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潔斎行路征くは天峰三師

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●仙界
 蓮の花より生まれた時、若き英傑『天峰三師』は己が一蓮托生の結末として再び生まれ出ることを知る。
 蓮の花の上に乗るが如く互いの存在を認識した時、不意に懐かしさを覚えたことを今でも覚えている。
『牽連四将』――それが己の妹であり、同じ蓮の花より生まれ出た双子であると即座に理解した。
 手にした『火尖槍』は宝貝。
 対する双子の妹『牽連四将』が持つは『乾坤一擲』。
「兄さんは、きっとその槍で道を示したのだわ」
「妹よ、君はきっとその乾坤の円環でもって悪逆を貫いたのだろう」
 互いが手にした宝貝の意味を知る。

「今までずっと一緒だったけれど。これからは互いに違う道を歩みましょう。きっとそれが新たに与えられた生命の意味なのだから」
「ああ、そのとおりだ。僕たちはそうすることで報いることができると知っている。だから、己たちを鍛えよう」
『天峰三師』はうなずく。
 彼が何を為さなければならないのかを生まれ出た瞬間に理解していた。
 これより新たに生まれる存在を護り育てるためには、己たちが強くならなければならない。
 もう覚えてはいないけれど。
 それでも生命は守らなければならないと理解できる。
 お互いの足に備わった宝貝『風火大車輪』は片足ずつ。二つで一つの宝貝であったが、己たちの足それぞれに片方ずつ備わっている。
 きっと己たちが双子であるからだろう。

「再びまた見える時が来る」
「寂しくわ無いわ。離れていても『天峰三師』、あたなが私の兄さんだってわかっているから――」

●救援
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は封神武侠界……その仙界において厳しい修行に打ち込む若き英傑がオブリビオンの大軍勢に襲撃されるという予知を私は見ました」
 彼女は襲撃されるという若き英傑『天峰三師』と呼ばれる蓮より生まれた、生まれながらにして宝貝を二つ持つ青年を猟兵たちに示す。
 彼は仙界で一人厳しい修行に明け暮れている。
 仙界は奇想天外な地形にあふれている。その一つである激流が落ちる大瀑布の側で『天峰三師』は鍛錬に励んでいるようである。

「若き英傑『天峰三師』は宝貝を持っていますが、皆さんには及びません。生誕して僅かな期間しか経っていないのですから当然といえば当然なのかもしれません」
 だが、それでも『天峰三師』は類稀なる才能と鍛錬によってユーベルコードを会得した強者でもある。
 彼と連携することによって迫るオブリビオンの大軍勢との戦いをより優位に運ぶことができるかもしれない。

「まずは襲撃が予知された『天峰三師』が修行を行っている滝の側で彼と交流し、事情を伝えて協力体制を組みましょう」
 ナイアルテは修行という言葉にうっとりしている。
 もしかして修行マニアなのだろうか。滝行というものに憧れがあるのかもしれない。
 けれど現場は大瀑布である。滝行したら、それこそ死ぬ。けれど、ナイアルテは修行という響きに気を取られ、気がついていないのだろう。
 そんな彼女を猟兵たちは若干冷めた目で見るやもしれない。
「――ハッ! え、ええと、そのですね。英傑『天峰三師』と共に襲撃発生の時間まで修行をして彼をさらに強くすることで、より襲撃時の連携をスムーズにできるかもしれません。共に修行を行うことも良いでしょう」

 そうでなくても、事前にオブリビオンに対する罠や砦などを築くのも良い考えかも知れない。
 何故オブリビオンが若き英傑『天峰三師』を狙うのかはわからない。
 けれど、みすみす彼をオブリビオンに殺されるわけにもいかない。
 襲撃してくるオブリビオンは大軍勢そのもの。第一波、第二波と連続して襲いかかってくる。
「襲い来るオブリビオンはいずれも人型。『刀刃拳門下生』が第一波。『虚ろなる処刑人』が第二波となる。

「数が多いとは言え、どちらも粒ぞろいの技量を持つオブリビオンです。油断は禁物であると言えるでしょう。どうか若き英傑を護り、これらの軍勢を退けてください」
 ナイアルテは頭を下げ猟兵たちを見送る。
 転移の先は封神武侠界における仙界。
 人界とは違う自然環境で修練に明け暮れる若き英傑『天峰三師』を救うために、猟兵たちは次々と転移していくのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 封神武侠界において若き英傑『天峰三師』を襲うオブリビオンの大軍勢を退け、守るシナリオになります。

●第一章
 日常です。
 襲撃が予知された若き英傑『天峰三師』が修行を重ねる仙界の大瀑布の側で彼と交流し、オブリビオン襲撃の事情を伝えて協力体制を組みましょう。
 襲撃の時間まで共に修行をしてもよいですし、罠や砦なんかを築いてもよいかもしれません。

『天峰三師』は年若い青年です。
 蓮の花より生まれ、生まれながらにして二つの宝貝を持つ存在です。
 一つは『火尖槍』。もう一つは片足だけ存在する『風火大車輪』です。これにより空中機動と鋭い炎の一撃を放つことができます。
 性格は生真面目な人となりをしているようです。

●第二章
 集団戦です。
 襲い来るオブリビオン『刀刃拳門下生』たちとの戦いになります。
 数が尋常ではなく多く、如何に『天峰三師』が宝貝を持っているのだとしても、一人では即座に数で圧殺されていたことでしょう。

●第三章
 集団戦です。
 さらに第二波である『虚ろなる処刑人』たちとの戦いになります。
 第二章で戦ったオブリビオンたちよりもさらに数が多いです。こちらが本命といえる強敵ぞろいです。

 それでは、封神武侠界において若き英傑を抹殺線とするオブリビオンたちの目論見を打破する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『武を磨く』

POW   :    肉体を磨く

SPD   :    武器の腕を磨く

WIZ   :    特殊な技術を磨く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 凄まじい量の水が流れにそって落ちていく音が響き渡る。
 ここは仙界の大瀑布である。圧倒的な水の流れは打ち勝つことなど不可能であると思わせるほどであった。
 だがこの場において修行を行う若き英傑『天峰三師』は、そんなことを気にする様子もなく滝行を敢行していた。圧倒的な水に打たれながら、彼は微動だにしていなかった。
 瞳を伏せ、己の精神を研ぎ澄ませていたのだ。
「――……」
 五体が砕けそうなほどの水圧を受けながらも、その鍛え上げられた肉体は、蓮の花より生まれたことを感じさせぬ強靭さ。
 手にした宝貝『火尖槍』が振るわれ、滝を一閃のうちに切り裂き彼は一歩を踏み出す。

「未だ大瀑布を干上がらせることはできない、か……僕は、まだまだということだろう」
 彼は滴るしずくを払いながら水辺の岩に腰掛ける。
 生まれてすぐに双子の妹と別れ、こうして修行に明け暮れている。
 義務というか、使命感にかられていることだけはわかる。けれど、それがどうしてそうしなければならないのかがわからない。

「急がなければならないことだけはわかっている……」
 焦りにも似た気持ちが沸き上がってくる。 
 それを振り払うように息を吐きだし、『天峰三師』は己の精神を統一し、研ぎ澄ましていくのであった――。
劉・涼鈴
おっすおっす! あなたが天峰三師? 私は劉家の涼鈴だよ!

行き詰ってる感バリバリだね! 顔見りゃ分かるよ!
でも、孫悟空だって仙人に弟子入りして何年も修行したんだから、焦っちゃダメだよ
それでも早く強くなりたいなら……私が稽古をつけてあげる、かかってきなよ!

覇王方天戟で火尖槍と斬り結ぶ!
ただの武器で宝貝と打ち合える、それがそのまま私とあなたの【功夫】の差だよ!
そらそらそらァ!

私と一緒に修行することでどんどん強くなる!
【劉山泊之後継者】として武侠を高みへ導く!
いいぞ! もっと強く! もっと速く!

しばらく打ち合ったら休憩~!
その間に襲撃の事を教えてあげる
実はここに魔教の連中が襲撃するって卦が出ててさぁ



 大瀑布より落ちる水が弾けて霧のように蒸せる仙界の片隅に在って、若き英傑たる『天峰三師』は精神鍛錬のために瞳を伏せ、その内なる精神鍛錬を欠かさぬ生真面目さがある若者であった。
 彼は蓮の花より生まれ、生まれながらにして宝貝を持つ存在である。
「――……」
 瞑想の中にありて、未だ彼の中には迷いや焦りが渦巻いている。
 何かに急かされているようでもあり、その答えが出ぬからこそ、彼は未だ己の心と向き合うことしかできなかった。

「おっすおっす!」
 そんな彼に声をかける一人の猟兵の姿があった。
 銀髪を揺らしながら赤い瞳で『天峰三師』に手を挙げて、彼の瞑想を中断させる。
「ここに客人とは珍しいな。僕以外に此処に来る人がいるとは思わなかった」
「あなたが『天峰三師』? 私は劉家の涼鈴だよ!」
 劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)は拱手でもって互いに礼を欠かすことはなかった。
 涼鈴にとって、彼の姿はひと目でわかる。
 なにせ、彼の顔は晴れやかではないからだ。
「行き詰まってる感バリバリだね! 顔見りゃわかるよ!」
「如何にも僕が『天峰三師』――……確かに。自分ひとりでの修行に行き詰まりを感じていたし、これ以上どうすればいいのかもわからない」
 素直な彼は生真面目さを絵に書いたような青年であるからこそ、涼鈴はうなずく。
「でも、孫悟空だって仙人に弟子入りして何年も修行したんだから、焦っちゃダメだよ」

 己の焦りを言い当てる涼鈴の言葉に『天峰三師』は言葉を発することはできなかった。
 彼女の言葉はもっともであり、今の己の焦りを示すように修行は遅々として進まないのだ。
「それでも早く強くなりたいなら……私が稽古を付けてあげる、かかってきなよ!」
「話が早い……ならば、お相手していただく!」
 二人の間には求道者としての共感がったのかもしれない。
 互いに手にした得物が激突し、衝撃波が瀑布の水流を切り裂く。手にした宝貝『火尖槍』は炎を操る槍である。
 それをただの武器である覇王方天戟が匠に打ち払い、受け流しているのだ。

「受け流される……! 一撃の重みをなかったかのように!」
「それがそのまま私とあなたの功夫の差だよ! そらそらそらァ!」
 涼鈴の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは劉山泊之後継者(リュウザンパクノコウケイシャ)として弛まぬ練磨の果てに至った境地であり、同時に己と同じく武を窮めんと志す武侠たちを高みに導く師としての力量でも在った。

「いいぞ! もっと強く! もっと速く!」
 打ち据える剣戟の音が瀑布に響き渡る。
 衝撃波が裂波のように水流を切り裂き、互いの功夫が高まっていく。どれだけ一人で修行を重ねたのだとしても、武は磨かれない。
 他者という存在が要るからこそぶつかり合い磨かれていく。玉石混交なれば、いずれも玉を磨くために必要なのは、同じく玉である。
 己よりも強き者を知る。
 打ち据える一撃一撃が、互いの練磨を高め、技量を高みへといざなうのだ。

「これが在野に在りし強者……!」
「まだまだいくよ! 私に付いて来れるかな!」
 涼鈴と『天峰三師』はお互いを認めつつ、そして技量を高めていく。
 しばらく打ち合った後、休憩をしながら彼女は告げる。
 此処にオブリビオンの襲撃があること。
 目的は『天峰三師』の殺害であること。
 そのような卦が出たことを告げるのだ。その言葉に『天峰三師』は改めて拱手でもって礼を尽くす。

「……それを知って駆けつけてくださったとは……誠にありがたきこと。及ばずながら僕も共に戦わせて頂きたい」
 彼の言葉に涼鈴は微笑んで手を取るだろう。
 どれだけ魔教の輩がやってくるのだとしても、恐れるに足りないのだというように、その微笑みは彼の背中を後押しすることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千思・万考
筋斗雲に乗って行動、白虎の白も連れていく
天峰三師に拱手一礼、修行中に水を差しちゃってごめんね
ここに訪れた事情を先に説明
もう話は聞いたかな?君が狙われているんだ、もうじきここが戦場になるよ
どんなに腕が立とうとも、数で攻められたのでは不利だろうからね
何で助けるのかって?
そうだな…襲われる理由に心当たりはあるかい?
どちらにせよ、これは理不尽な襲撃だからね
僕が助力する理由はそれで十分だ
まだ時間があるし、修行の続きといこうか
でも、君の攻撃は僕には荷が重いかな
白、相手をしてあげな
獣相手だとひとあじ違う修行になるんじゃない?
…その間に僕は襲撃対策に動こう
仙術で雷喚びの種をいくつも作り、周囲に撒いておくよ



 息を一吹きすれば現れる筋斗雲に乗り、白虎たる『白』と共に仙界の大瀑布の付近に降り立った千思・万考(花嵐・f33981)が見たのは猟兵と共に修行に励む若き英傑『天峰三師』の姿であった。
 己に近づくもの、その気配を感じ取れば青年の姿をした『天峰三師』と視線が合う。
 万考は拱手でもって礼を欠かさず、そして同時に謝罪する。
「修行中に水を刺しちゃってごめんね」
 そう詫びた彼に対して、『天峰三師』は構わないと同じく拱手でもって迎える。

 基本的に生真面目な性格であるのだろうが、それでも礼を欠かさぬ相手に対して修行を邪魔されたと考えることはないのだろう。
 水流が叩きつけられ飛沫が舞う中、『天峰三師』は筋斗雲から降り立った万考の元にやってくる。
「如何なる御用であろうか……もしや」
「ああ、もう話は聞いたかな? 君が狙われているということは」
 万考は、猟兵と『天峰三師』が修行をしていたということは、すでにことの経緯を聞き及んでいるであろうと判断する。

「じきここが戦場になるよ。どんなに腕が立とうとも、数で攻められたのでは不利だろうからね」
「確かにそのとおりだ。僕は未だ生まれたばかり。未熟であることも承知……しかし、何故あなた方は助けてくださるのか」
 それも当然の反応であろう。
 オブリビオンが此処に大挙として訪れることは理解できても、見ず知らずの存在を助ける猟兵たちの行動には何か益になることがあるのかもしれないと思うのも当然だ。

 逆に万考にとっては、それこそ知りたいことであった。
 オブリビオンが『天峰三師』を狙う理由。
 それを彼自身が自覚しているのならば、それを知ることがオブリビオンの企てを砕くことに繋がると思ったからだ。
「いや、僕には皆目見当もつかない……ただ、僕が早く成長しなければという思いだけが体の中に駆け巡っているようにも思えるんだ」
『天峰三師』は自らも知らぬ何かが自身にあることを自覚している。
 けれど、それを言葉にすることが難しいようである。

「どちらにせよ、これは理不尽な襲撃だからね。僕が助力する理由はそれで十分だ。まだ時間があるし、修行の続きといこうか」
 万考はうなずく。
 猟兵が誰かを助けることに理由はそう多くはない。
 理不尽に奪われる生命があるのならば、それを助けるために力を尽くすことなど当然である。
 とはいえ、己は仙人なれど貧弱で非力な体である。
『天峰三師』の攻撃に己は荷が重いと感じるがゆえに、共にやってきた白虎の『白』に彼の修行の相手をさせるのだ。

「四足の獣と戦うこともこれからあるかもしれない。一味違う修行になるんじゃない?」
「ありがたい。それでは、遠慮なく。それと……ご助力感謝する。襲撃のこともそうであるが、あなたの心遣い痛み入るばかりだ」
 そういって『白』と『天峰三師』は修行に移っていく。
 遠目に見たらじゃれ付くようなものであったかもしれないけれど。それでも万考は己の仙術たる雷喚びの種をいくつも作り上げていく。

 オブリビオンの襲撃は大軍勢によるもの。
 それも第一波、第二波と続けて襲いかかってくる。ならばこそ、ここで下準備を整えておくことは大事なことだ。
 敵の襲撃が予知できているからこそ、仕掛けておく場所には困らない。
 万考は次々と己の仙術を周囲に仕掛け、オブリビオンの大軍勢、その襲撃に備えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
『天峰三師』
風の噂に聞いたことがございます
私は董・白。崑崙の竜吉公主さまから教えを受けたモノです
大逆…オブビリオンの襲撃予知を聞き参上いたしました

私も未熟な身ではございますが、ともに切磋琢磨できたらと思います。
どうぞお顔見知りを…。

判定:WIZ

では、私は『道術』を用い…罠の術式を周囲に張り巡らしてきます。
天峰三師さまはよろしければこの地の事を教えてくださいませんか?

地の力の流れを読み利用するのは『道術』の十八番。
『龍脈使い』の術と『地形の利用』し、我が宝貝『十絶陣:紅水』の迷路を張り巡らせました。如何でしょうか?
え、これって金鰲派の宝貝じゃないかって?
昔少し交流(戦い)があってその時に少し…。



『天峰三師』――曰く、蓮の花より生まれ、生まれながらにして宝貝を二つ持つ若き英傑である。
 その姿は生まれたときより青年の姿をしており、槍の宝貝『火尖槍』と片足だけに一つの宝貝『風火大車輪』でもって空を飛ぶ者。
 一蓮托生の結末より蓮より生まれた彼は、同時に生まれた双子の妹『牽連四将』と別れて修行に励んでいる。
 その就業場所である大瀑布の側では、オブリビオンの大軍勢の襲撃に備えて猟兵が罠を仕掛けたり、『天峰三師』と共に修行を続けているのだ。

「風の噂で聞いたことがありましたが、このような青年の姿をされていたのでございますね」
 董・白(尸解仙・f33242)は僵尸でありながら仙人でもある。
 拱手でもって『天峰三師』と相対した彼女は己の名を名乗るのだ。
「私は董・白。崑崙の竜吉公主様から教えを受けたモノです」
「これは丁寧に。僕は『天峰三師』……未だ若輩ですが、どうか先達としてご指導のほどを宜しく賜りたい」
 生真面目な『天峰三師』は青年の姿であるが、丁寧に拱手でもって白を出迎える。

 すでに大逆……即ちオブリビオンの襲撃を聞き及んでいるからこそ話が早い。
「私も未熟な身ではございますが、共に切磋琢磨できたらと思います。どうぞお見知りを……敵の襲撃に対して罠を張り巡らしましょう。敵の数は膨大。数の不利を覆す力が必要ではありますが、時に知略を張り巡らせることもまた力の一端」
 白は己の道術を用い、罠の術式を周囲に張り巡らそうとする。
 その際に必要なのは、この大地のことである。
 この場で修行していた彼にとって、この大瀑布の側は勝って知ったる土地であろう。

「どうか、この地のことを教えていただきたいのです」
「然り。地の利を得ることまた戦いにおいては、己の足元を揺るぎないものにするもの……どうやら白殿は地の力を読み利用する道術を得手とされる方とお見受けします」
『天峰三師』は白と共に大瀑布を背に、オブリビオンの大軍勢が迫るのならば、と地形を説明していく。
 龍脈を読み取り、地形を利用することに寄って白の宝貝「十絶陣:紅水」(パオペイジュウゼツジンコウスイ)の効果をさらなる高みへと押し上げようとするのだ。
 敵が数で勝るのならばこそ、敵が一気呵成に攻め込むことができぬようにと妨害するのは戦の定石であろう。

 彼女の宝貝は、その点においては文句のつけようのない強力なものである。
 酸性を帯びた紅水の霧で出来た迷路を生み出す宝貝は、敵が大群であればあるほどに力を発揮する。
「これならば敵の数の利を潰すことができますね。ですが、これは……」
『天峰三師』の言葉に白は、指を唇に当てて内緒というように瞳を閉じる。
 茶目っ気のある仕草であったが、彼女が教えを受けた竜吉公主と相対する一派の宝貝に違いないようでもあったために彼は疑問に思ったのかも知れない。

「昔少し交流があって、その時に少し……」
 言葉を彼女が濁したことに生まれたばかりの『天峰三師』は特に疑問に思うことはなかったのだ。
 交流という言葉の裏に『戦い』という言葉が潜んでいたのだが、未だ若き英傑には知らなくてもよいことである。
 ならばこそ、白は言葉を濁し、笑って誤魔化すのだ。

「ともあれ、これで下準備は整いました。後は大逆の軍勢を待ち受けるのみです」
 白は己の宝貝の仕込みを完了させ、オブリビオンたちが向かってくる方面を見やる。
 何故彼が狙われるのかはわからない。
 けれど、オブリビオンが無意味に英傑を狙うことはないはずだ。
 それに彼が狙われるということは、いずれ『天峰三師』の双子の妹である『牽連四将』もまた標的に成るかも知れない。
 ならばこそ、白はオブリビオンの悪逆を見過ごすなどできようはずもなく。
 己の為せることを為そうと意気込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

外邨・蛍嘉
人格:クルワにて。男女双子だと思い入れが強い。

…何でショウ?見たことのあるようなないヨウナ?
デスガ、それはそれ。修行の一助とでも。

まずは、現地の礼儀に習って拱手。その後、修行の手伝いに来た、と。
怪我を厭わずに、斬り結びマショウ。怪我をしても…ほら、陽凪が。この体当たり、陽凪にとってはじゃれつきなのデスヨ。

ところで、アナタは何を目的に修行をしているのデショウカ?
ワタシの場合だと、剣を極めたくて修行してイマシタガ。
(そして雨剣鬼クルワになった)


陽凪、ゆったり泳いで怪我をしたら体当たり(じゃれつき)。怪我という概念もぐもぐ。



 奇縁悪縁良縁。
 そのどれもが人が選ぶものではないのかもしれない。
 いつかのどこかで結ばれた縁が、新たな出会いを呼ぶのだとしたら、封神武侠界で新たに結ばれる縁は如何なるものであったことだろうか。
 外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)、そのうちにあるもう一つの人格、『クルワ』はこの縁に何を思っただろうか。
「……何でショウ? 見たことのあるような、ないヨウナ?」
『クルワ』の視線の先にあるのは、若き英傑『天峰三師』である。

 青年の姿をしているが、蓮の花より生まれた片割れである。
 双子であるという彼の妹『牽連四将』の姿は此処にはない。
 生まれてすぐに離れて彼等はそれぞれに修行に励んでいるようである。そんな『天峰三師』をオブリビオンが何故狙うのかはわからない。
 けれど、そでも『クルワ』は男女双子に対しての思い入れが強かった。
 自分たちという猟兵の成り立ちからかもしれない。

 しかし、それはそれである。
 今成すべきことは『天峰三師』との協力である。
「『クルワ』と申しマス。修行のお手伝いに参りマシタ」
 拱手でもって『クルワ』は大瀑布の側の大地に降り立つ。隣に浮かぶ巨大熱帯魚である『陽凪』の姿は、ここ封神武侠界の仙界であっても物珍しいものであった。
 ふわりと宙に浮かぶ『陽凪』の姿に『天峰三師』は最初こそ戸惑いつつも、礼節を重んじるがゆえに拱手でもって相対する。
「これは丁寧に。僕は『天峰三師』……今日は多くの客人とお会い出来て光栄です」
 それに、と彼は続ける。

「此度は、僕の窮地を知って駆けつけてくれたこと、感謝します」
「イエ、では始めましょう。怪我を厭わず……真剣勝負だからこそ得られるものもあるデショウ」
『クルワ』は己が鬼であることを示すように真剣での修行に挑む。
『天峰三師』が持つ宝貝『火尖槍』もまた凄まじい威力を持つ槍である。真剣勝負だからこそ、生傷も耐えないだろう。
 けれど、『陽凪』のじゃれつきは、体当たりのようでもあったが、ユーベルコードでもあった。

 体当たりと言う名のじゃれつきによって、真剣でもって傷つけられた傷はたちまちに癒やされていく。
「これは……」
「エエ、これが 『陽凪』の力なのデスヨ」
 この力があれば、『天峰三師』の経験値はどんどん溜まっていくことだろう。
 しかし、『クルワ』には疑問があった。
 生まれたばかりである彼には何か目的があるのだろうかと。
 彼は迷っているようでも在った。いや、戸惑っているのかも知れない。生まれたばかりであっても宝貝と共にあり、その力はすでに英傑と呼ぶに相応しいものである。

「ところで、アナタは何を目的に修行をsているのデショウカ?」
 自分の場合は剣を極めたくてという目的がある。
 それこそ鬼に至るまで、その道を走ったという自覚がある。けれど、『天峰三師』はどうなのだろうか。
 彼の太刀筋にある戸惑いは、きっとその目的が定まっていないからではないか。
「……ただ、何かに急かされているような気がするだけなのです。僕は、きっと何かを守るために生まれてきたということはわかる。けれど、何を守ればいいのか、それがわからない」

 彼の心の中にあるのは間違いなく善性であろう。
 けれど、その善性が向かう先がわからずに戸惑っているのだ。
『陽凪』が怪我という概念を陽、燦々(アラユルモノヲショクス)と食し続けている。
 体当たりと言う名のじゃれつきをする『陽凪』の頭をなでながら『天峰三師』は未だ自分の道行きを定めることができないようであった。
「ナラバ、戸惑いを忘れずにいなければなりマセンネ。人は迷いながら進んでいく。だからこそ、己という存在を見定めることができマス」
 何度でもくじけていい。
 けれど立ち上がることを忘れてはならないのだと『クルワ』は告げる。

 彼の戸惑いは理解できる。
 だからこそ、その戸惑いを解消できるのもまた己自身であると、そう告げ、『クルワ』と『天峰三師』は修行を続ける。
 今できることはそれだけなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陸・橘子
【美芳さん(f32771)と】

あれが『滝行』というものなのですね~。

なるほど。
あの『宝貝』で滝を逆流させようということでございましょうか。
わたくしも試させていただきましょう~。

滝に【錘撃衝破】を使ってみますが、
少し堰き止めるようになったものの成功したとは言えず……。

なかなか難しいですね。
美芳様もおひとついかがでしょう。これはかなりな強敵ですよ。

わたくしは三師様のとなりに腰掛け、おやつを勧めたいと思います。

わたくし、修行というものをしたことはないのですが、
心穏やかでなくては、為せることも為せないのではないでしょうか?
焦っても良い結果はでないように思います~。

あ、美芳さんも、おやついかがですか~?


秦・美芳
【橘子ちゃん(f32784)】と

強くなるには修行、これ大切(こくり)
めいふぁんもまだまだ強くなるために修行の旅の途中
天峰三師くん、一緒に滝行させて……

橘子ちゃんが豪快な件について

めいふぁんの宝貝、まだ雷公鞭しかないんだけど
ここで使うとお魚がぷかーって未来しか見えないよ!よ!

ちなみに【降魔連打】なら瀑布を抉るくらいはできるかも
ていやーっ!!

とか修行していたら
いつの間にか橘子ちゃんと天峰三師くんが休憩モードね?!
あ、めいふぁんもいただきまーす♪(もぐもぐ)
張り詰めた糸が切れてしまうことがないように
適度に緩むのも必要よ

天峰三師くんはやっぱり火尖鎗を使った戦いが得意?
後でめいふぁんと手合わせしようよ



 猟兵たちが続々と封神武侠界、仙界に流れ落ちる水流むせる大瀑布へと集まってくる。
 それはこの地にて修業を続ける若き英傑『天峰三師』を迫るオブリビオンの大軍勢から救うためであった。如何に若き英傑と言えど地平線を埋め尽くすほどの大軍勢を前には多勢に無勢である。
 敵うべくもなく殺されてしまうという予知より彼等は共に修行に励み、そして大軍勢を迎え撃つ知略を巡らせるのだ。

 秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)と陸・橘子(大力放松・f32784)もまたそんな猟兵であった。
「強くなるには修行、これ大切」
 こくりと頷き拱手でもって修業を続ける『天峰三師』と相対する。
 生真面目な青年である彼は、生まれてから僅かな時間しか経っていないにも関わらず、青年の姿を持つ。
 手には宝貝『火尖槍』と片足に一つの『風火大車輪』。
 それだけの力を擁していながら、未だ何かに焦るように修行を続けているのだ。

「あれが『滝行』というものなのですね~」
橘子はのんびりとした口調で滝行に勤しむ『天峰三師』を見やる。
 あれだけの水量に負けず立っているだけでも尋常ではない。二人に気がついた『天峰三師』が拱手でもって礼をしてから川より上がってくる。
「『天峰三師』と申します。お話はすでに聞き及んでおります。不肖の身を思って駆けつけてくださったことを感謝いたします」
 すでに他の猟兵からオブリビオンの大軍勢が来襲することを聞き及んでいるのだろう。話が早くて助かる。

「めいふぁんもまだまだ強くなるために修行の旅の途中。『天峰三師』くん、一緒に滝行させて……」
 美芳もまた修行中の身である。
 そんな彼女もまた滝行に加わり水に打たれていく。精神修養もさることながら、膨大な水量に負けぬ体幹を作ることもまた己の肉体を鍛え上げることに繋がる。
 それにしても尋常ではない水量である。
 大瀑布より流れる水はまるで鉄塊でもって身を打ち据えられるかのようである。

「なるほど」
 そんな二人を見ていた橘子がうなずく。
 何がなるほどなのかと美芳は滝に打たれながら見ていた。どうするつもりなのかと思った瞬間、橘子の瞳がユーベルコードに輝く。
 放たれた拳が大瀑布の流れ落ちる水を穿ち、その水の流れを一瞬であっても堰き止めたのだ。
 錘撃衝破(スイゲキショウハ)は、集約された重力波を拳に載せて放つユーベルコードである。水流を僅かにせき止めるに至ったのは驚天動地である。
 これには『天峰三師』も目を丸くしている。
「なかなか難しいですね。美芳様もおひとついかがでしょう。これはかなりな強敵ですよ」

 あれだけのことをしておきながら橘子はにこやかに笑うばかりであった。
 豪快すぎる。美芳は己の宝貝のことを考えた。
 未だ宝貝は一つしか持っておらず、ここで使うと魚がぷっかーと浮かぶ光景しか彼女には想像できなかった。
 けれど、己の五体がまだある。
 むしろ、彼女にとってはこちらが本分と言えるのかもしれない。
「降魔拳伝承者としての意地もあるよ! ていやーっ!!」
 陶器を纏った拳や蹴撃が大瀑布の水流を切り裂き、穿つ。
 しかし、水流を阻む程度ですぐに流れ落ちる水は形を変え、元の大瀑布へと姿を変えていく。

「お見事です。僕はまだまだ……」
 二人の修行風景を見やり、『天峰三師』は焦りを感じているようであった。
 英傑と言えど、生まれて僅かしか立たぬ彼には猟兵には及ばない。されど、その胸の中にある早く強くならなければならないという思いは、彼の歩みを掴む足かせになっているように思えたかもしれない。
「わたくし、修行というものをしたことはないのですが」
 そう前置きして橘子は『天峰三師』の隣に腰掛ける。
 何を、と訝しむ『天峰三師』の顔を見上げながら、橘子は隣を手で示す。

「心穏やかでなくては、為せることも為せないのではないでしょうかか? 焦っても良い結果はでないように思います~」
 のんびりとした様子であるが、それもまた真理であろう。
 橘子の様子にこれまで焦りに駆られていた『天峰三師』はすっかり毒気が抜かれたかのように苦笑いをしながら彼女の隣に座る。
 菓子を進められれば、顔が綻ぶ。
 彼に今必要なのは確かに修行であったのかも知れない。
 けれど、真に必要なのは心の余白、余裕を得ることであったのだろう。菓子の甘みは、それだけで凝り固まった心をほぐすようであった。

「あ、めいふぁんもいただきまーす♪」
 まぐまぐと美芳が橘子の持っていた菓子を口でぱくついて満面の笑顔を浮かべる。
 張り詰めた糸が切れてしまうことがないようにと、適度に緩むことも必要である。
 橘子はそんな美芳の様子に微笑み、修行の最中であっても心の余裕は大切であることを示す。

 これより訪れるオブリビオンの大軍勢を前にして、三人は穏やかな時間を過ごすだろう。
 美芳と『天峰三師』は己の得物を手にして手合わせを続ける。
 時に休み、時に励む。
 橘子はそんな二人の様子を微笑ましげに眺めながら、菓子の甘みを堪能する。
 危機感を感じることも必要であったかも知れないが、それでもこの日に得た余裕はいつの日にか実を結ぶだろう。

 その予感に橘子はやはりいつものように微笑むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
『天峰三師』様ですね
私は騎士、トリテレイア
猟兵や襲撃については既にご存知かと思われますが、宜しくお願い致します

(顔に何処か覚えが…直接面識がある方では無いようですが…)

時に『天峰三師』様は多数の敵を相手取った事は御座いますか?
此度の襲撃は軍勢との事、英傑同士の一騎打ちとは異なる立ち回りも必要かと

例えるなら“式神”でしょうか
私が操る妖精で貴方の修練をお手伝いいたします

訓練用にレーザー出力絞りつつ
数の優位活かした様々な戦法を披露

その機体は囮です!

盤上の駒の様に彼我の位置を意識し二手三手先を読む
さすれば数の戦いを制する事が出来るでしょう

(類似データ検索…グリプ5機密文書閲覧時の記憶にヒット
…!?)



 オブリビオンの大軍勢襲来のに備え、『天峰三師』と猟兵たちは修行に、罠にと己たちに出来ることを残された時間で為そうと懸命であった。
 それは生きる者にとっては当然のことであっただろう。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそういった者たちを守るためにこそ、己の鋼鉄の体があるのだと信じていたことだろう。
「『天峰三師』様ですね。私は騎士、トリテレイア。猟兵や蹴撃についてはすでに御存知かと思われますが、宜しくお願いいたします」
 異世界の礼儀。
 拱手でもって鋼鉄の体を示すトリテレイアに『天峰三師』は特に驚く素振りを見せていなかった。

 猟兵であるからこそ他者に違和感を与えることはない。
 けれど、『天峰三師』はそれ以前にトリテレイアの風貌に違和感を覚えていないようであった。礼節には礼節を返すように拱手でもって『天峰三師』は礼を欠かさない。
「ご助力感謝いたします。騎士、トリテレイア。ええ、すでに僕の生命を狙って大逆の輩がやってくるということは聞き及んでいます。此度は感謝の言葉も尽くし難く」
 彼の姿形をトリテレイアは知っていたわけではない。
 顔に何処か見覚えがあったように思えたのは、彼の電脳の為せる技であったことだろう。
 直接面識がある者ではないという判断であったが、トリテレイアは時間が残り少ないことを顧みて話をすすめる。

「時に『天峰三師』様は多数の敵を相手取ったことはございますか?」
「いえ、生まれてすぐに修行に入りましたので、戦いは此度が初めての経験です」
「ならば、此度の襲撃は軍勢であることをご留意ください。英傑同士の一騎打ちとは異なる立ち回りも必要かと」
 そう言ってトリテレイアは自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)を呼び出す。
 複数の偵察妖精型ロボであるが、頭部に内蔵されたレーザーでもって今回の襲撃を僅かなりと再現できる。

「例えるなら“式神”でしょうか。私が操る妖精で貴方の修練のお手伝いいたします」
 そういってトリテレイアと『天峰三師』は修行を開始する。
 これまで猟兵と手合わせはあったが、たしかに多数との戦いを想定した修行はしたことがなかった。訓練用にレーザーの出力を絞りつつ、数の優位を活かした様々な戦法をトリテレイアは披露するのだ。
「――ッ! これは、たしかに……!」
 対する『天峰三師』は初めてとは思えぬほどの立ち回りを見せる。
 これは天性のものなのか、それとも彼の体に染み込んだ何某かの影響なのかはわからない。

 けれど、その動きは見事であった。
 若き英傑と呼ばれるだけの技量はある。だが、経験が圧倒的に不足しているのだ。
「その機体は囮です!」
 盤上の駒のように彼我の位置を意識し、二手三手先を読む。
 それが多数との戦いの定石である。己の立ち位置と敵の位置を知ることが、肝要なのである。
 囮にした機体の背後から迫る妖精ロボのレーザーによる射撃を受けて『天峰三師』が大地に叩きつけられる。
「く……背後にまで気が回らなかった……」
「己の背後にまで気を配り、己の背を取られぬのように。さすれば数の戦いを制する事ができるでしょう」
 トリテレイアは次々と多数の戦術を『天峰三師』へと叩き込んでいく。

 残された時間でどれだけのことを伝えることができるかはわからない。
 全てでなくてもいい。
 トリテレイアは己の電脳の中にあるデータを、今の『天峰三師』との動きに照らし合わせていく。
 完全ではないけれど、類似するデータを見つける。
 その事実にトリテレイアは驚愕する。何故他世界の存在のデータと類似しているのか。
 直接トリテレイアが見たことのないデータだけの存在。
 しかし、目の前の『天峰三師』と己のデータが似通っているという事実だけは事実として受け入れなければならない。

「……如何なることでしょうか」
 恐らく、『天峰三師』にこの事実を伝えても真実は未だ遠いだろう。
 けれど、足がかりは出来たと言ってもいいだろう。トリテレイアは修練に励む『天峰三師』を見やり、その吸収の速さにもまた驚愕するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ほほう、火尖槍に風火大車輪とな。
なんとBBQ向きの宝具っぽい名前であろうか!」

これはBBQ(勝手に命名)をオブリビオンから守り抜き、お礼にBBQしてもらうしかあるまい!

「というわけでBBQよ、これより美少女天才魔術師たる我が修行をつけてやろう!」

宝貝と魔術は関係ない?
ええい、細かいことを気にするでない!

「というわけで、まずは串打ち100本修行だ!
大瀑布を食材に見立て火尖槍で串を打つのだ!」

それが終われば、BBQの焼きのために『風火大車輪』の使い方もマスターしてもらおう。

「大瀑布を蒸発させるくらいの勢いで炎を起こすのだ!」

串打ち三年、焼き一生というからな。
その宝貝、簡単には習得できないと思え!



 蓮の花より生まれし『天峰三師』の持つ宝貝『火尖槍』は炎で持って敵を穿つ槍である。
 同時に彼の片足に備えられた『風火大車輪』は風を蹴って飛ぶ宝貝だ。
 生まれながらにして二つの宝貝を備えた若き英傑『天峰三師』は未だ未熟なれど、オブリビオンの大軍勢に殺されていい理由など何処にもない。
 オブリビオンが何故彼を狙うのかは定かではないが、それでも猟兵たちは彼の元につどっていたのだ。

「ほほう、『火尖槍』に『風火大車輪』とな。なんとBBQ向きの宝貝っぽい名前であろうか!!」
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)はかなり大雑把であった。
 何を持ってと言われたのならば、きっと『火』の文字であろう。
 何かに付けて彼女は肉料理を所望する。大体の食べ物は火を通せば大体なんとかなると思っている当たり、彼女のこれまでの人生がわかるというものである。
 すでにフィアは『天峰三師』をオブリビオンから守り抜き、お礼にBBQしてもらおうと画策する。
 完全に下心である。

「というわけでBBQよ、これより美少女天才魔術師たる我が修行を付けてやろう」
「えぇ……」
 流石に生真面目な『天峰三師』もこれには若干の苦笑いも浮かべられないほどに困惑していた。
 BBQってなんぞやという疑問を吹き飛ぶほどの唐突さ。
 彼女もまた猟兵であることはなんとなく理解できる。けれど、その瞳に輝いているのは、『食』と『欲』である。
 正直、彼女に関わると碌な目に合わないだろうなという感じが、ひしひしとするのだ。

「ええと、ですね。宝貝と魔術というものは……その、あまり関係がないかもしれないと申しますか」
「ええい、細かいことを気にするでない! というわけで、まずは串打ち百本修行だ! 大瀑布を食材に見立てて『火尖槍』で串を撃つのだ!」
 フィアの謎の修行が始まる。
 今完全に串打ちって言ったよね?
 だが、生真面目な『天峰三師』は言われたとおりにやってみるのだ。あ、やるんだ……と思わないでもなかったが、生真面目なのだから仕方ない。
 恐らく自分より年長者であり、長きにわたる戦いにおいて己よりもたくさんの経験を持つ先達たる彼女に敬意を払った結果である。

 フィアはこういうところある。
「お、終わりました……!」
「ならば次はBBQの焼きのために『風火大車輪』の使い方もマスターしてもらおう。大瀑布を蒸発させるくらいの勢いで炎を起こすのだ!」
 無茶ぶりである。
 だが、ある意味利に叶っているのかも知れない。いや、理ね。
 別にフィアの利益の利に適っているという意味ではない。多分。めいびー。

 出力の最大値を引き出すためには、一度己の限界を知る必要がある。片足だけに備えられた『風火大車輪』の一つでは本来の宝貝としては不完全であるかもしれない。
 けれど、その最大値を知れば、補うなりの工夫はできるようになるはずだ。
「串打ち三年、焼き一生というからな。その宝貝、簡単には習得できないと思え!」
 フィアがふんぞり返りながら、『天峰三師』の修行を見やる。
 後方師匠面とはこのことである。
 フィアの周りには生真面目な人が多いのだろうか。
 彼女のよくわからない威厳さに騙されてはいないだろうか? そんなこんなで『天峰三師』は己の限界を更新し続け、大瀑布において己の宝貝を徐々に使いこなせるようになっていったのだ。

「ふ、これが我式修行の真骨頂よ!」
 本当かなぁ――?

