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月光満ちし城にて待ち受けるは、絶望か真実か

#ダークセイヴァー #【Q】 #月光城 #月の眼の紋章

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●ダークセイヴァー・地下第5層――???
 人類が住まう「地下第4層」の下層に位置する、第五の貴族らが住まう地下都市が点在する階層――第5層。
 その層には、至る所に「城主不明の謎めいた城塞」が幾つも存在するという。

 第五の貴族たちは、彼の要塞について、こう噂している。

 ――月が満ちれば、その要塞は輝きを増し。
 ――月が欠ければ、その要塞は輝きを失う。

 まるで月の満ち欠けに呼応するように輝きを変える要塞は、しかし第五の貴族の間ではまことしやかにこう囁かれ、避けられていた。

 ――彼の城、第五の貴族の干渉すら阻み、あらゆる存在を遮断する城なり。

 あらゆる存在を拒絶し、月の満ち欠けに呼応するように輝き続ける謎の要塞。
 いつしか、その要塞は『月光城』と呼ばれるようになっていた。

●グリモアベース
「その『月光城』とやらに、ダークセイヴァーに浮かぶ『月』の秘密に迫る手掛かりが隠されているかもしれない」
 月のように輝く丸盾のグリモアを背に、グリモア猟兵館野・敬輔は集まった猟兵達に呼びかける。
 ――地下世界たるダークセイヴァーの空に、なぜか浮かぶ『月』。
 ダークセイヴァーが地下世界だと判明して以来、『月』の存在そのものが謎を呼んでいたが、猟兵達が第五の貴族との戦いを優勢に進めた結果、彼らの階層の至る所に月の満ち欠けに応じて輝きを変える『月光城』が存在することを突き止めた。
 もっとも、『月』に迫る手掛かりとしては余りにも些細な情報だが、儀式魔術【Q】が存在を暴き出す一助となったのであれば、調査する価値はあるだろう。
「今回、俺のグリモアが『月光城』と思われる要塞の場所を伝えてきた。そこで皆には『月光城』に向かってほしい」
 頭を下げ依頼する敬輔に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。

「『月光城』は第五の貴族すら干渉を許さない、あらゆる存在を拒む場所だ」
 それ故に、城内には侵入者を抹殺する大量の罠が仕掛けられていると、敬輔は語る。
 城内に潜入した猟兵達を真っ先に出迎えるのは、ギロチンの刃が絶えず降り注ぐ罠が仕掛けられた部屋にて待ち受ける、城主の配下たるヴァンパイアの花嫁たち。
「花嫁たちは城主の力で強化されている。罠は避けるだけでなく、逆に利用するくらいの勢いでないと苦戦を強いられるかもな」
 何とかギロチン部屋を突破し、城主の玄室に続く回廊に飛び込んだとしても、続いて待ち受けているのは、大量の吸血コウモリと回廊に飾られている人間たち。
「『人間画廊(ギャラリエ)』と呼ばれている回廊に飾られている人間は、『標本』や『絵画』、あるいは『瓶詰め』などの形で『生きながら捕らえられ』ている……惨いことをしてくれる」
 囚われの人々の苦しみを代弁するような敬輔の苦々しい呟きが示す事実に、猟兵たちもさすがに息を呑む。
「最優先は回廊の突破だが、できるだけ飾られている人々も救出してほしい……無理ない範囲で検討してくれ」
 そう、猟兵達に依頼する敬輔の蒼紅の瞳は、苦悩のいろに染まっていた。

「玄室に辿り着けば『月光城の主』たるオブリビオンとの戦闘になるが……厳しい戦いになる」
 第五の貴族の干渉すら阻み、あらゆる存在の侵入を遮断しているらしい『月光城の主』の戦闘力は、第五の貴族のそれを大幅に上回るという。
「グリモアは、『月光城の主』が『眼球と満月を組み合わせたような紋章』を身体のどこかに宿していると伝えてきた。……この紋章が完全な効果を発揮する限り、俺ら猟兵に勝ち目はない、ともな」
 しかもこれまで存在が確認されている紋章と異なり、この紋章は直接傷つけても弱体化しない、と敬輔は語る。
「だが、紋章である以上は、必ず弱体化させる術があるはずだ。その術は現地で見つけてもらうしかないが……俺は皆なら見つけてくれると信じている」
 数々の困難に打ち克って来た猟兵たちへの信頼を声音に籠めながら呼びかける敬輔に、猟兵達は頷きを以て答えた。

「正直、かなり危険な依頼になるが……ダークセイヴァーの秘密に迫れる絶好の機会だ」
 だから頼む、と口にした敬輔は、月のように輝く丸盾を大きく展開しながら転送ゲートを形成し。

 ――猟兵達を、『月光城』の入口へと送り出した。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 ダークセイヴァーに浮かぶ「月」の手掛かりは、地下第5層に点在する『月光城』なる要塞にありそうです。
 そこで、猟兵の皆様に『月光城』の調査をお願い致します。

 調査場所の特異性を鑑み、若干厳しく判定致します。
 それ相応の準備をした上でのご参加をお願い致します。

●本シナリオの構造
 集団戦→冒険→ボス戦となります。

 第1章は集団戦『ヴァンパイアの花嫁』。
「月光城」の主の配下たる強化オブリビオンとの戦闘となります。
 部屋全体には降り注ぐギロチンの刃の罠が仕掛けられていますが、その罠に対処するばかりでなく、逆に利用するぐらいでないと、この強化オブリビオンの群れに対抗するのは難しいでしょう。

 第2章は冒険『吸血コウモリ迎撃』。
「人間画廊(ギャラリア)」を飛び交う大量の吸血コウモリに対処しながらギャラリアを突破し、城主の玄室に向かって下さい。
 また、ギャラリアに「生きたまま捕らえられている」人々の救出も可能な限りお願い致します。(救出された人々は、ひとまず安全な場所に隠れてもらうことになります)
 詳細は第2章の断章にて。

 第3章はボス戦『????』。
 第五の貴族の干渉すら跳ねのける強大な『月光城の主』との戦いになりますが、現時点で開示できる情報はオープニングに記されている内容のみです。
 詳細は第3章の断章にてお伝えいたしますが、第2章の行動次第で戦闘難易度が下がるかもしれない……と、予めお伝えしておきます。

●プレイング受付について
 全章、冒頭の断章を追加した後からプレイング受付を開始。
 締め切りはマスターページとTwitter、タグで告知致します。
 なお、本シナリオはサポートをお呼びしつつ早めの進行を心がけますので、プレイングの採用は必要最小限となる見込みです。

 全章通しての参加も、気になる章だけの参加も大歓迎です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ヴァンパイアの花嫁』

POW   :    この心と体は主様のもの
自身の【感情か体の一部】を代償に、【敵への効果的な属性】を籠めた一撃を放つ。自分にとって感情か体の一部を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    全ては主様のために…
【肉体の痛みを麻痺させる寄生生物】【神経の痛みを麻痺させる寄生生物】【精神的な痛みを麻痺させる寄生生物】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    主様、万歳!
【自身が主人の脅威であると認識】を向けた対象に、【自らの全てを犠牲にした自爆】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:machi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダークセイヴァー・地下第5層――『月光城』エントランスホール
『月光城』の前に転送された猟兵達は、空と『月光城』を同時に見上げる。
 限りなく新月に近い三日月の下にそびえる『月光城』は、上空の月の輝きに呼応するかのように、城の左半分のみを僅かに輝かせていた。

 猟兵達が城内に足を踏み入れた先は、目の前には四方八方を石壁に囲まれた、魔術の明かりに照らされている広いエントランスホール。
 エントランスホールの奥に見える豪勢な扉は、おそらく『月光城』の主がいる玄室に繋がっているのだろう。

 猟兵達が豪勢な扉を目指しホールを横切ろうとした、その時。

 ――ヒュッ!!
 ――ガンッ!!
 ――ギィンッ!!

 突如、猟兵達の頭上から、鋭く磨き抜かれた刃の雨が降り注ぐ。
 かろうじて避けた猟兵達が目にしたのは、至る所で降り注ぎ、石壁や床にはね返され天井に戻ってゆくギロチンの刃だった。

「人間が、この城に何の用でしょう」
 次々と降り注ぐギロチンの刃が壁や床に衝突する音をかき消すように、感情の起伏に乏しい女性の声がエントランスホールに響く。
 ギロチンを避けながら猟兵達が目にしたのは、一様に感情が抜け落ちたような表情を浮かべている、花嫁姿のオブリビオンの少女たちの集団だった。

「猟兵たち、あなた方を主様に会わせるわけにはいきません」
「選びなさい。このギロチンの露となり消えるか、あるいは何もせず立ち去るか」
「あるいは、降伏して人間画廊(ギャラリア)の展示物となり、主様の目を楽しませるオブジェとなるか」

 花嫁たちは口々に警告を発するが、その声音には猟兵たちへの敵意が含まれている。
 どうやら、花嫁たちは主と敵対することが明白な猟兵達を通す気はなく、拒否するようなら躊躇せず排除するつもりだ。
 なぜなら、目の前の花嫁たちは、『月光城』の主を至高にして絶対の存在として敬い、主の為なら躊躇なく命すら投げ出す僕なのだから。
 ……そうするのが当然であると、主の戯れで「造り替えられ、強化された」花嫁たちだから。

「去らないのであれば、ここで果てていただきます」
 退く気がない猟兵達を見て、花嫁たちはギロチンの刃にかかることも恐れずに猟兵達に迫る。
 得物を手にした猟兵達は、ギロチンの雨が降り注ぐエントランスホールを抜けるために、ヴァンパイアの花嫁たちと対峙した。

※マスターより補足
 第1章は、天井から絶えず落下し続けるギロチンの罠に対処しながら、強化オブリビオンたる「ヴァンパイアの花嫁」の集団を撃破していただきます。

 天上から降り注ぐギロチンは敵味方を識別しないため、猟兵はもちろん、ヴァンパイアの花嫁の首や胴をも容赦なく斬り飛ばそうとします。
 猟兵にとっても花嫁にとっても危険極まりない罠ですが、この罠をうまく利用せねば、ヴァンパイアの花嫁たちと対等に渡り合うのは難しいでしょう。

 ちなみに、ギロチンの罠は部屋中に仕掛けられているため、解除はできません。

 ――それでは、よき戦いを。
リーヴァルディ・カーライル
…あら、選択肢ならまだあるわよ?

ここでお前達を討ち、捕らわれた人々を解放するという選択肢がね

…ああ、安心なさい。お前達の主とやらも、すぐに同じ場所に葬送してあげるから

挑発の合間に鉄の精霊を降霊した「精霊石の耳飾り」を使い精霊の視力を借り受け、
天井の刃の位置を暗視して索敵を行い戦闘知識に加え警戒しておく

…交渉決裂ね

UCを発動して全身を残像のように存在感を消すオーラで防御して覆い、
闇に紛れてギロチンの合間を縫って敵の死角から切り込み、
呪詛により敵の五感を切断し体勢を崩した隙に掴み、
ギロチンの下に怪力任せに投げ飛ば(投擲)した後、銃撃による追撃を行う

…どれだけ威力が高くても捉えられなければ無意味よ



●揺らめく陽炎は花嫁を惑わす
 石壁と石床に囲まれた室内に、ギロチンの刃が次々と落下し、天井に巻き上げられてゆく。
「選びなさい。ギロチンの露となるか、大人しく去るか、人間画廊(ギャラリア)に飾られるか」
 慈悲無き冷酷な刃が奏でる音をかき消しながらヴァンパイアの花嫁が侵入者に突き付ける選択肢は、あまりにも無慈悲で残酷だ。
「あら、選択肢ならまだあるわよ?」
 だが、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が花嫁たちに突き付けた選択肢は、そのいずれでもなかった。

 ――ここでお前達を討ち、囚われた人々を解放するという選択肢がね。

 Kresnikの名を持つ吸血鬼狩り用の大口径二連装マスケット銃を手にしたリーヴァルディに新たな選択肢を突き付けられても、花嫁たちは眉ひとつ動かさない。
「主様の楽しみを、奪わせるわけにはいきません」
「ああ、安心なさい。お前達の主とやらも、すぐに同じ場所に葬送してあげるから」
「主様は葬送させません!」
 主の命をちらつかせたリーヴァルティに挑発された花嫁は、感情を代償に強烈な光を宿す。
 おそらく、至近距離から強烈な光でリーヴァルティの目を潰すつもりなのだろう。
「交渉決裂ね……我が身を覆え、陽炎のごとく」
 ため息交じりに呟かれた言の葉が花嫁たちの耳に届くより早く、リーヴァルディの全身が万色に光る精霊石の耳飾りごと無色透明の陽炎の呪詛に覆われ、存在感ごと忽然と消え失せた。
「何処に消えても、ギロチンは逃しません」
 リーヴァルディが纏う陽炎の揺らめきを頼りに、花嫁たちは連携してギロチンの刃の真下に追い詰めようとする。
 もしギロチンの刃がリーヴァルディを掠めれば、石床の上に零れるであろう血痕や吹き飛ぶ銀髪が花嫁たちに居場所を知らせることになるが、ギロチンはリーヴァルティの血の一滴、銀髪のひとかけらすら零さない。
「無益な努力はやめましょう。この刃、避けられるはずもない」
 花嫁たちも自身の腕をギロチンに掠められつつ言の葉で牽制するも、陽炎と闇に紛れるよう姿を消したリーヴァルティには意味を成さない。
 なぜなら、リーヴァルティは全ての刃を回避しながら、花嫁たちに迫っていたからだ。
 それは、挑発の合間に精霊石の耳飾りに降霊した鉄の精霊の視力を借り受けて天井の刃の位置をほぼ全て把握し、さらに耳飾りを通して熱や音、振動等で周囲の状況を認識、知覚していたからこそ、可能となった離れ業。
 ギロチンに血潮も銀髪も渡さなかったリーヴァルティが花嫁の死角を取った直後、リーヴァルディの全身を覆う視聴嗅覚での感知を不可能とする陽炎の呪詛が花嫁を侵し、一気に五感を奪い取る。
「え!?」
 突然視界と音が閉ざされた花嫁が戸惑いよろめいた一瞬の隙を突き、リーヴァルティは花嫁を掴み力まかせにギロチンの刃の下に投げ飛ばした。
 投げ飛ばされ石床の上に転がった花嫁が、それでも立ち上がろうとしたその時、吸血鬼狩りの名を持つマスケット銃が火を噴き、足を撃ち抜いた。
 再度転倒した花嫁の頭上から、ギロチンが勢いよく落下。
 視聴覚だけでなく触覚も奪われた花嫁は、迫る無慈悲な刃の存在に気づかない。

 ――ガラガラガラ……ドスッ!!
 ――ザシュッ!!

 痛い、と感じる間もなく、花嫁は落下したギロチンに胴を両断され、絶命。
 しかし、投げ飛ばされた花嫁の位置からリーヴァルディの居場所を把握した別の花嫁が、ギロチンの刃を融かすほど高温の白炎を両腕に纏いながら肉薄する。
 だが、白炎がリーヴァルディやギロチンを炙るより、陽炎の呪詛が一瞬で花嫁の五感と平衡感覚を奪うほうが早い。
 一瞬で視聴覚を喪失し足をもつれさせた花嫁は、リーヴァルディに腕を取られ投げ飛ばされ、先の花嫁と同じ運命をたどっていた。

「……どれだけ威力が高くても捉えられなければ無意味よ」
 新たに迫る花嫁の姿を視認しながらギロチンの間を縫うように走るリーヴァルティの呟きは、激昂した花嫁の耳には入らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・イオア
よく来たな、死ぬがよいって感じの
物騒なエントランスホールだね☆
普段からこのままってことはないだろうから
どこかに解除する仕掛けはあるんだろうけど見える範囲には無いねー。

天井付近を飛んでギロチンの出てくる位置を確認しつつ
ガトリングブーツで弾幕を張り制圧射撃で動きを鈍らせる
いくつか安全圏を確認したら移動しつつ戦闘へ
シホの大きさなら罠の間でも動ける所は多そうなのでそれを利用。
UCと弾幕で接近されないように立ち回り
いざとなったら残像で回避。
シホに近づくことばかり考えてると、頭上注意だよ☆

アドリブ連携歓迎



●フェアリーはギロチンと花嫁をも魅了して
 ――ガラガラガラ……。
 ――ヒューン……ガチャン!!

 天井からギロチンの刃が絶えず降り注ぎ、猟兵とヴァンパイアの花嫁たち、双方の動きを著しく制限するホールの天井付近を、シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)は小さな羽根を羽ばたかせながら飛んでいた。
(「よく来たな、死ぬがよいって感じの物騒なエントランスホールだね☆」)
 ギロチンの刃が石床に衝突する甲高い音を耳にしながら、シホはあえて天井付近を飛びつつ、ギロチンの射出口を確認する。
 射出口は一見バラバラに並んでいるように見えるが、よく見ればギロチンが落下した際、刃同士がいらぬ隙間や死角を生み出さぬ様、巧みに配置されていた。
(「普段からこのままってことはないだろうから、どこかに解除する仕掛けはあるんだろうけど」)
 しかし、罠の解除装置らしきものは、室内には全く見当たらない。
 そして、室内にて猟兵の行く手を遮っている花嫁は、己が身の安全より城主を討とうとする狼藉者の排除を優先しているようにも見える。
「わたくし達の命に代えても、主様の元へは行かせませんわ」
(「あ~、花嫁たちって城主がそう考えるよう『造った』んだっけ」)
 感情に乏しい声音の裏に、月光城の主への盲従が滲み出ているような気がして、シホは小さくため息をつく。
 この様子では、花嫁たちはギロチンに斬り飛ばされても気にしないだろうから、室内には解除装置が設置されていない可能性が極めて高い。
(「まあ、このまま飛び抜けちゃえ☆」)
 ならば強行突破あるのみと飛翔速度を上げようとしたシホの頭上に、射出されたギロチンが迫る。
 しかしシホは、足を持ち上げつつ身体を回転させながら、履いているマジカルガトリングブーツの足底を天井と落ち行くギロチンの刃に向けた。
「魔法弾、発射☆」
 シホの掛け声と共に、マジカルガトリングブーツの足底にびっしりと現れた銃口から魔法弾が発射された。

 ――ドドドドド!!

 足裏から絶え間なく射出される魔法弾の雨は弾幕となり、ギロチンの刃の下から激しく刃身を叩き、落下速度を鈍らせながら軌道を逸らした。
 同じように周囲にも魔法弾で弾幕を張り、一時の安全圏を確保したシホは、小柄さを生かしギロチンをすり抜けられるようなコースを見極め、一気にホールの奥に向かって飛び始めた。
 安全圏を抜けると、落下したギロチンが羽根を掠めるが、シホはその都度弾幕を張ってギロチンの刃を逸らし、飛び続ける。
 だが、不自然にギロチンの刃が逸れ続けたことで、花嫁たちがシホの存在に気が付いた。
「逃がしません……主様、万歳!」
「わたくしの命、主様に捧げます!!」
 弾幕からシホの居場所を把握した花嫁たちが、主への忠誠を口にしつつ、走り出す。
 小柄で空を飛べ、なおかつ魔法弾の制圧射撃でギロチンすら狂わせることができるシホの存在は、花嫁たちには十分脅威に値するのだろう。
 花嫁たちは己が命は主のものと言わんばかりに叫びながら、足や腕が斬り飛ばされても気にせずシホに迫るが、シホはそんな花嫁たちを迎え入れるように両手を広げた。
「世界を癒せ、シホの光!」
 シホの聖痕とカリスマから、癒しのオーラが溢れ出る。
 癒やしのオーラは花嫁たちを包むと、シホへの敵意を霧散させ、足を止めた。
 オーラに包まれ立ち止まった花嫁たちは、頭上から落下したギロチンに悉く押し潰されるが、オーラから逃れた花嫁がシホの間近に辿り着き、両手を伸ばしシホを捕えようとする。
 だが、シホは軽く頭上に視線を向けながらにこやかに呟いた。
「シホに近づくことばかり考えてると、頭上注意だよ☆」
 両手を伸ばした花嫁が、警告めいた言の葉の意味に気づくより早く。

 ――ドスッ!!

 花嫁の頭上から急速落下したギロチンが、シホに気を取られていた花嫁を頭から左右に両断。
 二枚下ろしにされた花嫁の身体は、シホの目の前で石床に落下し消滅した。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラウン・アンダーウッド
ギロチンの雨が降るなんて中々見られない状況だね、傘でも差せばいいのかな♪

降り注ぐ刃の落下速度や跳ね返る角度を掌握し、10体のからくり人形には投げナイフを持たせて、クラウンは複製した懐中時計を展開。

突き刺さる形の罠じゃないだけいくらかやりようはあるね♪
オーラで包んで強固にした懐中時計や投げナイフで、向かってくるギロチンの刃を任意の方向に受け流し・はね返して回避&攻撃をする。

これだけ雑な扱いをされても鋭利なままの刃ならいくつか持ち帰ろうかな。投げナイフに加工しても使い勝手が良さそうだね♪



●道化師はギロチンすら手玉に取る
 ――ヒューン……ガンッ!!
 ――ガキッ!!

 天井から豪雨の如く降り注ぐギロチンの雨は、踏み込んだ猟兵と待ち受けるヴァンパイアの花嫁、双方に慈悲を持ちつつも厳しく降り注いでいる。
「ギロチンの雨が降るなんて中々見られない状況だね」
 傘でも差せばいいのかな♪  と天井に巻き上げられるギロチンを見上げながら無邪気な笑顔を浮かべるクラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)の姿に、感情乏しいはずの花嫁たちは殺意を露わにしていた。
「この刃は全てを断ち切る刃。傘ごときでは防げません。」
「その憎らしい口を、ギロチンで砕いてやりましょう」
「おおお姉さま方、怖い怖い♪」
 クラウンが諸手を上げ降参のポーズをとったとしても、花嫁たちの殺意は薄れず。

 ――ガシャン!!
 ――ドスン!!

 ギロチンの雨が石床に降り注ぐ鈍く甲高い音に触発されたかのように、花嫁たちがクラウンを殺めんと駆け出した。
「仕方ないなあ」
 クラウンは花嫁から逃げるように移動しつつ、無秩序に降り注ぐギロチンの刃の落下速度や跳ね返る角度を掌握しながらぱっと両手を広げ、からくり人形を10体呼び出す。
「さあ、お遊戯の時間だよ♪」
 からくり人形たちに投げナイフを持たせながら、クラウン自身も己が本体たる懐中時計を109個複製し、念力で操作しながら防御を固めていた。
 投げナイフや懐中時計には予め濃密なオーラを纏わせ強固にしてあるが、ギロチンの刃を完全に防げるかどうかは未知数。
 それでも、クラウンの表情から無邪気さが消えることはない。
「全ては主様のために……あの醜悪な道化師を討つために」
「そのからくり人形ごと、徹底的に叩き潰してあげましょう」
 クラウンの表情に相容れぬ嫌悪感を抱いたのだろうか。
 肉体と精神、そして神経の痛みを麻痺させる寄生生物を宿し、あらゆる痛覚を完全に押しつぶした花嫁たちは、目や耳から血を流しながらクラウンとからくり人形に肉薄する。
 落下するギロチンは、クラウンに迫る花嫁の頭上から冷酷に落下し、容赦なく髪や腕を斬り飛ばすが、花嫁は腕の1本持っていかれても全く意に介さない。
 おそらく、痛覚を潰したことで、負傷や危険に無頓着になったのだろう。
 腕を斬り飛ばされ、目耳から血を流しながらも、ひたすら殺意を抱いた相手に向かって前進するその姿は、異様の一言。
「あらあら、お姉さま方の美しさが損なわれているよ♪」
「主様の為なら、構いません!」
 あくまでもおどけるポーズを崩さぬクラウンに、痛みを知らぬ花嫁たちの拳が叩き込まれようとするが、端麗な顔に拳が叩き込まれるより早く、懐中時計が拳を遮るように割り込み、受け止めた。
 拳を止められた花嫁は、頭上から落下したギロチンが瞬時に両断する。
(「突き刺さる形の罠じゃないだけ、いくらかやりようはあるね♪」)
 からくり人形が投げたナイフが落下途中のギロチンの刃を真横から叩き、その軌道を変えるのを目撃しながら、クラウンはムクムクと湧き上がる好奇心を素直に口にする
「このギロチンの刃さ、これだけ雑な扱いをされても、鋭利なままのようだね♪」
 実際、何度も落下しているにも関わらず、ギロチンの刃は刃こぼれひとつ起こしていない。
 いくつか持ち帰ろうかな? と嘯きつつ、クラウンは己が頭上目がけて落下するギロチンの刃の軌道を遮るように、懐中時計を表面の角度を調整しながら数個配置。
 ギラリ、と室内の灯りを反射し鈍く光りながら落下する刃は、オーラに包まれた懐中時計をいくつか真っ二つに切断しつつ、徐々にその角度と軌道を変えられていった。
「この刃は決して――」
 刃こぼれしないのです、と口にしながらクラウンに迫る花嫁が見たのは――角度と軌道を変えられ真正面から迫るギロチンの刃。
「な――――」
 なぜ方角が、と口にするより早く。
 方角を変えられたギロチンの刃は、無慈悲に正面から花嫁の顔面を砕いていた。

 余談だが、月光城で全てが終わった後、クラウンはわざわざこのホールまで引き返し、刃の欠片をいくつか拾って持ち帰ったとか、
「投げナイフに加工しても、使い勝手が良さそうだね♪」
 幾度落下しても刃こぼれひとつ起こさず、鋭利さを保つ刃は、いつかクラウンの手で新たな刃物として蘇るのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

フェミス・ノルシール
処刑人である私にギロチンとはな…笑えない冗談だ

邪魔になりそうだな
処刑器具は置いておくとしよう

嬉しくはないが、この体なのでな
身軽さには多少自信がある

降り切ったギロチンの刃、壁、床を蹴り飛んで
花嫁達を【断罪剣】で斬り伏せよう

軌道を修正するため、屍を配置しUCを使い
新たな足場として利用する

花嫁達は最早正気でないのだろうが
これまでに犯した罪は消えないだろう

私が此処で、貴様らの罪を断ち斬る…!

~アドリブ・連携歓迎~



●処刑人は盲従ごとその業を断罪す
 ――ガンッ! ガンッ!!
 ――ガチャガチャ……。

 石床に勢いよく刃を落とした後、鎖に巻き上げられるギロチンの刃を目にしながら、フェミス・ノルシール(罪を背負いし処刑者・f21529)はため息交じりに呟く。
「処刑人である私にギロチンとはな……」
 ギロチンで処刑することもある私にとっては笑えない冗談だ、と声音に乗せられない言の葉を呑み込みながら、フェミスは金の瞳の先にいるヴァンパイアの花嫁たちを見つめていた。
「その姿、処刑人でしょうか」
 花嫁のひとりが、フェミスの正体を看破したかのように声を上げと、他の花嫁たちが騒めき始める。
 おそらく、フェミスが身につけている黒のゴシックドレスとドレスグローブから、処刑人だと気がついたのだろう。
「ならば、わたくし達が主様を誅しようとする処刑人を処刑して差し上げますわ」
「あなたが処刑した罪人とともに、このギロチンの露となりなさい」
 フェミスに対し、主様を誅しようとする咎人だと断罪する花嫁の瞳は、盲従で濁り切っているが、一方で別の感情がちらつき始めている。
「しかし、その白き肌、美しい髪……主様が気に入りそうですわ」
「ああなんと美しく……妬ましい」
 花嫁たちの瞳にちらつき始めていたのは――嫉妬という名の黒き感情の炎。
 濁り切った光に揺らめく感情の炎を見て、フェミスははぁ、と深く長いため息をひとつ。
 齢千を超える身としては、正直、吸血鬼の配下に妬まれても嬉しくはない。
 罪人たちに呪われた故、小柄な少女の様な外観が変化しなくなった身としては、なおさらだ。
 だが、この容姿ゆえ、身軽さには多少自信がある。
「話はそこまでか。ならばこちらから行くぞ」
 これ以上、花嫁の嫉妬には付き合っていられない。
 フェミスは床を蹴り上げ、ふわりと空中に身を躍らせた。

 空中に身を躍らせたフェミスは、勢いよく落下した直後のギロチンの刃の上にふわりと飛び乗る。
 重力に引かれるまま勢いよく落下した刃が天井に吊り上がるまでの僅かな間に、フェミスはギロチンの刃を蹴り上げながら再び空を舞い、次の刃へと飛び移った。
(「処刑器具は置いてきて正解だったな。邪魔になりそうだ」)
 もし、数々の処刑器具を持ち込んでいれば、処刑器具ごとフェミスの肉体もギロチンに両断されていただろう。
 ゆえにフェミスは断罪剣のみを携え、時に石壁や刃のない床も蹴りながら、出来るだけ刃の下に入らぬよう飛び移り前進し続けた。
 だが、常に都合よく刃が落ち、床や壁が足場として使えるとは限らない。
 足場が途切れようとしたその時、フェミスの厳かな声がホール内に響いた。
「死して尚、罪を贖う者共よ……さあ、存分に奮い給え。それが、君達の業なのだから……」
 フェミスの厳かな声が石壁や床に溶け込むと、床や壁から這い出すように屍たちが現れ、フェミスの足場を補うべく立ち上がる。
 現れた屍をフェミスは躊躇いひとつ見せず足場代わりに踏みつけ、次なるギロチンの刃に飛び移った。
「処刑人の業を抱えながら、焼かれなさい」
 花嫁のひとりがフェミスの容姿への嫉妬という名の感情を代償に両手に屍を浄化する光を宿し、ギロチンの隙間を駆け抜け、フェミスが次に足場と定めた屍を殴りつけるが。
 ――ガッ!
 骨と骨がぶつかる鈍い音が響くとともに、花嫁の拳は屍の手に掴まれていた。
 花嫁が拳に宿した光はじわじわと屍の掌を焼いているが、痛覚なき屍は全く動じず、光なき虚ろな瞳で花嫁たちを見つめながら拳を掴み続け、決して離そうとしない。
 フェミスの業で召喚された屍たちは、皮膚や骨、臓物等を強化されているため、黒き感情をくべた邪なる光では簡単に浄化されないのだ。
「こ、の……」
「私が此処で、貴様らの罪を断ち切る……!」
 花嫁が拳を振り払おうと躍起になっている間に、フェミスはギロチンの刃を勢いよく蹴って飛び上がり、足が止まった花嫁の頭上から断罪剣を振り下ろす。
 既に正気を失っており、主への盲従という名目で重ねた花嫁たちの罪は――消えないだろうから。

 ――斬ッ!!!

 処刑人に抱いた嫉妬を代償に纏った己が欲の光に呑まれながら。
 花嫁はフェミスの断罪剣の一振りで斬り伏せられ、消滅した。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・コーエン
地中の第四層に月が出るのは確かに変だ。
地中である事を糊塗する為の小道具なのか、他に意味が有るのか…。
知る為には城攻略だな。

第六感でギロチンの在処を大体把握。
天井から降り注ぐ、逆に言えば壁や床には罠が無いのは助かるな。

ヴァンパイアの花嫁達か、痛みを麻痺して超強化という事は警戒心が薄れるという事でもある。
故にオーラ防御を身に纏った上で、UC:刹那の閃きを使用。
相手の動きを読んで見切りで躱したり、残像で惑わせたり、武器受けつつ受け流したりで対応。
ダッシュによる素早い動きを繰り返し、第六感・地形の利用でギロチンに誘い込んで倒すか負傷させる。

生き残りは光の属性攻撃を宿した灼星剣と村正の2回攻撃で倒す。



●紅の光は「月」の謎に迫りて
 ――ガン! ガン!!
 ――ガチャン!

 絶え間なく降り注ぐギロチンの雨と、その奥で待ちかまえるヴァンパイアの花嫁たちを入り口付近から眺めるシン・コーエン(灼閃・f13886)の意識は、この世界に浮かぶ「月」の謎に向けられていた。
(「地中の第四層に月が出るのは確かに変だ」)
 地下第4層にあるにもかかわらず、他世界の月と同じように満ち欠けする、月。
 そして、地下第5層にあるこの月光城の輝きもまた、月齢に合わせて満ち欠けしている。
(「地中である事を糊塗するための小道具なのか、他に意味が有るのか……」)
 いずれにせよ、何らかの手掛かりはこの城に隠されているのかもしれない。
(「知る為には城攻略だな」)
 シンはいったん視線を花嫁たちから天井に移し、己が感覚も動員しながらギロチンの在処を探り始める。
 天井から無数にぶら下がっている見えるギロチンは、急速に石床に落下し甲高い音を立てた後、鎖で再び天井に巻き上げられ戻ってゆく。
 凡そ全てのギロチンの在処を把握し、シンは視線を壁や床に移した。
 壁や床には薄灰色の石材が敷き詰められているが、闖入者を排する仕掛けがあるようには見えなかった。
(「壁や床には罠が無いのは助かるな」)
 もっとも、視線の先にいる月光城の主に盲従する花嫁たちが、壁や床の罠代わりとしてこの場を護っているのだだろう。
「次から次へと、よく現れます」
「主様には一切手を出させませんわ」
 感情薄い表情に怒りを宿す花嫁たちの姿を目にしながら、シンは紅のオーラを纏いながら刹那の閃きを齎せるよう己が視力や知覚力を強化しつつ、駆け抜けるべき道筋を探る。
「全ては主様のために……」
 花嫁たちもまた、寄生生物を己が身に宿し、目や鼻から流血させながら肉体、神経、そして神経の痛みを麻痺させ、意識的に痛覚を潰しながら己が身体能力を劇的に向上させていた。
 双方が強化を終え、視線を交錯させた、その時。
「知る為に、そこを通してもらう!」
「主様の元へは行かせません!」
 シンはホールを駆け抜けるべく、花嫁は一気にシンを排除すべく。
 双方ほぼ同時に石床を蹴り、駆け出した。

 極力ギロチンの刃を避けるよう走る道を選ぶシンに対し、花嫁は一直線にシンに肉薄する道を選ぶ。
 故に花嫁はギロチンに髪や右腕を斬り飛ばされつつも、構わず走り続けた。
 全く痛みを感じず、シンのみに狙いを定めている花嫁たちの姿は、一種異様ではあるが、それは痛覚を失い痛みを感じぬ身が、心身の危機に対し無警戒に、無頓着になる証左であるとも言えよう。
(「痛みを麻痺して超強化という事は、警戒心が薄れるという事でもあるな」)
 事実、右腕を失いなおシンに迫ろうとする花嫁の意識はシンにのみ向けられており、ギロチンや自身の肉体の損失には全く注意を払ってない。
 花嫁の残った左手がシンの胸元に伸びるが、その動きはわずかに鈍っていた。
「貴様の攻撃、読み切った!」
 掴みかかる花嫁の動きを、シンは視線や足さばきも見切って躱し、紅の残像で惑わせながら、右手の灼星剣を無造作に振り上げる。
 その先にあるのは――シンに伸びた花嫁の左腕。
 直後、花嫁が立ち止まり、目の前を通過する紅の剣を見送るよう避けた。
 花嫁の足が止まった直後、シンは花嫁の脇をすり抜け走り出す。
 すぐさまシンを追う花嫁の気配を背に受けつつ、一方でギロチンの落下タイミングを視線で読み取りながら、シンは僅かに速度を上げながら落下寸前のギロチンの真下を走り抜ける。
「逃がしませんわ」
 シンを追ってきた花嫁が、背後からシンに掴みかかろうと左手を伸ばした、まさにその時。

 ――ガチャン!!
 ――グチャッ!!
 
