5
弱きに逢うては

#サムライエンパイア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア


0




●地獄の沙汰も
「救済とは何ぞや」
 壇上に立った男は、幾人かを並べ座らせ、笑顔で語る。
「即ち、カネだ。カネさえあれば何でも手に入るし何でも解決できる。だろ?」
 人懐こそうに笑って強い語気で力説する。いまひとつぴんと来ていない表情で、語られる者たちもとりあえずは頷いて見せる。
「その大事な大事なカネをだよオメェ、投げうってでも救ってくださいなんて拝んだ日にゃオメェ、仏さんだって救わねぇわけにもいかねぇだろ、なぁ?」
 扇子を差し向けながら再び同意を求めて話を振る。確かに、理にかなっているようにも思える。
「だから、俺がきっちーんと仏さんに話通してやるからよ、一族まるっと救ってくださいっつー気持ちを込めて、全財産をお預けなさいっつー話だよ」
 掌に扇子を打ち付けて、男は言った。
「おおっと、天網恢恢ってなもんだ、ケチって少しでも残すんじゃねぇぞ。仏さんを騙そうなんて太ぇ野郎にゃ、仏罰覿面…」
 言いながら懐から短筒を取り出して、バン!
「…とひとつ、食わされちまうぜ?」

●疎にして漏らさず
 我妻・惇(紅穿獣・f04976)は集まってくれた猟兵に向けて説明を始めた。しきりに首を傾げ、何か腑に落ちないような態度で。
「サムライエンパイアで、キナ臭い事件ッつーか…妙な信仰が流行っててなァ…こういう話、少し前にもしたような気がすんだよなァ…」
 なんでも、僻地の村で良からぬ信仰が急速に蔓延しだした、ということである。所有する財産の全てを「喜捨」することで、先祖代々は元より、未来の子々孫々に至るまで永劫に救済に与ることができるというものだ。財産がなければ農作物でも良いし、労働力として金銭を生む形で奉仕しても救われる、という何とも生臭い信仰によって、村人の所有物の権利はほとんどがその指導者の手に渡り、元来豊かではない彼らの暮らしは、あっというまに貧困を窮めたような物となってしまった。このような信仰内容であれば、よほど疑うことを知らないか、よほど手口の巧い者から持ち掛けられないか、あるいはよほど心が弱っているかでなければ、縋るには些かリスクが高すぎる内容にも思えるのだが…。
「こないだの、な」
 言いにくそうにグリモア猟兵が続ける。
「物騒な信仰ッつーか、洗脳されてた村、あンだろ。あの村なんだわ」
 彼が先日に予知した事件に、死を救済と称して隣人の殺害を行わせたオブリビオンの案件がある。今回の村はそれと同じ場所であり、多くは未だ罪悪感に苛まれ心が弱っており、そして多くは疑う必要などなく生きてきた、純朴な人間である。
「ンなわけで、今回も親玉はオブリビオンらしいンだけどなァ…悪ィ、正体は分からねェ」
 黒幕が農具置き場らしき小屋の地下にあることは変わらないが、今度の仕掛け人はより警戒心が強いらしく、村人を見張りに立たせており、そして彼らは救済を得るために何時間だって、それこそ骨身を惜しむことなく勤勉に責務を全うしようとする。彼らは以前に来た猟兵の顔は憶えているし、残念ながら恐怖と怨恨の悪感情を持っているため、信用させることは難しいだろう。
「まァ、逆手にとってビビらせるのもアリだろうが…できれば八方丸く収まってくれた方が良いだろうしなァ。隙を突いてやった方が無難かもな」
 なお、あまり警戒させて「教祖様」に報告されると、姿を晦ませ暫く現れず、なおかつ見せしめの被害者が生まれる可能性もあるとのことだ。
「あァ、道中にはまた餓鬼連中がわんさと詰めてるからな、適当に気ィ付けてくれや」
 前回と一緒という油断もありつつも、グリモア猟兵は信用を寄せ、歯を剥き笑って送り出す。
「何もンだか知らねェが…あァまァオブリビオンだけどな? とにかく、天網恢恢ッてなもンだ、太ェ野郎にゃ、バァンとひとつ食らわしてやろうや」


相良飛蔓
 お世話になります、相良飛蔓です。
 ご覧いただきありがとうございます。

 7本目の今回、またまたサムライエンパイアとなっております。今後も思いつくだけサムライエンパイアで吐き出してやろうと思っておりますので、お付き合いいただければ。

 今回は2本前の「仏に逢うては」の続きになります。構成自体は割と一緒になりますが、前回参加者様は面が割れてるのでちょっと工夫が要る仕様です。今回からの参加ももちろん大歓迎で、その場合は仲間と思われない限りは穏便な会話の余地はある感じです。前回と同様「いかに穏便に目的を果たすか」が一章のポイントとなります。

 なお、依頼の成否には関わりませんが、洗脳下において、村民たちは一様に教義を守っています。これまた前回同様ですが、3章終了後の村人への絡み方に関してプレイング書いていただくと後味少し違うかもしれません。

 それでは、ご検討の程よろしくお願いいたします。
41




第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    村を探索して手がかりを探す

SPD   :    尾行して様子を見る

WIZ   :    村人から話を聞く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エン・アウァールス
▼アレンジ歓迎
【SPD】
※村人に見つからないことを第一に。村には入らず外から、技能を使用して観察する。

▼心情
やあ、我妻。
あの村人たちがオブリビオンだったって?そうと決まれば話は早いね。エンに任せ、
…え、情報が間違ってる?
そこに座れ?

……。
ごめんよ、冗談のつもりだったんだ。
(困り顔で正座し、素直に説教される羅刹)

…へえ、そっか。
やっぱり、ヒトってよく分からないね。

▼行動
村を周りの自然や物陰(木の上、岩陰、草むらなど)から観察し、村人や見張りの行動を探る。
見張りの交代時間や、特に警戒されている場所に目星をつけ、他の猟兵に報告。
【地形の利用】【視力】【暗視】【迷彩】【クライミング】を駆使。


カレリア・リュエシェ
【アドリブ・連携歓迎】

守ってやるから財産を寄越せとは、随分と俗な考えをする神だ。
救済者は無私無欲が信条ではないのか。騎士として見過ごせん。

……見過ごせんが調査は苦手だ。話術も上手くないし身を潜めて機会を待つか。
日が暮れさえすれば衆目も少なくなる。それまでは通りがかる村人の会話を盗み聞こう。
怪しまれたら【怪力】で石を遠くに投げる、獣の真似で【恐怖を与える】なりで凌ぐ。

会話の中に有用な情報はないかな? 
オブリビオンに関するものでなく、こうまで神に縋る理由でも十分だ。
何を差し出してもという心境を変えない限り3度目もありうる。改善したい。
途中、他の猟兵に会えたら何か知らないか聞いてみよう。
【WIZ】



●無貌
 村の近くの森へと転送されたエン・アウァールス(蟷螂・f04426)は、少し痺れている脚をさすりながら立ち上がる。
「……冗談のつもりだったんだけど」
 グリモアベースで最後に見た相手の顔は、理解を怪しむ心配そうな表情。最後にしていた話は、懇々と繰り返された再度のブリーフィング。それらはいずれも、エンが放った言葉――彼いわく「冗談」に起因する。
『あの村人たちがオブリビオンだったって?そうと決まれば話は早いね。エンに任せ』
 彼は以前にもこの村を訪れている。そしてその去り際には、住民たちがオブリビオンでないことを「残念」と言った。知る者からすれば心配にもなろうというものであろう。申し訳なさからか、やや困り顔を引き摺りながら周囲を見回すと、カレリア・リュエシェ(騎士演者・f16364)の姿が目に留まる。義憤に燃える彼女の姿は、倒すべき敵の潜む村を、救うべき民のある村を、真剣な様子で見据えていた。
「守ってやるから財宝を寄越せとは、随分と俗な考えをする神だ。救済者は無私無欲が信条ではないのか。騎士として見過ごせん」
 救済を唱える者にも色々な思想や理念はあるが、彼女の求める理想の中では高潔で高邁な精神を持つ者が多いらしい。そして、今回予知された者のような理念を持つ者は、少なくとも知る中には存在しないようだ。そしてそれは、存在すべからざる物らしい。とは言う物の。
「……見過ごせんが調査は苦手だ。話術も上手くないし…」
 腕を組み思案する彼女がふっと目線を上げると、ややぼんやりした表情の羅刹と目が合い、その相手が柔らかく笑って見せた。先ほど正座してお説教を受けていたその相手に少し困惑した様子を見せるも、二人は連携を行うことにした。なった。

 人目に付かぬよう森を出て、身を屈めて茂みに隠れ、村との距離を近付ける。素顔を隠し視界が悪いかもしれない同行者を丁寧に先導し、エンは祭祀の場へと続く小屋の見える場所までたどり着いた。そこには、警戒心にあふれた見張りが数人、あるいは立ち、あるいは歩き、目を光らせていた。そう簡単には行かない様子に息を吐き、彼は長期戦の構えでの観察を開始した。
 隣のカレリアは、見つからないように気を付けながらも、少しでも会話を聞き取ろうとして身を乗り出している。一言二言を交わす声は時々聞こえるが、距離もあり明瞭ではない。もう少し、と踏み込むと、下草が鳴った。
「誰かいるのか!」
 見張りの一人が声を掛け、少し怯えた様子で近付いてくる。カレリアは咄嗟に獣の鳴き声を真似て注意を逸らそうと試みる。しかし歩哨の男は獣と見るや追い立てようと逆に勇んで歩を進めてきた。あわやという所で彼女は石を拾い上げ、怪力をもってあさっての方向へ投げ飛ばした。地面近くを飛び行く石は茂みの草を鳴らしながら遠くへと進み行き、駆ける獣のような様相を見せた。村人は安心したように溜め息を付き、問題が解決したものと自分に言い聞かせながら戻って行った。同じく、少女騎士も溜め息を付いた。横目で様子を見ていたエンは、首を傾げる。
「そこまですることないのに」
「何を差し出してもという心境を変えない限り3度目もありうる。改善したい」
 不自然なまでに神仏に縋る様は、由々しきものである。彼らが騙されているのなら、正義の騎士としては救わねばなるまい。しかしその答えは、この羅刹への物としては不十分である。「そこまでして救うことないのに」では、おそらく、ない。
「騎士として、傷つけるわけにはいかないだろう」
 彼女の理念にとっては当然の。多数派の社会正義にとっては当然の。そんな言葉に対し、エンは納得しきれていない表情のままで
「…へえ、そっか。やっぱり、ヒトってよく分からないね」
(そこまでしなくても、敵になるなら――)
 そうして彼は注意のすべてを村内に戻し、観察を続けた。結局、彼らの会話は交代の少し前と交代する瞬間に合図として行われる物だけで、それ以外では重く口を閉ざし、悲壮なまでに任務に忠実であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御剣・刀也
POW行動

やれやれ。泣きっ面に蜂たぁこの事だな
先導されたとはいえ、殺しを行った心の隙に付け込むか
俺はこういう奴が大嫌いなんだ。人の弱みに付け込むような糞は必ず斬り捨ててやる

村を練り歩いて手掛かりを探す
村の現状を見て、本当に血の一滴まで絞りつくされようとしてるんだな。と思うが、恵んだりはしない
そういう偽善は嫌いだから。オブリビオンを潰して取られた金をとり返したら、後はそれでどうにかするのは村人次第
生きることは戦いと選択の連続だから、容易に人を頼る事を覚えられたくない
村の中を歩き回って手掛かりを探し、不審に思われて絡まれたら
「失せろよ。俺は今機嫌が悪いんだ」
と殺気を浴びせて退かせる


真野・椋弥
金を欲し他者を騙す下衆が、神仏に話を通せる顔だとは思わんのだが……。
純粋さも罪悪感も、過ぎれば傍目には只の狂気だな。

一晩場所を借りたいと旅人を装う。敢えて人の疎らな場所で、働く者を眺め時折話し掛けるか。
この村の子は幸せ者だ。これだけ働いているんだ、蓄えは多いのだろう?
皆素朴な暮らしだが備えだろうか。先は親子共々満足いくまで食べて笑える未来なのだろうなぁ。
などと無知を装い褒める言葉を掛け、隙を見せれば【言いくるめ】て、一宿の恩を返したいと手伝いを申し出る。
仕事を手放す事を極度に厭うなら不自然だろうよ。
村の自衛の為に【戦闘知識】や【拠点防衛】の知恵は必要かと聞き、見張りに取り入るよう動くのも手か。



●無頼
(金を欲し他者を騙す下衆が、神仏に話を通せる顔だとは思わんのだが……)
 真野・椋弥(かぎろひ・f16323)は思う。彼は旅人を装い、一晩の寝床を借りたいと願い出てここにいる。ぼんやりした様子が幸いしたのか、別段怪しまれることもなく受け入れられ、今は簡素な家の軒先にて村の様子を眺めていた。焦点を結んでいるのかどうかも怪しい視線の先には、必死で鍬を振り下ろす男の姿。ふらつきながらも休むことなく労働に励むその人に、思う。
(純粋さも罪悪感も、過ぎれば傍目には只の狂気だな)
 事実、その村人の形相は尋常ならざるもので、落命を厭わぬ気色すら窺えた。近付き、椋弥は声を掛ける。
「この村の子は幸せ者だ。これだけ働いているんだ、蓄えは多いのだろう?」
 問われた者は躊躇いながらも手を止める。休憩が罪悪であるかのように落ち着かない様子ながらも、会話には応じる。
「そんなことはねえよ」
 しかしその言葉はそっけない。
「いやいや、皆素朴な暮らしだが備えだろうか。先は親子共々満足いくまで食べて笑える未来なのだろうなぁ」
 褒める言葉は褒められた者を刺し、苛んだ。苦しげな表情を浮かべ、作業に戻ろうとする男を、椋弥は逃がさなかった。
「しかし先ほどから働き通しではないか。一宿の恩を返したい、手伝わせてはくれないか」
 代わりに引き受け、休憩させようと手を伸ばすと、村人は首を横に振って道具を身体に引き寄せ、歯を剥いて威嚇した。
「…いい。旅人さんだって疲れてんだろ、休んでな」
 すぐに我に返ると、やはりそっけなく断って作業を再開した。それ以上は、何を問うても答えることはなかった。

「やれやれ。泣きっ面に蜂たぁこの事だな」
 渋面の御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)村を歩き回りながら呟いた。その姿に気付かず、憑かれたように手元の作業に従事する村人たちを眺める。勤勉に仕事をこなす彼らは、その割に貧しい暮らしをしている。ぢっと手を見る余裕すらもなく、ただただ無心に、人ならざる機構のように。
 手伝うことも、止めることも、休ませることも、仕事を奪うこともできる。しかし刀也はそれをしない。血の一滴すらも残さず絞られようとする彼らに、優しい手を伸べて見せたりはしない。選択する権利を、責任を奪い、強さを奪うその行為は「偽善」であり、そしてそんなことは嫌いだから。
(先導されたとはいえ、殺しを行った心の隙に付け込むか)
 彼の嫌う物は、この村にはもう一つある。
(俺はこういう奴が大嫌いなんだ。人の弱みに付け込むような糞は必ず斬り捨ててやる)
 怒りを燃やしつつも手がかりを探して練り歩く彼は、小さくない村の中で目的の小屋へとたどり着く。そこにはもちろん歩哨が立ち、見知らぬ男を見とがめる。
「お前ぇ誰だ、何しに来た」
「失せろよ。俺は今機嫌が悪いんだ」
 言葉通りに機嫌の悪い刀也は、殺気を漲らせて対する相手を威嚇する。それでも任務に忠実な村民は、命を擲つ覚悟をしながら、鋤を構えた。

「あっ、こんなところにいたんだな」
 危うい所に椋弥が現れ、両者の間に割って入った。
「俺の連れだよ、ちょっと喧嘩っ早いのだが、迷惑をかけたりしてないか」
 肘で刀也を小突いてアピールすると、小突かれた男も不機嫌そうにしながらも沈黙を守り、言うに任せておく。ぼんやりとした表情からは内実は窺い知れず、とりあえず村人は鋤を収めた。納得してくれたようだ。
「ところで、自衛の為の指南は必要か?」
 急な申し出に呆気に取られる男を言いくるめんと、妖狐は言葉を続ける。
「旅をしてると物騒なことも多くてな。俺もこいつも、戦い方や守り方にはそれなりに詳しい。一宿の恩返しに、どうだろうか」
 仕事のための知識や技術を身に着けることは、怠慢にはあたらないだろう。一通り思案してそう納得した村人は、それでは、と申し出を受け入れた。この後、幾人もの壮健な若者が、知識と技術と多大なる疲労を得て、朝までぐっすりと眠りこけることになる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
今日はひとり
……でも、やっぱり淋しい(ぽつり
………勇気だす

教祖様の情報必要
だけど村の人達、なんで救いが欲しいのかな

話をしてくれそうな村の人を探し……(わからない)
第六感で感じ取った人にえいって声をかけて

えっと……
直球で質問しても警戒されちゃう
悩んで、迷子にもみえる感じで、思ったままを素直に伝える

あのね、わたし独りなの
みんな居なくて、困って
何とかしなきゃって思っても何も出来なくて……
どうしよう
誰か頼れる人いませんか?

声に出して気付くの
……村の人達もそうなのかな
暗闇を独り歩くような
何かにすがりたい、気持ち

嫌がられないなら手をつないで。
少しでも安心を与えられたなら
救いが欲しい理由、話してもらえる?



●無力
 木元・杏(微睡み兎・f16565)は不安な表情をしている。今日は、双子の兄は一緒にいない。淋しさもあるが、それでなくとも彼女くらいの年頃で、たった一人でオブリビオンへ立ち向かうことは普通のことではない。
「………勇気だす」
 自身を奮い立たせると、小さな猟兵は考えた。必要なのは、歪んだ教えをもたらすものの情報。何者か、どうやって辿り着くか。だけど。
「村の人達、なんで救いが欲しいのかな」
 少女には、その方がよっぽど大事かもしれない。寄り添う誰かの心強さを、とてもよく知っているから。彼女は、手がかりを探し歩きだした。

 とはいえ周囲の人々は一心に仕事をしていて、態度や視線で判断することは難しい。誰もが一様に、受け入れてくれそうもないように見える。杏は意を決し、ちょうど挙動の切れ目にあった男に声を掛けた。
「あのっ」
「あ?何だい、嬢ちゃんどこの子だね」
 振り向いた男の頬はこけ、疲れた顔をしていた。その男は、見慣れぬ少女に訝しげな目を向けつつも、柔和な声を返してきた。
「えっと……」
 警戒させぬよう慎重に言葉を選ぶ杏。その様子を打算とは毛ほども思わず、村人は続く言葉を待った。
「あのね、わたし独りなの。みんな居なくて、困って…何とかしなきゃって思っても何もできなくて……」
 核心を避けて要領を得ない少女の言葉に、男は迷子の混乱を見る。落ち着かせてやりたいと思い伸ばした手は、触れず宙にて止まった。それは恐れるように、止まった。
 杏は気付いた。自分の不安を吹き飛ばしてくれる誰かのように、村の人たちも、何かに誰かにすがりたいのかな。思いながら、伸ばされたその手を握り、繋いだ。少しでも安心させてあげられたら、と。
 そんな暖かさが男には恐ろしかった。心地良い慈愛が、生者の熱が、奪ったものの重みを、突き付けるようで。震える声を絞り出してから、彼はそれ以上話せない程にぼろぼろと泣き出してしまった。

「おれは むすめを ころしたんだ」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
神様は何も救ってくれないって
私は思ってるけど信仰は自由だしね。
前の事は実際に見てないけど、
それと更に貧困で心が弱ってるからしょうがないのかな?

見張りがいる所は分かってるから、
夜に見張り以外に村人が来ないか一応確認かな。
ダークネスクロークの晦冥で夜に紛れながら動くね、
バレそうになったら【澄明】で隠れるか、
隠れられそうになかったら
【四精儀】で闇の霧を発生させて
目眩ましにして逃げるよ。
あまり目立たないようには頑張りたい。

生活が安定しないと、またつけ込まれちゃうかもしれないから
金銭が取り返せたら村人に返したいね。
心のケアも出来たら良いけど、
村の子供の為にも頑張って欲しい所だね。

アレンジ・連携歓迎



●無明
 神様は慈悲なんて与えない。何も救ってくれない。でなければあんな別れを与えたりなんて、きっとしない。
「けど、信仰は自由だしね」
 自身の事はひとまず脇に置いて、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は思いを巡らす。ここで何があったかは実際には見ていないし、神様に縋る気持ちも、あまりよくわからない。
「心が弱ってるからしょうがないのかな?」
 であるなら、少なくとも生活が安定しなければ、また付け込まれる可能性も。財産を取り返したり心のケアをしたり、しなければいけないこと、してあげたいことは多い。そのためにも、まずは根本を叩かなくては。
 思う彼女は闇夜に紛れ、目指す小屋へと歩を進め。晦冥をもて夜の帳を塗り重ね、息を潜めてにじり寄る。若者共は先の稽古で力尽き、歩く見張りの影はなく、灯火を持ちて扉に二人、疲れを押して立つばかり。そのうち一人が異変に気付く。僅かな音に明かりを向けると、黒く蠢く闇を見た。男はその目を擦って凝らし、再び闇を見つめるも、炎の明かりが揺らめくばかりでそこには何も見当たらず。
「気のせいか」
 落胆と安心の混ざった呟きをこぼし、彼は力を抜いた。その傍らで
(危なかった…)
 とこちらは呟くわけにはいかないヴィリヤが、澄明を用いて姿を消し、息を殺していた。そのまましばらく観察すると、注意の散漫さが見て取れた。長時間の緊張下にあっては無理からぬことであり、それは猟兵にとっては都合の良いことである。続いて彼女が行使した力で、小屋の周りのごく狭い範囲が無明の霧に包まれた。星明りすら消えた空に、二人の男は気付かない。潜んでいた猟兵たちも、仲間の合図に応じて順に侵入していった。

 信じるものが、正しきものに否定される悲しさを、彼女もきっと知っている。悪しかりしとは知りつつも、さに割り切れぬ苦しさも。そして彼女はきっと知っている。それでも立ち向かわねばならぬことを。さもなくば救えぬものもあることを。彼らもそれを知らねばならない。
「村の子供の為にも、頑張って欲しい所だね」
 仲間を待って最後に入り、ヴィリヤは扉を静かに閉めた。

 霧が晴れると、疲れた男がただ二人、変わらずそこに立っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『餓鬼』

POW   :    共喰い
戦闘中に食べた【弱った仲間の身体の一部】の量と質に応じて【自身の傷が癒え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飢餓の極地
【究極の飢餓状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    満たされぬ満腹感
予め【腹を空かせておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●小僧、丁稚、または餓鬼
 しばらく奥に進み、一部の猟兵には見覚えのある開けた場所。踏み入れるとすぐに囲むように餓鬼の群れが現れた。
「シンニュウシャ、シンニュウシャ!」
「コロセ!クエ!」
 大声で騒ぎ立てる声は、奥の暗がりから次々に同種を呼び寄せた。
『モラッタブンハ、ハタラカネェト!』
 何体もの餓鬼が口を揃えて、何かを復唱するように叫んでから、一斉に飛び出してきた。
カレリア・リュエシェ
【アレンジ歓迎】

なんとか潜り込めたが、信仰の理由は謎のままか。
共にいた猟兵には申し訳ないな……ああ、扉が見えてきた。意識を切り替えよう。反省は、この件を片付けてからだ。

矮躯で当てづらいが、餓鬼の攻撃には黒剣で【カウンター】だ。
それにしても貰ったとは何を。金や食べ物か、まさか人では――何だ? 悲鳴? 討ち漏らしを食っているのか! とんだ悪食だ。

共食いでどんどん強化されては困る。同族食らいを狙って突撃。
形状状、突きには向かんが体重を掛けて【串刺し】を狙う。
【生命力吸収】で食らった力を食らい返してやる。

乱戦で誰がどこにいるか不明だが、周囲はどうなっているだろう。
必要なら攻撃を中断し、庇いに入ろう。


真野・椋弥
意志の強さも向上心もあった。だのに、何故曖昧な存在に過度に縋るのだろうな。
他に拠り所が在れば多少は変わるのだろうか。

随分殊勝な妖だが、食われる義理も趣味も無い。代わりに華焔猛襲・蘇芳で、その腹の中に火焔を放り込んでやるか。
薙刀での【なぎ払い】なら何れかに当たるだろうし、返す刃や石突側での殴打の【二回攻撃】も狙う。二撃目を当てて灰も残さず焼き、共喰いの防止と成れば良いのだが。

敵の攻撃は【見切り】で回避。【激痛耐性】もあるが敵陣に飛び込む故、術での【オーラ防御】もしておくか。当たっても【カウンター】で反撃に転じれば良い。

早く、件の教祖様とやらの横面に一撃叩き込んでやりたいものだ。

アドリブ・連携歓迎


木元・杏
……食う?
怖い。でも、負けない
おじさんにふれた時の手のぬくもりが、わたしの決意と勇気

同行の皆と声掛けて、連携して戦うの
うさみみメイドさん(人形)は敵の動きを見切って早業で懐に飛び込んで目潰し
フェイント混ぜて2回攻撃で手数稼いで
威力より敵の撹乱を重視して人形を操るの
陣が乱れて隙が出来たら
しっかりダメージを与えるように攻撃重視に切り替える

わたしも敵の攻撃は見切り、剣のオーラを盾代わりにして防御
第六感も働かせて敵の動作を予測して
弱った敵から狙いを定めて『華灯の舞』
わたしの威力じゃまだ倒せない事が多い……、だから、
皆に倒しやすい敵を伝える意味も込めてUC、使ってく

※連携やアドリブOK



●みちなき みちゆき みちびきありき
 群れの迫力に呑まれそうになりながらも、少女は我が手をしばらく見つめ、意を決したように顔を上げた。木元・杏が言葉を交わした村人は、娘を殺したという。洗脳によるとはいえ、呵責は残った。己で許さねば永劫に続く苦しみに、付け込んだのは更なる災禍。
「怖い。でも、負けない」
 もういいよって、言ってあげなくちゃ。救いたい者の手のぬくもりが、少女の背中を押した。
 杏の操る人形のうさみみメイドさんが、主人の意に随って敵の群れへと躍り込む。すかさず横合いから飛び掛かる敵を、肉食獣の追跡を変則的な動きで躱しおおせる兎さながらに、巧みな跳躍で避けてのける。その動きは捕食者の欲求を掻き立て、飛び出した餓鬼どもを次々に地へ転がす。
 そうして避けるばかりの人形は、次第に囲まれ逃げ場を限定されていく。そうして跳び来た者は、その腕の直撃を受けることとなった。
「ギッ」
 顔からぶつかり、軋むような声を漏らしたその小怪は、その場に落ちて顔を押さえてのたうつ。他の者も一瞬ためらうが、空腹に逆らえないと見えて間を置かずに飛び込んでくる。こちらも回した腕で迎撃し、余る勢いでもう一体、あるいはひらりと宙返り、頭へ踵を打ち付けて。変幻自在に翻弄し、多くの敵を引き付けて見せる可愛らしい彼女は、操られているものとは思い難い。操られているからこそ全方位の攻撃に的確に対応できるとも言えようか。ともあれ、操作者にも高度な能力と意識の集中が求められることは間違いないだろう。

 そして、複数個所への意識の集中はとても難しい。この場合に疎かになったのは、杏自身の近辺である。いつの間にか近付いていた餓鬼の一体が、咆哮を上げて少女に迫る。気付いた時にはもはや防げる術はなく。
「させるか!」
 跳ぶ怪物を、黒剣が薙ぎ払った。仕留めるには至らず弾き飛ばされた敵は、黒鎧の騎士、カレリア・リュシェを憎々しげに見た。反撃を思い立ち上がろうとするも、そこに打ち下ろされた真野・椋弥の薙刀によってその身体は両断された。
覆われた頭を少し後ろに向け、仲間の安否を確認する眼光がバイザー越しにちらと覗く。その先には、目を丸くして驚いた顔の杏の姿があった。
「ありがとう」
 やや呆気にとられつつも、少女が二人に対し礼儀正しく挨拶を返すと、無事を認めた騎士は頷き、妖狐は目を細める。深い翆の瞳には、情動の炎熱がちろりと揺らめく。
「人を助けるのは騎士として当然のことだ」
 言って敵へ向き直り、カレリアはさらなる責務を果たさんとする。おひめさまを守るのは、広く知られる騎士の勲であろう。囲む敵へと黒剣を差し向けた。
「随分殊勝な妖だが、食われる義理も趣味も無い」
 並び立つ椋弥も得物を構え直し、敵の群れを牽制する。と、仲間の言葉にカレリアが応じる。
「それにしても貰ったとは何を。金や食べ物か、まさか人では――」
 おぞましい想像に、目の前の餓鬼が少し首を傾げて見えた。よもや自らの放った言葉への疑問だとは、思わなかったようだ。まあいいやとばかりに前に出ようとするそれの脳天に、うさみみメイドさんが物凄い勢いで着地した。浮足立った敵陣に対し、攪乱の用は十分に済んだ。となればここからは攻勢である。
「わたしも、がんばる」
 その目の恐れは完全には消えず、さりとて強い勇気の光も宿り。人形の円らな目も、爛々と輝いているようにも見えた。

「意志の強さも向上心もあった。だのに、何故曖昧な存在に過度に縋るのだろうな」
 自ら戦地に立つを良しとする彼が、最前にあるは当然と言える。迫る敵群をまとめて薙ぎ払いながら、合間に思いを口にする。
「ほかに拠り所が在れば、多少は変わるのだろうか」
 彼には実感が湧かないのかもしれない。強さゆえか、縋ることのなかった境涯ゆえか。手のぬくもりを答えとした杏には、自らの知るそれを十全に伝える言葉は、ない。
「信仰の理由は謎のままか」
 危険を冒してまで得ようとした情報が得られず、調査で同行した猟兵を思って少し申し訳なさに襲われるカレリア。椋弥の薙刀を逃れ来る敵の姿に、一瞬対応が遅れる。そこに杏の指が向けられ、注意を促す。
「射て」
 否。それだけではなく、そこから白銀の桜花が舞い踊る。思わぬ方向から攻撃を受けた小鬼は、銀光に灼かれ勢いを失った。黒騎士も速やかに意識を切り替え、惑う餓鬼へと斬りつける。
(反省は、この件を片付けてからだ)
 唐突に、この世の物とは思えぬ悲鳴があがった。事実この世の物でない怪物が、無数の怪物にその身を齧られる苦痛の叫び。誰に助けを求めることもできぬそれは、仲間の腹に見る間にその身を納められてしまった。
「とんだ悪食だ」
 カレリアは吐き捨てるように言う。その黒鎧に、口元を赤黒くした鬼どもが駆ける。先ほどよりも格段に速いそれは、矮躯も手伝い回避を難しくさせた。鎧を破るには至らずとも、重い衝撃が彼女を苛む。そして飛び掛かった数体目の餓鬼が開けた大口に、両手でしっかりと支えられた黒剣が突き刺された。盛大な返り血は黒に溶け込む。そのまま突き下ろされ地に縫い止められつつも、未だじたばた暴れる妖に
「食らい返してやる」
 声を掛けるや否や、矮躯は干からびさらに小さくなり、萎れて消えた。鎧に付いた血も、同じくぱらぱらと風に散る。剣を引き抜き立ち直る騎士に餓鬼も慄いて見せた。その姿は、禍々しくすら、見えた。

 共喰いの餓鬼は一つ所には向かわなかった。素早い動きで飛び掛かる鬼を、椋弥は見切りひらりと躱す。異なる向きより掛かる相手も、同じく避けんとするも、思い直す。我が身の先には他の猟兵、護るに立つが為すべきことと、その骨肉を差し出し、噛み付かれる。しかし、先に述べた通り、食われる義理も趣味も無い。気炎の防御をしてなお穿たれる傷を激痛耐性でものともせずに、取り直した薙刀で斬り付ける。緩んだ隙に払い落とし、その腹部へと石突を埋める。増長天の足下の如く、打たれた餓鬼は苦悶する。
「遠慮するな、焔の華も添えてやろう」
 合わせて、俄かにその身を炎が包む。薙刀を起点として放たれた狐火は、辺りを光に彩り、花開くように見事に一瞬燃え広がると。
「早く、件の教祖様とやらの横面に一撃叩き込んでやりたいものだ」
 座する者なき蓮華座は、夢幻の如くに消え失せた。元より何もなかったように、何も残さず消え失せた。茫洋たる視線の先には、まだ見ぬそれを捉えるか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ポノ・エトランゼ
隣人だけでなく、子も殺した――その気持ちを抱いて……生きていけるのかしら……
罪悪感とか、そんなので済ませられる重さじゃないわね
重くて重くて、きっと潰れてしまう
救済ってなんだろう……
きっと直ぐに手に入れられるものじゃないわよね
長い長い時間をかけて、重い足取りで生き抜いて、それでも得られる確証もないわね……

飢餓の極地
SPD対応

駆けつけた!
まずは千里眼射ち
風精霊の「属性攻撃」宿す一矢を敵陣に向けて「援護射撃」「範囲攻撃」で強い風を起こしてみるわね
あとは彼我の距離をつめて、魔法の杖を振りかざして敵を殴る!
同時に一体を起点に、凍れっ! と凍結魔法を「範囲攻撃」かつ「全力魔法」で放ち攻撃


連携・アドリブ歓迎


木元・祭莉
(連携アドリブ上等!)
アンちゃん、こんなとこにいたのー!?(追っかけてきた兄貴)

わ、なんだこいつら、きったないー!
ウチの妹は……確かに美味しそうだけど、おまえたちにはやんないもんねー!!(がおー)

(事情がわかんないのでとりあえず餓鬼を蹴散らすモード)

勢いよく飛び出し、グラップルの拳で餓鬼たちを殴りつけ、吹き飛ばしながら駆け回るー。
掴まれたら負けだと思って、野生の勘で舞うように、とにかく動き回って。

できるだけ多くの敵を引き付けたところで……
「(十分味方から距離を取ったコト確認して)よーっし」

おいらのリサイタル、耳の穴かっぽじって聞けーっ!

『ぼえぇーーーー!』(歌と呼ぶにはあまりに暴力的な咆哮)



●みちなき みちゆき こたえあれかし
 ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)は頭を悩ます。村の置かれた境遇に、彼らの犯した罪業に。
「隣人だけでなく、子も殺した――その気持ちを抱いて……生きていけるのかしら……」
 一人のひとを容易に潰してしまいかねないその出来事に、少女は思いを巡らせるが
「救済ってなんだろう……」
 答えは出ない。ここに住む誰もが求め、訪れたそれぞれのオブリビオンが語るそれは、きっと得難きものなのであろう。なればこそ、生きねばならぬのだろう。重い足取りで生き抜いて、後悔を抱いても生き抜いて。それでも答えは、出ないかもしれない。
 思う間に戦場へと行きついた。幾人かの猟兵が、いくらもの餓鬼と戦い、傷つき、斬り捨てる。生きるにも生かすにも、まずこの一戦。ポノは弓弦を引き絞る。
 ここまでの戦闘で、すでに同族を喰らい力を増したものもある。遠くから見て取れるほどに動きは素早く、避け損ねた味方の傷も小さくはない。そんな手強い個体を中心に形作られた集団に、千里眼は照準を合わせ、銀箭が放たれる。放たれた矢は烈風を纏い、敵の集団を吹き散らす。その射手の脇を、更なる疾風が吹き過ぎた。

「ウチの妹は……確かに美味しそうだけど、おまえたちにはやんないもんねー!!」
 戦う妹を守らんと、木元・祭莉(花咲か子狼・f16554)は弾丸の如くに駆け抜けた。先を行った精霊の力による風を追いかけるように、浮き足立つ餓鬼の群れへと突っ込んで、勢いのままに小さな拳を叩き込んだ。吹き飛ぶ相手に目もくれず、そこから大きく距離を取る。離れて踏み切りもう一度、群れに跳び込みもう一撃。何度も何度も繰り返し、多くの注意を引き付ける。妹思いの兄は危険を厭わず、それを請け負い助けようとする。手を取り勇気を与えることは、同じく勇気をもらうこと。大好きな誰かのためならば、怖くったって戦える!
 獣のようなその動きに食欲を刺激されたのかもしれない。ひと際に餓えを見せる鬼が祭莉へと向かい、それは他の餓鬼に紛れ少年の対応を遅らせた。気付いて引こうとする足を、させじと掴み引き倒す。
「わ、なんだよ、離せよー!!」
 聞く耳を持たず、眼前のご馳走に夢中の妖。祭莉は散々に殴りつけるも、噛み付くまでを遅らすばかりで一向に離れる気配はない。

 救ったのは、更なる射撃であった。今度は風を纏わず、違うことなく餓鬼の腕を貫くことでその用をなした。緩んだ腕を振りほどき、蜻蛉を切って距離を取る。立ち上がる餓鬼、後から更に迫る餓鬼。それは固まり集団をなし、少年を追い詰めんとする。
 しかしポノには好都合。敵は集まり、注意は他方。絶好の機会を逃さず駆け寄り
「凍れっ!」
 後頭部を強かに打ち付けられた餓鬼は短い悲鳴を上げ、背後の敵へと向き直――れない。見れば足元は凍り、地面に貼り付けられ。他の餓鬼も同様に身動きが取れず、憎々しげに呻いている。そうして動けぬ彼らに、祭莉が頷いた。
「よーっし…おいらのリサイタル、耳の穴かっぽじって聞けーっ!」
 歌う前から大音声、元気な少年の咆哮に、幾人かの猟兵は覚えがある。おそらくその記憶がもっとも強いであろう少女は、周囲を促しながら自らも耳を押さえた。改めて少年が大きく息を吸い込み…
『ぼえぇーーーー!』
 地下の、屋内である。とてもよく反響する。耳を塞いでなお頭の中を揺さぶる響きに、促されるままに防御姿勢を取った者たちは一様になるほどと頷いた。多くの餓鬼は放心し、弱っていたものはそのまま消滅していく。効果の程に満足げな少年は、勇気を見せたいその人へ、どんなもんだと笑って見せた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御剣・刀也
飢鬼どもか。こんな連中飼ってるとは、奥にいるのは相当あくどいらしいな
死んだ連中には安息の眠りを。飢鬼であれ、それは同じ。黄泉平坂に送ってやるよ
二度と戻ってくるんじゃねぇぞ

共食いされない様に、欠損部分に群がってる飢鬼から優先的に斬り捨てる
食べて力が増してしまったら、その個体を集中的に狙う
飢餓の極致になったら、緩急を使って動きでゆっくり動いて間合いに入ったら素早く動いて一気に突っ込んで斬り捨てる
満たされぬ満腹感で攻撃力を上げようとしてるのが居たら見つけ次第斬る
「さて、ボスに行くまでの露払いだ。お前らも二度と使われるんじゃねぇぞ」


ヴィリヤ・カヤラ
「貰った分は働かないと」って言ったかな?
食事の事かな?
村の人が作った作物を食べているなら、
これ以上食べさせる訳にはいかないよね。

敵が複数体固まっている所があれば、
【氷晶】で数を減らすようにするね。
もしダメージを受けてる敵が多ければ、
ダメージの大きそうな敵を
優先して狙って確実に倒していくね。
あとは敵の動きを確認しつつ『第六感』で、
出来るだけ逃がさないようにするよ。

敵の攻撃は避けるか武器で防ぐようにするね。
敵に無差別攻撃をし始める個体が出たら
【瞬刻】で引き付けるのも有りかな?
誰かが引き付けてくれてたら、
【氷晶】で狙ってみるね。

自他問わず怪我が酷そうな人がいたら
【輝光】で回復するね

アレンジ・連携歓迎



●みちなき みちゆき きりひらきゆけ
 痛みはなくとも傷は深い、血の気の多い猟兵たちへ、宝石の光が降り注いだ。玲瓏たる光は見る間に傷を癒し、光源にある猟兵は息を吐いた。
「『貰った分は働かないと』って言ったかな?」
「モラッタ!モラッタ!」
 呟いたヴィリヤ・カヤラの言葉に、意外にも餓鬼が返答した。その圧にやや驚きながらも、それならばと続けて言葉を投げかけてみる。
「食事のことかな?」
 今度は言葉が返ってこない。試しに『たべもの』と言い換えてみると。
「タベモノモラッタ!」「イモノハシッコ!」「キュウリノヤワイノ!」
 口々に言い立てる彼らは、どうやら自身の受け取った報酬を申告しているらしい。
「ダンナガイッテタ、モラッタブンハハタラカネェト!」
 そうして再度それを確認した彼らは、猟兵に向けて飛び掛かる構えを改めて見せる。何をどうしたのか、動きを封じる氷も、早々にその役目を終えようとしていた。まさか彼らが時間稼ぎにしゃべっていたなどとは考えにくいが――なんだか少し緊張感の薄れた感はあるが、気を取り直してヴィリヤも攻撃に備える。
「村の人が作った作物を食べているなら、これ以上食べさせる訳にはいかないよね」
 商品価値の薄いものだけを与えられているようではあるが、それでも大事な作物で。そしてそれ以外の部分はどうなっているのかも問題で。
「奥にいるのは相当あくどいらしいな」
 そうしてそんな使われ方をしている彼らに憐憫すら抱きつつ、御剣・刀也も得物を構える。使者には安息の眠りを。それがたとえ妖であれ、感傷であれ。
「黄泉平坂に送ってやるよ」
 此度は修羅の、救いやる。

「氷よ」
 今ほどまで言葉を交わしていた小鬼の群れに、容赦のない氷刃の雨が降り注ぐ。その身の中心を貫かれ、基部を抉り潰され、末端を千切り飛ばされる。狙われた多くの個体がそのまま消滅するが、残存する者も少なくはない。そして比較的無事な個体は、戦えぬ者へと集中し、その牙を剥く。自らの延命のために、同族の命を犠牲にせんと牙を剥く。
「させねぇよ」
 見越し、警戒していた刀也は、一目散にその一団へと距離を詰め、手早く撫で斬りにしてのけた。そうしてまた多くの個体が消え失せる。しかし殲滅には至らず、強化を遂げた個体が躱し跳び退った。悍ましき食事にありつけなかった者も、飢餓感により感覚を研ぎ澄まし、いずれもが眼前の男に向けて襲ってきた。
 しかしその動きは単調で、直線的で、連携など欠片もありはせず。ゆったりとした動きで、最小限の回避を行う剣豪。中でも多少精彩のある動きを見せる餓鬼に対して、半身を下げて空を噛ませながら、鋭く息を吐き、縦一文字に両断して見せる。身体は霧消するが、それで逡巡する程の理性を持ち合わせた餓鬼は、もはやここにはおらず。斬った動作を隙と見るや、その背に向けて一斉に飛び掛かった。気付けども、避ける暇もあらばこそ。
 否、避ける理合のなければこそ、彼はその背を牙へと晒す。
「射抜け」
 横合いから再びの掃射を受け、餓えは満たされることなく、残った者たちも今度こそその身を塵とする。絶え間ない炎熱の渇きだけは、幾ばくか癒されたのかもしれない。
「お前らも二度と使われるんじゃねぇぞ」
振り返りもせず獅子吼の刃を納め、刀也は先へと歩を進める。許せぬ外道を斬り捨てるために。
 他で戦っていた餓鬼たちも、程なく残らず消え失せて、それらを仕留めた猟兵たちも後を追うようにして奥へ向かう。そして彼らは、軋む扉を押し開けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『悪徳商人』

POW   :    先生、お願いします!
【オブリビオンの浪人の先生】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    短筒での発砲
【短筒】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    か、金ならいくらでもやる!
【懐】から【黄金の最中】を放ち、【魅了】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●弱きを殺すか
「あーあーあー、せっかくの商売を駄目にしちまって…」
 扇子の尻で頭を掻き掻き、にやつく男が溜め息を吐く。猟兵相手に怖じる様子もなく、立ちて嗤うはオブリビオン。
「アンタら何が気に入らねぇんだい。俺は野菜や細工物やで稼げて、村の衆は苦しんで働いて気が楽になる、うちの若い衆だってお足に満足してたんじゃないかい。三方丸く収まってたってのにハァ、前んときだって正義ぶって引っかき回さなきゃ、それぞれみんなうまくやってたってのに…」
 わざとらしく落胆して見せながらも、顔はにやにやと笑っている。ただいま村に安定があるとすれば、それはひどくいびつで、閉塞したものである。それ以前に、安定の一端を担うはオブリビオン、先にあるのは破滅に相違ない。
「倒してくれたって構わねぇよ、俺は強かねぇしな。だがそすっと、村の連中はお前ぇら囲んで言うんだろうなあ。『どうしてくれんだ』『余計なことしやがって』ってな。今のうちに詫びの言葉でも用意しときな」
 不意に短筒を懐から抜いて引鉄をひいた。
「先に地獄に行った連中に言うことになるかもしれねぇけどなぁ!」
 乾いた音が、開戦の合図となった。
ヴィリヤ・カヤラ
目の前の商人は何だかムカつく。
何でかな?
村の人を食い物にしたから?
とりあえずムカつくから黙って斬られてね?

【瞬刻】で接近しつつ斬れるかな?
ちょっと怒ってるから動けるダメージなら攻撃の手は緩めずに行くね。
助っ人を呼ばれたら、
旋刻で近くの動かせる物か敵を盾にしつつ、
【氷晶】で攻撃したり早めに倒しておきたいね。

終わって村の財産が見つかったら返すね。
起こった事は取り消せないけど、
子供の為にも頑張って欲しいな。
あと、あの商人が野菜と細工物で儲けたって言ってたし、
売れる物だと思うんだよね。
販路も戦闘訓練受けた人なら
移動中の護衛も出来ると思うし。

誰かの言いなりも楽だけど、
皆で頑張る方法も考えてくれたらいいな


ポノ・エトランゼ
何にしろ今
村の者に必要なのは自分自身を見つめ直す時間
その時を惑わす者には退散願いましょう
結果、詰られても構わないわ
縋っても詰っても罪過は自身の心に残る
それを未来へどう昇華させるのかは、その人の歩みの末にしか分からないものだと思わない?

防御は騎士の盾

WIZ対応

地下がダメになるかもと悩んだけど、思い切ってUC使用
信仰やるにしてもお天道様の下でやる方が健康的かなって
あと、変なの(敵)も入りこんじゃうし
黄金の最中に魅了される猟兵さんはいないと思うけれど
植物属性の竜巻を起こすわね
蔦なり草なりお任せ
【範囲攻撃】【全力魔法】敵の身を絡めとったり鞭打ち、皆を巻き込まないよう注意しつつ援護に

アドリブ・連携歓迎


真野・椋弥
早く倒そう。問答に時間を割くより、物資を返し村の者と話す方が建設的だ。
神騙リノ化物を使い、【オーラ防御】も重ね仲間を【かばう】事を重視。【激痛耐性】もある事だし、頭数が増えても少しは耐えられる。攻撃の動作が見えたら注意喚起もしよう。
他の前衛も居る、薙ぎ払うより刃を返しての【2回攻撃】が無難か。
生憎金に大した魅力は感じない。抑々、お前を消せば諸共消えそうだ。

非難には反論せず黙す。先を案じても、今の安寧が大切な者も居る。考え方はそれぞれだ。
ただ、純朴なままに、己の大切な物を守る為に知識や力を身に付けて欲しいとは言うが。
……騙した狐が言っても滑稽だが、まあ先の知識等も活かしてくれ。

アドリブ・連携歓迎


木元・杏
独りで必死に戦っていたら
皆がたすけてくれて
まつりんとポノも来てくれた
……ほっとしたら、余裕がでるんだね

皆と連携して、防御にも注意しながら
うさみみメイドさんを操るの
短筒の対象は【絶望の福音】で予知して
素早く対象者に声掛けて
メイドさんも庇いに入ってね
わたしが対象ならそのまま悪徳商人の懐に飛び込み、
灯る陽光で斬りつけて

おじさん泣いてた
心に余裕が無ければ良い事悪い事の
判断なんて出来ない
辛さを声に出せない
癒されない

あなたは癒せてない


村の人に。
…そんな風に、自分の事もずっと責めたの?
辛い声、聞くことしか出来なくてごめんなさい
だから、また来る
もういいよって伝える為に何度でも
そして、わたしに出来ること考える


木元・祭莉
「苦しんで働いて気が楽になる」って、なんかスゴイね!

でもさ。結局、苦しいんでしょ?
そう言ったじゃんー?(文字通りの意味しかわかんない子)

苦しいのはね、悪いことだよ?
だから、やめた方がいいと思うよ!(空気読まず、にぱっと笑う)

あとね。(すっと笑顔引っ込めて)
死んだら、終わりだから。
そこだけは、おいらも譲れない!(まっすぐに)

自分の間合いまで、ダッシュ!
途中、浪人の先生が現れたら、ニッコリして野生の勘で回避!
吹き飛ばしと武器落としで、おっちゃんの腹に一撃喰らわせる!

余計なことしたかなあ。ごめんね?
でもね、母ちゃん言ってた。空元気も元気のうちだって。

苦しいのは楽しくないから。嘘でも笑った方がいいよ!


カレリア・リュエシェ
何が? お前が気に入らないに決まっている、オブリビオン。
お前たちが作る「うまい世界」なんて碌なものじゃないくせに。

あの銃とやらは厄介そうだ。それにあの男。弱いと言ってはいるが本当か解らない。
視線や手の動きに注意して、不意を打たれそうな場合は庇うか黒剣で受けて援護に入ろう。
オブリビオンが呼んだ「先生」とやらを相手にするときも同じだ。
受けて、止めて、隙を作る。堅実にだ。
勿論、カリハリアスの腹を少しでも満たせる隙があるならば遠慮はしない。切り、突き、命を喰らってやる。

(村人たちに)
貴殿らは何から救われ、誰に祈りを捧げていたんだ?
たすけてほしいと願っていたのは、本当に神になのか。


エン・アウァールス
【アレンジ歓迎】

やあ。逢うのは2度目かな。
ああ、報告に走るのはもう遅い。
戦いは始まっているからね。

唆されて手を汚したのは事実だけれど。
キミ達の慚愧と、あの自称ホトケサマの使いが私腹を肥やすことに、何の関係があるんだい?

生きる気力を失うほど後悔しているのなら。
命を捨てて一矢報いたいとか、そういう気概はないの?

猟兵から手解きも受けていたね。付け焼刃でも、食い潰されるよりずっと良いと思うけれど。
キミ達は「ヒト」なんだろう?

それでも静かに、戦いなく終わりたいなら。
目の前にいる悪鬼が助けよう。

▼戦闘
①戦う意志を見せた者を連れ、ボスの元へ。

②立ち向かう者がいない
何の反応も返さず、自身だけでボスの元へ。



●無罣礙
「詰られても構わないわ」
 前進する、ポノ・エトランゼ。猟兵が好まれようと嫌われようと、この際大した問題ではない。村に必要なのは自分自身を見つめ直す時間であり、救いをちらつかせて心を惑わせる存在は害悪でしかない。紫の瞳で射殺せとばかりにきっと睨みつけると、視線の先の外道は吐き捨てる。
「けっ、二度と会わねぇ田舎もんなんざ、どうなろうが知ったこっちゃねえってか?正義の味方様はご立派なお考えであらせられますなあ」
 背を丸めて目線を低くして、睨め上げるように覗き込んでは気持ちを逆撫でしようとする相手に、彼女が動じる様子はない。
「早く倒そう。問答に時間を割くより、物資を返し村の者と話す方が建設的だ」
 真野・椋弥は諫めるように言う。もしかしたら年若い少女を案じてのことだったかもしれない。もっとも、言われずともポノの意見もそう違いはない。彼らの罪過を雪ぐことはできない。であればこそ目を向ける先は、歩み進めるその先は、未来であるべきだ。その足を引いて留めようとするオブリビオンは、まさしく過去の残滓であった。
「気に入らねえなあ、まったく気に入らねえ。耳塞いだってお前ぇらが偽善者だってのも村人が能なしの意気地なしの人殺しだってのは変わりゃしないんだぜ?」

 次に彼が見た猟兵は、彼の言を否定しなかった。そして肯定もしなかった。瞬きの間に眼前に現れた女の目は、合理や先見によって動いてはいないことを窺わせる、峻烈なる怒りを湛えていた。
「とりあえずムカつくから、黙って斬られてね?」
 ヴィリヤ・カヤラの能力による高速の剣閃は、回避の間を与えず。迫る銃弾に肩を貫かれ表情を少し曇らせるも、構わず二撃、三撃。斬られて慌てて跳び退り、時間を稼ぐ獲物の喉に、ほどけて蛇と化した刃が食らいつき、もう一撃。
「ちっ、執拗っけえなあ。先生、出番だぜ」
 首元を押さえながら憎々しげに言うと、灯に照らされた商人の影が揺らぎ、形を得て、質量を得る。先生と呼ばれたその男も、言うまでもなくオブリビオン。ヴィリヤの次撃を刀で捌くと、続けざまに体を当てて猟兵の攻勢を弾き返した。

 無理やりに距離を取らされた彼女に向かい、召喚された浪人は歩を進める。そこに割り入るカレリア・リュエシェ。その手に握られた禍々しい黒剣に、対するものは笑みを見せる。切り結ぶことを楽しみにするそれには生憎と言えるが、その持ち主…あるいは宿主の表情は、娯楽を見出しているそれではない。確実に防ぎ、守り、倒すことだけを考える。この戦いの先のために。
 浪士が動く。身を沈めて滑り込む。騎士が迎え撃つ。その刃を受けて勢いを殺す。男は下がり距離を取り、女は剣を構え直す。持ち替え、強烈な突きを繰り出すオブリビオンに、カレリアはその剣を差し出すが、交錯せずに刃は擦り抜け彼女の喉元を襲う。鎧装はあれど無事では済まない衝撃を与えるにはもってこいの攻撃は、しかし不発に終わった。
「喰らえ」
 刀は、剣に喰い止められていた。形を変え、二又に分かれた生ける黒剣・カリハリエスの刃がその刀を喰い千切る。衝撃の抜けない敵に、騎士はその剣を突き立てる。
「貪れ」
 異形の鋸刃は血を噴き出させながら、与えられた「餌」を取り込んでいった。
「そして力を貸せ」
 影から影へ、還って行った男の後に、退る首魁の姿が見える。

●遮那王
 見る間に消失した先生の向こうに見えた黒鎧の頭が、こちらを向いたように見えた。次はお前だ、とばかりの視線に、内心焦る。
「そのなりじゃあどっちが悪者かわかったもんじゃねえな。偽もんなら形くらいはそれらしくしねえと」
 やり直しだ、と言いながら再び浪人を召喚する。それもまた、黒騎士を見て、笑った。刀を抜いて構え――
「どーん!!」
 と飛び込んできた木元・祭莉の拳によって、有無を言わさず吹き飛ばされた。少年はふんと鼻息を一つ鳴らして、歯噛みして睨みつける商人を屈託なく見つめ返す。
「『苦しんで働いて気が楽になる』って、なんかスゴイね!」
「あ? ああ、おう、すげえだろ?」
 用心棒を思い切り迅速に殴り飛ばしたかと思ったら、その直後に笑顔で言葉を投げかけてくる少年に、さしものオブリビオンも呆気に取られる。すぐに気を取り直して笑って見せ、言葉を継いで煙に巻こうとするが。
「でもさ」
 またも、少年は早かった。
「結局、苦しいんでしょ?」
 平たく言えば、そういうこと。子どもにだって、そんなこと分かる。
「苦しいのはね、悪いことだよ。だから、やめた方がいいと思うよ!」
 少年の笑顔はなおも明るい。そうしてその笑顔は、弄する言葉の通じないことも助けて、商人をひどく苛つかせた。
「餓鬼のくせに、知ったようなこと言いやがって」
「まつりん、あぶない」
 うさみみメイドさんが躍り出て祭莉を押しのけ、鉛弾は空を走って壁に突き刺さった。不意を突こうとした射撃は木元・杏の予見にて封じられ、射手の溜飲はなおも下がらず。憤怒の形相を向けられながらも、少女には先のような恐怖はあまり見えない。前面には、決意と、勇気。
「おじさん泣いてた。心に余裕が無ければ良い事悪い事の判断なんて出来ない。辛さを声に出せない。癒されない」
 杏は元来、饒舌なたちではない。ややたどたどしくも、懸命に言葉を紡ぎ、届けんとする。それは弄ばれ投げつけられる言葉とは違う、熱のこもった言葉たち。
「あなたは、癒せてない」
「…煩っ瑣えなあ餓鬼のくせにぐっ…だぐだぐだぐだとよお!」
 聞きたくない言葉をかき消そうとするように闇雲に撃ちまくり、銃声を次々に轟かす。弾雨を遮るは騎士の盾、庇いに入るポノの姿に、ほっとした杏が笑顔を見せる。駆けつけてくれる家族に、友達に。勇気をくれるその人たちに、だからこそ縋るのではなく、自分にできることを。

●あおおに
 戦いは続き、異変は地上へもその匂いを漂わせる。常ならぬ雰囲気にざわつく村に、その鬼は姿を見せた。
「やあ。逢うのは2度目かな」
 茫洋なこの鬼の姿を、彼らは知っていた。恐怖と、辛い記憶を呼び起こすその悪鬼は、釘を刺すように続ける。
「ああ、報告に走るのはもう遅い。戦いは始まっているからね」
 人々も薄々は感じていたこと。再び拠り所を奪われる気配。さりとて抗えない運命。彼らはそれを理不尽と思いつつも、惹起される感情は、怒りではなく既に諦めである。エン・アウァールスにはそれが理解できない。欠落した感情であるからではない。もし仮に、十全に備えていたとしても、恐らくはそれを受け入れてはいないだろう。
「キミ達の慚愧と、あの自称ホトケサマの使いが私腹を肥やすことに、何の関係があるんだい?」
 鬼は首を傾げる。人は項垂れる。指摘されるまでもなく、正しくないことをしたのも、正しくないことをしているのも分かっている。それでもなお。
「生きる気力を失うほど後悔しているのなら。命を捨てて一矢報いたいとか、そういう気概はないの?」
 それは強いから言えることだ。命を捨ててなお、一矢報いることすらできないような、特別な能もない、意気地もない、自分たちにはとても。
「猟兵から手解きも受けていたね。付け焼刃でも、食い潰されるよりずっと良いと思うけれど」
 誰も顔を上げようとはしない。元々そう期待はしていなかったが、対話を継続する有用性がないと判断したエンは嘆息し、踵を返し地下へと向かう。
「キミ達は『ヒト』なんだろう?」
 あの日、怒りに任せて恐怖を押して言い返した言葉に、はっとして顔を上げると、神殺しの悪鬼はなく、扉の閉まる所であった。

 それからしばし。

「また出遅れてしまったかな」
 駆けてくるエンの不意を突いて、目敏く商人が発砲し、その脚を撃ち抜いた。これ以上人数が増えては堪らない、早めに始末したいという所だろうが…
「じゃあ、やろうか」
 まるで何事もなかったようにぼんやりとした表情のままに歩み寄り、その鉈のような異形の刃を振り上げる。その攻撃は激しい金属音をもって留められた。吹き飛ばされた用心棒の先生が立ち上がり、すかさず割って入ったのである。
 エンの目が、少し輝いた。逃げ腰の商人よりも、嗤う剣客の方が、削り合うには適役だ。鬼はその身に何かを宿し、禍つ気配を染み出させ。滲む瘴気に蝕まれるも、金の瞳は輝きを増す。振われる刃を避けもせず、振う刃を抉り入れる。何合も繰り返し、血みどろになったオブリビオンがエンを蹴り付け跳び退るまでそれは続いた。

●天祐
 さらに祭殿へと入り込む影に、商人が煩わしげな目を向けるが、何者であるかを認識した瞬間頬を吊り上げて厭らしく笑い、電光石火に引鉄をひく。その先にあるのは、手に手に農具を持って武装した、村人たちであった。
「誰が連れてきた」
 寸での所で我が身を盾にした椋弥が言うと、エンが応じて自首した。
「ごめんね」
「へへっ、足手まといが増えやがったじゃねえか、一人でも死んだらお前ぇらのせいだぜ、お前ぇらがこいつらを不幸せにするんだ」
 心中で頭を抱えながらも、より早期決着の意思を強めた椋弥は、その力を行使する。
「……思う存分戦わせてやるから、少し力を貸せ。」
 内にある『かみさま』に声をかけると、それが彼の表層に顕現する。その姿はすぐ後ろに立つ村人たちを望まずも威圧し、動きを止める。まあ予想外の動きをされるよりは守りやすいというものだろう。
 何発も何発も撃ち込まれる銃弾を、避けることなく荒神は受ける。護るべき人を背に置いて、傷つきながらも進み行く。延々と罵詈の言葉を吐きながら繰り返される攻撃は、一人の猟兵の決断によって撃ち止めとなった。
「地下がダメになるかもだけど…」
 思い切ったポノは、エレメンタル・ファンタジアにて、植物属性の竜巻を起こす。周辺の植物が渦巻き伸び来て、外道商人を締め上げる。しかし地下にあって自生する草花もなく、どこから現れたか分からない蔓植物たちの正体は。
「あれ、うちの畑の…」
 芋の蔓だった。寄進され備蓄された作物が、オブリビオンへと牙を剥いた。じたばたともがくたびに締まり、食い込み、自由を奪う。だが今そんなことが問題なのではなく、すぐ眼前に立つ猟兵たちが自らの生殺与奪を握っているということが問題であろう。
「か、金ならいくらでもやる!だから、な、な!?」
 必死に身をよじって懐に手を入れ、金色を戴いたその手を差し出し、媚びるような笑みで言うが、反応は芳しくない。
「生憎金に大した魅力は感じない。抑々、お前を消せば諸共消えそうだ」
「そ、そんなことねえよ、ちゃんとこの村のもん売って稼いだカネだ、ニセモンじゃねえぜ」
 そこにひょいとヴィリヤが首を突っ込み、手に取る。少し安心したような表情の敵に言葉をかける彼女。
「じゃあ、代わりに村に返しておくね」
 どうやら賄賂としては成立しなかったようだ。交渉の決裂に悪態を叫びながら、力を振り絞って銃口を向けるも、銃弾が刺さった対象はぼろ雑巾のようになった浪人であった。望まぬ最後の仕事を終えた彼の消失を見届けると、ヴィリヤは刻旋を納め、再度の瞬刻もその効果を終えた。

●差押え
 どうにかこうにかもう一発と、悪戦苦闘するオブリビオンの手元から、祭莉が銃を叩き落とす。
「あとね、言い忘れてたけど」
 その表情は先ほどのような笑顔ではない。まっすぐな少年は、貫くようにまっすぐな言葉で突き刺した。
「死んだら、終わりだから。そこだけは、おいらも譲れない!」
 その言葉に、生ける骸は負け惜しみにせせら笑う。
「へっ、終わらねえから、俺がここにいるんだろ。何回殺されたって出てきてなあ、何回だって騙して稼いで、ぶっ壊してやるぜ」
「もういいだろう。おしまいだ」
 いい加減よく回る口に、初めからまったく興味のない椋弥は薙刀を差し向ける。渦巻く炎を纏ったそれは、疑いなくオブリビオンに引導を渡すことを確信させるものであった。何事か口を開こうとした商人だったが、その言葉を待たずして刃が突き立てられ、その身が燃え上がった。その炎は蔓を巻き込み延焼し
「おいも」
 杏が駆け出し、繋がる先の蔓を急いで切断する。そのまま行けば無事な作物が灰になってしまう。良い塩梅の焼き芋になる確率に賭けるのは少し無謀だろう。
「もう一つ、返してもらうぞ」
 燃え続ける男にカレリアが近寄り、悪食のカリハリアスを突き立てた。
「何が気に入らないかと言ったな」
底を尽きかけたその命をさらに吸い上げられ、怨嗟の表情で睨め上げるそれに、黒騎士は話しかける。
「お前が気に入らないに決まっている、オブリビオン。お前たちが作る『うまい世界』なんて碌なものじゃないくせに」
 黒剣を炎から引き抜くと、その躯は崩れて消えた。振り返り、言葉もなく見つめ続ける人々に、問う。
「貴殿らは何から救われ、誰に祈りを捧げていたんだ?」
 尊きも救いも、此処にはなかったぞ、と。

●笑う門には
 目の前で戦った彼らは、傷つきながらも自分たちを守ってくれた。守るために、救うために、命を削った彼らに対し、自分たちはどうしてきたのだろう。しかし彼らは強いから、自分たちは弱いから、仕方ない。

 杏は、男の姿を探す。俯く人々の中に、泣いてたおじさんを探し、見つけた。
「辛い声、聞くことしか出来なくてごめんなさい」
 謝る少女に、戦ってくれた少女に、彼の慚愧はさらに増す。こんな子どもが戦ってるのに、俺は、弱いから?冗談じゃない。掛ける言葉が見つからないうちに、言葉は継がれる。
「だから、また来る。もういいよって伝える為に何度でも。そして、わたしに出来ること考える」
「…ああ」
 やっと絞り出した声で返事をし、腰を屈めて目線を合わせると、突然頬を掴まれた。無理やり引き上げられた口角が吊り上がる。視線を向ければ、祭莉が元気に笑い返す。
「母ちゃん言ってた。空元気も元気のうちだって。苦しいのは楽しくないから、嘘でも笑った方がいいよ!」
 頬を弾くようにして手を放し、わんぱく少年はまた笑う。男も、ぎこちないながらもつられるように笑い返した。

●人事を尽くして
「はいこれ、返すね」
 先の宣言通りに、ヴィリヤは金子を村人の手に無造作に返す。見た事もない大金を受け取ったらしく、村人たちは目を白黒させている。実際相場の数倍ででも販売していなければこのような金額にはならず、よほど阿漕な稼ぎ方をしていたことが窺えるが、この際それは見ないことにしておこう。
「野菜と細工物で儲けたって言ってたし、売れるものだと思うんだよね」
 提案に、首を傾げる者は一人もいない。目の前に確たる証拠があっては異論をはさむ余地もない。
「販路も戦闘訓練受けた人なら、移動中の護衛もできると思うし」
 言って視線を向けると、村人たちもその先を追う。注視された椋弥は肩を竦めて
「……騙した狐が言っても滑稽だが、まあ先の知識なども活かしてくれ」
 騙されて稽古をつけられた若者たちは苦笑気味にしつつも、抵抗なく素直にその言葉を受け入れる。
「ただ、己の大切な物を守る為に知識や力を身に付けて欲しい」
 疑わない純朴すぎるその姿勢に釘を刺すように、一言付け足した。この調子でまた付け込まれてもかなわない。
「子供の為にも、頑張って欲しいな」
 経営者の目線で村の再生案を丁寧に案内した最後に、ヴィリヤは笑顔でエールを送った。できることもすべきことも山ほどある、腐っている暇はないぞ、と。

●自ら助くる
「その、すまなかった」
 エンの元に怖じながらも近付いてきた青年が頭を下げた。詫びる言葉に首を傾げる猟兵に、その村人は以前浴びせた非難の事を説明した。自分の羞じていることを改めて説明するといういたたまれない作業の後で、羅刹は気にしていないよと首を横に振った。青年は合わせて律義に、他の猟兵にもそれぞれに謝罪をする。詰られる覚悟をしていたポノなどは戸惑っている。
「たすけてほしいと願っていたのは、本当に神になのか」
 カレリアの問いに、若者は言葉を失う。正直自分でも分からない。求めていたのは助けなのか、罰なのか。
「どうしたって、罪過は自身の心に残るわ」
 起きたことは――否、自分たちのしたことは消えない。改めて言われ、彼は俯くが、顔を上げる必要があることを知っている。
「それを未来へどう昇華させるのかは、その人の歩みの末にしか分からないものだと思わない?」
 ポノの言葉に頷く。どうしたら良いかはまだ分からないが、生きるヒトとして、もがきながらでも歩みを進めなければ。

 村は、きっと救われる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月27日


挿絵イラスト