4
人はそれを勇気ある者と呼び成せば英雄にならん

#ブルーアルカディア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ブルーアルカディア


0




●或る勇士の奮起
 ――常々思っていた。自分はどうして勇士の道を選んだのかと。魔獣の遺骸や天使核の他に、どうして勇士の道に進んだのか、どうして続けられているのかを。

 始りはとある浮遊大陸で恐ろしい魔獣に苦しめられている民を見たからだった。
 強大な力を持ちながらも残忍にして狡猾な、八つ首の竜が襲い民の生活を蹂躙される光景を見せつけられれば、勇士は否応なく思い出す。
 こうして苦しむ民を魔獣の手から救うために、志したのではなかったかと。

 故に勇士達は往く。己の初心を思い出し、魔獣に苦しむ民を救う為に。
 ――その勇気ある進軍の結果が、魔獣の巣窟に辿り着く頃に多くの仲間と飛空艇の大部分を失い、無惨にも魔獣に食い殺される未来であるとは、彼等は未だ知らない。

●竜退治は何度目か
「諸君。竜退治はもう飽きたと言いたくなるような世界の戦いは、とっくに終わったね」
 グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、荒廃した黙示録の世界の、とうに終わった戦争を思い出しつつ語り出した。
 何時もながらに突拍子もないという何処からかの声に、彼女はグリモアを静かに輝かせ、赴くべき世界を映し出した。
「喜び給え。ここに竜退治の仕事を持ってきた」
 ――淡い金色の輝きが数多の景色惑うグリモアベースに、鮮やかに広がる蒼穹の光景を映し出し世界の色を変えた。

「さぁ語ろうか。舞台は遥かなる蒼穹の理想郷、ブルーアルカディア。君達には勇士達の聖戦を助けに行って貰いたい」

 とある魔獣に襲われ被害を受けている浮遊大陸がある。だがとある勇士の一団――今でこそ魔獣狩りと天使核の収集で欲望優先に動いていた彼等だが、大陸の惨状に嘗ての志を思い出し、魔獣退治に向かっていった。
「志は立派ではあるのだが、如何せん相手が悪い。魔獣は中々に狡猾だ」
 不定期に大陸を食い荒らしては、積乱雲――内部に暴風と雷と吹雪が荒れるそれを壁の代わりにし、その先で引きこもり難を逃れ続けている。
 討伐するにはそれを突破する他ないのだが、風と雷と吹雪の暴力に晒され続けては流石の勇士も飛空艇や人員に少なくない犠牲が出て、魔獣に為す術もなく返り討ちに遭ってしまうのだという。

「よって君達には、この暴風と雷と吹雪が荒れ狂う積乱雲の中で、突破のサポートをして貰いたい」
 状況としては直接勇士達の飛空艇に乗り込むこととなる。丁度積乱雲の中に突入しようとした時点であるので、そこからサポートを始めて貰いたいと語る。
 事情を話せば猟兵達に彼等は快く協力してくれるし、余程無茶なことを言わない限り十分に協力してくれるだろうと補足する。
「完全に無傷での突破は難しいが、それでも無策で行かせれば甚大な被害が出る。そうなれば彼等の勇気は無謀で終わってしまう」
 飛空艇の損傷は免れないかもしれないが、人的被害に関しては――多少の手傷はあるかもしれないが、死者は出さず、これから先の戦闘も十分に行える程度に抑えられるだろうと語った。

「然る後、民を苦しめる魔獣を討伐して貰いたい」
 そう言ってスフィーエが示すは八つの首を持ち、空を翔ける翼さえ備えた強大な多頭竜の魔獣の姿を映し出した。
 強大な力を持ち、その上で残酷極まりない性質を持ち、浮遊大陸を食い荒らし、民を苦しませることを楽しんでいるのだという。
 同情の必要もないので遠慮なく倒すべきであるし、勇士達も遠慮なく力を貸してくれるので、存分に力を振るって欲しいと語る。
「ちなみにだがね。中々にこいつは美味しいらしい。特に首回りの肉や、目が極上の味をしているとか……」
 首回りは歯応えと旨味が豊富で、目は蕩けるような舌触りと旨味が堪らないらしく、倒すついでに食料になって貰うのも有りだとスフィーエは笑ってみせた。

「初心は大事だし思い出して奮起できたのなら良いことだが」
 一通りのことを語り終え、スフィーエは気を取り直すように茉莉花茶を一口してから、改めて語り出した。
「それが潰える絶望もまた度し難い。どうか、その聖戦を良きものとしてあげて欲しい」
 頭を下げ、グリモアの輝きが開くは勇士達の乗る船――淡い金色の輝きが猟兵達を導いていくのだった。


裏山薬草
 どうも、裏山薬草です。
 竜退治は飽きるなんて言いますけれど、飽きませんよね? 大丈夫ですよね?

 というわけで今回は、魔獣退治に赴く勇士達に手を貸し、魔獣を討伐し、浮島に戻って宴会するシナリオとなっております。
 勇士達は三十代の男性・魔獣解体士を筆頭に、様々な年代と性別・ジョブの人員が広く浅く所属しているようなイメージです。
 場面としては勇士達の飛空艇に乗り込み、協力を取り付けた所から始まりますので、事情の説明等は不要です。

●第一章『冒険』
 オブリビオンの下へ行く道の、積乱雲の中を突っ切ります。
 内部は暴風と雷、猛吹雪に満ち溢れておりますので、上手くそれを凌ぐよう立ち回ってください。
 流石に無傷では済みませんが、上手く立ち回れば損傷も抑えられるので、ボス戦でのボーナスが増えたりします。

●第二章『ボス戦』
 敵の巣に辿り着き、勇士達が狙っている魔獣オブリビオンとの戦いになります。
 強敵ですが勇士達と上手く協力し合いながら戦えばボーナスとなります。
 勇士達は皆様には及びませんが、適切な指示を与えればそれなりに戦力になります。
 ボスの根城は何の変哲もない浮島で、一章のような自然災害の邪魔はありません。

●第三章『日常』
 無事に魔獣の肉を持って帰り、近くの浮遊大陸での宴会となります。
 現地の人々や勇士達の交流、または魔獣料理などを目一杯楽しむと良いでしょう。
 この章のみ、呼ばれた時のみスフィーエは適当にお邪魔します。

 また、皆様が振舞った魔獣料理は後日グリモアベースに紹介いたします。望まれなければその旨をお書きくだされば紹介いたしませんのでご安心を。

 プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。
150




第1章 冒険 『龍の巣だよ!』

POW   :    根性で正面突破、いざとなれば武力や体力で乗り越える。

SPD   :    風を読み最高速で潜り抜ける、モタモタしている暇はない。

WIZ   :    直ちに迂回ルートを探索、とにかく被害を最小限に抑えていく。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニクロム・チタノ
ボクの守護竜と違ってこの世界の竜は悪竜が多い印象だね
でもそんな強大な敵に勇気と使命で立ち向かう、正に反抗者、ならこのまま見殺しにするわけにはいかないよ!
勇士のみんなボクもみんなと一緒に悪竜を退治するよ
大丈夫、ボクには反抗の加護があるこんな嵐なんかには負けないよ!
私は一人じゃない
守護の青焔は反抗の心を持つ者達を護る加護そのもの、今まであらゆる困難から反抗者を救ってきた形を与えられし奇跡だよ
暴風や雷を緩和して船を進み易くしてくれる、さあ行こう罪無き人々を苦しめる悪竜を退治しに!



●反逆の狼煙
 グリモアの転送門を通り、暴風と吹雪と雷に晒され、幾度となく揺らぎを見せた船内に入り、勇士達への自己紹介もそこそこに。
 ニクロム・チタノ(蘇った反抗の翼・f32208)は飛空艇の中、先のまるで見えぬ暴力的な空域の遠くに目線を向けた。
(ボクの守護竜と違って、この世界は悪竜が多い印象だね……)
 遠きに控える、此度の事件の元凶となった八つ首竜を想いニクロムは内心に吐き捨てた。しかしだからこそ、そのような強大な敵に立ち向かう相手ならば力を貸してあげたい。
「勇士のみんな、ボクもみんなと一緒に悪竜を退治するよ」
 ドンと胸を叩いて見せて、力強く宣言すれば、飛空艇の揺れの中でも勇士達は活気づいて笑う。
「勇ましいこったけどよ。……骨だぜ?」
 だが、と勇士達のリーダーがニクロムの声に反論する――悪竜は確かに強大、しかもこの進むだけでも多大な損傷を負わせてくる嵐、辿り着くだけでも決死の覚悟で行くものだと。
「大丈夫、ボクには反抗の加護があるこんな嵐なんかには負けないよ!」
 ――私は一人じゃない。
 言うが早いか、ニクロムから渦巻き広がっていくは青き焔。
 ただしその炎が焼くのは勇士達の心と体の消耗、風と雷と吹雪の影響で、飛空艇の中に於いて尚傷ついた勇士達の身体を癒し、彼等に再び行動する力を与える。
 ありとあらゆる困難から反抗の意志を持ち、立ち上がる者を救い、難きを実現してきた軌跡の体現。
 元来ならば突き進むだけでも船にも、人員にも少なくはない被害を出し続ける、天然の地獄すらも和らげ、勇士達の身体に今一度突き進む為の活力を吹き込む。
 飛空艇の中に響き渡る勇気を鼓舞する声が、再度燃え上がる中に、改めてニクロムは勇士達を見回すと遠きを指さし彼等に檄を飛ばした。
「さぁ行こう! 罪無き人々を苦しめる悪竜を退治しに!」
「ありがとうお嬢ちゃん。助かったよ。ところで君の名は?」
 リーダーらしき勇士がニクロムの助力に快活に笑いながら、聞きそびれていた名前を問う。
 一呼吸を置いて、彼女は口を開く――ニクロム・チタノ? 否。
 彼等は勇気と使命を以て強大な敵に立ち向かう反抗者であり、共に戦う仲間なのだから――故に彼女は、真実の名前を口に出す。
「――紅明日香」
 そして勇士達は湧く――明日香万歳と、不可能を可能とする反抗の意志を助く蒼き焔の中で、どこまでも。

成功 🔵​🔵​🔴​

レプリカ・レグナント
ハハッ成る程よい威勢だかつての我が精鋭達を思い出す
オレの名はレプリカレグナント義によって助力する
行く手を遮る自然の猛威かつて体験したことがあるな、まったく神々とはどの世界でも無慈悲なものだしかし我が前に立ち塞がるならどんな強大な自然でも踏みつけて進んでやる
受けてみろ我が超振動の一撃を、暴風や猛吹雪など消し飛ばしてやる
さあ道は開けた、進め我等の足跡を世界に刻み付けるのだ!



●トランプルゴッズ
 勇士達の進軍は続き、彼等を乗せた船は積乱雲の中を力強く突き進む。
 飛空艇を幾度となく打ち据える風や雷に身体を揺さぶられようと、飛空艇という壁を貫き襲う雷に身を灼かれようと、彼等は立ち上がった心のまま行く。
「ハハッ、威勢がいいな? まるでかつての我が精鋭を思い出す」
 その様を見た女――レプリカ・レグナント(反抗と圧政の竜・f32620)は、両腕を組みながら勇士達へ声を掛けた。
 ――嘗て滅びた王国の王女として、己を慕っていた部下のようだと、尊大に胸を張る女は勇士達の顔を一回り見遣ると。
「オレの名はレプリカ・レグナント。義によって力する」
 不思議と彼女の威風堂々たる姿に疑問を持つ勇士達は居らず、息を飲みながら勇士達はレプリカの為に道を開ける。
 その中を悠々と突き進み、レプリカは飛空艇の外、荒れ狂う雷と吹雪の猛威を目に映し軽く吐き捨てた。
「まったく、自然の猛威は、神々とは何処の世界でも無慈悲なものだ」
 得てしてそうした自然の猛威とやらを神として例えた事例も飽きる程にあり、それらは人がまず抗おうと思っても抗えぬもの。
 ――それでも抗い、神に例えられた猛威と、神にも並び得る魔獣に一太刀を浴びせんとする。何と勇ましきことか。
 それに何よりも――我が前に立ち塞がるならば、どのような強大な自然ですら乗り越えてみせよう。
 レプリカは唇の端を釣り上げると、甲板に自らの身を晒しながら大きく脚を振り上げて――
「――だからこそ踏みつけて進んでやる。さあ受けて見ろ、我が超振動の一撃を!」
 思い切り、踏みつける。
 叩き付けられた足裏を起点とし、広がり行く怒涛――純粋にして強大な振動の力が広がり、飛空艇の前進を阻む猛吹雪を真正面から消し去っていく。
 綺麗に、この一時に凪を産み出すかのように、暴君の如き踏みつけは絶対的な自然の暴力を捻じ伏せる。
 風の暴力を消し飛ばされて入れ替わるように、神々の暴力として最も鮮明な雷が襲おうとも、反抗の力強き踏み付けからなる超振動は雷の牙も容易く霧散させる。
 大きく生み出された穏やかな凪の地帯に、レプリカは鼻息を一つ、目線で以て勇士達にそれを示しつつ。
「さあ道は開けた」
 ――その言葉に響き渡る勇士達の声は、今だと、出力全開と切り開かれた道を勢いよく進む声。
「進め我等の足跡を世界に刻み付けるのだ!」
 それに更なる檄を入れるかのように、レプリカは掌を前に力強く突き出し王者の声を轟かせていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ライララ・ラクイン
嗚呼なんと力強く雄々しい思い正にアナタ達こそ反抗の竜に認められし反抗者、ならばこの戦いは力無き人々の為の英雄譚すなわち伝説として刻まれる戦いとなるでしょう
ならば私も己に与えられし役割を果たしましょう
この身は鎖反抗の竜の偽らない寵愛
この黒き鎖で出来た回廊は皆さまを悪竜に向かわせる為の反抗の導き
さあ祈りの時間は終わりました、行きましょう悪竜を倒し人々を救う為に!



●破滅に繋ぐ鎖
 ――嗚呼、なんと力強く雄々しい思いなのだろう。
 困難に続く困難、至る道ですらも偉業と言って等しい過酷な道を超え、その道をも圧倒的に上回る困難を打ち倒そうとしているのだから。
 しかもそれが、か弱く苦しめられている民の為だなんて――
「アナタ達こそ、反抗の竜に認められし反抗者」
 何処かうっとりと、自然の驚異の中を果敢に突き進む勇士達の姿を、エンジェルに似た、されど髪の花に違いを見せる天使の少女は称する。
 ライララ・ラクイン(虚飾の枢機卿・f34708)は両手を合わせ、輝かんばかりの笑顔を向け、勇士達の一人一人の顔を頭に刻む。
「いや、別にそんな大層なものでも……」
 勇士達の後頭部を掻きながらの謙遜を聞くまでもなく、ライララは興奮を隠さず頬を染める。
 この戦いは正に力無き者人々の為に捧ぐ英雄譚にして伝説の一頁、嗚呼、嗚呼、なんと素晴らしき一幕に加われるというのか!
「ならば私も己に与えられし役割を果たしましょう。この身は鎖、反抗の竜の偽りない寵愛」
 ライララは両手を組み合わせ祈りを捧げる。
 すれば積乱雲の自然の暴力の中、降り注ぐは雨――暴風と雷と吹雪に加え、雨まで暴力となって叩き付けられるかと一瞬思われたが、それはすぐに覆される。
 何故ならば注ぐ雨は何処までも柔らかく、不思議とその雨に包まれた飛空艇と勇士達は根拠はなくも確信していた。この慈(やさ)しい雨の中ならば、必ず進んでいけると。
「!? おい! 見てみろよ!!」
「鎖……? これはまるで……」
「進め、と?」
 勇士達が驚き声を挙げた時には、積乱雲の中は何と黒き鎖で出来た回廊が広がっていた。
 祈り慈雨の齎された黒き鎖の回廊、反抗の為に仕立てられ、勇気ある士を大いなる伝説へと導く為の道筋。
 悪しき竜を討てと、反抗の伝説をここに刻めと――英雄譚の英雄を怪物へと誘う道が今、ここに作り出されていた。
 ――この鎖の回廊の中、自然の暴力を損傷を限りなく抑え進むのは困難なこと。
 されど勇士達に反抗の意志がある限り、この回廊は確かに繋げてくれる。勇士達の輝かしい到達へと。
「さあ祈りの時間は終わりました、行きましょう悪竜を倒し人々を救う為に!」
 回廊の中を飛ぶ飛空艇に、風と雷と氷の脅威は自然と突き刺さることはなく、まるで自然とそれらが飛空艇を避けていくかのように。
 紛れもなくライララが見初めた反抗の意志は勇士達に在り、鎖の回廊は勇士達の船を無傷で進ませていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「そういう志を思い出せた辺り、やっぱり生粋の勇士達なんじゃないかな」
瑠璃「これからもその志のまま、多くの人達を救ってほしいからね」

【チェイン】で分身

瑠璃が風の魔術【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法、結界術】で船体を風の防御膜で覆い、暴風や吹雪(そしてこの後のUC)による影響を低減。
同時に緋瑪が【全力魔法、限界突破】で限界を超えて魔力を注ぎ込んだ【エレメンタルファンタジア】を発動。

積乱雲に荒れ狂う暴風と逆位相の「暴風」の「竜巻」を叩きつけ、積乱雲ごと竜巻で引きちぎり、吹き飛ばす形で無力化するよ。
逆に自分達の竜巻の影響が出るかも?

緋瑪「守るのは苦手なんだよねー」
瑠璃「力技だけど、守れれば良いよね」


鏡島・嵐
竜退治なあ……飽きられるモンなら飽きてえよ。何べん戦っても怖いモンは怖いから、それどころじゃねえっての。
ともかく、勇士サン達が酷い目に遭うんは放っておけねーし、助けに行かねえとな。

こんな悪天候の中に突っ込むとか、正気の沙汰じゃねえよなぁ。
人がケガするんも、船が傷つくんもこの後に響くから、なるべく最小限にしてえ……ここは《幻想虚構・星霊顕現》で風や雪の勢いを弱めて、船が進みやすいようにするのがいいかな。
暴走させると困るから、細心の注意を払いつつ、操舵してる人と息を合わせて、船が進みやすくなるように風向きを変えたり、船体に雷が落ちたりしねえように稲妻を逸らしたり。
素早く、ダメージは最小限に、な。



●大元素超幻想
 進めども進めども、ゴールの見えない……尤もゴールがゴールではなく、新たなスタートラインに過ぎぬものであるが、荒れ狂う雲海の中を勇士達を乗せた船は進む。
 新たなそのスタートラインに控える存在を思い、外套の襟を握りながら鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は呟いた。
「竜退治なあ……飽きられるモンなら飽きてえよ」
「色んな竜がいるからね」
「ピンキリだけどね。つまらない相手もいれば良い相手もいるから」
 嵐の呟きに二つの魂を写し鏡の如く瓜二つに受肉させ、四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)と半身の緋瑪がそれに続け。
 彼女達の言葉に嵐は肩を竦め、頭を振ると。
「いや、何べん戦っても怖いモンは怖いんだよ」
 拭い去れないものあれど、それはそれとして、と嵐が恐怖を紛れさせるように積乱雲に渦巻く猛威を見遣った。
「こんな悪天候の中に突っ込むとか、正気の沙汰じゃねえよなぁ」
 風の吹き付ける圧は容赦なく飛空艇を揺らし、吹雪の冷たさと唸る雷は、これまでの猟兵達の奮戦が無ければそれだけで勇士達を追い詰めていただろう。
 実際に予知でそうなっていたにも関わらず、そこまで行く――尤も悪竜を倒すにはこの道を行く他無いのだが――のは、異常といえるかもしれない。
 今も何とかして瑠璃が張り巡らせた風の魔術による防護膜で暴風と雷の影響を防いでいたり、他の猟兵の加護も無ければどうなっていたことだろうか。
 呟きを拾った勇士が、苦笑しながらも承知の上、それでも行かなくてはもっと大事なものが無くなると語れば。
「そういうモンなのかね」
 決して分からないとまでは言わないが、
「そういう志を思い出せた辺り、やっぱり生粋の勇士達なんじゃないかな」
「これからもその志のまま、多くの人達を救ってほしいからね」
 ――それでも彼等は立ち向かわずにいられないのだろう。例え待つものが破滅だとしても、自らの破滅と天秤に掛けて選んだのが誇りの為に進む道なのだとしたら。
「だな。勇士サン達が酷い目遭うんは放っておけねーし……って、デカいの来た!?」
 思わずに嵐が声を張り上げた先にあったのは、一際に大きな竜巻――雷が迸り、氷の礫が渦巻く、宛らダンジョンのラストボスが如く。
 大きな脅威を前に、嵐が同時に対応すべく術式を紡ぎながら、瑠璃が風の防護膜の力を高めては半身に声を掛ける。
「緋瑪、お願い」
「任せて! こういうのは一気に吹き飛ばすに限るからね~」
 ここぞとばかりに緋瑪が解き放ったものは、暴風の竜巻。
 ラストボスが如き雷と氷を伴った竜巻と逆位相の回転を持つそれが、神話の光景が如くぶつかり合う。
 風と風がぶつかり合い、形容のしがたい音を立てる様は宛ら神話の怪物の衝突のように。
 荒れ狂う風の吹き付けるのを堪えながらも、終には緋瑪の放った竜巻が積乱雲諸共自然の驚異を引き千切る――!
「守るのは苦手なんだよねー」
「力技だけど、守れれば良いよね」
 確かな手応えを瑠璃と緋瑪は感じていた。真っ向からの最後の脅威は、これで退けることは出来たのだと。
 だがうかうかはしていられない。退けるは一時、この機を逃せば再び自然の暴力に晒される。それだけではない――吹き飛ばした必殺の竜巻が、今度は逆に仇となり得る可能性すらもある。故に嵐は一歩殺人姫達の前に出ると。
「その分細かいフォローは任せてくれ」
 一歩を踏み出した嵐の頼もしきに、入れ替わる形となった瑠璃と緋瑪が擦れ違いながら頷き返し、それと同時に嵐と殺人姫達が親指を立て合って応え。
 嵐は開けた空の中、遥か彼方、遠き異界の冒険譚――悪しき終焉を打ち壊す英雄譚の時代の如き力を解き放った。
「Linking to the Material, generate archetype code:X...!」
 奇しくもそれは、殺人姫が脅威を退けた力と同質の力。
 暴風に対しての涼風、竜巻に対しての追い風――生み出された属性を伴った自然現象が今尚迫り続けている雷や吹雪を逸らし、殺人姫の残した竜巻の影響からも船の損傷を抑えつつ、嵐は額に汗を浮かべながら追い風を紡ぐ。
 暴走させないように、慎重に――怯えは裏を返せば慎重の証。
 勇士達の船を押す為の追い風を紡ぎあげ、それを以て船の背を押すように一度触れさせ――彼は声を張り上げる。
「勇士サン達、今だ!!」
「「「オオオォォォッ!!」」」
 響き渡る蛮声にも似た、雷鳴をも飲み込む勇士達の鬨の声。
 これまでに作ってくれた猟兵達からの援助を最大限に活かすべく舵を取り、最大限の加速を以て突き進む。
 自然の猛威は完全に逸らされ、弾かれる中を、積乱雲の中の景色変わらぬ道を只管に真っ直ぐに突き進み、そして――!
「抜けたかな?」
「……見て! あれ!」
 晴れ渡る空の輝きと、一面に広がる雲海――これまでの自然の猛威が嘘のように、爽やかな風の吹き付ける空を感じ、緋瑪が首を傾げ、そして瑠璃が何かに気付いたように声を挙げる。
 数多く浮かぶ浮島の中、一際存在感を放つ黒き八つ首が指差され、乗り組む者達の眼は否応なしに向けられる。
 赤赤とした眼の輝きに、暴力的な空域を潜り抜けた猟兵達と勇士達は感じていた。これから始まる、至る道以上への激戦を……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『百眼魔竜『獄闇外道』』

POW   :    竜の逆鱗
単純で重い【尻尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    竜の息吹・劫火
【八つの竜の頭部】から、戦場全体に「敵味方を識別する【どす黒い炎の渦】」を放ち、ダメージと【消えない炎とやけど】の状態異常を与える。
WIZ   :    竜の眼
【100の眼で敵を捉えること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高温の熱線】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガイ・レックウです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●八つ首の魔竜
 荒れ狂う積乱雲の中を乗り越え、勇士達と猟兵達は晴れ渡った空の中に到った。
 若干の損傷はあるものの飛空艇に大きな障害は残らず、勇士達もほぼ無傷という、快挙と言って差し支えない成果だった。
 改めて見れば、先程の凄まじい様相と打って変わって、穏やかで優しい風が吹く心地よい蒼穹には、いくつかの浮島が点在している。
 その浮島の中、一際大きな威容を放っていたのは、強大な魔獣の存在がそこにいたからだった。
 見上げる程の巨体は光を吸い込み続ける黒、八つ首の上には血の如く赤い瞳が輝き、やってきた勇士達と猟兵達を楽しむように見ては、悍ましい舌を覗かせる。
 そういえば見た目よりも邪悪な知性を持っており、略奪で得られる糧よりも、民の苦しむ様を楽しんでいるということを思い出す――恐らくは猟兵達をどう甚振り、叩き潰そうか思案しているのだろうか。
 ……更に考えてみれば、あの自然の猛威の中を幾度となく通りやってきたということは、あの猛威を物ともしないだけの力がある、ということだ。
 しかしだからといって放置し続ければ、気まぐれに襲われる浮遊大陸に安息の日はやって来ない。
 青雲の志を奮い立たせた勇士達と共に、今、邪悪なる竜との決戦が始まった――!
ライララ・ラクイン
嗚呼遂に開幕なのですね悪しき邪竜と勇ましき勇士達の戦い、伝説の幕開けが
ならば私もこの物語に足跡を刻む者として恥ずべきことの無いように戦いましょう
我が指先は運命、堕ちた人々の英雄譚
さあかつて名を馳せた英雄よ、心半ばで倒れた無念の勇者よ私の傀儡として蘇り再び伝説を紡ぐのです
ウフフ、今回傀儡として呼び出したのは盾の英雄と竜殺しの勇者
盾の英雄は邪竜の熱線を防ぎ勇士達の守護を
さぁ勇士の皆さま、竜殺しの勇者が皆さまと共に戦いますわ
邪竜の攻撃は盾の英雄が防ぎますので皆さまは突撃を
さぁ竜退治の伝説をこの世界に刻むのです
ウフフ、盾の英雄、竜殺しの勇者、そして反抗の勇士達、舞台は整いましたわ
何より美しき反抗を



●劇場開幕
 目の前には唸りを挙げ、大きく裂けた口を歪め挑発するように八つ首を揺らす竜。
 正しく物語の暴虐を尽す邪悪な竜と、自分の傍には勇士達が身体を震わせながらそれぞれに得物を手にし立ち向かわんとしている姿。
 故に少女の声が高らかに響くのも無理からぬことで――
「嗚呼遂に、遂に!」
 始まるのは悪しき邪竜と、それを倒すべく立ち上がった勇ましき勇者達との戦い。
 伝説の幕開けにこの自分が、ライララ・クラインが共に足跡を刻めることの何と素晴らしきことなのだろうか。
 八つ首の邪竜が吼え、その顎門から赤々と輝く力の滾りを感ずれば、ライララは指先を躍らせ歌うように祝詞を紡ぎあげる。
「我が指先は運命、堕ちた人々の英雄譚――さあかつて名を馳せた英雄よ、心半ばで倒れた無念の勇者よ」
 それと同時、八つ首竜から煽るように迸った熱線がライララと勇士達に向かう――咄嗟に身を乗り出した勇士達諸共焼き尽くすほどの熱量を込められたそれは。
 彼等の身を焼くこと無く、間に立ちはだかった何かに阻まれ、ライララと勇士達の身体を傷一つなく守り抜いていた。
「私の傀儡として蘇り再び伝説を紡ぐのです」
 ――顕現せしは、見るからに巨大な、千年の時すらも守り抜けるであろう盾を備えた英雄と、数え切れぬほどに強大な竜を屠ってきた名高き勇者。
 買い上げた死の中から選びに選び抜いた英雄として、これ以上おあつらえ向きな存在は無く、呆気に取られる勇士達に頬を染めながらライララは発破をかけた。
「さぁ勇士の皆さま、竜殺しの勇者が皆さまと共に戦いますわ。邪竜の攻撃は盾の英雄が防ぎますので皆さまは突撃を」
 ――そしてその声に応え、竜殺しの英雄が剣を突き出し、盾の英雄が頷きを以て示して見れば。
 過去の英雄と共に戦うべき、今の勇士達は負けていられないと駆け出していく。
 彼等の決意と勇気を残酷に焼き尽くすべく数多の熱線が向かおうと、盾の英雄はそれを防ぎ切り、竜殺しの勇者の一撃は邪竜をたじろがせる。
 それに続き、浮遊大陸の地面も揺るがすほどに今代の勇士達は鬨の声を挙げ進む。
「ウフフ」
 その光景を見れば正に英雄譚の一幕、全てが整った舞台に顔を綻ばせるのも無理なきこと。
 盾の英雄が邪竜の放つ炎から、勇士達を庇い防ぎ切り、竜殺しの英雄と勇士のリーダーが共に力を合わせて斬り込んでいく。
 それに続いて他の勇士達がそれぞれ一斉に、剣を、術を、弓矢を――各々の持ちうる力の限りを尽くし邪竜を追い詰めていく光景は。
 限りなく素晴らしい特等席にて、御伽噺の英雄譚も目ではなき光景を見られた喜びに、ライララは両の手を組み合わせ祈りを捧げた。
「何より美しき反抗を」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
遂に現れたね圧政の邪竜め、反抗の竜が迎え撃つよ!
ボクの真の名、紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
勇士のみんな行こう、八つの蒼焔の盾がみんなを守ってくれるよ
八つの重力槍を展開して射出、みんなの援護をしつつ隙を作るよ
八つの頭に一本ずつ撃ち込んでやる
みんなヤツの注意が反れてる今がチャンスだ、突撃だよ
さぁこれより反抗を開始する、どうか反抗の竜チタノの加護と導きを



●暴虐の邪竜と反抗の守護竜
 ――相手は圧政、邪悪な知性を持ち弱者をいたぶり搾取することに悦ぶ救いようのない邪悪。
 だからこそ彼女は、反抗<革命>の竜は気高く吼える。
「遂に現れたね圧政の邪竜め、反抗の竜が迎え撃つよ!」
 ――ボクの真の名、紅明日香の名を以て。
 その場に降臨させるは身体に宿りしチタノヤタテが力、青々と蒼穹の理想郷<ブルーアルカディア>の空にも劣らぬ、鮮やかに青く燃え盛る八盾(ヤタテ)が優雅に旋回し宙を舞いては、漆黒の邪竜より放たれた業火を受け止めていた。
「勇士のみんな、行こう。一緒に戦おう。攻撃は全てこの盾が守ってくれるよ」
「ああ、行くぞ明日香!」
「明日香!」
「明・日・香!」
 響き渡るは勇士達の、己が真の名を呼ぶ声。仲間として認めた者に許す名、それを呼ばれることは即ち彼等の仲間として認められている証でもあり。
「~~~~っ!」
 青き肌が感動に打ち震え、彼女の心はますますに昂ぶりを見せる。
 なれば勇士達の一人たりとも死なすまいと、赤よりも熱く盛る蒼き焔の尾を引かせ、八つ首に対する八つの盾が邪竜の灼熱を阻む。
 八つ首竜の百の眼が忌々しく、蒼き盾の妨害を睨みつけて尚、踊る盾は決して熱量の一分たりとも通さずに。
 勇士達の行動を攻めに振り切らせ、攻撃に専念させればさしもの邪竜も無視しきれずに、その巨体を揺るがし――そして。
 続き、邪竜の額に深々と突き刺さるは八つの槍――真名のもとに生み出されたそれは盾のみになく、人智を超越した存在を縫い付け、堕とす重力を宿した楔までもが産み出され、それが邪竜の八つ首それぞれに突き立てられていた。
「さぁ今がチャンスだ! 突撃だよ!」
 八つ首を振り回し、身悶え縫い付けられたかのように場から動かず、飛び立つこともなくなった邪竜を指さし、ニクロムは――否、紅明日香は勇士達に向けて力強く叫んだ。
「「「オオォォォォオ!!!」」」
 響き渡る勇士の叫びは何処までも遠く広がり、ブルーアルカディアを揺さぶるかのように。
 気合を入れ直し、より力を盛らせる勇士達へ、更に彼女は朗々と声を広げていく。
「さぁこれより反抗を開始する、どうか反抗の竜チタノの加護と導きを」
 ――彼女の背後に映る、竜の吼える姿が見えたのは幻か現か。否、論じるまでもなく、共に立ち向かう勇士には檄を、戦う邪竜には畏れを与えるように顎門を開く様は決して夢幻に非ず。
 漆黒の邪竜に刃を届かせていく勇士の姿を、反抗の加護は何処までも力強く付き続けていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レプリカ・レグナント
ほう、アレが邪竜か?相手にとって不足なし、行くぞ!
滅びの果てより来たれ我が亡国の軍勢よ
勇士達よ行くぞオレと軍勢に続け突撃
はん、炎を吐くつもりか?させんよ火竜よヤツに灼熱の炎を食らわせてやれ
さぁ駈けろ我が愛馬よ、再び共に行こう
勇士達はこのままオレと共に突っ込むぞ、我が亡国の軍勢は二手に別れてヤツの攻撃を分散させつつ攻撃しろ、火竜はヤツをこのまま抑えておけ
陸空からの二面攻撃だ、我が旗に続け
邪竜討伐か、懐かしいな



●古の軍勢
 傷を負わされて尚、絶対的強者の威厳を崩さずに翼を広げ、大きく裂けた口が歪み息遣いは炎を吐き出させる。
 良くも悪くも強大な力の化身として恥じぬ漆黒の巨体を見上げ、覇王は同様に唇を歪め心の臓を昂らせていた。
「ほう、アレが邪竜か? 相手にとって不足なし、行くぞ! 滅びの果てより来たれ! 我が亡国の軍勢よ!!」
 呼び出すは黒紫の屈強な肉体の軍馬、それにレプリカが跨れば後方に亡国の数多の軍勢が一糸も乱らぬ隊列で並び、上空には口から灼熱を噴き出す火竜が吼える。
 亡国の伝説の軍隊が今一度、ここに再現されれば、レプリカは呆気に取られていた勇士達の方を剥くと。
「さあ勇士達よ行くぞ。オレと軍勢に続け! いざ突撃!!」
「「「オーーーーーーッ!!」」」
 惚けるのも一時、まだ終わってはいない戦に昂ぶりを取り戻し、勇士達が拳を天に突き上げた。
 そして進む勇士達と亡国の軍勢の軍靴が浮遊大陸の地面を揺さぶり、その振動は邪竜の身体すらも響かせる。
 これ以上来るな虫けらが。
 そう言わんばかりに百の眼が輝く八つ首竜の顎門より、紅蓮の激しい熱量が大気を歪めていく様が見られれば、レプリカは呼び出した存在の一つに目を向け。
「させんよ。喰らわしてやれ火竜!」
 紅蓮の鱗を持つ竜が吼え、翼をはためかせながら吐き出した火炎が、邪竜の放つ業火とせめぎ合う。
 互角に続くかと思われた押し合いは、火竜の放つ灼熱が圧し、邪竜の身体を紅蓮が包み込み、邪竜に苦痛の叫びを挙げさせ怯ませた。
 ――そしてその時、今こそと愛馬が嘶き、牙を届かす時と告げる。
「さぁ駈けろ我が愛馬よ、再び共に行こう!」
 ――懐かしいな。
 こうして数多の軍勢を率いて、邪竜を討伐するというのは――栄ある歴史の栄華の再現に自然と心は昂ぶり、勇士達を率いる声にも熱が籠る。
「勇士達よ、我が旗に続け! 我等が力で以て、かの邪竜に目に物みせてくれようぞ!!」
 故に自然と、最初からレプリカが率いるべき者であるかのように自然と勇士達はつき、高らかにブルーアルカディアの蒼穹を震撼させる程に鬨の声が挙がる。
 亡国の軍勢が二手に分かれ、八つ首が持つ多方面への対応力を程よく分散させ、単体戦力として互角を興じられる火竜が巨体を以て組み合い、邪竜の力を押さえつけ。
 その間を率いられた勇士達が真正面から勢いよく斬り込み、邪竜をレプリカと共に追い詰めていく。
 ここまでに至り漸く、漸くに――邪竜は自らが相対していた存在が、甚振り狩り尽くす為の獲物でなく、全力で抗い逃げるべき脅威として慄くのも、遠からぬ時のことであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
くそ、毎度のことだけど竜種ってのは強ぇし怖ぇよな。身体の震えが収まんねえ……!
とは言え、ここまで来たらやるしかねえ、よな……!
こっちは猟兵つっても人間なんだ、手加減してくれよ、ホント……!

ともかく、船と勇士サン達をあっちの攻撃に曝すわけにはいかねえ。
〈第六感〉をフルに活かして向こうの攻撃タイミングを〈見切り〉つつ、回避の指示を出して船ごと避けてもらう。
一度どんな攻撃か見れば、あとはこっちのユーベルコードで相殺しやすくなるから、その隙をついて砲撃とかを撃ってもらう。
もし余裕が出てきたら、おれからも〈援護射撃〉で支援したり、士気を〈鼓舞〉して心が折れねえようになんとか助けるようにする。



●恐怖を知りそれでもと
 見上げる程の巨体は闇をそのまま溶かし出したような黒、八つ首にはそれぞれ血の色を思わせる赤が幾つも輝き、いやらしく歪んだ顎門からは煽るように舌が覗く。
「ッ……」
 本能的に、種としての強大な力の差に恐怖を覚える――いつ相対したとしても、竜という種の強大なることは人間でしかない背を震わせる。
「くそっ……」
 怖くて仕方がない。戦わずに済ませられるのならばそうしたいところだが、敵は逃がしてはくれないし逃げたところで自分以外の誰かが犠牲になる。なれば。
「ここまで来たらやるしかねえ、よな……!」
 息と共に生唾を飲み下し、ざっと浮遊大陸の地を踏みしめて嵐は両頬を叩き決意を固めた。
 勇士達を攻撃に晒すわけにはいかない――八つ首竜が嵐の決意を嘲笑うかのように口を歪め、多くの眼で彼を、そして後方へ控える勇士達を目に映せば。
 幾つかの頭部より立ち込めるは、大気を揺らめかせる膨大な熱量。これは何かが来る――超自然的な感覚の伝える危機に、嵐は勇士達へ向けて声を張り上げた。
「避けてくれ!」
「おう!!」
 嵐の号令に従い、勇士達は一気に舵を取り邪竜が解き放った熱線を躱していき。
 彼自身もまた寸前でそれを回避するものの、それが齎した被害を見れば、目を強く見開いていた。
「ひえ……」
 慄くのも無理はなく、頑強な大岩ですらも一瞬で煙と変える、相対してきた竜達と比べて何一つ劣らない熱の暴力に声が出てしまう。
「勘弁して欲しいぜ。こっちは猟兵つっても人間なんだ。手加減してくれよ、ホント……!」
 直撃など考えたくもないが、八つの首からそれぞれ時間を置き、波状攻撃を仕掛けるだけの知能もあるようで、別の首が熱線を今から迸らせようとしている様に嵐は舌打ちしつつも。
「鏡の彼方の庭園、白と赤の王国、映る容はもう一つの世界。彼方と此方は触れ合うこと能わず」
 ――波状攻撃という形に仕掛けたのが仇となった。一度攻撃を見れば理解は深まり、その技は成功率を高める。
 彼の眼前に突き出された写し鏡は、先ほど首が仕掛けた熱線をそのまま映し出し――
「幻遊びはお終いだ」
 放たれるは今正に邪竜が放った熱線――否、正確には正反対の攻撃を放つが故に持てる熱の位相は負へと傾いていた。
 焼き尽くす熱量と凍てつかす熱量がぶつかり相殺しあい、蒸気が立ち込める中を、今だと嵐の号令が響けば、勇士達は一斉に飛空艇から邪竜へ向けて砲撃を撃ち込んでいく。
「……よっし!」
 勇士達の放つ砲撃に圧されていく邪竜を見、己も立ち尽くしていられぬと改めて気合を入れ直し。
 砲撃に続き嵐は自らもまたスリングショットを撃ち込み、それに続いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「巨竜退治にはちょうどいいね」
瑠璃「一気に叩こう、緋瑪」

ジェミニオン二機を召喚し、更に二機の力を【合体】して真の姿の一つを顕現
メイン:緋瑪、管制・サブ:瑠璃で操縦

勇士は遠距離から各首へ砲撃支援を依頼。
フィールドバリアを展開し、攻撃をバリアで防いだり、【見切り、第六感】と高速機動で回避しながらソードライフルのビームとミサイルポッドで八の頭部を攻撃し、すれ違いざまにソードで首を【切断】して翻弄。
その間に瑠璃が敵の【情報収集】し、胴体の心臓部を確認。

全ミサイルを放出後ポッドをパージし、バリア・スラスター出力全開で突貫。
オメガ・パイルの全力の一撃を胴体の急所に叩き込み、胴体を貫通して撃ち貫くよ!



●竜殺しの殺人姫達
 ブルーアルカディアの空を斬り裂き飛来するは、赤と青の対照美鮮やかな双子の如き機体だった。
 鉄と火の世界の戦闘兵器として名高きキャバリアに、瑠璃と緋瑪はそれに搭乗すると、昂る戦意を示し合った。
「巨竜退治にはちょうどいいね」
「一気に叩こう、緋瑪」
「パターンD.U.S起動!」
「合体シークエンス開始」
 二つで一つの殺人姫。その機体もまた二つで一つとなることで力を発揮する。
 この変形は緋瑪の機体を中核とし現れる高速突破型機体――
「「ジェミニオン、真の姿を現せ!」」
 ――それは正に神話の如く。
 八つ首の強大な邪竜と、鮮やかなツートンカラーの巨人、神にも比肩しうる強大な存在の代名詞がここに相対していた。
「勇士のみんなは砲撃支援をお願い!」
「任された! 野郎共! あの方々に遅れを取るんじゃねえぞ!!」
「「「オーーーーッ!!」」」
 瑠璃の通信に勇士達が吼えれば、追い詰められゆく邪竜に全てを叩き付ける勢いで飛空艇の砲門から砲撃を放つ。
 全ての弾薬を惜しげもなくぶつける猛攻に、さしもの邪竜も怯み――激しい弾幕の中を、軽々と舞い踊るかのように迫るはジェミニオン。
 障壁を張った身で爆風をいなしながらソードライフルを以て斬り込む。
 首の一つより鮮血が噴き出し、邪竜が吼え反撃に勇士達の砲撃ごと尾で打ち払わんとしても、ジェミニオンの障壁は軽々とそれを受け止め、逆に反撃にミサイルポッドを次々と八つの首へと撃ち込み――脳天をビームで穿ち、更に硬直させた隙を擦れ違い様に刃を閃かせ、首の一つを落としていく。
 されど古の神話よろしく、再生はしてしまうだろう――自分と勇士も含めた猛攻で阻害しているが時間の問題だ。
 だがこれまでの戦いで蓄積されたダメージは十分、後は急所を――心臓を突けば一気に仕留められる筈と緋瑪は戦いを演じながらも主人格に問いかけた。
「瑠璃、どう?」
「わかったよ。心臓は……あそこッ!」
「オッケー!!」
「バリア・スラスター出力全開!」
 コンソールが映し出す邪竜の胴体、その中心部に脈打つ竜の生命力を象徴する心臓――そこへ照準を合わせると、ジェミニオンはミサイルポッドを切り離し、機体重量を下げ。
 オリハルコン製の杭打ちを突き出し、一気にスラスターを吹き上げた。
「「これが私/わたし達の最高の一撃! 竜退治を今ここに!!」」
 ――刹那、浮遊大陸の岩盤が蒼穹に弾けては吸い込まれ、一筋の流星が黒い邪竜の身体を過ぎ去っていった。
 流星――ジェミニオンが今いる場所は、邪竜の後方。邪竜の胴体には見事に美しき穴が開き――その中にあった筈の邪竜の心臓は。
 間違いなく双子機神の杭打ちを以て跡形もなく消し去られ、そして生命力の中心を穿たれた邪竜の身体が沈み――やがてどこからともなく、勇士達と猟兵達の歓声が晴れ渡る空に響き渡っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『浮遊大陸でのひととき』

POW   :    魔獣の解体体験を行う。または魔獣の解体技術を競い合う。

SPD   :    空を飛び、周囲の景色を皆で楽しみながら過ごす。

WIZ   :    魔獣の部位を使い、料理を振る舞う。または作られた料理で宴会を開く。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●竜退治の後は魔獣料理で宴会を
 人々を苦しめていた邪竜はここに打ち倒され、猟兵達と勇士達はかの邪竜に苦しめられていた浮遊大陸に凱旋する。
 勇士達の飛空艇に乗せられた、黒々とした巨体と絶命する姿を見た民は、猟兵達と勇士達の為した竜退治の偉業に喜びの声を挙げ、快く彼らの集落へ招き入れていく。
 志を取り戻し、猟兵達の助けもあったにしろ改めて人々を救う喜びを思い出した勇士達は、照れ臭そうに集落へと足を踏み入れていった。

 邪竜の煽る様な襲来で疲弊こそしているものの、集落は崩壊には至っておらず、すぐにでも元の暮らしを再開できそうではあった。
 良くも悪くも甚振るという知性があったせいというのは皮肉かもしれないが――それでも、生き残った人々は解放に喜び宴へ興じていく。
 これからは邪竜に襲われることもなく、のびのびと雄大な空の中を生きていけるのだから。

 さて、猟兵達もまた自らが救った場所で勝利を祝うのも良いだろう。
 勇士達や村人と語らうも良し、持ち帰った邪竜――腹の立つことに肉は意外と美味らしく、特に首回りの肉や目が美味だ――を調理して振舞うも良し。
 この地を救った猟兵達は、一時の安らぎに身を乗り出していくのだった。
レプリカ・レグナント
フム、あれが邪竜に苦しめられていた浮遊大陸か、行きは嵐だったが帰りは良い景色だったな
よし、皆の者胸を張って凱旋するぞ!
さて、ドラゴンとはなかなかに美味いものだ、かつて王国にいた邪竜を料理して食べたからな
部下達と解体して料理してやろう
鱗は丁寧に剥がすのだ、両足は関節で切断してドラゴンステーキにして配ってやろう
火はオレの僕の火竜が吐けるしな、首と頭と胴を切り離しドラゴンの首八本を丸焼きに、脳も食べられる生でな、うん?焼いたほうが良いか?
なら干して刻み妙薬にせよ、血は酒に混ぜると良い、内臓は刺身して食べると美味いぞ!胴も焼いて切り分けろ首は皆で切り分けずかぶり付くと良いぞさあ宴の準備をせよ


ライララ・ラクイン
ウフフとても綺麗な景色ですね、此処が浮遊大陸ですのね
反抗の天使達も一緒にお手伝い致しますわ
邪竜を討伐せし勇士達の凱旋物語のハッピーエンドは感謝の宴と云うことですわね
私は生憎と料理を得意としておりませんの、ですので宴の準備のお手伝いをさせて頂きますね
多数召喚した天使達にテーブルや椅子を準備させましょう、それから食器も
解体作業などで人手が必要ならばそちらにも回しますわ
ウフフとても素敵な宴になりますわね


ニクロム・チタノ
ここが皆の故郷の浮遊大陸なんだね、とっても綺麗なところだね
竜の解体作業が始まってるみたいだね
知ってる?竜の目玉は焼いたり干したりせずに積み上げてデザートにすると良いよ、ゼリーみたいで美味しいんだよ
少しグロイ?大丈夫、味はボクが保証するから
竜の頭蓋骨は魔除けに使っているってどこかで聞いたことがあるよ
あと竜の骨や爪は加工して武器や鎧にしたり牙はお守りとかにすると良いよ
鱗は盾や鎧に隙間なく詰めれば炎も防ぐ強力な防具になるんだ
みんなを苦しめていた邪竜だったけど最後は余すとこなくみんなの役に立ってくれるみたいだね
これも反抗の導き、チタノの加護に感謝しなくちゃ


四季乃・瑠璃
巨体故、大変だろうから、とりあえずジェミニオンで邪竜の積み下ろしを手伝い。
その後は機体を駐機し、UCを発動。
瑠璃・緋瑪以外の3名の人格(翡翠、真珠、瑪瑙)の姉妹達を宿した分身とサポート用の自立ドローンを召喚。
翡翠と真珠、ドローン達にジェミニオンとついでに勇士達の飛空艇等の修理・メンテナンスを、瑪瑙には邪竜の肉を使った調理の手伝いをお願い。

瑠璃・緋瑪は竜の解体場へ行き、勇士や集落の人達と話しながら武器の作成等に使えそうな素材とかを見繕い、宴の料理が完成次第、スフィーエさんや姉妹達を集めてみんなで邪竜料理(?)を堪能するよ!

※ちなみに、激辛好きは姉妹の中でも瑠璃だけで他の姉妹は誰も耐えられない


鏡島・嵐
ふう、上手くいってよかった。勇士サン達が頑張ってくれたおかげだ。
……え、おれ? 他の皆はともかく、おれはちょっと手伝いをしただけだ。大したことはしてねーよ。
……でもまあ、おれも頑張ったって認めてくれんなら、ちょっとご褒美を貰ってもバチは当たんねーかな?

とりあえず、食えそうな部位を解体して、宴用に下拵えするか。
……といっても、あんまり大したことは出来ねえけどな。〈世界知識〉と〈第六感〉を頼りに、集落の人のアドバイスも仰ぎながら、包丁揮ったり料理は混んだり、いろいろ手伝う。
一段落したら、おれもお相伴に。

竜種は戦う分にはすげえおっかねえけど、肉はホント美味いのな。そこだけは素直に評価できる、うん。



●英雄の凱旋の宴にて
 思い返せば最初の関門は踏み入れた者を拒絶し滅ぼす困難、そしてその先に立ちはだかる凄まじい力を持った強大にして邪悪な竜。
 二つの障害を乗り越え、苦労の汗を輝かせながらも勝ち取った勝利の喜びと、凱旋の先にある浮遊大陸の美しさは労苦を見事に労っていた。
「ウフフ」
 少女の口元が緩むのも無理からぬことで、少女ライララは勇士達と他の猟兵達の方へと向き直り、スカートの裾を僅かに広げ。
「皆様、本当に、本当に素敵な物語を紡いでくださり感謝いたしますわ」
 竜退治の英雄譚、各々が全力を尽くして困難を乗り切り、巨大にして強大な敵を打ち倒し華々しく凱旋する素晴らしき物語を祝福するかのように、ライララは満面の笑顔を花開かせる。
「ふう、上手くいってくれて良かった。勇士サンや皆が頑張ってくれたおかげだ」
「おいおい、アンタだって十分だろうが」
 同じくして勝利を喜び笑顔を向ける嵐に、勇士のリーダーが苦笑交じりに彼の言葉に返す。
 それに嵐は自分のことを指さし、周囲を見回すと、途端に否定するように手と首を振った。
「……え? おれ? いやいや、他の皆はともかく俺はちょっと手伝っただけだ。大したことはしてねーよ」
 謙遜のつもりもなく、本心からそう思っているようであり、慌てたような様子を嵐は見せていた。
「そんなことは無いと思うけど……」
「良いんじゃない? 陳腐だけど誰一人欠けても無理だったってことで」
 そこへ瑠璃と緋瑪がそれぞれに、さりげなくフォローめいた言を口にすれば、そこへニクロムが続ける。
「そう。これは皆で掴んだ勝利、皆で行った反抗だから。そういうこと言いっこなし!」
 続けられた言葉に、勇士達もまたうんうんと一斉に首を頷かせていけば、これ以上に否定するだけのものはなく。
 例えきれない何かの圧に、観念したかのように嵐は後頭部を掻きながら。
「……でもまあ、ちょっとぐらいご褒美貰ってもバチは当たらねーかな?」
「よし、話はついたようだな。……皆の者、胸を張って凱旋するぞ!!」
 パン、と乾いた音を立てて為されたは柏手一つ。
 それを行った黒髪の少女レプリカが、浮遊大陸の地を指さし、先頭に立つ勢いでそれを促せば。
「「「おーっ!」」」
 猟兵達か勇士達か、誰からともなく拳が突き上がり、一斉に同意の声が響き渡る。
 かくしてかの地を救った英雄達は、手土産に民を苦しみ続けた邪竜を携え、華々しく凱旋するのであった。

* * * * * * * * * *

 集落の大きな広場には、猟兵達と勇士達が力を合わせて討伐した、八つ首の邪竜の遺骸が運ばれていた。
 瑠璃と緋瑪の双子キャバリアが巨体故に持ち運ぶにも苦労するだろう、と同じく巨体を以て運び込んでいた。
 げに恐ろしき邪竜であったが、倒されてみれば大したことはない――と思うこともなく、見上げる程の巨体を前に嵐は顎に手を当て逡巡していた。
「さて、と。こいつはどうするかね」
「うむ。鱗は丁寧に剥がすのだ。足は関節から切るぞ」
「了解」
 何処から手を付けるか悩んでいた嵐に、亡国の軍勢を引き連れ、解体を始めていけば集落の民と勇士達の知識も共に竜の解体に励んでいく。
「私は生憎と料理を得意としておりませんの、ですので宴の準備のお手伝いをさせて頂きますね」
 解体作業を始めていくのと裏腹に、ライララは刻印の刻まれた天使――反抗と銘打たれた天使達を呼び出して。
 一部を解体の補助に置いておきながら、ライララはそれを率いて、集落の宴を行う為の広場へと突き進んでいく。
 宴の準備は竜の調理以外にもテーブルの配置や食器の配膳、花などの飾りつけ諸々も重要なもの。
 地味ではあるが、欠かせない土台を作り上げるものであり。
「それじゃあ勇士さん達の飛空艇を直したりしておくね――出番だよ、みんな!」
 宴の準備も何よりではあるが、それと同じくして勇士達の飛空艇も二つの激戦で多少の消耗が見られている。
 アフターケアも欠かせないと、瑠璃と緋瑪は彼女達の内に更に眠る姉妹達の魂を受肉させ、傍らにドローンをつけて。
 双子機体の整備や勇士達の船の整備を行わせていく――これもまた心置きなく宴を楽しむ為の下準備といったところか。
 瑠璃と緋瑪の姉妹達や、ライララと天使達を見送りながら、当の殺人姫達とレプリカ、ニクロムは解体に興じ続けている。
「爪や牙は使えるものは使っておかないとね」
「熱線器官とかは……ダメだね、潰れちゃった」
 あれだけの威力を持った熱線を放つ為の器官ならば、何かしらの武器に使えるのではないかと、淡い期待を込めて探ってみるも、真正面から貫かれたそれは完全に潰されていた。
 瑠璃と緋瑪が落胆すれば、レプリカが他の傷ついていない内臓を取り出して。
「だが内臓が新鮮なのは確かだ。刺身にしようではないか」
 こうして取り出していけば思いだす――かつての王国で喰らった邪竜のことを。ドラゴンというのは中々に美味いものだ。
 内臓は勿論のこと、首回りの肉と目が良いとも聞いていたし、当然のことであるが前脚もステーキにすると美味そうか。
 兎にも角にも肉は美味であるが、武器防具の素材としても欠かせないから、竜というのは実によく。
「翼も少し傷ついてるけど、いい感じかな?」
「偽翼とかに良いかもね~」
 解体した翼を眺めながら、丈夫な膜と頑丈な骨組みの翼を開閉しながら瑠璃と緋瑪が語らい。
「骨も地味に使えるよ。この巨体を支えてあれだけの攻撃力を支えるんだからね。他にも鱗は隙間なく詰めれば炎も防ぐ強力な武具になるんだ」
 だから丁寧に剥がした方がいい――ニクロムの言葉に勇士や集落の民が頷きを見せて。
 そうして食料にするものの解体や調理を粗方終え、後は武器防具の素材吟味の時間になり勇士達や集落の民と議論に興じていた猟兵達へ声が掛かる。
「皆様、宴の準備が整いましたわ。どうぞお席の方へ」
 そう言ってやってきたライララが示した先に、非常に美味しそうに立ち昇る湯気と賑わいの灯があれば、赴いて楽しむ他になかった。

* * * * * * * * * *

 宴の準備は既に整い、丁寧に、それでいて堅苦しさを感じさせず、皆で集まり賑わいという最高のスパイスを与えてくれる配置は見事なものか。
 各々が席に座る中を、輝く天使達が料理や飲み物を持って配り歩き給仕に専念する――文字通りに天上であるが、それでも天上の宴と称して良い光景。
「「「乾杯!」」」
 立ち並ぶ邪竜料理を前に、精一杯のもてなしである飲み物を掲げ誰からともなく宴の始りが告げられた。
 多くの談笑が始まり、盃を酌み交わす中であったが、ドンと中央に大きく置かれたメイン料理に、まずは殺到していた。
 竜の首を竜の火が焼くという幻想的で豪快な丸焼きにされた首回りの肉が鎮座していたからだった。
 噛み締めれば噛み締める程、芳醇な肉汁が溢れ口の中に旨味の大噴火を齎した。
 これは何と表現するべきだろうか。
 旨味の宝庫という言葉ですらも、あまりに陳腐で安っぽく思える程に竜の肉は旨味に溢れており、疲弊した身体に精気が見る見るうちに吹き込まれていく。
 しっかりした噛み応えのある肉質との触れ込みであったが、だからと言って食するのに困難ということもなく、噛む為に感じる顎の疲れすらも心地よいと思えるようで。
「竜種は戦う分にはすげえおっかねぇけど、肉はホント美味いのな。そこだけは素直に評価できる、うん」
 饗された肉を口に運びながら、嵐が竜と呼ばれる存在を称すれば。
「脳は干して刻めば妙薬にもなる。血は酒に混ぜても良い!」
 流石にそこを生ではちょっと、と難色を示されたが故にそう加工することとしたレプリカが言う。
 彼女が飲んでいるのはノンアルコールではあるが、成人済みの勇士には血を混ぜた酒が翼を授けるかのように精力を漲らせていた。
「武器や防具だけじゃなくって、例えば頭蓋骨は魔除けにもなるよ。牙はお守りにもなるし」
 解体した時にも言ったと思うけど、とニクロムが補足を加え、文字通りに余すところのない竜の活用法を語る。
「そうだね。多くの竜と戦ってきたけど、素材になるのも結構多かったよ」
「頑丈だし、魔法素材にしても上等だからね~」
 瑠璃と緋瑪が竜の脚のステーキを切り分けながら、それに続けるように語れば、嵐はフォークに同じく自ら切り分けたステーキの一切れをまじまじと見つめ。
「……そう考えるとホントに竜種やべぇな」
 戦うには本当に恐ろしく強大で、でも倒してしまえば至上の美味と余すところなく使える極上素材の宝庫。
 大きな危険(リスク)には高確率で希望(リターン)もあるものであるが、殊更にこの邪竜もそれに洩れぬ存在で改めて規格外という言葉の意味を思い知りつつも。
 神妙になりかけていた雰囲気を覆すかのように、瑠璃からの声が響いていく。
「でも今は食べることを楽しもうよ。首回りの肉を使ったこの特製激辛ステーキでも……」
「「「!?!!?!?」」」
 立ち込める刺激臭。
 瑠璃が差し出したステーキが放ち続けるそれに、宴の場にいた者全てが目を見開いた。
「えっと」
「……なあ」
「ほう……」
 ニクロム、嵐、レプリカと続いて瑠璃からオススメされたステーキと、バトンリレーのように視線を仲間の猟兵達やら勇士達やらに移していく。
 しかし誰も手をつけようとしない――確かに、確かにだ。見た目にはとても美しく焼かれたステーキだが掛かったソースの刺激臭は余程の勇士(と書いてチャレンジャー)で無ければ挑むのを避けるだろう。
 半身の緋瑪や、彼女の姉妹達、何度か味わい思い知らされていたグリモア猟兵が瑠璃の後ろで大きく「止めておいた方がいい」のバツ印を示す。
「どうかした? 食べないなら私が食べるけど」
「「「どうぞどうぞ」」」
 それはさながら何処かのコメディアンのように、一斉に息の揃った言葉であった。
 即断即決の言葉と勧めに僅かに疑問に思いながらも、瑠璃は本当に上機嫌にそれを食していく。
 その姿に誰もが思った――お前は普通に食べられるのかと。何処かの世界であれば、彼女は特別な味覚の持ち主です、決して真似をしてはいけませんと注意書きが出るのかもしれないが。
 漂い始めた微妙な空気を入れ替えるかのように、ニクロムが手を叩いた。
「知ってる? 竜の目玉は焼いたり干したりせずに、生でいくと良いんだよ?」
 彼女の言葉に輝く天使が生のまま、クロカンブッシュか月見団子のように更に積み上げられた目玉を出した。
 一見すればルビーのような輝きの美しさがあるが、あの恐ろしい竜の眼だと思えば宴の席からうぇっという声が響く。
「大丈夫。ゼリーみたいで美味しいよ。味は保証するから」
 その不安や気味の悪さを払拭するかのように、ニクロムは躊躇いなく、それを口に運び、幾つかの咀嚼を経て嚥下し。
 一切の曇りもない顔で皆も試してみて、と告げれば恐る恐ると言った形ではあるが、竜の目玉を口に運んでいく。
「確かに。とても舌触りが滑らかで、この弾力が適度で……」
 適度に冷やされたそれは本当にゼリーデザートのように。
 ゼラチンの頼りない揺れと、吸い付くような口腔への張り付きから、口内の温度で溶ける官能的な舌触り。
 元来の目玉の旨味に、デザートとして付加された甘味が心地よく、旨味に続く旨味に重みを感じていた舌を柔らかく癒し、食後の心地よい満腹感を齎す。
「ウフフ。邪竜を討伐せし勇士達の凱旋物語のハッピーエンドは、感謝の宴と云うことですわね」
 最高の一時と言って良い余韻の中、今だ賑わいと語らいの続く宴を目にし、ライララは頬を染め、集落の灯に照らされながら息を吐く。
「とても素敵な宴」
「これも反抗の導き、チタノの加護に感謝しなくちゃ」
 そこへニクロムが――紅明日香が続け、満足そうにこの一件の成果に頷いていた。
 民を苦しめていた邪竜は、民の為に立ち上がった勇士達と猟兵の手によって討たれ、その遺骸は余すところなく民と勇士達の為に使われることとなっている。何と素晴らしく、良く出来た導きなのだろうか。
 この地を救った猟兵達と、勇士達の宴は何処までも賑やかに、疲弊していた民を癒し、共に戦った戦友達の労苦を優しく癒していくのだった――。

 かくして竜退治の偉業を成し遂げた英雄達の日は過ぎていく。
 邪悪な竜に苦しめ続けられていた民も、程なくして活気を取り戻していくことだろう。
 そしてかつての青雲の志を取り戻した勇士達は、その志のままにまた苦しむ民を救う為に飛び立っていくのだろう。
 そして猟兵達もまた、この宴が終われば各々の行くべき道を歩んでいくのだろう。

 それでも。

 まだまだ終わらないこの集落(むら)の宴を、誰もが華々しく思う英雄譚の気持ちの良いエンディングシーンを終わるその時までに、この地を救った猟兵達は謳歌するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月29日
宿敵 『百眼魔竜『獄闇外道』』 を撃破!


挿絵イラスト