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守ってプリティー・ハロウィン!

#アルダワ魔法学園 #お祭り2021 #ハロウィン #装魔封災戦

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●ハロウィン嫌いの災魔がいた
 アルダワ世界のハロウィンは記念祭の意味を持つ。かつてあった「装魔封災戦」では当時夥しく溢れていた災魔の大部分を封印することに成功し、人々は勝利を収めた。
 その所以あってか、ハロウィンを祝うに当たっては装魔封災戦で実際に行われたことをそのままに、仮装する風習が今も続いている。
「どうだー! こわーいお化けだぞー!」
「何をー! こっちはゾンビだ、うりゃー!」
 学園の生徒達もハロウィンパーティにはこぞって仮装し、その出来を競い合う。しかしながら最後には皆で大笑いして終わる、愉快な愉快なハロウィンパーティ。
 受け継がれる伝統――だが受け継がれているのは、何も人ばかりではない。
「ウガアアアァアアッッ!!」
「うわあああっっ!!」
 ハロウィンパーティの匂いを嗅ぎつけた災魔がいた。忌むべき物、嫌うべき物――出し抜かれて封印されたのだから当然と言えば当然だ。
 災魔、ジェムビーストの群れは竜巻の如くパーティ会場に襲い掛かり、仮装を立派に仕立てた学生達から狩っていく――。

●アルダワ魔法学園・18thラウンド
「お菓子をくれなきゃ魔法を掛けちゃいまーす……と、言っている場合ではありません!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)はクローゼットから引っ張り出したハロウィン衣装に身を包んでグリモアベースを訪れていた。体が成長したことで急ぎ仕立て直したのは内緒の話――と、それはさておき。
「アルダワ魔法学園には『装魔封災戦』と呼ばれる戦いがありまして。簡単に言うと、人々が災魔に仮装して、災魔をぎゃふんとやっつけた、という感じですね! そう言った事情から多くの災魔はハロウィンを本能的に忌み嫌う性質があり、ハロウィンパーティがあるところへ襲撃する者達も現れてしまう、というわけです!」
 そしてロザリアの元に訪れた学園の未来は、その通りに襲われてしまっていた。
「今年も当然、学園の生徒の皆さんはハロウィンパーティを行います……が、そこへ『ジェムビースト』という災魔の群れが襲ってきます。これではハロウィンパーティが台無しです! なので皆さん! 災魔の横暴を是が非でも止めましょう!」
 ロザリアの熱弁がグリモアベース内に響き、興味を示す猟兵達が集まってくる。実は何処も彼処も似たような状況で、ハロウィンを巡る攻防戦がすでに始まっているのだ。
「作戦ですが、とりあえずハロウィンパーティに参加して、思い切り楽しんでください! 楽しめば楽しむほど災魔の標的になりやすいので迎撃もしやすい、というわけですね! あと、災魔は仮装が立派であればあるほど怒りをぶつけてきますので、皆さんが仮装をしてジェムビーストの注意を向けさせることができれば、一般の生徒さん達に被害は及ばないはずです! ちなみにハロウィンパーティの参加者は概ね10歳前後……まあ、私と同じくらいの年代の皆さんなのですが、その、何と言いましょうか……仮装は『可愛らしく』もあり……ともかく、皆さんがちょっと本気を出して仮装すれば、ジェムビーストの標的になることは間違いなしなので……」
 細かい部分はどうか察してほしい。ロザリアの歯切れが悪いのはそういう意味だ。
「それと、ジェムビーストはとても素早いのですが、ハロウィンを目の敵にしている影響で行動にムラが出来てしまうようです。これは皆さんがハロウィンパーティを続けながら戦うことでさらに助長できるようですので、利用してみるのもいいかもしれません。……というわけで、皆のハロウィンを守りましょう! どうぞよろしくお願いします!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 今年もこの季節がやってきましたよ。

●フラグメント詳細
 第1章:日常『ハロウィンを楽しみまくれ!』
 今回のハロウィンパーティに参加しているのは10歳前後の少年少女達。仮装は自作したようです。可愛らしいですね。
 なので多分皆さんが本気で仮装すれば、きっと彼らよりも凄い仮装ができるはず。
 料理やお菓子も「これでもか」ってくらい用意されていますので、皆さんが食べたい物がきっとあります。
 場所は学園の中庭っぽい感じの屋外です。周りは校舎もありますが、完全に囲まれているわけではないのでどこからともなくジェムビーストが突っ込んでくるわけですね。

 第2章:集団戦『ジェムビースト』
 凄い仮装をしている人を優先的に狙ってくる奴です。というわけで仮装は大事。
 あとはハロウィンパーティを続けながら(食べたり飲んだり歌ったり踊ったり等々)戦えば敵は怒りのあまり我を忘れて襲い掛かってくるため、かなりの隙を生じます。そこをガツンとやってしまえばオールオッケー。
 てな感じで災魔をやっつけてハロウィンを守りましょう!
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第1章 日常 『ハロウィンを楽しみまくれ!』

POW   :    お菓子や料理を食べて楽しむ

SPD   :    イタズラ合戦に参加して楽しむ

WIZ   :    素敵な仮装を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラガルルク・デンケラ
衣装は昨年、二〇二〇年のものを着てきてもいいかな。これはねえ……深海の幽霊、よりは海上のゴーストガールの方がカッコいいな。名乗るならば後者を使用しよう

さて他の者たちの仮装はっ……あ。あらら~~~…………かわいいな。かわいい。年のせいかな、子供を無条件で可愛いと思えてしまうのは。背丈は僕の方が下かもだが、わ~~……

や、いけない。これは守らないといけないね。そうだろ朱黄、お前たち総動員で少年少女たちに遊ばれておいで!
朱黄たちは布切れを被せれば人魂にみえるかな? おどろかして追いかけたり、菓子でも背に乗せて追いかけられたりかしら
僕は追われる側になろう。魔女を捕まえたら魔法を見せてあげるよ! なんてね



●ハロウィンの季節
 ハロウィンとは基本的には十月三十一日のことを指すが、ハロウィンムードは十月半ばともなれば十分に醸成されており、熱の入った仮装と共にハロウィンパーティを毎日楽しむのが通例となっている。
 今日もまたハロウィンパーティ。お化けやゾンビや吸血鬼やら、少年少女達は思い思いの仮装を自らの手で作り上げ、ハロウィンパーティに参加していた。
「衣装は昨年のものになってしまうけど、アルダワのハロウィンパーティは初めてだし……気に入ってくれるといいね。名乗るなら、深海の幽霊……いや、海上のゴーストガールのほうがカッコいいな。これでいこう」
 ラガルルク・デンケラ(先見の魔女・f28988)はハロウィンパーティを前に自分の身なりをもう一度確認し、少し撚れていた襟元を正した。今から向かおうとしているハロウィンパーティの参加者は概ね十歳前後の少年少女達とあって、単純な年齢では天と地ほどの差があるが、メガリスの呪いはラガルルクを彼らと大差ない姿に止めてしまっていた。
 突然の来訪でも、そう警戒されることはあるまい。ラガルルクがパーティ会場に入っていくと、狼耳と尻尾を付けた三人の少女達が気付いてパタパタと駆け寄ってきた。
「がおー、食べちゃうぞー♪ いらっしゃい!」
 歓迎の挨拶の前に仮装の演技とは、如何にもハロウィンパーティらしい。少女達の動きに合わせて揺れる尻尾に、ちょっと作りが甘くて垂れ気味の耳は却って愛らしさを強調していた。
「あらら~~~…………かわいいな」
 思わず声のトーンが高くなるラガルルク。ラガルルクよりもまだ少し背丈の小さい少女達が丸くて大きくて無垢な瞳をラガルルクに向けてくる。ラガルルクは少女達の仮装と表情をまじまじと見て。
「……かわいい」
 反則なまでの愛らしさを再確認するように呟いた。
 思わず小さな頭を撫でようと手を伸ばしかけ、しかしいけない、とラガルルクはハッと気を取り戻す。このまま少女達の愛らしさに呆けているようでは礼を失するばかり。少女達は丁寧に出迎えてくれたではないか。
 ラガルルクは両手でシースルーの衣の裾を摘まみ上げ、右足を僅かに引きながら膝を落としてお辞儀して、
「『わたくしと海の散歩に行きませんこと? うふふっ』。僕は海上のゴーストガール、お邪魔させてもらってもいいかしら?」
「どうぞー! パーティはみんなで楽しんだ方が、ずっと楽しいもん!」
 少女の一人がラガルルクの後ろに回って、ラガルルクの背中を小さな手で押していく。残りの二人はそれぞれラガルルクの右手と左手を取り、引っ張られ、押されてラガルルクはパーティの輪の中に迎えられていた。

「お姉さんスゲー! 透けてる! カッコいい!」
「お服がふわふわして柔らかいねー!」
「なんだかお嫁さんみたい! 東のお国のお嫁さんはこんな服を着てるって、ご本で読んだことあるの!」
「ゴーストガールだからね。しかし、お嫁さんかぁ……その発想はなかったよ。ならこれは、さながら角隠し、というわけかしら?」
 ラガルルクは集まった少年少女達に仮装をひらひらと披露しながら、被る帽子の縁を触っていた。シースルーのため羅刹の角は隠れているわけではないが、少女の軽妙な発想にはラガルルクも舌を巻く。
 そんなラガルルクを囲むのは、狼少女が居れば狼少年も居て、フランケンやキョンシーなんかも居た。本か何かで、もしくは学園の授業などで異国の怪物を学んだのだろう。
 出来は然程重要ではない。彼らはそれらを、多少は大人達の手を借りながらも、自分で作ったと言い張れるくらいには頑張って作った。それは称賛に値するし、だからこその愛しさがラガルルクの心に溢れてくる。
(や、いけない。これは守らないといけないね)
 近く、このパーティを災魔が襲うことはグリモア猟兵より聞いている。凶刃が彼らに及ばぬよう、彼らが必死に頑張って作った仮装を滅茶苦茶にされぬよう、ラガルルクは空飛ぶ魚群、朱黄をさりげなくパーティ会場に放つ。
「こんなに素敵なおもてなしを受けては、僕も何もしないわけにはいかないね。僕はゴーストガール……こんなこともできるんだよ。おいで、海を彷徨う人魂よ!」
 呼び声に合わせ、放たれた魚達は各々布切れを被り、背に一口サイズのチョコレートやクッキーなんかを乗せてゆらゆら不安定に泳ぎ始めた。それはあたかも人魂のように。
「わ、なんだ!?」
「きゃっ、こっちにも!」
「あれは僕が操る人魂達……捕まえることができたらお菓子はみんなの物だ。そして、僕は実は魔女でもある」
 布を被った魚達を追いかけようとしてラガルルクを囲む輪が少し途切れた瞬間を狙い、ラガルルクはさっと輪を抜け出して。
「魔女を捕まえたら魔法を見せてあげるよ! さぁ、来てごらん!」
「よーし、捕まえるぞー!」
「楽しそー!!」
 ラガルルクが仕掛けたパーティイベントに少年少女達は大はしゃぎ。あるところでは少女が人魂となった魚を追いかけて、
「えいっ――わっ」
 両手で掴まえたと思ったところ、魚はすいっと逃げ出していたが、先に待ち構えていた少年に捕まった。
「やったぜ! ……あ、お前のおかげでもあるかな……だから、半分こだ!」
「ありがとー!」
 ほんわかしたやりとりを眺めながら、ラガルルクも追ってくる少年少女達から逃げ回らなければならない。
「ほら、こっちだよ!」
「よーし、はさみうちだー!」
 可愛い仮装の子供達に追いかけ回されるとは、なんて至福。ラガルルクは大いにパーティを楽しんで、そして当然パーティは大いに盛り上がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
仮装:2019南瓜SD
ケーキのお姫様です、はい
でも僕男なんです…不思議ですね

とりあえず折角来たからにはお菓子は食べたい!
珍しいものがあればレシピ研究も兼ねてそれを優先的に
特に無ければ…ケーキも好きだけどパイが特に好き

少食であれもこれもというわけにはいかないから
悩みながら特に食べたいものを探して歩く
子供達がもし合言葉を言ってくれたら
ハロウィン包み入りな特別仕様にしてきた★Candy popの中身を
自由に取ってねと差し出します
魔法で無限に追加出来るから、いくつでも持って行っていいよ
但し、走りながら舐めると危ないから
これはおうちに帰ってからね

折角だし、君達の仮装の事も僕に教えてほしいな



●ハロウィンに不思議は付き物
「あら、あなたはなぁに? イチゴのリボンに、スカートはふわふわ、クリームみたい」
 また一人、新たなハロウィンパーティの参加者が。雪の結晶飾りを散りばめたドレスの少女が気付いて声を掛けると、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は体の前で両手をもじもじさせて、
「ケーキのお姫様です、はい。でも僕、男なんです……不思議ですね」
 少女にありのままを告げる。すると少女は、ふふっ、と口元に手を添えながら微笑んで、
「ハロウィンですもの、不思議なほうが楽しいわ! ねぇお姫様、せっかくですし、一緒にパーティを回りましょう?」
 ハロウィンパーティでは誰もが友達。少女は澪の手を引いて、会場内へ澪の存在を溶け込ませた。

 追いかけっこに夢中なミイラがいた。チキンやポテトをこんもりと皿に盛った猫又がいた。天使達が踊り出せばハーピィ達が歌い出して、どこもかしこも大賑わい。
「お姫様は何がお望み?」
 澪を引き連れる少女はくるりと振り返って尋ねた。すっかり案内役気取りでニコニコしている少女を前に、お姫様気分でもてなされてみるのも悪くはないかな、などと思いながら、
「やっぱりお菓子は食べたいなぁ……ここでしか食べられないような、珍しいお菓子はないかな?」
「お菓子! わたしも大好きよ! なら、あっちのテーブルに行きましょ!」
 澪が要望を伝えると、少女は爛々と目を輝かせながら澪の手を引っ張っていく。スカートを揺らしながら小走りについていった先には、手作りと思われる焼き菓子がずらり。ケーキにクッキー、ワッフルにパイなど、種類も豊富に取り揃えられていた。
「やっぱりお姫様はケーキがお好みなのかしら」
「ケーキも好きだけど、実はパイ系統のほうが……あっ」
 それまで引かれるままだった澪が初めて自らの意思で足を止めた。テーブルの上のお菓子を流し見ていた澪の目の前に現れたのは、太陽よりも真っ赤なパイ。見た目には派手な色をしたパイというだけだが、それだけで十分、澪が足を止める理由になった。
「それを選ぶなんて、お姫様も『お目が高い』わね! それはきっと、とっても珍しいものよ!」
 少女は言うが、店のように名札がつけられているわけでもない。ピースに切り分けられていた名前の分からぬパイを澪は手に取ると、パリパリの生地が零れても大丈夫なように小皿に受けながらサクリと一口。
「……甘い!」
 先端を小さく齧っただけで、舌の上にどっと広がるフルーティな味。やや人を選びそうな濃厚さだったが、澪の口には合っていた。
 少女も手に取り食べる横で、澪はサクサク味わいながら甘さの源が何なのかを探っていた。食べたことのある果物を思い出しながら味を確かめていくが、どれも微妙にしっくりこない。
「ねぇ、これは何の果物を使ってるのかな?」
「へっへーん、それは俺の母ちゃん特製、『シマシマサボテンパイ』だぜ!」
「あっ、もう、わたしが言おうと思ってたのにー!」
 得意顔で澪と少女の前に登場したのは、顔や手足を緑色に塗りたくった少年だった。どうやら彼の母親が二人の食べているパイを作ったようだが。
「シマシマ……サボテン?」
「あのね、西の砂漠の国に、中身が真っ赤なサボテンがあるの。それを使ったパイなのよ」
「なんてったって、『砂漠のスイカ』だからな!」
「砂漠のスイカ……そうなんだ、へぇ……」
 言われて齧れば、甘さの中にスイカの影が薄ら漂う。しかしサボテンとは。澪は目を丸くしてパイの齧り跡を見つめている。
「水気が多くて、パイにするのは大変なの」
「でも俺の母ちゃんは、ぱぱっと作っちゃうからな!」
「それは……是非レシピを習いたいところだね……!」
 まだ見ぬお菓子を求めて。澪はレシピ研究に余念がない。材料にサボテンを使い、しかも何かしらのコツが必要そうなシマシマサボテンパイ。学べば応用の幅も広がりそう――躍る心は抑えられそうにない。
「なら、パーティが終わったらウチに来るといいぜ!」
「うん、お邪魔じゃなければ――」
 言いかけて、澪の脳裏に過ったのは猟兵としての役目。楽しむだけ楽しんで、はい終わり、とはいかないことが、グリモア猟兵によって予知されている。子供達は皆、そんなことなど露知らず。無邪気にパーティを楽しんでいる姿にちくりと心が痛む。
 少年との約束も果たしてどこまで持つか。それは澪自身の手に懸かっている。
「じゃあ、後で……じゃないぜ! 大事なことを忘れてた! トリック・オア・トリート! サボテン巨人が襲い掛かるぞー!」
 それまで友好的だった少年が、ぐわっと体を伸ばして大きく見せながら澪と少女に襲い掛からんとする。それは澪の頭からすぽっと抜け落ちてしまっていたハロウィンの本質。
 災魔に扮して災魔を襲う――ハロウィンの概念は世界ごとに少しずつ異なるが、意味するところは変わらない。
 澪の思考はハッと目の前に引き戻される。ハロウィンを存分に楽しもうとしている少年の姿に、思わず笑いを噴き出していた。
「そうだったね。はい、自由に好きなだけどうぞ。君はサボテン巨人なんだ、だから緑色なんだね」
「母ちゃんがよく話してくれるんだ! サボテン巨人が街を砂嵐から守ったんだって!」
 ハロウィンに合わせて包みを工夫した特別仕様の飴玉の小瓶を差し出すと、少年は嬉々として飴玉を取りながら教えてくれた。お伽噺か伝承の類か、と澪はふんわり想像する。
「わ、わたしも……あのね、すっごい北の寒いところに住んでいる、悪い魔女さんなの! だから……トリック・オア・トリート……」
 便乗するようで、食い意地が張っているようで、少女はバツが悪いのだろう。萎み気味にぽそぽそ呟いていたが、呟かれたからには澪も、案内のお礼も兼ねてご褒美をあげなければならない。
「てっきり僕と同じお姫様かなと思ってたけど、魔女だったんだね。すっかり騙されちゃった。うん、悪い魔女さんもどうぞ」
「ありがとうなの!」
「おっと、俺も、ありがとうだぜ!」
「走ったりしながら舐めると危ないから、これはおうちに帰ってからね」
 澪が注意を付け加えると、二人ともこくりと頷いた。

 三人に増えたところで、次なるお菓子を探しに行く。少女と少年はこの場のお菓子には博識なようで、競うように澪へプレゼンしていた。
 おかげで食が細い澪は何を食べるか悩み通しだ。連れていかれた先にはもっと食べたくなるものがあるかも、なんて考えだしたらキリがない。
 言うまでもなく幸せな悩みだ。澪はどっぷりと悩みに浸りながら、ハロウィンパーティを心行くまで楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ジェムビースト』

POW   :    宝石一閃
【超高速で対象に接近した後、爪】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ジェム・オーバーロード
【超高速で対象に接近した後、身体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    スティレットレーザー改
【超高速で対象に接近した後、敵意を向ける事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【超光速で対象を追尾する誘導レーザーの弾幕】で攻撃する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●積年の恨み
 学園の敷地を疾駆する蒼き風。その瞳はギラつく怒りに燃えている。
「ウガアアアァアアッッ!!」
 忌々しいハロウィンパーティ。盛り上がった雰囲気はジェムビースト達の鼻まで届き、思考が狂気で支配される。
 ドコダ、ドコダ――ワレラガテキハ。
 封じたのは仮装をした奴だと。災魔の本能が告げていた。
栗花落・澪
わぁもふもふしてなーい
まぁジェムだもんね、そうだよね

大切な約束もあるし
なにより楽しい時間を邪魔はさせない

あ、このパンプキンシュー美味しそう

ドレスの裾が広がらないよう気を付けながら
翼での【空中戦】(シュークリーム食べながら
体には念のため【オーラ防御】を張り
いつ攻撃が来ても身を護れるように
追尾レーザーは怖い

とりあえず【高速詠唱】で炎魔法の【属性攻撃】を撃ち
視界を晦ませつつ翻弄しながら

ん、よし、ごちそうさま
それじゃあ天使降臨と参りますか

【催眠術】を乗せた【歌唱】で気を引きながら【指定UC】発動
会場一帯を一時的に美しい花園に変え
【破魔】による【浄化】の【範囲攻撃】で弱らせたところを
光魔法で追撃どーん



●ハロウィン憎けりゃ仮装まで憎し
 艶々とした質感ながら獣の柔軟性も合わせ持つジェムビーストの群れが雪崩れ込み、子供達は喚き叫びながら三々五々散っていく。この手の獣に背中を見せるのはご法度だが――ハロウィン狂いのジェムビースト達は子供達の仮装には目もくれず、より出来のいい仮装をした澪を一心不乱に追いかけ回す。
「ガアアアアァァァッ!!!」
 今のジェムビースト達には澪の姿しか映っていない。会場にある椅子を蹴散らし、テーブルを踏み壊して襲い来る。
 怒涛の高速接近――しかし澪は落ち着き払って翼を広げると、後ろにあったテーブルの上に残るパンプキンシューを掠め取って高く飛翔した。突き進む者達が三方、飛び掛かる者達が二方より澪という一点を仕留めにいったが、時の針は僅かに重ならず。入れ違いの澪は五体が団子状態で転がり抜けてテーブルを弾き飛ばすのを眼下に見た。
「わぁもふもふしてなーい。まぁジェムだもんね、そうだよね」
 驚きの声は作られたように平坦。澪はぱさりと翼で宙を煽ぎ、右手に救ったシューを見た。
「あ、このパンプキンシュー美味しそう」
 手のひらサイズの大きさにしてはずっしり重い。はむっと齧ると、サクサクの皮に濃厚な南瓜の甘味がとろーりとろける。パーティに提供された菓子はどれも店売りを思わせるほどに出来が良く、これもまたレシピを学びたくなる一品だったが。
(大切な約束もあるし……なにより、楽しい時間の邪魔はさせない)
 澪は再びジェムビースト達を見据えた。全身サファイアに似た蒼い体だが、陰影のついた牙が一層剥き出しになり、唸り声も一段と大きくなる。
「ウゥゥウ……ワゥゥウウ……!!!」
 仮装する者が憎い、パーティを楽しむ者が憎い――ジェムビースト達は「何故そう感じるのか」も理解できず、しかしひたすら澪を憎み続ける。相手は空だ。ジェムビースト達はより高く跳躍せんと助走をつける。
 だが、気が急く彼らは周りの仲間が見えていなかった。澪のみを瞳に映して跳び上がってくるジェムビースト達に対し、視野を広くとった澪は零れ落ちそうなクリームをあむっと咥えながら後方へと飛び退く。
 標的が逃げたと振り向いたジェムビースト達の顔が、密集し衝突を果たしていた。互いに潰し合った後は花火のようにまた散って、背中から落ちてギャウと情けない声を上げる。
「今はこれを味わいたいから、もうちょっと待っててね」
 半分食べかけのパンプキンシューを片手に澪はランタンのような炎を宙へ灯すと、ジェムビースト達の頭上へプレゼントとばかりに降り注がせた。炎の滝に打たれたジェムビースト達は狂喜乱舞か阿鼻叫喚か、地上でもんどりうって転げ回る。
「ガウッ――ガウンッ!?」
 敵意を突きつけてやりたい――ジェムビースト達はその一心で炎に飛び込み、そして追い返されていた。助走も無しの無策では注ぐ炎には敵わない。その間に澪は悠々とパンプキンシューを食し、ハロウィンパーティを楽しみぬいた。
「……ん、よし、ごちそうさま。それじゃあ天使降臨と参りますか」
 美味しいパンプキンシューを作ってくれた、参加者の誰かの親御さんに感謝。澪は一度手を合わせてから炎を止める。そこに偶然跳び上がったジェムビーストの何体かが敵意を向けて追尾レーザーの弾幕を飛ばしてきたが、澪に殺到する弾幕は悉くオーラの壁に弾かれて空へと逸れていった。
 澪は弾幕を気にすることなく、足下に集ったジェムビースト達を観客に歌い始める。ハロウィンをテーマにした輪唱曲だ。ジェムビースト達が全て片付いたら、少し会場を掃除して、それからみんなを集めて歌ってみようか――そんな夢を描きながら紡がれる言の葉はジェムビースト達の聴覚から脳へと直通し、現実を狂わせ始める。
 体が重くなっていく。足が動かなくなっていく。宝石の体がまさに宝石となっていくようだった。ジェムビースト達はやがて項垂れ、老いた獣の群れとなる。
「――貴方の闇に、希望の輝きを」
 老いて尽き果てる時に見るような、天上世界の花園が地上に広がりジェムビースト達を迎えていた。花園に君臨する澪は天の使いとなって、破魔を込めた浄化の光を一帯に振りまく。
「ガゥアアアァァァ……」
 今度ばかりは苦悶の呻きだ。破魔と浄化の二重苦はジェムビースト達の芯まで浸透し、圧力も何もなしにジェムビースト達をバタバタと倒していた。
 力無く空を掻き分ける足が虚しい。澪は効果がおよそ届いたのを確認すると、光を集めて頭上に巨大な光球を作る。
「最後にこれを……どーぞっ」
 最早虫の息のジェムビースト達。ぴくぴくと痙攣する彼らへ向けてトドメとばかりに放り落とされた光球は、地上に衝突すると円形に潰れて広がり、花園ごとジェムビースト達を呑み攫っていく。
 戦いの跡は極力残さない。眩い世界から戻ってきた地上の景色を見下ろせば、ジェムビースト達の姿だけが消え去っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラガルルク・デンケラ
おっ学園に犬が迷い込んできた。それも複数! 災魔じゃあなかったら生徒に可愛がられていたかもしれないが……噛み付くのはよくないな
吠えるのも時期が時期なら授業妨害だ。楽しいパーティーに混ぜて欲しいなら、イタズラだけじゃダメよ

わたくしは幽霊、深海の亡霊。と、演技してみようか。演出と防衛は紅月に手伝って貰おう。お前は手足の長さを活かして近づかれる前に攻撃を……おっと刺すならあっちだ

どうかわたくしの手を掴んで。引き上げて、抱き締めてくださりませぬか?
此処です、此処にいます。わたくしは此処にいます。獣に変わってしまった旦那様はどれでございましょう。深海に引きずり込めば、わかるやもしれませぬ……なんて、ね!



●そこな獣の旦那様
 つるりとした単一色の体。「ジェムビースト」とは宝石の獣――その本質が何であるかは行動や習性から読み取るしかないが。
「おっ? 学園に犬が迷い込んできた。それも複数!」
 子供達と追いかけっこに興じていたラガルルクだが、その追っ手がいつの間にかジェムビーストにすり替わっていた。グルルルと唸り声を上げる様にラガルルクは立ち止まる。どうやら囲まれているらしい。
「災魔じゃあなかったら生徒に可愛がられていたかもしれないが……そんなに牙を剥きだしにして。噛み付くのはよくないな。吠えるのも時期が時期なら授業妨害だ。楽しいパーティーに混ぜて欲しいなら、イタズラだけじゃダメよ」
 まるで生徒指導の教員のようにラガルルクはジェムビースト達を諭すが、ジェムビースト達は猛るばかり。尤も、そんなに素直なら僕達は要らないよね、とラガルルクは歯牙にもかけない。
「紅月、演出と防衛を手伝っておくれ。演目は……そうだね、あれでいこう」
 ジャイアントくらげの紅月はラガルルクに声を掛けられ、頭上にふわりと浮き上がる。傘より伸びる触手様の体は鳥かごのように傘を包み、その基礎となっている円形のひだより伸びる無数の触手がラガルルクの周りに垂れ下がった。深く暗い水底の演出だが、時折ラガルルクの顔に触手が向いてくるのでラガルルクはぺちぺちと払っていた。
「わたくしは幽霊、深海の亡霊――」
 役はハロウィンの仮装を存分に活かした深海の亡霊。たおやかに宙へ伸ばされた手に潤んだ視線を送る姿はジェムビースト達を強烈に苛立たせる。
「ガアアァァアッ!!!」
 ビリビリニ、ヒキサイテヤル――飛び掛かったジェムビースト達はラガルルクへ向かっていく中で前足の爪を立てた。八方から突き出される爪にラガルルクの逃げ場はないが――。
 ラガルルクが「水底」にいるという事実を、ジェムビースト達は吼えた拍子に吐き出してしまっていた。視界もピンホールのように狭くなり、そこにはラガルルクの姿しか映らない。
 持ち上げられた紅月の触手が突き出されていた。相手は八方から来るが、紅月の触手は八方では有り余るほど。いくつか束ねられて重い打突となった触手はジェムビースト達の爪がラガルルクに突き立てられる寸前で、その頭を潰して地面に刺し留めた。
 平べったく地べたに落ちたジェムビースト達の体は一瞬で砕け散り、原形不明の小塊となる。小塊の蒼はなお水底を演出し、ラガルルクの演技には一層の熱が入った。
「どうかわたくしの手を掴んで。引き上げて、抱き締めてくださりませぬか? 此処です、此処にいます。わたくしは此処にいます。獣に変わってしまった旦那様はどれでございましょう。深海に引きずり込めば、わかるやもしれませぬ……」
 ジェムビースト達を相手役に見立ててひらりはらりと手を彷徨わせる。ジェムビースト達は仲間が触手に倒されたにも関わらずそれすら見えないほど怒りに狂い、猛然と飛び掛かっては頭を貫き潰された。果てた仲間の上に潰れてまた果てる。触手ががしゃんと小塊を飛び散らせ、水底が足の踏み場まで侵食したところでジェムビースト達ははたと気付いたが――。
「……なんてね! 御観覧頂き、誠にありがとうございました」
 右足を引きながら恭しく頭を下げる。謝辞の相手は全て水底に沈んでいたが、ラガルルクは決して礼節を失しなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リディア・スカーレット(サポート)
 ダンピールのビーストマスター×パラディン、女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 恋人には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

静かな場所や花などの自然が大好きです。
人との会話は淡々とこなし、あまり私情を入れない様にしてます。
仲間は大切に思っており、仲間とは協力し合い
依頼の成功を目指します。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ミラリア・レリクストゥラ(サポート)
やや戦いの不得手なクリスタリアンの旅人です。唄を得意とし、必要であれば口だけではなく全身を震動させ発声します。また、ユーベルコードとして唄う場合は様々なサポートをします。
性格としておっとりしている所はあるものの、尊厳を卑劣に踏みにじる行為を見ると許せないと憤怒します。
ビーストマスター適性はかなり限定的で、『地母の恵み』で活性化した大地の恩恵を求め集まったものと一時的な協力関係が築かれます。
食事も呼吸も不要で、大地の放射エネルギーを糧とします。このためスペースシップワールドには適性がありながら苦手意識が強く、近寄りたがりません。

『お祝いですね!一曲唄わせてください!』
『あら?お困りでしょうか…』


紫野崎・結名(サポート)
音は、こころ。こころは、ちから。
今はたぶん、この音が合ってる…と思うから

音によるサポート、妨害、撹乱が好み
攻撃や運動は苦手、特に腕力はほとんど無いです
なので、キーボードも肩にかけます

ピンチは黒い天使、歩くのはセブンリーグブーツ、Float on soundをふわっと浮かべてキーボードを演奏
キーボードはスマホとつないで音源を自由に設定変更できるよ
動物の鳴き声にしたり、管楽器の音にしたり、弦楽器の音にしたり

食は細くてすぐお腹いっぱい
そして人見知り気味

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません



●アメジストの音にルビーが踊る
 ハロウィンパーティを襲っていたジェムビーストの群れは当初に比べれば随分と小さく纏まった。――否、纏められたと言うべきか。
「グヮウゥゥゥ……!!」
 怒りはぐつぐつと腹の底で煮え続け、沸き立つ蒸気を吐き出すかのように唸り声を上げる。収まらぬ、抑えられぬ怒りの前に新たな猟兵が立ちはだかっていた。
「ハロウィンパーティを、楽しんでください、と言われました……。なんとなくだけど……楽しむために必要な『音』は、コレだと思う……」
 キーボードを肩に掛けた紫野崎・結名(歪な純白・f19420)は鍵をドミソと鳴らし、音の拡散具合を確認しながらふわりと浮かべたスピーカー「Float on sound」の位置を調整する。
 ハロウィンパーティを楽しむにも色々。結名は奏でることを選択した。演奏だけでも楽しい雰囲気は演出できたが、幸いここには結名の音色に合わせられる声の持ち主がいた。
「戦いは全てお任せしてよろしいんですの?」
「えぇ。あなた達の演奏と歌が力をくれるから……最後まで戦い抜いてみせるわ」
 ミラリア・レリクストゥラ(目覚めの唄の尖晶石・f21929)は戦闘が少々不得手であると自認しているが、この場に於いて力とは必ずしも腕っぷしを意味するわけではない。ミラリアの唄が大いなる力になるのだと、リディア・スカーレット(孤高の獣使い・f24325)は言っている。
 一振りの大剣、クリムゾン・ノヴァをずしりと構えたリディア。奇しくも刀身はジェムビーストの蒼玉と対照的な紅玉を思わせる深紅。砕くことに於いてこの場では誰よりも長けている。
「では……いきます……!」
 結名は左手の人差し指で、一、二、三とテンポを取ってから右手を鍵盤の上に踊らせた。膝をクッションに体を少し上下させる横、前奏の合間にミラリアが胸に両手を添える。
「いのーちぃの さーけび つたーえらーれたーなら! あしーたはっ きぃーっと かがーやくぅーからぁ!」
 パッション溢れる結名の演奏に、ミラリアは未来への希望を願う魂の歌詞を乗せた。それを表現するには口だけでは足りず、ミラリアは全身を震動させて発声する。音と声が溶け合った結名とミラリアのコラボレーションは相乗となり、リディアの心を震わせていた。
「ウゥゥガゥ! ガウゥウ!!」
「この歌に共感できない者は黙りなさい。その気がないなら――斬られなさい!」
 リディアの瞳が真紅に燃える。ハロウィンパーティを楽しむ者達に悪の鉄槌を下そうとしていたジェムビースト達が吼えて飛び出した刹那、閃く蒼の輝きを凌駕する深紅が爪の立つ前に振り抜かれていた。
 ヴァンパイアの権能を発現し、さらに結名とミラリア、二人の魂の音色を受け取ったリディアの速度は超高速を超える亜光速に達していた。牙を剥く口から胴体、そして尾の付け根までを斬り去った大剣が次の獲物へ向かう頃、鏡面のように滑らかな断面を晒してジェムビーストは崩れ落ちる。
 怒りをぶつけたい相手へ向き直ろうとジェムビースト達が後ろ足に力を溜める一瞬すら、リディアにとっては剣を振り抜くに足るだけの隙となった。岩を砕くと称される爆発的な破壊力は今、結名とミラリアの支援を受けて新星の名に恥じぬ域に達していた。
「むねーにぃ ともーるぅー あたーたかーなきーもち! きょーうをー ぜぇーったい わすーれなぁーいでぇ!」
 絶唱するミラリアに演奏を合わせる結名も没入する。超高速と亜光速の戦いはその速さ故に目が追いついていなかったが、力が確かにリディアへと届いていることはジェムビーストが一体、また一体と二つに裂けてぐらりと倒れることから理解できた。
 ハロウィンを楽しむに相応しい結名とミラリアのパフォーマンスは名残惜しくも終わりを迎える。キーボードの和音が引き伸ばされて余韻を残す中、グレーの髪を靡かせたリディアの姿が再び二人の元に現れた時。
 ジェムビーストは残らず倒れ、やがて粒子となってハロウィンの空に昇っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年10月30日


挿絵イラスト