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一間先の闇より出でる

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●下手人はわらう
「こいつはまたひでぇことしやがる…」
「こんなことじゃ夜中に蕎麦も喰いにいけねぇや」
 戸板に乗せられむしろを被せられ、運ばれていく町人の亡骸――斬殺体を見送りながら、近隣の住民が口々に言い立てる。悲嘆の声や怯えた声。冗談を言ってみる声もあるが、これすらもまた恐怖を跳ね除ける、あるいはそれから逃避する自衛のためのものであることが察せられ、ことさらに咎め立てする者もいない。それほど、今この場所は恐怖が垂れ込めている。
 今日はあの人だったけど、明日は…否。

 今夜は我が身ということも。

●案内人はいらだつ
「辻斬り」

 集まった猟兵たちに、不機嫌な様子を隠すこともしないグリモア猟兵、我妻・惇(f04976)は言い捨てる。集めたくせに一言だけ吐いたきり口を開かないその男に、一人の猟兵が先を促す。
 頭をガシガシと掻きながら言うことには、サムライエンパイアのとある藩、代官屋敷近くの辻で、真夜中に人が斬り殺される事件が起きているとのことだ。それも一度や二度ではなく、放っておけば今後も続くというものである。
「屋の棟三寸下がろォか、水の流れもしばしは眠る…ッてなァ時間だろ。そうでなくても事件が起きたら普通は夜歩きも控えるだろうし、目撃者なんてそうそういやしねェ」
 それでも探すしかねェんだけどな、とおどけた調子で続け、溜め息。

 たとえば、近隣に住まう人間であれば、被害者の悲鳴を聞いている者がいるかもしれないし、夜中でなくても普段見かけない不審者の姿を気にした者がいたかもしれない。あるいは、危険は伴うが自ら囮となって夜道を歩いてみるのも一つの手であろう。猟兵であれば最善手とは言いきれなくとも、解決への近道とはなるかもしれない。

「まァ、下手人がオブリビオンなのは間違いねェな。仏サンの様子から見ても、相当な手練れらしい。どれもこれも一太刀でばっさり、切り口も見事なモンだ。見つけてからも油断しねェようにな」
 そうしてまた溜め息。続いて唸り声。

「…ッあァくそッ、なんで俺ンとこにこンなのが…こんなモン俺がヤりてェわ!」
 腕の立つオブリビオンとの戦闘の気配があるのに、自身は戦えない立場にあることが不満であるこのグリモア猟兵、景気付けだかストレス発散だかの大声を上げ、投げやりに転送の準備を始めた。

「いや、辻斬りをじゃねェぞ!?」
 じゃないらしい。


相良飛蔓
 お世話になります、相良飛蔓と申します。こちらを御覧いただきありがとうございます。

 舞台はサムライエンパイア、敵は正体不明の辻斬りです。

 転送先は事件現場の辻のほど近く、少し歩けば人通りも多く賑わう場所につきますので、人探しや聞き込みも、数当たることに関してだけ言えば容易かと思います。

 それでは、ご興味持っていただけましたらご参加よろしくお願いします。
 なお、サムネに立っているのは敵ではありません。
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第1章 冒険 『真夜中の辻斬り』

POW   :    とりあえず怪しそうな人物を引っ捕らえる

SPD   :    何か情報を知っている人がいないか聞き込みする

WIZ   :    罠や囮などを使って辻斬りを誘い出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

赤城・碧
さて、先ずは情報が欲しいところだな。


SPDを活かして聞き込みを行おう。範囲は限られるが、ユーベルコードを使用してもう一人の自分にも調査してもらおう。

聞くことは、今までに殺された人たちの特徴……殺された時の服装や発見場所とか、職業とか性別とか……そういったところに共通点がないか聞き込みを行っていこう。
後は発見場所についても聞きたいな。推理小説に有りがちな独特の残り香やら落ちていたものやらあれば良いが……。

まぁ、此方が不審人物と疑われたら堪ったものじゃないからな、念のために『コミュ力』と『礼儀作法』のスキルも活かして相手が話しやすい状況を作るか。


エン・アウァールス
▼アドリブ歓迎
一人称:エン

ふふ。難儀だねえ。
けれど、「見つける」ことは我妻にしか出来ないことだから。
頼りにしているよ。

【SPD】
自前の着物なら、民衆を刺激しにくいかな。辻斬りを捕まえたい、って伝えれば大体のヒトは協力してくれると思うしね。…彼らは怖がっているし、なるべく優しく聞いてみよう。

辻斬りが起きた近辺の住人。
殺されたヒトの身の上に加え、その家族に接触できたら御の字なのだけれど。
情報によっては、出没できる場所を絞れるかもしれないね。

「こんにちは。
…酷い辻斬りが続いていると聞いて馳せ参じた次第。良ければ、話を聞かせてくれないかな?」

まあ。
悲しいとか、怖いとか。
よく分からないんだけれどね。



難儀だねえ、と小さく笑って、歯噛みするグリモア猟兵を励ましながら転送を受け。
 最初に現地に到着したのは、エン・アウァールス(蟷螂・f04426)。自前の着物をその身に纏い、サムライエンパイアにあって違和感なくその景色に溶け込んでいる。
続いて、黒い髪に青い瞳の洒脱な装いの青年、赤城・碧(黒き百合は咲き乱れ白き少女は希う・f02420)が辻に立つ。
「さて、先ずは情報が欲しいところだな」
聞き込みのために人通りを求めて少し歩くと、期待の通りの賑わいに行き当たる。手当たり次第に聞いても良いが、当たりをつけて尋ねるのなら、「らしい」者を逃さないためにも手は多い方が良いだろう。碧はしばし思案して路地に戻り、次には二人の碧の姿が通りに現れ、それぞれに調査を開始する。ユーベルコードによりもう一人の自分を具現化させたのだ。その人格は亡き恋人のもの。もっとも、再現性は高くとも決して同一の存在ではないし、その姿に今背を向けて歩く碧の胸中は分からない。

