灯籠に照らされし祈りを空へ
灯籠節。
収穫を祝うために沢山の灯籠で洛陽の街全体がライトアップされる華やかな祭りは、その様を一目見ようとする者や祭りに乗じて一儲けをしよう企む者など理由は違えど多くの人々が集まってくる催しでもあった。
「で、灯籠の明かりを際立たせるため、夜には皆飾り布や光り物で仮装するという風習があるそうで……それに紛れてオブリビオンが洛陽に忍び込んで来るようです」
そう言ってお祭りらしく浴衣に身を包んだルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は屋台で買ってきた林檎飴に齧りついた。
「狙いは灯籠節を楽しむために上京してきた英傑候補。こんな街中で戦闘が起きたら関係ない一般市民にまで害が及ぶことになるでしょう。灯籠の中には周囲を炎上させる火種がずっとついていますから」
そんな惨事を防ぐにはオブリビオンが洛陽に乗り込んでくる前にこちらから挑み、片を付けてしまいたいところだが……英傑候補もオブリビオンも他の参加者と似たような仮装をしているため一目で見分けることは難しい。
ただ田舎から出てきたばかりの英傑候補はお祭りの空気に飲まれ、挙動不審になっているはずだ。
その異変に気づいて声をかけ、勢いと情熱、さらにお祭りの雰囲気に任せた説得をぶつければ協力を取り付けることが出来るかもしれない。
「まあ、英傑候補を捜索するかどうかは皆様にお任せいたします。今回の問題はあくまでオブリビオンですから」
串にこびりついた飴を噛み砕きつつ、ルウは話を続ける。
「ただ、ここが司馬炎のお膝元であることから彼らも彼らで迂闊な行動は出来ないはずです。そこに皆さんが遊んでいる様を見たら形勢が悪いと考えて撤退する可能性もございます」
つまり、今回はオブリビオンの襲撃を牽制するために目一杯灯籠節を楽しんで欲しい、ということらしい。
「で、個人的に気になった催し物がありまして…… 封神武侠界では節目の夜に『天灯』なる物を空に飛ばすという風習があるそうです」
天灯とは簡単に言えば、小型の熱気球である。
それはかつて戦時における通信手段として、周囲を敵軍に囲まれた状況で味方に救援を求めたり、盗賊を避けて山に逃れた村民が安全を知らせたりするために用いられていたという。
ただ皇帝司馬炎の統治の元、一応平和となった今は節目節目で心に秘めた想いを一文字に託して和紙に描き、空に飛ばす民俗習慣に変容したそうだ。
文字に託すのはこれからの決意でもいいし、これから叶えたい願い事でもいい。ただ二文字以上書くといわゆる「高望み」となってしまって叶わない……と言う者もいるらしい。
「まあ、今の形になってからそう日にちが経っていない行事ですから、説が色々あるのは当然のお話ですね。とにかく楽しんでいただければそれでいいと思います」
残った串を指で回しながら身も蓋も無いオチで話をしめたルウは猟兵達に笑いかけた。
「それでは皆様、洛陽の街をごゆっくりお過ごしくださいませ」
平岡祐樹
皆様お疲れ様です、平岡祐樹です。
今案件は夜の灯籠節をオブリビオンの襲撃から守るため、昼に散策するシナリオとなっております。もちろん他の方々に討伐は任せて、ひたすら楽しんでも構いません。
もし天灯を飛ばす際には、何を和紙に書き記すのかを必ず記載してください。戦闘が早々に終わらせられれば、浮かび上がる瞬間を見ることが出来るかもしれません。
第1章 日常
『天に送る祈り言』
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POW : 屋台を巡る
SPD : 飛びゆく天灯を眺める
WIZ : 天灯に願いを書いて夜空に飛ばす
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
さてー、まあ知己(司馬炎。『双仙遊戯』で遭遇済)のお膝元というわけですしー。
被害を出さないためにもねー。
あと、単純に陰海月が『天灯』を見てみたいとねだってきて。
こういう賑やかなのは(生前だと暗殺の隠れ蓑になりやすかったので)好きですよー。
内部三人(何か今、変な間があったな?)
