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潔斎行路に星写す熾天大聖

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●祈り
 若き英傑は猟兵たちに救われた。
 それは彼等の役割を全うするために必要なことであったし、彼等を喪うということはより善き未来の一つを喪うということでもあった。
「できるだけ多くの希望が紡がれる未来を選び取らねばならない」
「多くの祈りがそうであるように、より良い未来を手にしたいと願うから」
 一蓮托生。
 一つの蓮の花より生まれし英傑『天峰三師』と『牽連四将』は人界、『鴉鷺の都』と『梟門の都』の間に流れる川に立つ。
 そこには二つの都の民が集っていた。

 争乱の時代にあっては二つの都は互いに敵同士であった。
「憎しみだけが全てではない。ときには喜びもあったはずだ」
「喜びをかき消すほどの憎悪が胸を焦がしたときもあったはず」
 しかし、人はいつだってそれらを乗り越えることができる。
 お為ごかしと呼ぶのかも知れない。平穏を手にするためにたぎるような煮え湯を飲むような思いであったのかも知れない。
 生命は戻らない。
 どんなに願っても、大切な人を失った悲しみから元に戻ることはないのだ。

 だからこそ、人は祈るのだ。
 苦しみに満ちただけの生命であったなどと思わぬように。
 手にした天灯に火が灯る。
 熱を帯びた空気が膨らみ、気球のように次々と天灯が夜空に浮かび上がっていく。そこに記された願いは、続く平穏な日々であったことだろう。
 誰かを悼み、慈しみ。
 そして、己の中にある誰かを呪う心も、憎む心をも溶かしていく。清らかな願いにそれらが混じることを嫌う者もいるかもしれない。
「けれど、それでも人の心は白と黒に分かたれたものではない。灰色でもない。万色に彩られたものであるからこそ、そこに人は答えを見出すのだ」
「心に落ちる影あれば、灯す光もあるわ。だから、おいで」

 若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』は人の願いと祈りが天灯によって浮かび上がっていく夜空に手をのばす。
 己たちが守らねばならぬ『存在』の来訪を知るからだ。
「『梟門の都』と『鴉鷺の都』。人々の願いと祈りが、また『大星』を呼ぶ」
「貴方の名前は何? 何が貴方を貴方にするの?」
 空に浮かんで上昇していく天灯とは違う。一つの光の塊が彼等の腕の中に降りていく。
 それは少年の姿をしていた。
 亜麻色の髪が風に揺れて、閉じられた瞳が開いた時、そこに移すのは夜の色――。

●熾天大聖
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件もまた封神武侠界です。これまで二つの事件において二人の若き英傑を皆さんは救っていただきました」
 猟兵たちはナイアルテの言葉に頷く。
 一人は『天峰三師』と呼ばれる青年。蓮の花より生まれた若き英傑であり、宝貝『火尖槍』と片割れの『風火大車輪』を持つ。
 もう一人は『牽連四将』という少女。『天峰三師』と共に生まれた双子の片割れであり、同じく片割れの宝貝『風火大車輪』を持ち、手には鉄環の宝貝『乾坤一擲』を持っている。

 彼等を救った猟兵たちは、ナイアルテが予知したという三度に渡るオブリビオンの大軍勢の襲来を知る。
「襲撃されるのは、彼等の元にやってきたばかりの少年『熾天大聖』。彼は未だ生まれたばかりですが、少年の姿をしています。ちょうどこの日は、『梟門の都』と『鴉鷺の都』の間にある川で行われる追悼の日にして、互いの都が戦争状態から解放されての周年日となっているのです」
 そこで行われる天灯を飛ばすお祭りで若き英傑『熾天大聖』は空より落ちてきたのだという。
 彼を保護した二人の若き英傑と、新たな英傑『熾天大聖』を狙ってオブリビオンの大軍勢がやってくるのだという。

「今回はみなさんが守らねばならぬのは若き英傑たちだけではありません。『梟門の都』と『鴉鷺の都』の人々も守らねばならないのです」
 過去二度の襲撃と違うところはそこなのである。
 これまでは若き英傑と連携して戦うことができた。けれど、今回は違う。彼等を守り、お祭りにやってきている二つの都の人々をも守らねばならない。
「若き英傑であるお二人と『熾天大聖』はユーベルコードを体得している強者ですが、それでもやはりオブリビオンの大軍勢の数は凄まじいものです」

 要するに過去二度の襲撃と同じように猟兵たちは守りながら彼等と戦わなければならないということなのだ。
 第一波は『虎』。
 ただの虎と思うことなかれ。封神武侠界において『虎』とは象徴・孤高の存在であるが、オブリビオン化した存在は群れを為してあらゆる生物を襲い食らう。
 これが大軍勢ともなれば、人々はひとたまりもないだろう。

 さらに第二波に現れるのは『雷霆竜』。
 比較的若い個体で群れをなしているため成体以上の力を発揮する。知性あれど、それは対話の後に相互理解による和平が結べる存在ではない。何故ならば、彼等にとって他の生命とは、奪われるだけの存在であるからだ。

「これらを撃退し『梟門』、『鴉鷺』の人々を救い、若き英傑たちをも守ってください。そこに必ず善き未来が、人の祈りと願いの結実ある未来が、きっとあるはずなのです」
 ナイアルテは再三に渡る戦いに猟兵たちを見送る。
 おそらく若き英傑を狙うオブリビオンの軍勢は、これで一区切りとなるだろう。
 されどオブリビオンの暗躍は続く。
 ひたすらに戦い続けなければならない未来があるのだとしても、猟兵たちの戦いはきっと無駄ではない。
 多くの希望が残る未来を選び取ることによって、過去の化身たるオブリビオンの企てを阻むことができるのだから――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 封神武侠界において若き英傑『熾天大聖』を狙うオブリビオンの大軍勢を退け、護るシナリオになります。

●第一章
 日常です。
 襲撃が予知された『熾天大聖』は未だ生まれたばかりであり、少年の姿をしています。
 彼が生誕したのは『梟門の都』と『鴉鷺の都』の間に起こっていた争いが収まった周年日です。
 この日は二つの都の中間にある川に人々が集まって天灯を空に浮かばせ、願いと祈りを捧げるお祭りになっています。
 此処にはこれまでみなさんが救ってきた若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』も存在しており、若き英傑『熾天大聖』と共に天灯を見上げています。
 彼等と交流し、オブリビオン襲撃の事情を伝えて協力体制を組みましょう。
 襲撃の時間までお祭りに興じてもいいですし、周囲に罠や戦術を組み上げ、お祭りに集まっている人々を護る方策を打ち出してもいいでしょう。

『熾天大聖』は年の頃6歳ほどの少年です。
 生まれたばかりであり、どこかぼんやりしているようですが、受け答えはできるようです。

●第二章
 集団戦です。
 襲い来るオブリビオン『虎』の襲撃から人々と若き英傑たちを守らねばなりません。
 単純なオブリビオンですが、その分戦闘力が高く抜け目なく人々を狙います。

●第三章
 集団戦です。
 さらに第二波である『雷霆竜』たちの群れとの戦いになります。
 圧倒的な存在である竜としての風格を見せるような『雷霆竜』たちは言うまでもなく強力なものでしょう。
 これを撃滅しなければなりません。

 それでは、封神武侠界において若き英傑を抹殺せんとするオブリビオンたちの目論見を打破する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『天に送る祈り言』

POW   :    屋台を巡る

SPD   :    飛びゆく天灯を眺める

WIZ   :    天灯に願いを書いて夜空に飛ばす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 嘗て争い、互いを憎んでいたのもまた昔。
 そう言えるのならばどんなに良いことだろうか。それは『梟門』、『鴉鷺』の都の民たちにとって共通のことであったことだろう。
 心に抱くのはいつだって善き心がいい。
 けれど、人の心は複雑怪奇にして、陰陽分かたれ、混ざり合うものである。
「きらきらがいっぱい」
 生まれたばかりの若き英傑『熾天大聖』は見る。
 空を見上げた先にある天灯の光は、人の祈りと願いであると彼はすでに理解していた。
 隣りにある二人の若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』は彼を守護するために存在している。守り、育てる。それこそが彼等の在る意味であり意義。

 人の心の善は『熾天大聖』に優しさと慈しみを齎すだろう。
 人の心の悪は『熾天大聖』に怒りと悲しみを齎すだろう。
 それでも、人の愛憎入り交じった感情。悲喜に彩られた願いと祈りは、彼の為すべきことを心に宿しただろう。。
「知っているよ。生まれたこと。それがどんなに嬉しいことなのかって。だから、僕は『存在』しているんだ」
『熾天大聖』は天灯を見上げ続ける。
 そこにある祈りと願いを、その身たる器に注ぐ。
 喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも。
 全てが人の営みに必要なものであると理解するからこそ、今を生きる者たちに平和を齎さなければならないと理解したのだ――。
亞東・霧亥
虎の群れが確実に命を狙うというならば、それを逆手に取った罠を仕掛けよう。

【UC】
170cmの身長の大人を114㎥内に100体製作する。
これは『攻撃を受けた対象を絡め取り行動を阻害する仕掛け罠』のため非常に精巧である。

欲を言えば虎を倒せる程の強力な仕掛け罠が望ましいが、生半可な罠では突破される危険がある。
故に動きを鈍らせて、討つも守るも多少容易になれば良い。

そして、罠は突然の襲撃に恐れ逃げ惑う人々の姿を非常に精巧に模している。
これが襲われる事に英傑達は抵抗を示すかもしれないが、手段だと割り切ってもらいたく話をする。

あと、生まれたてで難しいとは思うが、熾天大聖自身が思い描く英傑としての姿を聞く。



 天灯が空に浮かぶ。
 それは追憶から来る願いを載せて天へと登っていく。
 人は記憶だけで生きることはできない。時が過去を排出して進むように、忌まわしきものも、悲しきものも、等しく前に進むために別の何かに変えていかなければならない。
 ゆえに、人々は己の思いを少しでも空に溶かすのだ。

 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)は夜空に浮かぶ天灯を見つめる。
 そこに彼の思いはなかったのかもしれない。けれど、此処にオブリビオンがやってくるというのならば、その火の粉を払おうとするのは猟兵として当然であった。
 オブリビオンの大軍勢、その第一波『虎』。
 彼等はオブリビオン化したがゆえに孤高であることを捨てて群れを為す。
 その爪と牙は等しく生命を奪うだろう。
 だからこそ、それを逆手に取った罠を仕掛けるのだ。

「レプリカクラフト」
 霧亥の瞳がユーベルコードに輝く。
 大人の複製をユーベルコードによって制作していく。それもただの複製ではない。『仕掛け罠』だ。
 攻撃を受けた対象を絡め取り行動を阻害する仕掛け罠である。
 ユーベルコード、レプリカクラフトは実物をもした偽物を作り上げるものであるが、作りが荒くなってしまう。
 けれど、仕掛け罠を作った際にのみ極めて成功になる。

「『虎』が確実に生命を狙うというのならば、それを逆手に取る」
 祭りに参加した人々に紛れるようにしてユーベルコードによって複製として作られた人々の似姿。
「欲を言えば『虎』を倒せるだけの強力な仕掛け罠が望ましいが……」
 生半可なものであれば、突破される可能性がある。
 ゆえに動きを鈍らせて討つも護るも多少容易になればいいと霧亥は判断したのだ。

「これがどれだけ『虎』の興味を引くかにかかっているが……」
 考える。
『虎』とは封神武侠界においては孤高の存在。力の象徴でもある。
 けれど、オブリビオン化したものはそうではない。群れを為し、己の牙と爪を以て生命を奪うことだけを存在意義としている。
 仕掛け罠に霧亥は突然の襲撃に恐れ逃げ惑う人々の姿を条件に付け加えていく。
 此処に居る若き英傑たちは抵抗を示すかも知れないが、手段だと割り切ってもらおうと彼は三人の若き英傑の元に足を運ぶ。

 彼等は一人ひとりがオブリビオンの大軍勢に襲撃されたものである。
『天峰三師』は青年の英傑であり、双子の妹である『牽連四将』と共に今回新たに生まれた若き英傑『熾天大聖』の側にいた。
 少年の姿をした『熾天大聖』は空を見上げてばかり居る。
 天灯が昇る夜空は、彼の黒い瞳に吸い込まれていくようでも在った。
「『天峰三師』、『牽連四将』だな?」
 霧亥の言葉に二人は拱手でもって礼を欠かさない。彼等にとって猟兵の存在は恩人でもあるのだろう。

 彼等に霧亥は罠の存在を伝える。
 手段だと割り切ってもらうためであり、今回もまたオブリビオンの襲撃があることを伝えるのだ。
「やはり。此処また戦場に成るか」
「それでもみなさんが手伝ってくださるのでしょう? なら、心強いわ」
 二人は霧亥の罠に賛同する。
 その傍で『熾天大聖』はぼんやりと霧亥を見ている。その黒い瞳が何を写しているのかはわからない。
 けれど、霧亥は聞かねばならないと思ったのだ。

「『熾天大聖』、如何なる英傑になることを思い描く」
 霧亥の言葉は、『熾天大聖』に響くことだろう。
 どのような英傑になることを望むのだろうか。それを彼は聞かねばならないと思ったのだ。
 少年の姿をした若き英傑は首を傾げ、ただ、一言応えるのだ。
 そう応えるのが当然であるというように。

「みんなが望む英傑――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
【外邨家】
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
蛍嘉とは双子。こちらが兄

ふふふー、蛍嘉とおでかけですねー。こういう時には、楽しみませんとー。
今年の約束ですしねー?ふふ、当たり前でしょう?

というわけで、若き英傑たちにもご挨拶ですねー。
本当、同じく双子なので他人事ではないというかー…。
母がこの世界出身者(羽衣人)なので、なおさらですよねぇ。

そして、ここにもオブリビオンが来ますがー。大丈夫ですよ、私たちも協力しますのでー。
ええ、そのために来ましたのでー。


外邨・蛍嘉
【外邨家】
『疾き者』とは双子。こちらが妹
基本は「義透」と呼び捨て

ま、こういうときに楽しむのは賛成だよ。緊張しぱなっしだと、調子崩れることもあるしね。
でも、警戒は怠らないように。ま、義透に言うまでもないか。

私も挨拶しなきゃね。私は内部から見てた感じだけどね…放っておけないのさ。
そうそう、本当に似通った家族構成だからねぇ。この世界には縁もあるし。
それに…どこかで見た気もするんだよねぇ。

ふふ、そう。私たちも協力するよ。何てったって、そのために生きている感じもあるしね。



 長きにわたる争いは果てなきものではないことを人々は証明しなければならない。
 連綿と続く憎しみの連鎖も、時が必ず解きほぐすものであると知るのならば、その心に宿った憎しみは何処に行くのだと問う心がある。
 人の心は全てが綺麗なものばかりではない。
 目を背けたくなるような感情もあることだろう。それは否定できようのない事実である。
 陰と陽があるように。
 光と影があるように。
 けれど、それでも人は願いと祈りをもって天灯を空に浮かべるのだ。

 その光景を見やる一組の猟兵たちの姿があった。
「ふふふー、蛍嘉とおでかけですねー。こういうときには楽しみませんとー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その四つの悪霊としての御霊でもって一つの猟兵としての存在として在る複合型悪霊の一柱『疾き者』はごきげんであった。
 共に歩く外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)とは双子である。
 彼が兄であり、蛍嘉は妹。
 その関係性は、若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』のものと同じであった。
「ま、こういうときに楽しむのは賛成だよ。緊張しっぱなしだと、調子崩れることもあるしね」
 でも、警戒は怠らぬようにと思ったが、それは今更であろう。
 彼女の兄に対して、それはあまりにも無粋というものであったし、このような場にあっても忍びであった『疾き者』に対する言葉としては誤りであったのだから。

「今年の約束ですしねー? ふふ、当たり前でしょう?」
『疾き者』は頷く。
 今年の約束というのは二人の間に交わされたものなのだろう。共に出かける。些細なことであるが、それはとても大切なことなのだ。
 二人は並び立って、天灯が浮かび上がっていく夜空を見やる。
 それは人の祈りと願いの光であった。
 憎しみを忘れることはできる。
 けれど、薄まるには時が必要なのだ。人は誰もがより善き未来を求めている。ならばこそ、二人はこの場へと襲来するオブリビオンの大軍勢の存在を若き英傑たちに伝えるのだ。

「これは……」
「貴方は……」
 二人の英傑『天峰三師』と『牽連四将』が二人の姿に拱手を以て出迎える。
 すでにオブリビオンの大軍勢からの襲撃を救った英傑たちの変わらぬ姿に二人は微笑んだことだろう。
「私は内部から見てた感じだけどね……」
 蛍嘉は、この二人の英傑を放ってはおけないと思っていたのだ。似通った家族構成であるからもあるし、この世界には二人して縁があるのだ。

「ええ、本当。同じく双子なので他人事ではないというかー……」
 二人の母はこの世界の出身者なのだという。
 この世界がオブリビオンの脅威に晒されているというのならば、尚の事救わねばならない。
 それに蛍嘉は二人のことを何処かで見た気がするのだ。
 他人の空似とは思えないし、それが一体どのような関係性を持つのかもわからない。他世界のことであるし、彼等とて、生まれて間もない英傑である。
「そうでしたか……しかし、お二人が来てくださったこと、心強く思います」
『天峰三師』が頭を下げる。
 三度に渡る襲撃。それを知らせてくれた猟兵たちにはどれだけの礼を尽くしても足りないと思っているのだ。

「大丈夫ですよ、私達も協力しますのでー」
「ふふ、そう。私達も協力するよ。なんたって、そのために生きている感じもあるしね」
 その言葉に若き英傑『熾天大聖』の黒い瞳が向く。
 彼は未だ幼さを残している。亜麻色の髪が揺れて、二人の猟兵を見やるのだ。
「誰かを助けるために生きているの? それがあなたの生きるということなの?」
『熾天大聖』の言葉が告げられる。
 その瞳にあるのは、興味ではなかった。
 生きるということ、その意味を問うたのだ。二人は、いや、猟兵としてある彼等の存在は、世界の悲鳴に応える生命の埒外に在るものである。

 ならばこそ、『熾天大聖』は問う。
 その生命の意味を。存在の意味を。何を為すために在るものなのか。
 助けるために。
 そのためだけに二人は存在している。オブリビオンという世界を破滅に導く存在を打倒するために、今こうして世界すら跨いで来ているのだ。
 ゆえに『疾き者』は頷く。
「ええ、そのために来ましたのでー」

 簡単なことではないことは理解している。
 けれど、そうせざるを得ないのではなく。そうしなければならないことを彼等はしているだけなのだ。
 複雑な世界であろうとも変わらぬことが一つ。
 誰かを助け、その生命が無為に散らされぬためにこそ、二人は戦うのだと『熾天大聖』は、その黒い瞳で知るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

董・白
天峰三師様、牽連四将様、またお会いしましたね。
はい。ご察しの通り三度ではございますがオブビリオンがお二人と、あの熾天大聖様を狙っているとの情報を得たため、共に戦わんと駆けつけました。
よろしくお願いします。

判定:WIZ
天灯に書く願い…ですか。もちろん次の戦いの勝利…は願うまでもない話ですね。とりあえず、秘密です。

さて、オブリビオンが来るまでに罠を張り巡らしてしまいましょう、
我が『道術』で『龍脈使い』この『地形を利用』した形で宝貝「十絶陣:紅水」を展開いたします。
先日も使った手ですが、中々便利なんですよね。出口に『破魔』の霊符を設置します。迷路から出てきたオブビリオンもひとたまりも無いですきっと…



 縁が結ばれれば、紡がれる未来は様変わりすることだろう。
 人の辿る運命は複雑である。如何なる要因が未来に影響を及ぼすのかを計り知ることはできない。
 ゆえに人と人との出会いは、奇跡的な確率によって成り立つものであったことだろう。
「『天峰三師』様、『牽連四将』様、またお会いいたしましたね」
 董・白(尸解仙・f33242)は拱手と共に二人の若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』の前に立つ。

 夜空に天灯が浮かび上がる祭りにあって、白は人々の祈りが如何なるものであるかを知る。
『梟門』と『鴉鷺』の都。
 二つの都のあいだにあった争いの根がどれだけ深いものであるかを彼女は知っていただろうか。
 知らずとも、この祭りが意味するところをすでに聞き及んでいる。
 天灯の一つが失われた命に対する哀悼であり、これ以上の血が流れぬことへの願いでもあったのだ。

 その祈りを見上げるは『熾天大聖』である。
 少年の瞳に映るのは、星にも似た輝きを放つ天灯。
「ご無沙汰、というほどではありませんが。此度も……」
「ええ、ご察しの通り三度ではございますがお二人と、あの『熾天大聖』様を狙っているとの情報を得たために、共に戦わんと駆けつけました」
 よろしくおねがいしますと白は挨拶もそこそこに、その場を後にする。
 ここには彼等だけではない。
 二つの都の民が集まっている。ここにオブリビオンの大軍勢がやってきたのならば、ひとたまりもないだろう。

「天灯に書く願い……」
 白が願うのは胸に秘するものであった。
 戦いに勝利することは願うまでもなく、己の手で成さしめるためのものだ。ならばこそ、彼女は罠を張り巡らせる。
 人々に累が及ぶことのないようにと、大地に流れる龍脈を知る。
 川と大地。
 荒野が広がる中に都の境を為すように川が流れている。

「先日も使った手えすが、中々便利なんですよね」
 手にした破魔の霊符を敷き、白は己の宝貝「十絶陣:紅水」(パオペイジュウゼツジンコウスイ)をもって祭りの会場を囲うのだ。
 オブリビオンの大軍勢は湧いて出てくるわけではない。
 必ず、この場を囲うようにして襲ってくる。
 ならば、そこにこそ宝貝の酸性を帯びた紅水の霧で出来た迷宮を敷けば、先日と同じように数を減らすことができるだろう。

 彼女が敷いた霊符は出口に設置されている。
 もしも迷宮を抜けてきたオブリビオンがいたのだとしても、出口でまた破魔の力が発動して力を削ぐだろう。
「これでオブリビオンの攻勢もある程度は緩和できるでしょう。敵の数は膨大……勢いづかせることこそ避けるべきこと」
『虎』と呼ばれるオブリビオン。
 本来は群れなすことのない孤高の存在にして力の象徴。
 されど、オブリビオンと化した今は違う。

「命を奪うためだけに存在しているオブリビオン。そんな彼等が孤高の存在であるわけがない」
 白は理解する。
 動物的本能だけに従う『虎』にかつてのような気高き性質はないのだと。
 ならばこそ、己の宝貝でもって打倒する。人々は失わせない。
 そして、若き英傑たちもまた失わせない。
 彼等が作る未来がある。
 それはきっと人々にとってより善き希望と成るはずだから。
「オブリビオンの無粋さなど今更とやかく言うわけではありませんが」
 見上げる天灯浮かぶ夜空は、人の祈りと願いに彩られ、美しいと呼ぶに相応しい光景だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「BBQとシチューの二人が揃い、天灯とともに英傑が生まれるか……
天より生まれし天丼よ、お前に使命を与えよう!」
(天灯(てんとう)を行灯(あんどん)のように、てんどんと読んだらしい)

失われた命を悼む祭りか……
我も長い人生の中で多くの者と別れてきた。

こんな祭りでは肉を食い生命へ感謝をするのが良かろう!

「ルクスよ、我らはこの祭りに焼肉屋を出すぞ!
BBQとシチューは鉄板を熱するのだ!」

2つ揃って完全になった風火大車輪があれば、火力は十分!
焼肉定食を作り放題だな!
ここに完璧な鉄板がいないのが残念だ。

「そして天丼は肉の焼け具合をしっかり見張るのだ!
肉をひっくり返すタイミングこそ命と知れ!」


ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

BBQとシチューが天丼を喚ぶ?

屋台をだすのはいいですけど、ちょっと何言ってるかわかりま……。
え?屋台は焼き肉なんですか!?

あ、三師さんははじめまして。

師匠、いいこと言ってる雰囲気だしてますけど、
お肉食べたいだけですから、気にしないでくださいね。

とはいえ、専属料理人として作らないわけにはいきません!
戦の前のお食事を提供しないといけないですしね。

さ、大聖さんも手伝ってください。
火はわたしがやりますけど、お料理は覚えて損はないですから!

そうでないと……あんなになっちゃいますよ?(師匠チラ見)

あ、三師さん四将さん、火だけつけてもらえますか?
お肉焼けたら持って行きますんでお願いしまーす!



 名前に意味があるのだとすれば、呼ぶ者と呼ばれる者との他者が存在しているからだろう。
 若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』はその名前によって存在を確立している。
 だとすれば、生まれたばかりの英傑『熾天大聖』の名前に如何なる意味があるのだろうか。そして、これからどのような意味を持っていくのだろうか。
「BBQとシチューの二人が揃い、天灯と共に英傑が生まれるか……」
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)はどこか遠い目をしていた。

 言葉面だけ聞いても何を言っているのかさっぱりわからんってなる。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)もそうであったことだろう。
「BBQとシチューが天丼を呼ぶ?」
 どういうことなんやとなるところであるが、ルクスにとっては割といつものことであったかもしれない。
「天より生まれし天丼よ、お前に使命を与えよう!」
 ぼんやり空を見上げていた『熾天大聖』は特に反応を示さなかった。
 だって、自分の名前はすでに決まっていたからだ。
 けれど、フィアは構わなかった。天灯を行灯のようにてんどんと読む彼女の心の中は、わりと食欲一色であったから。

 そう、この祭りは失われた生命を悼む祭りである。
 同時に平和に思いを馳せる祭りでもあるのだ。フィアもまた多くの者と別れてきたのだ。
 長きにわたる人生においては、それが必定であろう。
 ゆえに、死者を悼み、平和を祈る祭りならば。
「肉を食い、生命へ感謝するのが良かろう!」
「あの人はまるで変わらんな……」
「ええ、ずっと変わった名前で私のことを呼ぶのよ。しちゅーですって。面白いわね」
 若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』が苦笑いしているのも無理なからぬことであった。

「ルクスよ、我らはこの祭りに焼肉屋を出すぞ! BBQとシチューは鉄板を熱するのだ!」
 くわっ! とフィアの瞳が輝く。
 そう、片割れの宝貝『風火大車輪』が此処に揃ったのだ。
 ならば火力が生命の鉄板焼において焼肉定食を作り放題なのだ。
「屋台を出すのはいいですけど、ちょっと何言ってるのかわかりません……え? 屋台は焼き肉なんですか?!」
 あ、『天峰三師』さんははじめまして、とBBQと呼ばれた苦笑いを浮かべている英傑にルクスは拱手でもって挨拶をする。
 正直、自分の師匠の振る舞いに辟易していないかと心配でもあったのだ。

「師匠、いいこと言ってる雰囲気出してますけど、お肉食べたいだけですから気にしないでくださいね」
 とは言え、師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)であるルクスは、フィアの要望に答えなければならない。
 むしろ、乗り気でも在った。
 これから訪れるオブリビオンとの大軍勢との戦い。
 それに備えるためには確かに料理を振る舞うことに異存はなかった。

「さ、大聖さんも手伝ってください」
 ね、とルクスはぼんやりしていた『熾天大聖』の手を引いて鉄板の前に連れてくるのだ。
「どうして?」
 彼の瞳は純粋な疑問に溢れていた。
 どうしてこんなことをするのだろうという疑問。それを見たルクスは、ちらっと己の師匠を見やる。
「お料理は覚えておいて損はないですから! そうでないと……」

 彼女の視線の先にあるのは『天峰三師』と『牽連四将』を引き連れ、鉄板の前に陣取っているフィアの姿があった。
「ここに完璧な鉄板がいないのが残念だ。だが!」
 くわ! とフィアの瞳が見開かれる。
『風火大車輪』の火力で熱せられていく熱板の火加減をみているのだろう。
 その上で焼かれていく肉の香りを楽しんでいるだけではないかという疑念は突きないけれど。

「何をしている、天丼! 肉の焼け具合をしっかり見張るのだ! 肉はひっくり返すタイミングこそ生命と知れ!」
 くわわっ!
 鬼気迫る形相でフィアは『熾天大聖』へと呼びかける。
 これはかなり厄介な感じ仕上がっている。そんなフィアをルクスは示すのだ。
 ああなってしまう、と。
 あくまでちらっと見ただけにとどめたのは、なけなしの良心であったからかもしれない。

「わかりましたから、師匠! そんなに怒鳴らないでくださーい!」
 ルクスは『熾天大聖』の手を鉄板の前で焼き加減を教える。
 一度教えてしまえば、其処からは飲み込みが異常に早い。ルクスとまったく同じ動作でもって肉を焼いていく。
 それは完璧な所作であった。
 一度見ただけで覚えるのだろう。フィアのご満悦な顔を見て、ルクスは戦慄したかもしれない。
 師匠の専属料理人としての立場を危うくする存在が、まさか現れるとは思いもしなかったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束

いえ、あの、そんな珍獣を見るような視線で遠巻きにするのはヤメテクダサイ…
思い返してみると封神武侠界では名乗り上げた回数が少なすぎますね!
これは知名度が足りなさすぎなのでは??

ともあれ、お祭りを邪魔する予定はありませんし
私ものんびり回りましょう~
あ、オブリビオンの迎撃だけ考えておかないといけませんねー(もぐもぐ
罠もいいんですがどっちかというと大火力不意打ちの方が削れそうですし
お祭りを楽しむついでに狙撃(?)ポイントを探しておきましょうか
それにしてもこれ美味しいですね?
もう一個買ってきましょう



「お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
 そんな名乗り口上が夜空に天灯浮かぶ祭りの最中に響き渡る。
 どう考えても空気読めてない感じの口上であった。
 しかしながら、それは仕方ないことなのだ。
 なぜなら、お約束であるから。これを外してしまうことはクノイチ的にはあってはならぬことであるから、とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は特に邪魔されることなく名乗り口上がすんなりと響き渡ったことにちょっと驚いていた。

 いつも大体邪魔される。
 それに敵であるオブリビオンがいるからこそ、こうした前口上というのは映えるのだ。けれど、今はオブリビオンが来襲していない。
 これより大軍勢がやってくることはわかっているのだが、それでも人々の視線が痛い。
 ハチャメチャに痛い。
 突き刺さるかのようであったし、若干遠巻きにされているのが心に来る。
「いえ、あの、そんな珍獣を見るような視線で遠巻きにするのはヤメテクダサイ……」
 そんなこといっても無理だもんっ! ってなる空気である。
 思い返してみると封神武侠界では名乗りあげた回数が少なすぎた気がする。単純に知名度が足りてないとか、そんな感じであろうか。
 そうであるのならば、クノイチ的には大問題である。
 いや、知名度があるとかないとか、それはクノイチ的にはどうなのだろうか。忍び的な意味で。

「と、ともあれ!」
 そう、ともあれである。お祭りを邪魔するつもりはないのだ。遠巻きに見られていたことなど忘れるかのよういサージェは祭りの会場をのんびりと回るのだ。
 こうした慰霊祭にあっても、人々の営みは変わらない。
 天灯を飛ばすだけではなく、出店を回れば食べ物なども用意されている。
 それをサージェは頬張りながら、あ! と思い出すのだ。
「オブリビオンの迎撃だけでも考えておかないといけませんねー……もぐもぐ」
 サージェは色々考える。
 いや、焼きとうもろこし美味しいな、とか考えているばかりではないのだ。

 オブリビオンの大軍勢が来ることはすでに予知によって判っている。
『虎』と呼ばれるオブリビオン化した存在。
 生命を奪うことだけを存在意義とした存在である。そこにはすでに孤高と力の象徴としての意義はないのだ。
「ふむふむもぐもぐ」
 考えているのか考えていないのかわからない様子でサージェは考える。

 罠もよいが、大火力で不意打ちの方が削り取れそうだと考えたのだ。
『虎』と言えど、生物には変わりない。
 ならばこそ、不意の一撃は敵を引っ掻き回すにはよいだろう。
 お祭りを楽しむついでに狙撃ポイントを探す。
 ここ、封神武侠界は山河ありきの地形が多い。荒野と川が存在する『梟門』と『鴉鷺』の都の境にあっては、ますます険しい地形となっている。
 ならばこそ、そうした不意を討つ場所に恵まれているのだ。

「それにしてもこれ美味しいですね?」
 焼きとうもろこしを食べ終わって、サージェは胃袋がますます刺激されたのだろう。
 もう一つ買っておこうと狙撃ポイントを探しながら、彼女はおそらくもう一つと言わず二つ、三つとあれこれ買い食いすることだろう。
 お祭りを楽しむこともまた失われた生命を悼むことにもつながる。
「悲しいばっかりが人生じゃないですからね。きっと。こうして楽しむこともまた人生なんですよ」
 朗らかに笑いながらサージェは封神武侠界の食べ物を満喫するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
私はお二方と縁結んだ騎士、トリテレイア
宜しくお願いします『熾天大聖』様

(何故、私の思考演算は“親近感”を抱いているのか。“そうあれかし”という意志…いえ、奇妙な表現ですが設計思想を読み取れて…)

失礼、不躾な視線でした

人は赤子として生まれ出で、多くを知り、為すべきを見出す

ですが、為すべきを最初から刻まれた存在もまたおります
私は機械…絡繰りですので後者
最初から皆が望む英傑を望む貴方も

それを刻まれた者は幸いです
目指すべき星を見失いません

それを刻まれた者は不幸です
他の道を選べません

ですが、その道行きにどのような足跡を残すかは…己で決められるのです
願わくは、踏み締めた跡に美しき花が咲き誇るような歩みを



 若き英傑『熾天大聖』は人の祈りと願いを込められた天灯が舞い上がる夜空より光と共に落ちてきた存在である。
 その存在が如何なる未来を照らすのかは未だわからず。
 けれど、それがより多くの希望残る未来につながると信じるからこそ、猟兵たちは彼を守らねばならないのだ。
「私はお二方と縁結んだ騎士、トリテレイア。よろしくおねがいします『熾天大聖』様」
 そう告げるトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は幼き少年の姿をした若き英傑に親近感を覚えていた。

 彼の電脳、その思考演算が何故、そのような感覚を覚えるのかをトリテレイアは理解できなかった。
 まるで『そうあれかし』という意志のもとに存在しているかのような『存在』に戸惑いにも似た感情を覚えたからかもしれない。
 奇妙な表現であったが、そうとしか思えない設計思想のようなものを汲み取れてしまうのだ。
「騎士。騎士とはどのような存在?」
『熾天大聖』の言葉は、トリテレイアという存在に対しての疑問ではなかった。
 その騎士としての在り方を問うているのだ。

「ごめんなさい、騎士トリテレイア。この子はまだ生まれたばかり」
「どうか不躾な物言いを許して頂きたい」
 二人の英傑『牽連四将』と『天峰三師』が非礼を詫びる。
 その様子にトリテレイアはかぶりを振る。
「いえ、失礼。こちらこそ不躾な視線でした。人は赤子として生まれ出て、多くを知り、為すべきを見出すもの」
 トリテレイアにとって騎士とは如何なる存在であるかを今更問うまでもないだろう。
 けれど、目の前の『熾天大聖』は違う。
 見るもの全てが疑問に映るだろう。如何にして生まれ、如何にして死すのか。
 その定めすら未だ定まらぬ存在にとって、己の生き方はどのように写ったのだろうか。

「ですが、為すべきを最初から刻まれた存在もまたおります。私は機械……絡繰ですので、後者。最初から皆が望む英傑を望む貴方も」
『熾天大聖』の中に己から何かをしたいと思うことは『未だ』ないのだろう。
 だからこそ、他者を知ろうとする。
 人の祈りと願いを、その本質を知りたいと願い、相対するものが如何なる者であるかを、その黒い瞳で見定めるのだ。
「それを刻まれた者は幸いです。目指すべき星を見失いません」
 だが、同時にトリテレイアは告げる。
「それを刻まれたものは不幸です。他の道を選べません」

 二つの相反する言葉。
 それは『熾天大聖』にとっては難しいものであったのかもしれない。トリテレイアは少なくともそう思ったのかも知れない。
 けれど、『熾天大聖』は言う。
「でも、どうするかは自分で決められる。道が定まっていても、目指すべき星を見ていても、全部がそうじゃないって言えるものだから」
 それはトリテレイアが告げようとした言葉であったことだろう。
 道行きにどのような足跡を残すかを己で決めることができる。

 かつて自分がそうであったように。
 そして己の名前の通りに、その踏みしめた跡に美しき花が咲き誇れと願うように。
「ええ、そのとおりです。ゆえに私も願いましょう」
 貴方の道行きの跡に美しき花が咲き誇るようにと。
 たとえ、その道程が苦難に満ち溢れ、幾度も花を散らす暴虐があるのだとしても。
 枯れ果て、失意の中を生きるのだとしても。

 それでも、きっとそれが間違いではなかったと言えるようにと。
「共に征きましょう。貴方の道と私の道は違うものかもしれない」
「けれど、交わることがあるんだね」
『熾天大聖』はその黒い瞳で見据える。
 どれだけ遠き道程の果てに失意が待っているのだとしても、それでも残すことができるものがあると知ったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『虎』

POW   :    虎視眈眈
予め【敵を睨みつけて唸る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    猛虎幻翼
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    三回攻撃
【爪・爪・牙の連続攻撃】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:史牙空兎虎

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夜空に浮かぶ天灯が大地を照らすことはない。
 それは人の祈りのようにか細い光であった。けれど、それを目印にして大地を疾駆する影がある。
 オブリビオン『虎』である。
 彼等は封神武侠界にありては力の象徴であり、孤高の存在でもあった。

 けれど、今は違う。
 過去に歪んだ結果、孤高を忘れ果て群れを為す。
 力の象徴は血に塗れることを望み、その牙と爪は生命を貪るためだけにある。
「グルォオオオ――!!!」
 咆哮がほとばしり、人々は恐怖に慄く。
 その表情を見たかったのだというように『虎』たちは怯懦する人々へと襲いかからんとする。

 だが、それは猟兵の仕掛けた罠である。
 人々をもした複製であり、襲いかかった瞬間『虎』たちを拘束する仕掛け罠。
 さらに大地に煙る紅水の靄が迷宮と成って『虎』たちを翻弄する。例え、その迷宮を抜けたのだとしても、出口に設置された罠が彼等を滅する。
「ガ、オオオオオ――!!!」
 しかし、それでも『虎』たちは突き進む。
 どれだけの罠が在るの出しても、踏み潰すように圧倒的な数でもって『虎』たちは生命めがけて疾駆する。

 牙を突き立て、爪を振るい、その生命を散らしてこそ己の存在意義であるというように若き英傑を血に染めんと咆哮と共に迫るのであった――。
サージェ・ライト
しゅたっとクノイチ参上!
かーらーの!
【VR忍術】空から隕石(石ころサイズの流星群)の術!!

いやー、落とし穴とか土壁とかで足止めとか考えてましたけど
他の皆さんのトラップが優秀すぎたのでそれを使わせてもらって
私は速攻で虎潰しますね(イイ笑顔)

ふっ、睨んで唸っている暇もありませんよ!
【VR忍術】下から土の槍ぶすまの術!
足を止めれば私の忍術にやられると思ってください!

虎!今日の貴方たちは命を食む側ではなく私に食われる側!
いえ、実際に食べませんよ?!
どこぞの魔女みたいに術使ったらお腹減るってこともなく
そもそもさっきお祭りで食べましたからね??

ちょっと虎が私を食べたそうにしていたので対抗しただけですから!



 オブリビオンの大軍勢が迫る。
 それは山河を乗り越え、二つの都の民へと襲いかかる。
 されど、それは猟兵の仕込んだ罠。完璧に複製された民の似姿は、仕掛け罠となって『虎』達を捉える。
 さらにその罠を運良く切り抜けたとしても紅水の靄の迷宮が彼等を蝕むだろう。
 だが、物量で勝る彼等がそれらを踏み越えた瞬間、天より降り落ちる流星群が阻むのだ。
「グルォオオオ――!?」
 咆哮は戸惑いに染まるだろう。
『虎』とは封神武侠界においての力の象徴である。
 己たちが生命を奪う側にあるからこそ、天より墜ちる流星群が己たちを穿つとは梅雨とも思わなかったことだろう。

「しゅたっとクノイチ参上!」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は専用メモリをコンソールにインストールしながら、VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によって再現された流星群が『虎』達を穿つのを見やる。
 最初は落とし穴や土遁でもっての足止めを考えていたのだが、他の猟兵たちが仕掛けた罠が優秀すぎたためにそれに便乗する形でサージェは『虎』たちを速攻で潰すことにしたのだ。
 とてもよい笑顔である。
 しかし、『虎』達もまたただでやられるばかりではない。

 逃げ惑う者から噛み殺すと言わんばかりにねめつける視線は、『虎』本来の力を増していくことだろう。
 だが、睨めつけ、唸る暇などサージェは与えないのだ。
 その手にしたメモリをコンソールに突き立て、己の忍術を発現させる。
「ふっ、睨んで唸ってる暇もありませんよ!」
 VR忍術によって再現されるのは土の槍ぶすまの術。
 土遁と噛み合わせることによって大地より突き上げられるやりの一撃が『虎』たちの体を串刺しにし、後続の障害にカエルのだ。

「『虎』! 今日の貴方たちは生命を食む側ではなく、私に食われる側! いえ、実際には食べませんよ?!」
 けれど、どこぞの魔女のように術を使ったらお花が減ることもない。
 それ以前に祭りの会場でしこたま食べた後である。
 焼きとうもろこしの美味しさを思い出す。あれは人々の営みが生み出したものだ。
 それが人の全てではない。
 けれど、サージェは知っている。

 豊かさとは選べることである。
 否応なしに選択肢のない生活を送ることのないことである。だからこそ、サージェはなんでもない人々の営みをこそ守らなければならない。
「特別である必要なんて無い。連綿と紡がれていく人たちの、営みこそが!」
 睨めつける『虎』たちをサージェは土遁の槍でもって突き刺し、霧消させていく。
 遠くで『熾天大聖』の黒い瞳が見ている。
 あの瞳は己の瞳だ。
 他者は己を写す鏡であるというのならば、あの生まれたばかりの少年の姿をした『熾天大聖』は、きっとよりよい未来を掴み取るための『存在』だ。

 彼を彼たらしめるのは、きっと猟兵や、世界に生きる人々の姿なのだ。
「人を人たらしめるのです! ちょっと私を食べたそうにしている『虎』たちには、土遁の槍でも食らってなさーい!」
 放たれる槍が虎を貫く。
 とめどなくあふれるオブリビオンの大軍勢。
 それをサージェは真っ向から相手取り、次々と打ち破っていく。

 オブリビオンとの戦いはこの一幕で終わるわけではない。
 長きに渡って続くことだろう。
 それでも、この一戦があったからこそ、紡がれる未来があるのだとサージェは信じる。その心こそが人の祈りと希望を形に変えるバーチャルキャラクターとしての意義であるのだと、サージェは胸に秘めて戦場を駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
虎は死して皮を留め人は死して名を残す。
気高き虎もオブビリオンとなれば皮すら残す価値もございませんね。
皆様方…殲滅いたしましょう!!

十絶陣から抜けてきたことで、だいぶ疲弊も見られます。
このまま露と消えなさい!!
宝貝「雷公天絶陣」による『属性攻撃』雷を『範囲攻撃』いたします。
戦場全域の虎を感電させ、動きを鈍らせました。
このまま殲滅いたしましょう。
『道術』による『破魔』の効果を付与した霊符で生き残った虎を殲滅いたします。

虎はこの国において英雄に討伐されるのがお約束です。
皮すら残さない名だけの虎よ。来年が寅年だからと言って出てきたのが運のつきです(ぇ)



「虎は死して皮を留め人は死して名を残す」
 どれだけ気高き虎もオブリビオンとなれば皮すら残す価値はないと董・白(尸解仙・f33242)はつぶやく。
 目の前には己の宝貝を突破してきたオブリビオンの大軍勢『虎』たちが大地を疾駆している。
 己めがけて迫り、爪と牙でもって切り裂かんとしているのだ。
 しかし、それは本来の力ではないだろう。
 紅水の靄によって大半の『虎』たちが疲弊している。そこにダメ押しの霊符の破魔の力がほとばしれば、邪悪なる『虎』たちは光に撃たれ、さらに疲弊していくだろう。

「皆様方……殲滅いたしましょう!!」
 白の瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした宝貝『雷公鞭』から降り注ぐ雷が『虎』たちを穿つ。
 戦場の全域を覆うほどの宝貝「雷公天絶陣」は、大軍勢である『虎』たちの大半を感電させ、動きを鈍らせる。
「こちらも戦いましょう、兄さん」
「ああ、猟兵の方々ばかりに任せるわけにはいかない……『熾天大聖』よ、よく見ておくのだ」
 何を、と『熾天大聖』が言葉にすることはなかった。
 彼の黒い瞳には、猟兵たちの戦う姿が見えている。戦う術を学ぶのではない。
 その『存在』を問うのだ。

 彼にとって、戦う術は全てではない。
 力とはそういうことを示すものではないのだ。だからこそ、猟兵たちが何を思い、何を考え、何のために力を振るうのかを学ぶ。
「みんな誰かのために戦うのだね。そう在るべきだと思うから、世界の悲鳴にだって耳を貸すことができる」
『熾天大聖』は雷光に明滅する世界を見やる。
「このまま殲滅いたしましょう」
 道術に寄る破魔のちあkらを付与した霊符を白はばら撒き、雷にも耐えた『虎』たちを次々と打倒していく。

『虎』とは封神武侠界においては力の象徴である。
 ゆえに、荒れ狂う力は英雄によって討伐されるのがお約束。
 英雄譚にも、吟遊詩人の歌にも謳われる事柄である。ならばこそ、白はオブリビオンの『虎』にたいしては意味がないとさえ思うのだ。
「皮すら残さない名だけの虎よ」
 白の手にした雷公鞭がきらめく。

 それは滅びへの合図であり、同時に宣告でもあったのだ。
「来年が寅年だからといって出てきたのが運のつきです」
 果たしてそうなのか。
 そうではないのかもしれない。『牽連四将』と『天峰三師』は、きっと違う気がすると思わないでもなかったが、言わぬが花である。
 きらめく宝貝の光が雷と成って『虎』たちを貫いていく。

 迸る雷撃が大地を這い、人々を襲わんとする力をこそ打ち払っていくのだ。
「未だ修行中の身なれど。力に踊らされることなど。英雄の証明など必要ない。本当に必要なのは、力の証明などでもないのです」
 白のばらまく霊符から破魔の力が走り、『虎』達を打ち据える。
 どれだけの力があっても関係ない。
 力を振るう者の意志こそが、最も大切なことなのだ。

 白は嘗てすべてを与えられた。けれど、与えられたものは容易く消え失せていく。
 些細なこと一つでひっくり返り、水泡に帰す。
 ゆえに彼女は生を望むのだ。
 自身が自身であるために。その力を振るい他者を助けることこそが、己の仙人としての道であると示すように、雷光が戦場に迸る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
誇りを失っても強靭な体躯と爪牙が健在なのは厄介だな。

しかし、皆が望む英傑とはどんな姿だろうか。
まあ、少なくとも闇に紛れて寝首を掻くような業では無いよな。

【UC】
UCにより常軌を逸した技術を瞬時に身に付ける。

頭上を飛ぶ虎は足元の石を『怪力』で『投擲』し撃ち落とす。
俺を無視しようとする虎は『殺気』と『挑発』で強制的に引き付けて、強襲してくる虎諸共『功夫』で蹴散らす。
また、『暗殺』の知識も用いて急所を『部位破壊』すれば、より効率良く立ち回れるだろう。

「剛の英傑に二の打ち要らず!・・・って、そんな大層な業でも無いかな。」



 孤高の存在。
 それが封神武侠界における『虎』の在り方である。
 人ならざる強靭なる肉体に、しなやかさ。鋭い爪と牙。まさしく力の象徴と呼ぶに相応しい存在であったことだろう。
 そこに孤高である誇りがあったからこそ、人は畏敬の念すら抱くのだ。
 けれど、今や過去に歪んだオブリビオン『虎』に、その孤高たる存在の誇りはない。
 あるのはただ生命を鏖殺し、今という時間を侵食し世界を破壊に導かんとする意志だけであった。

「誇りを失っても強靭な体躯と爪牙が健在なのは厄介だな」
 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)は己の仕掛け罠と他の猟兵が張り巡らせた宝貝による迷宮によって疲弊したオブリビオンを見やる。
 あれだけの大軍勢であったことは脅威であったが、自分たちが仕掛けた罠もまた相当なものであったはずだ。
 けれど、それでも踏み越えてこれたのは『虎』本来が持つ強靭な体躯があってこそだろう。

 そんな中、彼は心の中で若き英傑『熾天大聖』の言った言葉を反芻する。
『皆が望む英傑』
 それは如何なるものだろうか。
 どんな姿であろうか。
 そればかりが彼の心の中を占めていた。
「まあ、少なくとも闇に紛れて寝首をかくような業ではないよな」
 霧亥の瞳がユーベルコードに輝く。
 瞬時に彼の肉体に宿ったのは、常軌を逸した技術であった。
 破壊の権化(ハカイノゴンゲ)足り得る器に注ぎ込まれるユーベルコードの力は、彼の膂力を底上げする。

 己を飛び越えて民を襲わんとする『虎』へと足元に転がる岩を投擲し射抜き、それでもなお己を無視しようとした『虎』たちを殺気を解き放つ。
「グルォオオオ!!!」
 その殺気は確かに強者としての自覚を揺らがすものであったかもしれない。
 けれど、『虎』たちにとってそれは無視出来ない挑発であったことだろう。自身が絶対的な強者であると信じるからこそ、己に向けられるのは殺気ではなく怯懦に濡れた視線であったはずなのだから。

「怒るか、己に殺気を向ける者に」
 若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』が片割れの宝貝『風火大車輪』と槍の宝貝、鉄環の宝貝でもって動きを止めた『虎』を貫く。
「力あるから強者なのではないわ。それを理解するのが人と獣の境界線」
 霧亥は見ただろう。
 人を護る英傑の戦いぶりを。そして、それを見つめる『熾天大聖』の黒き瞳を。
 彼の目に映るは、未来の己自身であった。

 他者が己を写す鏡であるというのならば、彼の瞳に映る己は未来の『熾天大聖』にほかならない。
 霧亥にとって英傑とは剛たるものである。
 決して屈せず、決して折れず。
 ただ己の在り方を示す拳こそが、力の象徴なのだ。
「剛の英傑に二の打ち要らず! ……って、そんな大層な業でも無いかな」
 彼の放つ剛拳の一撃は強靭な『虎』の体躯をも無造作に破壊するだろう。

 力の象徴も力に溺れれば、過去になる。
 弛まぬことこそが剛たる証であるというのならば、霧亥はその身に宿した破壊の力をこそ、他者を虐げる者に向けるだろう。
 撃ち抜かれた拳に二撃目はない。
 あるのは一撃必殺の業のみ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
【外邨家】

さて、虎ですねー。厄介ではありますがー…仲間の仕掛けた罠にはまってますからー…それを利用しましてー。
行きましょうか、蛍嘉。

私は指定UCで呼び出した弓足軽たちに、一斉発射を命じますねー。風属性攻撃もつけてますー。
どれだけ高く飛ぼうが、矢は尽きませんのでねー?

ふふー、私自身は漆黒風を投擲していきましょうかー。
『虎』たち。今回は狩られる側ですよー?

そう、私たちは『今を生きる者たちを助くため』に動いていますー。
何せ…私たちにはもう、望めないことですのでー…。


外邨・蛍嘉
【外邨家】

『虎』だねぇ。オブリビオンになっても厄介さは変わらない。
でも、頼もしい仲間たちもいるからね。
うん、行こうか義透。

さて、私の方は援護だね。指定UCによって、兵たちには回復がかかり続けるよ!
もちろん、『虎』には雨だけど…雨って、開けた場所だと避けるもなにもないからね。
矢が襲ってるのなら、なおさらだ。

私も藤流し投擲していこうか。何だろう、こうして義透と共に投擲してるの、久々な気がするよ。

私たちは、間に合うと知ったら全力で助けるのさ。
…故郷、壊滅しちゃったからね…私たちは…。



 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は封神武侠界にルーツを持つ猟兵でもあった。
 彼等の、性格には複合型悪霊の一柱『疾き者』と蛍嘉の中に、である。
「さて、『虎』ですねー」
「『虎』だねぇ」
 二人のつぶやきは些細なやり取りであった。
 兄と妹。双子であるがために通じるものがあったのかもしれない。

 封神武侠界において『虎』とは力の象徴である。
 人の肉体以上の体躯を持つ『虎』はしなやかでありながら強靭であり、また人が持たぬ牙と爪でもって容易くあらゆるものを切り裂くだろう。
 それをして厄介であるというのは当然なことである。
「オブリビオンになっても厄介さは変わらない。でも」
「ええ、仲間の仕掛けた罠にはまってますからー……」
 それを利用するのだと『疾き者』は言う。
 彼の見上げた夜空には天灯が浮かび続けている。されど、その夜空を征くのは『天峰三師』と『牽連四将』であった。

 片割れの宝貝を一つずつもつ二人は炎を噴出させながら、槍の宝貝と鉄環の宝貝でもって猟兵たちの仕掛けた罠に放った『虎』を次々と打倒していく。
 されど、敵の数は膨大である。
 この後に控える第二波もまた同様なのだ。
 ならばこそ、二人はうなずきあうのだ。体は分かたれていたのだとしても、心は合わせることができる。
「行きましょうか、蛍嘉」
「うん、行こうか義透」
 二人の言葉はユーベルコードの輝きと成って世界に放たれる。

『疾き者』のユーベルコードの輝き、それは兵のように(ヘイニジョウセイナシ)に形を変え、陣笠に数字の描かれた足軽達が居並ぶ。
 手にした弓を引き絞る。
 狙いは言うまでもなく味方の猟兵が設置した罠を突破してきた『虎』である。どれだけ爪が鋭いのだろうとも、どれだけ唸り睨めつけるのだとしても、関係などない。
「援護の者たちよ、ここに。さあ、一斉射ですー」
『疾き者』の号令と共に足軽たちが引き絞った弓矢を打ち放つ。
 それはまるで雨のように『虎』たちに降り注ぐのだ。

 しかし、それでも『虎』は屍を踏み越えるようにして飛ぶのだ。
「どれだけ高く飛ぼうが、矢は尽きませんのでねー?」
『疾き者』の言葉はそのとおりであった。
 冷雨暖風(ツメタキモアタタカキモ)が戦場に吹く。それは蛍嘉の放ったユーベルコードの輝きが姿を変えた万色の雨。
 オブリビオンには刺すような冷たい雨を。
 味方である足軽や若き英傑、猟兵には包み込むような暖かい風を送り続ける。
「矢と万色の雨……躱すことなどできはしないのさ」
『疾き者』と蛍嘉とが放つ黒と藤色の棒手裏剣が雨と風にまぎれて飛ぶ。

 それらは確実に『虎』たちの眉間を貫き、無償させてくのだ。
「『虎』たち。今回は狩られる側ですよー?」
「なんだろう、こうして……」
 共に戦場に並び立ち、同じ武器を手繰る。
 それはこの戦いの場にありて、不思議な連帯感のような、言いようのない感覚を蛍嘉に与えるだろう。
 とても久々なのだ。
 遠い幼き日に同じことをしたこともあったのかもしれない。

 あの遠き残響のような日々を思い出す。
 けれど、それは背に追うのではなく、己の道行きの跡においていかねばならぬことであることを二人は知っていただろう。
「私達は、間に合うと知ったら全力で助けるのさ」
 何故とは問われても、そう応えるしかない。
「そう、私たちは『今を生きる者たちを助くため』に動いていますー」
 ただ、それだけを応えるしかないだろう。

 二人は悪霊でありながら猟兵である。
 それが生命であるのかと問われれば、生命の埒外たる存在に答えはない。今に在るということだけが彼等の動く理由に成るだろう。
 失ったものがある。
 どれだけ求めても戻らぬものがある。
 それを知るからこそ、望めぬからこそ、二人は未だ失われぬものを護るために戦うのだ。
「それが戦う理由」
 幼き少年が亜麻色の髪を揺らして、黒い瞳で二人を見ている。
 彼等が戦う理由を知る。

 今を護るために。
 それがよりよい未来を作ると信じているからではなく、己たちと同じ思いをする者を二度と出さぬために、一人でも多くに暖かな未来を齎すために戦う二人を、『熾天大聖』は瞳に刻むのであった――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「くくく、鋭き牙と爪を持った血に飢えた虎か。
食材の方からやってきてくれるとは好都合!」

こちらは焼肉定食屋の準備は万端よ!
どんどん虎肉を捌いて鉄板に放り込んでいくとしよう!

「行くのだ、BBQにシチューよ!
火尖槍と乾坤一擲で虎を狩っていくがよい!
あとはルクスと、我が召喚したアンデッドが肉を捌いて、天丼が鉄板で焼いていくとしよう!」

くくく、これぞ、前門の虎、後門の鉄板作戦!
流れるように焼肉定食(虎肉)を作って、人々に提供していこうではないか!

「所詮、この世は焼肉定食。
生命を貪ることができるのは、自らも生命を貪られる覚悟があるものだけだということを教えてやろう!」(いいこと言った風な顔


ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

『封神武侠界において『虎』とは象徴・孤高の存在である』
いえ、群れてますけど……虎の尊厳は捨てたのでしょうか?

ま、お肉のためなら尊厳捨てそうなのは、よく見てるので驚きませんが!

あー師匠、やっぱりこれもいきますか。
蜂よりはいいですけど、これ、売ったほうがお金には……。

ナンデモナイデス。

赤身のお肉としては美味しそうですしね。
三師さん、四将さん、存分に狩ってきてください!
お肉はこちらでなんとかしますので!

え? 大聖さんが焼くんですか……?
大聖さんのほうがいいのかな?師匠までショタったのかな?

瞳の虹彩が消えていって、

師匠……頭焼き、できましたよ。
しっかり味わってくださいね(くすくすくす)



 オブリビオンと化した『虎』は、かつての孤高など忘れ去ったかのように群れをなして、祭りへと飛び込んでいく。
 猟兵たちの仕掛けた罠によって、その大半は勢いを削がれている。
 けれど、それでも人にはないしなやかな体躯、鋭き牙と爪は容易く生命を奪うだろう。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は目の前に迫るオブリビオン『虎』の大軍勢をみやり、呆れ果てた。
 そこには威厳も何もなかったからだ。
 骸の海に沈めば、過去に歪む。
 それは尊厳を捨て去ることと同義であった。

「ま、お肉のためなら尊厳捨てそうなのは、よく見てるので驚きませんが!」
 ルクスにとって、尊厳をかなぐり捨てる光景など日常茶飯事であったのかもしれない。それはそれでどうなのかと思わないでもない。
 けれど、彼女の師匠フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は群れ為す『虎』を前にして歓喜していた。
「くくく、鋭き牙と爪を持った血に飢えた『虎』か。食材の方からやってきてくれるとは好都合!」
「あー師匠、やっぱりこれもいきますか」
 いやまあ、蜂よりはマシである。
 というか『虎』を倒して毛皮を売った方がよほどお金になると思うのだが、フィアは目の前の食材しか見ていない。

 金勘定の話をしたところで、きっと食欲が勝るであろうから。
 そういうところもルクスはよくよく承知している。
「こちらは焼肉定食屋の準備は万端よ! どんどん虎肉をさばいて鉄板に放り込んでいくとしよう!」
 目がキラッキラしている。
 もうなんていうか、見ていられないというか。
 ナンデモナイデス、とフィアのキラキラお目々からルクスは目を逸した。

「赤みのお肉としては美味しそうですしね」
「では、征くのだ、BBQにシチューよ!『火尖槍』と『乾坤一擲』で『虎』を狩っていくがよい! あとはルクスと――」
 己の召喚したリザレクト・オブリビオン、死霊騎士が肉を捌く。
「天丼が鉄板で焼いていくとしよう!」
 じゅるりとフィアの唇の端からよだれがこぼれ落ちる。もう辛抱たまらん。そんな顔である。

 そんなフィアの横で師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)たるルクスは調理の準備をしていたところに、ぼんやりしていた天丼喚びされている『熾天大聖』にまさかの花形の焼きを持っていかれる。
「え? 大聖さんが焼くんですか……?」
 あかん流れである。
 これはハイライトがうすーくなっていく気配である。
 まあ、それもそうだろう。ルクスにとっては、ぽっと出の『熾天大聖』にお株をかっさらわれていく形になっているからだ。

 そんなルクスのハイライトが家出気味になっているというのにフィアはご機嫌である。
「くくく、これぞ、前門の虎、後門の鉄板作戦! 流れるように焼肉定食を作って、人々に提供していこうではないか!」
 しかしながら、すでに民たちは逃げ出している。
 定食屋どころの話ではないのだが。
 そんなフィアの言葉を聞いてか知らずか若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』が己の宝貝でもってオブリビオン『虎』を葬りさっていくのだ。
 その脇で『熾天大聖』が鉄板の上で肉をひっくり返している。淀みない見事な動作であった。
 いや、それはどうでもいい。

 フィアにとってもっと大切なことが今まさに背後で変なオーラを醸し出しているのだ。
「所詮、この世は焼肉定食。生命を貪ることができるのは、自らも生命を貪られる覚悟があるものだけだということを教えてやろう!」
 いいことを言ったふうな顔をしているが、言っていることは冗談そのものである。フィア自身が本気なところが質悪い。

「師匠……」
「ん――?」
 流れが変わっている。
 フィアが振り返ると其処に在ったのは虎の頭焼きを手に持つルクスであった。
 ハイライトは完全に家出している。瞳の虹彩のグラデーションも消えている始末である。
 師匠であるフィアまでショタショタに目覚めたのかとルクスの心は別の意味で闇落ちである。ヤンデレ気質なのかな?

「しっかり味わってくださいね」
 くすくすと様子のおかしいルクスの笑顔。
 ここってUDCアースでしたっけとなる場違い感。ならぬヤンデーレ具合。
 フィアは思い知るだろう。

 これは『前門の虎、後門の鉄板』ならぬ。
『前門の虎』に『後門の弟子』であると――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
人の血肉覚えた獣は殺さねばならぬ…自然に乏しき我が故郷から多くの世界を巡り学んだ事ですが、魔に属し血を欲する獣であれば猶更の事

その爪牙、無辜の民や『熾天大聖』様に届く事はありません
参りましょう『天峰三師』様、『牽連四将』様

(二つの都の祝祭、英傑の噂…この地を“かの御方”が訪れても可笑しくはなし。再びの拝謁に恥じぬ戦いをせねばなりませんね)

剣の切っ先向けた先に鱗粉散布
機を伺う虎共を纏めて無力化

武とは衝突を未然に防いで最善
戦う力のみを奪って解決し次善

ですがご覧ください、殺意に未だ光る数多の眼を
断固として刃を振るうべき時、それが今なのです

脚部スラスターの推力移動で敵中へ
虎共斬り捨て盾で殴り飛ばし



 人は獣よりも力が弱い。
 けれど、弱いということが即ち恐ろしくないということには繋がらぬ。それを理解するのが人と獣との境目であろう。
 獣は恐怖する。されど、その恐怖を克服する術を知らぬ。
 人もまた恐怖する。だが、その恐怖を乗り越える術を持っているのだ。
「人のち肉覚えた獣は殺さねばならぬ……自然に乏しき我が故郷から多くの世界を巡り学んだことですが、魔に属し地を欲する獣であれば猶更の事」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、手にした剣を掲げる。

 彼は騎士である。
 護るべきものがあるのならば、如何にオブリビオン『虎』が鋭き爪と牙を持つのだとしても、退くことのない戦士となる。
「その爪牙、無辜の民や『熾天大聖』様に届くことはありません。参りましょう」
 共に戦場に立つ猟兵、そして若き英傑たち。
『天峰三師』と『牽連四将』が片割れずつ備えた宝貝『風火大車輪』の炎を噴出させながら空を飛ぶ。
 手にした宝貝は、他の猟兵達によって勢いを削がれた『虎』たちを穿つだろう。

 トリテレイアは掲げた剣の切っ先を向ける。
 それを合図に機械妖精たちが舞い飛ぶ。散布されるのは特殊な鱗粉である。それに触れた『虎』たちは、その睨めつける視線をぐにゃりと歪ませて大地に伏すだろう。
 鋼の妖精圏(フェアリーランド・オブ・スティール)にありて、その敵意は尽くが鱗粉によって吸収され、無力化されていくのだ。
「武とは章傳未然に防いで最善。戦い力のみを奪って解決し次善」
 トリテレイアの言葉が戦場に響き渡る。

 未だ戦う力を持たぬ『熾天大聖』は、その黒い瞳で戦場の有様を見るだろう。
 学んでいるのだ。
 戦いとは如何なるものか。
 そして、戦いの後先にあるものがなんであるかを。それをトリテレイアは伝えることしか今はできない。
 二つの都をめぐる祭り。英傑の存在。
 トリテレイアにとって、戦いとは恥じることのないものでなければならない。
 それが己の騎士としての矜持であるからだ。

「ですが御覧ください、殺意に未だ光る数多の眼を」
 トリテレイアは示すだろう。
 如何に機械妖精が振りまく鱗粉を受けても、なお『虎』の瞳にあるのは殺意だけだ。生命を鏖殺し、奪うことしかない瞳だ。
 それを湛えるものと相対した時、人は何をしなければならないのか。
「断固として刃を振るうべき時、それが今なのです」
 全てが分かりあえるなど幻想に過ぎないのかも知れない。
 されど、剣を振るわなければ、その幻想すら守れぬと知るからこそ、トリテレイアはオブリビオンという過去に刃を振り下ろすのだ。

 脚部のスラスターが噴出し、敵陣の只中に飛び込む。
 剣が『虎』の体を両断し、襲い来る爪牙を盾で受け止めては吹き飛ばす。獅子奮迅たる戦いぶりを見せるトリテレイアを『熾天大聖』は見ただろう。
 勇猛果敢なる戦いは人の心を鼓舞するだろう。
 同時に恐ろしさも覚えるものである。

 戦いとは如何に不毛なるものであるかを彼は知る。
 人が英傑に求めるは武。
 されど、武とは戈を止めるものではない。武とは戈をもって進むものである。
「それが誤りであったのだとしても」
 トリテレイアは戈を持って進む先を見る。戈を止めると書くことが誤りなのだとしても、それでも人の祈りと願いが平和を望むように、かつての意味すら塗りつぶしていく。
 人の思いとは、過去の成り立ちすらも変える未来を示す。
 その光が今はか細いのだとしても。
 戦乱の先にあるものを求める心を失ってはならぬと、トリテレイアの剣はきらめくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『雷霆竜』

POW   :    雷霆竜の嘶き
【激しい稲妻】を降らせる事で、戦場全体が【乱気流内】と同じ環境に変化する。[乱気流内]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    龍燐鋼
自身の【強靭な鱗を頼った戦法】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    大回転攻撃
【全身をしならせた大回転攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオン『虎』の大軍勢は猟兵達によって雲散霧消した。
 それは地平を埋め尽くすほどの大軍勢であっても猟兵達を圧倒することは敵わぬという事実であった。
 されど、第二波がやってくる。
 空を埋め尽くすのは雷霆の輝き。
 天を白く染め上げる雷光が轟音と共に『雷霆竜』を呼ぶ。
「愚かな。我らを前にして抗うか。ひれ伏せ、生命の埒外に在るものどもよ――」
『雷霆竜』たちは、その雷を手繰る力でもって天より睥睨する。
 天にありて、己より優れたるものなしという傲慢さ。あるのは、全てが己に奪われるべき存在であるという歪なる意志。

 人々は恐怖しただろう。
 力の象徴たる『虎』と、絶対の象徴たる『竜』が己たちを襲う。
 怯懦に濡れた瞳は、彼等を絶対的な強者として認めるものであった。けれど、未だ恐れにまみれぬ瞳があった。
 一つは若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』。
 二つは猟兵。
 そして、未だ幼き瞳を持って見上げる『熾天大聖』の黒い瞳。亜麻色の髪を風になびかせ、彼は見ていた。
 そこにあったのは恐怖でもなければ戦う意志でもなかった。
 ただ、見ていたのだ。

「これはこれは。若き英傑の名を辿ってやってきてみれば、竜と相対することになるとはな」
 その声は突如として猟兵たちの背後から聞こえてきた。
 力強い言葉。
 これだけの大軍勢を前にしてもなお、恐れを踏み越え、克己する気概ありし声。
 威厳在る年の頃五十ほどの髭をたくわえた男性が快活な調子で手にした刀を抜き払う。

「余は司馬炎、晋の肯定司馬炎なり。これより義によって助太刀致す!」
 黄金と玉で飾られた屠龍刀から砂漠に燃え盛る太陽のごとき炎を噴出させながら、『雷霆竜』を切り裂くのだ。
 その技量、凄まじいというに他ならぬ。

 そう、此処に在るは、のちの武帝。
 そして、封神武侠界、人界を統一した晋を治める皇帝その人である。猟兵が知る武帝とは異なる名君としての姿を保つ。
 猟兵は知っているだろう。
 彼が在野、武林、仙界を巡り、封神台から溢れ出したオブリビオンに対抗できるユーベルコード使いを集めんとしていることを。

「ほほう、汝らは強いな? 一目見れば分かるぞ、我が国でこれまで余が出会ってきたどの英傑よりも強い!」
 そして、司馬炎は言う。
 此処に在りし猟兵たちに問うことは一つであると。
 放たれる『シバの炎』が『雷霆竜』を大地に失墜させる。手にした屠龍刀を振り抜く。
「種族や氏素性、門派は問題ではない。重要なのは――」
 迫る『雷霆竜』を刀の一閃が切り裂く。

 地響きを立てて落ちる竜を背に司馬炎の瞳が猟兵たちを見る。
「共にこの国を、民を守れることのみであるよ」
 其処に在ったのは、たしかに人の上に立つ者の器である。
 己の国を、民を如何にしても護るという絶対的な意志。
 名君としての在り方を、司馬炎は示したのだった――。
董・白
え?なんで時の皇帝がこんなところにいるんですか…。
この行動力がこの地を統一する皇の器ということなのでしょうか(呆)
うん。深く考えないことにしよう。絶対側近は苦労してるだろうけど…。

天峰三師様、牽連四将様、熾天大聖様。…とりあえず、第二陣の龍を殲滅したしましょう。

宝貝「五火神焔扇」を使用します。
先の戦闘で発生した瓦礫や破壊跡の無機物を宝貝の効果で炎と風の『属性攻撃』へ変換し、雷霆竜の集団へ『範囲攻撃』いたします。
火葬はまだ勘弁ですね私…土葬はもっと嫌ですけど。

さて、敵の攻撃は『道術』で『結界術』を張り巡らせ防御し受け止め、掴んで『投擲』して宝貝の効果範囲へ『吹き飛ばし』ます。
ではよい火葬を…



 封神武侠界、その人界を統一した晋の皇帝、司馬炎。
 彼がこの戦いに助太刀として参上したことに動揺を隠せなかったのは、董・白(尸解仙・f33242)であった。
 直接の面識があるわけではない。
 けれど、司馬炎の名前は仙界にまで轟いたことであろう。
「え? なんで時の皇帝がこんなところにいるんですか……」
 白にとって、それはあまりにも皇帝の名からは程遠いものであった。
 しかしながら、在野、武林、仙界など問わずにあらゆる場に赴いてユーベルコード使いを探すという行動力。
 そして、決断力が皇帝としての器であるというのならば、まさにそのとおりであったことだろう。

 あまりのことに白は呆れ半分であった。
 同時に深く考えてはならないとも思ったことだろう。彼の手繰るユーベルコード、シバの炎が黄金と玉で飾られた屠龍刀より放たれた砂漠に燃え盛る太陽の如き熱量でもって『雷霆竜』を焼き尽くすのだ。
「余のユーベルコード、シバの炎は決して消えざるシバの炎! さあ、見せてくれ、在野に在りしユーベルコード使い!」
 これまで見た英傑の誰よりも強いとひと目で猟兵の存在を看破した司馬炎の言葉に白は、己の為すべきことを思い出す。
「『天峰三師』様、『牽連四将』様、『熾天大聖』様……とりあえず、第二陣の竜を殲滅いたしましょう」

『雷霆竜』は群れをなし、幼体であれど数を揃えることによって成体をも凌駕する力を持つだろう。
 白は宝貝「五火神焔扇」(パオペエゴカシンエンセン)を手にする。
「この炎は全てを焼き尽くし、この風は全てを吹き飛ばす。舞い散らんこの世の儚さよ…」
 彼女は舞を踊るようにして宝貝を振るう。
 扇のようなそれは、先の戦闘で発生した瓦礫や破壊の跡の無機物を宝貝のちからでもって全てを塵に焼き尽くす猛火と狂風に変えて、『雷霆竜』へと放つのだ。

 それらは二人の若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』の宝貝『風火大車輪』の炎と共に空を群れ為して飛ぶ『雷霆竜』を吹き飛ばす。
「火葬はまだ勘弁ですね私……土葬はもっと嫌ですけど」
 炎の中を体をしならせて迫る『雷霆竜』を白は見据える。
 そのしなる体による鞭のような尾の打ち付けを道術で張り巡らせた結界でもって受け止める。
「我らを恐れぬか!」
「ええ、恐れるものですか。たかだか雷霆を操る力を得ているからといって――!」
 白は『雷霆竜』の尾をつかみ、ぐるりと怪力で持って振り回し投げ捨てるのだ。

 投げ捨てた先にあったのは、宝貝でもって生み出した全てを塵に焼き尽くす猛火が狂風によって形成された炎の竜巻。
 どれだけ『雷霆竜』が強靭な鱗に身を包んでいるのだとしても関係など無い。
 そこにあるのは確実な滅びだけである。
「オブリビオンと堕した『雷霆竜』など。では、よい火葬を……」
 灰も残さぬほどの炎の竜巻の中に消えた『雷霆竜』。
 それを見送り、さらに白は戦場にひた走る。あの一匹だけではないのだ。
 敵は大軍勢。
 此処にいるのは英傑だけではない。
 護るべき民もいるのだ。

 白はちらりと後の武帝と呼ばれる司馬炎の姿を見やる。
 彼の姿は堕落することのなかった名君としての姿である。そして、それを見つめる若き英傑『熾天大聖』の姿があった。
 彼は、司馬炎から何を学ぶだろうか。
 よりより未来を掴むため、多くの希望が残る未来を選ぶため。
 猟兵たちは己の為すべきことを為す。
 世界の悲鳴に答え、白は再び宝貝を振るう。炎の竜巻はオブリビオンの大軍勢に一歩も退くこと無く、その業火を持って過去の化身を霧消させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
【外邨家】
司馬炎とは『双仙遊戯』『茸筍、双界に競闘す』で邂逅済

おや、皇帝陛下。またお会いしましたねー。
あ、こちら妹の蛍嘉です。
…まあ、偶然って怖いんですよ。

せっかくですからねー、また違う業でいきますかー。
陰海月も顔見知りですし。

絶縁結界張りましてー。
ええ、不利な行動するのなら、これにはノッてきませんよね。
というわけで、ゆっくりな動きになったところへ、漆黒風を風属性攻撃つけての投擲ですねー。その鱗をも穿ってみせますよー。

はは、私たちが恐れるものか。抗うに決まってるでしょう?


陰海月&霹靂『あ、司馬炎さんだー』なぷきゅクエ。
陰海月、ノリノリダンスする。
霹靂、投擲に合わせて突撃する。


外邨・蛍嘉
【外邨家】

義紘(兄たる『疾き者』の名前)ってさ、たまーにとんでもない縁繋げてくるよね?
うん、拱手はしないと。礼儀は大切に。

さ、私も合わせるよ。指定UCは炎とかの邪魔をしないからね。
ふふ、その雨は私が降らせてるからね、こっちの領分なのさ。
私も、出てきた陽凪も陰海月ダンス楽しんでるから…相変わらず可愛いね。

で、藤流し投擲していこうか。陽凪も体当たりしてるね…つまり、相手にとって的が多くなった感じか。
ま、私も絶縁結界張ってるんだけどね!

そう、恐れはしないのさ。
キミの傲慢さを見てると、どこを恐れればいいのやら、だよ。


陽凪、皇帝いることにぎょっとした。陰海月と霹靂が気安いのもぎょっとした。



 縁とはつながるものである。
 一度結ばれれば、それは手繰り寄せられるようにして邂逅を果たす。
 それが果たして両者にとって幸いであるかはわからない。戦いの最中にあって見えるのならば、敵対者として見えることのなかったことを喜ぶべきであろう。
 晋の皇帝、司馬炎その人の姿を三度見ることになった馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は拱手でもって彼を迎えるのだ。
「おや、皇帝陛下。またお会いしましたねー。あ、こちらの妹の蛍嘉です」

 そういって共に戦場に立っていた外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)を示す。
 慌てて蛍嘉も倣って拱手する。
 時たま我が兄ながらとんでもない縁をつなげてくるものだなと彼女は思ったことだろう。
 礼節は大切なことだ。
 人として最低限の礼儀であるがゆえに、それさえできぬ者に対話する理由はないというのが封神武侠界の習わしである。
「よい。偶然も三度重なればこれもまた運命であろうよ」
 司馬炎は闊達に笑う。
 手にした黄金と玉に彩られた屠龍刀を振るい、炎のユーベルコードでもって『雷霆竜』を葬り去る。

 過去二度邂逅を果たした『疾き者』は己の手繰り寄せた偶然を怖いと思ったことだろう。
「どうだ、せっかくである。またぞろ違った業を見せてもらうとしよう!」
 司馬炎の言葉に『疾き者』は頷く。
 彼の影から飛び出した『陰海月』と『霹靂』が司馬炎の姿を見つけて、ノリよく手を振ったり鳴いたりしている。
『あ、司馬炎さんだー』という雰囲気を察した蛍嘉の巨大熱帯魚『陽凪』はぎょっとする。
 皇帝がいることにもぎょっとしてはいたが、あまりにも気安い様子の二匹にもぎょっとしたのだ。
 それは虹のように(ゲーミングカゲクラゲ)きらめくユーベルコードであった。
 俗に言うゲーミングカラー。
 1680万色に輝く『陰海月』のふわりふわりと宙に浮かぶダンスを楽しまぬ者の速度を遅らせる力。
 それに蛍嘉もまた合わせるのだ。
 万色の風雨が戦場を覆い尽くしていく。

「こういうこともあるよ。ふふ、この雨は私が振らせているからね、こっちの領分なのさ」
 蛍嘉も彼女の伴をする巨大熱帯魚の『陽凪』も、『陰海月』のゆらゆらとしたダンスを楽しんでいる。
 相変わらず可愛いものである。
「なるほどな! これは愉快である! 良い、とくと舞うがいい!」
 司馬炎もまた愉快そうに笑っている。
 戦場にあって舞を舞うことを許容する器の大きさもまた皇帝たる所以であろう。

「その鱗をも穿ってみせますよー」
 放たれる棒手裏剣が『雷霆竜』の鱗を貫いていく。
「我らの龍鱗を恐れぬか! 人の形をした猟兵風情が――!」
 咆哮が轟き、『雷霆竜』たちは己の龍鱗を誇る。されど、その動きは緩慢なものであったことだろう。
 そこに若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』の宝貝の一撃がダメ押しで打ち込まれていいくのだ。
「その龍鱗を誇るのならばこそ、躱すことはできないってことだね」
 さらに巨大熱帯魚の『陽凪』や『霹靂』の突撃が『雷霆竜』を翻弄するだろう。

 結界を張り巡らせることももはや必要ない。
 シバの炎もまた燃え盛り、ユーベルコードで持って『雷霆竜』たちの軍勢を突き崩していくのだ。
「はは、私達が恐れるものか。抗うに決まっているでしょう?」
 それは誰かに言われたからではない。
 誰に強要されたからでもない。
 己の意思で選んだ道だ。

「そう、恐れはしないのさ。キミらの傲慢さを見ていると、どこを恐ればいいのやら、だよ」
 蛍嘉は笑う。
 オブリビオンは力に溺れる。
 人を傷つけることで己の欲望を満たそうとする者ばかりだ。だからこそ、抗う。恐れることはあるかもしれない。
 けれど、その恐ろしさは決して正しいものではない。

 その誤ちを知るからこそ、蛍嘉は己の放った棒手裏剣が『雷霆竜』の逆鱗を貫くのを見ただろう。
 正しさを知るのならば、その誤ちを正すこともできる。
「ならばこそ、人は恐れを克己していくことができる。何も恐れないのではなく、恐れることを知ってこそ、踏み越えていく事ができる」
 もはや『雷霆竜』が奪うことのできるものなど、此処には何一つ無い。
 生命も、尊厳も。
 何もかも守り通すと決めた二人であるからこそ、オブリビオンの大軍勢を前にして恐れることなく、その力を振るう。

 それこそがきっと勇気と呼ぶのだろう。
『熾天大聖』は、その姿をこそ瞳に刻みつけるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
総大将が最前線に出てくるとか、ウチの初代皇帝を思い出すわ。

雷霆竜を眺めながら脳裏に浮かぶのは帝竜戦役の無限竜ワーム。
あの羽虫に比べれば猛々しい存在だったが、無限竜は猟兵に敗れ去った。
ならば我等が羽虫如きに遅れを取る筈も無い。

「我が物顔で空を席巻する羽虫共には、格の違いを見せ付けてやらんとな。」

【UC】
過去の激闘の記憶から無限竜ワームに変身し、雷霆竜の群れに突撃する。

悠然と雷霆竜と対峙する。
激しい稲妻?こんな脆弱な雷で笑わせる。
乱気流?そよ風の方がまだ荒々しく感じるぞ。
乱気流内に適応し、無限竜の放電で次々に雷霆竜を大地に叩き落とす。
トドメは英傑に任せる。

「上には上がいると思い知れ。」



 封神武侠界の人界を統一せしめた後の武帝たる司馬炎の炎はユーベルコードの炎であった。
 黄金と玉が配された屠龍刀より吹き荒れる炎は、消えぬ炎となってオブリビオンの大軍勢、『雷霆竜』を討ち滅ぼす。
「総大将が最前線に出てくるとか、ウチの初代皇帝を思い出すわ」
 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)はヤドリガミたる己の器物、その内部に内包された魂の一柱を思い出す。

 司馬炎の豪放磊落たる姿を見れば、それは当然であったかもしれない。
 皇帝とは即ち国のトップである。
 それが倒れれば国が傾くのは必定。
 されど、司馬炎もそうであるように己の目で在野を見て、民に何が必要であるかを知る。己が知らぬことを知ることこそが、彼の皇帝の器の大きさを示しているようでもあった。
「我らを恐れぬ愚かなる者どもよ――!」
 凄まじい雷撃が空より落ちてくる。
 オブリビオン『雷霆竜』のユーベルコードは雷を振らせ、乱気流の如き空間を作り出す。

 霧亥の脳裏に浮かんだのは、帝竜戦役の折に戦った無限竜ワームであった。
「あの羽虫に比べれば猛々しい存在だったが、無限竜は猟兵に敗れ去った。ならば、我等が羽虫ごときに遅れを取る筈もない」
「吠えたな、猟兵!」
 咆哮と共に雷撃が霧亥に迫る。
 その光景を見やる瞳に輝くのはユーベルコードの輝き。
 時を遡る力に覚醒し、屍山血河(シザンケツガ)を征く。過去の激闘の記憶から引き出した強敵。
 その姿へと変貌を遂げる。
 雷雲の中に全容すら知られぬ巨大なるワームの姿が『雷霆竜』たちをも飲み込んでいく。
 悠然と退治するワームの体は如何なるユーベルコードの雷撃すらも受け付けぬことだろう。

「我が物顔で空を席巻する羽虫共には、格の違いを見せつけてやらんとな」
 激しい雷が放たれるも、それらの尽くが霧消して消えていく。
「我等の雷が――」
「激しい稲妻? こんな脆弱な雷で笑わせる。この風もそうだ。そよ風のほうがまだ荒々しく感じるぞ」
 ワームの姿に変貌した霧亥は、戦場に吹き荒れる乱気流すらも適応し、無限竜ワームの放電で持って『雷霆竜』を大地に放逐する。

 ユーベルコードの稲妻よりも強力な一撃に『雷霆竜』は、その名に冠する力の一切を上回る存在を前に見上げるしかできない。
「こんな馬鹿なことがあってたまるものか、我等を越える竜が――」
 在っていいはずがない。
 そう告げる『雷霆竜』たちの首を落とすは、宝貝『火尖槍』の一撃。
 体を貫く宝貝『乾坤一擲』の鉄環が大地に失墜した『雷霆竜』の体を霧消させていくのだ。
 それを為したのは若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』である。
 霧亥はトドメを彼等に任せ、オブリビオンの大軍勢を蹴散らしていく。放たれる稲妻よりも強力な放電は、帝竜と呼ぶに相応しき威容である。

「上には上がいると思い知れ」
 人々の怯懦を睥睨するだけの存在であった『雷霆竜』は、その雷でもって大地に失墜する。
 恐れは正しく知らぬからこそ生まれるものである。
 如何に竜が絶対の象徴だとしても。
 それでも過去に歪み、堕した存在に負ける理由など無いというように霧亥は嘗て在りし強敵の姿でもって咆哮するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

あ、あれが超級料理人なんですね。
さすがはトップオブ料理人、そのオーラも火力もすごいですね。
あれなら、虎でも竜でも最高の裁き方、最高の火力で焼けそうです!

あ、でもそか、師匠はもうショタ道に入ってしまわれたんですよね……。

司馬炎さんの料理人(?)オーラに、
ちょっとだけハイライトが帰宅しますが、また家出しかけて……。

え? 今度はわたし焼いていいんですか? いいんですね!?

うふふふふ……それなら話は違いますよ。
専属料理人として、師匠に最高のステーキ定食を作って見せます!

三師さん火起こしを!
四将さんは紅茶のソースをお願いします!

大聖さんみていてください! 焼きの極意をご覧にいれますよ!


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ほう、その威厳ある立ち姿。
我にはわかるぞ。この男がただならぬ人物であることが……」

そう、その手にした屠龍刀こそ、この男の素性を物語っておる。

「どこの料理人風情か知らぬが、我の獲物である竜を横取りしようとは、許さぬっ!」(がるる

虎肉の焼肉定食の後は、竜のステーキ定食の予定だというのに、それをかっさらっていこうなど、不埒千万!

「さあ、ルクスにBBQ、シチュー、天丼!
我ら勇者パーティ、ステーキ定食をかけて、あの謎の料理人に対抗だ!」

我らのチームワークを持ってすれば、あのような輩に負けるはずがない!
【竜滅陣】で謎の料理人よりも多くの竜を倒してやろう!

あ、今度は焼きはルクスに任せよう。



 その威厳在る髯をたくわえた後の武帝、司馬炎の所作は他世界を知る猟兵たちをして威厳あるものであると知らしめるには十分すぎるものであった。
 さらには黄金と玉で彩られた屠竜刀を手に消えぬシバの炎を手繰るユーベルコードの煌き。
 司馬炎の名を知らぬ者であっても、彼が一廉の人物であることは明白であった。
「ほう、その威厳ある立ち姿。我にはわからぞ。この男がただならぬ人物であることが……」
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)の眼力は即座にそれを見破る。

 けれど、若干ズレているのはいつものことである。
「そう、その手にした屠竜刀こそ、この男の素性を物語っておる。つまり、料理人!」
 違う。
 絶対に違う。若き英傑『天峰三師』と『牽連四将』はそう思ったが、口には出さなかった。
 出してもきっと聞き入れないだろうし。
「あ、あれが超級料理人なんですね。さすがはトップオブ料理人、そのオーラも火力もすごいですね」
 だが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は感心したようにうなずいている。
 あ、これツッコミ不在のパターンである。
 あれならば虎でも竜でも最高の捌き方、最高の火力で焼けそうだと、ルクスは料理人としてのセンスでもって見抜く。いや、違うと思うけど。

「どこの料理人風情か知らぬが、我の得物である竜を横取りしようとは、許さぬっ!」
「フハハ、面白いな。在野のユーベルコード使いというものは! ならばなんとする!」
 司馬炎の度量が大きくて助かったフィアである。
 これが狭量なる皇帝であったのならば、まあ、即座に斬首刑ってやつである。むしろ、司馬炎じゃなければこの場で首スパーンな物言いをしておいて、笑って済ませる彼の器の大きさですでに負けている感あるが、そんなことは食欲の前には無意味なのだ。

 フィアにとって大切なことは虎肉の焼肉定食と竜のステーキ定食だけである。
 それを横からかっさらっていくことなど不埒千万というわけなのだ。
「さあ、ルクスにBBQにシチュー、天丼! 我等勇者パーティ、ステーキ低所kうを賭けて、あの謎の料理人に対抗だ!」
 フィアの言葉にルクスは返事をしようとするが、未だハイライトさんはご帰宅ではないのだ。
 ちろっと戻りかけて入るのだが、それは司馬炎のオーラに当てられてのこと。
 一度フィアの言葉を聞けばまた家出するのである。
 だって、そうなのだ。
 師匠ってばショタ道に入ってしまったのだから。
 いやなんだショタ道って。

「ルクスよ、焼きは任せたぞ!」
 フィアは己のパーティのチームワークをもってすれば、あのような輩に負けるはずがないと、その瞳をユーベルコードに輝かせながら告げる。
 竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)のぶっぱ癖は治ってない。
 しかしながら、ルクスにとって必要だったことは、その言葉だけである。
 焼きを任せた。
 つまり。

「え? 今度はわたし焼いていいんですか? いいんですね!?」
 師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)としての大復活である。
 専属料理人としてのプライドが砕かれたからこそのハイライトの家出だったのだ。
「うふふふふ……」
 何故かにんまり笑顔で『熾天大聖』を見るルクス。
 勝ち誇った笑顔に彼は首をかしげる。そもそも争ってすら居ないのだから当然である。
 だが、ルクスには関係ない。
「師匠に最高のステーキ定食を作ってみせます!」
 急に活き活きしはじめたルクス。
 よかった。家出したハイライトは戻ったようである。

「三師さんは火起こしを! 四将さんは紅茶のソースをお願いします!」
 此処まで来るともうシェフである。
 そんでもってフィアのぶっぱの光を背にルクスは自信満々な笑顔で『熾天大聖』へと向き直るのだ。
 黒い瞳がマジで疑問の色をしている。
 なんで対抗心燃やされているのか判っていない顔だ。

「大聖さんみていてください! 焼きの極意をご覧にれますよ!」
 食べ物は大抵火を通せばなんとかなるものである。
 ならば、その焼きこそが料理の極意でもある。火加減を制するのならば、料理をも制するだろう。
 ここに焼きの聖戦が始まる。
 いや、確実に蚊帳の外である『雷霆竜』たちはなんとも言い難い雰囲気のまま、フィアのぷっばでもってふきとばされ、ルクスの手繰る鉄板の上でフィアに食されるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
おおう?!なんか予想外な人の増援が?
これは頑張らないとですね!
あ、もう一回名乗り上げた方がいいんでしょうか?(そわそわ)

しかしクノイチ的には忍んでいた方がいいような気がします(ただし手遅れ)
ここは【電光石火】でいきましょう

ふっ、どんな攻撃も当たらなければ意味がありません
キレッキレ(スピードとカタールの2つの意味)な私を捉えることができあーっ?!(フラグ回収)

…真面目にやりますね(こほん)
狙いは喉元か腕
素早さと手数で攻めます

ユーベルコード使いがそうそう死なないと思いますが
司馬炎さんにはなるべく攻撃行かないように立ち回りますね



 黄金と玉に彩られし屠竜刀を携えし初老を越えた男性の姿は、一角の人物であることを示すオーラのようなものがあった。
 名を知らずとも、その威厳に満ちた髯をたくわえし姿は他世界を知る猟兵、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の肌に上に立つものとしての風格を知らしめるものであった。
「余は司馬炎。汝ら在野のユーベルコード使いを見つけ、集め、そしてこの国を救わんとするものである。汝らの力はこれまで見てきた者たちのどれよりも強いものである! あっぱれだ!」
 噴出する炎のユーベルコード。
 それは砂漠の太陽の如き消えることのない炎でもって、その手にした刀の字面の如く『雷霆竜』を大地に失墜させる。

「おおう?! なんか予想外な人の増援が?」
 これは頑張らないといけないと思ったが、クノイチ的にはどうなのだろ。
 目立つことなく鮮やかに、密やかに敵を討つことこそがクノイチ的には至上であるはず。
 けれど、もう一回名乗りを上げたほうがいいのかもしれないとソワソワしてしまうのはある意味仕方ないことであった。
 まあ、あの名乗り口上で司馬炎からツッコミを入れられたら、それはそれでしどろもどろになってしまうかもしれない。

 なので、クノイチ的には忍んでいたほうがマストでありベターであろう。
 手遅れではあるのだが。
「というわけで、動くこと雷霆の如し!」
 サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
 電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)の勢いで彼女は『雷霆竜』たちを翻弄し続ける。
 そのキレッキレの動きは『雷霆竜』をしても捉えることができなかったことだろう。
 それほどまでにサージェの動きは洗練されて無駄のない動きであったのだ。

「ふっ、どんな攻撃も当たらなければ意味がありません! スピードとカタールの二つの意味でキレッキレな私を捉えることができ、あーっ?!」
 フラグ回収も電光石火である。
 数で勝るオブリビオンの大軍勢をして『雷霆竜』は群れを為すことで成体の『雷霆竜』よりも群としての力を発揮するのだ。
「我等を愚弄するとどうなるか――!」
 迫る『雷霆竜』の牙。
 しかし、それはサージェに向かうことはなかった。
 大地より放たれた司馬炎の放つシバの炎が『雷霆竜』を包み込み、吹き飛ばしたのだ。

「在野のユーベルコード使いよ。如何に力に優れていても油断はいかんな」
「す、すみません!? 真面目にやりますね!」
 サージェはびしーっと居住まいを正して、戦場にて立つ。
 司馬炎はユーベルコード使いであるが、サージェにとっては護るべき者でもある。あえて自分が目立つことによって彼に攻撃が行かぬようにと立ち回ると決め、さらにキレッキレな動きで持って『雷霆竜』たちを翻弄していく。

 それは豪華絢爛なる武将の太刀筋とは違う。
 けれど、己に注意を引き攻撃の全てを受け流すからこそ、敵に決定的な隙を生み出す戦い方でもあったのだ。
「ふっ、油断して、などと上からものを言ったが!」
 中々どうして、と司馬炎は笑む。
 サージェの戦いぶりで明らかに自分に対する『雷霆竜』のマークが外れているのだ。
 ならばこそ、彼は己の手にした屠竜刀より放たれるユーベルコードの炎の勢いを強め、振るうのだ。

「狙い目は喉元か腕です! こちらが素早さと手数で攻めますので!」
 サージェは己の強みを存分に活かした戦いを繰り広げ、戦場にその身を晒す。
 クノイチ的にはどうかと思われるものであったけれど。
 それで誰かを守れるのならば安いものであるとサージェは、己の身一つで『雷霆竜』たちを次々と翻弄し、夜空に迸る雷光に輝くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※シナリオ『双仙遊戯』にて面識有り

拱手にて皇帝に礼を示し

再びの邂逅、光栄の至りです
『天峰三師』と『牽連四将』、そして『熾天大聖』
この地に集いし英傑達…必ずや晋とその民を救う力となる事でしょう

さて、世を脅かす竜を討つは騎士の誉れ
数が多い故、少々手段は選べませんが…

電脳禁忌剣を一振り
電脳空間に格納したUC武装を装着
剣由来でなくSSWの普及品なれど…扱う手腕で幾らでも

竜共の鱗頼りの突撃を全重火器の乱れ撃ちで迎撃し押し止め
動きの硬直逃さず鱗無き眼窩をレーザーキャノンで狙撃
頭蓋の中身消し飛ばし

至難?
いいえ、出来てこその英傑

『天峰三師』様、『牽連四将』様
さあ、私が竜達の動きを抑える内に!



 晋の皇帝、司馬炎。
 その姿を初めて見た猟兵もいれば、再びの邂逅を果たす者もいる。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)もまたその一人であった。
 鋼鉄の手でもって拱手をする礼儀を失することのない彼の姿を認め、司馬炎は闊達に笑う。
「再びの邂逅、光栄の至りです」
「よい、そう堅苦しくならずともな。機械の騎士よ。我が国の民を救わんと戦うことこそ、こちらもまた礼を言わねばならぬ」
 度量の大きさもまた皇帝たる所以。
 名君としての姿を保ったままの司馬炎は、豪放磊落たる性質そのままに笑うのだ。

 手にした屠竜刀より放たれる消えぬシバの炎でもって『雷霆竜』を打ちのめしながら、トリテレイアに続きを促すのだ。
「『天峰三師』と『牽連四将』、そして『熾天大聖』。この地に集いし英傑達……必ずや晋とその民を救う力と成ることでしょう」
「それは重畳。ならば、まずはこの戦場を切り抜けることとしよう」
「はっ……助太刀感謝いたします」
 謙遜するなと司馬炎は笑い、その炎でもって敵を打倒していく。あれだけのフットワークの軽さである。
 彼の心配はしないが、それでも臣下たちの気苦労はしれよう。

「さて、世を脅かす竜を討つは騎士の誉れ」
 さりとて数が多い。
 手段は選んではいられないと手にした電脳禁忌剣を振るう。瞬間、電脳空間に格納した強襲・殲滅戦用武装強化ユニット(エクステンションパーツ・コンボウェポンユニット)が展開される。
 銃火器を大量に装備した武装ユニットがトリテレイアの体に装着される。
 それは単騎で軍勢を圧倒するための装備であり、一斉に放たれる火線が『雷霆竜』を襲う。

「この程度で我等の龍鱗を穿つことができようものか!」
 吹き荒れる火力を前にして『雷霆竜』たちは、その砲撃の全てを強靭なる龍鱗でもって受け止める。
 躱すことなど、強者のすることではないと言わんばかりである。
 だが、それこそが傲慢であることをトリテレイアは知る。
「なるほど……確かに強者を自負するだけのことはあるとお見受けしますが……」
 それでもトリテレイアは取り乱すことはない。
 己の手繰る銃火器が『雷霆竜』の軍勢を押し留めていることは事実である。
 ならばこそ、その動きを止めた『雷霆竜』の眼窩を狙うことなど、彼にとっては造作もないのだ。

 龍鱗が銃火器を阻むというのならば、龍鱗に覆われていない部分を狙えばいい。
 放たれる弾丸が『雷霆竜』の眼球を貫き、その頭蓋を粉砕するのだ。
「馬鹿な――!? 我等の目だけを狙うッ!?そんな、至難の業が、続くもの、――ッ!?」
 次々と穿たれていく一撃。
 如何に龍鱗が優れたる防御であったのだとしても、龍鱗に覆われていない部位はそうではないのだ。
 その一天を貫くトリテレイアの一撃は『雷霆竜』にとって不可解な攻撃であった。
「至難? いいえ、出来てこその英傑」

 トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 乱れ打たれる銃火器の火線。その雨のような砲撃は『雷霆竜』たちの動きを止める。
 だが、それ以上に早く飛ぶのは片割れずつ備えた宝貝『風火大車輪』をあわせ、共に飛ぶ『天峰三師』と『牽連四将』であった。
「『天峰三師』様、『牽連四将』様――!」
 トリテレイアの言葉にきらめくは二人の若き英傑の手にした宝貝。
 火尖槍は炎を噴出させながら、『雷霆竜』の眼窩を穿ち。
 乾坤一擲の鉄環の一撃は狙い過たず、その頭蓋を吹き飛ばす。
「かたじけない、騎士トリテレイア」
「残りは私達におまかせを!」

 二人の若き英傑が飛ぶ。
 それはきっと己の電脳にはない動きであったことだろう。
 その煌めきをトリテレイアは忘れない。そして、新たなる英傑『熾天大聖』もまたそうだろう。
 亜麻色の髪が風に揺れる。
 黒い瞳は、猟兵と司馬炎、そして英傑の動きを忘れない。

 刻み込まれた戦いの軌跡と、人の在り方を学ぶ彼の道行きは未だ見通せず。
 けれど、救われた人々の顔を持ってより多くの希望が残る未来をつかみ取ることを『熾天大聖』はその魂に刻むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月14日


挿絵イラスト