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アリス・イン・パンプキンズ―Halloween

#ダークセイヴァー #お祭り2021 #ハロウィン #ヴェリーナ砦

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#ハロウィン
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●ダークセイヴァーにもハロウィンを
「もうすぐハロウィンの季節だな」
 グリモアベースの片隅で、猟兵達にハロウィン仕様の飲み物を振る舞いながら、グリモア猟兵藤崎・美雪はいつも通り、藪から棒に切り出した。
「今年のハロウィンパーティは全世界で開催する予定らしいが、その前に皆には少し、話を聞いてほしいのだ」
 そう前置きし美雪が語りだしたのは、ダークセイヴァーにおけるハロウィンの概念の話。
 ――ダークセイヴァーにおいて、ハロウィンは「伝承上の存在」。
 支配者であるヴァンパイアは、人類に盛大な祭りを決して行わせようとせず、支配される人類もまた、薄闇の空の下ではカボチャを育てても食用以外に用いるような余裕はない。
 ゆえに、仮に「伝承上の存在」たるハロウィンの概念を知っている者がいたとしても、祭りとして開催される下地はほぼないに等しかった。
「だが、昨今の皆の活躍で『人類砦』や『闇の救済者』の領土となった地域が増えており、少しずつ人類は自由を取り戻し始めている」
 かつて美雪がオブリビオンの襲撃を予知し、猟兵達が守り抜いた人類砦『ヴェリーナ』もそのひとつ。
「私も先輩から聞いた話に過ぎないが、最近彼の砦を拠点とする『闇の救済者』たちが一帯を支配していた領主を討ち、砦周辺を人類の手に取り戻したそうだ」
 よかったな、と感慨深げに呟く美雪に、猟兵達の一部が同じく感慨深そうに頷いていた。

「さて、前置きが長くなったが、ここからは本題だ。ヴァンパイアとの戦争に疲れた『闇の救済者』の皆に一時の癒やしを与えるためにも、ダークセイヴァーでハロウィンを行うべき時が来た……私はそう考えている」
 とはいえ、ハロウィンと言えば南瓜が付き物のため、カボチャを取ってこないと始まらないが、そこは心配無用、と美雪は胸を張り断言する。
「実は人類砦『ヴェリーナ』が支配する地域のすぐ側に、カボチャが群生している場所を発見したのだよ……若干問題があるが」
 群生地が辺境地帯にやや近いせいか、群生地には危険な「狂える神々」と、神々に憑依され理性を失くした「狂えるオブリビオン」が徘徊しているそうだ。
 若干どころか重大な問題だろう!? と突っ込みいれる猟兵を抑えつつ、美雪は説明を続ける。
「しかし、闇の救済者の皆に狂えるオブリビオンの相手をさせるのは、まだ荷が重すぎるんだよな」
 となると、カボチャ収穫は自然、猟兵の役割となるわけで。
「というわけで、皆には狂えるオブリビオンを排除した後でカボチャを収穫していただき、人類砦『ヴェリーナ』の皆にハロウィンのことを教えながら、目いっぱいパーティを楽しんできて欲しい」
 是非頼めないだろうか、と頭を下げる美雪に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。

「ああそうそう、皆にひとつだけ伝えておこう」
 グリモア・ムジカから無数の音符を展開しながら、美雪は猟兵達に告げた。
「今年のハロウィンでは、ダークセイヴァーを含む全世界を巡るハロウィンパーティが開催される手筈になっているが、実際に行われるのは【10月31日の朝までに、各世界でハロウィンにまつわる案件が最低1回ずつ解決されていた場合】に限られるそうだ」
 全世界規模のハロウィンパーティを開催するためには、多くの猟兵の手助けが必要となる。
「とはいえ、ダークセイヴァーにおいては、伝承上の存在だったイベントを復活させる良い機会であることも確かだ。それもまた、ダークセイヴァーの住民らが少しずつ自由を取り戻している証なのだからな」
 では頼んだよ、と再び頭を下げた美雪に誘われた猟兵達は、音符が飛び交う転送ゲートを潜り。

 ――人類砦『ヴェリーナ』の近郊にほど近い、カボチャの群生地に赴いた。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 度重なる戦で疲れ気味の、ダークセイヴァーの人類砦『ヴェリーナ』の人々に息抜きをしてもらうべく、伝承上の存在たる「ハロウィン」を復活させ、祭りを楽しんでもらいましょう!

 本シナリオはアドリブ多めでお送りしますので、描写量に差異が生じるかもしれません。
 また、勝手ながら全採用の保証は致しかねます。
 以上2点、あらかじめご了承のうえ、ご参加をお願いします。

 ちなみに、本シナリオの舞台となる人類砦『ヴェリーナ』は、シナリオタグ「#ヴェリーナ砦」がつく拙作シナリオと若干の関連性を持ちますが、他シナリオは未読でも全く支障ございません。初見の方も大歓迎です。

●本シナリオの構造
 ボス戦→日常の【2章構成】です。
 1・2章ともに、受付開始までに冒頭に断章を追加させていただきます。

 第1章はボス戦『闇の戦士たちの記憶』。
「狂えるオブリビオン」ですので、理性はなく、説得も通じません。
 勝利すれば、ハロウィンに利用できる大量のカボチャを手に入れることができます。

 第2章は日常『暖かな日』。
 第1章で手に入れたカボチャを用いて、ハロウィンの祭りを執り行いましょう!
 POW/SPD/WIZは参考程度で構いません。どうぞ、御心のままに行動してください。
 詳細は第2章の断章にてお知らせいたします。

 なお、第2章に限り、グリモア猟兵藤崎・美雪の同行が可能です。
 何か美雪に手伝ってほしいことがございましたら、プレイングにてご用命くださいませ。
 また、第2章ではプレイングでお呼ばれした場合に限り、人類砦『ヴェリーナ』の主要メンバーとも交流可能です。

●プレイング受付について
 本シナリオはMS都合により、プレイング受付期間を指定させていただきます。
 第1章のプレイング受付期間、及びリプレイ執筆期間は、以下の通りです。

 プレイング受付:10月21日(木)8:31~10月23日(土)20:00頃
 リプレイ執筆 :10月23日(土)21:00頃~10月25日(月)朝

 第2章のプレイング受付期間は、第2章開始時にMSページとTwitter、及びタグでお知らせいたしますが、31日朝までには完結予定です。

 全章通しての参加も、気になる章だけの参加も大歓迎です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『闇の戦士たちの記憶』

POW   :    STORMBLOOD
【血を代償に自身の武器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    HEVENSWARD
【高い跳躍で相手に近付きつつ、相手の頭上】から【闇の雷を纏った槍で垂直落下攻撃】を放ち、【感電や衝撃】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    SHADOWBRINGER
【地面から漆黒の刃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダークセイヴァー・人類砦『ヴェリーナ』付近――カボチャの群生地
 転送された猟兵達の目に真っ先に入ったのは、一面に生い茂るカボチャの実と蔓の山。
 地面を這うように覆う大量の蔓の間には、鮮やかなオレンジや緑、白などのカボチャが大量に実っていた。

 ふと、オブリビオンの気配を感じた猟兵達が視線を向けると、群生地から離れた草原に、漆黒の槍を携えたひとりの戦士が立っている。
「ああ……もうこんな季節か」
 戦士の目は、猟兵たちではなく、地面を埋め尽くすように実るカボチャを見つめている。
 だが、その瞳はカボチャではなく、この世界ではないどこか遠くを見ているかのように虚ろで、理性の光は見られない。
「早く狩り取らねば……はやく……ハヤク……」
 虚ろに呟く戦士の声も、この世界ではないどこかに向けられているようだった。

 どうやら、目の前の戦士は、かつて世界を救うべく、闇の力を纏い戦った戦士達の記憶が形を成し、実体化した存在のようだ。
 だが、実体化した後に己が闇に呑まれ殺戮者と化した戦士は、辺境に足を踏み入れた後「狂える神々」に憑依され、理性を完全に失ったらしい。
「ああ、はやく、早く……」
 群生地にふらふらと近づくその姿は、さながらハロウィンに合わせ舞い戻った亡霊のようだった。

 もしこのまま戦士を放っておけば、漆黒の槍でカボチャを悉く破壊しかねないし、人類砦『ヴェリーナ』に目をつける可能性もある。
 砦とカボチャを守るためには、ここで戦士を排除するしかない。

 猟兵達は得物を取り出し、漆黒の槍持つ戦士と対峙すべく駆け出した。

※マスターより補足
 第1章は「狂えるオブリビオン」と化した『闇の戦士たちの記憶』とのボス戦になります。
 既に理性がないため、説得は一切効果がありません。早めの撃破をお願い致します。

 撃破すれば、ハロウィンの祭りに利用できるカボチャが大量に手に入ります。
 ――それでは、良き戦を。
西院鬼・織久(サポート)
※過度なギャグ、性的な要素のあるシナリオはNG

【行動】
オブリビオン狩が最優先
口調等ステータス参照

五感と第六感+野生の勘で状況を把握し敵行動を予測
罠や逃走する敵の追跡などは戦闘知識の応用で対処する

「闇器」を場面に応じて使い分ける
武器は怨念の炎(呪詛+生命力吸収)を纏い継続ダメージ付与

先制攻撃を仕掛け狭い場所でも縦横無尽に動き回り死角から攻撃
殺気を抑え暗殺を行う事もできるが、大抵は特攻紛いの攻撃特化

集団にはUCやなぎ払いを範囲攻撃に広げるか、単体を夜砥やUCで拘束して振り回して周囲をなぎ払うなどで攻撃

敵の攻撃は残像などのフェイントや武器受けで受け流しカウンターを行う等全ての行動を攻撃に繋げる



●怨念の狂気と郷愁の狂気が交錯する時
 ――色鮮やかなカボチャの群生地にほど近い、辺境地帯の片隅で。
「はやく……早く狩らないと」
 過去を想起させるような譫言を呟きながら彷徨う「狂えるオブリビオン」の背後から、突如強烈な殺気が吹き付けた。
 その殺気に反応し、「闇の戦士たちの記憶」が実体化した狂える戦士が殺気の持ち主に漆黒の槍を向けるより早く。
 ――ズバァッ!!
 目にも止まらぬ速さで逆袈裟に振り上げられた黒い炎を纏った大剣が、戦士の背中を左わき腹から右肩にかけて深く切り裂いた。
「ぐぅ、お……」
 呻きながらも背中から流れる血を代償に漆黒の槍を巨大化させながら振り向いた戦士の目に入ったのは、紅の瞳を殺意に染めた西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)。
 その手に握られる大剣状の【闇器】が一、『黒椿』は、戦士の血を燃料に高らかと燃え上がる黒き怨念の炎が纏わりついている。
 織久の流れるように下ろされた漆黒の髪には、戦士自身の返り血が付着し、所々紅に染まっていた。
「ククク……我等が怨念尽きる事なし!」
「はやく狩るために……狩る!」
 オブリビオンへの憎悪と狂気を剥き出しにしながら『黒椿』を叩きつけるように力まかせに振り下ろす織久に対し、戦士もまた無造作に漆黒の槍を振り回す。
 殺意と狂気が浸み込んだ漆黒の槍は、容赦なく織久のいのちを狩り取ろうとするが、織久も『黒椿』を振り下ろした勢いを利用しつつ、縦横無尽に動き回りながら残像を囮に漆黒の槍の直撃を避け続けた。
 それでも、戦士は巨大化した漆黒の槍を振り回し、織久の胴を両断せんと狙い続ける。
 ――あくまでも、目の前の猟兵を邪魔者とみなし排除するかのように。
「いのち……我々を狙う……いのちは全て……」
「我等西院鬼一門に出会ったことを悔やめ」
 織久は巨大化した漆黒の槍の薙ぎ払いに浅く胴を切り裂かれながらも、構わず『黒椿』を下段から勢いよく振り上げる。
「ぐぅ、おぉぉ……!!」
 手傷を負いながら振り上げられた『黒椿』は、巨大化した漆黒の槍の先端を断ち切りながら、戦士の胴に縦長の浅い切り傷を穿っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加

確かに砦を整えて、戦力を集めて、領主を打倒して・・・ヴェリーナ砦の皆としては怒涛で急な日々だったろうね。疲れるのも当たり前だ。祭りでゆっくりするのもいいね。まあ、この世界の常として危険はあるんだよね。どれ、一肌脱ごうか。

【目立たない】【忍び足】で敵集団の後ろに回り込み、【不意討ち】で【気合い】【範囲攻撃】で竜牙で攻撃する。敵の攻撃は【オーラ防御】【残像】【見切り】で回避し、【カウンター】気味に【怪力】【グラップル】で一人を蹴っ飛ばして集団の中に放り込んで攪乱。

さあどいたどいた!!ヴェリーナ砦の皆の為にアンタらは消えて貰おうか!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

砦を住めるように整えて、襲撃者を撃退して、戦力を整えて、領主を倒して・・・猟兵の私達も目が回るほどの展開でしたからね。ヴェリーナ砦の皆さんが疲れるのも当たり前ですよね。皆さんの為にも、頑張りますっ!!(ぐぐっ)

なんかとっても怖そうな方々ですね・・・トリニティ・エンハンスで防御力を上げて【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】で敵の攻撃を引き受けますよ!!防御を優先しますが、攻撃が必要なら、【衝撃波】【2回攻撃】【範囲攻撃】で攻撃を!!

ヴェリーナ砦の皆さんの為に!!カボチャは必ずゲットしますよ!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

ヴェリーナ砦の戦いは長期間に及んだ上に、怒涛の展開で僕達でも大変でしたからね。ヴェリーナ砦の皆さんのお疲れは凄いものかと。お祭りで楽しんで皆さんが安らいでくだされば、これほど嬉しいことはありません。尽力しましょう。

【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を【範囲攻撃】化して敵集団に展開。【追撃】で氷晶の矢で攻撃。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。

ヴェリーナ砦の皆さんの為に・・・貴方達には骸の海に還って貰います!!容赦はしませんよ!!



●カボチャがあっても世界には危険が蔓延って
 カボチャの群生地から遠くに見える、人類砦『ヴェリーナ』の光を見つめながら、神城・瞬(清光の月・f06558)はしみじみと懐かしむように呟いた。
「ヴェリーナ砦の戦いは長期間に及んだ上に、怒涛の展開で僕達でも大変でしたからね……」
「砦を住めるように整えて、襲撃者を撃退して、戦力を整えて、領主を倒して……猟兵の私達も目が回るほどの展開でしたからね」
 ヴェリーナ砦の皆さんが疲れるのも当たり前ですよね……とやや苦笑いを交えながらしみじみと呟く真宮・奏(絢爛の星・f03210)に同意するかのように、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は静かに頷く。
「確かに砦を整えて、戦力を集めて、領主を打倒して……ヴェリーナ砦の皆としては怒涛で急な日々だったろうね。疲れるのも当たり前だ」
 だからこそ、ハロウィンの祭りを復活させ、ゆっくりしてもらうのも良いのだけど。
「ああ、早く狩らねば……終わる前に」
 目の前にて背中から血を流しつつ、狂気を湛えた瞳を虚空に向けて彷徨う「狂えるオブリビオン」の闇の戦士を見てしまうと、響は思わずため息をついてしまう。
「まあ、この世界の常として危険はあるんだよね」
 祭りに必要なカボチャを確保するだけでも、オブリビオンとの戦闘が避けられない。それがダークセイヴァーの辺境地帯に接する地域。
 たとえ「闇の救済者」が解放した地域であっても、「狂える神々」が蔓延る辺境地帯に近ければ近いほど、「狂えるオブリビオン」が襲撃する可能性は相対的に高くなる。
『第五の貴族』のように会話が成り立つのであればまだしも、「狂えるオブリビオン」は既に理性がない故、会話そのものが成立しない。
 その事実をまざまざと見せつけられた響は、子供たちの前で再度大きくため息をついていた。
「まあまあお義母さん、お祭りで楽しんで皆さんが安らいでくだされば、これほど嬉しいことはありません」
 だから尽力しましょう、と優しく微笑む瞬に、娘の奏も愛用のエレメンタル・シールドを手にしながら拳をぐぐっと握り込み。
「ヴェリーナ砦の皆さんの為にも、頑張りますっ!!」
「子供たちがやる気だから……どれ、一肌脱ごうか」
 やる気一杯の娘の姿に、響もため息を隠し苦笑いを浮かべながらブレイズランスを構えた。

「あああ、狩らないと、早くはやく……」
 背中に深手を、胸から胴にかけて浅手を負いながらも、漆黒の槍を構える戦士の瞳には、狂気が宿っているが、その動作は主に背中の深手のせいか、ややぎこちない。
「怖い相手ではありますが、動きがやや精彩を欠いていますね」
 背中から滴り落ちる血の存在に気づいた瞬が六花の杖を振りかざし、麻痺毒と目潰しの術式を練り込んだ結界を、戦士を囲むように展開した。
「ぐ、あぁ……見えない……」
 結界に触れた戦士が麻痺毒に侵され、さらに目を潰され、漆黒の槍を持たぬ左手で目を押さえながらよろめくが、全身から発せられる狂気と殺意は萎えぬまま。
「なんかとっても怖そうな方ですね……」
 奏は戦士の狂気に呑まれまいと気を強く持ちつつ、火と水、風の魔力を全身とエレメンタル・シールドに宿して防御力を上げつつ、戦士に視線を向けながらも足元にも注意を向けておく。
 正面だけに気を向けていては、足元からの不意討ちに反応できないと考えたからなのだが。
「漆黒の刃よ、目の前のいのちを全て狩り取れ……!」
 戦士が漆黒の槍の穂先を地面に突き刺しながら、呪を口ずさんだ。
 直後、響や瞬、奏の足元の地面から漆黒の刃が現れ、3人の足裏から片足を切り裂かんと鎌のように振り上げられた。
「予想はしていましたから、やられませんよ!!」
 足元に注意を向けていた奏は、練り上げていた3属性の魔力と翠のオーラを足元に集中させ、漆黒の刃を確りと受け止めた。
 瞬もまた、足元から漆黒の刃が生える瞬間に脳裏を過った嫌な予感に従い、その場を飛び退いて回避。
 そして、目立たぬよう足を忍ばせながらそっと背後に回っていた響は、足裏を狙う漆黒の刃を軽々と飛び越えながら戦士に肉薄した。
「さあどいたどいた!! ヴェリーナ砦の皆の為にアンタは消えて貰おうか!!」
 響が裂帛の気合と共に突き入れたブレイズランスは、背から脇腹を貫通。
 穂先が白熱した槍をそのまま薙ぐように振るうと、戦士の脇腹は熱で焼き切られるように切り裂かれた。
「ぐああ、あ……まぶし、ぃ……」
 目を潰されていても、脇腹を焼き切ったブレイズランスの白熱した穂先は見えるのか、戦士はさらに目を押さえながらよろめくよう後退。
 戦士は漆黒の槍を巨大化し、大きく回転させながら奏や瞬ごと響を攻撃するが、エレメンタル・シールドを確り構えた奏が響を庇うように立ちはだかり、盾の表面を滑らせるように槍を受け流した。
「母さんはやらせませんから! ヴェリーナ砦のために! カボチャを必ずゲットするために!!」
「か、奏……」
 我が娘が本音を口にしたように思えて、いつの間にか目的がすり替わっていないか? と一瞬呆れてしまう響。
「そういう言い方だと、奏がカボチャを食べたいように聞こえますが……はぁ」
 義妹の食欲の底なしぶりを見せられた瞬は、思わず大きくため息をつきつつも、六花の杖の先端に氷の魔力を集め、500本を超える氷の矢を生成。
「ヴェリーナ砦の皆さんの為に……貴方達には骸の海に還って貰います!! 容赦はしませんよ!!」
 瞬が杖を一振りすると、生成した氷の矢が全て、戦士の上空から豪雨のように降り注ぎ、胴や四肢を貫いた。
「ああああああ、冷たい、冷たい雨が……!!」
 氷の矢の雨に全身を貫かれながら、それでも氷の矢ごと瞬を薙ぎ払うように漆黒の槍を巨大化させ、瞬以外の全員をも同時に巻き込むように大きく振り回す。
「おおっと!」
「瞬兄さん!!」
 残像を囮に自力で槍を避ける響を横目に、奏は咄嗟に瞬の前に立ちはだかりエレメンタル・シールドで槍を受け止めるが、巨大化した漆黒の槍は容赦なく奏ごと瞬を薙ぎ払おうと盾ごとじわじわと押し込み、奏を後退させようとする。
「おも、い……!!」
 その場に揺蕩う「狂えし神々」ごと薙ぎ払わんと無秩序に振り回された本能と殺意の塊たる漆黒の槍を、奏は両手でエレメンタル・シールドを持ちながら力いっぱい受け止めつつ、至近距離から翠の衝撃波を放って牽制する。
「あああ、狩らないと、闇を狩らないと……!」
 翠の衝撃波を受けぬ様たまらず後退した戦士は、全身に深手を負わされながらも、響たち猟兵を闇とみなしたかのように、槍を向けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

ペンダントを竜騎士の槍に変えて【幽冥竜の騎士団】を召喚、幽霊である彼等ならカボチャを傷つける心配もあまりありません、さあ突撃です!カボチャを確保……間違えました、敵を倒しますよ!

形が壊れてしまったカボチャも回収します食料に出来ますからね!ただ焼いただけのカボチャも十分美味しいのですが餡にしたり揚げたりするととっても美味しい……わかってますよおばば様、ハロウィンがカボチャを食べる日ではないって知ってます!ちゃんとライナさん達に説明できますよ!

『ハッ!おばば様!おばば様大変です!見てください!凄く大きなカボチャがありました!』

アドリブ協力歓迎です。



●闇の記憶は海へと呑まれ
「ぐ、ぐぐぅ……」
 氷の雨に全身を貫かれ、脇腹と背中を激しく切り裂かれながらもなお立ち続ける「狂えるオブリビオン」の闇の戦士を見て、サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は身震いを隠せない。
 そもそもオブリビオンからも理性を奪い狂わせる「狂える神々」とは、一体何者なのか?
 サフィリアの脳裏にふと過った疑問は、しかし戦士の断末魔に近い咆哮にかき消される。
「お、おおおおおおおお……!!」
「……戦おう、施設のためじゃなく私達のために」
 戦いも止む無し、とサフィリアはペンダントを竜騎士の槍に変え、かつての仲間たちに呼びかけるかのように虚空に言の葉を広げると、お揃いの槍と鎧で武装した竜騎士の竜人と相棒の竜の幽霊を505体乗せた、翼を持つ蛇の姿をした幽冥竜が、虚空に召喚された。
 竜人たちにかつての施設の仲間たちの面影を見出し、サフィリアの胸に一瞬こみあげるものがあったが、今は郷愁に浸っている余裕はないとすぐに気合を入れ直した。
「さあ皆さん、突撃です! カボチャを確保……」
『サフィリア、それは後でもできるだろう!?』
「……間違えました、敵を倒しますよ!!」
 皆のおばば様たる幽冥竜に突っ込まれたサフィリアが慌てて訂正しながら竜騎士の槍で戦士を指差すと、505体の竜人達が一斉に戦士に殺到し、槍を突き出した。
 戦士も漆黒の刃を地中から生やし足元から狩り取ろうとするが、多勢に無勢では為す術なく、次々と竜人たちの槍を全身に受け、その場に頽れる。
「あああ、南瓜を……南瓜の祭りをもう1度見た……かった……」
 闇の記憶を抱えたまま狂わされた戦士は、かつての記憶に留めていた想いをポロリと零し、骸の海へと還っていった。

●そんなわけでカボチャ収穫です
 カボチャの群生地が全く荒らされていないことを確認し、ほっと胸をなで下ろしたサフィリアは、さっそく竜人たちと力を合わせてカボチャの収穫を始めていた。
 濃緑にオレンジ、白に黄色。
 よく熟れた色とりどりの大量のカボチャは、竜人たちとサフィリアの手で次々と収穫され、幽冥竜たるおばば様の背に載せられてゆく。
 もっとも、力を入れ過ぎてうっかりカボチャを割ってしまう竜人もいるのだけど。
「形が壊れてしまったカボチャも回収します。食料に出来ますからね!」
 気にしないで、とたしなめるサフィリアに、竜人たちも笑顔を取り戻し収穫作業に戻っていった。
 作業に従事する竜人たちを眺めながら、サフィリアはふと、カボチャの調理法に想いを馳せる。
「ただ焼いただけのカボチャも十分美味しいのですが、餡にしたり揚げたりするととっても美味しい……」
『サフィリア、何か勘違いしていないかね?』
「わかってますよおばば様。ハロウィンがカボチャを食べる日ではないって知ってます!」
 ちゃんとライナさん達に説明できますよ! とおばば様を誤魔化すように早口でまくし立てつつこっそり零れた涎を拭きとったサフィリアの目に入ったのは、サフィリアの背丈より高い、オレンジ色の巨大カボチャ!
「ハッ! おばば様! おばば様大変です! 見てください! 凄く大きなカボチャがありました!」
『ほぅ……これは立派なカボチャだの』
 これは何らかの飾りに使えるかもしれぬの、と頬を緩めながら口にするおばば様に、サフィリアもつられて顔をほころばせた。
 ちなみに、巨大カボチャは竜人たちと力を合わせておばば様の背に積み込みました。

「これくらいあれば十分かな?」
『砦にどれだけの人がいるかは知らぬが、間違いなく足りそうじゃの』
 おばば様の背に山積みにされた大量のカボチャに満足げに頷いたサフィリアは、竜人たちをおばば様の背に乗せ。
 久しぶりに会う友の顔を脳裏に思い浮かべながら、サフィリアは幽冥竜のおばば様と共に人類砦『ヴェリーナ』に向けて歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『暖かな日』

POW   :    村人や周囲の手伝いをする。冒険談を話す

SPD   :    料理や芸などを見せ、振る舞い、周りを楽しませる

WIZ   :    人との交流を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダークセイヴァー・人類砦『ヴェリーナ』
 収穫した色とりどりの大量のカボチャを手土産に、人類砦『ヴェリーナ』に足を踏み入れた猟兵達が目にしたのは、目覚ましい発展を遂げた人類砦の姿。
 かつてはごく小規模な砦だった人類砦は、周辺地域や地下都市からの避難民を受け入れ続けたことで人口が千近くにまで増加しており、さらに此の地の支配権を人類の手に取り戻した結果、今や周囲を立派な石壁で囲んだ城塞都市に変貌を遂げていた。

 砦の指導者らしき少年に案内され、広場に通された猟兵達は、集まる住人たちの目の前で広場に大量のカボチャを積み上げる。
「それは……カボチャ?」
「わぁ、たくさんあるぞ!!」
 広場に集まった住人たちは、色とりどりの大量のカボチャを見て目を丸くした後、喜びを爆発させた。
「危険地帯にあるから取りに行けなかったんだ。ありがとう!!」
「これだけ大量にあれば一冬越せるぞ!」
 思いがけず大量の食糧が手に入ったと勘違いし喜ぶ住人らに、猟兵達が慌ててハロウィンの祭りのために収穫したものだと説明すると、住人らは頭上にハテナマークを浮かべながら首を傾げた。
「はろ、うぃん……?」
「伝承上の祭り、じゃな……古老に伝え聞いただけだが」
 どうやら、人類砦『ヴェリーナ』の住人は、伝承を知るごく一部の人々を除き「ハロウィン」が何たるかを知らないらしい。
 猟兵達が「ハロウィン」のことを教えるから一緒に祭りを開かないかと提案すると、砦の指導者たる少年も快く了承した。
 幸い、砦の周囲にオブリビオンの姿はなく、この季節にしては気候も穏やか。砦をあげた祭りを執り行うには好都合。
「皆もひとつ、作業の手を休めて、『はろうぃん』のことを教えてもらいながらパーティをやらないか?」
 指導者たる少年の提案に、異を唱える住人はいなかった。

 ……さて。
「ハロウィン」を伝承上でしか知らぬ住人らに何を教え、何を行うかは、完全に猟兵達に委ねられている。
 住人らとともにカボチャ料理を作って振る舞うもよし、お菓子を作って子供たちに配るのも良いかもしれない。
 オレンジ色が鮮やかなハロウィンカボチャも、大小問わずたくさんあるから、飾りに仕立てるのも良いだろう。
 他の世界にはハロウィン当日に仮装をする文化もある。住人たちと簡単な仮装をして非日常を楽しむのも悪くないだろう。
 その他、住人らに伝えたいこと、住人らとやりたいことがあれば、提案すれば大体のことはできるはずだから、是非提案してほしい。
 ――このパーティは、猟兵達と住人たちの為にあるのだから。

 人類砦『ヴェリーナ』の人々に、一時の癒やしを与えるために。
 ダークセイヴァーでは伝承上の存在たる「ハロウィン」の楽しみ方を住人たちに伝えるために。

 猟兵達は、住人らと協力して、ハロウィンの祭りの準備を始めた。

※マスターより補足
 人類砦『ヴェリーナ』に暮らす人々にハロウィンの楽しみ方を教えつつ、皆でハロウィンの祭りを楽しみましょう!
 ハロウィンの楽しみ方を住民に伝えた上で、祭りの準備をしてパーティを目いっぱい楽しんでいただければ、どんな行動をしていただいても構いません。
 POW/SPD/WIZは参考程度でOKです。どうぞ、御心のままに行動してくださいませ。
 なお、カボチャランタン等の飾りを制作するための工具や調理の為の調理器具、カボチャ以外の食材は一通りそろっています。

 この章は、グリモア猟兵藤崎・美雪の同行が可能です。
 もしお手伝いが必要な場合、お話したい場合は、プレイングにてご用命くださいませ。
 特にご指名がない場合は、背景でカボチャのポタージュを作って住人らに振る舞っていますが、有難くもご指名いただいた場合は別の料理を作る予定です。

 また、シナリオタグ「#ヴェリーナ砦」がついている拙作シナリオに登場し、現在は人類砦の指導者となっている5名の少年少女(クレイ、リーア、ミルズ、アイラ、ヴォル)、及び拙作「アリス・イン~」シリーズに登場している元『アリス』の少女・ライナも登場可能です。
 彼らの登場を希望する場合も、プレイングに記載をお願いします。(記載なしの場合は登場しません)

 なお、指導者たちが全員未成年のため、飲酒喫煙は全面的に禁止とします。
 その他、問題行動、公序良俗に著しく反する行動が含まれたプレイングも、採用せずお返し致します。

 第2章のプレイング受付期間、及びリプレイ執筆期間は、以下の通りです。

 プレイング受付:10月27日(水)8:31~10月29日(金)17:00
 リプレイ執筆 :10月29日(金)深夜  ~10月31日(日)朝

 お預かりしたプレイングは、時間の許す限り採用させていただく予定ですが、有難くも多数の参加をいただき、31日朝までに全員分書き切れないと判断した場合、勝手ながら1章参加者を優先して採用させていただきますこと、ご了承いただけますと幸いです。

 ――それでは、良きハロウィンの祭りのひと時を。
真宮・響
【真宮家】で参加

ハロウィンは昔は悪霊を慰霊するお祭りだったらしいが、いつの間にか仮装してパーティする収穫祭のお祭りになってねえ。まあ、しんみりするのもつまらないから楽しくやるのがいいんじゃないかい?

黒いドレスに仮面をして仮面舞踏会を楽しむ貴族風に。皆に腕を奮ってかぼちゃ料理を振る舞うよ。かぼちゃのカップケーキにかぼちゃのクッキーにかぼちゃのプリン。料理を提供すると共に大人として子供にお菓子をあげよう。なにしろ、お菓子をあげないといたずらされるからねえ。何だか子供に奏と似たのが混じっているような気がするが気にしないでおくか。

今日は初めてのハロウィンだ。砦の皆が楽しんでくれれば嬉しいよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

ハロウィンは私達家族も余り馴染みがないのですが、浮ばれない霊を慰霊するお祭りだったらしいです。かぼちゃは悪行を重ねたあげく成仏できない人が成り果てたお化けの頭らしいです?

まあ、今日は楽しみましょう!!妖精の仮装をしてトリックオアトリート!!子供の皆さんに籠からお菓子を配ります。あ、「お菓子をくれないといたずらするぞ!!」と大人の人にいうとお菓子を貰えますよ!!

胃袋ブラックホールなのでかぼちゃ料理を食べる人達に何故か混ざってたり、18歳になる癖に子供達と一緒にお菓子を貰おうとしていたり。いいじゃないですか~今日はハロウィンパーティ、楽しんでなんぼです!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

ハロウィンって、元々は慰霊祭だったらしいですね。まあ、このダークセイヴァーの様な世界で元の謂れのようにすると色々とシャレにならないと思うので、今の様に仮装して、楽しくパーティすればいいんじゃないでしょうか。

紺色の魔導士のローブで仮装して、母さんの作ったかぼちゃ料理を砦の皆さんに配膳します。魔法使いの杖を振って【属性魔法】で光のエフェクトでパーティを彩ります。更に銀のフルートで清光のベネディクトゥスを奏でて精霊を呼び出して砦の皆さんの相手を務めてもらいますね。

なんか奏に似た妖精が色々やんちゃをしているようですが、今日はハロウィンパーティです。多めに見ましょうかね。



●人類砦『ヴェリーナ』の皆にハロウィン講座
 ――カボチャが山積みにされた、人類砦『ヴェリーナ』の広場にて。
「そもそも、ハロウィン、ってなんだ?」
「じゃあ、アタシらが答えるよ」
 一部の住人が口にした質問に答えたのは、【真宮家】の3人だった。
 ダークセイヴァーにおいて、「ハロウィン」の祭りは伝承上の存在に過ぎない。
 これまで吸血鬼に支配され、魔獣蔓延る地で生き抜くだけで精いっぱいだった人類にとって、祭りを楽しむ余裕は全くなかった。
 だが、『闇の救済者』や猟兵達の活躍によって、人類の生活圏は少しずつだが広がっている。
 だからこそ、伝承上の祭りが復活するのは、古老から伝え聞いていた年寄りたちにとっても、日々の戦に疲弊する人々にとっても、極めて喜ばしいことだった。
 もっとも……ダークセイヴァー出身の【真宮家】の3人にとっても、ハロウィンはあまり馴染みがない祭りなのは同じだったりするが、猟兵として他世界を回る過程で、それなりの知識は得てきたつもり。
「どうも、浮かばれない霊を慰霊するお祭り……だったらしいです」
「ハロウィンって、元々は慰霊祭だったらしいですね」
 真宮・奏と神城・瞬のふたりの説明に、伝承をちらりと耳にしていた老婆たちが頷いているところを見ると、どうやらダークセイヴァーにおいてもハロウィンはそういう祭なのだろう。
 一方、家族と共に他世界を見聞して来た真宮・響もまた、他世界のハロウィンの知識を交えながら説明する。
「まあ、ハロウィンは昔は悪霊を慰霊するお祭りだったらしいが、いつの間にか仮装してパーティする収穫祭のお祭りになってねえ」
「ジャック・オー・ランタンとやらのカボチャの幽霊がさまよう、と聞いたことはあるが?」
 古老から話を聞いていたらしき壮年の男性の質問に、奏が首肯しつつ説明。
「かぼちゃは、悪行を重ねたあげく成仏できない人が成り果てたお化けの頭らしいです?」
「ヒィィィッ!?」
 奏の説明に、お化けが苦手な子供たちが怯えるが、UDCアースのケルト人の祭りたるハロウィンに登場するジャック・オー・ランタンは、そういう性質を持つのも事実。
「まあ、このダークセイヴァーで元の謂れのようにすると色々とシャレにならないと思うので、母さんが説明した様に、仮装して楽しくパーティすればいいんじゃないでしょうか」
「そうだね、今日はそうしよう」
 瞬の提案に、住人を代表するように指導者たる少年が頷いていた。

●というわけでパーティの準備です
「さ、腕を振るうとするかね」
 黒いドレスに仮面をして仮面舞踏会を楽しむ貴族風の仮装をした響が、砦に用意された臨時キッチンを活用して住人の女性たちとともに仕込み始めたのは、カボチャ料理の数々。
 沢山あるカボチャを切ったり茹でたり、潰したり焼いたり。
 皆で協力しながら完成させたカボチャ料理は、紺色の魔導士のローブで仮装した瞬や男性たちが並べたテーブルに次々と運ばれてゆく。
「おっと、待った」
 その時、ハロウィンカボチャに手をつけようとした、女性陣を響が制した。
 日々生きるだけで精いっぱいのダークセイヴァーにおいては、他世界では食用に適さないとされるオレンジ鮮やかなハロウィンカボチャも貴重な食糧。
 故に、女性たちがハロウィンカボチャを料理しようと考えたのは、至極当然だったが……。
「今日はオレンジ以外のカボチャもたくさんあるから、オレンジのカボチャは食べないよ」
「じゃあ、どうするのかしら?」
「これはね、こうして中身をくり抜いて……よっと!」
 響が小さめのハロウィンカボチャを手際よくくり抜きランタンに仕立てると、周囲の女性たちから歓声が上がった。
 中にろうそくを立てたランタンは、子供たちに広場に並べてもらい、雰囲気づくりに一役買ってもらうことに。
「母さん、この大きなカボチャ……どうしますか?」
 大量のカボチャの中に、ひとつだけ威圧感を伴って鎮座している巨大なオレンジカボチャを見た瞬が、カボチャの表面を叩く。
 返って来た音は、しっかり中身が詰まったような音。
「それは食べられるけど、ランタンにすると面白そうだねえ」
「でも中身をくり抜くだけで大変そう……え?」
 眉を顰めつつ困惑する瞬の肩を、何者かの指がつつく。
 驚き振り向いた瞬の前には、いつの間にか竜人の霊たちが立っていた。
 竜人たちはそれぞれが槍や剣を携えつつも敵意はなく、瞬が叩いた巨大カボチャをじっと見つめている。
 彼らの正体は、他の猟兵がパーティの準備を手伝わせるために呼び出した霊の一部だったのだが、それを瞬が知るのは、また後の話。
「このカボチャを加工したいのですが、手伝っていただけますか?」
 恐る恐る聞く瞬に、竜人たちは最初からその気があったように揃って頷いた。
 ちなみに、巨大カボチャは竜人たちの協力を得て綺麗に中身がくり抜かれ、巨大なジャック・オー・ランタンとなって広場中央に置かれました。

 料理を完成させた後、続けて響が腕によりをかけて作ったのは、かぼちゃのカップケーキにかぼちゃのクッキー、そしてかぼちゃのプリン。
 もちろん、先ほどくり抜かれた巨大カボチャの中身を使うのも忘れません。貴重な食糧ですから有効活用します!
 焼きあがったかぼちゃのクッキーを、響はひとつずつ紙に包んで籠に入れ、翠の妖精の仮装をした奏に手渡す。
「はい、奏、子供たちに配って来てくれ」
「はいっ!」
 籠を受け取った奏は、背中の羽を羽ばたかせるように、軽やかに子供たちの間を回り始めた。

●お菓子をくれないと誰がイタズラするのかな?
「トリック、オア、トリート!!」
 透き通るような翠の羽に惹かれて集まって来た子供達に、奏は笑顔で紙包みを差し出す。
 恐る恐る受け取った子供たちがそっと紙包みを開けると、入っていたのは可愛らしいジャック・オー・ランタンの形をしたクッキー。
 可愛らしいカボチャのクッキーを見た子供たちの表情が、ぱっと明るくなった。
「わー、お菓子だ!」
「お姉ちゃんありがとう!」
 喜ぶ子供たちに、奏は茶目っ気たっぷりに子供たちにアドバイス。
「あ、『お菓子をくれないといたずらするぞ!!』と大人の人に言うと、お菓子を貰えますよ!!」
「ホント!?」
 目をキラキラさせた子供たちは、さっそく簡単な仮装をしてから砦内に散り、大人たちに「トリックオアトリート!」と声をかけながらお菓子をねだり始めていた。
 もちろん、響のもとにも子供たちがやってきて、ねだるように両手を差し出してくる。
「オバさん、お菓子をくれないといたずらするよ~」
「初対面の人に向かってオバさんは失礼だねえ」
(「とはいえ、渡さないといたずらされるからね」)
 響は初対面でも容赦ない子供たちの無邪気さに苦笑いを浮かべながら、別に作っておいた星形のクッキーを子供たちに手渡していた。
 ちなみに、お菓子の用意が間に合わなかった大人が子供たちにたくさんいたずらされることになったが、後で瞬から「これもハロウィンのイベントなのです」と説明されてしぶしぶ受けいれたとか。

●祭りは楽しいパーティに
 いつしか砦の広場には、手が空いた砦の住人たちがほぼ全員集まり、料理に舌鼓を打っていた。
 美味しい料理や菓子で気分が乗ったのか、誰からともなく広場の中央で踊り始め。
 それを皮切りに、住人たちが楽器を持ち出し、即興で演奏を始めていた。
 それを見た瞬が、魔法使いの杖を振って空に柔らかな光のエフェクトを展開。
 さらに銀のフルートを奏でて精霊を召喚すると、精霊たちは砦の皆の間をふわふわと揺蕩いながらくるくると空で舞い踊り、場を盛り上げ始めた。
 砦の随所に散った500体を超える竜人たちもまた、砦の皆に愛嬌を振りまきながら、配膳やお菓子配りを手伝っている。
 響も料理や菓子を作る手を止めないようにしながらも、ダンスに興じる住人らを盛り上げるような歌を無意識に口ずさみ始めていた。
 一方、奏は……いつの間にかカボチャ料理を食べる側に回っていた。
(「胃袋ブラックホールですから、いくらでも食べられちゃいます~」)
 沢山の食べ物に囲まれた今は、奏にとっては至福のひと時。
 母や砦の女性たちが作った料理に舌鼓を打つ奏の表情は、幸せいっぱい。
 ついでにちゃっかりと子供たちに紛れて、砦の大人たちにお菓子もねだっています!
(「何だか子供に奏と似たのが混じっているような気がするが……気にしないでおくか」)
 18歳なのに子供に混じって他の大人にお菓子をねだる娘を見て、母が苦笑していたのは、また別の話。
 それでも響は、人類砦『ヴェリーナ』の皆が楽しんでくれれば、娘が多少はっちゃけても嬉しいの一言に尽きた。
(「なんか奏に似た妖精が色々やんちゃをしているようですが、今日はハロウィンパーティです。大目に見ましょうかね」)
 瞬もまた、はしゃぐ義妹を見る目に苦笑いを浮かべながらフルートを吹き続けるが、奏に釣られた子供たちや大人たちの笑顔が見られれば、それで十分。
 実際、響や瞬の目の前で、砦に住まう『闇の救済者』達は、心の底からパーティを楽しみ、息抜きをしていたのだから。

 踊りに歌。
 料理にお菓子。
 お菓子をねだる子供の声に、お菓子をあげる大人の笑顔。
 広場を囲むジャック・オー・ランタンと、その中で揺らめくろうそくの光。
 そして、空を包む光のエフェクトと、薄闇に包まれたダークセイヴァーの空。

 楽し気な空気と音楽、柔らかなオレンジと白の光に包まれた人類砦『ヴェリーナ』のハロウィンの祭りは、もうしばらく続きそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

【幽冥竜の騎士団】を召喚して手伝いを頼んだ後にライナさんの元へ。

ハロウィンは元々亡くなった人が現世に戻ってくる日だったそうですよ、仮装も死者か生者かを曖昧にするためだったとか!そしてカボチャ料理が美味しい日です!

一通り料理を堪能したらペンダントを槍に変えて刃先に布を巻き付けて、広場で舞ます!槍舞です!
ライナさんも皆さんも参加してください!やり方なんてありません、舞でも踊りでも楽しければそれでいいんです!

ライナさん、さっきの仮面をつけた方は誰ですか?うーん、気のせいでしょうか、剣の振り方がとてもよく似ていたんです、あの時の緋色の剣士に。

アドリブ協力歓迎です。



●パーティにつきものなのは美味しい料理
「ハッピーハロウィーンです!」
 サフィリア・ラズワルドは、500体を超える竜人の霊たちに幽冥竜たるおばば様の背から大量のカボチャを降ろさせつつ、後のお手伝いを頼んでから、親友たるライナの下へ駆けつけていた。
「ライナさん、お久しぶりです!」
「サフィリア、あの後無事だったのね!」
「ええ!」
 小領主の館でサフィリアたちをそっと裏口から出した後、心底心配していたライナは、サフィリアの無事な姿を見て思わず安堵のため息をつきながらも、すぐに笑顔を取り戻しながらサフィリアに質問。
「ところでサフィリア、クレイや他の猟兵さんが口にしていた『はろうぃん』って何?」
「ハロウィンは元々亡くなった人が現世に戻ってくる日だったそうですよ、仮装も死者か生者かを曖昧にするためだったとか!」
 そしてカボチャ料理が美味しい日です! とにこりと笑うサフィリアに釣られ、ライナも笑顔をほころばせた。

 他の猟兵や住人の女性たちが広場で振る舞っていた料理と菓子を受け取ったサフィリアとライナは、広場の隅に並んで腰掛ける。
 ライナの視線は、小さなカップに注がれた黄金色に近い輝きの液体に向けられていた。
「サフィリア、これは……?」
「ああ、カボチャのポタージュですね!」
 サフィリアがポタージュに口をつけたのを見て、ライナもまた、恐る恐るポタージュに口をつけ、目を丸くする。
「これ、甘くて美味しいわね」
「季節のカボチャはとっても美味しいですから!」
 初めて口にするポタージュに感動するライナに、サフィリアもまた、ポタージュを味わいながら微笑みかけていた。

●パーティにつきものなのは演奏と踊り
 サフィリアとライナがゆっくりと食事を堪能している間に、広場の中央では踊り好きの住人たちが踊り始めていた。
 それに釣られた他の住人が、小さなハープやオカリナを持ち出して演奏し始め。
 さらにそれを見た他の猟兵が、そっと歌を口ずさんだり、フルートを演奏し始めていた。
 歌やフルート、ハープやオカリナ、タップ音が奏でる楽し気な音の波は、最初はバラバラだったが、いつしかひとつの音楽へと融合し、広場全体を明るい雰囲気で包み込み始めていた。
「私も舞います! 槍舞です!!」
 オカリナの軽やかな演奏に惹かれたか、サフィリアはペンダントを竜騎士の槍に変化させ、穂先にオレンジや白、黄色の布を巻き付けてしっかり保護し、槍を上下左右に振りながら舞い踊り始めた。
 槍の穂先に巻き付けた布がサフィリアの踊りに合わせてたなびき、ランタンの光を受けて淡く輝くのを見て、他の住人たちが嬉しそうに身体を揺らし、リズムを取り始める。
「さあ、ライナさんも皆さんも!」
「え?」
「やり方なんてありません。踊り方も関係ありません。舞でも踊りでも楽しければそれでいいんです!」
 踊りながらにっこり笑うサフィリアの笑顔に推されたか、それとも周りの楽し気な空気に触発されたか、ライナは恐る恐る踊りの輪に入り、そっと足を動かし、踊り始めた。
 広場のそこかしこからは、所々音程を外した声が聞こえてきたり、うっかり足をもつれさせて転ぶ人もいたが、それもご愛敬。
 いつしか広場は踊り楽しむ人々の輪がいくつも生まれ、陽気なダンスホールへと変化を遂げていた。
 サフィリアもまた、踊り慣れてきたライナをリードするように軽く槍を振って穂先の布をたなびかせる。
「踊ってみるのも楽しいわね」
「ね、楽しいでしょう?」
 徐々に足運びがスムーズになるライナを、サフィリアは笑顔で見守りながら、槍を振って舞い続けていた。

●ハロウィンの小さき奇跡
 ――ふわり。

 ふと、穂先の布と違う色の布が視界に入った気がして、サフィリアは手を止め広場の隅に目をやる。
 サフィリアの視線の先にあったのは、刃を潰した剣を手に優雅に舞っている赤毛の女性の姿だった。
 顔は白を基調とした蝶型のマスカレイドで隠されていたが、サフィリアはその剣筋に見覚えがあった。
「ライナさん、あの仮面の方……」
「ええ、彼女は……」
 顔を見合わせたライナとサフィリアは、再度広場の隅に目をやる。
 視線の先にいるマスカレイドの女性は……おそらく、飛蝗とともに砦を襲撃した緋色の剣士。
 一瞬、悪霊となって戻って来たのか、とサフィリアもライナも身構えそうになったが、マスカレイドの下に宿る瞳の光を見て、直ぐに警戒を解く。
 ――彼女の瞳の光は、険しく追い込まれたそれではなく、優しく楽し気なそれだったから。
 刃を潰した剣で、誰も斬らぬよう慎重にかつ優雅に舞う剣士を見て、サフィリアの頬が思わず緩んだ。
(「多分……ご主人様、とやらから解放されたのかな?」)
「……彼女、あのような優し気な表情も、できるのね」
 サフィリアの心中をくみ取ったかのようにそっと呟くライナに、サフィリアもまた目を細めながら頷き、ふたりでそっと剣士の舞を見守っていた。

 ――それは、ハロウィンという特別な1日が見せた、奇跡の欠片。

 いつの間にか、砦のそこかしこで再会を喜び、もしくはすすり泣くような声が響き始めている。
 おそらく、親しき亡者の霊と再会した砦の住人が、不慮の再会に驚き、喜び、そしてうれし泣きをしてながら語っているのだろう。
 それはおそらく、ほんの一時の淡く儚い夢となるだろうけど。
 それでも、誰かを失いながら辿り着いた人類砦『ヴェリーナ』の住人たちにとっては、明日への活力につながる一時になるだろうから。

 今日はハロウィン。亡者の霊が生者と再会する日。
 人類砦『ヴェリーナ』を包み込む亡者と生者の交わる優しい空気は、夜遅くまで絶えることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト