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星空にイカが瞬き海老が翔ぶ

#ブルーアルカディア #魔獣 #イカ #エビ #キャンプ #サンマ(3章)

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●秋島と新たな屍人帝国
「ブルーアルカディアの辺境に、メトポーロン島と言う浮島があるんだけど」
 集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)はいつになく真剣な面持ちで、話を切り出した。
「メトポーロンと言う名称よりも、『秋島』という通称で知られているらしい」
 気温や気候が、一年を通して秋に近い状態でほぼ一定になっている。
 故に、秋島、と呼ばれるようになったと言う。
 正式名称を『ホーライ浮島群・第3番島・メトポーロン』――と言うのだが、島の住人ですら、この正式な名称で呼ぶ者は殆どいないらしい。
「一定の気候のお陰なのか、なんとこの島の湖では、真冬以外ほぼ年中、サンマに似た魚が獲れるんだって。他にも気候が適しているからとブドウの栽培も盛んで、ワインも有名なんだとか」
 けれど、それだけと言えばそれだけだ。
 特殊な気候ではあるが、その恩恵は特別と言うほどではない。
「屍人帝国が『魔獣を持ち出してまで秋島を狙う理由』が見当たらないんだ」
 それこそが、ルシルが猟兵達を呼び集めた理由であった。
「そもそも、事を起こしている屍人帝国は、どうやら今まで確認された事がない、新たな屍人帝国みたいでね」
 屍人帝国とは、古代の帝国であったり、どこそこにあった王朝だったり、騎士の興した国であったりと、かつて滅んだ国々が蘇ったものの総称。その実態は様々だし、こうして、新たに蘇ってくるケースもある。
「今回の連中に関しては、秋島を狙う理由はおろか、どういう屍人帝国なのかすら、情報らしい情報が全くない」
 それでも、わかっている事がある。
 ルシルが予知した、メトポーロン島に差し向けられた今回の戦力。
 それは――。
「イカとエビ」
 ――はい?
「海産物のイカとエビを想像したと思う。その通りだよ。イカとエビの魔獣。正確にはイカ魔獣の群れとエビフライ型の魔獣だ」
 なんでこのエルフはこう、魚介類が関連する話を良く持って来るのだろうか。

「イカの群れは、ドーンテンタクルス」
 おおよそ成人男性程のサイズの、空中を浮遊するイカの魔獣である。
 当然だが、狩れば食べられる。とても美味らしい。
「こいつらは表皮の透過と発光で、星空に擬態する能力を持っていてね。転移した時点で、既にメトポーロン島上空に展開している」
 夜の内に島を包囲し、夜明けと共に一気に攻める算段のようだ。
「その前に、こっちから仕掛けてやるんだ。擬態を見破るのは、難しく考えなくていい。適当に空に向かって攻撃すれば、大体いるから」
 配置、雑だなぁ。
「ドーンテンタクルスを一掃したら、屍人帝国は今回の切り札であるエビ型魔獣を放って来る筈だ」
 それが、フライエビ。
 見た目は、翼の生えた尾頭付きの空飛ぶ巨大エビフライである。
 並の飛空艇よりも遥かに大きい上に、その飛翔速度は音速を越える。
 しかもカラっと揚がった衣に見える部分は、サクサクしてるくせに存外に硬く、当たればジョリジョリしてて痛い。音速で飛んでも剥がれず、飛空艇の外装も激突で削れる衣だ。
「その衣の様なものの下がどうなっているのかは、わからない。エビフライのようにすぐにエビの身があるのか、それとも衣の下にも更にエビの殻があるのか……」
 それ、そんなに大事な情報かなぁ。
「どっちにしても、フライエビも食べられる筈って事だよ」
 ブルーアルカディアでは、魔獣は食用です。
「秋島に、保養地の様な目的で勇士一行が訪れる事も少なくない。湖畔にはキャンプ施設があるそうだ。今はどこの飛空艇も停泊していないから、戦後は使わせて貰えるよ」
 戦闘後は、イカとエビの魔獣料理タイムが待っていると言う事だ。
「わたしも混ぜて貰おうと思う。湖で釣れると言うサンマを食べたいからね」
 このエルフ、サンマ食べたい一心で、この事件予知したんじゃなかろうな……?


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 ブルーアルカディアに、イカとエビを狩って食べに行きましょう!
 最後はサンマもあるよ。秋の果実もあるよ。
 そんなシナリオです。

 1章集団戦、2章ボス戦、3章日常・浮島キャンプ回。
 となっております。
 3章は、平和が戻った島で、キャンプしてってください、的な展開になる予定ですが、ここだけ参加でもOKです。
 あと3章は呼ばれたらルシルが顔出します。
 ほっといてもその辺でサンマ焼いて食べてます。

 詳細不明の新たな屍人帝国。秋島が狙われた理由。
 などなど、謎らしきものもありますね。
 ぶっちゃけ、気にしても気にしなくても良いです。
 どちらにせよ今回は1,2章の魔獣以外、屍人帝国側との接触は出来ません。
 3章で島の住人と交流したり、島を調べる事は出来ます。その際は調査と言うより、ネタ振りのつもりで何か書いて頂くと、使えそうなものは拾うかもしれません。
 浮島群とか続けられそうな単語を置いてみたので、続けるかもしれないし、もしかしたら単発で終わるかもしれません。
 そのくらいのふわっとした感じです。今のところは。

 今回は急がず無理なく進める為に、再送をお願いする前提で、その代わり受付期間を長めに取る形で進めてみようと思います。
 取り敢えず、1章は公開後からプレイング受付ます。
 締め切りや再送日は別途告知しますが、10/10(日)までは受付予定です。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『ドーンテンタクルス』

POW   :    この触手はどう見てもイカだ
命中した【触腕】の【吸盤】が【返しのついた爪】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    如何ともし難い墨
海の生物「【烏賊】」が持つ【旨味成分をたくさん含んだ墨を撒き散らす】の能力を、戦闘用に強化して使用する。
WIZ   :    イカしたゲーミングフラッシュ
【虹色に発光する表皮から放たれる催眠光】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木元・祭莉
【かんさつにっき】ですぞ!

アンちゃん、コダちゃんをエスコートして登場する騎士まつりん☆
とは、おいらのことだー!(テンションアゲアゲ)

ごらん、この美しいイカ空。
虹色にキラキラ光って……とても……美味しそう!
鮮度が良いならお刺身で。さっとゆがいて酢味噌和え。
モチロン醤油ダレの一本焼きは、おまつりんてきにも最高だね!
あ、ついついコダっちゃった。てへぺろ♪

オジサン、久しぶりー♪ 元気してた?
え、コダちゃんのオジ使いが厳しい?
あー、まあコダちゃんツンデレだしね!
え、イカさんはアンちゃんのスミあしらいが気になる?
あー、まあアンちゃん胃袋は底なしだしね!(和やか)

と、おいらも自分の分確保しとかなきゃ。
イカは、長い腕がモチモチで一番オイシイから!
舞扇を呼び出し、投射して牽制。
触腕が伸びてきたら、如意な棒で巻き取り。
その後は絆で縛って、棒をそのまま胴へ捩じ込む!(ぶっすり)

胴はいかめし用にアンちゃんにパース!
火加減はコダちゃん……だと危ないから、オジサンヨロシクねっ♪

わーい、次はどんな海老かなぁ♪


木元・杏
【かんさつにっき】
小太刀、まつりん。ほら、耳を澄ませて?
打ち寄せる波の音、あちこちから聞こえる漁の喧騒
そして
flying Sea イカ!
……んむ、湖?ノープロブレム

灯る陽光は銛にして
さあ、イカ、遠慮せずその巨体でわたしにCome on!
わたしは、姿焼きが、好き!
丸ごと狩る強い意志を銛に込めて迎え撃つ

む!

墨は用意してたバケツでしゅばばと受け止める
ふ、ひそり発動していた【絶望の福音】
美味なるイカスミも一滴残らず回収する
わたしは、イカスミも、好き(照れる)(本体を銛でざくざく)

ところで小太刀、白米ともち米どちらがお好み?
ん、いかめしも作らなきゃ
里芋との煮付けも美味
どんどん狩っていこー!


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

空飛ぶイカ?
何よ、ウサミミが生えてる分
海の仲間達の方が可愛いんだからね!(対抗心びしぃ!

早速彼らを呼び出し…たら間違えて食べられそうな勢いね(汗
ここは敢えてオジサンに
ほらほら、久しぶりの出番だよー!

イカの姿焼きが食べられると聞いて
日本酒片手にウキウキとやって来たオジサン
早速イカしたイカと意気投合して酒を酌み交わし…
「こらー!ちゃんと仕事しろー!!」
イカ共々蹴り飛ばすまでがお約束
やれやれね(遠い目

杏、イカ墨ナイスキャッチ♪
いかめし?
ふふふ、もちろんもち米派よ!

オジサンも今度こそちゃんと戦ってよ?
私も刀でどんどん捌いて
炎もお任せ…って祭莉ん?危ないってどういう意味よ!(←料理下手



●保護者(と書いてツッコミと読む)不在のかんさつにっき
「アンちゃん、コダちゃんをエスコートして登場する『騎士まつりん☆』とは、おいらのことだー!」
 唐突――でもないか。
 いつも元気な木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)であるが、今日のテンションは、何だかいつにも増して高い様子である。
 エスコート、騎士、という言葉がある辺り、双子の妹と姉同然の幼馴染とは言え、いわゆる『両手に花』という状況になると言う事に気づいての事だろうか。
 とは言え、双子の妹と姉同然の幼馴染なのである。
 祭莉が一緒にいるのは、木元・杏(焼肉処・杏・f16565)と鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)なのである。

「小太刀、まつりん。ほら、耳を澄ませて?」
 杏は湖の畔で、自身の言葉通り、目を閉じて耳を澄ませていた。
「打ち寄せる波の音、あちこちで行われてる漁の喧騒が聞こえる……」
 別の世界では、サンマ漁はサンマの光に集まる習性を利用して、夜間から夜明けの時間帯に行われるものだが、この島では違うのだろうか。そうなのかもしれない。
 いずれにせよ、杏の後ろの湖は静かなものだ。
 漁が行われている様子も、全くない。
 けれども、ここは湖だとか、漁が行われていないと誰かが言っても、杏は『ノープロブレム』とでも返した事だろう。
 要するに、祭莉のテンションに引っ張られる事無く、自分のペースなのである。

「空飛ぶイカ?」
 一方、小太刀は夜空を見上げて、きりっと睨みつけていた。
 星空に擬態しているイカが夜空にいるのだ。小太刀に油断はな――。
「何よ、ウサミミが生えてる分、海の仲間達の方が可愛いんだからね!」
 びしっと夜空を指差し、小太刀は啖呵を切っていた。
 油断とかそういうものではなく、対抗心がメラメラと燃えているようだ。
 要するに小太刀も祭莉にも杏にも釣られず、自分のペースである。

「ごらん、この美しいイカ空。虹色にキラキラ光って……」
 そして祭莉も祭莉で、2人に遠くの夜空を示す様に、何やら芝居がかった仕草で空に手を掲げていた。
 その虹色の中にイカらしきシルエットが見える。
「とても……美味しそう!」
 まあ、あっさりと花より団子の路線に行ってしまうのだが。
「祭莉んねぇ」
「んむ。いつものまつりん」
 一応聞いてた小太刀と杏が、揃って頷いていた。
「鮮度が良いなら、お刺身で。大きいみたいだからイカソーメンも出来るかな? さっとゆがいて、さっぱり酢味噌和え。イカフライにしたらソースも合うね。モチロン、醤油ダレの一本焼きは、おまつりんてきにも最高だね!」
 祭莉は祭莉で、思いつくままに頭に浮かんだ料理を並べていく。
「おまつりん……」
「あ、ついついコダっちゃった。てへぺろ♪」
「ちょっと祭莉ん? なんでそこで私なのよ!」
 杏に指摘されてぺろっと舌を出してみせた祭莉に、小太刀が食って掛かる。
 この3人だけで出かけるとなると、深刻に、(常識人な)ツッコミ役が不足しているのではないだろうか。

●知人の気配
 ――コケッコー!
「今のって……」
「メカたまこ……」
「だよね?」
 聞き覚えのある、ニワトリの様な鳴き声が遠くの空から聞こえて来て、3人は思わず顔を見合わせる。
 鳴き声が聞こえて来たのは、さっき祭莉が「ごらん、この美しいイカ空」と手をやった方角ではなかったか。
 あの虹色は、イカが放つ催眠光。
 つまり、誰かが戦っていたからこその、虹色キラキラだ。
 空が虹色になっていた方からあの鳴き声が聞こえた事は、何もおかしくない。
 何故ならこの秋島は、ワインも美味だと言う話だったではないか。
「まあ、来てるわよねぇ」
「イカはお酒に合うって聞くし」
 しみじみ呟いた小太刀に、祭莉がこくんと頷く。
「どんどん狩っていこー!」
 杏の言葉に頷いて、3人はイカが隠れる頭上の夜空を見上げた。

●それはそれとしてイカ漁のお時間です
「Come on! flying Sea イカ!」
 銛型にした白銀の光剣『灯る陽光』を空に掲げて、杏がキリッと言い放つ。
「シー?」
「杏、ここ湖」
「……んむ? ノープロブレム」
 ほらね。
 海ではなく湖と祭莉が首を傾げ、小太刀がつっこんでも、杏は気にしない。
「さあ、イカ、遠慮せずその巨体でかかってきて! わたしは、姿焼きが、好き!」
 杏の声が、夜空に響く。
 だが、イカが動き出す気配はなかった。
 相手は、奇襲したくて隠れている魔獣だ。いるのは判っているからかかってこい、と告げてもさすがにノコノコ動き出しはしないか。
 杏の、丸ごと狩って食べてあげる、という強い意志を恐れているだけかもしれない。

(「さすがね、杏」)
 じっと空に銛を突き付ける杏の姿に、小太刀は胸中で息を呑んでいた。
(「祭莉んもさっき、色々イカ料理を言ってたし……ウサミミな海の仲間達を呼び出したいところだけど」)
 ここに海洋生物を足したら、木元兄妹に間違えて食べられかねない。
 小太刀が息を呑んだのは、2人の食欲にだった。
「よし。ここは敢えてのオジサンね。銛も槍も似たようなものでしょ! ほらほら、久しぶりの出番だよー!」
 という結論で、小太刀はサモニング・ガイストで鎧武者のオジサンを召喚した。
 ――のだが。
 現れた鎧武者は、いつもの槍は背中に背負って、両手は何故か酒樽抱えていた。
「オジサン、久しぶりー♪ 元気してた?」
「……またなんでかお酒持って来るし……」
 手を振る祭莉にブンブンと大きく酒樽を振り返すオジサンのテンションの高さに、小太刀は頭を抱えたくなっていた。
 いつぞや宴会の場に召喚した時も酒樽抱えて出てきたが、まさか宴会でもないのに酒樽抱えて来るなんて。
「イカの姿焼きが食べられると聞いて? まあ食べられると思うけど……え? ついでにイカと飲みに来た?」
 オジサンの意図を確認すれば返って来た予想外の答えに、小太刀の目が丸くなる。何を言っているんだろう、この鎧武者。声に出してるわけじゃないけど。
 そこに、イカが1匹、擬態を解いてノコノコと空から降りてきていた。
 オジサンが酒升を差し出せば、受け取るようにイカが足を伸ばす。
「って、こらー! ちゃんと仕事しろー!!」
 オジサンもイカも纏めて、小太刀が蹴り飛ばした。
 ツッコミどころは、そこなのか。イカがお酒に釣られたことには、小太刀は疑問を抱かないのだろうか。
「やれやれね」
「イカ!!!!!」
 遠い目になる小太刀の後ろで、杏がイカに飛び掛かって銛をぶっ刺した。

●今度こそイカ漁のお時間ですね?
「え、コダちゃんのオジ使いが厳しい?」
 しょんぼりした様子で体育座りしてしまったオジサンの前で、祭莉が屈んで、うんうんと話を聞いてあげていた。
「あー、まあコダちゃんツンデレだしね!」
「誰がツンデレよ、誰が!」
 オジサンに向けた祭莉の一言に、小太刀がすかさず反応する。
「ほらね?」
 ですなぁ、みたいに祭莉に頷くオジサン。
「オジサン。もう一回蹴られたいみたいね?」
 ツン全開で、小太刀がオジサンに視線を向け――。
「小太刀、危ない!」
 そこに杏が横から飛び込んできて、何故か小太刀を押し倒した。
「ちょ、ちょっと、杏?」
 不意を衝かれた事もあり、小太刀はあっさりと倒され、杏にのしかかられる。まあ不意を衝かれてなくても、杏には力ではとても敵わないだろう。
「じっとしてて」
 小太刀を押し倒した体勢のまま、杏はさっと掲げる。

 ――バケツを。

 ばしゃんっと音を立てて、空から飛んで来たイカ墨がバケツの中に収まった。
「もういいよ」
 立ち上がって小太刀を解放した杏は、二射、三射と続いて降って来るイカ墨もしゅばばっと受け止めた。
「杏、イカ墨ナイスキャッチ♪」
「んむ。美味なるイカスミも一滴残らず回収する」
 押し倒された理由を知って笑顔を見せる小太刀に頷いて、杏はイカ墨を零さぬように慎重に、されど素早くイカ墨を受け止めて回る。
 杏のその身のこなしは、いつの間にかひそりと発動していた絶望の福音のお陰だ。
 本来は回避の為の予測術なのだが。敢えてそこに飛び込んでイカ墨集めるのも、まあ出来るか。出来るな。
「え、アンちゃんのスミあしらいが気になる?」
 まだオジサンの聞き役をしていた祭莉が、驚きを感じ取る。
 杏の動きは、鎧武者のオジサンをして驚愕させるものだった。
「あー、まあアンちゃん胃袋は底なしだしね!」
 しかし祭莉は、和やかに笑って返す。いつもの杏だしね。
「わたしは、イカスミも、好き」
 杏は何故かそこで照れたように片手を頬に当てながら、業を煮やして降りて来て触腕を伸ばして来るイカに、光の銛をザクザク突き刺していた。
「オジサン! いつまでも座ってないで、戦ってよ?」
 そこに小太刀の声が響く。
 いつの間にか日本刀『片時雨』を抜いて、臨戦態勢だ。

「っと、おいらも自分の分確保しとかなきゃ」
 弾かれたように立ち上がるオジサンに続いて、祭莉もぴょんと飛び起きた。
「イカは、長い腕がモチモチで一番オイシイから!」
 さっと広げた祭莉の両手に現れる、舞扇の幻影。
 オジサンが炎を放てば、照らされた夜空に擬態が揺らいだイカが見える。
「見えたぁ!」
 一瞬見えたイカに向けて、祭莉が舞扇を投げ放った。
 イカに当たった舞扇が、ボンッと爆ぜる。
 その衝撃と表皮が焦げた事で、狙われたイカは完全に擬態が崩れた。けれど致命傷にはならず、イカはゆらゆら降りてきて、祭莉に触腕を伸ばして来る。
 それでいい。
 イカにそうさせる事こそが、祭莉の狙いなのだから。
「それを待ってたんだよ!」
 祭莉は目を輝かせて、如意みたいな棒を先端をイカに向けて構える。
 祭莉が手元で捻って引っ張れば、にゅいーんと如意みたいな棒が伸びていった。
 伸びた棒がイカの触腕と交錯したその瞬間、祭莉は如意みたいな棒の手元をカチッと動かし伸長を止めると共に、ぐるんっと大きく棒を回した。
 ぐるん、ぐるん。
 二度、三度と、祭莉が如意みたいな棒を何度か回す内に、イカの触腕と足が、棒に巻き付ける様にして絡め取られていた。
「せーのっ!」
 そして祭莉が伸ばしたままの如意みたいな棒を振り下ろせば、絡め取られたイカは、成す術なく地に落とされる。
 イカだって、抵抗は試みていた。
 けれどいくら藻掻いても、祭莉の棒に巻き付いた触腕と足が離れないのだ。
 見えない何かに、縛られたように。

 遮那王の刻印。

 祭莉は如意みたいな棒を回しながら、オトナには見えない夢色の絆で、繋がったイカを縛っていた。先に投げ放った舞扇は、牽制と、絆を繋ぐ為の布石。
 忘れちゃいけない約束は、少年時代の宝物。
 けれど祭莉なら、きっと大人になってもこの力を使えるのだろう。
 祭莉は如意みたいな棒をそのまま、身動きが取れないイカの胴体にぶっすりと、深くまで刺して、グリグリと探るように動かす。
「忘れない、覚えとく!」
 そして、容赦なく引っこ抜いた。
 通常のイカならば指で出来る、胴体とゲソ部分の分離を、祭莉は如意みたいな棒を使ってやってのけたのだ。
 忘れないのは、まだこれから食べるイカの味も――と言う意味も籠っていたか。
「アンちゃん。イカめし用の胴体、パース!」
「きゃっち!」
 祭莉が如意みたいな棒を振って投げて来たイカ胴体を、杏が軽々と受け止める。
「小太刀、白米ともち米どちらがお好み?」
 うさみん☆にイカ胴体を預けながら、杏は小太刀に首を向けた。
「ふふふ、もちろんもち米派よ!」
 イカの触腕を斬り飛ばしながら、小太刀は迷わず杏に返す。2人の脳裏には、イカ胴体にもち米をたっぷり詰めたイカ飯が浮かんでいたとかいないとか。
「あ、小太刀。次は胴体の輪切りよろしく。里芋との煮付けも作らなきゃ」
「了解! どんどん捌いていくわよ!」
 杏は光の銛をぶん投げて、小太刀が落ちて来たイカに片時雨の刃を入れる。
「火加減はコダちゃん……だと危ないから、オジサンヨロシクねっ♪」
 如意みたいな棒を振り回しながらの祭莉の言葉に、オジサンが心得てると言わんばかりに大きく頷いた。
「って祭莉ん? 危ないってどういう意味よ!」
 小太刀が耳ざとく反応し、声を上げる。
「えへへっ。次はどんな海老かなぁ♪」
「まったくもう……」
 笑って誤魔化す祭莉に、小太刀は少し膨れながらも、イカに向き直る。
 遊んでいる様な賑やかさで、3人は次々イカを仕留めて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
年中秋のような気候の島か…過ごしやすそうで、いいじゃないか。
しかも、うまい魚が獲れてワイン作りも盛んだなんて。
屍人帝国の植民地にするなんて、勿体ない!

