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時の秘密を守りしは、心惑わす電子の歌姫

#アポカリプスヘル #【Q】 #時間質量論 #戦後

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「オブリビオン専用ネットワーク通信網再構築中……進行率2.4%」

 無数のモニターの明かりに照らされた、誰も知らないとある研究所の一室にて。
 雑然と積み上げられたコンピュータや端末類を操作する、ひとりの少女がいた。

 ガスマスクとヘッドセットを装着し、白衣と白翼に身を包んだ、可憐な容姿の少女。
 だが、モニターを見つめる瞳は機械のように冷たく、紡がれる言葉とウィンドウに表示される文字と数字の羅列は、現在彼女が進めている危険な計画の進捗を指していた。

「……なに? この忙しい時に……侵入者?」

 ふと、モニターのひとつの表示が変化する。それは部外者の侵入を伝えるアラート。
 厳重に秘匿されたこの研究所に、ただの人間が近寄れるとは考え辛い。おそらくは猟兵――招かれざる来訪者に、少女はマスクの下で顔をしかめる。

「面倒くさい……精神電波発生装置、全基最大出力」

 面倒だが、ここにあるデータは死守しなければならない。少女はピアノの鍵盤を弾くような指さばきで端末を操作し、研究所内部にある全ての防衛システムをフル稼働させる。
 電子と通信の領域から、この世界に滅びをもたらさんとする者――アリシア・ホワイトバードは、ひどく投げやりで冷たい口調で呟いた。

「ヒトの時代はとっくに終わったのに ばっかみたい」


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「アポカリプスヘルでの戦争中、猟兵はマザー・コンピュータが遺した『時間質量論』に関するデータを入手しました。これを解析したところ、関連する大量のデータが世界中の研究所に隠されている事が判明しました」
 今回リミティアが予知したのはそうした「隠された研究所」の所在のひとつだという。保管されたデータには重複も多いかもしれないが、集めることで情報精度が高まることは間違いない。時間質量論の解析をさらに進める手掛かりとして無視はできないだろう。

「判明した研究所はアメリカにあります。さほど広い施設ではないようですが、侵入者を排除する仕掛けとして、施設内部には精神に干渉する特殊な電波が発せられています」
 この電波を受信してしまった者は精神を操られ、無意識のまま研究所から出ていくように誘導されてしまう。研究所の所在が不明だった原因もこれで、長時間電波を受け続ければ精神に異常をきたし、最悪発狂する恐れもあるようだ。
「このままでは調査もままなりませんので、まずは研究所の各所に配置された電波装置を破壊し、精神電波の発信を止める必要があります」
 装置の形状はそれぞれ異なるが、どれも大型で一目で分かる見た目をしているらしい。なんらかの対策を講じて電波に耐えつつ、装置を発見して破壊できれば、それ以降は電波の妨害を受けずに研究所の奥に進むことができる。

「研究所の最奥には、何者かによってデータの警備を命令されたオブリビオンがいます。その名はアリシア・ホワイトバード。フラスコチャイルドのソーシャルディーヴァです」
 彼女はオブリビオン専用ネットワーク通信網の再構築と、人類の通信網へのサイバー攻撃及び破壊を目論んでおり、この研究所の設備とデータはその点で魅力的だったようだ。
 この世界のオブリビオン全てとソーシャル・ネットワークを構築する。フィールド・オブ・ナインの1人にして最強格のソーシャルディーヴァだった「プレジデント」亡き後、それを実現できる者は現状存在しないだろうが、もし再現されれば厄介な事になる。
「データの奪取という目的を抜きにしても、放置しておくには危険なオブリビオンです。また彼女もデータを狙う侵入者に容赦はしないでしょう」
 ハッキング技術に長けた強力なソーシャルディーヴァであるアリシアを撃破し、端末に保管されていた「時間質量論」に関するデータを奪取すれば、今回の依頼は完了となる。

「充分なデータが集まれば、時間質量論の解析はまた次の段階に進むでしょう。地道な積み重ねとなりますが、どうかよろしくお願いいたします」
 依頼の説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、研究所への道を開く。
 マザー・コンピュータが遺したパンドラの箱。その中身は希望か、あるいは悪夢か。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はアポカリプスヘルにて、以前回収された「時間質量論」に関連する追加調査となります。

 1章は新たに発見された研究所で、調査を妨害する精神電波を無効化します。
 内部から垂れ流されている強力な電波は猟兵の精神にすら作用し、無意識に研究所から追い出されてしまったり、精神汚染や発狂の危険があります。
 施設のあちこちにこの電波を発信する装置があるので、それを手分けして発見・破壊して先に進むという章になります。

 2章はデータの警備を任された『アリシア・ホワイトバード』とのボス戦です。
 アリシアはハッキング能力に長けた強力なソーシャルディーヴァであり、彼女を撃破しなければ『時間質量論』に関するデータは奪取できません。油断なく挑んでいただければ幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『精神電波を突破せよ』

POW   :    強い意志で、電波に耐え切り、電波装置を破壊する

SPD   :    電波の影響が薄い地点から接近して、電波装置を破壊する

WIZ   :    電波に対する解決策を思いつき、電波装置を破壊する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

七那原・望
セントメアリー・ベース以外にも大量の時間質量論の資料を隠していたのですね。
よくもまあ一人でこれだけ……
これの解析が終わったら、少しはマザーが何を知っていたかが理解出来るようになるのでしょうか。

第六感と野生の勘も駆使しながらなるべく電波の薄い地点から電波の出どころを探りつつ装置に接近していきましょう。

オーラ防御と結界術、更にle vent la fleurも併用して電波の干渉は完全にシャットアウトします。
精神干渉だって立派な攻撃だからきっと効果はありますよね。

セントメアリー・ベースに比べて明らかに施設の仕掛けが多い……
つまりこっちの研究所にある資料の方が重要度とか機密性が高いものなのでしょうか?



「セントメアリー・ベース以外にも大量の時間質量論の資料を隠していたのですね」
 よくもまあ一人でこれだけ――と、感嘆と呆れ混じりに呟いたのは七那原・望(封印されし果実・f04836)。前にも回収依頼に関わった彼女は、セントメアリーに残されていた膨大な資料を見ている。まさか、あれですら『時間質量論』の全容ではなかったとは。
「これの解析が終わったら、少しはマザーが何を知っていたかが理解出来るようになるのでしょうか」
 死してなお謎を遺していったフィールド・オブ・ナイン第2席。その答えを求めて少女は隠されし研究所を訪れる。以前は放棄された資料を漁るだけだったが、ここの設備はまだ"生きて"いるようだ。

「なんだかビリビリするのです」
 人よりも鋭敏な望の第六感と野生の勘は、研究所の中から放たれる電波を感じていた。
 この電波が精神に干渉して侵入者を排除するせいで、今までこの場所を調べられた者は誰もいなかったのだ。
「電波が出ているのはあの辺りでしょうか。ここからなら近づけそうですね」
 望は自分の感覚を頼りになるべく電波の薄い地点を見つけ、そこから電波の出どころを探る。情報によると発信源は複数あるらしいので、まずは外側から破壊していくべきか。

「咲き誇れ、風の花」
 望が【le vent la fleur】を発動すると、魔力で形成された巨大なアネモネの花が現れ、柔らかな風を吹かせて彼女を包み込む。この風には術者が非戦闘行為に没頭している間、外部からの攻撃を遮断し生命維持を保障する効果があった。
「精神干渉だって立派な攻撃だからきっと効果はありますよね」
 花の風が精神電波を遮ると、ピリピリした感覚も弱くなった。望はさらにオーラの結界を張って電波の干渉を完全にシャットアウトし、安全を確保した上で研究所に突入する。
 現在の目的は施設の探索と電波装置の発見。それに没頭している限りユーベルコードの効果も持続する。中に入ると電波はより強力になるが、彼女の心が乱れる事はなかった。

「セントメアリー・ベースに比べて明らかに施設の仕掛けが多い……」
 研究所に入ってまず望が気になったのは設備の多さ。部外者を追い返す電波装置をはじめとして、現在もまだ稼働中と分かる機材がそこかしこにある。セントメアリー・ベースのそれは資料も含めて放置されていた雰囲気だったが、ここはまだ現役といった印象だ。
「つまりこっちの研究所にある資料の方が重要度とか機密性が高いものなのでしょうか?」
 だとすればそれを回収する意義は大きくなり、同時に回収の難易度も高くなるだろう。
 前のようにはいかないはずと気を引き締めて、少女はまず電波の発生を止めるために、装置の元へ接近する。

「これですね」
 やがて見つけ出したのは、回転するパラボラアンテナを生やした直方体の機械だった。
 どういう仕掛けで動いているのかは知らないが、これが精神電波の発信源に違いない。望は純白の大鎌「罪華・フィーネ」を構え、結界の解除と同時にさっと振り下ろす。
「まずは1つなのです」
 一撃のもとに装置は破壊され、同時に付近一帯を包んでいた電波が消えたのを感じる。
 この調子で全ての装置を壊せば、研究所の一番奥にも辿り着けるだろう――少女は再び風の結界を貼り直し、調査を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新山・陽
 こういった事態に適した人材は、まず精神が最大の急所であると自覚しており、ちょっとした仕掛けをして備えているものですよ
 私に限っては、練りに練って17年ほど経過し、今も発展させ続けているワケありの備えですが…
 
 『鍵をかける力』で電波攻撃をいなします。
 【狂気耐性】で耐えながら【ハッキング】で電波解析し【情報収集】に努めます。情報を辿って発生装置を発見したら、『悪意ある助力』で手にしたレンチやハンマーを用いて【咄嗟の一撃】で破壊を試みます。

 データの警備で居残り組ですか、アリシアさんにはただならぬシンパシーを感じます。しかし、悪さをするとなればそれはまた別のお話です



「こういった事態に適した人材は、まず精神が最大の急所であると自覚しており、ちょっとした仕掛けをして備えているものですよ」
 そんな"適した人材"の1人という自覚を持つ新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)は、精神電波に包まれた施設を調査する今回の依頼に不安げなく名乗りを上げた。
「私に限っては、練りに練って17年ほど経過し、今も発展させ続けているワケありの備えですが……」
 外部からの精神干渉等から"記憶"という生きた情報を守るため、記憶を暗号化する潜在能力。陽はそれを『鍵をかける力』と呼ぶ。心の貸金庫にしっかりと錠前を嵌めてから、彼女は隠されし研究所に潜入した。

「なるほど、確かに強力な電波が飛び交っています」
 施設内に入った陽が端末を操作すると、異常な電波反応が検出される。ここにいる限り自分の精神は常に攻撃を受けているようなものか――しかし予めしっかりと対策を施してきたおかげで、メンタルに異常は感じない。
「これだけ強い信号を垂れ流していれば、逆探知も容易ですね」
 様々な修羅場を経験し、さらに『鍵をかける力』で保護された陽の頭脳を狂わせる事はできない。彼女は電波攻撃に耐えながら趣味の電脳魔術によるハッキングで電波解析し、その発信源の情報収集に努める。

「探知成功。あちらですね」
 発信源の特定を完了した陽は、表示された情報を辿って歩きだす。清潔な印象の美人が仕立ての良い高価なスーツを着て、綺麗な姿勢と流麗な所作で闊歩するさまは、やり手のビジネスマンといった雰囲気である。
「これが件の発生装置ですか。早急に破壊してしまいましょう」
 だが、同時にこの美女は悪と波瀾の中でヒーローズアース富裕層の均衡を保ってきた、腕利きのヴィジランテでもある。電波装置を発見した彼女が虚空に向けて手をのばすと、何もなかったはずの場所からレンチやハンマーが現れ、手の中におさまる。

「装置自体に保護はされていないようですね。ならこれで十分でしょう」
 「悪意ある助力」によって手にした武器を、電波装置めがけて無造作に叩き付ける陽。
 ガシャンと耳障りな音を立てて外装がへこみ、中に納められていた部品がバチッと火花を散らす。それきり装置は完全に機能を停止し、電波の発信も止まった。
「上手くいきました。さて、次は……」
 ひとつめの装置を破壊した陽は、まだ別の場所から出ている電波を調べ、次なる装置の元に向かう。ぽいと彼女が放り捨てた簡易武器は、現れた時と同じように虚空に消えた。

「データの警備で居残り組ですか、アリシアさんにはただならぬシンパシーを感じます」
 探索と破壊を続けながら、陽が考えるのはここの管理者たるアリシアについてだった。
 彼女はヒーローズアースの情報機関の所属であり、今はそれなりの立場ある者として後方勤務も増えた。今回の相手とは業務内容に近しいものを感じなくもない。
「しかし、悪さをするとなればそれはまた別のお話です」
 情報を利用してこの世界を滅びに導かんとするなら、それを阻止するのが自分の仕事。
 きりりと表情を引き締め、一分の隙もない所作で、彼女は研究所の奥に迫っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

下原・知恵
「侵入者を排除する仕掛け……ようするに、ジャングルみたいなもンか」
・下原は南米の小国に生まれ、祖国解放の為に戦い続けてきた歴戦の兵士であり、森林戦において一日の長を認める
・熱帯雨林特有の病気、虫害、ぬかるんだ地面──過酷な環境により育て上げられたしたたかなゴリラのゲリラを前にしては、精神をむしばむ特殊電波など3G回線にも劣ることだろう
・電波装置の実態はよく知らないが、「野生の勘」でサーチして得物のワサビニコフ小銃で「元気」よく「ぶん回し」たのちデストロイする所存
・戦地に仲間を認めた場合、積極的に声をかけて精神の影響を軽減するようつとめる
「ゴリラに電波が効くわけねえだろう!」



「侵入者を排除する仕掛け……ようするに、ジャングルみたいなもンか」
 アメリカの荒野に建設されたその研究所を、下原・知恵(ゴリラのゲリラ・f35109)は何故ジャングルと評したのか。あくまで推測だが、南米の小国生まれの兵士である彼にとって「危険で過酷な環境」で真っ先にイメージするのはジャングルなのかもしれない。
「森林戦ならお手の物だ。すぐに攻略してやるぜ」
 森での戦闘経験が建物の探索にどう直結するのかは定かでないが、ともあれ彼は揺るぎない自信で敵地に突入する。ワイルドな笑みを浮かべたその風貌はまさに密林の王者――彼は秘密組織UDCの臨床試験により変異した、ゴリラ似のバイオモンスターである。

「行くぜ!」
 手には革命戦争を共に戦い抜いた相棒「ワサビニコフ自動小銃」を構え、のっしのっしと研究所内をのし歩く知恵。電波対策など全くしていない彼の脳と体には、強烈な電波が浴びせられているはずなのだが、足を止める様子はまったく無い。
「ゴリラに電波が効くわけねえだろう!」
 熱帯雨林特有の病気、虫害、ぬかるんだ地面──祖国解放のために戦い続けてきた知恵にとって最も恐るべき敵は、政府軍の兵士だけでなく、自身を取り巻く環境全てだった。
 そんな過酷な環境により育て上げられた、強かなゴリラのゲリラを前にしては、こんな特殊電波など3G回線にも劣る。ゴリラだからと言うよりは、歴戦の兵士として鍛えられた精神の強靭さが、電波による汚染をはね退けたのだ。

「電波装置の実態はよく知らないが、サーチ&デストロイで良いんだろう」
 さらに知恵は森林戦で磨いた野生の勘を頼りに、電波の発信源を探り当てようとする。
 一瞬の油断が命取りとなる密林の戦いを生き延びた彼の直感は、ただの当てずっぽうとは違う。本人だけが分かる根拠に基いて、狭く入り組んだ施設から標的を見つけ出す。
「見つけたぜ!」
 いかにもなアンテナを生やした装置を発見すると、知恵はワサビニコフ小銃を元気よくぶん回したのちに振り下ろす。北の大国が生んだ名銃は、優れた耐久性ゆえに打撃武器としての評価も高く――ゴリラの腕力でそれを叩きつければ、装置の末路は言わずもがな。

「一丁上がりだ!」
 ぷすぷすと煙を上げる壊れた装置の前で、勇ましく拳を突き上げる知恵。密林の太陽のような活気に満ちたその笑顔には、かつてのハンサムな南米系男性の面影が残っていた。
「この調子で全部ブチ壊せばいいんだろう? 俺達ならやれるぜ!」
 昔に比べればイージーなミッションだと、自信満々に次の装置を探すゴリラのゲリラ。
 彼が勇ましく振る舞うのには、この研究所の中で共に戦う猟兵の心を鼓舞しようという意図もあるのかもしれない。反響するその声はきっと付近の仲間にも届いているはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
ようやく、フォーミュラの大半やヴォーテックス一族を駆逐して人間の生活圏を解放して来たのに、オブリビオン専用ネットワークの再構築なんてさせられないわ。

【念動力】の防護膜で電波の影響を遮断・軽減。
更に【ブラッディ・フォール】で「雷鳴の赤龍を捕らえよ」の「赤龍ズメウ紅葉」の力を使用(紅葉の服装+斧に翼と尾が付いた姿へ変化)

紅葉の雷鳴や電気を操る力を使い、非実体化し、逆探知の要領で電波の流れに乗って各装置の元へ移動。

【赤龍竜人合一体】を発動し、「雷鳴纏いし赤龍の鉞」で装置を粉砕するわ!

電波を防衛システムに使ったのが仇になったわね。
偶然だけど、こちらにはそれにちょうど良い能力があるのよ



「ようやく、フォーミュラの大半やヴォーテックス一族を駆逐して人間の生活圏を解放して来たのに、オブリビオン専用ネットワークの再構築なんてさせられないわ」
 戦争を越えて荒野の世界に芽生えだした希望。それを台無しにするような敵の企てを、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は許せない。もし全てのオブリビオンがネットワークで繋がれば、計り知れない脅威となろう。
「すぐに行くわ。覚悟していなさい」
 敵が潜んでいるのは研究所の最深部。辿り着くにはまず電波を無力化する必要がある。
 吸血姫は念動力による防護膜を身に纏うと、精神電波の渦巻く施設に足を踏み入れた。

「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 さらにフレミアは【ブラッディ・フォール】を発動し、大祓百鬼夜行との戦いで倒した妖怪『赤龍ズメウ紅葉』の力を身に降ろす。真紅のドレスがより活動的な服装に変わり、身体には竜の角と尾と翼が、手元には紅葉の得物だった紅い鉞が現れた。
「貴女の力を借りるわよ、紅葉」
 フレミアが彼女を選んだ理由は、かの「金太郎」こと坂田金時の父とされる赤龍の末裔である紅葉の、雷鳴や電気を操る力を欲したが故である。骸魂に取り憑かれた当時の紅葉はUDCアースの通信網を脅かしたが、それだけ現代社会にとって脅威な力である。

「電波を防衛システムに使ったのが仇になったわね。偶然だけど、こちらにはそれにちょうど良い能力があるのよ」
 赤龍の力を得たフレミアはふふっと微笑みながら非実体化し、研究所内を飛び交う電波の流れに乗る。そのまま逆探知の要領で発信源を辿れば、装置の所在はすぐに判明した。
「あの子の雷鳴に比べれば、こんな電波なんて何ともないわ!」
 念の防護膜により電波の影響を遮断しつつ、稲妻の速さで装置の元へ移動した彼女は、実体化と同時に【赤龍竜人合一体】を発動。赤龍と龍人ズメウの力を合わせた戦闘形態に返信するや否や、手にした鉞を思いきり振り下ろした。

「砕けなさい!」
 雷鳴纏いし赤龍の鉞を叩きつけられた電波装置は、真っ二つに粉砕され機能を停めた。
 同時に電波の発信が止まったのも、今のフレミアなら肌の感覚で分かる。だが同時に、同様の電波が別の方角からまだ流れてきているのも感じ取っていた。
「次は向こうね」
 赤龍の吸血姫は再び非実体化して研究所内を飛び回る。電波や通信網がある所であればいかなる物理的な妨害も受けず、例え地球の裏側だろうと移動できるこの能力の前では、狭い施設間の移動など文字通り一瞬である。

(『電話ボックス』と『メリーさんの電話番号』があれば話は別だったけど……知るはず無いわよね、そんなこと)
 川の流れを遡るように電波の源まで辿り着き、赤龍の鉞にて装置を破壊するフレミア。
 稲妻を帯びたその横顔は優雅で、余裕の笑みを浮かべており。外側から内側に向かって電波の元を断ちながら、研究所の深部に迫っていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
精神電波による防衛システム…悪いけど、わたしには効かないよ…。

【九尾化・天照】封印解放…。
光操作の力を応用し、精神電波を無効化…。

光も電波も光子を使った電磁波の一種だからね…。
純粋な光程自由は利かないけど、応用すればこれくらいはできる…。
…難しい科学的な話だから、わたし自身あまり詳しくないけど…(へにゃっ)

とにかく、電波を散らす形で無効化し、発信源を辿って【呪詛、力溜め、鎧砕き、鎧無視、衝撃波、切断】バルムンクで両断するよ…。

ただ、初手から封印解放はやっぱり消耗が激しい…。
連戦もできなくないけど…一つ破壊したら、少し回復に専念しよう…(ラン達が持たせてくれたおにぎりとお茶をもぐもぐ)



「精神電波による防衛システム……悪いけど、わたしには効かないよ……」
 侵入者の精神に干渉して施設から追い出し、最悪発狂させるという脅威を耳にしても、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の表情は動かなかった。いかに危険でもそれが電波の作用によるものなら、彼女には秘策がある。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 それが【九尾化・天照】の封印解放。施設の敷地内に足を踏み入れると同時に、彼女の銀髪と銀の尾は黄金色に染まり、尻尾の数は九つに増える。さらには目も眩むほどの光を身に纏ったその姿は、まるで太陽の女神のようだった。

「光も電波も光子を使った電磁波の一種だからね……」
 そう呟きながら璃奈は天照の権能である光操作の力を応用し、研究所を飛び交う電波を操る。もしも電波の流れを可視化できる者がいれば、まるで防波堤に跳ね返されたように彼女の周りだけ電波が散っていくのが見えただろう。
「純粋な光程自由は利かないけど、応用すればこれくらいはできる……」
 人間の視力で見えるもの以外でも"光"という定義の幅は広い。言ってしまえば可視光と電波の違いとは単なる波長の差で、科学的にはほぼ同じ現象なのだ。であれば光を操れる能力者が、扱い慣れないとはいえ電波を操作できない理由はない。

「……難しい科学的な話だから、わたし自身あまり詳しくないけど……」
 どこかでそんな話を聞いたものの、専門的な事までは分からなかったのか、璃奈の狐耳がへにゃっと垂れる。日頃から科学に慣れていなければ無理もないが、ともあれ現状では「光操作で精神電波を無効化できる」ということが分かっていれば十分だ。
「とにかく、まずは装置を破壊しないと……」
 璃奈は飛んでくる電波を散らしながら、その発信源を辿って研究所内をダッシュする。
 天照の封印解放には光操作だけはでなく光速移動を可能とする効果もある。今の彼女にこの施設は狭すぎるくらいだった。

「見つけた……」
 大きなアンテナの付いた装置を発見した璃奈は、駆け寄りざまに魔剣「バルムンク」を振るう。魔竜殺しの逸話を持つ伝説の魔剣の前では、ただの機械の強度など無に等しく、呪力の衝撃波を纏った斬撃によって電波装置は一刀両断された。
「まずは一つ……ふう……」
 電波の発信が止まったのを確認し、すぐに次の装置に向かおうかとも考えた璃奈だが、体にかすかな疲労感を覚えて足を止める。普段は封じられている力を解き放つ九尾化は、強力である反面術者の寿命を削るなど、相応の代償が求められる業でもあった。

「初手から封印解放はやっぱり消耗が激しい……」
 この後に強敵との戦いも控えている事を考えると、あまり飛ばしすぎるのも良くない。
 九尾化を一旦解除して元の姿に戻った璃奈は、荷物から竹の葉でくるまれた包みと水筒を取り出し、破壊した装置の傍に腰を下ろした。
「連戦もできなくないけど……少し回復に専念しよう……」
 包みを開くと中には美味しそうなおにぎりが。ここに来る前、屋敷で一緒に暮らしているメイド人形のラン達が持たせてくれたものだ。水筒にはあったかいお茶も入っている。
 璃奈は「ありがとう……いただきます」と手を合わせ、家族からの心遣いをもぐもぐ。心もお腹も満たして英気を養なったのちに、また探索を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
◇アドリブ連携OK
時間質量論の解析は私も興味があるな。
――とはいえ、まずは装置の停止が先か。アイテム【知覚端子】で広範囲の【情報収集】、装置や敵が居ないかの位置を特定。
なるべく負担のない道を進むが、もし電波を受けたときは【狂気耐性】。
位置が高ければアイテム【グレイプニル】の【ロープワーク】で上って【アサルトライフル】あたりで壊そうかね。

それにしてもオブリビオンのネットワークねぇ……ソーシャルディーヴァとしては応援したくもなるが、構築されたらまた厄介だ。私のネットワークも不完全なまま打ち止めにされているからね、彼女にもそうなってもらうとするか。



「時間質量論の解析は私も興味があるな」
 フィールド・オブ・ナインの1人にして天才的研究者だったマザー・コンピュータが、生前より進めてきた思索の成果たる『時間質量論』。その内容はマホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)にとっても気になるものだった。
「――とはいえ、まずは装置の停止が先か」
 この隠された研究所を渦巻く電波の妨害を何とかしなければ、そもそもデータに触れることすらできない。彼女は情報収集用ナノマシン「知覚端子」を散布し、発信源の捜索と施設内の索敵を開始した。

「施設内に警備の敵はいないようだな」
 下手に人員を配置しても電波の邪魔になるだけだからか、研究所の内部は無人だった。
 例外はここの管理責任者だろうが、そいつはデータの警備を最優先として研究所の奥から出てくる事はあるまい。一先ず警戒すべきは精神電波による汚染だけという事になる。
「なるべく負担のない道を進みたいな」
 光の粒子として広範囲に拡散させた端子により、装置の位置を特定したマホルニアは、そこへ向かうルートで電波の影響が薄いものを選ぶ。他の猟兵達による装置破壊も進み、破れた網目のように電波の来なくなった場所もある。そこを通り抜けるのが得策だろう。

「なるほど、少し頭痛がするな。まあこの程度なら問題はないかね」
 比較的安全なルートとはいえまったく電波の影響を受けないわけではないが、故郷ではUDCとの戦いも経験しているマホルニアの狂気耐性は並ではない。精神を汚染される事なく特定した場所まで辿り着いた彼女は、そこで巨大な柱のような物体を見る。
「装置の本体はあの上のやつか?」
 目線を上げれば柱のてっぺんに据え付けられた機械がアンテナをくるくる回している。
 施設に電波を行き渡らせる電波塔のようなものか。ここから手の届く高さではないが、かといってやりようが無いわけでもない。

「ここはこいつの出番か」
 マホルニアが取り出したのは「グレイプニル」。この鎖は太さを犠牲にして長さを増加する特性を持ち、伸ばせば登頂用のロープとしても使える。彼女は投げ縄のようにその先端を装置に引っ掛け、するすると柱を上っていく。
「これでよし、と」
 上りきったところでアサルトライフルの銃口を突きつけ、装置を破壊。アンテナの回転が止まり、電波が消えたのが直感的に分かる。頭にかかっていた靄のようなものが晴れたのを感じて、青白髪の傭兵はふうと息を吐いた。

「それにしてもオブリビオンのネットワークねぇ……ソーシャルディーヴァとしては応援したくもなるが、構築されたらまた厄介だ」
 電波汚染が解消され人心地つけたところで、マホルニアはここの管理者の事を考える。
 情報的にも分断されたこの世界に再び「通信網」をもたらすのがソーシャルディーヴァの努め。だがオブリビオンがそれを成し得た時、どんな厄災が訪れるか想像もつかない。
「私のネットワークも不完全なまま打ち止めにされているからね、彼女にもそうなってもらうとするか」
 そう決心した彼女は柱の上から降りると、敵の待つ最深部を目指して移動を再開する。
 ネットワークの力で滅びをもたらさんとする者を討つ。それもソーシャルディーヴァの務めの内だろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
精神電波、ね。
例えば【架空神権】、センサー兼フィルターの常套手段なら突破口を
暴くのも精神防護も容易いけれど。
――パフォーマーとして一辺倒は避けたいものだね?
何やら一人、戯れのように呟いてみたり。

【第一神権】起動、確定成功の対象は電波の影響が薄い脆弱点の看破。
元より探知力場をぶつけてやればスキャンは可能、
今回は不可能を覆すというより過程の省略と言うべきだろうね。
つまり朝飯前ってワケさ

《オーラ防御》と《気合》、精神《ハッキング》にも精通するが故の《狂気耐性》。
何より電波如きに惑わされはしないというプライド。
そして加速力をフル活用して電波影響圏を踏破する《早業》と《怪力》の一撃で
装置を破壊するよ



「精神電波、ね。例えば【架空神権】、センサー兼フィルターの常套手段なら突破口を暴くのも精神防護も容易いけれど」
 とある魔神の化身として権能を奮う事ができるカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は、この手の精神攻撃への対策もすぐに思いついた。が、取れる手段が複数あるがゆえに、彼女はどの選択肢を選ぶかを考える。
「――パフォーマーとして一辺倒は避けたいものだね?」
 何やら1人、戯れのように呟き、微笑を浮かべながら普段使うことの少ない手を打つ。猟兵であり魔神の化身であると同時に、彼女は見栄えを気にする表現者の気質もあった。

「未だ復元も不十分な私の核だけれど――"未来には全ての可能性が許されている"そうよ」
 そう言ってカタリナが発動するのは【第一神権 ― progress ―】。肉眼では見える筈のない精神電波の流れに目を凝らし、比較的影響が薄い脆弱点を看破しようと試みる。
 普通なら困難な行為だが、神の権能は理論上あらゆる不可能を覆す。当然それは器であるカタリナの許容値を越えられないが、逆に言うと可能性があれば実現するという事だ。
(今回は不可能を覆すというより過程の省略と言うべきだろうね。つまり朝飯前ってワケさ)
 元より探知力場をぶつけて電波をスキャンするなど、神権を使わずとも脆弱点を見抜く方法はあった。敢えてそうしなかったのは本人も言った通りパフォーマンス重視だろう。
 過程を飛び越えて"結果"を手に入れた彼女は、余裕の表情のまま研究所を進んでいく。どの道を通れば電波の影響を避けつつ装置に辿り着けるか、その眼は既にお見通しだ。

「電波如きに惑わされはしないよ」
 研究所の狭い通路を飛んでいくカタリナを守るのはオーラによる保護と、自らも精神のハッキングに精通するが故の狂気耐性。そして何より人としてのプライドと気合だった。
 自慢の双翼による加速力をフル活用して、電波の影響圏を翔け抜ける。神権が導き出した脆弱点を一瞬の内に踏破して、彼女は所内に据え置かれた巨大な装置を見つけ出す。
「この道行き、阻めるとは思わない事ね」
 速度を緩めずに踏み込み、レガリアスシューズによる蹴撃を放つ。目にも留まらぬ早業で跳ね上がった蹴り足が、尋常ならざる脚力を以って電波装置をコナゴナに蹴り砕いた。

「どう、ご覧いただけたかな?」
 装置の残骸の上に立ち、カタリナは誰もいない場所でひとり爽やかな笑みを浮かべる。
 いや、誰もいない訳がない。この研究所を管理する敵は、とうに自分達の侵入に気付いているはず――だとすれば彼女のパフォーマンスは、最高の挑発にして宣戦布告となる。
 天井に備え付けられた監視カメラを見つけると、閃風の舞手はそちらにウィンクをひとつ贈り。そしてまた次のターゲットを破壊すべく駆け出していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「カビパン紋章解析中…進行率0.001%」
とある研究所の一室にて。ソレを解析している少女がいた。

アリシアがソレと出会ったのは、猟兵達が侵入する前の事であった。突然変な紋章に話しかけられたのだ。アリシアは自分は疲れているのだろうと研究所に戻り、まだ舞い降りた出会いに気が付かなかった。

次の日。

誰かが呼びかけるような声が聞こえた。気味の悪い紋章を捨てようと手をかけたその時。
「ちょっと、ナウい紋章が話しかけているのよ!」
「…うそぉ」

諸悪の根源を掴み紋章を見る。ハッキング技術に長けた強力なソーシャルディーヴァの血が騒ぎだしたのである。
ソレを解析している間に妨害電波もおかしくなっていることにも気づかずに。



「カビパン紋章解析中……進行率0.001%」
 特殊な電波により外界より隠された、とある研究所の一室にて。得体の知れない紋章を実験台に置き、ソレを解析しているひとりの少女――アリシア・ホワイトバードがいた。
「一体なんなのかしらね、コレは……」
 彼女がソレと出会ったのは、猟兵達が侵入する前の事である。悪霊カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)が姿を変えたソレは、なんの前触れもなく研究所に落ちてきて、彼女に声をかけたのだ。

「こんにちは、私はカビパン紋章! あなた私を装備してみない?」
「は? 何コレ……ってか、こんなのこの研究所にあったかしら?」
 突然変な紋章に話しかけられたアリシアは当然ながら困惑した。データベースを洗ってもこんな物備品にはないし、外から紛れ込む事もまずありえない。見た目は宝石のついたブローチのように見えるが、変な色合いでピカピカ光っていて、しかも喋る。
「……働きすぎかしら。疲れてるのね、私」
 思えばここ暫くの間、ネットワークの再構築作業に掛かり切りで休む時間もなかった。
 オブリビオンとて疲労と無縁の存在ではない。カビパンの声を幻聴と決めつけ、少女は研究室に戻って仮眠を取ることにする――まだ舞い降りた出会いに気が付かぬまま。

「ふわぁ……寝ましょ寝ましょ……」
 コンピュータだらけの狭い部屋で、毛布に包まりつつ機械の隙間に潜り込むアリシア。
 疲れが溜まっていたのは本当だったらしく、すぐに意識が闇に溶けていく――それからどの位の時間が過ぎただろうか。
「おーい……もしもーし……」
「うぅん……なによ、って、えぇ?」
 誰かが呼びかけるような声が聞こえて目を覚ます。まぶたを開けばあの紋章があった。
 まさか寝る前のアレは幻覚ではなかったというのか? 目の前に転がっている気味の悪いソレを捨てようと、少女が手をかけたその時。

「ちょっと、ナウい紋章が話しかけているのよ!」
「……うそぉ」
 今度こそ疑いようもなくはっきりと聞こえた。諸悪の根源たるカビパン紋章を掴んで、アリシアはまじまじとそれを観察する。情報やネットワークの専門である彼女の知識にもこんな物体はない。元は異世界ダークセイヴァーの技術の産物なのでそれも当然だが。
「なにコレ、ちょっと気になる……!」
 未知の存在にソーシャルディーヴァの血が騒ぎ出してしまった彼女は、実験台にソレを置いて解析を始める。分からないモノを分からないままにしておけないのは技術者としてのサガか。放っておけば良かったものをと後悔するとしても。

「うーん……まったくわかんないわ……!」
 謎のカビパン紋章を解析するのにかけたコストと弊害に、アリシアはまだ気付かない。
 本来の仕事であるネットワーク再構築の遅れだけでなく、理不尽なるカビパンのギャグの力は、研究所を守る妨害電波さえも少しずつおかしくしていたのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
一筋縄ではいかぬとは戦争当時から予想はしておりましたが…
それこそ骸の海に沈む過去の如く、嘗ての電子の歌姫の叡智の量に限り無し、と

ですが終焉を越えた以上、徐々に復興の道も拓けたこの世界
マザー・コンピュータが遺した秘宝探索に取り組む冒険に挑むのも良いでしょう

生物の精神に異常齎す出力の電波など最早EMP攻撃の域
ですがそれはこの躯体に施された対電子防御の領分、影響は軽微ですとも
(環境耐性+電撃耐性)

大出力な以上、近寄ればその限りではありませんがそれは膨大な消費電力の裏返し
施設内に放った機械妖精の情報収集能力で配線割り出し破壊工作で供給ライン切断
無用の長物となった装置に悠々と近づき破壊してゆきましょう



「一筋縄ではいかぬとは戦争当時から予想はしておりましたが……」
 マザー・コンピュータの遺した『時間質量論』のデータ解析。そこに立ちはだかった新たな難題に、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は呻く。セントメアリー・ベースで回収した膨大な資料、あれでまさか全てでは無かったとは。
「それこそ骸の海に沈む過去の如く、嘗ての電子の歌姫の叡智の量に限り無し、と」
 勝利したとはいえ、やはりフィールド・オブ・ナイン第二席は只者では無かったと実感する。9月の戦争時点で彼女らを撃破できたのは、重ね重ね僥倖だったと言えるだろう。

「ですが終焉を越えた以上、徐々に復興の道も拓けたこの世界」
 世界各地の隠された研究所からデータを回収して解析するという、時間のかかる作業を腰を据えて行えるだけの余裕が今のアポカリプスヘルにはあり、その価値も十分にある。
「マザー・コンピュータが遺した秘宝探索に取り組む冒険に挑むのも良いでしょう」
 そう語って、トリテレイアは果敢に研究所の内部に突入する。可視光域の電波も捉える彼のセンサーなら、建物の至るところを強力な電波が飛び交っているのが分かるだろう。ウォーマシンである彼の電子頭脳とて、この危険な精神電波の対象外ではないが――。

「生物の精神に異常齎す出力の電波など最早EMP攻撃の域。ですがそれはこの躯体に施された対電子防御の領分、影響は軽微ですとも」
 電波渦巻く狭い通路を、淀みない足取りでのし歩くトリテレイア。この世界以上に電子技術が発達した宇宙において、この手の対策を施されていない兵器など欠陥もいい所だ。外部からの電子的影響を遮断する様々な措置により、彼の思考演算に影響は出ていない。
「それにしても、小規模ながらデータの保管・研究・侵入者対策など、これほどの設備が集約された施設。妖精の悪戯があっても不思議はありませんね」
 そんな事を嘯きながら【自律・遠隔制御選択式破壊工作用妖精型ロボ】を出撃させる。肩部装甲の収納スペースから飛び立った機械仕掛けの小さな妖精達は、騎士の命令に応じて鈍色の翅を羽ばたかせて各所に散っていく。

(大出力な以上、近寄れば影響軽微では済みませんが、それは膨大な消費電力の裏返し)
 トリテレイアが機械妖精に指示したたのは、電波装置の電力供給ラインの破壊である。
 施設内に張り巡らされた送電網の中から該当する配線を割り出した妖精達は、所持する爆弾を用いてそれを切断する。その手際はまさに機械を狂わす伝承のグレムリンの如し。
「回収予定のデータが消えてしまわぬよう、送電網の破壊には細心の注意が必要ですが」
 この手の破壊工作に秀でた機械妖精達がヘマをするはずもなく。電力の供給を断たれた電波装置"だけ"が稼働を停止し、周辺から電波反応が消失したのがセンサーで分かった。

「動力源を失えば、どのような高性能な機械も脅威とはなりませんね」
 妨害の消えた研究所で、トリテレイアは無用の長物となった装置に悠々と近いていく。
 もはやうんともすんとも言わずにただ鎮座している機械とアンテナの塊に、彼は「電脳禁忌剣アレクシア」の刃を突き立てた。
「破壊完了」
 基部を完全に貫かれた電波装置の横を通り、機械仕掛けの騎士は研究所の奥へと進む。
 同様の手順で次々と装置を破壊していきながら、彼の歩みは着実にデータの保管所へと近付いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『🌗アリシア・ホワイトバード』

POW   :    ハッキング・ザ・ブルースカイ
【自身の構築したスカイネットプログラム】から、対象の【通信網の破壊とオブリビオンの通信網の構築】という願いを叶える【ハッキングアルゴリズム】を創造する。[ハッキングアルゴリズム]をうまく使わないと願いは叶わない。
SPD   :    崩壊プロンプト
【強毒電子ウイルス】を籠めた【空間データの書き換え】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【空間認識力と全ての意思疎通手段】のみを攻撃する。
WIZ   :    ストームオーダー
【人類を滅ぼしたい】という願いを【自身のネットワークを通じてオブリビオン】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラブリー・ラビットクローです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「まさかあれを突破してくるなんて……往生際の悪い奴らね」

 精神電波の妨害を乗り越えて猟兵達が向かった先、そこにはモノリスのような大型コンピュータが立ち並び、無数のモニターのライトに照らされた、異様な研究室があった。
 そこに居たのは端末を操作する1人の少女。長いピンク色の髪と天使のような翼が印象的なその娘こそ、この研究所の警備を任された『アリシア・ホワイトバード』である。

「邪魔しないでよ、私は忙しいんだから……ネットワークの再構築もまだ途中なの」

 フィールド・オブ・ナイン「プレジデント」の死と共に失われた、全オブリビオンとのネットワーク通信網の再構築。それが『時間質量論』の死守に並ぶアリシアの目的だ。
 だが、その進捗状況は芳しいものとは言えないらしく、招かれざる客である猟兵達に、彼女は露骨な不快感を示す。兎のように赤い瞳に、深く暗い虚無感を宿して。

「ヒトの時代はとっくに終わったのに。お前達も人類もさっさと滅べばいいのに」

 気だるげに立ち上がった少女の周りでモニターが明滅する。ソーシャルディーヴァである彼女の武器はハッキング。現実空間すらも書き換えるその実力は決して油断ならない。

「『時間質量論』は渡さない。帰って。帰らないのなら……死んじゃえ」

 電子と通信のセカイから滅びのウタを紡がんとする白鳥、アリシア・ホワイトバード。
 この研究所に遺された『時間質量論』のデータを守護する最後にして最大の関門を前にして、猟兵達は戦闘態勢を取った。
カタリナ・エスペランサ
可笑しな事を言うねオブリビオン
往生際の悪い、とっくに終わりを迎えた存在。
それはキミたちの方だろう?
この世界は終末を超え未来へ向かう。その邪魔はさせないよ

【閃紅散華】発動し《早業+先制攻撃+切り込み》で速攻
空間座標を直接指定する攻撃は奇襲性に秀でる反面、
効果発生に僅かな遅延を伴うものだ
更に《第六感+戦闘知識》の《見切り》を以てすれば
敵の戦術構築、狙う座標の先読みも可能さ
《属性攻撃+ハッキング》の紅雷は調律権能。
散らす雷羽で予め空間を侵蝕し掌握しておく事で
敵の現実改竄を阻み、抉じ開け、捻じ伏せる《怪力+蹂躙》の連撃を叩き込もう

過去の亡霊は潔く骸の海へ還るといい
世界は未来(アタシたち)のものってね!



「可笑しな事を言うねオブリビオン。往生際の悪い、とっくに終わりを迎えた存在。それはキミたちの方だろう?」
 猟兵達を侮蔑するアリシアの物言いに、ふっと笑みを浮かべて言い返すのはカタリナ。
 とうに過ぎ去ったはずの『過去』が、のうのうと現世にはびこり生者を脅かす。未来を志向する魔神の化身である彼女にとって、それは不快であり滑稽な存在だった。
「この世界は終末を超え未来へ向かう。その邪魔はさせないよ」
「だから、それが往生際悪いって言ってるのよ……!」
 アリシアは苛立ちを隠そうともせずに、端末を操作して現実へのハッキングを試みる。
 だが、それよりも速くカタリナは【閃紅散華】を発動、敵が動く前に速攻を仕掛けた。

「その目を以て焼き付けよ、その身を以て刻みつけよ。此処に披露仕るは無双の演武」
 双翼に紅い雷を纏わせ、研究室に雷羽を散らすカタリナ。一目でそれをヤバいと感じたアリシアは、巻き込まれないよう白い翼を羽ばたかせて距離を取り、【崩壊プロンプト】を起動させる。
「考えなしに範囲攻撃をばらまいて……だったら自分がカミナリに打たれたらいいのよ」
 放たれたのは空間データを書き換える強毒電子ウイルス。これにより対象の空間認識力と全ての意思疎通手段を奪い、肉体を傷つけずに自滅へと誘うのが彼女の得意技だった。

「残念でした」
「っ?!」
 だが、アリシアがばら撒いた強毒電子ウイルスは効果を発揮しなかった。まるで、別の何かにハッキングが阻害されているような――動揺する彼女を見て、にやりと笑みを浮かべるのはカタリナだった。
「空間座標を直接指定する攻撃は奇襲性に秀でる反面、効果発生に僅かな遅延を伴うものだ」
 その僅かなラグを利用して敵の戦術構築、狙う座標を先読みした彼女は、"調律"の権能を宿した紅雷の羽で予め空間を侵蝕し掌握しておく事で、敵の現実改竄を阻んだのだ。
 本人は事も無げにしているが、これまでに培ってきた膨大な戦闘知識と、第六感による見切りのセンスがあってこそ成し得た、言葉通りの"神業"である。

「なんなのこのビリビリ……ハッキングの邪魔なんだけど……!」
 ジャマーのように改竄を阻む紅雷の羽嵐に、焦りを滲ませながらキーを叩くアリシア。だが彼女がプログラムを更新する前に、稲妻の軌跡を描きながらカタリナが飛んでくる。
「もう後悔しても遅いよ」
 自分自身にも紅雷を纏うことで攻撃力や速度を超強化した彼女は、閃風の舞手の称号に相応しい早業でダガーを振るう。いかなる抵抗も抉じ開け、捻じ伏せるように力強く。

「過去の亡霊は潔く骸の海へ還るといい。世界は未来(アタシたち)のものってね!」
「くっ……きゃぁっ!!?」
 一瞬のうちに放たれる9度の斬撃。アリシアの目に映ったのは紅雷の閃きだけだった。
 切り裂かれた白い肌から鮮血がぱっと散り、コンピュータモニターを濡らしていく――カタリナはそれでも手を休めずに、敵を蹂躙せんとばかりに連撃を叩き込むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
アリシアとカビパンの出会いから時間が流れる。
紆余曲折あったが何だかんだアリシアとカビパンは良いコンビだった。

「…往生際の悪い奴らね」
『奴らね!』

「私は忙しいんだから…ネットワークの再構築もまだ途中なの」
『忙しいくせに途中で私を解析してサボってたもんね』

「さっさと滅べばいいのに」
『だから北海道シュークリーム文明は滅びたのよ』

「帰らないのなら…死んじゃえ」
『アリシア。特別に私が力を貸してあげる。感謝なさい』
ソレを装備したアリシアの全身を駆け巡る圧倒的なパワー。
冴え渡る五感。頭の中が真っ白になる。世界を塗り替えてしまえそうな、凄まじい力の奔流。例えるなら自分は今、頂点をこの手に掴んでいる。

ギャグの。



「っ……本当に往生際の悪い奴らね」
『奴らね!』
 猟兵からの反撃を受けて、忌々しそうに顔をしかめるアリシア。その手の甲にピトリとくっついた奇妙な紋章――カビパン紋章が一緒に声を上げる。出会いから幾許かの時間が流れて、紆余曲折あったものの何だかんだ二人の関係は悪くないものになったらしい。
「私は忙しいんだから……ネットワークの再構築もまだ途中なの」
『忙しいくせに途中で私を解析してサボってたもんね』
「うるさい」
 その関係性はさながら漫才コンビのような。カビパン紋章に触れすぎたせいでアリシアの思考がギャグ世界の侵食を受けているのは明らかだったが、本人は気付いてない様子。

「さっさと滅べばいいのに」
『だから北海道シュークリーム文明は滅びたのよ』
 ぐちぐちと文句を言うアリシアに、カビパンは合っているのか分からない相槌を打つ。
 カビパンが提唱する歴史学によると、北海道シュークリーム文明はかつてUDCアースに存在した超文明である。だが北海道に限らず世界の文明が崩壊したアポカリプスヘルにおいては、どこを探してもシュークリームそのものが見当たらない。
「ヒトの時代も、シュークリームの時代も、とっくに終わったのにばっかみたい」
『トレジャーシュークリームの皆さんに謝りなさい!』
 シュークリームがそこまで重要なのかは定かでないが、ともあれ2人はシュークリームなき世において生にしがみつかんとする人類の愚かさを嘆き、やっぱり滅ぼさなきゃダメねという結論に至る。このへんはギャグ汚染されていてもやはりオブリビオンである。

「帰らないのなら……死んじゃえ」
『アリシア。特別に私が力を貸してあげる。感謝なさい』
 そんなワケでアリシアが改めて殺意を全開にすると、カビパン紋章が協力を申し出る。
 手の甲に装備されたソレからは圧倒的なパワーが送り込まれ、少女の全身を駆け巡る。【ハリセンで叩かずにはいられない女】の力の全てが今、敵の手に渡ろうとしていた。
「こ……この力は……!」
 冴え渡る五感。頭の中が真っ白になる。世界を塗り替えてしまえそうな、凄まじい力の奔流。生まれて始めて感じる無限大の全能感がアリシアの脳髄をスパークさせる。そう、例えるなら自分は今、頂点をこの手に掴んでいる――。

 ――ギャグの。

「って、なんでよッ!!」
 ぱしーん! とハリセンばりの快音を響かせて、アリシアは紋章を地面に叩きつけた。
 危うくあと一歩で戻ってこれなくなる所だった。もう少しカビパン紋章を装備していたら彼女は完全なギャグの住人となり、シリアスを続けられない体になっていただろう。
『あら、コンビ解消?』
「二度とごめんよ!」
 げしっと蹴っ飛ばされたカビパン紋章は、そのまま研究所のどこかに転がっていく。
 この一連のコントパートはアリシアにとって大きなタイムロスとなり、メンタル的にも落ち着きを欠いた彼女は、ここから猟兵相手にさらなる苦戦を強いられるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(戦争で活躍したある猟兵の方に容姿が酷似して…いえ、考察は後です)

帰れと言われて帰るならば、このような不作法な訪問はいたしません
最早歩み寄る余地も無い以上、互いに建設的な行動を取るべきでしょう

では、参ります

剣と盾を構え

…“機械”と感づいた際、好機と考えましたね?
私の故郷は数多の電脳魔術師が鎬を削る世界、故に電子セキュリティも発達しております

電子攻撃への対処を想定された私の処理速度と今を生きるヒトが構築する最先端のヴァージョンアップ
この二つがある以上、『過去』たるそちらのクラッキングが通じる余地は皆無ですよ

電子攻撃を鎧袖一触
実体化プログラムを怪力近接攻撃で蹂躙

では…御覚悟を

距離を詰め大盾殴打



(戦争で活躍したある猟兵の方に容姿が酷似して……いえ、考察は後です)
 直接対峙することで目にした『アリシア・ホワイトバード』の容姿に、トリテレイアは既視感を覚える。アポカリプス・ランページにおいて数多くの戦功を挙げたその猟兵も、種族はフラスコチャイルドだったはず――だがそれ以上の考察を行う余裕はない。
「帰れと言われて帰るならば、このような不作法な訪問はいたしません。最早歩み寄る余地も無い以上、互いに建設的な行動を取るべきでしょう」
「ふん、言われるまでもないって。こっちもお前達の相手ばかりしてられないんだから」
 敵視と排除の意志を視線に乗せて睨みつけるアリシア。それに応じるように機械騎士も剣と盾を構える。論議を交わしたところで平行線である以上、自らの目的を達成するには実力行使しかない――その一点において猟兵とオブリビオンの見解は一致していた。

「では、参ります」
「ふん!」
 トリテレイアが踏み出すのに合わせて、アリシアは【ハッキング・ザ・ブルースカイ】を発動。自身の構築したスカイネットプログラムからハッキングアルゴリズムを創造し、電子戦の構えを取った。
「壊れちゃえ、ばーか!」
 彼女はこれまでにもオブリビオンの通信網の再構築を進める一方で、人類側の通信網の破壊を行ってきた。そのハッキング技術には自信があり、だからこそ勝利を確信していただろう――相手が機械ならそれ自体をクラックし、ポンコツにしてやればいいのだから。

「……"機械"と感づいた際、好機と考えましたね?」
「え? な、なにこいつ、セキュリティ硬っ……」
 だがアリシアの予想に反し、トリテレイアの電子頭脳へのハッキングは困難を極めた。
 見たことのないシステムに基いて設計されたファイアウォールにアクセスを閉鎖され、裏口や脆弱性も見当たらない。彼女がこれまでに壊してきた地球上のネットワークとは、比較にならないレベルの電子戦対策だ。
「私の故郷は数多の電脳魔術師が鎬を削る世界、故に電子セキュリティも発達しております」
 慌てて干渉の糸口を探るアリシアに、トリテレイアは悠々とした態度で近付いていく。
 【式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン】である彼の電脳には、あらゆる電子干渉を完全遮断する最高レベルの防護措置が施されていた。

「電子攻撃への対処を想定された私の処理速度と今を生きるヒトが構築する最先端のヴァージョンアップ」
 秒間に数え切れない程のペースで繰り返される不正アクセスを鎧袖一触に撥ね退けて、淡々と語るトリテレイア。いかに高度な技術もそれだけでは陳腐化する。こと日進月歩の電子の世界においては、常に最新の状態に最適化を続けることが明暗を分けるのだ。
「この二つがある以上、『過去』たるそちらのクラッキングが通じる余地は皆無ですよ」
「うぅぅぅぅ~……うるさいっ!!」
 完全に締め出しを食らったアリシアは、最後の悪あがきにプログラム自体を実体化させて襲い掛からせるが――護衛用ウォーマシンが物理戦闘で遅れを取るはずもなく。電子の獣は騎士の豪腕によりあっけなく蹂躙された。

「では……御覚悟を」
「こ、来ないで……ぎゃうっ!!?」
 そのままトリテレイアは距離を詰めると、保持していた大盾を片手でぶんと振り回す。
 鈍器としても十分な強度と質量を誇る金属板でしたたかに殴りつけられたアリシアは、悲鳴と共に研究室の隅まで吹き飛ばされていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新山・陽
 さて、貴女にここを任せたのはどなた?
 ネットワーク再構築のあかつきには、どなたと、どういった内容のお話をされるご予定で?
 再構築にデータ防衛にとご多忙でしょうが、ひとつお相手願います。

 引き続き『鍵をかける力』に加えて【環境耐性】【毒耐性】で敵UCを対処します。ある程度の認識阻害を受けたとしても【野生の勘】をもってUC『ラッシュ』を発動して撃破に努めます。

 その後【暗号作成】したデータをロックするコードを駆使して再構築中のネットワークデータを凍結していき、時間質量論の奪取が叶えば暗号化して一時保護します。 

 例え貴女がどれほど優秀であっても、二番煎じの手法では、ヒトの時代は終わりませんよ…



「さて、貴女にここを任せたのはどなた?」
 研究所の最奥に辿り着いた陽は、そこに居た敵に問いを投げかける。彼女がここの警備を"任された"のなら、背後で糸を引く者がいるという事。戦争中に復活したフィールド・オブ・ナインは全て倒された現在、それが出来る者は一体何者なのか。
「ネットワーク再構築のあかつきには、どなたと、どういった内容のお話をされるご予定で?」
「ふん。教えるわけないじゃない」
 秘密の保護を命じられているアリシアが、おいそれと情報を猟兵に伝えるはずもない。
 陽もそれは分かっている。ならば実力行使で奪い取るまでと、格闘術の構えを取った。

「頭の中メチャクチャにしてやる!」
 先手を取ったアリシアは【崩壊プロンプト】を起動、電子ウイルスにより空間データの書き換えを行い、相手の空間認識力と全ての意思疎通手段を奪いにかかる。陽にはこの手の干渉に備える『鍵をかける力』があるが、それでも一切無効とまではいかなかった。
(さっきの電波攻撃よりも厄介ですね)
 空間ごと視界が歪み、気を抜けば自分の立ち位置さえ分からなくなりそうだ。それでも過酷な環境や毒物に耐性のある彼女はこの状況にもすぐに対応し、足元を確かめるように軽くステップを踏む。

「ふん、そのまま立ち往生してれば―――」
 アリシアはさらに強毒化した電子ウイルスを流そうとするが、その寸前に陽はたんっと床を蹴って走り出した。まだ認識阻害の影響は残っているはずなのに、移動先はまっすぐ敵に近付いていく。
「な、なんでこっちの位置がバレて……?!」
「野生の勘というやつです」
 数々の対策を経て、最終的には論理外のセンスにより標的の居場所を看破した彼女は、敵が動揺から抜けきらぬうちに【ラッシュ】を仕掛ける。すらりと伸びた脚が鞭のようにしなやかに風を切り、強烈なキックが胴体に叩き込まれた。

「やりますか」
「あぐッ?!」
 陽の武術はシステマをベースに、近代戦における様々な状況を想定した実戦的格闘術。
 映画のアクションシーンのように華麗な動きをフェイントに挟みつつ、多彩な技と手数で敵を打ちのめしていく。
「こ、この暴力女……きゃうっ!!」
 アリシアは電子戦は得意でも肉弾戦には慣れておらず、サンドバッグのようにボコボコにされた挙げ句に殴り飛ばされる。研究室の壁に叩きつけられた彼女は苦悶の声を上げ、ずるずるとその場に崩れ落ちた。

「隙だらけですね」
「え……? あっ、私のデータ!」
 ふらつきながらも立ち上がったアリシアは、陽の呟きを聞いて慌ててモニターを見る。
 彼女がかねてより進めていたオブリビオン用ネットワーク再構築の進捗状況。その表示が「進行中」から「一時停止」に変わっていた。
「お前がやったの!?」
「ええ。ついでにデータも一部ですが頂きました」
 必要とあらば格闘戦もこなすが、陽は優れた電脳魔術士でもある。物理攻撃を受けて敵の電子面への対処が疎かになった隙に、彼女は自作したデータをロックするコードを駆使して再構築中のネットワークデータを凍結し、時間質量論のデータを盗み出したのだ。

「例え貴女がどれほど優秀であっても、二番煎じの手法では、ヒトの時代は終わりませんよ……」
「う、うぅぅ……よくもぉっ!!」
 ソーシャルディーヴァの異能にも劣らない電脳魔術士の技術を見せつけた陽は、それを誇るでもなく冷静な顔で告げる。見事にしてやられて大切な計画に損害を受けたアリシアは、ガスマスクの下で悔しさを噛みしめることしかできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
矛盾した事を言いますね。
人類は未だに残っているし、わたし達は先の戦争に勝利した。
お前達オブリビオンの時代こそつい先日終わったところなのですよ。
それにお前達自身も既に滅んだ存在の出涸らし。
往生際悪く染み出してないで骸の海に帰ったらどうです?

真っ先に深淵の招来を発動し、第六感と野生の勘で敵の行動を見切りつつ対処を。

敵はネットワーク再構築はまだ途中と言った。ならネットワークを使うユーベルコードはすぐには発動出来ないはず。

中途半端でも使える状態に復旧されると困るので関係ありそうな機器を片っ端から多重詠唱結界術で閉じます。

あとは相手が暗闇で戸惑ってる内にフィーネで斬り伏せます。

時間質量論、もらいますよ。



「矛盾した事を言いますね」
 ヒトの時代はとっくに終わったというアリシアの意見に、望は辛辣な調子で反論する。
 この世界の人類は終わってなどいない。それは希望的観測ではなく列記とした事実だ。
「人類は未だに残っているし、わたし達は先の戦争に勝利した。お前達オブリビオンの時代こそつい先日終わったところなのですよ」
 今だ世界から荒廃の傷跡は拭えないとはいえ、フィールド・オブ・ナインのうち6体は倒され、復興の兆しも見え始めている。時代の流れがどちら側にあるのかは明白だった。

「それにお前達自身も既に滅んだ存在の出涸らし。往生際悪く染み出してないで骸の海に帰ったらどうです?」
「む、むむむ……このガキンチョ、かわいくないっ!」
 幼い子供にしては随分しっかりした発言と理路整然とした言い分に、口では勝てないと悟ったアリシアは実力行使に出る。だが彼女が【ストームオーダー】を起動させる前に、望は真っ先に【深淵の招来】を発動していた。
「漆黒の帳垂れし我、深淵と共に歩む物也」
 詠唱に応じて虚空から滲み出すように現れたのは漆黒の魔霧。またたく間に戦場を覆い尽くしたそれはあらゆる光を呑み込んで、己の足元すら見えない深淵の闇を作り上げた。

「なにこれ、真っ暗……!」
 ほとんどの者が体験する事のない完全な暗闇。そこに引きずり込まれたアリシアは当惑するが、元から封印の目隠しをしている望には何の支障もなかった。いつものように視覚以外の五感及び、第六感と野生の勘で周囲の状況と敵の様子を把握する。
(敵はネットワーク再構築はまだ途中と言った。ならネットワークを使うユーベルコードはすぐには発動出来ないはず)
 ソーシャルディーヴァにはネットワークで繋がった者達の賛同を得ることで自らの願いを叶えるユーベルコードがある。賛同人数によっては「人類を滅ぼしたい」といった荒唐無稽な願いすら実現可能性があるが――そのネットワーク自体に不備があるのは僥倖だ。

(中途半端でも使える状態に復旧されると困るので)
 望は深淵の闇を飛び回り、再構築中のネットワークに関係ありそうな機器を片っ端から封じていく。黄金の王笏「翼望・シンフォニア」を片手に詠唱を行うと、多重展開された結界が機器を囲い、外部からのあらゆる接触を遮断する。
「っ、ちょっと、なにしてるの?!」
 なにも見えない状態でも接続中の機器に異変があれば、流石にアリシアも気が付いた。
 このまま関連機器を閉ざされ続ければ、今後の計画にも支障が出る。まだ暗闇の環境に慣れないまま、彼女は物音を頼りに攻撃を仕掛ける。

「やめてってば!」
 放たれたのは現実すら歪める悪性のプログラム。しかし望はその動きを察知してひらりと身を躱し、装備を「罪華・フィーネ」に持ち替えて戦場を翔ける。迂闊に大声など出したものだから、アリシアの位置は彼女に筒抜けだ。
「時間質量論、もらいますよ」
「な……あぎぃッ!!?」
 暗闇に戸惑う電子の歌姫を、眼帯のオラトリオが斬り伏せる。純白の大鎌が鮮血の色に染まり、深淵の闇に悲鳴が木霊する――たとえ姿は見えずとも、荒い息遣いや重い足取りから、敵が追い詰められつつあるのは瞭然だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
随分と時勢が見えていないみたいね。
通信網を管理していた「プレジデント」を含むフォーミュラの大半を倒されておいてヒトの時代は終わったなんて

人の世は終わらない。わたし達が終わらせないわ

雷撃の魔弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾】による【弾幕】で敵を牽制しつつ、【紅魔弾タスラム】を発動。

幻惑の霧と高速移動により、居場所を悟らせない様にしつつ、魔槍に集束しさせた魔力から敵の肉体も精神も電子もあらゆる全てを侵食する真紅の魔弾を発射。

「人類を滅ぼしたい」という記憶すら消去し、再構築していた通信網も侵食・崩壊させるわ。
記憶を消して眷属にできれば助けたいけど…無理ならタスラムで滅ぼすしかないわね…



「随分と時勢が見えていないみたいね。通信網を管理していた『プレジデント』を含むフォーミュラの大半を倒されておいてヒトの時代は終わったなんて」
 頑なに人類の終わりを唱えるアリシアの言に、フレミアはぴしゃりと反論してのける。
 まさしくそのフォーミュラの大半を倒したのが、自分たち猟兵だからこそ断言できる。どれだけの脅威がまだこの世界に眠っていても、人類は決して滅びない。
「人の世は終わらない。わたし達が終わらせないわ」
「ばっかみたい……じゃあお前達から終わらせる!」
 凛とした吸血姫の宣言に、アリシアはイライラとガスマスクの下で奥歯を噛みしめる。
 決して諦める事を知らぬこの猟兵達が、彼女の願いを叶える最大の障害となっていた。

「さっさと滅びちゃえ……っ?!」
 まだ未完成のネットワークを通じ【ストームオーダー】を起動しようとするアリシア。
 だが、即座にフレミアが放った雷撃の魔弾による弾幕が、彼女の端末操作を妨害した。
「そんなに滅びが見たいのなら、見せてあげるわ」
 稲妻の散弾にて敵を牽制しつつ、魔槍に魔力を集束させ、幻惑の霧を戦場に展開する。
 これは【紅魔弾タスラム】の準備行動。優雅な微笑みだけをその場に残し、フレミアは霧の中に姿を隠した。

「こそこそ隠れてないで、出てきなさいよっ」
 アリシアは室内のセンサー等を操作して標的を見つけ出そうとするが、フレミアは自ら張った霧の中を高速で移動しており、容易には居場所を悟らせない。レーダーすら惑わす深い霧の奥で、真紅の光が駆け巡るのが微かに見えるだけだ。
「紅き魔弾は全てを侵し、狂わせ、破滅を与える……」
 敵がすっかり翻弄されている間に、フレミアのユーベルコードは完成に近付いていた。
 この血に流れる真祖の力を束ね、魔力を弾丸に、魔槍を銃身とする。その集束値が臨界に達した時、彼女は矛先を霧の中からぐっと突き出した。

「……滅びなさい」
 囁くような一言を乗せて、魔槍より発射される"タスラム"。紅い魔弾が凄まじい速さで飛んでくるのを見たアリシアは、血相を変えて身を翻すが――もう回避は間に合わない。
「あ、ぐぅッ!!?」
 魔弾が撃ち抜いたのは少女の白翼。集束された真祖の超魔力は原子崩壊を引き起こし、凄まじい物理的破壊力をもたらすと共に、肉体も精神も電子もあらゆる全てを侵食する。一撃で翼をもがれた敵が、自身の異変に気付くのはすぐだった。

「な……なに? わたしの中からなにかが消えていく……!」
 タスラムの魔力は再構築中だったオブリビオン専用通信網も侵食・崩壊させ、さらにはアリシアの精神から「人類を滅ぼしたい」という記憶すら消去しようとしていた。目的も使命も理由すらも奪われれば、後に残るのは空虚な抜け殻のみ。
「これが本当の滅びよ」
「い、いや……こんな形で終わるなんて……!」
 フレミアの目算ではこれで終わる筈だった。だがアリシアは予想以上の抵抗を見せる。
 予め記憶のバックアップを取っていたのか、あるいは真祖の力でも消しされない程に、人類を滅ぼさんとする意志は強固だったのか――彼女の瞳はまだ敵意を失っていない。

(記憶を消して眷属にできれば助けたいけど……無理なら滅ぼすしかないわね……)
 惜しいという気持ちが無かった訳ではないが、たとえ狙いが外れてもフレミアの対応は迅速だった。まだ残してあった魔力を再び集束させ、魔槍を構えて二射目の準備に入る。
「わ、たし、は……あぐぅッ!!!?」
 記憶の欠落と意識混濁により前後不覚に陥ったアリシアに、今度こそ魔弾が直撃する。
 肉体の侵食・崩壊はさらに加速し、たとえ滅びの意志を失わなかったとしても、彼女の生命の終焉は着実に迫っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
人類は滅びないよ…。
この世界で必死に生きている人達がいる限り、わたし達は必ずこの世界を救ってみせる…。

【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…。

無限の終焉の魔剣を展開し、一斉斉射…。
敵に攻撃を仕掛けると見せかけて、魔剣の一部を敵の背後の端末へ…。
端末へ突き刺さった魔剣を通じて呪力【呪詛】で侵食し、ネットワークを通じて繋がったオブリビオン達を呪力で侵食し、呪殺もしくは無力化…。
再構築したネットワークも端末機もそのまま侵食して破壊するよ…。

わたし達がいる限り、人類は滅びない…。
そんな願いは絶対に叶わないよ…。

後は呪力の縛鎖で捕縛後、【神滅】でその力を奪い去り、ただのソーシャルディーヴァ(人間)にするよ…



「人類は滅びないよ……」
 強固な意志で世界の滅びを願うオブリビオンに、璃奈もまた揺るぎない信念で答える。
 確かに、アポカリプスヘルの人類は今も危機に瀕している。だが人類は文明が崩壊した世界でも貪欲に生き延びる道を選択し、オブリビオンに屈する事なく立ち向かっている。
「この世界で必死に生きている人達がいる限り、わたし達は必ずこの世界を救ってみせる……」
 救いたいという意志は、滅ぼしたいという意志より絶対に強い。まっすぐな銀の眼差しに射竦められて、アリシアの赤い瞳が微かに揺れた――だが、それを素直に認めるほど、彼女の覚悟と絶望も生易しくはなかった。

「どいつもこいつもバカよ……こんなメチャクチャになった世界で諦めないなんて……」
 囁くような声で悪態を吐きながら、アリシアは破壊されたネットワークの修復を試み、【ストームオーダー】の発動を目論む。そうはさせじと璃奈は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解き、無限の魔剣にて迎撃体制を取る。
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 研究所の攻略から連続で二度の封印解放になるが、消耗の様子などおくびにも出さず。
 足元を崩壊させる程の莫大な呪力を身にまとい、九尾の妖狐に変身した少女の周りに、数え切れない本数の魔剣が展開された。

「く……っ! 来なさいよ!」
「なら、全力でいくよ……」
 凄まじい呪力に怯みながらも身構えるアリシアに向けて、璃奈は魔剣を一斉斉射する。
 一本一本が終焉の力を帯びた刀剣の嵐が、敵に殺到する――と見せかけて、魔剣の媛神の本命はその背後にある通信端末だった。
「――……なッ!?」
 アリシアの頬や肩を掠めていった魔剣の一部が、端末の本体やモニターに突き刺さる。
 この剣は言うなれば璃奈にとっての端末だ。回路に触れた刃を通じて呪力を流し込み、敵のネットワークをのものを侵食するための。

「このネットワークを通じて繋がってるのは、全員オブリビオンなんだよね……」
「な、なにするつもり……や、やめてっ!」
 オブリビオン専用通信網に割り込んだ璃奈は、それを通じて遠隔地にいる敵に呪詛をかける。まだ再構築中とはい、ソーシャルディーヴァであるアリシアが束ねるオブリビオンは相当数に上るはずだ――その全員を呪殺ないしは無力化するのが彼女の狙いだった。
『おい、なんだコレは……ぐげっ、苦し……』
『どうなってんだよ!? ぐおぇぇぇッ?!』
 呪力というウイルスに侵食を受けたオブリビオン達の、断末魔の通信が研究室に届く。
 それが止んだ後の端末には『通信が切断されました』という表示だけが残り、その端末自体も流し込まれた呪力の量に耐えきれず、ネットワークもろとも破壊されていった。

「わたし達がいる限り、人類は滅びない……。そんな願いは絶対に叶わないよ……」
「よくも……よくもよくもよくもぉッ!!!!!」
 敵が願いを叶える為の原動力を、完膚無きまでに破壊してみせた璃奈。望みを絶たれたアリシアは絶望と怒りを叫んで襲い掛かるが、肉体的には非力なソーシャルディーヴァがネットワークという武器を失って、熟達の妖剣士に敵うはずがない。
「決着をつけようか……」
「ッ?!」
 魔剣の媛神は呪力の鎖を放って敵を捕らえると、【妖刀魔剣術・神滅】の構えを取る。
 封印解放により強化された呪力と身体能力を、さらに飛躍的に強化。神速の踏み込みで間合いを詰めると、手にした妖刀に全身全霊を込めて振り下ろす。

「神をも滅ぼす呪殺の刃……あらゆる敵に滅びを……」
 その斬撃は肉体を傷つけることなく、アリシアのオブリビオンとしての力を奪い去る。
 最初は斬られても痛みがないことに困惑した彼女は、より致命的な傷痕を残された事にすぐに気付き、わなわなと崩れ落ちた。
「わ……私の、力が……!!」
 力の根源を断ち斬られた彼女には、もはやただの人間のソーシャルディーヴァとしての能力しか残っていない。人類を滅ぼす願いが叶う可能性は、これで完全に失われたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
引き続き知覚端子で相手の情報収集。隙を見て攻撃を――。
ばつん。ぽとぽと。おや?私の『目』が落とされた?
砂埃のようにファンや空調の風に吹かれるがままの粒子群。あらあら。
ああ、私もソーシャルディーヴァだよ。何だ、戦力のリソース確保で利用したいと?なるほどね。

わりと気味が悪い代物だが、其れでも構わないなら≪いらっしゃい≫。

邪神のUDC汚染されたネットワークのUC。生き物のように蠢く膨張したデータで少女のメモリと思考回路を圧迫させようか。
猫騙しは返したくなるのでね。深淵を覗く時は何とやら、というやつだ。【ハッキング】
空間認識能力は戻ったかな?まあ、こんなに近ければ弾も当たるかね。



(だいぶ弱ってきているみたいだな)
 猟兵達との激戦によって追い詰められ、満身創痍となったアリシア・ホワイトバード。その様子をマホルニアは引き続き『知覚端子』を用いて観測していた。できる限り相手の情報を集め、隙を見て攻撃を、と思っていたのだが――。
(おや? 私の『目』が落とされた?)
 ばつん。ぽとぽと。外部から強制的に接続を切られたナノマシンの粒子群が、砂埃のようにファンや空調の風に吹かれるがままに散っていく。誰の仕業かは考えるまでもない。両の瞳でそちらを見やれば、兎のように赤い瞳と目が合った。

「さっきからジロジロ見てた……お前、私と一緒でしょう」
「あらあら。ああ、私もソーシャルディーヴァだよ」
 食い入るようなアリシアの視線を受けて、マホルニアは彼女の狙いをすぐに理解した。
 戦闘の影響でアリシアのネットワークは壊滅状態に陥った。今の彼女にこれを復旧する力は無い。だから"代わり"となるものを外部に求めているのだ。
「何だ、戦力のリソース確保で利用したいと? なるほどね」
「もう、それしか無いのよ……よこせっ!」
 敵はふらつきながらも強毒電子ウイルスを放ち、周囲の空間データを書き換え始める。
 これで此方の空間認識力と意思疎通手段を奪い、前後不覚に陥った隙にネットワークを乗っ取るつもりだろう。

「わりと気味が悪い代物だが、其れでも構わないなら≪いらっしゃい≫」
「えっ?」
 だが、ウイルスに感染したマホルニアがまったく抵抗する素振りを見せなかったのは、アリシアにも予想外だっただろう。まるで裏口の合鍵を渡されたように、彼女はあっさりネットワークへの侵入を果たしてしまう。
「な……なに? こんなアルゴリズムは見たことない……」
 そこで白翼の少女が触れたものは、あまりにも名状しがたく常軌を逸していた。極めて難解かつ、読み取ろうとすれば脳にノイズが走るデータの混沌。自らの庭に等しいはずの電子とネットワークの世界で、彼女は知らない異界に迷い込んだような体感をしていた。

「CODE:INVITATION//CALLDIVA "M_COUNTRY" TRANSFER VISITOR=LDF_GUEST」
 マホルニアのネットワークが邪神のUDCに汚染されていた事など、敵は知る由もない。
 まんまと相手を【尾羽と剣の堂々巡り】に引きずり込んだ彼女は、生き物のように蠢く膨張したデータで敵のメモリと思考回路を圧迫させる。
「猫騙しは返したくなるのでね。深淵を覗く時は何とやら、というやつだ」
「い、いやっ……やめて、いや、いや、いやっ!」
 接続を切ろうとしてももう遅い。流れ込んだ汚染データは脳髄を狂気で蝕み、邪神の咆哮が頭蓋の内側で反響する。あまりにも異質な情報過多に耐えられなかったアリシアは、血涙を流してその場に崩れ落ちた。

「空間認識能力は戻ったかな?」
 相手が倒れるのと同時に電子ウイルスの干渉も止み、マホルニアの知覚は正常に戻る。
 彼女はへたり込んでいるアリシアの元までつかつかと歩いていくと、アサルトライフルの銃口を突きつけ――。
「まあ、こんなに近ければ弾も当たるかね」
「ぁ……ちく、しょ……」
 銃声は1発。悔しさを滲ませた少女のささやきと共に、白い羽根がぱっと室内を舞う。
 空に伸ばした手はぱたりと落ち――それが人類の滅びを願ったソーシャルディーヴァ、アリシア・ホワイトバードの最期だった。


 ――かくして、研究所の警備を撃破した猟兵達は『時間質量論』のデータを回収する。
 所内に遺されていたデータは膨大で、既存の資料とも照らし合わせての解析には時間がかかるだろう。だが、この成果は間違いなく解析を次の段階に進める一歩となった筈だ。
 フィールド・オブ・ナインが残した謎の深奥へ、猟兵達は着実に迫り続けていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月29日
宿敵 『🌗アリシア・ホワイトバード』 を撃破!


挿絵イラスト