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思い込んだら、 ‎Trick and Treat!

#アルダワ魔法学園 #お祭り2021 #ハロウィン #装魔封災戦

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#ハロウィン
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●思い込んだら、 ‎Trick and Treat!
 広大なアルダワ魔法学園の一画では、ハロウィンパーティーが開かれていた。
 かぼちゃやコウモリなどの賑やかな飾り付けが施されたフロアのテーブルには、ハロウィンをモチーフにした、様々なスイーツたち。
 学生や先生たちも、思い思いの衣装を着て、ケーキやゼリーをはじめとしたスイーツに舌鼓を打ち、会話を楽しんでいる。

 そんな会場の隅っこで。
 楽しそうな様子をぎりりと睨みつけている、複数の影。
『なーにがハロウィンだ! 我々にとっての屈辱の日に浮かれたパーティーなんぞやってんじゃねぇぞ、潰したらー!』
『楽しそうにしてるヤツらは、俺らの厚みで全て平らにして黙らせてやったらー!』
『おらおら、平らに転がしてトリートしたる! 重いコンダラー、ぶちかましたらー!』
 ごろんごろんと物騒な音を響かせて、彼らはパーティー会場へと突進していく……!

●グリモアベースにて
「トリック・オア・トリート! 今年もやってくるね、ハロウィン!」
 羽飾りの付いた帽子を被り、おもちゃの剣を携えて。彩瑠・翼(希望の翼・f22017)は、グリモアベースに集まった猟兵たちに満面の笑みを向ける。
「ハロウィンにちなんだお仕事を、今回はお願いしたいんだ。場所は、アルダワ魔法学園だよ」
 アルダワのハロウィンについてはもう知ってるよね、と。そう問いかけるように猟兵たちを見渡してから、翼は言葉を続ける。

 古文書によれば、アルダワ世界のハロウィンは「装魔封災戦(そうまふうさいせん)」の記念日にあたる。
 装魔封災戦は、人類が災魔の仮装をして災魔の拠点に侵入し、大規模な奇襲で大量の災魔を封印するというもの。
 その作戦の勝利を祝って始まったのが、アルダワのハロウィンというわけだ。
「普通に記念日で、パーティーして楽しむっていうだけならいいんだけど、そうもいかないらしいんだよ」
 人類側には勝利記念日だが、災魔にとっては敗戦という苦い記憶となる日。
 その記憶が残っているのか、今も本能的にハロウィンを忌み嫌う災魔は多い。
 今回も、その関係なのだろう。衝動のままに学園へと現れてくるのだという。

「そんなわけで、皆へのお願い! ハロウィンパーティーに現れる災魔をやっつけて欲しいんだ」
 災魔が現れるのは、学園のパーティ会場。
 放っておけばめちゃくちゃにされてしまうから、どうにかしたいところだ。
「出てくる災魔は、理性も低下してるけど、『仮装した者を優先的に狙う』んだって。だから、今回のお仕事は仮装が必須になるよ」
 パーティー会場には、仮装をしてパーティを楽しむ学生や先生たちが居るが、猟兵たちの仮装の方が断然目立つため、彼らに被害が及ぶことはない。
 また、猟兵がパーティーを楽しみながら戦うことで、災魔は冷静さを欠き隙だらけになる。
 楽しめば楽しむほど攻撃しやすくなるのだから、こんなにおいしい戦いもないだろう。
「会場では、スイーツブッフェが開かれてて、色んなお菓子がたくさん食べられるよ。仮装にお菓子も楽しめるなんて、かなりお得だと思うんだ」
 オレも行きたかったなぁ、とちょっぴり残念そうに呟く翼。
 お菓子とお祭りが恋しい年頃。幼い表情にはいいなぁ、という感情がそのまま出てしまっている。
 だが、グリモア猟兵としての仕事という認識はあるらしく、気を取り直した様子で腰元に提げていた筒の中から一枚の紙を取り出して広げた。
 紙には、何ともコミカルな雰囲気の絵が描かれている。
「オレが予知した災魔は、エゴコンダラーっていうよ。ローラーっていうのかな? 何でもごろごろーって平たくしたいみたい」
 ちなみに「コンダラー」は手動式整地ローラーの俗称なのだそうだ。
 もっとも、翼はその辺の由来は知らないようで、何でそういうんだろうね、なんて首を傾げているけれど。
 コミカルな絵をよく見れば、確かにローラーらしい外見をしている。
「数はけっこう多いんだけど、攻撃手段は勢いよく転がって轢くってのみ。速度出てたらすぐに止まれなかったりするから、うまく誘導して倒すといいんじゃないかな。皆だったら楽々で相手できると思うんだ」
 楽々で、という言葉を強調してから、翼は、話を聞いてくれた猟兵たちを見渡して。

「だからね。仮装して、お菓子食べて、思いっきり楽しんでね!」


咲楽むすび
 初めましての方も、お世話になりました方もこんにちは。
 咲楽むすび(さくら・ー)と申します。
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。

●内容について
 アルダワ魔法学園の依頼です。

 構成は下記のとおり。
 どの章からでも参加可能です。
 単体章のみのご参加も歓迎いたします。

 第1章:ハロウィンを楽しみまくれ!(日常)
 第2章:『エゴコンダラー』との戦い(集団戦)

 第1章では、アルダワ魔法学園内のハロウィンパーティを思いっきり楽しんでいただきます。
 スイーツブッフェとしているので、お菓子がメインになっていますが、パンやピザ、キッシュなどもあります。
 食べたいものを書いていただければ基本的には採用させていただきますので、好きなように考えてみてくださいね。

 第2章は集団戦です。
 アルダワ魔法学園のハロウィンパーティ会場に現れた災魔『エゴコンダラー』と戦っていただきます。
 仮装をしてパーティーを楽しめば楽しむほど戦闘が有利になりますので、めいっぱい楽しんでいただけると嬉しいです。

●仮装について
 第1章、第2章ともに仮装は必須です。
 南瓜行列SDイラストがある方は、その衣装を着ている旨を、そうでない方は衣装についてプレイングで記載をお願いします。

●プレイング受付について
 第1章は、10月23日(土)朝8:31より受付いたします。
 締切および、他の連絡事項は、タグとマスターページにてご連絡いたします。

 それでは、もしご縁いただけましたらよろしくお願いいたします!
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第1章 日常 『ハロウィンを楽しみまくれ!』

POW   :    お菓子や料理を食べて楽しむ

SPD   :    イタズラ合戦に参加して楽しむ

WIZ   :    素敵な仮装を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

杜鬼・クロウ
【煉獄】アドリブ◎
仮装:囚人

遊んでれば災魔共も俺達を狙うらしいし今は楽しむか
…この台詞、何度目って感じなンだが一緒に行くのが犬っころでなければもっとなァ(不満気

駄犬(ヴァン)とブッフェへ
そこで藤彦と再会

お!久しぶりだな、元気してたか藤彦(喜々
えらく髪伸びたなァ
その姿も似合って…噛まれてはねェよ!
つーかお前ら、同じ仮装だなんて息ぴったりじゃねェか
やっぱ似た者同士じゃね?(笑い堪え

甘味が苦手故、飯モノの所へ
お化けのバーガーや蜘蛛の巣ピザ食す

ウワ、人の指がパンになってる
まかろんの塔も凄ェな…
エ?悪戯も菓子もいらね…
だから甘いモンは好きじゃねェっつったろ結託すンな!
お前らで仲良く食え!(二人を押し退け


ヴァン・ロワ
【煉獄】アドリブ◎
仮装:警官

ちょっとちょっと~
ご主人サマが誘ったんだからもっと楽しそうな顔してよねぇ
ほ~ら笑って笑って~?
ご主人サマを揶揄いながら楽しんでたら
うわぁ何か来ちゃったじゃん

楽し気に話す二人の横であからさまにつまんない態度
けど話を振られたら笑顔で答えてあげますよ
俺様も…同じネタっていってもコレとアレじゃ違いすぎて気にする方が馬鹿らしいしぃ?
これで似たもの同士って言われてもねえ~ってカンジ

ご主人サマを挟んでパーティー会場の奥へ
やっぱハロウィンならこれを言わなきゃね~
ねえ、ご主人サマ
Trick or Treat?
トリートならはいじゃあこれあげる
だってお菓子選んだじゃん
ほら、あーん?


飛鳥井・藤彦
【煉獄】アドリブ◎
仮装:警察官(婦警にも見える)

クロウの兄さんやないですかぁ、お久しぶりです~。
おやおや、その恰好、何やいけないことしはったんです?
それとも隣の犬に噛まれはったんやろか?

(くすくす笑って目を細め)

おーきに。
ネタが被ってしもうたんは事実やけど、そないな風に言うと犬がへそ曲げてまうよ。
僕は犬と違うて心が広いからええけどな。

ところで兄さん。
折角のハロウィンパーティやで?
このマカロンなんてええ色しとるやろ。
それにこっちの南瓜タルトはそないに甘くないから兄さんだっていけると思うんやけど。
ほらほら、あーん?

(甘いもの苦手と知りつつ、ヴァンと両サイドからお菓子をすすめる形で迫る)




「遊んでれば災魔共も俺達を狙うらしいし今は楽しむか……」
 ある意味お約束な台詞を、わりと棒読みな感じで口にするのは、囚人服に身をやつした杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
 モノトーンのボーダー配色シャツとズボンという、ともすればやぼったくなりがちな服に、手足の錠と鎖をアクセサリよろしくジャラリとまとわせたその着こなしは、実に洗練されていて、いい意味で囚人らしくない。
「……この台詞、何度目って感じなンだが一緒に行くのが犬っころでなければもっとなァ」
 そんな囚人が、夕赤と青浅葱の色違いの瞳をすっと細め、あからさまに不満げな表情で傍らを見やれば。そこには犬っころ――ヴァン・ロワ(わんわん・f18317)の姿があった。
 犬っころと言われつつも、実際は狼である彼がその身にまとうのは警察官の衣装だ。紺色の帽子にスボン、そしてブルーのシャツといったいかにもな取り合わせを、これまたセンスよく着こなしていて。
「ちょっとちょっと~。ご主人サマが誘ったんだからもっと楽しそうな顔してよねぇ」
 狼耳をぴくりとさせ、ふさふさとした黒の尻尾をゆらゆら揺らしながら、ヴァンは抗議めいた声を上げた。
 それでもその表情には、どこか楽しむような色。
 不満そうな顔を一応作ってはいるが、クロウとのこういうやりとりは、むしろ楽しくもあって。
 そもそも飼い主は自ら選ぶがモットーの自由な狼がヴァンの本質。楽しくなければ、クロウをご主人サマと呼び、彼の飼い犬として傍らにいることを良しとすることなどない。
「ほ~ら、笑って笑って~?」
 ご機嫌斜めな表情を崩さないご主人サマを揶揄い……いや、気持ちを持ち上げさせようとする、半ば楽しむようなヴァンの言葉を聞きながら。やっぱり不満げな表情のまま、クロウが会場内を見渡した、その時。
「クロウの兄さんやないですかぁ、お久しぶりです~」
 はんなりとした柔らかな声とともに、にこやかな笑み浮かべやってきたのは一人の美人。
「うわぁ、何か来ちゃったじゃん」
「お! 久しぶりだな、元気してたか藤彦」
 それが見知った顔であるのを見て取れば、あからさまにつまらなそうな顔をするヴァンと、嬉々とした表情で言葉を返すクロウ。
 そんな対照的な二人を一瞥して。美人――飛鳥井・藤彦(春を描く・f14531)は、面白そうに紫の瞳を細めて、くすくすと笑った。
「おやおや、その恰好、何やいけないことしはったんです? それとも隣の犬に噛まれはったんやろか?」
「いけないことなンてしてね……噛まれてはねェよ!」
 楽しげな藤彦の軽口に即答で切り返しながら。クロウもまた、再会した彼の姿をまじまじと見つめた。
「それにしても、えらく髪伸びたなァ。そして、その姿も似合ってるぜ」
 腰あたりまでもあろうかという艷やかな藍色の髪をゆるくまとめた藤彦の仮装は、紺色の帽子にズボン、ブルーのシャツの警察官だった。見目麗しく柔らかな物腰から、ともすれば婦警にも見えるその出で立ちに、クロウは思わずといった様子で傍らのヴァンをちらと見やって。
「つーかお前ら、同じ仮装だなんて息ぴったりじゃねェか。やっぱ似た者同士じゃね?」
 笑い出しそうになるのを堪えるあまり、若干声が震えている。
 示し合わせたわけではないだろうことは、クロウだってもちろんわかってはいる。
 けれど示し合わせたのではないなら尚更だ。
 ここまで同じ衣装を選んでくるなんて、そうそうあるものでもない。
 そんなクロウに、藤彦は「おーきに」と言葉を返した。
「ネタが被ってしもうたんは事実やけど、そないな風に言うと犬がへそ曲げてまうよ」
 そうして軽く小首を傾げれば、あからさまにつまらなさそうな様子のヴァンを一瞥し、にっこりとした笑みを向ける。
「僕は犬と違うて心が広いからええけどな」
 その笑みに何かを感じたか。対するヴァンもまた、つまらなそうな表情から一転、藤彦へ向け、挑むような笑みを返して。
「俺様も……同じネタっていってもコレとアレじゃ違いすぎて気にする方が馬鹿らしいしぃ? これで似たもの同士って言われてもねえ~ってカンジ」
 パチリと火花を散らすかのような、にこやかな笑顔で対峙する二人の警官のやりとりを、面白そうに眺めながら、クロウは言った。
「まぁまぁ、折角のブッフェだしな?」
 先ほどまで不満げだったのはどこへやら。囚人は、吹き出しそうになるのを堪えながら、先ほど紡いだ言葉を、再び口にしたのだった。
「遊んでれば災魔共も俺達を狙うらしいし、今は楽しもうぜ?」


 再会した友人とのやりとりを楽しんだ後。
 ひとまずとばかりに会場内を一通り回ったクロウが足を止めたのは、軽食スペースだった。
 甘いもの好きな者にとっては天国とも言えるスイーツブッフェも、クロウのように甘味が苦手な者にとっては中々厳しいものがある。
 けれどそこは誰もが楽しめるようにと企画された、学園のパーティー。
 ハロウィン仕様にアレンジが施されたハンバーガーやピザ、サンドイッチといった食事が、賑やかに盛り付けられ、提供されていて。
「やっぱ口にするならこの辺だよなァ」
 お化けのバーガーに、蜘蛛の巣のアレンジが施されたピザを食べながら、クロウはしみじみと頷いた。
 他にもミイラをモチーフにしたグラタンに、モンスターをイメージしたパテがあったりと、なんとも賑やかだ。
「ウワ、人の指がパンになってる」
 ミイラのグラタンに盛り付けられた、人の指のデコレーションソーセージも中々リアルだと思ったが、目の前のパンもまた妙にリアルで、口にするのを思わずためらってしまいそうになる。
「まかろんの塔も凄ェな……」
 会場の中央に目を向ければ、紫やオレンジ、黒といったハロウィンカラーのマカロンで作られた巨大な塔。
 よく見れば目玉風のデコレーションが施された白いマカロンが、ところどころに混ざっていたりと、これまた趣向を凝らしたものになっている。
 なんやかんやとよく作ってるな、などと思いながら。クロウがマカロンの塔を眺めていると。
「さらっといなくなったと思うたら、こんなところにいはったんですか」
 そびえ立つマカロンの塔の影からひょっこりと顔を覗かせ。ようやく見つけたと言わんばかりの顔をした藤彦は、クロウの傍らに立ち、同じようにマカロンの塔を見上げた。
「兄さん、この目玉の色したマカロン見てたん?」
「あァ、コレ凄くねェ? 向きによってはホントに目玉みてェで」
「そうやねぇ。……ところで兄さん、折角のハロウィンパーティやで?」
 おもむろにクロウの腕に自分の腕を絡ませ、その脇を固めながら。藤彦は、その花顔に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「このマカロンなんてええ色しとるやろ」
 妙なリアル感のある目玉マカロンをそっと避け。白磁の指が指し示すのはコウモリの形をした、ココア色のマカロンで。
「……ま、まァな」
 わずかに笑みを引きつらせ、クロウが同意を示したなら。
「そ〜そ〜、ハロウィンだよ、ご主人サマ」
 いつの間に合流したのか。藤彦とともにクロウを挟むようにして脇を固めるのは、ヴァンだった。
 彼もまた、これまた楽しげな笑みを浮かべていて。
「やっぱハロウィンならこれを言わなきゃね~」
 ねえ、ご主人サマ、と笑みを浮かべたヴァンとともに、藤彦もまたにっこりと微笑む。
 そうして。囚人の脇をしっかり固めた警官二人は、示し合わせたかのように声をハモらせた。
「「Trick or Treat?」」
「エ? 悪戯も菓子もいらね……」
「トリートなら、はい、じゃあこれあげる」
 いらないと言いかけたクロウの言葉を、にこやかに遮るヴァン。
 だってお菓子選んだじゃんと言いながら手にするのは、先ほどクロウが藤彦に向け同意を示した、コウモリの形のココアマカロンで。
「それにこっちの南瓜タルトはそないに甘くないから、兄さんだっていけると思うんやけど」
 一方の藤彦はといえば、目についた一口サイズの南瓜タルトを手にし、にっこりとした微笑みを浮かべていて。
「ほら、あーん?」
「ほらほら、あーん?」
 甘いもの苦手と知りつつも、両サイドから菓子を勧める形でクロウへと迫る、ヴァンと藤彦。
 二人の手にした菓子が、あわやクロウの口元に届くかという、まさにその時。
「だから甘いモンは好きじゃねェっつったろ結託すンな!」
 あ、クロウさんキレた。
 ユーベルコード【杜の使い魔(モリノシキガミ)】にて召喚した八咫烏、閃墨の力をも借りながら、渾身の力を振り絞ったかと思えば。ガッチリ固められた両脇のホールドを半ば力づくで振りほどいて。
「お前らで仲良く食え!」
 そうして二人の警官を押し退ければ、囚人は八咫烏の背へと乗り、しばしの逃亡を図ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】
ボクは初年度の南瓜行列のチョコ餃子怪人の仮装……UCによる変身な自前だったり

……ビスちゃん、モフモフ部分が減ったって嘆く様な顔されても困るよ?モフモフ好きなの解るけど

ビスちゃんとウルシくんは
和風なニスロクと蝿の王(殿様)
だったっけ?

よく似合ってるよ、でも料理人とハエは
組み合わせ的に、ニスロクの由来的には仕方ないのかな?

あっ、ビスちゃんは何を選ぶ?
ボクはスイーツ餃子があればそれを選ぶけど、無かったらクレープをフルーツと合わせて作って食べるかな?

スイーツピザも悪くないかもだけど
互いに食べ合うのは良いか……そこのシャオロンは先走っちゃ駄目だよ、おすわりっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】
わたしは地獄の料理人の悪魔
ニスロクを和風ナイズした
紺色の割烹着に悪魔の付け羽

ウルシさんは主の蝿の王(ベルゼブブ)を和風ナイズで殿様な感じに(今年の仮装受理済み)

エミリさんのモフい部分が減ったぁー……餃子なのはエミリさんの流派的には解るのですけど殺生な

おほん……兎に角気を取り直し
ニスロクは蝿の王に仕える料理人の悪魔ですからね、此ばかりは仕方ないですよ

あっ、わたしは味噌スイーツや抹茶スイーツを中心に色々摘まむ感じにしようかなと

エミリさんの選択もらしいと言えばらしいですね、一通り集めたら互いに食べ合いませんか?

ウルシさんも後で分けます
大人しくしてくださいね

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎




 学園のパーティー会場へと向かう前の待ち合わせ場所にて。
「エミリさんのモフい部分が減ったぁー……」
 それが、親友であるエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)の衣装を前にしたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の第一声だった。
 いやいや決して、似合っていないわけではない。
 餃子の大地の力を操る餃心拳の伝承者たるエミリロットが扮するのは、チョコ餃子怪人。
 ユーベルコード【招餃功・餃怪変(ショウギョウコウ・ギョウカイヘン)】により変身した、まさに自前の仮装である。
 自前で用意しただけあって、頭部の餃子は、ぬいぐるみやハリボテなどでは表現することのできない、なんとも美味しそうな風合いがある。
 さらに、見た目に愛らしいデコレーションもまた、仮装という長時間のパフォーマンスにも耐えられるよう工夫が施されているのだ。
 ご当地怪人界隈の者が目にすれば、そこに込められた餃子への深い愛情が見て取れる、どこまでも心憎い演出!
 ……ではあるのだが。
「……餃子なのはエミリさんの流派的には解るのですけど……」
 似合いすぎているほどよく似合っている仮装ではあっても、普段のもふもふいっぱいのファードラゴンな彼女の方が好きだったりするビスマス的には、なんだか物足りない気がして。
 わかってはいてもついつい嘆きの声が出てしまう。
「……うう、殺生な……」
「……ビスちゃん、モフモフ部分が減ったって嘆く様な顔されても困るよ? モフモフ好きなの解るけど」
 思わず金の瞳を細め、なんとも表現しがたい困った表情になるエミリロット。
 親友が好いてくれる部分があることは嬉しい。けれど折角用意したハロウィンを楽しむための衣装なのだから、ここはもう少し気持ちを持ち上げて欲しいなぁ、なんて思ったりして。
「そういうビスちゃんとウルシくんは……」
 こういう時は相手に話を振るのがよいとばかりに、エミリロットはビスマスの仮装を見やり、こてんと首を傾げた。
「和風なニスロクと蝿の王……殿様? だったっけ?」
 悪魔ニスロク。蝿の王ベルゼブブを主に持ち、美味による誘惑と食卓の楽しみを司るという地獄の料理人だというが。
 目の前にあるのは、藤色の着物に、紺色の割烹着を美しく着こなした、女将然としたビスマスの姿。
 一体どの辺が悪魔なのだろうと、思わずまじまじと見つめるエミリロット。
「……あ、そっか」
 よくよく見れば、和風美人なビスマスの背中から生えているのは、悪魔の象徴であるコウモリ羽。
 そしてその頭にちょこんと乗っかっているのは、きらびやかな装飾が施された羽織を着てちょんまげを結った、いわゆる「殿様」な姿に扮したスッポン――可変漆塗りスッポン型グルメツール『ウルシ』だった。
 彼もまた、お椀な甲羅のところに飾られた、虫の翅から、ただの殿様ではないことが見て取れて。
「なるほどー。割烹着和装美人に殿様。確かに和風だね!」
 悪魔という言葉のイメージから帽子を被った洋食のシェフになりそうなところを、あえて和風アレンジにしたところが、料理……とりわけなめろうという和食を愛する彼女ならではの愛が伺えて、思わず笑顔になるエミリロット。
「よく似合ってるよ、でも料理人とハエは組み合わせ的に……だけど、ニスロクの由来的には仕方ないのかな?」
 なんというか、蝿は料理場においては大敵だから、エミリロット的にはどうにも違和感が拭えない。
 そしてそれはビスマスも同感だったらしい。
「ニスロクは蝿の王に仕える料理人の悪魔ですからね、此ばかりは仕方ないですよ」
 参照元の設定を変えてしまうわけにはいかないのだから。
 苦笑を交えながら、ビスマスはそう口にして。もろもろの気持ちを切り替えるかのように、おほん……と、一つ咳払いをして見せる。
「そしてここは料理人の悪魔らしく、ブッフェを思いっきり楽しみたいところです」
 そう言って、ほわりとした笑みを浮かべたビスマスに、
「うん、そこはボクも同感!」
 エミリロットもまた、にっこりと笑って頷きを返すのだった。


 そんな風にお互いの衣装を披露し合った「なめろう餃子」なコンビ二人は、パーティー会場へと足を踏み入れた。
 学園の生徒たちの手作り感を感じさせる、賑やかな飾り付けが施されたフロア内には、ハロウィンモチーフのスイーツや軽食の数々が並べられたテーブルが、至るところに設置されていて。
「わぁ、思った以上に色々あるねー」
 わくわくと瞳を輝かせながら、各テーブルを見て回るエミリロット。
 ギョウザライダーたるもの、何はともあれ探すのは、餃子に関わる料理。
 スイーツブッフェだから、さすがに食事としての餃子はないかもしれないけれど……餃子好きな生徒や先生がいるなら、もしかしたらスイーツ餃子だって提供されているかもしれない。
「……あ! 見てみて、ビスちゃん、チョコ餃子だって……!」
「ホントですね……これ、求肥にチョコの餡が包まれているのですね」
「タレは黒蜜だって! ふふ、見た目本物の餃子みたいだよね、なんだか嬉しくなっちゃうなぁ」
 スイーツがあることも嬉しいけれど。こんな風に本物と見まごうようなスイーツ餃子を作ってしまうほどに餃子好きな生徒や先生が、この学園にいるのだということが何より嬉しくて、エミリロットはうふふと笑った。
「あっ、ビスちゃんは何を選ぶ? ボク、このチョコ餃子とあわせて、クレープとフルーツ合わせてスイーツ餃子作ろうかな? スイーツピザも悪くないかもだけど」
「エミリさんの選択もらしいと言えばらしいですね」
 チョコ餃子を皿に取り分けながらも、自ら包む手作りスイーツ餃子の材料になりそうなものを探すように視線を巡らせるエミリロットに、ビスマスは微笑んで。
「わたしは味噌スイーツや抹茶スイーツを中心に色々摘まむ感じにしようかなと」
「抹茶はよく見るけど、味噌スイーツってあるんだ?」
「はい。味噌は隠し味にちょっとプラスするだけでも深みが増して美味しいんです。よく見るのはクッキーですけど……あ、フィナンシェもありますね」
「ほんとだー。確かに白味噌はバターとよく合うのかもしれないね。すごい、あっちのには赤味噌使ってるチョコブラウニーだって!」
「そうですね、思った以上に種類があるようです」
 味噌や抹茶のスイーツを興味津々に見始めたエミリロットを横目に、ビスマスもまた、盛り付けられたトレイを見渡す。よく見れば、コウモリやジャック・オ・ランタンなどのハロウィンモチーフに盛り付けられた練りきりやお団子といった和菓子もちらほらあるようで。
「わたしもテーブルを見て回って色々集めてみようと思うので、一通り集めたら互いに食べ合いませんか?」
「あ、いいね。互いに食べ合うのは良いか……」
 ビスマスの提案に。良いかも、と続けようと頷いたエミリロットは、視界の端に何かを捉えて振り向いた。
 そこには、てけてけと走り出す、一匹のチョコレートがけのスイーツ餃子――、
「あ、そこのシャオロンは先走っちゃ駄目だよ、おすわりっ!」
『キュ?!』
 そこには、餃子っぽい外見に、主人であるエミリロットと同じくチョコやアイスなどのスイーツにデコレーションされた小竜の姿があった。
 主人の声に従いおすわりはしてみたものの、その足元は、そわそわとちょっぴり落ち着きがなかったりして。
「ふふ、シャオロンさんも色々興味があるのですよね」
 そんなシャオロンとエミリロットのやりとりに思わずくすりとして。ビスマスもまた、自身の近くにいた相棒、ウルシを見やった。
 こちらは小竜のように駆け出すところまではいかないものの、それでも食べたそうに羨ましそうにじぃっとスイーツのあるテーブルを見上げている。
 そんなウルシの姿に、ビスマスは微笑み、近づいて。
「ウルシさんも後で分けます。大人しくしてくださいね」
 殿様姿の相棒に仕える料理人らしく、丁寧にそう言葉を紡げば、素直に頷くウルシさん。
 その姿にちょっぴりお殿様な風格を覗かせている気がするのは、ビスマスの欲目なのかもしれないけれど。
「それじゃあ、エミリさん、それぞれで集めに行きましょう?」
「うん、そうだね、ビスちゃん!」
 互いの顔を見合わせ、笑顔を交わして。悪魔の料理人とチョコ餃子怪人は、それぞれの獲物を求めて会場内を歩き出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュート・アコルト
【LL】
仮装は孫悟空
翼に「これ絶対似合うよ!」って言われて着てみたけどよ
確かになんかしっくり来るよな
で、ハロウィンってこうやるんだろ?
「命が惜しけりゃ菓子寄越せ」
如意棒突きつけ凄んで
え?違う?いたずらって悪事だろ?
ユディトは色々知ってるなあ
さすがは翼の師匠だぜ!
でもオブリビオンにならなきゃ天使核が手に入らないだろ?
なんか勿体ねえな(悪気0

食べ放題なんて気前がいいな!
ケーキを一口食べて途端に渋い顔
なんか…すっげぇ甘ぇ
俺甘いの得意じゃねえんだよなあ
甘いの食うと眠くなるだろ?
その間に魔獣に襲われたらたまったもんじゃねえ
味はそんな嫌いじゃねえんだけどよ
ピザもキッシュもうめえ!
クロと一緒に食べまくるぜ!


ユディト・イェシュア
【LL】
去年の狼の仮装で参加

リュートくんは初めてのハロウィンですか?
確かにその仮装はとても似合ってますね
えーと、その認識はちょっと違うというか…
この日に先祖の霊が還ってきて
同じくやってきた悪魔や魔女を祓うという話もあるようです
アルダワではまた少し違うようですね

(なるほど文化の違いはこういうことかって顔)
いろんな風習がありますし
リュートくんが楽しければいいんです
でも知らない人に如意棒つきつけたらびっくりしますからね…
せっかくだから美味しいスイーツをたくさん食べましょう

え、甘いの苦手なんですか?
確かにお腹いっぱいになると眠くなりますからね
ピザやキッシュを勧めつつ
自分はモンブランをはじめケーキを確保




「ふふ、今年のパーティーも賑やかになりそうですね」
 パーティー会場を見渡し、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は柔らかな笑みを浮かべた。
 飾り付けられた会場も、思い思いに着飾った参加者の仮装も、眺めているだけで楽しい。かつて屈辱を味わった災魔たちが、この雰囲気を本能的に嫌うというのも、何だか納得してしまう。
「リュートくんは初めてのハロウィンですか?」
 そういえば、と。ユディトは傍らの少年――リュート・アコルト(竜騎士・f34116)を見やった。
 修行仲間なグリモア猟兵と同じ年頃になる少年が、冒険の旅を始めたのは確かつい先日だっただろうか。
 とすれば、自分の故郷以外で過ごすハロウィンイベントもまた、彼にとっては初めての体験に違いなくて。
「ああ! なんかすげえよな、色々飾られてて。あと、この格好も」
 頷き、自分の格好を見下ろすリュート。
 赤を基調に華やかな金色の刺繍が施された、動きやすさを重視した服だ。後ろ側を見ればぴょこんとした猿の尻尾が生えている。
 それからこれも、と頭につけた金の輪を示し、同じく金色の長い棒をくるんと回しながら、リュートは言った。
「翼に『これ絶対似合うよ!』って言われて着てみたけどよ。確かになんかしっくり来るよな」
「確かにその仮装はとても似合ってますね」
 笑顔を見せるリュートに、ユディトもまたくすりとする。
 確か、孫悟空だっただろうか。元気で活発な彼には、確かによく似合っている。
「ユディトのは、耳と尻尾生えてるよな? その衣装、魔獣狩って作ったのか?」
「まさか。この耳と尻尾は狼なんです」
 ユディトが扮するのは、昨年義姉と同じテーマであつらえた狼の仮装。
 ぴこんと生やしたもふもふな耳と尻尾、そして革製のベルトやフェイクファーアクセサリで飾った衣装は、ワイルドさの中にどこか愛らしさも見え隠れしていて。
「狼は、赤ずきんという物語に出てくる登場人物なんですよ。ちなみにリュートくんの仮装は、西遊記という物語に登場する、孫悟空ですね」
 物語になぞらえた仮装をする人はこの会場にも多いかもしれませんね、と言うユディトの説明に、「へぇー」と声を漏らすリュート。
 手にした金の棒が、如意棒という孫悟空の武器なのだとも教えてもらえば、再び手の中でくるくると操って。
「じゃあ、これだとハロウィンやりやすいよな!」
「やりやすい?」
「ああ。だって、ハロウィンってこうやるんだろ?」
 不思議そうに瞬きをしたユディトに、リュートは頷きを返し、
「――命が惜しけりゃ菓子寄越せ」
 ビシッと。虚空に向けて素早く如意棒を突きつけ、凄んで見せる。
 まるで追い剥ぎのような悪い顔をした少年に、ユディトは思わず絶句して。
「……えーと、その認識はちょっと違うというか……」
「え? 違う?」
 子供らしい表情に戻ったリュートは、目をぱちくりとさせる。
「いたずらって悪事だろ?」
「……いたずらの言葉の定義としては間違ってないですけど。ハロウィンの仮装やお菓子は、元々は魔除けなんですよ」
 まずは一般的なハロウィンの知識を伝えた方がよいのかもしれないと。心優しい狼は、それこそ孫悟空を諭す三蔵法師がごとく、自身が知るハロウィンの由来について丁寧に説明する。
「この日に先祖の霊が還ってきて、同じくやってきた悪魔や魔女を祓うという話もあるようです。アルダワではまた少し違うようですね」
 仮装するのも、お菓子を配るのも、元々は先祖の霊とともにやってきた悪魔や魔女、悪霊がもたらす災いを遠ざけるための、魔除けの風習から来たものだ。
 もっとも、今では仮装をして皆でお菓子を配ったりパーティーを楽しむのが中心になっていて、元々の由来からは遠のいているし、そもそもアルダワでは由来そのものの話が違っていたりするのだけれど。
「ユディトは色々知ってるなあ。さすがは翼の師匠だぜ!」
 リュートは青空色の瞳を大きく見開き、感心したように頷くも。
「でもオブリビオンにならなきゃ天使核が手に入らないだろ? なんか勿体ねえな」
 続けて思ったことを思ったままに口にする。
「……」
 そんなリュートの発言に、一瞬面食らったような顔をするユディト。
 けれどそこは職業柄、世界の内外で多くの人と関わり、その文化に触れてきた背景からだろう、すぐに少年の言葉の意図するところを察すれば、なるほどという顔をした。
(「なるほど文化の違いはこういうことなんですね」)
 ユディトの育ってきた、あるいはこれまで行き来した世界では、オブリビオンは明確な敵として捉えられている。世界によっても状況は異なるものの、基本的にその発生は稀で、例えば死者となった者すべてがオブリビオンになるわけではない。だから、生者は死者を悼むし、その魂がそれこそ悪いものに影響されオブリビオンになるのを遠ざけたり、祓ったりする。
 けれど。
 オブリビオンの心臓である「天使核」を動力(エンジン)とする、独自の文明が発達した世界で育ったリュートからすれば、オブリビオンに対しての認識がそもそも違う。
 オブリビオンは敵だが、同時に自分たちが生きるためにも必要な、貴重な資源なのだ。だから資源になりそうなのにそうはならないという状況は素直にもったいないと感じてしまうのかもしれなかった。
「いろんな風習がありますし、リュートくんが楽しければいいんです」
 悪気など欠片もないであろう、リュートの「勿体ねえ」発言に、ユディトはしみじみと頷く。
 文化の違いとその感じ方は人それぞれ。少しずつ理解を深めていくものだから、どうこうと否定するようなものでもない。
「でも知らない人に如意棒つきつけたらびっくりしますからね……」
 それでもやってはいけない、必要なポイントだけは伝わるようにと、考えながら言葉を紡いだユディトに、
「確かに、いきなり如意棒はびっくりするよな」
 理解した様子でふむ、と頷き、如意棒を背中に仕舞うリュート。
 そんな少年の素直な様子に、ユディトは小さく微笑んで。
「せっかくだから美味しいスイーツをたくさん食べましょう」
 行きましょう、と。先導するように歩き出したユディトを見て、
「そうだな! よし、いっぱい食うぞ!」
 リュートもまた、相棒の黒竜クロノスを従え、元気よく駆け出すのだった。


「すっげぇ、食べ放題なんて気前がいいな! しかも見た目に色々あって面白いぜ!」
 会場内に設置されたテーブルの一画で。飾り付けられ、並べられた料理を見渡し、リュートは楽しそうに微笑んだ。
「お、これは肉の形してるけど違うのか?」
 最初に目についたのは、どーんと豪快に置かれた、大きな骨付き肉だった。
 大きい肉は骨の部分を持って、かぶりつくのがいいのだが、ご丁寧にも一口ずつに切り分けられていて。
 まあいいやと満面の笑みを浮かべ、切り分けられた一口分をフォークで突き刺すリュート。
 そのまま大きな口を開け、パクリと一口で食すれば。
「なんか……すっげぇ甘ぇ」
 見た目に反して口の中に広がるのは、ふかふかとした食感と、卵の風味と蜂蜜の甘さ。
 想像していたものとは全く異なる味に、思わず渋い顔をしたリュートは、飾られた大きな骨付き肉をまじまじと見つめた。
 それが肉の形をしたバームクーヘンだったことに気づけば、さらに微妙な表情になる。
「俺、甘いの得意じゃねえんだよなあ」
「え、甘いの苦手なんですか?」
 リュートを覗き込み。ユディトは、思わず問いを投げかける。
 正直、何でも好き嫌いなく食べる少年だと思っていたのだ。そんな彼からの「得意じゃねぇ」は、何だか不思議な気がして。
「甘いの食うと眠くなるだろ? その間に魔獣に襲われたらたまったもんじゃねえ」
 ユディトの問いに、大真面目な表情で答えるリュート。
「……味はそんな嫌いじゃねえんだけどよ」
 作った人のことを気にかけているのか、少し申し訳無さそうに付け加えるあたり、その心根はやはり素直で優しい。
「なるほど、そうだったんですね」
 そんなリュートの言葉に、納得したようにユディトは頷いた。
 甘い物を食べて眠くなるかどうかは人によるところではあるけれど。どんな理由であれ、調子が悪くなって動けなくなったところを敵に襲われてしまえば命にも関わる。その恐ろしさは、生まれ育った世界は異なれど、ユディトにも覚えのあることだ。
 それに、今回はパーティーの途中から、戦う必要もある。自分の特性を理解して動くのは、戦いに身を置く者としては当然の姿勢だ。
 それならば。
「では、リュートくんはこっちの方がいいかもしれませんね」
 手招きをし、ユディトがリュートを案内したのは、軽食が中心に置かれたテーブルだった。
 蜘蛛の巣アレンジのピザに、ジャック・オ・ランタンな南瓜がデコレーションされたキッシュ、お化けの顔をしたハンバーガーなど。ハロウィン仕様にアレンジされた食事が、賑やかに、所狭しと並べられていて。
「このピザとかキッシュでしたら、甘くないので食べても平気だと思います」
「へぇ、こんなのもあるんだな!」
 リュートは早速とばかりにピザとキッシュを手に取り、ぱくっと口にする。
「うめえ!」
 神妙そうな顔から一転、キラキラと瞳を輝かせた。
 確かに甘くないし、何よりとても美味しい。いくら食べても飽きない味だ。
「うん、コレなら食べられるぜ!」
 満面の笑みとともに、リュートは相棒クロノスを見やり、声をかけて。
「クロ! 一緒に食べようぜ!」
『きゅ!』
 そんな風に一人と一匹が楽しそうに食べ始める様子に、ユディトはほっとしたように瞳を細める。
「……ふふ、よかったです。では俺はケーキもらってきますね」
 定番の栗のモンブランはもちろんだが、それ以外にも色々なケーキを食べてみたい。
 食べまくるリュートに声をかけて。ユディトもまた、自分のケーキを確保すべく、再び会場内を見渡し、歩き出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)
白魔女の恰好をするわ♪えへへ。レーちゃんとお揃いね。

「わぁー。すっごく綺麗なお菓子が沢山あるわ♪」
お菓子ってケーキしかみたことなかったけど…色々あるのね。
どれも選べないわ。レーちゃんは…あ。シンプルなもの選んでる。
ちーずけーき?…へー。チーズのケーキってあるのね~。
「レーちゃんがちーずけーきなら、あたしは……そうね」
天辺に黒いのが乗ってるケーキを選ぶわ。もんぶらんってのね。

上に乗ってるのがまろんぐらっせってゆー…栗なの?これ?
それで網状のクリームは…これも栗なのね?中のクリームも栗?
へーへー。栗尽くしなのね♪へー…♪可愛いわ。これ。
暫くじっくり真剣にみてたら隣のレーちゃんに呆れられたわ。
「…だって~。こんな上品なお菓子って初めてなんだもの」

頬張ったら口の中に甘さと栗の味が広がってとっても美味しいわ!
へーへー♪栗ってこんな食べ方があるのね。あるのね♪
半分くらいまで食べたらレーちゃんの菓子も気になってきたわ!
「ねえねえ。レーちゃんのお菓子、味見してもいい? いい?」


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
仮装は黒衣の魔女。お揃い?…ああ。白魔女にしたのか。

「スイーツブッフェ? …なるほどな」
気になり調べたら菓子だけ自由に食べられる形式のイベントか。
種類も名もよくわからないが気になるモノを選んでみよう。
「ベイクドチーズケーキ。…ふむ。チーズを菓子に…」
隣のレアチーズケーキと迷ったが見た目が気に入ったので一つ。
露に何を選んだのか問われたので、名だけ言ってみる。
「ん? …ベイクドチーズケーキというものを選んでみた」
露はモンブランか。確か栗の菓子だったかな。

露と同席。何故か露は真正面ではなく隣に座ってくる。
極力私の近くに居たいらしい。…まあ。いつものことだが。
ゆっくりと一口含むと焼いたチーズの香ばしい味が広がる。
甘さはあるがチーズとの相性は良く紅茶に合うな。これは。
…むぅ…。住処で作ってみてもいいな。好みの味だ。

と。隣をみると露はモンブランを食べずにじっと眺めていた。
この子は何を?問うといかにもこの子らしい答えで呆れた。
「ん? 食べ合いっこ? やれやれ…ん」
口に放り込む。




 シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、会場内を見渡し、ふむ、と銀の瞳を細める。
 賑やかに装飾されたフロアの中央にそびえ立つのは紫やオレンジ、黒といったハロウィンカラーのマカロンで作られた巨大な塔。そしてその周囲を囲むようにしてあちらこちらに設置されたテーブルには、同じくハロウィンをイメージして盛り付けられた料理の皿が、ずらりと並べられていて。
「スイーツブッフェ……なるほどな」
 菓子だけ自由に食べられる形式のイベントだと、ここに訪れる前に調べた資料で見た気がする。
 確かにテーブルの上の皿に盛り付けられているものの大部分は菓子のように見える。けれど、テーブルによっては菓子だけではなく、食事のような料理も提供されているようだった。
「種類は確かに多いようだな。……詳しくはよくわからないが」
 再びふむ、と頷き。会場内のテーブルを見て回ろうかと、シビラは歩き出そうとするも、
「あ、待って待って、レーちゃん!」
 腕をぎゅうっと掴まれれば、立ち止まる。
「なんだ? 何か忘れ物でもしたのか?」
 シビラが呼ばれた声の方を見やれば、そこにはじぃっとシビラを見つめる、銀髪に白銀の瞳の少女――神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)の顔があって。
「そうよぉ、レーちゃん。忘れ物も忘れ物、特大の忘れ物をしているわ」
 ぷくぅ、と頬を膨らませてそう言ったかと思えば、露は半ば抱きつくようにしがみついていたシビラの腕から離れた。それから改めてシビラの前に立ち、くるりと一回転をする。
「ね、どーお?」
「……わからん、何がどうなんだ」
「もー、レーちゃんわかってない! ほら、見てみて、あたしの恰好!」
 露に言われ、シビラはまじまじとその姿を見つめた。
 三角帽子を被り、ワンピースにニーハイブーツという、頭の先から足の先まで白で統一された出で立ちは、白魔女だろうか。
 ワンピースは袖口のパフスリーブと腰元の大きなリボンが特徴的だろうか。さらにスカート部分は、前と後ろで丈の異なるアレンジが施されているように見える。いつだったかに何かの本で見た中には、確か、フィッシュテールスカートだと記されていたような気がする。
 そして。帽子とワンピースには蜘蛛の巣を模した美しいレース装飾。ぱっと見シンプルでありながらも実際は繊細な仕様のその衣装は、確かに、露にはよく似合っているように感じた。
「……そうだな、似合ってるんじゃないか?」
「えへへ、似合ってるだなんて嬉しいわ♪ ……って、そうじゃないでしょぉ〜」
「……じゃあ何なんだ」
 やれやれという顔をするシビラに、露は再び、可愛らしく頬を膨らませながら言った。
「もう! この格好、レーちゃんとお揃いなのよ?」
「お揃い……ああ、」
 ようやく気がついたと言わんばかりに、シビラは自分が身にまとう衣装を見下ろした。
 露と全く同じ特徴を持ったワンピースに、ブーツ。帽子も黒で統一した、黒衣の魔女の衣装だ。
「白と黒か。確かに色違いの揃いの仮装になるか」
「もう、リアクション薄いんだから〜。でも、レーちゃんの黒魔女、とっても似合ってるわ♪」
 少しむくれたような表情でそう言いながらも、すぐに機嫌を取り直し。愛らしく微笑んだ露は、再びシビラの腕に抱きついて。
「それじゃあ、黒魔女と白魔女で、すいーつぶっふぇ、楽しみましょ♪」


「わぁー。すっごく綺麗なお菓子が沢山あるわ♪」
 改めて会場内の各テーブルを見て回り、露は感嘆の息を漏らした。
(「お菓子ってケーキしかみたことなかったけど……色々あるのね」)
 魔女の飾り付けがされた皿の上には、真っ白なクリームの上に大きな苺がのった、ショートケーキ。それから、ガラスの器に入ったライトベージュのお菓子に、丸いふわふわとした感じのお菓子。おばけやコウモリの形にくり抜かれたかわいいお菓子もある。
 それぞれがのせられ、並べられた皿の手前には、それらの名前らしい小さなカードが置かれていて。……カードによれば、それらは「プリン」「シュークリーム」「クッキー」というものらしい。
 他にも、ぜりーにまかろん、きゃらめる、がとーしょこらと、本当に様々だ。
 あまりにも色々ありすぎて、どれを選んでいいかがよくわからない。
 うーんと、可愛らしく小首を傾げながら、露が視線を巡らせれば、別テーブルで同じように悩んでいるらしい、シビラの姿が目に入って。
(「レーちゃんは……あ。シンプルなもの選んでる」)
 シビラへと近づき、ひょっこり顔を覗かせながら、露がシビラの皿を見れば、カットケーキがのっていた。コウモリの絵が描かれた小さな紙がちょんとのせられたそのケーキは、他のケーキよりは見た目がシンプルだが、こんがりとした焼き色がついていて、とても美味しそうに見えた。
「ねぇねぇ、レーちゃん。そのケーキ、なぁに?」
「ん? ……ベイクドチーズケーキというものを選んでみた」
「べいくど……ちーずけーき?」
「ああ、チーズを菓子にしたものだそうだ」
 ふむ、と神妙な顔をして頷くシビラとは対照的に、露は興味深げに瞳を輝かせ、シビラのケーキを見つめる。
「……へー。チーズのケーキってあるのね~」
「ああ、隣のレアチーズケーキと迷ったが、見た目が気に入ったので一つな」
 そう言ってシビラが示すのは、確かに雪のように真っ白な色をした、これまたシンプルなケーキ。こちらにもお化けの絵が描かれた紙がちょこんとのせられている。
「へー。『れあちーずけーき』」
 シビラが選んだケーキとは色合いは違うが、こちらも確かに美味しそうだ。
「レーちゃんがちーずけーきなら、あたしは……」
 露も再びぐるりと視線を巡らせる。そうして目についたのは、山のような形状をした、栗色のケーキだった。細い糸のような、網状のクリームが幾重にも重ねられたその山の天辺には、宝石のような、つやつやと光る黒いものがのっかっている。
「そうね、コレにするわ♪」
 見た目にもなんだかとても綺麗だから、きっと美味しいに違いない。
 自分の皿に一つ取り分けてから、露はそのケーキが並べられている皿に添えられたカードを見やる。
「『もんぶらん』ってのね」
 名前の響きもまた、なんだか可愛らしい感じがして、露はにっこりと微笑んだ。
 一体どんな味がするのだろう。とても楽しみだ。


 ベイクドチーズケーキと、いくつかのクッキーをのせた皿を前にして。設置された四人掛けのテーブル席の一つに座ったシビラは、露が持ってきた皿の上のケーキを見やった。
「露はモンブランか。確か栗の菓子だったかな」
 いつだったかに読んだ、菓子について書かれた本によれば。「白い山」という意味を名に持つこの菓子は、露が持ってきた菓子のように、栗を使って作られているものが多いらしい。
 ただし、多く見かけるのが栗を使ったものというだけで、実際は南瓜やサツマイモ、抹茶やチョコレートといった、他の材料が使われているものも多くあるのだという。
 そういえば、この会場内においても、オレンジ色や紫色、チョコレート色をした同じ形状の菓子があり、バリエーションに富んでいたなと。本の内容を思い出しながら、シビラがふむ、と頷けば。
「へー。栗のお菓子……」
 興味津々な顔で持ってきた皿の上の菓子を見つめる露。
 ちなみに、ちゃっかりとシビラの隣を陣取っているのは、正面ではなく隣の席の方が近いから、らしい。
 極力シビラの近くに居たいらしい、露の無言の意思を感じ取りながら、シビラは言葉を続ける。
「ああ、上に乗っている黒いのは、マロングラッセという栗を甘く煮たものらしい」
「まろんぐらっせってゆー……栗なの? これ?」
「ああ」
「それで網状のクリームは……これも栗なのね? 中のクリームも栗?」
「おそらくな」
「へーへー。栗尽くしなのね♪ へー……♪ 可愛いわ。これ」
 興味津々な様子で、モンブランに顔を近づけ、矯めつ眇めつ眺める露。
 そんな露を横目に。シビラはフォークを手にし、持ってきた目の前のベイクドチーズケーキを一口サイズに切り、口の中に含んだ。
 広がるのは、香ばしくも濃厚なチーズの風味。ほのかに感じるのはシナモンのスパイスだろうか。甘さはあるものの、気になるほどでもない。何より、このチーズの風合いは、紅茶とよく合うように感じた。
(「……むぅ……。住処で作ってみてもいいな。好みの味だ」)
 レシピは先日の本の中にのっているかもしれないと、しばし思考を巡らせた後。
 ふと気がついたシビラが傍らを見やれば、先ほどと同じ体勢のまま、モンブランを真剣に眺める露の姿があって。
「……露、君は食べないのか……?」
 さすがに呆れの色を滲ませながらシビラが声をかければ。本当に集中していたのだろう、露ははっと我に返った様子で、てへ、と笑った。
「……だって~。こんな上品なお菓子って初めてなんだもの」
 つやつやと宝石のような輝きを帯びる、マロングラッセ。
 繊細な色合いを見せる、マロンペーストの細い糸。それらが幾重にも重なり、作り出したその山は、前から見ても横から見ても綺麗で、愛らしささえ感じてしまって。
 フォークを入れてしまうのはなんだかもったいなくて、中はまだ見ることができていないけれど。きっときっと、この中にもたくさんの栗が散りばめられているのだろう。そう思うと、なんだかドキドキとしてしまう。
「でもそうよね、せっかくのお菓子だもの、しっかり味わわなくっちゃ♪」
 意を決してフォークを手にした露は、目の前の山を崩しながら一口掬って、ぱくりと頬張る。
 そうしてキラキラと白銀の瞳を輝かせた。
「わぁ……♪」
 外側の網状のマロンペーストの濃厚な栗の風味と、内側の刻み栗を混ぜ込んだマロンクリームの滑らかで上品な甘さ。
 それぞれ異なる風合いだが、しっかりと栗の風味が感じられてとても美味しい。
 さらに、ケーキの真ん中あたりでフォークが引っかかるのをよくよく見れば、そこには大きな栗がある。本当に栗づくしのケーキだ。
「へーへー♪ 栗ってこんな食べ方があるのね。あるのね♪」
 眺めるのも楽しかったけれど、やっぱりお菓子は食べてこそねと改めて思いながら。半分ほど食べたところで、露はシビラを見やった。
「レーちゃん、もんぶらん、すっごく美味しいわ!」
「それは何よりだ」
「うん! ……でね、」
 シビラの言葉に笑みを浮かべる露だったが。その視線はちらちらと、シビラの皿のケーキへと向けられていて。
「レーちゃんのお菓子も気になるなぁって。……ねえねえ。レーちゃんのお菓子、味見してもいい? いい?」
 そんな露の顔にありあり浮かぶのは、「食べ合いっこしたいな」の色。
 問いかけながらも、一口分のモンブランをのせたフォークをシビラの前に持ってきているあたり、すでにやる気満々のようだ。
「ん? 食べ合いっこ? やれやれ……」
 そんな露に小さく息を吐くも。シビラもまた、自分のベイクドチーズケーキを一口分に切り分ければ、フォークに刺し、露の前へと持っていく。
「「……ん」」
 そうして二人、互いにケーキを差し出し、頬張れば、
「えへへ、レ―ちゃんのも美味しいわ♪」
「ふむ、モンブランもなかなかいいな」
 露とシビラは互いに顔を見合わせて、頷き、笑みを交わすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『エゴコンダラー』

POW   :    展延であれ
【圧し潰されて平たく伸ばされた物や者】を披露した指定の全対象に【コミカルな状況に緊張感を削がれた慢心の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    平滑になれ
【全てを平らにするという自身の存在意義】を籠めた【転がって轢く事】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【形状…厚み】のみを攻撃する。
WIZ   :    平坦よあれ
【転がり】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【や障害物を圧し潰して平らにし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 思い思いに仮装し、菓子や食事を楽しむ、魔法学園の面々と猟兵たち。
 このまま何事もなく、平和な楽しいパーティーが続くかと思われた……まさにその時。

 ――ごろんごろんごろんごろんごろん……!

 楽しい雰囲気に水を差すように。
 どこからともなく聞こえてきたのは、やたら物騒な音だった。

『ぐぐぐ……、思いっきり仮装して、楽しそうにパーティーなんかしやがって!』
『浮かれたヤツらも、こんなパーティーも、俺らが全て平らにしてやるんだらー!』
『お前らの仮装なんざ、全部ぺらんぺらんにしてやるんだらー!』

 口々にわめきながら勢いよく近づいてくる、複数の影。
 よく見ればそれは、やたらコミカルな外見の整地ローラーだった。
 見ようによっては愛らしくもあるあれこそが、グリモア猟兵の言っていた災魔『エゴコンダラー』に違いない。

『展延であれ! コミカルに伸ばされるんだらー!』
『平滑になれ! 全てを平らにするんだらー!』
『平坦よあれ! 圧し潰されて平らになるんだらー!』

 やたらコミカルな目をぎらつかせ、災魔たちは、猟兵たちへ向かって、勢いよく突進する――!

『『『おらおらぁぁぁ、思い込んだら、Trick and Trickで潰したらぁぁぁ!!』』』
ヴァン・ロワ
【征約】アドリブ◎
仮装:警察

よ〜やく存分にご主人サマ「で」遊べると思ったのに
邪魔しないでくれる〜?
ただの円柱には興味ないけど
あんまりおいたするなら逮捕しちゃうよ

とは言え毒も甘言も効かなそうだ
それならモール・フルールを爆ぜさせて
敵の進路を制限しよう
サポートも重要なお仕事でしょ
はいは〜いご主人サマの仰せのままに
【征約】で現れた闇で身を隠す
見えなきゃ潰すも何もないでしょ?

そうそう(ご主人サマの人生に)穴を掘ったりは犬のお仕事ってねっ!
平にされちゃ面白くないからさ〜
命令通りに背後をとったら
蜘蛛の糸で敵の動きを縫いとめる
だから、大人しく、ね?
俺様こういうカタブツに興味はないから
あとはよろしくご主人サマ〜


杜鬼・クロウ
【征約】アドリブ◎
仮装:囚人

考えてみりゃァ何で俺が尻尾巻いて逃げなきゃならねェンだ(会場内へ戻る。もう一人の警官はおらず
逃げられた…ヴァン、お前は後で覚えとけよ!
俺で遊ぶなや(首輪掴んで睨む
今の俺は囚人
場ァ引っ掻き回してヤろうじゃねェの(普段と同じ

囚人の足枷を代償にUC使用
鉈の様な形に(少し攻撃力低下
敵のUCで鉈がテーブルにある洋菓子に突き刺さる

クソ、笑かすなよ!お菓子の剣…甘そう(厭な顔
犬っころ!敵の背後に回れッ
挟み討ちで被害を最小に食い止める

俺の人生も少しは平らでもイイとは思うがよ
お前如きに凹まされる俺じゃねェわ
…ちィ、駄犬が(いちいち鼻につくぜ

ジャンプし八つ当たり気味に垂直に鉈を叩き込む




「まったく、あの警官ズめ。何なンだ、普段は仲が悪ィクセしてこンな時ばかり息ピッタリじゃねェか」
 麗しい警官二人に迫られてのスイーツな攻撃を間一髪で逃れ、相棒の八咫烏・閃墨の背に乗り空へと舞い上がった囚人――杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
 やれやれ助かったとばかりにふぅと息を吐く一方で、気がついてしまった事実に不機嫌そうに顔をしかめた。
「考えてみりゃァ何で俺が尻尾巻いて逃げなきゃならねェンだ」
 このままナメられ、からかわれ続ける一方なのは実に面白くない。あの二人には、ここはガツンと一言言ってやらねば。
 閃墨を転回させ、再びパーティー会場へと降り立ったクロウはぐるりと辺りを見渡した。
「ご主人サマ、おっかえり〜。いい逃げっぷりだったね?」
 そうして、楽しげな笑みとともに出迎えた一人――狼耳の警官ヴァン・ロワ(わんわん・f18317)を、忌々しげに睨みつける。
「ヴァン、お前は後で覚えとけよ!……って、藤彦はどこ行った?」
「さぁ? 帰っちゃったんじゃない〜?」
「……逃げられたか」
 もう一人の不在に悔しげに舌打ちするクロウ。
 そんな主人を横目に、ヴァンは満面の笑みを浮かべた。
「まぁでも〜、これでご主人サマ独り占めできるし、俺様としては好都合っていうか?」
 さて、何して遊ぼうか……と。楽しげに思考を巡らせた、まさにその時だった。

 ――ごろんごろんごろんごろんごろん……!

『そこのド派手な囚人と警官の二人、楽しそうにしてるんじゃないんだらー!』

「来やがったか……!」
「え〜、もう来ちゃったの?」
 聞こえてきた騒音の方向を睨みつけ、構えを取るクロウとは対照的に、あからさまにつまらなさそうな顔をするヴァン。
「よ〜やく存分にご主人サマ「で」遊べると思ったのに、邪魔しないでくれる〜?」

 ――ごろんごろんごろんご、

 ヴァンの言葉に反応するかのように。やってきた災魔『エゴコンダラー』の動きが、ふいにぴたっと止まった。

『ていうか「主人で遊ぶ」って、お前何するんだらー?』
 コミカルな顔に何やら訝しげな色を覗かせる災魔。

「ていうか……ヴァン、今のお前の発言で理性ないはずの災魔に何か疑われてるじゃねェか」
「え、そう〜? でも、それはそれで面白そ〜じゃ……」
「――俺で遊ぶなや」
「ちょっと~、ご主人サマ、ほ~ら、こういう時こそ笑って笑って~?」
 どこか楽しげなヴァンの首輪をぎりりと掴み、睨みつけるクロウ。
 ちなみに、一見険悪そうに見えるが、決してそんなことはない。これもまた、飼い犬とその主との信頼関係(?)のなせる技。心温まるやりとりなのだ……多分!

「……まァいい」
 ヴァンの首輪から手を離せば。クロウは鎖をじゃらりとさせ、囚人の足枷に手を触れさせた。
「神羅万象の根源たる玄冬に集う呪いよ。秘められし力を分け与え給え。術式解放(オプティカル・オムニス)──我が剣の礎となれ!」
 力ある言葉とともに。ユーベルコード【無彩録の奔流(イマーティア・リアル)】により、クロウが手を触れさせた足枷から創り出したのは、クロウの身の丈の半分はあろうかという刀身を持った、漆黒の片手剣だった。
 見ようによっては角鉈のような形状をした、禍々しい闇色のオーラを放つ剣を利き手に構え。クロウは災魔を見据え、にィ、口の端を上げて見せる。
「……今の俺は囚人だしな。パーティーぶっ潰しに来たってンならよ、お前ごと場ァ引っ掻き回してヤろうじゃねェの」
 相手してヤるからかかってこいと。不敵に笑み、挑発するように言い放ったクロウの言葉に、災魔の顔つきがガラリと変わった。

『そうだ! パーティーをぶっ潰すんだらー!』

 ――ごろん!

 ようやく本来の目的を思い出したらしい災魔の様子に、しょうがないと言わんばかりに、ヴァンは小さく肩竦める。
「今は、というか場を引っ掻き回すのは普段と同じでしょ、ご主人サマ」
 ともあれ、災魔の相手は最初から折り込み済みだ。
「ただの円柱には興味ないけど――、」
 これまた災魔をからかうように。両手で銃の形を作り、打ち込む構えを取りながら、ヴァンもまた不敵な笑みを浮かべて。
「あんまりおいたするなら逮捕しちゃうよ」

『円柱じゃねぇ! コンダラーなんだらー!』

 ――ごろんごろんごろんごろんごろん……!

『おらおらおらぁぁぁ、ぶっ潰してやるんだらぁぁぁ!!!』
 叫びながら突進してくる災魔を前に、
「「おっと――、」」
 互いに目配せ交わし、左右へと飛び退くヴァンとクロウ。

(これは、毒も甘言も効かなそうだ……なら、)
 攻撃を避けながら、災魔の性質を見て取ったヴァンが、「モール・フルール」を爆ぜさせ、その動きを鈍らせる一方で、

「突撃だけの攻撃で俺を潰せると思うなよ……ッ!」
 クロウは、利き手に持った角鉈の剣を構え直した。
 走り込みながら横薙ぎに振るい、災魔を叩き切らんとするも。

『お前こそ甘いんだらー! 展延であれ、なんだらー!』
 重たそうな外見に反して妙な機敏さでごろんと。災魔が方向転換を決めれば、

 ――かきぃぃぃん!!

「――うぉ、マジか?!」
 回転したローラーの勢いに押し負け、跳ね飛ばされるクロウの角鉈の剣。
 くるくると回転をつけて勢いよく飛んだ角鉈は、中央にそびえ立っていた、マカロンの塔にずぼぉっと、勢いよく沈み込む!

「わ〜、ご主人サマの剣ってば、伝説の剣っぽくなっちゃって!」
 思わず可笑しそうな声をあげ、笑い出すヴァン。
 しかもその周囲では、災魔に潰されぺらんぺらんになったハロウィン仕様の菓子や飾りがヒラヒラと舞っていて、そこはかとなくコミカルな雰囲気が漂っていたり。
「……クソ、笑かすなよ!」
 しかし悔しいにもかかわらず笑いがこみ上げてしまうのは、敵の術中に嵌ってしまっているからか。そう思うと何だか二重に悔しい。
「せっかくカッコよくキメて作り出した剣をコミカル仕様に飾り立てやがって……、」
 得物を取り戻そうとマカロンの塔の前へ走り寄ったクロウは、塔に突き刺さっていた自身の剣をずぼりと引き抜いた。
「お菓子の剣……甘そう」
 崩れたマカロンの色とりどりの欠片が付着し、ちょっぴり甘くポップな仕様に変身した剣に露骨に厭そうな顔をするクロウ。
 とはいえ厭な気持ちを引きずってもいられない。

「――犬っころ! 敵の背後に回れッ」
 マカロンの匂いと色を取り除くべく、得物をブンブンと振り回しながら。クロウが目配せとともにヴァンへと声を投げたなら。
「はいは〜い、ご主人サマの仰せのままに」
 すぐにその意図を理解したらしく、灰色の瞳を細め、頷いて見せるヴァン。

『……っ! 背後になんて回らせないんだらー!』
 そんなクロウとヴァンのやりとりを察したか。ぐりんと器用に方向転換した災魔のコミカルな目がヴァンへと向けられて。

 ――ごろんごろんごろんごろんごろん……!

『おらおらおらー! 全てを平らにしてやるんだらー! 平滑になれ、だらー!』

 ヴァンめがけ、勢いよく突撃していく災魔。
 あわや災魔のローラーの餌食になるかと思われた、まさにその時。

「――【征約(フルオーダー)】」
 接近してくる災魔をまっすぐに見据え。不敵な笑みを崩すことのなかったヴァンの口元が言葉を紡げば、不意にその姿がゆらりとかき消えた。

『――な……っ?! ど、どこ行ったんだらー?!』
 思わず驚愕の声をあげ、戸惑うようにその場でぐりんぐりんと転回する災魔。

「あらら〜? ちょ〜っと姿隠したくらいで動揺するとか、頭がそ〜と〜固くなってたりするんじゃない〜?」
『……! いつの間に?!』
 背後から聞こえた声に、方向転換を試み、振り向こうとする災魔だったが。
「はいは〜い、大人しく、ね?」
 至って軽いノリの口調とともに。災魔の背後に立ったヴァンが放ったのは、しなやかで頑丈な「蜘蛛の糸」。
 ヴァンの指に合わせ、目にも止まらぬ鮮やかな動きを見せた透明な糸は、災魔を幾重にも縛り上げ、その動きを確実に縫い止めていく!

『ぐ、ぐぅぅ――っ!』
 動こうとすればするほど糸に絡め取られ、ジタバタとする災魔。
 そんな災魔の前に立ち。そのコミカルな顔の前に角鉈の剣の先を突きつければ、クロウは不敵に笑った。
「俺の人生も少しは平らでもイイとは思うがよ。お前如きに凹まされる俺じゃねェわ」
「そうそう(ご主人サマの人生に)穴を掘ったりは犬のお仕事ってねっ! 平にされちゃ面白くないからさ〜」
 クロウのセリフに間髪入れずに割り込めば、ケラリと楽しげに笑うヴァン。
 ちなみに一部は言語化されていないはずなのに、なぜかしっかり伝わっちゃう不思議。
 思わず眉間を寄せたクロウに、ヴァンはにーっこりと笑みを浮かべて。
「そんなわけで。俺様こういうカタブツに興味はないから、あとはよろしくご主人サマ〜」
「……ちィ、駄犬が」
 思わず舌打ちするクロウ。
 セリフがいちいち鼻につくのは、一体どういうことなのだろう。
 とはいえこれもまた、深く考えてはいけない。

「まあいい。ともあれ――お前の平らにする人生もここまでだぜッ」
 もやりとした気持ちを振り払うかのように。クロウは角鉈の剣を手に、タンッと力強く地を蹴った。
 勢いよく空中へと跳び上がれば、くるりと回転しながら、角鉈を垂直に構え直し、
「コミカル要素なしに存分に喰らいやがれぇぇぇ!!!」
 落下の勢いとともに、一気に叩きつける――!

 ――ばきぃぃぃ!

『ぐわぁぁぁ?!』

 そうして、災魔の円柱ローラーな身体を真っ二つにしたのだった!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュート・アコルト
【LL】
転がっても同じ場所に顔があるのか?
まじまじ見てたら襲いかかってきて
なんだ踏み潰そうってか?
面白え!やれるもんならやってみろ!

敵の上に玉乗りみてえに乗ってやるぜ!
如意棒片手にエゴコンダラー乗り換えながらジャンプバク転!
見ろよユディト!すげえだろ!
慢心してたら足滑らせて落っこちて
潰される寸前にユディトに庇われ
危なかったぜ
ありがとよユディト!
俺もペランペランなユディトは見たくねえからな
守りは任せた攻撃は任せろ!

迫る敵に指定uc
伸びろ如意棒!って言ったら本当に伸びて
むしろ俺が驚きながらも串刺しに
動きを止めてブレス攻撃!

なんかよ
翼に教わった「串」って字に似てねえ?
日々勉強だってじっちゃが言ってた


ユディト・イェシュア
【LL】

確かに災魔にとっては苦い記憶…のようですね
なんだか緊張感を削がれる敵ですが
あ、リュートくん近づきすぎると危な…

…乗りこなしてますね
さすが孫悟空
筋斗雲に宙返りしながら乗るという話もありますし
さすがの運動神経ですね
お見事です(拍手

と、それでも油断は禁物ですね
潰されそうなリュートくんの前に割って入り
UCで鉄壁の守りを
さすがにこれなら潰されないと思います
…動けませんが
物語のキャラクターの仮装だとしても
二次元や平面…ぺらんぺらんになる自分は余り想像したくありません…

守りは任せてください
攻撃の方はよろしくお願いします
本当に孫悟空さながらですね

字を覚えているんですか
アルダワで勉強もできてなによりです




 教師や生徒たちへ避難を促しながら。ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、騒がしい音と声を響かせやってきた、災魔『エゴコンダラー』たちを見やった。
「確かに災魔にとっては苦い記憶……のようですね」
 パーティーの楽しそうな雰囲気に過剰に反応しているあたり、かつての敗戦の記憶が彼らの中に忌々しいものとして刻まれているのだろうことがわかりやすく見て取れる。
「そうは言っても……なんだか緊張感を削がれる敵ですよね……」
 予めグリモア猟兵の少年から絵を見せてもらった時にも思いはしたが、こうもあの絵のままだとは。
 学園で企画したイベントだと言われたらうっかり信じてしまいそうになるほどに、まるでリアル感がともなわない。
 とはいえ、敵は敵。ここは気を引き締めなければと、仮装の狼耳と尻尾をもふりと揺らし、ユディトが「払暁の戦棍」を構え直した、その一方で。
「すっげー、あれなんか面白えな!」
 青空色の瞳を輝かせ、あっけらかんとした口調で楽しげに言い放ったのはリュート・アコルト(竜騎士・f34116)。
「なぁ、ユディト、あれ気にならねぇか? あの顔!」
 まさに仮装の孫悟空らしい物怖じのなさでリュートが興味津々に見つめ、指差す先には、一体の災魔の姿があった。太眉に三白眼の瞳、大きな口。全体的に愛らしさのある顔立ちは、よく見れば常にローラーの正面にあるように見えて。
「言われてみれば、確かに」
 気にはなる。しかしそれは実は触れてはならない禁忌だったりしないのだろうか。
 例えばUDCアースにあるコミカルな漫画のキャラの中には、正面の顔を絶対に見せないという謎ルールを持つものもあると聞く。アルダワではどうかはわからないが、少なくともこの災魔については、色んな意味で深く追求してはならないものを多く持ち合わせている気がした。
「でも、リュートくん。そこは……」
 深く気にしてはいけない、俗に言う大人の事情というやつだと思います、と言おうとしたユディトだったが、
「転がっても同じ場所に顔があるのか?」
 残念ながら遅かった。ユディトが声を掛けるまでの間には、すでにリュートは興味津々な面持ちで、ずんずんと災魔の前へと近づき、その顔をまじまじと見つめている。
「あ、リュートくん近づきすぎると危な……」
 無邪気さゆえに容赦なく地雷を踏んでいくリュートを、見かねたユディトが制止しようとするも、これまた一足遅く。

『何見てんだらぁぁぁ! ひとの顔をジロジロと見やがるなんて失礼極まりないガキなんだらー!』

 目の前にちゃぶ台が置かれていたらひっくり返したであろう勢いで叫ぶ災魔。
「あー……怒らせてしまったようですね……」
 思わず遠い目をするユディトと、
「お? やる気か?」
 対照的に、やはりわくわくと瞳を輝かせるリュート。

 そんな二人の目の前で。

 ――ごろん!

 災魔はわずかに後退し、次の瞬間、リュートに向かって突撃を仕掛けてくる!

『失礼なヤツは俺のローラーでぺらんぺらんにしてやるんだらぁぁぁ!』

 ――ごろんごろんごろんごろんごろん……!

「なんだ踏み潰そうってか? 面白え! やれるもんならやってみろ!」
 楽しそうに叫び。リュートもまた自分へ向かってくる災魔に向けて勢い良く走り出し――ジャンプ!
「よっと!」
 空中で一回転してリュートが着地を決めたのは、回転する災魔のローラーの上だった。

『おわー! お前何するんだらー! 降りるんだらー!』
「やーだよ! 降りろって言われて素直に降りるかってんだ!」
 タタン、と、ローラーの上で軽くステップを踏みながら。玉乗りの要領でバランスを取り、器用に立ち乗りを決めるリュート。
「もいっちょ!」
 ローラーの進行方向を見極めながら、さらにジャンプ!
 今度は逆立ちでローラーの上に着地した。
 振り落とさんと動き回る災魔の上をこれまた両手で器用にバランスを取りながら乗りこなす。
「あらよっと!」
 さらに腕の力を利用した反動でジャンプすれば、空中でくるりと宙返り。再びローラーの上に、ステップを踏むような足取りで降り立った。
「見ろよユディト! すげえだろ!」
「さすが孫悟空、器用に乗りこなしてますね」
 サーカスの曲芸師さながらのリュートの乗りこなしぶりに、感心した様子で拍手するユディト。
「筋斗雲に宙返りしながら乗るという話もありますし、さすがの運動神経ですね。お見事です」
 向かってきた災魔が近くにもう一体いたならバク転で乗り換えまで行っていたに違いないだろう技のコンボに、ユディトだけではなく、避難中の教師や生徒までもが拍手している。
「へへ、だろー? 俺はすげえんだぜ!」
 皆の注目に、えっへん、と、災魔の上で胸を張るリュート。
 だが、このまま調子よく事が運ぶわけもない。慢心が生じれば、あらぬところで足元をすくわれることは、仮装のモデルでもある孫悟空だって身をもって証明していたりするわけで。
『ぐぬぬぬ……! さっきから調子にのりやがってぇぇぇ!』
「……って、あっ?!」
 躍起になって動く災魔の動きに、さすがのリュートもつるりと足を滑らせた。
 転がり、勢いよく地面に放り出されたのを見て取れば、災魔はおもむろに、ぐりんと身体の向きを変える。
『調子にのったお前の厚みごとぺらんぺらんにしてやるんだらぁぁぁ!』

 ――ごろんごろんごろん……!

「うわぁぁぁ?!」
 勢いよく突進してくる災魔に、避ける事も忘れてリュートが叫び声を上げた、その時。

「――やっぱり油断は禁物ですね」
 声とともに。ユディトは素早い動きで災魔とリュートの間に立つ。
 そうして手にしていた「払暁の戦棍」を前方に構え、

「この身に宿した鉄壁の守りで、あなたを護りきります――【無敵城塞】!」

 ――ごッッ!!!

『――な……?!』
 衝撃音が響くと同時。災魔は驚愕の声をあげた。
『俺の攻撃を受け止めた、だと……?!』

「ええ。文字通りの鉄壁の守りですからね。さすがにこれなら潰されないと思います」
 にっこりと微笑むユディト。
「ふぅ、危なかったぜ。ありがとよ、ユディト!」
 安堵の息を吐き、元気を取り戻したリュートが立ち上がれば、ユディトは視線だけを向けて。
「礼には及びません……とはいえ、動けませんが」
 ユディトの発動させたユーベルコードによる超防御モードは、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、反面全く動けなくなってしまうのだ。
 今は防御が成立しているが、戦いが長引けばそうもいかなくなってしまうだろう。下手をすると災魔に圧し潰されてしまう恐れだってある。
「なんというか、物語のキャラクターの仮装だとしても二次元や平面……ぺらんぺらんになる自分は余り想像したくありません……」
 言いながらうっかり想像してしまったのだろう、最後あたりは少しだけ遠い目をするユディト。
 血に濡れることや痛い目に合うことは正直苦ではない。だが、少しばかり天然と言われることがあろうとも、基本的に自分はシリアス寄りなのだ。今後のことを考えるなら、できればギャグ寄りのダメージ展開は避けたい。わりと切実にそう思う。
「確かに、俺もペランペランなユディトは見たくねえな」
 同じくうっかり想像したのだろう、神妙な顔で同意を示し、頷くリュート。シリアスやらギャグやらという大人の事情はわからないが、兄貴分のカッコいいイメージが崩れてしまうのは、後方支援をしているグリモア猟兵だってきっと望んではいない。

 ――ごろん、
『さっきは防がれてしまったが、今度こそ、なんだらー!』

 勢いをつけるべく後退を始めた災魔の動きへ視線を向けながら、ユディトは言った。
「……まあ、二次元や平面はともかく、物理的な守りは任せてください。攻撃の方はよろしくお願いします」
「ああ! 守りは任せた攻撃は任せろ!」
 ユディトの言葉に再び頷きを返せば、その脇に立ち。リュートは背中に収めていた如意棒を取り出し、構えを取る。

 この間にも、敵はゆっくりと後退し。一定方向離れたところでぴたと停止したかと思えば、再び勢いをつけ加速し、こちらに突進してくる――!

 ――ごろんごろんごろん……!

『――おらおらおら、覚悟しやがれぇぇぇ!!!』

「させるかよ!」
 動けない兄貴分の守りを得ながら自分の攻撃を敵にぶつける方法の用意は、もちろんある。
 構えた如意棒の先を迫りくる災魔へと向けながら、リュートは叫んだ!

「受けてみろ! これが修行の成果だ! ――伸びろ如意棒!」

 ――にゅぃぃぃん!

 リュートの叫びに応えるかのように。如意棒は、勢いよく災魔へと伸びていき――、

 ――どごぉぉぉ!!!

 災魔の顔のちょうど眉間のあたりを穿つように突き刺した!

『――ぐ、ぐおぉぉぉ! なんだとぉぉぉ?!』

「すっげ……! 如意棒、ホントに伸びた!」
「本当に孫悟空さながらですね……って、リュートくん、意図してなかったんですか?」
「ああ、如意棒の動きはな。でも敵の動きを止めるのは想定内だぜ! てことで如意棒、そのまま敵を固定してくれよな!」

 敵をまっすぐに見据え。リュートが如意棒を掴む手に力を込めれば、そこに生まれたのは、白い光を帯びた、大きな竜だった。

「――いくぞ、【竜装双覇撃(リュウソウソウハゲキ)】!!!」

 リュートが放った力ある言葉とともに。白の竜は、災魔へ向けて、眩しい光の炎をお見舞いする――!

『ぐわぁぁぁぁぁ?!!!』

 如意棒により突き刺され、白竜の光のブレスによって燃え上がった災魔。
 そのまま焼かれていくのをまじまじと眺めながら、ふと思いついたようにリュートは言った。

「……なんかよ、翼に教わった「串」って字に似てねえ?」
「字を覚えているんですか?」
 自らのユーベルコードを解き。ユディトもまた、炎に焼かれながら少しずつその姿を消していく災魔を眺めやる。
 確かに似ているかもしれない。今回二人で相手をしていたのは一体だったから、正確には「中」になるのだろうが。食べ物への関心の高いリュートからすれば、串焼きの方にイメージが直結するのだろう。
「……ふふ、そうですね、確かに「串」に似てますね。もっとも一体ですから、「中」……食べかけの串といったところでしょうか」
「そっか、食べかけ……! なるほどな、「串」と「中」の違いってそこなのか!」
 はっとした顔になるリュート。
「一つで二度美味しいってまさにこのことだよな。日々勉強だってじっちゃが言ってた」
「そうですね、アルダワで勉強もできてなによりです」
 そんなリュートに。ユディトは微笑み、頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】
引き続きわたしとウルシさんは
和風ニスロク&殿様ベルゼブフの仮装で

相手の立場で考えたら
気持ちは解らなくは無いですが
文化破壊は見過ごせませんしね

わたしとウルシさんは
この姿ならではの攻略法で対抗を
どんなのかは、見てのお楽しみですよエミリさん

●POW
事前に『料理』して来た茄子のなめろうを【ウルシ】さんもとい殿様に献上
『早業&大食い』で食べて貰いUC発動

殿様ハエのまま巨大化させ
生成した【茄子のなめろう・ビーム精霊馬】に騎乗、わたしもウルシさん取り付き『属性攻撃(トリモチ)』込めた『誘導弾&弾幕』の『制圧射撃&一斉発射』で動きを妨害

ウルシさんは騎乗した精霊馬で『推力移動&ダッシュ』で駆け回り

わたしが『第六感』で『瞬間思考力&見切り』敵の攻撃回避を指示

ビーム部分である割り箸ね足で『怪力』込めた『鎧無視攻撃&鎧砕き&切り込み&2回攻撃』で横から蹴り斬り、撥ね飛ばします

ハロウィンは西洋お盆みたいな物ですしね、ウルシさんには暴れん坊の殿様みたく暴れて貰いましょう

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】
ボクは先ず、オーバーロードでエカルドライバーセット!真の姿ギョウザライダー・エカルドに変身して

フルフェイスヘルムを脱ぎ
UC『早業』発動
その上から頭と尻尾を仮装として【島唐辛子餃子怪人】に変えるよ

まぁ、世の中トラウマって言葉もあるもんねビスちゃ……和風なのはソコ(お盆もって来る)も!?

どの殿様を意識しているかは、解るけど……サムライエンパイアだと遥か未来の上様になりそーだね

ビスちゃんったら、フリーダムなんだからもう

●POW
ビスちゃんと『集団戦術&団体行動』で連携しつつ『空中戦&推力移動』で駆けながら『第六感』で『瞬間思考力&見切り』『空中機動&残像』で回避

撹乱し横から【シャオロン(麺棒モード)】で『怪力&功夫&咄嗟の一撃』で一体を止め、敵のローラーの穴に『串刺し』突っ込み

『怪力』でそのまま、災魔をシャオロンの麺棒モードの延長武器代わりに振り回し『属性攻撃(炎)』込め『グラップル&2回攻撃』で他の災魔を殴り飛ばす(ビスちゃん達が撥ね飛ばしたのも)

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]




「やって来たみたいですね、エミリさん」
「うん、やって来たみたいだね、ビスちゃん」
 災魔『エゴコンダラー』の襲来を示す、どこまでも騒がしい音を耳にすれば。ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)とエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は、互いの顔を見合わせる。
「相手の立場で考えたら、気持ちは解らなくは無いですが……とはいえ文化破壊は見過ごせませんしね」
「まぁ、世の中トラウマって言葉もあるもんね。でも、ボクもビスちゃんに同意かな。これ以上パーティーを壊すのは許せないもん」
 会場内の一部のセッティングは災魔によって崩されてしまったが、幸い怪我人も出ていないし、無事なところも多い。今ならパーティー再開も容易だ。会場内のこれ以上の損壊を避けるためにも、気をつけて立ち回らなければ。
 視線を交わし頷き合えば。二人は、自らの装備を戦闘モードへと変身させていく!

「エカルドライバーセット!」
 オーバーロードを発動させながら。エミリロットは両手を天へ掲げ、高らかな声を響かせた。

 ――Dumpling System!
 ――True Form Revolution!

「真の姿の力、餃心拳で得た心で制するよ……変身!」

 呼応するように響くエカルドライバーによる機械音声とともに、真の姿『ギョウザライダー・エカルド』へと変身するエミリロット。
 ポーズを決めながらも、ここからが本番とばかりに。エミリロットは素早い所作で被っていたフルフェイスヘルムを外し、続けざまに力ある言葉を言い放った。

「此処に残りし餃子の担い手一人、意志を継ぎし餃子の護人となりて……身体は餃子に堕ちようと、この力は正しくあらんっ! ――【招餃功・餃怪変(ショウギョウコウ・ギョウカイヘン)】!」

 ――すると。
 餃子への情熱を体現した赤と金の装飾のフルフェイスヘルムの中から現れた、エミリロットの愛らしいファードラゴンの素顔が、みるみるうちに餃子怪人の頭部へと変化していく!

「ギョウザライダー・エカルド、島唐辛子餃子怪人仮装モード、見・参!」

 説明しよう! 島唐辛子餃子怪人とは、南国特産の島唐辛子を具材に練り込んだピリッとした辛さある餃子を身体に持った、正義を愛する怪人なのだ!
 ちなみに島唐辛子餃子は、お酒のつまみとして最適なピリッとした辛さが魅力の餃子だ! 興味を持った読者はぜひお試しを☆

「エミリさんのモフい部分がやっぱり少ないのは残念ですが……今回ばかりはそうも言ってられませんものね」
 頭と尻尾を餃子へと変異させ。麺棒モードへと変化させた相棒シャオロンを構え、ポーズを決めながらウインクするエミリロットに、ビスマスは頷いた。
「エミリさんがそう来るなら、わたしとウルシさんはこの姿ならではの攻略法で対抗しますよ」
 和装に割烹着姿の、和風ニスロクの出で立ちはそのままに。ビスマスは、殿様ベルゼブブ姿の相棒ウルシの方へと身体を向ける。うやうやしい仕草で取り出し、献上するは予め準備し持参していた、特製なめろうだ。
「ウルシさん……もとい、殿。はろうぃん特製、茄子のなめろうでございます」
 そんなビスマスに。いかにも殿様らしい、もったいぶった様子でうむ、と頷くウルシさん。
 そのつぶらな瞳をきゅぴーんと輝かせ、目にも止まらぬ速さで茄子のなめろうをぺろりと平らげれば、みるみるうちにその身体が巨大化していき。

「――【ウルシ・ファランクス】! 巨大殿様、ウルシさんのおなーりー、です!」

 ビスマスの力ある言葉に合わせるように、ぶーんと虫の翅をはばたかせ。ふぁさ、と白地に錦糸の装飾が施された着物の袖を翻らせたかと思えば、どこからともなく現れた茄子の馬へと跨るウルシさん。
「ビスちゃん、これって……」
「はい、精霊馬です。ハロウィンは西洋お盆みたいな物ですしね」
「……和風なのはソコ(お盆もって来る)も!?」
 思わずツッコミを入れたエミリロットに、いい笑顔で頷くビスマス。
 そんな二人のやりとりをよそに、跨った茄子の馬の手綱を握り、悠然とした態度で進行方向を定めるウルシさん。
 その姿は、サムライエンパイアやはたまたUDCアースの時代劇に出てきそうな、暴れん坊なあの殿様を彷彿とさせていて。
「はい、ウルシさんにはあの殿様みたく暴れて貰いましょう」
「どの殿様を意識しているかは、解るけど……」
 サムライエンパイアだと遥か未来の上様になりそーだね、と。ごく素直な感想とともに、エミリロットはくすりと笑った。
「ビスちゃんったら、フリーダムなんだからもう」
「ふふ、エミリさんこそ、気合充分じゃないですか」
 仮装を兼ねた互いの戦闘装備を見やって、くすり笑うエミリロットとビスマス。
「それでは、ひと暴れと参りましょうか、ウルシさん、エミリさん」
「そうだね、ビスちゃん! 災魔のみんなにはお引取り願っちゃおう!」
 再び視線を交わし頷き合えば。互いの相棒とともに、二人は災魔たちの方へと向かうのだった。


 ――ごろんごろんごろんごろんごろん……!

『おらおらおらー、パーティーなんて全部ぶっ壊してやるんだらー!』
『あっちもこっちもぺらんぺらんにしてやるんだらー!』

 仲間の猟兵たちの攻撃の隙を縫うようにして。
 勢いよくやってきた二体の災魔が、会場内へ突入しようとした、まさにその時。

 ――パカラッパカラッパカラッパカラッ……!

「その悪事、許すわけにはいきません……!」

『な、なんだらー?!』
『茄子の……馬と……侍?』

 どこからともなく聞こえてきた馬の足音と放たれた声に、訝しげな声を上げる災魔たち。
 動きを止め、声の方向へと視線を向けた、その瞬間。

 ――シュィィィン、ダダダダダダダダダダッ!!!

 災魔たちめがけ、無数の弾丸が発射される!

『『うわぁぁぁ?!!』』

「いかがですか、わたしが心を込めてお見舞いした誘導弾と弾幕の味は!」
 茄子の馬に跨った侍――殿様ベルゼブブなウルシの後ろに取り付いていた状態を解いて降り立ったビスマスは、災魔たちへと微笑みを向ける。
『弾丸に味なんてないんだら……っ!』
『お前ごと平らにしてやるんだら……な、動けないんだら?!』
「ちなみにその弾丸、トリモチを込めさせていただきましたので、存分に堪能してくださいね!」
『と、トリモチだとぉぉぉ?!』
『なんてことしてくれるんだらー?!』
 ジタバタとする災魔たちへ向けて、びしりと指を差すビスマス。
「かつてのトラウマがあろうとも、過去の恨みを今へ持ち込むのは言語道断。天に代わって、ウルシさ……わが殿が成敗してくれますよ!」
『なにをぉぉぉ、何が殿なんだらー!』
『不届き者はぺらんぺらんならぬ、べたんべたんにしてくれるんだらー!』
 いかにも悪役なセリフとともに気合を入れ直し始めた災魔たち。
 見た目も思いも重たいコンダラーらしい、持ち前の根性でトリモチの粘着を取り込みながら動きを取り戻せば、ぺったんぺったんと音をさせ、ビスマスへ向けて突進し始める!

「ウルシさん、お願いします!」

 ――パカラッパカラッパカラッパカラッ……!

 ビスマスの声に応え。殿ことウルシは茄子の馬を走らせ、ビスマスへと迫る一体の災魔へと接近すれば、その真横へと回り込んだ。
 茄子の馬の割り箸な両前足を軸足にして踏み込ませながら、後ろ両足を災魔へと向けさせ――その巨大なローラーの身体を力いっぱい蹴り上げる!

「――成敗!」

 ――バキィィィ!

『うわぁぁぁ?!』

 暴れん坊な殿様操る馬(精霊馬)による力強い割り箸足アタックをもろに受け、声を響かせ天高く飛ばされる災魔。
 ――その一方で。

『仲間をよくもぶっとばしてくれたんだらー、お前は絶対ぺらんぺらんにしてやるんだらー!』
 もう一体の災魔の勢いは止まることなく、ビスマスの目の前まで迫り――、

「――ビスちゃん、加勢するね!」

 突進してくる災魔の動きを、第六感と瞬間思考力で察知したエミリロットは、空中を素早く移動し、災魔の真横へと並んだ。
「シャオロン、あの災魔の動きを止めるよ!」
 声をかけながら。エミリロットは長槍ほどの長さへと变化させた麺棒モードなシャオロンを両手で構え、

「いっけぇぇぇ、止まれぇぇぇ!!!」

 回転する災魔の真横にあるローラーの中心部分の穴めがけ、勢いよく麺棒を突き刺す!

『――ぐぉ?!』
「まだまだ! いっくよー!!!」

 災魔を突き刺し、まるでローラー式麺棒状態になったシャオロンの持ち手部分に、エミリロットはぐぐっと力を込めた。

『離せ、離すんだらぁぁぁ?!』
「離さないよ! そーれ!」

 持ち前の怪力で、災魔の身体全体を持ち上げれば。エミリロットは、今しがた暴れん坊な殿様がぶっとばした災魔の前へと高速で移動し――渾身のフルスイングをヒットさせる!

 ――カッキィィィン☆

『うわぁぁぁ?!』

「お見事です、エミリさん!」
 今度こそ遠くへ飛んでいった災魔を眺めながら、拍手するビスマスに、
「ふふ、ありがと、ビスちゃん!」
 目を回した災魔がローラーとして刺さったままの麺棒を軽々持ち上げながら、にっこりと微笑むエミリロット。
「このまま他の災魔もぶっ飛ばしちゃうよ!」
「そうですね、エミリさん。では、引き続き災魔を成敗に参りましょうか」
 視線を交わして頷き合えば、更にやってきた災魔たちを迎え撃たんと、二人は再び駆け出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水瀬・美鳥
(アドリブ歓迎被弾多希望)
(格好は真の姿+魔女の様な黒いローブ)

🕊「遅れたとはいえ少しは楽しめた様だな。気分は?」
「最高にハイッてやつ♪」
🕊「悪役のセリフだぞそれ」

楽しみつつ災魔を誘導する為わざと多数の災魔に見つかる様に動き、人気の少ない場所へと移動します。

「さて。ふざけてるだけじゃダメだもんね?」

道の角を利用して災魔の視界から外れた瞬間、追いつかれても見つからない位置
まで下がって投影魔法で「踏んだ瞬間に太い鉄杭が飛び出す」罠をしかけます

色んな場所に沢山罠を仕掛けたらわざと災魔の前に現れて誘導

罠に巻き込まれない位置でわざと轢かれます

選択UC+元からの体質でどんなに薄くぺらんぺらんになってもぽよんと元に戻れるし
勢い余って災魔が粉砕されるだけって感じ

🕊「そんな強引な方法でいいんか?」
「せっかくだし、気持ちよくなるのもいいでしょ♪」

鳩さんに学生さんが来ないように避難を、私はさらに誘き寄せてと
罠がばれないよう轢かれる時の場所とか気をつけなきゃね

「単純な災魔さんだし、沢山楽しめそうかな♪」




 仲間の猟兵たちの活躍により、会場内に押し寄せてきた災魔を退けることはできた。だが、まだ終わってはいない――持ち前の野生の勘により更なる災魔の気配を感じ取った水瀬・美鳥(鳩ともちもち魔法兎少女・f15711)は、その襲来を阻むべく、会場の入り口へと向かう。

『遅れたとはいえ少しは楽しめた様だな。気分は?』
「最高にハイッてやつ♪」
『悪役のセリフだぞそれ』
 その格好もな、と。腕に乗せた白鳩がツッコミを入れた美鳥の仮装は、黒のローブを頭から被った漆黒の魔女。
 上質な素材が使われているのだろう、艷やかな光沢を帯びた黒のローブは、頭からすっぽりと被るとどこか怪しげで、確かに悪役に見えないこともない。
「そうかな……でも、私の楽しみはここからなんだもん」
 悪役よりは見た目可愛らしい感じがいいよねと、頭から被っていたフードを外す美鳥。その頭には真の姿になったことを示す愛らしい赤茶のうさ耳がぴこんと生えていた。
 これで悪役な魔女から一転、愛らしい兎の魔女へのイメチェン完了だ☆
『楽しみって何するんか?』
「それは……説明するより実際に見せたほうが早いよね」
 まぁ、見ててよと。相棒へぱちりとウインクを送り、早速とばかりに美鳥は動き出す。
 ほのかな赤色を帯びた乳白色の瞳の先に、会場へ突撃しようとやってきた、災魔『エゴコンダラー』の姿を捉えれば、
「災魔さーん、ほらほら、兎の魔女が通りますよ〜」
 身軽な動作で災魔の前へとぴょこんと飛び出し、美鳥は存在をアピールするように、くるりとターンして見せる。
『むむむ! 魔女なんだらー!』
「そうそう、魔女なんですよー。憎いです?」
 身に纏う黒のローブをふわりと揺らし、踊るような所作で、誘いかけるように災魔へにっこりと微笑む美鳥。
『むむむ! 何だか楽しそうにしやがって……!』
 そんな美鳥に本能を刺激されたか。叫びとともに美鳥へ向かって突進する災魔。

 ――ごろんごろんごろんごろん……!

『大丈夫なんか、美鳥?』
「もっちろん!」
 不安げな問いかけとともに頭上を飛行する鳩へ、笑みとともに頷けば、
「災魔さん、こっちですよ!」
 ぶんぶんと手を振りながら、美鳥は跳ねるように駆け出した。

『待つんだらー! 楽しそうなお前なんか、ぺらんぺらんにしてやるんだらー!』
「待てと言われて待ったりなんてしません……っ!」
 そんなやりとりをしながら、災魔を誘導し美鳥は走る。
(さて。ふざけてるだけじゃダメだもんね?)
 誘導先は人気を避けた道の角。目の前に行き止まりの壁が見えてきた、その時。

「……わ?!」
 何かに躓いたかのように。ふいに地面へと倒れ込む美鳥。
「……びっくりしたぁ……って……」
 倒れた身体を起こしながら、はっとして振り返った美鳥の目の前には、勝ち誇った様相で勢いよく迫る、災魔の影!

『おらおら、追いついたんだらー! おらおらー、平滑になれ! なんだらー!』
「ぴぇ……っ?!」

 ――ごろんごろんごろんごろん……っ!

 美鳥の悲鳴をかき消さんばかりに轟音を響かせながら。災魔による、厚みだけを狙った攻撃は、倒れた美鳥へと容赦なく襲いかかり――!

「……むぎゅぅぅぅっ」

『わっはっは、なんだらー! お前(の厚み)はもう死んでいるんだらー!』
 美鳥の厚みをぺらんぺらんにしてやったという、手応えならぬ轢き応えを確かに感じ取り、勝ち誇った笑い声を上げる災魔。
 ――だが。

「……むぎゅっ! その言葉は、そっくりそのまま災魔さんにお返ししちゃいます!」
『なんだと――、』
 勢い余って壁にぶつかりながら動きを止めた災魔が、聞こえてきた声に反応しようと、ぐりんと美鳥の方を振り返った、その時。

 災魔は見てしまった。

 ――ぽよんっ。

 厚みがなくなりぺらんぺらんな姿となった美鳥の身体が、ぷっくりもっちり厚みを取り戻し始める、奇跡のような瞬間を……!

『ふ、復活したんだらぁぁぁ?!』
 思わず驚愕の声を上げる災魔に、Vサインをする美鳥。
「すごいでしょ? 当社比300%のもっちもちだもんね♪」
 元々の柔らかく伸び縮みする餅のような性質に、真の姿になることで柔らかさをアップさせていた美鳥の身体は、発動させたユーベルコード【月兎ノ星餅【変性/柔】(ツキウサギノモチヘンゲ)】によって、更なる進化を遂げていたのだ。
 そんな史上最強といっても過言ではない、美鳥のもちもちな身体は、災魔のコンダラ―の重みによるぺらんぺらん状態からの復活という、奇跡の光景を実現させたのである!

『く……っ、俺のコンダラ―でぺらんぺらんにできない厚みがあるなんて……』
 完全に厚みを取り戻し、満面の笑みで胸を張る美鳥とは対照的に、悔しげに眉を歪める災魔。
『……だが、これで諦める俺では――、』
「ううん、災魔さんはここでおしまいだよ?」
 そんな災魔に。愛らしい笑みを向け、美鳥はそう口にする。
「言ったでしょ? 『お前はもう……』って言葉、お返しするって」
『なんだ、と――?!』
 災魔が言葉を返すのとほぼ同時。

 ――どごごごごっ!

 災魔の足元から飛び出した無数の極太鉄杭が、その身体を、勢いよく貫いていく!

『ぎゃぁぁぁ?! 俺の身体が――?!』
「――さようなら、災魔さん!」
 断末魔の叫びをあげながら、消滅していく災魔を、にこにことした笑みとともに手を振り、美鳥は見送って。

「ほらね、鳩さん、大成功でしょ?」
 あまりのインパクトに、虹色大回転で頭上を跳び回っていた鳩を見上げ、美鳥が声をかけたなら。
 ようやく落ち着きを取り戻した鳩は、美鳥の腕へと降りてきて口笛めいた鳴き声をあげた。
『確かに成功だが……』
 予め仕掛けておいた、投影魔法の罠の場所まで災魔を誘き寄せ、一体ずつ確実に倒していく。それが美鳥が実行に移した、今回の作戦だったわけだが。
『そんな強引な方法でいいんか?』
 この方法をそのまま続けるのは、果たしてありなのか。
 首を傾げた鳩に、美鳥はにっこりと微笑む。
「せっかくだし、気持ちよくなるのもいいでしょ♪」
 さっきぺちゃんこに潰された瞬間なんて、ぞくぞくするほど気持ちよかったと。先ほどの戦いを思い出せば、ふにゃっと頬を緩め、楽しそうに微笑む美鳥。

「単純な災魔さんだし、沢山楽しめそうかな♪」
 この場所以外にも、多くの場所に罠は設置してある。あとは今みたいにそれぞれの場所におびき寄せ、ついでに自分も気持ちよくなればまさに一石二鳥以上の得になる。
「だから――、鳩さんは、罠に学生さんたちが近づかないよう、気をつけてもらってもいいかな?」

 ――そうして。
 人が来ないように、鳩に誘導をお願いすれば、美鳥は別の災魔を誘き寄せるべく、再び駆け出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
敗れた存在たちにとっては屈辱の極みなのだろうな。
だからと言って黙認してやるわけにはいかない。
塵や埃で折角の甘味や飲み物が台無しになってしまう。
会場に侵入する前に【影手】で次々と逆進行へ誘導する。
逆方向へ進んで貰い会場から退場して戴こうと思っている。

封印を解いた後で全力魔法の高速詠唱で術を行使しよう。
誘導作業は見切りで隙をつき早業と操作と念動力で行う。
重量や回転する勢いの影響で誘導が困難な場合限界突破を。
露と協力や連携をして戦闘の負担をお互いに分けよう。
なるほど。眠らせる術でコンダラー達の暴走を止めるのか。
上手い事を考えたものだ…が。褒めると面倒なので心の奥で。

私自身は作業をしないのでベイクドチーズを食べていようか。
無論。クッキーも食しながら見守っていようと思っている。
問題が発生した場合は食べる手を止めて問題の解決に動く。

さて。解決したようだし今度はレアチーズを食べてみようか。
他にもチーズを用いたケーキはあるのだろうか?
気になるので少し会場を巡ってみることにしようか。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
相手のコンダラーさんって材質が石みたいだから重そうよね。
あたしと同じ石なのかしら?…え?素材は鋼板なの?へ~♪

勢いがつく前にどうにかして動きを止められないかしら…。
あ!コンダラーさん眠らせちゃえば動き止まるかもしれないわ!
止まらなくても抵抗されずに方向転換とかできそうな気がする。

限界突破とリミッター解除して全力魔法で【月華】を使うわ。
範囲攻撃と継戦能力も追加で使って広く影響が出るようにする。
?なんだかレーちゃんが感心してそうにあたしを見てるわ。
えへへ♪力一杯魔法を発動させちゃうわ~♪うん!
寝たコンダラーさんをレーちゃんと協力して方向転換するわ。

あれ?レーちゃんどこ行くの?あたしも行くわ~。
え?ケーキ巡りしに…あたしも別のケーキ食べたい!!
モンブランも一種類じゃないきがするもの。
形とかもっと可愛いのがある…と思うの。あたしは!

そういえばグリモア猟兵のよー君残念そうにしてたわね。
じゃあじゃあ。よー君の分を宅配してあげようかしら♪
…あ♪よー君だけじゃなくって…。




 会場内に入り込んだ災魔『エゴコンダラー』たちを見やり。黒魔女――シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、ベイクドチーズケーキを食べていた手を止め、小さく息をつく。
(「敗れた存在たちにとっては屈辱の極みなのだろうな」)
 こういうものは、やった側よりやられた側の方がより強く記憶に刻まれるのだろう。特に負の感情を伴う記憶であれば尚更だ。だから、災魔がパーティーを忌み嫌い、こうして会場になだれ込んで襲撃をしてくるというのも、ある意味納得はできるわけだが。
(「だからと言って黙認してやるわけにはいかない」)
 実際黙認はされず、仲間の猟兵たちによって倒されたわけだが。暴れられたおかげで会場の一部は壊れてしまったし、舞い上がった塵や埃で折角の甘味や飲み物にも損失が出てしまっているようだった。
 幸いにも会場の損壊は一部で、飲食物も数の用意はあるらしく、会場の復旧は比較的容易なようだが……とはいえこれ以上、災魔の侵入を許すわけにはいかない。
 会場内を見渡せば、やれやれと肩を竦めて。皿の上のケーキとクッキーをテーブルに設置されていたナプキンで包み、シビラは席から立ち上がった。
「レーちゃん、コンダラーさん止めに行くのよね?」
 落ち着きを取り戻しつつある会場の様子を横目に、シビラが入口へと歩き出すのを見れば。シビラを追いかけついてきた白魔女――神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、その意図を確かめるように問いを投げかける。
「ああ。見る限り落ち着いてきているようだが、あれで全部とも思えんからな。今度は侵入する前にお引取り願おうと思ってな」
「それなら、あたしも行くわ!」
 理由などなくともいつだって親友と一緒にいたいし、災魔を相手にするならなおのこと、手は少しでも多い方がいい。
 特に拒む様子もないシビラににこにことして、その腕にぎゅっと抱きつき、歩きながら。露もまた災魔にお引取り願うための方法について思いを巡らせる。
「ねぇねぇ、レーちゃん。あのコンダラーさんって、材質が石みたいだから重そうよね。あたしと同じ石なのかしら?」
「いや、あの素材は鋼板……鋼だろうな」
 見た目は石のように見えるから、外側に鋼板を用いて形を作り、重りとして石のように変化する何らかのものを入れて作られたのかもしれない。……とはいえ災魔だから、実際どのように生まれたかなんて実際のところはわからないのだけど。
 あくまでも推測の域だが、と言葉を添えるシビラの説明に、露は白銀の瞳を輝かせる。
「へ~♪ 何だか奥が深いのね、コンダラーさんてば♪」
 材質の話は突き詰めると色々ありそうだが、その辺はさておいても。先ほど目にした通り、結構な重さがありそうなことだけは確かだ。
(「勢いがつく前にどうにかして動きを止められないかしら……」)
 下手をして会場内へ侵入を許せば、再び仲間たちが相手をしたような大立ち回りをする事態になりかねないから、それだけは避けなければならない。
 そんなことを考えながら入口に辿り着いたその時。

 ――ごろんごろんごろんごろん……。

 おりしも遠くの方から響いてきたのは、先ほども聞いた、やけに騒がしいあの音で。

「――予想通り、やってきたようだな」
 露に声をかけながら、シビラは自らの封印を解いた。
「Lasă orice……」
 全力魔法をもって、高速詠唱で発動させるは、ユーベルコード【影手(レム・ラリア)】。
 目には見ることのできない、けれど強力な魔力を帯びた複数の気配がシビラの周りに生まれていき――、
「――見えない影の手よ。あの災魔たちの動きを止めてくれ」
 音のする方へと視線を向け、シビラが指差す先。
 そこには、今まさに会場へとなだれ込もうと突進してくる災魔たちの姿があって。

 ――ごろんごろんご……、

『――な、なんだ?!』
『急に前にすすめなくなったんだらー?!』

 対象物を認めた魔力の手は、災魔のローラーの身体を抑えこみ、その動きを止めることに成功したようだった。
 騒がしい音が止むと同時に、何が起こったのか把握できていない災魔たちが口々に叫ぶ声が聞こえれば、露は思わずくすりとする。
「……ふふ、レーちゃんの術で、コンダラーさんたち、びっくりしてるみたいね♪」
「そうだな……だが、ここからは力比べになるか……」
 そんな露とは対照的に。ぐ、と唇を引き締め、目を細めるシビラ。
 さすがは整地ローラーというべきか、会場へ近づこうと躍起になる災魔たちは、少しずつシビラの魔力の手以上の力を出し始めているようだった。
 拮抗する力。うっかり押し切られてしまえば、会場から遠ざけるどころか、会場内になだれ込む勢いを与えることになりかねない。
 注ぎ込む魔力の量を増やそうと、シビラが限界突破を試みようとしたまさにその時。
「レーちゃん、加勢するわね!」
 にっこりと微笑んだ露は、自らのリミッターを解除させ、ユーベルコード【月華(セレニテス)】を発動させた。
「ここにいる、コンダラーさんたちを癒して~♪」
 露を中心にして放たれたのは、やわらかな青白い光だった。
 その光は、さながら月の光のように、淡く優しく、災魔たちの身体を包み込み――、

『なんだ……なんだか眠くなったんだら……』
『力が入らなんだら……』

 ――ごろ、ん。

「……お、」
 災魔たちの進行しようと押す力がふいに弱まったのを感じて、シビラの口から思わず声が漏れた。
(「なるほど。眠らせる術でコンダラー達の暴走を止めるのか」)
 眠らせてしまえば、相手に抵抗されることもない。目覚める前に遠くまで誘導させてしまえば、少なくともパーティーが催されている間に再び襲撃が起こることもないだろう。
(「上手い事を考えたものだ……」)
 内心でそう呟き、感心した様子で露を見つめるシビラ。
 これまでも露の支援によって何度も助けられてはいるが、今回の作戦にはいい意味で驚かされてしまった。
 ちなみに褒め言葉は言葉にはせず内心のみに留めたのは、褒めると面倒なことになりそうだから……というのは、もちろんシビラだけの秘密なのだけれど。

(「? なんだかレーちゃんが感心してそうにあたしを見てるわ」)
 そんな親友の内心などつゆ知らず。向けられた視線はどこまでもポジティブな方向に受け止め、露は嬉しそうな笑みを浮かべる。
(「えへへ♪ 力一杯魔法を発動させちゃうわ~♪ うん!」)
 広範囲に、そして長時間作用するように範囲攻撃と継戦能力も上乗せさせての全力魔法。大好きな親友の期待には全力で応えなくてはね!
「それじゃあ、レーちゃんは、寝たコンダラーさんたちの方向転換と誘導に集中してね!」
 気合充分とばかりに元気よく声をかける露に、シビラはわずかに口の端を上げ、微笑を返した。
「……ああ、そうだな。もう力比べの必要はないから、あとは誘導が完了するのを見守るくらいになるが……」
 そこまで言ってから、ふと思い出した様子で。シビラはどこからともなく取り出した包みをおもむろに広げる。
「あ、チーズケーキとクッキー! レーちゃんてば持ってきちゃったの?」
「……作業するのは影手で、私自身ではないからな」
 言いながら食べかけのベイクドチーズケーキをパクリとするシビラ。
「え〜、いいなぁ、いいなぁ♪ レーちゃん、あたしもー!」
「……。では君には、このクッキーを……」
「レーちゃん。あたし、魔法発動で手がふさがってるの〜」
 ――だから、ね?
 ねだるように小首を傾げ、にっこりと微笑む露。
「……」
 何を言いたいかを理解して、やれやれと肩を竦めるシビラだったが。
「……まぁ、今回だけだからな?」
 魔女の帽子の形をした小さなクッキーを手にし、露の口元へと持っていくのだった。


 ――そうして。持参した菓子を食べながら、シビラと露が見守ることしばし。

「……ふむ、これで完了か」
 持ってきた最後のクッキーを口にして、シビラは改めて周囲を見渡した。
 そこにはもう、災魔たちの姿はない。
「そうね♪ コンダラーさんたちが途中で起きないように術はしっかりかけたし、レーちゃんの誘導もばっちりだったしね♪」
「そうだな……」
 眠らせる術の援護は助かったと、口にしようとした言葉をやっぱり飲み込みつつ、シビラは頷いて見せる。
 ともあれ。これで、少なくとも今回のパーティーの開催中にあの災魔たちがやってくることはないだろう。
「……さて。解決したようだし、」
 確かめるように辺りを見渡してから、シビラはくるりと踵を返す。
「あれ? レーちゃんどこ行くの?」
「会場だ。復旧も終わって、パーティーが再開しているだろうからな。……今度はレアチーズを食べてみようかと思っている」
 もしかしたらレアチーズ以外にも、他にもチーズを用いたケーキがあるのかもしれない。気になるので少し会場を巡ってみるのも悪くないだろう。
 言葉とともに銀の瞳を細め、柔らかな微笑を浮かべたシビラの答えに、
「え? ケーキ巡りしに……あたしも別のケーキ食べたい!!」
 露もまた、キラキラと白銀の瞳を輝かせる。
「モンブランも一種類じゃないきがするもの。形とかもっと可愛いのがある……と思うの。あたしは!」
 チーズケーキやモンブラン以外のケーキも気になる。それ以外のお菓子も美味しそうなものがたくさんあったから、先ほど以上に美味しくて楽しい時間を過ごせるに違いない。
 会場のお菓子に思いを馳せて、露はほんわりと笑みを浮かべるも。
「……そういえば、よー君残念そうにしてたわね」
 ふと浮かんだのは、今回の依頼主である、グリモア猟兵の顔。
 きっと彼もお菓子好きなのだろう。あんなに残念そうにしていたのだから。
「じゃあじゃあ。よー君の分を宅配してあげようかしら♪」
 お土産としてプレゼントすれば、彼もきっと喜んでくれるに違いない。
(「……あ♪ よー君だけじゃなくって……」)
 脳裏を過ぎった、もうひとりの顔を思い浮かべれば、露は再びほわりと笑む。
 宅配してあげたらどんなリアクションをするのだろう。想像するとちょっとわくわくしてしまう。
「よーし、決まり♪ ……って、あ、」
 頷き、ぽむっと手を叩いてから、露ははっと我に返った。
 気がつけば、先に歩き出した親友の背中は、ずいぶんと遠いところにあって。
「レーちゃん、待って〜!」
 前を行く親友の背中を追いかけ、露は駆け出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月20日


挿絵イラスト