…さて、まずはイカの魔獣を片付けなくては。
《仙術》を応用した【グラビティマスター】で重力を制御、
空へと飛び立つ。…いるな、光っているからすぐにわかる。
牽制にクロスグレイブを一射、二射。大きな群れができる前に
一匹ずつ引き寄せて、仕留めるぞ。
スラッシュストリングを《念動力》で操り、
《切断》《斬撃波》でイカ刺しにしてやろう。
催眠光には注意を払うが、もし直視して戦闘に支障がでるなら
肩に止まっていたメカたまこEXに《大声》で正気に戻してもらうぞ。



●空で、イカと、握手
 少し乾いた冷たい風に、長い髪が流される。
「確かに秋のような風だな。年中秋のような気候の島か……過ごしやすそうで、いいじゃないか」
 秋島。メトポーロン島。
 その名前の由来を、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は肌で感じ取っていた。
「屍人帝国は、ここを植民地にしようとでもしているのか?」
 正体の判らぬ新たな屍人帝国の思惑。
 呟いたそれはガーネットの推測に過ぎないが、可能性は低くないと思っている。気候が良い上に、うまい魚が獲れてワイン作りも盛んだなんて。
 他に辺境の島を狙う理由でもあるなら別だが――その可能性を探るにせよ、今は先にやるべきことがある。
「なんにせよ、まずはイカの魔獣を片付けなくては。封神武侠界で修行をした成果を見せてやろう!」

 グラビティマスター。

 仙人より会得した重力制御術で、ガーネットは空に浮かび上がる。
「光っているなら、別角度から見れば……」
 イカ――ドーンテンタクルスは、地上から見上げた時に星空に紛れられるように擬態している筈だ。そしてそれが透過と発光の組み合わせで実現しているのなら、見る角度を変えれば、擬態が擬態でなくなる可能性は高い。
「すぐに見つけて――ん?」
 ぷにん。
 上昇するガーネットは、頬や背中に妙な感触を感じて首を傾げた。ひんやりとしていながらも、弾力を持った柔らかさ。
「もしかして……イカ、なのか?」
 不意の遭遇に戸惑うガーネットの腕に、にゅるんとした感触。
 イカが絡みついてきたようだ。
「そこか」
 未だはっきりと見えないイカの足を、ガーネットは逆にぎゅっと握り締めた。強く握られて驚いたのか、イカがのたうち回って擬態が崩れる。
 その姿がガーネットの目に明らかになった直後、イカは空中でバラバラになって落ちていった。
 スラッシュストリング。未開惑星の宇宙海獣すら切断できるようにと言うコンセプトで造られた鋼の糸を念動力で操り、ガーネットは手も触れずにイカを切り刻んでいた。
「……いるな。この角度なら、光っているからすぐにわかる」
 先ほどは予想外に低い高度での遭遇で反応が遅れたが、そうと思って見れば、ガーネットは星空の中の違和感に気づいていた。
 十字架を模した携行型砲塔『クロスグレイブ』を構え、牽制の一射。
 二射目は撃ちながらクロスグレイブを振るい、自身の周囲に強く牽制しておく。
「イカ刺しにしてやろう!」
 そうしてイカを遠ざけておいて、ガーネットはスラッシュストリングを再び念動力で動かした。自身を中心に広げながら回し、斬撃波を飛ばしてイカを切断していく。
 ――ボゥ、と夜空に生まれる虹色の光。
 ガーネットを脅威と見たイカが、擬態を解いて放つ催眠光。
『コケッコー!!!』
 だがその光がガーネットに届き切る前に、その肩で、にわとり型ドローンのメカたまこEXが鋼の翼を広げ、けたたましい鳴声を大きく響かせた。
 その音量にガーネットは正気を支えられながら、光を放つイカにスラッシュストリングを飛ばして、切り刻んでいった。

 ガーネットは、気づいていたのだろうか。
 正気を保つ為にメカタマコに上げさせた大声が、思わぬ遠くまで響いて知人の耳にも届いていた事に。
 空気が冷たい方が、音は遠くまで響くのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
新たな屍人帝国か
一体どんな敵かまるでわからないけれど
きっと海産物が豊富な国なんだろうな

今夜は随分と星が綺麗だ
さておき旨味成分豊富な墨…気になるよね
星も僕にイカ墨パスタを作れと囁いている
パスタがなければ打てばいいじゃないって

という訳で動物と話す力を使って
穏便にイカ墨を分けてもらおう
その擬態とてもイカしているね
墨もイカしているんだろうな
おだてて墨を集めておこう

普通に解体してもいいけど
急に胴体をひっこ抜いたりすると
良い子の皆が驚くかもしれない
最終的に面倒になってUC使うけど…

はい
ゲソとエンペラを綺麗に切って
軟骨を取り除いたものがこちらになります
僕はすごい魔獣解体士なので
残虐なシーンもカットできるんだ



●イカもおだてりゃ墨を吐く
「今夜は随分と星が綺麗だ」
 偽りの星も瞬く夜空を見上げ、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、まるで誰かを褒め称えるような微笑を浮かべていた。
「きっと、そのイカした擬態のお陰だろうね」
 ような――ではない。
 章の褒め言葉は星空に擬態したイカ――ドーンテンタクルスに向けられていた。
「イカ墨も上手く使ってるんだろう? さぞかし旨味もイカしているんだろうな。どうだろう。イカしたイカらしく、穏便にイカ墨を分けてくれないかな?」
 魔獣相手におだててイカ墨をせしめる気なのだ。
 人間離れしたレベルの動物会話が無ければ不可能な事だが、そもそも、そうそう浮かぶ発想ではないだろう。軟体動物相手の交渉なんて。
「うん? お前もイカ墨狙いか?」
 夜空のイカの心を読んで、章がその心中を口走った。
「旨味成分豊富なイカ墨、人気じゃないか。気になった僕の目に狂いはなかった」
 イカの戸惑いを他所に、章は滔々と語り続ける。
「けれども、君達は僕にイカ墨を分けるべきなんだ」
 すっ――と、章は片手を掲げて人差し指を伸ばす。
「夜空の星々も、僕にイカ墨パスタを作れと囁いている。パスタがなければ打てばいいじゃない――って」
 章の後ろでは、収穫目前の小麦が、夜風にそよそよ揺れていた。
 囁いてるの、星空じゃなく案外近くにいませんか?
「けれど、パスタを打ってもイカ墨が無ければイカ墨パスタは作れない。だから、僕にイカしてるイカ墨を分け――」
 唐突に、章は告げる言葉を打ち切った。
 イカの戸惑いが極まったのを、感じ取ったのだ。どうすれば、ここまで軟体動物の心の機微を感じ取れるのか。
 ともあれ、章は方向性を変える事にした。
 アメの次は――ムチだ。
「僕は道民じゃなくて千葉県民だけど、その気になれば、君達を普通に解体する事も出来るんだ」
 章の手が、黒い解体用の鉈に伸びる。
「けれど、急に胴体をひっこ抜いたりすると良い子の皆が驚くかもしれないし、イカ墨も零れて勿体無いだろう?」
 羅生門を抜いた章に恐怖を感じたイカが、墨を撃ちだす。
「やめるんだ、イカ墨の無駄使いは。僕に旨味を足した所で、僕が煮ても焼いても食えないのはイカんともし難いんだから」
 何処か寂しげに告げて、章はイカ墨を避けようともせずに地を蹴って跳んだ。

 そして――。

「はい。ゲソとエンペラを綺麗に切って軟骨を取り除いたものがこちらになります」
 章の前には、綺麗に解体されたイカが並んでいた。
 活〆どころか活解体。
 10分割された足なんて、まだピチピチのたうっている。お目当てのイカ墨も、墨袋ごとゲットだ。
「途中経過? すごい魔獣解体士は、残虐シーンくらいカットできるのさ」
 解剖実習――サイエンスフィクション。
 本気出せば0.009秒台の解体なんて、目にも止まらない速さなのだ。気が付いたら全てが終わっている。そう言う事もある。
「新たな屍人帝国か……。一体どんな敵かまるでわからないと言う事だけれど、こんなに活きの良いイカを持っているなら、きっと海産物が豊富な国なんだろうな」
 まだ見ぬ黒幕に思いを馳せながら、章は次のイカの解体にかかるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

琥珀川・れに
※アドリブ好き過ぎて全てお任せ
※文面は判定とは違うUC使用でも可、面白そうなもので

「貴族たるもの余裕を忘れてはいけないな」
「やあ、なんて美しい人だ」

ダンピール貴族
いかにも王子様っぽければねつ造歓迎さ
紳士的ジョークやいたずらも好きかな

敵も味方も性別か見た目が女性ならとりあえず一言は口説きたいね
ナンパではなくあくまで紳士的にだよ?

実は男装女子で
隠しはしないが男風源氏名レニーで通している
その方がかっこいいからね

戦闘スタイルは
・剣で紳士らしくスマートに
・自らの血を操作した術技
が多い
クレバーで余裕を持った戦いができれば嬉しいよ
早めに引くのも厭わない



●イカに薔薇は多分似合わない
 秋島には野営地も用意されているが、宿と酒場を兼ねた様な店もある。島に訪れた勇士が全て、野営するわけではないのだ。
 とは言え、閑古鳥が鳴いている日の方が多いのだが。
「なんだい? 今夜はやけに騒がし――」
 外から聞こえる喧騒に、暇を持て余した女主人が店の外に顔を出す。
 そして、言葉を失った。
 遠くの空が、夜だと言うのに虹色に染まっているではないか。
「……オーロラかい? いや、あれは冬島にしか……」
「綺麗な夜空だね」
 唖然と空を見上げる女性の背に、声がかかる。
「けれど、中に戻った方がいいよ」
 女性が振り向けば、仕立ての良さそうなスーツに煌びやかな紫のマントを羽織った琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)が、そこに立っていた。
「今宵は少し、危険な夜だからね。あなたの様に美しい人にはそぐわない夜さ」
「ハハ。お嬢ちゃんの様な若い子にそんな事言われたのは、初めてだね」
 女性を安心させようと、れには微笑を浮かべて歩み寄る。
 けれども、その効果はあったのだろう。
「ハハ。お嬢ちゃんの様な若い子にそんな事言われたのは、初めてだね」
「――おや」
 落ち着きを取り戻すと同時に、女性はれにの男装に気づいていた。
「あっさりと見抜かれるとは、良い目をお持ちだ――僕はレニー。僕の顔を立てると思って、中に戻ってくれないかな?」
 それでもれには微笑を崩さず、女性の手を取り、触れない程度に甲に唇を寄せた。
 別に、女性である事を頑なに隠そうと言うのではない。
 ダンピールの貴族社会の中で、男児として育てられた事で、れには『貴族男子の憧れと言える王子様』の様な男装や振る舞いが、抜けきらないだけだ。
 安心させようと女性に告げた言葉がまるで口説き文句の様だったのも、その影響。
「良くわからないけど、そうしとくよ」
 れにのそうした振る舞いを特に追及する事無く、女性は店の中へ戻っていった。
「さて……と」
 扉が閉まったのを確認し、れにはその場で踵を返した。
「この辺りにも、いるのだろうね?」
 多くの星が見える夜空を見上げ、腰の剣に手をかける。
「見えないだけでいるのなら、こうするまでさ」
 れにが『エペ ド ルーン』を、鞘から抜き放てば、薔薇の花弁が刃から舞う。
「さぁ、この薔薇で幻想の世界へ誘ってあげるよ」
 れにが剣を振り上げれば、花弁は風に吹かれたように夜空に舞い上がった。

 薔薇の妖剣――ローゼス・イリュージョン。

 血で作った薔薇の花弁を剣より飛ばす血の術技が一つ。
 舞い上がった薔薇の花弁が、夜空のそこかしこで貼り付いたように動きを止める。
「動けないだろう?」
 れにの放った血の薔薇の花弁は、纏わりついた対象の動きを封じる。空中のイカは、星空に擬態したまま動けなくなっていた。
 そしてその位置は、花弁が教えてくれる。
 正確な位置は判らずとも、剣で貫くには充分。届かぬ高さも、後ろの建物の屋根を借りれば問題ない。
「このまま、一方的に倒させて貰うよ。君達は、人々に近づき過ぎた」
 れには膝を沈めて跳躍すると、貼り付いた薔薇の花弁に細身の刃を突き立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

乱獅子・梓
【不死蝶】
イカ??エビ??
グリードオーシャンならまだ分かるが
ここは空の世界ブルーアルカディアでは…??
思わず宇宙猫状態
綾の奴は細かいこと置いといて食うことしか考えていないし…
あときっと俺が全部作ることになるんだろうな

俺も細かいこと考えるのはやめて戦いに専念しよう、うん
というわけでまずは焔と零を成竜に変身させ
俺は焔の背に乗り、綾には零を貸してやる

UC発動、炎属性のドラゴンたちを召喚
空に向け、一斉にブレス攻撃を浴びせる
どこにいるか探すのなんてまだるっこしい
とにかく広範囲に攻撃して一網打尽だ!

ちょっ、あとでちゃんと料理してやるから今食べるのはやめなさい!
行儀悪いことしようとする綾をオカンの如く注意


灰神楽・綾
【不死蝶】
わぁ、イカとエビとサンマだって、梓
俺どれも大好き
早く食べたいな~どういう料理がいいかな~
イカ飯、エビチリ、シーフードパスタ…
シンプルに焼くだけというのもまたいいよね

さーて、それじゃあ張り切って食料調達と行きますか
零の背中に乗せてもらって空へと向かう
UC発動し、両手に構えたDuoの攻撃回数を増加

まずは無数のナイフを念動力で操り
空に適当に投げつけまくって擬態した敵を探る
見つけたらすかさず接近、Duoでザクザク斬りまくる
後で料理しやすいように今のうちにしっかり捌いておきましょうねー

梓のドラゴンたちにこんがり焼かれたイカ
いい匂いが漂ってきて美味しそう
ねぇねぇ、一口食べちゃっていいかな?



●不死蝶――イカ狩りでも手は抜かない
「イカとエビとサンマだって、梓」
 どれも好き――そんな風に笑う灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が初めて出会った頃の彼に比べれば、随分と丸くなっているのではないか。
 生憎と、今の梓はそんな、しみじみとする精神状態ではなかったが。
「……イカ?? エビ??」
 サングラスの下で紅い目を丸くして、梓は夜空を呆然と見上げていた。
(「ここは空の世界ブルーアルカディアでは……??」)
 胸中で呟いた梓の認識は、正しい。
 星の瞬く夜空に、雲ひとつ見当たらないのは、梓達が今いる場所が、雲より高くに漂う島の上だから。その縁に立てば、どこまでも広がる雲が見える筈だ。
 こんな空に、イカがいると言うのか。
 あとからエビも飛んでくると言うのか。
(「海洋世界グリードオーシャンならまだ分かるんだが。それともあれか。文字通りの、雲海だとでも言うのか??」)
 ツッコミ気質が災いして、銀河の様にぐるぐる渦巻く梓の思考。
「――イカ飯、エビチリ、シーフードパスタ……」
 梓を呼び戻したのは、食欲を隠そうともしていない綾の呟きだった。
「早く食べたいな~、どういう料理がいいかな~、シンプルに焼くだけというのもまたいいよね?」
(「綾の奴、細かいこと置いといて食うことしか考えていないし……」)
 我に返った梓は、胸中で溜息を零しながら、綾に倣って細かいことを考えるのはやめようと心を決める。
 ――綾が呟いていた料理は、きっと全部、梓が作る事になるんだろうから。

「焔、零」
『キュー!』
『ガウ』
 梓の肩から、2体の仔竜が羽ばたいていく。
 相棒の意を汲んだ2体は、梓の目の前で一時的に成長した姿へと変わった。
「梓、零を貸してやる。焔も頼むぞ」
「ん。零、よろしくー」
 綾は炎竜の焔に、梓は氷竜の零に。それぞれ翼を広げた竜の背に乗って、夜空へ舞い上がっていく。
『キュ?』
『ガゥゥ』
 だが――上昇し始めてから大した時間も経たない内に、焔と零が上昇を止めて、揃って訝しむような鳴き声を上げた。
「焔、零、どうし――うん?」
 何事かと声をかける梓の頬に、ひんやりとして、ぷにっと柔らかい感触。
「もしかして……イカか?」
 イカである。
 どうやら、案外低い所にもいるようだ。イカの触腕が届く距離、となるとそんな程度なのも仕方ないと言うものだろう。
「さーて、それじゃあ張り切って食料調達と行きますか」
 零の背で立ち上がった綾が、黒いコートを翻せば、その両手の指の間に小型のナイフが忽然と現れた。
 綾がそれを空中に放ると、傍らにふわりと静止する。
 念動力で浮かべたナイフはそのままに、綾はまたコートを翻して両手の指の間にナイフを現す。すぐに、綾の周りは宙に浮かんだナイフで一杯になった。
 一体、どれだけのナイフをコートに仕込んでいるのか。
 綾は念動力で浮かべた無数のナイフを、一斉に夜空に投げ放った。
 この星空の何処かに、相当な数のドーンテンタクルスが擬態している。擬態なのだ。例え今は見えなくても、そこにいるのだ。
 ストン、とナイフが夜空に突き刺さった。
「見ーつけた」
 隠れんぼの様な事を言いながら、綾が笑って大鎌の柄を握る。
「零。ちょっと跳んでくるから、背中でキャッチよろしく」
『ガウ』
 黒地に赤と、赤地に黒。似て非なる色合いを持つ左右一対の大鎌『Duo』を両手に構えて、綾は氷竜の背中から、ナイフを目印に星空へと跳んだ。
「すべて、ぜんぶ、ちゃんと受け止めて」
 綾のコートの隙間から、微かに紅い光が漏れる。

 ――キリング・ヘカトンケイル。

 百腕の魔人が如く手数を増やす業。
 身体の何処かにある『紅い蝶の跡』を輝かせた証たる紅光を、一瞬九度と閃かせ、綾が両手の大鎌を振るう。
 夜空に紅い軌跡が刻まれた直後――空が斬れた。
「まず1匹~」
 舌なめずりしながら、綾はバラバラに斬断したイカの残骸を蹴って更に跳んだ。

「……え? 待て、イカでかくね??」
 零の背中を蹴って跳んだ綾を目で追っていた梓は、また目を丸くしかけていた。
 斬られて絶命すれば、イカの擬態は解け、その大きさが詳らかになる。ああ、確かに成人男性程あると聞いていた通りだ。
「あれでイカ飯……? 米をどれだけ炊けば足りるんだ??」
 イカの大きさに、梓の思考が再び銀河の如く渦巻きかけてた。綾の戦い方を見る限り、恐らくイカ飯は作る事になりそうな予感がするのだ。
「綾の奴……器用な真似を」
 イカの間を飛び交う綾を目で追って、梓が小さく嘆息する。
 最初こそ大鎌でバラバラにしてしまったが、それで気づいたのだろう。少なくとも胴体はイカの原型を残さなければ、胴体にご飯を詰めるイカ飯は作れないと。
 数匹の間に、左右どちらかの大鎌で足を斬り落とし、反対の大鎌の刃を胴体に突き刺す様に振るうと言う方法を確立している。
 これは――梓もイカの形を残すのを求められているのだろうか。
「……焼くか。どこにいるのか、いちいち探すのもまだるっこしいしな」
 もう細かい事を考えるのを放棄して、梓は火力で攻める事にした。
「集え、そして思うが侭に舞え!」

 竜飛鳳舞――レイジングドラゴニアン。

 任意の属性の竜を喚ぶ業で、綾は焔と同じ炎の竜の群れを喚び寄せた。
『グルル……ッ』
「焔も頼むぞ。一網打尽だ!」
『キュー!』
 唸りを上げる竜達に焔も加わって、115体の竜の口から放たれる炎の吐息が、夜空を煌々と照らして燃え上がる。
 擬態で正確な位置がわからない敵の集団に対する戦術として、広範囲に攻撃すると言うのは、最適解のひとつと言って良いだろう。
 空を自在に飛ぶ竜の群れが放つ炎が、まるでオーブンの様にあらゆる方向からイカを焼いていく。イカがその炎の中で、のたうち回るしか出来ない。
 擬態も続けられなくなり、文字通りのイカの姿焼きである。
「おー。梓、派手にやってるなぁ」
 零の背に戻った綾の元に、イカの焼ける煙が届いていた。
「ん?」
 その煙の中に、綾は何とも言えない香ばしさを感じる。
 イカが丸ごと焼かれているのだ。その体内にあるイカスミも焼け、その旨味はプスプスと上がる黒い煙に籠っているのだ。
「ねぇねぇ、いい匂いが漂ってきて美味しそうなんだけどー!」
「ん?」
 それに気づいた綾は、零の背でぶんぶんと手を振って梓を呼ぶ。
「一口食べちゃっていいかな?」
「あとでちゃんと料理してやるから、今食べるのはやめなさい!」
 行儀悪いと窘める、オカンな梓の声が夜空に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

結城・有栖
ブルーアルカディアのイカは空を飛ぶんですね。
…美味しいらしいですが、どんな味なんでしょうか。

「あの大きさだから食べごたえはありそうダネー。」

まず、UCを発動してオオカミさんを召喚。
上空に黒い竜巻を発生させて、上空のイカを竜巻に巻き込むようにして攻撃をしてもらいます。

竜巻から逃れて下に降りてくるイカに対してはオオカミさんと連携して攻撃。
私は咎断ちの大鉈を振るって両断、オオカミさんには風の爪で触手を刻んでもらいましょう。
敵からの攻撃には【野生の勘】【見切り】で回避を優先、いざという時は【オーラ防御】で対処します。

「ねぇ有栖、これって生で食べても大丈夫カナ?」
…せめて火は通しませんか?



●オオカミさんもイカ食べたい
 夜空が炎で、赤く照らされている。
 別の方向に視線を向ければ、夜空は虹色の光に照らされていた。
 それらの光の中に、擬態が解けたイカのシルエットが浮かび上がっている。
「ブルーアルカディアのイカは空を飛ぶんですね」
 空中に見えたイカのシルエットに、結城・有栖(狼の旅人・f34711)はイカが空に浮かんでいるという現実を受け入れた。
 まあ、そんな事もあるだろう。
「……美味しいらしいですが、どんな味なんでしょうか?」
 美味しいらしい。
 それだけしか聞いていないが、一口に美味しいと言っても色々ある。甘さなのか、辛さなのか――或いは癖のある味も珍味を越えて美味と呼ばれる事もある。
『あの大きさだから食べごたえはありそうダネー』
 独り言ちた有栖の言葉に、答える声は有栖の中から届いた。
 有栖に憑いた――と言うよりも宿っているオウガ、オオカミさんだ。
「イカ食べたいなら、行きますよ、オオカミさん」
『あいよー、一緒に暴れましょうカ!』
 本音を察した有栖の声に、オオカミさんが応える。直後、有栖の身体から何かが抜ける感覚がした。
 それは、気のせいなどではない。
 有栖の隣には、もう1人の有栖が現れていた。

 魔獣具現・オオカミさん。

 有栖が想像で生み出したエネルギーを消費して、オオカミさんを、有栖自身と同じ姿で具現化させる術。
「まずは風を」
『!』
 オオカミさんの声で応えて、もう1人のアリスが空に両手を掲げる。どこからともなく吹いてきた風が、イカの間を吹き抜けた。
 昼間であれば、その風が黒い風であるのがはっきりと見えただろう。
 夜空にあって黒い風はただの風のようであった――のは、ほんの僅かの間の事。オオカミさんが生み出した黒い風は、あっという間に烈風の勢いになって、風圧で空中のイカが押しやられていく。
『見えて来たネー』
 強制的に押しやられた事で、擬態が景色とずれて意味をなさなくなったイカを見上げながら、オオカミさんは腕をぐるぐると回した。
 オオカミさんが腕を回す度に、烈風も空でぐるんっと渦を巻く。
 さながら黒い竜巻の様に渦巻く風に、イカ達は次々と高度を下げていった。
「オオカミさん、風の爪を!」
『あ、そっちもカ』
 有栖の意に応えて、オオカミさんが五指を広げた。指で風を引き裂くように腕を振るえば、放たれた風の爪がイカの足を斬り飛ばす。
 斬られて落ちたイカの足は、まだそこでビチビチ動いていた。
『おお、新鮮ダネ!』
「……」
 嬉しそうなオオカミさんの横で、有栖は表情を変えずに『咎断ちの大鉈』を抜いて、その刃の腹に指を当てて、滑らせた。
「っ!」
 短い呼気と共に有栖が大鉈を振り上げれば、幾つもに分離した大鉈の刃が鞭のようにしなって跳ね上がる。
 全ての足を斬られたイカにそれを防ぐ術はなく――成す術なく両断されたイカが、地に落ちた。
「ふぅ」
 小さく息を吐いて、有栖は大鉈の刃を一旦も戻す。
『ねぇ有栖、これって生で食べても大丈夫カナ?』
 そこに、オオカミさんがさっき斬り落としたイカの足を持って来る。まだ、ピチピチしてるイカの足を。
「……せめて火は通しませんか?」
 有栖は切実に、そうすべきだとオオカミさんに訴えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明石・鷲穂
栴(f00276)と来た

浮かぶ島って妙なもんだな。
秋島かあ。季節の中じゃ一番好きだな。なにより飯が美味い!
食欲の秋をしに行こうぜ。

よし、初手は任せた。
栴が散らしたイカを狙っていこう。
怪力を込めたグラップルで掴み取り、つまみ食い。既に美味い。
UCを発動したら、そのまま手近な奴から拳で攻撃。
攻撃してきたイカにはカウンターを見舞おう。
1匹で何食分だ?何匹持って帰るか決めておくべきか。

イカ墨だ!絞るほど出てくるが····もう少し締めてみるか。
これも回収できるか?
今は凍ってるがイカ焼きにしても美味いだろうな。
·····さっき生で食ったからな。薬貰っていいか?


