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夜行列車ポラリスの仮装祭

#UDCアース #黒翼の仮面 #『変態紳士』ブルマニア #ハロウィン #豪華寝台列車でゴー! #夕狩こあら

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#UDCアース
#黒翼の仮面
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 長距離夜行列車「ポラリス」――。
 全ての車輛を青に統一したその列車は、水平に引かれた淡いクリーム色の一条も含め、嘗て列島を走った寝台列車を想わせる姿が往年の鉄道ファンに愛されている。
 近年のファンを増やしているのは、イベントの多さか。
 十月にもなれば、車輛の内装は温かな秋色に変わって、乗客が仮装を愉しむハロウィン祭を行っており、これが人気を博している。
「トリック・オア・トリート!」
「トリック・オア・トリート!」
 駅のホームでは知らなかった誰かも、乗り合わせたならお化けの仲間。
 魔女や吸血鬼、狼男などに変身した乗客達は、それぞれのキャラクターになりきって、キャンディーの受け渡しを楽しんでいた。

 そこに異変が訪れる。
 壮年の男性が狂ったように金切り声を挙げ、隣する婦人に噛み付いたのだ。
『キィィィイイ異異イイッッ!』
「っ、きゃぁぁぁあああっっ!」
 吸血鬼の真似にしては度が過ぎると、大勢の乗客が眉を顰めたのも一瞬のこと。
 一度は床に倒れた婦人は、起き上がるなり瞳を赤く、赤く、血のように染まった眼球で乗客を睨めつけた。
『ィィ……ィキキ……イキキキキィ……!』
「お客様!? いかがなされ、ま、し……」
 悲鳴に気付いた男性乗務員が駆け寄るが、彼も間もなく膝を折る。
 婦人の瞳から放たれた光線に射抜かれた彼は、直ぐにも炎に焼かれるが、灼熱を纏った躯は死なず、そのまま立ち上がって他の乗客に襲い掛かる――!
『……ィギギギ、ギギ、ィィイイ……』
「……いっ、いやぁぁぁああ……っ!」
 始まりは壮年の男性から。
 次いで婦人、そして乗務員と、次々に狂気が車輛に満ちていく。
 彼等はひとしく、黒い蝙蝠が羽根を広げたような怪しい仮面をしていた。


「ここ最近、街中に何の脈絡もなく、いきなりUDC怪物が溢れる現象が発生しているの、とても気掛かりよね」
 原因があるのか。きっかけは何なのか――。
 何やら街に不穏な空気が流れていると懸念を示したニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)は、UDC怪物の大量出現が度々報告される中、夜行列車「ポラリス」も例外でなかったと口を開く。
「東京の上野駅から北海道は札幌駅に向かう夜行列車でも同様の事件が起きるの。猟兵の皆は列車に乗り込んで、車内に大量に涌き出るUDC怪物をやっつけてきて頂戴!」
 原因が分からない以上、脅威の現出そのものを止める事は出来ない。
 今はそれより一刻も早く事態を収拾し、異変に巻き込まれた民間人を救うべきだろうと語気を強くしたニコリネは、凛とした表情で時刻表を開いた。
「18時15分に上野駅を発車した列車は、ちょうど日没を迎える頃に仮面型オブリビオンが大量に発生して、次々と乗客に襲い掛かる筈」
 車内ではハロウィンイベントが行われており、仮面も仮装も当たり前。
 猟兵は速やかに「ただ仮装している一般人」と「黒翼の仮面に取り付かれた一般人」を見分け、守り、或いは戦って欲しい。
 狂気に呑まれた人々も、黒翼の仮面を取り去れば正気に戻るので、オブリビオンが大量発生するより早く、じゃんじゃん仮面を引き剥がしていこう。
「仮面型オブリビオンをやっつけたら、この列車の何処かに居るボスが……ひときわ強力なUDCが現れるから、人々を狂気から守りつつ戦ってね」
 UDC怪物の活動による被害が甚大である事は勿論、常人は強力なUDCを目にするだけで狂気に陥り、即座に発狂するか、場合によっては「その人間をUDC怪物に変えてしまう」。
 可能であれば、ボス戦を迎えるまでに乗客を寝台車などに避難させ、UDC怪物を人目に触れさせない工夫が要るだろう。
「最後に戦う『変態紳士』ブルマニアは、仮装じゃなく私服だから気を付けて!」
 成るほど私服がブルマなら、一目見ただけで常人は発狂するだろうし、場合によっては罪なき人々がブルマニアとなってしまうので、最悪の事態は避けたいところ。
 勿論、発狂に陥らないとはいえ、猟兵も狂気の結晶と戦う事になるので、ここは十分に気を付けて欲しい。
「全てやっつけたら、既に怪物を目にしてしまった人々に適切なケアを行いましょう」
 全ての脅威を取り去る事が出来たら、その後はUDCの秘密を極力守れるよう、現場で事件を目撃した人々への対応を行う事となる。
「ガチめのパフォーマーが居たとか、仮装イベントの一環だったとか、ハロウィンにちなんだ楽しい雰囲気で上書きしたら、一晩の後には落ち着いてくれるかもしれないわ」
 その為には、猟兵も仮装していくべきか――。
 また乗客の記憶処理が間に合うとも限らないので、必要であればUDC組織から貸与される記憶消去銃を使っても構わない。
 説明を終えた花屋は、ぱちんとウインクして、
「ダイヤ通りの運行が叶えば、函館あたりで暁が見られるみたい。楽しみね!」
 と、グリモアを召喚するのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、UDCアースにて洪水の如く溢れ出すUDC怪物を討伐する「溢れ出すUDC」シナリオ(難易度:普通)です。

●戦場の情報
 UDCアース、東京は上野駅から北海道の札幌駅まで走る長距離夜行列車「ポラリス」。
 第一章と第二章では乗客の共有スペースとなる「ラウンジカー」(ダイニング、クラブスペース、サロンの合計3両)での戦闘となり、第三章では寝台車(7両)も含めて車内を自由に使って頂けます。

●シナリオ情報(三章構成です)
 第一章『黒翼の仮面』(集団戦)
 悪の組織「暗黒面」に属していると言われる仮面型オブリビオン。
 周囲の空気に溶け込んで一般人を襲い、取りつかれた一般人は、仮面が剥がれるまで身体と意識を乗っ取られるようです。

 第二章『変態紳士』ブルマニア(ボス戦)
 嘗てブルマを称える程愛し過ぎ、私服もブルマにしたらヤバ過ぎて周囲からリンチを受け死んだ素敵な英国紳士。
 全ての人類をブルマにすべく、恐怖の変態紳士として地獄から這い上がってきました。

 第三章『豪華寝台列車でゴー!』(日常)
 UDCの秘密を極力守れるよう、現場で事件を目撃した人々への対応を行うべく、猟兵も寝台列車「ポラリス」で終点まで過ごしましょう。お手伝いやお話相手に、ニコリネを指定する事も可能です。
 必要であれば、UDC組織から貸与される記憶消去銃を使っても構いません。アイテムを作成する必要はありませんが、プレイングには明記願います。

●プレイングのコツ
 列車内には民間人が乗車しており、オブリビオンに取り付かれたり、オブリビオンに取り付かれた彼等が別の一般人に危害を加える可能性があるので、彼等を保護しながら戦うと良いでしょう。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。呼び名があると助かります。
 また、このシナリオに導入の文章はございません。オープニング公開後、すぐにプレイングをお送りいただけます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 集団戦 『黒翼の仮面』

POW   :    赤邪眼
【赤い眼から放出される光線】が命中した対象を燃やす。放たれた【闇属性を含んだ】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    超音波
レベル分の1秒で【音波による攻撃】を発射できる。
WIZ   :    急降下
【体当たり】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:大和屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鹿村・トーゴ
ポラリス、つーと北極星か
(相棒のユキエが呆れた声音で『…星に釣られた?』
Σいや?!ちゃんと任務って知ってるって!

仮装は黒装束でいかにも忍者
ユキエも黒頭巾
『仮装?』
そだよ、普段こんなカッコしたら余計目立つじゃん
『違うわ、なんでユキエも?』

客との見分けは黒い蝙蝠状の仮面の有無か?これを判断材料にしよ【情報収集】

客に蝙蝠仮面がいたら騒ぎの前から目を付け服装等覚えておく
騒ぎの時は対象と一般客の間に割って入りUCで対象を麻痺させ仮面を剥がす(増殖した際も同じく
抵抗が激しければ仮面を狙い人間にはなるべく傷を付けないよう手裏剣、クナイ【投擲】
猫目雲霧で打って絡めたり
棒状にし仮面を突き割る、弾く等

アドリブ可



 乗車前、ホームに停まる列車のヘッドマークに目が惹き付けられる。
 夜空を想わせる紺青に燦然と輝く白星を見た鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、平頭巾に隠した口元に嘆聲を零した。
「ポラリス、つーと北極星か。夜越しの長旅を導くに良い名前じゃないか」
 暫し繁々と眺めれば、肩に乗る黄芭旦のユキエが呆れたように囀って、
『……星に釣られた?』
「いや?! ちゃんと任務って知ってるって!」
 だからこその衣装だと、手は輕く生地を摘んで見せよう。
 此度のトーゴは黑い忍装束――万人がイメージするいかにもな忍者姿で、仮装イベントに相應しいドレスコードでの出立。旅伴のユキエも同樣の黑頭巾を被っている。
『仮装?』
「そだよ、普段こんなカッコしたら余計目立つじゃん」
『違うわ、なんでユキエも?』
 ユキエも必要? と語尾を持ち上げるのは、美し黄色の冠羽が隠れてしまったからか。
 己と似た琥珀色の瞳彩に訴えてくるユキエを宥めつつ、夜行列車に乗車したトーゴは、仮装客で溢れる車内に、早くも観察の目を疾らせた。
(「――黒い蝙蝠状の仮面。これを判断材料にしようか」)
 様々に仮装した乗客は色彩に溢れているが、犀利な烱眼は惑わされぬ。
 異變が生じる前より怪しい人物に目星を付け、その服装や背恰好を記憶したトーゴは、初動を制する“位置”を確實に、怪物が現れるという逢魔ヶ時を待った。
『キィィィイイ異異イイッッ!』
「っ、きゃぁぁぁあああっっ!」
 壮年の男性が婦人に嚙み付いた、正に刹那、逸早く爪先を蹴る。
 何事かと立ち止まる乗客の前に割り入ったトーゴは、両掌に迸らせた高圧電流を放ち、次の獲物を求め吶喊する男性を麻痺させると同時、黑翼の仮面に指を掛けた!
『……ィギギギッ! ギギィ、ィィイイ異異……ッッ!』
 皮膚に凝着した其を力づくで剥がした後は、掌に帯びる紫電で灼ききる。
 目下、足許では床に倒れた婦人が起き上がり、真紅の瞳から怪光線を放って仲間を増やさんとするが、トーゴは咄嗟にクナイと手裏剣を投げて光線を屈折させると、次に猫柄の六尺手拭いを棒状に伸ばし、婦人の仮面を突き破った!
 その普段と變わらぬ俊敏な動きには、トーゴ自身も喫驚いて、
「仮装といっても忍装束。いかにもな忍者も、それなりに――」
 云いかけた瞬間、ユキエが呆れたようにフルフルと首を振る。
 ツンと横向く姿にも黑頭巾がよく似合っていると、トーゴは密かに頬笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
トリック・オア・トリート!
せっかくのお祭りを台無しにするのは許せませんっ!

バニーの姿に変身して乗車
大鎌を持った死神バニーですっ!

子供にお菓子をあげたり遊んであげたりしてパーティーを楽しみつつ(お誘い・パフォーマンス)、【死睨の魔眼】で周囲の人々の死に易い箇所を見抜く
戦闘用に作られていない仮装用なら、むしろ日用品より壊れやすい(死に易い)筈
そんな中で極端に死に難いモノがあれば、UDCに違いない

魔眼によって見分けたら、暴れ出す前に機先を制して大鎌で【斬撃波】を飛ばして仮面だけを【切断】
超音波を【衝撃波】で相殺(カウンター)し、ウサギの脚力を活かして縦横無尽に飛び跳ねて次々に斬り捨てる



「Trick or treat!」
「Happy Halloween! 今夜はめいっぱい仮装とお菓子を楽しみましょうね」
 秋色に包んだお菓子を配りつつ、子供達とハロウィンソングを歌う麗しの修道女。
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は魔女や狼男に仮装した少年少女とパーティーを楽しみつつ、UDC怪物が出現するという日没に備えていた。
(「せっかくのお祭りを台無しにするのは許せませんっ!」)
 無辜の子らに惨憺は見せぬと意気込む彼女は、大胆なカットのバニーガール。
 自らも仮装して乗り込んだ訳だが、子供達が持つ劍や斧がダンボールにアルミホイルを巻いたものであるのに対し、聖女の大鎌は神秘の金属アダマスで出来たガチのやつ。
 青少年に注がれる眼差しこそ聖母の如く温かなものの、佳人の滿月の如く輝く金瞳は、【死睨の魔眼】(クリティカル・バロール)――乗客達の死に易い箇所を見極めるべく、烱々眈々と巡らされていた。
(「戰闘用に作られていない仮装用衣装なら、むしろ日用品より壊れやすい筈……」)
 其はバニーになった時のみに発揮される異能で、観測範囲は實に13,225m。
 車輛ごと網羅できる死神バニーを前に、果して黑翼の仮面は紛れられようか――否。
 如何な潜伏も不可能と證左(あかし)すべく、刻下、『告死の大鎌』が光を彈いた。
「そんな中で、極端に死に難いモノがあれば、悪しき異形に違いなく――」
『ギィィィイイギギ異異イイッッ!』
「この死鎌を以て終焉(ほろび)を告げる――!」
 刹那、車窓に翳が差すと同時に蠢く怪異を、弓張月の風刃が抑え込む。
 黑翼の仮面を付けた保護者らが暴れ出す前に機先を制したオリヴィアは、きゃあと叫ぶ子供達の前にピョンと躍して盾となると、黑いウサギの耳を立てて身構えた。
「お母様方も、お父様方も、なんと恐ろしいこと……本当にお化けのようですね」
 You are really scary!
 子供達の前ではハロウィンを貫きつつ、五感を研ぎ澄ませる。
 超音波は目には見えなくとも、その初動は必ずや読める筈だと仮面の群れに向き合ったオリヴィアは、連中が奇聲を上げるべく口を開いた瞬間に大鎌を振り抜いた――ッ!
「Here's your treat! キャンディの代わりです!」
『ィィイ異異ギャァァアアアアッ!』
 ぞんっと車輛を搖らすほどの衝撃波に超音波を相殺する。
 見えぬ衝撃の角逐を柔肌に受け取りつつ、猶も踏み込んだバニーは、ウサギならではの脚力を活かして側面にジャンプすると、それから車窓を駆け走って斬斬斬斬斬――ッ!
 大鎌の鋩を巧みに躍らせ、次々に仮面だけを斬り捨てていった!
 蝙蝠の如き黑翼を散らしながら跳ね回る死神バニーの美しきこと怖ろしきこと。
 彼女に連れ立ってホワホワと搖れる真白の尻尾だけが和やかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
別に俺が仮装する必要無かったんじゃないか?まぁ、良いさ。銀の銃弾のキャンディならたらふく用意してる。
気は早いが――Happy halloweenさ。

仮装はアリスの帽子屋マッドハッター。去年の仮装。紳士的な俺に似合ってるだろ?
飛び回る仮面に【クイックドロウ】で銃弾をぶち込む。
無事な一般人は寝台車にでも避難させて――ワザと扉は開けておく。
さぁ、ご乗車の皆さんは運が良い。仮装ショーの時間です!覗くのは自由、本物ギリギリ、再現度の高いショーを心行く迄ご堪能下さい!(胸に手を当て一礼して【悪目立ち】)
何でこんな事するんだって?ハッ、折角、オーディエンスが居るんだ。ショーぐらいは見せてやっても良いだろ?



 車窓に差し込む斜陽が影翳に呑まれる逢魔時。
 日没と同時に出現した仮面オブリビオンに幾人かの猟兵が立ち向かうが、増殖スピードの方が早かろうか、続々と湧く怪異に車内が恐慌で滿たされる。
 狂氣の奇聲と恐怖の悲鳴が飛び交う中、ラウンジカーのテーブル席に座っていた帽子の男だけは飄然と、紅茶に濡れた佳脣に艶々しいテノール・バリトンを囁いた。
「別に俺が仮装する必要無かったんじゃないか?」
 皮肉か自嘲めいた科白を置きつつ、スッと立ち上がるマッドハッター。
 鍔広のブリムより紫彩の瞳を覗かせた帽子屋は、いや、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、奇聲と悲鳴の交じ入る方へ、スッと通った鼻梁を向ける。
 同時に指先は立ち襟のフロックコートを潜り、而して須臾、懐より滑り出た二挺の銃が「追う者」と「追われる者」の疆を明らかにした。
「まぁ、良いさ。銀の銃彈のキャンディならたらふく用意してる」
『ィィイイイギャァァアア嗚呼ッッ!』
「気は早いが――Happy halloweenさ」
 所作は極めて紳士的に、気前良く高価な特注品を呉れて遣る。時にして1/115秒。
 狂氣に犯された乗客の黑翼の仮面のみを超速で撃ち抜いたカイムは、続々迫る後続にも銃彈をブチ込みつつ、明朗と、そして輕快に科白を囀った。
「さぁ、ご乗車の皆さんは運が良い。これより仮装ショーの時間です!」
「へっ、へぁ……仮装ショー……? ああ、これってショーなのか!」
 特等席は寝台車だと避難方向を示しつつ、塊麗の微笑に不安を和らげる帽子屋。
 勿論、ワザと扉は開けておくのには意味があろう。
「覗くのはご自由に、本物ギリギリ、再現度の高いショーを心行く迄ご堪能下さい!」
 眼前の惨憺を「見世物」にする――。
 その爲に敢えて目立つ仕草を、胸に手を当てて恭しく一礼したカイムは、間もなく背後に飛び掛かった狂氣を、全く振り向かずに一発で仕留めた!
「Here's your treat! さぁ存分に召し上がれ」
『ィィィ異異イイイッ!!』
 オルトロスの咆哮の後に置かれる科白も芝居めいていよう。
 折角、オーディエンスが居るのだ。怪夜の【銃撃の協奏曲】(ガンズ・コンチェルト)は派手な方が佳い。そしてギリギリを攻めねば、恐怖は感興に變わるまい。
 怪景を間際に置く帽子屋は慥かにイカれていたが、射撃の腕前には一縷の狂いも無く、銀の銃彈は聢と仮面の中心を撃ち抜いて黑翼を散らしていく――。
「イッツ、クレイジー……! 映画みたいに格好良いじゃないか!」
 而して乗客は何時の間にかオーディエンスとなり、極上のショーを楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライララ・ラクイン
あらあら大変なことになっていますわね、さあ皆さまどうぞこちらに来てくださいまし
その方が安全ですので、では傀儡の行進を初めましょうか
有象無象それは無数にされどまた一つに
仮面の方々は今回の見世物の主役、私はそれを盛り上げる道化師ならば観客の皆さまにも楽しんで頂かなくては
ウフフ超音波ですか、しかし狭い列車内では同士討ちの危険があるので乱射は出来ない、せいぜい前面の方々が傀儡数体にダメージを与えるだけでしょう
さあ皆さま傀儡と仮面達の大舞踏会をとくとご覧あれマスカレードパーティーですわ



 何の脈絡もなく、突如としてUDC怪物が大量出現する怪現象――。
 夜行列車ポラリスに現れた仮面オブリビオンも、逢魔時を迎えるや一気に膨れ上がり、その惨憺は乗客を恐慌に突き堕とした。
「あらあら大変なことになっていますわね」
 狂氣の奇聲と恐怖の絶叫が交じ入る中、玻璃と澄めるソプラノが滑る。
 佳聲の主はライララ・ラクイン(虚飾の枢機卿・f34708)――冱月の如く輝く銀の瞳、その玲瓏の彩は車内のパニックを映しても靜かで穩やかだ。
 少女は白磁の繊指をスッと差し出すや、車輛後方の寝台車を示し、
「さあ皆さまどうぞこちらに來てくださいまし。その方が安全です」
「あっ、ああ……だがお嬢ちゃん、あんたも危険だから一緒に逃げた方がいい!」
 決して恐怖を煽らぬ避難誘導に從って駆け寄る乗客の中には、少女こそ退避すべきだと心配の聲を掛けるが、ライララはゆるく頭(かぶり)を振ると、陰惨の前に踏み出た。
 視線を結ぶ先には、怒涛の勢いで増殖した狂氣――黑翼の仮面の群れが続々と迫るが、花顔は色を變えず。
「では傀儡の行進を初めましょうか」
 眼路の際を走る乗客が寝台車に収まるのを確認したライララは、双眸に光を湛えると、美し銀の輝きを搖らしながら秘呪を詠唱した。
「有象無象それは無数にされどまた一つに」
 反抗者が紡ぐは、【無数にして一つ群にして個】(オールインフィニティー)――。
 忽ちライララの周囲に顕現した合計86体の傀儡人形が、彼女の指先ひとつで動き出し、敵群を前に整然と隊列を組むや、言葉通り「行進」を始めたのだ。
「仮面の方々は今回の“見世物”の主役……私はそれを盛り上げる道化師ならば、観客の皆さまにも樂しんで頂かなくては」
 此度の戰闘をエキサイティングな見世物(ショー)にする――。
 道化を演じてみせようと微笑すら湛えたライララは、柔かく麗瞳を細めながら、仮面の群れが音撃を放つのも構わず、泰然と迎撃した。
「ウフフ超音波ですか、しかし狭い列車内では同士討ちの危険があるので乱射は出来ない……せいぜい前面の方々が傀儡数体にダメージを与えるだけでしょう」
 囁いて須臾、その通りの光景が双眸に映される。
 ライララは前衛の傀儡人形に不可視の衝撃波を受けさせると同時、攻撃した直後の者を後衛に捕えさせ、凝着した仮面を剥して正気に戻してやる。
 この時の絶叫も生々しいほどエンターテインメントになろうか。
「さあ皆さま、傀儡人形と仮面達の大舞踏会をとくとご覧あれ。今宵は妖しくも華やかなマスカレードパーティーですわ」
 金絲雀の如く囀る佳聲が、ファルス(道化芝居)を煽るようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
仮装ということで海賊の格好になりました
まさか黒い眼帯のようなものまで付けるとは
私が親分ですか?きゃぷてん?が、頑張ります

憑りついてる仮面を視力にて目視確認
索敵は少しばかり慣れていますからね
では倫太郎、貴方が引き剥がした仮面を私が斬ります

倫太郎の後に続いて、剥がした仮面に抜刀術『風斬』
早業と攻撃回数を重視して速やかに破壊

倫太郎?なるほど……それで彼等を誘導するのですね
では……(咳払い)諸君、話した通りだ
我等の宝、探し出してみるがいい

コミュ力を使い、倫太郎の催眠術に合わせ声を掛ける
……恥ずかしいですね

そうも言ってはいられません
では倫太郎、引き続き参りますよ

敵からの攻撃は残像にて回避後反撃


篝・倫太郎
【華禱】
トリックオアトリート!
仮装は海賊!夜彦が親分!
あ、親分じゃなくてキャプテン!

憑りついてるのは黒翼の仮面、だっけ?
視力も使って探そ

夜彦のが先に見つけるよネー
視力の性能段違いだもん

アイサー、キャプテン!

夜彦の言葉に確認すれば確かに黒翼の仮面
ダッシュで接近して黒翼の仮面を引き剥がそう

車両に居る憑りつかれてない一般人には

寝台車にぃ!俺達のお宝隠してあっからよぉ、
探し出したらくれてやらぁ!
早いもん勝ちだぜぃ!

なんて芝居がかった催眠術を乗せた声掛けで誘導

はいはい、行った行ったァ!

車両の人が減ったらさっさと仮面の対処

拘束術使用
念動力で誘導した鎖に部位破壊と吹き飛ばし乗せて
しっかり剥がして夜彦に任せる



「トリック・オア・トリート! 仮装列車の出発だ」
「ええ、私達も皆さんと一緒に百鬼夜行を樂しみましょう」
 折角なら此度のドレスコードに從おうと、二人で決めた結果、海賊の仮装をする。
 トリコーンの帽章に髑髏と骨十字を飾って現れた月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、ニコニコと玩具のカトラスを突き付けてくる篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)に、秋色を彩るお菓子を渡しながら云った。
「豈夫(まさか)このようなものまで付けるとは……」
「海賊船の船長ともなれば風格を出さねーとな、親分!」
 戸惑いがちに眼部に触れる夜彦に、黑い眼帯も海賊帽も頭領の證だと言う倫太郎。
 同じデザインの髑髏マークをターバンに印した彼との違いに気付いた夜彦は、ぱちくりと目を瞬いて、
「私が親分ですか?」
「あ、親分じゃなくてキャプテン!」
「きゃぷてん? ……が、頑張ります」
 とまれ、名に恥じぬよう振る舞うべきと背筋を伸ばしてみる。
 随分と淸廉な海賊にくしゃりと破顔した倫太郎は、その立派な仮装姿をキャンディーに労いつつ、怪異が訪れるという日没――逢魔時を待つ事にした。

『キィィィイイ異異イイッッ!』
「っ、きゃぁぁぁあああっっ!」

 壮年の男性が婦人に嚙み付いたのを皮切りに、車内に狂氣が溢れ出す。
 張り詰めた空気が一気に恐慌に突き堕とされる瞬間に触れた夜彦と倫太郎は、海賊宛ら輕快な身の科(こなし)で駆け走り、間もなく惨憺の中心に至った。
 先に佳脣より怜悧を零したのは夜彦。
「車輛の右手前と、奥手に黑翼の仮面をした乗客が一人ずつ――」
 片眼を眼帯に覆われていると云っても、湖水と澄める翠緑の瞳は鋭利に犀利に、樣々な仮装で溢れる色彩の中に朦々と滲出する狂氣を見極める。
 これには倫太郎が嘆聲を零し、
「やっぱ夜彦のが先に見つけるよネー。視力が段違いだもん」
「索敵は少しばかり慣れていますからね」
 而して一瞥を交した後は、お互いに玩具の武器から其々の得物に持ち替える。
 取り憑いた仮面を目視にて確認した二人は、摶ッと踏み込むや脅威の前に躍り出た。
「では倫太郎、貴方が引き剥がした仮面を私が斬ります」
「アイサー、キャプテン!」
 船長が優秀なら、彼に從う部下も頗る有能。
 颯爽と宙空に駆け上がりながら、眼下に黑翼の仮面を捉えた倫太郎は、【拘束術】――災禍を戒める不可視の鎖を放ち、かの者が怪光線を撃つより早く制してみせた。
『ィィィイイイ異異……ッッ!!』
「車内は火気厳禁だ。燃やしてくれるなよ?」
 片腕にギチギチと鎖の緊張を保ちつつ、拘束した者の仮面を剥ぎ取る。
 矢張りUDC怪物である事は間違いないか、宿主の肌膚に凝着する強さも、剥離してから蝙蝠のように黑翼部分を動かすのも気味が悪かろう。
 倫太郎が力づくで狂氣を剥ぎ取れば、忽ち夜彦が肉薄して、
「我が刃、風の如く。自在の刃は万物を両断す」
 閃くは、抜刀術【風斬】――!
 夜色に染まれる鞘より冱え冱えしく暴かれた刃が、秋水を遡上る魚鱗の如く輝きながら仮面の中心を手折れば、儚く別れた二つの黑翼をヒラヒラと舞って散った。
 而して音もなく着地した二人は、振り返るや乗客に避難を呼び掛けて、
「寝台車にぃ! 俺達のお宝隠してあっからよぉ、探し出したらくれてやらぁ!」
「――倫太郎?」
「見つけた奴の早いもん勝ちだぜぃ!」
「なるほど……余興に催眠術を添えて彼等を誘導するのですね」
 危険を訴えて恐怖を煽るより佳い方法があるとは、夜彦も直ぐさま合點しよう。
 仮装して周囲に馴染んだ甲斐があったと咲んだ彼は、「では……」と咳払いをひとつ、キャプテンらしく勇敢なるカヴァリエ・バリトンを澄み渡らせた。
「諸君、話した通りだ。我等の宝、探し出してみるがいい」
「すっげー! おたからだってさ!」
「おれ一番な! 宝箱あけるんだ!」
 凄い海賊ほど立派なお宝を持っているものだと色めき立った子供達が真っ先に移動し、次いで我が子を追う保護者らが急いで寝台車へ駆け出す。
「はいはい、行った行ったァ!」
 倫太郎が乗客の駆け足を急がせる傍ら、芝居めいた科白を添えた夜彦は口元を覆って、
「……恥ずかしいですね」
「中々サマになってたけど?」
 似合いだと頬笑む部下を遣り過した船長は、奥の車輛で突き上がる奇聲と悲鳴に鼻梁を向けると、そうも言ってはいられまいと爪先を彈いた。
「では倫太郎、引き続き参りますよ」
「アイアイサー!」
 ラウンジカーから人が減ったなら、それだけ移動も戰闘もやり易いか。
 華禱海賊團は勇往邁進、次々と黑翼の仮面を剥ぎ取っては斬り捨てていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『変態紳士』ブルマニア』

POW   :    【武】ブルマァインパクト!!
【名状し難きブルマ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    【龍】湿ったブルマを……抱きしめる!
【湿ったブルマを抱きしめる】事で【興奮が限界突破してドラゴブルマニアン】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    【魔】ブルマジック・バースト!!
戦闘力のない【戦場に、ブルマ強制装備波動を放つブルマ】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【戦場のブルマ者全員の、ほど良い生命力吸収】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵の活躍によってUDC怪物『黑翼の仮面』が次々に駆逐されていく。
 洪水のように大量発生する怪異が抑え込まれる中、ラウンジカーの壱号車サロンカーの上部に設置された展望室『北天』より、目下、凄まじい狂氣が流れ込んだ。
『……いやはや、お待たせしてしまって申し訳ない』
 階段を降りて來たる圧倒的プレッシャー。
 落ち着いた語調と穩やかなバリトンは實に紳士的だが、ぬっと現れた裸足と逞しい脛、剥き出しの太腿を覆う暴力的なまでの筋肉が気色悪かろう。
 奇妙なるアンバランスは更に科白を継いで、
『溌溂とした臙脂……淸らかなる群青……この車輛をどんなブルマ色に染めようか考えておりましたところ、いやはや、すっかり遅れてしまいました』
 変態的妄想に耽っていたとは隠しもせず。
 クラシックな眼鏡の奥で瞳を閉じ、ブルマの二大巨頭である臙脂色と群青色をうっそり思い浮かべた英國紳士もブルマ姿(紺)。なんと、私服であって仮装では無い。
 ブルマを愛するあまり、日常にもブルマを取り入れて我が物としてしまった男なれば、常人なら見るだけで吐気を催し、発狂するか気絶するかしてしまう程の狂氣を帯びる。
 辛うじて直視のかなった猟兵は、本人の口から真相を聽けようか、
『ミステリアスな黑の仮面にブルマを合わせたなら、新しい思想の境地に至れると思っておりましたが……どうやら貴人方に阻まれてしまったらしい』
 乗客も乗員も黑の仮面に染め、更にブルマ化させようとしていた、と――。
 禁忌の疆域に踏み込もうとしていた男に、幾人かの猟兵が瞋恚や義憤を抱き始める中、男は落ち着いた樣子で両手を広げる。
『対立……其も宜しいでしょう。思想とは常に討議を以て研磨されるもの』
 サロンとは斯くある可し、と周囲を見渡して云う程には余裕があるか。
 諸悪の根源、『変態紳士』ブルマニアはごつごつとした爪先をスッと踏み出し、
『私も皆樣方のご意見を賜る事に致しましょう』
 と、向かい來る猟兵を待ち受けるのだった。
鹿村・トーゴ
ん、いぶし銀な声…アレ?変にゴツイ奴来た
お江戸で褌一丁な男はザラだが妙にヤバく感じるなー
ユキエ『たぶん褌の匂い嗅ぎながら全裸で往来歩くヤバさよ』
…あ、それはタイヘンだ『ヘンタイね』

客の前に立ち狂気視線を塞ぎ【かばう】
いーか、ちとアクシデント
隣車両へ先行ってくれるかい?逃げ遅れるとブルマ必須で電車旅だと

敵が余裕見せてる間に【ロープワーク/地形の利用/罠使い】
気休めだが足元に縄や服の端材で簡易な足かけ罠
猫目雲霧を布状で振り距離とタイミング測る【情報収集】
敵UCに合わせて武器を槍化【串刺し】攻撃を仕掛け【カウンター/野生の勘】で直撃は躱す
ヤバそーだもん
だが…一寸の距離ならオレも外さねーぞ!

アドリブ可



 上部展望室『北天』より穩やかなバリトンボイスが降り立つ。
 随分と燻し銀な聲音だと視線を結んだ鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、次いで覗く精悍な巨躯に、一瞬、黄昏色の双眸をぱちくりと瞬(しばた)いた。
「……アレ? 變にゴツイ奴來た」
 コイツは――と佳脣が言を継ぐより先、ちょうどトーゴの平頭巾の上に位置取っていた黄芭旦のユキエが、邪氣の迸發(ほとばし)る方向へついと嘴を向ける。
 お喋りな彼女は物事を佳く識っていて、且つ物事に深く精通していよう、
「お江戸で褌一丁な男はザラだが、妙にヤバく感じるなー」
『たぶん褌の匂い嗅ぎながら全裸で往来を歩くヤバさよ』
「……あ、それはタイヘンだ」
『ヘンタイね』
 と、可及的速やかに対処せねばならぬ案件だと言外に示す。強く。
 斯くして此度の首魁のヤバさを冷靜に見定めた一人と一匹は、常人はそうもいくまいと黑影を滑らせて前へ、前へ――乗客が狂氣を直視せぬよう庇い出る。
「いーか、ちとアクシデント」
 トーゴは盾と踏み進みつつ、背に隠した人々に肩越しに流眄を注いで、
「隣車両へ先行ってくれるかい? 逃げ遅れるとブルマ必須で電車旅だと」
「!? ブ、ブルマで……電車旅……!? 絶対にイヤだ!!」
 而して蒼褪める乗客には、ユキエが乗員の聲真似をして避難をサポートすれば万全か。
 秀でた鼻梁を怪異に向けた儘、バタバタと掛け走る跫音を聽き届けたトーゴは、首魁が煙管を燻ぶらせる隙に黑装束の袖から長縄を取り出すと、巧みに服の端材と絡め合わせて足かけ罠を作り、おいそれと民間人を追い掛けぬよう牽制を敷いた。
 蓋し手は猶も休まず。
 トーゴは敵が余裕を見せている間に『猫目・雲霧』を布状で振って間合を確かめると、ブルマニアが言う『討議』の瞬間、その初動を聢と見極めた。
『猫柄のハンカチーフですか。實に愛らしいものですが、私のブルマも自慢でしてね』
 己が履いているブルマ(紺)からぬんっとブルマ(朱)を取り出す紳士。
 強靭な膂力を以て其を大きく広げた狂邪が、トーゴを抱き包まんと一気に猛進すれば、彼は研ぎ澄ませた戰闘勘と五感によって狂氣の抱擁をギリギリ躱したッ!
「ヤバそーだもん。そいつは遠慮しとく」
 距離とタイミングを間違ったら一巻の終わりと、敵影を射る瞳は烱々煌々。
 マタドール宜しく颯爽と突撃を躱したトーゴは、念を籠めて旋回していた手拭いを槍状に變えると、【羅刹旋風】――螺旋の風を纏う鋭鋩を突き付ける――!
「だが……一寸の距離ならオレも外さねーぞ!」
『ッ!!』
 眼路を過るブルマを裂き、切れ目の向こうに覗く紳士の喫驚を見たのも一瞬のこと。
 鋭利い布槍は隆々たる筋肉に沿って裂傷を刻み、朱き血潮を躍らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライララ・ラクイン
あらまぁアナタ様が此度の終幕を告げる悲劇の主人公なのですね、では
砕けた貴女に友の証を、さぁお手を拝借
砕けたる傀儡はかつての友今は只々割れた鏡の欠片となって降り注ぐのみ
ウフフ、余程ぶるまと云う御召し物がお気に入りのご様子、しかし召喚したぶるまは波動によって渦を巻いた鏡の欠片に刻まれ象を無くすのみ、その波動も私には届きません・・・嗚呼なんと云う
渦を巻いた鏡の欠片はアナタの身体も刻んでしまうのです
この狭い列車には鳥籠程の逃げ場もなく砕けば砕く程、私に近づけば近づく程に激しさを増してアナタの命の輝きを覆い削り骸の海に捨て去って行く
御後がよろしいようで、此にて終幕とても良い舞台でございました



 紳士的なバリトンが聽こえる方へ、禍々しい狂氣の迸る方へ、スッと視線を結ぶ――。
 黑翼の仮面と傀儡人形による大舞踏会を披露したライララ・ラクイン(虚飾の枢機卿・f34708)は、目下、乗客に恭しくカーテシーをして“第二の舞台”へ向かった。
 万雷の拍手を背にラウンジに至れば、奥手には猟兵の布槍によって負傷したブルマ姿の大男が、上質の絨毯に血斑を落としながら立っている。
 この男こそ、変態紳士ブルマニア――筋骨隆々たる巨躯をパツパツの体操服とブルマで覆った怪奇そのものであったが、ライララは眉ひとつ顰めず佳聲を囀った。
「あらまぁ、アナタ樣が此度の終幕を告げる悲劇の主人公なのですね」
『悲劇の主人公……? 私と皆樣方の討議は始まったばかりではありませんか』
 まだ語り尽くしていないと、流血をその儘に口開くブルマニア。
 赤々と鮮血を滴らせる巨腕を少女の前に翳した男は、忽ち無数のブルマを召喚すると、そこから「ブルマを強制的に装備させる波動」を放ッた――!
『実際に体験して頂いた方が早いでしょう。貴方にもこの素晴らしさが理解る筈』
 論よりブルマ。案ずるより穿くが易し。
 目下、車輛いっぱいに紺や臙脂色のブルマが舞って面妖な波動を放つが、銀髪の少女は其が毛先を搖するより迅く『反抗傀儡』の操糸を繰ると、漸うその疆界を解き始めた。
「砕けた貴女に友の証を。――さぁお手を拝借」
 砕けたる傀儡は嘗ての友。共に戰った反抗者。
 身を砕き「鏡の欠片」となった友は、瀲灔と光を彈いて宙を舞い、その小さな鏡面に車内の景色やブルマを映して降り注ぐ――【傀儡より舞い散れ友の悲哀】(マリオネットミラージュ)。
「ウフフ、余程ぶるまと云う御召し物がお気に入りのご樣子。しかし私には、その佳さも貴方の熱意も届きません」
『それは、如何云う――』
 少女が答えるより現象を見るが早かろう。
 悪しき波動によって渦を巻いた鏡の欠片は玲瓏なるも残忍で、鋭い破片にブルマの生地を断ち裂きつつ、己は千切れた色彩を映して猶も美しく煌く。
「嗚呼、なんと云う悲劇……然も鏡片はアナタの身体も刻んでしまうのです」
『――ッ!』
 而して列車には鳥籠程の逃げ場も無し。
 たとえ力いっぱい攻撃しても、鏡は砕けば砕くほど、少女に近付けば近付く程に激しさを増し、巨邪の命の輝きを覆い削り、骸の海へと引き込んでいく――。
「御後がよろしいようで、間もなく幕は引かれましょう」
 無数の光影と精彩が躍る中、ライララは穏やかに冷ややかに終幕を告げよう。
 花の如き可憐は「とても良い舞台でございました」と銀の瞳を細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
変身を解除することで、あらかじめ着ていた服装に戻る
そう、すなわち――体操服とブルマの姿に!

全身に【覇気】を漲らせ、【存在感】を放ち、乗客の視線を集め(パフォーマンス・おびき寄せ)、敵の方を見ないようにさせる
本来着用するべき性別の者が着用するという、正しい姿で以って狂気を相殺する
私とあなたと、どちらがブルマを纏うに相応しいか……いざ、勝負!

持ち前の【怪力】と鍛え上げた【功夫】で徒手空拳(グラップル)
座席や天井を足場にしてアクロバティックに戦い(足場習熟・地形の利用・ジャンプ)、至近距離の技を空振りさせる(見切り)
ブルマと同じ赤い炎を脚に纏い(属性攻撃)、【カウンター】の【熾天流星脚】!



 無数の鏡片が変態紳士ブルマニアを牽制する間、更なる猟兵が壱号車へと駆け走る。
 車内はバーカウンターや座席等の障害物が多いが、それらを輕々と飛び越えて進撃したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は流石のバニー……いや、此度は体操服とブルマなる「体育女子」の姿で現れ、車内の視線を一気に惹き付けた!
「なんと華麗なモンキーヴォルト! 車内でパルクールだなんて凄いぞう!!」
「雰囲気的に体育で習った抱え込み跳びっぽいな。教科書みたいに模範的な動きだ!」
 仮装か――否。
 彼女は變身を解除して「予め着用していた服装」に戻っただけで、体操服にはちゃんと「おりびぃあ」と名前が明記されている。ブルマとお揃いの赤いパイピングが◎だ。
 そして凛然と覇氣を纏うオリヴィアは、運動会の最終競技、組別対抗リレーのアンカーくらいの圧倒的存在感。その華々しい姿に釘付けられぬ者は居ない。
 円熟した肢体とレトロな体操着がちょっぴりいかがわしい感じもするが、彼女は淸らかなる18歳、本来着用すべき者が着用するという「正しい姿」が、車内に充滿する禍々しい狂氣から乗客を護る。(因みに彼女が未就学である事は、今は言及しない)
 無論、全てが正統派なオリヴィアにはブルマニアこそ感動を覚え、
『むおっ! 無垢な体操着に愛らしき臙脂色のブルマ……我が好敵手と見たり!!』
「私とあなたと、どちらがブルマを纏うに相應しいか……いざ、勝負!」
 紺ブルマの大男と臙脂ブルマの聖女が、闘志を剥き出しに相見える。
 変態紳士が己のブルマにぬんっと手を入れた瞬間、熾烈な闘爭が始まろう。
『異端と呼ばれた思想が主流となる事もある。時流は今だと告げましょう! ホァッ!』
「過去の教訓を活かせぬ者に、先人の想いよ……届け! ――はぁぁあああっ!!」
 角逐――ッ!
 ブルマから取り出したブルマを握って襲い掛かる狂氣を目前に、全き徒手空拳で挑んだオリヴィアは手四つッ! 持ち前の怪力で男の手首を摑み、ギリギリと拮抗する。
 凄まじい力比べをした後は、互いに彈けるように離れ、巨邪は地上から、オリヴィアは座席を足場に輕やかに舞い上がると、天井を蹴って彈丸よろしく突貫した――!
『貴女の記名済みブルマ、必ず勝ち取って見せましょうッ!』
「空中からの抱え込みツカハラ跳びで、キワを避ける――!」
『な、に……――ッ!』
 仮装だろうと私服だろうと、ガワだけブルマな変態に負けはしない。
 体育女子オリヴィアは、インパクトの瞬間を見事な躯の捻りで躱すと、ブルマが空振りした瞬間に【熾天流星脚】(ブレイズ・ストライク)! 我がブルマと同じ赤い炎を迸るカウンターキックを見舞い、ブルマニアに異端者の烙印を押した!
「破邪の炎よ、おぞましき狂氣を灰燼と成せ!」
 云うや否や、聖なる炎に包まれた筋肉の塊が、壱号車の床に強かに打ち付けられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
……ぶるま?わからないです
下着の上に履くもの……褌とはまた異なるのですね

境地、彼も何か強さを求めていたのでしょうか
見た目は……あれ、ですが

他の方々は倫太郎の催眠術に任せ、逃げ遅れた者にも此処から離れるように
此方も声を掛けておきましょう

早業の抜刀術『陣風』を使い、武器落としを活用して
ぶるまを斬り払って対処します
あれが敵の武器ならば、先に対策をしておいて損はないでしょうからね

近付かない方がいいのですか?
分かりました、ぶるま攻撃には注意して戦います
ですがそれは倫太郎もなのでは……

倫太郎と互いに援護が出来るように離れ過ぎない位置で戦います
敵からの攻撃は残像にて回避
回避し切れないものは武器受け


篝・倫太郎
【華禱】
マジ、視界の暴力……

あ、夜彦
ブルマって判る?あれな?あの履いてるやつ……

求めてないと思うヨ……
つーか、そんな強さ要らないから!

車両に居る一般人には催眠術使って
引き続き、お宝探しイベントを装って声掛け
身動き取れない奴にも効果ありゃ良いけどな

拘束術・真式使用
狙うのはブルマ持ってる手元!
ばぁん!と派手に爆ぜさせちまおう

あのヘンタイと繋がってるのかと思うと
ちょっと?いや、かなり……イヤン、だけど
逃げた一般人追われるよかマシってもんだ

夜彦、あんま近付くなよ
ブルマで攻撃されるからな?

華焔刀じゃ立ち回りし難い
暁想に衝撃波と吹き飛ばし乗せて攻撃し
夜彦にも俺にも『近付けさせない』

敵の攻撃は見切りで回避



 首魁に相對した篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は憮然たる表情。
 眉を曇らせ、睫を伏せて半眼に、斯くして絞られた視界にブルマの巨漢を映した彼は、筆舌に尽くし難い怪奇を前に大きな溜息を置いた。
「マジ、視界の暴力……車輛ごと切り離して訣別(わか)れたい……」
 げんなりする倫太郎の隣、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は彼と首魁を交互に見ては小首を傾げ、夜藍に染まれる睫を二、三度、瞬(しばた)く。
「……ぶるま? とは何の事でしょう」
 其が何物か知らぬ瞳が、変態紳士ブルマニアの頭の天辺から足の爪先までを眺めれば、倫太郎はすっかり色を失くした聲で説明をして、
「あ、夜彦はブルマって云っても判らないかー。あれな? あの履いてるやつ……」
 体育の授業とかで女子が履くやつ。スカートから下着が見えないように履くやつ。
 指を差すのも躊躇いつつ、無垢の劍士に衣類としての機能性を教えれば、夜彦は成程と首肯きながら相槌を打つ。
「下着の上に履くもの……褌とはまた異なるのですね」
「俺は寧ろ褌だったら良かったなぁって思うんだ」
 聽けば、かの男はブルマなるものの新境地を模索しているとか――。
 体操服をぱつんぱつんにさせる筋肉隆々もややこしかろう、夜彦は何かの鍛錬の賜物と思しき躯体に視線を結んで、
「新しい境地……彼も何か強さを求めていたのでしょうか。見た目は……あれ、ですが」
「求めてないと思うヨ……。つーか、そんな強さ要らないから!」
 これには本人でなく倫太郎から否定が入る。
 情状酌量の余地は無し、絶対に世に出してはいけないものだと闘志を兆した倫太郎は、瞳に光を取り戻して周囲を見渡すと、『黑翼の仮面』から解放されたばかりの乗客・乗員を避難させるべく催眠術を掛けた。
 彼は狂氣から醒めた者が再び狂氣に斃れぬよう、より強い暗示を與えて、
「俺達が隠した宝箱はひとつじゃない。今からだってありつけらぁ!」
「さぁ、探しに行くといい。大海賊の秘宝、諸君を失望させる事はあるまい」
 而して夜彦も何度目かの大海賊を堂々と演じ、スッと伸ばした指先に避難路を示して、急ぎ寝台車へと駆け走る乗客の背を見送った。
 二人の迅速なる誘導には、ブルマニアが怪訝(いぶか)り顔をして、
『論よりブルマ。案ずるより履くが易し。……皆樣方には私のブルマ愛を視覚的に知って頂こうと思っておりましたが……いやはや、こうも邪魔立てされては困りますな』
 云いつつ、ブルマ(紺)の中にぬんっと手を入れる。渾沌をまさぐった手がブルマ(臙脂)を取り出した、正に須臾、其處に衝撃が投げ込まれ、命中を得るや爆発した――!
「ばぁん! と派手に爆ぜさせちまお」
『むうっ! 私のパトスを何かが手折る……ッ!』
「ヘンタイと繋がってるのかと思うと、ちょっと? いや、かなり……イヤン、だけど! 何の罪もない人達を追われるよかマシってもんだ」
 凶行を阻むは【拘束術・真式】――災禍を縛する不可視の鎖に捕われたブルマニアは、ギリギリと張り詰める緊張の先、倫太郎の凛然たる佳顔を見つめる。
『ふむ。身に喰い込む拘束、緊縛……これぞブルマに掛け合わされるプレイに相應しい』
「ぷれい。其がぶるまに求める境地なのですか」
「いやホント夜彦に妙なこと教えないで!」
 小刀『暁想』を一閃、鋭く疾る衝撃波に距離を置いて叫ぶ倫太郎。
 薙刀では立ち回りが難しかろうと金色の刃を翻した彼は、夜彦の曇りも濁りもせぬ麗瞳に凛と流眄を注いで、
「夜彦、あんま近付くなよ。あの臙脂色ので攻撃されるからな?」
「近付かない方がいいのですか? 勿論注意して戰いますが、それは倫太郎もでは……」
「夜彦にも俺にも近付けさせないけど。夜彦は特にダメ絶対」
 唯一無二の愛しき花簪は穢させぬと、隔てる距離にこそ意志が現れよう。
 これを嚴重な警戒と受け取った夜彦は、成る程、互いに援護し合えるよう離れ過ぎない位置が佳かろうと、その場で鼻緒を踏み込み、腰を落とす。
「ぶるまとやら。あれが武器ならば、十全に対策をしておいて損はないでしょうからね」
 名状し難きものの形状を観察し、攻撃時の初動を読む。
 ブルマを知らぬからこそ、ブルマの武器としての可能性を探れようか――夜彦は極めて冷靜に敵の攻撃を予測すると、其を上回るべく五感を研ぎ澄ませた。
「ここから斬り払います」
 不可視の縛鎖が緊張している以上、ブルマニアが今以上に距離を取る事は無い。
 彼奴が攻撃するには距離を縮めて拘束を緩めねばならぬと、踏み込みの瞬間を見極めた夜彦は、隆々たる筋肉が動いた矢先に抜刀術【陣風】――! 無数の斬撃を放ッた!!
「機先を制す――それだけです」
 射程範囲は半径113m。即ち列車内で竜胆の士に斬れぬものは一つと無い。
 而して幾重に閃く斬撃は、迫り來るブルマを手折って刻むものも、手元に襲い掛かって裂傷を刻むものもあろう。愛刀『夜禱』の一刃より繰り出た衝撃は、臙脂色のブルマを切り刻み、遂にはブルマニア自身を切りつけ、赤々と血潮を躍らせた。
『なん、と……! 私のブルマが……ぎったんぎったんに刻まれて……ッ!』
 二人に肉薄するより前に床に膝をつく紳士、いや変態。
 上質の絨毯を血斑に染めゆく男が見上げる先には、これ以上の接近は(色々な意味で)許さぬと立ち塞がる男達が、雄峰の如き英姿を見せていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
さて、今宵のショーはこれにて終幕。乗客の皆様にはもう暫くお待ち頂けますよう――。(扉を閉じる)
なぁ、オッサン。アンタも出演者なら仮装ぐらいしてきちゃどうだい?その恰好じゃあ客も興覚めってモンさ。それに、趣味にどうこう言う気はないが、自分の趣味を他人に押し付けるってのは考え物だと思うがね。

(抱きしめる様子を見て)おいおい。変態此処に極まれり、だな。
俺の前で発情してんじゃねぇよ。俺にはそっちの趣味はないんだ。
ま、人間形態よりはそっちの方がぶった斬り易い。掛かって来な!変態野郎。
スピードと反応速度…ハッ、けど今日の俺はlucky guyでね。
帽子屋のトレードマークの帽子を天上スレスレに投げる。魔剣を躱した先で帽子がふわりと落ちて視界を遮るって寸法さ。
さぁ、決めようか!Trick or Treat!
(紫雷を纏って踏み込み突きの【串刺し】)

―――――っと。そういや、閉めたままだったか。(締めた扉をチラリ)
やれやれ。派手に決めたってのにオーディエンスが居ないんじゃ、決め甲斐がねぇな。(前髪掻き上げ)



 宿主を離れて宙を舞った『黑翼の仮面』を撃ち抜き、中心を劃って散らせる。
 泣き訣れた二翼が飜然(ヒラリ)躍って狭霧と化す――その度に拍手してショーに興じた観客、いや乗客達は、帽子屋のボウ・アンド・スクレープを名残惜しく見届けた。
「さて、今宵のショーはこれにて終幕」
 咆吼を哮った双頭の魔犬を懐に収め、深々と一礼。
 マッドハッターらしく大仰に帽子を被り直したカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、幾許にもリラックスして寝台車に収まった乗客らを眺め渡すと、小気味佳いウインクをひとつ置いて、そっと扉を閉じた。
「乗客の皆樣には此方でもう暫くお待ち頂きますよう――」
 硝煙の匂いが燻ぶる間は、彼等も興奮冷め遣らず今のショーを語り合おう。
 而してその間に事態を収めれば佳いと、通路を進んでサロンカーへと至ったカイムは、展望室より降り立った埒外の狂氣に正對した。
 芝居めいた科白を囀ったハイ・バリトンは、ここに猟兵の音色を取り戻して、
「なぁ、オッサン。アンタも出演者なら仮装ぐらいしてきちゃどうだい?」
『おっさん……』
「煙管は兎も角、その恰好じゃあ客も興覚めってモンさ」
 夜越しの仮装列車を樂しむにドレスコードがなってないと、鍔広のシルクハットの下、紫の麗瞳に男の頭の天辺から足の爪先まで見渡して云う。
 然し眼前の異樣――変態紳士ブルマニアは、「これが正装」とばかり両手を広げ、
『ブルマは仮装という一時的で一過性の現象に留まるべきものでは無いのだよ。ブルマは日常と共に在る至高の嗜好……存在であって概念たりうる唯一のアニマなのだ』
「嗜好、ねぇ……他人の趣味にどうこう言う気はないが、自分の趣味を他人に押し付けるってのは考え物だと思うがね」
 その狂氣的思想と変態的私服コーデに向き合えるカイムも凄まじかろう。
 常人なら見るだけで発狂する怪奇を前に正気を手放さず、それどころか全き正論を突き付ける彼を「論破する価値アリ」と認めたブルマニアは、己がブルマの中にぬんっと手を突っ込むと、取り出したブルマ(湿)を……あろうことか抱き締めた!
『ふむ……君と語り合うには、我がアニマをこの身に焚き染める必要があるだろう』
「おいおい。変態此処に極まれり、だな」
 眼鏡が曇るほどブルマを抱き締め、法悦に耽るブルマニア。
 両手に摑んだ臙脂色のブルマに激情をくぐもらせた紳士は、いや変態は、カイムの眼前で性癖を解放する事で、一気に自重と規制の臨界を突破していく――!
『ふぅぅぅぉぉおおお雄雄雄雄おおおお…………!!』
「俺の前で発情してんじゃねぇよ。俺にそっちの趣味はないんだ、オーケー?」
『嗚呼、そうして言と視線で嬲るが宜しい……然すれば私はより昂ぶる……この樣に!』
 素気無いカイムをがっつり直視し、愈々興奮を爆発させるブルマニア。
 而して本当に爆熱を呼び起こしてしまった変態は、烈風の中から大いなる龍の姿を――ドラゴブルマニアンなる異樣を顕現(あらわ)した!
『私はブルマを愛する概念そのもの……この愛、爪と牙で届けさせて頂く!』
 車輛狭しと巨躯を膨らませつつ、鎌首を擡げてカイムを睨め据える龍。
 その巨影に暈されたカイムは、然し好戰的に口角を持ち上げるや、願ったり叶ったりと『神殺しの魔剣』に黑銀の炎を迸發(ほとばし)らせた。
「ま、人間形態よりはそっちの方がぶった斬り易い。掛かって来な! 変態野郎!」
『変態が変態と罵られて悦ぶとは知っているかな? 狂った帽子屋の君!』
 叫ぶや須臾、龍の息吹が熱いパトスを叩き付ける。
 颶風が車輛を搖する中、ドラゴブルマニアンは更に猛牙を剥いて突進ッ! 魔劔を盾と構えたカイムと激しく衝突して震動を疾らせる。
 ズンッと胸を打つ波動を衝き上げた両者は、更に鋭爪と鋭刃を咬み合わせて閃々鏘々、白虹を描き、或いは火華を躍らせて闘った。
『なんと素晴らしき闘爭! 然し私のブルマ愛……スピードと反應速度には勝るまい!』
「ハッ、随分と調子が良さそうだが、俺も今日はlucky guyでね」
 賭けて遣るよ、と仕掛けるは【命知らずの賭け】(デッド・オア・アライブ)――。
 ブルマニアをドラゴブルマニアンに、敢えて敵を極限状態に昇華させたカイムは、我が反應と反射がギリギリ追いつく緊張感を味わいつつ、コイン代わりに帽子を投げる。
 帽子屋のトレードマークたる帽子が天井スレスレを躍ったのは幾許であったか。
『――ッ!?』
 奇を衒ったかと、帽子に惹き付けられる視線を引き戻した巨龍は直ぐに攻撃に出るが、劍呑が迫るほど冷靜に龍の息吹を切り裂いたカイムは、次いで迫り出る鈎爪を魔劔の鋩で逸らし、濤と滾る黑銀の炎に灼く。
『……酔狂な……ッッ! 性癖を超克した私に小細工は、通……用――ッ!』
 炎など噛み砕くべしと猛牙を剥いた巨邪は、刹那、目の前にふわりと降り立った帽子が“Trick”――悪戯をしたとは気付くまい。
『ッ、ッッ!』
 巨龍に被せられたシルクハットは視界を遮り、眩く閃く紫雷も見せず。
 一瞬の暗闇が時間(とき)を止める中、爪先を蹴って彈丸の如く駆け出したカイムは、霹靂を纏う魔劔の鋩を真直ぐに突き立てた――ッ!
「さぁ、決めようか! Trick or Treat!」

『ぶぅぅぅるぅぅぅぅまぁぁぁああああ唖唖唖唖……ッッ!!』

 今際の絶叫が車輛を大きく搖らし、一気に溢れた狂氣の奔流が列車全体を波打たせる。
 時に、車輛専用の強化ガラスがビリビリと震える樣に振り返ったカイムは、そう言えば通路扉を締めて來たのだったと後方を見遣り、「やれやれ」と吐息ひとつ。
「……折角、派手に決めたってのにオーディエンスが居ないんじゃ、決め甲斐がねぇな」
 拍手くらい欲しかったと、残念そうに宙を翻った手で前髪を掻き上げる。
 而して幾許か視野を広くしたカイムの瞳には、ちょうど21時を回って仙台駅に到着する――温かなホームの光が映り込むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『豪華寝台列車でゴー!』

POW   :    コース料理に舌鼓を打つ。三ツ星シェフの作る豪華なコース料理に酔いしれ。

SPD   :    車窓を楽しむ。成人にはお酒、未成年にはジュースが提供される。

WIZ   :    先頭の展望室に行って夜空を裂く様を眺める。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 時刻は21時。
 夕刻に上野駅を出発した夜行列車ポラリスが、無事に仙台駅に到着する。
 これまで何度か停車して料理や飲料を運び込んだクルーズトレインは、ここで仮装した樂団員による生演奏を聽いての本格リラックスタイム。愈々夜に向けての準備を始める。
 然し、乗客や乗員の中にはまだ興奮冷め遣らぬ者も多かろう。
 彼等は黑翼の仮面が増殖する怪奇や、筋骨隆々たる紳士がブルマを履く怪奇を見て動揺しており、事態を収束させるには、もう少し時間が掛かるだろう。

 彼等と一緒に仮装を楽しんで、イベントの一貫だったと言い切ってしまおうか。
 或いはUDC組織から貸与された記憶消去銃を使って、忘れさせてしまおうか。

 幸いにして全乗客・全乗員が終点の札幌駅まで乗るので、時間はある。
 猟兵は彼等のメンタルケアを終えたら、夜明けまで自由な時間を過ごせよう。

 扨て、どうしようか――。
 秋の夜長に胸を膨らませる猟兵を連れ、ポラリスが仙台駅を出発した。
ライララ・ラクイン
ウフフ、さあ皆さまそろそろ終点です私達の舞台はお楽しみ頂けましたでしょうか?
お楽しみ頂けたなら幸いですわ、最後の見世物として皆さまにもう一つ用意しております
どうぞこちらへ、展望室にて星空で踊る天使達の舞踏をご覧に入れますわ
ウフフ、嗚呼美しき反抗の天使達よ
如何ですか星空を見上げながら見る天使達の舞踏
皆さまを飽きさせない為に工夫を凝らしておりますの
さぁご飯とお飲物も天使達が運んで参りますわ
どうぞ素晴らしい星空と美しき天使達を眺めながらお食事をお楽しみください
ウフフ、何より美しき反抗を



 長距離夜行列車ポラリスが最後の荷積みを終えて仙台駅を発つ。
 レトロなコバルトブルーに染まる車輛が、一直線に引かれた白条を流星の如く疾らせ、秋深まる夜を往く姿が美しかろう。
 大きな車窓に飛ぶように流れる光を靜かに眺めたライララ・ラクイン(虚飾の枢機卿・f34708)は、銀糸の睫を瞬いた後、月色の瞳を乗客に結んだ。
「……ウフフ、さあ皆さま、夜越しの仮装行もそろそろ終点です」
 埒外の狂氣と邂逅したとは思えぬ程、花脣を滑る佳聲は穩やかで――。
 未だ動搖や緊張を心の片隅に残す乗客の前で莞爾(ニッコリ)と頬笑んだライララは、一人一人に丁寧に聲を掛けて回った。
「私達の舞台はお樂しみ頂けましたでしょうか?」
「ああ、凄かった……とてもリアルで、生々しくて……ドキドキしっ放しだったよ」
「ウフフ、お樂しみ頂けたなら幸いですわ」
 その喫驚こそ報酬と受け取った道化師は、折に白磁の繊手を通路へ、今やすっかり邪氣の失せたサロンカーへと乗客を導く。
「最後の見世物として、皆さまにもう一つご用意しております」
「――? まだ何かイベントがあるのかい?」
「どうぞこちらへ」
 而して乗客が上部展望室に至った時だった。
 車輛の天蓋に燦爛たる光が降り立つや、夜帳に双翼を広げた天使達が輕やかに華やかに舞い始める。
「ウフフ、嗚呼美しき反抗の天使達よ」
 滿天の星空を舞台に躍るは【反抗の天使達】(アーククラインズ)――。
 銀翼の少女に喚ばれた合計475体の光り輝く天使達は、天衣無縫に夜穹を舞って、時々その神々しい微笑を地上に降り注ぐのだ。
「如何ですか? 星空を見上げながら見る天使達の舞踏は」
「なんて幻想的な……沢山の天使が澄んだ夜空を泳いで……凄く綺麗だ!!」
 陶然と夜空を仰ぐ乗客を飽きさせない工夫も充分。
 ライララが命じれば、無垢なる天使達は次々と地上に降り立って料理と飲み物を運び、新たな喫驚と感動に包まれる乗客を持て成す。
「どうぞ、素晴らしい星空と美しき天使達を眺めながら、お食事をお樂しみください」
 この場に恐怖は一縷と無いと、あえかに咲うライララ。
 神秘的な美景と美味に漸う落ち着きを取り戻す乗客を見た少女は、くす、と竊笑して、
「ウフフ、何より美しき反抗を」
 星の瞬きほど幽かに、金絲雀の聲を囀るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
トリック・オア・トリート!

今度は季節に合わせて雪女の仮装ですよ!
ブルマの偉丈夫? ふーむ、お酒でも飲まれました?
さっきまで私がブルマの仮装をしていたので、光の加減か何かでしょうか!
他にも色々ありますよ!
色んなコスチューム姿を披露して、お祭りの勢いで誤魔化します!

中華服で中華料理を運んだり、天使の姿で歌ったり、雪女の姿でお菓子を食べたり、パイロットスーツで子供たちとヒーローごっこで遊んだりして賑やかします!
疲れたらシスター服に戻って一息ついて……え? これは仮装ではなく私の普段着です



 仙台駅を発った列車が北の大地を目指すに合わせ、装いを變える。
 宵の宴、これからの季節にピッタリな「雪女」に仮装したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、眞赭の鼻緒の下駄をかろり、純白の雪花を舞わせる着物を纏いつつ、莞爾たる笑顔を咲かせた。
「トリック・オア・トリート! 今度は和風にしてみましたよ!」
「うんうん、色っぽくていいねぇ。それじゃあお菓子も和風に、金平糖をどうぞ!」
 Here we go! と笑顔が交わるのは、彼女がすっかり乗客と打ち解けたから。
 擦れ違う人々と挨拶を交してはお菓子を交換して回ったオリヴィアは、車内を回る裡、浮かぬ顔でカウチに掛ける怪獣……いや、壮年の紳士に気付いて足を留めた。
「いかがされました? 折角の仮装列車ですのに、怪獣さんに元気が無くては!」
「聞いてくれ、雪女さん! 先刻、ブルマ姿の不気味な巨漢が居たんだ……!」
「ブルマの偉丈夫? ふーむ、お酒でも飲まれました?」
「ほ、ほんのちょっぴりさ! 酒酔いでも乗り物酔いでもない気持ち悪さだったよ!」
 おぞましいものを見たと頭を抱える男性に、小首を傾げて寄り添うオリヴィア。
 眼鏡の奥でキラリと輝く金瞳を細めた麗人は、かの男性が今宵、悪夢に魘されぬよう、敢えてブルマニアが犯した罪を負う事にした。
「さっきまで私がブルマの仮装をしていたので、光の加減か何かでしょうか!」
「まさか、こんな美女と変人を間違う事なんてありえない……あれは本当に慥かに……」
 而して瞼に刻まれた像を振り返らんとする男性には、更に機転を利かそう。
 オリヴィアは一旦ラウンジを離れると、別のコスチュームに着替えて再登場! 男性の目に焼き付いた“怪奇”を上書きする事にした。
「他にも色々ありますよ! さぁ、とことんハロウィンを樂しみましょう!」
 ある時は、豪勢な中華料理を運ぶ、深めのスリットが眩しいチャイナガール!
 またある時は、天上の歌聲で讃美歌を歌い上げる、神々しき白翼の天使!
 そうして頂戴したお菓子を袖から取り出して食べるは、美し妖し雪女!
 子供達のお休み前にはパイロットスーツでヒーローごっこをするキャバリア操縦士!
 乗客の恐怖や不安が大きな感動に書き換えられるまで、その麗姿に樣々な衣装を纏ってパーティーを賑やかしたオリヴィアは、一人一人が本当の笑顔を取り戻して寝台車に向かうまで見届けた。
「……ふぅ、そろそろ一息つきましょうか」
 眞夜中、ラウンジのバーカウンターに腰掛ける此度の姿は、慎み深い修道女。
 働き者の彼女には、バーテンダーが甘味をとハロウィンフラペチーノを差し出すが、
「此度の仮装もとてもよくお似合いですよ、シスター」
「……え? これは仮装ではなく私の普段着です」
「……えぇぇえーっ!?」
 と、聖女は宛ら万華鏡の如く、夜が明けるまで皆々を驚かせて樂しませるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
事件の後始末の件は紳士協会に応援を頼んでる。そっちは上手く行くだろうさ。
俺は仮装のまま、行儀悪く椅子に足を投げ出して帽子を目隠し代わりに仮眠。折角こんな格好なんだ。
アリス(ニコリネ)に声を掛けてお茶会でもしようと思ってね。
悪いが、着いたら起こしてくれ。

ダイニングでお茶会。
さて、アリス。白うさぎは事情があって来れないのが残念だが…お茶会を愉しもうか。
芝居めいた口調でニコリネは席に付かせて、カップに注いでいく。
暖めたカップに勢いよく注ぐ…だったか?少し高めの高度から跳ねないよう丁寧に。
さぁ、どうぞ。安心してくれたまえ。毒は入っていない。入れたのが俺だから味は保証しかねるけど、な?(悪戯っぽく笑う)



 猟兵も歷とした乗客にて、全室がスイートルームの客室を其々に宛がわれている。
 然しカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、夜にはバーとなるラウンジカーの一画で、革張りの椅子に長い脚を投げ出すようにして休んでいた。
 不思議の國の住民たる仮装はその儘、帽子を目隠し代わりに仮眠を取る――。
 猶も聡き耳に聽く靜粛は、今やコートの内ポケットに収められた【全時空紳士協会応援要請チケット】(ジェントルメンズ・ゴールドカード)によるものか――事件の後始末を紳士協会に頼んだカイムは、他人の仕事に口を出す性格でも無し、軈て訪れた靜默を成果と受け取ると、帽子の脇に覗く黑影に小さく言を添えた。
「……そっちも上手く行った樣で」
 構成員は総員115名。駅構内や車内で事態の収拾に当たった者の一人を労った麗人は、白手袋をした右手を飜然(ヒラリ)と翻し、もうひとつだけ頼み事をする。
「折角、こんな格好なんだ。仮装がてらアリスとお茶会でもしようと思ってね。悪いが、着いたら起こしてくれ」
 生憎、時計は持っていないのだと諧謔を零し、そう深くない眠りに就く。
 而して協会の者には目覚めを頼んだだけだったが、ダイニングカーを訪れた帽子屋は、不思議の國に迷い込んだ少女の姿で現れた花屋に、「手配が宜しい」と苦笑を零した。
 狂氣は取り除いたカイムだが、彼は物語の「いかれ帽子屋」を演じ切ろう。
「さて、アリス。白うさぎは事情があって来れないのが残念だが、お茶会を愉しもうか」
「お招きありがとうございます、素敵なお帽子のミスター」
 芝居めいた口調でニコリネを席に付かせれば、彼女も恭しくカーテシーをして。
 仮装列車を樂しもうという想いは同じく、よく似た紫苑色の瞳を結び合わせた二人は、テーブルに広がる色彩と甘い馨に花顔を綻ばせると、早速ハロウィンの茶会を始めた。
「温めたカップに勢いよく注ぐ……だったか?」
 少し高めの高度から跳ねないよう丁寧に、手首を柔かく使って紅茶を注ぐ。
 レトロアンティークなティーカップに滿ちる茜色には、ニコリネもほうっと吐息して、
「なんて良い香り……! ゴールデンドロップを頂けるなんて光栄だわ」
「さぁ、どうぞ。先ずは一杯、冷めないうちに」
 華奢な持ち手に繊指を添え、馨りごと味わうように口元に寄せた瞬間、同じくカップを持ったカイムが、ふうわと漾う湯気越しに科白を足す。
「安心してくれたまえ。毒は入っていない」
「毒? ――もう、ミスターったら!」
 一瞬、ドキッとして時を止めるニコリネに悪戯な微笑を注ぐ帽子屋。
 彼女に先んじて一口を含んだ彼は、濡れた紅脣の端を小気味佳く持ち上げ、
「淹れたのが俺だから味は保証しかねるけど、な?」
 御口に合いますやらと零す科白ひとつさえ艶麗に、アリスを翻弄するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
ふむ、なんか上手い方法…
せっかくいかにも忍者の格好してるし
ユキエ『エセ忍術でも披露する?』
Σエセじゃねーよ
(黒頭巾白い鸚鵡が流暢な人語で)
『えー鳥好きな皆様お立ち会い、このニンジャが何か見せるって』
…雑な客寄せするねぇー
デッキ車両であっという間に色んな鳥呼んで見せよう
お望みの鳥があればお目に掛けるし
(リクエストあれば
うん、御意にと返事。勿体ぶって巻物とかバサッてする)
>舞飛ぶUCの鳥はこの世界に合わせてCGやホログラムのよう
鳴き声は人語で音声もはっきり
ハッピーハロウィン!
終点まで楽しい旅を!と店員めいてアナウンス

『んー…ユキエは飛ばない』(トーゴの肩で羽繕いするのをヨシヨシと撫でて)

アドリブ可



 あれだけの変態怪奇にて、車内に残された爪痕は凄まじい。
 ブルマを履いた謎の男が居たのだと、尠くない乗客が不安を抱える様子を烱眼に捉えた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、布地に覆える口元に思案の聲を零した。
「ふむ、なんか上手い方法は……」
 云って、己の格好を見る。仮装列車に溶け込むよう、敢えて目立つ忍装束をしていたと生地を摘んだトーゴは、之を活かしてみるかと、密かに口角を持ち上げた。
「せっかくいかにも忍者の格好してるし――」
『エセ忍術でも披露する?』
「いやエセじゃねーよ」
 こちとら本職だと、肩口に留まれる黄芭旦のユキエに返そうとした矢先、揃いの黑頭巾を被る彼女が實に流暢な人語を澄み渡らせる。
 金絲雀にも大瑠璃にも劣らぬ美聲は、人々の耳を一気に惹き付けよう。
『えー鳥好きな皆樣お立ち会い、このニンジャが何か見せるって』
 ニンジャが? まさかニンジュツを? ニンポーを披露する!?
 果して何を見せて呉れるのかと皆々が好奇の目を集めれば、その視線を一手に引受けたトーゴが、ぱちくりと目を瞬きつつ、隣する旅伴に皮肉を零した。
「……雑な客寄せするねぇー」
 街商だってもっと……と言いつつ、向かう先は車輛後方のデッキ部。
 客室より開けた場所に位置取ったトーゴは、止まり木代わりに両手を大きく広げると、【鳥寄せ“沙謡鳥”(サヨドリ)】――佳脣に紡ぐ言の葉に鳥形の霊を降ろし始めた。
「よし、色んな鳥を呼んで見せよう。お望みの鳥があればお目に掛けるし」
 淸々しいテノールに忽ち覆い被さる羽音と囀り、そして色彩!
 夜越しの仮装列車に相應しく、様々な種類の鳥をCGやホログラムのように煌かせつつ舞わせる彼には、パッと笑顔を咲かせた乗客が次々にリクエストを投げる。
「とっても綺麗……! 尾羽が綺麗で、声真似が得意なコトドリって呼べる?」
「うん、喚べる」
「わたしは黄緑と青色のセキセイインコがいいな!」
「勿論、御意に」
 勿体ぶるように巻物を取り出し、バサッと広げる仕草も感興を煽ろう。
 トーゴの聲ひとつで羽搏き、唄い、宙空を飛び回った鳥達は、鈴のように澄める声で、ハッキリと人語を――まるで乗員の如き流暢なアナウンスを囀った。
「ハッピーハロウィン! 終点まで樂しい旅を!」
 わぁ、と湧き上がる喝采と共に鳥達が飛び立てば、ユキエはトーゴの肩で羽繕いして、
『んー……ユキエは飛ばない』
 慣れた所が良いと言う彼女を、彼は大きな掌でヨシヨシと撫でてやるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
宝物は無事に見つけられたようですね
寝台車で空になった宝箱を見て一安心

えぇ、彼等が楽しんだ後は私達も楽しませて貰いましょう
列車の中でも美味しい料理が楽しめるそうです
私達もそちらを頂きましょうか

……ありがとうございます
食事に向かう前に服を整えられれば微笑むも相手の言葉には照れ笑いして
私がそうならば、貴方もかっこよくあらねばなりませんね
先程自分がして貰った時のように頭のターバンや服を整える

乗客に話し掛けられれば、再度「親分」を演じて
諸君、楽しんで貰えただろうか?
ハロウィンの夜はまだ終わらない、楽しむが良い

ふふ……倫太郎のお腹は待ちきれないようですね
何を頂きましょう?お酒も飲みますか?


篝・倫太郎
【華禱】
寝台車のあちこちに仕掛けてあった宝箱
それらが無事発見されてるのを確認
回収されなかったのは漣でポーチの中にこっそり回収

もう、随分と夜も更けてるし
皆のお陰でだいぶ落ち着いてるし……
折角だから俺達も遅くなったけどハロウィン楽しもうぜ?
つか、滅茶苦茶腹が減ってんだけど、俺

そんな風に言いながら戦闘で乱れた夜彦の服を整える
滅茶苦茶格好良いはずの頭目の服が乱れてたら
格好良さ半減しちゃうからな
おっと、ありがとさん

俺の服装を整えてくれた夜彦にお礼を告げた後
通りすがりの乗客に
お宝見つけたと話しかけられれば

ハッピーハロウィン!素敵な夜をな!
そう笑う

腹の虫ー!お前が応えるなよ、ばかー!
夜彦も笑ってないでよ……



 華禱海賊團が寝台車に隠した宝箱は、無事、小さな冒険者達によって開けられていた。
 とっておきの宝物を用意していた海賊の船長こと月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、空になった宝箱を何處かホッとした表情で覗き込む。
「難易度に合わせて宝箱を用意しておいて良かったですね」
「ああ、大海賊の秘宝が簡單に手に入っても味気ねーもん」
 小さな子供でも見つけられるよう置かれた宝箱もあれば、少年少女が背伸びしても見つけられない宝箱があるのも良かったと、鍵の掛かったままの宝箱を【漣】――無窮の電脳空間が広がるポーチの中へ仕舞った篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、共に余興を成功させた夜彦とコツンと拳を突き合わせた。
 列車が北の大地を目指すに、穩やかな空気を纏いつつあるとは直ぐに気付こう。
 倫太郎は開いた拳をヒラリと宙に游がせながら言を足して、
「もう随分と夜も更けてきたし、仲間のお陰で車内もだいぶ落ち着いたし……折角だから俺達もハロウィン樂しもうぜ? 遅くなっちまったけど、まだ時間はあるだろ」
「えぇ、皆さんに樂しんで頂いた後は、私達も樂しませて貰いましょう」
 任務は終了。
 而して猟兵も歷とした乗客にて、夜越しの仮装列車を滿喫しようと咲みを交した夜彦と倫太郎は、寝台車からダイニングカーへと移動を始めた。
「つか、滅茶苦茶腹が減ってんだけど、俺」
「列車の中でも美味しい料理が樂しめるそうです。私達もそちらを頂きましょう」
 地元の食材を使った料理や地酒が美味らしいと付け加えれば、足は早まろうか。
 ラグジュアリーな照明に照らされる通路を歩いた二人は、不圖、車窓に映る互いの姿を見遣り、先刻の戰闘で随分と“海賊らしくなった”と苦笑を揃える。
「凄まじい狂氣の荒波に揉まれましたからね……」
「滅茶苦茶格好良いはずの頭目の服が亂れてたら、格好良さ半減しちゃうから。ほら」
「……ありがとうございます」
 髑髏マークが映えるよう海賊帽の向きを確かめ、衣装を整える。
 倫太郎の親切を微笑して受け取った夜彦は、耳に届く科白には照れ笑いして、
「私がそうならば、貴方もかっこよくあらねばなりませんね」
 と、己も彼がしてくれたように、頭に巻いたターバンや腰の布が勇ましく映えるよう、丁寧に整えてやる。
「おっと、ありがとさん」
 倫太郎がキャプテンの心遣いに礼を告げれば、すっかり男を上げた海賊の前には、彼等の宝箱から秘宝を手に入れた子供達がやって來て、嬉しそうにお宝自慢をし始めた。
「みてみて。かいていにしずんでいたでんせつのけん!」
「これね。にんげんにこいをした、にんぎょのたてごとなんだって」
「ぼうろ。ぼーろ!」
 大海賊が七海から集めた秘宝やお菓子を見せに集まるキッズ&ベビー達。
 思わず頬が緩むところ、夜彦は海賊の親分らしくキリリとした表情で賞讃を送り、
「諸君、樂しんで貰えただろうか? 秘宝の呪いを撥ね退けるとは勇敢な」
「それだけ優秀なら、俺達の海賊團に入れるかもな!」
 と、倫太郎も長躯を屈めてチビッコ達を褒めてやる。
 然れば魔女や狼男に扮していた彼等もすっかり海賊に魅了されよう。
 これから大航海の冒険物語をするのだとはしゃぐ子供達を、二人は快く送り出して、
「ハロウィンの夜はまだ終わらない、存分に樂しむが良い」
「ハッピーハロウィン! 素敵な夜をな!」
 と、パタパタ駆け行く背に笑顔を置いた後は、互いに細めた瞳を結び合せるのだった。

 而して爪先は暖色煌めく食堂車へ――遅めのディナーに与る。
「猟兵の皆樣。この度は誠にありがとうございました」
 お陰でダイヤ通りの運行がかなっていると、謝意を示しに現れた車掌と少々会話する。
 夜行列車ポラリスは、このまま予定通り夜明けに函館に、翌11時には札幌に到着すると説明する間に運ばれる和のコース料理は、旬の食材に創意工夫を凝らした先付けに、鮮度抜群の寿司のお凌ぎと、二人の前に豊かな色彩を広げていく。
 料理の中にも赤や黄色の秋色が覗くのがご愛嬌。
 二人が瞳を細めて皿を見れば、車掌は深々と礼をして旅の充実を祈り、
「では、ごゆっくり。夜越しのハロウィン列車をお樂しみ下さい」
 ――ぐう、と。
 對面の夜彦にも車掌にもハッキリと聽こえる音量で「腹の虫」が返事をすれば、これにぎょっとした倫太郎が腹部を擦って宥めた。
「腹の虫ー! お前が応えるなよ、ばかー!」
「ふふ……倫太郎のお腹は待ちきれないようですね」
「夜彦も笑ってないでよ……これ充分な越権行為なんだから……」
「では、ご機嫌を直して貰えるよう、そろそろ頂きましょうか」
 吃々と竊笑しつつ、夜彦が箸を取れば至福の時間は始まろう。
 いただきます、と手を合わせた倫太郎は、それから皿まで食べる勢いで食べ始めた。
「お酒も飲みますか?」
「もっちろん」
 今夜はとことん舌を甘やかせてやる心算(つもり)にて、地酒も味わわねばなるまい。
 深秋ならではの美味を堪能する倫太郎の表情こそ報酬と、翠緑の麗瞳を細めた夜彦は、瞳に映る全てをご馳走と頂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月25日


挿絵イラスト