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Light the pumpkin~閃火

#ダークセイヴァー #お祭り2021 #ハロウィン #魔女領主戦争

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●閃
 ダークセイヴァーにおいて、ハロウィンというのは御伽噺や伝承の中でだけ語られる架空のものだ。
 支配者であるヴァンパイアにとって、人類に盛大な祭りを行わせる理由などなく、人類にとっても、食用である南瓜をそれ以外の事に用いる余裕などなかった。
「けれど、今ならば。闇の救済者達の活躍によって得た地域が存在する。そして、なんとも都合の良いことに、その近くに南瓜が群生しているという予知を得た」
 楽しげな様子で語るのはグリモア猟兵エンティ・シェア(欠片・f00526)。
 伝承たるハロウィンの実現が可能となる予感に、わくわくしているのだろう。
「南瓜があるのは、異端の神々が徘徊している地域なのだけどね、食料としても優秀な南瓜はぜひとも獲得すべきだろう」
 南瓜の飾りを作ったり、南瓜の食べ物を振舞うなど、ハロウィンの楽しみ方を伝え、共に楽しむことが出来たなら。
 きっと、支配者たるヴァンパイアに抗い続ける闇の救済者達の癒しにもなるだろうから。
 そのためにも、まずは異端の神々たるオブリビオンを排除せねばならない。
「群生地にいるオブリビオンは、『純血姫』と呼ばれる女性だ。かつては守護者の一族で、けれど吸血鬼の子を身籠ってしまった絶望の果てに死んだ、憐れな娘だ」
 オブリビオンとして蘇った今では、そして、狂えるオブリビオンと化した今では、吸血鬼に対する憎しみだけが彼女を動かしている。
 無論、狂えるオブリビオンたる彼女に、説得などの言葉は届かない。倒す事しか、してやれる事は無いのだ。
「――そうそう、肝心の場所なのだけれどね。二つ並んだ領地の片割れ。かつて、魔女と呼ばれた者が治めていた場所さ」
 その領地を照らした閃火は、今も輝いている。
 輝きが絶える事の無いよう、彼らのための収穫祭を。
「楽しい日にしようじゃないか」


里音
 ハッピーハロウィーン!
 ダークセイヴァーからハロウィンをお届けします。

 舞台はかつて魔女領主から解放された領地です。
 (弊シナリオ『Witch Lord War~閃火』にて解放した土地ですが、特に把握する必要はありません)
 第一章にて異端の神を討伐し、第二章にて領地の民とハロウィンを楽しみましょう。

 タテガミMSとの合わせシナリオですが、『以前同時解放した場所』という共通点のみですので、どちらのシナリオにも参加頂けます。
 また、第一章は🔵の必要人数程度で執筆(場合によってはサポートさんのお力もお借りします)し、第二章をメインで受付の予定です。

 最終章が日常章ですので、お声掛けいただいた場合エンティも描写可能です。
 皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『純血姫レヴリス・シルバームーン』

POW   :    第四の旋律・灼かれて滅せよ
【敵への憎しみから生み出される「灼滅の炎」】が命中した対象を燃やす。放たれた【憎しみの】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    第五の旋律・番犬の刃
【三つ首の番犬】の霊を召喚する。これは【牙】や【炎を吐くこと】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    終の旋律・忘却への道標
対象の攻撃を軽減する【天使の姿】に変身しつつ、【全てを忘れ眠るように命を奪う浄化の光】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマヒル・シルバームーンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サンディ・ノックス
以前解放した土地の片割れ
前回こちらには来れなかったけど、今回はこちらにも南瓜の祭を届けよう
南瓜の群生地に居るオブリビオンは運が悪かったかな?
ううん、オブリビオンになってしまって、狂気に囚われて、縛られ続けているほうが不幸
倒して解放してあげるからね

UC招集・赤夜発動
魔力でもう一人の自分を作りだし、彼に指示を出して敵を攻撃させる
わ、相手は炎を使うのか、南瓜が燃えたらどうしよう
俺も火への耐性が一応あるけど、無傷では済まないと思う
距離があるのが不幸中の幸い、火を躱しながら魔力の自分に指示を出し続ける

「吸血鬼の子を身籠っただけで迫害されるなんて可哀想」と魔力の俺が言う
本心だろうけど煽りにしか聞こえないよ




 かつて、魔女領主と呼ばれた者が治めていた、二つ並びの領地。
 その片割れ――処刑台の魔女の元に、当時のサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は駆けつけていた。
 あの時は訪れることが出来なかったもう片割れ。今日は、こちらの地に、平和な南瓜の祭を届けようと思ったのだ。
「――あれが、噂のオブリビオンかな」
 南瓜の群生地でふらりと佇む一人の女性。
 『純血姫レヴリス・シルバームーン』。それが、彼女の名であり、称号だ。
 こんな場所に一人で佇むドレス姿というのがそもそも異様だが、サンディの気配を察して振り返ったようなその瞳に、理性的なものは全く感じられない。
 支配者達にあるような愉悦も、人類の間に広がるような希望も、絶望すらも。
 猟兵達が求める南瓜の群生地に存在してしまったオブリビオンなんて、運の悪いことだと一瞬思ったサンディだったけれど。その眼差しに見つめられると、考えが、改まる。
「倒して解放してあげるからね」
 元は、人々を守ることを生業とした一族だと聞いた、レヴリスが。
 こうしてオブリビオンになり、挙句の果てに狂気に囚われて彷徨い続ける存在となってしまったならば。
 その不幸から、解き放たねば。
 差し伸べるような手のひらは、けれど、魔力の矛先を決める指針。
 従うように放たれたのは、サンディと同じ姿をした、魔力の塊だ。
「炎を使うみたい。南瓜が燃えたら大変だし、なるべく引き離して」
 指示することで、魔力の塊であったもう一人のサンディを『操作』する。もっとも、サンディが『悪意』と呼ぶ存在は、頷いてくれるわけではないけれど。
 レヴリスの手のひらを起点に、舞い上がる炎。それは赤々と美しいのに、憎しみの念を拭いきれない、禍々しい炎。
 それが放たれるより先に動いたもう一人に合わせ、炎は、南瓜から幾分か離れた場所を、焼き払う。
 吸血鬼への憎しみが、狂う事で全ての命への憎しみに変わったのか。あるいは、何もかもが吸血鬼に見えるのか。
 白い肌に引かれた赤い唇が、しきりに呟くのは、行き場のない恨み言。
「……ああ、余程、憎しみが籠っているんだね」
 小さな声なのに、不思議と耳に届くのは。放たれる炎に、その憎悪が、染みついてしまっているからだろう。
 晒される熱に、当てられそうな憎悪に瞳を細めて、サンディはまた少しだけ、距離を取った。
 代わりに前線に駆けるもう一人は、黒剣を携え、振るい、その憎悪すらも受け止めるかのように、距離を詰めて。
 理性の無かった瞳が憎しみに染まるのを見つめながら、ぽつり、呟くように、告げる。
『吸血鬼の子を身籠っただけで迫害されるなんて可哀想』
「――ッ!!」
 思い出したくもない、レヴリスの最大の絶望であり汚点。憎悪の根源。
 哀れに思う気持ちは本心なのだろうけれど。まるで、些細な事だと言わんばかりのその言いざまは。
「……煽りにしか聞こえないよ」
 これだから、お前は『悪意』なんだと。小さな呟きは、口元だけで、掻き消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葬・祝
さて、遊ぶ前にお仕事ですね
誰が何を言ってももう変わらぬなら、早々に終わらせてやるのがせめてもの慈悲でしょう
んふふ、私に慈悲なんて言葉、欠片も似合いませんけどねぇ

UCで場を作り替えましょう
私のためだけに与えられた場所ですもの、動きやすいのは道理ですねぇ
ハロウィンの日は、お盆と同じで霊魂だけの私は引き摺られ易いですから
神域の中が安全なんですよ
忘れることも眠ることもしませんよ、あの子の神域の中で私を害そうなんて無理な話ですもの

【誘惑、恐怖を与える、おびき寄せ】で敵を惹き付け【カウンター、呪詛、郷愁を誘う、催眠術、精神攻撃、生命力吸収】
精神面が効かなそうなら【念動力、斬撃波、衝撃波】に切り替えましょう




 さて、と。葬・祝(   ・f27942)は穏やかな声音で呟く。
 そうして、『純血姫レヴリス・シルバームーン』の姿を、見た。
「遊ぶ前にお仕事ですね」
 見かけた瞬間は虚ろに見えたレヴリスだが、猟兵と一戦交えたその目には、明確な憎悪がある。
 ぼんやりと呆けていても言葉なんて届かなかっただろうけれど、こうして憎悪に満ちたなら、一層、聞く耳などないのだろう。
 誰が何を言ってももう変わらぬなら。
「――早々に終わらせてやるのがせめてもの慈悲でしょう」
 二コリ、微笑んで見せて。
 んふふ、と楽し気に祝はわらった。
「私に慈悲なんて言葉、欠片も似合いませんけどねぇ」
 たまにはそんな素振りをして見せるのもいいだろう。だってほら、ハロウィンは普段と違うものに化けて、たのしむものだから。
 笑う口元を隠すように添えた袖。対の手をひらりと揺らせば、朱蛺蝶がひいらりと舞い始める。
 それが幾つも飛び交えば、そこは、『朱の社』と化す。
「ハロウィンの日は、お盆と同じで霊魂だけの私は引き摺られ易いですから。神域の中が安全なんですよ」
 行きはよいよい帰りは――。
 わらべうたを唱えれば、常秋の社に適応する妖たる祝の力は、増す。
 レヴリスは、異端の神などという呼び名を持ったとて、所詮は狂えるオブリビオン。祝のために整えられた場に順応できるはずもなく。
 それでも、動揺らしいものすらないのは、やはり、狂っているからか。
 かつての名残に縋るように、天使の姿に変身したレヴリスは、浄化の光を放つ、けれど。
「あの子の神域の中で私を害そうなんて」
 無理な話だと、祝はわらう。
 守られるような温かな心地にまどろむことならばあるかもしれないけれど。眩しすぎる光では、目も覚めてしまうというもの。
「いっそ君こそ全て忘れてしまえば良いのに」
 ねえ、そうでしょう。ことりと小首を傾げて、祝は誘うように微笑む。
 誘いに乗るとはあまり思っていないけれど、僅かでも揺らぐなら、つけ入る隙はあるだろう、なんて。
「……頑なですね」
 やれやれと頭を振って、聞きそうにない誘惑や催眠の代わりに、指先を遊ばせて見えない念動力を操った。
 開いた扇をふわりひらりと翻し、憎悪に塗れた天使の娘へ、贈るのは戦神の加護が篭められた、暴風。
 羽根を羽搏かせ抗う素振りを見せつつも、切り刻まれるように煽られて、レヴリスは落ちて地を這う。
 それでもまだ立ち上がろうとする彼女にもう一閃と構えてから、ふと、ころり転がった南瓜の破片に、くすりと笑う。
 ――あとで上手に料理されてくださいな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
【華葛】
仮装:吸血鬼(マント、帽子などの典型的な奴)

おや、良く似合ってるねぇマリア。俺を捕らえる? ハハハ、奮闘に期待するさぁ(明らかに余裕顔)