「こんにちは」
「あ、ああ、こんにちは」
 見ない顔、不思議な雰囲気の羅刹の姿に、声をかけられた町人は少し怪訝な顔をしながら言葉を返す。ここの所の事件を鑑みれば、不審に思ったとしても無理もないことだろう。
「…酷い辻斬りが続いていると聞いて馳せ参じた次第。良ければ、話を聞かせてくれないかな?」
 極力不安を与えないよう、努めて優しい声で尋ねるエン。対する町人は、少しだけ緊張を解く。警戒心や恐怖心が全てなくなったわけではないものの、とりあえず「話が通じる知らない人」という程度の認識を得たようだ。
(まあ、悲しいとか、怖いとか、よく分からないんだけどね。)
 表情から警戒度を推し量りながら少しずつ情報を引き出そうと試みるエンは、順調に住民の心の裡へと滑り込んで行く。しかし被害者たちにはこれといった共通点も見当たらず、悲嘆に暮れる家族への接触も、それを良しとしない住人たちの結束によって情報を得ることはできなかった。

 もう一方の碧の調査も、少し難航する様子を見せていた。
「すまないが、少し話を聞かせてくれないか」
 道で話し込む住人達に声を掛けると、こちらを振り向いた彼女らは一瞬息を呑む。普段色々な種族や境遇の者たちと顔を合わせる猟兵にとっては何の変哲もない、警戒させるような雰囲気などでもない彼の姿だが、この世界、この町しか知らない町人たちにとっては、彼の出で立ちは多少なりとも懐疑の目を向けさせた。そこにつけて現在の状況と、何よりも彼の腰に佩かれた妖刀の存在である。身構える彼女らに、真摯な態度で説明をし、話し方にも細心の注意を払って警戒を和らげていく。ついには彼女たち、より指向性のあるニュアンスを込めて呼ぶなら「おばちゃん」たちは、持ち前のバイタリティとネットワークによって、殺害事件が多発するいくつかの現場の情報を教えてくれた。碧の体力と時間は相当量犠牲になってしまったが、調査の結果としては上々といえるだろう。

 なおもう一人の碧の方では、その明るい性格によって人々との接触はスムーズに進み、少なくとも確認できる範囲での被害者の外傷が、すべてたった一つの致命傷のみである旨の情報が得られた。当初の予想通りではあるが、相当な手練れであることは間違いないようだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
【WIZ】
服装は外套で隠して動くね。

人が少なくなってるなら誘えるかもしれないし、
【幻影】の分身に手伝ってもらって、
事件のあった辻の辺りを警戒されないくらいにゆっくり歩いてもらうね。
私は【目立たない】も使って物の影に隠れながら分身を追うね。

分身を追う人か自分を追跡する気配を感じたら
【第六感】で出来る限り敵の攻撃タイミングを予測して
初撃を剣で防ぐように割り込みか
【ジャッジメント・クルセイド】で攻撃
「噂の辻斬りさんかな?」

初撃の後に逃げるなら【追跡】で
方向を見失わないようにしつつ
【氷晶】で進路を塞いでみるね。
戦うなら全力で時間稼ぎかな。
潜伏先か方向が分かれば良いな。

アドリブ、連携歓迎。


死之宮・謡
はっはっはぁ!強者の気配がするよぉ?愉しみだねぇ?ドキドキするよぉ…嗚呼、早く殺し合いたいよ…斬り合いたいよ……尤も、私のメインウェポンは槍だけどねぇ?斬り合いは性格じゃねえか?

操作方法?勿論囮一択サァ!囮?勿論私に決まってるだろう?私の望みは唯一つ、流血を伴う遊戯(意味深)さぁ!だから私を襲ってきてくれよ!思う存分殺し合おうぜ?尤も、殺されちゃあもう誰も殺せねぇし保険はかけとくか…【裏世界の七血人】召喚…此奴らを周囲に潜ませとくか…といっても基本的には待機、私が本当にヤバくなった時だけ動かすさぁ!

サァ、此ノ私ヲ愉シマセテクレヨォ!



しばしの後、夜。
 早期の事件解決が望ましく、それほど浪費できる時間はない。聞き込みと並行していたとはいえ、この時間を待つのはとても穏やかな気持ちでできることではない。
ただ、その甲斐あってこの晩の標的は無辜の住民ではない。

 一人の女が夜道を歩く。日中の聞き込みによって得られた情報から、絞り込まれた犯行の候補地。月も隠れるその瞬間。
 一間先の闇より出でる、幽鬼に違わぬその姿。
 再び見えた月明かりの中にあってなお黒き影。真赤な瞳、生命を疑う程の白い肌。死之宮・謡(狂い果てし王・情緒不安定の狂戦士・f13193)は強者との邂逅に胸を躍らせる。

一人の女が夜道を歩く。日中の聞き込みによって得られた情報から、絞り込まれた犯行の候補地。月も隠れるその瞬間。
 一間先の闇より出でる、幽鬼と紛うその姿。
 再び見えた月明かりに、浮かび上がるは金色の瞳。その形を外套で隠し、対する影を睨み据える。ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)の幻影に向け、闇はゆらりと歩を進む。

「サァ、此ノ私ヲ愉シマセテクレヨォ!」
 望みの通り襲ってきた、襲ってきてくれた敵に対し、謡は興奮を隠すことなく目を見開き、その血色の眼を輝かす。しかしゆらりゆらりと揺れながら、一向に動かず出方を待つような影。さんざん焦らされた美しき殺戮の鬼は、もはや辛抱などできようはずもなく、その槍を構えて放たれたように飛び出した。口を笑みに大きく歪め、咬みつかんばかりの勢いで。
「あぁ!もう我慢できない、早く、早く早く、殺し合おうぜぇ!」
 そしてその槍は、抵抗もなく、悲鳴もなく、血飛沫の一滴さえもなく、影の真ん中を貫いた。刀の地に落ちる音。
「あ?」
 思わぬ手応え――手応えとさえ言えぬ感触に、呆気に取られたような声を上げて、貫かれた骸を見やる。その骸は、骸だった。貫かれる前から、骸だった。
やり場のなくなった謡の狂熱は怨嗟へと名を変え、夜の空へと響く。

 ゆったりとした動きに見えたその影は、瞬くその間にヴィリヤの眼前に。しかし刀を振り上げたその影もまた、はがねのぶつかり合う音を伴って眼前に割り込んできたもう一人のヴィリヤの姿に驚くこととなった。
「猟兵か」
 鍔迫り合いの中で相手の正体をみとめて詰まらなそうな声で吐き捨てると、得物で相手を押し返し、その反動で距離を取る。
「噂の辻斬りさんかな?」
 油断なく相手の姿を見据える。残念ながら天蓋に覆われた顔貌は窺い知ることはできなかった。突然遠くから聞こえる女の声。
「お仲間か」
 問いに答えることなく問いを投げかける敵に対し
「さあ?」
 彼女もまた、答えない。お互いにとってお互いの問いは、答えるまでもなく、かといって答える義理もないものである。憎らしげな舌打ちの音を響かせて、天蓋の辻斬りは刀を収めて背を向ける。
「興が醒めた。今夜は仕舞いにしてやる」
「逃がさないよ」
 しかし放たれたユーベルコードの氷刃によって塞がれた彼の進路は、再び抜かれ、間もなく収められた刃によって斬り開かれた。
「仕舞いにしてやると言っている」
 声に不快感を乗せて、男は言う。ここでこれ以上引き留めると、住民を巻き込む恐れがある。ヴィリヤは苦々しい思いをしながら、影を見送った。

 その背が向かうは、代官屋敷の方角だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御剣・刀也
POW行動

さて、辻斬りか
人斬りは血の匂いがよくするもんだ
こびり付いた血の匂いはそうそう落ちるもんじゃない
ま、こいつがそれを気にするまともな神経を持ってるとは思わんがな

第六感を駆使して怪しそうな人物を探す
辻斬りは普通の人間として振舞っていると思うので、歩く際の体重移動、重心移動などを注意してみる
武術に覚えのある人物は歩き方からして一般人と違うと思うので、そこを重点的に探す
臭いな。と思う人物を見つけたら、付かず離れず、絶妙な距離で尾行する
「いや、悪い悪い。ただ普通の人間より動きが綺麗だったんでな。ついつい付いて来ちまった。気にしないでくれ」


八田・阿須摩
うーん…
囮になるにしても怪しそうな連中を捕まえるにしても、道に迷ってちゃ意味がない、よなぁ…

ま、考えても仕方ないし適当に聞き込みしながら
怪しそうな人物の目星付けでもしようかな

飲食できる場所で店員や客へ
最近ここいらでは見慣れない者がいなかったか聞き込み
あぁ勿論、俺以外でね
俺は此処へ来るの初めてだけど、事件を解決したいが為に奔走しているだけだから

後は、陽が落ちたらそこら辺をふらふら歩いてみようか
囮になれればこれ幸い
初手は見切って避けるか、卯ノ花で受け止めよう

他の猟兵が囮になるなら何事にも即対応できるよう
気を抜かない

他の猟兵達とは連絡取り合って連携しなくちゃね
一人で相手するには、俺は力不足だから



 昨夜の捕物は成就しなかったが、聞き込みの成果もあって新たな被害者の報もなく、その点で言えば大成功であると言えた。遭遇した辻斬りの言動からして狙いの下手人には違いなく、死人を別所に配した手口からして普通の辻斬り――語弊はあるが――ではないことも間違いなさそうだ。その行方の手がかりも。
明けて、日の下にて。

 煮売茶屋にて通りを眺め、八田・阿須摩(放浪八咫烏・f02534)が芋を食う。
 注文ついでに給仕の娘に、怪しい影の噂を尋ねる。極度の方向音痴を自任する彼は、人の集まり情報の集まる場所での聞き込みという手段を採用した。
「最近ここいらで、見慣れない人とかいなかったかな?」
 のんびりして見えるのは生来のマイペースさによるもので、決して気を抜いているわけではない。そしてその言動は相手の警戒を緩和させることに一役買っていた。
「あぁ、勿論、俺以外でね」
 阿須摩の顔を指し示そうとしていたところに釘を刺された娘は少し笑い、顎に指を当てながら考える。
「えぇっと、見慣れない人なら、昨日は通りで黒いお侍さんと、角の生えた男の人と」
 これもきっと違うが、うんうんと頷き続きを待つ。
「あとはそうだねぇ、お代官様がやったら物々しい警護を増やしてるから、その人たちくらいかねぇ」
 ごめんね、あんまり知らなくて、と他の呼び声に駆けていく娘を見送り、考える猟兵。
「お代官様かぁ」
 代官屋敷ってどっちだろう。行くなら歩きながらこまめに尋ねて辿り着くしかなさそうだ。そして再び通りを見やると、油断なく歩く猟兵の姿が横切って行った。

 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は男の背を追う。風貌は普通の侍だが、身のこなしには油断がない。隙が見えない。安定した治世の市中ではそうも多くはないのかもしれないが、鍛錬を怠らず行住坐臥を修行とする剣客も、まあいないことはないだろう。しかし、
(人斬りは血の匂いがよくするもんだ)
 こいつはそんな手合いではない。この剣豪の第六感が、嗅覚が、その男について警告を発していた。確信といっても差し支えないほどの疑念。しかし確証はなく、もしそうだとしても、今ここで抜かせては、多くの人を巻き込むのは必至である。見つからぬよう気を付けながら後を追う猟兵の視線の先で、推定・辻斬りは立ち止まり、振り返る。素知らぬ顔で歩を進めるも、擦れ違おうとする寸前
「何の用か」
 尾行に気付き、問い質すために待っていたようだ。何気ない口調で飄々とした様子で返す刀也。
「いや、悪い悪い。ただ普通の人間より動きが綺麗だったんでな。ついつい付いて来ちまった。気にしないでくれ」
「普通の人間より、か」
 言って鼻を鳴らし、踵を返して何事もなかったように歩き去っていく。

 程なくその先の門をくぐって、男は通りから姿を消した。傍らの塀を見上げる刀也のもとに、その姿を見つけた阿須摩が現れる。にこやかに手を振る親切な案内人と別れると、その成果を伝えあう。
「ここ、代官屋敷だよね。最近警護を増やしてるって聞いたんだけど」
「ああ、今入ってった。間違いない、あれは人を斬ってるぜ」

 うまくやれば、今夜にでも決着をつけられる。
 間違いなく、今夜に決着をつけてやろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『奪還して欲しいモノがある』

POW   :    力尽くで奪い返す。人なら殴り倒し、金庫なら殴り壊す。

SPD   :    素早く気づかれずに奪い返す。人からなら早業で、金庫なら鍵開けで。

WIZ   :    知的にだまして奪い返す。人からなら言いくるめで、金庫なら暗証番号解読で。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 要人が黒幕なんて物語ではよくあること。そんな場合は往々にして忍び込んだり出し抜いたり、そういった手段での身柄の確保が求められるものである。
 情報は共有され、猟兵たちはお屋敷へ。侵入経路は門でも塀でも構わないが、建物の内外共に警備はそうも少なくない。そしてそのうちのどれだけが使役されるオブリビオンか人間かは分からず、見つかって倒す、あるいは手心を加えて無力化することも、できなくはないが得策とは言い難い。
 そんな中で目指すのは責任者である屋敷の主の部屋。問い質す価値はあるだろう。猟兵たちは各々の手段で目的地へ向かう。
御剣・刀也
POW行動

素早くとか、知的にとか俺には無理だ
邪魔する奴は(死なない程度に峰打ちで)ぶった斬る。邪魔な物は斬り壊す
力技で解決するってのは褒められる事じゃないが、俺にはこれしかできん。

さて、俺の前に立ってくれるのは人間だといいんだがね。人間なら峰打ちで黙らせることができるが、人外がそれで大人しくなるとは思えん。
ま、それでも、峰打ち二発くらって立ってたら人間じゃないと思っていいのかね?俺の一発がそんなに温いとは思わんが、二発くらって立ってられると少し自分にがっかりしそうなんでな。ま、そういう奴は無視して先に行くが。
「で、主さん、知らないって言葉は通らないぜ?しっかり説明してもらおうか?」


死之宮・謡
何時も通り何もかも破壊して突き進む…隠密なんて向いてないんだよ…さっきは結局辻斬り来なかったし、イライラするな…コロシテヤルヨ…

取り合えず【三重血統装具】と「怪力」で破壊し尽くす。正面突破、向かって来るなら来るでストレス発散出来て好都合。

用心なんて言われるくらいだ…変なことしなくても裕福に暮らせるだろ…そこで変な欲をかくから私達みたいなのに襲われるんだ…馬鹿な奴…



 まず、正門の扉が両断された。その過程で真っ二つになった閂は役目を終え、轟音を響かせながら代官屋敷は開放された。あまりに豪快な賊の侵入に、屋敷の警邏の者たちがわらわらと集まってくる。
 その真ん中に向けて、御剣・刀也は堂々と歩を進める。彼自身、これが最良の選択肢でないと認識はしている。それでも
(俺にはこれしかできん)
 彼の性格も剣風も、小難しい作戦などとは縁遠い。それ以上に彼は彼の振るう剣に、強い信頼を置いている。そういった意味では、これが彼自身の採るべき最善手と言えるだろう。
 それからすぐに、各々に武器を構えた面々が猟兵を取り囲んだ。と言っても、屋敷への進路を塞ぎ、門の側はノータッチの半円状、何事もなく帰って欲しい気持ちが如実に表れていた。
「し、神妙にしろぉ、そこになおれぇっ」
 構えた切先は、裏返った声と同様に震えている。察するに抜身を他人に向けたことなどないのであろう彼の姿は、日ごろの市中の治安の良さをうかがわせるものであった。
「邪魔する奴は、ぶった斬る」
 こちらも抜身の長物を片手にぶら下げて、怯む様子もなく宣告をする。お帰りいただけないことを再確認し、対峙する剣士は一瞬泣きそうな顔になるが、意を決して刀を振り上げ、やや気の抜けたような、しかし彼にとっては至って真面目な気合の叫びを上げながら襲い掛かる。
 刀也はそれを避けることもせず、鋭い呼気と共に相手の胴体を打った。鈍い音、潰れたような声、地に倒れ伏す落下音。そしてざわめき。どうやら間違いなく、ただの人間であるようだ。
 刀也に殺意はなく、今放たれた一撃も峰打ちである。しかし、峰打ちと言えど鋼の棒による殴打であり、加えて鉄の鎧兜を両断するほどの剛剣の使い手が放つそれは、常人が受けてすっかり無事とはいかない。事実その経験者も、ぴくりともせず死んだように転がっている。
「斬られたい奴だけ来い、命が惜しけりゃ下がってろ」
 朗々たる声で言い放ち、周囲を見渡す。たじろぎながらもそれぞれ忠誠心や名誉欲や勤勉性やなんやかやで、次々と襲い来る衛兵たち。それなりの使い手も混じっていたようであったが、それらのことごとくを、刀か骨かの数本でもって心か鼻柱かを折ってのけ、さほどの時を要さずに進路を確保してみせたのだった。

 そして刀也には、この選択肢を採るべき理由がもう一つあった。
(隠密なんて向いてないんだよ…イライラするな…)
 赤い瞳を炯々と光らせて、一人のダンピールが歩み進む。死之宮・謡のフラストレーションは決壊寸前であった。決壊せずともそれを溢れさせ、既に抑え込むことは不可能である。少しの刺激であっても、その堤を崩すことは難くないだろう。
(結局辻斬りも来なかったし…)
 渋い顔をする刀也の脇をすっと通り過ぎ、まっすぐに館へと向かう。その背からは呪詛を思わせる気炎が立ち上り、いかにも恐ろしい。先の剣士に意識があれば、悲鳴を上げて逃げ出していたかもしれない。
(だいたい、変なことしなくても裕福に暮らせるだろ…そこで変な欲をかくから私達みたいなのに襲われるんだ…馬鹿な奴…)
 享楽に生きる彼女にとって、それを目の前にして肩透かしを喰らった現状は、非常に好ましくない。憤懣やるかたない思いは、破壊の魔女を憎き辻斬りのもとへと駆り立てる。
 建物に手が届くほどに近づくと、アアモウ、と苛立たしげに言いながらその手の大槍を無造作に振った。目の前を飛び回る羽虫を払いのけるかのようなその動きで、構造物の一部が抉られるようにして砕け飛び、柱は叩き折られ、軒が崩れ、瓦が次々と落ちて割れた。見た目に似合わぬその凄まじい膂力に加え、発現された彼女と彼女の糧となったモノの血の力。それは明確な形を成した災害、姿を与えられた神にも似た。
 当然ながらその災禍は、一度始まったら一瞬で止むようなものでもない。徐々に速度を上げながら、ストロークを大きくしながら、砂場のお山を蹴り壊す怪獣ごっこの子どものように、一心に念入りに崩し、微塵にしていく。
「コロシテヤルヨォ…!」
 赤い瞳を爛々と輝かせ、赤い口を美しく切り裂いたように吊り上げ、彼女は笑いながら突き進む。とりあえず、髪飾り以外に新たに彼女を赤く彩るものはなく、刀也は多くの無辜の命を救うことに成功したといえる。今のところは。

