6
果てに潜む怠惰なる高貴

#ダークセイヴァー #常闇の燎原 #次の断章は11/10投稿予定です。

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#常闇の燎原
#次の断章は11/10投稿予定です。


0




●輝きに満ちて
「聞いたか皆、ダークセイヴァーの話を!」

 レーナ・ベーメンメーレンは、グリモアベースで、目を爛々とさせながら猟兵達に語りかけた。話というのは当然――これまでダークセイヴァーそのものだと思われていた「第4層」の上にあるかも知れないという「第3層」の事である。

「もしそこを見つける事が出来たなら……それはどんな世界なのだろうか? 地下ではなく、太陽が燦々と照りつけているのか? それとも、これまでとはまた別種の闇が存在しているのだろうか? 3層という事は、2層や1層はどうなるのだ?」

 そこで自分がどういう状態で話しているかに気づいたのか、レーナはこほんと咳払いをする。

「済まない。……とにかく、君達には謎を解明するための手がかりを探して欲しい。そのためにはまず、辺境地帯の更に果てにある常闇の燎原を目指す必要があるだろう。と言うか、そこぐらいしか手がかりが無さそうと言ったほうが正しいかな? 常闇の燎原というのは完全な闇に覆われた、おおよそ人が住むことは出来ない領域と聞いている」

「当然のように、道中はオブリビオンとの遭遇にも警戒する必要がある。おおよそダークセイヴァーの典型であるヴァンパイア達ばかりの筈なのだが……一部の個体は何やら黒い炎を使うようだ。警戒して欲しい。後はそうだな……厚着していくのが良いと思う。道中はとても冷えるようだ」

 その場で思いつく限りの事を話し終えると、レーナは最後に神妙な面持ちで話を締めくくった。

「もしかしたならば、光がもたらされるかも知れないのだ。暗闇に満ちたあの世界に。もしそうなら私はそれが見てみたいし、あるいは、それ以外の何かでもそうだ。どうか、よろしく頼むよ」

●暗闇の中で
 誰かがぼやいている。少女のように声高で、それでいて全てに倦んでいるかのような。

「猟兵達がこっちに向かっている? 今更なんのために? まあ、良いでしょう。あの狂ったサディストが喜んで相手をしてくれるだろうし、後は念の為に冷気を強めておきましょう。私は大いに暇で、忙しいのだから。まさか自分で相手などしたくないし、ねえ?」

 唯一の灯りでもある蝋燭の下で、ページをめくる音だけが響き続けていた。


Char
 初めまして、あるいはこんにちは、Charと申します。グリモア猟兵は興奮していますが、物自体は比較的オーソドックスなダークセイヴァーのシナリオです。

●以下は補足情報です。
 基本的にプレイングは冒頭追加後は随時募集しておりまして、参加人数やオーバーロードについても特に制限はありません。
 どなたかと一緒に参加される場合は目印をお忘れないようにお願いします。
 一応調査物という事で各章に関する事前情報はありません。各冒頭断章をご参照ください。
 念の為、断章投下前に投稿されたプレイングについては流させて頂きます。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。では、参加をお待ちしております。
2




第1章 ボス戦 『厭世の侯爵』

POW   :    ソドム饗宴
【血の雨】を降らせる事で、戦場全体が【処刑場】と同じ環境に変化する。[処刑場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    美徳の不幸
【自身が持つ灰色の剣による攻撃】が命中した対象の【体内】から棘を生やし、対象がこれまで話した【善意、慈愛、希望に満ちた言葉】に応じた追加ダメージを与える。
WIZ   :    悪徳の栄え
【暇潰しに命を奪った人々の怨嗟の声】を解放し、戦場の敵全員の【生命力】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂気、退廃、あるいは永遠の命
 猟兵達はダークセイヴァーの辺境へと侵入した。ダークセイヴァーは元々陽光の無い世界である。が、それにしても気温が低い。活動に支障はないものの、0度あるのかどうか、そう感じる。所々に民家らしき物はあるが、人の気配は無い。運が良くて、人骨が見つかる程度の物だ。

 そんな中で猟兵達は、一際目を引く白い男を発見した。高そうな服を着て、剣を持ち、そして――人の気配はしない。オブリビオンだ。

「おや、うむ……今更我が領地に侵入する者が現れるとは。しかも、中々に見所のありそうな猟兵ではないか」

「良いだろう。君達は私が殺す価値がある。そして私が殺される価値がある! 殺し合いの悪徳に幸いあれ! ハハハハハハハ!」

 男は剣を構え、猟兵達に突撃してきた。話し合いの余地は、ない。
マホルニア・ストブルフ
◇アドリブ連携OK UC詠唱不要
子供の頃に冬の隙間風なぞに慣れたとはいえ、肌寒いわねぇ。言われた通りコートを着てきてよかったわ。おや、あれはオブリビオンか。まあこの世界で豪奢な見た目をしていれば大抵奴らだろうが。

あら、どうもこんにちは。――こんばんは?
相変わらず昼夜がわからない世界だな……よ、なんだ、殺される状況も好きとは、悪食な趣味を持ってる奴だな!

アイテム【レヴィアスク】を武器化して男の剣を受けるよ。【拡張義体】を強化外骨格型に展開させ、剣を防ぎながら【斬撃】と【グラップル】で応戦しようか。
UCによる光で、向かってくる相手の攻撃は緩やかに、自分の放つ攻撃は加速を付与しながら戦うよ。



「……言われた通りコートを着てきてよかったわ」

 マホルニア・ストブルフはそう独りごちた。それに合わせて白い息が立ち込める。だが幸いにして寒さには慣れたものだし、対策の甲斐もあって、コートの下には確かな温かみを感じてもいた。
 言いながら辺りを見渡していると、白衣の男と目が合う。十中八九オブリビオンであろうとは思いながらも、マホルニアは挨拶をする事にする。寒さに慣れているのと同じく、あるいはこれもまた育ちという物なのだろう。

「あら、どうもこんにちは。――こんばんは?」
「おや……残念ながらどちらも外れだよお嬢さん。正しくは――さようならだ!」

 言うなり男は洒落た灰色の剣を真っ直ぐに構えると、マホルニアに向けて突撃してきた。マホルニアは咄嗟にレヴィアスクの片刃で受け、逸らすように弾く。

「なんだ、見境の無い奴だな!」
「生憎と娯楽に飢えているのだよ! 領民は片端から殺した! ありとあらゆる方法で! しかしそれは私を満足させる物ではなかったし、私を殺せる者もまた現れなかった!」

 煌めきながら迫る剣の切先を、諸刃の剣が受け流す度に火花が散る。即座に展開した強化外骨格の力を持ってしてもなお、受け流した後に反撃という所までは中々辿り着けない。男に殺された者たちの怨嗟の声自体が、彼に味方をしているために。

「だからどうかお嬢さん、私に殺されてくれ! あるいは私を殺してくれ!」
「殺される状況も好きとは、見境の無い上に悪食な趣味を持ってる奴だな!」

 マホルニアは仕切り直すために一度レヴィアスクを振り、大ぶりに男を剣ごと弾き飛ばして距離を取った。

「だがまあ確かに月並な言葉だが。殺したって事は、殺されてもしょうがないって事だ、な」
「殺せるのならばなあ!」

 灰色の剣が再び直線的に向かってくる。そしてマホルニアに触れようとする刹那――段違いなまでの速度の差で、レヴィアスクが男を両断した。

「な……殺された……か……はは……」
「これも一応、報いって奴なのかね?」

全ては男自身恩恵を受けていた怨嗟と、それによる男自身の攻撃が、これほどの差を招き寄せたのだった。マホルニアの持つユーベルコードによって。
 まだ何かしてこないか一瞥を崩れ落ちた男にくれた後、マホルニアは先を急ぐことにした。こんな所で立ち止まる理由は、ないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・ネクサス
「ちょうど各関節のモーターが暖まってきたところです」
・ヘンリエッタは身体の大半を機械化しており、ボディーの過熱は命取りになる。生身の人間がかろうじて活動できる程度の低温環境下ならば、むしろベストコンディションである
・ヴァリアブル・ウェポンを発動。左前腕が縦に割け、二枚の金属板がせり出すなり青白い閃光と共に鉛弾が、目前の冷血漢めがけてはじき出される
・攻撃回数重視。左腕のレールガンでちくちくと攻撃を加え、ダークネスクロークで「闇に紛れ」つつ敵の反撃を「受け流し」怒りを促す。注意力を奪い、次に続く味方の攻撃行動につなげる
「過度な感情の高ぶりは危険察知能力を損ないます。冷静になりましょう(挑発)」


アマネセル・エルドラート
「寒いわね。いくら日の光が無いからってここまで寒い物かしら。」
事前に聞いていたので動きを妨げない程度に厚着はしてきたが、それにしても寒い。
少なくとも何らかの異変が起きている事は間違いないだろう。

「オブリビオンね。…と、いきなり突っ込んできた。随分と好戦的ね。まあそう簡単にやられるつもりはないけれど。」
目の前に居るオブリビオンは寒さの直接的な原因ではないようだが、話し合う余地も無い以上は戦うしかない。
UC【アリスナイト・イマジネイション】で鎧を纏い剣での攻撃に備えつつ。
アリスランスによる【ランスチャージ】で突撃してきたオブリビオンを迎え撃つ事を狙う事にしよう。



「寒いわね。いくら日の光が無いからって、ここまで寒い物かしら」
「生身の体の方は大変でしょう。ボクとしてはとても丁度良い環境なのですが」
「そうなの?」
「はい、ちょうど各関節のモーターが暖まってきた所です」

 ヘンリエッタ・ネクサスとアマネセル・エルドラートは、お互いの差について会話を交わしながら荒野を進む。好奇心旺盛なアマネセルに、ヘンリエッタが巻き込まれた形ではあるのだが、おかげで何もない辺境を歩いていても、退屈せずに済んでいる。

「……随分と会話が弾んでいるね、美しいお嬢さん方」
「あら、あなたは……オブリビオンね」
「白も良い。赤も良い。が、私は思うのだ。君達には更に鮮血が似合うだろうと」

 しかし、彼女達は白衣の男に見つかってしまった。猟奇的で嗜虐的な白衣の伯爵に。

「どうか見せて欲しい、君達が鮮血に染まる様を!」
「……と! 随分と好戦的ね」

 灰色の剣による鋭い一突きを、アマネセルの咄嗟に創造した強固な鎧が受け流す。それを見たヘンリエッタはダークネスクロークを素早く身にまとった。見た限りこちらの二人の長所ははっきりしている。であるならば、彼女を援護する事が最善になる、そう冷静に判断している。