 シンの背後で、花嫁の頭上から落下したギロチンがその身体を両断しながら石床に勢いよく衝突した。
 背後の気配が消えたことに一息つく間もなく、直ぐ別の花嫁がシンの行く手を遮る。
「主様に手を出そうとする狼藉者、散りなさい!」
「そこを退いてもらおうか!」
 シンは躊躇わずに行く手を遮った花嫁の胴を全てを焼き尽くさんと輝く灼星剣で一息に薙いだ後、左手の村正でもう一薙ぎ。
 二撃を受けた花嫁は、たまらずその場で崩れ落ちていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
「地下に存在する月。
しかも満ち欠けまでするなら
何かの力が加えられていると考える方が無理がない。
その謎の手掛かりがここにあるのか?」

敵に
「悪いがその選択肢に俺の望む答えはない。
だから切り開かせて貰う。進む道を。」

ファントムリキッドを発動。
敵の位置を把握
ギロチンの動きを【見切り】
ギロチンと敵の攻撃を自らを液状化し回避。
ギロチン射出口を敵との間に挟む様に立ち
身体の一部を敵に気づかれない様に床面に配置し
敵の攻撃に合わせ足を掴みギロチンに当てる。
自爆しようとする敵には
スカイロッドの風弾で吹き飛ばし他の敵も爆発に巻き込む。
「身を捨ててと言えば聞こえはいいが。
捨てる価値しかない命で
俺を止める事は出来ない。」



●探究者もまた、月の秘密に迫ろうと
 術士であり研究者でもあるフォルク・リア(黄泉への導・f05375)の興味は、ダークセイヴァー「地下第4層」に浮かぶ月にも向けられていた。
 地下に存在する月。
 しかも他世界の月と同様、満ち欠けまでするならば。
(「……何らかの力が加えられていると考える方が無理がない」)
 そして、この月光城とやらは、月の満ち欠けに応じて輝き方が変わるという。
 ならば、月の謎の、力の起源の手掛かりはここにあるのだろうか。
 それを知るために、フォルクもまた、無数の罠が闖入者を排せんとする月光城に踏み込んでいた。
 だが、ヴァンパイアの花嫁たちは、フォルクを一瞥すると、変わらぬ選択肢を突き付ける。
「選びなさい。ギロチンの露となるか、あるいは大人しく退散するか……人間画廊(ギャラリア)に飾られるか」
 その選択肢は、何れもフォルクの命を月光城の主とやらに捧げるか、フォルクに調査を諦めさせる理由にしかならないもの。
 ゆえに、フォルクは即座に断言する。
「悪いが、その選択肢に俺の望む答えはない」
 ……と。
「闖入者に、望みを口にする権利があると思って?」
「だから切り開かせて貰う。進む道を」
 花嫁たちの言の葉をかき消すように風宿るスカイロッドを振りかざしながら、フォルクは己が道を切り開くべく、ギロチンの雨の中を歩き始めた。

「森羅に遍く湖水の亡霊。我に宿りて、此の身を不浄の水へと変じ。仇讐討ち果たす無双の刃と成せ」
 フォルクの朗々とした言の葉と共に、彼の身体に湖水の亡霊たる水霊が宿る。
 水霊はフォルク自身の身体を温度、特性変化自在な液体に変化させるとともに、液体らしく拡散・収束をも容易に行えるよう変化させていたが、簡単に花嫁たちに手の内を見せぬ様、あえて人型を保ったまま歩き出した。
 花嫁から注意を逸らさぬ様にしながら、フォルクは天井から降り注ぐギロチンの動きを見切りつつ前進するが、無造作に降り注ぐ以上、全てのギロチンの刃は躱せない。
 フォルクの頭上から、ギロチンの刃が彼を真っ二つにせんと慈悲無き刃をきらめかせながら落下するが、フォルクはあえて液状化した自らの身体で受け、斬られるままに任せながら負傷を最小限に留めていた。
 ギロチンが天井に巻きあがった後、フォルクは真っ二つに割られた液状の身体を元に戻す。
「もとに、戻った……?」
「精霊が人を液状に変えるとは!」
 ギロチンに斬られた目の前の人間が液体と化し、再び戻る光景は、感情乏しき花嫁たちすら驚かせるが、主への盲従は花嫁の驚愕を上回っている。
「構いません……主様、万歳!」
「この身、主様を殺めようとする狼藉者を討つためなら!」
 すぐさま気を取り直し、ギロチンの雨の中フォルクに迫った花嫁たちは、次々と自爆しフォルクをギロチンの雨の中に吹き飛ばそうとする。
 だが、フォルクは花嫁たちが自爆する寸前に己が身体を液状化し、爆発の衝撃を和らげながら床へと広がっていた。
 それでも、フォルクを確実に討ち取るために、残った花嫁たちが身体が斬り飛ばされることも厭わず、床に広がった液体を探しつつギロチンの雨の中を駆け抜ける。
 液体化した肉体を床に広げたまま、腕を飛ばされる花嫁たちとギロチンが巻き上げられる天井に目をやったフォルクは、再び人型に戻り、ギロチンの射出口を花嫁との間に挟むようにその身をギロチンの真下に晒した。
「そこにいましたか」
 フォルクを発見した花嫁がゆったり近づく間に、フォルクはローブに隠れた左腕を再度こっそりと液体化し、周囲の床に広げながら無言で待ち受ける。
「主様のために、散りなさい」
 花嫁がフォルクに掴みかかろうと近づき、液体を踏みつけた瞬間、液体化した左腕が花嫁の両足を一気に絡め取り、動きを封じた。
「な――――」
 足を止められ驚く花嫁の頭上にギロチンが落下し、その身体を一気に両断した。

「身を捨ててと言えば聞こえはいいが。捨てる価値しかない命で俺を止めることはできない」
「わたくし達の命の価値は、主様が生かしてくださります」
「わたくしたちの命は主様のものですから、無駄ではありません」
 そう嘯きながら飛びかかり自爆しようとする花嫁たちに、フォルクはスカイロッドの先端を向け、風弾を撃ち出す。
 風弾を受けた花嫁は、吹き飛ばされた後に他の花嫁にぶつかり爆発し、周囲のギロチンの刃を大きく揺らがせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
「では選ぼう。このギロチンの間を抜け貴様らの主をこの剣で串刺しにする。否やとしたくばかかって来い」

ギロチンが飛び交う中を下手に動くは悪手だ。
黄金魔剣掲げて敵を【挑発】、此方に【おびき寄せ】る。

敵が迫るならばUC【命を虚ろにせし亡撃】を込め【投擲】短剣【乱れ撃ち】で迎撃。
自分の意のままに飛ぶ【誘導弾】、当てるのは容易く当たりさえすれば痛手である必要は無い。
『肉体・霊体の自由を封じる呪いの第一撃』ないし『思考・精神活動を封じる呪いの第三撃』で敵の挙動を封じれば後はギロチンが始末する。
運よくギロチンが届かないならゆっくり近づき直接手を下すだけだ。

さて、進むぞ。囚われの人々が五体満足であればいいが。



●黒騎士の空舞う短剣は花嫁の意を奪い
「選びなさい」
 月光城の主に盲従するヴァンパイアの花嫁たちは、闖入者に対し、流暢に選択肢を突き付け続けている。

 ――ギロチンの露となる。
 ――何もせず立ち去る。
 ――降伏し、人間画廊(ギャラリア)のオブジェと化す。

 しかしその選択肢は、通り抜けた猟兵達に悉く否定され、花嫁のいのちごと踏み躙られた選択肢。
 そして、黒き全身鎧を纏い、黄金魔剣を手にしたルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の答えもまた、何れでもない。
「では選ぼう。このギロチンの間を抜け、貴様らの主をこの剣で串刺しにする」
 僅かに青炎がちらつく黄金魔剣の切っ先を花嫁たちに突き付けながら、ルパートは選択肢の全てを否定するとともに花嫁たちを挑発した。
「ああ、今日の来客は何と愚かな」
「皆、わたくしたちの、主様の死を望む」
 ――ならば。
「主様の為にも、ここで果てていただきましょう」
 花嫁たちはルパートの挑発に乗り、ギロチン降り注ぐ合間を縫ってルパートに迫ろうと駆け出した。
 一方、ルパートはその場を動かない。
 ギロチンが飛び交う中、下手に動くのは悪手。
 故にルパートは、主とやらへの危害をちらつかせ花嫁を挑発し、花嫁が負傷を厭わず接近するのを待っていたが、どうやらうまく挑発にかかってくれたようだ。
「我望むは命満ちる未来。されど我示すは命尽きる末路」
 花嫁が挑発に乗ったと確信したルパートは、こそりと黒鎧の隙間に隠し持っていた短剣を取り出し、小さく言の葉を呟きながらおびき寄せられるように迫る花嫁に投げつけた。
「その程度の短剣で、わたくし達は止まりませんわ」
 花嫁もギロチンの刃を避けながら同時に短剣を避けようと身を翻すが、短剣はまるで花嫁の動きを予期していたかのようにひとりでに方角を変え、無防備な背を浅く切り裂いた。
 続く腕を狙った一撃は偶然落下したギロチンの刃に弾かれるが、三度舞った短剣は首筋を浅く切り裂き、ルパートの手中に戻った。
「ぁ……ぅ……」
 ルパートの意のままに舞う短剣の二撃を受けた花嫁が、小さい呻き声を漏らしながらその場に立ち止まった。
 立ち止まった花嫁の瞳からは光が失われ、ギロチンの雨が降り注ぐ中でも無警戒に腕をだらりと下げ、人形のように棒立ちになっていた。
「何をしているのです。早く狼藉者を」
「主様のことすら忘れたのですか?」
 他の花嫁たちが足を止めた花嫁に注意を促すも、無防備に立ち止まった花嫁の紅瞳は、ルパートへの敵意どころか主への忠誠すら映していない。
 背中を掠めた一撃は、花嫁の肉体・霊体の自由を封じ、精神を肉体の中で藻掻かせる。
 さらに背後から首を掻っ切らんと掠めた一撃は、花嫁の思考・精神活動を封じていた。
 生命力を封じる第二撃は外れたものの、第一撃と第三撃の双方が命中すれば、花嫁は周囲に迫る危険に注意を払うことすら叶わなくなる人形と化す。
「…………」
 幾重にも呪いを重ねられ、己が仕える主への忠誠すら忘れさせられた花嫁は、そのまま頭上から落下したギロチンの露となり消えた。

(「囚われの人々が五体満足であればいいが」)
 人間画廊(ギャラリア)にて「展示」されているであろう人々の身を案じながら、ルパートは真正面から黄金魔剣で花嫁を貫き、短剣に宿した呪いで花嫁の動きを封じギロチンに捧げる。
「な、なにを、したのです、か……!!」
 第一撃を受けた花嫁は、自由を奪われた肉体で己が精神を藻掻かせたまま、ギロチンの露となり消え。
「ぁ……ぁぁ……」
 最初の二撃を躱したにもかかわらず第三撃を受けた花嫁は、瞬時に意志と思考を封じられ己が役割を見失い、ギロチンに叩き潰される。
 花嫁たちは二撃命中しない限り棒立ちにならぬと勘違いしていたが、もともと第一撃と第三撃、何れか一撃だけでもこの雨の中では致命的な隙となり得る。
 次々と肉体を、思考を封じられ、ギロチンに叩き潰される花嫁を蒼き炎が宿る兜の奥の瞳で見つめながら、ルパートはゆっくりとホールの奥に進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
お出迎えご苦労様
悪趣味なご主人サマに銀の弾丸のお届けだよ
受け取り拒否? まぁそう言わず
君たちの分も用意してあるんだ、受け取ってよ

自分に落ちてくるギロチンには
「仕掛鋼糸」で花嫁を引き寄せ身代わりに
さぁ開戦だ

「STACCATO.357」を乱射しつつ
接近されれば▲グラップル織り交ぜ斬りつける
掴まれたら刃で掴んだ腕を▲切断、飛退こう

あぁもう、煩わしいなこのギロチン!
とっておきの魔弾を▲早業で装填
天井に向けてUCを使用する
君たちに通用するとは思っちゃいないさ
でも……コイツら(ギロチン)はどうかな!!
花嫁を追う様に、横に落ちるギロチン群と共に畳みかける
逃げ道は「ブルーコア」のレーザーで塞ぐ
チェックメイトだ



●銀弾と銀光は吸血鬼をも貫いて
 ――ヒューン……ガンッ!!
 ――ガキッ!!

 何度も何度も落下と巻き上げを繰り返す無数のギロチンの刃が見守るエントランスホールに新たな猟兵が現れるのを、ヴァンパイアの花嫁たちが冷たく見守る中。
「お出迎えご苦労様。悪趣味なご主人サマに銀の弾丸のお届けだよ」
 レモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)は、天真爛漫な声音の裏にこの月光城の主への怒りを存分に籠めながら、白黒二丁のガンナイフ・STACCATO.357のふたつの銃口を、最奥の玄室にいるであろう月光城の主――ヴァンパイアに向ける。
 余りにもあからさまに主を狙う銃口から主を護るべく、花嫁たちが扉の前に立ちはだかった。
「生憎ですが、銀の弾丸は必要としておりませんの」
「受け取り拒否? まぁそう言わず――」
 レモンはSTACCATO.357を花嫁たちに向け、冷淡に宣告した。

 ――君たちの分も用意してあるんだ、受け取ってよ。

 天井に無数に吊り下げられている鈍く輝くギロチンの刃は、猟兵も花嫁も関係なく、真下にいる者の身体を無慈悲に確実に引き裂かんと狙い続ける。
 故にレモンは、己が頭上に落下するギロチンの気配を察すると同時に仕掛鋼糸を投げつけ花嫁を捕縛した後、一気に鋼糸を手繰り寄せた。
 鋼糸を巻き付け引き寄せられた花嫁は、レモンの身代わりとなって鋼糸ごとギロチンで真っ二つに引き裂かれた。
 だが、花嫁は他の猟兵達に掃討されかなり数を減らしたとはいえ、まだ残っている。
 レモンに手を下そうと駆け出した花嫁たちを見て、レモンはSTACCATO.357を乱射しつつ牽制しようとするが、無秩序に落下するギロチンの刃は射線を遮り、銃弾を意図せずあらぬ方向へと弾いていた。
「あぁもう、煩わしいなこのギロチン!」
 思わず悪態が口を突いて出るも、冷たき無慈悲な刃は何も答えない。
「主様、万歳!」
 一方、花嫁たちは、腕や髪を斬り飛ばされても全く意に介さずレモンに肉薄しようとしていた。
 どうせ自爆するのなら、事前に腕が飛ぼうが足が飛ぼうが関係ない、とでもいうのだろうか。
 ヤドリカミたるレモンも、仮にギロチンで身体が引き裂かれても偽身符さえ無事なら再生できるが、それでも自爆を喰らうのは真っ平御免。
「とっておきの魔弾、受けてもらうよ」
 レモンはSTACCATO.357に素早く魔弾を装填し、銃口を天井に向け発射。
 魔弾は室内に銃声を響かせながら、天井に小さな穴を開けた。
「発砲一つで趨勢が変わるなんて、良くある話さ」
「いいえ、たかが1発では、わたくし達には影響ございませんわ」
 威圧射撃としては無意味だと嘲笑する花嫁を見つめるレモンの視線は――なぜか笑顔。
「この魔弾が君たちに通用するとは思っちゃいないさ」
「ええ、ですから――」
「でも……コイツらはどうかな!!」
 レモンの声がホールに響き渡ったその時。
 落下するギロチンの刃が突然ひとりでに軌道を変え、次々と花嫁に襲い掛かった。

 ――ガンッ!!
 ――ガツッ!!

 自爆すべく肉薄していた花嫁たちが、次々とギロチンの刃に両断され、そのいのちを散らして行く。
「何があったのですか!」
 残った花嫁が状況を理解できぬと見せた焦りもまた、肉体ごとギロチンに吹き飛ばされた。
 それはまるで、意志を持たないギロチンがレモンに友好的であろうとすべく、花嫁たちを斬り刻まみ道を開けようとしているかのよう。
 ――レモンの魔弾の狙いは、全てのギロチンに聞こえるよう銃声を奏でること。
 ユーベルコードの効果を乗せられた魔弾の銃声を聞いたモノは、109秒だけレモンに対し無意識に友好的な行動を行うようになる。
 花嫁はレモンへの敵意が勝る為無意識に抵抗していたが、意志を持たぬギロチンは銃声を受け入れレモンに友好的となり、花嫁に一挙に牙を剥いた。
 一転しギロチンから逃げ始めた花嫁を、レモンは極小ビット「ブルーコア」を周囲に展開、レーザーで逃げ道を塞ぎながら追いかける。
 追いかけられた花嫁は、ギロチンと無数のレーザーで退路を塞がれ、あっという間に石壁に追いつめられていた。
「チェックメイトだ」

 ――パーン……!

 追い付いたレモンの冷ややかな言の葉と同時に、ギロチンに負けず劣らず無慈悲な銃声がホールに木霊する。
 STACCATO.357の一撃を頭に受けた花嫁は、そのまま絶命した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『吸血コウモリ迎撃』

POW   :    俺の血を吸えるものなら吸ってみろ! 敢えて自らの身を囮にし、引き寄せた蝙蝠を一網打尽にする!

SPD   :    数に対抗するには、こちらも手数だ! 攻撃の手数を増やす工夫をして、素早く確実に殲滅してやる!

WIZ   :    蝙蝠といえば、超音波で周囲の様子を探っているはず! 何らかの方法で音波を撹乱・遮断し、混乱させる!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダークセイヴァー・地下第5層――『月光城』人間画廊(ギャラリア)
 ヴァンパイアの花嫁たちを撃破し、ギロチンの雨が降り注ぐエントランスホールを抜けた猟兵達は、ホール奥の豪勢な扉を開け、奥に飛び込む。
 扉の奥に広がっていたのは、大量の吸血コウモリが飛び交う薄暗い回廊だった。

 ――キィ。
 ――キィ、キィ。
 ――キィキィキィ!

