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帝都のハロウィン～オレンジ色の一時を

作者：白鳥美鳥

●帝都のハロウィン～オレンジ色の一時を
「みんな、もうすぐハロウィンだよね。サクラミラージュでもハロウィンのイベントがあるんだって」
　フィーナ・ルリス（陽だまり・f04597）は猟兵達に話しかける。
「サクラミラージュのハロウィンは、大正時代風の町並みのあちこちに南瓜が飾られて、一年中桜の咲き誇る帝都が、ハロウィンらしいオレンジ色の装いに染まっていくんだって」
　でね、とフィーナは続ける。
「帝都の楽し気なハロウィンの賑わいにつられて、か弱い子供の影朧が、南瓜に宿って現れることがあるんだって。姿形は南瓜の被った感じで、オレンジ色のマントを羽織っている可愛い女の子で……香奈枝ちゃんっていうんだ。ちょっと幽霊みたいな感じにはなってるけど、可愛い女の子の影朧なんだよ！」
　香奈枝ちゃんは、あくまで影朧、とフィーナは言う。
「勿論、影朧だからユーベルコードを使ったら、一発で倒されちゃうくらい弱い存在なんだ。でも、子供の影朧で、ハロウィンに興味を持ってやって来たんだよ！　楽しませてあげるのが一番だよね！　それに香奈枝ちゃんと楽しくハロウィンを過ごせば……彼女は転生する事が出来るんだ。それって最高に素敵な事だよね？」
　だから、とフィーナは訴える。
「香奈枝ちゃんは影朧だけど、ハロウィンを楽しみたい普通の女の子なんだよ。そして、みんなが一緒に香奈枝ちゃんとハロウィンを楽しんでくれたら、彼女は転生が出来るんだ。みんなが香奈枝ちゃんを思いっ切り楽しませてあげるだけじゃなく、一緒に楽しく過ごして、彼女を転生させてあげよう？　素敵なハロウィン、楽しく過ごしてね！」

第1章 日常 『街歩きでも』

POW   :    観光をして過ごす SPD   :    演芸を見て過ごす WIZ   :    カフェで過ごす 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「香奈枝ちゃん、今日は一緒に遊びましょ？　お姉さんはあまりハロウィンに詳しくないから……楽しそうなものを見付けたら教えてね」
「でも、離れないように気を付けるんだぞ」
　香奈枝の手を引くのは、斑鳩・椿（徒花の鮮やかさ・f21417）と天海・虎徹（睡虎・f19245）だ。
「うん！　お姉ちゃんは何が好き？」
「そうね……音楽が好きだけれど」
「じゃあ、そういう所、探してみるね！」
　三味線が趣味である椿は、香奈枝の言葉にそう答える。ここはサクラミラージュ、三味線もあるかもしれないが、ハロウィンではどうだろうか。
　楽しそうに話す椿と香奈枝を虎徹は見つめる。
　虎徹には子供の頃に良い思い出はない。香奈枝がどういう経緯で影朧となってしまったのかは分からないが、せめて楽しい思い出と共に転生出来るようにと思う。
「お姉ちゃん、音楽やってるよ！」
　三味線とはいかないが、歌を披露している人達がいる。明るい曲なので、ハロウィンに合わせたものなのだろう。
　三人で歌を楽しんでから、出店等を見て回る。
「射的があるな。香奈枝やってみるか？」
「やった事が無いから、やってみたいけど……」
　じっと虎徹を見上げている香奈枝。それに、椿は微笑む。
「見本を見せて欲しいみたいよ？」
「見本か……上手くいくと良いんだがな」
　香奈枝にきらきらした瞳で見守られつつ、虎徹は射的にチャレンジする。折角なので、香奈枝が喜びそうなお菓子を狙う事にした。
「よし、取れた」
「うん、あの銃で当てれば良いんだね？」
　香奈枝も挑戦してみるが、残念ながら外れてしまった。
「ざんねん～」
「これをやるから、元気を出せ」
「ありがとう！」
　射的に失敗して残念そうにしている香奈枝に、虎徹が取ったお菓子を受け取ると、花の様な笑顔を見せた。それに、虎徹も椿も笑顔になる。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、他にも行ってみよう？」
　オレンジ色のマントをはためかせて、駆けだす香奈枝。
「香奈枝ちゃん、走ったら危な……ほら虎徹くん、追いかけて！」
「ああ、分かってる」
　そんなやり取りをしながら、虎徹と椿は香奈枝と出店を楽しんだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 日常 『本日は甘味食べ放題！』

POW   :    目についた甘味から片っ端に平らげる！ SPD   :    人気の甘味が品切れになる前に迅速行動！ WIZ   :    ペース配分や食べ合わせを考えて心から味わう！ 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　出店を見て回った所で、次は甘味処へ。和菓子に洋菓子、新作スイーツも色々と取り揃えてある。
「香奈枝ちゃんはここね」
「うん！」
　斑鳩・椿に案内されて、真ん中の席に座る。その両隣に椿と天海・虎徹が座った。
「どのお菓子にする？」
「うーんと……果物が一杯入ったゼリーにする！」
　香奈枝は、みかんやぶどう等、フルーツ一杯のフルーツゼリー。
「俺は、まずはこれかな……」
　虎徹は、まずは大福餅を確保する。好物だからだ。
「私は……この新作のフルーツタルトにしようかしら」
　それぞれ、まずは一品目。フルーツゼリーも大福餅も新作のフルーツタルトも、どれも美味しい。ここの甘味はどれも期待できそうだ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんの大福餅、美味しかった？」
「ああ、美味かったぞ」
　虎徹が大福餅を食べ終わった所で、香奈枝が聞いて来た。そして、彼の答えににっこりと笑う。
「じゃあ、次は大福餅にする！」
「お？　じゃあ、俺は香奈枝が食べていたフルーツゼリーにしてみるか」
　虎徹は洋菓子よりも和菓子の方が好みなのだが、自分が好きな大福餅を美味しそうに食べる香奈枝を見て、先程、彼女が食べていたフルーツゼリーが気になって、それにしてみる事にした。
「あ、虎徹くんずるい。私、一人だけ仲間外れみたい。私も香奈枝ちゃんが好きそうな物も探そうかしら」
　仲良く笑いあっている虎徹と香奈枝を見て、椿はちょっと膨れる。ちょっと寂しいので、今度は香奈枝が喜びそうな物も選んでみる事にした。
（「うーん、可愛いお菓子が良いかな。あ、この新作の練り切りのお菓子、猫の形をしてて可愛いし美味しそう……。この小ささなら香奈枝ちゃんも食べきれるかしら」）
　猫の練り切りを二つ取って、香奈枝が望んでくれたら食べて貰おうと椿は思う。
　大人と子供、身体の大きさも違えば好みも違う。食べられる量も当然変わって来るけれど、こうして笑みを交わしながら食べるお菓子はとても美味しい。
　虎徹は和菓子を中心に色々な物を美味しそうによく食べているし、香奈枝もゆっくりと一つずつ色々な物を選んでいて、椿も自分のペースで鮮やかな新作のお菓子を中心に美味しく頂く。優しく甘い世界だ。
「ふふ、香奈枝ちゃん、美味しい？」
「うん！」
　先程、椿が選んだ猫の練り切りを、黒文字を使って満面の笑みを浮かべて食べてくれているのが嬉しい。
　それから、他にも色々なお菓子を選んで、時には香奈枝には多すぎる場合は分け合ったり、これが美味しかったと情報を共有しあったり。
「……」
　ふと、椿の手が止まる。
　近くにはハロウィンらしい南瓜のタルトのお皿に、イチゴのショートケーキ。先程、香奈枝にお勧めされた苺大福、他、諸々。
（「流石に多かったかしら……」）
　香奈枝が勧めてくれた苺大福は食べるとして……他の新作スイーツの数々は……。そして、にっこりと椿は虎徹に笑顔を向ける。
「はい、あ〜ん」
　虎徹の口に運ばれるのは南瓜のタルト。自分や香奈枝が食べきれなかった物は虎徹に食べて貰おうという非道な考えによるものだが、当の虎徹は特に気にしていない。
「お兄ちゃん、さっき食べたお菓子が美味しかったから、お兄ちゃんにも食べて欲しいな？」
　香奈枝は違う方向から攻めて来る。とはいえ、香奈枝は恐らく虎徹の食べっぷりに、自分の好きな物を食べて貰おうと思っているのだろう。
「うん、どれだ？」
「これ！」
　そんなやり取りをしながら、ふと虎徹と椿は考える。
（「はたから見てこれは親子に見えたりしないのだろうか？」）
（「……そういえば、これって外から見ると兄妹に見えているのかしら」）
　ちょっと考えている年代が違ってはいるが、それだけ仲良しに見えているのではないかと思うのだ。だって、今、この時間がとても優しくて楽しいから。
「あー、美味かったな」
「ええ。香奈枝ちゃんは？」
「うん、お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にお菓子を一杯食べれて嬉しかった！」
　食後に、緑茶や紅茶等、それぞれが好きな飲み物を飲んで、ゆっくりとした時間を過ごす。
　笑顔の虎徹と椿に挟まれて、香奈枝は嬉しそうにほんわりと微笑んだ。その姿はゆっくりと消えていきそうになっている。きっと幻朧桜が呼んでいるのだろう。
「あのね、お兄ちゃんとお姉ちゃんに会えてよかった！　ずっと忘れないから！」
「うん、俺も忘れない」
「私もよ、香奈枝ちゃん。楽しい時間をありがとう」
　お別れの時――笑顔の虎徹と椿に見送られ、同じく笑顔を浮かべて香奈枝は消えていった。
「……次は良い人生を送れると良いな」
「ええ。楽しい事が一杯の、ね」
　虎徹と椿は微笑みあう。香奈枝と過ごした時間は楽しかった。彼女も素敵な笑顔を浮かべて消えていった。次もそんな人生を送って欲しいと思う。そう、あんな小さな年齢で影朧にならないような素敵な人生を。
　いつか、どこかで出会ったら、その時はまた笑いあえるように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年10月31日