 ともあれこの騒動は、他の経路から侵入する猟兵たちにとってはお誂え向きの陽動となることだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
代官さんに辻斬りについて聞けば良いかな、
中で聞けなければ外に出すのも考えないと。

人目につかない塀の外で【澄明】で透明化、
【跳飛】で建物の屋根に跳んで行くね。
音と気配は隠せないから気を付けるよ。

奥の方の大きめの部屋かな?
『第六感』で何となく分かるかな?
見つかったら辻斬りについて聞いてみるね、
この屋敷に向かったのは見たしね。
「辻斬りさんについて知ってる事教えて?」
渋ったら…吸血しちゃうよ…って
牙見せて脅してみるのも有りかな…
でも、吸いたい人じゃないから
吸血は最終手段で。

連れ出す時と逃げる時は【四精儀】の
光度高めの光の霧で目眩ましを狙うね。
事前に仲間にサングラスを渡せたら渡すね。

アドリブ、連携歓迎


エン・アウァールス
▼アドリブ歓迎
【SPD】

他の猟兵達によれば、怪しい男は堂々と屋敷の門を通って行ったらしいね?となれば、門からの侵入は辻斬りそのものと遭遇する可能性があり。さらに塀を乗り越えるには、警護の目をくぐる必要がある。

…代官屋敷であるなら、「白州通用門」が何処かにあるはず。【視力】【忍び足】【地形の利用】を駆使して侵入を狙ってみよう。屋敷の人間に見つからないよう、細心の注意をはらいつつね。

敷地内に潜り込めたなら、屋根裏・床下、庭の草木に隠れつつ主人の部屋を探そう。
主人に隙があれば【早業】、隙がない・及び護衛を呼ばれそうになったら【気絶攻撃】で力尽くで奪おう。
あとは、油断無く迅速に逃げようね。



 騒然たる正門とはうってかわって、こちらは静かなものである。
「奥の方の大きめの部屋かな?」
「そうだね、まずは『白洲通用門』が何処かにあるはずなんだけど」
 ヴィリヤ・カヤラの問いかけに、エン・アウァールスが応答する。息を潜めて足音を忍ばせながら、別の侵入口を探して塀伝いに歩くと、さして時間もかからずにその門に見当たった。小さな作りの門にはやはり閂が掛けられ、猟兵たちの侵入を拒んでいた。
 ヴィリヤは少し待つように言うと、彼女のユーベルコード・澄明でその姿を周囲の景色に溶け消えさせる。その跳躍音から数秒の後、内から門が開かれた。エンは小さな声で姿の見えない相手に礼を言いながら、素早く木の影へと身を隠す。それを確認すると、ヴィリヤは宙を駆け屋根の上へと向かっていった。もっともその成否は姿が見えない以上、彼女自身と注意深く聞いていた者にしか分からないし、正門側の喧騒があっては注意深く聞くことも難しくはあるのだが。

 多くの兵が正門に駆け付けたといっても、もちろん全員というわけではなく、むしろ警戒を強め巡回する者もあり、エンはその目を盗む必要があった。そして、彼にはその適性があった。白洲の玉砂利を避け、身を低くして草木に隠れながら塀伝いに迂回すると、相手の死角を突き、自らの死角を検め、気配を殺して建物へと近付く。屋敷の警護が離れた瞬間を狙い、彼は素早く床下へと潜り込んだ。
 暗いながらも目は利く。あとは知識や観察力を活かし、頭上の足音や声音を確かめながら邸内の構造を把握していく。そうして彼は、確実に邸の中枢へと歩を進めていく。

 屋根の上のヴィリヤも、音を立てないよう、注意を向けさせないように慎重に行動する必要があった。視界の端には見る見る流れ落ちていく瓦の滝が近付いてきていたが、この際見ないことにしよう。あちらにはきっと人はいない。主の部屋もあちらではない。
 感覚を研ぎ澄ませ、向かうべき方向に当たりをつけて飛ぶと、建物の造りから見てもだいたいこの辺りかと思える場所へと行きついた。さすがに屋根の上にまで人手を回す余裕はないようで、スムーズなものである。屋根の上から顔を出し、安全を確認すると、そのまま静かに飛び降りる。廊下へ上がり、戸を開けると。

 縮こまって震える男がいた。身なりは良く、恰幅も良い。代官とみて間違いはないだろうが、そう思わせる威厳のようなものは見つけようもない有様である。念のため問う。
「あなたが代官さん?」
 呻き声を上げながら、こくこくと頷く。それならと猟兵は言葉を続けた。
「辻斬りさんについて知ってる事教えて?じゃないと…」
「わ、儂のせいじゃない、あれがあんな、化物だなんて、知らなかったんだ!」
 吸血しちゃうよ、と脅しをかけようとする言葉を遮って、何事かの弁明を始める男こと代官。勢いに目を瞬かせるヴィリヤに遅れて、エンも床下から這い出てくる。
「た、助けてくれ!誰でも良いから、儂を!」
 泣きそうな顔で喚き散らす男には威厳の欠片もない。代官の大声を放置し続ければ護衛を招きかねず、そうなれば猟兵たちが危害を加えた嫌疑は免れない。侵入者であるには違いないのだが、だからこそ厄介なことになる前に――
「悪いけど」
 素早く室内へ躍り込み、躊躇いなく当身を食らわせ大人しくさせるエン。静かになった屋敷の主を肩に担ぐと、ヴィリヤの方へと顔を向けて淡々と言う。
「さあ、油断無く迅速に逃げようね。」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八田・阿須摩
塀を乗り越えて侵入するのは簡単
…なのだけども、ね
入った後が問題か

忍び足で出来るだけ見つからないように屋敷の奥へ向かって行く
…うん、途中、迷いそうだけど、俺的には奥へ向かう

見つかりそうになったら近くの部屋に逃げ込む
もしくは最近雇われた護衛です、て誤魔化す
見知らぬ顔だ、とか知らぬ名だと言われても
ならば君は護衛全ての顔と名前を知っていて
尚且一致させているのか?と問う
半々の確率だけど、言いくるめは成功できるはず
失敗したなら他の猟兵達が目的達成できるよう、
なるべく注意を引いて目的地までを手薄にさせるべく動く
対峙したり逃げたりして

言いくるめ成功できたら
主に呼ばれたんだけど場所どこだっけ
と案内して貰おう



 八田・阿須摩も、他の隠密組と同様に邸内へと足を踏み入れていた。が、一方は屋根の上、もう一方は床下を行った。忍び足で屋敷の中を単独で探索する彼は、極度の方向音痴である。そして同じような部屋の並ぶ、知らない屋敷の中ともなれば、迷わないはずがない。それでも、頼りないながらも奥へ向かって歩いていく阿須摩だが、やはり同じ柱の前を数度通り過ぎることとなっていた。
 そうこうするうちに、角の先から現れた家中の者と出くわしてしまった。見覚えのない顔に疑いの視線を向け、矯めつ眇めつ眺め回す相手に、しかし冷静さ故かマイペース故か、この猟兵が表情を崩すことはなかった。
「最近雇われた護衛ですけど、道に迷ってしまって」
 疑いの視線に応える言葉に、男はさらに眉を顰める。
「いや、知らん顔だ。間違いない」
「ならば君は護衛全ての顔と名前を知っていて、尚且つ一致させているのか?」
 問いに、気色ばんだ表情になって男は答える。
「当然だ、全員俺が選んで採った」
「そういうことなら仕方ないね」
 阿須摩は素早く踵を返して一目散に逃げだした。当然相手も追ってくる。
「曲者だぁっ!」
 たまたま出遭った相手が悪かったが、この猟兵もただでは起きず、追跡者を増やしながら邸内を駆け回るのだった。これによってさらに多くの衛兵が駆り出され、代官の誘拐がより容易になったのは言うまでもない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『用心棒』

POW   :    剛なる居合い
【居合い 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    飛刃縮地の構え
自身に【修羅の気 】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    死者の誘い
【用心棒が殺した死者 】の霊を召喚する。これは【悲痛な叫び声】や【生前持っていた武器になりそうな物】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 追われる者は撒いて出て、担いだ者は連れて来る。
 正門前のなおも破壊され続ける光景の前で、代官を連れての撤収を図るなか。

 もうもうと塵芥の舞う中から、瓦礫の山を踏み越えて、それは姿を現した。

「そいつは置いとけ、あとでじっくり捌いてやる」
 集合した猟兵たちの前に、抜身の刀を引き摺って。纏う空気は禍々しく、血生臭い。間違いなく人ではない。
「代官威かして家来のふりしてりゃ、嫌って程斬れると思ったんだが…存外早かったなあ」
屋敷ぐるみで匿われていたらしいそれは、鬱陶しげに舌打ちして、ぼやくように言った。
「俺はなあ、殺し合いがしたいんじゃない、ただ、斬りたいんだよ」
 睨め付け、嗤う。
「くびを、あしを、はらを。ちが、にくが、はらわたが」
 わらう。不気味に声を漏らしながら。
「おまえらも、まとめておとなしく斬られてくれんか…なあ!?」
 わらいながら、跳んでくる。
傀童・沙華
【POW】

ふむ……
斬りたいだけ、のぅ
面白くない
まっこと面白くない者じゃ

弱者を嬲るだけの悦楽に浸るだけの俗物相手には勿体なくはあるが
わらわにとって戦場でやることはただの一つ
相手の攻撃に避けずに身を晒し、ひたすら攻撃を加えるという己の喧嘩の流儀に従うまでじゃ

俗物相手に口上を語る必要なし
無言で天蓋抂乱を発動させ
更に【オーラ防御】で耐久性を上げつつ、
【怪力13】【鎧無視攻撃10】を用いた【捨て身の一撃110】での攻撃じゃ

お前さんのような、弱者相手しか斬れぬ下郎の血なぞ、
いくら浴びても不快になるだけじゃ
せめてお前さんに斬られた己自身の血で
この身の滾りを満たすとするかの

下郎が。貴様はここで朽ち果てろ


御剣・刀也
斬りたい?人を斬る享楽に落ちたか
てめぇはもう剣士じゃねぇ。ただの人殺しだ
せめて剣士として逝かせてやる。来い!

居合は間合いに入らないよう気を付ける。もし間合いに入ってしまったら見るのではなく第六感で感じて捌く
飛刃縮地の構えで高速移動されると再び間合いにとらえるのが難しくなるので距離を離されないようにする、衝撃波はサムライブレイドで受け止めるか避けるかして突っ込む
死者の霊を召喚されたら特に邪魔にならないなら放置。悲鳴とかがうっとうしい場合、あるいは邪魔された場合は斬り捨てて進む
「人が斬りたいといったな。お前、斬られる覚悟はあるのか?斬る覚悟よりも斬られる覚悟の方が大事なんだよ!!」


ヴィリヤ・カヤラ
大人しく斬られるのは嫌だから却下で。
今度は逃がさないよ?

至近距離は危なそうだから、
剣の間合いに入りすぎないように、
宵闇の蛇腹剣も使いながら気を付けるね。

動きも速そうだから『第六感』にも頼りつつ、
【氷晶】で進路を妨害して
動きを鈍らせられるかも試してみようかな。
敵の動きはよく見て、
攻撃は避けるか、武器で受けるように頑張るね!
もし誰かが危なそうなら割り込みしてフォローに入るよ。

霊を召喚したら【氷晶】で早めに対処、
効きが悪ければ【ジャッジメント・クルセイド】で。

ダメージが大きそうな人がいたら優先して【輝光】で回復。
でも、回復が得意そうな人がいたらお任せするね。

アドリブ・連携歓迎


死之宮・謡
漸く出てきたか!長かった、此処まで…全然殺せないし、ストレスも溜まる一方だったけど…漸く戦えそうだよ!

唯斬りたいだけか…私も殺すのも壊すのも大好きだけど殺し合いも大好物さ!だから、微妙に意見が合わないねぇ…まぁ、どうでも良いけど?オブリビオンと意見合ってもしょうがないところあるし…抑、気の合う合わない関係なしに今回は依頼で殺しに来ただけだしねぇ!

それじゃあ行くよ?【血脈回帰・鏖殺帝】発動…


八田・阿須摩
大分人を斬ったみたいだね
それなら勿論、君自身も斬られる覚悟はあるよね

基本的には一撃離脱
間合いに入ったままにならないようにする
後はやっぱり他の猟兵の邪魔にならないように、かな

肩でも腕でも斬り落とせりゃ僥倖だけど
ま、何度でも斬りに行けばいいか
君が何人も人を斬ったように、ね

相手からの一撃は避けずに受け止めよう
俺も剣豪の端くれを名乗っているからね

死者を召喚されぬように
喉を斬った方がいいか
自分が殺した相手を召喚して利用するなんて
図々しくないかい?

あぁそうそう
代官さん
自分が事の発端を担っている自覚をして
ちゃんと被害者への補償は行って欲しいかな
それくらい造作も無いことだろう?
命の恩人である俺達からのお願いだ


エン・アウァールス
▼アドリブ、ダメージ描写歓迎

屋敷を壊してしまったのも事実だし、代官の顔を立ててあげようかな。
これだけの騒ぎなら、同心も駆けつけているだろう。彼らに「辻斬りが屋敷に潜み、代官の命を狙っていた」と伝え、そのまま保護をお願いする。

キミとは反りが合わなそうだ。
肉の削り合いが、楽しいのにね。

▼戦闘
戦闘は好戦的なヒト達に任せて、エンは裏方に回ろうか。家来の振りができる辺り、狡猾な輩のようだからね。逃走経路になりそうな門・堀・屋根などに、予め「雪迎え」を仕掛けておこう。逃げる素振りを見せるなら【戦闘知識】【降魔化身法】で追いかけ、叩き落とそうか。もし攻撃を仕掛ける隙があったなら、「肉剥」で【傷口をえぐる】。



 瞬間に、弾丸のように跳び来る人斬りの影は、軌道上に躍り出た影にその進行を妨げられた。もう一度舌打ちをし、憎々しげに睨みつけるその目に映るは、黒き、魔女。死之宮・謡は愛おしげに狂おしげに目を細める。
「長かった、此処まで…」
 ようやく叶った逢瀬のように、熱を艶を伴って投げかけられるはしかし、愛情や思慕などではなく、紛う方なき殺意。交わされるは抱擁や接吻などではなく、熾烈なる剣戟。而して此処に在りしは享楽と熱情。
「漸く、漸く漸く!」
 疾駆する狂気、尖鋭なる狂気、豪然たる狂気。間断のない狂気の応酬を捌きながら、妄執の男は後退る。
 閑談を厭うて疾く斬らんとし、亡霊は身を沈める。
「もう我慢ならないんだ、早く、斬らせろ、早く、斬られろ」
 鋭い呼気と共に放たれる、認識に堪えざる神速の一太刀が謡を襲い、赤い飛沫を上げる。しかし、その程度の障害はこの殺戮鬼を止めるに能わない。待ち続けたのは男だけではない。女も飽くほど待ち続けた。血が、傷が、今更なんだと言うのか。
「漸く戦える、漸く殺せる!」
 止まらぬ謡のその槍は、差し違えるようにして男の脾腹を貫いた。

 思い通りにならない相手に苛立ち距離を取る人斬りに、鞭のように蛇腹剣が牙を剥く。刀で受けるとさらに跳び退り、腹立たしげに蛇の帰る先を視線で辿ると、「見逃してやった」女の姿を見た。手の中に戻る宵闇を構え、ヴィリヤ・カヤラは睨み返す。
「今度は逃がさないよ?」
「今度は仕舞いにはしてやらんぞ」
 与しやすしと見ると、人斬りは標的を彼女に定める。すかさず放たれる氷晶は、それの目から獲物の姿を隠した。
「守護を司る石の輝きを以て苦痛を癒せ」
 氷の牢は確実に対象を捕え、その間に急ぎ謡を癒す。
「学ばんのか」
 効かんぞ、と色濃い嘲笑を向けながら、先の丑と同様に氷刃の群れを斬り伏せた男。疲労を見せるヴィリヤの前に、侍の骸が沸き出でる。
「そういえば、こいつも世話になったのだな」
 笑む先を、黒い女へと移す。幾度となく呼び起こされ使役される死者に、謡は見覚えがあるはずだった。しかしそこに興味はなく、喚起される記憶もなく、感情もない。再び同じ死者を貫きながらも無感動な彼女の相貌に鼻を鳴らし、男はその姿をかき消して

 ヴィリヤの眼前、凶刃が迫っていた。

 一瞬のうち謡の視線を外し、やや息の荒いヴィリヤを狙い致命の一撃を放たんとする奸計は、猟兵の身体に大きな損傷を及ぼした。
「面白くない。まっこと面白くない者じゃ」
 溜め息を吐きながら、傀童・沙華(鬼哭童子・f12553)は冷ややかな落胆の表情を向ける。赤い羅刹の赤い血は、過剰なまでにあらわにされた白く美しい肌を流れ伝う。その有様にいびつな笑みを漏らし
「俺は面白いぞ。もっと斬らせろ」
 言いながら二度三度と刀を振り、血の華を咲かせる。新しい玩具に夢中になる童のように、楽しげに笑いながら斬りつけまくる。放たれる拳は躱し、いなし、受け、優勢に酔う。
 不意に、刀が止まった。沙華の肌の上で、止まった。
ユーベルコード・天蓋抂乱。避けず打つ、不退転の喧嘩師の魂が彼女をより強きものにする。日頃語られる口上は、俗物相手には過ぎたるものとてうたわれず、侮蔑の念が表される。剛拳はオブリビオンを吹き飛ばし、要所の防具ごとその骨身を砕く。不足に過ぎる喧嘩の相手に、沙華は歩み寄り再び拳を振り上げる。身を守ろうと、立ち上がろうとする男、傲然とそれを見下ろす女。
「下郎が。貴様はここで朽ち果てろ。」
 振り下ろされた腕は、苦し紛れに振られた刃にかすめられながらも、敵の身体を撃ち抜いた。

「お、おのれ」
 血反吐をはきながらもなお立ち上がる。斬るだけでなく斬り倒すことを要する現状は、オブリビオンである彼の基の、何かを呼び起こす。
「勿論、君自身も斬られる覚悟はあるよね」
 さなか、剣鬼の前に剣豪が立つ。確実に捉えるには遠く、飛刃には足りぬ。そうして躊躇う間に、八田・阿須摩はその美しい太刀を一閃する。危ういところで身を引き、浅い傷を負うた人斬りは、思い出せぬ何かをひとまず殺した。
「軽いな」
 挑発に、目の前の相手は冷静に答える。
「何度でも斬りに行くよ、君が何人も人を斬ったように、ね」
「俺は、斬りたかった。俺には、斬る必要があった」
 一笑に付すべき言葉を、口を衝いた言葉が迎え、人斬りは戸惑う。思い出せぬ何かを振り切るように跳躍し、近間に捉えた阿須摩を抜き打つ。追われる者、迷う者の剣は精彩を欠き、咲かすべき華は立ち枯れる。

 気が付けば下手人は追い詰められ、知らずに随分と後退していた。なお対峙する剣豪に圧され、今一歩。
 瞬間、その背が裂け、血が噴いた。
「!?」
 容易とは言えずとも、目を凝らせば見て取れたであろう張り巡らされた銀糸は、追い詰められた人斬りの目には捉えられず、さらに心を揺さぶっていく。
「キミとは反りが合わなそうだ」
 計略の成果を確認するようなタイミングで背後からゆっくりと現れたエン・アウァールスの姿に、改めて自身の窮状を思う。眼前には幾人もの猟兵の姿、そして恐らく、ほとんどの退路を塞ぐように配置されているであろう銀糸の罠。脱するには囲みの瑕疵を、弱きを突くか。そうなると…
「ああ、俺も、罠に頼るような雑魚とは合わないと思うぞ」
「ううん、そこじゃなくて」
 神速の踏み込み、神速の抜き打ち、取った、と思った人斬りに、この羅刹は平然として首を横に振り
「肉の削り合いが、楽しいのにね。」
 にいっと口を吊り上げて、威嚇する獣を思わせる笑顔を見せた。先の雰囲気とは違う、知るとおりの羅刹の姿。叩き込まれた得物は、貫かれた脾腹に衝撃を与え
「ぐううぅっ」
 エンがその武器を引くと、人斬りは灼け付くような痛みに叫びを漏らす。転がるように逃げ、目に見えた刃は、人を斬ることを目的としているようには見えなかった。苦痛を与えるために、あるように。流れる血に構うこともなく、なおも無邪気そうに笑って見せる異端の鬼の姿は、異形としてあるはずのオブリビオンを、その異質性でもって戦慄せしめたのであった。

「てめぇはもう剣士じゃねぇ。ただの人殺しだ」
 言われなくても。おれはもとより人殺しだ。人斬り包丁ぶらさげて、綺麗事など笑えんよ。
「せめて剣士として逝かせてやる。来い!」
 惑い、逃げるおれを、剣士として。
 慙愧か、感謝か、憤怒であったか。思い出せぬ何か、綯い交ぜの感情をしまい込み、大きく息をすると、侍はゆっくりと構え、躙るように歩み寄る。御剣・刀也は隙なくその刀、獅子吼を構える。たやすい相手ではないのだろう。ともすればおれは斬られるのだろう。しかしだからこそ、おれはこいつを斬りたいのだろう。斬らねばならなかったのだろう。
 制空権に捉えると、侍は今一度、目にも留まらぬ速さで刀を抜く。今ここにきて、最速の抜き打ちであった。しかしそれは、射抜くような殺気でもって刀也に冷たい死の感触を如実に伝え、寸での所で受け止められてしまう。次はこっちの番とばかりに振り上げられる雲耀の太刀。
「人が斬りたいといったな」
 向けられる怒りの正体は分かる。分からない道理はない。大上段を防がんとして刀を構える。
「斬る覚悟よりも斬られる覚悟の方が大事なんだよ!!」
 振り下ろす刀に合わせ、身を躱し、刃をいなし、衝撃を和らげ――それでも足りず、侍の刀は叩き落され、額を割られ、胸を裂かれ、血が噴き出す。それでも。
「斬られる覚悟など疾うにあった!おれには斬る覚悟の方が必要だったのだ!」
 思い出せぬ何かは、殺せず、逃げられず、そこにあった。

「どぉーうでも良いわ!」
 オブリビオンは吹き飛んだ。
 そう、どうでも良い。他人の命も、オブリビオンの理屈も、くだらない詰まらない自分語りも、平行線の押し問答も。昂った破壊衝動、溜まりに溜まったフラストレーション、殺戮によって得られるカタルシス、それらの前には不要、無用、不純物!
「それじゃあ、行くよ?」
 死之宮・謡は真祖の血を解放し、変貌する。明らかに変わったその様に、侍は身構え、攻撃に備えた。
 しかし、備えは不十分であった。否、散々に力を削がれたこのオブリビオンには、十全の備えなどもはや望むべくもないことであったろう。槍の一突きで刀は弾かれ、次の一突きで刀は折られた。先の戦いとは比較にならない速さ、鋭さ、重さ。成す術もなく蹂躙され、読んで字の如くその身を見る間に削ぎ落とされ。

 肉塊となり、塵となり、風に消えた。

●それから
 大騒ぎの屋敷へと役人が集まり、エンが迎え入れた。天下自在符の提示によって身の証を立て、「辻斬りが屋敷に潜み、代官の命を狙っていた」旨を伝える。当人たちから伝え聞いた内容とは違うが、悪意ある加害者ではない代官への、エンなりの配慮によるものである。

 そして当の代官はと言えば。
半壊した屋敷の姿に放心したかと思えば、次には事態の重さに頭を抱え、自責の念から腹を切ると騒ぎだしている。エンの話を聞いた同心たちからしてみればちょっと意味が分からず、ひとまず落ち着かせようと駆け寄り必死で取り押さえる有様である。なお、物的被害額のスコアホルダーは興味なさげに涼しい顔をしている。
「代官さん」
 阿須摩が声を掛けると、代官はいったんおとなしくなる。この柔和な猟兵は頷くと、責任の自覚と、被害者への補償を促した。
「それくらい造作も無いことだろう?命の恩人である俺達からのお願いだ」
 逡巡の後、頷く代官。彼にしてみれば阿須摩の言葉はこう取れたかもしれない。即ち
『お前の命は俺達のものだ、責任を果たすまで死ぬことは許さないぞ』
 ともあれ代官の命は救われ、この後の補償も手厚くしっかりと行われたことだろう。もしかしたらおとなしくなったのは、猟兵の肩の後ろに見えた、もう一人の猟兵・エンの笑顔が、今までの人生の中で一度しか当身を喰らわされたことのない代官に、向けられていたからかもしれない。


 かくして、この町に再び平和が訪れた。被害者は戻らず、同じ平和は戻らず。しかし、守れなかった、守るために何もできなかった、そんな後悔をオブリビオンが生むことは、ひとまずしばらくはないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月09日


挿絵イラスト