 回廊を頻りに飛び交っている吸血コウモリたちが、猟兵達の気配を察し、次々と鳴きながら猟兵達の周囲に集まってくる。
 闖入者が現れたことを月光城の主に知らせているのだろうか、あるいは単に生餌が現れたとでも思っているのか。
 いずれにせよ、この部屋を抜けるためには、集まりつつある吸血コウモリを撃退する必要がありそうだ。

「うううぅ……」
 微かに響く呻き声を探し、回廊内に視線を巡らせた猟兵達は、息を呑んだ。
 なぜなら、視線の先にいた……否、回廊に「飾られている」のは、生きている人間たちだからだ。

 ――ある若者は、四肢を剣で縫い留められ、昆虫標本のように飾られている。
 ――ある子供は、鎖で四肢を縛られ、絵画のように飾られている。
 ――ある老人は、無理やり瓶詰めにされ、気が触れたかのように笑っている。

 標本として、絵画として、あるいは瓶詰にされて「飾られて」いる人間の数は、凡そ30名程度。
 いずれも長い間惨い扱いを受け「飾られて」いるのか、一様に心身の何れか、あるいは両方が衰弱しているようだ。
 加えて、「飾られて」いる人間たちから漏れ出している何らかのエネルギーが、奥にあるであろう城主の玄室に流れ込んでいるようだ。
 もし、玄室に向かう前に「飾られて」いる人間達を救出すれば、城主と対峙する際に少し有利になるかもしれないが、ほぼ間違いなく吸血コウモリの大群が救出活動を妨害するだろう。

 吸血コウモリを撃退しながら「オブジェ」たちを先に救出し、安全な場に隠れてもらってから城主の玄室に向かって月光城の主を討つか。
 あるいは、吸血コウモリを撃退後、先に玄室に向かって月光城の主を討ってから救出するか。

 猟兵達は、選択を迫られていた。

※マスターより補足
 第2章は、「人間画廊(ギャラリア)」を飛び交う大量の吸血コウモリに対処しながらギャラリアを突破し、城主の玄室に向かっていただきます。

 オープニングでグリモア猟兵も語っておりますが、最優先は「人間画廊(ギャラリア)の突破」ですが、可能な範囲で「飾られている」人々の救助もお願いします。
 ただし、救助活動中も吸血コウモリは絶え間なく襲ってきますので、ご注意を。

「人間画廊(ギャラリア)」に「オブジェ」として飾られている人々の数は、全部で30人です。
 本章で救出された一般人の人数に応じて、第3章の難易度が変わります。

 なお、本章で「オブジェ」となっている人々の生死は問いません。

 ――それでは、最善の行動を。
シホ・イオア
救いを求めている人を見捨てたくない。
だから、シホは助けに行くよ。

ガトリングブーツの弾幕と範囲制圧攻撃で吸血蝙蝠を減らしつつ
要救助者のもとへ移動。
結界術で短時間でも結界を張り音波を遮断して救助時間を確保し
物理的な拘束なら剣で切断、
術的な拘束なら破魔と封印を解くスキルで何とかしてみる。
救助後はフェアリーランドにご招待。
彼らを守りながら救助活動をしなくていいので
より多くの人を助けに行けるんじゃないかな?

敵の攻撃は霞を利用した残像で回避
せん滅よりは救助を優先。

アドリブ連携歓迎というか
連携した方がシホの結界もUCも生かせるかな。



●聖者はフェアリーの園に人々を誘って
 ――キィキィ。
 ――キィキィキィ。

 吸血コウモリがひっきりなしに飛び交う回廊の壁に視線を巡らしながら、シホ・イオアは背の羽根を羽ばたかせつつ薄暗い空間を飛翔し先に進んでいると、壁に飾られたひとつの「絵画」に興味を惹かれていた。
 それは、四肢を厳重に鎖で拘束され、無理やりポーズを取らされた状態で壁に貼り付けられた、絵画のように「飾られている」若い男女のカップル。
「うぅぅ……」
「あ、ああああ……」
 シホの羽音が耳に入ったのだろうか、男女ともに目の前に近づくフェアリーに視線を向けるために、必死に頭を動かそうとする。
 だが、シホを見ようとする男性の瞳は酷く虚ろで生気が見られず、女性の表情には色濃い諦念が宿っていた。
 ふたりとも生きることを諦めているようにも見えるが、それでも生きているのは……月光城の主がエネルギー源としてふたりを生かし続けているからだろうか。
 実際、シホの瞳には、ふたりから回廊の奥に向かって伸びている、細い生気の糸が映っていた。
(「救いを求めている人を見捨てたくない。だから、シホは助けに行くよ」)
 男女から救いを求め、縋るような視線を向けられたシホは、くるりと方向を変え、ふたりに近づいた。

「キィキィ!」
「絵画」と化した男女に近づこうとするシホに、吸血コウモリの群れが迫る。
 新鮮な血液を求める吸血コウモリの瞳や牙は、シホのみを狙い、「絵画」の男女に見向きもしていない。
 おそらく、吸血コウモリたちは「オブジェ」と化している人々を襲わぬよう、月光城の主に厳命されているのだろう。
 フェアリーの聖者たる新鮮な肉体と血のみに興味を持ち、殺到する吸血コウモリたちを前に、シホはくるりと身体を回転させ、マジカルガトリングブーツの足底を吸血コウモリたちに向けた。
「キィィ!!」
 シホの首筋を狙い迫る吸血コウモリたちの目の前に、足底にずらりと並んだ無数の銃口が差し出された、その瞬間。

 ――ドドドドド!!

 周囲の空間ごと制圧するような大量の魔法弾がマジカルガトリングブーツの銃口から撃ち出され、魔法弾の豪雨を真正面から受けた吸血コウモリが次々と撃ち落とされていく。
 増援に駆けつけた吸血コウモリがシホを探すべく超音波を発するが、シホは急ぎ音波遮断の結界を展開し、吸血コウモリから姿を隠した。
「今、助けるよ!」
 吸血コウモリが一時的に去るのを目にしながら、シホは宝石剣エリクシアを抜き、剣に破魔と封印を解く術式を施してから、男女を拘束する鎖を一気に断ち切る。
 物理と魔法の双方で拘束されていた男女は、剣の一振りで身体を壁に固定する術式と一緒に鎖を破壊され、床に落下し蹲った。
「大丈夫?」
「う、うううぅぅ……」
 シホは男女の四肢に残っていた鎖を全て解きながら声をかけるが、ふたりとも酷く衰弱しているのか、か細い呻き声を上げるだけで蹲ったまま動かない。
 シホは少し考えて小さな壷を取り出すと、壷の中をふたりに見えるように見せた。
「この中に入って、待っていてくれないかな」
 シホに促された男性がのろのろと壷を覗き込むと、壷の中に広がるフェアリーの園が目に入る。
 本能的に、この中に入れば安全は確保されると察したのだろうか。
 男性はシホに向かってこくりと頷くと壷に触れ、中に吸い込まれていった。
 その様子を目にした女性もまた、シホに促され壷に触れ、フェアリーランドへと向かっていた。

 男女ペアを救出したシホは、後続の猟兵達に壷を見せ、救出した人々にフェアリーランドへの招待を受けてもらえるよう提案する。
 フェアリーランドに匿ってもらうほうが、回廊の片隅に隠れてもらうよりはるかに安全であると判断したのか、猟兵達もシホの提案を快く了承してくれた。
 猟兵達が「オブジェ」と化した人々の救出に従事している間、シホは吸血コウモリの突進を残像を囮に回避しながらガトリングブーツの弾幕で撃ち落とし、少しでも数を減らしてゆく。
 救いを求める人々をひとりでも多く救助する手助けをすべく、シホは最後まで回廊に残り、猟兵たちを支え続けていた。

【救出完了:2人/30人】

大成功 🔵​🔵​🔵​


※マスターよりお知らせ
 先の猟兵の行動で、フェアリーランドによる安全圏が確保されました。
 以後、救出された人々は自動的にフェアリーランドに保護されます。
リーヴァルディ・カーライル
…惨い真似をする。人間画廊とはよく言ったものね

…だけど、まだ息があるのなら見捨てたりはしない。必ず救いだしてみせるわ

火の魔力を溜めた「精霊結晶」を天井に向けて乱れ撃ち、
爆発の炎と衝撃で空中機動を行う蝙蝠の群れをなぎ払い気絶させていく

怪力任せに大鎌をなぎ払い拘束を切断して囚われた人達を解放して回り、
重症の者はUCを使用して額に銀貨を貼り付け石化を行い、
城主を討つまで安全な場所に保管しておくわ

…心配しないで。怪我が良くなるまで眠っていてもらうだけ

…この世界の常識なら、介錯するのが慈悲だと私も思う
だけど、この世界以外の技術ならば十分治療できるはず

だから今は眠りなさい。何も怖れる事なく安らかに…



●不死者を狩る業は、生者のいのちを繋ぐ
 ――キィキィ。
 ――キィ、キィ。

 吸血コウモリが飛び交う回廊に足を踏み入れ、その鳴き声を耳にしたリーヴァルディ・カーライルの目には、回廊の壁に「オブジェ」として生きたまま飾られた人々の姿が目に入っていた。
「……惨い真似をする」
 人間画廊(ギャラリア)とはよく言ったものね、と小声で吐き捨てながら、リーヴァルディは近くに「飾られて」いるみっつの「オブジェ」に目を向けた。

 ――虫の息のまま磔にされている若い女性。
 ――人ひとり収めるのがやっとの大きさの瓶に閉じ込められている老人。
 ――四肢と腹を剣で縫い留められ、標本よろしく飾られている子供。

 誰もがいつ……否、今すぐ命を落としてもおかしくない状態にも関わらず、まだ生きている。
 リーヴァルディが良く目を凝らすと、彼らから伸びる生命エネルギーの糸が回廊の奥に吸い込まれるようにゆったりと漂い、伸びているのが見えた。
 おそらく、糸の伸びる先に、月光城の主がいるのだろう。
 だが、彼らにまだ息があり、生の意思があるなら、リーヴァルディは見捨てたりはしない。
「必ず救い出して見せるわ」
 言の葉の端に、月光城の主への怒りと諦めぬ意思を乗せながら、リーヴァルディはKresnikの名を持つ吸血鬼狩りの銃に火の魔力を溜めた精霊結晶を籠める。
 そして、炎が微かにちらつく銃口を天井を飛び交う吸血コウモリの群れに向け、立て続けに引き金を引いた。

 ――ターン!!
 ――ドウッ!! ドンッ!!

 乱射された精霊結晶が次々と天井に着弾し、籠められていた火が一気に解放され、爆発と見間違うばかりの勢いで炎が天井に広がり。
「キィッ!!」
「キィィィーッ!!」
 衝撃波を伴い一気に拡散した炎の津波は、リーヴァルディの首筋を狙っていた吸血コウモリを打ち据え気絶させながら、次々と呑み込んでいった。
 炎に巻かれてゆく吸血コウモリたちを横目に、リーヴァルディは怪力任せにグリムリーパーの名を持つ大鎌を振るう。
 大鎌は炎を避けた吸血コウモリを一気に薙ぎ払い、磔にされている女性の四肢の鎖を一息に断ち、子供を縫い留める剣を叩き折り、老人を閉じ込められている瓶を叩き割っていった。
「オブジェ」と化していた人々の拘束が破壊された瞬間、回廊の奥に流れ込むエネルギーの流れがやや弱まったような気がした。
 この調子で次々と人々を救出していけば、やがてエネルギーの流れを完全に断てるかもしれない。

 拘束を破壊し救出した3人をひとまず床に寝かせながら、リーヴァルディは妖怪「ゴルゴーン」が描かれた3枚の銀貨を取り出し、3人の様子を伺う。
 老人は長い間無理やり瓶に押し込められていたせいか、命に別状はないものの、身体のあちこちが強張り、四肢の関節も固まって動かせないようだ。
 子供も腹の傷からの出血が止まらず、四肢や腹から襲う痛みに頻りに顔を顰めている。
 一方、磔にされていた若い女性の息は、徐々にか細くなり、今にも消え失せようとしていた。
 特に女性は今すぐ手当てしないと命を落としかねないが、この世界の医療技術の水準と医術の常識ならば、無理に延命措置を施さず介錯するのが慈悲だと、リーヴァルディは思う。
 だが……この世界以外の医療技術ならば、この女性も十分助けられるはず。
 ゆえに、リーヴァルディはゴルゴーンの銀貨を見せながら、虫の息の女性に声をかけた。
「これから石にするけど……心配しないで。怪我が良くなるまで眠っていてもらうだけ」
「……わたし、たすかる……の?」
「ええ、だから今は眠りなさい」

 ――何も怖れる事無く安らかに。

 微かに頷いた若い女性は、額に貼り付けられたゴルゴーンの銀貨の魔力で完全に石化し、眠れる石像と化す。
 その光景を見ていた子供と老人もまた、一時的な石化を望んだため、リーヴァルディは女性と同じように額に銀貨を貼りつけ、石化させた。

 治療を待つ3体の石像は、他の猟兵が用意したフェアリーランドに安置し、一時の安全を確保する。
 彼らのいのちを弄んだ月光城の主の命を一刻も早く狩るために、リーヴァルディは回廊を駆け抜け、城主の玄室へ向かった。

【救出完了(総数):5人/30人】

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「人間画廊…。
生かしたまま己の糧にしているのか、
今はまだ生きているが。
それが保証されている訳じゃない。」
早く助けるべきだろう。それで敵に隙を見せる事になったとしても。

先ずは蝙蝠に対処しようと
呪装銃「カオスエンペラー」で蝙蝠を狙撃。
幻覚、マヒで動きを封じて
影狼【ハイド】を呼び出して蝙蝠を攻撃させ
ファントムレギオンの死霊を展開して人々を守らせる。
ある程度安全が確保された時点で人々を救出し
怪我人には表の呪い裏の呪詛を使用して
ダメージを蝙蝠に肩代わりさせて治療。
「今助ける。ゆっくりでも良い。
兎に角此処から離れて隠れていてくれ。
その後は一緒にここから出よう。」
と怪我や精神状態を気にしつつい避難誘導する。



●死霊は吸血鬼の先鋒を許さず
 ――キィキィ。
 ――キィキィ。

「人間画廊……」
 飛び交う吸血コウモリの群れと「オブジェ」として飾られている人々の有様を見たフォルク・リアは、固い口調の端々に怒りを露わにしていた。
「生かしたまま己の糧にしているのか」
 彼らの命を弄ぶだけでなく、己が力の糧としているであろう月光城の主への怒りを覚えながら、フォルクは剣で縫い留められている「オブジェ」の人々に視線を向ける。
 飾られて自由に身動きが取れぬとはいえ、彼らはまだ生きているが、いつまでもそれが保証されている訳ではないだろう。
 ゆえに、たとえ敵に隙を見せることになったとしても。
「……早く助けるべきだろう」
 フォルクはローブの内側に手を入れ、呪装銃『カオスエンペラー』のグリップに手をかけた。

 吸血コウモリの群れが、一斉にフォルクを狙い突進し始める。
 目深に被るフードのおかげで簡単に首筋が狙われることはないが、それでも吸血コウモリの群れに一斉に群がられたら、人々を救うより早くフォルクの血が吸い尽くされかねない。
 ゆえにフォルクは、先に吸血コウモリに対処すべく、呪装銃『カオスエンペラー』を抜き、徐に狙撃を敢行した。
「キィ……?」
「キィッ!!」
 狙撃された吸血コウモリは、翼が麻痺したかのようにその動きを止め、床に落ち、呼び出された影狼【ハイド】に次々と喰らわれてゆく。
 もし、吸血コウモリが「オブジェ」と化した人々を襲うようなら、フォルクはファントムレギオンの死霊を展開し人々を守らせるつもりだったのだが、吸血コウモリが「オブジェ」と化している人々を襲う気配はない。
 フォルクの目には、「オブジェ」から回廊の奥に伸びている生命エネルギーの流れが、はっきりと映っている。
(「おそらく、この流れを途絶えさせないために、襲うなと命じているのだろうか?」)
 吸血コウモリを使役する月光城の主に若干の興味を抱きつつも、フォルクは油断せず死霊には壁を形成させ、吸血コウモリの超音波と動きを遮らせる。
「オブジェ」と化している人々が、救出され「オブジェ」でなくなった後も、吸血コウモリが襲わない保証はどこにもないからだ。
 もっとも、地面の影狼と空中の死霊の壁のおかげで、吸血コウモリの群れはフォルクやその近くにいる「オブジェ」の人々に近づくことすら叶わない。
「今助ける」
 フォルクは人々の四肢を縫い留めていた剣を次々と抜き、その身体を地面に降ろす。
 剣を抜いた瞬間、人々から流れ出していたエネルギーの流れがまた弱まった気がした。

 死霊の壁で時間を稼いでいる間に、フォルクは救出した人々の容態を観察する。
 彼らを縫い留めていた剣は巧みに急所を外していたが、それでも時間をかけてかなりの量の血液を失ったのか、彼らの意識はもうろうとしていた。
「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ」
 フォルクは己の魔力を代償に冥府へと繋がる闇を纏い、救助した人々の傷痕に触れながら闇を流し込む。
 生と死を司る冥府と繋がる闇は、傷痕から身体に侵入し、人々にとって敵となり得る任意の対象にダメージを肩代わりさせる呪詛として宿った。
 フォルクの目の前で、見る見るうちに人々の四肢の傷が塞がり始める。
「キィィィ!!」
「ギィッ!?」
 一方、死霊の壁の外で機を伺っていた吸血コウモリたちは、人々のダメージを肩代わりさせられ、剣を徐々に突きこまれるような痛みに襲われ、苦しみ始めた。
 やがて吸血コウモリたちは、苦悶の鳴き声をあげながら墜落し、事切れていった。

「あの、俺は……」
「兎に角ここから離れて、この中に隠れていてくれ」
 四肢の傷が癒え意識を取り戻した人々に、フォルクは他の猟兵が手にしている小さな壷を指差し、中に入るよう促す。
 人々が壷の中を覗き込むと、その中には既に保護された元「オブジェ」の人々の姿があった。
「君たちをこのような目に合わせた主を倒した後は、一緒にここから出よう」
 見知った顔がいたことに安堵し頷いた人々は、壷に触れ、フェアリーランドに誘われる。
 救助した人々の当座の安全を確保したフォルクは、死霊の壁を前進させながら、少しずつ回廊を先に進んでいった。

【救出完了(総数):8人/30人】

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・アンダーウッド
ふむ。まだ息があることに安堵すればいいのか。人間をこうも飾り立てた元凶に怒りを覚えるべきなのか。それとも死なない程度を見極めているその手腕に感嘆すればいいのか。情報量が多くて反応に困るね♪

業火を展開、全体の7割を集めて回廊を塞ぐような炎の壁を作り、3割を救援目的に使用。
炎の壁で牽制しつつ前進して、飾り付けられた人達の救助及び壁を抜けてきたコウモリを撃墜をからくり人形達が担当。
投げナイフで致命傷を避けつつモグラ叩きの要領でコウモリを墜としていく。

クラウンは一人、救助した人を業火で治療しつつ撃墜したコウモリを鼻歌まじりに回廊の壁に飾り付けていく。

殺さない程度に弱らさて飾り付けるのは中々難しいね♪



●道化師はヒトを癒しコウモリを握り
 ――キィィ……。
 ――キィッ、キィッ!!

「おやおや、これはこれは」
 目の前に広がる人間画廊(ギャラリア)に「飾り付けられた」人々の苦悶と諦念の表情と、上空を飛び交う吸血コウモリの群れを目にしたクラウン・アンダーウッドは、半ば困ったように眉を顰めていた。
 今は「オブジェ」と化した人々にまだ息があることに安堵すればいいのか。
 人間をこうも無惨にモノとして飾り立てた元凶に怒りを覚えるべきなのか。
 それとも……死なない程度を見極めている月光城の主の手腕に感嘆すればいいのか。
 生かさず殺さず、絶妙なラインを見極めた上で人々を「飾り」続けている月光城の主の意図は、クラウンにはよくわからない。
 ただ、ひとつだけ言えるのは――。
「情報量が多くて反応に困るね♪」
 ――クラウン自身が如何なる反応をすれば良いのか、困っているということだ。
 現在得ている情報を鑑みると、直ぐに「オブジェ」と化した人々を救出する必要はないのかもしれない。
 だが、他の猟兵が「オブジェ」と化した人々を救出するたび、回廊の奥に流れてゆくエネルギーの量は確かに減っているため、月光城の主に挑む前に「オブジェ」と化した人々を救出するのは決して無駄ではないはず。
 ……むしろ、先んじた救出は、猟兵達にとっても有益なのかもしれない。
「さぁ、盛り上がっていこうじゃないか♪」
 ゆえにクラウンは、道化師らしく笑顔を絶やさぬまま、大仰に両手を掲げ一大ショーの開催を宣言する。
 ――吸血コウモリと月光城の主を観客に迎えた、救出ショーの開催を。

「ただ燃えるだけが炎じゃないのさ!」
 大仰に掲げたクラウンの両手の間から現れたのは、109個の地獄の炎の塊。
 その7割を費やして、クラウンはまず、回廊を塞ぐような動く炎の壁を形成、展開した。
「キィィ!!」
 焼かれてはたまらないと、突撃していた吸血コウモリたちが壁の前で停止し、空中をホバリングし始めたところに、10体のからくり人形が、次々と投げナイフを投擲。
 翼や脚の付け根など、致命傷となり得ない部位をナイフで貫かれた吸血コウモリたちは、次々と床に落下した。
 吸血コウモリの群れが散った隙に、からくり人形たちは手にしたナイフで瓶を叩き割り、鎖を投げナイフで切断し、解放された人々を床に降ろしていく。
 解放された人々は、長期間拘束され飾られていたことで身も心も酷く傷ついているが、壁を成していない残り3割の燃え盛る業火が、人々に慈愛を与えるようその肉体を優しく包み込んだ。
 ――クラウンが呼び出した炎は、いのちあるもの全てを焼き尽くすだけの業火に非ず。
 地獄から召喚された炎は、いのちに害を成さんとするものを遮る守護の炎であり、心身が傷ついたものを優しく包み込み癒す慈愛の炎でもある。
 轟々と燃え盛る業火は、見た目に反して包み込んだヒトのいのちを決して燃やそうとはせず、彼らの心身を温め、傷痕を残さぬ様優しく癒していった。

「~♪」
 心身共に傷ついた人々が業火で癒されるのを横目に、クラウンは鼻歌混じりに撃墜された吸血コウモリを掴み、回廊の壁に「オブジェ」の代わりに飾りつけていく。
「キキィッ!!」
 吸血コウモリたちは金切声を上げ抵抗するが、クラウンは耳を傾けない。
 ただ無邪気に、月光城の主に自らの存在を誇示するかのように。クラウンは吸血コウモリをひとつの絵画を描くように並べ、投げナイフで縫い留めていく。
 ナイフで貫かれた瞬間、吸血コウモリたちが代わりの「オブジェ」となって回廊の壁を彩り、哀し気な鳴き声を響かせたが、それでも何体かは貫かれたショックで絶命していた。
「殺さない程度に弱らせて飾りつけるのは、中々難しいね♪」
 あれ? と小首を傾げながらも、クラウンはからくり人形たちが叩き落とした吸血コウモリを生かさず殺さず縫い留め、オブジェを造り続けた。
 ――それを成した月光城の主の手腕を褒めるかのように、お道化た口調で呟きながら。

 クラウンが新たなオブジェを完成させる頃、地獄の炎で傷が癒された人々はフェアリーランドに匿われていた。
「さて、主とやらに会いに行こうかな♪」
 さも嬉しそうに嘯きながら、クラウンは軽い足取りで城主の玄室へと歩みを進めていった。

【救出完了(総数):11人/30人】

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
片っ端から焼き払う、では人々に飛び火しかねんか。
地道に助けて回るしかあるまい。

囚われの人々の【救助活動】優先。オブジェとしての拘束を【怪力】で破壊。
動けない者が殆どだろう、担いで安全な場まで迅速に【運搬】。これを繰り返す。

吸血コウモリには鎧に内蔵しているバリアバンクルを起動しUC【異界駆け往く鉛背】。
救助中の人間を【かばう】手前、タックルとはいかんが群がって来るのに合わせて随時【吹き飛ばし】て押し退けよう。

救助した人間の衰弱が著しいようなら
「刀身を潰し、触れた相手が自分に対して【生命力吸収】する」ように【武器改造】しておいた短剣を当て生命力を供給する。

今暫く辛抱していろ。すぐに方を付けてくる。



●黒騎士のいのちは人々のいのちを繋ぐ
 先の続き足を踏み入れたルパート・ブラックスミスの視界に入ったのは、四肢を鎖で拘束され絵画のように飾られている若い男性と、両の掌と足の甲を剣で縫い留められ標本とされた老婆、そして小瓶に押し込められた子供の姿だった。
 人々が「オブジェ」として飾られている回廊――否、人間画廊(ギャラリア)の天井付近は、吸血コウモリの群れが隙を伺いつつ旋回しているのを見て、ルパートは兜の奥で小さくため息をついていた。
 片っ端から吸血コウモリを焼き払いたいところだが、それでは「オブジェ」と化した人々に飛び火しかねない。
「地道に助けて回るしかあるまい」
 兜の奥に青白き炎を揺らめかせながら、ルパートは吸血コウモリへの対処より「オブジェ」と化した人々の救助を優先しようと心に決め、壁際に近づいた。

「オブジェ」と化した人々に近づいたルパートは、彼らを拘束している鎖や剣、瓶に手をかけ、片っ端から怪力任せに破壊する。
 鎖で拘束されていた若い男性は、その鎖を強引に引き千切られ床に落下。
 掌と足の甲を縫い留められ飾られていた老婆は、骨と肉にしっかりと食い込んでいた剣を力まかせに抜かれ、僅かに呻き声を上げていた。
 子供を閉じ込めている小瓶は、子を傷つけぬ様注意深く握り潰しながら破壊。
 そうして救助した人々を、ルパートは纏めて怪力で抱え上げ、回廊の隅に運搬した。
 もちろん、吸血コウモリも「オブジェ」が持ち去られるのを黙って眺めておらず、ルパート諸共吸い尽くさんとばかりに襲い掛かる。
 吸血コウモリたちは月光城の主から「オブジェ」と化した人々を襲わぬ様厳命されてはいたが、「オブジェ」でなくなったのであれば――その命を奪うのみだから。
「キィィッ!!」
 逃がさぬ、血を寄越せと言わんばかりに、吸血コウモリたちは子供の剥き出しの首筋や老婆の四肢、青年の胴を狙って突進する。
「させぬ!」
 ルパートは鎧内蔵のバリアバンクルのバリアを活性化しつつ、吸血コウモリの群れに立ちはだかった。
「我が命運は闇夜にこそ在りて。されど……我が騎士道は万理へと延びる!」
 ルパートの鎧に隠された7つ(以上)の秘密のひとつであり、宇宙空間活動用のバリアを展開する内臓装置が、ルパートの言の葉に応じるよう全力で稼働し、ルパードごと人々を包み込むような薄闇のバリアを展開。
 あらゆる環境に適応するよう調整され、さらに吸血コウモリという外的要因を分析し展開された薄闇色のバリアは、表面に時折微弱な青白い電流を走らせながらルパートや救助された人々の姿を闇に紛れさせた。
 虚空に走る電流に構わずルパードたちに群がろうと突撃したコウモリが、バリアに触れた、その時。
 ――バチバチッ!!
「キキィッ!!」
「キィーッ!!」
 吸血コウモリたちは微弱な青白き電流を浴びせられ、全身が麻痺し翼の浮力を失いそうになり、たまらず後退。
 その動きに合わせるように、ルパートはバリアを纏った両手で吸血コウモリを叩き、さらに遠くへ吹き飛ばしていった。

 バリアと吹き飛ばしで吸血コウモリを遠ざけたルパートは、改めて救出し運んできた人々に目を向ける。
「う、うぅぅぅ……」
「いたい……よぅ……」
 解放された人々は、呑まず食わずで飾られていたからか、誰もが酷く衰弱していた。
 その光景を見たルパートは、迷わず刀身を潰した短剣を取り出し、刀身を子供の頬に当てる。
 ――それは、触れた相手がルパートの生命力を少しずつ吸収し、命を繋げられるよう改造された短剣。
 命を奪うのでなく、命を繋ぐための短剣に触れた子供の身体に、ルパートから分け与えられた生命力が少しずつ染み渡り、生気と活気が戻ってゆく。
 次第に元気を取り戻して行く子供を見た青年や老婆が、必死に短剣に手を伸ばすのを見て、ルパートは青年や老婆の手も短剣に触れさせ、生命力を分け与えていた。

 生気を取り戻した青年たちに、他の猟兵が小さな壷の中を見せ、中に避難するよう勧めてくる。
「今しばらくこの中で辛抱していろ。直ぐに方をつけてくる」
 彼らが壷に触れフェアリーランドに避難するのを見届けた後、ルパートは電流走る薄闇のバリアを展開させたまま、真っ直ぐ城主の玄室に向かった。

 ――一刻も早く、月光城の主を討つために。

【救出完了(総数):14人/30人】

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
”飾られている”人々の救助をしよう。
その為には吸血コウモリは邪魔だな。

UCで左手をブラックホールに変換し、吸血コウモリ及びコウモリが発する超音波を対象に吸い込み開始。
どれだけ多数が現れようが、全て吸い込み消滅させるまでの事。

人を縫い留めた剣は念動力で引っこ抜き、人を縛る鎖や人を押し込めた瓶は右手の灼星剣による鎧無視攻撃で断ち斬って、人々を救出する。
「遅くなってすまない。城主は俺達が倒して、皆さんが故郷に戻れるようにするから、その壺に触れて向かった先で休んでください。」と避難誘導する。

「どうせなら城の大掃除をしておくか。」と、他の猟兵達と協力して、吸血コウモリ根絶と人々全員の救出を目指します。



●深淵の牢獄に蝙蝠たちを誘いて
 ――キィキィ。
 ――キィッ、キィッ!!

 人々が「オブジェ」のように飾られ、吸血コウモリの群れが飛び回る回廊――否、人間画廊(ギャラリア)に足を踏み入れたシン・コーエンは、「飾られている」人々を一瞥し、迷わず救助を優先しようと心に誓う。
 そのためには、この回廊――否、人間画廊(ギャラリア)の中を好き放題飛び回る吸血コウモリは、邪魔にしかならない存在だ。
 吸血コウモリたちが「オブジェ」と化した人々から血を奪う様子はないが、微かに伸びるエネルギーらしき糸が少しずつ生命力を奪っているのか、「オブジェ」と化した人々の生気は酷く薄い。
 急ぎ救出するために、シンは最も近い「オブジェ」に向け駆け出した。

「全てを引滅する究極の門よ、我が元に来れ」
 シンは左手をブラックホールに変換し、天井付近から急降下しようとしている吸血コウモリたちの進路を遮るように翳す。
 コウモリが発する超音波は、シンの耳に届くよりブラックホールに吸い込まれ、シンの正確な居場所をコウモリたちから隠すとともに彼の耳と精神を守った。
 超音波が届かず戸惑うコウモリたちに、シンは容赦なく左手のブラックホールを向け、吸い込む。
「キィィッ……!!」
「キィッ!! キィッ!!」
 吸血コウモリたちは、次々と悲鳴を上げながらブラックホールにその身を吸い込まれ、消滅した。
 必死に翼を羽ばたかせ逃れようとする吸血コウモリもいるが、コウモリの翼の浮力程度では、何処かの深淵に繋がっているであろうブラックホールの吸引力から逃れることはできない。
(「どれだけ多数が現れようが、全て吸い込み消滅させるまでの事」)
 シンは逃れようとする吸血コウモリにも容赦なくブラックホールを向け、次々と吸引し消滅させていった。
 一方、「オブジェ」と化した人々は、自分たちも吸い込まれるのかと思わず目をつむるが、微動だにしないことに軽く驚きを覚えていた。
 シンのブラックホールは、指定した対象のみを吸引し何処とも知らぬ空間に放逐するから、指定されていない「オブジェ」や拘束が吸い込まれることはないからだ。
 次々と吸血コウモリが悲鳴を上げ、消滅していくのを目の当たりにした「オブジェ」達の瞳に、微かに光と生気が宿り始めていた。

 周囲の吸血コウモリをブラックホールに吸い込ませたシンは、一端ブラックホールを左手に戻し、「オブジェ」と化した人々の救出を開始。
「オブジェ」を標本よろしく縫い留めていた剣は、念動力で4本同時に引き抜き。
 鎖で無理やりポーズを取らされていた別の「オブジェ」は、右手の灼星剣の一振りで四肢を拘束する鎖を一気に焼き切るように切断し、解放。
 子供が閉じ込め「オブジェ」として飾られている瓶も、高熱の刀身を持つ灼星剣で瓶そのものを飴細工のように切り裂き、中の子を抱え上げた。
「遅くなってすまない」
「あ、うぅ……」
「城主は俺たちが倒して、皆さんが故郷に戻れるようにするから、その壷に触れて向かった先で休んでください」
 シンは軽く詫びながら他の猟兵が手にする小さな壷を指差し、救出された人々をフェアリーランドに誘導する。
 頷いた人々は、次々と小さな壷に手を触れ、安全圏たるフェアリーランドに誘われた。

「どうせなら城の大掃除をしておくか」
 シンは再度左手をブラックホールに変え、解放された人々を狙わんと飛び交う吸血コウモリたちを吸い込んでゆく。
「オブジェ」と化した人々から伸びていたエネルギーの糸は、いつの間にかほぼ消滅している。
 人々から生命力を奪っていたであろうエネルギーの糸が途切れた今、未だ「オブジェ」のままでいる人々の救出は、月光城の主を討った後に回した方が安全だろう。
 だが、猟兵達の救助活動に希望を見出したのか、残った「オブジェ」の人々は必死にシンに縋るような視線を向け始めている。
 シンひとりで救出するにはいささか多すぎる数だが、この回廊にはシン以外にも多数の猟兵が潜入し、救助活動に従事しているから、彼らと協力すれば、城主の玄室に突入する前に全員救出できるかもしれない。
 故にシンは後続に道を繋げるべく、1体でも多くの吸血コウモリを吸い込みながら、少しずつ城主の玄室へと歩みを進めていく。
 ――いずれ彼らも救出されるであろう、と確信しながら。

【救出完了(総数):17人/30人】

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
アドリブ・連携ほか◎

残虐性を誇るように見せびらかしちゃって、やれやれ
ご主人様とやらはメンタル幼稚園児、自己顕示欲のカタマリか

「STACCATO.357」の片方のみ「C.T.弾頭」を装填してから
複製偽身符を風に舞わせ床に散らす

救助班は98名
搬送2名、前後左右に護衛4名、遊撃兼穴埋め1名
以上の7人組を最大で14チーム編成する
君たちは合図があるまで符のまま潜伏だ

残りは即座に実体化、私と一緒に玄室への突入班だ
突入班が初撃で「C.T.弾頭」を蝙蝠の群れにブチ込み▲おびき寄せる
コッチに向かってきたら救助班は一斉に実体化して作戦開始!

