【サポート優先】サポート猟兵と慈愛の神
※これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
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「手が空いている人がいたら助けて欲しいのよ。出来たら腕に覚えがある人だと嬉しいのだけれど」
そう切り出したのはラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)。彼女の声を受けて名乗りを上げたのは、何かあれば助太刀すると予め登録していた猟兵たちだ。
新米の猟兵である彼女にとってみれば、彼ら彼女らは皆先輩。手早く出動の準備を整えてくれる頼もしさに、これなら心配は要らなそうねと笑みを漏らした。
「向かって貰いたい世界はヒーローズアース。場所はその中心、センターオブジアース。ここには神々の時代に討伐された不死の生物が封印されているんだけど――この世界のオウガ、じゃなかった、オブリビオンといったかしら? やつらがその怪物に目をつけてしまったの」
首謀者は怪物の封印を見張っていた番人を殺め、怪物の力の一部を解き放ち配下のオブリビオンへと纏わせた。
「怪物の名はケルベロス。地獄の門番。その力を纏った配下たちは、地獄の炎を自在に操る力を身につけたようね。触れただけで生命を燃やし尽くすような強大な力よ。何の対策もなければ近づく事さえ敵わない。でもね」
ぴっ、とラヴィは人差し指を立てる。
「神々も、封印を解かれた時の対策はしていたわ。『浄化の神』と呼ばれる女神の力で、その炎を弱めることができるの。でも何せオブリビオンは数が多くて、女神は浄化の力を行使するのが精一杯、斃す方には手が回らないみたい。そこでお前達の力が必要なの」
つまり、女神が被害を食い止めているうちに、猟兵達の力で配下のオブリビオンや首謀者を斃して欲しいというわけだ。
「敵は強いわ。でも、お前達ならきっと大丈夫。油断しないで、ばっちり頑張ってきてね」
茨の輪がセンターオブジアースへの路を切り拓く。先導しながら、ラヴィは猟兵達を振り返った。
「何で怪物そのものを解き放つんじゃなくて、力だけを自分たちに取り込むなんてまどろっこしい事をしているのかというと、『スナーク化』というのがやつらの目的らしいの。力を取り込んだ配下たちは本物の怪物よりは弱いし、不死でもなんでもないけれど、簡単に数を増やす事ができる。それを世界中に解き放って『恐怖の代名詞』とすることで、超生物スナークを編み出す……そんな狙いらしいのよ。
ラヴィの世界にもスナークのお話はあったわ。目にした者は跡形もなく消えてしまうんですって。でもそれなら、どうしてお話だけが残っているのかしら?」
ion
●お世話になっております。ionです。
このお話はサポート優先シナリオです。書ける時に書き、骸の月集計日(12/19)までの完結を目指します。
トミーウォーカー様からの定型文として「通常参加者を採用する場合もあります」と書かれておりますが、今回はサポート様だけで完結させる予定です。
また、全てのサポート様を採用できるわけではないことをご了承くださいませ。
このシナリオにはプレイングボーナスがあり、神々と共に戦う、もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る事によってボーナスを得ることができます。
サポートシナリオなので判定には影響ありませんが、明記しておきます。
このうち「神々と共に戦う」は、浄化の女神の力を借りて接敵している為、参加者様が一律自動的に満たしているものとしております。
一章も二勝も純戦です。その為、戦闘が得意そうな猟兵様を採用させて頂く予定です。
第1章 集団戦
『デュランダル騎士』
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POW : デストロイブレイド
単純で重い【量産型魔剣デュランダル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ケイオスランサー
【魔槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【仲間のデュランダル騎士との怒濤の連携攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 不滅の刃
【量産型魔剣から放たれる光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:弐壱百
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アハト・アリスズナンバー(サポート)
「私の手が必要ならば、お貸しします」
無表情、無感情に見える、死んでも次の自分が即座に故郷から転送される量産型フラスコチャイルドです。
一人称は「私」、口調は誰に対しても「です、ます、でしょうか」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的には手が必要なら貸す、といったスタイルでユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず突撃します。
ただ、アリスが関連してる場合は積極的に手を貸します。
その他の部分はマスターさんにお任せします
グレナディン・サンライズ(サポート)
『ここはこの年寄りに任せてもらおうかね?』
『こう見えても、まだまだ衰えちゃいないよ』
年齢3桁の婆。
スペースシップワールド出身の元宇宙海賊。
主な武装はフォースセイバーとブラスター。
戦闘スタイルは基本的には前衛遊撃。敵を翻弄するような戦いを好む。
グルメではない酒好き。
年齢なりの経験を積んでいるので、冷静さと余裕をなくすことはない。
口調(あたし、あんた、だね、だよ、~かい?)
