その屋上に、ナミダは流れる
#シルバーレイン
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神秘の力持つ詠唱銀の雨が振り、生命を脅かすゴースト達が人知れず跋扈し、脅かす。
かつてこの世界は、そんな危険な世であった。
しかし、2012年7月。とある私設組織……能力者養成機関でもあった『銀誓館学園』の能力者達が、その戦いに遂に終止符を打つ。
能力者達は数多の戦いを越え、遂に宇宙の創造主である『二つの三日月』を討ち取って、全ての生命根絶の危機を乗り越えたのだ。
……だが、世界の危機は終わってはいなかった。
最後の戦いから、4年。2016年頃、崩壊しつつあった世界結界が突如として復活。そして同時に、かつて討ち取ったはずの脅威達が次々と蘇りその牙を剥いたのだ。
当然、そんな彼らに対抗する様に能力者や彼らを支える運命予報士達もその力を振るうが……世界結界復活の影響か。彼らはその力を大きく減退させてしまっていた。
力を減じながらも、なお世界の為に顕れた新たな脅威……オブリビオンと戦う能力者達。
そんなこの世界と。銀の雨降る世界──『シルバーレイン』の世界と猟兵達の道が今、交差しようとしていた。
●
「お集まり頂きまして、ありがとうございます」
居並ぶ猟兵を迎え入れる、銀の髪のグリモア猟兵。
ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は様子は、常の通り穏やかだ。
どうやら今回の案件も、それ程厳しい物とはならないらしいと。集まる猟兵達の顔も、僅かに緩む。
「つい先日縁が結ばれた地……『シルバーレイン』の世界については、皆さんお聞き及びのことと思います」
その名を聞けば、何かを感じる者もいるかもしれない。
『シルバーレイン』。ヴィクトリアが語る様に、つい先日発見された世界である。
この世界の特徴は、世界を覆う一つの結界。超常の存在を人々に認識させない『世界結界』の存在である。
だが、人類の技術の進歩によりその結界は綻んだ。そして多くの超常の存在が姿を顕した。
その戦いの結果を言えば、人類は生命の根絶を企む超常の存在を討つ事に成功した。
だがその結果、世界結界は完全に崩壊し。人々は超常の存在の内の友好的な者達と手を取り合いながら未来を生きる事になる──はず、だった。
世界の命運を占う一大決戦から、僅か四年。世界結界は突如復活し、またかつて打倒した者達が再び世に顕れだしたのだ。
……全て、オブリビオンと化して、である。
「今回皆さんに赴いて頂くのは、そのシルバーレイン世界の日本国。とある都市部にある商業ビルの屋上です」
ヴィクトリアが言うには、その場所には一体の地縛霊が縛られているらしい。
だが、その敵は地縛霊であって地縛霊ではない。オブリビオン化し凶暴性が増した、いうなれば『妖獣化オブリビオン』とでも言うべき存在であるのだという。
只の地縛霊であれば、現地世界で戦闘能力を持つ者達(アビリティと呼ばれる超能力を振るう、能力者と呼ばれる存在である)で対処は容易い。だがオブリビオン化した相手では、そうもいかない。
故に今回、現地で猟兵達を後援してくれる銀誓館学園なる組織よりの依頼で、猟兵達が対処に当たる事になったのだ……と、ヴィクトリアは語る。
「地縛霊は、夜に出現します。まずはその時間帯まで、皆さんには屋上で待機して頂く事になります」
ヴィクトリアの説明は続く。
標的である地縛霊が出現するのは、夜。陽は落ち街も夜闇に沈んだ、そんな時間である。
それ以外に特に何かをする必要は無い。時間が訪れれば、敵の方からその姿を顕してくれるだろう。
……今から転送されると、数時間程の空きが生じる時間である。ではその空き時間の間、一体何をすれば良いのだろうか?
「そうですね。今は時期も時期ですし……秋空の下で変則的なピクニック、というのも良いかもしれませんね」
問い掛けられたその問いに答えるヴィクトリアの声は、変わらず朗らかだ。その裏にも、特に何かの意図は感じられない。文字通り、空き時間はのんびりしていて構わないという事だろう。
……一般人が入り込まないような対策の手回しはヴィクトリアが担当してくれるそうなので、その辺りの心配も特にする必要は無いだろう。
「ただし、日が暮れてきたらご注意を。いつ戦闘となっても、可笑しくは有りませんので」
その場に顕れる地縛霊の正体については、視えている。『ナミダ』と呼称される、女性型の地縛霊である。
その特徴は、白いローブに身を包み、常に瞳に涙を溢れさせるという事であるが、涙を流すその理由は本人も判らない。更に言えばオブリビオン化して凶暴性を増した『妖獣化』状態である為、何かを問うても明確な答えが返ってくる事は無いだろう。
猟兵達に出来るのは、彼女がこの世界にこれ以上の害を与える事無く討ち倒す事。それだけである。
「一度は掴み取った世界の運命。平和になるはずだった世界に這い寄るオブリビオンの魔の手を、見逃す訳にはいきません」
皆さんの御力を、お貸し下さい。
いつものように、深く丁寧な礼をして。ヴィクトリアは猟兵達を、現地へと送り出すのだった。
月城祐一
まさかの銀雨続編とは。
どうも、月城祐一です。なんてこった……なんてこった……(懐かしさに語彙崩壊)
今回は新世界『シルバーレイン』より。
とある都市部の商業ビル屋上に巣食う地縛霊の討伐となります。
以下、補足です。
第一章は日常章。
地縛霊の出現ポイントにて、(一般人が立ち入らない様に警戒するという名目で)日が沈むまでの数時間を潰して頂きます。
現場の屋上は近隣でも比較的高所にあるので、少し風は冷たいかもしれません。
とは言え、天気は晴れ。気持ちの良い秋の晴天が広がっていますので、日光浴などには最適な環境であるでしょう。
階下の商業ビルは、ごくごく一般的なデパートをイメージして頂ければ。
屋上の時間を過ごす上でご入用な物があれば、調達していただいても構いません。勿論持ち込みも大丈夫です。
第二章は集団戦。第三章はボス戦となります。
現状、OP以上の情報はお知らせ出来ません。章が進展次第情報開示を行いますので、ご了承下さい。
一度は平和を掴み取った、銀の雨降る世界。
その地に這い寄る過去を、猟兵は討ち祓えるか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 日常
『屋上にて』
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POW : 日光を浴びながら昼寝する
SPD : お弁当やパンを食べる
WIZ : 街の景色を眺めて楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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グリモア猟兵の導きを受け、猟兵達が現地に降り立つ。
そこは、高く聳えるビルの屋上階。周囲のビルよりも頭一つ高い、高層ビルであった。
ここが、件の商業ビル。その屋上なのだろう。
さて、グリモア猟兵の話によれば討伐目標となる地縛霊が顕れるのは日没以後。
だが今はまだ日は高く、青空が広がる時間帯である。本番となる時間までは、まだ数時間の猶予がありそうだ。
まずはその時間までこの場で待機する事が、猟兵達に求められた役割である。
……何をのんきな、と思う者もいるかもしれない。だが(グリモア猟兵がその辺りに手を回すとは言え)まかり間違って現場に一般人が入り込まないように警戒する為にも、これは必要な事なのだ。
とは言え、数時間の空き時間は流石に長い。
さて、どうやって時間を潰そうか……猟兵達はそれぞれに屋上で思いを巡らし、動き出すのだった。
四王天・焔
アドリブや他猟兵との絡み歓迎
■心情
学園の能力者かぁ、でもオブリビオン相手だと
能力者だけでは心許ないだろうから、焔も皆の手助けするよ。
それあそうと、まずは腹ごしらえだね。
■行動
お弁当やパンを食べて過ごそうかな。
念の為『フォックス・アシスト』を使い
周囲に一般人が居ないかどうかを確認しておくね。
「お弁当にパンも、とっても美味しいね♪」
と、食べ物に舌鼓を打ちつつのんびりと地縛霊の出現を待っておくね。
何か甘いスイーツも欲しいから、フォックス・アシストには
屋上の身周りを担当して貰い
焔は商業ビルでプリンやショートケーキなどの
色々なスイーツを買っておくね。
「これだけあれば、暇をせずに過ごせそうかな?」
●
抜けるような、青く澄み渡る秋の空。降り注ぐ陽の光も、どこか柔らかな。吹き抜ける風は場所柄故かちょっとだけ冷たいが……これくらいなら、許容範囲と言えるだろう。
本日の天気は、まさに絶好のピクニック日和と言える具合である。
「ふんふんふ~ん♪」
そんな場所に響く、少女の鼻歌。ピクニックシートを広げつつ楽しげに口遊むのは、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)であった。
「お弁当に、パンに……うふふっ」
広げたシート座り、傍らに置いておいた階下の商業ビルの地下階で買い求めた荷物を広げる。
焔を初めとした猟兵達が降り立ったこの地は、所謂『デパート』と呼ばれる類の商業施設である。その地下階となれば、当然『デパ地下』……食品類を取り扱うフロアが広がっている物である。
焔が広げているこの荷物の数々は、そこで買い求めてきた品々だ。お弁当に惣菜、調理パン……いずれ劣らぬクオリティの逸品ばかりである。
(学園の能力者、かぁ……)
そんな品々を並べつつ、焔は思う。
能力者……かつてこの『シルバーレイン』世界の未来を勝ち取った者達は、比喩表現抜きにこの世界最強の存在だ。
だが、そんな彼らでもオブリビオンという存在を相手とすれば分が悪い。生命の埒外となる存在との戦いでは、彼ら程の力があっても心許ないのだ。
無論、彼らとて無策ではない。オブリビオンに触れ『運命の糸』が交わる事で猟兵として覚醒する者も出てはいるが、その数はまだ不足していることも事実である。
ならば、その間は手助けせねばらない。それこそが、オブリビオンを討つ猟兵である自分の務め……焔はそう、考えていた。
……とは言え、だ。
「……よしっ。それじゃ、いただきま~す♪」
戦いの前には、まずは腹ごしらえが必要だ。
宝石のような輝きを放つ品々に目を輝かせ、満面の笑みで手を打って。焔が並ぶ品々に手を付けていく。
老舗の和食割烹の丁寧な仕事が光る懐石弁当。有名とんかつチェーン店のカツ丼は柔らかな肉から脂が溢れ、惣菜専門店の一品料理の数々は飽きが来ない。丁度出店していた某所の名物釜めしは流石の伝統の味であるし、地域に根を張るパン屋のフルーツサンドは爽やかな風味……そのどれもが美味である事を示すかのように、頬張る焔の顔は幸せそうに蕩けるばかりである。
青い空。そよぐ風。見晴らしの良い景観に、美味しい料理。
後は周囲が自然豊かな地であれば、百点満点のロケーションであっただろうが……ここは都市部の一角である為、魅力は半減と言った所か。
……だがこの環境の全てが全て、悪いという訳でも無い。
「……ん~。ちょっと足りない、かな?」
呟き、立ち上がる。
食事は十分。お腹も膨れたが……やっぱり年頃の少女としては、甘いものが足りない気がする。
そう言えば、地下にはプリンやショートケーキを扱うスイーツ専門店や、和菓子などを取り扱うお店もあったはず。
ここは色々買い込んで……青空の下で食べ比べるのも、乙なものだろう。
「よしっ……狐さん、お願いねっ!」
意を決して呪を紡げば、焔の前に大きな影が顕れ出て、実体化する。
焔とほぼ同じ体格のその影は、焔が喚び出した白狐のぬいぐるみ。【フォックス・アシスト】である。
他の猟兵もいるとは言え、皆思い思いに時を過ごしている最中だ。ぬいぐるみにはその間、屋上の見回りで活躍して貰うことにしよう。
「それじゃ、行ってくるねっ!」
後のことをぬいぐるみに任せ、焔が小走りで階下へ繋がる階段へと駆けていく。
十数分後、両手に大きな買い物袋を携え戻ってきた焔の表情は、至福の甘味への期待に光り輝いていたという。
大成功
🔵🔵🔵
大神・零児
ポイント付近の邪魔な場所で(一般人対策)
昼寝中
いつもの悪夢の中
……この気持ち悪い感じは、……そうか
俺の魂と同一の魂が、このシルバーレインで生きて存在してるのか
魂喰がどっちが本物か判別できずに混乱してやがる
……てめぇだ、骸魂の大神の始祖
笑い転げてるっつーことは……俺の魂そのものに何かしでかしな?
なぜわかったって?感覚とてめぇの反応みたら自ずとな
……そうか、ここの魂がオリジナル
俺のは、その破片からお前の手で……
オリジナルは世界結界創造の時の封印の眠りで記憶とともに魂の一部を失って
骸魂のお前がそれを拾い集めて俺を創って、お前の子孫の血筋の人間の子として、か
同一が故共鳴し続けたための、この記憶と悪夢か
●
商業ビル屋上、出入り口付近。
そんな場所で人の出入りを塞ぐような形で身を預けながら、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)が微睡む。
秋の空から降り注ぐ日差しは柔らかく、心地良い。今の時間帯も相まって、快適な午睡の一時を味わえる事だろう。
(……この気持ち悪い感じは)
だが零児の眠りは、穏やかな物とはならなかった。零児は今、魂の平穏を掻き乱す様な『悪夢』の中にいたのだ。
……とは言え、悪夢に落ちるのは零児にとっては『いつものこと』である。その事で今更どうこう騒いだりはしない。精々が目覚めが多少悪くなる、その程度の事である。
だが、この悪夢は何かが違うと。零児はほんの僅かな違和感を感じていた。
(そうか。俺の魂と同一の魂が、この世界で生きて存在してるのか)
そしてその違和感に気づけば、自ずとその答えも導き出せるだろう。
……いつでも抜けるようにと腕に抱えた『魂喰』の銘持つ妖刀が震えているのが、その答えの正しさ示す証左である。
魂喰は、混乱していた。己を振るう主と瓜二つの魂をこの世界に感じ、どちらが本物かと判別できずに震えていたのだ。
(──てめぇだ。躯魂の、大神の始祖。俺の魂そのものに、何かしでかしたな?)
己の魂のより深い所に意識を向ければ、からからと嗤いながら『何故理解った?』と問うその存在を感じる。その答えと反応を見れば、零児の推測に間違いは無かったらしい。
……今零児が問いかけているのは、『オオガミノシソ』を名乗り『レイジ』の悪夢を零児に見せつける存在。躯魂の一種である。
今までは何が目的なのか理解ず、我武者羅に掻い潜り、打ち勝つしか無かった始祖を名乗る存在のその行動。
その目的と理由が今、零児に明かされる時が来たのだ。
(ここの魂が、俺の『オリジナル』。俺の魂は、オリジナルの破片からお前の手で、か……)
全ては、この世界に……『シルバーレイン』に導くために。
始祖は語る。『零児』の魂は、オリジナルの模造品。世界結界創造に伴う封印を受けた際に喪った、記憶と魂の一部なのだと。
その記憶と魂を始祖は拾い集めて、大神の血に連なる末のヒトの子として『零児』を創りだしたのだ、と。
同一の魂。二つのそれが共鳴し続けたが故の……。
「……この記憶と、悪夢か」
ゆっくりと目を醒まし、一つ呟く。
慣れたとは言え悩まされていた悪夢。そして己のルーツ。
この世界に訪れた事で明らかになった二つの事象に、どう向き合うべきか。
零児は再び目を閉じ、己の内で答えを見出そうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・信子
●WIZ
UDCアースと同じように見えてサクラミラージュの帝都桜學府とUDC組織をあわせたような銀誓館学園があり、うまく言葉で言い表せれませんが……どこか雰囲気が違いますね
今まで渡った平行世界、過去、未来、数々の日本の姿を追懐しながら、事件が起きるという商業ビルに足を踏み入れますが…
日の入りまで随分と時間があるようですので、書店コーナーで情報収集を兼ねて時間を潰したいと思います
時間が限られていますので重点的に巡るのはオカルトコーナー
能力者やゴーストの存在が秘匿されていても能力者である学園の卒業生が後輩に向けて想いを託すべく書き遺したものがないか、そんな希望的観測に基づいて色々と手に取ってみます
●
猟兵達が討つべき地縛霊、『ナミダ』と呼称されるその存在が顕れるまでの時間まで、まだ猶予はたっぷりとある。
その間、どの様に時間を潰すかは猟兵たちの裁量に任されているとは言え、基本的には現場となる屋上で時間を潰すのが(一般人対策としても)望ましかった。
……とは言え、流石にずっと屋上で時間潰しをするには手持ち無沙汰にも程があるというもので。
一部の者は、階下の商業ビルに足を踏み入れ散策して時間を潰そうと考えていた。
(うまく言葉では言い表せられませんが……どこか雰囲気が違いますね)
秋月・信子(魔弾の射手・f00732)も、その一人である。
信子の頭に浮かぶのは、過去・現在・未来、そして平行世界に至るまで。これまで目の当たりにしてきた数多の世界の『日本』の風景だ。
文明の発展度合いは、ヒーローズアースやUDCアースと同レベルだろうか。だがその裏側ではサクラミラージュの『帝都櫻學府』とUDC組織を掛け合わせたような存在である『銀誓館学園』が存在し、世界を護り導いている。
似ているようで、どこか違う。そんな空気に信子は僅かな違和感に小首を傾げつつ……。
「……っと、ここですね」
辿り着いたのは、ビルのワンフロア丸ごとに居を構える書店コーナー。
秋の日は釣瓶落としとは言うが、日の入りの時間までは大分余裕がある。そんな空き時間に、信子はこの場所で情報収集も兼ねての時間潰しをしようと考え、足を運んだのだ。
これだけの大きさの書店だ。当然取り扱う種類も膨大だ。雑誌に小説に漫画、図鑑や洋書などの専門書まで選り取り見取りである。
この『シルバーレイン』と呼ばれる世界の情報を集めるという意味では、まさにうってつけの場所であると言えた。
「とは言え、時間に限りもありますからね……」
だが信子がそう呟く様に、時間制限があるのもまた事実。
故に今回信子が重点を置いて探すのは、オカルト関連の書籍の数々だ。
この世界に於いては、能力者やゴーストの存在は秘匿されている物である。もし明るみになったとしても、『世界結界』の影響でその事実は人々の記憶から掻き消されてしまうのだ。
だがそんな世界であっても、過去から未来へ想いを託すべく書き遺された物が紛れているのではないか。そんな希望的観測に基づいて、信子は書に手を伸ばしているのだ。
(……学園の卒業生が、後輩に向けて……なんて物もあるかもしれませんし、ね)
一冊、二冊。目についた書を抱える信子。
書に指をかけるその表情は優しく和らぎ、只の文学少女であった頃の面影を浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
セフィリカと
服を買うべき。と言われてビル内へ
この服は目立ちすぎるらしい
もしかすると今の装いは、街歩きに向かないのかもしれない
済んだらすぐ屋上に戻るとして、ついでに買っとこう!ということのようだ
これも自分のアップデートなのだろう。そんな風に納得して付いていく
この世界はUDCアースに近い発展の状態らしい
文化の傾向も近そうだし、似たような品はありそうだ
向かいつつ物思い
買うにしてもどう選ぶべきか
この格好で問題を感じていなかった以上、自分で選ぶとあまり変わらない気もする
そこは常に進化する美少女なセフィリカの指導に期待するか
セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と
結構待機時間あるか
映画でも見る?あー…いや、服でも見とく?
私のじゃないよ、君の
仮に私側の買い物に君を付き合わせると
「いいんじゃないか?」botになりそうだもの
そういうのはリリアとか女の子同士で行く方が良さそうだし
いつもの服もいいけどさ
たまに気分を変えてもいいと思うよ
まずは一着街を歩く用のコーデ見繕っちゃおう
『一つ忠告しとくけど。疲れたらコイツのこと考えずに切り上げなさいよ』
シェル姉、珍しくアルトリウス君を心配?
『着せ替え人形になろうとしてる奴への助言よ』
なんか実感篭った言い方!
とにかく行こうか!
君もなんか気になった服あったらとりあえずキープしといてね。コーデは無限大なんだからさ
●
──時は少し遡り、猟兵達がこの地に降り立った頃である。
「うーん、結構待機時間あるかぁ……」
グッと体を伸ばしながらセフィリカ・ランブレイ(鉄エルフの蒼鋼姫・f00633)が呟く。
まだまだ陽は高く、抜けるような晴天の空模様である。指定された時刻までは、まだまだたっぷりありそうであった。
「時間潰し、どうしよっかな。映画でも……あー、いや。服でも見とく?」
そんな状況を把握して、セフィリカが振り返り問い掛ける。
そこにいたのは、長身痩躯で色白な、鋭い眼光の男。アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)であった。
「服、か。付き合うのは構わないが……」
「いやいや、付き合うとかでなくて。アルトリウス君の服を買おう、ってコト!」
セフィリカの誘いにいつもの平坦な口調で言葉を返すアルトリウスであったが、その言葉を遮る様にセフィリカが言葉を被せる。
セフィリカ曰く。まずは一着、街を歩く用のコーデを見繕っちゃおうとのこと。
そう言われてアルトリウスが己の服に視線を落とす。
いつもと変わらぬ、黒で纏めた装いである。だがもしかすると、これは世間一般から見れば目立ちすぎるのだろうか?
とは言え猟兵として活動する以上は、どんな格好であっても人々から違和感を覚えられる事は無いので特に問題は無い筈だが……。
そんな主旨の事を、アルトリウスはセフィリカに告げてみるが。
「ダメダメ! いつもの服もいいけどさ、たまには気分を変えてみようよ!」
セフィリカからは一刀両断、バッサリ切って捨てられた。
アルトリウスには判らないが、こういったファッションなどは他者とのコミュニケーションに繋がるもの。そういった方面では、アルトリウスよりもセフィリカの方が一枚も二枚も上手である。
そんなセフィリカがこういうのだ、これは従う方が利口であるのかもしれない。
……よくよく考えれば、これもセフィリカが言う所の『アップデート』に繋がる所もある。そう考えれば、アルトリウスとしても納得がいく。
「わかった。だがそれはそれとして、セフィリカの分は良いのか?」
「いーのいーの。仮に私側の買い物に君を付き合わせても、『いいんじゃないか?』botになりそうだし」
そういうのはリリアとか……女の子同士で行く方が良さそうだしね?
そう言葉を紡ぎ、チラとセフィリカが視線を移す。視線の先にいるのは……この場に皆を送り込んだ、銀の髪のグリモア猟兵。この場に一般人が立ち入らないように手を回す為に、猟兵達とともにこの場に降り立ったらしい。つまり彼女はこれからお仕事が控えているのだ。
そんなわけで、今回は彼女は誘えない。故に今回は、アルトリウスのコーディネートに全身全霊を注ごうと言うわけであった。
『……一つ忠告しとくけど。疲れたらコイツの事考えずに、切り上げなさいよ』
瞬間、響いたのは第三者の声。セフィリカが腰に佩く意思持つ魔剣『シェルファ』の声だ。
「シェル姉、珍しくアルトリウス君を心配?」
『着せ替え人形になろうとしてる奴への助言よ』
「なんか実感篭もった言い方ぁ!」
目の前で繰り広げられるじゃれ合いを眺めつつ、アルトリウスは思う。
この『シルバーレイン』と呼ばれる世界は、文明レベル的にはUDCアースと近い所にある世界であるらしい。分化の傾向も概ね似通った所があるようだし、ならば服飾のデザインセンスも似たような物であるだろう。
では、そんな中で何を買うべきか。今現在の装いで特に不足を感じなかった以上、自分で選ぶとあまり代わり映えしない所に落ち着きそうである。
……で、あるならば。
「……常に進化する美少女なセフィリカの指導に、期待するか」
「ん、大船に乗った気持ちで任せなさい! 君もなんか気になった服があったらキープしといてね! コーデは無限大なんだからさ!」
意気揚々、と言った様子で前を往くセフィリカ。腰の魔剣から漏れ出る呆れた気配。そんな二人の背を一歩遅れで付き従う様に、アルトリウスが続く。
……こうして戦いの時まで、数時間。一行は平和な時間を過ごして、再び屋上へと足を踏み入れる。
その両手に持つ荷物の中身がどんな物なのかは、きっと別の機会で示される事だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
佐伯・晶
天高く馬肥ゆる秋って感じで空が綺麗だね
少し肌寒いし、フードコートで
たこ焼きでも買って食べようか
屋上からは街の様子が見えるかな
見た所UDCアースとよく似た世界みたいだね
オブビリオンとの戦いを考えなければ
同じと言っても良さそうな気がするよ
ここで戦う事になる訳だし
下見も兼ねてぐるっと歩いてみよう
あまり派手に壊す訳にいかないしね
後始末まで考えなくていいというのは楽なんだよなぁ
そう考えるとUDC組織の人達には頭が上がらないよ
さて一通り下見が終わってもまだ時間がありそうなら
もう一度フードコートまで行って
食べ物と飲み物を補給してこよう
そういや町中でゆっくり夕焼けを眺めるなんて
久しくしてなかったかもしれないね
●
天高く、馬肥ゆる秋。
秋は空が澄み渡り高く晴れ、気候が良いので食欲が増進して馬も良く肥える。
秋が爽やかな季節であり、心身ともに心地の良い季節である事を示した、所謂『形容』の言葉である。
「今日の空は、まさにそんな感じで綺麗だね──あちちっ」
そんな空が広がる商業ビルの屋上に設けられた欄干に手をやり、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が呟き……口に放り込んだたこ焼き(階下のフードコートで買い求めた出来たての物だ)の意外な程の熱さに涙目を浮かべる。
晶の眼下には、少しずつ傾き始めた陽に照らされた街の様子が広がっていた。
よく発展した、平和な街の風景だ。車道では車が引っ切り無しに行き交い、歩道を歩く人々も明るく賑やかだ。
見た所、文明のレベルとしてはUDCアースと酷似……というより、ほぼ同一とまで呼べる程に似た世界である。
唯一の違いと呼べるのは、UDCアースの世界が今も迫りくる邪神を初めとしたUDC怪物……オブリビオンとの戦いの渦中にあるのに対して、この世界では生命根絶を目論む『異形』の存在、ゴーストとの戦いが終結していた事だろうか。
……尤も、その終結したはずの戦いの日々は再び幕を開けてしまったようであるけれど。
「はっー、すぅー……さて、と」
火傷した口内に冷たい外気を取り込んで冷やしつつ、顔を上げた晶が歩き出す。
グリモア猟兵の話によれば、戦場となるのはこの場所。商業ビルの屋上であるのだという。
で、あるならば。時間のあるうちに現場の下見をしておくべきだろう。
地形を知る、という事は地の利を得るという事。戦いを有利に運ぶ為には、必要不可欠な要素である。
(まぁ、あまり派手に壊す訳にもいかないしね)
それに、出来ればこの場を荒らすのは最小限にしたいという思いもある。
ここがUDCアース世界であるならば、そこまで気を配る必要は無いだろう。戦闘後の後始末はUDC組織のエージェントが猟兵に向けた支援活動の一貫として担当してくれるからだ。
だが、ここは違う。『シルバーレイン』と呼称されるこの世界でも、『銀誓館学園』なる組織が猟兵を確かに支援してくれはするが……彼らはあくまで学生であり、能力者。支援を専従として活動してくれる存在では無いのだ。
……聞けばかつての戦いでも、『世界結界』の影響も考慮に入れて大体の場合の後始末は能力者である学生たち自身で行ってきたらしい。つまりそうする事が、この世界で戦う上での流儀……といえば、そうなるのだろう。
(後始末の事を考えなくて良い、というのは楽なんだよなぁ……)
戦いに専念できる、という事のなんと喜楽な事か。
そう考えると、後始末を担当してくれるUDC組織の人達には本当に助けられていると言える。頭が上がらない、とはこの事だ。
今度馴染みの職員と顔を会わせた時は礼を言っておこうと、晶は心のメモ帳に書き付けておく。
「──っと、もう一通りか」
ビルの屋号を掲げる看板も兼ねた給水塔。数多く並ぶ空調の室外機。禁煙化の煽りを受けてここまで追いやられたのだろう、屋外用の灰皿スタンド。
都心の一等地ならともかくこの規模の街のデパートの屋上は、そう広くもない。並んでいる障害となりえそうな物は、こんなものである。
とは言え、戦闘の際にこれらを障害として使って壊してしまえば……ビルの営業に差し支えが出るかもしれない。
戦闘の際には気をつける必要があるだろう。
「さて、まだ時間がありそうだし……何か食べ物と飲み物を補給してこようかな」
一通りのチェックを終えて時計を見れば、日の入りまでの時間はまだ暫くの余裕がある。間食を挟むくらいは出来そうだ。
その事を確認し、階段に向けて歩みを進めて……ふと、晶が傾き始めた陽に向き直る。
(……そういや、こんな町中でゆっくり夕焼けを眺めるなんて。久しくしてなかったかもしれないね)
少しずつ色を変え始めた陽の光は、人々の心を刺激する力に満ちている。
晶もまたその例外ではなく……傾き始めた太陽を見つめる晶の目には、どこか優しげであった。
大成功
🔵🔵🔵
桐生・カタナ
▼陰
旅先で知り合った猟兵とやらの話を聞いて、
久方ぶりに帰国した訳だが…。
やれやれ、随分と懐かしく感じるモンだぜ
しかし…変わらねーな。この街も、この国も。
――あの戦いから数年。
アイツ達は達者にやっているだろうか?
(知人らの顔を思い浮かべ)
引退した奴、結婚した奴、
今も戦いに身を置く奴もいると聞く。
…いや、心配など杞憂か。
俺には俺の目的があるように、
皆、それぞれの道を歩んでいるのだからな
▼陽
黄昏るのはガラじゃねーが、
こう街並みを見渡していると色々と記憶が蘇ってくるぜ
とりあえずスマホで必要そうなブツの
再発行か配達して貰うよう連絡でもしておくか。
何せ――武器もねぇ、イグカもねぇ、バイクもねぇと来てる。
…マジでロクなモンがねーな(笑
帰国直後だから仕方ねーんだが…まあいい。
今の内に戦場となる屋上の地形や障害物でも把握しとくか。
運が良ければ配達も間に合うだろう
確か予報では世界結界の完全崩壊まで、あと数年だったか。
どうやら想定と異なっている、という話は本当らしい
上等だぜ。せいぜい楽しませて貰おうか(悪笑
●
陽は少しずつ沈み始める。東の空は少しずつ暗くなり、西の空は茜に染まる。
「……変わらねーな。この街も、この国も」
そんな空を眺める、どこか懐かしむ様な声色の男の声。
(旅先で知り合った『猟兵』とやらの話を聞いて、久方ぶりに帰国した訳だが……やれやれ、随分と懐かしく感じるモンだぜ)
長めに伸びた藍色の髪を雑に纏めた、紅い瞳の鋭い相貌の男だ。
体付きは靭やかで、その身からは自然と滲み出る剣気が浮かぶ。見る人が見れば、数多の修羅場を越えてきた事が一目で理解るだろう。
男の名は、桐生・カタナ(千鬼夜行・f35375)。かつて『銀誓館学園』に属した能力者であり、その第一期卒業生である。
──あの戦いから、数年か。
カタナの頭を過るのは、今は懐かしき日々。頼もしき仲間に恵まれた、今も鮮明に思い出せる死と隣り合わせの青春の日々だ。
後の者に後事を託し、引退したもの。愛した人と結ばれ、幸せな日々を生きるもの。そうして自分と同じ様に、今も戦いの日々に身を置くもの……あの頃の仲間達は皆、達者にやっているだろうか?
(……いや、心配など杞憂か)
ふと浮かんだその思いを、頭を振って掻き消す。
カタナにはカタナの道があるように、仲間たちには仲間たちの道がある。皆、それぞれの道を歩んでいるのだ。
今はただ、それだけでいい。
「いかんな。こう街並みを見渡していると、色々と記憶が蘇ってくるぜ」
黄昏るのはガラじゃねーんだがなぁ、と。頬を掻きつつ取り出したのはスマートフォン。
『異形』との最後の戦いから数年。カタナは渡航し諸国を渡り歩いていたのだという。
今しているのは、これから必要となりそうなものの調達だ。
(何せ──武器もねぇ、イグカもねぇ、バイクもねぇと来てる。マジでロクなモンがねーな)
自身の置かれた状況に、カタナの顔に思わず苦笑が浮かぶ。
諸国を渡り歩く際に必要最低限な物以外、かつての装備は処分してしまったらしい。今はまず、それらの装備に換わる物が必要だ。
差し当たって必要な物は、学園に連絡してイグニッションカードの再発行だろうか?
正直、色々と面倒だが……まぁこればかりは帰国直後だから致し方ないだろう。
「……よし、まぁこんなモンだろう」
ある程度目星をつけていた品の手配を終えて顔を上げれば、空の対比は随分と夜闇に偏っていた。戦いの時まで、それ程の猶予は無いだろう。
さて、運が良ければ配達も間に合うかもしれないが……どうなることやら。
(しかし、運命予報では……世界結界の完全崩壊までは、確かあと数年だったはずだが)
少しずつ近づきつつある戦いの時。久々なその時間に、肌にひりつく物を感じながらカタナは思う。
本来であれば世界結界は崩壊し、神秘と文明が混じり合う世界となるはずだった。その時の為に、銀誓館学園の学生達は日々の備えに余念が無かった。
だがその備えは崩された。世界結界は復活し、従来のゴーストとは違う存在が顕れて……。
(どうやら想定と異なっている、という話は本当らしいな)
能力者の超能力(アビリティ)は弱体化し、運命予報士の運命予報……世界結界の歪みを探知するという力も喪われた。銀誓館はその強みを封じられ、新たな戦いに於いては苦戦の日々を送っているらしい。
状況は劣勢。だが、逆襲の兆しは芽生えている。
「……上等だぜ。精々、楽しませて貰おうか」
今この場にいるカタナの様に。新たな出会いの果て、新たな力に……猟兵としての力に目覚める能力者達も現れているのだ
一度は戦いの時代に終焉を迎え、だがまた新たな戦いの時が訪れたこの世界。
銀の雨降る世界の未来はどうなるのか……その果てを見る為に、能力者は、猟兵は戦い続ける。
その一人であるカタナの表情は、気が付けば獰猛な笑みの形に変わっていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『サイコチェーンソー』
|
POW : 殺人チェーンソー
【チェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD : サイコスピン
【狂乱しながらの回転斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ノイズチェーンソー
自身の【チェーンソー】から【強烈な駆動音】を放出し、戦場内全ての【防御行為】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
時刻は刻一刻と過ぎ行き、陽の光は西の空へと傾き落ちる。そうして街には、夜の帳が落ちていく。
だが、街に暗闇が満ちる事は無い。賑やかな繁華街であるこの地は多くの照明が灯り続け、いっそ眩しい程である。
猟兵達が集まるこの商業ビルの屋上も、同じだ。
屋号を掲げる大看板を照らす照明の灯りは、夜だというのに昼間のようにこの場を照らし続けている。
……本当に、こんな状況で。件の『ナミダ』なる地縛霊が姿を見せるのだろうか?
──ァア……アァァァ……!
瞬間、生温い風が吹き抜けた。
その風と同時に聞こえた嗚咽に猟兵達が視線を向ければ……そこに立つのは白いローブに身を包む女の姿。そして女の身体に繋がり浮かぶ、千切れた鎖が目に映る。
見るものが見れば、理解る。その女は、この世の者では無いと。
更に詳しいものが見れば、理解るだろう。この女は『ナミダ』と呼ばれる地縛霊の、変異種であると。
変異種。そう、この世界で戦い抜いてきた能力者から見れば、変異種だ。
地縛霊とは本来、地に繋がれる者。だが目の前のこの霊はその鎖の戒めから解き放たれた、特殊な存在であるのだ。
だがその正体は、猟兵達との出会いにより遂に割れた。
目の前の存在は、過去より蘇りし『オブリビオン』と呼ばれる存在。その中でも『暴力衝動』が特に強くなった、『妖獣化オブリビオン』と呼ばれる存在であると。
──ァァ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァッ──!!!!
猟兵達の視線に気づいたか、髪を掻き乱し止めどなくその瞳から溢れ流れる涙を飛ばす地縛霊。
すると地に落ちた飛沫がジュクジュクと音を立て……成人男性程の大きさのヒトガタの群れを作り出す。
ボロボロの身体のそのヒトガタの群れは、手に携えたチェーンソーを唸らせながら猟兵達へと手を伸ばす。
どうやらこのヒトガタは、地縛霊の眷属か何かであるらしい。
まずはこのヒトガタ……『サイコチェーンソー』を仕留めねば、地縛霊と戦うこともままならぬということか。
──ギィィィィィィンッ!!
唸るチェーンソーの駆動音。その音に立ち向かうように、猟兵達もそれぞれの武器を構える。
夜空の下の、ビルの屋上の死闘。その第一幕が、始まろうとしていた。
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●第ニ章、補足
第ニ章は集団戦。
地縛霊『ナミダ』が作り出した眷属、『サイコチェーンソー』が相手となります。
ボロボロでかつ貧相な外見ですが、その膂力はかなりのもの。
携えたチェーンソーを引き摺りながら犠牲者に向けて疾走するという不気味なゴーストです。
……とは言え、歴戦の猟兵であれば対処はそう難しくないでしょう。
戦場は、商業ビルの屋上。時刻は描写通り、夜となります。
基本的には足元に障害となる要素はありませんが、ビルの屋上には貯水塔兼大看板や空調の室外機などが設置されていたりします。
これらの設備にダメージが入ると、商業ビルの営業に差し支えがあるかもしれません。
出来れば場を荒らさないような戦い方をすると、(フレーバー要素ですが)後々の処置が楽になることでしょう。
夜闇の中、遂に現れた地縛霊とその眷属。
本来の種族の枷を外れオブリビオン化したその実力は、能力者達を梃子摺らせる程の物。
そんな相手を向こうに回し、猟兵はどう戦うか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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大神・零児
!?
こいつらはアミーゴ横須賀にいたサイコチェーンソー!?
オリジナルが湧き潰ししまくったリビングデッドの一種!
アビリティがUCに変質してやがる
これはオブリビオン化した想定で掛からないと
屋上は戦闘に十分な広さだが
なるべく施設への被害は最小限に
味方にはUCの攻撃に巻き込まないよう注意を促し
早業の先制攻撃で世界知識により竜脈使いで強化したUCを発動
UCの出口の外へ退避
UC内部に敵集団を捕縛
かつてのゴーストタウンにお帰り願おう
UCで作り出したゴースト達は過去の模倣
ダッシュでの追跡や挑発、一斉発射、医術の悪用や不意打ち、悪路走破からの捨て身の一撃等の団体行動による数の暴力での無差別攻撃で敵集団を一網打尽に
●
甲高く響く、チェーンソーの駆動音。
けたたましく響く耳障りなその音。そして顕れた地縛霊の眷属と思しき存在は……零児の魂に刻まれた『記憶』を、強く刺激する。
「こいつらは……『アミーゴ横須賀』にいたサイコチェーンソーか!?」
アミーゴ横須賀。それは、かつてこの世界の横須賀市に存在していたショッピングモールの名である。
その土地柄か、往時は外国人客にも人気のあったその地であるが……経営母体の倒産に伴い閉鎖され、廃墟と化した地であった。
だが、その廃墟は只の廃墟では無かった。
この『シルバーレイン』の世界に於いて、人の住まぬ地は『常識』が喪われると『世界結界』の力が及ばなくなりゴーストの跋扈する地へと変じてしまう。
アミーゴ横須賀も、その例外では無かった。当時の銀誓館学園の能力者達は、とある出来事を切っ掛けにゴーストタウンと化したその地を見つけ、無数のゴーストを掻き分け、制圧したという……アミーゴ横須賀とは、そんな曰く付きの地であるのだ。
零児のオリジナルもまた、当時はそんな戦いの最前線にいた。目の前のサイコチェーンソーを初めとした無数のゴースト達を、沸く側から叩き潰し続けたのだ。
で、あるなら。当然、敵の戦い方のその特徴も、直ぐに頭に浮かんでくるが……。
──ギイイイィィン!!
「この音は……ッ、アビリティが、ユーベルコードに変質してやがるのか!」
響くその音を耳にして、頭に浮かぶ特徴を捨てる。
零児が看破した様に、目の前のサイコチェーンソーは過去に相対したそれとは違う。オブリビオンとして蘇った、アビリティをユーベルコードへと変質させた存在なのだ。
コイツは、タダのリビングデッドなどでは無い。ゴーストでは無く、オブリビオン化した想定で掛からねばならぬだろう。
「──巻き込まれるなよ!」
だが、それならそれで良い。今の零児はゴーストと戦う能力者では無く、オブリビオンと戦う猟兵なのだから。
周囲に警告を発しつつ、妖刀を引き抜いて。その切っ先を、地に突き立てる。
瞬間、世界が蠢く。大地から、空間から吸い上げる力を身体に纏う氣と絡ませ、練り上げて……一つの小世界を創り上げる。
「かつてのゴーストタウンに、お帰り願おう……!」
そこは、様々な物が乱雑に放置された廃墟。かつては楽しげな賑わいに満ち、今は怨嗟の声が響く場所。
その名は、『アミーゴ横須賀』。零児のユーベルコード【悪夢召喚「ゴーストタウン・アミーゴ横須賀」(ハンティングチェイス・ザ・ショッピングモール)】によって再現された、在りし日の死闘の舞台である。
構築され、広がる小世界が屋上を包み……顕れ出たサイコチェーンソー達の一部と零児を呑み込み、隔離する。
「さぁて、オリジナルがやった様に……やってやろうじゃないか」
隔離されたこの世界の内で戦うのならば、屋上設備への影響は最小限に防げるはず。後はここから、奴らを出さねば問題は起こらぬはずだ。
創り上げた小世界、迷宮の唯一の出口であるエントランスに仁王立つ零児。そんな彼に降り注ぐのは、かつての戦地の姿を今の時代に再現するかのように響く無数の怨嗟だ。
だがその声に、零児が怯む事は無い。むしろ増々戦意は滾り、瞳は鋭く口元は獰猛に牙を剥く。
「──掛かってこいよ、ゴーストども!」
早速顕れ、こちらに向けて躍り掛ってきたサイコチェーンソーの一体を一太刀で斬り捨て、吠える零児。
その一喝は鳴り響くチェーンソーの騒音を掻き消すほどに鋭く響き……異界内での戦いの主導権を握るのが誰であるのかをはっきりと示すのだった。
成功
🔵🔵🔴
四王天・焔
SPD判定の行動
アドリブや他猟兵との共闘歓迎
■心情
遂にナミダが現れたみたいだね
ともあれ、まずは眷属たちを相手するのが先決だね!
■行動
白狐召還符(UC)を使用。
御狐様に騎乗して、狐の【ブレス攻撃】を使い
【属性攻撃】で蒼い炎属性を強化し敵を焼き払うね。
焔自身は『フローレ』を使って【範囲攻撃】で纏めて敵を攻撃しつつ
弱っている敵が居たら御狐様で突進しつつ【ランスチャージ】で倒すよ。
敵の回転斬撃に対しては、こちらも御狐様を【ダッシュ】で退避させ
攻撃範囲外に逃げるね。
避け切れない場合は【敵を盾にする】で身代わりになって貰う。
また、屋上の設備などには、敵に近づけさせない様に
注意を焔達猟兵に惹く様にするね。
●
生み出した小世界に、一人の猟兵とサイコチェーンソーの群れが消える。
その場に残されたのは、猟兵と『ナミダ』と呼ばれる地縛霊のみだ。
この状況は、まさに絶好の好機。猟兵達が勇んで地縛霊にその武器を向けるが──。
──ァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!
再び響く、『ナミダ』の慟哭。溢れ出た涙の飛沫が再び地を濡らし、泡立ち……眷属達を、その場に喚び出す。
同時に戦場に立ち込め始めたのは、何とも言えぬ不快な空気。怒り、悲しみ、恨み……負の感情を掻き立てるような、陰の気だ。
「──符よ、妖の郷への扉を開け」
そんな気を祓うように凛と響いたのは、焔の声。
先程まで美味な食事を楽しんでいたその表情は、今の焔には無い。今の焔は猟兵としての使命を果たさんとする決意に心を燃えし、その瞳は強い理知の輝きに輝いていた。
そんな焔の喚び声に応えるように、その手に構えられた符が燃える。そうして湧き立つ蒼の炎が膨れ上がって姿を変えて。
「おいでませ、御狐様!」
顕れ出るのは、焔の二倍ほどの体長を持つ巨大な狐だ。
古来より、狐とは農耕の神とされる『稲荷神』の神使(眷属)として扱われ、神聖視されてきた生き物である。
焔が喚び出したこの狐は、そんな狐の中でも特に強い力を持つ一体だ。輝くような白の毛並みに蓄えられた妖力が、まさにその証左である。
「まずは、眷属たちを相手にするのが先決だね! お願い、御狐様!」
そんな光り輝く白狐の背に跨りながら焔が願えば、その願いに応じる様に狐がすぅ、と深く息を吸い込み……。
──カッ!!!
吐き出された息が蒼炎となり、サイコチェーンソーの群れを飲み込んだ。
炎に巻かれて苦悶と怨嗟に呻く眷属達。けたたましく響くチェーンソーの音は、そんな彼らの痛みを示すかの様だ。
そんな彼らを追い打つように。
「やぁぁぁぁぁっ!!」
屋上を駆ける白狐に跨ったまま、焔が携えた手槍を突き入れ、薙ぎ払う。
聖なる蒼炎に焼かれ、その上で鋭いランスチャージまでとなれば一溜まりもない。一体、また一体と、眷属はあっさり倒され塵となって消えていく。
……が、しかしだ。
ブゥゥゥン──!
「ッ、御狐様!」
敵もただ、一方的にやられているという訳ではない。
他の眷属が盾となったのか。炎に巻かれつつも比較的軽傷な一体が独楽のような動きを見せながらチェーンソーを振り回す。
そんな敵の動きに、焔が声を上げる……とほぼ同時に跳躍一番、白狐がふわりと浮かんで凶刃を躱せば。狂乱しながら振り回されたその刃は、周囲の同族を巻き込んで切り刻む。
……今のはちょっと、危なかった。油断大敵、と言った所である。
「ふぅ……でも、この調子だよ御狐様!」
とは言え、機先を制する事が出来たのも事実である。
眷属を討ち、地縛霊を倒す事が今回の目的。だがその結果、施設に悪影響を残す様な事を焔はしたくなかった。
ならば、敵の意識をこちらに向け続けねばならない。そして出来れば敵が施設の設備に近づかないように立ち回らねばならない。
中々難しい舵取りを強いられるが、この調子ならば何とかなりそうである。
……息を整え、再び敵の渦中へと飛び込む焔と白狐。
蒼炎を纏いながら舞うように戦うその姿は、当然の事ながら人の目を惹きつけて……少なくない数の眷属を釘付けにし、焼き貫いていった。
大成功
🔵🔵🔵
桐生・カタナ
▼陰
ほう、あれがオブリビオンか
地縛霊と比べて違いがサッパリだぜ
だが見た目は重要じゃねぇ。
大事なのは中身がゴーストらしく在るかどうかだ
…丁度良い
有象無象の群れで準備運動と行くか
▼陽
刀を手に斬撃破で攪乱しつつ蹴り技等も加え連撃を見舞う。
適当に見繕ったなまくらだし期待はしてねーが…
(半壊した刀を見つめ)
やれやれ…コイツはダメだな。
敵の攻撃もだが、気魄を込めてもへし折れそうだ
(何処からか射出された財布入れを掴み)
――待たせたな(悪笑
イグカから式刀を出す勢いのまま
ビル設備に近い敵から纏めて両断を
ま、本命の一振りって訳じゃねーがな
しかしこれが噂の世界結界の影響ってヤツか。
妙にウザったいぜ、この違和感はよ
●
「ほう、あれがオブリビオンか」
遂に始まった、商業ビル屋上での戦い。
顕れた敵のその姿、その動きを見定めるように。カタナの鋭い目が、矯めつ眇めつ睨み見る。
「……タダのゴーストと比べて、違いがサッパリだぜ」
この世界の命運を占う戦いの第一線に立ち続けていたカタナだ。その戦闘経験は豊富であり、その中には当然、視線の先の地縛霊やリビングデッドと同種(或いは近しい種の)に関する知識もあった。
だがそんな彼の目から見ても、一見した所では敵に大きな違いは見受けられなかった。地縛霊の鎖など、細かい所では違いはあるが……ほぼほぼ、過去に見た姿と同じなのだ。
(だが、見た目は重要じゃねぇ)
とは言え内心でカタナが呟くその通り、外見の違いなどはさして重要な事では無い。
大事なのは、中身。ヒトであるなら、能力者であるなら、来訪者であるなら……そして、ゴーストであるなら。
それぞれがそれぞれらしく在るかどうかこそが、大事な事なのだ。
目の前で嗚咽に叫び、また狂乱の刃を振るうこいつらは、果たしてゴーストであるのか。それともその枠すらも外れた、この世界にとっての異物であるのか。その本質を知る最も手っ取り早い手段は……やはり、刃を交える事だろう。
その為にも。
「丁度良い。有象無象の群れで準備運動と行くか──!」
久々の実戦に、まずは心身の錆を落とさねばならない。目の前の凶刃を振るうリビングデッドは、リハビリにもってこいの存在だろう。
猛々しい覇気を全身から発しつつ、カタナが駆ける。
迎撃する様に繰り出された鎖鋸を無造作に振るった刀で弾き、ガラ空きとなった敵の胴に鋭い前蹴りを叩き込む。勢いを乗せたその蹴りに敵の身体はビル設備から遠ざかる様に吹き飛ばされ、周囲の同族数体を巻き込み転倒する。
「……やれやれ。コイツは、ダメだな」
大きな隙を晒す敵。だがカタナは追撃を仕掛けはしなかった。正確には、追撃を仕掛ける事が出来なかった、というべきか。
呟くカタナの視線が向けられたのは、自身の手元。先程敵が振るった鎖鋸を弾いた刀であった。
彼が今携えたこの刀は、とりあえずの間に合わせで用意した所謂『なまくら』な一振りである。
そんな刀を超常の戦いに用いればどうなるか。その答えは、簡単だ。
(一撃受けてコレじゃあ、気魄を込めてもへし折れそうだな)
一合保たずに砕けて折れて、刀としての務めを果たせず終わるのみである。
カタナが握る刀の刀身は、半ば以上が消えていた。残る刀身にも目に見える程の罅が入り、最早修復も不可能であるのは一目瞭然だ。
この程度の強度では、実戦に堪えられない。カタナとしてもある程度の戦いのスリルは味わいたいが、自殺行為をしたい訳ではないのだからコレを使うのは論外だ。
……しかし、さて。こうなると、どうするべきか──。
「──ッ!」
瞬間、夜闇を切り裂き飛来した『何か』。その『何か』を、カタナは類稀な反射神経で見事に掴み取る。
一体何が。訝しげな表情で、それを検め……。
「──待たせたな」
その表情が、肉食獣を思わせる獰猛な笑みへと変わる。
カタナが掴んだのは、黒革製の財布だ。
当然、それはただの財布などでは無い。その中に収められたモノこそが本命だ。
それは、カタナが発行を依頼したイグニッションカード。銀誓館学園が開発した、『己の異能の一部と装備を封じ、キーワード一つで即座に展開する』という驚異的な能力を秘めたカードである。
「『起動(イグニッション)』!」
そして今、そのギミックが解き放たれる。
起動を告げるその言葉を受け、光り輝くイグニッションカード。そしてその光の中に浮かび上がり具現化したのは……一つの巨大な棒状の物体だ。
巨大な鉄塊の如きその棒の柄を、カタナの手が握る。そうして一振り二振り、具合を確かめる様に振るってみる。
そんな悠長なカタナの様子に、体勢を立て直したリビングデッドが鎖鋸を唸らせ迫るが……。
「フッ──!!」
呼気も鋭く振るわれた鉄塊の前に、鎖鋸ごと横一文字に一刀両断。塵と変わって虚空へ消えた。
対するカタナは、夜風に乗って消えていく敵の姿に一瞥くれる事も無い。鎖鋸ごと敵を斬り捨てなお無傷のその刀に、満足げに頷くばかりである。
……とは言え、この刀も彼にとっての本命の一振りという訳では無いのだが。
「──ッ!」
振り抜いた刀を構え直す。先程までのなまくら刀の頼り無さと比べ、この式刀は雲泥の差だ。
掌にそんなずしりとした重みを感じ、カタナはその目で鋭く敵を睨む。
戦いに向けた意識を途切らせる事はしない。
(……しかし、これが噂の復活した世界結界の影響ってヤツか)
しかしその胸中では、感じる違和感への分析も怠らない。
世を生きる人々の『常識』の力により、超常の存在と力を抑え込む世界規模の結界。それがこの世界を覆う『世界結界』の効力である。
一度は解れ、崩れるはずだったその結界。だが現実には、こうして復活し……力を磨いた能力者の異能を封じる厄介な存在へと変じていた。
それにそれだけでは無い。『復活』とは言うが、その性質はかつてのモノとはどうも変じているような。そんな感覚を、カタナは感じているのだ。
「妙にウザったいぜ。この違和感はよ」
一つ小さく呟く。
この世界に何が起きているのか。そしてどんな未来に進む事になるのか。
感じる違和感を解き明かしたその時、全てはきっと明らかになるのだろうか。
……ともあれ今は、戦いの時。カタナは再びその手の鉄塊の如き刃を振るい、敵の一刀両断斬り伏せてみせた。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
セフィリカと
やることはいつも通りか
周りは壊さん方が、恐らく良かろうな
戦況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
破壊の原理から逃れる術、無限の先へ届く道理いずれも無し
要らぬ余波は『無現』にて否定
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
『天光』で捕捉した全対象同時に魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する
何をしていても初めからやり直し
此方は余裕も持てるだろう
更に捕縛の瞬間を『再帰』にて無限循環し完全封殺する
以降セフィリカと共に各個撃破
破壊の原理を乗せ打撃で始末
続きも控えている以上時間を掛けず速やかに
セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と
チェーンソー役が1人だからホラー映画が成り立つわけで、何人もチェーンソー回してたらもはや騒音による怒りが勝つんだよなあ
でも街中だし、やりすぎない様にね
ま、その辺り今更言わなくてもいっか
器用だもんね、君
イメージは重機でプリン食べる的な器用さだけど
私もゴーレムやキャバリア使うと派手になりすぎる故
【光刃舞踏】
右手に魔剣、左手に叡智の光刃な二刀流
光刃で防御、魔剣で攻撃!
シェル姉、気持ちいつもよりダイエット気味でよろしく!
『趣味の悪い注文ね、それ』
回転攻撃は伸縮自在の光刃で冷静に足元を薙ぐ
アルトリウス君が止めたのを即座に処理しつつ、数人倒せば把握できる急所を狙って沈めていくよ
●
ぎゅいんぎゅいんと鳴り響く、チェーンソーの駆動音。
見窄らしい身なりのリビングデッドがその鎖鋸を振り回して襲い来る姿は、なかなか心臓に悪いものがある。
だが……。
「──いや、ただただうっさいし!」
この場で実際に立ち向かうセフィリカからすれば、恐怖などより怒りの方が勝ったようである。
ホラー映画などではチェーンソーを獲物とした殺人鬼というのは良くあるものだ。だがそれらの創作物では、多数の被害者に対して一体の異物が交じるからこそ恐怖の念が生まれて作品が成り立つというもので。目の前の光景の様に、数多くのチェーンソーが唸りを上げるという状況はただただ騒音による怒りが勝ってしまうものである。
……そもそも、セフィリカは数多の修羅場を潜り抜けてきた猟兵であるからして。今更こんな光景で怖気付く事なども無いのだけれど。
「……やることは、いつも通りか」
そんな騒音に対する苦情を叫ぶセフィリカに対し、隣に立つアルトリウスは常の通り淡々としたもの。
実際、猟兵としてオブリビオンと相対する以上はやる事は変わらない。過去より這い出る敵を討ち、現在と未来を守る事こそが猟兵の使命なのだから。
もっとも今回に関しては、周りの設備に多少注意する必要がありそうだが。
──アルトリウス君。街中だし、やりすぎないようにね?
そんな常と変わらぬ様子で力を練り始めたアルトリウスに対し、セフィリカは一つ釘を差そうと口を開いて……その言葉を呑み込んだ。
『原理』と呼ばれる力を振るう、猟兵の中でも飛び切りの異才。アルトリウスという猟兵は、そういう猟兵である。
その力を一言で表すなら、『万能』。その圧倒的な力でどんな状況にも対応できる器用さこそが、彼の強みであるのだ。
(まー、イメージは『重機でプリン食べる』的な器用さだけどね)
まぁ、世間一般で言う所の『器用さ』とは一線を画するモノである事も事実であるけれど……それを口にする事は無い。
何せセフィリカも、得意とする戦い方(自家製ゴーレムやキャバリアを運用する戦いだ)をすると人のことを言えない程に派手になり過ぎるきらいがあるからだ。下手に口を開くと、腰に佩く姉と慕う魔剣のお小言を浴びそうである。
「シェル姉、気持ちいつもよりダイエット気味でよろしく!」
『趣味の悪い注文ね、それ』
そんな訳で、今回のセフィリカは省エネ気味の戦法である。
右手には魔剣を、左手には自身が創り出した光刃を構えた二刀流だ。
……とは言え、このまま突っ込むのは無策が過ぎる。鳴り響くチェーンソーの音は五月蝿く集中が乱されるし、単純に数に任せてチェーンソーを振り回されるのも厄介だ。
ここはもう一手、打つべきだろう。
「──淀め」
その一手を打つのが、アルトリウスである。
世界の外から供給される無尽の魔力を糧として、振るう力は十一の原理。
その力を無限に廻し、阻み、逸し、この世界の理を捻じ伏せて──その鋭い眼光で敵を睨めば。睨まれた敵が携えた鎖鋸がその駆動を止め、構えた眷属も力を喪ったかのように膝をつく。
【魔眼・封絶(マガン・フウゼツ)】。そのユーベルコードは、アルトリウスの振るう力を応用したもの。認識した敵の行動と能力発露を封じる、強烈な魔眼である。
能力の発露を封じる。つまり今回の場合、敵のユーベルコードの起点であるチェーンソーの動きを止めるという事である。
効果時間も、外部からの魔力供給のおかげでほぼ無限であるからして……有り体に言えば、アルトリウスに睨まれたサイコチェーンソー達は『詰み』の状態に陥ったのだ。
「ナイス、アルトリウスくん──!」
そうなってしまえば、後はもう勝ったも同然。
笑みを浮かべて飛び出したセフィリカが、手に構えた魔剣を一度二度と震えば……鎖鋸ごと、眷属の身体が両断される。
それでも、中には諦めの悪い敵もいるようで。チェーンソーが動きを止めた状態にも関わらず、ぶんぶんと振り回してセフィリカを狙うが……当然そんな攻撃など、何の脅威にもなりはしない。冷静に間合いを見極めたセフィリカに軽々と回避され、お留守になった脚を伸縮自在の光剣で薙がれ、地に倒れた瞬間に頭を魔剣で貫かれて消えるだけだ。
魔眼を維持しながらその拳で敵を殴り倒すアルトリウスも加われば。二人の前に立つ眷属はあっさりと駆逐され、この場から姿を消したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
佐伯・晶
さて、現れたようだね
できるだけ周囲に被害をださないように戦おうか
宵闇の衣を生成して纏おう
ここじゃイグニッションっていうんだっけ
僕の場合はちょっと違うけど
魔法のように着替えて戦う点は少し似ているかな
個人的には複雑だけど、UCの使用条件上
着替える必要あるんだよね…
ガトリングガンを使うと被害が大きいし
ワイヤーガンを使って回避と攻撃を行おう
数が多いと面倒だね
という訳で静かにして貰おうか
邪神の慈悲で相手を凍らせ動きを停めよう
これは防御行為じゃなくて行動阻害だから
その煩い音では無力化できないよ
まあ、静かになって丁度良いかな
凍った相手を切断用ワイヤーで切ろう
バラバラにするのはチェーンソーだけの特権じゃないよ
●
屋上の戦いは、猟兵たちの側に優位に進んでいた。
とは言え、まだまだ油断は禁物。嗚咽の声を上げ続ける地縛霊の涙から、また新たな敵が顕れているのだから。
(まったく、キリがないね)
そんな敵の前に立ち塞がったのは、晶であった。
晶の装いは、夕暮れ時とは変わっていた。活動的な少女を思わせる衣服から、邪神の力宿る漆黒のドレスへと変じていた。
『宵闇の衣』と呼ばれるそのドレスは、晶の身に宿る邪神の力で生成された戦闘用の装束である。
……この世界の『能力者』と呼ばれる者達は、イグニッションカードの力で普段着から戦闘装備に即座に換装出来るのだという。それとはちょっと違うが……魔法のように着替えて戦うという点については、晶と現地能力者達は少し似ているとも言えるだろう。
いつかは、現地の能力者と肩を並べて戦う日が来るのだろうか。まぁ、それはそれとして……。
「この力を振るうのは、個人的には複雑なんだけどね……っ!」
晶としては、この装束を纏い戦うのは正直なところ業腹であった。
元はごくごく普通の男性であった晶だが、ひょんな事で邪神と融合し、その呪いで今の身体へと変じたという過去を持つ。その呪いは今も健在で、心身が弱れば、また戦いの場で邪神の力を引き出し過ぎれば、身体が徐々に石化していくという呪いに蝕まれているのだ。
そんな背景を思えば、出来る限り邪神の力に頼る戦いは避けたいと晶が思うのも宜なるかなと言った所であるのだが……今回に関しては、色々と話が別である。
何せ敵の数は多数であり、出来れば設備には被害を及ぼさない方が良いという条件だ。ちまちまと戦っては、何が起きるか判ったものではない。
面倒な状況は、出来得る限り早く切り抜けるのが一番だ。
「という訳で、静かにして貰おうか」
呟き、くるりとその場で一回転。ドレスの裾がふわりと広がり……瞬間、ドレスから吹き出す冷気が敵の列を縛め、氷へ閉ざしていく。
【邪神の慈悲(マーシフル・サイレンス)】。晶が振るう、ユーベルコードの一つである。
その効力は、自身が纏うドレスから、万物に停滞を齎す神気を放つというもの。
晶が宵闇の衣へと装いを変えたのは、この為だ。邪神の慈悲とその力を引き出す為に、嫌々ではあるが着替えざるを得なかったのだ。
──ギュゥゥゥン! ギィギギッ……。
身を凍らす神気の力に抗う様に、一際けたたましく鳴り響く鎖鋸。だが、それは無意味な行動だ。
晶のこの力は、『防御行動』では無く『阻害行動』。煩く響く駆動音による無力化の対象外であるのだ。
一つ、二つと、停滞を齎すその力の前に停まる、鎖鋸の駆動音。
そしてそうなれば……鎖鋸を携えた眷属も、氷の中に閉ざされて氷像へと変わるばかりだ。
「まぁ、静かになって丁度良いかな、っと……」
そうして動きを止めた敵に対して、晶が向けたのは愛用のガトリングガン……ではなく、フック型のワイヤーを打ち出す銃型デバイス。所謂ワイヤーガンだ。
狙いを定め、撃ち放つ。フックが氷像に引っかかり、ワイヤーが絡みつく。
「──フッ!」
そうしてその瞬間、体を使ってワイヤーを撓らせば。氷像は細切れに千切れ、分解される。
当然中の敵も一緒に、だ。
「バラバラにするのは、チェーンソーだけの特権じゃないよ」
晶が小さく呟くその通り、物を斬るのは鎖鋸だけの特権ではない。
タダの糸であっても、使い方次第では物を切り裂く事も出来る。更に言えば、晶のワイヤーガンは物を切断するのに適した切断用ワイヤーで出来ているのだ。
そんな武器を使えば、この程度の事など造作もない事である。
「さて、次は……っと」
銃本体にワイヤーを戻し、再び狙いを定めて撃ち放つ。
敵の動きを停めて、一体一体分解していく。一見すれば、地味に見えるかもしれない。
だがこの地の環境に被害を与えない事を最優先と考えれば……晶の戦術こそが、実は最適解と言える物であるかもしれなかった。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・信子
●POW
あれが地縛霊の眷属…一見するとホラー映画に出てくるような動きが緩慢なゾンビのようですが、所謂『走るゾンビ』でもあるようです
片手でチェーンソーを振り回す力があるとなると、下手に倒そうとするとがむしゃらに振り回して屋上の構造物を壊しかねませんので、照明の灯りを活かして一網打尽にすべきでしょう
まずは、敢えて被っている鉄仮面に向けてハンドガンを撃ち【挑発】します
こちらに注意が向きましたら、別の個体に射線を移して同様に撃ち、設備を破壊しようとする個体には右手を撃ち抜く【武器落とし】を狙ってみます
明かりが強い場所へと【おびき寄せ】ましたら『影の流砂』を発現
自らの影の沼に落ち、骸の海へと還りなさい
●
唸りを上げるチェーンソー。携えたボロボロの身形の眷属は、一見すればホラー映画に出てくるような動きが緩慢なゾンビに見える。
だが一度動き出せば、その動きは実に機敏だ。古き良き時代(?)のゾンビと言うより、最近の創作物で見られ始めた『走るゾンビ』の方がイメージに近いか。
更に言えば、かなりの重量を誇るチェーンソーを、片手で軽々と振り回すパワーもある。であるならば、それなりの耐久力もあると見た方が良いだろう。
下手に手を出せば、その獲物を我武者羅に振り回して屋上の構造物を壊しかねない。
戦うとしたら、その辺りをよく考えねばならないが……。
(……っ、そうだ。アレを活かして……!)
サイコチェーンソーの様子を具に観察していた信子の視線が向いたのは、屋号を示す大看板兼貯水塔。
陽が暮れ街に夜闇が降りたこの時間であってもその大看板は煌々と照らされて、街を歩く人々にその存在を誇示している。
……つまり、その周囲は今も『明るい』という事で。であるならば──!
「──ッ!」
そうと決めれば、後は動くのみと。信子が懐から取り出したのは、愛用の自動拳銃だ。
多少暗くて見通しが効かないとは言え、『魔弾の射手』の肩書を持つ信子がこの程度の距離を外すことなど断じて無い。
照準を定め、迷いなく、その銃爪を引く。
──パッ!
発砲音を打ち消す消音器を取り付けている為、響いた発砲音は存外小さな物だった。
だが次の瞬間、その発砲音を打ち消すかの様な甲高い音が戦場に響く。
見れば、眷属の一体が顔を抑えているのが判るはずだ。
どうやら信子の放った銃弾が、サイコチェーンソーの顔を覆う鉄仮面を叩いたらしい。
──ギィィィィィィ!!
その事実を認識し、撃たれた敵が怒りを示すかのように鎖鋸を唸らせ駆け出す。その動きに釣られた様に、更に数体が後を続いて信子に迫る。
チェーンソーを唸らせ、相当な速さで迫るゾンビの群れ。見る人が見れば悲鳴を上げそうなその光景に対して……。
(釣れた──!)
信子は悲鳴を上げる事など無い。この状況こそが、信子が狙った状況なのだから。
駆け来る敵を挑発するように、更に一発二発を銃弾を撃ち込みながら後退する信子。そんな彼女の動きに、敵は更に熱り立って距離を詰めてくる。
あと、20メートル、10メートル、5メートル。振り被られたチェーンソーが、信子の身体に対して振り下ろされ──。
「ふっ──!」
その身が切り裂かれる、その直前。跳躍一番、凶刃を躱して。
「影の触手よ。影の中へ、引きずり込みなさい!」
鍵となるその言葉を、告げる。
瞬間、蠢き出したのは眷属達の足元の『影』。長く伸びたその影が意思を持ったように蠢き伸びて、信子の指示に従って眷属達を縛め捕らえ……そのまま、影の沼の底へと引きずり込んでいくではないか!
……ここは、大看板の直下。この屋上で最も明るく、そして影も伸びる場所である。
信子は、銃を武器とする猟兵である。だがそれだけが彼女の武器では無い。銃器の他にも、物の『影』という存在を信子は自由自在に操る事が出来るのだ。それが故に、信子はこの場所の環境を利用しようと考えたのだ。
信子のその狙いは、しっかりと嵌った。敵は狙い通りに釣り出され、己の影を奪われ操られる事となったのだ。
「……自らの影の沼に落ち、『躯の海』へ還りなさい」
再び地に降り立ち、立ち上がりながら信子が呟く。
その背では釣られたサイコチェーンソー達が流砂に飲まれるが如く影の中へと飲み込まれて……そして、消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ナミダ』
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POW : ペインフルティアーズ
全身を【滂沱と流れ落ちる涙】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【痛み】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD : 涙の体
自身の肉体を【涙に似た成分の液体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : 涙の鎖
自身が【悲しみ】を感じると、レベル×1体の【地面から生える「霊体の鎖」】が召喚される。地面から生える「霊体の鎖」は悲しみを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
商業ビルの屋上。その地の戦いの緒戦は、猟兵の側の勝利に終わった。地縛霊が喚び出した眷属は、斃されたのだ。
──アァァ……。
その事実を理解しているのかいないのか。地縛霊の様子は、変わらない。
先程までと同じく、その目から涙を溢れさせ呻くばかりで……。
──ァァァアアアア!!
いいや、違う。
その目から涙を溢れさせる事だけは、変わらない。
だがその目が泡立ち、眷属と変じる事は無くなっている。
それに、良く見れば……涙に濡れる地縛霊のその視線は、猟兵達にしっかりと向けられているのだ。
……どうやら、眷属ではどうにもならぬと悟り、自ら猟兵達の相手をするつもりであるらしい。
何故、この地縛霊がこの地に縛られたのか。そして何故、オブリビオンと化したのか。その理由は、判然としない。
だが、その事実を明かす事に意味は無いだろう。きっと答えを問うても応じる事は無いはずだ。
ならば疾く敵を討ち……その無念を断ち切ってやる事ことこそが慈悲であるのかもしれない。
今もなお、嗚咽の涙を流し続ける地縛霊。
夜闇に包まれた屋上での死闘の本番が、始まろうとしていた。
====================
●第三章、補足
第三章はボス戦。
商業ビルの屋上に巣食う地縛霊、『ナミダ』が相手となります。
白いローブに身を包んだ、女性型のゴーストです。
本来は自分の胸に刻まれた悲しみを晴らす為に人々を襲うという習性を持ちますが、この個体は『妖獣化オブリビオン』である為に凶暴性が特に高く、衝動のままに猟兵達へと襲い掛かってきます。
断章にある通り、何故と問うても答えは返ってきません。容赦なく討ち倒す事こそが慈悲であるとお考え下さい。
戦場は二章と同じく、商業ビルの屋上。
特に変化はありませんので、ご安心下さい。
眷属を打倒し、遂に猟兵が地縛霊に刃を向ける。
妖獣化オブリビオンと化したその敵を討ち、屋上を濡らす涙を止める事が出来るだろうか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
====================
大神・零児
真の姿・第二段階(紅目白銀の人狼の姿)
てめぇが弄くってたのは俺の魂と生まれだけか?
……そうか、文字通りの『神隠し』に『魂喰との邂逅』もてめぇの仕業か
オリジナルを超えなくともその潜在能力に俺の実力を迫らせるためか
俺の意思決定を誘導しやがって
なら力貸せ
落とし前つけろ
対価ならやる
UCにより始祖の封印を解くことで始祖を降霊し融合することで限界突破
特殊なこの環境から霊的な地形の利用で竜脈使いにより生命力吸収の如く吸い上げ魔力溜めし
その力を鮮血の氣に練り込み武器改造・防具改造し武器と自身全体に巡らせ
野生の勘と第六感であえて攻撃をオーラ防御で武器受けする度に呪詛耐性・激痛耐性で耐えつつ
カウンターで接触部分から鮮血の氣を敵に流し込み呪詛・生命力吸収・催眠術の効果で徐々に敵の動きを鈍らせ
その際に敵の意識と自分の意志を一時的に繋ぎ読心術で使えそうな事柄を情報収集
施設への被害を最小限に抑えるため収集した情報を基に挑発
自分に意識を向けさせ
自分はあまり動かず
敵の動きをコントロールするよう立ち回り
周りの被害を減らす
●
嗚咽の涙を流し、屋上を濡らし続ける『ナミダ』。
異界から現世に帰還した零児は、そんな敵の様子を眺めながら……しかしその意識は、自身の内側へと向いていた。
(てめぇが弄ってたのは、俺の魂と生まれだけか?)
確認するのは、己の身の上の事。
この世界の何処かに存在する『オリジナル』から零落した魂と記憶。それらを寄せ集め、ヒトの形を成したのが零児である事には既に触れた。
だがきっと、それだけでは無い。その事を直感し、零児が己の内に潜む『始祖』に向けて問い掛ければ。
(……そうか。文字通り、『神隠し』に『魂喰との邂逅』も、てめぇの仕業か)
零児の魂の内から返される答えは、その直感の正しさを示す物であった。
──オリジナルである『オオカミレイジ』を越えずとも良い。
──だがその実力を、少なくとも潜在能力に近づけねばならぬ。
返される答えに、悪意は無い。そうする事で、目的を果たす一助となるのだろう。
だがカラカラとしたどこか愉悦を愉しむ様なその声と。
「──俺自身の意思決定を、誘導しやがって」
零児の意思を操るかのようなその所業が。零児の怒りに、火を点ける。
瞬間、膨れ上がる闘気。鮮血の様なその氣が、この地を流れる地脈の霊力を吸い上げて、その力を増していく。
その力は、本来ならば零児の許容量を超える物。これ以上力を増せば、良くて暴走。悪ければ周囲を巻き込み、爆ぜて消し飛ぶ事だろう。
……だが、しかし。
「なら、力を貸せ! 落とし前をつけろ!」
この場に『居る』のは、零児だけでは無い。零児をこの地へと導いた始祖もまた、この場に居るのだ。
無論、始祖を頼るのは業腹だ。零児の自由意志に対して視えざるレールを敷いて、その意思を意のままに誘導してきた事に憤りはある。
だが、その事は今は飲み込もう。
零児は。大神・零児は、世界を蝕む過去を討ち、現在と未来を守る為に戦う猟兵であるのだから。
その目的の為ならば。
「対価なら、くれてやる!」
憤りを飲み込む事も。対価をくれてやることも。どちらも苦ではないと、決然と戦意を示す。
すると膨れ上がった氣は更に練り上げられ、零児の身体を包み込み、その姿を変えていく。
黒の毛並みは白銀に。瞳は血のような紅へ。零児の真の姿である、白銀紅眼の人狼剣士にだ。
同時に、零児の身体に宿る大いなる力。始祖……オオガミノシソがその身体に宿り、その心身と霊格を引き上げる。
「──オオオォォォォッッ!!!」
己の内に滾る力に、零児が叫ぶ。その姿はまるで、夜闇を切り裂く様に遠吠える狼の如く。
そんな零児から感じる圧倒的な気配に気圧されたのか。
──ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!!
嗚咽を上げる地縛霊は己の身体をも涙と変えて、腕を引き伸ばし振るう。
その一撃は法則性も何も無い、まるで泣きじゃくる子供が感情に任せて振るう腕だ。歴戦の猟兵である者ならば、軌道を読んで躱す事は難しく無いだろう。
だが──。
──ガッ!
「グぅ……ッ!」
零児はその一撃を、敢えて受けた。
身体の芯に響くような重い衝撃に、食い縛った口から思わず漏れ出る息。
下手に回避をすれば、屋上設備を傷付けかねない。
それは避けねばならない。零児は己の身を盾に、屋上設備を守る為に立ち塞がったのだ。
「こっ、ノ……ッ!」
だが、それは一方的に叩かれるばかりという訳ではない。
鞭の如く振るわれた地縛霊の腕が身体を叩くその度に、零児の腕が動く。
目にも留まらぬ速さで繰り出された零児の腕には、身体を覆う氣の一部が乗っている。身体が叩かれる寸前で腕を使い攻撃を凌ぐ際に、その氣を地縛霊に流し込んでいるのだ。
零児の氣には、呪詛の力が込められている。その氣は零児の身体に降りた始祖の力も相まって、徐々に徐々に、敵の生命力を吸い上げていく。
そして零児が敵に氣を流し込む目的は、それだけでは無い。
──NAンで……イtaイ、苦死い……ドウシテ、コンナ──!
瞬間、零児の頭に過る何者かの『声』。零児が氣を地縛霊に流し込んだ事で、敵の意識と自身の意識が一時的に繋がったのだ。
何故、どうして。ノイズ混じりの『ナミダ』の意識は、己の状況を嘆くばかり。そしてその意思はノイズに包まれてすぐに途絶えて──。
──Aaaaaaaaaaaa!!!
その直後、まるで狂乱したかのように叫び出し、振るう腕の勢いを増々強める。
一体、何に対し嘆いているのか。その答えを知る事は出来なかった。だが『ナミダ』の濡れたその瞳は今、確かに零児に向けた敵意が浮かんでいる。敵の意識は、確りと惹き付ける事が出来ているようである。
ならばこのまま、敵の動きをコントロールして……周りに被害を及ぼさぬ事に、専念すべきだろう。
長期戦となれば己の人間性は削られるだろうが、それは既に呑み込んだリスクだ。気にする程の物ではない。
先程よりも重みを増した敵の一撃を捌きながら、零児が腰を落として身構える。
戦いは、まだ序盤。本番は、これからだ。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・焔
SPD判定の行動
アドリブや他猟兵との共闘歓迎
■心情
サイコチェーンソーの次はナミダかぁ、
シルバーレインの敵は厄介そうだね、でもどんな相手でも負けないよ!
■行動
フォックスファイア・弐ノ型(UC)を使用して戦うね。
敵のレベルm範囲外から、焔もUCを使用して
【スナイパー】で狙いを定めつつ【属性攻撃】で灼熱属性を強化して
敵を攻撃していくね。
もし敵に接近されてしまっても【盾受け】や【オーラ防御】で
防御しつつ、焔も【ダッシュ】で距離を取る様にしながら戦うね。
「ナミダが何故、この場で涙を流しているのか分からないけど
人々に危害を加える存在なら、倒すまでだよ!」
●
狂乱したように喚き、涙と変えた腕を伸ばし振るう地縛霊。
一見すればただ乱雑に振るわれるその一撃を捌くことは、焔から見ればそう難しい事では無いと思えた。
だが実際は、そうでは無いらしい。今もその一撃を受けて捌く猟兵の姿を見れば、平常心を失うようなリスクを背負って自己強化を図らねば捌ききれる物では無いようだ。
そう言えば。先程戦ったサイコチェーンソーにも、少々冷や汗を掻く思いをさせられたのは記憶に新しい所だ。
この世界、『シルバーレイン』の敵は、中々に油断ならぬ厄介な敵が多いようである。
「……でも、どんな相手でも負けないよ!」
しかし、だからこそ怯んではいられないと。己を奮い立たせるように喝を入れ、小さな拳をぎゅっと握る。
これまでも数多くの世界で起きてきた戦いを、家族や友人達と共に乗り越えてきた焔である。
大事なことは、支え合い助け合うこと。そして何より、諦めないこと。
今回は、家族や友人達は側にはいない。けれどそれでも、共に戦う仲間達がいる。
そんな彼らと共に、諦めずに立ち向かえば……どんな相手でも、きっと勝利を掴めるはずだ。
「御狐・焔の狐火を以て、破魔の一矢と成せ──!」
跳躍して地縛霊との距離を取りつつ、九寺を切るように掌を組む。
すると焔の身に宿る妖力が増幅され、溢れ出て……創り出されるのは、光り輝く聖火の矢だ。
(絶対に、外さない……!)
鋭く敵を睨み、狙いを定める。
もし敵がこちらの動きに気づいたとして、距離は十分取っている。
そもそも敵は、目の前の猟兵に意識を注いでいる状態だ。こちらには全く意識を向けていないから、狙撃が妨害される心配は無い。
落ち着いて、細く息を吸い、吐いて──。
「──いっくよー!」
矢を、放つ。
放たれたその矢が、夜闇を切り裂くように一直線に飛んでいき……。
──Aaaaaaaッ!?
地縛霊のその身体に突き刺さる。
苦悶に叫び、身を捩らせる地縛霊。だが、それだけでは終わらない。
焔が放った矢は、狐火を以て創り出した聖火の矢だ。その聖火が、地縛霊に宿る様々な負の感情を焼き尽くすように光り輝き、地縛霊の身体が燃え上がり始めたのだ。
「あなたが何故、この場で涙を流しているのかは分からないけど……」
悲鳴を上げる地縛霊を見つめ、呟く焔。
ナミダと呼ばれるその存在が、何故この地に縛られたのか。その理由は、分からない。けれどきっと、何らかの痛ましい事があったのだろう。
その事に、同情を覚えなくはないけれど。
「けれど、人々に危害を加える存在なら。倒すまでだよ!」
それを理由に、この世界を今生きる人々に牙を剥くというのであれば、話は別だ。
決然とした意思を瞳に浮かべて、焔が告げる。
その志はきっと、この場に居並ぶ猟兵達の総意と言っても過言ではないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
桐生・カタナ
▼陰
確かナミダだったか
昔、似た敵とやり合った気もするが…
成る程、これが過去から飛来するってヤツか
甦った脅威は存分に見せて貰うとしてだ
相も変わらず辛気臭い、その涙。
拭ってやるぜ。但し――些かヘヴィだがな!
▼陽
敵の動きは勘で回避するとして
攻撃を式刀1本で捌くのは…正直面倒くせぇな
となれば、コイツの凶暴性に不意打ちを与えて
戦況の流れを引き寄せるか
幸い体も温まってきた
一時期、多用しまくってた事もあって
あの技なら出せる気がするぜ
テンプルや心臓に狙いを定め
コークスクリューブローで殴りつつ。
式刀の斬撃へ繋げながら敵を跳ね上げ
BIの紅蓮撃を叩き込む
全盛期より出力は低めか?
違和感は消えねーが、要はやりようだな
●
燃え上がる聖火。その炎に巻かれ、『ナミダ』が苦悶に喘ぎ、悲鳴を上げる。
(……確か、ナミダだったか。成る程、これが過去から飛来するってヤツか)
そんな敵の姿に、死と隣り合わせであった当時の記憶を思い返しながら、カタナがふむと一つ息を吐く。
目の前の敵は、かつてこの世界で跋扈していたゴーストと呼ばれる超常の存在の内、地縛霊という種にカテゴライズされた……まぁそれなりに見た敵だ。
当然、銀誓館学園に属する能力者として、数多の戦いを潜り抜けてきたカタナであるからして、ナミダとその同種の敵との交戦経験も豊富である。
そんな斃してきたはずの敵が、こうして再び姿を見せるとは。しかも力の性質を変えて、だ。
何とも厄介な事態ではないか。カタナは『オブリビオン』という存在の厄介さの片鱗を理解しはじめていた。
……とは言え、過去の記憶が蘇れば思う事もあるようで。
「ったく、相も変わらず辛気臭い涙を流しやがって」
かつての『ナミダ』と呼称されるその敵は、常に嗚咽に嘆き、涙に地を濡らしていた。そして今の『ナミダ』と呼称されるその敵も、だ。
過去と今。力の性質こそ変わったようだが、その性根に関しては変わらぬと見える。
何とも気の滅入る性質の敵ではあるが……女の涙を見過ごしては、男の名折れであるとも言える。
「……その涙、拭ってやるぜ。但し──些か、ヘビィだがな!」
ならば、その涙は止めてやらねばならぬ。但し、カタナ自身がそういう様に激しい手法で、だが。
身体から覇気を吹き出し、一歩二歩と歩みを進めれば。その猛烈な覇気を地縛霊が感知する。
今も聖火に焼かれる地縛霊は、痛みからかその瞳に溢れる水の量を増しており……その溢れる雫を力と変えて、カタナの接近を阻む様に腕を振る。
溢れる涙を纏うその腕は、幾つもの幻影を纏ってまるで分裂したかのようにカタナには視えた。
だがその全ては『虚』では『実』。所謂『質量を持った残像』とでも言うような拳打である事もまた、カタナはその直感で感じ取っていた。
「フッ──ッ!」
故にその拳打の全てに対して、カタナは退かずに迎え撃つ。
突き、振り上げ、振り下ろし、横薙ぎ……数多繰り出されるその打撃を、携えた式刀で打ち払っていく。
だが流石に、無数とも思えるような拳打に対して刀一振りというのは多勢に無勢。正直に言えば、面倒臭い状況である。
(──と、なれば……ッ!)
だが、そんな状況をひっくり返す為の手立てを打たねばならない。
幸い、その為の取っ掛かりとなる物はある。
それは、敵に無くてカタナにはある物。無数の修羅場を潜り抜ける事で養ってきた、観察眼だ。
カタナの見た所、敵はその凶暴性を膨れ上がらせた個体である。ならばこの拳打の雨も、理性ではなく本能だけで振るわれる物だろう。
ならば、敵の攻撃の間隙を突いて一撃を見舞えば……戦況の流れを引き寄せる事は、そう難しくはないはずだ。
……お誂え向きに、地縛霊のその腕がこちらを貫くような形で振るわれる。その突きを軽くいなせば、敵は次の一打を放つ為に拳を引くだろう。
「遅ぇっ!」
狙い所は、此処だ。
拳を引いた相手の隙を突く様に、カナタの脚が動いて距離を詰める。
涙に溢れる瞳を見開く地縛霊。その顔の側頭部へ向けて──。
「シッ──!」
鋭い呼気と共に距離を詰めたその勢いのまま、開いた左の拳を叩き込む。
カタナが拳を叩き込んだのは、人体急所の一つであるテンプル……所謂『蟀谷(こめかみ)』と呼ばれる部位だ。
この箇所は、ヒトの頭蓋骨の中でも特に薄い箇所であり、顎先と並んで打撃を受ければ脳震盪を起こし易い場所であると知られる箇所である。
更に言えば、カタナは拳を叩き込むその瞬間、左の腕を捻る様にしていた。
『コークスクリュー・ブロー』と呼ばれるその打撃法は、拳打の威力を通常よりも高める効果がある。
そんな拳を、急所に叩き込まれたのだ。ゴースト(オブリビオン)がヒトでは無いとは言え、その効果は絶大だった。
──ッ!?
グラリと地縛霊の身体が大きく揺らぐ。頭を揺らす衝撃の為か、悲鳴を上げる事すら出来ぬらしい。
だが、カタナの攻撃はそれで終わりでは無い。
「御託は──ッ!」
揺らぐ敵に向け、右に握る刀を振り上げる。
斬撃、では無い。使うのは刀の鎬や身幅と言った部分。
面の部分を使って、揺らいだ敵の頭の逆側を跳ね上げて。
「──いらねぇッ!!」
完全に頭が跳ね上がり無防備に晒されたその喉元に向けて、最後の一撃を叩き込む。
能力者として現役の頃多用していたその一撃は、能力者が振るうアビリティの中でも随一の火力を誇る一撃だ。
幸い、身体も温まってきた。能力者から猟兵へとその力の有り様が変わりはしたが……この状況であれば、繰り出せるはずだ。
──ゴウッ!
裂帛の気合と共に繰り出されたカタナの拳が、煌々と燃え上がる。
それは、敵対する全てを蒸発させ灰燼に帰させる爆炎の一撃。『紅蓮撃』と呼ばれる一打が、地縛霊の身体を打ち……その身体を、更に激しく燃え上がらせる。
──~~~~~ッッッ!!!
燃え滾る炎に飲まれ、声なき悲鳴を上げる地縛霊。
だがそんな敵の姿に、カタナはどこか不満げな表情である。
……本来のカタナが放つ一撃よりも、その出力は随分と抑えられた事に違和感を拭いきれないのだ。
「……まぁ、しょうがねぇ。要はやりよう、だな」
とは言え、今のカタナは能力者でなく猟兵。力の方向性が変わって、そう間もない時期である。
今はまだ、この力と向き合う時期だと……燃え上がる敵から距離を取りつつ、カタナは愚痴る様に言葉を零した。
成功
🔵🔵🔴
佐伯・晶
オブビリオンである以上話して
どうにかなる相手じゃないからね
悪いけど実力で排除させて貰おうか
引き続き切断用ワイヤーを用いて戦うよ
戦闘が続いているけど
屋上の様子はどうかな?
あんまり荒れてないと良いんだけど
ちなみにUDC組織謹製だから鎖と勝負になっても
簡単に千切れたりはしないよ
体を涙のような液体に変えるか
水を切るのはちょっと難しいかな
ただ、相性が少し悪かったかもね
静寂領域で相手を凍らせよう
水溶液である以上凝固点は然程低くないだろうね
動きが止まったらさっきと同じ様に
ワイヤーでバラバラにしようとするよ
氷像を放置する訳にはいかないしね
まだ力尽きない様なら
部分的にでも凍ったままになるようにして
後続に託そうか
●
一度ならず二度までも……と、地縛霊が思ったかどうかは定かでは無いが。
炎に飲まれ燃え上がりながら声なき悲鳴を上げるその姿を横目で見つつ、晶は周囲の状況を確認する。
(周りの様子は……うん。あまり荒れてはいない、かな)
先程の眷属との戦い。そして本番である地縛霊との決戦。
そのどちらの戦いでも、猟兵達は戦場をあまり荒らさないようにと気を使いつつ立ち回っていた。その甲斐あってか、屋上設備に流れ弾が及んだり等という事は今の所は無いらしい。
……とは言え、これからの戦い方次第ではどう転ぶかは判らない。これからもより注意が必要となるだろう。
「あまり派手な事は出来ない、か。なら……」
それならそれで先程使ったワイヤーガンを用いるなど、やりようは幾らでもあるというものだ。
このワイヤーは、UDC組織謹製の特注品だ。仮に地縛霊の鎖と引き合いになったとしても、そう易々と千切れたりはしないだろう。
──ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!
さて、どう立ち回るべきか。ワイヤーガンを掌で玩びながら思案を続ける晶の耳に飛び込む悲鳴。
視線を向ければ、地縛霊の身体を包んでいた炎が鎮火していく様子が目に映る。
……どうやら己の身体を水と変えて、炎を無理やり消しているようだ。
(身体を液体に、か。ワイヤーで切るのは、ちょっと難しいかな……?)
そんな敵の様子に晶が眉をしかめるが……それはホンの一瞬の事。
敵の身体が多少変わろうと、対応する手段は晶にはある。
それこそ繰り返しとなるが……やりようは、幾らでもあるのだ。
「僕の相手をするには、相性が少し悪かったかもね──優しい微睡みに、ご招待致しますわ」
一つ呟き、瞳を閉じて。己の内に潜む邪神の意識を呼び起こす。
瞬間、屋上に吹き抜ける風。肌を刺すような、冷たい風だ。
それは、晶に宿る邪神の力によるもの。森羅万象を停滞させる神気を寒気と変えて、屋上に吹かせたのだ。
寒風吹き抜けるこの領域──【静寂領域(サイレント・スフィア)】のその力は、敵味方を確りと判別する。
故に味方である猟兵達には、多少肌寒いと思わせる程度であるかもしれないが……敵である地縛霊は、そうはならない。
──アァァ……ッ、ァァ──!
水と変えたその身体の末端から、全身全てを侵すかのように。
少しずつ、少しずつ……その身体が縛められて、氷の中に閉ざされていく。
今の敵の身体は、涙と似た液体。つまりは水溶液だ。そうである以上、凝固点は然程低くはないはずだろう。
そう考えた晶の予想は、まさに正鵠を得る物であったらしい。
「オブリビオンである以上、話してどうにかなる相手では無いでしょうから」
──申し訳無いけれど、実力で排除させて貰いますわ。
淡々とした口調で、冷え冷えとした視線を敵に向け。その手に携えた銃口を指向して──発射。
放たれた切断用ワイヤーは狙い違わず氷に閉ざされた地縛霊の末端に絡みつき、切り刻み……氷の破片を、屋上に散らす。
「さて、この調子で──っ、ぅ!」
後はもう、一方的な終わりとなるだけか。誰もがそう、思った時だった。
晶が表情をその歪ませて、銃を取り落したのだ。
見れば、晶のその手、指先が変わっていた。白く細い少女の指が、灰色の無機質な石へと変じていたのだ。
「力を、使い過ぎた……かな?」
額に脂汗を滲ませながら晶がそう呟けば……屋上を満たしていた寒気は消えて、元の秋の夜の気候へと戻る。
心身が弱れば。また邪神の力を使い過ぎれば。晶の身体はその呪いにより石へと変じてしまうという事は、既に触れた通りである。
この現象は、その呪いが発露した結果である。邪神の神気を使う事で晶の心身は蝕まれ、身体の末端が石化する程の消耗状態へと陥ってしまっていたのだ。
「こうなっては、仕方ないね。済まないけど、あとは……」
石化する事を畏れなければ、敵を砕き切る事は難しくない。
だがそうしてしまえば、他の者達に迷惑を掛けてしまう事に繋がりかねない──そう判断した晶は追撃を諦め、大人しく一歩退き後事を託す。
とは言え、晶の力は絶大だった。身体の半分を凍りつかせたままの地縛霊のその姿が、その証明だ。
敵を大きく追い詰めたその功績は、今回の戦いに於いて功績一等に挙げられるものとなるはずだ。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
理由も忘れたのなら早々に眠るべきだな
戦況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
破壊の原理から逃れる術、無限の先へ届く道理いずれも無し
要らぬ余波は『無現』にて否定
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
まずは近接し白打を一手
それを以て天印起動
行動を封じ能力を禁じ存在原理から崩壊させる
即終わりは望めぬ故『再帰』にて付与の瞬間を循環
崩壊を加速させつつ、仮に一つ二つ破っても問題ないようにお膳立て
鎖も纏めて囚われるだろう
あとは放っておいても終わる筈だが、始末はセフィリカに委ねる
セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と
感触的には生きた塩水かな?
で、どう攻める?
問いかけるまでもないか、君には
捉え所がなければ捕らえる、お見事だね
けどこんなガッチリ決まったコンボ見てると崩し方を考えたりしない?
『悠長ね。セリカ』
シェル姉…相棒の魔剣がため息
寧ろシェル姉寄りの感覚じゃない?コレ
『ま、そうね。で、セリカ的な策は?』
んー、何度も見た今なら崩しの幾つかも浮かぶけど
『初見じゃ目の前の奴のようになると』
ま、容赦ないからね、彼
じゃ、折角大きな一撃当てられるチャンスを貰ったところで……
【月詠ノ祓・隠神】
久々に大技、行っとこうか!
魔剣と極限まで同調し、全ての力を一刀に込める
瞬間に全力を注ぎきる集中力の極致にて、勝負!
●
「……感覚的には、生きた塩水かな?」
半身を氷漬けとさせられて、地縛霊が苦悶に呻く。
そんな敵の姿を眺めながら言葉を零したのは、セフィリカだ。
セフィリカは優秀な剣士にして魔術師であると同時に、高度な技術を使いこなすエンジニアでもある。敵の特性を見極めんとするその瞳は、そんなエンジニア特有の強い好奇心を発露する様な輝きに満ちていた。
「──で、どう攻める? って、問いかけるまでもないか、君には」
そんなセフィリカが見抜いた通り、敵の最大の特徴は液状に近い形態を取ることが出来る異能にある。
液状。つまりそれは斬撃や打撃と言った物理攻撃がイマイチ通じにくいという特性を示す訳で。戦い方次第では、梃子摺る事になる事だろう。
……とは言え、生命の埒外とも呼ばれる猟兵であればその程度の特性を超える手段は幾らでも持つ。
その中でも特に、セフィリカが問い掛けた相手──アルトリウスは、飛び切りの異才であると言えた。
「ああ。理由も忘れたのなら、早々に眠るべきだな」
世界を構築する理、原理の力を振るうアルトリウスである。その力の特性を考えれば、相手の特性に対する対応などを考える必要は無い。只々真正面からゴリ押せば、大抵の状況は打破出来る物である。
そしてその正面突破の一手は、今回も通じるものであった。
「フッ──!」
鋭い呼気が戦場に響けば、アルトリウスの身体が動く。
まるで地を滑るかのようなその動きもまた、原理の力の応用だ。諸々の抵抗や生じる余波など、全て無視して打ち消しての行動である。
そうして一息に地縛霊との距離を詰めれば……無手の一打を叩き込む。
凍えた身体に痛烈に突き刺さる白打。その衝撃にまた一度大きく呻き溢れる涙を地に流す地縛霊だが……この一打は、あくまで布石だ。
「──下せ」
原理から流れ込む力をそのまま流し込む様なイメージで、その力を発動させる。
【天印】と名付けられたその力は、先程のサイコチェーンソー達の戦いでアルトリウスが見せた物と同系統の物。所謂、敵能力の発動阻害を主目的とした物である。
だが、それなら先だって見せた能力で十分である。だがあえて違う能力を用いたのには、理由がある。
──ッ、ヴ、ァ゛……!
その理由こそが、目の前で苦しみ始めた地縛霊の様子で示される。
アルトリウスが流し込んだのは、敵の力を阻害する『静止』の力だけでは無かった。彼が流し込んだ力は、もう一つあったのだ。
それは、『崩壊』を司る力。敵の存在原理を崩壊させる事で、敵の存在そのものを崩壊させる様に導いたのだ。
尤も、その崩壊は直ぐに訪れる物では無い。他の原理の力で加速しているとは言え、毒に蝕まれるようにじわりじわりとした物である。
(捉え所がなければ、捉える。お見事だね)
そんなアルトリウスの振るった力を正確に理解して、感嘆の息を漏らしたのはセフィリカだ。
原理の力を振るう、文字通りの万能の戦士。彼はその力を組み合わせる事で、数多の敵を封殺してきた。
そんな彼の力を、セフィリカは当然心強くも思っているが……。
(……こんなガッチリ決まったコンボ見ちゃうと、崩し方を考えちゃうなー)
それはそれとして、その強力な力の崩し方に思案を巡らしてしまうのもセフィリカであった。
(悠長ね、セリカ)
そんなセフィリカの思考を読み取り、腰に佩く魔剣から響くのは呆れたような念。
姉代わりの魔剣のその反応は、まさに他人事の典型とも言えるもの。
だが、しかし……。
(いやいや。寧ろコレ、シェル姉寄りの感覚じゃない?)
(ま、そうね──で、セリカ的な策は?)
姉の影響による感じ方だし、と反駁すれば、姉もあっさりそれを認めて……具体的な手について、問いを重ねる。
ふむ、と一つ息を吐いて考えを深める。
アルトリウスの振るう原理の力。その力は既に何度か間近で目にし、その性質も完璧ではないが理解はしている。
故に、理解が進んだ今ならば。崩しの手段の一つや二つは思い浮かぶが──。
(──初見じゃ、目の前の奴のようになると)
(そーいうこと。ま、容赦ないからね、彼)
思考の先を読んだ姉の念に、素直に頷く。
アルトリウスの強みとは、『その世界の理の外にある力を振るう』という事に尽きる。それはつまり、世界の常識に囚われた存在に対して、認識外の力を振るえるという事だ。
彼の力に対応出来るとすれば、『同じタイプの力の使い手』か、または『世界の常識の外を知る手合』か。もしくは『彼の力の理論を理解した者』でないと難しい。
畢竟、アルトリウスという存在は『究極の初見殺し』とも呼べる存在なのだ。
「──セフィリカ」
「っと、りょーかい任されたっ!」
そんな考察はさておいて。ともあれ、これで遠からず、目の前の地縛霊の『終わり』は確定された訳だが……このまま放置して終わらせるというのも、些か無慈悲という物だろう。
自身の名を呼ばうアルトリウスのその声に意識を切り替え、セフィリカが応える。
「じゃあ、せっかく大きな一撃当てられるチャンスを貰った所で……久々に大技、行っとこうか!」
魔剣の柄を握る。集中力を、魔力を、極限まで高め、同調する。
──シェル姉、準備は良い?
──いつでも良いわよ。
そうして二人の意識が重なったその瞬間、セフィリカの姿が掻き消えて──。
──斬ッ!!
戦場に一条、閃く銀閃。そして直後響くのは、一際高い地縛霊の断末魔の如き叫び声。
見れば半ば凍りついた地縛霊の身体が、両断されていた。そしてそんな地縛霊の背後には、剣を抜刀し残身を取るセフィリカの姿があった。
魔剣と意識を重ねた瞬間、セフィリカが放ったのは自身の修める剣術流派の基礎にして奥義、一式・月詠ノ祓。その改良型である所の、【月詠ノ祓・隠神(ツクヨミノハラエ・イヌガミ)】。一日一度が限度の、まさに全身全霊の込めた一太刀である。
瞬間に全力を注ぐ、集中力の極地たる必殺の一太刀。その剣でセフィリカは、見事に地縛霊の身体を断ち斬ってみせたのだ。
「──っ、く……」
「大丈夫か」
だが流石にそれだけの一撃を放てば、身体に反動が来るのは致し方ない事。
全身を襲う鈍い痛みと疲労に、セフィリカの身体がふらりと揺れるが……床に倒れる事は無い。既の所でアルトリウスがその身体を支えたのだ。
セフィリカの斬撃を受けた地縛霊は、まだ消えない。だがその消耗具合を見れば、あと一押しで倒しきれるのは明白だ。
とは言え、セフィリカの消耗具合を考えるとこれ以上の戦闘はよろしくないはず。ここは退いておくべきだろう。
何、心配する事は無い。敵の滅びは最早確定しているし……この場に集う猟兵は、まだいるのだから。
そうして支え合って、二人が戦場を一度退く。決着の時は、直ぐそこに迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
秋月・信子
●POW
あれが妖獣化オブリビオン…この商業ビルに囚われている地縛霊
恨み、辛み、妬み、嫉み、嫌み、僻み、やっかみ…
彼女が流す涙と嗚咽には人生の七味とも呼ばれる負の感情がひしひしと感じ取れますが、七つのみは全て『悲しみ』に覆われている気が致します
ですが、何故彼女はそれらに囚われているかを問い質そうとしても、問答無用に衝動に駆られて怨嗟の念をこちらに向けてくるでしょう
そして、力で捻じ伏せて祓ったとしても、果たしてそれが彼女の救済になりえるのか
敵が悪霊の類であると事前に知らされてた為に用意していた銀の銃弾
狙うは蛇蝎の如く濁り淀んだ内なる悲しみを慈雨のように痛み与えない銀の弾雨、浄化の魔弾で祓ってみます
●
身体を断たれ、断末魔の悲鳴を上げ続ける地縛霊。
受けたその傷は最早致命傷の粋に達しており、放置してもいずれ存在を保つことすら出来なくなり消えゆく事は確定的である。
だが、だがしかし。そんな状態に陥ってもなお、地縛霊の怨嗟は消えはしない。悶え苦しみながらも、淀む気配を場に漂わせ続けていた。
(あれが、妖獣化オブリビオン。この商業ビルに囚われている地縛霊……)
そんな地縛霊の姿を眺める信子の胸に宿る感情は、『哀れみ』だった。
恨み、辛み、妬み、嫉み、嫌み、僻み、やっかみ……地縛霊が流すあの涙からは、『人生の七味』とも呼ばれる負の感情がひしひしと感じられる。だがその七つの『み』は、全て『悲しみ』で覆われているようにも信子には思えた。
(ですけど、何故彼女がそれらの感情に囚われているのかを問い質しても……)
何故、悲嘆に涙を流すのか。何故、この場に囚われているのか。それを問うても、答えは返ってこないだろう。それどころか問答無用に衝動に駆られたまま怨嗟の念と害意をこちらに向けてくる事だろう。
そんな地縛霊の害意と怨嗟を、力で捻じ伏せ祓ったとして。果たしてそれは、彼女の救済となり得るのか──。
──aaaァァァアア゛ア゛ッッ!!
「──くっ!?」
悩み迷う信子。そんな彼女の逡巡など知らぬことかと、怒り狂う地縛霊がその腕を伸ばして振るう。
既の所で信子が気付き躱した為、その一撃が信子を捉える事は無かったが。あと一歩回避が遅ければ、怨嗟の腕は華奢な信子の身体を弾き飛ばしていた事だろう。
……迷いは、己を殺すことになる。息を吐きだし、吸い込んで……顔を上げた信子の目に、もう迷いの色は無かった。
(此れは、身体を撃たず中に巣食うモノのみを射抜く魔弾……)
愛用の自動拳銃の弾倉を引き抜き、懐から取り出した弾丸を装填する。
信子が用意したその弾丸は、聖別された銀製の弾丸だ。今回の敵が悪霊の類であると事前に知らされていた為、予め用意してきた物である。
これを使う事が本当に正解なのかは、今も信子には判らない。だがそうと決めた以上は、もう迷いはしない。
「セット──ファイアッ!」
弾丸が込められた拳銃を指向し、狙いを定め、放つ。
空気の抜ける様な音と共に放たれたその弾丸は。今も溢れる涙のままに暴れる地縛霊のその胸に一直線に突き刺さり──あっさりと、貫いた。
──~~~~~ッ!?
瞬間、最早何度目になるか判らぬ声なき声を上げる地縛霊。
だがその目には、痛みによる敵意の色は薄く……未知の感覚に対する戸惑いの色が浮かんでいる様に、信子には見えた。
……信子が放った魔弾は、聖別された銀の弾丸。迷える悪意と穢れを祓う、救いの魔弾である。
その弾丸が敵の胸を貫いたその瞬間、敵の魂の中で蛇蝎の如く濁り淀んだ悲しみも共に貫き、祓ってみせたのだ。
その一撃は、まさに全てを優しく包み癒やす慈雨の如し。
【浄化の魔弾(パーガティヴ・ショット)】の面目躍如、と言った所である。
──ァァァ……。
ダメージが限界を越え、宿す悲しみも祓われて。地縛霊が、静かに消えていく。そうして完全にその存在が消えてしまえば……後に残るのは、涼やかな秋の夜風が吹き抜ける屋上の風景ばかりである。
まるで、先程までの戦いが嘘のような光景。だが、それで良いのだ。
世界の平和は、人知れずに守られるもの。『シルバーレイン』と呼ばれるこの世界に於いては、平和とはそういうものなのだから。
再び夜風が吹き抜けて、月の光が屋上を照らす。
もう、この屋上が涙に濡れる事は……二度と、無いだろう。
成功
🔵🔵🔴