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そうだ、エジプトを守ろう!

#サクラミラージュ #改羅 #幻朧戦線

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#サクラミラージュ
#改羅
#幻朧戦線


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●予知:桜舞い散る埃及(エジプト)にて。
 サクラミラージュに存在する都市のひとつ、『改羅(カイロ)』。
 数千年に栄えた古代文明が色濃く残る亜剌比亜(アラビア)文化の中心地点である。
 七百年以上前に帝都によって統一されてもなお独自の文化は尊重されており、スフィンクスやピラミッドといった遺産を観光の名所として、日々賑わっている。

 幻朧桜の花びらが彩る都市の郊外、人気の多い砂漠を二人の娘が歩いていた。
 娘たちは黒い女学生服に身を包み、ピラミッドを見上げている。
 辺りには大勢の観光客がいるため、二人を不審に思う人はいない。
 そのうちの一人が黒い鉄の首輪をつけていることにも、もう一人がオブリビオンであることにも、気づいていない。
 オブリビオンの娘が愛おしそうに口を開く。
 恍惚とした笑みを隠すように、口元を手で覆い隠す。

「何と美しいのでしょう。これほどの芸術作品が、数千年も維持されていようとは。
 ああ……。とても美しい……荘厳な雰囲気、神秘的な佇まい……。
 凛々しきスフィンクスの面持ちも、整然と並ぶピラミッドの石段も……。
 ああ、そのすべてを……。

 壊してしまいたい!」

「帝都から遠く離れたこの地であれば、帝都桜學府の動きも鈍いでしょう。
 同志、甘粕・妙子。どうぞ、貴方の芸術を存分に披露してください。
 この停滞した大正に、華々しい嚆矢を放ってください」

「ええ、ええ! 同志、ヤーサミーナ!
 ワタクシの芸術をご覧にいれましょう!
 新時代の博覧会、カーテンコールと参りましょう!」

 宣誓と共に、オブリビオンがその砲火を振るい、居合わせた観光客諸共スフィンクスを破壊する。
 青い空に悲鳴が広がる中、哄笑と共に破壊活動が行われていく。
 幻朧戦線・改羅支部の手によって、貴重な文化遺産が破壊されていった。

●招集:転移先は飛行船。
「ハーイ、エブリワン! テロリズムの予兆を察知しマシター!
 ターゲットは、エジプト!
 ギザのピラミッドやスフィンクスを破壊して、騒乱の引き金を引くことであります!
 なので、阻止してくだサーイ!」

 バルタン・ノーヴェがプロジェクターを起動すると、複数人の女学生が映し出される。
 誰もが黒い鉄の首輪を付けている。それは、『幻朧戦線』の特徴だった。

「彼女たちは幻朧戦線・改羅支部の構成員! これまでは水面下での活動に徹していたため摘発を逃れていたようデスガ、ついに動き出したため予知に引っかかったデース!
 この予知を受けて、帝都桜學府から飛行船を発進させてもらってマース!」

 予知の事件発生まで、まだ一日以上猶予があるという。
 それまでにエジプトのカイロに着き、観光がてら情報を集めて欲しいということだ。

「彼女たちは市井に溶け込んでいるとはいえ、特徴的な首輪をつけておりマース!
 現地の人々に話を聞けば、彼女たちの往来がある場所、すなわちアジトや潜伏先を掴んで、先制攻撃できるはずデース!」

 最悪、数多あるスフィンクスやピラミッドの前で待ち伏せていれば姿を見せるだろうが、そうなると重要な文化財に被害が及ぶ可能性が高い。
 最善は、事件が起こる前に幻朧戦線を叩き、テロリストたちを逮捕することだ。

「幻朧戦線のメンバーは一般人であるゆえ取り押さえるのは難しくないデショーガ、彼女たちはいくつかの影朧を使役しているようデース。
 奇襲がうまくいっても、決して油断なきよう頼みマース!」

 そして、バルタンはグリモアを起動してテレポートのゲートを開く。
 向かう先は、飛行船の中。数時間の空の旅を経て、猟兵たちはエジプトへとたどり着くことだろう。
 安心して欲しい、墜落はしない。


リバーソン
 こんにちは。リバーソンです。
 マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。

 今回の舞台はサクラミラージュの「大正時代の外国」、エジプトです。
 現地で活動するテロ組織、『幻朧戦線・改羅支部』を排除することが目的です。
 デッドオアアライブですが、一般人の構成員たちは逮捕することを推奨します。

 第一章:エジプトのカイロで観光を満喫しつつ、情報収集を行ってください。
  カイロの場景はプレイングに合わせて変化するので、時代背景とか立地とか気にせず好きなように楽しんでください。

 第二章:第1章で得た情報を元に『幻朧戦線・改羅支部』の拠点に襲撃を行ってください。
  拠点には数名の構成員がいるため抵抗が予想されます。
  影朧の出現に警戒して挑んでください。
 プレイングボーナスは、『構成員を逃がさない』です。

 第三章:拠点にいる支部長、今回の事件の首謀者との戦闘となります。
  支部長も一般の人間であるため戦闘力はありませんが、強力なオブリビオンを従えている様子です。
  オブリビオンを撃破し、支部長を無力化してください。
 プレイングボーナスは、『支部長を逃がさない』です。

 登場人物:幻朧戦線の皆さん。敵です。全員女性で構成されいるようです。
  予知によって顔や一部名前が明らかになりましたが、素性は未だ不透明です。
  血気盛んですが、戦闘能力は影朧に依存しているため、生け捕りは容易です。

 オープニング公開後、断章を公開します。
 プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
 皆様、よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『桜と砂の都『改羅』』

POW   :    ラクダに乗って観光する

SPD   :    ピラミッドやスフィンクスなどの歴史的建造物を楽しむ

WIZ   :    砂漠の熱と桜が見せる蜃気楼を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章:現着、午前也!

 カイロに着いた猟兵たちを出迎えたのは、照り付ける太陽と綺麗な桜吹雪であった。
 砂漠であってもお構いなしに幻朧桜は咲き誇り、花びらが辺りを覆っている。
 街路に目を向ければ、馬の代わりにラクダが闊歩し、特徴的な衣装の人が行き交っている。
 遠くにはそびえ立つピラミッドの先端が見え、少し歩けば観覧できそうだ。
 飲食店も多く並んでおり、この地域独特の民族料理を提供する露店から、帝都風に合わせたモダンな料理店まで軒を連ねている。
 もちろん、観光地特有の土産物屋や、怪しい物売りも目に映る。
 様々な異国情緒を楽しみながら、猟兵たちは行動を開始するのであった。
化野・花鵺
「ギザギザのぴらみっとにスメルクス…?」
横文字に弱い侍帝国の狐、首をかしげた

「…せぇふく!黒せぇらぁ!さっぱりわかんないけど承ったの!」
制服捕縛と曲解した狐、喜び勇んでゲートを潜った

「あ、あづくて死ねるぅ~」
グリモア猟兵に聞いた制服姿で聞き込みしようと思っていた狐、一瞬で化術解除した

「…カヤの真価はせぇふくと相対する時にあるの、うん…管狐!」
「カヤの代わりにぃ、黒髪黒せぇふく首輪つきの女の子の噂や居場所を探し集めるのぉ。どうせ建物の影とかぴらみっと?の地下とかOKの谷?とか人目につきにくそーな場所に潜んでると思うからぁ。任せたよぉ…あづいぃぃ」
狐、召喚した管狐に情報収集任せ宿に引きこもった


ゲニウス・サガレン
埃及には巨大三角山や巨大首塚があり、地下の王を守っているという
素晴らしい!古代文明とはそうでなくてはならない
驚異と脅威、異形たる偉業を持って見る者を圧倒する

さて、幻朧戦線には彼らなりの思想があるのだろうけど、文化財保護の視点がないようだね

アイテム「フライング・シュリンプ」
私の指揮下にある有翅エビたちに哨戒してもらう
UC「眠れる力を呼びおこせ!」で彼らの感覚をパワーアップだ!
怪しいものを見つけたら私に知らせてくれ

私はラクダに乗って観光しつつ、街の様子を見ておこう
統一した行動をとるグループがいれば怪しむべきだ

さて、エジプトで聞き込みをする時は、アイスティーを4つ注文しないといけないんだったかな?


