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スプーキー・マリッジ

#サクラミラージュ #お祭り2021 #ハロウィン

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#サクラミラージュ
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#お祭り2021
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#ハロウィン


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●日が暮れてからのお楽しみ
 ぽつり、ぽつり。
 温かみのある橙色の明かりが灯る。
 近付けばそれが南瓜の中に灯された明かりだと解るが、それに驚く者も不思議がる者も、此処にはいない。
 南瓜を積み上げたようなアーチに、パッと電飾が灯る。門を守る騎士のようにアーチの横に立つ骸骨とカカシの瞳にも、怪しい光がボウと宿った。
 それでもやはり恐れる者はいない。
 ――何故なら今日は、ハロウィンだから。

 『ハロウィンマアケツト』と大きな文字が掲げられたアーチを潜れば、足元を照らす南瓜達が屋台といっしょに両脇に。
 甘い香りの漂う屋台は、ハロウィンにちなんだお菓子や軽食の屋台たち。消えるのが得意なお化け綿あめに、太いウインナーを挟んだパンに白いパン生地が巻かれたミイラッドック。緑の粘液がどろりと掛かった菓子は、糖蜜に着色したほくほくカリッとな大学芋。眼球がコロコロギョロリと沈む飲み物は、もちもちなタピオカ入りドリンク。ドラキュラワインはブドウジュースかグリューワイン。舌の色を変えてしまうパチパチ弾けるびっくり飴玉はいたずら向き。他にも、他にも。目移りしてしまうくらいハロウィン料理で溢れている。
 屋台はハロウィン料理だけではない。仮装のためのアイテムや、インテリアやエクステリアのちょっと可愛くてちょっと怖い小物たち。屋台を覗くたびに驚きが溢れていることだろう。
 ゆうらり揺れる蝋燭を掲げ歩くのは、骸骨騎士姿のスタッフ。安全のために巡回する彼等は、時折ドンとぶつかるはしゃぎ走る子どもたちには注意をして、『トリック・オア・トリート』の掛け声にはお菓子をくれる。

 笑い声とともに楽しげに駆けていく、シーツお化けや南瓜とシーツの子どもたち。
 楽しげな足取りを追ってみれば、たまに彼等の姿を見失ってしまうだろう。屋台の角を曲がったはずなのに、その姿は忽然と消えているのだ。
 けれどそれでも、やはり恐れる者も騒ぎ立てる者もいない。
 だって今日は、『そういう日』なのだから。

●尾びれのいざない
「はろうぃんのおまつりに案内してあげる」
 紈扇を手の内でくるりと遊ばせた雅楽代・真珠(水中花・f12752)が、これは黑社會の衣装だよと言い置いて。
「はろうぃんの市が開かれているから、遊んでおいで」
 日が沈んでから開かれるその市――『ハロウィンマーケット』は暗闇の中に浮かぶ橙色の明かりがなんとも幻想的な市なのだとか。
 この日にしか売られない珍かな菓子や小物が売られる屋台。明かりに囲まれた市を、人々はハロウィンの衣装を身にまとい楽しむのだ。
「小さな影朧に出会うかも知れない。けれどそれは、害をなす者ではないよ」
 ハロウィンの賑わいにつられて、か弱い子供の影朧が、南瓜に宿って現れてしまうのだそうだ。菓子をもらって、駆けて、楽しんで。フッと舞う桜の中に消えたりするが、騒ぎ立てる者はいない。客はそういう演出だと思っているし、運営側も子どもたちのいたずらだと思っている。
「もしかしたら、小さなスタアにも逢うかもしれない」
 その子たちに出会ったら、もてなしてやってもいいし、そっとしておいてくれてもいい。
「きっと何かに導かれるだろうから、お前たちは好きに過ごすと良い」
 きっと子どもたちもそうするだろう。
 それが、夕方から夜にかけてのイベント。
 夜が更けて、月が空で笑う頃、もうひとつイベントがある。
「これはここだけの内緒の話。いい? 他の人には教えてはいけないよ」
 小さく声を落としていとけなく微笑んだ真珠が、手のひらの上に蓮花と金魚を踊らせた。

 ――はろうぃんの夜。廃教会が一夜限り開かれるのだって。


壱花
 ごきげんよう、壱花です。
 サクミラからハロウィンシナリオをお届けします。

●シナリオについて
 このシナリオは2章編成です。グループでのご参加は【4名まで】です。
 のんびり進行なため、再送が度々生じたりします。受付・締切・再送等、TwitterとMS頁、タグにお知らせが出ますので、送信前に確認頂けますと幸いです。
(オーバーロードについて:MS頁を参照ください)

●第1章
 ハロウィンマーケットを楽しめます。
 走り回る子どもたちの他に、スタアの子どもたちが居ます。

『瓜生文彦』『南條秋乃』
 誰もが知る天才子役、だった、弱い子供の影朧。満たされた時、桜の中に消えます。
 大人の世界で幼い頃から生きてきたふたりは、小さな体でも心は立派なスタア。スタアらしく気高くあれと生きていたため、少し我侭かもしれません。
 子供らしく甘味が好きで、何処か「行かなくちゃ」と思っている場所があるようです。誰かとひととき一緒にいても、ふと姿が消えて他の人といっしょにいることもあります。
 ※このふたりは、『どちらか』にしか会えません。

【第1章のプレイング受付は、10/25(月)朝8:31~でお願いします】

●第2章
 廃教会にて仮装姿で、ハロウィンの日だけの結婚式を行えます。
 本気でもごっこ遊びでも、二度目だって三度目だって気にしない。ここにはもうかみさまはいないし、せっかくのハロウィンの日なので楽しく幸せに過ごしましょう。
 時折仮装ではないこの世あらざる者も紛れ込んでいるかもしれませんが、自分たちの世界に浸っているので皆気にしません。
 【A】か【B】の行動選択をプレイング頭に記してください。

【A】挙式
 2名以上の場合、同行者さんと挙式できます。
 3名以上の場合は2組、もしくはその挙式への参列となります。

【B】参列
 文彦と秋乃の式へ参列頂けます。
 おめかしのお手伝いや場所を整えたり等もできます。
 一括での返却を目指します。

※最終章日常につき、声が掛かった時のみ真珠が登場します。

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合は冒頭に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『我儘なスタア』

POW   :    これを向こうに持っていって下さる?(山のように届いた差し入れを運ぶ)

SPD   :    ああ、あれとあれとあれが欲しい……。(大量に頼まれたものを買ってくる)

WIZ   :    ――何か面白い話はありますか?(滑らない話)

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●わがままな小さなスタア
 ぽつんと迷子のように佇む南瓜頭にシーツ姿の子どもが居た。
 お嬢ちゃん/坊や、迷子? そう尋ねた人へ返る言葉は――

「迷子? あたくしが? 冗談を言わないでくださる?」
「迷子? 俺が? 俺を誰だと思っているんだ」

 離れた場所で、男女の子どもがそう口にする。
 自分たちはスタアなのだから、それ相応の扱いをしてくれないと。
 フイと上げた顎(南瓜頭が斜めになったので、多分きっとそう)を見れば、親切にしてあげたのに、とやれやれと離れていく者も多いようだ。
 しかし、よくよく見れば、どうやら『この場に不慣れな様子』という事が解ることだろう。初めて大きなマーケットへ来た子どもが、親と離れてしまい動けなくなってしまっているような、そんな雰囲気だ。
 子どもの態度に負けること無く訊ねれば、「噂では知っているけれど初めて来た」と、小さな声で恥じらうように告げられる。珍しい菓子も料理も気になるけれど、こういった場所でどうすればいいのか解らないでいるのだ。

「そうだわ、あなた。あたくしをヱスコオトさせてあげるわ」
「そうだ、お前。俺と一緒に歩かせてあげる。……あの菓子は何? 美味しそうだ」

 離れた場所で、男女の子どもは同じことを閃いたようだ。
 あなたたちは漂う気配から影朧だと解るから、気付くだろう。
 きっとこれは、大きな南瓜頭に素顔を隠した、子どもたちの最後の我侭だ。
 子どもらしく過ごしてみたいという願いが滲んだ、我侭なのだ。
 子どもたちのことは何も知らない。
 南瓜で顔も見えやしない。
 けれど仲良くなれば、きっと彼等は自分たちのことを話してくれるだろう。
夜鳥・藍
wiz
衣服は黒のロングワンピースと帽子で魔女風に。これなら本職に近い気がするしね。
マーケットで何を買おうかな?食べ物もたくさんあるし……。
ふと目についたのはワイン。……グリューワインってアルコール低めの物があるかしら?
一杯頂いて腰掛けられる場所を探してそこで飲みましょうか。

件の影朧にはきちんと対応しましょうか。あまり私自身が好きではないのよね、子供扱いって。
実際中身が子供というより知らないゆえの幼さというか、なんて言ったらいいのかしら?そういうものにそれなりの対応をするのはともかく、初めから何も知らない理解できない子供扱いは嫌。
子供は意外に聞こえてるし理解してるもので、実際私もそうだったから。




 ひらりと揺れる黒のロングワンピースに三角の帽子は、風景に溶け込んで。
 すれ違った骸骨兵に「魔女さん良い夜を」と挨拶された夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は、小さく会釈を返してマーケットを歩んでいく。
 右を見ても左を見ても、視界に入るのは『いつも』にはない物だ。
 お菓子を買ってみようか、それとも……?
 たくさんあるからこそ目移りして悩んでしまう。
 そんな藍がふと視線を留めたのは吸血鬼のイラストが描かれたノボリだ。
(……グリューワインってアルコール低めの物があるかしら?)
 すみませんと断ってから店主に尋ねてみれば、「うちのは度数低めのワインで作っているよ」と返事が返ってくる。子どももいるような場所で酔っ払いが大暴れ、なんてことにはしないためなのだと教えてくれた吸血鬼の店主に小銭を渡し、一杯頂くことにした。
 手の中の熱がじわりと手を温める心地良さを感じながら静かな場所で口にすれば、体の芯からほかりと温まってくる。
 飲み終えた容器を捨てに行く最中に見付けた、ぽつんと立つ南瓜頭の子ども。
(あの子が件の)
 そっと近づき声を掛ければ、「なによ」と生意気そうな少女の声が返ってくる。
 けれどそれは、自分を守るための盾なのだろう。
 子供は意外に周りの言葉が聞こえてるし、理解している。自分がそうだったから知っている。
 子供扱いはしまいと誓って、藍は言葉を紡いだ。
「よかったら、一緒にマーケットをまわりませんか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

槙宮・千空
♢ヨル(f32524)と

襤褸シーツの下で揺れる尻尾
喜ンでるのがすげェ分かりやすいな
(素直で可愛いとは言わないケド、)
よしよしとシーツの上から頭を軽く叩き
さァ、俺らも行こうか

ふらふらと興味のあるほうへ
惹かれそうな君を繋ぎ止める為
そっと手を取りマアケツトを散策

こういう仮装アイテムもイイな
俺は普段から"仮装"してるようなモンだけど
尻尾着けたらお揃いだなァ?
なーンてな、と、ヨルの唇へ
びっくり飴玉を押し付け誤魔化した
なァ、舌出して舌、すげェ変わッてる

そんなふうにじゃれている現場を
見てた店主から兄妹かと聞かれ
慌てて否定する様子を見守り

俺がお兄ちャンでイイの、
と、不敵に口角を吊り上げた
へェ、そりャ光栄だな


幽・ヨル
千空(f32525)と
アドリブ、マスタリング歓迎

_
瞳が煌めき
襤褸シーツの裾が上がり尻尾は揺れて
見たことないものばかり
驚きながら
楽しくて夢のようで

ドキドキと心臓の炎を揺らしながら
千空さんと手を繋ぎ屋台を巡る
常はお金を家に入れる為に食事は殆どしなくて
だからお腹はいつも空いて
けれどサアビスチケットを使う勇気もなく眺めるだけ

手を引かれて入った屋台で
戸惑いながらも商品を見ていたら
千空さんの言葉に嬉しくなったり
でも飴に驚いたり
店主に兄妹かと問われ
慌てて否定したけれど
千空さんみたいなお兄ちゃんがいたら毎日幸せだと
はにかみ
この言葉に嘘はない
でも
兄では嫌という気持ちも確かにあって
けれど今の私はその理由は解らない




 橙の明かりに照らされる市は何処か不気味で、けれど楽しそう。
 積まれた南瓜に、おかしな色の蝋燭に、時折現れる骸骨兵。
 良い香りの漂う屋台も、不思議なもので溢れている屋台も、どれも幽・ヨル(カンテラの灯・f32524)の興味を誘い、心臓に灯る青を揺らめかせる。
 揺らめくのは炎だけではない。被った襤褸シーツの裾を上げて『ご機嫌』を主張する尾はパタパタと揺れて、それを見るだけで彼女が喜んでいることが手に取るように解る。
 当人がその事に気付いているのかは知らないが、その素直な姿が可愛いと槙宮・千空(Stray cat・f32525)が小さくクスリと笑みを零せば、煌めく市へと向けられていた瞳が不思議そうに千空を見上げてきた。
「どうし……わぷ」
「さァ、俺らも行こうか」
 頭にぽすんと置かれた手によしよしとぽふぽふ叩かれて、一層揺れた尾は矢張り素直だった。
 ヨルはいつも空きっ腹だから、良い香りがするとついついふらふらと惹かれてしまう。ふらふらと惹かれては、サアビスチケットを使う勇気もなく眺めるだけ。
 そんなヨルを逸れないようにと繋ぎ止めてくれる千空に手を引かれ、ふたりは屋台を見て回った。
「尻尾着けたらお揃いだなァ?」
 覗き込んだ仮装アイテムの屋台にあったふかふか尻尾。
 普段から千空は『仮装』をしているようなものだが、尻尾を付けたらどう見えるのだろう。友だち? 家族? それとも――。
「なーンてな」
 膨らんだ想像を断ち切るように、甘い飴玉を押し付けられた。
 舌の色が変わるという、『びっくり飴玉』だ。
「なァ、舌出して舌」
 恥じらいながらも小さくペロリと舌を出せば、すげェ変わッてると千空が笑った。
「本当? 何色?」
「黒」
「黒!?」
「仲いいねぇ、お兄さんたち。兄妹かい?」
「えっ、違うよ!?」
 それじゃあと続く言葉は、頭も手もブンブンと振って大慌てで否定したヨルの耳には届かなかったようだ。
 屋台から離れ、通りを歩むヨルの心に残るのは、先程の店主の言葉。
 千空に失礼じゃないかと慌てて否定してしまったけれど、でもさと幸せな想像をしてみる。
「千空さんみたいなお兄ちゃんがいたら毎日幸せだね」
「俺がお兄ちャンでイイの」
「えっ」
 それは一体、どういう意味?
 光栄だなと不敵に釣り上がる口角に、混乱する頭。
 こんな素敵な兄が居てくれたらと思う気持ちは嘘じゃない。
 けれど、『兄では嫌』と言う気持ちも確かにある。
(それって、どういうことなのかな……)
 それがどういうことなのか、ヨルにはまだ解らない。
「それじゃァ妹ちャンにもッと甘いの買ッてあげようか」
「え、でも」
「妹ちャンなら甘えてイイんだぜ」
 今宵はこんなにも素敵な夜なのだ。
 紳士淑女も怪盗も人狼も、怪物たちだって。
 皆揃って浮かれてトリック・オア・トリートを唱えて楽しもう。
 『収穫祭』に空腹なんてナンセンス。ヨルがもう食べられないと告げるまで、千空は美味しい料理を買い与えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻


はろいんの市場かい?
変わったものが多くて楽しいね

結ばれた手がどんなとりーとより甘くて嬉しい
サヨの好きなものを買って食べよう
可愛い巫女は甘やかしたくなる
ミイラドック…私にも分けてくれる?
私は眼玉のタピオカだ
私はひとを食したことはないがこんな感じなのだろうか
サヨにもあげる

葡萄酒?
酒は駄目だよ
きみは酒癖がトリックじゃ済まされないから
…私の血でいいなら、いくらでも
けれど人前ではいけない
驚いてしまうからね

子供達?
私には見えなかったが
迷える御魂達も宴を楽しんでいるのだろう

とりっくおあとりーと
今宵は斯様な日だろう?甘いお菓子を贈ろうか
我儘も可愛いものだ
サヨにはどちらかと言うと悪戯をしてあげたいけれど


誘名・櫻宵
🌸神櫻


ハロウィンマアケツトですって!
魔女の市場のようでもあって、ワクワクしちゃうわね

華やかな市場を愛しい神様の手を握り歩む
珍しくて可愛いものには目がないのよ
あれが食べたいわ!
ミイラドック!
ハロウィンの食べ物って変わったのが多くてすきよ
カムイは…随分とホラーなタピオカね?
美味しそうだわ
うふふ、一口頂戴な

葡萄酒も飲みたいところだけど──わ、わかってるわ!今はやめとくわよっ
…葡萄酒より酔わせるのは神様の血

子供達も元気に走り回っててほっこりするわね
え?何も見えないって…
ふふ
御魂達も、楽しめればいいわ
かぁいい子には、好きなものを贈ってあげましょ
我儘もまたよいものよ
私はいつもカムイに我儘いってるもの!




 とろりと甘い、蜜の香り。
 不思議な色の明かりが仄かに灯る、怪しげな雰囲気。
 三角帽子にローブを纏った人や南瓜頭が通りを行き交う。
 それはまるで魔女の市場のようで、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)の心を弾ませる。
「カムイ」
 珍しくて可愛いもの好きで……実は世間知らずな神様がハロウィンの悪戯に巻き込まれないようにするのは巫女の務めである。名を呼び手を引けば、珍かな品々があると瞳を瞬かせていた朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)が櫻宵を見つめ、なんだいとふわりと微笑う。結ばれた手と傍らの存在が、屋台で売られているどんなトリートよりも甘くて嬉しいから。
「気になるものはあって?」
「気になるものが多すぎるから、サヨの好きなものを買おう」
「そうね……それなら、あれが食べたいわ!」
 ピッと櫻宵の指が指し示す先には『ミイラドック』なる文字。文字の傍らに描かれたミイラが「おいしいよ」と言っているのが少しシュールだ。
 変わった食べ物だと口にしたカムイは早速櫻宵のためにひとつ買い求めて来てくれる。
「カムイは何を食べてみる?」
「私はあれにしようと思う」
 ミイラドックを受け取り感謝の言葉を告げながら首を傾げれば、少し待っていてとカムイがまた買い求めに行った。
「まあ! 随分とホラーなタピオカね?」
 戻ってきたカムイの手の内には眼玉のタピオカが沈む怪しい色のドリンクがあった。口広のストローで吸い上げれば、もちもちとした団子みたいな眼玉が口内へと飛び込んでくる。
「私はひとを食したことはないがこんな感じなのだろうか」
「うふふ、一口頂戴な」
「サヨも、私に分けてくれる?」
 お互いに差し出し合って口にすれば、こっちも美味しいねと笑みが咲いた。
 ふたりで買い食いを楽しみながら市を周る、と――。
「酒は駄目だよ」
「わ、わかってるわ!」
 カムイに先に釘を刺され、櫻宵はぎくりと肩を跳ねさせた。視線が吸血鬼と葡萄酒の描かれたノボリへと行っていたことに気付かれたのだろう。
「……葡萄酒より神様の血が飲みたいわ」
「……今は駄目だよ」
 人前で無ければ、君が望むままに。
 この神様は、本当に巫女に甘い。
 握る手が、少し、熱を帯びたような気がした。
「それにしても、子供達も元気に走り回っててほっこりするわね」
「子供達? 私には見えなかったが」
「え?何も見えないって……」
 さっきからあんなにも元気に走り回っているのに?
 首を傾げること僅かばかり。きっと彷徨える御霊なのだろうとふたりは結論づけた。
「あの子は見えるよ」
 カムイの視線の先には南瓜頭にシーツの子供。――影朧だ。
「とりっくおあとりーと。今宵は斯様な日だろう? 甘いお菓子を贈ろうか」
「食べたことがない菓子、全種でも?」
 掛ける声に南瓜頭を少し動かした子どもは、少年の声でそんな我侭を口にする。
「いいわよ、かぁいい子には、好きなものを贈ってあげましょ」
 私はいつもカムイに我侭を言っているものと胸を張って請け負った櫻宵を見て、カムイは流石サヨは懐が広いと微笑むのだった。
 いつも可愛い我侭を聞いているのだから、今日は悪戯をしてもいいのかな、なんて思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
♢♡

三毛猫の耳カチューシャつけ大きな籐製バスケットに一口サイズのお菓子を山盛りにして参加

「トリック・オア・トリート」
の掛け声聞いたら
「ハッピー・ハロウィン」
と返しつつ籠からお菓子を一掴み
声をかけてくれた子に渡していく

ハロウィンお菓子全制覇目指しゆっくり食べ歩き
籠の中身が減ったらびっくり飴玉等同サイズのお菓子を補充
お菓子を切らさないよう注意しながらのんびり廃教会目指す

子供達がハロウィンスイーツを食べたそうにしていたら
「一緒に食べます?」
と声掛け
子供達と自分の分も購入して一緒にもぐもぐごくごく
子供達の楽しい思い出が1つでも増えるよう心掛ける

気に入ったお菓子は大量購入
内緒で無限倉庫に仕舞っている




 ハロウィンお菓子全制覇目指す三毛猫が腕に掛ける藤製のバスケットには、お菓子がたっぷりどっさり。
 それに気付いてか、南瓜頭の子どもが御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の姿を見かける度に声を掛けてくる。
「ねこさん、ねこさん。トリック・オア・トリート」
「はい、ハッピー・ハロウィン」
 言葉を返しながら合わせられた両手の上に一掴みにしたお菓子を渡してやれば、子どもたちはワアと嬉しげな声と感謝の言葉を告げて駆けていく。もう何度目かのやり取りに、応じる桜花も慣れたものである。
 減りつつある籠の中へ買ったばかりのびっくり飴玉と妖怪ラムネを追加して、桜花は次は何を食べましょうかと並ぶ屋台を見つめた。
 その時だった。ひとりでぽつんと立つ南瓜頭の子どもが、誰かにトリック・オア・トリートと声を掛ける訳でもなくただ立ち尽くしていることに気がついたのは。
 一度通り過ぎて、屋台で綿あめを買う。美味しかったので持ち帰り用を頼んで夢幻倉庫へとしまい込み、それから次は――南瓜頭の子どもは、まだそこにいる。
「一緒に食べます?」
「……別に。物欲しそうに見てはいない」
 ぷいっと背けられる南瓜頭から溢れた声は少年のものだ。
 しかし、そうですかと立ち去り屋台へと向かえば、その背を南瓜頭の視線が追う。
「どうぞ」
「別に俺は……」
「一緒に食べてくれると私が嬉しいです」
「……それなら、仕方ないな」
 南瓜頭を押し上げてパクリと口にした少年は、次の瞬間、確かに口元を綻ばせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

一一・一一
【アスカ・ユークレース】と一緒に行動
関係は恋人,アスカに対しては名前呼び+さん付けの敬語

アスカに手を引かれながら、微笑みながら、ついていきます
「あ、そこの飴もおいしそうですよ」
すれ違う骸骨騎士たちにはお疲れ様ですと頭を下げて
アスカさんに似合いそうな小物があれば買ってプレゼントしたり

スタァに出会ったら、にこやかに挨拶しましょう
ねだられたら購入したお菓子をあげましょうかね
あぁ、でも、その前に
ハロウィンなのだから、合言葉がほしいかも
もしわからないというのなら教えてあげましょう
「トリック・オア・トリート、おかしくれなきゃいたずらするよ」


アスカ・ユークレース
【一一・一一】と行動◇
関係:恋人
「一一、あそこのミイラドッグ、ていうの気になるわ!お化け綿あめは……凄い、ホントに消えたわ……!あ、あっちのドラキュラワインっていうのも美味しそうね……!」ハロウィン仕様の屋台飯に目移り、一一の手を引いて子供みたいにはしゃぎ回る

悪戯に驚かされたり駆け回る子供にびっくりさせられつつも基本的にはニコニコ笑顔

スタァの子には「貴方みたいな素敵なスタァのヱスコォトが出来るなんて光栄だわ」とにこやかに対応
緊張を解せるよう出演した作品について話を振ったりする
どちらの子に会うかはお任せ




「一一、あそこのミイラドッグ、ていうの気になるわ!」
 はしゃぐ愛しい人の姿はキラキラと煌めいて。
 あれもこれもと目移りしては、一一・一一(都市伝説と歩む者・f12570)の手を引いて歩むアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の姿は可愛らしい。
「これはお化け綿あめというのね。はむ……凄い、ホントに消えたわ……!」
「アスカさん、そこの飴もおいしそうですよ」
「え、どれ?」
 様々な菓子を頬張っては美味しいと瞳を輝かせ、一一も食べてとアスカは一一にも食べさせる。一一はそんなアスカについてまわり、時折すれ違う骸骨騎士たちにはお疲れさまですと頭を下げながらも、彼女に似合う小物はないかと目を光らせた。
「あ、あっちのドラキュラワインっていうのも美味しそうね……!」
「アスカさん、ワインも良いですが、先にこちらを付けてみてくれませんか?」
 気に入った小物を見つけてもアスカがすぐに食べ物の屋台へと向かってしまう。
 繋いだ手をそっと引いて引き寄せて。
「うん、似合いますね」
 コウモリ型の髪飾りを素早く合わせ、購入してからワインを飲みに向かった。
「ふふ、お腹がポカポカするわ」
「スパイスとハチミツで飲みやすかったですね」
「トリック・オア・トリート!」
「わ! ……ああ、お菓子ね。はいどうぞ」
 気分よく歩いていたところに、Boo! と子どもたちが現れればびっくり。
 けれど驚いたと笑って、買ったばかりの飴玉をあげる。
 脅かされるのもお菓子を上げるのも、ハロウィンマーケットの楽しみのひとつだ。
「ねえアスカさん、あそこにいる子」
 きっとスタアの子ではないかと一一と視線を向けるのは、ぽつりと所在なさげに立ちながらも美しい姿勢を保っている南瓜頭の子どもだ。時折南瓜頭を動かして視線を彷徨わせている姿を見て、ふたりは声を掛けてみました。
「こんばんは、良い夜ですね」
「ハッピーハロウィーン、お菓子はいかが?」
「ッ! ……あら、ごきげんよう。お菓子をくださるの?」
 南瓜頭が驚いたように跳ね、溢れた声は大人びた口調の少女のものだ。
「あぁ、でも、その前に。ハロウィンなのだから、合言葉がほしいかも」
「……合言葉? 知らないわ」
「トリック・オア・トリート、おかしくれなきゃいたずらするよ」
 さあ言ってご覧と促せば。
「とりっくおあとりーと……おかしくれなきゃいたずらするよ? あっているかしら」
「ええ、バッチリよ」
 小さくありがとうと返した少女はアスカが手渡した菓子を珍しげに眺める。
「もっと素敵なお菓子がたくさんありますよ」
「あら。それならあたくしをヱスコオトしてくださいな」
「貴方みたいな素敵なスタァのヱスコォトが出来るなんて光栄だわ」
 空いている手の方をさあどうぞ、なんて差し出せば、控えめにちょんっとアスカの手に小さな手が乗るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『輝きをもう一度』

POW   :    華やかに

SPD   :    厳かに

WIZ   :    絢爛に

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●文彦と秋乃
 かつて、その悲報は大々的に報じられた。
 帝都を賑わす小さなスタア、『瓜生文彦』と『南條秋乃』の突然の死。
 読売は号外を刷り、街中で配られ、人々はその早すぎる死に涙を流した。
 読売は謳う。
 ――スポツトライトの下敷きとなったふたりは、手を繋いで事切れていた。
 人々は噂する。
 ――屹度、文彦くんが秋乃ちゃんを連れて逃げようとしたのだろう。
 ふたりの死は沢山の人々の話に上がり、そして今尚忘れられていない。

 文彦と秋乃のふたりは、幼い頃から大人社会で生きてきた。同年代のスタアは互いしかおらず、仕事に追われるふたりには他に友人らしき友人はいない。
 幼馴染だった。ライバルだった。親友だった。かけがえのない人だった。
 ともに切磋琢磨し、時に喧嘩をし、ふたりは十歳までともに生きた。
 内に秘めたその想いが恋だと自覚しだした頃に、ふたりの生は終わりを迎えたのだ。

「あたくしね、行きたいところがあるの」
「俺、行きたいところがあるんだ」

 離れた場所で、ふたりがそう言った。

「文彦に逢いたいの」
「秋乃に逢いたい」

「逢ってどうしたいって? 解らないわ。文彦が覚えていないかもしれないし」
「逢ってどうしたいか? ……約束を果たしたい」

「文彦は冗談だったかも知れないし……」
「秋乃は冗談だと思っているかも知れない。けど俺、約束したんだ」

 ――お前が誰とも結婚できなかったら、お前をもらってやる、って。

 離れたところで同じ話をするふたりは、互いに約束のことを覚えている。
 ハロウィンの日だけの結婚式の話が、マーケットを歩む人々の口から聞こえた。
 廃教会で行われる結婚式。もし本当にそれがあるのなら、もし文彦が、秋乃が、その噂を聞いていたら、そこで逢えるかもしれない。

●今宵限りの結婚式
 月が高くに昇って笑う頃、古びた廃教会の門扉が開く。
 嗄れた魔女の笑い声めいた音とともに開かれたその先には数多の蝋燭たちが、ぼう、ぼう、ぼう、と足元を淡く照らすだろう。
 蝶番が外れ斜めになった扉が、今宵限りはするりと開く。
 ほつれ、埃にまみれた赤絨毯。
 朽ちた参列者のための座席。
 かみさまのいなくなった祭壇。
 手を取り合うふたりが訪えば、全ての燭台に火が灯る。

 静かに、静かに、静かに。
 静けさに沈むように、人知れず結婚式が行われる。
一一・一一
【A】【アスカ・ユークレース】と
しゃべり方は敬語,呼び方はアスカさん
服装は赤黒いスーツに、かぼちゃの胸飾り。ちょっとハロウィンっぽく

このような形での僕らしいといえば僕らしいですが、アスカさんにつきあわせて申し訳ないと思っています
参列者には,知り合いの都市伝説がきてるかもしれません

病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむことを誓い,死してもそれを失くさないことを誓います

指輪交換して,ベールをめくり,アスカさんを少しみつめてから誓いのキスをします
愛してます、アスカさん

アドリブ等歓迎です


アスカ・ユークレース
【A】【一一・一一】と
蜘蛛の巣やコウモリの装飾を付けたハロウィンカラーのウェディングドレス

まさかこんな場所での挙式になるなんてね。嫌ではないけど。ただ私達らしいなとは。それに一般の人達と都市伝説達を遭わせるわけにもいきませんし

私は一一を生涯、いえ、死んでからも愛し、癒し、嬉しいことは分け合い、悲しいことは共に手を取り乗り越えていくと、誓います
牧師もいないから誓うのは目の前の彼と参列者だけになるけど十分よね

ベールをまくられた視界が眩しいせいか彼がいつもよりめかしこんでるせいかしら?思わず目を閉じるわ
アドリブ歓迎




 神様のいなくなった教会は暗く、静かで。
 吐息を零すだけでも傍らの人に伝わりそうなほど。
 ぼ、ぼ、と音を立てて灯った明かりに照らされる参列者用の席には、いつの間に来たのだろう。人影のようなものがいくつか見える。
(あれは……知り合いの都市伝説たちかな)
 告げてきては居ないけれど、何かを察してこっそりと見に来てくれたのかもしれない。ふたりを邪魔しないように静かに見守ってくれているようで、一一は少しくすぐったい気持ちになった。
「まさかこんな場所での挙式になるなんてね」
 ふふっと小さく笑ったアスカに申し訳ないという気持ちを抱くが、一一が口を開くよりも先にアスカが違うのと首を振り、蜘蛛の巣を模したヴェールが緩やかに揺れた。
「ただ私たちらしいなって」
「そうですね、僕たちらしい」
 神様が見ていない祭壇の前で、ふたりは笑い合う。
 違う神様が居なくていい。
 聞き届けてくれる牧師も居なくていい。
 ただ目の前にあなたが居て、そして参列しようと駆けつけてくれた友人たちさえいればいい。それだけで、アスカも一一も幸せだ。
「病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむことを誓い、死してもそれを失くさないことを誓います」
「私は一一を生涯、いえ、死んでからも愛し、癒し、嬉しいことは分け合い、悲しいことは共に手を取り乗り越えていくと、誓います」
 神様は居ないから、純潔を示す白を身に纏う必要もない。
 蜘蛛の巣レースに覆われた手を取って、その薬指に約束の証を飾る。
 アスカも同じように一一の手を取り、指輪の交換を。
 ヴェールを持ち上げれば、愛しい彼女の顔がよく見える。
 薔薇色に染まる頬に、歓喜に潤む瞳。
 赤黒いスーツにバラの代わりにかぼちゃの胸飾りを着けた一一は、魔女を思い浮かべそうな紫のウェディングドレスを着たアスカをジッと見つめ、綺麗ですと愛おしげに瞳を細めた。
 アスカの瞳が、自然と伏せられる。彼がいつもよりめかしこんでいるせいか、何だか眩しい……と感じたように。
「愛してます、アスカさん」
 ええ、私も。
 重なる唇に、言葉は返せないけれど。
 それでも思いは触れた熱から伝わることだろう。
 命の気配が希薄な教会で、ふたりは密やかに愛を誓うあうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

槙宮・千空
【A】
♢ヨル(f32524)と

すげェ雰囲気あるなァ
廃教会の前、少女の手を引き
ほら、中まで行くぞ、妹ちャン?
揶揄された関係性は続行中で
悪戯っぽく笑ってみせた

結婚なンて興味もないし
好きも恋も愛だッて分からない
ただ、──
ちらりとヨルを見れば
さみしそうにしてるから

祭壇の前で足を止め
なァ、妹ちャン、目閉じて?
まるでウェディングベールみたいな
襤褸シーツを上げると徐々に顔を近付け

カチッ、と音が鳴る

市で見つけた
黒猫のシルエットが
ワンポイント入ったチョーカー
首に着け満足気に口角上げ

誓いの言葉も指輪交換もしねェ
俺らは友達でも恋人でも、兄妹でもない
ただ、──

彼女の質問にチョーカーへ触れ
お前は俺の"獲物"だからなァ?


幽・ヨル
【A】

千空(f32525)と
_

揶揄に頬赤くし膨らませながら
怖い雰囲気の廃教会に内心怯えるけれど
…結婚は憧れだった
大好きなシンデレラの物語
結婚して幸せそうに笑っていて

…人狼病な上、心臓を喪い地獄の炎で補っている私はもう先は長くない
だからこそ尚更憧れなのかもしれない
でも
私は恋なんてわからない
私はお姫様なんかじゃない
オオカミはいつだって悪役で
退治される側で

「?」
従順に彼の指示に従い目を閉じる
近くなる気配に否が応にも炎をくゆらせるも
届くのは予想外の感触と音
不思議に思って目を開け首に触れ
「ちあさん…これは?」
指先なぞり見上げた先
『兄』なんかでは決して無い
『怪盗』の眼をした彼に
心臓の炎が大きく揺れた




「……っ」
 ビュオッと耳元で音を響かせて強く吹いた風が、廃教会の敷地内に立つ枯れ木をカラカラと鳴かせた。思わず手を握ってくれている千空の腕にぎゅっとくっついたヨルの頭上から、楽しげな笑みが降る。
「ほら、中まで行くぞ、妹ちャン?」
 殊更強調されるのは、揶揄された関係性。
 悪戯めいた笑みは、ぷくと膨らませた赤い頬への満足の笑みでもあった。
 蝶番が外れた扉は、ギィと鳴いて。
 端なんて闇が固まっているかのように、暗くて。
 昼間に太陽が空から見守ってくれていても、ヨルはひとりで来られるかはわからない。繋がれた千空の手に縋るように寄り添って、ヨルは出来る限り隅っこの暗闇を見ないようにして歩いた。
 ヨルにとって、結婚は憧れだった。大好きな物語の中では、ハッピーエンドの象徴として結婚が描かれる。幸せそうで、キラキラしていて、憧れて――けれどそれは、同時に自分には縁がない、とも思っていた。
 ヨルは人狼病で、地獄の炎で補って保たせている紛い物の心臓。先が長くないことは自分が一番知っていて、恋を知ることもなく、お姫様になれることもなく、ましてやハッピーエンドなんて到底迎えられるはずもない。
(だってオオカミはいつだって悪役で、退治される側だもの)
 そうあることを、ヨルは『当たり前』と受け入れていた。
 一歩一歩祭壇へ近寄っていくヨルの表情は、どこか寂し気なものだった。
 チラリとヨルを見た千空には、そう思えた。
 結婚も、愛だの恋だのそういった浮ついたものにも興味のないものだ――けれど千空は祭壇の前で足を止めて。
「なァ、妹ちャン、目閉じて?」
 不思議に思いながらも、素直に。言われたとおりに目を閉じたヨルの襤褸布を、そっと上げる。
 それはまるで、ウェディングベールのように。
 それはまるで、愛の誓いの直前のように。
 瞳を閉ざしたヨルに感じるのは、千空の気配と衣擦れの音だけ。
 気配が被さるように近くなって――胸の炎がゆうらり揺れた。
 これでは、これでは、本当に。本当に、物語みたいな――。

 ――カチッ。

「え?」
 喉に触れた、ナニカ。
 ヨルはパチリと瞳を開き、恐る恐る首へと指を伸ばした。
「ちあさん……これは?」
 よく似合っていると千空が指でなぞるそれは、黒猫のシルエットがワンポイント入ったチョーカーだ。市で見掛けた時に似合うだろうと思い、ヨルが食べ物に頬を押さえている間に密かに購入したものだ。
「お前は俺の"獲物"だからなァ?」
 愛の証でも、ましてや恋の奴隷への首輪でもない。
 これは、印。
 兄なんかでは決して無い、怪盗の男の『予告状』。
 怪盗が盗むのは、物だけとは限らない。
 こんな廃教会じゃ、警察はいない。探偵もいない。
 ヨルの心臓の炎が、大きく揺れた。

 ――今宵、あなたの心を盗ませて頂きます。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティル・レーヴェ
【花結】♢
ふたとせ前と同じ白を纏えども
あの日には無く今は恒添う
ふたりの花を咲かせた今宵
あなたの花嫁と在れる事が幸せで

あなたより素敵な人はいないわと
継ぎ接ぎなぞり微笑んで
あなたからの言の葉も
己を映すその眸も
裡を頬を咲き綻ばせるに充分

ふたりの密やかな予行練習
其処にあなたの友らも添うて
真赤を彩る勿忘も
ひとつひとつが胸を打ち
満つ儘に潤む眸はヴェールに隠して

ほんとうの前の特別な一夜
今宵限りの花嫁として並ぶ身も
誰より幸せな花として
あなたの隣
咲き誇っていることを
あなたも感じているかしら
なんて
揺れる淡紫に答え見て

互いに互いへ互いの詞で
それは
指輪をくれた日をも過ぎるから
あなたと生きる今も先も……その先も
あなたを愛しているわ
ずうと、ずうと

あなたと同じく“だけ”と紡げないのは
いつかあなたとふたりで愛を向ける
そんなふたりの家族をも願うから
なんてほんとうの先の欲張りを
抱かれ交わす口づけの中
裡秘めるのを許してね

枯れた白薔薇
其処に抱く言の葉を
崩さぬように護るよに
柔くもしかと抱きしめて
それも互いと
一輪飾るわあなたの胸に


ライラック・エアルオウルズ
【花結】♢
裾の破けた真白の燕尾服
頭に花蔓絡む螺子を飾り
ふたとせ前に君が抱いた
フランケンの怪物を装えば

彼より素敵になれたかな?
継ぎ接ぎ描く容で柔く笑み
もちろん、君は凄く素敵だ
『彼の君』より『僕の君』が
綺麗と想えるのが嬉しくも
いとおしくて仕方ないほど

ではと、ふたり始める
いつかの密かな予行練習
燭台灯る火に添うよに
燈籠を揺らし、友を喚び
影の少年は僕に指輪を
影の少女は君の背追い
真赤に勿忘の花鏤めて

真白の君が、僕の傍に
咲き誇るよに添うこと
それで高鳴る裡を抑え
揺れる眸で見つめたなら
指を引いて、腕を寄せて
歩む路も恒と違う心地で

神様も牧師もいない祭壇
だから、君に誓わせてね
死がふたりを別つ先であれ
怪物と蘇る事が叶わずとも
――君だけを愛していると

君が返す詞に裡満ちて
永遠紡ぐ唇を唯恋うて
抱き上げれば、ひらめく真白
細まりゆく眸に君を刻んで
やわらかな誓いのくちづけを

ああ、侭に、流れ辿るなら
友へ花束を贈るのだろうが
枯れた白薔薇に籠もる詞は
『生涯を誓う』であるから
次の、――ほんとうのために
その花束は、抱くままでいて




 めぐるめぐる、春夏秋冬。
 花が咲いて、枯れて、あなたと出会ってまた咲いて。
 いつの間にか心のうちはあなたの花(なまえ)で埋め尽くされて。
 ふたとせ前の同じ日に腕を通した白。同じ装いだれど、心は全くと言う程違うもの。あなた色に染まってしまった心で抱く腕に人形はなく、あの日人形が着ていた装いを着たあなたの腕がある。
「彼より素敵になれたかな?」
「あなたより素敵な人はいないわ」
 頭に花蔓絡む螺子を飾ったフランケンシュタインの怪物姿のライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)が淡い笑みとともに声を降らせば、そっと見上げるのは彼色の瞳。幼さ残る指先伸ばし、肌に描かれた継ぎ接ぎなぞるは花嫁の。あの日腕に抱いた人形よりも、世界の何よりも一等素敵とティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)が微笑んだ。
「もちろん、君は凄く素敵だ」
 彼の表情を見れば、その思いは違えようもなく『知っている』。
 彼が沢山くれたから、彼がたくさん心の中に種をくれて大切に育ててくれたから、かんばせにも心にもさいわいの花咲かせ、ティルは愛おしげに瞳を和らげる。彼と居ると微笑みすぎて、瞳が蕩けてしまいそう。
「――『彼の君』より『僕の君』が綺麗」
「ライラック殿ったら……」
 ライラックが自身を持ってそう思えるようになったのも、重ねた月日とティルト綴った数多の物語があればこそ。年の差を気にし、時間の流れを気にしていた以前の彼ならば、きっと出てこなかった言葉だろう。
 ――では、始めよう。
 ふたりだけの密やかな予行練習を。
 手にした燈籠を燭台に揺れる炎のように揺らせば、燈籠が伸びて。
 影の少年は、指輪を手に。
 影の少女は、花嫁のヴェールを手に。
 降ろしたヴェールで君の顔が見られないことが少し物寂しく思うけれど、其れ故にその奥の表情を想像する楽しみも知っている。物語の頁を捲るような気持ちとは違う気持ちでヴェールを捲るのは、まだ少し先。
 ここには追いかける白ウサギもいないから、手を取り合いふたりは静かに廃教会の中を歩んでいく。
 参列者はいない。神様もいない。書き手も読み手もいない、ふたりきり。
 ほんとうの前だからこそ、互いに互いだけを感じて過ごす特別な一夜。
 嬉しくて、切なくて、愛おしくて。満ちる想いに滲む瞳でヴェール越しに覗い見れば、前向くあなたの顔はとても凛々しくて、ああ何度だって恋に落ちてしまう。この気持ち、忘れないわ。赤い勿忘が指先で告げずとも。あなたの隣、咲き誇れていることを、こんなにも感じるのだから。
 一歩一歩、ゆっくりとして歩みが止まるは、祭壇の前。
 誓うべき相手は、指先触れ熱分け合うひとりだけ。
「死がふたりを別つ先であれ、怪物と蘇る事が叶わずとも――君だけを愛している」
「あなたと生きる今も先も……その先も、あなたを愛しているわ」
 ずうと、ずうと。
 大切な頁を捲るようにヴェールが捲られ、見つめ合い、言葉を交わす。
 ライラックと同じようにティルが『だけ』とは紡げないのは、いつかの先、ふたりの未来を見ているから。いつかふたりで愛を向ける『贈りもの』に出会えるのを、家族になったふたりに家族が増えるのを、この上なく幸せを感じながらもその先の幸せを願ってしまっている。
 ああ、なんて贅沢。
 そう思えども、抱いた願いの灯火は消えやしない。
(あなただけと紡げない妾を許してね)
 思いは、ただ胸の裡の薔薇の下へと秘して。
 抱き上げられた腕の中、緩やかに瞳を閉ざせば、彼もそうして閉ざし――橙に揺れる燭台の灯りで伸びる影が重なった。
 誓いのくちづけは、やわく、甘く。
 この時が永遠に止まってしまえば良いのに。
 そう願う気持ちとともに、止まるのは惜しいと心が強く訴える。
 ともに生きることへの喜びは、この先ずっとふたりの物語に綴られていく。触れ合う度に、熱を分け合う度に、微笑い合う度に、さいわいはやわく甘く胸を満たすことだろう。
 名残惜しさを感じながら離れたくちびる。
 一度瞳を合わせて微笑み合って。再び瞳を伏せたなら、こつりと額を合わせあう。これから先も、なんて幸せなのだろうと、同じ気持ちを幾度も抱くのだろう。
 恒ならば、この先は花嫁の花束を友人たちへ贈るのだろうが――今日は予行練習。
 枯れた白薔薇に籠もる詞――『生涯を誓う』。
 崩れぬように護るようにと胸に抱かれたその花を、花嫁は一輪、花婿と己の胸に飾る。音に乗せず、ただ静かに、想いを行動に示した。
 いつかの、ほんとうの日には、友へ贈ろう。
 けれど今はまだ、枯れた白薔薇は胸に抱いたままに。
 神様がいないのだから、きっと誰も咎めはしないだろう。
 花嫁は『もう一度』を願い、あなたの唇へ熱を落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻
◇A

神が居なくなった廃教会、か
噫、そうだとも
私はきみの神なのだ
神不在のこの場所は、或る意味で都合がいいよ
邪魔する神(もの)が何も無いのだからね

そも、私は厄神だから
祝う場の神には好かれぬものだ

サヨには白無垢が良いだろうか?
しかし白いべぇるに、白いれぇすの洋装も良く似合うと思っているよ
然るべき時には、然るべきように用意をしよう
龍の巫女が神に嫁ぐのだから、花嫁行列も必要だろう?

ふふ、桜の頬もまた可愛らしい
サヨが葡萄酒を我慢してくれたから酒に酔って記憶を飛ばす心配もないし、ちょうど良いかな

三日夜の餅もまだだが
もちろん、誠にすると決めているよ
でもそれは未だこのときでは無い
右肩にそうと触れ撫でる
宿るのはきみの命を喰らう愛なる呪
この呪を救ってから
関係ないよ
サヨに宿る呪(想)なんて私の呪だけでいい
嫉妬だ

此処では誓の代わりに約束を交わそう
…大丈夫
きみが厄災ならば
私は厄を受け止める厄神
サヨの罪も共に背負ってあげる
あいしているよ
きみを赦さない

指輪の代わりに赤い絲を薬指へ
私は櫻宵を救ってみせる
だから、共に


誘名・櫻宵
🌸神櫻
◇A

誰もいなくなった教会だなんて雰囲気があるわね
幾つの旅立ちを見送ってきたのかしら

神様は此処にいるわ
私の愛しいかぁいい神様が
式場の神様とは仲が悪いの?
複雑なのね
私にとってはあなたが一番
私の災愛はあまいのよ

ふふ!
カムイには紋付袴がきっと良く似合うわ
凛々しく美しく、清らかで…
どちらでも構わないけれど、花嫁行列は恥ずかしいわよ
だから葡萄酒を飲ませなかったの?
カムイったら用意周到だわ

三日夜の餅って
……本気なの?カムイ
私は本当は幸せにはなっていけない、神の傍にもいてはならない化け物なのよ
ひとを喰らい殺して
斬り殺す事を楽しんで、たくさんの愛も幸いも未来も奪ってきた厄災よ
嘗ての「あなた」すら殺したのは今触れているこの身に宿る呪
愛をしるたびに
過去の罪がのしかかる

救ってくれるの?
そんな資格だってきっとない
嫉妬?面白い神様ね

けれど心が掬われているのは本当
うん…
約束して

そばにいて
ゆるさなくていいから
そばにいて
結ばれた赤い絲に唇をおとす
誠は其の時に

私の禍は、ほんに
あまい
愛しているわ
なんて言葉でも足らない




 鉄の門扉がギィギィと錆びた音を零し、枯れた草木がカサカサと音を立てる。幾つもの旅立ちを見送ってきた神も、手入れをする者さえもいなくなった廃教会は心淋しく――然れど、こういった雰囲気が好きな者には風情があると見えることだろう。
「神様は此処にいるわ」
 私の愛しいかぁいい神様がと櫻宵が傍らを見れば、そうだともとカムイが桜色を細める。カムイは神で、櫻宵はカムイの巫女だから、他の神様よりも傍らに彼が居てくれる事の方が大切だ。
「神不在のこの場所は、或る意味で都合がいいよ」
「式場の神様とは仲が悪いの?」
 唯一で、一等で、甘い災愛。そんな彼が口にした言葉に櫻宵は首を小さく傾ける。
 彼の神が云うには、西洋の神と日本の神、それから異世界の神とでは在り方がまた異なるが、邪魔神(もの)はいないに越したことはない、とのことだ。
「そも、私は厄神だから――祝う場の神には好かれぬものだ」
 何事もないように云う神へ、櫻宵は複雑なのねと返した。
「サヨには白無垢が良いだろうか? しかし白いべぇるに、白いれぇすの洋装も良く似合うと思っているよ」
 どちらも捨てがたいと話すのは、『いつか』の未来の話。
 手を引いて蝶番が外れた扉を潜り、ゆっくりとエスコートするように祭壇まで歩む間の語らい。
 然るべき時には然るべき物を。完璧にこなすから任せてほしいときりりとカムイが真剣な顔をするものだから、櫻宵は唇に指を添えてコロコロと笑った。
「カムイには紋付袴がきっと良く似合うわ。凛々しく美しく、清らかで……」
「サヨが望むのならそうしよう。花嫁行列をどれだけの長さにするかも考えておかなくては」
「……花嫁行列は恥ずかしいわよ」
「龍の巫女が神に嫁ぐのだから、必要だろう?」
 瞳をパチリと瞬かせるカムイがさも当然な顔をするものだから、櫻宵の頬が桜に染まる。その姿もまた愛らしいと微笑んだカムイは、葡萄酒を呑ませなくて良かったと口にした。櫻宵が酔って記憶を飛ばしては、今宵の――今から行う行為も忘れられてしまっては、神とてとても悲しいのだ。
 周到であったことを知り櫻宵は瞳を瞬かせるも、頼りになる己が神に一層惚れ込む想い――だが、次に放たれたカムイの言葉に、櫻宵は瞠目してしまう。
「三日夜の餅もまだだが」
「三日夜の餅って……本気なの? カムイ」
「もちろん、誠にすると決めているよ」
 好いた相手の本気の思いに、喜ばない者などいない。
 けれど櫻宵は、己が幸せになってはいけないと思っている。
 化け物だと、己を思っている。ひとを喰らい殺して、斬り殺すのを楽しみ、たくさんの愛も幸いも未来も奪ってきた厄災。愛を知る度に、過去の罪がのしかかり、幸せになっては駄目だと己を戒める。
 そんな櫻宵は、本当はこの神の側にいることとて許されない。
 それなのにこの神は、本当に優しいのだ。欲しい熱をくれる。愛をくれる。傍らに居てくれる。今だって優しく右肩にそっと触れ、労るように撫でてくれる。――そこに宿るのは『嘗てのカムイ』を殺した呪なのに。
「きみをこの呪から救ってみせるよ」
 この愛なる呪はきみの命を喰らうから。
「……救われる資格なんてないわ」
「資格などいらない。サヨに宿る呪(想)なんて私の呪だけでいい」
 下がり眉を更に下げる櫻宵に、カムイは嫉妬だと告げる。
 櫻宵に資格があろうがなかろうが、カムイは救うだろう。そうと決めたのなら己の思う通りにするが神の性分だ。
「さあ、サヨ。此処では誓の代わりに約束を交わそう」
「うん……約束して」
「……大丈夫。きみが厄災ならば、私は厄を受け止める厄神。サヨの罪も共に背負ってあげる」
 ――あいしているよ。
 櫻宵の左手を掬い上げて、柔らかに愛を紡ぐ。
「きみを赦さない」
 きみが罰されたいと願うのなら、そうしよう。
 過去の過ちを許されたくないと願うのなら、そうしよう。
 だから共に――、と薬指に指輪の代わりに赤い絲。
 必ずきみを救ってみせる。
 白魚めいた指に、約束を、結んで。
「そばにいて」
 ――ゆるさなくていいから、そばにいて。
 血の色にも似た赤を結ばれた指を見下ろして、櫻宵は約束の証へ唇を落とす。
 赤は血の色。命の色。約束の色。あなたの色。
 どれもこれも、あなたに繋がって愛おしい。
「私の禍は、ほんに――あまい」
 唇で触れて、愛おしむ。
 約束をくれるあなたは、私だけの災愛。
 あなたが私に分けてくれる心は、祿い。
「あいしているよ、サヨ」
「愛しているわ、カムイ」
 そんな言葉では足りないくらいに。
 足りないからこそ、何度だって紡ぐのだ。
 あいしている、あいしているよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
SPD
【B】引き続き魔女の衣装のままで。

互いに約束を覚えていて、そしてそれを今果たそうとする。……ちょっと、いいえすごく羨ましい。
私も約束が欲しかった。今の私じゃなくて過去世の私がだけど。
もう終わったことだけど。でも、約束があればもう少し生きられたかもしれないって、まだ頑張れたかもしれないってどこかで思ってたから。
……いつまでも感傷に浸ってはだめね。
今日はお祝いの日。お二人の新しい門出を祝わなければ。少しでも心地よく過ごせるようにお手伝いを。とは言っても手すきの所ぐらいしかできなさそうではありますが。
式を見ながらまた再びお二人が出会えるように願って。
今私がこうしてあるように、未来を祈りたいの。


御園・桜花


教会へ行く前に色々な棒付キャンディーまとめてキャンディーブーケ作りリボンで飾る
「子供っぽいと言われてしまうかもしれませんけれど。ハロウィン時期ですから、ウェディングブーケもキャンディーブーケの方が良いのかな、と思いましたの」

UC「幻朧桜夢枕」使用
「転生して、一緒に大人になって。今度は白くて大きなウェディングブーケを持って、お二人で結婚式が挙げられますように」
秋乃嬢にキャンディーブーケ渡し2人が共に転生して大人になって、教会で結婚式を挙げられるよう願う

「お幸せに、どうかお幸せに。お二人で転生なさって、もう1度お二人一緒に望みが叶えられますように」
フラワーシャワー手伝いながら喜びの歌歌い送る


宵雛花・十雉
【蛇十雉】【B】

なんだかそういう関係っていいね
きっと他の人には分からない、2人だけの「何か」があるんだろうなって思う

オレたちみたいか
へへ、そうかも
そうだったらいいな

結婚式って綺麗だなぁ
新郎新婦も参列者もみんな幸せそうに見えるよ

もう、なつめったら泣いてるの?
でもオレも感動してうるっときちゃった

へぇ、なつめでも結婚式したいって思うんだ?
大丈夫だよ、なつめなら
強いし優しいし、きっと可愛いお嫁さんもらえるよ
相棒のオレが保証する

なんて言いつつ、そうなったらなつめはオレのことなんて忘れちゃうかなって
少しだけ寂しい気持ちになった

はぁ!?
ば、馬鹿じゃないの
男同士で結婚できるわけないだろ
照れ隠しに思い切り叩いて


唄夜舞・なつめ
【蛇十雉】【B】

まさか幼い2人の結婚式に参列するとはなァ

アイツら死ぬ前は
すっげー仲良かったんだってよ。
幼なじみで、親友で、ライバルで
喧嘩もして、かけがえのない存在だったんだと。

なんか、俺らみたいだなァ?

重ねちまっていーもんか
わかんねーけど
何となく似てる気がしてよ

あー、やっぱ
生で見るのってすげーこう…
ダメだ視界が…(涙目)
うう、良かったなぁお前ら…
ずび…すっげー幸せそうだ

…俺もいつか出来んのかな
幸せにしたい奴とこーいう事

そりゃあなァ
けど嫁さんにするなら
ときじみてェな人がいいなァ
一緒にいて落ち着くし
家事もできるし
幸せにしてやりてーし
…あれ、じゃあ別に
ときじが嫁でもいいよな?

…って痛!何すンだよ!


ピリスカ・ニスク
♢♡ WIZ
※仮装は黒いローブと帽子とほうきの魔法使い風で
(きゃ~、結婚式よ!スタアよ!か・わ・い・い!)
ええと、素敵な式に参列させていただけるかしら。会場の準備も手伝うわ。このクリーナー...魔法のほうきと布とお薬で、どんなものでも綺麗にできるの。あ、綺麗すぎないほうが雰囲気が出るのかな?とにかく色々協力するから、お願い。




 神様が居なくなった教会には、神父もいない。
 綺羅びやかな装飾も、門出を祝う祝福の鐘も、あるはずのものは全てない。
 けれど、『約束』と見届ける参列者の姿があった。
「……文彦」
「秋乃」
 魔女の装いの夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が秋乃の手を引いて連れてきた廃教会には、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)と秋乃と似た姿の南瓜頭の子ども――文彦が其処に居た。
 ふたりは南瓜頭の姿でもお互いを認識出来ているようで、信じられないと言った様子で立ち止まった秋乃に、文彦が臆した様子もなく手を差し出した。
「秋乃、随分と待たせてしまったけれど、約束を果たそう」
「……約束、覚えていてくれたのね」
 文彦の手に秋乃の手が乗り、応える。
 死後何十年も経っても、ふたりは十歳の子供のまま。
 けれど死して尚、あの約束を覚えている。
(……すごく、羨ましい)
 約束をほしいと願ったことのある藍は眩しげに瞳を細め、ふたりを見守る。今の藍ではなく過去世の、もう終わってしまったことだけれど、それでもいいなと思えてしまう。約束があればもう少し生きられたのかもしれない、頑張れたかもしれない。そう、思うから。
(……いつまでも感傷に浸ってはだめね)
 藍は気持ちを切り替えて、ふたりの門出を祝うべく手伝いを申し出た。
(きゃ~、結婚式よ! スタアよ! か・わ・い・い!)
 結婚式の噂を聞いて見に来たピリスカ・ニスク(ミレナリィドールの電脳魔術士・f27382)はスタアふたりに気付いた。
 小さなふたりのために祝いの場を整えるべく会場の掃除を……と先に廃教会を覗き込み、これは綺麗にしないほうが雰囲気が良いと気付き、参列するべく席へと収まる。
「ハロウィン時期ですから、ウェディングブーケもキャンディーブーケの方が良いのかな、と思いましたの」
 子供っぽいと言われてしまうかもしれませんけれど、と桜花は廃教会へ来る前に買っておいた棒付きキャンディーのブーケを秋乃へ差し出した。
「ブーケ? 可愛い。見て、文彦。あたくし、花嫁に見えるかしら」
「秋乃は……」
(が、頑張って……!)
 言い掛けて口を閉ざして俯いてしまう文彦に、ピリスカは思わずエールを贈る。その場に居合わせた者たちの心は、きっと同じだろう。
「……秋乃はいつも一等きれいで可愛い」
「文彦……!」
 ふたりは幼馴染で、親友で、ライバルだったからこそ、思っていても恥ずかしくて言えなかった言葉。きっと南瓜の中の彼の顔は赤くなっていることだろう。
 嬉しげに文彦の手を握った秋乃の姿を見つめ、桜花は願いを口にする。
「転生して、一緒に大人になって。今度は白くて大きなウェディングブーケを持って、お二人で結婚式が挙げられますように」
「また、秋乃に会えるかな」
「あら、あたくしを見つける自信がなくて?」
「馬鹿にするな。俺を誰だと思っている」
 それがふたりのいつものやり合いなのだろう。
 大きな扉をくぐって祭壇へ向かう間も、ふたりは離れていた時を埋めるように言葉を交わし合う。
「……なんだかいいよね」
「アイツら死ぬ前はすっげー仲良かったんだってよ」
 参列席に座ってぽつりと零した宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)に唄夜舞・なつめ(夏の忘霊・f28619)が返す。ふたりの邪魔をしないように静かに見守りながら、柔らかな笑みを零して。
 あのふたりは幼なじみで、親友で、ライバルで、喧嘩もして、かけがえのない存在。それは何だか自分たちのようだったから、親近感を感じるとなつめが口にすれば、十雉は目を瞬かせ、それから腑に落ちたような顔をした。
「オレたちみたいか……へへ、そうかも。そうだったらいいな」
 なつめと十雉の横を、秋乃と文彦が歩いていく。
 仲良く両手を繋いだふたりの姿は『ちゃんとした』式の姿ではない。
 けれど、それでいい。
 また会えることを祈りながら藍がライスシャワーを撒いて。
「お幸せに、どうかお幸せに。お二人で転生なさって、もう一度お二人一緒に望みが叶えられますように」
 ふたりの幸せを願う桜花がライスシャワーを撒いて喜びの歌を歌って、ピリスカが胸の前で手を組んでふたりを見守る。
 南瓜頭で文彦と秋乃の表情は見えないけれど、きっと微笑み合っている。
「結婚式って綺麗だなぁ」
 みんなの幸せがぎゅっと詰まって、宝箱みたいだ。
 寂れた廃教会のはずなのに、橙の灯りも、参列する人々も、みんな優しい。
 なあ、となつめへと同意を求めれば――。
「えっ、もう、なつめったら泣いてるの?」
「うう、良かったなぁお前ら……ずび……すっげー幸せそうだ」
 映像で見るのとは違う、空気感というのだろうか。その場にいるからこそ、肌や心に直接感じるものがある。手でグシグシと涙を拭いながら、小さな新郎新婦を綺麗なものを見るように見つめる瞳は自愛に煌めいて、十雉の鼻の奥もツンと痛くなる。
「……俺もいつか出来んのかな。幸せにしたい奴とこーいう事」
「へぇ、なつめでも結婚式したいって思うんだ?」
「そりゃあなァ。けど嫁さんにするならときじみてェな人がいいなァ」
 強くて優しいなつめなら、きっと可愛いお嫁さんがもらえるよ。相棒のオレが保証する……と続くはずだったのに、落とされた爆弾に「へ……」と十雉は固まった。
「一緒にいて落ち着くし、家事もできるし、幸せにしてやりてーし……あれ、じゃあ別に、ときじが嫁でもいいよな?」
「はぁ!? ば、馬鹿じゃないの」
「……って痛! 何すンだよ!」
 思わず立ち上がって照れ隠しになつめを殴った十雉の声となつめの声が廃教会に響き、祭壇へと辿り着いた小さなスタアふたりと、参列者全員の視線がふたりへと集まった。
「あ、いや……続けて下さい……」
 音もなく座り直して縮こまる十雉に、秋乃がクスクスと笑って。
「どうぞ、受け取ってくださいな!」
 消えてしまって地面に落ちる前にと投げられたキャンディーブーケは十雉の手へと収まった。
「次はあなたよ! どうぞお幸せに!」
「なあときじ、うまそうだな、それ」
「うるさい、馬鹿! なつめのせいだぞ!」
 ふたりはとても仲良しだ。
「俺たちみたいだな」
「ええ、文彦。あたくしたちもきっと、周りからああ見えていたのよ」
「そうだったのなら……俺に悔いはひとつもない」
「あたくしも。あたくしも、あなたとともに生きられて、幸せでした」
 祭壇の前に立ったふたりが、手を握り合う。
 神様はいない。神父も居ない。けれどふたりは、愛を誓う。
 誓っていいと、参列してくれている人たちが言ってくれているから。
 ふたりの愛を、ふたりの終わりを、ふたりの始まりを、見守ってくれている人たちがいるから。
「秋乃、すきだよ」
「文彦、だいすきよ」
 桜花弁が舞って、ふたりの頭の南瓜が、光の粒になって消えていく。シーツの裾も、覗く足も、光になっていく中――ふたりの表情があらわになった。
 両手で互いの手を握りあい、幸せに満ちた瞳でお互いだけを見つめ、小さなスタアのふたりは消えていく。
 けれど消える直前、何かに気付いたふたりは参列者の方へ身体を向けて。
 ――舞台の最後のお辞儀を残した。

 ふたりの今世での舞台はこれでおしまい。
 けれどきっとふたりは再びこの世を騒がせることになるだろう。
 それは十年後か二十年後か――。
 サクラミラージュの読売か、それとも銀幕の中で。
 また会える日が、きっとくることでしょう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月07日


挿絵イラスト