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なんでもない日

#UDCアース

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#UDCアース


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●脈絡のない洪水
 恐らく誰も予期することのできぬものであったことだろう。
 世は事もなし。
 平々凡々に毎日が続くと人は理由なく信じている。今日という日が特別でないからこそ、明日もまた同様に訪れるものであると。
 けれど、それは誤ちである。

 皮肉なことに非日常に叩き込まれて初めて人は、明日が保証されていないことを知るのだ。
 だが、それを誰が責めることができるだろう。
「ああ、そうだよ。誰も責めることはできやしない。だから、なんでもない日を永遠に続けるためには特別な日を根こそぎ狩り尽くせばいい」
 セーラー服が風にはためく。
 オーバーサイズのコートを羽織り、手にしたカランビットナイフをくるくると弄びながら、白昼の交差点を見下ろす。

 誰もが今日という日を自覚していない。
 なんでもない日がどれだけ特別なことの連続であるかを知らない。
 別に知らしめたいわけじゃあないのだ。
 セーラー服の彼女は、そのなんでもない日をこそ憎む。
 特別な毎日を送りたいと願えば、それはなんでもない日に様変わりする。なんでもない日があるから、特別な日がある。
 毎日が特別に成れば、それは平坦な日常に堕ちるだけだ。

「だから、逆に特別を永遠にしてしまえばいい。さあ、あの日を繰り返そう。ボクが嘗て成すことのできなかったことを、その特別を再現しよう」
 彼女の名は『月蝕』。
 本名ではない。オブリビオンとなった彼女に本来の名前は無い。失われてしまっている。
 かつて邪神復活のために猟奇殺人事件を起こした少女であるとしかUDC組織には伝わっていない。
 逮捕される直前に、今まさに彼女が立っている高層ビルより身を投げて自死に至ったのである。

 過去の化身となった彼女が行動するのは、かつて成し遂げられなかった邪神復活のための儀式を完遂するためだけである。
『月蝕』が手を掲げる。
 手にしたカランビットナイフが太陽光を受けて虹色に輝く。
「月食の時までに生命を焚べよう。わかるだろう、諸君。その身に邪神の力を降ろし、その力で邪神と戦う諸君らであれば」
『月蝕』の背後にずらりと居並ぶ兵士たち。
 コンバットスーツに身を包み、ゴーグルで顔を覆った銃火器を伴う数多の兵士たちは、UDCアースであっても異様であった。

 彼らは『奇跡亡き夜の囚人』である。
 邪神の力を持って邪神を制する兵士を生み出すという実験の被害者たちだ。言うまでもなく実験は失敗している。邪神に対抗するために生まれた者たちは、奇しくも邪神の影を伸ばす尖兵と成り果てた。
 首輪型制御器の警告ランプが虚しく輝き続けてる。
「――」
「希望などないだろう。あるのは絶望だけだ。諸君らはボクと違い、不運であっただけだ。けれど、ボクが約束しよう。この儀式が完遂されれば、君たちは特別に不運な存在ではなくなる」
 そう、特別な日をなんでもない日にするように。
 あらゆる生命を『奇跡亡き夜の囚人』たちが辿った不運に叩き落とす。そうすれば、彼らは己たちを縛る哀れなる末路を忘れることができる。
『月蝕』と『奇跡亡き夜の囚人』たちは高層ビルの屋上から眼下を見やる。

 そこにあったのは、日の下でなんでもないという特別を理解せずに安穏と生きる生命たち。許しがたい。膨れ上がる憎悪はとめどなく。
 そして狂気をはらんだ瞳が告げる。
「塗りつぶそう。彼らが謳歌しているなんでもない日を。悪夢という名の影で――」

●遍く者を想う
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はUDCアース。となる街中の交差点に難の脈絡もなく、突然、UDC怪物が洪水の如く溢れ出す現象が発生してしまうのです」
 ナイアルテの言葉は、あまりにも荒唐無稽であった。
 UDC怪物が関係する事件には、必ず何らかの因果がある。
 邪神復活の儀式であるとか、カルト集団の暴走であるとか。そういった兆候があるはずなのだ。
 今までのUDCアースで起こるオブリビオン関連の事件にはそうした兆候があった。
 けれど、グリモアの予知に引っかかったのは、突如としてUDC怪物が洪水のように溢れ出るという光景のみである。

「何かしらの原因はあるはずなのです。ですが、今回はそれを調べる余裕もなく……」
 それは即ち一刻も早く事態を収拾せねばならないということである。
 また同時に街中に現れたということは溢れ出したUDC怪物より人々を救わなければならない。
 人々の目にUDC怪物を認めさせてしまったということは、もはやどうしようもないことである。
「UDC怪物たちを打倒し、その後に事件を目撃した人々への対応を行わなければなりません。必要であれば、UDC組織から貸与される記憶消去銃を使っても構いません」

 人々の平穏を護るためには、UDCの存在は隠さなければならない。
 そのために猟兵たちは急ぎ、交差点に溢れたUDC怪物たちを打倒しなければならないのだ。
「溢れるUDC怪物は『希望亡き夜の囚人』と呼ばれる、かつてUDC組織で邪神の力を持って邪神を打倒する兵士を生み出す実験の失敗によって死亡した兵士の成れの果てです」
 もとより集団で戦うことを前提とした彼らの戦力は洪水のように溢れかえっていて、数で圧倒してくるだろう。
 そして、同時に彼らを率いている、ひときわ強力なUDCが出現する。

「それが『月蝕』と呼ばれるUDC。彼女の姿を見た人間は即座に発狂し、場合によっては『人間をUDC怪物に変えてしまう』のです。彼女が現れるまでに人々を可能な限り避難させ、目に触れさせないようにしなければなりません」
 ナイアルテは頭を下げる。
 突如として湧いた事件。そして、事前に防ぐことのできない出来事。予知と呼ぶにはあまりにも拙いものである。
「どうかお願いいたします。UDC怪物によって脅かされる人々の安寧……なんでもない日を護ってください」

 そう、なんでもない日……そんな毎日を送る人々を護るために猟兵たちは戦わなければならないのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 今回はUDCアースにて起こる突如として溢れるUDC怪物から人々を護るシナリオになります。
 原因は不明ですが、人が溢れる交差点の中心から現れるUDC怪物と、UDC怪物の首魁。
 これらを目にした人々はUDCの狂気に囚われてしまうことでしょう。
 平穏ななんでもない日が一変する。その日常を護るための戦いとなります。

●第一章
 集団戦です。
 人で混雑する交差点の中心から溢れるようにして突然現れたUDC怪物『希望亡き夜の囚人』たちとの戦いになります。
 人々を守りながら、また避難させながらの戦いとなります。
 当然のことながら、人々はパニックに陥っていますし、また同時に現実として受け入れられない者もいるでしょう。
 また何かの撮影だと思ってスマートフォンで記録を取ろうとする者だっているでしょう。
 UDC怪物たちの存在が明るみになることは避けなければなりません。

●第二章
 ボス戦です。
 ひときわ強力なUDC怪物『月蝕』が出現します。
 彼女を見た人間は即座に『UDC怪物に変えられて』しまいます。前章までに避難させた人々は難を逃れますが、避難できなかった、しなかった人々は『UDC怪物に変えられて』、皆さんへと襲いかかってくるでしょう。
 人々を避難させる、または人々の目に『月蝕』を触れさせないなど言った工夫が必要となるでしょう。

●第三章
 日常です。
 UDCの秘密を極力守れるように、現場で事件を目撃した人々への対応を行いましょう。
 スマートフォンで動画や写真を取っている人もいるでしょうし、SNSで拡散している人もいるでしょう。
 単純にUDC怪物を見てしまって現実と区別のつかなくなっている人もいます。
 そんな彼らのケアを行ってください。
 必要であればUDC組織から貸与される記憶消去銃を使っても構いません。人々の記憶にUDC怪物事件が残るほうが問題なのですから。

 それではUDCアースにて突如起こる事件を解決する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『奇跡亡き夜の囚人』

POW   :    乱心『明けぬ夜の旅』
【失われたはずの自我が不意】に覚醒して【邪神の力を完全制御した闇を纏う姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    汚染拡大『数珠繋ぎの不運』
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【影人間】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    変異侵食『悪夢が始まった日』
自身が戦闘で瀕死になると【全身から無数の影人間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:nii-otto

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『それ』は突如として起こった。
 まるで最初からそこに居たかのように、自然に立っていたのだ。
 サバイバルゲームに興じる人のように、『そういう』ファッションなのだと言われれば、そういう人もいるのかもしれないと思えるほどに自然に『それ』は居たのだ。
 サバイバルスーツに身を包み、ゴーグルで目元を隠し、口元は防毒マスクのようなものが覆っている。
 手にした銃は遠目から見れば実銃だと思ったかも知れないが、此処は白昼の交差点である。
「えーなになに? なんかの撮影?」
「うっわ、やっべ。本格的じゃん」
「……」
「どうなってんだよ、昼間っぱらから。常識ってものがないのか」
『それ』――UDC怪物『希望亡き夜の囚人』を見た者たちの反応は三者三様である。
 感心を持つ者、無関心な者、異を唱える者。

 だが、彼らは知らないのだ。
『希望亡き夜の囚人』たちがまるで波のように静かに、けれど突如として溢れかえるのを。
 無数に。まるで影のように、コピー機から紙が壊れたように印刷されるように『希望亡き夜の囚人』たちは交差点に溢れかえっていく。
 混乱すらない。
 未だ人々は笑う者、関心を向けぬ者と誰一人として危機感を覚えていなかったのだ。
「――」
 声なき声。
 首にはめられた制御器が警告を発するように赤く明滅し、人々がモデルガンだと思っていた銃を構える。
 その段階になっても人々は、まだ今日という日がなんでもない日なのだと信じて疑わないのであった――。
大町・詩乃
ほとぼりが冷めた頃にひっそり参加したら大変な事に(わたわた💦)。
怪物退治と人々の避難・保護を同時並行。
仕方ありません、ナイアルテさんに焔天武后を送り込んで貰ってUC使用。

搭載したレーザー射撃・スナイパー・範囲攻撃の精密射撃で怪物達のみを撃ち抜き、大型化した雷月に炎の属性攻撃を宿してのなぎ払い・焼却で倒す。

「ロボット映画の実写版撮影中です。模擬弾が飛び交いますので避難願います。」と人々に呼び掛け、催眠術・結界術・高速詠唱で『ここから避難しなければ』と暗示が掛かる強制人除け結界形成して避難誘導。

オーラ防御を纏わせた天耀鏡を巨大化させて人々と詩乃を盾受けでかばい、逃げ遅れた人は念動力で後押しです。



 ただ不運であっただけ。
 それだけの理由で生命が絶たれたのであれば、それは哀れと呼ぶに相応しい最期であったのだろう。
 けれど、邪神と戦うために生み出され、邪神のちからをもって不運の中に死する存在があるのだとしたら、不運の一言で生命が終わるのは許しがたいことであったのだろう。
 それゆえに白昼の交差点に溢れる『希望亡き夜の囚人』たちは、なんでもない日を謳歌する人々に銃口を向ける。
「え、なになに? ウケるんですけど、なんか銃向けられてる」
 UDCアースに住まう人々は日常を過ごしているだけだ。
 誰が想像するだろうか。

 この平穏の中で銃を突きつけられるなどと。
 視界では正しく理解している。けれど、それがまさに自分の生命を奪おうとしているなどと理解できようはずもない。
 彼らは何も悪くはない。
「――不運だっただけだ」
『希望亡き夜の囚人』たちの手にした銃より弾丸が放たれ、人々の生命を奪わんとするその瞬間に彼らはつぶやいた。
 声無き声ではなく。
 ただ、己たちと同じ不運に人々を叩き落さんとする狂気によってのみ、その言葉は理性的であったのだ。

 しかし、その弾丸は弾かれる。
 巨大な鋼鉄の掌が、銃弾から人々を護っている。
 見上げればそこにあるのは、5m級の戦術兵器。UDCアースには存在しない、架空の物語の中だけでしか見ることの出来ないまさに『セット』の一部とでも言うべき存在が、『希望亡き夜の囚人』たちの放った弾丸から人々を護ったのだ。
「ロボット映画の実写版撮影中です。模擬弾が飛び交いますので避難願います」
 その言葉は、あまりにも非日常であった。
 けれど、その言葉は人々に奇妙な説得力を持って伝わることだろう。
「映画かよー! 本物かと思った」
「ねー、びっくりしちゃった。どっちに離れればいいんですか?」
 人々はその声の主、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)に声を掛ける。

 彼女とて猟兵である。
 そして、人間ではなく神性宿すほんとうの意味での神なのだ。けれど、それを感じさせぬ詩乃は人々にあちらですと避難誘導を開始する。
「頼みましたよ、焔天武后」
 彼女は脳波と神力によってコントロールされる焔天請来(エンテンショウライ)のユーベルコードに寄って、スーパーロボットである『焔天武后』を操り、人々を護る。

 彼らにとってこれは非日常であったかもしれない。
 けれど、まだ日常の延長線上に在る。逸脱した狂気に彩られた非日常ではない。ここがギリギリだと詩乃は理解しているだろう。
「さあ、こちらです。慌てなくて大丈夫です。誘導にしたがってください」
 詩乃の言葉はやはり不思議な説得力を持っていた。
 それは彼女の神性であり、同時に催眠術や結界によって人払の暗示を掛けた結界によって為せる業だ。

 人々はUDC怪物である『希望亡き夜の囚人』の放つ弾丸から結界に守られ、次々に交差点から誘導されていく。
「やはり数が……! 避難が間に合わない……!」
 しかし、それで詩乃は諦めない。
 誰一人として失わせてはならない。誰の日常も失わせてはいけない。その思いだけが彼女の中にある。

 なんでもない日。

 それがどれだけ大切で、どれだけ得難いものであるかを彼女は知っている。
 例えそれがUDC蠢く、薄氷を踏むような、儚い平穏なのだとしても。
 それを護るために詩乃は猟兵として戦いに挑んでいるのだ。焔天武后が搭載したレーザー射撃に寄って『希望亡き夜の囚人』たちを討滅していく。
 炎を纏う懐剣の一閃が波のように溢れるUDC怪物たちを吹き飛ばす。
「ですが、それでも。人の営みに神は介在しなくていい。見守るだけでいい。それだけで人は歩んでいけるのだと私は知っています」
 だからこそ、詩乃は戦う。

 かけがえのないものを護るために。
 誰かの日常を護るという使命に詩乃の心は燃える。
 それを示すように焔天武后は戦場と成った交差点において人々を守り、戦うスーパーロボットとして見事に『セット』という役割を果たすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
戦うにも数が多いってのにまず街の人を避難させないと、だよなー
UDCの所為かあんまり動揺してないようだが…
【地形の利用/情報収集】で建物伝いに移動し危険な方角を割り出し避難方向を町の人に示す
「あっちはかなりガタついてるからさ、それ以外の方へ行ってくれる?流れ弾とか危ないし
のんきに撮影してるなら【念動力】で小石程度をスマホに当て故障狙う

>敵
観衆の目をくぐって【スライディングと忍び足】で接近
【だまし討ち】で故意に敵に囲まれUCで一気に動きを鈍らせてクナイで攻撃
遠目の敵には自分の腕を斬り血を付け帯電させた手裏剣を【投擲】即追随しクナイで【串刺し/暗殺】
敵との距離により猫目雲霧も槍に変え応戦

アドリブ可



 UDCアースの交差点は人でごった返していた。
 一定の秩序があるのだとしても、見下ろす先にある人の動きは混沌そのものである。そこに現れたUDC怪物『希望亡き夜の囚人』たちは猟兵の介入に寄って、いよいよその真価を発揮しようとしていた。
 彼らは己が瀕死の状態になると無数の影人間たちを繰り出してくる。
 それは数で圧倒する彼らにとって、さらなる数の暴威を齎すものであり、猟兵たちがどれだけ彼らを排除せんとしても、溢れる津波のように交差点から飛び出していくのだ。
「うーわ、なんだよこれ。撮影って本当なのか? とりま、撮影しとくっしょ!」
 人々に未だ危機感はない。
 猟兵たちが、なんでもない日を守ろうとするがゆえに、彼らは未だ日常と地続きの日常を謳歌している。

 それこそ、この状況を彼らは楽しんでいるようにも、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)には思えたことだろう。
「戦うにも数が多いってのに」
 まずは街の人々をUDC怪物たちから避難させないといけない。
 例え事件が収束しても、人々の記憶にUDC怪物の存在が刻まれているのならば、それがきっかけとなった邪神は影を伸ばすだろう。
 そうならないためにもトーゴたち猟兵は、人々の記憶に残らぬように善処しなければならない。

 トーゴは建物を伝うように壁を蹴り、屋上を飛び跳ね周囲を見回す。
 人々は混乱こそしてはいないが、避難の誘導に戸惑っている。それもそうだろう。誰もが切羽詰まっていない。走る者もいれば、のんびりとした調子で歩いて居る者たちだっている。
「平和な証なのかもしれないけれど……これじゃあ、平和に呆けていると言われてもしかたないかもしれないな」
 トーゴの見やる視線の先には拓けた道がない。
 どこもかしこも人々でごった返している。それに拍車を掛けるように『希望亡き夜の囚人』たちが銃を構えて迫ってきている。

 猶予がないことを悟ったトーゴは、スマホを構えて事態を撮影しようとしている人々に小石を念動力で操り、叩き落としながら言う。
「あっちはかなりガタついているからさ、それ以外の方へ行ってくれる?」
 トーゴの言葉よりもスマートフォンが壊れたことを嘆く若者たち。
 仕方のないこととは言え、トーゴは仕方ないと人々の流れに逆らうように、そして同時にその隙間を縫うようにして走る。

 人々が『希望亡き夜の囚人』たちに追いつかれるのは最早、避けられない。
 ならば迎え撃つしかないのだ。
「此処から先は行かせない……みんなあんまり動揺していないにしても、これこそが平和だっていうんならさ!」
 放たれるクナイが『希望亡き夜の囚人』たちの頭蓋を割り、さらに溢れる影人間たちを手にした六尺手拭いを念動力で固くした一閃で薙ぎ払う。
「――私達の不運は、起こるべくして起こったこと。何も変わらない。他の誰とも変わらない。けれど、不運であったと言われるのならば」
『希望亡き夜の囚人』たちの首にある制御器が明滅する。

 彼らにとって、今を生きる平穏貪る人々こそが仇敵なのであろう。
 ゴーグルの奥に在るのは狂気だけだ。
 それをトーゴは憐れむだろうか。
 不運の一言で終わる人生。それはもしかしたのならば、己にも在り得た最期であったのかもしれない。
「けど、そんなの今を生きる人にはかんけーねーだろ!」
 トーゴの瞳がユーベルコードに輝き、サイキックブラストの一撃が高圧電流となってUDC怪物たちを一瞬の内に感電させ、その動きを止める。

 電柱を蹴ってトーゴの体が宙に舞う。
 彼の瞳が見据えるのは赤い制御器。瀕死の状態にしてしまうと『希望亡き夜の囚人』たちは影人間を噴出させてしまう。
「なら、一瞬で!」
 サイキックブラストの電流で動きを止めた『希望亡き夜の囚人』たちへと手裏剣を放ち、疾風迅雷の如き踏み込みで持ってクナイの一閃でもって首の制御器を破壊する。

「――わかっているよ。それが不運だってな」
 けれど、トーゴは憐れむことはしないかもしれない。
 彼らの生命は確かに不運で終わったのかも知れない。けれど、それを決意させたのは、決して悪いことではなく。
 邪神と戦うためにと決意したれっきとした覚悟であったはずなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
はーい、皆さん。パニック映画の撮影中ですからね。本気で怖がって逃げてくださいね。現在撮影中ですから、勝手に写真を撮ったりネットに流すのは駄目ですよ。弁護士の人とお話することになりますからね。
「コミュ力」ならこんなところかしら。要避難者がいなくなったら「結界術」で人払いして。アヤメと羅?は避難の方をよろしく。

さて、「召喚術」と「降霊」で執金剛神降臨。
あたしの薙刀を振るう動きに合わせて、「怪力」での「破魔」の独鈷杵で、UDC怪物を確実に仕留めてもらうわ。
基本的には密集しているところへの突撃。「なぎ払い」、「貫通攻撃」でまとめて「串刺し」に。
全く、きりがないわね、これ。弱音吐いてる場合じゃないか。



「――そうだ。オレは、俺たちは、我らは、邪神を討つ者」
 UDC怪物たち『希望亡き夜の囚人』たちは、その瞳に理性を取り戻す。
 それは一瞬の出来事であったことだろう。
 本来、彼らは実験体である。不運にも邪神のちからを制御できずに死する者たちであった。
 理論上は可能であったのだろう。
 邪神の力を制御下において、その力を邪神に向ける。本来であれば、それはこのような自体において力を発揮するはずだったのだ。

 けれど、それはオブリビオン化した彼らには関係ない。
 完全制御できたことが、オブリビオン化したことによる恩恵であったのならば皮肉でしかなかった。
「――闇を払うためには、闇をまとえばいい」
 超絶なる力に満ちた『希望亡き夜の囚人』たちは闇を纏う姿へと変貌を遂げ、その瞳を理性を覆う狂気に輝かせ、銃を掲げる。
 放たれる影の弾丸は避難する人々に悲鳴を挙げさせる。

「な、なんだよあれ! おい! どうなってんだよ、これ!」
 本物の銃声だと人々は漸く理解したのだ。
 これは本当に映画の撮影なのかと。しかし、そのパニックを逆に利用する者がいた。
「はーい、皆さん。パニック映画の撮影中ですからね。本気で怖がって逃げてくださいね。現在撮影中ですから」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はパニックに陥りかけた人々に声をかける。
 彼女の言葉は、真実ではない。
 けれど、銃声という現実を前にさらに荒唐無稽な虚構をぶつけ、相殺する。人はパニックに陥っている時に落ち着けと言われて落ち着くことなどできない。

 ならば、そのパニックを肯定してやればいい。
 否定することで加速するというのならば、肯定することで脳の処理を一時的に止めるのだ。
「勝手に写真撮ったり、ネットに流すのはダメですよ。弁護士の人とお話することになりますからね」
 ゆかりの言葉はもっともらしい言葉の羅列であった。
 それが事実であるかどうかは関係ない。
 そうあるかもしれないと思わせることが重要であった。ゆかりは己の式神たちに人々を避難誘導させ、己は結界で人払いを行う。

 銃声が響き渡る交差点にいまだ人は逃げ惑っている。
「オン ウーン ソワカ。四方の諸仏に請い願い奉る。其の御慈悲大慈悲を以ちて、此の時此の場に御身の救いの御手を遣わしめ給え!」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
 執金剛神降臨(シュウコンゴウシンコウリン)によって招来された執金剛神が彼女の倍はあろうかという腕を古い上げる。
「どれだけ不運にまみれていたとしても。それで人に触れてはならないということぐらいはわかるでしょうに」
 ゆかりは迫りくる『希望亡き夜の囚人』たちを見据える。

 闇を纏う弾丸を執金剛神の腕が防ぎ、振り払う。
 手にした独鈷杵がふるわれる。それはゆかりの動きをトレースするものであり、いわば巨大な外装を纏うようなものであったことだろう。
 次々と交差点の中心から現れるUDC怪物たち。
 彼らは再現がないようにさえ思えるであろう。この儀式を執り行っている中心的UDC怪物がいるはずである。
「その中心が見えない……全く、きりがないわね、これ」
 ゆかりにしては弱音がこぼれてしまう。

 それほどに圧倒的な物量なのだ。
「一気に、確実に」
 彼女の手にした薙刀が横薙ぎにふるわれた瞬間、執金剛神の独鈷杵もまた横薙ぎにUDC怪物たちを吹き飛ばす。
 薙ぎ払っても、薙ぎ払っても溢れ出る怪物たち。
 しかし、ゆかりの振るうユーベルコードは徐々にUDC怪物の影の津波を押し返していくことだろう。
「弱音吐いてる場合じゃないか……UDC怪物は余さず残さずすべて討滅する」

 UDCアースがどれだけタイトロープの如きバランスで成り立っているかをゆかりは思い知り、同時にこの平穏をこそ護ることが来たるべき邪神たちとの戦いに楔を打ち込むことだと信じて、己のユーベルコードの輝きを増すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
◇連携アドリブOK
知覚端子を展開させて情報収集しつつ、アサルトライフルで制圧射撃。
一連の出来事を撮影しようとしている人々のスマートフォン、及び電子機器にハッキングをかけて情報規制させてもらうよ。
近くの監視カメラのデータも瞬間思考を上げて映り込んだUDCにマスク処理――と言った感じか。
スマートフォンが使えなくなったこと、UDCそのものにパニックになっている人間も避難させねばならんな。

ん、撮影? まあ――そんな所ね。リアルな反応が撮りたかったとかそんな所かしらね。ああそう、私服なのだけれど小道具管理兼、警備員なの。撮影とはいえ危険だから、カメラからフェードアウトするように逃げてくれたら嬉しいわ。



 それは数珠つなぎの様相を呈していた。
 猟兵たちとオブリビオンの間には未だ隔絶した力の差がある。過去の化身たるオブリビオンの力は強大であり、強力な個体は猟兵単一の実力を凌駕するものであった。
 しかし、猟兵たちは入れ替わり立ち代わり、紡ぐようにしてこれまでにも強大な敵を討ってきた。

 まさに数珠つなぎ。
 UDC怪物『希望亡き夜の囚人』たちもまたそうであったのだ。倒された個体に触れ、影人間へと変性させていく。
「――」
 それは声無き声であったけれど、それでも数という優位を覆させぬという意志を感じさせるものであった。
 次々と倒れた『希望亡き夜の囚人』たちが影人間として立ち上がってくる。まさに無限に湧き上がる悪意と狂気であった。

 マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)は展開されたナノマシン群から得られる情報により、それを知る。
「厄介極まりないユーベルコードだな」
 彼女の瞳が見るのは、『希望亡き夜の囚人』たちのユーベルコードに寄って、霧消しかけた個体を無理やり影人間として戦力に成立させる現象であった。
 まさに不滅の軍隊。
 個体としての能力が落ちるのだとしても、影人間は未だ数の脅威として数えられる。

 だからこそ、彼女はアサルトライフルの制圧射撃で大波の如き進軍を防ぐのだ。
 なんでもない日。
 それは彼女にとっては如何なる意味を持つであろうか。
 彼女にとってのなんでもない日という特別はきっと、己を施設から引き上げてくれたヒトの手のぬくもりであったのかもしれない。
 永遠に失われてしまったものであるけれど、あの炎を未だに忘れることはないだろう。
「私が今できることは」
 その瞳がユーベルコードに輝く。

 自分に出来ることは何か。Freyja(フレイヤ)――女神の名を関するユーベルコードは、彼女の中にある、彼女ではない誰かから与えられた優しさを増幅させる。
「な、なんだ……スマホが壊れちまったのか……? これだけの騒動だってのに……!」
 マホルニアはアサルトライフルで『希望亡き夜の囚人』たちを牽制しながら、未だ避難に遅れながら、この光景を映画の撮影だと信じ切っているのんきな人々の言葉を聞く。

 彼らはこんな機会はないとばかりに避難誘導に従わずに、今という非日常をカメラに収めるべくスマートフォンを掲げている。
 しかし、そこに収まるべきものは何もない。
 マホルニアのナノマシン群によって彼らのスマートフォンや電子機器はハッキングされ、情報規制を強いられているのだ。
 近くの監視カメラも例外ではない。
 動画データや画像の類もマホルニアの恐るべき速度の思考でもってマスク処理を施されていく。

 例え撮影が出来たとしても、そこに在るのはフィルターのかかったような不鮮明な画像が残るだけだ。
「なあ、あんた! これ撮影なんだろ? おかしいぜ、これ! これほんとうに――」
 撮影なのかとマホルニアの背中に問いかける人々。
 確かにこうして戦っている姿は真に迫るものであろう。自分でも雑な言い訳だと思ったかも知れない。

 けれど、それ以上の余裕は今はないのだ。
「ん、撮影? まあ――そんなところね。リアルな反応が撮りたかったから……ああそう、小道具管理兼、警備員なの。撮影とは言え危険だから……」
 だから、ここから逃げてほしいとマホルニアは、その瞳に輝くユーベルコードで持って、言葉に優しさをにじませる。
 人は不安な時ほど笑顔にほだされるものである。
 自分の不安を払拭させるために、あらゆる事象を好意的に捉えるだろう。ああ、そうなのかと普段ならば受け入れることのできない現実も受け入れる。

「さあ、行って。撮影にご協力感謝するわ」
 言っていてマホルニアは苦笑いしてしまう。
 人々が己の背から遠ざかっていく。それをナノマシン群で知覚しながら、彼女の瞳は溢れ出るUDC怪物たちを見据える。
 戦いは此処からである。
 彼らを排除し、平穏を取り戻す。平穏が脅かされたということすら人々に認識させず、なんでもない日を取り戻す。

 それがきっと彼女の手をあの日引いてくれたヒトの願いであっただろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
この世界が狂気に満ちてることなんて、みんなが知る必要なんて無いと思う
知らない方が、こうして幸せに過ごせるんだから

『月蝕』がそうしてるように、私も交差点を見降ろせるビルの屋上に移動
そこからUCで兵士達を貫きます【投擲】【範囲攻撃】
大丈夫、絶対外さない。誤射なんて有り得ない。と暗示をかけて【スナイパー】

ここからなら、逃げ遅れたヒトにも気付きやすいはず
敵に囲まれそうだったり、距離が近いヒトは優先的に守ります
敵がこちらに気付いても、それはそれで引きつけられるから良し、です

いつもと変わらない、退屈な日常
そう思えるのは、未来に進めてるからこそだと思う
私にとっては、withと過ごす毎日の全部が特別やけどね



 邪神蠢く世界。
 それがUDCアースである。他世界を知る猟兵達からすれば、UDCアースの在り方は異様であったかもしれない。
 他世界は確かにUDCアースを基準に考えれば、不思議な光景ばかりである。けれど、それを知るのは猟兵達のみである。
 UDCアースに生きる人々にとって、それは関係のないことだ。
 こうしている間にもUDCアースの闇には邪神たちが復活の機会を伺っている。復活してしまえば、世界は破滅するだろう。
 その薄氷の上にあるのが、なんでもない日のような日常であることを人々は知らない。

 一枚隔てた向こう側に狂気が満ちている。
 誰も知らない。知ろうともしない。
 けれど、それでいいのだと春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は思った。旅する根無し草であると彼女の隣にあるのは大剣。
 彼女は高層ビルの屋上から交差点を見やる。
 溢れるようにして現れ続けるUDC怪物『希望亡き夜の囚人』たちは人々を襲うが、猟兵たちの活躍に寄って映画の撮影のように思われているようだった。
 混乱がないのは良いことである。
「この世界が狂気に満ちていることなんて、みんなが知る必要なんて無いと思う。知らないほうが、こうして幸せに過ごせるんだから」

 知らなくていいことがある。知らなければならないことはあるかもしれないが、結希にとって、これは知らなくていいことだ。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 己の掌で大剣の刃に触れる。
「焔の雨(ホノオノアメ)――with、行くよ」
 掌に傷口が生まれ、そこから噴出する焔が形作る無数の杭が空に浮かぶ。

 それはまさに雨そのものであった。
「絶対大丈夫。当たる。『当てる』んじゃなくって、『狙わなくても当たる』――」
 自己暗示。
 強烈な暗示に寄って、彼女の制御する杭の雨は、焔の雨となって直上より『希望亡き夜の囚人』たちを貫く。
 誤射などありえない。己の中に深く根付く暗示がそう告げる。

 彼女が屋上に陣取ったのは、人々と『希望亡き夜の囚人』たちの位置を確認するためだ。
 今は猟兵たちの助けも在って避難が順調に進んでいる。
「いつもと変わらない、退屈な日常」
 確かに今はそうなのだろう。
 変わることのない平坦な日々。誰もが特別でありたいと願うだろう。いつか、この退屈の書き割りを破いて非日常が襲ってくるかも知れない。

 それを恐ろしく思いながらも、どこか楽しみにしている。
 人とはそういう生き物だ。
 刺激なくば、生きる意味すら見いだせなくなる。
「そう思えるのは、未来に進めているからこそだと思う」
 結希にとって、withと過ごす毎日のすべてが特別である。だからこそ、人々の平穏な日常を護る。
 なんでもない日を護るのだ。

「だから、どれだけあなたたちが不幸であったのだとしても。みんなのなんでもない日を護るために私は行く」
 屋上に殺到するように『希望亡き夜の囚人』たちが高層ビルの壁面を這い上がってくる。
 大剣withを手に結希は笑う。
 こんな時にだって最愛の人が己の手の中にある。側にある、それだけで力がみなぎる。
 焔の杭の雨降りしきる中、彼女は躍り出るように飛び出し『希望亡き夜の囚人』たちを薙ぎ払っていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【柘榴師匠(f28110)と】

依頼で師匠と会えるとは偶然でしたが、
今回は数も多いですし、攻撃も防御も、となりますと、
ひとりではちょっと不安がありましたので助かりました。

日常が特別でない、と思っている勘違いUDCには、
ちょっときつめにお仕置きしてあげないといけないですよね。

師匠が結界を張るのを確認したら【E.C.O.M.S】を発動させて、
あふれ出てくる『希望亡き夜の囚人』に突撃させていくよ。

狙い所は、首の制御器、かな。

でもその前に……ちょっと一発くらい弾を喰らっておこう。
人って、実際に目で見ないと、危険かどうかの判断をつけにくいんだよね。

みんなが逃げのモードに入ったら、しっかり反撃するよ!


弓削・柘榴
【理緒(f06437)と】

『月蝕』とやらの言っていることは解らんでもないが、
それを望むものがどれだけいるのかは疑問じゃな。

ま、大半の者は望んでおらんじゃろう。

それに猟兵は『なんでもない日』を守るのが仕事らしいし、
なにより『特別』はめったにないから楽しいのでな。

特別を日常にされたら、楽しみが減るというものじゃし、
『特別な悪夢』など、どう考えても楽しそうではないからの。
ここは『なんでもない日常』を守らせてもらうぞ。

【陰陽九字】を発動させて交差点の人たちを守りつつ、
あちきの防御力もあげて、いざというときは盾になることにしよう。

攻撃は……あちきの攻撃では皆を巻き込みかねんからな。
理緒、お主に任せるぞ。



 特別な日を永遠にする。
 それは過去を排出して時間が進む世界の理を逸脱した行いであったことだろう。
 変わらぬ日が続く限り、時間は前に進まない。
 未来に進まない。停滞と同じである。未来が失われるという事にほかならない。
 オブリビオン『月蝕』の言葉は、そういうことだ。
 傷つくということは、いつだって痛みを伴うことだ。変わるということでもある。だからこそ、変わらぬことを望むのだろう。不変を、永遠を望む。

 それが人の性であるというのならば、叶えてはならぬ願いなのであろう。
「『月蝕』とやらの言っていることは解らんでもないが、それを望む者がどれだけいるのかは疑問じゃな」
 人は誰しも気がつく。
 永遠は虚構に落ちるものであると。例え永遠を手に入れたとしても、人は慣れる生き物である。
 だからこそ、弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)は己の過去に浸るだろう。
 遠き日のことを思い出す。
 あの想い出は永遠にしなくても、己の中にある。ただそれだけでいいと彼女は思える。だからこそ、告げるのだ。
「ま、大半の者は望んでおらんじゃろう」
「師匠、お会いできるとは偶然でしたが、今回は数も多いですし……一人ではちょっと不安がありましたので助かりました」

 そんな彼女の隣に並び立つのは、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)であった。
「日常が特別でない、と思っている勘違うUDCにはちょっときつめのお仕置きしてあげないといけないですよね」
 理緒の瞳はやる気に満ちている。
 そんな弟子の姿に柘榴は笑むだろう。そのとおりであろうと彼女は溢れかえるUDC怪物『希望亡き夜の囚人』たちを見やる。

 今や人々は映画の撮影であると思い込みながら猟兵たちの誘導にしたがって、交差点から退避を始めている。
 しかしながら、そのUDC怪物たちはあまりにも数が多い。理緒の言う通り、これだけの数を討ち果たすには骨が折れる。
 また柘榴のユーベルコードでは、人々をも巻き込みかねない。
「理緒、お主に任せるぞ。青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・南斗・北斗・三台・玉如……!」
 彼女の瞳がユーベルコードに過輝き、同時に印が結ばれ、九字を切ることによって結界を張り巡らせる。

 その結界は交差点を囲うようにして人々と『希望亡き夜の囚人』たちとの間に隔てりとして生み出される。
「猟兵は『なんでもない日』を護るのが仕事らしいし、なにより『特別』はめったにないから楽しいのでな」
 柘榴にとって、特別とはそういうことである。
 日常のすべてが特別に成ってしまったのならば、それは退屈になる。楽しみが減るというものである。
「『特別な悪夢』など、どう考えても楽しそうではないからの」
 理緒がうなずく。

「作戦行動、開始」
 E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)によって制御された八角形のユニットたちが宙を舞って、『希望亡き夜の囚人』たちへと飛ぶ。
 溢れかえる『希望亡き夜の囚人』たちの弱点は首の制御器である。
 明滅する赤いランプが目印である。だが、理緒は前に出る。それはあまりにもうかつな行いであったことだろう。

 彼女が前に出たことによって影纏う『希望亡き夜の囚人』たちの弾丸が彼女の肩を穿つ。
 鮮血が吹き出し、理緒が呻く。
 痛い。
 痛みが体に走っていく。けれど、これは必要なことだ。
「――ッ!!」
 人々が息を呑む気配を理緒は感じただろう。
 人は実際に目で見ないと、危険化どうかの判断ができない。例え、これが映画のセットだと、作り物だと言われたとしても、その光景は人々の心に衝撃を与えたことだろう。

「理緒。それがお前の選んだ道なのじゃな」
 柘榴は理緒の行いを咎めることはなかっただろう。
 彼女の考えはわかっている。確かに今は非日常なのだろう。けれど、日常を守ろうとする者たちにとって、彼らの存在は護るものでありながら足枷にもなる。
 そんな彼が熱に浮かされたままでは意味がないのだ。
 冷水を浴びせる行いだとわかっていてもなお、理緒は訴えたかったのだろう。
「なんでもない日を護るためです。自覚してもらわなくてもいい。少しだけ、考えて欲しいだけなんです」
 理緒は血潮溢れる肩口を抑えながら、その瞳にユーベルコードを輝かせる。

 歩む人々の足が駆け足になっていく気配を理緒は感じながら、彼女が手繰るユニットたちでもって『希望亡き夜の囚人』たちを討ち果たす。
 波のように襲い来るUDC怪物の群れを前にして理緒は一歩も退くことはなかった。
 彼女が為さねばならないことは、決まっている。
 守るための戦いが猟兵の本分であるというのならば、理緒は柘榴と共にそれを成すのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
邪神の力で邪神を制する兵士か
他人事とは思えないね
そしてなんでもない日のありがたさは
身に染みて分かってるよ

ともあれ避難誘導しないとね

あら、それは私がやりますの
集合場所の看板を創って地下道に誘導しますの
撮影の邪魔にならないようにこちら来て下さいまし

晶には宵闇の衣を生成して着替えさせますの
その格好でガトリングガンを持てば
虚構らしく見えると思いますの

フリフリの衣装でガトリングガン持った少女なんて
創作めいているとは思うけど

是非それらしく振舞って下さいまし

少し状況が違えば僕も彼らのようになってたのかな
そうならなかったのは幸運だったんだろうか

いや、そう思う時点で危ないな
邪神に関わった時点でそもそも不運なんだ



『希望亡き夜の囚人』たちの首に備えられた制御器が赤く明滅する。
 それは警告であった。
 邪神の力でもって邪神を討つ。
 存在意義であったし、同時に抱えた矛盾そのものであった。邪神を倒すために邪神を下ろすという行い。
 毒をもって毒を制すという言葉がある通り、理屈としては通っているのだろう。けれど、邪神は人の理など意に介さない。

 人が邪神を完全に理解することなど不可能なのであろう。
 その行いの末路が彼らである。彼らは不運であった。生死を分かつものがあるのだとすれば、その要因しかなかった。
 適合しなかったという不運。
 ただそれだけで生命が失われる。そこに意味があったのかと問われれば、恐らく無意味であったことだろう。
 己たちの生命が無為に終わることをこそ、彼れは拒絶する。
 溢れるようにして交差点に影人間たちが蠢き出す。

 その光景を佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は他人事とは思えない思いで見つめていた。
「邪神の力で邪神を制する兵士か」
 そう、他人事ではない。
 経緯が違えど、己もまた身の内側に邪神在る者である。いかなる理由でそうなったのかはわからない。
 彼らと自分との間にどれだけの差異があったのかもわからない。
 けれど、晶にはわかっている。
「なんでもない日のありがたさは、身にしみてわかっているよ」

 元は男の体。けれど、今や体は女性のものだ。
 魂は男であっても肉体は女性であるという矛盾に、己という存在がわからなくなることもあるだろう。
 遠き日のことを思い出す。確かにあのなんでもない日の連続こそが懐かしむべきものであり、己が目指すべきものであることを晶は知る。
「ともあれ避難誘導しないとね」
 追憶は後にすべきだった。晶は切り替えて、人々をUDC怪物たちから遠ざけるために動き出す。

「あら、それは私がやりますの」
 邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)とでも言うのか、身の内にある邪神の分霊が現れ、誘導を買って出てくれる。
「助かる。それじゃあ、映画の撮影ってことで地下道に誘導して」
「わかりましたのーというわけで、晶は宵闇の衣を着てくださいね」
 タダで手伝ってくれるわけではないのかと晶は辟易する。
 可愛らしいフリルの付いた服装。未だに慣れぬものであったけれど、それでもやらねばならない。
「その格好でガトリングガンを持てば、虚構らしく視えると思いますの」
「趣味じゃないんだよね? というか、この状況の言い訳にはいいだろうけれど………フリフリ衣装でガトリングガンを持った少女なんて創作めいているとは思うけど」

 今はそれが都合がいい。
 他の猟兵たちもこれが映画の撮影であると人々に言い聞かせている。
 ならば、それを使わない手はないだろう。
 断じて邪神の趣味でないとは言えないけれど。
「仕方ない。やらないとな……少し状況が違えば、僕も彼らのようになってたのかな。そうならなかったのは」
 幸運だったからなのか。
 自身と彼らを隔てるもの。それが本当に運の差であったのか。

「――」
 声なき声を挙げ、人々に襲いかかる『希望亡き夜の囚人』たち。
 彼らの姿を見て、晶は頭を降る。
 そうではないのだ。そう思う時点で危ないのだ。あれよりはマシだと思った時点で、すでに邪神に毒されている。

 何故ならば、邪神に関わった時点でそもそも不運なのだ。
「だから、君等はたしかに特別不運であったのかもしれない。けれど」
 手にしたガトリングガンから弾丸が斉射され、『希望亡き夜の囚人』たちを貫いていく。
 首の制御器が明滅し、その姿が霧消していく。
 その欠片を見やり、晶は手向けとするのだ。
「それで他人を同じ不運にまで引きずりこもうっていうのは、理解できない――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
白昼堂々とやってくれるものです…!
これ以上、手出しはさせはしません
人々に安寧を齎し、災いを遠ざける事こそ騎士の務めなのですから

そろそろ違和感を覚えられても可笑しくない段階です
多少強引にでも…

●操縦する複数機の機械妖精でスマホ等の人々の持ち物を強奪
付かず離れず眼前にちらつかせ持ち去り、避難を渋る人々を半強制的に誘導

貴方達の相手はこちらです
…最早、其方の事情の考慮は出来ぬ段階なのです

センサーでの情報収集と瞬間思考力で敵の動向を瞬時に把握
銃口から人々かばい、脚部スラスターの推力移動で戦場を疾走
剣や盾で攻撃防ぎつつ妖精の頭部レーザーのスナイパー射撃で四肢を撃ち抜き体勢を崩し、斬り捨て大盾で打ち据え撃破



「ねえ、これ本当に大丈夫なやつ? 危なくない?」
「だって、映画の撮影って言ってたじゃん」
「それにしてもさ……」
 そんなふうに人々は交差点にて突如として湧き出たUDC怪物と猟兵たちの戦いを認識していた。
 猟兵が映画の撮影であると偽り、人々を戦いの場から遠ざけるという方策はうまくことが運んでいるようでもあったが、同時に徐々に人々もまた気が付き始めたのだ。
 これがのっぴきならない状況なのではないのかと。

 本当にこれがなんでもない日の延長線上にある非日常であるのかと。

 その疑いは、やがて確信につながっていくだろう。
「やっぱ、変だって、これ! 絶対!」
 そう言って人々がスマートフォンを手にした瞬間、それをかすめ取るものがあった。
 それが自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)と呼ばれるトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)が手繰るものであった。
 妖精ロボはスマートフォンを抱え、ひらりひらりと飛んでいく。
 人々にとっては、それは鳥が自分のスマートフォンを奪ったのだと思ったことだろう。
「ちょ、ちょっと待って! あたしのスマホ!」
 それに釣られるようにして人々は次々と交差点の付近から遠ざかっていく。
 トリテレイアはその様子を見やり、己の行動が強引であったことを恥じたが、今はそれどころではない。

「白昼堂々とやってくれるものです……!」
 彼の目の前には迫る大波の如き『希望亡き夜の囚人』たち。
 続々と現れる彼らを打倒しなければ、そもそも此処から人々を避難させた意味すらなくなってしまう。
 映画の撮影と偽ってはいるが、違和感を覚えられていたように、悟られてしまう可能性だってあるのだ。
 だからこそ、トリテレイアは強引な手段でもって人々を戦いの場から遠ざけていくのだ。
「貴方たちの相手はこちらです。人々に安寧をもたらし、災いを遠ざけることこそ騎士の務めなのですから」

 しかし、トリテレイアは思うだろう。
 目の前の銃撃交える兵士たち。彼らの事情は知っている。
 邪神を制するために邪神の力をおろして戦う兵士の実験体の成れの果て。
 毒をもって毒を制すという言葉通りの存在でありながら、彼らが死すのは不運という要因唯一であったことを。
「……最早、其方の事情の考慮は出来ぬ段階なのです」
 許してほしいとは言わないだろう。

 ただ己のできることをしなければならない。
 センサーが煌き、残光を遺しながら脚部スラスターでもって戦場を疾走するウォーマシンの体。
 人々の視線は最早ない。
 ならばこそ、剣と盾でもって銃撃を防ぎ、手繰る妖精ロボの頭部から放たれるレーザーでもって彼らの四肢を穿つ。

「――」
 声なき声が聞こえる。
 例え理性を取り戻したとしても、完全に邪神の力を制御したと思い込むオブリビオンには、情けを掛けられない。
 ここで躊躇っては、多くの人々が犠牲になることを彼は知っている。
「同情することこそ、忌むべきことであると……わかっているのです」
 放つ斬撃が袈裟懸けに『希望亡き夜の囚人』を切り裂き、大盾の殴打でもって大地に叩きつける。

 霧消していく彼らの首に備えられた制御器の明滅が消えていく。
 それをトリテレイアは見ない。
 見てはならない。不運に足を掴まれた者が、如何なる末路を辿るかなどトリテレイアは幾度も見てきた。
 救うことの出来ない存在を。
 そして、そのような存在が救うことの出来た者を食い物にしていく。
 知っているからこそ、トリテレイアは戦場を駆ける。手遅れになることのないように。

 薄氷を渡るような慎重さと、果断なる意志こそがなんでもない日を守るのだと、今は信じるしかないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

別にこれくらい知られたってどうってことないと思うんだけどなー
むしろ日常のいい刺激になるんじゃないかな!

●UC『神知』使用
【天候操作、催眠術、範囲攻撃】あたりをレベルアップ!
あ雨だ、風も吹いてきた、あ雹だ!
というわけでみんな交通機関が止まる前におうちに帰ろうね!
いいかい?キミたちは…何も…見なかった!
と[叡智の球]くんから無差別広範囲催眠ビームをビビーッ!とやってもらって駅にでも向かってもらおう

後は…[影]を周囲一帯、広範囲に広げていって…そのなかに潜んだ大小の[餓鬼球]くんたちにバクリ、バクリとまとめて食べていってもらおう

ていうか慣れちゃったらなんでも同じじゃない?



 UDC怪物たちが溢れ、人々を襲う光景を見下ろし、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は首を傾げていた。
 UDCアースは確かに日常の裏に邪神の影蠢く魑魅魍魎が跋扈する世界である。
 一般人たちが平穏を謳歌するためには、邪神たちの狂気は在ってはならぬものだ。けれど、ロニにとって、目の前の光景は、完全に隠蔽しなければならないものであるとは思えなかったのだろう。
「別にこれくらい知られたってどうってことないと思うんだけどなー。むしろ日常のいい刺激になるんじゃないかな!」

 あっけらかんとしているが、彼の言葉は誰に聞かれるものでもなかった。
 彼の瞳がユーベルコードに輝く。
 神知(ゴッドノウズ)にとって、それは当たり前のことであったからだ。
 世界の在り方をそのままに見つめる瞳は、ユーベルコードの輝きに寄って真実のみを見据える。
 このUDCアースの世界がどれだけ邪神の影にうごめいているのだとしても、それを否定することはないのだろう。
「あ雨だ、風も吹いてきた、あ雹だ!」

 彼の瞳がユーベルコードに輝く限り、天候は自由自在である。
 猛烈な風が交差点に吹き荒れ、避難を誘導されていた人々が混乱していく。あまりにも日常とかけ離れた光景に人々は不安を募らせるだろう。
 ロニはそこに付け込むようにして笑う。
「みんな交通機関が止まる前におうちに帰ろうね! いいかい? キミたちは……何も……見なかった!」
 空中に飛び上がる球体。
 それより放たれる催眠の光線が降り注ぎ、人々はうなずく。

 何も見なかった。
 何もなかった。
 今日という日は非日常ではなくて、なんでもない日であったと彼らの頭には刻まれたことだろう。
 それを惜しむことなどない。
「だって、なんでもない日の連続こそが、過去を排出して時間を推し進めることになるんだから」
 ロニの足元から影が広がっていく。
 それは彼の制御下にある影だ。潜む球体たちが、地面から飛び出し次々とUDC怪物たちを飲み込んでいく。

 それは今日という非日常の痕跡を一切許さぬ顎であったことだろう。
 UDC怪物たちがどれだけ数がいようとも、ロニの操る球体はそれ以上の速度でもって、彼らを捕食していく。
「特別な日を永遠にしたいって言うけれど」
 ロニは嘆息する。
 それは詮無きことである。
 どこまで言っても人は慣れる生き物だ。同時に忘れることもできる生き物でもある。

 刺激を求めるのは、結局の所そういうことなのだろう。
 変わらぬものを求めるわりに、違うことを欲する。
 矛盾している生き物が人だ。その矛盾こそを愛する者もいるであろうが、この事件を引き起こしたオブリビオンは違う。
 不変を求め、永遠を求める。
 そこに刺激など必要ない。だからこそ、ロニは神なる身からの知見を述べるのだ。

「ていうか、慣れちゃったらなんでも同じじゃない?」
 変わらぬ日々。
 どれだけ特別な一日があったのだとしても、連続して同じ日が繰り返されるのならば、それは意味のないことである。
 刺激を求め、手を伸ばしたからこそ人々は進化してこれたのだろう。
 あらゆる芸術がそうであったように、なんでもない日の連続の中にこそ、煌めく何かを掴むことができるのが人であると知るからこそ。

 ロニはオブリビオンの言うところの永遠にさえ興味を持てぬのだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『月蝕』

POW   :    静かの海
【ナイフ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    熱の入江
【身体を腐食させる劇物】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    善良の湖
技能名「【見切り】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。

イラスト:香

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ショコラッタ・ハローです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 溢れるUDC怪物たちが猟兵たちの手によって霧消していくのを『月蝕』は高層ビルの屋上から見下ろしていた。
『前回』は、用意周到に計画を練って、練って、練りすぎて遠回りの道を歩んでしまったがために感づかれて、最後にはアドリブに頼らざるを得なかった。
 賭けに負けたからこそ、『月蝕』は己の死でもってリセットしたのだ。

「だから、今回はアドリブなし。余計なことをしないで最速最短で突っ走るつもりだったんだがね」
 ふぅ、と息を吐きだし、彼女は高層ビルの屋上から飛び降りる。
 セーラー服とオーバサイズのコートがはためき、しかり飛び降りた時と同じように地面に激突する寸前で、『それ以上進めない』ように地面の数センチ上で停止する。
 彼女はやあ、と気さくに挨拶をするように猟兵達に手を掲げて見せた。

「やっぱり遠回りこそが正解だった。簡単な道は間違いだった。思い知ったよ。『今回』も、またボクはキミたちに阻まれる。けれど、仕方ないよね。間違った道は、正解にはたどり着けない」
 告げる言葉と声色は穏やかなものであった。
 休日に友人に出逢ったかのような、そんな気軽ささえ在った。

 けれど、猟兵たちは見た。
 その瞳にあるのは憤怒でも悲哀でもない。
 ただの狂気だ。自分たち猟兵を見ているようで見ていない。自分たちに言葉を投げかけているようで投げかけていない。
「あともう少しだったんだけどね。遠回りしてはアドリブを加えたくなる。アドリブを入れると失敗するから、入れる暇すらないように近道を選べば、キミたちが来る……『次回』に持ち越すとするよ。悪いけど、消化試合にして泥試合に付き合ってもらうよ」
『月蝕』の瞳が狂気に彩られ。

 そして、猟兵たちは知るのだ。

 目の前にいるUDC怪物にしてオブリビオン、『月蝕』。
 ただ狂気をはらむだけの存在ではない。
 不気味な重圧を放つ彼女こそ、解き放ってはならぬ存在であると――。
村崎・ゆかり
一般人なら見ただけでUDC怪物に変わるってね? じゃあ、人の目から隔離しなきゃ。
「範囲攻撃」「結界術」「破魔」「浄化」の浄玻璃紫微宮陣。これで視線は完全に遮られる。
他の猟兵が戦いやすいように、構造はシンプルに。

腐蝕攻撃は、相手に使われると厄介ね。「環境耐性」「呪詛耐性」「狂気耐性」で耐えきりましょう。
『月蝕』と言ったかしら? 日蝕も月蝕も、時が過ぎれば輝きは戻る。所詮は一時の見世物よ。

「衝撃波」まとう薙刀で斬りかかり、「なぎ払い」から「貫通攻撃」の「串刺し」に。
間合いがナイフのものに入らないよう気をつけて、見切られたなら、更にフェイントを多用する。
邪神の眷属は、ここできっちり討滅してあげるわ。



 その姿は別段おかしなところがあるわけではなかった。
 セーラー服に身を包んだ銀髪は、たしかに目を引くものであったし、不思議な虹彩の色を放つ瞳だってそうだった。
 けれど、彼女――かつて人間であった頃の名前を失った存在である『月蝕』は手にしたカランビットナイフを弄びながらゆっくりと歩みを進める。
 グリモア猟兵曰く、『一般人であれば、姿を見ただけで正気を失いUDC怪物へと成り果てる』というその姿のまま、まるで気安く友人に語りかけるように猟兵たちへと歩みを進める。

「一般人なら見ただけでUDC怪物に変わるってね?」
 ならばと、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は己のユーベルコードを輝かせる。
 戦場となった交差点に玄妙な霊気漂う正常な星空の破魔結界が生み出されていく。
 それは迷路と同じであり、結界でありながら迷宮となる。
 浄玻璃紫微宮陣(ジョウハリシビキュウジン)と呼ばれるユーベルコードは、『月蝕』の姿を一般人の視界に入れさせぬようにと遮断するのだ。

「へえ、用意周到だね。こっちの情報が割れているというのは、とても厄介だ。ボクは本当に残念に思っているんだよ」
『月蝕』の表情は変わらない。
 ただ言葉だけが気安いものであった。
 十年来の友人に会ったようでもあり、同時に何者にも執着していないかのような希薄さがあった。
「『月蝕』と言ったかしら?」
「ああ、『今』はそう名乗っているよ。いや、そう呼ばれているというのが正しいのかな、ボクの場合は」
 手にしたカランビットナイフとともに『月蝕』が走る。

 特別早いわけではない。
 けれど、いつのまにか間合いに入られている不気味さがあった。
 ゆかりの放つ斬撃波伴う薙刀の一撃を躱す。その不気味な虹彩の輝きがゆかりを捉えている。見切られているとゆかりは直感するだろう。
「日蝕も月蝕も、ときがすぎれば輝きは戻る。所詮は一時の見世物よ」
「そうだろうね。けれど、そこには意味があるし、意味を見出すのが人間さ。例え、一時的に日が陰るだけに過ぎないのだとしても、そこにどうしようもない意味を見出すから儀式として成り立つ。ボクの名前だって同じさ」

 世界に刻まれる『月蝕』という名前。
 それによって彼女はきっとオブリビオンへと変わったのだろう。過去に歪んだ存在でありながら、薙刀の一撃をカランビットナイフで受け流すのだ。
「どこまで言っても邪神の眷属。ここできっちり討滅してあげるわ」
「キミたちのやっていることは引き伸ばしに過ぎないよ。遅かれ早かれね。けれど、やっぱりそうだ。ボクの目的はキミたちとは相容れないようだ」
 ゆかりの放つ薙刀の斬撃の一撃を受け止めたカランビットナイフ。しかし、『月蝕』の細腕は斬撃を受け止め、見切る事ができたとしても、肉体が保たない。

 ゆかりは己の動きが見切られているのならばとフェイントを多用した。
 確かにそれは有効であったのだろう。
 斬撃波は受け止めたとしても、『月蝕』の体を削るように追い込んでいく。だというのに、手応えがない。
「あなた……何を狙っているのよ」
「どうしたらキミたちの目から逃げられるのかなと考えているところなんだよ。そして、『次回』はどうやってうまくキミたちを欺こうかと考えている。でもね、残念なことにボクには、持ち越す力がない」
 次に活かすことができないのならばと『月蝕』がゆかりの薙刀を振り払う。

「やぶれかぶれになってしまうのも無理のないことだと思うんだ」
 放たれるナイフの斬撃。
 しかし、それをゆかりは薙刀の柄で受け止め払う。やはりそうだ。不気味な踏み込みはあれど、体術やナイフの動きからして素人同然。
 この奇妙な感覚は恐らく天性のもの。
「『次』なんてない。あんたには、此処で滅びてもらう!」
 ならばこそ、時間を掛けてはならない。
 こちらの動きを見切るように『月蝕』は猟兵たちの動きに慣れていくだろう。ならばこそ、此処で打撃を与えることこそ鮮血である。

 ゆかりは己の渾身の力、清浄なる星空の破魔結界のちからを背に受けて、薙刀の一閃を振るう。
 その速度は『月蝕』の見切りを超えて、その身に刻まれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

弓削・柘榴
【理緒(f06437)と】

会話している風なことを言うてはおるが、
こやつ、自分勝手に一席ぶっておるだけじゃな。

正気を失ったやつの演説など、聞くに値せん。

いくら永き時を生きていると言えど、こんなのに付き合うほど暇ではないな。

理緒、攻守交代じゃ。しばし時間を稼げ。

理緒が時間を稼いでいる間に準備と詠唱をすませ、
【四神喚起】で四神、そして、黄龍を召喚して超重力の一撃を喰らわせてやろう。

お主は【見切り】が上手いようじゃが、
周囲一帯押し潰す重力をどう見切るのか、見せてもらおうかの。

消化試合にして泥仕合などの二回戦に付き合う気などさらさらないわ。
『次回』などありえんくらいにすり潰してくれよう。


菫宮・理緒
【柘榴師匠(f28110)と】

あなたが何を思おうと、好きにはさせませ……え?
すでに正気を失っている、ってことですか師匠?

あ、はい。わかりました!

師匠の指示に従って【フレーム・アドバンス】を発動して、『月蝕』の動きを止めるね。
できれば師匠の準備が終わるまで動きを止めておきたいけど、
完全に止められなくても、限界まで動きを遅くして行動を制限しよう。

師匠の詠唱が終わったら、『月蝕』が逃げられないように、
わたしも【全力魔法】でフレーム・アドバンスを強化するね。

って、それにしても師匠の術のすごすぎないですか?
地面えぐれてますけど……。

え? 【虚実痴漢】で描き直しておけ、って……後始末わたしですかー!?



 パタパタと音がする。
 それは『月蝕』に刻まれた傷跡から落ちる血潮の音であった。赤い血が袈裟懸けにふるわれた薙刀の一撃に寄って彼女の体に傷を負わせる。
「参ったな……薄皮一枚で避けたと思ったんだけれど」
 セーラー服とオーバサイズのジャケットを身に纏った少女の姿をした怪物『月蝕』が変わらぬ表情のままに、その魔眼の如き虹彩放つ瞳を輝かせる。

 その瞳に映るのは猟兵たちの動きを見切るものであった。
 動きは素人に毛が生えたようなものである。しかし、その天性の如き動きは、徐々に猟兵達に捉えることを許さぬことだろう。
「これが猟兵。『前回』とは違うな。けれど、『次回』に持ち越すことはできない経験……どうしようかな。これは困った。どうにかして、この経験を『次』に生かしたいんだけれど」
 キミたちはどう思う、と『月蝕』は結界の遮断された中にありながら、未だ余裕めいた言葉を紡ぐ。
「ボクはこのまま、なんでもない日を潰したいんだけれど。キミたちも思ってはいないかい? 特別な毎日を送りたいと。特別な自分になりたいと」

 その言葉を受けて菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は頭を振った。
「あなたが何を思おうと好きには――」
「無駄だ。理緒、こやつ、自分勝手に一席ぶっておるだけじゃ」
 それは会話に見せかけたものでしかない。
 見る者に狂気をもたらし、UDC怪物へと変貌させるほどの力を持つ『月蝕』の言葉は、何処まで言っても弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)には聞くに値しないものであった。
 あの瞳を見ればわかる。
 あれは正気を失ったものの瞳である。狂気だけを持つ存在の言葉を聞くに値はしない。

 時間の無駄だ。
「理緒、攻守交代じゃ。しばし時間を稼げ」
「困るな。そんなにせっかちじゃあさ。答えを急がない方がいいって話をしていたところなんだけれど」
『月蝕』の言葉は笑っていた。
 けれど、その瞳は、表情は何一つ変わっていない。
 ゆらりと立つ姿は、ただの素人であったが、不気味なまでの踏み込みは先程よりも早くなっている。
「あ、はい。わかりました!」
 理緒が瞬間的にユーベルコードを発動させる。
 どれだけ不気味な踏み込みが早くても、理緒のユーベルコードは、電脳魔術はそれを許さない。
 自身のコンピュータにキャプチャした『月蝕』の姿から同期プログラミングを放ち、現実と同期させることにより、その動きを止めるのだ。

 それが、フレーム・アドバンスの力である。
「なるほど。現実を侵食する魔術か。『それ』はまだ試したことがなかったな」
『月蝕』は動きを止めながらも、そのユーベルコードに抗うように言葉を紡ぐ。
 完全に止められない。何故、と理緒は『月蝕』の姿を見て思うだろう。停止できないまでも、動きを鈍らせることができるはずだ。
 なのに、キャプチャした画像の中で徐々に『月蝕』がこちらに近づいてくるのだ。

「時間を遅滞させているわけじゃない。ボクの動きを鈍らせているだけならさ。ボク自身が早くなればいいんだ。圧縮。圧縮。圧縮。言葉を、動きを最短にして最速にすればいい。そういうのは『今回』で試して得意なんだ」
「破られる――師匠!」
 強化したユーベルコードでもなお、『月蝕』の動きは抑えきれなくなってくる。
 これほどまでに強力な個体が未だUDCアースに存在している事自体が脅威であった。
 だが、柘榴の詠唱は理緒の時間を稼ぐ行動に寄って完遂される。
 柘榴のユーベルコードは召喚【四神喚起】(シジンカンキ)を成すものである。
「五陽霊神に願い奉る……」
 柘榴の瞳がユーベルコードに輝く。
『月蝕』を中心にして配される四神たち。それを電脳魔術を破って飛び出す彼女の動きを一瞬止める。

 完全な停止。
 だが、それでも『月蝕』は不気味な輝き放つ虹彩の瞳を柘榴に向ける。
「お主は見切りが上手いようじゃが、周囲一体を押しつぶす重力をどう見切るのか、見せてもらおうかの」
「こちらの動きを止める力と――」
『月蝕』が見上げる。
 そこにあったのは柘榴によって召喚された黄龍であった。極大なる重力が空に浮かぶ。
 攻撃を見切るというのならば、逃げ切れぬ広範囲の攻撃をぶつければいい。
「一撃必殺っていうやつだね。重力の力……なるほど。考えているね。ボクが逃げるという選択肢を潰しに来たか」
「消化試合にして泥試合などの二回戦に付き合う気などさらさらないわ。『次回』がありえんくらいに磨り潰してくれよう」
 放たれる重力の一撃。

 暗獄の超重力の一撃が『月蝕』に降り注ぐ。
 それは地面をえぐり、アスファルトを押しつぶす。圧縮し、すり潰すような一撃に『月蝕』は叩きつけられるだろう。
「師匠の術すごすぎないですか? 地面えぐれてますけど……」 
 柘榴のユーベルコードの輝きは凄まじいものであった。並のオブリビオンであれば、これで十分であったことだろう。

「理緒、お主の電脳魔術で描き直しておけ」
「後始末わたしですかー!?」
 えぐれたアスファルト。戦いの痕は極力消さなければならない。とは言え、まだ戦いは続く。
 なにせ、あの一撃を受けてなお重力渦巻く中心に『月蝕』の歪な虹彩の輝きが灯され続けているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
やり直せると自覚しているオブビリオンは厄介だね
でも倒す事に違いはないから戦うとしようか

得物はナイフの様だし
近付かれる前にガトリングで攻撃

劇物は厄介だから神気で固定して防ぐよ

あら、そんな事をしなくても
腐食しない体にしてあげますの
晶を生きてると見紛う様なお人形に変えますの
遠目なら超常現象には見えませんの

この硬い体にも慣れたと言えるのが切ないね
助けてくれるのはありがたいけど

そうそう、宵闇の衣は大丈夫ですけど
下着はわかりませんの

絶対遊んでるな…
ほんと邪神に関わると碌な事がない

でも多少劇物に触れても耐えられるから
切断用ワイヤーで接近戦を挑もうか

回避が難しくなるよう
ワイヤーで包み込むような配置で攻撃しよう



 その姿を見たものをUDC怪物に変質させるほどの強力な個体である『月蝕』は、交差点の中心にあり、猟兵たちの攻撃の前に膝をつく。
 けれど、未だ消滅しない。
 霧消しないのだ。
 人の姿をしているだけであって、その中身は別物であると言わざるを得ない。
 袈裟懸けに切りつけられた体からとめどなく血を流している。通常の人間であれば、すでに失血死していてもおかしくない量である。
「やあ、これは大変なことだね。超重力というのは。動きが取れないと思っていた、が――」

 ぎしりと筋繊維がきしむ音が聞こえてくる。
『月蝕』の線の細い体が超重力の檻すら踏み越えて猟兵達に迫るのだ。
「やり直せると自覚しているオブリビオンは厄介だね」
 でも、倒すことには違いはないと佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、己の手にした携行式ガトリングガンの銃口を向ける。
 確かにオブリビオンはやり直すことができる。しかし、それは同一の個体による事件ということではないのだ。
 彼らは過去が存在し続ける限り、骸の海より滲み出る。
 しかし、膨大な過去に歪んだオブリビオンは経験を引き継ぐことができない。あたかも経験引き継いだかのような存在はいるかもしれないが、それでも通常のオブリビオンにそのような力はない。

「何を持って『次回』というのかわからないけれど……次なんて無い」
 放たれる弾丸を躱す『月蝕』。
 その体から吹き出し続ける血潮はあらゆるものを腐食させる劇薬となって晶を襲うだろう。
 それを神気で固定しながら、晶は走る。
 逃してはならない。
 もとより逃げるつもりはないのかも知れない。何が目的なのかはわからないけれど、それでも彼女をここで倒さなければならない。

「『前回』があったのだから、『今回』がある。そして、『今回』があるから『次回』がある。当然の帰結だとは思わないかい?」
 劇物が晶の眼前で止まる。
 あれにふれてはあらゆるものを腐食されてしまう。固定したとして、劇物が消えるわけではない。
 次第に晶の動きが限定されていく。
 これが『月蝕』の狙いであったのだろう。晶が神気に寄って防ぐのだとしても、劇物は固定されて戦場に残り続ける。

「そうなると後はキミの動きが限定される……こういう時、チェックメイトと言うんだよね?」
 放たれるカランビットナイフの一撃。
 しかし、そのナイフの一撃は晶の肌を引き裂くことはなかった。
「あら、そんなことをしなくても腐蝕しない体にしてあげていますのに」
 その声は晶の内側から聞こえてくる。
 そう、邪神の分霊による、邪神の繰り糸(オーダード・マリオネット)が晶の体にまとわりつく。
 人形化の呪い。
 されど、その人形へと変貌した姿にナイフの一撃は意味をなさないだろう。

 硬い体に慣れた自分に切ない思いをいだきながら、晶は助けてくれたことにありがたさを感じる程度には未だ人間をやめていないのだ。
「そうそう、宵闇の衣は大丈夫ですけど、下着はわかりませんの」
 感謝したことを秒で投げ捨てたくなるような言葉を聞いて、晶は完全に自分が遊ばれていると理解する。
 そんな様子を見て、『月蝕』は、初めて笑ったのだ。
「アハハハ、いいな。そういうの。ボクも邪神を復活させようとしていたのだけれど、キミは上手にやっているんだね。羨ましいよ、とてもね」
 けれど、即座に表情が消える。
 彼女の目的は邪神の復活。
 ならばこそ、目の前の晶は障害に成り得るのだろう。

「羨ましがられることなんてない。ほんと邪神に関わるとろくなことがない……だから、ここで終わりにさせてもらうよ」
 晶の手にある極細の切断用ワイヤーが走る。ただ闇雲に劇物を躱して走っていたのではない。
 周囲に張り巡らせたワイヤー。
 それは奇しくも『月蝕』が劇物を撒き散らして晶の行動範囲を絞っていたのと同じ戦術であった。

「これは、やられたな……ボクとしたことが、同じ土俵で一杯食わされるなんてね」
 包み込むようなワイヤーが『月蝕』に迫り、その片腕を捉える。
 一瞬の内に寸断される『月蝕』の片腕が宙に舞い、晶は邪神と関わった者の末路を示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
消化試合とか言わんでくださいよ~
今日は、あなたと初めて出会った特別な日。大事な思い出になるんですから

あなたの武器はナイフなんですね!接近戦が好きですか?私は大好きです
目の前の相手を叩き潰すことだけ考えればいいから
『wanderer』の蹴撃と『with』の斬撃を織り混ぜ、変則的に攻める
ナイフは受けても構わない
地獄の焔が塞いでくれる【激痛耐性】
むしろナイフごと掴んでしまえば、動きを止める事も出来るかも【怪力】

何でも無い毎日だから、些細な事でも幸せになれるんやと思います
今日のランチは美味しかったなぁ、とか
気になるあの子と目があった、とか
特別な日やなくても、嬉しい事はたくさんあるんですよ、きっと。



 切断された片腕が中を舞い、アスファルトの上に落ちる。
 それは猟兵の攻撃に寄って為された傷であり、鮮血が滴り落ちていた。ぱしゃ、と血溜まりを踏むように『月蝕』は己の切断された腕からカランビットナイフを取り上げ、くるりと手の中で弄ぶ。
「やるものだね。消化試合のつもりだったのだけれど、キミたちはどうやら本気のようだ」
 それはまるで『月蝕』が本気を出していないかのような言葉であったことだろう。
 彼女にとってこの戦いは計画の頓挫によって、勝利する意味もない戦いでしかなかったのかもしれない。
『今』のこのオブリビオンとしての存在は滅びるのだとしても、『過去』に、骸の海に沈んでいる『月蝕』は再び過去よりにじみ出てくることだろう。


 それをして彼女は『次回』があると言うのだ。
 だからこそ、すでに計画が猟兵に寄って妨げられた以上、この戦いに意味はないのだと言っているのだろう。
「消化試合とか言わんでくださいよ~今日は、あなたと初めて出逢った特別な日。大事な思い出になるんですから」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は笑っていた。
 そんな彼女の笑顔を前に『月蝕』の表情は変わらない。血に塗れたセーラー服を手で祓って首をかしげる。
「残念だけど、『今』のボクはそれを忘れてしまうんだよね。キミの言う大事な想い出も『次回』のボクにはなんら意味がないのさ。忘れてしまうんだから」
 経験を引き継ぐことのできないオブリビオンにとって、新たに現る『月蝕』は似て非なる存在である。

 だからこそ、彼女は『いつか』の自分が、『かつて』の自分の計画を成功させることができればいいと思っているのだ。
「でもまあ、仕方ない。やろうか。キミが楽しそうなのは、ちょっと癪だしね」
 不気味な踏み込み。
 素人同然の動きであるというのに、結希は底知れぬものを感じていただろう。油断などできない。
 けれど、彼女の思考は単純にして明快であった。
「接近戦が好きですか? 私は大好きです」
 なぜならば。

「眼の前の相手を叩き潰すことだけ考えればいいから」
 迫る『月蝕』のナイフの刀身を襲撃で持って蹴り上げる。片腕に成った『月蝕』にとって、それはさばくことの出来ない攻撃であったことだろう。
 さらに大剣とともに繰り出される襲撃とのコンビネーションは、まるで踊るようでもあったことだろう。
「足グセが悪いようだね……けど」
 それでも『月蝕』は迫る。
 素人同然の体術であるというのに、いつのまにか接近されている。視線が至近距離で交わされる。
 放たれたカランビットナイフの一撃が結希の肩に突き立てられる。

 言いようのない痛みが体の中を走る。
 けれど、それでも結希には些細な傷だった。彼女の体は地獄の焔で満ち溢れている。
「――?」
『月蝕』は訝しむ。
 突き立てたナイフを引き抜こうとして引き抜けないのだ。溢れ出す地獄の焔が傷を埋めて、さらにナイフを引き抜けぬように固定しているのだ。
「接近戦が好き者同士――ここが私たちの距離ですよね」
『月蝕』にとっても、それは同様である。
 だが、彼女のナイフは結希によって固定され、引き離すことはできない。武器を手放して身を翻すという選択肢を保たぬ『月蝕』にとって、それは回避不能なる距離であった。

「なんでもない毎日だから、些細なことでも幸せになれるんやと思ういます」
 それはきっと今日のランチは美味しかったなぁ、とか。
 気になるあの子と目があった、とか。
 些細なことでよかったのだ。けれど、『月蝕』はそれを否定する。幸せとはそんなものではないと。
 狂気に侵された彼女にとって、それは幸せでもなんでもない。特別でもなんでも無い。
 ただ平坦な起伏のない日々に過ぎないのだ。

「其れは無理だよ。ボクは、そういうふうには感じられないのだから。キミたちがボクを理解できないようにね」
「それでもあるんですよ」
 結希は言う。
 そう、特別な日でなくても、嬉しいことはたくさんあるのだ。
 それを彼女は知っている。

 至近距離で放たれるwanderer(ワンダラー)による蹴撃。
 それは超強化された脚力でもって『月蝕』の細い体を吹き飛ばし、なんでもない日をこそ尊ぶ彼女の言葉を如実に顕すのであった――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
見た目は普通の姉ちゃんで存在が狂気か
厄介だね

目視、即姿勢低く駆け【忍び足】
ナイフ予想射程1m前で手裏剣【念動力/投擲】
【追跡】し敵UC射程内でUCを手持ちのクナイに乗せ撃つ【カウンター/暗殺/武器受け】
道路面は多少破壊してしまうが建物被害は抑える
【激痛耐性】で被弾や衝撃を耐え一撃離脱
崩れた路面の足場悪さを【地形の利用】し陰から毒塗りの手裏剣を【毒使い/罠使い】念動で投げ牽制
時間稼ぎの小手先なのは承知
速さ活かし接近
正面突撃やすれ違い時に服を掴み引き寄せるか態勢崩させ
目か腹をクナイで狙い裂くか【串刺し/暗殺】

月は狂気を喚ぶ
そういうけど
あんたはその体現なのかねぇ
次の…月蝕ごとに現れるのかな

アドリブ可



「見た目は普通の姉ちゃんで存在が狂気か」
 厄介だと鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は思ったことだろう。
 目の前のオブリビオン『月蝕』は猟兵たちの攻撃に寄って片腕を失い、胸に袈裟懸けの傷を受け、大量の失血に脅かされながらも未だ霧消していない。
 骸の海に消えることはなかった。
 それだけ強力な個体であることが伺いしれる。

 けれど、彼女の動きは素人同然であった。
 何か武術を嗜んでいる様子は何処にもなかったというのに不気味な重圧を持って猟兵達に迫る。
 目視した彼女を捉え、トーゴは姿勢を低くし戦場を走る。
 あの手にしたカランビットナイフの射程は短い。こぶりなナイフは、正面切って戦うというより、暗殺向き……即ちトーゴにとっては馴染みのあるものであったことだろう。
「猟兵とはキミみたいな者もいるんだね。面白い」
「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” …穿て大鉄嘴」
 トーゴの瞳がユーベルコードに輝き、空嘴(カラバシ)の一撃を放つ。

 超圧縮された空気が手にしたクナイとともに放たれ、アスファルトを削りながら『月蝕』へと迫る。
 それをカランビットナイフで受け止める『月蝕』の体は超圧縮された空気を受けて吹き飛ぶのだ。
「やはり素人……なのに!」
 なのに、この力にも耐えてくる。
 いや、耐えている様子すらない。
 ふきとばされた体がアスファルトをゴムまりのように跳ねては体勢を整え、不気味なまでの歩法でもってトーゴに迫るのだ。

 接近を赦すつもりはなかった。
 けれど、それでもトーゴに肉薄する『月蝕』の顔は無表情でありながら、その歪な狂気を持つ虹彩の輝きが彼を圧倒するだろう。
「毒をもって毒を制す、か。先の彼らは面白い存在だったけれど……キミはどうかな?」
『月蝕』の振るうナイフの一撃がトーゴに迫る。
 しかし、その一撃を横合いから飛んできた毒塗りの手裏剣が念動力でもって飛び、弾くのだ。

「小手先だね」
「そんなのは百も承知なんだよ!」
 速さを生かし、すれ違いざまにセーラー服をつかみ投げ飛ばす。手にクナイが現れ、振り下ろすが即座に『月蝕』が身を翻して身をかわし、跳ねるようにして飛ぶ。
 歪な輝き放つ虹彩もつ瞳がトーゴを捉えている。
 やはり、そうなのだ。
 これが天性というものであり、これまでの猟兵との戦いで動きを見切り始めている。

「月は狂気を喚ぶ。そういうけど、あんたはその体現なのかねぇ。次の……『月蝕』ごとに現れるのかな」
「そういうこともあるかもしれないね。けれど、次は同じようにするとは限らないだろう? 私には『次回』がある。けれど、キミたちが来るっていうのなら、話は別だよ」
 ここでキミたちを消耗させると『月蝕』が走る。
 トーゴは己の速さを信じる。どれだけ『月蝕』が不気味な歩法で持って己に迫るのだとしても、積み重ねられた研鑽がトーゴを裏切ることはない。

 すれ違いざまに放たれる一撃。
 超圧縮された空気は敵の目測を誤らせる一撃となって『月蝕』のナイフが己に届く前に彼女の体を吹き飛ばす。
「なら、その目論見ごと砕くのが猟兵ってやつだ。どうせ、『次回』なんて言いながら、俺たちのことなんて覚えてもいないんだろうから」
 それは無駄なことだとトーゴは言い放つ。

 オブリビオンは同一の名前を持つ者であっても、同一ではない。
 似て非なる者としてにじみ出てくる。
 それが過去に歪むことであると知るからこそ、トーゴは己の一撃で持って『月蝕』を打倒するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
煌月は使わず距離を取って遠距離戦の構え。

風や雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で術式による攻撃を連続で放つ。
相手がナイフで攻撃してきたら第六感と見切りでタイミングを読み、空中浮遊・自身への念動力・空中戦で空を舞っての回避等で対応。
斬り合いは避ける。

結界術・高速詠唱で張った防御壁を斬らせ、相手に好機と思わせて突っ込んできた時に、一対の天耀鏡を真剣白刃取りの要領で拳ごとナイフを挟み込み(第六感・見切り・盾受け)、念動力で固定。

UC発動して雷月で刺し、『月蝕』の魂を貫く!
「『次回』などと吝嗇な事は言わず、何度でもやって良いのですよ。その都度、阻止して倒して差し上げます。」と決意を籠めた微笑みを向ける。



 隻腕となった『月蝕』の体がアスファルトの上を面白いくらいに跳ねてふきとばされる。
 ゴムまりのように跳ねた体が高層ビルの壁面に叩きつけられると思った瞬間、彼女の体はまるで壁面に吸い付くように、地面のように着地する。
「げほっ……ごほっ……! ああ、たまらないな。けれど、意味はないね」
 隻腕となった傷口からは血潮がとめどなく溢れ出し、胸に刻まれた袈裟懸けの一撃の痕からも溢れて止まらない。
 さらに肉体への打撃や酷使された筋肉が悲鳴を挙げているであろうに、『月蝕』の表情は変わらない。

 歪な輝きを放つ虹彩だけが、異様であった。

「意味がないことなどありません。あなたの存在はここで終わりを告げる。例え、あなたの言うところの『次回』がオブリビオンに存在するのだとしても」
 大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の周囲には高速詠唱によって紡がれた術式に寄る風と雷を織り交ぜた弾丸を飛ばし、『月蝕』の接近を許さない。
 壁面に激突した術式が暴風と雷をほとばしらせながら、『月蝕』を襲う。
 けれど、それらのすべてを彼女は躱し、素人同然の体術でもって詩乃に迫るのだ。

 相手の得物がナイフしかないことを詩乃は知っている。
 だからこそ彼女は距離をとって空中に浮かび、攻撃させる暇を与えぬまま術式の展開を行っている。
 けれど、それでも『月蝕』は迫ってくる。
 見えぬはずの暴風すらも足場にするようにして跳ねてくるのだ。
 どう見ても、女学生のような線の細い体では成し得ぬ動き。けれど、これが現実である。
『月蝕』は見た目こそ、女学生。
 けれど、中身は狂気に彩られた怪物だ。

 その表情の変わらぬまま、異様に輝く虹彩がそれを示している。
「猟兵……いや、神性を宿した神そのものか。ボクが求める邪神とは違うけれど、キミはボクにとってあまり意味のない存在のようだ。善性だけの存在など、面白くはない」
 迫る『月蝕』のカランビットナイフの一撃が詩乃の張り巡らせた結界を切り裂く。
 詩乃を守る防御壁は失われ、返す刃が詩乃の体を貫かんと振り下ろされる。
 それは『月蝕』にとって好機そのものであったことだろう。
 同時に詩乃にとっては窮地。

 だが、それを覆すのが猟兵である。
 盾のように空を舞う一対の鏡が、迫る兇刃を真剣白刃取りの容量で持って『月蝕』の拳ごと挟み込み、念動力でもって固定するのだ。
「『次回』などと吝嗇なことは言わず、何度でもやってよいのですよ」
 詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。

 彼女の神力が込められた懐剣が明滅する。
「そのつもりだけれどね」
「ならば、その都度、阻止して倒して差し上げます」
 微笑みはユーベルコードの輝きにかき消える。
 詩乃手にした懐剣が振り下ろされ、その邪心そのものを打ち払う斬撃の一撃が『月蝕』に叩き込まれる。

「霊刃・禍断旋(レイハ・カダンセン)――!」
 肉体を傷つけるのではなく、その悪しき魂のみを切り裂く刃。
 それこそが彼女のユーベルコードである。煌めく神性の光は、狂気はらむ『月蝕』の魂そのものを焼き切るだろう。
 どれだけ彼女がなんでもない日、その日常を壊そうと蘇ってくるのだとしても。

 それでも詩乃の決意は揺らぐことはない。
 永遠にも続くかも知れないイタチごっこなのだとしても、詩乃は覚悟を持っている。なんでもない日を過ごす人々のために、己が神性である意味を問う。
「守るべきものがある。あなたには其れがない。だから『今回』も失敗するのです」
 それは『次回』も変わることはないのだと示すように詩乃の放つユーベルコードの輝きが、邪心を焼き滅ぼすように明滅するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
用途申請、特級危険物に対する非戦闘員の保護!

電脳禁忌剣を大地に突き刺しUC解禁
戦場のアスファルトを材料に籠(ケージ)状の虐殺兵装圏を展開、月蝕を衆人の目から隔離

幾度貴女が過去より染み出そうと、必ずや道を阻む者が現れる事でしょう
この世界がこれまで「なんでもない日」を積み重ねてきたように

純粋な技術故に、その力の無効化には至りませんが…やり様はありますとも

地面、壁、天井
ありとあらゆる場所から展開する銃器の飽和射撃の●蹂躙で回避許さず

『次回』の結末は誰も与り知らぬ事ですが…『今回』の結末は決まっております

ここから一歩も出る事能わず、滅んで頂きます

蜂の巣にして回避行動を封じ、剣を振り下ろし



 視界を染め上げるほどの猛烈なる神性の輝きが『月蝕』の邪心を焼き滅ぼすように炸裂する。
 その光の中であってもなお、『月蝕』の邪心は浄化されることはなかった。
 彼女の心は、魂は、すでに狂気に寄って歪められている。
 彼女自身がもとよりそうであったというように、彼女は己の心の形を変えているのだ。
「変わらないよ。ボクはね。元からこうだったんだ。みんなと違うなんてことはわかってる。別に嫌じゃないんだ。ボクが嫌だったのは――」
 光の中から隻腕となり、胸からは血潮をこぼす『月蝕』の姿がいまだ無償せずに存在している。

「ボクが本当に嫌だったのは、世界そのものさ。『なんでもない日』が特別だなんて、そんな価値観が存在している事自体許しがたいことなんだから」
 溢れかえる邪気。
 支えるは狂気。

 その姿を前にしてトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は即座に決断した。
「用途申請、特級危険物に対する非戦闘員の保護!」
 電脳禁忌剣を大地に突き刺し、トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
 銀河帝国未配備A式フォースナイト殲滅圏展開兵装(アレクシアウェポン・エクスタミネートフィールド)によって生み出されるは、物理、科学以外の力を無力化する虐殺兵装圏。
 それは邪心の力を持つであろう『月蝕』においては、彼女の力を減退させるものであったはずだ。

 周囲に張り巡らされた結界は弱まっていた。
 彼女の姿を人々の目に触れさせれば、それだけで人々は狂気に飲まれUDC怪物へと変貌してしまう。
 トリテレイアは己の檻のような籠を生み出し、『月蝕』の姿を衆人から隔離したのだ。
「幾度貴女が過去よりしみだそうと、必ずや道を阻む者が現れることでしょう。この世界がこれまで『なんでもない日』を積み重ねてきたように」
「其れが嫌いなんだよ。特別なことがないのに、平然と時間が過ぎていく。それは無為ってことならないかい?」
 迫る『月蝕』の動きは、素人同然。
 けれど、不気味な圧力でもってトリテレイアに肉薄する『月蝕』の動きは脅威そのものであった。

 やはり、この動きは邪心の恩恵などではない。
 単純な技術なのだ。素人同然に見せているのは、其れこそが『月蝕』の技術。
「無力化には至りませんか……ですが」
 やり様はあるのだ。トリテレイアが何故、虐殺兵装圏を籠のような形状に設定したのか。
 それは天井、地面、壁といった戦闘領域を固定するためである。

「『次回』の結末は誰も与り知らぬことですが……『今回』の結末は決まっております」
 トリテレイアのアイセンサーが再び煌めく。
 どれだけ凄まじい見切りを持っているのだとしても、籠の中の鳥は、籠より出ることはできないのだ。
 壁、天井、地面から瞬時に展開する銃器。
 それらの銃口が『月蝕』を捉えるだろう。

「ここから一歩も出ること能わず、滅んでいただきます」
 放たれる銃弾の雨。
 それは『月蝕』を逃さぬ銃撃の乱舞であったことだろう。際限なく放たれる弾丸。例え、見切るのだとしてもこれだけの飽和攻撃である。
 すべてを躱すことなどできやしない――はずであった。

 トリテレイアは息を呑むような所作を思わずしていたかもしれない。
 己のアイセンサーが捉えていたのは、あらゆる銃撃を隻腕で手にしたナイフで弾き、跳弾のようにして連鎖反応的に縦断の嵐をかいくぐる『月蝕』の姿であった。
「ならば、もう一手!」
「人の目でないこと、そういうことか、猟兵の機械騎士」
『月蝕』の歪な虹彩と視線が交わる。
 そこにあったのは、狂気だけである。トリテレイアが籠の中の嵐へと介入することに寄って、『月蝕』の体勢が崩れる。
 弾丸が足を貫き、体勢を崩す彼女の姿をトリテレイアは捉えていた。

 この窮地にあってなお、その瞳に恐れはなかった。
 あったのは狂気だけ。振り下ろした剣の一撃に切り裂かれる肉体、その痛みを感じていないかのような表情は、それでもなお、猟兵達を圧倒する強力な個体としての存在を誇示しているようにもトリテレイアには思えたかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

「次回」ねー?
そういう持ち越し要素があるならたのしそうなんだけどなー
一期一会って考え方もあるんだろうけどさー
んもー
それでもこれはつまんないじゃん!
もっと真摯にゲームをしようよー!

●帳
一応周りを[影]から[餓鬼球]くんに出てもらって円陣を組むように囲んで目張りをしておこう
わお!絵面が怪しい!

●【第六感】で避け…UCでドーンッ!!

なーんて言っても次のキミは覚えちゃいないんだろうけれど
"キミ"にとっては一度きりのチャンスだっていうのに
そんなことにも気付かないし、気付けない…
もっと楽しまなきゃダメだよ!

でもいいよ
"キミ"にとってはたった一度きりだからね
本気で遊んであげる!



 銃弾の嵐吹きすさぶ檻の中から飛び出した『月蝕』の体はボロボロであり、満身創痍と呼ぶに相応しいものであったことだろう。
 隻腕となった腕からは血潮が溢れている。
 胸に十字傷を刻まれたのは、猟兵たちの攻撃の激しさを知らしめるものであったことだろう。
 だが、それでもなお『月蝕』は滅びることはなかった。
 強力な個体であるということを差し引いてもなお、不気味さを醸し出している。
「いい経験になった。持ち越せないのが残念であるけれど。それでも『次回』に活かせる。とてもよいことだね。オブリビオンの体というのは」
 言葉と声色は笑うようであったけれど、『月蝕』の表情は変わらない。

 異様なる輝きを放つ虹彩を前にして、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はくびをかしげていた。
「『次回』ねー? そういう持ち越し要素があるならたのしそうなんだけどなー」
 一期一会って考え方もあるんだろうけれど、とロニはつまんない憤慨する。
 彼にとってオブリビオンとの戦いはゲームそのものであった。
 神性であってとしても、個である以上考え方も在り方も様々であろう。

 だからこそ、ロニはつまらないと言うのだ。
「そうは言ってもね、キミ。キミのやり方に合わせられる者なんてそんなに多くはないんじゃないかな?」
「もっと真摯にゲームをしようよー!」
 目張りをするように球体たちがロニの影から飛び出していく。円陣を組むようにして囲んだのは、目張りと同時に『月蝕』を逃さないようにしているのだろう。
「わお! 絵面が怪しい!」
「やるほうが言うとはね。でも、ゲームをしているつもりはないんだよね、ボクは」
 迫る『月蝕』の動きはロニをして捉えることのできない不気味な踏み込みであった。

 動きは素人なのに、踏み込むのは神速の如き速さ。
 筋繊維がきしむ音が聞こているのに、『月蝕』の細い肉体にはその筋肉があるとは思えない。
「楽しまない人に特別な日なんてこないと思うんだけどなー……なーんて言っても次のキミは覚えちゃいないんだろうけれど」
 ロニは迫る『月蝕』の振るうカランビットナイフの一撃を躱す。
 第六感。
 それは人智を超えた直感めいたものであったことだろう。超高速で放たれた斬撃の一撃を躱し、横っ腹に打ち込むのは、神撃(ゴッドブロー)の一撃である。

「“キミ”にとっては一度切りのチャンスだっていうのに、そんなことにも気づかないし、気づけない……もっと楽しまなきゃダメだよ!」
 放たれた一撃は神々しさすら感じさせる一撃であったことだろう。
 単純明快な力の殴打。
 それはロニにとっては当たり前の一撃であったことだろうが、『月蝕』にとってはそうではない。
 信心無き者にすら神々しさを齎す一撃は、彼女の横っ腹を撃ち抜くように打ち込まれる。

「――っ」
 だが、それでもわずかに呻く程度であるのは『月蝕』の外側と内側が釣り合っていない証拠であろう。
 吹き飛ぶ体が跳ねて、それでも立っている。
「これが神の一撃というやつか。面白いね。それだけの神性を持ってしても、ボクの中身は堪えていないようだ」
 その余裕、その無表情。
 その全てがロニという神性を見据える。

「でもいいよ。“キミ”にとってはたった一度きりだからね。本気で遊んであげる!」
 ロニは笑う。
 対する『月蝕』は笑いもせず、その異様なる輝きを放つ虹彩でもって相対する。
 拳と刃が交わり、激突し、火花を散らす。
 何度も、何度も打ち付けられ、それでもなお、『月蝕』は打ちのめされ続ける。
 ロニの言葉通り、彼女にとってのチャンスは今回一度きりである。

 それを理解しない『月蝕』にとって、それはあまりにも残酷な現実そのものであったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
ああ何だったか、非日常の日常化か。そうしたところで、追々別の特別が定義されそうなところだが、どこまで続けるつもりかね。
まあ何度繰り返しても構わんよ、音を上げるまで阻んでいこう。

相手の攻撃は引き続き知覚端子で情報収集することで、UCで展開した光学モジュールも足場にしながら到達するまでに安全地帯へ。モジュールらをハッキングによって操作しながら制圧射撃で攻撃に転じよう。モジュールは腐食しようが問題ないな。

『月蝕』が間合いを詰めてくれば、避けるかアサルトライフルで受け止めるよ。
銃口はまだレヴィアスクがあるからな。その時は零距離射撃で撃ち抜こう。



 マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)にとって、UDC怪物である『月蝕』の目的は一考にすら値しないものであったことだろう。
『月蝕』の言うところの『非日常の日常化』とは、あまりにも意味のないことであったからだ。
「そうしたところで、追々別の特別が定義されそうなとろこだが、どこまで続けるつもりかね」
 マホルニアにとって、それは意味のないことのように思えたことだろう。
 なんでもない日。
 それは確かに日々を生きる人々にとって、刺激のない特別ではないものであったことだろう。

 平々凡々に生きるということに意義を見いだせぬ『月蝕』においては許しがたいことであったのかもしれない。
「それこそ永遠にさ。そうすることで人のは絶えることのない進化の道を歩んでいけるだろう? ああ、いや、そうじゃないな。ボクにとって進化なんてどうでもいいことなんだ。特別がほしいんだよ。特別なものがね」
 その表情は変わらぬものであった。
 平坦な表情。されど、その瞳に輝く狂気はらむ虹彩だけが爛々と輝いている。
 相容れぬ存在。
 破綻した理論。この戦いをして『今回』と言う彼女の考え方はオブリビオンならではのものであろう。
「まあ何度繰り返しても構わんよ」

 ホマルニアは展開したナノマシン群から得られる情報を元に、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「CODE:EMISSION//LDF_B_MODULE COORDINATE SHIFT.」
 紡ぐ言葉が生み出すは反射外殻を持つ浮遊型無線光学モジュール。
 それは、光り輝く者(ヒミングレーヴァ)と呼ばれるモジュールであり、マホルニアの知覚端子から得られた情報を元に飛翔するのだ。
 放たれる光線が『月蝕』を追い込んでいく。

 確かに彼女の体は満身創痍であった。
 隻腕となり、胸に刻まれた十字傷は浅からぬものであった。失った血液も尋常なものではない。なのに、未だ彼女は失血死することなく動き続けている。
 それが証明するのは、すでに彼女が人外へと身を落としていることであろう。
 姿形は女学生であっても、中身は最早別物である。
「キミは自分が特別だとは思わないかい? 自らの存在が、世界にどのような影響を与えるのか。それを考えたことはないかい?」
 迫る『月蝕』をモジュールを足場にすることに寄ってマホルニアは躱し、いなし続ける。

 不気味な踏み込みで持って距離を詰めてくる『月蝕』の斬撃の一撃をアサルトライフルで受け止める。
 ただ、それだけで銃身が切り裂かれ、両断される。
「それは意味のある質問とは思えないな。私にとって大切なことは唯一だ。それに報いたいと思えるものがあるかどうか」
 あの日、己の手をとって引き上げてくれた炎の中の手がある。
 あの光景をマホルニアは忘れないだろう。

 あれを特別だというのは簡単なことだ。
 けれど、きっと己の手を引いてくれたあの人にとって、それは特別なことではなく、当たり前のことであったのだろう。
 その『なんでもない』ことにこそ自分は今救われているのだ。
「貴様にはわからぬことだよ、オブリビオン」
 両断されたアサルトライフルを棄て、マホルニアは弓なりの両手剣を手にする。ナイフと激突して火花を散らす。

 肉薄した最中にあって『月蝕』の異常なる虹彩の輝きがマホルニアを押し切ろうと凄まじい力でもって圧する。
「この距離なら――」
「いいや、この距離は私の距離だよ、オブリビオン」
 手にしたレヴィアスクは弓なりの両手剣にして、持ち手がハンドガンになっている。
 その銃口が狙うは『月蝕』の眉間。
 ゼロ距離で放たれる弾丸は、狙い過たずに『月蝕』の頭部を貫き、その体から休息に力を失わせていく。

 頭蓋から崩れていく肉体。
 その最後まで残った口が、漸くにして釣り上がる。
 笑っている。
 己の滅びすらも笑う『月蝕』の表情にマホルニアはためらうことなくレヴィアスクの刀身を振り下ろし、白昼にて行われたUDC怪物事件に幕を下ろすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『今から来てくれる?』

POW   :    ガッツで乗り越える

SPD   :    テキパキ、適度に力を抜く

WIZ   :    頭を使って作業効率アップ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオン、UDC怪物『月蝕』が引き起こした事件は幕を下ろす。
 しかし、猟兵たちには未だやるべきことが残っている。
 白昼の交差点に溢れかえったUDC怪物という非日常にして、現実。
 それらは人々の記憶に否応なく刻まれることだろう。今日という日は、彼らにとって『なんでもない日』ではなくなっている。

『月蝕』の言うところの、『次回』とは、彼らに刻まれた記憶を依り代にすることなのだろう。
 駆けつけたUDC組織の職員たちはそう結論づけた。
 刻まれた非日常の記憶を媒介にして撚り合わせ、儀式として再臨する。
 それが『月蝕』の『次回』なのだ。

 これを防ぐためには、地道な『記憶消去』しかない。
 最悪なことに、目撃者は多い。多すぎるのだ。猟兵たちは己の手段、そしてUDC組織から貸与される『記憶消去銃』を持って、今回の事件の目撃者たちの記憶を消去し、彼らにケアを施さなければならない。

 ここまで仕組んで、目論見通りにことを運ばせたのが『月蝕』であるのならば、猟兵たちは彼女の言うところの『次回』を確実に消し去らなければならない。
 それこそが、なんでもない日を守る唯一の方法なのだから――。
村崎・ゆかり
難儀な話ねぇ。どこぞの世界結界が羨ましく思えるわ。

『映画撮影謝礼会』、とでも交差点近くのビルに看板掛けて、記憶消去会場を準備。
普段から交差点を利用してる人が自発的に入ってくれるのを待つわ。
あたしは受付で「コミュ力」を目一杯使って奥へ通す。
記憶消去銃の扱いはUDC組織の人の方が心得てるでしょ。

受付を続けつつ、黒鴉の式で交差点の様子を確認。
人の流れはどんなものか。極度に怯えが見える人がいたら、黒スーツに着替えたアヤメに『会場』へ連れてきてもらう。

一応、便乗して当日居合わせてないのに謝礼だけもらおうって人は追い返すわ。
全く、人間は逞しいわね。
記憶消去会場にも黒鴉を送って、様子を眺めていましょ。



 UDC怪物『月蝕』のもたらした混乱はUDC組織にとって、あまりにも甚大な被害を齎すものであった。
 人がUDC怪物に変貌するという最悪は免れたものの、『月蝕』の遺した『非日常』の記憶は人々に刻まれたままである。
 猟兵たちの活躍に寄って、その被害は想定されていた範囲よりも、より狭くなっていたのだが、それでも大勢の人々の記憶の中に『非日常』は刻まれてしまった。
 その度合は軽微であったのだとしても、数が揃えば再び『月蝕』は再臨するだろう。

 UDC怪物が溢れ出した原因は未だ掴めず。
 けれど、その痕跡はたしかに世界に刻まれてしまったのだ。
「難儀な話ねぇ。どこぞの世界結界が羨ましく思えるわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はUDCアースの現状を憂う。
 あまりにも薄氷の上に成り立つ世界の在り方に彼女はため息を吐き出した。
 人々の記憶を消すにしたとしても、効率よく人々を集めなければ、『月蝕』の目論見は達成されてしまうだろう。

 だからこそ、彼女は『映画撮影謝礼会』として、人々を避難誘導する際に使った方便を利用することにしたのだ。
 事件が起こった交差点付近のビルに看板を掛け、記憶消去の会場を準備する。
 あとは人々が謝礼目当てに会場に入ってくれるのを待つだけである。
 ゆかり自身は受付として人々を招き入れていく。

「とは言え、これも人海戦術よねぇ……」
 全員が全員、映画撮影を信じていたわけでもないだろう。
 察しの良い人間だっているはずだ。そもそも映画事態に興味のない者だっているかもしれない。
 けれど、大多数が集まっていけば、興味本位で人は集まってくる。
 彼女は、受付に座しながら、黒鴉召喚(コクアショウカン)によって感覚を共有した式神の黒鴉から得られる外の状況を確認する。
 映画撮影だと信じている者ばかりであるのならいい。

 けれど、自分が見たものが現実のもの、UDC怪物の恐怖に怯える者がいたのならば、その記憶は在っていいものではない。
 強烈な記憶はそれだけで強力な媒介になってしまうだろう。
「全く……」
 そんな怯えた人間もいれば、商魂たくましい人間だっている。
 何かやっている、何かもらえると知れば寄ってくる人間だって居る。謝礼目当てに寄ってくる人間をゆかりは追い返しながら、次々とUDC組織の人員たちと協力して会場を埋めていく。

 式神であるアヤメにも手伝ってもらいながら、順調に収容された会場はそれなりの数の人々を集めることができただろう。
「人間は逞しいわね。なんて、そんな簡単に言えるのなら良いのだけれど……そうも言っていられないのが大変なところよね」
 ゆかりは会場に配置されたUDC組織の人員たちが一斉に『記憶消去銃』を持って人々の記憶から『非日常』の記憶を消去していくのを見やる。

 彼らが今日という日を『なんでもない日』だと認識しているのならば、それでいい。
 人は特別を求める。
 当たり前のことだ。誰だって一人ひとりがかけがえのない存在である。
 けれど、それを自覚しているからといって、全てが良い方向に進むものでもないことをゆかりは知っているだろう。
「一廉の、なんて言うわけじゃないけれど。それでも『月蝕』は、そういうものを求める普通さを理解しきれていなかったのでしょうね」
 あの『月蝕』は、そういう存在だ。
 ガワだけが普通。
 けれど、中身は最早、人間ではない別の何かだった。

 あれを放置しておくことこそが、UDCアースの危機であったことだろう。
 彼女は『次回』と言っていた。
 けれど、その芽は完全に此処で摘み取る。戦う以上に、このような地道な道のりこそが、『なんでもない日』を持続させていくために、本当に必要なものである。
 だからこそ、ゆかりは人々が首を傾げながら会場から出ていく姿を見やり、一人疲労感にさいなまれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
焔天武后はUDC組織に用意して貰った大型トレーラーの上に横たえ、詩乃はSSW用のフィルムスーツを着用してパイロットを演じ、ゆかりさんがセッティングしてくれた『映画撮影謝礼会』にて御協力感謝の言葉を述べつつ、記憶消去銃で危険な記憶を消していきますよ~。

『月蝕』にはああ言いましたが『次回』が無い事が一番ですしね。

これ(記憶消去銃)って効果抜群ですね♪
これが有れば深夜の境内でデビキンの邪神様なりきりセットを着用しての演技練習を見られた事や、いま神社の石像(焔天武后)が無くなっている事もごまかせるのに…一つ貰おうかな?
でも狂気と関係無いのにご近所様に撃つのは…と悩む詩乃でした。
(結局貰いませんでした)



『次回』などと吝嗇なことなど言わず、何度でもやっても良いのですよ、とはオブリビオン『月蝕』に向けて大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)が言い放った言葉である。
 その都度、彼女は阻止すると覚悟と決意をみなぎらせて、『月蝕』を討ち果たした。
 それは間違いなどではなかった。
 けれど、『次回』など無いことが一番であると詩乃は理解していたことだろう。

 UDCアースにおいてオブリビオン、邪神の存在は影に潜むものである。
 どんなに平穏な生活があるのだとしても、その裏側には、影には邪神の眷属の影が存在しているのだ。
「『月蝕』にはああ言いましたが」
 やはり詩乃は何事も無いことが一番良いことだと、スペースシップワールド用の装備であるフィルムスーツを身にまとい、大型トレーラーの上に横たえたスーパーロボット『焔天武后』とともにポーズを撮ったりしている。
 それは他の猟兵が用意した映画撮影謝礼会に乗じるものであった。

 彼女の操るスーパーロボット『焔天武后』は、その巨大さゆえに『セット』として人々の目に触れた。
 ならば、これに乗じて説得力を増した方が良いと思ったのだろう。
 UDC怪物の姿を実際に見た人々の記憶を消去するために設えられた会場は多くの人々が集まってきている。
「今日は撮影にご協力頂きありがとうございました。パイロット役を演じさせていただきました」
 そう言って詩乃は舞台の上に立ち一礼する。
 表向きはロボット映画のパイロット役を演じる女優である。

 これらの全てはUDC組織に用意してもらったものであり、大仰な会場と合わせて説得力を増すものであった。
『セット』として『焔天武』を使うことに詩乃は特別抵抗感はなかったのも幸いした。
 彼女の神性は、時にカリスマ女優が放つオーラと似通っていたことも大きかった。
「それでは、スタッフの皆さんよろしくお願いたします」
 挨拶を終えた詩乃の言葉とともにUDC組織の人員たちが『記憶消去銃』を携え、不思議な光線で持って集まった人々の記憶を消去していく。

 確かに今日という日は、非日常であったことだろう。
『月蝕』の言うところの『特別』であったのかもしれない。けれど、その記憶が依代となって人々に悪意という名の牙を剥くのならば、その記憶こそ消し去らなければならない。
 なんでもない日。
 その記憶に置き換えられた人々は次々と会場から歩みだしていく。

 効果抜群な様子を見て、詩乃はしばし考える。
 あの『記憶消去銃』を一丁もらえないだろうかと。たぶん頼めばもらえるのかもしれない。
「……これがあれば……」
 そう、デビルキングワールドにおける邪神なりきりセットを着用してのワルの演技練習を見られた時や、今まさに『焔天武后』が神社の石像としての役割を果たさず、UDCアースに存在していることなど、あらゆる猟兵として活動する際につきまとう面倒事をまるっと解決することができるのかもしれないと彼女は考えているのだ。

 しかし、人の記憶をそう簡単にホイホイ消去していいのかという葛藤もある。
 なにせ、特に狂気とは関係のないご近所様を撃つには、詩乃はあまりにも優しすぎたのだ。
 理由が理由だけに切実な問題である。
 一人、映画撮影謝礼会の舞台上に立ち、詩乃はうんうんと悩むのだ。
 それは今回の事件の後始末に追われるUDC職員たちの苦悩からすれば、大変に可愛らしいものであったけれど。

 それでも詩乃にとっては、なんでもない日を守るために必要なことであったのだ。
 結局彼女は、悩みに悩んだ末、『記憶消去銃』をきちんとUDC組織に返却して、これからまた神社に戻ってどうやってご近所様をごまかそうかと頭を悩まし続ける。

「ですが、これも、なんでもない日。特別なことがなくてもいい……悩みながらでも、少しずつでもいい。いつもと少しだけ違う日々を送ることができる。その特別さを噛みしめるのはちょうどよいのかもしれません」
 詩乃は、その悩みを笑いながら抱えて生きていく。
 ただそれだけで、少し心が軽くなるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
さっきの非日常を上書きする出来事用意するのは難儀だし
ここはUDC組織の記憶消去銃に頼ろう
銃器は扱い方分かんないから組織の人と一緒に行動

とんでもない非日常な出来事か
エンパイアなら祟りだ、なんだって大騒ぎして…ま、そこで終わるけど
UDCはすぐ情報がばら撒かれるしなー
この世界はもともと刺激の強い出来事が多いし全員が混乱してるわけでも無さそ

観衆の中を歩き【情報収集】
>やけに熱心にスマホ操作中の人
>表情からショックを受けた様子の人
>UDC組織の人から見て既に影響を受けつつありそうな人
等に声掛け
映画撮影だったらしいけど物々しすぎてびっくりしたよなーと観衆の【演技】
隙を見て組織の人に銃使用して貰う

アドリブ可



 UDC怪物『月蝕』と猟兵の戦いは、目撃した一般人たちにとって非日常そのものであったことだろう。
 どれだけ『映画撮影』のセットであると伝えられても、彼らが目撃した非日常を覆い尽くすほどのものではない。
 それは副次的なものでしかないのだ。
 だからこそ、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は非日常を上書きする日常wお用意するのは難儀であると判断したのだ。

 ならば、やるべきことは一つである。
 UDC組織より貸与される『記憶消去銃』に頼ることである。とはいえ、彼は銃器の扱い方を心得ていない。
「というわけで、一緒に頼むぜ」
 トーゴはUDC組織より派遣されてきたエージェントとともに戦いの場となった交差点付近の街中を歩く。
 先程の出来事を目撃した者たちを探すためだ。

 他の猟兵達によって『映画撮影謝礼会』が開かれ、それに乗る形で人々が大勢集まってはいる。
 けれど、すべての人々がその会場にまで足を運ぶかと言われれば、そうではないだろう。
 トーゴたちが行うことは、そういう取りこぼしを潰すことであった。
「結局、最後には地道な足の作業になるんだよな」
「仕方のないことです。地道でも一歩ずつやらなければ」
「それもそうだな」
 トーゴは考える。これがサムライエンパイアであったのならば、祟だなんだって大騒ぎをして、大体はそこで終わるのだ。
 けれど、此処UDCアースは違う。

 情報はすぐに拡散し、凄まじい速度で世界に伝播していく。
 その過程で真実は歪められ、変わり果てていく。そうしてUDC怪物が新たに生まれる可能性だってある。
「この世界はもともと刺激の強い出来事が多いし、全員が混乱しているわけでも無さそうだな」
 トーゴはあれだけの騒ぎがあったにしては、街中の様子がそこまで慌ただしいものではないことに驚くだろう。

 ならば、トーゴはそれこそやりやすいと考える。
 やけにスマートフォンを操作する人、表情から察するにショックを受けた様子の人、そういう人間が目に付きやすいのだ。
 いつもどおりの行動をする人間ならば、この場に留まる理由などない。
 けれど、そうではない人々は別である。
 この情報を一刻も早くソーシャルネットワークサービスにアップロードして注目を集めたい者や、あれだけの騒ぎに精神的に参っている人間は、トーゴにとってすぐに目につくのだ。

「あの人とかどうだ?」
「確かにそのような雰囲気がありますね。『記憶消去銃』の扱いは任せてください」
 UDCエージェントと打ち合わせして、トーゴは己もまた観衆の一人であったというゆにスマートフォンをいじる一般人に近づいていく。
「映画撮影だったらしいけど物々しすぎてびっくりしたよなー」
 え、とスマートフォンをいじっていた一般人が顔を向ける。
 急に知らぬ人間から声を掛けられれば、そういう反応にもなるだろう。
 けれど、トーゴにはそれでよかったのだ。

 己に意識を向けさせるだけでよかった。
 UDCエージェントが『記憶消去銃』の引き金を引き、不思議な光線を浴びせかける。記憶を消去したことにより、意識が混濁する一般人を支え、トーゴは手にしていたスマートフォンをUDCエージェントに投げる。
「この板っきれの中に情報が詰まってるんだろ? ならさ、それも消しとかないとな」
 情報を発信する機器。
 そこにもUDC怪物の記憶だけではなく、情報も残っていることだろう。それを媒介にして『月蝕』が復活する可能性だってあるのだ。

 トーゴは、そうした僅かな可能性も一つ一つ潰していく。
『次回』と言った『月蝕』の言葉を否定するように、トーゴは未だ多く残る一般人たちの非日常を消し去っていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
成程、記憶から再臨するとなれば、カバーストーリーで誤魔化すことも無駄なわけか。始めから『次回』のために動いていたのは凄まじい執念だが、『今回』で最後にせねばならんな。

近場にいる人間は――他の猟兵や職員も対応しているなら……戦闘中に情報収集した際に見た人間のうち、遠くへ移動している者のもとへ向かうとするよ。
負担はかかるが、知覚端子を広域に。場所が分かれば、周囲の目がないところに自分の座標を書き換えて近づこう。

現場で物を落としていたわ――などと、安易だが足を止められればそれで構わないか。
記憶を消すのは抵抗があるが、これは仕方がないな。



 白昼堂々と交差点に溢れかえったUDC怪物の群れ。
 それは人々の記憶に刻み込まれた非日常である。その非日常は、狂気を宿すには少しばかり足りないものであった。
 けれど、ひとりひとりの記憶に残る非日常が僅かなものであったのだとしても、その記憶がより合わさることによって、『月蝕』は再び舞い戻るであろう。
 最初からそのつもりだったのだ。

 己が猟兵に敗れることも想定のうち。
 それ以前に彼女の計画は最速にして最短。その刹那の如き時間ですら見逃さぬ猟兵たちの迅速な動きは、彼女をしても計画を変更せざるを得ないものであった。
「成程、記憶から再臨すると成れば、カバーストーリーで誤魔化すことも無駄なわけか」
 マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)は、オブリビオンにしてUDC怪物であった『月蝕』の計画にうなずく。
 用意周到であると言わざるを得ないし、どう転んでも『月蝕』自身が再び、邪神復活のために動き出すには十分過ぎるものであった。

 猟兵たちが人々の記憶に残ったUDC怪物たちを誤魔化すためのカバーストーリーを編み出したとしても、それはきっと根本的な解決には至らない。
 ならばこそ、マホルニアは『月蝕』の執念の如き働きぶりに頭を振る。
「だが、『今回』で最後にせねばならんな」
 彼女は周囲に集まる人々を見やる。
 多くの人々は他の猟兵たちが対応してくれている。
 それに加えてUDC組織の職員たちも動いている。ならば、マホルニアは己が何をするべきかを知る。

 多くの人々がUDC怪物の存在を認知したことだろう。
 それが真実としての怪物と記憶に刻む者もいれば、作り物であると信じたままの人間だって居る。
 だからこそ、マホルニアは知覚端子で戦闘中に情報を収拾した際に見た人間のうち、遠くへ移動している者の元へと向かう。
「負担はかかるが……CODE:UPDATE IDEA//FROM ■■□■■■■.」
 欺瞞の逕路(ビルレスト)と呼ばれるユーベルコードを発動させた彼女は、遠くへ離れていった人々を追う。
 自身の次元の座標と存在定義を書き換えることで、あらゆる空間と距離を飛び越えて追いつくのだ。

 それは彼女の肉体に負荷をかけることであったが、『月蝕』の目論む再臨を阻むためには致し方のないことである。
「いた……彼らか」
 マホルニアは知覚端子で得た情報と目の前の人物を照合する。
 一致したことを確認し、マホルニアは近づき肩を叩く。
「さっき、交差点に居た人でしょう。これを落としていたわ」
 そう言ってマホルニアはなんでもないように装って、振り返った人々に『記憶消去銃』を突きつける。

「え――」
 躊躇いがなかったのかと言われれば、多少はあるのだ。
 記憶を消す事。
 それはどんな理由があったとしても正当化されることはないだろう。仕方のないことだ。
 引き金を引いた瞬間、不思議な光線が放たれ、UDC怪物に関連する記憶をすべて消していく。

 こうすることで『月蝕』は二度滅ぶことになる。
 彼女が言っていたところの『次回』は失われるだろう。けれど、これでいいのだ。非日常は失われる。
 得られる、なんでもない日。
 それで守られる者がいる。今はそれで十分だ。
「まだまだ居るな……骨の折れる後処理だが。やってやれないことはない」
 滅びた後も、その残滓でもって猟兵を苦しめる『月蝕』。
 その存在は確かに強敵と呼ぶに相応しいものであったことだろう。だが、彼女が望んだ『次回』など訪れない。

 マホルニアは再びユーベルコードを輝かせ、その残光を世界に刻む。
 それは特別な光。
 猟兵としての力を振るうことに躊躇いはない。
 そう、なんでもない日を支えるのは、いつだって特別な何かなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
これが記憶消去銃…
思い出を集める為に旅をしてる私にとって
触りたくも無いものやけど…
あの…大丈夫ですよね?暴発したりしませんよね…?
不安過ぎるので、UDC職員の方に使い方をよーく聞いておきます

ネット上に広がった情報の対処はUDC組織がしてくれるはず、慣れてるやろうし
他の猟兵さん達は…もう動いてるみたい。すごいなぁ…
いつも組織に任せきりだからどうすればいいか…
この、すごくいやな銃…で地道に仕事しとこ

みんな騒いでますけど、どうかしたんです?
…うわやば。これ本物なんですか?すごーい(銃発射)
んー…やっぱり良い気はしないね。今日のこの時間が無駄になってしまうんやもん。ごめんね…
私は全部覚えておくから



 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は己の手にした『記憶消去銃』を前にして、渋面を作っていた。
 いや、やらなければならないことであるということは重々承知しているのだ。
 人々の記憶からUDC怪物に関連する今回の事件の記憶を消さなければ、UDC怪物である『月蝕』は再び人々の記憶を媒介にして再臨してしまう。
 それを防ぐためには、人々の記憶からUDC怪物に関連する記憶を消して回らなければならない。

 それは途方も無い後処理であったことだろう。
 しかし、結希にとって、それは大した問題ではなかった。
「これが『記憶消去銃』……」
 想い出を集めるために旅をしている彼女にとって、それは触りたいと思うものではなかった。
 最愛の人である大剣with。
 彼とともに旅する彼女にとって、記憶とは簡単に消していいものではなかった。
「あの……大丈夫ですよね? 暴発したりしませんよね……?」
 大丈夫だとたしなめるUDC職員を前にしても、不安は尽きない。

 すこしでも不安要素があるのならば、今のうちに取り払っておくべきだと彼女はUDC職員に詰め寄る。
「大丈夫です、本当に大丈夫です。まずは銃口になっている部分を顔の前に突き出します。トリガーを引けば光線が出るので、これに照射されれば、UDC怪物に関連

する記憶が消せるようになっていますから」
 だから安心してくれと再三UDC職員が説明する。

 それならばと結希は頷き、懸念を口にする。
「遭遇した人たちは皆スマートフォンで写真や動画を撮ってました。あれをネットに広げられたらもうどうしようもないと思うんですけど……」
 確かに尤もな懸念であった。
 UDC職員たちはうなずく。これから徹夜の作業になることだけは確かである。ああ、と結希は同情したくなったかもしれない。
 けれど、慣れている人にそれは任せて自分は人々の記憶を消す作業に戻らなければならない。

 他の猟兵たちはどうしているだろうかと見回すと、すでに映画撮影謝礼会など様々なやり方で対応し始めている
「すごいなぁ……いつも組織に任せきりだからどうすればいいか……」
 手にした『記憶消去銃』を、とても嫌なものを見る目でみながら、地道にやるしか無いと結希は息を吐き出す。
 先程もUDC職員に言った通り、人々はスマートフォンなどの端末に記録したものを誰かに見せるだろう。

 こんな非日常を経験したのだと、必ず吹聴するはずだ。
 だからこそ、結希は知らぬふりをしてスマートフォンの画面を見せあって騒いでいる一団へと近づいていく。
「みんな騒いでいますけど、どうかしたんです?」
「ん? ああ、これ見てみろよ。さっきまでそこの交差点で……」
「……うわやば。これ本物なんですか? すごーい」
 そこまでいって結希は、スマートフォンの画面を見せてくれた一般人に向けて『記憶消去銃』の銃口を突きつけ、引き金を引く。

 不思議な光線が放たれ、一般人たちは呆けたような表情になる。
 記憶を奪うということは、あまり慣れない。慣れるつもりもない。
「やっぱり良い気はしないね」
 いわば、それは今日この時間が無駄になってしまうようなものである。
 結希にとって、想い出とは最も大切なものである。

 それを奪うような真似をしてしまったことを悔いる。
 けれど、それも必要なことなのだ。画面を見せてもらったスマートフォンを呆け血ている一般人から取り上げ、画像やデータを諸々消去する。
「これで、よし。ごめんね……」
 言っても意味は無いかも知れないが、結希は謝る。

「私は全部覚えておくから」
 だからきっとこの時間も無駄にはならない。
 なんでもない日を正しく過ごしたということにはならないかもしれない。けれど、それでも守られるものがあるのならば、結希は気乗りしない作業を乗り切る。
 こんな日があってもいい。
 こんな日があるからこそ、かけがえのない大切な日を迎えた時に、噛みしめるようにして過ごすことができるのだ。

 今日記憶を奪った彼らにも、そんな日がすぐにやってくるといい。
 結希は、そう願わずにはいられないのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
邪神が徐々に力を取り戻しているのは事実なんだよね
とは言え邪神と心中する訳にもいかないから
何とかする方法を見つけないと

まあ、酷い
私は皆様を失いたくないだけですのに

戯言はともかくまずは体を元に戻してくれ
勝手に動く人形なんて怪談にしかならないよ

特殊メイクと言えば良いのでは?

こんなやり取りにも慣れてきた事が本当にまずいな
このままだと不老不死の邪神の体という永遠に囚われてしまう
一時的に人形や彫像になる事なんて可愛いものだよ

仕方ありませんの
でも服はそのままが良いと思いますの

UDC組織の方が用意して下さったビラを配って
目撃された方を職員の方々へ誘導すると良いですの
可愛らしいからきっと上手くいきますの

憂鬱だ…



 戦いが終われば、人形化した肉体は佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)にとって、あまりにも異物感の強いものであったことだろう。
 自身の体が別の何かに変わっていく感覚というのは、人にとって未だ受け入れがたいものであった。
 確かに邪神の力は強力そのものである。
「邪神が徐々に力を取り戻しているのは事実なんだよね。とは言え、邪神と心中する訳にはいかない」
 球体関節がきしむ音が聞こえる。

 これが邪神の力。
 己の体の内側に存在し、融合している邪神の齎す恩恵でもある。
 この力に助けられることもあるが、かといっていつまでもこれに頼り切りになるというのは、即ち己が邪神そのものになるという意味もあるのかもしれない。
 だからこそ、晶は何か方法を見つけようと足掻くのだ。
「まあ、酷い。私は皆様を失いたくないだけですのに」
 晶の内側で邪神の分霊がぷんすことしている。

 それを戯言だと晶は切って捨てる。
「ともかくまずは体を元に戻してくれ。勝手に動く人形なんて階段にしかならないよ」
「特殊メイクと言えば良いのでは?」
 邪神の分霊の言葉は、うなずけるところもあった。
 けれど、問題はそこではないのだ。こういう会話に自身が慣れてきたという事実に晶は頭を抱える。
 このままだと不老不死の邪神の体という永遠にとらわれてしまう。

「そういう問題じゃない。UDC怪物の記憶が一般人に残ってる。これをどうにかしないとまた『月蝕』が復活してくるんだから」
 一時的に人形や彫像になる事なんて可愛いことだと思えるようになってしまったのは、どうしようもないことであるが、晶は気を取り直して人々の記憶からUDC怪物の記憶を取り除くために方策を練る。
「仕方ありませんの」
 邪神の分霊が手伝ってくれるようであるが、どうするのか。

 答えは簡単である。
 というか、晶には予測できたことであったのかもしれない。
「晶は、そのままの洋服で。さあ、UDC組織の方が用意してくださったビラを配って目撃された方を職員の方々へと誘導すると良いですの」
 邪神の分霊が提案したのは、他の猟兵たちが催した『映画撮影謝礼会』の宣伝のビラであった。
 これを配れば、人々は多くが誘導されていくだろう。
 それにはどうあっても宣伝が必要である。そして、ビラ配りにはいつだって可愛らしいコンパニオンは必須。

「まさか……」
「ええ、可愛らしいからきっとうまくいきますの」
 にっこりと微笑む邪神の分霊。
 晶は再び頭を抱える。体は女性のものであっても、心は未だ男性なのだ。
 ひらひらのふりふりに慣れてきた、もとい麻痺してきた晶であったが、それでも愛想を振りまいて女性のように振る舞えというのは、抵抗がまだあるのかもしれない。

「憂鬱だ……」
 どうしようもないことであるが、それでも晶はふりふりの衣装を身にまとい、目いっぱいの愛想を振りまいてビラを配る。
 それは晶にとって憂鬱な一日になるのかもしれない。
 けれど、それでも人々のなんでもない日を守る一助になることは間違いなかった。

 そんな晶のげんなりした表情とはよそに邪神の分霊のツルツルテカテカとしたもち肌は、今日も輝くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
暫し電子の海に潜るといたしましょう

ネットワークにハッキング
直近に書き込まれたUDC怪物に関わる全ての情報を走査し把握、消去や偽装工作を敢行

写真などが撮られなくとも目撃情報の書き込み等を全て防ぐのはほぼ不可能
消去すれば逆に怪しまれる以上、大量の“虚偽”による“自演”で信憑性を限りなく貶めましょう

書き込み毎にアカウントを、経由するサーバーを切り替え…
『情弱乙 イベントと現実の区別付けろよ』
『そもそもそこでコスプレ撮影会なんて開かれてないぞ?』

…安寧を護るのは騎士の務めとはいえ、やり口が銀河帝国プロパガンダ部隊の模倣とは何とも因果なものです
ですが“嘘も方便”…人々の為、手抜かりはいたしませんとも



 情報とはUDCアースにおいて、尋常ならざる速度で持って広がっていくものである。
 それが良しにつけ悪しにつけ、情報は変質していく。
 人を介する度に微妙に変わっていく情報は、いつしかUDC怪物へと変貌するだろう。そういうものなのだ。
 特にそうした側面が強い世界であることをトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は知っている。
「暫し電子の海に潜るといたしましょう」
 UDCアースのネットワークにハッキングし、直近に書き込まれたUDC怪物に関わるすべての情報を走査し把握していく。

 他の猟兵も同じく動いているだろう。
 手は多いほうがいいのだ。トリテレイアはソーシャルネットワークサービスの情報を人では成し得ぬ速度で持って精査していく。
 時刻や場所、動画や画像といったあらゆる情報を精確に読み取り、UDC怪物を示したものである書き込みを見つけては、発信者を特定していく。
「写真などが撮られなくても、目撃情報の書き込みなどすべて防ぐのはほぼ不可能ですね……」
 消去してしまうのが手っ取り早いだろう。
 しかし、トリテレイアは逆に怪しまれることを懸念していた。

 消去される=真実である。
 その図式が成り立ってしまうのを彼は恐れたのだ。ならばこそ、トリテレイアはソーシャルネットワークサービスのアカウントを習得し、目撃情報に返信していくのだ。
 それも書き込みごとにアカウントを、経由するサーバーを切り替え……。
『情弱乙 イベントと現実の区別つけろよ』
『そもそもここでコスプレ撮影会なんて開かれてないぞ?』
 そんなふうに書き込み、真実を大量の“虚偽”でもって薄めていく。
 これならばUDC怪物の情報が残っていたとしても、人々の中には定着しない。正しい真実は薄まり、信憑性は失墜するだろう。

 そうなれば『月蝕』の言う所の『次回』は訪れない。
 彼女は己の存在とUDC怪物『希望亡き夜の囚人』たちの存在という記憶を媒介にして人々の中より復活するつもりであったのだろう。
 ならばこそ、歪められ、虚偽に満ちた情報からは彼女は滲み出ることはできない。
「……安寧を護るのは騎士の務めとはいえ、やり口が銀河帝国プロパガンダ部隊の模倣とはなんとも因果なものです」
 トリテレイアは電子の海にたゆたいながら、あらゆるUDC怪物の情報の信憑性を貶めていく。

 それは迅速な作業の賜であった。
 けれど、時に自己嫌悪にも陥るものである。ただのウォーマシンであるのならば、何も迷うこともなかったのだろう。
 けれど、トリテレイアは個としてのウォーマシンであり矛盾を抱える機体でもある。
「ですが“嘘も方便”……人々の為、手抜かりはいたしませんとも」
 トリテレイアは次々と書き込みを行っていく。
 時にウィットに。時にジャジーに。
 そして、時に煽り散らかすように。『月蝕』が目論んだ『次回』の芽の尽くを摘み取っていく。

 そうすることで守られるものがある。
 なんでもない日。
 こんな他愛のない、取るに足らぬやりとりさえ、きっと忘れ去られるだろう。だが、それでいいのだ。
 時間が過去を排出して進むように。
 人はいつだって忘れながら歩むのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

んもー
これが『次回』?
もうこれで死んでもよい思えるほどの境地に達して?
もう『次回』に委ねれば大丈夫だと安心して?
全てを託して…?
これが人のしたことならちょっとはほめてあげてもいーんだけどなー

●UC『神知』使用
【催眠術、ハッキング、追跡】辺り強化
[叡智の球]くんにネットと機械内のデジタル情報を根こそぎ消していってもらおう記憶と一緒に
あとは…【第六感】で大きな捜索からこぼれた子、逃れようとする子、あるいは秘密大好きなへそ曲がりな子ってのはいるものだからね
そんな彼らを追いかけてこぼさず“ケア”してこう!

んもー
少しはさ、もっとこう…『次回』になんか託さず自分でがんばってよね!



「んもーこれが『次回』?」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は憤慨していた。
 いや、正確には違うのかもしれない。
 オブリビオンである『月蝕』の言うところの『次回』とは如何なるものであるのかをロニは知りたかったのかも知れないし、期待していたのかもしれない。
 彼女の言うところの『次回』とは、他者の記憶を媒介にして再び己がUDC怪物として『今』を侵食することであったのだ。

 人々に刻まれた今日という非日常は、不穏なる記憶として残り続けるだろう。
 それは強烈な記憶であり、それを媒介にすることによって彼女は再びの現界を目論んでいた。
「もうこれで死んでも良いと思えるほどの境地に達して? もう『次回』に委ねれば大丈夫だと安心して? すべてを託して……?」
 ロニはオブリビオンのしたことに対して疑問ばかりが浮かぶことだっただろう。
 これがもし、オブリビオンではなく人の為したことであったのならば、神として褒めても良いとさえ思ったのかも知れない。

 けれど、神知(ゴッドノウズ)持つ彼にとって『月蝕』のとった方策は下策と呼ぶに相応しいものであった。
 彼の影から球体が浮かび上がり、ネットワークに接続し、機械内のデジタル情報を根こそぎ消去していく。
 他の猟兵たちもネットワークに介入しての消去や改竄、もしくは信憑性を貶めるといった行いをしていることだろう。
 ロニは己の瞳をユーベルコードに輝かせながら、あらゆる手段を講じてUDC怪物の遺した痕跡を虱潰しにしていくのだ。
「それにしても……」

 息を吐き出す。
 オブリビオンは過去よりの化身。
 骸の海よりにじみ出た存在だ。だからこそ、滅びることに意味はない。今存在している己は滅びても、過去が存在している限り、再び似て非なる存在として生まれ出るだろう。
「んもー、少しはさ、もっとこう……」
 だからこそ、捨て鉢になることができる。『今』を放り捨てることができる。

「『次回』になんか託さず自分でがんばってよね!」
 それは一生懸命じゃないとロニは思うのかもしれない。
 人は懸命に生きるからこそ、永遠に生きる灰色の如き輝きではない、千差万別の二児の如き輝きを見せてくれる。
 それを見るのがたまらなく美しいと思うからこそ、次に託す思いは素晴らしく思えるのだ。
 けれど、『月蝕』のそれは違う。

 諦観にも似た感情で彩られたそれに美しさはない。
 消化試合と言い、泥試合とも言った彼女の最後は、あまりにも美しくはなかったのだ。
「オブリビオンだからって甘えないで欲しいよね! さ、秘密大好きなへそ曲がりな子を追いかけていこうか」
 ロニはネットワークに残された痕跡から、未だ情報を秘匿しようとする人々の元へと駆けていく。
 少しも遺してはならない。
 あれは美しくないからではない。あってはならない、なんでもない日を穢す何かであるからこそ、ロニは走るのだ。

「なんでもない日。非日常を期待する『次回』なんてないよ。なんでもない日を特別に変える努力にこそ意味があるんだからさ」
 ロニは笑って『月蝕』の残滓を尽く消していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
さて。まずは師匠の後始末から……かな。
とりあえず、交差点を直したら、わたしは『映画撮影謝礼会』に来る前に逃げちゃった人たちのフォローをしよう。

映画の撮影に協力してくれた人たちに向けてサイトを立ち上げ、
ゆかりさんの『謝礼会』に来られない人でも、
住所や氏名を登録してもらえれば、謝礼をお送りしますってことにしようかな。

UDC組織に協力してもらって、
なるべく大きめに宣伝してもらえば、来られない人はサイトに登録してくれるよね。

登録してくれた人の素性や行動とかは【電脳潜行】で、SNSとかを調査かな。
その日、あの場にいた可能性がある人をリストアップして、
組織の人に記憶消去に行ってもらうことにしよう。


弓削・柘榴
ふむ。あちきはこういう広い範囲での調査作業は苦手なのでな。
理緒とUDC組織の手伝いでもしようかの。

理緒のリストアップした中から、
行きにくそうな場所や遠い場所にいる者を担当することにしよう。
【幻身変妖】で【翼猫】に変化していけば、山奥だろうが孤島だろうがひとっ飛びじゃからな。

記憶消去銃とリストを借りたら、早速行くことにするか。

ほう。なかなかにいろんなところを回ることになりそうじゃな。

最終的にUDC怪物の記憶が消せればいいのじゃよな。
せっかく行くのだし、行った先ではうまいものでも食うてくることにしよう。

今回はなかなかな依頼だったし、
理緒や他の猟兵、UDC組織の皆にも土産くらいは買うてきてやるか。



「認証クリア……ログ、イン」
 電脳潜行(デンノウセンコウ)によってUDCアースのインターネット世界にダイブした菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、まずやらなければならない

ことがあると、戦いの場となった交差点に刻まれた痕を修復していく。
 息を吐き出す。
 これだけの騒ぎを収拾するには相当な労力が必要となるだろう。
 騒ぎを目撃した一般人たちの記憶を消去して回ったり、ショックを受けている人の心のケアもしなければならない。

 UDC怪物とは狂気を撒き散らす存在だ。
 存在しているだけで人々の心に影を落とし、そこから復活を企てようとすることはこれまでにも知られていることである。
『月蝕』が狙ったのも、それであろう。
 人の記憶を媒介にして再臨を果たす。
 それは数が多ければ多いほど確実性を増すし、即座に復活することもかのうであったのだろう。
「さて。まずは師匠の後始末から……かな」
 理緒は師匠である弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)の解き放ったユーベルコードの残滓を取り除くべく作業に没頭する。

 テクスチャを書き換えるようにめくれ上がったアスファルトを修復し、周囲に齎された猟兵の戦った痕跡を須らく消していくのだ。
「ふむ。あちきはこういう広い範囲での調査作業は苦手なのでな。理緒、リストアップした者たちを早う教えてくれ」
 柘榴は理緒のように痕跡を消したり、追ったりすることは苦手としている。
 だからこそ、彼女は肉体労働に精を出すのだ。
「ちょっとまっていてくださいね。映画撮影謝礼会で、エキストラとして参加してくれた人たちに向けてのサイトを立ち上げてますから」

 理緒の後ろから柘榴がモニターを覗き込めば、そこにあったのは今回の事件の舞台であり、同時に猟兵たちが映画の撮影と偽って作り上げた『セット』で行われ

た謝礼会の様子を掲載したサイトが作り上げられていた。
「これで映画撮影謝礼会に来れない人でも住所や氏名を登録してもらえれば、謝礼を送りますってことにしておけば、みんな登録してくれるってわけです」
「なるほど。それであちきが向かえばいいんじゃな」
 柘榴にとって距離はあまり問題にはならない。
 変化【幻身変妖】(ゲンシンヘンヨウ)でもって翼猫に变化すれば、山奥だろうが孤島だろうがひとっ飛びであるからだ。

「しかし、サイトの閲覧数が芳しくないようじゃが」
「まだ立ち上げたばかりですからね。ここはUDC組織の皆さんに協力してもらって、なるべく大きめに宣伝してもらえれば、気がついてもらえますよ」
 こういう時に物を言うのが組織力というものである。
 UDC職員たちによって理緒の立ち上げたサイトは大々的に宣伝され、次々と拡散されていく。
「でも、これだけじゃ、今日あの場に居た人たち全員をカバーすることはできないですよね。だから……」
 こうするのだと言うように理緒はソーシャルネットワークサービスへとダイブしていく。

 今日という日にあの場に居た者たちであれば、ソーシャルネットワークサービスで何かしらの情報を発信している可能性がある。
 そう言った者たちを見つけるために理緒はワードを絞り検索していく。
 あの交差点の地名、日付に時刻。
 そうしたものを絞っていけば、当事者たちを見つけることは難しくないだろう。
 次々とリストアップされていく場所を理緒は紙にプリントアウトして柘榴に手渡す。
「おまたせしました、師匠。これでわたしが調べられた人は全部です。よろしくおねがいしますね!」
「ほう。なかなかにいろんなところを回ることになりそうじゃな」
 柘榴はリストアップされた紙を見やり息を吐き出す。
 しかし、苦にはならない。UDC組織の職員から受け取った『記憶消去銃』を片手に柘榴は翼猫と变化し、一瞬で飛び去っていく。

 最終的にUDC怪物の記憶が消せればいいのだ。
 ならば、柘榴は舌なめずりをする。あちこちに飛ぶのであれば、行く先々で美味しいものを食べようと、ちょっとした出張気分になるのも無理なからぬことであ

った。
「今回はなかなかの以来だったし、理緒や他の猟兵、UDC組織の皆にも土産くらいは買うてきてやるか」
 柘榴は笑って飛ぶ。
 眼下を見やれば、なんでもない日を謳歌する者たちがいる。

 このなんでもない日を壊すのがUDC怪物であるのだとすれば、柘榴は人の営みをこそ愛するだろう。
 特別か特別でないかを決めるのは、いつだって人だ。
 他者であり自身でもある。
 だからこそ、柘榴は思うのだ。理緒がそうであったように、なんでもない日を積み重ねるからこそ届くものがある。

 きっとこの出張から戻れば理緒が出迎えてくれるだろう。
 手土産を手渡せば喜ぶに違いない。
 それを思えば、なんでもない日を守ることは、そのまま特別な日を守ることにも繋がる。
「なんでもない日、か。いつか、今日という日も特別なものになるやもしれん」
 柘榴は風を切って飛び、最後の後始末を終え、なんでもない日の終わりを見届けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月19日


挿絵イラスト