13
花燭フェスティヴィタ

#サクラミラージュ #お祭り2021 #ハロウィン #おでかけ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ
🔒
#お祭り2021
🔒
#ハロウィン
#おでかけ


0




●運河の街
 空が朱から紺へと色移り始めると、至るところに飾られた南瓜の洋燈が、ひとつ、ふたつと灯り始める。
 そこは、帝都の一角にある街。西洋風の建物の隙間を、細く長い運河が縫うように走るその街並みは今、ハロウィン一色に染まっていた。
 街灯と街灯を繋ぐ、おばけや蝙蝠、魔女などのマスコットを繋げたガーランドたち。
 川辺の庭先に飾られた南瓜のイルミネーションが水面に淡く光を零し、ふわりと舞う幻朧桜の花弁が賑わう街に彩と香りを添える。
「それに誘われたのか、か弱い子供の影朧が、南瓜に宿って現れたんだって」
 倒すのかと問えば、海藤・ミモザ(水面の陽・f34789)はううん、と首を横に振った。
「勿論、みんななら一撃で倒せると思うけどね。せっかくのハロウィンだし、愉しいほうが良いでしょ?」
 だから、子供たちを見かけたら、お菓子をあげたり、おすすめの場所を教えてあげて欲しい。それだけでいい。
 あとは猟兵たち自身が愉しむことで、彼ら影朧を転生に導くことができるはずだ。何らかの仮装をしていれば、子供の影朧たちもより警戒心を解いてくれるだろう。

●ハロウィンナイトの愉しみ方
「街でできることは色々あるけど、やっぱりゴンドラが素敵だなー」
 この時期のみハロウィンの装飾を施されたその船首には、様々な表情の南瓜の洋燈が飾られ、短くも密やかな船旅の標として夜を照らす。
 涼やかな秋風に桜踊るなか、流れゆく街並みに、揺らぐ水面に、あなたはなにを想うだろうか。
「あとは、この街のカフェーも見逃せないよねー」
 レトロな雰囲気の店内も、すっかりハロウィン色。
 木製のテーブルにはひとつずつ、ハロウィンモチーフの硝子洋燈が置かれ、柔らかな影を落としている。
 期間限定のメニューは、2種のクリームソーダ。
 ひとつは、オレンジソーダのうえに南瓜味のホイップを乗せ、魔女帽子を被ったおばけ風のバニラアイスを飾ったもの。
 もうひとつは、ブルーベリーソーダのうえに生クリームとバニラアイスを乗せ、ラズベリーを鏤めたもの。そのうえには、チョコレートで象った蝙蝠が添えられている。
 ほかにも、南瓜をベースにしたクッキーやマフィンなどの焼き菓子、パンプキンパイや南瓜ムースなどのケーキ。
 食事なら、南瓜のスコーンやグラタン、クリームパスタ、南瓜サラダなど。
 掌サイズのちいさな南瓜を器にしたパンプキンプリンやスープは、見た目も愛らしい。
 カフェー自慢のラテアートは、この期間だけハロウィンモチーフを描いてくれるという。どんな絵が描かれてくるのかを愉しむのもまた、一興だ。

 それは、秋の終わりと冬の始まりの境界。その特別でありふれた一夜の祭。
「みんなが愉しんだぶん、影朧もきっと満たされるよ」
 ――だから目一杯、満喫しようね。
 娘はそう言って、瞳を煌めかせた。


西宮チヒロ
こんにちは、西宮です。

ハロウィン一色の運河の街で、一夜の夢を愉しみましょう。

●全体補足
・当シナリオは「第1章:運河の街巡り」「第2章:カフェーでのひととき」の2章構成です(どちらも日常)。
・各章のPOW/SPD/WIZの選択肢はあくまでも一例です。

●プレイング
・同伴者はご自身含め2名まで。プレイング冒頭に【IDとお名前】もしくは【グループ名】をご明記下さい。
・対影朧のプレイングは1行程度で構いません。寧ろ愉しむ方に全力を注いで下さい。
・OPにない情報はお好きにプレイングに盛り込んでください。極力採用します。
・昨年以前の南瓜SDの仮装で参加する場合は「西暦+南瓜SD」の表記でご指定下さい。
・公序良俗に反する行為、飲酒喫煙、その他問題行為は描写しません。

●各章補足
<第1章>
ゴンドラでの船遊びがメインですが、水辺や露天散策も可能です。
<第2章>
ラテアートの絵はプレイングで指定しても構いません。

●プレイング受付&採用
・ご参加はどちらかの章のみでお願いいたします。
・各章オーバーロード未使用の方は【8名程度】の採用を想定しています。
 オーバーロード使用の方はプレイングに問題がない限り全て採用します。
-------------------------------------------
<第1章>10/21(木)8:31~10/22(金)8:30
<第2章>当シナリオのタグにてお知らせします
※オーバーロード使用の方は、送信可能であれば上記期間外でも受付します。
-------------------------------------------

●NPC
お声かけあればミモザがご一緒します。
愉しいこと、美味しいもの、どちらも大好き&幸せになれます。
ゴンドラなら燦めく風景と雰囲気に浸り、カフェーなら甘味一直線です。

皆様のご参加をお待ちしております。
90




第1章 日常 『花水路の街』

POW   :    街を見て回る

SPD   :    ゴンドラに乗る

WIZ   :    市や店を覗いてみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

陽向・理玖
【月風】

瑠碧の対の金烏・漢服風仮装
恋人と手繋ぎゴンドラへ

南瓜の洋燈見っけ
離れてれば大丈夫?
反対側の船尾で腰掛け
雰囲気だけでも楽しまないとな
ほら愛嬌のある顔してる

おっ動き出した
そういや俺ゴンドラ初めてかも
瑠碧は?
凄ぇよな
水の上進んでるのにすっごい街が近い
思わず立ち上がりかけ
ちょう運転上手くね?
…おお
大人しく座る

ほんと不思議だよな
ハロウィンなのに桜が舞って
街が水路に映って桜も映って
…何かに化かされそう
まぁ瑠碧になら悪戯されてもいいけど

でもやっぱ風はちょい涼しいな
…寒くねぇ?
繋いだ手絡め反対の手で撫で

そっか
嬉しげに表情緩め
次は肩抱き寄せ

そろそろ終いか
名残惜しいな

影朧に会えば南瓜に型抜きしたチョコ渡し


泉宮・瑠碧
【月風】

2020南瓜SDの仮装で
恋人と手繋ぎゴンドラへ

火は苦手なので、洋燈と少し距離を置き
並んで腰かけて
…でも、洋燈は、見るのは楽しいです

ゴンドラは、以前乗りましたが
水路からで、座ってもいますから
街を見上げるのも、また雰囲気が変わりますね
…運転上手ですが、移動中に立つのは駄目ですよ

サクミラですが
この街並みは出身世界に似て、少し落ち着きます
幻想的な光景を通る風に、心地よく目を細めて
寒さには強いので大丈夫
…でも、理玖の温もりは好きです

名残惜しくもゴンドラを降りて
影朧の子を見つけたらしゃがんで招きます

来てくれたら
お化け形の白いアイシングクッキーを渡して
合言葉は
とりっくおあとりーとって、言うそうですよ



●桜と橙に染まる街
 西空を染めていた残照と入れ替わるように、南瓜の燈會が灯った。
 ひとつ、またひとつと灯り、瞬く間に街を彩った橙に、人々からも歓声が沸いた。古きケルト人にとっての、年の終わりと始まりの祝祭。現世と黄泉が繋がる日、サウィンの夜の幕開けだ。
 入口に並ぶ巨大南瓜に出迎えられ、南瓜のアーチを抜ければ、ハロウィン一色の街並みが現れる。黒猫やおばけのオーナメントが飾られた、軒先や窓辺。そのドアの前に並べられ、積み重ねられた表情豊かな南瓜たちが、街にあたたかな色と光を滲ませている。
『わあ! 南瓜の形のチョコレートだ!』
『これ、もらっていーの?』
「ああ。そのために持ってきたんだからな」
「よければこれもどうぞ。合言葉は、とりっくおあとりーとって、言うそうですよ」
『ありがとー! わかった!』
 目線を合わせるようにしゃがむ泉宮・瑠碧(月白・f04280)からおばけ形の白いアイシングクッキーを貰い、子供の影朧たちは更に喜び飛び跳ねた。つられて笑う陽向・理玖(夏疾風・f22773)にも手を振ると、弾む足取りでぱたぱたと駆けてゆく。
 その後ろ姿を見送ったふたりもまた、そぞろに歩き出した。黒と赤の地に金烏の舞う漢服風の仮装に身を包んだ理玖と、対となる青地に薄く草花の流れるそれを靡かせる瑠碧。探していたゴンドラ乗り場の看板見つけると、それを辿り岸辺へと続く石畳の階段を下る。
「あ、南瓜の洋燈見っけ」
 船着き場に並ぶ、色とりどりのゴンドラたち。そのうちの金糸雀色の船首に飾られた子南瓜に笑みを零すと、理玖は肩越しに瑠碧の様子を窺った。
「離れてれば大丈夫?」
「少し、距離を置けば。……でも、見るのは楽しいです」
「なら良かった。雰囲気だけでも楽しまないとな」
 ほら、愛嬌のある顔してる。そう微笑む理玖に頷きゴンドラに乗り込むと、ふたりは船尾寄りに並んで腰かけた。ふわりと吹いた秋風に、どちらからともなく掌に触れる。絡めた指先の熱が、不安も夜気も優しく溶かしてくれる。
 ゴンドラ漕ぎが心地良いテノールで、短く歌った。出航の合図だ。ゆっくりと風が、風景が、流れ始める。
「おっ、動き出した。……そういや俺、ゴンドラ初めてかも。瑠碧は?」
「以前、乗ったことがあります」
「そっか。凄ぇよな。水の上進んでるのに、すっごい街が近い」
「水路からで、座ってもいますから。街を見上げるのも、また雰囲気が変わりますね」
 洋燈の影が揺らめく石畳を行き交う、たくさんの人々。運河に乗り出した飲食店のテラス席から溢れる笑い声。この街にいる誰もが、この一夜限りの祭りを愉しんでいる。
 賑やかな喧噪からゆっくりと離れ、ゴンドラは細い運河へと舵を切った。2艘ほどならすれ違えるほどの河を淀みなく進む様に、
「ちょう運転上手くね?」
「……運転上手ですが、移動中に立つのは駄目ですよ」
 感嘆の息とともに思わず腰を上げかけた理玖の手を、瑠碧がそっと引いた。おお、とそれに気づき、理玖は再び座り直す。
 あたりに満ちる水面の光と、弾ける水音。どこかで演奏をしているのだろう。頬を優しく撫ぜる風が、薄紅色の花弁を運び、微かなリュートの音色を耳許に残してゆく。
 緩やかに吹く風に混じる桜の香に、エルフの娘の眦も自然と綻んだ。帝都ながらも故郷の世界に似ている風景は、どこか心を穏やかにしてくれる。
「にしても、ほんと不思議だよな」
 秋に舞う桜。あたたかな色に染まる街並み。それらが水路に映り、ゆらりゆらりと揺れる様は、まるで朧のよう。
「……何かに化かされそう」
 まぁ瑠碧になら悪戯されてもいいけど。そう言ってくすりと笑い視線を向けた理玖にひとつ瞬くと、瑠碧は柔らかに眸を細めた。
「でもやっぱ風はちょい涼しいな。……寒くねぇ?」
 言いながら、そっと、けれど熱を込めて、指を柔く絡め直す。愛しさを滲ませながら、灯に淡く色づく柔らかな薄青の髪をゆっくりと撫でると、瑠碧も静かに身を寄せた。
「寒さには強いので大丈夫。……でも、理玖の温もりは好きです」
「そっか」
 愛らしい言葉に口許を緩ませ、理玖はその細い肩を抱き寄せる。
 どうか、どうか。――もうすこしだけ、このひとときを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

世母都・かんろ
仮装は淡い色彩の善き魔女
こども達にお菓子をわけてゴンドラに

えと、せっかく、だか、ら
ミモザ、さん、も
ご一緒、でき、たら

運河を渡るゴンドラははじめてで
なんだかそわそわ

わ、ぁ
とって、も、ロマン、チック

南瓜の洋燈はお洒落で帝都らしい
けど、桜が舞ういつもの帝都とも少し違う
一人でそんな風景を見るのも
もったいなかったから

ミモザ、さん、は
帝都、はじ、め、て、です、か?
わ、たし、は
よく、来る、の

でも、こんな、素、敵、な、船旅
珍し、く、て
なんだ、か、歌い、たく、なる、わ

…あ
歌うの、すき、だから

街の、あかり、も
装飾も、きらめ、いて
あたたかく、なる、の

夜桜の水面に明かりが揺れて
とろけそうな夜
影朧も、満たされますように



「わ、ぁ……とって、も、ロマン、チック」
「本当……こんなに綺麗なの、故郷でも見たことないよ……!」
 青の濃淡に染まるゴンドラに揺られ、淡い彩を纏う善き魔女と南瓜髑髏の印を戴く女海賊が揃って息を洩らした。
 南瓜の洋燈で飾られた街並みは、どこを見てもお洒落で帝都らしいけれど、桜が舞ういつもの景色ともすこし、違う。
 そんな特別でありふれた時間を、景色を、ひとりで過ごすのは勿体ないから。
「さっき逢った子供の影朧たちも、お菓子喜んでくれて良かったね」
 夜の灯に一層眸を煌めかせて笑う海藤・ミモザ(水面の陽・f34789)は本当に嬉しそうで、一緒に過ごそうと声をかけて良かったと、かんろも柔らかに微笑んだ。
 そういえば、自分もゴンドラは初めてだったけれど、彼女もなのだろうか。船を前にそわそわとしていたら、勇気づけようと「ここは海賊の私に任せてー!」と意気揚々と乗り込んだ途端、大きく波打って揺らいだ船にとても驚いていたことを思い出し、かんろは笑みを深くする。
「ミモザ、さん、は、帝都、はじ、め、て、です、か?」
「うん、初めて! かんろさんは?」
「わ、たし、は、よく、来る、の」
「いいなー。こんな愉しいこといっぱいな素敵な場所なら、私も日参したいくらいだよー」
 桜咲いてるなら、やっぱりお花見かな!? でも、お洒落カフェーでのんびりするのもいいよね。なんてはしゃぐミモザは、かんろより年上のはずなのにどこか子供っぽくて、思わずふふ、と笑みが零れる。
「でも、こんな、素、敵、な、船旅、珍し、く、て。なんだ、か、歌い、たく、なる、わ」
「歌?」
「……あ。歌うの、すき、だから」
「では魔女様。その『すき』を、わたくしにも分けていただけますか?」
 演技めいた口調で軽く頭を下げたミモザは、顔を上げるとひとつ微笑んだ。それに応えるように頷いた魔女は、美しく伸びやかな歌声を響かせ始める。
 人々の語らう声。街を縁取る万彩の灯。それを纏いながら、歌に乗って淡く光の螺旋を描き零れてゆく花びらたち。
 そのすべてに浸るように眼を伏せるミモザはやはり幸福そうで、かんろもまた、胸の内に宿るぬくもりに眦を緩めた。
 夜桜の揺蕩う水面に、光が揺れる。
 この蕩けそうな夜に、影朧たちも満たされますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
仮装:海賊風。ジャケットや帽子など一式

折角の祭りの夜だが今は一人だし、影朧の子供と一緒に遊ぶとしようかな

ゴンドラに興味がある子供たちを見つけた
こんな時間に出歩いている子供を海賊が見つけたらどうなるか分かるか?
そう、連れ去ってしまうんだ……なんてことをおどけた様子で言いながら、海賊船ならぬゴンドラに連れて行くとしよう(2~3人くらい纏めて連れていく)

ボートを漕いだ事はあるし、ゴンドラも同じ要領でどうにかなるだろう
落ちたら危ないからあんまり身を乗り出したりしないように……とか注意しながら、ゆっくり景色を楽しみつつ運河をゆく
まさに非日常って感じだよな

なんだ、腹が減った?それじゃ、軽く食事に行こうか



 ちいさな蝙蝠のシルエットが浮かぶ街灯に、南瓜や秋の味覚をいっぱいに積んだ荷馬車。
 案内板よろしく、街の要所を示す骸骨飾りの指さす方へと歩く、魔女や狼男、白布を被ったおばけたち。道化師が弾むように奏でるアコーディオンの調べ。
 祭を彩るものたちに囲まれながら、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はゆるりと街を散策していた。見慣れた帝都のはずなのに、今日ばかりはまるで異国のようだ。
「なんだ、乗りたいのか?」
 船着き場で佇む子供たちを見かけ、声をかける。頭からすっぽりと南瓜を被っているが、猟兵なら容易く知れた。――影朧だ。
『わ! 海賊だ!』
「そう、俺は海賊。こんな時間に出歩いている子供を海賊が見つけたら、どうなるか分かるか?」
『ど……どうなるの……?』
「そう、連れ去ってしまうんだ……」
 息を吞んだ子供たちに、おどけたように冗談だと伝えると、彼らの警戒心も程よく溶けたようだ。ゴンドラでの船旅に誘えば、皆喜んで頷いた。
 折角の祭りの夜だ。ひとりで過ごすより、影朧たちと遊ぶほうが彼らにとっても良いだろう。
 元よりそのつもりだった鏡介は、海賊船にも似た夜色に豪奢な船首の煌めくゴンドラを選ぶと、子供たちを乗せて運河へと繰り出した。ボートを漕ぐ要領で、緩やかに船旅の舵を取ってゆく。
『すごーい! 水の上走ってるー!』
『水つめたーい』
『光がきらきらきれいー!』
「落ちたら危ないから、あんまり身を乗り出したりしないように」
 言いながら、はしゃぐ子供たちの姿にはつい笑みが零れる。
 海賊帽をくい、と上げて見渡せば、視界いっぱいに広がるあたたかな光と異国の景色。まさに、非日常。今宵限りの、夢の時間だ。
『せんちょー! お腹空いたー!』
「それじゃ、近くの街に寄って、軽く食事に行こうか」
『やったー!』
『さんせー!!』
 賑やかな声に笑顔を返しながら、鏡介は意気揚々と櫂を持つ手に力を込めた。そうして大きく旋回した船は進む。光集う、あたたかな場所へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

猫実・夜澄
ハロウィンのお祭りと聞いて!
仮装はパンの魔女(イラスト有り)です。
街もハロウィン一色で、とても素敵ですね。

ミモザさんは初めまして、猫実夜澄と申します。
もし良かったら街巡りをご一緒して頂けませんか?

はい、ミモザさんもお菓子をどうぞ!
焼き菓子を沢山作って持って来ましたので。ハロウィン柄のクッキーです。
(お菓子は幾らでも籠から出て来ます(※詳細不明)近くの人や他の参加者に配ったりは自由にして貰って構いません(多くの人に食べて貰った方が嬉しいので)

玲瓏の子供達を見掛けたら、お菓子をあげます。
「はい、どうぞ」
ハロウィンなのですから、楽しい方が良いですね。私のお菓子もそれにお手伝い出来れば嬉しい限りです。



 はじめまして、に続く街巡りのお誘いにふたつ返事で頷いた海賊ミモザは、パンの魔女姿の猫実・夜澄(きつねのパン屋さん・f18329)と夜の祭りに繰り出した。
「街もハロウィン一色で、とても素敵ですね」
「だねー! 飾りも食べ物も、ひとつひとつ凝ってて可愛い……!」
 南瓜の灯りに導かれて辿り着いた広場には、焼き菓子にホットドリンク、ちょっとした軽食から雑貨まで、様々な露店が軒を連ねていた。
 おばけに見立てた電球を連ねたり、緋色の天鵝絨を天蓋のように緩く掛けたり、さらには魔女の帽子を象ったようなテントまで、店自体も遊び心で溢れている。
「あっ! そうだ忘れてた……!」
「どうしました?」
 急に立ち止まり、何かを思い出した様子のミモザに、夜澄はきょとんと眸を瞬いた。
「私、まだ『トリック オア トリート!』ってやってない……!」
 なにぶん、出自が妖精のうえに、長いあいだ人との交流に飢えていた娘だ。やってみたい、と眸を煌めかせるミモザにくすりと笑うと、パンの魔女はどうぞと言葉を促した。
「夜澄さん! トリック オア トリート!」
「はい、ミモザさんもお菓子をどうぞ!」
「わーい! ありがとー♪」
 ずい、と差し出された籠には、溢れんばかりの夜澄お手製のハロウィン柄のクッキーがあった。
 プレーン味のおばけ型に、ココア味の黒猫型や魔女型、マーブル模様の南瓜まで。どれにしようか悩んだ末、夜澄に勧められて1種類ずつ味わっていると、どこからか感じるひとつの視線。
『と……とりっく、おあ、とりーと……!』
 ふと足許を見ると、ちいさな子供の影朧たち。ぼそりと呟いた声が可愛くて、娘ふたりは見合ってふわりと微笑んだ。
「はい、どうぞ」
『お姉ちゃん、ありがとう!』
「どれもすっごく美味しいよー」
 喜ぶ子供たちへ絶賛しながらミモザが勧めれば、
「お、ならオレにもひとつくれないか? 大人だけどな」
「なら私も!」
「こっちにもひとつ貰えるかい?」
 その声を聞きつけた周りの仮装者たちが、次々と集まってくる。
 折角のハロウィンだ。愉しいほうが良いし、自身の菓子がその一助になれば嬉しい限り。
「はい。まだまだありますから、どんどん召し上がってください」
 気づけば大きな輪が生まれ、一層賑わう広場の一角。笑顔で味わう人々に、夜澄もまた、花のような笑顔を返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
栗花落さんf03165と
仮装は2019南瓜SD/幽霊の花嫁

街を渡る風は確かに秋の温度だけれど
僕らに春を届けてくれるから不思議だね
桃色の花弁で満たされた運河をゆきながら
眺める世界は確かに一夜限りの悪戯のよう

観光という非戦闘行為に没頭しているんだ
僕もお菓子入りブーケを皆に投げるね
ふふ
沢山あるから取り合わないで

…おや
アリスからもそう言われるとは驚きだ
トリックとトリートどちらが正解か
一瞬真剣に考えるけれど
川に突き落とされたりしたら大変

背伸びしている自覚も
こんな時だけ子供ぶるのも
半分大人な証なんだけどな
内心微笑ましく思いつつ

僕は大きな子供なので
ブーケを真上に投げて悪戯で返すよ
皆幸福を逃がさず受け取ってね


栗花落・澪
鵜飼さん(f03255)と
仮装:2020南瓜SD。アリスです

風が気持ちいいねぇ
水上だと流石にちょっと冷たいけど
あ、ほら鵜飼さん、桜つかまえたよ

ふわり落ちてきた花弁をそっと手に乗せ
ゴンドラから街並みを眺める
桜とハロウィン独特の空気感の組み合わせは
まるで異世界に迷い込んだように不思議

子供達には優しく手を振り
【指定UC】で呼び出したハレンに★飴を届けてもらう
お代わりあげるから降り口で待ってて

あ、そうだ
鵜飼さん
トリックオアトリート

悪戯っぽい笑顔を見せながら片手を差し出す
いつもは背伸びもしたいお年頃だけど
今日くらいはいいよね
だって

僕も子供だよ?

ゴンドラから降りたら子供達を優しく撫で
今度はちゃんと手渡し



「風が気持ちいいねぇ」
 夜気に冷えた水を孕むそれはすこし冷たいけれど、それでも微笑みながら言う栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に、向かいに座る鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)も、そうだね、と頷いた。街を、運河を渡る夜風は確かに秋を告げているのに、あわせて春の彩と香りも連れてくるから不思議なものだ。
「あ、ほら鵜飼さん、桜つかまえたよ」
 言いながら、澪は握った掌をゆっくりとひらいた。そのまま花弁越しに、流れていく街並みをぼうと眺める。絶えることのない桜と灯り。決して交わることのないはずの、ふたつの季節。まるで異世界に迷い込んだようだと、アリス姿の澪も心を重ねる。
 中心地よりは幾分和らいだ街明かりのなか、緩やかな往来の裏道に沿ってゆらりゴンドラが往く。
 微かに聞こえる虫の音。桜色に染む水面。過ぎる夜陰に不確かな一筋を残してゆく、船首の朧な角燈。柔らかに靡くうヴェール越しに見ても、それは確かに一夜限りの悪戯のようだった。
「……あ。影朧だ」
 吸血鬼姿の子に、ミイラ姿の子。澪が手を振ると、魔女服を纏った子が応えるように大きく杖を振った。
「おいで、ハレン。あの子たちに、これを届けてあげて」
 呼びかけた空の先に現れた金蓮花の精霊は、ちいさく頷き両の手を広げた。ふわりと宙に浮いた取り取りの飴を連れて、子供たちの許へと舞う。無事に受け取ったのだろう。すぐさま可愛らしい歓声が聞こえてきた。
「じゃあ、僕もお菓子入りブーケをあげようかな」
 観光という非戦闘行為に没頭しているならば、倣わぬ理由はない。幽霊の花嫁が投げた菓子の花束を魔女の子が手にすれば、忽ち両側の子らが羨んだ。
「ふふ、沢山あるから取り合わないで」
「僕からも、お代わりあげるから降り口で待ってて」
 夜にそっと響いた声に、歓喜する子供たち。降りたら今度は頭を撫でて、手渡ししよう。そう思いながら遠のく影を見送っていた澪が、「あ、そうだ」と短く零した。悪戯めいた笑顔で、片手を差し出す。
「鵜飼さん。トリックオアトリート」
「……おや。アリスからもそう言われるとは驚きだ」
 どちらが正解か。言われて一瞬、真剣に考える。後者を選んで万が一にでも河に突き落とされたりしたら、目も当てられない。そんな様子に、澪はくつくつと笑みを深める。
 いつもは背伸びもしたいお年頃。だけど、今日くらいはいいよね。
 だって、
「僕も子供だよ?」
 そう言った声に、章はひとつ瞠目する。
(半分大人な証なんだけどな)
 背伸びしている自覚も、こんなときだけ子供ぶるのも。
 その微笑ましさに口許をそっと綻ばせると、章は手にした花束を真上に放った。
「えっ!?」
「僕は大きな子供なので」
 だから、悪戯で返すよ。
 そうして空を仰ぎ慌てるアリスの姿に、花嫁の眦も緩やかに、密やかに綻ぶ。
 ――皆、幸福を逃がさず受け取ってね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
【花冠】

常よりも色彩を増した和装を纏う
重ねるおめかしは、猫又の仮装
この世界でも、収穫祭なるものがあるのかしら

桜の世界へは頻回に降り立つのだけれど
まあ、ふふ。とてもステキね
水上を往ける乗り物があるだなんて

あなたからの提案に頷きを示しましょう
ゆうらりと揺られて
常とはたがう視点から楽しみましょうか

――わ。ときじさん、だいじょうぶ?
わたしならば平気よ
……こう、かしら。ふふ、上手に乗れたわ

お菓子と悪戯を強請ることが出来るのだもの
つい、浮き足立ってしまいそう
ときじさんは、何方がお好き?

ふふ、おそろいね
わたしも、やわい甘味が好ましいわ
此度のように冷ややかな日には
あたたかな甘味が、こいしくなるわね

ええ、もちろん喜んで
南瓜や栗を使った甘味に出逢えるかしら
色彩も味覚も、とても好ましいの
共にいただきましょう

嗚呼、とても愉しいひと時だこと
仮装の尾までも揺れてしまいそうだわ


宵雛花・十雉
【花冠】

収穫祭の空気を目いっぱい楽しむために
狐の仮装をして参加
七結さんと雰囲気を合わせた和服姿で

わぁ、凄い…!
住み慣れた世界の筈なのに、まるで別の世界みたいに見えるよ
ゴンドラに乗ってゆっくり運河からの眺めを楽しもうか

七結さん、足元に気を付けて
水に落ちたら大変だか…うわっ!?
乗り込む時、彼女の心配をしていたら
自分の方が揺れるゴンドラに足を取られそうになる
あ、危なかった…

ゴンドラが進むたびに景色が流れていくみたいだ
ハロウィンのお祭りを知ったのは割と最近だけど
南瓜やお化けを見てるだけでわくわくするよ
仮装してる人もたくさんいるね

うーん、オレはやっぱりお菓子かな
七結さんはどっちが好き?

見て、七結さん
あそこにカフェーが見えるよ
後で行ってみようか
南瓜も栗も美味しいよね
オレも秋になると不思議と食べたくなっちゃって

なんて、もしかしてはしゃぎすぎかな
でも一緒に遊びに来られて楽しいからさ、つい
七結さんも楽しんでくれてるならもっと嬉しいよ



 そよと吹いた夜風に、ほんの一瞬、眼を瞑る。
 花が舞い、光が踊る。
 再び開いた双眸に映る、ひときわ鮮やかな風景。まぼろしのようで、けれど確かな色を帯びたそれに、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は思わず足を止めた。
「わぁ、凄い……!」
 洋燈に照らされ、まるで温もりを纏ったかのように夜に浮かぶ街並み。誘うように道端に連なる、表情豊かな南瓜たち。賑やかな音楽がそこかしこから聞こえ、人々の賑わう声は絶えることがない。
 見慣れたはずの桜景色も、今宵ばかりは別世界。
「この世界でも、収穫祭なるものがあるのね」
 だからだろうか。数歩先を歩いていた蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)が、そう言いながら振り返った姿がどこか目映くて、十雉は焦がれるように瞳を窄めた。
「ときじさん、どうかした?」
「……否、なんでもないよ」
 微かに苦笑を滲ませながら、傍らに並び歩き出す。
 白に紅、藤紫。いつもの彩に添えたのは、今宵を満たす橙いろ。
 常より一層華やかな着物に身を包んだ猫又娘と、対なる和装姿の狐男。ちらりと見下ろした先にある愛らしい猫耳にひとつ笑むと、ふたり尻尾を揺らしながら石畳をそぞろ歩く。
 夜気に交じる水の気配に気づき、大通りを背に煉瓦の階段を降りる。すぐさま現れた運河のそばには、幾隻かのゴンドラを擁した船着き場があった。
「これに乗って、ゆっくり運河からの眺めを楽しもうか」
「まあ、ふふ。とてもステキね」
 微笑みながら、ちいさく頷く七結。
 幾度も降り立ったこの世界に、水上を往ける乗り物があるだなんて。ゆうらり揺られながら、いつもとは違う視点から眺める。それはとても愉しそうだ。
「七結さん、足元に気を付けて。水に落ちたら大変だか……うわっ!?」
「――わ。ときじさん、だいじょうぶ?」
 後ろに続く娘を気遣うも、最たる危険は己の足許。ぐらりと揺れたゴンドラに脚をとられかけた十雉は、どうにか体勢を立て直して乗り込んだ。
「あ、危なかった……。七結さんは――」
「わたしならば平気よ。……こう、かしら」
 言って、七結は軽やかに搭じた。「ふふ、上手に乗れたわ」と嬉しそうな娘につられて笑むと、十雉は手招いて腰を下ろす。ほどなくして、船乗りが伸びやかな声で朗々と船出を告げた。
 ゆらりと船が進み出す。
 浮遊でもなく、自ら動かす遊具とも違う。まるで揺り籠にゆられるような感覚と、いつもよりずっと低い視線は、さながら子供に還ったかのような心地だ。
「ハロウィンのお祭りを知ったのは割と最近だけど、南瓜やお化けを見てるだけでわくわくするよ」
 仮装してる人もたくさんいるね、と続けながら視線を外へと向ける。ゆっくりと現れては流れていく景色。そのどこを切り取っても、人々の笑顔で溢れている。
 それは七結も同じだった。お菓子と悪戯を強請ることができるのだ。つい、浮き足立ってしまうというもの。
 あちらこちらから聞こえる、トリック・オア・トリートの声。
「ときじさんは、何方がお好き?」
「うーん、オレはやっぱりお菓子かな。七結さんは?」
「わたしも、やわい甘味が好ましいわ」
 ふふ、おそろいね。そう言って花のように綻ぶ娘の髪を、涼を孕んだ秋風がふわりと浚った。幾枚もの花弁がひらひらと零れては、水辺を春色に染めてゆく。
「此度のように冷ややかな日には、あたたかな甘味が、こいしくなるわね」
「そうだね……――あっ。見て、七結さん。あそこにカフェーが見えるよ」
 一等賑やかな声とともに現れたのは、運河に迫り出したテラス席。屋根を縁取るように連なった様々なモチーフの灯りが、水面に絶え間なく光を鏤めている。
「後で行ってみようか」
「ええ、もちろん喜んで。南瓜や栗を使った甘味に出逢えるかしら。色彩も味覚も、とても好ましいの」
「南瓜も栗も美味しいよね。オレも秋になると不思議と食べたくなっちゃって」
「ふふ、共にいただきましょう」
 そう言って笑う七結に、十雉も微笑みを返す。
 もしかして、今日は少しはしゃぎすぎだろうか。
 けれど、それも構いやしない。愛しいひとと共に過ごせるひとときは、ほかに代えがたいほど心躍るのだから。
 娘も同じ気持ちなら、と願う男。
 その傍らで、猫又の尾が愉しげに風に揺れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『彩る泡の傍らに』

POW   :    甘味も頼む

SPD   :    軽食も頼む

WIZ   :    今日のお勧めも頼む

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

日隠・オク
リュカさん(f04228)と
2019メイド南瓜SDです
お菓子を入れた籠をもって

ハッピーハロウィン、リュカさん(お菓子渡して
はい、ハロウィン一色ですね、とても楽しいです。
影朧子供にお菓子渡しつつ
ゴンドラの灯りに興味惹かれつつ
街灯のガーランドや南瓜の洋燈に目を奪われつつ
(ぼーっと眺めてしまったり

ミモザさんミモザさん
私からもお菓子をどうぞです
お菓子がもらえるのかなと期待の眼差しを向け

カフェー
灯りの色が落ち着きます
期間限定に惹かれて
ブルーベリーのほうのクリームソーダに、上に乗った蝙蝠もかわいいです
あと南瓜のスコーンを
リュカさんのラテはどんな絵で来るでしょうか(気になり


リュカ・ラス
【(f10977)オク殿】
仮装は2019+南瓜SD

桜の花とハロウィンの飾りで街がすごく綺麗ですね!
影朧と出会ったらお菓子をあげます
「こんばんは。あちらの川の方、ゴンドラの光がとても綺麗でしたよ」
お祭りは皆が楽しい方が良いです

ミモザ殿にはご挨拶を
この間はお世話になりました(一礼)
これハロウィンのお菓子です、良かったらどうぞ(カゴから差し出し)
ミモザ殿も、楽しいハロウィンの夜を

街を見て回るのも楽しかったですが、カフェの店内も素敵ですね
メニュー、どれも美味しそうです…!これは悩みます…!!
(たっぷり悩んで)南瓜グラタンとプリンとラテアート(お任せ)をお願いします
はい、何の絵が来るのか私も楽しみです



●月と橙に染まる夜
 夜空が色を深め、月の清かな光がほろほろと零れるなか、中央広場にある大時計が19時を告げた。
 方々の洋燈は光彩を仄かに落とし、祭りを彩る音楽も、リュートとアコーディオンの奏でる華やかな曲から、緩やかなジャズへと移り変わる。
 それでも、街の賑わいは変わらない。
 祭りを祝う歓声、悪戯かお菓子かの問いかけ、絶えぬあたたかな雰囲気が街を満たしている。
「ハッピーハロウィン、リュカさん」
「わ! ありがとうございます。私からも、どうぞ」
 可愛らしいメイド姿の日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)がお菓子を詰めた籠からひとつ渡せば、悪戯おばけを被ったリュカ・ラス(ドラゴニアンの剣豪・f04228)もまた、南瓜の籠からとっておきを返す。
「それにしても、桜の花とハロウィンの飾りで街がすごく綺麗ですね!」
「はい、ハロウィン一色ですね、とても楽しいです」
 川縁で揺れる波間。煌めく水と光。様々なキャラクターを連ねて灯る、ガーランドと街灯。まるで夢幻のようで、魅入ってしまう。
『おにいちゃん、おねえちゃん』
 ぼうっとしていたオクは、スカートの裾をちいさく引かれて意識を戻した。視線を落とせば、南瓜を被った子供の影朧たち。
『とりっく おあ とりーと!』
「こんばんは。お菓子をどうぞ」
「こちらもどうですか? 美味しいですよ」
 ふたりからお菓子を貰い、子供たちが元気よく跳ねる。
「あちらの川の方、ゴンドラの光がとても綺麗でしたよ」
 そう添えたリュカたちにお礼を残して、愉しそうに駆けてゆく。その後ろ姿がそっと花弁に紛れ、街灯の淡い光に溶けて消えていった。
 お祭りなら、皆愉しいほうがいい。その気持ちを受け取った子供たちにはきっと、優しい未来が待っている。
「こんばんはー♪ 楽しんでるー?」
 後ろからの軽やかな声に振り向くと、女海賊姿のミモザがひらひらと手を振っていた。今日の戦利品だろうか。宝箱型の鞄からは、色とりどりのハロウィングッズが頭を覗かせている。
「ミモザ殿! はい、すごく楽しいです。あと、この間はお世話になりました」
 ぺこりと丁寧に一礼するリュカに、「いえいえー」とミモザも頭を下げる。かしこくないどうぶつたちとのたたかい――あれは酷い話だった。再戦がないことを願いたい。
「あ。これ、ハロウィンのお菓子です。良かったらどうぞ」
「わーいありがとー!」
「ミモザさんミモザさん。私からもお菓子をどうぞです」
「オクさんからも貰えちゃうの!? やったー! 大盤振る舞いだね!」
 にこにこしながら、ふと視線に気づく。じっと見つめ、期待にきらきらと目を輝かせるオクにくすりと笑うと、ミモザは「よーし!」と手にした拳銃をくるりと回した。
「ばーん! ……なーんて♪」
 上空に向かって銃口から放たれた何かが、そのままミモザの掌にころりと落ちてきた。弾丸型のチョコレートだ。「ま、これだと手間かかるから」と言いながら、シリンダーを開けて残りの弾丸をまるまるオクの掌に乗せる。
 リュカさんにはこっちをどうぞー、と帽子を脱ぐと、羽根飾りに交じって刺さっていたペロペロキャンディを手渡した。ハロウィンカラーのそれは、見ているだけで賑やかだ。
「じゃあ、引き続き佳い一夜をー!」
「ありがとうございます。ミモザ殿も、楽しいハロウィンの夜を」
 手を振って別れた後に向かうのは、お目当てのカフェー。『汽水楼』と名を掲げた煉瓦造りの洋館は、正面に中央広場を、背面に運河を擁した街一番の店だ。
 扉から漏れる、ぬくもりを帯びた光に誘われて店内へと入れば、穏やかなボーイが恭しい礼とともに出迎えてくれる。
 黒檀色の腰壁の中央にある両開きの扉を過ぎればそこは、吹き抜けの大広間。白いテーブルクロスの掛かる卓には深紅に染まる天鵞絨の椅子が並び、橙を帯びた洋燈のひかりがあたたかく包む。
 リュカとオクが案内されたテーブルには、ちいさな灯りの点る黒猫のキャンドルホルダー。
「街を見て回るのも楽しかったですが、カフェの店内も素敵ですね」
「灯りの色が落ち着きます」
 こくりと頷きながら、オクがメニューへと視線を馳せる。ここはやはり、期間限定のブルーベリーソーダ。それと、南瓜のスコーン。
「どれも美味しそうです……! これは悩みます……!!」
 と向かいで長考するリュカの様子にひとつ笑み、先に運ばれてきたソーダをじっくりと味わう。
「上に乗った蝙蝠もかわいいです。リュカさんのラテは、どんな絵で来るでしょうか」
「はい、何の絵が来るのか私も楽しみです。――あ、来ました!」
 たっぷり悩んで決めた南瓜のグラタン。それに添えられたラテアートは、リュカの服に描かれたのと同じ表情のおばけ柄。
 それに気づいて、見合って笑って。あたたかな夜は、まだまだ始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
仮装:キョンシー
ラナさんには少し砕けた敬語で

ゴンドラからの風景、素敵でしたね
ハロウィンと桜が一緒に楽しめるのもこの世界ならではで…
(メニューを広げた途端真剣な表情に
…ところでラナさん、由々しき事態です
クリームソーダ、どっちも気になって選べないんですけど
ラナさんはどっちにします?
オレンジを選んで
あとは南瓜のスコーンとグラタンと
それから勿論ラテアートも(絵柄お任せ)

ん、ソーダは勿論ですけど
アイスもクリームも美味しいですよ
視線に微笑んでどうぞと一口差し出し
ラナさんのも、一口頂いていいですか?
広がる甘酸っぱさに幸せな心地

影朧の子がいたらおいでと招いて
美味しいスコーンをお裾分け


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)
2020南瓜SDのコウモリのお姫様

街並みがとても綺麗でしたね
桜の花びらも、まるでハロウィンの魔法みたいでした

本当です、どちらも美味しそう…
じいっとメニューを見つめて
悩んだ末選ぶのはブルーベリー
コウモリさんに惹かれたんですけど
甘酸っぱくて美味しいです!
パスタを頂きながらハロウィンを満喫
ラテアートも気になるけど…
カフェオレなら飲めるかな

その…、蒼汰さんのソーダのお味はいかがですか?
差し出されたら綻んで一口
甘くて爽やかなお味、ですね
はい、勿論
蒼汰さんの言葉には少しドキドキしながら
アイスの乗ったスプーンを差し出す

蒼汰さんと一緒に
一緒にお茶はいかがですか?
ハロウィンの一夜へご招待



 運河に迫り出したテラス席へと案内された月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)とラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は、柔らかな天鵞絨に背を預けてひとつ息を吐いた。
 ふと移した視線の先には、星空を映した水辺と心地よい水音。先程までふたりも乗っていたゴンドラたちが、ゆるりと河を渡っていく。
「ゴンドラからの風景、素敵でしたね」
「はい。桜の花びらも、街並みも、まるでハロウィンの魔法みたいでした」
「本当に。ハロウィンと桜が一緒に楽しめるのも、この世界ならではで……」
 ほわりと微笑むラナに、蒼汰もそっと眸を細める。同じものを見て、同じように感じる。言わずとも重なっていた想いがあることが、なによりも嬉しい。
「……ところでラナさん」
「どうかしましたか?」
 古書を思わせる表紙のメニューを開いた蒼汰の、その真剣な声色にラナがきょとんと首を傾げる。
「由々しき事態です……。クリームソーダ、どっちも気になって選べないんですけど」
「本当です、どちらも美味しそう……」
「ラナさんはどっちにします?」
「うーん……」
 キョンシー姿の青年と、蝙蝠姫の娘。ふたり揃って悩んだ末に、蒼汰はオレンジ、ラナはブルーベリーのソーダと選び、それぞれの食事も注文する。
 さやさやと頬を撫でてゆく夜風。ちろちろと揺れる、七色硝子に映る蝋燭のあかり。
 蝙蝠リボンにとまり、そのままひらりとふたりの間を過ぎった桜を追えば、影朧の幼子が店内の洋燈の下でぽつり佇んでいた。そのすぐ横を通り、ボーイができたてのスコーンを運んでくる。
「おいで」
「一緒にお茶はいかがですか?」
『いいの……?』
 魔女の衣装に身を包んだ少女は、笑顔で頷くふたりを交互に見ながら、おずおずと椅子に座った。「どうぞ」と差し出された南瓜のスコーンに、目を瞬かせる。
「できたてですから、美味しいですよ」
『うん……!』
 はふっと口をつけて、一口頬張る。続けてもう一口。二口。どうやらお気に召した様子が愛らしく、蒼汰とラナも釣られて微笑む。
『ほっぺた……落ちそう』
 ごくん、と最後の欠片を飲み込んだ少女は、そう言ってちいさな掌で頬を押さえた。そうして見せた笑顔が、夜に舞う花弁に紛れて消えていく。
 ――ありがとう。
 耳に残った声に、ラナは瞳を閉じた。今宵の招待の想い出が、次の光に繋がりますように。
 広場から聞こえる曲が切り替わった頃合いに、お待ちかねの料理も揃い出た。
「コウモリさんに惹かれたんですけど、甘酸っぱくて美味しいです!」
 クリームパスタの柔らかな味に、ちょっとしたアクセント。それがまた美味しくて、つい笑みが毀れてしまう。
 対する蒼汰は、ユーモア溢れる髑髏のラテアートをお伴に、南瓜のグラタンに舌鼓を打っていた。娘は食後のカフェオレを愉しみながら、蒼汰の傍らにあるオレンジソーダへと視線を移す。
「その……、蒼汰さんのソーダのお味はいかがですか?」
「ん、ソーダは勿論ですけど、アイスもクリームも美味しいですよ」
 どうぞ、と微笑みながら銀の匙を差し出せば、花のように綻ぶ娘。そっと口の中に広がるひんやりとした甘みに、更に眦を緩ませる。
「甘くて爽やかなお味、ですね」
「ラナさんのも、一口頂いていいですか?」
 その声に、ひそりと鼓動がひとつ跳ねた。差し出した匙から一口味わうと、蒼汰も幸せそうに笑み綻ぶ。
 甘く香るバニラと桜。柔らかな夜が、ゆっくりと更けてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

藤崎・美雪
【統哉さん(f08510)】と
アドリブ歓迎
仮装は2019年南瓜SDのアラビアンな姫姿

この世界のカフェーは
どこかレトロで落ち着くんだよな
本業(カフェオーナー)柄
どうしても内装や料理に目移りしてしまうが
できるだけ楽しもう

統哉さんと2人になるのは珍しいな
ラテ(アートお任せ)と南瓜のスコーン、そしてクッキーを頼んで
テラス席に着くか

(統哉さんが零した言葉に反応)
ん、好きな人?
…私はカフェと珈琲が恋人のようなものだが

ほう、気になる人がいるのか
まずは共通の話題を探してみるのはどうだ?
…大真面目に答えたが助言になるのか?

影朧を見かけたら
楽し気な歌をそっと口ずさみながら見守るよ
近づいてきたらクッキーを差し出そう


文月・統哉
【美雪っち(f06504)】と
アドリブ歓迎

仮装はいつもの黒猫着ぐるみ…ではなく
狩衣姿の陰陽師
まあ、偶にはね♪

ハロウィンよりも
カフェそのものが気になってる辺りが美雪っちらしいや(笑顔

(華やぐ周囲を眺めつつ
美雪っちってさ、好きな人とかいる?
(ポロっと零した言葉に
いや、何でもない、忘れてくれ!
(慌てて誤魔化すも時遅し

…まあその、気になる人がいるんだけどね
何をどうしたらいいのやら(溜息

共通の話題なら
追ってる事件の情報を…って、そうじゃなくて!

相談相手を絶対間違えてるよなと思いつつ
でも茶化さないでいてくれるのがまた
美雪っちらしくて有難い(苦笑

お化けさんな影朧には
お菓子のお札をペタン♪
ハッピーハロウィン!



 テラス席に佇み、ふわり零れた藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)の歌声に惹かれた影朧の子ら。
『とりっく……えーっと、おあ?』
『とりとー!』
 言い間違いにくすりと笑うと、真っ白な布を被りおばけを装う子に、文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)がぺたりとお菓子のお札を貼りつけた。
『悪戯……じゃない、これお菓子だー!』
「ハッピーハロウィン!」
「ほら、クッキーもどうだ?」
『ありがとー!』
 狩衣姿の陰陽師とアラビアンな姫君からもらったお菓子を頬張りながら、嬉しそうに夜へと溶けていく子供たち。またね、と聞こえた声。同じ言葉を心中で返し、ふわりと微笑む。
 街の雑踏とはまた違う、穏やかに語らう人々の声。温もりを帯びた洋燈の彩。そして、卓上で黒猫のシルエットを浮かび上がらせる、蝋燭の仄かな光。
「そういえば、今日はいつもの黒猫の着ぐるみではないんだな?」
「まあ、偶にはね♪」
 返る微笑みに、そうか、とだけ添えると、美雪はジャック・オー・ランタンの描かれたラテアートを一口含んだ。続けて南瓜のスコーンを味わい、何やら思考しながらちいさく頷く。
「この世界のカフェーは、どこかレトロで落ち着くんだよな」
「ハロウィンよりも、カフェそのものが気になってる辺りが美雪っちらしいや」
 本業がカフェオーナーの身だと、どうしても内装や料理に目移りしてしまうのだろう。言いながらも椅子や腰壁の装飾を眺める様子に、統哉もつい笑みが洩れる。
「――統哉さんと2人になるのは珍しいな」
 そう言われた統哉は、ひとつ瞠目して顔を上げた。言われてみれば、確かにそうかもしれない。
 ふと見れば、どこの卓も笑顔で溢れていた。花と灯りのこの一夜を、親しい人と過ごす。それはささやかで、けれど一等幸せな時間だろう。
「……美雪っちってさ、好きな人とかいる?」
 ずっと言い出せずにいた言葉を、思い切って絞り出してみる。だが、言った後から些か唐突過ぎたと気づき、
「いや、何でもない、忘れてくれ!」
 慌てて取り繕うも、美雪は既に思考に入っていた。一拍遅れて視線を戻すと、いつもの口調で返す。
「好きな人……そうだな、私はカフェと珈琲が恋人のようなものだが。……そういうことを聞くと言うことは……そうか、気になる人がいるのか」
「……まあその、そうなんだけどね。何をどうしたらいいのやら……」
 言葉の終わりに、嘆息が混じる。自身でもまるで取っかかりがなく、困り果てた末に相談してみたのだが――、
「では、まずは共通の話題を探してみるのはどうだ?」
「共通の話題……それなら、追ってる事件の情報を……って、そうじゃなくて!」
「違うのか? というか、共通の話題がそれということは、相手も猟兵なのか?」
「いやっ、違……わないけど、その……!」
「はっきりしないやつだな。……で、大真面目に答えたが助言になるのか?」
 絶対、相談相手を間違えている。
 それでも、茶化さないで話を聞いてくれる彼女がまた、彼女らしくて。感謝とともに、統哉はちいさく苦笑を洩らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
【花冠】

猫又の尾を揺らして歩みましょう
鼻尖を擽るのは空腹を誘うような香りたち
とても美味しそうね、ときじさん

硝子の洋燈が齎す灯りも好ましいわ
ふふ。収穫祭とは、とても愉しいものね

何をいただくのか、決まったかしら
わたしは――そうね、まずはクリームソーダを
ふた種類あるそうだけれど、何方がお好き?

わたしは此方の蝙蝠が乗った品をいただこうかしら
ラズベリーのお味が、とても好きなの
つい、心惹かれてしまうわ

南瓜のスコーンに、パンプキンプリン
食後にはラテアートをお願いしたいわ
如何なる絵が描かれるのでしょう
心が弾むかのよう。とてもたのしみね

ときじさんのラテアートは如何かしら
もし良ければ、見せ合いっこをしましょうか


宵雛花・十雉
【花冠】

ゴンドラを降りて街を行く
水上から見るのとはまた違って見える気がする
本当だ、すごくいい匂い…
ちょうどお腹もすいてきたし
ちょっと腹ごしらえしていこうか

クリームソーダを見ると、七結さんと喫茶店で初めて会った時のこと思い出しちゃうな
それじゃあオレはオレンジのクリームソーダにする
う、おばけのアイスがもったいなくて食べられない…!

さすが収穫祭、南瓜のメニューがたくさんあるね
どれも美味しそうで欲張りになっちゃいそう
南瓜のグラタンもパンプキンパイも食べたいなぁ

あ、オレもラテアートお願いしよう
完成するまでわくわくするね

うん、もちろん
見せ合いっこしようよ
ふたつ並べて写真も撮っていいかな?



 ゴンドラの旅を終えた宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)と蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は、ぶらりと街へ繰り出した。
 船上から見る街並みも綺麗だったけれど、こうしてその袂に入ると、まるで柔らかに包まれたような暖かさを感じるから不思議だ。連なる建物も、運河にかかる橋も、街行く人々も、なにもかも同じはずなのに違って見えるのは、まるで夢幻のよう。
 石畳にゆらりゆらりと影を描いていた猫又の尾がぴたりと止まった。
 鼻腔をくすぐる美味しそうな香りに、七結が傍らを見上げる。
「どこからかしら。とても美味しそうね、ときじさん」
「本当だ、すごくいい匂い……」
 香りを辿って広場へと出た先に、煉瓦造りの洋館があった。エントランスの両側に連なる窓から、ステンドグラスの燦めく光が路地へと零れている。
「『汽水楼』……ここがカフェのようね」
「ちょうどお腹もすいてきたし、ちょっと腹ごしらえしていこうか」
 早めに入店した客らが食事を終えた頃合いなのだろう。比較的空き始めた店内に案内されたふたりは、運河と広場の双方に面した窓際の席についた。緩くドレープを描いたカーテンが彩る窓は程よく開け放たれ、心地よい夜風と音楽、そして仄かな花の香りがあたりに満ちる。
「さすが収穫祭、南瓜のメニューがたくさんあるね」
 メニューを眺めながら目を見張る十雉に頷きながら、何をいただこうかしら、と七結も首を傾げる。
「わたしは――そうね、まずはクリームソーダを」
 娘に倣って十雉も同意するものの、次の難関がすぐそこにあった。
「ふた種類あるそうだけれど、何方がお好き?」
「うーん……それじゃあ、オレはオレンジのクリームソーダにする」
「では、わたしは此方の蝙蝠が乗った品をいただこうかしら」
 ラズベリーの味がとても好きだと微笑む七結に、ふと昔の姿が重なった。彼女と初めて逢ったのも喫茶店だった。程なくして運ばれてきたソーダに、あのころの記憶がふと浮かぶ。
「う、おばけのアイスがもったいなくて食べられない……!」
 躊躇いながらも匙を挿した十雉に、くすくすと笑いながら七結もソーダを一口飲んだ。――嗚呼、この味。やはり、心惹かれてならない。
 暫くして運ばれてきたのは、南瓜のグラタンやスコーン。プリンにパイ。
 どれも美味しそうで、つい欲張ってしまったけれど、煮た南瓜を磨り潰したからこそ出る深い甘みを下地に、まろやかな味わいのグラタン。ほくほくほろりとしたスコーン。プリンはカラメルの苦味が良いアクセントになっていて、サクサクのパイ生地のうえに描かれたジャック・オー・ランタンは見た目も愛らしい。
 ハロウィン色の硝子のキャンドルが料理を灯し、あたたかな笑顔と声がふたりを包む。
「あとは、食後のカフェラテね……とてもたのしみね」
「うん、完成するまでわくわくするね」
「もし良ければ、見せ合いっこをしましょうか」
「うん、もちろん。ふたつ並べて写真も撮っていいかな?」
 なにが描かれてくるのだろう。心のままに声を弾ませていれば、ウェイターが白磁のカップをふたりの前へと置いた。
 十雉には猫の、そして七結には狐の描かれた、ふんわりと豆香るラテアート。互いの絵柄に気づいて、くすぐったそうに微笑みを交す。
「ふふ。収穫祭とは、とても愉しいものね」
 いつだって、きみの傍らにいるのはこの自分なのだと。
 その当たり前のようで特別なことが、唯々心を満たしてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
先程の子供たちと一緒にカフェに到着
特に問題は起きないと思うが、店員にはそっと目配せして「大丈夫だ」と伝えておこう

さて、何を頼むか……今は子供たちが主役だからな。頼みたいものを頼ませよう
おっと、何を頼んでも構わないが、ちゃんと食べ切れる量にすることだ
ああ、色々食べたいなら、皆で別のものを頼んで少しずつ分けると良い

なんて子供たちの世話をしながらも、俺も食事をしながらハロウィンの思い出話なんかをして楽しませてもらおう

……楽しかったか?ああ、それならよかった
彼らが満足したのなら、それで良い。笑って見送ろう

って、食べ切れるだけにしろって言ったのに結構残ってるな
仕方ない、せめてもう少し片付けていくか



「さあ、着いたぞ」
 言って、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は影朧の子らを連れてエントランスへと入った。大丈夫だ、と出迎えたボーイに目配せをすると、承知した旨の首肯が返る。
『すごーい! きらきらしてる……!』
『見て見て! お人形さんがあるよー』
 元より家族向けの席なのだろう。6人掛けの広いテーブルには、狼男やミイラ男、ゴーストたちの可愛らしい玩具が飾られ、橙色の蝋燭が燭台でぬくもりを灯している。
「さて、何を頼むか……。皆も遠慮せず、好きなものを選ぶといい」
『ほんとにー!?』
『やったー! じゃあ、ぼくはグラタン!』
『あたし、この南瓜のスープがいい!』
『こっちのパイも食べたいなー』
「おっと、何を頼んでも構わないが、ちゃんと食べ切れる量にすることだ」
 はーい、と声を揃えてから、再び賑やかにメニューを選び始めた子供たちに、鏡介も口許を綻ばす。
 今日の主役は彼らだ。頼みたいものを頼ませよう。
「ああ、色々食べたいなら、皆で別のものを頼んで少しずつ分けると良い」
『あ、そっか!』
『じゃあ、おれはこれにするから、おまえはこっちにするのは?』
『うん! みんなで分け合いっこしよーぜ!』
 南瓜のグラタンやクリームパスタ。南瓜のサラダは特別に大盛りを。ちいさな南瓜を器にしたパンプキンスープとプリンは、特別にひとりひとつ。お店自慢のクリームソーダは、2種を3つずつ注文すれば両方をちょっとずつ味わえる。
 誰かと食事を囲み、過ごす。
 そのぬくもりと優しさに、生死は関係ないのだろう。人である鏡介も、影朧である子らも、共に同じものを食べ、想い出を語らい合う。そのひとときは、確かに今在るのだから。
「……楽しかったか?」
『うん!』
『料理もすごく美味しかったー!』
「ああ、それならよかった」
 そう言って微笑む鏡介に、子供たちも心から笑う。満足しただろうか、なんて愚問だろう。なによりもその笑顔が、すべてを物語っていた。
 ――ありがとうね、お兄ちゃん。
 ひとり、またひとりと、光の花となって夜風に舞ってゆく。そうしてがらんとしたテーブルを見れば、まだまだ残っている料理の皿を前に、鏡介はひとつ苦笑した。
「……食べ切れるだけにしろって言ったのに」
 仕方がない。そう心中で言いながら、皿のひとつを手許に寄せる。
 眸を閉じれば、鮮やかに蘇る。あの笑顔を傍らに、甘くあたたかな一匙を頬張った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

香神乃・饗
【きょうたか】
らてあ?と?ら?てあーと?っすか?????
全然解らないっすけど見たほうが早いっす
疑問を全部呑み込む

じゃあシマエナガ描いて貰うっすか
ハロウィンエナガっす

へ?何が可愛いんっすか
シマエナガチャンが可愛いっすか
なんでもないっすか
目をぱちぱち
よく解らないっすけど楽しそうだから良いっすと笑う
いつも通り誉人と同じ物を頼むっす
ははあ南瓜が定番っすか
南瓜祭りっす!誉人物知りっす!

へっ器も食べていいんっすか
目をぱちぱち
美味しいっすか
食べて良いなら続き食べる
美味しいっす!

ラテアートに目をキラキラ
おお!可愛いっす!
誉人も可愛いっす!
ラテアートと悶えてる誉人をそっとスマホで撮影し自分も写り込む
『この日』を生きた証を残しておきたいから
へへへ、一番可愛いの頂いたっす!(しゃき

可愛い所から思い切ってずずっ
美味しいっす!
らてあーとも美味しいっす!
口元にシマエナガ顔生やす
えー?誉人の珈琲がいいっす(強主張
へっ何っすか?


影朧
余分のラテアート出し
飴入れてのむと温かくて美味しいっす
笑顔で優しく
ハッピーハロウィンっす


鳴北・誉人
【きょうたか】

饗、ラテアートって知ってるか?
かァいいの描いてくれンだって
ハロウィンっぽいとか、シマエナガとかネコとか…

ハテナ飛ばしまくる饗は微笑ましく
何気ない一時が嬉しい

まって、あはっ、かァい…なン、やば、え?
なんでもねえ

相変わらずの天然っぷりに思わずほっこり
オーダーは限定品で揃えてしまおう
どれもこれもうめえに決まってる
しっかり味わって食う

南瓜は定番だけどうめえよな
これぞハロウィンって感じィ
ちっこい南瓜のプリンを眺めて感心を
器が南瓜ってことは食えンのかな…齧ってみる
うまァ…
全部の食事を愉しんで

エナガチャンのラテアートに悶絶
暫く飲めそォにねえかも
饗に撮られても気にしない
これもいつものことだから
饗と過ごすかけがえない時を切り取る
後で簡単に今日へと戻ってこれるから
大切な想い出をひとつでも多く残して

立派な泡のヒゲに破顔
俺の淹れる珈琲よりずっとうまいだろ?
かァいい顔の饗チャン
なんておどけて笑み合って

影朧の子には飴を渡そう
みかんの飴チャンあげるからいっぱい笑ってよォ
俺、お前の笑ってるとこ見てえなァ



「饗、ラテアートって知ってるか?」
「らてあ? と? ら? てあーと? っすか?????」
 瞳をまんまるにして、きょとりと傾ぐ香神乃・饗(東風・f00169)。
「かァいいの描いてくれンだって。ハロウィンっぽいとか、シマエナガとかネコとか……」
「全然解らないっすけど、見たほうが早いっす」
 疑問をまるっと飲み込み結論を出した饗に、鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)もくすりと微笑む。こんな何気ないやりとりも、日々の幸せの一欠片だ。
 ならばと訪れた、カフェ『汽水楼』。ステンドグラスの光毀れる窓辺の席に案内されたふたりを、ふわりとした座り心地の天鵞絨が包み込む。
 古書を思わせる表紙のメニューを開けば、紙面に花を添える優しい料理の挿絵たち。そのなかからラテアートという文字を見つけた饗は、うーんと暫く考え込んだ末、
「じゃあシマエナガ描いて貰うっすか。ハロウィンエナガっす」
 ハロウィンエナガ。
 聞き慣れない単語に、誉人は瞠目し――次に相好を崩す。
「まって、あはっ、かァい……なン、やば、え?」
 魔女帽子を被ったシマエナガだろうか。それとも、ジャック・オー・ランタン? おばけだったら、それは白に白を重ねることになるし――いや、彼のことだ。絶対、そこまでは考えていないだろう。変わらぬ天然っぷりに、愛しさと笑いが同時に込み上げる。
「へ? 何が可愛いんっすか。シマエナガチャンが可愛いっすか」
「……なんでもねえ」
 どうにか笑いを堪えながらそれだけを返す誉人に眼を瞬きながら、
「なんでもないっすか」
 よく解らないっすけど楽しそうだから良いっす、と饗も笑う。
 折角だからと、誉人が注文したのは限定メニューのフルコース。いつものように、饗もそれに倣う。どれもこれも美味しいに決まっている。ならば、しっかり味わわねばなるまい。
 そうして揃った料理は、瞬く間にテーブルを埋め尽くした。あたたかな湯気に溶ける南瓜の香りが、食欲をそそる。
 まだ熱を持った器に軽く触れながら、まずはグラタンに匙を入れた。少し空気を含ませ、熱を逃がしておきながらサラダを一口運ぶ。
 十分に漉すことでより深みを増した甘さと、レーズンの甘酸っぱさ。そこにシナモンパウダーがアクセントを添えている。それでいてさっぱりとしているのは、ヨーグルトのお陰だろうか。
「南瓜は定番だけどうめえよな。これぞハロウィンって感じィ」
「ははあ、南瓜が定番っすか」
 なるほどと納得しながら、饗もフェットゥチーネを頬張った。見た目ではあまり分からなかったが、確かにこれも南瓜の味がする。それに炒めた玉葱の甘さが加わり、ベーコンの塩気が味を引き締め、エリンギの食感が満足感を増幅させてくれる。合間に挟むスコーンも、ほろほろさくさくと舌の上で解けてゆく。
「南瓜祭りっす! 誉人物知りっす!」
 双眸を燦めかせる相棒に、つい笑みが毀れる。いつも見ているものだけれど、ひとつでも多く見たいと思うし、見飽きることもないのだろう。
 あらかた浚えた後に残ったのは、甘味たち。誉人は、その中のちいさな南瓜を器にしたプリンをまじまじと眺めながら感心する。
「器が南瓜ってことは食えンのかな……」
「へっ? 器も食べていいんっすか」
 不思議そうに器を見つめる饗の前で、ジャック・オー・ランタンよろしく顔の描かれた器を軽く匙で押してみると、跡がついた。どうやら火は通っているようだ。指先で一かけ千切り、口に含む。
「うまァ……」
「美味しいっすか」
 笑顔で頷く誉人に、饗も笑って手許を見た。中身のプリンを零さぬようにかぷりと囓れば、ほくほくとした食感に次いで、滑らかで濃厚な甘みが口一杯に広がった。
「美味しいっす!」と口を衝いて出た言葉に、「だろ?」と声が返る。美味しいも、嬉しいも、重なる心が何よりの調味料だ。
 食後にはお待ちかねのラテアート。
 ハロウィンエナガという、なかなかないであろうオーダーの結果を見てみたふたりは、そのあまりの可愛さに一瞬言葉を失った。
 シマエナガ in ジャック・オー・ランタン。
 南瓜の上部からひょこっと顔を出したシマエナガは、どこか誇らしげで嬉しそうで、それがまた愛らしい。
「おお! 可愛いっす!」
「……暫く飲めそォにねえかも」
 始めて見るうえに、更には好きなシマエナガが描かれたラテアートに、一層瞳を燦めかせる饗。
 対して、予想以上の可愛さに、口許を押さえて悶絶する誉人。それに気づいた饗はささっと隣に座り、「誉人も可愛いっす!」とすかさずスマートフォンのカメラボタンを押した。
 それは、『この日』を生きた確かな証。
「へへへ、一番可愛いの頂いたっす!」
 満足げな様子につられて、笑みを返す。
 いつものこと。けれど大事なこと。ふたり過ごすかけがえのない時間に、いつでも簡単に戻って来られるように。ひとつでも多く、大切な想い出を写真に残していきたい。
『……それ、なぁに?』
 一際沸き立つふたりが気になったのだろう。聞こえたちいさな問いかけに視線を移せば、おどおどとした様子の影朧の子。
「これは、らてあーとっす!」
 覚え立ての言葉を誇らしげに言いながら、どうぞっす、と饗が余っていたカップを差し出した。続いて誉人が、蜜柑味の飴をころり、ちいさな掌に乗せた。
『これ……?』
「飴入れてのむと温かくて美味しいっす」
「俺、お前の笑ってるとこ見てえなァ」
 微笑むふたりを交互に見つめた影朧は、掠れるような声で礼を言うと、恐る恐る飴をラテアートの中に入れた。そのままカップに口をつけ、一口飲む。
『……ふふ、あまぁい』
「ハッピーハロウィンっす」
「ほら、こっちに座って。いっぱい笑ってよォ」
『うん……!』
 こくり、こくり。足をぷらぷらとさせながら、ゆっくりと1杯を飲み終えると、
『ありがとう……お兄ちゃんたち』
 最期にほわりと笑いながら、花弁となって消えていった。ぽっかりと空いた空間をしばし見つめていた饗が、にかっといつもの笑顔を見せた。
「俺も飲んでみるっす!」
 どこから飲もうか悩ましいが、思い切って可愛いところから。そっと口に含めば、珈琲の酸味が程よくクリームのまろやかさに蕩けた、優しい味が広がった。
「らてあーとも美味しいっす!」
 そう言った相棒の口許にできた、シマエナガのように白い泡髭。思わず破顔した誉人が、くつくつと笑いながら尋ねる。
「俺の淹れる珈琲よりずっとうまいだろ?」
「えー? 誉人の珈琲がいいっす」
 大切な人が淹れてくれた一杯は、それだけで一番だから。
「かァいい顔の饗チャン」
 なんて、断固として譲る気配のない饗に戯けてみせれば、「へっ? 何っすか?」と不思議そうに瞬く相棒と笑みが重なる。
 これからも、いつまでも、こうして重ねてゆこう――このぬくもりの傍らで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
可能ならミモザさん(f34789)と。

仮装は今年用の装いで猫の魔女。
あまーい南瓜のクッキー(猫型)準備しておこう。
南瓜に宿った影朧に出会ったら…お菓子か悪戯か、それを言ってくれないとにゃーと促して。
言ったらならトリートで!とお菓子を渡す。
悪を為してないなら人にやさしく、それが(今の格好はさておいて)騎士だし。

そんな風に街を歩きつつミモザさんの言ってたカフェへと向かい、ついたらミモザさんにご挨拶。
よければちょっと相席いいかな?折角だし誰かとお喋りしたくてね。
メニューを見つつ、期間限定という言葉が目に留まり、それならオレンジソーダの方に挑戦してみるかな!
それに南瓜マフィンを合わせて丁度いい感じ。きっと。
待ち時間中はカフェの雰囲気を楽しみつつミモザさんと世間話してみたり。
こういういい感じのお店とかよく知ってるの?
私はどうにも流行とかには疎いしにゃー。尊敬。
ちなみにミモザさんはどんな甘味が好きなのかな。果物系とか色々あるよね。
そんな風に駄弁りつつソーダもお菓子も楽しもっと。

※アドリブ絡み等お任せ



 いつもの羽のついた騎士帽子ではなく、今日被るのは魔女のそれ。鍔の広さは同じくらいの黒いとんがり帽子をくいと上げて、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はぶらりと歩く。
 頬を撫でる風が、一片、また一片と花弁を連れていく。そのなかのどれほどが、今宵、生まれ変わる道へと歩き始めた影朧たちだろうか。
『――ああ。まだ、こんなところにいたんだね』
 路地の先で、ゆらゆらと揺れるひとつの南瓜。周囲の人々からは見えていないその子に優しく声をかければ、南瓜の顔がくるりとこちらを向いた。
『……みんな、いなくなっちゃったの』
「キミは? まだ遊び足りない?」
『……うん』
 こくりと頷く影朧の頭を、南瓜越しに撫でる。「なら、お祭りをもっと愉しまなきゃね」と微笑んだクーナに影朧が首を傾げると、途端、南瓜がずり落ちそうになった。慌てた様子で両の手で支え、ちいさな声で尋ねる。
『どうすればいいの……?』
「今日はハロウィンだからね。お菓子か悪戯か、それを言ってくれないとにゃー」
『お菓子か、悪戯か……?』
「そう。さあ、言ってみて。『トリック オア トリート』!」
 まるで魔法を教える魔女のように、杖代わりに立てた指を、くるりと回す。
『とりっく……おあ、とりーと……』
「じゃあ、トリートで!」
 そう言ってクーナが取り出したのは、甘い南瓜の猫型クッキー。両手を広げて、と促して、その紅葉のような掌いっぱいにクッキーを乗せる。
 悪を為していない相手には優しく。それが――今の格好はさておき――騎士のあるべき姿。
 不思議そうに見つめていたそれをひとつ手に取り、影朧の子が口へと運んだ。さくりとした食感。口一杯に広がる甘さに、自然と頬が緩む。そのままぱくぱくと、あっという間に食べ終えると、
『魔女さん、ありがとう!』
 残りをポケットにしまって、両手を大きく振りながら、賑わう祭りの中へと駆けて行った。その背が、夜と灯りに溶けて消えてゆく。
 残りのクッキーは、転生へと至る道中のおやつ代わりだろうか。
 顔は、やはり南瓜で見えなかった。けれど、きっと笑っていたはずだ。
「ハッピーハロウィン、ミモザさん」
「あれ? クーナさん!」
 その足で立ち寄ったカフェ『汽水楼』で見つけた顔見知り。名を呼べば、顔を上げたミモザも天真爛漫な笑顔を見せた。
「よければちょっと相席いいかな? 折角だし誰かとお喋りしたくてね」
「ぜひぜひー! 私もちょうど、今ひとりだったんだ。あ、メニュー見る?」
 手渡されたそれを眺めていれば、期間限定の言葉が目に留まる。ならばと選んだのは、オレンジソーダ。それに南瓜マフィンをあわせたら、きっとちょうど素敵な組み合わせに違いない。
 猫型キャンドルに灯る炎が、ゆらりゆらりと揺れるたび、あたたかな色がテーブルに満ちてゆく。
「こういういい感じのお店とかよく知ってるの?」
「今回はたまたまだよー。言っても私、まだ最近自由になったばっかりだしね」
「それでも、私はどうにも流行とかには疎いしにゃー。尊敬」
「そんなそんなー照れるなー」
 文字通りはにかんだ様子のミモザに、クーナもふわりと瞳を細めた。ちょうど運ばれてきた2種のソーダとマフィン、ミモザが頼んだプリンが並べられたら、ささやかなハロウィンパーティの始まりだ。
 崩すのはどこか勿体ないような気もするけれど、まずは魔女帽子を被ったおばけのアイスを一かけぱくり。次いで飲んだオレンジ味のソーダが、しゅわしゅわと甘みを散らしていく。
 向かい合ったミモザは、ブルーベリーソーダの上に乗っていた蝙蝠型チョコレートをそーっと皿に避けていた。恐らく、勿体なくてまだ食べる気にならないのだろう。生クリームのうえにラズベリーを一粒乗せて、ぱくりと頬張った。
「ちなみにミモザさんはどんな甘味が好きなのかな」
 果物系とか色々あるよね、と尋ねるクーナには、「甘いものなら全部!」と前置いたうえで、
「その中でも特にって言うと、やっぱりクリーム系かな? カスタードや生クリーム、ホイップクリームにバタークリーム……自然界にはないあの甘さ! ふわふわ感!」
 もう最高! と熱弁しながら、生クリームをもうひと匙すくうミモザ。あまりにも幸せそうなその顔に、つられてクーナも笑みが毀れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南雲・海莉
カフェのテラス席でリンデン(バディペット)と

寄り添うリンデンと膝掛けに温もりつつ
街の景色を楽しむわ

途中、スマホの画像に視線を下ろし
そこには義兄が残したメモ(日記帳の切れ端?)の写真
何度も描き直した跡のある絵にはたくさんの注釈
白いコートに執事服、巨大なモートスプーン…

「『南瓜行列に
言い伝えのティーソムリエに捧ぐ』だって
義兄の仮装、見てみたかったな」

次の画像はメモの裏
『俺の手で幸せにしたいひと
今の俺を求めてくれるひとのために』
という走り書き

「私と出会う前の、人達…」
義兄を求める気持ちなら誰にも負けるつもりは無い

でも彼が自分の眼の前から消えたということは
自分は義兄が幸せにしたい相手では…

わわ、リンデン
心配させちゃったね
(膝に顎を乗せる愛犬の頭を撫で)

食事の届く気配に
「うわぁ、美味しそうっ」
南瓜グラタンの良い香りに声を弾ませ

リンデンには犬用の南瓜饅頭を…って慌てないで
(幸せそうに食べる様子に笑い)

大丈夫、絶対に義兄さんを見つけるんだから
(南瓜の香りのルイボスティに
一緒に憩う未来を想像しながら)



 テラス席のローソファに腰を下ろした南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)は、一息吐きながら緩やかに顔を上げた。
 ゴンドラが征くたびに生まれる波紋。水を切る櫂にあわせて、散りながら煌めきを増す光の粒。朧のような桜は止むことを知らず、夜陰に色を差している。
 広場から聞こえる楽器の音色は人々の笑い声に混じり、不思議なぬくもりを帯びていた。どこかこの世のものではないような、それでいてほっとする景色に、海莉は自然と瞳を細める。
 気まぐれな花一片が、ローテーブルの上に置いてあったスマートフォンの画面に舞い降りた。指を伸ばし、ひんやりとした端末を手に取る。画面から滑り落ちた桜は、そのまま膝にかけたブランケットを掠め、娘の隣に座る愛犬リンデンの鼻の上にふわりと着地した。
「『南瓜行列に 言い伝えのティーソムリエに捧ぐ』……か」
 白いコート、執事服、巨大なモートスプーン。
 日記帳の切れ端だろうか。画面に映る紙には、幾度も描き直した跡の残る絵と、たくさんの注釈が添えられていた。
「……義兄の仮装、見てみたかったな」
 ぽつりと洩れた声。伏し目がちの双眸で、ただ端末を見つめる。彼はどんな気持ちで、これを記したのだろうか。
 そっと指先を動かし、画面を繰る。
『俺の手で幸せにしたいひと 今の俺を求めてくれるひとのために』と書かれた、メモ裏の走り書きの画像。
「私と出会う前の、人達……」
 それが誰なのか、海莉は知らない。けれど、相手が誰であれ、義兄を求める気持ちなら負けるつもりはない。それは確かだ。
 それでも、現実が突きつける。
 義兄が自分の眼前から消えたという、現実。それはつまり、彼にとって、私は幸せにしたい相手では――。
 瞬間、ぽすんと膝になにかが乗った。見れば、リンデンが顎を乗せてこちらを見上げていた。どこか不安げな色を滲ませた瞳に気づき、海莉は柔らかく頭を撫でる。
「ごめんね、リンデン。心配させちゃったね」
 ほら、食事も来たみたい。そういって気持ちを切り替え、テーブルに並べられていく料理に口許を綻ばせる。
「うわぁ、美味しそうっ」
 ほかほかのグラタンから香る甘い南瓜の香りに、思わず弾む声。
 目の前に置かれた犬用南瓜饅頭に気づいたリンデンも、ぱっと身体を起こして両前足をテーブルに置いた。尻尾を嬉しそうにぱたぱたと揺らしながら、そのまま前のめりでお饅頭を食べ始める。
「……って、リンデン。慌てないで」
 幸せそうな様子に、つい零れる笑顔。張り詰めていた気持ちも、そっと緩む。
 ――大丈夫、絶対に義兄さんを見つけるんだから。
 気負わず、けれど一歩ずつ歩む。そうすればきっと、いつかは。
 南瓜の香りのルイボスティ。
 その柔らかな水面に、彼と共に憩う未来を描きながら、海莉はそっとカップを傾けた。

 幾つもの光の花が、ゆらりふわり、愉しそうにサウィンの夜を渡ってゆく。
 そうしていつかは至るのだろう。
 秋を過ぎ、冬を越え――あたたかな未来へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月06日


挿絵イラスト