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『刀刃拳門下生』

POW   :    刃化
【剣と拳を組み合わせた拳法、刀刃拳の技】が命中した対象を切断する。
SPD   :    舞刃演武
自身の【体を一振りの剣に見立て、空を舞う剣】になり、【舞う様に攻撃する】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ   :    鍛磨
【身を鍛え、心を研ぎ技の切れ味を磨いた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。

イラスト:ばんどー

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 大瀑布を背に猟兵たちは見るだろう。
 地平線を埋め尽くすかの如き大軍勢を。それはオブリビオンの大軍勢であり、第一波と第二波が合流した数である。
 第一波である『刀刃拳門下生』たちは、数を頼みしたオブリビオンであるが、どれもが粒ぞろいである。
 これを退けたとしても、後に迫るはさらなる数の第二波である。

「まさしく背水の陣……というわけですね」
『天峰三師』は片足に備えられた宝貝『風火大車輪』でもって、遠く地平線を埋めるオブリビオンの大軍勢を見やる。
 その瞳に恐怖はなかった。
 何故ならば、彼の隣には頼もしき猟兵達がいる。
 どれだけの数を揃えようとも、彼の心には今、正しさと強さ、そして余白がある。そして、多数を相手取る戦術を得ているのだ。

「みなさんを巻き込むこと、申し訳なく思っております。ですが、どうかお力を貸してください。いつの日にか、この御恩に報いたいと、そう心に強く思うのです」
『天峰三師』は手にした槍の宝貝『火尖槍』を構える。
 見えるは『刀刃拳門下生』たち。
 迫る彼等を打倒し、さらなる第二波に備えなければならない。

 圧倒的数の不利。
 されど、猟兵たちはこれらを打倒し、若き英傑をオブリビオンの魔の手から守らねばならぬのだ――。
千思・万考
狙われているのは君だし、僕と白(虎)は君に合わせて動くから、思う存分槍を振るうといいよ

さっきの交流で彼の動きの傾向は概ね把握したし、彼が撃破されない事を念頭に動くつもり

白は、敵が到着する前に放して別行動
僕たちとの連携は気にせず存分に喰い荒らすんだ、そう言い含め。
敵が経験を武器にするのなら、こっちは予測不能な要素を足して戦場を掻き乱してやろうじゃないか。

足場が悪い場所では筋斗雲に乗って行動。
雷喚びの種を仕掛けた場所へ攻撃を交わしたりして誘導&攻撃したり。
白が虚を突いた敵や、三師の死角から攻撃する敵に雷公鞭で雷を落とし。
大勢飛び掛かってきたなら布槍でなぎ払い。
天峰三師と連携するかたちで動くよ



『刀刃拳門下生』たちは、生前においては確かに武林において研鑽を積んだ者たちであったのだろう。
 だが、今はオブリビオンと化し、その研鑽は生命を奪うことにだけ向けられている。
 ぐるぐると頭や体に巻き付いた包帯は、彼等がすでにオブリビオンと化した傀儡であることを示していた。
「……」
 彼は何も言葉をはっしない。
 ただ己の振るう拳の鋭さを誇示するためだけに、生前の研鑽を積んだ拳を振るうのだ。

「彼等はもはや人にあらず……あれがオブリビオン……」
『天峰三師』は地平を埋め尽くすほどの大軍勢を前にして僅かにたじろいだ。
 同時に自分を狙うオブリビオンの軍勢との戦いに猟兵たちが巻き込まれることをこそ厭うだろう。
「狙われているのは君だし、僕と『白』は君に合わせて動くから、思う存分槍を振るうといいよ」
 千思・万考(花嵐・f33981)は彼と共に並び立ち告げる。
 これまで『天峰三師』の動きは概ね把握している。
 猟兵たちとの修業によって力が底上げされているのも理解している。けれど、この数だけは如何ともし難いものがある。

 ならば、彼が撃破されないことこそなさねばならないことだ。
「さあ、お行き」
 万考は白虎の『白』にそう明治、別行動をする。己達との連携を気にせずにオブリビオンを喰らえと命じ、万考は筋斗雲に乗り空へと舞い上がる。
「助力感謝いたします」
『天峰三師』は片足だけに備えられた『風火大車輪』でもって空を飛び、己の手にした槍の宝貝『火尖槍』を振るう。
 炎が吹き荒れ、『刀刃拳門下生』たちが次々と薙ぎ払われていく。

 多数との戦いを学んだ彼に死角はない。
 白虎の『白』が戦場を駆け抜け、縦横無尽にオブリビオンたちの連携を分断しているからこそ、『天峰三師』がのびのびと空での戦いを繰り広げることができるのだ。
 それを万考は筋斗雲の上から見やる。
「仕掛けておいた『雷喚びの種』……ここまで乱戦であれば、さらに君たちを引っ掻き回すことができるだろう」
 彼の手にあるは、宝貝『雷公鞭』。
 しかし、万考が何かをしようとした瞬間、『刀刃拳門下生』たちは狙いを彼に定め、一斉に襲いかかってくるのだ。

「万考殿!」
 叫ぶ『天峰三師』の言葉に万考の瞳がユーベルコードに輝く。
 仕掛けはすでに終わっている。
 なんのために己が先んじて『雷喚びの種』を戦場に仕掛けていたと思うのだ。
 彼の仕掛けた『雷喚びの種』はあくまでマーカーである。
 彼の手にした宝貝が輝くのを合図にして、『雷喚びの種』が囲う場所へと落ちるは裁きの雷。

「ようこそ、来てくれて嬉しいよ」
 千客万雷(センキャクバンライ)とでも言うべきであろうか。
 己に飛びかかってきたオブリビオンを布槍で薙ぎ払い、天より落ちる雷撃の一撃が多くの『刀刃拳門下生』たちを撃ち貫き、視界を明滅させるほどの白き雷が塗りつぶして霧消させていくのだ。
「仕掛けは上々。後はこのまま、この一波を吹き飛ばそう。まだまだ行けるね?」
 万考は『天峰三師』へと呼びかける。

 それに応えるように炎が吹き上がり、槍の一撃がオブリビオンを刺し穿つ。
 白虎の『白』も応えるように咆哮し、戦場と成った大瀑布を背に二人と一匹は『刀刃拳門下生』たちの連携を断ち切るように次々と撃破していく。
「それだけ研鑽を積んできたのだとしても、予測不可能な要素……罠があるかもしれないと今の一撃で思い知ったことだろう。敵も容易には飛び込んではこない」
 けれど、それでいい。
 敵が身長になるということは、逆に敵がひとかたまりに成るということでもある。

 その時こそ、万考のもつ宝貝『雷公鞭』が放つ裁きの雷の本領である。
 極大の雷が再び天より放たれ、並み居るオブリビオンを吹き飛ばし、戦いがさらなる混乱へと陥っていくのを万考は筋斗雲の上から見下ろし、己に従う『白』と共に戦場を駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
それにしても、戦いは数だよ!…と言ってもあれだけの数どこから持ってきたのでしょう。
兵站や士気もそうですが、ここまでの数を揃えて攻めてくるなどたった一人の英傑に対しては過剰すぎます。
…『天峰三師』にはそれだけを仕掛ける価値がある…とみてるということでしょうか?

それでは、先ほど仕掛けた罠を抜けてきたようですね。ではこちらも仕掛けます。

さきほどの罠の仕掛け時にこの地の地形と龍脈事情は察しています。
罠の出口の『地形を利用』し『道術』により『龍脈使い』で強化した太極符印を発動させます。
氷の津波と炎の竜巻による『範囲攻撃』で吹き飛ばし押し流します。
敵は死にたいです、止めを!!



 地平線を埋め尽くすかの如き大軍勢。
 それを目の当たりにした董・白(尸解仙・f33242)にとって、それは過剰とも言える戦力であった。
 たった一人の若き英傑『天峰三師』を葬り去るためだけにこれだけの軍勢が必要なのかと思うほどのものであった。
 戦いとは数。
 とは言え、あれだけの数を何処から用意したのか。
 白にとって、それは不可思議なことであったし、疑問に思って当然のことであった。

「……『天峰三師』にはそれだけを仕掛ける勝ちがある……と見てるということでしょうか?」
 未だ真実は暗闇の中である。
 何故彼が狙われるのか。それは白や他の猟兵も知る由もないことである。
 だが、だからと言ってみすみす彼を殺されるわけにはいかない。
 白が仕掛けた宝貝による迷宮。
 その酸性の霧が蒸せる迷宮の中をオブリビオン『刀刃拳門下生』たちは徐々に抜け始めていた。
 他の猟兵たちの戦いや、『天峰三師』の修行により底上げされた力で軍勢を押し返して入るが、これはまだ第一波にすぎないのだ。
 迫る第二波が来た時、少しでも多くのオブリビオンを排除していなければ、今度は逆にこちらが押し返されてしまう。

「こちらの紅水陣を抜けてきたようですね。では、こちらも仕掛けます」
 白はすでにこの地における龍脈の位置、そして地形を把握している。
 紅水陣を敵が抜けてくることは予めわかっていたことだ。ならば、その迷宮の出口という地形を利用し、道術に寄って龍脈を利用して己の身に宿るユーベコードの力を底上げするのだ。
「宝貝「太極符印」(パオペエタイキョクフイン)!」
 手にしたのは符である。
 ユーベルコードに輝く宝貝は、氷の津波と炎の竜巻に寄る圧倒的な範囲攻撃でもって『刀刃拳門下生』たちを立ちどころに霧消させる。

 それでも白の用意した迷宮から飛び出してくる『刀刃拳門下生』たちは氷の津波と炎の竜巻の勢いが弱まることを知る。
 彼女のユーベルコードは制御が難しいのだ。
 常に最大威力を維持することは、未だ白であっても困難である。
 それを彼等は見越したように、勢いの衰えた氷の津波を飛び越え、炎の竜巻を躱して白へと迫る。
「確かにこちらの二段構えの攻勢をも乗り越えてくるのでしょう……ですが、あなたたちはすでに死に体です、『天峰三師』、止めを!!」

 白の言葉と共に片足にだけ存在する一つの『風火大車輪』から炎を噴出させながら、『天峰三師』が宝貝『火尖槍』を手に白に襲いかかる『刀刃拳門下生』たちを薙ぎ払う。
「おまかせを! これより僕の後ろには敵をゆかせはしません。どうか、符術の立て直しを!」
 白を守るように『天峰三師』は飛び回り、火尖槍の一撃を『刀刃拳門下生』たちへと放ち、無償させていく。

 多数との戦い。
 そして連携。底上げされた力と共に『天峰三師』は猟兵たちに及ばないまでも、彼等の戦いをサポートすることができるようになっていた。
 白は、そんな彼を見上げ己のユーベルコードの制御に専念する。
 あれだけの数を用意してきたのだ、迫る第二波もまた粒ぞろいであろう。即座に宝貝の制御でもって迷宮を維持し、流れ込む龍脈のちからを利用して白は再び氷の津波と炎の竜巻でもってオブリビオンの大軍勢を押し返すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・イングラム
私の世界ではオブリビオン・フォーミュラが倒れ、もはやオブリビオンが自然発生することはなくなりました

ナイアルテさんの導きを受けて初めてこの世界に来ましたが、まさかあれほどのオブリビオンの軍勢が存在するだなんて
私の今の力では他の皆さんのようにあれらの敵を倒すことなどできないでしょう

ですが、この世界の若き英傑を守るために力を尽くしましょう
あの方は私と違い、限りある命しか持たないのですから

遠間から“ジャッジメント・クルセイド”を放ち、敵の接近を阻みます
敵に近付かれてしまったら、“無敵城塞”で防御
できるだけ多くの敵を引き寄せてから“デッドマンズ・スパーク”を放ち、一体でも多くの敵を屠ることを狙います



 地平線より迫りくるオブリビオンは、まさに大軍勢と呼ぶに相応しい数であった。
 第一波である『刀刃拳門下生』たちは己の過去の研鑽を持って猟兵達に襲いかかり、標的である若き英傑『天峰三師』へと刃を向ける。
 蓮より生まれし若き英傑『天峰三師』は生まれて未だ日が浅い。
 されど、手にした宝貝『火尖槍』と片足だけに備えられた一つの『風火大車輪』でもって空を縦横無尽に飛び、その鋭き一撃を放つ。

 オブリビオンがいかなる理由で彼を狙うのかは未だわからず。
 けれど、彼をみすみす喪っていい理由などない。
「まさかあれほどのオブリビオンの軍勢が存在するだなんて……」
 イングリット・イングラム(聖騎士・f35779)もまた猟兵に成って日が浅いのだろう。
 己が他の猟兵たちのようにオブリビオンを圧倒することは出来ないであろうと感じていた。
 それでも彼女は駆けつけたのだ。
 オブリビオンによって無為に奪われようとする生命を守るために、彼女は己の力と存在を持って相対するのだ。

 彼女の出身世界であるアックス&ウィザーズはオブリビオン・フォーミュラの討たれた世界である。
 過去より滲み出るオブリビオンが発生することこそなくなったが、それでもこの世界、封神武侠界がかつての己の世界のようにオブリビオンの脅威にさらされているのならば、どれだけの大軍勢であろうとも怯む理由はなかったのだ。
「ご助力感謝いたします、異邦の騎士よ」
 若き英傑『天峰三師』がイングリットに告げる。
 空を飛ぶ彼はすぐに駆けつけてくれた彼女に拱手でもって礼を欠かさない。

「こちらはおまかせを」
 イングリットは彼の姿を見やる。
 どれだけ生まれながらにして宝貝を持っていたとしても、彼は有限なる生命を持つもの。
 己のように死を超越したものではないのだ。
 そう、彼女はデッドマンである。
 例え、腕をふきとばされようとも、胸を穿たれようとも時間とともに復活する。五体が散り散りに成ったとしても、彼女は立ち上がってくるだろう。
 何故ならば、彼女はオブリビオンの脅威から奪われる生命を守るために存在しているのだから。

「この世界の若き英傑を守るために力を尽くしましょう……ジャッジメント・クルセイド」
 彼女の指先がユーベルコードの輝きに満ちる。
 放たれるは裁きの光。
 天から落ちる光が『刀刃拳門下生』たちに落ち、その光が彼等を撃つのだ。
 確かに自分の力では『刀刃拳門下生』たちを圧倒することはできないだろう。けれど、近づかれる前に敵を穿てばいい。
 接近を阻み、彼等の研鑽による刀刃拳を己に向けさせなければいいのだ。

「騎士の方、前衛はおまかせを。僕が壁になります!」
『天峰三師』がイングリットを護るように前衛に立ち、オブリビオンの接近を阻む。
 彼は確かに生まれて日が浅いからこそ修行に励んでいた。
 そこに猟兵たちの知識や教えが加わることにより、イングリットを護るように多数との戦いをするようになっていたのだ。
「ありがたいことです。背後はおまかせを。ですが、こちらのことはどうかお気になさらず」
 イングリットは微笑む。
 己が守ろうとした者に守られる。いや、これはそういうことではないのだ。
 互いの存在が互いの力を高めあっている。
 イングリットにはそう感じることだろう。

 ならばこそ、彼女のユーベルコードは地平線を埋め尽くすほどの大軍勢を前にしても陰ること無く輝き続け、天からの光でもってオブリビオンを撃滅し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
さっきは孫悟空を例にしたけど……関連した面白いの見せてあげる!

【身外身法】! 分身の術だ! 1020人の私たちが相手をしてやる!
だからもう数の不利は気にしなくていいよ! 目の前の敵を確実に倒して修行の成果を見せる時だ!

自分同士だからこそできる意思疎通不要の連携攻撃!
私が覇王方天戟で【なぎ払って】、避けたヤツは別の私が蹴っ飛ばす!(吹き飛ばし)
斬りかかってきたヤツはまた別の私が殴り倒す!(グラップル)
回避率10倍ってんなら、100倍の攻撃回数でぎったんぎったんに叩きのめしてやる!



 共に過ごした修行の時間は僅かであったけれども、たしかに劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)と若き英傑『天峰三師』との間には信頼が結ばれていたことだろう。
 手合わせをしたことにより互いの手の内を理解している。
 そして、いかなることができるのかも知っているだろう。涼鈴は『天峰三師』が他の猟兵達と修行したことにより、自身と手合わせをしたときよりもより高みに至っていることを肌で感じていた。

 ならばこそ、彼女は次なる段階に進むべく自信たっぷりに笑っていうのだ。
「さっきは孫悟空を例にしたけど……関連した面白いのを見せてあげる!」
 そんな言葉に『天峰三師』は首をかしげる。
 涼鈴の体術は見事なものであった。
 さらに孫悟空に関連したものをと言われれば、いかなる術を見せるのだろうかとオブリビオン『刀刃拳門下生』を宝貝『火尖槍』で穿ち余裕なく言葉をかける。

「涼鈴殿、こちらはそういう余裕は……」
「身外身法(シンガイシンポウ)! 分身の術ッ!!」
 彼女の瞳が有無を言わさずユーベルコードに輝く。
 瞬間、彼女の周囲に居並ぶは千を越える涼鈴の分身たちであった。それは圧巻の光景であったことだろう。
 並々外れたる体術の使い手である涼鈴が千人を越えるほどに立ち並び、いっきにオブリビオンの大軍勢へと立ち向かっていくのだ。

 その光景は凄まじいの一言であった。
 彼女の類まれなる体術は如何に研鑽を積んだ過去を持つ『刀刃拳門下生』たちであっても敵うべくもない。
 ちぎっては投げ、拳を突き出せば穿ち、襲撃を放てば切り裂く。
 それほどの鋭い技を持ってすれば、数の不利など如何様にも覆すことができるのだ。
「もう数の不利は気にしなくていいよ! 目の前の敵を確実に倒して修行の成果を見せるときだ!」
 涼鈴の言葉に『天峰三師』は頷き、手にした『火尖槍』から炎を噴出させてオブリビオンを薙ぎ払っていく。

「やるようになったね! なら、今度は私の番だね!」
 涼鈴は『天峰三師』の獅子奮迅たる戦いぶりに触発されたように自分同士だからこそできる意思疎通不要の連携攻撃で持って『刀刃拳門下生』たちを薙ぎ払っていく。
 手にした方天戟でもってなぎ倒し、躱したオブリビオンは別の己が蹴り飛ばすのだ。
 斬りかかられたとしても、受け止め、別の己が殴り倒す。
 どれだけ敵の攻撃を躱す力が増したオブリビオンであったのだとしても、一瞬の隙すらない連携を見せる涼鈴たちによる連続攻撃は怒涛の勢いでもって打ち倒すのだ。

「どれだけ体術を底上げしたって! それを上回る攻撃で叩きのめしてやる!」
 地平線を埋め尽くすほどの大軍勢を相手取る千を越える涼鈴たち。
 彼女たちが大地を踏みしめ、構えを取る度に地鳴りが響き渡る。
 大瀑布を背にした背水の陣などとはもう言わせはしない。彼女にとって、ここは戦場である。
 されど、常勝の戦場でもあるのだ。
 確かに数は多い。
 けれど、その数の不利を補って余りあるほどの練磨が此処にはあるのだ。

「涼鈴殿、しかと分身の術を拝見させていただきました。なんとも心強いことでありましょうか」
『天峰三師』が驚愕なる術を前にして涼鈴の勇猛なる叩きぶりに感嘆する。
 でしょう、と涼鈴は胸を張り、再びオブリビオンを叩き伏せ、数の不利を覆すユーベルコードの輝きを持って地平線に並ぶ大軍勢に穴を穿つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「刀刃拳か、聞いたことがある……
なんでも肉を食いやすくするため、拳で叩いて柔らかくし、それから包丁で切ってカットステーキにするという流派……」

だが!肉は鉄板で焼いたまま食うか、BBQで串焼きにして食うかの豪快な方が我は好みだ!

「というわけで、BBQには、軟弱な刀刃拳陣営どもを相手に修行してもらおう。
柔らかくした肉を切るよりも、きちんと火が通るように串に刺す方が難しいことを教えてやれ!」

我は後方でBBQに修行内容を伝え、その成果を見させてもらおう。

「あ、BBQよ。
敵に背をむけるようなことがあれば、我の【隕石召喚】が降ってくるので、本気で修行するのだぞ」

これぞ背水の陣など生ぬるい背師匠の陣よ!



「『刀刃拳』か、聞いたことがある……」
 そうつぶやいたのは、フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)であった。
 大軍勢たるオブリビオンたち、その第一波である『刀刃拳門下生』たちの姿を見やる。彼等は一様に拳と刃でもって敵を屠る殺人拳の使い手たちである。
 そんな彼等を見てフィアは己の中にある知識でもって解説するのだ。

「なんでも肉を食いやすくするため、拳で叩いて柔らかくし、それから包丁で切ってカットステーキにするという流派……」
 知っているのかフィア!
 とはならん。完全にフィアの偏った知識による解説である。猟兵書房にはあるのかもしれないが、『天峰三師』は若干本当かなぁって顔をしていた。
 言わないほうが良いとすでに学んでいたのかも知れない。
 というか、それは割と普通の調理方法ではないだろうか。いやさ、拳で肉を叩くという下りは確かにそれっぽかったけれど。

「だが! 肉は鉄板で焼いたまま食うか、BBQで串焼きにして食うかの豪快な方が我は好みだ!」
 カッ!
 刮目するフィア。完全に食の好みの話になっている。そういう話なのかな、と『天峰三師』は宝貝『火尖槍』でもって迫る『刀刃拳門下生』たちを穿ち、倒していく。
 フィアの言葉に余計な力が肩から抜けたおかげであるのかもしれない。
 気負いが無くなっているがゆえに、修行した時と同じ力を発揮できているのだ。怪我の功名というか、瓢箪から駒というか。

「というわけで、BBQには、軟弱な刀刃拳陣営どもを相手に修行をしてもらおう。柔らかくした肉を斬るよりも、きちんと火が通るように串に刺す方が難しいことを教えてやれ!」
「……あ、それ僕のことだったんですね」
 後方師匠面しているフィアに『天峰三師』は、僅かな短期間でフィアという猟兵のことを理解していたのかも知れない。
 言うこと成すこと大体いつも破天荒なのだ。
 生真面目彼からすれば、そういう生き方はやろうと思ってやることのできない生き方だ。
 だからこそ、得るものがあると思ったのだろう。
 なんという良い子。

 こうしてまた一人フィアの弟子が増えたわけである。いや、弟子っていうか、勝手に師匠を自認しているだけなのだが。
「あ、BBQよ。敵に背をむけることがあれば、我の隕石召喚(メテオストライク)が降ってくるので、本気で修行するのだぞ」
 まさかの脅しである。
 背水の陣と自分が言ったのだが、そういう意味じゃない気がする。
 あくまで背に大瀑布を背負っての不退転の決意を示したつもりだったのだが、この師匠は物理的に撤退を許さぬのだ。

「……えぇ……」
『天峰三師』は思わずうめいていた。
 もとよりそのつもりではあったのだけれど、こうも背後でユーベルコードに瞳を爛々と輝かせているフィアを見ていると、自分に向けるよりもオブリビオンの大軍勢にユーベルコードをぶちかましてくれた方がより早くご飯にありつけるのではないかと思わずにはいられなかった。
 けれど、彼の生真面目さ故であろうか。

 悲しいかな。
 そんな指摘ができない。ので、『天峰三師』は師匠面したフィアの言葉に従い、『火尖槍』を奮って『刀刃拳門下生』たちをなぎ倒していくのだ。
 その一気呵成に、そして獅子奮迅たる戦いぶりを見せる弟子『天峰三師』の姿にフィアは満足げにうなずくのだ。
「これぞ背水の陣など生温い背師匠の陣よ!」
 フハハハ! と高らかに笑うフィア。
 後方でフィアは何をしているのかと言うと、戦いが終わった後のBBQの下準備。
 タレよし!
 串よし!

 あとは戦いが終わるばかりであるというようにフィアの高笑いを背に受けながら『天峰三師』はなんとなく釈然としない顔で敵をなぎ倒すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陸・橘子
【美芳さん(f32771)と】

お二人の修行風景を眺めていたら不穏な気配が。

三師さま、美芳さま、いらっしゃったようです~。

確かに『背水の陣』ですが、ここは、背後は安心、と思うことにいたしましょう。

美芳様とわたしで両翼を固めますので、
三師様は心置きなく正面を蹴散らしてくださいませ。

【興覇】を構えて、三師様の横に立ち【宿星纏装】を発動させますね。

相手の攻撃を【オーラ防御】で防ぎながら、
美芳さんの【雷公鞭】で行動不能になった分も含めて、
興覇を【ぶん回し】て門下生を【吹き飛ばし】ていきましょう。

隙を見ておやつを食べてるのは【エネルギー充填】ですので、
大目に見てくださいませね。

動くとお腹が減るのです~。


秦・美芳
【橘子ちゃん(f32784)】と
あいやーもうきちゃったね?
橘子ちゃん、天峰三師くんと臨戦態勢
めいふぁん、頑張るよ!

びしっと降魔拳の構えをとりつつ
【宝貝「雷公天絶陣」】!!
引っかかったな、構えはフェイントよ!
とりあえず刃物は近寄らせないのが最適よ!
どーん、どーんと全力で撃ち込んでいくよ

橘子ちゃんそっちはどう?
っておやつ食べてるね
それで太らないのは反則だと思うよ!よ!
そんな密かな思いを抱きつつ
なるべく広範囲に雷公鞭を撃ち込んで感電させて
橘子ちゃんと天峰三師くんのフォローをしていくね

感電で動けなくなったら
そこを拳で仕留めていくよ
めいふぁん、これでも降魔拳継承者!(宝貝乱発しつつ)



 若き英傑『天峰三師』との修行はあっという間に過ぎ去った。
 張り詰めることもあるかもしれないが、それでも心の余白こそが大切であると説いた陸・橘子(大力放松・f32784)は秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)と共に並び立つ。
「いらっしゃったようです~」
 目の前には地平線を埋め尽くすかの如き大軍勢。
 されど、橘子の様子は普段と変わらぬものであった。危機感というものが欠如しているかのような彼女はどれだけの数を用意したとしても、今のような様子を崩すことはなかったであろう。
 それが心の余白であると言うのかはまたべつのことであったが、このように泰然自若たる心を持つことができるのならば、百戦危うからずというものである。

「あいやーもうきちゃったね? めいふぁん、頑張るよ!」
 一方で美芳は張り切っている。
 心に余裕がないわけではない。それ以上に彼女は目の前にせまる『刀刃拳門下生』たちとの戦いに心を躍らせる。
 これまた修行である。
 戦いに挑むために修行はある。けれど、戦いの中に修行という練磨を見出すのならば、戦いのさなかに在ってなお美芳は成長していくだろう。
 構える『降魔拳』は、ぴしりと凛とした雰囲気を醸し出すだろう。

「確かに『背水の陣』ですが、ここは、背後は安心と思うことにいたしましょう」
 橘子は『天峰三師』の言葉にそう頷く。
 己を追い込むということを知らぬ彼女にとって、三人で戦うことこそが力を十全に発揮することができるものであったからだ。
『天峰三師』の両翼を固めるように橘子と美芳が構える。
 迫るオブリビオンの大軍勢などものともしないように、微笑む姿に『天峰三師』は心強く思ったことだろう。

「三師様は、心置きなく正面を蹴散らしてくださいませ」
 手にした円錐台の双錘を構え、宿星纏装(シュクセイテンソウ)が巨大化する。それは彼女のユーベルコードである。
 巨大な双錘はまるで嵐のような勢いで持って『刀刃拳門下生』たちを吹き飛ばしていく。
 それはあまりにも凄まじい光景であったことだろう。
 鍛え上げられた肉体ではなく、その身に宿した星の力。いや、違う。これは生まれ持った天性の肉体があってこそであろう。
 箱入りで育てられとは思えぬほどの豪快さは、『天峰三師』をして凄まじいと言わしめるものであった。

「さあ、『降魔拳伝承者』のめいふぁんが相手よ!」
 同じ拳を志す者であればこそ、美芳は『刀刃拳門下生』たちと相対する。彼等の拳と刃は鋭いものであるからこそ、伝承者として相対しなければならないと思ったのだろう。
 じりじりと彼女を取り囲む『刀刃拳門下生』たち。
 四方から一斉に襲いかかる彼等を見た瞬間、美芳が取り出したのは、雷公鞭である。
「引っかかったな、構えはフェントよ!」
 えぇ……。
 瞬間、宝貝「雷公天絶陣」が発動し、一瞬のうちに降り注ぐ雷に『刀刃拳門下生』たちが貫かれ、感電して大地に倒れ伏す。
「とりあえず刃物は近寄らせないのが最適よ! それ、どーん! どーん! めいふぁんこれでも『降魔拳伝承者』!」
 あんまりにもあんまりなフェイントにオブリビオンたちは成すすべがない。感電して動けないオブリビオンから『天峰三師』が止めを差していくのだ。

 ここまでくると反則ではないかなと思うが、それ以上に反則だったのが橘子であっただろう。
「もぐもぐ……えっ、動くとお腹が減るのです~」
 彼女は隙を見てはおやつをもぐもぐしている。エネルギーを補給しながら、片手で巨大化した双錘を降りっては敵を吹き飛ばしているのだ。
 あれだけ甘いものをもりもり食べているというのに、彼女の体はほっそりしたものであった。
 すらっとしていると言ってもいいだろう。
「橘子ちゃん、それで太らないのは反則だと思うよ! よ!」
 美芳にとって、それは不可思議で理解できないものであったことだろう。無論、戦いのさなかにおやつを食べていることではない。
 太らないことにだ。

 どう考えてもおかしい。
 あれだけ動いているからエネルギー消費はしているのだろう。けれど、食べている量が量である。
 あれだけ食べてるのに……と思いつつ、美芳は己の拳をオブリビオンに叩きつける。
 世の中の不条理とはこういうことを言うのだというように思いの丈を込めた拳は重たく、そして鋭く打ち込まれる。
「多めに見てくださいませね」
 なんて、橘子はたおやかに笑っているのだから、余計に不条理が際立つというものである。

『天峰三師』はそんな二人のやり取りを見ながら、戦いに戻っていく。
「お二人の連携は見事なものです。僕も負けてはいられないな」
 宝貝『火尖槍』を振るいながら、『天峰三師』は空を征く。
 頼もしき猟兵、橘子と美芳、二人の活躍と共に彼はオブリビオンの大軍勢に立ち向かい、その力を十全に振るうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(気になる事もあれど直ぐに解決する事でも無し、優先順位を違えぬように…)

さて、先程賢しらに立ち回りの講釈を垂れた身ではありますが…私は真正面より攻め入ろうと思います
『天峰三師』様が『正しき』を求めるなら、何時か兵を率いて戦う時もあるやもしれません
敵陣を切り崩す先鋒を担う際に参考にして頂ければ幸いです

機械馬に●騎乗
全身に格納した銃器の乱れ撃ち、振るう馬上槍、翳す大盾、馬の踏みつけ
●推力移動を強化した騎馬突撃で拳の刃を届かせる事もなく軍勢を●蹂躙

出鼻を挫き、陣形をかき乱しつつ
マルチセンサーでの情報収集で彼我の位置を常に把握
己を囮とし…

好機です、『天峰三師』様!

若き英傑の火尖鎗にて一網打尽に



 若き英傑『天峰三師』を狙うオブリビオンの大軍勢は猟兵たちの活躍に寄って、徐々に数を減らしていた。
 それでも『刀刃拳門下生』たちは軍勢の第一波にすぎないのだ。
 まだまだ背後に控えるオブリビオンは膨大な数を残している。彼等を打倒しなければ、何処までも『天峰三師』は追われる身となってしまうだろう。
 彼の安全を確保するためにはオブリビオンの大軍勢を蹴散らすほかない。

 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は電脳の中で演算する。
 気になることがあるのだ。
 それは戦いにおける不確定要素ではないが、それが解決されないというしこりを電脳にゆらぎとして残すだろう。
 彼の電脳に残された他世界のデータと似通ったものを持つ『天峰三師』がいかなる存在であるのか。
 それを彼は知りたいと思ったことだろう。
 しかし、優先順位を違えぬようにと己を律するのはまさしく騎士そのものであったことだろう。
「いかがしますか、騎士トリテレイア殿」
 空を舞うは宝貝『風火大車輪』の片割れを持つ『天峰三師』であった。

 彼にこれまで多数との戦いを説いてきたトリテレイアであったが、ならばこそ己は示さねばならない。
「私は正面より攻め入ろうと思います。『天峰三師』様が『正しき』を求めるなら、何時か兵を率いて戦う時もあるやもしれません。敵陣を切り崩す先鋒を担う際に参考にして頂ければ幸いです」
 トリテレイアは己が将たる器であるとは思っていなかったかもしれない。
 けれど、通常とは異なる力を有する猟兵であればこそ、単一の戦力としての力の使い方を示さねばならないのだ。

 機械馬に跨ったトリテレイアが戦場を疾駆する。
 全身に格納された銃器が乱れ撃たれ、振るう馬上槍の一撃がオブリビオンである『刀刃拳門下生』を打ち据える。
 さらに馬上である利点を活かすように機械馬の踏みつけの一撃が大地を穿つかの如くオブリビオンを霧消させるのだ。
「まさに一騎当千とはこのこと……!」
『天峰三師』は空よりトリテレイアが一気呵成に敵陣へと食い込み、敵をかき乱しては打倒していく姿を見下ろす。

 槍の使い方も得手とするものなのだろう。
 馬上にありて人馬一体となる姿は、『天峰三師』をして驚愕せしめるものであった。
「出鼻をくじき、陣形をかき乱しつつ……」
 己を囮とする。
 敵の注意をひきつけ、己のマルチセンサーが彼我の距離、位置を常に把握する。それによって、敵は陣形を崩し、連携を絶たれるのだ。

「機械騎士の突撃(マシンナイツ・チャージ)とはこのこと……! 好機です、『天峰三師』様!」
 トリテレイアは己がターゲットにされることをいとわない。
 誰かを護るのが騎士としての努めであるというのならば、今の己の行動こそが『天峰三師』を護ることに繋がるのだ。
 己という囮に集中するオブリビオンたちは、空より飛来する『天峰三師』に気がつくことはできない。

 空より強襲する『天峰三師』が手繰る宝貝『火尖槍』より吹き荒れる炎の一撃が、惹きつけられた『刀刃拳門下生』たちを吹き飛ばし、霧消させていく。
 それはまさに一網打尽と呼ぶに相応しき一撃。
「できました、騎士トリテレイア! 第一波はもうすぐ打倒できるでしょう」
「ええ、残すは僅かになった第一波と残す本命の第二波。油断無きように」
 トリテレイアと『天峰三師』は共に連携しながらオブリビオンを霧消させていく。
 敵の数は多い。
 されど、知略と機転、そして備えた武を持ってすれば、数など恐れるに足りないものであると教えるようにトリテレイアは機械馬と共に戦場を疾駆するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

外邨・蛍嘉
ナルホド、彼らが相手と。
なれば…行きマショウ『天峰三師』殿。

回避率と飛翔速度…つまりはこちらに来やすくする、と。
デスガ…エエ、ワタシのUCで回避範囲関係なく、一度なぎ払う。そして、逃れた者は…任せマスヨ。
先程のなぎ払いで、回避した場所というのは、限られてイマスノデ。

…焦らぬことデスヨ。今は見つからず…イエ、見えぬとも、アナタには修行する目的があるのデスカラ。
なれば、今は生き残り、その先を繋げることこそ大切だと…思いマスヨ?



 オブリビオンの大軍勢は多くの猟兵達と若き英傑『天峰三師』の力によって次々と穿たれ、霧消していく。
 膨大な数であったけれど、それでも修行と知略、そして連携に寄ってこれらを見事に撃退せしめているのだ。
 けれど、続く第二波が控えていることを忘れてはならない。
「ナルホド、彼等が相手と」
 外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は戦場に立つ。

 これら全てを撃退しなければ若き英傑『天峰三師』の安寧は程遠い。
 彼がこれより未来においていかなる運命に立ち向かっていくのかはわからない。けれど、それでも彼が此処で死すということは猟兵にとっても、世界にとっても善きことであるわけがない。
「なれば……行きマショウ『天峰三師』殿」
「ええ、おまかせを」
『天峰三師』は『クルワ』が成さんとしていることを理解した。

 瞳がユーベルコードに輝く。
 どれだけ『刀刃拳門下生』たちが己たちの練磨の果てに至った体術を駆使するのだとしても、『クルワ』の振るう妖影刀『甚雨』の前には関係ない。
 巨大化した妖影刀が、雨剣鬼の記憶:間合絶無(マアイイトワズ)を垣間見せるのだ。
 天高く飛び上がる『天峰三師』の姿を『クルワ』は見ることはなかった。
 見なくてもわかる。
 この斬撃は平行方向に一閃する。
 ただそれだけで数を頼みにするオブリビオンたちは薙ぎ払うことができるのだ。
 しかし、体術を納めた彼等が全て打倒できるわけではない。
 躱す者だって出てくるだろう。

 けれど、彼等がどれだけ躱すのだとしても、地面と平行方向に薙ぎ払われた一撃を躱すということは、つまり――。
「そう、回避する場所というのは、限られてイマスノデ」
『クルワ』は見ただろう。
 多くの『刀刃拳門下生』たちが空へと飛び上がり、その斬撃の一撃をかわしたのを。
 だが、そこは『天峰三師』の領域である。
 宝貝『風火大車輪』の片割れを持つ彼を前にして、空に飛ぶということは無防備な姿をさらけ出すことと同義である。

「空こそが僕の戦場! ハァッ!」
 放たれる宝貝『火尖槍』より放たれた炎がオブリビオンたちを焼滅していく。
 その姿にもはや焦りは見えない。
 彼の心にあるのは『クルワ』と共に励んだ修行にて得たものである。

 焦りは人の動きを鈍らせる。
 確かに今は見つからぬものがあるのだろう。見えぬものがある。
「アナタには修行する目的があるのデスカラ」
『クルワ』は告げる。どれだけ彼が焦っていたのだとしても、その目的が見えないのだとしても。
 それでも彼には進みゆく道が続いているのだ。
 ならば、なさねばならない。

「生きることを。そのさきをつなげることがこそが大切だと……思いマスヨ?」
『クルワ』とは違う道を歩むであろう『天峰三師』の空を舞う姿を見やる。
 それは眩しいものであったかもしれないけれど。
 己たちが護った光でもある。『天峰三師』はきっと違えることはないだろう。彼が生まれた意味、彼が成さねばならないこと。

 それを知る彼がこれからさきオブリビオンに負けることはないのだ。
『クルワ』はその瞳をユーベルコードに輝かせ、妖影刀の一撃で持って彼の道行きを切り開き、オブリビオンの大軍勢を退けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『虚ろなる処刑人』

POW   :    首を刎ねる
自身の【雷光を纏った剣】から、戦場の仲間が受けた【ユーベルコード】に比例した威力と攻撃範囲の【雷の一撃】を放つ。
SPD   :    咎人は拘束する
【拘束マスク】【両手を封じる手枷】【鉄球の付いた足枷】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    罪を告白しろ
質問と共に【雷光を纏った檻】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。

イラスト:なみはる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「穢在りき」
 それはオブリビオンの大軍勢の第二波。
『虚ろなる処刑人』たちの口からこぼれた言葉であった。地平を埋め尽くしていた大軍勢は猟兵と若き英傑『天峰三師』によって退けられた。
 けれど、第二波たる彼等はやはり第一波と同じように大軍勢である。

 彼等の言葉から漏れるのは、同じ言葉ばかりであった。
「その魂に穢在り。ならば、その穢を断ずるには、処刑の刃のみ」
 禊ぎ、落とし、そして汚れを断ち切らねばならぬと『虚ろなる処刑人』たちは進む。
 彼等の手にした雷光放つ刃と檻、そして手枷が『天峰三師』を狙う。
 彼等の言葉に正しさはないのかもしれない。

「穢れ……僕のことを言っているのか」
 オブリビオンが目指す先にあるのは『天峰三師』のみ。
 猟兵たちに目もくれず、オブリビオンは彼を殺そうとするだろう。いかなる理由が在るのかを彼は知らない。
 なぜなら、彼はこの世界、封神武侠界に生を受けて僅かしか経っていないからだ。
 自分の身が、魂が穢れているとつぶやくオブリビオンたちの言葉を理解できなくても致し方のないことであったのかもしれない。

「だが、僕にはやらねばならぬことがある。それが何かを未だ知らず。ならば、この生命をくれてやるわけにはいかないんだ」
『天峰三師』は宝貝『火尖槍』を構える。
 その魂が如何に穢れていると言われたのだとしても、それでも譲れぬもの、守らねばならぬものがあるかぎり、彼はきっと諦めないだろう――。
董・白
所詮オブビリオンの戯言です。
そもそもこの世界穢れはあっちでしょうが…。

しかし、予想以上の大軍です…。本当にここまでの大軍を動かした理由は黒幕とは一体何者なのでしょうか?

疑問は尽きませんが今はここを切り抜けるのが先でございますね。

では…全力でお相手いたします。
罪?確かに生まれながら罪深い好みではありますが、オブビリオンに恥じるつもりはありません。
なんでも答えましょう。セクハラ以外なら(ぁ)

この『地刑の利用』と『龍脈使い』。さきに仕掛けた罠の宝貝は十絶陣だけは有りません。
見せまう。我が切り札を…
全力の『道術』で強化しました…宝貝「四宝剣」による『範囲攻撃』で『吹き飛ばし』ます。



 生命に罪在りき。
 それは生まれ出たこと事態が罪であると考えるのならば、祝福もまた然りである。
 生命は罪と祝福で持って生まれ出るものである。
 抱えた罪を祝福が濯ぐのであれば、今を生きる生命に罪があろうはずもない。
 喜びの中より生まれ出た生命ばかりではないにせよ、『虚ろなる処刑人』の瞳に映るのは、その穢れのみである。
「穢れ在りき。汝ら罪あり」
 オブリビオンである彼等の言葉は妄言である。

 少なくとも、董・白(尸解仙・f33242)にとってはそうであった。
「所詮オブリビオンの戯言です。そもそもこの世界の穢れはあっちでしょうが……」
 オブリビオンとは骸の海より染み出した過去の化身である。
 彼等の存在は生前がどうであれ、過去に歪んでいる。どれだけ生前の魂が高潔なるものであったのだとしても、過去に歪んだ存在は其処に狂気と欲望を宿すものである。
 ゆえに、今の『虚ろなる処刑人』の瞳に映る全てが穢に視えるのだろう。
「しかし、予想以上の大軍です……本当にここまでの大軍を動かした理由は」
 一体何なのだろうか。
 答えは未だでない。宝貝を生まれながらにして持つ存在、『天峰三師』。
 彼を殺さんとする意図が未だ見えず。さりとて、ここで退却する理由も白にはないのだ。
 この大軍を裏で糸引く存在がいるのだとしても、一体何者であるのだろうか。

「疑問は尽きませんが、今はここを切り抜けるのが先でございますね」
「ええ、生きてこそ活路が拓けるというもの。僕もお手伝いしますよ」
『天峰三師』が宝貝『風火大車輪』の片割れでもって飛ぶ。
 猟兵たちとの修行が活きているのだろう。彼は出逢った頃より随分と、力をつけている。これならば、押し切られる心配はないかもしれない。
 白の瞳がユーベコードに輝く。
 予め仕掛けていた複数の宝剣が『虚ろなる処刑人』たちを取り囲むように大地に突き立てられる。

「罪を告白せよ。我らが雷光の檻は、お前の汚れを濯ぐものなり」
『虚ろなる処刑人』たちから放たれる檻。
 それを『天峰三師』が火尖槍でもって切り払う。
「では……全力でお相手いたします。汚れを罪だというのならば、生まれながらにして罪深いこの身ではありますが、オブリビオンに恥じるつもりはありません」
 白にとって、己の死した肉体は罪の末路であったのかもしれない。
 けれど、己が今動き、正しきを成す行いについてオブリビオンにとやかく言われる謂れなど何処にもない。

「なんでも答えましょう。セクハラ以外なら」
 突き立てられた宝剣が龍脈により強化される。
 大自然の精気を凝縮した大光球が天にまばゆく輝く。それこそが白の切り札。道術で強化され、龍脈より汲み上げられる力が白の体を経由して発露するのだ。
「私の秘中の秘術です。大自然の裁き。受けるがいい!!」
 彼女の手にした切り札にして、宝貝。
 それは宝貝「四宝剣」(パオペエシホウケン)である。数多の宝剣が囲う中にありて、その大光球を躱す術などない。

 囲われた内部にある者たちに待つのは、等しい滅びである。
 光が明滅し、世界を染め上げていく。
 放たれた大光球の熱量が大気を熱し膨らみ、あらゆるものを吹き飛ばしていく。己に迫っていた檻など物ともしない極大なる一撃は、『虚ろなる処刑人』たちを霧散させる。
「どれだけオブリビオンの言葉が人の心を傷つけるものであったのだとしても、それでも胸を張りましょう。誰かを、他の生命を救うことに穢など存在しないのです」
 己が『天峰三師』にそうしたように。
 謂れなき穢、罪により絶たれる生命があるのならば、死した後に蘇りし尸解仙たる己が全て掬おう。

 それができるだけの力を今彼女は手にしている。
 手にした力の意味を知るのならば、それをためらうことはない。自分が嘗て手を差し伸べられたように、今度こそ彼女は己以外の誰かのために、その手を伸ばすと決めたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・イングラム
全て思い出しました。

天峰三師様、先程は世界を渡ることに不慣れな私を守ってくださり、ありがとうございます。
ここからは私の本当の力、いえ、世界を守るために神より授かった力をお見せします。

聖堂騎士団としての武具を召喚して身に纏う。
迫りくる敵を見据えつつ、聖剣を両手で天にかざしてUCを発動。
神の奇跡を顕現させます。

技能は、天候操作、浄化、神罰、範囲攻撃を指定。
広範囲に雷雲を呼び起こし、敵の軍勢に幾多の浄化の雷を落とします。

雷とは神鳴る力。
世界の穢れそのものである貴方達オブリビオンがそれらを纏い、操ることなど赦されることではありません。
神罰たる浄化の雷を受け、塩の柱へとなりなさい。



「全て思い出しました」
 己がなんであるのかを。
 己の胸のうちにある信仰がなんであるのかを。
 イングリット・イングラム(聖堂騎士・f35779)は思い出したのだ。五体をふきとばされようとも、胸を穿たれようとも、あらゆる傷は心に信仰がある限り、己の身が不滅であることを知らしめる。
 彼女は猟兵として未熟であったのかもしれない。
 されど、その胸の内側に秘めたる信仰だけは、紛れもないものである。

「『天峰三師』様、先程は世界を渡ることに不慣れな私を護ってくださり、ありがとうございます」
 その言葉は宝貝『風火大車輪』の片割れで持って空を征く『天峰三師』に向けられていた。
 彼にはそのつもりはなかったのかも知れない。
 人を助けることにさりとて意義が必要であるとは思わない生真面目な青年である若き英傑にとって、それはやって当然のことであったからだ。
 けれど、その思いが、無償の行いこそがイングリットの中にある信仰を持って己が何であるかを知らしめるのだ。

「ご無事で何よりです! さあ、敵は未だ多く。僕が貴方の盾になりましょう」
 しかし、イングリットはもう大丈夫だと頭を振る。
 どれだけ迫るオブリビオンの大軍勢たる『虚ろなる処刑人』の手にした雷放つ剣の切っ先が恐ろしいのだとしても、イングリットの心にもはや恐怖というものはない。
「ここからは私の本当の力、いえ、世界を守るために神より授かった力をお見せします」
 彼女の身に纏われるは、聖堂騎士団としての武具。
 召喚された武具は迫りくる『虚ろなる処刑人』を見据え、聖剣を天にかざす。

 彼女の手にした聖剣はユーベルコードの輝きに満ちていた。
 神の奇跡を発現(ハツゲン)させる力。
 それは天候すらも操作する力えあり、浄化と神罰をもって、広範囲に設定された力である。
 言葉はもはや必要ではない。
 雷雲が立ち込め、浄化の力を宿した神罰の雷が『虚ろなる処刑人』の頭上に降り注ぐ。
「雷とは神鳴る力」

 イングリットの瞳がユーベルコードに輝いている。
「世界の穢そのものである貴方達オブリビオンがそれらを纏い、操ることなど赦されることではありません」
 そう、雷光とは常に神の威光を示すものであり、神の手繰る力。
 ゆえに『虚ろなる処刑人』が如何に神より赦された神罰の代行者であるのだとしても、過去に滲んだ存在が手にしていいものではないとイングリットは断じるのだ。
「穢と我等を呼ぶか。我らに罪なし。我らこそが神罰代行者。穢に塗れた存在の生命をこそ、我らは刈り取らねばならぬ」
 その言葉はイングリットには届かなかったことだろう。

『天峰三師』は見た。
 天より注がれるが如き雷の明滅は、その全てが『虚ろなる処刑人』へと落ち、全てを穿つ。
「神罰たる浄化の雷を受け、塩の柱へとなりなさい」
 告げる言葉は絶対である。
 放たれた力は『虚ろなる処刑人』たちの心の臓を撃ち貫き、その体を霧散させる。
 雷鳴が轟き、どちらが正しき神罰代行者であるかを示す。
 手にした聖剣の輝きは未だ潰えず。

 目の前に迫るオブリビオンの大軍勢を前にして、イングリットは聖剣より発現した力を振るうことだろう。
 己がなんであるかを自覚し、己の成すべきことを知る今、イングリットは止まらない。立ち止まらない。
 その瞳に今を生きる生命を脅かす過去の化身があるかぎり、輝くユーベルコードと共に力を振るうのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

外邨・蛍嘉
…耳を貸す必要はアリマセン。あちらが勝手に『処刑しか方法がない』と言っているだけデスカラ。穢れも本当かどうか。
というか、穢れはこちらの方が強いですし(悪霊的な意味で)

その拘束具たちに捕まるわけにはいきマセン。なので、それら全てを、相手を含めて一気に指定UCでなぎ払ってしまいマショウ。
あ、此度のなぎ払いには仙術によって強化した切断浄化もついてマスノデ。無事で済むとは思わないことデス。

『天峰三師』殿。アナタに祝福を。この先、如何なることが有ろうと…その魂の衝動が導くままに、行けることを願いマス。



『虚ろなる処刑人』は言う。
 若き英傑『天峰三師』は穢に身を染めていると。
 ゆえにその穢を禊ぎ、はじめて魂の安息があるのだと。けれど、それは彼等の勝手な理屈に過ぎない。
 オブリビオンは過去の化身である。
 どれだけ生前が高潔な魂であったのだとしても、過去に沈み歪んだ結果、どしようもなく狂ってしまう。

 彼等はその最たる例であったことだろう。
 処刑人であるからこそ、彼等の心には人の命を立つことによって禊ぎとする心得がある。
 生命を奪うことでしか救われぬものがあると信じるからこそ、彼等の剣には罪なきと記される。
「……耳を貸す必要はアリマセン。あちらが勝手に『処刑しか方法がない』と言っているだけデスカラ」
 外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は『天峰三師』にそう告げる。
 本当に彼が穢れているのだとしても、それを決めるのはオブリビオンではない。
 自分の足で立ち、自分の生命をまっとうしようとするものにそれは必要ないのだ。

「……僕にはわかりません。僕の生命が彼等の言う通りなのだとしても」
「汚れも本当かどうか。というか、汚れはこちらの方が強いですし」
『クルワ』は己のことを言う。
 悪霊である自身の方がよほど彼等の言うところの穢れがあるであろうと。
 けれど、それでも前を向いて生きようとする者を留めるものではない。オブリビオンの軍勢である『虚ろなる処刑人』たちから次々と放たれる手枷が『天峰三師』を狙う。

 しかし、巨大化した妖影刀の一閃が尽く薙ぎ払うのだ。
「その拘束具たちに捕まるわけにはいきマセン」
 仙術でもって強化された薙ぎ払う一撃は、拘束具だけではなく『虚ろなる処刑人』たち諸共に切り裂く。
 一刀のもとに両断された『虚ろなる処刑人』たちが霧消していく。
「我らの処刑を邪魔するか。穢こそ灌がねばならぬというのに。穢れた魂は禊ぎによって清めねばならないのだ」
 彼等の言葉はどこまで真実かわからない。
 けれど、『クルワ』には彼等の言葉が真実であるとは思えなかった。

 手合わせをした若き英傑『天峰三師』は生真面目な青年であった。
 己の中にある何かに急かされるように、己の役目を全うしようと必死なだけであった。だからこそ、オブリビオンの言葉は正しくない。
「他者の道行きを阻もうと言うのデス、無事で住むとは思わないことデス」
 雨剣鬼の記憶:間合絶無(マアイイトワズ)が再び輝き、迫りくるオブリビオンを尽く両断して打倒していく。
 未だ『天峰三師』は戸惑いの中であろう。

 だからこそ『クルワ』は告げるのだ。
「『天峰三師』殿。アナタに祝福を。この先、いかなることが有ろうと……」
 戦いの最中であったが、互いの視線は交錯する。
『クルワ』は望むだろう。
 どれだけの困難が、今日のような出来事がこれから続くのだとしても。
「その魂の衝動が導くままに、行けることを願いマス」
 その願いの先にある未来を掴んで欲しい。
 悪霊である己が掴めぬ未来をきっと、彼は掴むことができるはずであろうから。

「『クルワ』殿……お心遣い、感謝いたします」 
 空に在りて『天峰三師』が拱手でもって一礼する。
 その姿を見やり、『クルワ』は頷く。
 彼はもう大丈夫だと確信する。己が願い、彼が征く道行きに惑いは必要のないことだ。
 魂が告げる先にこそ、彼の成さねばならぬことが在る。
 そう『クルワ』は確信するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陸・橘子
【美芳さん(f32771)と】

『穢れ在りき』ですか?

当たり前のことと存じますが、なにが問題なのでしょう?
穢れのない人なんて、いないと思いますよ~。

わたしだって、どこか穢れているでしょうし、
穢れがないような人は、だいぶ偏ってる人と思いますよ~。

それに……。
穢れしかない過去の亡霊にそんなことを言われても、困ってしまいますね。
まず断ち切るなら、あなたたちからではないでしょうか。

三師様、美芳さま。お二人にも穢れはあるのだと思います。
でもそれでいいのではないでしょうか。
だからこそ人の気持ちがわかるのだと思いますから。

ふわりと微笑んだら、ちょっと真剣な顔になって、
【錘撃衝破】ですり潰していっちゃいますね。


秦・美芳
【橘子ちゃん(f32784)】と

あいやー…またいっぱい来たねー

穢れとかよくわからないけど
そういうのがあるから『道』があって
それを極めるために修行するよ
伝承者といっても今だ道なかば
だからめいふぁん、頑張るよ!

そもそもおぶりびおんに穢れとか言われたくないよ!
というか、禊ぎって身削ぎであって
命を絶つことじゃないよ?
根本的に間違ってない?(首かしげ

めいふぁんがぶっ飛ばしてあげるよ!

【降魔連打】で仕掛けるね!
処刑人から放たれた拘束具は地を滑るように飛んで回避
懐に飛び込みつつ飛翔の勢いを乗せた拳を叩き付けるよ!
「はいやーっ!!」
そこから拳の連打をおまけ!
処刑人を吹っ飛ばして他の処刑人に当てて倒していくよ!



「あいやー……またいっぱい来たねー」
 秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)は大瀑布に押し迫るようにして現れた大軍、『虚ろなる処刑人』たちの姿を見やる。
 彼等の瞳に在るのは虚ろなる光のみ。
 若き英傑『天峰三師』を抹殺せんとする意志。
 どれだけ高潔な魂も過去に歪めば、そこに狂気と欲望のみを宿すものである。だからこそ、オブリビオンは世界を破壊する。
 その世界の悲鳴に応えるのが猟兵であるというのならば、美芳たちは『天峰三師』を護ると決めるのだ。

「穢れ在りき。そこに穢れた生命があるのならば、我らが処断しなければならぬ」
 オブリビオンの言葉を聞き陸・橘子(大力放松・f32784)は首をかしげる。
 彼女の知る若き英傑『天峰三師』は彼等の言うところの穢れ在りきの生命であるのかもしれない。
 けれど。
「当たり前のことと存じますが、なにが問題なのでしょう?」
 穢れなき人など存在しない。
 己もまたそうである。どこかが穢れているのであろうし、穢れないように見える者はどこか偏重したところがあるものである。

 清濁併せ呑む。
「そういうのがあるから『道』があって、それを極めるために修行するよ。伝承者といっても未だ道半ば。だからめいふぁん、がんばるよ!」
 美芳もまた並び立ち言うのだ。
 人の道は陰陽。
 悪しき心が存在するからこそ、善き心もまたある。
 どちらかを捨て去る事はできないがゆえに、道はそこにあるのだ。それは己が一番良く知っていて、未だたどり着けぬ境地であればこそ、美芳は構えるのだ。
「そもそもおぶりびおんに穢れとか言われたくないよ!」
 禊ぎとは身を削ぐことである。
 生命を断つことではないと、彼女は戦場を一直線に駆け抜ける。

「ええ、そのとおりです。穢れしかない過去の亡霊にそんなことを言われても、困ってしまいますね。まず断ち切るなら、あなた達からではないでしょうか」
 自分にも、美芳にも、『天峰三師』にも。
 誰にも汚れはある。
 けれど、それでいいのだと思うのだ。己の中に穢れがあるからこそ、他者の気持ちがわかるのだ。
 他者を思いやることができる。
 橘子はふわりとほほえみ、空を征く『天峰三師』と地を疾走る美芳に続く。

「めいふぁんがぶっ飛ばしてあげるよ!」
 美芳の瞳がユーベルコードに輝く。
『虚ろなる処刑人』たちが放つユーベルコードによる雷光湛える拘束具を地を滑るようにして躱し、一直線に迫るのだ。
 踏み込んだ勢いのままに放つ拳は降魔連打(コウマレンダ)。
 輝く瞳が見据えるは、己が穿つべき敵である。
 彼女の拳は闘気を纏い、凄まじい勢いで持って『虚ろなる処刑人』たちを吹き飛ばし、他のオブリビオンへと叩きつける。
 迫りくるあらゆる攻撃を踏み込みの速度で持って威力を殺す。

 空を見やれば『天峰三師』が手にした宝貝でもって炎を噴出させ、舞う。
「こちらはおまかせを!」
「ちょっと痛いのいきますよ~」
 錘撃衝破(スイゲキショウハ)の一撃が橘子の手にした双錘より放たれる。
 それは集約された重力で持って『虚ろなる処刑人』たちをすり潰す豪快なる一撃。
 三人の動きはバラバラなようでいて互いをカバーするものであった。
 これまで修行した時間は僅かであったけれど、共に戦場に立てば互いの欠点も見えてくる。

 美芳の連撃は凄まじいものであったが、一撃が軽い。
 橘子の一撃は重さを力にかえるものであったが、一撃の後の隙が生まれる。
『天峰三師』はその隙間を縫うようにして、彼女たちに迫る『虚ろなる処刑人』たちを撃破していく。
「お二人のお言葉、心にしみるものばかりでありました。共に参りましょう。僕も未だ道半ば。ならば、示してみせましょう!」
 空に炎が吹き荒れる。
 人は一人では存在できない。
 個であるからこそ、他を意識することができる。互いと互いの接点が生まれれば、そこに摩擦は生まれるものであったのかもしれない。

 けれど、それはときに傷だけでなく熱をも生み出すものである。
 美芳と橘子は、その熱を胸に宿し、共に戦場を駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
ばっちぃってこと? よく分かんないや
ふつーの人の言う、罪とか死なら武侠にとっちゃ日常茶飯事だしね
殺し殺されなんて当たり前だし、それとどう折り合いをつけるかなんて本人の勝手
処刑しなきゃ、なんてお前がしゃしゃり出る幕じゃないよ
なんか問答してる横から戟で【なぎ払って】血飛沫を浴びながら

にしても、虚ろって名前だけあって気合いの入ってないヤツらだね
一発、【気合い】入れてやろうか!

全身に【覇気】を漲らせて吶喊! いっくぞー!!
ユーベルコードじゃなくて、鍛え上げた【功夫】で戟を振り回して戦う!
宝貝っぽい剣を使おうとしてきたら、戟をぶん投げて体勢を崩させたところに【劉家奥義・獅吼爆裂覇】!!



 生命の穢れとはいかなるものであろうか。
 人の営みには常に他の生命が必要となる。それを穢れと呼ぶのであれば、人の器は空虚なるものであろう。
 されど、人の器に満ちるものは穢れだけではない。
 陰と陽があるように奪う生命あれば、育てる生命もある。
 どちらかだけでは存在しきれぬ。
 ゆえに、『虚ろなる処刑人』の言葉は、生前の高潔なる魂を過去に歪ませたものであると言えるだろう。

「穢れを灌がねばならぬ。我らの刃は、そのためにこそ存在しているのだから」
 雷光輝く剣が戦場に明滅する。
 罪人の穢を濯ぐための剣。生命を断ち切ることによって、それを濯ぐというのであれば、彼等の刃は確かに処刑人の刃であったし、罪なきものであったことだろう。
 けれど、劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)は彼等の言葉に理解を示すことはなかった。
「ばっちぃってこと? よくわかんないや」
 普通の人の言う、罪とか死なら武侠にとっては日常茶飯事である。
 意識していないだけで、それは武侠ならずとも死は日常茶飯事なのだ。己が食する豚や鳥、牛などは生命を死に至らしめた結果であるということを理解しないのならば、それはただの傲慢であろう。 
 だからこそ、涼鈴は『虚ろなる処刑人』たちの言葉に首を傾げるのだ。

「殺し、殺されなんて当たり前だし、それとどう折り合いをつけるかなんて本人の勝手」
 だからこそ、涼鈴は構える。
 どれだけ罪を糾弾する刃があるのだとしても、己の功夫によって鍛え上げられた肉体は負けることはない。
「処刑しなきゃ、なんてお前がしゃしゃり出る幕じゃないよ」
 横合いより殴りつけ、涼鈴は『天峰三師』に襲いかかる『虚ろなる処刑人』を薙ぎ払いながら突き進む。
「涼鈴殿……! かたじけない!」
「いいのいいの! にしても『虚ろ』って名前だけあって気合の入ってない奴等だね。一発気合入れてやろうか!」
 裂帛の気合が大地を揺らす。

 踏みしめた足が地面を砕き、地割れを引き起こした。
 涼鈴の気合はそれほどのものである。大地を揺るがし、風を巻き起こす。
 大瀑布より落ちる水のしずくが蒸せるように大気に満ちる。それらの全てを涼鈴は吹き飛ばす。
「いっくぞー!!」
 みなぎる気合とともに覇気が噴出する。
 その覇気はあらゆる『虚ろなる処刑人』たちを圧倒するものであった。
 方天戟はまるで草払いをするかのように次々とオブリビオンを圧倒していく。

 その姿はまさに一騎当千。
 涼鈴を止めることはできない。『虚ろなる処刑人』たちの手にした雷光湛える剣が輝いた時、涼鈴は間髪入れずに瞳をユーベルコードに輝かせる。
 方天戟で引っ掛けたオブリビオンを投げつけ、体制を崩した瞬間彼女の掌から噴出する闘気。

 それは劉家奥義・獅吼爆裂覇(リュウケオウギ・シコウバクレツハ)。
 彼女の鍛え上げられた功夫により練り上げられた闘気は、周囲を巻き込んで吹き荒れる暴風のように『虚ろなる処刑人』たちを吹き飛ばしていく。
「これが、私の功夫! 覇気! 見たか、劉家奥義を!!」
 よらば斬る。
 されど、己より離れるのならば闘気が逃さぬ。
 涼鈴は、その手にした方天戟と己の拳、その五体でもってあらゆるオブリビオンを圧倒し、『天峰三師』をして猛虎のごとき果敢なる攻めを讃えられるだろう。

 どんなに汚れがあるのだとしても、オブリビオンにそれを断じる資格などない。
 彼女のみなぎる力は、穢れをも飲み込んで世界に吹き荒れ、オブリビオンの大軍勢を霧消せしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ぬ……その刃にまとった雷光……!
さては『でんじちょうりき』とかいうやつだな!」

我知ってる。
『でんじちょうりき』よりも直火の方が肉は美味い!

「BBQよ、お前の火尖槍と風火大車輪の方が優秀な調理器具だということを教えてやれ!」

さすがにそろそろ我も師匠としての力を見せねば、戦闘後のBBQにありつけぬかもしれぬ。
【極寒地獄】で敵の軍勢を氷の迷宮に閉じ込めてくれよう!
これならば出口から出てくる少数とのみ戦えば良いはず!

「なに!?
鉄板での焼き肉とBBQどっちが良いかだと!?
くっ、我には決められぬ……!」

質問に答えられぬ我は、『でんしれんじ』による攻撃で大ダメージ(質問は簡単なので)を受けるのであった。



 雷光湛える剣を構える無数のオブリビオン、『虚ろなる処刑人』たち。
 彼等の姿を見たフィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)はうめいた。
「ぬ……その刃に纏った雷光……! さては『でんじちょうりき』とか言うやつだな!」
 多分違う。
 フィアにとって、大概のものは食と関連するものである。
 どう見たってそうではないのだけれど、フィアの瞳はきっと其のように写っているのだろう。
 こればかりはもう致し方のないことである。
 あまりにも長いこと飯スタントならぬ弟子が甲斐甲斐しくお世話をしてくれていたのだ。戦うというより食すためにユーベルコードぶっぱすることに慣れすぎてしまったのだ。

「我知ってる。『でんじちょうりき』より直火の方が肉は美味い!」
 かっ! と見開く瞳。
 もう戦いの跡のBBQのことしか頭にない顔である。いっそ此処までくると清々しい気持ちになるのは何故だろうか。
『天峰三師』は、この人大物だな、とポジティヴに解釈してくれているからいいものの、どう考えても自分のことを調理器具くらいにしか考えていないのだ。
「なにを言っている……?」
 対するオブリビオンたちも若干退いている。
 まじでわからん。
 目の前の魔女が何を言っているのか、さっぱりなのである。仕方ない。

「BBQよ、お前の『火尖槍』と『風火大車輪』の方が優秀な調理器具だということを教えてやれ!」
 そんなふうに振られても『天峰三師』は困るだろう。
 だが、すでにこれまでの経験で短いものの、フィアという猟兵がどのような存在であるかを彼は理解していた。理解できてしまっていたのだ。
「わかりました。ですが、フィア殿。フィア殿も、そろそろお働きいただかないと、後の宴に招かれますまい」
「ぬ……流石に我もそろそろ師匠としての力を見せねばな。よかろう!」
 乗せるのが上手である。
 フィアの瞳がユーベルコードに輝き、氷壁が『虚ろなる処刑人』たちを囲い込む。
 それは迷宮であり、極寒地獄(コキュートス)の力。

 内部に居る者を徐々に凍りつかせる迷宮に囚われた『虚ろなる処刑人』たちは次々と氷漬けにされていく。
 普段は冷凍庫代わりに使っているせいか、所々、これまで保存した食材が存在しているような気すらする。
 これが混沌というやつだ。
「これならば……!」
 だが、そんな彼女を捉える『虚ろなる処刑人』たちの放った檻。
 
 それは雷光を放ち、質問に応えなければ電撃が襲い来る恐ろしいユーベルコードである。
 しかし、簡単な質問なのだ。
『熱々の鉄板での料理と串焼きのBBQ。どちらが良い?』
 どちらが良いだろうか。懊悩してしまうのだ。懊悩っていうほどかなって思わないでもなかったが、言わぬが華というやつである。
「ぐ、ぐぬぬぬ……!」
 そんなに?
 そんなに唸るほどの質問であっただろうか。
『天峰三師』は其の姿にこそ困惑しただろう。どちらか選べばいいのだ。簡単な話である。

 だが、フィアにとてはそうではないのだ。
「くっ、我には決められぬ……!」
 ばりばりっと『でんしれんじ』が如き電撃をフィアは甘んじて受け入れるだろう。
 えぇ……と困惑顔の『天峰三師』に助けられるまで、フィアは電撃に寄って痺れまくった己の体で、まだどちらが良いか決めあぐね、びりびりとしながら懊悩し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
穢れ…罪ですか

数多の檻見回し

創造主の意に反しその想い人を殺めた事か
復讐に果てた彼女を尻目に人格と記憶を犠牲に蘇った事か
嘗ての主たる銀河帝国に弓引いた事か
幾度も現実に屈し己の騎士道を裏切った事か

まだ檻が残るとは
告解では時間が足りませんね

剣振るって檻破壊

処刑人の繰り言はさて置き
『天峰三師』様、“罪”とは二種類あります
絶対的か、己の尺度による相対的な物か

これらを犯したり、自覚したならば目を逸らさぬよう
為すべきを、眼前の光景と己の芯に問うてください
それが“正しき”を為す強さとなるでしょう

さて、私の為すべきは若き英傑への加勢です

剣を一振り
呼び出す千本余りの花で軍勢串刺し行動阻害
そのまま切り込み一息に蹂躙



 己を取り囲む檻を見る。
『創造主の意に反し、その想い人を殺めた』
『復讐に果てた彼女を尻目に人格と記憶を犠牲に蘇った事』
『嘗ての主たる銀河帝国に弓引いた事」
『幾度も現実に屈し、己の騎士道を裏切った事』
 あらゆる罪過がトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)を囲う檻となって、彼を苦しめる。
 罪を告白しろという『虚ろなる処刑人』のユーベルコードが作り上げた檻が幾重にもトリテレイアの道を阻む。

 どれだけの罪がこの機械の体にあるのかをトリテレイアは正しく記憶していたことだろう。
 生身の人の体であるのならば、忘れることができる。
 なかったことにできるであろうし、その罪を別の記憶で持って精算することもできたであろう。
 けれど、トリテレイアはウォーマシンである。
 電脳に刻まれた記憶はなくなることはない。失われてしまうことはあるのかもしれないが、彼が稼働する限りそれは失われないだろう。
 また同時に喪ってはならぬものであるとトリテレイアは思っていたのかも知れない。

「まだ檻が残るとは。告解では時間が足りませんね」
 トリテレイアは己が罪とするものを数多抱える。
 けれど、それを責める者はいないだろう。これほどまでに罪深き存在が『虚ろなる処刑人』たちにとっては赦せぬものであった。
 だからこそ、次々とユーベルコードの檻を放つのだ。
「トリテレイア殿!」
『天峰三師』の放つ『火尖槍』の一撃が檻を破壊する。
 同時にトリテレイアも己の剣をふるって放たれた檻を切り裂くのだ。

「処刑人の繰り言はさておき」
 トリテレイアは互いに並び立つ『天峰三師』に告げる。
 彼もまた穢れ在りきと言われた生命である。自身に自覚なきものであっても、人の体には汚れが存在するものである。
 だからこそ、トリテレイアは告げねばならない。
「“罪”とは二種類あります。絶対的か、己の尺度による相対的なものか」
 トリテレイアは迫る檻を切り裂き、炎吹き荒れる大瀑布を背にした戦場を戦う。
 彼にとって、それはいかなるものであっただろうか。

「これらを犯したり、自覚したならば目をそらさぬよう。為すべきを、眼前の光景と己の芯に問うてください」
 これまで己が懊悩したように。
 矛盾を抱えるウォーマシンという存在だからこそ、たどり着けた境地が在る。
「それが“正しき”を為す強さとなるでしょう」
 彼にとって為すこととは何か。
 すでに彼の中にはそれがある。それはいわば種火のようなものだ。誰かの凍える懊悩を溶かし、温めることができるものである。

 ならばこそ、トリテレイアは若き英傑を救う。
 いや、救うという言葉はトリテレイアにとってはふさわしくないかもしれない。彼は護るために戦う猟兵である。
 誰がためにと剣を掲げるのだ。
 電脳禁忌剣・通常駆動機構:抑止兵装『守護の花』(ディタレンスウェポン・ブローディア)は、その思いに応えるように華の形をした誘導兵器へと姿をかえる。
 乱舞する誘導兵器が『虚ろなる処刑人』たちを蹂躙していく。
 千にも至る華の誘導兵器は、己の敵と、そして若き英傑の征く道を遮る過去を切り裂き、蹂躙していくのだ。

「ならば、僕は征きましょう。“正しき”を為すために。僕の心にしたがって、未だ見えぬ光を目指しましょう」
『天峰三師』は告げる。
 すでに戦いは終わっていた。
 地平線を埋め尽くすほどのオブリビオンの大軍勢。それらの全てを打倒し、猟兵たちと『天峰三師』は活路を開いた。

 穢れ在りきというのならば、潔斎をもって濯ぐ。
 その行路は険しい厳しいものであるだろう。されど、『天峰三師』の心に今あるのは、恐れや悩みではない。
 己が為すべきことを見つけるという、そのたった一つの光を目指して進むという大切な何かを得たのだ。
 何物にも変えがたきを得た若き英傑は、猟兵たちに拱手でもって一礼し、片割れの『風火大車輪』によって空へと飛び上がり、その道を征くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月05日


挿絵イラスト