おや、陰海月。自分でも字を書いて飛ばしたいと?支えなくて大丈夫ですー?(陰海月の訴えで、見守り体制)
※
陰海月、自分だけの力で文字書きたい。頑張って筆もって、ヘロヘロ文字だが『和』を書いた。
皆、この先も仲良ければいいな。そんな願いをぷきゅっと。
「さてー、まあ知己のお膝元というわけですしー。被害を出さないためにもねー。」
かつてとある屋敷で司馬炎と対峙したことのある馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はそう言って膝を叩いた。
「あと、単純に陰海月が『天灯』を見てみたいとねだってきて。こういう賑やかなのは好きですよー」
その聞いている分には何の変哲もない言葉に中にいる3人の盟友は変な行間を感じ、思わず押し黙った。
「何ですか皆さん、何も変なことは言ってないでしょう?」
空を舞う陰海月の触手に引っ張られながら「義紘」は抗議するが、多数決で残念ながら受け入れられることはなかった。
ちなみに義紘が賑やかなこういうお祭り事を好むのは「暗殺の隠れ蓑になりやすかったから」だったため、3人の嫌な予感は的中していた。
そうしてなされるがまま連れて来られたのは、天灯に文字を記す会場であった。
「おや、陰海月。自分でも字を書いて飛ばしたいと?」
ぷきゅぷきゅ、と気の抜けるような音を発しながら頷く陰海月の可愛らしい様子に癒されつつ、義透は店員にお金を渡して天灯と書道道具一式を受け取って机へと向かう。
そして墨を磨りながら義透は、誰にも渡すものか、と言わんばかりに筆をギュッと握りしめる陰海月に語りかけた。
「支えなくて大丈夫ですー?」
陰海月は頭が外れんばかりに勢いよく何度も頷く。その意欲を尊重して義透は硯を陰海月に譲り、いつでも助け舟を出せるように後方に陣取った。
陰海月は触手を何本も使って頑張って筆を持ち、持ち上げた筆先から落ちた墨汁に肝を冷やしつつヘロヘロになりながらも「皆、この先も仲良ければいいな」という願いを込めて「和」の一文字を書き記す。
その想いが義透に伝わるかどうかは分からない。
「おお、よく書けましたね」
でも陰海月は冷たいけど温かい愛撫が嬉しくて、ぷきゅっと鳴いた。
「では、これを先程の店員さんに預けて飛ばしてもらいましょう。綺麗に飛ぶといいですね」
「ぷきゅー」
そうして陰海月渾身の一作は祭りの夜を彩る列の1つに並べられた。
大成功
🔵🔵🔵
ミリアリア・アーデルハイム
【街角】
折角なので、一緒に買い食いしたいです!
中華まんと、月餅と、ジャスミン茶と、焼き栗と・・・
春巻き美味しそう、一つ月餅と交換してください!
(詩乃さん、買い食いしててさえ優雅ですね 見惚れ)
栗もおいしいですよ。どうぞ(にっこり口元に差し出し)
あ、お仕事もちゃんとしないと
梟と木兎を創造
爽籟、待宵、色々珍しがっている武人と妖しい気配の者を探してくれますか?
自分は屏氷万里鏡で周囲の人達を確認しながら歩き
英傑さんが見つかれば拱手、お登りトークと食べ物でお近付きに
では天灯の会場に向かいましょうか
何を書くか悩みますね。詩乃さんは何にしました?(覗き)
私は希望の「希」にしました。ふふ、とっても綺麗ですね!