いやぁ、絶望してる彼女にこの仮装は悪かったかなぁ?(全然そう思ってない)
ま、死が救済ならばそれは結構。命を盗むまでさぁ。

さぁて、借りるよマリア。マリアの一角獣に乗るのは久しぶりだなぁ。
んじゃま、俺は狂気の使役を発動しよう。召喚された三つ首の番犬の霊の主導権を盗むのさぁ。そこのわんこ、傍のご主人を焼け、牙を突き立てろ。
ははは、奪われ続けるだけだなぁ狂える姫君。とはいえ俺は今は吸血鬼、血を欲しよう(銃で撃ったりダガーで斬りにも行く)
確かに盗ませて貰ったよ


マリアドール・シュシュ
【華葛】
仮装:吸血鬼ハンター
翼の様な黒外套
短パン
ロングブーツ
ポニーテール
黒のリボン

永一が吸血鬼ならマリアはハンターね!(ふんす
捕まらないよう気をつけて頂戴、永一
むぅ…(がしっと掴む

ダークセイヴァーでもハロウィンが…!
この地に住む人々に伝える為にも
永一、まずは目の前の絶望に堕ちた彼女をすくいましょう
憎しみに狂いよがる姿は(居た堪れなくて、可哀想)

目を伏せて再び見上げ
高速詠唱でUC使用
103体召喚
3体合体させ背に乗り移動
5体合体させ永一用の一角獣を
残りで豪快に一斉挟撃

永一、これを使って

竪琴で麻痺絡む鎮魂の旋律を奏でる
鋭敏な音の誘導弾で敵へ攻撃
一角獣で防御
永一の死角を一角獣で潰す

どうか安らかに
お休み




 明確な憎悪が、そこにはあった。
 それが注がれるのは、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)。理由は、彼自身が理解している。
 永一は、吸血鬼の仮装で、この場に現れたからだ。
 御伽噺で描かれるような、黒づくめのマントやスーツ、帽子など。典型的な姿のそれは、ダークセイヴァーにおける『吸血鬼』の在り方とは、些か異なるかもしれない。
 けれど、永一は理解していた。吸血鬼を身籠ったことで絶望した彼女――『純血姫レヴリス・シルバームーン』にとって、その装いで振舞う事が、何らかの影響を与えるだろうことを。
 理解して、選んだ。だから、向けられる憎悪を当たり前のように、受け止めた。
「永一が吸血鬼ならマリアはハンターね!」
 ふんす、と。気合を入れるマリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)は、そんな永一を狩るハンターの立場に扮している。
 ポニーテールを揺らし、翼のような黒の外套を纏って。その下には、ロングブーツにショートパンツの動きやすい服装。
 きりっ、と表情を引き締めるさまは、ややあどけなさを残したような、愛らしさもあった。
 ――もっとも、レヴリスにとって、『吸血鬼』と共に居る存在を『人類』だとはみなせるわけがない。そもそもそれを判断する理性も、無いのだが。
 だからこそ、永一に向けられる憎悪の一端をひりひりと感じ僅かに眉を寄せながらも、マリアドールはするりと視線を背け、ちらと永一を見た。
「ハンターのマリアに捕まらないよう気をつけて頂戴、永一」
「俺を捕らえる? ハハハ、奮闘に期待するさぁ」
 良く似合っているねぇ、と笑ったその顔のまま、子供の戯言を聞き流すかのような調子で笑われて。むぅ、とマリアドールの頬が膨らむ。
 永一の腕をがしっと掴み、捕まえた、と目線で訴えてみるが、どこ吹く風。
 ますます頬が膨らんだが、いつまでも戯れている場合ではない。
 レヴリスによって呼び出された、三つ首をもつ番犬の霊が轟くように吼える。
 空気の震える心地に晒されながら、二人は、彼女を『救う』べく、その命へと、刃を向けるのだ。
「可愛い可愛い一角獣さん、いらっしゃい──さぁ、マリアに見せて頂戴? 合わさりし時に目覚める真の力を」
 呼び寄せるのは、限界目一杯の103体。宝石の身体を持つクリスタルユニコーン達は、マリアドールの償還に応じ、同時に複数体で合体する。
 左の前足に刻印された『1』の数字を、『3』と『5』にまで引き上げて。より強い方を、永一に託す。
「永一、これを使って」
「マリアの一角獣に乗るのは久しぶりだなぁ」
 ひらりと跨り、満ち満ちた憎悪に呑まれるばかりのレヴリスを見やれば。
 視線が合うと同時、弾かれたように嗾けられる、ケルベロス。
 蹄を鳴らして駆ける一角獣を操り、牙を突き立てんとする突進を避けながら、へぇ、と永一はわらった。
「いいのを出したじゃあないか。俺にも使わせて欲しいくらいさぁ」
 なぁ、わんこ。囁きかけるような言葉に、ぐるる、と喉を鳴らしていたケルベロスの勢いが、緩む。
 レヴリスが呼び寄せた存在。その主足りえる資格を、永一は、盗んだのだ。
「死ぬまでこき使うまでだよ」
 返してやれる保証はないなぁ、と笑いながら、永一はくるりと体勢を変えたケルベロスに命じる。
 元の主人であるレヴリスを焼き、牙を突き立てろと。
 命じられるまま駆けたケルベロスは、首の一つが吐く炎でレヴリスを飲み込む。
 炎の中で迸るのは悲鳴だ。けれど、叫びながらも、レヴリスは永一を睨む眼差しを逸らさない。
 自身の身が焼け爛れようと、腕や足が突き立てられる牙に引きちぎられようと、それを回避することさえなく、ただただ、貫くような感情だけを、ぶつけてくる。
「なるほど、狂える姫君だ」
 吸血鬼への憎しみだけが、彼女の存在を繋ぎ止めているのだろう。
 騎乗用とは異なる、攻撃手段として残した『1』のままの一角獣達を嗾ける機械を見失いながら、マリアドールはその痛々しい姿に、きゅっ、と眉を寄せた。
(――居た堪れなくて、可哀想)
 ダークセイヴァーで、ついに持たされれるというハロウィンの催事。それを伝えるためにも、レヴリスを狂気から救うためにも。
 マリアドールは一度伏せた瞳を再び開くと、せめてと、鎮魂の曲を竪琴で奏でた。
 届いてくれたらいい。響いてくれたらいい。
 願いながら奏でる曲が、レヴリスにどう聞こえているかは、わからないけれど。
「どうか安らかに――お休み」
 だん、と。燻る煙をも断ち切るように、永一のダガーが閃いて、レヴリスの首筋に突き立てられる。
 血を欲する吸血鬼の真似事に、最期に合った眼差しは、どこまでも純度の高い憎しみだけがあって。
 見つめ、見届けて。永一はゆるりと口角を上げて、わらう。
「確かに盗ませて貰ったよ」
 奪われ続けた彼女の、命さえも。
 静けさばかりが残る土地で、大きく育った南瓜達が、それを見届けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『ささやかな華やぎ』

POW   :    料理をいただく

SPD   :    会場作りを手伝う

WIZ   :    様子に想いを馳せる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●南瓜に灯す
 大きな南瓜、程々の南瓜。沢山の南瓜が運び込まれ、領地に住む闇の救済者達は歓喜した。
 同時に、少しばかり戸惑った。この沢山の南瓜達は、ただの食糧ではなく、『ハロウィン』なる祭りの催しに使われるのだと、聞いたために。
 ハロウィンとは何だ。ひそひそと尋ねる声に混ざって、子供の頃に絵本で読んだことがあるだとか、いやいや古い歴史書に書かれていただとか、様々な言葉が飛び交っている。
 彼らは知らない。ハロウィンというものがどういう催事か。
 だから、今日この領地で行われるハロウィン祭は、猟兵達が自由に考えて良い。
 仮装を楽しんだり、南瓜の飾りを作ったり。
 お菓子を作ったり配ったり、ちょっとした悪戯を仕掛けたり。
 自由を勝ち取った彼らが、笑って過ごせるようなひと時を――。
霑国・永一
【華葛】
仮装:吸血鬼

生きるのに必死で娯楽が無いというのは損なものだなぁ。ま、何が普通なのかは人それぞれだけど。
それじゃ、娯楽の一つを施しに行こうか、マリア。今宵は盗むのではなく真逆のお仕事さぁ(お菓子の入った籠を片手に)

やぁ、紳士淑女、或いは子供達。楽しんでいるかなぁ?
ハロウィンは楽しむもの。お菓子を振舞おうじゃあないか

なんだいマリア?……おぉっと、そう来たかぁ。しかし、散々配り歩いていたから今の手持ちのお菓子が無くなってしまったなぁ。いやぁ、参った、これはトリックを受け取る他無いかな?(悪戯待ち)

いやぁ、可愛らしい悪戯だったよ。それじゃお菓子をあげるさぁ(笑いながら隠し持ってたチョコ渡す)


マリアドール・シュシュ
【華葛】
仮装は一章同様

永一がもしもこの世界にずっと居たら、盗まないお仕事をしてくれるのかしら
でもマリアも人々を笑顔にする娯楽を伝えたいもの
ええ、祭りを盛り上げるのよ!

この地の民にハロウィンの楽しさを教える
南瓜のランタンを作ったり歌ったり

皆に魔法の言葉を教えてあげる
トリックオアトリートって言って頂戴(意味も教える
ふふっ、お菓子をどうぞ(永一と共に菓子を配る

一段落ついたら永一へ魔法の言葉を言う

今のマリアは吸血鬼ハンター
今度こそ捕らえちゃうんだからっ
むぅ…また余裕の表情ね
じゃあもーっと笑わせてあげるわ!

無抵抗な永一へくすぐり攻撃

えっ…お菓子を持っていたの?
も、もう!最初っから言って…!(胸元ぽかすか




 戦の後の姿のまま――つまり、御伽噺の吸血鬼スタイルで街を訪れた霑国・永一に、初めこそ困惑を見せた領民達。
 けれど、マリアドール・シュシュが吸血鬼ハンターを名乗り、「マリアがしーっかりと捕まえているのだわ!」と胸を張るものだから、ほっこりとした安堵が過り、広がる。
 まぁそもそも、これは仮装なのだと。こういった『怪物』の姿を装うことも、この娯楽の醍醐味だと、人々の間に伝わる頃には、警戒じみた困惑なんて、掻き消えていたのだけれど。
「姿一つであれとは。生きるのに必死で娯楽が無いというのは損なものだなぁ」
 それがこの世界の人々の日常であり、普通であったのだろうと思えば、肩を竦める程度にとどまるもの。
 そんな彼らに娯楽を施しに行くのだから、盗みを生業とする常とは真逆ですらあって。愉快な心地すら、するのだけれど。
 永一の様子をちらと見つつ、彼がもしもこの世界にずっと居たら、盗まないお仕事をしてくれるのかしら、なんて小首を傾げていたマリアドール。
 そんな永一の日常はあまり想像が出来ないとも、思うけれど。
「それじゃ、娯楽の一つを施しに行こうか、マリア」
「ええ、祭りを盛り上げるのよ!」
 人々を笑顔にする娯楽を。しっかりと伝えるべく、お菓子の入った籠を手にした二人は街を颯爽と歩いた。
 持ち込んだ南瓜は、ランタンにする。そう告げたマリアドールに目を丸くしていた青年が、一生懸命その中身をくりぬいている。
 その隣で削った中身を籠に集めながらじっと作業を見つめていた少年は、この南瓜がどうランタンに変わるのか、わくわくとしているよう。
 その光景をくすりと笑み見つめ、ふわ、と彼らの傍らにしゃがみこんで。
「正面には顔を作るのよ。笑顔がいいのだわ!」
 でも、ランタンとして光るものだから、ちょっと目つきが悪いくらいの方がぴったりかもしれないなんて。
 言いながら自身の眦を指で吊り上げて見せるマリアドールを真似る少年。そうして、顔を見合わせて噴き出した。
「おねえちゃんにはその顔似合わないなぁ」
「あら! マリアだってきりっとしている事はあるのだわ」
 楽しげに笑う二人を見守りながら南瓜を掘っていた青年の手で作られる笑顔は、きっと、愛嬌のある悪戯顔。
 あちこちで続々と仕上がる南瓜ランタンに陽を灯し、怪しげで幻想的なハロウィンの空気が灯っていくのを見守りながら、マリアドールは陽気な歌を口遊む。
 子供達を中心に、一人、また一人と歌う声が広がっていく光景を微笑ましく見ている母親達の前に、すっ、と差し出される、お菓子の入った籠。
「やぁ、淑女諸君、楽しんでいるかなぁ?」
 にっこりと微笑む永一が、ひょいと飴玉の包みを摘まみ上げ、それぞれの手のひらに落としていく。
「ハロウィンは楽しむもの。お菓子を振舞おうじゃあないか」
 甘いものは元気が出るものだ。困窮する日々の中でも、今日という特別を存分に楽しめるように。
 手のひらのものをまじまじと眺める母親達にひらりと手を振り身を翻した永一は、そうやって出会い頭にお菓子を配り、飾られる南瓜飾りを覗き込み、ゆるりとのんびり過ごしていた。
 布切れを被りお化けの装いをしてみたり、永一を真似るかのようにマントとして羽織った子供達が傍らを駆けていくのを視線で追い掛けていると、つん、と裾を引かれて。
 振り返れば、マリアドールが永一と同じお菓子の籠を手に立っていた。
 にっこり笑う彼女と、今度は二人でお菓子配り。
「皆に魔法の言葉を教えてあげる。トリックオアトリートって言って頂戴」
「トリック、オア、トリート……?」
「そう、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ! って意味。ハロウィンではそう言ってお菓子をねだるのよ」
「悪戯って?」
「痛くなくて笑い合えるものがいいのだわ。例えば……くすぐってみたり!」
 でも今は、マリア達はお菓子を持っているからこれをあげるのだわ、とチョコレートを差し出されて。教わった子らは、来年楽しんでみようと嬉しそうに駆けて行った。
 そうして手持ちのお菓子をひとしきり配り終えた頃。
 数歩先を歩いていたマリアドールがくるっと永一を振り返って。
「永一、トリックオアトリート!」
「……おぉっと、そう来たかぁ」
 お菓子を持っていないのを知っているな、と。肩を竦めれば、マリアドールはしてやったりと言わんばかりの顔でふふりと笑う。
「今のマリアは吸血鬼ハンター。今度こそ捕らえちゃうんだからっ」
「いやぁ、参った、これはトリックを受け取る他無いかな?」
 しかし、永一は相変わらずの余裕の表情。にんまりと笑みを湛えるその顔に、むぅ、とまた、頬を膨らませて。
「じゃあもーっと笑わせてあげるわ!」
 えい、と飛びつくようにして、永一をくすぐるマリアドール。
 くすくすと笑う永一は、くすぐったがっているのか、微笑ましがっているのか。
 あんまり効いているように見えない永一は、頃合いを見てむくれ顔のマリアドールの前に、チョコレートの包みをぶら下げた。
「いやぁ、可愛らしい悪戯だったよ。それじゃお菓子をあげるさぁ」
「えっ……お菓子を持っていたの?」
 きょとん、としたマリアドールが目を丸くしている間に、ぱ、と落とされたチョコレート。
 慌てて受け止めたマリアドールの頬は、これ以上ないくらい、膨らんでいた。
「も、もう! 最初っから言って……!」
 ぽかすかと胸元を叩かれる心地に、永一はまた笑って。
 愉快な一日だなぁ、と誰へともなく呟いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葬・祝
【彼岸花】

さ、飾り付けしましょう、カフカ
合流した愛しい子と共に南瓜を飾りましょう
くり抜いた部分は料理に使いますから大丈夫ですよ、と周囲の人々に伝えておきましょうね
食糧として無駄にする訳ではないと分かった方が受け入れやすいでしょうし

カフカの彫った南瓜の顔を見て思わず笑ってしまう
くふふ、思ったより硬かったんでしょう
手、切ってませんか
そりゃあ心配しますとも
君の手は素敵な文字を綴る手なんですから

……あ、そうだ
カフカ、カフカ、とりっくおあとりぃと、です
先日鏡のヤドリガミに教わったばかりの言葉を
菓子を持っていないのは当然知っている
あら、なら仕方ありませんね
帰ったら、夜にでもとびきりの悪戯をしなくては。ね?


神狩・カフカ
【彼岸花】

ハロウィンの飾り付けか
そういや初めてやるなァ
この南瓜を使うのかい
南瓜料理も楽しみだな

とりあえずこれを掘りゃいいんだな?
顔っぽくすりゃいいんだろ?
うろ覚えのジャックオーランタンを思い出して
掘り始めたものの
か、かっっっってェなこれ…!
そりゃまあ体力も力もないほうだが(認めたくないが)
それにしても固くねェか?