「援護射撃を開始します」

 機械的な言葉と共にヘンリエッタの左腕が変形し、レールガンによる速射を開始した。射撃しながらの移動もおさおさ怠り無い。まずは相手の注意を引きつける事。意図の通りに白衣の男は射撃こそそうそう喰らわないものの、ヘンリエッタに対応せざるを得ないが、しかし接近するにはまず射撃が邪魔で、射撃が途切れるとダークネスクロークのせいで位置が掴みづらい。

「中々猪口才な事をするじゃあないか!」
「過度な感情の高ぶりは危険察知能力を損ないます。冷静になりましょう」
「馬鹿な、これほどの逸材を前にして、冷静になどなれるものか! 殺さずになど居られるものか!」

 しかしその射撃と発言は、全てが味方のための物だ。案の定、基礎能力こそ高かった男の注意がわずかに逸れる。目の前に居る、ウサギの騎士から。
 おかげでアマネセルは、完璧にランスチャージのためのタイミングを掴む事が出来る。

「そこだーっ!」
「なんとっ……ぐ……!?」

 助走と共に繰り出される白銀の槍が、深々と男を刺し貫いた。最後の力を振り絞るようにして突き出された剣はしかし、アマネセルに届くことはない。
 アマネセルは槍を引き抜くと、想像の鎧を解除してから、同じくクロークを脱いだヘンリエッタに歩み寄った。この戦いで、また話すことが増えてしまったためだ。好奇心とは、何にも勝るのだ。

「お見事です」
「あなたも、良い陽動だったわ! その左手ってそんな風になっているのね?」
「はい、これもやはり気温のお陰で普段より連射機構の性能が――」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォルク・リア
「目指す場所が定まったのは良いけど。
楽な道ではなさそうだ。」
寒さには身に纏ったローブや
【氷結耐性】【オーラ防御】
フレイムテイルから発生させる炎で耐え。

敵に
「早速だが死んでもらう。
なに心配はいらない、君位の悪人なら
迷わず地獄に辿り着けるだろう。」

怨嗟の声を聞きながら
「これが今までに奪った命か。
ならその声の呪い、自分の身に受けると良い。」
表の呪い裏の呪詛を発動。
奪われた生命力を治癒。敵にはそれを肩代わりさせる事での
ダメージを与え。更に死の【呪詛】で追撃。
敵が【呪詛】に蝕まれている間に接近し
纏った冥府へと繋がる闇をぶつけて攻撃する。
「冥府がお前を呼んでいる。
その狂気と共に黄泉路へと旅立って貰う。」



 荒涼とした風景の中で、フォルク・リアは白衣の男と対峙していた。目の前の存在がオブリビオンである事は既にわかっていたし、彼が道中で見た物、その元凶であるという事も、確信を持って判断出来る。という事は、戦うより他にないという事だ。

「やあムッシュ。ここを通りたいと言うのならば、この私と――」
「君と話をするつもりはない」

 饒舌に語りかけてくる男の話をフォルクは遮る。彼には目指すべき場所という物があり、そのためには、こんな場所で立ち止まっている訳にはいかないのだった。当然、悪人と立ち話などしている暇もない。

「早速だが死んでもらう。何、心配は要らない。君くらいの悪人なら、迷わず地獄に辿り着けるだろう」
「ははは、ならばやって見せてくれ、この怨恨と憎悪の声の中で!」

 厭世の侯爵のユーベルコードが発動し、叫んでいるような、夥しい量の声が響き渡ると共に、フォルクの生命力を奪わんとする。

「これが、今までに奪った命か」

 しかし、フォルクは動じない。彼にはこの怨嗟に対抗するユーベルコードがある。

「――ならその声の呪い、自分の身に受けると良い」

 フォルクが詠唱を唱えると共に、闇の世界であるダークセイヴァーより更に深い所――冥府へと繋がる闇がフォルクの全身を包んでいく。それは怨嗟の声の力を奪い取るように、飲み込むように、呪詛によって白衣の男の全身を蝕んでいく。

「これは! 私の悪徳の……饗宴の全てがぁぁ!」

 白衣の男が悶え苦しむ。かつて彼が他人に与えていた物を受けている間に、フォルクは影の様に男に接近した。

「冥府がお前を呼んでいる。その狂気と共に黄泉路へと旅立って貰う」
「馬鹿、な……」

 フォルクがそう囁くのとどちらが早かったのか。男は自ら発生させた怨嗟と、フォルクの闇に飲まれて息絶え、倒れた。

「目指す場所が定まったのは良いけど……」

 戦闘で少しだけ乱れた装いをフォルクは整え直し、フードを深く被り直した。寒さ対策のための耐性も確認する。これから先、どれだけのオブリビオンと出会うのだろうか。そして、どれだけ寒さは厳しくなるのだろうか?

「……楽な道ではなさそうだ」

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・イオア
命は、娯楽の道具じゃないよ。

「全てを癒せ、シホの光!」
怨嗟の声に寄り添い【慰め】【祈り】、【浄化】の力で癒しましょう。
死者の声が力となるならシホはそれを癒し解放するよ!

ボスへの直接攻撃には【神罰】や【精神攻撃】などをのせて
ダメージアップを狙う。
殺戮の快楽も、興奮も、全部癒して浄化してあげる。
悪徳を全部否定してみせるよ。

敵の攻撃は残像と空中戦とダンスを駆使して回避。
重量差で受けるのは危険だしね。

アドリブ連携歓迎。
動きに支障がない程度に着込んでいきます。



「じゃあ、この場所に人が居ないのは……」
「そう、私が全て殺してしまったからさ、小さいお嬢さん」

 眼前の白衣の男は言っているそれが誇らしい事のように、饒舌に語る。シホ・イオアはそれがどうしても許せない。

「そんな! 命は、娯楽の道具じゃないよ!」
「娯楽だとも! 全ては強者のための娯楽であり、そしてそれはまた、君もそうだ。私の領地に入ってきたからには、覚悟をして貰わなければね。我が悪徳の栄えによって!」

 そう言うと、男は問答無用でユーベルコードを発動する。男に惨たらしく殺された領民たちの声がこだましていくのを、シホは実際に目の当たりにする。しかし、怯むような事は無い。何故なら彼女は、聖者だからである。

「すごい量の、怨嗟……でも! 全てを癒せ、シホの光!」

 シホから溢れ出る光とオーラが怨嗟の声と激突する。そして触れた声は片端から宥められ、鎮められ、解放させられていく。シホの浄化の力がそれを可能にしているのだった。数が多すぎ、全てを一度にとはいかない。それでも、男を動揺させるには十分な力だった。今までそれは男の所有物であり、兼おもちゃだった筈のものなのだ。

「私の成果が、消えてなくなっていく……いかん! それはいかん!」
「あなただって、全て浄化してあげるんだから!」
「それを許す訳にはいかないと言うのだ!」

 灰色の剣と共に男自身が突撃するが、シホには届かない。高速の突きは全て残像に当たるか、ひらりと空中でかわされるのみだ。熟練のフェアリーを捉えようと言うのはそれだけ難しい。そして近づいた分だけシホのオーラが、男にさえも作用する。

「悦楽が消える……否、消させるものか……我が喜びを!」

 怨嗟の声が消えていく中、遥かに弱々しくなった男の攻撃が、なおもシホに迫る。シホはそれをすれすれで避けると、すれ違いざまに自らの剣を一度だけ振るった。それだけで十分だった。二人の属性はあまりにも対極にあり、一回の攻撃が致命傷となってしまう。

「悪、徳……」
「……結局、あなたにはそれしか無かったんだね」

 きっとそれ以外の喜びを知らず、浄化されれば何もかも無くなると悟っていたのだろう。シホは男にすら若干の哀れみを抱くと、周囲の声に耳を傾けた。怨嗟の声は全て消えていて、いつものダークセイヴァーの風景が広がっている。それでも歩みを再開する前に、シホは何となく、か細い声を聞いた気がした。だから、こう答える事にする。

「……どういたしまして!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『凍える夜』

POW   :    強行突破…気合と共に歩む

SPD   :    一刻も早く抜ける為に脇目も振らずに走り抜ける

WIZ   :    魔法で暖や光などを取りながら進む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 寒さという物が極限まで進んでしまった場合、どうなるのか?

 痛みを覚えるのである。この場所の気温はまさにそんな風だった。0度などという優しい物ではない、極地を思わせる極寒の荒野がここまで進んできた猟兵達の前に広がっていた。

 雪が積もっている訳ではない、風が吹いている訳でも無いのに、立ったまま凍りついてしまいそうな程この地は寒く、また実際に凍ったまま倒れている者が道中に散見される。きっと、ここの元領民達なのだろう。しかしこの状況ではもはや人間はおろか生物はろくに住めそうに無い。陽光の暖かみすら、この世界には届かない。上空には星空が瞬いている。

 しかし、それでも、猟兵達は先に進まねばならないのだ。『常闇の燎原』はまだ遥か先だからである。

(この章のプレイングボーナスは寒さ対策になります)
(逆に寒さ対策以外の要素がほぼ無いため、この章では積極的なアドリブ・連携を多用します。苦手な場合は記載をお願いします)
マホルニア・ストブルフ
◇アドリブ連携OK
進めば進むだけ、更に冷えてくるな。

雪国の足の縺れるような積雪がないのは幸いとはいえ、このままでは道に転がる領民たちと添い寝をすることになるだろう。

レヴィアスク、お前は寒くな――、寒いんだな。

コンソール画面の欠片のようなノイズの走る体を持った相棒に声をかけてみると、見ているこっちが悲しくなるレベルで震えているのがわかって――もう。
仕方がない。まだオブリビオンが居るかもしれない中で体力を削っている訳にもいかないし。
相棒をコートに潜ませて摩りながら、UCを展開するよ。
他の猟兵が居れば彼らにも広げようか。


アマネセル・エルドラート
「さっき以上に冷え込んでるわね。まさに刺すような寒さって感じ。」
先ほどオブリビオンと戦った時以上の寒さ、普段以上に着込んでいるとは言え、これほどまでの寒さは流石に堪える。

「こうも寒いとなると熱源が欲しいところね。普段からこの寒さって訳じゃないみたいだし、燃料になる木くらいはまだ生えてるはず。」
雪が降って居ないのであれば木も湿っては居ないだろう、手頃に持てそうな木の棒を探してUC【ウィザード・ミサイル】で火を付ける。
攻撃に使う訳ではないので威力はあくまで棒に火が付く程度に加減をして。
火傷や火事に気を付ける必要はあるが、燃えている間は熱源になってくれるだろう。


シホ・イオア
寒さ対策かー。
とりあえず火かな?

「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
周囲を囲むようににして中を温めるか、
収束させて強力な熱源とするか状況に応じて対応。
動かせるから移動も問題ないしね。
心が寒い?
シホがくっついて光で癒してあげるよ♪

領民たち、亡くなっているんだよね?
無事だったらフェアリーランドに避難させてあげるんだけど。
せめて、弔ってあげたいけどね……。

アドリブ連携歓迎。


フォルク・リア
フレイムテイルの炎で暖をとり、
フードを押さえて寒気を防ぎながら。
「如何に日の射さないダークセイヴァーとはいえ。
これ程の寒さはそうあるものじゃない。
それに雪もない荒涼とした大地。
凍り付く物すらない荒地という事か。」
「何にしろ速く抜けるに越した事はないが。」
としばし思案した後。
真羅天掌を発動、炎熱属性の雪崩を発生。
その熱気で自分の周囲の気温を集中的に上昇させつつ
龍翼の翔靴で大地を蹴り炎熱の雪の勢いに乗って
荒野を駆け抜ける。

凍り倒れた人を見つけると
「……あれは、流石に息はないか。
この環境ではかなり前の遺体でも状態はほぼそのままなのだろう。
墓もないのは可哀想だけど。せめて冥福を。」
と手を合わせつつ。



 ダークセイヴァーの辺境というのは比較的広大な領域である。もちろん猟兵なら最悪気長に歩いて探索する事は十分に可能だし、だからこそグリモア猟兵もそういった配慮はせずに猟兵達を送り出した。別に一度グリモアベースに戻って、態勢を整え直したって構わないのだから。
 しかし、その環境が極度に過酷であれば、それはまた別の問題となってくる。



「如何に日の射さないダークセイヴァーとはいえ。これ程の寒さはそうあるものじゃない。一体何が原因か……」

 フォルク・リアは、自ら起こした炎に当たりつつ、荒野を進んでいた。元々重装備でもあり、活動には今の所支障は出ていないものの、それでも全く寒さを感じない訳には行かない。
 
「何にしろ、早く抜けるに越した事はないか」

 そう言ってから思案の末に、フォルクは一計を案じる事にした。周囲は一面荒野であり、雪すら降っていない殺風景な荒地だ。ならば、移動するのは何も単なる徒歩である必要は無い。
 ユーベルコード、真羅天掌による雪崩、より正確に言えば平地を滑る様に進む雪の流れをフォルクは作り出した。ただし属性だけは反転させ、炎の属性を付与し、寒気への対策とする。微調整が難しく制御に気を使う術ではあるが、そのまま徒歩で移動するよりは遥かにマシな筈だ。龍翼の翔靴は熱に負ける事も無く、雪の勢いに乗って滑るように、フォルクは荒野を駆け抜けていく。
 そして、幾つかの出会いをした。



「進めば進むだけ、更に冷えてくるな。レヴィアスク、お前は寒くな――寒いんだな」

 マホルニア・ストブルフは着込んで来た成果もあって、極寒の中で未だに元気を保っていたものの、その愛竜、レヴィアスクは違うようだった。マホルニアになるべく体を寄せてくるので、コートの中に入れてやる。それでも、この小竜がこの寒さを超えられるのかどうか、彼女には確証は持てなかった。しかし、目指すべき常闇の燎原は未だ見つからない。

「……こんな所で体力を削っていても仕方がないし、ここは――」

 荒野を疾走する雪崩をマホルニアが目撃したのは、彼女がユーベルコードを発動しようとするまさにその時だった。



「悪いね、乗せてもらっちゃってさ」
「いや、同じ目的があって協力し合えるのなら、それに越したことは無いだろう」

 道中で出会った二人は短時間のテストの後に、力を合わせる術を生み出した。それはマホルニアとフォルク、二人のユーベルコードの合わせ技によって生み出された乗り物だった。フォルクは敢えて乗れる程度に落としている細かい雪崩の制御を捨て、巨大な炎熱の奔流を生み出す。その上にマホルニアのユーベルコードを展開し、下からの灼熱も外からの冷気も攻撃として遮断する。そして全てを遮断する青い輝きは、雪崩に乗って駆けるよりも早く荒野を滑り続ける。二人はその中に居た。

「これなら、この寒冷地帯もすぐ抜けられるだろう」
「ああ、助かるよ。この子も限界だった所だ」

 そう言われてフォルクは前方から、マホルニアにちらりと視線を移した。マホルニアはコートの下で震えているレヴィアスクを抱きしめてやっている所だった。彼女のユーベルコードは現在全てを遮断しているため、内部は平常な気温と言った所で、既に凍えてしまっている者には、少し物足りない。そしてフォルクは、真羅天掌の扱いに力を注がねばならない。

「……小竜、か。既に大分衰弱しているね。生憎だが、俺の力でここから更に暖を取るのは難しい」
「そこまで厄介にはなれないさ。もう寒くは無いし、擦ってやっていれば少しは良くなるだろう。それぐらいしか――」

 しかし、出会いはそれだけでは無かったのだ。出会いは合計で三度あった。



 アマネセル・エルドラ―トは旅慣れていて、更に強まっていく寒気にも動揺する事は無かったが、これ以上対策をしないのは憚られる程に、周囲の温度は下がりつつあった。着込んでいても、これ以上は少し厳しいと感じる。

「まさに刺すような寒さって感じ。こうも寒いとなると熱源が欲しいところね」

 慣れていれば考えてから行動に移すまでの時間も早い。手早く周囲から適当な木の枝を物色すると、ウィザード・ミサイルで火を付ける。扱いにさえ気をつければ、即席の松明にはなるだろう。

「これで、とりあえずは凌げるかしら? 後は急いでこの場所を抜けて――」

 急ぐ方法はすぐに見つかった。誰も予期せぬ事だったが、彼女は雪崩に乗る船の進路上に居たのだった。



「それは大変だったわね、これで少しは温まれる?」
「そりゃ渡りに船って奴だよ! 良かったね、レヴィアスク」
「あなたはレヴィアスクって言うのね? よろしく!」

 アマネセルの作成した松明は荒野を渡るのに必須ではなくなったが、別の意味で役に立った。マホルニアのユーベルコードの更に内側に熱源を持ち込む事に成功したのである。外部の全てを遮断するユーベルコードの輝きは、内部からの刺激には反応しない。アマネセルが松明を差し出すと、マホルニアは早速レヴィアスクを抱きかかえて火に当たらせてやる。例え短期間でも火に当たれるか当たれないかは、回復の度合いを大きく左右するだろう。
 直近の問題が解決すると、アマネセルの生来の好奇心が顔を出して、一行の旅路は更に賑やかになった。元々マホルニアもフォルクも別に無口という訳でも無いし、出身、種族、職業、全てが違う彼らには話せる事がいくらでもあった。先へは素早く移動でき、寒さも消え、何ならその場に居る誰もが、この道行きを少し快適だと感じ始めていた。

「貴方達は何か、面白い物を見たりした事はない?」
「かなり漠然とした問いだな、珍しい物って意味ならそりゃ多少はあるけども……」
「……また何か居るね。誰か倒れているのと――小さい、何だ?」

 最後の出会いを最初に見つけたのはフォルクだった。彼は真羅天掌によって実質的にこの一行の行き先を操作するために、前を見ていなければならない。そのためだった。

 その出会いはその場の空気に少し水を差す事になる。勿論、悪いのは出会いではない。



 シホ・イオアがこの辺りで立ち止まって、もとい飛んでいたのは環境のせいではなかった。寒さは自らの輝石が発する炎によって克服出来ている。元々ここは雪も降っていない荒野で、進む事には何の支障も無い。しかしそこには、聖者として見過ごせない物があった――倒れている領民である。息はもう無かった。明らかに凍死している。この辺りは元々この地で数少ない村であったのか、遠くには他にもちらほらと掘っ立て小屋のような粗末な家があった。当然、生存者は居ない。凍死した者はきっと、碌な外套も無い中でこの地からの脱出を試みたに違いなかった。
 聖者であっても死者は救えない。それでもシホは生存者が居ればと、死んでいるならせめてその安寧をと、願わずには居られなかったのだった。

「……そうなんだ、それでここに居たのね」
「誰か一人でも、生きている人がいればって思ったんだけど……」
「死んだばかりのように見えはするが、この環境ではかなり前の遺体でも状態はほぼそのままなのだろう」
「つまり冷凍保存されてるって? 笑えないな……」
「確かに笑えない。墓もないのは可哀想だけど、せめて冥福を祈ろう。だが、これでわかったこともあるね」

 フォルクが情報を要約した。ここはダークセイヴァーの辺境の果てであり、確かに賑やかとは言えない状態だったが、村の跡があった。つまりこの極寒の地は、陽光が届かないからとか、常闇の燎原に近いからとか、そういった理由で最初からこうなっているのではない。かつては人が住めた筈なのだから。
 誰かが意図的にこうしたのだった。きっと領民の事など気にもかけずに。
 そうするような存在を、彼らは一つしか知らない。ヴァンパイア――つまりは、オブリビオンだ。
 冷静さと程度に差はあれど皆一様に、同じ感情を抱いていた。

「……もし、本当にそうなんだとしたら――許せないよ!」

 シホが、確かに分かる怒りと共に感情を吐き出した。

「そうだな。そんなオブリビオンを見つけたのなら、こいつを撃ち込んでやるとしよう」

 マホルニアはちらりと携行するアサルトライフルに目を向けて、隠れた凶暴性を覗かせる。

「どっち道オブリビオンなら、戦うしか無いものね」

 アマネセルはマイペースなようだが、それは意気込みが無いという事ではありえない。

「……もう暫く一緒に進んだら、また別れて探索をする事にしようか。全員寒さ自体は対策出来るようだし、その方が効率が良いだろう。もしそれが俺達以外でも、誰か猟兵が戦っていると感じたら、その方向に進めば良い」

 最後のフォルクの言葉に皆が頷いた。常闇の燎原を探し出す前に、猟兵達には目的が出来た。
 この極寒の地の主を、仕留めるという目的が。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公』

POW   :    魔導書(物理)―オンスロート・エッジ―
【苛立ちに任せて振り回した分厚い魔導書の角】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    自著魔典―エレメンタル・スプレッド―
レベル×1体の、【様々な色の表紙をしたギリシャ文字で背表紙】に1と刻印された戦闘用【の表紙の色に応じた属性魔法弾を放つ魔導書】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―
戦闘用の、自身と同じ強さの【重厚な鎧と楯、鋭い槍を携えた重戦士の霊達】と【後方で魔法で砲撃と回復を行う魔術師の霊達】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はモリオン・ヴァレーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
エダ・サルファー(サポート)
アックス&ウィザーズ出身の聖職者で冒険者です。
義侠心が強く直情的な傾向があります。
一方で、冒険者としての経験から割り切るのも切り替えるのも早いです。
自分の思想や信条、信仰を押し付けることはしません。
他人のそれも基本的に否定はしません。
聖職者っぽいことはたまにします。
難しいことを考えるのが苦手で、大抵のことは力と祈りで解決できると言って憚りません。
とはいえ、必要とあらば多少は頭を使う努力をします。
戦闘スタイルは格闘で、ユーベルコードは状況とノリで指定のものをどれでも使います。
ただ、ここぞでは必殺聖拳突きを使うことが多いです。

以上を基本の傾向として、状況に応じて適当に動かしていただければ幸いです。



 息も凍るような極寒の中、そのヴァンパイアは不気味な意匠の揺り椅子に坐したまま優雅に宙を漂っていた。
「お前か。ここらを掌握していたボスっていうのは」
 エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)の問いに、女吸血鬼はしばしの間をおいて膝の上の書物から顔を上げ、うっすらと微笑む。
「全く……ネズミのくせにしぶといわよ。私、見ての通り忙しいのだけど?」
「その様子じゃ、自分のやってきた事に何も感じてはいないみたいだな」
 ヴァンパイアは答えない。ただ再びページの上に指を滑らせる仕草は、魔術の詠唱と言うよりは、どう見ても『趣味の読書の再開』に見えた。そして、それが答えだった。
 ああそうかよ、と歯噛みし、エダは低く構えた拳を固める。女公を名乗りながら享楽のみに耽り、領民を『読書』の余波に巻き込んでも平然としている――ああ、なんて度し難い。
 凍り付いた大地を砕くように蹴り、たちまち肉薄してくるエダを、女公は椅子の上からちらと見下ろした。閉じた本を掴む指の隙間から、薄いドレスの中から、青い瞳から、たちまち黒い炎が噴き出して。
「お願いだから、邪魔をしないでくれる?」
「ハ、聞けないねえ……!」
 振り下ろされた本の角を横跳びにかわし、エダは下段からの鋭い蹴りを放つ。それが捉えたのはヴァンパイアの本体ではなく、魔力で揺らぎ浮かぶ椅子の脚。大きく傾き、その上に坐すヴァンパイアもまた振り落とされたところで、エダは僅か一瞬祈るように瞼を伏せ、そして。
「お前みたいな手合いに好きにさせて、ろくなことになる訳ないだろ!」
 組みついて極めた吸血鬼の腕が、そこでごきりと嫌な音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

茜・皐月(サポート)
 多重人格者のウィザード×アーチャー、21歳の女です。
 口調は「精神年齢10歳程の少女(ボク、キミ、なの、よ、なのね、なのよね?)」、「精神年齢20代の娘(私、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。
 少女と娘はよく会話をします。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

ただし、極稀に出てくる残虐な幼女人格(5歳くらい)に限り過激な行動を取る場合があります。狂気過多シナリオ時推奨

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「ぐっ……!」
 呻き、あからさまに機嫌を損ねた様子で揺り椅子を立て直したヴァンパイアの真横で、空間がゆらりと滲んだ。渦を巻くようにして高まる魔力の中から現れたのは、重厚な装備に身を包む戦士団と、奇妙に捻じ曲がった杖を携える魔術師達。ヴァンパイアの呼び出した霊の群れが一斉にこちらに視線を向けてくるのを前にして、茜・皐月(多重人格者のウィザード・f05517)は両の手で愛用の得物を握り締めた。
「何の罪もない人々をあんな目に遭わせるなんて……あんまりなの!」
『逸らないで。あのヴァンパイアの魔力、感じていないわけじゃないでしょ』
 己だけに語りかけてきた娘――もうひとりの『自分』の言葉に、皐月はこくりと浅く頷く。やる気の欠片もない態度ではあるが、敵の手にする書物はどこからどう見ても強力な魔導書だ。加えてあれだけの霊の軍勢をひと呼吸で呼び出す手腕からも、彼女の強さは見て取れる。
「でも、引くわけにはいかないの……!」
 かざした杖先に、あかあかと炎が燈る。撃ち出した魔法の矢の数は、ゆうに五百をくだらない。冷気を裂いて流星雨の如く駆けるそれは、主の傷を癒さんとする者、不思議な『少女』に向けて魔法の砲弾を放たんとする者、主を守らんと立ちはだかる者、あらゆる霊を次々に焼き清めて、そして。
「……そこっ、隙あり! なの!」
 一条の焔が消えゆく霊の隙間を貫き、ヴァンパイアの肩を薄く焼く。決して深手という訳ではない。だがそれは、召喚術の維持を阻むのに十分な傷だった。残る霊たちまでもがたちまち霧消する様に、女公は苛立たしげに肘掛けを叩いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦

称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。

複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!



「見るに堪えんな。領民を顧みず、ただ己の欲望のみに走るその姿」
 紫水晶を思わせる美しい瞳を軽蔑の色に染め、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は吐き捨てる。いかに優美な女性の姿を象ろうとも、このオブリビオンの在り方はどこまでも醜悪で、そして許しがたい。
(「確か……あの黒い炎、あらゆる防護を吸収すると言ったな」)
 攻撃を受けるたびに敵の回復を許してしまうのであれば、敢えてこちらが傷を負いに行くのはリスクが高い。そも今回は、もはや守るべき一般人もいない地での戦いだ。奴の攻撃をわざわざこの身で受けてやる理由など、どこにもない。そう判じて、シェーラはホルダーから引き抜いた精霊銃を宙へと投げた。
「私を批評しようというの? 随分な思い上がりではないかしら」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
 魔導書から直接魔力を流し込もうというのか、或いは単なる重量攻撃なのか、ヴァンパイアは椅子を駆りつつシェーラに向けて書物を振りかぶる。対するシェーラは軽やかに飛び退り、或いは翔け来る椅子の横合いを抜け、巧みに敵の間合いを脱出しながら、宙に放ったいくつもの精霊銃を掴んでは撃ち、撃ってはまた宙へと手放して、ヴァンパイアの生命と魔力を削り取っていく。その様は死の冷気に満ちた戦場でありながら、どこまでも鮮やかな舞踏すらも連想させた。
 鋭く白い息を吐き、手の中でいくつ目かの銃をくるりと回して、シェーラはじっとヴァンパイアを睨む。――恐らく、これであと半分ほど。

成功 🔵​🔵​🔴​

姫神・咲夜(サポート)
 桜の精の死霊術士×悪魔召喚士、女性です。
 普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 片思いの人には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

清楚で女流階級風の口調で、お淑やかな性格です。
基本的に平和的な解決を望みますが
戦わざるを得ない時は果敢に戦いに向かう勇敢さを持っています。

 あとはおまかせです。よろしくおねがいします!



「戦うしかないのですね。ここで散っていった命の為にも、この世界を解き明かす為にも」
 呟く姫神・咲夜(静桜・f24808)の口元に浮かぶ笑みは、平素のそれより少しだけ悲しげに見えた。避けようのない戦いの為か、或いは死した人々を想ってのことかは、彼女自身にしか分からない。そして勿論、目の前のヴァンパイアがそれを慮ることもない。
 それが分かっているからこそ、咲夜もそれ以上の嘆きは見せなかった。冷気も悪意も払い捨てんとばかりに手にした魔杖を一度振るって、彼女は凛と女公に相対する。その杖の先端で、溢れ出した桜の花弁が待ち侘びたように渦を巻いた。
「さぁ、華麗に舞いなさい。そして敵を捕らえてしまいなさい」
 杖先を敵へと向ければ、たちまち無数の花弁が舞い、光を帯びた枝が伸び、逞しい根が大地を割り、吸血鬼を捕らえんとそれぞれに躍る。
「ッ……!」
 対する女公は咄嗟に魔導書の群れを呼び、或いは冷気を、或いは炎を帯びた魔法弾でそれらを撃ち落とそうとするけれど、咲夜とてそこで手を緩めるわけもない。
 膨れ上がった魔力に呼応して再び吹き荒れた桜の嵐が、そうして魔導書ごとヴァンパイアを深く呑み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。


風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可

約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。

戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。



「……『怠惰なる魔典の虫』、か」
 ヴァンパイアの二つ名を呼ぶ風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)の帽子の下で、紅玉の瞳が鋭く輝いていた。刺すようなその視線を受けてなお、ヴァンパイアの態度は変わらない。億劫そうに書物の背を指先で弾いて、女公は僅かに片目を細めた。
「そんな風に呼ばれたこともあったかしらね」
 それを誇るでもなく、厭うでもなく、ただ事実を事実とのみ述べて、ヴァンパイアは魔導書をひと撫でする。たちまち、先に召喚されたそれとまるで同じ姿をした霊の群れが彼女の周りに陣を張り、一斉に顕吉を睨みつける。ほう、と僅かに口の端を上げて、男は愛刀を引き抜いた。
「その首、今狩りに行くとしよう」
 駆け出す彼に合わせるように、戦士が、魔術師が、それぞれに動き出す。一糸乱れぬ動きで放たれる槍襖を飛び越え、降り注ぐ魔法弾の雨を地に転がってかわし、波の如く押し寄せる霊へと向けて刀を振るえば、淡く燈った破魔の光が実体を持たない敵を確かに斬り伏せる。
 多対一の状況ながらに奮闘を繰り広げる顕吉にちらと視線を向けた後、アス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)は密かに動き始めた。奇妙な形状の茂みの影に潜みつつ、気配を殺して少しずつ少しずつアスは『その位置』を探す。浮遊し、多少なり動き回る敵の急所を狙い撃つには、まだ位置とタイミングが揃わない。
(「……気付いてくれるなよ」)
 そう心中で先に呟いたのは、どちらだったか。霊の一体にでもアスに気付く者がいたなら、それはたちまち彼らの主たるヴァンパイアにも知れてしまうだろう。そうなれば、もはやこの技は通じない。だからこそ、二人はどこまでもそれぞれに独りで己の務めを果たす。片や無双の剣技を操るヴァンパイアハンターとして、片や異境の武装と技術を扱いこなす騎士として。
 ふ、と短く息を吐いた顕吉が、手にした剣を閃かせる。鎧の隙間を縫うように割かれて霧消する霊を見送る間もなく振り返り、もう一閃。あくまで霊だけを彼が相手取っているのだということにヴァンパイアが気付いた時には、既にアスは『そこ』にいた。
「悪いが、狙った獲物は逃がさない。……そう決めているからな」
 聞き取られることのないよう唇のおもてだけで呟いて、そうしてアスはトリガーを引く。瞬間、ヴァンパイアの纏う黒い炎が断末魔のように燃え上がり――そうして心臓を撃ち抜かれた女公は、塵となって崩れ消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年04月20日


挿絵イラスト