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姫は星夜に遁走す

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 体の奥から凍えるような星夜。
 白き息を吐きながら、一人の少女が人気のない道をひた走っていた。
 年の頃は十六ほどだろうか。着物の裾をたくし上げ、結い上げた髪を乱しながら駆けていく様からは、彼女の身に降り掛かった事態が尋常ではないものであることが分かる。
 背後から響く怒号に、少女の瞳から大粒の涙が流れては散り落ちた。

 賑わうグリモアベースに、一人のケットシーが入ってくる。
 彼は肩にかけた羽織翻し、そばにあった椅子にとび乗ると、眼の前にいる猟兵達へと鋭い眼光を向ける。
 猫であるが故にわかりにくいが、その面立ちが、いつにも増して険しいような気がする。
「皆の衆、よく集まってくれた。それがしはケットシーの剣豪、久遠寺・篠だ。早速だが、皆の衆にはサムライエンパイア世界に向かってもらいたい。ある武家の娘の身に危機が迫っている」
 篠はそう説明しながら、懐からある街の地図をだして机に広げた。
 街は武家の集まっている発展した土地で、道は整備され碁盤の目のように広がっている。道に沿うように水路が数多あることが特徴の一つである。
「皆の衆に向かってもらうのは、この水路に囲まれた街だ。武家や商家、花街などがある華やかな街だが……先述した武家の娘が、借金取りに追われている」
 借金取り。その予想外の言葉に、話を聞いていた猟兵達の中から疑問の含んだ声が上がる。
「どうもこの娘の父親が賭博に嵌まり込み多額の借金を背負ったようなのだが……もちろん、皆に頼むのはその背後にオブリビオンの影があるからだ」
 そう話ながら、篠は地図の上に二枚の絵姿を並べる。一人は儚げながらも美しい面立ちの少女。もう一人は中年の武人だ。
「娘……武家の姫の名前は、お琴という。そしてこちらはその父親である源之丞。源之丞は今賭博に出て行ったきり行方不明になっているが、それはまず置いておくとして。皆の衆にまずして欲しいのは、お琴の救出だ」
 篠はそこで一旦言葉を切ると腕を組む。
「お琴は父親が通っていた賭博場において何らかの秘密を知ってしまった。それが直接の原因で、オブリビオンの手下である借金取りに追われているのだ。追手の数は予知だと十数人程、数人ずつ纏まっているがばらばらに行動してお琴を追っている。夜道を逃げるお琴が彼らに捕まる前に助けだしてやって欲しい」
 予知ではオブリビオンがどのように賭博場に関与しているか分からなかったのだと、篠は申し訳なさそうに耳を伏せる。
「お琴を助け出せたら、彼女から賭博場の秘密を聞き、さらにオブリビオンに迫ることが出来るだろう」
 篠は広げていた資料を全て回収すると、それらをまとめて文にし、表に『依頼状』と認める。
「借金取り達はオブリビオンに使われているがただの人。出来るならば命は取らないでやって欲しい。また面倒な依頼となるが……皆の衆、頼んだぞ」


三橋成
 皆様こんにちは、三橋成(みはし・せい)です。

 今回は借金取りに追われているお姫様を助け出し、賭博場の秘密を暴き、元凶のオブリビオンをやっつける、というドラマ重視の盛りだくさんなシナリオとなっております。
 お姫様の助け方など、解決方法はどのようなものでも構いませんので、どうぞ思うように行動していただければと思います。

 皆様と共に格好良い物語を紡いで参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『落ち延びて』

POW   :    逃げている辺りを片っ端から走り回って探す

SPD   :    追手を撃退して時間を稼ぐ

WIZ   :    地図と地形を見合わせて逃げ込みそうな場所を割り出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

法悦堂・慈衛
■WIZ

常世には情けもなんもあらへんようやなぁ。
オブリビオンやらなんやらは、まぁ大事やけど関係あらへん。
女の子が泣いてる。動く理由はそれで充分や。

ちゅーことで、逃げ出込みそうな場所を割り出すとしよか。
女の子の足で逃げられる場所…賭場の場所が分かれば見当つくやろ。
集まって夜に動いとるんなら目立つはずや。
その声を影に闇に隠れ追い地図や地形で仮定を出す。

あとは…【式の参・卑弥呼】。
卑弥呼ちゃん、宵の闇に逃走する哀れな女の子がどこにおるかを示してくれや。
俺の得た話も振るし予言があれば、俺はそれを信じるからさぁ。

見つけたら安心させる為に『手をつなぐ』
お琴ちゃん、月夜の番に頼れる男はご入用やないですか?


ネーヤ・ティオモ
どのような事情があるのか、まだ分かりませんが…
お姫様が追手に追われているという状況だけでも、お助けするには十分な状況です。ましてやオブリビオンの影が背後にあるならば。
しがない流れの小娘ですが…いざ、助太刀致します!

地図からお琴さんが通る道にあたりをつけ、先回りもしくは合流できるか試してみましょう。
そして通り過ぎる(もしくはすれ違った)タイミングで「水属性」の「雨氷」を用いた【エレメンタル・ファンタジア】を発動。
路面を雨氷で瞬時に凍らせ、ツルツルにして通行を妨げるのが狙いです。
…制御できなくて追っ手の人に命中しても…死にはしないと思いたいのですが…
な、なるべく上手く制御できるよう努力します


アベル・スカイウインド
【SPD】

博打で失敗するやつは自業自得と言えるかもしれんが、オブリビオン絡みとあってはそう単純な話ではない、か。

まずは【追跡】を駆使してお琴とそれを追う借金取りの痕跡を見つけ、追うぞ。
【ダッシュ】【地形の利用】で屋根上を素早く移動したりUC【スカイルーラー】を使って高所から捜索すればそう難しいことでもあるまい。
お琴に一番接近しているグループの排除が最優先だな。
そしてそれを発見したらお琴と借金取りの間に降り立ち、とおせんぼしてやるとするか。
「行け、逃げるんだ。フッ、ここは俺に任せておけ」
借金取りがオブリビオンでないのなら刃傷沙汰にする気はない。【見切り】で攻撃をいなし【時間稼ぎ】するとしよう。


黒岩・りんご
琴さん(f02819)と一緒

琴さんを助けないとですね?(くすくす
偶然とはいえこれは助けたくなります
地図とにらめっこしながら、姫様の考え方をトレースしましょう
カウンセリングは専門でなくても医者ですから、医術の応用です
場所の絞り込みができたら、別行動中の琴さんに連絡、そこに近付く人を狙撃してもらいます

その間にわたくしはお琴さんの元へ
推測は当たっているかしら?

お琴さんと合流できたら声をかけ
「わたくしは味方です。もう大丈夫ですよ?」
あとは琴さんの合流まで、わたくしと『喜久子さん』で守りますね

琴さんと合流したら、からかうように
「同じ名のよしみですし、この後は琴さんがお姫様の影武者にでもなります?」
なんて


加賀・琴
りんごさん(f00537)と組んで。

お琴さん、ですか。偶然とはいえ同じ名前ですね。会って話してみたいですね。
りんごさんが逃げ先を特定してくれますから、私は屋根の上に登ってその場所に向かってくる追っ手を探します。
場所が分かっていて、そこにを目指す追っ手なら見つけやすいでしょう。
見つけたら屋根の上から【千里眼射ち】『先制攻撃、スナイパー』ですね。
追っ手は一人とは限りませんし『早業、2回攻撃』で素早く次の矢も番えますね。

追っ手を撃退したら屋根から飛び降りて、りんごさんと合流するために移動しますね。
私が影武者ですか?確かに名前同じですけど似てますかね?
まぁそれで相手が騙されるならありかもしれませんね。


信楽・黒鴉
SPD

【残像】が現れる程の速度で敵を翻弄しつつ時間を稼ぎ、【殺気】によって相手の戦意を削ぎつつ、峰打ちで昏倒させる。

「あー、その。 別に正義の味方ヅラするつもりはないんですが……」
「邪魔すると痛い目見ますよ。僕、貴方たちよりかはよっぽど強いんで……」
「だからさっさとどっかに行っちゃってください。ああ、僕……二回同じ事言うのイヤなんで」
「……こっから先は実力行使させてもらうよ」

共闘、アドリブ、改変、歓迎いたします


リュカ・エンキアンサス
※アドリブ・ほかの方との一緒も歓迎
……例えどんな親でも、親は親だ。
親子は、一緒にいたほうがいい。俺にはできないことだから。
特にこんな星が輝く日は特に。

ということで追手を撃退するほうを選びます。
ある程度地形の利用をしながら娘を追跡して、離れすぎないようにする。そうすれば追手も確認できるだろうから、足止めの罠でも張って物陰に隠れて銃で打つ。
なるべく足を狙ってやるけれど……。流れが悪くて殺しちゃったらごめん。
悪いとは思ってるよ。銃を撃った時点で後悔はしないだけで。
愛想が悪いからなるべくお琴には遭遇しないようにするけれど、遭遇した時点で同様の手法を取りつつも護衛に切り替えるよ。きっと心細いだろうから。



 星の瞬く、澄んだ夜空の広がるサムライエンパイアの街。
 その街の一角に響く男達の剣呑な怒号を聞き、法悦堂・慈衛は手にした煙管を唇から離し、ふうと紫煙をくゆらせる。
「常世には情けもなんもあらへんようやなぁ」
「博打で失敗するやつは自業自得と言えるかもしれんが。オブリビオン絡みとあってはそう単純な話ではない、か」
 星の光に輝く白き髭を揺らし、誇り高きケットシーのアベル・スカイウインドが応える。
「……例えどんな親でも、親は親だ」
 博打で失敗した、そう情報を得ている源之丞に言及し、ぽつりと呟いたのはリュカ・エンキアンサス。
「保護対象の女性の名はお琴、だったな」
 そうアベルが資料を確認した言葉に、黒岩・りんごはくすりと笑い声を上げる。
「琴さんを助けないとですね? 偶然とはいえこれは助けたくなります」
 彼女は言って、今回共にこの地へとやって来た友人の加賀・琴を見やる。その視線にはからかいの色と共に、友へと寄せる信頼も感じられる。
「ええ、私と同じ名前ですね。会って話してみたいですね」
 今回護らねばならない渦中の女性、お琴と同じ名を持つ琴は柔和な笑顔で応え、こくりと頷いて見せた。
「そうですね。話を聞いてみなければ、どのような事情があるのか、まだ分かりませんが」
 その隣で、地図を広げたのはネーヤ・ティオモ。
「お姫様が追手に追われているという状況だけでも、お助けするには十分な状況です」
「女の子が泣いてる。動く理由はそれで充分や」
 慈衛はネーヤの言葉に同意を示し、煙管から灰を捨てると地図を覗き込む。
「ちゅーことで、逃げ込みそうな場所を割り出すとしよか」
 りんごもまた地図を覗き込み、お琴の考え方をトレースし行動を予測しようと思考を巡らせる。彼女は医者。心理学やカウンセリングは彼女の専門ではないものの、そこにも医術の応用がきくだろう。
「お姫様は着物ですから、高低差のあるところには逃げないはずですわ」
「女の子の足で逃げられる場所……賭場の場所から見当つけて、この辺行ってみよか」
 りんごの言葉を聞き、慈衛は頷くと地図の一角を指差す。猟兵達の向かうべき場所は、華街の片隅。家々の裏側にあたり、水路が沿う道の一つと決まった。
 そうして彼らは、各々の仕事を全うするため行動を始める。

 地上を向かう仲間と別行動をするのは、アベルと琴。
 家々の屋根の上を駆け、アベルは上空から逃げるお琴を見つけた。彼は傍の地上を走っていたリュカへ合図を送り位置を伝えながら、お琴が逃げ込む道へと降り立った。
 目の前に現れた見知らぬ男の姿にお琴が一瞬足を止める。
「行け、逃げるんだ。フッ、ここは俺に任せておけ」
 が、アベルのその言葉に、お琴は目を瞬かせると頭をぺこりと下げてから再び駆け抜けていく。
 アベルはお琴の後を至近距離で追いかけていた借金取りの男たちの間に立ちふさがり、不敵に笑う。ついでに小さき肉球で、かかってきなと手招きをひとつ。
「てめぇ、何もんだ!!」
 頭に血が上ったらしき男たちが襲いかかってくるのを、アベルは宙を蹴りひらりひらりと交わして時間稼ぎをするのであった。
 その間、琴は屋根の上に残り他の追手の居場所を索敵する。
「あれは不味いですね」
 お琴が駆けていく先へ、さらに別の追手が迫っているのが見えた。
 琴は藍色に染められた強弓に矢をつがえると、その男たちの足元を的確に射抜く。流石に男たちの命を奪うわけにはいかないが、そうして牽制することで彼らの足を止めることは出来る。
 一方、その矢で足止めを食らった男たちの元へフォローをするように一人の猟兵が地上から駆けつけた。闇夜にとける漆黒の髪を結い上げた信楽・黒鴉だ。
 黒鴉は現場に到着すると同時に、目にも留まらぬ速さで刀振るう。その刀は彼らの命を奪うことなく、男たちの中の一人を峰打ちで昏倒させる。
「あー、その。 別に正義の味方ヅラするつもりはないんですが……」
 仲間の一人を一瞬で無効化され、男たちが一瞬で怯んだことが様子から伝わる。
「邪魔すると痛い目見ますよ。僕、貴方たちよりかはよっぽど強いんで……」
 黒鴉はその様子を睨めつけるよう視線を向けた。
「だからさっさとどっかに行っちゃってください。ああ、僕……二回同じ事言うのイヤなんで」
 元々、借金取りたちは仕事を全うしているだけで、武士でもない普通の町民である。最早男たちからは争う気配を見出すことは出来なかったが、しかし。黒鴉は腰に下げた刀の柄に手をやり、最後の一押し。
「……こっから先は実力行使させてもらうよ」
 慇懃な敬語を消し去ったその言葉から感じる凄味に、男たちは短く悲鳴を上げると賭博場へ逃げ帰っていくのであった。

 他の仲間へとアベルから受けた合図の位置情報を共有し、リュカはさらに別方向から迫る追手に対応するため、道へ精巧な仕掛け罠をかける。そして男たちの足音が近づくと同時、そのまま物陰へと潜む。
 リュカが待ち構える通りにやって来たのは二人組。もちろん彼らも直接戦えば猟兵達の敵にはならぬ相手だ。だが、ここで彼らの命を取るのはリュカの本意ではない。
 だからこその仕掛け罠と潜伏しての対応だが、しかし。
「流れが悪くて殺しちゃったらごめん」
 物陰に潜みながら、アサルトライフルを構え、その足を止めさせるために追手の一人の足元へと銃弾を撃ち込む。同時にもう一人の男が仕掛け罠にかかり叫び声を上げていた。
 その声を聞いても、リュカの顔色は変わらない。ただ、そこには覚悟があるのだ。銃は何かの命を奪う物。だからこそ、その引き金を引いた時点で後悔はしないのだ。
 すっかり足止めされた男達の様子を見やり、リュカは物陰に腰を下ろしたまま空を見上げる。家々の屋根の間から、美しい星空が覗いていた。
「親子は、一緒にいたほうがいい。特にこんな星が輝く日は……」

 お琴が道を駆けて、ネーヤの潜んだ路地を横切った瞬間。彼女は手にした糸杉の聖杖を振るうと、路面を雨氷で瞬時に凍りつかせる。
 そのことを知らず別の借金取りの男たちがお琴を追い、路地に通りかかった瞬間。
 男たちは何かの仕込みの芸を見ているかのようにツルッと足を滑らせ、すっ転ぶと見事に腰から背中にかけてを地面にしこたまぶつける。
「あ痛ァ!!」
 男たちの口から実に率直な感想が漏れ、その先の影に隠れていた猟兵達は笑いを堪えるのに難儀することになる。
 だがりんごは笑いを堪え、的確に通りかかったお琴の手を引き、その路地に彼女を引き込むことに成功する。
 この接触が叶ったのは、他の猟兵達が各々借金取り達の対応を進めたおかげである。
 悲鳴を上げかけたお琴の唇にそっと指をあて、りんごは微笑む。
「わたくしたちはあなたの味方です。もう大丈夫ですよ?」
 そう彼女が囁いた途端、お琴の涙の溜まった瞳が細まる。
「……本当、ですか…?」
 問い返すか細い声は震え、お琴が感じていた恐怖や不安が如何ほどであったかを伝える。
「お琴ちゃん、月夜の番に頼れる男はご入用やないですか?」
 そんな彼女の様子を見て、その場に共に待機していた慈衛はお琴の手を取り、そっと握り込む。
 整った面立ちでお琴の顔を見つめ、ウィンクを一つ。
 お琴は一瞬面食らったように瞬いてから、闇夜の中でも分かるほど頬をぱっと紅く染める。
 そうこうしているうち、別行動していた琴がやってくる。その姿に、知らず知らずのうち、りんごの口元に笑みが浮かんだ。
「同じ名のよしみですし、この後は琴さんがお姫様の影武者にでもなります?」
 りんごはそう言って琴の顔へちらりと視線を向け笑う。
「私が影武者ですか? 確かに名前同じですけど似てますかね?」
 琴はそう、お琴と顔を見合わせる。黒髪に黒い瞳を持つお琴と、琴は言われてみれば似ているようだ。
 まるで、この偶然の出会いが必然のものであるかのように。
 すぐ側で、すっ転んだ男たちを追い払い終わったネーヤがまた、お琴の前へ進むとその瞳を真直ぐに交わす。
「わたしはしがない流れの小娘ですが……助太刀致します」
「あ。ありがとう、ございます、皆様……よろしくお願いいたします」
 ようやくその身が助かったことを認識し、お琴はそう素直に頭を下げる。しかし武家の娘は遠慮がちに、慈衛に握られた手をそっと解く奥ゆかしさを見せるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『父と娘と金と幸せ』

POW   :    賭場に乗り込みひと暴れ

SPD   :    賭場でわざと負けて金山送りになる

WIZ   :    父親を全うに働かせるために説得する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達は、保護に成功したお琴から賭博場の秘密……賭博場の地下に、「金山」と呼ばれる強制労働施設があるということを聞くことに成功した。
 そのような施設はもちろん、通常あるものではない。そこには必ずオブリビオンの関与がある。
 そして、その地下から幾人もの死人が担ぎ出されていたという。
 彼女は今宵、家に帰ってこない父の源之丞を案じ賭博場へと向かい、その事態を目撃し追われることなったのだと語った。
 お琴は未だに源之丞に会うことは叶っていない。おそらく、源之丞もまた金山に送られているのだろう。
 猟兵達はこれから賭博場へ向かい、何らかの方法で金山に迫り、そこにいるオブリビオンを引きずり出さねばならない。
 また、お琴は父の身を案じ、賭博場へ同行することを望んでいた。お琴をどうするか否か、その方法も猟兵達に委ねられている。
ネーヤ・ティオモ
私のような子供ですとそもそも賭場に入れなさそうです…。
そこで!【神が与えた猶予】で姿を透明にしつつ内部や地下にこっそりと忍び込んでみるのです。

金山について雑談してる方はおられないでしょうか…?おられましたらそっと盗み聞きです。
ぐるぐる巻になって金山送りにされそうになってる人とかは居られないでしょうか…?居られましたら期を伺ってこっそりお話を聞きます
なにか怪しい資料や物はないでしょうか…?あったらこっそり盗み見です。

あと…もし他にお琴さんの同行を受ける人が居ない、もしくはお琴さんから直に同行を要求された場合はご一緒致します。もうおひとりさまだけ透明にできますから…!


信楽・黒鴉
POW 賭場に乗り込みひと暴れ

壺振りが仕掛けてくるタイミングの【殺気】を読む、あるいはユーベルコードをあらかじめ使用しておくことによる逆イカサマで、イカサマを破ってバカ勝ちしまくる事で賭場を荒らし、博徒どもに因縁をつけられれば、剣にモノを言わせる二重の意味で改めて賭場を荒らしまわる。

「…………いやあ、運否天賦ってェやつですか」
「まあ、建前はそーでしょうけど」
「でも、勝つのも負けるのも何時だってその人の振舞い次第なんですよ」
「あ、それロンです。……違う? じゃあ、五光。200点ください」
「お粗末」

アドリブ 改変 その他もろもろ歓迎します


黒岩・りんご
引き続き琴さん(f02819)と一緒

「せっかくですし、琴さんにはお琴さんの影武者になってもらいましょう」
お琴さんと服と取り換えてもらって
琴さんを囮に、お琴さんはわたくしが傍で守ります
「本当は危険な場所に同行は進められないのですが、気持ちはわかりますから仕方ないですね。勝手な無茶だけはダメですよ?」
とお琴さんに言い含めて

わたくしは普段琴さんと接しているようにからかい交じりの軽口をお琴さんにたたきながら、賭場で賭け事に興じてみます
お琴さんもいるのでわざと負けるのは危険ですし、勝ちに行きますよ
賭場のお偉いさんが出てくるくらいに勝ち続けてみたいですねぇ?
そしたら、情報を賭けてもう一勝負、かしら?


加賀・琴
りんごさん(f00537)と引き続き。

影武者ですか、そうですね。お琴さんがそのまま賭博場に行くよりはいいでしょうね。
では、お琴さんと服を取り替えますね。羅刹の角は隠して髪型もお琴さんに似せますね。
武器は、持って行けないですよね。弓と薙刀は重いですけどお琴さんに預けるしかないですかね。
あ、武家の娘なら追われてたのが戻ってきたなら刀ぐらいなら護身用か父親の借金返済換金用に抱えて持ってても平気かもしれませんね。
刀は弓や薙刀に比べると不慣れですが、破落戸程度ならどうとでもなりますね。
ともあれ、お琴さんの振りをして囮になりますね。りんごさんの側にいるのが本物のお琴さんとはバレないようにしませんと。



「せっかくですし、琴さんにはお琴さんの影武者になってもらいましょう」
 そこは賭博場の裏方。
 お琴を救出した翌日の昼。黒岩・りんごと加賀・琴はお琴と共に準備を進めていた。
「影武者ですか、そうですね。お琴さんがそのまま賭博場に行くよりはいいでしょうね」
「本当は危険な場所に同行は進められないのですが、気持ちはわかりますから仕方ないですね。勝手な無茶だけはダメですよ?」
 りんごの提案で、お琴と琴は着ていた服を入れ替えていた。琴の角を隠し、髪を結い上げてよりいっそうお琴に似せる。琴には付け角をつけさせると、ぱっと見では完全な入れ替わりが完成していた。
「名前が一緒だと外見まで似るものなんでしょうか」
 その様子にりんごは呟き、琴は自身が持っていた弓と薙刀をお琴に渡す。
「少し重いですけど、我慢してくださいね」
「いいえ、問題ありません。私のかわりに琴さんに危険がないと良いのですが」
 お琴が申し訳なさそうに眉を下げるのに、琴とりんごは揃って笑顔を向ける。
「問題ありませんわ。私、腕には自身があります」
「二人のことはわたくしが傍で守ります」
「さて、ではそろそろ行きましょうか」
 そう声をかけたのは、ネーヤ・ティオモ。
「しかし、私のような子供ですとそもそも賭場に入れなさそうです」
 ネーヤは小さな手を顎にあて、しばし考える。
 その表情は落ち着いていて大人びているが、彼女はいまだ九歳の少女だ。その予見の通り、何の策もなく賭博場に入ることは厳しいだろう。
 そこで、彼女は一計を案じることにした。手に力を集めると、じわりとネーヤの手から体が薄れて消えていく。もちろん、本当に消滅しているのではなく、その姿が透明になり見えなくなっているのだ。
「どうか……見つかりませんように」
 そう祈るように呟いた言葉を最後に、身につけているものを含めてネーヤが姿を消した。
 不可視の存在となったネーヤを従え、りんごと琴、お琴、そして着替えが終わるまで離れて待っていた信楽・黒鴉の五人は賭博場へと向かう。

 サイコロを振るう音、博徒たちの上げる怒号と歓喜の声、そして壺振りの威勢のよい掛け声。
 妙な熱気で昼間から賑わう賭博場の戸が、勢いよく開けられた。
 戸が立てた大きな物音に、人々の注目が一瞬集まる。その視線の先にいたのは腰に刀をさした若い剣豪。黒鴉だ。
「おやおや、すみませんねェ。皆さんどうぞ続けてください」
 黒鴉は口先だけの謝罪と分かる軽い口調でそう告げると、賭博場に入り壺振りが行われている盆布の前に座り込む。それにりんごと琴、お琴も続いた。
 博徒たちの視線は再び壺の方へと戻っていたが、賭博場の関係者たちの注目はお琴に成り代わっている琴へと注がれていた。
 それもそうだろう。昨夜取り逃がした者が自らその巣に飛び込んできたのだから。しかし客の手前、今おおっぴらに彼女を引っ捕らえることは出来ないようだ。
 だが、その場に流れる空気は確かに張り詰めていく。と、その時。
「ロンです」
 黒鴉は壺振りの掛け声に合わせて懐からだした金を前に置き、声を上げる
 再び人々の視線が黒鴉へと集まる。何しろこれは麻雀ではない、壺振りだ。
「……違う?」
「おいおい、兄ちゃん素人さんかい? 何言ってっか知らねえがこれは丁半ってぇ博打だ。丁か半かどっちかに賭けな」
 隣に座っていた男にが笑い、僅かに場の空気が和らいだ。
「なるほど、ご教授感謝します。じゃあ丁で」
「わたくしたちも賭けましょうか、わたくしも丁で……わたくしに負けたくなかったら同じ目に賭けるしかありませんわ琴さん。なにしろわたくしは負けませんから」
 黒鴉に続き、りんごが琴に扮しているお琴に話しかける。
「で、では……私も、丁、で…」
 お琴の言葉はたどたどしい。同行を願ったのは彼女本人ではあるが、彼女も敵の只中で賭け事に混ざるとは想像もしていなかっただろう。
「勝負」
 再び博打は始まる。全てのかけが出揃った所で、壺振りが壺を開ける。中に入っていたサイコロは一と五。丁だ。
「グイチの丁!」
 周囲から悲喜こもごもの声が上がり、猟兵達のかけた金が倍になる。全員が賭け先を揃えたことで、この一回でかなりの大金になってしまった。
 なるほど、と黒鴉はその金を手元に引き寄せながら笑う。
「……いやあ、運否天賦ってェやつですか」
 一見ただ賭博に興じただけに見えるが、彼はその間、影の追跡者を召喚し、それで壺振りや賭博場の進行役である中盆の様子を観察していた。しかし、どうやらイカサマなどは行われていないようだ。表面上はごく普通の賭博場である。
 そしてイカサマをしていないということは、逆を返せば、いかに能力を使用し裏から見ていたところで壺の中にあるサイコロを察知することは出来ないということ。
 何か他の手を打たねば、猟兵達が強運を持っていない限り一方的に勝つことは厳しいだろう。
 彼らはそのまま賭けを続けることにした。

 一方その頃、姿を消し賭博場へと潜入したネーヤは金山に纏わる情報収集をしていた。賭博場の裏に入り込み、あらゆる場所へと目を配る。
 と、その時、彼女の視線が不自然に板間に敷かれた茣蓙に留まった。その茣蓙の下から、空気の流れを感じるのだ。
 あれはまさか。そう口に出さず心の中で呟きながら、そっと茣蓙をめくる。そこには人が降りられる穴が空いており、地下へと続く階段が隠されていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

法悦堂・慈衛
■WIZ

なんやみんなで丁半楽しんでぇ、俺もやりたかったやん。
でもま、折角隠し階段も見つけてくれたし、一働きするとしよか。

あらためお琴ちゃんから親父さんの特徴を聞いといて探すとしよか。
お慰みの経文を上げに来たとでも言おうか。
相手が誰であれ「誘惑」で上手く紛れるとしよか。

見つかればさらりと近づき自己紹介。
実情と黒幕の情報を引き出すとしよう。
それから目の前でUCを使う。
手持ちのコインの表裏当ての結果を予言させる。外れるようにな。

ほら見てみぃ。偉い神さんみたいな人でも上手くいかんもんや。
あんたみたいな凡人が入れ込んで、事を成しえる訳がないやろ。
お琴ちゃんっちゅー可愛い娘さんもおるんやし、改心しなや?



「なんやみんなで丁半楽しんでぇ、俺もやりたかったやん」
 賭博場の盛り上がりを横目に、法悦堂・慈衛は一人、人目を忍んで仲間の発見した隠し階段へと向かった。
 彼の目的は、お琴の父親を探し出すことである。父親の外見特長は、事前に篠より渡されていた資料の姿絵により判明している。
 慈衛は階段を一歩降りるごとに空気が濁っていくことを感じた。思わずその柳眉が寄る。
 しばらく階段を降りた後、辿り着いたのは、坑道らしき場所であった。薄暗く、あちこちに灯されたランプの光によってぼんやりとその通路の様子が伺える。人一人が立てる程度の高さはあるが、狭く圧迫感がある。
 道の奥から、その道を掘り進めているらしき複数人の物音が聞こえていた。
「ここが、『金山』か」
 慈衛がそう呟いた瞬間であった。
「貴様! そこで何をしている!」
 賭博場の関係者であろう一人の男が道の奥から現れ、慈衛の姿を見咎める。
 そこで、慈衛はとっさに……しかしその身に染み付いた笑顔を返した。その甘い笑みは、同性であっても好感を寄せずにはいられない魅力に溢れていた。
「ここの主さんに呼ばれてお慰みの経文を上げに来たんよ。なんやここでは沢山人が死んどるらしいやん」
「そんな話は聞いていないが……」
「別に俺は帰ってもええんやけど、死人をちゃぁんと送らんと後が怖いでぇ。で、どないする?」
 男は慈衛の言葉と自信満々の態度に気圧され、結局のところ、彼は自由に坑道内を行動する許可を得ることに成功したのであった。

 一時の後、慈衛は坑道内で壁を掘らされている人々の中に、お琴の父親である源之丞の姿を発見した。
 彼は土埃にまみれ、その身は姿絵から比べても極端に痩せ細っていた。そこで働かされている人々の姿は、皆源之丞と似たり寄ったりである。今にも死にそうな者も幾人かいる。
 この坑道には金山などという名前がついているが、このような街の只中にある土地をいくら掘ったところで金など出る訳もなく、彼らをここで働かせている賭博場の目的が、金ではないことは明らかだ。
 であれば、その目的は。
 慈衛は源之丞にそっと近づき、声をかける。
「お琴ちゃんが、親父さんを心配しとる」
 そう始まった言葉に源之丞は目を見開き、彼の話す言葉に耳を傾けた。そして、事の顛末を全て話した。
 慈衛は式神符を懐から取り出すと、そこから女帝を顕現させる。
「古の女帝のありがたい御言葉や、傾聴してなぁ」
 そして、手にしたコインの表裏を呼び出した女帝に予言させた。が、女帝の予言は表。正解は裏であった。
「ほら見てみぃ。偉い神さんみたいな人でも上手くいかんもんや」
 しかし、それは慈衛の源之丞を改心させるためのトリックだ。
「お琴ちゃんっちゅー可愛い娘さんもおるんやし、改心しなや?」
 その、咎めるでもなくただそっと背中を押す一言に、源之丞は頷きながらただ涙を流すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『闇刃阿修羅』

POW   :    六道輪廻撃
【六本の腕】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    救世塵殺
自身が装備する【武器】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    後光・偽
【全身】から【目映い光】を放ち、【相手を怯ませる】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は月凪・ハルマです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵がお琴の父親である源之丞を無事金山から連れ賭博場へ出たその時であった。
 賭博場に、異変が起きた。
 具体的に言えば、賭博場に置かれていた金の菩薩像が震えだした。そして、その表面がパリパリと割れ、中から生まれ出たのは凶悪な六本の腕を持つ阿修羅のごときオブリビオンであった。
 その名も「闇刃阿修羅」。
 それは人々の傍にあり、近くにある者に果なく人々の死を求めるよう気を狂わせる性質を持つ。
 オブリビオンはこの場に隠れ、賭博場の経営者の気を狂わせていたのである。
 この場でこの闇刃阿修羅を倒さねばならない、しかし、この場には無関係な人々も数多いる。
 お琴、源之丞をはじめ、それら人々を守りながら戦う立ち回りが求められていた。
信楽・黒鴉
POW

【残像】さえ現れるほどの速度で敵の大技に巻き込まれないように素早く距離を取りつつ、渾身の【殺気】を込めた秘剣もといユーベルコードによる脇差を投げつける遠距離攻撃。
その後は懐に飛び込み、相手の武器を狙う【盗み攻撃】によって立ち回る。

「…………さて、と。いかに僕が剣の天才とは言え、六本腕を相手に真っ向からバカ正直に戦うのは少々荷が重い」
「今回はアレをやるとしましょうかね……っと……!」

アドリブ その他諸々歓迎です



 突如現れた異形の姿に逃げ惑う人々。
 その混乱は、賭博客、賭博場の関係者に関わりがない。この賭博場で働いていたからといって、オブリビオンの存在を知っていた者など誰一人としていないのである。
 その混乱の中、逆に異形へと立ち向かい行くのは賭博に興じていた猟兵達であった。
 信楽・黒鴉は腰にさしていた脇差の柄に手をやりながら立ち上がり、目の前の異形を見上げる。
 闇刃阿修羅の体長は百八十センチ程であろうか。その元の姿であった菩薩像はそこまで大きくなかったので、变化と共に大きさも変わっているようだ。
 窪んだ眼窩の奥で光る昏い赤が不気味に黒鴉を見返す。その腕は六本。それぞれに違う得物を握っている。
「……さて、と。いかに僕が剣の天才とは言え、六本腕を相手に真っ向からバカ正直に戦うのは少々荷が重い」
 黒鴉は軽口を叩くと、闇刃阿修羅が動き出す前に行動した。
「今回はアレをやるとしましょうかね……っと……!」
 その動きは、目にも留まらぬ、という形容が陳腐に感じるほどに素早かった。触れていた脇差を抜き放ち、それで斬りかかるのではなく投げつける。中距離から放ったその一撃は闇刃阿修羅の脇腹付近に深々と突き刺さる。
 だが、敵もただ静かに攻撃を受けるだけの存在ではなかった。まるで黒鴉に対抗するかのように宙に数多の刃物を浮かべ、それを放ち、斬りかかる。
「さらに武器を放ちますか」
 いくつかの攻撃は避け切ることが出来ず、黒鴉の肌を裂いて血が散る。だがその自身の腕を切りつけてきた刀を握り、彼は構える。
「わざわざ贈り物をしてくれるとは有り難い」
 闇刃阿修羅は言葉を発しない。ただ、猟兵達の前へと立ちはだかるのみ。
 そして、宙に浮いた数多の刃物は、その場にいたお琴や源之丞へも等しく向けられるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒岩・りんご
琴さん(f02819)と引き続き

影武者していた琴さんが、着替える暇ないので町娘姿のままなのを見て、
「それにしても琴さん、普通の町娘スタイルも可愛らしいじゃないですか。普段からそれでもいいのに」
なんて、くすくす笑いながらからかってみたりしつつ

わたくし自身は【巫覡載霊の舞】の神霊体、銀髪に白銀の角の姿になり
キャリーバッグから相棒の懸糸傀儡『喜久子さん』を取り出して
お揃いの薙刀で構えさせます
もちろんわたくしの十指から操作の糸は伸びていますが、それを操りながら、わたくし自身も神龍偃月刀を振るい、琴さんの援護を受けつつ前線で喜久子さんと共に攻撃します
「琴さん、支援感謝ですわ」
「これでもくらいなさい!」


加賀・琴
りんごさん(f00537)と引き続き。

とりあえず、お琴さんに急いで弓矢と薙刀を返して貰います。巫女服はこの際諦めます。影武者やると決めた段階で覚悟はしてましたし。
町娘姿で普段の巫女服より頼りないですが仕方ありません。
武器を受け取ったら、まずはお琴さん達を狙う刃物を射貫いて撃ち落としてお琴さん達を逃がしますね。

もう、りんごさん。からかわないでください。それに神社で町服は逆に浮いてしまいますよ。

【破魔幻想の矢】で『2回攻撃』です。腕が六本あろうと合計190本の『破魔』の矢は防げないでしょう。
浮かぶ刃物で防ぐのも限度があるでしょうし、浮かぶ刃物で防いでその数を減らせるならばそれはそれで好都合です。


フィロメーラ・アステール
「おーっと、人助けなら任せとけー!」
今こそ【全力魔法】を駆使するときだ! いくぞー!

【ほうき星の待避所】を発動するぜ!
光の粒子を使って、人を次々になぞのばしょへ転送して避難させるぞ!
【残像】のスピードによる、あっという間の【救助活動】を見よー!

間に合わない・避難させられない場合は【迷彩】魔法を飛ばして【物を隠す】ことで狙いを逸らす!
あと奥の手として【オーラ防御】を用いながら【かばう】ことも考えるぞ!
これで気兼ねなく戦ってもらうよう仲間を【鼓舞】だ!

あ、敵の光へは主に目を閉じることで対処するかな!
視覚に頼らなくても【第六感】で人の気配を察知するくらい朝飯前だぞ!
あとは【気合い】でなんとか!


法悦堂・慈衛
おやまぁ、仏さんに隠れとったとは。罰当たりやなぁ。
まぁええわ。人をかどわかす残滓のアンタ、滅ぼすのが猟兵。
一肌脱がせてもらうとしよか。

と、いっても俺は後方支援くらいしか出来んからなぁ。
偏愛真言符と煩悩切で武器を払ったり敵さんに嫌がらせしたりに徹する。
必要なら【式の弐・吉備津彦命】で他の猟兵さんらの援護。
動けなくなるからよう判断してからや。

しかし六本腕ってのは厄介やなぁ。皆も怪我とかしとるんちゃうか?
大丈夫、大丈夫や。
【式の壱・石長姫】、怪我人はまとめて治したるから女神の抱擁、受け取ってな。

…あぁ、やっぱしんどいなぁこれ。とはいえ前衛は戦場の華。
華を守るはええ男の仕事やから、気張っていこか。



 俄に始まった戦闘に、黒岩・りんごと加賀・琴は共に立ち上がりお琴の前に立ちふさがった。
 琴はお琴に託していた弓矢と薙刀を急ぎ返してもらうとそれを携え、お琴へと迫る刃物を弓矢で射抜き撃ち落とす。
「それにしても琴さん、普通の町娘スタイルも可愛らしいじゃないですか。普段からそれでもいいのに」
 傍らでその様子を見ていたりんごがそう笑うのに、琴は肩をすくめて見せる。
「もう、りんごさん。からかわないでください。それに神社で町服は逆に浮いてしまいますよ」
 琴はそう言うなり振り返るとお琴を見て、今すぐここから離れて、と告げようとした。
 しかし、お琴は琴の言葉を聞いてはいなかった。それもそのはず、その場にずっと探していた父親が現れたのだから。
「お父様!」
「お……琴……?」
 驚きに目を見開いたお琴が駆け出し、やつれきった父親である源之丞へと駆け寄った、その時。闇刃阿修羅が放った数多の刃物が源之丞と琴めがけて飛来した。
「おーっと、人助けなら任せとけー!」
 刃物の切っ先がお琴の肌を切り裂こうとしたその寸前、眩く輝く光の粒子がお琴と源之丞を包み、その姿を消す。
 それは、星屑色の髪を揺らし宙に現れたフェアリー、フィロメーラ・アステールの放った保護魔法であった。
「お琴さん!」
 瞬時に姿を消してしまったお琴にりんごが慌てて声を上げるが、フィロメーラは輝く笑顔で応える。
「心配しなくて大丈夫だぜ! これはほうき星の待避所。安全な場所に移動させてるだけだぞ! あっという間の救助活動を見よー!」
 フィロメーラは相変わらずの笑顔で元気いっぱい辺りを飛び回りながら、光の粒子を振りまきその場にいる全ての一般人の「なぞのばしょ」への保護を完了させてしまう。
 魔法の特性を活かした、実に鮮やかな救出劇であった。
「これで気兼ねなく戦ってもらえるぞ!」
 えっへんどうだ、と自慢げに腰に手をあて胸を張るフィロメーラに、法悦堂・慈衛はウィンク一つ投げて応える。
「おやまぁ、仏さんに隠れとったとは、罰当たりやなぁ。けどフィロメーラちゃんが場を整えてくれはったし、人をかどわかす残滓のアンタ、滅ぼすのが猟兵。一肌脱がせてもらうとしよか」
 彼は自身の手で柄に経文を写経した薙刀を構える。得物を握ることで気を高めると、自身の傍らに長刀を携えた女武者と雉の霊獣を召喚した。それらは地から現れ、慈衛へ恭しく頭を垂れてから敵へと向かっていく。
 だがその瞬間、闇刃阿修羅の全身から眩い光が放たれた。それは見る人を勇気づけるフィロメーラの輝きとは正反対の、見るもの全てを圧倒し、そして動きを封じる力。
「効きませんわ」
 りんごは凛々しく言い放つと、その姿を瞬く間に变化させていく。深い藍色の髪が輝きを纏うように銀髪へと変わり、白銀の角を頭部に戴く。神霊体の姿となった彼女は、闇刃阿修羅の後光を無効化しキャリーバッグから戦闘用懸糸傀儡を取り出すと揃いの薙刀を構えさせる。
 一方の琴は敵の放った後光を防ぐ術がなくその視界を奪われた。しかし。
「見えなくても問題ありません、数で攻めます。腕が六本あろうと合計百九十本の『破魔』の矢は防げないでしょう」
 彼女は目を閉じたまま弓に数多の聖なる矢を番え宙へ撃ち放つ。
「遠つ御祖の神、御照覧ましませ」
「琴さん、支援感謝ですわ」
 りんごはまるで琴の放った矢に紛れるよう身を躍らせ、闇刃阿修羅へと肉薄する。
 闇刃阿修羅の六本の腕がそれぞれバラバラに、しかし巧みに動きりんごを待ち構える。その超高速かつ大威力の一撃は傍へ近づく限り避けることが難しい。
 りんごの身にいくつもの切創がつけられる。
「大丈夫、大丈夫や」
 そこへすかさず慈衛が使用する術を变化させる。
 指に挟んだ式神符を放つと、そこから輝き出た光の女神がりんごをそっと後方から腕に抱く。
「女神の抱擁、受け取ってな」
 りんごの受けた傷は瞬く間に癒やされ、そのまま正面突破の攻撃を可能にした。その術は強力であるが故、術者である慈衛の負担は大きい。
「前衛に立つ彼女は戦場の華。華を守るはええ男の仕事や」
「これでもくらいなさい!」
 仲間達の支援を受け、りんごは巧みに十指から伸びた糸で懸糸傀儡を操り、同時に神龍偃月刀を振るう。
 傀儡、そしてりんご自身から放たれた二つの一閃。それらは闇刃阿修羅の両腕をそれぞれ三本ずつ斬り落とし、その息の根を止めるのであった。

 事件は、鮮やかな猟兵達の活躍によって幕を閉じた。
 金山に捕らえられていた人々は開放され、オブリビオンがいなくなったことで正気に戻った賭博場の主は、賭博場を改めて健全に運営し直していくことを決めた。
 慈衛によって心根を正された源之丞は、お琴に全てを謝罪し、賭博から足を洗うことを約策したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月26日
宿敵 『闇刃阿修羅』 を撃破!


挿絵イラスト