生浦・栴
山羊の(f02320)と
俺では飛べぬ高度ゆえ、興味深い眺めだな
まあ楽しむのは最後の楽しみに回そうか

先ずは眼鏡の結界術をそのまま俺と山羊のの範囲で展開する
そう頑丈でも無いが解呪分の時間稼ぎくらいはできよう

数撃てば中ると云うても矢張り無駄撃ちは面倒だ
衝撃波を広範囲に放って落ちて貰おう
地に在る敵は山羊のに任せられるのでな
俺でも再度魔力で氷属性の刃を放っておく
思うほど落ちて来ぬなら衝撃波に氷の属性を乗せて動けなくしよう
片付いたものはUCに吸い込ませておく
俺では手に余るが、持ち帰れば料理上手が居るからな

お主を含め壁基準にすると何食か難しいな
墨も別口に凍らせておこう
処で腹は大丈夫か?(薬瓶片手に必要あれば



●イカをルイベにして踊り食らう
 夜空に瞬く星に擬態した、空飛ぶイカ。ドーンテンタクルス。
「よし、初手は任せた」
「任された」
 手が届くかも正確な居場所もわからぬ空の敵。それを躊躇いなく任せて来る明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)に、生浦・栴(calling・f00276)もあっさりと頷いた。
「さて……数撃てば中ると云うても、矢張り無駄撃ちは面倒だ」
 栴が眼鏡を取り出しかけると、そのフレームをコツコツと指で軽く叩いた。レンズがぼんやりと淡い輝きを放ち、自身と鷲穂の身体を同じ輝きが包んでいく。
「まとめて撃ち落とさせて貰うとするぞ」
(「眼鏡をかけると、人相悪くなるんだなぁ」)
 こっそりと胸中で呟く鷲穂の見ている前で、鬼畜眼鏡のお陰で鬼畜さが数割増しになってる栴は紅いオーブ『Ancient deep sea』を夜空に向けて無造作に掲げた。
 ドンッと空気を震わせて、衝撃波が夜空に放たれる。
 衝撃が迸った夜空のそこかしこで、星が震えた。
「落ちたな、イカ」
「ああ。だが……思うほど落ちぬな」
 落ちて来る笑みを浮かべる鷲穂の横で、しかし栴は内心、臍を噛んでいた。
 2匹しか落とせなかったのは栴の計算外だ。どこにいるかもわからないと言う部分を気にして範囲を広げた分、威力が足りなかったか。
「山羊の」
「ん?」
 トーンが変わった栴の声に嫌な予感を感じつつ、鷲穂は表に出さず続きを促す。
「少し冷たくするが、恨むならイカを恨め」
 『Ancient deep sea』の内側で、闇い水が波立ち騒めく。先以上の魔力を込めて、栴は再び夜空に衝撃波を放った。
 氷の属性を込めた衝撃波で、夜空のそこかしこが薄い霜に覆われていく。
「これで動け無かろう」
 表皮が凍って擬態が解けたイカの群れを見上げ、栴がニヤリと笑みを浮かべた。
「凍らせたか。まあ、食えるだろ」
 凍って力尽きたイカが落ちて来たのを見て、鷲穂が歩いて行った。
「結界は張っておいた。そう頑丈でも無いが解呪分の時間稼ぎくらいはできよう」
 背中に聞こえる栴の声に軽く手を振って了解を返して、鷲穂は落ちて来たイカの、冷たい足を掴んで持ち上げる。
「食わせて貰うぜ」
 そして、躊躇いなくガブっと噛り付いた。
「栴! 凍らせたのは正解かもしれないぞ。生臭さが抑えられてる! コリコリとした歯応えでいて、舌に吸い付いてくる。これはこれで既に美味い!」
 まだ完全に絶命していなかったイカが悶えるのも構わず、鷲穂はガブリ、ガブリと、足に噛り付いていく。
 文字通りの踊り食い。
 けれども、鷲穂はただ単にイカを食べているわけではない。
「――この身は不浄の皮袋」
 イカを喰らうごとに、鷲穂の身体に力が漲っていく。やがて握る鷲穂の手の力にイカの足の方が耐えきれなくなって、ブツンッと握り潰された。

 恙み宿し。

 敵を喰らい、その不浄の気を敢えて取り込む事で、己を超強化する業。その代償は、鷲穂の身体に溜まる毒素や呪詛。だから栴は先に鬼畜眼鏡の結界を広げたのだ。
「もう充分だな」
 顔を上げた鷲穂は、硬く握った拳を掲げる。
「ぬんっ!」
 そして、無造作に振り下ろした一撃で、蠢くイカに引導を渡した。
「まず一匹――うぉっ!?」
 手首までめり込んだ拳を鷲穂が引き抜くと、黒いものがイカの胴に空いた穴から噴き上がって来た。
「イカ墨か!」
 指に付いたそれを舐めてみれば、独特のコクが鷲穂の口に広がった。
 どうやら鷲穂の拳が、イカの墨袋を潰したらしい。
「美味いなこれ……もう少し締めてみるか」
 味を占めた鷲穂は、イカを持ち上げると両手でギュッと締めてみた。
「おお。絞るほど出てくるな」
「何を遊んでいる、山羊の」
 イカ墨を絞る鷲穂に、栴が近寄って来た。
「栴。これも回収できるか?」
「イカ墨か……別口に凍らせておこう」
 鷲穂が絞り出していたイカ墨を、栴は氷の魔力で凍らせる。更に魔鍵『prison cell』を取り出すと、凍らせたイカ墨にかざした。
「大人しくして居れ」

 ――Saved area。

 ユーベルコードで構築した保冷空間に、凍らせたイカ墨が吸い込まれる。
 更に栴は、トドメが刺されているイカも保冷空間に吸い込んだ。
「1匹で何食分だ? 何匹持って帰るか決めておくべきか」
「お主を含め、壁基準にすると何食か難しいな」
 吸い込まれるイカを眺めて鷲穂が発した疑問に、栴は鍵を構えたまま思案する。数匹では足りるまいが、多すぎればいつかの鳥肉地獄の再来もあり得るか。
「まあ、持ち帰れば料理上手も居る。多めに持ち帰っても、無駄にはならなかろう」
「確かに。生もいけたが、イカ焼きにしても美味いだろうな」
 栴の言葉に頷いて、鷲穂は山羊の四肢で地を蹴って跳び上がる。
「もう一匹!」
 高度が落ちていたイカの足を掴むと、一気に引き摺り下ろして地に叩きつけた。
「低高度は山羊のに任せて良さそうだな」
 鷲穂の跳躍を見て、栴は再びオーブを掲げる。今度は衝撃波を広く放つのではなく、氷属性の魔力刃を飛ばして、高所のイカを落としていった。

●恙みの代償
 栴が撃ち落とし、鷲穂がトドメが刺し、栴が吸い込む。
 作業を分担していると言っても、今回は栴の方が作業が多い。先に手持無沙汰になった鷲穂は、何とはなしに近くの高台に向かっていた。
 そこから島の外を見れば、雲が眼下に続いている。
 まさに雲海。
「浮かぶ島って妙なもんだな!」
 この世界でなければ見れぬであろう奇妙な景色。鷲穂がそれを眺めていると、イカの回収を終えた栴が、高台に昇って来た。
「山羊のも、ここまでは飛べぬか?」
「無理だな」
 栴の言葉に、鷲穂はあっさりと頷く。背中の鷲の翼。その特徴を濃くした姿に変生したとて、ここまでの高さは届くまい。
「俺でも飛べぬ高度ゆえ、興味深い眺めだな」
 竜の翼を持つ身でも届き得ない高さの景色に、栴の口元に好奇の笑みが浮かぶ。
「俺は味の方が興味深い。さっきのイカも美味かったし、秋は季節の中じゃ一番好きだからな。飯が美味い!」
 破顔して、鷲穂は高台を降りようと踵を返す。
「さて。次の食欲の秋をしに行こうぜ」
「そうだな」
 進み出そうとした鷲穂に、栴は短く告げて何かを差し出した。
「それは?」
「薬だ。結界で多少抑えているとは言え……腹は大丈夫か?」
「ははは。貰っとく」
 生きたままのイカの足を齧り宿した不浄の気の毒素は、鷲穂の腹の中で、ゴロゴロと不穏に蠢いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
リュカさんf02586と
イカですね
じゃ、リュカさんは捌く作業をよろしく頼みます
料理は私がしますので!

ハレルヤが料理できるか否か──それはこの顔を見れば一目瞭然では?
まあ大丈夫です、多分作れますとも!

まずは手軽にさくっと焼いてみますか
やっぱバター醤油ですかね
あとイカリングとイカ天も食べたいです
いや大丈夫、火を使うものこそ私に任せて下さい炭にされたくないので!!
え?どれくらいに切ればいいんでしょうね。わからん

しかしレシピを見ながら作ればそれなりの品が出来るものです
美味いでしょう?そうでしょう、そうでしょう!
作ってる最中に感じた憐憫の眼差しに折れなくて正解でした!

え、いや
次の天ぷらも私が作りますって


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
イカだって
え。俺が解体係なの?
まあいいや
弾丸が入ると体に良くないって聞いたから
今回はダガーで端から処理していこう

でもお兄さんって、料理できたっけ?
…ええ。心配だなあ
バター醤油に揚げ物?天ぷら?
なんだか心配だから、火を使うものだけでもかわろうか?
まあ、たまにはいいよね
で、どれくらいに切ればいいの?
(…え。もっと焦がした方がよくない?
味薄くない?そこはもっと塩入れるところでは?
…可哀想に
きっとお兄さんはお金がないんだな…)

え、あ、うん、美味しいよ
勿論。お兄さんが作ったものだもの

でも、次の天ぷらの相手(調理)は任せて
たっぷり色々足した美味しい天丼を俺が作るから
いっぱい食べて



●羽がなくともイカは狩れる
 夜とは、暗いものだ。
 その暗さに備えて、常に持ち歩いているランタンを切っ先にぶら下げて、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は妖刀『悪食』を振り上げた。
 夜空に上がったランタンがクルクルと回れば、放たれる光もクルクル回る。
 合わせてリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)が探照灯『星鯨』を頭上高くの宙に浮かべれば、星空に擬態したイカの輪郭が光の中に露わになった。
「お兄さん、イカだね」
「ええ。イカですね。リュカさん」
 夜空を見上げて、リュカと晴夜は、どちらからともなく顔を見合わせる。
(「お兄さん、羽を生やす技を作ってたりしないかな?」)
(「リュカさん、羽を八枚くらい生やすの習得してないですかね?」)
 いつかのどちらが翼を生やすかというやり取りを、同時に思い出していた。
 浮かんでいるのが存外に高くないとは言え、敵が空を飛んでいるのなら、そりゃあ飛べた方が便利だ。
 けれども2人とも、浮かんだそれは口に出さずに呑み込んだ。
「じゃ、リュカさんは捌く作業をよろしく頼みます。料理は私がしますので!」
「え。俺が解体係なの?」
 さっさと役割を決めて来た晴夜に、リュカは少し意外そうに小首を傾げる。
「まあいいや」
 あっさりと頷くと、リュカは肩にかけているアサルトライフルを降ろした。
「あれ? 使わないんですか?」
「うん。弾丸が入ると体に良くないって聞いたから。今回はダガーで端から処理していこうと思う」
 驚いた様子の晴夜に、リュカは武骨な短剣の具合を確かめながら返す。
「……届くんですか?」
「がんばる」
 晴夜の問いに曖昧な答えを返し、リュカは短剣を鞘に戻す。そして、近くの背の高い樹にするすると昇ると、その枝を蹴って跳び上がった。
「よっと」
 空中で、リュカの靴底にむにんとした感触が伝わって来る。
「よし」
 イカの上に飛び乗ったリュカは、イカの足っぽいものが足首に巻き付いてくるのを無視して、短剣『散梅』を抜いて身を屈め――。
 ドスッ!
 無言で、イカに散梅を突き立てた。
 ドスッ! ドスッ! ドスッ!
 何度も何度も、リュカは散梅を突き刺しては抜いて、突き刺してを繰り返す。その内、足首に巻き付いていたものが、力が抜けた様に離れていった。
 同時に、再び感じる落下感。
 リュカは柔らかいイカを蹴って、適当に夜空に飛び出す。
 むにん。
「よし」
 運良く他のイカに飛び移れたリュカは、再び容赦なく『散梅』を突き刺し始めた。

●レシピ通りに作れば料理を失敗しないなら、誰も失敗しないんだよ!
「ところでお兄さんって、料理できたっけ?」
 めった刺しにして落としてきたイカをザクザク解体しながら、リュカはふと浮かんだ疑問を口に出してみる。
「ハレルヤが料理できるか否か──それはこの顔を見れば一目瞭然では?」
 返って来たのはそんな言葉と、いつもの晴夜と変わらないドヤ顔だった。
「お兄さんが自信満々なのはいつもの事じゃない」
「まあ大丈夫です、多分作れますとも!」
 リュカの反論にも、晴夜の自信は揺らがない。
 けれども、晴夜は『多分』と言った。
 多分――その言葉は前向きなようでいて、時に不安要素にもなるものだ。
「……心配だなあ」
「レシピを見ながら作ればそれなりの品が出来るものです」
 リュカの不安をよそに、晴夜はレシピ片手にコンロを並べ、フライパンの準備を始めている。一体何を作る気なのだろう。
「で、どれくらいに切ればいいの?」
「え?」
 ある程度解体を終えたリュカが訊ねれば、晴夜の動きが一瞬ピタリと止まって、レシピを凄いスピードで捲っていく。
「どれくらいに切ればいいんでしょうね。わからん」
 晴夜から返って来たのは、不安しかない答えだった。

「まずは手軽にさくっと焼いてみますか
 このくらい、とリュカが適当に切り分けたイカの身を、晴夜がフライパンに載せる。
「やっぱバター醤油ですかね。あとイカリングとイカ天も食べたいです」
 コンロに火を付けフライパンにバターを落とすと同時に、晴夜はもう1つ並べたコンロに鍋を載せ出した。
「バター醤油に揚げ物? 天ぷら? なんだか心配だから、火を使うものだけでもかわろうか?」
 リュカが後ろから、心配そうに覗き込んでいる。
「いや大丈夫、火を使うものこそ私に任せて下さい! 炭にされたくないので!!」
「そう? まあ、たまにはいいよね」
 妙に力の籠った晴夜の熱意に、リュカは大人しく野営用の椅子に座った。
 けれども――。
(「……え。もうひっくり返すの? もっと焦がした方がよくない?」)
 リュカが見ている前で、フライパンの中のイカの身が思わぬ早さで返される。
(「味も薄くない? そこはもっと塩か醤油を入れるところでは?」)
 確か塩で下味をつけたりもしていないのに、晴夜ってば最初にバターと醤油を入れたきりでイカを焼き続けていやしないか。
(「……可哀想に……きっとお兄さんはお金がないんだな……」)
 調味料を足そうと言う考えが無さそうな晴夜に、リュカはついに憐みを抱き出した。

 それでも、火を入れていれば焼けはする。
「出来ましたよ! さあ、熱い内にどうぞ!」
 なんてこれまで以上のドヤ顔で晴夜が焼き上がった(?)イカを差し出して来るものだから、リュカは無言でそれを口に入れた。
 やっぱり焼き時間が短いのか、半生である。それだけならまだいい。バターも醤油も控えめな上に、塩も足りなかったのか生臭さも少し残っている。
 別に不味いわけではない。不味くはないが――。
「美味いでしょう?」
「え、あ、うん、美味しいよ。勿論。お兄さんが作ったものだもの」
 リュカは正直な感想を呑み込んで、歯に衣を着せて優しい答えを返す事にした。晴夜の期待の圧に負けたともいう。
「そうでしょう、そうでしょう!」
(「作ってる最中に感じた憐憫の眼差しに折れなくて正解でした!」)
 リュカの憐みの眼差しに気づいていた晴夜は、心の中でガッツポーズ。
「でも、次の天ぷらの相手は任せて」
 けれどもこれ以上任せておけないと、リュカは椅子から立ち上がる。
「え、いや。次の天ぷらも私が作りますって」
「ううん。たっぷり色々足した美味しい天丼を俺が作るから、いっぱい食べて」
 次はどちらが料理するか、2人の言い合いはしばらく続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『フライエビ』

POW   :    180℃のご褒美
【しっぽ】から、戦場全体に「敵味方を識別する【浮かぶ炎上した油のボール】」を放ち、ダメージと【油まみれ】の状態異常を与える。
SPD   :    フリットダイブ!
【両羽】によりレベル×100km/hで飛翔し、【纏う油の温度と量】×【身体のサクサク度】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ   :    油の尻戟
【腰の瞬発力を使って連続】で敵の間合いに踏み込み、【油】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は琥珀川・れにです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●謎の艦橋シーン
「……全ドーンテンタクルスの反応……途絶しました」
 薄暗い空間に、絞り出したような絶望的な声が響く。
 声の主の前には、半球状の大きなガラス玉の様なものがある。等高線の様なラインが入ったそれは、周辺外部の状況を映し出す魔導機械。
 少し前までは、少し前まではメトポーロン島の上空に配したドーンテンタクルスを示す光点が所狭しと点いていたが、1つ、また1つと消えて今は0になっていた。
「辺境の小島と思っていたが……侮ったか」
 最初の声の主よりも高い位置から、別の声が響く。
 その2人目の声の主が手元のボタンを操作すると、何処か別の場所の様子が、魔導映写機から空間に映し出される。
 そこには――油がたっぷり入った鍋が映っていた。
「鍋の準備はどうだ?」
『油の温度は180℃ジャストです。いつでも揚げられます!』
 2人目の声の主が訊ねれば、映像の中の鍋に箸のような長い木の棒が入れられる。棒の周りから、シュワシュワと細かい泡が立ち始めた。
「よろしい。鍋ユニット放出、フライエビを出撃させよ。その後、本艦は当空域より離脱する。フライエビは頭が良くない。この空域に留まれば、我らとて巻き込まれるぞ!」

●彗星の如く、エビ出陣
 夜空からイカの気配がなくなって程なくして、それは突然、起きた。
 メトポーロン島からそう遠くない雲海の中から、光の柱が立ち昇る。雲海が割れ、雲の中から、切り株の様にずんぐりと太く短い、大きな円柱状の物体が昇って来た。
 直径100m程はありそうな巨大物体――その正体は、鍋だ。
 底の深い揚げ物用の鍋だ。
 小型の飛空艇ほどはありそうな巨大鍋が、雲の上に浮かんでいるのだ。
 しかもどういうわけか、下にはコンロもないのに鍋の中が温まっているようで、パチパチと油の爆ぜる音が聞こえて来るではないか。
 これも、天使核の力なのだろうか。
 けれども、猟兵達にそれを確かめる時間はなかった。
 巨大な鍋の中から、巨大なフライエビが飛び出してきたからである。

『エビィッッッ!』

 両翼を広げたフライエビは、彗星もかくやと言う速度で、メトポーロン島に向かって飛び出してきた。

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 2章です。フライエビとのボス戦です。
 基本的に飛んでるエビです。
 1章のイカよりは高く飛んでます。夜空でエビと空中戦!
 とても大きいので、あとでエビの身が足りなくなることはないでしょう。でも本格的に食べるのは3章にしとこうな?

 なお雲の中から出て来た謎の空飛ぶ揚げ物鍋は、フライエビを格納していたケージの様なものです。普通の魔獣ならケージで良いんでしょうけど、フライエビだから鍋です。揚げ物は、油の温度が大事!
 というわけで、特に害があるものではないので、放っておいても大丈夫です。

 プレイングは本導入公開時から受付です。
 ただ、今週はあまり執筆時間が取れない状況になってしまっており、来週までかかる見込みです。2章も再送して頂く事になりますので、週末まで受付中にしておきます。
 プレイングは保存しておきますので、再送受付告知後にお願いします。
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木元・杏
【かんにき】
空を見上げていると、あ、ガーネット。それにシリンも!(手を振り

空飛ぶエビ。故に、フライエビ。えびふりゃー(成程、とこくん)
そいえばシリン、えびふりゃは初めて?
こう、えびのしっぽまで美味しくてね、こう…
……!タルタルソースが必要!
わたし、えびふりゃにはタルタルソース派!

UC発動
地上から特大メガホン持って皆を支援

えびふりゃは衣がさくさくー
ぱくりとかじれば身がぷりんっ
口一杯に広がる潮の香り
ん、美味しいね
塩レモンやタルタル!ソースやケチャップを付けるも美味!
わたしは地上でこれらを作っているね
皆、頑張って!

む、うさみん☆も桜花に包まれてる
同意してる?
ならえびふりゃ狩り、行ってこーい(ぶん投げ


木元・祭莉
海老獲り【かんにき】、出動!

あ、姉ちゃんズだ、はろー♪(雑)
うん、おいらたちも海産物狩りに来たんだー。
ほら、イカも大漁だったよー♪(見せる)

エビ出た! 揚げたて! いい匂いー♪
綾帯でエビを華麗にいなしつつ、海産物の踊り!

(マンボのリズムで)
オーレ!(ぴょいっ)
ウー!!(正面のエビにメカたまこが上空から降下)
オレオーレ!!!(背筋のワタをつつき出す)

御頭付きなのが豪華だよね、今回のエビさん!
みんなが捕まえたエビさんは、空中を舞い踊りながら集めて回るよー♪
ホラ、大漁大漁♪(荷車に旗を立て)

アンちゃんの準備も着々と進んでるし。
次はなんだっけ、サンマ?
今年はあんまり食べてないから、楽しみだなあー♪


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

ガーネットにシリンも!
エビフライには白ワインが合うんだっけ
二人が見逃す筈もなかったわ
でも揚げ物にはウーロン茶だって合うんだからね!(びしぃっ!

シリンの大技の気配を感じ盾となるべく前に
オジサンも美人の護衛役と杏の応援にやる気満々
行くわよオジサ…鼻の下のばし過ぎぃ!

氷結の【属性攻撃】乗せた【衝撃波】で油を相殺
間合いに入ったらオジサンが槍で突…あ吹っ飛んだ
まあ、幽霊はこれ以上死なないし(目逸らし
でも痛いのはヤダ?
仕方ないわね、次は奥の手使うわよ

【オーラ防御】と共に【罠使い】で周囲に糸雨張って
敵の勢い利用して切り刻みつつ防御
【カウンター】でオジサンが急所を一突き!

準備は整った、かな?


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

む、イカの次はエビか。あれ、既に料理じゃないのか?
しかし、わざわざ油の入った鍋まで用意するとはね…
屍人帝国に感謝すべきか?それとも食べ物で
遊ぶんじゃないと怒るべきか?

さあ、かんにきメンバーも揃ったところで戦闘だ!
私はキャバリア『夜の女王』に乗って出撃。
PSDホーネットを射出して、エビ共に《レーザー射撃》を放って牽制。
そうするとエビはユーベルコードで攻撃を仕掛けてくるだろう…。
《空中戦》《空中機動》で連撃をいなし、
タイミングを見計らって【サマーソルトブレイク】で蹴り返す!
さっきからジュワジュワと美味しそうな音を立ておって。
おーい皆、そっちにエビが飛んでいくぞ!油に気をつけて!


シリン・カービン
【かんにき】

お待たせしました、と転送、着地。
えびふりゃー… 初めて聞く食べ物です。
ふむ、揚げ物の一種ですか。
たるたるそーすも初耳ですね。
ふふ、楽しみです。

杏の横で精神を集中して待機していると、
こちらにガーネットが弾き飛ばしたエビが。
「ふっ」
エビの頭部を狙って雷の精霊を宿らせた精霊銛を投擲。
大したダメージは与えられませんが、これは下拵え。

盾役を買って出てくれた小太刀とオジサンに一礼しながら、
【エレメンタル・ファンタジア】を発動。雷の精霊の制御に集中。

一天にわかにかき曇り。
暗雲の中に閃く数多の雷光が大渦の様に宙を回り始め、
「穿て」
号令と共に避雷針代わりの精霊銛に集束。
渦を巻いた雷がエビを貫きます。



●大人組、合流
 ――エビィィッ!
 夜空に響いたその音を、鳴き声と呼んでも良いのだろうか。
 少なくとも、パァンッと音の壁をあっさりと超えて、瞬きする程の間で飛行機雲の様な痕跡を空に残して秋島を飛び越えるなど、普通エビに出来る事ではない。
「空飛ぶエビ。故に、フライエビ。えびふりゃー」
 陸上では木元・杏(焼肉処・杏・f16565)が成程と頷いて、空を飛ぶフライエビを視線で追いかける。
「イカの次はエビか……エビなのか?」
 その視線が、初めて聞いた気がするエビの鳴き声(?)に首を傾げる、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)を捉えた。
「あ、ガーネット」
「ん? 杏じゃないか」
 ガーネットも杏に気づいて、浮かんでいた空から降りていく。
 そんな2人の間に生じたのは、転移の光。
「お待たせしました」
 転移先にいると聞いていたのだろうか。
 そこに現れたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が、見慣れた顔触れに驚く事無く微笑を浮かべる。
「ガーネットにシリンも!」
 降りて来たガーネットと、転移してきたシリンを見て鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)も声を弾ませる。
「あ、姉ちゃんズだ、はろー♪」
 木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)は降りて来たガーネットにも、現れたシリンにも驚いた風もなく、ぶんぶんと手を振ってみせた。
「良いワインと、それに合う海産物があると聞きましたので」
「うん、おいらたちも海産物狩りに来たんだー。ほら、イカも大漁だったよー♪」
 来訪目的を告げるシリンに、祭莉はにぱっと笑顔になって、串刺しだったり輪切りだったり、エンペラ引っこ抜かれたりと、思い思いに解体された大きなイカを見せた。
「これはまた大漁ですね……」
 感心したように頷いて、シリンは空に視線を向けた。
「で、あの大きい上に不思議な出で立ちのエビが、次の獲物ですか?」
「獲物と言うか、あれ、既に料理じゃないのかと言うか……」
 シリンの問いに、ガーネットは曖昧に答えを返す。
 イカとの戦いの為に空に浮かんでいたガーネットの目には、雲を割って浮かんで来た巨大な鍋も、その中でくつくつと煮え滾っている油も見えていた。
 そのせいで、フライエビと言うかエビフライにしか思えない。
「わざわざ油の入った鍋まで用意するとはね……屍人帝国に感謝すべきか? それとも食べ物で遊ぶんじゃないと怒るべきか?」
 ガーネットが零す困惑の呟きが、秋のような乾いた夜風に流されていく。
「シリン、えびふりゃは初めて?」
「ええ。初めて聞く食べ物です」
 答えて頷くシリンに、杏の中で何かのスイッチが入った。
 美味しいものは、広めなくてはならない。
 みんなで食べれば美味しいのだから。
「えびふりゃは、揚げ物でね。こう、えびのしっぽまで美味しくてね、こう……」
「ふむ、揚げ物の一種ですか」
 シリンにその美味しさを伝えようと、杏は脳裏にエビフライを思い浮かべる。
「……!」
 そして――足りないものに気づいた。
 杏が思い浮かべたエビフライには、かかっているもの。けれど今、空を飛んでいるフライエビには添えられていないもの。
「タルタルソースが必要!」
「たるたるそーす……それも初耳ですね」
 杏の口から飛び出したその名称も、シリンには聞き覚えの無いものであった。
 そーすと言うからには、エビフライにかけるものなのだろうか。
「ふふ、楽しみです」
「わたし、えびふりゃにはタルタルソース派! だから、作る」
 内心で首を傾げつつも微笑を浮かべるシリンにそう言い残し、杏はタルタルソースの材料集めに走り出す。
「揚げ物と言う事は、白ですかね」
「白だろうな」
 その背中を見送ったシリンの呟きに、戻って来たガーネットが頷く。
「そっか。エビフライには白ワインが合うんだっけ。二人が見逃す筈もなかったわ」
 二人のやり取りに、小太刀が訳知り顔で頷いていた。
 小太刀ももう、18歳。
 世界や時代によっては、お酒を飲めなくもない年頃ではある。
「でも揚げ物にはウーロン茶だって合うんだからね!」
 まあ大人ぶってみても、ウーロン茶で張り合ってビシッと指差しまでしてる辺りで、色々と台無しになっているのだが、本人気づいているのだろうか。

