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銀河帝国攻略戦⑬~猟兵よ、悪夢を超えろ

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 銀河帝国攻略戦は、解放軍が優勢に推移していた。
 帝国の誇る大要塞『エンペラーズマインド』の前面に展開する大艦隊を食い破り、遂にその内部に手が届き始めたのだ。
 解放軍の士気は高い。だが、この戦いに猟兵達は一抹の不安を覚えている。
 帝国軍の誇る宿将達。そして『予兆』で見た、あの存在は。未だ戦線に出てきていないのだ。



「銀河帝国攻略戦は、順調に推移しています」

 集まる猟兵達を前にして、グリモア猟兵、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)がふわりと微笑む。だが直後、その笑みが消えて真剣な表情へと変わる。

「皆さんの中には、帝国執政官兼科学技術総監『ドクター・オロチ』に関する『予兆』を見た方もいると思います」

 帝国に従うオブリビオン。その中でも圧倒的な力を持ついくつかの存在。その内の一人が、ドクター・オロチだ。
 様々な技術を帝国に齎した存在であり、今回の攻略戦に於いても注視しなければならない存在であるのだが……グリモア猟兵の予知にも掛からない、謎多き敵である。

「そのドクター・オロチの動向を探る一手を、今回皆さんには担って頂きます」

 ドクター・オロチの座乗艦『実験戦艦ガルベリオン』は、強力なジャミングでその居場所を隠避しているらしい。
 そのジャミングを展開している装置の破壊。それが今回の任務となるのだヴィクトリアは語る。

「装置はドクター・オロチが派遣した艦に搭載されている事が判明しています。艦自体は既に放棄されていますが、装置は積まれたまま生きているようです。それを破壊するのが、皆さんの務めになります」

 ただし、接近すれば装置の防衛機構が稼働するらしい。防衛機構は『近づいた対象のトラウマとなる事件などを再現し、対象の心を怯ませる』という悪辣な物だ。
 対処法は、唯一つ。強い決意と覚悟を持つ事。その上で、装置の見せる悪夢に挑むしか、対処法は存在しないのだ。

「……誰しも、心に秘めておきたい、忘れておきたい事はあると思います。しかし今、それを乗り越えねば、この世界の未来の可能性のいくつかが閉ざされてしまう事になるでしょう」

 皆さんの健闘を、期待します。そう言ってヴィクトリアは深々と頭を下げるのだった。


月城祐一
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 銀河帝国攻略戦、月城にとって2本めのシナリオとなります。
 今回はどこかで見たことある、ドクター・オロチの行方を突き止めて頂きます。
 以下、当シナリオにおける補足説明となります。ご確認下さい。

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 このシナリオでは、ドクター・オロチの精神攻撃を乗り越えて、ジャミング装置を破壊します。
 ⑪を制圧する前に、充分な数のジャミング装置を破壊できなかった場合、この戦争で『⑬⑱⑲㉒㉖』を制圧する事が不可能になります。
 プレイングでは『克服すべき過去』を説明した上で、それをどのように乗り越えるかを明記してください。
『克服すべき過去』の内容が、ドクター・オロチの精神攻撃に相応しい詳細で悪辣な内容である程、採用されやすくなります。
 勿論、乗り越える事が出来なければ失敗判定になるので、バランス良く配分してください。
 このシナリオには連携要素は無く、個別のリプレイとして返却されます(1人につき、ジャミング装置を1つ破壊できます)。
 『克服すべき過去』が共通する(兄弟姉妹恋人その他)場合に関しては、プレイング次第で、同時解決も可能かもしれません。
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 リプレイでは、『PCが悪夢に打ちのめされた状態』から始まります。
 その状態から、いかにして悪夢を乗り越え、克服するかが描かれる事になります。

 特殊なシナリオとなりますが、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『ジャミング装置を破壊せよ』

POW   :    強い意志で、精神攻撃に耐えきって、ジャミング装置を破壊する

SPD   :    精神攻撃から逃げきって脱出、ジャミング装置を破壊する

WIZ   :    精神攻撃に対する解決策を思いつき、ジャミング装置を破壊する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 放棄されたドクター・オロチの手勢の艦に取り付き、それぞれジャミング装置を発見した猟兵達。
 だが装置を破壊せんとそれぞれの力を振るおうとしたその瞬間。ジャミング装置の防衛機構が発動する。

 防衛機構が見せる物は、近寄る者達が目を逸らしたい悪夢・トラウマだ。
 耐えられる者もいるだろう。だが、耐えられない程の深い闇を見る事にもなるかもしれない。

 猟兵達は装置の見せるそれぞれの悪夢を、乗り越える事が出来るだろうか。
 そして、装置を無事に破壊する事が、出来るだろうか……
ナハト・ダァト
『克服すべき過去』
実はよく分からないままに、
持ち合わせた才能のみで使用していた叡智
使う度にナニカが身体を侵蝕し
いずれ自分が自分で無くなる恐怖を無意識に覚えていた

しかし、彼は使うことを決意する
六ノ叡智
希望を自らに振るい、叡智があったからこそ病に立ち向かい自身が周囲に頼られる存在であることを再認識する

治療にリスクがある事ハ承知の上サ
使いこなしタつもりデ
いつか飲まれるだろうト
考えていない筈ハ無いだろウ
覚悟はしていル
だガ、私は私である事ヲ捨てはしないヨ
救えるものがいれば助けル
病に苦しむものがいれバ治ス

だかラ、私ハ倒れなイ
諦め給エ
この程度の覚悟、とうに済ませているのだヨ

※アドリブ歓迎




 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は、ブラックタールの身でありながら全身から光を放つ異能の持ち主である。
 だが人とは、自分と違う存在を恐れる者だ。その生まれ持った異能故、彼は周囲から恐れられ、迫害を受けて来た過去を持っていた。
 彼が見た闇は、その過去だったのだろうか。いいや、違う。彼はその過去を、憎んだりはしていないのだ。
 彼が見た悪夢とは──『彼自身が生まれ持つ、異能そのもの』が由来する物だった。

 眼の前に、救いを求める者がいる。傷つき、癒やしを求める者がいる。
 そんな者達の為に、彼は光を放つ。身体を治し、心を癒やす、叡智の光を人々に齎すのだ。

 だが、今。彼はその光を放てない。眼の前に立つ、黒い影が、光を覆うのだ。
 影はナハトの姿をして、ナハトの声を以て、ナハトの耳に、囁きかける。

 ……その力ガ、何に由来していルのか。判っテいルのか?
 力を使えバ使う程、『ナニカ』が身体ヲ蝕んでいルのを、感じていルだロう?
 そうしテ、いズれ。自分ガ自分で無くなル事に、恐怖を覚えテいるのダろう?

 ナハトを包み込もうとする影の声は、彼が無意識に感じていた『恐怖』を浮き彫りにする。
 ……誰しもが。己が己で無くなる事には、恐怖を覚える。当然の事だ。
 だから、その力を振るうのは、辞めてしまおう。ここで一つになって揺蕩い続ければ、その『恐怖』と向き合う事はこれからは無くなるのだ……

 影の甘い誘惑が、ナハトの心を冒していく。
 あぁ、そうだ。確かに、自分は、自分自身で無くなる事に恐怖を覚えていた。それは、事実だ。認めよう。
 ……だが。

 光が、溢れた。溢れ出る光はナハトの全身を輝かせ、纏わりつこうとする影を灼き、祓う。
 影が問う、『何故だ!』と。『自分が消える事が、恐ろしく無いのか!』と。

「……あァ、そウさ。治療にリスクがある事ハ、承知の上サ」

 この力を使いこなしているつもりでも、いつかは飲まれてしまうかもしれない。そう、考えていない筈が無いだろう。
 だが、その力に飲み込まれ……自身が消えてしまうかも知れない事実に対しても、ナハトは覚悟を決めているのだ。
 この力が希望となり、叡智となったからこそ、多くの病に立ち向かい、人々を救ってこれた。周囲に頼られる、自身でいられるのだ。
 ……この力と、覚悟こそが。ナハト・ダァトという猟兵の、立脚点なのだ。

「だガ、私は私である事ヲ、捨てはしないヨ。救えるものがいれバ、助けル。病に苦しむものがいれバ、治ス」

 自らに課した、その使命。果たすまでは、倒れない。
 強き覚悟と決意が、光を強め……遂に、影はその姿を完全に消した。

「……諦め給エ。この程度の覚悟、とうに済ませているのだヨ」

 目を見開くと、目の前に存在するのは人の脳を模した様な形状の悪趣味な装置。
 その装置に対して、ナハトは決意を込めて……その腕を、振るうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅葉・智華
ジャミングとは厄介な……破壊すべきでありますね。

克服すべき過去
登校する為に家を出た瞬間に、拉致され、目が覚めたらサイボーグとなり、傭兵組織に売られた事及び戦闘訓練や初めての人を殺した際の感触。

今でも思い出す。無力で、ただやられるままだった頃。
今でも思い出す。モノ同然に扱われた戦闘訓練。
今でも思い出す。初めて人を殺した感触。その瞬間の相手の顔を。憎々しげな顔を。

けど。全て過ぎた事。それら全てを糧にして、前へ進む事こそが、今を生きる者の義務。
改造されていようといなかろうと。今の射撃は、改造された結果なんかじゃなく、私自身の「力」なのだから。

※精神的な刺激により、普通の口調になっている。




 少しオタク気質な女子高生が、ある日突然拉致されて、その身を戦闘機械へと変えられる。
 傭兵組織へと売られ、モノ同然に扱われ、望まぬ戦闘を強いられ、殺人を犯す。
 紅葉・智華(紅眼の射手/妹捜索中・f07893)の視た悪夢は、かつて自分が体験した様々な理不尽。その追体験だった。

 悪夢は何度も繰り返す。初めての殺人の場面から、また家を出た瞬間の拉致の場面、改造される場面……無限にリピートするシーンの数々を、何度見せられただろうか。
 無力で、ただやられるままだったあの頃。
 苛烈で、人としての生活は望めなかった組織での日々。
 そして、初めての殺人の感触。相手が見せた、憎々しげなその形相。
 ……そのどれもが、今でも夢に見る程に身体に染み付いた、理不尽だ。

(あぁ、でも……)

 目を背けたい過去の経験を視せられつつも、智華の内で囁く冷静な自分がいる。グリモアに選ばれた、自分自身が囁いてくれる。
 その体験は、全て過去の事。今、起きている事ではないわ。
 過去の全てを糧にして、前へ進む事。それこそが、今を生きる者の義務であり……過去を越える者である、猟兵足る者の、務めではないかしら?

「……そう。そうよね」

 様々な理不尽を受けた。だがその理不尽な経験も、自分自身を形作ってきた一要素。
 そして、今から振るう、この『力』も。

「私自身の、『力』なのだから!」

 脳裏に侵食してくる悪夢を振り切る様に、瞳を見開いて。眼の前の悪趣味な装置に、愛銃の弾丸を叩き込む。
 そうだ、改造されていようが、いなかろうが。今放った弾丸は、智華自身が得てきた、力の証明なのだ。

 ……銃弾を受け、沈黙するジャミング装置と、その妨害機能。
 破壊されたソレを見て、口を開こうとして……言葉が出ずに、一つ深呼吸。

「……厄介なジャミング装置の破壊、成功であります」

 精神的な刺激に揺れていた心を落ち着かせるように、あえて強く意識して。
 智華は普段のキャラ作りの口調で、呟くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エミリィ・ジゼル
トラウマ…そうですね。あれは忘れもしない光景です。
焦土と化した八王子。周辺を無数に飛び交うザルバルク。
ケルベロスとして覚醒したばかりのわたくしにはなんとも嫌になる光景でしたね。

今でもたまに夢に見ます。
炎の熱、肉の焼ける匂い、ザルバルクの泣き声。

しかしもはやあの頃のようなか弱い存在ではありません。
わたくしはケルベロスであり、同時にイェーガーなのですから。

この程度のトラウマ、華麗に乗り越えて見せましょう。

というわけで《覚醒するメイドの術》でケルベロスとしての力を全開にし、
聖剣めいどかりばーとシャークチェーンソーの二刀流で、
襲い掛かるデウスエクスの群れを一網打尽にしてやります。

ヒャッハー!




 業火が街を焦がし、空には巨大な魚状の異形が舞い踊る。
 異形はいくら落とそうとも無限に増え続け、やがて人々はその街を諦め、撤退する。
 エミリィが見た悪夢の光景。それは彼女の内面に残る、戦いの記憶だ。

 彼女は今も、その光景を夢に見る。
 炎の熱も、肉が焦げる匂いも、無限に増える異形の魚の鳴き声も。
 その全てを、今でも夢に見るのだ。

「……ですが、今のわたくしは。あの頃のような、か弱い存在ではありません」

 心象風景に刻まれた心の傷を見せ付けられても、エミリィの心は挫けない。
 かつてより、更に力を磨き上げ。彼女は今、猟兵として戦っているのだから。

「この程度のトラウマ! 華麗に乗り越えてみせましょう!」

 魂に宿る、重力の力を開放させるエミリィ。身に纏うメイド服のスカートを翻すと……現れるのは、彼女自慢の愛用品。聖剣めいどかりばーと、シャークチェーンソー!
 二振りの刃を振りかざし、メイド少女が焦土を駆ける。
 迫りくる怪魚の群れを千切っては投げ、千切っては投げ……後に残るは、ズタズタに裂かれた魚の切り身ばかりだ。

「一網打尽にしてやりますよ!」

 ヒャッハー! 等という美少女に似付かわしくない叫び声をあげながら、また一匹の怪魚を屠るエミリィ。

 ……この娘さん、この光景にホントにトラウマ抱えてるんだろうか、という疑問が湧いたりしてきたが。
 悪夢の中で全ての異形を討ち果たすと、エミリィはジャミング装置にチェーンソーを叩き込んで破壊するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マカ・ブランシェ
精神攻撃か……困ったのだよ……。

■SPDで逃げる
私が抱えている越えられなかった過去は、オブリビオンからひとつの村を救えなかったこと、だ。
仲間に頼ることを知らなかった昔の私は、一人で解決しようと潜入して、事態を悪化させてしまった。
村の少女との約束はどれだけ経っても果たせないままだ。
謝りながら少女の幻影から逃げて、振り切れたらジャミング装置を破壊しよう。
直視して乗り越えられなくても、抱えて生きることで報いる傷もある。
きっとそうなのだよ……ね?


ジャミング装置に辿り着けたら、【血統覚醒】で能力を底上げして、【彼岸の果て】で一気に破壊してしまうのだよ。
「さようなら」
たとえ幻影でも、君は大切な友達だよ




 暗闇の中を、少女が走る。何かから逃げる様に、ひたすらに走り続ける。
 仲間を頼る事を知らなかった少女は、オブリビオンの脅威から一つの村を救おうと、ただ一人で挑み……結果として、事態を悪化させてしまった。

(ごめん……ごめんよ……!)

 悪化した事態が何を産んだのか。村の少女と交わした約束は、時がどれだけ流れようが果たされる事はなくなってしまったという事実が、結末を示す。
 走り続ける少女……心象風景の中のマカ・ブランシェ(真白き地を往け・f02899)は、その罪の意識から逃げ続けているのだ。
 あぁ、だけど。走り続ける少女の足が、止まる。その姿が代わり、今のマカの姿となる。
 ただ逃げ続けているだけでは……犠牲となった人々が、報われないではないか。

(私の罪は、きっと。直視する事から、始まるのだね)

 逃げ来た道を、振り返る。迫りくるのは、彼女の罪の象徴である、あの村の人々……その先頭に立つ、約束を交わした少女。
 ……その罪は、きっと乗り越える事は出来ないだろう。だが、罪を認めて、その罪と傷を抱えて……生き抜く事で、報いる事も出来るはずだ。

 その手に持つ武器を構えて、血を装填する。血統覚醒による力の底上げにより、愛銃が暴走を起こしそうな程の熱量を帯びる。
 狙うは、彼女の罪の象徴達。そしてその後ろにあるはずの……この悪趣味な世界を生み出した、元凶足る装置。

「……さようなら」

 トリガーに指を掛け、引く。その動作だけで、強烈な熱線が世界を灼いた。
 罪の象徴も、約束を交わした友人も、ジャミング装置も。一切合切が光の中に消えて行く。

「精神攻撃、か……困ったのだよ、本当に」

 過去の罪、その全てを乗り越える事は、出来ないだろう。
 だがマカは、人々を護り導く猟兵だ。これからも、その罪の傷を抱えて、生き抜いて行く。その覚悟を、今日彼女は示したのだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ジェット・ラトリオック
妻が居た
妻となる筈の女性が居た
自分との子供も、その時には身籠っていた
家族に、なる筈だった

所属していたサイトで大規模収容違反が起こった
UDC、いや、突発的なオビリビオンの出現による内部からの襲撃だった
俺は彼女を引き連れて逃げだした。逃げ切れる筈だった

妻が眼の前で引き裂かれた
人に似た肉が中から零れ落ちた
眼の前で貪り食われている

ああ、ああ

何の為の鉄兜だ
何の為の覚悟だ
何の為に顔を潰した
何の為にジェットを殺した
何の為に何処までも伸びる処刑具を手に取った

二度も、二度と、俺に地獄を見せるんじゃあない
悲劇を、見せるんじゃあない

改めて分かった
猟兵となった理由
俺の地獄は俺だけの物
他の誰にも、同じ目に合わせられない




「ああ……、あぁ……ッ!!」

 男の悲痛な呻きが木霊する。
 装置を前に蹲る、鉄兜の男……ジェット・ラトリオック(黒玉の蛸・f01121)の悲鳴だ。
 装置を前にして見せられた幻影に、ジェットのその精神は砕かれる寸前となっていた。

 かつて、妻が居た。未来を共に歩んで行くはずだった人が居た。
 二人の思いの結晶である新たな生命も、身籠っていた。家族になる筈だったのだ。
 だが、その未来は儚く消えた。

 オブリビオン、UDCによる、突発的な襲撃。
 彼は、妻の手を引いた。その手を繋ぎ、逃げ出した。逃げ切れる、筈だったのだ。

 だが、だが……!

「やめろ……やめてくれ……ッ!」

 ジェットの更なる悲痛な声が響く。だが、装置が見せる幻影は、止まらない。
 愛する妻が、引き裂かれた。眼の前で、その生命を散らされた。
 二人の未来、家族の象徴であった生命の塊が、かつて妻だった肉の塊から零れ落ちた。
 その生命の塊すらも、UDCは目の前で貪り食ったのだ。
 ……地獄という言葉すら生温く感じる、無惨な光景。それを繰り返し、ジェットは見せ付けられていたのだ。

 常人ならば、心が折れるその光景。ジェットの精神も、その拷問に似た仕打ちに悲鳴を上げている。
 だが、彼は猟兵として世界に認められた男。心の内で、沸々と湧き上がる感情を以て、幻影に抗うのだ。

 何の為の、鉄兜だ。
 何の為の、覚悟だ。
 何の為に、顔を潰した!
 何の為に、ジェットを殺した!
 何の為に、この処刑具を手に取った!
 何の為に、猟兵として戦っている!

「俺の見た地獄を、他の誰にも経験させない為だろうが!」

 裂帛の気合と共に、振り上げたのはどこまでも伸びるという鉄鉈……愛用の処刑具。
 振り下ろし、目の前で愛した存在を貪り続ける邪神と、幻覚を見せ続けたジャミング装置を、両断する。
 幻覚が見せた地獄絵図が消えていく。残るのは破壊された悪趣味なデザインの装置と、肩で息をする大柄の猟兵のみだ。

「二度も、二度と……俺に地獄を、見せるんじゃあない……!」

 ……地獄を超えて、改めて己の為すべき事を認めた男の決意がその場に響く。
 二度と悲劇を現さない為に。男は次の戦場へ、向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アスティリア・モノノフィシー
SPD
【克服すべき過去】
5歳の頃、1つ下の実の妹が持ち主不明の何故かそこにあった拳銃SRPを誤射。祖父母を射殺したため妹は即ある施設へと送られた。
先に私が拳銃に気付いていたはずなのに。そんな後悔と自分を一人娘として育てる両親を思い、妹の事は忘れたフリをずっとしてきた。


あの子は今どうしているかしら。
あの子はパパとママに愛された私を恨んでるでしょうね。

本当は一度もあの子も、あの瞬間も忘れたことはないの。

家を飛び出して、今この拳銃を使っている理由も懺悔と忘却防止とそしてあの時SRPが我が家にあった理由を知るため。もう一度あの子と会うため。

その意思をもって戦います。
でも、何故でしょう。涙が止まらないの




 響く銃声。倒れ伏し、血を流す祖父母。持ち主不明の拳銃を持つ、1つ下の実の妹。
 アスティリア・モノノフィシー(清光素色の狙撃手・f00280)が見る悪夢は、アスティリアが5歳の頃に愛する妹の犯した罪。その現場だった。

 ……だが、本当に苦しいのは誤射とは言え、妹が罪を犯した事ではない。
 先に銃を見つけた自分が、管理出来なかったという後悔。施設に送られる事になった妹の事を忘れたかの様に振る舞い、自分ひとりに愛情を注ぐ両親の姿。
 なにより、その両親の事を思い、自分も妹の事を忘れたフリをして生きてきた、という経験だ。

「あの子は、どうしているかしら……きっと、パパとママに愛された私を、恨んでるでしょうね」

 見せられた悪夢に、アスティリアの胸が締め付けられる。
 満たす感情は恐怖でも無い。苦しみでもない。本当は一度も忘れたことなんて無い、妹への深い思いだ。

 家を飛び出したのも。今この手に握る、かつて妹の人生を変えてしまった拳銃を使っている理由も。
 あの時への懺悔と、忘れないという決意と、何故あの時この銃が家にあったのかという真実を知る為と。
 何より、もう一度。愛する妹と、会う為なのだ。

 ……彼女は既に、心の傷を乗り越えている。乗り越えた上で、目的の為に日々を生きているのだ。
 そんな相手を前に、装置が見せる幻影の力は……意味を為さない。

 ズドン、という。拳銃の発砲音にしては大きい衝撃音が響く。装置は破壊され、幻影も終わりの時を迎える。
 愛する妹と、もう一度巡り合うために。決意を以て戦う少女の瞳からは……何故か、一筋の涙が溢れるのだった。

 それぞれの心の闇、傷、痛み……様々な悪夢を越えて、猟兵達はジャミング装置の破壊に成功した。
 悪趣味なこの装置を生み出した元凶、『ドクター・オロチ』。その足取りを掴む時は、それほど遠くはないはずだ。
 そして足取りを掴んだ、その時こそ。それぞれが今回示した覚悟と決意を、今一度示す時に、なるはずだ。

 ……決戦の時は、きっとすぐそこに迫っている。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト