灰かぶりはお姫様になれたのか
●お姫様になりたかった
「私はお姫様なの。魔法使いの馬車に乗って舞踏会へ行って、そこで王子様に見初められて、それで魔法が解けても幸せに暮らすの」
花が埋め尽くす国で黒いドレスの少女が虚ろに笑う。
「だって、だってそうでしょう? 私はずーっと頑張って来た。こんなひどい世界で、辛い目にも耐えて、私が一番幸せになっていいはずでしょう?」
少女の声に答える者はない。なぜならこの世界の住人達は、皆眠っているか、物言わぬ彫像になってしまっているから。
それを成したのは彼女が従える花たち。黒き薔薇の香りを嗅いだ者はまるで平伏す民のように倒れ眠り、金の花の花粉に巻かれた者は姫を称える臣下たちのように手を差し伸べたまま黄金の像となった。
その中で少女は誰も答えぬ言葉を自ら作った静寂に投げ続ける。それはまるで、本当の答えが返ってくるのを拒むかのように。
金と黒のその世界を、一つの赤が横切っていく。
「何なのここ……とにかく、ウサギ穴っていうのを探さないと……」
くたびれた身なりの赤毛の少女。当て所もなく歩くその足が踏み出すごとに、その足元の黒薔薇は枯れて消えていく。
その姿を見つけた黒い少女は、信じられないものを見たように声を震わせた。
「どうして……どうしてあなたは眠らないの……ここで動いていいのは、お姫様だけ……」
その声を聞いた赤毛の少女はたじろぐことなくそれを見返して言う。
「そんなこと言われても分からないよ、私はウサギ穴を探してるだけ」
「うそ、うそよ、あなたなんかがお姫様なわけない。私にだって魔法使いも、王子様も来なかったのに……」
相手の返答など聞かぬとばかりに恨み言を繰り返す黒い少女に、赤い少女は不気味さを感じ、一歩距離を取る。
妙にふわりとしたその足取りの下で、足元に撒かれた赤い薔薇の花弁が触れた黒い薔薇を枯らしていた。
●お姫様なんかじゃなかった
「皆さん、お疲れ様です。本日は私が依頼を出させていただきます」
資料を手にした谷保・まどか(バルバロス委員長・f34934)がそう言って一礼する。
「今回はアリスラビリンスで、倒された猟書家の跡を継いだ人と戦ってもらいたいと思います。相手の名前は『『七罪』嫉妬のシンデレラ』というそうです」
おとぎ話の姫と大罪の名を持つオウガのグループ。その一人だという。
「彼女は『エンデリカ』という猟書家の跡を継ぎ、その能力であった黒薔薇を使って一つの不思議な国を侵略してしまいました。ですので、彼女を倒して不思議の国を解放してください。このままでは住人達はもちろん、ウサギ穴や『自分の扉』さえも抑えられて通ることができないようです」
エンデリカ、その黒薔薇は影響下にある者を全て眠らせる。嫉妬のシンデレラはその力を持って不思議の国を制圧し、一人そこで妄言に耽っているという。
「彼女は黒薔薇の他、『黄金花』という花を従えています。こちらはいい香りで相手を誘い、近づいたものを生物、非生物問わず魔力で黄金像に変えてしまうようです。花だけどオウガなのでそう簡単には枯れてくれませんし、香りもユーベルコード由来なので息を止めるくらいでは防げません。マッチ一本でお終いとかではないのでうまく対処してください」
ただの花と侮れば一瞬後には黄金と化す。油断なく挑む必要があるということだ。
「黄金花を越えたらシンデレラとの対決です。その名の通りシンデレラをモデルにしたような技を使い、空飛ぶドレスを纏っての飛翔やガラスの靴での蹴り技、機動要塞と化した南瓜の馬車の召喚を行います。また嫉妬の力で相手の技の模倣もしてきます」
不安定な精神と裏腹にその実力は猟書家の跡目を継ぐに相応しいもの。強敵と言って差し支えないだろう。
「この世界にはエンデリカの黒薔薇が蔓延していて、例え皆さんでもその眠りからは逃れられません。ただ、プリンセスがユーベルコード【ドレスアップ・プリンセス】の花びらを浴びせることで黒薔薇を枯らすことができます。丁度ばったりシンデレラと出くわしてしまったプリンセスの方がいらっしゃいますので、その人に状況を説明して手助けを頼んでみてください」
そう言ってまどかは資料をめくり、プリンセスのデータを出す。
「ラモーナ・ロスという13歳の女性で、猟兵に助けられたことがあります。なので協力的な人ではあるのですが、戦う力はほとんどないみたいです。自分がプリンセスの力があることすらあんまり分かってないかもしれません」
協力者であると同時に護衛対象でもある。無理はさせず、だが役目は果たしてもらうために扱いには注意が必要だろう。
「シンデレラはお姫様というのにすごくこだわってるみたいですね。元々内気な努力家だったみたいですけど、努力の甲斐なく願いはかなわなかった……これをお姫様になれなかったと表現してるみたいですね。それでその不満と絶望から強いオウガになって世界に憎悪をぶつけるようになったみたいです」
しばしばいる元アリスのオウガか、あるいは別の出自を持つのか。それは定かではないが、とかく嫉妬に狂い自らがシンデレラであると主張を繰り返しているようだ。
「でも苦労してるのは猟兵やラモーナさんだって同じですし、我がまま言われても困りますよね。ですので、やっつけてきちゃってください」
あまり相手の事情には踏み込まぬという様子でそう言って、まどかは猟兵たちを黒薔薇に支配された世界へと送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。今回は眠りを誘う黒薔薇の中、アリスラビリンスでの猟書家後継者との戦いです。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス(全章共通)……空飛ぶプリンセスを守り続ける』
第一章では『黄金花』との集団戦。使ってくるUCは香りで誘い近づいたものを黄金化させるもの一つだけですが、近づいたものは何であろうと黄金に変えます。これを何とかしないとボスに近づけませんので、どうにか駆除するか踏み越えてください。
第二章では『『七罪』嫉妬のシンデレラ』とのボス戦。彼女は高速飛翔からの格闘戦や兵器と化した南瓜馬車の召喚、食らったUCのコピーを使ってきます。その名の通り嫉妬深く、強い者、恵まれた者、美しい者に嫉妬の感情を向けます。お姫様という言葉に異常にこだわり、自分こそが真のお姫様にふさわしいと主張しそれを認めない世界全てを憎悪しています。
戦場には眠りを誘う黒薔薇が蔓延り、協力者のプリンセスが【ドレアップ・プリンセス】で飛翔中に舞い散らせる花びらによってのみそれを枯らすことができます。現場にはシンデレラとエンカウントしてしまったプリンセスがいますので、彼女に協力を頼み、かつ飛び回る彼女を守りましょう。
以下プリンセス詳細。
ラモーナ・ロス(13・女性) アリスラビリンスに来たばかりの時に一度猟書家に捕まり、その時一緒に救出された仲間とも別れ今は一人。自分は特別ではないという思いを強く持っており、一度猟兵に助けられた後(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=38312、読む必要はなし)もその考え方は変わっていない。芯の強い性格な一方戦う力は弱く、種族やサブジョブもはっきりせず【ドレアップ・プリンセス】以外のUCは使えない。
それでは、自分の力で勝利をつかみ取るプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『黄金花』
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POW : 金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:相澤つきひ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
目の前の黒い少女が繰り返す言葉。その言葉を受けて赤い少女、ラモーナ・ロスの脳裏には一方的に知る、あるいは自身を救ってくれた何人かの姿が浮かんだ。少し前までは自分にもそんなものは関係ないと思っていた。今も彼らが都合よくいつでも助けてくれるなどと思っていない。だが、それを言って聞きそうにないのは相手の様子を見ればわかった。
「まさかあなたも……」
意味の分からないことを言い続ける話の通じない相手。それが何なのか、彼女は嫌というほど知っていた。
「逃げなきゃ……死にたくないし、死ねないし……!」
命を繋ぐために最善の策が何なのかは知っている。それを躊躇なく実行しようとした瞬間、その足元から赤い薔薇の花びらが舞い散り、そしてそれが体を取り巻いて擦り切れた服を豪華絢爛な赤いドレスに変えた。
「え、え……え!?」
その姿に、黒い少女はあらん限りに嫉妬と憎悪の目を向ける。
「やっぱり……どうして、どうしてあなたなんかが!」
殺意交じりのその声から逃れようとすれば、今度は体が宙に浮きあがる。その軌跡には赤い薔薇の花びらが舞い散って、触れた黒薔薇を次々に枯らしていった。
だが、その下から現れるのは甘い香りを放つ金色の花。その花の向こうへ引きながら、黒い少女はあらん限りの憎悪を叫ぶ。
「あなたはこの世界のお姫様なんかじゃない……降りてきて! お城を飾る像になって!」
黒薔薇を枯らした花弁も、その金の花に触れれば薄い金箔となって砕け散る。
ラモーナは知らぬことだが、この金の花は黒薔薇と共に既にこの世界を満たしている。どこに飛ぼうともう逃げ場などはない。
猟兵よ、ただ一つの道を開くため、赤き薔薇を守りながらこの金の花を切り払い、踏み越えよ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
また厄介な状況に巻込まれておりますねぇ。
お助け致しますぅ。
『FAS』により飛行、[結界術]による『遮断結界』で私とラモーナさんを包みますねぇ。
そして【崇卓】を発動、戦場全体の大地に『熔岩域』を形成すると共に、私とラモーナさんを『大気の壁』で覆いましょう。
周辺の空気が黄金化していない以上、この『魔力』は『大気』を黄金化させる能力は無いでしょうし、『風』と『結界』の二重防御であれば『香りの浸透』も防げますぅ。
そして、地下深くまで干渉し『熔岩』を形成すれば、仮に表層が黄金化されても、その部分ごと『熔熱』で焼き尽くせるでしょう。
対処しつつ、ラモーナさんに事情を説明したいですが。
突如として変わった服、浮き上がった体、そしてそれに怒りをあらわにする目の前の相手。
空を飛ぶ人間は見たことはある。でもそれは向こう側の、戦う力を持つ人たちのはず。自分はただ、誰でもできるようなことだけを組み合わせて進んでいくことしかできない力ない存在だ。自分がそんなことができるなんて思ってもいなかったし、なぜあの相手がそれをあんなに怒るのかもわからない。
幸い体を捻れば行きたい方向に行くことは出来そうだ。とにかく、今はこの浮く力を使って回避していかなければ。
「また厄介な状況に巻込まれておりますねぇ。お助け致しますぅ」
そう考えていたラモーナに、のんびりとした声が聞こえた。
「あなたは……!」
直接かかわったのだから今度こそ覚えている。以前彷徨い歩いていた時に助けてくれた相手。
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は自身も『FAS』で飛行しながら、ラモーナに近づいて結界で自分と足元を隔てる。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その祭壇の理をここに」
そのまま【豊乳女神の加護・崇卓】を使用、大気の壁を重ねて花と自分を遮る壁を増やした。黄金花は近づく者を全て黄金に変えると言うが、周囲の空気までは黄金化されていない。故に気体……少なくとも空気は黄金には変えられないはずと、そう踏んでの大気の壁だ。
そうして壁の中で時間を稼ぎ、まず伝えなければならないこと。
「ラモーナさん、あなたを助けるためにあなたの協力が必要でして」
「私の……?」
この世界を覆う黒薔薇を拒絶できるのはラモーナの散らす花弁だけということ、これをどうにかしない限り猟兵と言えども戦い続けることができないことを急ぎ説明する。それさえどうにかしてくれればあとは自分が彼女を守り切るとも。この説明の間にも黒薔薇は繁殖し、るこるの張った防壁さえないもののように突き抜けてくるのだ。とにかく、彼女に上空で飛び回ってもらわなければ話にならない。
「飛び方って言われても……うわあ!?」
その言葉に従おうとし、上を向くと体がそちら側へ向けて飛んでいく。何とか体の動かし方を探りつつ、上空を飛び回れば薔薇の花びらが下へ落ち、足元に黒薔薇が増えるのを防いでいく。
真下に黒薔薇がなければ眠ることはない。るこるはそのまま溶岩を下に出現させ、黄金花を焼き尽くそうとした。
黄金花はオウガではあるが花ゆえに真下に危険物があっても避けることは出来ない。瞬く間に花は溶岩に沈んでいくが、同時に触れた溶岩を黄金に変え、自分にとっての安地に変えてしまった。
それでもるこるは溶岩を作り続ける。それは黄金を溶かし、もう一度花を飲み込んで今度こそそれを焼き尽くしていった。
一方で移動すればそこはまだ黒薔薇が繁茂し、それに守られて黄金花がある。そこには溶岩を敷こうにも黒薔薇はそれさえも防ぎきり、堪え得ぬ眠りをその場にばらまいてしまう。
だから、るこるはラモーナと一緒に移動する。黒薔薇を彼女が消せば、あとは黄金と溶岩のせめぎあいの上に道が作られて行くのだから。
誘う匂いは風で、魔力は結界で、花自体は溶岩で防いで進み、唯一自分が対処能わぬ黒薔薇をラモーナに任せる。どちらが欠けても進めぬ道行は、王子様を待つシンデレラの元へと花を散らして続いていく。
「来ないでよ……私はお姫様なの、そんなもの待ってない!」
花の向こうへシンデレラは引いていくが、それならばそこへ向かって道を作るまで。
馬車は南瓜ではなく、道は焼き尽くされている。だが先に進むことだけは諦めぬプリンセスにはこれこそ相応しいと、るこるは先へ向かって赤き薔薇の前に赤き道を作り続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリスティアー・ツーハンドソード
なるほど、王子を求める声があるなら行かずにはいられない
待たせたねプリンセス達、王子様のエントリーだ!
と意気揚々と向かうが自分だけだとほぼ動けないのでプリンセス・ラモーナに僕を装備してもらおう、すまないね
だが足手まといにはならないさ
『ブレイクミラー・ホッパーション』でラモーナの空中移動力をあげ『アリスランス・クリエイション』の【援護射撃】で黄金花を凪払う
質量による攻撃なら黄金になっても止められず威力も変わらない
また破片がある程度散るのを確認したら選択UCを使い更に広範囲を質量攻撃するとしよう
おいたはいけないねプリンセス・シンデレラ
それに君にはそんな怖い顔より笑顔が似合うと思うのだが…どうだろう?
戦える力はなくとも、生き延びて先へ行くためには花を越えてシンデレラを追わなくてはならない。一方でシンデレラも、助ける者さえいなくなればただ飛び回るだけの力なきプリンセスを仕留めるなど容易い。
否応なしに向き合う二人のプリンセス。その両者の間に割って入るように、一本の剣が飛来し花畑の中に突き刺さった。
「なるほど、王子を求める声があるなら行かずにはいられない。待たせたねプリンセス達、王子様のエントリーだ!」
そして聞こえる凛々しき声。その出所を探し両者は当たりを見回すが、その剣の持ち主と思しき人影は見当たらない。
そして先に思い当たったのはシンデレラ。この世界の存在は人型である必要性など全くない。それは住人も、オウガも、そして猟兵も。
「あなたなんかが王子様……?」
軽蔑、あるいは拒絶するように眼前に突き立つ剣を睨みつける。そう、その青き両手剣こそがアリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)、王子様を名乗る愉快な仲間の猟兵なのだ。
「と、格好つけたはいいが自分だけだとほぼ動けないのでね。プリンセス・ラモーナ! 僕を装備してもらいたい」
その指名にラモーナはびくっと肩を震わせるが、今回自分は守られているだけではいけないことは先に教えられている。意を決し、アリスティアーの持ち手を掴み力いっぱいその刀身を引き抜いた。
「すまないね」
そう告げるアリスティアー。その身は外見相応に重く、武器の心得などないラモーナには当然扱いきれるものではない。
「だが足手まといにはならないさ」
その言葉通り、ラモーナの足元に一枚の鏡が現れ、そしてそれが割れると同時に勢いよく反音体を空中に跳ね上げた。アリスティアーはアリスに自分を使わせることでの戦いを本分としている。力のない者に持たれることはこれが初めてではない。
そのまま空中で槍を形成し、それを足元の花へ叩きつけさせる。本数は力の、重さは心の強さに比例する槍を生み出すその魔法は僅かな、それでいて固く重い槍を生み出し地上の花を穿った。当然槍は花に触れた途端黄金と化すが、たとえ組成が変わろうとその重さは不変。
「質量による攻撃なら黄金になっても止められず威力も変わらない」
自身の力で黄金に変わった槍に潰されても、花は決して抵抗は出来ない。潰れた花の上にラモーナの足が着けば、まるでそれを受け止めるかのように鏡がそこに現れ、そして割れては彼女を跳ね上げる。
武骨な黄金と割れた鏡で作られた道は煌びやかながらも刺々しく、荒々しい。だがそれはアリスの道を阻む者の骸の上に、それを倒す力を添えた王子様が敷いた道。
黒を枯らし、金を潰し、ばらまかれたガラスの道が黄金の世界を切り裂いたのを確認したアリスティアーはラモーナに指示をする。
「さあプリンセス。僕を天に掲げて!」
「分かった……!」
その言葉に答え、ラモーナが細腕で両手剣を天を突くように掲げた。
「墜ちよ写し身、大地を穿て!」
それに呼ばれるかの如く、巨大な赤い両手剣……【涙刃墜空剣】によるアリスティアーの真の姿の写し身が、ガラスの道に切られた場所を全て断ち割るかの如くその血に突き刺さった。
そしてこれも当然黄金と化すがやはりその質量は変わらず、アリスティアーを手に黒薔薇をはぎ取った場所にある花を全てその身で叩き潰した。
「おいたはいけないねプリンセス・シンデレラ」
宙を舞うラモーナの後ろに彼女を称えるように堂々と聳える黄金の剣。それを見たシンデレラは、やはり怒りと嫉妬に燃えてラモーナを睨む。
「この花だって私が植えたのに……どうしてそれがあなたを飾るの!? 私から全てを奪うの!?」
全てを黄金に変えるオウガの花、それを逆用されたことに怒るシンデレラ。それをたしなめつつも、王子様は決してもう一人のプリンセスを蔑ろにはしない。
「それに君にはそんな怖い顔より笑顔が似合うと思うのだが……どうだろう?」
優しく言うその声だが、表情を持たないアリスティアーの本意は読みがたい。それは挑発か、あるいは報われぬプリンセスへ王子様が手を差し伸べたのか。散らばる鏡は何も映しはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
マルグレーテ・エストリゼン
最初からUCを発動、飛行してラモーナの下へと向かう
敵対者のごとく、黒い花弁を舞い散らして……だがその中に薔薇の花は無い
彼女の近くにいる敵をグレイヴで薙ぎ払い、こう言ってやるのだ
「安心しろ、私もプリンセスだ」
「…ただし、闇の世界のだがな」
自嘲的に笑う
「しかし、今は君を助けよう。たとえ望まれなくとも」
そう……私は
自身の力を生きる事に窮した弱者を救うために使うと決めたのだ
たとえそれが、オブリビオンの力だとしても
生まれ落ちた境遇に満足せず
生き方を自分で決めると誓ったのだから!
黒いハートを質量兵器として次々と放ち、敵を殲滅する!
立ち位置はラモーナを庇える位置だ
攻撃は【オーラ防御】で防ぐぞ
地には黒薔薇と黄金化が咲き、空からは赤い薔薇が降る不思議の国。花同士がせめぎ合うその地に、また別の色の花が降り注いだ。
「え……」
その花を見た時、赤い薔薇を降らすプリンセス、ラモーナの顔が引きつる。そこに振って来た花は、まるで地を覆う薔薇の中まであるかのように真っ黒であったのだ。
その黒い花を降らせている少女が、黒薔薇の消えた場所の上を飛んでやって来た。それはまるで枯らされた黒薔薇を補填しているかのような動き。
敵の新手か。だが逃げようにも、迂闊に動けば残る黄金花の匂いと魔力に囚われ自身も黄金像と化してしまう。
進退窮まるラモーナ。だが現れた女は、一度地面すれすれまで高度を下げると銀のグレイブで地に蔓延る黄金花をなぎ払った。
「安心しろ、私もプリンセスだ」
周囲の安全を確保した少女は、再びラモーナと同じ高さまで浮き上がり彼女に声をかけた。彼女の名はマルグレーテ・エストリゼン(ダークプリンセス・f23705)。散らしていた花弁は彼女の【ドレスアップ・プリンセス】によるもの。よく見ればその花は確かに黒いが、その中に薔薇の花はない。
「……ただし、闇の世界のだがな」
自虐的にそう笑う彼女の足元からは、その言葉を肯定するように黒い花弁が舞い散り続ける。
「しかし、今は君を助けよう。たとえ望まれなくとも」
そう言って、マルグレーテは黄金花、そしてその向こうにいるシンデレラへと向き合った。
「この世界のお姫様は私なの……お花なら私を飾って!」
プリンセスを名乗る者のさらなる登場に、シンデレラは嫉妬と怒りをあらわにする。その意思に応えるかのように地に黒薔薇が満ちていくが、その黒薔薇は上から降る赤薔薇にすぐに枯らされた。
「ありがとう……私も、できることはする」
彼女の自虐を否定するように花弁を撒くラモーナ。それを背に、マルグレーテもまた自らの力でできることをなそうとする。
「そう……私は、自身の力を生きる事に窮した弱者を救うために使うと決めたのだ。たとえそれが、オブリビオンの力だとしても」
手の中に黒いハートが現れ脈動する。『ダークプリンセス・ブラックハート』、マルグレーテの呪力を物質化させた黒いプリンセスハート。恐るべき力の下に生まれ、残酷な運命の中育てられた彼女に宿された禍々しい力の結晶。
なれど、その力をどう使うかは自分で決められる。
「生まれ落ちた境遇に満足せず生き方を自分で決めると誓ったのだから!」
黒いハートから溢れ出した呪いが黄金花を押し潰した。黒い呪力が金へと変えられていくが、その後ろから次々と溢れ出す黒がその金諸共黄金花を飲み込んでいく。
