15
月光の城と花飾る鳥籠

#ダークセイヴァー #【Q】 #月光城 #月の眼の紋章

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#【Q】
🔒
#月光城
🔒
#月の眼の紋章


0




 常夜の世界に煌々と輝く城がある。
 纏う光は空に浮かぶ月明りと呼応する。
 その城塞は『月光城』と総称されていた。
 ダークセイヴァーに幾つもあるという『月光城』。
 その各地に猟兵たちの調査の手が伸びてゆく。

 そうして、ここにもまたひとつ。
 月明り帯びて輝く城に座す主の身に、月とも眼とも見えし紋章が宿っていた。

 ●

 「皆様、お集まり頂き有難う御座います」
 深々とこうべを垂れ、灰銀の髪を揺らした女が君達を迎える。
 「お初にお目にかかります。此度は私、アヴリルが猟兵の皆様をご案内致します」
 そう名乗ったアヴリル・パテル(静かなる微笑み・f35659)は、再び背筋を伸ばしたなら笑みを絶やさぬ儘話を続けた。
 「ダークセイヴァーが地下世界であると明らかになった話は、皆様お聞き及びかと存じます」
 地下世界であればこそ、人々の暮らす第四層たるその地の天は常夜に包まれ、真なる空ではないのだ。
 しかしながら、偽りの空にも『月』は輝く。それは、何故?そう疑問に思った猟兵の進言により調査の手が伸びることとなった。

 「皆様のご尽力で『第五の貴族』との戦いを優勢に進めた結果、此方の手がかりを得ることが出来ました」
 彼女が続けることには、彼らの階層……いわゆる『地下都市』のところどころに、『月光城』と総称される、城主不明の謎めいた城塞が幾つもあるという情報を突き止めたのだという。
 「その『月光城』と呼ばれる城塞は、共通点として『月の満ち欠けに呼応して輝く』という特性があるのだそうです」
 まだ不明点も多い些細な手がかりではあるものの、その存在を知れたならば調べゆくことも、これから明かしゆくことも可能だろう。
 なればこそ、その一つに向かって欲しいというのが此度の依頼である。
 「そして、月光城には、『月光城の主』と呼ばれる強大なオブリビオンが君臨しております」
 彼らは『第五の貴族』の干渉すら阻み、あらゆる存在の侵入を遮断しているという。危険な冒険となるでしょう、と続けた彼女は集う猟兵たちを一度見回した。
 その顔色に、それでも向かう意思を認めたならば、柔らかな笑みを浮かべ説明を続ける。

 「先ずは月光城内部の突破で御座います。城の内部には数多の罠が仕掛けられております、どうぞご注意下さいませ」
 彼女の知覚しただけでも『降り注ぐギロチンの刃』や『杭の仕込まれた落とし穴』等、数種類の罠が仕掛けられているという。他の侵入を遮断するという城である、それ以外の罠もあるとみていいだろう。
 「そうして、城塞を守る配下たちも皆様を襲いくるでしょう。彼女らは通常個体より強化されておりますが故、ただ迎え撃つだけでは、猟兵の皆様方でも苦戦は必至かと存じます」
 淡々と説明を続けながら、しかし、と告げた彼女の言を待てば、城に仕掛けられた罠を上手く使うことが出来たならば、戦闘も有利に進むだろうと柔らかな笑みを向けた。
 「猟兵の皆様を脅かす程の罠で御座います。強化された彼女らにも、よぅくよぅく、効くことで御座いましょう」
 そう紡ぐ彼女の表情が、どこか楽し気であるのは気のせいだろうか。

 「そうして、奥へ奥へと向かわれたなら、開けた場所に出るでしょう。其処で皆様を迎えるのは、それは美しい真白の花畑……と、鳥籠の並ぶギャラリアで御座います」
 『人間画廊(ギャラリア)』、と一言添えたアヴリルは、其処が城主により捕らえられた人間たちのギャラリアであると告げる。
 「城主の待つ玄室へ繋がる此処に捕らえられた人々の救出も、お願いしたく存じます」
 捕らえられた人間たちは、抵抗することなく鳥籠に納まり虚ろな状態ではあるが、生きている。抵抗のそぶりを微塵も見せないのは、花畑に咲き誇る花々の効果だという。
 「鳥籠をも飾るように咲く真白の花々には、身の自由を苛む神経毒と幻覚の作用があるので御座います」
 それは猟兵である皆々様にも等しく作用する罠の一つでもあるのです、と彼女は言う。
 花の見せる幻覚は人によって異なるといい、心地よいもの、苦痛を伴うもの、それは踏み入れてみないと判らない。幻覚と神経毒の双方でもって、鳥籠内の人々のように夢見る儘、飾り物へとそして糧へと変えられてゆくのだ、と。
 「とは言いましても、直ぐに動けなくなってしまうという事も御座いません。幻覚に対抗し蝕む毒へと適切な対処を施し、一人でも多くの人間を救い出した上で、先に待つ城主の元へとお向かい下さい」

 念を押すように告げた彼女は、思案するように一度視線を宙へ浮かせ。
 「……と、言いますのも。そのギャラリアに捕らわれ飾られている人間たちは、城主が宿す紋章の糧でもあるので御座います」
 花畑を抜けた先、城主の玄室にて対する相手は『鳥籠の主人』と称すひとりのヴァンパイアであるのだが、『月光城の主』として、眼球と満月を組み合わせたような『月の眼の紋章』をその身に融合しており、その戦闘力は格段に強化されているというのだ。それは、猟兵の力をもってしても到底敵うものではない、と彼女は言う。
 「ですが、先も述べましたように、その紋章の糧はギャラリアに捕らわれた人間たち、です」
 つまりは、『人間画廊』から人々を解放することこそが、人助けのみならず城主攻略の鍵となるのだという。淡々と続ける彼女の言う事には、解放する人間の生死は問わないというが……そこは皆様方の状況とお心に委ねますわ、と彼女は笑み添えた。
 「解放するほどに効果は弱体化し、捕らわれの半数を解放すれば、紋章による強化の力は失われるとされています。ただ……紋章から独自に繰り出される攻撃については、尚存在するといいますから、どうぞお気をつけ下さいませ」

 今告げられることは以上だと、説明を結んだ女は集う猟兵たちを見回した後。
 「これ程までに手の込んだ場所で御座います。『月光城』にはおそらく何らかの意味があるのでしょう」
 どうぞ、その謎を解き明かす一手として、かの地の攻略をお願い申し上げます。
 そう告げたアヴリルは、再び深々と頭を下げ、集う面々を月光と呼応せし城へと送り出したのだった。


四ツ葉
 初めまして、またはこんにちは。四ツ葉(よつば)と申します。
 此の度は当オープニングをご覧頂き、有難うございます。
 未熟者ではございますが、今回も精一杯、皆様の日々を彩るお手伝いが出来ましたら幸いです。

 それでは、以下説明となります。

 ●シナリオ概要
 ダークセイヴァーにおける月の謎を追う【Q】シナリオです。
 『月光城』と呼ばれる、月の満ち欠けに呼応して輝く城塞の一つを調査、其処に君臨する『月光城の主』を撃退しましょう。

 ★各章について。
 第1章:集団戦『黒い薔薇の娘たち』
 主の配下である『強化オブリビオン』達がうごめく、月光城の内部を突破しましょう。
 襲い来るのは領主ヴァンパイアに仕えている少女型オブリビオンたちですが、その個体は通常より強化されており、ただ迎え撃つのみでは苦戦を強いられます。
 また、城内にはあらゆる罠が仕掛けられています。アヴリルの告げたものに限らず数多のものが仕掛けられておりますので、プレイングにて指定頂いてもOKです。それらに対処し、また逆に利用しながら強敵の群れを撃破して先を目指してください。

 第2章:冒険『まどろみの花畑』
 主の玄室に続く、『人間画廊(ギャラリア)』を突破します。
 この城のギャラリアでは、数多の人間たちが様々な形をした鈍色の鳥籠に閉じ込められており、周囲に咲き誇る花々の神経毒と幻覚に苛まれながら『生きながら捕らえられて』います。彼らの救出に成功したら、ひとまず安全な場所に隠れてもらい、城主の撃破に進みましょう。
 ただし、この地に咲く花の神経毒や幻覚は足を踏み入れる猟兵たちにも作用します。それに対処しながら如何に多くの人間たちを解放出来るかが鍵です。
 この章で救出できた人数により、3章ボスの強さが変わります。

 第3章:ボス戦『鳥籠の主人』
 この月光城の主である、ひとりのヴァンパイアとの戦闘となります。
 この城の主となったのも戯れの一つのようで、彼からの情報入手は期待できませんが、撃破し城を解放することにより、城自体の調査が可能になったり先の助けとなるでしょう。
 本来の能力に加え、『月光城の主』としてその身に宿す『月の眼の紋章』の力によりその戦闘力は「66倍」に激増しています。しかし、2章ギャラリアにおける救出活動の成果如何で、紋章による強化能力を弱体化~無効化が可能です。ただし、強化能力が失われても、紋章自体から繰り出される追加攻撃の対処は必要となります。

 ●プレイングについて
 OP及び各章公開後、MSページ及びタグにて、受付開始日をお知らせ致します。
 受付前に頂いたものは、お返しとなりますのでご注意ください。
 受付の〆についても、同様にご連絡差し上げますので、お手数をおかけいたしますが、プレイング送信前にご確認下さい。
 今回は各章やや早めの運営を想定しております。
 募集期間も採用人数も少なめとなるかと存じますので、ご理解くださいませ。

 有難くも想定より多く目に留めて頂けた場合、採用出来ない方が生じる可能性もございます。
 決して筆が早い方ではありませんので、全員描写の確約は出来ませんことを念頭に置いて、ご参加頂ければ幸いです。
 また、その場合は先着順ではなく、筆走る方から順に、執筆可能期間内で出来る限りの描写、となりますので、ご了承頂けますよう、お願い申し上げます。

 ●その他
 ・同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)とID(f○○○○○)】又は【グループ名】のご記入お願いします。キャパの関係上、今回は1グループ最大『2名様』まででお願い致します。また、記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・逆に、絶対に一人がいい。他人と組んでの描写は避けたい、と言う方は【絡み×】等分かるように記載して頂ければ、単独描写とさせて頂きます。記載ない場合は、組んだり組まなかったりです。
 ・グループ参加時は、返却日〆の日程が揃う様、AM8:31をボーダーに提出日を合わせて頂ければ大変助かります。

 では、此処まで確認有難うございました。
 皆様どうぞ、宜しくお願い致します。
77




第1章 集団戦 『黒い薔薇の娘たち』

POW   :    ジャックの傲り
戦闘中に食べた【血と肉】の量と質に応じて【吸血鬼の闇の力が暴走し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    クイーンの嘆き
自身に【死者の怨念】をまとい、高速移動と【呪いで錬成した黒い槍】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    キングの裁き
対象のユーベルコードを防御すると、それを【書物に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:シャチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…月光城ね。確かに地底世界に月があるのは不思議だけど…

…正直、故郷が実は地の底だったという衝撃が強すぎて、そこまで頭が回らなかったわ

土の精霊を降霊した「精霊石の耳飾り」を使い精霊の視力を借り受け、
壁や床内の金属製の罠や部品を暗視して索敵を行う

…吊り天井に落とし穴、仕掛け弓にギロチンまであるのね

過去の戦闘知識と第六感が捉えた殺気から敵の行動を見切り、
攻撃を受け流した勢いを利用して敵の体勢を崩して掴み、
罠の方向へ怪力任せに敵を投擲しつつ切り込みUCを発動

…我が手に宿れ、光の理。邪まなる者を滅ぼす刃となれ

発動した罠に魔力を溜めた手で触れて武器改造を施し、
光属性攻撃の魔剣で敵を乱れ撃ちする追撃を行う


ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK

月光城…
月に関わるのなら、もしかして、人狼の謎にも、迫れるかも?
【勇気】を出して、潜入なの
お城自体が月の影響を受けるなら、満月の魔力を扱うぼくに、有利な場面があるかもなの

まずは、魔術陣を展開して床からお城を【ハッキング】
【索敵】と罠の【情報収集】なの
これで【地形の利用】がしやすいの

あとは、進むルートに絞って【ジャミング】
ぼくのUCの迷宮で上書きして、乗っ取るの
内装も罠もそのまま利用して、魔力も吸収しちゃうの

目的地に進みながら、
攻撃は【誘導弾】の雷【属性攻撃】魔術を【多重詠唱】して【乱れ撃ち】
適宜、罠も作動させて倒していくの

ごめん、進まないといけないから、大人しくしててね?



 ●

 夜の闇に包まれたダークセイヴァー。
 その第五層におけるこの地にて、ぽうと光帯びた城が佇んでいる。
 「……月光城ね。確かに地底世界に月があるのは不思議だけど……」
 輝く城を前に、そうぽつりと言葉を零したのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
 「正直、故郷が実は地の底だったという衝撃が強すぎて、そこまで頭が回らなかったわ」
 今己を包む闇も、地下であるが故の色なのかと、その眸をつ、と細めた。
 今まで生きてきた己の認識を覆す、新たに齎された情報を裡に落とし込むのはそう容易くはない。

 思案気に佇むリーヴァルディの近く、同じく物思う色を宿し月明りの城を見上げているのは人狼の少年。
 「月光城……月に関わるのなら、もしかして、人狼の謎にも、迫れるかも?」
 その胸の内に広がるのは、己の身を人狼たらしめる病のこと。
 ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、自身の身を思うよに両の掌を見つめたのち、再び月光の城と向き合った。
 「……お城自体が月の影響を受けるなら、満月の魔力を扱うぼくに、有利な場面があるかもなの」
 未知の地への不安を押しやるように、希望の言葉を口にしたなら、瞳に宿す光に勇気を灯し、彼は目前の城へ潜入の一歩を進めゆく。
 傍の猟兵が歩みゆくのを見て、リーヴァルディもまた巡る思考を一時止め、毅然とした眸を前へ向けたなら、城の明り受け煌めいた銀糸の髪を揺らし城内へと踏み込んだ。

 足を踏み入れた城内は、しんと静まり返っている。
 廊下を照らす照明は煌々とその道を照らし、足元には質のよさそうな絨毯が敷かれ、一見普通の城のようにも思える。
 しかしながら、ここが『普通』でないのは知ったこと。
 何の変哲もない廊下であろうと、むやみに一歩を踏み出すわけにもいかない。
 同道していた猟兵ふたりは、互いに顔を見合わせれば頷きあい、其々の持つ術で潜まされた罠や城内の空間把握を試みる。
 先に口を開いたのは、ロランだ。
 「ぼくの術で、お城のハッキングを試してみるの」
 その間、警戒を頼めるだろうかと問う彼へ、言葉少なながらも確かにリーヴァルディは頷いた。
 その手を今立つ床へと軽く触れたなら、集中するようにその眸を細め、小声で術式を展開してゆく。
 力を通じ伝わる城内の空間情報を、ロランは自身の電脳魔術の力をもって解析してゆく。
 その最中、ぱちんと何かに阻まれる感覚がする。
 特殊な城である為だろうか、一度に城内全ての読み取りは叶わなかったようだが、それでも、今立つこの地からある程度のルートまでの把握と、その範囲内のラビリンス化は可能となったようだ。

 己の持ちうる力で可能となった内容をリーヴァルディへ告げたなら、彼女は解したように頷いて己の身に着けている精霊石の耳飾りに触れた。其処に土の星霊の力を降し暗視した現状を、自身の力でも確認すれば。
 「……吊り天井に落とし穴、仕掛け弓にギロチンまであるのね。力の及ばなかった部分については、私の力でも補う」
 だから、と。先ずは先に進むことを進言し、目の前に仕掛けられた罠床を避けふたりが一歩踏み出した瞬間。

 ――……避けて!

 借り受けた精霊の視野、そして歴戦の戦闘知識をもってリーヴァルディが声を上げると同時、ロランもまた己の空間把握能力によって知覚した敵の存在を感知し地を蹴り、ふたりは立っていたその場を離れた。
 其々に、避けた先の地へと足をついた時、先ほどまで立っていた床は、絨毯のみならずその下の硬い石床をも抉り、黒槍が突き刺さっていた。
 「あら。あら、あらぁ!今のを避けるなんて……今日の玩具は、そこそこ楽しめそうねぇ?」
 「ただのネズミじゃなさそうじゃない。今回はどれくらい遊べるかしら」
 くすくすと笑うふたりの少女が、ふたりの前に現れた。
 楽し気な笑みに、ゆらゆらと手にした羽ペンを揺らす様は無邪気な少女の其れでいて、滲み出る殺気は彼女らが強敵であることを物語っている。

 リーヴァルディとロランもまた、即座に迎え撃つ構えを取ったなら、バチ、と音を立て雷属性の魔弾が複雑な軌道を描きつつ、黒き薔薇を飾った少女の一人へと飛翔してゆく。ひとつ、ふたつと数を増し乱れ飛ぶ魔弾を少女は軽やかにドレスの裾を翻し避けてゆく。
 「まぁ、ふふ。綺麗な光ねぇ、私たちを歓迎してくれるの?」
 くすくすと笑みを絶やすことなくまるで舞うかのように避けゆく少女の余裕は、その身が強化されているが故だろう。
 しかし、その余裕が油断に繋がる事も往々としてあるものだ。楽し気に、ひらりひらりと少女が避けゆくその先、見越したように突如壁面が開き、内部から幾重もの槍が発射された。
 「――……なっ!?」
 罠作動のスイッチに触れたわけでもなく、己へと向かい来る数多の槍に不意を突かれた少女の身を、慈悲もなく槍先が深々と突き刺し貫けば、その勢いの儘壁へと磔とした。
 信じられないといった様相で、かはっ、と息を吐く少女を見つめているのは、壁に手をついたロランの眸。
 そう、この地は彼のラビリンスとしてハッキングの叶った空間だ。その内であれば罠の作動も彼の任意で行える。
 「ごめん、進まないといけないから、大人しくしててね?」
 口から血を吐き苦々しい目で見つめる少女へとそう告げたなら、太き槍で身動きのとれぬ彼女の体力と魔力を奪いゆく。

 少女の一人が戦闘不能となった姿を見て、もうひとりの表情が変わった。余裕の笑みから、ぎり、と奥歯をかむよな表情へと変えた彼女は癇癪を起こした子のように、怒気を隠さぬ儘ロランへ向かい地を蹴った。
 ……が、その軌道上に現れたのはリーヴァルディだ。
 「――……私を無視して、何処へ?」
 立ちふさがる様に現れた己へ向かい勢いづいた少女の身を、軽やかに、そして流れるように受け流したなら、彼女の纏っていた勢いの儘、リーヴァルディは掴んだ彼女を怪力任せに投げつけた。
 其の儘、地に背を打ち付けるだけでも苦痛を伴うような投擲ではあれど、それだけでは済まない。
 リーヴァルディの投げつけた先、其処には彼女が感知した底抜けの罠が待ち構え、軌道上には仕掛け弓も待ち受けている。先に放たれた仕掛け弓の一つにリーヴァルディは、魔力を溜めたその手を伸ばす。

 ――……我が手に宿れ、光の理。邪まなる者を滅ぼす刃となれ。

 静かに唱えられた言の葉とともに、矢に流れ込んだ魔力は彼女の力によって武器改造を施され、幾本もの煌めく光を宿した魔剣へと生まれ変わる。
 「さようなら」
 目の前に生まれゆく光の剣を見開く眸に映し、黒薔薇の少女は口を開けた底抜けの罠へと落ちてゆく。
 彼女を待つのは背を襲う数多の杭と、視界を覆う煌めく光刃の雨。
 数刻前の余裕な笑い声は何処へ呑まれたか。静寂を切り裂くような断末魔とともに深き穴の底、彼女は事切れた。

 一戦を終えたふたりは息を整えた後、再び罠や配下を警戒しながら奥へと進みゆく。
 まだ城内探索は始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

岩倉・鈴音
吸血鬼とか中世みたいな世界だな此処は。鋼の魂をもつわたしが月光城のナゾに挑ませてもらうよンッフッフ。

罠については罠使い持ちの勘でちょっと雰囲気違うかも?なところは暗視とかでよく見回す。踏んだら起動しそうだから空中機動で通りすぎてみようかな。
罠起動する場所がわかればメモして薔薇の娘を誘い込んだり。

戦闘は娘さん達が集まってきたら土蜘蛛の檻をつかうつもり。
罠には罠だね。
腕力なくなったところを先制で切り込んで攻撃しまくる。オーラ防御や盾受けで守りながら斬撃破を放つ。主に鋼鉄の鬼が吸血鬼を喰らいに来た、そう伝えるんだな。脳と脊髄以外血肉を持たぬ機械の体に牙を立てられるなら立ててみろ!(貫通させながら)



 ●

 踏み入った城内をくるりと見渡し、岩倉・鈴音(JKハングマン・f09514)は、ほぅ、と一息。
 「吸血鬼とか、中世みたいな世界だな此処は」
 己の生きた世界での知識と照らし合わせれば、素直に浮かんだ感想を言の葉に乗せ、湧き上がる好奇心の儘、にぃ、と笑みを浮かべた。
 「鋼の魂をもつわたしが、月光城のナゾに挑ませてもらうよンッフッフ」
 思わず漏れいでる笑いを抑えられぬまま、解き明かす謎へ想いを向け、彼女は一歩奥へと踏み出した。

 石造りの廊下がむき出しとなった彼女の侵入した経路はやや薄暗く、通用口のような場所。
 如何にもといった雰囲気にも、潜む謎を感じるかの如く、鈴音の浮かべる表情はどこか楽し気なものをも含んでいる。しかし、決して油断をしているわけでもなく、己の持つ罠使いとしての技能と勘を駆使し、周囲の壁や床、飾り物から受ける違和を注意深く観察し、その在処を探っては危機回避を行っている。
 「おっと、この床はなんだか怪しそうだね?」
 一見してほかの敷石と変わらぬようであるが、その組み方に違和を覚えた鈴音は軽やかに地を蹴れば、ふわりとその地を回避し通常の床へと降り立った。
 「ここもしっかりメモしておくとしようか」
 己の感知した罠の場所を、通過した城内経路と合わせて手にしたメモへと記述してゆく。
 先へ、奥へと進むことも必須であるが、いざとなれば後退し、罠の在処を把握した地にて応戦するのも必要なことだ。
 何せ地の利は相手にあるのだから、少しでも既知の場を増やしておくことに越したことはない。
 「戦いに備える用意周到さも正義の使徒には必要、ってね」
 そう、手にしたメモを懐へと仕舞おうとした最中。

 ――ガコンッ!

 何かが起動する音とともに、天井から巨大なギロチンが降り注ぐ。
 重い金属音を重ねて鳴らし落ちゆくギロチン刃を、先ほど把握した床罠を避けながら軽やかに後退し鈴音は避けてゆく。
 幾つの刃が降り注いだだろう。廊下が宛らギロチン畑のような様相へと変わった頃、きゃらきゃらと甲高い笑い声が響いた。
 「すごぉい、ぜーんぶ、避けられちゃったー!仕掛けだけで壊れちゃう玩具じゃないみたいね」
 楽しくなりそう!と、無邪気に笑う少女が一人、突き刺さるギロチン刃の上に立っている。髪に黒薔薇の飾りを咲かせた彼女は、この城の配下の一人のようだ。幼さを残す様相とは裏腹、赤い液体が滴る指を舐める様はどこか妖艶でもある。
 鈴音がその指先へと視線を向けたことに気づいた少女は楽しげに笑い。
 「ああこれぇ?さっきちょっとつまみ食いしただけよ?」
 こんなふうにー。と告げた彼女が壁の石を一つ押したなら、開いた壁から赤黒い染みと肉片がこべり付いた棘が顔を出し、その肉片を指先摘まめば、口へと運んだ。

 「おやつを食べて機嫌がいいの、だからぁ……」
 いっぱい遊んでちょうだい!と声を上げた少女が地を蹴り、鈴音へと肉薄してくる。
 咄嗟の行動ではあったものの、彼女の『お喋り』を鈴音もまた唯黙って聞いていたわけでもない。
 「罠遊びが楽しいみたいだけど……罠には罠、って知ってる?」
 にやりと笑った鈴音の先ほどまでいた場所には、細い細い糸の檻が施されていた。気づかれぬよう特に影の濃い場所に仕込んだその檻へと勢いづいて飛び込んだ少女が、異変に気付いた頃にはその身に蜘蛛の糸が幾本も纏わりついている。
 「な、何よこれぇ!」
 「罠を張るなら、自分が罠を食らう覚悟もしておくんだね」
 彼女の『つまみ食い』で得た力を相殺するように、そうして更に奪うように、蜘蛛の糸が少女の腕力を削ってゆく。
 そんな己の状況を気に入らない、受け入れないというように、鋭く伸ばした爪を振り回す少女の攻撃を、オーラを纏った鋼の身を時に盾とし受け流しては、手にした鋭き刃で切り込んでゆく。
 「主に鋼鉄の鬼が吸血鬼を喰らいに来た、そう伝えるんだな」

 ――脳と脊髄以外血肉を持たぬ機械の体に、牙を立てられるなら立ててみろ!

 そう少女へと叫んだ鈴音の放った残撃破が少女を襲う。防御するにもじわじわと蜘蛛糸で奪われた腕力では弾き返すことも叶わず、その衝撃波は黒薔薇の少女の身を貫く勢いでもって跳ね飛ばし、彼女を鋭き棘の待つ壁面へと押し付けた。
 つい先ほどおやつと称したかつての誰かと同じ運命を辿った少女の姿を一瞥し、武器を一度収めた鈴音は暗き廊下をさらに奥へと歩みゆく。
 謎に迫るべく、そして、先の言葉を叶えるべく。
 この城の主と見える為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

さてー、謎を解くためにも参りましょうかー。
指定UC(攻撃力強化)は常に発動でー。認識は、影にいる二匹がしてますしねー。
四悪霊の総意は言わずもがなでしてー。

(のほほん消失)
常に再生しつつ、罠突破。ああ、敵が出てきたときにはもろともに食らうことで。
罠も攻撃ですからね、範囲内ですよ。
敵、戦闘力強化できても再生はできないんですよね。
そもそも…血と肉なのか怪しいんですがね、『私たち』。
それでも来るようならば、漆黒風を投擲していきましょうか。これでも潜入暗殺は私の領域、私の仕事。
後腐れなく、行きましょうか。



 ●

 「さてー、謎を解くためにも参りましょうかー」
 各所で起動する罠の数々、配下と応戦する猟兵たちによって騒がしさを増しゆく城内。
 其の雰囲気に似合わぬよな、のほほんとした声が廊下に溶けた。声の主は馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。
 穏やかな笑みを絶やさぬまま、先に待つ罠や配下の襲撃に備え、定期的にその身に展開した術式を維持する。
 忍びとしての経験と勘で配下との遭遇は速やかに避け、避けきれぬ罠は己の身に施した術式と、一身に同居する『彼ら』と共に再生を繰り返し乗り越えてきた。
 しかし、俄かに騒がしさを増す城内は、その分警戒度も上がって行くことだろう。
 「このまま、誰にも会わず奥へ行ければ僥倖ですがー」

 ――……そうも、いかないようですね。

 そう、短く告げた義透の笑みに細めた眸が、つ、と少しばかり開かれたと思えば、鋭き爪を伸ばした少女が彼の身へ向けて飛び込んできた。
 紙一重で避けた義透を一瞥し、へぇ、と楽し気に笑む少女は黒薔薇飾る髪を片手で整えて。
 「一撃で仕留めるつもりだったのに。今日の玩具たちは骨がありそうね」
 最近、すぐ壊れちゃう玩具ばかりで飽き飽きしてたのよ?と、告げた少女はぺろりとその舌で己の唇をなぞればからころと楽しげに笑う。
 「此方としては、面倒は避けて先へ行きたかったんですけれどね」
 「あらぁ、そう言わないで。せっかくだから遊んで頂戴、よっ!」
 先ほどまでの、のほほんとした雰囲気を潜め、やれ、と吐息を零す義透へと、地を蹴る少女の攻撃が放たれてゆく。
 それをひらり、ひらりと紙一重での回避を重ねる義透の姿に、目を細めた少女は手にした羽ペンを鋭く投げつけた。
 それもまた、紙一重で避けた義透の背後、羽ペンの飛んだ先よりカチリと小さな音がする。
 「――……おや」
 耳に拾った小さな音に、義透が声を零した瞬間、にやりと笑った少女の爪が伸びゆくとともに、背後から数多の槍が発射され、義透の身は前後から串刺しとなる。
 その衝撃に、かは、と空いた声を上げる義透の様に、満足げな笑みを浮かべ、止めと言わんばかりにその身に噛り付いた少女であったが、口元に笑みを浮かべたのは義透も同じであった。

 「何を……」
 その笑みに違和を覚え、血に染まる牙を彼から外し、その言葉の先を続ける間もなく義透から放たれた棒手裏剣を、咄嗟に後退することで回避した少女は驚きの目で彼を見つめた。
 何故ならば、確かに己の爪と罠が貫いた彼のその身が、鋭き牙で齧り取った肩の傷が、みるみるうちに再生されてゆくのだから。
 「あゝ、やはり備えあれば、というものですね」
 よいしょ、と。身に刺さる槍を抜きながら、首を左右に振る義透の姿を、薔薇の少女は信じられないといった目で見つめている。
 「なん……何なのよ、あんた!」
 「なに、と問われれば、『悪霊』と返すのが正解でしょうかね」
 にこやかでありながら、どこか寒気を呼ぶような声音で告げたなら、受けた傷の再生はすっかりと済み、つい先ほどと変わらぬ姿の義透が其処に在る。
 「あなたは戦闘力強化できても、再生はできないんですよね」
 己の肉を齧り血に染まる少女の口元を見つめながら告げた義透は、あゝ、と告げ添えて。
 「そもそも……血と肉なのか怪しいんですがね、『私たち』」
 くすり、と、笑った。
 苦虫を嚙み潰したような少女の顔と、笑みを湛える義透。

 おかしい、おかしい。こんなはずじゃないのに!その表情は逆の筈なのに!
 「――……笑うのはっ、遊んでいるのはっ、私よぉっ!!」
 感情が爆発したように、ぶわ、と髪を逆立てた少女が義透へと再び飛び掛かる。
 「おや、あの姿を見ても向かって来ますか」
 ならば仕方がない、と。再びその手に棒手裏剣……この手に随分馴染んだ『漆黒風』を握ったなら、義透もまた地を蹴った。

 ――さあ、後腐れなく、行きましょうか。

 潜入暗殺は私の領域、私の仕事。
 そう己の自負を胸にこの地での戦闘を制し、彼が……『彼ら』が、更に奥へとその足を踏み出すのは、そう時を掛けぬ暫し後のこと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
僕は見た事のない景色を見るのが好きでね
正直に言うと人間画廊に興味があって来たんだ
城主様も悪趣味で結構なこと
仕事は確りこなすから心配ないよ

この城も無闇に神秘的だけれど
地球上の分類で言えば忍者屋敷だな
そう考えると急に興が削がれる
観光気分も程々にしようか

逃げ足の速さで敵をまきながら
罠も落ち着いて都度かわしていこう
簡単さ
刃が当たるより速く通れば良いし
穴が開き切るより速く走るだけだ
追ってきた彼女達には丁度当たる位の頃合いでね

死を恐れる心があれば
罠に突っ込むなんて普通出来ない
まして僕は脆い只の人間
その真贋を理解するといい

UCで恐怖心を誘発
足を竦ませ確実に罠にかける
撃ち漏らした時は仕方ない
投擲で急所を狙うね



 ●

 ひらり。この世界を包む宵色に紛れるよな、烏羽色の外套を翻し、するりと窓から侵入した一室を一瞥するのは、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)。
 煌々と光を湛え、その名の通り月光めいた外観と裏腹に、内部は至って普通の城塞然たるその様に、溢れたのは、ふぅん、と色の無い一言。
 「この城も無闇に神秘的だけれど。地球上の分類で言えば忍者屋敷だな」
 今立つこの地に至る迄、受け流してきた罠の数々を思い返せば、自ずと浮かぶ感想を音に乗せてはみるものの。其れは、見たこともない景色を見たい、と、そう抱く己の願望を満たすには反するもので。
 「……いや、そう考えると急に興が削がれる。観光気分も程々にしようか」
 スゥと、どこか冷めゆくよな心地を追い払うよに吐息ひとつ、ふるりと頭を振れば、扉の先暗く飲み込むよな廊下の先を見据えた。
 そう、この先にはもしかしたなら、裡に宿りし好奇心を満たすものが待っているかもしれないのだから。

 そうして扉を潜り抜けた章の足許へ、禍々しい黒に染まった一本の槍が突き刺さる。
 ひらりと距離を取る様に、軽やかに地を蹴り避けた章の耳に、くすくすと楽し気な笑い声が届いた。
 「うふふふ、みぃつけたぁ。今日の私の玩具さんっ」
 キラキラと無邪気な色を湛えた少女は、パチリと両の手を鳴らし合わせた。そんな彼女の様子を一瞥した章は、さも興味がないといった様子でくるりと踵を返し廊下の奥へと駆けてゆく。
 「ちょっ、ちょっとぉ!何の反応もないわけっ?」
 バカにしてぇ!と、声を上げた少女は素早く駆けては己から逃げ行く章の背を追いながら、その身へ向けて黒槍を放ってゆく。
 そんな少女を尻目に、逃げ行くままに徐に、章は口を開いた。

 「僕は見た事のない景色を見るのが好きでね」

 ――正直に言うと、人間画廊に興味があって来たんだ。

 そんな章の言葉に、彼を追う少女は瞬きひとつ。
 「……なぁに、あんた。人間の癖にアソコに興味があるわけ?」
 「城主様も悪趣味で結構なこと」
 問う少女へと言葉短に告げたなら、尚も自分へと向かう黒槍を、素早い逃げ足をもってして躱し乍ら駆け抜ける。
 仕事は確りこなすから心配ないよ、と。裡にて添えた言の葉は、この依頼を持って来た者に対してか、はたまた己に言い聞かせるものであったろうか。
 何れにせよ、結果的に成せば良いだけの事。過程を如何に味わおうが、悪たることはない。

 そうして暫し、追い逃げ躱すふたりの追いかけっこは続く。
 駆ける足を止めぬ儘、その速度を落とさぬ儘に、黒槍の追撃を避けながら罠の仕掛けられた廊下を奥へ奥へと真っすぐに。
 そう、唯々、真っすぐに。
 天井より落ちるギロチン刃も、乗る者を吞み込むよに口を開く仕掛け床も、まるで其処に在ることなど意に解さぬように駆けてゆく。
 あゝ其れは、章にとっては簡単なことなのだ。刃が当たるより速く通れば良いし、穴が開き切るより速く走るだけ。
 そう、叶う事ならば、追ってきた彼女には丁度当たる位の頃合いで。
 そんな章を追いながら、少女もギリギリのところで罠を躱して彼を追従する。
 この城に住まうが故に、罠の位置をある程度把握しうるが故に、そうしてそれを叶えるだけの力を持ちうるが故に為せること。
 しかしながら、少女は彼を追いながら、徐々に違和を覚えてゆく。
 死を恐れる心があれば、罠に突っ込むなんて普通は出来ない。けれど、目の前の章と言う人間は、さながら恐怖を捨てたよに、己を襲い来る罠に真正面から飛び込んでゆくのだ。
 「あんた、ホントに人間……?」
 思わず溢れた少女の純然たる問いに、今し方すり抜けた罠の向こう、どこか儚げでいて美しい笑みを浮かべた章が振り向いた。

 ――さあ、きみはどうだと思う?

 投げ掛けられた言の葉で、不意に襲いくる恐怖。
 じわりと裡から湧き上がれば、瞬時に身を蝕むような。思わず足が竦み、動きが止まる程の其れは、一体何から来るものか。
 そんな思考が廻りきるより先、紙一重を避ける間を奪われた少女は、ハッとするいとますら無く鋭き罠に喰われ飲み込まれた。
 その様を静かに確認した章は、万が一仕留め損ねた時のためと、仕込んだ鋏へ伸ばした指先を、緩やかに下ろした。

 ひと先ずの静けさを取り戻したこの廊下をくるりと見渡し、章は一歩奥へと踏み出す。
 今は罠と配下ばかりの興を擽らぬこの城内も、先へ向かえば心の琴線に触れるものがあるだろうか。
 その答えは、実際に己で目にしてみないと分からない。
 「人間画廊、か」
 それが期待に添うものであればいい。
 ほんの少し口端を持ち上げた章は、奥へと続く暗き廊下へと漆黒の身を溶け込ませていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティフティータ・トラーマ
「地下世界と偽りの空ね。あそこも月が綺麗だったけど…。」
故郷?を思い出しつつ城へ
「これは…罠の城って言いたくなるわね。ま、殆どが触らなければ問題ないし…と、流石に扉関係は無視できないわね。」
空中浮遊で罠を回避して進むが、罠扉に足止めされ
「開けたら落し穴、ならいいんだけどコレは…うーん?トリガーだけって事は奥からナニか来るのかしら?」
徒のアラームの筈もなしと、糸で離れて開ける仕掛けを作り
「そろそろ追いついて…と来たわね、身代わりよろしく。」
現れた黒薔薇娘の攻撃を、体勢を崩し受け流しつつ扉を開けて、罠に突っ込ませたりと罠利用します。
「この娘達も可愛いし遊びたいけど…まあコレが終わってからよね。」


フォルク・リア
「月の満ち欠けに呼応して輝く月光城か
確かに何かしらの手掛かりがありそうだ。」

敵を前にしたらグラビティテンペストを発動。
斥力で身を守り。重力を操り僅かに宙に浮き
落とし穴などの罠を発動させない様にする。
ギロチン等飛来する罠はグラビティテンペスト
発動の為の材料として微粒子に変換。

敵にはファントムレギオンや
呪装銃「カオスエンペラー」から放たれる
死霊による銃撃で攻撃。
銃撃で敵をマヒ状態や幻覚を見せる事に成功したら
グラビティテンペストに使用したギロチンを
元に戻しそれで攻撃。
残る敵には重力を操作し加速して接近。
掌に【全力魔法】で重力弾を作り出し
至近距離から攻撃。
極力ユーベルコードを防御されない様に立ち回る。



 ●

 明けぬ宵の色を常帯びるこの地を眺める、一人の女。
 「地下世界と偽りの空ね。あそこも月が綺麗だったけど……」
 己の故郷とも呼べるだろうか、裡に浮かぶ世界の月へも思い馳せ、天を仰ぎそう呟いたティフティータ・トラーマ(堕天使の剣舞暗殺者・f29283)の声を受け、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)もまた、視線を擡げた。
 煌々と、月明りを放つよに輝く月光城。
 眸にその姿を映したならば、その城が内包するであろう謎へと彼は思いを向ける。
 「月の満ち欠けに呼応して輝く月光城か。確かに何かしらの手掛かりがありそうだ」
 これより己たちが向かう先へと、各々の思いを抱いたならば、既に侵入した猟兵たちによって静寂を欠いた城内へと、ふたりもまたその足を踏み入れてゆく。

 そんな彼ら彼女らの目に映るのは、城内に仕掛けられた数多の罠。
 先行した者の通った道には、地に突き刺さったギロチン刃、剝き出しになった針の壁、既に起動した罠の残骸が残されており、それを横目に見ながら駆け抜ける。
 「これは……罠の城って言いたくなるわね」
 その視界に映る光景に、ティフティータは思わず声を漏らすも、其処から得られる情報もまた冷静に分析してゆく。
 「でも、ま、殆どが触らなければ問題ないし……」
 廊下で目にした罠の殆どは、壁や床に仕掛けのトリガーが組み込まれているように見受けられた。
 その情報を同道するフォルクとも共有し、未踏破の道を探るべく、経路を選択したふたりの行く先。
 極力罠を作動させぬようにと、ティフティータは翼を使った空中浮遊の手を駆使し、フォルクは自身の持ちうる術の力で剥き出しとなった棘やギロチン等を糧と変え、重力操作で己の身を浮かせて先を急ぐ。

 そんなふたりが足を止めたのは、重厚な扉の前。
 意味ありげなその扉は、続く道が重要なものであるように感じさせるも、それ故にむやみに触れることを躊躇う様相だ。
 「先へ進むとなれば……扉関係は無視できないわね」
 開けたら落し穴、ならいいんだけどコレは……と、経験と勘を照らし合わせた彼女の導き出した答えは、この扉そのものが何らかの罠のトリガーとなっているという事。
 この扉を開けることによって、奥から何らかの罠が作動するのではないかと推測した。
 放たれる物が無機物の罠であればフォルクの力で無効化ができるが、そうでなかった場合は厄介だ。
 ふたりは話し合った後、配下たちを身代わりとする手を選択することとした。敵戦力を削ぎ道を開く、一石二鳥だ。
 「でも、少女たちってこの城のこと把握してるんじゃない?そう簡単に掛かってくれるかしら」
 「其処は俺が何とかしよう」
 そう告げたフォルクが彼女に見せたのは、彼の手に納まった一丁の銃。
 『カオスエンペラー』と彼が呼ぶ其れに込められしは死霊の弾丸。物理的な攻撃のみならず、マヒや幻覚といった呪詛の効果をも及ぼすものだ。
 「これで与える幻覚を使えば誘い込むことも可能だろう」
 「オーケー、じゃあそれで行きましょう」

 簡単に策を打ち合わせたなら、ふたりは先と同様に罠の起動を避けながら少し道を引き返し、配下たる少女たちとの遭遇を図る。
 そうしてそれは、さほど時を待たず叶う事となる。黒薔薇の少女たちもまた、城内を騒がす猟兵たちを探し動いていたが故だ。
 「あーっ!見つけたわよ!こんな奥まで入り込むなんて……!」
 「なんて無作法なのかしら!主様のお手を煩わせるわけにはいかないのにっ」
 さっさと壊れちゃいなさいよ!と、既に頭に血が上った様子の彼女らは、彼らにとっては好都合の相手だ。
 「なんだ、お前たちが無能だからじゃないのか」
 此処まで然程苦労はしなかったぞ、と。加えて挑発めいた言葉を投げかけたなら、目に見えて明らかな程顔を真っ赤にした二人の少女がフォルクに向かって突進してくる。
 怒りに身を任せた行動は、冷静な相手よりも読みやすい。
 重力操作で浮かせた身は其の儘に、二人分の突進を躱したなら、追って来いとでもいうようにその身を翻し、先の扉に続く道を駆ける。
 「ちょろちょろ忍び込んだネズミの癖して……私たちを馬鹿にして!許さないんだから!」
 「逃げるんじゃないわよ!この……!」
 怒りに任せた少女たちが投げつける黒槍を、斥力を駆使して弾き返したなら、フォルクは廊下の角を折れた。
 其の陰に潜み待ち構えていたティフティータが、少女たちの姿を目に留めると同時、仕掛けと繋いでいた糸を引く。
 「なっ!」
 「あっぶないっ!」
 発動した罠から放たれた矢の雨を少女たちはすんでの所で躱すものの、その身には隙が生じる。その瞬間を見逃すはずもなく、フォルクの放った弾丸がふたりの少女を捉えた。
 直撃した痛みは有るものの、強化された少女たちの身に響くダメージとしては、そう大きいものではない。
 「なによ、この程度」
 「痛くも痒くもないわよっ!そっちの女も私たちを罠にかけようだなんて」
 許さないんだから!と、激昂する少女たちは再び踵を返したフォルクと、合流したティフティータの背を追う。
 しかし、彼女たちは気づいていなかった。先に受けた死霊の弾丸が、彼女たちに幻覚を見せ始めていることを。

 強化された身である少女たちに複雑な幻覚は効かないかもしれない。故に込めた其れは至極単純なものだ。
 フォルクたちの逃げ行く道が、彼女らが追いゆく道が、かの扉の先に続くものとは異なる道行に見えるもの。
 彼女らを誘い込み逃げ行くふたりの目の前には、既に先の扉が見えているが、少女たちには扉無き廊下に見えている。
 ティフティータとフォルクが顔を見合わせ頷いたなら、策も大詰め。
 フォルクが重力操作で加速した身で瞬時に少女らの背後を取れば、そのまま掌に作り出した全力魔法の重力弾を彼女らの背に打ち込んだ。
 至近距離で背後から放たれたそれは、不意を突いた少女らの身を扉の眼前まで吹き飛ばす。
 直後、扉の直線上から避けるよに壁際に避難した彼の姿を確認したなら、同じく壁際に控えたティフティータが予め仕掛けておいた糸を引き扉を開いた。
 それと同時。
 開いた扉の向こうから漆黒に染まる魔力の塊が放たれたかと思えば、その真正面にいた少女二人を易々と飲み込んでしまった。
 悲鳴を上げる間もなく、ふたりの黒薔薇の少女たちは闇の力に呑まれゆき、暫しの後、渦巻いた闇色の魔力は彼女らがいた痕跡を何一つ残すことなく消えてしまった。
 一瞬の出来事に、ひとつ、ふたつと瞬いたティフティータが、対の壁面に居るフォルクと顔を見合わせて乾いた笑いを零しつつ。
 「――……自分たちで開けなくて、よかったわね?」
 「……そうだな」
 頷きあったふたりは、念のため扉に追加の効果がないか確認をしたのち、何もないことを認めその先へと足を踏み入れた。

 一度、振り返ったティフティータがぽつり、と。
 「あの娘達も可愛いかったし、遊びたくもあったけど……」
 まあ、コレが終わってからよね。そう、独り言ちたなら。
 潜り抜けた扉の先、歩みゆくフォルクの背を追い、城のさらに奥へと向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
絶対に助けてやろうぜ、アレス
悪態をつきたい気持ちをぐっと飲みこみ
先ずは囚われてる奴らを助ける、為にぶっ飛ばす!
歌で身体強化、靴に風の魔力を送ったら
ダッシュで先制攻撃だ
炎の魔力を込めて斬りつける

あ~!くそっ罠ばっかで戦い辛ぇ!
いっそ全部ぶち壊す…
楽な方に思考が流れるも
アレスに策があるならそっちの方がいいな
OK、任せた
歌い上げるは【囀る籠の鳥】
敵を引き付けるだけ引き付けて
旋風を足元で炸裂させ全速力
アレスの声に合わせ呼ぶ方へ
そこに何があるかなんて関係ない
アレスが大丈夫っつーなら大丈夫
絶対の信頼で飛び込んだ

ナイス、アレス
信じてたなんて
言わなくても伝わるだろうから
代わりに拳を合わせよう


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

“此処にも”鳥籠に囚われている人々がいて
彼らを囚えた外道がいる
…怒りが心に満ちる
同時に…必ず助け出す決意もある
ああ、勿論だ。セリオス
【絶望の福音】で敵の行動と罠の出現を予測し
彼に向かう攻撃は盾で防ごう

…確かにこれは少々骨が折れるね
セリオス、ここは僕に任せてくれないか
君は思い切り歌ってくれ
…大丈夫
僕が君を守り、導いてみせる

予測を駆使して
セリオスに敵と罠の回避の指示を出しながら誘導
彼を援護するように
剣から光の衝撃波を放とう
予測したギロチンの罠の前まで辿り着けば
セリオス!!
飛び込んでくる彼を受け止め急停止させ
敵は罠へと飛び込ませよう

君もね。セリオス
信頼には信頼を
彼と拳を合わせよう



 ●

 この地の話を聞いた時、真っ先に過った感覚は、怒り。
 あゝ、“此処にも”鳥籠に囚われている人々がいて、彼らを囚えた外道がいるのだ、と。
 アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は心に満ちたその感情と、同時に必ず助け出すという決意も裡に宿し、隣立つセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)へと視線を向けた。
 その視線を受けたセリオスもまた、アレクシスの青き眸を真っ向から見つめ返す。
 彼もまた、かの地に捕らわれる人々の状況を思えば、そして其処から繋がるものを思えばこそ、悪態をつきたくもなるものの、その気持ちをぐっと飲みこみ、浮かべるは笑み。
 紡ぐ言の葉には己の内に抱く想いを、そうして彼への信を真っすぐに乗せて。
 「絶対に助けてやろうぜ、アレス」
 「ああ、勿論だ。セリオス」
 セリオスから届くものをしかと受け止めるからこそ、アレクシスの言の葉もまた、力強き音が乗る。
 互いに顔を見合わせて、大きく一つ頷いたなら、揃って一歩を踏み出した。

 「先ずは囚われてる奴らを助ける、為にぶっ飛ばす!」
 装備したデバイス越しに囀るような歌声で、己の身体強化を施し、靴に風の魔力を纏わせたセリオスが視界に捉えた少女の一人へ先制攻撃を仕掛ける。
 既に先行した猟兵たちの通過した廊下は、罠の残骸が散らばっているが、すべての罠が起動済みとも限らない。
 少女に肉薄したセリオスの右側が、キラリと光る。
 壁より発射される矢の存在に薔薇の少女がにやりと笑った瞬間、金属同士のぶつかり合おう音が響き、彼に右には矢の代わり、盾を構えるアレクシスの姿があった。
 セリオスを狙う罠を阻む彼の完璧なサポートは、運命を変えるべくとその身に宿した未来予測の確かな力と、そしてなにより、彼と共に重ねてきた日々の賜物。
 「ナイスだ、アレク」
 「当然だろう。――セリオス、其のまま真っすぐだ」
 「オーケー」
 言葉短かにしかし確かに、伝わりあう互いの心は頼もしくも暖かい。
 受ければ応える、それはセリオスもまた同じ、握る剣に炎の魔力をも乗せたなら、風に乗る勢いの儘少女の身を切り伏せて突き飛ばす。そう、アレクシスの告げた『其のまま』に、少女の背後に口を開けた落とし穴へと。

 そうして駆け行くふたりは、互いの力で罠をも少女をも超えてゆく。
 しかしながら、奥へ行けば行くほど罠の数も配下との遭遇率も上がって行くもので。
 「あ~!くそっ罠ばっかで戦い辛ぇ!」
 アレクシスの助言は有るものの、罠の発動そのものを阻める個所はそう多くなく、戦い難い状況にセリオスの苛立ちも蓄積してゆく。
 「……確かに、これは少々骨が折れるね」
 「――もういっそ、全部ぶち壊……」
 「セリオス、ここは僕に任せてくれないか」
 目の座ったセリオスが、それならばもう楽な方を……と、剣握りしめ呟きかけた言の葉を、アレクシスが笑み交じりに柔く遮った。
 ん?と、視線を上げ、彼の表情を見つめるセリオスに、笑むままアレクシスは続ける。
 「君は、思い切り歌ってくれ」

 ――……大丈夫。僕が君を守り、導いてみせる。

 そう言い切る彼の言葉に、セリオスもまた、ニッと笑みを浮かべたなら、首を縦に振り。
 「アレスに策があるならそっちの方がいいな。OK、任せた」
 そうと決まれば、と。気合を入れるように軽く服を叩いたセリオスの歌声が、城内の廊下に響き渡る。
 どこまでも伸びゆく旋律は、その聲を耳にしものを魅了して、彼の歌声へと惹きつける。
 その歌声を求め、手を伸ばし、籠の内へと閉じ込めてしまいたくなる程に、欲して仕方がなくなるような。
 そんな感覚を呼び起こす。呼び覚ます。
 それは、裏を返せばセリオスにとっても諸刃の剣のような術でもあるようだが、不安などあろうはずもない。
 何故ならば、そう。共にかけるアレクシスが居るからだ、彼の約した言の葉が、そして確かな導きがあるから。
 だからこそ、何の躊躇いもなく、歌い駆ける事が出来る。ふたり一緒だから。

 そうして、アレクシスの誘導の元、幾つの罠を超え、その囀る歌声で、幾人の少女を引き連れたことだろう。
 飛来する黒槍をアレクシスの盾が阻み、時に剣より放つ衝撃波で阻みながら、ふたりは駆ける。
 「セリオス、もうすぐだ」
 歌い続ける彼の耳元、目的の地が近いことを告げたなら、セリオスもまた頷きで返す。
 目の前に見えた曲がり角を折れたなら、其処には長い長い廊下が続いている。
 そこへ至れば、アレクシスはセリオスよりも先行し、セリオスは少し落とした速度で背後より迫りくる配下を惹きつける。

 薔薇を飾った少女たちが迫りくる。
 ――……まだだ。
 歌う彼を捉えるべくと、伸ばした腕が近づいてくる。
 ――……まだ、もうすこし。
 もう、爪が、目の前に。

 ――……今だ!

 十分に、ぎりぎりまで引きつけたなら、艶やかな長髪を翻し、旋風を足元で炸裂させたセリオスが、全速力で駆けた。
 疾く、疾く、真っすぐに。
 そうして速度を上げたセリオスを、指先ひとつ届かず逃がした少女たちも、彼に合わせて速度を上げて追い上げる。
 追う対象を目の前でとり逃す感覚は、より欲求を増加させるものだ。
 求むる儘、欲す儘、少女たちは速度を上げ続け、彼の背へと追い縋る。

 そうして。その爪先が彼の髪に届くかと思われた瞬間。
 「セリオス!!」
 その耳に、己を呼ぶアレクシスの声を捉えたセリオスが、旋風に乗る勢いは其の儘に、地を蹴り彼の声の方へと跳んだ。
 あゝ、そこに何があるかなんて関係ない。

 ――アレスが大丈夫っつーなら、大丈夫!

 飛び込むこの身に在るのは、唯々、彼における絶対の信頼。
 そうして、アレクシスもまた、己の全てを持って飛び込む彼を受け止める。
 腕の中に飛び込んだ彼の身を急停止させ、ぐ、と包み込んだなら、そのまま低く低く身を屈めた。
 そんな彼らの上を、勢いづいた速度を止める術持たぬ少女たちが、真っすぐに飛び込む先。
 雨のように降り注ぐのは数多のギロチン刃。
 止むことなく落ちゆく刃に、ひとり、またひとりと喰われゆく少女たちの断末魔は暫し続いた。

 そうして、刃の降る金属音も、餌食となる少女の声も消え失せて、静寂が廊下を包む頃。
 伏せた身を起き上がらせたふたりは、顔を見合わせて。
 「ナイス、アレス」
 「君もね。セリオス」
 あゝ、『信じてた』なんて、言の葉に変えずとも伝わるだろうから。
 セリオスが代わりに突き出すのは己の拳。
 そうして、信頼には信頼を。
 アレクシスもまた、その拳を突き出したなら。
 こつり、とふたりの拳が重なり合った。

 さぁ、先へ進もう。ふたり一緒ならば、この先に何が待とうとも。
 そんな思いをてのひらに込め、先に立ち上がったアレクシスがセリオスの身を引き起こす。
 見つめる先へ、踏み出す一歩は、共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

備傘・剱
地下世界の月を統べる城、ね…
謎解きは大好きだが、それを邪魔する奴がいただけないな

鳥獣技で小さな蜂になって潜入する
いくら警戒していようが、小さな虫にまで、気が行くやつは少ないさ
そんな警戒心が強い奴でも、仲間の服の裾に紛れ込んだ見えない虫に気を配る奴は、そういないだろうな
そうやって情報収集しつつ、一人になった所で、静かに変身解除、念動力で動きを瞬時に縛って、背後から暗殺風味に呪殺弾、誘導弾、衝撃波、斬撃波、ブレス攻撃の零距離射撃に鎧砕きと鎧無視攻撃に破魔を付与した物を叩き込めば、倒すことは難しくないだろう
そうやって始末したら、また蜂に変身して、の繰り返しか

謎の多い城だよなぁ

アドリブ、好きにしてくれ



 ●

 月明りに呼応するよに輝く城。月光城。
 その姿を見上げ、ほつりと言葉を零したのは、備傘・剱(絶路・f01759)。
「地下世界の月を統べる城、ね……」
 その存在の確たる意味は不明だが、それ故に内包する謎には興味も湧いてくるというもの。
 「謎解きは大好きだが、それを邪魔する奴がいただけないな」
 なればこそ、城の謎に、月の謎に迫るべく目の前の障害は取り除かねばなるまい、と。彼もまた、かの城へと潜入を試みる。

 月光城の窓の一つその傍に小さな羽音を響かせて、自在に空を飛ぶ蜜蜂が居る。
 そう、その蜂こそが、鳥獣技の術をもってして姿を変えた剱である。
 如何に侵入者の警戒に厳しい城といえど、小さな虫一匹に気を取られることは少なかろうと剱のとった策は、なるほど上手く働いていた。
 ましてや、先行した猟兵たちによって騒がしさや慌ただしさの増した城内は、配下の少女たちも遭遇する侵入者や城内の状況に気が向いている。
 まったくもって好都合だ、と。その小さな身を窓の隙間から城内へと潜らせて、彼は情報収集のため、そうして楽な移動のため、配下の姿を探しゆく。
 その間も、移動しながら城内の構造や罠の在処、その量を確認し、既に起動した罠も含め徐々に仕掛けが厳しくなる先を選び取り奥へと向かう。
 すると、一つの扉の前で会話をする少女たちの姿を発見した。
 万が一にも見つかることを避け、まずはと声の聞こえる程度の距離でその様子を伺う剱の耳に、彼女らの話し声が届いてくる。

 「ちょっと!この扉が開いたままってどういうことなの?」
 「落ち着きなさいよ。仕掛けは作動したみたいだから、きっと開けた奴は壊れちゃってるわよ」
 「でも、もしこの先に行かれちゃってたら?花畑までもうすぐじゃない。ここから先は主様の領域だから罠も張ってないのよ?」
 「それこそ、心配ないわよ。そのまま主様の玩具か糧になるのがオチだわ」
 「それは……そうだけどぉ」
 「ほら、それよりさっさとネズミ狩りに行きましょ。呼ばれてもないのに奥に行けば私たちが叱られるわ」
 「此処は?その儘じゃダメでしょ」
 「……そうね、じゃああたしが仕掛けなおして閉めておくわ。先に行ってて」

 そんな会話を交わし、少女の一人はこの地に残り、もう一人は廊下を引き返し去っていく。
 どうやらこの先が花畑に通じる道であることに加え、ここを超えれば罠はもう無いようだ。
 その情報を己の脳にしかと刻み、蜜蜂姿の剱は廊下の陰からかの少女へと少し近づいた。
 蜂の身とは言え、羽音に気付かれるかもしれない、照明の陰に隠れ少女の隙を窺う。
 未だ剱の存在に気付いていない少女は、先ほどの言葉の通り、目の前の扉へと何らかの処置を施しているようだ。
 彼女の意識が扉に向かい、そしてその処置が完了する前。
 機は今だと判断した剱は、音もなく静かに変身解除し元の姿を取り戻したなら、念動力で目の前の少女の動きを瞬時に縛う。
 「――なっ!?あんた、いつの間に!」
 身に起きた異変を察知し、背後へ首を回した少女が剱の姿を眸に捕らえた瞬間、呪殺弾をはじめとした数多の遠距離からの攻撃をその位置から叩き込み、未だ動きの鈍い彼女へと肉薄した彼のガントレットからは、零距離からの破魔の力を宿した攻撃が繰り出される。
 常の状態であれば、少女もまた応戦が叶ったであろうが、目の前の扉の処置に己の力を注いでいたこと、また完全なる不意を突かれたことにより、応戦儘ならぬその身が地に付すのもそう時間がかからなかった。

 己の手により倒れた少女を見下ろして、動かぬことを確認したなら、剱は目の前の扉と向き合う。
 強化されたオブリビオンの少女が、いとも簡単に倒れるほどの力を注ぐ必要のある罠。これを再起動されれば厄介だろう。
 幸いにも少女の施していた処置は済んでおらず、扉は未だ口を開いた儘。
 追随する猟兵たちのため、剱はこの扉を破壊したのち、この先が目的の場に至る道だと情報の共有に向かう。
 未だ残る配下や罠の回避のため、再び蜂の姿を取った剱は、今しがた壊した扉を一瞥し、その先に待つであろう地を思う。

 「――……謎の多い城だよなぁ」

 ぽつりと、零れた言の葉は静かに廊下に飲み込まれてゆく。
 剱は、今はまだ、と扉に背を向けて。
 己の為すべきことをと、得た情報を胸に羽搏いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『まどろみの花畑』

POW   :    息を止めて突っ切る

SPD   :    素早く走り抜ける

WIZ   :    対策を取って切り抜ける

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ●

 罠に満ちた城内を駆け、暗き廊下を抜けた先。
 突如、君たちの視界がパッと開けた。
 その目に飛び込むのは、真白に染まる花畑。
 名も知らぬ花々が、甘き花弁を静かに揺らす。

 そうして、そんな白の中。
 数多の鳥籠が並んでいた。
 様々な装飾施された鈍色の鳥籠内には、囚われた人間たちの姿。
 ある者は天仰ぐよに、掌を上に伸ばし。
 ある者は耳を塞いで、何かに怯え蹲る。

 恍惚とした表情の者。
 安らぐよな笑みの者。
 恐怖に怯えた顔の者。
 溢れる涙止まらぬ者。

 鳥籠の中には十人十色の人間模様。
 されどその何れもが眸の光を失って、心ここに在らずといった様子。
 そんな籠中の人々を、花は静かに包みゆく。
 白き、白き、花弁でもって。
 甘き、甘き、香りでもって。
 彼らを捕らうのは、鈍色の柵か。
 はたまた、花の見せゆく夢路の檻か。

 花咲く地へと足を踏み入れたなら、君たちも夢誘う甘き香りに包まれるだろう。
 この地を満たす花に花粉に触れたなら、感覚鈍りゆく違和をも覚えるだろう。
 甘く、甘く、その心誘う幻惑の香り。
 柔く、柔く、その身包む真白の彩り。
 どうか心を強く持ち、現の繋がりを絶たぬよう。
 花に。籠に。幻惑の夢に。
 君たちまで、囚われる事の無きように。
リーヴァルディ・カーライル
…人間画廊。見た目だけ取り繕った生け贄の祭壇のような悪趣味な場所ね

…誰一人、見捨てたりはしない。必ず救いだしてみせるわ

「精霊石の耳飾り」に風の精霊を降霊し花畑にある鳥籠の索敵を行いつつ、
事前に毒を浄化する作用を強化する肉体改造術式を自身に施し、
全身を毒を遮断する風のオーラで防御して覆い、幻覚は狂気耐性で受け流して先に進む

鳥籠を大鎌で切断し囚われていた人に魔法陣を展開した掌で触れUCを発動
必要なら他の猟兵が救出した人も含め常夜の城にある寝台に転送して回る

…心ここにあらずならば転移に抵抗はされないはず
もう少しだけ我慢して。毒は後で必ず処置するから

…今は、私の城で眠りなさい。安らかに…


備傘・剱
花の香りは罪の匂いってか…?
こんなもんで止められる思われてるのなら、猟兵を甘く見過ぎてる

オーラ防御を膜の様にはり、外気を遮断、そして、内部の空気を浄化して、青龍撃、発動!
周りに水弾をばら撒いて、水分で香りを洗い流しつつ、花を爪で切り裂きながらダッシュで駆け抜けてやる
そのついでだ、正気に戻るかどうかは解らないが、弱めの水弾を鳥籠の中の奴らにぶつけて、気付けにしてやるよ

夢に逃げ込むのもいいが、厳しい現実に抗ってこその命ってな
希望者がいたら、ちょっと戻って、鳥籠を切り裂いて逃げれるようにしてやるよ

これを仕掛けた奴には、花の香よりも強烈な己の血の香りをかがせてやろうか!

アドリブ、絡み、好きにしてくれ





 ●

 真白の花弁がひらり揺らめく。
 甘き香りがふわりと満ちゆく。
 一面に咲き誇る花々は麗しく、これがただの花畑であったなら癒しの地ともなっただろう。
 けれども、そうでないことは、この地に至り立つ猟兵たちには知れたこと。
 花畑に並び立つ鈍色の鳥籠と、その中に捕らわれた人々の姿もまた其れを物語っている。

 「……人間画廊。見た目だけ取り繕った生け贄の祭壇のような、悪趣味な場所ね」
 眸に映るこの情景を、軽く口を覆ったリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が、心に浮かぶ儘音に乗せた。
 「花の香りは罪の匂いってか……?」
 同じく、花畑に至る門の前より、わずかに香る甘さを感じながら目を細めるのは、備傘・剱(絶路・f01759)。
 「こんなもんで止められると思われてるのなら、猟兵を甘く見過ぎてる」
 「……ええ。誰一人、見捨てたりはしない。必ず救いだしてみせるわ」
 奇しくも同じタイミングでこの地に立ったふたりは、互いに顔を見合わせ頷きあえば、画廊であり檻であり罠でもある、この真白の花畑にと対抗すべく身を整えてゆく。
 リーヴァルディは身に着けた「精霊石の耳飾り」へと風の星霊を降霊し、その力を借りて毒を遮断する風のオーラを纏いゆく。万が一、そのオーラをもすり抜けた毒が身を脅かすことのないように、と、己自身へと肉体改造術式を施すことにより、毒耐性の強化を図ることも忘れていない。
 剱もまた、己の身より発したオーラの力で外気を遮断したなら、その内部の空気を浄化していった。

 花畑へと突入の準備が整ったなら、リーヴァルディは再び己の耳飾りへと意識を集中する。
 鳥籠一つ、内の誰一人、逃すことのなきよう、と。風の声に耳傾ける彼女の眸は、何処までも真っすぐに前を見据えていた。
 大気の流れを掴むよに、風の精霊の力を借りて、この花畑に存在する鳥籠の位置を数を把握すべく索敵を行ったならば、己の感知した情報を他の猟兵たちとも共有してゆく。
 彼女から齎された情報をもとに、効率的に手分けして人々の救出を行うこととした猟兵たちは、各々の割り当てられた区画へと足早に散って行った。
 その姿を見届けながら、剱はこの大気に宿る水の力へと意識を集中する。
 『天よ、祝え!青龍、ここに降臨せり!踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!』
 突き出した拳と共に、力宿す言の葉を唱えたならば、その身に青き水の彩を湛えた清流の爪と牙が宿りゆく。
 やるべきことが決まったならば、疾く、為すまで。
 きらりと煌めいた青き牙より、彼の周囲へと水弾をばら撒くことによって、この一帯に充満する甘き甘き花の香りを洗い流してゆく。
 そうして、リーヴァルディより齎された、最も近い鳥籠へと向かって地を蹴れば、青龍の力で増した速度の儘、周囲の花を青き爪で切り裂き薙ぎ払いながら、疾く、疾く駆けてゆく。
 何処までも速くと駆け行く彼の行動は、その術によって己の寿命が削られていくことも少なからずあるだろうが、それよりも、己の行動の先に救える命があるが故。
 先を見据えた剱の視線は、今の行動其の儘に、真っすぐと前を向いている。

 そうして花を狩り、鳥籠への道を作りゆく剱の背後を、リーヴァルディもまた疾く駆ける。
 彼の水弾でも払いきれなかった香りから、ふわりと視界を歪めるような感覚を覚えることもありながら、そのうちに宿す強き意志と、今までに培ってきた狂気耐性をもって払ってゆく。
 己に揺らいでいる暇などない。
 その眸には、救うべく人が、それを捕らう鳥籠の姿が見えているのだから。
 「あれか?」
 「ええ、そのようね」
 問う剱の声に、短くも的確に彼女の声が返ったならば、小さくよし、と頷いた剱はその爪先にひとつの水弾を生み出した。
 先ほどまで花々を払うように繰り出されていた其れよりも、随分と柔らかに生まれた水の玉は、彼の動かす指に合わせ鳥籠の内へと飛翔した。
 そうして、その水弾が内に囚われた青年の顔にパシャリと当たり弾けると同時、リーヴァルディの振り抜いた大鎌が鳥籠の柵を切断した。
 剱の水弾が気付け代わりとなったのか、顔を水で濡らした青年は未だどこか虚ろとしたままではあるものの、その顔をふたりの方へ向け、眸に姿を映している。
 「おい、しっかりしろ。……夢に逃げ込むのもいいが、厳しい現実に抗ってこその命ってな」
 そう告げながら、焦点の定まりきらない青年へと剱の声と水弾が今一度飛ぶ。
 「……あ、れ?俺……は」
 「意識は戻ったか。安心しろ、救助に来た」
 ぼんやりと、しかし意識を取り戻し声を発する青年の姿に、安堵の息を零したリーヴァルディが、身を動かすことまでは叶わない彼へと、剱の隣から追って声をかける。
 「もう少しだけ、我慢して。毒は後で必ず処置するから」
 そう告げて、その手に魔方陣を展開したなら、彼を驚かさぬよう、そうっとそのてのひらを差し伸べて。
 「心配しないで、安全な所へ避難させるだけ。他の人たちもすぐに送っていくから待っていて」
 夢うつつの様相ながら、己を救ってくれる存在だとは認識したのだろう、ふたりへと青年はおぼつかない所作ながらも頷いた。
 そんな彼の様子に頷きあったなら、リーヴァルディは再びそのてのひらで青年へと触れる。
 そうしたなら、魔方陣と彼女による転移の力でもって、青年の姿は鳥籠から、この地から、すうと消えていった。
 彼の送られる先は、同じ常夜の世界に在って、されども此処とは異なり、柔らかに彼の身を癒す寝台のあるリーヴァルディの城。
 転移した先について剱にも説明を添えたなら、さらなる救助を行うため、ふたりは鳥籠の外へと踏み出した。

 青年の姿が消えた鳥籠を振り返ったリーヴァルディは、今は姿なき彼へと小さく唇を開く。
 「……今は、私の城で眠りなさい。安らかに……」
 そうして、彼女の鎌によって切り裂かれた鳥籠をひと蹴りした剱は、そのまま勢いづけて前を見据え。
 「これを仕掛けた奴には、花の香よりも強烈な己の血の香りをかがせてやろうか!」
 気合を入れなおすように、その青き爪で虚空を切った。

 そう、まだこの地には救うべき人々がいて、その先には倒すべきこの地を総べる元凶が居る。
 疾く、次を。ふたりは再び地を蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

岩倉・鈴音
人を鳥籠で飼うのが主の趣向か。
彼らもこの月光城の探索に来たのかも知れんが……今は先に進まぬばならぬのでな。
主を倒した暁には必ず助けよう。
狂気耐性で耐えながら出口を探す。倒れたら鳥籠に囚われるからな。
ここはムサシビームで狂気の花たちに教えてもらうっ
ンッフッフ♪わたしは主の大切な来客ですヨ。
花粉はヤメテー
出口の方向になびけー

助けてくれたらさっさと駆け抜けるけどだめなら片っぱしからなぎ払うしかないね。

主よ。見ているのはわかっている。お前も解放してヤルゾ。この月光城という鳥籠からな!



 ●

 「人を鳥籠で飼うのが主の趣向か」
 ふぅんと、その眸に映るこの地の場景に目を細めたのは、岩倉・鈴音(JKハングマン・f09514)。
 真白の花々が咲き誇る花畑に、鳥籠の群れが並ぶ様はある種幻想的でもあり、それでいて、その内側に囚われた人々のありとあらゆる表情や仕草が、造られたかのようにとどまる様は歪な情景とも見て取れる。
 そこに囚われた人々は、城主が連れてきたものだろうか、それとも。
 「――彼らも、この月光城の探索に来たのかも知れんが……今は先に進まぬばならぬのでな」
 思案げに、そう呟いた鈴音は、鳥籠に囚われた者たちのことも気にはなるものの、先ずはこの花畑からの出口の確保をと、動くことに決めたようだ。
 身を蝕む異質なる花に満ちた空間で、己の出来うることを選択するのも一つの手なのだ。

 「さて、そうと決まれば。ここはムサシビームで、狂気の花たちに教えてもらうっ」
 そう己の決意を音に変えた彼女は、深く、深く、精神を研ぎ澄ませるかのように呼吸をしたなら、鋭き目つきでもって、この地に満ちる真白の花々を真っすぐと見据えた。
 その眸から放たれしは、受けたものを操り、己にとって友好的な存在へと変えてしまう魅惑の光。
 その対象は、生命体のみならず、無機物や自然現象にまで至る。
 「ンッフッフ♪わたしは主の大切な来客ですヨ」
 そう、花々へと語りかけるように、視線を光を向けながら、鈴音は花畑を進んでゆく。
 花粉はヤメテー、出口の方向になびけー。と、どこか歌うように告げる鈴音の声を解してだろうか。

 ふわり、ふわり。

 真白の花が一斉に頭を揺らす。
 それは先ほどまでの無造作になびくものとは異なって、一定の方向へと誘うように導くようにと揺れている。
 眸に宿し力にて、一定時間の助力を花から得た鈴音は、導きに添い駆け行く中、その視界に映る鳥籠内の者たちへと視線を送る。

 ――……主を倒した暁には、必ず助けよう。

 そう、必ずだ、と。彼らへと、そうして己へと言い聞かせるように、鈴音は疾く駆ける。
 為すと決めたならば、脇目を振っている余裕はない、決めた先へ向かい、疾くあるべきだ。
 そう、半ばで倒れるわけにはいかないのだ、かの鳥籠の中の者たちと同じ道をたどるわけにはいかない。
 求めし出口へと至るために。そうして己の為したそれを、後追う猟兵たちの標ともするために。
 眸からの術が及ばぬ花は、鋭き刃でもって薙ぎ払い、目に見える道とも変えながら先へと行く。

 「主よ。見ているのはわかっている。お前も解放してヤルゾ」

 ――この月光城という、鳥籠からな!

 だから待っていろ、と。
 先に待つ、この鳥籠の主人への思いを胸に抱き、鈴音は尚、駆けながら、精神を研ぎ澄ませた視線を花々へと向け続けた。
 揺れる白は、そんな彼女を先へ先へと誘ってゆく。
 それはまるで、はやくおいでと、手招くようにも見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

まあ、まだまだ私の範囲内でしてー。
風属性の結界術を施し、さらに毒耐性で少しでも影響を少なく。
幻覚は…内部三人が『覚ましの呪詛』してくれてますのでー。
ま、見るとしたら故郷の惨状ですか。もう幾度となく見た、あれを。

鳥籠に鍵がついているなら、鍵開けで扉開けまして。
鳥籠の中の人は抵抗しないのなら、指定UCで中に退避してもらった方が安全ですかねー?
最悪、鳥籠ごと中に退避してもらって、陰海月に任せますか…。
中に退避不可なら、人々にも風属性の結界を分けましょう。


陰海月、ぷきゅぷきゅしながら中で布団敷いてる。癒し。
鳥籠ごと来たら、頑張って鍵開けする。
誰も来なくても、掃除する。


ティフティータ・トラーマ
「さて、と。この花、毒だけって訳じゃないのよね。幸い?鳥籠の中に花は無いし、纏めて焼いてしまいましょ。」
UCの炎沙で進路の白花を焼き払い
「思ったより燃えないけど…呪いの類同士でも、ちゃんと干渉してるみたいね。」
燃え残った白花にも黒沙が撒き散らされ、ピリピリと肌を焼く呪いの痛みが甘い香りの誘惑に警鐘を鳴らして
「とはいっても…コレはコレで害しかないし、早く救出しないとマズイのよね。ま、死ぬよりマシでしょ。」
傷の痛みで眠気を覚ましているようなものだし、と鳥籠を開けて中の人を運び出していきます。
「ところでこの花…普通(オブリビアンではない)の草なら色々面白そうよね…密封して見えなければ大丈夫かしら?」



 ●

 白き花の咲き乱れる周囲を見回し、ふむ、と顎を一つ擦った馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、柔く浮かべた笑みを深める。
 「なるほどー……まあ、まだまだ私の範囲内でしてー」
 穏やかな声音は其の儘に、己の身を包むよう風の結界術を施した義透は、両の掌を一度握っては開いてみる。
 その身に培ってきた毒の耐性は、この花より齎されるものにも効いてはいるようで、行動を害するほどの影響を受けるにはまだ時間的猶予は有るらしい。
 そんな彼の隣、同じく揺れる白き花々とその地に並ぶ鳥籠を眸に映したティフティータ・トラーマ(堕天使の剣舞暗殺者・f29283)もまた、背の翼をはた、と一度揺らして見せて。
 「さて、と。この花、毒だけって訳じゃないのよね」
 幸いにして、鳥籠の中には咲いていないようだ……とは紡いでみたものの。その鳥籠を飾る様に咲く花はある。
 「纏めて焼いてしまいましょ……と、思ったけれど。万が一、鳥籠に火が移りそうなら……」
 「ええー、そこは私が、何とか致しますよー」
 先んじて、鳥籠の花を切ってしまうなり、結界術を駆使するなり、ね。と、同じ区画へと駆けてきた義透が、やんわりと笑みながら添える。
 「そうして貰えると助かるわ。その代わり、鳥籠までの邪魔な花は私に任せて頂戴」
 ひとりならば懸念される状況も、そうでないが故に対策も打てる。それもまた、同道する猟兵同士による縁の賜物というものであるだろう。

 ふたりの猟兵は互いに頷きあったなら、先ずはとティフティータがその漆黒の翼を大きく広げた。
 『ハムシーン・カムシーン 煉獄の熱砂よ 嵐となりて吹き荒れよ』
 それと同時、力ある言葉を音に乗せ、彼女が広げた翼を羽搏かせたなら、その直線上に黒炎と黒沙が舞い上がり熱砂の嵐と姿を変える。
 ティフティータが見据える直線上、視界に捉える鳥籠までの道を作るよに、真っ直ぐに放たれる熱の嵐が、白き花々を飲み込むようにして翔け抜けた。
 ちり、と音を立て焼けゆく花を視界に捉えながら、放つ嵐を追うようにふたりは翔け駆ける。
 ただの花でないが故か、直接その嵐を受けた花々はともかくとして、そこから周囲に燃え広がるといったような様子は見受けられない。
 「思ったより燃えないけど……呪いの類同士でも、ちゃんと干渉してるみたいね」
 なるほど、と。どこか観察し分析するような視線を向けながら、ティフティータはぽつりとつぶやいた。
 燃えた花の跡を翔ける身には、ピリリとした感覚が時折走る。
 それは白花を燃やした黒沙による呪いの痛み。
 身を苛むような痛みではあれど、それが白花から齎される甘き甘き香りの誘惑に対する警鐘の役割をも果たしてくれる。
 夢に誘うような甘き甘き誘いから、現に引き戻すように。痛みが己を繋いでいてくれるのだ。

 「とはいっても……コレはコレで害しかないし、早く救出しないとマズイのよね」
 ま、死ぬよりマシでしょ。と、そう裡で零した彼女は、はっとその視線を後方へと向ける。
 己自身はともかくとして、共に駆ける彼は無事だろうか、と。
 その視線を受けた義透は、変わらず穏やかな笑みを浮かべたまま彼女の後を追っている。
 その身に施した風の結界が、黒沙の呪からも彼の身を守っているようだ。
 その様子に、安堵の息を一つ零したなら、速やかに鳥籠へと向かいゆく。

 ティフティータの起こした熱砂の嵐は、彼女が見越し唱えた詠唱の威力から外れることもなく、鳥籠の直前で止んだ。
 目の前の鳥籠に囚われているのは、花により見せられた幻覚のせいだろうか、溢れる涙を拭うことなく悲哀に濡れた一人の女性であった。
 如何な夢を見せられているかは定かではないが、ほろほろと溢れる涙は止めどなく、消え入りそうな声でしきりに謝罪を繰り返している。
 内部の人間が自ら逃げる可能性は皆無に近い状態であるが、鈍色の鳥籠にはしかと錠がかけられている。
 それを見た義透は、すっと前に歩み出て。
 「鍵開けは、私の得意分野でありましてー」
 お任せくださいー、とその手を鳥籠を閉じる錠へと伸ばし解いてゆく。
 彼の身についた忍びの技をもってしたならば、この程度の鍵開けは障害とも言えぬほど。
 するりと器用に動かす指先は、あっという間に籠の口を開いて見せた。
 鳥籠の内部に入ってくるふたりの存在に気付く様子もなく、女性は唯々涙を流している。
 抵抗されないのはいいことだが、その姿は見るに忍びない。
 捕らわれた悪夢の元凶がこの地に咲く花々であるならば、速やかに退避させるのがいいだろう。

 退避の術があると申し出た義透に女性を任せ、ティフティータは一度鳥籠の外へ出た。
 その眸にこの地に咲く白を認めたなら、ふと湧き上がるのは好奇心。
 「ところでこの花……普通の……オブリビオンとかじゃない草なら、色々面白そうよね」
 密封して見えなければ大丈夫かしら?と、呟いてもみて。
 可能なら後で残ったものを持ち帰ってみよう、などと密か目論見ながら、少しでも影響を排すべくと、内に影響なき範囲で、ティフティータは鳥籠周囲の花々を焼いてゆく。
 そんな彼女の行動を籠の内にて感じながら、静かに一度目を伏せた義透は、その手のひらにねじれ双四角錐の透明結晶を召喚し、そっと涙流す女性へと手を伸ばては、彼女の手を其の透明結晶へと触れさせた。
 その瞬間、ゆら、と彼女の姿が揺らめいたかと思えば、結晶の内へと吸い込まれゆくように消えていった。
 彼女の誘われた先は、夕焼け空が続く空間に建つ日本家屋。
 今はまだ、花の幻覚冷めやらず涙を流すだけの女性も、暫しの後には香りの呪縛から解き放たれて、その景を眸に映すことも叶うだろう。
 どこまでもどこまでも広がる暖かな色を宿した空は、闇色に満ちた世界に在った彼女の心を癒すものとなるかもしれない。
 そんな彼女に寄り添うように、ふわりと近づいてきたのは義透が『陰海月』と呼ぶミズクラゲ。
 誘われた人々の介抱は任せて、というように。ぷきゅぷきゅと布団を敷けば、女性を其処へと寝かせてゆく。
 宙を浮く不可思議な存在でありながら、どこか癒される雰囲気を宿す陰海月も、ここに誘われる人々の癒しへと変わるだろう。
 そんな内部の様子を結晶越しに見たのだろうか、はたまた見えずとも、義透には手に取る様に思い描けるのかもしれない。
 内に宿した陰海月の存在に、そうしてかの内部に広がる己にとって大切な情景に思い馳せたなら、そのすべてに信を置き義透は笑み一つ、掌に浮かせた結晶の召還を一度解いた。

 「さて、それでは次へ行きましょうかー」
 「ええ、さくさく行くとしましょうか」
 鳥籠に囚われたひとりの無事を確保し、その外にて頷きあった二人は次の鳥籠へと視線を移し再び翔け駆ける。
 この地にて救うべき人々も、抱かれし謎も、未だ多い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「これだけの人々が囚われているとは。
生きているのは幸いだけど。
人間画廊…、何とも趣味の悪い。」

毒に侵されない様に月光のローブや
【オーラ防御】、【毒耐性】で毒の効果を軽減。
【毒使い】で毒の特性を見極め
スカイロッドで空圧を自分の周囲に張って
毒を寄せ付けない。

牢を破り人々に。
歩けるか、身体に異常はないか、気をしっかりもて。
等と声をかけ、正気を取り戻させようとするが。
「反応がないか。毒が余程強力なのか。
長く囚われ過ぎたのか。」
敵に発見される前に救出する為に迅速さを心掛け。
毒の苦痛と幻覚に膝をつきつつ
香夜胡蝶乱舞を発動。
「今から君達を安全な所へ送る。
暫くはそこで休んでいてくれ。」
と人々を中に吸い込む。


鵜飼・章
道理の外に美を見る倒錯性は
誤りだと理屈では咀嚼している
けれど無聊を慰める光景だよ
僕にはここまでする情熱も理由も無い

画廊と名付けられたからには
正当に鑑賞されないと作者が気の毒だ
標本にされた蝶達がヒトの容を持てば
きっと同じ光景が見えるだろうに

花の香りを嗅がないよう留意しつつ
鳥籠へUC使用
速やかに人々の解放を促す
被害者もこのままでは脱出困難だろうな
目覚ましも兼ねて軽く針を刺すよ

優しい声掛けは大事だね
ちくっとするけど我慢だよ
自力で出口へ行くようお願いし
効率的に救出していこう

狂気にも毒にも耐性があるから
神経毒の回りは鈍いだろうな
残念だ
白くて甘い夢の中に
黒がぽつんと浮いている
前衛芸術の出来損ないみたいだね



 ●

 真白の花畑に並ぶ数多の鳥籠。
 入り口付近でこそ、真白の花が視界を埋めるものであったが、奥へと行けば鳥籠の数も増えゆきて。
 一つの鳥籠に一人の人間が納められ、様々な様相を浮かべゆくその景は、まさに『人間画廊』と言うべき様だ。
 「これだけの人々が囚われているとは。生きているのは、幸いだけど」

 ――人間画廊……何とも趣味の悪い。

 そんな景を眸に映し、ほつりと零れる言の葉に嫌悪感を隠さぬ儘、音に乗せたのはフォルク・リア(黄泉への導・f05375)。
 この地を満たす白花の毒に侵されぬよう、月光のローブで身を包んだ彼は、表情こそ隠れがちではあるものの、その眉間には深く皺が寄っている。
 そんな彼の言の葉を耳に、同道し隣立つ鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)もまた、その景色を眸に映していた。
 しかしながら、内に抱く心地というものは、隣の彼とは幾分違ってもいるもので。

 「道理の外に美を見る倒錯性は、誤りだ」
 ……と、己も理屈では咀嚼している。
 けれども、あゝけれども。
 この地は、この景は。無聊を慰める光景だ。そう、章は感じていた。
 「僕には、ここまでする情熱も理由も無い」
 音に乗せる言の葉は選びながら、それでも彼は彼自身の感性のまま、この地をその景を眺めている。

 ――画廊と名付けられたからには、正当に鑑賞されないと作者が気の毒だ。

 そう、それが、作者たる相手がオブリビオン……ヴァンパイアなのだとしても。
 この景には、それを形と成した者の何かしらの想いや意図が、大なり小なりあるはずなのだ。
 それを無為に是とするわけではないし、この行為を正当なものだと云うわけでもない。
 だが同時に、人々が飾り鑑賞する昆虫等の標本と、この景に、如何程の違いがあるというのだろう。
 はりつけられた昆虫たちの魅せるその景に、心慰められる人々はいて。
 されども……いや、そうであるが故に。
 「標本にされた蝶達がヒトの容を持てば、きっと同じ光景が見えるだろうに」
 静か、音に乗せた章の言葉は、ふわりと花弁を揺らした風と共にその景に溶けた。
 
 内に抱く想いは様々で、その形にこそ確たる是非などない。人の心は人の数だけあるものだから。
 されど、この地において為すべきことは等しく在りて、其の先が重なるが故に、人は同じ方向をも向くのだ。
 この場においては、鳥籠に囚われし人々を解放する。その目的が、彼らを繋ぐ。
 行動を阻害する真白の花々の毒や香りを受けぬよに、其々の持ちうる術を用いて身の対策を整えたなら、ふたりは共にすぐ近くに見えている鳥籠へと歩みを進めた。
 フォルクの掲げるスカイロッドの空圧で、まるで一種の結界のように身を包まれたふたりは、一先ずは身の不調を感じることなく鈍色の鳥籠のひとつへと至る。
 その内に囚われた少年は、身を震わせながらも見えぬ何かをかばう様に、その地に蹲っていた。
 彼を捕らう鳥籠の口を固く閉ざす錠前に、章の懐から放たれた針が当たったならば、まるで魔法のようにカチリと音を立て錠が外れ、地へと落ちる。
 その様子を確認し、扉を開けたフォルクが内部へ入るが、少年の様子は相変わらずだ。
 「おい、歩けるか。身体に異常はないか」

 ――気をしっかりもて。

 そう懸命に語り掛けながら少年へと手を触れるフォルクであったが、その手を払い除けられることこそ無いものの、件の少年は先ほどと全く変わらぬ様子で、見えぬ何かを内にかばうような形のまま、その身を震わせている。時折、譫言のように、『だいじょうぶ』と唱えながら。
 「……反応がない、か。毒が余程強力なのか。長く囚われ過ぎたのか」
 少年の様子に、少しばかり困ったようなしぐさを見せるフォルクへと、少し離れた位置から彼らの様子を見ていた章が歩み寄る。
 「例えば、彼が動くことが出来たなら……退避の場所に、目星はある?」
 「ああ、俺の術で安全な場所へと送ることは出来る」
 「分かった、じゃあそっちは頼むよ。僕は目覚ましも兼ねて、彼に軽く針を刺すよ」
 そうフォルクへ告げた章は、徐に蹲る少年へと一歩一歩と近づいてゆき、その懐から細い一本の針を取り出す。
 それは先ほど錠前に投げつけたものと同じものだ。

 ――……ちくっとするけど、我慢だよ。

 その声が届いているかは定かではないものの、対する相手への優しい声かけも大事だ、と。穏やかな口調で少年に語り掛けながら、章は手にした針をちくりと少年の腕に一刺し。
 それは、彼の手慣れた様子を窺い知れるほどに、速やかで鮮やかな処置だった。
 きっと、少年の意識があったとしても、痛みを殆ど感じる事の無き程に。
 その針を通し、章の力が及んだ少年は、つい先ほどまで震えていた身を緩やかに起き上がらせて、未だぼんやりとしているもののすっくとその場に立ち上がった。
 「まだ花の効果も抜けていないだろうからこの様子だけれど、それも抜ければ正気も戻るんじゃないかな」
 使用者である彼への同調効果は有れど、操るものとは異なる術の作用をフォルクへと告げたなら、頷いた彼は、ならば次は己の番だと、その身を少し蝕み始めた毒の苦痛を追いやりながら、力ある言の葉を紡ぎゆく。

 『その翅に虚ろなる瞬きを宿せし夢幻の蝶。その燐光に触れし者を常夜へ導け』

 唱うフォルクのその周囲に呼び出されるのは、翡翠色をした蝶の群れ。
 ひらりひらりと舞う様は、宛ら幻想へと誘う使者の如く。
 されど、煌めく夢幻の蝶が導く先は、どこまでも穏やかな白檀の香りがする満月夜の世界。
 「今から君を、安全な所へ送る。暫くはそこで休んでいてくれ」
 そう告げたフォルクの言葉に、夢うつつながら一つ頷いた少年は、その手のひらを舞う蝶の一羽へと伸ばし、触れた彼の身はゆらりと揺れてこの地から姿を消した。
 時を経て、少年の身から白花の毒が抜けたなら、優しき香りと柔き光が包む地はその身と心を癒す場となるだろう。
 少なくとも、先ほどのような悪夢に囚われ続けることはもう、ない。
 少年の姿が鳥籠から消えたことを確認したフォルクは、彼の安全と安寧を願い、その身を籠の外へと向かわせる。

 フォルクが少年を安全な地へと送る間、先に籠の外に出ていた章は、目の前に広がる真白の景を再び眺めていた。
 その地に立つ己の身を、伏せた瞼の裏に描いた章はほんの少し吐息を漏らす。

 ――……あゝ、残念だ。

 白くて甘い夢の中に、黒がぽつんと浮いている。
 それは、まるで。
 「前衛芸術の、出来損ないみたいだね」
 僅か眉を下げた章の声が、小さく嗤う様に空気を揺らした。

 そんな呟きが真白の景に融けたころ、背後から少年を送り終えたフォルクの足音が聞こえた。
 振り返った章とフォルクの視線が交差したなら、彼らは次の鳥籠へと向かう為、頷きあう。
 残る鳥籠の解放と、その先に待つ景へと踏み入るために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK

うわ、なにこの光景…
それに、この匂い…
前にも似た状況があったね

ぼくの鼻なら、成分を正確に分析できるばずなの(狼の嗅覚【聞き耳】で【情報収集】)

○幻覚
破壊衝動と人狼病の狂気に呑まれたぼくが言ってくるの
『壊せ、殺せ、喰らい尽くせ』
やだよ、ぼくはそうしない
ぼくは、救うために戦ってるの
君には、負けない

ゆっくり詠唱してUC発動
精神を守る魔術陣の首輪と魔術回路の鎖で縛られた狼の姿に

襲い掛かるぼくの幻影に魔力を込めた遠吠えで【浄化・属性攻撃】で打ち払うの

現実に戻ったら、さらに遠吠えで【浄化・範囲攻撃】の人狼魔術
匂いの元を消し去り、声で囚われた人たちの目を覚ますの

起きて、みんな
ここから逃げて



 ●

 真白に包まれる花畑に、多くの鳥籠が並べられている。
 花が放つ何処までも甘い香りは、安らぎを感じるには程遠く。
 鳥籠の内に納まる人々は誰も彼もが、その身を硬直させながら不自然なまでに、各々一つの感情に囚われ続けている。
 「うわ、なにこの光景……」
 目の前に広がるその景に、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、思わず口と鼻を覆いそう零した。
 「それに、この匂い……前にも似た状況があったね」
 いつか経た経験を思い出しながらふるりと一度頭を振れば、彼は目の前の光景としかと向かい合う。
 そうして、この地に充満する甘い花の香りを吸い込んだ。其れの齎すものは知っている。
 けれど、それを自身の鼻で直に、つぶさに感じることで、解することも出来るはずだと。敢えて、この地に咲く花々と向き合うこととしたのだ。
 己の狼たる嗅覚をもって、花の香りが齎す聲を聞く。
 己の経験の内から、その香りを、其処に宿す成分を見つけ出すように、情報を探ってゆく。

 あれじゃない……これでもない。
 あゝ少し違うけれど、此れに、似て……

 そうして己の裡と語り合ううち。
 ふと、ロランの耳にある聲が響き渡った。

 ――……壊せ。壊せ。

 聲は言う。
 その聲は、とても、とてもよく聞き覚えのあるものだ。

 ――……殺せ。殺せ。

 聲はロランの手を引くように。
 耳の奥、山彦のように響いては繰り返される。

 ――喰らい尽くせ!

 ひときわ強く響く、己であって己でない聲が叫ぶ。
 いつの間にか、目の間にゆらりと立ち現れた、もうひとりのロランが、己に向かって手を伸ばす。
 此方側が『本当』だというように。
 破壊衝動と人狼の狂気を纏ったその姿で、己と同じ聲をもって。
 ロランを『此方』へと呼んでいる。

 「……やだよ、ぼくはそうしない」
 向き合うロランに、ロランは真っ直ぐと言の葉を紡ぐ。
 其れは一片も揺らぎのない音だった。
 「ぼくは、救うために戦ってるの」
 向き合う己の姿をした相手へと、ロランは静かに、けれども確かな思いを込めて紡ぐ。

 ――君には、負けない。

 力強く、己の意志を告げたなら。
 ロランはゆっくりと力ある言葉を詠唱してゆく。
 『夜の灯りを、呼びし遠吠え、大いなる円の下、静寂を尊ぶ』
 精神を守る魔術陣の首輪と、魔術回路の鎖で縛られた狼の姿にその身を変じさせたならば、その身に襲い掛かるもうひとりの己の姿をした幻影へと魔力を込めた遠吠えを放つ。
 空気を揺るがすほどに大きく、込めた意志を表すように真っ直ぐと放たれた力持つ聲は、浄化の力をも宿し幻影を打ち払う。

 そうして現実へ意識を戻した彼は、己の声が届く範囲へと浄化の力を乗せて再び吠える。
 城主の手によって独自に生み出された真白の、完全なる解析は成らなかったものの、ある程度の無効化を図ることは可能なようだった。
 最も近い鳥籠へと駆けた彼は再び人の姿を取ったなら、内なる人へと声をかける。
 「……起きて。そうして、ここから逃げて!」
 そうして、ひとつ、ひとつ確実に。
 鳥籠の口を開け放ち、他の猟兵たちとも力を合わせ、ロランは人々を安全な地へと誘ってゆく。
 花に籠に囚われし人々も、あと僅か。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎

実際に鳥籠が並ぶ様を見て小さく息を呑む
恐れではない、ただ…煮えたぎるような怒りが暴れまわって吐きそうだ
…ああ、アレス
あんなもん全部ぶっ壊してやろうぜ
頷き1歩踏み出せばそこに―…
嗚呼、ああ!
鳥籠を見た時の激情ですら生温い
怨敵の、吸血鬼の姿に炎があふれ出しそうだ
その花ごと、全部燃やして…と思った瞬間
触れる温度に助けたいという意志はそのまま心が凪いでいく
…悪い
流石に燃やしちゃまずそうだ
ああ、そうだな
俺達ふたりなら
触れた手から力を注ぐように
アレスの光と共に
風の刃で花を刈りとってやる!

あとは鳥籠だ
俺は剣よりこっちだな
歌で身体強化して
鳥籠を無理矢理ひん曲げる
あの時…自分が出たように
籠の中から彼らを救い出そう
それから、ちゃんと自分の足で帰れるように
安心できるように
アレスの光に合わせて
【シンフォニック・キュア】を
任せとけ、これ以上奪われねぇように
元凶はぶっ叩いてくるからよ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

命を、未来を捕え…壊そうとする鳥籠
ああ…“此方”も悪趣味だ
一刻も早く助け出そう、セリオス
毒の耐性にと僕と彼のマントにオーラを纏わせ
花畑へ踏み出し…立ち止まる
救おうとしていた鳥籠の中は血に染まり空っぽで
セリオスを攫った吸血鬼の姿があった
その光景に
これは幻だと頭では理解していても
怒りに動揺…心に様々な感情が湧き上がる
…だけど
傍ら、幻も花も己すらも焼き焦がしそうなセリオスの炎に気付き
ぐっと感情を堪え
手を伸ばしてその手を掴む
君の心が悪意の幻に囚われぬように
…見失わぬように
一緒に皆を助けよう、セリオス
…僕らの目の前にあるのは過去でも運命でもない
鳥籠はまだ空っぽじゃないんだ
…大丈夫
僕達ふたりなら
幻も毒も終わらせられる
剣に宿すは【理想の騎士】の光
皆を鳥籠から助け出す為
彼の風と共に
浄化を乗せた光を広げるように放とう

幻と花を斬り祓えたら
鳥籠の扉の鍵を盾で壊して
UCの光で彼らを毒からも解放させよう
1人でも多く
誰かにとって大切なものである彼らを取り戻そう
僕達が必ず、君達が帰る場所へと帰すから



 ●

 その地に立ち、実際に鳥籠が並ぶ様を見て、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は小さく息を呑む。
 静かな空間に響き渡りそうな、そんな錯覚を覚えるほどに、しかと己の喉奥を震わせた其の元は、恐れという感情ではない。
 ただ……あゝ、ただ煮えたぎるような怒りが、この裡を暴れまわって吐きそうだ、と。奥歯を噛みしめ耐えるセリオスの隣。
 アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)も、また眼前の景を前に胸中を震わせていた。
 どこまでも広がるような白に包まれ立ち並ぶ鈍色は、内包する人間たちをただ静かに、黙し囲っている。
 そう、其れは、命を、未来を捕え……そして、壊そうとする鳥籠。

 ――ああ……“此方”も悪趣味だ。

 湧き上がる嫌悪感。その儘に、眉間に深く溝を刻む。
 毒の耐性となろうか、と、互いのマントにオーラを纏わせたアレクシスは、一歩踏み出すとともに意志を言葉に乗せる。
 「一刻も早く助け出そう、セリオス」
 「……ああ、アレス。あんなもん、全部ぶっ壊してやろうぜ」
 アレクシスの言葉にそう応え頷き、彼の歩みに合わせ一歩踏み出したセリオスの、その目前。

 ――……嗚呼、ああっ!

 眸に捉えた“其れ”に、思わず溢れ出す感情が、儘とセリオスの声に乗る。
 奥から絞り出すように、けれども、同時に、激しく弾けてしまうかのような。
 鳥籠を見た時の激情ですら生温い。
 その目に映る、己の眼前に立つ怨敵の……吸血鬼の姿に、炎があふれ出しそうだ。
 理性という歯止めを弾き飛ばし、裡から溢れ燃え盛る感情の炎の儘。
 あゝ、此の儘、燃やし尽くしてしまいたい。
 咲き乱れる白も、佇む鈍色も、何もかもを巻き込んで、全部、全部……!

 そんな激情にセリオスを誘いゆくのは、他でもない真白の幻惑。
 ゆらり、ゆらりと揺れる白は、彼の隣に立つアレクシスもまた、甘き香りをもって幻惑の内に吞み込んでいた。
 咲く真白にも負けぬほど、その表情を白く染めた彼が見ているのは、空っぽとなったひとつの“鳥籠”。
 其れは、己が救おうとしていた、何より救いたかったもの。
 そうして駆けてきた筈の鳥籠は、真っ赤に染まり、居る筈の、救う筈の姿は其処には、無くて……
 どろり、と。滴る赤き血が満たす鳥籠の内には。
 セリオスを攫った吸血鬼の姿が、在った。
 逆光めいた光と影でその表情は見えないが、まるで此方を、『間に合わなかった』この身を、嘲笑うような。

 これは、幻だ。

 そう、頭では理解していても。
 アレクシスの裡を占めゆくのは、怒りに動揺……心に様々な感情が湧き上がる。
 ぐるり、ぐるり、呑まれゆくような感覚に、僅かな眩暈を覚えたその瞬間だった。
 チリ、と。彼の身をわずかな熱が襲う。
 はっと、視線を隣に向けたなら、其れは彼のよく知る炎の熱と色。
 そう、確かに己の傍らに存在する、セリオスの炎。
 幻も花も、己すらも焼き焦がしそうなセリオスの炎に気付いたならば、渦巻く感情を堪え、アレクシスは伸ばした手で彼の手をしかと掴んだ。
 セリオスの心が、悪意の幻に囚われぬように。
 そうしてそれと同時、彼の存在を……夢幻に見た其れとは違い、共にある今をも掴むように。

 はっと、意識を引き戻されたのはセリオスも同じだ。
 荒れ狂う激情は、己の腕を通し伝わるあたたかな温度が凪と変えてゆく。
 この地の人々を助けたい、その思いは、意志は其の儘に、己を己へと引き戻してくれる。
 それは、他の誰でもない、アレクシスだから出来ること。
 深く息を吸い、視線を隣へ向けたなら、真っすぐに此方を見つめる彼と眸の色が交差した。
 「……悪い、流石に燃やしちゃまずそうだ」
 「……見失わぬように、一緒に皆を助けよう、セリオス」
 そう告げた言の葉は、セリオスへと真っすぐに響かせたものだけれど、きっとアレクシス自身にも向けたものだ。
 己を己たらしめてくれるのは、アレクシスにとっても、セリオスの存在であるのだから。
 「……僕らの目の前にあるのは、過去でも運命でもない。鳥籠はまだ空っぽじゃないんだ」

 ――……大丈夫、僕達ふたりなら、幻も毒も終わらせられる。

 そうアレクシスが告げたのは、今目の前の現状を隣の彼に伝えると同時、先の幻影は現ではないのだと。そう、己へも言い聞かせるためのものであったかもしれない。
 それを知ってか、知らずか。いずれにせよ、真っ直ぐに重ねた視線は其の儘に、セリオスも彼へと力強く頷いて。
 「ああ、そうだな、俺達ふたりなら!」
 そう、確かな音で告げたなら、先とは逆に、セリオスの手がアレクシスの手へとあたたかに触れゆく。

 ――……こんな世界でも光が、救いがあるってこと。教えてくれ、アレス。

 重ねたてのひらから。
 願うように、唱うように、そうして背を押すように告げる言の葉から。
 セリオスは、己の力を彼へと注ぐようにして。
 そんな彼の力を、言の葉を受け、アレクシスは其の剣へと光を纏わせてゆく。

 ――……教えてもらったのは、こちらの方だよ。

 そんな言の葉は裡に秘め。
 「……ああ、君の望みに応えてみせよう」
 「アレスの光と共に、風の刃で花を刈りとってやる!」
 柔らかな笑みで応えたアレクシスは、セリオスから受けた風の力と共に、浄化を乗せた光を広げるように放ちゆく。
 ふたりの力を乗せた眩い光の一閃は、自分たちを呑み込もうとしていた幻影を、そうしてその原因たる花を切り祓っていった。
 一帯の花がはらり、と舞い散る様をその目に映したなら、ふたりは頷き合い、近くに並ぶ鳥籠へと其々に手分けして駆けてゆく。
 ひとりでも多く、少しでも早く。ふたりで力を合わせ、救うべく。

 アレクシスは、最も近い鳥籠の扉の鍵を盾で壊し、先ほどの花を散らしたものと同じ光で、内にて天を見上げる女性をその身蝕む毒からも解放させてゆく。
 キン、と金属音を響かせて籠を解放しゆく彼の姿を横目に映し、口端に笑みを浮かべたセリオスもまた、目の前の鳥籠へと手を伸ばす。
 「俺は、剣よりこっちだな」
 そう、にやりと笑ったなら、響かせる歌声で己の身体を強化した後、握りしめた鳥籠の柵を力の限り左右へ引けば、無理矢理にひん曲げた。
 それは、過日……そう、あの日。セリオス自身が、そうして鳥籠から出たように。
 鈍色にて囲い捕らえる鳥籠の中から、今度は己が人々を救い出すのだ。
 そうして、ちゃんと自分の足で帰れるように。安心できるように。
 願いを込めて、希望を乗せて。
 近くで感じるアレクシスの光に合わせるように、癒しの歌を響かせる。
 花畑に、鳥籠の群れに、光と旋律が、煌めき響き広がってゆく。
 ひとりでもでも多く……叶うなら、誰一人取りこぼすことなく。
 誰かにとって大切なものである彼らを取り戻そう。
 そんな意志を、形と音と成しながら。

 「任せとけ、これ以上奪われねぇように、元凶はぶっ叩いてくるからよ」
 「僕達が必ず、君達が帰る場所へと帰すから」
 そう語り掛けるふたりの声は、籠められた想いは、しかと人々に届いただろう。
 始めはこの状況への戸惑いも、身に残る毒の違和も感じながらも、向き合う彼らの功績で其れも晴れたなら。
 囚われであった人々は、確かにその足で、己の歩みでもって鳥籠からこの花畑から、人間画廊から放たれてゆく。

 鳥籠が、ひとつ、またひとつと放たれてゆく。
 人々が、ひとり、またひとりと救われてゆく。

 そうして、ここに集いし猟兵たちの力によって、鳥籠はひとつ残らず空となる。
 救われた人々が元の地へと日々へと至るには、今暫くの時が必要だ。
 この城の奥に待つ、此の地の元凶を。
 この鳥籠の群れの主を倒した後にこそ、其れは叶うのだから。

 人間画廊であった花畑を後にした彼らの先には、城主の玄室が、そしてその主が待っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『鳥籠の主人』

POW   :    僕の支配から、逃げられると思うのかい?
【眷属たる吸血蝙蝠の群れ】【己の意思で自在に操る束縛の金鎖】【毒仕込みの念動力ナイフ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    さて、コレはどれ程役に立ってくれるかな
【巨大な鳥籠から己に服従する『代替品』】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    いつも代わりや餌ばかり。帰っておいで、僕の小鳥。
【敵意、嫌悪、畏怖、諦め、服従の何れか】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【ひとひとりを閉じ込める巨大な鳥籠】から、高命中力の【対象を束縛し鳥籠へと引き込む金鎖】を飛ばす。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ティル・レーヴェです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ●

 白き花に満ちた空間を抜けた先。
 再び石造りの廊下を駆けた猟兵たちは、最奥、暗き玄室に辿り着いた。
 広くも殺風景な石造りの景観を、壁に並ぶ幾本もの蠟燭が、ゆらりゆらりと灯し映しだしている。

 その最たる奥には、一際目を引く、金色の大きな壊れた鳥籠が、ひとつ。
 そうして、壊れ開け放たれた籠の扉に、腰をかけた吸血鬼がひとり、此の地へと踏み入る猟兵たちを眺めていた。
 「随分、賑やかだと思ってはいたけれど、本当に此処まで来るとはね」
 さほど感情の籠らない声で、腰かける儘の彼が告げれば、ふぅん、と手の甲に指先を触れる。
 「……成程ね。鳥籠に飾った玩具が、此れの糧となっているというのは、嘘じゃなかったわけだ」
 此れ、と、彼が触れゆく其処には、満月とも眼球とも見える紋章が宿って見えた。
 其れが話に聞く、『月の眼の紋章』であろうか。
 大して面白くもなさそうに、その紋章を二、三度指先なぞった吸血鬼は、腰掛けていた壊れた金の鳥籠からその身を降ろし、一歩前へと踏み出した。
 「嗚呼、そうだ。あの玩具は好きにしていいよ。此れの糧になるというから、飾ってはみたけれど……やっぱり玩具は飾るだけより、箱庭で動いてる方が、まだ幾分は面白いからさ」
 ひらり、と。『好きにしていい』を形と成すように、手を振り払う仕草を見せたなら、紋章からパシリ、と音を立て棘鞭が一度現れ消えた。
 あゝ、これはまだ活きているのか、と。紋章を一瞥し独り言ちた言の葉も、大して色を宿さない。

 「それで……此処に来た、ということは、少しは暇を潰させてくれるんだろう?」
 小娘達が遊んでも壊れず、花に惑わされ紋章の餌に成ることもなく、此処に来た。
 其処に立つモノ達は、それなりに、僕も遊べそうな強度はあるということだ。
 そう、少しばかり愉しげに声を弾ませた男は、赤き眸をつぅ、と細めて、己の眼前に立つ猟兵たちをくるりと眺めた。
 「此処にも、僕の小鳥は居なかった。代わりになるモノも見つからないし、別に未練もないんだ」

 ――でもほら、折角整えた玩具箱だからさ。僕も、ひと遊びしたかったんだよ。

 ほら、此処に来たのなら、何か目的があるのだろう?
 ひと遊びしていくといいさ、そうして僕の興を満たしてくれよ。
 真白の花は、小鳥と同じようには咲かせられなかったけど。
 この『代替品』の具合を見るには、いいかもしれない。
 あゝそれとも、新しい玩具になってくれるのかい?
 唯の餌で終わるなんて、つまらないことはよしておくれよ?

 そう、語るようでいて、独り言のようでもある言葉を零し、薄らと笑った男はコツリ、靴音響かせて君たちと対峙した。
花羽・紫音
【ソロ希望】【アドリブ歓迎】
「人を鳥籠に閉じ込めるなんて許せないわ」
即座に【鈴蘭の嵐】を使って攻撃をするわ
でもあまり効かない事で諦めの感情が少し生まれてしまい……
鳥籠から延びる金鎖に拘束されてそのまま鳥籠に閉じ込められてしまいそうだわ
そして鳥籠の中で諦めから畏怖、そして服従を感じてしまいそうだわ



 ●

 「人を鳥籠に閉じ込めるなんて許せないわ!」
 そう告げて、鳥籠から猟兵たちへ向かい歩みゆく吸血鬼へと、即座に白き花弁を放ったのは、花羽・紫音(セラフィローズ・f23465)。
 玄室へと辿り着いたその足で、即座に放った紫音の攻撃は、一見、彼女の存在を意識していなかった吸血鬼の意表をついたかのようにも見えた。
 しかし、嵐のように舞い放たれた鈴蘭の花弁は、彼の手の甲より現れた棘鞭の素早い動きにより散らされてゆき、辛うじて其れを逃れた数枚も、彼の翻したマントによって阻まれた。

 「……へぇ。これで、僕の意表を突いたつもりかい?」
 あゝ、本当につまらないな、と。取るに足らないといった様子で、冷ややかな視線を向ける男の姿に。擦りもしなかった花弁の散る様に。紫音の胸の内に湧き上がるのは、己れの力が及ばぬ、届かぬ事による、諦めの感情。
 「……そん、な」
 裡に渦巻く感情に呑まれ、小さく声を漏らす紫音の元へと、彼の手により呼び出された鈍色の鳥籠から、金の鎖が放たれる。
 難なく拘束され、鳥籠の内へと囚われゆく紫音の姿を、変わらず冷ややかな目で流し見ながら、男はマントに付いた鈴蘭の花弁を一枚、その手に掬い上げた。
 「……あゝ、つまらないな。つまらない。……けど、この真白の花は嫌いじゃないよ」
 僕の小鳥に咲いてた花だ。
 そう告げて。少しばかり、眸の冷ややかな色を和らげたのも束の間。
 コツリ、と靴音を立てて紫音を呑み込んだ、鈍色の鳥籠へと歩み寄る。

 ――……あ、ああ。

 金の鎖に拘束され、鳥籠の中から吸血庫を見上げる紫音の瞳は、徐々に諦めの色を増してゆく。
 動けぬ身が、囚われた身が、その感情を呼び起こすのだろうか。其れとも、己を捕らうこの鳥籠にはそのような効果があるのだろうか。

 カシャリ。
 男の触れた、鈍色の鳥籠が鳴く。
 「おや、よく見れば、コレにも白い翼があるじゃないか。仕込みようによっては、予備の『代替品』くらいには、なってくれるのかな?」
 未だ見つからない、僕の小鳥の籠が埋まるまで。仮初の、鈍色の中で歌うかい?
 そう問う彼の赤色が、紫音の白き翼を映し、弧を描く。
 玩具を見つけた子の様に。
 「僕の役に立つのなら。つまらないモノから、面白いモノになってくれるなら。餌に変えるのではなくて、使ってあげてもいいよ」
 色の籠らぬ、音ばかり優しく紡ぐその声に、何処か深い闇を抱くその声に。
 紫音の心は、畏怖とこの男への服従を感じ始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…そうね。お前がこれ以上、暇をもて余す事は無くなるわ
何故ならお前は今日、この場で私達に狩られるのだから

「光の精霊結晶」を投擲し強烈な閃光で一時的に敵の視力を潰して索敵から逃れ、
敵の体勢が崩れた隙に死角から切り込み棘鞭によるカウンターを誘い、
存在感を付与した「写し身の呪詛」の残像を囮に迎撃を受け流しUC発動

…お前達の能力ならよく知っている
目を潰した程度では隙を突く事ができない事も、
その能力に絶大な自負を抱いている事もね

…だからこそ、こういう手がよくよく有効なのよ

右腕のみに血の魔力を溜め肉体改造を施して完全な吸血鬼化を行い、
限界突破した怪力任せに大鎌を超高速の早業で乱れ撃ち敵を無数に切断する


馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風

さて、あなたが城主。
なれば、倒すのみですねー。この城、調べたいですしー。

さて、攻撃に当たるわけにはいきませんのでー。第六感と見切りを活用しての回避ですねー。
ただ…念のために、内部三人が四天霊障による結界術を張ってますがー。
…コウモリは四天霊障で潰しますか。

漆黒風や四天流星を投擲していきましてー。ま、外れてもいいのです。
四天流星は、位置を錯誤させる呪詛を振り撒くためのもの。
漆黒風は本命武器なんですが、外れたやつを指定UCで掴んでまた投げるんですよ。外れてしばらく動かないものって、意識から外れますからねー。



 ●

 ひとりの猟兵を内へと捕らえた鈍色の鳥籠に向かって語りかける吸血鬼に向け、目に見えぬ呪詛が飛来する。
 その気配を察知して、ひらりと避けた吸血鬼と鳥籠の間を抜けたその力は、猟兵を捕らえた其れを掴み上げるようにして引き寄せる。
 ガシャン、と音を立て地に降りた鳥籠を、そしてその内に囚われし彼女を吸血鬼の元より取り返したのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の操るポルターガイストの力。
 「おや、残念だね。暇潰しの種が増えるかと思ったのに」
 大して残念そうでもない声でそう告げる男へと、対峙するように一歩前に踏み出したのは、鋭き視線を彼へと向けた、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
 「……安心しなさい。お前がこれ以上、暇をもて余す事は無くなるわ」

 ――何故ならお前は今日、この場で私達に狩られるのだから。

 落ち着いた声音でありながら、意志込めたその言の葉は、暗く静かな玄室に響いた。
 そんな彼女の言葉を受けて、先と同じ力をもって鳥籠を玄室の外、安全圏たる其処へと移動させた義透もまた、対する男へと顔を向ける。
 その表情は依然、穏やかな笑みを浮かべたままだ。
 「さて、あなたが城主ですかー。……なれば、倒すのみですねー」
 この城、調べたいですしー。己のこの地に立つ目的をも添えながら、その障害となる彼へと、薄く開けた瞼の内から視線を向けた。
 ふたりの猟兵から同時に向けられる其々の色を宿した視線を受けて、吸血鬼は小さく笑う。
 「僕を狩り、倒す、か。……気概ばかりで、さっきのみたいにつまらない終わり方は、やめておくれよ?」
 笑い告げる儘、地を蹴りふわりと身を浮かせた彼が放つのは、翻すマントの奥から現れ飛ぶ金の鎖。直線に放たれる金色の軌跡を、義透とリーヴァルディは左右に分かれ難なく避ける。
 その身を追うように、続いて飛び来るのは複雑な軌道を描きながら切っ先を煌めかせたナイフの群れ。避ける身を追従するよに曲がり跳ぶナイフの軌道を、持ち前の第六感と見切りの技をもって避けゆくのは、『疾き者』を名乗る義透には容易い。
 「そう容易く、攻撃に当たるわけにはいきませんのでー」
 にこやかに、間延びする語り口調もそのままに、余裕を持った速度で飛来するナイフを躱し、その軌道を読み誘導した先、玄室の壁へとぶつけゆく。
 カランと、無機質な音を立て地に落ちた其れを横目に見た彼の目の前へと、休む間もなく吸血蝙蝠の群れが襲い来る。
 自在に飛ぶナイフを捌き避けた直後、壁を背に身を捻ったばかりの眼前に迫りし蝙蝠に、避けゆく先はないようにも見えたが、避けれぬのならば潰すまで、と。義透が放つのは、四種の無念が集まりし霊障の力。
 混ざりて渦巻くような霊力に吞み込まれ、義透に向かい飛んできた蝙蝠たちはその腹を、口内を一滴と潤す間もなく散ってゆく。
 そうして、一連の攻撃を躱しきったかと思われた彼の側面から、最初に避けた筈の金鎖が伸びた先、軌道を変えて再び飛来してくる。
 あわや当たろうかといった瞬間、その身に届く指先一つ分の距離で枷を弾いたのは、先ほど蝙蝠を呑み込んだと同じ霊障の力を用いた結界術。一つの身に宿りし四人。戦場に立ち、この身を守るのは表の彼ばかりではない。そうして、もしもに備えた行動と、彼が使う策に重なった攻撃であった為にこそ叶った防御だった。

 「なるほどね、言うだけあってちょろちょろと、避けるのはそれなりに上手いじゃないか」
 其れくらいは、しぶとくいてくれなくちゃ。と、弾かれた金鎖の行方を目で追って、薄ら笑う口端から牙を覗かせたなら、男は更なる攻撃をと踏み込んだ。
 その矢先。
 眩いまでの閃光が吸血鬼の視界を覆いつくす。
 思わず身に纏うマントで眼前を庇う彼に放たれた光の正体は、リーヴァルディの投擲した光の精霊結晶の力。
 意識を光に奪われ、身を庇い、僅かながらな隙を生んだ彼の死角から彼女の鋭い黒鎌による斬撃が繰り出された。
 ガチン、と硬質な音を立て、その刃が受け止められたのは、マントを掴む彼の手の紋章から現れ出でた棘鞭の防御。
 其の儘、迎撃に出た棘鞭の攻撃で、その身を棘に抉られ……て、見えたのは、彼女が囮として遣わした写し見の呪詛の影であった。
 手ごたえ無く、影を振り抜いた棘鞭が空を舞った様を見たリーヴァルディ本人は、その利き手である右腕のみに血の魔力を溜めてゆく。
 「……お前達の能力ならよく知っている。目を潰した程度では隙を突く事ができない事も」

 ――そうして、その能力に絶大な自負を抱いている事もね。

 語りゆくリーヴァルディの右腕は、徐々に其処に籠る魔力を増してゆき、肉体改造の力も重なりて、部分的な完全なる吸血鬼化を完成させる。
 「……だからこそ。こういう手がよくよく有効なのよっ」
 それと同時、放つ言葉に意志と力を重ねゆくように、限界突破した右手の怪力任せに、使い慣れた大鎌を超高速の早業で乱れ打つ。
 其れは、彼女の言う通り、己は上位だと自負するが故の吸血鬼の傲慢たる油断と、彼女自身が仕掛け生んだ隙が齎した好機。
 そうして、襲い来る連続する斬撃の気配を避けようとした彼の足元に、黒き棒手裏剣と呪詛の籠った幾本もの鏢が突き刺さる。
 リーヴァルディが放つ停止不可の乱撃を避けさせぬよう、義透が放った牽制の一手だった。
 わずかな一瞬、其れでも完全なる回避を阻まれた吸血鬼は、紋章宿さぬ側の手を振り回される鎌の刃に捉われ、其処が無数に切断されてゆく。

 片腕を負傷しながらも跳躍し、己を傷つけたモノたちから距離を取った男は、走る痛みに、その身に刃を受けた事実に、僅かながら眉間に皺を寄せた。
 ぼたり、と。その手から滴る液体をひと舐めしたなら、なるほど、と小さく独り言ち、彼は傷の無い方の腕をゆらりと振った。
 それと同時、虚空から現れ出でた鈍色の鳥籠の内から、目隠しをした翼持つ少女がその地に降り立つ。
 お呼びですか、主様。と。付き従うように彼の傍らに立ち告げた少女を一瞥した男は、静かに口を開く。
 「――……僕の役に立つんだよ。それが『代替品』のつとめだろ」
 その為に、望み通り僕の力の一部にしてあげたんだから、と。そう告げた男の腕を見た少女は、小さく一つ頷いて見せて。囀るように歌を紡げば切断された彼の腕に癒しの力が巡る。
 切り裂かれた袖は其の儘に、先ほどまで失っていた片腕が形を取り戻せば握って開いて。
 「……ちょっとぎこちないけど……まぁまぁ、かな。その調子で役に立つんだよ」
 切断され一度失われた形は戻るも、リーヴァルディの与えた負傷の全てが癒えた訳ではないらしい。されども、『代替品』と呼ぶ少女の力で癒しを得た男は再び向き直る。

 「ねぇ、僕はまだ遊べるよ」
 「お前達のことはよく知っているといったでしょう。一筋縄でいくとも思ってないわ」
 「いやはや、しぶとい……のは、どっちのことでしょうねー」
 薄ら笑いを再び宿した吸血鬼へ向け、冷ややかな視線を向けるリーヴァルディは再び鎌を構え、義透もまた、漆黒風と呼ぶ棒手裏剣をその手に握る。
 癒しを携えるならば、幾度でも挑み、切りゆくまで。
 そうして、何よりも。この地に立つのは己だけではないのだから。

 猟兵たちが対峙せし、鳥籠の主人との戦いは、未だ始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
おや…やる気のない敵
僕も何をしに来たか忘れてしまった
似た者同士平和的解決とはいかない?
UC発動し身を守る

今頑張っているこの子達は
動物図鑑から出した僕の作品
人間は彼らを簡単に殺してしまうから
無条件で助ける義理は特にない
その場の判断が全てだよ
つまり…きみが『何となく可哀想に見える』
愛するペットを亡くした人みたい

その鳥籠
小鳥を入れるには大きすぎるね
何か思い出話でもないの
人殺しのボランティアも結構暇なんだ
何でも未練なく処分できるから

愛情や執着を持ち得たなら
僕もきみになっていただろうな
最後に質問
『退屈で死にたくならない?』

以上は言いくるめと催眠術
UCを解除するかは彼次第かな
自刃するも処分されるもご自由に


岩倉・鈴音
主よ。貴様は独りあの世で遊んでおれ。猟兵は猛獣なんでな。
月光城の秘密は明かしてもらうがな!

鋼の鬼は涙を流さないが友情は知る。アドリブ、連携希望だよ

闘争心を高めて他の雑念を振り払う。
先制で切り込んでいくよー
紋章から棘鞭がでてきたら見切りして回避できるように動きながら主の振り払う動きに注意をする。ちょこまか動く代替品など鎧無視の貫通で仕留めてやるわ。

代替品とか小鳥とかどういうことカナ?とんと合点がいかん。貴様の代わりが入るならそう言えばいい。月光城は猟兵が貰う!

暇してる主を暇な極楽へ大往生!【虹の身体】をつかいダメージを与える。
閉じこもってちゃ沢山ユーベルコードも持てない。
鳥籠を捨てよ旅にでよう。


ティフティータ・トラーマ
「気持ちは判らなくもないけど…それなら代替品なんかに手を出すんじゃないわよ。」
ある意味、暇を持て余したのは自分も同じだけれど
「だいたい、代わりになるモノなんて気にしているから、小鳥に気付けないのよ。」
探すなら探し様ってのがあるでしょ、と言いつつ
「直接、貴男に用がある訳じゃないけど…そうやって遊びにも中途半端だから、ダメなのよっ!」
遊びたいなら、楽しむ実感が欲しいなら自分で動け、と現れた代替品や鳥籠を宙を舞う様に躱して、主人を襲おうとします



 ●

 対峙する猟兵に語り掛け、『代替品』と呼ぶ翼持つ少女を傍らに従えた城主へと、素早い動きで切り込んだのは、岩倉・鈴音(JKハングマン・f09514)。
 ひらりとその身を翻し、鈴音の一撃を避けた彼へと握る刃の切っ先を向ける儘、鈴音は紡ぐ。
 「主よ。貴様は独りあの世で遊んでおれ」
 猟兵は、玩具などではなく、猛獣なんでな。そう言い添えた鈴音の赤き眸は、向けたカトラスと同じく、真っ直ぐと相手を見据えている。
 鋼の鬼は涙を流さないが、友情は知る。
 そう裡で語る鈴音が前に飛び出すことが出来るのは、この地に立ち、目の前の敵と対峙するのが己だけではないと知っているが故。
 数多の戦場にて、その地で縁結ぶ者らと無言の連携を交わしてきた、猟兵たる身であるが故。

 「猛獣とはよく言ったものだね。それじゃあ、その獣たる姿、みせてごらんよ?」
 くすりと笑う男の笑みは意識の外へ、構えた刀身に意識を集中し、闘争心を高め、鈴音は他の雑念を振り払う。
 再び地を蹴った鈴音の動きを邪魔するように、翼持ちの少女はその翼から白き羽根を飛ばして牽制を行ってくる。
 その合間を縫って、紋章から繰り出される棘鞭を捌きながら、城主への距離の詰め方を模索する鈴音の様子を、少女と伸びる鞭の向こうから吸血鬼は眺めて笑う。
 「あゝ、今回の代替品はよく働くじゃないか」
 僕の小鳥ほどじゃないけれど、そう添えながらもどこか満足げな声音を広い、鈴音は視線を彼へと向ける。
 「先ほどから聞いていれば、代替品とか小鳥とか、どういうことカナ?」
 とんと合点がいかん。と、眉を顰めた鈴音が告げる。
 「どうにも……やる気のない敵だね」
 その言葉を追うように、そう言葉を発したのは、やり取りを眺めていた、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)。

 ――……僕も、何をしに来たか忘れてしまった。

 拍子抜けしたような声音を重ねて、そう告げた章の言葉通り、彼は戦闘行為を放棄して、いつの間にか彼の傍らに現れた生き物たちに添われつつ、目の前の戦闘を眺めている。
 吸血鬼の男が視線を向けた章の元へと、紋章より伸びた棘鞭が放たれるが、其れは章に添う多くの生き物や闇が阻むように弾き返し、彼に届くことは叶わない。
 其れは宛ら、少女と棘鞭の向こうから眺める城主と姿が重なるようでもあった。
 そんな章の様子を、へぇ、と興味深げな声と共に見やる赤き眸を、彼の紫色が見つめ返す。
 「提案だけどさ。似た者同士、平和的解決とはいかない?」
 「人間の癖に面白いことを言うじゃないか。……聞くだけ、聞いてあげるよ?」
 つまらない話なら直ぐに打ち切りだ、と笑いながら、男は続きを促す。その視線が章を護るように忙しく動く動物たちにも向いていることに気付いたならば、あゝと一言添えて。
 「今頑張っているこの子達は、動物図鑑から出した僕の作品」
 作品、と告げた彼の言葉に細まる赤を視界に映しながら、淡々と章は続ける。
 「人間は彼らを簡単に殺してしまうから、無条件で助ける義理は特にない。僕にはその場の判断が全てだよ」
 つまり。

 ――……きみが『何となく可哀想に見える』。

 章から思わぬ言の葉を投げかけられた男は、其の赤を僅かばかり瞠る。
 「……可哀想、だって?この僕が?」
 「あゝ、僕の目にはそう映るよ。まるで、そう。愛するペットを亡くした人みたい」
 そう続けた彼の紫が、男が座っていた大きな金色の鳥籠を映す。
 「その鳥籠。“小鳥”を入れるには大きすぎるね」
 言葉の通り、ではないのだろう?と、章は言外に告げる。それにピクリと耳端が動いたことを見逃さず、彼は続ける。
 「何か思い出話でもないの。人殺しのボランティアも、結構暇なんだ」
 何でも未練なく処分できるから。さらりと言ってのけた言葉は、偽りの響きを含まない。
 其処にも似たモノ同士は垣間見えはしないか、と。章の視線は男の視線を捕まえにゆく。

 「はは、まったく珍しい。対しているのが本当に人間なのかと思うね」
 可笑しげに笑った吸血鬼は、いいよ、興が乗った。と告げたなら、章の問いかけにつらりと返す。
 嘗て玩具として、孰れの餌として手元に置いていた人間の幼子。その一つがある日、翼と光を得たのだと。
 手元で孵った雛を、面白いと育てたのだと。
 「人間の言葉で、刷り込みというのだったかな?」
 孵ったばかりの翼持つ雛は、面白いくらい僕の想うように育ったんだ。
 僕の言うことを、なんでも信じた。なんでも身に付けた。

 ――あれは、そう。僕の為に生まれた小鳥だったんだ。

 そう告げた男の眸は、金の鳥籠へ向き。
 「今は、見ての通りだ。僕の小鳥の為に用意したこの籠は、知らぬうち誰かに壊され、逃げてしまった」
 だから探してるのさ。そこまで告げて口を閉じた男へ向けて、暫く耳を傾けていた章は、そう。と淡白に告げた。
 「愛情や執着を持ち得たなら、僕もきみになっていただろうな」
 そう告げながらも、冷たさも温かさも宿らぬような視線を向けた章は、徐に彼へと告げる。

 ――……最後に質問。『退屈で死にたくならない』?

 “其れ”がキーワードとなる様に、言葉の魔術が男を襲う。
 章の紡ぐ言葉の数々は、偽りこそ含まぬものの、男へ向けた言いくるめと催眠術を孕んだものだった。
 自刃するも、処分されるもご自由に。
 そんな思いの儘、眸細めた章の視線を受け、己を襲うくらりとした感覚に、刹那戸惑うような様子を見せた男は、直後、可笑しげに愉しげに笑いだした。
 そうして仕掛けるのか、と。笑い声と共に、章へと向けられた棘鞭は少女による攻撃は、やはり動物たちに阻まれる。しかし、其れすらも愉快そうに笑う男は儘に続ける。
 「そうだね、『退屈は人を殺す』とも人間はいうのだろう。けれど僕は人間じゃない」
 現状に飽き飽きして、『今』の終わりを選んだとしても、人間の言う死を迎えたとしても。
 「それは僕たち(オブリビオン)の、もう一つの始まりに過ぎないんだよ」
 ひとつを終えども骸の海を経て、また新たな地に立つ。今己が此処に居るように。
 だからこそ、面白いことを、暇つぶしを、常々探しているのさ、僕は。と彼は告げ、話は終わりだと章と距離を取った。
 攻撃の通らない代わり、現状手出しもしない彼の身は後回しだとでもいうように、その視線は他へと向く。

 語る言葉とその様子から章の行動に作戦が孕むのを感じ、交わされる会話を見守り聞いていた猟兵たちも、動き出した吸血鬼の姿を見とめ、再び臨戦態勢を取る。

 「貴男の気持ちは、判らなくもないけど……」
 武器を構えながら、そう言葉を溢したのは、ティフティータ・トラーマ(堕天使の剣舞暗殺者・f29283)だ。
 行動の是非は兎も角として、思い入れの深きものを失い執着する気持ちも、長き暇を持て余す気持ちも、それ自体は分からなくもない。
 何故ならば、ある意味、暇を持て余したのは自分も同じだ、と。永き時を過ごしゆく西洋妖怪たる彼女は感じるのだから。
 けれども。いや、だからこそ。
 「それなら、代替品なんかに手を出すんじゃないわよ」
 己へと向かい来る、代替品と呼ばれし少女の攻撃を素早い動きで躱し、時に手にしたダガーで捌きながら、ティフティータは言葉に乗せる。
 「だいたい、代わりになるモノなんて気にしているから、小鳥に気付けないのよ」
 本願となるものがあるのなら、暇を嘆き余所見をするのではなくて。仮初で穴を満たそうするのではなくて。
 探すなら、探し様ってのがあるでしょ、と言いつつ、ティフティータは軽やかに空を舞う。
 己と男の前に塞がる、少女と鳥籠、そして棘鞭を掻い潜るようにして。その後ろへ控えるよに立つ男へとの距離を詰めるべく。

 そうして、城主たる男へと向かいゆく彼女と連携するように、彼女の身を避け虹色の炎が飛来する。
 鮮やかな七色の炎は、ティフティータの軌道を阻むよな羽根や棘鞭を焼いてゆく。
 其れは、鈴音がその身から放った灼滅の炎。
 邪魔なものを燃やしながら、飛翔するティフティータと共に翔けるよに、城主に向かいゆく炎を飛ばし、彼女もまた告げる。
 「暇してる主を、暇な極楽へ大往生!」
 閉じこもってちゃ、沢山ユーベルコードも持てない。己は旅立つ事により、数多の力を自由を得た。

 ――鳥籠を捨てよ、旅にでよう。

 鳥籠に囚われているのは、主の方なのでは?そんな思いも乗せながら。
 「そうして、この月光城は、猟兵が貰う!」
 力強く叫んだ鈴音の炎が、威力を増す。
 ゆらめき輝く虹色の炎が、行手を阻む棘鞭と代替品の少女を呑み込んだ。
 パチパチと燃やしゆく七色の火花が飛び散る中を掻い潜るようにして、不要なものを身から外し、身軽さを増したティフティータが速度を上げて七色の中から飛び出してゆく。
 「直接、貴男に用がある訳じゃないけど……そうやって遊びにも中途半端だから、ダメなのよっ!」
 遊びたいなら、楽しむ実感が欲しいなら、自分で動け!
 永き時、終わらぬほどの時間を過ごしながら、己がそうしてきたように。そうしてゆくように。

 其々の思いを乗せた七色の炎と鋭き刃は、暇を憂う城主の身を、切り裂き焼いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

備傘・剱
頭の弱そうな奴が出てきたな
素直に「この事態は想定してませんでした、すみません」っていえば、多少手心を加えてやったもんを

美形気取りに効くのは、おちょくりってのが、定番なんでな
式神使いで式神を多数つくり、化術で鋏や鉛筆に変えて、こいつに落書きしたり、服を切って、脱がせたりしてやるよ
胡椒に化けさせ、くしゃみをさせてもいいな
あ、誘導弾を混ぜ、混乱させてもやろう


相手が冷静じゃなくなったり隙を見せたら、瞬間的に結界術で相手を縛り、念動力で浮かせ、顔面に鎧無視攻撃と鎧砕き黒魔弾を叩き込んでやる

…すかした奴も嫌いだが、人を玩具と言い張る奴はもっと嫌いでな
自慢の顔を破壊されれば、少しは気持ちが解るんじゃないか?



 ●

 己の身を焼く炎を祓い、裂かれた身を庇う様にして、対していた猟兵と距離を取ったこの城の城主は、マントを一度翻し目を細めた。
 「……ふん、思ったより長く遊ばせてくれるじゃないか」
 お陰で代替品もひとつ、壊れてしまった、と。
 炎に呑まれた跡を見やり、僅か肩を竦め溢した言葉を耳に、ハッと乾いた笑いを零して、目の前の吸血鬼を見据えるのは、備傘・剱(絶路・f01759)。
 「これは、頭の弱そうな奴が出てきたな」
 嗤うように目を細め、徐に口を開いた彼から放たれるのは、そんな言の葉。
 ぴくりと、吸血鬼の尖耳が跳ねたのを見て、尚も挑発するようにその口を動かしてゆく。
 「素直に『この事態は想定してませんでした、すみません』っていえば、多少手心を加えてやったもんを……」
 その言葉の続きを阻むように飛翔したのは、金色に煌めく鎖。
 己に向かい飛び来るそれを避けた剱へと、冷ややかな視線を向けた彼は、静かながらも口を開き。
 「頭がいいと自負するほどの頭脳を、僕も持っている訳じゃないけれど。飛び回る羽虫に喚かれるのは……良い気分にはならないものだよ」
 此の城をぶんぶんと飛び回っていた事だって知っている。あの虫だろう?
 じろ、と睨むよな視線を受け、尚も笑みを崩さない剱は、内心、其れでいいと呟いた。
 美形気取りに効くのは、おちょくりってのが、定番なんでな、と。裡にて続ける儘、笑みを深めた剱が続けて呼び出すのは、式神使いの技を駆使して呼び出した式神たち。

 「そんなに暇なら……遊び相手が欲しいってんなら、お望み通り遊んでやるよ」
 告げる言葉が終わるや否や、剱の周囲を舞っていた式神たちが、彼の化術により鋏や筆といった文具へと姿を変える。
 「そんなモノでどうするっていうのさ」
 小馬鹿にしたような声音で嗤い告げる男の放つ、念動力のナイフの群れをすり抜けて、剱の指示で式神たる道具たちが男に向かい飛翔する。するりするりと軽やかに、合間を縫っては舞うように飛翔する鋏や筆。
 吸血鬼たる、この城の城主たる男にとっては、払い落とすことも容易かったろう。けれども、その様な物が届いたところでどうなるというのかと、眺め見ているその状況、油断もまた剱の狙ったものに他ならない。
 飛来する鋏のひとつを、払う手で落とそうとしたその瞬間、鋏の形をとっていた式神が突如胡椒の瓶へと姿を変える。
 何事かと不意を突かれ目を瞠った吸血鬼の目の前で……その手に払われた胡椒瓶が弾け飛んだ。
 其れを正面から浴びた男がどうなったかは……言葉にしなくてもわかるだろう。
 溢れんばかりの故障の威力が齎すものは、ヒトも吸血鬼も変わらぬようだ。

 止まらぬくしゃみのダメージは、身体的には大きくないものの、精神的にも隙を生むにも効果は大きいようだった。
 片手でマントの端を手繰り寄せ、少しでも胡椒の影響を阻みつつ、飛来する道具には棘鞭にて応戦するものの、視界が戻るまで、止まぬくしゃみが落ち着くまで、完全なる防御は叶わない。
 その隙を突いた剱の結界術が一時的に男を縛る、その身を念動力で浮かせたならば、地を蹴り肉薄した速度に乗せて、鎧をも砕きゆく力を籠めた黒魔弾を彼の顔面に向け放った。
 「美形気取りの……その自慢の顔を破壊される気分は、どうだ?」
 顔面に強打を叩き込まれ、その勢いで身をも飛ばされるまま膝をついた男に向かい、周囲を飛ぶ式神たちが、剱の言葉の通り『遊んで』ゆく。鋏は彼の身ではなくマントや衣類を切り裂いて、筆は落書きを施して。
 まさに、おちょくっている、としか言えない状況。
 マントで顔を覆い、膝をつく儘、なすがままにされているようにも見えた男が、肩を震わせマントをひと振りしたならば、内から飛び出した吸血蝙蝠の群れと棘鞭が式神たちを一掃した。

 ――……いいかげんにしなよ。

 苛立ちを隠せない、心の儘に響かせた男の言葉が剱の耳に届く。
 「……すかした奴も嫌いだが、人を玩具と言い張る奴はもっと嫌いでな」
 玩具にされる側、気持ちはちょっと解ったか?
 そう告げる剱と、立ち上がる男の冷ややかな視線が交差する。
 「……五月蝿いな。玩具の……羽虫の分際で、僕をここまで虚仮にしたのは、ある意味見事だと言ってあげるよ」
 その分のお返しを、存分にしてあげなくちゃね。
 そう告げた男と剱が同時に地を蹴ったなら、互いの力が飛び交った。
 戦いは、まだまだ加熱する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
自分が抜け出したのと同じような鳥籠によかったと
『誰か』は逃げたのかと
そう思ったのは一瞬
直ぐにそれは怒りに変わる
ああ、玩具だ何だとうるせぇな
そんなに囀んのが好きなら自分が鳥籠に入ってろ

歌で身体強化して
靴に風の魔力を
旋風に押されるように一気に加速したら
まずは先制攻撃だ
そのクソムカつく口を閉じさせる!

…やりづれぇ!
代替え品と呼ばれるやつ等が出てきたら
一旦アレスの後ろに退く
彼らに剣を向けることも…俺は、躊躇いなくできるけど
それよりアイツ本人をブッ叩きてえ
そんじゃアレス頼んだぜ
アレスが構える後ろ限界まで力を溜めてタイミングを待つ
その、一瞬の隙を見逃さず
【閃迅烈脚】
吸血鬼に全力をぶつける


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

金の鳥籠には『誰か』がいて
…今は自由な空にいるのだろうか
一瞬だけ想いを馳せ
…鈍の鳥籠にいた彼らを玩具と呼ぶ敵を討つ覚悟に変える

光の魔力を脚鎧に充填
セリオスを援護するべく駆け
彼に向かう攻撃…棘鞭は見切り
『閃壁』を展開した盾で防ごう

「代替品」と呼ばれる者が現れたら
庇うようにセリオスの前へ
…彼らも過去の残滓なのか
それとも囚われた者なのか
…目に見えるままに敵ごと討つ訳にはいかない
ゆえに狙うは吸血鬼ただ1人のみ
任せて。セリオス
─光は月光のみに在らず
【天破空刃】
距離を超えた斬撃を吸血鬼に放ち隙を作り出そう
代替品には盾で気絶させる
悪いが彼の邪魔はさせない
最後の鳥籠…この城を解放させてもらう



 ●

 月光城の主たる彼の背後にある、金の鳥籠。
 かつて己が抜けだした、『其れ』と同じように壊れた其の姿に、良かった、と。
 その内にいた『誰か』は逃げたのか、と。
 どこか安堵した気持ちで目を細めたのは、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)。
 そうして、そんな彼の隣にて、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)もまた、同じくその金の鳥籠を眸に映し。
 かの鳥籠にいた『誰か』は、今は自由な空にいるのだろうか、と。
 ふと、その視線を宙へ向け、想い馳せたのは、互いに一瞬。
 次の瞬間、裡に抱かれ浮かぶのは、鈍色の鳥籠に捕らえた人々を玩具と称し、眼前にて戦いを繰り広げる吸血鬼への怒りと、彼を討つ覚悟。

 セリオスとアレクシスは、互いにその対象たる相手を真っすぐと見据えた。
 その間も、彼の口から幾度となく繰り返される玩具という単語。それを聞くたび、セリオスの眉間も視線も険しくなってゆく。
 「ああ、玩具だ何だとうるせぇな。そんなに囀んのが好きなら、自分が鳥籠に入ってろっ」
 苛立ちを音に乗せそう告げたなら、想いを力と変えるよに、その唇より響かせる歌で己の身体を強化した後、靴に風の魔力を纏わせる。
 生み出す旋風に身を、背を押されるように一気に加速したならば、内なるものをそのまま形としたよな勢いで、吸血鬼たる男へと身を飛び込ませてゆく。

 ――そのクソムカつく口を、閉じさせてやる!

 そんな心の声が聞こえてきそうなセリオスの身に添うように、光の魔力を脚鎧に充填させたアレクシスもまた、この地を駆ける。
 彼の身に宿す紋章から放たれる棘鞭の攻撃は、その動きを見切り、手にした盾より生じさせる『閃壁』を展開することにより弾いてゆく。
 「まったく、次から次へと五月蝿いな。僕は今あまり、機嫌がよくないんだよ」
 煩わしい、といった様子でセリオスからの一撃を、手を翻し生じさせた鳥籠で阻んだならば、内から現れた翼持ちの少女が高音の歌声に乗せ衝撃波を放ってくる。
 既の所で躱したセリオスと吸血鬼の間に再び現れた少女は、翼を持つ娘という共通点を持ちながら、先の少女とは別の個体のようだった。
 「さて、さっきのはそれなりだったけど。コレはどれくらい役に立ってくれるかな」
 現れ出でた少女の動きを眺めながら、そう告げる男に向かい、再び地を蹴り近づこうとするセリオスだったが、主たる彼を庇うかのように一定の距離を保ちながら飛翔し、時に歌声で、時に翼から放つ羽根でとその進路を妨害する少女と共に、男の宿す紋章からの棘鞭も、セリオスの身を狙い放たれてくる。
 アレクシスの防御により、此方も大きなダメージを受けることはないものの、相手にもなかなか攻撃らしい攻撃が届かない。
 「……やりづれぇ!」
 チッと舌打ちひとつ。悪態ひとつ。
 幾重と放たれる少女と鞭の攻撃を避け、彼らと一旦距離を取ったセリオスの前に、彼を庇うようにアレクシスが立つ。
 対する相手からの攻撃に警戒しながらも、アレクシスの視線の先。その眸に映るのは『代替品』と呼ばれし少女。

 ――……彼女らも過去の残滓なのか。それとも囚われた者なのか。

 そう、目の前の存在へと想い馳せるアレクシス。
 僅か顰められた眉には、其処に込められた想いがありありと乗る。
 かの少女の在りようを知らぬまま、目に見えるままに、敵ごと討つ訳には……いかない。
 そう裡に抱く想いを知るように、前に立つアレクシスの背を見つめるセリオスの眸もまた、僅か思案気な色を宿す。
 『代替品』と呼ばれし少女……おそらく『少女たち』。目の前に、己の敵として立ち塞がるというのなら。

 ――あの少女たちに剣を向けることも……俺は、躊躇いなくできるけど。

 けれども、己の目の前に立つアレクシスは、そうはいかないだろう。
 そうして、己自身もまた。
 刃を向けるとするならば、彼の呼び出す少女たちを、ではなく。その向こうで主人面をして眺めている……
 「アイツ本人を、ブッ叩きてえ」
 そう、音に乗せ告げたセリオスの言の葉が、アレクシスの背をも押す。
 「ああ、狙うは吸血鬼、ただひとりのみ」
 告げて視線を後ろへと向けた彼と交差した視線に笑みを乗せ、互いに頷きあう。
 「そんじゃアレス、頼んだぜ」
 「任せて。セリオス」

 ――光は月光のみに在らず。

 す、と。精神を集中させ、構えたアレクシスの剣に、極光の輝きが集う。
 剣を構え集中する彼の後ろにて、セリオスもまた己の力を限界まで溜めタイミングを計っている。
 『光一閃、駆けよ、果てまで!』
 力ある言葉に乗せ、極光の輝きを帯びた剣を振りきれば、その煌きは突如、彼の見据える吸血鬼のすぐ傍から現れ出でた。
 距離を超え、至近距離から繰り出される光の斬撃に、城主も咄嗟に反応し、紋章より出でし棘鞭がその蔦めいた身をしならせて彼を庇うが、避け切れぬ光が彼の身を一部切り裂いた。
 吸血鬼の口から思わず出た、舌打ちひとつ。
 己を捉え傷つけた、極光の輝き現れし空間に視線を向け、彼の意識が傾いた。
 その瞬間を待っていたというように、一瞬の隙を見逃さずセリオスが駆ける。
 其れは己の靴に過負荷レベルの魔力を注ぎ込んだ、爆発的なエネルギーをもっての加速。
 疾風の如く接近する彼の軌道上に、己の主を護らんと立ち塞がる少女の身を、アレクシスの盾が弾いた。
 「悪いが彼の邪魔はさせない」
 僅か眉根を寄せ、気絶させる程度に止まるその当身に籠められた彼の心裡は、少女に届いただろうか。
 如何であれ、吸血鬼を狙ったセリオスの軌道を邪魔するものは、今無い。

 ――全力の一撃、喰らいやがれっ!

 想いと力の乗った、セリオスの渾身の蹴りが吸血鬼の腹部を捕えた。
 圧倒的な速度と力の乗った彼の脚撃に、身を庇いながらも吸血鬼は一歩、二歩と後退する。
 「最後の鳥籠……この城を、解放させてもらう」
 疲労の見え始めた吸血鬼を眸に映し、並び立つセリオスとアレクシスは再び構えを取るのだった。
 眼前の男を倒す先、『鳥籠』の解放まで、そう、きっとあと少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
※第二章から引き続きUC使用後の姿のまま

あなたが、ここの城主?
え?あなたは、もしかして、このお城も紋章も、誰かからもらったの?
与えられた玩具箱……

考えるのはあと
月光城に満ちる満月の魔力のせいか、まだ、この姿を保てるの
ぼくは小鳥じゃない
狼でもない
ぼくは、ロラン・ヒュッテンブレナー、ダークセイヴァーの解放を目指す魔術師なの

佇まいはすごい威圧感と怖さがあるけど、【勇気】を振り絞るの
きっと金鎖に囚われて閉じ込められると思うけど、
ぼくの身を戒める物が何か、分かってるかな?
狂える人狼の力を狼の形に縛り付けてる魔術回路の鎖の【封印を解く】よ
変化と魅了を司る「満月の魔力」の力で、金鎖にぼくの鎖を絡め【ハッキング】
鳥籠も金鎖も乗っ取って、逆に鳥籠の主人を捕えるの

紋章からの攻撃程度では、
活性化した音狼の満月の魔力で作る【結界術】と月光の【オーラ防御】は、簡単には破れないよ

最後は月光城に溜められてる月の魔力も利用して、
月光【属性攻撃】の【全力魔術】で【範囲攻撃】なの

弄ぶ者、闇に還ってね…


フォルク・リア
欠伸を嚙み殺(す振りを)しながら
「なるほど。話が退屈な訳だ。
お前自身が退屈していたと。」
「で、その紋章と糧の話。お前に吹き込んだのは
一体誰だい?」

敵と鳥籠を観察しつつ一見無造作に敵に近づき
金鎖の動きを【見切り】回避。
空間を広く使い鎖を誘導、
鎖、鳥籠、敵の位置を考慮し
鎖で敵や鳥籠を絡める為に
ALL OUTを【高速詠唱】で発動し冥府の気を纏った黒翼で急加速。
回避と同時に敵や鳥籠の間を駆け抜け上昇、
両手に生成した雷の槍を敵に放ち攻撃。
感電による【マヒ攻撃】も行い
マヒした隙に
【全力魔法】で雷の剣を生成
加速突撃と同時に切りつける。
「暇つぶしも此処までだ。
後はゆっくり冥府ででも退屈していてくれ。」



 ●

 城主との戦闘繰り広げられる中、己も交わされる其れに混ざりつつ、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、彼とこの城について思いを馳せていた。
 「……あなたが、ここの城主。あなたは、もしかして、このお城も紋章も、誰かからもらったの?」
 城主の語る言葉の一つ一つを思い返し問う彼の姿は、此の地が月と関係のある場であるせいか、満月のオーラを纏う狼の姿を保っている。
 その胸中には、この月光城たる城の持つ秘密や、月と関係しての人狼に繋がる何かを得られるのではないかと、そんな思いもあったろう。
 「さあ?どうだろうね。まぁ、紋章も此処も。生まれ持ってのモノ、でないのは事実かな。ただ、今此処に僕が居て、この城の主である証に此の紋章が宿っている」

 ――だから、今此処は、僕の退屈を埋める、ひとときの玩具箱なのさ。

 そう告げては、この城自体にも、その秘密にも、特に思い入れの欠片も見せず、男は紋章を宿す手をひらりと振って見せた。
 「与えられた、玩具箱……」
 紋章から繰り出される棘鞭を避けながらも思案気なロランの近くで、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)もまた、城主の言葉に耳を傾けつつ、ふあ、と欠伸を嚙み殺すような仕草をしていた。
 「なるほど。話が退屈な訳だ。お前自身が退屈していた、と」

 ――で、その紋章と糧の話。お前に吹き込んだのは、一体誰だい?

 退屈そうな仕草を見せながらも、この城への疑問を率直に投げかけるフォルクに対してもまた、城主は両の手を広げて見せて笑う。
 「あははっ、どうにも、僕が色々と秘密を知っているように思っているようだけれど……」
 正直なところ、この城自体にも紋章にも、僕はたいして興味はないんだよ。と彼は語る。
 「強いて言うなら、そうだな。紋章の効果は自ずと知った、というところか」

 ――……まぁ、其れ、が。

 紋章を宿すことで自然と備わった知識なのか。
 此処の城主としての役割を与えたナニモノかが居たとして、ソレから植え付けられた知恵なのか。
 はたまた、全く違う何かなのか。
 「僕にはわからないし、興味もないからね。教えようもないよ」
 もし、知っていたとして、教える気になったかもわからないけどね。と、そう告げた男は、お喋りは終わりだと腕を振る。
 それと同時に現れた巨大な鳥籠の姿を見とめれば、フォルクもまた、その足を一歩前へと踏み出した。

 かぱりと開いた鳥籠の口から、眉根を寄せるフォルクへと、その身を捕えるべく金の鎖が放たれる。
 己へ向かう来るその動きを、鋭い観察眼でもって見切りながら回避し、広い玄室の空間を使いフォルクは其の鎖を誘導してゆく。
 そうして、フォルクが地を蹴った後、男の言葉を受け思案を続けていたロランも、ふるり、と首を振る。

 ――……考えるのは、あと。

 彼から得られる情報がもう無いというならば尚の事、今は対する相手を、此の地を解放することが先だと、意志を宿した眸を前へと向ける。
 そんなロランの眸を真っ向から受け、男はつと目を細めた。
 「そういえば、話す狼も此処に立つのか。僕の小鳥の代わりには成りはしないだろうけど」

 ――……狼を飼ってみるのも、一興かもね?

 面白い事を思いついたと、にやり嗤えば、調教用の鞭を思わすように紋章から伸びる其れを一度撓らせて、一歩前へと踏み出す。
 そんな彼を見据えたまま、ロランもまた口を開いて。
 「ぼくは小鳥じゃない。狼でもない」

 ――ぼくは、ロラン・ヒュッテンブレナー、ダークセイヴァーの解放を目指す魔術師なの!

 目の前に迫りくる城主たる男の佇まいには、威圧感も怖さも感じる。
 其れもまた、ロランの感じる事実だけれど。
 其れを超えゆくだけの勇気だって、己の裡にはあるのだ、と。その視線はしかと吸血鬼を見据えている。
 裡に抱かれし怖れを感じ取って迫りくる金鎖は、ロランの身を捉え拘束する儘、鈍色の籠へと引き込んでゆく。
 その様子を目にした城主は笑みを深め、己を追う金鎖を捌きゆくフォルクの眸は見開かれもしたけれど、当のロランの眸は意志の輝きを宿した儘、鳥籠を操る男を見ている。

 「……ぼくの身を戒める物が何か、分かってるかな?」

 ほつり、と。静かに告げたロランの声に、視線が向いたその時。
 ロランが纏いし青き魔術の輝きを宿す鎖が、ぽぅと光を増した。
 それは、彼の狂える人狼の力を狼の形に縛り付けてる、魔術回路の鎖。
 その封印を自ら解いたなら、彼の持つ、変化と魅了を司る満月の魔力をもってして、金鎖に己の鎖を絡めハッキングを試みる。
 青き鎖から伝う月の魔力が、金の鎖を通して鳥籠へと注がれゆけば、ロランを捉えていた金の鎖はその身から外れ、城主に向かい放たれてゆく。
 その様に、驚きと興味に色づいた赤き眸が向けられたなら、フォルクもまたこれが好機と己を追う金鎖の動きを読みながら、迫りくる其れを回避すると同時、鳥籠の間を駆け抜けてゆく。
 フォルクを追う金鎖と、ロランの操る金鎖が縦横無尽に吸血鬼の周囲を動き回り、いつしか金鎖の元の使い手たる男を絡め捕るように迫っていた。
 「これは……なるほど、僕の力で僕を捕らえようとするとは、なかなか面白い意趣返しじゃないか」
 そう簡単には捕まりはしない、と、彼自身も回避しながら紋章の棘鞭で応戦するも、結界術と月光の力帯びたオーラに護られた鎖を捌き切るのは容易ではなさそうだった。
 其れに加え、フォルクの素早くも的確な誘導も相まって、身を襲う金鎖は二つ。
 完全に囚われる事こそ何とか避けきってはいるものの、回避に徹さざるを得ない状況に吸血鬼は追い込まれてもいた。

 そんな様子を見てとれば、仕掛けるならば、今だと。
 ロランとフォルクは集う猟兵たちにもわかるように、合図を施す。

 それと同時、フォルク自身も術発動を促すべく高速詠唱を行い、力宿す言の葉を唱え終わると同時、冥府の気を纏った黒翼で急加速した彼はその身を急上昇させ、上空からその両手に生成した雷の槍を放ちゆく。
 フォルクの手から放たれた槍を避けようと、その身を捻る吸血鬼の元へと、呪詛の鏢と幾重もの標本針、そうしてそこに混ざりゆく誘導弾が飛来し、その回避を妨げた。
 避ける先を失った男の脚を感電による麻痺を伴った槍が貫けば、ぐ、と痛みを堪える声を漏らした彼の身は一時的に止まりゆく。
 その隙を逃さぬよう、ひと時でも伸ばすよう、と、彼の周囲を舞っていた鎖がその身を捕らえるが如く巻き付いてゆく。
 これは聊か拙い、と過ったのだろうか、眉根を寄せる男だったがこの機を逃すまいと、重なる猟兵たちの連携も止まらない。
 捕らえる鎖諸共、と、虹の炎に極光が加わり迫りくれば、その鮮やかな光に紛れ、鋭きダガーの切っ先と、風と共に繰り出される脚撃が男の身を抉り、黒き鎌が幾重も切り刻んでいった。

 猟兵たちの重なる攻撃に、膝をついた男の姿を眸に映したフォルクとロランが頷きあったなら。

 ――……ほぉぉぉぉぉぉぉぉ……んっ!

 狼の姿を保ったロランの遠吠えが響き渡り、月光城たる此の地らしい月の属性を宿した全力魔術が城主に身に降り注ぐ。
 その力が男を襲うと同時、フォルクもまた己の魔力の全てでもって生成した雷の剣を手に、上空から加速突撃する勢いに乗せて城主へと切りつける。
 「暇つぶしも此処までだ。後はゆっくり、冥府ででも退屈していてくれ」
 「弄ぶ者、闇に還ってね……」
 其々に、想いと言葉を乗せながら彼の身へと喰らわせた一撃は、言葉の通り、此の月光城の主を躯の海へと還す力となった。

 月光と雷の魔力が生じさせた、眩いほどの光が収まり、暗く静かな玄室がその姿を取り戻す頃には、月光城の主であった男は躯の海へとその姿を還し、この地は彼から解放された。
 鳥籠に囚われていた人々も、彼の手中にあった月光城も、此れでひとつの自由を得ただろう。
 『月光城』の孕む謎も、明かされぬものも未だ多く在れど、此の一件もまた、関わりし全てにとって確かな一歩と変わるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月22日


挿絵イラスト