5
銀河帝国攻略戦⑬~だって、ここで終われないから

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦争
🔒
#銀河帝国攻略戦


0




●理由なき者は
「皆、なかなかに苦しい戦いをしているみたいだけど、折角解放軍優勢なんだもの、まだまだ頑張れるよね」
 アニムス・ルードゥス(月飼い・f13301)は杖を掲げて猟兵たちに語り掛ける。
「僕から君たちにお願いしたいのは『実験戦艦ガルベリオン』の捜索……ではなく、その邪魔をしているジャミング装置の発見と破壊だよ」
 オロチが派遣した艦の残骸周辺に、『実験戦艦ガルベリオン』を秘匿する『ジャミング装置』がある事が存在する事が判明した。
 宙域内に多数設置された『ジャミング装置』を破壊する事で、『実験戦艦ガルベリオン』を発見する事が可能となるという。

「この『ジャミング装置』の防衛機能は大変厄介でね。君たち、トラウマってあるかい? いや、こたえなくてもいいよ。きっとあると答える人にもないと答える人にもこの装置は発動して君たちにそれを見せるんだろうからさ」
 アニムスは笑う。トラウマ、人の過去、現在、あるいは未来への恐怖や苦しみや憎しみの感情を強く焼き付ける負の感情の根源である明確な、あるいは漠然とした物や者や現象。
「それが、防衛機能が君たちに見せる現象だよ。君たちはそれを回避することはできない、でも、そんな精神攻撃を受けたからってそのまんま落ちていくわけにはいかないだろう? 君たちにだってそれを超えてでもやっていきたいこと、今こうしている理由があるはずだ」
 アニムスは君たちなら大丈夫だよね? と試すように笑う。それは挑戦なのか、それとも願いなのか。
「……だから、君たちに行ってほしいんだ。弱くて乗り越えられそうもない僕の代わりに、僕の力で君たちを送り必ず帰るのを待つから、どうか、装置の起こすトラウマ現象を乗り越え、装置を破壊してきてほしい」
 アニムスは意味深な態度からふっと真面目な表情に変わると、猟兵たちにまっすぐに願うのであった。そして、月と星の杖を振るい、星が輝きクルクル回りだすと、足元に魔法人が描かれ、転移の力が働き始めた。


ピンク☆フラッシュ
●この戦争シナリオについて
 このシナリオでは、ドクター・オロチの精神攻撃を乗り越えて、ジャミング装置を破壊します。
 ⑪を制圧する前に、充分な数のジャミング装置を破壊できなかった場合、この戦争で『⑬⑱⑲㉒㉖』を制圧する事が不可能になります。
 プレイングでは『克服すべき過去』を説明した上で、それをどのように乗り越えるかを明記してください。
『克服すべき過去』の内容が、ドクター・オロチの精神攻撃に相応しい詳細で悪辣な内容である程、採用されやすくなります。
 勿論、乗り越える事が出来なければ失敗判定になるので、バランス良く配分してください。

 このシナリオには連携要素は無く、個別のリプレイとして返却されます(1人につき、ジャミング装置を1つ破壊できます)。
 『克服すべき過去』が共通する(兄弟姉妹恋人その他)場合に関しては、プレイング次第で、同時解決も可能かもしれません。

●戦争シナリオですね!
 やっはろー! ピンク☆フラッシュでーす!
 初めてのシリアスです。ピンクフラッシュが重視したいのは皆さんの戦っていく理由になります。もちろん、過去のトラウマをしっかり描写していくうえで、何をもってそれを乗り越えていこうと思うのか、というところですね!
 こちらを皆さんにプレイングで書いていただけたらなと思います!
 そしたらピンク☆フラッシュは頑張ってそれを深めていきたいと思います。
 時数が余ったらキャラをつかみやすくできる心情や感情情報で埋めてくださると幸いです。
180




第1章 冒険 『ジャミング装置を破壊せよ』

POW   :    強い意志で、精神攻撃に耐えきって、ジャミング装置を破壊する

SPD   :    精神攻撃から逃げきって脱出、ジャミング装置を破壊する

WIZ   :    精神攻撃に対する解決策を思いつき、ジャミング装置を破壊する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エミリィ・ジゼル
トラウマ…そう、あれは忘れもしない、わたくしがまだ10歳ぐらいのか弱き少女メイドだった頃のことです。
愛鳥であるダチョウ三号を乗り回していたわたくしは、落馬ならぬ落鳥し、そしてそのまま三号に腹部を思い切り蹴り飛ばされたのです。

今でもたまに夢に見ます。
落下の衝撃、ぽんぽんに走る痛み、回転する景色。

今こそあの時の雪辱を果たす時。
見事三号を打ち倒し、華麗に乗りこなしてみせましょう。

というわけで襲いかかる三号の攻撃を回避しながら華麗に《メイド式殺人光線の術》でフルボッコにし、催眠術で言うことを聞かせて、その背中に乗ってやります。
一流のサメ使いだけではなく、ダチョウ使いであることも知らしめてやりましょう



●サメと落鳥と回し
「あ、あなたは……三号!」
 エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は目の前に現れたトラウマと相対していた。
 そう、それは忘れられない青い思い出のトラウマ……。

 エミリィが10歳程度の幼くてかわいらしいただのメイドであった時のことであった。
「さんごー! ハイヨーーーー!!!」
 あの頃の私は、大変無邪気で恐れるものなんて知りませんでした。三号とはかつて私が愛したダチョウのお名前です。
「ねー! 見てくださーい! もうわたくし、三号を完璧に乗りこなしてますー!」
 幼かったわたくしはその姿を誰かに見せようとはしゃいでいて、そして、油断していたのです。前方不注意というやつです。ええ、不覚です。

「きゃああああああ!」
 誰かに向かって手を振りはしゃぐ幼い私を振り落とすように暴れる三号、ええ、気づきませんでした。まさかあんな陸上に、サメがいるなんて!
 ……幼いエミリィと三号の行く手を阻む一頭のサメ。記憶の曖昧な部分を大好きなサメで埋めてしまったのであろう。とにかく幼いエミリィは何かに行く手を阻まれていることに気付けず、三号を制御できなくなっていた。そして……。
「ぐえっ!」
 メイドにあるまじきはしたない一声。しかしそれも無理はない。このダチョウ、主を落としたばかりか綺麗な回し蹴りを腹部に受けてしまったのだ。いや、エミリィが落鳥した拍子に振り返って逃げようとした足がそのように当たったのかもしれないが、これがプロレスなら白熱した実況が繰り広げられていたであろう綺麗な回し蹴りが幼女エミリィの腹に決まったのだ。それは確かであった。更にそのまま勢いよく地面に叩きつけられ、世界の景色も回った。
「ぐっふぅ……」
 ちーん! という効果音と共に魂が出ているようなコミカルな表情ではあるが、幼女エミリィはたまらず気絶していた。そしてそのPONPONPONのペインは今もエミリィにアタック! 忘れえぬ痛みの記憶としてエミリィに見事トラウマを植え付けるのであった。

「あの時の雪辱、三号、今の私はさらに華麗にあなたを乗りこなし、その後ろの装置を壊します!」
 エミリィは回想を終えてダチョウを見据える。戦闘開始だ。
 聞く人によってはコミカルでばからしいトラウマかもしれないが、そんなの、落鳥してないから笑えるのです。
 エミリィは三号にくいくいと手招きして誘い込む。
「クエーッ」
 三号はそれを合図に襲い掛かる。急接近しエミリィに突っ込んでいく。そして、エミリィと三号が足と足を交差させられるほどに近づき、格闘戦が始まるかと思われたその時だった。
「くらえ!メイドビーム!」
 ビビビビビビビ! エミリィの目から【メイド式殺人光線の術(メイドビームノジュツ)】が放たれた。
「ク、クエエエエエエッ! クエッ! クォッ!」
 メイドビーム! メイドビーム! メイドビーム! 絶え間なくぶち込まれるメイドビームの嵐。ただのダチョウのトラウマ三号はなすすべもなくぼっこぼこにされる、lしかしこんなものでは許さない、こんなものではトラウマなんて乗り越えられない、乗り越えられないなら、乗って超えろ! エミリィが三号に飛び乗る。しかし、そのエミリィの姿はもうメイドではなかった。
「私が一流のサメ使いだけではなく、ダチョウ使いであることも知らしめてやりましょう!」
 トラウマを超えたエミリィに防衛機能のキャパシティがオーバーしたのか、エミリィはサメ着ぐるみの姿に変わっていた。それは決して早着替えしたわけではない、トラウマを乗り越える彼女の思いが防衛機能に起こしたバグだ。彼女はねじ伏せたのだ、トラウマごと三号を!
「ハイヨーーーー!!!」
 エミリィは駆ける、ダチョウに乗って、自分の目の前のジャミング装置に向かって。そして、その装置も、ダチョウに騎乗しながら打ち出された【メイド式殺人光線の術】によって、見事木端みじんに砕け散った。

成功 🔵​🔵​🔴​

宮落・ライア
それは痛みの記憶。身体を切り裂かれ、弄られ、薬に侵される記憶。自分の足が他の何かで代替される。自分の腕が自分のものでなくなる。痛くて痛くて痛くて…
そして最後に屍の泥の中で溶けていった記憶。
一度死んだ記憶。


ああ…煩わしい。煩い。
私は託されたんだから。
どれだけの命と期待を背負ってると思ってるんだ。
止まるわけにはいけないんだ。
こんなことで足を止めるなんて許されていないんだから。

ジャミング装置の力を【野生の感】で察知し苛々に任せて力任せに破壊。



●IT iNHeRiTeD THe PaiN
 それはどこから来るのだろう。体、あるいは血潮。それとも臓器。魂なのか。いや、そのどこからでもあり、どこからでもない。
「非検体の様子はどうだ」
「うん、成功しているよ。とっても良好。まさに科学と叡智の結晶だね」
 ああ、意識がはっきりしない。このまま手放してしまいたいのに……。
 宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)は防衛機能が見せるいつかの記憶に囚われていた。ベッドに縛り付けられる自分と、笑いながら自分の体を弄ぶ大人たちの様子が頭に流れてくる。
「そうか、それは最高に楽しいね。今度はこれ、くっつけてみようよ」
「お、いいね。この死体の足は使えそうだ」
 ああ、なんて耳障りな声なんだろう。これは本当に私が過去に聞いた声なのか、それとも、捏造か? まったく、こまったことに、意識があった記憶はあるのに、この光景の真偽も見定められない。いや、信じたくないのか? それとも、逆にこんなにひどい光景であったのだと信じたいのか。選ばれ、繋がれ、託され、私の体を引き裂いて切り裂いて抉り取って捥ぎ剥いでつながれた誰かの手、誰かの足、誰かの血肉。それはこんなにもヒトをモノとして扱われ行われてきたことなのだと。どっちなんだ。
 だって、わからないから。本当のこの時の記憶がそんなものマトモにわかるわけない。いや、揺るがない。私がたしかに選ばれ繋がれ託されたこ思うことは。しかし、それでもわからないのだ。薬にずぶずぶに鎮められて浸けられて心を冒されて体を侵されて過ちを犯されながら生きていた時のことをはっきりと覚えているかなんて、はっきりと覚えていると自分が思っていたとして、その真偽は本当のところは当事者だからこそわからないのだ。被検体の私の被検体だった時の記憶を、こんなふうに見せられてしまったらこれが真実なのではと……。
『痛い――』
 ―—煩い。
『痛い、痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイいたいいたいたいいたいいたい!』
 ―—煩い。
『いたいよぉ……』
 ―—煩い!!!!! 煩いんだよ!!!!!!
 お前はもう死んだんだ。屍の泥の中で溶けていったんだ。ああ、痛かったよ。痛かったんだよわたしは! でもな、もう一回死んだんだ、それでチャラだろ! 今のわたしは、そうやって出来たわたしはもうわたしだけのわたしじゃないんだよ!
 ライアが強い意志をもって反抗するのは、痛みの記憶。
 真偽なんてもうどうでもいい。絶対に真だってわかってる、わたしのすべてに刻み込まれている記憶の景色がこの景色に紛れているんだから全くの偽の記憶ではないのだ。それでもわたしは、だからこそわたしはわかるんだ。だったらここで立ち止まっちゃいけないって。

 激しくガラスが割れたような音が歪んだ景色に響いた。画面が砕け落ちる様に、記憶の景色が砕け落ちていく。瞼の裏に広がる漆黒。そう、瞼の裏だ。わたしは目をつぶっていたんだ。だって光が眩しかったから。光――そうだ光だ。わたしは光に囚われていたんだ、目を開けばそこにある装置の。それを壊しに来たんだ、わたしは。
「お前が、わたしのトラウマか」
 目を開けたライアの前にいるのは、幼い、まだ何にも選ばれていない、泣いてばかりのらいあ。
「イタイいいいいい」
 しくしくと泣いている小さなライア。そんな自分に、ライアは大剣を振り上げる。
「負けられない! 死ぬことも止まることも認められない! 私は託された! 選ばれたんだから! たくさんの命を背負ってるから!!!」
 【違えられぬ期待】、【内に響き続ける祈り】、【強く狂気に近い決意】、それを宿し超過するユーベルコード【侵食加速:自己証明(シンショクカソク・ジコショウメイ)】。これほどまでにこの装置を破壊するのに適したユーベルコードがあるであろうか。一瞬そんなくだらないことを考えかけて笑う。代償を伴うこのユーベルコードが選んだその対価は、呪縛……。ライアの足は呪いによって全くと言っていいほど動かなくされてしまう、地面に根が張って絡まる様に。でも、関係ない。・野生の感で分かってる、装置は……。
「だからお前はもう一度死ねえええええええ!」
 少女の自分に向けてライアはその剣を振り下ろす。動かない、泣き続ける幼い自分の姿をした何か。それを叩き切り砕く。そして、少女の姿をしていたジャミング装置は、本来の姿として自分の目に移り、幻影が消えたのだとライアは息を整える。
 そしてぐっと脇を絞めていつもの調子で叫ぶ。

「わたし!こそが!ヒーロー!……になりたい!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

星群・ヒカル
荒廃した学園
舎弟たちは記憶操作され、皆自分のことを忘れていた
現れたお洒落な少女が悪辣な笑みを浮かべ囁く
「君は一体だぁれ?」
……わからない
それは自分が学園に来る前の記憶を消されているからだ
今の自分は、銀河帝国が実験に都合良く記憶を上書きし作った存在なのだ

寄る辺を失い孤独と絶望に苛まれ、崩折れる少年の前で少女は嗤う……

●行動:SPD
うるせぇ!!(少女をグーパン)
自分が誰かわかんない?知るか!
ここにいるおれは超宇宙番長、星群ヒカルで間違いない!おれがそう言ってるんだからな?
聞く耳持たず、視える光に向かってぶっちぎる!それが超宇宙番長の生き様だって決めたんだッ!

ゴッドスピードライドで駆け抜けるぞ!



●記憶に穴があるのならトラウマにも穴をあけてやる
 星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は気が付くと荒廃した学園のなかでも特に荒れた校舎裏の庭に立っていた。
「おいてめえ! ここは俺らのナワバリだってわかってんだろうなぁ?」
「はあ? お前等……おれのことを忘れちまったのかよ!?」
「……何寝ぼけたこと言ってんだ? こいつ。おい、こいつ誰かの知り合いか?」
 少年は困惑していた、だって、そこは自分のナワバリでもあったのだ。今自分にこんな質問を投げかけているのは自分を慕ってくれていた人物のはずだったのだ。少年は逃げ出す。たまらなくなってその場から一目散に走りだす。おい待てよと絡んできていた男の手を振り切って、舎弟だったはずの男たちから全速力で逃げ出した。
「なんで……」
 傷つけるわけにもいかないから。いや、よかったのだろうか、絡んでくる舎弟を力でねじ伏せてからそこを離れても、でもそんなこと考えている余裕もないくらいおれは追いつめられていたんだ。衝撃を受けていたんだ。だから、逃げ出した。舎弟も、誰も、皆がおれのことを忘れてしまった世界。寒い、寂しい、これは自分の感情なのか……。
 しかし、夢中で逃げた先は、暗い黒い空間だった。
「ふふ、ふふふ……」
 四方八方何も見えない、真っ暗な世界に響く、鳥のさえずりのような可憐な笑い声。
「ねえ、君は一体だあれ?」
 突然目の前に現れたかわいらしい服を着て、綺麗な装飾を控えめにつけたおしゃれな少女。少女が少年に質問を投げかける。
「君は一体だあれ?」
 ……わからない。わからないんだ。
 それは自分が学園に来る前の記憶を消されているからだ。今の自分は、銀河帝国が実験に都合良く記憶を上書きし作った存在なのだ。少年は膝をつく、寄る辺ない恐怖は孤独を突き付けられることで絶望に変わる。
「君は一体だあれ?」
 少女は悪辣な笑みでもう一度囁く。思わず膝をついてしまったヒカルの耳元で。ああ、なんて汚い笑顔なんだろう。何度も何度も囁かれなくたってわかっているのに。ああ、本当にコイツは……。

「うるせぇ!!!!!」
 ヒカルは右足の裏をしっかりと地面につけて。そのまま立ち上がる力のままに腰を入れた拳をその少女にぶち込んだ。
「自分が誰かわかんない? 知るか! ここにいるおれは超宇宙番長、星群ヒカルで間違いない!おれがそう言ってるんだからな?」
 強く自分にも言い聞かせるようにしっかりと声に出して堂々と言い放つ。そしてヒカルは宇宙バイクを変形させ騎乗する。殴り飛ばした少女は声も上げずに消え、現実の、現在の景色がしっかりとヒカルの視界に戻ってくる。少し先にある、逃げ出す前に自分がいたはずの位置にあるジャミング装置を見据えて、ユーベルコード【ゴッドライトスピード】を発動したヒカルはそのままそこまで一気に走り、そして走り抜け、思いっきりジャミング装置を引きとばして駆け抜けた。

聞く耳持たず、視える光に向かってぶっちぎる!それが超宇宙番長の生き様だって決めたんだッ!
 それが、ヒカルの掲げた理由。今を生きるなら、トラウマの声になんて耳を傾けてはいられない。

成功 🔵​🔵​🔴​

レド・ダークライト
俺のトラウマ、か。
過去などとうに切り捨てたつもりだが、ジャミング装置の程がどんなものかはわからん。
油断せずに行かせてもらおうか。

「覚悟」を決め、ジャミング装置に一気に距離を詰めさせてもらおうか。
···大丈夫、俺には師匠や兄弟がいる。もう過去の後悔などとうに乗り越えた!
「どいてもらおうか!」
【盟約の鉄血】で自身に傷をつけることで、意志をより強く保つ。
あとは「気合い」でぶち抜くのみだ!行くぞ!



●過去を切り捨てた先にある未来からの
 レド・ダークライト(紅き閃光・f01284)は滅びたはずの故郷にたっていた。最初は何気ない記憶だった。貴族となるべくして、跡取りとして育てられていた時の。そして、今目の前で滅びていく、宿敵によって滅ぼされていくその光景を見せつけられるのだ。記憶の追体験。あの時の苦しみがレドに襲い掛かる。まるで今この瞬間に怒ったことのように。
「なるほど、これが防衛機能の力か、確かに、な」
 レドは呟いた、だが自分でも驚いた。過去を切り捨てたとまで豪語している自分の声が、これがトラウマ的光景として流されているのだろうと理解しているその自分の顔が、弱弱しくゆがんだものになっているではないか。い、いや、別に自分は……。そう思いたくて目が泳ぐ。そうだ、これはあくまでも見せられているもの。それでも後悔がとめどなく襲ってくるのだ。

 記憶とは触れられるものではない。確かなものではない。でも、レドは知らなかった。いや、多くの人は知らないだろう。それは意識しなければ知ることのないまま過ごしていけるものなのだ。思い知るほどまでには至らないものだ。これは本来、切り捨てられなかったものが知る、切り捨てることすらできないほどまでに強く受け止められたものだけが弱者だけがそこまでに感じることができる、悟りのような事実なのだ、漠然と知識で知っているのとはわけが違う。
 ―—記憶とはもはや自分とは全く違うせ生物のようなものなのだ。
 と。レドは打ちのめされるかのように思い知る。例えば今自分が切り捨てられたとして、こうして強くその記憶を引き出され胸中を踏み荒らされたとして、まともな精神状態の時であれば人はそれにっ蓋をしたり耐えたり切り捨てたり吐き捨てたりできるのだ。だが、記憶は捨てられたからと言ってはいそうですかとその場でおとなしくたたずんでいるものではない、今この瞬間のように何かによって弱く脆くなった瞬間にその主に牙をむく、蠢く感情の糧、鬱の糧、不幸の糧。それをこの防衛機能が無理やり自分に引き起こしているのだ。油断はしていなかった、そして、今の自分には師匠や義兄弟がいるから大丈夫だと思っていた。でもこの装置はそんなお行儀のいいものではなかったのだ。
「な……っ」
 思い浮かべた人物が、生々しく目の前で同じく宿敵に殺される。レドの間の前に突如そんな光景が広がった。これは本当に起こったことではない、だが全身から血の気は引いていく、それほどまでにリアル。レドは言葉を失いかける自分に気が付くと、その震えた声で、歪んだ顔で呟いた。
「我が鉄血を捧げ、盟約を果たせ」
 ユーベルコード【盟約の鉄血】が発動した。冷えていたレドの血を代償に鮮血の黒剣が赤い光を放つと、レドの精神も無理やり安定させられるかのようだった。無理やりにリアルな恐怖を断ち切る。そうだ、これは後悔だけのトラウマではない、師匠や兄弟たちと過ごす中でいつかもしかしたら自分が持っていたかもしれない漠然とした恐怖、それを考えたり考えそうになった時二度と考えない、そんなことは起こさせないと決めたときの感情。それがトラウマとなって表れたのだ。
「どいてもらおうか!」
 レドが目の前でいま師匠や兄弟の幻を殺した宿敵の姿をしたものを切り捨てる。斬って破壊する。そう、実際こんなに簡単に倒せるはずなんてないのだが……。正常な視界が自分の前に戻る。ジャミング装置が破壊されたのだ。
「全く、最悪な趣味だな」
 これを作ったものは相当性格が悪く、押しつけがましいらしい。レドは改めて油断ならないと、この戦場では特に意志を強く保つよう心がけるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

舞塚・バサラ
殺した
山ほどの、様々な命を奪った
理由は色々あったかもしれないが、その一切が闇の中
お陰で手には命を殺す感覚が染み付いた
この手はいつも、血に塗れて…

薄々覚悟はしていたで御座るよ
記憶は無いが…某は簡単に命を殺せ過ぎる故な
ああ、認めるで御座る
某は人殺しだ
慣れたように殺せる人非人に御座ろう
必要とあらば償おう。某の命を支払おう

だが、まだ責務を果たしきれては居らぬ
某はきっと理不尽に命を奪った
ならば同じように理不尽に命を奪おうとする輩を殺すのが、せめてもの償い

某が果たすべき、業に御座る
故に…業を抱えて走れや、月影牙
理不尽を以って理不尽を殺す為に

月影牙の全力で、宇宙を駆け抜け妨害装置へ突撃
逃げずに【覚悟】する



●悲鳴だけが蘇る
「ぎゃあああああ」
 殺した。
「ぐわーっ」
 殺した。
「きゃあああああ!」
 殺した。
 山ほどの、様々な命を奪った。男も女もない。理由は色々あったかもしれないが、その一切が闇の中。色々な命を平等に殺したのだ、某は……。お陰で手には命を殺す感覚が染み付いた。
「許さん、許さんぞ……」
 死に際の人々の悲鳴や恨み言というのはなんて強く耳に残るものなのであろうなあ。記憶など失くしているのに無理やりそれを引き出される思いでござる。
「この人殺し!」
「血も涙も流れていない薄情な鬼め!」
 ああ、認めるで御座る。
「某は人殺しだ」
「いやーーーーっ!」
 また、殺した。
 薄々覚悟はしていたで御座るよ? 記憶は無いが…某は簡単に命を殺せ過ぎる故な。だからきっと本当にたくさん奪ったのでござろう。この手はいつも、血に塗れているようでござる。
 故に、慣れたように殺せる人非人に御座ろう。鬼と罵られても仕方ない。必要とあらば償おう。某の命を支払おう。
 だが、まだ責務を果たしきれては居らぬ。某はきっと理不尽にも命を奪った。ならば同じように理不尽に命を奪おうとする輩を殺すのが、せめてもの償い。某はそう信じているのでござるよ。
 某が果たすべき、業に御座る。
 しかし、あいやしかし。本当にこの装置を作ったものは、大悪党の器でござるなあ。
 舞塚・バサラ(多面巨影・f00034)は目の前に広がるおそらく自分が殺した人々、そして装置を破壊するために殺さなければならないであろう人々が並んでいるのを眺め、頭を掻いた。振り返ればこの回想の間に切って捨てた人々の死体が転がっている。
「まあ、信念によって覚悟はもう決められたでござるからなあ。げに奇妙な光景でござるよ」
 我々を殺さなければ装置へはたどり着いけないとばかりに入りされる人の群れに、正常な視界ならあるはずの装置への道のりが重なり、戦艦の中に自分御殺したであろうものが処刑を待つような奇妙な光景が完成している。
 やれというならばやるでござるよ。拙者も立ち止まるわけにはゆかぬでござるからな。故に……業を抱えて走れや、月影牙。理不尽を以って理不尽を殺す為に。
 バサラはユーベルコード【陰術:月影牙(インジュツ・ゲツエイガ)】を発動し、道幅をぎっちぎちに埋める巨大な大ガエルの影絵を召喚し騎乗する。
「なに、蛙に御座るよ。そう見えるかは知らぬで御座るが」
 バサラが前に進もうとすると、人々がこちらに襲い来る、復讐の刃をバサラに向けるために。しかし前向きに今を生きるバサラは過去を内包してもなお進み、失った記憶もすべて生きてさえいれば、何とかなるの精神で目の前の人々を簡単ん位殺し立ち向かう。
「やれやれ、でござる」
 そしてその巨体による動きは装置との距離を簡単に埋めてしまい、バサラは【陰陽剣:反逆スル夜光(ヴェンジェンス・ナイト)】を形成し、それを振るって自らの手で直々に装置を破壊してそれを作った誰かへの挑戦とばかりに不敵に笑っって見せるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マスター・カオス
フハハハ…我が名は、グランドフォースに導かれし、世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大幹部、マスター・カオス!!

トラウマ…それは彼が日常的に発する「法螺」に起因する。

かつての銀河帝国との戦いの際、私はテキトーな事を言って、味方に多くの犠牲を出した。更にその原因について聞かれたとき、思わせ振りに、味方にスパイが紛れ込んでいたとテキトーな事を…まさに、嘘の上塗り!!
そして、味方はいよいよ疑心暗鬼になり同士討ちを……。
少しは良心の呵責もあったんだぞ…?

フハハハ…しかして人の本質は変わらん!
故に、私は嘘を嘘のまま真実と成そう!!
「法螺吹キハ全知全能」にてなんか全力無敵だぞアピールで根比べといこう!!



●嘘つきは英雄の始まり
 その男、マスター・カオス(秘密結社オリュンポスの大幹部・f00535)は不真面目に生きているように生きていた。よくわからないって? それはそうだろう。テキトーだからな。
「おい、交代の時間だぞ。おい貴様、ちゃんと見張っていたんだろうな!」
 同僚、つまり自分と同じ程度に偉い男が声をかける。私は自らの所属する反銀河帝国のとある騎士団にて、銀河騎士団との戦いの折に見張りに立っていた。しかしその日、疲れからか私は交代の時間ぎりぎりまでたったまま呆けていたのだ。ちゃんと見張っていたかといえばノーになる。しかし、ノーをノーと答えるのは得策とは言えない。これは処世術だ。
「当然だ、私もフォースマスターであるのだからな」
 見栄を張る。まあ、何かあったならば呆けていても私ほどの大騎士なら気付いているであろうという驕りもあった。
「ふん、ならいいがな。しかし、俺達大騎士様が直々に見張りに回らされるとはな」
 同僚が愚痴を垂れる。
「そういうな、私たち自らがこうして見張りも請け負うことで部下の士気も上がるのだからな」
 見栄から出る適当なそれっぽい優等生回答に、同僚も感動の様子。
「ああ、そうだな。すまない、お前のことを疑ってしま……」
 しかし、戦いの世界はそんなには甘くなかった。マスターがかっこよく決めたとき、すでに戦いは動いていたのだ。同僚の男は最後までマスターに言い終えることなくこと切れていた。強襲によって。そう、彼が呆けている間に戦況は動いてしまっていたのだ。
「な、なにぃ!?」
 マスターは目の前で撃たれた同僚から一気に離れて部下や仲間を呼び応戦する。そしてその場を切り抜けるのであった。

「なぜこのような強襲に気付かなかったのかね!」
 戦況を切り抜けた後、案の定マスターは上官に呼び出されていた。
「いえ、違うのです、私はあの場を離れ報告しようとしていたのです、撃ち殺されたものが敵のスパイの一人だったようなので! しかも、スパイはまだほかにも潜んでいる可能性まであったのです」
 巧みな話術。つらつらと頭から湧いて出る言い訳。そして……あっけなく崩壊する仲間たちの絆。そう、これを機に私の所属していた隊は仲間割れを起こし、間もなく崩壊したのだ。懐かしいな、あれには私も少しだけ良心を痛めたものだ。

 マスターの目の前にいるのは、そんな嘘つきの自分。自分自身の当時の適当な姿。
 当時の? ふふふ、そのチョイスはわたしには効かぬよ。残念だったな銀河帝国。
 マスターが笑う。
「フハハハ! 今の私と争うのはオススメしないぞ! 過去の私よ!」
 ユーベルコード、【法螺吹キハ全知全能】を発動する。人の本質など簡単には変わらない、なら私は法螺をもって真実を制するだけだ。あれ、しかし私はこの後どうすればいいのだろうか。謎のフォースの力で全知全能の存在になったマスターは、そのまま全く動けず、延々とトラウマとの根競べを行うだけであった。

失敗 🔴​🔴​🔴​

山梨・玄信
トラウマ…捨て子で寺育ちのわしには

【POWを使用】
赤子を寺の前に置く若夫婦が見えるのじゃ。
「これでまた夫婦水入らずね。子供なんて邪魔よね」
「そうだね。愛し合う僕達に他人の入り込む余地なんて無いよね」
おい、自分の子じゃろ!

「あ、名前何にする?」
「面倒だなあ。地元の有名人の名前ひっくり返して『玄信』でいいや」
「あ、いいわねえ!」
そんな適当な理由で…。

「ああ、邪魔な物も無くなったし、また愛し合いましょ」
「そうだね。あ、でもこの町からは引っ越さないと。あれが居ないと詮索されるから」
物扱い…。

そうじゃ!わしは…わしの信念は…リア充爆発しろ!
正気に戻ったら、灰燼拳で文字通り装置を灰燼に帰してやるぞい。



●彼がRBに染まるのは
 山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)もまた、一つのジャミング装置にたどり着き、防衛装置による悪夢に囚われていた。
「……これでまた夫婦水入らずね。子供なんて邪魔よね」
「そうだね。愛し合う僕達に他人の入り込む余地なんて無いよね」
 ある夫婦が山寺の前で赤子を毛布にくるみ、適当な箱に入れて捨て置いた。それを見る玄信の視点は、ここだ。
「おんぎゃあ! おんぎゃあ!(おい、自分の子供じゃろう、く、涙が、な、泣くでないわしよ!)」
 赤子となった玄信はあほ面下げて自分を見つめるバカップルを見上げることしかできなかった。だって、赤子だから。
「あ、名前何にする?」
 おお、さすがの母も名前を付けて捨てようという心はあったのか、というかいらぬわ! そんな今から捨てられるのに捨てられるものの名前とかいらぬわ! 寺が付けてくれるほうがまだましじゃ! あ、しかしもしかしたら名前ぐらいには罪悪感とかそういうものがあるのかもしれぬ、なんせほら、玄信ってそこそこかっこいい名前じゃし。
「面倒だなあ。地元の有名人の名前ひっくり返して『玄信』でいいや」
「あ、いいわねえ!」
「お、おんぎゃあああああああ!(ってなんじゃその名前の由来はああああ!)」
 複雑じゃ、喜んでいいのか? 有名人の名前からとられたことを喜ぶべきなのか!? 喜べるかこんなもの、というかすごいのうこのトラウマ機能、わしが知らんかったわしの事実を簡単に暴いてみせたぞ! く、だんだんはらわたが煮えくり返ってきたわい、そうか、こいつらか、こいつらのせいでわしは……。
「あ、ほら、この子も喜んでるじゃん。これにしちゃお?」
「うん、そうだね。じゃあね玄信、僕たちこれからまたイチャイチャしまくらないといけないんで♡」
「ぅぎゃあああああ!(こ、このあんぽんたんの人でなしめがーーー!)」
 く、赤子だからこんな語彙しか出てこぬのか? それもこれもこのくそリア充のせいじゃ。これが父と母など、情けないわ!
「ええ、邪魔な物も無くなったし、また愛し合いましょ」
「そうだね。あ、でもこの町からは引っ越さないと。あれが居ないと詮索されるから」
 こ、このうえ物扱いじゃと、わ、わしもう心折れてきたわい。い、いやいや許せぬ、このリア充をRBせねばわしは前に進むことなどできんのじゃああああ!

「そうじゃ!わしは…わしの信念は…リア充爆発しろ!」
 感謝するぞ、バカ夫婦! お前らなど父でも母でもない、私にとって爆破対象の、クソリア充なんじゃあああああああ!
 玄信は走る。正気を取り戻して走る。
 あのバカ夫婦に見えるものは爆破対象であり、トラウマの根源、ならばあれを爆破する先にジャミング装置の破壊がある!
 玄信は幻影を打ち破りリア充への怒りで元の姿に戻ったそして、かけた先で一気に距離を詰め【灰燼拳】をうち放つ。最高に腰の入った今まででも最高の一撃が腕を組んでいちゃつく夫婦の姿をしたジャミング装置を打ち抜いた。
「これでわしはさらに、リア充を爆破し続ける大義を得た!」
 玄信が叫ぶ、その裏にあるのは果てしない憎しみと怒りか、それとも信じられないものを追体験させられた一抹の寂しさか、それは彼の胸の内に秘められるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーラ・フリュー
例え本物でなくとも、打ち勝てば…少しは気が晴れるのかもしれませんね…。
…ある意味、いい機会ではないでしょうか…。

私のトラウマは…幼い頃に見た「触手の生えた緑色の邪神」。
鮮明に覚えています。辺り一面の鮮血。周りの叫び声。そして、悍ましい邪神の姿。
…生き伸びたのは、奇跡のようなものでしたね…。

あの時の私は何もできなかったですけれど…邪神被害を少しでも抑えたくて、戦闘知識を学んで力を付ける努力しました。
猟兵になれたのも僥倖。今の私なら、あの邪神を倒せる力があります…。
リボルバーで【早業】と【クイックドロウ】を駆使して触手を撃ち落としながら前に進み、【猟犬の咆哮】で装置ごと撃ち抜いてしまいましょう。



●リアルな嘘であるならば
 シーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)のトラウマは凄惨な光景。
 たくさんの血、血、血、血の雨。惨劇の血雨林。赤い赤い景色が緑の林を染めていく。林……? いや、違う。それこそが『対象』だ。私が忌み凍えるもの。鮮明に覚えているのに、曖昧にしか脳が思い出させてくれない恐怖そのもの。
 『触手の生えた緑色の邪神』
 そうだ。それはこんな姿をしていた。いや、まて。え、こんな姿をしていたのか。こんな、ああ、そんなところまで。幼い記憶で見えていなかった部分まで鮮明に見えてくる。なるほど、傷を開くだけではない。抉られるとはこういうことか。より強く刻み付けられる。これではもうしばらく夢に出てくる勢いのえげつなさだな。マトモな感情があっては耐えられまい。まだ今のわたしでよかったと喜ぶべきか悲しむべきか。

 景色が開く。目が開く。どうやら強い光に充てられて目を閉じていたようだ。他の人もそんな感じだろうか。目の前には緑の邪神と何もできないで立ち尽くすあの日の自分がいて、その後ろに私が立っている。ホログラムなのか、脳が見せる残像か。でも、私のトラウマが邪神なら、私はアレを撃てばいい。私のトラウマがあの私なら、私はあの私を撃てばいい。両方行くか、いや……。なかなか煩く思考をくみ上げられるのだな、私は。もっと表にも面にも出せればいいのだろうけれど。
 シーラはリボルバーに手をかける。撃つモノを決めたなら、一気に!
(―—近づいて、放つ!)
 シーラが動くと反応するように襲い来る邪神の触手。しかしシーラが早い。全て回避したり、早業とクイックドロウから放たれる高速の連続射撃でそれを切り抜け、邪神と零距離まで詰め寄る、幼き少女の自分と邪神の間に割って入って。
「今の私が撃つのはお前だけだ」
 【猟犬の咆哮(ハウンド・ロア)】目にも止まらぬ速さでリロードした銃による超高速かつ大威力の一撃が邪神を撃ち貫いた。ズドンッという迫力ある音と共に、そして邪神は肉片の代わりに機械片をぶちまける。それはそうだ、だってこれは幻、本当にぶち抜かれたのはジャミング装置なのだから。
 あの時の私は何もできなかったですけれど…邪神被害を少しでも抑えたくて、戦闘知識を学んで力を付ける努力しました。
 機械を打ち抜いたシーラは完全に幻影から解放され、後ろを見る。もうそこに私はいない。だが、自分を撃たなくてよかったとシーラはどこかで思っていた。
 猟兵になれたのも僥倖。今の私なら、あの邪神を倒せる力があります……。たとえ、本物が表れたとしても。けれど……。
 だからと言って自分事打ち抜いては、昔の自分事打ち払っては、それは取り戻したいものがある自分への否定になる。シーラはそう考えた。
「ふぅっ」
 熱くなった銃身に息を吹きかける。お約束というやつだ。シーラはそのまま銃をしまい、元居た場所へと一度帰っていくのであった。次にやるべきことを知るために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

睦川・優大
【WIZ】で勝負します。

『克服すべき過去』
学生時代、UDC怪物に操られた仲間をやむなく殺めた事がトラウマです。

精神攻撃に捕らわれ過去を再現するように仲間と戦い、
止めを刺す寸前で「TCGの対戦を強要するUDCオブジェクト」を取り出して渡します。
「後悔を後悔で終わらせないために、搦め手も身に着けたんですよ。」
「ふざけた道具でしょう?それでも、あなたを二度殺すよりはずっとマシですから。」

ユーベルコードを使用して対戦に勝利することでなんやかんやして相手の動きを一時的に封じ、
その隙にジャミング装置を拳撃をもって破壊します。
「UDC神拳奥義!狂神パンチ!」



●二度は撃たない
 睦川・優大(刹那の見斬り・f09824)は戦っていた。かつての仲間、自分の殺した仲間と、再び。かつて戦った理由はやむをえないものであった。仲間はUDC怪物に乗っ取られてしまったのだ。だから当時の私には相手を殺して生きることしかできなかった。今だってそうだ。再現性の高いトラウマ装置によって私は気が付いたら同じように戦わされていしまっている。
「お前の力はそんなものか、そんなもので私は殺されたのか!」
 相手が叫ぶ。これが私が相手ならこう言うと思った相手の心理再現、というわけであろうか。負けず嫌いだったっけな。そんなことを思いながらも、優大は相手の攻撃をかわしては拳による一撃を入れるヒット&アウェイで戦うばかりである。
「そうですねえ、そろそろ終わらせたほうがいいでしょうね」
 そして笑う、困ったように笑う。ああ、私今困ってるんですね、思ったよりも心を追い詰められている。全く、長く戦えば本当に私はやれれてしまうかもしれませんねえ。二度も殺すのはたとえ偽物でも、悲しいじゃないですか。仲間の亡霊まで殺してしまうみたいで。
 研究者が亡霊、なんておかしいだろうか。しかし、相手はUDCの怪物に囚われた者なのだ、もしかしたらいつかまた復活しその姿で戦うことになるかもしれないのだ。しかし私は今やUDC神拳の使い手としてさらに技を極めた身。手加減だけしてむざむざやられるわけにはいかないのです。
「そんなに死にたいなら、殺してやるよぉ!」
 相手が叫ぶ。そういうわけにはいきませんが、やりますか。
「よろしくお願いします」
「はぁ!?」
 優大はふっと動きを止め相手を引き寄せる。そして、優大は止めを刺される寸前で『TCGの対戦を強要するUDCオブジェクト』を取り出し、相手に渡した。あまりにも流れるような動きに受け取ってしまうかつての仲間。デュエルが……始まる。

「く、ふざけやがって! 俺のターン、ドロウだ!」
「ふ、残念でしたね、ルールが変わったのです。今は先攻ドローはありませんよ」
「な、なに!? く、マジだエラーが出やがる」
 相手の先攻。男は手札を見て絶句する。仲間はそのカードゲームのデッキを持っていた。持っていたが……とても型が古いのだ。しかも、知っていたカードゲームのはずなのに盤面が違う、なんだ、このEXクリーチャーゾーンとかいうのは……。
「わ、私はカードを3枚伏せてエンドだ」
 相手は苦しげにターンエンドを告げた。
 いや、大丈夫だ、有能な罠が3枚も伏せられている。私の知る限りでは魔法罠を同時に何枚も破壊する魔法は禁止となっているはず。
 相手の表情が引きの悪い絶望から歪んだ笑顔に変わる。
「なるほど、では私のターンですね、ドローです」
 しかし、世界の、カードゲームのルールとは激しく入れ替わり、そして、流行のように変わっていくものなのだ。
「私は手札よりガルーダの翼を発動。相手フィールドの魔法罠をすべて破壊します。まさか、対策カードも伏せてないわけではありませんよね?」
 とっくにそんなカード、禁止ではなくなっていたのである。そして相手はそのカードへの対抗策なんて引いていなかった。初手にそんな強力なあるのはずるいだろう!
「ふむ、手の内を見たかっただけなのですが、すべて破壊が通りますか、そうですか。まあ、そうですよね」
 時の流れを憂う優大。どちらにせよ確殺コンボはそろっていたのだが……。そのまま優大は大量に展開を始める、次々と埋まっていく優大のモンスターゾーン。しかし相手は持っていた、手札に、最後の対抗策を。優大が攻撃した瞬間、手札から発動しそのターンのバトルを終わらせるカードを! そして次のターンであればまだ手札2枚から動ける手札が残っていると。しかし優大のデッキは、攻撃など必要としなかった。
「私は手札からマジックを発動し、私の攻撃力9600のモンスターのコントロールをあなたに私、もう一枚のモンスターの効果を発動しそれを破壊、そして、破壊したモンスターの攻撃力文のダメージをあなたに与えます!」
「な、なにい!? 効果ダメージだとおおおおおお!?」
「ありがとうございました! ……後悔を後悔で終わらせないために、搦め手も身に着けたんですよ。」
 にっこりと笑う優大。そして、優大のユーベルコード【UDC神拳奥義・TCG拳ソリティアの型(ティーシージーケンソリティアノカタ)】が完全発動した、ソリティアからの押し付け破壊バーンによる確殺コンボ(成功率35%)が見事に決まる。これにより仲間の体はUDCオブジェクトに拘束され動けなくなるのであった。
「ふざけた道具でしょう?それでも、あなたを二度殺すよりはずっとマシですから」
 もしいつか本当に二度目のあなたが表れたときにも、そうなればいい。
 優大はその仲間の隣を通り抜け、その後ろに見え始めたジャミング装置へと歩いて行った。どうやら仲間を拘束したことで、防衛機能が弱まり幻覚の拘束が弱まったらしい。
「UDC神拳奥義!狂神パンチ!」
 優大は自らの拳をもってジャミング装置を破壊した。振り返ると、仲間が光に包まれて消えていく。なんとなく、仲間は笑っていたような気がした。
「これは、願望なんでしょうかね」
 優大の笑顔に少しの寂しさと温かい気持ちが混じっていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

鮫島・冴香
…人の心の傷を利用…許せないわね


私は休職していた。
お腹に子供がいたからだ。

私の誕生日、二十歳年上の夫の帰りを待つ。
「ごめん、今日は帰れそうにないや」
街を賑わせていた快楽殺人犯の目星がついた、と。

私は「気を付けて」と声をかける。

…その日、夫は帰ってこなかった。
次の日も、次の日も。

憔悴しきった中、映像が届いた。
『冴香、観ちゃダメだ』
夫の声が聞こえた気がしたが、私は再生した。

殺されていく、夫。
命乞いもせず、最期まで画面を見続ける強い眼差し。
私は、倒れた

犯人は未だ捕まらない
お腹の子は星となった

しかし


『冴香、前へ進もう』
私の中に彼は生きている

絶対に、捕まえる
私は装置に銃弾を浴びせる

※アドリブ大歓迎!



●失ったもの、失えなかったもの。
 私は休職していた。産休だ。私のおなかには愛する夫の子供が宿ったのだ。うれしい。ああ、本当にうれしい。満たされた。彼に愛され、愛して、満たされて満たされた。その結果がここにある。
「ふふ、ねえ、今日も元気にしているかしら?」
 おなかを撫でる。たまらなくいとおしくなる。まだまだ生まれるまでは先で、元気で生まれてくれるかもわからないけれど、きっと大丈夫だよね。私の希望、私たちの鎹。
 貴方は絶対に愛されて生まれてくるの。私達、アナタがこの世界でたくさんたくさんいろいろなものに触れて、探して、見つけていく日々を手塩にかけて育てて、そしていずれ見守って。ああ、なんて、想像するだけで幸せなんでしょう。まだつわりもつらいし、正直苦しくていやになりそうな時もあるけれど、この子がこんなに、まだであってもないのに大好きなの。

 そんな幸せな日々。私は誕生日を迎えた。二十歳年上の夫は上手に私を支え、励ましながら私を包み、私と同じように子供の宿りを喜び、私の体ごと生まれてくる子供をいつくしみながら日々を過ごしてくれた。彼からすれば遅めのこともだし、男性は父親になる自覚が遅いというけど、彼の場合父になるのが遅かったから言うついているのだろうか、気持ちが。だとしたらとっても喜ばしいことね。彼も忙しいから、もしそうでなかったらもっと、気持ちが沈んだりする日もあったかもしれない。

 だから。
「ごめん、今日は君の誕生日なのに、帰れそうにないんだ。街を賑わせていた快楽殺人犯の目星がついてな」
 夫が私の生誕を今日は一緒に祝えないのだと告げたときも、私はなるべく落ち着いて聞いた。だって、彼は自分が疲れていても私を支えてくれたのだ。ここで私が、妻として、それも同じ刑事として、彼を引き留めてどうする。それに彼はいつも無口な癖に言うんだ。
「絶対に埋め合わせするから、この件が終わったら、二人で過ごそう。それに、そろそろ子ども用品も本格的に集めたいって言ってただろう? 冴香はきっと、ちゃんと一緒に選んでほしいんだよね?」
 と。こんな埋め合わせを約束されて、甘い言葉で、私が苦い思いをぶつけても仕方がないじゃない?
「うん、わかった。気を付けて、絶対帰ってきてね」
「ああ」
 夫が私の額に唇を落とす。私はそのまま夫の首に手を回して口づけをかわす。せめてもの誕生日プレゼントにと夫が昨日用意したのだという花束を渡される。きっと今日が終わって事件が解決すれば、また私たちは支えあえるひびが来る。それが当たり前なのだと思っていた。

「旦那さんの応答が無いんです」
 私の同僚であり、彼の部下だった刑事がうちを尋ねたのは夜だった。夫はその日帰ってくることはなかった。いや、違う。その日だけなんかじゃない。次の日も、その次の日も。
 私が憔悴しきった頃、自宅のポストにDVDが届いた。白い封筒に入れられた、題名も宛先も無いDVD。しかし、一枚のメモが取り付けられていた。ここにあなたの探し物がある、と。アヤシイDVDだ、刑事としてこんなもの個人的に開くべきものでは二、開くべきものではない、のに……。
 気が付くと私はDVDを仕事用に使っていたパソコンに投入していた。
「やめろ、見るな。冴香、見てはいけない!」
 それは私の心なのか、あの人の意志なのか、夫の声が聞こえた気がした。でも、もう私には縋るものがないのよ。貴方にたどり着くための道がない。ねえ、アナタは今、どこにいるの……?
 再生して危険がないかを自分なりに調べ確かめてから、そのファイルを開き再生する。

 ――猟奇的な映像だった。
 殺されていく、夫。
 命乞いもせず、最期まで画面を見続ける強い眼差し。
 ご丁寧に下卑た犯人の笑い声まで聞こえてくる。その声が、私があの人を殺した人間にたどり着く強力な手掛かりとして、私の脳裏に焼き付けられた。そうよ、これが私のトラウマの記憶。この時の私が弱かったから……。
 私は、お腹の子供まで失った。

 目を開く冴香。そう、回想では逆に気絶したところだ、この後倒れて、病院に運ばれ、子供の命を失い、しかし自分は生き、起き上がったのだ。冴香が頭を整理する。
「冴香、前に進もう」
 頭の中に、夫の声が響く。これは幻じゃない。
「ええ、そうね。だって私たち今、一つなんだものね」
 私の中に彼は生きている。私は夫の人格を自分の中に宿らせたのだ。絶対に、捕まえる。それまで私は止まれない。

 冴香は熱線銃(ブラスター)を構え、今自分の中にいる夫の人格に励まされることでトラウマに飲まれることから解放され、そしてそれを直線状のジャミング装置へと撃ち放った。これはまだ始まれてもいない復讐の物語。そのプロローグに過ぎない……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藍沢・織姫
トラウマ:自分そっくりな兵士?左腕に「Indigo-248」の文字がある。歌で無差別攻撃(人狼咆哮に近いかも)

かつて私は、オブリビオンの呪いか洗脳か何かで大量殺人を強いられていた…
逆らう事はおろか逃げる事も出来なかった。それが許されないのは勿論、そもそもそんな選択肢自体が存在しなかった…。聴いた者全てを狂い死にさせる歌を休みなく歌わされ続ける呪いは決して解けない…自分が自分の歌で死ぬまでは。
でも今の私は自分の意志で戦う。そう、昔の「殺人兵器Indigo-248」は死に、猟兵「藍沢織姫」に生まれ変わったのです!

戦闘:そんな感じで死の歌に飲み込まれないよう癒しの歌で対抗しつつ、通常攻撃で装置を叩く



●救いはもういらない
 かつて私は、オブリビオンの呪いか洗脳か何かで大量殺人を強いられていた。
 逆らう事はおろか逃げる事も出来なかった。
 それが許されないのは勿論、そもそもそんな選択肢自体が存在し得なかった。

 だからこれは、その脱出口なのかもしれない。藍沢・織姫(紺碧の歌姫・f03959)は目の前のトラウマを見てそう思った。思ってしまった。それは自分そっくりな兵士のような姿をし、左腕に『Indigo-248』の文字を刻み込まれている。そう、これが恐らくかつての私。人狼咆哮のような歌による無差別攻撃をけしかける私。聴いた者全てを狂い死にさせる歌を休みなく歌わされ続ける呪いは決して解けない。
 自分が自分の歌で死ぬまでは。
 ならば、この歌で私が死ぬなら、きっと私は本当の意味で呪いから解放されるのだ。けれど、その答えは私が今選んでいるものとは違っている。

「アナタは今のわたしにはもういらないんです!」
 自分を殺してくれる自分の歌なんてもう望んでいない。確かに苦しい。目の前で苦しんで歌う自分を見るのは苦しい。あの日私が止められない歌に込めた一つ一つの感情が蘇るようで。だけど、この歌を私は終わらせられるんだ。この歌を超えればそこにこの歌を昔のわたしに歌わせている装置があるんだ。そして、私はこの私を歌うことから解放してあげられるんだ。
 織姫が対抗するように歌い始める。歌うのは癒しの歌。【シンフォニック・キュア】
 ねえ、私。大丈夫だよ。私もう選んだから。あなたはもう死んだの、そしてこれからもう一度死ぬの。
 織姫は歌いながら一歩一歩、音の衝撃の向かい風に抗って進む。自分を癒しながら、そして相手が共感して癒されてほしいと願いながら。自分を慰める歌。とてもやさしい歌。
 私が私にやさしくしないと、世界も私にやさしくしきれないから。だから私が癒すんだ。私のトラウマを。

 織姫の強い意志と優しい心が織りなす歌いながらの前進はやがて音の向かい風を超え、音の追い風に乗る。彼女が過去の自分を超えたとき、それは前に進む大きな力になるのだとばかりに。そして織姫はそのままのスピードで歌いながら装置に突っ込んで、装置に飛び蹴りを入れ、破壊した。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月11日


挿絵イラスト