▲衝撃波と▲範囲攻撃と一点射撃の撃ち分け
更に「ブルーコア」の誘導レーザーで蝙蝠の群れを突破する
救助対象を落とすなよ、ポカミスで死人を出したら寝覚めが悪いぞ!
ギリギリまで救助班を見届けたら玄室へ転がり込むよ



●110体の「レモン」は人々の希望を叶えて
 ――キィキィ。
 ――キィキィ。

「残虐性を誇るように見せびらかしちゃって」
 やれやれ、と肩をすくめながら、レモン・セノサキは手にした白黒二丁のガンナイフ『STACCATO.357』の片方の弾丸をクラスター・サーモバリック炸裂弾頭――C.T.弾頭に入れ替えながら、吐き出すように呟いていた。
「ご主人様とやらはメンタル幼稚園児、自己顕示欲のカタマリか」
 怒りのままに呟いた呆れを含む言の葉が回廊を吹き抜ける風に乗って広がる中、レモンは回廊をざっと見渡し、残りの「オブジェ」と化した人々の居場所を確認。
 先に突入した猟兵達の救助活動で、30人程度が飾られていたであろうこの回廊――否、人間画廊(ギャラリア)に飾られている「オブジェ」は、13人にまで減っていた。
 しかも「オブジェ」から回廊の奥へ伸びているはずのエネルギーの流れは、全く感じられなくなっている。
 流れが途切れた今、残った「オブジェ」の救出は月光城の主を討った後にしたほうが安全かもしれないが、レモンも他の猟兵たちと同様、可能な限り全てのいのちを『今』助けたいことに変わりはなかった。
 故にレモンは『今』全ての人々を救出しようと心に決める。
「集えよニセモノ――物量戦だ」
 レモンは109枚の複製偽身符を取り出すと、回廊を吹き抜ける風に舞わせ、意識的に床に散らすと、近くに舞い落ちた11枚を突入班として即座に実体化させ、レモン本体に合流させた。
 一方、残り98枚はまだ実体化させず、合図があるまで符のままで潜伏させる。
 先に実体化させた11体の持つガンナイフにC.T.弾頭を籠めさせながら、レモンは構えるよう合図を送りながら、機会を伺った。

 やがて、吸血コウモリがある程度群れを成し始める。
「撃て―っ!!」
 機を見切ったレモンの合図と共に、突入班の複製体11人が吸血コウモリの群れに向けて一斉にC.T.弾頭を発射。
 四方八方にばら撒かれたC.T.弾頭は、回廊の至る所で爆発し周囲に子弾をばら撒き、吸血コウモリを片っ端から叩き落としていった。
 C.T.弾頭の一斉爆発から逃れた吸血コウモリたちは、おびき寄せられるようにレモンたち突入班に向け、一斉に突撃した。
「キィッ!! キィッ!!」
 レモンたちから貪るように血を吸わんと言わんばかりに、ほぼすべての吸血コウモリが突入班に迫った瞬間、レモンは符のまま潜伏していた複製体に合図を送った。
「作戦開始!!」
 レモンの合図と共に、符のまま伏せていた救助班98名が一斉に立ち上がる。
 救助班たる複製体は、予めレモンが指示していた通り、搬送役2名、前後左右の護衛4名、遊撃兼穴埋め1名の7人1組で編成された14組の救助チームに分かれると、残り13名の「オブジェ」と化した人々を救出するために吸血コウモリの影がほぼなくなった回廊を一気に走り抜けた。
「オブジェ」の下に辿り着いた救助班の複製体たちは、護衛4名が要救助者の周囲を固めつつ、搬送役と遊撃兼穴埋役の3名がガンナイフの刃で鎖を断ち切り、力まかせに剣を抜き、瓶を叩き割っていく。
 拘束が堅固すぎて救助に手間取っているチームには、残った1チームが合流し、2チームがかりで救助。
 そうして救助班たる複製体たちは、次々と「オブジェ」を解放し、誰一人死なせることなくヒトに戻していった。

 一方、レモンと突入班の複製体達は、C.T.弾頭の子弾がばら撒く衝撃波も利用しながら、残った吸血コウモリを掃討しつつ前進。
 吸血コウモリたちの中には、子弾からも衝撃波からも逃れた運の良い個体もいるが、それもレモンの周囲に展開された無数のブルーコアからの誘導レーザーが翼に無数の穴を開け、叩き落とした。
「救助対象を落とすなよ、ポカミスで死人を出したら寝覚めが悪いぞ!」
 複製体達を叱咤激励しながら、レモンもまた、STACCATO.357で残った吸血コウモリたちを掃討し、道を切り開きながら前進する。
 一方、要救助者を助け出した救助班の複製体たちが、少しずつその数を減らし始めていた。
 ――複製偽身符が実体化した複製体は、攻撃を1度受ければ即座に消滅する。
 消滅した複製体は、要救助者を狙う吸血コウモリの攻撃を代わりに受け、符に戻ったのだろう。
 突入班も間近に接近した吸血コウモリの体当たりを受け、1体、また1体と消滅。
それでもレモンたち突入班は、STACCATO.357を連射し吸血コウモリを撃ち抜きながら、救助班が避難誘導するための道を開けてゆく。
 ふと、レモンが開いた道に目を向けると、小さな壷を持つフェアリーの猟兵が開いた道を進み、要救助者の下へ向かっていた。
 到着した猟兵は、小さな壷に要救助者の手を触れさせ、次々とフェアリーランドへと誘っている。
 おそらく、彼女に任せておけば、要救助者の安全は確保されるだろう。
 そう、確信したレモンは、引き続きSTACCATO.357とブルーコアで道を切り開き続けた。

 やがて、レモンの目の前で、最後の要救助者が小さな壷に吸い込まれた。
「頃合いかな……行こう!」
 最後まで救助を見届けたレモンは、壷持つ猟兵にも合図を送り、STACCATO.357で行く手を遮る吸血コウモリを撃ち抜きながら、残った複製体とともに走り出す。
 救助を終え合流した複製体たちが吸血コウモリたちから身を挺しレモンと壷持つ猟兵を庇い消滅する中、レモンは壷持つ猟兵と共に一気に回廊を駆け抜け、転がり込むように城主の玄室へと突入した。

【救出完了(総数):30人/30人。全員救出完了!!】

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア・ノゥブル』

POW   :    封印魔眼
【封じられし魔眼から放たれる、魅了の視線】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    従魔召喚
【レベル分の数、使い魔の吸血蝙蝠や人喰い狼】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    肉体変化
対象の攻撃を軽減する【魔力で出来た霧状の肉体】に変身しつつ、【時折実体化し、腰に佩いた剣や調教用の鞭】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:壱ル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダークセイヴァー・地下第5層――『月光城』城主の玄室
 吸血コウモリが飛び交う薄暗い回廊こと人間画廊(ギャラリア)に飾られていた人々を全員救出し、フェアリーランドに収容することで安全を確保した猟兵達は、そのまま回廊を突き進み、最奥の城主の玄室に突入した。

 扉を開けた猟兵達を出迎えたのは、岩盤をくり抜かれ造られたであろう部屋の床に紅の絨毯が敷き詰められた、小ぢんまりとした玄室。
 その奥にて待ち構えていたのは、貴族風の衣装を纏い、右眼を眼帯で隠し、紅の左眼に眼球と満月を組み合わせたような紋様を宿した、ひとりの少年吸血鬼――ヴァンパイア・ノゥブルだった。

「よくもやってくれたね、猟兵達……全部台無し」

 猟兵達を見るなり、ヴァンパイア・ノゥブルの口から発せられたのは――怒り。
 見た目は少年とはいえ、ヴァンパイアの外見と年齢は一致しないため、目の前の少年は見た目に反して高齢で、相応の力と知能、そして狡猾さと強かさを持つ相手であろう。

「全く、僕の花嫁たちをぜーんぶ壊した挙句、苦労して集めたオブジェも全部取っ払ってくれちゃって」
「おかげでこの城から僕以外誰もいなくなっちゃったし、『月の眼の紋章』も何も力を与えてくれなくなったじゃないか」

 猟兵達を舌鋒鋭く糾弾するヴァンパイア・ノゥブルだが、彼が指差す眼球と満月を組み合わせたような紋様からは、ほとんど力を感じられない。
 おそらく、眼に宿した眼球と満月を組み合わせたような紋様――『月の眼の紋章』が、人間画廊(ギャラリア)で飾られていた人々から生命エネルギーを吸収し、吸血鬼を強化していたのだろう。
 猟兵達が全員救出し、さらにフェアリーランドに匿ったことで『月の眼の紋章』による強化は封じられたようだが、『月の眼の紋章』そのものはまだ残っているため、『月の眼の紋章』から何らかの不意討ちを受ける可能性はあるかもしれない。

「まあ、ここで君たちを全て討って、新たな花嫁(おもちゃ)と『オブジェ』を探し直そう」

 この城を護るためにもね、と付け加えながら、ヴァンパイア・ノゥブルはその身に宿した力を解放し、吸血コウモリや人食い狼を召喚しようとする。
 なんの悪びれもなく花嫁を「おもちゃ」と言ってのけ、さらに捕らえた人間を『オブジェ』と表現したヴァンパイア・ノゥブルを前に、猟兵たちは其々の得物を構え、対峙しようとしていた。

 さあ、猟兵達よ。
 目の前にいるのは、エントランスホールにて対峙した花嫁たちの心身を弄んで壊し、盲従させた上、何の罪もない人々を捕らえて自由と生命力を奪い強化の糧としていた『月光城の主』――ヴァンパイアだ。
 先の勇敢たる行動にてヴァンパイアの強化の源を断ち、人々の安全を確保した今、後顧の憂いは一切存在しない。
 今、持ちうる全力を以て、『月光城の主』を討ち取れ。

 ――健闘を、祈る。

※マスターより補足
 第3章は『月光城の主』こと『ヴァンパイア・ノゥブル』とのボス戦となります。

『月の眼の紋章』は、ヴァンパイア・ノゥブルの「左眼(眼帯で隠れていない方の眼)」に埋め込まれております。
 この紋章は『人間の生命力を吸収し装着者を強化』する効果と、『格納された棘鞭を飛び出させて攻撃する』効果を持っておりますが、前者の効果は第2章の判定の結果、消滅いたしました。
 ただし、後者の効果は残っておりますので、猟兵がある程度近づくと紋章から棘鞭が飛び出し、猟兵達の急所を貫こうとします。
 本シナリオでは、棘鞭による攻撃は【ユーベルコードと同時に使用できる、高レベルのスキル「2回攻撃、不意討ち、串刺し」を組み合わせた追加攻撃】として扱いますので、棘鞭への対処もお願い致します。
 なお、紋章を直接攻撃しても、追加攻撃を封じることはできません。

 第2章の判定の結果、捕らえられていた人々は全員救出され、さらにヴァンパイア・ノゥブルが絶対手出しできない場所(フェアリーランド)にて保護されました。
 結果、解放された人々の身を案じる必要がなくなり、ヴァンパイア・ノゥブルの撃破に集中できる状況になっておりますので、第3章は通常の難易度にて判定を行います。(これは第2章全員救出のボーナスとして扱います)

 ちなみに、『月の眼の紋章』が装着者に強化を齎すためのエネルギー源は『人間画廊(ギャラリア)に捕らえられている人間』でした。
 誰も救出しなかった場合、戦闘力強化は通常の『66倍』に及び、到底かなわぬ相手となっておりましたが、人間画廊(ギャラリア)から「オブジェ」を1人救出するごとに強化が減少し、全体の50%(本シナリオでは15人)を救助した時点で完全に失われております。
 本シナリオでは、猟兵たちが【第2章において「人間画廊(ギャラリア)」に捕らえられていた人々を全員救出】しておりますので、結果として全てのエネルギー源が断たれ、戦闘力強化の効果は失われた、ということになります。
 ただし、この状態でも『月の眼の紋章』から棘鞭を放つ力は残っておりますので、油断は禁物です。

 ――それでは、最善の戦いを。
フェミス・ノルシール
貴様と語ることなど…何もない
今ここで、貴様を処刑する…!

【真の姿を開放】
身体が20代程度まで成長し、瞳が深紅に染まり
服の影などから屍の手や足が這い出る

「盲従の花嫁、人間画廊(ギャラリア)に並べられた人々…貴様の重ねた罪の数々、決して赦されることはないだろう」

彼の紋章は厄介だ
呼び出した屍に処刑器具を持たせ、囮として接近させて
紋章が発動した隙を狙い距離を詰める

【アイアンメイデン】で穿ち貫き、【ギロチン】を使い部位を切り落とし、【ファラリスの雄牛】にて焼き尽くそう
途中で紋章が発動するようならば、屍に防がせる

「貴様は、この程度で赦されはしない…それだけの事をしてきたのだからな」

~アドリブ・連携歓迎~



●処刑器具は吸血鬼とともに舞う
「君、美しいね……花嫁(おもちゃ)にしてあげようか」
「貴様と語ることなど……何もない」
『月光城の主』ヴァンパイア・ノゥブルの誘いを、真の姿を解放したフェミス・ノルシールは言の葉の刃で一刀両断しながら、断罪剣を構える。
 罪人らの呪いで少女のまま成長を止めているフェミスは、真の姿を解放した今、瞳を金から深紅に変えた、20代程度の美しい女性の姿を取っていた。
 だが、服や足元に落ちる影からは、絶えず無数の屍の手や足が這い出そうとしていた。
「今ここで、貴様を処刑する……!」
 影に潜む屍を従えたフェミスは、断罪剣を突きつけ、ヴァンパイア・ノゥブルの処刑に取り掛かった。

 城主に盲従する花嫁の姿を思い返し、人間画廊(ギャラリア)に飾られていたであろう人々の姿を想像しながら、フェミスは処刑人として、吸血鬼を糾弾する。
「盲従の花嫁、人間画廊に並べられた人々……貴様の重ねた罪の数々、決して赦されることはないだろう」
「へぇ、君が僕を断罪するのか。楽しみだな」
 断罪剣を突き付け追いつめようとするフェミスに、ヴァンパイア・ノゥブルは百を超える吸血コウモリや人食い狼を呼び出し、けしかけた。
「屍よ、我が声に応じ、矛となれ!」
 フェミスの呼び声に応じ、拷問用の縄紐を手にした屍が影から這い出す。
 虚ろな目をした屍は、吸血コウモリや人食い狼の群れをかき分けながらヴァンパイア・ノゥブルに迫った。
 痛みを感じず、フェミスの命のみに従う屍は、人食い狼に胴を食いちぎられようが吸血コウモリに群がられようが、全く意に解さない。
 全身を噛み千切られながらもヴァンパイア・ノゥブルの目前に辿り着いた屍は、表面がざらついた拷問用の縄紐で縊り上げようとするが。
「ただの屍に縊り殺されるわけにはいかないよ」
 ヴァンパイア・ノゥブルの右眼の『月の眼の紋章』が一際強く輝くとともに矢の如く撃ち出された棘鞭が、至近距離から屍の喉に巻き付き、一気に引き裂いて動きを止めた。
「アハハッ! 処刑人さんどうしたのかな? 僕を処刑するんじゃないの?」
 動きを止めた屍を除けたヴァンパイア・ノゥブルは、わざわざ処刑人たる事実を強調しながらフェミスを嘲り、嘲笑する。
 だが、その笑いは、背後から濃い血の臭いとともに吹き付けた殺気にかき消された。
 振り向いたヴァンパイア・ノゥブルの目の前にいたのは――フェミス。
 屍を囮に人食い狼の背を飛び移りながら接近したフェミスは、内部にびっしりと鉄の棘が生えた鉄の処女――拷問具『アイアンメイデン』をヴァンパイア・ノゥブルの目前に差し出した。
「なっ……!」
 フェミスは一瞬言葉を失ったヴァンパイア・ノゥブルの腹を蹴るようにアイアンメイデンの中に押し込み、扉を閉めた。
 ――ブチブチッ!!
 ――グサグサッ!!
 鉄の棘が全身を貫く音が、室内に木霊する。
「ぎゃあああああ!!」
 全てを穿ち貫く鉄の処女に全身を貫かれたヴァンパイア・ノゥブルの悲鳴があがるが、フェミスの『処刑』はまだ終わらない。
「この程度で赦されると思うのか」
 フェミスは冷酷に言い放ちながら、アイアンメイデンからヴァンパイア・ノゥブルの身体を引っ張り出し、その首を拷問具『ギロチン』にセットしようとするが、右眼の紋章が輝くのを見て、咄嗟に足元の影から別の屍を呼び寄せ盾にした。
 右眼から飛び出した棘鞭は、フェミスの盾となった屍を縛り上げ、ボロ雑巾のようにズタズタに引き裂いた。
「じゃあね、処刑人さん」
 引き裂かれた屍を無造作に放り出し棘鞭を回収しながら、ヴァンパイア・ノゥブルは悠々とギロチンから首を外し、身を翻そうとするが。
 ――ズーン。
 突然、目前に全身が高温に熱せられた銅の雄牛が現れた。
「なっ……!!」
 突然別の拷問具が現れ、ヴァンパイア・ノゥブルは言葉も動きも止めるしかない。
 フェミスの複数の拷問具による連続攻撃は、避けられても中断できない。
 だが、逆に言えば、拷問具を1度避けられても、必ず全ての拷問具が処刑対象の前に姿を現し、確実に仕留めようとする。
「貴様はこの程度で赦されはしない……それだけのことをしてきたのだからな」
 フェミスは冷酷に言い放ちながら、最後に現れた拷問具『ファラリスの雄牛』の胴に開いた穴にヴァンパイア・ノゥブルを放り込み、閉める。
「あ、熱い熱い熱いぃぃぃぃぃ!!」
 放り込まれたヴァンパイア・ノゥブルが、体表から体内にかけてじわじわと焼かれ、水分と気概を奪われながらあげる悲鳴を、フェミスは冷酷な表情を崩さぬまま、じっと聞き続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レモン・セノサキ
お片付けの出来ない子からオモチャ没収は当たり前
ママンに勝手に片付けられたからって拗ねるなよ
……高貴なヴァンパイア?
寝言は寝てから言いな、モスキー(ヤブ蚊野郎)

私と同じで外見と中身の年輪が不一致なヤツだ
強化が無くても甘く見れば敗けるだろう
▲挑発の声に▲催眠術を乗せて、僅かでも冷静さを奪いたい

敵が霧となったら「HMDアイバイザー」を装着
「ブルーコア」から出鱈目に▲レーザー射撃で牽制しつつ
「仕掛鋼糸」の▲ロープワークで絶えず不規則に動き回る
エネルギー体の流れを手掛かりに実体化の予兆を掴みたい
それまではある程度の負傷も想定の内だ

予兆に合わせて全周飽和砲火陣の集中射撃をお見舞いしよう



●駄々をこねる子供(に見える大人)にはお仕置きを
「お片付けの出来ない子からオモチャ没収は当たり前」
 金の瞳に怒りの炎を宿したレモン・セノサキは、『月光城の主』ヴァンパイア・ノゥブルを睨みつけつつ、聞き分けのない子供を宥めるような声音で流暢に挑発していた。
「ママンに勝手に片づけられたからって拗ねるなよ……高貴なヴァンパイア?」
「へぇ、僕のおもちゃを勝手に片づけたのはそっちだよね?」
「おもちゃを勝手に引っ張り出してきたくせに、口だけは達者ね?」
(「やはり、吸血鬼だけあって、見た目と年齢が一致しないようね……さて」)
 ヤドリカミたるレモンが外観と中身の年輪が一致していないように、目の前のヴァンパイア・ノゥブルも若く見える外観に反し年輪を重ねているらしく、挑発が然程響いていないように思えてならない。
『月の眼の紋章』による強化は全て剥ぎ取ったはずだが、それでも相手を甘く見れば、負けるのはレモンだろう。
 ゆえにレモンは、言の葉に相手の思考を鈍らせる催眠術を織り込み、少しでも冷静さを奪おうと試みながら挑発を続ける。
「寝言は寝てから言いな、モスキー」
「モスキー、ってなんだい?」
「吸血コウモリ以下のヤブ蚊野郎、って意味さ」
「……っ!!」
 闇に閉ざされたダークセイヴァーにやぶ蚊がいるかどうかが怪しいため、一応吸血コウモリを例えに出しはしたが、この挑発が予想以上に効いたのか、ヴァンパイア・ノゥブルの全身から強烈な殺気が放たれた。
「相手の所有物を一方的に壊した猟兵に、吸血コウモリより下だと言われたくないかな!」
 ヴァンパイア・ノゥブルはその全身を霧に変化させ、レモンの前から姿を消す。
 魔力を帯びた霧が室内に満ちるのを目にしたレモンは、熱源や動体反応を調べるためにHMDアイバイザーを装着し、ヴァンパイア・ノゥブルの本体の動体反応を探ろうとするが、HMDアイバイザーの画面は瞬く間に動体反応に覆い尽くされた。
(「この霧のどれかが本体、ではなく、全てが本体……!?」)
 これでは、どこから実体化するかは皆目見当もつかない。
(「どこから出て来るかわからない。でも、それでも……!」)
 それでも何とか実体化の片鱗を掴もうと、レモンは虚空に浮かべたブルーコアから出鱈目にレーザーを撃ち出しつつ仕掛鋼糸を壁に撃ち込み、玄室の床を蹴って空中へ。
 仕掛鋼糸の先端を絶えず壁や天井に撃ち込みつつ、壁や天井を蹴りながら空中を不規則に動き回るが、そのさなかにも霧中から突然実体化した剣で斬られ、鞭できつく叩かれ、棘鞭で四肢を切り裂かれた。
 切られ裂かれる都度、精神まで引き裂くような痛みが全身に走るが、レモンは奥歯を噛みしめ耐えながら玄室内を飛び回り、機を待つ。
 今は、手掛かりとなるエネルギー体の流れを掴む段階。
 手掛かりをつかむまでは、この程度の負傷は想定の内だ。

「いつまでも見世物を見ているほど、僕も暇じゃないんだよ」
 レモンが見せる空中サーカスに飽きたのか、何処からともなく響いたヴァンパイア・ノゥブルの呆れた声音とともに、霧が少しずつ寄り集まり実体化し始める。
 ――レモンが耐えながら待っていたのは、この時だった。
「これが、近世以降積み上げられた人間の業ってやつよ」
 レモンは実体化したヴァンパイア・ノゥブルの周囲に、各世界に記録として残る530丁もの銃器を呼び寄せた。
 古式ゆかしい火縄銃から最新式のアサルトライフル、果ては実在したか否かが不明な銃器までが宙に浮く光景は、さながら未来の銃器の見本市。
 もっとも、ダークセイヴァーの住民にとって、銃は一般的ではない武器。
 それは人類はもちろんのこと、吸血鬼もまた然り。
「へぇ、玩具で囲んで何がしたいの?」
 ゆえに、銃口を向けられても、何をされるか皆目見当ついていないヴァンパイア・ノゥブルは悠然と構えたまま。
 一本取ったり、と心中で昏い笑みを浮かべながら、レモンは右手を振り上げ、ヴァンパイア・ノゥブルを指すように振り下ろした。

 ――ズドドドドドドド!!

 レモンの合図と共に、全方位から向けられた銃口から炎の魔弾が雨あられとヴァンパイア・ノゥブルに降り注ぎ、その全身を瞬く間に火だるまに変える。
「ぐああああああ!!」
 胴の雄牛に閉じ込められた際の火傷が癒えぬまま、新たな火傷を全身に刻み込まれたヴァンパイア・ノゥブルの絶叫が、玄室内に木霊した。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…四肢と腹、両の掌と足の甲。お前は何処が良い?

…お前がオブジェを傷付けた部位よ。折角だから選ばせてあげる

…等と挑発しつつ「闇の精霊結晶」を投擲して一時的に戦場を闇で覆い、
肉体改造を施し吸血鬼化した視力で敵群を暗視して見切りUCを発動

…この闇は、お前達の眼を欺く為のものでは無いわ
その魂までも、この瞳で見透かす為のものよ

限界突破した負のオーラで防御を無視する闇属性攻撃で敵群をなぎ払い、
「写し身の呪詛」の残像を囮にして棘鞭の迎撃を受け流しつつ切り込み、
魂(生命力)を吸収し強化した怪力任せに大鎌を乱れ撃ちする早業の追撃を放つ

返事が無いならサービスしたけど…駄目ね
こんな醜いオブジェ、飾る場所が無いもの



●無数の魂の煌めきは吸血鬼狩りの力となる
 リーヴァルディ・カーライルは、紫の瞳に吸血鬼への静かな怒りを湛えながら、全身火傷の痛みに苛まれている『月光城の主』ヴァンパイア・ノゥブルに詰め寄っていた。
「四肢と腹、両の掌と足の甲。お前は何処が良い?」
「何処、と言われても何故選ばないといけないのかなあ」
「お前がオブジェを傷つけた部位よ」
「ああ、あの飾りたち。あれは見るに滑稽だったね」
 クックック、とくぐもった笑いを浮かべるヴァンパイア・ノゥブルの瞳は、リーヴァルディの予想に反し、冷静さを取り戻しているように見えた。
(「挑発したつもりだったけど、そう簡単には乗ってくれないようね」)
 先程、まんまと猟兵の挑発に乗せられていたような気もするが、今のヴァンパイア・ノゥブルには乗ってくれる気配がない。
 先の猟兵が与えた全身火傷の引き攣るような痛みが、奇しくもヴァンパイア・ノゥブルに高慢ながらも冷静な思考を取り戻させていた。
 それゆえに、リーヴァルディの初手の言の葉のジャブには乗らないどころか、むしろリーヴァルディを挑発するかのように平然と軽口を叩いてくる。
「あんな醜いオブジェたちと同じように僕を飾るつもり? むしろ同じように飾られるのは君のほう」
「……」
「ああ、半端者のダンピールなら、花嫁(おもちゃ)にするのも悪くないな」
 己が所業を恥じるどころか、享楽の種と為したことをひけらかしているヴァンパイアの視界を、突然降りた暗闇の帳が完全に閉ざした。
 これ以上の問答は無駄と判断したリーヴァルディが闇の精霊結晶を投擲し、玄室全体を漆黒の帳に閉ざしたのだ。
「あれ? 闇に包んでも、僕の目は誤魔化せないけど?」
 闇の精霊が齎す暗闇の中、一瞬だけ瞳を紫から深紅に変えながら走り抜けるリーヴァルディの姿を同じ深紅の瞳で捕らえたヴァンパイア・ノゥブルは、召喚した吸血コウモリと人喰い狼にリーヴァルディを追わせた。
「君もダンピールなら、僕に暗闇は意味がないって最初から気づいているよね?」
「……限定解放。その肉の身を安らかに離れ、我が呼び出すまで戻るなかれ」
 挑発を無視して呪を紡いだリーヴァルディは、全身に闇に溶け込む負のオーラを纏いながら、向かい来る使い魔の大群を深紅の瞳で見据える。
「この闇は、お前達の目を欺く為のものでは無いわ……その魂までも、この瞳で見透かす為のものよ」 
 囁きを闇に溶け込ませながら、リーヴァルディは己に迫る吸血コウモリと人喰い狼の大群を、負のオーラを纏った闇の魔弾で一気に薙ぎ払う。
 使い魔の大群はその一薙ぎで魂ごと生命力を吸い尽くされ次々と消滅していったが、その派手な動きは、闇を見通すヴァンパイアに確りと把握されていた。
「半端者って、どうしてこうも甘いんだろうね?」
 リーヴァルディが使い魔を薙ぎ払い一息入れた隙を突き、ヴァンパイア・ノゥブルは左目の『月の眼の紋章』を輝かせ、棘鞭を飛び出させてリーヴァルディの胴を一気に貫く。
 取った、と邪な笑みを浮かべたヴァンパイア・ノゥブルの目の前で、リーヴァルディの姿が闇に紛れるように霧散した。
「幻影?」
 棘鞭を戻しつつリーヴァルディを探すヴァンパイア・ノゥブルの真正面から、強烈な負のオーラが吹き付ける。
『写し身の呪詛』で生み出した幻影を囮に棘鞭の一撃をやり過ごしたリーヴァルディは、グリムリーパーの名を持つ漆黒の大鎌を構えながら、真正面から肉薄し、怪力任せに漆黒の大鎌を縦横無尽に振り回した。
 吸血コウモリや人食い狼の魂を薙ぎ払ったことで無数の魂を底知れぬ闇に沈めた漆黒の刃は、容易に吸血鬼を両断し、その魂ごと吸収できる程にまで強化されている。
 結果、ヴァンパイア・ノゥブルは魂の片鱗を吸収されつつ、全身を滅多切りにされていった。
「うぐっ……半端者が、闇討ちするような真似を!!」
「返事がないならサービスしたけど……駄目ね」
 オブジェと同様に両掌と両足を大鎌の刃先で貫きながら、リーヴァルディは淡々と、だが若干の呆れを籠めて呟く。

 ――こんな醜いオブジェ、飾る場所がないもの。

「……っ!!」
 その痛烈な言の葉は、ヴァンパイア・ノゥブルの身体を切り裂く刃よりも深く激しく、精神を抉り取り、冷静さを奪い取っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・アンダーウッド
やぁ、吸血鬼。あの「オブジェ」を多数飾り立てたその手腕、称賛するよ♪ボクには中々出来ない芸当だった。相手を殺しきりないその技術、見習いたいものだね。だけど...

嘗ての人形技師の姿に変身し、得物(バンシー)を持って一言
キミは確実に解体(抹殺)する

静かに激怒しつつ両目を瞑りながら攻撃開始
バンシーの立てるギャアァァァァという悲鳴のよう駆動音による反響音で、目で見ず音を頼りに周囲の状況を掌握
相手の肉体の可動部に刃を当てて切断しバラバラのお人形の様にしていく
懐中時計の秒針が一周(60秒)するまで全身全霊で行動するも、その後は無気力になる

※嘗ての持ち主を殺した吸血鬼という種の存在をクラウンは嫌悪している。



●器物の持ち主の嫌悪と共に
「やぁ、吸血鬼。あの『オブジェ』を多数飾り立てたその手腕、称賛するよ♪」
 ボクには中々できない芸当だった、と表面上称えているクラウン・アンダーウッドの声音は、陽気にお道化ながらも底知れぬ闇を秘めていた。
「人類って脆いからさ、なかなか手加減が難しいんだけどね?」
「ふぅん……」
 ――チッ、チッ。
 目の前のヴァンパイアへの底知れぬ怒りを腹に抱えつつ、器物たる懐中時計の針がそっと動き始めるのを感じながら、クラウンはあくまでもお道化た口調を崩さず付き合い続ける。
「そうだねぇ。相手を殺し切らないその技術、見習いたいものだね」
「へぇ、興味あるんだ」
「だけど、ね……」
 クラウンに興味を持ち、真紅の目を爛々と輝かせるヴァンパイア・ノゥブルの目の前で、クラウンの姿が赤髪蒼瞳の道化師から、金髪紅瞳の青年に変化した。
 ――その姿は、嘗て懐中時計の持ち主であった、人形技師の姿。
 最早時を刻むことがないはずの懐中時計の針が静かに動き始めたことで現れたかつての持ち主の姿を取りながら、クラウンはバンシーの名を持つチェーンソー剣を構えつつ、吸血鬼を紅に変じた瞳で睨みつける。
 紅の瞳に宿る光に吸血鬼に対する底知れぬ嫌悪を湛えながら、クラウンは人形技師の声で宣告した。
「キミは確実に解体する」

 ――この場で確実に抹殺する、との意を籠めて。

 クラウンは紅に変化した両目をあえて瞑り、バンシーの駆動音とその反響音に耳を傾ける。
「アッハッハ! 目を瞑って」
 意図的に視覚を閉ざしたクラウンに対し、ヴァンパイア・ノゥブルは即座に大量の吸血コウモリと人喰い狼を召喚し、一斉にクラウンにけしかけた。
 吸血コウモリの羽音と人喰い狼の咆哮、そして狼とヴァンパイア・ノゥブルが立てる足音がバンシーの駆動音に割り込み、奇怪な演奏を奏で始める。
 ――ギャアァァァァァ……。
 バンシーの乱れた駆動音と反響音から、クラウンは無数の吸血コウモリと人喰い狼の居場所を把握し、刃が激しく回転するバンシーを猛烈なスピードで振るい始めた。
 羽音けたたましく飛びかかる吸血コウモリは、激しく刃が回転するバンシーで一挙に両断し。
 咆哮で威圧する人食い狼は、その口を二度と聞けぬ様バンシーでバラバラに解体した。
 冷静に、しかし腸煮えくりかえるような激怒を静かにたたえつつ。
 時折噛みつかれながらも召喚された使い魔をあっという間に全て解体したクラウンは、目を瞑ったまま爆発的なスピードと反応速度を以てヴァンパイア・ノゥブルに一気に迫った。
「ひ、ひぃぃっ!!」
 情けない悲鳴を上げるヴァンパイア・ノゥブルの左肩に、クラウンはバンシーの刃を当て、一気に左腕を切断した。
「っぐあああああああ!! 貴様、貴様あああああああ!!」
 左腕が鋸に挽かれる激痛に耐え兼ねたか、ヴァンパイア・ノゥブルがあげた咆哮が至近距離からクラウンに浴びせられる。
 だが、薄く開いたクラウンの紅の瞳は、昏く底の知れぬ怒りに満ちたままだった。

 ――吸血鬼は許さない。
 ――かつての持ち主を殺めた輩と同じ、吸血鬼ならば。
 ――クラウンから持ち主を奪い、その生き血を啜った輩と同じ種ならば。
 ――この場でバラバラにし、二度と動けぬ人形にしてやるのみ。

 クラウンが目の前の吸血鬼をただの人形にすべく、全身全霊を以てさらにバンシーを振るおうとした、その時。
 ――チッ……チッ。
 懐から微かに響いていた秒針が時を刻む音が、突然途切れた。
 おそらく、秒針が1周回り、静かにその針を止めたのだろう。
 針の音が途切れると同時に人形技師から道化師の姿に戻ったクラウンは、魂が抜けたかのように無気力になり、その場に膝をついた。
 嘗ての持ち主との繋がりが途切れた今、怒りのまま手にしたバンシーが酷く重く感じられる。
「アハハッ、突然どうしたんだい!! 死にたがっているように見えるけど!!」
 突如戦意を喪失したクラウンを見て、ヴァンパイア・ノゥブルが笑いながら『月の眼の紋章』から棘鞭を引っ張り出し、道化師に戻ったクラウンの肉体を激しく引き裂こうと一振り。
 だが、棘鞭がクラウンの身体に巻き付こうとしたその瞬間、虚空に現れた月のように輝く丸盾がクラウンを覆い、棘鞭を弾き飛ばした。
 ――クラウンが戦意喪失したと判断したグリモア猟兵が、強制転送を発動させたのだ。

 棘鞭を引き戻したヴァンパイア・ノゥブルの目の前で、丸盾に覆われたクラウンはそのまま掻き消えるように姿を消した。
「ちっ……邪魔が入ったか」
 止めを刺し損ねた悔しさを吐き捨てながら、ヴァンパイア・ノゥブルは切り落とされた左腕を部屋の片隅に蹴り込んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・コーエン
単独希望

よくもこれまで好き放題やってくれたものだな。
その報い、今こそ与えよう。

小ぢんまりとした玄室で従魔を大勢召喚したら、身動きとりずらくなるだろうに。それとも飽和攻撃で俺を押しつぶすつもりか?
いずれにせよ甘いな。

玄室内を間仕切るように結界術・高速詠唱・地形の利用による防御壁を形成して従魔達が迫るのを押しとどめ、更に念動力&範囲攻撃で纏めて動きを止める。
数だけ多い雑魚では突破は難しかろう。

突破しそうな棘鞭は第六感・見切り・武器受けで防ぎ、早業でカウンター。

灼星剣に炎の属性攻撃・破魔を宿してUC発動。
UCによる3回攻撃+2回攻撃+斬撃波+鎧無視攻撃による合わせ技で玄室内の全てを焼いて斬って滅する



●眩き剣は全てを焼き尽くし
「よくもこれまで好き放題やってくれたものだな」
 シン・コーエンもまた、他の猟兵達と同じように、『月光城の主』ヴァンパイア・ノゥブルへの怒りを声音に湛えて言い放つ。
「その報い、今こそ与えよう」
「報いを受けるのは、僕の城で好き放題やってくれた君達だと思うけどね?」
 シンを憎い親の仇のように睨みつけるヴァンパイア・ノゥブルの左肩から先は、他の猟兵に斬り落とされたのか、失われている。
 それでもなお、戦意を失っていない吸血鬼に若干の戦慄を覚えながら、シンは何が来ても即応できるよう身構えた。

「さあ使い魔達よ、目の前の男を引き裂き、血を飲み干せ!!」
 ヴァンパイア・ノゥブルが吸血コウモリと人喰い狼を召喚する気配を察し、シンは軽く身構えつつも、吸血鬼の傲慢さを内心嘲笑う。
(「小ぢんまりとした玄室で従魔を大勢召喚したら、身動きとりづらくなるだろうに」)
 そんなことを考えながらシンが天井を眺めると、召喚された吸血コウモリの群れは玄室の天井を覆い尽くしながらもシンに一斉に飛び掛かろうとは決してせず、ただ彼の様子を伺っている。
 同時に召喚された人喰い狼もまた、シンの隙を伺いつつも、自分からは飛び掛かろうとしない。
 コウモリと狼の合計数は、ざっと300程度だろうか。
(「飽和攻撃で俺を押しつぶすつもりにしては、少ない?」)
 岩盤をくり抜き造られたであろう小ぢんまりとした玄室で従魔を大勢召喚したら、ヴァンパイア・ノゥブルも身動きが取りづらくなる、と考えていたシンにとっては、少々予想外の光景。
 猟兵達との交戦経験から、目の前の猟兵もまた、使い魔を纏めて殲滅するか、強引に突破し一太刀浴びせるかと予想したヴァンパイア・ノゥブルは、あえて空から強襲できる吸血コウモリの数を増やし、入れ代わり立ち代わりシンを襲わせる算段だった。
 見た範囲、シンは範囲攻撃を行う術を持ち合わせていない。
 故に一度に襲わせる従魔の数を少なくし、交代で波状攻撃を仕掛けさせれば、シンを消耗し討ち取れるとでも考えたのだろう。
 だが……歴戦の戦士たるシンは、ヴァンパイア・ノゥブルの思惑を易々と超える術を揃えていた。
(「……いずれにせよ甘いな」)
 シンは腕を一振りしながら、結界術を応用し玄室内を間仕切るような防御壁を複数形成。
 天井の石板と見間違うような色彩の結界が、シンとヴァンパイア・ノゥブルの上空を覆い隠すよう形成され、吸血コウモリの大群を結界と天井に挟まれた狭い空間に押し込めた。
「キキィッ!?」
「ガァウッ!!」
 降りれなくなった吸血コウモリの悲鳴をよそにシンに飛び掛かろうとした人喰い狼の群れは、石板と同じ色の結界を玄室を細かい区画に仕切るように形成し、寸断される。
 血気盛んにシンに飛び掛かろうとした人喰い狼は、突如目の前に現れた防御壁に激突し気絶。
 残った狼も狭い区画に押し込められ、身動きが取れない。
 それでも、結界で間仕切られる直前に突破したわずかな吸血コウモリや人食い狼が、シンの喉笛を食いちぎらんと迫るが。
「甘い!!」
 シンの一喝と共に、周囲に無差別に展開された念動力が、残る吸血コウモリと人喰い狼の動きを止めた。
 使い魔を全て退けられても、ヴァンパイア・ノゥブルの表情は余裕のまま。
「うん、じゃあこれならどうかな」
 ヴァンパイア・ノゥブルの左眼に宿る『月の眼の紋章』から飛び出した棘鞭が、間仕切っている結界の一点を貫くと、振り回すように動きながら結界を引き裂き、シンに絡みつこうとする。
 だが、シンは破られた結界の位置から棘鞭の軌道を予測し、残像を囮に回避しながら灼星剣を手にした。
「我が剣よ、我が生命の力を得て更なる進化を遂げ、この地に集いし敵を一掃せよ!」
 紅く輝くシンのオーラを注ぎ込まれた灼星剣は、力強い言の葉と共に眩く輝きながら巨大化し、自ら張った結界ごと吸血コウモリを焼き尽くす。
 そのまま大きく振り回し、まずは天井を薙ぐように一撃。
 続いて床を這うように二撃。
 さらに玄室内の空間を真っ二つにぶった切るように三撃。
「キィィィ!!」
「グオオオオオン!!」
 白熱した灼星剣の乱撃を受けた吸血コウモリと人喰い狼は、一気に炎に包まれ、灰と化した。
「なん、だって?」
 一瞬で吸血コウモリと人喰い狼を灰にされ、驚くヴァンパイア・ノゥブルにシンが肉薄し、さらに三撃叩き込む。
 最初は斬り上げ、次に斬り下ろし、最後に胴を薙ぎ。
 炎が宿った斬撃波を生み出しながら振るわれた灼星剣の追撃は、ヴァンパイア・ノゥブルの全身に三度火傷を刻みつけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
UC【神・黒風鎧装】と青く燃える鉛の翼を展開。
UCによる漆黒の旋風で周囲諸共前方に【吹き飛ばし】。
敵UCで霧状化していようが旋風に伴う炎で【焼却】する分には問題ない。

実体化による攻撃及び『月の眼の紋章』の棘鞭に対しては黄金魔剣で【武器受け】。
不意打ちであろうと自分が持つ兆しの鈴が察知すれば報せてくれるし(【聞き耳】【第六感】)
吹き飛ばした前方からならば【見切り】の見込みはある。
そもそも鎧の中など空のリビングアーマー、貫かれた程度なら精々「痛い」だけだ。
目前の敵に反撃する分には問題ない(【覚悟】【捨て身の一撃】)

お前の従者たちへの宣言も果たしておかねばな。
【串刺し】が貴様の末路だ、ヴァンパイア。



●青き焔は魔力諸共霧を焼き尽くし
 ――ゴウッ!!
 漆黒の旋風と共に現れたルパート・ブラックスミスは、『月光城の主』ヴァンパイア・ノゥブルの姿を見るなり己が真の姿を解き放ち、青く燃える鉛の翼を展開する。
 だが、そんなルパートを見ても、ヴァンパイア・ノゥブルは傲慢たる姿勢を隠さない。
「いくら炎で焼き尽くそうとしても、魔力の霧は焼けるかな?」
 ルパートをせせら笑いながら魔力を帯びた霧と化したヴァンパイア・ノゥブルは、己が霧を玄室全体に広がるよう拡散させ、ルパートを取り囲もうと動き出す。
 しかし、ルパートを覆う漆黒の旋風が突然指向性を以て吹き荒れると、玄室内に広がりかけていた霧を前方に吹き飛ばし、再度収束させた。
「ふぅん……その翼も漆黒も、飾りじゃないわけか」
 漆黒の旋風と青き炎が少しずつ魔力の霧を蝕み、燃していくのを実感しているのか否かはわからぬが、奇妙に反響するヴァンパイア・ノゥブルの声音はまだ余裕を湛えたままだ。
「だけど、君たちには負けないよ――この城のためにもね」
 ヴァンパイア・ノゥブルの声音が途切れると同時に。
 ――チリン。
 ルパートが身に着けている『兆しの鈴』が、涼やかな音とともに彼に危険を知らせる。
 咄嗟にルパードは身を捻るが、前触れなく現れた長剣が脇腹を貫いていた。
 その背にいたのは――一瞬だけ実体化し、長剣を握り締めたヴァンパイア・ノゥブル。
 ルパートの不意を討つよう胴に突き出した長剣は、しかし兆しの鈴の音の警告のおかげでルパートの脇腹を軽く貫く程度にとどまった。
 むしろ、ルパードを貫いたヴァンパイア・ノゥブルの方が、驚いている。
「中身が、ない……?」
 長剣がヴァンパイア・ノゥブルに伝えてきた手ごたえは、鎧の外から中を、そして中から外を貫いたような手ごたえのみで、鎧の中にあるはずの肉体を貫いたような感触は一切なかった。
 思わず鎧から抜いた長剣を眺めると、剣に付着しているのは血痕ではなく、青い炎の欠片。
 ヴァンパイア・ノゥブルの目が、大きく見開かれた。
「そもそも鎧の中など空だ。貫かれた程度なら精々『痛い』だけだ」
「きさ、ま……っ!」
 ルパードに謀られたと思い込んだヴァンパイア・ノゥブルは、一瞬だけ実体化してから右眼の『月の眼の紋章』を輝かせ、棘鞭を撃ち出すが、ルパートは慌てず黄金魔剣で棘鞭を受け止めたついでに確りと絡め取る。
 棘鞭の回収を封じたルパートは、ヴァンパイア・ノゥブルの至近距離から青き鉛の翼を大きく羽ばたかせた。
 ――ゴウッ!!
 轟音と共に鉛の翼に宿る青き炎が棘鞭を一瞬にして灰に帰すが、ヴァンパイア・ノゥブルは再び霧化し追撃を避ける。
 だが、至近距離から浴びせられた青き炎は魔力の霧をじわじわと炙るように侵蝕し、ヴァンパイア・ノゥブルの体力と魔力を少しずつ奪い取っていた。

「くっ……忌々しい炎だな」
 やがて、蒼い炎にじわじわと霧を炙られるのに耐えきれなくなったのか、ヴァンパイア・ノゥブルは実体化し、再び長剣をルパートに突き出そうとする。
 だが、再び取り戻したヴァンパイアの肉体は、長剣を突き出そうとする意思を受け付けなかった。
「体が、重い……?」
 全身が、血管と筋肉に鉛を注ぎ込まれたように酷く重い。
おそらく、霧の状態で長時間青き炎に炙られ続け、水分を奪われたのが原因か。
 意図せぬ原因で動きが鈍ったヴァンパイア・ノゥブルに、ルパートは黄金魔剣片手に肉薄し、冷たく言い放つ。
「お前の従者たちへの宣言も果たしておかねばな」
「なに、を……!」

 ――串刺しが貴様の末路だ、ヴァンパイア。

 ルパートの宣言通り、ヴァンパイア・ノゥブルの右肩口を黄金魔剣が深く抉り取る。
「ぐあぁあぁぁっ……お前ら、お前ら……っ!」
 老齢たる余裕さを剥ぎ取られたヴァンパイア・ノゥブルの破れかぶれの絶叫が玄室内に満ちても、ルパートはさらに黄金魔剣で肩口を深く抉りつつ、兜の奥から青き炎とともに冷淡に見つめるのみだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・イオア
ねえねえ、力を奪えなくて弱体化したのはどんな気分?
どれだけ吠えようが貴方はここで終わり。
罪を償うといいよ☆

「大丈夫、シホ達は負けないよ」
壺は絶対守る。

「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
呼び出した炎は【神罰】で強化して周囲に球状に展開。
結界術と合わせて敵を簡単に近づけないようにする。
敵が接近しなければガトリング砲と空飛ぶハートで遠距離攻撃。
接近して結界に触れたら周囲の炎で迎撃し距離をとる。
隙があれば【全力魔法】【鎧無視攻撃】【限界突破】で強化した
収束の炎を叩き込む。

【空中戦】による【見切り】と【残像】で攻撃を回避。

アドリブ連携歓迎
皆を連れて帰るまで油断しない。


フォルク・リア
「台無しか、それは何より。此方の目的が
達せられつつあると言う事だ。
だが、まだ全部じゃないだろう。
全て終わらせるにはお前を倒すと言う
最後の一手が残ってる。」

棘鞭の攻撃を躱す為【残像】を発生させ
敵の動き、攻撃を【見切り】
距離を取りデモニックロッドの闇の魔弾で攻撃しながら
「自分の為に命を捨てた者を玩具呼ばわりか。だが、
その全てを遊びで終わらせ、
命を張る覚悟もないお前はその玩具以下だ。」
と挑発し敵が霧化する様に誘導。
肉体変化の兆候が見られたら大きく飛び退き
真羅天掌を発動し拡散属性の暴風を発生。
「刃を潜る薄霧も荒れ狂う強風の前では
ただその身を散らすのみ。」
霧の身体を実体化させない様に
滞る場所のない様に精密に風を操り
霧を拡散させその隙を与えない。
霧状の敵に攻撃する為ファントムレギオンの死霊を使い
魂を狙って攻撃。
「如何な姿になろうと
その澱んだ魂の在処を死霊達が見逃す事はない。」

死霊が攻撃する場所へ向け
魔力を集中したデモニックロッドの闇の魔弾で攻撃。
「その驕りに満ちた生に此処で幕を引いてやるよ。」



●決着は人々に救いを差し伸べた聖者と研究者の手で
「ねえねえ、力を奪えなくて弱体化したのはどんな気分?」
 先の猟兵達の苛烈な攻撃で左腕を失い、全身に火傷を負った上に滅多切りにされた『月光城の主』ヴァンパイア・ノゥブルを目にしたシホ・イオアのあからさまな挑発に、横に立つフォルク・リアは必死に口内で苦笑を噛み殺す。
「全部台無しにした張本人が、何を吠えているのかな?」
「台無しか、それは何より。此方の目的が達せられつつあると言う事だ」
「猟兵とやらが、大概にしろよ……!」
 苦笑を交えながらも挑発するかのような文言をさらさらと口にするフォルクに、ヴァンパイア・ノゥブルの怒りはさらに募るが、構わずフォルクは言の葉を紡ぎ続ける。
「だが、まだ全部じゃないだろう」
「全部じゃない、だと?」
「全て終わらせるにはお前を倒すと言う最後の一手が残ってる」
「そうそう。どれだけ吠えようが貴方はここで終わり。罪を償うといいよ☆」
 断罪の声音の裏に、フェアリーランドで匿った人々全員と絶対帰るとの意思を籠めながら、シホもまたヴァンパイア・ノゥブルを断罪するが、ヴァンパイア・ノゥブルは軽く首を振り否定した。
「いいや、罪を償うべきは君たちのほうだけどね」

 ――僕の花嫁とオブジェ、両方を奪った罪は、重いよ?

 猟兵こそ咎人だ、と断罪するヴァンパイアを前に、シホが両手を上げて叫ぶ。
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
 叫びと共に呼び出された113個の深い紅炎は、シホとフォルクを球状に包み込みながら炎の結界と化し、ヴァンパイア・ノゥブルとの間に防御壁を構築。
 フォルクは炎の結界の隙間からデモニックロッドを突き出し、闇の魔弾を連射しながら言の葉でヴァンパイア・ノゥブルを牽制した。
「自分の為に命を捨てた者を玩具呼ばわりか」
「彼女たちは素晴らしかったね。僕のために身体を張ってくれた」
「だが、その全てを遊びで終わらせ、命を張る覚悟もないお前はその玩具以下だ」
「僕が玩具以下、だって?」
 フォルクの口調が気に障ったのか。
 それとも、数々の猟兵達に挑発され、論破され、精神的な余裕が失われているのか。
 ヴァンパイア・ノゥブルはこれまでにないほど苛立ちを募らせ、フォルクへの殺気と共に吐き捨てた。
「あの玩具さ、僕がじっくり造り上げて初めて素晴らしいモノになったんだよ? 素晴らしいでしょ?」
 フォルクの指摘に言い返しながら、ヴァンパイア・ノゥブルは己が身を魔力の霧に変化させ始める。
 炎の結界の隙間を探り当て霧のまま侵入し、フォルクを狙おうとでも考えたのだろうか。
「そう簡単には近づけさせないよ!」
 シホは空飛ぶハートを炎の結界の隙間から発射し、霧化を阻止しようとするが、空飛ぶハートは逆に霧を吹き散らし、拡散させてしまった。
「あ~、やっちゃった!」
「いや、散らしてくれてありがとう」
 謝るシホを嗜めるフォルクの声音に、シホに対する怒りはない。
 収束させた方が都合の良いシホと異なり、フォルクは霧が拡散してくれたほうが都合が良いからだ。
 フォルクはデモニックロッドの先端を炎の結界の外に向けながら、朗々と呪を唱え始める。
「大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
 フォルクが呪を唱え終わった瞬間、炎の結界の外に少しずつ風が吹き荒れ始めた。
 ――それは、吹き荒れる風を無理やり拡散させ、玄室全体に大嵐を引き起こす術。
 続けてフォルクは荒れ狂う暴風の術を精緻に制御し、魔力の霧と化したヴァンパイア・ノゥブルのみをひっかき回そうとする。
 だが、暴走しやすい性質の術だからか、術は徐々にフォルクの制御を離れ始め、勝手に威力を増し始めていた。
 もし、エントランスホールでこの術を用いていたら、床はめくれ壁は剥がされ、天井のギロチンも天井ごと悉く破壊されていただろうが、この玄室が岩盤をくり抜かれて造られた部屋だったことが幸いし、部屋そのものが破壊される形跡は全くない。
 ゆえに、暴風による損害は、霧化したヴァンパイア・ノゥブルが壊れかけた洗濯機の中に放り込まれたように玄室全体で激しくかき回されている程度。
 そのヴァンパイア・ノゥブルは、再度実体化するタイミングを狙っていたが、暴風内では己が身が暴風に吹き散らされてしまい、なかなか実体化できずにいた。
「刃を潜る薄霧も、荒れ狂う強風の前ではただその身を散らすのみ」
「愛の炎は優雅に舞い踊るだけじゃないから☆」
 フォルクの嘲笑めいた言の葉に乗せるように、シホもまた含みを持たせた言の葉を暴風に乗せ、ヴァンパイア・ノゥブルを挑発した。
「小癪な……!」
 シホの挑発に激高したヴァンパイア・ノゥブルが、その身を暴風にかき回されながらもなんとか霧の一部を炎の結界に近づけた、その時。

 ――ドンドンドン!!
 ――ボオオオオオオッッ!!

「ぎゃあああああああああああああ!!」
 突如至近距離から飛び出した炎弾に身を焼かれ、絶叫するヴァンパイア・ノゥブル。
 霧の一部が炎の結界に触れたことで、結界から立て続けに炎弾が撃ち出されたのだ。
 愛を弄びし者を狙った炎は、次々と暴風に乗りかき回されている見えない塵や霧に引火し、瞬く間に暴風を炎の嵐へと変化させていた。
 シホの炎は、愛の炎。
 それは、愛なき者、もしくは愛を弄んだ者に苛烈な牙を剥く……灼熱の炎。
 花嫁を玩具とし弄んだ者を焼き尽くすために撃ち出された炎とフォルクの呪で巻き起こされた暴風が融合すれば……それは愛を弄びし吸血鬼を徹底的に焼き尽くす、灼熱の嵐へと進化する。
 シホとフォルクは炎の結界内にいるため、灼熱の嵐の影響は受けない。
 だが、霧化した身を暴風でひっかきまわされたヴァンパイア・ノゥブルにとって、周囲が全て炎嵐に変化すれば……死、あるのみだ。
「ぐ、ぐぅ……!!」
 玄室内を荒れ狂う炎に霧化した己が身を次々と焼かれながらも、ヴァンパイア・ノゥブルはかろうじて残った己が身を集め、再度実体化しようとするが、徐々に集結しつつある霧に吸い寄せられるように死霊が集まっていた。
「こ、これは……!」
「如何な姿になろうと、その澱んだ魂の在処を死霊達が見逃す事はない」
 死霊の正体は、フォルクが結界の隙間から放ったファントムレギオンの死霊。
 生に敏感な死霊がヴァンパイア・ノゥブルの邪悪な魂を追跡し、フォルクに居場所を伝える道標となっていた。
 死霊が実体化したヴァンパイア・ノゥブルに纏わりつき動きを妨げている間に、シホが炎を操って結界にわずかな隙間を開ける。
 炎嵐の侵入を許さぬ程度に開けられた隙間から、フォルクのデモニックロッドとシホのマジカルガトリングブーツの足底が突き出された。
「その驕りに満ちた生に此処で幕を引いてやるよ」
「これで、終わりだよ!!」
 デモニックロッドの先端から闇の魔弾が発射され、マジカルガトリングブーツの無数の銃口からシホの全魔力を収束した炎の魔弾が撃ち出された。
 闇と炎の魔弾は、ファントムレギオンが濃く群れている場所……ヴァンパイア・ノゥブルを撃ち抜いた。
 ――ドドドドドドドド!!!

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ……お前ら、貴様ら……っ!!」
 魔弾に容赦なく蹂躙されたヴァンパイア・ノゥブルの肉体は、ハチの巣と化した後、さらさらと灰となり消滅する。
 こうして、闇に蹂躙され愛の炎で神罰を与えられた吸血鬼のいのちは、月光城の中で潰えた。

●帰還
 シホとフォルクは他の猟兵達と共に城外に出た後、フェアリーランドに匿っていた人々をそれぞれの住まいに送り届ける。
 救出された人々のうち、虫の息だった者たちは、フェアリーランド内のフェアリーの尽力で一命をとりとめていた。
 残った者もフェアリーランドにて一時でも心身を休め幾分か回復していたため、それぞれの住まいに送り届けられた後に猟兵達に手厚く礼を述べていた。

 こうして、人々の心身を自儘に弄んだ『月光城の主』は、徐々に輝きを取り戻し始めた『月光城』の露となり消えた。
 ――解き明かされずに終わったいくつかの謎を残しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月27日


挿絵イラスト