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鬼さん、こちら

#カクリヨファンタズム #【Q】 #戦後

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#カクリヨファンタズム
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#【Q】
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#戦後


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●おうたのみち
 “とおりゃんせ、とおりゃんせ”
 “ここはどこぞの細道じゃ”“神か仏かあやかしか”
 “うたへ うたへ うたうたへ”

 “我らが首魁へと通ず道”

 “わたしの友へと至る道”

 “あの手に捕まるその前に”
 “あの目に見つかるその前に”


 “さあ”

『走れ!!!』

 ◇

 鳥居連なる幾重にも分かれたこの道は終わらない。
 間を抜けようにも見えない何かに阻まれたうえ、間から見えた景色も石段の時代も進むほど乱れていく。
 分からないが、何やらどうにも正解を引き当てること叶うまで決して終わらないようだ。
 あの鬼が出口だと示した奴の口が、今“救い”に見えると言った奴の気持ちが分かる気がする。

 硬く繋いでいたはず手は解かれ、あの子の名前を呼べど何処にも届かない。
 唯一の返事は鬼の声。呼んだ愛おしい名に、さも当然の面で返事をするだろう。ゆえに、呼んではならない。
 決して名を言うな。鬼が、これを読む君や君の愛しい人を呼んでしまう。
 この終わらぬ逢魔が時。沈まぬ夕日。伸びたままの影ばかり。

 ああ、忘れることなかれ―――きみに“かえるばしょ”があることを。
 逃げろ逃げろ逃げろ倒せ逃げろ君なら逃げろ逃げろ逃げろ、どうか。

 いきてくれ。
                         (落ちていた黒革の手記より)

●かえろう
 資料を手に、壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)は眉間に皺を寄せていた。
 深呼吸をしたところで猟兵の姿に気付き目元を緩ませると、いつものような微笑みを浮かべ件の説明へと移る。
「では、この度の事件についてご説明させていただきます」
 それはカクリヨファンタズムにて発生した怪異。
 UDCアースのUDC対策組織が管理していたはずの強力な呪物が、まるで神隠しのように消える事件が発覚したことから全ては始まった。
「UDC組織より消えた強力な呪物が一つ、“おにのお面”がカクリヨファンタズムにて確認されました」
 【回収記録No.023510 おにのお面】。
 所謂、節分のイベントなどで配布されるデフォルメされた“赤おに”の描かれた紙製の面。
 一見して無害なソレは、付けた……否“憑いた”者の食欲を非常に増幅させ、命あるものならば全て“追いかけ捕まえた末に喰らう”という性質を持っている、と杜環子は言い、更に。
「特に迷子を好みます。年齢は問わず、迷う者を追いかけ追い詰め喰らう……既に犠牲が出ていることも、確認されました」
 今回、おにのお面が憑いたのは妖怪 腹ペコ坊主。
 元々腹ペコ坊主の性質が大食いであることも相俟って、放置すれば大事になるのも想像に難くない。
「わたくしがご案内叶いますのは、おにのお面に憑かれた腹ペコ坊主の作り出した迷宮の入り口まで」
 ぎゅっと袖口を握った杜環子が視線を落とす。
「本来軒に下がり得物を待つ腹ペコ坊主はおにのお面の力により、空中を浮遊しながら追い掛けてくることでしょう」
 恐らく、目的は“鬼ごっこ”に似た行為。
 唯一の問題は、迷宮に入ったもの全てがおにのお面憑けた腹ペコ坊主の獲物になるということだろう。
「迷宮はおにのお面の為に、迷いやすい構造及び“必ず一人になる”術式が施されています」
 どんなに硬く手を繋ごうと入った瞬間別の場所へと招かれる。
 そして常に追い来る“何か”を感じながら迷宮を歩くこととなるだろう。

「皆様……どうか、お気をつけて」

 ご武運を――その言葉の後、揺らいだ視界に瞼を上げれば朱鳥居連なる終わらない石段が猟兵達を出迎えた。

 訳もなく鼓動が早まる気がしてならない……ああ、逃げなければ。


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 にげろ。

●進み方
 第一章、二章の二章構成シナリオになります。
 第二章の前にのみ断章が挟まれる予定です。

●第一章:冒険『とおりゃんせ、とおりゃんせ』
 常に“追われている”という感覚と危機感は胸の奥でむずむずするような空間です。
 黒い影に追われている気がする―――。
 黒い影に捕まってはいけない気がする―――。
 その感覚を大切に、鳥居の中の探索をお勧めいたします。

 ※今回の場合のみ、黒い影から逃げる及び隠れる行為がプレイングになく、黒い影にぶつかった方が第二章へ参加された場合、鬼に味見をされています。
  味見をされた=攻撃が当たりやすいギミックが追加されます。

●第二章:オブリビオン 妖怪 腹ペコ坊主
 強力な呪物 おにのお面に憑かれています。
 一見本当に節分用の豆のおまけに付いていそうな紙製の赤鬼の面ですが、呪物です。

 濡れることも破れることも燃えることもありません。
 腹ペコ坊主の撃破に成功した場合、本来の腹ペコ坊主及び件の呪物 おにのお面の回収に成功します。

 ※第一章にて鬼の味見を受けている場合:対象への腹ペコ坊主の命中率がアップ。



 複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】で大丈夫です。
 IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすいです。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございます。

 もしよろしければ、お役立てくださいませ。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。


 最後までご閲覧下さりありがとうございます。
 どうか、ご武運を。
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第1章 冒険 『とおりゃんせ、とおりゃんせ』

POW   :    過去の記憶に惑う。

SPD   :    忘れた感情に揺れる。

WIZ   :    誰かの幻が浮かぶ。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●鬼さんこちら
 おいで、おいで、おいでませ。
 ようこそようこそ、遊びましょ。

 なにして遊ぶ?なにしよう?
 追いかけっこ?ああ、追いかけっこをしよう!

 わたしが鬼で、あなたは迷子。
 さあ。

 さあ、さあさあさあ!

『逃げろ!』
シキ・ジルモント

探索だけならともかく、追われる状況というのはあまりいい気分では無い
どれだけ歩けばいいのかと少々うんざりしてくるが
とにかく落ち着いて進むように自分に言い聞かせながら進む
一度通った道には印をつけて、行き止まりなら一度隠れて「黒い影」をやり過ごして正解の道を探す

ユーベルコードの効果もあわせ、耳を立てて周囲の様子を探る
浮遊して移動するなら足音は期待できないか
その他の音はあるか、それが駄目なら気配はどうだ
「鬼」から離れるように駆けて、その場を離れる、逃げ続ける

…いっそ捕まってしまえば、この焦燥感からは逃げ切れる
一瞬そう過ぎったのは、黒い影に追われているという危機感が焦りへと変わりつつあるのかもしれない



 
●ひとつ手拍子、
「……っ!!」
 グリモア猟兵に送られ石畳を踏んだ瞬間、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の脳内を幼子に老人に女に男と老若男女入り混じった声が響き渡った。
 米神を押えて見上げた先には連なる石段と鳥居の群れ。声の主の影も形も無く、ただ妙な焦燥感だけがシキの心を駆り立てる。
「気持ち悪い……」
 絶妙な不快感の中、進む。
 どうせこの感覚が終わらないというのなら、冷静になれと自分自身に言い聞かせるほかに対策は無いだろう。
 ただ一つ、軽い足取りで走るシキが唯一行ったのはUC―ワイルドセンス―の発動。すうっと立てた狼の耳は、今なら針の落ちた音さえ拾えるだろう……そう感じるほど神経を研ぎ澄ませ、ナイフで鳥居に傷を刻んでゆく。
「一体どこまで――……」
『ぁ  ――ぼ……ぅ』
 続くんだ、と鳥居を見上げて言いかけた言葉を、シキは反射的に呑み込んだ。
 不意に聞こえた遠くからの声。それは明らかにシキ自身へ向けられたものだと勘が告げている。
「――チッ!」
 背筋に走る怖気は確かな鬼の気配。
 知りもしないはずなのに、シキの脳内に警報が響くのだ。“捕まるな!”、“捕まったら喰われる!”と。
 わざとらしい足音がシキを追う。わざとらしい――いや、正確に言えば“人ではない”足音がシキに徐々に距離を詰めてきているのだ。
 逃げながらただ一瞬――ほんの一瞬、シキは思った。
「(いっそ捕まれば……捕まってしまえば、この焦燥感から逃げられるんだろう)」
 と。
「……な、わけないだろうが!」
 パン!と両頬を叩いて入れた気合をエンジンに、崩れた鳥居の一本向こうてワイヤーを掛け跳び上がる。
 恐らく“追う鬼”は走っているはずだから。
『 そ  ぼ ぅ』
 迫る。
『あそ  ぅ』
 声が。
『あーーそーーぼーーー!!』
 真っ黒な人型が鳥居の上で気配を潜めたシキの下を抜けていく。
 ありもしない目で、此方を見上げながら。

「っ、ぅ」
 咄嗟に出そうになった声を殺して飲み下す間に、それは通り過ぎて行ったけれど――……。

「何なんだ、アレは」

 漠然とした不安が、再び心に覆いを被せた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
何に追われるのかしら?追い立てられたような思いはあるけど、追いかけられたことはあったかな?
過去世の想いを終わらせないとって焦っていた時期はあったけど。

このカクリヨの迷宮では右手の法則も使えないのかな。実際構造自体ではたどり着けない迷路もあるのだし。
でもむやみやたらと進むよりは良いのかも。右手を壁の代わりに鳥居たちをなぞるように進んでいきましょう。

隠れる際はクリスタライズで姿をけし、さらに目立たないように鳥居の柱の影に、闇に紛れるように気を付けて隠れて。追われる感覚に焦らないように、動揺しないように。焦ったらダメ。
探索も同様に。何事も焦りは禁物。足元をすくわれたらそれこと大事になってしまうわ。



●ふたつ手拍子、
 ドッ、と耳元で鳴った様な心音に夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は指を握る。
「何に追われるのかしら……?」
 漠然とした独り言は、虫の音響く鳥居の群れに溶けた。
 足を進めないだけで募る漠然とした不安。そして言いようのない焦燥感に胸元を握りしめた。

 軽く走りながら石段を行く。
 この迷宮で役立つか分からなかった右手の法則に則り、藍は進み続けていた。
「……むやみやたらに進むより、まだ良いのかも」
 拭えない不安は胸に蟠ったまま。
 だが“右手の法則で迷わないように進もう”という意志が藍の心を奮い立たせる。と、苔の多い石段を一段、踏んだ時だ。
『―――、ぃーか   ?』
「……!」
 バッと反射的に振り向いた後ろには“何もいない”。
 しかし何故か泡立つ藍の背筋と猟兵の勘が、“何かが来る”と訴えていた。
「来る、ってことなのね……!」
 探査する中、鳥居の色味が変わるのを境に時代が変わっている――……そうヒントを得たばかりのこと。
 古い石段を踏んだから?
 いや、その前に古いものを3度は踏んだ。
 特定の時代だったのか?
 その可能性は、まだ否定する材料が足りない。
『も   ぃ かい?』
「……っ!」
 後ろから声がする。
 まだ足音は遠く明確な言葉は聞けない、が、後ろから。
『もー、い   か ?』
 “もういいかい?”
 咄嗟に古鳥居の狭間のくぼみへ飛び込み、発動させたのはUC―クリスタライズ―。ぎゅっと自身を握りしめ、不自然に周囲のものを消さないように――ただ、透明なものになるように。
『もーいーかい』
 来た。
『もーいーかい?』
 近い。
『もーいーかい!』
 目の前だ。
 何故か下を向いてしまった。
 藍はぎゅうっと自身を抱いて息を殺す。ああ、どうかこの鼓動が伝わらないように……そう祈った時、すん、と相手――否、真っ黒い何かが匂いを嗅いでいる。
 毎秒溜まる疲労に、汗が滴りそうになった時だ――。
『もーいーかい!!』
 視界にあった足が突如走り出し声は遠くなって、とうとう聞こえなくなった。
 ふら、と傾いた身体を鳥居で支えたながら、やっと吐いた息。
「……っ、ぁ、」
 逃がされたのか、気付かれなかったかは分からない。
 たった一回の遭遇で、こうも神経を削るとは……。
「焦ったら、ダメ……気を付けましょう」
 汗を拭い、藍は再び足を進める。
 
 

成功 🔵​🔵​🔴​

葬・祝
【彼岸花】◎

繋いでいた手の先が消えたことに思わず周囲を見回す
……本当に完全に分断されるんですねぇ
カフカ、大丈夫でしょうか
追われ生きることに慣れはあるが、手元にあの子が居ない
それが何だか心配で、落ち着かない

