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天使核と勇士とちいさな竜

#ブルーアルカディア #屍人帝国「海神の国」

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#ブルーアルカディア
#屍人帝国「海神の国」


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●雲海に浮かぶとある浮島にて
 「よぉし!準備は整った。後はターゲットを見つけ出してぶっ倒し、宴会だぁ!」
「おーう!!」
 眩しい光が降り注ぐ中。勇猛な声を上げるリーダーと思しき勇士の声に、配下であろう荒くれ者の勇士たちも威勢の良い雄叫びを上げる。
 既に飛空挺の準備は完了、後は出航してターゲットから天使核を持ち帰るだけだ。
 彼らは、まだ駆け出しではあるが、着実に天使核収集の実績を積んできた一行だった。浮島の住民からの信頼も厚く、今回も浮島で建造する新たな飛空挺の動力にするべき天使核の収集を頼まれていた。
 「いざって時、出遅れんじゃねえぞ!」
「ガッテン!」
 かくして、彼ら勇士を乗せた飛空挺は大空へと旅立った。

●グリモアベースにて
 「この度もお集まりくださり、ありがとうございます。グリモア猟兵の土御門泰花(つちみかど・やすか)と申します」
 場に集まってくれた猟兵たちをみやり、土御門泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は優雅に一礼した。
 「さて、今回私が皆さんに依頼したいのはブルーアルカディアでの悲劇を食い止めることです。」
 そう告げると、泰花は虚空へ先程の映像を映し出した。
「彼らは名誉を得たいが為にどんな困難にも立ち向かう勇気を持つ勇士たちではあるのですが……私の予知ですと、この後ターゲットとしていた敵と交戦する中で、全滅してしまうことが判明しました。そこで皆さんには、彼等勇士たちの乗る飛空挺に乗り込んで加勢し、ターゲットを共に討滅して差しあげていただきたいのです」
 それから、泰花は映像を切り替えた。現れたのは、子猫ほどの大きさしかない竜の姿。一部の猟兵たちからは可愛らしいと評する声さえ挙がった。
 そんな猟兵たちを牽制して、泰花は続ける。
 「この竜は、私がかつて予知した『屍人帝国「海神の国」』から出てきた竜と思われます。本来であれば他の魔獣に寄生して甘い汁だけを吸って生きていた小型の魔獣です。それが、今回のこの個体に限っては突然変異を起こし、天使核をエネルギーとして見た目からは想像もつかない高威力の攻撃を放ってくるようです」
 体の面積が少ない分、まだまだ駆け出しの勇士たちだけでは上手く攻撃を当てることが叶わない。しかも天使核を内蔵したオブリビオン等危険極まりない。そこで、猟兵の出番となる訳だ。
 「誠に遺憾ながら、今回の予知ではこの竜がどのような攻撃手段を持つかまでは判明しませんでした。ですが、感じた気迫はボス級のものです。くれぐれも油断なさいませんよう……」
 それから、と泰花は諸注意を告げていく。
 「私の転送先は、今旅立とうとしている飛空挺のすぐ近く、または飛空挺の中となります。まずは勇士たちと交流しながら、危険空域を突破してください。この飛空挺が行く先には大きな積乱雲が待ち受けており、暴風や轟雷、激しい大雨等に見舞われることでしょう」
 ただ、飛空挺が荒れる空を飛ぶことは、勇士たちも覚悟できている上、ある程度の操縦は難なくこなす。猟兵としては、いかに勇士たちや飛空挺を消耗させずにオブリビオンと対峙できるように導くかが重要だろう。
 「無事に突然変異の個体であるこの竜を討てば、天使核は勇士たちが村へ持ち帰って行きます。また、恐らくお礼として勝利の宴へお招きくださると思われます。魔獣の肉の量は少ないかも知れませんが、浮島の皆さんに調理してもらったり、ご自身で調理なさるなりして、是非楽しんでお過ごしください。……もしも、勝利の宴に私をお呼びくださるのでしたら、喜んでお供させていただきますね」

●いざ、大空の世界へ
 ひとしきり話し終えた泰花は、映像を消すと手のひらに紫のグリモアを浮かべた。すると、淡い紫の光を放つ転送陣が展開される。
 「では、皆さんのご武運をお祈りしております。……戦いは避けられませんが、良い旅を」
 ふわり、泰花は微笑んで猟兵たちを送り出して行くのであった。


月影左京
 ご無沙汰しております、または初めまして。
 マスターの月影左京と申します。
 ※私のシナリオに初参加なさる方は、予めマスターページをご確認いただければ幸いです。

 この度は久しぶりに、ブルーアルカディアでのお話です。
 駆け出しで、将来有望な勇士たちがオブリビオンの犠牲になる事の無いよう、皆さんのお力添えを是非お願いします。

 今回は3章構成です。簡単に各章のご説明を致します。

●第1章「龍の巣だよ!」(冒険)
 巨大な積乱雲の中を、飛空挺及び勇士たちの消耗や損耗をできるだけ防ぎつつ切り抜けてください。
 飛空挺の扱いは勇士たちが慣れているので、指示を出せばその通りに飛空挺を操ってくれます。
 また、この章の中で是非勇士たちと交流を持ち、信頼や親しみを得ておくと第3章でも交流しやすくなるかと思われます。

●第2章「???」(ボス戦)
 今回の勇士たちのターゲットです。泰花が事前に説明した通りの情報しか、今のところ判明していません。ですが、猟兵の皆さんであれば対峙した途端にどのように襲い来るのか、察知可能です。
 可愛らしい姿に油断することなく、撃破してください。
 天使核は、戦勝すればリーダー格の勇士が的確に回収します。
 また、お好みで魔獣の肉や鱗を持ち帰り、第3章で活用することも可能です。

●第3章「島観光」(日常)
 勝利の宴を勇士たちが開いてくれるので、是非楽しんでください。
 第2章で獲得したものを使ったお料理を、勇士たちや浮島の皆さんにお料理してもらうのも、自己流でお料理するのも楽しいでしょう。
 また、今回に限り、プレイング内で泰花をお招きいただければ、お邪魔にならない範囲でご一緒致します。
 ※獲得したアイテムをMSとして発行することや配布することはできません。悪しからずご容赦ください。

 各章とも、断章は設けません。オープニング公開後からプレイングを受け付けます。
 ※リプレイ執筆測度は現在遅くなりがちですので、お急ぎの方はご注意願います。

 皆さんからの勇敢なプレイング及び美味しそうなお料理のプレイング、お待ちしております!私もリプレイ執筆を頑張りますね。
 よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『龍の巣だよ!』

POW   :    根性で正面突破、いざとなれば武力や体力で乗り越える。

SPD   :    風を読み最高速で潜り抜ける、モタモタしている暇はない。

WIZ   :    直ちに迂回ルートを探索、とにかく被害を最小限に抑えていく。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

村崎・ゆかり
いざ往かん、冒険待つ空の果てへってね。アヤメ、羅睺、準備いいわね?

クルーには「コミュ力」で接しましょう。
こんにちは、勇士さんたち。あたしたちも飛空艇に乗せてくれない? これでも役に立つわよ?

アヤメと羅睺は適当に船の中の雑用しててね。
あたしは黒鴉召喚。霊符が変じた黒鴉たちを進行方向の空へ向けて飛ばす。あたし自身の五感で黒鴉の感じる気圧差を感じ取って、船を操る勇士さんたちに伝える。
黒鴉がいきなり同調切れるとまずいから、ワンクッションになるマージンは取っておくわね。

そろそろ雲を抜けるわ。この先は何が待ってるのかしら?
これでも専門はそっちの方でね。制圧までは任せてちょうだい。



 「いざ往かん、冒険待つ空の果てへ!ってね。……アヤメ、羅睺、準備良いわね?」
 転送されてすぐ、意気揚々と自らの信頼するパートナーたちへ声をかけたのは村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)。ちなみにアヤメはくノ一、羅睺は式神だ。
 「こんにちは、勇士さんたち。あたしたちも飛空艇に乗せてくれない?これでも役に立つわよ?」
「おぅ!?嬢ちゃん、この艇は天使核を狩りに行くんだぜ!?」
「そんなこと分かってるわ。だからこそ力になりたくて来たんだから。天使核を狩りにってことは、屍人帝国の何かとやり合うんでしょ?」
 ゆかりの堂々たる雰囲気とコミュ力に、初めは女の子を乗せることに戸惑いを覚えていたクルーたちも、やがて笑顔を見せた。
 「へぇ!やっぱ人は見かけによらねぇな!乗んな、嬢ちゃんたち。その代わり、船酔いは飲み込んでくれよっ」
 冗談交じりに、クルーの1人がゆかりたちを飛空挺へといざなった。豪快な手招きに応じてゆかりもさっと艇へ乗る。
「よぉし、飛ぶぞ!」
「おー!」
飛空挺はゆかりたちを乗せて、早速浮島から浮かび上がった。

 まず、ゆかりはアヤメと羅睺にクルーたちを手伝って艇の中の雑用を補助するように頼んだ。そして自身は操舵室へと赴いて、霊符を複数手に取り……。
「急急如律令!汝は我が目、我が耳なり!」
 端的な呪言に応じて、カラスによく似た鳥型の式神がゆかりのもとから一斉に進行先の空へと飛び立つ。【黒鴉召喚】……彼ら式神の鳥たちはゆかりと五感を共有できるため、行く先に待ち受ける荒天や乱気流も予め察知することが可能になるのだ。
 そうすることで、この飛空挺やクルーたちが消耗するのを最小限に抑える。そうしてこの先の戦いに備えるのがゆかりの意図だ。
 「この操舵室から、外のクルーにも連絡は取れるわね?」
「おうともさ!」
念の為の確認へ雄々しい返事が戻る。ゆかりはそれに頷くことで応じ、自身もまた五感を研ぎ澄ます……式神の黒鴉から感じ取る僅かな気圧差さえも逃すまいと。
 飛空挺が進むにつれ、次第に風が荒くなっていく。ゆかりは式神と自身の感覚すべてから得た天候情報を的確に操舵室のクルーへ告げた。クルーも慣れた手つきで舵輪を操り、必要に応じて他のクルーたちへ飛空挺操作の指示を飛ばす。

 飛空挺は荒波に揉まれる小舟のように大きく小さく揺れ続けたが、やがてゆかりは式神ごしに明るさを感じた。雲が途切れて日が差しているのだ。
「……そろそろ雲を抜けるわ」
「おう!嬢ちゃん助かったぜ!けど、まだまだぁ!」
 この先は何が待つのか。高揚する気持ちを抑えて、ゆかりは飛空挺の行く先を見据えた。
 ゆかりの「専門」は、敵と相見えてからこそ本領を発揮するもの。制圧までは任せなさい!と、自信たっぷりの表情を浮かべる。
 とはいえ、どうやら勇士たちのターゲットまではまだ距離があるようだ。ゆかりは今一度気を引き締めて、黒鴉との同調に注意を払い飛空挺の迂回ルートを探るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェリー・クサナギ
「みんなー、衝撃に備えてーッ!」
・パンクロッカー然とした筋骨隆々の男が、たおやかな身振りと女性的な語調で船員たちに注意を促す
・勇猛果敢な勇士たちの志に美しさを見出す。志の美しい者は、種族性別を問わず魅力的とシェリーは考える
・砂漠に生まれ、地を這って生きてきた者として空の舟はやや不慣れだが、過酷な生活で養った体幹力で環境にすぐ順応する
・船体に亀裂が入れば持ち前の「サバイバル」技術でダメージコントロールに貢献し、高すぎる女子力で勇士の体力消耗を気にかける一方で、風に煽られ操舵が利かなければ「怪力」を以て舵取りに力を貸そうとする
「嵐だって突き抜けてしまえば問題ないわ。共に生き残るわよ!」



「みんなー、衝撃に備えてーッ!」
「おぅ! お前こそな、シェリーの兄ちゃん!」
 シェリー・クサナギ(荒野に咲く一輪の花・f35117)の叫びに、クルー達は豪快な返事で応える。その直後、ドーン!と凄い音が大きく船体を揺らした。
「いやァ、スゴい音! みんなー、怪我してないー!? ワタシのことは心配要らないからね〜!」
 シェリーは、筋骨隆々な身体を持ちながらもたおやかな仕草で立ち回り、中性的な口ぶりでクルー達の安全を気遣った。
「おー! 平気平気!」
「……って、ここ、今のでヒビ入ってるぜ!?」
「やだァ、早く直さないと危ないわね!」
 大声で報せたクルーの元へ、シェリーは少し危なっかしくも、優雅かつ迅速な足取りで向かった。
 シェリーは砂漠に生まれ、これまでは血と暴力と砂嵐が支配する狂気の地上世界で生きてきたから、こうした空の旅はどちらかと言えば不慣れなのだ。
 けれど……いや、だからこそ、この荒々しい旅へ加わったのだ。なぜなら、こうした生い立ちを持つシェリーにとっては、美しいものと可愛いものこそが人の心を癒すのであり、この勇猛果敢な勇士たちの志に、シェリーが尊ぶ美しさが宿っているのを見出したから。
 志の美しい者は、種族性別を問わず魅力的なものである。そしてそんな一般論以上に、シェリーの美意識では非常に素晴らしいものなのだ。だから、シェリーは未知の冒険が待つこの飛空挺に乗り込むことに対し、なんの躊躇いも無かった。
「さて、どこがヒビなの〜? ……あー、ここね。よし、まッかせて!」
 シェリーは示された損害箇所を見るなり素早く修復作業に取り掛かった。必要な道具も的確にクルーに頼んで借り、持ち前のサバイバル技能を存分に活かして瞬く間に応急処置を終えてしまう。
 とはいえ、応急処置にすぎないのは事実で、できる限り早く荒れた空域を抜け出して安定した航行をしたほうがいいに決まっている。クルーの体力的にもその方がいいのは明白だ。肝心の「ターゲット」に会う前に彼らが力尽きたらどうしようも無い。
「あざっす!シェリーの兄ちゃん!」
「いいのいいの。それより、みんなスタミナはちゃんと温存するのよ?その為の助っ人に来たんだからね。疲れたら、ワタシが一時的に代わるから呼んでちょうだい!」
 気のいい笑顔を見せて、辺りのクルー達へ呼び掛けるシェリー。それにはあちこちから威勢のいい応答があった。この分なら、とりあえずは「ターゲット」に会うまでに倒れる者はいなさそうだ。
 されどそんな風にシェリーが安堵した刹那、強い風が今まで以上に荒れだした。
 操舵室では熟練のクルーが舵取りをしているはずなのに、飛空挺は不安定に右へ左へ、上へ下へ、揺れる。中にはバランスを崩して床を転がるクルーもいた。幸い、彼らは皆乗り慣れているから、大した怪我は無いようだが……。
(これは危ないわね。なら、ワタシの出番……!)
 そう直感したシェリーは、すぐさま操舵室へ向かう。
「おぅ! あんたいいところに来てくれた! ちょいと手ェ貸してくんねぇか? こりゃあまたすげー風でなァ……っ!」
「おっけー、まっかせなさァい!」
 シェリーは言うが早いが舵輪に手を掛けて握り締め、外見に相応しい怪力でぐるんぐるんと舵をとった。流石は荒野育ちだ。
「嵐だって突き抜けてしまえば問題ないわ。共に生き残るわよ!」
「ガッテン!!」
 クルーたちの屈強な体力と豊富な経験、そしてシェリーの気配り――生い立ちを考えたら高すぎるほどの女子力に裏打ちされた気配りと、彼の猟兵としての力が、この時まさに美しくひとつに融合した。

 やがて飛空挺は荒波の如き暴風域を抜け、舵輪が幾分軽くなる。
 舵を取りながら、クルー達の報せだけでなく先の猟兵が提供してくれる情報をも受け取って風を読み、最高速で切り抜けるというシェリーの作戦は、どうやら上手くいったようだ。
「ふーぅ、なんとかなったわねぇ。ひとまずは、お疲れ様〜!」
「あざーっす! ……よぉーし、『ターゲット』狙ってどんどん行くぞ! お前ら全員、油断すんなよ!?」
 晴れ渡る蒼の中、シェリーも皆もいい汗をかきながら、より一層昂る気持ちを胸に、なおも先を目指して突き進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・フィッシャー(サポート)
『例え全ては救えずとも、誰一人として見捨てはしない』

・雑な扱いでもいいのでどんどん採用してくれると嬉しいな。
・【コミュ力】を有効活用出来そうな状況ならばそれを使うよ。なくても目的達成のために最善を尽くすよ。
・ユーベルコードは所持してるものからいい感じのを使うよ。
・他の猟兵との絡みも歓迎だよ。共闘するのなら、ボクは補助に回っても構わないよ。
・もし男なのか女なのか問われたら「見ての通り」と答えるよ。モニターの前のキミにも、ね。
・他の猟兵に迷惑をかける行為、公序良俗に反する行動はしないよ。

あとはお任せ。好きに使ってね。



 例え全ては救えずとも、誰一人として見捨てはしない――それが、王子様にして勇者のノエル・フィッシャー(イケメン王子様・f19578)が貫く信念だ。
 飛空挺を駆る勇士達が命を賭して危険な「ターゲット」に挑むというのなら、それが避けられぬのなら、自らが剣となり盾となりて最前線に立つ。ノエルはごく自然にその結論に辿り着き、この飛空挺に乗り込んでいた。
「よぉし、独特の気配が濃くなってきた! もう少しで『ターゲット』の元へ着くぞ!」
 クルーの独りが嬉々として叫べば、あちこちから猛々しい声が応じる。
「やりぃ! みなぎってきたぜ!」
「よっしゃ! 今回も天使核を回収してひと儲けだ! 終わったら酒だ! 肉だ! 宴会だ!」
 ……些か、先走り気味な声も混ざってはいるが。
 そんな荒くれ者の中に、ノエルは凛とした気品溢れる佇まいのままで混ざっていた。
 船内のこまごました雑用を手伝ったり、いよいよ出番が迫ってきた武装の確認を手伝ったりといったことを、ごく自然に溶け込んで、以前からの仲間であるかのように振舞っている。
「いやァ助かったぜ、ノエルの兄さん!」
「いやいや。この程度、礼には及ばないよ、キミ。」
 ノエルがここまで馴染むことが出来たのは、ひとえに尋常ならざる程にずば抜けたコミュ力の持ち主だからこそ。他に得手とする技能が無い代わり、人心を惹き付け円滑な関係を構築する技能の高さは、もはや天晴れと言うしかない極地。

「……っ!? まだ、ちょいと荒れた空を突っ切ることになりそうだぜ!」
 不意に、行く先を観測していたクルーが緊迫した報せを告げた。船内の空気が瞬時に張り詰める。
「しょうがねぇ、もう『ターゲット』はすぐそこなんだ! このままど根性で強行突破するぞ! いいかお前ら、歯ァ食いしばれ!!」
「……いや、その必要は無いよ。ここは、是非ともボクに任せて欲しい」
 覚悟を宿して叫んだリーダーに、ノエルはよく通る声で告げた。そしておもむろに飛空挺の進行方向へ向けて、高らかに宣言する。
「天地よ、ボクの声を聞け――王権の下に勅を命ず!」
 勇敢な王子たる、威風堂々とした勅命。それはノエルのユーベルコード【王子様の尊き御言葉(インヴォーク・コマンド)】を発動させる詠唱でもあった。
 制御が難しいとされるユーベルコードだが、やがて観測役のクルーが今度は驚愕に満ちた声で報せをもたらした。
「うへぇ!? おい、マジすか!? 雲も、風も、何もかも……まるで無風の海みてぇ! 完全な凪だ! ただの海だよ、こりゃあ!」
 その報告に驚いたのは、ノエルの用いたユーベルコードの本質を知る猟兵たちを除いて、全員だった。
「す、すげぇ……!」
「な、なぁノエルの兄さん、アンタまさか……自然さえ従わせる程の王家の生まれなのか!?」
「マジで!? アレ、冗談じゃねェってか!?」
「ああ、ボクは確かに王子だよ」
 どよめく船内で、ノエルと猟兵たちだけが平常心を保っていた。なんということは無いとばかり、涼し気な微笑みで応えたノエルは、改めて皆の意識を本来のものへ向けさせる。
「ほら、キミ達の活躍はここからだろう?『ターゲット』は、すぐこの先にいると言っていたでは無いか。集中、集中、だ」

 やがて飛空挺はノエルによって「雲で出来た凪の海」と化した積乱雲を完全に抜け出した。そのすぐ先には「ターゲット」が――予知で示された、子猫ほどにちいさな竜が、いる。
 勇士達の本番は、ここからだ。そしてそれはまた、猟兵たちにとっても同じである。

 ……さぁ、狩りの時間だ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『突然変異の寄生竜』

POW   :    食事
【魔力】を籠めた【突進】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【貯めてあるエネルギー(魔力等)】のみを攻撃する。
SPD   :    攻撃
【天使核が使用されている物品】を操縦中、自身と[天使核が使用されている物品]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
WIZ   :    防衛
敵より【天使核のエネルギー抽出に優れていた 】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シェリー・クサナギ
「マヤちゃん、クロエちゃん、頼んだわよ!」
・マヤ・ウェストウッド(f03710)とクロエ・ボーヴォワール(f35113)に支援を要請
・二人には勇士たちが乗る飛空艇を囲むように陣形を展開してもらい、小竜たちの攻撃から守るようにお願いする
・マヤとクロエが竜の群れ相手に大立ち回りしている間、勇士たちに飛空艇を雲の中に紛れ込ませるよう指示し、「ヘッドショット」で寄生竜の急所を狙い撃つ
・気づかれてしまった場合は得物のヴァーチュアで「制圧射撃」を試みる
・かわいいものをこよなく愛するシェリーとしては、できれば天使核を抜き取らずにテイクアウトしたいところだが、心を鬼にしてガマン


マヤ・ウェストウッド
「ったく、しょうがない。アンタに頼まれちゃ断りようがない」
・シェリー・クサナギ(f35117)の支援要請を受領
・自前の飛空艇「アンビュランサー」で戦場に駆け付ける。移動手術室を備えた空飛ぶ病院ながら「砲撃」も可能
・「嵐の救急医療」は、患者を救うならばオブリビオンにも敢然と立ち向かう優秀な医療スタッフを呼び出す。アンビュランサーが傷つこうとも「拠点防御」と「メカニック技術」で機体を即修理し、医術と救助活動で傷ついた勇士たちの応急処置を行う
・マヤの「操縦」テクで飛竜の群れに「空中戦」を挑む。天使核の出力差は「野生の勘」による機動力でカバー
「シェリー、『診療代』はそっちの勇士に請求すればいい?」


クロエ・ボーヴォワール
「丁度、わが社も『クラウド(雲)』の導入を検討していたところですわ!」
・シェリー・クサナギ(f35117)の支援要請を受領
・UC「クロエの見えざる手」により飛空艇を手配して、シェリーと勇士たちのもとに駆け付ける。現地住民を乗組員(正社員)として雇用し、船体に大きく自社の名前を貼り付けてコマーシャルも欠かさない
・ありあまる財力と「取引」技能で買い占めた弾薬で、小さな竜たちをくぎ付けにする
・クロエ自身はシンフォニックデバイスで「歌唱」し、敵群を惹きつけることにつとめる
・敵の攻撃力が高そうなので飛空艇が航行可能なうちに早々に退散を検討。社員を護ることも経営者の務め
「今後とも、弊社をごひいきに……」



 ――少しだけ、時を遡る。勇士達が「ターゲット」を目指して飛空挺で飛び立った後、まもなくのこと。
「ほ、本当にこんな、大金……!?」
「こ……今回の報酬、こんなに良いのか!?」
「さささ、詐欺でも、夢でも、ねぇ……! 本物の、カネ……!」
 勇士達のいた浮島から、あちこちで驚愕や驚嘆の声があがる。しかもそれは戸惑いながらも喜びに震えるような、勇士志願者や種々の商人達の声ばかりだ。
「おーっほほほほ! 当然でしてよ! 弊社の一員として雇うのですもの。危険な空域へ共に向かう以上、わたくしは相応の見返りを提供することを惜しみはしませんわ!」
 そんな彼等へと高らかに機嫌良く笑ってさらりと答えるのは、クロエ・ボーヴォワール(ボーヴォワール財閥総裁令嬢・f35113)。アルダワ魔法学園の世界でインフラを支える企業のひとつを経営する、その財閥総裁の令嬢として生まれたクロエは、自由奔放な性格でありながら内実は己の持てる資質を民草の為に全力で提供すべしと信念を貫く、一人前の猟兵へと育った。
 それは、総裁からの溺愛ともいえる子煩悩な愛と次期総裁としての厳しい学びを経て熟成され、これまでの猟兵としての経験で更に磨き上げられた、彼女のまごうことなき魅力である。

 クロエは、歓喜する人々から飛空挺を、弾薬を、そして乗組員たる社員へ、ためらいなく財力を費やしていった。
「カネ持ち、ナメないでくださる……?」
 呟くように紡がれたこの言葉は、そしてありあまる財力を湯水の如く消費したのは、実はクロエのユーベルコード【クロエの見えざる手(クロエコノミクス)】を無事に成功させ、先に飛び立った仲間を確実に支援する為。
 勿論、正社員扱いで給与のみならず手厚い福利厚生と共に雇用した人員や飛空挺へ配慮することも、飛空挺の船体に社名を大々的に記して自社をアピールすることも、手を抜かない。
「準備、完了しやしたっ!」
「よろしくてよ。……では、わたくし達も飛びますわ! いざ、勇ましい友の待つ空へ!」
 かくして「ボーヴォワール魔導蒸気技術社」専用船となった飛空挺も、大空を冒険へする旅へ向かって行ったのだった。

 そして今、肝心の「ターゲット」たる天使核を有した突然変異の寄生竜に接敵した飛空挺では。
「がおー!」
「や〜ん♪ なんて可愛らしいの!?」
 ぬいぐるみかと見まごうほどの愛くるしい青い竜が、精一杯威嚇する。されどその鳴き声は外見と相まって、シェリーのハートを見事に射抜いてしまった。テイクアウトしてしまいたい衝動を、言葉だけでグッと心の奥底に押さえ付けるシェリー。せめて他にも仲間がいる、集団で襲い来るような力の弱い敵だったなら、その中の1体くらいは……いやいや、今は勇士達の支援が最優先だ。

 予知にあった通り、この愛くるしいちいさな青い竜――ちび竜は、その見た目からは想像し得ない凄まじい力を発揮して勇士や飛空挺を迎撃している。
 事前の情報から、このちび竜が集団戦の敵勢全てを合計したくらいの強さを単体で有していると推測したシェリーは、この時のために仲間を呼んでおいて正解だったと実感していた。
「マヤちゃん、クロエちゃん、頼んだわよ!」
 ここぞとばかり、タイミングを図ってシェリーが要請を飛ばせば。
「到・着!! ですわ! 丁度、わが社も『クラウド』の導入を検討していたところですの、絶好の機会ですわ!」
「ったく、しょうがない。アンタに頼まれちゃ断りようがない。飛空艇『アンビュランサー』、到着だ!」
 すぐさま、ちび竜から勇士達の飛空挺を守るように2隻の新たな飛空挺が姿を現した。
 片方はクロエが率いる、ボーヴォワール財閥専用船。船体に堂々と掲げられた社名が眩しい。
 ただその、クロエの宣言する「クラウド」は恐らくこの空に浮かぶ雲では無くてもっと電子的な意味のほうというか、確かに雲の形で例えられるとはいえ高度なテクノロジー的な話のもののはずなのだが、はたして……いや、今は戦いが先だ。

 そしてもう片方は、豪放で快活な女性の声が飛んだ小型飛空挺。その声の主は、3人の中では猟兵としての練度が最も高いマヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)だ。
 彼女が駆る飛空挺は、無骨な砲塔を初めとした様々な武装を備えながら、医療に携わる存在であることを示すマークをも持ち合わせていた。戦闘を補佐しながらも移動手術室による医療支援まで提供できる、攻防一体のガンシップ――空飛ぶ病院だった。
「ありがと〜!……さァ、ワタシ達は一旦雲隠れするわよ。バックバック!」
 シェリーの指示で、勇士達の飛空挺は2隻と入れ替わるようにやや後退し、雲の中へ姿をくらました。されど、当然ながらターゲットを見失ってはいない。シェリーは懸命に攻撃と回避と操船に集中する勇士達の中で静かにアサルトライフル「ヴァーチュア」を手に取り、スっと目を細めた。

「さぁ、まだまだ惜しみなく撃ちまくりなさいな!弾薬はこの時のために買い込んだのですわよ!余らせても無駄になるだけですわ!武装が壊れない最大限で、途切れることなく放ち続けなさい!!」
 クロエの激励に、財閥専用船の正社員達も全力で応えていた。愛くるしいちび竜、それもわずか1体を相手にするにはあまりにも過剰では無いかという程の砲撃を、浴びせに浴びせまくる。
 だが、それはダメージを与えることと同等かそれ以上に、シェリーとマヤの飛空挺を防護する役割をも目的としているものだった。いわゆる「攻撃は最大の防御」を地で行く戦い方である。
「きしゃー!ぐるるる……がぉぉぉおー!!」
 ちび竜はちいさいがゆえの機動力と、天使核から得る凄まじいエネルギーのブレスや尻尾の筋力で、くるくると弾幕を掻い潜り、砲弾を叩き落としている。それでも、塵も積もれば山となるような感じではありながら、ダメージは地味に受けているようだ。
「きしゃしゃー!がおーっ!」
「まぁっ、ちょこまかと……!わたくしを愚弄するつもりなら、どんなにあなたが小さかろうが、骸の海の底まで轟沈させてやりますわ!」
 挑発するような鳴き声を上げる竜へ、クロエはまるで汚物を目の当たりにしたかのような、露骨に見下す視線を向けた。

 一方、マヤはというと。
「諸君、仕事の時間だ。すべての害毒を切除し、汚物を消毒するために。あとは全部やっといt……ええッ、アタシもやるの!?」
 【嵐の救急医療(ナイツ・イン・ゲイル)】で100余名の精鋭医療スタッフを宇宙コロニーK9から召喚し、負傷した勇士をトリアージしては次々と忙しなく治療回復させていた。
 ちび竜の一撃は、猟兵であっても脅威的と判断する程の威力を持つのだ。いかに勇士といえど猟兵では無い彼らの怪我は免れないし、ましてまだ駆け出しの勇士達では、傷の深さも負傷人数もなかなかのものだった。
 そんな彼らを、精鋭スタッフたちは最大効率で、かつ的確に戦力として復帰できるレベルまでの処置を完了させ、シェリー達が乗る飛空挺へ迅速に送り返していた。また同時に治療中の患者である勇士達を守るための砲撃をも行っていた。
 されどそんな戦線維持の要ともなれば、ちび竜も放っておかない。
「来るぞ!」
 マヤが野生の勘で気づくのと同時、自分にとって本当に邪魔になるのはこっちだと、飛空挺「アンビュランサー」へちび竜が突進してきた。即座に回避を試みるスタッフ達だが、様々な技能に秀でる彼らや小型飛空挺ならではの機動力をもってしても、ちび竜の接近を許してしまった。
「ぎゃーおーっ!!!」
アンビュランサーの間近から、ちび竜は全力ブレスを放つ。敵より天使核からのエネルギー抽出が優れていると、命中率や回避率、ダメージ力が3倍に跳ね上がるのだ。天使核をそもそも持たないアンビュランサーでは、ちび竜が前提条件を満たすのは容易かった。
 あまりの熱量で融解していく砲塔や船体を、スタッフもマヤも役割分担し、迎撃の手を休めないままに拠点防衛とメカニックの技能をフル活用して手際よく修復していく。
 負傷した勇士を医術と救助活動で治療し、救難艇らしからぬ威力の砲撃を放って飛空挺の中の「闘志や信念を持つ命」全てを守り、飛空挺の修復も即座に済ませ……マヤと精鋭スタッフ達は見事なまでの連携で、3つの異なる行為を、使える限りの技能を最大まで用いて成立させていた。

「ぐーうーるるる……」
 やがてブレスを吐ききり、尚もアンビュランサーが健在であることを知ったちび竜が、忌々しげな鳴き声を立てる。そして今度は更にアンビュランサーの至近距離へ迫り、丸ごと叩き潰して吹き飛ばさんと尻尾を振り上げた。

 ――その時だ。不意にちび竜の片眼がひしゃげ、どろりとしたものを流した。

「ぎゃああああ!!」
 完全に潰れた眼の痛みに、ちび竜は取り乱して絶叫した。アンビュランサーはその隙に退避を済ませ、安全を確保する。
「よぉし狙い通りね、バッチリよ!マヤちゃん、ありがとー!もちろん、クロエちゃんもね!」
 ちび竜の眼を射抜いたのは、シェリーの【ヘッドショット】による、急所狙いの一撃。
 眼は脳の間近にある器官であり、このちび竜もまた恐らく両眼と脳は近いと踏んだシェリーが、勇士達の巧みな操船技術で彼のユーベルコードの射程圏内ギリギリである91mまで密かに近づき、柔らかい急所たる眼を狙ったのだ。

 ちび竜に結構なダメージを与えることに成功した3人の猟兵達ではあったが、マヤの飛空挺もクロエの飛空挺も、相応に痛手を受けていた。「正社員」達には疲労感を滲ませる者も出てきている。
(社員を護ることも経営者の務めですわね……)
 飛空挺がまだ動けるうちに一旦戦略的撤退をするべき、とクロエは判断した。
「わたくしは1度ここを離脱致しますわ!すべては社員を護る責務のためですの。どうぞ今後とも弊社をごひいきに……」
「はーい!感謝よクロエちゃん♪」
 シェリーも快諾し、財閥専用船は後退していった。
「アタシらはさすがに撤退したらヤバいね。何とか最小限の後退で踏ん張ってみせるよ……ところでシェリー?」
「はぁい?」
「今回の『診療代』は、そっちの勇士に請求すればいい?」
 マヤの声に、シェリーのそばに居たリーダー格の勇士の顔が一気に青ざめた。
 それを見たシェリーは思わず苦笑い。
「んーと、後でまた連絡するーっ!」
「オーライ!」

 マヤとシェリー、そして気を取り直したリーダー格の勇士も含めた皆が、今一度ちび竜を見据える。
 片眼を失わせる事はできたが、まだ絶命してはいない以上、油断はならなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
突然変異って魔獣にもいるのね。ま、そこはどうでもいい。オブリビオンはただ討滅あるのみ。

「式神使い」で『GPD-331迦利』と共に飛鉢法で出撃。
『迦利』は「レーザー射撃」で竜を牽制しつつ、適宜攻撃を加えさせる。
あたしは飛鉢法で空を舞い、竜の突進を「見切り」避けながら、「高速詠唱」炎の「属性攻撃」「衝撃波」の不動明王火界咒を叩き込む。
出来るだけ、潰れた片目側に出来た死角を利用しながら。

そろそろ頭に血が上ってきたかしら?
『迦利』前部鋭角に「オーラ防御」を付与。疑似衝角となして、全力突撃よ! 抉り取りなさい、『迦利』!

骸は、資源になるのよね。出来れば持ち帰りたいところだけど、無理なら雲海へ沈めるか。



「突然変異って魔獣にもいるのね」
 興味をひかれたゆかりは、勇士や他の猟兵たちが奮戦する様を観察して機を見つつ、小さく感想を漏らした。天使核を得てしまったが為に強化されたその力は、なかなかのもの。
 とはいえ、彼女にとってそんなことは些末なものだ。オブリビオンはただ討滅あるのみ。シンプルで、ゆえに強い信念。

「来なさい、迦利(カーリー)!」
 彼女の声に呼応して、紫と白を基調とした逆三角形型の機甲式式神が現れる。そしてすぐさま足元を蹴り、迦利と共に飛鉢法を駆使して突然変異の寄生竜――ちび竜のもとを目指した。
 迦利はゆかりの式神であるがゆえに、声を介さずとも主の意思通りに動いた。レーザー射撃によりちび竜を牽制しながら、適宜攻撃を浴びせて主の為の援護を行う。
 そしてゆかりは飛鉢法により華麗な足取りで宙を舞い飛ぶ。
 ちび竜の突進は、彼女の歴戦の経験から易々と見切られ、なかなかゆかりに当たることがない。
「(ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン!)」

「がぉーっ!」
 潰された片眼の死角に踏み込まれ、遂にちび竜は痺れを切らした。
 身体に、その小ささからは想像もつかぬ程の魔力を宿して、ゆかりへと突進していく。これが当たれば、彼女の中に潜む様々な呪力を奪うことができる……と、形勢逆転を狙ったのだろう。
 されど、ゆかりのほうが1枚上手であった。ちび竜が痺れを切らすまでの間に、彼女は既に高速詠唱により、炎の属性を持つ術技の発動準備を終えていたのだ。
 ゆかりが投げつけた白紙のトランプから、絡みつき不浄を灼く炎が噴出し、ちび竜の身体を包む。【不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)】、密教や修験道に縁の深い術技だ。

「ぎゃーーーっ! きしゃー!」
 思うようにいかないちび竜は、怒りに任せてとにかく暴れる。しかしそれは、歴戦の猟兵であるゆかりを前にしては、ただの隙としかならなかった。
「(そろそろ頭に血が上ってきたかしら?)」
 そう判断したゆかりは、『迦利』の前部鋭角に「オーラ防御」を付与。疑似衝角となして、命令を下す。
「全力突撃よ! 抉り取りなさい、『迦利』!」
 迦利は、指示通り的確にちび竜へと立ち向かっていく。そして、腹部に突き刺さると、思い切り内部を抉り出した。
「……!」
 ちび竜はのたうち回りながらも、やがて力尽きて迦利に突き刺さったままに動かぬ骸となった。抉られた中から、金色の塊が見える。恐らく、天使核で間違い無い。

「スゲェや!」
「あんなにハチャメチャに強いヤツを、俺たちが仕留めた……!」
 勇士たちの飛空挺へ、ちび竜の骸を手にしたゆかりが戻れば、どっと歓声が沸いた。
「ま、なかなかの強さだったのは認めるわ。でも、あなたたちの頑張りがあってこそよ。私たち猟兵は、助太刀したに過ぎない。……で、天使核が要るのでしょ?」
 照れ隠しもあるのか、ゆかりはあくまでもサラッと受け流し、骸をリーダー格の勇士へ差し出した。
 竜の体内から取り出された天使核は、戦いで幾らかは竜にエネルギーを吸われたはずなのに、猟兵たちのみならず駆け出しの勇士まで感じ取れる程の圧倒的なエネルギーを宿していた。この分なら、計画通り新たな飛空挺の動力源として問題なく利用できるだろう。
「……その骸は、資源になるのよね?」
「そうとも。俺たちは天使核を回収するのが目的だ。この竜の肉なり骨なり何なりは、全部差し上げよう! 好きに使ってくだせェ!」
「焼肉にしたいんなら、浮島に帰って宴会する時に、焼いてやるぜ?」
「ちっちぇー竜だが、牙や骨は武器や防具にしても良いかも知れんな」
 念の為と尋ねたゆかりの問いに、勇士たちは興奮冷めやらぬ様子で答えた。成程、天使核以外は猟兵の好きにして良いらしい。

「さぁて、凱旋だ! 帰ったら謝礼も兼ねて盛大な宴会だァ!」
「おぉー!」
「うぉー!」
 勇士たちの飛空挺は、方向転換し、浮島へ向かっていく。
 駆け出しの勇士たちから1人の犠牲者も出ずにこの戦いを終えられた事に、猟兵たちも安堵しながら共に向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『島観光』

POW   :    島の街や村を観光する。

SPD   :    島の風を感じるために空中散歩

WIZ   :    島の自然を観光する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

村崎・ゆかり
祝勝会ねぇ。せっかくだし呼ばれてみようかしら。
アヤメ、羅睺、行きましょ。

あの竜は小振りだったとはいえ、家畜一頭分くらいの肉は取れたんでしょうね。
傷む前に食べきる手伝いをしましょうか。
二人も一緒にね。

竜肉は初めてね。どんな味かしら。
ふむ。胡椒か何かちょうだい。しっかり味付けした方がいいわ。

みんな盛り上がってるわねぇ。お酒を酌み交わせばあの空気に入れるんでしょうけど、まだ飲めないしね。
ま、気にしないわ。隅の方で竜肉つついてましょ。



「祝勝会ねぇ。せっかくだし呼ばれてみようかしら」
 ゆかりは、初めは賑やかに飲めや歌えやと騒ぐ勇士達を眺めていた。されど、顔を合わせた勇士達から声が掛かると、ふっと破顔して、ゆかりのかけがえの無い存在もいざなった。
「アヤメ、羅睺、行きましょ」
 エルフのくノ一であるアヤメと、数奇な縁から式神となった羅睺の2人へ手招きして、宴会の中へ歩を進める。

 大小の焚き火が点在する中のひとつにゆかり達も加われば、豪快に笑う男性の1人が語りかけてきた。
「よぉ、姉ちゃん! アンタ、荒くれ者の勇士どもをサポートしてくれたんだってなぁ? いやァ、大したもんだよ!」
 褒めちぎられるのを、ゆかりは内心で苦笑いしながら受け流す。あんまり全力で褒められるのも、どこかくすぐったくて素直になりきれない。
「別に……できることをしたまでよ。褒めるなら、強敵相手に奮闘した勇士達のほうがいいんじゃない?」
「はぁ〜! 実力派でありながら謙虚なもんだ! ……さ、ほら。肉はスタミナがつくぞ。そろそろいい具合に焼けたヤツがある。姉ちゃん達も食いな」
 ゆかりの言葉に感心した男は、熱々の焼肉を3串取り、皿に乗せて差し出してきた。

 あの竜はかなり小柄に見えていたが、火にくべられている量から推測すると、家畜1頭分程度の肉はあったらしい。
(傷む前に食べきる手伝いをしましょうか)
 ついツンデレな考え方をしてしまうのは、最早彼女の癖か。アヤメと羅睺にも竜の焼肉を渡してから、ゆかりもまた、まずはひと口含む。
 ゆかりは、竜の肉を食するのはこれが初めてだ。どんなものだろう……と淡く期待しながら咀嚼する。確かに新鮮な味わいの肉汁や歯応えのある食感は悪くない。しかし、思ったよりなんとなくパンチに欠ける気がした。
「……ふむ。胡椒か何かちょうだい。しっかり味付けした方がいいわ」
 一旦口の中の肉を飲み込んでから、スパイスの小瓶を受け取って肉へふりかけ、再び軽く炙る。
 それからまた焼きたての肉を少し冷ましながら口にすれば、スパイスの香りとそれに引き立てられたジューシーな肉汁が口の中を満たした。肉も幾分柔らかく食べやすくなったように感じる。

 もぐもぐと竜肉の串焼き……というより、ドラゴンステーキと言ったほうが近い焼肉を、代わる代わる声を掛けてくる人々やアヤメ、羅睺と世間話をしながら楽しむ。
 ふと他の人を見遣れば、宴には付き物の様々なお酒をあおりながら盛大に盛り上がっているのが目に入った。勇士達の幾人かもまた、飲めや食えやでどんちゃん騒ぎをしている。
(みんな盛り上がってるわねぇ)
 そんな光景を、ゆかりはどこか微笑ましく眺めた。彼女も飲酒可能な成人を迎えたら、いつかこんな賑やかさの中にもま混ざれるのだろう……今は未成年だから、致し方ないが。
 周りから聞こえてくる歓声や音楽、歌声をBGMに、ゆかりはアヤメや羅睺、そして声を掛けてくる浮島の住人達と穏やかに食事を楽しむことにしたのだった。
 凱旋の宴は、まだまだ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・シフファート
ブルーアルカディアに独自で天上界の調査に来ていた所を通りがかるわ
もう戦闘は終わっているみたいだけど、折角だしドラゴンステーキを食べに行きましょうか

そう言って分厚いビフテキならぬドラゴンステーキが焼かれた鉄板の前で優雅にナイフとフォークを取り、切り分けて口に運んでいくわ
うん、サーロインの滑らかな油分に近い部位のようね
後、ばら肉に近い部位があれば……
ちょっと厨房を借りるわね
そう言って厨房内で白菜に似た葉野菜を切り出し、ミルフィーユ上に鍋へと詰めて煮込んでいくわ
素材こそ違うけれど、勝手は同じでしょう
さ、ミルフィーユ鍋の完成よ
舌を火傷しないよう気を付けて食べなさいな


シェリー・クサナギ
「ワタシが求めていたもの。それは……」
・この世界に住まう人々の、勇敢な意志。シェリーはそれを見届けることができたので満足しており、必要以上の報酬を受け取るつもりはない
・――が、彼らの好意を無下にするのも心苦しいので、先程援護要請に応じてくれた同志への土産に飛竜の骸を受け取ることにする
・闇医者のマヤには研究資料用に骨格の一部を、ゲテモノ好きのクロエには竜の臓物を酒に漬けて保存するよう住民にお願いする
・シェリーにとっては異世界のグルメであろう竜肉の串焼きを一本、酒と共にかっくらい、休む間もなく新たな旅の準備をはじめる
「ワタシは行くわ。行かなきゃダメなの。そこに、護るべき美しいものがある限り……!」


ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎

『サイコミュ・ファンネルビット・テレポート』を駆使して状況と舞台と状態を把握しながら周囲の自然の空気と環境と風を記録して記憶します。
『アプロディーテ・フューチャーサイト』で1分先までを見てみても自然の変化と情勢の自然変化しか見えずに一瞬困惑をしつつも「これが…平和と平穏…」と呟きながら戦場と戦況で生まれた存在だけに「…守護(まも)りたい…」と呟いて自然と涙します。

全身に風を浴びて自然を見て、「平和を守護して維持するのが“猟兵”…」ふと無意識に微笑んで「守護して維持して笑顔を増やす…」両手を広げて「私の戦闘の能力はその為の能力、それを駆使する!」と再確認をして決意の笑顔



 シャルロット・シフファート(異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708)は偶然にもこの浮島へ、独自にブルーアルカディアの調査に訪れていた。不意に、そんな彼女の鼻先を香ばしい匂いがくすぐっていく。
「(……お肉?)」
 いざなわれるように、その元を辿るシャルロット。するとそこでは豪快な笑い声を響かせる人々が火に肉をくべて焼いていた。聞こえてくる会話によればどうやら祝勝会のようで……。

「お! 嬢ちゃん、あんたも食いねぇ! ちょうど良い焼け具合だぞ!」
 人の良さそうな顔で、そのうちの1人がシャルロットへ手招きした。彼女も折角ならと傍へ向かう。
 とはいえ、彼女は気高き令嬢たろうとするレディ。そっとユーベルコード【高き者たる令嬢の作法(レディ・オブ・ハーヴァマール)】を発動させ、独自の技能である「貴族令嬢」を活用しながら振る舞う。
「ええ、お招きに感謝します。……分厚いお肉みたいだけど、ステーキ、なのかしら?」
 麗しい金髪を、食事の邪魔にならないように、火に触れてしまうことのないように、優雅な髪型へとまとめてシャルロットはその集まりの中へ加わった。それでも、勇士達も含めてほとんどの人は彼女の気品に気後れすることは無かった。先に、既にありあまる財力をもってして勇士達のサポートに駆けつけた令嬢の猟兵を見ていたからかも知れない。

「……さ、どうぞレディ。よく火の通ったドラゴンステーキだ」
 調理をしていた別の勇士が、食べやすいようにカトラリーも添えて、手早く広げた折りたたみテーブルの上へ、シャルロットの分の肉厚ステーキを差し出した。彼女は礼を述べ、洗練された仕草でドラゴンステーキを切り分け、品よく口へ運んでいった。
「(……うん、サーロインの滑らかな油分に近い部位のようね。後は、ばら肉に近い部位があれば……)」
 噛みごたえや味にはそれなりに満足しながらも、シャルロットはふむと思案する。
「ねぇ、ドラゴンのお肉は他にもまだあるのかしら? ちょっと、キッチンと一緒に借りたいの」
「んー、あるっちゃあるが、小ぶりなドラゴンだったんでなぁ……大して残ってねぇと思うが」
 眉根を下げて答えつつも、彼は大声で奥さんと思しき人を呼び、シャルロットにドラゴン肉の残りとキッチンを貸すよう言いつけた。彼女はシャルロットと先ほどこの浮島について語らっていた人の1人で、快諾してシャルロットを案内した。

 果たして案内されたキッチンには、鍋や生鮮食品類はあるものの、ドラゴン肉は本当に僅かしかなかった。それでも、婦人の話を聞けばシャルロットが望んでいたばら肉に近いものらしい。
 そこで、婦人に許可を得ると、シャルロットは早速、鍋やそのドラゴンのばら肉、そして白菜に似た葉野菜である「ホワイトリーフ」を借りて、テキパキと調理を始めた。貴重なお肉を葉野菜で巻いてミルフィーユ状にし、鍋で煮込んで……。残念ながら借りることができたのは、よく鍋料理に使われる土鍋では無かったが、獣の骨を加工して作られたその鍋は、他の世界の土鍋に外見は割と似ていた。
「あなた、お料理お上手ねぇ……!」
 婦人は、鍋の扱いに関することなどの最低限のアドバイスだけして、後は感心しながらシャルロットを眺めている。
「レディたるもの、このくらいはできなくてはいけないものよ。……さて、こんなものかしら?他の世界では『ミルフィーユ鍋』というの。皆さんのお口に合えば良いけど」

 シャルロットの代わりに婦人が鍋を手にして、2人揃って先程の集いへ戻る。どうやら少なくともこの焚き火に集まった勇士達は手軽に食べられる焼肉をよく食べていたようで、「ご令嬢お手製の異国の鍋料理」というのは味もレア度も高評価だった。
 シャルロットもまた、すっかりご機嫌の勇士達やその家族から、この浮島の暮らしが狩猟中心であるという話や、天使核を獲得して帰ってくる勇士には統括する専門のギルドがあってその中で依頼の難易度や志願者の実績に応じた報酬が出る……といった少々踏み込んだ話を聞くことができた。
 互いに良き出会いとなった宴は、夕焼けの中でさらに盛り上がっていく。

 一方、こちらはシェリーと、ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)のペア。
 初めは幼いティティスが独りで【サイコミュ・ファンネルビット・テレポート(サイコミュ・ファンネルビット・テレポート)】を発動させながら、周辺環境を記憶し記録し……とふらふら移動していたのだが、その様子に気づき、多少の保護の必要性を感じ取ったシェリーが声を掛けたのだ。
 案の定ティティスは平和と平穏に満ち満ちたこの浮島の様子を前に、どこか戸惑っていた。

「これが……平和と、平穏……」
 ぽつり、紡がれた小さな声。この浮島に住まう人達の勇敢な意志という美しいものをじっくり味わっていたシェリーが何か言おうとするも、それより早くティティスの頬を雫が流れた。
「……守護(まも)り、たい……」
 幾分機械的な響きながら、そこには共に戦った勇士達に引けを取らぬ意志が見えた。シェリーはその涙を拭ってやりながら、笑顔で頷いて告げる。
「大丈夫よ、アナタも立派な『猟兵』なんだから! できるわ、ちゃんとね♪」
 美しいものがまさに芽生えようとする瞬間に立ち会えるチャンスは、数多の世界を駆ける猟兵といえど、そう多いものでは無い。

 シェリーの笑みに、ティティスは今一度目を上げて、蒼空を茜色に染めていく陽射しを、島を吹き抜ける涼風を、人々の談笑の声を、全身で、もてる感覚のすべてで受け止めて微笑んだ。
「平和を守護して、維持するのが……『猟兵』……。守護して、維持して……笑顔を、増やす……」
 ティティスの無機質だった語調に、段々と何かが宿っていく。
「私の戦闘の能力はその為の能力、それを駆使する!」
 大きく両手を広げ、高らかに宣言する6歳の猟兵は、にっこりと笑顔を見せていた。
「美しいわよ、アナタのその気持ち。大事にしてね」
 シェリーは、さらなる「美しさ」との出会いに心を震わせて笑みを返していた。

 さて、そんなシェリーのもとへと、ふと若手の勇士達がやってきた。
「ここにいたのか!……なァ、あんた!死地を一緒にくぐってくれたんだ、良かったら何か欲しいものを贈りたいんだが……何が良いかな?お頭も是非に何か礼をっつーんだ。遠慮なく言ってくれ」
 シェリーとしては既に「美しいもの」をもらっていたので満足していたのだが、こう言われて無下にするのもそれはそれで心苦しい。そこで逡巡ののち、援護に駆け付けてくれた仲間へのお土産をメインに頼んでみることにした。
「……そうねぇ、それならご厚意に甘えるわ。ありがとう♪」
 闇医者の彼女には、今後の研究資料向けに、あのドラゴンの骨格の一部を。
ゲテモノ好きな令嬢の彼女には、ドラゴンの臓物を酒で漬け込んだ代物を。

 そしてシェリー自身は――ティティスには甘いジュースをさりげなく用意してもらった上で――勇士達と共に酒を飲みかわしながらドラゴン肉の串焼きを1本、ティティスと共にご馳走になることにした。
 異世界グルメであるドラゴン肉は、噛みごたえ十分にして口の中に広がる肉汁の旨みも十分、ざっと塩コショウしただけの味付けでもお酒をともにしているとなかなかの美味と感じられるものだった。

「お、もう一杯飲もうぜ?酒ならまだ……」
「ああ、ありがとう。だけどごめんね、ワタシはもう行くわ。ううん、行かなきゃダメなの!まだそこに、ワタシの求める美しいものがある限り……!」
 シェリーは言いながらどんどん熱血になって……しまいには、一目散に夕陽へ向かって全力ダッシュしながら叫んでいた。
 ティティスは、そんなシェリーのことを初めはびっくりしたように見送っていたが、お肉を食べ終えると後を追いかけていったのだった。

 ――かくして猟兵達の活躍により、浮島の日常も、勇士達の意志も何も損なわれることなく、日が沈んだ。
 そして幾ばくかの日が流れ……猟兵達の名や称号を冠した新たな飛空挺が、新たな冒険へと、新たな空へと飛びたった。
 その動力には、猟兵達と共に勝ち取った天使核を据えて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月23日


挿絵イラスト