狂い哭く音楽のサバト
#シルバーレイン
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「皆さんこんばんは……ロートリクです……」
とある平日のゴールデンタイム。某SNS上にて1人の配信者がライブ配信を始める。
画面に映し出されたのは、赤いギターを担いだ可憐な少女。背景から所在を特定できるようなものはなく、やや古ぼけた印象の音響設備と配信機材だけが並んでいる。
「前回の弾いてみた動画、1000万再生突破ありがとうございます……今回はそのお礼もこめて、沢山リクエストにも応えていこうと思うから……最後まで聞いていってね……」
コメント欄には「待ってました」「最高」「愛してる」などのメッセージが飛び交い、文字とアイコンの洪水が熱狂的な雰囲気を作り上げている。ゆうに万を超える人々が今、ネットを通じてリアルタイムで彼女の存在に注目していた。
「それじゃあ、最初の一曲は……『Silver Rain』」
配信越しにでも伝わる熱狂に、少女は静かな恍惚を味わいながらギターをかき鳴らす。
プロも裸足で逃げ出すような、繊細かつ力強い超絶技巧。あまりにも強烈な音楽の力に視聴者は脳天をブン殴られ、SNSによる拡散、同接数の増加は止まることを知らない。
――現代に蘇りし悪霊(ゴースト)は、流行とネットの力で信者を増やしつつあった。
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「新たに発見されたシルバーレインの世界で、欲望を満たすために人間の支配を求める『リリス化オブリビオン』の出現が予知されました」
この世界ではかつて生命根絶を目的とした「ゴースト」と呼ばれる脅威に「能力者」という異能者達が立ち向かい、勝利を収めたはずだった。しかし現在、オブリビオンとして蘇った過去の脅威により、世界は再び「銀の雨が降る時代」に逆戻りしようとしている。
「今回発見したリリス『ロートリク』は、音楽を極める事に快楽を覚える少女のゴーストです」
最高の音楽を奏でることが彼女の悦び。その恍惚は聴衆の存在でより高まる為、彼女はより多くの人間を籠絡し、自分の演奏を聞かせる為だけの奴隷にする計画を立てている。
「そのためにロートリクはネット上に自分の演奏動画をアップロードしており、SNSを通じてフォロワーを増やしています」
その人間業ではない超絶技巧によるギター演奏は、既にネットで話題になりつつあり、動画の再生数もうなぎ登り。若者世代を中心に熱烈なファンも多く、このままでは危険な兆候が見られる。
「ロートリクの目的は籠絡の完了した人間を『サバト』と呼ばれる儀式の生け贄にして、恍惚と共に強大なパワーを得ることにあります」
もしこの計画が発動すれば多くの犠牲者が出るうえ、力を増したリリスによるシンパの増加はさらに加速するだろう。そうなる前に倒さければならないが、サバトの予定地でもある現実世界におけるロートリクの塒は、まだ所在が明らかになっていない。
「リリスの塒を突き止めるために、まずはシンパになるふりをして敵に近づきましょう」
そう言ってリミティアが見せたのは、SNSアプリをインストールしたスマートフォン。敵がネットを活動の舞台にしているなら、同じネットを通じての接触そのものは容易だ。
「ロートリクは用心深くリアルでの正体を隠していますが、音楽で人を籠絡し支配したいという欲望には逆らえません。それを利用して交流を深めれば必ず隙を見せるでしょう」
ファンを装って演奏の感想を呟いたり、自分でも同じ曲の動画を上げてみるなどして、ロートリクの興味を引きつつ他のシンパとも積極的に交流し、熱心な信者と認められれば向こうから迫ってくるだろう。
「相手に敵視されるような荒らし行為は厳禁です。うまくシンパとして取り入って、情報を引き出して下さい」
巧みに警戒を解くことができれば、敵はまだ誰にも明かしていない拠点の秘密を漏らすだろう。居場所を突き止めれば、後はサバトの準備が整う前に速やかな突入あるのみだ。
「現状では塒の詳細は不明ですが、おそらくロートリクも悪意ある侵入者への対策として何らかの妨害を用意しているはずです。くれぐれもご注意下さい」
塒の奥には血塗れのギターを抱えたロートリク本人がいる。欲望のままに音楽を奏でる彼女の技巧は、オブリビオン化によりユーベルコードの域まで高められており、油断してかかれば痛い目にあう。
「ですがリリス化オブリビオンには自己の生存よりも『欲望』を優先する傾向があり、たとえ敵に止めを刺せる状態でも『欲望』を満たせそうならすぐには殺しません」
この性質を利用できれば、普通に戦うよりも楽にロートリクを倒す事ができるだろう。
罪なき人々を音楽の奴隷に堕とし、支配せんと目論むゴーストの野望を打ち砕くのだ。
「かつて能力者達が救った人々の命を守るためにも、皆様の力をお貸し下さい」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、シルバーレインへ道を開く。
オブリビオンとして復活したゴーストと猟兵達による、新たなる戦いの幕が上がる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回の依頼はシルバーレインにて、ネットを通じて人々を支配しようとする「リリス化オブリビオン」の撃破が目的となります。
1章はSNSを通じて敵の情報を集めます。
本人や周りのシンパ達とネット上で接触し、表向きは楽しく交流しつつ塒に関する情報を集めてください。
敵は慎重にリアルの情報を漏らさないようにしていますが、逆らいがたい欲望を抱えているため、そこを突けば警戒を解けるでしょう。
無事に塒を特定できれば、2章は突入するシーンとなります。
塒の内部および道中には敵の妨害が存在するため、突破は容易ではありません。詳細は2章に移行してからお伝えします。
3章は『ロートリク』との決戦です。
演奏の力をユーベルコードの域まで高めた強敵ですが、自らの欲望を生存以上に優先するため、そこを利用すれば隙ができるのは1章と同じです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『SNSだべり場』
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POW : 多くの友達や知らない人と積極的に話す
SPD : 気の利いた返しやジョークで盛り上げる
WIZ : タイムラインを眺めながら気に入った発言に「いいね」する
イラスト:乙川
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雛菊・璃奈
…わたし、SNSとか、(各世界で多少知識や経験はあれど)馴染みが薄いから苦手…(へにゃり)
でも、なんとか頑張らないと…。
銀誓館学園の人にも(操作とか色々)手伝って貰いながら交流するよ…。
一応、全員に精神防御【呪詛、オーラ防御、結界術、破魔、高速詠唱】を掛けつつ、動画を視聴して感想を上げたり、ロートリクの応援動画やサイト(偽)を作って応援する等、熱心なファンを装って接触・交流し、「オフでの生演奏が聴きたい!」「やっぱり生ライブは臨場感が違うから」みたいな感じで敵の欲望を刺激する形でオフのライブやイベント開催を促すような書き込みを行い、情報を可能な限り引き出すよ…。
「……わたし、SNSとか、馴染みが薄いから苦手……」
エンパイア出身の雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、パソコンを前にへにゃり、と弱々しく尻尾と耳を垂れさせる。各世界を巡る上で多少の知識や経験はあれど、高度に情報化された社会やネットでの立ち回りについて、彼女はあまり詳しくなかった。
「でも、なんとか頑張らないと……」
これもシンパを増やそうとするオブリビオンの企みを挫くため。幸いにしてこの世界の能力者組織である「銀誓館学園」の協力を得られた彼女は、SNSの操作など色々なことを手伝ってもらいながら情報収集を開始する。
「えっと……動画を見るには、ここを押せばいいの……?」
不慣れな手付きで端末を操作し、まずは動画サイトに上げられたロートリクの演奏動画を聞いてみる。音楽を極める事に快楽を覚えると言うだけはあって、その演奏技術は文句なしに高く、ジャンルにあまり詳しくない璃奈でも心震わすものを感じる。
「確かに、これはすごいかも……」
念のため、動画を視聴する自分や協力者たち全員には呪術的な精神防御を掛けてある。
オブリビオンの演奏に魅了されてこちらまでシンパになってしまったら、ミイラ取りがミイラである。対策には意味があったと言えるし、敵の実力の程もこれで知れた。
「とても、素晴らしかった、です、と……」
動画のページの下には視聴者がコメントを残せる欄がある。璃奈はそこに演奏の感想を上げるのを皮切りに、熱心なファンを装っての活動を開始する。なお、必要となる技術や設備は銀誓館学園の全面協力である。
「まずは応援動画とか、偽の応援サイトとか……」
ハイテクに馴染みの薄い彼女には動画ひとつ作るのも大変だったが、これも依頼の為と思って努力する。演奏に歌を合わせてみたり、ロートリクのこれまでの活動や動画を纏めたサイトを作ったりと、敵の興味を引けそうなことには何でも手を付けていく。
『オフでの生演奏が聴きたい!』
特に重要になるのはロートリクとファンたちの交流の拠点である、SNS上での活動だ。
