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でっかいトカゲさんに乗りたいのだ part3

#アポカリプスヘル #【Q】 #戦後 #賢い動物

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#【Q】
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#戦後
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#賢い動物


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●再びお疲れさまなのだ
「資料回収は捗っているな、我のグリモアも解析を頑張ってるのだ!」
 ロアー・アレグリアス(雷刃名轟・f02956)は山積みにされた資料を番号順に並び替える作業の合間に、帰り着いた猟兵達へぶんぶんと手を振っている。
 グリモアによる資料解析は順当に進んでいるとのことで、進捗はどの程度かと誰かが尋ねた所……ロアーはにっこりと笑顔で答えた。
「ざっと、四分の一くらいなのだ! 我以外のグリモア猟兵からもこうした依頼が出ているかと思うが……それらぜーんぶひっくるめてみんなで解析してるのだぞ! 勿論、もっともーっと資料があれば、さらーに解析が進むのだがな! だがなー?」
 だがなー、だがなー、と……やっぱり目をキラキラさせた猫が上目遣いでこっち見てる。
 これはきっとあれだ、“あなた”が首を縦に振るのを待っているいつものやつだ。

●みたび説明なのだ
「アポカリプスヘルで発見された『賢い動物に関する禁断の技術研究』、その資料回収の目的は、コールドスリープ中の動物達を目覚めさせる為なのだ」
 ロアーは自らが担当する研究施設跡地の地下四階にてモニター越しに確認された、コールドスリープ中の動物達が納められた多くのカプセルをグリモアに表示させる。
 眠れる彼等をより安全に目覚めさせるには、更なる資料解析が必要であり、その為の人員は今も絶賛募集中なのだと繰り返した。
「回収すべき資料は地下二階にどっさり、地下三階に機密なモノがずっしりだ、まだまだ回収できるものがあるぞぅ! 加えて前回の作業過程で一部のセキュリティシステムが掌握出来たから……前より資料を運ぶのが楽チンになってるのだ!」
 先日に電力室やシステム管理室を掌握出来た結果、エレベーターや館内放送や連絡などのツールが使えるようになったようだ。
 地下三階にある鍵のかかった扉には、攻性トラップが存在しないことも判明した。
 その為、鍵開けやハッキングに自信がなくとも気軽にチャレンジ出来るだろう……警報と封鎖による多少の足止めはあるようだが。
「我の想像なのだが、もしかしたら【隠し部屋とかがあるかもしれん】な! 施設に隠された“ナニカ”を探ってみるのもいいかも……とにかく、役立ちそうなモノはじゃんじゃん持ってきてくれ!」
 もちろん、秘密の部屋などを探らなくても引き続き地下二階で資料の運搬を行うのもアリだ、モノは多ければ多いほどいいモノだ。
 そして例によって今回もオブリビオンの襲撃が予知されている……グリモアが映し出したのは巨大な烏だろうか、肉体の表面が一部腐敗しているように見える。
「敵はジャックレイヴン、でっかいカラスのゾンビなのだ。 上空から汚染された血液やら毒ガスで攻撃してきたり、配下のカラスゾンビを呼び出したりと、厄介な相手なのだぞ!」
 この屍鳥は己の尽きぬ食欲を満たすために、生者全てに襲い掛かる獰猛なオブリビオンだ。
 なぜ食欲が尽きぬかと言えば、嘴に装着されたマスクのせいで食事行為が取れない為だと言う……喰いたくても喰えない、永遠の飢餓がこの屍をさらに狂暴たらしめている。
「……なんか想像したくない苦しみなのだな。 だからといって眠れる動物達に危害を加えさせる訳にはいかないから、出現したならきっちりと倒してほしいのだ!」
 屍鳥の撒き散らす汚染や毒によって、動物達の目覚めが阻害されることなど、やはりあってはならない。
 けれどもこの研究施設跡地は、そういった外敵を容易く通さぬセキュリティがあっても、撃退する為の攻撃性を持っていないのだ。
 ならばその攻撃性、世界を守る猟兵達が担ってやらねばなるまいとロアーは拳を掲げる。
「アポカリプス・ランページを乗り越えた今でもあっても、オブリビオンの存在は人々や動物達にとって脅威なのだ。 無防備な眠れる動物達にとっては尚更な……そんな彼等を守れるのは諸君しかいないのだ! だから、今回も引き続き頑張ってくれ!」
 我も引き続き頑張るのだ、とロアーは沢山の資料と向き合い始める。
 ……どうやらまた、資料を番号順に並べる作業を始めたようだ。