大町・詩乃
【街角】
(チャイナドレス姿で)ミリアリアさんと一緒に店や屋台を廻り、気になる点心を注文します。小籠包や胡麻団子や春巻とか。
ミリアリアさんと一部取り換えっこして食べてみますよ~。
UCで呼び出した眷属神達(街中にいてもおかしくない動物)にお願いして、仮装して挙動不審になっている英傑候補、仮装して堂々としているオブリビオンっぽい人、を捜してもらいます。
英傑を見つけたら都と祭りと人々の安寧の為に協力をお願いし、オブリビオンは秘かに監視します。
天灯では一文字だけなんですよね~。
暫し考え、平和や皆さんが和やかでありますようにという思いを籠めて「和」に。
ミリアリアさんの言葉は明るくて良いですね♪と笑顔で。
「ミリアリアさん、お待たせしました〜」
封神武侠界にあわせて緑のチャイナドレスに身を包んだ大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は雑踏の中にいたミリアリア・アーデルハイム(永劫炉の使徒・f32606)の姿を認め、手を挙げる。
その声に明後日の方を見ていたミリアリアはすぐに振り返り、手を振って応えた。
「詩乃さん、今日は付き合ってくれてありがとうございます! 1人で行くのはちょっと淋しかったので……」
「いえいえ。ところで何をしましょうか? ミリアリアさんがしてみたい事にお付き合いしますよ~」
「はい! 折角なので、一緒に買い食いしたいです!」
誘拐を繰り返された結果、ドラマや漫画で見るしか出来なかった憧れの行為を上げたミリアリアは指を折ってここにくる道中で見かけた美味しそうな屋台をどんどん言い連ねていく。
「中華まんと、月餅と、ジャスミン茶と、焼き栗と……」
「ふふっ、急がなくてもこの時間なら屋台が閉まることはないですよ。ゆっくり回りましょう?」
そう言って2人は屋台を廻り始めた。一般的には「お行儀が悪い」とされる買い食いをしててさえ優雅な詩乃の姿に見惚れていると、当の本人が首を傾げてきた。
「どうしましたか?」
「え、いや、なんでもないです! そうだその春巻き美味しそう、一つ月餅と交換してください!」
「もちろんいいですよ〜」
流石は洛陽の街。不味い店は生き残れないようで、どの屋台も絶品だった。そんな品々を堪能しているとどこからともなく梟が飛んできてミリアリアのすぐそばにあった木材の上に着地した。
「爽籟、何か見つかったんですか?」
口の中の胡麻団子を飲み込み、ミリアリアは屏氷万里鏡を確認する。あらゆる角度の景色を映し、見えざるものの存在を暴く氷の欠片に映し出されたのは周囲を忙しなく見回る少年の姿だった。その後ろには木兎の待宵がついており、どうやら尾行してくれていたらしい。
「ミリアリアさんいかがされましたか?」
「栗もおいしいですよ。どうぞ」
突然氷の粒を周りに展開し出したミリアリアを心配し、詩乃は声をかける。
ミリアリアは笑顔で大粒の栗が入った粽を詩乃の口元に近づけ、詩乃もそれを受け入れたところでミリアリアは拱手をして、少年に話しかけた。
「はじめまして、英傑候補の方。ミリアリア・・アーデルハイムと申します」
突然の拱手に少年も慌てて返す。そしてミリアリアは彼が離れようとする前に話題を切り出した。
「大分呆気に取られてるようでしたが……どちらを見てらっしゃったんですか?」
「いやあ、どの家も瓦とか木とかちゃんと使っててすごいなぁ……って」
「そうですよね! 郊外だと藁葺きとか漆喰の壁ですものね」
田舎トークで盛り上がるミリアリアと英傑候補の様子を眺める詩乃の手元に街中に放った眷属神達のうちの一体が舞い降りてきた。
スズメが1羽ということは、オブリビオンは確認したが、動く気配はないという合図だ。恐らくもっと日が落ちてこないと動き出しては来ないのだろう。
「英傑候補の方、都と祭りと人々の安寧の為に動いてくださるそうです。あと、美味しい屋台の情報交換もしてきました!」
「ではそこに寄りながら、例の所に向かいましょうか」
そうして2人は予定通り天灯に文字を書く会場へと向かった。
「何を書くか悩みますね」
「んー……私もまだ決まってないです。天灯では一文字だけなんですよね~」
しばし天灯の前で唸り悩んだ末に、2人はほぼ同時に筆を取った。
「出来ましたー! 詩乃さんは何にしました?」
「ええ。私は平和や皆さんが和やかでありますようにという思いを籠めて『和』に」
「ふふ、とっても綺麗ですね! 私は希望の『希』にしました」
「ミリアリアさんの言葉は明るくて良いですね♪」
「えへへ……」
互いに筆で書いた字を見せ合い、笑う。そして待っていた担当者に託していると、すでに預けられていた天灯に火が付けられ始めた。
温められた空気に乗って人々の想いが込められた天灯が浮かび上がる。それを眺める2人の足元を1匹のネズミが駆け抜けていった。
「……来たようです」
すると和やかな空気は引っ込み、抜き身の刀のような緊張が走った。
大成功
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第2章 集団戦
『死人集め・輪廻』
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POW : 獄鎌・死人刈
予め【武器を振り回しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 外法『死人繰り』
【鎌の一振り】が命中した部位に【仙気】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
WIZ : 外法『悪鬼の鎌』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【巨大な鎌】で包囲攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
その僵尸達は「強い武人の死体を集めよ」という主の命に忠実に行動し、どのような残忍な行為もいとわぬように調整されてきた。
逆を返せば「不意の事態に対応が出来ない」という弱点も有していた。
故に、他の理知的なオブリビオン達が猟兵達やその眷属の存在に気づいて撤退する中で、作戦を一切変えぬまま洛陽の街に居続けてしまったのだ。
だが狙っていた英傑の命を刈り取り、その体を主の元へ届けるべく大きな鎌を隠さず掲げて練り歩く様に、道行く者達は何の疑いも不信感も抱かない。
まさか彼女達が仮装ではなく、本当に死神だとは誰も思っていなかったのだ。
そして彼女達は狙っていた英傑の1人の姿を見つけ、その歩調を早め出した。
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
普段の口調は「チンピラ(俺、てめぇ、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )」
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
冒険等では割と力業を好みますが、護符衣装を分解して作った護符などを操作したりなどの小技も使えます。
ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。お触りなしのお色気までが許容範囲。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「おいおい、そこの僵尸ども止まりやがれ?」
屋台の屋根から飛び降りた一つの影が僵尸達の行く手を阻む。
「お前ら、強い武人の体をどっかに持っていってるらしいな? 死体を運ぶのが生業の火車からしてみれば、てめぇらの行いは看過出来るもんじゃねえんだよ」
手についた砂を払いながら立ち上がった陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)を前にした僵尸達は足を止めて、威嚇するように大鎌を振り回し始める。
それによって近くにあった屋台の骨組が削り取られ、崩落していく様に人々は悲鳴を上げて逃げ出した。
「やっば。こりゃ早めにやらねぇと……」
周囲に被害が出てしまってることに焦りを感じた柳火はスティック状の袋の縁を切ってその中身を一気に吸い切り、僵尸達へ飛びかかった。
予め武器を振り回しておく事で周囲を混乱させることに成功したが、重い物を振り回したことによる遠心力によって咄嗟の軌道修正が出来ない僵尸達の動きは非常に見破りやすく、柳火はあっさりと懐に潜り込めた。
そして腰に下げていた退魔の力が込められた刃を僵尸の肉体に叩きつけるとまるで豆腐のように何の抵抗もなく切り裂けた。
その断面から血が溢れ出ることは一切なく、真っ二つにされてもなお僵尸は大鎌を振りかぶったが髪飾りの中に隠れていた札をそれごと剥がすとすぐに活動を停止した。
一息つく間もなく死角から迫ってきていた別の僵尸の視界を、鞘を投げつけることで塞いだ柳火はその喉笛に齧り付く。
そして全身に魔力を漲らせると護符を取り出して投じた。
すると護符はばら撒き弾、誘導弾、爆裂弾など様々な種類の物を組み合わせた弾幕となって周囲にいた僵尸達を一掃していった。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
えー、陰海月が『浮かぶところも見たい』とねだってきてるので。
早めに終わらせるためにも、やりましょうかー。
ええ、霹靂。お願いしますねー?
集団でいるのですからねー、指定UCがいいでしょう。
運と霊気だけでも充分なのです。だって、『敵の運は地の底』にですからー。
見切り、カウンター気味に漆黒風投擲したり…陰海月がはりきったり。
もちろん、敵に運がないので、周りの被害も抑えぎみになりますよー?
※
陰海月、『天灯>敵』になっているため、全力怪力触手パンチを容赦なくしていく。
見れたら自分も浮く。見られなかったらしょんぼりする。
霹靂、一声鳴いて周りに落ち着くように促す。クエッ!
二匹は友達!
まとめられた触手による渾身のストレートが僵尸の鳩尾に叩き込まれる。食らった僵尸は宙に弧を描き、高い外壁を越えて外まで飛んでいった。
ぷきゅー、と息を鳴らした陰海月がシャドウボクシングを繰り返す中、義透を乗せたヒポグリフの霹靂も現場に着地する。
「えー、陰海月が『浮かぶところも見たい』とねだってきてるので。早めに終わらせるためにも、やりましょうかー」
そう言って義透が細い目を開いた瞬間、故意に封じていた呪詛が溢れ出る。それは僵尸の運気や霊力を奪い、その穴埋めに大量の不幸を詰め込んだ。
「ええ、霹靂。お願いしますねー?」
霹靂の咆哮が空気を震わせ、恐慌状態であった市民達の動きを留めさせる。こうしたのは今の僵尸よりも不幸な人間がいないとは限らないからだ。
「動かない方が身のためですよ。あなた方の運は地の底にですからー」
義透の忠告を聞かずに襲いかかってきた僵尸の下駄の尾が突然外れ、前につんのめったところに陰海月の触手が炸裂する。
吹っ飛ばされた僵尸は仲間「のみ」を巻き込んで「石の壁」に激突し、互いに潰し合うことで体のあちこちを「粉砕骨折」した。
だが死体である僵尸は体が歪になっても痛がらず、平然と立ち上がる。しかし壊れた部位が元の働きをすることは出来ず、しきりに転ぶようになった。
「おやおや。これは頭を破壊しないと止まらないようですねー?」
そう呟いて義透は漆黒風を投擲する。石に躓いてよろめいた僵尸の頭部にその先端は吸い込まれるように突き刺さり、活動を停止させた。
粗方僵尸達を一掃できたところで再び会場に戻ってくると、すでに多くの天灯が打ち上がっていた。
陰海月は普段とは比べ物にもならないほどの速さで天灯の間を動き回り……しょんぼりした。どうやら自分の描いた物は見つからなかったらしい。
しかし職員達の手元にはまだまだ大量の天灯が残っている。まるでノックを待つ野球部員のように、陰海月は気合を入れ直した。
「ああ、見つけられたみたいですねー?」
それからしばらくして、1つの天灯の周りをくるくる回し出した陰海月の姿を見て義透と霹靂は微笑んだ。
大成功
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大町・詩乃
【街角】
ミリアリアさんが知り合った英傑候補の方に、同行と戦闘における援護をお願いします。
詩乃は前衛でUC発動して功夫(神社近所の健康教室で習った太極拳)の構え、ミリアリアさんは後方で全体把握して、互いに連携。
天耀鏡は一つを英傑候補に配して盾受けでかばい、一つを詩乃の盾受けに使用。
手足に光の属性攻撃を宿し、功夫による突きや蹴り(打撃時に衝撃波を上乗せ)で僵尸達を倒していく。
防御では功夫・見切り・受け流しによって、躱したり化徑で無効化したりして対応します。
私達がいる以上、誰も被害に遭わせたりしませんよ!
ミリアリアさんの賛辞には笑顔で返しつつも、(本当はなんちゃって太極拳なのですが…と)内心冷や汗。
ミリアリア・アーデルハイム
【街角】
あれは僵尸ですね。息を止めれば・・・え、駄目なんですか?(マジで?)
数が多い!それに一撃入れたくらいでは倒れそうにないとは厄介な。
屏氷万里鏡で味方を防御
白兵対応で掃除機のローラちゃんを地上に残し、箒で飛翔し警戒
凄い、詩乃さんが次々と敵をっ
これが「葦牙流光凛拳」!!まさかこの目で見られる日が来ようとは!
可憐にして苛烈、そしてなんという神々しさ・・・
はっ、術を使うつもりですね。させません!
ケージを掲げUC(全力魔法、カウンター、浄化)
なんか、良い物を見せてもらっちゃいましたね。
天灯の願いが既に叶ったような?「希」は「まれ」とも読みますよね。
ふふ、もっといろんな詩乃さんを知れたらな、なんて。
ミリアリアと詩乃が降りて来た先で、偶然にも昼時に見かけた英傑候補の少年が僵尸の顔面に飛び膝蹴りを食らわせていた。
「大丈夫ですか!?」
「あっ、ミリアリア殿、息災でしたか! ちゃんと都と祭りと人々の安寧の為動いてますよ!」
「それよりもご無事で何よりです! あ、教えてもらった小籠包のお店美味しかったです」
「それは何より! ところでお隣の方は……」
「大町・詩乃と申します。先程はミリアリアさんがお世話になりました」
「これはご丁寧に。鳳・雄峰といいます」
拱手を交わしあう中、ミリアリアは足元で伸びていた僵尸をじっくり見聞していた。
「これは……僵尸ですね。息を止めれば……!」
「いや、息を止めてもダメです。こいつは一度視界に入れたら標的が死んでも追い続ける種です」
「え、駄目なんですか!?」
僵尸は息の臭いで敵を感知するため、息を止めれば見失う……という知識を知っていたミリアリアが驚く中、雄峰の一撃を食らって伸びていたはずの僵尸達がふらふらと立ち上がって来た。
「数が多い! それに一撃入れたくらいでは倒れそうにないとは厄介な!」
ミリアリアは眉間に皺を寄せると箒を取り出し、起き上がって来たばかりの僵尸の頭を叩きのめす。その間に詩乃は天耀鏡の一方を雄峰に託そうとしていた。
「これが雄峰さんの身を守ってくれるでしょう。持たずとも、近くにいるだけで構いませんので」
「い、いや、こんな綺麗な鏡万が一壊してしまったら……」
ヒヒイロカネの硬さを知らぬ雄峰が物怖じして受け取らない中、その襟元をミリアリアの箒の持ち手が引っかける。
「詩乃さん、雄峰さんは私がカバーしますから、思いっ切りやっちゃってください!」
「え、う、うわっ!?」
そう柄に乗りながら叫んだミリアリアはそのまま浮上していく。残された詩乃は深く息を吐くと、神社の近所の健康教室で習った太極拳の構えを取った。
「任されたからには無様な真似は晒せませんね。『神の威を此処に知らしめましょう。』」
鎌を振りかざして迫る僵尸に向けて詩乃は教わった通りのゆったりとした動きから、強烈な一撃をくらわせた。
「私達がいる以上、誰も被害に遭わせたりしませんよ!」
光の力を宿し、打撃時に衝撃波を上乗せされた蹴りを食らった僵尸は路上を転がり、屋台の前に置かれた木の椅子を薙ぎ倒していく。
「凄い、詩乃さんが次々と敵をっ……これが『葦牙流光凛拳』!! まさかこの目で見られる日が来ようとは! 可憐にして苛烈、そしてなんという神々しさ……!」
「葦牙流光凛拳……!? これが洛陽の拳法なのか……!?」
「あ、洛陽とはまた別の場所です」
勘違いされる前に訂正していると、詩乃に向かっていなかった僵尸が鎌を宙に投げてきた。
こちらを狙って来たのだろうとミリアリアは屏氷万里鏡で弾き返したが、鎌は重力に逆らって落ちないどころか、幾何学模様を描き複雑に飛翔し出した。
「はっ、術を使うつもりですね。させません!『生命を成す炉の炎 ここに勅を発すれば 抗う事ぞ六ヶ敷!』」
ミリアリアが懐から出したケージから放たれた収束呪禁が鎌の動きを封じ、術式を破壊して墜落させる。しかし僵尸はめげることなく鎌を宙でキャッチするとそのまま詩乃へ襲いかかった。
だが詩乃も展開している天耀鏡で正面の一撃を受け止めつつ、背後からの敵は功夫による技術で見切り受け流し、化徑をガラ空きの胸に叩き込む。
敵を追い続ける執念はあっても、動きが硬く戦場での心得のない僵尸にはその防護を破る術は無かった。
こうしてあしらわれ続けた僵尸はいつの間にか近づいていた掃除機のホースに吸い込まれると、骨が砕ける音をたたせながらそのタンクの中に仕舞われていった。
僵尸達が周囲にいなくなったところでミリアリアは雄峰を地面へと下ろす。ずっと宙吊りにされていたにも関わらず、雄峰は腰砕けになることなく拍手を送ってきた。
「詩乃殿、お見事でございました……!」
「なんか、良い物を見せてもらっちゃいましたね。天灯の願いが既に叶ったような?『希』は『まれ』とも読みますよね」
大変ご満悦そうなミリアリアと雄峰の反応に、本当はなんちゃって太極拳なのですが……とは言い出せず内心冷や汗をかきつつ、詩乃は笑顔で応える。
「ふふ、もっといろんな詩乃さんを知れたらな、なんて」
そんな気持ちの揺らぎが起きているとは一切気づいてないミリアリアはふと足を止めて空を見上げた。
「あ、天灯が夜空に映えて、すごくキレイですよ!」
指差した先に視線を向ければ、オレンジ色に輝く小さな気球がさらに星空に舞い上がっており、真下から観るのとはまた違う趣が感じられる風景が広がっていた。
こうして夜の灯籠節は落ち着きを取り戻し、願いを込めた天灯はゆっくりと空を流れていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