うまくグループへの接触に成功した璃奈は、ファンと一緒になって感想を言い合うなど交流を深めつつ、敵の欲望を刺激するような書き込みを行う。
『やっぱり生ライブは臨場感が違うから』
『わかりみが深い』『動画でもヤバいのに生だとどうなっちまうんだ』『そら昇天よ』
璃奈の呟きにはファンからも多くの同意と「いいね」が集まり、タイムラインの流れが変わる。現状ではネット上でしか活動していないロートリクに、こうしてオフのライブやイベント開催を促すのが彼女の狙いだった。
『ありがとうございます。近いうちにオフイベの開催も企画しているので、待っててくれると嬉しいです』
そんな璃奈とファンたちの集うSNSに、ロートリク本人からの書き込みが投下される。
期待に応えるその内容に、ファンは勿論大盛り上がり。「いつやるの?」「場所は?」など質問が溢れ、相手は「まだ詳しくは言えませんけど」とぼやかしながら答えていく。
「会えるのを、楽しみに、しています、と……」
これまで慎重にリアルの情報公開を避けてきたロートリクだが、自分自身の支配欲には勝てなかった。ひとつひとつは大した事のない内容も、集めれば特定の手掛かりとなる。
うまく情報を引き出すことができて、璃奈はモニターの前でほっと息を吐くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
SNS上で「尊敬してます!」「大ファンです!」みたいなアプローチをコメントであげつつ、こちらも動画を投稿。
対抗するのではなく、リスペクトするファン・妹分的な感じで同様の曲や似たジャンルの曲で【歌唱、存在感、ダンス】【プリンツェス・ツェーン】を使った「歌ってみた動画」を上げる事で聴衆を「魅了」し、急上昇でファンや注目を集めることで、ロートリクの興味を引くわ。
ファンアピールしつつ、「同ジャンルを扱う弾いてみたと歌ってみたで演奏コラボとかできないか」等、大型コラボによるファン増加等の利用価値を匂わせてリアルでの接触を試みる様に連絡を取り合い、少しずつ相手の情報を引き出すように接触していくわ
「まずはこちらの存在を相手にアピールしないとね」
ネットで活動する敵からリアルの糸口を探る為、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は端末片手にアプローチを始める。まずは「尊敬してます!」「大ファンです!」といったコメントをSNS上にあげ、自分の存在を主張する。
「次はこちらも動画を投稿してみようかしら」
相手の演奏に対抗するのではなく、あくまでリスペクトするファン・妹分的な感じで。
それで他のファンからの反応を集めることができれば、ロートリク本人の興味を引くこともできるだろう。そして彼女には自信があった。
『ここは一時、わたしのステージ……至福の一時をお見せしましょう♪』
早速動画撮影の準備を整えたフレミアは、画面の向こうの人たちに綺麗な笑顔で挨拶。
そして【プリンツェス・シェーン】を使用して、天上の歌声と華麗な踊りを披露する。
選曲はロートリクと同様の曲や似たジャンルの曲をチョイス。あちらの演奏技術も人外のレベルだが、彼女の歌と踊りの美しさもユーベルコードの域に達している。
『これが初投稿?!』『すごすぎる……』
新星の如くネットに現れた吸血姫の「歌ってみた動画」は、たちまち多くの聴衆の尊敬と感動を呼んだ。魅了されたファンの手で拡散されることで、彼女の存在はSNSの急上昇にも入り、さらなる注目を集めていく。
『わたし、ロートリクさんの大ファンなの♪』
最初の動画で注目されると、フレミアはロートリクのファンであることをSNS上で猛烈にアピールする。あくまで謙虚にリスペクトの態度を取りつつ、仲良くなりたいという意図をにじませることで、興味を引かせつつ欲望を刺激する作戦だ。
『同ジャンルを扱う弾いてみたと歌ってみたで、いつか演奏コラボとかできたらいいなと思っているわ♪』
『なにそれ神コラボじゃん』『絶対実現してほしい!』
今SNS上で話題を集める配信者2名のコラボの匂わせに、多くのファンが反応を示す。
ロートリクの既存のファンだけでなく、フレミアの「推し」という形で新規のファンとなった者達もそこには含まれていた。
『はじめまして。あなたのような方にファンだと言ってもらえて嬉しいです』
この賑わいに当然ながらロートリク本人も反応。フレミアとのコラボにさらなるファンの増加等の利用価値を嗅ぎつけたか、向こうからも積極的にアプローチを仕掛けてくる。
『DM失礼します。コラボの案ですが、具体的に企画として進めていきませんか?』
『ええ、喜んで! とても光栄です!』
ダイレクトメッセージで送られてきた文章に、フレミアは静かに笑いながら返信する。
コラボのために連絡を取り合えるようになれば情報を得られるし、いずれはリアルでの接触も試みられるだろう。まさに彼女の狙い通りの展開だ。
(ここで焦って居場所を聞いたり、向こうを警戒させてしまってはだめね)
獲物が釣り針に掛かった時こそ慎重に、フレミアは少しずつ相手の情報を引き出すように話を進める。表向きはにこやかに交流を深めつつも、索敵の網は徐々に狭まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
とあるライブ配信中。
コメント欄には「デビルカビパン様」「死神降臨」「SATSUGAI」とカルト的な雰囲気を作り上げている。
その圧倒的な音痴で彗星の如くデビュー。音痴ブームに社会現象とスターダムにのし上がった。一時期活動停止していたデビル・カビパンは順風満帆。
「新曲…『北海道にシュークリームは存在しない』だ!」
地獄の悪鬼も裸足で逃げ出すような強烈な死神のロックに視聴者は魂を刈り取られ、再生数の増加は止まることを知らない。
もう一人の悪霊はロートリクと並びSNS界二大巨頭と呼ばれるようになる。同じ舞台に異なる伝説が同居するこの時、ロートリクの方からカビパンにコンタクトを取ろうとするのは必然であった。
「待たせたな、貴様等」
それはロートリクのとは別の、とあるライブ配信。画面の前で瀟洒な軍服に身を包み、キリッとした顔で立つカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)がいた。
『デビルカビパン様』『死神降臨』『SATSUGAI』
コメント欄には熱狂的な賛美と物騒なワードが並び、一般的な配信における陽の雰囲気とはまるで真逆な、ある種のカルト的な雰囲気を作り上げている。だがこの異様さこそがここでは当たり前――そう、デビル・カビパンの配信においては。
「ナウなヤングにバカウケの、新時代の癒やし系を教えてやる」
ある日突然シルバーレイン世界のSNS上に現れたカビパンは、その圧倒的な音痴で彗星の如くデビュー。音痴ブームに社会現象とスターダムにのし上がった。あまりに音痴過ぎて心をやられる者が続出したため、一時期活動停止するトラブルもあったがすぐに復活。
『あの音痴が癖になる』『完全に洗脳された』『1日100回はリピートしてる』
などなど、ちょっとヤバめに洗脳されたファン達の熱意に支えられて、投稿した動画はミリオンが続出。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、デビル・カビパンは順風満帆であった。
「新曲……『北海道にシュークリームは存在しない』だ!」
そして今夜の配信は、ファン待望の新曲お披露目。地獄の悪鬼も裸足で逃げ出すような強烈な死神のロックに視聴者は魂を刈り取られ、再生数の増加は止まることを知らない。
『来た!』『マジヤベエ』『死ぬ』『死んだ』
おそらく画面の向こうでは【カビパンリサイタル】にやられた連中の山ができている。
カビパンの絶望的にあまりにも酷い音痴な歌と、頭にこびりついて離れない死にかかわる曲は、不愉快というレベルを越えてもはや精神攻撃に近いそれなのだ。
『今回の曲も最低だった!』『歴代最悪を更新したな!』
そんな精神攻撃を耐え抜いた猛者達のお陰で、再生数の増加は止まることを知らない。
ネットの世界に現れたもう一人の悪霊は、今やロートリクと並んでSNS界二大巨頭と呼ばれるようになっていた。ロートリクが正の面なら、カビパンは圧倒的負の面だが。
「……ひどい歌……でも、これだけ注目されているなら、チャンスかも……」
同じ舞台に異なる伝説が同居するこの時、ロートリクの方からカビパンにコンタクトを取ろうとするのは必然であった。あちらの音痴と組み合わせることで自分の演奏の技巧はさらに引き立ち、今よりもっと多くのファンを獲得できる――そう考えたのだ。
『はじめましてデビル・カビパンさん。あなたの歌動画、見ています』
より多くの人を音楽で籠絡したいという欲望のまま、ロートリクは悪魔に呼びかける。
その先に待っているものが己の破滅だとも知らずに、彼女はゴーストにも支配できない理解不能の因子に触れてしまったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
成程、この世界の嘗ての『リリス』は特定事象への執着が特に顕著なタイプだったのですね
(銀誓館学園のネット借りつつ、猟兵未覚醒の生徒に協力仰ぎ)
事件解決の為、ご協力感謝いたします
では、ご命令を頂けますか
…「敏腕プロデューサーになれ」と
ネット配信音楽番組の情報を収集
それを元にダミーサイトを作り、ネット上のアーティスト集うコンテスト番組企画を偽装
出演依頼のスカウトマンとしてSNS上で振る舞いましょう
優勝も夢ではありません
ですがそれ以上に…私は、貴女の音楽を更に多くの人々に聞いて貰いたい!
