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price of holy nights

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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「お疲れ様、みんな。クリスマスシーズンで忙しいだろうにごめんねっ」
 愛嬌のある顔立ちに申し訳なさそうな色を浮かべて、クリームヒルト・クルスクロイツは猟兵たちを出迎える。
「いやあ、なんでクリスマスの話したかっていうとね、今回の依頼にちょっと関係してくるんだよね!」
 そういって、クリームヒルトはテーブル上に地図を広げる。今回の任務地となる、クロムキャバリアの一地方をピックアップしたものである。
「この地域には、“聖連”と“商協”っていう2つの小都市連合国家があるんだけど、この2つの国がまあ仲が悪いのなんの」
 寒冷な気候にあるこの地域では、特殊な環境から大規模な都市国家が発生し辛く、小都市連合である聖連や商協が数少ない有力国家であった。といっても、それですらも栄えている地域の弱小都市と張り合うのがやっとの程度なのだが。
「地方の親玉の座を賭けてるのかなんなのか知らないけど、もう長いこと五十歩百歩の戦いが続いてるんだよね。泥沼の戦いってヤツ」
 冬季が長く、積雪も多いこの地域では、長期間の戦争行為は燃料や食糧など様々な面から困難である。結果として、一時的にどちらかの国が優勢に立っても、攻め切ることができずになし崩し的に休戦状態に陥り、その間に力を蓄えた相手に反撃される、といったような不毛な争いが長年続いているらしい。
「で。不倶戴天の敵って感じの両国だったんだけど、流石にこのままじゃお互い二進も三進も行かないっていうことで、軍備縮小条約を相互に締結することで合意に至ったんだって」
 元より両国共に軍事目的で連合を組んでいるわけではなく、戦争継続に反対する派閥が両国内で力を増し始めているということらしい。
「ただ、今までずっと戦ってきたのに、はい今日から仲良くしようねって言われても難しいわけです。そこで、今回の休戦協定の象徴として、国境沿いにある聖連の街でクリスマスの式典を行おうってなったんだ」
 元々、聖連は宗教的同盟国家であり、クリスマスは重要なイベントとなっているらしい。そこに、商業連合である商協も金の匂いを嗅ぎつけ、このイベントなら休戦協定の象徴として相応しいということになったようだ。
「この式典には両国の首脳陣も列席して、お互いの目の前で同時にキャバリアを破棄するセレモニーが行われる予定なんだけど、この破棄予定のキャバリアが全てオブリビオンマシン化して、参列した穏健派を皆殺しにするって言う予知がありました」
 そんなことが実現してしまえば、最早両国は歯止めを失い、滅亡するまで殺し合いを続けることになるだろう。
「そんな企みは阻止しないとね! って言うわけでみんなの出番だよ。まずみんなには、今回の式典に参加してもらうことになるから、式典の概要から説明するね」
 今回の式典の目玉として企画されているのが、キャバリアのデコレーションイベントである。
 元々聖連では、クリスマスの時期にキャバリアをクリスマスに合わせた姿に飾り立て、宗教的権威を高めると言う儀式があった。これはそれを流用した物である。
 聖連も商協も、お互い完全にキャバリアを廃棄するわけには行かないので、残すキャバリアの一部をこうして飾り立てることで、あくまで軍事用ではないとアピールする狙いがあるのだろう。
「みんなはこのキャバデコに参加してもらってもいいし、お祭りだけあって出店なんかもあるから、そっちを回ったりしてもらってもオッケー。有事に備えてっていう名目ではあるけど、お祭りを楽しんでもらって大丈夫!」
 もし戦闘の際にキャバリアを借り受けるつもりなら、このデコレーションのためという名目で先んじて借り受けておくことで、戦闘の際により操作に熟練した状態で挑むこともできるだろう。
 勿論、専用キャバリアを持っているなら、そのキャバリアを飾り立てることもできる。
「敵の襲撃タイミングはわかってるから、キャバリア破棄のセレモニーが行われる時には配置についておいてね」
 破棄予定のキャバリアとはいえ、数は多い。また、開けた場所とはいえ都市部、更には積雪があるという特殊な環境にも気をつける必要があるだろう。
「それで、破棄予定のキャバリアたちの暴走を食い止めたら、今回の首謀者の乗るオブリビオンマシンとの戦いになるはず。こっちは強敵だから、十分気をつけてね……!」
 パイロットの力量も高く、マシンを撃破してもパイロットには逃げられてしまう可能性が高い。パイロットを捕縛する場合、なんらかの工夫が必要だろう。
「ただ……二つの国に喧嘩を売ってるわけだから、もし上手く捕縛できても、処刑されちゃうことは間違いないだろうし、なんなら、その人がどう言う来歴の人かとかで、新しい火種なっちゃったりも……するかも」
 それを避けるために、あえて逃すというのもありだ。あるいは、捕縛した上で、パイロットの処刑もさせないという手段が思いつくならば、考えてみるのもよいだろう。
「ただ、今回の依頼はあくまで両首脳陣の殺害と、それに伴う戦争の勃発を防げればオッケー! 悩みすぎないでいいからね!」
 首謀者がどうなろうと、オブリビオンマシンの暴走を防ぐことができれば、成功は成功である。
「それじゃあ、質問がなければハンガーに向かうよ!」


月光盗夜

 皆様ご無沙汰しております、月光盗夜です。
 今回は少し変わり種のクリスマスシナリオをお送りできればと思います。
 概ね依頼内容についてはオープニング内で説明されていますが、いくつか補足まで。

◆一章
 日常章です。思い思いにお祭りを楽しんでいただければと思います。
 キャバデコについては、クリスマスっぽいデコり方だとより人気が出ますが、何をもってクリスマスっぽいと言うかは皆様次第です。
 出店については、好きなものがあることにしていただいて構いません。デートスポットでもなんでもあります。
◆二章
 集団戦です。戦闘区域は、セレモニーの行われる、キャバリアが幾体も並んでも余裕のある開けた広場を中心に、出店の並ぶ商業区域などが広がっています。クロムキャバリアの戦闘の常として、貸し出しのキャバリアに乗り込んで戦うことも、生身でキャバリアに挑むことも可能です。
 市街戦や、積雪といった環境を活かしたプレイングだとカッコイイ活躍ができるかも?
 また、第一章でデコったキャバリアで戦うとプレイングボーナスがかかります。
◆三章
 注意事項は概ね二章に準拠します。戦闘後に首謀者をどうするかについては依頼の目的とは関係ありませんのでノータッチでも構いません。
 また、首謀者の取り扱いに対して、猟兵間の意見がどうしても両立できない部分がある場合、その部分についてだけはプレイングの意に反した結果になる場合がありますが、ご了承ください。

●プレイングについて
◆略式記号
 アドリブ、連携描写などを多用する傾向にあります。
 アドリブは大丈夫だけど知らない人との連携描写は苦手だよ、という場合は「▲」を、アドリブも連携描写もなるべく少なめで、という場合は「×」を、【プレイング冒頭に】お書き添えください。
 なお、アドリブ連携大歓迎、という場合は「◎」を書いて頂いても構いませんが、そもそも記載のない場合は原則アドリブや連携多めになりますので、記載しなくても問題ありません。
◆合わせプレイングについて
 合わせプレイングをお送りいただく場合は、プレイング冒頭に【お相手様の呼び方とID】、もしくは【グループ名】を【】付きで記載頂くようお願いいたします。
 なお、なるべくタイミングを揃えて送信いただけると、迷子の危険性が減るかと思います。

 長々と失礼いたしました。それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『キャバデコ!』

POW   :    カッコよく仕上げる

SPD   :    可愛く仕上げる

WIZ   :    この世界に爪痕を残すレベルで独創的に仕上げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

牙・虎鉄
◆アニエス(f31989)と

其方はうまく「でこ」が出来たようだな、アニエス。

うむ、『武に一つも関わりない催しに興味などない』と一蹴された。
嗚呼、貸出もあるらしいか。そうしよう。

――然し、キャバリアを借りたはいいが うむ
てんで動かし方がわからないな。

ああいや、あれの仕組は"影との連動"でな
則ち俺の動き其の儘に合わせて動くのだ。
加えて何分機械は苦手でな……

む?助かるが
……いや、乗り込まずとも
この方が教え易い?
そ、そうか……

――――耐雪梅花麗。
(まじないを唱えて覚悟を決めておく。これは修行と同義。……しかし)

お手柔らかに頼む。
……まだ気心知れた君が相手な分心穏やかに済みそうだ。


アニエス・アルカンシェル
◆虎鉄くん(f31118)と

アルカンシェルをクリスマスらしくデコ、か。……おひげでもつけておく?
光刃は虹の七色の出力を七本それぞれに振り分けてイルミネーションに見立てて、と。
うん、こっちのデコはこんな感じかな。
虎鉄くんの方は……ああ、自意識を持ってるタイプだもんね。
そうだね、それじゃあキャバリアを借りてこようか。

……え、操縦法がわからない? ああ、特殊な操縦法のタイプなんだね。
それじゃあ私が教えてあげる。
アルカンシェルも思念操縦だけど、一般的な操縦方も抑えてるから。

それじゃあ一緒にコックピットに入ろっか。
……ふふ、そうした方が教えやすいの。ね?
文字通り手取り足取り、ってね

想像以上に、近……!



「アルカンシェルをクリスマスらしくデコ、か。……おひげでもつけておく?」
 己の愛機の肩上に乗り、その細身な顔にサンタクロースの白髭を模したワイヤーを施す少女が一人。
 三稜鏡を思わせるような透き通った鋭角的なパーツで構成され、両腕に副腕、長い尾を備えたその特徴的なシルエットは、彼女の祖国から遥か離れたこの聖連にも名の届く名機“アルカンシェル”。
 であれば、当然それをデコレーションする彼女こそは、シエル王国が四天護機の一角、アニエス・アルカンシェル(虹のアニエス・f31989)に他ならない。
「あとは光刃の出力を……」
 両腕、両副腕、両脚、そして尻尾。しめて七箇所にマウントされた、アルカンシェルの象徴たる七本の光刃の発する光芒を、それぞれ虹の七色に割り振れば、その姿はさながらクリスマス・イルミネーションの如しであった。
「うん、いい感じ」

「其方はうまく“でこ”が出来たようだな、アニエス」
 一通りデコレーションを終えたアニエスが、愛機の肩から降り少し離れたところからその様子を眺めていると、瞑目したまま体躯に見合わぬ静かな足音とともに彼女に歩み寄り、話しかける少年が一人。
 牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)。機甲の世を中心に戦場から戦場を渡り歩き、虎と渾名される風来の武人である。
「うん、こっちのデコはこんな感じかな。虎鉄くんの方は……」
 虎鉄がいるということは、彼の魔神機もデコレーションされているのだろうか、と周囲を見回してみるも、その様子はない。
「……『武に一つも関わりない催しに興味などない』と一蹴されてな」
「ああ、自意識を持ってるタイプだもんね」
 彼のキャバリアは虎鉄の師とも呼べるような武人めいた性格の持ち主だという。それならば、このように浮かれた飾りをされることは好まないのも無理はないか、と一つ頷く。
「それじゃあキャバリアを借りてこようか」
「嗚呼、貸出もあるのだったか。そうしよう」

 さて、そんな会話を経て、一台の量産型白兵用キャバリアを借りに行ったはよかったのだが。
(然し、キャバリアを借りたはいいが、うむ)
 虎鉄の乗り込んだキャバリアを、まずはデコレーションのためにアルカンシェルの近くまで移動させねばならないのだが、キャバリアは唯々仁王立ちするのみであった。
「どうかしたの、虎鉄くん?」
 それを疑問に思ったのか、コックピットの搭乗口からのぞき込むようにしてアニエスが話しかける。
「うむ。てんで動かし方がわからなくてな……!」
 そうはいうものの、この機体は多くの国で採用されている量産型であり、操縦方法もオーソドックスな操縦桿とペダルを中心に用いるものである。アニエスの疑問を感じ取ったのか、虎鉄は小さく首を振った。
「ああいや、あれの仕組は"影との連動"でな則ち俺の動き其の儘に合わせて動くのだ」
 思念操作。彼女の操るアルカンシェルもそうであるように、サイキックキャバリアやオブリビオンマシンと呼ばれるようなキャバリアには珍しくない操縦形態である。
 加えて、機械は苦手でな、と呟く虎鉄を見て、アニエスは楽し気に小さく微笑む。
「ああ、特殊な操縦法のタイプなんだね。それじゃあ私が教えてあげる」
 アルカンシェルは彼女の家系に代々受け継がれてきたもの。当然、アニエスが家督を継ぎ継承するまでは、彼女は一般機で訓練を行っていたため、オーソドックスな操縦法は一通り身に着けていた。
「む? 助かるが……」
「それじゃあ、一緒にコックピットに入ろっか」
「!?」
 少々照れる気持ちはあるが、教えてもらえるというのならば有難い話だ、と頷いたのも束の間。コクピットに乗り込もうと搭乗口に手をかける彼女の姿に、少年の心臓は大きく跳ねた。9個だか10個だかある猫、もとい虎の命がひとつ吹き飛ぶのではないかという程の衝撃である。
「…………いや、乗り込まずとも」
 長い沈黙を経て、噛みしめるように呟く。虎の命は儚いのである。
「……ふふ、そうした方が教えやすいの。ね? 文字通り手取り足取り、ってね」
「この方が教え易い? そ、そうか……」
 悪戯っぽい笑みでー瞑目した彼には見えないが、鋭敏な感覚からもその雰囲気は十分伝わって来たー指導のために必要と言われれば、それ以上突っぱねることもできず、甘んじて了承することとなる。

「――耐雪梅花麗」
 寒い冬を乗り越えてこそ、梅の花は美しく咲く様に、苦難を乗り越えた先にこそ大成することができる。
 まじないを唱え、苦手なものに対峙する覚悟を決める、一種の自己暗示である。苦手なものというのが女人でさえなければ、武人らしいストイックな姿だと言えるのだが。
「お手柔らかに頼む」
 ともあれ、密閉空間で女人と触れ合う覚悟を決めた少年は、静かな声で笑いかけた。
「……まだ気心知れた君が相手な分、心穏やかに済みそうだ」

 とはいえ。まじないで耐性を得られるのはせいぜい百秒という所である。自己暗示の効果が薄れてくるころには、密着した状態から逃れるすべを持たない少年は、虎の残る8個くらいの命を一気に散らしたかのように鼻血を噴出し、赤くデコレーションするのは外側だけでいいんだけどなあ、などと言われる羽目になったとか。

(そ、想像以上に、近……!)
 少年はそんな状況だったがゆえに、真後ろで顔を耳まで真っ赤に染めた少女の鼓動もまた高まっていたことに気づく気配もなかったのは、少女にとって幸運だったのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月白・雪音
多くの国が相争い、命を散らすが常のこの世界において、
完全な和解とは未だ言えぬまでも一つの戦を終える式典。
例え小国の間なれど、実に喜ばしい日です。

…されど、戦にて続く時代の側面あらばこそ、
それが止まれば生きられぬ命もまた在るのでしょう。
此度の首謀者が辿る道、悔い無き選択をしたいものです。


…とはいえ、今はこの祭典をひと時楽しむと致しましょう。
私は機甲を用いぬ身ゆえ、流行りの装飾には明るくありません。
ここは知識のある御仁に助言を願いつつ、祭事に相応しい装飾に挑戦してみましょうか。
クリスマスといえばやはりイルミネーション…、きらきらを沢山並べて飾りましょう。
大きな袋など持たせれば雰囲気も出ましょうか。



 広場のあちこちに鎮座するキャバリアたちが、思い思いにデコレーションを施されていく。デコレーションを行う者は、キャバリア乗りらしい青年たちが中心のようだが、この街の住人やそうでない者も含めて、老若男女問わず作業に加わっている姿が見て取れる。一部では、聖連の民と商協の民が談笑しながら作業をしている姿も見受けられた。
 長年に渡り国と国との争いが絶えず、兵士は勿論、そうでない者たちも戦争で死んでいくのが日常のこの世界においては、極めて珍しい光景であるといえよう。
「完全な和解とは未だ言えぬまでも一つの戦を終える式典……。例え小国の間なれど、実に喜ばしい日です」
 雪の積もった広場に溶け込むような、真っ白な印象を与える女。アルビノの徴を持つ虎のキマイラ、月白・雪音(月輪氷華・f29413)は、式典の様子を見て歩きながら、感慨深げに小さく吐息するのであった。

(――されど、戦にて続く時代の側面あらばこそ、それが止まれば生きられぬ命もまた在るのでしょう)
 己の吐いた白んだ息が霧散していくのを眺めながら、雪音は黙考する。戦い以外の生き方を知らぬ者、戦争で全てを失った者、はたまた戦争で利益を得てきた者。理由は様々だろうが、戦争という大きなうねりから止まる事のできない者がいるということは、彼女にはよく理解できた。何故なら彼女自身、逃れ得ぬ獣の闘争本能を涼やかな面持ちの奥に火照らせ続けているのだから。
(此度の首謀者が辿る道、悔い無き選択をしたいものです)
 首謀者の処遇は、自分たち猟兵の行動に大きく左右される。戦場への案内を務めたグリモア猟兵の言葉を思い返しながら、小さく頷いた。

「……とはいえ、今はこの祭典をひと時楽しむと致しましょう」
 しかし、先ずは祭りを楽しむのも依頼の内。そう呟くと、彼女はふと目に留まった、少女とも呼べよう若い女性パイロットのデコレーションするキャバリアのもとに歩み寄る。
 武具すら用いぬ徒手空拳で戦うのを佳しとする彼女にとって、キャバリアは縁の薄いもの。洒落た雰囲気のある女性パイロットであれば、丁度良い助言をしてくれるのではないかとの考えであった。
「そこのパイロット様。よろしければ私にもお手伝いさせていただけますか」
「お、ほんと? リョーヘーの人だよね、助かるよ~!」
 トレードマークなのか、飛行帽を被った快活な女性パイロットの指示に従うようにして、雪音が高い身体能力を活かしてあちこちに飾りつけを施していくこと暫し。

「よっし、完成~! どうどう? キャバリアもやればできるもんでしょ!」
「これは……ええ、美しい仕上がりになりましたね」
 鮮やかに光を放つイルミネーションを随所に施し、イルミネーションの彩を更に深める赤と緑の反射板を取り付け、大きな袋を背負ったその姿は、どこに出しても恥ずかしくない立派なクリスマス仕様である。
 雪降る中に煌めくキャバリアの姿を見て、飛行帽の少女と楽し気に笑みを交わす雪音であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花陽浴・來流
一年の終わり、十二月
七面鳥の用意はいい? もうX'mas
式典にTRY 口ずさむ Carol と Rhyme
“聖連”も“商協”も 一緒に騒ごう お祭りっすよ?
清廉潔白とはいかない 一時(いっとき)前まで戦争してたもの
けど停戦! 卒業しよう闘争と暴力 妄想じゃなく行動 たとえば、
Let's go to venue for Cheva-Deco(キャバデコ)!
共に熱中 キミはお上手? ここでデビュー? それとも Avant-garde?
楽しめれば Win-Win 何だって Allright!

・キャバデコを盛り上げる方向で行動
・自分がデコるのはパンク系(戦闘用とは別方向のカッコよさを志向)



 雪が静かに降りしきる中、これまでは相争うことも多かった聖連と商協、二国の者たちがともに手を取り合い式典の準備を進めていく。
 だが、昨日までの禍根を今日からは綺麗に忘れろと言われても、そうはいかない者たちも多いようだ。
「ここであったが百年目だ! 俺の顔忘れたとは言わせねぇぞコラ!」
「戦場じゃキャバリア乗ってるのに顔もクソもねえだろうが馬鹿野郎。もの考えて喋れ単細胞」
 ざわめきの中、睨みあい悪罵する二人の青年。前線都市だけあって、どうやら戦場で因縁浅からぬ者たちがいるのも当然というもので、彼らがお互いの存在に気が付き一触即発の雰囲気に、といったところのようだ。
 初めは二人を止めようとしていた周囲の者たちも、長年の戦争による禍根に加えて祭りによる昂揚した空気が悪い方向に働いたのか、ピリピリとした雰囲気が漂い始め、このままでは周囲も巻き込んだ喧嘩が始まりかねない。

「一年の終わり、十二月。 七面鳥の用意はいい?もうX'mas」
 青年たちの肩がとトントンと叩かれ、二人の間をすり抜けるようにして涼やかな声が響いたのはそんな時だ。
「ああ? なんだテメー!」
「お前から先にぶっ飛ばしてやろうか!」
 血気盛んな青年たちに睨みつけられながらも、声の主――体の周囲を覆うアンサーウェアと呼ばれるこの世界独自の衣装をベースに、アシンメトリーでビビッドなアース系世界でいうところのパンクファッションと呼ばれるスタイルに仕立てた服を纏った少女は、彼らを誘うように、ちっちっち、と指を数度振る。
「式典にTRY 口ずさむCarolとRhyme」
 どこからか流れるアップテンポなBGMのビートに乗せて、ステップを踏むようにしながら口ずさむ少女。
「“聖連”も“商協”も   一緒に騒ごう お祭りっすよ?
 清廉潔白とはいかない 一時前まで戦争してたもの」
 ギャラリー
 青年たちの視線を惹きつけるように少女が近寄っていくのは、彼女がデコレーションした一機のキャバリアだ。
「けど停戦! 卒業しよう闘争と暴力 妄想じゃなく行動 たとえば」
黒をベースに染め上げられたボディにドクロを模したスプレーアート。チェーンやベルトで縛り上げられるように包まれつつも、堂々と仁王立ちする姿は、少女の纏う衣装と同じ、“反逆”の体現。パンクスタイルに他ならない。
「Let's go to venue for Cheva-Deco!」
 この場に集う多くの者たちと同じく、戦争の絶えないこの世界に、戦争のために生み出されたアンサーヒューマンでありながら歌の力を知り、マイクを手に戦場を行く彼女は、ここでもまた、ライムに合わせてHip-Hopにキャバリアの上を駆け上がる。
「共に熱中 キミはお上手? ここでデビュー? それとも Avant-garde?
 楽しめれば Win-Win 何だって Allright!」
 一発“ぶちカマし”た花陽浴・來流(アンサーヒューマンのサウンドソルジャー・f31871)は、己のステージと化したキャバリアの肩上で、挑戦的に笑うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

曾場八野・熊五郎
【チーム聖悪十字陵】
ようは我輩のメカドッグをクリスマスっぽく飾ればいいでごわすな?
よろしい、賢い我輩が最高にクリスマスっぽくしてやるでごわす

ピシャーンピシャーン‼︎(自身を引っ張って進むリクロウに鞭を打つサンタ犬キャバリア)
ゴワハハハ!働け働け、そんな様子では今年の冬のサンタ選抜に出ることはできないでごわす!
真っ赤なお鼻の栄誉が欲しければ鼻血が出るまで引っ張るでごわす!(赤鼻のトナカイに偏見を持つ犬)

ふう、ここが聖悪十字陵のてっぺんでごわすか。
流石に景色の良い……え、なんか動いてるようなゴワワー!?(キャバリアの合体に巻き込まれて合体聖人ダイサンターになる)


ティアー・ロード
【チーム聖悪十字陵】
そして悪を殲滅すればいいのだろう?
つまりヒーローの得意分野だ!ミニスカサンタ服を装備(浮遊)して参戦するよ!
デコレーションのためにキャバリアを借りよう……
そうだね、借りれるだけ借りれると嬉しいなぁ?

【キャバリア?所詮玩具さ……私たちのな!】
ピラミッド……???
まったく!彼らはクリスマスの何たるかを理解していないな
あれでは例えプレゼントを運べても意味がない。
ちゃんとデコレーションをしなければ乙女に夢を配れない!

「仕方ない……ここは私が一肌脱ぐとしよう」
「いくぞ!合体だ!」
使用ユーベルコードは【刻印「鉄樹開花」】!
無機物と合体してロボットに変化するコードさ
無機物と合体して……そう、無機物の数は何個でも構わない……!
鹿キャバリア、メカドックとたちと合体し
真なるオーバーロードダイサンタロボットとなってお祭りを盛り上げて見せよう!
「さぁ!ショータイムだ!」

要するに軍事用のキャバリアなんて使いきっちゃおうって作戦さ
「争いの火種は少なければ少ないほど、夢があるだろう?」


リチャード・チェイス
◎【チーム聖悪十字陵】
Y○uはSh○ck~♪(クリスマスらしいオルゴール音のBGMが街を彩る)
式典にふさわしく一際賑わったデコレーションが見えるであろう。
無数の電飾輝く鹿キャバリアによって作られたピラミッド!
その輝きはまさに平和を願う心を集める象徴にふさわしいのである。
これぞ……聖悪十字陵(サンダァクロゥス)!!

そして、頂上へとトナカイ(リクロウ)に引かれたサンタが進んでいる。
ああ、人々の希望を象徴するなんと素晴らしい光景であろうか。
さあ行け、合体聖人ダイサンター。平和を全ての人々にプレゼントするために!

かつて賢人は言った。
平和のために禍根は根こそぎ絶て。
(ナレーション:リチャード・チェイス)


詩蒲・リクロウ
◎【チーム聖悪十字陵】
何がなんだかわからないけど、何故か事前に仲間(と書いて敵と読む)にとんがらしスプレーで目潰しをされた上になんかクソ重い物を牽いてクソ辛い坂道登らされてるのですがこれ一体どういう状況ですかね???
「イタッちょっイッタッ!帰ったら覚えてろこの駄犬め!」鞭に打たれつつも聖犬十字陵のテッペンまで登りつめ……なんか色んな変身に巻き込まれリクロウは空へと還りましたとさ

R.I.P

……って死ぬわけないんですよね!!!(ダイサンターの頭部パーツと化したリクロウが喚き散らしながらプレゼント(リクロウの自腹)を撒き散らしていった)



「あ、アレを見ろ!」
 点々とまばらに散らばったキャバリアがデコレーションされていく広場。祭事特有のざわめきの広がっていた広場が、突如として、別種の喧騒で満たされる。
 先ほどまでのざわめきが喜びと期待、一抹の不安だとすれば、この喧騒はそう。困惑。
「アレは……なんだ!?」
 戸惑いを隠しきれない市民たちの前で、鹿のような装飾が施された由来不明の珍物体が行進している。いや、よく見れば市民たちにとってはそれは僅かに見覚えがあった。それらは、聖連と商協がそれぞれ前世代の主力機として量産していたキャバリアである。
 だが、その頭部には鹿角のような装飾が施されたり、フェイスパーツが仮面を思わせるものにすげ代わっていたり、極めつけには体中に電飾が巻き付けられていたり。面影こそあるものの、そのような珍妙な怪機械をキャバリアと認識し難いのも無理はなかった。
「なんなんだ、アレは……!」
「知らんのか。シャーマンズゴースト鹿キャバリアである」
「シャーマンズゴースト鹿キャバリア!?」
 困惑する市民の傍を通り過ぎる、怪キャバリアの肩に乗って進んでいく怪人がその質問に答えた。
「うむ。両国よりデコレーションのために融通してもらった破棄予定のキャバリアを我が力で支配したものである」
 怪人の名はリチャード・チェイス(四月鹿・f03687)。自分を鹿と呼んで憚らない怪シャーマンズゴーストである彼に支配されたのであれば、キャバリアたちがこのような珍妙な姿になるのも納得という者であった。
「よくわからんが、そうか、トナカイに見立てているんだな?」
 言われてみればクリスマスらしく華やかである、と納得し始めた市民たちに、しかしリチャードは指を振りながら否定する。
「いいや、トナカイは別にいる。見ておくがいいのである!」
 激しくもどこかコミカルな曲調の中に愛と絆を歌ったとある名曲を口ずさみながら、キャバリアの群を広場の中心まで移動させると、リチャードは高らかに声を上げた。
「さあ、シャーマンズゴースト鹿キャバリアたちよ、合体せよ!」
 号令一下、組体操のような要領で数十機に及ぶ鹿キャバリアたちが組み上げたのは、ピラミッドのような何かであった。人間ピラミッドならぬキャバリアピラミッドである。その頂上で優雅にコーヒーを飲みながら、怪人は告げた。
     サンダアクロゥス
「これぞ、聖悪十字陵!平和を願う心を集める象徴にふさわしいのである」
 ――本当にそうか?市民たちは訝し気な顔になりつつも、まあ確かに祭典のモニュメントとしては見応えがある、といえなくもなかった。

🎄🎁✨🦌🎂🍗🎉
 かくして出来上がった機械の奇怪なピラミッドを、生身で登る一人の少年の姿があった。
「はあ……はあ……一体僕は何をさせられてるんですかこれは……?」
 このピラミッドの上に待つ男とも因縁浅からぬ彼の名は、詩蒲・リクロウ(見習い戦士・f02986)。筋骨隆々たる見た目に似合わず心根の優しい少年である。
「なんか気づいたらよくわからん足元の悪い場所にいるし……正直未だひりひりするせいで目も開けられないし……なんクソ重いもの牽かされるし……」
 ヴィラン
 仲間たちによって噴霧された唐辛子スプレーの目潰しによる後遺症に苦しみながらも、謎の重荷が繋がれた取っ手を牽き続けるリクロウ。だが、彼が自分の現状に疑問を覚えて立ち止まると、彼の背中が鋭く打擲される。
「ゴワハハハ! 働け働け、そんな様子では今年の冬のサンタ選抜に出ることはできないでごわす!」
 リクロウを撃った鞭の主は、ずんぐりむっくりとした巨大な何やら赤色に染められた鉄の塊であった。犬の姿を模しているらしい独特のシルエットのキャバリアは、赤色に染め上げられ、何やら大きな白いズダ袋を持っている。サンタ犬、とでも言えようその姿は、ともすれば愛嬌のよさから人気の出そうな、まさにこのキャバデコの場に相応しいものであった。
「真っ赤なお鼻の栄誉が欲しければ鼻血が出るまで引っ張るでごわす!」
 乗り手たる賢い犬畜生こと曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)が悪役めいたセリフを発しながら、自分の乗るソリを牽く少年を打擲する、これまた悪の奴隷監督のような真似をしているのが愛嬌のすべてを台無しにしていたが。
「イタッちょっイッッッタ! 帰ったら覚えてろこの駄犬め!」
 鞭のスナップに絶妙に加減が聞いているのか、それとも純粋にリクロウの肉体が強靭なゆえか。幸いにしてリクロウは怪我を負った様子もなく、熊五郎を始めとした仲間たちへの恨み言を呟きながらも、一歩一歩大地を、もといキャバリアを踏みしめてピラミッドを登っていく。

🎄🎁✨🐕🎂🍗🎉
        リクロウ
「かくして今、トナカイに牽かれた合体聖人ダイサンターが聖悪十字陵の頂上へと辿り着いた。嗚呼、人々の希望を象徴するなんと素晴らしい光景であろうか」
「人々に希望を与える前に僕にも希望を貰えませんかねぇ」
 頂上にたどり着いたリクロウとサンタ犬キャバリアを待ち受けていたリチャードの放った言葉に、少年も流石に少し怒りを隠し切れなかった。
「ふう、ここが聖悪十字陵のてっぺんでごわすか。流石に景色の良い……」
「疲れたふりしても登って来たの全部僕ですからね。まあ、ある意味幻想的な光景なのは認めますけど……」
 謎の達成感を醸し出す熊五郎に、リクロウはどうにかしてこいつら痛い目みればいいのになどと思いながらも、ともあれこの奇妙ながらも華やかな光景にひとまず意識を向けることにする。
「ちょーっと待ったー!」
 だが、そんな風に謎の達成感を醸し出していた男たちのもとに鋭い声が響く。
「まったくなんだいこのザマは!」
 真っ赤な毛糸の衣装を白い羊毛で飾るそれは、正しくサンタ衣装。その中でも、切り詰められたトップスと短い丈のスカートは、へそや脚を強調する、ミニスカサンタと呼ばれる類のものであった。男ならば思わず視線を吸い寄せられてしまう、可愛らしくもセクシーな衣装である。衣装が自立し虚空にぷかぷかと浮遊していなければ、だが。
「キミたちはクリスマスの何たるかを理解していないな!」
 まるで透明人間がサンタ服を着ているかのように、サンタ服の顔の位置に浮かんでいる精緻な紋様の施された白い仮面。それこそがこの声の主、意志持つ仮面、ティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)である。
「ほう、これは異なことを言う。この聖悪十字陵に不満があると?」
「アリもアリ、大アリだね! キミが任せろというから借りてきたキャバリアを預けてみれば!」
 べしべし、と飾り紐を鞭のように振り回しながら訴えるティアーに、試す様にリチャードも問い返す。
「ほう、では何が足りないのか言ってみるがいい」
「キャバリアたちを合体させてひとつのモノを作るところまではいい! だけど飾りが電飾だけってどういうことだい。そしてメカ犬サンタもだ。雑に赤色に塗るだけじゃ物足りないじゃないか! もう少し……あるだろう!」
 どうやらティアーに言わせれば、まだまだデコレーションが足りないということらしかった。これでも彼女はこのチームの紅一点。こういった飾りつけにはほかのメンバーに比べてこだわりが強いのかもしれない。
「これでは例えプレゼントを運べても意味がない。ちゃんとデコレーションをしなければ乙女に夢を配れない!」
「ほう。ならばどうする、涙の支配者よ!」
 指を突き付けるかのように飾り紐を伸ばすティアーに、無表情な顔のままにリチャードはどこか楽し気に言葉を返した。
「仕方ない……ここは私が一肌脱ぐとしよう」
 ぱちん、といかなる仕組みか飾り紐を打ち鳴らせば、キャバリアピラミッドが鈍い地響きを立てて揺れ始める。
「ちょっと待ってくださいよ二人とも、一仕事させたのにこれ以上僕を巻き込まないでくウワー!?」
「え、なんか動いてるでゴワー!!?」
 嫌な予感がした、とリクロウが二人を止めようとするも時すでに遅し。何かに吸い寄せられるように、リクロウとサンタ犬キャバリアは空中を浮遊し始める。
「いくぞ! 合体だ!」
 ティアーの念動力に導かれるようにして、ピラミッドを構成するキャバリアたちが、サンタ犬キャバリアが、そしてなぜかリクロウが、空中を浮遊したかと思うと、分離・合身を繰り返し新たなシルエットを生み出していく。
「これは……成程、オーバーロード・ダイサンタロボットというわけであるか」
「そうとも! さぁ! ショータイムだ!」
 高笑いとともに、巨大なサンタロボットが大地を踏みしめる。無茶苦茶な素材から生み出される破茶滅茶な合体であったが、確かにそれは、市民の心を釘付けにするエンターテイメントと化していた。

🎄🎁✨🎭🎂🍗🎉
「キャバデコの名目で維持しようとしていた戦力の一部を、こうしてパフォーマンスに組み込む……考えたものであるな」
「なに、争いの火種は少なければ少ないほど、夢があるだろう?」
 合体巨人の中に乗り込んでそんな会話を交わすティアーとリチャード。今後の禍根になりそうな戦力は減らしておきたいが、相手の目を考えると減らし過ぎたくはない。そんな両国穏健派の思惑を踏まえると、両国の戦力を平和的に、しかし強引に接収するこのパフォーマンスは、ある意味理にかなっているといえるかもしれない。力押しがすぎるが。
「かつて賢人は言った。平和のために禍根は根こそぎ絶て――ということであるな」
「そう言った食えなさそうな話はどうでもいいんでごわすが、トリニクはどうなったでごわ?」
「うん? 詩蒲くんならヘッドパーツに――」

「うおおおおおお! 覚えてろよおおおおおおおおお!」
 合体の衝撃で宙へと飛び出したリクロウは、自腹で用意させられたプレゼントを広場中に撒き散らしながら吹っ飛んでいくのでした。
 リクロウ R.I.P
「って、死にませんからね! 死ぬわけないですからねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『GC-04カルキノス』

POW   :    マシンガンアタック
【RSマシンガンによる掃射と共に行う 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【遠隔兵器で装備した友軍機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    チョバム・アーマー
敵より【も丈夫な装甲のキャバリアを操縦している 】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    ディストラクション・フェーズ
自身が操縦する【キャバリア 】の【装備を拠点攻撃用重爆撃装備に換装し、火力】と【攻撃範囲】を増強する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 各々アプローチは様々であるが、キャバデコを楽しみ、そして祭典を盛り上げた猟兵たち。
 祭典は順調に進み、いよいよ両国首脳陣が壇上に並び、両首脳が同時に合図を出すことで、一斉にキャバリアが破棄されようという、まさにそのタイミングで、キャバリアたちが一斉に動き出す。
 動き出した機体の大半は、GC-04“カルキノス”という機体だった。少し頑丈なくらいで、その他は並程度の量産型キャバリアとしての水準しか持たない性能のこの機体はしかし、シンプルな操縦系とそれによる丈夫さ、メンテナンスの高さから戦場を選ばず、その一点を以てクロムキャバリアに広く傑作機として知られる機体である。
 雪に悩まされるこの両国においてもその性能は健在であり、全盛期には両国で数えきれないほどのカルキノスが配備され、そして消えていった。
 廃棄直前かつ暴走状態にあってなお、その安定性は健在。雪の街中というこの戦場を猟兵たちがどう活用するかで、戦況は大きく傾くだろう。

●備考
 戦術の通り、本章では、「第一章でデコレーションしたキャバリアを用いて戦う」「地形を活かして戦う」などの行為に強くプレイングボーナスが入ります。
 また、両国首脳陣や、式典に参加していた一般市民などは、猟兵が特に助力しなくとも順調に非難をしているものとして扱いますが、そういった人々を救助する、または逆に力を借りるなどの行動を取りたい場合は、行っていただいて構いません。
 なお、本章の敵は無人機です。
月白・雪音
…始まりましたか。ここからが我々の領分ですね。
今日この日の祭典は、双方の国が歩むべき大きな一歩。
それを崩すも理由は在りましょうが、阻ませて頂きます。


キャバリアは使用せず生身にて
事前に街の技師より敵機の心臓部の位置を確認しUC発動
残像、ジャンプ、悪路走破にて立ち並ぶ建物を渡り立体的な挙動で
怪力、グラップルを用いた格闘戦にて戦闘展開

見切り、野生の勘にて攻撃の初動を抑え武装を優先して破壊、
事前に聞いた心臓部を部位破壊にて打ち抜き街の破壊を出来る限り防ぐ


積もる雪に身を潜めればサーモカメラを欺く事も出来ましょうか。
敵は耐久力に劣る個体の殲滅に優れる様子。
…なれば、其れを上回る速度と精度を以て望むまで。



 鈍い稼働音を立てて動き始める“カルキノス”の群れ。猟兵たちもそれに呼応するように即座に動き始めるが、予知を乱さぬよう、そして式典を邪魔しないようオブリビオンのアクションを待たなければならなかった以上、猟兵の駆るキャバリアが動き出すには一瞬の間を必要とした。
「……始まりましたか。ここからが我々の領分ですね。今日この日の祭典は、双方の国が歩むべき大きな一歩」
 ならば、この戦場において先駆けるのは誰か。そう、戦闘兵器たるキャバリアを相手に、生身で戦おうとする酔狂者たちに他ならない。
「それを崩すも理由は在りましょうが、阻ませて頂きます。――我が拳にて、お相手致しましょう」
 月白・雪音の言葉が静かに戦場に響くのと、貫手一閃、胴体の動力機関を貫かれたカルキノスの一機がその場に崩れ落ちるのは、全く同じタイミングの事であった。

 当然、僚機を失ったカルキノスは陣形の中に飛び込んできた雪音を倒さんと包囲を行うが、そのような攻撃をむざむざと喰らう武人ではなかった。己を束縛せんと伸ばされる拳に向かって跳びあがり、差し出された手を橋とするように駆けあがり、敵機の頭部に回し蹴りを放つ。
「……やはり、先程のように心臓部に直撃させなければ有効打は与えられませんね」
 手応えを確かめるように数度その場で跳ねる雪音。流石に頑丈さが売りの機体だけあって、旧型と云えど、格闘の達人たる彼女からの一撃でも一度や二度では身じろぎさえしない頑丈さであった。
「ですが、それならばそれで戦いようはあるというものです」
 攻撃直後の隙を突く様に殺到する弾丸を、大きく跳躍して回避した雪音。そのまま、祭りのために用意されていたアーケードに飛び乗ると、不安定な足場を軽やかに踏みしめてカルキノスの元へと飛び移り、標的を見失った銃に掌底を入れてひしゃげさせた。

 先んじて武器破壊を行い、着実に敵機を狩る白虎の戦術に翻弄されるキャバリアたちであったが、敵もさるもの。どこか有機的な印象すら受ける一糸乱れぬチームワークで陣形を変えると、雪音と後続の猟兵たちの連携を断つかのように鉄の壁を作り出す。
(なるほど……。鈍重さは連携で補い、耐久力に劣る個体を殲滅する。理にかなっています)
 だが、優位な陣形を生み出したはずのカルキノスは、戸惑ったようにカメラアイの搭載された頭部をきょろきょろと見回し始めた。この鋼鉄の群れの中で赤々と輝いていた熱源、即ち雪音の姿がいつの間にか消えていたのである。
 戸惑った様子のカルキノスたちは、しかし、慌てることなく密な連携を取りながら周囲の捜索を行う。
 その連携が崩されたのは、突如、機関部を弾けさせるようにして崩れ落ちるカルキノスが現れた時であった。
「其方が装甲と連携を武器とするならば、其れを上回る速度と精度を以て望むまで」
 隠れ潜んでいた積雪の中で絡みついた粉雪を髪から舞散らせながら、敵機の中を軽やかに駆ける拳士がそこにいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花陽浴・來流
参列者狙う 不埒で陰険な手口
判決待つまでもないアウトなやり口
冠雪をものともしない可用性 カルキノス
貫徹する 徹甲弾(APC) 斬鉄する 刀剣(シャムシール)
Don't need 休戦だからね兵器は不要
代わりに贈るよ このANTHEM(アンセム)! 
正々堂々 来るならまだしも
声明もない無法は無用 Hey! Say! 稼働は強制終了!


デコったキャバリアのスピーカーをアンプ代わりにバトるっすよ!
と、いっても
休戦だ軍縮だ言いながら、“わかりやすい武力”はイマイチっすよね
まーでも、相手はただの無人機じゃなく、オブリビオンマシン
つまり“言葉”が“通じる”ってコトっすよ
(精神攻撃みたいなニュアンスっすね!)



「よくもまあこんだけ集まったもんっすね」
 己のデコレーションしたキャバリアの肩に立ちながら、戦場を眺めて感心したように目を細める花陽浴・來流。この場で敵に回った戦力の大きさは、即ちこれまでの泥沼の戦いの中で聖連と商協が蓄えてきた戦力の現れである。辺境の小国と言っていい両国がこれだけの戦力を集めていたというのは、両国の間の溝の深さを感じさせた。
「仕方ない、ここはボクの出番っすね」
 そう言って彼女は、アンサーヒューマンとしての強化頭脳を用いてキャバリア戦に挑む―ーわけではない。
 來流が指を鳴らすと、キャバリアのスピーカーから低い音の、しかしそれでいてどこか陽気な音楽が流れ始める。
「参列者狙う   不埒で陰険な手口
 判決待つまでもないアウトなやり口」
 続いてビートに乗せるように、來流の刻むライムがスピーカーから戦場へと拡散されていく。愛用のマイクからケーブルをキャバリアに繋げば、即席のアンプのできあがりである。
「冠雪をものともしない 可用性 カルキノス
      APC      シャムシール
 貫徹する 徹甲弾 斬鉄する 刀剣」
 冠雪した戦場において、パンクスタイルにデコレートされ、大音量でラップを流し出すキャバリアはいい的である。だが、最低限の回避運動のみをオートパイロットで行わせたキャバリアの上で、振動を巧みに受け流しながら來流は歌い続ける。
「Don't need 休戦だからね兵器は不要
 代わりに贈るよ このANTHEM!」
 そう。今日は平和の第一歩となる祭典の日。そんな日に、武器を捨て手を取り合うことを歌う自分がキャバリアに乗って銃を撃つのはダサすぎる。ラッパーとしての意地を以て、來流は最前線で言葉を紡いでいた。
「正々堂々 来るならまだしも
 声明もない無法は無用
 Hey! Say! 稼働は強制終了!」
 心を持たぬ無人機相手に無謀かと思える挑戦はしかし、実を結ぶ。
 曲が佳境を迎えた頃、弾丸の雨がそれに応じるように、次第に和らいでいったのである。
                       ギャラリー
「やっとボクの歌に興味が出てきたみたいっすね、観客? いいっすよ、どーぞお聞き逃しなく!」
 いま彼女が対峙しているのは、通常の無人キャバリアではない。オブリビオンマシンである。それは本来ならば、キャバリアパイロットや猟兵たちにとって、手強い戦力となることを意味している。
 だが、彼女にとっては。刻む韻律こそを武器とする彼女にとっては、プログラムのままに動く無人機よりも、世界を壊滅させようという憎悪のままに動くオブリビオンマシンの方が都合がいい。何故なら、憎悪を持つということは、即ち感情を持つということ。
「感情を持ってるんなら――そこに言葉を届けるのが、ボクの戦いっすよ!」
 カメラアイに憎悪を湛えていたカルキノスたちは、來流を取り囲むように動きを止める。そして、一機、また一機と、編隊の一部が、戦意を喪失したように膝をついていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティアー・ロード
【チーム聖悪十字陵】
現れたな、オブリビオン!
デコレーションしたこの合体聖人ダイサンターで裁いてあげよう!
「無骨なデザインだ
趣はあるが、聖夜には相応しくないね」

【使用UC:刻印「悪人正機」】
「ご退場願おうか、BIG・サンター・ショータイム!」
忘れたわけではあるまい
この合体聖人ダイサンターは無数のキャバリアの集合体!
つまり合体元の火器は全てこのダイサンターの武装となるのだ!
全開放してオブリビオンを蹂躙するよ

「アーッハッハッハ!」
……周りへの被害?ははは、何勘違いしてるんだい?
クリスマス仕様の火器なんだ、全部花火さ!

【死兆星】
「ハ?」
潔く爆発四散
「ふふ……
いい子の諸君は、真似しちゃダメだよ
きゅー」


リチャード・チェイス
【チーム聖悪十字陵】
   
   
   

ポチッっとな /
 ̄ ̄ ̄V ̄ ̄
( V⊿)σ【自爆】
   
   
   


詩蒲・リクロウ
【チーム聖悪十字陵】
リクロウが今どこに居るか。気になっている方がいるんじゃあ無いでしょうか?
正解は上空をダイサンター頭部とノーパラダイビング中です。なぜこんな事になってるかって?

それはこっちが聞きたいですよ!というか、もうすぐ地面なんですけど!誰かー!大人の男の人呼んでーっ!

うおぉ、このまま大人しく散ってやるものですか、死なばもろとも!覚悟しろダイサンター!!
(流星リクロウ(ステラ)がダイサンターを貫いて大爆発を巻き起こし、周囲のオブリビオン共々悪巧みを成敗する)


曾場八野・熊五郎
【チーム聖悪十字陵】
あ!やせいのキャバリアがとびだしてきた!
さあ行くでごわすダイサンター!志半ばに散っていったトリニクの仇を取るでごわす!!

悪を滅ぼすにはド派手な狼煙が必要でごわす。
そして巨大ロボにはかっこいい主題歌が付き物。それではお聞きください、作詞作曲我輩で「合体聖人ダイサンター」
(クッソ喧しい犬の鳴き声をBGMにダイサンターが暴れまわる)

ゴワハハハ!怯えろ!竦め!キャバリアとしての性能を活かせないまま砕け散るが良いでごわす!

ごわ?大きな星がついたり消えたりしている……ツリーの天辺の星でごわすか?
いや違うでごわすな。ツリーの星はもっと、バァーって光るでゴワァァァアアアアア!?(爆散)



 さて、カルキノスたちの繰り広げる銃火の煌めきや、それに混ざって猟兵たちの繰り出す打撃音や戦闘音が戦場に広がる中で、悠然と動き出す巨大な影があった。
「やれやれ、武骨なデザインだ。趣はあるが、聖夜には相応しくないね」
 そんな風に呟くティアー・ロードの居場所は、今まさに動き出した巨大なモニュメントの中。
 赤と緑のクリスマスカラーで彩られ、電飾が巻き付けられたその姿は、まさしく巨大クリスマスツリー、もとい巨大サンタクロースが如し。そう、キャバデコの名目で集めたキャバリアたちを合体させて組み上げられた巨大ロボット、誰が呼んだか合体聖人ダイサンターである。
「現れたな、オブリビオン! デコレーションしたこの合体聖人ダイサンターで裁いてあげよう!」
「さあ行くでごわすダイサンター! 志半ばに散っていったトリニクの仇を取るでごわす!!」
 リクロウが聞いていれば、敵に責任を押し付けるなと猛抗議をしそうなところであったが、彼はここにはいない。死人に口なしである。正確に言えば別に彼は死んではいないが。

 ダイサンターが動き出したことによって、初めてこれが戦場のモニュメントではなく巨大ロボットだということに気づいたのか、カルキノスたちが一糸乱れぬ戦列を組み機銃を掃射。
 数十体のキャバリアが合体したダイサンターの巨体にとってみれば一発一発の弾丸を受けたとて大きな痛痒はないが、一ヵ所ずつの装甲は合体元となったキャバリア相応のもの。
「やれやれ、乗り手を持たない状態でもここまでの連携精度。感服する気持ちがないとは言わないが、だからこそ哀れだな」
 相手を賞賛すればこそ、ここで暴走を止めてやるのが情けというものだろう。
「作り手、乗り手、君たちに関わった者たちのためにも、ここでご退場願おうか。BIG・サンター・ショータイム!」
「BGM、スタートでごわ!」
 ティアーの掛け声とともに、ダイサンターの巨体が動き始める。無理な合体で組み上げられた体ゆえに激しい動きができないのか、動きこそ鈍重であるが、掌、肘、足の甲、至る所から砲門を開く。
 そう、この合体聖人ダイサンターは無数のキャバリアの集合体。即ち、合体元となったキャバリアたちの火力が全て、塔されているということである。

 ――♪ ワァン ワワンワワン ワンワンワン

 ダイサンターコックピット内部で、ティアーが飾り紐を奮う度に、念動力によってダイサンター各部に指令が届き、戦闘駆動が行われる。
 カルキノスたちの銃火を浴びながらも、砲門から敵の火力を上回る一斉射撃が放たれる。

 ――♪ ワァンワァンワオーン!

 先程からダイサンターの戦いに合わせて響き渡るのは、ダイサンターのスピーカーによって拡散されたクマゴロウの鳴き声である。これが往年のロボットアニメのテーマソングか何かであれば画にもなろうというものなのだが、残念ながら何やら不良警官が追いかけっこをしてる時にでも流れて来そうな素っ頓狂なBGMとあってはそうも言い難い。しかもそれを構成しているのがけたたましい犬の鳴き声とあれば猶更である。
 ともあれ、そんな鳴き声響く中で、眩い砲火が雪原に煌めいた。


「あはは……どこなんでしょうねえ、ここ。冷えますし、風が体を打ち付けて痛いですし」
 現実逃避するように呟くリクロウが今どこにいるのかといえば、先程合体の衝撃で射出されたダイサンターのヘッドパーツと共に、絶賛空中遊泳中であった。当然、命綱もパラシュートもない。
 然るに、射出の勢いは次第に重力に負けて、今は重力加速度の赴くままに高速で落下中である。
「なぜこんな事になってるかって? そんなのこっちが聞きたいですよ! というか、もうすぐ地面なんですけど! 誰かー! 大人の男の人呼んでーっ!」
 次第に地面が近づいてきたことに顔を引きつらせ、ヤケクソのように叫んだリクロウの視界に眩い煌めきと、一瞬遅れてやかましい鳴き声が聞こえてくる。
「はっ……この声は! うおぉ、このまま大人しく散ってやるものですか、死なばもろとも! 覚悟しろダイサンター!!」
 シュクテキ
 仲間たちの居所が判明したことで反骨心に火が付いたリクロウは、火事場の馬鹿力とでも言うべき勢いで大地を蹴り、再び空中へ舞い上がった。その勢い、天を裂き地に国境を刻むほどの流星の如し! 狙うは一途、ダイサンター!


 そこからの出来事は、目まぐるしい展開であった。

「アーッハッハッハ! アーッハッハッハッハッハ!」
「ゴワハハハ! 怯えろ! 竦め! キャバリアとしての性能を活かせないまま砕け散るが良いでごわす!」
 いっそ悪役めいた笑い声を響き渡らせるティアーとクマゴロウ。だが、ダイサンターによる戦闘音とはまた別種の轟音が近づいてきていることに彼らは気が付いた。

 ステラァーーーッ!!
「流星リクロウ!」
「アーッハ……ハ?」
「ごわ? 大きな星がついたり消えたりしている……ツリーの天辺の星でごわすか? いや違うでごわすな。ツリーの星はもっと、バァーって光るでゴワァァァアアアアア!?」
 摩擦熱で鋭利な形に磨き上げられたヘッドパーツを矢尻の如く構えたリクロウがダイサンターに着弾。

「……うむ。今こそ出番であるな」
 ここにきて、ダイサンターの蹂躙中もコクピット内で虚ろな眼でじっと虚空を見つめていたリチャードが動き出す。

ポチッっとな /
 ̄ ̄ ̄V ̄ ̄
( V⊿)σ【自爆】

 リクロウ着弾の衝撃と、いつの間に搭載されていたのやら、謎の自爆スイッチが押されたことによって、ダイサンター内部に大量に搭載された花火が一斉に起爆され。
 特大の花火が、雪原に煌めくのであった。


「ふふ……。いい子の諸君は、真似しちゃダメだよ。きゅー」
 崩れ落ちるダイサンターの残骸。その上に、ぼす、ごと、と鈍い音を立ててボロボロになったティアーと熊五郎、リクロウが着地。
「――うむ、いい花火であった」
 遅れること数秒後。ひゅるるるる、ぽすっ。と緩やかな落下音を立てて、自爆の際にダイサンターコックピットから射出された“飛び出せ!エド・ゲイン君”と通称されるサイドカーに座ったリチャードが、ゆったりと着地するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 斯くして猟兵たちの活躍により群れを成して攻め込んだカルキノスは退けられ、雪原には鉄騎の山が築かれた。
 周囲を警戒する猟兵たちの頭上から、光が差し込む。
「――嗚呼、同胞たちよ。安らかに眠りなさい」
 残光を纏いながら戦場に舞い降りたその機体は、天使の似姿として作られたキャバリアがオブリビオンマシン化したもの。
 聖連において、ごく一握りのエースにのみ与えられていた機体である。
「和平。今更和平だなんて虫のいい話だと思いませんか? この国の雪原の下は、血と鉄錆で真っ黒に覆われているというのに」
 オブリビオンマシン――セラフィム・リッパーのパイロットは、猟兵たちに語りかける。それはどこか、優しさすらも感じさせるような、戦場には似つかわしくない穏やかな口調であった。
「敵も、味方も、数えきれないほどの人を殺させて。和平なんてできるなら……最初からやっておけばよかったじゃあないですか?」
 猟兵たちの元に聖連の管制官から秘匿通信が入る。敵機のパイロットは恐らく“シスター”というコードネームで呼ばれた聖連の特殊部隊のパイロット。
 戦争を長引かせたい派閥の指令の元、長年後ろ暗い任務に従事させられ――先日、姿を消した。
「だから私は、こんな和平なんて認めません。綺麗事を言う者たちを粛正し、永遠の戦争を。こんな2つの国が、滅びてしまうその日まで」
 光を帯びた剣を高々と構え、両国首脳陣の避難していった方角に向ける。
「それを邪魔すると言うならば……あなた達にも、神の審判を下しましょう」
牙・虎鉄
◆アニエス(f31989)と

穏当な口振りの割には随分と不穏な文句を吐く輩だな。

――征くぞアニエス、最後の正念場だ。

大振りな刀だ――だがその大きさ、人間大の相手を切るのは易しくあるまい。
敢えてシャンユエの機体は使わず五体のみで吶喊、狙い辛さを逆手に取り敵の斬撃軌道を見切り、刀から敵機体の中枢を駆け伝い――

腕にのみシャンユエの機甲を纏ったのち、機体のこめかみに向け乾坤一擲、破山一閃――
此ぞ我が【毀鋼拳】也。

――生憎と神への信仰心は持ち合わせていない。
俺が信じているものは
己が鍛えた拳のみだ。

――所で
俺にばかりかまけてていいのか?
お前を裂く刃がくるぞ。

――うむ、上手く回収してくれて助かる、アニエス。


アニエス・アルカンシェル
◆虎鉄くん(f31118)と

最初からやっておけばよかった、ですか。
犠牲を許容できない……という気持ちには理解を示しますが。
狂わされているとはいえ、パイロットにもどこかでそのような想いはあったのでしょう。
きっと清廉すぎたのでしょうね、あのパイロットは。
──ええ、行きましょう。

……キャバリア戦で五体を晒すなんて正気の沙汰ではありませんね。
まあ、噂通りですが。
こちらはビットの射撃で蜘蛛の巣が如く網を張りましょう。
その剣、射撃の網の中で彼へ向けて正確に振るえますか?
振るえなければ、これで終いです。
背後に回り込むようにしつつ、胴を光刃で貫きます。
爆発でもするのであれば、彼は手に乗せて回収しましょうか。



「最初からやっておけばよかった……ですか」
 カルキノスとの戦いを切り抜け、戦場に降り立った首謀者の独白めいた言葉を聞いて、アニエスは愛機のコクピット内で小さく吐息する。
「狂わされているとはいえ、パイロットにもどこかでそのような想いはあったのでしょう」
 アニエス自身、一国を負って立つ将というにはまだまだ青い所があるのを自覚している。これまでに築かれてきた犠牲を許容できないという気持ちは、理解できなくもない。
 だがそれでも、自分はこの敵機のパイロットのように思いきることはできなかっただろう、と、そうも思う。
「きっと清廉すぎたのでしょうね、あのパイロットは」
 アニエスが彼女のように割り切れないのは、アニエス自身が思うように、世界そのものが血に塗れたこの鉄の世界の住人として、彼女の心が荒んでいるからでもあるだろう。
 だがそれは、かつての犠牲に報いるために、これから生まれる犠牲を見過ごすとはできないという、眼前の敵とも異なる、彼女なりの真っ直ぐさの表れでもあるのだ。

「穏当な口振りの割には随分と不穏な文句を吐く輩だな」
 一方で、虎鉄にとっては眼前の敵の事情を聞いたからといって、アニエスのような感傷はなかった。別に、彼にアニエスのような情動がないというわけではない。
 だが、戦場においての彼は、武の頂を目指す一人の侠だということが先に立つだけである。
「――征くぞアニエス、最後の正念場だ」
「──ええ、行きましょう」
 友が確と頷くと、武人は天使の前へと躍り出た。

「多少の変質はあれど、その刀。幾度となく見て来たぞ」
 セラフィム・リッパーが握るのは、その破壊力や取り回しの良さから、名を変えデザインを変えつつも、この鉄の世界で白兵武装の代表格として広く知られる大太刀。いわゆる“無敵斬艦刀”と呼ばれるタイプのものだ。
 然らば、この世界で幾度となくキャバリア戦に身を置いてきた虎鉄にとっては、その特性はあまりにもよく知るところだ。
「なっ……単身で!?」
 カルキノスとの戦いにおいては呼び出していた魔神機の姿は掻き消え、よく鍛えられているとはいえど、鉄騎に比べればあまりにも脆弱な肉の身一つで、武人は吶喊する。
「確かに名刀。――だがその大きさ、人間大の相手を切るのは易くあるまい」
 身一つで駆け寄ってくる武人への戸惑いも束の間、即座に狙いを絞って刀を振り下ろしたのは敵もさるもの。
 だがしかし、斬艦刀は人を斬るためにはできていないのだ。その狙いはどうしても大振りにならざるを得ず、それだけのブレがあれば、熟達した武人にとっては十分すぎる隙となる。
 天使が振り下ろした断罪の剣は、水面に映った朧月を斬ろうとしたかのように空を切った。
「ッ!!」
「朧月の歩法――獣の俊脚――」
 獣の如き野性の見切りと巧みな足捌きで敵の斬撃軌道を躱した虎鉄は、そのまま刀を伝うようにして敵機の体を駆け上がっていく。
「剛柔織り成し、繰り出すは剛」
 敵の肩まで駆け上がったかと思うと、そのまま大きく跳びあがった。限界まで引き絞られた左腕に、先程姿を消した黒虎の装甲が纏われていく。
「乾坤一擲、破山一閃――此ぞ我が【毀鋼拳】也」
 虎の咆哮の如き風切り音を立てて放たれた機甲の拳が、正確に敵機のこめかみを討ち貫く。鉄が歪む嫌な音を立てて、天使の装甲に罅が入る。
 まさに頭部にクリーンヒットを受けた人間の如く、天使はその場でたたらを踏んだ。

「争いを糧に……ただ己の求道しか考えない者たち! あなた達のような人がいるから、神の救済は――!」
「――生憎と神への信仰心は持ち合わせていない」
 よろめく機体を立て直し、虎鉄に向かって悲痛ささえ感じさせる声で叫ぶ声に、しかし静かに首を振る。
「俺が信じているものは、己が鍛えた拳のみだ」
 振るわれた刀に飛び乗るようにして回避した虎鉄が、珍しく、口元だけで少し冗談めかした笑みを浮かべる。
「――所で。俺にばかりかまけてていいのか?」
 その言葉を合図とするかのように、天使の光翼に負けぬほどの、美しき虹の光牢が、天使の周りを包み込んだ。
「お前を裂く、刃が来るぞ」

「敵もビット兵器を備えている。あなたのお陰で網の展開が間に合いましたね」
 当然、虹の操り主は虹を冠する機体の繰り手、アニエスである。虎鉄が敵の気を引き付けている間に、アルカンシェルに搭載されたビット兵器を展開し、レーザーの陣を作り上げたのだ。
 その様は、虹を編み上げて作った蜘蛛の巣が如く。囚われた天使は羽ばたくこともできない。
「これで、終いです」
 カウンターもできない無防備な胴に、光の刃が振るわれる。
「くぅ……!」
 なんとか、腕がレーザーで焼け焦げるのも構わずに、斬艦刀を盾のようにして光刃の軌道に差し込むセラフィム・リッパーであったが、渾身の軌道で振るわれた一閃と、苦肉の策で構えられた盾と、どちらが勝るかは言うまでもない。
 鉄が焼き切られる異臭とともに、斬艦刀は両断された。

「なんということ……!」
 斬艦刀の最後の攻撃と言わんばかりに、手元に残った斬艦刀の破片を握り潰して轢弾としばら撒くセラフィム・リッパー。だが、アニエスは至極冷静に、ビットを盾にしながら後退した。勿論、虎鉄をその手で拾い上げるように回収するのも忘れない。
「致命傷こそ与えられませんでしたが、十分な戦果でしょうか」
「――うむ、上手く回収してくれて助かる、アニエス」
 高出力のビーム兵器を大量展開したアルカンシェルはエネルギー不足。虎鉄もまた敵の攻撃こそ直撃していないものの、自分よりはるかに巨大な敵と戦う風圧・重圧は彼の体力を容易に削る。
 敵の最大の武器を破壊せしめた二人は、自分たちが反撃を喰らわぬうちに、最前線から後退した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花陽浴・來流
殺めた命は還らない、流れた血は戻らない
鋼が散る戦いを“なかったこと”は堪えがたい?
オーライ 空回りする固い決意ならしょうがない
お相手しましょ お祭りついでに
戦(いくさ)の火種、煙のうちに消させてもらうよ!
けど、ねぇ、“お友達(Sister)” ここでひとつ 問いかけ(クエリー)
いつか死ぬまで 殺し合うがきみの教理?
戦禍の旗手には Hasta La Vista!




ガチの有人機が相手だと、ちょっとマジでやらなきゃっすね
UCで「自分を含む、殺し合いに非協力的な人たち」をバフってビームをしのぐっすよ
彼我の頭数が違うっすから、大技を一発捌けば、それだけでトータルで有利になるはず!
(あと、積極的に攻撃すると、たぶんシスターさんのテンションを上げちゃいそうな気がする……ってのもあるっすね)

本人が本心で戦争したがってるなら別っすけど、捕まえられたら、いっそ停戦の象徴にできないっすかね~
っていうか、処刑とかしたら、聖連側で他にもけっこうな人数をヤらなきゃじゃないっすか? それは停戦のバランスを崩しそうっすよ


月白・雪音
…そうですね。
過去は取り返せぬもの。間違いが在ったとするならば、それは最初であったのでしょう。
戦に生きる貴女がたには、此度の和平が空虚に映るも道理です。

されど、和平とは単に平和を甘受するのみにあらず。
戦を止めるという事は、その責任を負うという事です。
殺した者、壊したモノ。それら全ての業を、生きて末期まで背負うが和平。
或いは、死より重い覚悟を有すべき選択です。


UC発動、残像にて即座に接敵し、見切り、野生の勘で敵の攻撃を感知しつつビットの攻撃に本体が巻き込まれかねない距離を保つ
グラップル、怪力で敵機の稼動機関を狙って破壊し
相手が飛翔するなら怪力、踏み付け、ジャンプ、残像による蹴り足にて跳躍、
部位破壊で飛行機構を破壊
パイロットが脱出すれば野生の勘にて即座に感知、アイテム『氷柱芯』を飛ばし殺すことなく捕縛する


…和平の辿る道。それには見届ける者が必要です。
それを正しく評価出来る、戦の現実を知る裁定者が。
綺麗事と云うのであれば言葉を変えましょう。

――私は『貴女の有用性』の為に、その命を拾うのです。



「何故邪魔をするのです! 見てきたのでしょう、あなた達は! この世界の愚かさを!」
 猟兵たちが世界を渡る戦士たちだと知ってか知らずか、戦乱に明け暮れる世界の悲惨さを訴えかけるように悲鳴を上げる“シスター”。その乗騎は大剣こそ失えど未だ健在。自身の周囲にビット兵器を展開し、光の翼を広げて戦場を睥睨する。先ほどのように再び至近距離に攻め込ませはせぬというように。
「……そうですね。過去は取り返せぬもの。間違いが在ったとするならば、それは最初であったのでしょう」
 黒虎の武人が痛打を加えたその後に、立ちはだかったのは白虎の武人。感情乏しく見られることもある雪音だが、その瞳には、確かに複雑な情念の入り混じった色が揺蕩っている。
「戦に生きる貴女がたには、此度の和平が空虚に映るも道理です」
 尽きぬ闘争本能をその身に抱えながら生きている雪音だからこそ、望まずして戦に身を置き続けてきた“シスター”の感じている虚しさの一端を感じ取ることができた。
「ええ、そうでしょう! このような我が身可愛さの休戦が、これまで積み上げられてきた屍に適うはずがない!」
 悲痛な叫びとともに、ビット兵器が縦横無尽に雪音に襲い掛かる。だが、その攻撃が雪音を傷つけることはない。
「されど、和平とは単に平和を甘受するのみにあらず。戦を止めるという事は、その責任を負うという事です」
 彼女の内側に蓄えられた獣の本能は、周囲に奔る殺気を敏感に察知する。そして、ビット兵器による攻撃網も、次の攻撃がどこから来るのかさえ察することができるのならば、彼女の極限までに練り上げられた武術をもってすれば、全ての攻撃を躱し続ける道を見つけることも不可能ではなかった。
「殺した者、壊したモノ。それら全ての業を、生きて末期まで背負うが和平。或いは、死より重い覚悟を有すべき選択です」
「そのような覚悟! あんな奴らにあるものですか!」
 ビット兵器の包囲網に対しては活路を見つけた雪音であったが、もう一歩、網を抜け出して一撃を浴びせようとすると、光の翼が広がり、近づく者を拒むようにプラズマの壁を産む。
(手薄な箇所を突いて抜け、闇雲に攻撃を浴びせるだけならば容易い……けれど)
 彼女の狙いを果たすには、後一歩が足りない。

「ヤーマン、それならするよ助太刀
 アーメン、どうぞ任せてお役立ち」
 軽やかな声で刻まれるライムが雪音に浴びせられたのは、そんな時の事だった。
「なんてね。多分、キミが一番狙いは近そうだと思ったんで、協力させてもらうっすよ」
 ビット兵器の攻撃を凌ぎながらちらりと視線をやれば、そこにいたのは、マイクを片手に、デコレーションされたキャバリアの陰で巧みにセラフィム・リッパーからの流れ弾を避ける來流の姿であった。
「ビームのバリアを抜けるところまでは手伝えます。後は任せていいっすよね?」
「……いいでしょう、わかりました。仕掛け時はいつでも」
 手短な言葉ではあったが、拳と歌、方向性は大きく違えどともに武器を持たずに戦場に立つ者同士、何やら通じるところがあったのか、雪音は静かに頷いた。
「Hey,Sis! そんなに戦いが厭なら、届けてあげるっすよ! これがボクのゴスペルっす!」
 雪音の反応を見るなり、來流は勢いよくキャバリアの上に飛び上がる。勿論、その手に持つのはマイクひとつ。彼女にとっては、これこそが“正解”だ。
「殺めた命は還らない、  流れた血は戻らない
 鋼が散る戦いを“なかったこと”は堪えがたい?
 オーライ 空回りする固い決意ならしょうがない」
 來流の刻む韻律が、戦場に高らかに響き渡る。雪音にとってはあまり聞き慣れぬものだが、それでもどこか気分が高揚し、力が湧いてくるような心持であった。それは純粋に來流のスキルの高さによるものでもあるし、刻む歌と、そこに込められた意志に共感する者たちに力を与える、ユーベルコードとしての力でもある。
「そんな歌が聖歌だなどと……!」
「お相手しましょ     お祭りついでに
 戦の火種    煙のうちに消させてもらうよ!
        Sister         クエリー
 けど、ねぇ、“お友達” ここでひとつ 問いかけ
 いつか死ぬまで 殺し合うがきみの教理?」
 來流の歌を警戒したように、それまでの防御的使い方から一転、大きく翼を広げ、プラズマビームを収束させるセラフィム・リッパー。だが、それを見た來流が、どん、と一度だけ大きく足を鳴らすと、コンマ秒を切る神速の反射で、雪音が弾丸のように飛び出した。
「邪魔をするのであれば……なッ!」
「――押し通ります」
 収束したビームを発射する一瞬の隙を突くような突進で、翼を大きく揺さぶると、ビームは霧散した。
 そして、至近距離まで持ち込んだならば、そこは雪音の間合いである。張り付くように敵機と密着することで、ビット兵器を無茶に使えば自滅しかねないと敵を牽制。
 俊足にて敵機の背面に回り込むと、鋭い拳打でアンダーフレームを貫いた。
「まだです! まだ、私にはこの熾天の翼がある!」
 人間でいえば“膝かっくん”の要領でバランスを崩された熾天使は、翼を大きく広げて姿勢の安定化を図るが――。
「いいえ。これで、終わりです」
 不殺での無力化を図っていた雪音にとって、両脚と飛行機能を破壊し稼働を封じることは最優先目標。脚部を破壊した直後、豪脚にて大地を蹴りつけて大きく跳び上がっていたのだ。
「戦禍の旗手には Hasta La Vista!」
 〆のフレーズが勝利のファンファーレのように響き渡る中、堕ちた天使はその場に鈍く崩れ落ちるのであった。


 オブリビオンマシンの破壊は成功。依頼そのものはこの時点で達成と言っていい……が、それで終わるのをよしとしないからこそ、二人は力を合わせたのだ。
「……私の負けです。さあ、どうぞ早く殺しなさい。血まみれの和平がこの国には相応しい、そういうことなのでしょう」
 雪音のワイヤーアンカーによって捕縛された“シスター”は、諦念を色濃く滲ませた顔で投げやりに呟く。
 捕まえてみれば、まだあどけなさすら抜けきっていない、年若い女性兵士である。そんな彼女がこれだけ擦り切れてしまうというのだから、この二国の”小さな戦争”の悍ましさも伝わろうというものであった。
「それなんすけどね? キミにはいっそ、停戦の象徴になってもらえないっすかね~、なんて」
「……は?」
 たはは、と頬を掻く様にして告げる來流の言葉に、“シスター”は一瞬呆気にとられたのち、眉を吊り上げた。
「馬鹿にしているのですか……あなたは!」
「バカになんてしてないっすよ。これは、キミが首謀者として処刑されちゃあ、折角極力対等な条件で和平を結ぼうとした両国間のパワーバランスが崩れる羽目になる。そういうドライな話っす。……勿論、キミに死んでほしくないって言う感情的な部分もあるっすけどね?」
 アンサーヒューマンらしい淡々とした説明で出鼻を挫いた後に少しの茶目っ気を見せる姿に、“シスター”は言葉を奪われる。
「……和平の辿る道。それには見届ける者が必要です。それを正しく評価出来る、戦の現実を知る裁定者が。……綺麗事と云うのであれば言葉を変えましょう」
 沈黙した彼女の瞳を、雪音の赤い瞳じっと覗き込み、静かに言葉を紡ぐ。
「――私は『貴女の有用性』の為に、その命を拾うのです」
 結局、その言葉が決め手となって、彼女は観念したように、小さく頷いたのであった。


 さて、こうして猟兵たちの活躍によって辛くも窮地を救われた二つの国であったが、これにて万事解決万々歳、となるわけもなく、以前の軋轢、人種問題、行き過ぎた融和……これから先も、様々なトラブルに見舞われることになるのだが。
 しかし、両国はゆっくりゆっくりと時間をかけて、ついには一つの国となるのであった。
 その渦中には、聖母と謳われたとある人物がいたというが―ー。

 それは全て、未来の話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月02日


挿絵イラスト