UC+【索敵、追跡】で周囲を警戒しながら進みましょう
身の内がざわめくような、落ち着かない焦燥感
早く逃げろと誰かに押し付けられているようで、ちょっと気に食いませんね
生者でもないので、獲物になる命あるものかは分からないですねぇ
【闇に紛れ】ながら、黒い影に遭遇しないよう【幸運】に【祈り】ますよ

……早く此処を抜けて、カフカと合流したいですねぇ
まあ、緋幟もありますし、大丈夫なのは分かってるんですけど


神狩・カフカ
【彼岸花】◎

…はふり?
へェ、見事に離されちまった
奴さん、やるなァ

なんて呑気な考えも最初のうちだけ
己の意志に反してぞわぞわと纏わりつく焦燥感
気持ち悪ィなこの感覚!
仕方ねェ、本気でやるか

ほれ、出番だぜ
眷属の鴉を召喚したなら
周囲の索敵と偵察を頼もうか
何かあったら教えとくれ
なるべく出口への最適な道を洗い出したいところだが
隠れる場所がないなら寄り道も手だ
気配が近付いたら隠れてやり過ごそう

にしても鬼事なんていつぶりだろうなァ
焦燥感に混じる懐かしさ
ま、勝負事で負けるつもりはねェが

さて、さっさと抜けるぞ
…はふりのことも心配だしな
朱蛺蝶がいるから大丈夫だろうけれども
傍にいないってだけでこうも落ち着かないとは、な



●みっつ手拍子、
 鳥居の群れに気付いた時には、手中の熱が消えて居た。
「……本当に、完全に分断されるんですねぇ」
 なんとまあ、と呟いた葬・祝(   ・f27942)は鳥居を見上げる。
 連なる鳥居の妖しさは言葉にし辛く、空いた手の寂しさで祝の心を揺らす。
「カフカ、大丈夫でしょうか」
 “逃げなければ”という焦燥感と“手元にあの子が居ない”という不安感に気持ちを引きずられそうになりながらも、細く白い指で撫でたのは自身の影。
「さぁ、追いなさいな……私を追いに来るモノを」
 UC―闇は凝る―が起こされた瞬間、祝の影が滲みざわめいて。
 瞬きの間に出でた毒蛇と烏は音も無く地を這い、鳥居を抜けて先を行く。
 尖らせた神経がちりちりと焦らされる感覚は、おそらく此処を抜けるまで終わらない――……答えの一つもない中、悟りながら祝は駆ける。

 駆けて暫し。未だ、自身を追う気配は無いものの微妙な違和感が祝の中で積もっていた。
 同じ形ながら時に色が、時に損傷度が微妙に異なる鳥居を見続けたせいか、“何かずれている感覚”が拭えない。
「まったく、私は生者でもない―――」
『―――    ぇ!』
 命無い身と祝が自身を口にした時、遠い声感知したのは影と祝の同時。
 殆ど聞こえなかったそれが、何故か祝には呼びかけのように聞こえて―――ぶわりと、冷や汗の出るような“錯覚”。
「……なるほど」
 己の存在を誇示するように行動するのか――そう理解した瞬間、祝は裾をたくし上げ走り出す。
 恐らく、相手は確実に自身を捉えに来るだろうから……なら、影の多い鳥居道を選ぶ。時折飛んで跳ねて、足音消して。
 鬼というモノが何を基準に追って来るのかは未だに謎なれど、恐らく知る必要はない。
「私を捕まえるには、骨が折れるでしょうから」
『―――ね    ぇ !』
 呼びかけ。
 待てと言わず、呼びかけるか。何と小賢しく姑息なことを、と祝の口角は無意識に上がる。
「――成りたては野暮ですねぇ」
 言外に鬼を未熟とわらった悪霊が、影に溶けた。
『 ね  ぇ!』
 迫る。
『ね ぇ!』
 常人ならば反射的に振り向こう。
『ね  ぇ!!!!!』
 祝の鏡瞳が捉えたそれは、子供の様にぐるぐる首を廻しながら走る黒い人型であった。

 ぐうるり首を二廻しの果て、祝に気付かず猛スピードで影は去る。


●よっつ手拍子、
「……はふり?」
 神狩・カフカ(朱鴉・f22830)に応える声は無し。
 カフカの手は、“はふり”と繋いでいた時の形のまま――不自然な空気を握ったままだった。
「奴さん、やるなァ」
 何せこの空間に入った瞬間が掴めなかったのだ。
 違和感一つも無く、空気のように馴染みさも当たり前の様な顔であるこの空間に、カフカは小さく感嘆の息を漏らす。が、常の様で有れたのも此処まで。
「……っ!」
 ゾ、と背の筋に奔った得も言われぬこの寒気と焦燥感。
 この空間限定の仕掛けに倣って、カフカは石段を掛けてゆく。乗ってやるさ、と張った意地と共に鳥居の群れを通り、進める歩み。
 薄い唇で銜えた無骨ながら趣のある煙管から、カフカはふうと一服を吐く。
「ほら、出番だ……ひと仕事頼むぜ」
 カフカの言葉に呼応するように煙から出でた烏は、UC―月夜鴉―。それは羽搏きの音も無く鳴き声さえ上げず、差す黄昏へ一も二も無く溶け込み飛んでゆく。鳥居の下を縫うように、いくつもの鳥居の影に度々馴染みながら。
「何かあったら教えとくれ、」
 お前さんたちなら――というカフカの言葉は、揺らぐ煙にかどわかされた。

 と、と蹴った石段は幾つ目か。
 声無き鴉の警鐘に気付いて数分ほどの中、カフカは走り続けていた。
 追跡者は、笑う男―――そう、何故かカフカには漠然と“男”と認識が出来た。思い込みか、はたまたただの偶然かは分からないが。
「にしても、鬼事なんていつぶりだろうっ、なァ!」
 手を掛け飛び越えた崩れた鳥居を越えた瞬間、鳥居が朱ではなく石造りの古いものへと変じる。時代が変わったか――と感覚的に捉えながら、カフカは歩みを止めない。
『 は   はは   はははは !』
「近いな」
 先より徐々に声との距離が縮まっている。
 一体終わりはどこなのか――漠然と疑問が湧くと同時に、鎌首擡げたのは疲労と焦燥。捕まってしまおうか……無理矢理頭の中へ上書きされたような言葉を、頭を振って振り払う。
「勝負事で負けるつもりはねェさ」
『アは ははは ハハハハハハハハハ!』
 背に迫る声に“こわい”と紡ぎそうになった唇噛んで、石段を蹴る。隠れる場所でもあれば良いのだが、どうにもこうにも場所が無い。そのうえ先程まで幾重にも分かれていた道は気付けば一本。やられた――!そう気づいた時には、遅かった。
 ふと、苔生した石段踏みしめた勢いで思ったのは“はふり”のこと。
「はふりは、ま……大丈――」
『はふり!!』
 真後ろから声。
 呼ばれた名は会いたいあの人。
「  、」
『つーかまーえたーーー!!』
 あははっあははははははははははは!!!!!

 けたたましいわらい声が木霊する。
 横っ腹へ喰いつかれながら、悪運に気に入られたかという自嘲がカフカの頭を占めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『腹ペコ坊主』

POW   :    味見させて…
自身の身体部位ひとつを【鋭い牙が並んだ自分】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    キミを食べたい
攻撃が命中した対象に【美味しそうな物のしるし】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【捕食者のプレッシャーと紅い雨の弾丸】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    今日の予報はヒトの消える日
【飢餓】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠弦月・宵です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●鬼の陽炎
 雨が降らなくて、ひさしぶり。
 おなかがへった。

 かじったキミが、おいしくて。
 おいしくて、おいしくて、わすれられない。
 あかくてキレイなキミが。

 いいにおい。
 もういちど、すいたい。吸う。
 今度は骨の髄まで啜ろう。最後には骨も食べて。

 きっと、

 ああ、きっと悲鳴すら美味しい。
 今までだってそうだった。わからない。
 わかラない。分カらナイ。ワかラナイ。
 誰も居ない。

 たべたい。
 たべよう。


 ごはん。ごはんだ。

 いただきます。

 
夜鳥・藍
見た目はほのぼの系?だけど……久しぶりにぞくりとするような感じですね。先程の追いかけっこの影響かしら?
それとも異変の大元はUDCの呪物だからかしら?

青月をかかげUC雷光天絶陣をマヒ攻撃と共に放ちます。大きくなっても多少なりとも動きに制限を掛けられれば大きく脅威とならないと思います。
相手の攻撃は直感(第六感)で回避します。威力は上がっているでしょうが、逆に大振りに見えると思いますので。

どうして食欲なのかしら?鬼だから?それとも呪物になった経緯かしら?
追いかけるのは鬼だからとして……その食欲は餓鬼道の鬼かもしれないわね。
……はぁっとため息。疑問が起きるとどんな状況でも考えてしまうのは悪い癖ね。



●馨しの花
「……呪物の影響かしら?」
 鬼面を付けた腹ペコ坊主を前に夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が眉を寄せたのも無理はない。
 本来ならば掌より少し大きい程度であろう腹ペコ坊主が、今や人並みの大きさを保ったまま……――首のタコ糸が、どこにも繋がっていないのだから。

『いいにおい……食べサせテェぇェえエエ!!!』
「っ、」
 一声、図体に見合わぬ幼子のような声発した腹ペコ坊主が、鬼面の口がパクリと開くと同時、線一本引かれただけの口からピリピリと亀裂広げて迫り来る!
 反射的に抜き打った青月に藍が纏わせたのは稲妻。
「痺れなさい――!」
 踏み込むよう見せかけ身を翻し、すれ違いざま雷公鞭として顕現させた青月を振るえば、鋭い雷光の一閃が感電する程の轍を残せば、元より襤褸布の腹ペコ坊主が身悶え唸る。
『い、いぃィいイ、ァァアアア!!!おなかへった、減った、へったから!!』
「どうして……」
 あれではまるで獣だ。
 貪欲を越えた“食欲”に支配されているような、腹ペコ坊主の姿は見るに堪えない。
 たしかにグリモア猟兵は“元々の腹ペコ坊主の性質”も関わっているのだろう。だが、そうは言えどもあまりに―――……。
 痺れた体を無理やり動かし襲い来る腹ペコ坊主を飛び退け、藍は思考を巡らせる。
 鬼ゆえに“人”を追うと仮定して。食欲の理由は?何と結ぶ?
「っ、く……呪物だから?でも、それはあまりに短絡的でしょう」
『待ァぁァアあてェぇぇええええ!!!』
 幼子のようだった面影も今は無い。
 幼子少年少女に青年女性老人老婆に、獣。老若男女有象無象混じった声の、酷いこと――そう、眉顰めた時だ。ふと藍の脳裏をいつか見た書物が過る。
「……――あなた、餓鬼道の鬼……でしょう?」
『ア゛』
 ぐるりと目の中央抜け穴となった紙の面が藍を見た。

 しゅるり、紐の緩む音がする。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葬・祝
【彼岸花】◎
己の所有印でも護印でもある緋幟が発動した気配を追い、辿り着いた先
血を流す愛しい子の姿

……あとで直ぐ治しますから、お前は良い子にしていらっしゃい

ちりりと剣呑な音を立てた鈴を乱暴に取り払い【封印を解】けば、青年の姿へ変わる
抑え込んでいた暗く重い瘴気
満ち満ちる不吉
ありとあらゆる厄災の形

成り立ての小鬼如きが私の宝を喰らおうなんて、良い度胸ですねぇ
……身の程を知れ

私のものに手を出した時点で、重罪ですよ
君がどんな存在か、なぁんて、私には欠片も興味がない
【念動力】で敵の動きを阻害
UC【神罰、呪詛、恐怖を与える、生命力吸収、精神攻撃】【斬撃波、衝撃波】
徹底的に、存在ごと磨り潰して消し去るような厄を


神狩・カフカ
【彼岸花】◎

痛ってェなァ
思いっきり喰らいつきやがってよ…
そういや前も腹喰われたっけなァ
そんなにおれは美味しかったかい?
ふふ、そうかい
悪ィが大人しく喰われる趣味はないンでな
悪足掻きくらいさせとくれよ

緋幟が発動したならば周囲に呪詛が満ちていく
これで少しは時間稼ぎが…――なンだ、早かったな
はふりの姿が見えてほっと息を吐く
そっちは怪我がないようで安心したぜ
おれァちょっとばかしドジ踏んじまったが…
剣呑な様子に瞬いて
へいへい、大人しくしてますよっと

腹を押さえながら後ろへ下がる
ここまで怒ってるのも珍しい
なんて他人事のようなことを思いつつ
緋幟の呪詛と合わさってはふりの力が増していく

心配掛け過ぎちまったかねェ…



●渦中の、
 藍の言葉に混乱した様子で頭を振った鬼面の腹ペコ坊主の動きがピタリと止まる。
 空洞に等しい目で捕らえたのは、脇腹から血を滴らせた神狩・カフカ(朱鴉・f22830)の姿だった。
『ぁ』
「そんなにおれは美味しかったかい?だが、この辺でやめとけ」
 お前さんの為だと言いながらも挑発的にカフカが笑えば、先程裂けた腹ペコ坊主の口が歪むや無数の牙でカフカ目掛けて飛来する。
『あ ぁ、あぁぁあアあァァア!!!!』
「まだ喰い足りねェってか。ったく、おれの腹はそんなに美味いのか?だが、ま―――」
 迫る腹ペコ坊主に、カフカが向けた指先。
「とっくにお前さんは逃げられねェだろうが……おれァ、忠告したからな」
 UC―緋幟―が発動したカフカの声に、僅かに慮る色。
 だが呪物の力で狂った腹ペコ坊主には一切届かぬまま、発動されたのは地面から影湧くように芽生え花開いた曼殊沙華。
 漆黒のそれはこの場に差す逢魔が時の日差しに僅かに赤く照り返し。
 咲く。
 割く。
 裂く。
 生けるものならば持つ心を、願いを、欲を。その裡からさかせて。
『ウう、ぅ   ぅぅうぁあぅううぅ!!!!』
「ぐ、 ぃっ……!」
 身を翻すも、身を捻らせカフカの腹抉った腹ペコ坊主は獣の如く唸る。
 ぎりぎりと牙を擦り合わせ、空中浮ながらもゆらゆら得物たるカフカを喰わんと隙を伺っているのだ。
 その光景を、鳥居の群れ出た葬・祝(   ・f27942)は見た。

 瞬間、目を見開く。

「―――、!」
 はくりと音も無く祝の唇が叫んだ。
 無数の牙に抉られたはず……にもかかわらず、傷口がさほど酷くないのは祝の護印のお陰だろうか。“ちりり”。
 だが“ちりり”カフカの脇腹から滴った赤と僅かな呪詛の気配に、祝は目を見開いたまま。
「……ったく、痛ってェなァ」
「……あとで直ぐ治しますから、お前は良い子にしていらっしゃい」
 顔顰めたカフカを撫でる祝の手は優しく、声は酷く柔らかく。“ちりり”。
 しかして、“ちりり”その背に負ったその気配は尋常ならざる“何か”があった。“ちりり”。
「……、」
 おまえ。
 そう“ちりり”うたった祝の唇が零した歯軋り。“ちりり”“ちりり”。
 “ちりり”。
 “ちり りゃん”。
 燃えるような眸が鬼面ごと腹ペコ坊主を捉えた瞬間―――ソレは弾け飛ぶや、影が、闇が、周囲を覆う。
 黒くて、暗くて、全てを見失ってしまいそうになるような。

 カフカは知っている。
 封の解けた祝は葬になると。重く暗く“葬るもの”へと変貌する。祝を呼ぶ者がきちんと意思を込めて位置を定めて祝と呼ぶから、祝は祝なのだ。
 はふりと、カフカが呼ぶのは二つ合わせて祝がはふりだから。
「だァから言ってやったってのに」
 カフカの呟きは誰にも届かない。

「成り立ての小鬼如きが」
 ゆら、ゆら。
 うごめきわらう災厄のこえが、古のうたのようにカフカにさかれた腹ペコ坊主の裡で反響する。
「私の宝を、私のものに手を出す罪を 知れ。刻め……君がどんな存在だろうが、私は欠片も興味が無い、が」
 “わすれることは ゆるさない”。
 祝の言葉が、暮れゆく誰そ彼に舞い散る。
 UC―花は落ちる―、それは罪の重さを厄災で図る小さな地獄。かみとよばれたことのある祝ゆえに使えるユーベルコード。
『ぇ゛ぁ  ぁ、ぁあ、あ゛あ゛あ゛!!!!』
「――さぁて、君はどうなりますかね」

 ぎちぎちと締め上げ蝕むその呪い。
 一つ緩んだ面の紐が、もうほどけそうなほどゆるんでいる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント

全く、散々追い回してくれたな
これ以上遊んでいる暇も、まして食われてやる気も無い、対象の撃破に移る
腹が減るのは辛いだろう、解放してやる

…しかし、倒す対象が目の前にあるのは気が楽だな
不気味な相手ではあるのは変わらないが、先のように追われるよりはだいぶ良い

常に視界内に相手を収めて攻撃の予兆を確認、回避を試みる
基本的に回避を優先、相手の攻撃の合間にユーベルコードで反撃を行う
しるしを付けられたら距離をとって紅い雨の弾丸の範囲外へ
この場合もユーベルコードを使えば射程距離には十分収まる筈だ

こんな面が呪物とは…ふと湧いた興味を振り払い仕事を進める
この手の代物に深く関われば、今度はこちらが“鬼”と成り兼ねない



●祓【回収記録No.023510 おにのお面】 新回収記録
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が鳥居の間を駆け抜け開けたこの場に出た時、既に戦闘は始まっていた。

 祝によって締め上げられ投げ飛ばされた鬼面の腹ペコ坊主がシキの前に。
『う゛ ァア゛……、い゛ぃぃいいぃい!!!』
「……文句の一つも言いたかったんだが」
 のた打ち回り蝕む呪いに苦しみながら足掻く腹ペコ坊主は、傷ひとつなく当たり前のように居座る鬼面に精神から食われているのだろう。
 余りに哀れ。
「腹が減るのは、辛いだろう」
 シキの瞳には慈悲というよりも憐れみがあった。
 唸りながら体を起こすように再び浮遊する腹ペコ坊主は、明らかに這う這うの体。にもかかわらず、戦おうというのだ。つまり鬼面に慈悲は無く、あるのは腹ペコ坊主を宿主に生存を続けるか、新たな宿主を見定めることだけなのだろう。
『た    、たぃ』
「……?」
 油断なく銃口を腹ペコ坊主へ向けたシキの耳を、老若男女獣入り混じった声が掠める。
 眉間に皺寄せ油断せず耳を澄ませた、その時。

『たべたい』
「―――っ、がっ!!!」

 発動していたUC―ブルズアイ・エイム―を以てしての、掠り傷。
 目を見開いたシキが横に飛び退いた気負いのまま転がり避けた場所にめり込んだ紅の弾丸。それが、降る。
『た べた ぃ』
「――、おぉおおお!!」
 撃つ。
 撃って撃って撃って、撃ち落とす。
 見切り紅雨の弾丸をギリギリ避けながら、時に紅雨撃ち落としシキは自身を守る。滑ったならば滑り込む動作へ即移り、継続戦闘への構えを崩さない。
指先痺れるほど引いた引鉄が硝煙だけを立ち昇らせた時、荒い息のシキが吼えた。

「お前はここで撃ち落とす―――!!」

 シロガネの銃口飛び出した弾丸が空を泳ぐ。
 美しい白銀の弾丸は螺旋の遠心力纏うまま、紙切れである鬼面を撃ち抜き、布切れ詰めただけの腹ペコ坊主の頭部を貫通して。

 悲鳴。
 絶叫。
 怒号。
 音にも言葉にもできぬ獣以下のこえは、爆ぜた後空気に溶けた。

 ひらりと、鬼面が落ちる。
 痛む体を引きずって拾い上げたそれは、本当に“紙”のような手触りで。
「(こんな面が呪物とは――……)」
 くり抜かれた“目”越しに夕日を見そうになった時だ。
 ぎょろり。

 目が。

「っ、!!」
 投げ捨てたのは恐らく正しい判断だろう。
 たった一瞬目を見ただけで、内側から掻き回されるような感覚は奔ったのだ。猟兵である、自身が。
 只人ならば、喰われている。

 そう直感しながら、シキは封の術式施された風呂敷で鬼面を包みしまいこむ。
「この手の物は、深く関わらないに限る……か」
 気を抜けば、次の鬼は自分だろう。

 おにさんこちら、てのなるほうへ。


 遠い子供の声が木霊する。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト