●森深き泉
水はどこまでも透き通り、木々に覆われて日陰になっているこの場所は涼い。風も爽やかだ。
この森の木々は赤い。鮮やかな赤い色が風を浴びて、柔らかく揺れていた。
泉の中ではエルフの娘が水と戯れていた。一糸纏わぬ姿で、木漏れ日を肌に照り返し、瞳を閉じて水の冷たさを楽しんでいる。
彼女が動く度に、水面は美しい波紋を描いていく。時折跳ねる水しぶきも透き通り、ガラス細工のようだった。
透き通るような白い肌と長い金色の髪のその姿は、太古の昔からこの風景の一部であったかのように溶け込んでいた。
ふいに、茂みでガサリと大きな音がした。
突然の音に娘は驚いて、体を拭くための布を取りに向かう。
「誰かいるの?!」
気丈にも声をかけた。
布で体を覆い、身構える。
またガサリと音がした。今度は先程より大きく、長い。
やがて茂みから、何か大きなものが姿を現した。
それは、馬ほどの体躯で、ドラゴンの姿をしていた。
「──キャアアアアアアアアアアア!!!」
思わず悲鳴をあげた。
里で誰かがドラゴンを飼っているなどという話は聞かない。異常事態だ。
すぐさま誰かに知らせなければならなかった。
「どうしたんだラルウィン!」
「何があった!?」
「うわっ! なんだこいつは?!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア?!」
茂みの別の場所からエルフの男が三人出てきた。
「そこで何をしてたんですか!」
「そんなことより!」
「こいつはドラゴンじゃないのか!?」
「はやく皆に知らせないと!」
「ごまかさないでください!!!」
男達は慌ててこの場から逃げ去っていく。ラルウィンと呼ばれた娘も着替える暇もなく布だけを体に巻いて、彼らを追いかけるように続いた。
「どこへ行っていたのだラルウィン!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??」
彫りの深い、気難しそうなエルフの男が突如としてラルウィンの前に現れた。
「ち、父上!!!」
「探したぞ。みだりに外で裸になるなと、言っておいたはずだが」
「そ、そんなことより!」
今度はラルウィンが誤魔化そうとした。
誤魔化し半分ではあったが、話さなくてはならない相手だった。彼女が父と呼んだその男こそは、この里の呪い師で、里全体の取り決めなどにも大きな影響を持つ、ブラエンその人だったのだから。
「すでに孵化していたか……私のところにもドラゴンの卵らしきものを森で見たという報告があった。
説教は後だ。
お前もすぐさま戦士隊の指揮を執ってもらう」
「はいっ! お任せください! 私、こう言うときのために特殊部隊を組織しておりました故、是非とも投入を」
「何?」
「究極・最強☆エリン・グラス!」
「無敵でごめん☆エリン・グラス!」
この森の木々を思わせる赤の、フェアリーが着るような光沢のある薄い衣装を着込んだ、見目よいエルフの娘達が7人、集まっていた。手には細かく刻んだ布を何本もまとめた束を持って、それを振って、黄色い声援をあげながら躍り、笑顔で愛嬌を振り撒いている。
「どうです……私が組織した少女応援団、『|紅葉乙女《カランウェン》』は」
「彼女らを戦場に連れていく気かね?」
「うっ……それは」
ラルウィンはブラエンの指摘を受け黙った。今日ここに至るまで、冷静に考えたことがなかったのだ。
「き……救護室にて負傷兵の鼓舞にあたります!」
「……邪魔にならぬように、廊下でやるがいい」
一応の許可は得たが、ブラエンの視線は威圧感に満ちていた。
ブラエンは去る。
後にはラルウィンと紅葉乙女と彼女らを見つめるエルフの男達が残された。
●以上、変なエルフの里の状況でした
「手のかかる妹というのはいるものだ。わかるな?」
そう言ったアノルルイ・ブラエニオンの態度は普段のような飄々としたものに見えた……少なくとも表向きは。
「エリン・グラスという、変なエルフの里があってね。まあ私の故郷なのだが。
そこはまさに昔ながらのエルフの集落で……閉鎖的な習慣が災いしてか人口が流出しつつある。
だが、そこは世界樹イルミンスールから株分けされた『聖なる木』を守る由緒正しき集落なのだ。
カルニスティルというのがその名だ。その言葉は古いエルフの言葉で『赤ら顔』を意味する。名の由来は一年中鮮やかな赤い色の葉を付けているからだ。
影響を受けてか、周囲の木々の葉も赤い。異世界で言う所の紅葉の季節が一年中続いていると思ってもらえればいい。
……だがこの聖樹カルニスティルがオブリビオンに襲われようとしているのだ。
周囲が迷いの森に囲まれているエルフの集落には通常、近づくことはできん。だがどうやってかオブリビオンは集落にたどり着く方法を見いだして、森を焼き討ちにしようとしているようだ。
敵はどこからか孵化直前のドラゴンの卵を複数持ち込んで、孵化したての幼竜に襲わせようとしているようだ。
その状態はドラゴネットと呼ばれ、肉体を使った攻撃や噛みつくことで敵に対応した進化を果たす能力、飛翔力を増す能力などを備えており、社会生活を送る生物の文化圏を荒らすことにかけては右に出る者がいない悪竜だと言われている。
君達は現場のエルフ達と協力し、まずは森にいる、ブレスで森に火を着けようとしている敵を倒して欲しい。エルフ達の指示があれば、敵だけが道に迷い、こちらは樹上から一方的に有利な状態で戦う事ができるだろう。素早く倒せれば、延焼も最小限で済むはずだ。
それらを撃退したら、この襲撃の首謀者を倒してくれ」
少し間を置いて、アノルルイは続けた。
「あと……エリン・グラスのエルフ達は総じて美しいものが好きだ。何かアピールすればやる気を出すかもしれん。
カルニスティルが焼き尽くされることになれば、里は間違いなく滅びてしまうだろう。
それなりの気持ちで臨んでもらうぞ!」
そう言って、角笛を吹き鳴らした──。
デイヴィッド
ハーイ! デイヴデース!
夏休みムードの中働かせようとする鬼畜エルフがいます。
内容はエルフの森防衛戦。
全二章構成。
第1章・集団戦。
森を焼き討ちする複数のドラゴネットとの戦いです。
戦場は森。
エルフ達の指示があれば、敵だけが道に迷い、こちらは樹上から一方的に有利な状態で戦う事ができます。素早く倒せれば、延焼も最小限ですみます。
第二章・ボス戦。
詳細不明。
OPはコミカルですがプレイング内容に応じてシリアス度は変化します。
MSの都合により、8/18までの完結を目指します。
プレイング受付はOP公開より開始します。サポートも積極的に採用していきます。
プレイングボーナス(全章共通)……エルフ達と協力し、共に戦う。
なお、舞台がアノルルイの故郷で、アノルルイの親族も登場しますが、リプレイにアノルルイは登場しません。
よろしくお願いします!
第1章 集団戦
『ドラゴネット』
|
POW : 進化の礎
単純で重い【角や牙、翼など】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 進化の贄
【噛み付き】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【成長した竜の姿】に変身する。
WIZ : 進化の翔
【より大きい飛竜の姿】に変身する。変身の度に自身の【翼】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エルフの呪い師ラエルウィング──長くて大袈裟なので普段はラルウィンと呼ばれている──は、樹上の家と家を繋ぐ廊下から、広がる森を眺める。
もとより鮮やかな赤い光景に、所々で緋が混じっていた。よく見れば、煙が上がっているのも確認できる。
この里は聖樹カルニスティルを護る里。
野良のドラゴンが迷い込んだ、というならともかく、これがカルニスティルを狙った襲撃であれば一大事だ。
カルニスティルが亡くなれば、この里はもはや滅亡は必至。
思い出す──自分が永い時を過ごした、この里のことを。
閉鎖的で、変化に乏しい里で、出ていくものも多いが、美しくて賑やかで温かい、自分にとっては何物にも変えがたいふるさとだ。
それが無くなるかもしれない……。
そう思うと、心の底から恐ろしい心地がした。
「こういう時は誰かの助けが欲しいよなぁ」
「誰も来ないだろ、こんな辺鄙な里になんか……」
誰かの話声が聞こえてきた。
ラルウィンと同じように森を眺めているエルフの戦士達だった。
「いやいや、猟兵が来てくれるかも知れないぞ?」
「猟兵? この間の郡竜大陸の、帝竜戦役を勝利に導いたっていう?」
「そうそう。ついこの間の。
この村からだって猟兵は出ているんだぞ。アノルルイっていう」
「アノルルイ? 一時期雑貨屋にいた?」
「あれでもブラエン様の息子だぞ。知らなかったのか?」
突如としてその名が出てきたのでラルウィンははっとした。
それは彼女の兄の名だ。里を出ていった一人であり、それ以来一度も会っていない。
「帝竜戦役にも参加していたって言うぞ。あんまり活躍はしなかったらしいがな……ともかく猟兵が来てくれれば安心だ。いや、カルニスティル様を狙った襲撃であったなら、必ず来てくれるはず」
「よし、それじゃ猟兵を呼ぼう!」
「「ベントラー……ベントラー……猟兵よ……お越しください……」」
こいつら猟兵を何だと思っているのだろうか?
エル・クーゴー
←こんな感じで空からスーッと舞い降りて来る
> m'aider信号の亜種波長っぽいものを観測しました
『ワイルドハント』エル・クーゴー
当機はオブリビオンの殲滅に高い適性を発揮します
(バイザー表面をチカチカ光らせながら語るとかいうコズミック来訪者感)
●エルフ達と協力
当該森林地帯に深い造詣を有する諸氏へ要請があります
敵性が発見された座標の情報を提供して下さい
情報の入力方法は――このねこに見せるか言い聞かせるかすれば、当機の間との情報授受が成立します(ドローン『マネギ』をその辺の土地勘ありそうな人に押し付ける)
・敵位置網羅次第、照準セット――【マルチプルミサイルⅢ】をぶっぱ
・敵に近接戦を許さずボコにする
ベントラー……ベントラー……。
「おお……何か現れたぞ!」
空に向かって呼びかけていたエルフの戦士達が驚愕の声をあげる。
銀色に発光する何かが突如として上空に現れたのである。
「えっ嘘……!?」
その様子を半ば呆れ顔で眺めていたラルウィンも目を丸くした。
銀色の発光する浮遊物体はゆっくりと降下してくる。
「猟兵が……猟兵が降りて来られたのだ!」
「我らは助かるぞ!」
どう見ても未確認飛行物体である。
やがて森の木々の影に入り、銀色の発光は相対的に強さを増し、人の形のシルエットが明かになって、フライングヒューマノイドにカテゴライズされる要件を満たした。
静かで音階もリズムも一切変わらないエンジン音を響かせ、それはエルフの戦士達の目の前まで降りてきて中空で静止した。
それは少女の姿をしていた。白と緑を基調とした、体型にフィットした衣服を身に付け、銀色の長い髪を風になびかせている。その顔はバイザーに覆われており、その表面が1680万色の光を出して所々で点滅を繰り返した。
オーバーテクノロジーの塊に見えた。
しかし実のところそれは──彼女はミレナリィドールの猟兵であった。
「m'aider信号の亜種波長っぽいものを観測しました」
彼女は語った。オーバーテクノロジーの塊のような見た目の割には雑な認識のままここに現れたようだ。
しかし、その受け取り方は正しかった。まさにエルフ達の発したそれは、救難信号であったのだから。亜種も亜種だったが……。
「『ワイルドハント』エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
当機はオブリビオンの殲滅に高い適性を発揮します」
よく響く抑揚のない声で彼女は──エルは言った。
「おお……なんと神々しい!」
「天上の星星を身に纏ったかのようだ……」
エルフの戦士達は喝采をあげた。
「当該森林地帯に深い造詣を有する諸氏へ要請があります」
早速、エルは作戦行動に関する要請を行った。
「敵性が発見された座標の情報を提供して下さい。
情報の入力方法は――このねこに見せるか言い聞かせるかすれば、当機の間との情報授受が成立します」
エルの背後からウイングキャット・マネギがヒョコッと顔を出す。
翼を羽ばたかせながら(だが小さく、それで揚力を得ているようには見えない)フヨフヨとエルフの戦士達のほうへと浮遊してくる。
「解った……敵の場所を突き止め、このねこに見せれば良いのだな!」
きっとそれで何とかしてくれるのだと、エルフの戦士は受け取った。
「待ちなさい!」
ここで成り行きを見守っていたラルウィンが戦士を止めた。
「それは私がやります。あなたは本陣にこの事の報告を」
「む……解った!」
ラルウィンはユーベルコードの使い手である。里でもユーベルコードを使えるものはそう多くない。敵と遭遇するのであればラルウィンの方が安全だ。
「貴方は私と来て」
そう言って、もう一人いたエルフの戦士に命ずる。
「ひとつ、教えてください」
行動を開始する前に、ラルウィンはエルに問うた。
「誰がこの里のことを、あなた達に伝えたのですか?」
もしや、という気がしていた。
「お答えします。
それはグリモア猟兵アノルルイ・|ブラエニオン《ブラエンの息子》です。
彼はこの里の出身を自称しており、当機と同じく猟兵の旅団『ワイルドハント』に所属しています」
エルの答えにラルウィンはしばし言葉を失う。
失われたと思われた絆が、その言葉によって再び見いだされたのだから。
「はじめまして、ラエルウィング・|ブラエニル《ブラエンの娘》。
貴方に、伝え聞いた特徴との一致を確認しました」
ラルウィンはすぐさま本陣へと走った。
斥候がもたらした敵発見の報は、まず本陣にもたらされ、それをもとに各拠点へと出撃の指示が出される。
敵の情報を可能な限り覚えたラルウィンはすぐさま敵が現れたという方角へと向かった。
地元のエルフでなければ里の外は、どこも変わらない森に見える。
しかし地元の地理に習熟したエルフならば地図の座標がわかれば実際にそこに行くことが可能だ。
走っている間、何も怖くなかった。
先程までの恐れは嘘のようだ。
エルのたった一言が、恐れを吹き飛ばしてしまった。
そう時間はかからない内に敵を見つける。木々の間に作られた廊下から、敵の姿が見えた。
ドラゴネットの一体が、地上で木に炎の吐息を吹き付けていた。すでに葉には火が付いている。
ラルウィンはすぐさまマネギを眼前に掲げた。
細めていたマネギの目が、獲物を見つけた肉食獣のようにカッと開いた。
「目標確認」
現れた場所から動かないままのエルが、敵の姿をバイザー越しに補足した。
敵はラルウィンに気づいておらず、隙だらけだった。
「弾道修正……修正完了」
L95式火器管制システムは演算を一瞬で完了。
「弾道設定を完了_ファイア」
L95式アームドフォートが展開され、発射音と共に、小型ミサイル群が長くまっすぐな煙を伸ばして、上空へと射出される。
次の瞬間──。
ラルウィンがマネギを向けていたドラゴネットに小型ミサイルが雨霰と降り注ぎ爆発した。
凄まじい爆煙と衝撃の余波がラルウィンに叩き付けられる。
マネギをしっかりと抱えて止むのを待つ。
それが止むと、ドラゴネットは跡形もなく吹き飛んでいたのが見えた。
躯体番号L-95は弾道ミサイルの運用においても高い適正を発揮した。
「凄い……。
これなら、やれるわ……!」
ラルウィンは次なる敵へと向かって駆け出す。
それに伴い、エルは次々と戦果をあげ、エリン・グラスの防衛に貢献することになる。
大成功
🔵🔵🔵
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
「まあ……ここがエリン・グラス?
聞いていた通りの、美しい所ですわね」
ふわりとした口調で響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)は周囲を眺めて感嘆の声を漏らした。エルフの隠れ里エリン・グラス、そこは森に囲まれており、木々の葉は赤く色づき、日の光を浴びて鮮やかだった。そして清浄な空気に満ちている。
今やそのエリン・グラスが危機に瀕している。その事実を知ったグリモア猟兵により、次々と猟兵がここに転送されていた。
リズの姿を目にしたエルフ達は、リズの長い金色の髪や、その中に咲いた小さな花、紫色の大きな瞳、純白の翼を見ては「ほお……」「美しい……」などと呟いたり、ため息を漏らしたり、熱い視線を送ったりしていた。
「きっと異界のひとが珍しいのですわね……」
リズにはかれらの心中をひとつとして察することはできなかった。
本陣まで案内され、指揮官であるエルフの戦士長から状況を聞く。現在、敵は里の周囲の森で迷っており、分散しているとのことだった。
「こんなに若い子達が戦っているなんて……わかりました。私、全力で皆様をお助け致しますわね」
リズはここまで来るまでに見た顔が皆若かったから、なおいっそう、務めを果たそうという気になる。実際はエルフは常若の種族なので、中には本当に若い者もいたが、リズの数倍は生きている者もいた。
敵の位置を把握した斥候が、報告に忙しく出たり入ったりしている。リズもすぐさま斥候に案内され、少数のエルフ戦士と共に敵の迎撃に向かった。
「御武運を! Jaeger!」
「美しい方よ、どうかご無事で!」
その姿を見送る戦士達の何人かから、声援が飛んだ。
やがて、リズとエルフ達は樹上の家と家を繋ぐ橋の上から、ドラゴネットの姿を眼下に納める。
ドラゴネットは地上におり、炎の吐息を吹きつけて森に火を放とうとしていた。
「木々は私達の隣人……今すぐ救いたいです」
案内したエルフが、怒りをはらんだ声で言った。
「わかりましたわ、ここはお任せくださいませ」
リズは魔法杖ルナティック・クリスタを構える。エルフの痛ましい声を無視することはリズにはできなかった。
速やかに駆除する必要があった。
精神を集中させる。
意識を、『天』に同調させる。
自身の魔力が高まるのを感じた。
そして詠唱する、力ある言葉を。
「天の雷よ
邪心に染まりし悪を滅する
天の裁きを与えん!!」
かの者に、裁きの雷を!
魔導杖から雷電が迸り、ドラゴネットの一体に炸裂したかと思うと、その全身を一瞬で黒焦げにした。
反撃はなかった。ドラゴネットは一瞬で身体を硬直させ、もう動くことはなかった。
「! 上です!」
リズが突然エルフに向かって声を発する。エルフはとっさに身をかわした。わずかに遅れて彼が立っていた所を巨大な影が通り過ぎていく。
それは上空へと舞い上がった。先程倒したドラゴネットよりもさらに大きな、四枚の翼を持つ飛竜だった。敵は、一体ではないのだ。
「進化した個体ですね……しかし!」
リズは一歩も引かずに相手取る。
先程とは違い、先手を取ることは叶わない。
しかしリズは戦いの中で機会を見いだし、やがて再び閃いた雷光が敵を打った──。
成功
🔵🔵🔴
仲佐・衣吹(サポート)
キレイなもの、カワイイもの、ぶち壊そうなんて許さないんだから
バトルだって芸術よ。美しく戦いなさい!
お相手するはアタシことネイル
美術好きな女性人格よ
口調はいわゆる女言葉かしら
身のこなしが一番軽いみたいで
接近戦より距離をとってダガーで戦うのが好きよ
よく使う手は
外套を投げつけて囮や目暗ましからの一撃
ルーンソードで戦ってる途中で手放して虚を突き、袖口から隠し武器としてダガー
光属性を付けたルーンカルテを落としといて、タイミングを見て目潰しフラッシュ
こんなところかしらね
アイテムやユーベルコードはお好きに選んでくれていいわ
使えるものは全部使って、華麗に美しく戦いましょ!
「この仕事が終わったら観光案内を誰かに頼もうかしら?」
仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)──正確には多重人格の一人ネイル──は、同行するエルフの戦士に言う。
美しいものを愛するネイルにとって、ここエルフの里エリン・グラスは興味を惹かれる対象だった。昔からエルフは独自の文化を持ち、美術や工芸に精通している。ここエリン・グラスも──最近は異質な『文化』が伝わってきているものの──例外ではなかった。
「最強・必勝☆エリン・グラス!」
「負けなくてごめん☆エリン・グラス!」
「へー、思ったよりカジュアルなのね」
ネイルは道中ですれ違ったエルフの少女応援団『紅葉乙女』を見て認識を改める。
赤いキラキラした衣装で笑顔でネイルに声援を送ってくれた。そのコンセプトは、アスリートアースで見られるチアリーダーそのものだった。
「誰が考えたのかしら?」
「この里の呪い師の一人だ」
「またずいぶんカジュアルな呪い師ね」
同行しているエルフの戦士の一人の説明を受けてネイルは固定観念を自ら捨てた。
「真面目で、とにかく明るい呪い師だ」
戦士が説明する。よくわからない。
「後でお話聞きたいわね」
とにかく個性的なことは確かだと思ったネイルは、そう答えた。
だが、まずは里を救うための戦いだ。
勝たなければ、美術も工芸も芸能も堪能できない。
本陣にもたらされた、斥候の報告により発見された方向へと向かう。
しかし相手は飛び回る竜だ。どこで襲われるかはわからない。
「しっ、何か聴こえる!」
「ええ」
最初に反応したのは戦士だったが、ネイルもまた気づいていた。
猟兵として戦場をいくつか渡り歩いた身であれば、この殺気に気づかないことはない。
いた。地上だ。今ネイル達は、樹上の館の前を通る足場の上にいた。
迷いの森に迷い込んだドラゴネットは、こちらに気づいていなかった。森の木々に向かって火を吹いている。
目的地に辿り着くよりも、森を焼くことを優先しているのか。
「どちらにせよ──迷惑でしょ?」
「迷惑なんてもんじゃないが」
ネイルの言葉に戦士は返す。
死活問題だった。
「そうよね……この距離では狙い辛いわね。アタシが合図したら一斉に弓で射るのよ。そしたらすぐ離れて」
同行しているエルフの戦士は三人いた。一人がうなづき、すぐさま弓に矢がつがえられる。
そしてネイルの合図。三本の矢が一斉に放たれ、ドラゴネットの身体に突き刺さった。すぐさま戦士達は離れ、ドラゴネットの視界から消える。その視界に残るのはネイルのみだ。
すぐさま翼を羽ばたかせ、ドラゴネットはネイルに向かってくる。
鋭い牙の並んだ口を大きく開いて、高速で上昇してくる。
ネイルはギリギリまで引き寄せて、それを避けると同時に顔に向けて外套を投げつけ、視界を塞ぐ。
同時に空中に何枚ものルーンカルテが舞った。
外套がドラゴネットの顔から外れると、ルーンカルテはそれぞれが眩い光を放つ。
それはドラゴネットの視力を奪う。ネイルはその隙に距離を取る。
「仕掛けは終わったわ」
それは、僅かの間に仕掛け終わっていた。
ドラゴネットの動きがその時からおかしくなる。
飛ぶことはおろか、立つことこそままならず、その場でのたうち回り始めたのである。
今。
ドラゴネットの精神世界では、多重人格者、仲佐・衣吹の分身精神体が召喚されていた。
衣吹の人格は五人。ベスト、ウォッチ、ネイル、コート、サーベル。分身精神体もその人数分居る。性格の大きく違う五人が、今ドラゴネットの精神の中で暴れまわっている。
(よっし、行け分身! 奴の精神をズタズタにしろぉッ!)
衣吹の脳内で好戦的なサーベルが吠えた。各人格現状を共有するため、今主導権を握っているネイル以外もこの状況を見て好き放題言っている。
(やがて隙が生じるでしょう。タイミングを見極めて)
ウォッチが冷静に告げる。ネイルもそれくらいは解っていたが、ウォッチは多分ネイルを落ち着かせるため言ったのだ。
今さら別人格が騒いだぐらいでどうにかなるネイルではなかったが。
(ダガーで弱らせてから喉元をかっ捌くから見ててね♥️)
別人格達に宣言してみせるネイル。
その後すぐドラゴネットは無防備になった。ネイルが投げたダガーが前肢と両眼に過たず突き刺さる。
視覚と反撃の手段を潰したネイルは無駄のない動きで歩み寄ると、ルーンソードを一閃。
その喉元を一文字に斬り裂いた。
ドラゴネットはあえなく倒れる。
「一丁上がりね……」
剣を振り、血を払う。
「……なんと鮮やかなことか……」
その華麗な仕留め方に、エルフの戦士達は内心で喝采を送った。
成功
🔵🔵🔴
下原・知恵(サポート)
「話は聴かせてもらった。つまり……ここは|戦場《ジャングル》だな!」
◆口調
・一人称は俺、二人称はお前
・ハードボイルド調
◆癖・性質
・公正と平等を重んじ、己を厳しく律する理想主義者
・自分の現況を何かにつけてジャングルとこじつけたがる
◆行動傾向
・己を顧みず同志の安全と任務遂行を優先する(秩序/中立)
・UDC由来の人工心臓が巨大ゴリラの変身能力をもたらす
・ジャングルでの戦闘経験から過酷な環境を耐え抜く屈強な精神力と意表を突くゲリラ戦術を体得している
・とりあえず筋力で解決を試みる。力こそパワー
・手軽に効率よく栄養補給できるバナナは下原の必需品
・生真面目がたたり、意図せずとぼけた言動や態度をとることがある
熱。
何かが、灼けていた。焦げた匂いもそれを告げていたが、それよりも、熱を感じていた。下原・知恵(ゴリラのゲリラ・f35109)は、過去、幾度となくその熱を感じたことがあった。
戦場。その熱を。
エルフの里エリン・グラスへの、オブリビオンの襲撃があると聞いて来た。
エルフ達にはその巨体に奇異の視線と、頼もしさをもって迎えられ、本陣に向かって敵の情報を聞いたのちに、敵を撃破するべく出撃した。
里の周囲は迷いの森だ。敵は道に迷い、戦力は分断されているという。エルフの戦士長からは、各個撃破を勧められた。
「その判断に異論はない」
それと行き先だけ告げて、下原は外に出た。伝令などの役割を果たす、エルフの戦士が二人続く。
向かった先で、下原は二人連れのエルフに出会い、声をかけられた。声をかけた方は女だった。
「こんにちは。あなたも猟兵ですか?」
「ああ。お嬢さんは、ここの住人かい」
「ここで呪い師をしています、ラルウィンと言います」
「下原だ」
少し置いて、下原は続けた。
「ここは──申し分のないジャングルだな」
「ジャングル?」
ラルウィンは聞き返す。
確かに木々に囲まれているが、ここは高温多湿でも、密林でもない。
一年の中では、高温多湿な季節ではあるが。
「ああ……ジャングルだ」
だが下原は言い続ける。
そこに深い理由の存在を感じたのか、ラルウィンはそれ以上聞かなかった。
周辺を探索した下原とラルウィン達は、敵を発見する。
ドラゴネットが二体。木に向かって、炎の吐息を吹き付けていた。
今かれらは樹上を通る通路にいる。敵には気付かれていなかった。
「この距離は苦手でね。筋力が伝わらん」
下原はそう言って、バナナを食った。
「え? 筋力……」
ラルウィンは、言葉の途中で息を飲んだ。
ゴリラが居た。さっきまで下原が居た所に。
「っ……?!」
ラルウィンは、思わず叫びそうになるのを必至で堪える。
「見違えたか? これが俺の戦闘形態だ」
ゴリラに変身した下原は言った。服に装着されたグレネードを手に取る。
「武器使うんですね……」
「言っただろう、筋力が伝わらんって。だから別の手段も用意していないわけじゃない」
「では一斉に仕掛けましょう」
ゴリラのでかい指が、グレネードのピンを抜いた。
凄まじい力で投擲。
瞬く間に爆発し、爆風はドラゴネット二体を巻き込んだ。
エルフの戦士達も同時に矢を放つ。
ラルウィンはユーベルコード、エレメンタル・ファンタジアを発動していた。
その効果は、土の津波。
盛り上がった地面が、ドラゴネット二体を飲み込んだ。
しばしの静寂。
一体が、地面から飛び出た。
体当たりを仕掛ける。狙いは下原達一行ではない。かれらの足場になっている木だ。
地形が破壊される、重い一撃。
幹が折れた。下原達は地上へと落下する。地面に打ち付けられた。
ドラゴネットが飛び上がっていた。
来る。上空からの一撃。ラルウィンを狙っていた。
「やはりな、簡単な敵じゃねぇ。この過酷さ、向けられる殺気。ここはジャングルだ」
下原が、ラルウィンの前に立っていた。
ドラゴネットが、太い首に喰らいついている。
その牙は、首に深く食い込んでいるように見えた。血が、流れ落ちていた。
「下原さん!」
ラルウィンは驚愕する。急ぎユーベルコードを発動させようとする。
だが、その前に何者かが現れた。
巨大な、黒い塊だった。
それはドラゴネットを素手で掴むと、力任せに首とそれ以外の部分を、引き千切った。
「やはり、物事を解決させるには、筋力に限るな」
下原は、噛みついたままのドラゴネットの顎をこじ開け、捨てた。
千切れた首は、何の動きもなかった。
筋力。首を引き千切ったそれも、同じものを武器とした。戦場の亡霊。下原が、ユーベルコード・|反骨精神《アルティマ・レジステンシア》で呼び出したものだった。
「すぐに救護室に!」
「その必要はない」
腕を引くラルウィンを、下原は拒否した。
「|戦場《ジャングル》には、まだ俺が必要だ」
成功
🔵🔵🔴
エドゥアルト・ルーデル
(てょわわわあ~ん)
しょうがねぇなプライベートで幼女ウォッチングしてる時に…
地元のエルフに協力して貰おうじゃないの…美少女エルフの応援が必要だ!こう黄色い声援を送ってくれよな!
拙者のテンションが上がるからな!
生まれたての竜は飛ばないから狩るのが楽でいいでござるな
爪やら翼やらの近接攻撃しかできないでござるからな!動きに合わせて部位を掴み攻撃の勢いを活かしながら空目掛けて一本背負い!
初めて空を飛んだ気分はどうだ?感想を述べよ!答えは聞いてない!!
追撃ですぞ!投げた竜に飛び乗る様に跳躍!
空中をサーフボードめいて乗りこなし他の幼竜に激突させるでござるよ!
生れた龍の背に乗って
筋肉・インフェルノーッ!!!
「てょわわわあ~ん」
最初の猟兵の転送以降、空から現れてゆっくり降りてくる流れができてしまったらしい。
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は謎の発光物体となってコズミックでミステリアスかつ何かに乗っ取られたかのような効果音とともに現れた。
「ああっ! また次の猟兵が降りて来られたわ!」
「本陣に知らせてくる!」
今猟兵が降りてくる場所には戦いに参加しない女達がいた。場所を清めたり花びらを巻いたりと何か神聖なものに対する行動をしている。何か勘違いしているような気もする。
「ようこそお越しくださいました猟兵のお方」
エドゥアルトが着地するとエルフの女がうやうやしくかしづいた。
「状況を説明しますので、どうぞこちらへ」
「よろしくたのむでござるよ!」
エドゥアルトは目をむいてニッと笑う。
胡散臭い。
(なんかイメージとちがう……)
女はそう思いながら、エドゥアルトを先導して本陣へと向かった。
「キラキラ☆爆発! Jaeger!」
「来たぜ☆熱いぜ! Jaeger!」
本陣前の廊下で(人通りが多く広いのでここに配置された)少女応援団・|紅葉乙女《カランウェン》が声援をあげる。流れを読んでか、台詞も猟兵向けのものに変えられている。
「おおっ、あれは何でござるか!?」
「戦いに向かう者達を鼓舞しています」
「つまり拙者でござるな! もうしばらくここで鼓舞されていくのでよろしく!」
「ええ?!」
エドゥアルトは紅葉乙女の前にしゃがんでガン見した。
あんまりガッついていたので、紅葉乙女のメンバーの中には見ないようにしている者もいた。見られて燃えるものもいたが。
エドゥアルトの視線はだんだんと下がっていって、乙女達の剥き出しの脚の高さになり、さらに下がって、ヒラヒラしたスカートの中が視界に収まりそうになった。
「え……」
「なにこのオッサン……」
「あきらかな不審者ムーヴ……」
「アツい視線! アガってきた! もっと見てッ!」
メンバーの大半が引く。中には一人だけ調子に乗って下着が見えそうで見えない位置までスカートの裾の位置を上げたポーズを見せつけたりする者もいたが。
「フー!」
一人だけテンションのおかしい女が、引いている仲間を放っておいてエドゥアルトの前に出る。
「「フー!!」」
そして奇声をあげて二人してその場で踊る。
変態の二人だった。
「誰か止めてェェェェ!!」
案内していた女の絶叫がこだました……。
「幼女ウォッチングする時間まで惜しんでここに来ているのになんたる仕打ちでござるか!」
しばらくして来たエルフの戦士達によって、本陣に連行されてきたエドゥアルトが抗議の声をあげる。
「我らも時間が惜しいのです」
戦士長は本当に時間が惜しかったので不穏な単語は聞き流した。
「無理もござらんね、でも余裕も必要ですぞ。エルフのくせに生き急いでどうするんでござるか。ほらマーマイトでも食って落ち着くでござる」
「これは……|辛《から》いな……」
言われて余裕を取り戻した戦士長は、エドゥアルトに敵の現れた場所についての情報を教え、案内役に先導させた。
果たして樹上に設けられた舞台で、敵の姿を発見した。ドラゴネットが二体、森の木々に火を付けるべく火炎の吐息を吹いている。
「一度に二体……援軍は要りますか?」
「とうッ!」
「え!?」
エルフの案内役が聞くのにも応えずにエドゥアルトは跳び降りた。
エドゥアルトの身長のゆうに三倍はあろうかと言う高さから跳び降り颯爽と着地した。
「トァ───ッ!」
そして華麗に跳躍するとレッグラリアートをドラゴネットの首目掛けて食らわせる。
完全に虚を突いた。
ドラゴネットはその勢いのままぶっ倒れる。
もう一体が跳び上がり、勢いを付けて翼を叩き付けようとする。
「円は直線を包む!」
エドゥアルトは弧を描くような足さばきでそれを避ける。
地面を打ち付けた翼が地表を砕き、エドゥアルトの足場を破壊するが、その時にはすでに空中に逃れていた。
空中で両足を開き、ドラゴネットの首を挟む。そして体をねじらせて自身ごとドラゴネットの体を地面に叩き付ける。
「竜と格闘している……!」
樹上から先導してきたエルフが驚愕の表情でそれを見ていた。
その様子は血沸き肉踊るバトルであり、彼も戦いの行方から目を放せないでいた。
地面に叩き付けられたドラゴネットは、立ちあがりざまに爪の一撃を放ってきたが、エドゥアルトはそれを
紙一重で避け、前足を掴む。そして体を回転させて背中を敵の胴体に密着させると、膝を折って一気に伸ばし、全身のバネを使って空中へと投げ飛ばした。
「初めて空を飛んだ気分はどうだ? 感想を述べよ! 答えは聞いてない!!」
ハイテンションでまくし立てながら自らも跳躍する。そして、空中で一回転するとドラゴネットの背に足から降り立った──。
「あ──っとエドゥアルトマン空中でドラゴネットの背に足を乗せて立った───っ!」
何かが取り憑いたかのように実況をするエルフ。
その時には最初にレッグラリアートを食らったもう一体のドラゴネットが起き上がり、エドゥアルトに襲いかかろうとしていたが、エドゥアルトは空中にいた。
「筋肉・インフェルノ────ッ!!!」
エドゥアルトはサーフィンのようにドラゴネットの背に乗り、その軌道を自らの意のままにした。そして、その進行方向にはもう一体のドラゴネットがいる。
──激突!
森じゅうに轟くかのような激突音とともに、二体のドラゴネットの頭と頭が衝突する。
両方の頭がありとあらゆる場所からおびただしい血を吹き出し、大きく反り返って倒れていく。
エドゥアルトは無事着地。そして二体のドラゴネットは、もう動く気配はなかった。
エドゥアルトはキメ顔で拳を天に突き上げる。
「勝ったのはエドゥアルトマン! エドゥアルトマン完全勝利───っ!!!」
そして熱狂の極みにあるエルフの実況を止められる者はなかった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『精隷使いニクス』
|
POW : ムスペルの巨人
自身の【捕らえた精霊の思考力】を代償に、【作り出した巨大なゴーレム】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【燃え盛る両腕】で戦う。
SPD : 魔剣レーヴァテイン
【捕らえた精霊の記憶力】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【炎を纏った大剣】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ : スルトの焔
自身の【捕らえた精霊の生命力】を代償に、【指先から凝縮された熱量】を籠めた一撃を放つ。自分にとって捕らえた精霊の生命力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
イラスト:Moi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ネージュ・ローラン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エリン・グラス中央部。ひときわ雄大で、他の木々よりも生命力に溢れ、葉がより艶やかな木がある。それこそがこの里が守る聖樹、カルニスティルだった。
カルニスティルの周囲には結界が貼られており、たとえ上空からであろうと真っ直ぐそれを目指しても途中で見失い、たどり着くことはできない。だがオブリビオン相手となれば安心は出来なかった。
今カルニスティルの周囲には、呪い師長ブラエンをはじめエルフの戦士達が厳重な警戒を行っていた。
戦況はここにも届いていた。現在は猟兵の援軍が次々と到着し、現れたドラゴネットの数は少くなりつつある、ということだった。
その報を聞いて、戦士達は猟兵達に喝采を送っていた。ただブラエンだけは、ここへの襲撃に対するべくじっと緊張感を保ち続けていた。
「警戒せよ!」
ふいにブラエンが声を飛ばし、杖を振るった。
衝撃波が発生する。
それは何もない所に向けて放たれたように見えた。しかし。
「やれやれ……さすがにお見通しか」
空間が剥がれるように、そこには黒いローブの人物の姿が現れた。
彼こそがこの襲撃の首魁。
邪悪なる魔術師、精隷使いニクスである。
「こんにちは、エルフのお爺さん……カルニスティルは僕がいただくよ」
ニクスは邪悪な笑みを浮かべながら、大仰に一礼する。
エルフの戦士達が一斉に武器を構える。
「止めよ! 全員、急ぎ猟兵を呼びに行くのだ!」
ブラエンは周囲にそう命じ、自らは杖を掲げ呪文を唱える。
すると眼前に旋風が巻き起こり、その中心点に光輝く槍を備えた、古代のエルフの戦士の霊が現れた。
「ここは私が食い止める」
エルフの戦士達はすぐさま走り去り、猟兵を呼びにいく。
残されたのはブラエンとニクスだけとなった。
「へえ……そんなの役に立つのかな?」
ニクスは古代の戦士を前にして、不敵に笑った。
ブラエンには勝算はなかった。
自身の死をも覚悟していた。それほどの相手と見たからこそ、他の者をここには残さなかったのだ。
命をかけてもカルニスティルを守る。それが呪い師長である己の役目である。
生半可な者には果たせない。だから長男には無理だと判断し、長女を跡継ぎとして育てることにした。
しかし矛盾しているが、たとえカルニスティルが滅び、里が滅びても、子供達には生き延びて欲しいという思いも抱いている。
娘には自分と同じ生き方を担わせようとしているというのに。
息子がこの里から出ていったことは、今となっては救いだった。
どちらにせよ、自分の生はここまでなのだから、後の事ができるだけ上手く行くように祈る……。
ブラエンにできるのは、猟兵が来るまでの時間稼ぎの他、それだけしかなかった。
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。
ちゃんと説明は聞いてマシタヨ?(地の文と目を合わせない)
戦闘は、範囲系ユーベルコードなら集中砲火、単体攻撃なら可能な限りの連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。
基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。
シリアス以外ならいたずら好きの面も。
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
エルフの里、エリン・グラス襲撃の首魁である精隷術師ニクスを相手に、里の呪い師長ブラエンは独り戦いを挑む。
守るべき聖樹カルニスティルを前に、最後の戦いが始まろうとしていた。
ブラエンの召喚した古代の戦士の霊が、左掌から炎を放つ。それはニクスの視界全てを覆う程の大きさとなって包み込む。
さらに自身も前進し、槍の一撃を見舞う。
炎の隙間から見えた身体に向けての刺突の狙いは確かだった。しかし次の瞬間、緋の光が戦士を両断するように一閃し、その身は炎を上げて焼き切れた。
実体化した古代の戦士の霊は実体を保てなくなり、燃え尽きるように消滅した。
「こんなものか。さあ、どうする? またあれを召喚する?」
ニクスは軽く笑って、ブラエンに指先を向ける。
「その前に殺すけどね」
私は世界から取り残され
世界が落ちていく
その時、異質な歌が響いた。
場違いな程にダウナーなメロディ、救いようのない暗い歌詞……それとともに、何かがニクスに向けて高速で飛来した。
(名乗る前に歌ってしまった……プロデューサーさんごめんなさい……だって怖かったんだもの……編集でなんとか……私ってほんと駄目……)
その場に飛来した人物はそんな思いを抱いていた。
彼女こそは音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)。
カルニスティルとエリン・グラス、そこに住まうすべてのエルフを守るべく転送されてきた猟兵である。
(ああ……このまま逃げ出したい……)
内心はうらはらだったが。
(でもそうしたら番組が……苦しみに耐えるしか……)
ユーベルコード・鬱歌『Fall Down』の効果により黒い翼を生やした堕天使に扮した鬱詐欺は、得られた飛翔能力を生かして敵を翻弄する。
ニクスの周りを飛び回っては、その周囲の空間に水泡を残していく。
水泡はニクスの身体に触れて割れる。
「どうせ私は嫌われ者……」
「私に関わるとみんな不幸になる……」
「世界に私の居場所なんてない……」
その度に、鬱詐欺の暗い呟きが聞こえた。
「これは……呪詛か。小癪だね」
ニクスは鬱陶しそうに顔をしかめる。
その水泡はバブル・ショックより発射されたもの。割れると何かを暴落させる効果を持つ。ユーベルコードにより効果を増したウサギマイクで拡声された鬱詐欺の呪詛(ただの愚痴)により威力を後押しされ、効果を発揮した。
そのバブルの崩壊は、集中力の暴落をもたらした。
「くっ……関わりたくない……」
ニクスは鬱詐欺を狙うことに躊躇する。本来の狙いではないことに加え、鬱詐欺自身の発する、悪印象を与え、遠ざけ、他者から自身を隔絶する性質のネガティブオーラの影響によるものだった。……アイドルとは何だったのか。
ふいに鬱詐欺が離れた。
次の瞬間には、突然の竜巻。
ニクスは竜巻に巻き込まれつつも、踏ん張って体勢を保つ。
風に舞う、いくつかの何かを見いだす。
それは符だ。
ニクスがそれに触れるや否や、強力な眠気に襲われる。
鬱詐欺の呪詛により集中力が暴落している今は、完全に抵抗することができない。
(当たった……これが効いてくれれば……!)
春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は強く願う。
同じくカルニスティルを守るべく転送されてきた猟兵だ。
彼女の場合、純粋にカルニスティルとエリン・グラス、その全ての住人を救いたいという心からの思いから行動している。
猟兵となったことで、異なる世界の、遠い存在の危機を知ることができるようになった。
遙は困っている人を助ける存在でありたいと思っている。
そのために害をなす存在を退けよう。
ここエリン・グラスも、自身の手の届く範囲だった。
目に留まった以上、見過ごせはしない。
遙はユーベルコードを仕掛けるだけに留めておき、自身はブラエンの元へと向かう。
「無事ですか?」
「ああ、貴公らが早く来てくれたお陰だ」
ブラエンは思わず、「ほっ」とした表情になった。
命を懸けていたとはいえ、自らの命が惜しくないわけではないのだ。恐怖もあった。それは遙達の到着で、かなり和らいだ。
「私達も戦います」
「恩に着る……」
ブラエンは外界との関わりはあまり望んではならない立場だが、今回に限っては完全に受け入れていた。
「くっ……こんなありふれた術に……呪詛さえなければ……」
遙の竜巻導眠符はザントマンの伝承を原点とする術。それはニクスにとっても良く知るものであり、通常であれば状態であれば難なく防げるものであったが、手練れの猟兵によるものであり、集中力を妨げられている今であれば、抵抗しきれず、反撃の機会を逃した。
ありふれているという事は、それだけ強力ゆえに広く流布しているという事だ。
そして、その状態のニクスにいくつもの炎の矢が飛ぶ。
「がぁぁぁっ……! こんなもので……!」
無防備な状態のまま突き刺さり、身体を焼き、酸欠にする。それは執拗に降り注ぎ、その全てをその身に受けた。
「炎の精霊を従えるこの僕に……こんな基本的な術で…………屈辱だよ」
それはウィザード・ミサイルだった。基本的なユーベルコードとはいえ、使用者のレベルによって攻撃の回数が変わり、実戦においては高レベルな術者相手であっても使い方次第で充分な効果を発揮する。
今回は味方が無防備な状況を作り出してくれたゆえに、クリーンヒットした。
「オブリビオンなら倒します!」
力強い宣言とともに、術者である、城田・紗希(人間の探索者・f01927)が姿を現した。
「目的が何なのかは知りませんが、それはきっちり後で教えてもらいますよ! もし生きていればの話ですがね!」
紗希の発言に、ニクスは何言ってんの? という顔になる。
何も聞いてない。
考えるよりも先に行動した結果だった。
まずオブリビオンを倒す、その後に状況を考えるというスタンスである。
カルニスティルとかエリン・グラスの危機とかは、後で確認する。
原因が取り除かれるのなら何も問題はない。ないのだが……。
「ここは……そういえば立派な木がありますね……。
さてはこの木が狙いですか! これが何だと言うんです!」
もはや勢いで喋っている。
だというのに気迫では押していた。
「まあいいか……後で考えます!」
そう言って、ブラエンを守れる位置に移動する。
「あなたが誰なのかは、後で聞きます!」
確かに彼がブラエンとは、誰も説明していないが。
この時に鬱詐欺も降りてきて、猟兵達とブラエンは互いに庇い合える位置に立つ。
「私達、みんな殺されるわ……いいえきっと私から……」
鬱詐欺はこの期に及んで、まだ怯えていた。
「まったく……まとまりがないですね……」
遙は呆れた。猟兵は色々だ。
しかし、敵と戦えるだけの戦力は揃った。
ここからは、カルニスティルを狙った悪しき魔術師に、天誅を加える時間だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
エドゥアルト・ルーデル
聞こえなかったか?
猟兵達の忍び寄る足音が~~っ
エルフ衆は実況と観戦を頼みましたぞ!気持ちが高まった方がキレが良くなるでござるからな!
見返りに素晴らしい|必殺技《フェイバリット》を見させてやるぜェ!
魔法なんぞ撃たれる前に仕留めればいいんだ!素早く接近して打撃を決める!|ラリアット《クォーラルボンバー》ッ!怯んでいる暇はないでござるよ!
背中側に回り込み…必殺!パロ・スペシャル!腕を完全に極めてしまえば指から魔法は使えねぇでござるな~!
術頼りで鍛錬が足りんのだ下等超人が!ケケケーッ!このままへし折ってくれるでござる!
なるほどアンタアノルルイ氏の親族なん?
その辛い気持ちこのエドゥアルトマンお察しします
「グェ────ッ!」
いつの間にか、ニクスの右肩にエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)が噛みついていた。
「あ──っとエドゥアルトマン不意討ちの噛みつきだ──!」
「ど……どうしたんだお前?」
すっかり実況が板についてしまった実況エルフを、同僚が怪訝な目で見ている。
「こいつ、いったい何だ!」
ニクスは振り払い、エドゥアルトと向かい合う。
「聞こえなかったか?
猟兵達の忍び寄る足音が~~っ」
エドゥアルトは到底人間には出来そうにない悪魔的な笑みをニクスに向けた。
「なっ……なんだこの魔物は!?」
その時のニクスにはそう思えた。
「デュフフフ 愉快な拙者は夜の8時まで、それ以降は虐殺王に変身するの」
エドゥアルトは邪悪極まりない魔物の顔で怪しく笑う。よく見ると見た目は変わってないし、ついでに言えばまだ日が沈んでいないのだが、そんなことは問題ではなかった。
こいつは今やルール無用の残虐超人だ。
「さあ虐殺王エドゥアルトマンVS精隷使いニクス、ルール無用の一本勝負! 果たしていかなる展開になるか? 目を放せません!」
「な……なにを言っているんだお前?」
実況エルフが始めた口上に怪訝さを強める同僚。
「ククク……昔から言うでござろう!
"魔術師相手には組み付きと転倒"」
そう不敵に言うとエドゥアルトは突進した。
「|喧嘩《クォーラル》ボンバ───ッ!」
ユーベルコードの効果により超人……もとい格闘家になったエドゥアルトの突進から繰り出されるラリアットを、ニクスは避けることができない。
「あ───っとエドゥアルトマンのラリアットを受けニクスは転倒───ッ! エドゥアルトマン、ここからニクスの背後に回って上半身を起こします」
そして首に腕を絡み付ける。
「スリーパーホールドだ───ッ!」
「この角度、絞め具合、ニクスのスタミナを考えるとあと2分35秒で文字通り|スリーパー《眠る人》となる……ってそんなに待ってられっかー!」
エドゥアルトはニクスの頭をひっ掴んで無理矢理立たせた。
そして背後から、両足を相手の両太ももにフックさせ、両手首をひねり上げる。
「で、出た───っ! エドゥアルトマン、伝家の宝刀パロ・スペシャルだ───っ!」
「腕を完全に極めてしまえば指から魔法は使えねぇでござるな~!
術頼りで鍛錬が足りんのだ下等超人が! ケケケーッ! このままへし折ってくれるでござる!」
勝ち誇るエドゥアルト。完全に悪役である。
「くっ、正体不明の魔物のくせに言ってくれるね……」
ニクスは苦しみながらも言葉を返す。ちなみにエドゥアルトの種族は人間である。
「!」
エドゥアルトは突然技を解いて跳び退いた。
わずかに遅れて緋色の熱線が、エドゥアルトのいた場所を貫いていく。
「接近戦に対応する手段くらい持っているさ……そうでなきゃ一人で行動などできるものか」
ニクスはそう言うと空中を滑るように移動し、エドゥアルトと距離を取る。
「デュフフフフ……今のは焦ったでござる。まさかワン・フレーズでの詠唱が可能とは……」
非常に短かったが、呪文を詠唱するのをエドゥアルトは聞いたのだ。
「ハァ……ハァ……殺されるまで無抵抗でいるとでも思ったのかい?」
ニクスは体勢を立て直した。だが、相当に足にきているようだ。
「残念だが拙者の番では殺しきれなかったようですな……だが覚えておくがいい! 最後に勝つのは我々でござる!」
エドゥアルトも悪役の台詞を吐いて一対一の勝負を中断する気だった。
「人は拙者達のことを………………。
|第六猟兵《JAEGER SIXTH 》と呼ぶ!」
そして去り際に所属を明かす。
今更だった。
それだけ言ってエドゥアルトも他の猟兵達のもとへと跳んだ。
「あーっと試合続行不可能のようです。どうやらここからは猟兵対オブリビオンの決戦に変更となる模様です!」
「……一体何に影響を受けたんだよ……」
それきり黙る実況と同僚だった。
「むっ? そこにおられるのはさてはブラエン氏?」
エドゥアルトは猟兵達の一団の中の一人に、声をかけた。
「いかにも、私はブラエンだが……」
「アノルルイ氏と同じ顔でござるなー……しかし雰囲気はまるで逆」
ブラエンは、もしアノルルイが深刻な表情をしたら、こんな顔になるのであろう、という顔に見えた。
しかし、こんなに似ているにも関わらず、正面から見て両者を間違うことはないだろうと思えた。
「息子を知っているのかね……?」
「なるほど……その辛い気持ちこのエドゥアルトマンお察しします」
沈痛な面持ちをされてしまったブラエンは思った。
息子は今、どんな世界に足を突っ込んでいるのだろうと……。
大成功
🔵🔵🔵
白斑・物九郎
おたくがアノルルイのにーさんの身内っスか
ほー、めっちゃビシッとしたカンジでやんの
『ワイルドハント』白斑・物九郎
俺めのコトは猟団長と呼べ
●エルフと協力
・【砂嵐の王・死霊大隊】発動、マイ飛空艇『ワイルドハント号』をカッ飛ばし戦場へ
・呼びに来たエルフの人らを乗せ、方角も示させ、急ぎ駆け付ける
●戦闘
・こちらに注意を惹く企図で、船の威容をデカデカ見せ付けるようニクスの上方に付く
・船底を盾代わりにビームを受けつつ急降下、船体ごとブチ当たりに行く
・手勢の幽霊に艦載武装を扱わせ追加攻撃、またエルフの人らにも弓系・バリスタ等の器械兵器を「使ってもいっスよ」って丸投げ
・味方の攻撃に紛れ接近、己も直でブン殴りに行く
その時……。
里の木々すれすれに、巨大な影が飛来した。
死の象徴たる髑髏を掲げ、周囲に威圧感を撒き散らすそれは、空を征く海賊船だった。
その名を、飛空艇『ワイルドハント号』。
白骨の女神像が飾られた船首の上から、誰かが大声で呼び掛ける。
「父上ェェーーーーーーーーーー!!!!!」
エルフの呪い師、ブラエンの娘ラルウィンは、飛空挺船首からブラエンの姿を確認した。
「よかった! 父上は無事です! 猟奇団長!」
「俺めのことは猟団長と呼べ。何ですよ猟奇団長って」
兄に勝るとも劣らぬ変なエルフだ、と白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は思う。
彼こそがこのワイルドハント号の船長にして、旅団ワイルドハントの『猟団長』。
三千世界より群れ集う超常の猟師達の長である。
「心強いです、『ワイルドハント猟奇兵団』」
「変な接尾語を付けんなってんですよ。別に猟奇的な団じゃねぇっての」
ラルウィンは思い込みで変な間違いをしていた。彼女がここにいるのは、ニクスの出現を告げにきたエルフの戦士が、外の敵に対応していた物九郎に告げ、ワイルドハント号で向かうところにラルウィンも居合わせて同乗したからである。
「……ま、狩りの標的は決まってますからな。
ちゃっちゃと狩って終わらせるとしましょうや」
「……あんなでかい物を持ち出してくるとはね」
精隷使いニクスは、上空のワイルドハント号を見上げる。その顔に、邪悪な笑みを浮かべて。
「落とし甲斐があるよ!」
十本の指全てから、凝縮された熱量を放つ。
灼熱の熱線がワイルドハント号の船底に触れると、それは緋色の軌跡を描いて燃えた。
「ケッ、んなモンで焼けるほどヤワじゃねえっての」
しかし物九郎は構わずに船を進ませる。
すでに船底の表面は火に包まれていたが、ニクスの真上まで来ると、急降下する。
「突っ込んで来る?!」
ニクスは回避。下敷きにはできず、ワイルドハント号は轟音をたてて地面に不時着する。
「|死霊大隊《ネクロトライブ》! かかれェェェ!!!」
「ウオオオオオオォォォォォ!!!」
物九郎の一声で、カトラスや槍で武装した、乗組員である狩猟好きの幽霊達が出撃し、ニクスを包囲せんとする。
「我々も行くぞ!」
誤射を避けるため近接武器を手にしたエルフの戦士達もそれに加わる。猟兵を呼びに行き、声をかけ終えた者達だ。
「エレメンタル・ファンタジア……水の集中豪雨!」
ラルウィンはユーベルコードを発動し、船の燃焼部分の消火にあたった。
「数で攻めるのかい? こちらは一人だが……スルトの焔は大量虐殺兵器だぞ!」
ニクスはすべての指から熱光線を飛ばし、幽霊やエルフの戦士達を焼き払おうとする。
「ところがよぅ、こちとらすでに死んでんだ。今さらそんなモンにビビってられっかってんだゼハハハハハハ!」
「ホロホロホロホロホロ!」
「キョーーーーーーーッキョッキョッキョ!」
何せ各世界から集った幽霊達。
それぞれ奇怪で幻想的な笑い声をあげた。
とはいえ実体化した幽霊達も焼き払われれば活動不能となるので、避けなくてはならず、ニクスへの攻撃がなかなか行えないでいた。
「猟団長! あの籠です!」
ラルウィンがふいに言った。ニクスの所持している、檻のような籠を指していた。その中では炎が外に漏れでるように燃え盛っている。
「あの籠の中に強い精霊力を感じます。奴の力の源はそれです!」
「アーハ。ソイツをどうにかすりゃいいワケですわな?」
「はい。おそらくは……どこかが開け放たれればよいかと!」
「オケ」
物九郎は短く言うと、モザイク状の空間を展開させ、そこから魔鍵・心を抉る鍵を引き抜いた。
その姿もモザイクに包まれる。
猫のように素早くニクスに向かって突進した。
ニクスは幽霊や戦士達を焼こうとしていたが、物九郎の接近に気づけない。
物九郎は第六感をフルに使って熱線をかいくぐり、ニクスの眼前へと現れる。
「なっ……いつの間に!」
「『ワイルドハント』白斑・物九郎。
俺めのコトは猟団長と呼べ」
速やかに述べられる、参上の口上。
言い終わらないうちに、魔鍵を籠の隙間に差し込んだ。
90度回して先を内部に引っ掻け、思い切り引く。
ニクスの体に固定されていたそれは、裂けるように、籠の一部が千切れ、ひしゃげた。
「なっ、何てことを─────!!!」
「ニャハハ、錠を開けるのは鍵と相場が決まってますわな?」
物九郎は素早く離脱。
次の瞬間、ニクスは爆炎に包まれた。爆発の余波で、物九郎も周囲の幽霊や戦士達ともども吹き飛ばされる。
紅蓮大紅蓮の炎が上がっていた。回りの木々にも引火している。
「こ、これは! 炎の精霊が怒り狂っている!?」
「……どーするんスよ。責任とりなさいや」
慌てふためくラルウィンの傍らに物九郎が現れて、言った。
「……いや、あの場合は仕方がなかった」
二人の背後から声がした。
「父上! ご無事でしたか!」
「よくやっていただいた、猟兵の方よ。ラルウィンもご苦労であった」
「おたくがアノルルイのにーさんの身内っスか。ほー、めっちゃビシッとしたカンジでやんの」
物九郎は感想を無遠慮に口に出す。
見た目が瓜二つであるからこそ、違いが際立って見えた。
「アノルルイは息子だ。息子はどんな世界で……いや、良い。
今、奴に封じられていた火の精霊が暴走状態にある。今からそれを鎮める。ラルウィンにも手伝ってもらう。あとは……そこの者、呪い師に全員集まるよう言うのだ」
「……はっ!」
ブラエンは側にいたエルフの戦士に命じると、赤々と燃え盛る巨大な柱に向かった。
「ほんと落ち着いてるッスね。娘とは大違いッスよ」
「私ですか!? 兄上でなく!?」
「アノルルイのにーさんはあれはあれで修羅場潜ってんスよ」
「そうですか……兄上も立派に活動をしているのですね……」
ラルウィンは真剣な顔つきをしてうつむいた。
「ま、おたくも頑張ったんじゃニャーですか?
責められるようなことはしてねぇと思うッスよ。ほれ、父上が呼んでますでよ」
「あ、はい! 行ってきます!」
その後、猟兵達も手伝って、エルフ達総出の消火作業が行われた。
三日かけて炎はようやく鎮火され、エリン・グラスはいくらかの傷痕を残しながらも、平和を取り戻した。
平和になった里では、ブラエンの主催で猟兵達と里の住民を労うための宴が催された。
「またテーブルの上で踊らないでくださいよ父上!」
「止めてくれるな娘よ、宴といったら酒飲んで踊らずして如何する?!」
宴を開くと言った時のラルウィンとブラエンの会話である。
どうやらブラエンは普段は厳格だが、はっちゃける時は徹底してはっちゃける人のようだ。
やがて宴が開かれ、言葉通りにテーブルの上にあがって激しく躍り狂ったブラエンを見て、エルフ達はようやく平和が戻ったことを実感したのだった。
誰もが喜んで享受したそれを守ったのは、猟兵達の活躍によるものだ。
エリン・グラスのエルフ達は、一人残らず猟兵に感謝した。
余談。
ラルウィンは宴の席で猟兵達にアノルルイの話を聞きたがったが、ブラエンは一言として聞かなかったという。
彼の生き方に今さら影響を与え、変えてしまうことを恐れたからであった。
大成功
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