フリル・インレアン
ふわぁ、ここが桜と砂で有名な都、改羅ですね。
暑いですね。
アヒルさん、翼を広げて日陰を作ってください。
そんなことをしたら焼き鳥になっちゃうって、アヒルさんはガジェットさんですから焼き鳥にはならな・・・。
ふええ、突かないでください。
あそこの幻楼桜さんの木陰に行きましょう。
それにしても、こんな場所でも咲いているなんてすごいですよね。

そういえば、情報収集はどうしましょうか?
ふえ?お電話の魔法ですか?
この世界に携帯電話はないけど、幻朧戦線なら無線機を持っているだろうから爆破の威力を抑えて使えば、盗聴ができるってすごいですけどスパイさんみたいですね。


卜一・アンリ
埃及は初めてなのだけれど、こんな砂漠でも生い茂るのだから凄いのね、幻朧桜って。
……いつもの格好してきて正解ね、冬前だと案外冷える。

捜査は足で稼ぐもの。屋台で買った串焼きケバブを齧りながら観光名所で【情報収集】よ。
幻朧戦線の目的上、人が集まる場所、此処で事が起これば混乱と被害が出そうと考えられる場所を探すのがいいかしら。

後は例の首輪を探せればだけど…よし、物陰に隠れてUC【悪魔召喚「フォカロル」】。
【天候操作】よ、この辺りに突風を吹かしてちょうだい。
その中で【視力】をこらして捲れる首周りのフードとかの下に首輪がないか観察してみましょう。

……うーん、スカート捲りとかしてる感じでちょっと複雑な気分。


ティフティータ・トラーマ
アドリブ&連携OK、SPD
「こういう景色も懐かしいわね…。このサクラ?の花は違和感しかないけれど…。」
久しぶりの沙漠に、砂の色は違えども懐かしさを感じつつ、旅芸人風の踊り娘衣装で街を歩くと。
「露店も一通り回ったし、そろそろ情報収集もしておかないと…と、手を出すなら相手を選んだ方がいいわよ、はいコレ。」
勝手知ったる砂漠の街、スリに来た相手の財布をUC&盗み攻撃で逆に掏り盗って揶揄ったりしつつ。
「劇場とかに紛れ込むのもいいけどに…こういうアヤシイお店を何件か回れば1件ぐらい話が聞けないかしら。」
ふらふらと路地裏を巡って、怪しげなお店で古びた発掘品を物色しながら、アジトに出来そうな場所を探っていく。



●断章前のグリモアベースにて。

「ギザギザのぴらみっとにスメルクス…?」

 横文字に弱い侍帝国の狐、化野・花鵺(制服フェチの妖狐・f25740)は首をかしげた。
 グリモア猟兵が予知の参加者を募っている声を聴き、視線を向けるとちょうどプロジェクターに幻朧戦線の構成員の映像が投影されていた。
 そう、黒い制服に身を包む女学生たちである。

「……せぇふく! 黒せぇらぁ! さっぱりわかんないけど承ったの!」

 花鵺は制服狂いである。
 制服を着たカッコいいグリモア猟兵の依頼や、制服を着たオブリビオンが出現する依頼に飛び込む由緒正しい狐娘なのだ。
 幻朧戦線を逮捕するというグリモア猟兵の指示を制服捕縛と曲解したのだろうか? グリモア猟兵はそんなこととは露とも知らずに「よし、通れ!」とばかりに花鵺をゲートへ招き、転移させた。
 喜び勇んでゲートを潜った花鵺は、他の猟兵たちと共にしばらく飛行船の遊覧を満喫した。
 道中でお互いに簡単な自己紹介を済ませて、現地エジプトのカイロへと到着した。

●現地にて作戦会議。

「あ、あづくて死ねるぅ~……」

 そして、花鵺はエジプトの灼熱に喘いでいた。
 さっそく制服姿の聞き込みをしようと思っていた花鵺であったが、この砂漠の世界の気温が辛い様子だ。
 砂の上に敷き詰められた桜の花びらの絨毯にへたり込み、ダラーンと横になる。

「ふわぁ、ここが桜と砂で有名な都、改羅ですね」

 共に飛行船を降り立ったフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)も、額に汗を浮かべている。
 化術を解除して小さな狐になった花鵺を抱き上げ、傍に侍る『アヒルさん』に視線を向ける。
 アヒルさんは、フリルがアリスラビリンスに迷い込み目覚めた時から一緒にいる、アヒルちゃん型のガジェットである。
 フリルとアヒルさんの目と目が合う。

「ふぇ……暑いですね。アヒルさん、翼を広げて日陰を作ってください」
「ぐわっ、ぐわっぐわっ」

 フリルと花鵺を直射日光から守るためにアヒルさんを遮蔽にしようとお願いするが、アヒルさんは拒絶する。

「そんなことをしたら焼き鳥になっちゃうって、アヒルさんはガジェットさんですから焼き鳥にはならな……」
「ぐわっ!」
「ふええ、突かないでください。あ、あそこの幻楼桜さんの木陰に行きましょう」
「あづいぃ~……」

 アヒルさんの抗議に屈したフリルは、花鵺といっしょに小走りに桜の木陰へと駆け込んでいく。
 すでに日陰にいた卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)とティフティータ・トラーマ(堕天使の剣舞暗殺者・f29283)はベンチに腰掛けて、近くの屋台で買った食べ物や飲み物を並べて舌鼓を打っていた。
 小走りに入って来たフリルの座るスペースを開けて迎え入れる。

「ふぅ。それにしても、こんな場所でも咲いているなんてすごいですよね」
「埃及は初めてなのだけれど、こんな砂漠でも生い茂るのだから凄いのね、幻朧桜って」
「こういう景色も懐かしいわね……。このサクラ? の花は違和感しかないけれど……」

 普段通りの装いのアンリは、砂漠と幻朧桜の織り成す景色に吃驚していた。
 サクラミラージュの出身ではあるが、初めてのカイロ訪問には好奇心が刺激されているようだ。

 旅芸人風の黒絹踊り娘衣装に身を包むティフティータは、故郷の砂漠を思い返していた。
 砂の色は違えども、陽射しや街並みは似通ったところがあり、桜という違和感を除けば懐かしさを感じているようだ。

 二人は暑さに苦しむフリルと花鵺に、サトウキビを搾ったアサッブというジュースを差し出す。

「ありがとうございます。……甘くて美味しいです」
「あああ、おいしぃ~……生き返るぅ~……」
「……私はいつもの格好してきて正解ね。冬前だと、案外冷える」
「砂漠は、夜は寒くなるところだから。日陰や家の中は案外涼しいものよ」
「なるほどぉ」

 直射日光が暑く照らすものの、帝都と比べて湿気が少ないためか、日陰に入り風が吹けば、涼しいものだ。
 女性陣四名は桜を眺めながら、砂漠の雄大さを見物していた。

 そして、女性たちが大きな串焼きケバブを切り分けてシェアしているところへ、最後に飛行船から降りてきたゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)が近づいていく。
 北国の出自であるが、博物学や地理学を学んできたゲニウスは調査の準備に抜かりはない。
 飛行船のスタッフからカイロの地図をもらい受けていた。

「待たせたね、お嬢さん方。地図をもらってきたので、行動方針を話そうか」
「あ。そういえば。情報収集はどうしましょうか?」
「幻朧戦線の目的上、人が集まる場所……、此処で事が起これば混乱と被害が出そうと考えられる場所を探すのがいいかしら」

 アンリの考えに、ティフティータとゲニウスが同意する。

「そうね。観光名所とか、大勢が集まりそうだもの」
「うん、幻朧戦線には彼らなりの思想があるのだろうけど、見過ごす訳にはいかない」

 観光名所であれば、遠くにそびえ立つピラミッドが身近であろう。予知の現場でもある。
 幻朧戦線の人員が下見をしてくる可能性を考慮すれば、外す手はないだろう。
 ゲニウスが広げる地図を眺めて、ティフティータは自分の方針を告げる。

「……なら、私は逆を探してみるわ。街中の、人気のない路地裏を回ってみる」
「捜査は足で稼ぐもの、という訳ね。オーケーよ」

 若い女性一人で動くのは……、と異を唱えるものはここにはいない。
 集まったのは、いずれも優秀な猟兵である。
 ティフティータも経験豊富なバトルシーフ型の暗殺者だ。
 相手が一般人であれば何の問題はなく、たとえオブリビオンと接触してもむざむざとやられることはない。

「……。ぐわっ」

 そして、作戦会議を見つめていたアヒルさんがフリルに話しかける。
 膝の上でぐてーっとしている花鵺を帽子で扇いでいたフリルは、アヒルさんの声に反応する。

「ふえ? お電話の魔法ですか?」
「電話の魔法? 何それ?」

 フリルの呟きが耳に入ったアンリが問いかける。
 フリルはアヒルさんから提案された内容を説明する。

「はい、私の力、ユーベルコードで、皆さんが互いに通話状態を繋ぐことができるんです」

 フリルが説明したのは、彼女のサイキックエナジーにまつわるユーベルコード。
 《誰とでもお話しできるお電話の魔法(ハンドフォン)》。
 フリルから発信するサイキックエナジーの電波が命中した対象を爆破し、更に互いを通話状態で繋ぐという能力だ。

「爆破するのかい……?」
「あ、いえ、威力を抑えれば、大丈夫です。それで、連絡を密にできるだろうって。
 ……どう、でしょうか?」
「素晴らしいわ、フリルさん。
 いちいち合流して話し合う手間が省けるもの。ぜひお願いするわ」

 物騒な単語に一瞬気圧されるゲニウスに慌てて補足するフリル。
 その能力による情報伝達のタイムラグを失くすことができれば、情報収集は順調に進めることができるとアンリは笑い、GOサインを提示する。

「ならば、私は指揮下にある有翅エビたちを放ち、哨戒させよう。
 空から見下ろせば効率がいいだろう」
「そうね。……例の首輪を探せればいいのよね?
 それなら良い手があるから協力して頂戴、ゲニウスさん」
「わかったよ、アンリ嬢」

 およその活動方針が定まったところで、幾分か暑さから回復してきた花鵺が頭を上げる。
 その様子を見て、ゲニウスが柔らかく微笑みながら心配するように声をかける。

「大丈夫かい、花鵺嬢。
 暑いのが苦手なら無理をする必要はない、適材適所というものだ」
「う~ん……お言葉に甘えて、今は休ませてもらうの。
 カヤの真価はせぇふくと相対する時にあるの……。だから、カヤの代わりを呼ぶの」
「おや? 召喚ですか?」
「うん。さあ、おいでませ、管狐!」

 花鵺が熱き日差しの中を動く必要はない。
 狐の姿で前脚を叩き、《管狐の召喚》を行使して107匹もの管狐を呼び寄せる。
 あっという間に辺りがモフモフの管狐に覆われた。

「管狐ー。黒髪黒せぇふく首輪つきの女の子の噂や居場所を探し集めるのぉ」
「おお……これはすごい」
「ふわぁ、狐さんがいっぱいです」
「はわー……すっごい数ね」
「こんなにいっぱいいれば、すぐに見つけられそうね」

 作戦のすり合わせを終えた五人の猟兵たちは、幻朧戦線の企みを阻止するために情報収集を開始した。

●準備は万端。飛び回り駆け回り。

 まずはフリルのサイキックエナジーによる電波とゲニウスの士気高揚から始まった。
 ぽふんという可愛らしい音と共に、その場にいる全員が爆発していく。
 猟兵だけでなく、大量にいる海老と管狐たちも残さずに。
 流石に爆発する数が多く、煙が晴れるまで少々の時間を要したが、割愛する。

「さあ、《眠れる力を呼び起こせ》! この街を守るために協力して欲しい!
 君たちの感覚は、バトルオーラでパワーアックしている!
 怪しいものを見つけたら、魔法の電話で知らせてくれ!」

 ゲニウスの号令を受けて、フライング・シュリンプと管狐たちが飛翔する。
 そう、管狐もだ。
 花鵺が管狐の四足に千里を駆ける呪を生やし、熱い地面を踏むことなく走り回せるよう飛翔能力を付与したのだ。
 もっとも、管狐たちもモフモフである以上気温の高さは酷であるようだが、バトルオーラによって暑さに対する耐性も向上しているようで、意気揚々と散らばっていく。

 フライング・シュリンプが観光地や人通りの多い場所の上空を飛び回り、管狐たちが入り組んだ建物の陰や人目につきにくい暗所を駆け回る。
 《誰とでもお話しできるお電話の魔法》の効果もあって、彼らからの情報が直ちに全員へ共有されていく。

「あとは任せたよぉ……あづいぃぃ……」
「ふわぁ、いっぱい電話がつながって……なんだか、スパイさんみたいです」
「ぐわっ」

 引継ぎを済ませた花鵺は、フリル、アヒルさんと共に最新の空調設備があるというカフェーに引きこもった。

●妖艶なる踊娘の立ち回り。

 ティフティータは仲間たちに伝えていたように、一人で路地裏を巡っていた。
 魅力的な風貌と露出度が高い衣装で練り歩くその様子は、男たちの視線を釘づけにしていた。
 故郷と同じ砂漠の街ということもあり、区画にさほど迷わない。その足取りに躊躇いはない。

「ふふ、手を出すなら相手を選んだ方がいいわよ」

 狭い道ですれ違いざまにスリを働こうとした相手は逆に財布を掏り盗って揶揄い、下卑な心で手を伸ばす相手にはダガーによる素早い一撃の寸止めで追い払う。
 《シーブズ・ギャンビット》の技は、身軽になる必要もなく一般人の悪漢を追い払っていく。
 わずかな時間で、彼女は只者ではないという印象を周囲に振りまいていった。

「露店も一通り回ったし、あとは……店舗を覗いて回りましょう」

 時折すれ違う管狐と会釈を交わしながら、ティフティータが選んだのは裏通りの中にある怪しげな店である。
 いくつかの店に入り、古い発掘品や非合法な品物を物色していく。
 そうして数件目にて、手がかりとなりそうな話を耳にする。
 ティフティータは気に入った品を購入し、店主からその話を詳しく聞き出す。

「そう。帝都からの女学生が大勢留学してきているのね?」
「ああ。黒いセーラー服のな。みんな首に黒い、チョーカーかね? を着けてるよ。
 帝都の流行りなのかね。……ただ、どうも學府には通ってないようだ。
 ちょくちょくこの辺をうろついては、売ったり買ったりしてるもんだ」
「何を、とは聞いても教える訳はないわね。ありがとう」

 ティフティータはこの街に幻朧戦線が潜伏しているという、確かな情報を手に入れた。
 すぐさま魔法の電話にて共有され、調査範囲が絞られていく。

●故意による急な天候変化。

「素晴らしい! 驚異と脅威、異形たる偉業を持って見る者を圧倒する!」
「近くで見ると大きいのねー」

 ゲニングとアンリは、ラクダに乗って観光名所にやってきていた。
 ゲニウスはピラミッドやスフィンクスを眺め、感動し、賞賛していた。

「これが埃及の巨大三角山と巨大首塚かな?
 地下の王を守っているというが、立ち入りはできないのだろうか……。
 うん、ダメだ封鎖されている、無許可の立ち入りは厳罰か。
 文化財保護の視点としては正しい保管方法だ。
 景観だけでも至極当然、感銘を受けるに充足している。
 古代文明とはそうでなくてはならない!」
「あ、うん」

 興奮を露わにしているゲニウスは現地に溶け込んでおり、ゴシックに身を包んだアンリ共々旅行に来た観光客にしか見えず、幸いにしてさほど注目されずに済んでいた。
 衆目を集めていれば、アンリの行動に支障をきたすところだった。

「それじゃあゲニウスさん。そろそろ……」
「おっと、わかった。時間は有限だ、観光は事件を解決してからもできるだろう」

 二人はラクダを止めて、付近の岩陰に隠れる。
 ゲニウスがアンリの姿が人目につかないように隠している。
 そしてアンリが、ユーベルコードを起動する。

「フォカロル。天候を操作して、この辺りに突風を吹かしてちょうだい。
 こう、フードが捲れて首回りが見えるように」

 《悪魔召喚「フォカロル」(シンシハツバサヲアタエタモウタ)》。
 アンリは召喚した悪魔『フォカロル』に魔術をかけさせ、風と水を支配する魔獣の翼を生やす能力を利用して、観光地に風を吹き荒らしていく。
 突然の強風に人々ははためく服を抑え、飛ばされた帽子を追って走っている。

「……うーん、スカート捲りとかしてる感じでちょっと複雑な気分」
「ははは、まあ必要なことだよ。
 ……統一した行動をとるグループがいれば怪しむべきだ。今も学生服を着ているとは限らない」

 アンリは物陰から頭を出して目を凝らし、ゲニウスはフライング・シュリンプの指揮に集中する。
 《誰とでもお話しできるお電話の魔法》によって、『違う』と判断できる人が、『いない』と断言できる範囲が増えていく。
 そして、正午を過ぎ、ランチタイムが終わる頃。

「っ、見つけた、スフィンクスからまっすぐ、目線の先にあるお店!」

 帝都由来のモダンな店、フライドチヰンを提供する料理店から出てきた女性たち。
 店を出た瞬間に浴びた突風で羽織っていた外套が捲れ、一瞬露わになった黒いセーラー服と首元に黒く光る鉄の首輪をアンリは見逃さなかった。
 風を嫌ったか、人目を避ける意図があるのか。そのグループは素早く路地へと入っていく。

「花鵺さん、管狐を向かわせて頂戴!」
「黒せぇらぁ、はっけん? 任せてぇ!」

 任された管狐たちが集団を追跡し、その行き先を突き止めた。

●仕事終わりの、あるいは仕事前の一服。

 猟兵たちは十五時頃のおやつ時に、カフェーに集まった。
 フライング・シュリンプと管狐たちは回収し、今は五人と一羽のみとなっている。
 すでに情報は共有されている。幻朧戦線のアジトは、市内の外れにある大きな豪邸であった。

「ぴらみっと? の地下とか、OKの谷? とかにいると思ったんだけどなぁ」
「王家の谷は、ちょっとこの街から遠いですね。ピラミッドは、立ち入り禁止だったみたいですし」
「ぐわっ」
「私もアジトを見て来たけれど、とてもアラビアンな家だったわ。
 帝都からの留学生を受け入れている後援者が所有しているという話よ」
「ふーむ。……その後援者が幻朧戦線と関りがあるかどうかは、今回は気にしなくて良さそうね」

 化術で人型になった花鵺と、フリル、ティフティータ、アンリがカフェーの丸いテーブルに座っている。
 ゲニウスはカウンターでアイスティーを注文し、人数分をトレーに載せて持ってきた。

「さて、エジプトで聞き込みをする時は、アイスティーを4つ注文しないといけないんだったかな?」
「私たち5人いるからそれだと1人足りなくなるのだけれど?」
「ははは、ジョークさ、ジョーク。
 さて、調べ物は済んだ。ゆっくりお茶を飲んで、一休みしよう」

 アーモンドやピーナッツ、ピスタチオが混ぜられた焼き菓子に手を伸ばし、猟兵たちは情報収集で疲弊した心身を休ませていた。
 この後に始まる、戦いに備えて英気を養うために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『影狼』

POW   :    シャドーウルフ
【影から影に移動して、奇襲攻撃する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    復讐の狼影
自身の身体部位ひとつを【代償に、対象の影が自身の影】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ラビッドファング
【噛み付き攻撃(病)】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章:夜襲の時は、深夜零時や丑三つ時か。

 日が落ち、昼間の暑さが嘘だったかのように、冷え切ったカイロの街。
 その郊外に位置する豪邸には大勢の女学生が滞在していた。
 彼女たちは全員が幻朧戦線・改羅支部の構成員たちである。

 間もなく行うテロ活動、ピラミッドやスフィンクスといった文化遺産を破壊してこの地に騒乱を引き起こすために、念入りに準備を進めていた。
 とはいえ、彼女たちは生身の人間である。
 生きている以上は当然睡眠が必要で、多くの構成員はベッドに横になっていた。
 それでも非合法な世界に身を置く以上、念のためにと見張り番を立てていた。
 ゆえに。猟兵たちの襲撃を察知する。

「敵襲、敵襲ー!」

 猟兵たちの襲撃を受けた仲間の叫び声を聞いて跳び起きた女学生たちは、各々の使役する影朧を呼び出すための『兵器』を手にして声の元へと集まっていく。
 逃げるためではない。敵を殲滅するためだ。

「私たちの理想、大正の世を終わらせ、新世界を実現するという目的の邪魔をするならば、排除してやる!」

 彼女たちが手にしたラムプより、次々に影朧が……『影狼』が放たれていく。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ※場所は幻朧戦線の拠点である豪邸です。時間帯は夜間となります。
  屋外の庭や屋根の上、屋内の部屋や廊下など、戦場は自由に選んでもらって構いません。
  構成員は、集団戦の敵が健在である間は戦場に留まりますが、影朧が撃破されると逃亡を試みます。
  プレイングボーナスは、『構成員を逃がさない』です。ご注意ください。
ゲニウス・サガレン
影狼……影に潜む狼か!
閃光弾やランタンで影を乱すことはできるが、別の影が生じる
主攻は頼もしき他の方々に任せて、戦場から逃走する構成員の捕縛に回ろうか

屋敷の突入側と反対に回る
影狼とガチで戦う術が乏しいため、一撃の奇襲を狙おう

UC「水魔アプサラー召喚」
我が友よ尼羅(ナイル)の水を呼ぶんだ
鉄砲水で逃亡をはかる者たちの足元をすくえ
陸上動物の弱点は何をするにも大地が必要なことさ

上空に「フライング・シュリンプ」を待機
逃走者を見つけ次第、「沈滞の投網」を投下して捕まえる!
抵抗する者がいれば「海蛍閃光弾」で視界を奪い、影狼を呼ぶランタンを「スティングレイ短針銃」で狙撃を試みてみようか


フリル・インレアン
ふええ、ここに幻朧戦線さん達がいるんですね。
えっと、彼女たちが逃げられないようにすればいいんですね。
ガラスのラビリンスです。
これでこの館を出るには迷路から脱出しないといけませんよ。
これで大丈夫ですね。
ふえ?ダメなんですか?
影狼さんに噛まれてしまうとユーベルコードが封じられてしまうから、ガラスのラビリンスが解けてしまうってことは・・・。
全力で逃げ続けろってことですか。
こんなのばっかりだから、私は逃げ足とかばっかり速くなってしまうんですよ。


ティフティータ・トラーマ
アドリブ&連携OK、SPD
「さて、襲撃への反応は悪くないみたいだけど…と、出てきたわね。逃がさないわよ。」
闇に紛れて上空から見張りをすると、手薄な所から逃げ出そうと出てきた構成員を狙って空から襲っていきます。
「そういえば鳥は犬と相性が悪いのだったかしら?面白い攻撃だけど、空に影は映らないわよ?」
「復讐の狼影(SPD)」に対してUC「シーブズ・ギャンビット」を使うことで、素早く自分の影を消しつつ攻撃します。
「さて、何処へイくのかしら?闇に紛れるならちゃんと明かりは消さないとダメよ?」
影狼を失って闇の中を逃げる女学生達を、明かりもないまま背後に舞い降りると、優しく?抱きしめて捕まえていきます。


卜一・アンリ
影朧を嗾けて悪魔召喚士気取り?
笑ってしまうわ、格の違いを教えてさしあげましょう。

UC【悪魔召喚「フォカロル」】。
魔術を施すのは私と悪魔憑きの拳銃の弾丸。

敵UCを【見切り】で私に生やした魔獣の翼で支配した風に乗って大【ジャンプ】回避。
そのまま錐揉み回転しつつ拳銃の【クイックドロウ】【乱れ撃ち】の【弾幕】で【カウンター】よ。

構成員が逃げだしたら適当に発砲し周辺空間を【天候操作】。
昼間の時と同じ要領、今度は全力で突風を吹かせ構成員を私の方に向かって【吹き飛ばし】。
【おびき寄せ】たらその風に乗ってドロップキックでKOよ。(【滑空】【踏みつけ】【気絶攻撃】)

問答はお互い不毛でしょう。黙って寝てなさい。


化野・花鵺
「妾はな、怒っておるのじゃ。桜學府が行きにくいだけなら、具理陰颯土でも加羅哇哥斯でも良かろうが!なにゆえこんな暑い場所を選んだんじゃ!許せん、全くもって許せんぞ、ムッキィー」
狐、地団駄した

「ヌシら一人も逃がさぬぞ!終わらぬ悪夢に招待してくれるわ!」
影狼ガン無視で敵構成員に「狐の化かし」
「式神!管狐!彼奴らが逃げられんよう、彼奴ら同士の髪の毛でぎっちり結んでしまえ!頭頂部から丸刈りせねば逃げられんようにな!複数いないなら近くの建物で構わん!彼奴らに丸刈りになれる矜持などあるまいよ」

人員確保を眷属に任せ狼退治
敵の攻撃は野生の勘で避けて衝撃波で弾きオーラ防御で防ぎ敵の至近距離から破魔の衝撃波叩き込む



●走れフレル! 怒りの花鵺!

 化野・花鵺は激怒した。
 かの幻朧戦線の構成員に文句を言ってやらねば気が済まぬと、『式神』や『管狐』、そしてフリル・インレアンを伴って正面から襲撃を仕掛けた。
 豪邸の正門に現れ、門扉を衝撃波で吹き飛ばして堂々と侵入を果たした。

「ふええ、ここに幻朧戦線さん達がいるんですね」
「いかにも! でてこーい! ヌシらの敵が参ったぞー!

 花鵺は大声を上げ、幻朧戦線の構成員たちを屋敷から誘き出していく。
 騒音と襲撃者の怒声を聴きつけて、黒いセーラー服の女性たち―――幻朧戦線の構成員たちが駆け付け、ラムプから影狼を出現させていく。
 その敵を、花鵺がきっ! と睨みつける。

「妾はな、怒っておるのじゃ……。
 桜學府が行きにくいだけなら、具理陰颯土(グリーンランド)でも加羅哇哥斯(ガラパゴス)でも良かろうが!
 なにゆえこんな暑い場所を選んだんじゃ! 許せん、全くもって許せんぞ、ムッキィー!」
「えっ、何? ……桜學府の手先、よね?」「そんなこと私たちに言われても……」
「そんなこととはなんじゃー!」

 地団駄する花鵺に困惑する女学生たちをよそに、呼び出された影狼たちは眼前の敵に食らいつこうと地を駆ける。
 《ラビッドファング》と呼ばれるその牙に噛みつかれれば、捕縛され数秒の間ユーベルコードを封じられてしまう。
 そうなればたとえ猟兵といえども、数多くいる影狼たちに蹂躙されるのは明白だ。

「えっと、彼女たちが逃げられないようにすればいいんですね」
「うむ! 一人も逃がさぬぞ! 終わらぬ悪夢に招待してくれるわ!」

 影狼に立ち向かうように前に出た花鵺は、その場でとんぼ返りを放つ。
 これこそ花鵺のユーベルコード、《狐の化かし》の起動条件である。

 最大107m半径内に存在する指定したすべての対象を眠らせ、いつ醒めるともわからぬ夢の中に落とす花鵺の幻術だ。
 なお、睡眠中の対象は傷が回復するが、眠っている限りは身動きを取ることもできない。
 一般人である構成員たちは、たちまち地面に横たわっていく。

「ホーッホホホホ! さあ、式神! 管狐!
 彼奴らが逃げられんよう、彼奴ら同士の髪の毛でぎっちり結んでしまえ!」

 花鵺の命に従い、式神と管狐たちが倒れた構成員たちへと近づいていく。
 幻術に耐えた影狼たちが迎撃しようとするが、前に出た花鵺が破魔の衝撃波叩き込み、影狼たちを弾き飛ばしていく。
 噛みつき攻撃は野生の勘で避け、衝突の際の痛みすらオーラ防御で防いでいる。

 花鵺に阻まれた影狼たちは、召喚主たちが髪の毛を無造作に絡められていくのを眺めるしかなかった。
 遠巻きに様子見をしていた影狼たちが花鵺の間合いから離れ、一時の膠着状態に陥る。
 その間に生じた隙を、フリルが活かす。

「今じゃ、フリル!」
「はい。出てきてください、ガラスのラビリンス」

 フリルが手をかざすと、豪邸の敷地全体が透明なガラスで出来た迷路に包まれた。
 《ガラスのラビリンス》は迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
 これにより、館から逃げ出すためには迷路を踏破しなければならなくなった。
 未だ建物の中から出てこない構成員たちも、屋敷の中に突然出現したガラスの迷路に戸惑っていることだろう。

「ふぅ。これでもう大丈夫ですね」
「よくやった、フリル! あとはお主が噛まれぬよう気を付けるのだぞ」
「ふえ?」

 花鵺の忠告を受けてフリルが目をパチクリさせると、影狼たちが迷路のガラスに身体を擦りつけながら走り回り、フリルに向かっている様子が見えた。
 その殺意に満ちた目は、明確にフリルを捉えている。
 この迷路を生み出した者を理解しており、召喚主のために《ラビッドファング》によって解除しようと迫っているのだ。

「妾はこの迷路の出口を守護らねばならぬからの! がんばれ!」
「ふええ、全力で逃げ続けろってことですか」

 じわりじわりと近づいて来る影狼から逃げるために、フリルは勝手知ったる迷路の中を走り出す。
 製造者ゆえ迷路の構造を知っているが、うっかり挟み撃ちにされたり、行き止まりに追いやられてたりすれば、危ういことになる。
 構成員たちが逃げることができないよう、迷路を維持するために。フリルは捕まってはいけない鬼ごっこを始めた。

「こんなのばっかりだから、私は逃げ足とかばっかり速くなってしまうんですよ」

 フリルは影狼が討伐されるまで走り続け、花鵺は他の仲間たちが豪邸の中にいる構成員たちを捕縛するまでのしばしの間、迷路の出口を守り抜いた。

●暗躍のゲニウス。

「影狼……影に潜む狼か。閃光弾やランタンで影を乱すことはできるが、別の影が生じる。
 ……よし、私は影狼とガチで戦う術が乏しい。奇襲を狙おう」

 正面から花鵺とフリルが襲撃するのに合わせて、ゲニウス・サガレンは豪邸の裏手、二人の反対方向から侵入していた。
 塀を乗り越え、息を潜めて敷地に入り込み、静かに落ち着いて様子を窺っていた。

 時間が経過し、《ガラスのラビリンス》が展開されてしばらくすると、手探りで攻略して屋敷から逃亡を試みようとする構成員たちが裏手に現れた。

「ふむ、多勢か。ならばここが切り処だね。」

 ゲニウスは姿を晒して奇襲を仕掛ける。

「な、何者!」「お前はまさか、超弩級戦力……猟兵か!」
「さぁ出番だぞ、アプサラー!」

 構成員の女たちがラムプを構える前に、ゲニウスは飼育用の壺を構え幼少の頃からの友を召喚する。
 ユーベルコード、《水魔アプサラー召喚》が為される。
 出現した水魔に向けて、構成員たちは慌てて呼び出した影狼を向かわせるが、《ガラスのラビリンス》が行く手を阻む。
 そうしているうちに、アプサラーの流水を操る術が発動する。

「我が友よ。尼羅(ナイル)の水を呼ぶんだ。鉄砲水で足元をすくうんだ」

 ゲニウスの求めに応じて、アプサラーが近隣の水脈から水を吸い上げる。
 ナイル川に連なるカイロ中の水が、屋敷に雪崩れ込む。
 迷路の中を水が流れ、次々に地面の上に立つ構成員と影狼を飲み込んでいく。

「きゃあああ!?」「あばぼぼっ!?」
「陸上動物の弱点は何をするにも大地が必要なことさ」

 流され溺れる敵に向けて、空飛ぶエビ『フライング・シュリンプ』に持たせた古代遺跡で見つかった金属繊維で編み上げた『沈滞の投網』を投下させて、拘束していく。
 水中での活動に秀でているゲニウスは水の影響をものともせず、抵抗の激しい構成員は『海蛍閃光弾』の激しい閃光で無力化し、危険な影狼は『スティングレイ短針銃』の毒棘で激痛を与えて無力化していく。
 呻き声を上げる構成員たちを縛り上げ、ゲニウスは汗をぬぐう。

「さて、裏から逃げようとしたのは押さえた。もし迷路が解除されても取りこぼしは無いだろう」

 仲間の力を信じつつも、万一のために備えを行う。
 堅実に対処したゲニウスは屋敷のベランダに昇り、『星屑のランタン』を灯す。
 上空にいる頼もしい仲間たちへと合図を送った。

 なお。
 唯一の出口から流れ込んできた水に影狼たちが押し流されたことで、正門で行われていた鬼ごっこはフリルの勝利で幕を下ろしていた。
 花鵺はオーラ防御で水を逸らしたので無事だった。

●主攻の猟兵たち。

 少し時をさかのぼり、襲撃が始まる頃。
 ティフティータ・トラーマと卜一・アンリの二人は、豪邸の上空に滞空していた。
 月と星の明かりを頼りに、カイロの夜空を飛翔して屋敷の上まで先行し、地上の仲間たちが動き出す時を待っていた。

「さて、襲撃への反応は悪くないみたいだけど……と、出てきたわね」

 花鵺の声を聴き、正面玄関に現れた構成員を見て、ティフティータが呟く。
 ティフティータの背中から生える漆黒一対の鳥翼『堕天使の翼』は、力場により羽ばたくことなく空を飛ぶことができ、安定性と隠密性に優れていた。
 身を包む『宵闇の衣』は闇に紛れ、隠密行動に適したボディスーツであり、視覚に対応する魔法効果が有る一品だ。
 宵闇の中の行動こそ、ティフティータの独壇場である。

「ふーん。影朧を嗾けて悪魔召喚士気取り? 笑ってしまうわね」

 そしてアンリは《悪魔召喚「フォカロル」》の力を再び行使し、自身に魔獣の翼を生やして飛翔していた。
 フォカロルの魔術によりアンリ自身と、アンリの持つ『悪魔憑きの拳銃』の弾丸に風と水を支配する力が付与されている。
 高見から屋敷を見下ろし、ラムプから影朧を放つ幻朧戦線の構成員を見て、失笑している。

 そして、花鵺の立ち回り、フリルの迷路作成、少し間をおいてゲニウスの水攻めを目撃して、この奇襲が佳境に入ったことを理解した。
 ゲニウスのかざした、静かな銀色の光が二人の目に届く。
 外に出てきた敵を片付けたという合図だ。

 乱戦を避ける意図と、ゲニウスたちが取りこぼした構成員が出た時に急行するために待機していた二人であったが、この段階に至っては後は屋敷の中から出てこないものだけだ。
 襲撃にあって迎撃に出なかった構成員、すなわち重要なポジションにある者か、何か別命を受けている者であろう。
 当然、見過ごす訳にはいかない。

「さあ、格の違いを教えてさしあげましょう」
「ええ。逃がさないわよ」

 ティフティータとアンリ、二人の美しい猟兵が左右に分かれ、上層階の窓を破って豪邸の中へと侵入する。

●悪魔召喚士アンリ。

 もっとも豪勢な一室の中にいた女性たちが、窓を蹴破って襲来したアンリに反応する。
 部屋の中は散乱しており、構成員たちは大きな鞄に何かを詰め込んでいたのか、逃走の準備をしていた。

「……あら、リーダーはいないのね。ここにいると思ったのに」
「くっ……! やれ、影狼!」

 あらかじめ召喚していた影狼たちを嗾ける構成員であったが、宙を舞うアンリの動きは早かった。
 アンリは魔獣の翼で支配した風に乗り、影狼の攻撃を錐揉み回転で見切り避け、クイックドロウの乱れ撃ちで次々に貫いていく。
 《ラビッドファング》が触れることもなく、瞬く間にすべての影狼たちが撃破される。

「ま。こんなところね」
「影狼が、一瞬で全滅……!」「こ、この化け物っ!」

 泡を食い、鞄を抱えて逃げ出す構成員たちを、アンリは風の力を宿した弾丸によって生み出した突風で封じ込め、アンリの方へと吹き飛ばして誘き寄せて、まとめてドロップキックをお見舞いする。

「問答はお互い不毛でしょう。黙って寝てなさい」
「ぎゃふん!?」「えぼっ!?」

 勢いよく蹴り飛ばした構成員たちを本棚へとシュートして、アンリは床に落ちた鞄に目を向ける。

「わざわざ持って逃げようとするなんて。……何が入ってるのかしら?」

●堕天使ティフティータ。

 ティフティータは火の光が見える部屋へと飛び込んだ。
 そこには書類を集めて火をつけようとしている女学生がいた。
 おそらく幻朧戦線の情報が記されている資料を、猟兵の手に渡る前に処分しようとしていたのだろう。
 そういった役目を任されるような立場にいる構成員ということだ。

「闇に紛れるならちゃんと明かりは消さないとダメよ? 見つかってしまうわ」
「……猟兵……。私たちの理想の邪魔は、させません! 行け、影狼!」

 構成員は呼び出しておいた影狼に命じて、ティフティータへと飛び掛からせる。
 防御を考えない、捨て身の突撃だ。
 たとえ攻撃に失敗して傷を受けたとしても《復讐の狼影》を発動させることで、ティフティータの影から影狼の頭部を生やしてカウンターを行えるためだ。
 他の影狼たちと異なる攻撃手段を有する影狼を使役するこの構成員は、他の女性たちとは一味違うようだ。
 ただし。それだけでは実力の差を埋める理由には足り得ない。

「そういえば鳥は犬と相性が悪いのだったかしら?」

 軽口と共にティフティータの『殺戮刃物』が翻される。
 殺戮の為だけに鍛え抜かれたナイフは、まっすぐ向かってきた影狼の首を斬り落とす。
 そして《復讐の狼影》の発動条件を満たしたことで、ティフティータの影から影狼の新たな首が現れ……。
 息絶えた。

「……なん、だと?」
「フフッ。面白い攻撃だけど……空に影は映らないわよ?」

 影狼を斬り捨てたティフティータはいつの間にか、足元に伸びる影に『スローイングダガー』を投げていた。
 《シーブズ・ギャンビット》。
 構成員にも影狼にも気づかれないほど素早い一撃が、影から変形する影狼の頭部を貫いていたのだ。

 一瞬の放心から意識を取り戻した構成員が、部屋から逃げ出そうとする。
 音もなく飛来したティフティータが構成員の背へ迫り、抱きしめる。
 堕天使の手が、女学生を捕らえる。

「あら。何処へイくのかしら?」
「や、やめろ、放せっ!」

 一般人の身体能力では猟兵の手を逃れることはできず、構成員は捕縛された。
 ティフティータは書類を回収して、仲間たちと合流した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●そして残るは後一人、のはず。

 屋敷の中を飛び回り、構成員を捕えて回ったティフティータとアンリが豪邸の庭へと下り立つ。
 ゲニウスとフライング・シュリンプも手伝い、予知のプロジェクターで確認していた女学生は一人を除いて全員逮捕できたことを確認する。
 何かの入っている鞄や、重要そうな書類も手土産として確保できていた。
 正面を守っていた花鵺とフリルも合流して、猟兵たちは話し合う。

「あとは首謀者だけか……。だが、どこにもいなかったのだろう?」
「ええ。少なくとも地上階はすべて見て回ったわ」
「隠し部屋もないわね。……地下階に通じる隠し階段はあったけれど、水没してたわ」
「ならばそこしかないではないか! よし、行くぞ!」
「ふええ、待ってください」

 一般構成員は気絶させられたり、投網で拘束されて、一か所に集められている。
 花鵺の施した所業によって、逃げることはできない。
 アプサラーに水を捌けさせ、猟兵たちは地下室へと乗り込んでいく。

 その先にいるであろう、今回の事件の首謀者。
 幻朧戦線・改羅支部の支部長を逮捕するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『ヴァンダリスト』甘粕・妙子』

POW   :    ラヰフル・トリガアハッピヰ
【いくつもの自動小銃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    キルゾーン・ラピッドファヰア
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【銃火器】で包囲攻撃する。
WIZ   :    マシンガン・クロスファヰア
【哄笑】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【機関銃】で囲まれた内部に【集中砲火の弾幕】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠バルタン・ノーヴェです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章:破壊主義者を打ち砕け!

 豪邸の地下室に踏み込んだ猟兵たち。
 そこは、地下とは思えないほど広く、高さのある空間だった。
 棚に置かれた幻朧ラムプや、壁に並ぶ銃器の類。
 幻朧戦線の武器を貯蔵する倉庫なのかもしれない。

「これほどまでに機敏に動かれるとは……。
 侮っていたようですね、桜學府の超弩級戦力たち」

 部屋の最奥に二人、黒いセーラー服を着た女学生が立っていた。
 片方は改羅支部の長、事件の首謀者であるヤーサミーナという人間の女性である。
 そしてもう一人は、愉悦に満ちた表情を浮かべるオブリビオン。『甘粕・妙子』だ。

「私たちの理想の実現のために、この土地で騒乱を起こすという計画。
 目立たぬよう動いていたというのに、未然に察知されるとは驚きました……。
 しかし、ここで貴方たちを始末できれば、問題はありません」
「ええ、ええ! 猟兵……! 強く、正しく、美しい存在!
 そのようなものを破壊できるなど、まさに蠱惑的ではありませんか!
 騒乱の前祝として、前菜として! 皆様をワタクシの芸術にして差し上げますわ!」

 妙子がヤーサミーナの前に出て、虚空から多様な銃火器を生み出す。
 支部長を捕らえるためにも、まずはこのオブリビオンを撃破しなくてはならない。
 埃及における戦いの、クライマックスが幕を開けた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ※場所は地下室となります。
  影朧兵器を保管できるほどの広さがあるため、猟兵の行動に制限はかかりません。
  支部長は、『甘粕・妙子』が猟兵の相手をしている間に隠し通路から逃げ出そうと目論んでいます。
  オブリビオンを撃破し、支部長を無力化してください。
  プレイングボーナスは、『構成員を逃がさない』です。よろしくお願いいたします。
ティフティータ・トラーマ
アドリブ&連携OK、SPD
「随分広い地下室だけど…それでも好きに飛び回る、って訳にはいかないわね。」
それならそれで、とホバー移動や棚とか柱の陰を使って銃撃を躱しながら戦うと
「ただ…コの数を避けて進むのはちょっとキツいわねぇ。…とも、言っていられないかしら。」
縦横に飛び回る機関銃の火線になかなか進むことができずにいたが、そうしている間にこっそり逃げ出そうとする支部長を見て
「ココまで来て逃がすわけにも…いかないのよねっ!」
妙子ににダガーを投げて気を逸らした一瞬に、宵闇の衣を空蝉にしたUC「シーブズ・ギャンビット」で一気に飛び込んでヤーサミーナを狙います。
(安心してください、踊り娘の服が残ります。)


フリル・インレアン
ふええ、ついに追い詰めました。
悪だくみはさせませんよ。

えっと、今回も首謀者さんを逃がさないのですから、ガラスのラビリンスですね。
予め仕掛けておいたのでしたら、突然できたこの迷宮に対応はできていないはずです。
完全ではない集中砲火ならダメージは大きくならないですよね。
あてにしていた隠し通路も出入口はどこでしょうね。



●守勢:引きつけ、逃さない。

 戦いが始まり、薄暗い地下室に激しい銃声が響き、マズルフラッシュが瞬いた。

「アハハハハハハ!」
「随分広い地下室だけど……それでも好きに飛び回る、って訳にはいかないわね」

 ティフティータ・トラーマが飛翔すると、甘粕・妙子は直ちに数十本の銃火器を飛翔させ、追尾させた。
 幾何学模様を描き複雑に飛翔する銃火器の包囲攻撃、《キルゾーン・ラピッドファヰア》。
 室内を縦横無尽に飛び回る銃火器が、宙を舞うティフティータを付け狙う。

 しかし、ティフティータは踊る様に弾丸を躱していく。
 力場により空中を移動する『堕天使の翼』により、ホバリングしたまま左右への移動、急降下や急上昇、棚や柱の陰を使っての攪乱などを駆使して、一発も被弾することなく避け続けている。

「ただ……コの数を避けて進むのはちょっとキツいわねぇ」

 当たりはしていない。しかし、攻撃するために接近することも、できずにいた。
 ちらりと視線を下ろしたティフティータの目に、眩い曳光弾が写る。
 いつの間にか展開されていた数多くの機関銃から、集中砲火の弾幕が放たれる。
 室内を鉛弾で埋め尽くさんばかりに射撃を繰り返していた。

「いいです、いいです! いいですわっ!
 もっともっと魅せてください! 抵抗を! 反抗を! 拮抗を!
 その身が打ち砕かれる瞬間を伸ばそうと懸命に! 耐えて耐えて、耐えることでぇ!
 砕け散る美が! より輝くのですわぁ!」
「ふえええ」

 狂ったように哄笑を続ける妙子に《マシンガン・クロスファヰア》が応じる。
 床や壁、柱に仕掛けられていた機関銃が猟兵たちを囲み、銃撃を行っている。
 だが、その銃弾はことごとくがフリル・インレアンの《ガラスのラビリンス》によって阻まれていた。
 かなりの硬度を持つガラスの迷路が猟兵たちを守る防壁となり、機関銃を分断して囲まれないようにしているのだ。
 完全に包囲できていなければ、集中砲火によるダメージも大きくはない。
 弾かれる弾丸の火花がガラスに反射し、地下室が激しく煌めく。

「アハハハハハハ!」
「……これはキツイなんて、言っていられないかしら」

 狂乱しているように見える妙子だが、冷静に戦況を把握している。
 突然できた迷宮に対応しようとしている。
 絶えず発砲を続けることでガラスの壁がない箇所を特定し、迷宮を踏破しようとしている。
 虚空から生み出した機関銃を次々に展開して、射線を通していく……猟兵たちを包囲するための、『仕込み』を行っている。
 このまま時間を与えれば、新しい《マシンガン・クロスファヰア》に囲まれることになる。

 ティフティータが《キルゾーン・ラピッドファヰア》を引きつけていなければ、フリルも他の猟兵たちも上からの銃火を浴びることになっているだろう。
 もっとも、銃火器の火線に阻まれることが無くなれば、ティフティータは瞬く間に妙子に接近し素早い一撃によってその首を取ることだろう。
 ティフティータが無事に飛び回り攻撃の機を窺っているがゆえに、妙子は飛翔する銃火器でフリルたちを攻撃するという手段が取れなくなっているのだ。

 猟兵たちも、オブリビオンも。
 どちらも、敵に有効打を与えるために、鎬を削っている。

「皆さん、まだ大丈夫です。まだ持ちこたえられます。だから」
「……そう。そうね。今はまだ攻める時ではないわね」

 妙子の叫声と機関銃の銃声にビクビクと反応しながらも、フリルは懸命にユーベルコードを維持し続ける。
 機関銃の弾幕から仲間たちを守るために、そして支部長ヤーサミーナを逃さないために。

 その様子を見て、ティフティータも《キルゾーン・ラピッドファヰア》の動きに集中し回避行動に専念する。
 間違っても撃ち落とされて銃火器を自由にしないために、そして攻める時を見逃さないために。

 手堅い守勢が、妙子の攻撃を防いでいる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

卜一・アンリ
始末だなんて大口叩く割には逃げ腰のご様子だけど、さっき拾ったこの鞄はいらないのかしら?
ま、いいわ。始末するのはこちらの方よ。

UC【悪魔召喚「ザガン」】。
地下室一帯の床や壁に並ぶ銃器諸々を片っ端からザガンの魔力で硬貨に変換、
そのまま硬貨の波を敵や構成員にぶつけて敵UCも逃走も妨害してやるわ。(【地形破壊】【武器落とし】【体勢を崩す】)
私自身も硬貨の波の上を駆けて接敵、(【悪路走破】【ダッシュ】)
悪魔憑きの拳銃で【クイックドロウ】【零距離射撃】を仕掛ける。

構成員の身柄は桜學府に引き渡しだろうし
殺しはしないけれど、手足に穴が開く分には構わないでしょう。
ご希望の騒乱のお時間よ、精々楽しみなさい。


化野・花鵺
「ホホホ、たかがトルソーごときがよくもまあほたえよる。ヌシが強くも美しくもないことなど、とうの昔に分かっておろうに。あれか、自分の強さにも美しさにも自信がないひねた性根を、その口先だけでごまかしておるのであろ?そうよなぁ、桜學府のユーベルコヲド使いから逃げ惑って改羅くんだりまで落ちてくるくらいじゃもの。お里がしれるわなぁ」
狐、笑った

「ヌシの相手など、この程度で充分じゃ」
「狐の呪詛」で敵2人に不幸の連続プレゼント
銃がジャムって発砲しない
攻撃を避けて他の猟兵からの攻撃が直撃する
靴紐が切れ転んで味方に当たる
味方の攻撃の落下物が直撃する等々

「打てぬ銃などいくらあっても棒以下じゃ、ホホホホ」
狐、高笑った



●攻勢:呪い、変換し、撃ち貫く。

 新たな《マシンガン・クロスファヰア》に包囲されるよりも先に、ガラスの防壁によって得た時間を用いて猟兵たちは攻撃の準備を整えた。
 未だ止まぬ銃撃をガラス越しに眺めながら、卜一・アンリと化野・花鵺は哄笑する妙子を睨みつけている。

「アハハハハハハ!」
「まったく、騒々しい奴ね。ま、いいわ。始末するのはこちらの方よ」
「ホホホ、たかがトルソーごときがよくもまあほたえよる。
 ヌシが強くも美しくもないことなど、とうの昔に分かっておろうに。
 さあ、行けぃ!」

 花鵺が手を叩くと、管狐が姿を見せる。合わせて放った式神たちを守りにつけて、銃火を避けて走らせる。
 フリルから迷路の造りを教わっているため、管狐は迷うことなく妙子の元へとたどり着き、その足首に癒えない噛み傷を刻みつける。

「っ、この程度の反撃など……」
「ヌシの相手など、この程度で充分じゃ」

 その直後、機関銃が不調をきたした。
 弾詰まりを起こし、銃架が折れ、あるいは暴発する。
 ティフティータを追っていた銃火器もまた、突起物に引っかかり、衝突し合い、互いを撃ち合い破損していく。
 次々と発生する『不慮の事故』により、妙子の武器が損なわれていく。
 足元の管狐を撃とうと虚空から生み出した銃もまた、たまたま手が滑って取りこぼす。

 この現象こそ、花鵺のユーベルコード《狐の呪詛》によるもの。
 攻撃が命中した対象に、花鵺から108m半径内にいる限り『不慮の事故』を受け続ける呪いを施すものだ。
 妙子が銃器を生み出す端から、そのことごとくが『不慮の事故』により破壊されていく。

「打てぬ銃などいくらあっても棒以下じゃ、ホホホホ」
「ああ……。なんて綺麗な……!
 ワタクシの銃火器が破壊されるなんて! ああ、美しい……!」

 恍惚に笑みを深める妙子を、花鵺は嘲るように笑う。

「戯け。あれか、自分の強さにも美しさにも自信がないひねた性根を、その口先だけでごまかしておるのであろ?
 そうよなぁ、桜學府のユーベルコヲド使いから逃げ惑って改羅くんだりまで落ちてくるくらいじゃもの。お里がしれるわなぁ」
「……。猟兵と言えども、所詮は獣。美しい破壊の美学は理解できないようですね」

「ホホホ、笑うのを忘れておるぞ? 余裕がなくなったかの?
 ヌシは狐の恐ろしさを知らんようじゃ。とくとその身で味わえ!」

 落ちて来た銃火器が妙子の頭を打ち据え、その表情が憤怒に染まった。
 次々に機能不全を引き起こして銃器が床に転がっていく。
 妙子自身も花鵺の挑発に意識を向けており、隙が生じている。

 そこで、アンリが動く。

「『ザガン』、行けるわね?」「応とも。浴びる程くれてやろう!!」

 アンリは召喚した悪魔『ザガン』によってたっぷりとチャージした魔力を、地下室全体に浴びせかける。
 機関銃が、弾丸が、地下室の床や壁諸共に、次から次へとに硬貨へと変換していく。
 妙子が気づいた時には、もう遅かった。

「っ!? これは、このコインの山は何!?」
「教えてあげる義理はないわね。さあ、たっぷり浴びせてあげるわよ」

 アンリのユーベルコード《悪魔召喚「ザガン」(オウシノシチュウセン)》。
 姿を晒さぬ牡牛からもたらされた魔力により、アンリから106m半径内の無機物を任意の世界や国の硬貨に変換しているのだ。
 そして、その力はそれだけでは終わらない。

「食らいなさい!」

 アンリの号令を受けて、魔力を帯びた硬貨が煌びやかに宙を舞う。
 アンリの意のままに操作された硬貨が波を作り、妙子を呑み込んでいく。
 逃れようとする妙子であったが、『偶然』靴紐が切れて転び、逃れられない。

「この、こんな、拝金主義に……!」
「そんなに破壊が好きだというなら、あなたを破壊してあげましょう」

 硬貨の波の上を素早く駆け抜けたアンリが、『悪魔憑きの拳銃』を抜き妙子に突きつける。
 零距離からの乱れ撃ちを浴びせられた妙子が、苦悶の表情を破壊されて硬貨の中へと沈んでいった。

 ガラスの迷宮を埋め尽くす硬貨の波の中、銃声は止み、硬貨の擦れる音と花鵺の高笑いが響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●趨勢:猟兵たちの勝利。

 当初の啖呵もどこへやら。
 支部長ヤーサミーナは隠し通路を開き逃げようとしていたが、突如出現したガラスの壁に阻まれて狼狽していた。

「くっ! こんな、一瞬でこのような壁ができるなんて、理不尽なっ……!」
「ココまで来て逃がすわけにも……いかないのよね」

 背後からの声を聴き、振り向いたそこにはティフティータが立っていた。
 飛翔中、妙子が戦っている隙に逃げ出そうとするヤーサミーナを見逃さず、その後を追っていたのだ。
 追尾していた銃火器は『宵闇の衣』を空蝉として脱ぎ捨て、身軽になって加速することで置き去りにしてきた。
 そして、衣の代わりに『踊り娘の服』の姿でヤーサミーナの前に現れていた。

「ま、待って! 見逃して! 私には、やらなければならない使命があるのよ!」
「そんなことやらせる訳にはいかないじゃない」

 ティフティータはヤーサミーナを掴み、引き摺って地下室へと戻っていく。
 抵抗むなしく、ヤーサミーナは大量の硬貨が敷き詰められた床へと投げ出される。
 ジャラジャラと音を立てて倒れたヤーサミーナが顔を上げると、そこにはオブリビオンを倒した猟兵たち……フリル、アンリ、花鵺が立ち並び、見下ろしていた。
 アヒルさんを抱きかかえ、拳銃にこれ見よがしに装弾し、ワキワキと手の指を動かしている。

「ひっ」

「あてにしていた隠し通路も出入口はどこでしょうね。もう悪だくみはさせませんよ」「ぐわっ」
「始末だなんて大口叩く割には逃げ腰のご様子だけど。ご希望の騒乱のお時間よ、精々楽しみなさい」
「ホホホ、ヌシの命運もここまでよ。さあ、ヌシのせぇふくも捕縛するぞよ!」

「い、いやああああ!?」

 こうして、幻朧戦線・改羅支部の構成員は一人残らず逮捕された。
 証拠となる資料も影朧兵器も回収し、鞄に詰まっていた活動資金は洗浄を経て猟兵たちへの報酬として贈与された。
 猟兵たちの活躍により、埃及のテロは未然に防がれたのであった。
 めでたし、めでたし。

 ……なお、他にも分捕りされたモノがあったかどうかは、定かではない。

最終結果:成功

完成日:2021年11月14日
宿敵 『『ヴァンダリスト』甘粕・妙子』 を撃破!


挿絵イラスト