クネウス・ウィギンシティ(サポート)
※アドリブ&絡み歓迎
●特徴
サイボーグ(四肢機械化済み)の技術者&狙撃手。SSW出身の鎧装騎兵。
民間人互助や義侠心に厚い。
口調 通常(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
メイン武器 アームドフォート、マシンガン、パイルバンカー
●台詞例
『敵影捕捉、これより戦闘行動に入ります』
『索敵完了、狙撃開始』
『掃討戦ならばこの武器の出番ですね』
『これで一掃します』
●行動
狙撃手としての『狙撃・援護射撃』や技術者として『(技術)支援』がメイン。
遠距離狙撃や砲撃メインで援護に徹します。
主な技能:スナイパー・メカニック・武器改造・情報収集
●
かつて、デュランダルという名の組織があった。
複雑化する善と悪、ヒーローとヴィランの抗争。正義が善とは限らない世界では、時にヴィランの不条理な弾圧が起きていた。
改造され、洗脳された者。
愛する者の為に、仕方なく悪事に手を染めた者。
たった一度の過ちから、ヴィランに成り果てた者。
純然たる悪とはいえぬ彼らが、正義や断罪の名の元に糾弾され、差別され、迫害される。正義を振り翳す人々は、それこそが彼らから更生の機会を奪っているのだと気づくこともない。
そのような不条理に真っ向から立ち向かった者たち。それがデュランダルの騎士団――“だった”。
かつてその名の組織に属していた漆黒の甲冑騎士は今やオブリビオンとなり、かつての思想の片鱗は歪められた。
今は只、正義は敵であり、虐殺すべきものであるという狂気だけに支配されている。
●
「――皮肉なものですね」
ぽつりと呟かれた言葉は、囂々と燃える炎に掻き消され。
クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)の眸に宿るものは、義に厚い青年のそれから鋼鉄の狙撃手たる怜悧さへと変化する。
「敵影捕捉、これより戦闘行動に入ります」
額のゴーグルを下ろし、構えるは自動給弾式のバスターキャノン。蒼白い閃光と共に放たれる熱は、猟兵の背後で祈りをささげる女神の加護を受け、地獄の炎をも貫いて騎士の鎧に罅を刻み込む。
僅かに生まれた隙をついて、二人の猟兵が騎士へと肉薄する。輝く金髪を揺らし槍を振るうのはアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)――の、正確には“別個体”。
禍々しい牙のような騎士の魔剣が、アハトの槍を阻む。受け止めたアハトの身体が衝撃に軋むが、彼女は眉一つ動かさない。
「下がりな」
短く告げられた言葉はグレナディン・サンライズ(永遠の挑戦者・f00626)から。アハトが後ろへ跳んだのと入れ替わるように、炸裂するオーラが擲弾のように爆ぜた。
「あんた、若いのに動きがいいね」
更に理力の火器を形成しながら、グレナディンは皺だらけの顔に笑みを見せた。アハトは変わらぬ無表情のまま「どうも」と返す。
今戦っている“アハト”は猟兵として登録されている個体とは別の存在であるが、たとえグレナディンと言葉を交わしていたのが“彼女”を呼び出したアハトであってもリアクションに大差はなかっただろう。
手が必要なようだったから呼ばれた。同じ猟兵がいたから共闘した。アハトにとってはその程度のものだ。少なくとも、本人はそう認識している。
大上段から振り下ろされた魔剣を、グレナディンは老婆とは思えぬ素早さで身を屈めて躱す。ひと振りで命を奪う暴力の象徴かのような鉄塊を見ても、今更彼女の顔に焦りが生まれることはなかった。そんなものはとっくに――“そうさね、何十年も昔に味わい尽くしたものさ”。
反帝国の宇宙海賊。悪辣なる銀河帝国へと立ち向かった女のかつての栄光を語るには、あまりに多くの年月が流れ去ってしまった。それでも尚、その豪胆さと挑戦し続ける意志は老婆の胸の中に燃え続けている。地獄の炎よりも熱く、強く。
クネウスの機械仕掛けの眸がゴーグルに投影されるデータを追いかけ、騎士の鎧の隙間を穿つように銃撃を放つ。自動給弾式のバスターキャノンはクネウスの見定めた好機を逃さず、神話に名を残す狩人の如く的確にその身を削り、騎士を追いつめる。
アハトの槍が騎士の魔剣と再びぶつかり、大きく跳ね上げた。
「これで一掃します」
攻守ともにがら空きになった騎士へと、クネウスの放つ迅雷の如き一閃が炸裂した。
「ぐ……ッ!」
あくまで狙撃手として後方支援に徹するクネウスだが、技術者としての一面も持つ彼自ら手をかけた武器にかかれば、その役割は援護射撃には留まらない。騎士の鎧は瓦礫のように砕け、がくりと膝をつく。
グレナディンとアハトが同時に地を蹴った。槍が、擲弾が、騎士へと浴びせかけられる。魔剣が纏っていた禍々しいオーラが消え、騎士もまた動かなくなった。
「まずは一体、片付きましたね」
アハトが静かに告げた。
「どうだい、このあと一杯」
グラスを持ち上げるようなジェスチャーをするグレナディンに、酒煙草博打をこよなく愛するアハトはこの時初めてぴくりと眉を動かしていたという。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
シフォン・メルヴェイユ(サポート)
『楽しい世界が待っていたらいいなぁ。』
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
怒った時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
のんびりとして、無邪気な性格をしています。
基本的に常に笑顔で人に接して、
敵以外なら誰に対しても友好的な性格です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから7年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!
あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ
商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします
四王天・焔(サポート)
『こんにちは、焔だよー。』
妖狐の人形遣い×ガジェッティアの女の子です。
普段の口調は「無邪気(自分の名前、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、家族には「甘えん坊(自分の名前、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
無邪気で感情の起伏が激しい性格の少女、
武器はからくり人形とドラゴンランスを主に使います。
植物、特に花が好きです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
コノカ・ハギリガワ(サポート)
『やるわ。私に任せなさい!』
サイボーグの鎧装騎兵×戦巫女、18歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
出身世界:スペースシップワールド
性格:勇敢
戦場では積極的に前線に切り込み、敵の注意や攻撃を引き受けます
・戦闘
勇翠の薙刀を主に使って戦います
また、エメラルドアームから発生させた障壁で仲間を庇います
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
チル・スケイル(サポート)
「皆さん、よろしくお願いします(お辞儀)」
「…(仕事の時間)」
「では、吉報をお待ちください」
竜派ドラゴニアンのクールな女性です。普段の口調は『私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?』誰にでも礼儀正しく接します
戦闘中は 『私、あなた、~さん、言い捨て』不要な発言はしません
戦闘スタイルは魔法による射撃が主体。氷の魔法を操ります。それ以外の属性は使いません
侮辱や暴言、報酬の踏み倒しなど、敬意に欠ける行為を嫌います
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません
スシが大好きです
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
味方が屠られ、骸の海に還る姿を見ても、漆黒の騎士たちに動揺した様子は無い。
そこには只、かつての高貴なる信念の残骸だけがあった。
――正義だの、平和だなどと声高く騒ぎ立てる者達を、破壊し尽くす。
それだけが騎士の衝動であり、その憎しみが地獄の炎を巻き上げる。
火の粉が吹きすさぶ中、女神の祈りが炎を浄化していく。だがすぐに炎は燃え上がる。尽きぬ憎しみを表すように。
憎悪と浄化が互いを塗りつぶし、目まぐるしく姿を変える戦場を、五つの影が駆けていた。
氷の如き竜人、チル・スケイル(氷鱗・f27327)の脳裡に浮かぶのはこの闘争について説明をしていたグリモア猟兵の姿だ。斃して欲しい、と女は云った。満足のいく報奨金も提示された――故郷の人々にある程度まとまった食料や物資を送れる程には。だから、受けた。
その時彼女に返したものと同じ言葉を、今一度チルは呟く。
「では、吉報をお待ちください」
言葉少なく指令を完遂する忠実なる僕のように、チルの周囲に氷晶が浮かび上がる。それが騎士を狙う鋭利な礫となり降り注ぐのに合わせ、チルもまた、銃火器の如き魔法の杖を構えるのだった。
氷礫と魔弾が騎士へと降り注ぎ、漆黒の鎧に痕を刻み付ける。憤怒の炎でそれを溶かしながら、騎士が大きく踏み込んで槍を振るった。
「させないよー!」
どこか花のような甘さを持つ聲が響き、何かが騎士の槍を受け止める。それは四王天・焔(妖の薔薇・f04438)の操るからくり人形の一体だ。先陣を切った騎士に続いて振り翳された別の槍もまた、ゴシック風の衣服に身を包んだ道化人形が阻む。
「助かりました、ありがとうございます」
「あんな炎を操るオブリビオンがいっぱいいたら、植物やお花がみーんな燃やされちゃう。ここでやっつけておかないとねー!」
がんばろ! とガッツポーズをしてみせる焔。末っ子らしい天真爛漫さに満ちた少女だが、護るべきものの為に立ち向かう胆力をも持ち合わせている。
焔の周囲には、また新たなからくり人形やぬいぐるみ達が出現している。彼女や仲間を護ってくれる存在だが、焔とて守護されるばかりのか弱い薔薇ではない。
「地上が恐怖の怪物でいっぱいになっちゃうなんて、焔イヤだもん。お人形さん達、力を貸してね! 皆で突撃だよー!」
お気に入りの和装メイド服の裾を翻しながら、からくり人形や花を愛する小竜“フローレ”と共に果敢に騎士へと切り込んでいった。
――ふわり、と焔の視界に白いものが舞う。その端っこに愛らしい花が見えた気がして思わず目で追えば、それはブギーモンスターである納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)が纏う知恵の布であった。
「そうなのですわ! 困ったちゃんにはお仕置きですの。アタシも昔は色々あったけれど、やっぱり度の過ぎたおイタはあきまへんわー」
お嬢様なのか、そうでもないのか、どうにも判別の難しい言葉遣い。ふりふりシーツを揺らしながら得物を掲げてアピール。花とリボンで愛らしく飾り立てた先には光り輝く刃、それすなわち伝説の“勇者の剣”。まさかお仕置きというライトな言葉とは裏腹に、その実態は伝説の剣で悪を一刀両断する事なのでは!?
「そんなに恐ろしいことはできませんわ、アタシはただのシーツおばけですもの。出来る事といえば……」
そう云って、ピンチンは知恵の布の裾に手をかける。お花刺繍の愛らしい布がめくれて、中から現れたのは――。
「ひっ」
「ひいいいいっ」
信念を妄信する狂気の騎士ともあろう者たちが、ピンチンの“変身”したものを見てみな一様に情けない声をあげた。
それは四つ足の草食動物を醜悪に歪めたような、形容しがたきおぞましい怪物の姿であった。真っ赤に血走った眼は哀れなる犠牲者に狙いを定め、軽い気持ちで入手したその怪物の好物を容赦なく奪い去るのだという――ってそれ、ただの煎餅を狙う鹿では?
「じ、地獄の門番より恐ろしい……ッ!」
だが観光地の鹿に馴染みのない騎士たちにはテキメンに効いていた。困ったちゃんにちょこーっとお仕置きするだけのはずのピンチンの変身が、騎士たちのメンタルをガッタガタにしていた。さすが勇者!! つよいぞ!!
「くそっ、あの怖いのは最後だ! 他の奴を狙うぞ!!」
だがデビキンのワルい子よりワルい騎士たちはピンチンを視界に収めないようにしながら相も変わらず悪事を働く気らしかった。懲りてない!!
かくして姑息なる騎士達が狙いを定めたのは、ピンク色の髪をひとつに束ねた柔和な少女、シフォン・メルヴェイユ(夢見る少女・f19704)。だが魔を帯びた槍がシフォン目掛けて刺突を繰り出す度、彼女はひらり、ひらりと舞うような動きでそれを躱してしまう。
「ぬぅ……ッ」
鉄仮面の奥、騎士が呻く。
「こうなる事はすべて判っているわ、その攻撃は当たらないわよ!」
眸と同じエメラルド色のリボンがふわりと舞う。槍の動きを見定める双眸はあくまで柔らかく、ここが戦場である事を忘れさせるかのようだ。
それはシフォンが積み重ねてきた戦闘訓練と、風水術や占星術の知識、その双方を活用した身のこなし。研ぎ澄まされたそれらは、まるで未来が視えているかのような回避動作を可能とする。騎士たちにしてみれば、自慢の槍術がまるで暖簾に腕押し――この場合押すのは暖簾ではなく、美しい“織物(シフォン)”といったところだろうか。
「なかなかの槍の使い手ね。でもそれじゃあ、私には届かないわ」
くるりと回りながら鮮やかな着地を決めたシフォンが、すうと深く息を吸う。
「槍はね、こう使うのよ!」
金色時計が施された三叉鉾が、地獄の炎をも貫く刺突を繰り出した。
騎士の絶叫がこだまし、歪んだ正義がまたひとつ、打ち砕かれる。
塵と化す騎士を振り返る事もなく、もう一人の騎士が槍を振るう。狙いは機械仕掛けの元スペースノイド、コノカ・ハギリガワ(勇を示す翠・f06389)。
コノカの構えた勇翠の薙刀が、真っ向から槍を受け止める。金属がぶつかり合う音が戦場に響き、両者はじりじりとにらみ合った。
小柄な彼女よりも頭二つは大きい騎士相手にも、コノカは一切物怖じする事無く果敢に喰らいつく。膂力は敵の方が上だ。徐々に押し負けられつつも、コノカは鋭く相手を睨み続ける。
(「こんなんじゃ、師匠には届かない」)
英雄と称された彼のようになりたくて、コノカは今のコノカになった。身体の一部を機械に置き換え、直伝の術も磨き上げてきた。
「こんな力任せで、打ち倒されるわたしじゃない」
折れかけた膝が、持ちあがる。翠色に輝くフォースの刃が、禍々しい槍を徐々に押し返していく。それでもコノカを押さえつけ、地面へと叩きつけようとする騎士へ抗うように、薙刀がひときわ目映く輝いた。
次の瞬間、騎士は空へと放り出されていた。何が起きたのか判らぬまま、地面へと叩きつけられる。
それはコノカの繰り出す翠空閃(フォースリッパー)。圧倒的速さで放たれた斬撃派を、騎士は目にする事さえ敵わなかった。
「が、は」
全身を強かに打ち付け血反吐を吐く騎士が最後に見たのは、迫りくる氷の弾丸。そして、同じように透き通ったチルの眼差し。忠実なるアイス・バトラーは、今日もまた過不足なくオーダーをこなしてみせたのだった。
歪んだ信念も命も、氷漬けにされて骸の海のなか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士の女の子です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。
その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
ミルディア・ディスティン(サポート)
「サポート?請われれば頑張るのにゃ!」
UDCでメカニックして生計を立ててるのにゃ。
『俺が傭兵で出撃して少し足しにしてるがな?』
※自己催眠でお人好しで好戦的な男性人格に切り替わりますがデータは変わりません。
ユーベルコードはシナリオで必要としたものをどれでも使用します。
痛いことに対する忌避感はかなり低く、また痛みに性的興奮を覚えるタイプなので、命に関わらなければ積極的に行動します。
公序良俗は理解しており、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。むしろ積極的に助ける方です。
記載の無い箇所はお任せします。よろしくおねがいします。
●
正義が善でないのであれば、悪は何なのだろう。
かつてそれらを救おうとした組織の成れの果て。漆黒の騎士が持つ禍々しい魔剣から光が迸る。
それは救いの力だ。自身と味方の傷を癒し、再び立ち上がらせる力。
不条理に虐げられる者達を救うために戦った者達は、本当に悪だったのか。
その答えを知る者は、ここにはいない。
優しき光は、今やかつての気高さとはかけ離れた殺戮衝動の儘に振るわれる。全てを壊し尽くすまで、立ち止まらないために。
●
「えっと……えっと」
夜空に煌々と輝く星の名を冠した槍を構えながらも、メイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)の言葉はどこか歯切れが悪い。
だがこのわずか十六の少女が、正義を狩り尽くす悪しき騎士達に恐れをなして震えているのかといえば、答えは否だ。
ただ遊牧民として生を受け、幼い頃からドラゴンと心を通わせてきたメイリンは、少しばかり対人恐怖症のきらいがある。人と面と向かって話すのは、たとえ相手が鉄仮面で顔を隠した騎士であろうと緊張してしまうのだ。
だがメイリンは思い返す。グリモア猟兵の言葉を。彼らを放置していたら、どうなってしまうのかを。
(「地上が、ううん、ヒーローズアース全域が恐怖で支配されてしまいます……そんなの、絶対に阻止しないと!」)
「……ほう」
せわしなく彷徨っていたメイリンの視線が、真っ直ぐに騎士を捉える。面白がるように声を漏らした騎士に、メイリンは眉間の皺を深めた。
「あなた達の……思い通りには、させません!」
決意を込めた声と共に、メイリンの周囲に八匹の小竜が現れる。地獄の炎を割るように放たれた闇のブレスが騎士に浴びせかけられた。
「この程度」
闇を振り払いながら、騎士が鋭い刺突を繰り出した。槍は確かにメイリンへと届きその皮膚を裂くが、届かせた筈の騎士の方が苦々しげに呻いた。
手ごたえはあった。なのに女へと刻んだ傷は随分と浅い。
「あなたの力は、竜の呪いによって阻まれるのです」
先程のブレスは、殺傷の為のものではなかったのだ。
戦場に満ちる闇と地獄の炎の中を劈き、メイリンの光の槍が騎士を貫いた。
●
「にゃあああっ」
重い一撃を、すんでのところでしゃがんで避ける。
頸を撥ね飛ばされるような事態は避けられたものの、ミルディア・ディスティン(UDCの不可思議メカニック・f04581)の髪が一房、斬撃に持っていかれてしまった。
「ううっ……髪はダメなのにゃ」
思わず涙目になりながら頭に両手をやったミルディアは、自慢の猫耳ヘアが無事であることを確かめてようやく安堵の息を漏らす。毎日時間をかけてセットしているお気に入りの髪型なのだ。
だがそんな事を知る由もない騎士の刃は、無情にもミルディアを突け狙う。懸命にクランケヴァッフェで応戦するミルディアだが、敵の猛襲の前に徐々に追いつめられていく。
「にゃあ……っ」
刃がミルディアのオーバーオールを、膚を裂くたび、か細い悲鳴が少女の喉から漏れる。それは恐怖や苦痛というよりも、むしろ――。
「あ、んっ」
とろんと濁る双眸。窮地に追いやられ、全身を赤く染められながら、ミルディアははっきりと快楽を感じていた。
ふらつく脚に力を込め、敢えてその身で騎士の剣を受ける事により、近接からの攻撃を浴びせ続けるミルディア。だがやがてそれも限界を超え、少女の身体は地面に倒れ伏す。
「――トドメだ」
無情に振り下ろされる剣を、何者かががっしりと受け止める。痛みと快楽に朦朧とする意識の中、ミルディアが微笑んだ。
「ご主人さま、来てくれたのにゃあ」
彼女が主人と呼ぶ護衛騎士が、漆黒の騎士を屠る様を見届けながら。
ミルディアはそっと、意識を手放した。
●
何度目になるだろう。金属がぶつかり合う澄んだ音が響き渡る。
徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)の持つ名刀“大天狗正宗”と、漆黒の騎士が持つ魔剣デュランダルが真っ向からかち合う。
家光が刀を振り上げ、空いた胴体へと斬撃を叩きこむ。血飛沫が吹きあがるが、ばっさり裂けた傷は魔剣の力によってすぐさま修復されてしまう。
まさに不滅。歪みきって尚、抱き続ける矜持。振り下ろされる刃を名刀正宗で弾きながら、家光はそれを膚で感じ取っていた。
――それでも。
「あなた達のしている事は間違っています」
否定する。真っ向から。騎士が鉄仮面越しに鋭く家光を睨みつけてくる気配。射抜くような視線を真っ向から受け、家光は尚も怯まず言葉を続ける。
「かつてのあなた達は、ヴィランというだけで不当に虐げられる人達を救うために戦っていたんですよね? ヒーローというだけで殺す今のあなた達は、それと同じじゃないですか!」
将軍として、より良い幕府を目指し戦い続ける男。正義を絵に描いたような姿に、悪の騎士は憤怒の炎を囂と燃やす。
「黙れ!!」
騎士の剣が猛獣の如く家光の頸を狙う。家光は避けなかった。ただ身体を捻り、致命傷を避けた。刃は家光の左肩を大きく抉り、噴き出た血が白布をしとどに濡らす。それでも家光は体勢を崩さない。
後ろに控えるデバイスが、家光の雄姿を大奥へと中継している。大勢の妻たちが、彼へと声援を降り注がせる。彼女たちの声に応える為、退けるわけがない。
一歩。踏み出した。薙ぐように閃いた刃が、騎士を両断する。
治癒の光さえ追い付かぬ、圧倒的な早業であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『ヴィラン『ロンリーオンリー・リオ』』
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POW : ウィー・ニード・ユー
【孤独や寂しさ】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【髪に潜む数多の目玉】から、高命中力の【血肉を吸収する肉管】を飛ばす。
SPD : オーディナリー・マイ・ワールド
【融合した魔術師の力】を籠めた【林檎型の魔具から放たれる光】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【“一つ”になることへの嫌悪や恐怖心】のみを攻撃する。
WIZ : カム・アンダーン
【悪魔の如き角と翼を持つ、幼く凶暴な弟】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「デュラン・ダグラス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
チヒローズ・イッシー(サポート)
自由都市を故郷に持ち、本人も自由を愛する女性です。
戦闘では指定したユーベルコードを状況に応じて使い、人々の自由を取り戻す為に皆さんと力を合わせて戦います。
オラトリオの聖者×プリンセスということで、もしよければキラキラっとした華やかな戦闘演出を描写していただけると嬉しいです。
口調はステータスシートの通り、「なの、よ、なのね、なのよね?」という感じの優しく人当たりのいい女の子といった感じの喋り方です。
一人称は「私」、二人称は基本的に年齢や男女を問わず「さん」付けの呼び方です。
あとはマスターさんにお任せします。よろしくお願いします!
アニカ・エドフェルト(サポート)
『よろしく、おねがいします。』
オラトリオのサウンドソルジャー×聖者、6歳の女です。
普段の口調は「読点やや多め(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、あわてた時は「読点少なめ(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」
基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。
探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。
情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。
戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。
●
地獄の業火は消え失せた。だが、そこに一人の少女が舞い降りる。
「彼らは“ひとつ”になっていたのです。リオ達のように」
どこか気だるげな眼差しが猟兵達を一瞥する。紫を帯びた髪がふわりと靡く。ぎょろり、ぎょろり、赤い眼球が動いて、少女と同じように猟兵達に視線を送る。
それは少女の髪に移植された無数の眼球。だが、少女を最も異形たらしめているのは、その背に宿った赤膚の魔物だ。まるで赤子のようにふくふくとした身体に、鋭い爪と牙。悪魔のような角と翼。
「弟は一度死んでしまいました。でも、もう寂しくありません。リオ達はひとつになったのですから」
静かに語る少女に宿る、底知れぬ狂気。地獄の炎よりも燃え滾る、純然たる野望。
「世界全てが一つになれば、彼ら――デュランダルの騎士達の憤怒も癒える事でしょう。正義も悪も、同じものになるのですから」
その為にスナークが必要というのであれば、生み出すまで。
スナークはどこにでもある。何からでも生まれるのだから。
●
「リオさんといったかい? それが望みなんだな」
未だ古代文明の趣が残るセンターオブジアースには不釣り合いな、原付めいた宇宙カブ。ライダースーツで愛機を颯爽と駆りながら現れたのは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。
快活な笑みをちらと見遣り、リオは冷ややかに返す。
「貴方達は、リオ達の願いを阻みに来たのですね」
「結果的にはそうなっちまうのかねえ」
多喜は素直に認める。彼女がここに来たのは事件を解決するためだ。実力行使が不要であればそれに越したことはないが、話し合いで解決できる相手だとは到底思えなかった。
それでも声を掛けたのは、この少女を只の障害、対峙すべき敵と見做し機械的に排除するのが嫌だったからだ。多喜は、そういう性分なのだ。
「リオさん達が望むような世界になられたら困るからね。でも――大切な人を喪う哀しみは、少しだけ、わかるよ」
「なら、貴女も正直になればいいのでは?」
リオの眼差しが、真っ直ぐに多喜を捉えていた。どういう事かと聞き返そうとした多喜の身体を、リオの操る光が包み込む。
「失いたくない人がいるのでしょう? それとも、“いた”のかしら? 怖がることはありませんよ。ひとつになってしまえば、もうお別れをしないで済むのですから」
その言葉はやけにあたたかく、ぞっとする程優しく、多喜の心にぽつりぽつりと沁みていく。
少女が手を差し伸べた。誘うように。
「……そうだな」
多喜は微笑んで手を伸ばす。
指と指が触れ合った瞬間、凄まじい電流がリオの身体に注がれた。
「く……っ!」
慌てて手を引っ込めながら、リオは信じられないものを見るような眼差しで多喜を見上げた。
「どうして? 術は確かに効いていた筈なのに、拒めるのですか?」
「ああ。確かにずっと一緒にいられるってのは幸せだろうねえ」
でも、さ。
「一つじゃないからこそ、違うからこそ、分かり合えたり尊重し合える事もあると思うんだよ」
ばちばちと爆ぜる雷が、再びリオへと注がれた。
●
甲高い悲鳴を上げるリオ。背に融合した赤鬼は姉の苦痛に反応するように怒声を上げ、猟兵へと牙を剥く。純白の翼を持つオラトリオ、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)はまるで流星めいたスピードでそれを躱す。
「お姉さんが、弟さんのために、頑張っているように。弟さんも、お姉さんのために、頑張って、いるんですね」
小さな身体と爆発的なスピードを活かしての回避と、叩き込む蹴り技の数々。翼のオーラで強化された回し蹴りに殴打されながらも、弟は怯む事もなくアニカへと襲い掛かる。
至近距離からの爪撃を、咄嗟にクロスさせた腕で阻む。アニカの白い膚が裂け血が噴き出るが、十にも満たぬ少女は気丈にも微かに呻いただけですぐに鋭い蹴りを繰り出した。
アニカは“闘技場”出身だ。ヴァンパイアの娯楽のために戦わされてきた。聖者であるアニカはその力で“選手”を癒す役割の方が圧倒的に多かったが、それでも争いごとと無縁ではいられなかった。
翼オーラでの身体強化に力を注いでいる今は、癒しの力を十二分に発揮することができない。負傷しても立ち向かうアニカを、暖かい光が包み込んだ。
「これは……!」
アニカにはすぐにわかった。これは聖者が生まれながらに持つ光。
「アニカさん、傷は私が癒すわ!」
ぱっくりと裂けていた傷が、みるみるうちに塞がっていく。それはアニカと同じ聖者であり、オラトリオでもあるチヒローズ・イッシー(オラトリオの聖者・f20852)の力だ。
「ありがとう、ございますっ!」
アニカは礼を述べ、また果敢に立ち向かっていく。その背に光を齎し続けるチヒローズの周りでは、プリンセスのハートがきらきらと光り輝いていた。
闇の世界にさえ差し込む光。癒しの力は使用者を疲労で苛んでいく。連続行使にふらつきそうになるチヒローズを支えるのは、光り輝く心が具現化したこのハート。
自由都市に生まれた彼女は、そんな故郷を愛している。そんな純粋な心を持つからこそ、彼女は常闇の世界に光を齎す救世主であり、ピュアな心を持つ人だけがなれる不思議なプリンセスでもあるのだろう。けれどチヒローズは同時に知っている。世界はあまりに不自由で満ちていて、苦しむ人々がたくさんいることを。
「だからね、私は戦うのよ」
人々の自由を取り戻す為に。皆が皆、思い思いの幸せを享受できるように。
それは、世界すべてをひとつにするというリオの指標とは真っ向から反するものだ。寂しさや悲しみ、一切の負の感情から解き放たれた世界には、同時に喜びや幸せもない。何もかもが。
「力の限り、どこまででも――ですっ!」
アニカの決死の蹴りが炸裂する。彼女が負傷を気にせず思う存分戦えるように、チヒローズもありったけの癒しの力を注ぎ込むのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リーリア・ブラッドスノー(サポート)
強化人間のアリスナイト×バロックメイカーの少女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、後輩の前では「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードはイマワシキキオクを使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。
依頼成功の為には己の身体も道具にします。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
負傷描写は重め、多めな傾向が好み、NGは無いので瀕死や内臓がはみ出すくらいグロテスクな描写を好みます。
ほかはお任せいたします。
よろしくお願いいたします。
●
「げ、ぅ……ッ」
もう何度目になるだろう。
醜き赤鬼の爪がリーリア・ブラッドスノー(うつろなる幻想・f27329)の皮膚を引き裂き、爪が肉を食い破る。
既にリーリアは満身創痍。胎から引き出された臓物を握りつぶされ、リーリアは赤黒い血を撒き散らす。
ああ、それでも死ねないのだ。
「まだ斃れないのですか」
見下ろすリオの眼差しには憐憫さえ宿っていた。それほどまでの惨状の中、リーリアは立っていた。
「しかし身体が不死身に近くとも、精神の方はどうでしょうか」
ぴくり、リーリアが眉を顰める。
「……精神?」
「気が違ってしまえば、リオ達の往く手を阻むこともなくなるでしょう」
それまで苦痛を与え続ければいい。あまりに残酷な言葉。だが。
「ふ、ふふ」
リーリアは絶望するでもなく、驚愕するでもなく、ただ笑っていた。
「何がおかしいのですか? それとももう、精神の箍が外れてしまったのですか?」
「箍? そんなのとっくの昔に壊れちゃった。あのね、この世は悲劇と苦しみでできているんだよ」
リーリアの言葉に、今度はリオが眉を顰める番だった。
強化人間の手に、いつの間にかメスが握られていた。銀色の刃に反射された光が、かつてリーリアが体験した“すべて”をリオに視せ、知覚させる。
麻酔なしの解剖。痛みに暴れ回る少女を大人たちが押さえつける。四肢の骨が折れ、涙と涎と恐怖で顔をぐちゃぐちゃにしながら少女は絶叫した。悲鳴が弱り、か細くなり、やがてひゅうひゅうと息を漏らすだけになっても、実験は続けられた。
「……あ」
がたがたとリオが震えだす。五感を伴った映像はまだ続いていた。絶望、恐怖、苦痛。それこそがアリスナイトの力を形成するものであり、リーリアは力を研ぎ澄ます為にありとあらゆるそれらを注がれてきた。
「ああ、やめて、もうやめて」
「こんなのでギブアップしてしまうの? まだまだあるのに」
リーリアがくるりとメスを回し、切っ先をリオへと向ける。
「だから云ったでしょう。このくらいじゃあたしは狂わない。あなたも――狂わないで、ね?」
成功
🔵🔵🔴
佐那・千之助(サポート)
「手が要るか?」
入り用ならば、なんなりと。
ダークセイヴァー出身のダンピール
困った人を放っておけない
いつも人への敬意と好意を以て接する
よく言えばお人好し。たまに騙されていることは秘密。
可愛い動物や甘いものに懐柔されやすい
戦闘は前衛、盾役向き。治療も可能。
焔(他の属性は使えない)を黒剣に宿し斬り込んだり、遠くの敵でも焔を飛ばして燃やしたり。
負傷は吸血や生命力吸収で持ち堪える
平和主義なので戦わずに済む敵なら平和的解決
かわいい敵は抱いてもふりたい
想い人がいるので色仕掛けは効かない
物語に合わせて諸々お気軽に、どうぞご自由に。
よき手助けができれば嬉しいです。
轟木・黒夢(サポート)
『私の出番?それじゃ全力で行くわよ。』
強化人間のヴィジランテ×バトルゲーマー、19歳の女です。
普段の口調は「素っ気ない(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「それなりに丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで、あまり感情の起伏は無いです。
戦闘では、格闘技メインで戦い、籠手状の武器を使う事が多いです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
政木・朱鞠(サポート)
ふーん、やっと、ボスのお出ましか…。
もし、貴方が恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけているのなら、不安撒き散らした貴方の咎はキッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ。
SPDで戦闘
代償のリスクは有るけど『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で攻撃を受けて、自分の一手の足掛かりにしようかな。
ボス側の弐の太刀までの隙が生まれればラッキーだけど…それに頼らずにこちらも全力で削り切るつもりで相対する覚悟で行かないとね。
得物は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かないダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
●
「ふーん、やっとボスのお出ましか」
声はどこか面白がるようですらあった。褐色の妖狐、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)がリオを見下ろす。
「もっとも、あと一息ってところみたいだけど。貴方の咎はキッチリと清算してから骸の海に還ってもらうよ」
朱鞠に続き、二人の猟兵もそれぞれの武器を構える。
「かつて神々に封印された怪物の因子を解き放ち、スナークなる新たな恐怖を生み出す、か――どの世界でも、オブリビオンという者は碌な事をせぬのう」
常闇の中でも陽のように目立つ橙の髪のダンピール、佐那・千之助(火輪・f00454)は黒騎士の心継ぐ剣を握り。
「何にせよ、あいつを斃せばおしまいね。それなら遠慮なくいくわ」
籠手を嵌めた拳に力を込め乍ら、轟木・黒夢(モノクローム・f18038)はそっけなく告げる。
「どうしてわからないのでしょう。リオ達のようにひとつになれば、恐怖もやがてひとつになる」
ロンリーオンリー・リオの手にした林檎が光り出し、髪と融合した眼球がぎょろぎょろと猟兵達を見つめる。
「恐怖が苦痛なのはその前段階だけ。全てが一つになってしまえば、もっと大きな幸せが生まれるわ。喪失の哀しみよりも辛いものなんて無いでしょう?」
光が、言葉が、猟兵達を蝕んでいく。
黒夢が目を見張った。
「喪失の、哀しみ?」
「そうです。一つになってしまえば、独りぼっちじゃなくなるの」
その言葉が、黒夢の心にじわじわと染みわたっていく。浸食していく。
そっけない態度と物言いの奥に、寂しがりの一面を持つ黒夢。そんな黒夢を知っているかのように、リオは微笑みかけるのだった。
「お兄さんにも、」
と、リオが千之助を見上げる。
「お兄さんにも、失いたくないものがありますよね?」
「――失いたくないもの」
その言葉に、千之助は無意識にふたつを思い起こしていた。
ひとつは、闇の世を生きる人々。不当に虐げられ、日々を生きるのに精いっぱいな人々が少しでも助かるようにと、千之助は陽光のような髪を長く長く伸ばしてきた。
彼らを助ける事が出来なかったら。それはお人好しの千之助にとって、確かな恐怖だ。
そして、もうひとつは。
千之助の唯一。想いを交わし未来を誓ったひとと、引き離されるとしたら。
「リオ達も、一度はばらばらになってしまったんですよ」
あどけなさの残る眼差しが、背に融合した赤鬼を愛おしげに見つめていた。
「でも、ほら。ひとつになったら、いつまでも一緒です」
醜悪な角の生えた頭を撫でながら、リオは最後の一人に目線を遣る。
「お姉さんも、意見が違う人に苦しめられたことはありませんか?」
「私、は」
林檎の光が朱鞠の貌を照らす。焦点がぼやけた眸には、故郷の光景が浮かび上がってきた。
古来より続く忍者軍団。血筋を重んじる長老たちは、朱鞠が跡を継ぐものだとはなから決めてかかっているようだった。
(「私だって、自分の生活を楽しみたいのに」)
朱鞠は忍びである前に、まだ二十二の女性なのだ。頭領としての責務に縛り付けられるにはあまりに若い。外にはあんなに広い世界が広がっていて、楽しいことがたくさんあるのに。
結局、朱鞠は名刀の捜索と咎忍の処理を定期的にこなす事により、頭の固い長老たちを黙らせる事には成功した。けれど――条件付きの自由は真実、自由だろうか?
「一つになれば、あなたの意見を軽視する“他人”もいなくなります」
リオはうっそりと笑んだ。
「だから、リオ達の目的を阻むことはもうやめてください。今よりもずっとずっと、いい世界が生まれようとしているのですから」
「……そうね」
「ええ」
「そうだのう」
猟兵達は短く頷きあい、――転瞬、リオと赤鬼の身体に、無数の傷が刻まれた。
「な……ッ」
驚愕に目を見開くリオを、地獄の炎が焼き尽くしていく。それはこの地に囚われた怪物の力ではなく、千之助が放つ千思蛮紅。
「どう、して……抗うの」
「例えひとつになる事が飢えや苦しみからの解放だとて、人々がそれを望むとは私には思えぬ」
かの人々は闇の世界を今も尚懸命に生き延びている。千之助は盾として、太陽として、それをずっと見てきたのだ。
「そして“彼”は――私とは違うからこそ、好いのじゃよ」
囂々と地獄は燃え上がり、千之助の白い貌を照らし続ける。振り払おうと藻掻くリオの手を、蔓薔薇の如き棘がついた鎖が絡めとった。
「っあああ……!!」
「確かにノルマだのなんだの色々あるけど、刺激の無い生活もつまらないものね」
降魔化身法の代償に身を蝕まれながらも、朱鞠は艶やかに笑んだ。
「私の心を“覗き見”するなんて意外とダイタンな子ね。嫌いじゃないわよ、そういうの」
「そう? 私はごめんだわ」
リオが無意識に声のした方に目をやると、黒夢が拳を打ち鳴らしながら真っ向から睨みつけてくるところだった。
「何にせよ、あとは全力でいくだけね」
すう、と息を吸い込んだ黒夢が、大地を踏みしめ渾身の拳を放つ。
地獄の炎を劈き、異形の鬼を貫き、“孤独にして唯一”の少女、リオの身体を砕く。
その身体も、手から零れ落ちた林檎も、炎に焼かれて消えていった。
成功
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