錬金術的ギミックが施された月光城にて
朱殷という名で呼ばれた魔術師は己の研究をこよなく愛していた。賢者の石を生成するための学問――錬金術に必要な血液を求めるためにも、『第五の貴族』からの干渉を避けてアトリエに引き篭もるのにも、この場所と紋章はとても役に立ってくれたのである。
その場所の名を『月光城』、紋章の名を『月の眼の紋章』という。
「ダークセイヴァーは地下世界であった、というお話ですけれど……ではなぜ、空に『月』が見えるのでしょうか?」
黒弗・シューニャ(零・f23640)は不思議そうに尾をくゆらせた。
「『月』の調査が行われた結果、関連があると思われるお城が見つかりましたの。その名前は『月光城』。城主不明の謎めいた城塞が幾つも見つかったのですけれど、共通点があって、月の満ち欠けに呼応して輝くのですって。なにしろ、あの『第五の貴族』ですら手出しが出来ない難攻不落の要塞なのだとか。一度、調査をしてみる価値があるかもしれませんわ」
ただ、『月光城』には強大なオブリビオンが主として君臨しているため、攻略は一筋縄ではいかないだろう。
「皆さまが向かう『月光城の主』は朱殷の魔術師と呼ばれる吸血鬼ですわ。お城の地下に広大な研究室を持っていて、滅多に外へは出てきませんの。研究に必要な生贄すらも、配下のオブリビオンに攫わせて自らは錬金術に没頭しているみたいですわ。研究に熱心なあまり、研究室以外のお城内部も様々な錬金術的仕掛けが凝らされて、まるでダンジョンのような有り様ですの」
侵入者を巨大な試験管に閉じ込め、充填した液体で殺した死体を保存するための装置。秤の一方に自分が乗り、もう一方に同じ重さの何かを乗せないと開かない扉。落とし穴の先は巨大なすり鉢になっていて、落ちたが最後、粉々にすり潰されて血液だけを漉し取るための素材にされてしまうだろう。
「しかも、お城には攻撃性を強化されたオブリビオンがたくさん放たれていますの。ダンジョンの罠に対処するだけでなく、時には利用することで強化オブリビオンとの戦いを有利に運ぶことができるかもしれませんわね」
ダンジョンと化した城の内部を地下に向かって進むと、その途中に『人間画廊(ギャラリア)』という広間があるのだという。
「ここに集められているのは、まだ生きている人間ばかりですわ。『月光城の主』が持つ『月の眼の紋章』はギャラリアに捕らえた生きた人間をエネルギー源として、なんと通常の『66倍』もの戦闘力を宿主に与えるという効果を持ちますの! まさに生贄ですわね……!」
その上、『月の眼の紋章』は吸血鬼自身の攻撃に加えて棘の生えた鋭い鞭を射出する能力を持っていて、たとえギャラリアから人々を救い出して強化を無効化したとしても、こちらの攻撃は自在に放つことができるのだそうだ。
「朱殷の魔術師のギャラリアは錬金術の趣味がいかんなく反映されておりますの。人々は透明な瓶にひとりずつ詰められ、名前のアルファベット順に整理されて並べられている状態ですわ。彼らだけで逃がすのは危険ですから、助けたらひとまず隠れていてもらって、吸血鬼を倒してから一緒に脱出してもらえると助かりますわ。ああでも、その前にこのギャラリアには飢えた鼠の群れが放たれておりますの! 猟兵にはたいした攻撃にならなくても、弱った人々には致命的となりかねませんわ。完全に殲滅するか、鼠に襲われないような状態にしてあげないと、安心して先に進めませんわね……」
説明を終えたシューニャは再び尾を揺らめかせ、頷いた。
「では、皆さまをダークセイヴァーにお送りいたします。夜と闇に覆われ、異端の神々が跋扈する地下世界へ……!」
ツヅキ
こんにちは、ツヅキです。ダークセイヴァーの『月光城』に君臨する吸血鬼退治のシナリオとなります。
プレイングはオープニング公開後から受付中です。人数は融通が利きますので、参加人数に関わらずお好きなタイミングでご参加くださいませ。システム的に締め切られるまではいつでもお待ちしております。
共同プレイングをかけられる場合はお相手の名前とID・もしくは団体名をプレイング冒頭にお願いします。
また、他の参加者と一緒にリプレイを執筆する場合があります(完全にタイミングやプレイングの内容次第となりますので、連携描写の有無はこちらにお任せください)。
基本的にアドリブ有りです。
無しをご希望の場合はその旨をお伝えください。
●武器描写について
プレイング内で指定がないが、ユーベルコードが武器依存である場合(もしくは単に『剣』や『銃』とだけ指定があって、その分類の武器を幾つか所持している場合など)はステータスシートのアイテム欄からこちらで状況に合ったものを描写することがあります。
特定の武器を描写してほしい場合はあらかじめプレイングかユーベルコードの説明欄よりご指定をお願いします。
第1章 集団戦
『オルトロス』
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POW : くらいつく
自身の身体部位ひとつを【もうひとつ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : ほえる
【悲痛な咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : なかまをよぶ
自身が戦闘で瀕死になると【影の中から万全な状態の同一個体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:夏屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
錬金術に、魔術師
それと、月光城か…
どんな研究をしてるか分からないけど、人狼病のこと、わかるといいな
それに、囚われた人たちも、助けるの
うん、やるの【勇気】
まずは、床に手をついて魔術陣を展開
電脳空間と繋げて【ハッキング】なの
敵の【索敵】と、ルートや罠の【情報収集】
道は一本に絞って精度を上げるの
UC発動して3タイプの天狼の魔剣【ルプス】を大量に従えて進むの
破邪【結界術】で作るルプスの特徴を使って、大剣型で防御を、
長剣で牽制と攻撃を、刺突剣で足止めと罠発動のアンテナとして活用なの
咆哮は剣に纏わせた【オーラ防御】で遮音と反射
同士討ちも狙うの
それは、ぼくも使ってるから、対処を知ってるの
ゾーヤ・ヴィルコラカ
ダークセイヴァーの月、人狼にとっては複雑な気持ちね。本当にここに、何か手掛かりがあるのかしら。とにかく、中に囚われた人を助けて、奥にいる咎人さんを何とかしなきゃ。
【UC:魔氷変容】(POW)を発動よ。装甲を半分、移動力を5倍にするわ。防具に纏っていた氷を身体の強化に使うわね。噛みつかれるより速く駆け抜けて〈シールドバッシュ〉で弾き飛ばすわ。
錬金術的な仕掛けは、わたしに分かるものかしら? 秤に乗せるみたいなのは〈結界術〉で氷を生み出せばいいけれど、時間がかかりそうなら〈怪力〉で〈こじ開け〉て進むわね!