四季臣
 六十七度目まして、四季臣です。
 この度はここまでOPをご覧いただき、ありがとうございます。

 前々回の「でっかいトカゲさんに乗りたいのだ part2」依頼ではお疲れ様でした。
 更に引き続いて賢い動物さん関係の依頼です、資料はもっともっと必要になります。

 第1章は、日常『研究資料回収』です。
 研究施設跡地を探索し、『賢い動物』の研究資料を回収してください。
 資料を持ち帰ったら、解析はグリモアが行ってくれるそうです。
 量を取るか、質を取るかで方針が変わってくるかと思います。
 更に今回は【隠し部屋を探してみる】といったチャレンジを募集しています。
 施設にどんな秘密があるか、秘密の入り口はどう開くか……皆さんの想像力を楽しみにしています。

 第2章は、ボス戦です。
 巨大なゾンビカラスこと『ジャックレイヴン』との戦闘になります。
 嘴のマスクのせいで食事すら取れず、尽きぬ飢餓状態に苦しむ敵は非常に狂暴です。
 そして上空から汚染や毒を撒き、地上に持続ダメージを発生させる嫌らしい敵です。
 毒に対する策や、空中戦闘の備えがないと苦戦が予想されます、ご注意下さい。

 それでは、三度よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『研究資料回収』

POW   :    施設内をくまなく歩き回り、資料を探す

SPD   :    散乱した書類の中から目ぼしいものを探し出す

WIZ   :    施設に残されたコンピュータにアクセスする

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

三上・チモシー
アドリブ連携歓迎

やっほー、また来たよー
資料回収頑張るね!

るーさん、ここ、隠し部屋があるかもしれないんだって
ちょっと探してみようよ
『猫行進曲』で呼び出した100匹超のるーさんたちを放流
壁に【聞き耳】をたててみたり、後はなんかこう、【野生の勘】で隠し部屋を探すよ!
あっ、資料回収もちゃんとやるよ!

隠し部屋らしい場所が見つかっても、たぶん簡単には入れないよね
開けられる人がいればおまかせするけど、いなかったら……う~ん、どうすればいいかなぁ
とりあえず、押してみる?
押してダメなら……もっと押す!【怪力】
大丈夫大丈夫、世の中、大体のことは物理でなんとかなるから
資料あるかなー?


バロン・ゴウト
進捗は四分の一、まだ先は長いかもしれないけど、それでも着実に解析は進んでるのにゃ。
よーし、今回も資料回収張り切って頑張るのにゃ!

さて、今回は隠し部屋探しにチャレンジにゃ。
【トリニティ・エンハンス】で弱めの風を起こして、羽根帽子から取った羽根を飛ばすのにゃ。
隠し部屋があればその辺りの空気の流れが変わるはず。羽根の動きをしっかり観察して、おかしな飛び方をした辺りの壁を【聞き耳】を立てながら叩いたりして調べるのにゃ。

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。



●秘密を探せ、にゃんこたち
 かれこれ3度目の資料回収となった今日、研究施設跡地には見慣れたメンバーが再び顔を合わせることとなった。
「やっほー、また来たよー! 一緒に資料回収頑張ろうね!」
「やっほーなのにゃ! 今回もよろしくなのにゃ!」
 1回目の依頼では怪力担当として活躍した三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)と再会を果たしたバロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)は、ぽむっとハイタッチをしてご挨拶。
 資料を運び出し終えた部屋に一時的な拠点を構えて、バロンは2度目の依頼での経過状況をチモシーに説明していた。
「なるほどー、だから地下3階の閉まってた部屋が殆ど開いてたんだねー。 バロンくんってば鍵も開けれちゃうんだー」
「魔法学校での勉強の成果なのにゃ! そして進捗は四分の一、まだ、先は長いかもしれないけど、それでも着実に解析は進んでるのにゃ。 ボクは今回、隠し部屋探しにチャレンジするにゃ!」
 隠し部屋……グリモア猟兵がそうしていたように、チモシーとバロンの瞳もキラキラとしている気がする……秘密基地などは男の子のロマンなのだ。
 であれば協力して秘密の部屋を探す流れとなり……2人はさっそくユーベルコードを発動させる。
「にゃーん☆ 出ておいでるーさん!」
「トリニティ・エンハンスの風の型よ、我に力を示せ! ……なのにゃ!」
 そうして地下の施設跡地になだれ込んだのは、100匹超の灰色の猫『るーさん』の群れと、羽根を宙に舞わせる風の魔法。
 チモシーの猫行進曲(にゃんこマーチ)で出てきたるーさん達は、その数の多さで隠し部屋を総当たりで探しに向かう。
 バロンはトリニティ・エンハンスで風を起こし、更に羽根帽子から取った羽根を飛ばして風の流れを視覚化。
 施設内の構造からなる空気の流れの変化を探ることで、隠し部屋のありそうな空間を見つけ出す作戦を取る。
 ……なお、多すぎて余り気味なるーさんは資料回収を頑張っていた。

 地下2階の資料部屋や通路を、2人(+るーさんがたくさん)が探りながら歩いていると……最初に違和感に気付いたのはバロンだ。
「この壁の向こう側に風が抜けていくのを感じたにゃ。 隠し部屋はきっとこの先にゃ!」
「うーん、一見なんの変哲もない壁だね……鍵とかなさそうだし、どうやって開けよう?」
 壁に耳を押し当て向こう側の物音を探ろうとしているバロン……子猫の耳には何やら、草が風に揺れて擦れ合うような細やかな音が聞こえると言う。
 コンコンと軽く壁を叩いてみれば、音はよく響く……ここの壁だけ異様に薄いとはっきり分かるほどだ。
 であればこの先が隠し部屋か、となるが……チモシーの言うようにそこはぱっと見ただの壁で、鍵らしきモノが存在しない。
 ならばどうするか。
「とりあえず、押してみる?」
「押してみるにゃ! チモシーさん、お願いしますにゃ!」
 ここで初回の怪力担当チモシーの役が回って来た、バロンが指差す先目掛けて、鉄瓶由来の強靭なプッシュが炸裂する!

 壁はべこんと鈍い音を立て、チモシー型の大穴をぽっかりと開けた。
 突き破る形でその空間に入り込んだチモシーが踏み締めたのは、草が敷き詰められた柔らかい土の上だった。
 視界に映るのは、草が生い茂り幾つかの遊具が転がされた『とある一家の庭先』といったような、なんとも平和で……今のアポカリプスヘルでは到底あり得ない光景だった。
「……えっ、と? ここ、地下……だよね?」
 目をぱちくりとさせて困惑するチモシーと共に、後から入ってきたバロンも驚きの声を上げる。
 ただよーく見てみれば、見渡せる風景や空は、壁や天井に描かれた絵だと言うことに2人は気付いた。
 どうやら地上に出た訳ではなく、まだ地下にいるようだ……言うなれば『地上を描いた秘密部屋』と言ったところだろうか。
「気持ちが落ち着く場所だけど……資料はなさそうだね」
「ここは一体、何のための部屋なのかにゃー?」
 新たな疑問が浮かび上がるが、見事隠し部屋を見つけ出すことが出来た。
 2人は思いがけない自然の景色の中、魔法の風が鳴らす草の音に耳を傾けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アーネスト・シートン
前回は、遅れたがゆえにほとんど調査が出来ず、功を焦っていたと思います…

ただ、そう言ってられるような状況ではないし、引き続き調査でもいたしますかね。
さて、今回は…扉をこじ開けてもいい??隠し部屋??


なら、今回は、このように致しましょうかね。
キャッスルクラフト。本来は城や要塞を作るためのものですけど、この領域を作り変えてもいいかも知れませんね。改装ですよ。

てなわけで、地下3階の扉を作り変えていただきますかね。
あと、隠し部屋あったら報告をお願いいたしますね。

そんな訳で、扉や部屋が解放されたら、【情報収集】【医術】【失せ物探し】で、見つけた資料を必要性あるか分けあせていただきますね。

アドリブ歓迎



●もういっそ拠点を築こうかってレベルなのだ
 地下三階では……こちらも総勢100を超える程の作業員が資料回収に勤しんでいた。
「資料を運び終えた部屋は、どんどん改築していって下さいね。 あと、隠し部屋あったら報告お願いいたしますね」
 アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は、作業している人々にそう声を掛けて回っている。
 ちなみにこの作業員達はユーベルコード、キャッスルクラフトによって呼び出した面々であり……作業員は作業員でも、本来は工事作業員である。
 なので、余っている人手は施設の改築要員としてフル活用してしまおうと、動物愛好家さんは思い付いたそうだ。
「地上からオブリビオンの汚染や毒が染み込まないよう、即席の屋根を組み立てくださいね。 空になった部屋は資材置場にしましょうか、動物達が目覚めた時の貯蓄です」
 動物達の目覚める世界は既に荒廃しきっている……厳しい現実を目の当たりにするであろう彼等の未来を少しでも良くする為の努力を、アーネストは怠らない。
 資料は回収しつつ、改装を行うことで施設全体の防御を固めていく……前に救急隊員達が設営したバリケードは地表に張り巡らせるよう指示を出し、敵の攻撃に備えた。
「……さて、私は調査の続きでもしましょうかね」
 そうしてアーネスト本人は、作業員達が集め終えた資料に手を伸ばす。
 前回は依頼に出るのが少し遅れてしまって出来なかった分の調査を、と……ぱらぱらと手早く、それでいて着実に進めていく。
 隠し部屋の調査も行っていると、どうやら地下二階に施設長であった人物の自宅の庭先を模した自然空間があることを突き止めた。
 では早速、とアーネストがそこへ向かった頃には……既にチモシー型の大穴が空いていて、そこで2人の猟兵と合流を果たすこととなる。
「この施設にいた人は、馴染みあるこの光景を残しておきたかったんですね……」
 荒廃した世界の地下に秘された、造られた自然の中、アーネストは適当な場所を見つけて座り込む。
 魔法の風に吹かれながら資料に目を通すその一時は、ここがアポカリプスヘルだと言うことを忘れかけるくらいに穏やかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・シルバーマン
三度訪れる事になったが矢張り空気は変わらんのう。
一歩ずつ進んでいると信じ頑張ろうか。

