4
キャンディズ・クラッカー

#キマイラフューチャー #お祭り2021 #ハロウィン

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#お祭り2021
🔒
#ハロウィン


0




※注意事項(必ず目を通して下さい)※

※猟兵同士の模擬戦シナリオ(PvPシナリオ)です。
 勝敗はサイコロで決まるので、負けるのが嫌な人は参加しないでください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※


●スパーク・アンド・ポップコーン
「ハロウィンか」
 チョコレート・ミルクレープで幾重にも包装され、中にはたっぷりのカスタード・クリームと、濃厚な生クリームホイップが、とろける質感と共に繊維層を表現し、最後にさっくりとした食感の円形ビスキュイの白茶色が蓋をする。多すぎる中身を掬いながら食べるのも、濃厚なクリームを楽しんだ後、口中をリセットする為に食べるのも、それは好みによる所だ。カロリー兵器等と揶揄するのは十中八九きのこ派であると、赤砂色の髪をしたキマイラの少年は固く拳を握った。
「ハロウィンだな」
 ココアパウダーで上品に彩られた表面、傘下の繊維層に見えるのは幾重にも折り重ねられたデニッシュ生地で、柔らかさと歯切れの良さが病み付きになる。
 中身は単純に生クリームホイップの白色で染め上げられ、滑らかな食感と、振りかけられたココアパウダーが、上品な苦味を演出し、口中を二色の風味が染め上げる。
 飾り気が無い、地味、無理に都会に染まった田舎の味などと揶揄するのは十中八九たけのこ派であると、藍色の髪をしたキマイラの少年は奥歯を噛んだ。
「主張は変わらないんだな」
「この時期だけは、例えお前だとしても、相容れない」
「決着は何時も通り」
「きのこたけのこ武闘会だ。あ、今年は猟兵部門も出来るらしいぜ、観戦の時だけ休戦ってのはどうだ?」
「マジで? 賛成賛成! その時だけ菓子の話はナシなー!」
「協定成立だな! そんじゃ猟兵部門のチケット仕入れとく!」
 キマイラフューチャーの確執は何処まで行ってもこの程度だ。

●グリモアベース
「和菓子屋さんのわらび餅として旗揚げして乗り込むのが過激派、何時も通り、わらび餅食べながら、それとなく布教するのが穏和派じゃな。何の話かって? キマイラフューチャーのハロウィンの話よ」
 海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は穏和派且つモダン派である事を主張する様に、南瓜餡入りのわらび餅を突いた後、猟兵達にキマイラフューチャーのハロウィンについて纏められた資料を配っていく。
「今回は依頼って言うより企画じゃな。キマイラフューチャーでは毎年、ハロウィンの時期にきのこクレープとたけのこドーナツの雌雄を決する為の、きのこたけのこ武道会が開催されるんよ。今年はこれに猟兵部門が出来たけー、良かったら遊んで行くと良え。キマイラフューチャーがどんな世界かは資料の通りよ」
 キマイラフューチャーは人類滅亡後の地球らしき惑星に、人類の遺した明るいサイバーパンク都市だ。人類の代わりに生き残ったキマイラ達が面白可笑しく、日々を適当に生きている。
 衣食住については都市の適切な場所を適切なタイミングで三度ノックする、俗にコンコンコンと言う行為を行えば、其れ等が支給されるシステムが全土に実装されている。とある科学者が作り出したシステム・フラワーズの一端、その名残だが、今を生きる彼等にはどうでも良い事だ。求める物が必ず支給される訳では無い為、面倒な場合は商店で購入し、生活を営んでいる。
 猟兵達はこの世界を襲撃する怪人を成敗出来る憧れのヒーローとして、キマイラ達の注目の的だ。動画アップで即百万再生を達成する事が出来る上、彼等に見つかれば無限握手会は避けられない。
「と、そんな世界じゃな。予選は田舎の闘技場で行われるよ。決勝は都会の摩天楼になるんじゃねえかなあ……ま、これは確定情報じゃねえよ。それと」
 注意点が有ると思い返した様に鎮は語り掛ける。
「観客が居るし、当然動画も撮影される。盛り上がるようにすると良え。後は……こっちは個人的なお願いになるんじゃけど……猟兵同士じゃと相性によっては千日手になるけー、3手で決着するようにして欲しい。面倒じゃとは思うけど、宜しく頼む」
 そう言って鎮は丁寧に頭を下げ、各地で行われる予選会場のマップを渡し、提示した。



●挨拶
 紫と申します。
 今回はキマイラフューチャーのハロウィンシナリオ、PVPのご案内となります。
 冒頭の通り、サイコロによって勝敗が決定致しますので、勝ち負けよりも、【楽しむ事】を主眼に置いて、ご参加下さい。
 また特殊なシナリオ形態でも有りますので、以下の ※注意事項※ に目を通した上で、ご参加下さい。


※※※※※注意事項※※※※※

(1)「きのこ派かたけのこ派か」と「対戦相手の猟兵と、一対一で戦うプレイング」を書いてください。合わせプレイングで対戦希望してもOK。

(2)マスターがきのこ派とたけのこ派のプレイングをひとつづつ選びます。ただし、「負けた相手を貶める内容」が書かれたプレイングは採用しません。

(3)きのこ派を10の位、たけのこ派を1の位として、d100して出目の大きい方を勝者と決め、リプレイを執筆します(同値なら引き分け)。プレイング内容はリプレイの描写にのみ影響し、勝敗には全く影響しません。

(4)最終的に、リプレイ執筆終了時点で勝利数の多かった派閥の勝ちです。

※※※※※※※※※※


●シナリオについて
・シナリオ目的
 きのこ派、たけのこ派に別れて楽しく戦いましょう!
 1章は予選、2章は決勝です。共に【冒険】です。

※ペア参加推奨
 二人一組での合わせ推奨シナリオです。
 迷子防止のタグ付けをして頂けると助かります。

・ギミック
【大勢の観客】
 観客達は猟兵を一目見ようと、予選決勝に関わらず、会場が溢れる位に集まります。動画撮影、写真撮影、握手、サイン諸々準備万端で押し掛けています。闘技場では彼等がより楽しめる様に対戦を行うと良いでしょう。

【3手】
 3手で決着が付くようにすると切りが良いと思います(3合では有りません)。
 大体1手、塊として、大まかにこう動く、と明記する感じで大丈夫です。
 1手の間に使用出来るユーベル・コードは1種のみです。

●その他
・1章毎にopを制作します。
・PSWはあまり気にしなくても良いです。好きに動いてみて下さい。
・途中参加:歓迎
 

●最後に
 なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
 宜しくお願い致します。
92




第1章 冒険 『きのこたけのこ武闘会(予選)』

POW   :    パワーと体力で押しまくる

SPD   :    スピードとテクニックで翻弄する

WIZ   :    賢く策を弄して立ち回る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

村崎・ゆかり
きのこ派
相対:ミリア(f32606)

ミリア、あなたとこんな形で決着を付ける日が来るとはね。
運命の残酷さを嘆いても始まらない。いくわよ。

●一手
まずは小手調べね。「高速詠唱」で不動金縛り法。動きが止まったところを、薙刀の石突きで「串刺し」にするような突き込みを。

●二手
宝貝『太極図』を「範囲攻撃」で全域展開。自分も含むあらゆるユーベルコードを無効化する。
後は技能勝負。薙刀の石突きを棒術として使って、「衝撃波」で「なぎ払い」つつ、ミリアの反撃は「受け流し」て。

●三手
呪術の基本にして奥義、不動明王火界咒を「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」で使用するわ。
「オーラ防御」で反撃を耐える。

何とか決着ね。


ミリアリア・アーデルハイム
たけのこ派
相対:ゆかりさん(f01658)と

そんな!ゆかりさんがきのこ派だなんてッ
どうして天はかくも過酷な運命を与えるのでしょう(拳を胸に空を仰ぐ)