ラモーナより少し低い場所、下からの攻撃や黄金花の放つ香りや魔力からラモーナを庇える位置に浮遊し、そこでオーラの壁を張って彼女を守りながらマルグレーテは黒いハートを次々と放った。戦意に応じて増す質量が黄金花を潰し、散らしていく。例え金に変えられても、その質量が巨大ならそれを押し付ければ花をすり潰すことは容易い。
「私だって、自分の力で頑張った……なのに、どうして! 私とあなたの何が違うの!」
黒い姫が黒い姫を糾弾する。だがその声に応えるはずの黒薔薇は、結局は赤い薔薇に散らされる。あるいは後ろにそれを背負う意思、決意こそが二つの黒の運命を分けたものなのかもしれない。
運命を切り開く姫の黒き花が、運命を待った姫の黒薔薇の世界に気高く舞い散っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ホーク・スターゲイザー
ジェイクと行動
アドリブOK
「さてあれらをどうするか」
近づかづに一掃する方法を模索。
取り出したのは山羊の角の付いた全身漆黒の甲冑姿の黒騎士の描かれた悪魔のタロットカード。
「シヴァかこれか……」
距離を取って燃やし尽くすならどちらかと考える。
前者はこの光景を観て全て焼き尽くして再生させると言い出す可能性がある。
「デビル、そっちはまだ呼び出したことが無い」
炎を使う以外は一切未知の存在故に迷うらしい。
シヴァを呼び出す事にする。彫像となった者達に関しては何とか説得すると話す。
「我を呼んだか、我が信徒よ」
第三の目から破壊光線を撃ち出す前に頼む。
「彫像は破壊しないでほしい」
ジェイク・リー
ホークと行動
アドリブOK
結界術による防衛役を行う。
「また会うとはな」
離れない様に指示し、黄金花対策を任せることに。
「深くは聞かんが言えるのはある。今ある危険から護る約束は出来る」
安心させるために思いついた言葉を言う。ホークも見て頷く。
「あの黄金花、どうする?」
シヴァとデビルに迷うホークに両者の能力を聞く。
「なら呼び出した方を選べばいい」
知っている方なら多少の信頼もあると判断して答える。
「元に戻せる可能性があるなら破壊は止めてくれ」
元凶討ってどうなるか、それを見届けてからでもとシヴァに話を試みる。
猟兵の活躍により、黒薔薇の枯れた下から出てきた黄金花は駆逐され、その下の地面が道のように露出していた。あと少し、黒の下から現れる金を排除すれば嫉妬の姫への道が通じる。
そのために必要なプリンセスを守るように、結界の幕が黄金に誘う甘い匂いを遮った。
「また会うとはな」
それを作ったジェイク・リー(終極の竜器使い・f24231)は頭上を舞うラモーナを見上げそう言った。彼女が力なき放浪者として初めて予知にかかった時にその道行を助けた彼の登場に、ラモーナも頷いて答える。
「深くは聞かんが言えるのはある。今ある危険から護る約束は出来る。とにかく離れず、黒い花を枯らすことに専念しろ」
そして彼女が今も戦う力をまるで持たないのは変わりない。一方でその心の芯にある強さも知っているジェイクは、彼女を安心させる言葉を選びつつそう言って己にしかできないことに専念させる。そしてそれ以外の危険から守るべく、目の前に広がる黄金花を改めて見渡した。
「さてあれらをどうするか」
ジェイクの言葉に共に頷いたホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)も黄金花を見て、近づかずにそれらを一掃する手段を模索する。彼もジェイクと共に少し前ラモーナを守護したことのある者、彼女のか弱さはよく分かっていた。
そして彼には取るべき手段の一応の当てはある。その内の一つである山羊の角の付いた全身漆黒の甲冑姿の黒騎士の描かれた悪魔のタロットカード。
「シヴァかこれか……」
堕落、誘惑を示すあまり良いとは言えないそのカードと共に考えるのは、インドの最高神の一体である破壊神。こちらは尊き神ではあるが、齎す破壊の範囲は深く広い。
「あの黄金花、どうする?」
基本的には破壊することには変わりない。それだけならば強ければ何でもいいとも言えるが、完全な制御下にない存在を呼び出すとなれば慎重にもなる。
「シヴァはこの光景を観て全て焼き尽くして再生させると言い出す可能性がある。デビル、そっちはまだ呼び出したことが無い」
ホーク自身炎を使うとしかデビルの情報を知らない。何しろこのタロットを持つきっかけになった者すら、己が召喚しながらその素性を知らぬ者なのだ。タロットの意味を考えればその炎が比喩的表現の可能性すらもあり、そしてそれはむしろ敵対者であるシンデレラの方に通じてしまう意味も持つ。
「なら呼び出した方を選べばいい」
知っている方なら多少の信頼もある。その言葉に、ホークも彼を召喚することを決めた。そして、彼を呼んだ時に懸念される一つの大きな問題についても必ず対策せねばとも。
「我を呼んだか、我が信徒よ」
三つ目の魔人、破壊神シヴァ。まさにそれそのものの見た目を持つ存在が威圧的に告げる。目的は黄金花の殲滅。だが、一つ必ず聞き入れて欲しい願いがあった。
「彫像は破壊しないでほしい」
この世界に黄金花と共に散らばる黄金の彫像。それはただの像ではない。この世界の本来の住人達が、花の力によって姿を変えられてしまったものなのだ。侵略を受け、姫を称える黄金像へと無理矢理変えられてしまった哀れな犠牲者たち。彼らを破壊してしまっては嫉妬の姫、そして力の元であったエンデリカと結局は齎す結末は変わらないと、ホークはシヴァに懇願した。
「元に戻せる可能性があるなら破壊は止めてくれ」
状態変化は可逆、不可逆など様々な種類がある。花を駆逐し、それを連れてきたシンデレラを倒すまで結論を出すのは早い。ジェイクもそうシヴァに言い添える。
一番まずいのは戻すことができてそれに構わずシヴァが破壊ししていまい、かつその事実をラモーナに知られてしまうこと。助けられる者を助けられないばかりか、守るべき者、そして猟兵にもできぬ役割を担う者に恐怖や不信を植え付けてはならない。それは前回の彼女との道行でもとみに気を付けた部分だ。
その言葉に直接答えることはなく、シヴァは第三の目から破壊光線を放った。光線は光という特性ゆえか黄金に変えられることなく、その花たちを焼き払っていく。そしてその光が晴れた後には。
「……感謝する」
絶望の表情で手を差し伸べる多数の黄金像の姿が。
「やるか」
その黄金像にシンデレラが何かする前にと、ジェイクとホークはラモーナを伴い一気に前進していく。そのまま黒をかき分け突っ切る道の先にあるのは、嫉妬の目で猟兵とプリンセスを睨む黒き姫の姿――
大成功
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第2章 ボス戦
『『七罪』嫉妬のシンデレラ』
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POW : シンデレラ・ストーリー(シンデレラの物語)
【理想とする美しさと強さを備えたプリンセス】に変身し、武器「【全てを破壊し、全てを防ぐガラスの靴】」の威力増強と、【無敵の美しさと魔法の加護を得る魔法ドレス】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD : 戦略級空中機動要塞・パンプキンフォートレス
自身が操縦する【超重火力のカボチャ型空中機動要塞】の【45cmカノン砲、多連装ミサイルの威力】と【対物理・魔法装甲及び対電子プロテクト】を増強する。
WIZ : 常時発動型UC『恵まれし者達への嫉妬』
【嫉妬の闇の魔力を纏った自身の肉体や武器】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、嫉妬の闇の魔力を纏った自身の肉体や武器から何度でも発動できる。
イラスト:ミタビツカサ
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フレミア・レイブラッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒薔薇は枯れ、周囲の黄金花を全て散らされて、ついに引いていくことを諦めたのか黒いドレスの少女が足を広げて不思議の国に立つ。
「ねえ、どうして? どうしてあなたはそんなに何人も魔法使いや王子様がいるの? 一人くらい私に分けてくれたっていいじゃない」
怒りと嫉妬、そして哀願を込めた目で搾りだすようにいう黒い姫。
「私の方がずっと長くここにいた。ずっとたくさん頑張って来た。なのに、どうして私には何もないの? 誰も来ないの?」
「私に言われたって分からないよ。別にあなたをどうしたいとか思わないし、私をここから出してくれればそれでいい」
一方的な恨み言を、赤い姫は知らぬとばかりに突っぱねる。だが、相手の言葉に聞く耳を持たないのはシンデレラも同じ。
「でもね、もういいの。魔法は自分の手で作り出すの! みんなを私に平伏させて、そうすれば、私はきっとお姫様になれる!」
手の中に杖を呼び出しそれを振り上げると、一度枯れたはずの地に再び黒薔薇が蔓延る。
「馬車も、ガラスの靴も、ドレスも! 王子様の手だって、私は自分で作り出す! 私はお姫様になるの!」
その宣言通り、魔法の力が彼女を取り巻き破壊の力となる。
努力の果てに得たのがこの力だというなら、それは何のための努力だったのだろうか。自分よりずっと力のないはずの姫にすら嫉妬を向ける、その心が求めたものは。
だがそれが何であれ、今の彼女はその力を無関係な不思議の国にまき散らし、己の道を行く別の姫を阻む恐るべき厄災、罪人でしかない。
猟兵よ、嫉妬に飲み込まれたシンデレラに12時の鐘を鳴らしてやれ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
斯様な戯言は、聞く必要も有りませんねぇ。
お守りしますので、ラモーナさんは薔薇への対処を。
『FAS』により飛行、【接穣】を発動し『祭器』全てを超強化すると共に『即時修復能力』を付与しますねぇ。
更に『FMS』のバリアで包囲し離脱を阻害、『FSS』のシールドと『FGS』の重力結界で私とラモーナさんの守りを固めますぅ。
そして『FRS』『FBS』は周囲、『FDS』は上に配置し、包囲攻撃を仕掛けましょう。
『靴』による防御は足を使う関係上、複数方向からの同時攻撃は防ぎ辛いですし、『F●S』が破壊されても『即時修復』が可能ですぅ。
後は『ドレスの加護』が破れるまで、攻撃を繰返しますねぇ。
ついに手ずから意に添わぬ者を排除せんとする『七罪』嫉妬のシンデレラ。彼女にとってはその嫉妬は命を懸けるに値する者なのかもしれないが、巻き込まれた者にとっては意味の分からない八つ当たりでしかない。
「斯様な戯言は、聞く必要も有りませんねぇ」
だから、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は彼女の言に聞く耳を持たず、ただ戦いのための指示を出す。
「お守りしますので、ラモーナさんは薔薇への対処を」
その言葉に従いラモーナが浮き上がると、るこるもまたともに浮き上がり彼女を庇える位置につく。
「大いなる豊饒の女神、豊かなる器を今一度、新しき力へとお導き下さい」
そこから【豊乳女神の加護・接穣】を発動、装備する兵装と自身をリンクさせることで双方の強化を図った。
「私にドレスをくれない魔法使いなんていらない……私は、お姫様になるの!」
その強化をまるで自分を見捨てた魔法使いに見立てるかのように、怒りをあらわにしながらシンデレラは杖を振る。そうすれば彼女の体は黒と白の豪華なドレスに包まれ、足元の靴は美しいガラスの靴へと変じた。この魔法の力もまた、魔法使いが来ない彼女が自ら編み出した『お姫様』への変身魔法だろうか。
その姿で自らも浮き上がり、るこると同じ高さまで上がるシンデレラ。その前にはるこるが浮遊盾を配置して自分とラモーナをかばっている。
「私より上に、上がらないで!」
ドレスをはためかせて足を出し、シンデレラはその盾を蹴り飛ばす。その細足と靴の繊細なデザインからは想像もつかない威力のその蹴りは、たったの一撃で盾の一枚を叩き壊した。
だが、壊れた盾はすぐに元に戻る。【豊乳女神の加護・接穣】の効果の一つは壊された装備の即時修復。その効果で修復された盾を、シンデレラは何度も蹴りつける。
「報われないのは慣れてるの……だから私は、お姫様になるまで何度だって……!」
一蹴りごとに砕け散る盾は蹴りの威力を物語るが、その都度壊れた盾は何度でも治る。そしてるこるは守っているだけではない。攻撃能力のある兵器を纏めてシンデレラにけしかけ、彼女を叩き落とそうとした。
「自分の身は自分で守れる……守れるようになっちゃったの!」
飛来した戦輪を片足で蹴り落とし、さらにその衝撃で飛んできた砲弾を防ぐ。同時に頭上で爆発が起こるが、その爆風は勢いよく回転して回し蹴りを放ち、その旋風でなぎ払った。
お姫様という言葉を否定するような荒々しい戦い方。もしかしたらそれこそが彼女の本来の持ち味、才能だったのかもしれない。だが、彼女はお姫様という言葉にすがり、そうなるために報われぬ努力を重ねた。自分が見えていなかった、それこそが彼女の過ちであり悲劇だったのだろうか。
だが、それがどうであれ今のシンデレラが倒すべきオウガであることは変わらない。るこるは防がれ、壊されようと次々と兵装を差し向け、シンデレラを攻めたてる。
それを次々蹴り落とすが、守ってばかりでは相手を倒すことができないのはシンデレラとて分かっている。ならばと攻めにかかりたいが、その為にはまず前の盾を壊さねばならない。そして盾自体は壊せてもその間に攻撃は来るし、そちらを防げば盾が直ってしまう。
手が……もとい足が足りないこの状況。それを埋める手段はあった。眠りの黒薔薇、猟兵でも対処できないそれがあれば、相手が何人いてどう攻めてこようと自分の国、『お姫様』の地位は安泰のはずだった。だが、それも見知らぬ『お姫様』が自分の色に塗り替えてくる。
「なんで……どうして……」
どうあがいても報われぬ苛立ち。とにかく一旦仕切り直そう。そう思い後ろに下がった体は、しかし強い衝撃に跳ね飛ばされた。
「何……!?」
後ろに張られていたのはバリアを張る円盤『FMS』。シンデレラは黄金花が前にあった時、ラモーナや猟兵に恨み言を言いつつもその後ろに下がっていった。戦略的撤退を選ぶことは躊躇ない彼女のその性質を鑑み、るこるは兵装の一つは退路封鎖に浸かっていたのだ。
弾かれたことによる一瞬の躊躇、そこに一気に攻撃用兵装が迫る。
「あっ……!」
とっさにそれを防ごうとするが、一瞬の遅れで全てを対処することは出来ない。救いを求める手の代わりに差し伸べた、自ら攻撃を防ぐ足。それを乗り越えた攻撃が、シンデレラの体に叩きつけられた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴を上げながら薔薇のない地面へ落ちていくシンデレラ。その姿を見下ろす二人の目に何の感情があるかは、遠い地上からは窺うことはできなかった。
大成功
🔵🔵🔵
マルグレーテ・エストリゼン
まず哀れみをもって話しかける
「哀れな。自分自身を苦しめている自覚はあるのか?」
「汝は望みが叶わなかったと知った時、その望みは諦めて前向きに生きようとするべきだったのだ。
だが汝は、失敗にいつまでも執着し続けることを選んだ。自分自身の手でな」
「もはや取り返しはつくまい。かくなる上は……来たれ、我が蛇竜騎士!
この者に骸の海での、しばしの安寧を与え給え!」
蛇竜と騎士を召喚し戦わせる
向こうが対抗して召喚してきた場合はある程度戦わせて解除
花符ガーベラツイスターから呪殺弾の弾幕を発して牽制、同時に死霊銃兵に本体を狙い撃たせる
この術は本体が傷を負うと解除される…広範囲・遠距離の攻撃法には弱いはずだ
敵を前に怒りの表情を隠さないシンデレラ。それ自体は不自然なことではないが、その表情はどことなく辛そうにも見える。
その表情に、マルグレーテ・エストリゼン(ダークプリンセス・f23705)が哀れみを持って話しかけた。
「哀れな。自分自身を苦しめている自覚はあるのか?」
報われぬ努力、届かない理想。それに縋り続けて自分を追い込んでいるシンデレラ。その言葉に、シンデレラはやはり怒りの声で返す。
「頑張るのは大変な事、そんなの当り前よ。それでも私の望みは叶わなかった……それを羨むくらいいいじゃない!」
それを一人でやっているなら、あるいはそれでも良かったのかもしれない。だが彼女は自分の苦しみを周囲に撒き散らし、そしてそれでいてなお自分で自分を追い詰め続ける存在となってしまった。
「汝は望みが叶わなかったと知った時、その望みは諦めて前向きに生きようとするべきだったのだ。だが汝は、失敗にいつまでも執着し続けることを選んだ。自分自身の手でな」
努力が必ず報われるとは限らない。それは誰しもに通じる厳しい現実。だからこそ、そこには諦めるという道が常に用意されている。そしてその先で新たな道に向かい別の努力をしていくこともできる。しかし、希望や執念は時にそれを潰す毒ともなり得る。
「簡単に言わないで。私がどれだけ頑張ったか……辛い思いをしたか……お姫様になるのを諦めたら、私は私でなくなってしまうの!」
どういわれても、シンデレラは己の努力と『お姫様』に縋りつくのを辞めない。それはオウガとなった故の思考の固着か、あるいは過去の自分を否定しきれない自己防衛か。
「もはや取り返しはつくまい。かくなる上は……来たれ、我が蛇竜騎士! この者に骸の海での、しばしの安寧を与え給え!」
彼女が現世にある限り自分で自分を追い詰め続けるなら、例え骸の海に返し手でもその軛から解き放とう。その命を受けた騎士と蛇竜が、武器と牙を露にシンデレラに攻めかかる。
その攻撃を、シンデレラは武器を武器で留め、牙はその白肌にあえて突き立てさせることで受け止めた。
「私はお姫様なのよ……あなただけが騎士を従えるなんて許せない! 従者たちよ、私の為に戦って!」
その声に応えるように現れるのは、マルグレーテが呼び出したものと寸分たがわぬ騎士と蛇竜。持てる相手を羨む嫉妬の心が自身の力を相手と同じ場所まで引き上げる。本来ならば努力の原動力となるだろうその心は、しかし決して彼女を先に進ませることはない。
呼び出された従者たちが撃ち合うが、コピーである故にその実力は互角。あるいはシンデレラがボス級オウガということを考えれば、もしかしたらそちらにすら分があるかもしれない。それを示すように、マルグレーテ側の騎士は徐々に武器を下げ、蛇竜も体に傷が増えていく。
そして一気に仕留めんとコピーたちが大きく踏み込み大口を開けた瞬間、マルグレーテは自らユーベルコードを解除した。狙いを失った攻撃が空振り、二体は大きく体勢を崩す。
「私はただ守られているだけの姫ではない。もっとも、それは汝も同じだろうがな」
マルグレーテは花符「ガーベラツイスター」を前面に展開、それをシンデレラへ向けて一気に打ち出した。
その攻撃は召喚された者たちの脇を通り、シンデレラへと襲い掛かった。だがシンデレラも自ら杖を振るいその多数の火球を打ち払う。
「私は……この世界で、ずっと……!」
懸命に、文字通りに振り払うように杖を振り回すシンデレラ。だがその眼前で、彼女の勅命を受けたはずの従者は突如として消え失せた。
「この術は本体が傷を負うと解除される……広範囲・遠距離の攻撃法には弱いはずだ」
同時に呼び出した『死霊銃兵』たちの射撃。火球に紛れて撃たせたそれがシンデレラの肌を穿っていた。そして【リザレクト・オブリビオン】は術者が僅かでも負傷すれば召喚された者は消える。自分のユーベルコードなのだから、その弱点や苦手な間合いはマルグレーテ自身が誰よりも分かっていた。
シンデレラの能力は近接戦強化や受けた技のコピーなど自身の負傷をある程度許容するものが多い。それ故、完全無傷を前提とする技を使いこなすことは難しいのではないか。その予想通り、コピーしたユーベルコードの弱点を突かれ彼女は守りを剥がれるに至った。
「少し休んで、新たな道を見つけるといい」
守られ、担がれる姫よりも、もっと似合いの生き方が彼女にはあるのかもしれない。与えられた道を拒絶し愛と自由を得たダークプリンセスはもう一人の黒き姫もまたそうあれと、赤き弾幕で彼女を包むのであった。
成功
🔵🔵🔴
ジェイク・リー
ホークと行動
絡み・アドリブOK
助ける理由について聞かれるとこう答える。
「漫画の受け売りだが頭から足先まで一本の柱があってな」
自分を支える柱、魂。見捨てればそれが折れると。
「俺もあいつもお前を助ける為にここに来た。この先進む方向は分らんが何かあったら駆けつけてやるよ」
黒銀の滅牙を抜き、攻撃するタイミングを伺う。
飛んでくるミサイルを軽業とジャンプで足場にして接近を試みる。
「平伏させようとする時点で終わりだな」
ホーク・スターゲイザー
ジェイクと行動
絡み・アドリブOK
シヴァに加えて香寿郎、バルガ、レヴェリーを呼び出す。
「者達の心願に答えただけ。心願こそ我が力」
花の件の話をした後に守護に特化した女神の話をする。
呼び出したのは紅い長髪に白狐の耳と尻尾を生やしスカート丈の短い白地に赤を基調としたワンピース姿のグラマーな女神が現れる。
「我が名はレオーナ、神盾を持って護らん!」
不可侵の護りで味方をカバーしつつガラス片の物体を展開して攻撃にも参加。
タワーのカードから巨人を呼び出し抑え込ませ一斉攻撃を行う。
「忌むべき悪よ、滅びの時来たれり」
「俺は俺の責務を全うする!」
「大鎌オルクス! 過ぎ去りし獣の血を啜り刃と成せ!」
「颶風よ破滅を!」
ラモーナとシンデレラの力の差は天と地ほどにある。本気で殺しにかかればラモーナの命など瞬く間に散らされ、赤い花弁の代わりに血を黒薔薇の上にまき散らすこととなるはずであった。
だが、実際にはそうはなっていない。次々と彼女を助けるものが現れ、それを阻んだからだ。
「どうして、そっちにばかり魔法使いが来るの? 私が一人で何でもできるから? 頑張った人ほど助はいらないって言うの!?」
怒りと嫉妬にまみれたシンデレラにその答えは分からない。だが、猟兵が如何なるものか確とは知らないラモーナも、何故自分をこんなにも助けてくれるのか、それは有り難く感じながらも疑問に思う所ではあった。
「どうして、そんなに何度も私を助けてくれるの?」
感謝しているからこそ、それを疑問に思う。それにジェイク・リー(終極の竜器使い・f24231)は、あえて自らの言葉を用いずに答えた。
「漫画の受け売りだが頭から足先まで一本の柱があってな」
自分を支える柱、魂。見捨てればそれが折れると。本来戦いとは無縁であったろうラモーナには、経験から来る真に迫りすぎた言葉よりもフィクションからの引用が伝わりやすかろうと選んだ言葉。
「漫画……読むんだ……」
険しい男の意外な一面に驚きつつも、助けることが己の矜持に繋がるということはラモーナにも理解できた。
そしてもう一人、破壊の力を持って黄金花だけを払った畏怖すべき神にも。
「者達の心願に答えただけ。心願こそ我が力」
ホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)の呼び出した破壊神シヴァが堂々とそう答えた。信徒なくして神は存在できない。斧が新星と合致する正しき願いに力を用いるのは、神の義務であり存在理由だと、破壊神はそう告げた。
そしてその周りには若き剣士、堂々たる巨漢、レオタード姿の女もいつの間にか現れていた。
「香寿郎、バルガ、レヴェリー。安心しろ、皆味方だ。だがあの黒い花を散らすことはこの誰にもできない。故に、それができる君を守るための女神を呼ぼう」
そう言って呼び出したのは、紅い長髪に白狐の耳と尻尾を生やし、スカート丈の短い白地に赤を基調としたワンピース姿のグラマーな女神。
「我が名はレオーナ、神盾を持って護らん!」
周囲にガラス片を撒き相手を傷つける守りとしながら、不可侵の守りをラモーナの前に敷く。
「次々と新しいのを呼んで……私にだって、馬車はあるの! 自分で作った、南瓜の馬車が! 私はこれで、お城に行って見せる!」
シンデレラが杖を振り上げると、カボチャ型空中機動要塞【パンプキン・フォートレス】が不思議の国の上空を覆い現れた。その圧倒的な存在感は姫を運ぶ馬車などでは到底なく、むしろ城を攻め落とし国や王子を滅ぼすための兵器。逞しくなりすぎた姫は、嫁ぐ国すら自分で破壊するほどの力を持ってしまったというのか。
いかに人数がいようと、宙を飛ぶ要塞と比べれば小物と言わざるを得ない。すでに五人召喚し制御に限界も近いが、ホークはさらにもう一枚タロットカードを取り出す。
「抑え込んでくれ、タワー!」
破滅のカードである塔を掲げ、正に塔の如き巨人を呼び出す。タワーはパンプキン・フォートレスと正面から組み合い抑え込もうとするが、45cmカノン砲がその体に炸裂し易々とはそれを許さない。
「地面にいるのもなぎ払うのよ! 私の障害になるものを焼き払って!」
シンデレラの命に応え、多連装ミサイルが地表にいる者たちに一斉に襲い掛かった。
「忌むべき悪よ、滅びの時来たれり」
「俺は俺の責務を全うする!」
「大鎌オルクス! 過ぎ去りし獣の血を啜り刃と成せ!」
「颶風よ破滅を!」
呼び出された者たちはめいめいにそのミサイルを対処していく。破壊の光がミサイルを消し飛ばし、分厚い巨体が真正面から爆発を受け止める。鋭い太刀が爆破させることなくミサイルを両断し、リボンが回転し起こった風が向かってくるミサイルを跳ね返した。
その後ろで彼らの維持、制御にホークは全力を注ぐ。これだけの力のあるものを六人、その負担は並ではない。そしてその力に一歩も引かぬシンデレラの姿は、やはり守られ、もてはやされる姫よりも先頭に立ち戦火を駆ける凛々しき将と呼んだ方がよほど似合いであった。
姫たらんとする努力が、皮肉にも彼女を姫から遠ざけている。その姫将軍の式の元放たれた次のミサイルを、ジェイクは蹴って跳んだ。
黒銀の滅牙を抜き、今こそというタイミングで切り込む。呼ばれた者たちの徹底抗戦と守りの間に見切ったそこを突くは、将の首を狙う一太刀。
「平伏させようとする時点で終わりだな」
お姫様ならではの傲慢、それは童話の世界では往々にして悪とされ断罪されるもの。そしてまた、有能な将であるほど取られた時の被害は甚大となる。
ジェイクは一太刀、黒きドレスを纏う姫将の身を切り裂いた。
「いやっ……私、は……!」
ダメージによって制御が崩れ、ついにタワーがパンプキン・フォートレスを完全に抑え込み、香寿郎たちがそれぞれにその砲や装甲を破壊していく。
とても自分の入る余地などない激戦。ただ花弁を撒くだけのラモーナは、やはりこの世界は自分とは隔絶されたものだと僅かに怖じる。
だがこのアリスラビリンス、そして数多の世界にいる者と同じ様に、既に彼女も運命に絡めとられてしまった。最早彼女もただの背景ではいられないのだ。
「俺もあいつもお前を助ける為にここに来た。この先進む方向は分らんが何かあったら駆けつけてやるよ」
先へ進むのを阻むその運命の糸を何度でも切りにこよう。爆炎と破壊の中より戻った男は、英霊を繰る男と並び彼女にそう告げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW
死霊術の独学に励んでいた頃の私と同じね……
初めて戦った時以上に救わずに居られないわ
ラモーナに【迷彩】魔法をかけ安全確保。
理想の美しさと強さを得る変身も
愛欲に比例して強くなる『欲望解放』で逆効果。
守護霊の【ドーピング】で更に強化し
最大11600km/hの【空中戦・残像・見切り】で攻撃を避け
【怪力・捕縛】の抱擁と密着でガラスの靴での攻撃・防御を封じ
【吸血】しつつ媚毒の【呪詛】を体内に直接注ぎ
魔法ドレスの加護も無視して魅了し【慰め・生命力吸収】
たった一人でよく頑張ったわね。
私は貴女を攫いに来た悪い魔女だけど
王子様よりもずっと貴女を幸せにしてみせるわ
貴女の全てを見せて
隅々まで愛させて
自分を追い込みながら、妄執とも言える執念を持って報われぬ努力を重ね続けるシンデレラ。その姿を、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は痛ましげに見つめる。
「死霊術の独学に励んでいた頃の私と同じね……初めて戦った時以上に救わずに居られないわ」
以前はゆりかごの中、ある少女が絶望と嫉妬に食い尽くされた姿として現れたシンデレラ。そして今回は、お姫様になりたいという執着のため努力を続け、その果てに臨み叶わず嫉妬に狂う形でここに現れた。
その彼女を嫉妬の鎖から解き放つべく、ドゥルールは自らの服に手をかける。
「ありのままの私を見せてあげる!」
裸体となり、【欲望解放】で宙を舞うドゥルール。その時撒き散らされた月下香の花弁が、ラモーナの降らす赤い花弁と混ざって視界を乱し彼女の姿を覆い隠した。
花弁に囲まれた世界で、疑似的にシンデレラと二人きりとなったドゥルール。だがそれは視線と嫉妬を一身に受けるということでもある。
「ドレスなんていらないって言いたいの? 私はずっとそれが欲しかったのに!」
シンデレラの衣装がより大きく、豪華になり、無敵の強さと美しさを齎す黒いドレスへと変わる。そのドレスの力でシンデレラは浮き上がり、ドゥルールの速さに同側で追いすがった。
スカートを翻し、ガラスの靴を履いた足を振り上げ蹴りを放つシンデレラ。全てを破壊するその蹴りをギリギリで見切り避けるが、その為に注視したシンデレラの白い脚にドゥルールの愛欲は高まる。愛欲に比例して強くなる効果を得たドゥルールにとって、今のシンデレラの強さと美しさは自分を強化する糧でしかない。
次々に繰り出される蹴り技と、その度に露になる脚。重厚なドレス姿とその戦い方のギャップに愛欲を滾らせながら己の強化を続けるドゥルールに、シンデレラは焦れていく。
「そんなずっと避けてばかりで、私を馬鹿にしているの? 無駄な努力を続けた馬鹿な女だって!」
言われてもいないことを自分で言って勝手に怒るシンデレラ。欲しいものを得られなかった努力が徒労であると認めたくない心が、その言葉となって吐き出されているのだろう。
その美しくも痛ましい空中戦を存分に堪能したドゥルールは、何度目かの蹴りを外したところで一気に近寄りシンデレラを抱きすくめた。
「くっ……!」
もがくシンデレラだが、武器となるガラスの靴による破壊や防御は足先に集中している。密着状態で上半身を抑え込まれてしまえばその力は発揮できない。
そしてもう一つの力の源であるドレスから露出している首筋に、ドゥルールは自らの牙を突き立てそこから血を吸い上げ、代わりに呪詛を注ぎ込む。
「たった一人でよく頑張ったわね。私は貴女を攫いに来た悪い魔女だけど、王子様よりもずっと貴女を幸せにしてみせるわ」
注ぎ込むのは魅了の呪詛。だがそれ以上に、たった一言の言葉が何よりも彼女の心を蕩かしていく。
「そうよ……私、頑張ったの……」
装備によって強化されているシンデレラは、その装備がない場所の守りは脆い。そして最も彼女が脆いのは、お姫様への執着とそのための努力で塗り固めた中のその心だったのかもしれない。
「貴女の全てを見せて。隅々まで愛させて」
一番欲しかった言葉を聞かされたシンデレラは、力の差以上に抵抗を弱めその生命力を吸われていく。ドゥルールはその代わりのように、彼女が欲しかった言葉をその身に流し込んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリスティアー・ツーハンドソード
お姫様になるか…きっとそれは本当の望みじゃない
自分で言っているじゃないか「魔法が解けても幸せに暮らす」と
そう呼び掛けつつ
サニティクロスとウイニング・イマジネーションを使ってラモーナを強化
キミが諦めなければ負けることはないと【鼓舞】し詠唱の時間を稼いでもらう
充分に詠唱を終えたら選択UCの浄化の力でシンデレラの嫉妬心と闇の魔力を削ぎ落とす
これは相手を救うための力、ゆえに模倣を恐れることはない
効果が見えたなら真の姿で王子の姿を出しシンデレラにハートスイーツ・パティシエイションのお菓子を手渡そう
今は難しいかもしれないが嫉妬の装飾を全て外せたならまたおいで
絵本のページを捲るような驚きと喜びを約束しよう
「私は、この世界で、お姫様に……」
既に満身創痍となり、虚ろに呟くシンデレラ。その力が枯渇していることを示すように黒薔薇の繁茂する速度は鈍り、最早地は赤い花弁の方に覆われつつあった。
その状態でなお漏らす虚ろな望みに、ラモーナが……否、彼女の手にある両手剣が答えた。
「お姫様になるか……きっとそれは本当の望みじゃない。自分で言っているじゃないか「魔法が解けても幸せに暮らす」と」
もしあれば首を横に振りながら言っていただろう言葉。アリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)は、ラモーナの手の中からシンデレラに語り掛ける。魔法が解けたシンデレラは元の灰かぶり娘に戻る。それでも幸せに暮らすため、本当はその為に彼女は努力を重ねていたのではないか。魔法で飾ったお姫様ではなく、幸せをつかむ力を持った気高い灰かぶり、それこそが彼女が最初に目指したものなのではないか。シンデレラが幾度となく口走った言葉から、アリスティアーはそう考えていた。
なれど、既にオウガと化した彼女はどうしたって滅びを振りまかずにはいられない。自分を手にするもう一人の姫を守るため、アリスティアーはラモーナの赤いドレスの上にアリスクロス『サニティクロス』を纏わせる。
「心を強く持って。キミの一番大きな力はその意志の強さだ。先に進む勝利を疑っちゃいけない。キミが諦めなければ負けることはない」
その鼓舞はただの励ましではない。勝利を想像し続ける限りその身に一流の戦士の如き力を与える革命の魔法『ウイニング・イマジネーション』。己を持った者にしか使わせられない極めて限定的な力だが、弱い力と強い心を持ったプリンセスの手にある今こそこの魔法が全力を発揮できる時。
「諦めなければ負けないなら……私が、一番負けないはずなのに!」
黒い姫は自ら作った美しい黒いドレスをはためかせ、王子様にオーバードレスを与えられた赤いドレスの姫に杖を構えて殴り掛かる。例え強化されていなくともそれは力ない姫に躱せるものでは到底ないが、ラモーナはまるで歴戦の戦士の如くその動きを見据え、身をかわした。
「死にたくない……死にたくないの……」
小世界をさまよう姫の、たった一つの願い。その脱出という勝利を願う心は王子に与えられた魔法の力となり、本来到底抗しえぬはずのシンデレラの攻撃をかわす身体能力を彼女に与えていた。
「私だって、魔法をかけられたかった、王子様に見つけられたかった、なのに、なのに……!」
目の前で自分の欲しかったものをひけらかす……少なくとも彼女にはそう見える相手に幾度となく殴りかかるシンデレラ。それをラモーナは与えられた力で躱し、捌いていくが、最後に冗談からの大振りが来た時、まるで導かれるように手にした剣でそれを真正面から受け止めた。
「プリンセス・シンデレラ。君を縛る呪いを今解こう」
杖と鍔迫り合いする剣……アリスティアーが凛としてそう告げる。
「僕はキミを傷つけない、キミの抱える闇を暴き、身を蝕む悲しみを断ち、未来への希望を送り、キミを救う! それこそ王子というものだろう!」
その刀身から、暖かな光を放つ桜吹雪が舞い上がった。浄化の力を込めた【涙刃桜花光】の花が至近距離からシンデレラを包み、その体に纏う嫉妬の力を引き剥がしていく。
「やめて……私のドレスを、脱がさないで……!」
その体に受けた力を嫉妬の力で反射し、同じように桜吹雪を舞い上がらせるシンデレラ。だが、殺傷を目的としていない力はたとえ跳ね返されても浄化されるべきものを持たない相手には通じない。
「これは相手を救うための力、ゆえに模倣を恐れることはない」
撃ちたければ撃つがいい。その桜を浴びて、アリスティアーはシンデレラの闇の力を剥ぎ取った。
せめぎ合う赤と黒を纏めて包む花に覆われ、不思議の国は桜色に染まった。
その桜の絨毯の上、シンデレラはがくりと膝をつく。彼女は嫉妬を力にした七罪のオウガ。その力を剥がれた今、ここまでの戦いで傷ついた体を保たせることはもうできなかった。
顔を伏せるシンデレラの前に跪く者が一人。長い筋の髪に涼やかな顔、上物の服を着たその姿はまさに王子様。
王子様はシンデレラの手を取り、そこにハートの形をした菓子を握らせる。
「今は難しいかもしれないが嫉妬の装飾を全て外せたならまたおいで。絵本のページを捲るような驚きと喜びを約束しよう」
その声は今まで剣から聞こえていたのと同じもの。最後の瞬間だけと真の姿を見せ『ハートスイーツ・パティシエイション』の魔法で作った菓子をアリスティアーはシンデレラに手渡す。
闇と嫉妬の力を失ったシンデレラは、王子様の贈り物を手に花が散るように消えていった。
シンデレラが消えると同時に不思議の国を覆っていた黒薔薇は枯れ果て、それに連座するように戦いの余波から逃れていた黄金花も朽ちていった。そしてその影響を受けていたこの国の住人達は目を覚まし、あるいは黄金像から戻り、一斉に猟兵たちの元へと集まり口々に礼を言う。
そしてその中には時計ウサギの姿もあり、迷い人であるラモーナの姿を認めると彼女にも礼をするように大きくウサギ穴を開く。
「ありがとう……私、生き続ける……」
ドレスアップ・プリンセスの力は既に解けて元のくたびれた服に戻っている。だが、野に咲く薔薇には馬車もガラスの靴もいらない。すり減った靴を履いた自分の足で、赤い姫は次の世界へとまっすぐ進んでいくのであった。
大成功
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