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熾火は青く昌盛・『︰l』

#ブルーアルカディア #『オーデュボン』

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#ブルーアルカディア
#『オーデュボン』


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●そして何も救えないのだとしても
 亜麻色の髪が風に揺れる。
 その黒い瞳が見るのは、いつだって戦禍だった。自分の行く先には争いが常であった。
 穏やかな時がなかったわけではない。
 それ以上に争いばかりが目の前に広がっていた。誰もが平和な明日を望んでいるというのに、いつだって争いはそう願う者たちの前を火で塗りつぶしていく。
「飛空艇の天使核が破損している! このままじゃ、墜ちる……!」
 飛空艇の甲板上で蒼い鎧の巨人『セラフィムV』が立ち上がる。
 その胸の中に亜麻色の髪の少年『エイル』は座す。

「わかっています。天使核が燃え尽きないようにコントロールを。後は僕が……! 後もう少しなんでしょう、『オーデュボン』に占領されたっていう浮島は」
「だが、敵陣真っ只中だぞ! レジスタンスだってどこに……いや、これは。レジスタンス側からの誘導灯……!?」
 高度を保てなくなってきている飛空艇がゆらゆらと空を飛ぶ。
 飛空艇の原動力である天使核が屍人帝国『オーデュボン』の攻勢によって傷ついているが為に出力が上がらないのだろう。
 そんな中、『オーデュボン』に占領された浮島に潜むレジスタンスたちの飛空艇が曳航するために出張ってきている。

「諦めなければ、いつだって道は続いている。だから勇気を持って進む。それが勇士っていうんでしょう。なら――『V(ヴィー)』!!」
 甲板上に立つ青い鎧の巨人『セラフィムV』の掌が雲海に沈まんとする飛空艇からレジスタンスの飛空艇へと伸ばされる。
 炉心にある巨大な天使核が燃える。
 膨れ上がった膨大なエネルギーが青い鎧の巨人の掌から伸びて、曳航しようと高度を下げるレジスタンスの船へとつながり、ゆっくりと沈みゆく飛空艇を引き上げていく。
「高度が回復した……これなら!」
 飛空艇の勇士たちが活気に湧く。
 最早雲海に沈むしか無いと思われた窮地を救った青い鎧の巨人『セラフィムV』は占領された浮島、そこにレジスタンスを結成した勇士たちと合流を果たすのであった――。

●全てが無駄に終わるのだとしても
 傷ついた飛空艇は曳航されながら浮島のレジスタンスたちが隠れ潜む入り組んだ谷間のような地形へと入っていく。
 そこは屍人帝国『オーデュボン』に支配されながらも、未だ抵抗を続ける勇士たちが結成したレジスタンスの本拠地であった。
 少年『エイル』は己たちを狙う『オーデュボン』が何処までも追いかけてくるのならばと、『オーデュボン』を打倒することを選んだのだ。
「助けてくださりありがとうございます」
『エイル』は自身たちの飛空艇が『オーデュボン』の攻撃を受けて沈みかけていたところを助けられた。その例をレジスタンスたちに告げる。

 そんな彼の前に現れたのは、かつてこの土地に存在した国の祭事を司る巫女たちであった。
「危険な道中をよくぞ来てくださいました。ご助力感謝いたします」
 深々と頭を下げる巫女たち。
 彼女たちだけではない、大勢の勇士たちが青い鎧の巨人『セラフィムV』と『エイル』、そして飛空艇に乗ってきた勇士たちを出迎える。
「いえ、こちらこそ。この御恩は戦いの働きで返させて頂きます」
『エイル』は少年がならもしっかりとした言葉遣いでレジスタンスの面々に頭を下げた。

 これより行われる反攻作戦。
 その一戦で屍人帝国『オーデュボン』の支配を、そして『エイル』たちは追撃を止めることができるかもしれない。
 そのためにレジスタンスと合流しようとしたのだ。
「ともあれ、飛空艇の修理を進めねばなりませんね。資材はこちらに。飛空艇の修繕が終わり次第作戦を決行いたしましょう。時はもう多くはないようですから」
 レジスタンスの長である巫女の一人が告げる。
 そう、戦力を求めたのはそのために。
 屍人帝国『オーデュボン』を打ち破り、大空に再び人々の安寧を齎す。それこそがレジスタンスたちの目的である。

「もう人が傷つくのを見たくない。そのために戦わなければならないっていうのなら」
『エイル』は黒い瞳でもって未来を見据える。
 戦いの果てに安寧があるのならば、それを求める。
 見果てぬ夢であってもいい。
 誰かの平穏が僅かでも齎されるのならば、そのためにこそ己は戦うのだと決めた少年の瞳が其処にあった――。

●それでもと言うのならば
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件はブルーアルカディア。屍人帝国『オーデュボン』との戦いになります」
 彼女の告げる言葉はこれまで幾度も猟兵たちが戦ってきた屍人帝国との新たなる戦いを示すものであった。

「すでに屍人帝国『オーデュボン』の侵略に寄って陥落し、支配されている浮島に御存知の方もいらっしゃる『エイル』さんと『セラフィムV』の姿があります。彼らはこの地にてレジスタンスを結成している勇士の皆さんと合流しているのです」
 しかし、蜂起の時を伺っている勇士たちの中に屍人帝国『オーデュボン』のスパイが一人混じっているのだという。
 彼女の予知では、レジスタンスが反抗作戦を介ししようとしたその瞬間、『オーデュボン』の大軍勢に寄って逆に叩き潰されてしまうのだと言う。

「見過ごす訳には参りません。レジスタンスに皆さんも合流し、スパイであるオブリビオンを見つけ出してレジスタンスの壊滅を阻止して頂きたいのです」
 スパイ自身がオブリビオンであるため、猟兵は対峙すればスパイであると知ることができるだろう。
 だが、敵も巧妙である。
 巧みに姿を隠し、レジスタンスの中に溶け込んでいるのだという。

「皆さんは傷ついた飛空艇を整備しながら、スパイの影を探し出してください。すでにスパイが入り込んでいる以上、情報は『オーデュボン』に流れていることでしょう。急ぎ、スパイを見つけ出し、打倒し、彼らをレジスタンスが蜂起の第二候補としていた浮遊大陸まで守り送り届けてください」
 ナイアルテの言葉に猟兵達は頷く。
 ここで屍人帝国に対する反抗の芽を摘ませるわけにはいかない。

 彼らを守り、『オーデュボン』の脅威を振り払う。
 そのために猟兵達は急ぎ、レジスタンスの基地へと合流すべく転移するのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 大空の世界、ブルーアルカディアにおいて屍人帝国『オーデュボン』に支配された浮島、そこに隠れ潜むレジスタンスたちの本拠地に赴き、入り込んだオブリビオンのスパイを見つけ出して打倒するシナリオになっています。

●第一章
 日常です。
 レジスタンスに合流して本拠地に入り、傷ついた飛空艇の整備を行いながら、潜むスパイを探し出しましょう。
 スパイはオブリビオンであるので、皆さんが対峙すればすぐにそれとわかるでしょう。しかし、巧妙に隠れているため、皆さんは整備しながらレジスタンスの面々を虱潰しに接触しましょう。
 そうすれば、必ずスパイを突き止めることができるでしょう。

●第二章
 ボス戦です。
 第一章にて見つけ出したスパイであるオブリビオンとの戦いとなります。
 スパイですが、強力なオブリビオンです。これまで相手取ってきた屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオンの中でも、さらに強力な存在です。

●第三章
 冒険です。
 スパイに情報を流されていたことは確実で、屍人帝国『オーデュボン』が迫っています。レジスタンスの本拠地を棄て、別の浮遊大陸までレジスタンスや非戦闘員たちを運ばねばなりません。
 しかしながら、スパイであったオブリビオンとの戦いで本拠地の飛空艇は損傷しています。足を手に入れなければ蜂起の第二候補としていた浮遊大陸へと向かうこともできません。

 ここではレジスタンスの飛空艇を修理し、脱出の準備を整えることになります。

 それでは、ブルーアルカディアにおける一人の少年と一体の巨人をめぐる皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『飛空艇整備』

POW   :    破損した箇所を修理する

SPD   :    船体や甲板を綺麗に磨き上げる

WIZ   :    新しい艦装を組み込む

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「『オーデュボン』に歯向かうことなど無意味であるというのに。なんて無駄なことをするのでしょう。それもこれもあの青き鎧の巨人が全ての因果であると何故気が付かないのでしょうね」
 その者は、レジスタンスに入りこんだ屍人帝国『オーデュボン』のスパイにしてオブリビオン幹部であった。
 名はすでに棄てた。
 かつて在ったであろう名前にもう意味はない。
 在るのは屍人帝国『オーデュボン』に逆らう者たちの意志、その萌芽を摘み取るという意志のみである。
 希望があるから絶望するのだ。
 人の営みがあるからこそ、そのようなものが生まれる。
 そして、青き鎧の巨人こそが『オーデュボン』の望み。あれを手に入れるまで『オーデュボン』は諦めないだろう。

 何処までも何処まで追い求める。
「すでにこの情報は『オーデュボン』に送ってある……ならば、後はあの青き鎧の巨人を手に入れるのみ」
 ひっそりと行動に移す。
 今ならば飛空艇の修理、修繕にまぎれて行動できる。
 あれさえ手にれてしまえば、己の目的も達成される。己たちが滅びたように、尽くを滅ぼし、この世界をありのままの世界にするのだ。
 弱肉強食。
 魔獣こそが己にとって至高なる存在。
 脆弱なる人の身体など取るに足りない。魔獣こそが、この大空の世界ブルーアルカディアを支配するのたる存在なのだと、そのものは固く信じ、レジスタンスの中に潜んでいくのであった――。
鈴久名・紡
既に顔見知りの勇士も居ればエイルもいるから
身元についてはさほど気にする必要もないか……

エイル、久しぶりだな
Vもトラブルが無いようで何より

敵があの屍人帝国だからな
敵の敵は味方の理論で助太刀に来たんだ

スパイに関しては一先ず伏せておこう
いずれ知れるかもしれないが、疑念は疑念を呼ぶ
そんなもの、知らずに済むなら
それに越したことはないのだから

Vを磨いて労ってやるといい(掃除道具をエイルに押し付け)

リアンシィとむすびと共に
修理・修繕に必要な資材の運搬を手伝おう
場所と資材の照らし合わせもあるから随行して
色々な個所のレジスタンスと接触しスパイを探す

高い場所への資材運搬も
リアンシィとむすびで手伝えば
時間短縮に一役買えるだろうしな

ある程度のレジスタンスに接触したら、エイル達の元へ行こう

これまでの動向からすれば、Vとエイルに害する可能性も高い
純粋に戦力として脅威であるだろうし
反抗作戦の旗印になるだろう存在を無効化されれば
レジスタンスの士気に関わる

猟兵が誰かしら
エイルとVの傍にあった方が良いだろう

手伝おう、エイル



 これまで屍人帝国『オーデュボン』による青き鎧の巨人『セラフィムV』への執拗な追撃は、求めるものがなんであるかを知られぬままに続いてきていた。
 追われる青き鎧の巨人『セラフィムV』も、それとともにある少年『エイル』もまた確固たる理由を見いだせぬままに戦禍へと巻き込まれてきた。
 多くの猟兵たちが関わることによって『セラフィムV』を奪われることなく『オーデュボン』を撃退してこれたことは幸いであったことだろう。
 この地に集まるレジスタンスたちの数が多いのもまた猟兵たちの戦いが遠因になっていることは疑いようがなかった。
「『エイル』、久しぶりだな」
 そう少年『エイル』へと声を掛けたのは、鈴久名・紡(境界・f27962)であった。

 すでに何度めかの邂逅。
 周囲にいる勇士たちもすでに顔見知りの者たちもいる。
「あんたも此処に来たのか。当てにしているぜ」
 勇士達は紡の力を知るからこそ、彼の肩を叩いて歓迎してくれる。それは少年『エイル』もまたどうようであったことだろう。
 彼にとっては恩人と言っていい存在だからだ。
「お久しぶりです。あなたが来てくれたのなら、とても心強いです」
『エイル』の顔はもう少年のようなあどけなさはなくなっていた。
 これまで戦いを重ねてきたこと、自分を追って戦禍が拡大してきたことを責任に感じているのかも知れない。

「『V(ヴィー)』もトラブルがないようで何より。敵があの屍人帝国だからな。敵の敵は味方の理論で助太刀に来たんだ」
 猟兵という存在は勇士と同じように捉えられるだろう。
 すでにグリモア猟兵からの情報で、このレジスタンスの本拠地に屍人帝国のスパイが紛れ込んでいることが判明している。
 けれど、紡は敢えてそれを言葉に朝無い。

 いずれ知ることになるのかもしれないが、不要な疑念を抱かせるべきではないと考えたのだ。
 疑念は疑念を呼ぶ。
 そうなれば戦いの連続でやつした心は、きっと悪い方向へと傾くだろう。
 知らなくて良いことがあるのならば、知らなくてもいい。それに越したことはないのだからと紡は手にした掃除用具を少年『エイル』へと押し付ける。
「……なんです?」
「『V(ヴィー)』を磨いて労ってやるといい」
 そういって紡は笑って『エイル』の背中を押す。きっとスパイは飛空艇の近くや、もしくは『セラフィムV』の近くに来ているかも知れない。

 羽の付いた兎型幻獣の『むすび』と純白のグリフォンである『リアンシィ』と共に紡は修繕を急ぐ飛空艇経と資材を運んでいく。
「あー、頼む。その資材はあっちに。で、これはあっちに!」
「わかった。他に持っていくものはないか? まだ来たばかりで不慣れなんだ。誰か随行してくれると助かるんだが」
 紡の言葉はもっともな理由であったことだろう。
 スパイを探すためにレジスタンスたちを虱潰しに接触していく。

 スパイがオブリビオンであれば、猟兵である我が身である。すぐにそれとわかるからだ。
 そのためには多くのレジスタンスたちを見なければならない。
「わかった。おい、誰か一緒に行ってやってくれ!」
 その言葉に手の空いたレジスタンスたちが紡と共に資材を分配していく。その都度、紡はレジスタンスたちの顔を見ていく。
 修繕に参加している全ての勇士たちと接触できたわけではないが、それでも多くの者たちを見ることができた。

「こちらにはいない、か……『リアンシィ』、『むすび』、引き続き作業を手伝っておいてくれ」
 多くの勇士たちと接触してもオブリビオンである者はいなかった。
 ならば、此処にはいないのかと紡は『エイル』の元へと急ぐ。
 これまでの動向を顧みた時、『V(ヴィー)』または『エイル』に害する可能性が高いと彼は思っていたのだ。
 純粋に戦力として脅威でもあるだろうし、レジスタンスの行おうとしている反攻作戦の旗印にも成り得る存在だ。

 屍人帝国であればこそ、これを無視するわけにも行かない。
 同時に『セラフィムV』が無効化されることになれば、レジスタンスのs指揮にも関わるだろう。
「猟兵が誰かしら『エイル』と『V(ヴィー)』の傍に居た方が安全、か……」
 紡がそう考えるのも当然であった。
 少年『エイル』は紡に言われたとおり青い鎧の巨人である『セラフィムV』の装甲を磨いている真っ最中であった。
 言われたとおりに素直にするところは、真面目な少年といったところであろう。

「手伝おう、『エイル』。大方の資材運びが終わったんでな」
「助かります。『V(ヴィー)』のこと、磨くって考えたこともなかったので、新鮮でちょっと楽しいですね」
 そう言って笑う『エイル』。
 これまで戦いばかりの中を走り抜けてきた彼らにとって、今という時間は貴重なものであったことだろう。
 紡は言いようのない不安を覚えたかもしれない。

 何かを見落としているわけではない。
 けれど、これから起こること。スパイのこともある。屍人帝国『オーデュボン』。その目的がなんであれ、彼らを失うことは猟兵にとっても、レジスタンスたちにとっても痛手である。
 ならばこそ、紡は己の名の通り、彼らの明日を紡ぐことをこそ使命とするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリウス・ストランツィーニ
民の為にも、屍人帝国の支配を許すわけにはいかないな。

レジスタンスの皆に挨拶をしつつ、作業に入ろう。
私は飛空艇については素人だ。下手に整備に手を出す自信もないから、素直に現場の勝手を知る者の指示に従い資材などの荷物運びをさせて貰おう。
力仕事なら「気合い」と「ダッシュ」でなんとかできる。

それに、物を運んで色々な所を動き回ればスパイ探しもしやすくなるだろう。
作業をしながら多くの者と接触・観察する。



 ブルーアルカディアにおいて屍人帝国の存在は捨て置けぬことである。
 他世界の軍閥華族であるストランツィーニ家の現当主であるマリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)である彼女にとっては民のためにと願う心は、己に直接関係のない者たちであっても変わらぬものであった。
 没落したとはいえ、彼女は軍人である。
 若くして家を継いだ彼女は正義感と己の家系に誇りを持っている。

 その気高く完璧であらねばならぬという気概は特筆すべきものがあった。
「飛空艇の修繕、その手伝いをさせてもらおう」
 とは言え、彼女の姿は年若き乙女と同じ。
 勇士達は彼女の姿に、力仕事は無理であろうと、作業をしている者たちへの給仕を願ったが、マリウスはそれを断り資材を持ち上げる。
 勇士達であっても軽々とはいかない重量の資材を軽々と持ち上げる彼女に勇士達は目を見張ったことだろう。

 なにせ女性の細腕で飛空艇の修繕に使う装甲板を悠々と持ち上げているのだから。
「す、すごいな、あんた……女だてらにとは言わないが……」
「これも、超気合(グランデ・モティバツィオーネ)というやつだ。何事も気合でどうにかなるものさ」
 軽々と資材を運び続けるマリウス。
 その姿に勇士たちは感心すれど、己たちも負けてはならぬと張り切り始める。

 そんな彼らをマリウスはつぶさに観察していた。
 作業しながら多くの勇士たちと接触を持った彼女の目的はレジスタンスの中に紛れ込んでいるであろうスパイの存在を確認するためである。
「オブリビオンであれば、猟兵は必ずわかる……それはオブリビオンにとっても同じであるが。この状況ではスパイの存在を見つけ出すことが先決か」
 彼女は多くの勇士たちを見やる。
 作業をしながらであるが、物を運ぶついでにレジスタンスの本拠地の中をくまなく歩き回る。

 ここにはレジスタンスの勇士たちだけではなく、屍人帝国『オーデュボン』の侵略支配によって土地を追われた非戦闘員……すなわち元の住民たちもまた避難してきている。
 この中にスパイが紛れ込んでいる可能性はある。
 そんな彼らの集まっている場所を見やれば、勇士たちでもなければ住民たちでもない存在を見つけることができるだろう。
「あれは……」
「ああ、あの人らはこの国の祭事を司っていた巫女様たちだな。元々はこの国に仕えていたんだ」
 マリウスは作業を手伝いながら、他の勇士たちからそんな話を聞くことができた。
 なるほど、とマリウスは頷く。

 彼女たちはこのレジスタンスの本拠地に逃げ込んできた住民たちをケアして回っているのだろう。
 考えにくいことであるが、この人数の中にスパイが紛れ込むのであれば、勇士達の中よりもあちらの方に居た方が自由に動き回ることができると判断できる。
「とは言え、時間は足りないか……この資材は此処で構わないな?」
 マリウスは勇士たちの中にスパイが存在しないことを確認し、作業を進めていく。
 どちらにせよ、この飛空艇の修繕を終わらせなければ、スパイの流した情報によって招き入れられる屍人帝国『オーデュボン』の大軍勢から逃れることもできない。

 マリウスは他が為に戦う猟兵である。
 それは彼女の血筋でもあっただろうし、同時に彼女自身の高潔さもあるだろう。
 戦いの予兆はすぐ其処まで来ている。
 今自分にできることを最大限に為すべく、マリウスはスパイの暗躍の跡をたどるように飛空艇の修繕を手伝い続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・ジルニトラ
まったく屍人帝国なんかに協力しても未来が無いというのに。
目先の楽に目がくらんだかただの馬鹿か…。
スパイなどという愚かな行為はその身で償ってもらわないとな。

さて、私は船の整備を手伝いつつ、スパイとスパイの工作がないか確認だな。
破壊工作…船の出航できないと、袋の鼠。
スパイを見つけてもレジスタンスはまともに戦えず逃げれずそのまま殲滅される恐れもあるし、普通そこを狙うだろうしね。

Vが目的なら…なおさら逃げられないように船に細工しそうだしねぇ。
以前の屍人帝国のオブビリオンもなんか目をつけていたし、うん。一通り船体のチェックをしつつ、エイル少年たちの周囲に目を光らせるか。



「まったく屍人帝国なんかに協力しても未来がないというのに」
 ブルーアルカディアの空に浮かぶ屍人帝国『オーデュボン』によって占領された浮島の一つに降り立ったイングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)は嘆息する。
 この浮島には『オーデュボン』によって住む大地を追われた人々が集まり、反抗作戦を結構するためにレジスタンスの本拠地となっていた。
 そこまでよかった。
 けれど、その本拠地に『オーデュボン』のスパイであるオブリビオンが入り込んでいるというのであれば話は別である。

「目先の楽にくらんだか、ただの馬鹿か……」
 イングリットにとって、その行いは愚かなこと以外の何物でもなく、唾棄すべき行いであった。
 しかし、スパイはオブリビオンであることはすでに判明している。
 オブリビオンと猟兵は滅ぼし合う関係でしかない。
 ならばこそ、対峙すれば自ずとそれが己を滅ぼす存在であり、同時に滅ぼさなければならない存在であると知ることが出来る。
 猟兵達はレジスタンスの本拠地に潜むオブリビオンのスパイをあぶり出すために、虱潰しに接触を図っていた。

 イングリットもまたその一人である。
 修繕しなければならない飛空艇や、他に整備をしなければならない飛空艇だってまだ数多く存在している。
 屍人帝国『オーデュボン』との決戦を控えていればなおさらである。一つの不備が敗北を呼び込むこともあるだろう。
「スパイなどという愚かな行為は、その身で償ってもらわないとな」
 しかし、と彼女は考える。 
 スパイが情報を流すことは当然である。もしも、己がスパイであったのならばと考える。それはもしかしたのならば、破壊工作の類があるのかもしれないと考えるに至るのは当然の帰結であったかもしれない。

『オーデュボン』の大軍勢が襲ってきた時、もしも破壊工作をされていたのならば、レジスタンスはまともに戦えず、そして逃げることもできずに殲滅されてしまうかもしれない。
「ならば、狙うのならば其処だろう」
 そしてもう一つ気がかりなことがある。
 屍人帝国『オーデュボン』がこれまで一貫して狙ってきた青き鎧の巨人『セラフィムV』。

 その存在のことを忘れてはならない。
 あくまで『オーデュボン』の目的は『セラフィムV』だ。ならば、なおさらかの蒼き鎧の巨人に逃げられないように船に細工をしそうなものである。
「以前戦った『オーデュボン』のオブリビオンも目をつけていたな……うん」
 イングリットはレジスタンスの船体を一通りチェックしていく。
 奇しくも彼女の行いは、スパイが飛空艇に何らかの細工をするタイミングを与えぬ警邏のような役割を果たしていた。

 今はわからないことであったが、確かに彼女の行いはスパイの行動を制限するものであり、もしも彼女の行いがなかったのならば、飛空艇に細工された何かの罠が発動するところであった。
 そんな彼女は『セラフィムV』の姿を認め、少年『エイル』へと声を掛ける。
「久しいな、少年。今は『セラフィムV』の装甲を磨いているのか?」
「……ん? ああ、そうです。いたわってはどうかと言われたので、そうしているところなんですよ」
 青い鎧の巨人の装甲を磨いている少年『エイル』がゆっくりとイングリットの立つ場所へと歩いてくる。

 これまで磨くということに思い至らなかった彼は、額に浮かぶ汗を拭って微笑む。
「そうか。なにか他に変わったことはなかったか? 些細なことでもいいんだが……」
 イングリットの言葉に『エイル』は首をかしげる。
 特におかしなことはなかった……と彼は思っているようであったが、あ、と気がついたように言葉を紡ぐ。
「そういえば、この浮遊大陸にあった元々の国の巫女様が様子を見に来ていましたよ。あなたがきたらいなくなっていたので、入れ違いに成ったのかも知れませんね」
 そう告げる『エイル』の言葉にイングリットは頷く。

 直接自分の瞳で見たわけではない。
 けれど、イングリットは確信めいたものを得るだろう。勇士たちの中にスパイはいなかった。それは他の猟兵たちの行動からも伺える。
 ならば、勇士達以外の中にスパイがいると考えるのが打倒であろう。
 元々の国に存在していた巫女たち。
 その中にこそ、このレジスタンスの本拠地から情報を流している者がいる。その事実を得て、イングリットは戦いの予感にその瞳を輝かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
いよいよ決戦が近いのかしら? これまで『オーデュポン』に蹂躙されるがままだった人々が立ち上がっていく。
その果てに、屍人帝国は再び雲海に沈むのね。

さて、アヤメと羅睺と一緒に厨房に寄って、勇士達に配る食事の配給を任せてもらう。
腹が減っては戦は出来ぬ。人に化けたオブリビオンだって、食べなきゃ怪しまれるわよね。
「コミュ力」で愛想を振りまきながら、食事を配っていくわ。時折伸びてくる手は、アヤメが払ってくれるでしょ。

一方、黒鴉の式を打ってあたしの視線を避ける者がいないか、幾つかの視点から推定。式越しに見ることで正体が暴けるのならこれ程楽なことはないけど、自分の目でも確認しなきゃね。ティー・オア・コーヒー?



 屍人帝国『オーデュボン』との戦いは今に始まったことではない。
 ブルーアルカディアと呼ばれる大空の世界にあって、猟兵たちが幾度となく戦ってきたオブリビオンたちが属していた屍人帝国の名である。
 その存在は、如何なる理由からか少年『エイル』と共に在る青い鎧の巨人『セラフィムV』を狙い、追い続けていた。

 あの巨人の特殊性は言うまでもなく手繰る者の技量を受けて成長する兵器でるという所であろう。
 現に少年『エイル』が駆る『セラフィムV』は共に戦う猟兵たちの技量を吸い上げるようにして成長している節がある。それは扱い方を誤ることがなければ、絶大な力と成って屍人帝国を脅かすものとなるだろう。
 それ故に屍人帝国『オーデュボン』は『セラフィムV』を追うのかもしれない。
「いよいよ決戦が近いのかしら? これまで蹂躙されるがままだった人々が立ち上がっていく……その果てに、屍人帝国は再び雲海に沈むのね」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はレジスタンスの本拠地の中を己の式神たちと共に厨房を借り受けるために進む。

「おいおい、なんだアンタ達は? 何か用か? 見ての通りこっちは大勢が集まったおかげで食料を準備するのに追われてるんだよ」
 厨房に入ろうとするとレジスタンスの勇士の一人がゆかりの姿を認めて止める。確かに見やれば厨房はごった返している。
 レジスタンスの勇士たちだけではなく、逃げ延びてきた元住民たちの食事を用意しなければならないのだ。
 人手はほしいが、見慣れぬ人物がやってくれば神経質にもなるだろう。
「腹が減っては戦は出来ぬ。いつの時代も一緒ね。忙しそうだから手伝いにきたのよ。料理は任せておいて、役に立つわよ」

 そういって式神の羅喉をゆかりは厨房に入らせ、次々と食事の用意を手伝わせる。
 その手際は素晴らしいものであったし、何より栄養面から見ても完璧であったことだろう。
 最初は渋っていた料理番の勇士も彼女の働きには認めざるをえなかったのだろう。礼を告げていた。
「カリカリしていてすまなかった。助かったぜ」
「いいえ。じゃあ、こっちは配膳させてもらうから、そちらもゆっくり休んでおいてね。戦いを前にして疲れ切っていたら元も子もないわ」
 ゆかりは愛想良く笑いながら、勇士達に食事を配っていく。
 式神であるアヤメと共に愛想を振りまくのは慣れたものである。別にただ食事を給仕するだけのために彼女はこうしているわけではない。

 オブリビオンは生命維持のための食事を必要としない。
 これだけ食事を配っていれば、皆食べているのに一人だけ食べていないというのは目立つことだろう。
 スパイであるオブリビオンであればなおさらである。
「なら、そこにいるっていうことなる……幸いに勇士たちの中にスパイはいないようね」
 ゆかりは勇士たちを見回す。
 猟兵とオブリビオンであれば、ひと目見ただけでオブリビオンか否かということはわかる。
 見回す範囲に居ないことを確認してゆかりは避難してきた住民たちを見やる。
 彼らの中にも不自然に食事をしていない者はいないようである。

「……食事をしないように隠れている者がいる……?」
 黒鴉召喚(コクアショウカン)によって放った式神の黒鴉の視覚を共有したゆかりは、住民たちに紛れて存在している巫女たちの姿を認める。
 彼女たちは食事をしていないようである。
「あの人達の食事はいいの?」
「ああ、あの人らは巫女様たちだな。あの人達の食事は日に一度なんだ。なんでもそういう決まりがあるって言う話でな」
 料理番をしていた勇士が教えてくれる。

 式神越しの視覚ではオブリビオンか否かまでは判別できない。
 けれど、ゆかりはスパイの存在を探る範囲を徐々に狭めている。勇士たちの中には確認できず、さりとて怪しき者たちは見つけることができた。
 元々の国に存在し、仕えていた巫女達。
 その中にこそスパイが存在していると彼女は確信する。そのためには、散らばって存在してる彼女たちを己の目で確認しなければならない。
「ティー・オア・コーヒー? なんて、キャビンアテンダントに憧れるわけじゃないけれど」
 ゆかりとアヤメは怪しまれないように徐々に包囲するように勇士や住民たちの間を歩いていく。

 その行いに寄って巫女達の中に潜むであろうスパイを遠からず見つけることができるだろう。
 オブリビオンの目論見を阻むその瞬間まで、あと僅か――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
こっちにくるのは久しぶりだね。
でも持ってきたかったものもあったし、間に合ってよかった。

でもその前にまずは飛空艇だね。
この修復を放っておいたら【モーター・プリパラタ】の名が廃る!

UCを使って損傷箇所を修復しながら、さらに防御力と索敵能力を高めていくよ。

スパイの捜索は作業しながらするね。
データ収集しかしていない人とか、おかしなギミック作ってる人がいたら、チェックしておこう。

飛空艇を修復できたら『エイル』さんと『セラフィムV』にご挨拶しながら、内緒のお話。
某世界で手に入れた機体データから組み直してブラッシュアップしたプログラムと、
装備品を2人に渡そう。

『エース』と呼ばれる人の動きを基にした高速機動の制御系と、
天使核のエネルギーを攻撃に変換するための威力と効率をアップさせるプログラム。
それと天使核の力を増幅して打ち出すバスターランチャーとエネルギー刃の光剣。

もしよかったら使ってみて。
シミュレーションではかなりな攻撃力アップになるはずなんだけど……。
さすがに試し撃ちができてないのだけは、ごめんね。



「こっちにくるのは久しぶりだね」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、ブルーアルカディアの大空に浮かぶ大陸に降り立ち息を吐き出す。
 急ぎ転移してきたこともあり、忙しないことこの上ない。
 それもそのはずである。
 このレジスタンスたちが本拠地としている浮島は隠れているとは言え屍人帝国『オーデュボン』の支配が広がっている。

 落ち着くことなど難しいであろうし、それ以上に彼女は転移と共に持ち込みたいと願ったものの用意に手間取っていたのだ。
「でも間に合ってよかった。『エイル』さんと『セラフィムV』さんにも用事があったし……その前にまずは飛空艇だね」
 彼女の目の前には傷ついた飛空艇があった。
 少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』たちがこの浮島に辿り着く前に『オーデュボン』からの攻撃で傷ついた船体。その飛空艇の修繕を急がなければならない。
 天使核が傷ついてはいるが、補助の天使核を接続すれば問題はなさそうである。
「この修理を放っておいたら、モーター・プリパラタの名が廃る!」

 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女は機材に対する修理や調整、整備、補給に長けた猟兵でもある。
 その行動に没頭するあまり、通常の12倍にも及ぶ精度と速度でもって圧倒的な力を発揮する。
 尋常ならざる整備能力は主機となる天使核と補助の天使核の同期を一瞬で終わらせ、飛空艇の出力を底上げしていくのだ。
「す、すげぇ……! 天使核の出力が高水準で安定している!」
 勇士たちが飛空艇の出力が安定したことを喜んでいる間、さらに理緒は装甲を厚く、そして索敵能力を高めるように整備していくのだ。

「とは言え、スパイの捜索もしないとだね……おかしな行動をしている人はいないかな……?」
 飛空艇の整備をしている勇士たちに不審な動きをしている者たちはいないようである。他の猟兵たちが警邏のように動き回っていたこともスパイに対する牽制にもなったのだろう。
 飛空艇周りにおかしな行動をする者はいない。

 ならば、あとは避難してきていた住民たちや、元々この国に仕えていた巫女たちが怪しいと見るべきであろう。
 しかし、理緒はそれ以上にやらねばならないと思うことがあったのだ。
「あ、『エイル』さん、ちょっとこっちこっち」
 理緒が『セラフィムV』の装甲を磨くのを終えた『エイル』を手招きする。その仕草は何か内緒の話をしなければならないかのような雰囲気であり、『エイル』に緊張を走らせる。

「……なんです?」
「これ。プログラムってわかるかな?『エース』って呼ばれる人の動きを基にした高速機動の制御系と、天使核のエネルギーを攻撃に変化するための威力と効率をアップさせる仕組みを組み込むためのものなんだけど……」
 理緒が持ち込んだのはこれである。
 青い鎧の巨人『セラフィムV』は確かに成長する兵器であるように思える。
 ならばこそ、理緒はこの戦いにおいて『セラフィムV』がレジスタンスの行う反攻作戦の要になることを理解していた。

 その強化のために持ち込んだプログラムは異世界の『エース』の操る戦術兵器のデータを基にしたものである。
 プログラムが『セラフィムV』に馴染むかどうかは未知数であったが、組み込むことには意義があるだろう。
「これを? でも、僕はよくわからなくて……」
「ちょっといじらせてもらえる許可がほしいんだ。大丈夫?」
「それは、たぶん。大丈夫かと」
 その言葉に理緒はプログラムを『セラフィムV』にインストールしていく。

 けれど、彼女の手が止まる。
 『セラフィムV』の中には、すでに同じプログラムがインストールされている。いや、自分が持ってきた異世界の『エース』の挙動を基にした高速機動のプログラム、制御系を越えるものがあるのだ。
 理緒がアップグレードを行おうとしても、これ以上のグレードアップは望めないことが理解できるだろう。
「……なら、天使核のエネルギーを攻撃に変換するのは……コネクタがある」
 理緒は『セラフィムV』の性能を解析しながら一つの結論に至る。

 すでに天使核から捻出されるエネルギーを打ち出すバスターランチャーを使用する下地ができあがっている状態であると。
 そして、エネルギーを刃に変える光剣の扱いも同様である。
『セラフィムV』にすでに備わって喪われていただけの装備であったかもしれない可能性を感じつつ、己が用意したものが無駄にならなかったことに胸をなでおろす。
「もしよかったら使ってみて」
「ありがとうございます。今まで『V(ヴィー)』は拳だけで戦っていたので……これでこれからの戦いが楽になればいいんですが……」
 理緒が持ち込んだ装備を『セラフィムV』が装備する。
 シュミレーションした結果ではかなりな攻撃力のアップになることが見込まれている。

「ぶっつけ本番で試し打ちができないのだけは、ごめんね」
 理緒はこんな状況でなければ、試射でもってデータを取って最善を尽くしたいところであったが、レジスタンスの本拠地ともあればその時間も場所もないだろう。
 けれど、彼女の行いは確実にレジスタンスの戦力をアップさせ屍人帝国『オーデュボン』との戦いを優位に進めることができるだろう。
 そのための手助けができたことに理緒は安心したように微笑み、強大なオブリビオンとの戦いの予感を覚えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
おーっ、元気だったかエイルッ!
「……お久し振りです。」
しばらく見ないうちに立派な男の面構えになっちまいやがって。『男子、三日会わざれば刮目して見よ』ってか?
と、そうだ。お前さんお気に入りの『おはぎ』をタッパーに詰めて持ってきたぜ。休憩の時にでも食いなッ!
「…なんか、親戚のおじさんみたいだよ?」
おっと、せめてそこはお兄さんと言ってくれよ相棒!?

エイルも頑張ってたし……んじゃ、俺達もお仕事開始といきますかッ!
「…式、召喚【捜し鼠】」
式神を放って違和感のある奴や怪しい行動をしている奴を捜し出すぜ。
見つけたら後はしらみ潰しに接触だな。


【技能・式神使い、情報収集】
【アドリブ歓迎】



 大空の世界ブルーアルカディアにおいて出会いとは縁結ぶものである。
 人の行き来が空の航路だけである世界にあって再び道が交錯することは、そう多いものではない。
 飛空艇も、天使核も全てが万能ではない。
 明日には雲海に沈み全てが消えてゆくものであるのかもしれない。それでも、こうしてまた会えたことを喜ぶことはブルーアルカディアに住まう人々にとっては当然のことであったのかもしれない。
『おーっ、元気だったかエイルッ!』
 そうカタカタと紅の鬼面を揺らすのは、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)であった。

 彼はこれまで屍人帝国『オーデュボン』の追撃を受ける少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』に関わってきた。
 浅からぬ縁を結んだ猟兵の一人であった。
「……お久しぶりです」
 凶津のパートナーである桜もまた頭を下げて久方ぶりの再会を喜ぶのだ。
「お久しぶりです。なんだか懐かしいっていうのは違うのかも知れませんが……それでもまたお会いできて嬉しいです」
 そう言って微笑む少年『エイル』の顔は、もはや出逢った頃のあどけなさや、戦禍に怯えるものはなかった。

 これまで幾度もの戦いを経てきたのだろう。
 凶津にとって、それは喜ばしいと言えるものではなかったかもしれないが、それでも少年の成長であることは言うまでもない。
『しばらく見ない内に立派な男の面構えになっちまいやがって。男子、三日会わざれば刮目して見よってか?』
 それほどまでに凶津と桜の前にいる少年は未だ幼さ残る身体の内側に青年と言っていいほどのたくましい精神性を宿すように成っていた。

『と、そうだ。お前さんお気に入りのおはぎをタッパーに詰めて持ってきたぜ。休憩のときにでも食いなッ!』
 そう言って桜から『エイル』に手渡される『おはぎ』を詰めたタッパー。
 それはこれまで彼が食べた中でもっとも良い反応を示した食べ物であり、パートナーである桜謹製のものである。
「わっ! ありがとうございます!」
『エイル』の顔は、『おはぎ』ですぐに年相応な表情に元通りである。
 よほど好きなのだろう。綻ぶ笑顔に凶津と桜は微笑ましいものを見たような気持ちになったことだろう。
「……なんか、親戚のおじさんみたいだよ?」
『おっと、せめてそこはお兄さんと言ってくれよ相棒!?』

 そんなやり取りをした後に凶津たちは、本題へと入る。
 彼らが探すのはレジスタンスの本拠地に潜むスパイのあぶり出しである。
『エイルも頑張ってたし……んじゃ、俺たちもお仕事開始といきますかッ!』
「……式、召喚【捜し鼠】」
 凶津の瞳がユーベルコードに輝く。
 一斉に解き放たれる式神【捜し鼠】(シキガミ・サガシネズミ)たちが、レジスタンスの本拠地の中を駆け抜けていく。

 彼らを解き放ち、飛空艇や本拠地で怪しい行動をしている存在を探し出すのだ。
 式神たちと猟兵たちの両面作戦によって、本来スパイが飛空艇に仕掛けるはずであった細工は尽くが仕掛ける前に頓挫したことだろう。
 猟兵の警邏、そして式神による監視。
 これらによって仕掛ける隙が飛空艇にはなく成ってしまったのだ。スパイであるオブリビオンにとって、己の存在を晒すことだけは避けなくてはならぬことである。
 なにせオブリビオンと猟兵はひと目見ただけで、それとわかるのだから。
『そんならやっぱり、勇士達の中にスパイはいないってことになるなッ!』
「……となると、やはり巫女たち。避難してきた住民たちに紛れているのなら」

 凶津と桜は式神たちから送られてくる情報を基に勇士達ではなく、避難してきた住人たちや、元からこの国に仕えていた巫女たちに狙いを絞っていく。
『後は虱潰しだなッ! 巫女ってんなら異世界であっても相棒が接触するのが最適だろう。頼んだぜッ!』
「……わかった」
 桜と共に凶津は巫女たちに接触していく。
 彼女たちの殆どは、異世界であっても同じ巫女である桜に対する反応は好意的なものであった。

「……特に変わったことはない……」
 桜は訝しむ。確かに接触した巫女たちの中にオブリビオンはいなかった。けれど、全てではない。
 やはり、巫女達の中にスパイがいる。
 今こうしている間にも情報を流しているはず……ならば。
『なるほどなッ! 今此処に居ない巫女がいるってんなら、そいつが――ッ!』

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【勇者パーティ】

ししょーっ!やっと見つけましたよ!
いままでどこに隠れて……って、え?焼肉?焼肉食べたいんですか?

焼肉を定食スタイルで食べたいのかな、と思って準備しようとしていたところに師匠のお言葉。

焼き加減……?
師匠!いままでわたしの焼き加減に何か文句が!?

……っ、わかりました!
『鉄板V』こうなったら勝負です!どちらは師匠の焼肉担当か決着をつけましょう!
肉はこれを。わたしも同じものを使いますから公平ですよ!

お互いに焼いたものを、師匠と『エイル』さん、ステラさん、飛空艇のみなさまに食べていただいて審査していただきましょう!

ステラさん!エイルさんへのえこひいきは無しにしてくださいね!(据わった目)


フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「焼肉定食。
肉こそが我にとって至高なる存在」

そのための鉄板たるVは誰にも渡さぬ!
あの絶妙な火加減は我のものだ!

「だが敵も鉄板の魅力に気がついてしまったようだな。
やはり極上の鉄板ともなれば、見る者が見ればわかるということか……」

だがしかし!
それでも譲れぬもの(鉄板)というものがこの世にはあるのだ!

「というわけで、ルクス、ステラ!
焼肉パーティーだ!」

え、なんでだと?
鉄板Vで焼肉パーティーをしていれば、鉄板Vを狙う敵が出てくるに違いないからだ!
さあ、肉を持ていっ!
我は魔術で鉄板を熱していくぞ!

え、我ら、もう『勇者パーティ』じゃなくて『焼肉パーティ』と名乗ればいいんじゃないかって?


ステラ・タタリクス
【勇者パーティ】

エイル様ぁぁぁ!!(だきゅはぐぎゅー)
ご無事でしたか?
あなたのメイド(ステラの中では確定事項)のステラ
いま馳せ参じました
遅れてしまった分はこの後挽回しますので

まずは焼肉定食を、はい、あーん

え?いえ、不埒な勇者と魔女がいるのですが
まぁ肉に罪はないので、はい、あーん
こんなことをしている暇は無いと?
しかし腹が減っては戦もできません
今は力を蓄える時です、はい、あーん

何か向こうが騒がしいですね
私がエイル様にえこひいきなど
単に食べさせるお役目を譲らないだけで、はい、あーん

さて飛空艇の修理もしませんと
エイル様、ご命令ください
『働いていない輩を探してこい』と
ご用命、必ずや果たして見せましょう



「焼肉定食」
 その言葉はブルーアルカディアの大空の青に溶けて消えていく。
 正直何言ってんのか全然わからんが、それでもフィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)の瞳にあったのは哀愁を帯びた美少女オーラであった。オーラ?
 彼女のたおやかな唇から紡がれるのは、いつだって食欲に正直な言葉であった。
 これまでも大変な目にあってきたが、いつだって彼女は腹の虫と共にあったのだ。
「肉こそが我に取って至高なる存在」
 だから何言ってんのか全然わからん。
 たそがれる彼女の心を締めているのは肉である。そうNIKUなのだ。
 そのために鉄板である『セラフィムV』は誰にも渡さないと決意を新たにして、その瞳から哀愁が吹き飛ぶ。

 そう、あの青い鉄板の上で滴り落ちる脂。
 芳しい香り。
 最適な焼き加減。
 どれをとっても網目などには及ばぬ分厚い鉄板。鉄板V!
 それを狙う不埒な輩がいるというのならば、美少女であるフィアは戦うだろう。
「だが敵も鉄板の魅力に気がついてしまったようだな。やはり極上の鉄板ともなれば、見る者が見ればわかるということか……」
 これから戦う敵の手強さにフィアは頷く。
 さっきから何一つ言ってることがわからん。

「ししょー! やっと見つけましたよ! いままでどこに隠れて……って、焼き肉食べたいんですか?」
 そんなフィアの言葉に早速、師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)たるルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)が焼き肉を定食スタイルで提供しようとしていた。
 この娘もよくわかんないな。
 唐突であったけれど、久方ぶりの再会であるはずだ。
 けれど、流れるように料理を用意しようとする姿はさすがは専属料理人とでも言うべきであろうか。

 いや、それ以上にルクスはフィアの言葉に何か感じるものがあったのだろう。
「焼き加減……師匠! いままでわたしの焼き加減に何か文句が!?」
「ルクスよ、あの極上たる鉄板を見て何も気が付かぬか」
 フィアが師匠風をびゅんびゅん吹かしている。
 もう暴風と言ってもいいほどに吹かしている。意味深な雰囲気を作っているが、言ってることは焼き肉の焼き加減の話である。
 どういうことなのと思われがちであるが、ちゃんと今回の事件の概要わかってるよね? と訪ねたくなる。

 そんな二人のやり取りを遠巻きに見ていた少年『エイル』は、苦笑いしていた。 
 これまでであれば戸惑いのほうが大きかったけれど、彼にとってルクスとフィアはそういう人たちというカテゴリでくくられるようになっていた。
 あんな人達も世界にはいるんだなぁ、位である。そして、そんな彼が二人の姿を認めれば、当然現れるであろう人のことも予測済みであった。
「『エイル』様ぁぁぁ!!」
 凄まじい咆哮っていうか、絶叫と共に『エイル』の背後からアタックを仕掛けるステラ・タタリクス(紫苑・f33899)を彼はひらりとかわそうとして、ダメであった。

 あのメイドのは追尾能力が在る。いやないけど。
 軌道をえぐい角度で変更して『エイル』少年に抱きついて久方ぶりの感触に涙しそうに成っているメイド。やべーやつである。
「ご無事でしたか? あなたのメイドのステラ、いま馳せ参じました。遅れてしまった文はこの後挽回しますので」
「い、いえ……大丈夫です」
 ほんと大丈夫である。というかステラのほうが大丈夫ではない。様子がおかしいのが平常運転であるとさえ思うほどにステラはちょっとおかしなテンションになっている。
 クールなメイドかと思ったがそうじゃなかった。

 そんな二人のやり取りの背後でステラが叫ぶ。
「……っ、わかりました!『鉄板V』こうなったら勝負です! どちらが師匠の焼き肉担当か決着を付けっましょう! 肉はこれを。私も同じものを使いますから公平ですよ!」
 ルクスが取り出したお肉は大変に上質なものであった。
 いやそうじゃない。問題はそこじゃない。なんでも勝負することになってるのかって話である。
「譲れぬものというものがこの世にはあるのだ」
 しかしながら、フィアさん。
 なんで焼肉パーティするんですかね? 船の修繕をしてほしかったんですが、あとオブリビオンのスパイの捜索。

 だが、フィアは意味ありげに笑む。
 そう、フィアにはちゃんとした計算があったのだ。
 焼肉パーティをしていれば、『鉄板V』もとい『セラフィムV』を狙うスパイが出てくるに違いないからだ。
 敵も肉を食べたかろう? とはフィアの言葉であるそうかなぁ。そうじゃないような気がするけどなぁと思いつつもルクスの用意したお肉が焼き上がっていく。

「さあ、勇士の皆さんたちも! 審査してくださいね! こちらがわたしの焼いたもの! そしてこっちが『鉄板V』で焼いたものです!」
 フィアが魔術で『鉄板V』こと『セラフィムV』の装甲を熱して焼いた肉を振る舞いつつ、しっかり自分も賞味しているあたりがこう、なんともフィアである。
「ええ、まずは焼肉定食を。はい、あーん」
 ステラはステラで『エイル』をひしっと抱き寄せお口にお肉を運ぼうとしている。
 大丈夫かこのメイド。
「あ、あの、こういうことをしている場合では」
『エイル』が最もなことを言ってくれるが、そんなことお構いなしである。

「え? いえ、不埒な勇者と魔女が居るのですが、肉に罪はないので、はい、あーん」
「ですから、その、こういうことをしている場合では」
「しかし腹が減っては戦もできません。今は力を蓄える時です、はい、あーん」
 負けねぇな、このメイド!
 ていうか、まったくブレねぇな! 鋼の意志である。絶対に手ずから食べさせるという強固な意志を感じる。
 そんなこんななやり取りをしているとルクスが据わった目でステラを射抜くように見ている。

「ステラさん!『エイル』さんへのえこひいきは無しにしてくださいね!」
 えこひいきってそういう話かなぁって思わないでもなかったが、ルクスの中ではそうなのである。
「私が『エイル』様にえこひいきなど。単に食べさせるお役目を譲らないだけで、はい、あーん」
 ひくほどステラはマイペースである。
 勇者パーティあらため焼き肉パーティとなったルクス、フィア、ステラの三人。

 彼女たちのどんちゃん騒ぎはスパイを惹きつけるどころか飛空艇から遠ざけるような行いであった。
 けれど、猟兵たちの警邏と合わせてみれば、それは飛空艇にスパイが細工をする暇を与えぬものであったことだろう。
 結果オーライである。
 しかしながら、ステラは思い出したように頷く。彼女の腕の中には焼き肉をしこたまはいあーんされた『エイル』がぐったりしている。

 戦いを経てきたとは言え、まだまだ少年はメイドには敵わないようである。
「『エイル』様、ご命令ください。『働いていない輩を捜してこい』と。ご用命必ずや果たして見せましょう」
 いや、今更そんな真面目な顔してもダメである。
 もうこのメイドの印象は、強引にしてゴリ押しメイドである。思い出したかのようにバトラーズ・ブラックを発動させて、当初の目的を果たそうとしたってしょうがないのである。

「ええと、じゃあ、それで……」
「かしこまりました!」
『エイル』のぐったりした声と共にステラは未だ焼き肉パーティに興じるルクスとフィアの首根っこを掴んでスパイの捜索へと走り出すのであった。
 まあ、だいぶ出遅れてるけど――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

おやまあ、同じ穴の狢がいると。ですが…害を及ぼさぬように。
ま、その時までは秘しておきますかー。

エイル殿とV殿はお久しぶりですねー。ええ、本当に。
ふふふ、ちょっとお手伝いに来たんですよー。ね?陰海月と霹靂。
こういうとき、人手はあった方がいいでしょう?
そういいながら、内部三人と一緒に不振人物いないか警戒しましてー。


陰海月、怪力活かして資材運びしてる。最近、また食べすぎたのではりきる。ぷきゅ。
霹靂もお手伝いしつつ、怪しい人いないかきょろきょろ。クエッ。



 忍びとは即ち間諜のことである。
 闇に紛れ敵の内部へと入り込み、その情報を持って味方を優位に立たせる。
 戦いに在っては重要な役割でありながら、その功績が華々しく知られることはない。
 そも、そんなことがあってはならぬのだと理解している。
 だからこそ、屍人帝国『オーデュボン』よりレジスタンスの本拠地の中にスパイがいると聞いた時、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱、その一柱である『疾き者』は驚くことはなかったが、意外なものを見たような感想をつぶやいたのだ。
「おやまあ、同じ穴の狢がいると」
 それは『疾き者』が生前忍者であった事実から、このような事態にあっては如何なる動きをスパイがするのかを熟知しているものであった。

 だが、スパイが居るという事実をレジスタンスの勇士達に伝えることはない。
 今だが実害が出ていない場合において、スパイの存在を周囲に知らしめることはレジスタンス側にとってあまりにリスクが大きい。
「疑心暗鬼になっても困りますし、混乱を招くだけ……敵も嫌なタイミングで作戦を決行しようとするでしょうからね。その時まで秘しておきますかー」
『疾き者』にとって、スパイの捕縛は意味がない。
 敵がオブリビオンであり、強力な個体であるのならば、この本拠地の中で暴れられることこそが一番厄介である。

 周囲を見回せば、ここには勇士達だけではなく占領された国からの避難民たちも含まれている。
 勇士達は有事の際には戦うことができるだろう。
 けれど避難民たちは非戦闘員だ。オブリビオンがそれに配慮することなどあり得ない。
 彼らを巻き込まず、さりとて戦いの際には護ることが『疾き者』にとっての優先事項であったことだろう。
「あ、お久しぶりです。その節はどうもありがとうございました」
 そうこうしていると『疾き者』を見つけた少年『エイル』が近寄ってくる。彼とは幾度となく屍人帝国『オーデュボン』との戦いの折において縁を結んできた。

「『エイル』殿と『V(ヴィー)』殿はお久しぶりですねー。ええ、本当に」
「今回はまたどうして? レジスタンスに参加されるんですか?」
「ふふふ、ちょっとお手伝いに来たんですよー。ね?『陰海月』と『霹靂』」
 そう言って『疾き者』の陰より現れる『陰海月』と『霹靂』。
 二匹の巨大な生物が力こぶを作るようにして触腕を膨らませ、嘶くように鳴く声が響き渡る。
『陰海月』と『霹靂』の姿に『エイル』も頬がほころんだように、よろしくね、と声を掛けて飛空艇の修繕を手伝っていく。

「最近食べ過ぎた?」
「ぷきゅ……ぷきゅぷきゅ!」
「クエッ!」
 一人の少年と二匹は言葉でも通じているかのように笑い合いながら飛空艇の修繕に歩いていく。
 そんな彼らの背中を見送りながら『疾き者』は内部にある三柱と共に不審人物がいないかを警戒していく。

 怪力を持って資材を運ぶ『陰海月』。『霹靂』は高い場所へと勇士たちを乗せて作業を行っていく。
 見回す限り、勇士たちの中におかしな動きをする者はいないようであった。
「となると……やはり、間諜は非戦闘員の中に紛れ込んでいるようですね」
『疾き者』は瞳を走らせる。
 避難民たちを見ても、おかしな点はない。不審な動きをしている者はいない。

 けれど、避難民たちの世話をしている巫女達の動きが気になる。
 彼女たちは確かに避難民たちの世話をしてくれている。けれど、違和感を感じるのだ。オブリビオンであれば猟兵が見ただけでそれとわかるものである。
「……巫女たちの動きが効率化されていない。何か歯が掛けたような動き……」
 そう、人手が足りていない。
 巫女達も働く以上、役割分担をするはずだ。けれど、誰か一人サボっているような、そんな動きなのだ。
 一人がいないために他の巫女たちがそれをフォローするように動いている。

「となれば、やはり敵は巫女の中に……」
『疾き者』は即座に行動に移す。
 勇士達は飛空艇にかかりっきり。そして、巫女たちも避難民たちに応対して手一杯。
 ならばその隙に敵が動くのであれば今であると直感的に気がつくのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
よお、久しぶり。
(とエイルとV、ついでに顔見知りの勇士がいればそいつ等にも挨拶)

カカカ、もうすぐ波瀾が起こるぜ。まあ、それは今更か。
エイル君も準備をしとくんだな。
俺はとりあえず飛空艇の整備を手伝ってくるわ。

さて、スパイだったか。俺等があっちを分かるようにあっちも俺達が分かるはずだから一生懸命かくれんぼをしているはず。
猟兵複数に対してスパイは一人。それが避けようと動き回れば不自然な動きになるわな。
つーことで整備作業をしつつレジスタンスに話かけ、普段と違う動き、非自然な動きをしている奴がいないかを聞いていこう。その内ヒットするだろ。



 ブルーアルカディアの空はどこまで青空が広がっている。
 眼下に広がる雲海は沈めば何物も逃れることのできぬ滅び。
 雲海に沈んだものが再び浮かび上がる時、それはオブリビオン化という脅威となって現れる。
 誰もが知ることであり、同時に如何にしてそのような事態に陥るのかを知る者もまた未だ居ないのだ。
 そんな世界にあってもなお人々は懸命に生き、屍人帝国の脅威を振り払わんとしている。
 このレジスタンスの本拠地もその一つである。

「よお、久しぶり」
「おお、あんたか! 久しぶりだな。あんたもこっちに来たのか! 心強いぜ!」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は久方ぶりのブルーアルカディアの世界にあって、共に幾度か屍人帝国『オーデュボン』との戦いで知り合った勇士たちに挨拶を交わしながらレジスタンスの本拠地の中を歩いていた。
 飛空艇がいならび、損傷を受けた船の修繕や整備が続く中、この中に存在するレジスタンスの所在を知ることが猟兵達に託された役割であった。

 アレクサンドルは猟兵とオブリビオンだからこそひと目見ただけでそれとわかる特性を利用して、この本拠地に存在しているであろうオブリビオンのスパイを捜しながら見知った者たちに声を掛けて回るのだ。
 そうすれば、先の戦いでアレクサンドルが如何に活躍したのかを勇士達や他の人員たちに紹介したがる。そうやって接触していく者を増やして虱潰しにしていけば、敵の所在もわかるというものである。
「アレクサンドルさん!」
 そんな明るい声が聞こえる。
 お、と振り返ると、其処には少年『エイル』の姿があった。幾分、少年のあどけなさは消え、男の顔となりつつある彼にアレクサンドルは笑って答えるのだ。

「よお。元気そうで何よりだ。カカカ、もうすぐ波瀾が起こるぜ。まあ、それは今更か」
 そう自分たちが此処に居るという事実が、それを伝えているようなものである。
『エイル』もそれに気がついているのだろう。
 けれど、猟兵たちがそれを伝えないということは、秘する必要があると理解しているようであった。
 だからこそ、アレクサンドルは手短に伝える。
「『エイル』君も準備をしとくんだな。俺はとりあえず飛空艇の整備を手伝ってくるわ」
 また後でな、とアレクサンドルは手を振って『エイル』と別れ、飛空艇へと歩む。

 スパイ。
 それは確かに脅威であっただろうが、オブリビオン本人がスパイとして紛れ込んでいるのであれば話は別である。
 オブリビオンと猟兵は知識なくともひと目見ただけで、対峙しただけでお互いが滅ぼし合う間柄であると知ることができる。
 視界に捉えるだけで、違和感となって理解することができる。 
 それはお互いにとって同様である。
「ということは、あっちも一生懸命かくれんぼをしているはずだよな」
 そうでなくても他の猟兵たちが目を光らせているのである。

 何かうかつなことをしようものなら、即座に看破されてしまうことなどあちらも理解しているであろう。
「猟兵複数に対してスパイは一人。となれば、不自然な動きになるわな」
 アレクサンドルは勇士達と話をしながら周囲を見回す。
 勇士たちの中に不審な動きをしているものはいないようである。ならば、勇士たち以外……非戦闘員たちの中に紛れ込んでいるということだ。

「よう、なんか普段と違うこととかなかったか?」
「ん? いや、特にっていうか。あんたらが来たり、あの青い鎧の巨人を乗せた飛空艇が来た事以外は……」
 整備をしていた勇士が首をひねる。
 そういえば、と彼が告げるのは、巫女たちが慌ただしかったという話である。どうにも非戦闘員である避難民たちの世話をしてくれているようであるが、その人員が一人いなくなったという話を聞いたと教えてくれる。

「なるほどな。ありがとな。参考になったわ」
 アレクサンドルは笑う。
 スパイと言えど簡単に尻尾を出す。やはり自分たちの存在がプレッシャーになっているのだろう。
 単体の力が強大であろうと、元々の目的を達するために必要な作戦を決行することがスパイの目的である。ただ破壊を齎すことが目的出ない以上、あちらは慎重にならざるを得なかったのだろう。
「となれば、しびれを切らす頃合いだよな――!」
 アレクサンドルの瞳が、それを捉えた瞬間、彼の言うところの波瀾がレジスタンスの本拠地に巻き起こるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
エイル君に挨拶しておきたいところだけど
エイル君とVの動きは
相手も気にしているだろうから
敢えて近付かない様に様子を探ろうか

修理のための荷物を運びながら
本拠地の中を歩き回って
スパイを探しつつ
戦闘に備えて構造を把握しておくよ

脱出の際に鉑帝竜が必要になるかもしれないから
鉑帝竜と使い魔には本拠地の近くに隠れて
スタンバイして貰っているよ

相手はレジスタンスに紛れつつ
他の猟兵達からは距離を取ろうとしているはず
修理現場を見渡せる場所があれば
ドローンを潜ませておいて
コクピットに映像を転送し
他の猟兵達から不自然に距離を保つ人が居ないか
使い魔に見ておいて貰おう
怪しければ通信で知らせて貰うよ

まかせてくださいなのですよー



 蒼き鎧の巨人『セラフィムV』と共にある少年『エイル』。
 一機と一人の存在は屍人帝国『オーデュボン』にとって如何なる存在であったことだろうか。
 これまで多くの戦禍を巻き起こしてきたことからも、重要度の高さが伺える。
 その度に猟兵達は介入し、屍人帝国『オーデュボン』の魔の手が彼らに伸びるのを防いできていた。
 そんな彼らが再び狙われているというのであれば、猟兵達は彼らを守らんとするだろう。

「『エイル』君に挨拶しておきたいところだけど……」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はレジスタンスの本拠地で考える。
 敵がスパイとして本拠地に紛れ込んでいるというのならば、『オーデュボン』の最優先目的である『セラフィムV』の動きはスパイも気にしているところであろう。
 ならば、敢えて近づかないように様子を探るのも一手であると晶は修理のための資材を運びながら、本拠地の中を歩き回る。

 スパイがオブリビオンであるというのならば、猟兵の瞳で見れば、すぐにそれとわかるであろう。
 オブリビオンと猟兵が互いに滅ぼし合う間柄であるからこそ、知識なくとも瞬時に理解できる。その特性がスパイにとっては不利に働いていることはオブリビオンにとっての誤算であったことだろう。
 一人だけで敵地にいるという不利な状況に対して、猟兵は複数、レジスタンスの本拠地に入り込んでいるのだ。
「此処で戦闘が起きる可能性だってある……鉑帝竜と君たちは本拠地の近くで隠れていてね」
 そう言って晶は鉑帝竜と使い魔たちをスタンバイさせる。
 これでいつ戦闘が始まって構わない。

 敵であるオブリビオンはレジスタンスに紛れつつ、自分たち猟兵の姿を認めれば距離を取ろうとするだろう。
「勇士たちの中にそんな動きをする者はいない……」
 晶は飛空艇の整備場を俯瞰して見える位置にドローンを潜ませておいて、鉑帝竜のコクピットに映像を転送し、不自然に猟兵たちから距離を保つように離れる者がいないかを使い魔達にモニタリングさせていた。

 敵が動くならば飛空艇に何かを仕掛ける時だろうと思っていたが、猟兵たちの警邏の如き虱潰しの行動にスパイもうかつに行動ができないのだろう。
 不審な動きをする者はいなかったが、それでも確実にレジスタンスの本拠地にスパイがいるのだ。
「……となれば、此処じゃない?」
 晶はドローンを操作し、レジスタンスの本拠地を飛ぶ。
 此処には勇士達だけではなく、支配された国に元々住んでいた者たち、即ち避難民たちも存在してる。
 彼らは非戦闘員であり、彼らの世話を巫女たちが担っているようであった。
 そんな巫女たちの動きがおかしいと晶は気がつくだろう。

「なんだか慌ただしいな。何かあったのかな」
 見やれば、その動きは欠員が出たために他の者がフォローに回るような余裕のなさであった。
「なるほどね。敵は非戦闘員……巫女達の中にいる。その肝心の巫女は、と」
 晶は使い魔たちと連携し、欠員が出ている巫女を探す。
 何処だろうかと探し回る内に気がつくのだ。
 あちらが猟兵たちの存在に気が付き姿を眩ませたのならば、今こそが屍人帝国の大軍勢を引き入れるタイミングであると。

 そして、晶は外に隠れるようにして配置させていた鉑帝竜のコクピットにいた使い魔からの通信に視線を外に向ける。
「――外!」
 そう、確かに猟兵達は飛空艇に対する仕掛けを許さないようにあらゆる障害を拭ってきた。
 けれど、今まさにスパイは行動を起こしていたのだ。
 レジスタンスの反攻作戦を叩き潰す、その蜂起の萌芽を摘み取るが如き作戦を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……ふーむ……スパイ、ね……
…まあ……簡単に尻尾を出すとも思えないし…まずは飛空挺の整備からだ…
…レジスタンスの面々に案内して貰いながら飛空挺の整備を手伝うとしよう…

…飛空挺の整備や修理方法を教えて貰って…出来れば図面なんかも見れると良いな…
…そして大体覚えたら【歌い働く小人の夜】を発動……これで飛空挺を次々に修理しよう…
…あとは修理後の試運転やその結果を報告するという形でレジスタンス達に接触して行くとするか…
…その時に『タイミングが悪くて』たまたまその場にいないレジスタンスのメンバーがいるかは確認…記憶の片隅に置いて置いて
機会があれば探しに行くとしよう…



 屍人帝国『オーデュボン』のスパイがレジスタンスのホンキョチに入り込んでいることはグリモア猟兵からの情報ですでに得られている。
 しかしながら勇士達にその調査をする余裕もなければ、スパイが入り込んでいるという疑念を抱くこともできなかったことだろう。
 彼らにとって屍人帝国との戦いというのは、圧倒的な物量差があるものである。
 だからこそ、この浮島もまた占領され、支配されたのだ。
 これを打開するための反攻作戦こそが、レジスタンスの要となっている。また同時にその反攻作戦には青い鎧の巨人である『セラフィムV』の存在も欠かせぬものであったことだろう。

「……ふーむ……スパイ、ね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は簡単にスパイが尻尾をダストは思えなかった。
 これまでも単体で強力なオブリビオンであったとしてもスパイという行動を一貫して守ってきた存在が、今更うかつな行動を取るとも思えなかったからだ。
 彼女の予想は見事に的中していた。
 猟兵たちが警邏し、飛空艇に仕掛けられるであろう細工もさせず、さりとて己の存在を認めさせぬように振る舞う行動は、未だ猟兵たちをしても捉えることができなかったからだ。

 そんな中、メンカルは飛空艇の整備をすすめる。
 勇士達に案内してもらいながら整備を手伝うメンカルは図面を求め、その図面を記憶していく。
「……わかった。匠の小人達よ、縫え、繕え、汝は改修、汝は技巧。魔女が望むは集い仕上げる錬磨の技」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 歌い働く小人の夜(リトル・マイスターズ)が如く小型の修理、改造用ガジェットが呼び出され、飛空艇を次々と修繕していくのだ。
 勇士達は全てが飛空艇の内部構造に精通しているわけではないだろう。
 如何に急いだとしても、手が足りない。

 けれど、メンカルのユーベルコードはそれらを補って余りある力を発揮する。
「じゃあ、こっちは済んだから。修理の箇所を確認しておいて」
 そう言ってメンカルは次々と勇士たちと接触していく。
 虱潰しにしていけば、自ずとスパイであるオブリビオンとの接触もできるであろうという目論見であった。
 勇士達と接触を終えたメンカルは、スパイが勇士たちの中にいないという事実を突き止める。

 それは喜ばしいことであったが、同時に違和感を感じる。
 情報はすでに屍人帝国に流れているという。なのに勇士たちの中にはスパイがいない。
「非戦闘員……このタイミングで居ない存在……」
 メンカルは考える。
 この逼迫した状況の中で本拠地を離れる者がいるだろうか。
 いや、いるはずがない。すでに反攻作戦を行おうと息巻いている状況にあって、この場を離れる理由などない。

「その非戦闘員……巫女の中にスパイがいる」
 メンカルは居なくなったというスパイが何処に向かったのかを探す。
 しかし、その姿は本拠地の中にない。ならば、何処か。
「外……」
 そう、このタイミングで居なくなる。
 本拠地の中は猟兵たちが複数存在し、見ただけでオブリビオンと看破されるのであれば、姿をくらますには猟兵たちの視界の外に出ればいい。

 そして、本拠地の外に出たということは、このレジスタンス集まる地に屍人帝国の大軍勢を引き入れることなど造作もないことである。
 メンカルの予想は的中し、本距離の外、レジスタンスが潜む谷間の地形に迫る影を見るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
スパイかあ…
MI6だとかそういうのは浪漫溢れて良いんだけどね…
身内に居ると厄介だ、スパイ映画のようにはいかないなあ
まあ適当に動いてたらバッタリ会うかもしれないし、好きにしていよう
会えばすぐ分かるって便利だけど、浪漫が無いよね…

とりあえず、飛空艇の修理!
『メカニック』の腕がなる!
来た時よりも美しく…じゃないけど、元よりグッと魔改造…もとい高性能にしよう!
【Code:M.S】起動!
さあ多目的マシン、仕事だ仕事
城や街を築く能力で、外部装甲をガッチリ強化してあげて!
目指すは空飛ぶ重装甲戦艦!
重量上げ過ぎは注意ね
整備も現地技術で出来るようアフターフォローも忘れずに!

…あ、いやスパイ調査もシマスヨ?



「スパイかぁ……」
 そのつぶやきは月夜・玲(頂の探究者・f01605)のものであった。
 彼女は秘密情報部という言葉の響きにロマンを感じていた。溢れるロマン。とても良いものである。
 しかしながら、それは身内に潜むのであれば厄介極まりないものであることを示している。
 サブカルチャーに傾倒している彼女にとってスパイ映画は娯楽そのものであったし、心躍る物語であった。
 けれど、実際に自分たちがやられるとなると、こうも面倒くさいのかと思わざるを得ない。
 スパイがオブリビオンであるということが唯一の救いであった。

 これが一般人をスパイとして仕立て上げるオブリビオン、屍人帝国のやり方であったのならば、さらに面倒なことになっていたことだろう。
 オブリビオンと猟兵は滅ぼし、滅ぼされる関係である。
 知識がなくともひと目見た瞬間に互いが敵であると判別できる。そういう意味では便利であった。
「けど、浪漫が無いよね……」
 もっとこう証拠を集めて『異議あり!』的なあれが出来たのならば面白かったのかも知れないと思わないでもなかったが、しかしながら、とりあえず玲は飛空艇の修理へと走るのだ。

 彼女はサブカルマニアでありながらメカニックでもある。
 こういう時にこそ腕がなるというものだ。
「来た時よりも美しく……じゃないけど、元よりグッと魔改造……もとい高性能にしよう!」
 今魔改造って言った?
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 Code:M.S(コード・マシン・クラフト)。それは多目的小型マシンを無数に召喚し、飛空艇の整備場を走り抜ける。

「さあ多目的マシン、仕事だ仕事」
 多目的小型マシンは十分な時間さえあれば城や街を築くことができるほどに多用途に長けたマシンである。 
 飛空艇を魔改造……じゃない改修することなど造作もない。
「目指すは空飛ぶ重装甲戦艦!」
 玲の目的はスパイを探すことから、飛空艇を魔改造することにシフトしていた。ダウンじゃなくてアップであるところは評価したほうが良い点であろう。

 次々と飛空艇が重装甲になっていく。
「重量挙げ過ぎは注意ね。よしよし、いいよいいよー」
 玲の目がキラキラ輝いているような気がする。とは言え、全ての飛空艇にそれができるわけではない。
 圧倒的に時間が足りないというのもあるが、それでも反攻作戦の旗艦となる飛空艇があるのとないのとでは士気の上がり方が違うだろう。
 ここは一隻でも玲の思う重装甲戦艦に作り上げることが観葉である。

「で、でもよ。これだけ複雑にされると後の整備が……」
 おぼつかないのではないかと勇士の一人がつぶやく。
 それは尤もな意見であったことだろう。どれだけ高性能であっても、整備ができないのであれば宝の持ち腐れであるし、いつかはガタが来る。
 しかし、そこは玲である。
「大丈夫。整備も今までの飛空艇と同じように出来るようにアフターフォローしているからさ!」
 安心安全浪漫の塊が玲のモットーであろう。

 彼女の言葉通り整備は既存の飛空艇整備技術の範囲に収まっている。
 天使核の出力に気を配っていれば、装甲を増した弊害である重みにも十分対応できるものとなっているのだ。
「むふー……これは良い浪漫だね」
 玲が見上げる先にあったのは、彼女の目指した重装甲戦艦の如き重装甲飛空艇。
 旗艦が沈まぬことこそが艦隊の役割であるのならば、玲の施した改造は正しいものであったことだろう。

 不沈艦。
 その言葉に浪漫を感じるのは玲だけではないだろう。
 すっかりご満悦である玲。
 しかしながら忘れていることがないだろうか?
「……あ」
 スパイ調査である。
 すっかり飛空艇の改造改修作業に夢中になっていた玲は何故か片言でごまかし、とってつけたようにレジスタンス本拠地を走るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
古の銀河帝国と旧解放軍との戦いでも両軍のスパイは重要な働きを担いました
組織力に優れたオブリビオンならではの脅威
せめて被害を最小限に食い止めねばなりませんね

私が情報を送り終えた『オーデュボン』のスパイとして行動するならば案は二つ
『セラフィムV』と『エイル』様へのアプローチ
帝国の攻勢を支援する破壊工作の起動とそれに伴う混乱に乗じた脱出

多くの猟兵の方が前者を警戒する以上、私は後者の対策を採りましょう

重量物の物資の運搬がてらスパイの影を探りつつ、透明機械妖精による情報収集で施設内に仕掛けられた爆発物等の破壊工作の痕跡を調査
完全な空振りなら目出度い限り

もしあれば…一つでも多く解除しなければなりません



 スパイの存在は大きな戦いにおいて必要不可欠なものである。 
 戦いとは単純な力の激突だけではない。
 そこには情報という名の力が介在することによって戦力差を覆すことさえ可能であるのだ。
 戦いの歴史を紐解けば、情報が持つ力の強大さは証明されるであろう。
 古の銀河帝国と旧解放軍との戦いでも、両軍のスパイは重要な働きを担ったことは言うまでもないことをトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の電脳のデータベースに収められている事実からも理解していた。

 特にブルーアルカディアにおいて屍人帝国『オーデュボン』は組織力に優れた帝国である。
 数で圧倒し、その脅威は言うまでもないことである。
 スパイがレジスタンスに潜入している事実からも、ことが起これば被害が出ないことはないだろう。
 ならばその被害を最小限に食い止めることこそがトリテレイアに課せられた使命でもあった。

「私がもしも情報を送り終えた『オーデュボン』のスパイとして行動するならば……」
 トリテレイアの電脳がシミュレーションを重ねていく。
 己がスパイであったのならば、現状どのように動くのが最も得策であるかを考えるのだ。
 そうすれば、スパイの動向が如何なるものであるかを理解できる。
 導き出された案は二つ。

 一つは『セラフィムV』と『エイル』への接触またはアプローチである。
 もう一つは屍人帝国の攻勢を支援する破壊工作の起動とそれに伴う混乱に乗じた脱出。

 前者は多くの猟兵たちが警戒していることであろう。
 現に少年『エイル』と青い鎧の巨人『セラフィムV』の周囲には猟兵たちの目が光っている。
 この状況でなんらかの行動を起こすのは悪手である。
 ならばトリテレイアは後者を選択するであろう。
 猟兵たちに囲まれた現状を脱するためには、スパイの捕縛という目的以上の混乱を引き起こさなければならない。
 その混乱が何であるかまではトリテレイアにはわからない。

 けれど、それを知ると決めた以上、トリテレイアは対策を講じることをいとわないのだ。
 例え、それが空振りであったのだとしても、細工がされていないという事実が得られるのであればそれで十分なのだ。
「自律・遠隔制御選択式破壊工作用妖精型ロボ(スティールフェアリーズ・タイプ・グレムリン)……頼みましたよ」
 トリテレイアは静粛性能に特化した機械妖精を放ち、レジスタンスの施設内に仕掛けられた爆発物などの破壊工作の痕跡を調査していく。

 ウォーマシンであるが故に彼はマルチタスクなどお手の物である。
 トリテレイア自身は重量物の運搬がてらにスパイの影を追う。しかし、スパイの影は見当たらない。
 勇士たちが集まる場所にはスパイがいないということは、勇士たちの中にスパイが存在しないことを示している。
「となれば、それ以外の場所にこそスパイがいる、と考えるべきでしょう」
 他の猟兵たちも囲いを狭めている頃合いだろう。
 となれば、益々時間が差し迫っている。追い込まれたスパイが行うことは、常に己の持つ情報と作戦の意図を完遂することだけである。

 ならばこそ、その時までの時間が少ないことをトリテレイアは理解する。
 機械妖精たちが本拠地内部をくまなく精査していく。爆発物はない。けれど、何か卵のような物を見つけていた。
 それは魔獣の卵。
「これは……! 爆発物ではない。極小の、卵……であれば! 機械妖精!」
 トリテレイアはそれが緊急を要することであると理解する。
 猟兵達に追い詰められたスパイが引き起こす混乱。
 施設のあちこちに仕掛けられた魔獣の卵をトリテレイアは余さず全て機械妖精と共に剥ぎ取り、雲海へと投げ飛ばすのだ。

 瞬間、その魔獣の卵が膨れ上がるようにして雲海から飛び立つ。
 翼を持つ魔獣。
 そして、その生まれ出る嘶きがレジスタンスの本拠地の周辺に響き渡る。
「最悪は免れましたが……! やはり、すでにスパイは……!」
 トリテレイアのアイセンサーが捉えるは、雲海広がる空に飛ぶ一人の女性の姿。
 それはこの国に元々仕えていた巫女達と同じ装束であったが、見る見る間に黒衣へと色を変えていく。

 あの巫女こそがスパイ。
 このレジスタンス本拠地に魔獣の卵を仕掛け、混乱を引き起こして反攻作戦を粒さんとした悪意。
「ええ、私です。魔獣の卵は排除され、飛空艇に細工を仕掛ける暇も与えてはいただけませんでしたが……私の『目的』は達せられました。全てが無駄。全てが滅びに向かう。何もかもが貴方たちの思い通りに事が運ばぬことを知るが良いのです」
 さあ、と手を掲げる巫女の背後に屍人帝国の軍勢が迫る。

 新たな戦禍が目の前に広がっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『堕翼の巫女』

POW   :    大いなる御使い
自身の【所持する魔獣の天使核】を代償に、1〜12体の【大天使から賜った御使い】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD   :    対帝竜用実験術式
レベル×1体の【天使核連結式竜型大魔獣】を召喚する。[天使核連結式竜型大魔獣]は【極光のブレス】を放射する能力と【竜】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ   :    天からの声
【大天使からの託宣を受ける】事で【予知能力】を得た【天使核暴走形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は九頭竜・聖です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「魔獣の卵は排除され、飛空艇に細工を仕掛ける暇も与えてはいただけませんでしたが……私の『目的』は達せられました。全てが無駄。全てが滅びに向かう。何もかもが貴方たちの思い通りに事が運ばぬことを知るが良いのです」

 姿を表したスパイである屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオン、『堕翼の巫女』。
 彼女は雲海広がる空に浮かび、オブリビオンの大軍勢を引き入れてレジスタンスの本拠地を叩き潰さんとしている。

 その瞳に合ったのは狂気でもなければ憎悪でもなった。
 あるのは諦観である。
「何をしても無駄なのです。何故わからないのですか? 天使核が消耗し、潰えれば大陸は雲海に沈む。それが終焉であるというのに。それだというのに、貴方たちは抗おうとする。脆弱な人の身体ではこの大空の世界には耐えられない。魔獣こそが、この世界に在りし、本来の支配者」
 彼女は無数の魔獣たちの群れ、屍人帝国『オーデュボン』の大軍勢と共に猟兵とレジスタンスの勇士たちが居る本拠地へと進む。

「全てを滅ぼしましょう。どれだけあらがっても無駄です。ただの引き伸ばしにすぎないのですから。私はそのお手伝いをするだけ。この大空を在るべき支配者の手に委ねたいだけなのですから」
 その言葉は最早誰にも届くことはないだろう。
 人でもなく、魔獣でもない存在。

 オブリビオンへと成り果てた『堕翼の巫女』は、その力を持って屍人帝国『オーデュボン』の為す支配を現実のものにせんと、その魔獣手繰る力をもって、猟兵たちに襲いかかるのであった――。
鈴久名・紡
やがては滅ぶかもしれん
この世界にお前の居場所はないと
世界そのものに存在理由を奪われるかもしれん……
妖怪達が、竜神達が、かつてそうであったように

けれど、それが『今』では無い以上、抗い、足掻こう
何より、他者が独断で決めて良いことではないのだから

エイル、V、レジスタンスと飛空挺を頼む

竜神飛翔を使用
飛翔と同時に部位破壊を乗せた雷を魔獣の翼へと放ち
槍に形状変化させた禮火で敵である巫女に先制攻撃
攻撃には常時、なぎ払いと鎧砕きを乗せていく

一度死して、壊れた者の思想と思考
それが歪なのは今に始まったことでは無い

敵の攻撃は見切りと空中機動で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぎ
以降の攻撃には生命力吸収を乗せて対処



 生まれたのならば滅びは必定である。
 それは如何なる存在においても変わらぬ真理である。
 うつろわぬものなど何一つ無いことを鈴久名・紡(境界・f27962)は知っている。
「滅びに向かう定め。生命には終りがある。ならば、その間にある事柄など些細なことでしょう。故に大いなる御使いのもとに人は速やかに滅ぶべきなのです」
 屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオン『堕翼の巫女』の掌から、落ちるは天使核。
 それらを触媒として現れるのは大天使の如き御使いの姿であった。
 全部十二。
 一体一体が強力な力を発露させ、凄まじい重圧を持って空を飛ぶ。

 周囲には未だ飛び立つことのできぬ飛空艇が数多あった。
 反攻作戦を計画していたとしても、屍人帝国側から襲撃してくるなど想定外のことであったのだ。
 それ故にレジスタンスの初動が遅れることは仕方のないことであったのかも知れない。
「やがては滅ぶかもしれん。この世界にお前の居場所はないと、世界そのもに存在理由を奪われるかもしれん……」
 紡の言葉は真実であった。
 かつてUDCアースにありし竜神や妖怪がそうであったように。

 その存在を世界から追われることもあるだろう。
 このブルーアルカディアの世界にあって人がそうならぬという理由はない。けれど、それでも『今』ではないのだ。
 紡の瞳にあるのは、『今』という現実に怯える人々の瞳と、そしてそれらに真っ向から立ち向かおうとする勇士たちの姿であった。
「ならば抗い、足掻こう。何より、それは」
 そう、それは紡にとって当然のことであった。

 輝く瞳はユーベルコード。
「――他者が独断で決めて良いことではないのだから」
 竜神飛翔によって完全竜体へと変貌した紡がブルーアルカディアの空を駆け抜ける。
 飛翔と同時に雷が大空に降りしきる。
 それは屍人帝国『オーデュボン』の大軍勢である魔獣たちの翼を打ちのめし、槍へと形状を変えた神器による一撃で持って次々と雲海に鎮める。
「いいえ、支配者がいる以上、その定めを決めるのは力在る者でしょう」
『堕翼の巫女』が言う。
 彼女は天使核より齎された大天使が如き御使いと共に紡へと襲いかかる。

 放たれた槍の神器が大天使が如き御使いへと放たれ、その体を穿ち貫いていく。
「一度死して、壊れた者の思想と思考。それが歪なのは今にはじまったことではない」
 紡にとって『堕翼の巫女』と語らう必要はなにもない。
 彼女と紡は何処まで言ってもオブリビオンと猟兵でしかない。滅ぼし、滅ぼされる関係にあって、互いの主張が食い違うことなど当たり前のことである。

 迫る大天使の如き御使いの攻撃を飛翔する竜が躱す。
 やはり強力なオブリビオンである。召喚される御使いたちの力もこれまでの比ではない。
 放たれる光の槍をオーラで防ぎ、威力を殺す。
 オーラを貫いていくる光の槍の一撃が紡の体を覆う龍鱗を砕く。痛みが走る。
 けれど、関係ない。
 己の背には守らねばならぬ人々がいる。

 彼らのことは『エイル』と『セラフィムV』に任せてある。
 それができるだけの力を持った存在であると紡は知っている。これまで何度も同じ戦いをくぐり抜けてきた戦友と呼んでもいい存在が背中に居るのだ。
「お前の言う滅びとは、いつだって自分自身の滅びのことしか言わないんだな。人はこんなにも次に繋ぐことができる。自分のためじゃない。他の誰かのために戦うことが出来る。後を任せることができる」
 己にとって、背中を預ける『エイル』と『セラフィムV』のように。

 その戦う姿が力を齎すことを紡は知っているのだ。
「だったら何だというのです。それでも滅びはやってくる!」
 叫ぶ『堕翼の巫女』を前に紡は答えなかった。
 それは確かに真理。
 けれど、彼女にとっての真理であって、『今』を生きる人々の真理ではない。

 紡は渾身の雷の力を乗せた神器の槍の一撃を持って召喚された御使いたちを一撃のもとに、その核である天使核を砕き、雷の奔流を『堕翼の巫女』へとほとばしらせるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリウス・ストランツィーニ
何をしても無駄かどうか、大陸の終焉だとか、支配者だとか、私には関係のない事。この世界の民が決める事だ。
皆が諦めて降伏するというなら止めないが、レジスタンスにはその様な者は一人もいないようだな。
ならば私は全身全霊をもって協力するまで。

レジスタンスが戦いやすいように立ち回る。
我が銃「リヴォルベル・ペル・ストランツィーニ」による「威嚇射撃」で敵の注意をレジスタンスからそらし、こちらに引き付ける。

そしてブレスを放ってきたらUCで受け止め、撃ち返してやろう。



 雷の奔流がオブリビオン『堕翼の巫女』の体貫く。
 しかし、その一撃だけでは彼女を消耗させることしかできない。それが強力なオブリビオンの個体であるからこそであり、屍人帝国『オーデュボン』の幹部でもある彼女の力の示す通りであった。
 彼女の手にあるのは天使核。
 その天使核を連結し、彼女の掌の中から生み出されるのは巨大な竜の如き魔獣であった。
「滅びは全ての定め。全ての終わりと定められたもの。抗うことなど無意味。無駄。だというのに、今という時間に縋ることに何の意味があるというのです」
 彼女の言葉はあらゆる生命に対する諦観であった。
 この大空の世界ブルーアルカディアにおいて人の力は脆弱なものである。
 浮島一つを浮かすのにも天使核を動力とした技術がいる。それも完璧ではない。天使核が消耗すれば、高度は維持できなくなり、雲海の中に沈んでいくだけだ。

「だから意味がないのです。生まれ出る懊悩など、滅びの前では些細なこと」
『堕翼の巫女』が座す大型の竜の如き魔獣の口腔に光が集まっていく。
 極大のブレスを解き放とうとする輝きは、レジスタンスの本拠地すらも飲み込むことだろう。
 けれど、それをさせぬと立ちふさがるものが居る。
「何をしても無駄かどうか、大陸の終焉だとか、支配者だとか、私には関係のないこと」
 マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)の手にした回転式拳銃から弾丸が放たれ、その銃撃の音に『堕翼の巫女』は視線を向ける。
 彼女の瞳は諦観に満ちてなどいなかった。
 没落した家があった。
 けれど、どれだけ落ちぶれようとも彼女の心のなかには、魂の中には、己の血筋が示す誇りがあった。

 どれだけ失墜しようとも喪わぬものが人にはある。
『堕翼の巫女』の言葉がどれだけ真実であったとしてもマリウスには耳を傾ける必要などなかった。
「此の世界の民が決めることだ。皆が諦めて降伏すると言うなら止めないが、レジスタンスにはそのような者は――」
 誰一人としていない。
 それを示すようにマリウスの背後からレジスタンスの飛空艇が次々と飛び立ち、魔獣の大軍勢に立ち向かっていく。

 戦力差は絶望的だ。
 けれど、それでも諦めない心が輝くのならば、マリウスの心は一つであった。
「ならば私は全身全霊をもって協力するまで」
 彼女は巨大な飛空艇――猟兵達によって整備され、改造された旗艦である重装甲戦艦の如き飛空艇の甲板上に立つ。
 手にした回転式拳銃より放たれた弾丸は号砲のように響き渡り、鬨の声のように大空に響き渡る。

「無駄なことを! その抗いなど、先延ばしにすぎないのです!」
 竜型魔獣の口腔より放たれる極大のブレス。
 その一撃が旗艦へと迫るのをマリウスは見た。
 しかし、彼女の呼吸は乱れることなく静かなものであった。完全なる脱力状態。力を抜く。
 余分な力など必要ない。
 どれだけブレスの威力が強いものであったとしても関係ない。
 手にした名刀はストランツィーニ家に代々伝わる業物。名を『八重霞ノ太刀』
 抜刀され煌めく刀身はユーベルコードに輝いていた。
「すぅー……集中!!」

 恐れは呼吸を乱す。
 集中を途切れさせる。光の奔流が己を襲い、旗艦である飛空艇毎飲み込まんとしている。
 されど、己の心にはいつだって誇りを。
 そこにある物を彼女は知っている。誰のために戦うのか。己のためではない。他のために闘うことこそ、己の家系が示す誇り。

 ならば、その見開かれた瞳に輝くのは、やはりユーベルコードの光である。
 極大のブレスを身に受けた瞬間、抜刀した刀が全てを無効化し、光を切り裂いていく。
 否。
 吸収しているのだ。
「ブレスの、光を……吸い込んでいる……あの刀は!」
『堕翼の巫女』が呻く。
 そう、煌めく刀身を見よ。八つに重なる霞。揺らめくその霞は捉えること能わず。されど、刀身に湛えた光こそは他がために輝くのだ。

 その名を、蓖游刃(コンチェルト・レジオーネ)――。

 解放された刀身から放たれる光の刃は大空を染め上げ、大型の竜型魔獣すらも一刀のもとに切り捨て、屍人帝国『オーデュボン』の魔獣の大軍勢すらも巻き込んで大空に嘗ての栄光の輝きを齎す。
「私は過去と戦う。過去の栄光を取り戻すために。何より……この世界の民が望む明日の為に戦おう」
 マリウスの一閃は絶望に染まる人々の闇を切り裂く光となって、大空を駆け抜けていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
カカカ。何をしても無駄ってのが主張なんだよな?
じゃあ、なんでお前は頑張ってスパイやって俺達に抗ってんの?
何しても無駄っていうなら放置しときゃいいじゃねえか。
引き伸ばしを縮めるお手伝い?
カカカ。それこそ無駄だわ。
結局のところな。滅びたお前たちは羨ましいだけなのさ。
一生懸命今を生きている奴らがな。だから、自分と同じところに引きずり落そうとする。
矮小で滑稽。俺に言わせればお前等の存在の方が無駄だ。骸の海に還りな。

敵SPDUCで現れた魔獣の群れを『闇黒炎雷』にて撃滅、あるいは行動不能にして『堕翼の巫女』の接近。魔力を籠めた拳でぶち抜きましょう。



 剣閃の一撃が大空に舞う大型の竜型魔獣の群れを一掃する。
 オブリビオン『堕翼の巫女』が生み出した天使核連結によるユーベルコードの力は、再び輝き魔獣の群れを生み出していく。
 彼女が存在している限り、魔獣の群れはとめどなく溢れてくるだろう。
 レジスタンスの飛空艇は初動の遅さを補うように本拠地から飛び出していく。
 魔獣の群れを放置していたら、この入り組んだ谷間のような地形にあっては各個撃破されていくだろう。

 故にレジスタンスたちは重装甲に改修された飛空艇を旗艦にして編隊を組んで魔獣の群れに対応していた。
「無駄なことを。滅びは決まっているというのに。悪足掻きでしかないというのに何故未だそんなに生命に縋るのです」
『堕翼の巫女』にとって、それは不可解な行動であったことだろう。
 すでに滅びた存在である彼女にとって、死とは滅びではない。
 停滞した時間の中、骸の海より出て『今』を貪り、未来という可能性を食いつぶす。それができるのがオブリビオンである。

 雲海に沈めば誰しもがそれを為せるというのに、未だ人々は屍人帝国に抗うことが理解できなかった。
「カカカ。何をしても無駄ってのが主張なんだよな? じゃあ、なんでお前は頑張ってスパイやって俺たちに抗ってんの?」
 何をしても無駄だというのならば、放置しればいいとアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は言う。
 彼にとって『堕翼の巫女』が語る言葉のどれもが真実ではない。
 一考するにも値しないものであった。

「引き伸ばしを縮めようと言うのです。生命が終わることによって齎される永遠があるというのならば、それこそが生命の到達点にて通過点なのですから」
 その言葉をアレクサンドルは否定する。
「カカカ。それこそ無駄だわ」
 その金色の瞳がユーベルコードに輝く。
 掲げた掌から放たれるは黒い炎と黒い雷。
 闇黒炎雷(クロイホノオトイカズチ)たるユーベルコードの輝きが戦場に放たれ、迫る魔獣の群れを打ちのめす。

 一度身に灯された炎は消えない。
 それがアレクサンドルのユーベルコードの力であり、その力の根源でもあったことだろう。
 炎が魔獣たちの体を包み込み、その動きを止めれば次々と雲海に沈んでいく。オブリビオンであったとしても、それは変えようのない事実であった。
「無駄? 私の行いのどこが――」
「結局の所な」
 アレクサンドルが飛翔し、『堕翼の巫女』との距離を詰める。

「滅びたお前たちは羨ましいだけなのさ。一生懸命『今』を生きている奴らがな」
 迸る黒い炎と黒い雷。
 それらがアレクサンドルと『堕翼の巫女』の間に割って入り、進撃を阻もうとする魔獣を尽く失墜させていく。
 どれだけ数を差し向けたのだとしても、ブレスの一撃を放たれたとしても、アレクサンドルは止まることはない。
「だから、自分と同じところに引きずり落とそうとする。それを救いだと宣う。それが矮小で滑稽。俺に言わせればお前等の存在のほうが無駄だ」
 過去よりの化身。

 骸の海より出る存在。
『今』を侵食し、未来を貪る獣と同じ。
 そんな存在を誰が有益だと言うだろうか。無駄の極致。そ斬って棄てたアレクサンドルが『堕翼の巫女』へと迫る。
 拳に魔力が宿る。
 誰もが懸命に今を生きている。
 それは他の誰にも否定はできないものだ。過去の化身だけが、『今』を生きていない。

 彼らがやっていることは他人の足を引っ張るだけの行いだ。
 だからこそ、それを許しがたいと思う。
「時間が前に進むために過去を排出しながら進んでいくっていうのなら、過去の化身んであるオブリビオン、お前等こそが不要な存在なんだよ」
 未来など誰にもわからない。
 暗闇の如き荒野が続くのだとしても、勇士達はためらわず前に進むだろう。

 この戦場を見てもひと目でわかることだ。
「骸の海に還りな」
 アレクサンドルは、その拳に秘めた一撃でもって『堕翼の巫女』を打ちのめし、竜型魔獣達毎叩き伏せるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・ジルニトラ
何故滅ぶと断言できるのか、なぜ勝てないと諦めれるのか…マジ理解できない。
うん。やっぱりただの馬鹿だった。未来は過ぎないと分からないのに。
やーい、バーカバーカ。
私の身に宿った怨念を弾丸にし、左手で指弾で弾きとばし、召喚された魔獣の撃墜を行う。
(使用技能「呪殺弾」『砲撃』)

天空の舞踏…飛翔し空中を移動しつつ、舞うように堕翼の巫女をスカイソードで切り裂いていく。
みよ
(使用技能:空中戦、空中機動、ダンス、斬撃波)


少年たちがここまで来れたことなど、エイル少年とセラフィムVが出会った時には誰もわからなかった。むろんここからどこまで行けるなど神ですらわからないだろう。
この世界の未来などなおさらだ!!



 天使核を連結させた大型竜型魔獣の咆哮が大空に響き渡る。
 その咆哮はレジスタンスの勇士たちの心を挫くものであった。けれど、イングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)は、その程度で勇士たちがひるまないことを知っている。
 彼女が嘗て飛空艇であったこともそうであった。
 どんなときでも勇気を忘れない。
 前を見て、恐れを克服していくからこそ勇士。レジスタンスの勇士たちが乗る飛空艇が旗艦である重装甲の飛空艇を中心に編隊を組んで並み居る屍人帝国『オーデュボン』の魔獣たちを蹴散らしていく。

 それを見ても尚、オブリビオン『堕翼の巫女』は言う。
「何故抗うのです。滅びは定め。必ず訪れる終焉であるというのに。如何なるものも逃れ得ぬ運命であるというのに」
 その瞳にあるのは諦観だけだった。
 イングリットは知っている。
 そして同時に理解出来ないとつぶやいた。
「何故滅ぶと断言出来るのか、何故勝てないと諦めれるのか」
 理解できない。
 今まさに己達と共に大空に飛び立つ勇士たちの姿を見て、何故気が付かないのか。
「何を言っているのです? 滅びを前にして勝てる者などいるはずがない。死に向かっていくことこそが生命の本質なのです」

『堕翼の巫女』が手繰る天使核によって竜型魔獣たちが連結していく。
 口腔に溜まっていく光の煌きは極光のごとく。
 しかし、イングリットは己の身に宿った怨念を弾丸に変えて、次々と連結していく魔獣たちを撃ち抜いていく。
「うん。やっぱりただの馬鹿だった。未来は過ぎないとわからないのに」
 そう、誰もが持つ可能性。
 未来は『今』になるまで何も確定しない。例え、滅びが必定なのだとしても、それは『今』ではない。

 勇気を持って嘗て己に乗った勇士たちの姿をイングリットは知っている。 
 彼らは滅びることを恐れていなかった。
 その勇気が今も尚イングリットの心を突き動かすのだ。
「未来を決めることは自分にしかできない。それを彼らは知っているからこそ、戦う。暗闇の中を歩むことをこそ、勇気と呼ぶ。この雲海広がる空を征く勇気を持つからこそ、彼らは勇士と呼ばれるのだ! そんなこともわからないからお前はバカなのだ。やーい、バーカバーカ」
 そんなふうにイングリットは、瞳をユーベルコードん輝かせながら、空中を飛翔するように、ステップを踏むようにして『堕翼の巫女』へと迫る。

 肉薄する極光の輝き。
 ブレスが放たれるまで間もない。それを放たれてしまえば、例え飛空艇と言えど撃墜されてしまうだろう。
 だからこそ、その魔獣たちを手繰る存在である『堕翼の巫女』を直接討つ。
「悪いが、私は天使とのダンスは趣味じゃないんでね」
 彼女の空中を蹴るようなステップから繰り出されるは天空の舞踏(ダンスオブエーテル)そのもの。
 放たれる斬撃波が壁に為る魔獣を切り裂いて進む。

「人の歩みで行けるところなど限られているはずです。到底、死を乗り越えることなど!」
「少年たちが此処まで来れたことなど、『エイル』少年と『セラフィムV』が出逢った時には誰もわからなかった」
 イングリットは知っている。
 このブルーアルカディアでの戦い。
 屍人帝国『オーデュボン』との因縁が結ばれた時からずっと見てきた少年と青い鎧の巨人の歩み。
 彼らはいつだって懸命に生きてきた。
 例え、彼らの道行きの果てが滅びなのだとしても。

 それでも、と彼らは進むのだ。
「無論、此処からどこまで行けるかなど神ですらわからないだろう」
 イングリットの放つ斬撃波の一撃が最後の魔獣を斬り裂き、『堕翼の巫女』へと肉薄する。
 その瞳にある諦観。
 彼女の瞳に諦観が在る限り、イングリットの言葉の意味など彼女は理解しないだろう。
 それがオブリビオンであるというのならば、イングリットの言葉通り愚かだと言わざるを得ない。

「此の世界の未来などなおさらだ!!」
 放たれる一撃が『堕翼の巫女』の体へと打ち込まれる。
 諦観に塗れた瞳の者などに未来は見据えることはできない。過去ばかりを見て、己の滅びしか見ていない者に、未来を見る者の歩みを止めることなどできないのだ。
 イングリットは、その道行きを阻む者を今、切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
オブリビオンなんて、お為ごかしばっかり。停滞を永遠と言い換えてみたり、滅びこそが執着と言ったり。
いいけどね、別に。自分達だけで骸の海へ還ればいい。

じゃあ、始めましょうか。
宝貝『太極図』。
この宝貝の前では、ユーベルコードで生み出した存在は悉く消去される。新たにユーベルコードを使うことも不可能。

レジスタンス船団、砲撃をお願い。今なら通常の砲弾でも通用する。
あたしは、「全力魔法」で炎の「属性攻撃」を放つわ。

肉弾戦を望むなら好都合。
この薙刀にかけて、あなたを骸の海へ還しましょう。
「衝撃波」をまとう「薙ぎ払い」から、「貫通攻撃」の串刺しへ繋げて。

ユーベルコードという優位性を失った気分はどうかしら?



 斬撃の一撃がオブリビオン『堕翼の巫女』の体を切り裂く。
 その一撃は確かに彼女の真芯を捉えたものであったことだろう。けれど、強力な個体である彼女は手にした天使核を連結させて招来せしめる大型竜型魔獣を次々と連結させていく。
「滅び。滅び。滅びしか、この道の先にはないというのに。何故、どうして歩みを止めないですか」
『堕翼の巫女』にとって滅びは必定である。
 己が滅びたからこそ、その瞳にあるのは未来を見ぬという諦観であった。

 彼女は知っている。
 人の生命の先に待つのは死である。
 死ぬために生きるなど、終わってしまった身である彼女にとって意味のないものであった。
 過程と結果があればこそ、彼女の死に意義を見出すこともできただろう。
 けれど、彼女にはそれさえない。

「オブリビオンなんて、お為ごかしばっかり。停滞を永遠と言い換えてみたり、滅びこそが終着と言ったり」
 そんな言葉はもう聞き飽きたとばかりに村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は飛空艇の甲板上に立ち、『堕翼の巫女』を見据える。
 彼女の瞳にあるのは諦観などでなはない。
 紫の瞳に映るのは『今』である。
 別にオブリビオンである『堕翼の巫女』の言葉を肯定するわけじゃないけれど、それでも彼女は言い放つのだ。

「いいけどね、別に」
 ただし、と彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 首にかけた太極図の立体ペンダントトップから冷気が漏れ出していく。
「自分たちだけで骸の海に還ればいい」
「戯言を。貴方もいつか、骸の海に沈む『今』だというのに」
 膨れ上がる大型竜型魔獣たちが連結して広がっていく口腔に湛えられた極光の輝き。
 その膨れ上がった光がブレスとなって、ゆかりやレジスタンスの勇士たちが乗る飛空艇に襲いかかる。

 凄まじい熱量のブレスの一撃。
 それは一度触れれば熱に寄って天使核を暴走させ、爆発を引き起こすものであった。
 けれど、対するゆかりのペンダントトップから溢れる終焉の冷気が戦場に広がっていく。
「万物の基は太極なり。両儀、四象、八卦より生じし森羅万象よ。その仮初の形を捨て、宿せし力を虚無と為し、悉皆太極へと還るべし! 疾!」
 それは、宝貝『太極図』(タイキョクズ)。
 彼女のユーベルコードにして、あらゆるユーベルコードの使用と維持の不能を齎す力である。

 放たれたブレスさえも極光のままに消えていく。
 まるでなかったことにされたかのように光条が消えるのだ。
「――ッ!? これは……!?」
 魔獣たちですら消えていく。
 ユーベルコードに寄って生み出された者は尽く消えていく。
 この宝貝がある限り、新たなユーベルコードを使うことも不可能である。同時にそれはゆかりもまたユーベルコードを使用できないということを意味している。

 けれど、此の場においてゆかりは一人ではない。
「レジスタンス船団、砲撃をお願い」
 今ならばユーベルコードで生み出された魔獣たちに阻まれることはない。
 ゆかりの号令によって飛空艇から次々に砲撃が放たれる。『堕翼の巫女』に放たれる砲撃は彼女に降り注ぎ、その身を貫くだろう。
 しかし、その砲撃の雨の中を『堕翼の巫女』は飛ぶ。
「ユーベルコードという優位性を失った気分はどうかしら?」
 ゆかりは薙刀を手にして構える。

 このユーベルコードを打ち消すユーベルコードという力の源であるゆかりを打倒しようとするのは考えられることであった。
「ユーベルコードがなくとも。あなたの滅びは変わらないでしょう。あなたがユーベルコードを消すというのなら!」
 強力な個体である『堕翼の巫女』。
 されど肉弾戦を望むのならば好都合である。横合いから飛び込んできた青い鎧の巨人『セラフィムV』の拳が『堕翼の巫女』へと放たれ、その体を吹き飛ばす。

「『エイル』!」
「こいつは此処で仕留めます……! 動きを停めて……!」
 放たれる光剣の一撃が『堕翼の巫女』の羽を切り裂く。そこへゆかりは、『セラフィムV』の腕を駆け上がって、肩を蹴る。
「骸の海へと還りなさい。『過去』に『今』は居場所なんてない。あなたの終着は此処ではないにせよ。それでも、此処に居ていい理由なんて無い」
 ゆかりの放つ薙刀の一撃が衝撃波を纏い、『堕翼の巫女』のガードをこじ開け、突きの一撃で彼女の胴を貫くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
いつかは滅びる。『いつかは』でしょう?

それまでに、大陸を保持する案が見つかるかもしれない。
どこかに別の移住先が見つかるかもしれない。
それ以外でも、何か生き残る案が見つかるかもしれない。

もし滅びてしまうとしても、その最後の一瞬までがんばるのがわたしたちじゃないかな?

そうだよ。全て希望の話。
でも、あなたの言ってることだって『いつかは滅びるかもしれない』でしょう。

未来は決まってない。
その証拠に、いまわたしたちがここに居て、あなたを倒す。
これは決まっていた未来かな?

【リオ・セレステ】でV-TOL機動をしながら魔獣たちを撃ち落として、
最後は『巫女』さん!
希望がないならそれが見えるまで、骸の海に沈んでて!



 貫かれた体から血が噴出する。
 胴を貫かれても尚、オブリビオン『堕翼の巫女』は滅びない。彼女の瞳に塗れているのは諦観だけであった。
 けれど、彼女の手にした天使核が輝きを放っていく。
「滅びなど、すでに経験したこと。どんな生命にも訪れる滅び。必ず滅びるのです。滅びを回避した者など存在しないのと同じように。いつかは必ず滅びる。栄えた帝国が失墜するように」
 彼女は輝く天使核を代償に大天使から遣わされた御使いたちを呼び寄せ、己の周囲を囲わせる。

 猟兵の力は侮りがたいものであったし、完全に混乱に叩き落とすことができたはずであったレジスタンスたちでさえ、屍人帝国『オーデュボン』から招き入れた大軍勢を前にしても怯むことなく編隊を維持して戦っている。
 それはあまりにも想定外なことであっただろう。
「いつかは滅びる。『いつかは』でしょう?」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『リオ・セレステ』、ガンシップに乗り、軍勢である魔獣を撃ち落としながら『堕翼の巫女』へと迫るのだ。

「そのとおりです。その『いつかは』は明日かもしれない。もしかしたのならば、強化も知れないのです。なのに何故抗うのです」
 御使いたちが理緒の駆るガンシップへと突撃して来る。
 その力は言うまでもなく強大そのもの。『堕翼の巫女』を守るために召喚された御使いたちは理緒の道行きを阻むように迫りくる。
「それまでに、大陸を保持する案が見つかるかも知れない。どこかに別の移住先が見つかるかも知れない。それ以外でも、何か生き残る案が見つかるかも知れない」
 理緒の言葉に『堕翼の巫女』は笑う。
 
 それは嘲りであった。
「かもしれない、などという、か細い希望に縋るからこそ人の希望は絶望に塗れるのです。より深い絶望に沈むだけなのです。ならば、潔く諦めた方が人のためでしょう!」
 確かに彼女の言う通りであったことだろう。
 希望があるから絶望がある。わかりきっていたことだ。
 けれど、理緒は首を振る。
「もし滅びてしまうとしても、その最後の一瞬までがんばるのがわたしたちじゃないかな?」
 共に大空を飛ぶ飛空艇に乗る勇士達を見た。

 絶望は希望によって深さを増すのかもしれない。
 けれど、そんなことに恐れを為すことがないからこそ。いや、その恐れを踏み越えてきた者たちが大空には居るのだ。
 彼らの名は勇士。
 理不尽にも、運命にも、終焉にも立ち向かう勇気ある者達だ。それを理緒は知っている。
「そうだよ。全て希望の話。でも、あなたの言っていることだって『いつかは滅びるかもしれない』でしょう」
 ならばこそ、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。

 諦観に塗れた『堕翼の巫女』にはない輝き。
 その輝きがあるからこそ、理緒は猟兵なのだ。
「未来は決まってない。その証拠に、今わたしたちが此処に居て、あなたを倒す」
 屈折率を固定させ、大気を屈折させたレンズを生成するユーベルコード。
 大空の世界にあって太陽は近い。
 その光が収束し、その熱線が炎となって『堕翼の巫女』へと放たれる。

 彼女を守らんとする御使いたちを尽く討滅していくNimrud lens(ニムルド・レンズ)の一撃は、『堕翼の巫女』すらも打ち据え、その身を焼くだろう。
「これは決まっていた未来かな?」
 答えることはできないだろう。
 なぜなら、彼女には見えていないからだ。勇気を持って暗闇を進む勇士たちの姿も。
 未来という可能性に向かって手をのばす少年の姿も。

 だからこそ、彼女の瞳には諦観だけが塗れる。
「希望がないなら、それが見えるまで骸の海に沈んでて!」
 ガンシップと共に大空を飛ぶ理緒の言葉が響き渡る。
 希望無くば『今』を生きることはできない。されど、希望が絶望を色濃くするのであれば、それを見て立ち止まることは許されない。
 いつだって未来へと続く道は、暗中を征くがごとく、煌めく勇気を燈火にして進むのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:灰遠雷

ま、巫女に紛れるのも常套手段ですよねー(実家は歩き巫女も用いていた)

そして…何をしても無駄とか、言われる筋合いはないですねー。その稼いだ時間で、新たな道が見つかる可能性もあるんですからー。
だからこそ、『私たち』は手を貸すのです。…生きている者たちを守るためにもね。
陰海月に霹靂、護衛お願いしますねー。

指定UCに風&竜屠属性つけましてー。ええ、わざわざその属性つけてくださったのでね?
視界内におさめてますので、どこまでもその矢はおいかけますし?数も敵より多くできますからねー。

はは、見つかった密偵というのは、こういう最期がお似合いだ。



 光の一撃が『堕翼の巫女』を撃つ。
 諦観という暗闇に塗れた彼女の瞳には、その輝きはあまりにも眩しいものであり、同時に嫌悪すべきものであったことだろう。
 希望という光が落とす影が絶望であるというのならば、彼女の瞳に在る諦観こそが絶望の色であったことだろう。
「あくまで終焉を否定しますか。滅びこそが訪れる唯一にして最後のだというのに。誰しもに訪れる確定した未来。ならば、何故それを恐れないのです」
 天使核を連結させて生み出す大型竜型魔獣たちが、次々と『堕翼の巫女』の前にて連結していく。

 その威容はあまりにも恐ろしいものであった。
 口腔に蓄えられていく極光の如きブレスの輝き。その輝きが放たれる度に飛空艇など耐えられるものではないだろう。
 放たれれば必ず滅びが訪れる。
 されど、レジスタンスの勇士達はそれを恐れない。死よりも恐ろしいものを知っているからこそ、彼らは怯まず立ち向かうのだ。
「ま、巫女に紛れるのも常套手段ですよねー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱、その一柱である『疾き者』は頷く。
 巫女がオブリビオンのスパイとして紛れ込んでいたことは、『疾き者』の生前の経験からありえることであった。

 歩き巫女と呼ばれる存在があった。
 今回の『堕翼の巫女』と同じように間諜として敵の中に入り込み、情報集めてくる存在。
「何をしても無駄とか、言われる筋合いはないですねー」
『疾き者』たちは、すでに同じように滅びた者たちの集合体である。
 呪詛と結界によって束ねられた魂が、今は一つの猟兵として在る。確かに滅びは一つの終着であろう。
 けれど、そこから新たな道を歩む者たちだっているのだ。

「その稼いだ時間で、新たな道が見つかる可能性もあるんですからー」 
 だからこそ、彼ら――馬県・義透は、その名を一つずつわけあって変わったのだ。
「『私達』は手を貸すのです。生きている者たちを守るためにもね」
 悪霊からは逃げられない。
 どれだけオブリビオンが逃げようとも、風のごとく逃げたのだとしても、その呪詛からは逃れられない。

 放たれるブレスからの一撃を引き裂く光条が『疾き者』の乗る『陰海月』と『霹靂』の背後から放たれる。
 それは旗艦である重装甲の飛空艇の甲板上から放たれた『セラフィムV』の構えたバスターランチャーの放った天使核をエネルギーに変えて放つ一撃であった。
 極光の如きブレスさえも引き裂くバスターランチャーの光条は『疾き者』にとって、援護の一撃。
「ブレスは、僕が……! 連射はできませんが!」
『エイル』の言葉が聞こえる。
 放たれるブレスの一撃に合わせたバスターランチャーの砲撃。『侵す者』が己と同じく『武の天才』としての片鱗を感じたことを実感させる技量を『エイル』は知らしめる。

「ええ、任されましたー。わざわざ竜としての属性を持つ者など」
 構える雷の力秘めた強弓が引き絞られる。
 呪詛を籠められ黒き姿へと変貌した強弓から放たれるは、四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)の一撃。
 放たれた雷の矢は分裂して空を駆け抜ける。
「くっ……! この矢は……!」
「ええ、竜屠る力を籠めてありますので……そして、その矢はどこまでも追いかけますし?」
 分裂した雷の矢が次々と大型の竜型魔獣たちを貫いて屠る。

 一撃一撃に竜を屠る力の籠められた竜殺しの矢は、必中。否。逃げることのできぬがゆえに必殺の矢となって『堕翼の巫女』へと襲いかかるのだ。
「はは、見つかった密偵というのは、こういう最期がお似合いだ」
 放たれた矢をかわそうと空を飛ぶ『堕翼の巫女』。
 けれど、逃げることは出来ない、悪霊からは。
 ついにその翼を貫く雷の矢が、彼女の最期を予見させるであろう。どうあがいても逃げることはできないと知らしめるように。
 嘗て在った最期。
 オブリビオンとなった身であっても訪れる終焉という結末は、二度目の死を彼女に与えるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
何をしても無駄なのが何故分からないのかだって?
ハッ、分からないねッ!
「…生憎と諦めの悪い性分なので。」

炎神霊装でいくぜ、相棒ッ!
「…転身ッ!」
炎翼を展開して飛翔しながら敵の召喚した天使核連結式竜型大魔獣とやらを生成した炎刀や炎翼から飛ばした炎刃でなぎ払っていってやる。
数を減らして堕翼の巫女までの道を開いたら高速飛翔で一気に近付いて、その諦観したシケたツラごと破魔の炎刀で叩き斬ってやるッ!

ついでに教えといてやるよ。
『未来』っのは、最後まで足掻いた奴の手元に転がり込んでくるもんだぜ。


【技能・空中戦、なぎ払い、破魔】
【アドリブ歓迎】



「何をしても無駄だというのに。滅びは覆らない。終焉の定めはいつだって同じ。どうして無駄なことをするのです」
 屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオンである『堕翼の巫女』が呻くようにして雷の矢に寄って貫かれた傷痕を抑えながら手にした天使核をつなげる。
 彼女のユーベルコードは魔獣を生み出す力である。
 スパイ活動によって招き入れられた屍人帝国『オーデュボン』の大軍勢は、猟兵たちの活躍に寄って十全の状態で大空へと飛び立ったレジスタンスの飛空艇が組む編隊によって、圧倒的な物量差にありながら健闘していた。

 その光景を前にして彼女は言うのだろう。
 全てが無駄であると。どれだけ勇士たちが普段以上の力を発揮するのだとしても、覆せぬものがあるのだと知らしめるように大型の竜型魔獣を呼び出し、次々に連結していく。
 幾度も放たれようとしては阻まれ、放たれてもそれらを尽く打ち消されてきた極光のブレス。それを再び放とうとしているのだ。
『何をしても無駄なのが何故わからないのかだって? ハッ、わからないねッ!』
 カタカタと紅の鬼面が歯を鳴らすようにして叫ぶ。
 それは、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の言葉であった。
 彼の心には正義の心がみなぎり、燃え盛っている。それがヒーローマスクという種族であるのと同じように、いや、それ以上に彼の心には正しき勇気が宿っていたことだろう。

「……生憎と諦めの悪い性分なので」
 相棒である桜が鬼面を手に顔にかぶり、その身をユーベルコードの炎が包んでいく。
『炎神霊装(ブレイズフォーム)で行くぜ、相棒ッ!』
「……転身ッ!」
 ユーベルコードの輝きが、凶津たちの力を一つにして顕現させた炎翼を纏う霊装へと姿を変える。
 炎の翼が羽ばたき、大空へと飛び立つ凶津たち。
 飛翔する彼らが放つ炎の刃が極光のブレスを放つために光を口腔に溜め込む魔獣を討たんと迫る。
 けれど、それらを『オーデュボン』の軍勢である魔獣がかばうようにして盾になるのだ。

「……近づけない」
『薙ぎ払って――』
 二人が思わぬ障害に『堕翼の巫女』に近づくことができないでいると、背後から光条が走る。
 それは青い鎧の巨人である『セラフィムV』が構えたバスターランチャーの一撃であった。
 旗艦である重装甲の飛空艇と直結したケーブルが天使核に繋がり、エネルギーを光条として打ち込んでいるのだ。
「援護します! 魔獣はこちらに任せて!」
『エイル』の声が聞こえる。

 そう、彼だって勇士だ。
 凶津や桜と同じく心に勇気を持つものだ。彼の放つ精密な射撃が次々と二人の前に障害と成った魔獣たちを撃ち落としていく。
 開かれた道の如き大空を炎翼を羽撃かせて一直線に飛ぶ。
「何故、ッ! 未来など、そんなもの、そんな不確定なものを何故、手に入れようと――! どんなにあがいても、絶望しか無い未来のはずなのに! そんなもの私の前には」
 訪れなかったと、諦観に塗れた瞳が二人を見据える。
 極光の輝きを湛えた口腔、その魔獣たちを一閃の元に切り裂く炎の刃。

 凄まじ爆発が凶津と『堕翼の巫女』を巻き込む。
 あの諦観に塗れた顔を凶津は見ただろう。
『ついでに教えといてやるよ』
 凶津が何故諦めないのか。桜が何故彼と共に歩むのか。
 それは簡単なことだ。どれだけ絶望しか無いような未来があったのだとしても。より良い未来を求めるのならばやらなければならないことがあるのだ。

『未来ってのは、最後まであがいた奴の手元に来るもんだぜ』
 振りかぶった炎の刀の一撃が縦一閃に放たれ、『堕翼の巫女』の体を切り裂く。
 それは、諦観しかない瞳にはあまりにも眩しい輝きであったことだろう。
 嘗ての彼女が手を伸ばしても得られなかった輝き。

 凶津たちにあって彼女にないもの。
 それは、レジスタンスの勇士たちも持っているもの。
 唯一、暗闇の中を進むために必要な勇気。その差異こそが互いを猟兵とオブリビオンに分かつのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
馬鹿だなあ…オブリビオン何てやっぱり一度は滅んだ存在
もう価値観がただの馬鹿に成り果ててるんだなあ…
終わりがあるからこそ、人生がある
終わりに対して抗うからこそ、人生に張り合いがあるんじゃないか
永遠何て求めてもしょうがないじゃない
ま、終わりがない…終わりを無くした過去何かが分かるわけ無い…か
この楽しさは生きている者だけの特権だからね
先が分からないこそ
何が出るかが分からないからこそ人生は楽しいんだ


超克…オーバーロード!
外装転送、最大出力
模造神器4剣全抜刀
これが、今を生きる者の力だよ
【Code:U.G】起動
私も飛翔しながら戦場の魔獣達に重力を掛けて落として行こう
悪いけど今回は素材ゲットでウハウハ生活…って余裕は無さそうだからね
魔獣に私より上は飛ばさせないよ
重力で高度を落として『天候操作』で下降気流を生成して魔獣は雲海にまで落としていく!
そして巫女を細くしたら最大速度で加速
4剣同時に『串刺し』にしてやろう
そして串刺したまま、無理矢理『なぎ払い』追加攻撃

人生を諦めた奴なんかに、負ける訳がないんだよ



 大空に炎の翼が羽撃き、一閃がオブリビオン『堕翼の巫女』の体を切り裂く。
 その身に宿した血は嘗て在りし日の残滓でしかない。
 とっくに終わった存在であり、忘れ去られた者であるオブリビオンにとって……特に強力な個体にとって、それは致命傷ではなく消耗であった。
 どれだけ強力な個体であったとしても、猟兵達は繋ぐ戦いによって、彼らを追い込む。
 一人では敵わない敵であったとしても、それでも繋ぐことに寄って過去の化身を『今』という時間より排除せんと迫るのだ。
「滅びを否定しますか。ここまで。私という存在をして『今』を侵食する。未来などという可能性など棄てなければ、永遠にはなれないというのに」
『堕翼の巫女』の瞳にあったのは諦観だけであった。

 あらゆるものを諦めている。
 諦めているからこそ、死という終わりの先にある永遠を求めるのだろう。そうしなければ、彼女は己が存在している意味すらも見出すことができない。
 手にした天使核が輝き大天使より遣わされた御使いを召喚する。彼らは皆、生前の彼女に従った力なのだろう。
「終わりこそが全ての救い。終わりがあるからこそ、人は永遠へと到れるのです。その短くも儚い人生のままに、永遠に生きる者などいないのですから」
 放たれた御使いたちがレジスタンスの飛空艇を落とさんと大空を飛ぶ。

 それを見上げていたのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)であった。
「馬鹿だなあ……オブリビオンなんてやっぱり一度は滅んだ存在」
 もう価値観がただの馬鹿に成り果てていると彼女はつぶやいた。
 終わりがあるからこそ、人生がある。
 確かにそのとおりである。
 終わりのない演劇に意味はない。ただ徒に引き伸ばして駄作に成り果てるだけである。

 ならばこそ、人は己の手で終わりを掴まなければならない。
 望む終わり、望まない終わり。
 それは人ぞれぞれにある。
 目の前に迫る御使いと屍人帝国『オーデュボン』の魔獣による大軍勢を前にしても玲は怯むことはなかった。
「終わりに対して抗うからこそ、人生に張り合いがあるんじゃないか。永遠なんて求めてもしょうがないじゃない」
 その瞳が輝く。
 どれだけ確かな終わりが目の前にあるのだとしても、それを越えていく。
 超克していく力が人にはあるのだ。真の姿。誰も知り得ぬ猟兵の根源。その姿を晒すことになろうとも、あらゆるおのを超克していく。

「『超克』……オーバーロード!」
 外装が転送され、出力が上がっていく。
 副腕を得た玲の手にあるのは、四振りの模造神器。
「最大出力、模造神器四剣全抜刀。これが、今を生きる者の力だよ」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 重力を制御下に置く形態。彼女はふわりと飛空艇の甲板から飛び立つ。それはこの大空の世界にあって異質なる飛び方であったことだろう。
 反動を付けるわけでもなければ、打ち出されるわけでもない。まるで重力という枷から解き放たれたかのように浮かび上がる彼女の体は、空間の支配者であった。

「『今』など過去が侵食する。どれだけ逃げようとも、どれだけ時間を排出して私達を遠ざけようとしたとしても、忘れ去ろうとも!」
 迫る『堕翼の巫女』が解き放つ御使いたちが玲を取り囲む。
 その力は言うまでもなく強力なものである振りかぶられた光の槍が彼女へと放たれた瞬間、それらの全てが玲の周囲から雲海に失墜する。

「――ッ!?」
「ま、終わりがない……終わりをなくした過去なんかがわかるわけ無い……か」
 玲は笑っていた。
 こんな戦場の最中に在って尚笑っていたのだ。
 それは今を生きる者の特権だ。終わりを絶望するのではなく、立ち向かう。例え、どれだけ道行きの果が同じ死なのだとしても。
 それでもその道程を楽しむことができる。
「先がわからないからこそ、何が出るかがわからないからこそ、人生は楽しんだ」
 未来が見えないから人は不安になる。
 けれど、その不安を楽しさに変えることができるのもまた人であろる。

 彼女の力の奔流が戦場に放たれる。
 それは完全なる重力制御。Code:U.G(コード・アンロック・グラビティ)による重力が彼女の周囲に在る魔獣の全てを押しつぶすようにして大空から雲海へと叩き落とすのだ。
「悪いけど、今回は素材ゲットでウハは生活……って余裕はなさそうだからね」
 魔獣を己の頭上には飛ばさせはしない。
 迫る御使い達すらも彼女の制御する重力下においては無力であった。

「馬鹿な……ッ! 御使いが、こんなことで……!」
『堕翼の巫女』にとって、それは誤算であったことだろう。
 強力な個体である彼女だからこそ、召喚される御使いの力は跳ね上がっていく。けれど、それらの尽くが玲の制御する重力に寄って雲海に沈められるのだ。
 いや、それだけではない。
 掲げた模造神器の青い刀身が輝く度に風が吹き荒れ、重力と風の力でもって抗う力を削ぎ落とされていくのだ。
「余裕はないって言ったよ。どれだけ君が強力なオブリビオンであったとしても……――」

 玲が模造神器交差させて『堕翼の巫女』へと突っ込む。
 最大加速での激突。
 交差させた模造神器と彼女の腕が激突して火花を散らせる。周囲の魔獣たちが次々と失墜していく中、その諦観に塗れた瞳を玲は見ただろう。
 振り抜いた斬撃が『堕翼の巫女』のガードを跳ね上げ、間髪入れずに刀身が突き立てられる。
「――人生諦めた奴なんかに、負ける訳がないんだよ」
 貫かれた模造神器の刀身が四方に薙ぎ払われる。
 十字の傷痕が『堕翼の巫女』の胸に刻まれ、その体から噴出する鮮血が青空に舞う。

 そう、諦観に塗れた者は、歩みを停めたものである。
 これ以上先にも、後にも戻れず立ちすくむだけだ。オブリビオンとはそういう存在である。
 ただそこに在るだけで『今』を侵食し、『未来』という可能性を潰す。
 玲はその先をこそ見ている。
 今を楽しみ、暗闇に閉ざされた未来であっても、己の知賢でもって照らす。
 未だ見ぬものを楽しむ度量があればこそ、彼女の道行きにあるものは、きっと未だ可能性に満ち溢れているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
【焼肉パーティ】
「くくく、魔獣こそが本来の支配者、か。笑止!
ならば教えてくれよう、焼肉定食の理というものを!
強き者が弱き者を焼いて食らう――それこそが焼肉定食の理よ!」

――え?
じゃくにくきょうしょく?
まあ、そうとも言うな!

「というわけで、我の【竜滅陣】を受けるがよい!」

天使核連結式竜型大魔獣とやらを召喚しようとも無駄だ!
我の竜滅陣は竜特攻の魔術!
竜型大魔獣など焼き肉の材料として狩りつくしてくれるわ!

「さあ、竜型大魔獣は我が撃ち落とすので、肉を回収して鉄板Vで焼くのだ、ルクス、ステラよ!」

さあ、巫女とやら。
どんどん肉を持ってくるがよい!
片っ端から焼き肉の材料にして、鉄板Vで焼いてくれるわ!


ルクス・アルブス
【焼肉パーティ】

……あれ?
えと、それってまさか……

師匠、それ「弱肉」です!
じゃーくーにーくーきょーうーしょーくー!

うわ、さすが師匠、まったくブレない。
さすがにそこには痺れも憧れもしませんが!

って、まだ焼き肉食べるんですか!?
まぁ確かに竜のお肉はありませんでしたけど……。

でも師匠はやっぱり鉄板Vが好きなのかなぁ。ちょっとしょっくだなぁ。

そうか、さっきは師匠、自分で焼き肉を焼いていました。
なら、鉄板Vを使ってわたしが竜のお肉を焼いたら、そこには究極で至高な焼き肉ができるのでは!?

ステラさん!
『エイル』さんと師匠のため、あのお肉を手に入れてください!
必ずや『エイル』さんを虜にできる逸品を作りますよ!


ステラ・タタリクス
【焼肉パーティ】

え?なんですかこのタグ?

ともあれ、私のエイル様(勝手に)が後ろにいる以上
ここで好き勝手をさせるわけにはいきません
へそ出しなら私だって負けていないことをお見せしましょう!
…え、竜の肉ですか?まだ食べるおつもりですか?燃費悪いにも程がありませんか?

【テールム・アルカ】発動
この場合は…ロングレンジアームでしょうか
『アンゲールス・アラース』で空を飛びながら
ヒト型にリサイズしたロングレンジアームを伸ばして墜ちてきた竜を回収しましょう

何してるんでしょうか私?
なんか疲れてきたので腹いせに
【テールム・アルカ】再発動でヒト型リサイズハイペリオンランチャーを召喚
ぶっぱして憂さ晴らししておきますね



 焼肉パーティ。
 それは言わば新たなパーティの名前であり、同時にこれより行われる血湧き肉躍る宴の名でもあった。
 あまりに緊張感のないそれにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は自分もひとくくりにされているのを不満に思っていた。
 どうしたって納得がいかない。
 なんだか非常にキャラがブレッブレになっている気がしないでもない。ある意味まったくブレていないとも言えるのだが、ステラにとって今大切なことは唯一つである。
「私の『エイル』様が後ろにいる以上、ここで好き勝手をさせるわけにはいきません」
 彼女は自身が立つ甲板、その飛空艇の背後に在る旗艦でもある重装甲飛空艇に座す青い鎧の巨人『セラフィムV』に座す、彼女が勝手に御主人様と認めている少年『エイル』のためにこそ戦うのだ。

 どれだけオブリビオン『堕翼の巫女』が強力な個体であっても、へそ出し魅惑の美女であったとしても彼女は負けるつもりなどなかったのだ。
 へそ出しならば自分だって負けていないということを見せてやろうと意気込んでいただの。そういうのって対抗意識燃やすところなのかなと思わないでもなかったが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は特に突っ込まなかった。

 ツッコミを入れていたらキリがないことを彼女は知っていたし、それ以上に彼女はショックを受けていたのだ。
 それは言うまでもなく師匠であるフィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)が青い鎧の巨人『セラフィムV』こと『鉄板V』にひどくご執心であるからだ。
「師匠はやっぱり『鉄板V』が好きなのかなぁ。ちょっとしょっくだなぁ」
 なんというか、自分が師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)である自負があったからだ。
 けれど、そんなルクスの心を知ってか知らずか、フィアは高笑いしながら宣言するのだ。

「くくく、魔獣こそが本来の支配者、か。笑止!」
 フィアは今日も絶好調である。
 なぜならば、戦いの前にしっかり腹ごしらえという名の焼肉定食を食べてご満悦であるからである。
 しかしながら、食べられるのならばもっと食べたいと思うのが魔女の真理。いや、全魔女がそうではないことは承知の上であるがノリでる。
「ならば教えてくれよう、焼肉定食の理というものを! 強き者が弱き者を焼いて喰らう――それこそが焼肉定食の理よ!」
 迫る魔獣の群れ。

 それはフィアにとって最早焼肉定食にしか見えないのだろう。
 食欲に目がくらんだ結果というか、末路と言うか。
「師匠、それ『弱肉』です! じゃーくーにーくーきょーしょーくー!」
 まったくブレない師匠にルクスは痺れも憧れもしない。
 けれども、その間違いを間違いのままゴリ押す姿勢だけは見習うべきであったことだろう。
「――え? じゃくにくきょうしょく? まあ、そうとも言うな!」
 流石のステラもその言葉には、えぇ……って顔をしていたし、まだ食うつもりなのかと思った。
 流石に燃費が悪過ぎる。
 いや、今にはじまったことではないけれど、流石に一言物申したくなるというものである。

 ルクスの凄まじさが伺い知れることだった。
「何をわけのわからぬことを」
 オブリビオン『堕翼の巫女』も猟兵達に傷を負わされながら、フィアの宣言に若干引いていた。何を言っているんだろう、この猟兵って感じである。
 戦いの場において食欲が何物にも勝るフィア。
 そして、そんなフィアを餌付けしたいルクス。そんでもって少年『エイル』に勝手に忠誠を誓っているメイドことステラ。
 なんだこの混沌としたパーティ。

 そんな彼女たちを前に現れる天使核を連結した竜型魔獣の口腔より放たれようとしていた極光のブレスであった。
 凄まじい一撃は、それだけでレジスタンスの飛空艇を飲み込むことだろう。
 それをさせぬとフィアの瞳がユーベルコードに輝く。
「無駄だ! 我の竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)は竜特攻の魔術! 竜型大魔獣など焼き肉の材料として狩り尽くしてくれるわ!」
 絶滅しちゃう!
 そんな不穏な言葉とともに放たれる極大魔法。こんなしょうもない理由でブッパされる竜滅陣の気持ち、考えたことがあるんですか。

 いつものブッパながら、放たれるユーベルコードの光は本物である。冗談ではない光の奔流が大型竜型魔獣を一撃のもとに撃ち落としていく。
「さあ、竜型大魔獣は我が撃ち落とすので、肉を回収して『鉄板V』で焼くのだ、ルクス、ステラよ!」
 もうこうなったフィアは止められない。どれだけ魔獣を召喚しようとも、片っ端からブッパして撃ち落としている。
 竜も他の翼獣も手当たり次第である。ドラゴンステーキもチキンソテーもあんまり変わりないのである。

「此の場合は……ロングレンジアームでしょうか?」
 ステラはフィアの言葉にうなずき、人間サイズにリサイズされたロングレンジアームを伸ばし、ぶっぱによって落とされた魔獣たちを片っ端から回収していくのだ。
 一体全体自分は何をしているのだろうと冷静になってしまう。
 わからんでもない。
 しかしながら、隣に立つルクスはやる気満々である。
 そう、彼女は気がついてしまったのだ。鉄板Vの火力が師匠は好き。ならば、その鉄板Vを使って自分が肉を調理すればどうなるのか?

「答えは究極で至高な焼き肉ができる! です!」
 そうかな? 流石にどっかの美食家が此の焼き肉を焼いたやつはどいつだとぶっこんできそうな理論であるが、まあルクスが意気込んでいるのでみなまで言うな。
「ステラさん! 『エイル』さんと師匠のため、あのお肉を手に入れてください! できるだけ上質なドラゴン肉を! カラズや『エイル』さんを虜に出来る逸品を作りますよ!」
 その瞳はキラキラしていた。
 まごうこと無く私利私欲であった。けれど、『エイル』の名を出されてステラは、それまで自分が何をしていたのかと疲れた顔をしていたが、その名を聞いた瞬間に顔が華やぐ。

 いいのかな、それでと思わないでもない。
 けれど、何度でも言う。彼女たちはこれが通常である。平常運転なのである。腹いせにハイペリオンランチャーをブッパしていたステラは憂さ晴らしなど後回しであるというようにロングレンジアームを振るい、フィアのぶっぱによって落ちてくる竜型魔獣たちを回収していくのだ。
「おまかせください! 『エイル』様のためにならば、どれだけでも!」
「わーい、ありがとうございます!」
 ルクスが計画通りという顔をしていた気がしないでもないが、彼女たち焼肉パーティの活躍は凄まじかった。

 フィアのぶっぱも後で焼肉パーティができるということもあって最早際限なしである。
 食料を確保できた魔女が一番怖い。
 後先考えぬ大魔術ぶっぱは、圧倒的物量差で追い詰められていたレジスタンスたちを巻き返し、凄まじい大攻勢で持って、この戦いの趨勢をひっくり返したのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
無駄かどうかは自分達で決めればいい話だと思うけどね
どうせ死ぬから生きるのは無駄
って言ってるようなものだし
まあ、オブビリオンに意見を変えろっていうのも
無理な話かもしれないね

という訳でこちらはこちらのやりたいようにさせて貰うよ

魔獣の軍勢がレジスタンスに向かうのか
こちらに来るのかわからないけど
纏めて足止めさせて貰おうか
何なら永遠にゆっくりしていってよ

UCを使用し巫女と魔獣の動きを固定
動きを停めた敵をガトリングガンで攻撃するよ

Vやレジスタンスに手伝って貰えそうなら
魔獣の退治に参加して貰おう

わたしもお手伝いするのですよー

実物と戦った経験から言わせて貰うと
この魔獣じゃ帝竜を相手取るには厳しいんじゃないかな



「無駄なのに。全て死に向かうのならば、意味など無いのに。それなのに何故、無駄なことをしよとするのです」
 オブリビオン『堕翼の巫女』の手にある天使核が輝く。
 連結することに寄って大型竜型魔獣の力は増大していく。召喚される魔獣たちが次々と連結して、口腔に溜め込まれた光は極光に至る。
 その咆哮の如き一撃をこれまで何度も猟兵達によって阻まれてきた彼女にとって、その光景は最早、諦観に塗れた瞳で見るには値しないものであった。

 死はかならず訪れる終着点。
 それ故に彼女は生きることすら無意味であると、『今』を侵食しようとする。
 その行いがオブリビオンらしいと言うのであれば、まさに彼女はオブリビオンであったのだろう。
 けれど、『今』を生きる人々にとって、それは関係のないことである。
 どれだけ生の行き着く先が死なのであったとしても、それでも懸命に生きるのだ。
「無駄かどうかは自分たちで決めればいい話だと思うけどね。どうせ死ぬから生きるのは無駄――って言っているようなものだし」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、オブリビオン『堕翼の巫女』の言葉にそう答えた。

 オブリビオンに意見を変えろというのは無理な話だと判っている。
 どれだけ人間らしい言葉と姿を持っていても、過去の化身たるオブリビオンは成長しない。変わらない。忘れ去られ、過去に歪んだからこそ、『今』を侵食しようと骸の海よりにじみ出るのだから。
「というわけでこちらは、こちらのやりたいようにさせてもらうよ」
 晶は魔獣の軍勢がレジスタンスの飛空艇が編隊を組む空域に飛ぶのを見た。
 確かにレジスタンスの勇士達は士気が上がっている。それに猟兵たちの行動に寄って、彼らの飛空艇は傷つくことなく十全の体勢で屍人帝国『オーデュボン』を迎え撃つことができた。

 ならばこそ、彼らの飛空艇を失ってはならない。
「なんなら永遠にゆっくりしていってよ」
 晶の瞳がユーベルコードに輝く。
 戦場を神域に似た環境に変化させていく。それこそが、静寂領域(サイレント・スフィア)。
 その身に邪神を融合させた晶のユーベルコードにして、虚空より放たれる森羅万象に停滞を齎す神気。それらを受けたものは尽くが時間停止に寄って大空に停まるのだ。

 そう、放たれようとしていた極光のブレスさえもだ。
「動きが、停まる……! これが停滞を齎す権能ッ!」
『堕翼の巫女』が呻く。
 敵と味方を判別する神気は無差別ではない。敵は停めて、味方は動く。レジスタンスの飛空艇より放たれる砲撃や、甲板上に立つ青い鎧の巨人『セラフィムV』が放つバスターランチャーの砲撃が大型の竜型魔獣たちの連結を解くように放たれ、次々と雲海に叩き落としていくのだ。
「わたしもお手伝いするのですよー」
 使い魔達と共に晶は大空を舞う。

 手にしたガトリングガンの銃口を『堕翼の巫女』に向け撃ち放ち、彼女を守る魔獣たちを尽く引き剥がしていくのだ。
「実物と戦った経験から言わせて貰うと、この魔獣じゃ帝竜を相手取るには厳しいんじゃないかな」
 晶は知っている。
 帝竜という存在を。嘗てブルーアルカディアにおいて起こったと言われる争い。天使と帝竜を率いた存在の戦い。

 此処ではない世界で晶たち猟兵は一つの戦役を乗り越えてきた。
 ならばこそ、この魔獣たちとでは比べるべくもないと晶は断ずるのだ。
「君がその時代の巫女なのかはわからないけれどね。それでも僕らはこれ以上の敵を倒してきた。屍人帝国がどれだけ強大なのだとしても」
 それでも負ける理由にはなっていないと、停滞した領域の中、銃声だけが大空に響き渡るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
遠隔操縦で呼び寄せた機械飛竜ロシナンテⅢに騎乗し空へ

己が生存の為に歩み続けるのは生命の定め、海から陸へ、空へ、そして星の果てまで…
全てが過去に堕ちるのが定めなら、より良き未来を目指す私達の戦いもまた必然

魔獣の巫女として貴女が立ち塞がるのなら、人の側に立つ騎士として打ち砕きましょう

敵集団との彼我の位置情報をセンサーで情報収集

全部で13体、一体に付き一秒未満……やってみせますとも!

UC起動

未来予測演算で敵の攻撃と移動を見切り空中機動で掻い潜り
突き出した馬上槍、飛竜の口部機関砲の乱れ撃ち、敵の同士討ち
飛竜のランディングギア兼用の脚の爪の怪力で瞬く間に排除

貴女の語る終わりは…まだ遠いようですね

槍を投擲



「己が生存のためにあるき続けるは生命の定め。海から陸へ、空へ、そして星の果てまで……」
 機械飛竜が大空の世界を舞うようにして飛ぶ。
 多くの猟兵がオブリビオン『堕翼の巫女』へと迫り、魔獣の群れを尽く打ち払ってきていた。
 レジスタンスの飛空艇から放たれる光条や砲撃が屍人帝国『オーデュボン』の大軍勢を数で劣る振りを覆し、撃退せしめているのは猟兵達が彼らを事前に十全な状態で守ってきたからである。
 そう、トリテレイアは、この大空の果てにある銀河を征く世界にて生まれたウォーマシンである。
 ならばこそ、彼は言うのだ。

「全てが過去に墜ちるのが定めなら、より良き未来を目指す私達の戦いもまた必然」
 トリテレイアは世界の広さを知る。
 どこまでも続く青空。雲海が滅びを齎す世界。されど、このような世界にあっても人は前を向いている。
 より良き未来を掴み取るために抗い続ける。
「どれだけの時間があったのだとしても! それでも人は滅びる! 滅びこそが終着なのですから! 誰もが滅びを回避できない! ならば!」
『堕翼の巫女』が叫ぶ。
 彼女の瞳は諦観にあふれていた。
 手にした天使核が砕け、光とともに招来される御使いの姿。

 あまりにもまばゆい姿とは裏腹に、その諦観に塗れた瞳は『今』すら見ていない。
 あるのは滅びの渇望のみ。
「魔獣の巫女として貴女が立ちふさがるのなら、人の側に立つ騎士として打ち砕きましょう」
 機械飛竜の鋼鉄の翼が羽撃き、そのアイセンサーが煌めく。
 それはユーベルコード。
 彼が追い求めた未来。白騎士の背、未だ届かず(ホワイトライト・トゥルーライト・リミテッド)と知る。
 時間にして凡そ12秒にも満たぬ間においてのみ未来予測に基づく精密攻撃を可能とするユーベルコードである。

「コード入力【ディアブロ】、戦域全体の未来予測演算を開始――全部で13体。一体に付き一秒未満……やってみせますとも!」
 未来予測演算が御使いの軌道を見せる。
 対する此方は一機。されど、やらねば開けぬ活路があるというのならば、如何にか細き道であっても突き進むのが騎士としてのトリテレイアである。
 空中機動で御使いを交わし、すれ違いざまに馬上槍で貫き、機械飛竜の口部機関砲の乱れ打ちによって軌道を限定し、御使い同士の激突を誘発させる。

「どれだけ数が多かろうとも!」
 迫る御使いを機械飛竜の鉤爪が瞬く間に砕き、その身を粉砕させる。
 しかし、『堕翼の巫女』が手繰る力は強力であった。未来予測は強力なユーベルコードである。
 敵の軌道を見やり、あらゆる手段でもって敵陣を突破する。
 しかし、あと一手が足りない。
 なまじ未来を演算する電脳が在るがゆえにトリテレイアにははっきりと見えてしまったのだ。

 召喚された御使いは12体。
 されど、『堕翼の巫女』という単体でも強大な個体がトリテレイアに迫っている。それを防ぐ一手が足りない。
「なら、その一手は僕が――!」
 それは重装甲飛空艇の甲板より放たれた光刃の剣の投擲であった。
 視線をめぐらせれば、そこにあったのは青い鎧の巨人『セラフィムV』を駆る『エイル』の援護。
 放たれた光剣は『堕翼の巫女』を仕留めることはできずとも、トリテレイアに迫る攻撃をそらすことはできる。
 
「邪魔立てを……!」
「見ましたか、魔獣の巫女よ。未来予測の演算すらも凌駕する力。どれだけ貴女の言う未来が死しか待ち受けぬものであったのだとしても」
 それでも、今覆したものがあったのだ。
 人は、どれだけ決定づけられた運命からも逃れることはできない。
 けれど、それに抗う事はできる。
 死したとしても負けることはない。人間とはそういうものなど今、トリテレイアは見た。
 それをこそ未来に繋ぐものであると彼は知る。

「貴女の語る終わりは……まだ遠いようですね」
 手にした馬上槍が投げ放たれ、『堕翼の巫女』の体を貫く。
 それは人の見せた希望であり、同時にトリテレイアが見たはるかな未来に至るための通過点なのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…えっ…言ってる意味がちょっとよく判らない…
…何時かは終わりは来る…でも…終わりまでの道筋も無駄というわけでも無い…
…そして…引き延ばしを続ける事が歴史だよ…
…理解出来ないかもだけど…引き延ばしのために倒れてもらおうか…

…宣託を受けて予知をすると…
…それならば……【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…
…透明に近い氷で作られた剣を複雑な軌道で飛ばして敵へと攻撃…
…さらに幾つかは「設置」する事で罠としよう…
…つまり…安全な場所、踏み込んでは行けない場所を頻繁に変化させる…
…これを全て予知通りに間違えずに対処出来るかな…
…1度間違えれば魔剣は凍結を起こし動きを鈍くする…どんどん対処が難しくなるよ…



 その身を貫いた馬上槍を胴から引き抜き、投げ捨てたオブリビオン『堕翼の巫女』は忌々しげに血反吐を撒き散らしながらも、その瞳に在ったのは未だ諦観であった。
 滅びこそが必定であるのならば、己の滅びもまた当然であろう。
 幾度となく繰り返される滅び。
 その中にありながら、オブリビオンという永遠を手にした彼女は、未だ抗う者たちに理解を示すことなどできなかった。
「何故、滅びを受け入れないのです。終わりは必ず訪れるもの。ならばこそ、結果だけを求めればいいのに。何故、過程を辿ろうとするのです。結果はすぐに訪れるというのに」
 彼女の言葉は全てが過去に歪んでいるものであった。

 だからこそ、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解できなかった。
 理解しようとしたのだろう。
 言っている意味がわからないのだ。
「……何時かは終わりは来る……でも……終わりまでの道筋も無駄というわけでもない……」
 そう、過程をないがしろにした結果はいつだって悲惨なものだ。
 過程を省こうと、効率的にしようとすればするほどに、それは求めたものとは程遠いものによって塗れていく。
『堕翼の巫女』が得た諦観のように。

「ならば、何故引き伸ばすのです。無駄を省くことで、最短を征くことができるでしょう!」
 手にした天使核が暴走していく。
 穿たれた胴に押し込み、『堕翼の巫女』の頭上に輝きは光輪。大天使よりの託宣により、暴走形態へと移行した彼女の瞳には何が見えるのか。
 それは予知である。
 あらゆる己を害する攻撃に対して、瞬時に理解するのだ。

 レジスタンスの砲撃すらもたやすく交わし、メンカルに迫る『堕翼の巫女』の姿は自壊していくような危うささえ在った。
 自らの滅びすらも勘定に入れていない特攻の如き突撃。
「……引き伸ばしを続けることが歴史だよ……理解出来ないかもだけど……引き伸ばしのために倒れてもらおうか……」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
「無駄です。どれだけあなたのユーベルコードがあろうが!」
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)が放たれ、空を舞う。
 メンカルの瞳が輝く限り、それらは全て彼女の意のままに操る事ができる。打ち込まれた場所から凍結を引き起こす魔剣の力は、予知によって触れてはならぬものであると理解できるだろう。

 同時に躱すことだって可能である。
「無駄だといいました! どれだけ強力なユーベルコードの力があろうとも、当たらなければ……!」
 しかし『堕翼の巫女』は見ただろう。
 己の予知にある全ての光景。踏み込んではならぬ領域。受けてはならぬ攻撃。
 あらゆる行動にはメンカルの意図がある。
 初撃を躱せば二撃目が。
 三撃目は布石、四撃目すらもブラフ。あらゆる点においてメンカルが張り巡らせた詰将棋の如き戦術が予知を圧迫していく。
「……確かに予知は強力。だけど……これを全て予知通りに間違えずに対処出来るかな……」

 あらゆる布石が意味を為してくる。
 魔剣の一射一つとっても、予知した未来を瓦解させる一手となる。
「一度間違えれば魔剣は凍結を起こし動きを鈍くする……どんどん対処が難しくなるよ……そして、それ以上に」
 そう、予知をもたらすユーベルコードは確かに強力そのもの。
 だが、今の『堕翼の巫女』は暴走状態にある。その力が強大であればあるほどに自壊へと道をたどることだろう。

 魔剣が空を舞い、あらゆる一手を打ち込んでいく。
 予知でみている以上、彼女は躱す以外の手がない。されど、メンカルは違う。この戦術の中にレジスタンスたちの砲撃をも組み込んでいくことができる。
「ぐっ――ッ!」
 魔剣の予知で手一杯であった『堕翼の巫女』は増える選択肢、そして自壊していく体、鈍る動きに絡め取られ、その体を徐々に崩壊させていく。

 諦観に塗れた彼女があがくことなどない。
 かつてそうであったように。
 最早、彼女は動くことすらかなわず、氷結の中で崩れていく。
 未来を諦めない者と未来を諦めた者。
 その明暗を分けたのは、いつだって勇気だ。メンカルは、氷結の彼方に霧消していく『堕翼の巫女』の姿を見送り、つぶやく。
「……人の歩みはいつだって死に至るもの。けれど、積み上げたもの、紡ぎあげたものはなくならない。人の礎となって、いつかは天にだって届く……それが歴史というものなんだよ……――」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『ガレオン修理』

POW   :    資材を運んだり、壊れた箇所を修繕する。

SPD   :    急いで応急処置を行う。

WIZ   :    破損の内容から、適切な修理方法を提案する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 レジスタンスを襲った『堕翼の巫女』による屍人帝国『オーデュボン』の大軍勢は、猟兵と勇士たちによって退けられた。
 しかし、その代償は少なからず彼らの飛空艇に傷を負わせた。
「この拠点はもうダメだな……次の拠点に移動しなければ……」
 勇士達は勝利に湧く時間すらも許されず、次なる第二候補の拠点へと向かわねばならない。
 避難民達を安全な浮島に送り届けなければ、また第二のスパイが紛れ込むこともあるだろう。そうならないためにも早急に飛空艇の修繕と整備を再び行わなければならない。

「できるだけ早いほうがいいだろう……――ッ!?」
 そうつぶやいた勇士達は、己たちが拠点にしていた浮島が突如として地鳴りのような音と共に振動しているのを感じていた。
『堕翼の巫女』は言っていた。

「……私の『目的』は達せられました」

 そう言っていたのだ。
 それはスパイ活動に寄って屍人帝国の大軍勢を引き入れたことを示していたように思えたが、そうではなかったのだ。
「この振動……! 天使核の暴走! この浮島を浮かせている天使核を暴走させているんですよ、これ!」
 少年『エイル』が真っ先に気がついたのだ。
『堕翼の巫女』が何故、猟兵たちから隠れるようにして外に居たのか。
 このためだったのだ。

 どちらにせよ、浮島ごとレジスタンスを雲海に沈め、新たなる『オーデュボン』の領土としてオブリビオンを満載した島として浮かび上がらせる計画であったのだ。
「……早く整備を終わらせて、避難民の人たちを移動させないと!」
『エイル』の言葉に戦いを終えた猟兵達に緊迫した空気が走り抜ける。
 すぐに浮島が雲海に沈むことはないだろう。
 けれど、確実に浮島は天使核の暴走に寄って下降していく。

 それを止める手立ては『今』は無い。
 ならば、猟兵達は急ぎ傷ついた飛空艇を修繕し、多くの人々を救わねばならない――。
鈴久名・紡
連中の好きにさせてなるものか
過去がいかに策を弄そうと……
未来を変えるのは『今』を生きる者達なのだから

ひとまず、飛行状態を維持出来るものは先に空に上がって貰おう
そちらに避難民を多めに乗船させる事が出来るならそうしてくれ

飛行しながらでも修繕可能な箇所は後回しにして
飛翔し飛行航行を続けるのに必要な箇所や
飛行しながらの修繕が難しい箇所に『必要最低限』の処置を施すように提案
次の拠点まで持てばいいだろう
次の拠点で改めて、完全修復してやれば良い

生きていれば、辿り着ければ
それが『次』を生み出す

引き続き、むすびとリアンシィは資材の運搬を手伝ってくれ
必要ならレジスタンス達の指示にも従うように二体には伝えておく



 屍人帝国『オーデュボン』の目論見は、オブリビオン『堕翼の巫女』によって完全とは行かずとも悪辣なる罠となって猟兵たちとレジスタンスに迫る。
 彼女の目論見は、この浮島事態を雲海に沈めること。
 雲海に沈めば、あらゆる生命は滅び、再び浮かび上がってきたときには、すでにオブリビオンで満載された屍人帝国『オーデュボン』の領地へと姿を変えていることだろう。

 この浮島を浮かせている天使核の暴走こそが『堕翼の巫女』の真為る目的であったのだ。しかし、それも十全に行えたわけではない。
 猟兵たちの活躍に寄って多くのレジスタンスたちは倒されることなく飛空艇の損失もなかった。
 あれだけの大軍勢を前にして此処までレジスタンスの力が残っていることは予想外であったことだろう。
「連中の好きにさせてなるものか」
 鈴久名・紡(境界・f27962)は急ぎ、飛空艇の状態を見る。
 これまで『オーデュボン』の大軍勢との戦いで損傷した飛空艇も少なくないはずだ。一隻も喪わなかったことは奇跡的なことであるが、次の拠点候補地まで船が持つかどうか……そして、未だ残されている多くの避難民たちがいる。

 彼らを安全に其処まで運ぶためには、飛空艇の修繕と整備、チェックは急務であった。
「過去が如何に策を弄そうと……未来を変えるのは『今』を生きる者たちなのだから」
 紡は勇士達と飛空艇の状態をチェックしていく。
「こっちは飛べそうだ。天使核の出力も落ちてない。順次出せるか?」
「いや、まだ避難民たちを乗せてない。できるだけ早く彼らを次の拠点に移さないと……」
 なにせ、天使核の暴走によって島一つを雲海に沈めようと言うのだ。
 この空域のどこかに避難民を乗せているがゆえに戦うことのできない飛空艇を襲わんとしている魔獣の群れがあるともわからない。

「……時間も人でも足りないか……ならば、飛行しながら修繕可能な場所は後回しにして、必要な箇所だけ手を入れていこう。飛行しながら修繕が難しい箇所には必要最低限の処置を施す。そうすれば、時間を短縮できるはずだ」
 次の拠点まで保つことができればいいのだ。
 そして、落ち着いた改めて修復すればいい。本来ならじっくりと修繕と修復を行うところであるが、緊急じたいだ。
 幻獣である『むすび』と『リアンシィ』たちに資材の運搬の手伝いを支持しながら、紡はレジスタンスの拠点の中を走り回る。

 時間がないという焦りがジリジリと猟兵や勇士たちを追い詰めていく。
 けれど、生きていなければこの焦りも感じることができない。
「くそっ……! なんでこんなに時間がないんだよ……!」
 勇士の一人があまりの事態に気が急くのだろう。
 時間のなさに悪態をつく。それもうなずけるというものであったが、紡は彼の肩を叩く。
「生きていれば、たどり着ければ。それが『次』を生み出す。今は皆で生きることを考えよう。時間のことはどうにかする。できるはずだ」
 これまでであってもそうであったように。
 今回のようにいつだってうまく行くとは限らない。

 けれど、あがき、先延ばしにし、未来に手を伸ばしたからこそ、『今』がある。
 それを紡は知っている。
 勇士たちの勇気が『今』に繋いだ。
 ならば己は何をするべきかを彼は知っている。その名前の通り。
「未来を紡ぐ……そのために俺たちは此処にいる」
 諦めることのない気持ちが明るい未来を手繰り寄せるのならば、紡はそのか細い糸のような希望をこそ撚り合わせ、太くちぎれぬ糸へと紡ぐのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・ジルニトラ
ちぃ、飛空艇ではなく浮島ごとだと!!
やっぱり馬鹿だ。あれはただの馬鹿だ!!

とにかく修理を急いで済ますぞ。最悪飛べれば後は空で直す。
飛べれば私がなんとかする。
まずは一通りの飛空艇を確認し、損傷が激しく修復に時間がかかる船体は修理の材料へすることを提案。
損害が少ない船体の修復を急がせる。

おい、こいつの天使核はまだ使える。あっちの船体に使うぞ。こいつは竜骨が行っちまってる。マストは使えるから流用だ。


さて、私も飛空艇に変身し浮かぶだけでも修復が終わった船体を牽引して脱出を手伝うぞ。ガレオンチェンジだ。
私も100人ぐらいは運搬可能だ。(使用技能:空中浮遊、空中機動)



 大空の世界ブルーアルカディアにおいて雲海に沈むということは即ち破滅である。
 例外は何一つない。
 オブリビオンであったとしても雲海に沈めば、直ちに戻ってくることはない。
 魔獣であってもそうなのだ。
 ならば、浮島ほどの巨大なものであればどうであろうか。
 それは言うまでもなく浮島に住まう生命、そしてあらゆるものが過去に沈むということを示している。

 再び沈んだ浮島が浮上した時、其処には嘗て在った生命はなく、代わりにオブリビオンが満載されて他を雲海へと引きずり込む亡者となる。
 かつて雲海に沈むギリギリのところで浮島に座礁した飛空艇であったイングリット・ジルニトラ(ガレオノイドの翔剣士・f33961)にとって、オブリビオン『堕翼の巫女』が仕掛けた最後の罠は到底受け入れることのできないものであった。
「ちぃ、飛空艇ではなく浮島毎だと!! やっぱり馬鹿だ。あれはただの馬鹿だ!!」
 悪態をつく時間すら許されない。
 このレジスタンスの本拠地がある浮島の天使核を暴走させたオブリビオン『堕翼の巫女』のし掛けは、すぐさま浮島を雲海に沈めさせるものではない。
 けれど地鳴りのような音が告げるように徐々に高度が落ちているのもまた事実。

「とにかく修理を急いで済ますぞ。最悪飛べれば後は空の上で直せばいいし、飛べれば私がなんとかする」
 イングリットは屍人帝国『オーデュボン』との戦いから戻った飛空艇の状況を見やる。
 あれだけの圧倒的数の不利を覆した激戦であったのだ。
 どの飛空艇も無事ではない。
 一隻も喪わなかったことは不幸中の幸いであったが、それでも航行に難のある飛空艇もある。
「……どうする。この飛空艇はもう殆ど駄目だ。かといって、修理しないと飛空艇が足りなくなる」
 勇士たちの言葉にイングリットは頷く。
「ならば、この飛空艇は他の船への修理の材料にしよう。そうすれば、損害の少ない飛空艇の修復を急ぐことができる」
 イングリッドはガレオノイドである。 

 だからこそ、飛空艇が何もせずにこのまま雲海に沈むことが不憫でならないのだ。ならば、その船体をバラし、他の船の一部として生きながらえた方が良いと考える。
 これが彼女なりの足掻きである。 
 どれだけえ未来が決まっていたのだとしても、それでも足掻いて手を伸ばさねば未来は掴めないのだから。
「おい、こいつの天使核はまだ使える。あっちの船体に使うぞ。こいつは……」
 竜骨が駄目になっているとイングリッドは忸怩たる思いで決断を下す。
 迷っている時間はないのだ。
「わかった。こっちの天使核と直結させて出力を安定させてみるよ。マストはどうだい」
「マストは使えるから流用しよう。さあ、忙しくなる。こいつの役割は私が果たそう」

 イングリットは船の修繕を急がせながら、この解体した飛空艇の代わりに欠落した数を補うことを提案する。
 ガレオノイドである彼女がガレオンチェンジよって飛空艇の姿に変身すれば、避難民たちを乗せて第二の本拠地候補の浮島まで安全に運べるだろう。
「私が変身した飛空艇に曳航する飛空艇があれば繋いでくれ。住民たちは百人程度であれば運搬可能だからな。急ぐぞ」
 そう、どれだけオブリビオンが周到に罠を巡らせているのだとしても、それでも今を生きる人々が諦めないのならば、イングリットもまた同様である。

 彼女は飛空艇に変身し、解体された飛空艇の名残を見下ろす。
 己もああなっていたかも知れない。
 けれど、その役目、思いは同じ飛空艇であった己が引き継ぐ。
 終わりが目の前にあっても、つなぎ、紡ぐものがある。イングリットは、それを託されたのだ。
 ひしゃげた竜骨、その姿を目に焼き付け、無念を晴らすように大空へと飛び立つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『希ちゃん』【ネルトリンゲン】は大地すれすれでホバーしながら待機。大地が脆いから気をつけて。

現在飛行手段のない人や、機材、資材、食料……。

ああ、もういいか!
乗りたいって言ってる人や物、詰めるだけ積んじゃっておっけー!
目立つように、発光信号、忘れないでね。

わたしは飛空艇の修理に行ってくるよ。
なるべく大型の艇から直して、人の犠牲だけは絶対に出さないようにしないとね。

個人の艇や機材とか諸々は、壊れていたりするならネルトリンゲンに積んでもらおう。

積んでおいてくれれば、次の大地までの移動中にわたしが直すからね。

レジスタンスとして戦うなら、ここにある全部が戦力。
少しでも多く、次の拠点に引き継ぐ、よー!



 浮島の天使核が暴走したことによってレジスタンスの本拠地を移す作戦は前倒しになっていた。
 勇士達は屍人帝国『オーデュボン』との戦いで傷ついた飛空艇の修繕と整備に急ぎ、本拠地はごった返していた。
 避難民たちもそうである。
 彼らは元々住んでいた浮島を離れなかればならない。
 このまま此処に居ては雲海に沈み、生命を落とすだけである。そうなってしまえば、元も子もない。

 そんな慌ただしさの中、占領されたとは言え『オーデュボン』の支配を受ける浮島の大地にミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』が大地すれすれにホバーしながら待機していた。
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はAIである『希』に『ネルトリンゲン』の操作を任せ、急ぎやらねばならないことを為すためにレジスタンスの本拠地へと走っていた。
「現在飛行手段のない人や、機材、資材、食料……」
 考えなければならないことが多すぎる。

 本拠地の第二候補の浮島へと移動するにしたって足がいる。
 此処は大空の世界ブルーアルカディアである。他の世界と違って地続きではないのだ。徒歩での移動など望めるわけもない。
 さらに食料の問題もある。
 飛空艇に積み込む以上、食料や機材を持ち込めば人が乗れなくなる。かと言って人が乗れば機材や食料が積み込めなくなる。
「ああ、もういいか! 乗りたいって言ってる人や物、積めるだけ積んじゃっておっけー! 目立つように、発光信号、忘れないでね!」
 理緒は『希』にそう告げて急ぎ、飛空艇の修理に赴く。

 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 この限られた時間での修繕修復は、全てに手を伸ばしている時間はない。
 如何にモーター・プリパラタと言えど、彼女が全てをカバーできるわけではないのだ。
「こっちが大型だ! この飛空艇から頼む!」
 勇士たちが慌ただしく走り回っている。
 避難民たちを乗せて、この拠点を放たれるためには一隻でも多くの飛空艇が必要となるのだ。
「わかった。なるべく大型の飛空艇から直していくから!」

 人の犠牲だけは絶対に出さないようにと理緒は意気込んでいる。
 個人の飛空艇や機材などの諸々を『ネルトリンゲン』へと積載することを勇士たちに告げ、次々と運び出していく。
 搬出の時間は刻一刻と過ぎていく。
 このままだと浮島の高度が脱出限界にまで低下することは誰の目にも明らかであった。
「レジスタンスとして戦うなら、此処にある全部が戦力。少しでも多く、次の拠点に引き継ぐ、よー!」
 集中する。
 ユーベルコードに寄って己の能力は通常の12倍にまで引き上げられている。
 
 けれど、それでも足りない。
 取捨選択をしないといけない時来てしまうだろう。
 諦めない。何もかもをも諦めた『堕翼の巫女』と理緒は同じではないのだ。彼女には未来に手を伸ばすだけの力もあれば、意地もある。
 誰も彼もが救えないというのならば、その最善を見つけるためにギリギリまであがくのが自分だと知る
「よしっ、次だよー! この大型の飛空艇は物資や人を乗せたらすぐに出しちゃってー!」
 理緒は大型飛空艇の整備を終えて、次なる作業に取り掛かる。

 どんなに困難なことでも諦めない。 
 諦めずに前進すれば、いつか己が望んだものを掴むことができるかもしれない。
 諦観など己には必要ない。
 いつだって輝くユーベルコードが指し示す先にあるのは、誰もが笑える未来であるはずだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
屍人帝国に間者を送り込まれてる時点でここはもう駄目だったけど、本格的にお終いか。

笑鬼召喚。あなたたち土建業と船大工が違うのは分かるけど、それくらいは何とかしてみせなさい。木造の家屋を建てるのだと思えば、そうは迷わないはずよ。
羅睺、直接指揮よろしく。

あたしはアヤメと、避難民の誘導に当たるわ。黒鴉を飛ばして、受け入れ体勢の整った飛空艇を確認してから、順番に避難民を送り込む。
優先順位は、子供、女性、老人。成年男性は待ってもらうわ。
この場所に思うところがある人もいるでしょうけど、ここはもう終わりなの。ゆっくり急いで!

巫女の皆を各飛空艇に配して、避難民の慰撫をお願い。こういう時こその巫女でしょう。



 屍人帝国『オーデュボン』のスパイ、『堕翼の巫女』がレジスタンスの本拠地にまで入り込んでいる時点で、この拠点が遅かれ早かれ放棄されることはわかりきっていたことであった。
 けれど、それでもと猶予はあるはずだったのだ。
 今のように慌ただしく本拠地を後にしなければならないなどと誰が思っただろう。
 これがオブリビオンのやり方である。
 大空の世界ブルーアルカディアにおいて雲海に沈むということは、滅びるということである。

 どんなものであっても雲海に沈めば息絶え、滅びる。
 再び浮かび上がる時、其処に在るのはオブリビオンだけだ。ゆえに屍人帝国『オーデュボン』はこの浮島を沈め、己が領土へと塗り替えんとしている。
 そんな地鳴り響き、天使核の暴走に寄って沈みゆく浮島に子鬼の姿を式神たち走る。
「急急如律令! 汝ら、陣を敷き壕を巡らせ郭を築くものなり! あなたたち土建業と船大工が違うのはわかるけど、それくらいはなんとかしてみせなさい」
 笑鬼召喚(ショウキショウカン)によって召喚された子鬼の式神たちを手繰り、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)がレジスタンスの本拠地の中を歩む。
 彼女の式神である羅喉に子鬼たちの士気を任せ、ゆかりはアヤメとともに避難民たちの誘導にあたる。

 慌ただしいことこの上ない。
 なにせ急転直下の状況の変化である。
 いつまでも此処で生活するつもりはなかったにせよ、あまりにも急なことに混乱が起こっているのだ。
「いつだって突然に状況は変わるものだけど……アヤメ、彼らを落ち着かせましょう。このままパニックになっては、取り返しがつかない」
 ゆかりは大型の飛空艇が資材や機材、人といったものを積載し、搬出する体勢が整うのを待つ間、嘗てこの国に仕えていた巫女たちを捕まえる。

「巫女のみんなは、各飛空艇に乗り込んで。避難民たちの慰撫をお願い。こういう時こそ巫女の役目があるでしょう」
 ゆかりは自分たちだけでは避難民たちのパニックを抑えられないと悟っていた。
 少なくとも今は自分たちにはできないことである。
 ならばこそ、巫女たちの力を借り受けるのだ。
 誰かに頼ることもまた必要なことである。猟兵は確かに戦う力や超常の力を持っているだろう。
 けれど、それが全てではないのだ。

 人が生きる上で必要なこと全てを猟兵一人が持っているわけではない。
「わかりました……民の誘導はお任せします。こちらは彼らの心を鎮めましょう」
 その言葉にゆかりは頷き、巫女たちを送り出す。
「子供、女性、老人を優先させてもらうわ。わかるでしょう。こうするしか今はできないって。みんなで助かるためよ」
 ゆかりの言葉に避難民達は戸惑いを隠せないようであった。

 それもそのはずである。
 レジスタンスが蜂起するために反攻作戦を行おうとしていたのは、この島を取り戻すためであった。
 その取り戻すための浮島が今沈みゆく。
「この場所に思うところがある人もいるでしょうけど、ここはもう終わりなの。ゆっくり急いで!」
 今は感傷に浸る時ではない。
 
 だからこそ、ゆかりは心を鬼にして叫ぶのだ。
 今生きることをやめてはならないのだと。今を生きて未来へと歩むことができれば、再び大地を踏みしめることができるはずだ。
「島は沈むかもしれない。けれど、貴方達の心のなかにはあるでしょう。これからどうしなければならないのかを。諦めない心があるでしょう」
 ゆかりの言葉に人々は考えるだろう。
 己が今何をすべきなのかを。

 泣きわめき、取り乱すことではない。
 少なくとも『今』は。
 それだけで人々は希望を保つことはできないまでも、捨てることはないと歩みを停めない。
 ゆかりは、何もかも諦観に塗れた瞳を振り払うように声を上げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』

置き土産としては最悪の部類ですねー…。さて、急ぎませんとねー。
陰海月、飛びながら勇士たちの手伝いをしなさい。お願いしますよー?

霹靂は私と共に避難民のところへでも。
ええ、UCで呼び出した結晶に触れてもらい、内部に避難を。今回は、個室多めの日本家屋になってますよー。
霹靂は、走るよりも空中駆けた方が早いと思いますのでー。

故郷が滅びるのは、とても悲しいことですからねー。しかして、助けられる人は助けますよ。
これでも、諦めの悪い悪霊なので。


陰海月、必要なことあったら言ってね!基本は資材運搬するよ!なぷきゅー。
霹靂、全速力で飛ぶ。クエエエ!



 オブリビオン『堕翼の巫女』の残した最後の悪足掻き……いや、本来の『目的』は達せられていた。
 浮島を浮遊させるための原動力である天使核。
 その暴走によって今まさに浮島は雲海に沈もうとしている。
 はじめからこのためにスパイとして本拠地に入り込んでいたのだ。レジスタンスを潰すのではなく、浮島事態を雲海に沈める。
 それさえ為してしまえば、屍人帝国『オーデュボン』は己の新たな領土とすることができる。

 雲海に沈んだものは、全てが息絶え、例外なく再び浮かび上がった時オブリビオンへと変わる。
 浮島もまた同じだ。
 その土地に在ったものは全てが滅び、オブリビオンを満載した新たな領土となる。悪辣なる意志と思惑は、今まさに実現されようとしていた。
「置き土産としては最悪の部類ですねー……さて、急ぎませんとねー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は独りごちる。
 間諜としての『堕翼の巫女』の為したことは確かに屍人帝国としては最高の形であったのだろう。

 けれど、その最高は此方にとっての最悪。
 されど、その最悪を覆すのが己達である。
「『陰海月』、飛びながら勇士達の手伝いをしなさい。お願いしますよー?」
「ぷっきゅ!」
『疾き者』の言葉に促されて『陰海月』がふよふよと本拠地に収まった飛空艇の修繕のための資材を運んでいく。

「『霹靂』、あなたは私と共に避難民のところへ」
 そう、このレジスタンスの本拠地は勇士達だけが存在しているわけではない。
 この浮島にあった元々の国、其処からの避難民達で溢れている。こればかりはどうしようもないことである。
 浮島毎沈むのならば、彼らもまた浮島から脱出させねばならない。
 けれど、そのために物資や資材を積載できないのは本末転倒である。第二の本拠地候補の浮島へと移動したとしても、勇士達は物資不足から屍人帝国に対抗することもできなくなってしまうだろう。

 それは猟兵である『疾き者』にとっても望むものではなかった。
「お手伝いをしましょう。この内部に避難を。確かに戸惑う気持ちもわかりますがー……」
 それは四悪霊・『届』(シアクリョウ・トドク)と呼ばれるねじれ双四角錐の透明結晶に触れた者を吸い込むユーベルコードであった。
 ユーベルコードで生み出された夕焼け空が続く日本家屋が広がる空間は、避難民を退避させるための手段としてはうってつけのものであったことだろう。

 これならば、避難民達を飛空艇に全て乗せきることができなくとも、相当な人数を『疾き者』が運ぶことができる。
 けれど、問題がある。
 如何に切羽詰まった状況と言えど、ユーベルコードで出来た空間に吸い込まれるというのは未知なる経験である戸惑う者たちだっているはずだ。
「故郷が滅びるのは、とても悲しいことですからねー……」
 わかっているのだ。
 同じ故郷を失った者であるからこそ、彼らの悲哀がわかる。
 やるせない気持ちの置所さえ今はわからないだろう。そんな彼らに信じろと言われて信じることはできないだろう。

 けれど、それでも『霹靂』が空を飛んで人々を運んでくる。
 懸命に困難に立ち向かう者の姿が、人々にどう映ったのかは、人々の心の内にしかない。
「しかして、助けられる人は助けたいと思っていますよ。失っても、失っても、それでも歩みを停めない限り、何かを手に入れることもできるでしょうからねー」
 それが人というものである。
『疾き者』の言葉に促された人々が次々と透明な結晶の中に吸い込まれていく。
 身の安全は保証される。
 けれど、心の安全は保証されるだろうか? どれだけユーベルコードの中が安全であっても、人の心までは守ることはできない。

「だからこそ、人の心は人自身が守らねばならない。できるのは手助けだけですのでー」
 わかっていることだ。
 だからこそ、諦めない。
 己達は悪霊。されど、諦めの悪い悪霊なのだ。今でも思っている。この浮島が沈まぬ方策はないのかと。

 諦めない限り、人の歩みは終わらない。
 ならばこそ、活路もまた輝くのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
あのヤロー、最後にとんでもない置き土産遺していきやがったなッ!?
ともかく急いで飛空艇を動かせるようにしてこの島からとんずらしねえとッ!

相棒、式神で人手を増やすぜッ!
「…式、召喚【築き大太郎法師】」
式神を各場所に配置して力仕事をさせるぜ。これで少しでも飛空艇の整備や修繕が楽になりゃいいんだが。

国の祭事を司る巫女達も気にかけとくか。自分たちの中にスパイがいた事を気にしてるかも知れねえしな。相棒、同じ巫女として慰めときな。

にしても天使核の暴走にいち早く気付いた事といい、本当に成長したなエイルの奴。
「…視点がやっぱ親戚のおじさんみたいだよ、凶津」


【技能・式神使い、慰め】
【アドリブ歓迎】



 紅の鬼面がカタカタと不愉快そうに歯を鳴らしながら、忌々しい計略に寄って激しい地鳴りを告げる浮島の様子に叫ぶ。
『あのヤロー、最後にとんでもない置き土産を遺していきやがったなッ!?』
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)にとって、それは最後っ屁というにはあまりにも用意周到なものであったことだろう。
 それはオブリビオン『堕翼の巫女』がもたらした最後の策略であった。
 彼女の目的は屍人帝国『オーデュボン』に対して反抗するレジスタンスの一掃である。
 そのためにスパイとして潜り込み、本拠地の場所を知らしめ、大軍勢でもって叩き潰そうとしていた。
 だが、それ以外にも彼女の計略は密かに行われていたのだ。
 天使核の異常暴走による浮島の沈下。

 この地鳴りはそのためである。
『ともかく急いで飛空艇を動かせるようにしてこの島からとんずらしねえとッ!』
 しかし、大軍勢との戦いによってレジスタンスの飛空艇は一隻も喪われていなかったとしても、大なり小なりの損害を受けている。
 中にはもう飛行することが叶わない飛空艇もあった。
 それらをバラし、整備し、修繕してなんとか飛ばせることができたとしても、時間が足りないのだ。

 なにせ、本拠地毎雲海に沈めようとする敵の策略である。
『相棒、式神で人手を増やすぜッ!』
「……式、召喚。【築き大太郎法師】」
 凶津の言葉に桜が頷く。その瞳がユーベルコードに輝き、式神【築き大太郎法師】(シキガミ・キズキダイダラボッチ)が召喚される。
 大工姿の巨人の式神が本拠地の整備場に降り立ち、その大工道具や自慢の巨躯を振るって重量のある資材を運び込むのだ。

 しかし、それでも差し迫った時間以上に避難民の数が問題であった。
 彼らを島の外に連れ出さなければならない。
 この島と共に雲海へと沈めば、待つのは死だけである。他の猟兵達の気遣いもあってか、なんとかパニックには陥っていない。
 けれど、それも飛空艇の数や乗る事のできる人数に限りがあれば、どうなるかわかったものではない。

『修繕は楽になっているようだが……こういう時はできることはなんでもやるってもんだぜッ! 相棒、同じ巫女として巫女の連中を慰めときな』
「……わかった」
 スパイであった『堕翼の巫女』は、元々この国に仕えていた巫女の集団の中に紛れ込んでいた。
 その事実を知った巫女たちが気にしているかもしれない。
 そうなっては本来人々を導き、慰撫する者の意味がなくなってしまう。不満と混乱を抑えるためには彼女たちの力こそ今必要なのだ。

 その必要性を受けて桜が駆け出そうとして、こちらにやってきていた少年『エイル』とぶつかる。
「……ッ! すいません……!」
 大丈夫ですか、と桜の手を取って『エイル』は手を引いて起き上がらせる。
「急いでいる所にぶつかってしまって……大丈夫ですか?」
 今まで少年であった『エイル』の顔はもうどこにも幼さはなかった。 
 あったのは決意に満ちた表情であった。
 初めて会った時とは違う。庇護されるだけの存在ではなく、誰かを守るために戦う男の顔がそこにはあった。

「巫女様たちのこと、お願いします」
 そう言って『エイル』は駆け出していく。
 彼もまたこの緊急事態に為すべきことを為そうとしているのだろう。そんな彼の背中を凶津は息を吐き出す。
『天使核の暴走にいち早く気がついたことといい、本当に成長したな『エイル』の奴』
 それはほんのりと寂しさも混じっていたかもしれない。
 これまで自分たちが守る存在であった者が手の中から羽撃くのを見たような。
「……視点がやっぱ親戚のおじさんみたいだよ、凶津」

 桜の言葉に凶津は、そこは『お兄さんだろッ!』と叫ぶ声が聞こえた。
 こんなときだからこそいつものやり取りが心を慰めるだろう。
 凶津たちは少年がそうしたように己たちも出来ることをなそうと本拠地を走るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
【焼肉パーティ】
「ふははは!
焼き肉食い放題で魔力満タンな我に不可能はない!
いでよ、我の操るアンデッドが乗る【死霊船団】よ!」

空中に描かれし魔法陣より現れるは、空飛ぶ幽霊船の大艦隊!
我の艦隊は魔力さえあれば星の海すら渡るのだ!
雲の上くらい簡単に飛んでみせよう!

「浮島が沈むというなら、我が魔力でそれを阻止してみせよう!」

浮島の底部に死霊船団を向かわせ、艦隊の全推進力で島を支えようではないか!
我の二つ名、腹ペコぺったん番長の名は伊達ではないっ!

……あれ?
我、漆黒の魔女とか、そういうかっこいい二つ名じゃなかっただろうか?

「……くっ、ここで魔力切れか。
焼き肉……」

死霊船団は浮島ごと雲海に沈んだのだった。


ルクス・アルブス
【焼肉パーティ】

師匠の魔力が全解放されています……!
そうか、さっきの焼肉で師匠の肉ゲージが満タンになったんですね!
さすがです。

あとは、燃費が良くなって、ぶっぱ癖を直して、胸が大きくなれば完ぺ……まだ結構ありますね。

それはそれとして、それではわたしも【クラリネット狂詩曲】で大地のダメージを癒していきますよ!
師匠の【船団】とわたしの癒しで時間を稼ぎますから、レジスタンスのみなさまはその間に脱出を!

ステラさん!
若干の危険は感じますけど『エイル』さんはお任せしました!
……あーえっと、離してあげてもいいとは思いますよ?

っと、さすがに大陸ごとは消耗が激しいですね。
わたしもここまで……焼き肉作……(がくっ)


ステラ・タタリクス
【焼肉パーティ】

え?まだこのタグ?

いえ落ち着いて
今は緊急事態
戦いに出ていない者が巻き込まれるなどあってはいけません!
【バトラーズ・ブラック】

フィア様とルクス様が時間を稼いでいる間に
メカニック、航海術、集中力、瞬間思考力を駆使して
使える船を全て応急処置して飛ばします
怪力も使って少々強引な手段を取ることも辞しません

時間が足りない……!
残る手段は【ガレオン・チェンジ】
18人という数は少ないですが
最後まで修繕で残っていた職人くらいは乗せて退避できそうです

ああ、島が沈んでいく…勇者と魔女とともに…

「やむを得ない犠牲でした」
私がエイル様と(仕方ないのでセラフィムV様は横にいてもいい)二人きりになるための…



 焼肉パーティ。
 もはや、勇者パーティという名は有名無実と化したのかもしれない。
「え?」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はあまりの緊迫感とのギャップに風邪を引きそうになっていた。
 緊急事態である。
 落ち着いて。落ち着いて。ビークール。そんなふうに彼女はメイドとしての立ち振舞を忘れまいとしていた。
 なんだか釈然としないくくりの中に自分がいるという事実から目をそらしただけとも言うが、天使核の暴走に寄って浮島が沈むという現実は変わらないのだ。
「戦いに出ていない者が巻き込まれるなどあってはいけません!」
 兎にも角にも己がなさねばならぬことは唯一つ。

 それは飛空艇の修繕である。
 オブリビオンの大軍勢を退けたとは言え、どの飛空艇も無傷というわけではない。飛行に支障をきたしている飛空艇だってあるのだ。
 避難民や物資を運び出すためには、この大空の世界ブルーアルカディアにおいては飛空艇が必要不可欠。
 地続きになっていないことが、こと緊急を要する時にネックとなっているのだ。
 時間さえあれば、飛空艇の修繕はできる。けれど、その時間が足りないのだ。

「ふははは! 焼き肉食い放題で魔力満タンな我に不可能はない! いでよ、我の操るアンデッドが乗る死霊船団(アンデッド・フリート)よ!」
 空中に描かれる魔法陣より現れるのは、そらとぶ幽霊船の大艦隊。
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)はこれまで蓄積した焼き肉の量に応じて魔力を蓄え、全快となった膨大な魔力で持って招来した幽霊船を浮島の底部へと走らせる。
 彼女の幽霊船の歓待はフィアの魔力によって星の海すらも渡る。雲の上など造作も無いことである。

 そして、彼女が何をなそうとしているのかをルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は知る。
「師匠の魔力が全開放されています……!」
 あまりにもまばゆい魔力の輝きにルクスは感嘆の声を上げる。
 そう、先程までの焼肉定食食べ放題によってフィアの魔力ゲージならぬ肉ゲージが満タンになったのだ。
 流石です。
 いや、そうか? そうなのか? ルクスの色眼鏡では? と普段ならば思うところであるが、輝くユーベルコードの光は尋常ならざるものであった。

「あとは燃費が良くなって、ぶっぱ癖を直して、胸が大きくなれば完ぺ……まだ結構ありますね」
 冷静に為ると、そうでもなかった。
 流石であるところはあるのだけれど、それを覆うほどの弱点というか、こう直してほしいなぁってところが多い。
 しかしながら、フィアの行動がレジスタンスたちが本拠地から退去するための時間を稼ぐために必要なことであったのもまた事実である。

「浮島が沈むというのなら、我が魔力でそれを阻止してみせよう!」
 フィアの操る幽霊船たちが次々と浮島の底部に張り付き、噴出する推力でもって浮島の沈下を阻もうとしているのだ。
 しかし、それだけの魔力をもってしても、沈下を止めることはできなかった。
 船体が悲鳴を挙げている。
「我の二つ名、腹ペコぺったん番長の名は伊達ではないっ!」
「師匠、それ色々混ざってますし!? それはそれとしてお手伝いしますよ!」
 ルクスのクラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)によって、んぅんむ、んぅ、んぅんうぃむゃむぃむ! と色とりどりの音色が幽霊船を修復し、ダメージを癒やしていくのだ。

 この際音色のことはとやかく言うまい。
「ステラさん! 若干の危険は感じますけど『エイル』さんはお任せしました!」
 離してあげてもいいとは思いますけど! とルクスは余裕なくフィアの援護に回る。
 そんな彼女たちの決死の時間稼ぎを受けてステラの瞳がユーベルコードに輝く。

 バトラーズ・ブラック。
 彼女のメイドとしての使命感。そして『エイル』への若干歪んでるんじゃないかなーって感じの忠誠心が天を衝くが如く限界突破していく。
「お任せください」
 彼女はメイドである。
 言うまでもなく。たまにおかしなことになっているけれど、根本的にメイドなのである。ならばこそ、今をおいてその力を発揮するのは当然であった。
 己の中にあるメカニックとしての知識、航海術、集中力、瞬間思考。彼女が用いる事のできる全てをを持って飛空艇に応急処置を施していくのだ。

 この際怪力すぎて『エイル』少年にドン引きされるかもとかそういうのは度外視である。
「時間が足りない……!」
「ステラさん、ここはもう大丈夫です!」
 そんな目まぐるしく働くステラに『エイル』が声を掛ける。飛空艇の修繕は完璧ではないが、それでも一人ではないのだ。
 彼女がガレオノイドであることを知る『エイル』は求めている。ステラが飛空艇に変身し、一人でも多くの人を救うことを。

 ならばこそ、彼女はメイドとしてたおやかに微笑むのだ。いつものぽんこっつはどこにもない優雅なお辞儀であった。
「頼みます!」
 少年『エイル』の顔は、少年の顔ではなかった。
 そこにあったのは、男の顔であった。自分が何をなさねばならないのかを知る顔であった。
 ステラはその顔に一抹の寂しさを感じたかもしれない。
 あわよくば『エイル』と二人きりになることができるやもしれないと思っていただけに。

 いや、まあ、それ以上にやむを得ない犠牲で勇者と魔女が雲海に沈んでいく……ってやって慰めてもらおうかなって思っていたわけではないはずである決して!
 そんなやり取りが発生しているとも知らずフィアは己の魔力ゲージならぬ肉ゲージを膨大に消費しながら浮島の沈下にあらがっていた。
「師匠、流石に大陸ごとは照応が激しいですね! わたしもここまで……焼き肉作……」
 ルクスが限界までユーベルコードによって幽霊船を修復していたことにより、フィアの背中に倒れ込む。

 重いわ! と空気を読まないフィアではなかった。
 我、漆黒の魔女とか、そういう格好いい二つ名があったはずだけど、いつのまに腹ペコぺったん番長って名前になったんだっけ? とか思っていたのだ。
 あれーおかしい。
 いつのまにそんな面白おかしいことに成っていたのだと。いや、全部自分が名乗ったというか、行動の全部が帰ってきただけっていうか。
「……くっ、ここで魔力切れか。焼き肉……」
 魔力が切れたことによって幽霊船が瓦解し、消えていく。フィアとルクスが同時に倒れ込む。

 けれど、彼女たちが浮島と運命を共にすることはなかった。
 青い鎧の巨人『セラフィムV』の掌が彼女たちを受け止め、飛空艇に変身したステラの甲板の上に乗せられる。
 勇者と魔女は『鉄板V』の夢を見る。
 きっと忘れがたき肉の味。
 焼き肉パーティの一時。
 きっともう二度と会えないかもしれない。そんな予感を感じながら、それでも青い鎧の巨人のは征くのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
これはまた用意周到だね
でもまだ終わったわけじゃないから
慌てず飛空艇の修理に注力するよ
まだまだ諦める時じゃないさ

必要な部品を複製創造で創って渡そう
一度見ないといけないけど
それさえ満たせれば供給できるよ

停滞の権能が目立つけど
これも割とインチキ臭い能力だよなぁ

同じものが同時に複数湧き出るというと
何かを彷彿とさせるけど
…まあ、大丈夫だよね

心配せずとも大丈夫ですの

邪神の言う事じゃなくて
猟兵としての勘を信じようか

いよいよ危なくなってきたら鉑帝竜に搭乗
小型の飛空艇かゴンドラくらいなら
足で掴んで飛べるから逃げ遅れた人を一緒に運んでいくよ
最終手段として邪神の聖域もあるけど流石にね

エイル君達も無事だといいんだけど



 屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオン『堕翼の巫女』の計略は用意周到というしかないものであった。
 本来の目的であるレジスタンスの本拠地の陥落。
 それが彼女がオブリビオンの大軍勢を引き入れた一手であった。
 けれど、彼女の計略は、さらに大掛かりなものであったのだ。猟兵たちが己の存在を嗅ぎつけてきたことを逆手にとって、彼らをレジスタンスの本拠地に釘付けにし、その間に己は浮島を浮遊させる動力である天使核を暴走させる。

 自身が敗れても浮島は沈み、大地に住まう生命の尽くは滅びる。
 再び浮島が雲海より浮かび上がった時、そこはすでに『オーデュボン』の領土と化すのだ。
 その悪辣さを前にして、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は歯噛みする。
「でもまだ終わったわけじゃないから」
 確かに浮島の沈下を止める術が今のところ無い。
 ならば、己がすべきことは一つである。慌てずに大軍勢との戦いで傷ついた飛空艇の修理に尽力するまで。
 どれだけ滅びが決まっているのだとしても、晶は告げたのだ。
『堕翼の巫女』の諦観を否定する言葉を。

「なら、まだまだ諦める時じゃないさ」
 晶の瞳が輝き、飛空艇の修繕に必要な部品を複製創造(クリエイト・レプリカ)によって生み出し、勇士達に手渡していく。
「一度見ないといけないけど、補修する場所はわかっているんだよね。なら、そこから重点的にやっていくから、案内してくれないかな」
「わかった! 飛ばせればいいんだ。重要な部分から頼む!」
 勇士たちと協力して晶は、不足している部品の重要度に応じて優先順位を決めて作業を行っていく。

 一度見る必要があるユーベルコードであるが、その条件さえ満たせば供給することは容易い。
 己の身に宿した邪神の権能の一つ。
 停滞が本来のものであろうが、この複製創造も割とインチキ臭い能力であると晶は自嘲する。
 けれど、それでもこの力によって窮地を脱することができるというのであれば使わない手はないのだ。
 それにしても同じものが同時に複数湧き出るというと、何かを彷彿とさせる。
 けれど、まあ大丈夫だよねと晶は納得する。
「心配せずとも大丈夫ですの」

 そんなふうに身の内にある邪神が無邪気に言う。
 そういうことじゃなくて、と晶は思わないでもなかったが、猟兵としての勘を信じることにするのだ。
「それに一人じゃないからね。他の誰かが一緒に手伝ってくれるなら、まだ諦める時じゃない」
 晶は時間が差し迫った時、鉑帝竜に乗る。
 これでいつ浮島が本格的に雲海に沈んでも大丈夫なはずだ。いざとなれば小型の飛空艇やゴンドラくらいなら足で掴んで逃げることもできるだろう。

 一人でも多くの人々を救う。
 そのために使える力はすべて使う。最終手段として邪神の聖域もあるが、あれは本当に最後の手段だ。
「助かります。こちらの作業は完了していますから、晶さんも!」
 そう告げるのは『エイル』であった。
 青い鎧の巨人『セラフィムV』の胸の中に乗り、多くの作業を手伝ってきたのだろう。
 彼らもまた最後の最後まで足掻こうとしている一人であった。
 どれだけ困難が目の前に立ちふさがったのだとしても、これまで猟兵たちが見せた戦いを彼は知っている。

 だからこそ、諦めないのだ。
「わかった。けれど、そっちも無理はしないこと、いいね!」
 晶の言葉に『エイル』が頷く。
 其処に在ったのはこれまで守られてきた少年の顔ではなかったことを晶は知るだろう。
 そして、彼が何をしようとしているのかもまた理解した。
 浮島は確かに沈む。
 けれど、その浮島は人々にとってはかけがえのない故郷なのだ。その思いを知った彼が何をするかなんて、晶たち猟兵はきっとすぐに分かることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…これはやられたな……反省は後回し……兎に角皆を集めて脱出しないといけないね…
…ここで使われている飛空挺の図面を頭に入れておいてよかったよ…
…まずは飛空挺の損傷状態を確認…
…今の資材と時間で修理が間に合う飛空挺とそうじゃない飛空挺を判別…効率的に修理していこう…
…同時に修理後の最大収容可能人数を把握…各飛空挺に避難民やレジスタンスを割り振って行って…
…更に各飛空挺に【旅人招く御伽宿】の扉型魔法陣をマーキング…
…この内部の宿屋を使えば収容可能な人数は増えるし内部空間を介して飛空挺間の移動も容易になる…効率的に載せていくとしようか…



 浮島が地鳴りを立てて雲海に沈下していく。
 それは天使核の暴走に寄って引き起こされた緊急事態であった。
 確かに猟兵と勇士たちはオブリビオン『堕翼の巫女』と大軍勢に打ち勝った。けれど、その勝利に喜ぶ暇すらも彼女は与えない。
 例えレジスタンスを殲滅できなかったのだとしても、彼らが本拠地としている浮島を雲海に沈めれば、己が滅びようとも屍人帝国『オーデュボン』は新たな領土を手に入れることができる。

 そこまで計算づくであったのならば、それは猟兵たちにとって痛烈なる一撃となったことだろう。
「……これはやられたな……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は即座に思考のスイッチを切り替えた。
 反省は後回しである。
 兎にも角にも今なさねばならないことはひとつ。勇士達と共にこの本拠地を離れなければならない。

 しかし、問題なのは避難民たちである。
 彼らの数は多い。そして、戦いに勝利し飛空艇の損失こそなかったものの、その損害は軽微ではない。
 飛行中に出力が落ちれば、そのまま雲海に沈んでしまう。
 そうなれば訪れるのは死でしかない。
「……此処で使われている飛空艇の図面を頭に入れておいてよかったよ……」
 メンカルは即座に本拠地の整備場に入ってきた飛空艇の図面を頭の中に引き出す。
 それと照らし合わせて飛空艇の損傷の状態を確認し、今のレジスタンスが保有する資材で修理が間に合うか、もしくは、重要度に応じて選別していくのだ。

「その飛空艇はこっち……あの飛空艇は重要機関に被弾しているから、すぐに作業を始めないと間に合わない……」
 メンカルの頭の中にはタスクとスケジュールが展開されている。
 この浮島の沈下速度から雲海に沈むまでの時間を割り出す。そう多くはない。けれど、やれないわけではない。
 ギリギリかもしれない。
 けれど、やらなければ全てが水泡に帰してしまう。

「……各飛空艇に避難民とレジスタンスの人員を割り振る」
 メンカルは修繕と飛空艇に乗り込む人員の数まで細かく決定していく。
 彼女の頭の中ではマルチタスク以上に並行に情報を処理し、それを正しく組み上げていくのだ。
「憩いの場よ、開け、招け。汝は旅籠、汝は客亭。魔女が望むは困憊癒やす隠れ宿」
 同時に彼女は飛空艇に旅人招く御伽宿(スパロウズ・ホテル)の扉型魔法陣を付与していく。

 それは触れればガジェットが歓待し、傷と疲労を癒す部屋へと繋がる魔法陣である。
 これならば、飛空艇における積載人数を越えての収容が可能となるだろう。
「助かる……! これなら、避難民たちも余さず救える!」
 勇士達の声が上がる。
 絶望的な状況にあっても尚、希望の芽は芽吹くのだ。
 さらに扉型魔法陣を繋げば、飛空艇間の移動もできるようになる。子供や女性、老人から優先して飛空艇に乗り込んでも、内部空間を介せば、中で家族と合流することもできる。

「これならば安心してくれる……おい、其の旨をみんなに伝えておいてくれ!」
 勇士たちがメンカルの意図を汲み取って号令を掛ける。
 どんな状況にあっても家族が離れ離れになることは不安を齎す。
 不安はきっと混乱を招くし、混乱は恐慌を引き起こす。その心理的な重圧を取り除くためにメンカルは腐心するのだ。
「いつだって、効率的に……けれど、諦めない、あがく心があるのなら」
「何も捨てる必要なんて無い、ですね」
 メンカルのつぶやきに少年『エイル』がうなずいた。

 そう、何も諦める必要なんて無い。
 すでにメンカルたち猟兵は示したのだ。どれだけ困難な道であっても進めば前に道ができる。
 暗闇を歩むのだとしても勇気を持てば篝火になる。
 それを証明するようにこれまでも『エイル』の前に猟兵達は手を引いて導いてきた。

 ならば、今の彼ができることはなんであろうか。
 己がそうしてもらったように。
「『エイル』……君、まさか……」
 メンカルは気がつくだろう。彼が何をしようとするのかを。彼は笑って青い鎧の巨人『セラフィムV』と共に征く。
 その道行きをメンカルは知るだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
わーおデスマーチ!
お仕事楽しいです…
まあ最悪飛べば良かろうな応急処置をして…
けど、浮島一つ消滅…か
どういう風に消えるか時間があれば観察したいけど、流石にそんな時間も無いか
さっさと修理修理

もう一回【Code:M.C】起動
飛べる飛空艇はマシンを乗せて飛んでもらって、ダメージを受けた部分とかはマシンに逐次修理するように指示
動力部がまだ調整が必要な飛空艇は私が直接修理しよう
まだあんまり天使核技術は勉強してないんだけど…まあとりあえず動けばいいっしょ
『メカニック』の腕の見せ所!
題して、何で動いてるか分からないけど動いてるからヨシ!作戦
とりあえず、動くよう手を加えて行って細かい所はマシンに丸投げしとこう!



 浮島の沈下と飛空艇の整備。
 それは言葉にすれば、それだけのことである。事実の羅列でしかない。
 しかし、その状況に飛び込む者にとっては言葉面以上の困難な道となって、あらゆる障害をもって立ちふさがるのだ。
「わーおデスマーチ!」
 お仕事楽しいです……とハイライトが消えたかのような表情になったのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)であった。

 オブリビオンの大軍勢を退けたとは言え、レジスタンスの飛空艇の損傷、損害は少なくないものであった。
 装甲を取り替えるだけで良い飛空艇もあれば、重要機関に打撃を受けた飛空艇もある。
 ざっと見ただけでも頭を抱えたく為るような作業量である。
 多くの猟兵たちが修繕と整備に駆けつけてはいるが、それでも避難民たちの誘導や収容、そういったものなどを考えれば玲がデスマーチと言ったこともうなずけるであろう。
「まあ、最悪飛べば良かろうな応急処置をして……けど、浮島一つ消滅……か」
 玲は作業をこなしながら考える。

 ブルーアルカディアという世界にあって雲海は滅びの象徴であろう。
 如何なる存在であっても雲海に沈めば、滅びる。
 生命であっても無機物であっても。
 その消滅の光景を知ることは難しいことであろう。如何にして消えるのか、時間さえあればそれを観察したいと願うのは玲が頂を求めるからであったことだろう。
「流石にそんな時間もないか。さっさと修理修理」
 思考を切り替える。
 詮無きことは考えても仕方のないことだ。

 彼女の瞳がユーベルコードに輝き、再び多目的小型マシンが召喚される。
 飛空艇の整備でも使った小型マシンたちが戦いの前に行われた経験をラーニングしてさらに最適解を導き出していく。
「飛べる飛空艇はもう飛んでいって大丈夫だから。この小型マシンを乗せていけば、飛びながら逐次修理するように指示を出しているよ」
 玲は整備場が混雑することを嫌ったのだろう。
 急がなければならないときほど、作業するスペースはこざっぱりした方がいい。
 乱雑にものや整備するものが並べば、思わぬ事故によって時間をロスしてしまうからだ。

「わかった。おい、動力部が損傷している飛空艇をこっちに移動させろ!」
 勇士達が玲の言葉にうなずき、動力部が損傷している飛空艇を横付けに移動させる。
 それを見やり、玲は唸る。
 未だ天使核を動力とする技術に関しては勉強不足である。しかし、とりあえず動けばいいのだ。
 それくらいの気概でいかなければ、到底間に合わない。
「こういうときこそメカニックの腕の見せ所! 題して、なんで動いているかわからないけど動いているからヨシ! 作戦」
 いいのかな、それでと誰もが思った。
 けれど、そうでもしなければこの緊急事態を乗り越えることはできないだろう。

 難しい天使核の調節。
 出力がゆらぎ、それを安定させるための調整。それらを勘でやるには心許ないものであったが、そんな玲の背後から少年『エイル』が指差す。
「天使核の出力はモノによって固有のものがあります。元は魔獣の心臓部ですから、この炉に使われているものは、一旦出力が落ちた後、一気に跳ね上がるみたいですから」
 その言葉で玲は完全に理解したことだろう。
 天使核の癖がわかったのならば、その癖をこちらでコントロールしてやればいい。

「ヨシ!」
 玲は謎のポーズを取る。なんです、それ、と『エイル』が笑っている。
 そこにあったのは少年の顔ではなかった。
 もう、そこには庇護されるべき者ではない戦う者の顔があった。これまで見てきた少年の顔とは違う。
 玲は共に笑うことしかしない。
 何を得て、何をするかは、少年の心のままにするべきであろうと彼女は思ったはずだ。

 だからこそ、送り出す。
 少年はいつか一人で歩き出すものだ。その道行きに如何なる困難があろうとも、踏み越えられることを猟兵達は目の前で証明してきた。
「それじゃまあ、いっといで」
 そこらへの散歩に送り出すような気軽さで玲は少年の背中を押す。
 それがどんなに心強いことなのか、きっと彼はわかっていることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
敵の殲滅と戦力増強の一石二鳥…素晴らしい一手ですね、全く!

円滑な物資の搬入や避難民の収容には情報集積が必要
勇士達に通信機配りマルチタスク能力で作業状況把握

「積載スペースがある飛空艇はあちらです」
「東方面に避難民の誘導願います」

エイル様!

ああ、作業はそのまま
『V』へのアクセス許可を頂けますか

ワイヤーアンカーでハッキング
追加演算処理装置に使い作業情報を整理しつつ

先刻のご加勢、騎士として感謝いたします
一角の勇士となられましたね

御分りでしょうが、苦しい状況こそ私達力持つものはその振舞いで周りを鼓舞せねばなりません

互いに前を見据え奮起いたしましょう…っと演算終了
それでは!

指揮続行しつつ重量物運搬に向かい



 屍人帝国『オーデュボン』のスパイであったオブリビオン『堕翼の巫女』の行った計略は確かにレジスタンスを一掃するものであった。
 本拠地を割り出し、大軍勢でもってこれを制圧する。
 それは確実に猟兵の介入を招くものであったのならば、それを逆手に本命である天使核の暴走によって浮島を雲海に沈める。

 そうすれば、浮島に住まう生命は例外なく滅びる。
 雲海に沈んだ浮島は再び浮かび上がった時、オブリビオンを満載した『オーデュボン』の領土として彼らの版図に加えられるのだ。
「敵の殲滅と戦力増強の一石二鳥……素晴らしい一手ですね、全く!」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は屍人帝国『オーデュボン』のやり口に言葉ではそういいつつも、その騎士道精神が燃える炉心を怒りに震わせていたことだろう。

 しかしながら、今はその時ではない。
 やらねばならないことをなさねばならない。このままでは浮島は沈み、レジスタンスや避難民たちもまた雲海に消えてしまうだろう。
 それをさせぬために猟兵達は飛空艇の整備や避難民たちの誘導を行っているのだ。
 円滑な物資の搬入や避難民の収容には情報収集が第一である。勇士達に通信機を配ったトリテレイアは、ウォーマシンたるマルチタスク処理能力でもって作業の進み具合を把握していく。
「積載スペースがある飛空艇はあちらです。こちらの飛空艇には積載荷重が越えてしまいますので」
「わかった。こっちの物資はあっちの飛空艇に……後は、修繕が済んだ飛空艇から空に飛び立たさせる。順次避難民の収容をはじめるから、誘導を頼む!」

 勇士たちと通信機でやり取りをしながらトリテレイアは行動を開始する。
「東方面に避難民の誘導願います。こちらの処理は私が行っておきますので……『エイル』様!」
 トリテレイアは己のアイセンサーに捉えた少年の姿を認め、声をかける。
 彼もまたレジスタンスとして人々の誘導や物資の搬出などを手伝っていたのだろう。今や彼の顔は少年の顔ではなかった。
 あったのは一人の戦士として、騎士として認めうる存在。

「トリテレイアさん、こっちはもう作業終わります。後は、あの物資を……」
「『V(ヴィー)』へのアクセス許可をいただけますか?」
「『V(ヴィー)』の? どうしてまた……」
「ああ、作業はそのまま。いえ、追加演算処理装置に使い、作業情報を整理するためです」
 機械騎士の臨時前線指揮(マシンナイツ・コンダクター)は確かに情報を集め、小型通信機を介して、周囲の勇士たちの能力を引き上げていく。
 意思統一された勇士たちの行動は迅速だ。ならばこそ、青い鎧の巨人である『セラフィムV』もまた例外ではない。

「なるほど。わかりました。きっとだいじょうぶかと思いますが……」
『エイル』がうなずき、再び作業を始める。
 最初こそあどけない守られるべき存在であった少年。しかし、今は違う。先程の戦いぶりを見てもそれは最早疑うことのない事実であった。
「先程のご加勢、騎士として感謝いたします。一角の勇士となられましたね」
 それはトリテレイアにとって偽らざる言葉であった。
 戦いはいつだって人の営みを侵すものである。けれど、時として人を成長させるものでもあるのだ。

 少年『エイル』の横顔がそれをうなずかせるのだ。
「僕は、まだまだです。皆さんがそうしてくれたように、僕もそうしようと思っただけなんです」
 その言葉にトリテレイアは頷く。
「御分かりでしょうが、苦しい状況こそ私達力保つものはそのふるまいで周りを鼓舞しなければなりません」

 もはや『エイル』は守られるばかりではない。『守る者』だ。
 その成長を見たからこそトリテレイアは告げる。
「互いに前を見据え分き致しましょう……演算終了。それでは!」
「はい! 僕もできることをします。どうかトリテレイアさんもご無事で」
 その言葉と共にトリテレイアは『エイル』と背中を向け合って駆け出す。
 きっと彼は成長していく。もっと、もっと。これからもずっと。
 それをトリテレイアは予感していた。

 誰かを守ること。
 争いを振り払うこと。
 それらを彼は猟兵たちから学んだのだ。理不尽に奪われることがないようにと。
 誰かのためにと言う祈りを受けて、少年は今、男に変わったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
浮島ごと落とすか。なかなか豪快でちょっと評価が上がったぜ。
とは言え結局のところレジスタンスを絶やせる訳でもないんだから、浮島一つ、勿体ないとしか言いようがねえな。

さて、飛空艇は足りてるかい?
すし詰めだときついだろ。
おい、そっちの奴等こっちに来な。ああ、そこの奴らもだ。
荷物も一緒で良いぞ。

何十人か集めて魔法陣を生み出し、「これに触れな」と。
『無限収納』を展開してユーベルコード製の空間にご招待。
(ひたすらに広い空間です)
出ようと思えば出れるがこっちが呼ぶまで勝手に出るなよ。お空の上だと落ちるしかねーからな。

十分に確保したら『スルト』に搭乗。第二候補の浮島に飛び立ちましょう。



「浮島ごと落とすか。なかなか豪快でちょっと評価が上がったぜ」
 屍人帝国『オーデュボン』のオブリビオンである『堕翼の巫女』は滅びれど、彼女の計略は未だ生きている。
 レジスタンスという勢力を潰すために武力は必ずしも有効であるとは限らない。
 彼らを叩き潰したとしても必ず勇気ある者たちは逃れ、雌伏の時を経て必ず牙を剥く。ならばこそ、オブリビオンである『堕翼の巫女』がなさねばならなかったのは何か。

 その本拠地の壊滅である。
 このブルーアルカディアの世界にあって雲海に沈むことは即ち滅びである。
 レジスタンスたちの本拠地である浮島毎雲海に沈めさせれば勇士達はオブリビオンに。浮島は新たなる『オーデュボン』の領土となって還ってくる。
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、その練り上げられた策略に笑っていた。
「とは言え結局の所レジスタンスを絶やせる訳でもないんだから、浮島一つ勿体ないとしか言いようがねえな」
 しかし、己たちの故郷が雲海に沈むということは、この地に住んでいた人々にとっては精神的な打撃となるだろう。

 こればかりはどうしようもない。
 天使核が消耗し、高度が保てなくなれば如何なる浮島であっても雲海に沈むしか無い。だからこそ、人々は魔獣を狩り天使核を得て日常を存続させているのだから。
「さて、やることをやらねーとな」
 アレクサンドルはレジスタンスの飛空艇を見やる。
『オーデュボン』の大軍勢との戦いで消耗した飛空艇は整備や修繕を行わなければならない。

 本来であれば腰を落ち着けて、勝利に湧くところだ。
 けれど、浮島の沈下という緊急事態に在っては、それもおぼつかない。勇士たちが慌ただしく駆け回る整備場の中で彼は飛空艇の状況を見やる。
「人を乗せれば物資が乗らず。物資を乗せれば人が乗らず、か。すし詰めはキツイだるな」
 ならばと彼の瞳がユーベルコードに輝く。
 小さな魔法陣が虚空より現れる。
 それは、無限収納(ナンデモハイル)。触れたものをユーベルコード製の無限収納スペースに収めるものである。
 出ようと思えばいつでも外に出ることができる。

 そこに人々や物資を収納しようというのだ。
「おい、そっちの奴らこっちに来な。ああ、そこの奴らもだ。荷物も一緒でいいぞ」
 アレクサンドルは避難民達に声を掛ける。
 どうあがいても飛空艇の数が足りないのだ。如何に子供や女性、老人を優先にしても飛空艇の絶対数が足りない。
 ならば、あらたな移動手段を用いればいい。
「これに触れな」
 そう促して人々を魔法陣に触れさせる。たちまちの内に人々が消えたことに避難民たちはどよめく。

 けれど、心配するなとアレクサンドルはいつものように自信満々に告げるのだ。
「大丈夫ですよ。この人のことは信頼できますから」
『エイル』がアレクサンドルの行動をフォローするように避難民たちに言う。
 不安もあるだろう。
 故郷を失う喪失感に打ちのめされてもいるだろう。
 けれど、今を生きることが何よりも優先されることだと説く彼の言葉にしたがって人々が次々と無限収納スペースに入っていく。

「出ようと思えば出れるがこっちが呼ぶまで勝手に出るなよ。お空の上だと落ちるしかねーからな」
 そういって笑うアレクサンドル。
 簡単に言っているが、大事である。そんな彼に『エイル』が頭を下げる。
「ありがとうございます。どうかみんなをよろしくお願いします」
「ああ、任せておけ。少年はどうするよ」
 乗っていくか? とアレクサンドルはオブリビオンマシンである『すると』を指差す。
 アレクサンドルは『スルト』と共に第二候補の浮島に避難民を送り届けるのだ。

『エイル』は首を振る。
「いいえ、僕は……いえ、俺はもう少し足掻いてみようと思います。喪うばかりだなんて、そんなこと良いことだとは思えない。だから」
 だから、皆さんのようにやってみるんです、と少年であった『エイル』の顔は男の顔に変わるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月29日


挿絵イラスト