その手伝いをさせて貰えませんか
相手にとって渡りに船
接触を図る可能性は高いでしょう
…良い腕前なのは、確かなのですがね
「成程、この世界の嘗ての『リリス』は特定事象への執着が特に顕著なタイプだったのですね」
ここは銀誓館学園のコンピュータルーム。トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は事件解決の為に学園のネットを借り、記録された過去のゴースト事件の情報や、現在ネットで活動しているリリス『ロートリク』の情報を集めていた。
「事件解決の為、ご協力感謝いたします」
「ううん。このくらいお安いご用ですよ」
協力を仰いだ相手はまだ猟兵に未覚醒の生徒。修復された世界結界の影響により能力は弱体化しているが、一般人とは違い超常現象を認識できる貴重な現地協力者たちである。
「では、ご命令を頂けますか……『敏腕プロデューサーになれ』と」
「うん……うん? わかりました」
なれと言われてなれるものなの? という疑問を浮かべながらも、トリテレイアに頼まれた通りの命令を生徒は口にした。これにより【銀河帝国量産型ウォーマシン・非常時越権機能行使】のロックが解け、電子頭脳に凍結封印されていた各種データが解放される。
「……承諾いたしました。感謝します」
騎士に搭載された裏機能と言えるこれは、トリテレイア自身にアンロック権限がない。
なので用意した「命令」を協力者に命じてもらうという裏技めいた手順が必要なのだ。面倒な手順の要るユーベルコードだが、それに見合うだけの性能はある。
「それでは、プロデュースを開始いたします」
手始めにトリテレイアはネット配信音楽番組の情報を収集し、それを元にダミーサイトを作り、ネット上のアーティストが集うコンテスト番組企画を偽装する。学園のPCを借りて行われたこれら一連の作業には、せいぜい1~2時間しかかかっていない。
「速っ! しかも良くできてる……」
それを見た生徒が驚いたのも無理はない。今のトリテレイアは命令完遂のために汎ゆる知識や技能をデータベースから参照し、万事に卓越した能力を発揮する事ができるのだ。
『現在、本企画では出演して下さるネットアーティストの皆様を募集しております』
下準備が完成したところで、いよいよトリテレイアはロートリクにコンタクトを取る。
SNS上では出演依頼のスカウトマンとして振る舞い、今をときめくアーティストの1人として注目しているという設定でオファーをかけ、巧みな文章で相手を誘う。
『優勝も夢ではありません。ですがそれ以上に……私は、貴女の音楽を更に多くの人々に聞いて貰いたい! その手伝いをさせて貰えませんか』
文面からも伝わってくる熱意もさながら、企画サイトのほうも良く出来ていて素人にはダミーとはわかるまい。「敏腕プロデューサー」トリテレイアの仕事は実に見事だった。
『……ありがとうございます。とても光栄です』
より多くの人間をシンパにしたいロートリクにとって、このお誘いは渡りに船だった。
接触を図る可能性は高いと見込んだ通りに、さほど時間を置かず相手から返信がくる。
そのまま当日までの打ち合わせやスケジュールを詰めるというていで、トリテレイアは彼女から情報を引き出していく。
「……良い腕前なのは、確かなのですがね」
SNSでの発言と並行して機械騎士が見やるのは、動画サイトに上げられたロートリクの演奏動画。情報収集の一環として視聴したそれは、技術的には本当に見事だった。弾き手が邪なる意思を持ったオブリビオンである事が、惜しいと感じられるほどに。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『ポルターガイスト』
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POW : 飛来する物品を叩き落とす
SPD : 物品を俊敏にかわして進む
WIZ : 魔力干渉で物品の飛来を妨げる
イラスト:乙川
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シンパを装って敵と接触した猟兵達は、無事怪しまれず情報を引き出すのに成功する。
各々の成果を照合した結果、ロートリクの塒(ねぐら)はとある都市の廃ビルにあると分かった。既に居住者は誰もおらず、ゴーストの潜伏拠点としては丁度いい場所だろう。
相手が拠点を突き止められたと気付かないうちに、猟兵達はすぐさま現地へと向かう。
『誰……? どうして、ここが……』
人気のない廃ビルに踏み込むと、どこからか声がする。動画や配信やSNSで話していた少女と同じ声だ。ネットでは常に淡々としていた印象とは違い、今は焦りが滲んでいる。
『あなたたち……猟兵? まさか、もう見つかるなんて……』
聞こえてくるのは声だけだが、向こうからは此方が見えているようだ。監視カメラ等の設備がまだ生きているのかもしれない。侵入者がただの一般人や自分のファンではない事を察した彼女は、すぐさま敵意を露わにする。
『まだライブの準備はできてないの……帰って……!』
ロートリクが声を上げると、廃ビルの中に散らばっていた物品や瓦礫が浮かび上がり、猟兵達に襲い掛かってくる。心霊現象として有名なポルターガイスト現象というやつか。
ただの物品なので当たっても痛い以上の害はあまり無さそうだが、ここで足止めを食らっていれば敵に体制を整えられてしまうかもしれない。
籠絡した人間を生け贄にして力を得る、邪悪なサバトの儀式(ライブ)を行う事こそがロートリクの目的。その祭場でもあるこの拠点をこのままにしておくわけにはいかない。
敵のいる上階を目指して、猟兵達はポルターガイストの妨害に立ち向かいながら廃ビルを駆け上がっていく――。
カビパン・カピパン
猟兵達が突入する前…
『デビルカビパンさん。コラボしませんか』
『いいよ』
招かれたロートリクはカビパンの塒を訪れた。
「えっ…」
絶句。様は悪魔がひそむ殿堂、パンデモニウム。
玄関前から空のペットボトル、瓶、食べ物のゴミ袋などが溢れるほど転がっており汚屋敷であった。
「ようこそ私の城へ。どうぞ入って」
足の踏み場もない。そこらにある入れ物はスープやらが凝固してゼリー化し、蝿やら蟻やらがたかっていた。自分から話を持ち掛けておいて帰ることは流石にできなかった。
「まぁ座ってくれ」
(座る場所、ない…)
悪魔的に汚い部屋で心霊現象以上に恐ろしい体験をしたロートリク。精神的な動揺は決して拠点を突き止められただけではない。
『デビルカビパンさん。コラボしませんか』
『いいよ』
それは猟兵達が塒に突入する少し前のこと。ロートリクはカビパンの塒を訪れていた。
サバトの開催に先駆けて、今をときめく超音痴シンガー「デビル・カビパン」を自分の虜にして、コラボでさらなる信者増加の布石にしようと考えていたのだろう。だが――。
「えっ……」
ギターを担いで指定の場所までやって来た彼女は思わず絶句する。目の前にそびえ立つその様は悪魔がひそむ殿堂、パンデモニウム。玄関前から空のペットボトル、瓶、食べ物のゴミ袋などが溢れるほど転がった汚屋敷であった。
「ようこそ私の城へ。どうぞ入って」
ガチャリと玄関のドアを開ける音がして、家の中からカビパンがひょこりと顔を出す。
ネットではデビルとか言われてる割にフランクな態度である。ロートリクは躊躇したものの、ここまで来て何もせずに帰るのはゴーストの沽券に関わると考えて覚悟を決める。
「お、お邪魔します……」
意を決してドアをくぐれば、中は足の踏み場もない。そこらにある入れ物はスープやらが凝固してゼリー化し、蝿やら蟻やらがたかっている。仮にも女性として、いや人間としてこの惨状はいかがなものか。もはやお城というより汚城であった。
(せめてゴミくらい捨てたらいいのに……)
目の端に転がる汚いモノをなるべく視界に入れないようにして、所在なくその場に立ち尽くすロートリク。さっそく中に入ったのを後悔しかけていたが、自分から話を持ち掛けておいて帰ることは流石にできなかった。
「まぁ座ってくれ」
(座る場所、ない……)
やたら偉そうな態度で勧められても、マジで座るところがない。床の上にあるスペースはちょうどカビパンが座る1人分だけで、あとはゴミとか家具とかよく分からない雑貨等で埋められている。ひょっとしてワザとやっているなら大した嫌がらせである。
「それで、コラボの話だけど……」
「あーはいはい。それより何か食べる? 乾杯しましょ」
さっさと本題の相談をして帰ろうとするロートリクだが、カビパンはやる気のない態度でのらりくらり。付近に置いてあったスーパーの袋に手を突っ込み、がさごそごと食べるものを漁っている。
「あ、シュークリームとオレンジジュースがあったわ。北海道産じゃないけど」
「それ、消費期限大丈夫……?」
一抹どころではない不安を抱く少女に対し、デビルカビパンはどこまでも適当だった。
結局紙コップで乾杯させられ、コラボに関係のない話題を延々と聞かされ。しまいには配信越しにでも気絶者が続出する、あの恐ろしい音痴歌を生で聞かされて――。
「も、もういいです……この話はなかったことで……!」
悪魔的に汚い部屋で心霊現象以上に恐ろしい体験をしたロートリクは、ネットの知人と迂闊にリアルで会う危険性を噛み締めて、ほうほうの体で自分の塒に逃げ帰っていった。
その後、猟兵の襲撃を受けた彼女が精神的に動揺していたのは、決して拠点を突き止められただけはでなく、この衝撃体験が少なからずトラウマとなっていたのだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
見えているのであれば好都合ですね
種明かしをさせて頂きます
飛来する瓦礫などを剣と盾で捌き、駆け上がり
ネット配信番組のスカウトマン…お心当たりは?
改めまして自己紹介を
猟兵の騎士、トリテレイアと申します
ええ、貴女の潜伏場所を割り出す為、身分を偽り接触したのです
センサーでの情報収集で背後から迫る瓦礫を見切り、視線を向けずに捌き
騎士崩れと罵って頂いて結構ですよ
今回の私の手口は其方の情熱に付け込んだ悪辣に過ぎた物でしたから
ですが、貴女がああしたスカウトを受けるのも時間の問題でした
その音楽は“本物”でしたからね
人々をサバトに饗する訳には参りません
監視カメラ発見
一礼し、剣突き付け
直ぐに参ります
ライブのご準備を
「見えているのであれば好都合ですね。種明かしをさせて頂きます」
建物に反響するロートリクの声に返事をしながら、トリテレイアは剣と大盾を構えた。
奥からは大きな瓦礫や壊れた家具などの物品が次々に飛んでくるが、それをガードして捌く手際には余裕さえ見られる。
「ネット配信番組のスカウトマン……お心当たりは?」
『!! まさか、あなた……』
これまではSNSやメール等の文章上でのやり取りだったため、声を聞いても気付けなかったのだろう。だがその一言で相手の反応が劇的に変わったのが、姿を見えずとも分かる。
「改めまして自己紹介を。猟兵の騎士、トリテレイアと申します」
敏腕プロデューサーにしてスカウトマンという、ネット上での偽りの肩書きを捨てて、機械仕掛けの騎士は名乗りを上げる。ここまで来ればロートリクも最初から罠だったのだと気付いたようだ。
『全部、ウソだったのね……』
「ええ、貴女の潜伏場所を割り出す為、身分を偽り接触したのです」
全てはサバトの開催を阻止し、ネットを隠れ蓑にしたオブリビオンを追い詰めるため。
嵌められたと知った少女の怒りを表わすように、周囲の物品がガタガタと震えはじめ、トリテレイア目掛けて一斉に飛んでいく。
「騎士崩れと罵って頂いて結構ですよ。今回の私の手口は其方の情熱に付け込んだ悪辣に過ぎた物でしたから」
激しさを増すポルターガイストの渦中で、騎士は冷静に剣と盾を振るい道を切り拓く。
超常の力とはいえただモノを投げつけるだけの攻撃で、彼を傷つけることはできない。瓦礫の雨降る通路を突破し、上階へと続く階段を一気に駆け上がる。
「ですが、貴女がああしたスカウトを受けるのも時間の問題でした。その音楽は“本物”でしたからね」
偽りのプロデュースとはいえ、ロートリクの演奏を視聴したトリテレイアには分かる。彼女の音楽には人を魅了する力がある。悪用すれば多くの人々を狂わせ、虜にしてしまうことも可能な、危険な力だ。
「人々をサバトに饗する訳には参りません」
『あと少しで……そうなったのに……!』
怒りに震える声と共に、トリテレイアの背後から瓦礫が迫る。しかし彼は後ろにも目がついているかのような挙動で飛来物を見切り、視線を向けることもなく剣で切り払った。
彼のボディに搭載されたマルチセンサーに死角はない。周囲の動体反応から軌道まで、そして先程から自分を見ている監視カメラの配置まで――全てを把握している。
「直ぐに参ります。ライブのご準備を」
『ッ……!』
監視カメラの前で一礼し、剣を突きつけるトリテレイア。それは紛う事なき宣戦布告。
ロートリクの息を呑む声を聞くと、彼はそのまま剣を握りしめて走り出す。ネットでは既に知らない仲ではない相手との"初対面"の時は、すぐそこに迫りつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
あの子が全く無害なただ音楽を奏で聴かせるだけのオブリビオンなら良かったのに…演奏自体は素晴らしいのに残念だわ。
【念動力】の防御膜でポルターガイストによる攻撃を防ぎつつ、先程の言動から監視カメラが生きていると考え、周囲のカメラを探し、カメラを天井、壁面から【怪力】で引っこ抜いて破壊。
更に【ブラッディ・フォール】で「雷鳴の赤龍を捕らえよ」の「赤龍ズメウ紅葉」の力を使用(紅葉の服装+斧に翼と尾が付いた姿へ変化)
紅葉の雷鳴や電気を操る力を使い、非実体化し、引っこ抜いたカメラに繋がっていたネットワークケーブルから、ネットワーク回線に侵入。
カメラを見ていたロートリクの元へ回線を伝って逆に到達するわ
「あの子が全く無害なただ音楽を奏で聴かせるだけのオブリビオンなら良かったのに……演奏自体は素晴らしいのに残念だわ」
飛来する瓦礫や物を念動力の防御膜で弾きつつ、フレミアは心から残念そうに呟いた。
無害なオブリビオンなどそうそう居るものではないと知っていても惜しいと思うのは、それだけロートリクの音楽が気に入ったということだろう。
『だったら、私の邪魔をしないで……!』
どこからか聞こえる少女の声に合わせて、廃ビル内に放置されたガラクタが飛び回る。
その動きは的確にフレミア達猟兵の行く手を阻むような軌道を示しており、向こうからこちらの様子が見えているのは間違いないようだ。
(やっぱり監視カメラが生きているのかしらね)
先程の言動も含めてそう推測したフレミアは、念動力でポルターガイスト攻撃を防いだまま周囲のカメラを探す。あると分かっていれば発見するのはさほど難しい物ではなく、天井や壁面に設置されたカメラがすぐに見つかった。
「これでわたし達を見ていたのね」
『あっ……!』
防御膜を張ったままつかつかとカメラの元に近付き、吸血鬼譲りの怪力で固定箇所から引っこ抜く。慌てたようなロートリクの声にも構わずレンズを破壊すると、浮遊する物品の動きが途端にデタラメになった。こちらの位置を捕捉できなくなったのだろう。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
監視の目を潰したフレミアはさらに【ブラッディ・フォール】を発動し、幽世に住まう妖怪「赤龍ズメウ紅葉」の能力を身に宿す。真紅のドレスはより活動的な衣装に変化し、身体には竜の翼と尾が生え、手元には巨大な鉞が姿を現した。
「貴女がどの部屋にいるかは分からないけど、この監視が仇になったわね」
ふっと微笑む赤龍フレミアの手には、先程引っこ抜いた監視カメラ。本体は破壊したがケーブルはまだ繋がっており、映像データを送る為の導線がビルのどこかに通じている。これを辿ればカメラを見ていたロートリクの元に到達できるはずだ。
「広いネットの海に比べたら、簡単な一本道ね」
フレミアが降ろした赤龍ズメウ紅葉の能力は雷鳴や電気を操り、通信網に潜入する力。
ケーブルであれ電話線であれ、そこにネットワーク回線が通じているならどんな場所にも電波の速さで移動できる、現代社会においては恐るべき能力だ。
「待ってなさい。すぐに行くわ」
『な……っ?!』
バチリと赤い稲光が爆ぜる音を残し、フレミアの姿はカメラのケーブルの中に消えた。
このままロートリクの居場所に移動するまで数秒とかかるまい。非実体化した吸血姫はまっすぐに回線の中を駆け抜けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
【天照】を使えばこんなビル、すぐに踏破できるけど…あまり消耗するのは良くないね…。
ミラ、クリュウ、アイ、力を貸して…。
「きゅ~」
ミラ達を【影竜進化】で影竜に進化させ、影に潜航…。
ポルターガイストの攻撃を避け、ロートリクの元まで敵に察知されないまま廃ビル内の影伝いに進むよ…。
影の異空間までは攻撃は届かないし、影の中なら見つかる事も無いからね…。
…でも、なんでサバトなんてするんだろう…?音楽を奏でて聴かせる事が彼女の悦び(恍惚)なら、そんなことしてパワーを得なくても、純粋に彼女の音楽が好きで、聞いてくれるたくさんのファンがいてくれてるのに…。
「【天照】を使えばこんなビル、すぐに踏破できるけど……あまり消耗するのは良くないね……」
素早く敵の元にたどり着くために、一度は【九尾化・天照】の封印解放も考えた璃奈。光の速さで移動できるこのユーベルコードなら、ポルターガイストの攻撃を避けて進むのも簡単だろうが、本戦前にあまり力を使いすぎるのは危険だとすぐに思いなおす。
「ミラ、クリュウ、アイ、力を貸して……」
「きゅ~」
かわりに璃奈は一緒に連れてきた3匹の仔竜に【呪法・影竜進化】を使用する。彼女の呪力を受けた仔竜達は一時的に急成長を遂げ、影を自在に操る竜として進化を果たした。
『ドラゴン……?! そんなの、連れてこないで……!』
ビルの奥からロートリクの慌てた声が聞こえ、道を阻むように瓦礫の山が降ってくる。
だが、その攻撃に押し潰されるよりも一瞬早く、璃奈と影竜達はすうっと姿を消した。
『……いない?!』
付近の監視カメラを調べても何処にも映っていない。それもその筈で、彼女らは影竜の能力を用いて影の中に潜航したのだ。そこは同じ影を操る能力を持つ者には干渉できない一種の異空間である。
「影の異空間までは攻撃は届かないし、影の中なら見つかる事も無いからね……」
璃奈はそのまま影に潜んで攻撃をやり過ごし、廃ビル内の影から影へ伝って移動する。
もしロートリクが影竜の能力に気付いたとしても、どこに璃奈達がいるのか察知する事は不可能だろう。様々な物品や瓦礫が散らばるビルの中では潜伏できる場所が多すぎる。
『くっ……どこに行ったの……?』
困惑と焦りを含んだ少女の声を聞きながら、魔剣の巫女は悠々とビルの探索を進める。
ここは一見して部屋数も多いが、老朽化が進んでおり実際に住める所は少ないようだ。虱潰しに探していっても、妨害さえなければすぐに敵を発見できるだろう。
「……でも、なんでサバトなんてするんだろう……?」
影の中を移動する間、ふと璃奈はロートリクの動機について考えていた。虜にした人間を贄とした儀式で更なる力を得るのがリリス化オブリビオンの特徴だというが、果たしてそうまでする理由があの少女にあるのだろうか、と。
「音楽を奏でて聴かせる事が彼女の悦びなら、そんなことしてパワーを得なくても、純粋に彼女の音楽が好きで、聞いてくれるたくさんのファンがいてくれてるのに……」
ただ聞いて貰うだけでは満たされない欲望があるのだろうか。オブリビオンと化した者の心象や目的を理解することは難しい。ただ、璃奈の耳にはまだ動画で聴いた演奏が残っている。ひたむきに熱意を捧げなければ奏でられないであろうあの音楽が、
「もし話をすることができたら、聞いてみようかな……」
そんな事もぽつりと考えながらも、璃奈は気を引き締め直して廃ビル探索を再開する。
この塒(ねぐら)の主であるリリス、ロートリクとの邂逅の時は目前まで迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ロートリク』
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POW : ロートリク・ミュージック
レベルm半径内を【ギターの調べ】で覆い、[ギターの調べ]に触れた敵から【意志の力】を吸収する。
SPD : ワンナイト・コラボレーション
【同等の音楽技量を持つリリス】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : ロートリク・ライブ
【超絶技巧のギター】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:Spring
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「そう……ここまで、来てしまったのね……」
敵の塒(ねぐら)に突入した猟兵達は、妨害を乗り越えて遂にロートリクと対峙する。
廃ビルの最上階の何部屋かをぶち抜いて作られたそのフロアは、防音と音響機器を備えた簡素なライブステージのようなつくりになっていた。
「私のライブにようこそ……リアルでのお客さんは、あなたたちが初めてだよ……」
長い緑髪を垂らした少女が血塗られた赤いギターを担ぎ、昏い瞳で猟兵達を見つめる。
ここまで来られてはもはや逃げも隠れもできないと悟ったのだろう。チューニングするように弦を爪弾きつつ、既に臨戦態勢といった気迫だ。
「予定はめちゃくちゃになったけど……こうなったら、あなたたちを最初の生け贄にしてあげる……」
サバトの準備は未だ不十分。ネットで集めたシンパという名の生贄もここにはいない。
それでも彼女に諦めるという選択肢はないらしい。欲望を満たすために人を支配しようとするリリス化オブリビオンの衝動は、生存本能よりも優先されるようだ。
「あなたたち猟兵を私の音楽の虜にできれば……きっと、すごく気持ちいいはず……」
あまり変化に乏しいロートリクの表情が、そう呟いた時だけ喜悦の予感にほころんだ。
事実、ユーベルコードに昇華された彼女の演奏は、猟兵の意志の力すら奪いかねない。ただの音楽家と油断すれば痛い目を見るだろう。
――ネットの力を借りて信奉者を増やしてきたリリスの陰謀に、ここで終止符を打つ。
狂い哭く音楽のサバトを阻止せんとする猟兵の戦いは、クライマックスの時を迎えた。
ニノン・トラゲット(サポート)
『容赦なんてしませんから!』
『アレ、試してみちゃいますね!』
未知とロマンとお祭りごとを愛してやまない、アルダワ魔法学園のいち学生です。
学生かつ魔法使いではありますが、どちらかと言えば猪突猛進でちょっと脳筋っぽいタイプ、「まとめてぶっ飛ばせばなんとかなります!」の心で広範囲への攻撃魔法を好んでぶっ放します。
一人称はひらがな表記の「わたし」、口調は誰に対しても「です、ます、ですよね?」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的にはいつも前向きで、ネガティブなことやセンチメンタルっぽいことはあまり口にしません。
その他の部分はマスターさんにお任せします!
シャイニー・デュール(サポート)
『拙者は剣士でござります故!』
ウォーマシンの剣豪×クロムキャバリアです
真面目な性格ですが勘違いや空回りも多く、かつ自分がズレているという自覚もありません
正々堂々とした戦い方を好みますが、それに拘泥して戦況を悪化させたりはしません
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
公序良俗に反する行為は(そういう依頼でない限り)しません
サムライというものに憧れていますが、正しい知識はありません
銃を使うことを嫌っているわけではなく、必要に応じて刀と内蔵兵器を使い分けます
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ソフィア・エーデルシュタイン(サポート)
わたくしは愛され望まれたからこそ生まれてきましたのよ
だからこそ、わたくしはこの世の全てが愛しいのですわ
狂気的な博愛精神の持ち主
命あるものは救われるべき
蘇った過去はあるべき場所に還るべき
果たすためならば手を下すことに躊躇う必要などないと胸を張る
主に【煌矢】を使用し、牽制や攻撃を行います
勿論、他のユーベルコードも必要があれば使いますわ
わたくしの愛するきょうだいである水晶髑髏は、盾にも刃にもなってくれますのよ
怪我など恐れる必要はありませんわ
わたくしが役に立てるのであればこの身が砕かれようとも構いませぬ
他の方の迷惑や公序良俗に反する事は致しません
それは、わたくしを愛してくれる人達への裏切りですもの
「ライブはちょっと気になりますけど、容赦なんてしませんから!」
ロートリクの塒における決戦に際して、サポートとして駆けつけてきた猟兵達もいた。
その1人であるニノン・トラゲット(ケットシーの精霊術士・f02473)は、お祭り事が好きな性分ゆえかライブに興味を示すものの、それ以上の闘志を燃やして対峙する。
「拙者は剣士でござります故!」
一方で一切迷いのない様子で「非搭載兵器:無銘刀」を構えるのはシャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)。生真面目な性分とウォーマシンという出自故か、目前に敵あらば真っ向から全力で戦うつもりのようだ。
「わたくしは愛され望まれたからこそ生まれてきましたのよ」
そして3人目のソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は、曇りなき博愛の精神で戦場に立つ。命あるものは救われるべき、蘇った過去はあるべき場所に還るべき、というのが彼女の思想である。
「だからこそ、わたくしはこの世の全てが愛しいのですわ」
愛をもって万物を救うためならば、手を下すことに躊躇う必要などない。純粋であるがゆえに狂気的な信条をもって、彼女は目の前のロートリクを骸の海に還そうとしていた。
「お客さんがたくさん……なら、こっちも……」
臨戦態勢の猟兵達に対して、ロートリクは【ワンナイト・コラボレーション】を発動。
自身と同等の技量を持つリリスを呼び出し、二人がかりでの演奏攻撃を仕掛けてきた。
「「私たちの音楽に溺れて……」」
超絶技巧から繰り出されるギターの音色が、猟兵達の心をあやしく揺さぶる。ネット上の配信でも凄まじかったが、ライブの迫力はやはり別格だ。超常の域に高まった芸術は、あらゆる人間から抵抗の意志を砕く。
「敵が2人になっても、まとめてぶっ飛ばせばなんとかなります!」
敵のライブ攻撃に即応したのはニノンだった。可愛らしい白猫の容姿と精霊術士という職のイメージに反して、意外と猪突猛進で脳筋っぽい所もある彼女。広範囲の魔法攻撃でコラボ相手ごと倒せばいいという発想は、乱暴だが実際間違っていない。
「アレ、試してみちゃいますね!」
さらに機転を利かせて発動するのは【エレメンタル・ファンタジア】。十字のエレメンタルロッドを掲げて呪文を唱えれば、まるで何かが爆発したような勢いで、耳をつんざく大音音が戦場に轟いた。
「「うるさ……っ?!」」
ニノンが発動させたのは「音」属性と「嵐」を合成した現象。敵の演奏を上回る爆音でダメージを与えつつ、演奏の音をかき消すことで敵の攻撃を無効化しようという作戦だ。
響き渡る音の嵐にロートリク達がたまらず耳を塞ぐと、それを好機とみたシャイニーが【搭載兵器№4:レイオブライト】を起動する。
「対象視認。弾道予測完了。狙撃します」
狙撃モードに切り替わった右目が目標を捉え、右肩部に内蔵されたスナイパーライフルの照準が合う。サムライに憧れ、正々堂々の戦いを好む彼女だが、決してそれに拘泥して戦況を悪化させる事はなく、必要に応じて武装を使い分ける柔軟性も持ち合わせていた。
「発射!」
シャイニーの狙撃は針に糸を通す様な正確さで、ロートリクのコラボ相手を撃ち抜く。
弾丸に心臓を貫かれたリリスは「ぎゃッ!!」と短い悲鳴を上げて、虚空に溶ける様に消滅した。
「一人撃破であります!」
そのままシャイニーは残るロートリクに向かって抜刀突撃を敢行。味方の魔法によって演奏の効果が半減している今、一気に勝負を決めるつもりだ。手にするのは何の特徴もない無銘の刀ながら、切れ味については折り紙付きである。
「くっ……お客さんはステージに上がってこないで……!」
猟兵が近付いてくるのを見たロートリクは、ギターの音量を上げて対抗しようとするが――なぜか音が出ない。はっと気がついて背後を振り返ると、設置してあったスピーカーに青玉髄の楔が突き刺さっていた。
「失礼させて頂きましたわ。この機械があなたの音を増幅しているのでしょう?」
壊れたスピーカーの隣に立っているのはソフィア。彼女は【クリスタライズ】で透明になると、ロートリクの注意が他の味方に向いている隙を突いて背後に回り込み、本人ではなく音響設備への攻撃を仕掛けたのだ。
「これでわたくしも役に立てましたでしょうか」
「よ……よくも……!」
透き通った微笑みを浮かべるクリスタリアンの女性に、ロートリクは髪の毛が逆立つほど怒り、ギターを鈍器代わりにして殴りかかろうとする。だが、血塗られたギターがさらなる赫に染まるよりも、ソフィアの反応のほうが速い。
「わたくしの愛するきょうだいである水晶髑髏は、盾にも刃にもなってくれますのよ」
「ッ?!」
水晶で出来た骨格標本がすっとソフィアの前に立ち、ギターを片手で受け止めながら、もう一方の手でロートリクの腕を掴む。すぐに振り解かれてしまうだろうが、一瞬動きを止められればそれで十分だった。
「音楽で悪いことをする人にはこうです!」
ニノンが杖を振ると音の嵐の音圧がさらに強まり、ロートリクの元に一極集中される。
制御の難しいエレメンタル・ファンタジアをこれだけコントロールできるのは、本人の技能の賜物だろう。
「っ……ぅあ……!!」
物理的な威力を伴うまでになった音の衝撃波を受けて、敵はたまらずギターを落とす。
そこに駆け込んできたシャイニーが、力強い踏み込みからの渾身の一刀を繰り出した。
「成敗でござります!」
「きゃぁぁ……ッ!!」
使い手の性格を反映したまっすぐな太刀筋が、ロートリクの胴体に深い傷を刻み込む。
ぱっと噴き出した鮮血が、ライブフロアの床を赤く染め――その上にがくりと膝をついた少女の顔は、それまでの無表情ではなく苦痛に歪んでいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
カビパン・カピパン
ライブ配信中
「デビルカビパン・ミュージックだ!」
蹴り破り登場したのは悪魔だった。
※コメント欄にはカルト的な賛美
「今日のサバト…ワンナイト・コラボレーションはコイツだ」
同等(負)の音楽技量を持つカビパンが現れ、協力してくれた。良かったねロートリク。
※カルト的な熱狂
「この者はデビル・カビパン様に対しコラボを申し出てきた。その勇気に免じて、私は『いいよ』と返答した。だがあろうことかコイツは我の前でもういいです、と話を勝手に蹴って逃亡した」
※カルト的な批判
「しかも北海道産じゃないシュークリームも食べた…その罪状、万死に値する!」
※カルト的な発狂
「今宵の贄は貴様だ!デビルカビパン・ライブを開催する!!」
「おとなしく聞いている気はないのね……だったら聞き惚れさせてあげる……」
猟兵達から反撃を受けながらも、ロートリクはギターを拾い上げてライブを続行する。
ネット上で何万という人々を魅了した、超絶技巧のギター演奏。その実力はリアルでも確かなものであり、本人の気持ちが昂ぶるにつれて精彩を増していく――。
「デビルカビパン・ミュージックだ!」
「……?!」
だが。そこにライブフロアの壁を蹴り破り、登場したのは悪魔だった。配信機材を小脇に抱え、手にはマイクがわりの聖杖を握りしめ。つい先日ロートリクにトラウマを与えたデビルカビパンがやって来た。
『デビルカビパン様!』『礼拝の時間だ!』『待ってました!』
カビパンは今も配信中のようで、コメント欄には視聴者からのカルト的な賛美が並ぶ。
そこに突如として巻き込まれる羽目になったロートリクは、当然ながら困惑していた。
「今日のサバト……ワンナイト・コラボレーションはコイツだ」
「え、え、え……???」
カビパンの音楽技量はロートリクと同等のものを誇る。正と負でベクトルは真逆だが。
そんな対極にある2人の突発コラボとなればファンはもちろん大歓喜である。コメントの熱狂は止まることを知らず、同接数がどんどん増えていく。
「この者はデビル・カビパン様に対しコラボを申し出てきた。その勇気に免じて、私は『いいよ』と返答した」
「た、たしかに言ったけど……」
ロートリクの脳裏に浮かぶのはつい先ごろの嫌な記憶。まさか目をつけた相手があんなおかしな輩だとは思っていなかった故の失敗だが、それでもまだ認識が甘かったらしい。まさか自分の塒まで乗り込んできて、ライブを乗っ取ってしまうだなんて。
「だがあろうことかコイツは我の前でもういいです、と話を勝手に蹴って逃亡した」
『なんてヤツだ!』『失望しました』『ファンやめます』
コメント欄に溢れかえるカルト的な批判。ネット上の観客は既にカビパンの一挙一動に踊らされている。不特定多数の見えない悪意が突き刺さるような気がして、ロートリクは思わず身を縮めた。
「しかも北海道産じゃないシュークリームも食べた……その罪状、万死に値する!」
「そ、それがどうして罪なの……?!」
『そうだ、そうだ!』『やっちまえ!』『キル・ユー!』
身に覚えのない、というか意味の分からない罪を押し付けられたロートリクの抗議は、視聴者のカルト的な発狂に押し流された。オーディエンスを完全に味方につけたカビパンは罪人(?)にびしりと指を突きつけ、ドスのきいた声で宣言する。
「今宵の贄は貴様だ! デビルカビパン・ライブを開催する!!」
かくして【ロートリク・ライブ】は【カビパンリサイタル】に塗り替えられ、絶望的な音痴歌がリリスの塒に響き渡る。皮肉にもロートリクの演奏技巧と同様、リアルのほうが威力が増すのはカビパンの歌も同じだった。
「ひ……ひどい……!!」
あらゆる意味でのひどさを味わった少女は、たまらず耳を塞いでその場にうずくまる。
音楽には音楽の力で対抗する、と言えばカビパンの対応は間違っていない気もするが、やはり何かがおかしい――それでも、敵に与えた精神的なダメージは本物だった。
大成功
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フレミア・レイブラッド
そんな事をしなくても、とっくに貴女の音楽は好きなのにね…。
戦闘しつつ、出来なかったコラボを一時でも叶える為、戦闘しながら【プリンツェス・ツェーン】で歌いながら戦闘。
【吸血姫の覚醒】を発動し、ミュージックの影響を遮断する為に【念動力】の防御膜を展開。
高速飛行から雷撃の魔力弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾】で身動きを封じ、魔槍による当身で弱らせた後、【怪力】と【念動力】で拘束。
直接戦闘力は高く無いみたいね…それでは勝てないわ。
最後は戦闘力を奪った状態で、降伏を迫ってみるわ
この世界に居づらいなら、眷属として魔城に来ても良いしね。
数多の世界の人々に音楽を聞かせるのも良いんじゃないかしら?
「そんな事をしなくても、とっくに貴女の音楽は好きなのにね……」
あくまでサバトの開催にこだわるロートリクに、どこか哀しげな顔を見せるフレミア。
ネットで視聴した彼女の演奏は本当に素晴らしいものだった。だからこそ、それを悪用して人々を陥れようとするのが残念でならない。
「まだ足りないの……もっと、もっと……私の音楽だけを聞いて……!」
闘いの中で傷つくたびに【ロートリク・ミュージック】は冴えを増している気がする。
このままでは説得も通じまい。相手に対する敬意だろうか、フレミアは全力を以って敵を制するべく【吸血姫の覚醒】を発動する。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
真の力を解放したフレミアの身体から爆発的な魔力が放たれ、フロアを満たしていく。同時に彼女の背中には4対の真紅の翼が生え、身長も伸びて17~8歳程の外見に変わる。
「あなた、ヴァンパイアだったのね……でも、負けない……!」
変身を遂げた吸血姫に対して、ロートリクはより激しく演奏を仕掛けるが、意志の力を奪うギターの調べがフレミアに影響を及ぼすことは無い。彼女の周囲に張られた念動力の防御膜――廃ビルの探索中よりも強固なそれが音波を遮断している。
「直接戦闘力は高く無いみたいね……それでは勝てないわ」
初手の攻防から相手の実力を見切ったフレミアは、真紅の翼を広げて反撃へと転じる。
覚醒した吸血姫の飛行速度は瞬間移動と見紛う域に達する。あまりの速さにロートリクは彼女の姿を見失った。
「消えた……? きゃっ!!」
直後、背後から放たれた雷撃の魔力弾が少女を撃つ。狙いは感電で身動きを封じる事。
電流で痺れた指先がもつれ、ギターの演奏が中断される。その隙を逃さずにフレミアは距離を詰め、真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を振るう。
「抵抗は無意味よ」
「あぐっ!」
刃を突き立てるのではなく柄による当身を食らわせると、ロートリクの口から苦しげな悲鳴が上がる。フレミアは立て続けに数打を浴びせて相手の抵抗を弱らせると、仕上げに自らの怪力と念動力で拘束する。
「降伏しなさい」
両腕を掴んでギターを弾けなくすれば、相手はもはや戦闘力を失ったも同然。その状態でフレミアは降伏を迫る。このまま彼女の音楽を葬り去ってしまうのは、あまりに惜しいと思ったためだ。
「この世界に居づらいなら、眷属として魔城に来ても良いしね」
「な、なにを……?」
猟兵から突然そんな提案をされても、容易に信じられるオブリビオンはいないだろう。
ロートリクは困惑しながらじたばたと暴れるが、念動と腕力の拘束はビクともしない。しっかりと動きを封じた上で、フレミアはなおも説得を続ける。
「数多の世界の人々に音楽を聞かせるのも良いんじゃないかしら?」
彼女が他者に音楽を聞かせることで快感を得られるなら、それを悪事とは違う方向性に昇華できないか。猟兵と共に暮せばこの世界の外にまで演奏を聞かせられる機会もある。様々な理由とメリットを提示する吸血姫の表情は真剣だった。
「う……他の世界にも演奏を聞かせられるのは、いいかも……」
フレミアの降伏勧告を聞いているうちに、ロートリクの心も徐々に揺れてきたようだ。
だがゴーストにしてオブリビオンである彼女が悪しき欲望に逆らうのは容易ではない。本当に猟兵を信用していいのかという不安もある。
「わ……私は、まだ……っ」
結局、僅かに力が緩んだ隙を突いてロートリクは拘束を脱すと、ギターをかき鳴らす。
だが、その調べに弾き手の迷いが表れているのを、フレミアの耳は聞き逃さなかった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
貴女を止めるよ…
猟兵として…一人のファンとして…
【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…。
敵のロートリク・ライブに共感する事で逆にわたしの力も増強…。
無限の終焉の魔剣を展開し、一斉斉射で攻撃を仕掛けつつ、敵の周囲に陣を敷く様に魔剣を配置し、魔剣を起点とした魔法陣を展開…。
呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】で捕縛しつつ、九尾の呪力を使用した呪力結界【呪詛、結界術】で敵を閉じ込めて力を奪い、【共に生きる奇跡】で人の中で一緒に生きる様説得するよ…
演奏が好きで、聴いて貰うのが好きなんでしょ…?
貴女の音楽は人は素直に凄いと思う…生贄にして得る様な力なんて必要ないくらい…。
だから、貴女も人の中で共に生きられないかな…?
「もっと……もっと……もっと……!」
迷いを振り捨て、音楽の生む快感に溺れてしまおうと、一心不乱にギターをかき鳴らすロートリク。超絶技巧の演奏がライブステージに響き渡り、聞き手の心を妖しく惑わす。
「貴女を止めるよ……猟兵として……一人のファンとして……」
それに耳を傾けながら、真剣な眼差しで語るのは璃奈。ロートリクの演奏は彼女だけでなく多くの人々の心に純粋な感動をもたらしてきた。だからこそ、その演奏によって誰かが不幸になる事態だけは、絶対に防いでみせると彼女を決意させる。
「封印解放……!」
【九尾化・魔剣の媛神】を発動し、無限の魔剣を展開する璃奈。九尾の妖狐に変身した彼女の体からは普段以上の――通常の封印解放時すら超える膨大な呪力が放たれている。
「なに……この力は……?!」
「あなたの演奏のおかげだよ……」
あまりに凄まじい呪力の気配に息を呑むロートリク。だがその原因は彼女の力にある。
【ロートリク・ライブ】は演奏を聞いて共感した"全ての"対象の戦闘力を増強する。それは即ち、璃奈が本心から彼女の演奏のファンであることの証でもあった。
「行くよ……」
璃奈はあふれ出す呪力を無限なる終焉の魔剣の力に変え、一斉斉射で攻撃を仕掛ける。
思わず身を強張らせるロートリクだったが、その切っ先は敵を直接狙ったものでなく、一定のパターンと間隔を描いて周囲に突き刺さる。
「っ……なにを……?」
その意図はすぐに明らかになる。璃奈は魔剣の配置により戦場に陣を敷いていたのだ。
魔剣を起点に九尾の呪力を送り込めば魔法陣が展開され、敵は内部に閉じ込められた。
「なっ……これは、結界……?!」
ロートリクが慌てた頃にはもう遅く、魔法陣から伸びた呪力の鎖が彼女の手足を縛る。
この魔法陣は結界としての役割もあり、閉じ込められた者は徐々に力を奪われていく。相手は直接的な戦闘力に乏しく、陣が完成した時点でもはや勝敗は決していた。
「う……ほどけない……っ」
「お願い、わたしの話を聞いて……」
呪力の縛鎖に捕われてもがくロートリクに、璃奈はそっと話しかける。呪力結界の解除は行わないものの、その口調は優しく穏やかなもので、敵意の類は感じられなかった。
「演奏が好きで、聴いて貰うのが好きなんでしょ……? 貴女の音楽は人は素直に凄いと思う……生贄にして得る様な力なんて必要ないくらい……」
飾り気のない素直な言葉で、璃奈はロートリクの演奏を称賛する。特殊な異能や洗脳術などではなく、単に磨き上げた超絶技巧によって人々を魅了する――それは才能を努力で磨くことでのみ得られる、素晴らしい力だ。
「だから、貴女も人の中で共に生きられないかな……?」
「ゴーストの私が……人の中で……?」
思わぬ賛辞と提案に困惑するロートリクに、璃奈は自身が持つ能力について説明する。
敵対意思の無い者を共存の為に最適化する【共に歩む奇跡】。この力ならオブリビオンを人と共存させられる。そうなればサバトが行われる危険も消失し、彼女は普通の少女として演奏を続けることができるだろう。
「わたし達と一緒に生きよう……」
結界からそっと手を差し伸べる璃奈。それを見たロートリクは明らかに戸惑っていた。
敵であるはずの自分に、どうして情けをかけようとする者達が多いのか。今までネットでの交流しかなかった彼女にとって、それはリアルで感じる初めての人の温もりだった。
「わからないわ……あなた達のことが……」
差し伸べられた手を少女がすぐに握り返すことはなかった。だが演奏に現れる迷いの音はさらに大きくなっている。欲望に頑なだったリリスの心は、少しずつ開き始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
無辜の命を音楽に捧げる等許される筈も無し
易々と虜にされる訳には参りませんね
一つ、音楽で雌雄を決しませんか?
ご希望とあらば、貴女が骸の海に還っても良いと思える程の弾き語りを披露させて頂きますが
やって見せろ等の“命令”を挑発で引き出し受諾
では、最初の弾き語りは未だ歌詞に謎多きこの曲…『ユ●ベルコ●ド』
電脳剣を電脳魔術でギターに武器改造
楽器演奏は敵に一日の長があり
哀切表現する演技と歌唱の総合パフォーマンスで勝負
「この世を滅ぼす~♬」
…貴女も如何です?
間奏の間にリリスを●誘惑
此方に引き込み、最終的に全員で演奏
(騎士? という当然の突っ込みにギクリ
…御伽噺の騎士は荒唐無稽なまでに万能なのです!
(苦し紛れ
「無辜の命を音楽に捧げる等許される筈も無し。易々と虜にされる訳には参りませんね」
快楽と力を求めてサバトを目論んだリリスの少女に、トリテレイアは淡々と宣言する。
彼の武力であれば、このまま力尽くで敵を制圧することもできただろう。だが、一度はプロデューサーとして少女の音楽に触れた者として、彼はその選択を摂らなかった。
「一つ、音楽で雌雄を決しませんか?」
「え……?」
代わりに騎士が提案したのは相手の土俵である音楽対決。まさかの挑戦にロートリクも目を丸くしている――だが、これを拒まないであろう事をトリテレイアは確信していた。
「ご希望とあらば、貴女が骸の海に還っても良いと思える程の弾き語りを披露させて頂きますが」
「や……やれるものなら、やってみせなさいよ……!」
音楽を極める事に快楽を覚えるロートリクには、音楽家としての強いプライドもある。
快楽への欲望が何より優先されるリリスとしても、この挑発には背中を向けられない。
「承諾いたしました」
挑発に応じたロートリクの買い言葉を"命令"と解釈することで、トリテレイアは再び【銀河帝国量産型ウォーマシン・非常時越権機能行使】を起動。開放されたデータベースから音楽関連の情報を引き出し、プロ級の演奏技術を一時的に会得する。
「では、最初の弾き語りは未だ歌詞に謎多きこの曲……『ユ●ベルコ●ド』」
トリテレイアは佩剣たる「電脳禁忌剣アレクシア」を電脳魔術でギターに改造すると、脳内に流れるメロディに合わせて演奏を始める。無骨な機械の指が滑らかに弦を爪弾き、繊細かつ力強い音色を奏でだすと、ロートリクの表情が変わった。
「……なかなか、やるね……」
純粋な楽器演奏の技能ではまだ少女に一日の長があるだろう。そこで騎士が挑んだのは哀切を表現する演技や歌唱力を含めた総合パフォーマンスでの勝負。才能ある者が極めた一芸には並べずとも、蓄積された複数の技能を組み合わせれば対抗する事はできる。
「だったら、こっちも……」
対するロートリクは【ワンナイト・コラボレーション】を発動、召喚したリリスと共に演奏を始める。その技巧はネット上で披露していたものと同等――否、それ以上に絶妙。だがトリテレイアも負けてはいない。
「この世を滅ぼす~♬」
機械らしく一音の狂いもない歌声に細やかな情緒と抑揚が加わり、電脳ギターの演奏とともにライブフロアに響き渡る。予想を遥かに上回る見事なパフォーマンスを披露され、ロートリクは悔しそうに顔をしかめた。
「……貴女も如何です?」
「え? ……いいよ♪」
そこでトリテレイアは間奏の間に、ロートリクのコラボ相手であるリリスを誘惑する。
優れた音楽に快感を抱くという点では、そのリリスもロートリクと同じだったようで、突然の誘いにあっさり応じて笑顔を見せる。
「ちょ、ちょっと……」
コラボ相手にあっさり裏切られたロートリクは慌てるが、騎士とリリスのセッションを聞かされると黙ってしまう。重なりあう異種の音楽が生み出すハーモニーは、ロートリク単体の演奏技巧を凌駕する。彼女はそれが悔しそうであり、また羨ましそうでもあった。
「……ずるいっ……!」
内なる衝動には抗えず、とうとうロートリクもトリテレイアの演奏に合わせてギターをかき鳴らす。1人よりも2人、2人よりも3人――奏者が増えるたびに音が彩りを増す。
辺りでそれを聞いていた猟兵も、気付けば幾人かが輪の中に加わり。華麗な歌や踊り、手拍子などが会場のテンションを引き上げ、ライブの盛り上がりは最高潮に。
「如何ですか?」
「楽しい……!!!」
その時のロートリクの表情は、これまでにないくらい幸せそうな、最高の笑顔だった。
ネットで何度ファンの前で演奏しても満たされなかった欲望。それが今、満たされた。
「……私の、負けだね……あなた達とのコラボ、楽しかった……」
猟兵との演奏が終わると、リリスの少女はそっとギターを置く。これまでにない最高のパフォーマンスができ、この上ない快感を得られた。もはや生命の未練すらないほどに。
「……でも、これって騎士のおつとめと関係ある……?」
「……御伽噺の騎士は荒唐無稽なまでに万能なのです!」
ふとこぼれた少女の疑問に、トリテレイアは苦し紛れの言い訳をして。その様子がおかしかったのか、ロートリクはくすくすと笑った。邪気のない、ごく自然な笑い顔だった。
――その後、ロートリクはサバトの開催を諦め、猟兵達に降伏した。
とある猟兵の共存を願う奇跡を受け容れ、その身柄はまた別の猟兵の居城の預かりとなったとか。彼女がその後どんな音楽を紡いていくのかは、ここではない別の物語である。
確かなのはこの日、狂い哭く音楽のサバトは阻止され、ネットから一人の音楽家が姿を消した。だが、その演奏は良き思い出のまま、人々の心に残り続けたということである。
大成功
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