6
UDC・スクリーム・パレード

#UDCアース #プレイング受付中 #戦闘メイン #一般人救出 #10月28日(木)19時頃まで

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
#プレイング受付中
#戦闘メイン
#一般人救出
#10月28日(木)19時頃まで


0




 それは作り物だから楽しいのだ。
 不穏な静寂、不自然に狭い雑居ビルの廊下、寒すぎるほどの気温なのにこころなしか不快な湿度を肌が感じる。はぐれないための細いロープを握りしめる手に力が入るのは仕方ないことだ。
 先頭の青年が恐る恐る次の部屋へのドアを開ける。真横を何かの影が通過したような気がして、早く行けよ、と彼の背中を押した。なんなら後ろの同行者からも押されている。気持ちは分かる。
 ひゅうう、と環境音が大きくなった。そして部屋の真ん中を通過した頃、
「ギャアアアアアア!!」
「うわああああああ!?」
「ひょえええあああああ!!」
 突然の大きな音、自分たちがやってきたのとは違う方向から長い髪をした血まみれの女性が奇声を上げて自分たちへと迫ってくる。
「早く進めよ!?」
「怖い怖い怖い怖い!!」
「はっはははははは!!」
 彼らはドタバタと、しかしロープを離さぬよう進んでいく。『EXIT』のドアを押し開けて転がるように明るい屋外へと飛び出す。

「あー怖かった……」
「次どこ行く?」
「待って、生まれて初めて腰抜けた。待って……」
 明るい日差しに陽気なBGM。そこは遊園地の日常が広がっていた。
 今までお化け屋敷に興じていた彼らは、忙しい心臓を休めながらこれからの行動を話し合っていた。
「あれ、お化け屋敷のスタッフかな。メイクしたままで出てきてるのこえーな」
 そんな彼らの視界に、おどろおどろしい姿の女性が映る。自分たちの方へ向かっているようで、中で落し物でもしただろうかと首を傾げた。
 彼らが異変に気づいたのは、そいつが数メートルの距離まで近づいた頃で。
「なあ、あれ、お化けの人あんなに居たっけ……」
 いつの間にか、同じ姿をした悪霊に、取り囲まれていて。

 遊園地のあちこちで悲鳴が上がり始めるのに、そう時間はかからなかった。

●グリモアベースにて
「緊急です」
 グリモア猟兵のアゼリア・リーンフィールド(空に爆ぜた星の花弁・f19275)は焦っている様子で杖を忙しなく動かしていた。
「UDCアース、都市郊外の遊園地で突然、UDCの怪物が大量発生しました。一般人への被害も既に生じています」
 大量に現れたのは悪霊の姿をした怪物たち。休日を遊園地で楽しんでいた一般人の何人もがそれを目の当たりにしてしまっている。
「大量に発生している中には他にも強力な一体も居ます。それを退治すれば取り急ぎ、騒ぎは終息するはずです」
 なので、まずは敵の数を減らし、その後ボス級の怪物を退治することが一旦の目標になる、とアゼリアは言った。

「しかし、既に一般人の方への被害が大きすぎます。敵と戦うにも、彼らを上手に逃がして戦わねばなりません。そして、ボス級の怪物は間違いなく、一般人の方が目にしたら即発狂ものです。それも対策しなければならなりません」
 それになにより、ボスを倒したとしても一般人へのケアが必要になる。そう彼女は付け足した。
 UDC組織の職員は現地に向かってはいるのだが、被害を受けた一般人の数に対してケアを行う手が足りない状態なのだ。

「さて、依頼の内容をまとめます。UDCアースの遊園地に突如現れた大量の怪物たちを討伐してください。一般人の方が多くいます。彼らを守りながらです。退治した後、被害にあった方々への対応、ケアにも手を貸していただければと思います」

 ことは緊急だ。アゼリアはとんっと一際大きく杖を振るい、猟兵達を阿鼻叫喚の遊園地へと転送した。


蜉蝣カナイ
 お化け屋敷怖いです。蜉蝣カナイです。
 ということで、大パニックな遊園地での依頼のご案内となります。

●構成
 第一章:集団戦
→襲われている一般人を守りながらの戦闘となります。
 第二章:ボス戦
→相手が一体になりますが、一般人への影響もより強い敵ですので、いかに彼らの目に触れないようにするかなど、工夫が必要となります。
 第三章:日常
→被害を受けた一般人をケアし、日常へと戻すパートです。詳細は断章を入れます。

 断章を挟み随時プレイング募集いたしますので、送れる画面でしたら途中でも気にせずいらしてください。
 とはいえ適度にサポートも採用予定でございます。

 では、皆さまのご参加、お待ちしております。
16




第1章 集団戦 『悪霊』

POW   :    共食い
戦闘中に食べた【他の個体】の量と質に応じて【自身の傷を癒し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    ミーム拡散
自身が【一般人に認識されたこと】を感じると、レベル×1体の【新たな悪霊】が召喚される。新たな悪霊は一般人に認識されたことを与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    不滅
自身が戦闘で瀕死になると【相手の記憶を元に生成された新たな悪霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 どこかの大きなテーマパークで、こんなイベントがあった気がする。
 おぞましい悪霊達がいたるところに跋扈し、人々へと襲いかかる。イベントならば、キャストはゲストへ触れることは無いし、様々な相手を等しく驚かしに行くことだろう。

 しかしこれはイベントでもパレードでもない。

 作り物でもない悪霊達が、キャストもゲストも関係なく、恐怖と混乱へと陥れている。そこがファンシーなコーヒーカップの前でも、ジェットコースターの待機列でも関係ない。
 転送された猟兵達は、すぐさま一般人とオブリビオンの間にその身を滑り込ませるのであった。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、緊急事態ですぅ。
急ぎましょう。

『FAS』により飛行、遊園地を俯瞰しつつ『F●S』各種を展開し【紘器】を発動、大量の複製を一気に形成しますぅ。
『FAS』の複製は私を包み防御に。
『FMS』は本体と複製の一部による『バリアのテント』を形成、被害者の収容場所を用意すると共に残る複製を保護に回し、可能な限り『テント』まで誘導しますぅ。
『FBS』は被害者と『テント』の周囲に配置、近付く相手を[カウンター]で[切断]し護送と防衛に。
『FSS』『FRS』全てを[砲撃]に、『FDS』全てによる[爆撃]も重ね[範囲攻撃]を行い、『共食い可能な部位』も残さない様、確実に仕留めましょう。



●フローティング・レスキュー・パレード
 突然の怪異に対して非力な青年は、ただ腰を抜かして震えることしかできなかった。おぞましい姿の悪霊が、彼を絞め殺さんと飛び掛かる。青年は喉の奥に悲鳴をひりつかせながら、来るべき衝撃を覚悟して目をぎゅっと閉じ……しかし、どさりと何かが落ちる音に目を開いた。
「もう大丈夫ですよぉ」
「え? えぇっ!?」
 悪霊を切り伏せた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、浮遊する円盤を操り青年をすくい上げる。自律飛行する円盤は猛スピードで悪霊の隙間を抜けて彼を運んでいったが……先ほどとは別のニュアンスの悲鳴が聞こえたかもしれない。
 それを見送る間もなく、るこるはその背に乳白色の翼を広げると強く地を蹴り、上空から遊園地の全域を見渡した。至る所で、悪霊たちの黒い姿が塊となって動いている。
「成程、緊急事態ですぅ」
 話には聞いていたが、かなりの量のUDC怪物が発生している光景は異様だった。自然と、彼女の声色も少し、硬くなる。
「急ぎましょう」

 そんな状況を前にるこるが取った戦略は非常にシンプルだった。彼女は自身が操る浮遊武装のシリーズを一気に遊園地全域に向けて展開する。
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の真実の姿を此処に」
 唱える祝詞に呼応し、るこるの纏う翼が質量を増し半透明の繭のように包み込んだ。同時に各方向へと飛行する形態様々な装置たちが倍々に数を増やしてさらに四方八方へと展開してゆく。
 そう、相手が多いならこちらも物量でどうにかするまで。そして彼女にはそれが可能なのである。

 まずは一般人を避難させなければ。
 空中からの視点は敵の配置も的確に把握することができる。るこるはある程度広さがあり、悪霊たちの密度が低い地点ーーアトラクションのエリアとエリアを繋ぐ動線の一部を選ぶと、真っ先にそこへ円盤の何割かを向かわせた。円盤は多角錐を形作るように配置につくと、点同士でつながり線に、そしてバリアで面を埋める。そして複製された円盤が、時には背中を押すように、もしくは何枚かで直接乗せて、一般人をそのバリアの中へと収めてゆく。
「安全地帯の確保はこれで大丈夫ですね」

 逃げてきた一般人を追いかけて、悪霊たちがバリアのテントへとわらわら集まろうとするが、接近を許するこるではない。
 一般人を誘導する円盤たちの影から一回り小さい戦輪が次々飛び出し、追い縋らんとする悪霊の足をビームで切り裂いてゆく。それでも中には這いながら、そして回復のために他の悪霊を喰らおうとする個体もいる。さながらゾンビのように。
「共食いなんてさせませんよぉ」
 守りが進めばあとは攻勢に出るだけ。るこるは両腕を地面へと向けた。自分が狙うのは足元の地点へと集まっている悪霊たち。だが、他の場所にも同様の砲台と盾も兼ねた砲門の配置は完了している。
 死角はなかった。
 るこるが念じればそれぞれの砲門から眩いビームが一斉に放たれる。その強力な光は直撃した悪霊たちを文字通り消し飛ばした。
 さらには辛うじて残った手足のような部位すらも、塵一つ残さないほどに、るこるが派遣した無数の爆撃機がしらみ潰しに爆砕してゆく。

 少女が指揮する大規模広域攻撃は、光と火薬と爆音の、まさにパレードの一幕のようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「これは面倒なことになったっすね〜」
相手は一般人を優先的に狙いそうっすし、ここは一般人を強化させて逃げやすくするっすかねー

UCを使って一般人達に憑依。そのまま猟兵の身体能力で【集団戦術】も駆使して逃げてもらう
「大丈夫、落ち着いて順番に動いてけば逃げられるっすよ〜」
悪霊に襲い掛かられそうになったら、【破魔】の力を拳やその辺の武器になりそうな物にこめて反撃
「獲物だと思っていた相手に反撃される気分はどうっすかねー?」

「正直、早く終わらせたい所っすけどね」
本体は代償でろくに動けなさそうだけど、自分に【浄化】をかけつつ、愛用の宇宙バイクの上で休憩。ヤバそうな所にはバイクを自動【操縦】で向かわせて突撃



●マスクド・マス・パレード
 遊園地に不釣り合いないかつい大型バイクが、高いブレーキ音を響かせてスライディングしながら止まる。その先には逃げ惑う人々とそれに群がろうとする悪霊たち。
「これは面倒なことになったっすね〜」
 いたる所に蠢くそいつらの数に、辟易した声色でリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)はひとりごちた。
 自分を狙って襲いかかってくる奴もいるが、大半はやはり非力な一般人へと向かっている。看過できないが、リカルドにとってある意味『使える』状況でもあった。

 弱いなら自分の力を分けて強くすればいい。リカルドの身体ーー狐の面がぶるりと震える。
「す〜ぐ助けに行くっすよ〜!」
 細胞が勢いよく増殖するかのように、リカルドの面が無数に増えていく。それらは真っ直ぐに一般人たちへと飛んでいくと、次々彼らの頭へ纏われた。
 一般人たちの髪の毛が藍色に染まる。震え怯えていた者が、目が覚めたかのように、しっかりとした足取りで悪霊たちから距離を取るように動き始めた。
 それは唐突に始まったマスゲームにも見える。この人数の人間が一斉に逃げ出そうとしたらパニックでボトルネックが発生してもおかしくないだろうに、統率の取れた素早い行進は全くそんな素振りを感じさせなかった。
「大丈夫、落ち着いて順番に動いてけば逃げられるっすよ〜」
 自身の分体を通じてつながるネットワークで、リカルドは全体の様子を把握し、彼らを誘導していく。猟兵がもつ身体能力にはUDCの怪物を目の当たりにしても正気を保つ精神力も含まれている。これならしばらくは問題ないだろう。

 しかしそんな行進に追い縋ろうとする悪霊もいるもので。
 不気味な呻き声を上げる悪霊に、最後尾の一人の肩が掴まれーー
「むむっ」
 それを察知したリカルドはすぐさまその一人に傾ける力を強めた。
 掴まれた一般人、振り向きにしっかりと腰が入っていた。ちょっと輝いたパンチが悪霊の顎を打ち抜き、そいつを数メートル吹っ飛ばす。すかさず周囲の数名がすぐそばにあったゴミ箱を抱え、タコ殴りに処していく。これには他の悪霊も心なしかたじろいだ。なんなら振り回されたゴミ箱が周囲の悪霊も巻き込んで薙ぎ払っていった。
「獲物だと思っていた相手に反撃される気分はどうっすかねー?」
 防御面も問題なさそうだ。当たり前だとリカルドはケラっと笑い声をあげた。

 しばしして、自分が操る一般人の多くを避難させた頃。
「おええぇ……いやまだ耐えら……おえ……」
 統率が取れた逃走行進の脇でリカルド本体は、アルタイルの名を冠するバイクのタンクの上でぐったりしていた。
 これは能力の代償である。大量の分体に力を分けているのだから仕方ないが。最初はまだマシだったが時間が経つにつれてやはりどんどんしんどくなってきていた。無い胸がむかむかするしなんかぼんやりするしこころなしか眩暈もして、もうぐわんぐわんだった。正直リカルドに自身の症状を形容する元気もない。
 しかしそれで一般人の避難に影響を及ぼす訳にはいかない、と自分自身に浄化の術をかけて騙し騙しやってきたが……
「あっ、やべっ」
 残り少ない一般人に悪霊が迫る。そして不運にも彼らの周囲に武器になりそうな物がない。それを彼が認識した瞬間、自動操縦に設定していたバイクのエンジンが唸りを上げた。
「ちょまっ……うぇ〜い!」
 この宇宙バイクは優秀である。しっかりと守るべき対象と攻撃すべき敵を認識するくらいなのだ、もちろん綺麗に悪霊たちだけをそのボディで轢き倒していく。
 ただし、ぐったりしたリカルドを乗せたまま。
「でも皆無事ならOKっす……」
 リカルドのグロッキーと引き換えに、彼は敵の数を減らしながら一般人をある程度逃すことに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アドレイド・イグルフ
従業員や怪物よりも、それらを忘れてしまう程におそろしく広大な夜を見せてやろう。このランタンの中に入っている星は虫みたいなものでなア……自由勝手に飛び舞うが、人の目を惹くことくらいはできる
一般人たちには悪いが、安全な場所までは自分の足で移動してもらうぞ。避難経路はワタシが作る。後ろを振り向いてもキミたちを追う者は居ない。ワタシが居るだけだ

さて、啖呵を切ったからには……無様な姿は見せられまい。大弓で引き続き敵の斬滅を行う。距離を詰められたら散弾銃を撃って、防衛ラインの維持を意識しつつ距離を保つ
新手は……まるで脱皮だな。横で瀕死になっているヤツ諸共逃げずに立ち向かってこい。ワタシは此処に立っているぞ



●ファントム・スタァ・パレード
「無理、もう無理ぃ、先逃げてぇ」
「そんなこと出来るわけないでしょ泣いてないで足動かして!」
 その女性は、涙で顔をびしょびしょにしてへたりこんだ同行者の腕を必死に引っ張っていた。おびただしい数の恐ろしい悪霊がすぐそばまで迫っていても、彼女を置いて自分だけ逃げることは出来ない、と。
 一緒に逃げていた集団の背中が遠くなってしまう。パニックでぐちゃぐちゃになった頭はなんの解決策も生み出さない。

 ふわり、と、ふたりの目の前を小さなきらめきが横切るまでは。

「なにこれ」
「キレイ……」
 その光は短い残像を引いて、つかもうとしても羽のように逃げてしまう。気づけば周囲に同じ光が溢れていた。
「お手をどうぞ?」
 呆気に取られていたふたりに手が差し出される。反射で掴んだそれはひんやりしていて、しかし力強く彼女たちを立ち上がらせた。
 深い夜に煌めく星のような美しいひと、と後からそのふたりは形容したらしい。アドレイド・イグルフ(ファサネイトシンフォニックアーチャー・f19117)が、魅惑的な笑みを浮かべていた。アドレイドの傍らには、ラッパ状に花弁を広げる花の意匠が施されたランタンがふわふわ佇んでいる。フィラメントにあたる部分から溢れた小さな光たちが、ガラスをすり抜けて溢れ出していた。
「従業員や怪物よりも、それらを忘れてしまう程におそろしく広大な夜を見せてやろう」
 恍惚に目を丸くする彼女たちに、アドレイドは笑みを深めた。
 もうそこは陽の光も届かない、暗くて美しい夜の世界に塗り替えられていた。

 集団で逃げていた一般人達の目にランタンーー夏星歌から放たれる魅了の光がしっかりと映ったことを認識して、アドレイドは悪霊たちにも視線を向ける。奴らも動くことを忘れてぽかんとしている様子だった。ならば大丈夫だ。
「さあ、行くがいい。避難経路はワタシが作る」
 彼女の声に応えるように、ランタンから溢れた光たちがさらさらと流れてゆく。一般人たちはそれに吸い寄せられるように、それしかmに映っていないかのように、歩を進め始めた。
「大丈夫、後ろを振り向いてもキミたちを追う者は居ない。ワタシが居るだけだ」
 一般人たちに背を向けて、アドレイドは得物の大きな弓を構え、射った。弦が空気を叩く音と同時に、弓の直撃を受けた悪霊が後ろに倒れていく。悪霊たちは弾かれたように蠢き始めた。
 一般人たちと悪霊たちの距離を詰めることは許さない、と一歩近づいた奴から的確に、素早く頭部を撃ち抜いてゆく。倒れ伏した悪霊の身体からずるり這いずり、複製のように、もしくは実体のある幽体離脱のように、もしくは、
「まるで脱皮だな」
 サブウエポンの散弾銃でぶち抜いた射線から、数を増やさんとする悪霊にも矢継ぎ早に叩き込んでゆく。その様はまるで流星のようで。
「どうした? 横で瀕死になっているヤツ諸共逃げずに立ち向かってこい」
 ふん、とニヤり鼻で笑って、アドレイドはマントを翻した。
「ワタシは此処に立っているぞ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

花房・英
【ミモザ】
寿、こういうの(ホラー系)苦手なのに大丈夫か?と横目で見遣りつつ
…遊園地って楽しいの?
ふーん、って返して
雑談しつつも敵を見据えて花散里を放つ
どっちも数多いな、と内心零して
…じゃあ行く
思いがけない誘いには悩むことなく頷く

ん、任せる

何かを守れって仕事は初めてじゃないけど
いつだって柄じゃないって気持ちが拭えないから
俺は戦うだけのが気楽でいい

その分、寿たちには敵を近づけさせない
視界に捉えた敵は花散里で全て消す
悪霊が一般人の視界に入らないよう
花弁で敵を覆って片付ける

空間にハッキングをして一般人や寿の周りに不可視の盾を展開しとく
…虹霓振り回す寿がいるから大丈夫だろうけど、なんかあったら嫌だから


太宰・寿
【ミモザ】
うっ、お化け屋敷拡大版みたいになってる…楽しい場所が台無しだよ
そうだよ

頷きながら取り出した絵本を開いて、陽気なお友達を呼び出したら
ちらりと英を見上げて
…今度行く?遊園地
へへ、お化け屋敷以外なら喜んで

それじゃやろっか、英
私が誘導するね
みんな力を貸して

今日のテーマはハロウィンパーティー
仮装行列の動物さんに王子様やお姫様
逃げてる人達を守ってね
数には数で対抗

一般の人達は呼び出した子達に驚くかも
大丈夫です、この子たちも味方ですよ
可愛くて強いんです
って落ち着いた声で話しかける

虹霓を手に避難誘導
地面に色を乗せて、進む道を分かりやすく
邪魔する悪霊は虹霓で叩き伏せる
もうっ、こっち来ないで!(物理)



●フラワリング・ハロウィン・パレード
 一般人に掴みかからんとする悪霊を大きな絵筆のスイングで吹き飛ばしながら、太宰・寿(パステルペインター・f18704)は呻いていた。
「うっ、お化け屋敷拡大版みたいになってる……」
 心なしか涙目なのは、まあ、いろいろと要因があるのだが。
「寿、こういうの苦手なのに大丈夫か?」
 そう、寿はホラーが苦手なのである。表情こそそんなに変化はないが、気遣うように花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)は寿の様子をちらりと確認する。ぶんぶんと悪霊が居ない空間にも絵筆を振り回している様はちょっと心もとない。
 彼の手のひらからは黄色い花弁が噴き出すように舞い上がっていた。とりあえず別方向からやってくる悪霊に視線を戻して、花弁で押し返し、道を切り開いていく。
「楽しい場所が台無しだよ……」
「……遊園地って楽しいの?」
「そうだよ、こんなことになっていなければ、だけど」
 花弁を操りながら、そして他愛のない会話を交わしながら英は周辺の様子を把握していく。その隣では多少落ち着いた様子を見せ始めた寿がひとつ頷いて絵本を開く。ページが扉であるかのように、無数のデフォルメされたキャラクターたちがぽこぽこと飛び出してゆく。
「今度行く? 遊園地」
「じゃあ行く」
 寿と英の視線が交わった。迷うことない了承に、えへへ、と寿が表情を柔らかくする。
「お化け屋敷以外なら喜んで」

「それじゃやろっか、英。私が誘導するね」
「ん、任せる」
 絵本から飛び出すのは寿の『お友達』だ。かぼちゃの被り物をしたクマやネコやキツネといった動物たち、花屋かな飾りがついた帽子と仮面の王子様、そして愛らしくもいたずらっぽさを感じさせるドレスを纏ったお姫様……
「みんな、力を貸して! 逃げてる人達を守ってね!」
 オー! と高い声で『お友達』は返事をすると一般人のそばへと集り、へたり込んでいる者へは立ち上がるよう促したり、逃げている背中をわいわい押したりと行動を始めた。
 寿はその様子を確認しながら、くるりと絵筆の穂を地面に押し付けて軽い足取りで駆けてゆく。彼女の軌跡が地面に鮮やかにラインを引いていた。
「さあ、こっちへ」
 恐怖に満ちた空間に、突如現れた可愛い存在たちに目を丸くしている一般人へ、寿は朗らかな笑みを向ける。
「大丈夫です、この子たちも味方ですよ」
 舞う黄色い花弁を背景にしたその姿は、彼らの心をある程度落ち着かせるには十分だった。

 さて一方の英はと言えば。一般人の誘導を寿が担ってくれたことである程度肩の力を抜くことが出来ていた。何かを守りながら戦うのは柄じゃない。余計なことを考えずに戦うだけの方が性に合っているのだろう。
「お前らは寄らせない」
 黄色い花弁が勢いを増す。津波のように押し込めば、まるでミキサーの刃のように悪霊たちをミンチにしてゆく。だがそのある種グロテスクなさまも、同じく花弁が目隠しになって一般人や寿の目には届かないのだが。
「ひょああ!?」
 後ろから聞こえた、寿のちょっと抜けた悲鳴に、勢いよく英が後ろを振り向く。反射で空間に障壁を作り出し、寿を守らんとするが……その前にごすっと重い打撃音が響いていた。
「もうっ、こっち来ないで!」
 状況的にたぶん、横から悪霊が飛び出してきていたのだろう。しかし寿は絵筆の柄でがしがしとそいつを殴り倒して無力化していた。とどめを刺すことも忘れないあたりしっかりしている。
 寿への信頼を胸に、英は改めて群れている悪霊たちへと向き直った。自分はシンプルにこいつらを片付ければいいだけだ、と。
 ……でも万一彼女や一般人に何かあっても嫌なので、障壁は展開したままの英だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『夢の現』

POW   :    夢喰み
【対象の精神を喰らうこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【戦意の喪失】で攻撃する。
SPD   :    魂攫い
【深層の欲望を見抜く視線】を向けた対象に、【欲を満たし心を奪う空間を創り出すこと】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    心砕き
いま戦っている対象に有効な【対象が最も苦手とする存在】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルメリー・マレフィカールムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 倒れた数多の悪霊たちが、ずりずりと、辛うじて立っている一体に集まっていく。それは粘土をひとまとめにするように形を歪ませながら、質量を増し……グロテスクな色彩をした触手の束が形成される。
 虚空からボロボロの外套が現れ触手をその中に収める。首のない頭部は羊の頭蓋骨のようだった。
 そいつは、洞窟を抜ける風のような唸り声を上げた。
 ある程度一般人はこいつから離れた場所へと移動させたが、それでもその化け物は狂気をまき散らす本能で彼らを目指して進んでいるようだった。

 猟兵以外がこんなのを目の当たりにしたら、一瞬で正気を失い、最悪の場合彼ら自身も怪物と化してしまうだろう。

 それを防ぐことが出来るのは猟兵たちだけ。
 敵の現在地点はメリーゴーランドやコーヒーカップが集まるエリアの広場だ。ファンシーな雰囲気に、怪物の姿はとてもミスマッチだった。
 兎角惨劇を防ぐためならば、多少大暴れしても大丈夫だろう。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに恐ろしい容姿ですし、通すことは出来ませんねぇ。

『FAS』により飛行し【耀衣舞】を発動しましょう。
そして『光の結界』に残る『F●S』各種のエネルギーを供給、[結界術]も重ね強化を施し『光速の突進』を行いますねぇ。
怪物さんの能力は『視認』が条件ですが、『光速での移動』+『視界を遮る光の結界』という相手をしっかり捉えるのは難しく、多少視界に入る程度なら『結界』で防げますぅ。
後は『怪物さんへの突進』→『中空への突進で光速離脱』の繰返しによるヒット&アウェイを行い、確実に叩いて参りますねぇ。
『突進』の際は、出来る限り『避難場所から離す』且つ『遊具を壊さない』様注意しますぅ。


リカルド・マスケラス
「ひどい目に遭ったっすねぇ。いや、自分でやったことなんすけどね」
避難が終わったなら、後は思い切りやるだけ。アルタイルに乗ってかっ飛ばすっすよー

敵の精神攻撃に関してはアルタイルを中心に【破魔】の【結界術】を展開して防御する
「伊達に色々な世界を渡り歩いていないっすよ!」
座席は空いているので、味方2人くらいまでなら乗せられるっすよ
後は【牽牛星覚醒】で強化し、ビーム砲やミサイルランチャーの【一斉発射】で仕留めにかかる。
万が一自分の戦意が削がれた場合もアルタイルを自動【操縦】モードにして攻撃を継続してもらう
「心を蝕む怪物が、心を持たない鋼の怪物に倒されるっても、なんか皮肉っぽいっすね」



●爆ぜる流星のパレード(物理)
「確かに恐ろしい容姿ですし、通すことは出来ませんねぇ」
 滑るように進む羊頭の怪物を眼下に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は展開していた浮遊武装のシリーズを、一部を除いて自らのもとへと戻していた。
 今のところ敵はこちらに気付いていないが、そのまま進ませるわけにはいかない。るこるは胸元に手を当て祝詞を紡いだ。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう」
 祝詞に呼応して、浮遊武装のシリーズが高い駆動音を発しながらるこるへとエネルギーを転送する。高出力の光線がるこるの身を縁取ると、それは結晶のような光の結界へと変換されていった。幾重にも重なった結界は彼女の姿が見えなくなるほど眩く輝いて、昼間だというのに遊園地の広場を明るく照らし出すほどだ。
「行きますよぉ」
 光に気付いた羊頭の怪物が上を向いたとき、その光はもう眼前まで迫っていた。
 触手で防御する間もない。絡み掴もうとしても、光の速度に迫ったるこるの突進を捉えることは出来ない。激しい衝突音が響き渡るが早いか地面に叩きつけられた怪物は、その勢いの強さに一度バウンドし……空中で反射する光のようにるこるの軌跡が折れ曲がると、遊具や一般人たちが集まる方向とは逆の方向へと水平に、さらなる突進で弾き飛ばしていた。その様はまるで真っ白なレーザービームのようで。ぴしり、羊の頭蓋骨にヒビが走る。

 そして吹っ飛ぶ羊頭の怪物に、雄々しい角が目立つ大質量の物体が追撃のように突っ込んでいった。
「うお、やってるっすね~!」
 広場の端を彩る木々に羊頭の怪物を打ち返したのは、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)と彼が操る大型バイク、アルタイルである。とんだ出会い頭の事故だが触手メインの羊頭な怪物に負けるバイクではない。なにより羊よりも牛の方が強いのだ。たぶん。
「はぁ~ひどい目に遭ったっすねぇ。いや、自分でやったことなんすけどね」
 先ほどまでぐわんぐわんしていたのも無事回復して絶好調。しばらくあれはこりごりだ。
 しかしそんなリカルドを視界に収めた羊頭の怪物が蠢くように進みながらその触手をうぞ、と揺らす。精神を喰らわんとする攻撃の前兆だ、ととっさに判断したリカルドはバイクを起点に防御の結界を広げる。これが精神を喰らうということなのか、少し思考の端をやすりで撫でられたような感覚がするが、致命的ではない。
「伊達に色々な世界を渡り歩いていないっすよ!」

 じり、というにらみ合いを遮るように、リカルドの目の前に光が舞い降りる。るこるだ。なるほどこれなら眩しすぎてこちらを視界に入れることは出来ないだろう。
 敵の攻撃が止んだ一瞬に、ちらりとふたりが目くばせをする。いまや光源と狐面ゆえにその表現はおかしいかもしれないが、互いに意図は理解したので問題ない。
「私たちを視ることはできませんよぉ」
 ふたりを視界に入れるために移動しようとする羊頭の怪物に、るこるが先んじて突進をかました。ぶつかると同時に、その反動を利用して空中へと瞬時に離脱。
 すぐさまそこに重火器の一斉掃射が叩き込まれた。リカルドの操るアルタイルは、サイドバックにあたる部分や牛の意匠の前足の影から、むしろどこに収納していたのかという場所から、いくつもの銃口を扇形に展開している。
「さ~てアルタイル! すごいとこ見せてやるっすよ!」
 激しい爆音の如き発射音が鳴り響く。るこるの突進と離脱に合わせて弾丸、だけではない、ビームもランチャーもマシンガンも大口径の砲台も、どうにか少しでも避けようとする羊頭の怪物に着弾しては煙を上げさせた。ちょっとくらいリカルドの戦意が喰われていても、無機物かつ自動操縦であるアルタイルに戦意はない。つまり攻撃にはなんら問題ないということで。

「お嬢さん! バイクの座席なら空いてるっすよ~!」
「ではお言葉に甘えて」
 突進を繰り返するこるの軌跡の先に、武装の掃射を繰り返すリカルドとアルタイルが滑り込む。
 とん、とアルタイルのシートを存外軽い音でるこるが蹴った。即座に浮遊武装シリーズのエネルギー供給がうなりをあげて出力を上げる。ひときわ強力な光の突進が、低い位置から抉るように羊頭の怪物を空中高くへと打ち上げた。
 それに合わせてアルタイル搭載の重火器がすべて上へと狙いを定める。ノズルフラッシュがまばゆく熱を上げ、光線もグレネードも鉛玉も砲弾も、落下を始める羊頭の怪物へと吸い込まれていった。

「心を蝕む怪物が、心を持たない鋼の怪物に倒されるってのも、なんか皮肉っぽいっすね」
「そう思うと、機械は天敵だったのかもしれませんねぇ」
 ぶすぶすと黒い煙を上げて、羊頭の怪物はざらついた広場へと落下してゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アドレイド・イグルフ
……ンン? なんだ、ワタシの欲望を満たす気か。一般人の避難は完了している。多少の地形破壊は厭わない……ただ敵を射ることに集中するワタシは、きみを討つこと以外への欲が薄い
だが……敵を倒したと錯覚させる空間は、ワタシの心を満足させるだろう。いや二度刺さないと安心できない。逃亡の可能性は捨てきれない。警戒は解かずに索敵を

倒しても倒しても覚めぬコレはまだ続いているか? 空間に攻撃したって本体にダメージが届かなきゃあ意味がないぞ。……よおし物理だ、物理に賭けて目を閉じる。目を合わせないからって解ける術じゃないだろうが、シンプルに。気配を感じたら弓を向けて矢を放つ
やり口は一緒だが……持久戦に持ち込んでやる



●底無しの欲望のパレード
 アドレイド・イグルフ(ファサネイトシンフォニックアーチャー・f19117)が鋭く放った矢が羊頭の頭蓋骨を貫いた。
 頭骨は砕け、触手は溶けるように形を崩しながら重力に従って広場のタイルに落ちる。ぼろぼろの外套が一瞬遅れてそれに追いついて、そいつは全くの動きを止める。追い打ちの一矢を叩き込んでもそいつはもう動かない。
 やったか。そう思うが早いか、しかしいつの間にか無傷の羊頭の怪物が全く反対側に佇んでいた。
 敵に回復や分裂の能力があるという情報はあっただろうか。少なくともアドレイドには思い当たらない。
 しかし彼女が行うことは何も変わらない。幸いにも敵の動きはそこまで機敏ではない。こちらに向かって来るそいつを、ただ静かな心で弓に矢をつがえ、放つだけである。
「……ンン?」
 ということを何度か繰り返したころ、さすがにアドレイドは首を傾げた。なにかおかしい。敵を射つ行為は百発百中なのだが手ごたえのような何かが足りない。くるりと弓をもてあそび、ウゥンとひとつ唸って、ああ、と彼女はひとつの回答にたどり着いた。
「なんだ、ワタシの欲望を満たす気か」
 言うが早いか、アドレイドの矢が羊頭の怪物の頭部を砕く。沈む間もなく二射目が触手の束を、三射目が外套を地面に縫い付ける。
「今のワタシにはきみを討つこと以外への欲が薄いぞ?」
 いいのか? と言外に、彼女は不敵な笑みを浮かべた。

「しかしキリがないな」
 射られた羊頭の怪物の残骸は、もはやあちらこちらに小山を作り上げている。少し前に倒したような記憶のある場所に残骸がないこともある。夢中で無数の矢を放ち敵を倒しても、もっともっとと際限なく『欲』が湧き上がってくることを、アドレイドは自覚していた。この無限とも言える満たされないもので、羊頭の怪物は敵の心を奪うのだろう。
「倒しても倒しても覚めぬコレはまだ続いているか?」
 また現れた羊頭を瞬時に射ち抜く。うっすら敵の気配はある。相手はこちらを視認していなければこの攻撃はできない。ゆえに射程範囲内にいるのは間違いないのだが、本体に攻撃ができなければ意味がないのだ。
「よおし物理だ。こうなったら物理だ」
 いっそ自分を惑わすようなものを見なければいいのだ。アドレイドは思いついたら迷うことなくその煌めく瞳を瞼の下に隠した。身体の余計な力を抜く様に、構えっぱなしだった弓を下ろす。
 風が鼓膜を撫でる音、流れっぱなしのファンシーな園内BGM、自身の呼吸音、とても遠いざわめき、ずるりと何かを引きずる音。
「そこか」
 ぐるりと身体の向きを変え、弓を上げながら弦を引き上げきると同時に矢を放つ。
 ビュゥ、と、風の唸りは今まで聞くことのなかった悲鳴だ。硬い何かが地面に落ちる音がした。正確無比なアドレイドの射撃は、目を閉じていた彼女が知らぬうちに、羊頭の怪物の角を砕いていた。だが彼女はまだ目を開かない。索敵方法を変えるだけで、結局先程までとやることは変わらないのだのだから。
 動こうとする気配に一射、二射。ああ、全然違う、満たされる心も段違いだ。
「さあ、持久戦と洒落込もうじゃないか」
 更なる欲を満たすため。だがそれは心を奪うものではなく、確実に羊頭の怪物を追い詰めるものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラハミーム・シャビィット(サポート)
 シャーマンズゴーストのUDCメカニック×戦場傭兵、25歳の男です。
口調は、掴みどころの無い変わり者(ボク、キミ、デス、マス、デショウ、デスカ?)

人と少しずれた感性を持っていて、面白そうならどんな事にも首を突っ込む、明るく優しい変わり者です。
戦闘時にはクランケヴァッフェや銃火器の扱いは勿論、近接格闘術のクラヴ・マガなどでド派手に暴れ回ります。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 乱雑に扱ったわけでもないのに、その黒いジュラルミンケースはごっ、と重い音を立てた。
「ホウホウ、精神に強く影響を与えるタイプのUDCデスカ」
 鳥のくちばしのような東部、ツートンカラーのたてがみ、黒いロングコートの裾からは異形の手足が覗いていた。ラハミーム・シャビィット(黄金に光り輝く慈悲の彗星・f30964)は無造作に地面に置いたケースから、ショットガンといくつかのクランケヴァッフェを取り出す。
「マ、やることは変わりマセンネ」
 眼球を持たない羊頭の怪物と視線が合った気がした。

 敵は戦意を失わせてくるというがさてはてどの程度のものか。様子見も兼ねダッシュで肉薄すれば、ラハミームは携えた大型のハンマーを振るう。途端向けられたあるはずのない視線に、胸の半分がざり、と削れるような感覚と共に、腕から力が抜ける。手の中からハンマーがすっぽ抜けないようにくるりと勢いを逃がしてバックステップ、すぐにゴミ箱を遮蔽物として身を隠した。
「なるほどネ」
 こういう感覚か、とラハミームは納得した。これは食らい続けていたらおそらく体が動かなくなるとか、そういうことになるだろう。そしてなにより、ある程度耐性があるとはいえ、精神を喰らわれるのは中々に不快な感覚である。
 だがまあ、対策はシンプルだ。今みたいに視界に入らなければよいのだから。それはそれで戦況が停滞してしまう可能性もあるが……ラハミームの聴覚はこちらに近づいてくる触手の音をしっかりと捉えていた。

 羊頭の怪物が、ゴミ箱の向こう側から覗き込んでくる。それが視界に入った瞬間に、ラハミームは構えていたショットガンの引金を引いた。まずは単発、散弾が羊頭の怪物の頭部を跳ね上げる。立ち上がりながらストックで殴りつけ蹴りで追撃。
 蹴り飛ばされた羊頭の怪物が触手を伸ばしながら視線をラハミームへ向ける。対してラハミームは片腕で構えたショットガンの銃口をただ向けるだけ。引金に触れずとも、それは連続で弾丸を吐き出していく。
「やはりオートなら戦意とか関係ありませんネ」
 ショットガンとは逆の腕には、骨めいたクランケヴァッフェが食い込むほどに巻き付いていた。
「畳み掛ければどうということありマセン」
 鞭のようなクランケヴァッフェがラハミームの腕を傷つけると、それは肉づくように急激に質量を増し、増殖するように幾本にも分裂する。
 嵐のように、食らいつくように、触手と化した鞭が羊頭の怪物へと襲い掛かる。
 それは、羊頭の怪物を丸ごと包み込むと、ごしゅ、と柔らかいものと硬いものを同時に潰す音を立てた。
「ま、こんなもんでショウ」
 クランケヴァッフェが元の形状に戻った時、そこには何も残ってはいなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『遊園地で遊ぼう!』

POW   :    参加型ショーアトラクションで遊ぼう!

SPD   :    絶叫系アトラクションで遊ぼう!

WIZ   :    お化け屋敷で遊ぼう!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 脅威は排除されたことが確認された。UDC組織の職員がそれを猟兵たちへと礼と共に伝える。
 遊園地の物的被害については職員たちが全力で当たっているので問題ないとのことだが、今回の騒動では何人もの一般人が怪物の姿を見てしまっていた。そう、UDCの存在は一般人には秘密なのである。万一SNSなどで広がってしまってはどんな影響が出るか分かった物ではない。
 幸い、一般人に重篤な被害は出なかったが、彼らには何らかの言い訳やら誤魔化しをして日常へと戻ってもらわねばならない。それを含めた園内への誘導などに力を貸してほしい、というのが職員の依頼であった。

 そして彼は小声で付け足した。記憶消去銃なら言っていただければお貸しできますので、と。


※能力値は気にせず自由に行動ください※
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
後はケアのお手伝いですねぇ。
了解ですぅ。

園内の『フードコート』の食材を利用し【到爨】を発動、『恐怖』や『呪詛』等の異常を治療する、大量の[料理]をご用意しますねぇ。
そして、表向きは『事故のお詫び』ということにし、『フードコート』で『無料配布』を行うとして一般の方々を集めますぅ。
これで、一般の方々の受けた悪影響は或る程度除去出来ますし、『職員』の方に『出入口』に控えて貰い、出入りする方を『記憶消去銃』で狙って頂けば、記憶操作もし易いでしょう。

設備の破損も考えますと、表向きは『準備中のホラーイベントで使う予定だった機械の暴走』等の『何らかの事故』という形になるでしょうかぁ?



●オイシイ・ヒーリング・パレード
 その二人はぼんやりと遊園地を歩いていた。めっちゃ怖いのに追いかけられて頭がしっちゃかめっちゃかだったが、遊園地のキャストがもう大丈夫と言っていたのでとりあえずふらふらしていた。
「さっきのヤバかったな」
「意味わかんなかった……」
 そんな彼らの鼻を、香ばしくてしょっぱくて温かい香りがかすめる。
「ん? なんかすごく良いにおいする」
「マジだ。うわーこれ腹減ってくるやつ」
 そんな二人にキャストが話しかけた。
「今回の騒ぎのお詫びにフードコートで軽食をお配りしていますので、是非お立ち寄りください」
 なるほど、と二人は顔を見合わせると一直線にフードコートへ向かうのだった。

 ダイナーを模したフードコートのキッチンでは、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)がその料理の腕を振るっていた。涼しい顔をしているがそれはもうすさまじい勢いで。
 さてさて、彼女が作るのはハンバーガー。ずっしりしたパティを濃厚な照り焼きソースにからめてチーズとシャキシャキ野菜と共に焼目がうっすらついたバンズでサンド。ボリューミーなので満腹感が得られること間違いなし、逃げて疲れた一般人にはうってつけのカロリー供給である。
 それが一秒に十個以上のペースで並べられてゆく光景はまさに魔法のよう。
 ……いや待て同時に横の大皿には付け合わせの王道、フライドポテトと、その次の大皿にはサラダ、その次にはチキンナゲットと、早回しの映像のようにファストフードが積み上がっていく。
「さて、このくらいで足りるでしょうか?」
 自分だったらもう少し、いやもっと多くても全然行けるのだけれど、とるこるは完成した料理たちをワゴンに乗せ、ハンバーガーを配る職員チームへと合流しに行く。
 残像が見えた。食材を運んだUDCの職員はそう感心で目を丸くしていた。

 ぼんやりしたり、異常なほどに周囲を気にしたり、精神にダメージを受けた様子の一般人たちへトレイに乗せたハンバーガーを手渡してゆく。目が合えば控えめに微笑んで。
「この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした、こちらお詫びの軽食ですぅ」
 るこるが申し訳なさそうに眉尻を下げる。ちょうど受け取った二人組の片割れがいえいえと首を振りつつも、戸惑った様子で口を開いた。
「ええと、さっきの騒ぎは一体何だったんですか……?」
 客として説明を求めるのは当然のことだ。もちろん、カバーストーリーも用意済みである。
「もうすぐハロウィンでしょう? ホラーイベントを開催予定だったのですが、準備中の機械が故障、暴走してしまったんですぅ」
 ポテトやサラダはご自由にお取りくださいね、と付け足せば二人組はおずおず頷いて、ざわめくフードコートの座席へと向かっていく。腹も減ったしちょうどいいか、なんて会話がるこるの耳にも届いた。

「うっっっま!!」
 飲食スペースからそんな歓喜の声が聞こえれば、作ったるこるも冥利に尽きる。ちらり様子を伺えば、彼らは先ほどまでの様子が嘘のような笑顔でハンバーガーを頬張っていた。
 そう、ただ高速で作っていただけではない。豊饒の女神様の加護を受けた……一口食べれば恐怖も吹き飛ぶ、美味しい癒しの料理を彼女は作っていたのだ。
 料理を通して大勢の一般人を癒す、というのがるこるの作戦だった。ハンバーガーは恐怖を、付け合わせは呪いや毒などを。効果はそれぞれだが、その分様々な症状に対応できる。その効果は料理に夢中になっている一般人たちの様子で一目瞭然だ。
「あら、あの方……」
 それでもまだ挙動不審な一般人が見えれば、るこるは入り口付近の職員に小さくハンドサインを送る。あちらは記憶消去銃で念入りにやってもらえば大丈夫だろう。
「遊園地といえば食事も魅力ですよねぇ。ふふ、落ち着いたら私も何か食べないと」
 一仕事の後のご褒美に思いを馳せて、るこるはとろけるような微笑みを深くしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
こういうのでよくあるパターンとしては「アトラクションの一部として言い張る」っすかねー?

そんな訳で霧影分身術で分身を作り、UDCをさらに雑にしたような着ぐるみを着せたような格好に変身させる
「いやはや、お化け屋敷のリニューアルを兼ねた宣伝だったんすけど、驚かせてしまったようで……」
みたいな感じの言い訳でもしておこう。「あまりにも驚かせるのに度が過ぎてしまったから、リニューアルは取りやめ」みたいな感じに話を持っていけば、今後のお化け屋敷に出てこなくても辻褄は合うだろうし

まあ、無理があった時は記憶消去銃を借りるっすかね



●フェイク・スクリーム・パレード
 大型宇宙バイク、アルタイルの座席から、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)はふ~むふむと遊園地に戻り始めた一般人たちの様子を伺っていた。精神的なダメージが抜けきっていないのか、ぼんやりしていたり、異常なほどにびくびくしている者がやはり多く見える。
「こういうのでよくあるパターンとしては『アトラクションの一部として言い張る』っすかねー?」
 よし、そうと決まれば後は任せろ。リカルドは目立たぬようにアルタイルを走らせた。

 その三人組は、自分たちが飛び出したお化け屋敷の前の広場に戻ってきていた。
「うひぇ~、さっきのまた出てこないか?」
「お前がスマホ落としたのが悪いんだろ……」
「見つかんなかったら落とし物センターだなー」
 ざらついたタイルの地面を見渡し、ベンチの下を覗き込んだ一人の上に影が落ちた。友人のどっちかが来たのだろうか、と顔を上げるとそこには黒い悪霊の姿が……
「うおぁっ!?」
「ああ、お客さん驚かせてすみません!」
 腰を抜かした彼に、悪霊(?)は頭を掻いて一歩距離を離した。おや、なんだか動きが人間くさいぞ? 危険ではなさそうだと認識したであろう彼のもとに、友人二人もなんだなんだと合流する。

「いやはや、お化け屋敷のリニューアルを兼ねた宣伝だったんすけど、驚かせてしまったようで……」
 申し訳なさそうにする悪霊、は先ほど大量発生したUDCの怪物ではない。リカルドが作り上げた分身がそれっぽく変身した姿であった。同様の姿をした何体もの分身たちは、このエリアをパフォーマンスのようにうろつきながら、一般人の客たちに対応をしている。
 とはいえ、怖がらせすぎてまたパニックになってもいけないので、変身のクオリティにはとてもこだわった。質感はチープに、おどろおどろしさを減らしてちょっとぽっちゃりさせて、ディティールの解像度は落として。
 お化け屋敷出た直後にこんなの沢山出てきたらびっくりするっすよね~、と彼は人好きのする調子で言った。

 さっきめっちゃ怖かったのはそうか、俺たちの気の持ちようだったのか。よく見ればそんなに怖くないではないか。なにより、演じている者いるのだから。そう納得した三人組はほっと息を吐いた。よく見れば他の客も説明を受けたり、記念撮影でツーショット撮ってる奴までいるではないか。
「なんだ、俺たちかなりのビビりだったってわけじゃん!」
 三人組が笑いあっていると、別の悪霊――リカルドの分身がてってけとこちらへ駆け寄ってくる。
「これ、お客さんの落とし物っすかね?」
「あ! そうです、よかったー……」
 もう一人のリカルドが差し出したのはスマートフォンだ。受け取った一人は安堵の笑みを浮かべていた。
 いいタイミングだ、とリカルド同士が従業員同士の世間話を装った会話を始める。
「いやあ、落とし物も多いもんで、こりゃああまりにも度が過ぎたって上層部で問題に上がりそうなんすよね」
「あちゃあ、そしたらリニューアルは取りやめっすかねぇ」
 もちろんこの会話は三人組も聞いていた。彼らはその偽りのストーリーを真として、話を流してくれるだろう。

 事実は小説より奇なり、なんて言葉もあるけれども。
「嘘を事実と思ってたほうが幸せなこともあるっすよね~」
 三人組を見送ったリカルドは、ちょっと作画が雑な悪霊の姿で、また別の客のフォローに回るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アドレイド・イグルフ
さて。夢とは楽しい時もあれば怖い時もあり……それらは、身体が起きれば「先程の光景は夢だった」と気付ける。意識が覚醒するにつれて朧げになるソレを思い出すキミは、断片的な内容を友人に伝えるか?

ならばワタシという魅惑を伝えるといい。ワタシを見てみろ、見てるだけで健康になると思わないか? 思わない?? アレっ
さっきは星に見惚れていただけでワタシじゃない? アッレレ……黙ってる方が絵になるから大人しくしてろ!? エっ元気だなキミ???

マアいいさ。どれ、一つ歌でも……おっと、待て。待てよ。写真や動画といった記録媒体でワタシを記憶するのはダメだ。よしてくれ、マジに本業に支障が出る。脳に直接刻み込んでくれ!



●そしてそれは夢のように
 その女性二人組はなかばぼーっとしながら、遊園地を歩いていた。
「さっきの一体何だったんだろ」
「気づいたら救護室いたしね。倒れて意識が無かったーみたいなこと言われたけど……」
「すごくホラーのあときらきらした夢見た気がする」
 緩やかなカーブを描く道の先に、メインの広場が見える。それでもなぜだか普段と違うように感じるのは先ほどまで見ていた夢のせいだろうか。そもそもあれは夢だったのだろうか。あまりにもリアルな恐怖をぬぐい切れないまま、二人の視線はとある一点に魅かれた。
「ねえ、あの人」
 夢で逢ったような。彼女たちの足が自然とそちらに向かうのは当然の事だった。

「さて。夢とは楽しい時もあれば怖い時もあり……」
 イベント用のステージのふちに、足を組んで腰掛けていたのはアドレイド・イグルフ(ファサネイトシンフォニックアーチャー・f19117)だ。彼女はふらりと近づいてきた女性たちにしっかりと目を合わせると、芝居ががった仕草で両腕を広げて語る。
「それらは、身体が起きれば『先程の光景は夢だった』と気付ける」
 ワタシは君たちの夢にお邪魔したかな? と、アドレイドが問いかければ、二人組はおずおず頷いた。
「本当に?」
 いたずらっぽい声色と青白い指が手を当てる口元は、もっと思い出してみろと促すようで。すこし眉をひそめた二人組は、ううんと唸って視線を空へと向ける。
「意識が覚醒するにつれて朧げになるソレを思い出すキミは、断片的な内容を友人に伝えるか?」
 そう、あの出来事を夢だと認識させてしまえば忘れさせることは容易いのだ。夢は時間が経つにつれて思い出せなくなるものだから。しかし、アドレイドの真の狙いはそこではなかった。語りがどんどんノッてきた彼女の声量がだんだんと大きくなって、他の一般人もちらほらステージの周りに集まってくる。

「ならばワタシという魅惑を伝えるといい。ワタシを見てみろ」
 重力を感じさせない軽い身のこなしでアドレイドはふちからステージへと上がる。勢いのままくるっとターンをして、ひらめく夜色のマントを腕でばっさあと広げた。そう、夢は上書きしてしまえばいい、美しい己という存在で!
「見てるだけで健康になると思わないか?」
 決まった! これは十点満点中百点が出る美しき所業! ドヤ顔が浮かんでしまうのも仕方ない!

「え、健康……? いや別に」
「エっ思わない? アレっ?」
 決まってなかった。
「確かに整ってるなーとは思うけど健康って言われるとよくわからないというか……」
「あと声がうるさい」
 一般人、結構辛辣だった。
「イヤ、いやいやキミたちさっき、アー、夢の中でもワタシに見とれてただろう!?」
「いや、星綺麗だなとは思ったけど」
「ワタシじゃない!?」
「ちょっと黙っててくださいそっちの方が絵になるので。あと動きもうるさいからもっと大人しくというか!」
「エっ元気だなキミ?」
 至極真面目な顔をして言い放つ二人組(片方はなぜか鼻息が荒くなっていた)に膝をつきそうになったアドレイドだがこのくらいではくじけない。踏ん張る足をステップに変えてばっと手を掲げればステージのライトが彼女を照らす。裏に居たUDC組織職員が空気を読んだ。

「マ、マアいいさ。どれ、一つ歌でも」
 おおー、とええー、が混ざる観衆の声。ええーってなんだええーって。しかしスマホのカメラを向けられるのは悪い気は……
「おっと、待て。待てよ。写真や動画といった記録媒体でワタシを記憶するのはダメだ。よしてくれ、マジに本業に支障が出る」
 ダメでした。気を利かせた職員の手によってステージの録画録音はご遠慮くださいのアナウンスが流れた。やめなさい、ブーイングをするんじゃあない。
「ええい! 脳に直接刻み込んでくれ!」
 美しく、そして無駄に大音量の歌声は遊園地全体に響き渡り、人々の恐怖の記憶をかき消すほどだったという。

 あとから騒音の苦情が来たがまあ、結果良ければそれでいいのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月30日


挿絵イラスト