出来上がったものを眺めて苦笑い
わ、笑うなって!
…いや、怪我はねェよ
心配されて気恥ずかしい

なんだ藪から棒に
あいつ…余計なこと教えやがって…恨むぞ
今日は菓子なんて持ってきてねェぞ
知ってたのかよ…狙ってやがったな
帰ったら、ねェ…
想像してしまい顔が赤くなる
大きな溜息を吐いて

…お手柔らかに頼むぜ




 さ、と。一人先行して敵と対峙した葬・祝は、合流した神狩・カフカ(朱鴉・f22830)を手招いた。
「飾り付けしましょう、カフカ」
「ハロウィンの飾り付けか。そういや初めてやるなァ」
 行事自体は知っているが、自分から関わる事は無い。
口伝に聞いていただけのものに触れる興味を隠すことはせず、ひょいと南瓜を持ち上げて、カフカはくるりとあちらこちらから眺め見た。
「この南瓜を使うのかい」
「そう、くりぬいて灯りにするんですよ」
 その様子を、じっと見つめている少女がいた。
 食料としてしか見ていない南瓜を飾り付けに使うという行為に、なんとなく不安を覚えている様子が、眼差しからありありと伝わってくる。
 そんな少女に視線を合わせて、祝はにっこりと微笑む。
「くり抜いた部分は料理に使いますから大丈夫ですよ」
 折角の美味しいものを無駄にしないようにね、と添えれば、少女の顔がパッと明るくなる。
 それは周囲にも派生していき。安堵の広がる様にホッとすると同時に、南瓜を使った料理がどんなものになるかと、楽しみも湧くカフカ。
 両方楽しむためにも、まずはこの南瓜を加工せねばならない。
 とりあえずこれを掘ればいいのか、と。南瓜に刃物を突き立てて。
「顔っぽくすりゃいいんだろ?」
「あくどい笑顔がいいですねえ」
「ふーん、確かにそう言う感じだったかも」
 うろ覚えのジャックオーランタンを思い起こしながら、刃物を動かし掘り始めようとするものの。
(か、かっっっってェなこれ……!)
 生の南瓜は想像以上に硬かった。体力の無さを(認めたくないが)自覚くらいはしているカフカには、ちょっと重労働が過ぎた。
 掘るだけならまだ地道にできるが、顔を作るとなるとどうにも歪にしかならない。
 最終的には何とか顔として成立するものになったが、我ながらこれはひどいと、思わず苦笑いが漏れた。
 同時に、隣からも明確な笑い声が聞こえたわけだが。
「わ、笑うなって!」
「くふふ、思ったより硬かったんでしょう。手、切ってませんか」
「……いや、怪我はねェよ」
 よく言えば愛嬌のある南瓜の顔から、ちらとカフカの手に視線を移した祝は、そこに普段通りのままの綺麗な手がある事を確かめて……けれど、力を込めていたからか、少し赤くなっているようだとほんの少し眉を提げる。
 心配げな表情に、気恥ずかしくなってなんとなく視線を背けたカフカの手に触れ、祝はそっと労わるように撫でた。
「そりゃあ心配しますとも。君の手は素敵な文字を綴る手なんですから」
 痛まないのなら平気だろうか。擦れているわけでもなさそうだ。
 確かめて満足した祝は、背けられっぱなしの視線に、ふと微笑まし気に笑って。
「……あ、そうだ」
 思い出したと言うように手を打って、そそそ、とカフカの逸らされた視線の先に回り込む。
 そうして、ちら、と瞳が向けられることを確かめて、にっこり、微笑んで。
「カフカ、カフカ、とりっくおあとりぃと、です」
「……なんだ藪から棒に」
「先日教えてもらいました」
 共通の知り合いであるヤドリガミに、と。伝えればカフカの表情が露骨に歪んだ。
 余計なことを教えやがって、とこぼされるのをにこにこと見守っていたら、ふぅ、と小さな溜息。
「今日は菓子なんて持ってきてねェぞ」
「あら、なら仕方ありませんね」
 ぱ、と。楽し気に笑う顔は、カフカがお菓子を持っていないことを知っていたという事を隠しもしない。
 狙ってやがったな、とますます表情を歪めたカフカのじとりと睨むような眼差しを意に介することもなく、祝は口元にそでを添えて、ゆるり、笑む。
「帰ったら、夜にでもとびきりの悪戯をしなくては。ね?」
 囁くように紡がれる、艶美な声。
 そうして満足気に笑う祝を見つめて、帰ったら、を想像して。
 顔が赤くなるのを自覚したけれど、それは、大きな溜息をついてごまかした。
「……お手柔らかに頼むぜ」
 強がりに似た言葉に、祝がいっそう満足気に笑うのは、見て見ぬふりをした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
【華道】

獣耳の形に合わせたフード付きの
足まですっぽりな大きな黒布を被る
簡易的な仮装

突然現れた大きな南瓜顔にびくり驚いて
ああ、なんだクラウンか
急に現れるから驚いた
似合ってる…と言っていいのか?
いや、楽しそうだしいいか

魔法の言葉
「とりっくおあとりーと」
と言うんだそうです
お菓子を持っていないと悪戯され…っと、わっ

突然掴まれた手にされるがまま
動きに合わせくるり踊らされる
俺は、クラウンみたいな芸は出来ないよ
苦笑を返しながら一番後ろでまごつく子達に
はい、どうぞとクラウンが出したお菓子をあげて

…ありがとう
じゃあ、俺からは
彼の手に乗せた太陽の形のマフィン

クラウンの笑顔が子供たちへと
そんな様子に俺も咲った


クラウン・メリー
【華道】

大きなカボチャを被り
くろりん!どうどう似合ってる?
ふふー、カボチャのオバケさんだよ!

わあ、くろりんオバケさん!
ちょんと布を触る

よーし、みんなといっしょに楽しんじゃおう!
ハロウィンはね、仮装したり踊ったりするんだよ!
後ね、まほうの言葉を言うと素敵なお菓子が貰えちゃうかも!

――ね、くろりん!なんて言った後
くろりんの手を取ってくるりと踊り始める

えへへ、いっしょに!
小さなカボチャをジャグリング
さあ、まほうの言葉を唱えてごらんっ!

カボチャがぱっとカラフルなお菓子に大変身!
そのお菓子を子供達に
くろりんには黒猫さんクッキーをプレゼント!
わ、俺にもくれるの?ありがとう!

えへへ、特別な夜にさせちゃおっ!




 ふわり纏うは黒の布。華折・黒羽(掬折・f10471)の足元まですっぽりと覆うその布は、彼の耳に合わせて獣の形をしている。
 獣の影を象ったような姿は、簡易的な仮装。
 仮装はハロウィンの醍醐味の一つであり、こういう簡単なものでもいいのだと、伝わればよい。
 と。
「くろりん!」
 唐突に、目の前に南瓜が現れた。
 しかも大きいし顔が彫ってある、いわゆる南瓜ヘッド。
「……ああ、なんだクラウンか」
 びくりと肩が震えたのは一瞬。声と、振る舞いとで、それがクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)であることはすぐにわかったから、驚きに強張った黒羽は肩の力を抜いて、まじまじと南瓜の被り物を見た。
「どうどう似合ってる? ふふー、カボチャのオバケさんだよ!」
「似合ってる……と言っていいのか?」
 似合う似合わないの印象を大きく左右するだろう顔の部分が隠れてしまう仮装で、その言葉が適切なのかはわからないけれど。
 顔が、隠れているのに。クラウンの楽し気な様子が伝わってくるから。
 似合っている、と言っていいものなのだろうと黒羽は微笑んだ。
「くろりんはお化けさん!」
 ちょん、と突いた布は、重い色だけれど柔らかい。歩けば裾がふわっとして、ふよふよと浮く感じも出るかもしれないなと少しのわくわくを籠めて見つめていたが、互いの仮装ばかり眺めている場合ではない。
「よーし、みんなといっしょに楽しんじゃおう!」
 少しずつ南瓜の飾りが増えて賑やかな様子が作られつつある街に、南瓜頭と黒お化けが繰り出した。
 ハロウィンとは『怪物』の装いが多いものだと聞いている領民達は、南瓜を被るクラウンに驚きつつも、興味深げに近寄ってくる。
 そんな彼らの前でくるりと回って見せながら、クラウンは楽し気なステップを踏んで踊る。
「ハロウィンはね、仮装したり踊ったりするんだよ!」
「どんな踊りでもいいの?」
「勿論! 楽しい気分になる踊りがきっと合うよ」
 見上げてくる幼子に、ぱちん、とウインクして見せるが、南瓜頭で見えないんだったと笑って、クラウンはちょっぴり屈んで内緒話をするように告げる。
「後ね、まほうの言葉を言うと素敵なお菓子が貰えちゃうかも! ――ね、くろりん!」
「魔法の言葉?」
「そう『とりっくおあとりーと』と言うんだそうです」
 聞きなれない単語に首を傾げる少女に、こくりと頷く黒羽。
「お菓子をくれないと悪戯するぞと言う意味で、お菓子を持っていないと悪戯され……っと、わっ」
「えへへ、いっしょに!」
「俺は、クラウンみたいな芸は出来ないよ」
 説明中の黒羽の手を取って、クラウンがくるくると踊るように回り始める。
 引かれるまま、クラウンに合わせて足を進めるだけでも、十分踊っているように見えるだろう。
 そうだ、細かい技術なんていらない。楽しそうに、愉快気に。それが伝わればいいと、黒羽は笑みを湛えてくるくると踊りながら広場の真ん中まで移動する。
 ぱっ、と黒羽の手を離したクラウンがもう一回転すると、その手にはいつの間にか小さな南瓜。
 集まってきた人だかりは、現れた南瓜に驚き、その南瓜がひょいひょいと華麗に宙を舞う様子に一層驚き、歓声を上げていた。
 拍手が手拍子に変わり、はしゃいだ声に歌声が混ざって。そこらにあるものをとんてんかんかんと打ち鳴らしてはリズムを取って。自然と、足元が躍り出す。
 そうやって賑やかさが広がっていったなら、後は――。
「さあ、まほうの言葉を唱えてごらんっ!」
 ――トリック・オア・トリート!
 子供達の声が重なり、その瞬間、クラウンの回していた南瓜が、ぱっとお菓子に早変わり。
 カラフルな包みの飴玉やチョコレート、クッキー達が、色とりどりに宙を踊って、クラウンの手の中に納まった。
 それを一つ一つ子供達へ配るクラウンと、その周りに咲く笑顔を、眩しいものを見るような目で見つめていた黒羽は、ふと、クラウンの周囲に集まる子供らの一番後ろで、まごついている少年を見つけた。
 他の子達より少しばかり引っ込み思案なのだろう。輪の中に上手く飛び込めない少年の肩をつんと突いて、黒羽は掌に載せたお菓子を差し出す。
「魔法の言葉は、なんでしたっけ」
「えっと……とりっくおあ、とりーと……?」
「そう、お菓子をどうそ」
 にこりと微笑む黒羽に、ぱぁ、と嬉しそうに笑った少年。大事そうに包みを収めて、ありがとうと綻ぶ姿は、やっぱり、眩しいものだった。
 母親の元に駆けていく少年を見送る黒羽の視界に、再び唐突に飛び込んでくる南瓜頭。
 被り物の奥の、にっこりと楽しそうな目と、目が合って。
「くろりんには黒猫さんクッキーをプレゼント!」
 今日の仮装によく合いそうな黒猫さん。差し出されたそれに、めをぱちくりとした黒羽は、ふ、と笑んで受け取る。
「……ありがとう」
 そうして、クラウンの手が引っ込められる前に、違う包みを一つ、乗せた。
「じゃあ、俺からは、これ」
 きょとんとしたクラウンが目に留めたのは、太陽の形をしたマフィン。
「わ、俺にもくれるの? ありがとう!」
 後で一緒に食べようと嬉しそうに笑って、クラウンはまた黒羽の手を引く。
 今度はあっちの方に行こうと促すその顔は、誰よりも眩しく、煌いていて。
「えへへ、特別な夜にさせちゃおっ!」
 彼が向かう先で、その煌きが華やかな笑顔に変わるのを見つめながら。
 温かな心地に満たされて、黒羽もまた、照る陽射しに花開くように、咲うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
まず南瓜ランタンを作る
一部をくりぬいて反対の面に顔を作る
これがハロウィンのマスコットだよ、何個も作ろう
みんなも作ってみない?と子供達に声をかける
不恰好カボチャでもそこが可愛らしいよって褒めてあげる
中身は大人に調理してもらおう
パーティなので料理の種類が多いと嬉しいな
それっぽい料理もあるけど、まずはたくさん用意してパーティの雰囲気を作ってもらいたい

次は仮装のこと
子供が仮装して大人にお菓子を貰いに回るんだと概要説明
そのときの呪文は「トリックオアトリート」
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞって意味だけど、子供達を楽しませるためにお菓子は用意してあげてね

じゃあ仮装を作ろうか
仮装はいつもと違う、誰かを模した格好をすることだよ
例えば…シーツはあるかな?
その二隅を男の子の胸の前で結んで、後ろになびかせてマントのようにして
剣代わりの棒を持ったら、ほら、騎士様だ
女の子の髪には持ってきたリボンを結んであげて、いつもと違うお洒落な服を用意してもらったらお姫様だね
自分達で色々考えてみて
違う格好をする楽しさを知ってほしい




 南瓜はね、くりぬいてランタンにするんだ。
 これがハロウィンのマスコットだからね、沢山作って、色んなところに飾ると良いよ。
「みんなも作ってみない?」
 興味津々の顔で眺めてくる子供達に声を掛けるサンディ・ノックスは、もう既にいくつかおかれている南瓜のランタンを指さして、あんな感じで顔を作るんだ、と示して見せる。
 硬くて力のいる部分は大人が手伝えばいい。どんな顔にするか。どこに飾るか。お喋りしながら一緒にする作業は、きっと楽しい。
「疲れたらこれでも食べて」
「わ、ありがとうございます」
 くりぬいた中身は、大人達に託して、調理をしてもらう。
 シンプルな味付けの南瓜のポタージュや、素朴な味の煮物は作業の合間のおやつにもぴったり。
 だけれど今日は『パーティ』をしたいから。サンディの知る範囲で、色んな種類の料理をお願いしているところだ。
「ママがね、パイを焼いてくれるの」
「へぇ、いいね、美味しそう」
「僕の姉さんはサラダを作るのが上手なんだよ!」
「それもぜひ食べたいな」
 ハロウィンらしい料理も色々あるけれど、拘らなくたっていい。
 沢山の品数でテーブルを埋めて、思い思いに食べることが出来るパーティの雰囲気が作れるなら、十分だ。
 料理上手な家族を誇らしげに自慢してくる子供達に、微笑まし気に相槌を打ちながらの作業は、思った通り、皆楽しげだ。
 初めてのことで、顔が不格好になってしまう子もいるけれど、それもまた愛嬌の一つ。
「こういうのも可愛らしくていいよ」
「ほんとう?」
「本当。皆同じ顔だったらつまらないでしょう?」
 なんてったって南瓜のお化けなんだから、とサンディが笑えば、嬉しそうにはにかんで、飾りつけに走っていく。
 ひとしきり作業を終えたら、次は仮装についてのレクチャーだ。
「子供が仮装して大人にお菓子を貰いに回るんだ」
 お化けに人の子が浚われてしまわないように仲間のような姿をさせるとかそんな意味があったような気もするけれど、そんな儀式めいた事情は今日は要らない。
 大事なのは、子供達がハロウィンを楽しんで、その様子を大人達も安心して楽しめる事。
「お菓子を貰う時の呪文は『トリックオアトリート』って言って、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞって意味だけど……」
 戯れな悪戯よりも、子供達はきっと、お菓子を期待するだろうから。ぜひ用意してあげて欲しいとは、大人達に。
 とはいえ、仮装はハロウィンの醍醐味の一つ。だから勿論、大人が仮装を楽しんだって良いのだとサンディは笑顔で説いた。
 さぁ、ハロウィンの概要を語って回ったなら、最後の仕上げは身に着ける仮装作り。
 いつもと違う、誰かを模した格好を――どうやら今日は『怪物』の装いをする猟兵もちらほらいるようだし、その方向性で楽しんでみようじゃないか。
「例えば……シーツはあるかな?」
 問いかけに、少年が持ってきたのは継ぎ接ぎの見える古びたシーツ。
 それを丁寧に広げて少年の肩に羽織らせて、胸の前できゅっと結ぶ。
 そうして後ろをなびかせれば、ほら、マントのよう。折角だから結び目を青いハンカチで包むように、巻いてやれば、たt打のシーツからワンランクアップ。
 剣の代わりの棒を持てば――。
「ほら、騎士様だ」
 頭に巻くバンダナがあればまた印象も変わるかな、と首を傾げつつ、つん、と袖を引く女の子から、持ってきてもらったリボンを受け取って。
 長く伸びた髪を優しく手に取り、リボンを結う。あまり器用な髪型は出来ないけれど、いつもと違う、ちょっぴり大人ぽい編み込みぐらいは、できるから。
「お姫様みたい」
「でしょう?」
 髪に合わせたドレスはどんなものがいいだろう。きらきらと豪華なものでなくたって、いつもと違う装いなら十分だろうし、先ほどの少年のように、シーツを使ってアレンジすることだってできる。
 少女達が集まって、あれがいい、これがいいと好き好きに試していくのを、サンディは瞳を細めて見守る。
 支配され、命じられ、搾取されるばかりの生活で。自分達で考えて『遊ぶ』のは、大切なこと。
 そうやって、いつもと違う自分を装う楽しさを、目一杯味わってほしい。
 ふと、ひらりと『マント』をなびかせてサンディの前を横切りかけていく少年。その手元に握られる『剣』は、木の枝を組み合わせて、よりそれらしくなっていた。
(……あぁ――)
 この地を照らした閃火は、ひと時だけの閃きにあらず。
 暮らす一人一人が輝き合って、きっと、大きな光になっていくのだろうと、そんな確信を抱くサンディであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト