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空挺ドラゴンハンターズ

#ブルーアルカディア #お祭り2021 #ハロウィン #空飛ぶ世界の勇士達

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● ブルーアルカディアのとある空域
 無限に広がる空の世界・ブルーアルカディア。
 小さな浮島が連なる危険空域に、ドラゴンが現れた。天使核の暴走でガレオン船がドラゴン化したガレオンドラゴンは、小さな浮遊岩石をものともせず進む。
 目的さえ分からないガレオンドラゴンの行く手には、小さな村。その面積のほとんどがぶどう畑で占められた村は、この襲撃を知らずにハロウィンの準備に忙しい。
 目に危険な色を浮かべたガレオンドラゴンは、咆哮を上げると速度を上げた。

● グリモアベースにて
「ルーヴァンって村を襲うガレオンドラゴンがいるんだけどよ、こいつの退治に手を貸してくれねえか?」
 どこか楽しそうに笑ったリュート・アコルト(竜騎士・f34116)は、集まった猟兵達に空図を示した。
 辺境に位置する小さな島はブドウの産地だという。生食用は勿論、干しブドウやブドウジャムなどに加工された品は品質も良く、都会に行けば高値で取引される。
 そして何より、ここには素晴らしいワイナリーがあるのだ。
「俺はよく分からねえけどよ、なんかすっげえ旨いらしいぜ。丁度今年仕込んだ新酒のお披露目会? をハロウィン兼ねてするらしいからな。俺達にも飲ませてくれるぜ。っても、俺はブドウジュースだけどな」
 そんな島を襲うガレオンドラゴンは、その名の通りガレオン船と融合したような姿をしている。
 このガレオン船には、沈む前に積まれていた様々な品が手付かずで残されている。ガレオンドラゴンと上手く分離させることができれば、素晴らしいお宝を手に入れることができるだろう。
 そこまで言ったリュートは、魔獣解体士の血が騒ぐ! と言わんばかりにワクワク顔で身を乗り出すと目を輝かせた。
「ガレオンドラゴンの肉は旨いんだぜ? 倒したら俺が解体してやるよ。ただ、解体前にストレス与え過ぎちまったり熱を加えすぎちまったりすると味が落ちるから気をつけてくれよな!」
 ガレオンドラゴンへは飛空艇から攻撃することができる。ガレオンドラゴンがいる空域は小さな浮島が多く、これを足場にしても良い。無論、自前のユーベルコードで飛んでも良い。
「うまいことガレオンドラゴンを狩れたらパーティーしようぜ! 楽しみだよな!」
 リュートは楽しそうに笑うと、グリモアで飛空艇への道を開いた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 ハロウィンシナリオをお届けに伺いました。

 第一章はボス戦。
 ガレオンドラゴンの肉を傷つけないように倒すとプレイングボーナスです。
 ガレオン船には色々積まれていますので、うまくすればお宝ゲットもできます。プレイングでご指定ください。ただし、マスターからのアイテム発行はなしでお願いします。
 また、飛空艇の手配は済んでいます。ご指示があればその通りに飛びます。また勇士の船ですので、乗組員のセイルフローター乗りの後ろに乗せて貰うこともできます。

 第二章は日常。
 ボジョレー・ヌーボー的なワインとガレオンドラゴンの肉で思う存分宴会をお楽しみください。未成年者の飲酒喫煙は、ふんわりマスタリングされます。
 仮装もできますので、プレイングでイラストを指定いただくか、文章で服装をご指定ください。
 お声掛けがあれば、リュートが登場します。無ければ画面外で嬉々としてガレオンドラゴンを解体しています。

 プレイングは10/22(金)の8:31から。受付終了は追ってご連絡します。
 オーバーロードのプレイングは期間外でも受付致します。第二章は断章投稿時にご連絡します。
 第一章に断章の投稿はありません。

 それでは、良き空の宴を。
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第1章 ボス戦 『ガレオンドラゴン』

POW   :    属性変換
【ドラゴンの牙】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【部位を持つ『属性ドラゴン』】に変身する。
SPD   :    ガレオンブレス
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【口】から【ブレス砲撃】を放つ。
WIZ   :    飛竜式艦載砲
【飛空艇部分の艦載砲】を向けた対象に、【砲撃】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※プレイング受付開始の日付を間違えておりました。
 正しくは10/23(土)8:31からです。
 申し訳ありませんでした。
彩瑠・翼
ドラゴンの肉…かぁ(遠い目
でも、もうなんかパリピとかでも色々食べてるし、今更だよね
オレも大人になったんだなー(微妙

美味しいってリュートくんも言ってたしね
めっちゃいい笑顔だったもんね
なら、もうここは素直に信じて頑張ってみようかな

そんなわけで
ウィン、今回も一緒に頑張ろうねっ

…って、頑張るは頑張るけど
ドラゴン傷つけないで倒すってどんな風に…?
えーっとえーっと(思いつかなかった)
よ、よぉし

トドメはみんなにおまかせして
オレはドラゴンの意識を引きつけることを頑張ってみる!
[第六感、逃げ足]を駆使して翻弄させるんだ
ちょっと怖いけど…こ、これも修行なんだよね?
(ここにはいない兄貴分の言いそうな言葉を思い出してつぶやいてみたりする)
よーし、[勇気、気合い、覚悟]で…いっくよー!

攻撃はできりる限りUCの鎧でガード…したいんだけど…!
砲撃もブレスも跳ね返す…って、
ちょ、ドラゴンの牙攻撃なんて聞いてないよ?!(悲鳴)
うわ、ウィンを食べようとしないで?!
(アリスランスをバトンのようにぶんぶん振り回して威嚇試み)


榎木・葵桜
星桜

おおー、ドラゴン!
傷つけないで攻撃ってなかなか難易度高い?!
でも、トドメの一撃以外はなるべく苦しまないようにしてあげたいっては思うよね

なら…攻撃は目とか頭に集中させるようにして、身体は綺麗にを目指してみるね
ね、エリシャさん、美味しいもの食べるためにがんばろーね!

移動はセイルフローター乗りの方々の手を借りて、
可能な限りドラゴン接近してUC発動

動きが止められそうなら
頭に飛び移って"胡蝶楽刀"で
目のあたりめがけて突き刺して攻撃する!

飛び移るの失敗したり
落っこちそうになったらセイルフローター乗りの皆さんにヘルプお願い

あはは、ごめんね、エリシャさん
でも、大丈夫!
美味しいもののためならえんやこらだよ!


エリシャ・パルティエル
星桜

この世界に来るのは初めてね
ハロウィンを邪魔する敵は許さないわ!

ガレオンドラゴン…ほんとに食べれるの?
美味しい…のよね?
でもできるだけ傷つけないように倒さなきゃね
ええ、葵桜ちゃん頑張りましょ!

勇士のセイルフローターに乗せてもらうわね
仲間が攻撃しやすいように
囮になって飛んでもらうわ
引きつけて引き離して
強い遠心力と風を感じるけど…
ふふ、あたしこういうわくわくするの大好き!

あの艦載砲には十分気をつけてね!
頃合いを見計らってUC
少しでも動きを鈍らせられたらいいんだけど

葵桜ちゃん大丈夫!?
…もう心配しちゃった
勇士さんたち頼りにしてるわね

ガレオン船に葡萄酒造りに使えそうな樽があれば
街の人達に渡したいわね


パルピ・ペルポル
新酒の季節だもんね。
お宝もあるとなれば気合いも入るってものよ。

ドラゴンにはドラゴンということで。
徳用(巨大)折り紙で心折れそうになりながら作った巨大折り紙ドラゴンをエプロンのポケットから取り出して有為なる写しで増やしてオリジナル以外をけしかけるわ。
足止めしてる間にセイルフローター乗りに頼んでガレオンドラゴンに近づいてもらって背中に飛び移るわ。

移れたらこちらのものよ。
古竜の骨のマン・ゴーシュを増やして翼の根本に刺して、穢れを知らぬ薔薇の蕾も増やしてあちこちにばら蒔いて。
通常サイズの折り紙ネズミたちに船とドラゴン部の境目を齧らせて内側からじわじわダメージ与えるわ。
これだけ大きいと気付けるかしら。


アレッシア・リベラ
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

美味しいブドウとワイナリーがある村を襲おうとするなんて
ガレオンドラゴンも困ったものね

私はセイルフローターがあるから自分で飛べるけど
私の射撃の腕ではストレスを与えないように倒すのは難しそうね
天使核マスケット銃からスモーク弾をガレオンドラゴンの眼前に発射して煙幕を張り視界を遮った後
他の猟兵にできるだけ接近してから【リベリオンウインド】発動、再行動を促すわ
さあみんな、今が狩りのチャンスよ!

…このガレオン船、ドラゴンに変異するだけあって相当大きいようだけど
ガンシップや天使核グライダーのような
機動力の高い乗り物も積まれていそうね
もしあるようなら、一隻拝借しちゃおうかしら?



● ドラゴン尽くしの空の旅
 見渡す空はどこまでも青。見下ろす空もどこまでも青。
 遮るもののほとんどない空の世界を飛空艇の甲板から空を見渡した彩瑠・翼(希望の翼・f22017)は、久しぶりに来た空の景色を遠いーー本当に遠い目で見渡すとぽつりと呟いた。
「ドラゴンの肉……かぁ」
 UDCアースで生まれ育った生粋の現代っ子である翼は、もちろんドラゴンの肉なんて食べたことはない。どんな味が想像もつかない。味は牛に似ているのか豚に似ているのか。とにかく美味しいらしいことは確かで。
 空ではなく肉に想像を思いを馳せる翼は、掛けられる声に振り返った。
「美味しいブドウとワイナリーがある村を襲おうとするなんて。ガレオンドラゴンも困ったものね」
「アレッシアさん」
 振り返った視線の先には、ブルーアルカディア出身の生粋のセイルフローター乗りであるアレッシア・リベラ(空賊はセイルフローターと共にあり・f34149)がセイルフローターの整備を終えて翼の隣に立つと離れていくルーヴァン島を見送った。
 そうだ。そういえばドラゴンの肉ばかりに気を取られがちだが、浮島には美味しいブドウがあるんだった。翼はワインは飲めないけれど、きっとブドウを使ったスイーツとかもあるに違いない。でもやっぱり気になるのはドラゴンの肉で。
「アレッシアさんは、ドラゴンの肉って食べたことある?」
「ドラゴン? あるわよ。ドラゴンは強いからそんなに狩れないけれどね」
「美味しいの?」
「美味しいわよー」
「そうなんだ」
 ドラゴンの肉を思い出したのか、アレッシアの目が楽しそうに歪む。リュートも美味しいって言っていたし、彼もめっちゃいい笑顔だった。きっと美味しいんだろう。
 思えば翼は、パリピ島とかでも色々なものを食べている。ギョロ目やらダークマターやらに比べれば、今更だよね。そうだよね。少なくともこの世界では、一般的に食べられているのだからきっと大丈夫。
「オレも大人になったんだなー。もうここは素直に信じて頑張ってみようかな」
「その意気よ。初めてのドラゴン肉、きっと忘れられない思い出になるわ」
「ねえ誰か、そっちの端っこを押さえてー!」
 ドラゴンの肉の話で盛り上がる二人に、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は少し焦り声を上げた。ドラゴン狩りの準備のために徳用(巨大)折り紙でドラゴンを折っていたのだが、いかんせんパルピはフェアリー。色々がんばって折ってはいるのだが、あっちを押さえればこっちが浮き上がり、そっちに折り目をつければどっちに畳めばいいのか分からなくなり。
 半ば心折れそうになりながらも折っているのだが、少しずつできあがるドラゴンの姿に諦めたらそこで試合終了な気分になってきて。
 ぐぬぬ、となりながらも折るパルピに、手が差し出された。
「手伝うよー! ここを押さえればいいのね」
 駆け寄った榎木・葵桜(桜舞・f06218)が、パルピが指を差すポイントを押さえてくれる。ようやく折り紙崩壊の危機から脱したパルピは、胴体を折り上げると鼻面と角を折って整え満足そうな息を吐いた。
「ありがと! 助かったわ」
「すごいわねパルピ。これが一枚の紙でできてるなんて信じられないわ」
 感心したように目を丸くするエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)に、パルピは嬉しくなって胸を張った。頑張った甲斐あって、完成度はなかなかのもの。長い首を巡らせているところなんて、今にも動き出しそうだ。
「いいでしょ。今は新酒の季節だもんね。お宝もあるとなれば、気合いも入るってものよ」
「ふふ、気合充分ね」
「もちろん!」
「あたしも気合は十分だよ! ドラゴンの肉って、どんな味がするんだろう?」
 ワクワクを隠せない様子で葵桜が微笑んだ時、遠くから咆哮が響いてくる。一瞬だけ首を竦めたパルピは、近づくガレオンドラゴンの姿に折り紙ドラゴンに騎乗した。
「さ、ドラゴンのドラゴン狩りよ!」
「乗ってパルピ。一緒に行きましょう」
「ありがと!」
 セイルフローターの支度を整えたアレッシアが、パルピに手を差し出してくれる。その手にサムズアップで応えたパルピは、騎乗した折り紙ドラゴンをセイルフローターの後ろに乗せると、共に空へと飛び立った。

● 無敵の鎧と聖なる光
 セイルフローター乗りの後ろに乗ったエリシャは、同時に甲板から飛び立った翼の声に振り返った。
「……って、頑張るは頑張るけど。ドラゴン傷つけないで倒すってどんな風に……? えーっとえーっと」
 ホワイトペガサスのウィンに騎乗した翼が、隣で困惑したように周囲を見渡していた。翼は目的をハッキリさせたらとても強い力を発揮できるのだが、反面そこがブレるとどうしても力が出せないようだ。そんな話を義弟から聞いていたエリシャは、ウィンに横付けしてもらうと翼に声を掛けた。
「翼、どうしたの?」
「エリシャさん。傷つけないようにドラゴンを攻撃ってどうしたらいいんだろう? って」
「ふふ、難しいわよね。あたしは仲間が攻撃しやすいように、囮になって飛んでもらうわ」
 エリシャの答えに、翼がぱあっと表情を明るくする。こんな姿は何となく義弟に似ている気がするけれど、やはり師弟というべきか。
「そ、そうか! じゃあオレはトドメはみんなにおまかせして、ドラゴンの意識を引きつけることを頑張ってみる!」
「じゃあ一緒に囮、頑張りましょう」
「うん!」
 力強く頷いた翼が、迫るガレオンドラゴンの左翼側へと舞い上がる。その姿に、エリシャは右翼側へ回り込むよう勇士に指示を出した。
 途端に全身に迫る加速度。向かい風は痛いくらいに叩きつけてくるが、それもまた心地よくて。狭まる視界に心臓が縮まりそうな重力と加速度は、以前宇宙バイクの後ろに乗った時のそれと似ているけれど、感じる振動はやっぱり違うもので。
「ふふ、あたしこういうわくわくするの大好き!」
 わざと目立つように飛行するセイルフローターに、ガレオンドラゴンも気付いたのだろう。ビリビリくるくらいの威嚇の咆哮を上げたガレオンドラゴンがエリシャに向けて艦載砲の照準が合わせられた時、白いペガサスが割って入った。
「よーし、いっくよー! 今日のオレの鎧は、ドラゴンの砲撃もブレスも跳ね返すんだ!」
 想像から創造した無敵の鎧を纏った翼は、エリシャの前に飛び出すと大きくアリスランスを振り回すと威嚇を試みた。その姿に照準を翼に向ける。高い命中率を誇る艦載砲は、翼の鎧にことごとく命中するがかすり傷一つ与えられない。轟音と圧力に目に涙を溜めた翼は、無事なエリシャを振り返るとがんばって笑いかけた。
「ち、ちょっと怖かったけど……こ、これも修行なんだよね?」
「ありがとう翼。修行の成果、ちゃんと出てるわ」
「そうかな?」
 翼が照れたように頬を掻いた時、ガレオンドラゴンが大きく口を開けた。鋭い牙を剥き出しにしたガレオンドラゴンは、生臭い息を吐きながら翼に迫った。大丈夫。今日の翼はドラゴンの砲撃もブレスも跳ね返す無敵の鎧を纏っている。だけど、牙は砲撃でもブレスでもない。そのことに気付いた翼は、全身から血の気が引いた。
「ちょ、ドラゴンの牙攻撃なんて聞いてないよ?!」
 間一髪噛みつきを回避した翼は、巨体に似合わない俊敏さで迫るガレオンドラゴンの牙に慌ててウィンを上昇させる。追いかけるガレオンドラゴンの牙は、飛翔するウィンごと食べてしまおうと執拗に迫った。
「うわ、ウィンを食べようとしないで?!」
「今ひとときの安らぎを……まどろみの淵へと誘ってあげる」
 意識が完全に翼に向いているのを見たエリシャは、右手を高く掲げると詠唱を開始した。
 右掌の聖痕から、聖なる光が溢れ出す。今まさにウィンに噛みつこうとしていたガレオンドラゴンは、優しい光に包まれると目をとろりとさせて動きを止めた。
 翼の無事を確認した時、ふいにガレオンドラゴンが目を覚ますと大きな咆哮を上げた。

● 空賊とフェアリー
 時は少し遡る。
 ドラゴンの注意を引きつけるエリシャ達から離れて飛行したアレッシアは、音もなく飛行するとパルピと共にガレオンドラゴンの背後に回り込んだ。ガレオン船とドラゴンの継ぎ目付近に取り付いてしばし。アレッシアの肩の上に飛んできたパルピは感心したようにガレオンドラゴンの背中を見渡した。
「それにしても、大きいドラゴンね」
「ドラゴンも色々だけど、ガレオンドラゴンはガレオン船が変異したから尚更大きいわ。積荷は無事、ってことだけど、ガンシップや天使核グライダーのような乗り物も積まれてるかしら?」
「きっとあるわよ。ふふ、やっぱりお宝は見逃せないわよね。さあ、まずはガレオン船とドラゴンを分離させるわよ!」
 楽しそうに笑ったパルピが、詠唱を開始する。パルピが手にした古竜の骨のマン・ゴーシュの数が増えると、その内の一本をガレオン船とドラゴンの継ぎ目付近に留まらせた。切っ先をドラゴンに向けたマン・ゴーシュの柄には、一匹の折り紙ネズミが乗っている。
 見える範囲を一定の間隔でマン・ゴーシュと折り紙ネズミを配置したパルピは、念動力で制御するとアレッシアに声を掛けた。
「いい感じね。次行きましょ!」
「それじゃこのまま、ガレオン船の周囲を一周するわね」
「よろしくね!」
 マン・ゴーシュと折り紙ネズミを配置するパルピの呼吸に合わせて、セイルフローターを操縦するのは難しいけれど楽しくて。途中何かを追いかけるように動きを早くした時は驚いたけれど、それでも一定の距離を保たせるパルピのユーベルコードに負ける訳にはいかない。スピードと動きを読んだアレッシアは、やがてガレオン船部との継ぎ目を一周すると最初の位置に戻った。
「これで全部ね」
「さあ、行くわよ!」
 パルピの合図と同時に、マン・ゴーシュが一斉に継ぎ目に突き立った。ガレオン船とドラゴンを分離させるように放たれた刃を伝い乗り移った折り紙ネズミ達が、隙間に入り込んでは傷を大きく広げていく。
 さすがに気付いたガレオンドラゴンは、大きな咆哮を上げると暴れ出した。巨体をくねらせて異物を排除しようともがくが、マン・ゴーシュと折り紙ネズミはピタリと密着していて引き剥がすことができない。
 暴れるガレオンドラゴンから一旦離れたたアレッシアは、大きく迂回するとガレオン船の甲板に着地した。セイルフローターを手早く固定して、パルピと一緒にガレオン船の中へと駆け込む。途中積荷に良さそうなガンシップを見掛けたが、吟味は後回しだ。船橋に駆け込んだアレッシアは、舵輪を掴むとガレオン船を起動させた。
「さあ、お宝をいただくわよ!」
「あと少しで分離できるわ!」
 パルピが言った直後、ガレオン船が大きな音を立てて分離する。そのままガレオン船を起動して空域を離脱しようと舵を切るが、怒りに震えたドラゴンがこちらに向けてブレスを吐こうと口を開き身をくねらせる。
「わわ、どうしよう!」
「パルピ! 今が狩りのチャンスよ!」
 アレッシアの決意を込めた言葉に、船橋に嵐が吹き荒れる。風を受け力を受け取ったパルピは、再び詠唱すると折り紙ドラゴンを複製させた。
「ドラゴンにはドラゴン! さあ、あの口の中に飛んで行って!」
 パルピの指示に、折り紙ドラゴンは羽を羽ばたかせると一斉に飛び立った。口を開けて今にもブレスを吐こうとするガレオンドラゴンの口の中に、110匹の折り紙ドラゴン達が一斉に飛び込んでいく。
 ドラゴンの口の中で、ブレスが大爆発を起こす。苦痛の叫び声を上げながら飛行スピードを落とすドラゴンの姿を見送ったアレッシアは、パルピとハイタッチで健闘を称え合うと安全空域までガレオン船を移動させた。

● 特攻
 時は少し遡る。
 勇士の飛空艇に乗り込んだ葵桜は、エリシャと翼に引きつけられてブレスを吐くガレオンドラゴンの姿に歓声を上げた。
「おおー、ドラゴン! やっぱりでっかいねえ」
 楽しそうに戦闘の様子を見守る葵桜は、油断なく胡蝶楽刀を構えると後方から間合いを取る。傷つけないで攻撃、というのがなかなか難易度高く難しいところだが、葵桜には一つ腹案があるのだ。
「トドメの一撃以外はなるべく苦しまないようにしてあげたいっては思うよね。だから速攻、お願いできる?」
「もちろんである!」
「おお、頼もしい!」
 胸を叩いて請け負った勇士に微笑んだ葵桜は、胡蝶楽刀を構えると加速するセイルフローターを掴んだ。距離を取り、間合いを計りながらも攻撃のチャンスを探る葵桜は、変わる戦況に目を丸くした。
 ガレオン船とドラゴンが分離したのだ。まさかの展開にあっけに取られる葵桜の隣を、ガレオン船が進む。口の中でブレスを暴発させながらも半身を追いかけるように追いすがるガレオンドラゴンに、葵桜は大きく飛翔した。
「あのガレオン船を追いかけてるならチャンス到来! 行こう!」
 葵桜の呼びかけに、セイルフローターが一気に加速。ガレオンドラゴンの真正面に出た葵桜は、ブレスを回避するセイルフローターの後ろで腰を浮かせると詠唱を開始した。
 間近に迫るガレオンドラゴンの姿に、葵桜はセイルフローターを蹴る。ガレオンドラゴンの頭に着地した葵桜は、胡蝶楽刀を手に舞を舞った。
「舞う桜はあなたを捕らえて離さない、ってね! 見せてあげるよ、桜吹雪!」
 詠唱と同時に現れた桜の花が、葵桜を振り落とそうとするガレオンドラゴンを拘束する。動きを止めたガレオンドラゴンの頭に膝をついた葵桜は、薙刀を逆手に構えた。
「これで、とどめ!」
 ガレオンドラゴンの目に、胡蝶楽刀が突き刺さる。目を貫かれ、頭にあった天使核を破壊されたガレオンドラゴンは、グラリと身体を傾けると落下を始めた。 
 急に悪くなる足場に、葵桜の天地がひっくり返る。投げ出された、と思った時にはもう遅い。胡蝶楽刀からも手を離した葵桜は、自分の身体が空に投げ出されるのを自覚した。
 あ、これはやばい。そう思ったが、身体の自由落下を止められない。伸ばした腕の先は何も掴まず、お腹がひっくり返るような感覚がジェットコースターみたいだ、などと呑気な考えが脳裏をよぎる。
「葵桜ちゃん!」
「掴まるのね!」
 エリシャの悲鳴と、勇士の声に我を取り戻す。葵桜に向けてセイルフローターを寄せる勇士の後ろに乗ったエリシャが、必死な表情で身を乗り出し手を伸ばしてくれる。
 その手を掴んだ葵桜は、大きく弧を描き引っ張られながらも落下をやめる。エリシャが手首を掴み必死な顔で支えてくれるが、もともと二人乗りのセイルフローターでは三人の体重を支えきれない。徐々に高度を下げながらも必死に腕を掴んだ葵桜は、ふいに身体が落下をやめるのを感じた。
「まったく! 無謀なのであるからして!」
「えへへ。ごめんね」
 葵桜の下に回り込んだ勇士が、その身体を掬い上げる。セイルフローターの後ろに座った葵桜は、思い出したように早鐘を打つ心臓を宥めた。
「葵桜ちゃん大丈夫!?」
 腕を離したエリシャは、青い顔をしている。心配そうな様子に、葵桜は笑顔を浮かべた。
「あはは、ごめんね、エリシャさん。でも、大丈夫! 美味しいもののためならえんやこらだよ!」
「……もう心配しちゃった」
 腕を振り上げガッツポーズを作る葵桜に、エリシャが心底ホッとしたように胸を撫で下ろす。
 ガレオンドラゴンの下に回り込んだ飛空艇が甲板で受け止めたのを見下ろした葵桜は、力なく横たわるガレオンドラゴンに微笑んだ。
「これで美味しいドラゴンを食べられるね!」
「そうね。それにしてもガレオンドラゴン……ほんとに食べれるの? 美味しい……のよね?」
「ガレオンドラゴンの肉は美味しいのである!」
「滅多に食べられないごちそうなのね!」
 不安そうなエリシャに、勇士達が嬉しそうな声で語り合う。その声に安堵の息をついたエリシャ達は、飛空艇へと帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『勇士達の酒盛り』

POW   :    沢山飲んで沢山食べる

SPD   :    宴会芸で盛り上げる

WIZ   :    自慢の料理やドリンクを振る舞う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● そして始まる宴の時間
 運び込まれるガレオン船とドラゴンに、ルーヴァン島の住人たちは歓喜に湧いた。
 ガレオンドラゴンが襲ってきたとなれば、祭りどころの騒ぎではない。襲撃を阻止できただけでなく、ドラゴンの肉が手に入ったのだから当然と言えた。
「まさかドラゴンの肉まで手に入るとは思ってもみなかった! さあさあ、皆さんも新酒祭りに来てください! 今年の新酒は特に出来が良い。飲んでいってくださいな!」
「ドラゴン料理はもちろん、特産のブドウを使った料理もたくさんあるよ! グレープタルトにクレープのグレープジャム添え、干しぶどう煮込みも絶品さ!」
 口々に誘う声に、湧き上がる乾杯の声。
 テーブルには所狭しと並ぶ料理の数々。ドラゴンステーキにドラゴンテイルスープ、串焼きやローストドラゴンなんかもある。ドラゴン料理に抵抗があるのならば、この島特産のグレープ鶏を使った料理もたくさん揃っているから心配はいらない。
 新鮮野菜も負けてはいない。美味しい料理の数々は、猟兵たちの舌も心も満たしていく。
 港に停泊させた戦利品のガレオン船は、様々な品が乗せられている。改めて探索するのもいいだろう。
 楽しい宴は、始まったばかりだった。
アレッシア・リベラ
【一応POW】
アドリブ他者絡み大歓迎
リュート同行希望

あら、島を挙げての大騒ぎになっているわ
せっかくだから、住人たちと一緒に大いに騒ぎたいところね

でもその前に、ガレオンドラゴンの解体が先よ
なんせ、ドラゴンの肉は滋養があるから(適当言ってるだけかも)
栄養が損なわれないうちに急いで解体して食べましょう!

パーティが始まったら
ワインと共にドラゴン肉を味わうわ
…うん、ワインも串焼きもステーキも絶品!
やはり新鮮なお肉は一味違うわ
グレープ鶏や野菜料理も頂戴するけど、これもまた格別
ルーヴァン島っていいわね…

宴がお開きになったらガレオン船探索
ガンシップや天使核グライダーは見つかるかしら?
船底あたり、怪しそうだけど


パルピ・ペルポル
狩りたてならやっぱり内臓を食さないとね。
心臓焼きに肝焼き、モツ煮込みもいいわね。もちろんステーキとかも食べるわよ。
そしてこのすごくフルーティーなワインが美味しくてワインがすすんじゃうわ。
寝かせるとどう化けるか楽しみだわ。

ブドウのデザートまで堪能したらガレオン船内部を探索するわ。
いろいろと積まれているし、輸送船だったのかしら。
道中検分しながら(宝石類はポケットに入れつつ)船長室を探すわ。
航海日誌とかからこの船の情報を得るとしましょ。
後は金目のものを頂いてと。何かしら使えそうなものは使えそうな人が使えばいいんじゃないかしら。

あ、ワインと干しぶどうも分けてもらっておかなきゃだわ。



● なにはともあれ解体が先
 勇士の飛空艇の甲板から降ろされたガレオンドラゴンを見上げたアレッシア・リベラ(空賊はセイルフローターと共にあり・f34149)は、お祭り騒ぎな人々の喧騒に目を細めた。
「あら、島を挙げての大騒ぎになっているわ。せっかくだから、住人たちと一緒に大いに騒ぎたいところね」
 思いもかけず島に上がったドラゴンの肉。しかも大物のガレオンドラゴンで、ガレオン船との分離も済んでいる。こんな上物はなかなか見ないと見物する住人もいれば、猟兵の代理として所有権を預かる勇士達と売買交渉に勤しむ商人の姿もある。
 ドラゴンが空揚げされた街の喧騒は、どこも似たようなもの。馴染みの光景を見渡したアレッシアは、ドラゴンが解体場に運ばれもせず放置状態なことにため息をつく。そもそもドラゴン狩りの基地ではない島で不慣れなのは仕方がないが、ドラゴンの所有権がどうあれ、このまま放置しては鮮度が落ちてしまう。
 アレッシアの隣に飛んできたパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)も、同じことを思ったのだろう。ふっくらとした頬をぷう、と膨らませると腕を組んだ。
「狩りたてならやっぱり内臓を食さないとね。内臓は鮮度が落ちると途端にまずくなるのよ。早く解体しないとね」
「そうよね。商談も大事かもだけど、まずガレオンドラゴンの解体が先よ。なんせ、ドラゴンの肉は滋養があるから。栄養が損なわれないうちに急いで解体して食べましょう!」
「俺も同じこと思ってたぜ! もったいねえよな」
 アレッシアの隣に立ったリュートが、パルピと同じように腕を組んで大きく頷く。申し合わせたように同時に頷いた三人は、商談で揉める大人たちへと駆け寄った。
「なあ、商売は後にして早く解体しようぜ!」
「せっかくのドラゴン肉がまずくなっちゃう」
「こうしている間にも商品価値が損なわれるの。それはお互い望まないんじゃない?」
 三人の申し出に、利害関係やら何やらで揉めていた大人たちが押し黙る。やがて折り合いがついたガレオンドラゴンは、ようやく解体場へ運ばれるのだった。

● おいしいワインとドラゴン肉
 テーブルに所狭しと並ぶドラゴン料理が、美味しそうな匂いを辺りに漂わせる。乾杯と同時にワインを飲んだアレッシアは、口の中に広がる芳醇な味わいに頬を綻ばせた。若いワインの持つ豊かな葡萄の味わいが、醸成されたアルコールと共に喉の奥へと滑り落ちていく感覚はたまらない。すかさずドラゴンのもも肉の串焼きを手に取ったアレッシアは、ワインの余韻がなくならない内に串焼きを頬張った。
 ほとんどストレスを与えずに解体されたドラゴンの肉は柔らかく、噛めば噛むほど深い味わいが口の中に広がってはワインの余韻と混ざり合い味に深みを与えていく。この感覚は、ワインと肉の相性が良くなければ出ないもので。
「……うん、ワインも串焼きも絶品! やはり新鮮なお肉は一味違うわ。こっちのステーキはどうかしら?」
「Tボーンステーキも絶品よ。口の中でとろけていくのがたまんないわ。それに見てよこの心臓焼きに肝焼き! この綺麗な色、ツヤ、形に香り! 解体を急かしだだけのことはあるわ」
 人間用の食器を器用に使ったパルピは、出された心臓焼きにナイフを入れると自慢げに掲げた。鮮度を保ったまま解体された心臓焼きは鮮紅色で、絶妙な火入れ加減がたまらない。シンプルに塩胡椒だけで味付けされた心臓を口に運べば、特有の歯ごたえと噛めば噛むほど沸き立つ風味が鼻をすり抜けていく。控えめに言ってたまらない。
 心臓焼きを堪能してワインを口にすれば、若いワインのフルーティーな味わいと苦味が心臓の味と混ざり合い、新しい風味となり喉の奥を滑り落ちていく。若いワインなのに、味に深みとコクがあって素晴らしいの一言だ。今年は当たり年、という会話も頷ける。
「このワイン、すごくフルーティーで美味しいわ。ワインがすすんじゃう」
「パルピ、こっちのグレープ鶏のソテーもなかなかのものよ。さすがは名物だけあって、ワインとのマリアージュで言うならこっちの方が上かも知れないわね」
「どれどれ? ……んー、ドラゴン肉とはまた違って美味しい! 確かにワインと絶妙に合うわね。このワイン、寝かせるとどう化けるか楽しみだわ」
「野菜料理も格別。ルーヴァン島っていいわね……」
「良ければ10年もののワインもあるけど、お土産にどうだい?」
「いいわね! 試飲はできるのかしら?」
「おつまみに干しブドウもあるよ」
「あら美味しそう。大粒なのね」
 商魂たくましいワイン商人が、ボトルを手にパルピとアリッシアにお勧めしてくる。干しブドウもセットで売り込む辺り商魂たくましい。美味しいワインを見極めた二人は、お土産のワインと干しブドウを手に入れるとデザートのグレープタルトまでしっかり味わい尽くすのだった。

● ガレオン船探検隊
 宴がお開きになり、夜が明けて。眩しい光に目を細めたパルピは、大きく伸びをすると早速手に入れたガレオン船に飛んでいった。
 意気投合したアレッシアとリュートと一緒に内部を探索してしばし。戦闘中はろくに見れなかった飛空艇内部に、パルピは歓声を上げた。
「わあ、いろいろ積まれてるわね。輸送船だったのかしら」
「そうみたいね。ガンシップや天使核グライダーは見つかるかしら? 船底あたり、怪しそうだけど」
「宝石類も同じ場所にありそうよね。警備が楽だもの」
「だな」
 なかなかに豪勢な船内に目を輝かせたパルピは、三人で船内を探検して回る。やがて船底の倉庫に辿り着いたパルピは、置かれた金庫に目を輝かせた。古めかしい金庫は大きく重く、中には貴重なものがありそうだ。
「あら、これは竜牙のレリーフね。綺麗なブローチだわ。月を象っているのね」
 中に入っていたブローチを取り出して、光に透かしてみる。ドラゴンの牙を削り出して作られたらしいブローチは真珠色に輝き、女性の横顔が彫られている。他にもあった宝石類をポケットにしまい込んだパルピは、上がる歓声に振り返った。
「こ……これは! この天使核グライダー、エアロスカイ社のS-90型じゃない! 伝説のグライダー職人が手掛けた世界で10艇しかないって言われてるレア中のレア! このエンジンの希少金属は今じゃもう手に入らないのよね」
「いいもの見つかったの?」
 パルピの問に、目をキラーン! と輝かせたアレッシアは拳を握り締めて熱弁を始めた。
「いいなんてもんじゃないわ! この天使核グライダー、今じゃいくらお金を積んでも手に入らない逸品よ! こっちにはガンシップもあるわ。この兵装は……」
「楽しそうだなアレッシア。俺飛空艇には詳しくねえからなあ」
 若干呆れた様子のリュートを無視したアレッシアが、興奮した面持ちで語る。熱を持って語るのを聞いていると、この船はものすごく良い品を乗せているのがよく分かった。
「よく分からないけど、そんなにいいものを積んでたのね。どんな船だったのか、俄然興味が湧いたわ」
「そうね。他にもお宝の手がかりがあるかも知れないわ」
 目を輝かせるアレッシアと一緒に、船長室を探す。やがて見つけた船長室に置かれた航海日誌を開いた。
 この船は老舗セイルフローターメーカーのエアロスカイ社の輸送船だった。エアロスカイ社は最初小さなセイルフローターメーカーだったが、ある時を境にどんどん大きくなっていった会社だった。潤沢な資金を背景に次々と新しいセイルフローターを開発していったのだが、その資金の出処は未だに謎が多い。
「ええと、『……天使核空域から採集された天使核を搭載したセイルフローターを、同じ空域から採集された天使核の飛空艇にこれほどの数を搭載して運ぶのは初めてのことで、細心の注意が求められる。緊張の毎日だ。低い唸り声のような音を聞いたという整備士の話もある。明日調査することとしよう』ここで終わってるわね」
「天使核空域って何かしら?」
 アレッシアの問に、リュートも首を横に振る。何にせよ、何かしらのトラブルが起きてこの飛空艇の天使核が暴走し、ガレオンドラゴンとなったことは間違いないようだ。
「ま、またゆっくり調べましょ。この飛空艇は猟兵の管理ってことで話はついてるんだから」
「そうね」
「ちぇ。いい槍があるかと思ったけど、無駄足だったなー」
 頷きあった三人は、他にも使えそうなものを手に入れると飛空艇を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩瑠・翼
ウィンもありがと、お疲れ様だよ
島の人が、葡萄は馬も食べていいっていうから、どうぞ!
(いただいた葡萄を与えつつ)

葡萄ジュース、すごく美味しい!
お酒はもっと美味しいのかな?

リュートくん、ホントすごいね
あんなおっきなドラゴン、どんどん解体しちゃうなんて
…そして、お肉ってこうやって解体されて売られたり食べたりしてるんだね
さっきまで怖かったあのドラゴンとは思えないや

(エリシャさんの言葉に、ドラゴン料理をまじまじと見つめ)
普通に眺めてたら全然そんな感じしないんだけど、これ全部ドラゴンの料理…なんだね
パリピで食べた熊肉みたいな感じ…なのかな
味は皆言うから多分美味しいんだろうなっては思うんだけど…
(何も見てなかったらきっと普通に食べてただろう料理たちだが、
今回は原型知ってるししっかり解体ショー見てたので戸惑ってる)

命をいただく、かぁ
敵でも命は命だもんね
怖いとか好き嫌い言ってたらダメだよね
(こくりと頷き、祈るように手を合わせ
いただきます、とやってから、覚悟を決めたように一口食べて)
…うん、美味しい、かな?


榎木・葵桜
星桜

ドラゴンのお肉ってどんな味するのかな?
めちゃくちゃ気になるー!

それにしてもリュートくん、手慣れてるね!
マグロ解体ショー見てるみたい
ところで、ドラゴンの一番美味しいとこってどこ?全部?
んじゃね、まずはステーキいただこっかなー。定番!
美味しいー。あの姿からは想像できない美味しさだね、へー!
エリシャさんがレシピゲットするなら、また食べられるね♪

そうだ、私お酒飲める!やったね大人!
やったー、エリシャさん、かんぱーい♪
ホントだね、口当たりすごくいい
これ、ついつい何杯も飲みそうになっちゃうなぁ

あ、宴には歌と踊りもあるといいよね♪
私踊りまーす!
何人か巻き込んで一緒に踊るよ
田中さんにも伴奏お願いしちゃうね


エリシャ・パルティエル
星桜

無事に村を守れてよかったわ!
故郷にもドラゴンはいるけど
食材って認識じゃないのよね
これが文化の違いね
リュートがさばくの見てみたいわ

命をいただくんだからどこも無駄にしないわ
角とか牙とかも再利用できそうね
ドラゴン肉のレシピも聞いておくわね

あら、ほんと美味しいわね
勇士のみんなも食べて食べて
翼も食べてる?
リュートはドラゴン肉を食べて育ったの?
いっぱい食べて大きくなるのよ

そしてやっぱり葡萄酒!
葵桜ちゃんと乾杯よ!
そう大人だから危険なこともほどほどにね?
とっても美味しいわ
当たり年ってやつね
お土産にも持って帰れるかしら…

葵桜ちゃんのダンスはお祭りにぴったりね
ワイン片手に干しぶどうを摘みながらにこにこ見守る



● ドラゴン肉への期待と不安
 時は少し遡る。
 ガレオンドラゴンの解体を終えて着替えたリュートを、榎木・葵桜(桜舞・f06218)は拍手で出迎えた。
 滅多に見られないドラゴンの解体だ。面白そうだから見せてもらっちゃおう! といって見せてもらったのだが、なかなかどうして大迫力だった。
 ドラゴン自体がガレオン船ほど大きくて、数人がかりで専用の包丁(?)やバール、クレーンみたいなのを使って肉を切って塊ごとに取り分けて処理していく姿は解体ショーというにふさわしいもので。内蔵やら皮下脂肪やらは流血が苦手な人が見たら失神ものだろうが、幸か不幸か葵桜は平気な性質で。あっという間に解体されたドラゴンは、既に厨房や業者の手に引き渡されていた。
「それにしてもリュートくん、手慣れてるね! マグロ解体ショー見てるみたい」
「葵桜の世界でも解体するのか。マグロって何だ? 今度見てみてえ!」
「いいねいいね! 機会があったらお誘いしちゃうよ! ね、翼くん?」
「え、う、うん」
 ワクワクした様子で身を乗り出すリュートに、葵桜も大きく頷く。ドラゴンの解体ほど大掛かりではないけれど、きっと気に入ってくれるはずだ。そう思って振り返った葵桜は、どこか青い顔をしている彩瑠・翼(希望の翼・f22017)の様子に首をかしげた。
 いつもなら元気に同意してくれそうだが、俯き加減で元気がない。どうしたのか尋ねようとした時、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)が楽しそうな声を上げた。
「マグロの解体ショーも面白いわよね。でもドラゴンの解体を見られて良かったわ」
「エリシャはアックス&ウィザーズの出身なんだってな。あっちにも竜がいるっていうけどよ、食わねえの?」
 首を傾げるリュートに、エリシャは頷いた。アックス&ウィザーズではドラゴンといえば神話の中にいる強大なオブリビオンで、竜を倒した英雄の話ならあるが食材として一般流通するような品ではない。2つの世界は何かしらの繋がりがあると噂されてはいるが、全く違うのだと思わされる。
「故郷にもドラゴンはいるけど、食材って認識じゃないのよね。これが文化の違いね」
「そっか。アックス&ウィザーズもドラゴンいるもんね。ドラゴンのお肉ってどんな味するのかな? めちゃくちゃ気になるー!」
 ぽつり零すエリシャに、葵桜はワクワクしながら想像を巡らせる。葵桜もドラゴンの肉は食べたことがない。未知の味を体験するのは、どんな時でもワクワクする。そんな葵桜に、リュートは嬉しそうに微笑んだ。
「ドラゴンの肉はうめえぞ! なんていうか、ジュワーってなってこう……とにかく食えば分かる!」
「楽しみー! ところで、ドラゴンの一番美味しいとこってどこ? 全部?」
「好みは別れるけど、俺がお勧めなのはTボーンのとこだな。一頭の中でちょっとしか取れねえんだぜ? さっき大人たちが争ってたから、俺が貰ってやった! 皆で食おうぜ!」
「やっぱりいちばん美味しい食べ方って、ステーキかな? 楽しみだよね翼くん!」
「うん。……さあ、早くテーブルに行こう! 喉が乾いたから、ブドウジュース飲みたいな」
 改めて話を振った翼は、やっぱり元気がなさそうに微笑んでテーブルへと向かう。顔を見合わせた三人は、翼の後を追ってパーティー会場へと向かった。

● お肉とワイン、時々ダンス
 出てきたお料理の数々に、エリシャは感動のため息をついた。ドラゴン肉のステーキはもちろん、グレープ鶏のソテーや煮込み料理、新鮮なお野菜を使ったサラダやパイなどなど所狭しと並んだ料理はどれもこれも美味しそうで。
 運ばれてきたワインをグラスに注いでもらえば、綺麗なルビー色が本当に綺麗でうっとりしてしまう。
 もしこの村を守りきれなければ、料理もワインも台無しになってしまうのだ。守りきれたという実感を噛み締めたエリシャは、ドリンクが行き渡ったのを確認するとワイングラスを掲げた。
「無事に村を守れてよかったわ! 今日は楽しみましょうね。乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
 全員で掲げたグラスを鳴らしてワインを口に運べば、広がる芳醇な葡萄の風味が口いっぱいに広がって。まだ若いワインは新鮮でフルーティーで、華やかな香りと味わいがたまらない。
「とっても美味しいわ。当たり年ってやつね。お土産にも持って帰れるかしら……」
「いいなあエリシャさん。ワイン飲めて」
 ブドウジュースのグラスを傾けて頬を膨らませる葵桜に、エリシャは小さく微笑んだ。葵桜はもう20才。胸を張ってお酒を飲める年齢なのだが、飲酒の習慣がまだ身についてないのだろう。葵桜はまるでこの新酒のようだった。
「ふふ、葵桜ちゃんはもう大人でしょ? 葡萄酒だって飲めるはずよ」
 エリシャの指摘に、葵桜が大きな目を更に大きくする。やがて目を緩めた葵桜は、嬉しそうにブドウジュースのグラスを干した。
「……そうだ、私お酒飲める! やったね大人! ねえねえ、ワインちょうだい!」
 通りがかりのソムリエに赤ワインを注いでもらうと、綺麗な色の液体がグラスに落ちて思わず見とれてしまう。ため息をついた葵桜は、エリシャにグラスを掲げた。
「きれーいやったー、エリシャさん、かんぱーい♪」
「乾杯♪」
 グラスを鳴らして初めてのワインを口にする葵桜を、興味深く見守る。ワインを一口飲んだ葵桜は、目を見開くとグラスを干した。
「ホントだね、口当たりすごくいい。これ、ついつい何杯も飲みそうになっちゃうなぁ」
「ワインは結構アルコールが強いのよ。大人だからって調子に乗ると酔いつぶれるわ。危険なこともほどほどにね?」
「はーい」
「おまたせしました。Tボーンのステーキです」
 ウェイターが運んできたステーキは、霜降りの骨付きステーキだった。どこの骨かは分からないが、見た目は肉の多い巨大なスペアリブにも見える。鉄板の上でいい音を立てる骨付きステーキに、ウェイターが解説を加えた。
「ナイフで骨から外しましたら、骨はこちらの皿に置いてください。煮出してスープにしますので」
「分かったわ」
「骨まで使うんだね。捨てちゃいそうだけど」
「命をいただくんだからどこも無駄にしないわ。角とか牙とかも再利用できそうね。後でドラゴン肉のレシピも聞いておくわね」
「エリシャさんがレシピゲットするなら、また食べられるね♪」
「楽しみにしていてね」
 嬉しそうに微笑む葵桜を見ていると、ドラゴン料理習得の意欲が湧いてくる。なにせドラゴン肉とレシピがあればいつでも再現できるのだ。仕事で忙しい彼に、差し入れだってできるだろう。
「美味しいー。あの姿からは想像できない美味しさだね、へー!」
 早速頬張る葵桜に、エリシャもステーキにナイフを入れる。巨大なドラゴンから数%しか取れない希少部位の肉をミディアムレアに焼き上げたステーキは、口の中に入れると何とも言えない肉の旨味と味わいが口の中いっぱいに広がって、気がついた時には溶けてなくなっている。
「あら、ほんと美味しいわね。勇士のみんなも食べて食べて。翼も食べてる?」
「あ、うん」
 ずっと無口な翼を振り返ったエリシャの視線に、慌ててナイフを握る。さっきから食が進んでいないようだ。たどたどしい手付きでステーキと骨を切り分ける翼に、リュートがもどかしげに声を掛けた。
「なあ、どうしたんだよ翼。ドラゴン肉、口に合わねえ?」
「そ、そんなことないよ」
 一旦ナイフを置いた翼は、神妙な表情で両手を合わせると目を閉じた。
「いただきます」
 小さく祈りを捧げてしばし。改めてナイフとフォークを手に取ったリュートは、覚悟を決めたように一口食べる。なんだか難しい表情の翼に、リュートが勢い込んで尋ねた。
「どうだ? うまいか?」
「……うん、美味しい、かな?」
「なんだよハッキリしねえな。まずかったらまずいって言ってくれよな! ドラゴン肉はTボーンだけじゃねえんだぜ! 内蔵だってすげえ旨くて……」
「宴には歌と踊りもあるといいよね♪ 私踊りまーす! リュートくんも踊ろう! 田中さん、伴奏お願いね!」
 勢い問い詰める口調になるリュートの手を取った葵桜が、ダンスにリュートを引っ張っていく。始まる楽しげなダンスに、リュートも調子を合わせて踊る。楽しそうな二人の姿に、エリシャはワイングラスを傾けた。
「葵桜ちゃんのダンスはお祭りにぴったりね」
「そうだね」
「リュートはドラゴン肉を食べて育ったのかしら」
「そうだね。……オレ、ウィンにご飯をあげてくる」
「翼?」
 返される生返事に、席を立って立ち去る翼を見送る。追いかけようと思ったが、拒否するような背中に浮かせた腰を椅子に下ろす。何があったのかは分からないが、こういう表情をしている時はそっとしておいた方がいい。エリシャは経験上それを知っていた。
 翼の背中を見送ったエリシャは、ダンスパーティーから帰ってきた二人を出迎えた。

● 食べるということ
 宴を抜け出した翼は、貰った葡萄を飼い葉桶いっぱいに詰めるとウィンの許へと向かった。厩舎に繋がれ退屈そうにしていたウィンは、翼の姿に嬉しそうに鳴くと鼻面を擦り寄せてくれる。飼い葉桶を置いてたてがみを撫でた翼は、ウィンの前に葡萄を置いた。
「ウィンもありがと、お疲れ様だよ。島の人が、葡萄は馬も食べていいっていうから、どうぞ!」
 いただいた葡萄を差し出すと、ウィンは嬉しそうに口に運ぶ。美味しそうに食べるウィンを見つめた翼は、小さくため息をついた。
 思い出されるのは、解体されていくガレオンドラゴンの姿。原型をとどめ、そのまま生き返って飛んでいきそうなガレオンドラゴンは翼の目の前で解体されていった。首を落として皮を剥いで肉を切り分け、鮮やかに赤い内臓が取り出されて。その様子を思い出すと、なんだか胸が締め付けられるようで。
 再びため息をついた翼に、後ろから声が掛けられた。
「よ、翼。こんなところにいたのか」
「リュートくん……」
「どうしたんだよ翼。元気ねえな。腹の具合でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫だよ」
 リュートから葡萄ジュースのグラスを受け取った翼は、そっと口に運ぶ。喉を滑り落ちていく葡萄ジュースは甘くてすっぱくて味が濃くて、UDCアースで飲む葡萄ジュースとは全く別の味がした。
「葡萄ジュース、すごく美味しい! お酒はもっと美味しいのかな?」
「どうだろうな。じっちゃは旨そうに飲んでたけどな」
 翼の隣に座ったリュートも、葡萄ジュースを飲んでいる。何か言おうとして言えない様子のリュートを見かねたように、クロノスが翼の膝の上に乗ると顎に頭を擦り寄せた。もふもふでなめらかなたてがみが少しくすぐったくて、ちょっとだけ気持ちがほぐれてくる。
「きゅ?」
「クロノス、くすぐったいよ。……リュートくん、ホントすごいね。あんなおっきなドラゴン、どんどん解体しちゃうなんて」
「あ? ああ、まあな」
 少し得意げなリュートに微笑んだ翼は、葡萄ジュースのグラスに視線を落とした。UDCアースでも、お肉はほとんど毎日食べていた。スーパーで売られているパック詰めのお肉は食材で、生きていた動物だっていう感じはしなくて。でも。
「……お肉ってああやって、解体されて売られたり食べたりしてるんだね。さっきまで怖かったあのドラゴンとは思えないや」
「さっきからどうした? 何かあったのかよ?」
「うん。……リュートくんの解体を見てたらね。ドラゴンも生きてたんだなって」
「そうだな」
「普通に眺めてたら全然そんな感じしないんだけど、さっきの全部ドラゴンの料理……なんだね。パリピで食べた熊肉みたいな感じなのかな」
「そうだな」
 もどかしげに口を開きかけたリュートは、何かを飲み込むように口を閉じる。エリシャや葵桜が言ってたろ、聞く姿勢聞く姿勢、と呟いて言い聞かせるリュートに、翼は微笑んだ。
「うまくいえないけど、何も見てなかったらきっと普通に食べてただろう料理たちだが、今回は原型知ってるししっかり解体ショー見てて。生きて、噛み付いてきたあのドラゴンを食べたんだな、って思うと、何ていうのかな。うまく言えないけど……」
「……俺も、昔世話になったドラゴンを食ったよ」
「え……?」
 突然の言葉に、翼は顔を上げた。どこか遠くを見るリュートは、苦いものを噛み潰したような顔になると独り言のように言った。
「イデアって白いドラゴンなんだけどな。色々あって浮島に取り残されてさ。イデアは年寄すぎて飛べなくて。腹が減って腹が減ってしょうがなくて。イデアも腹が減ってて。取っ組み合いに戦って、俺が勝って解体して食った」
「……」
「俺はあいつの命を食って生きながらえた。だから俺は、あいつの分も生きるんだ。エリシャも言ってただろ? 命をいただくって」
「うん」
 頷いた翼は、葡萄ジュースを飲み干した。この葡萄だって生きていたのだ。あのガレオンドラゴンだって生きていた。その生命を奪って、食べることで翼は生きている。それだけは紛れもない事実で。
「命をいただく、かぁ。敵でも命は命だもんね。怖いとか好き嫌い言ってたらダメだよね」
「ドラゴンで一番うまいのは脳味噌だぜ?」
「わわっ、それは……が、がんばるよ」
 いたずらな目で微笑むリュートに、慌てて両手を振る。翼の反応に大きか声で笑ったリュートは、立ち上がると翼に手を差し伸べた。
「冗談だよ。あんな旨いところ、翼には食わせねえよ。さ、行こうぜ。デザートにはまだ早いからな!」
「うん!」
 リュートの手を取って立ち上がる。生命をいただいて翼は生きている。預けられた命の分、何ができるのだろうか。そんなことを考えた途端に、お腹がグーッと大きな音を立てる。正直な腹の虫の訴えに、二人は目を見交わすと笑いあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月01日


挿絵イラスト