まずコールドスリープ中の動物達のいる部屋の近くで様子を確認。
まだまだ目覚めるには時間はかかるじゃろうが必ず起こさぬとな…
その部屋を中心に隠し部屋の捜索を試みる。
システム管理室でセンサー等の図面を確認し実際の設置場所と個数を照らし合わせ不自然な点がない確認。
他にも実際に施設を歩いて歩いた距離と部屋の位置関係で妙な空間がないかも調べられるかのう。
階段の途中に別の小部屋の入口がある等も考えられる。
他は…壁を叩いて音が違ったりした個所も調べてみるか。
入り方は不自然な置物等を弄るか最悪実力行使…?

※アドリブ絡み等お任せ



●眠れる動物達の管理者
「三度訪れる事になったが矢張り空気は変わらんのう」
 ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)の訪問もかれこれ三度目となる、システム管理室から拝借したタブレット型端末を片手に施設内の探索を行っていた。
 前回システムの一部を掌握出来たローの手元には、センサーや監視モニターの図面がある……これらが配置されている箇所を実際に見回り、不自然な点がないかを確認している最中だ。
 時折作業を進める工事作業員に手を貸しつつ、目視での確認を終えたセンサーにチェックを入れていく……今のところ特に不自然な点は見当たらない。
 そうしてローは現在、地下4階にある動物達が眠る部屋の前にいる……途中の階段にも隠された入り口がないかと調べたが、そこいらにはなにもなかった。
 生半可な腕では破れぬセキュリティドアの向こう側、ガラス越しに見える大型のカプセルを見る。
 進捗は四分の一と言っていた、ならば一歩ずつ着実に進んでいると信じて頑張ろうと、決意を改める。
「(まだまだ目覚めるには時間がかかるじゃろうが、必ず起こさぬとな……む?)」
 手元のタブレットをカチカチと操作していると、何やら不自然な場所を監視し続けているモニターがあることに気がついた。
 地下4階のセキュリティドアを監視するのはまだ理解できるが……そのドアを通りすぎた突き当たりの壁をずっと写しつづけるモニターは、一体何を監視していると言うのだろうか。
「ただの通路の余白と思っておったが……なにか意味があるようじゃな」
 システム周りを把握していなければ、この不自然なモニターに気付くことはなかっただろう。
 突き当たりの壁の前に立ち、壁をコンコンと軽く叩いてみると……他の壁よりも高い音が響いた。
 間違いない、この先に隠された空間がある……そう確信したローだが、どのように開けるかは分からない。
 見渡す限り、不自然な置物の類いはないようだ……仮にそんなモノがあったなら、最初の依頼で誰かが気付いていただろう。
 地下2階でチモシーがそうしたように、ここは実力行使か……そんなことを思い、タブレットを片隅に置こうとしたローへ。

『ーー待っていたぞ』

 ふと、どこからかそんな声がかけられた、ノイズにまみれてしゃがれたような、妙に耳に残る特徴的な声。
「……何者じゃ?」
『入れ』
 ローの問いに応じることなく、謎の声はただ指示だけを下す。
 すると先ほど叩いた目前の壁が横へとスライドしていき……その先には両開きの扉があった。
 備えられたプレートには……『所長室』と書かれている。
 地下二階に自宅の庭先を模した部屋を作った人物のオフィスは、動物達が眠る部屋のすぐ近くに隠されていたと言うことだ。
 であれば謎の声の正体は所長なのだろうか……考えを巡らせつつ、警戒をしながらローは扉に手を掛け、押し開ける。
 そうしてまずローの視界に映ったのは、人間とおぼしき者の白骨死体だった。
「むぅ……」
『我が主だったものだ、もう話せない。 代わりに我輩が話そう』
 椅子に腰掛けた状態で亡くなったであろう人から目を逸らさせるように、声がローを部屋の奥へと導いていく。
 個人の書斎のような落ち着いた部屋の奥には、培養液に満たされた巨大な水槽がある。
 そしてその液体の中には……いくつもの配線で繋がれて眠る、一匹の大きなエリマキトカゲの姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ジャックレイヴン』

POW   :    トキシックフェザー
【両翼】から【血液で汚れた無数の羽根】を放ち、【血液に含まれる神経毒】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    オールモストデッド
【腐食、腐敗を促進させる毒ガス】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    デッドレイヴン
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【屍鴉】が召喚される。屍鴉は敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鈴・月華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●管理者の願いを託されたのだ
 地下4階にて、隠されていた所長室と賢い動物のプロトタイプを見つけた。
 ローの連絡を受けた猟兵達は所長室へと集い、そして水槽に入れられた大きなエリマキトカゲと対面することとなる。
 チモシーは目を輝かせている中、バロンは羽帽子を胸に当てて一礼をした。
「うわぁ~、本当にでっかいトカゲさんだ、恐竜みたいでカッコいい!」
「初めましてなのにゃ、こうしてお会いできて嬉しいのにゃ!」
 そんな二人の声かけに応じてか、眠れるエリマキトカゲは僅かにその身体を震わせたように見えた。
 ローの持っていたタブレットから、再び奇妙な声が再生される……どうやら目の前の“彼”は、タブレットを介して猟兵に語り掛けているようだ。
『狼に、猫……我等と同族かと思えば、どこか異なる者よ。 望みはなんだ』
「お主らを目覚めさせることじゃ、たとえ時間がかかるとしても、必ずな」
「あなた達をこのまま滅ぼす訳にはいかないですからね」
 問われてローとアーネストがそれに答える……これまでに多くの研究資料を施設から持ち出したが、その最終目的は賢い動物達をコールドスリープから解放することである、と。
 タブレットからは『そうか……』とだけ返される。
 どこか機械的な声色でありながら、それでも命にすがる必死さが籠っていた。
『我々は、諦め掛けていた……目覚めることを。 技術者達は失われ、我が主である所長はなにも話せなくなった以上、我々が目覚める術は失われていた。
 それでも目覚めることを願い、我が主の思いを朽ち果てさせぬ為……我輩は同胞のバイタルを維持し続け、ただ待ち続けることしか出来なかった。
 そこへ、諸君が現れた……改めて問おう、諸君は我々の目覚めを望むものか?』
 そうであってくれと願うような、すがるような音声に対し、その場に居合わせた猟兵達は揃って頷いて見せれば。
 寝ているはずのエリマキトカゲの口元が、なんとなく緩んだように見えた。
『……ここにある資料は好きに使ってくれて構わない、それが諸君の、そして我々の目覚めの助けになるならば、尚更のことだ。
 諸君には、我々の事を二度も護りきった実績も存在する……我輩は忠実な獣ではないかもしれないが、決して恩知らずではない、目覚めの暁にはーー』
 ーータブレットの声に重なり、施設中に警報音がけたたましく鳴り響く。
 水槽のエリマキトカゲがその音に反応し、たじろいだように見えたが……機械的な声はノイズにまみれた焦りを帯びて、猟兵達に現状を伝える。
『生命を脅かすモノが現れた。 決して満たされぬ飢餓故に、全ての生命を啄むことさえせずに、ただ破壊を汚染を撒き散らす、忌まわしき屍の大鴉。
 お願いだ、見知らぬ人に見知らぬ獣……我々は目覚めたい、託された思いを朽ち果てさせる訳にはいかない。 どうか、我々を助けてくれ……どうか』
 切なる願いに猟兵達は再び頷いて、速やかに地上へと向かうべく、所長室を飛び出す。
 その最中、流れた館内放送にてせめてもの援助として、施設にあるせめてもの設備について説明が成された。
『地上にはモノを宙へと打ち出す為のカパタルト、地下2階の医務室には解毒剤がある。 解毒剤が奴の汚染に効く保証は出来ないが、助けになるならば存分に使ってくれて構わない』
バロン・ゴウト
この地下に居る賢い動物さんは目覚めることを望んでいた。
良かった、ボク達のしていることは、決して間違いではなかったのにゃ。
だからこそ、地下に眠る皆さんをオブリビオンの餌食になんてさせないのにゃ!

カラスのゾンビ……けど、ここには丁度いい設備もある。それを使ってうまく戦ってみせるのにゃ。
地上にあるカタパルトを使って空中に飛び、【トリニティ・エンハンス】の風の魔力で姿勢の制御をするのにゃ。
敵に近づいたら【全力魔法】で風の魔力を纏って敵目掛けて突進し、敵の飛ばしてきた羽根ごと【吹き飛ばす】のにゃ!

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。


三上・チモシー
アドリブ連携歓迎

早く大きいトカゲさんと直接お話ししたいね
よーし、がんばろー!

カタパルトってこれかなぁ? なんかカッコいいね、ライ麦ちゃん
ちょっと使わせてもらおっか
ライ麦ちゃんに乗って、カタパルトの力を借りて一気に敵のいる空中へ!

ライ麦ちゃんの【高速泳法】で敵のもとに一直線
敵の羽根攻撃は一つ一つ避けてたらスピードが落ちちゃうから、毒を受けるのも覚悟で突っ込むよ!
自分もライ麦ちゃんもある程度は【毒耐性】があるから、毒の効果も少しは薄いはず
毒がまわる前に、最高速度で体当たりドーン!
からの『灰燼拳』! えーいっ!


荒珠・檬果
今まで、ロアーさんのキラキラ目に気絶してました!
ですが、まあ戦闘に間に合いましたのでよしとしましょう!
あ、解毒剤は貰っておきますね。

七色竜珠を合成して白日珠(ビーム書簡形態)へ。
さて、厄介なUC使ってきますよね?なので、使われる前にこちらのUCを使う。つまりは先制攻撃です!
見えない以上、UC使おうとしてくるでしょうしね。霧がある以上、意味ないですけど。

この人を憑依させる以上、打てる手は打つ。
だからこそ、解毒剤貰ってたのです。霧は発生してるので…動けるようにする『二の手』ってやつですよ。

はい、私はビームで攻撃していきますが、まあサポートですよね。

なお『戒慎将』とは、契約の際に私がつけました。



●再び集う第一陣なのだ
 思いがけない邂逅を果たし、切なる願いを聞き入れた猟兵達。
 中でもフットワークの軽いバロンとチモシーは、エレベータを待つ時間を惜しみ、階段へと向かう。
「賢い動物さんは目覚めることを望んでいた……良かった、ボク達がしていることは決して間違いではなかったのにゃ!」
「早く大きいトカゲさんと直接お話ししたいね! よーし、一緒にがんばろー!」
 救いを求める声あらば、決意を更に固めてバロンは先導し駆け上がる……未来を願う彼等をオブリビオンの餌食にさせるわけにはいかない。
 地下3階、地下2階……階数表札を横目に急げ急げと地上を目指す最中、二人は見覚えのある緑にふと立ち止まった。
 地下2階の通路からひょこっと現れた、目に優しい緑の鬣を揺らしながら、その人はきりっと表情を引き締める。

「今まで、ロアーさんのキラキラ目に気絶してました!」

 ーーあのグリモア猟兵は作業中に、出発前の猟兵に何をしでかしたんだろうか。
 何はともあれ、茶色い猫毛をいくつもくっつけた荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)とここで合流を果たしたバロンとチモシー。
 もう敵が迫ってることを手短に伝えて再び階段を駆けると、お買い物袋に薬をたんまり詰め込んだ檬果は慌てて後を追いかけた。

●深い霧は失策しないのだ?
「いたのにゃ!」
 真っ先に地上へ飛び出たバロンがまず指差した遥か上空に、そのオブリビオンは羽ばたいていた。
 死して尚、果てない飢えを満たすための汚染と殺戮の嵐を撒き散らす屍鴉、ジャックレイヴンは……餌食を求めて空をさまよっている。
 どうやらまだ、猟兵達の存在には気が付いていないようだが……地下に多く潜む生命に興味を抱くのも時間の問題だろう。
「あっ、カパタルトってこれかなぁ?」
「おーっとその前に、私は先制攻撃を仕掛けちゃいましょう!」
 チモシーがすぐに射出機……カパタルトの存在に気付いて駆け出すのに、檬果は待ったを掛けてユーベルコードを発動させる。
 その名も『胆の座りし彼の者に失策はなく。 全ては手のひらの上』……ふりがなは(呼べるけど難しいんだよ)。
「失策がないからこそ、難しいんですよねー……」
 檬果の心境を覗かせるような一連の流れに子猫騎士と鉄瓶っ子が首を傾げる中、現れたるは戒慎将『賈詡』……三國志においては魏軍の政治家である。
 どうにも“失策がない”ことに定評があるらしい賈詡を檬果の身に憑依させ、『白日球』より発生させるのは深い霧だ……霧だとわかるのに、猟兵の視界を遮らない不思議なそれは、ただの目眩ましに留まらない。
 もくもくと立ち込める霧がジャックレイヴンをも包み込んでいったならば、霧は鴉の朽ちた肉体を蝕みつつも、攻撃の1種である毒ガスの発生をも妨げてしまう、攻守万能の策である。
「この人を憑依させる以上、打てる手は打つ。 だからこそ解毒剤貰ってたのです!」
 きりっと『二の手』も用意したと、ガッツポーズをキメてる檬果からついにゴーサインが出される。
 いざって時の備えも、ビームによる援護射撃の準備も万全とのことで……ようやくチモシーはカパタルトに手を掛けた。

●飛び出せライ麦ちゃん、落とせ2つの流星
「角度よーし、そしてー」
 きりきり、きりきりと、カパタルトの射出角度を調節し……土台には宙に打ち出す子をむぎゅっとセットする。
「よーし、ライ麦ちゃんセットアップ!」
 チモシーの呼び掛けによって現れたのは、全長3メートルほどの大きさになったナマズの『ライ麦ちゃん』だ。
 空をも泳げるいい子をカパタルトに乗せて、その上でチモシーはライ麦ちゃんの大きな背中に乗り込み発射準備は万全。
 加えてお隣に失礼したバロンは、再びの風魔法を準備して空中戦闘に備えている……準備はいいかなとチモシーが目で問うのに、バロンは頷きで返した。
「しっかり掴まってね……いくよー、ライ麦ちゃんはっしゃー!!」
 それはさながらピンク色の生ける砲弾として、2人を乗せたライ麦ちゃんはジャックレイヴンを目掛けて放たれる。
 檬果の起こした霧の効果もあって、地上より迫り来るライ麦キャノンの存在に屍鴉の反応は大きく遅れ……汚れた羽根で迎え撃つ隙もなく、巨大ナマズ渾身の体当たりが炸裂した。
 かなりの質量を誇る強打をまともに受けたジャックレイヴンは大きく上へと打ち上げられながらも、巨体による体力でもって空中姿勢を取り戻しては獲物を探す。
 マスクに覆われた光なき目でやっと、空中を高速で泳ぐライ麦ちゃんを捉えるも……乗っていたはずの2人の姿がそこにない。
 獲物はどこだと視界巡らすジャックレイヴンの、そのまた頭上に2人はいた……トリニティ・エンハンス、風の型で空中姿勢を制御していたバロンとチモシーは、がら空きとなった屍鴉の背を目掛けて急降下する。
 その異様な風の流れを感じたか、ジャックレイヴンは咄嗟に向き直った時には既に遅く、羽根を放つ間もなく2人の猟兵は屍鴉の懐に入り込んでいた。

「いっせーの! えーい!!」
「せーのっ! なのにゃっ!」

 自らを風の弾丸にしたバロンの突撃と、チモシーの固さと怪力が込められた灰燼拳が同時に突き刺さり、屍鴉の巨体を凄まじい速度で地に落としていく。
 それは黒い隕石の如く、霧の中で屍肉と羽根を散らすジャックレイヴンはやがて、レイピアの切っ先と鉄瓶の拳に翼を縫い止められたまま、荒れ果てた地面に激しく墜落した。
 地面には大きく亀裂が入り、辺りには土埃が立ち込める……地上に控えていた檬果がビームを撃つ間もなかった。
「あわわわっ、お二人とも大丈夫ですかーっ!?」
 檬果がすぐさま駆け寄って、汚れた羽根に埋もれかけたバロンを引っ張り出す……流石にこれはモフりたくないなと思いつつ。
 バロンに付着した汚れた血液は檬果の医術で手早く拭われて、毒耐性のあるチモシーはすぐに体制を立て直した。
 霧による持続ダメージに加え、三度の強打を受けたジャックレイヴンの消耗は激しいが、こちらも大きく羽ばたいては空へと舞い上がる……戦う余力はまだあるようだ。
「うわー、結構痛そうだったのにまだ飛べるんだねぇ……バロンくん大丈夫そう?」
「ちょっと身体がピリピリするのにゃ……」
「はいっ、二の手打ちますよーっ!」
 霧と土埃を盾にして、更にチモシーが立ち塞がる中……檬果はバロンの受けた毒の治療を開始した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ロー・シルバーマン
ふむ、体は眠っているが意識は一部目覚めている…という事かのう?
正しくコールドスリープを解除しなければならないのは変わらないのじゃろうが。
…目覚めたいという意志を持つ動物がいる。ならば屍の大鴉に貪らせる訳にもいかぬからな。

医務室の解毒剤を回収し地上へ。毒ガスを確認したらすぐに摂取。
空の敵に対し屋根等があるならそれに隠れつつ、或いは付近の景色に紛れるよう服など迷彩し狙撃のタイミングを計る。
毒を極力吸わぬよう気をつけつつ儂から注意が逸れた瞬間を見計らいUC起動、狙撃し撃ち落すとするか。

礼はいらぬ、
ただ幸せになれるよう、生きようとしてくれればそれが儂には嬉しい事じゃ、と伝える。

※アドリブ絡み等お任せ


アーネスト・シートン
さて、汚染能力を持つ空を飛ぶ鴉ゾンビとは、傍迷惑ではあるものの、人類の所業の一端ですね。

さすがに、この場所を汚染されるわけにも行きませんからね。
こうなれば、わたくしの出来うることをやるのみですね。
M.S.L.スナイパーモードにして、命中率をあげて空に居る敵を撃ち落とすのみです。
あの鳥にも、苦しみから開放しなくてはいけませんね。
はっきりしている事は、倒さなくてはいけないということです。
まず、カタパルトで【スナイパー】狙いでウォッカの瓶をぶつけさせてから、M.S.L.で狙い撃ちしますね。
アルコールは、消毒液にもなるんですよ。
わたくしは、あまり飲まないのですけどね。
終わりにしましょう。
アドリブ歓迎



●アルコールは消毒液にもなるのだ
「むぅ……」
 エリマキトカゲの説明に従い、医務室に向かい解毒剤の回収に向かったローだったが……それがあったであろうケースは既に空っぽだった。
 近くで設備の点検を行っていた作業員の話によれば、緑の鬣をした奇妙な鳥が薬をお買い物袋に詰め込んでいったとのこと……来るのが一歩遅かったようだ。
「まぁ……場所が分かれば良いか」
「はいはい、ちょっと失礼しますよ」
 かさばる荷物を運んでもらったと思い直したローの横をアーネストが通りすぎ、そこいらの薬品棚に手をかける。
 解毒剤ならもう地上じゃぞとローが声をかけるが、アーネストの目当ては薬ではなく……いくつもの茶色い瓶だった。
「それは?」
「消毒用のアルコールです」
「消毒……ふむ、わしも手伝おう」
 敵は自らの血液に神経毒を溜め込んだ屍鴉だ、その毒性を薄められる手段として、アーネストはアルコールに目をつけて、作業員と共に地上へと運び出す。
 その後をローも1箱抱えてついて行く……遥か上空にいる屍鴉の汚染が広がる前に、自分達の手で討ち取らねばならない。

●永遠の飢餓に終焉を
 2人の猟兵と幾人かの作業員が地上に出た頃、既に薄い霧が立ち込めていた。
 毒ガスか、とローが咄嗟に口を覆うがそうではなく、仲間が発生させた目眩まし兼敵の攻撃阻害用の霧だと聞いて、アーネストはほっと胸を撫で下ろす。
 とはいえずっと安全とも言い切れない為、アーネストはすぐさま行動に移る……作業員達にも毒が回っていないことを改めて確認した後、いくつものカパタルトの位置を指差し始めた。
「それではアルコールをカパタルトにセットして下さい、狙いは鴉ゾンビです」
 そうして配置についた作業員達は、一斉にカパタルトからアルコール瓶を上空へと打ち上げていく。
 上空のジャックレイヴンからしてみれば、深い霧の中からいきなりモノが飛んでくるような状況なのだろう、まともな回避行動も取れずにたくさんのアルコール瓶に直撃していった。
 その間にも、そしてバロン達と戦っていた時でさえ一声も鳴かないのは、やはり顔に付けられたマスクが原因なのだろう……人為的な処置によって、喰うことも鳴くことも出来ぬ鴉の痛々しい姿がアーネストの心に突き刺さる。
「もう、終わりにしましょう」
 この場所を汚染させぬ為に、そしてあの鳥を苦しみから解放する為に、アーネストはM.S.L.スナイパーモードを構え、地上より精密射撃を行う。
 重厚なる狙撃の銃声が高鳴る度に、鴉の嘴を封じるマスクに鉛弾が突き刺さって亀裂を刻んでいった。

 その間にローは、作業員が建築していた屋根の上でその時を待っていた。
 仲間が発生させた霧のお陰で隠れる必要がなくなった上に視界は良好、けれども敵からはまるで見えていないときている……狙撃手にとってこれほどまでに恵まれた状況はなかなか訪れないものだ。
 万一に備えて解毒剤を口に含み、アーネストの合図を待つ……狙うは、苦しみから解放することを望んだ動物愛好家が刻んだ、マスクの亀裂だ。
 かくして地上より狙撃が行われ、衝撃を受けたジャックレイヴンの頭が大きく仰け反る……狼の鋭い眼光が、揺れるマスクの亀裂を捉えた。

 猟銃より放たれるただ1発の弾丸は、的確にジャックレイヴンの脆くなったマスクに突き破り、頭蓋を砕いていく。
 地上と屋根の2ヶ所から揺さぶられるように銃撃を受けたマスクは、その衝撃のあまり粉々に砕け、そしてーー。

 ーーギャアアアアアアァァァァァァッ!!

 耳をつんざく程の声でやっと嘴を開けた屍鴉は、ついに飢餓の苦しみから解放されて地に堕ちていった。

「ふぅ……」
 やがて霧が晴れた頃、地上に落ちた死骸が焼き払われていくのをローは屋根の上から眺めていた。
『終わったようだな』
 持ち出したタブレットからエリマキトカゲの声がする、ノイズのせいで分かりづらいが、どうも沈んだ気持ちでいるようだ。
『……ありがとう、その、我々は』
「礼はいらぬ」
 守られてばかりで後ろめたさを感じているであろう管理者へ、ローは普段の穏やかさで微笑みかける。
「ただ幸せになれるよう、生きようとしてくれれば、それが儂には嬉しい事じゃ」
 目覚めたい、生きたいという意思を持つ者達の為……猟兵達はその日が来るのを待ち続け、そして守り続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月08日


挿絵イラスト