屏氷万里鏡で防御及び撹乱(残像)
箒で空中機動
ゆかりさんは多種多様な式を遣われますから対応が必要ですね

先制で① 約束の地 たけのこ派が勝って欲しいという陣営の観客の願いを叶え、たけのこ派に有利な戦場に変更
②永劫炉の使徒で致命的なUCに対抗
③ルーンソード使用ミゼリコルディア・スパーダを誘導弾として数に対抗
通常攻撃は魔法弾です。

嗚呼、何故こんな事に?
あんなに一緒だったのに(ネタ)
貴女と仲良くたけのこドーナツを食べたかった・・・ふふ、クリームついてますy


一一・一一
「キノコ組」を指定,アスカ・ユークレースと戦いを希望
相手への呼び方はアスカさん,しゃべり方は敬語,相手との関係は恋人

キノコとタケノコというのは正直あまり好みの差はないですが
目的はアスカさんとの手合わせです、本気でいきます

1手目
「ライトニング」と「イーグレット」を使った遠距離からの【Q・T・S】で狙撃を狙います。相手の攻撃をよける気はないです

2手目
「スパイダー」と「各種手榴弾」を使った【蜘蛛の巣】で中距離からトラップを仕掛けます

3手目
相手を動きを『見切き』でよけつつ,超至近距離で【我流蹴術】を放ちます

アドリブ等歓迎です


アスカ・ユークレース
タケノコ組
一一・一一との対戦を希望
「恋人だからこそ手加減はしない。どっちが勝っても恨みっこなしの全力勝負よ!」

戦法
空間を広く使う
誘導弾の弾幕で攻撃、あえて弾速、軌道をバラバラにしフェイントをかける
威力と派手さのある弾幕で誘惑し足元に置き弾のトラップをしかける騙し討ちも


反撃
視力で見切り瞬間思考力により回避or誘導弾での相殺

王手
UCで動きを止め無力化、最後の一瞬まで油断はしないように

勝ったら
「貴方の背中を守りたくて頑張りましたから」
負けたら
「強いわね、惚れ直したわ……!」


地籠・凌牙
【地籠兄弟】アドリブ歓迎 きのこ派
ハロウィンらしさを出す為に黒猫の着ぐるみを着て出場!
どっちも好きだから、どっちかっていうとせっかくの大会だから盛り上がるようにと思って参戦した方がでかい。
とはいえバトルはバトルなので、正々堂々真っ向勝負だ!
この為に日頃の不運を浄化してもらったしな。
陵也、本気出さなかったら許さねえかんな?

というワケで真正面から格闘戦主体で突っ込むぜ!
あっちはガードが固いがちょっと抜けてるところあるから、そこを突いていく感じで。
UCを使ってきたらこっちもUCで応戦して相殺を狙う。

何だかんだでこうして真っ向からぶつかったことなかったから、勝ち負けより楽しかった方が強いな。


地籠・陵也
【地籠兄弟】アドリブ歓迎 たけのこ派
せっかくの大会、盛り上げられるなら盛り上げないとな。
というワケでハロウィンらしさを出す為に凌牙同様、白猫の着ぐるみを着て参戦だ。
不運で勝負が左右されないように【浄化】しておいたし、正々堂々とした戦いができるハズだ。
わかってるよ、簡単に負けるつもりはないぞ?

『バールのようなもの』で接近戦をする。
基本的に凌牙が先に攻め込んでくるだろうから、防戦と見せかけて隙を突いて反撃する感じでいこう。
多分俺がUCを使うタイミングでUCを使うだろうが、それはそれで盛り上がる演出に観客は思ってくれそうだな。

……たまにはこうして思い切りぶつかるのも悪くないな?



●きのこたけのこ武道会のパンフレット
 キマイラフューチャーは惑星全てが都市化している世界だ。よって、田舎と言う言葉が持つ意味は、普段から人影が少ない、またはアミューズメント施設が少ない、その程度の事だ。或いは、キマイラ達には記された文字も読めず、存在意義の不明なバーチャル遺跡周辺の事を指す。
 ただし、ことハロウィンの時期に限り、あるスイーツがポップするこの地域には、広大な闘技場が設置された。
「エモいし映えるし、、ゴールドエクスペリエンスだし! 摂取したカロリーの消費にもなるから、闘って決めようぜ、だから闘技場各地に作ろうぜ!」
 この世界でも有名な発起人は、そんなノリだったと、今も当時の動画が残っている。この動画の熱はすぐさま、キマイラフューチャーのソーシャル・ネットワーキング・サービスを通じて、ノリの良い人達が次々と闘技場を作ったと、パンフレットには記されていた。これが、きのこたけのこ武道会の始まりである。
 尚この記事の出展元はキマイラフューチャーの住民の間では信憑性に欠けるネタを提供する事で有名であり、パンフレットにこの記事を引用するのは、半ば毎年恒例のネタとなっている。
 何故、ハロウィンの時期に支給される二種のお菓子が提供される場に闘技場が有るのか、キマイラフューチャーの住民は、誰も知らない。

●キノコ派のゆかり、タケノコ派のミリア。擦れ違うさだめ
 各地に点在するきのこたけのこ武道会場は例年以上に賑わい、チケットの売切が続出し、各会場のS席チケットを手に入れた者達は互いが何方の派閥であるかを確認した後に競艇を成立させ、入れ込んだ者にチケットを譲っていた。また、今年は各部門の優勝賞品に猟兵の部のチケットが贈呈される程だ。
「会場のボルテージが最高潮に達する中、まずはきのこ派の入場です。一つに結わえられた三つ編みと紫色の瞳が可愛らしい、村崎・ゆかり選手の入場です! 拍手と歓声でお迎え下さい!」
最後の催し物として、会場のボルテージが最高潮に達した頃、実況が高らかに猟兵の部の名前をコールする。
 会場の割れんばかりの拍手と歓声に、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、白一色の霊符を数羽の鴉に変じさせ、会場上空に煌めく紫色の燐光で、きのこの文字を描く。鴉が留まった観客の方を向いて、片目を瞑ってみせると、キノコ派の住民達が一際大きな歓声を送り、皆がリズムを合わせて拳をきのこの唱和と共に三度、力強く振り上げた。
「思わぬファンサービスにキノコ派の皆様が活気付いていますね! 続いてタケノコ派、セミロングと黒の士官正装風の六つボタン、スラッとした印象を与える白のボトム、持っている箒は得物でしょうか、イカしたファッションの、ミリアリア・アーデルハイム選手の入場です! タケノコ派の皆様は同じく、拍手でお迎え下さい!」
 ミリアリア・アーデルハイム(永劫炉の使徒・f32606)は、礼儀正しく観客席に向けて頭を下げた。チャームポイントとして紹介された黒い髪のセミロングが揺れて、琥珀色の瞳を上げながら、羽織った外套をばさりと捲る。
 姿を消したかと思うと、棕櫚箒に乗ったミリアリアが、空から闘技場の中央にふわりと降り立った。
「そんな! ゆかりさんがきのこ派だなんてッ……」
 コールの時から動揺していたのか、わなわなと唇を震わせ、信じられない物を見るように、目を見開き、未リアは掌で口元を抑えた。
「ミリア、あなたとこんな形で決着を付ける日が来るとはね」
 対して、ゆかりは何もカモを諦めた様に目を伏せてから、何時もの強気な表情を作り直した。合わせるようにミリアはぐっと唇を引き締め、目を閉じる。
「どうして、天はかくも過酷な運命を与えるのでしょう」
 そうして、拳を胸に当て、空を見上げて、儚げに瞳を開く。
「運命の残酷さを嘆いても、始まらないわ」
「そう、です……ね。今はタケノコ派のミリアとして、きのこ派のゆかりさんを打倒致します」
「ええ、あたしも。今はキノコ派のゆかりとして、たけのこ派のミリアを全力で討滅するわ。いくわよ!」
 ゆかりが目前で印を結ぶ。印の形、流れて来る不動明王の真言、ミリアは即座にどの様な呪文の行使なのかを察知し、即座に対策を講じる。
「たけのこ派の皆様、強く、強く願って下さいませ! タケノコクレープの良い所を、存分に思い浮かべて下さいませ!」
 其処に紡がれた願いこそが、彼女、ミリアとの約定の証。闘技場に願望が収束した光が降り注ぎ、ミリアは白一色の霊符から伸びた羂索に四肢を封じられながらも、たけのこクレープの世界を、この戦場全てに創造した。
「約定は成された 汝の望む楽園を此所に顕現せん!」
 至る所にたけのこクレープが生え、きのこ派への理解を求めるクレープが、カスタードと生クリームの沼を作り出し、チョコレート・ミルクレープで編まれた綱が、踏み込みに入ったキノコ派であるゆかりを束縛し、行動を制限する。其処へ、虚空に展開された魔法陣から、掌大の魔法球が生み出され、高速でゆかり目掛けて飛来する。
「ミリア……この世界、それ程なのね。それ程、きのこドーナツを認められないのね! なら、あたしにも考えがあるわ!」
「嗚呼、何故こんな事に……?」
 魔力で強化されたと思しきミルクレープの綱はそのままに、ゆかりは異なる印を結び、呪を紡ぐ。一方で拘束を脱したミリアは箒に乗り、空へ逃げる。
「万物の基は太極なり。両儀、四象、八卦より生じし森羅万象よ。その仮初の形を捨て、宿せし力を虚無と為し、悉皆太極へと還るべし!」
 全てを凍てつかせる冷気が掛けられた太極図型の首飾りに渦を巻いて集中する。普段の彼女の力とは違う発露に、それが何らかのマジックアイテムだと、急ぎ、携帯しているケージに手を伸ばす。
「生命を成す炉の炎 ここに勅を発すれば 抗う事ぞ……」
 収束し、吹雪き始める無慈悲の光に相対するように、永劫路に焼べるユーベル・コードを番人の元に転送する魔法具の中で、淡く炎が揺らめいた。
「疾!」
「六ヶ敷!」
 展開される二重の無効化術式。タケノコクレープの世界が、宝貝、太極図の発する絶対零度の霊力に屈し、音を立てて徐々に徐々に凍結し、澄んだ音を立てて砕けていく。効果を吸われ、全てを破壊するまでには至らず、ミリアの攻撃手段を封じるまでには至らなかったが、ゆかりには、それで十分だった。
 ぬかるみ、鼻腔を埋め尽くす甘い香りを振り払いながら、身を屈め、上方に跳躍する。妨害用に展開された魔法珠を、体外に張り巡らせた霊力で逸らして受け流し、気流の乱れに足を取られたミリアとの間を詰める。同時、霊力を込め、ミリアの頭を兜割気味に薙ぎ払う。
 ミリアは一瞬の肉薄に歯を噛みながら、棕櫚箒を介して障壁を張り、霊力による衝撃を防ぐ。箒を操作し、上に逃げようとするのを防ぐ様に、石突による乱撃は、ミリアの行動を封じる事が出来るものの、ゆかりの方も滞空時間は限られ、決め手とはならない。
「千日手ってこういう事よね……埒が明かないわ」
 ゆかりは体力消耗を考えて、一旦魔法珠の追撃を避けながら距離を取り、冷静に九字を切り、呪を紡ぎ始める。
「あんなに一緒だったのに……冷えて凍ってしまった。貴女と仲良く、たけのこクレープを食べたかった。それだけだったのに」
「あたしも、あなたと仲良く、きのこドーナツを食べたかったわ……終わりにしましょう」
「はい、終わりにしましょう。きのこ派のゆかりさんに慈悲を」
 これまでの対立している様な言動は、ほぼほぼ演技だったが、観客達は切れ間切れ間のドラマに涙していたり熱くなったり、名シーンとして動画アップしたりリアルタイム実況動画アップしたり、マニアックな解説動画やスローモーションムービーで動きを仔細にしていたりとクリエイティブに動いている、会場の盛り上がりは好調なので何も問題は無い。
「ノウマク、サラバタタギャテイビャク、サラバボッケイビャク。サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ」
 紡がれる呪と切られる九字に呼応して、展開された白一色の霊符に従い、霊力光で描かれた五芒星が、それを機転に拡大する。練り上げられた霊力がやがて火気を纏い、会場全体を熱気で包囲しながら、次第に焔となった霊力が、巨大な龍の形を取って術者を取り巻くように、ゆっくりと蜷局を巻き、解放の時を待ち侘びる様に、咆吼する。
「慈悲深き剣よ。我が手の元を訪れよ。我が作りし正しき印をなぞれ。悪逆も善行も、平時を慈しむ農民も、全てを許し、静かな終わりを言い渡そう。血に濡れるのは汝の清らかな刀身では無く……」
 紡がれる言葉と共に召喚された刀身にルーンの刻まれた魔法剣が、更に複雑広大な法陣を描き、飛翔する度にその本数を増やしていく。小さな陣を描き終わる度に、10本。それはミリアリアが歩いて来た道筋そのものでもあった。本数が1000を超える頃には、広大な宙空を埋め尽くし、慈悲深き剣龍は、地上で荒れ狂う火龍を撃つ時を今か今かと、主人の命を待つ。
 互いに汗を吹き出しながら、目を瞑り、魔力と霊力を振り絞り、今にも手綱を離れて暴れ出しそうな術式を紙一重で制御しながら、解放の一言を口にする。
「サラバビギナン ウンタラタ カンマン!」
「我が手である!」
 宙空の剣龍に解き放たれた倶利迦羅龍が、魔力を纏った剣龍にその牙を突き立てる。灼熱の身体を残った剣が内側からその焔の身体を裂きながら、自身の身体も次第に熱で溶解し、魔力光を散らして霧散する。絡み合い、食い合いながら、二匹の龍は空を駆け、霧散する。
「……素晴らしい、術式でした」
「ミリア、あなたのもね」
「有難う、御座います」
 暫しの沈黙の後、ミリアは疲労感に抗えず、ふっと笑って、意識を手放した。ゆかりは膝を付きながらも、最後まで意識を手放す事は無く、この予選はきのこ派、ゆかりが制した結末で幕を閉じた。
「何とか、決着ね。結構鍛えたと思うけど、まだまだね」
 試合終了後、ゆかりは残った霊力を少し分け与え、魔力欠乏で気絶したミリアを助け起こし、肩を担いで、一先ず会場を後にした。
「決勝まで時間が有る筈だから、お互いにもう少し回復したら、きのこドーナツとたけのこクレープ、此所の住民に見つからない様に食べましょ。ミリア」
「はい、是非、そう致しましょう!」

●バイカラー・ユークレース
「続いて、キノコ派、長い黒髪の落ち着いた青年、しかし、その手に持つのは重量超過してんじゃねって感じのゴツいスナイパーライフル二丁! 一一・一一選手です。皆様、拍手でお迎え下さい!」
 一一・一一(都市伝説と歩む者・f12570)は、柔らかな微笑みを浮かべて軽く手を振り、声援と拍手に応えて、目を閉じる。意味深な仕種に、観客達は自然と息を呑む。
「キノコとタケノコと言うのに正直、あまり好みの差は有りませんが……」
 其の儘、次の実況に合わせて、聞こえない様な声で呟き、耳を澄ます。
「対するタケノコ派は、二色に揺らめく瞳が印象的な、アスカ・ユークレース選手です。同じく、拍手でお迎え下さい」
 小さな足音が闘技場に響いて、一一は黒瞳を開く。二色に揺らめく澄んだ宝石色の瞳が強気な色に染まっていた。
「恋人だからこそ、手加減はしない。どっちが勝っても恨みっこなしの全力勝負よ!」
 アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の宣言に会場が戸惑いにどよめき、実況は早くもファン止めます宣言をし始めた観客を察知し、弄り始めた。実際美男美女の恋人なので、祝福の冷やかしや、恋人同士でも食べ物の違いで対立するのか、等と戸惑いと有らぬ誤解が広まっていた。
「では遠慮無く。本気で行きます」
 アスカがスナイパーゴーグルを下ろした瞬間、二人は大きく孤月を描きながら後ろに跳躍する。宙空への跳躍と同時、ピストル式の機械弩が装填された弾頭を放つ。使用者の意図を汲み取る液体金属特殊魔法弾頭が、中間地点で拡散し、相手の魔力を追尾する魔弾へと変化し、その結果を待たず、装填された次弾で更なる弾幕を張る。三重の遅速拡散弾頭で徹底的に一一の行動を制限する。
「アスカさんらしいですね」
 だが、その一切をフェイントと見切ったのか構わず、二つの轟音が硝煙と共に鳴り響く。スコープでの目付も無しに87分の1秒で精密に速射された鉛弾は、人の身体を食い千切るには余り有る獣の牙だ。
 張られた弾幕と共に瞬間思考力を拡大。銃弾一つ一つが鈍足に見える世界で、襲来する精密無比な狙撃を紙一重で見切る。
 一一はばら撒かれた誘導弾から直撃する物だけを連射性能の有るスナイパーライフルで撃ち落とす。アスカと同じ様に、極限集中下による思考速度の高速化は、超速で迫る弾雨を酷く遅く見せる。その中で、冷静にライトニングの総弾数と、オート・リロードの時間を計算し、誘導弾の相殺を狙い、致命となる誘導弾のみを的確に捌く。薬莢の落ちる音が響き、互いの足が地面に着いた瞬間、二人の時空間が途端に速度を取り戻す。
 誘導弾巻くの着地位置を粗方把握、アスカの性格上、殆どがフェイントだと見抜き、通用しなければ次に取る手は恐らく、同じ。
 キューブ状のワイヤー射出装置を張り巡らせ、そこら中に手榴弾によるトラップを仕掛けて行く。同時に派手な色の誘導弾頭が各所で炸裂、全て致命傷で無いのは、等と考えていれば、きっちり一一を狙撃する速射弾頭が放たれる。
 四方に飛び回りながらも、アスカもトラップを仕掛ける癖を見抜いているのか、ワイヤーには簡単に掛からない。
 そういて、無害だと割り切っていた超鈍足弾頭が身体に刺さりそうになる。尚も気を緩めないアスカに思わず笑みを零しながら、上方に仕掛けたワイヤにスパイダーを引っかけ、そのまま上空からの蹴撃。アスカは派手な色に紛らせていた飛行する魚の幻影に、背後からの迎撃を命じ、一一はスパイダーを繰り、蹴撃を寸止めした。
「……強く、なりましたね」
「貴方の背中を守りたくて、頑張りましたから」
「嬉しいです。その言葉が聞けただけでも、本気でやり合えて良かったと思えます」
 魚が牙を剥き出しにして頸動脈に食い付こうとするのと、蹴撃がアスカに届くのは、ほぼ同時だった。結果、恋人同時の銃撃戦は、両者寸止めによる引き分けによる幕引きとなり、小さな拍手によって二人の選手の健闘が称えられた。
 派手さと技巧の精緻さの合わさった、玄人の銃撃戦と、互いの高い理解度によって成立していたこの一戦は、キマイラフューチャーのサバイバルゲーム愛好家達に高く評価され、暫くワイヤートラップと置き弾戦術が流行る事になるが、それはまた、別の話だ。

●タケノコ派の白猫とキノコ派の黒猫
「せっかくの大会、盛り上げられるなら盛り上げないとな」
「ハロウィンらしさと言えば仮装だよな!」
 物静かな双子の兄、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は淡々としながらも、何処かのんびりとした口調で白猫のぬいぐるみを着込む。
 対して、ノリが良い双子の弟、地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は歯を見せて快活に笑いながら、黒猫の着ぐるみを着込んだ。
「次の選手の入場です。今回は双子の兄弟での出場だそうです。まずはきのこ派、黒い猫の着ぐるみは会場でウケています。地籠・凌牙選手! 皆様拍手で出迎え下さい」 
 肉球の様な音が出るキマイラフューチャーらしい謎オプション付きの着ぐるみを来て、緑色の瞳が僅かに観客に見えるだけの状況は、その格好で真面目に戦えるのだろうか、という不安のどよめきと、可愛らしい、イベントにぴったりだと会場の熱気を二分していた。満ちていた。
「続いて、タケノコ派、白黒の毛並みの猫は短毛種と長毛種で別の戦争が起きそうです。白猫の着ぐるみを着た地籠・陵也選手! 皆様、拍手でお出迎え下さい」
 会場の二分した雰囲気にも構わず、二人はピンク色の肉球が付いた手を振った。
「盛り上げる為とは言え、バトルはバトルだ。正々堂々真っ向勝負、頼むぜ」
「わかってるよ、簡単に負けるつもりはないぞ? 凌牙」
 案外身体にフィットする着ぐるみハンドを握り、凌牙はぶらりと得物を提げた白猫との距離を詰める。コメディホラーの様相を呈した絵面は、先ず着ぐるみを着て一瞬で懐に潜り込んだ、猟兵の身体能力を知らしめた。続いて、容赦なく打ち込まれる両拳の乱撃が容赦無く人体急所を狙っている状況が、猫の喧嘩では無く、これが技術に裏打ちされた真っ当な殴り合いであると観客達の不安を瞬く間に払拭する。
 そして、明らかな怪力で繰り出される其れ等の打撃を、難なく金属棒一本で捌き続ける白猫の技量も、驚嘆に値する物が有った。寧ろ何故折れないのか、観客達は其方の仕掛けが不可解でどよめいていた。
 正面からの打ち込みが通用しないことに笑い、側面へのフェイント・ステップ。身体を戻して肘を突き入れ、と見せ掛けてこれもフェイク、着ぐるみで思い通りにならない足で鞭のようにしなるロー・キックによる崩し、までも見抜かれ、僅かな隙に差し込まれた鈍器の突き込みを皮一枚で避け、僅かな隙に腹へ拳を叩き込む。痛撃には遠い物の、たたらを踏んだ陵也は、咄嗟に得物を捨て、孤児院の院長から譲り受けた形見の杖を、凌牙に向けた。同時に、凌牙も着ぐるみの中で予め仕込んでいた糸で、自身の鱗を乱暴に剥がす。
 急局地的に出現した翡翠色の猛吹雪が、対象を凍てつかせようと荒れ狂う。凍てつく筈の身体から、現れた地獄の炎が、翡翠色の雪ごと、凍てついていく身体に過剰な熱を与え、よろめきからの復帰に遅れた白猫に対して身を屈め、突き上げる拳で顎を綺麗に打ち抜いた。勝ったキノコ派、黒猫の凌牙は腕を上げ、試合終了の合図と共に、兄に手を差し伸べた。
「……たまにはこうして、思い切りぶつかるのも悪くないな?」
「何だかんだでこうして真っ向からぶつかったことなかったから、勝ち負けより楽しかった方が強いな」 
 不意に兄から投げ掛けられた言葉に、凌牙はもう一度、歯を見せて笑った。観客達は翡翠色の吹雪と、その後、篝火の様に灯った炎が大きくなり、溶けていく演出は予選大会中屈指の美麗さだと動画をアップし、実際に二人がどの程度の力のやり取りをしていたのかを検証した動画のアップが盛んに行われ、その本気度と外見のギャップでキマイラフューチャーのネット界隈を騒がせる事となった。

●見つからないように食べるのがマナー:1
「どっちも、カロリー高めよね」
 きのこドーナツを切り分けてミリアの皿に半分を載せる。中から真白な良く泡立てられたホイップクリームと、網目状のデニッシュ生地が覗く。
「たけのこクレープの独特な所は中身の二種類のクリームの分離と、この外層のチョコレートミルクレープの薄さと重層ですよね。キマイラフューチャーの技術でしょうか」
 きのこドーナツを受け取ったミリアは、たけのこクレープを半ばで切り分けて、ゆかりの皿に載せた後、輪切りにしたクレープを頬張った。溶け合うチョコレートミルクレープと二種の濃厚且つ上質なクリームが口中で広がって行く感覚に舌鼓を打つ。
「きのこドーナツの生地も狂気的な折り返しなのよね……この辺り、やっぱり誰かの欲望が形になったのかしら」
 歯切れの良い生地を口に放り込み、フレッシュクリームとココアパウダーの苦味を楽しんだ後、たけのこクレープをミリアと同じく切り分けて頬張った。
「あら、クリームがついていますよ」
「え、何処かしら?」
「少々、お待ち下さいね」
 ポケットに仕舞っていたハンカチを取り出して、ミリアは不意にゆかりの顔を固定し、顔を近付けて、頬を布地で拭う。
「取れました」
「ありがと、ミリア」
 二人は合わせた様に微笑んだ。

●見つからないように食べるのがマナー:2
恋人同士の 一一とアスカは仲良く分け合って、二種類のスイーツを食べ比べた。時に差し出されるフォークに、互いが戸惑う時間が有ったとか、決勝までの間は寛いでいた様だ。

●見つからないように食べるのがマナー:3
「で、だ。合間に食べ比べしてみようぜ」
「そうだな」
 反応の多い凌牙に比べて、陵也は終始黙々とスイーツを食べ進めていた。味については互いに甲乙付け難く、武闘大会で決めるのは有る意味自然なのでは、と考えたが。
「いや、やっぱおかしいよな?」
「この世界ではおかしくないんだ。だから、良いんじゃないか?」
「祭り好きにも程があるよなあ……」
「それだけ平和な世界だからな」
「それも、そうか……」
 誰にも、あの様な思いをさせないと誓う兄と、あの時の無念と怒りによって報復を誓う弟は、何となく推し黙り、スイーツを完食した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『きのこたけのこ武闘会(決勝戦)』

POW   :    パワーで相手をねじ伏せる!

SPD   :    スピードで相手を突破する!

WIZ   :    賢さで相手の裏をかく!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●きのこたけのこ武道会・決勝前アナウンス
「各地の予選結果が出揃い、集計も終了しつつあります。今年は猟兵の部の設立も有って、例年以上の賑わいになっていますね。まだまだ猟兵さんの姿を見たいと言う要望が、ネット上で流れており、運営としては、君達、本当に猟兵さんのこと大好きだな! 私も大好きなんですよ! と言う事で即可決致しました。猟兵さん以外も、今年は敗者復活戦をご用意しております。再び闘技場の土を踏む覚悟がある皆様、猟兵の皆様、是非、奮ってご参加下さいませ! また、今年はきのこドーナツ派が優勢、のようです」
 きのこたけのこ武道会運営ボランティアは今年、無料且つ無条件で猟兵さんの戦いを見れると言う事で大盛況だったらしい。各会場の敗者復活戦チケットは飛ぶ様に売れていく。
「決勝の舞台は猟兵さんが心置きなく戦える指定区域内の摩天楼。既に各種交通整理は終了しております。周辺区域には近付かないようにお気を付け下さい。猟兵さん本当に何でも出来ちゃう方が多いですからね! 巻き添えによる絶命なんて、猟兵さんも望んでませんからね!」
 広大な都会のデジタルマップ数箇所を示し、きのこたけのこ武道会の決勝戦は迫る。集計に時間が掛かる為、当日までに終わらない為、俗にハロウィン後夜祭などと呼ばれている現状だ。二種のスイーツによる対立も、この辺りで大分マイルドになり、大型スクリーンが有る周辺では企画店舗や屋台、グッズ売り場が並び、通りはより一層の賑わいを見せていく。

●きのこたけのこ武道会・決勝戦開催
 念の為、注意事項を再度記載するが、勝敗はサイコロで決まる。負けるのが嫌な猟兵は参加を控えて欲しい。また、この企画の構造上、ペアで参加するのが望ましい。
 他の注意事項4種については、手間を掛けさせてしまうが、マスターコメント欄を参照して欲しい。

 その上で、前回の予選で敗北、または引き分けとなった猟兵は、敗者復活戦を勝ち進み、決勝戦に顔を出す事になる。気兼ね無く、予選で戦った相手を誘って参加出来ると言う認識で構わない。

 決勝戦の会場はキマイラフューチャーの都会、摩天楼の広大な敷地を使用する事になる。予選と違い、高低差が多く、入り組んだ市街は身を隠す場所も多いだろう。市街地戦を想定した作りであり、それぞれの配置場所は本人にしか伝えられず、索敵から始める事になる。
 大まかな流れは【索敵】→【会敵】になるだろう。
 【索敵】は索敵をしながら何かをしても良い。あえて【索敵をしない】、自身の居場所を何らかの行動で知らせる等の選択肢もある。好きな様に動くと良い。
 【会敵】の後は予選と同じく、大まかな塊としての【3手】で詰める事になる。

 【索敵】の際に使えるユーベル・コードは【1種】
 【会敵】で使用出来るユーベル・コードは【1手に付き1種】だ。

 また予選と同じく、観客が喜びそうな行動を取ると尚良いだろう。

 猟兵は渡されたマップを把握し、武道会の決勝に挑む。
村崎・ゆかり
きのこ派
相対:ミリア(f32606)

また会えて嬉しいわ、ミリア。まだたけのこ派にこだわっているようだけど、その信念に敬意を表して叩きのめしてあげる。

●索敵
黒鴉召喚で満遍なく。奇襲しようとしたら容赦なく逆襲する。

●第一手:方術『空遁の法』
地を蹴って空間転移。ミリアの背後から薙刀の石突きで全力攻撃するわ。

●第二手:九天応元雷声普化天尊玉秘宝経
薙刀で交戦しつつ、一撃入ってミリアが怯んだところに、落雷を落とす。

●第三手:魂喰召喚
ここまでよく戦ったわ。もう休んでもいいんじゃない? といいつつ、非実体化した薙刀の穂先でミリアの精神を薙ぐ。


終わったわね。きのことたけのこのレシピもらって帰ろうかしら。


ミリアリア・アーデルハイム
たけのこ派
相対:ゆかりさん(f01658)と

簡単に宗旨替えできるならば、この大会に出場などしませんよ。
たけのこに生きたけのこに死す、それが運命。参ります!

マントで姿を隠し、建物の影を選んでゆっくり①の準備を。
【索敵】はクリエイションで鷹(嚆矢)を創造、鴉達と推測される捜索者を見つけるよう依頼

① 書道セットの半紙を使用して炉焔獄永劫牢 大物に対応
② 氷塵蒼焔花で数に対応
ゆかりさんを抑えればチェックメイトですよね?本人向けに③ロケット頭突き
え、胸を借りるってそういう意味じゃない!?そうですか・・・

お見事です、いい戦いでした・・・
私達いい仕事しましたよね?
みんなにもお土産持って帰りましょうね!



●決勝戦開始
「予選では、たけのこ派ミリア選手の作り出した、たけのこクレープの世界を凍てつかせ、空に逃げる彼女を追撃。最後には炎と剣の龍の一騎打ち。派閥の違う友人との対立と言う悲しきドラマを、ド派手な演出と共に見せ付けてくれました。決勝戦ではどの様な戦いを繰り広げるのか、今から楽しみです。きのこ派、村崎・ゆかり選手が、市街地に足を踏み入れました!」
 互いの位置が割れてしまうと本末転倒となってしまう為、中継は各地点に置かれた定点カメラと全方位撮影可能なカメラを搭載した球体ドローンによる撮影となっている。村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、その一つに向かって、微笑みながら、軽く手を振る。予選で鴉が留まっていたキマイラの女性は熱心なファンとなったのか、一際大きな黄色い声を上げていた。
「対するは、友人に敗れた後、敗者復活戦に名乗り上げ、見事勝ち抜きました。剣龍を作り上げたマジック・ガール。箒は果たして得物なのか、乗り物なのか、はたまた、ただの趣味なのか。情熱のたけのこ派、ミリアリア・アーデルハイム選手です」
 ミリアリア・アーデルハイム(永劫炉の使徒・f32606)はカメラに向かって、丁寧に頭を下げる。宙空に投影されたモニタに映る友人のプロフィールと映像ログを見て、二人は唇を釣り上げた。
「それでは、試合開始です!」
 実況の合図と共に、二人はすぐさま行動に移る。

●嚆矢
 ミリアリアは外套を纏い直し、透明化の機能を解放する。
 頭に入れたマップから、近くの路地へと歩を進め、物陰に身を隠す。集中、紡がれる詠唱と共に掌大の小さな法陣が展開され、それを潜るように、理知的な双眸を持つ鷹が現れ、ミリアの手の甲に留まる。
「嚆矢、彼女はこう言った場面では、式神と呼ばれる黒い鴉を呼び出す事が多かったので、今回も恐らく、そうだと思います。彼等の捜索をお願いします。視界の同期は此方で」
 二重の詠唱によって作られた六角形の氷片がミリアリアを取り巻く様に展開され、鷹の視界を丸々写し取る。理解したと首肯して、嚆矢と呼ばれた鷹は空へと飛び立った。
「それでは、準備を始めましょう」

●黒鴉
「急急如律令。汝は我が目、我が耳なり」
 霊力を集中し、詠唱と共に印を結ぶ。52枚の白一色の霊符が、淡い紫色の燐光と共に虚空に五芒星を形作る。一枚一枚が徐々に濡れ羽色の輪郭を帯び、近未来を思わせる摩天楼を、主人の命に従い、飛び回る。
「ミリアなら確実に、この手はバレてるわよね……目を潰しに来るかしら? 奇襲したら容赦なく、と思ってたけど……ミリアは、そう言うタイプじゃないわよね……」
 奇襲の目が無いとすれば、遠距離からの大火力。実は此方も彼女らしくはない。細かに有利な状況を作っていくのが、彼女のやり方だろうと、ゆかりは推測した。
「この広さだと、罠は潰しておきたいわね」
 上空と同時、網目の様な市街地を低空飛行させる鴉達から送られて来る情報を何時も以上に神経を尖らせて処理し、頭を抑えた。
「分かってはいたけど、下手なオブリビオンを見付けるより厄介ね……」

●下準備
 ミリアリアは嚆矢が送って来る情報に舌を巻く。予想できた事とは言え、実際に52匹もの鴉が、統率の取れた動きで空と地上を駆け回ると言うのは、思っていた以上に動きを制限される。
「いざ敵に回ってこうして使われると、ゆかりさんの黒鴉は本っ当に、いやらしいですね……!」
 嚆矢が映し出す映像を読み取り、どうにか見つからない路地裏を辿り、定期的に半紙を建物の影、或いは建物の中に設置する。最低限四方を囲める様に、見つからず配置して行くのは、手間の掛かる作業だ。少しでも窓を見上げれば、濡れ羽色の監視役が此方に迫る。
「……嚆矢も既に見つかっている筈ですが……妙な動きをされていますね」
 ミリアリアは疑問を抱く。そもそも今は、既に自身の捜索を半ば打ち切っている状況では無いのかと。

●静かな進展
「……半紙か。これ、どう考えても発動媒体よね。幾つばら撒いているのかしら。鷹は監視役に徹しているみたいだし、どうしましょうか」
 そろそろ此方の居所も鷹が知らせる頃だろう。此方の目を掻い潜る手段には見当が付く。
「現世の裏に無我の境地あり。虚実一如。空の一心によりて、我が身あらゆる障害を越えるものなり。疾っ!」
 鴉には半紙の回収を命じながら、地を蹴り、宙空へと転移し、踏み込みすぎた鷹へと居場所を曝す。ゆかりが愛用する薙刀、その石突が逃げようとした鷹の頭を捉え、痛打に身を痙攣させた。墜落しようとする鷹を捕まえて、主と繋がれている魔力の径路を辿る。
「……当たり前だけど、偽装とダミーは噛ませるわよね! ああもう!」
 思わず苛立って目を瞑り、頭を掻く。力技だが幾つかに地点は絞り込めた。黒鴉による行動制限は確実に効果を現している様だ。


「嚆矢、捕まってしまいましたか……思ったより早かったですが、これで、ゆかりさんの位置は絞り込めます。同じく行動に移りましょうか」
 捜索が打ち切られた事を推測し、ミリアリアは回収されたであろう半紙は、屋外の物だけだろうと見積もった。時間的にも、取った行動も、彼女を焦らすには効果的だった筈だ。
「嚆矢と繋げていた存在しない無数の魔力径路、その先には実際に存在する複数の偽装径路。単純ですが、これだけでも頭が痛くなりますからね……」
 建物を出て透明マントを起動、大凡、ゆかりから最も近い位置に、黒鴉の警戒を掻い潜り、ゆっくりと目視出来る地点へ移動する。
 予想通り、近場から潰しに掛かっていたゆかりを見付け、ミリアリアは小さな声で詠唱を紡ぐ。
「生命を成す炉の炎 慈悲の手を伸べ、骸を抱け。其が静寂に還るまで」
 紡がれる言の葉と共に打たれる二度の柏手、遠目から確認できた人物を、半紙を媒体に現出した氷色の浄炎が鳥籠に捕らえた罪人の魂を罪業ごと蒸発させようと、猛り、うねる。
「また会えて嬉しいわ、ミリア」
 だからこそ、脱出不能な牢獄を空間ごと掘削し、空間を踏破し、背後から聞こえた馴染みの有る声に、ミリアリアは驚きながらも振り向いた。頭上に迫り来る石突に、障壁の展開。小気味良い音が終わらない内に、すぐさま距離を取る。
「その様子だと、まだ、たけのこにこだわっているようね」
「簡単に宗旨替えできるならば、この大会に出場などしていません。たけのこに生き、たけのこに死す。それが運命。参ります!」
「そう、なら……その信念に敬意を表して、叩きのめしてあげる!」
 ゆかりの踏み込みを、魔力で肉体を強化しながら、つぶさに捉え、障壁を展開。胴を薙ぐ一閃を防ぎ、ミリアリアは詠唱を紡ぐ。
「氷獄に現の花が咲くならば柵木に花を告うものか……」
 ミリアリアの小さな唇の動きを捉え、ゆかりは片手で紫揚羽を操り、軽い打ち込みを続けながら、印を結ぶ。
「九天応元雷声普化天尊」
  低姿勢、下段から腹部への突き込みを取らせ、運足によって身体を回しながら背後へと回り込み、ミリアリアが上体を反転させるのを諦め、詠唱に集中するのを予測し、肩を石突で打ち付けた。
「咲、け!」
「疾っ!」
 取らせたのはミリアリアも同じ。完成した詠唱に呼応して、摩天楼に触れた者を燃やす蒼炯の氷華が舞う。ほぼ密着状態のゆかりが花弁に触れ、身体を蒼炯の炎に焼かれながらも、径路に霊力を巡らせて、最悪を防ぐ。残酷ながらも美しい氷の華を彩る様に、雷神の稲光が、呼び掛けに応え、摩天楼に振り注ぐ。
 よろめく頭で魔力障壁を張り巡らせ、致命を回避すると、摩天楼が衝撃で破壊され、崩落し始めた屋上で、浮遊する身体を、霞がかった頭で思考を回す。
「ゆかりさんの方が、背、高いんですよね」
 棕櫚箒で一瞬、足場を作り、距離を取る。残った魔力を集中し、それを蹴る。顎を揺らす垂直突進に、ゆかりは静かに呪を紡いだ。
「ここまでよく戦ったわ。もう休んでもいいんじゃない? 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり。」
 実体を無くした紫の刃が揺らめく。一欠片残っていた闘争心を、描かれる軌跡が綺麗に薙ぐ。勢いを失ったミリアの、自分より小さい身体を抱き止める。
「それから、胸を借りるってそう言う事じゃないから」
「そうですか……お見事です。良い、戦いが出来ました」
 微笑んで意識を手放したミリアの短い黒髪を撫でて、崩落するビルの瓦礫を蹴って下へ下へと駆け抜け、最後は空間ごと掘削し、市街地へと生還する。
 きのこ派の勝利を、司会が高らかに歌う。予選と変わらない内容の濃さに、観戦者達は大いに盛り上がっていた。

●試合終了後
「終わったわね。索敵まで込みでミリアとやると、最終的に詰め将棋になるって分かっただけでも、良しとしましょうか」
「それは私の台詞です……それは兎も角、私達、良い仕事しましたよね?」
「結構騒がれてるみたいよ。良かったわね。疲れたから色々遠慮してって言ったら皆すぐ引いてくれたしね」
「それじゃあ、お土産探して、みんなに持って帰りましょう!」
「そうねえ、きのこドーナツとたけのこクレープのレシピを探して、持って帰ろうかしら? 存在するかどうかすら怪しいけど。どうかしらね?」
「ちょっとした冒険になりそうですね」
 結果的に、数多有るバーチャル遺跡の一つにレシピが存在する事が判明し、二人で攻略する事になったが、良い土産話になった様だ。こうして、二人が過ごすキマイラフューチャーの小さな日々は過ぎ、日常が戻ってくる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

地籠・陵也
【地籠兄弟】アドリブ歓迎 たけのこ派
純粋に楽しかったし好評だったしで、敗者復活戦をクリアしてもう一度凌牙とバトルだ。
前回は接近戦がメインだったが、今度は遠慮なく魔術を使わせてもらうぞ。

●索敵
双子だから何を考えてるのか互いにわかるんだよな。
道なりに進んでいけば会えるだろう。……ほらな?やっぱりこっちにくると思った。

①【霧氷侵蝕】
気温を下げることで動きを鈍らせる。

②【改良術式【秘された魔術書】】
距離を取らせないことで詠唱時間を稼ぐ。

③【【昇華】神罰顕現・虚数光華】
②で距離を稼いでいる間に【多重詠唱】しておき、いいタイミングで思い切りドン!だ。

ふふ、楽しかったな。
たまにはこういうのも悪くない。


地籠・凌牙
【地籠兄弟】アドリブ歓迎 きのこ派
めっちゃネットにアップされてんじゃん俺らの動画。
せっかくだから期待に応えてもっと盛り上げるべく決勝も陵也とぶつかるぜ!楽しかったしな。

●索敵
陵也の行くとこってだいたい何となくわかるんだよな。別段探る必要は感じねえ……やっぱりここにいた!
やっぱ双子だな、俺たち。

①【煉獄の黒き逆鱗】
【火炎耐性】の応用で炎を身に纏って気温低下の影響を防ぐ。

②【【喰穢】黒淀顕現・穢竜招来】
こいつに【おびき寄せ】て俺自身への集中を避ける。

③【飛翔せし煉獄の黒竜】
でかいのくるならこっちもでかいのだ!②の間に黒竜に変身してブレスをお見舞い!

あー楽しかった!
思い切り身体動かせたし満足だ!



●集計中の一コマ
「めっちゃネットにアップされてんじゃん俺らの動画」
 地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は集計の合間に屋台で売られていたポップコーンを食べながら、相棒を操作する。小型端末の罅割れた液晶に映るのは 容易くミリオンに達している武闘会動画だ。大まかに解説系と名シーン系、ノンカットの三種が多く、兄弟の予選最後のやり取りは名シーンの一つとして切り取られており、凌牙は小さく微笑んで決意を固める様に首肯した。その一瞬、無警戒に歩を進めていた凌牙は、何故か張られていたワイヤに足に引っかけ、小さな破裂音と共に白煙が上がり、次いで飛来する無数の小さな球形弾の襲撃をマトモに受けた。
「いってえ!?」
 設置されたワイヤートラップの思わぬ襲撃、相手を仕留めたと勘違いしたサバイバルゲーム・チームが、カラフルなセミオート・ライフルで6ミリ球形弾をフルオートで掃射する。
(そう言や、他の予選でトラップ戦術使われて、切っ掛けで流行ってたんだっけな!?)
「一人撃墜……って、あれ?」
「どうした? トラブルか?」
 白煙が晴れた後、ガスマスクを付けたチームが銃口を向けたまま、凌牙に近寄り、全く関係無い人物だと気付き、ゲームを一時中断して両チーム総出で謝罪する顛末となった。
「危ねえから、こう言うの使う時はエリア自重しろよー! それとは別に、遊んでる所に勝手に入って悪かった。気ぃ抜きすぎてた……」
 元気の良い返事の後、場所を変えようかと装弾しながら去って行く彼等に手を振り、凌牙は悩みを振り解く様に、溜息を吐いた。
 日常生活で気を抜けば、鉄骨が降ってくる。何故か丁度転ける位置に石があり、躓く。気紛れに電化製品を弄ると何故かショートし、電池を使用する製品は九割方、電池切れだ。ネットワーク製品を使用すれば、ネットワーク接続に何故か失敗する、凌牙の日常は、生来の不運の元凶、穢れを喰って溜め込む能力から、不運に溢れている。双子の兄が心配して通話用に端末を渡したのも、無理のない事だ。
「その辺り、本当にお前は運が良いよな……もしかして浄化されたりしてんの?」
 日常生活への気を引き締め直し、ネットワーク接続が安定し、回路も壊れず、液晶のみの被害で済んでいる小型端末に何となく感謝しながら、思わず取りこぼし、残り少なくなったポップコーンを口に放る。
「どっちでも良いけどな」
 丁度、ブックマークしている武闘会のサイトから、敗者復活戦の報せが届く。兄の名前を確認して、凌牙は再戦の時に胸を躍らせた。
「折角だから、期待に応えてもっと盛り上げるぜ!」

●双子の日常
 敗者復活戦を勝ち抜き自身の名前がコールされ、一つ首肯した後、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は何となく凌牙が不運に見舞われている気がして、虚空を見上げた。
「浮かれて出歩くのを止める事は出来ないが、大丈夫か」
 何となく小声で虚空に問い掛けると、歯を輝かせて親指を立てる双子の弟が見えて、陵也は溜息を吐いた。
「決勝の前に一度会って浄化しておこう。思い切り戦うのは、楽しかったしな。今度は遠慮無く行くぞ」
 闘技場を後にして、滞在用に抑えていた宿泊所に足を向ける。街中は依然きのことたけのこの対立は有るが、普通の食べ物の出店も出回っており、表立った対立は身を潜めている。敗者復活戦で顔が割れた陵也は、それとなく気配を隠し、出店で売られている食べ物を買い溜めして行った。
 キマイラフューチャーは、その出自に事情があり、難事も抱えているものの、大まかには平和だ。誰も誰かに奪われる事無く、誰も唐突に喪う物は少ない。食うに困らず、家族を喪う事も無く、好きに生きる事が出来る。
「……後ろ向きだな。我ながら」
 それでも、その残された執着が自分と弟を生かしてくれるのならば、それで良いだろうと、目を閉じて微笑んだ。
「敗者復活戦は無事通過だ。カードも発表され……大丈夫か」
「大丈夫だ。ちょっと気を緩めて歩いてたら、サバゲーエリアに突っ込んで、誤射喰らっただけだ。んで、カードは俺とだったっけ」
「そうだな。好評だった様だし、次も遠慮無しだ」
「おう、俺も同じだ。楽しかったし、思い切り挑ませて貰う」
「それはそれとして、始まるまでに腹拵えだ。屋台で幾つか買ってきたが、欲しい物は有るか?」
「俺も買い込んで来た。陵也も食べたい物は有るか?」
 二人が買って来た物はほぼ同じ。ただ一種類だけ、互いが好んで食べる物が有る。こう言った時に何となくで続いている約束事の様な物で、それを互いに取ってから、向かい合って卓を囲む。

●決勝戦開始
「壮絶な黒猫と白猫のバトル。予選では魅せてくれました地籠兄弟、今回は決勝と言う事も有って、着ぐるみを脱いで、素顔を曝しております。これが彼等の本気モードとなるのでしょう。特に黒猫を着込んでいた凌牙選手の怪力は多くの解説動画でも、一打一打が間違い無く激重だったと話題です! それを涼しい顔で受けきっていた白猫、惜しくも敗れた陵也選手も、得物の耐久力と共に、その技巧の高さがヤベエと話題となっております! 予選の様に華々しいカットを魅せてくれる事を期待しましょう!」
 決勝戦の直前に浄化を掛け、予選の時と同じく、凌牙の不利をなるべく取り払い、指定された区域に陵也は静かに足を運ぶ。同じく、凌牙も位置に付き、市街の足場を確認する様に、爪先を数度軽く当てた後、背筋を思い切り伸ばした。
「互いが位置に付いた様です。それでは、試合開始です!」

●全力行使
 全力とは言ったものの、二人は一先ず、足の向くまま、のんびりと歩き始めた。そのルートは上空から見れば、ぴったり互いが向かい合う位置で有り、思考するよりも、感覚で向かう場所が分かっていると言う方が自然だった。二人が考える事は索敵では無く、互いがどの様に戦術を組み立てるか、それのみだった。
「全力って言ってたし、魔法だよな。時空間と温度操作と、後何が有ったっけ?」
「全力と伝えたからな。魔法を使って行く程度はバレているだろう。対応は炎で間違い無い筈だ。確か、召喚と変化も出来たな。となると、骨が折れそうだ」
「光の雨とか出来たっけなあ、アレ時空間操作だしな、受け切れねえと負け、か。ま、影響薄い内に距離詰められるかどうかって所か!」
「何処まで距離を取れるか、が鍵だな。さて、そろそろ近くなってきたか」
「何となく、そろそろだと思うんだよな」
 確信した様に、エリア内のメインストリートで鉢合わせ、互いにやはりと唇を釣り上げた。
「思った通り、やっぱりここに居た! って、一足跳びじゃ間合に入れねえな!?」
「こっちに来ると思った。予想の通り、詠唱済みだ。理解が早くて助かる。術式展開、先手は貰う!」
 言葉と共に、愛用の杖で地面を軽く叩く。展開された氷色の法陣から発せられた冷気の霧が、周囲の物体から、容赦無く温度を奪う。それは凌牙の身も例外では無く、指先に霜が降りる前に、自身の鱗を剥がす。
「それくらいで止まるとは思ってねえよな!」
 途端に身から吹き出た紅蓮の炎が、冷気の霧を蒸発させ、白煙を巻き起こす。白色に染まる世界に、静かに聞き慣れた小さな声を、ギリギリで捉えた。
「凌牙がこの程度で止まるなら、こんなに頭を使う必要は無いな」
「やっべ。マジか……!」
 微かに聞き取れた多重高速詠唱。視界が炎の励起で潰れる所まで計算通りだった様だ。冷や汗を垂らしながら、思わず声が上がった。思っていたより陵也にも熱が入っているらしい。少々意外だった。彼としては、少し嬉しかったかも知れない。だが、それはそれと、湧き上がる感情を隅に追い遣り、頭を回す。
「我が喰らいし万物の淀み、竜を象りて顕現せよ!」
 言葉と共に足下から染み出る黒色の粘体。粘つくそれを固め上げ、白霧に対を為す巨大な黒竜を作り上げる。
「引き寄せろ!」
 響く命令と共に、黒竜が咆吼する。今も絶えない白霧の空間を、利き手で大きく薙ぎ払う。巻き込まれた建造物が大きな音を立てて瓦解し、伴う風圧が、白霧を裂く。一瞬見えた陵也の身体を掴もうと、今度は腕を伸ばす。
「少し遅かったな。咲いて散れ」
 完成した第一の術式、杖を向けられた黒竜が、その身を構成する穢れごと、巨大な氷華となって凍り付き、白霧の中で咲き誇る。凌牙はそれが砕け散るより早く跳躍し、氷華を蹴って宙空に身を躍らせた。
「其は悠久なる白銀の息吹、父なる天の怒り、虚数の牢獄にして原罪の特異点――来たれ、開け、誘いて悔い改めさせよ! 術式展開」
「時空操作だろうが関係ねえ! デカい花火にはデカい弾だ! こいつで、押し切ってやらァ!!」
 光の雨が降り注ぐ。一粒一粒が時空を歪める魔法の雨粒。直線上に展開されたそれが、対する者の正しい時間感覚を奪っていく。踏み台にした氷の華が、綺麗な音を立てて、ゆっくりと割れていく。速度感覚のズレを冷静に分析し、自らの身体に、黒色の穢れを纏う。猛る様に紅蓮を噴出させ、約束通りだと吠え猛り、黒竜は違い無く、双子の兄を視界に収め、肉薄しながら、上空から収束させた炎渦を吐き散らす。渦巻く紅蓮の竜巻が、間違い無く目標を捉えた。
 障壁によりどうにか直撃は逃れたものの、陵也は舞い降りる黒竜を見て、膝を付いて、両手を上げた。
「楽しかったな」
「ああ、楽しかった! 本腰入れてくれて嬉しかったぜ! 陵也」
「そうだな。たまにはこう言うのも悪くない。また機会が有ったらやるか、凌牙」
「ああ、願ったり叶ったりだ。その時はまた、よろしくな」
 膝を付いた陵也を助け起こすと、きのこ派の勝利のアナウンスが響き渡る。白霧の中をに咲き誇った巨大な氷の華、黒竜と光の雨、予選と変わらない派手な戦闘は、決勝の中でも見所が多いと、その後も動画等で話題を呼ぶこととなった。

●一時集計
「予選と合わせ、猟兵部門の一角では、きのこ派が4勝、たけのこ派は0勝と負け越しの結果となっております。今年はきのこドーナツの年になるかもしれませんが、決勝の投票はまだまだ終了しておりません。たけのこクレープ派は挽回なるか、まだまだ先は分かりません」
 街頭に映し出されるスクリーンで、或いは動画サイトで、実況が途中集計結果を伝え、住民はのんびりとその一報を聞き入れた。きのこ派は密かにそれを喜び、たけのこ派もその隣で小さく声援を送る。互いに屋台で出される適当な物を摘まみながら、少しだけ何時もと違う、楽しい日々を過ごす。

●日常に戻る
 顔が割れて無限握手会やサイン会や弟子入り志願やらで住民に迫られ、可能な限り対応した後、二人は自分達の日常へと帰っていく。一人は、人々の無念と怒りを刻む報讐者として、一人は、心優しき護り手として、世界で今も起こる悲運を、少しでも減らす為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月10日


挿絵イラスト