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おお野薔薇よあなたの扉はどこ

#アリスラビリンス #戦後 #【Q】 #宿敵撃破 #野薔薇は独り行く

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#戦後
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#【Q】
#宿敵撃破
#野薔薇は独り行く


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●盃でも心臓でもなく
 ここはどこだろう。それは分からない。何故ここにいるのだろう、それも分からない。ここは怖い所、それだけは知っている。
 気が付いたらここにいた。そして、すごく怖い怪物が自分を捕まえた。でも、怪物は捕まえた後は自分はほったらかしで、違う人にばかり構っていた。
 そのうち凄い人が来て、怪物をやっつけてみんな助けて貰えた。ずっと構われてた人は素敵な王子様と消えていった。自分は他の構われなかった人たちと一緒に違う所へ行った。
 仲間は少しずつ減っていった。なぜか一つの場所を目指して進んでいき、そこで消えてしまう人がいた。不思議な生き物に迎えられて、そこに残ることを選んだ人もいた。怪物に追われてはぐれて、そのまま会えなくなった人もいた。
 自分には助けに来てくれる素敵な王子様はいない。一緒に捕まっていた人たちももう誰もいない。あの凄い人たちが誰だったのかもわからない。
 結局何も分からない。分かるのはこれだけだ。
 私は、まだ生きている。

●小世界に野薔薇はたった一輪で咲く
「あなたのメルでございます。この度『儀式魔術【Q】』が成功いたしました」
 メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が猟兵たちにローズヒップティーを配りながら言う。
「今回の【Q】の成功により、こちらから『自分の扉の世界にいないアリス』に接触できるようになりました。同時にその世界から離脱するためのウサギ穴も見つけられるようになったので、これによってアリス達が無意味に扉のない世界をさまよう時間を短縮できることになるかと」
 今までは猟書家などの大規模な危険に曝されていない者は予知の目からは零れやすかった。だが例え猟兵にとっては一介のボス級オウガに過ぎなくとも、アリスにとっては容易く命を奪われる恐ろしい存在。こちらから探査、接触することでそれらの危険から守り、その世界からの退避をスムーズに行わせることができるようになったということだ。
「で、その試運転と言いますか、早速一人のアリスに接触していただきたいのです」
 そう言ってメルは簡単な資料を配る。だが、そこに記されているのは猟書家……それも既に倒されたはずの者の事件。
「迷っているアリスはラモーナ・ロスという女の子です。彼女はアリスラビリンスに来てすぐとある猟書家に捕まってしまい、その際にすぐ助けられたのですがその後は結局アリスラビリンスをさまよい続け、仲間をすべて失いとうとう一人になってしまいました」
 仲間たちは脱出に成功したり愉快な仲間たちに保護されたりなど色々だが、とにかく今行動を続けているのは彼女一人らしい。
「彼女はアリスラビリンスについて『怪物が襲ってくる』『彷徨っているとたまに違う所に行く』程度の知識しかありません。猟兵についても『なんか凄い人がいた』くらいしか知りません。ついでに言えばアリス適合者としても未熟で、下手をしたら覚醒していないオウガブラッドの可能性すらあります。異能の類は使い方を分かってません」
 その程度の知識と力でよく生き残って来られたとも思うが、あるいはそれも仲間が大勢いたからかもしれない。そしてその仲間も、今は彼女にはいないのだ。
「今は彼女は茨でできた迷路の中を一人で彷徨っています。まずは彼女を助けて迷路を脱出してください。ただ前述の通り彼女は猟兵やオウガについても何も知りません。説明が面倒だと思うなら彼女が一人で抜けられるようこっそり手助けしてもいいかもしれません」
 直接会わずに障害を破壊する、先に正解を見つけ間違った道を封鎖しておくなどのやり方もありということだ。
「迷路を抜ければこの世界の出口であるウサギ穴があります。ただそこには『ロストハート・オウガ』という、アリスがこの世界から出ることを許さないオウガがいます。彼女自身元はここで力尽きたアリスだったようですが、寂しさから他のアリスをオウガ化して『友』としてこの世界に留め置きたいようですね」
 魔鍵を武器とするようだが、その鍵はこの世界にアリスを閉じ込めたいという願望の表れかもしれないと言う。
「流石にボスと戦う姿を見せれば皆さんが彼女言う所の『なんか凄い人』だということは理解してくれます。ただし彼女ははっきり言って物凄く弱いので、戦力としては当て込まないでください」
 完全なる守護対象、あるいは足手まとい。だがそもそもアリスとは本来そういう存在なのだ。
「ボスを倒せば彼女はウサギ穴から次の世界へ旅立てます。時計ウサギの方なら自分で穴を開いてあげてもいいかもしれませんね。もちろん次の世界に彼女の扉があるという保証はありませんが……出るまで回せば出るの精神で、扉ガチャの試行回数を増やすだけでも意味はあると信じたいです」
 いずれは確定で扉のある世界へ行く方法も見つかるかもしれない。それまでは、こうして回数をこなしていくしかないのだ。
 その為の手伝いを少しでもと言い、メルはグリモアを起動しアリスラビリンスへの道を開くのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。スイスではスートが♠♦♣♥ではないらしいですね。
 今回は『儀式魔術【Q】』によって可能となった『アリスへのこちらからの干渉と今いる世界からの脱出』を行っていただきます。
 アリスの詳細はこちら。

 ラモーナ・ロス(13・女性) アリスラビリンスに来たばかりの時に一度猟書家に捕まるが、本命の人質ではなかったため雑に扱われていた。その際一緒に捕まった仲間が大勢いたが、今は一人。猟兵やオウガについての知識も何もなく、とにかく逃げ回ろうということしか考えられない。芯は強いがどこか『自分はモブ枠』的に思っている所があり、自分の為に他人がわざわざ動いてくれたり特別な力があるとは思っていない。アリスとしても非常に弱く、能力が未覚醒過ぎてジョブどころか種族すらアリス適合者かオウガブラッドか定かではない。

 第一章では茨の迷宮に閉じ込められたラモーナに脱出の手引きをしていただきます。直接接触して手助けするほか、こっそり隠れて危険の排除や、休憩できるような安地作りを行ってもいいかもしれません。彼女は猟兵やオウガについての知識は全くないので、説明が面倒な方はこちらでどうぞ。逆に誘導がてら色々教えてあげてもOK。

 第二章では『ロストハート・オウガ』との戦闘。彼女は元アリスであり、他のアリスが自分を置いてこの世界から出ていくことを許しません。四属性や魔鍵による攻撃の他、オウガ化したアリスを使役してきます。ラモーナは弱いので戦力にはなりません。前章で何も説明されていなくても、戦う姿を見せれば皆さんが味方だということくらいは理解できるので言うことは聞きます。

 拙作『炎の中の王子様と遅れてきたリア充爆破犯』(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=30882)のスピンオフ的なシナリオですが、ぶっちゃけモブを後付けでNPC化した感じなので読む必要はありません。

 それでは、野に咲く薔薇を守るプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『迷子の迷子のおともだち』

POW   :    手を引いて連れて行こう

SPD   :    障害を先に取り除いていこう

WIZ   :    こっそりと行き先を示してあげよう

イラスト:真雨 吟

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 どこまでも続く茨でできた壁。その棘は鋭く、うっかり引っかかれば肌が容易く切り裂かれる。時には蔓が絡み合って行く手を遮って来たり、棘罠のように地面に敷き詰められている場所すらもある。
 その暗い緑の道の中を、赤い髪の少女が歩いていた。辺りの色と補色になるその姿はとても目立ち、それは遠目に見ればたった一輪だけ咲いたの花のようにすらも見える。
「ここ、前通ったっけ……でも違うような……」
 少女の名はラモーナ・ロス。最もその名を呼ぶ者は今はもう誰もいない。元居た場所からこのアリスラビリンスに迷い込み、そこで出会った仲間たちももう残っていないのだから。
 でもそれは当然の事。自分には怪物を追い払ってくれる勇者も、命懸けで助けに来てくれる王子様もいないのだから。自分はあの大きな女の子みたいな『特別』ではないのだから。
 この迷路の先に何があるかなんてわからないが、ここにいたっていい事なんて何もないのは分かっている。
「疲れたよ……でも、行かなきゃ……死にたく、ないもん……」
 その一心で体を引きずり歩くその姿は、何も知らぬ故の悲観と、だからこその自立心に溢れていた。
 彼女に全てを教え手助けするべきか、あるいは陰ながら力を貸し自ら立つその姿勢を可能な限り保たせるか。
 だがいずれにせよ、それは猟兵にしか出来ないことには変わりはない。
 猟兵よ、荒れ野に咲いた弱くも逞しいこの薔薇を散らせるな!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
ああ、あの時にいらした方ですかぁ。
お手伝い致しますぅ。

まずは【饒僕】を発動し沢山の『僕』を召喚、周囲の『地形』や『仕掛け』等の[情報収集]をお願いしますねぇ。
これで『目的地までの経路』や『罠等の仕掛け』はほぼ把握可能ですぅ。

そして『FAS』により飛行して移動、ラモーナさんと合流しましょう。
まずは自己紹介と『あの時見かけたこと』を告げ、緊張を解しますねぇ。
想定外の事態や『回避不能な罠』に備え『FMS』のバリアで保護、『棘罠』の様な地形では抱えて運ぶ等して庇いつつ進みますぅ。
その際『この世界の事』『オウガの事』等、彼女が混乱せず、且つ話して問題の無い範囲でお伝えしますねぇ。


カツミ・イセ
僕の神様は言ったよ。『やりたいことをやりなさい』と。

ん?ああ、あのときに僕の秘密基地に招いた一人かな?
ふむふむ…よーし、直接手を貸そう。
怪我してるようなら、【快兩】で回復させちゃおう。

こんにちは、アリス。僕はカツミ、カツミ・イセという…あなたの名前は?(警戒させないためわざと聞く)
よければ一緒にいこう?
分かれ道には、地面に✕つけておいて。通った場所わかりやすくしておこう(水流燕刃刀でがりがり)

怪物はさ、オウガといって。肉を食べたいから襲ってくるんだよ。だから、全力で逃げるのは正解なんだ。
ああ、僕は猟兵でさ、そういうのから助ける側だよ。ふっふーん、これでも強いんだぞーっ!(胸はり!)



 たった一人、茨の迷宮をさまようアリスの少女ラモーナ・ロス。彼女はかつて猟書家に囚われ、端役としてその命を使い捨てられかけたことがあった。
「ああ、あの時にいらした方ですかぁ。お手伝い致しますぅ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はその際に彼女を救出した猟兵。最もその際に主にかかわったのは、デスゲームに挑まされていた面識あるアリスとそのパートナー。他のアリスと一纏めにされていた彼女自身の事は、やはり強く印象に残っているわけではなかった。
「ん? ああ、あのときに僕の秘密基地に招いた一人かな?」
 それはやはりその事件の解決に挑んだカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)も同様。彼女は猟書家との戦いの際、ラモーナを含めた数多い力ないアリスを自身のユーベルコード製秘密基地に退避させていた。だがやはりその時に印象深いのはその入口となる簪を託した者の方。
 もちろんそれは、事件の流れと敵の目的や優先度を考えれば当然の事。その時のラモーナは、敵の目から外した時点でまず安全が確保されたと言ってもいいような立場だったのだ。
「ふむふむ……よーし、直接手を貸そう」
 なれど、今は話が違う。その時枝葉末節であった道が、続いた果てに今再び己と交わったのだ。
「僕の神様は言ったよ。『やりたいことをやりなさい』と」
 神の教えに従い、その道に乗ることにカツミは何の躊躇いもなかった。
「こんにちは、アリス。僕はカツミ、カツミ・イセという……あなたの名前は?」
 ラモーナの前に出て、彼女に声をかけるカツミ。自らの名を名乗ると同時に知っているはずの彼女の名を尋ねるのは警戒させないため。
 その甲斐あってか、驚いたような様子を見せたラモーナだが、ゆっくりと名前を名乗る。
「え、あ……ラモーナ……ラモーナ・ロス……」
 そもそも襲ってこない相手に会うこと自体が珍しいし、仲間がいなくなってからは一人だったのだ、誰かと会話することもなかったのだろう。話しかけられた、それだけでも彼女にとっては安堵するようなことだったのかもしれない。
「私は夢ヶ枝・るこる。あなたが以前怪物に捕まった時に居合わせた者ですぅ」
「ひっ!? 飛んで……え、それって……?」
 飛翔しながら近づいたるこるが続いて名乗ると同時に言うのは、彼女のある種の始まりとなった事件に居合わせたということ。猟兵というものも知らずその時にいた一人一人の顔も覚えていないラモーナだが、飛んでいる、という彼女の常識ではまだ理解しきれない事実と合わせ、相手があの時の『凄い人』なのだということは何となく理解できた。その事実は彼女に安心を与え、無用な警戒心を溶かせる。
「よければ一緒にいこう?」
 カツミが手を差し伸べ、ラモーナの手を取って歩き出す。るこるはそれを『FMS』によるバリアで囲み、周囲の危険から守りながら進んでいった。

「怪物はさ、オウガといって。肉を食べたいから襲ってくるんだよ。だから、全力で逃げるのは正解なんだ」
 進みがてらこの世界とそこに住む怪物についてラモーナに教える二人。その際るこるは事前に【豊乳女神の加護・饒僕】で把握しておいた道を先導するように進み、危険個所は抱えて飛ぶことで安全を確保しながら通過していく。そしてカツミは、分かれ道では『水流燕刃刀』で×印を刻み、一度通った場所が分かりやすいよう印をつけていく。
 その手慣れた探索は、今までがむしゃらに逃げてきたラモーナにこの世界での落ち着いた退避法を教えていく。
「ああ、僕は猟兵でさ、そういうのから助ける側だよ。こんな風にね」
 カツミは【水の権能、四『快療』】の水の渦でラモーナを包み、彼女の体の傷を癒していく。瞬く間に塞がっていく傷が、何よりも雄弁に彼女の能力と優しさをラモーナに教えていた。
「猟兵……」
「ええ、あなたの言う『凄い人』の正式名称と思っていただければ」
「ふっふーん、これでも強いんだぞーっ!」
 るこるの説明にどんと胸をはるカツミ。もし彼女たちがあの怪物を倒した人たちならば、強いのはよく分かっている。
「この世界はオウガがアリスを襲う世界ですが、どこかにあなたが元の世界に帰るための扉があります。決して希望を失わずに」
 この世界にある脅威と、脱出する手段の存在を混乱しないようにるこるは教える。どこかにゴールがあるという事実は、追い詰められた時の心の支えになるだろう。
 一つ一つ、花に水をやるように知識を与え、その先を導いていく猟兵たち。彷徨う野薔薇は、ここにようやく真っ直ぐ伸び始めたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴェル・フィオーネ
・心情
……助けきれなかった、アリスか
それでも、こうして見つけた以上は悔やむよりもできる限りのことはしていかないとね
私だって、『アリス』なんだから

・行動
POWを選択
ラモーナと接触して、この迷路を抜け出せるように手を引いて歩こうとはするわ
その中で、例えば疲れているのならばおぶってあげたりとかしたりと、手助けできそうなことは手助けしたり、アリスや猟兵のことを教えてあげるわ
それが少しでも、彼女の気力が戻ることに繋がればいいのだけれど……

ここまで一人で頑張って来たからこそ、私達がラモーナの所へ来ることができたんだから
そこだけは、絶対に褒めてあげなくちゃ

・その他
アドリブ等は大歓迎よ



「……助けきれなかった、アリスか。それでも、こうして見つけた以上は悔やむよりもできる限りのことはしていかないとね。私だって、『アリス』なんだから」
 ヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)はラモーナと、様々な理由でいなくなった彼女の仲間たちを思う。
 ヴェルもまた猟兵となってなお扉を探し続ける『アリス』の一人。猟兵としての力がある以外は彼女たちと何ら変わらない存在なのだ。
 それでも、その猟兵であるからできることがある。それを成すために、ヴェルはラモーナへと直接の接触を図った。
「こんにちは。私はヴェル・フィオーネ。猟兵で、あなたと同じアリスよ」
「同じ? 私と?」
 猟兵でありアリス、そう名乗る存在に、ラモーナは不思議そうな表情をする。猟兵というものの存在は既に別の者に教えられていたが、それと自分は全くの別物と考えていたのだろう。実際彼女は猟兵ではないのだが、アリスと猟兵が同時に成立しないわけではない。
「ええ、そう。詳しいことは進みながら話しましょう」
 ラモーナの手を引き、迷路を進むヴェル。その道すがらで、アリスや猟兵について彼女に教える。
「アリスというのはこの世界に迷い込んできた人たちのこと。あなたもそのはずよ。元居た場所のことは覚えてる?」
「ええと……え……どこ、だっけ……」
 自分の出自が思い出せない、そのことに気づき愕然とするラモーナをヴェルが宥める。
「大丈夫、アリスは元の世界の記憶をほとんど失ってることが多いの。私も自分の名前しか覚えてないんだ。猟兵になってもそれは結局変わらない。だから自分の扉を探してるの」
 猟兵としての力でグリモアベースを経由すれば好きな世界に行ける。だがそれでも記憶が戻ることはなかった。自分の扉を見つけるしか本当の意味で元の世界へ戻る術はない。それは自分も相手も変わらず、等しくアリスである証なのだとヴェルは説明する。
「それからどこの世界にもオウガみたいなのがいて、色んな世界を巡ってそれと戦っている、それが猟兵よ」
「どこの世界にも……? じゃあここから出られても……」
「いいえ、オウガは特別狂暴でやりたい放題。他の世界ではもう少しくらいは大人しくしていることが多いわ。オブリビオンという名前が一般的だけど、災魔、影朧、コンキスタドール……世界によって独自の呼び名もあるかな。どれかに聞き覚えは?」
 猟兵とオブリビオンについても説明すると、それらの名前を口の中で反芻し考え込むラモーナ。言葉の中から少しでも記憶を取り戻せたら。その姿は自分と重なるところがあり、やはり彼女を放っておけないとヴェルに思わせた。
 そんな彼女の前で、ヴェルは背中を見せてしゃがんだ。
「え……?」
「疲れてるなら私がおぶってあげるわ。私は今来たばかりだけどあなたはずっと彷徨っていた、疲れ方は全然違うはずでしょ?」
 助けてくれる者がきたことで、今まで抑え込んでいた疲労を自覚したのだろう。少しためらいながらも、ラモーナはその背におぶさった。
「考えることがあるならゆっくり考えていてね。手助けできることがあれば何でも言って。それから……」
 少しでも休めるよう、手伝えるように気を配りつつ彼女を背負って進むヴェル。
 そして最後に一つだけ、これだけは必ず言わねばと決めていたこと。
「ここまで一人で頑張って来たからこそ、私達がラモーナの所へ来ることができたんだから。それは取っても凄いし、立派なことよ。ありがとう、よくやってくれたね」
 たとえこちらから接触できるようになったとはいえ、その前に命尽きてしまえばそれもままならない。仲間が消えていくことにも折れず、何も分からない中一人で生き続けた力強きアリスへの賞賛。アリスだからこそ言えるアリスへの賛辞に、ラモーナは黙って彼女の背に顔をうずめた。
 そして二人になったアリスは、そのまま先へと進み続けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

死絡・送
SPD
協力OKアドリブOK
偶には忍びらしく影からさせるとしよう。
先に先行して露払いをする。
トラップはロボの男探知で壊して進む。
「忍びだけれど暴れるぜ!」
愛機のジガンソーレも使い頑張るぜ。
まずは索敵と情報取集で敵の位置を探し、ルーチェ・デル・ソーレで範囲攻撃や償却で茨を焼いたりロックした敵を攻撃し殲滅を目指す。
重量攻撃と衝撃波を組み合わせたロボのパンチを叩き込む。
敵をある程度片付けられたらユーベルコードを使用。
配下の土遁衆96人を呼び出し、ジガンソーレも重機代にして
ラモーナ嬢が休めるよう彼女が自分が使って良いとわかるようなある程度の家具や生活道具も土遁衆に用意させた小屋作りを行う。


ホーク・スターゲイザー
ジェイクと行動
アドリブ・絡みOK

「敵ではないのは事実だ」
迷宮から逃す為に案内をする。
その道中で教えられることは教えていく。
「やはり敵の領域では次元を切り開いての脱出は不可能か」
四属性の気配を探りつつ道を進む。


ジェイク・リー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

「疲弊してるな」
閻羅刀を抜き、救いの力による回復の刃を振う。
「やってみる」
ホークに言われ、閻羅刀を蒼色に戻し次元の切断を試みる。
「斬れはするが移動は不可能だ」
元を絶つ方向で進む。
(どうするかも考えねば)
一番危険なのは希望を失う事。なくなった時、何が起きるか分からないとホークと話し合う。
「少なくとも、味方がいるという事は教えねばな」



 自分には決して来ないと思っていた外部からの、それもあのとてつもない勇者達の助け。それは彷徨えるアリスの少女ラモーナに大きな希望を与えたが、それでもこのアリスラビリンスで散々植え付けられた無力感、あるいは人に頼れないという思い込みは簡単にはぬぐいきれない。
 しかしその孤独は、決して自分の足で立つことをやめない自立心という形となって彼女をこの迷宮の中に立たせていた。
 彷徨えるアリスに猟兵が関わっていられるのはグリモア猟兵の予知の及んでいる間のみ。どうしたって自分の力で生き延びなければならない時は訪れる。その時にまず自力で何とかしようと考えるのは、生きるためには大切な考え方でもあった。
 それ故死絡・送(ノーブルバット・f00528)は彼女に直接接触せず、先行して露払いをすることとした。
 偶には忍びらしく影から動くとしよう、そう思っての事でもあったのだが。
「忍びだけれど暴れるぜ!」
 スーパーロボットの愛機『ジガンソーレ』を駆り、男探知で壁を踏み潰していく送。アリスの肌くらい容易に切り裂く茨の棘も、ロボの装甲の前ではないも同然。壁をどかどか踏み越えて、地面に広がる棘の絨毯、上から釣り下がる棘蔦の首きりトラップも『ルーチェ・デル・ソーレ』で焼き払う。
 まさにそれはアリスラビリンスに差す太陽の輝き。悪しき茨を枯らし一人咲く花を照らす陽光。ではあるのだが。
「……何あれ……」
 身長5メートルのロボが壁を壊しビームを放ち大暴れしているのだから、目立たないはずはなかった。忍びなれども忍ばないを地で行くその行動は遠目にもよく観察でき、一般人同然のラモーナにもその姿は完全に捕捉されてしまっていた。
「……敵ではないのは事実だ」
 突如肩に手を置かれ、高い位置から聞こえる男の声。ホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)のその言葉は本来自分たちの身を証すためのものだったのだが、期せずして遠くで大暴れしている仲間のフォローにもなってしまった。
「疲弊してるな」
 そしてもう一つの男の声。ジェイク・リー(終極の竜器使い・f24231)が見立てた通り、ラモーナはここまでの放浪で疲労しきっていた。もう少し助けに入るのが遅ければ、そのまま行き倒れていたかもしれない。
 ジェイクは閻羅刀を抜き、そこに救いの力を籠め回復の刃としてラモーナに当てその疲れと傷を癒す。本来傷をつけるためのものである刀で傷を取り去るという芸当にもラモーナは驚くが、彼女にとって猟兵は未知の存在でありまさに何でもあり。そう言うこともあるのだろうとその原理について深く尋ねたりはしない。
 そのまま彼女を連れ、出口へ向けて案内する二人。前方ではロボが茨の迷宮を破壊し道そのものを作っているためほぼ案内の必要もないのだが、その姿を見てホークは一つの考えを思いつく。
「やってみる」
 その考えをジェイクに告げると、ジェイクは閻羅刀を蒼色に戻し眼前の空間を一閃した。
 次元を立つほどの斬撃。それはそこにあるもの全てを断つばかりに鋭かった。だが、それだけであった。
「斬れはするが移動は不可能だ」
「やはり敵の領域では次元を切り開いての脱出は不可能か」
 次元の壁さえ切り裂いて強引に脱出できればとも考えたが、やはりそんな甘い話はなかった。小世界同士の移動ですら時計ウサギの力を借りてウサギ穴を経由せねば出来ないのだ。ましてや世界間移動など猟兵ですら一定の条件を整えねばできないこと。易々とアリスを安全圏に連れ出せるのなら、猟兵総出でとっくにやっているという話だろう。
(どうするかも考えねば)
 一番危険なのは希望を失う事。なくなった時、何が起きるか分からない。それ故に、今の行動の真意もラモーナには詳しく伝えず次の手を考える。
「……こちらに、土の匂いがする」
 それはおいおい二人で話し合うとして、ホークは属性の気配を探りながら先に進んでいた。事前にグリモア猟兵から聞いた話では、迷宮の果てにいるオウガは四属性を扱うという。そこからの奇襲や待ち伏せを警戒しての事であったが、なぜかその前に土属性の気配だけがやけに強く匂っていた。
 それに従い進んでいくと、小さな休憩所のような場所が。土壁で作られた急ごしらえの小屋だが、中には休憩に適した広さと簡単な家具が。
 そう言えばさっきまでこのあたりで暴れていたロボの姿も見えなくなったことも合わせ、ホークはそれが仲間が用意したものだと察する。
「……これは安全だ、少し休憩しよう」
 この土製の休憩所、それは送が【死絡忍軍土遁衆招来】で作り上げたものであった。送は何も考えなしに大暴れしていたわけではない。迷宮を破壊し更地を作り、そこに時間次第で町や城さえ作れる忍軍を放つことで、危険な敵地をアリスのための安地へと変えていたのだ。
「少なくとも、味方がいるという事は教えねばな」
 直接顔を見せて保護する者だけではない。遠くから彼女を支えようとする者もいるのだと、ジェイクはそこで休むようラモーナに促す。
 そこにはそれなり以上にしっかりと休めるよう、いくつかの生活用品も整えられていた。もちろんここはアリスにとって決して安住の地となる場所ではない。だからすぐにここを捨て先を目指さねばならないのだが、その為に疲労を全快まで癒せるように、すぐ目の前に迫る大きな危機を乗り越えられるようにと、短い時間でできるだけの心配りが用意されていた。
「聞きたいことがあれば聞くと言い。教えられることは教えよう」
 必要なのは知識か、力か。伝えられそうなものは伝えよう。可能な限り彼女の助けになれるよう、ホークとジェイクは落ち着かせながらゆっくりと話す。
「……ちょっとまって、何を聞けばいいかから考えるから……」
 やはり状況完全には飲み込み切れはしない。だが男たちの力強くも繊細な心遣いの中、ラモーナはここまでの疲れと疑問を全て吐き出す準備を整えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ロストハート・オウガ』

POW   :    ロストハート・フレンズ
レベル×1体の【過去にオウガ化したアリス達】を召喚する。[過去にオウガ化したアリス達]は【炎・水・風・土のいずれかの】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    エレメント・ロック
【火・水・風・土のエレメントを宿す魔力弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【対応するエレメントの鎖】で繋ぐ。
WIZ   :    キー・ストライク
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【魔法鍵】で包囲攻撃する。

イラスト:おむらいす

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴェル・フィオーネです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 どこまでも続くと思われた茨の迷宮。だがそれは、自分とは無縁だと思っていた勇者たちの導きによっていとも容易く抜けることができた。
 暗き緑の生け垣の先、そこには一人の少女がまるで迷宮を抜けてくる者を待ち構えるかのように佇んでいた。
「ねえ、アリス。どこへ行くの? この先にはもう何もないわ」
 迷宮から出てきたラモーナに、少女は優しく、だがどこか迫るように話しかける。
「どこに行くかなんて私だって知らないよ。でも、ここにだけはいちゃだめ、それは分かるの」
 きっぱり言うラモーナ。力も知識もなく自分の扉も見つかっていない彼女に対して、行き先を尋ねるほどの愚問はないだろう。正解など彼女にだってわからない。だが、ここに留まるという絶対の不正解だけははっきりと分かっていた。
 その答えに、少女は怒りと悲しみがないまぜとなった表情になる。
「だめよ。ここからはどこにも行かせない。私と友達になって。あなたにお似合いな鎖を用意するわ。他の友達もきっとあなたを歓迎してくれる。扉には鍵をかけたの。もうどこにも行くところなんてない」
 少女の背に四色の鍵が浮かび上がり、四つの属性を辺りにまき散らす。それは時折人の形をとり、まるで少女に媚びるかのようにすり寄ってはまた消えていく。
 彼女は孤独のうちに死したアリス、『ロストハート・オウガ』。今はただ他のアリスを『友』として自らの悪夢の中に閉じ込めることだけを望む、先なき停滞に縋る心失いしオウガ。
 ボス級である彼女と、アリスとしても弱い部類に入るラモーナとの力の差は歴然。なれど、心の強さははたしてどうか。
 猟兵よ、強く孤独に進まんとする弱き野薔薇を、孤独に敗れ先を失った強きオウガに手折らせるな!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
彼女に『進む意志』が有るからこそ、力を貸す気になるわけで。
始めますねぇ?

『FAS』により飛行し『F●S』各種を展開、【紘器】を発動し大量の複製を一気に形成しますぅ。
『FAS』の複製は私を、『FMS』の本体と複製半数はラモーナさんを包み、守りを固めましょう。
『FMS』の複製残り半数で周囲を覆い離脱を阻止、『FGS』全てで上方から重力を掛け、オウガと召喚対象達の動きを抑えますぅ。
後は『FSS』『FRS』全ての[砲撃]に『FDS』全てによる[爆撃]、地表近くに配置した『FBS』全てによる足元からの[切断]も併せて[範囲攻撃]を行い、オウガと召喚対象を確実に叩いて参りますねぇ。



 迷宮の出口にそれ以上アリスが進むことを許さぬとばかりに立ちはだかるロストハート・オウガ。その力の前に今までどれほどのアリスが道を断たれ、彼女の『友』にされたことだろう。
 今ここにいるアリス、ラモーナもそこを越える力はもってはいるまい。なれど、彼女はこの恐ろしきオウガを前にしてなお立ち、進む意思を失わなかった。
 それは弱さ故相手の実力を計れぬ無謀からくるものかもしれない。だが、その力を補い先を開くものがあれば、意思はその身を先へと進めていく。
「彼女に『進む意志』が有るからこそ、力を貸す気になるわけで。始めますねぇ?」
 意志ある弱者の力となるため、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は浮遊状態でラモーナとロストハート・オウガの間に入る。
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の真実の姿を此処に」
 【豊乳女神の加護・紘器】で自分の装備する兵装を大量複製、防御能力のあるものの半数をラモーナに向けてその守りとし、さらに残り半数は全体を覆うようにして敵の離脱を防いだ。
「つまらないものを増やさないで。私は友達が欲しいの。こんな冷たい機械はいらない……みんなも、そうでしょう?」
 ロストハート・オウガの声にこたえるように、背にあった四つの鍵がそれぞれの属性を噴き上げ、それらを無数の人型へと変えた。
 もとよりロストハート・オウガはここから移動するつもりはない。囲みの中で邪魔者を滅し、ラモーナもそこに加えようと『友』たちを一斉に差し向ける。
 それに対してるこるは『FGS』で重力を操作、纏めて相手たちをその場に這いつくばらせようとする。
「まあ、何て酷い……!」
 その攻撃に、青い服や紫の花を纏った配下……アリスだった者たちが潰れていく。だが、赤い炎を纏った者や緑の風に髪をたなびかせるものはその力を差し向け、上空のるこるを炙っていった。
 炎や風なら重力の影響は受けづらく、さらには空中にいても大きなアドバンテージにはならない。
「ああ、私の為に戦ってくれる素敵なお友達……」
 ロストハート・オウガの賞賛に応えるように、彼らはより自らの力を強めるこるを炎の竜巻で焼き尽くそうとした。それは友の期待に応えるためか、あるいは自らを喰らったオウガへの恐怖からか。
 だがその感情が何であろうと関係ない。今の彼らは最早ロストハート・オウガに使役されるだけの存在であり、どうあろうと排除すべき『障害』でしかないのだ。
 重力が利かぬならと砲撃能力を持つ兵装を全て差し向け、さらには爆弾を落としての絨毯爆撃、加えて地表すれすれに戦輪を飛ばし足元を切り裂いての攻撃を加えていく。
 属性噴射攻撃を主体とする故近接戦を行っていなかった『友』たちは足元を狩られて転倒、そのまま上から来る無慈悲な爆撃の嵐に飲み込まれ、その中へと消えていく。
 風属性の者たちは吹き散らされ、爆撃に最も長く耐えた火属性の者も舌かな何度も執拗に切り刻まれて微塵となって消滅した。
「ひどい、ひどすぎるわ、私の友達を……!」
 その様子を見てロストハート・オウガが言うが、彼らを差し向けたのは間違いなく彼女であるし、そもそも彼女がアリス達を閉じ込め食らったから彼らは戦いの為に使役されることとなったのだ。彼らの運命を嘆く資格などロストハート・オウガには微塵もあるまい。
 それを教えるかの如く、兵装たちはアリスを蹴散らした後でロストハート・オウガへと向く。何処かへ行こうにも退路はもはやない。るこるがこの場を囲い、別世界への扉すら彼女自身が閉ざしてしまったのだ。
 逃げ場を失くしたロストハート・オウガを、アリスを屠り切った兵装の全てが攻撃する。身を守るための魔法鍵をアリスに変えて破壊されたロストハート・オウガは防御の術を失い、ほとんど無防備なままにそれにさらされた。
「いや……私は、ここにずっといたいだけなのに……!」
 爆炎と斬撃の中停滞に縋ろうとするロストハート・オウガ。歩みを止めた者の末路を見よとばかりにラモーナの眼前で打ち据えられるその姿は、彼女自身の望みと裏腹に弱きアリスの進む意思をより固めたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カツミ・イセ
ラモーナさんは強いね。先に進もうとしてる。
だからこそ、僕も力を貸すんだよ。

さあ、おいで『僕たち』!ここを通るために、あのオウガを倒そう。
あ、五人はラモーナさんの防衛に回ってね。

んー、相手も同じようなUC使ってきたね。属性なんだろう?極端に苦手なのは無さそうだけれど。
何にしても…皆、水流燕刃刀展開。なぎ払っていこう。
きみたちをラモーナさんに近づけるわけにはいかないし。オウガはもっとだよ。
うん、水流燕刃刀にばかり目がいってるようだけど。僕の偽装皮膚解除で、水の針のようにして刺しもするからね。

いいかい、あなたにラモーナさんを止める権利はない。ラモーナさんは先に進もうとしてるからね。



 ここにいるアリスのラモーナは戦う力はほとんどない。ジョブの力どころかアリス適合者としての能力すら満足に使うことのできない、オウガや猟兵に比べてはもちろん、アリスの中でも弱者と言っていい存在であった。
 だが、カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)はそうは思わない。
「ラモーナさんは強いね。先に進もうとしてる。だからこそ、僕も力を貸すんだよ」
 戦う力とは違う強さ。孤独に折れず、弱さに甘えず、たった一人でも先を目指し続けるその心にカツミは『強さ』を見出した。それを守るために彼女の持たない自分の力、自分の強さをそこに添えることに何の躊躇いがあろうか。
「さあ、おいで『僕たち』! ここを通るために、あのオウガを倒そう」
 カツミはラモーナの進みを阻もうとするロストハート・オウガに対して、毅然として向かい合う。
「僕の神様から賜りし水の権能、その一つ。僕と似た者たちをここに」
 宣言通りに【水の権能、二『似姿』】でカツミと同じ姿の球体人形たちが大量に現れた。それらのほとんどはロストハート・オウガと向かい合うよう布陣するが、五人だけはラモーナを囲み、彼女を守るようそこに立ちふさがる。
「自分ばかり増やして寂しい人。私は友達がたくさんいるから寂しくないわ。あなたも友達になりましょう」
 いつの間にか背負い直されていた四つの鍵が再び四つの属性を吐き、それらを人の姿として顕現させた。一度全滅させられたはずの『友』たちは変わらぬ姿で再び呼びなおされ、猟兵たちへとけしかけられる。それは不滅と呼ぶには余りに無残な、死して逃れられぬ鎖に繋がれたかの如き永遠の束縛と言えるかもしれない。
「んー、相手も同じようなUC使ってきたね。属性なんだろう? 極端に苦手なのは無さそうだけれど」
 属性を宿す彼らをじっとカツミは観察する。持っている属性は炎・水・風・土のいずれか。カツミの人形たちが浄化の水の力を持つことも考えれば、炎には有利、水とは互角。圧倒的に不利を取りそうな雷がないのは幸いとしても、土や風と水の相性は時々によって変わる。ならばとるべき手段は。
「何にしても……皆、水流燕刃刀展開。なぎ払っていこう」
 水の力を秘めた刀を全員に展開させ、物理主体の戦いを挑むカツミの軍団。それに対しオウガとなったアリスの軍団はそれぞれの宿す属性をうならせてカツミたちを迎え撃った。
 水の剣が薙ぎ、払い、浄化の水を振りまいていく。火の者たちは瞬く間に消されていくが、土はそれを受け止め吸収し、風は吹き散らそうとする。それをさせ字とカツミたちは刃をしならせアリスたちの身を鋭く切り裂いて倒していき、自分たちの後ろには絶対に相手を抜かせない。
「きみたちをラモーナさんに近づけるわけにはいかないし。オウガはもっとだよ」
 たとえ相手が食われた果てに使役される元アリスだろうと、今先に進もうとするアリスをやらせるわけにはいかない。ましてやその原因となったオウガなど。
 多勢がぶつかり合う合戦じみた戦場の中で、カツミの人形たちの水流燕刃刀がアリス達を抜けてロストハート・オウガへ届こうとした。だがロストハート・オウガは、その刃を軽々と躱し、浄化の水も振り払う。
「その程度の剣、私の鎖を断つことなんてできないわ。私はここに永遠にあり続けるの」
 自分を今、ここから切り離すことなどできないと宣言するロストハート・オウガ。それを否定するべくまた別のカツミが剣を突き出したが、それも素手で軽々とはじき返した。
「何度来ても……」
 無駄、そう言おうとしたロストハート・オウガの声を無数の刺突が遮った。
「うん、水流燕刃刀にばかり目がいってるようだけど、僕の偽装皮膚解除で水の針のようにして刺しもするからね」
 カツミの着物の裾から露になった肌が剥がれ、無数の針のようになってロストハート・オウガへと突き刺さっていた。今攻めてきたカツミは人形ではなく彼女自身であり、その体を覆う皮膚はクランケヴァッフェの一種。露になった球体の関節から無数の水製の針が伸び、ロストハート・オウガの体を貫きその体内に浄化の水を流し込んでいった。
「いいかい、あなたにラモーナさんを止める権利はない。ラモーナさんは先に進もうとしてるからね」
 まるで神の代弁者の如くはっきりと告げるカツミ。その言葉を体現するかの如く針が一気にその体に食い込み、その勢いでロストハート・オウガを地面に縫い付けた。
 倒れたものが先に進もうとする意志あるものを阻んではいけない。それを身をもって知らしめるかのごとく先なきオウガは地に伏され、その後方への道を露にさせられたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW

アリスを友として閉じ込める……
標的が違うだけで似た者同士かもね、私達

オウガ化したアリス達を召喚されたら
守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
『紅キ楽園ノ女王』で更に114倍

似た者同士と言った筈だ。
ルルに寄り添うのはアリスではないがな

城や町を築いて守りを固めようと
今の我は戦場の敵全てから【生命力吸収】が可能。
【火炎耐性・氷結耐性・激痛耐性】と【第六感・見切り】で
攻撃に耐えているだけで勝負が着く

だが、恐怖による支配はルルの本懐ではない。
我もろとも【結界術】に閉じ込め
【誘惑・催眠術】の魔力を充満させつつ
身も心も【慰め】救済しよう

お前達の孤独感を奪ってやろう。
我らの楽園に来るが良い



 ロストハート・オウガの目的はただアリスを餌として食らうだけではない。食らったアリスをオウガ化し、友として永遠に自分の傍に留め置くこと。それこそが一人この世界で倒れ、その果てにオウガと化した彼女の望みなのだ。あるいは他のオウガとは違い、彼女にとっては捕食とは単なる通過点でしかないのかもしれない。
「アリスを友として閉じ込める……標的が違うだけで似た者同士かもね、私達」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)はロストハート・オウガのその在り方に自分を重ねて見るが、彼女にはその意図は届かない。
「私が友達に欲しいのはアリスだけ。あなたは私の友達を奪うつもりなの? そんなの許さない。友達になれない人はいなくなって」
 三度、ロストハート・オウガの背の鍵が属性を噴き上げオウガとなったアリス達を呼び出した。
 例え滅ぼされようとロストハート・オウガが望む限り何度でも蘇らせられる彼らは、最早自分の意思など関係ないとばかりに彼女の望むままにドゥルールと向かい合う。そのオウガたちに対抗するかのように、ドゥルールは自らの宿す守護霊たちを自身に憑依させる得意の形を取った。
「我が身を憑代に、彼の者を贄に……」
 さらにその上で、【紅キ楽園ノ女王】を発動、高露出の真紅のドレスを纏った美しき『吸血妃』アルカーディアを顕現しそれと化すことで、さらなる強化を図った。
 零れ落ちんばかりの豊満な体を僅かな衣装に押し込めた銀髪紅眼の吸血妃。だがあくまで彼女が一人であり傍には誰もいないことを見ると、ロストハート・オウガは薄く唇を上げる。
「どこが似ているの? あなたは一人。私にはたくさんの友達がいる。あの独りぼっちさんに見せつけてあげましょう、私の友達」
「似た者同士と言った筈だ。ルルに寄り添うのはアリスではないがな」
 相手の嘲笑に尊大な態度で返すドゥルール……もといアルカーディア。その豊満な体を見せつけるように進む前で、オウガたちは自らの属性を活かし燃える土塁を築き、波立つ堀を作り始めた。
 即席で作られた小さな城砦の前でアルカーディアは足を止める。そしてそのまま掘りを飛び越え、燃える土壁へと取り付いた。
「ほら、一人だから自分でそれを乗り越えなければいけないの」
 ロストハート・オウガの嘲る声。もし彼女が逆の立場ならば、あるいは『友達』を踏み台にでもして乗り越えたのであろうか。だがそれも意に介さず、アルカーディアは燃える壁を登っていく。そして彼女の体が上がっていくと同時に、炎の勢いが弱まり始めた。
「どうしたの、私の友達……」
 まさか、『友達』たちが手を抜いているのか。困惑するロストハート・オウガを、土塁を登り切ったアルカーディアが堂々と見下ろしながら告げた。
「今の我は戦場の敵全てから生命を啜ることが可能。攻撃に耐えているだけで勝負が着く」
 かつて封印を施された程の恐ろしき吸血妃。その威はただそこにあるだけで弱い者を圧し、その命を喰らっていく。まさに後ろにいるラモーナがそうであるように、力なきアリスを喰らい作られた『友達』たちはオウガと化しても本質的には『弱者』なのであった。
 だが、同じもとアリスであってもボス級オウガと化したロストハート・オウガは違う。
「ひどいわ……なら、あなたに消えて貰ってもう一度友達を……!」
 オウガたちを消して鍵に戻し、それによって攻撃をかけるロストハート・オウガ。その威力は高く足元の土塁が一撃で崩れるが、着地したアルカーディアは攻められるのも構わずロストハート・オウガに近づいた。
「だが、恐怖による支配はルルの本懐ではない」
 そう言って彼女の周りを包むのは、あらゆる干渉を防ぐが如き結界。その結界はアルカーディアとロストハート・オウガだけを包み、彼女が閉ざした小世界からさらに二人を隔離する。
「お前達の孤独感を奪ってやろう。我らの楽園に来るが良い」
 結界が閉じる瞬間に漏れ聞こえたその言葉を最後に、外に一切の姿も音も見えなくなった。
 閉ざされた結界の中で、アルカーディアはロストハート・オウガをその豊かな体で慰めていく。孤独によってオウガとして生きるロストハート・オウガ。それを奪ってくれようという吸血妃の優しき傲慢は、閉ざされた世界の中誰も見ることなく続くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ホーク・スターゲイザー
ジェイクと行動
アドリブ・絡みOK

香寿郎とバルガ、レヴェリーを呼び出す。
「ああ、やっと出られた」
大量の黒い羽根が付いたレザージャケットとパンツ姿の男に三者が刃を向ける。
「大罪人ベリアル、なぜここに」
「フフ、六天道子に特別にね。用があるのはあっち」
姿を消したかと思えばグラマーな女となってレヴェリーの背後から声をかけ、ジェイクへと向かう。
レヴェリーが属性攻撃で攻撃しバルガがスラスターによるダッシュで攪乱、香寿郎が斬りつける。
受け流しや見切りで避けつつカウンターを繰り出す。


ジェイク・リー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

ロスの防衛をしつつ閻羅刀を構えているところにベリアルが来てはロスを口説き始める。
『止めろ!』
悪びれる様子もなく笑みを浮かべるベリアルに威圧感を感じつつ目的を訪ねる。
技を教えるために来たと言われ、そのまま講義が始まる。
次元斬、範囲攻撃の斬撃波を相手の周囲に起こすが動き回る相手には少し不利。
雷閃、リミッター解除から龍脈使いにダッシュと推力移動、吹き飛ばしを用いた移動術。
「俺に欠けていたもの」
ベリアルがなぜ力を貸すかは不明であるが、使えるものは使う。
「間合いを詰め、あの魂を救う」



 ロストハート・オウガの能力は食らったアリスをオウガとして使役することだけではない。彼らに与えている四属性は元より彼女の能力を分け与えたものでもあり、自身でそれを用いて戦うことも当然できるのだ。
 その力は当然相応に強く、余波だけでも力なきアリスなど容易に消し飛んでしまうだろう。それ故に、戦いの影響が及ばぬようホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)とジェイク・リー(終極の竜器使い・f24231)はラモーナの前をしっかりと固め、ロストハート・オウガの射線はもちろん見ることさえ阻むかのように堅固の布陣を敷いた。
「力を貸してくれ」
 さらにその守りを盤石にすべく、ホークは【守護者召現】で英霊たちを召喚する。それに答えるかのように金髪の剣士、黒鎧の巨漢、新体操選手の如き女が現れた。だが。
「ああ、やっと出られた」
 四人目に現れた大量の黒い羽根が付いたレザージャケットとパンツ姿の男。その姿が見えると同時に三人は武器をその男へと向けた。
「大罪人ベリアル、なぜここに」
 巨漢バルガが威圧感を隠そうともせず迫る。剣士香寿郎は抜き身の刀を今にも振り抜かんばかりに構え、レオタードの女レヴェリーも敵意を隠さない。
「フフ、六天道子に特別にね。用があるのはあっち」
 その声が聞こえたのはレヴェリーの後ろから。一瞬にして姿を消し、面影を残しつつ間違いなく豊満な姿の女となったその者……ベリアルはジェイク、そしてその背に守られるラモーナへと近づいていく。
「素敵な薔薇だ。是非手折らせてほしい」
 ラモーナの赤髪を撫でようとするベリアルを、ジェイクが一喝する。
「止めろ!」
 彼女は守護対象。己が、そして仲間が守り抜いてきた先へ進ませるべきアリス。もし彼女に何事かあれば、あるいは猟兵への恐怖や不信感でも植え付けられてしまえば、それは取り返しのつかないことになるし、ここまで彼女を守り導いてきた者全てに対して詫びる言葉もなくなる。
 それに対し悪びれる様子もなく笑みを浮かべるベリアル。その笑顔の奥に威圧感を感じつつ、ジェイクは彼女に問う。
「何をしに来た」
「技を教えに」
 それは力のないラモーナにか。そう問う前に、ベリアルはロストハート・オウガへ向き合った。
「次元斬、範囲攻撃の斬撃波を相手の周囲に起こすが動き回る相手には少し不利」
 先にジェイクが虚空に放った次元を断つが如き斬撃でロストハート・オウガを切り。
「雷閃、リミッター解除から龍脈使いにダッシュと推力移動、吹き飛ばしを用いた移動術」
 複数の力で自身を跳ね飛ばし、重い突きを叩き込む。
 突然の連撃にロストハート・オウガは抵抗も忘れ体を揺らがせた。このような技ラモーナに到底真似できるはずがない。つまり、教えに来たのは自分にということ。
 それ以上何かを問う前に、ベリアルは早々に姿を消してしまった。その向こうで、体勢を立て直したロストハート・オウガが四つの力を溜める。
「突然攻撃してくるなんて。あなたたちはこの世界にいらないわ」
 四属性の魔法弾が一気に放たれた。それらはラモーナの前に立つ者たちに一斉に襲い掛かり、大爆発を起こす。
「ふふふ……こんなものか」
 その爆発が晴れ、四色の鎖に繋がれた者。それは全ての魔砲弾をその身に受けたバルガであった。捨て身とも言えるその防御法も、彼ほどのタフネスがあれば最適解となる。そのまま強引にスラスター移動で前進し相手の視界を塞ぐバルガ。
「そのまま……」
 ならもう一度属性を、そう放とうとするロストハート・オウガに、彼女の扱えぬ雷の属性が鞭の如く襲い掛かった。レヴェリーの持つリボンが雷属性を携え、その身を打ち据えたのだ。
「まだまだ!」
 さらにそこに香寿郎の斬撃が降りかかる。再度体を揺らがせながらも反撃に出ようとするロストハート・オウガの動きを、重ねて詰め寄ったホークが受け流しそのまま再度抑え込みをかけた。
「俺に欠けていたもの」
 その姿を見ながらも、ジェイクの心は先にベリアルが見せた技にある。しかしその心は、目の端に赤い髪が入った途端現実に引き戻された。
 今自分は守らねばならぬものを背負っている。なぜ力を貸すかは不明であるが、使えるものは使う。
「間合いを詰め、あの魂を救う」
 すぐ戻るから待っていろ、その意思を込めて言いながら、先のベリアルがそうしたように自身を打ち出すが如き動きでロストハート・オウガに詰め寄り、一度突き飛ばす。そして自らの斃れた小世界にいつまでも縋りつく必要はない。そう言わんばかりに次元を断つ斬撃を彼女へ打ち下ろした
「いや……私を、ここから出さないで……!」
 次元を切り裂きこの世界から彼女を解放する、例えそれが相手を倒すことと同一であろうとも。まるでその意思を乗せたかの如き斬撃に、ロストハート・オウガは大きく体をのけぞらせた。
「……もうすぐ、開けてやる」
 その姿を見てホークはラモーナ、そしてロストハート・オウガに、この世界からの脱出が近いことを告げるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴェル・フィオーネ
・心情
……そうよね、あなたのような、アリス「だった」人も居るよね
ラモーナだって……ううん、私だって、あなたのようになっていた可能性は、否定できない
でも、だからこそ……ラモーナをあなたには渡さないわ
それが、私自身のやりたいことなのだから

・戦闘
【オーラ防御】や【カウンター】による【全力魔法】で飛んでくる鍵の攻撃をしのぎつつ、【ランスチャージ】で攻撃して隙を伺うわ
そして、隙を見つけたらユーベルコード「想像を創造する希望の少女」で、一気に攻撃するわね

・その他
アドリブ等は大歓迎よ



 決してその場から退こうとせず、ここだけが自らの場所、ここに来たアリスは全て自らの友とそれに縋り続けるロストハート・オウガ。
 その姿を見てヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)は思う。
「……そうよね、あなたのような、アリス「だった」人も居るよね。ラモーナだって……ううん、私だって、あなたのようになっていた可能性は、否定できない」
 ロストハート・オウガもまた、望まずしてアリスラビリンスに放り込まれ、散々に迷った末にここで命尽きたか弱きアリスであったのだ。
 さらに死によって彼女の道は途切れることはなく、オウガと化すというより無残な形で先を続けることを強要されてしまった。
 もし猟兵の目に留まらなければ、もし猟兵とならなければ、そんなほんの少しのボタンの掛け違いで、ここで扉に鍵をかけていたのは自分たちだったのかもしれない。
 自身もまた迷い続けるアリスであるヴェルにとって、それはただの想像と言い捨てるには余りにも恐ろしく、そして生々しい話であった。
「でも、だからこそ……ラモーナをあなたには渡さないわ」
 けれども、現実には自分は猟兵として、ラモーナはアリスとして、そしてロストハート・オウガはオウガとしてここにある。今はその現実、その運命、そしてその意思に従うべき時なのだ。
「それが、私自身のやりたいことなのだから」
 猟兵となったアリスが、オウガとなったアリスへと向かい合った。
「あなたはアリスなのね。それなら、私の友達になれるはず。あなたはどの鍵がいい? どの鎖で飾って欲しい? 好きなだけ選んでいいわ」
 ロストハート・オウガの背負う魔法鍵が無数に分裂し、複雑な軌道で飛び回りながらヴェルへと殺到した。
 その鍵を、ヴェルはオーラを纏って押し返す。一つ一つは対し体力でもないのかほとんどは弾き飛ばされ無効化されていくが、そのうちのいくつかは守りをすり抜けヴェル自身へ襲い掛かる。
「させない!」
 抜けてきたものは自身でも魔法の力を使い、反する属性をカウンターでぶつけることで相殺した。
 圧倒的な物量を守り切り、敵の攻勢が途絶えたその瞬間。そこを逃さぬとばかりに『スペリオル・マグナ』を構え、一直線にロストハート・オウガへと突進した。
「うぐっ……!」
 その先端が腹部を突き刺し、白い肌とドレスを血に濡らす。だがロストハート・オウガもその手に力を籠め、魔力と想像力でできているはずのその穂先を掴んで強引に体から引き抜こうとした。
「私は……ずっとここにいるの……友達と一緒に……」
 繰り返し言う停滞への望み。だが、彼女が本当に臨んでいたのは果たしてそれだったのか。アリスであった時、彼女もまた帰る道を求めてさまよっていたのではないか。
 オウガに限らず、オブリビオンとなった者は生前の望みを忘れたり歪められることがある。彼女が最期に感じた孤独、それだけが無制限に肥大して彼女を飲み込み、友を求め鍵をかけるオウガに変えてしまったのではないだろうか。
 もちろん想像でしかない。本人に聞いたとて否定の答えしか返ってこないだろう。それでも。
「絶対に、諦めない!!」
 決意の言葉が形となったかのように、ヴェルの背に青い魔力が翼の形をとって噴き出した。スペリオル・マグナの刀身が重く、大きくなり、より輝きを増してロストハート・オウガへと押し込まれていく。
「いや……いやよ……諦めて……私と、一緒に……!」
 ロストハート・オウガの背が煌めき、再度四つの属性がヴェルへと襲い掛かった。ほとんど密着している状態では避けることも難しくそれらはヴェルの体を傷つけていくが、それでもヴェルは怯まない。
「道を開けてもらうわ。アリスは先へ進むの」
 【想像を創造する希望の少女】が、青き羽をはばたかせて前へと進んでいく。ロストハート・オウガの足が少しずつ後ろに押し込まれていくが、やがて何かに当たったように動かなくなった。
 恐らくそこにあるのはこの世界の扉。彼女が鍵をかけ、孤独を否定する停滞の象徴としたもの。
 この扉はラモーナの、そしてヴェルのものではない。だがそれでも、いつかここにたどり着いたアリスがその扉をくぐれるように。
「この状況を変えられる……絶対、『自分の扉』を見つけ出してみせるんだから!」
 猟兵としての原点、アリスとしての目的を改めて叫び、ヴェルは青き翼をはためかせた。
 強き意志で未来を想像するアリスナイトの体が、一歩先へ進む。それに押された想像を力にする槍が、留まり続けたオウガの体を貫いた。
「一人にしないで……私も、連れていって……」
 心の弱さを露にしたかのごときか細い声と共に、ロストハート・オウガの背に残っていた鍵の本体が粉々に砕け散った。それと同時に彼女の背を抑えていた何かが消え、突進の勢いのままヴェルとロストハート・オウガは大きく前へと移動した。
 進んだ先で青き翼が消え、スペリオル・マグナも元の杖へと戻る。その体を貫く槍が消えるとともに、ロストハート・オウガの体も4つの光となって消えていった。
 彼女に喰われた『友達』たちが解放されたのか、あるいは彼女を連れて行ったのか……その答えはアリスナイトの相乗力をもってしても分からなかった。

 小世界を閉ざしていたオウガが消えたことで、この世界から他へと続く道も正しく開かれた。
 自分のものではない故に扉をくぐることは出来ない。その代わりオウガに怯え隠れていたと思しき時計ウサギが現れて、ウサギ穴を二人の前に開いた。
「これがウサギ穴。時計ウサギだけが開ける次の世界へ続く道よ。もし迷ったらこれと時計ウサギを探すといいわ」
 もちろん次の世界に扉があればそれに越したことはない。だが、そんな幸運がそうそうないことはヴェル自身が身をもって知っている。
「ありがとう。私なんかの為に……」
 ラモーナは少し目を伏せながら礼を言う。こんなにも強く優しい勇者たちが自分を助けてくれた。今までだれにも頼れない、誰にも気にかけられないと思ってきた彼女にとってそれがどれほど心の救いとなったか。
「私、何もお礼なんてできないし、全然強くもないけど……死なないように頑張る。じゃないと、あなた達に失礼だから」
 救われたのだからもう一人の命ではない。最後に一度ヴェルと固く手を握り合ってから、孤高の野薔薇はウサギ穴へと消えていった。
 ウサギ穴は閉じ、後には僅かな薔薇の花びらだけが舞い散っている。願わくば今度は互いの扉の先で出会えたらと、ヴェルもまたグリモアの転移をくぐり、グリモアベースへ戻るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月20日
宿敵 『ロストハート・オウガ』 を撃破!


挿絵イラスト