ここで止まってなんていられないわ。早く、もっと先に進まなきゃ。
(アドリブ連携等全て歓迎)
まるで天に輝く月の満ち欠けを写し取ったかのように、月光城は月が見せる形と同じ分だけ万華鏡の如き幻想的な光を纏っている。
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は微かな吐息を零してそれを見上げ、決意を秘めた眼差しで頷いた。
「うん、やるの」
囚われた人たちを助け、人狼病の手がかりに少しでも近づけたらいい。勇気が希望を生み、ロランに力を与えてくれるのだ。
「ダークセイヴァーの月、ね」
ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)たち人狼にとってあの月はとても重要な意味を持っていたから、どうしても複雑な気持ちが湧き起こるのを抑えきれない。
――なぜ、地下世界に月があるのか――。
ゾーヤは小さく握りしめた拳を胸に当て、探るように城を見つめる。本当に何かの手掛かりがここにあるとすれば、行くしかない。囚われた人々を助け、元凶たる咎人を何とかしてみせるのだという覚悟がゾーヤの身に纏う魔氷の防具に変化をもたらした。装甲が解け、代わりに脚部を神秘的な氷の膜で覆い尽くして移動力を5倍にまで強化する。
「これで、一気に攻略よ」
ロランとゾーヤは揃って月光城へ踏み込んだ。迎え撃つのは、狂暴を超えて狂気の域にまで至るほどの暴虐性を齎されたオルトロスの群れ。
「――アクセス」
それまでの柔らかな口調から抑揚に乏しい声色へ変化したロランが召喚するのは天狼の魔剣と呼ばれる大量の剣であった。両手を床につき、描いた魔法陣が次元を超えて電脳空間と直結。オルトロスの群れごと城内の至る場所を光の筋が迸り、ハッキングによる浸食領域が拡大してゆく。
「索敵……総数を把握、ルートの可能性を50%以下にまで限定完了。罠の場所をピックアップ」
情報収集の結果が次々とロランに集まる。
「ルートを一本化するまであと5……4……3……解析終了」
襲いかかるオルトロスを交差した大剣型のルプスで押し返しながら、ロランは真北を指さした。
「あっちの壁に、ギャラリアへ続く扉があるよ。手前には落とし穴があるから、気を付けなきゃ」
「よし、こいつらを蹴散らして進むわよ!」
氷の結晶を舞い上がらせながら、ゾーヤは持ち得る限り瞬発力を発揮する。迫るオルトロスの牙が体に触れるより早く駆け抜け、道を塞ぐものは問答無用で文字通りに跳ね飛ばした。もんどりうって床に転がったところをロランの操る刺突剣が足を縫い留めるように突き刺して足止める。そうやって動けなくしたところを、長剣でばっさりと斬り捨てた。
「そこに罠があるのは、わかってるの」
天井から降り注ぐ試験管にいち早く対応したのはアンテナ代わりにしていた刺突剣である。試験管を鋭く穿ち、甲高い音を鳴り響かせながら細かく割り砕く。ゾーヤは躊躇うことなく落とし穴の上を飛ぶように駆け抜けた。床が開き、すり鉢が顔を見せる頃にはもう扉の前までたどり着いている。
「キャィンッ!!」
オルトロスが吼えた途端、剣に纏わせたロランの気膜が音響を反射することで同士討ちを誘発。ハウリング――自分も使ったことのある技であれば、対処方法にも通じているというわけだ。耳をいからせ、苦し紛れにのたうつ彼らを見据えつつ、ロランは後ろ向きにゾーヤの隣にまで近寄った。
「で、この秤の反対側に自分と同じ重さを乗せればいいのよね? 大丈夫、いけるわ」
秤の一方に飛び乗ったゾーヤが生み出したのは、自分と同じ重さの氷である。氷塊が乗った皿はゆっくりと揺れながら傾いた後、やがて水平に釣り合った。
「扉が開くわよ!」
ゾーヤは待ちきれないとばかりに足踏み、道が開けると同時にその先を目指して進む。助けを待っている人がいるから、手掛かりを掴みたいから――この足はまだ、止まることを知らない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
儀水・芽亜
同行:土御門泰花さん(f10833)
泰花さん、今回はよろしくお願いします。
ふむ、番犬ですか。確実に殺しきらないと同じものが増えていくと。
それなら「全力魔法」眠りの「属性攻撃」「範囲攻撃」「催眠術」の幻夢クラスターで、まとめて眠らせましょう。
起こさないようそうっとそうっと。
仕掛け罠は私の苦手分野ですね。なにしろ眠らせられない。
一度、ナイトメアランページでナイトメアに通路を突っ走らせて、罠の有無を確かめてみましょうか。
泰花さんは、何かいい手があります?
え? 私を抱えても大丈夫ですか? でしたらお願いします。
通り過ぎた後を次々罠が動き出してますよ!
罠地帯を抜けた!? 随分と危ない橋を渡ったものです。
土御門・泰花
※アドリブ歓迎
芽亜さん(f35644)と参加
現場到着と同時、芽亜さんと私へ【早業】にて【結界術】【オーラ防御】を展開、守りを。
第4層の月の謎、このお城に秘密の一端が隠されてるやも、と。
では、共に参りましょうか、芽亜さん。
強化オブリビオン……単体では私たちには及ばずとも、数が多くなると危険でございましょう。
先ずは芽亜さんがご対処されますか?
ふむ……『多数の敵には眠りから』。
では、彼らを起こさぬうちに奥へ進みましょう。
私も特段、遺跡探索のようなことをしているのではありませんが……。
事前情報にあった罠のお話が、妙に具体的でしたのが気になりますね。
ふむ。ナイトメアを走らせて、まず試しを?
では私のUCで通路を抜けましょう。芽亜さんくらいでしたら何とか抱えられると思いますゆえ、これで罠をかいくぐりましょう。
芽亜さんを抱えたら、UCと【早業】【軽業】を併用しつつ、【呪詛】を纏わせた黒揚羽の式神(と、可能であれば巴形薙刀)で【カウンター】し、「蝶のように舞い蜂のように刺す」戦い方をしながら先へ進みます。
「ふむ、思っていた以上に過酷な戦場ですね……」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は考え込むようにそっと目を細めて館の内部を眺め渡した。敵はオルトロス、地獄の番犬たち。確実に殺し切らない限り、敵の生命力を奪って傷を癒しながら戦い続ける運命にある獣は威嚇するように喉を低く鳴らしてこちらに襲いかかるタイミングを待っている。
「泰花さん、準備のほどは?」
「いつでもどうぞ」
穏やかな微笑みとともに土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は素早く結界の印を結び、芽亜と自身の周囲に強固な守りを紡いだ。
「では、第4層の月の謎を解くために参りましょうか、芽亜さん」
「はい、よろしくお願いします」
芽亜は初手から全力でもって幻夢の炸裂弾を作り出す。それは虹色の催眠光をオルトロスたちへ浴びせかけるための巨大なクラスターを発生、眠りの淵に落とした相手の鼻先をそっと静かに通り過ぎるだけの時間を稼いだ。
「さすがにこれだけの数がいると、まとめて相手をするのは危険でしょうね。いったん眠らせるという芽亜さんのご対処は正解かと」
――多数の敵には眠りから。
まずは相手を行動不能に陥らせ、その間に仕掛けの攻略を行うという流れに泰花は納得したような顔で頷いている。
「それで、どうしましょうか? 私も特段、遺跡探索に経験が深いわけではありませんので……確か、試験管に落とし穴でしたね。妙に具体的でしたので、よく覚えています」
泰花はちょっと辺りを見回してから、「いきなり試験管に閉じ込められてホルマリン漬けは勘弁ですよね」と苦笑した。
「私もこういった罠は苦手分野ですね」
芽亜も肩を竦め、軽く嘆息せざるを得ない。
「何しろ、眠らせられませんから。試しに一度、ナイトメアを囮にしてみますか?」
「ふむ。ネイトメアを走らせて、まず試しを?」
窓の外から差し込む月の輝きが館の全貌をうっすらを浮かび上がらせる。魔法陣のような図案が描かれたタイルの床はいかにもなにかありそうだ。
「ただ、ナイトメアだけでは少し心もとないかもしれません。泰花さんは、何かいい手があります?」
泰花は少し考えてから、「では」とある提案を申し出た。
「芽亜さん、私に抱え上げられても構いませんか?」
「え? 私は構いませんが、むしろ泰花さんが抱えても大丈夫ですか?」
瞬きして驚く芽亜に、泰花はゆっくりと頷いてみせる。
「たぶん、何とか」
そして泰花は本当に芽亜を腕に抱え、静かに呼吸を整えた。少しずつ、泰花から重さという概念が抜け落ちてゆく。まるで揚羽蝶の如く軽い、泰然と空を舞う存在に近くなる。
「いきましょう、芽亜さん」
それを合図に、芽亜は慎重に呼び出したナイトメアを一直線に走らせた。
「おいきなさい!」
罠を恐れもせず、ナイトメアは薄闇に沈む館内を突き進む。それに先導され、泰花も滑るように駆け出した。芽亜にしっかり掴まっているように告げ、ナイトメアに反応して降ってくる試験管を黒揚羽の式神を纏わせた薙刀で軽やかに払い除ける。背後で硝子の砕ける音が弾け、標的を見失った保存液が呪詛に塗れながら無為に床を流れ落ちた。
芽亜は泰花の首に掴まり、後ろを見ながら思わず呟く。
「通り過ぎた後を罠が動き出してますよ!」
「順調ですね」
次は落とし穴だ。先にナイトメアが発動させた後なので、不意打ちを受けずに攻略するだけの余裕がある。
泰花は鋭く薙刀をすり鉢の底へ突き刺し、それを軸にすることで軽業の如き身のこなしを披露した。罠に触れることなく空を舞うのに合わせて、狩衣の裾が蝶のように麗しく翻る。
「罠地帯を抜けた!?」
お守りのように黒揚羽の群れを引き連れた泰花は、安全と思しき場所へ芽亜を下ろして一息を入れた。
「随分と危ない橋を渡ったものですね、泰花さん」
「芽亜さんと一緒なので張り切ってしまったかもしれません。なにはともあれ、仕掛けは攻略完了です。さあ、先へ進みましょう」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
一瀬・両儀
POWで行くとするかァ。
錬金術だ何だのと、面倒なことは考えないに越したことはねェな。
要は死なずに邪魔なやつを斬って捨てれば終わりだ。
面倒なトラップ関係は<第六感>と、
ちと不得手だが<瞬間思考力>でなんとかしよう。
中の怪異はそこまでじゃねェみたいだな。
こいつらにゃあもったいないが、
<ダッシュ>で一気に距離を詰めて【UC: 抜刀・死電一閃】を発動。
片っ端から斬るとするかねェ!!!
(アドリブ連携など全て歓迎です。)
月白・雪音
…オブリビオンの貴族すらも立ち入らぬ月光城。
世界の成り立ちにどう関連するか、今は分かりかねますが…、
この城に囚われ奪われる命が在るならば、踏み入らねばなりませんね。
自らの妄執のままに骸を築く、或いはそれも命の性ではありましょうが…、
過去より今を脅かすとあらば、今を以てこの城を落とすのみです。
UCを発動
残像、悪路走破にて全速を以て駆けつつ野生の勘、見切りで敵の攻撃と罠を感知
怪力、グラップルにて向かってくる敵を迎撃しつつ落とし穴等の罠には敵を巻き込むよう動く
重さのギミックなど他の物体が必要となる際には倒した敵の体も利用する
罠の回避が不可能な場合には地形破壊も交え壁や床を破壊し
逃げ道を広げて突破する
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
やはり吸血鬼だけあって悪趣味な罠が満載だな
月の秘密も気になるが
今は吸血鬼を叩き、人々を解放するのが先だ
…全て、叩き切ってやる
指定UC発動
白い靄を纏い高速移動を可能にする
錬金術的な仕掛けの在処は「視力、暗視」で見破って把握しておきたい
もし「第六感」で仕掛けの発動を察知したら
即高速移動で室内を駆けまわり逃げ切ろう
オルトロスの群れは黒剣に「属性攻撃(聖)」を付与後「なぎ払い、衝撃波」で落ちてくる仕掛けごと一気になぎ払う
咆哮による無差別攻撃は「地形の利用、ダッシュ」で極力音を遮るような壁や家具の陰に滑り込みやり過ごしたいが
無理なら「衝撃波」の音で「範囲攻撃」し相殺を試みよう
やれやれ、面倒事は敢えて考えないに越したことはない――一瀬・両儀(不完全な殺人術・f29246)は館内へ突入するなり、敵の出方を待つまでもなく能う限りの速度で近づくと同時に腰に提げた二刀を抜刀。交差する剣閃が影のように揺らぐオルトロスの体を鮮やかに斬り捨てた。
「要は死なずに邪魔なやつを斬ってやればいいんだろ? さあ、来いよ。てめェらにはもったいねェくらいの業物だぜこいつはよォ!!」
容赦なく、両義はオルトロスの首を撥ね飛ばす。かろうじて致命傷を逃れた個体が傷口から生やしたふたつめの頭部を剥き出して躍りかかるのを、低い姿勢を保ちながら疾駆する月白・雪音(月輪氷華・f29413)の右手が喉元を掴み、大外刈りの要領で転ばせてから手刀を急所に叩き込んで沈黙。
オブリビオンの貴族すらも退ける月に所縁ある城内に、その名の如き“白”を纏う雪音の姿は否応なく映えるのであった。
骸、増やさざるべし。
この手がまだ間に合うというのなら、雪音は駆ける。過去より今を脅かすとあらば、雪音が落とす――この城を。
「ッ」
ほんの僅かな足裏に感じた違和感を逃さず、真横へ跳躍。ぱっくりと口を開いた落とし穴の底へ手近な敵の足元に回し蹴りを入れて叩き落とし、逆に仕掛けを利用してやる。この作戦には流石のオルトロスも怯み、情けない唸り声を上げながら怖じるように後ずさったところを雪音が振るう裏拳の餌食と化した。
「何であろうと、勝利に必要とあらば生かしてみせましょう。それが妄執のままに人の命を弄ぶ者の罠だとしても……踏み入ったからには、その思惑すらも越えてみせます」
落下した敵の姿がやがて見えなくなり、遠く微かに悲鳴のような声だけが雪音の耳に届いた。吸血鬼の名に相応しい悪趣味な罠を前にして、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は憤りめいた感情を宿した瞳を城内へと差し向ける。
なんという、昏き気配に満ちた場所だろうか。いまにも命を搾り取られている人々の苦しみ抜いた呻き声が聞こえてきそうなほどに、陰気で冷たいところ。敬輔は軽く剣の鍔を鳴らし、白い靄のような魂魄をその身に纏った。
「……いくぞ」
刹那、視界の隅で光る何かに気づいたのは闇をも透かす視力の賜物であったろう。第六感に従った方向へすぐさま高速移動を用い、試験管の罠を空振りへと導いた。背後から飛び掛かるオルトロスへは破邪の力を宿した黒剣を薙ぎ払った際に生み出す衝撃波で先ほど躱したばかりの試験管ごと砕き退ける。
「ギャンッ」
黒剣の纏う聖なる属性に感覚器をやられ、オルトロスは痛痒さに耐えるように自らの体をかきむしった。
「オルトロス、番犬の怪物の名を与えられたオブリビオンか。悪いが、悠長にお前の相手をしている暇はない。……全て、叩き切ってやる」
悲痛なる咆哮にも敬輔は惑わされず、剣を薙いだ時に発生する衝撃波で音がこちらへ到達するより先に半ば打ち消し、相殺しきれなかった余波はあらかじめ盾代わりにできそうな地形としてピックアップしてあった柱の影へと滑り込んでやり過ごした。
地形を生かして戦うのが敬輔なら、それを破壊して己の有利に事を運ぶのが雪音である。降り注ぐ試験管から逃れるため、背に当たった壁を肘撃ちで突き崩して即席の逃げ場を設けた。両義は同じ仕掛けを第六感としか言えない勘の良さで察知し、ダッシュの応用で落ちてくるよりも早く潜り抜ける。
「さッてと、あとはこいつか……」
扉の前に鎮座する秤を前にした両義は瞬間思考力でぴんと来たのか、敬輔をまじまじと眺めてこう尋ねた。
「アンタ、身長いくつだ?」
「僕か? 177cmくらいだと思うが……」
「奇遇だな、俺もなんだよ。見たところ似たような背格好だし、重さも同じくらいなんじゃないかと思ってな」
実際にふたりが乗ってみると、秤はちょうど釣り合って扉を封印していた仕掛けが解かれてゆく。
「…………」
雪音は無造作に首根っこを掴んだオルトロスの体を引きずり、反対側の秤へ向かって擲った。意外と現地調達でも何とかなるものである。使えるものは使うという意志さえあれば、文字通りに道は拓けるのだ。
両義は拳を打ち鳴らし、快哉を叫ぶ。
「俺にかかりゃあ、ざっとこんなもんだぜ」
「この先に、例の人間画廊があるのか……」
敬輔はここまで漂う血生臭さに眉をひそめ、怒りに拳を握り締めた。
「月の秘密も気にならないわけではないが、今は一刻も早く人々を解放しなくてはな」
こくりと首を縦に動かして、雪音も同意する。
一体、月光城とは何なのか。世界の成り立ちとの関わりは果たして本当に存在するのだろうか?
「少なくとも、この城に囚われ奪われかけている命が在る……それだけで、往くには十分です。たとえ命の性であろうとも、赦されざる罪の償いは受けて頂きましょう」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『飢えた鼠の群れ』
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POW : 噛み付いてきた鼠達を全身で振り払う
SPD : 鼠から足の速さを生かして逃げる
WIZ : 地形や道具、魔法を使って鼠たちの動きを牽制する
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ひッ……」
息を呑むような悲鳴がしたのは『S』のラベルが張られた瓶の並ぶ列からだった。中に閉じ込められているのは確か、セラだかサラだかそういう名前のまだ十代半ばにしかない少女。
「大丈夫だ、この瓶の中まではあの鼠たちも入ってはこれない。皮肉なことだが、俺たちを閉じ込めるこいつが俺たちを守ってくれるんだ」
『L』のラベルがついたガラス瓶を青年が内側から撫でるように触れる。彼らの腕には細い管のようなものが差し込まれ、瓶の蓋から床の穴をくぐって地下へと延びるその管を通じて血液を抜かれているのだった。
鼠の鳴き声がひっきりなしに聞こえてくる。あれは魔獣の類で、人肉を好んで食するのだ。武器と人手があれば、彼らにでも駆除できる程度の小獣ではあるが……こんなところに閉じ込められ、血を抜かれて弱っている状態ではそれも望めまい。
「死ぬまで、これが続くの……?」
少女のすすり泣く足元に寄ってきた鼠が瓶のガラスを歯で齧り、乾いた虚しい音を立てた。それは本当に、生きる気力を根こそぎ奪うようなとても耳障りで気を滅入らせる響きをしていた。
ゾーヤ・ヴィルコラカ
ここが人間画廊、本当に、酷いわね。人を何だと思っているの。すぐに助け出さなきゃ、その為にも鼠さん達はちょっとあっちにいっててね。
【UC:絶凍魔弾】(WIZ)を発動よ、辺りの床のみを凍り付かせる〈属性攻撃〉で鼠さん達を追い払うわ。囚われている人はみんな、立つのもやっとだと思うから、わたしが一人ずつ、安心してもらえるように〈優しさ〉いっぱいで抱えて運ぶわね。時間はあまりないけれど、一人ひとり声をかけながら助け出すわ。
ここで、少しだけ待って頂戴。すぐに奥の咎人さんを倒して、全部終わらせてきちゃうんだから。こんなに怖いことは全部ここで終わり、だから、安心してね。
(アドリブ連携等々全て歓迎です)
一瀬・両儀
SPDで行くかねェ。
オレは殺人鬼という性を背負っちゃあいるが、
人間画廊なんて趣味のわりーモンには興味ねえな。
人を粗末に扱うのはオレとは相容れん。
【UC:影身具現】を使って、オレの影に鼠どもでも分かる殺気を放ちつつ、
無銘刀を使った<早業>で処理させよう。
あまりオレらしくねえが、2人くらいなら一気に担げるはずだ。
<ダッシュ>でこんな陰湿な場所からサッサと抜けるぞ。
体力が続く限りこれを続ける。
変な気を起こしてうろついたりしようなんて思うなよ。
テメエらのために言ってンだぜ。
(アドリブ連携など全て歓迎です。)
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
むむ…、間違った、安心感なの…
そうなる様に、仕向けてるのかも
何にしても、ネズミは危ないから、可哀想だけど倒しちゃうね
UC発動
瓶を避けて等間隔に炎魂たちを配置させるね
ちょっと寒くなるから、瓶の壁から下がっておいてね?
炎魂たちに指令を送るの
部屋の熱をドンドン吸収して、ネズミたちの動きが鈍る室温まで下げていくよ
室温自体を下げるから、逃げ場もないはずだよ
寒さで鈍ったネズミに【誘導弾】の様に炎魂を当ててさらに冷やして氷漬けにするね
魔術で【索敵】して、確実に当てるの
ん、寒いと思うけど、これで安全だからね
今出してあげるから、そしたら近くで隠れてて
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
指定UC発動は1章から継続
人間を瓶に閉じ込め血を抜くなんて
悪趣味にも程があるな
鼠諸共、速攻叩き壊してやる
事前に「視力、暗視、地形の利用」で人々を避難させられそうな安全地帯を確認
鼠たちに高速移動で接近した後、「属性攻撃(炎)」を宿した炎の「衝撃波」で「なぎ払い、吹き飛ばし」てやる
貴様らには人肉ではなく業火をくれてやる!!
鼠を退けたら「頭を抱えて床に伏せて!」と警告した後
瓶を「怪力」任せに黒剣で叩き割ろう
力技にも程があるが、上から引っ張り出すだけの時間も惜しい
瓶を叩き壊したら
救出した人々の管を抜いてから怪力で安全地帯に運ぼう
…城主を倒すまで、ここで待っていてくれ
儀水・芽亜
同行:土御門泰花さん(f10833)
この『人間画廊(ギャラリア)』、他の予知で語られたというものと随分趣が違います。これは、画廊ではなく実験室?
城主の性向が特に強く出ているのでしょうか。
ちょろちょろと物陰から鼠達が覗いていますね。値踏みするような目をして。
いいでしょう、この領域全体を制圧します。
「結界術」「全力魔法」「範囲攻撃」夢の「属性攻撃」でサイコフィールド。
鼠達を眠らせると同時に、捕らわれた人々に夢幻の癒しをもたらします。
鼠は私が鋏で「切断」して駆除しますから、泰花さんは囚われた方々の救出をお願いします。
皆さん、この安全地帯は私達が城主を討滅する間程度はもちます。吉報をお待ちください。
土御門・泰花
芽亜さん(f35644)と参加。
※アドリブ等歓迎
……まぁ随分と悪趣味ですこと。
ええ、芽亜さんの仰せの通りですね。
同意しつつ【早業】にて己と芽亜さんへ【結界術/オーラ防御】展開、守備を。
鼠をお任せできますなら……人々は私が安全な場所へ避難させましょう。
芽亜さんが鼠を相手取る間に私はUC発動、試験管へ。
【軽業/早業】で中の人々を傷つけることのない様、瓶のみを薙刀で矢継ぎ早に破砕。
もし倒れる人や鼠が狙った人がいれば【かばう】。
救出次第、皆さん一旦あちらへ!と人々を出入口へ誘導。可能な限り救出したら、私も護衛に傍へ。
鼠の全滅後、首魁を討ったら必ずお迎えに来ることを告げて愉し、安心していただきましょう。
月白・雪音
…瓶に囚われ血を抜かれ、周囲は人喰の獣の群れ。
我らにとっては小さき障害なれど、心身衰えた彼らにとってどれほどの恐怖であることか。
迅速に対処せねばなりませんね。
あまり気は進みませんが…、獣に会いては獣の理にて相対すると致しましょう。
捕食、動物と話すの技能にて、己が身に宿る虎の臭いと狩猟本能を僅かに晒し鼠の群れを強く威圧
――道を塞がば、悉く喰らってくれよう。
鼠が怯めば人々が囚われた瓶を破壊し残像にて即座に安全な場所へと運び出す
…不躾に恐れさせた事をお許し願います。
我々が此処に訪れたのはこの城の主を討たんが為。
其れを為すまでは身を隠して頂ければ幸いです。
私の匂いが残らば、鼠が近寄る事も無いでしょう。
そこはあまりにも酷い場所であった。ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)の目に映る、まるで実験動物のように狭い瓶へと閉じ込められた人々の諦めきった横顔……おそらく、これをやった者は彼らを人間として扱う気がまるでないのだ。
「ギャラリア……つまり、コレクションってことよね。それも、生きたまま血を搾り取るなんて蛮行の犠牲者たち。すぐに助け出してあげなきゃ」
「なら、この城の軒先に見つけた納屋にひとまず運ぶといい。あそこなら外から見えないし、屋根もある。建物の外にあるから逃がす時も楽なはずだ」
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は軽く城内をひと回りして、一時的に彼らを逃がしておける場所を探してきたのだった。こめかみに指を触れさせ、戦いの時とは裏腹な柔らかい微笑みを見せる。
「地形を視る“眼”には自信があるんだ。大丈夫、万が一何かあってもあそこなら敵よりも先に僕たちの方が駆けつけられるだろう」
「よッし、じゃあ一丁やるとするか」
気合を入れるように髪を両手で撫で付け、一瀬・両儀(不完全な殺人術・f29246)はじっと目を凝らす。人間画廊とやらに対する感想その一、最低に趣味が悪い。その二は興味がないのでご遠慮いたしますといったところだ。
「殺人鬼なんて性を背負っちゃいるがな、こんな風に人を粗末に扱う気なんざさらさらねェんだよ。いいか鼠ども、オレの影身をとくと味わいな!」
それは竜に似ていた。両義の影が鎌首をもたげ、わざとらしいくらいに殺気を解き放つ。いくら鼠だとて、これほどに凄まじい気に当てられたら気づいて然るべし、だ。
「キキッ?」
それまでガラス瓶に群がっていた鼠が異変に気付き、忙しなく動き始める。なんだこの気配は? とてつもない化け物めいた威圧感に戦慄し、辺りを窺う。
ひとつは両義の影、もうひとつは……月白・雪音(月輪氷華・f29413)が僅かに晒した狩猟本能の発露であった。それも、虎だ。ここに竜虎が揃い、獰猛なる睨みと本能へ訴える獣臭でもって鼠たちを威圧した。
――道を塞がば、悉く喰らってくれよう。
「キッ……」
毛を逆立て、恐れ慄いて後ずさる。ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)はそっと、鼠たちが離れた後のガラス瓶に触れた。
「自分たちを、閉じ込めている……こんなものに、安心感を抱いてしまう……むむ、そんなの、間違ってる」
「あなたは……誰……どうして、ここに?」
虚ろな少女の問いかけにロランはこんな風に答える。
「ちょっと寒くなるから、瓶の壁から下がっておいてね?」
「え――」
最初は驚いたが、実際に外から冷気が近づいたので少女は慌てて瓶の真ん中で縮こまる。美しい蒼炎が画廊内部に等間隔を置いて揺らめくという幻想的な光景に息を呑んだ。
「さあ、ドンドン部屋の熱を吸収して奪うの、もっと、もっと」
室温自体を下げるから、逃げ場もない。体の小さな鼠はあっという間に体温を奪われ、動きが鈍くなった。小刻みに震え、牙を鳴らして少しでも熱を逃がさまいと毛を膨らませて丸くなる。何匹かでひと塊になって、なんとか暖を取ろうとする。
「さあ、この人たちから離れなさい!」
ゾーヤの足元から白い靄のような冷気が立ち昇った。氷の結晶を描きながら徐々に範囲を拡大して床だけを凍り付かせてゆく。鼠は機械などの上に逃げようとするが、ゾーヤの冷気が追いつく方が早かった。足元が凍り付き、動けなくなったまま氷原に捕らわれては為す術もあるまい。
「この『人間画廊(ギャラリア)』、他の予知で語られたものとは随分趣が違いますね」
まるで実験室のようだ、と儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は素直な感想を漏らす。城主の趣向によって紋章の生贄とする血の集め方にも個性が出るというわけなのだろうか。
「興味深いです。ねえ、泰花さん?」
「ええ、芽亜さんの仰せの通りですね」
土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は手早く結界を紡ぎ、自分と芽亜の身を護らせる。「気を付けていってらっしゃい」と送り出す保護者のような手際の良さであった。
「悪趣味な画廊には天誅です。芽亜さん、鼠の方はお任せできますか」
「あの、ちょろちょろと物陰から値踏みするような目で私や生贄の方々を見ている輩のことですね。いいでしょう、最初から全開でいきます」
芽亜の唇が詠唱を始めると同時に、鼠たちに異変が起こった。体温を奪われ、硬直していた体がゆっくりと弛緩して次々と眠りの淵に落ちていったのである。
「キッ!」
逃れようとした鼠には、ロランの差し向けた蒼炎がぶつかって氷漬けにしてしまう。フィルム・アイを通した電脳魔術による索敵から逃れることなどできはしない。逃げ場を失った鼠たちの死角より、今度は紅蓮の業火が襲いかかった。
「逃がしはせん!」
――剣に纏わせた炎を掲げ、敬輔は神速でもって接近するのと同時に炎を薙ぎ払った。迸る炎の衝撃波が鼠を群れごと呑み込み、灰へと変えてゆく。
「一丁上がりっと」
両義が無名刀でさくっと切り裂いた鼠の体はびくびくと痙攣した後でようやく動かなくなった。さすが魔獣らしく、手足を少し傷つけた程度ではまるで効かない。こうやって一刀両断にしない限りは、いつまでも動き続けたに違いなかった。
「まったく、憎らしいくらいの生命力ですよ」
芽亜の鋏が閃き、あっという間に鼠を両断。さすがに首を切られては魔獣といえども再生できまい。
「皆さん、頼もしいですね」
凍り付き、色様々な炎が揺れ動く戦場を泰花はひらりと蝶が舞うように移動した。ガラス瓶に閉じ込められた人々の元まで馳せ、薙刀を構える
「さあ、下がっていてください」
刃が真横に薙ぎ払われ、甲高い音が鳴り響いた。泰花は息つく暇なく、ガラス瓶が脆くも壊れた中から人々を救い上げる。
「破片で怪我をしないよう、気を付けてくださいね」
「は、はい……あッ」
もうずっと立ち上がっていなかったからだろう。よろめいた少女を庇うように泰花が手を貸した。
「大丈夫ですか? 皆さん一旦あちらへ!」
必死にうなずく少女の背を支え、先ほど敬輔が言っていた納屋のある出入口へと導く。
「頭を抱えて床に伏せて!」
敬輔の警告を聞いた人々が言われた通りの態勢を取る。懇親の力を込めた一撃を叩き込まれたガラス瓶が粉々になって砕け散った。
「お、おお……!」
力技に感心している青年に手を貸し、腕に刺さった管を一息に引き抜く。
「上から引っ張り出すだけの時間も惜しいからな。この方が色々と手っ取り早い。さあ、安全地帯まで急ごう」
「わ、わかった」
頷き、青年はおとなしく敬輔に従った。
ロランは助け出した少女の冷たくなった指先を包み込んで温めるように手を繋ぎ、皆と一緒に納屋へ向かう。
「まだ寒い?」
「ううん、へいき! どこへ行くの?」
「安全なところだよ。そこで少しの間、隠れてて」
「うん!」
まだ幼い少女はこくりと頷き、しっかりとロランの手を握り返した。
「す、すごい……俺たちが何をどうやってもヒビひとつ入らなかったのに……」
ガラス瓶を素手で砕いた雪音は、中から助け出した男の拳がどす黒く腫れ上がっているのを見た。きっと、何度も内側から叩き続けたに違いない。
「……もう大丈夫です。さあ、安全な場所へ」
残像を残して、雪音は彼らを外へと連れ出した。久しぶりに外の空気を吸った者たちはようやく助かったという実感が込み上げてきたようで、すすり泣くような気配があった。
「よく、耐えましたね」
瓶に囚われ、血を抜かれ。
人喰いの獣の群れに囲まれながら衰弱を待つしかなかった彼らの恐怖を思えば、それ以外の言葉が出てはこなかった。
「生きていてくださって、幸いでした」
「いや、こちらこそ……! まさか、助けてが来るなんて思いもしなかった。ほんとうにありがとうございます」
人々は安堵し、何度も例の言葉を繰り返す。
「そらよ、しっかり掴まっとくんだぜ。ったく、オレらしくねェが乗り掛かった船だ。サッサと陰湿な場所からはおさらばするぞ」
両義は特に弱っている――おそらく、誘拐されてここへ閉じ込められていた期間が長い者だろう。かなり衰弱しており、自力で立つこともままならない――女たちを両肩に担ぎ、急いで外へと運び出す。
「あ、ありがとう……ありがとう……」
「うん、もう大丈夫よ。順番にひとりずつ運ぶからわたしについてきて、ね?」
目が見えないのか、手探りでゾーヤの手を掴んで礼を言おうとする男に優しく頷き返す。どれほど怖かったろう、心細かったろう。ゾーヤに抱えて運ばれる間、男はずっと泣いていた。そんな彼らにゾーヤは親切に寄り添い、時には励まし、時には慰めた。
「ここで、少しだけ待って頂戴。すぐに奥の咎人さんを倒して、全部終わらせてきちゃうんだから」
「でも、危ないんじゃ……」
「大丈夫よ!」
ゾーヤが笑うと、人々もまたつられたように表情を和ませる。
「あなたが言うと、そんな気がしてくるね」
「だって、本当だもの。怖いことは全部ここで終わり。だから安心して、ね?」
「うん……」
少女は自分の肩を抱き、精いっぱいのささやかな微笑みを浮かべて頷いた。芽亜の敷いた陽炎状の結界は彼らの痛みを癒し、苦痛を和らげてくれる。
「不思議な鴇色の光……」
触れると少しだけ温かい。
芽亜は納屋に集めた人々に説明した。
「皆さん、この安全地帯は私達が城主を討滅する間程度はもちます。吉報をお待ちください」
「首魁を討ったら必ずお迎えに来ます。それまで、どうかお待ちくださいませ」
続けて、泰花が口添える。人々は真剣に猟兵の言葉に耳を傾け、ここを動かずに帰りを待つことを約束する。雪音は彼らの前に膝をつき、申し訳なさそうに言った。
「……不躾に恐れさせた事をお許し願います。我々が此処に訪れたのはこの城の主を討たんが為。其れを為すまでは身を隠して頂ければ幸いです」
「あなたこそ、お気をつけて。この城の主は……とても恐ろしい人です」
少女は掠れた声で、思い出すように呟いた。
「自分以外のものは生きていようがいまいが、人だろうが鉱物だろうが無関係に“素材”でしかないのです。己の研究にしかまるで興味がない、冷血なある魔術師……」
途中で鼠の鳴き声がして、少女が震え上がる。
すぐさま、雪音が言った。
「普通の鼠です。おそらく、私の匂いを察して逃げ出したのでしょう。この残り香がある限り、ただの獣であろうと魔獣であろうと近寄る事はありません」
神妙な顔で頷く人々の顔をのぞき込むように体を屈め、両義はしっかりと念を押した。
「変な気を起こしてうろついたりしようなんて思うなよ。いいか、これはテメエらのために言ってンだからな。言いつけを破って危ない目に遭ったって、責任とれねェぜ」
「はい、ご心配ありがとうございます」
「心配? チッ、別に俺はよォ……」
両義は唇を尖らせて髪をかき上げ、まあいいかと武器に手を伸ばした。
「やるこたァ同じだ。コイツで城主の奴をぶった斬る」
「残るは本命のみ、か」
彼らはここで待っていてくれると誓ってくれた。ならば、敬輔のやるべき事は決まっている。なにしろ、相手は人間を瓶に閉じ込めて血を抜くような悪趣味な相手だから容赦は要らない。
「……待っていろ、すぐに叩き潰してやる」
大成功
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第3章 ボス戦
『朱殷の魔術師』
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POW : その技、興味深いわ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【鮮血の石が煌く杖に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 美しく踊って頂戴?
自身が装備する【硝子瓶から追尾能力を持つ鮮血の刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 朱く赤く紅く咲きましょう
全身を【薔薇が香る瘴気】で覆い、自身が敵から受けた【喜怒哀楽の感情の強さ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:佐東敏生
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「玖・珂」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あら……?」
人間画廊から送られてくるはずの血液が止まった。朱殷の魔術師は少しの間考え、ようやく邪魔者が現れたのだという結論に至る。
「どうしましょう。これでは研究が進まないわ……それに、紋章も力を失っている……」
左目に手を翳すと、そこに埋め込まれた『月の眼の紋章』が輝きを無くしているのがわかった。
「侵入者……私の研究を阻む凶兆……いえ、危機は好機でもあるわ……そう、普通の人間よりも上等な“素材”があちらから来てくれたのですもの……ふふ、私の研究の贄として歓迎してあげましょう、ふふふ……!」
そこは人間画廊と血液を送り出す管によって繋がれた地下の研究室――魔術師はアトリエと呼んでいる。煮立った巨大ビーカーや複雑な蒸留装置などが乱立する、そこは彼女にとって愛すべき居場所であった。
儀水・芽亜
同行:土御門泰花さん(f10833)
錬金術師にアトリエは確かにお似合いですが、頭に「オブリビオンの」が付くとこうなりますか。
本人ごと、忌むべき研究成果を無かったことにしてしまいましょう!
研究が何より大事ならば、アトリエへの攻撃が最も怒りを呼び起こすはず。
時限発火でアトリエ全域に炎をばらまき、起爆させて実験器具類を破壊しましょう。
さあ、あなたの研究を台無しにしたのは私ですよ。かかってきてください。
挑発と共に「オーラ防御」と炎の「属性攻撃」を乗せた「結界術」で朱殷の魔術師の攻撃を防ぎ、彼女に生まれた隙を皆さんに衝いてもらいます。
城主を討滅したら何か起こるでしょうか? それも含め残務処理沢山ですよ。
土御門・泰花
芽亜さん(f35644)と参加
※アドリブ等歓迎です。
アトリエへ踏み込む前に己と芽亜さんに【高速詠唱】で【結界術/オーラ防御】展開、守りを。
進入時より【第六感/聞き耳/世界知識】も活用し、敵の行動に厳重注意。
錬金術師は私はとんと馴染みの無い術者ですが……こうも非人道的ですか。
【義侠心】からの義憤を微笑みに隠し、芽亜さんの炎に怒りを抱いた敵へ【早業/軽業/忍び足】で【地形の利用】もし、死角から迫りて【多重詠唱】でUC発動。
あなたが蝕んできた無辜の民の苦痛に比べれば、この程度大したことは無いでしょう?
私から生命力を奪おうとも守護結界は展開済み。思う通りには行かぬでしょう。
物理攻撃は【早業/軽業】にて回避と同時に薙刀で【咄嗟の一撃/カウンター】。
【体勢を崩す】ことも狙って。
さて……その「紋章」。
今や力無きものの様ですが、人の血、つまり生命という「陽気」を「陰」の存在たる月の眼の紋章へ注ぐことで陽光の代わりにし、力の源としていたのでしょうか?
となるとこの世界の月は、人の命を吸って輝いている……?
「はい、これでよいですよ」
土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は相変わらず手慣れた仕草で儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)に守りの結界を授け、にっこりと微笑んだ。
「私とお揃いの守護結界です。少しでもお役に立てますように」
「助かります、泰花さん」
芽亜は優雅にお辞儀をして感謝の意を表した。
「で、ここが例の魔術師のアトリエですか。さすがオブリビオンと言いますか、やはりオブリビオンと言うべきでしょうか……」
やや呆れた声色になるのも無理はなかった。純粋な錬金術を探求するには、その場所はあまりにも血生臭く死の気配が濃く漂っている。
ふと、微かに笑う声が部屋の奥から聞こえたような気がした。
「私のアトリエにようこそ。お茶でも淹れましょうか?」
片手に杖を持った銀髪の女が艶然と微笑み、芽亜と泰花をアトリエへと招き入れる。おとなしく誘いに乗る素振りでありながら、泰花はしっかりと耳を澄ませて第六感の導きを待ちつつ、敵の動向をうかがった。
「私は陰陽師ゆえに、こういった魔術にはとんと馴染みが無いのですが……このような道具を使うのは普通なのですか?」
泰花の目に留まったのは腑分けに使うような切れ味鋭い小刀である。魔術師は含み笑い、「さあ?」と嘯いた。
「私、他の魔術師とは交流を持たないでいるのよ。この城から出たのも、最後は一体いつだったかしら……」
「それはそれは、大層研究熱心なことですね」
おっとりとした微笑みを絶やさず、泰花は本心を隠して頷いた。芽亜が重ねて問いかける。これが宣戦布告だと、果たして敵は気付くかどうか。
「自分の研究がそれほど大事ですか」
「ええ、それはもう」
「わかりました」
いつの間にか、芽亜の手元には三連の神楽鈴が握られている。
「では、あなたごと忌むべき研究成果を無かったことにしてしまいましょう!」
透き通る鈴の音色が発火を誘い、アトリエ一帯を瞬く間に美しい鴇色の炎海へと変えてしまった。驚いたのは魔術師で、完全に虚を突かれた顔になる。
「燃やした? あなた、私のアトリエに火をつけたの……!?」
「御覧の通りです」
芽亜はしれっと認めた。次第に炎が爆ぜ始め、爆発に巻き込まれたビーカーが破裂する。零れ落ちた中身にも炎の手が襲いかかり、すべてを灰にする勢いで部屋全体に燃え広がった。
「あなた、よくも……! いますぐにこの炎を消しなさい!」
「お断りします」
すげなく芽亜が答えた刹那、魔術師の杖から複製された炎が迸る。けれど炎は芽亜にまでは届かず、見えない壁によって霧散する。
「その結界は――」
「優秀な陰陽師の贈り物と、私のオーラを交えた炎による守護です。そう簡単には破られませんよ」
まさしく、今が敵の不意を突く好機であった。アトリエを燃やされた怒りで我を忘れ、芽亜しか目に入らない魔術師の視界の外を泰花が素早く移動している。幸い、ここには視線を遮るための設備が山ほどあった。泰花はうず高く書物が積まれた――といっても、芽亜によって既に炎の渦と化していたのだが――の後ろを回り込み、死角からの急襲に出たのである。
「な……!?」
敵が気付いた時には既に、全身を黒揚羽の群れに蝕まれている。
「あっちへおいき!!」
杖でいくら払っても、裕に百体を超える大群は花に群がるそれのように魔術師の体表へと張り付いて呪詛による浸食を深めていった。
「おやおや、あれだけ人の命は軽んじておいてご自分のことになると大騒ぎするのですね。あなたが蝕んできた無辜の民の苦痛に比べれば、この程度大したことは無いでしょう?」
「私とたかが素材如きを一緒にするなど、ふざけないで……!」
怒りを薔薇の香気に変え、魔術師は己の魔力の全てを左目の紋章へと集約させる。あれが彼女を月光城の主たらしめる証なのだと泰花は瞬時に理解した。
「けれど、人間画廊の生贄がなければそれほどの力は発揮し得ないのですよね」
「くッ!」
それでも、紋章が齎す茨の鞭を躱すのは泰花の結界術と軽業をもってしても間一髪であった。体勢が乱れる。だが、構うことなく咄嗟に薙刀をもう片方の手へと持ち直して間合いを伸ばし、敵の足元を薙ぎ払った。
「なッ……」
「あまり傲慢ですと、文字通りに足元を掬われますよ」
泰花はぴたりと薙刀の刃を左目の紋章へと突きつける。生命力という『陽気』の象徴たる人の血液を『陰』の存在たる月の眼の紋章へ注ぎ込むという所業。まるで、陽光の代わりとなるエネルギーを集めていたかのようにも思えるが。
「だとすればこの世界の月は、人の命を吸って輝いている……?」
「城主を討滅したら何か起こるでしょうか? この他にもまだまだ存在するということなので、気の長い話ではありますが」
芽亜もまた、残務処理の量を思ってため息をついた。月光城の謎が解けるまでにやらねばならないことが沢山あるだろうことは容易く予想がついたので。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
一瀬・両儀
SPDで行くぜ。
趣味のわりー”画廊”に人助けのせいで、
さっきは興が削がれちまったからなァ。
大目玉らしく振舞ってくれや、城主さんよォ!
初めから<リミッター解除>、殺人鬼としての本能を剝きだす。
<継戦能力>には自信があるんでね。
鮮血の刃を1本ずつ無銘刀の<早業>による<斬撃波>で叩き落とす。
チッ、これじゃあ埒が明かねえな。仕方ねえ…
さきほどまでの<斬撃波>で照明を落とす。
そしてゆっくりと納刀し、【UC:解放・彼岸降獄】を抜刀する。
あの世へ行きな。
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
指定UC発動は1・2章から継続
生憎だが、貴様にくれてやる素体は何一つ存在しない
何故なら、ここで貴様が果てるからだ!
装備する鮮血の刃は「視力」で走り抜けられる隙間を探した後
「地形の利用、ダッシュ」+UC効果の高速移動で器具の合間を縫うように走り回り刃を回避
これだけ器具が密集していれば、ぶつけないよう操作するだけで一苦労なはず
隙が生じたら「なぎ払い、衝撃波」で器具を破壊しながら錬金術師に接近
接敵したら「2回攻撃、怪力」で一気に叩き斬りつつ器具の中に「吹き飛ばす」
人の命を弄ぶ悪辣な錬金術師め、ここで果てろ!
紋章は人の血液で強化されていたか
…月が人類の生命と関係あるのか?
ゾーヤ・ヴィルコラカ
あなたが月光城の主、朱殷の魔術師ね。どうしてこんなことを始めたか、なんて分からないけれど、あなたにこれ以上ギャラリアの人たちを苦しめさせないわ!
【UC:裁きの冬、来たれり】(WIZ)を発動よ、瘴気をも凍り付かせる冷気が、氷雪と共に戦場を覆うわ。〈祈り〉で〈結界術〉を展開すると、細氷の〈継続ダメージ〉で咎人さんを〈捕縛〉して、生命力吸収を妨げるわ。動きが鈍ったところで、〈多重詠唱〉〈高速詠唱〉で氷の〈属性攻撃〉を放って〈追撃〉しちゃうわね。
裁きの氷雪は、決してあなたを逃さないわ。あなたの研究は此処で終わり、氷に抱かれて骸の海に還りなさい、咎人さん!
(アドリブ連携等々全て歓迎です)
非常にゆっくりと、敢えて時間をかけて館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は息を吐き出した。何もかもが己の思惑通りに叶うと心底から考えるのは傲慢であり愚か者だ。
「……生憎だが、貴様にくれてやる素体は何一つ存在しない。この世のどこにも――いや、他の世界のどこにもな」
敬輔が纏い続ける魂魄もまた、彼の感情に呼応するように一際激しく揺らめいた。腰を落として剣の柄に手を添える。
「言ってくれるじゃないの。ふふ……そう言われるとますます欲しくなるものね」
まるで天邪鬼な子どものように魔術師は含み笑った。駄目だと言われると余計に欲しくなるというあの心境と言えば伝わるだろうか。
「あなたたちのせいで、せっかく集めた生贄がいなくなってしまったのよね。代わりにいかが? おあつらえ向きの瓶を用意してあげるわ」
「ハッ、そりゃこっちの台詞だぜ」
一瀬・両儀(不完全な殺人術・f29246)は肩を竦め、じろりと流し目を敵へ送る。
「おかげでこっちはらしくもねェ人助けなんてしちまって興が削がれるにも程があらァ。アンタ、ここの城主さんなんだろ? 落とし前つけるためにも大目玉らしく振舞ってくれや……!」
刹那、両義の赤い瞳がカッと燃えるように輝いた。普段は抑え込んでいる殺人鬼としての本能が脊髄からせり上がるように開放されてゆく感覚――あァ、暴れてもいいんだな――もはや敵しか見えない。両義は真っ直ぐに馳せた。
「おゆきなさい」
魔術師が瓶を傾けると、中に入っていた血液があっという間に無数の血刃となって周囲にばら撒かれる。まるで地雷みたいに。
「チッ」
両義は最初こそ無銘刀を振るった時に発生する衝撃波によって律儀に薙ぎ払っていたが、すぐに埒が開かないと舌を打つ。
「数が多過ぎるな」
「まったく、とんでもない城主ね」
ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は恐れることなく月光城の主と向き合い、じっと目を凝らすように睨みつけた。
「確か、朱殷の魔術師……だったかしら。異名通りに鮮血を操るのがお得意みたいじゃない?」
「ふふ、その名をよくご存じだこと」
「あのねえ、嬉しそうにしないでくれる?」
ゾーヤは腕を組み、半目になって呆れた。
「どうしてこんなことをしているの」
「新しい生命の創造――」
うっとりと、魔術師は微笑む。
「あなたも是非、そのための礎に使ってあげたいわ」
「生命を創るために、生命を奪うのね。そんなの絶対に許さない。あなたにこれ以上ギャラリアの人たちを苦しめさせないわ!」
救われたことを泣いて喜んだ人々を思い出して、ゾーヤは尻尾の毛を逆立たせた。呼応するように室内の気温が一気に低下する。先駆けのように霜が降りたかと思えば、すぐに本格的な吹雪がやってくる。
「これは……」
白い息を吐いた魔術師は、少しでも寒さを凌ぐために薔薇の瘴気を吐いた。ゾーヤは両手を祈りの形に組み合わせ、構わず繰り返す。そんなもの、一緒に凍てつかせてしまえばいい。
「裁きの冬よ来たれ。心亡きものに、痛みと罰を――!」
「まず――」
とっさに魔術師が身を引こうとした時にはもう遅い。万物を凍てつかせるほどの細氷がゾーヤの敷いた結界の外部へと迸り、その体をすぐ脇にあった机の棚へと縫い留めた。
「くッ」
強引に引き抜いて逃げるより早く、敬輔が動いている。――視える。蠢く無数の血刃をすり抜けるための隙間、ルート。僅か一瞬でそれを見抜き、過たずに駆け抜けるだけの能力を敬輔は備えていた。
「貴様の大切な器具を巻き込んでもいいのか?」
「小癪な……!」
敬輔が選んだのはここがアトリエであることを逆手に取った戦法であった。それらを時には盾に、ときには足場へと変えて隙間を潜り抜ける――しかも高速で――敬輔に対して、迂闊に手を出せばアトリエの方が持つまい。
手も足も出ないとはまさにこのことで、魔術師は悔しそうに歯ぎしりしてから最後の手段を解き放った。
「!」
今まさに剣を薙ぎ払って魔術師への道を拓かんとしていた敬輔はとっさに攻撃の矛先を器具から“それ”へと切り替えることで事なきを得た。
床に斬り落とされたのは茨の鞭である。
「そうか、それもあったな」
月の眼の紋章が持つもうひとつの能力を思い出し、敬輔は慎重に間合いを取った。接敵まではあと二、三歩を残すのみ。
「俺に考えがある」
両義は首を鳴らしてから、慣れた仕草で無造作に刀を払った。
「ふん、そんなもの当たるわけが……」
だが、侮っていた魔術師の背後で何かが割れる音がしたと同時に、室内が闇に呑まれる。
「灯りを!?」
「――あの世へ行きな」
一旦、ゆっくりと刀を鞘に納め――鍔が軽く鳴った直後、素早く鯉口を切って再び抜刀。相手が無数の刃ならこちらも無数の斬撃で対抗するまでだと言わんばかりの、それも暗闇においては圧倒的な威力を誇る一撃が綺麗に入った。
「ふ、ぐッ……」
魔術師は堪らず防御態勢を取るも、
「無駄よ」
ゾーヤが言った。
「その細氷は常にあなたを攻撃し続ける……それにわたしの氷はまだまだ、こんなもじゃないんだから!」
高まる魔力が凍気を帯びた魔法陣を多重に描き、同時に幾つもの氷を呼び出して一斉に降り注がせた。飛沫となって散る鮮血は魔術師が集めたものではなく、本人が受けた傷から流れ出している。
「血……私の、血が――!」
「あなたの研究は此処で終わり、氷に抱かれて骸の海に還りなさい、咎人さん!」
――月。
敵目がけて最後の一歩を跳んだ敬輔は窓の外に浮かぶ天体に思いを馳せた。人の血液を奪い、強化するために用いる紋章。
(「……月が人類の生命と関係あるのか?」)
一発目は下から突き上げるように敵の体を浮かせ、二発目で思いきり背後の器具に向かって吹き飛ぶような形で剣を振るった。
「人の命を弄ぶ悪辣な錬金術師め、ここで果てろ!」
「がッ――!!」
手加減無視の怪力で叩き付けてやったのだ。直撃した器具は悉くひしゃげ、激しい音を立てながら床の上に倒れて砕け散った。
成功
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月白・雪音
…貴女がこの城の主。相違ございませんね?
貴女が何故研究に没するか、何故賢者の石なるものを求めたか、
或いはそこに理由は在りましょう。
されど、其れは今この世界に生きる命を脅かすものなれば。
――我が武を以て、貴女を討たせて頂きます。
UC発動にて、残像、グラップル、怪力を用いた高速格闘戦にて戦闘展開
相手の飛ばす刃及び棘の鞭は野生の勘、見切りで事の起こりと軌道を感知予測し
アイテム『薄氷帯』による霊力の守護を纏った素手にて打ち払う
隙を見て部位破壊で紋章の放つ鞭を手刀にて切断し、
落ち着き技能の限界突破、無想の至りにて自らの気配、存在を完全に断ち
死合の最中にあってなお相手の眼前より姿を消して
極限まで練り上げた技を以て怪力、グラップル、残像の速度を乗せた
最大威力の一撃を叩き込む
…月の名を冠す城とその紋章、この世界の夜空に輝くそれとどう繋がるか、
存じていた所で答える気も無いのでしょう。
過去の残滓は骸の海へ。今を生きる命の脅威へと成り果てたその狂気を、
在るべき場所へと還しましょう。
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
※🔴を消費して真の姿に
あなたも、魔術師なんでしょ?
何の研究をしてたの?
あの人たちは、どこから連れてきたの?
少しでも情報、引き出せないかな?【勇気・コミュ力】
人と、共存する意思はある?
ないなら、戦うしかないよね…【優しさ】
※真の姿:月光城が放つ満月の魔力を吸収して、
髪が黒から獣毛と同じ竜胆色に、両の瞳を月光で輝かせた狼のオーラを纏った状態
ぼくは魔術師、ロラン・ヒュッテンブレナーなの
あなたを止めさせてもらうね
あなたの力は、さっきから見せてもらってるの【情報収集・学習力】
月光の魔力で【オーラ防御】する【結界術】で守りつつ
変化と魅了の満月の魔力を放出して相手の瘴気にぶつけ【ハッキング】
相手UC効果を弱めるの
瘴気を満月の魔力で浸食しつつ、
人狼の力を抑える【封印を解く】よ
【限界突破】するほど魔力を溜めて、UCを【高速詠唱】
【全力魔術】で破邪結界の光を放つね
血の刃も、瘴気も、これで一緒に【浄化】するの
狼の瞬発力【ダッシュ・ジャンプ】を活かして範囲内に収め続けるよ
おやすみの時間だよ
満ち欠けるような輝きを纏う城に映える窓越しの月を背負い、月白・雪音(月輪氷華・f29413)は静かに問いかける。
「……貴女がこの城の主。相違ございませんね?」
「ふふ」
朱殷の魔術師は否定しなかった。
「だとしたら、私を殺すの? そうね。命ある限り、私は私の研究を続けるでしょう。そのために人を狩り、血液を求める……」
「どうしてなの」
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は訴えかけるように、上目遣いで彼女を見上げる。
「あなたも、魔術師なんでしょ? なんの研究をしてたの?」
「新たな生命の誕生よ」
魔術師の指先が、戦闘の余波によって砕け散った試験管の欠片を拾い上げた。微かな音と共に、焼け焦げて凍り付いたテーブルの上に置かれて揺れる。
「様々な魔術的素材を元にして創り上げた核を、人間の血液を養分として少しずつ、少しずつ育ててゆくの。いまはまだ出来損ないばかりだけど、いつかは」
「養分……そのためにあの人たちを連れてきたのね。どこから連れてきたの?」
「知らないわ。私はずっとこの城で研究に没頭していた。オルトロスがどこからさらってきたかなんて、興味がないもの。どこで暮らしていようが、人は人でしょう?」
「じゃあ、人と、共存する意思はないんだね」
ロランは睫毛を伏せ、もはや戦いが避けられないことを受け入れる。
「そんな顔をしないで、優しい人狼さん」
くすりと、魔術師が笑みを零した。
「ここはダークセイヴァー。力あるものが無きものを虐げる世界。さらわれた者たちは弱かっただけなのよ。そして、私がここで死ぬとしてもそれは私があなたたちよりも弱かったから。それだけなの」
「ならば、これ以上の問答は無用でしょうね」
雪音は一歩、前に出る。
「貴女が研究に没頭する理由、錬金術なる学問に拘泥する望み。それは理解いたしました。されど、其れは今この世界に生きる命を脅かすものに他なりません。なれば、私は――」
もう一歩、前へ。
魔術師が杖を構え、 雪音もまた、残像を結ぶほどの高速で飛びかかる。
「我が武を以て、貴女を討たせて頂きます」
「ふふ。そう来なくてはね……!」
刹那、解き放たれた棘の鞭が雪音の頬を掠めながら脇へと逸れた。
「外れた?」
再び鞭がしなる。雪音は野生の勘をもってその軌道を見切り、素手に巻き付けた不可視の霊帯で打ち払うことでさりげなく矛先を変えていたのだ。
「ここは、満月の魔力に満ちてる……」
窓から差し込む月光を浴びて、ロランの髪が黒から美しい竜胆色へと移り変わり始めていた。伏せられていたまぶたが開いた時、両の瞳は月光と同じ色に輝き光る。
「ぼくは魔術師、ロラン・ヒュッテンブレナーなの。あなたを止めさせてもらうね」
敵の纏う薔薇の瘴気とロランの放つ満月の魔力が城を二分するほどの勢力を保って正面からぶつかり合った。茨の急襲を弾く月光を帯びた気膜が狼のそれと混ざり合ってロランを守護し、瘴気を押し返そうと膨れ上がる。
「な――?」
引き戻しかけた棘の鞭はしかし、敵の手元に戻る前に細切れとなって床に落ちた。手刀によってそれらを切り落とした雪音は、僅か一瞬のうちに全ての気配を断つ。何も考えない、感じない、故に限りなく希薄となる存在感。
「どこに?」
狼狽える魔術師は、瘴気を押さえつけるロランの魔力が徐々に侵食していることにすら気付けなかった。魔術と融合した電脳術式によるハッキングが徐々に瘴気の構成を分析してその効果を弱めているのだと、知った時にはもう遅い。
「全部、浄化してあげる」
ロランは――真なる姿を晒したロラン・ヒュッテンブレナーは、ここで更にもうひとつの鍵を外す。それは人狼の力を抑えていた封印、箍が外れるのを抑え込んでいた鎖のようなもの。
今、解き放たれる。
「……限界突破の魔力と」
「限界突破した無想の至りにて」
雪音の声だけがした。
「ッ……」
はっとして、魔術師が振り返る。
――いつからそこに。
疑問を口にする余裕も、躱す時間もありはしなかった。極限まで練り上げられた技に無駄な動作は一切なく、ただひとえに純粋なる“力”が叩き込まれるだけ。雪音は敵の腕に取り付き、流れる動きで懐へ潜り込みながら背後を取ってその一撃を打った。
「がッ――」
急所を深く穿たれ、呻く相手の頭越しに月が見える。
……その名を関する城と紋章が一体あれとどのような関係にあるのだろうか。果たして何者が、裏で糸を引いている?
「存じていた所で、答える気など無いのでしょうね。ならば、骸の海へお還りなさい」
囁くような雪音の後をロランが引き継いだ。
「うん、おやすみの時間だよ」
真っ白な光だった。
その時、月光城を外から見る者がいたとすれば閃光のように世界を染め上げる破邪の輝きに目を瞠ったことだろう。
「あ、あァ……!!」
ロランはまさしく狼のような身のこなしで敵を追い、幾何学に飛翔する光のただ中に敵を閉じ込めた。血液を集めた瓶が砕け、光に照らされて蒸発。茨は干からびて見る間に枯れ果てる。
「……この世界は、今を生きる命たちのもの。その脅威と成り果てた狂気に穢されてよい場所ではございません」
雪音は足元に落ちた月の眼の紋章を見つめた。宿主を失い、床に転がっているそれは明けぬ夜の月光を受けて艶めき、皮肉なほどに美しかった。
大成功
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