●(一部は)シリアスなかんさつにっきの戦い
「さあ、かんにきメンバーも揃ったところで戦闘だ! 来い、夜の女王!」
 ガーネットの後ろに、光の柱が立ち昇る。
 光の中から現れたブラッドギア『夜の女王』に乗り込むと、ガーネットは背中のバーニアを吹かせ、再び空中へ――。
「あ、おいらも乗せてって!」
 上昇し出した夜の女王の足に、祭莉が飛びついてきた。
「お、おい、あぶな……」
 ガーネットが静止する間もなく、まるで木登りの様にするすると登って来る。
「まあいいか。まつりんだし」
 祭莉なら大丈夫だろう。
 それに今更降ろす方が危ない。
 そう片付けたガーネットは夜の女王の肩部に祭莉を乗せて、フライエビの方へゆっくりと飛んでいった。

「……」
 空中戦に向かう2人を、シリンは無言で見上げていた。
 片手に持つ精霊銛を陸上から投げても、フライエビには届かない。例え精霊猟銃と組み合わせても、無理だろう。
 今は、まだ。
 だからシリンは精神を集中し、今は時を待つ。
 精霊銛を届かせられるその時を。
「オジサン、シリンを守るわよ!」
 シリンの様子で、何か大技を狙っているのを察して、小太刀は盾役を買って出た。
 鎧武者のオジサンも、小太刀にひとつ頷いて、背負った槍を構える。如何にも武士然とした、堂に入った構え。
 けれども小太刀だけは気づいていた。
 オジサンが漲らせた気の中に混じる、まあ何と言うかある種の邪念的なものを。
「鼻の下のばし過ぎぃ!」
 スパァンッと、小太刀のいいツッコミが入った。

「PSDホーネット、射出」
 ガーネットの操縦する夜の女王の腰部装甲が展開し、中から裏側に収納されていたユニットが飛び出して来る。
 その名の通り、何処かハチを思わせるデザインで飛び回るそれは、遠隔レーザー射撃デバイス。
 ガーネットはサイキックでそれらを操り、レーザーをフライエビに浴びせていく。
『エビッ、エビィッ!』
 対してフライエビは、腰を使ってビョンビョンと空で跳ね出した。飛び跳ねる事で光を避けつつ、衣から飛び散る油も光を屈折させていく。
 飛び散った油はそれだけではなく、当然の様に陸上にも降って来た。フライエビは無軌道に跳ね回っているように見えて、あれで狙っているのかもしれない。
「ふっ!」
 降って来る油を見上げて、小太刀が刃を振るう。
 片時雨から放たれた氷結属性を乗せた衝撃波が、油を凍らし、砕いていく。砕けた油の欠片の内、当たれば痛そうな大きなものを、オジサンが槍で弾いていく。

「えびふりゃは衣がさくさくー!」
 そこに、タルタルソースの材料を集めて戻って来た杏の声が響いた。
「ぱくりとかじれば身がぷりんっ」
 特大メガホンも両手で抱えて、空にも届けと響かせる。
 エビフライの美味しさを伝える声援を。
「口一杯に広がる潮の香り――ん、美味しいね」
 まるで本当にエビフライを食べて、その歯応え、舌触りを確かめ、味を噛み締めたかのように、杏はほぅと息を漏らす。
 杏にだけは、見えていたのかもしれない。
 揚げ立てでタルタルソースがたっぷりかけられた、エビフライが。
 そして、かんさつにっきの面々の足元から、桜の花弁が舞い上がった。

 ――涼風に乗る言の葉。

 演説に同意した者に、桜の花弁舞う涼風を吹かせる業。その風は害意を弾き、吹かれる者の身と心を守る。
 あれまでのリアリティを持った杏の演説が、仲間に響いていない筈がなかった。ましてや聞いているのは皆、杏のグルメさを知っているのだから。
「塩レモンやタルタル! ソースやケチャップを付けるも美味! わたしは地上でこれらを作っているね! 皆、頑張って!」
 そして、風が守るのは猟兵に留まらなかった。小太刀のオジサンや、ガーネットの夜の女王も舞い上がる桜の花弁に包まれている。
「む、うさみん☆も同意してる?」
 自身のうさみみメイドさん人形も桜花に包まれている。それに気づいた杏は、その手を掴んで――。
「ならえびふりゃ狩り、行ってこーい」
 怪力でぶん投げた。

 桜花に包まれたガーネットの夜の女王は、フライエビと同じ高さに到達していた。
「エビ! 揚げたて! いい匂いー♪」
 フライエビの揚げ立て感と香ばしい匂いを間近で感じて、祭莉は涼風に乗って夜の女王の肩の上から飛び出す。
 腰に巻いた天地の綾帯を、空中でしゅるんと解く。白銀の玉が付いた赤を分銅鎖の様に振り回し、祭莉は飛び跳ねるフライエビの長い吻に巻き付けた。
 フライエビの動きに合わせて、祭莉は綾帯を手繰り寄せ、あれよあれよと言う間にフライエビの上に飛び乗った。
「御頭付きなのが豪華だよね、今回のエビさん!」
 などと言いながら、その豪華な御頭の上を祭莉は躊躇なく駆け昇っていく。
「わぉ、高ーい!」
 フライエビは結構な高度を飛んでいる。落ちたら猟兵でも危ない高さなのだが、祭莉はその高さに怯む事なく、フライエビの上を駆けていく。
「オーレ!」
 そして遂に到達したフライエビの衣に、祭莉はぴょいっと飛び乗った。
「ウー!! オレオーレ!!!」
 そして何を思ったか――祭莉はフライエビの上で、マンボのリズムで踊り出した。カリカリに揚がった衣の凹凸も、油のツルツルも、ものともせずに。
「オーレ!」
 勿論、祭莉が意味もなく踊っている筈がない。
 ドスンッ!
 重たい音を立てて、どこからともなく大きな鉄のニワトリが降って来た。

 ――陽光の舞歌。

 舞によって戦闘用ニワトリ型ロボ『メカたまこ』を召喚する術。
「オレオーレ!!!」
 ――背筋のワタをつつき出せ!
『コケーッ!』
 踊る祭莉の意志に応えて、メカたまこが嘴をフライエビの衣に突き立てる。
 ぶん投げられて来たうさみん☆も、メカたまこと一緒になって衣を叩く。
 けれどもフライの衣にしか見えないくせに飛空艇の外装を削ると言う衣は、流石のメカたまこの嘴でも、容易に突き破れるものではなかった。
『コケッ! コケコケッ!』
 メカたまこはムキになった様子で、凄い勢いで嘴を衣を突きまくる。
『エビッ! エビビッ!? エビィィッ!』
 衣でも痛いのだろうか。祭莉とメカたまこを振り落とそうと、フライエビがのたうち回りながら跳ね回り出した。
「オーレーッ!」
 ロデオ感覚で粘る祭莉だが、フライエビが跳ね回れば、それだけ油も飛び散るのだ。
 一番飛んでいくのは、正面にいるガーネットの夜の女王であった。
 ガーネットは機体を制御し油を避けていくが、血中のナノマシンと精神感応技術を以て駆動する夜の女王であっても、ほとんど乱射のように飛んでくる油を人より大きな機体で避けきると言うのは、さすがに難しい。
 杏の桜花が無ければ、今頃ガーネットのいるコクピットは、機体の損傷を告げる赤い警告灯が瞬いていたかもしれない。
「さっきからジュワジュワと美味しそうな音を立ておって!」
 ガーネットが、コクピットで床を蹴る。その動きに夜の女王が追随する。
 夜の女王での、サマーソルトブレイク。
 キャバリアの宙返りキックが、飛び跳ねるフライエビを蹴り飛ばした。
「あ」
『コケッ!?』
 ぴょんぴょこ跳ねて踊っていた祭莉と、一心不乱にフライの衣を突き壊そうとしていたメカたまことうさみん☆も、その衝撃でフライエビの背中から弾き飛ばされていた。

『おーい皆、そっちにエビが飛んでいくぞ! 油に気をつけて! あとまつりん達も落ちたからよろしく!』
 夜の女王の外部スピーカーから響くガーネットの声に対し、シリンが動いた。
「っ!」
 短い呼気を吐いて、精霊銛を投げる。風の精霊の後押しも受けて、細身の銛はぐんぐんと昇っていき――フライエビの頭部に突き刺さった。
 けれどもフライエビの巨体からすれば、針が刺さって程度だろうか。
 大した通用は、感じていないようだ。
 ――それでいい。
 精霊銛は、次への布石。料理で言えば下拵え。その一撃を確実に当てる為に、陸上からの投擲が届く高さまでフライエビが落ちて来るのを、シリンは待っていた。
 但し、次の本命まで、まだ時間がかかる。
「てへ。落ちちゃった」
 そこに、空から降って来た祭莉が、ぺろっと舌を出しながらしゅたっと着地した。
 少し遅れて降って来たメカたまこは、頭から地面に落ちて半ばまで埋まる。
『エビィッ!』
 それを見たエビが、陸上に向けて突っ込んできた。狙っているのは祭莉か、メカたまこか、それともシリンの脅威を感じたか。
『!!』
 させまいとオジサンが槍を構えて跳躍し――。
「あ、吹っ飛んだ」
 そりゃあ、桜花があってもそうなるだろう。これと言った工夫もなく巨大なフライエビと正面からぶつかれば、鎧武者のオジサンでもそうなるに決まっている。
「まあ、幽霊はこれ以上死なないし――?」
 逸らそうとした小太刀の視線が、固まる。
「小太刀。オジサン、拾っておいたから」
 吹っ飛んだオジサンを、杏が片手でキャッチしてたなんて。
「良かったじゃない、オジサン」
『……』
「痛いのはヤダ? 仕方ないわね」
 オジサンの反応に、小太刀は溜息を一つ零して片時雨を鞘に納めた。
「次は奥の手、使うわよ」
 代わりに苦無を構え、小太刀はオジサンの槍の上に飛び乗った。オジサンが槍を振るうと同時に、その上を蹴って空に跳び上がる。
 空から迫るフライエビに対して、小太刀は、何故か明後日の方向に苦無を投げた。更に何も持っていない様に見える腕を振るう。
 けれども、何も持っていない筈がない。小太刀が投げた苦無からは、景色に溶け込むほどに細く丈夫な鋼糸『糸雨』が伸びていた。
 小太刀が空中に作った罠に、フライエビがぶつかる。
 勢いが落ちた所に、オジサンが投げた槍が突き刺さった。
「準備は整った、かな?」
 小太刀が落下しながら陸上を振り向けば、シリンが閉じていた目を開いた所だった。

「あなたは私の――私達の獲物」
 夜空から、星々の輝きが消える。
 昼間であれば、秋島の空に真っ黒な雷雲が生まれたのが見えただろう。元々黒い夜空では、暗雲それ自体は目立たない。
 けれども空からは、雷の先触れの音がゴロゴロと響いてくる。
「……」
 存在を主張する雷の精霊達を、シリンは何とか制御していた。
 程なく、暗雲の中に光が生まれる。1つ、2つと、光は増えていく。雲の中に、雷光が溜められていく。
「穿て」
 シリンが号令を発した瞬間、暗雲の中で数多の雷光が瞬いた。

 エレメンタル・ファンタジア。

 属性と自然現象を合わせて、超常現象を起こす術。猟兵が扱える中でも制御が難しいと知られるその術で、シリンが今回起こした現象は雷光の大渦とでも言うべきもの。
 雷雲から放たれた幾つもの雷が渦を巻き、収束していく。
 ピシャーンッ!
 シリンの精霊銛に、雷渦によって生じた轟雷が落ちた。
 そして漂う、香ばしい匂い。電子レンジで、エビフライ再加熱したのと、何が違うと言うのだこの状況。
「アンちゃんの準備も着々と進んでるね」
「んむ。でもまだ、タルタルソースが足りない……!」
 祭莉と杏など、もう食べる方に意識が傾いている。
「次はなんだっけ、サンマ? 今年はあんまり食べてないから、楽しみだなあー♪」
 にぱっと笑う祭莉の頭上で、身体から煙を上げるフライエビが、文字通り尻尾を巻いて逃げ出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
空飛ぶ巨大鍋の中から空飛ぶ巨大エビが出てきた
自分でも何を言っているのかよくわからない…

うおっ、あぶね!?
敵の飛ばしてくる油、あれをまともに食らったら
物理的ダメージも精神的ダメージも絶大だ
(しかも4回喰らうと死ぬとか言うし
綾、俺はあの油の対処をするから
お前はフライエビ本体を叩きに行け
どさくさに紛れて食おうとするなよ??

この作戦には零が必要だから
まずは焔から零の背に乗り換え、焔には綾を乗せてもらう
そして零と共に敵のもとへ接近
敵も攻撃する為に間合いを詰めようとするだろう
その瞬間、油も凍るような零のブレス攻撃を浴びせUC発動!
敵の動きを封じ、綾に攻撃のチャンスを与える


灰神楽・綾
【不死蝶】
空飛ぶエビフライ、その名もフライエビ
すごい、なんて天才的なネーミングなんだろう
あとエビってエビィィって鳴くのかー

既に調理済みだなんて食べてくださいと
言っているようなものだよねー、と思ったら
実行する前に梓に止められた、チェッ
これが終われば梓の美味しい手料理が食べられるから頑張りますか

梓が攻撃のチャンスを作ってくれたら
焔に乗って敵のもとへと接近
UC発動し、Emperorにエビの「衣」部分を透過する性質を与える
あの衣は多分鎧みたいな役割をしているんじゃないかな
強固な鎧の下は存外脆いんじゃないかと推理
衣に包まれた胴体目掛けてEmperorの重い一撃を叩き込む



●シュレディンガーなエビ――衣の下はまだ見えない
「雲の中から巨大鍋が出てきて、空飛ぶ巨大鍋の中から空飛ぶ巨大エビが出てきた」
 唐突に、そして立て続けに起きた現象。
 成竜化したままの焔の上から見ていた光景を、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、思わず声に出していた。
「だめだ……自分でも何を言っているのかよくわからない……」
 けれども声に出してみたところで、信じ難い現実が変わる事はない。
『エビィッ!』
 フライエビの鳴き声(?)は、今も空に響いている。
「エビってエビィィって鳴くのかー」
 その鳴き声なのかすら謎な音に感心したように頷けている灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が、何だか羨ましい。
『キュ?』
 再び思考が銀河の様にぐるぐるになっている梓に、何事かと焔が顔を寄せて来た。
『ガウ?』
 何があったのかと、零も綾を乗せたまま梓の方に移動して来る。
 そんな2匹の優しさに、梓は我に返る事が出来た。
「空飛ぶ巨大エビフライ、その名もフライエビ。すごい、なんて天才的なネーミングなんだろう」
「見たまんまでは?」
 綾にツッコむ余裕も生まれていた。
「それにな、綾。エビは鳴かないから」
 さっきツッコミ損ねた所も、時間差でツッコんでおく。
 他のエビも、エビィッとか鳴くと思われては、溜まらない。
『エッビィッ!』
「でもほら」
「あれは普通のエビじゃないから。普通のエビは鳴くもんじゃないんだよ!」
 折良く響くフライエビの鳴き声(?)に反応する綾に、梓のツッコミが止まらない。
 そんな風に背中の上で騒がしくしてる主と相棒よりも、竜達の方が冷静だった。
「ん?」
「なんだろ?」
『キューッ!』
『ガウッ』
 急に暗くなった事に気づいて、梓と綾が同時に空を仰ごうとした瞬間に、焔と零が同時に翼を広げ、右と左に急旋回していた。
 誰もいなくなった空を、熱々の油が通り過ぎていく。
「うおっ、あぶね!?」
 当たらなかったものの、油の熱を肌で感じて梓が声を上げる。
 見上げれば、フライエビは腰の瞬発力を使って、2人の頭上でビョンビョンと跳び跳ねていた。動きが少しぎこちなく見えるのは、気のせいだろうか。巨体の彼方此方から煙が上がっているのは、気のせいだろうか。そう言えば、さっき雷の音がしたような。
 綾も梓も気づいていなかったが、フライエビはついさっき、他の猟兵のグループにやられて避難してきた所である。そこに別の猟兵と遭遇して、やられる前に油を浴びせてやろうと、ビョンビョンしているのだ。
「油、アツアツだねー」
 同じく油の温度を肌で感じた綾は、何故か声を弾ませていた。
(「既に調理済みだなんて、食べてくださいと言っているようなものだよねー」)
 綾にとって、フライエビは鴨がネギ背負って来た状態に見えているようだ。
 そんな綾の胸中を推し量るように、梓はじっと視線を向ける。
「綾、交代だ」
 そして、おもむろに焔の上で立ち上がった。
「俺は零に乗って、あの油の対処をするから。お前は焔に乗って、フライエビ本体を叩きに行け。……どさくさに紛れて食おうとするなよ??」
「ちぇー」
 噛り付く前に梓に見透かされ、綾は口を尖らせながら零の上で立ち上がる。
「ま、これが終われば梓の美味しい手料理が食べられるから頑張りますか」
 高さを合わせた竜達の背から、2人同時に跳んで。
 パンッと空中で掌を打ち合わせながら、梓は零に、綾は焔の上に飛び乗った。

「頼むぞ、零」
 乗り換えた氷竜の首をポンポンと撫でて、梓はフライエビに向かって飛んでいく。
『エビッ?』
 すぐにフライエビも梓と零に気づいて、ビョンビョンと跳ね始めた。
 頭上でやられた時はあまり気にしていなかったが、同じ高さから見ると、何と言うか中々に奇怪な動きだ。
 だがその動きによって、フライエビの身体から油が飛び散っている。
「……あれをまともに食らったら、物理的ダメージも精神的ダメージも絶大だ」
 直撃したら猟兵でもただでは済まないのは、明白。
 だがそれ以上に、もしも――もしも油が敗因なんて負け方をしようものなら、何と言うかそれは、あまりにも恰好が付かないではないだろうか。
 エビフライの油なんかで負けるわけにはいかない。
 そんな意志が、梓の中にふつふつと湧いていた。
「零、頼む」
『ガウッ』
 梓の声に一鳴き応えて、零が口を開いた。
「氷の鎖に囚われろ!」
 放たれた氷竜のブレスが収束し、それ自体が生き物であるかの様に、フライエビにとぐろを巻いて絡みついていく。

 絶対零度――アブソリュートゼロ。

 氷竜のブレスを束ね、敵の力を封じる氷の縛鎖と変える業。
「オリーブオイルなのか菜種油なのか知らないけど、凍ってしまえば、油を撒き散らす事は出来ないだろう!」
 食用油にも色々ある。油の種類のよって凝固点は異なるのだが、いずれにせよ水よりも凍り付く温度は低いものだ。空飛ぶ鍋の中でフライエビが纏った油が何油なのかは定かではないが、その性質は変わらないだろう。
 けれども、凍らないわけではない。
 フライエビが飛び出した鍋を凍らせるのであれば難しいだろうが、フライエビの衣から飛び散った油であれば、氷竜のブレスを集めて束ねた氷の縛鎖で、凍らせられない筈がなかった。
 梓の思惑通り、フライエビの身体から飛び散った油は、すぐに凍りついてそれ以上飛ぶ事無く、雲海へ落ちていく。
 こうなってしまえば、フライエビはただ空で飛び跳ねている巨大なエビフライだ。
 言葉にすると、これでもまだおかしな存在である。
「チャンスだ。焔、頼むよ」
『キューッ』
 それはさておき、梓が作ったそのチャンスに、焔に乗った綾が動く。
 愛用のハルバード『Emperor』を片手で構え、フライエビに充分近づいた所で、焔の背中から綾は飛び出した。
「何処にいても、君を捕まえる」

 ――ディメンション・ブレイカー。

 己の武器に、任意の物体を透過する性質を与える業。
 綾が透過する対象と選んだのは、フライエビの胴体を覆っている、カリッカリに上げられたフライの衣。
(「その衣は、多分鎧みたいな役割をしているんじゃないかな?」)
 強固な鎧と言うものは、多くの場合、その下にある脆い部分を守るためにある。
 そう考えた綾は『Emperor』を高く掲げて――思いきり振り下ろした。
 狙い通りに、フライエビの揚げ衣を透過した『Emperor』は、その内側を斬った。
「ん?」
 けれども焔の上に降りた綾は首を傾げていた。もう一度、フライエビに『Emperor』を振り下ろしてみる。
「んん?」
 手応えはある。感触的には生っぽい、プリッとした感じ。けれども、衣は斬らずに斬った為、傷が見えないのだ。鎧を壊さずに鎧の中だけ切っても、傷は見えない。フライエビはエビなので、血を吐いたりもせず、実にわかりにくい。
「うーん。効いているのかな?」
『エービィッ!!!!』
 しかし、実感が得られないまま、綾が何度も何度も斬り付けてみれば、フライエビは嫌がるように猛スピードで飛んで逃げ出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

結城・有栖
あれが話に聞いたエビフライ…もとい、フライエビですか。
…空を飛ぶのは良いとして、既に調理済みなのは何故でしょう?

「そういう魔獣じゃないのカナ?熱々の油にも気をつけないとネ。」

相手は大分高い場所に居ますしこちらも空へと参りましょうか。

まず、オオカミさんとの意識の同調を開始。
そしてUC「嵐の王」を発動、風を纏って空へと飛翔します。

自身の周辺に黒い烈風の渦を作り、こちらにエビが飛んできたら渦に巻き込んで捕らえ、動きを阻害。
ついでに熱々の油も烈風で飛ばして身体を冷やしてあげます。

動きが鈍ったら風の爪を飛ばして攻撃、飛んでくる油は【野生の勘】で察知して風で弾いたり軌道をそらす事で回避します。



●黒風渦巻かす嵐の王
 ――エビィッッッ!
 夜空に、そんな鳴き声(?)が響いていた。
「あれが話に聞いたエビフライ……もとい、フライエビですか」
 フライの揚げ衣にしか見えない黄金色の衣を纏った真っ赤なエビ魔獣を見上げ、結城・有栖(狼の旅人・f34711)は呟いていた。
 フライエビが頭上に来れば、空気が仄かに暖かくなる。
 そして漂ってくるのは、揚げ物特有の油の残り香。これもうエビフライなのでは?
「……エビが空を飛ぶのは良いとして、既に調理済みなのは何故でしょう?」
 フライエビを調理済み認定しながらも、ならば何故あんなに元気に動けるのかと、有栖は思わず首を傾げていた。
『そういう魔獣じゃないのカナ?』
 有栖の疑問に、もう一人の有栖――オオカミさんが返す。
 実際、そう片付けてしまうのが手っ取り早いと言うものだろう。何でエビがフライになって空を飛んでいるかなんて、考えてもきっと答えは出ないだろうから。
『それより有栖。あいつ――』
「わかっています」
 オオカミさんの言葉を、有栖が遮る。
 言いたいことは判っていた。
 フライエビが調理済みだろうがああいう魔獣なのだろうが、確かな事が1つ。
 フライエビは速い。最初に鍋から飛び出した後、音の壁をパァンッと割って、一瞬で島を飛び越えてしまったくらいには。
 スピード勝負になったら、有栖はきっと追いつけない。
 だからと言って、何もしないわけにはいかない。
「とりあえず、相手は大分高い場所に居ますし、こちらも空へと参りましょうか」
『熱々の油にも気をつけないとネ』
 有栖の言葉にオオカミさんが頷くと、その姿が薄れていく。想像で生み出したもう一人の有栖が消えて、オオカミさんが有栖の中に戻って来る。
 有栖の中に、オオカミさんが広がっていく。
 オオカミさんが有栖に混ざっていく様な感覚。
「オオカミさんとの同調を完了……さあ、参りましょうか」

 ――嵐の王。

 オウガであるオオカミさんと同調し『嵐の王』形態となった有栖は、黒い烈風を纏ってふわりと舞い上がり、ぐんぐんと浮かんで、フライエビと同じ空まで到達した。
 近づいてみれば、黄金の衣の表面では、油から上げた揚げ物の様に、パチパチと油が踊っていた。
『エビィ――』
 自らと同じ高さまで上がって来た有栖をどう見たのか。エビが両翼を広げて、身体に力を漲らせる。
 ――有栖。
「わかっています」
 脳裏に聞こえる狼さんの声に頷いて、有栖は空中に幾つもの黒風の渦を生み出した。
『エッビィッ!』
 ビョンビョンと空を飛び跳ね出したフライエビが、黒風の渦に突っ込んでいく。
『エビッ!?』
 渦の思わぬ勢いに、フライエビがバランスを崩した。
「ついでに熱々の油も烈風で飛ばして、身体を冷やしてあげます!」
 それを見た有栖は、フライエビが嵌った渦の烈風の勢いを強める。フライエビが藻掻いても、烈風の渦の中からでは油も飛ばせない。
「これで、どうですか!」
 そこに有栖が放った風の爪が、藻掻くフライエビの足を一本斬り飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
リュカさんf02586
ええ、飛べません
飛べそうな神々しさを感じさせるのは認めますが
というかリュカさんだって飛べな…あ、はい乗ります
成る程、わかりましたよ…このバイクが空を飛ぶのですね!
え、飛ばないんですか?じゃあ今からご機嫌なツーリングにでも繰り出します?
跳ぶ?どういう事ですか?

思いのほか豪快
うわ熱っ!待って下さい、危ないです!
いやハレルヤの上質な毛並みは熱に強くないんですよ
あ、敵は妖刀の斬撃から放つ衝撃波で切り裂きます
リュカさんは運転に集中してて下さいね!
集中してて下さいねって!なに堂々と手を離してるんですか!

普通に飛べもするんですね、このバイク
はー凄い
なら最初から普通に飛べばいいものを何故


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
お兄さん飛べないんだっけ
乗る?
…そう(スルー
しっかり掴まっててね
え?空は飛ばないけど
あ、跳びはするよ

周囲の障害物とか、謎の鍋とかを足場にアルビレオで上昇。無いなら片手でうたいの鼠にフック付きワイヤーを付けて射出。諸々引きずり倒したりぶん投げたりして足場を作って上昇する
大丈夫、こいつ熱には強いから
ほらお兄さん敵。斬って
自分は運転に専念
たまに暇したら両手を離して灯り木で撃つ
勿論その時は多少制御は失うけれども、俺が落ちるわけがない。俺は
いや、だって暇なんだもの
たまにはスリルあっていいでしょう?

あ、いざとなったら普通に飛びます。宇宙バイクなので
何でって…燃料費の高騰が理由かな



●スリル満点空中ツーリング――浪漫だけでは空は飛べない
 ――エビィッ!
 空にフライエビの鳴き声(?)が響く中、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)と夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は、秋島の中を歩いていた。
「お兄さん、飛べないんだっけ」
 先ほどまでのイカは飛ぶと言うか浮かんでいる程度だったが、フライエビにあれ程の速度で空を飛び回られては、リュカはそれを訊ねずにはいられなかった。
「ええ、飛べません」
 その後ろについて歩きながら、晴夜は何故か自信たっぷりに答える。
「ハレルヤが飛べそうな神々しさを感じさせるのは認めますが――」
「……そう」
 晴夜の謎の自信を、短い相槌でスルーして、リュカはそこら辺に止めておいた『アルビレオ』の前で足を止めた。
「ちょっと、訊いておいてつれないんじゃないですか?」
 不満そうな晴夜の声を背中で聞き流し、リュカはよっこいしょ、とアルビレオを起こして、後部座席の荷物を降ろしていく。
「というか、リュカさんだって飛べな――」
「乗る?」
「あ、はい。乗ります」
 アルビレオに跨ったリュカの言葉に頷いて、晴夜は空いた後部座席に、いそいそと乗り込んだ。
「刀は持ったね? しっかり掴まっててね」
 ハンドルを握り、リュカはアルビレオを発進させる。
「成る程、わかりましたよ……このバイクが空を飛ぶのですね!」
 やっぱり自信たっぷりに、晴夜がリュカの背中に訊ねる。
 この局面でバイクを持ち出すのなら、晴夜でなくてもそう思うだろう。
「え? 空は飛ばないよ」
「え、飛ばないんですか?」
 しかし前を向いたままかぶりを振るリュカに、晴夜は逆に目を丸くする。ならば、何故リュカは、バイクを走らせているのだろう。
「じゃあ……今からご機嫌なツーリングにでも繰り出します?」
「そんな感じかな。ご機嫌かはわからないけど」
 晴夜の問いに答えながら、リュカは首に下げていたゴーグルを上げて、正しい位置に装着し、アルビレオの速度を上げる。
「空は飛ばないけど、跳びはするから」
「跳ぶ? どういう事ですか?」
 晴夜が頭の上に疑問符を浮かべている間に、リュカは秋島にある飛空艇の発着場に入って行った。

 ブルーアルカディアで船と言えば、ほぼ飛空艇になるだろう。
 その発着場となれば、海の船の港とは趣が異なるものだ。例えば、浮かぶ船を係留する為の設備が、空に向かって伸びているとか。
 リュカはそんなクレーンのひとつに、アルビレオで乗り上げた。
「跳ぶって、まさか――」
「本当に、しっかり掴まっててね」
 バイクが跳ぶと言った事の意味に気づいて驚いた様子の晴夜に背中で返して、リュカはブォンッとエンジン音を響かせてクレーンを駆け上がる。
 そしてその先端から、更に高い所にある別のクレーンへと飛び移った。
「お、おぉ……思いのほか、豪快」
 どんどん高くなっていくのを感じて、晴夜が呟きを零す。意図せず、ぶわっとなってしまった尻尾は、リュカに気づかれてない筈だ。多分。
 ハンドルを握るリュカは躊躇なくアルビレオを走らせ、クレーンからクレーンへと跳び移っていく。そして最も高いクレーンの上で、アルビレオの速度をもう一段上げて――空に跳び出した。
 ふわっとした浮遊感。けれどもアルビレオはある程度上昇した所で、やっぱりと言うかなんと言うか、高度を下げていく。
「あ。ちょっと足りないか」
 雲海が迫る中、リュカは慌てた風もなく呟いて――片手をハンドルから離し、拳銃型ガジェット『うたいの鼠』を構えた。
 リュカが『うたいの鼠』からフック付きワイヤーを射出したのは、フライエビが飛び出した空飛ぶ鍋。その側面には、何故か空飛ぶ鍋なのに持ち手が付いている。
 カランッと音を立ててフックがそこに引っかかれば、後は振り子の要領だ。
「よし。ここからは、登るから」
 振り子の要領で空飛ぶ鍋に取り付いたリュカは、そのまま鍋の外側をアルビレオで走って登り出した。
 垂直に登るのは大変なので、側面をぐるぐる走りながら少しずつ登っていく。
 だが鍋の中は、フライに適した180℃の油なのだ。
 鍋本体の温度は、推して知るべし。
「うわ熱っ! 待って下さい、危ないです!」
 うっかり触れれば猟兵でも火傷しそうな鍋の熱さに、晴夜が溜まらず声を上げる。
「大丈夫、こいつ熱には強いから」
「いやハレルヤの上質な毛並みは熱に強くないんですよ!」
 しれっとアルビレオを走らせるリュカの後ろで、晴夜が自慢の尻尾が焦げない様にと片手でギュッと抱える。
 そうこうしてる内に――何だか暗くなって来た。
「ほらお兄さん敵。斬って」
「え?」
 リュカが指さす方に晴夜が視線を向ければ――そこにフライエビ。
『エッビィィッ!』
 しかも何だか、ご立腹のご様子で突っ込んでくる。
 鍋の側面にフライエビがダイブして、ゴォォォォンッと鐘の様な音が空に響いた。
 激突の衝撃で、アルビレオがふわっと鍋から浮き上がる。
「おっと」
 リュカは再びうたいの鼠を構えると、飛びついた時と同じく、空飛ぶ鍋の持ち手に射出したフックを引っかけ、振り子の要領で鍋に戻っていった。
「この鍋は自分のもの、と言いたげですね」
 怒気を漲らせるフライエビを見上げ、晴夜は妖刀『悪食』を真横に掲げる。
「このハレルヤも、妖刀も、空腹でして。残さず食べて差し上げます」

 喰う幸福――クウフク。

 晴夜は悪食に暗色の怨念を纏わせて、フライエビに向かって振り上げる。放たれた衝撃波を浴びたフライエビの身体から、カリっと揚がった衣が齧られたように消えた。
「っ! 浅いですか。ならばもう一撃!」
 まだ衣の下が見えないのを見やり、晴夜は再び悪食を振るう。更に続けて衝撃波を放とうと、晴夜は悪食の怨念を強めて――。
「リュカさんは運転に集中してて下さいね!」
「え、大丈夫」
 念のためにと言った瞬間、晴夜の体勢が思わぬ方向にぶれた。
 視線を戻せば、リュカがハンドルから両手を離していた。いつの間にか、いつものアサルトライフル『灯り木』に持ち替えて、両手で構えているではないか。
「集中してて下さいねって! なに堂々と手を離してるんですか!」
「いや、だって暇なんだもの」
 食って掛かる晴夜に、しれっと返すリュカ。
「たまにはスリルあっていいでしょう?」
「求めてないですから! 是非とも運転に集中を――!」
 パンッと灯り木から銃声を響かせるリュカに運転に集中するよう促しながら、晴夜も悪食を振るう。
 だが――。
 ゴォォォォンッ!
 そこに再び鐘の様な音が響いて、鍋を突き抜けた衝撃がアルビレオの下で爆ぜた。
「あ」
 鍋から空中に大きく吹っ飛ばされたアルビレオの上で、リュカの口からそんな間の抜けた声が零れる。うたいの鼠は、一旦しまってしまっていた。
「あ、じゃなくて! どうするんですか、これ!」
「仕方ない……飛ぶ」
 落下し始めればmさすがに慌てた様子で声を上げる晴夜に頷いて、リュカの両手がアルビレオのハンドルを握り直す。
 ブォンッ!
 エンジンを震わせて、アルビレオは事も無げに空を走り出した。
「はー…………凄い。普通に飛べもするんですね、このバイク」
「飛べるよ。宇宙バイクだもの」
 感嘆の吐息を漏らす晴夜に、リュカも事も無げに返す。
「なら最初から普通に飛べばいいものを、何故」
「何でって……燃料費の高騰が理由かな」
 晴夜の至極真っ当なツッコミに、リュカは遠い目で呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明石・鷲穂
栴(f00276)とエビ落とし

跳んで油に入る秋の海老。
腹も万全な今 おれに恐れるものはない。
栴、腹減ったか?
胃もたれしない程度にいただこうなあ。

妙に香ばしい匂いで跳んでくる!
UCで翼を強化して飛翔。
エビの羽を狙って部位破壊。空中機動活かしてエビからの直接攻撃を受けるのは避けたいな。

エビといえどオブリビオンだ。
オブリビオン(揚げ物)への油断はせずに終始臨もう。
空中で冷めないように、すばやく叩き落とす。
有難くいただくために、慈悲を持って攻撃しような。

飯の準備終わり。
回収助かる····もう刻んだのか!?手際良いなあ。
あとはタルタルソースがあれば完璧だが·····そんなオブリビオンはいないよな?


生浦・栴
引き続き山羊の(f02320)と

入った直後の低い油の音が高温に変わると、そろそろ飛び出すのだなと分かるな…
射出元を叩くのがセオリーであろうが
大惨事の予感しかせぬので鍋は放置するか

胃を刺激する音と香りだが、もう一仕事の間は我慢できるぞ
胃薬の用意もあるが、鮭が残っておるので程々にな

山羊のを見送ったら眼鏡の結界術を狭い範囲に設定する代わりに強固にする
不足分は都度オーラ防御で補強しよう
山羊のが叩き落として来た獲物に対して使う属性は当然氷
瞬間冷凍で鮮度を保ってUCで回収

折角揚げたてなので一尾は風の魔法で喰いやすく輪切りにして
ついでに隣に小さな結界を作って保温する
山羊のが降りてきたら味見するとしよう



●古鍋や海老が飛び込む油の音
 とぷんっ。
 生浦・栴(calling・f00276)と明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)が見ている前で、フライエビが空に浮かぶ揚げ物鍋の中に、自ら飛び込んでいった。
 揚げ物が自分から、鍋に戻ったのである。
 二度揚げ三度揚げどころの話ではない。
「飛んで油に入る秋の海老――ってとこか」
 ちと語呂が悪いかと、鷲穂が笑う。
 フライエビがそうした理由の見当は、鷲穂も栴もついていた。
 まず、空とは寒いものだ。
 それはこのブルーアルカディアであっても、変わらない事であろう。
 風を遮るものが何もないのだから、ずっと空を飛んでいれば、体温が奪われていくのは自然な事である。
 ましてや、猟兵が氷竜の吐息を束ねて浴びせて油を凍らせたり、黒い烈風を渦巻かせて油を散らしたりしていれば、熱々だったエビフライ――じゃない、フライエビの衣が冷めてしまっていても、何もおかしくはなかった。
「油の補給でもする気か。であれば、供給元を叩くのがセオリーであろうが……」
 あの空飛ぶ鍋がなくなれば、フライエビは衣が冷えて油が薄くなっても、もう衣を温め直す事は出来なくなる。
 そんな栴の予想は、恐らく正しい。
 だが、鍋を壊せばどうなるか――栴の脳裏に、巨大な鍋に出来た破損から熱々の油が広がっていき、雲海が炎の海になる光景が容易に浮かんで来た。
 揚げ物の油は時に、火元となる。
 鍋と中身を纏めて消滅でもさせない限り、そのリスクは拭えない。
「駄目だな。どう考えても、鍋に手を出せば大惨事の予感しかせぬ。鍋は放置するか」
「まあ、何度揚げでも構わんだろうさ」
 お手上げだと言った風に肩を竦める栴に、鷲穂がパシッと両手の拳と掌を打ち鳴らしながら返した。
「腹も万全な今、おれに恐れるものはない」
 イカを生で喰らって溜まった不浄は、既に鷲穂の身体から消えている。
 巨大なエビ如き、何するものぞ。
 そうこうしている内に、ジュウーッとフライエビが飛び込んだ瞬間に鍋から聞こえて来た音は小さくなり、パチパチと油が爆ぜる高い音が響いてきていた。
「油の音が変わった。山羊の、直に出て来るぞ」
「そうか。なら、こっちも準備しないとな」
 音を聞き取った栴の言葉に頷いて、鷲穂が両手で印を組む。
「梵天を駆ける赦しを」
 鷲穂の背の鷲の翼が剛く巨きくなっていく。山羊の四脚の内の前二つが羽毛に覆われ、蹄が割れ伸びて、鉤爪を持つ猛禽の脚へ変わっていく。

 仏教に於いて、仏や菩薩が持っているとされる人知を超えた六つの力。その一つに、自由自在に自分の思う場所に思う姿で行き来する、と言うものがある。
 破戒の身では、その境地には至れずとも。埒外の奇跡にて踏み込む、偽りの境地。

 即ち――偽悟・神足通。

「栴、腹減ったか?」
「胃を刺激する音と香りだが、もう一仕事の間は我慢できるぞ」
 山羊の特徴が薄れ鷲の特徴が濃くなった鷲穂の姿に驚く事も無く、栴が返す。
「カカッ、妙に香ばしい匂いで飛んでるもんなあ!」
 嘴の様に硬くなった口で笑って、鷲穂は大鷲の翼を広げる。
「胃もたれしない程度にいただこうなあ」
「胃薬の用意もあるが、秋刀魚が残っておるので程々にな」
 二人が顔を見合わせたそこに、ザバァッと音を立てて、揚げ物鍋の中で油をたっぷり纏い直したフライエビが飛び出してきた。

 エビといえどオブリビオン。
 それは先にフライエビが見せた本気の速度でも伺える。音を置き去りに飛び、羽ばたけば気圧の変化を起こすのが、単なるエビである筈がない。
 それと空中戦を挑もうという鷲穂に、油断はなかった。
「空中で冷めないように、すばやく叩き落とさんとな」
 オブリビオンと言うより、揚げ物に対する注意なのは仕方ないだろう。
 フライエビなのだから。
 オブリビオンでありながら、揚げ物なのだから。
「かと言って迂闊には近づけんなあ」
『エビィッ、エビィッ』
 フライエビは、奇声を上げつつビョンビョンと空中を跳び跳ねては、油を撒き散らしている。その油は立て続けに当たるのは拙いものだし、竜を思わせる巨体自体、ぶつかれば痛い目を見るのは鷲穂かもしれない。
「直接攻撃を受けるのは避けたい――となれば、これだ」
 鷲穂は背中の大鷲の剛翼を広げ、そこから羽根を放った。跳び跳ねるエビに羽根が突き刺さって――しかし、ポロリと落ちていった。
「まだまだ!」
 意に介していない風のフライエビから飛び散る油を避けながら、鷲穂も突き刺さって落ちるのも構わず、何度も羽根を放ち続ける。
 一見すると、鷲穂の攻撃は無駄に見えたかもしれない。
 フライエビの巨体の前には、鷲穂の放つ羽根は雨粒の様なものかもしれない。
 けれども――刺さってはいるのだ。
 ならばそれを『同じ個所』に当て続ければ、どうなるか。例えば、フライエビの背中にある翼の根元の様な、脆い場所であれば。
「雨垂れ岩を穿つ、ってなあ」
『エビィィッ!?』
 フライエビが、突如、空中で大きくバランスを崩して落ちかける。
 その背中からは、鷲穂が狙って羽根を放ち続けて重ねた損傷によってポッキリと折れた片翼が落ちていった。

「ふむ……この辺りか」
 その様子を地上から眺めていた栴は、空を見上げたまま2,3歩下がった。
 ズドンッと、その目の前にフライエビの片翼が降って来る。
 地上にも降って来る油は、鬼畜眼鏡の結界で防いでいたが、あの質量は結界だけでは防げなかっただろう。
「エビの翼など、本来は可食部位ではなかろうが……いや、そもそもエビに翼があるなどと聞いた事がない」
 だがそれは、栴の目の前で香ばしい匂いを漂わせている。
 その翼だけでも、栴よりも鷲穂よりも、大きいのだ。その骨組み部分は栴の腕より、一回りも二回りも太く、しっかりとしている。折れた関節部から見てみれば、カニの足のようにみっちりと身が詰まっているのが見て取れた。
「大人しくして居れ」
 栴は迷わず『Ancient deep sea』から冷気を放ち、一瞬で翼を凍らせると、魔鍵『prison cell』を掲げ、ユーベルコードで構築した保冷空間に吸い込んだ。
「山羊の! 脚も一本落とせるか!」
 そして、空の鷲穂に向かって声を張り上げる。
 ややあって、フライエビの胴体下部にある脚の一本が、栴の前に落ちて来た。
「本体は良いのか?」
 そこに鷲穂も降りて来る。
「あの大きさを落とすのは、骨が折れよう。それよりも――その脚だ」
 栴が示したフライエビの脚も、やはり香ばしい匂いが漂わせていた。
 戻った空飛ぶ鍋の中で、素揚げ状態になっていたのかもしれない。そして、翼の骨組み部分同様に、エビの脚と言っても本体が大きい為、かなり太かった。栴が風の魔法で適当な長さに切り分ければ、こちらも中には身がぎっしり詰まっていた。
「役得だ。先に味見するとしよう」
「そうだな」
 栴の言葉に、鷲穂は神足通を解いてあっさりと頷いた。
「あとはタルタルソースがあれば完璧だが……そんなオブリビオンはいないよな?」
「壁から持って来させればよかろう」
 そして二人は、一足先にフライエビの味を確かめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
やれやれ
コンプライアンスに配慮するのも一苦労だよ

フライエビはエビと鳴くんだね
珍種だし図鑑に記録しておこう
しかし揚げる手間を省いてくれるとは
意外と親切な国民性の人達なのかな
僕が適当に揚げるより職人に任せた方が
段違いに旨く揚がるよね

という訳で美味しい所を
いかに傷つけず狩るかが肝だな
イカだけに
UCで隼くんを呼び出し空へ
エビの心を読んで突撃を何とかかわそう

何故こいつはエビの心が読めるんだ…
今きみたちはそう恐怖を覚えたかな
狩人は獲物の事を熟知しているものだよ
これだけしっかり揚がっていると
勿体ない気もするけれど
頭を斬り落とせばまあ死ぬだろう
食べない派もいるから仕方ない

隼くん頭食べておきなよ
嫌い?勿体ない…



●祝、フライエビ図鑑掲載
『エビィッ!』
「うんうん、フライエビはエビと鳴くんだね。もうわかったよ」
 何度も夜空に響いたフライエビの鳴き声(?)に、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は同じ高さで頷いていた。
 章が座っているのは、黒翼を広げた大きな鳥の背であった。

 ――相対性理論。

「本当に大きなエビだね。隼くんが小さく見える」
 召喚した全長3m以上の大きな黒いハヤブサの上に座り、章が何をしているのか。
「珍種だし図鑑に記録しておいてあげたよ」
 章はずっと、フライエビの生態を図鑑に書き込んでいたのだ。
 まあ、エビは生物的な分類上、節足動物に分類されている。その分類の中には昆虫も含まれるので、章の中でも珍しい部類になったのだろう。
 結果、フライエビが見せつける様に音速を越えて秋島を飛び越えてみせた後から片翼になるまでの間、章は隼くんの上でつかず離れずの距離を保って記録していた。図鑑に書き込むなら、まあそのくらいかかる。
「もう書き込みはいいかな」
 けれども暇つぶしに本を読んでいた程度の気軽さで、パタンと図鑑を閉じて。
 ピュィィィィィッ!
 章は隼くんの上で、召喚した時と同じように指笛を響かせた。隼くんが黒い翼を大きく羽撃かせ、フライエビに接近していく。
「どこから解体しようかな? 都合によりお見せ出来なくなりそうな方法で良いなら、解体も楽なんだけどね」
 コンプライアンスに配慮するのも一苦労だよ――と、肩を竦める章だが、どう解体しようかと思案する理由はそれだけではない。
 フライエビと横並びに飛んでいれば、嫌でも目に入る黄金色の揚げ衣にもあった。
「良くこの大きさをしっかり揚げられるものだね」
 見れば見る程、見事にカラッと揚がっている。何処にも焦げなどなく、残る油に月明かりを浴びて、夜空にあってもツヤツヤと輝いている揚げ衣だ。
「これだけ揚がっている衣を剥がすのは勿体ない気がするんだよね。僕が適当に揚げるより、職人に任せた方が段違いに旨く揚がってるだろうから」
 揚げ物としてみれば、フライエビの衣は、章ではひっくり返っても作れないであろう、見事な揚げ衣なのである。
 ぶつかった飛空艇の船体の方が削れると言う噂もあるのだが。
「揚げる手間を省いてくれるとは、この島を狙っている屍人帝国は意外と親切な国民性の人達なのかな」
 屍人帝国が、お近づきの印的に巨大エビフライを進呈してくれた――とでも言うのだろうか。それ、普通のエビフライで良くないかな。
「衣は残して、頭かな。頭を斬り落とせば、まあ死ぬだろう。食べない派もいるし」
 なんだかんだ呟いて思案している内に、章の方針が固まった。
「えい」
 隼くんの上から無慈悲に羅生門を振り下ろす章の姿は、フライエビの目にバッチリと映っていた。
『エビィィッ!?』
 慌てた様子で、フライエビが速度を上げる。
「頭を斬られるのは怖いかい? 逃げない方が痛みは感じないよ。多分」
『エビッ!?』
 だが十数秒もすると、隼くんに乗った章がしれっとフライエビの正面に現れた。
『エビィ……?』
「僕がここにいるのが不思議? きみの心を読んで、先回りしただけだよ」
 不思議そうなフライエビに、章は淡々と告げる。
「何故こいつはエビの心が読めるんだ……今きみはそう恐怖を覚えたね」
『エッビッ!?』
「狩人は獲物の事を熟知しているものだよ」
 章の言葉に、フライエビが驚いたように跳ねる。
 これはフライエビでなくても、驚くと言うものだろう。
「隼くん頭食べておきなよ。え? 嫌い? 勿体ない……」
 章は解体をまだ狙っているが、もうこれだけで良いんじゃないだろうか。
 この時、フライエビは章に恐怖しつつ、下から別の猟兵に脚を斬られる恐怖も感じてたりしていたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

琥珀川・れに
会いたかった…
噂話を聞いた時から一度食べてみたかったんだ。
これだけ大きくて活きがいいんだ、絶対に美味!
しかし噂以上に大きい、僕だけじゃ食べきれないだろう

という訳で調理してもらう為助っ人を呼んだ
剱!酒場のマスター、終わったら調理よろしく!
できればフレンチもよろしく
剣で捌いた部位は次々彼にパスしよう

……あっ忘れていた、戦う助っ人としてもね!
彼はたまに言動が怪しくなるんだ、気にしないでくれ。


生きているうちから香しい油…
うん、これなら3回は当たってもいい…なんてね
しかしここぞでUC輪廻決行
100秒だけ強くなり4回目を「カウンター」で「鎧無視攻撃」
この細い剣で中の神経を狙い「串刺し」にし
疲労で味を落とさないよう一発でシメよう

では美味しい料理をよろしくね
余ったら持ち帰って酒場の皆にふるまおう。
(親指を立てて浅い油の塊に沈む)

※剱f01759と、分からないが他に旅団酒場の人いれば
※流れてもできるだけ再送するようお願いした
※アドリブ大好き、大体やりそうならご自由に
※文章上はUC変更もOK、書きやすい奴で


備傘・剱
なんか、出遅れたが、その分、活躍してくれるわ!
という訳で、そこなエビフリャー擬き、その肉、おいてけだがね!

調理開始、発動!
まぁ、おみゃぁら!美味しくからりと揚がったしゃちほこ風味に仕上がってまぁ
そんなに美味しく食べられたいんかね?
安心しぃやぁ、衛生的に、美味しく、ちゃんと余す所なく全部食べたるがね
覚悟しぃやぁ

さぁさぁ、皆の衆、美味しく食べるが世の常だがね
琥珀川も、どんどん捕ってちょーよ

…なんだろう、魂の奥底よりも深い所からこんな言葉が出てきてるんだが…
俺は一体、どうしてしまったんだろう?
まぁ、ちゃんと確保するだがね、とまた出た

あ、オブリビオン相手に、この一言を言うのを忘れていた
なぁ、お前、オブリビオンだろ!
オブリビオンだろ、なぁ、肉置いてけ(酒場ではいただきますを指す言葉)!


解体したやつは、オーラ防御と念動力で空中確保、こっそり持ち込んだクーラーボックスにどんどん詰めていこう

アドリブ、絡み、名古屋弁、好きにしたってぇね

※琥珀川f00693と共に



●フライエビと王子様の運命
「会いたかった……」
 空を飛ぶ巨大なエビフライの如き魔獣に、琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)は、恍惚とした表情で視線を向けていた。その仕草と表情が、まるで『長らく会えずにいた恋人に再会出来た王子様』の様な、何処か芝居がかっているのは、れにがれにである以上、仕方がないと言うものだ。
 けれども、会いたかったと呟いた言葉は演技ではない。
 フライエビと言う非常識極まりない魔獣の噂を、れには、秋島を訪れる前に聞いた事があったのだ。
(「噂話を聞いた時から、一度食べてみたかったんだ」)
 緩みそうになる口元を意識して引き締め、れには胸中で呟く。
 実在するなら、見てみたい。
 そして、食べてみたい。
 密かにそう願っていた魔獣は、今はもう、幻の魔獣ではない。
(「しかも、噂以上に大きいね」)
 れにが聞いたフライエビの噂では、大きいものでは数十mになる個体もいると言う事ではあった。けれどもその部分は、噂の中でも眉唾物と言う感じで伝わっていた。
 それがどうだ。
 今、空を飛んでいるフライエビは、れにが噂で聞いた以上に大きい。吻の先から尾鰭の先までで計測すれば、三桁に届くのではないだろうか。
(「これだけ大きくて活きがいいんだ、絶対に美味!」)
 否が応でも胸中で膨らむ期待に、れには思わず拳を握る。
 既に他の猟兵の攻撃を何度か浴びていても、まだ生きているくらいには活きが良い。それは間違いのない事実だ。
 それだけの体力がある身体なら、その身にどれだけ旨味があるのだろう。
 反面、フライエビの巨体故の問題もあった。
 あれほどの巨体。他の猟兵と分けるとしても、1人分がどれほどになるか。れに1人ではとても食べ切れる気がしない。
 そしてもう1つは、どう食べるか、という問題だ。
 見た目はエビフライだが、ああして飛んだり跳ねたりしているのを見れば、まだ生きているのが判る。そこから推測される事は、フライエビは調理可能――或いは必要、と言う事である。
(「まだかな、酒場のマスター」)
 だかられには、助っ人を呼んだのだ。調理が得意で、特に食べられるオブリビオンだと目の色を変える類の。
「待たせたな。こりゃ、どえりゃあ大きなエビフリャー擬きだがね」
「やあ、待っていたよ。剱」
 背中に聞こえた声にれにが振り向けば、備傘・剱(絶路・f01759)が立っていた。

●料理人の衝動
「まぁ、おみゃあ! 美味しくからりと揚がったしゃちほこ風味に仕上がってまぁ。そんなに美味しく食べられたいんかね?」
「……君、たまに言動が怪しくなるよね」
 現れるなり、謎の訛り全開で捲し立てる剱に、れにが苦笑を浮かべる。
「……なんだろう、魂の奥底よりも深い所からこんな言葉が出てきてるんだ」
 何故そう訛まるのか、剱自身も良くわかっていなかった。
「俺は一体、どうしてしまったんだろう?」
「君にわからないものを、僕が判る筈ないだろう?」
 首を傾げる剱に、れにが肩を竦める。
 フライエビのせい?そうかもしれない。
「まぁ、気にしないでよ。ちゃんと確保するだがね」
「ああ、気にしないでおくし、戦いの助っ人としても頼りにしてるよ」
「勿論! 琥珀川も、どんどん狩ってちょーよ!」
 剱の抑えられない訛りは置いておいて、れにはフライエビに視線を戻した。

●王子様と料理人
「調理開始、発動!」
 料理にキャンプ、早業に串刺し。
「オブリ飯の神髄見せてやるぜ」
 魔獣を狩ってそのままバーベキューに入れそうな技能を纏めて、ドンッと大きく高める業を発動した剱は、包丁代わりに短刀を構え、エアブーツで地を蹴って跳び上がった。
 既に片翼を失っているフライエビは、空飛ぶ鍋から現れた当初よりも飛行の高度がガクッと落ちている。それでも、陸上からのジャンプではまだ届き切らなかった。
「ちぃっ!」
 浮遊感が落下感に変わる直前、剱は舌打ちしながら短刀『Orthrus』を振るう。いつもよりも不思議な光を強めた刃が、フライエビの足の1つの先端を斬り落とした。
「足だけか」
 不満そうにしながらも、剱は空中でその足をキャッチして、持って来ていたクーラーボックスにしまい込む。常識の範囲のエビの足は大した食材ではないが、フライエビの脚はカニのように身が詰まっているのが見て取れたから。
 けれども、剱は脚では満足できない。
 本命たる狙いは、フライエビの身だ。
「なぁ、お前、オブリビオンだろ! オブリビオンだろ、なぁ、肉置いてけ!」
 剱は何度も何度も地を蹴って、フライエビを狩らんと刃を振るう。
 地を蹴る度に、その形相は険しくなり、回数が3回を超える頃には、慈悲など無さそうな鬼気迫る形相になっていた。仏の顔も三度まで、と言ったところか。
 それが精神攻撃になっているのは、狙ってなのか無意識なのか。
『エッビィィィィィ!?!?!?!?』
「あ、こら待て!」
 そんな剱に気圧されたか。
 速度を上げてばびゅんっと飛びだしたフライエビを追って、剱も駆け出す。
 剱からはフライエビが邪魔で見えていなかったが、フライエビはちょっと前から、その上を飛ぶ別の猟兵によって恐怖を与えられ続けていた。
 上下から色んな意味での恐怖を感じれば、フライエビだって逃げると言うものだ。
「そこなエビフリャー擬き、その肉、おいてけだがね!」
 そうと気づいていない剱は、両目をぎらつかせてフライエビを追い続ける。
 肉置いてけ、と言われて置いていく獲物がどこにいると言うのだろう。
「安心しぃやぁ、衛生的に、美味しく、ちゃんと余す所なく全部食べたるがね」
 剱の言葉がフライエビに正しく届いているかは謎だが、届いていたとしても、安心はとても出来ないだろう。
 食い尽くされると言われて安心できる生物が、いる筈がない。
「狩ったら美味しく食べるが世の常だがね。覚悟しぃやぁ!」
 しかも剱の表情と気配は、ますますコワクなっていく。
 色んな意味で限界に達したフライエビは、もう真っすぐ飛ぶのをやめて、空中でビョンビョンと飛び跳ね出した。
「うぉっと!」
 カリカリの衣から飛び散った熱々の油が降ってきて、剱の足を止めさせる。
 地に落ちた油が、じゅっと地面を焦がして香ばしい匂いを立てた。
「生きている内から香しい油……」
 剱の後に着いてきていたれにが、その匂いを深く吸い込む。
「うん、これなら3回は当たってもいいかな……」
 なんてね、と微笑んだれにの肩を、剱ががしっと掴んだ。
「琥珀川。それは、やめといた方がええ」
「どうしてだい?」
 剱の真剣な表情に、れにが首を傾げる。
「それは、ディープフライ・フレーバー言う、揚げ物特有の油の香りでな。確かに食欲をそそる香りではあるのだが、その油に旨味はにゃー。油は油だがね」
 フライや天ぷらと言った揚げ物料理は、揚げ衣で包んで揚げる事で、食材の水分が飛んで衣の中に旨味が凝縮されるのが持ち味とされている。衣が与えるのは食感と、香ばしい香りだけだ。そこに旨味は、ほとんどない。
 剱の言うように、油は油である。
「当たるメリットはにゃー思うに」
「そうか……折角だから当たってあげても良いかと思ったんだが」
 剱の力説に、れには心なしか残念そうに、腰の剣に手をかけた。
「そういう事なら、これ以上時間をかける必要はないね。疲労で味を落とさないよう一発でシメよう」
 スラリと抜き放つ、ルーン文字をあしらった細身の刃。
 『エペ ド ルーン』を構えて、れには肺の奥深くまで空気を吸い込んで、それをゆっくりと吐き出した。
 そうした深い呼吸を、何度も何度も繰り返す。
 ――ドクッドクッ。
 その内に、れにの心臓は常にない程に早鐘を打っていた。
「沸き立つ血を燃料に僕を生まれ変わらせよ」

 輪廻決行――サキュレーションフォーシング。

 肺活量にものを言わせた呼吸で血流を操作し、血流を限界以上に増強する事で、全ての能力を増強する業。
「後で言えるかわからないから、先に言っておくよ。美味しい料理をよろしくね。できればフレンチも欲しいな。余ったら持ち帰って酒場の皆に振る舞おう」
「任せろ」
 既に斬り落とした脚をしまったクーラーボックスを叩いてみせる剱に頷いて、れには膝を沈めると、地を蹴って跳んだ。
『エビッ!?』
 その跳躍力に驚いたように跳ね上がったフライエビが、油を飛ばして来る。
 れには空中で身を捩って油を避けつつ、その油を蹴って更に勢いを増して、フライエビへと跳んでいった。
『エビッ! エビッ!』
 フライエビも来るなと飛び跳ね、油を撒き散らす。
「くっ!」
 れにも距離が詰まるにつれて、空中で油を避けるのも困難になる。
(「これは必要な事だからね、仕方がない」)
 胸中で呟いて、れには油を避け切るのを諦め、油を浴びてでもフライエビに肉薄する事を選んだ。
 血流増強で限界以上に得た強さが、いつまでも続く筈がない。その力は時間限定。時間切れとなれば、れにが意識を失うと言う代償すらある。
 残されたあと十数秒で、フライエビに届くには、そうするしかなかった。
「そこだ!」
 そして、衣の無い頭部の部分に、れにが下から刃を突き立てる。その一撃はフライエビの甲殻その一撃はフライエビの甲殻を貫き、巨体にある中枢神経系のひとつの中心を捉えていた。
 ビクンッとフライエビの巨体が大きく震えて、残る片翼と髭と数本の足がだらんと力を失って垂れ下がる。
「ははっ――やったね」
 弛緩したフライエビの身体から、ズルリと刃が抜け落ちる。
 落下の感覚を感じる前に、れにの意識は途切れた。
 ゆっくりと落ちていく下にあるのは、フライエビが飛ばして溜まった油溜まり。
「ひゃー、お疲れ」
 れにが油の中に落ちる前に、剱が受け止める。
「さーて。どう料理してやろうか」
 油の無いところにれにを横たえて置いた剱は、落ちて来るフライエビを目をギラつかせて待ち構えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『浮遊島でキャンプを』

POW   :    魔獣や屍人帝国を警戒し、寝ずの番をする

SPD   :    火を起こし、手早く食事を作る

WIZ   :    安全に寝られる場所を確保し、休息する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●平穏戻りて
「あんなイカが潜んでたなんて……」
「うちの屋根の上にもいたの? やだねぇ……」
「何だったんだ、あの巨大なエビフライは……」
「エビってエビって鳴くんだな……」
「何でこの島が……」
 ざわ……ざわ……。
 猟兵達によってフライエビが討伐された秋島では、さすがに異変に気付いた住人達がざわついて――。
「「「「「まぁ、いいか」」」」」
 いなかった!
 いや、一度はざわつきはしたのだ。
 したが、住人達は深く気にしない事にしたのだ。
「まあ、居合わせた勇士のお陰で事なきを得たのなら、ねぇ?」
「そうそう。それでいいじゃない」
「大きな被害もなかったし」
「取られて困るものもないものね」
 と言う事らしい。
 フライエビから飛び散った油の始末すら、夜が明けてから行うつもりのようだ。油は冷えて固まった方が始末が楽だしね。
「今夜は助かりました。もう遅いですし、この島に泊って行ってくだされ」
 猟兵達が何か言う前に、住人の代表者と言う壮年の男性からそんな申し出があった。
「湖畔の野営地を好きに使って頂いて構いません。後ほど、島の野菜を届けさせます。夜ならば湖に適当に釣り糸を垂らすだけで、バゼラードフィッシュも釣れましょう」
 バゼラードフィッシュと言うのが、サンマに良く似た湖の魚の事だろう。
 フライエビもあるし、イカも大漁だ。
 何はともあれ――秋の魚介キャンプの時間である。

 なお、フライエビの揚げ衣の下だが、剥ぎ取ってみれば甲殻はなかった。ある意味、甲殻よりも丈夫だった揚げ衣の下には、ツヤツヤの綺麗な生のエビの身があったのだ。切り分けようと身に刃を入れれば、拒むような弾力が伝わって来るくらいのプリプリのエビの身である。
 あれだけ油まみれになってて、なんで下の身体が生なのかって?
 いいじゃないか。
 謎がひとつくらい、残っていても。

===================================
 フライエビの身の状態の謎の解説が浮かばなかったわけではないYO!

 というわけで、3章です。
 秋島の湖畔でアウトドアな夜です。
 1,2章で倒したイカとエビな魔獣料理をするもよし、湖でサンマっぽい魚を釣って食べるもよし。住人と交流して屍人帝国の狙いを探るもよし。お好きにどうぞ。
 時間帯は夜の9時くらいからです。まあ起きてる人は起きてます。
 湖は琵琶湖くらいの大きさです。

 OP時点で書いていた通り、ここからの参加もOKです。
 イカもエビもいっぱいあるからね!
 なおフライエビは数十m(100m近い)巨大なの1尾でしたので、適当に切り分ける形になります。多少人数増えても、1人辺り厚み1m以上になりますね。
 野菜、果物は秋が旬のものなら大体採れる感じので、希望すれば貰える=プレイング書いとけば出て来る、くらいで大丈夫です。
 キャンプ道具はレンタルもあるので、深く考えなくてもOKな感じです。
 あ、飲酒は、大人になってからで!
 それと、ルシルは呼ばれたら顔出します。

 そのくらいでしょうか。

 プレイングは本導入公開時から受付です。
 2章途中から悪くなってた肩の状態は、良くなったりまた痛くなったりしてるので、3章も再送前提で進めさせて頂きます。
 プレイングは保存しておきますので、再送受付告知後にお願いします。
===================================
備傘・剱
それでいいのか、秋島住人
いや、いいならいいんだが
…いい、のかなぁ?

食材に幅があるのはいい事だし、さて、バゼラードフィッシュ、ゲットしよう
と言うわけで、鳥獣技発動して海豚になって、確保じゃ!
うむ、念動力で確保すれば、必要数と求める大きさの奴は手に入るだろう
…まぁ、傍から見たら、結構、不気味な光景だよね、俺のやってることって…

てなわけで、エビ擬きに、サンマ擬きをゲットしたから、今度は調理じゃ!
美味しく食べてもらえて、食べることが出来て、初めてオブリ飯の真価を発揮するのだよ

さぁ、どんどんこさえていこうね、シンプルに焼いてもよし、活きがいいから生でもよし
ちょっと凝ってもいいよな

アドリブ、好きにしてくれ


琥珀川・れに
※打ち合わせなし剱f01759と
※アドリブ好き

早く!待ちきれないなぁ
食材を獲る事は出来るが料理は食べる専門でね
だからこそ食材を余さず料理人には敬意を払うよ
貴族らしく優雅な所作で食事
物によってはかぶりついて
熱っ…(照れ笑い)

こんなオブリビオンだけならいくらでも協力していくらでも美味しくいただくんだけどね
こんなのを飼ってる帝国とやらに攻めてみたくもなったよ
他にも食材がいるのだろうか(わくわく)



●王子様とイルカ
「……マスターは、どこに行ったんだろうね?」
 静かな夜の湖畔を1人、琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)は人を探して歩いていた。
 ちらほらと見える光は、他の猟兵がキャンプしている光だろう。
 ゆらゆらと揺らめく炎の灯りと、人工の光が入り混じっている。
 けれど、その光の中にも、れにが探している人物――備傘・剱(絶路・f01759)の姿は見当たらなかった。
 ――バゼラードフィッシュ、ゲットしてくる。
 などと言い残して、剱が湖の方に消えて、数十分。
 島の住人から借りた道具で、れにが不慣れながら野営の準備を終えても、イカとエビ以外の、これまた島の住人から貰った野菜も軽く洗って調理の準備も終わっても、剱はまだ戻ってきていないのだ。
「いないなぁ」
 仕方なく、れにはこうして探し歩いているのだが、剱の姿は見当たらない。
 魚を採りに行ったのだから、湖の周りを探せばすぐに見つかると思ったのだが。
(「そう言えば、釣り竿も持たずに行ったような?」)
 剱は一体、どこでどうやって魚を採っているのだろう。
 れにが内心で首を傾げたその時、水面で何かが光った気がした。
「なんだ?」
 近づいてみると、水面に何かが浮かんでいる。
 あれは――魚?
 その時、ザパァンッと大きな水音を立てて、湖の中から海豚が飛び出してきた。
(「!?」)
 海豚。湖で、イルカ。
 ――何故。
(「いや……イカとエビが空を飛んでた世界だ。この島では、湖にイルカがいるものなのかもしれない」)
「琥珀川じゃないか。どうしたんだ?」
 れにが予想外の遭遇に胸中で困惑している、イルカの方から声をかけて来た。
 それがますます、れにを困惑させる。
 イルカは、とても賢い動物だと言う。
 だがそれは決して、人語を話すと言う事ではない。
「あ。もしかして、剱かい?」
「そうだ」
 気づいたれにの一言に、イルカ――剱はあっさりと頷いた。

「獣の戯れ、鳥の群。交り変わりて常世に姿を映せ。百鬼夜行も、旅の道連れ」
 鳥獣技――メタモルモーフ。
 全身、或いは身体の一部を鳥獣に変異させる業。幾つか選べる種族の中、剱がイルカを選んだ理由は他でもない。
 サンマ擬き――バゼラードフィッシュを採る為である。
(「水ん中のもの取るには、こっちも水の中に入るのが一番!」)
 水中での運動能力と言う点で、イルカに勝る変異候補はないだろう。
 ただそれだけの理由で、この男は多用すれば元の姿に戻れないと言うリスクを持つ技を使ってイルカになっていたのだ。
「驚かせる気はなかったんだが……まぁ、傍から見たら、結構、不気味な光景だよね、俺のやってることって……」
「不気味と言うか、まさかイルカになっているとは思わず……」
 変異する瞬間を見ていなかったれにが、イルカ姿の剱にすぐに気づけなかったのは仕方がないと言うものだろう。
「で、成果は?」
「充分に。念動力で確保したから、状態もいいぞ」
 れにの問いに、剱は水面の魚を浮かび上がらせる。針を使っていないので、どのサンマ擬きも綺麗なものだ。
「で、琥珀川は何でここに?」
「勿論、君を探していたんだよ」
 剱から魚を受け取りながら、れには迷わず返す。
「僕は食材を獲る事は出来るけれど、料理は食べる専門だからね!」
 だから助っ人として呼んだんじゃないか、と悪びれもせずに告げるれにに、人の姿に戻った剱は苦笑していた。

●生、揚、焼、煮――イカエビ三昧
「さて。エビ擬きに、サンマ擬き。琥珀川の獲ったイカ擬きも併せて調理じゃ!」
 良く研いだ包丁を手に、剱が魚介類に向き直る。
 まずは腸を取ったサンマ擬きに塩を振って、しばらく置いておく。
 その間にフライエビの身を、一口大に切り分けて。イカ擬きは20cm四方くらいに切り分けてから、2~3mm程度の幅に細く切っていく。
 最後に塩で水が抜けたサンマ擬きを頭を落としてから三枚に卸して、中骨の一枚を除いた2枚の身を薄切りにしていく。
「まずは刺身! 活きがいいから生でも行けると思うよ!」
「どれも綺麗だね。でもまずはやっぱり――」
 剱が寄越してきた皿から、れにはまずフライエビの身に手を付ける。少しだけ醤油をつけて口に入れれば、れにの口の中でエビが踊った。
 歯が滑るのではと思う様な弾力。噛み締めれば、舌の上で感じていた甘味が、より濃厚になって口の中に広がっていく。
「これが……フライエビか。さて、次は――」
 続けてイカ。素麺風に細く切った身は数本まとめてツルりと。コリコリとした弾力のある歯応えと、エビと違う甘味が美味しい。
 サンマの刺身は、生姜醤油で。生でも脂が乗っているのが良くわかる。
「どれも美味しいけど、フライエビが一番かな」
 噂を聞いた時から食べてみたいと思っていたフライエビ。恐らくは二度と味わえないであろうその味を、れにはじっくりと味わう。

「琥珀川はエビが良いんかね」
 そんなれにの様子を見ながら、剱は次の料理に取り掛かっていた。
 フライエビの身を20cm程の長さに切り、片方の先端に切り込みを入れて、フライエビの尾の欠片を刺しておく。
 そして溶き卵をまぶしてパン粉を付けたら、揚げ油へ。
 ジュゥゥゥッと響く油の音。
 次第にその音が小さくなり、パチパチと小さく爆ぜる音に変わる。
「これぞ、エビフリャーだ」
「一周回って戻ってきた」
 わざわざ尻尾の欠片までつけて再現したエビフライ。何故か剱は、そうせずにはいられなかったそうである。
「さぁ、どんどんこさえてくから、どんどん食ってちょーよ」
 また口調が怪しくなりながら、剱は焚火の上に焼き網と鉄板を並べて置く。
 焼き網には、軽く塩を振っただけのそれらを乗せて、シンプルに焼いていく。
 一方、鉄板の方は、たっぷりのオリーブオイルを入れ、貰った野菜と合わせてから蓋をして、アクアパッツァ風に。
 剱にとってオブリ飯とは、美味しく食べてもらえて、食べることが出来てこそ。食べられるオブリビオンなら、料理を作るも戦うも同じ事だ。
「本気だね、マスター。ならば僕も」
 自分では料理を作れないからこそ、食材を余さず使う料理人には敬意を払う。
 その勢いに、刺身は貴族らしく優雅に食べていたれにも、湯気が立っているエビフライにかぶり付いた。
 揚げ衣の下から、エビの旨味が熱と共に広がって来る。
「熱っ……」
「良い食べっぷりじゃん!」
 熱さに思わず声を上げたれにが、照れたように笑ったのを見て、剱も笑って自分様に串焼きにしたエビを齧った。

「しかしまぁ、秋島住人はあれでいいのか」
 2人ともに腹がくちて調理の手も止まった頃、剱が夜空を見上げてぽつりと呟いた。
「何の事だい?」
「魔獣を嗾けられていた事を、あまり気にしてないようだっただろう?」
 れにが訊ねれば、剱は苦笑しながら返して来た。
「まあ、彼らがいいならいいんだが……いい、のかなぁ? と」
「いいんだろう。彼らに戦う気が無いのなら、僕達で屍人帝国に攻めたっていい」
 イマイチ納得しきれていなさそうな剱に、れには不敵な笑みを浮かべてみせた。
「攻めてみたくもなってるんだ。こんな美味しいのを飼ってるなら、他にも美味しい食材がいるのだろうかと気になってね」
「それは俺も気になる」
「こんなオブリビオンだけなら、いくらでも協力していくらでも、美味しくいただくんだけどね」
「そんときゃ、また料理にしてやるさ」
 食欲を隠しもしないれにの言葉に、剱も料理人の顔で頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明石・鷲穂
栴(f00276)とメシ

泊めてくれるのか?悪いなあ。
湖畔近くのいいとこに野営地とるぞ。急げ!

住民に野営道具を借りて準備。
あと酒も分けてもらおうな。
ほどほどに···いや、2.3本貰っていいか?
あと栴用にアルコール以外の飲みもんも頼もう。

あっという間に美味そうな料理になっていく···
改めて見ると規格外な珍味だよなぁ。
腹が減る匂いだ。つまみ食いは·····我慢しよう。

毎度美味い飯の案内ありがとなあ、ルシルも良かったらどうだ?
どんどん飲み食いすると良い。
食糧はしっかり保冷してくれたからたっぷりだ。

気になってたんだが、俺がその保冷庫に入ったら食べ放題だよなぁ。·····冷えるか?いや気になるな···。


生浦・栴
山羊の(f02320)と
この時間に他の者を呼ぶのも悪かろう

野営準備は任せた
その間に合図用の鈴を付けた釣り竿にを岸に固定し、糸を垂らす
料理は技術要らず前提だ
イカもエビも大き目に切ってフライパンと鉄板で焼くのみだ
鉄板側は塩胡椒を振り、フライパン側は酒を少し頂戴して蒸す
梨やリンゴも薄切りで鉄板に乗せ、バターとシナモンを少々
釣れたものは串焼きにしよう

フューラーのも良ければどうだ?
俺がまだ飲めぬのでなあ
お主がもし飲めないのであれば普通に鉄板から摘まんでほしい
いつも美味い依頼の案内をして呉れている分の礼もしたいのでな

冷えるし、調理前の冷えた食材しか入っておらぬぞ?
魚も焼けた、喰うのは調理済みだけにしておけ



●月に駆けて鈴が鳴る
(「随分と大きく見えるものだな」)
 暗くなった湖面に映っている大きな月を横目に眺め、生浦・栴(calling・f00276)は胸中で呟いていた。
 空の世界だからだろうか。
 湖面に映った月は、他の世界よりも大きく見える気がする。
「さて、山羊のは何処まで行ったのだ?」
 そんな明るい湖畔を、栴は明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)を探して歩いていた。
 湖畔近くの良い所を野営地にしよう――と、鷲穂は島の住人に借りた野営道具だけ担いで、栴に先んじて急いで湖まで駆けて行ったのだ。
 自分が飲みたくて貰ったお酒も、栴に預けて。
 それはいい。鍵の保冷庫――『Saved area』に入れてしまえるものであれば、栴は重さも気にせず運ぶ事が出来るのだから。
 けれども湖が大きいと言う事は、とりもなおさず、湖畔も広い。
 そんな場所で人ひとりを探すのは、それなりに時間のかかるものであった。
「やっと見つけたぞ、山羊の」
「よう。栴。良い場所だろ?」
 合流した時には、鷲穂は既にテントを設置し終えていた。
「確かに、急いだだけあって良い場所だな」
 ススキに似た背の高い草に囲われた、湖畔の空き地。そうは言っても、かなり高さのある大型のテントを設置できるだけの広さはある。
 他に大きな樹木はないので、湖も夜空も良く見える。さりとて、ススキの囲いである程度隠されるので、周りを気にする必要もない。
「良い場所だが……あれ程急ぐ事はなかったのではないか?」
「それな」
 思っていた事を栴が口に出してみれば、鷲穂が苦笑を浮かべて頷いた。
「こんなに広いなら急ぐ必要なかったかもなぁ」
 十数人程度が数組に分かれて野営しているのだ。
 場所はほとんど、選びたい放題だったろう。
「まあ、良いけどな。大して疲れちゃいないし」
「山羊のが気にしてないのなら構わんさ。釣りもじっくりと臨めるしな」
 笑って返す鷲穂に頷いて、栴は湖畔にキャンプ用の椅子を置いた。
「釣れそうか?」
「まあやってみるさ」
 鷲穂の声に背中で返し、栴は釣り竿を振る。仕掛けが落ちたのをポチャンと言う音と、揺れる水面の月で確かめて、栴は椅子の前に置いた竿掛けに釣り竿を立てた。
「後は待つばかりだ。聞いた所、こうするのが良いらしい」
「そうか。釣れると良いな」
「そうだな」
 期待が滲む鷲穂の声に曖昧に頷いて、椅子に深く座り込む。
 それからしばらくは、湖畔には鷲穂が焚き火台を組み立てる音だけが響いていた。

 ――チリンッ。

 釣り竿につけておいた小さく鈴が鳴った直後、栴が弾かれたように立ち上がる。
 視線を向ければ、釣り竿は引かれてグンッとしなっている。
「喜べ、山羊の。どうやら坊主は免れそうだ」
 小さな笑みを浮かべて告げて、栴は竿を立てる。糸の動きから魚の動きを予想し、竿の向きを変えながら。
「山羊の、網を頼む」
 引く勢いが弱まった所に栴が釣り竿を振り上げれば、湖の中から短剣のように細長く鋭い体形の魚が3匹いっぺんに姿を現した。

●僧と術士と酒とメシ
 釣りに明確な終わりというものはない。
 いつ終わりにするかは、釣り人次第。
 ――ぐぅぅぅっ。
 けれども今回、栴に釣りを止めさせたのは、盛大に響いた鷲穂の腹の虫だった。
「イカもエビもあるしな。このくらいで十分か」
「料理も任せていいんだな?」
 苦笑しつつ釣り竿をしまう栴に、心なし強くなった鷲穂の期待が向けられる。
「ああ。技術要らず前提の代物だがな」
 軽く返して、栴は料理の準備に取り掛かった。
 と言っても、鷲穂に向かって言った通り、高い技術を必要とするものではない。
 『prison cell』の保冷庫から取り出したイカとエビの身を適当に大き目にザクザクと切り分け、塩を振っておく。
 釣り上げたサンマ――バゼラードフィッシュも塩を振って、串に刺しておく。
 これで、ほぼ終わり。
「貰うぞ」
 栴はイカとエビをフライパンに入れると、そこに鷲穂が島の住人から貰った白ワインを軽く浸るくらいまでかけて蓋をした。
 そのまま、焚火の上、やや火から遠い所に置いて遠火で蒸し焼きに。
 続けて、栴は焚火の真上に鉄板を置いて、バターを落とす。バターが溶けた所で塩と胡椒を振っておいた、イカとエビを投入していく。
 サンマの方は、もう一度塩を振って串に刺して焼くのみだ。
 見事なまでに魚介尽くし。
 まあ、野菜を入れるとなると、料理の難易度が少し変わるし。
「野菜がないなあ!」
「要るか?」
「要らないな!」
 鷲穂も魚介尽くしで良いと言っているのだから、これでいい。
「しかし腹が減る匂いだ」
 ジュウジュウと音を立てる鉄板から昇る煙に、鷲穂の顔が緩んでいる。腹の虫も、またぐるぎゅーと空腹を主張していた。
「つまみ食いは……我慢しよう」
「ん? 鉄板のなら、好きに摘まめ。生焼けを食っても、薬はまだある」
 空きっ腹を抱える鷲穂に、栴は鉄板を指して告げる。フライパンの方は、アルコールが飛ぶまでまだ時間がかかるが、鉄板焼きなら焼き加減は好みで良い。
「お、いいのか。なら、遠慮なく!」
 待ってましたと破顔して、鷲穂は鉄板に箸を伸ばした。
 まずはエビ。
 エビの切り身とは思えない大きさ。白くなっていると思っていたが、かぶり付いてみれば半生で、外側は穂栗と、奥はプリッとした歯応えが残っていた。
 フライになって飛んでいたとは、とても思えない。
 不浄を得る為に生で噛り付いた時とは違う、もっちりとした歯応え。塩と胡椒のみなので、イカ本来の甘味が良くわかる。
「ああ……これはいかん。酒が進む」
 口の中にエビとイカの熱が残っている内に、冷えた麦酒をぐいっと煽れば、焼いた魚介とは違う酒精の熱が、鷲穂の喉を滑り落ちていった。
「くはぁ……」
「美味そうに飲むものだな」
 喉の奥から出て居そうな吐息を零す鷲穂に、栴が感心したように呟いた。
 栴はまだ飲めない年齢故に酒の味と言うものは判らないが、目の前でこうも美味そうに飲まれては、それほどなのかと思わせられる。
「まあな。酒もたっぷり貰っといて正解だった」
 空になったグラスに、鷲穂は次はどの酒を注ごうかと迷う。同じ麦酒にするか、米の酒に行くか、葡萄酒にするか――野営道具を借りる際に交渉したら、一通りのお酒を貰えてしまったのだ。
「こっちもそろそろ良いだろう」
 そこに、栴がフライパンを焚火から上げて蓋を取る。
 ぶわっと広がった湯気と共に、これまた食欲をそそる香が広がった。
 エビとイカの白ワイン蒸し、と言った所か。口に入れてみれば、どちらも焼いたのとは違う柔らかな舌触り。
 ワインに残る仄かな葡萄の香りが、魚介の香りと共に鼻に抜けていく。
「どうだ、山羊の。まあまあであろう」
「充分美味いって、栴!」
 心なしか得意そうな栴に、鷲穂は箸を伸ばす手は止めずに力強く頷いた。

「気になってたんだが」
 追加の食材が出て来る鍵を眺め、鷲穂が口を開く。
「俺がその保冷庫に入ったら食べ放題……? 冷えるか?」
「確実に冷えるし、調理前の冷えた食材しか入っておらぬぞ?」
 喰うのは調理済みだけにしておけ、と鷲穂の思い付きを栴が止めていると、そこにルシルが顔を出した。
「やあ。やってるね?」
「来たか。フューラーの」
「2人だけなんだね?」
「ああ、この時間に他の者を呼ぶのも悪かろう。それより、良ければどうだ?」
 新たに追加したイカとエビがジュウジュウと音を立てている鉄板を指して、栴が少し食べていけと勧める。
「いつも美味い依頼の案内をして呉れている分の礼もしたいのでな」
「そうそう。毎度美味い飯の案内ありがとなあ」
 栴の言葉に、鷲穂も頷く。
「そういう事なら、頂こう」
 あのエビもう会えなさそうだし気になっていたんだと、ルシルはまずエビの身に持参したフォークを突き刺した。
「へえ。これ塩と胡椒だけで味付けしたのか。シンプルだけど、素材が良い時はこういうのも良いもんだね」
「イカも美味いぞ。倒してすぐ、保冷しといて貰ったからな」
 ルシルの評価に笑って返す鷲穂。その少し赤くなった顔が、これまでに飲んだ酒量を物語っている。
「って事で、ルシルもどんどん飲み食いすると良い。食材はたっぷりある」
「俺がまだ飲めぬのでなあ」
 グラスを掲げる鷲穂の横で、栴も頷く。相伴ついでに晩酌にも付き合っていけ、という事か。だが――。
「あ、言ってなかったっけ? 私、お酒はあまり強くなくてね。たまに嗜む程度だよ」
 言ったと思っていたと笑いながら、ルシルは1杯だけ、と酒杯を取った。
「然程飲めないのであれば、普通に鉄板から摘まんでほしい。魚介以外に甘いものも欲しくなるかと、こういうものも用意してある」
 栴が鉄板の端の方に乗せるアルミホイルの包みを開くと、中からシナモンと甘い香りがふわりと広がった。中に入っているのは、焼きリンゴと焼き梨だ。
「これなら葡萄酒だなぁ!」
 それを見た鷲穂が嬉々としてワインの瓶を取るのを見て、栴とルシルは思わず苦笑を浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜久・灯火
【黒猫】
戦闘には参加できなかったけど、キャンプをしにやって来たよー。
有栖ちゃんはお疲れだろうし、料理の準備は任せてよ。

キャンプのために装甲車型キャンピングカーを持ち込むよ。

黒子のバトルキャラクターズを召喚して手伝ってもらって、手早く料理の準備を開始。
エビもイカも大きいねー。折角だから今回は天ぷらにしちゃおうか。

エビとイカを食べやすいサイズに切って、衣をつけて油であげて天ぷらにするよ。
秋の野菜も頂いてついでに天ぷらにしちゃおう。

有栖ちゃんが釣ってきたサンマは塩焼きにしようかな。
何だか豪華な晩ごはんになりそうだね。
白米も用意したし、島の人にぶどうジュースも貰ったから一緒にどうぞ♪


結城・有栖
【黒猫】
料理の方は灯火さんが準備をしてくれるそうですから、私達はサンマを釣りに行きましょうか。
「イカやエビも楽しみダケド、サンマも美味しそうダネー。」

釣りの道具を借りて夜釣りをしつつ今日の戦いを思い浮かべます。
…結局、屍人帝国がこの島を狙った理由は何でしょうね。
「分からないケド、また襲ってくる可能性もありそうダネー。」

サンマを数匹程釣ったら、灯火さんの所に戻りましょう。
エビとイカは天ぷらにしたんですか。美味しそうですね。
灯火さんは有難うございます。美味しくいただきますね。

今日はオオカミさんも大活躍でしたから、召喚して一緒に食べてもらいましょう。
「わぁい♪どれも美味しそうダネー♪」



●オオカミ娘と黒猫娘
 暗い夜道に、2つの光が一定の速度で動いている。
 車のヘッドライトだ。
 それが一般的な車よりも屋根が厚く、フロントガラスの前にせり出た独特な形状を持つキャンピングカーであるのがわかっただろう。
 尤も、普通のキャンピングカーは特殊部隊が乗ってそうな装甲に覆われていたりしないのだが。
「ええと、有栖ちゃんは確かこっちって……」
 その運転席で、夜久・灯火(キマイラの電脳魔術士・f04331)はハンドル代わりのゲームデバイスを手にしていた。
 装甲だけでなく内部には補助AIも搭載しており、初めての道でなければAI任せの運転も可能な凄い車なのである。
「あ、いたいた」
 明かりの中に探した姿を見つけ、灯火はブレーキボタンを押す。
「やっほー、有栖ちゃん。キャンプしにやって来たよー」
「待ってましたよ、灯火さん」
『オツカレー』
 緩々と速度を落として止まったキャンピングカーから降りた灯火を、2人の結城・有栖(狼の旅人・f34711)が出迎えた。どうやら、既にオウガのオオカミさんを有栖自身と同じ姿で具現化させているようだ。
「……で、いきなりだけど、それ何?」
 灯火の目を引いたのは、有栖の横に謎の大きな物体。
「はい。これが今回のイカとエビの身ですよ」
「え……?」
 事も無げに返して来た有栖に、灯火の目が点になる。
 イカはまだ判る。良く見れば、ああイカだなってわかる形が残っている。でも、エビの方は、なんかプリッとした肉の塊にしか見えない。
 それが、エビの身のほんの一部だなんて。
「とても……大きいエビフライでした……」
 しみじみと呟く有栖の声の響きが、苦労を伺わせる。
「有栖ちゃんはお疲れだろうし、料理の準備は任せてよ。その為に持ち込んだ、キャンピングカーだからね」
「うん、お願いしますね」
 灯火の申し出に、有栖が頷く。
 というかまあ、そのままだと、イカもエビもキャンピングカーの冷蔵庫に入りきらないので、料理するしかない。
「料理の方は灯火さんに任せて、私達はサンマを釣りに行きましょうか」
『イカやエビも楽しみダケド、サンマも美味しそうダネー』
 だと言うのに、有栖とオオカミさんは借りた釣り竿を手に、湖に向かっていく。
 その背中を、灯火が『まだ食材増えるんだ……』と言いたげに見送っていた。

●夜釣りに思う
 ぽちゃんっ。
 投げ入れた仕掛けが水音を立てて、湖面に映った月が波紋に揺れる。
 波打った月が元の形に戻るのを、有栖はぼんやりと眺めていた。
 こうして静かな時間を過ごしていると、今夜の戦いが思い浮かんでくる。
 ――少し前までは、この夜空に、エビがエビィッと鳴いて飛んでいたのだ。
 視線を上げれば、湖面よりもくっきりと、月が輝いていた。
「……結局、屍人帝国がこの島を狙った理由は何でしょうね」
『分からないままだねえ』
 有栖の呟きに、オオカミさんが頭を振りながら返す。
『ケド、また襲ってくる可能性もありそうダネー』
 オオカミさんの呟きに、有栖が「うっ」と言葉に詰まる。
 その可能性は、誰も否定できない。
「……また、エビとかそういうの出て来るんでしょうか」
『カモネー』
 疲れたような有栖の呟きに、オオカミさんがあっさりと返す。
 そんなやり取りをしていると、有栖の手にぐぐぐっと言う感触が伝わって来た。
『有栖! 引いてる引いてる!』
 直後に響く、オオカミさんの珍しく慌てたような声。
「え? あ、うん!」
 有栖が空から視線を戻せば、釣り竿が大きくしなっていた。
「よ、よし。がんばる……!」
『ガンバレー』
 ぐっと両手で握ってたどたどしく竿を立てる有栖に、オオカミさんが気の抜けた声援を送る。
「……オオカミさんも引いてません?」
『え? あ、ホントだ。え? 有栖、これどうすれば』
 がんばれ。

●人海戦術
 一方その頃。
「エビもイカも大きいねー」
 規格外のエビとイカの身に、灯火はちょっと困り顔になっていた。
「大きくても、魚介類みたいだね。空を飛んでたとも聞いたけど」
 見た目はそうは思えない大きさでも、漂う香はイカやエビのそれである。
「街で秋の野菜も貰って来たし……今回は天ぷらにしちゃおうか」
 献立が決まれば、後は準備を進めるだけだ。
「黒子さん、手伝いお願い」
 灯火はまず、黒子のバトルキャラクターズを召喚する事にした。
 こんなに大きな食材、食べ易い大きさに切るだけでも一苦労だ。灯火はそれなりに料理が上手い方だとは思うが、これはちょっと、一人では手に余る。
 黒子達は戦闘用の存在だが、食材を切るくらいの簡単な手伝いは出来るだろう。それが82体もいれば、立派な戦力だ。
 エビとイカの解体を黒子達に任せて、灯火はキャンピングカーの中に戻って、野菜と揚げ衣の準備に取り掛かった。
 舞茸の様なキノコは適当な大きさに手で裂いて、カボチャやサツマイモの類はスライスしておく。
 具材が多いので衣はたっぷりと。卵1パック分を纏めて割って、冷水で溶いて、小麦粉を加えて混ぜれば準備はOK。
「後は打ち粉を用意して……揚げるのは、有栖ちゃん戻ってきてからで良いかな。折角だから、揚げ立ての方が良いよね」
 その頃には、黒子達が良い感じに切り分けたエビとイカを車内に運んできた。

●天麩羅は出来立てが一番
「戻りました」
『ただいま』
 有栖とオオカミさんが、キャンピングカーに入って来る。
「おお。釣れたんだね」
「数匹ですけど」
 有栖が手にしたバケツの中を、灯火が覗き込む。泳いでいるのは、6匹のサンマ――に似た魚。バゼラードフィッシュと言うのだったか。
「サンマは塩焼きが良いかな」
 バケツから上げたサンマを、灯火は真水で洗って塩を振っておく。
 すぐには焼かず、このまま少し置いて、身体の水分が出てからもう一度軽く塩を振ってからグリルで焼くつもりだ。
「エビとイカはどうしたんですか?」
「これから、最後の仕上げをね。出来立てが良いと思って」
 首を傾げた有栖に答えて、灯火は一度温めておいた油を再び火にかける。すぐに油がパチパチと音を立て始めた。
「……この音……」
『さっき聞いたネェ』
 有栖が何を思い出したか察して、オオカミさんがしみじみ頷く。
 空飛ぶ鍋から、聞こえた音に良く似ている。それもその筈。フライも天ぷらも、同じ揚げもの。イカやエビを使うなら、適した油の温度は同じくらいになるのだから。
「?」
 2人の様子を不思議に思いながら、灯火はエビとイカに打ち粉をして、冷やしておいた衣に潜らせ、油に入れる。
「揚げ物にするんですね」
『一周回って戻ったネー』
 エビフライとして出て来たエビが、倒したら生身に戻って、再び揚げ物にされる。そんな運命を辿っている鍋の中を、有栖が覗き込む。
 ジュゥゥゥッ――パチパチッ。
 何だか不思議な感じもするが、食欲をそそる油と衣が爆ぜる音が、キャンピングカーの中に響き出せば吹き飛ぶ程度の問題だ。
 美味しく頂ける事以上に大事な事が、今あるだろうか。
『わぁい♪ どれも美味しそうダネー♪』
「ええ、美味しそうですね」
 声を弾ませるオオカミさんに、有栖も頷く。
「白米も炊けてるし、島の人に葡萄のジュースも貰ってあるから、後で飲もう」
 何だか豪華な晩ごはんになりそう。
 そんな確信を抱きながら、灯火は油から天ぷらを上げる。
「はいどうぞ」
 まず一つ目は、有栖に。
 塩を振っただけで、口に入れてみる。さくりと軽い衣の後に待っているのは、プリッと歯応えのあるエビの身。海のエビと変わりない美味しさ。
『美味しいねえ、有栖』
 二つ目のエビ天に顔をほころばせるオオカミさんに、口の中がいっぱいになっている有栖は無言で頷く。
(「よし」)
 2人の様子に料理の成功を確信して、灯火は胸中でぐっと拳を握っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
キャンプっていうと、去年の夏休みに
グリードオーシャンでキャンプしたことを思い出すねぇ
あの時のバーベキューも絶品だったなぁ

おっ、梓先生気合い入ってるぅ~
美味しい料理の為ならそれくらいお安い御用だよ

焔と零に協力してもらい(押さえてもらったり)
ちゃちゃっとテント設営を済ませたらサンマ釣りへ
綺麗な星空を眺めながら釣りというのもいいねぇ

ルシルを発見したら挨拶しよう
良ければ一匹分けてよーなんて半分冗談で言ってみたり

ただいま~梓、いっぱい釣れたよ
戻ってきたら俺の食べたかったメニューが
全部出来上がっている、すごい
梓大好きー(はーと) では、早速いただきます
イカもエビもサンマもぷりぷり、ふわふわで最高


乱獅子・梓
【不死蝶】
ああ、懐かしいな
材料を焼くだけのバーベキューも良かったが
今回は更に「キャンプ飯」にこだわってみようか

というわけで、俺は今回は料理に集中するから
綾はテント設営と、サンマの調達を頼んだ
何かあったら焔と零も使ってやってくれ

レンタルしたキャンプ道具や自前の調理セットを並べ調理開始
確か綾は何が食べたいと言ってたっけか
イカ飯、エビチリ、シーフードパスタだったか
何やかやで綾の食べたがっていたものを
作ってやる俺ってあいつに甘いよなぁ…

おー、お帰り。すごいじゃないか
こいつらはシンプルに串焼きにするとしよう
手料理と、幸せそうに食べる綾と仔竜たちの様子をつまみに酒を飲む
うむ、最高の一杯だ



●秋の思い出を増やすため
「キャンプっていうと、去年の夏休みのキャンプを思い出すねぇ」
「ああ、懐かしいな」
 大きなテントを広げながら灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が零した呟きに、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は炭火グリルを組み立てながら頷いた。
 それは別の世界で過ごした、夏の日の思い出。
「あの時のバーベキューも絶品だったなぁ」
「材料を焼くだけのバーベキューも良かったが、今回は更に『キャンプ飯』にこだわってみようと思ってる」
 しみじみ呟いた後の梓の言葉に、テントのポールを組み立てていた綾の目が、キラーンと輝く。
「梓先生気合い入ってるぅ~」
 期待のあまり手が止まっている綾の肩を、梓の手がポンと叩く。
「というわけで、俺は今回は料理に集中するから。綾はテント設営が終わったら、サンマの調達を頼んだ」
「美味しい料理の為なら、それくらいお安い御用だよ」
「ああ。何かあったら焔と零も使ってやってくれ」
『キュー』
『ガウ』
 梓に美味しい料理を作って貰うために。
 綾は焔と零にもテントを抑えたりという手伝いを頼みながら、秋冬物のしっかりとした造りのテントを組み立てていく。

●料理は火力が大事
「さて。綾は何が食べたいと言ってたっけか」
 綾をご飯で釣って料理に専念できる環境を得た梓は、頭の中に献立を描く。
「確かイカ飯、エビチリ、シーフードパスタだったか……」
 何と言うかこう、見事に調理方法がバラバラになる。去年の夏に使ったガーデンコンロがあっても、3段でも足りない。
 だから梓は、炭火グリルを複数借りたのだ。
 火が幾つか使えれば、料理が捗る。
「取り敢えずもち米を水につけといて……エビチリでトマトを使うし、パスタもトマトソースにするか」
 頭の中で大まかな段取りを立て終えた梓は、調理に取り掛かった。
 まず深めのボウルでもち米を水につけておく。
 次に鍋で湯剥きにしたトマトを、潰しながら煮込んでいく。
 隣のコンロで、同時進行。フライパンですり下ろした玉ねぎとにんにく、スパイスを炒めておいて、トマトがに崩れて来たところで鍋に加える。更にトロトロになるまで煮込めば、ケチャップ風のトマトソースの完成。
 半分は別の鍋に分けて、唐辛子をたっぷり足してエビチリ用に。
 残りの半分はパスタ用に、少量のイカスミとエビミソを溶いておく。
「後はイカとエビを適当に切って……イカ飯はどうするかな」
 問題はイカが大きすぎる事。通常のイカ飯のように、成人男性ほどもあったドーンテンタクルスの胴体をそのまま使うにも、入る鍋がない。
 鍋で煮込まなければ、イカ飯は作れない。
「厚みもあるし、ピタパンみたいに開いて、中に詰めるか……」
 梓は頭の中に浮かべた代替案に沿って、イカの身を切っていく。
 その内に、何やかんや言っていても、綾の食べたがっていたものを全部作ろうとしている自分に気づいて、梓はふと苦笑を浮かべた。
「俺って、あいつに甘いよなぁ……」
 呟いた声は、静かな湖畔に流れて消えていった。

●アングラーとの遭遇
 テントの設置を終えた綾は、約束通り仔竜達を連れて湖に向かっていた。
「どこで釣ると良いんだろうね?」
 綾が手にしている釣り竿は秋島の町で借りた、疑似餌を兼ねた複数の釣り針が枝分かれした糸の先にある仕掛けのタイプ。
 借りた時に聞いた話では、どこでも釣れる時は釣れるし、ダメな時はダメらしい。
「ま、いっか。取り敢えずやってみよう」
 ポチャン、と音を立てて、仕掛けが湖に沈んでいく。
「綺麗な星空を眺めながら、釣りというのもいいねぇ」
 なんて夜空を見上げている余裕も次第に消えていくことになる。
「……かからないね?」
 どうにも釣り竿が、反応しない。釣り針が疑似餌を兼ねているのだから、餌だけ持っていかれると言う事はない筈なのだが。
 ビギナーズラックはどこに行った。
「うーん……焔と零の分も欲しいから、最低4匹は欲しいねぇ……」
 希望を口にしつつ、場所が悪いのだろうかと、綾は糸を上げて湖畔に沿ってしばらく歩いてみる事にした。他にも誰か釣りをしているかもしれない。

 ――フィーッシュ!

 その声は、すぐに聞こえて来た。
「やっぱり。ルシルなら釣りしてると思ったよ」
「やあ、綾。釣ってるかい?」
 綾に気づいたルシルが、片手を釣り竿から離して軽く振る。
「それがねぇ。中々釣れなくってさぁ……」
 不調を零しながら綾が近づくと、ザバァッと言う水音が湖から上がった。ルシルが振り上げた釣り竿の先に、細長い身体を持つ魚がかかっている。
「バゼラードフィッシュもサンマと一緒で、群れで泳いでるらしい。綾が釣っていた所の近くには、群れがいなかったのかもね。今はこの辺り、いるよ」
「お。それじゃあ、頑張ってみる!」
 目の前で釣り上げたルシルの言葉を信じて、綾は再び釣り竿を構えた。
 それでも、絶対釣れるとは限らない。
「もし釣れなかったらで良いからさ。良ければ一匹分けてよー」
「いいよ?」
 なんて冗談めかして綾が言ってみれば、ルシルはあっさりと頷いた。
「……いいの?」
「興が乗って、釣り過ぎちゃったからねぇ。ああ、でも、その必要はなさそうかな」
 驚く綾に、ルシルが言った直後だった。
『キュ?』
『ガウ?』
 退屈したのか綾の足元で蹲っていた仔竜達が顔を上げた直後、ぐんっと言う強い力が綾の手に伝わって来た。
「うわっ!」
 いきなりのヒット。
 慌てつつも、綾はすぐに竿を立て、リールを巻いて糸を引く。
 勢いが弱まるのを待って引き揚げてみれば、4つの針の先に魚がかかっていた。

●2人と2匹に美味しいひと時
「ただいま~、梓」
 釣りに行ってから小一時間程経った頃、重そうなバケツを持って綾が戻って来た。
「お帰り。どうだった?」
「いっぱい釣れたよ。ルシルに釣れる場所を教えてもらったし」
「それでも、すごいじゃないか」
 綾が置いたバケツの中を覗き込んでみれば、脂の乗ってそうなサンマに似た魚が狭そうにピチピチしている。
 ところで、この釣果に一役買ったエルフはどこだろう。
「パスタ職人につかまってた」
 綾の答えに、何の事だろうと梓は内心首を傾げる。けれども、それ以上の追求はしなかった。綾の顔に、早く食べたいと書いてあったから。
「じゃあ、早速食べよう!」
「サンマは良いのか?」
「これも食べたいけど……戻ってきたら俺の食べたかったメニューが、全部出来上がっているんだよ? 早く食べたい!」
 梓の後ろにある料理が自分がイカを狩る前にリクエストしたものであると、綾は見た目と匂いで気づいていた。
 その匂いを前に、我慢など出来る筈がない。
「いただきます!」
 まずはイカ飯。煮込まれたイカの身はもっちりとしていながら、柔らかな歯応え。噛み締めれば、醤油ベースの煮汁とイカの旨味が綾の口の中に広がる。
 唐辛子とトマトの香り漂うエビチリは、見た目以上にピリッと辛い。一口大に切ったエビの身の旨味が、辛味の後に広がって来る。
 色がエビチリよりも濃いトマトソースのシーフードパスタ。ソースをたっぷり絡めて食べれば、トマトの酸味とイカスミとエビミソのコクが一体となった味わい。ゴロゴロと主張が強く入っているエビの身とイカの身を一緒に食べても美味しい。
「イカもエビもぷりぷりで、うんまーい! 梓大好きー」
「はいはい」
 はーとが付いてそうなくらいの綾の猫なで声をさらりと流し、梓は串に刺したサンマをグリルの炭火で焼いていく。
『キュ』
『ガウ』
 何かを訴える様な仔竜達の鳴き声。
「ん?」
 足元に感じる靴を引っかく感覚に綾が視線を落とせば、焔と零がもの欲しそうにカリカリとかいていた。
 先ほどから、足元にまとわりついているのは綾も気づいていた。
 手伝った(?)のだから、分け前が欲しいのだろう。サンマの焼ける匂いに、そそられたのかも知れない。
「梓。生サンマでいい?」
「それも良いけど、お前達の分も用意してあるからな」
 綾に笑って返す梓は仔竜達にと別の料理を用意していた。味付けなしで軽く火を通しただけのイカとエビの盛り合わせだ。
 特にエビチリは綾の好みに合わせて色々と濃いめなので、お勧めできない。
 ついでに、丁度焼けたサンマを綾の前に。
『キュー!』
『ガウ!』
「サンマもふわふわで、うんま。焔も零も、良かったねぇ」
 嬉しそうに食べる2匹と綾を眺めながら、梓もイカ飯を齧って麦酒を煽る。料理に専念していて乾いた喉を、酒精の熱が滑り落ちていく。
「うむ……最高の一杯だ」
 予想通りの美味い酒に、梓はしみじみと呟いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
やあルシルさん
突然だけど僕パスタ職人になるよ

ここに秋島産の小麦粉と
鳥型魔獣から狩った卵がある
これにオリーブオイルと塩をイカ墨を混ぜてこねた生地を
UCで小一時間寝かせた状態にしたものがこちらだ
綿棒で伸ばして細長く切れば
黒いイカ墨生パスタが完成するんだけど
ルシルさんは太麺と細麺どちらがいいかな
お好みに合わせるよ

島の人から貰った秋トマトで
パスタに合うイカ墨トマトソースも作ったよ
捌きたてのイカもちゃんと入れてあるし
仕上げにフライエビの切り身を豪快に上に乗せた
我ながら不穏な所が何一つない
安心して召し上がってほしい

まあ一つ懸念はあって
量をフライエビのサイズ感に合わせたら
すごく…とても…大盛りになってしまった
UDCアースでなら映えるという無意識が
僕の創造性を覚醒させたのだろう
余ったら島の人や皆にも食べてもらおうか

美味しい…僕やれば出来る子だから
本当に何もないのか疑わしいけど
本当に何も用意してないんだよな
解体士だからこそ食材では遊ばないよ
人間らしさを代償にしてまで
普通にパスタ打ちたかっただけの夜もあるさ



●暴食のNero Pastaio
「やあルシルさん。突然だけど僕パスタ職人になるよ」
「え? あ、うん」
 三角巾とエプロンを装備した鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)の突然の宣言に、湖で釣りをしていたルシルの目が丸くなった。
「ここに秋島産の小麦粉と、鳥型魔獣から狩った卵がある」
「成程?」
 組み立てた簡易テーブルの上に章が置いた小麦粉の袋と、鶏卵より少し大きな卵を見たルシルは、何故か安堵したような溜息を零した。
「小麦の栽培から始める、なんて言い出すかと思った」
「そこまでやると、パスタ職人でなくパスタを作る農家の人になってしまうからね」
「出来ないとは言わないんだ……」
 真顔で返して来る章に、ルシルが呻くように返す。
 そもそも小麦を一晩で育てられるわけがない――と言うツッコミは、呑み込んだ。
「さて。小麦粉を容器に入れていくよ」
 章は大きめの容器に、ザーッと小麦粉を流し込んで、そこに塩を少々。
 別の容器に卵を次々割り入れて、オリーブオイルを加えて混ぜる。通常ならこれを小麦粉に流し込んでいくのだが、章はそこに何やら黒い液体を足し始めた。
「解体したイカ墨さ」
 旨味がたっぷり詰まったイカ墨が加わってすっかり黒くなった卵液を、小麦粉に注いで混ぜていく。粉っぽさがなくなってきたら手で捏ねて――捏ねて――十数分程経った。
「小一時間寝かせた状態にしたものがこちらだ」
「ん???」
 何かすっ飛んだ工程に、ルシルが思わず首を傾げる。
「≪バベルの塔≫――僕の人間らしさを代償にすれば、小一時間寝かせた状態の生地を作る事が出来た。あとは麺棒で伸ばして切れば、黒いイカ墨生パスタが完成するよ」
 グルテンの形成、水分を行き渡らせる。
 小麦粉を捏ねた生地を寝かせる理由は幾つかあるが、章はその辺りを、人間らしさを代償にあらゆる行動に成功する業で、捏ねながら成功させたと言う事なのだろう。
 何処からか取り出した長い麺棒で章の前の真っ黒なパスタ生地がどんどん薄く伸ばされているのが、何よりの証左だ。
「ルシルさんは太麺と細麺どちらがいいかな? お好みに合わせるよ」
「フェットチーネかタリアテッレの様な平麺で」
 薄く伸ばした生地を、くっつかない様に粉振ってから折りたたむ章の問いに、ルシルは敢えて第三の選択肢を答えとした。
「生地に卵を入れて練っていただろう? それなら、平麺向きの生地になっている筈」
「さては通だね」
 ルシルの言葉にふっと小さく笑って、章は包丁代わりに解体用鉈を構えた。

 乾燥パスタに比べ、生パスタの茹で時間は遥かに短い。
 だから、パスタを打ち終えた章は、それを茹でる前にソースに取り掛かった。
 街で貰ったトマトを、フライパンで潰しながら炒めていく。
「勿論、ソースにもイカ墨を入れるよ。あとエビ味噌も」
 そのままでも味を調えて煮込めば、トマトソースになるのだが、章は調味料以外にイカ墨とフライエビの頭部から取ったエビ味噌を加えて煮込んでいった。
「これで、イカ墨生パスタに合うイカ墨トマトソースも完成だよ」
 あとは先ほどのパスタを1~2分ほど茹でて、ソースと絡めれば完成――。
「しないよ?」
 しなかった。
「これだけじゃ、ただのイカ墨生パスタだからね。まだ、フライエビがエビ味噌しか使えていない。仕上げに使ってあげないと」
 と言う事で、章は最後の仕上げにと、真っ黒なイカ墨パスタに赤黒いイカ墨トマトソースをかけた上から、フライエビの切り身を豪快に乗せた。
「完成だ……我ながら不穏な所が何一つないイカ墨パスタだ」
 やり切った顔で、章は三角巾とエプロンを外す。
 確かに、何も不穏な食材は使っていない。
 使っていないが――。
「量が……凄いね」
「流石ルシルさん。そこに気づいてしまったか」
 ルシルが感じるままに呟いたその一言は、章のたった一つの懸念であった。
「いやまあ、生地を捏ねてる時から、多くない?とは思ってたし」
「フライエビのサイズ感を出すのにパスタの量を合わせたからね。すごく……とても……大盛りになってしまったよ」
「これあれだよね。UDCアースだったら『制限時間内で食べ切れたら無料!』とかそう言うイベントが付いてくるやつ」
「UDCアースでなら映えるという無意識が、僕の創造性を覚醒させたのだろうね」
 章の創造性が覚醒した結果は、大盛りと言うか、デカ盛りと言うくらいのイカ墨パスタの山であった。

「ともあれ、安心して召し上がってほしい。僕、やれば出来る子だから」
「そうだね。頂こう」
 フードファイターがいなくとも、作った以上食べなければ、パスタは減らない。
 大皿から黒いパスタを取り分けて、フォークで絡めて一口。
「あ、美味しい」
 パスタにもソースにも入れた、イカ墨の独特の風味。
 寝かせる工程を時短したのにモチモチとした歯応えのある平麺にたっぷり絡んだソースに残るトマトの酸味とエビ味噌のコクが、味に深みを持たせている。
 結局切り分けられたフライエビの切り身も一緒に食べても美味しい。プリプリとした食感と、エビ味噌にないエビの身の旨味がパスタにも合う。
「美味しい……」
 作った章自身も、その味にしみじみと呟いていた。
「本当に何もないのか疑わしいかもしれないけど、本当に何も用意してないんだよ」
「うん。なにが起こるのかと、正直少し構えてはいた」
 口の周りを黒くした章の独白に、パスタもぐもぐしながらルシルが頷く。
「解体士だからこそ食材では遊ばないよ。人間らしさを代償にしてまで、普通にパスタ打ちたかっただけの夜もあるさ」
 なお、食べ切れなかったパスタは他の猟兵や島民の皆さんに声をかけて、皆で美味しく頂いたそうである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
【かんにき】で行動

屍人帝国は去ったか。しかしおかしな連中だった…。
さて、これでやっと島の人々と交流ができるな。
集落を訪問し、住民に事のあらましを説明しておこう。
「どうやらイカやエビの魔物を使って、この島を攻めようと
していたようです。……ええ、イカとエビです。危ないところでした」
大人組として、自分達の活躍はちゃんとアピールしておこう。

それからは湖の野営地で余暇を過ごそう。
飼ってるイトマキエイのマン太を呼び出し、
彼の背中に乗ってふよふよと湖の上を遊覧飛行。
夜風が気持ちいいな。
「あそこで釣りをしているのは、小太刀とアキか。
シリンはどこだろう、彼女も魚を獲っているのかな」
「まつりん、杏、お疲れ様。料理の準備はできたかい?」
木元兄妹の手料理に舌鼓を打ち、グリードオーシャンから
持ち込んだ酒や、勇士の酒をシリンやルシルと酌み交わす!
「こっちは『グリフォンライダー』。これは『幽霊船長の船出』」
えびふりゃに焼きイカ、それからサンマ。
やはり自分達で手に入れた食材は最高だね。
「それから、この島のワインも……」


木元・祭莉
【かんにき】で宴会だぞーっと♪

ふー、いい汗かいたー。(海老お立ち台演技を終え)
え、この野営地、使っていいの?
よっしゃー、じゃあココで宴会しよ宴会!!

いそいそと石積みの竈を作り、火口から火を熾して。
いそいそと食材を洗って切って下味つけて。
いそいそと食器と飲み物の仕込みを確認して。
荷車に毛布被せて、仮眠用のテントに仕立ててっと♪(キャンプ体制)

よしよし、みんな準備できたね?
じゃあ、イカとエビとサンマに、かんぱーい!
オジサンもお疲れサマ!(一緒に歌って踊る)(芸妓さん仕込みの宴会芸も披露)

いいかんじの飲み物を見繕っては渡して回り。
好みの食べ物を訊いては給仕に励むよ。
あー、花火持ってくればよかった!
ちょっと寒いケド、お星さまキレイだし?

最後、テント車のそばの焚火に近寄って暖を取りつつ、残った料理をいただきマス。
ルシル兄ちゃんも、残り物食べる?
ハイ、燻製サンマ!
福があるっていうよ?(にぱ)


木元・杏
【かんにき】
ふう…、えびふりゃの衣はパリパリ、中の身はぷりぷり
Why?大きな謎を解き明かす為、わたしは調理に専念する
あ、アキ。わたしのサンマは超特大をよろしく
…んむ?アキ、いた!(気付く

よし。イカはもち米をぎゅっと詰めて、タレを塗って焼く
里芋とイカの煮っころがし
そのまま炙って食べるもよし!
えびふりゃはでんと大きく切り、タルタルソースをかける
レモンをふり、こちらはお塩
ルシル、お味見よろしく
…んむ?ルシルも、いた!(気付く

ん、まつりん、焚き火をお願い
串も用意し焼魚の準備もOK
村の皆さんからお野菜頂いてサラダも作ろう

……ぷりぷりの秘密、わかった
えびは、おデブで火が通らない
ふふ、迷探偵杏の推理やいかに

シリンとガーネットはマンタの上
サンマ狩りはいかが?と手を振ってみる
小太刀とアキの勝負はどうなってるかな

ん、お料理完成
皆の成果と共に頂こう
途中で眠くなっても頑張って起きてる(うと


鈍・小太刀
【かんにき】

大漁大漁♪
食材も揃ったし、いよいよ料理ね!
(杏に続いて張り切って腕を捲れば、慌てたオジサンに釣竿渡され
秋刀魚がまだ足りないって?
仕方ないなぁ、獲って来るかぁ
(小太刀の調理回避に胸をなで下ろすオジサン

秋刀魚ってどうやって釣るんだっけ
サビキ釣り?(見様見真似でえいや!
アキ、どっちが沢山獲れるか勝負よ!(びしぃっ!
(※ダイス判定お任せします!

一仕事終えたら待ってましたのご馳走タイム♪
一口食べればふわり広がる至福の味
うん、おかわり!

一方のオジサンは
とっておきの日本酒を手土産に
大人組に混ざって宴会の構え
祭莉殿に習い宴会技能を会得した甲斐もあったというもの
ルシル殿もさあ♪
この一時こそ格別なり!


駒鳥・了
【かんにき】合流!
ヌシサイズ狙えってか!(けらけら
ちなオレちゃん居て当然なカンジだね!
差入れの調味料類は置いてくよ
さーっ釣りをガンバ…ってそだね
この手のイベントで鈍ちゃんが燃えない訳がないね
ってコトでヤルか!
あっ上空に居るの大人組じゃね?
アレの上で飲んだら酔いが回るの早そーだ!

サンマ似ってのは味と生態とどっちだろーね
波立ちが激しそーなあたりを選んでこ!
釣り糸には枝分かれするよーに複数の釣り針を仕込む
群れで回遊してるハズだからこれでイケる!はず
釣果も勝負も時の運だねー

結果はどーあれ料理はおいしー!
えびふりゃはレモン派ね!
まだ残りモノとかいう分量じゃないねえ
杏ちゃんは眠い?
お疲れ様だよ(上着かけ


シリン・カービン
【かんにき】

屍人帝国が狙うモノの手がかりを探して住人に話を聞いていると、
「あれは…」
見上げれば空を征くイトマキエイと赤い髪の女性。
ふっ、と笑んで宙を駆け上がります。
「ガーネット、お邪魔します」

皆の様子を聞いて地上を眺めれば小太刀とアキの釣り対決。
「少しお手伝いしましょうか」
光の精霊を呼出し湖面へ。誘魚灯のように魚を誘います。

空から秋島の風情を楽しんだ後は、
イカにエビにサンマ、杏の魚介尽くしがお待ちかね。
更には日本酒にワインに勇士の酒と大人組のお楽しみ。
ルシル、杯が空いてますよ、とオジサンにお酌しつつ自分も一杯。

残った魚介を塩とハーブで味を調えスープに仕立てます。
「温まりますよ」
祭莉、お疲れ様。



●ふえるかんさつにっき
「どうやらイカやエビの魔物を使って、この島を攻めようとしていたようです」
「……イカ? エビ?」
「エビって、その後ろでかいの?」
 端的に起きていた事を伝えるガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の言葉に、島民達は首を傾げていた。
 イカとエビに攻め込まれていた、と聞かされてそうなるのは、普通の反応だろう。
「……ええ、イカとエビです。危ないところでした」
 そんな島民達に、ガーネットは真剣な顔で告げる。
 自分達の働きなのだと言う部分をアピールしつつ、この島が狙われた理由に繋がりそうな情報を得ようと言う狙いだ。
 この辺りは、大人組として抑えておかなければならない。
 情報を得られるかはさておき、ガーネットはアピールは上手く行く自信があった。自分の言葉を裏付ける証拠が、そこにあるのだから。
 翼をもがれ、力尽きて地に落ちたフライエビ。
 その解体の中に、木元・杏(焼肉処・杏・f16565)は加わっていた。
 その作業を、かんさつにっきの他の面々が見守っている。これほどの大きい獲物の解体なら、杏が一番だ。パワー的に。
「ふぅ……大きいと、衣を剥がすのも大変な――」
 怪力でべりっと剥がした黄金色の衣の下に現れたのは、プリプリの、生のエビの身。
「えびふりゃの衣はパリパリ、中の身はぷりぷり。……Why?」
 エビと言う食材とみても、エビフライと言う料理とみてもおかしな現実に、杏の目が点になって、頭上に幾つもの『?』が浮かんでいた。
「みんな」
 しばらく、思考がぐるぐるしていた杏だが、決意を秘めて仲間の方に振り返る。
「この大きな謎を解き明かす為、わたしは調理に専念する」
「オッケー、エビは杏に任せたわ!」
 ぐっと決意を秘めて拳を握った杏に、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)が親指を立てて頷き返す。
「大漁だったイカは、私が――」
 いよいよ料理、とやる気たっぷりに腕まくりをした小太刀の肩に、大きな手がぽんっと置かれた。
「うん?」
 小太刀が振り向けば、オジサンが首を左右に振っている。
 見れば、片手に釣り竿を持っていた。
「ん? 秋刀魚が食べたいって?」
 コクコク頷いて、オジサンは釣り竿を小太刀に押し付けて来る。
「仕方ないわね。たっぷり獲って来きてあげるわ!」
 頭の中の天秤があっさりと料理から釣りへ傾いた小太刀は、謎の自信を胸に秘めて湖へ向かっていく。その背中を見送りつつ、オジサンはほっと胸を撫で下ろしていた。
「ま、それが平和だよねぇ」
 オジサンの意図を察していた駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)も、ケラケラ笑って小太刀の背中を見送っている。
「んじゃ、オレちゃんも釣りしてこよっかな」
 かと思えば、了も小太刀の後に続いて、湖に向かおうとした。
「あ、アキ」
 その背中に、杏が声をかけて来る。
「わたしのサンマは超特大をよろしく」
「あ、おいらもおいらも! 超特大!」
 杏のリクエストに、木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)もしゅびっと手を挙げて続いてくる。
「ヌシサイズ狙えってか!」
 2人の無茶ぶりも慣れた様子で、了はまたケラケラ笑って手を振った。
「……んむ?」
 ふと、杏の頭の中を過る違和感。
「……アキ、いた!」
「いるよー。調味料持ってきたの、置いてくね」
 一拍遅れて、いつの間にかアキがいる事に気づいた杏に笑って返して、了は今度こそ湖へ向かっていった。

●釣り対決、勃発
「秋刀魚ってどうやって釣るんだっけ」
 湖面を見つめて、小太刀が呟く。
「これって、サビキ釣りよね?」
 サビキ釣りと言うのは、疑似餌に似せた針を幾つか連ねた仕掛けの事だ。アミに入れた寄せ餌で魚を集めるのもあり、海釣りで岸壁から小型の魚を狙う際には良く使われる仕掛けである。
「サンマ似ってのは味と生態とどっちだろーね」
 合流した了も、仕掛けをしげしげと見つめる。
 海のサンマでも、岸壁で釣る時はサビキ釣りが主流である。群れで泳ぐサンマには向いている仕掛けなのだ。
「借りた釣り竿がこれだったんだから、生態も近いんじゃない?」
「あー、成程ね」
 小太刀の見解に頷いて、了は釣り竿を構えた。
「波立ちが激しそーなあたりを選んで……」
 言いつつ湖面に視線を向ければ、静かに月が映り込んでいる。
「って、湖だった!」
 湖に波がないわけではないが、海のような波は立たないものだ。
「まーいっか。それなら、適当にカンでいこ!」
 選べないなら仕方ない。頭を切り替え、了は竿を振って仕掛けを湖に飛ばす。
「むむ……中々の手際ね」
 負けじと、小太刀も釣り竿を構えて仕掛けを飛ばす。
「アキ、どっちが沢山獲れるか勝負よ!」
「この手のイベントで鈍ちゃんが燃えない訳がないね」
 何故か勝負に燃えてびしっと指を突き付けて来た小太刀に、了はくすりと笑う。
「いいよ。ヤルか!」
「負けないんだから!」
 こうして始まった、小太刀と了のサンマ釣り対決。
 けれども了は、その前にこれだけは言わずにはいられなかった。
「ってか、杏ちゃんも鈍ちゃんも、オレちゃん居て当然なカンジだね!」
「ん? ……あれ? アキ、いつから?」
 杏に良く似た小太刀の反応に、了はケラケラ笑って釣り竿を振るった。
「さーっ釣りをガンバろっか」

●宴会奉行と迷探偵
 一方、その頃。
「野営地使っていいなんて、いい汗かいた甲斐があったねー」
 取り敢えずタープを張った野営地に決めた場所では、祭莉が嬉しそうに石を積んで、かまどを作っていた。
 いい汗かいたとは言うけれど、フライエビの上を駆けのぼって踊って落ちて来ただけだった気がするのは、内緒だ。ちゃんとメカたまこ喚んだし。
 むしろ、今は今でいい汗をかいている。
 祭莉が作っている石のかまどは、2つ目なのだ。今作っているのは、縦に石を積んで高さを出している。その隣には、上に鉄板や焼き網の大きく平らなものを置きやすいようにと、広く作ったかまどがあった。
 ぐらつかない様に積み上げる石を選んで、形や大きさが合う石がなかったら、湖畔を探して回っている。ある意味、戦いよりも忙しいのではないだろうか。
「宴会、宴会♪」
 けれども祭莉は疲れも見せず、楽しそうに駆け回っている。
 元気だなぁ。

 エビの解体が終わった後、杏は宣言通り調理に取り掛かっていた。
 けれども、食材はエビだけではない。
「よし。まずはイカ飯」
 胴体全部そのままは、さすがに大きすぎる。食べ切れはするだろうけど。
「んむ……うん?」
 しばし考え込んで、杏は頭部の先の方だけを切って使う事にした。もち米をぎゅむぎゅむ詰めて、きゅっと縛って閉じておけば同じような感じになる。
 あとは醤油をベースに砂糖を少し入れた甘じょっぱい系のタレを塗っておく。
「アンちゃん。火熾し、しちゃっていい?」
 イカ飯をせっせと作る杏の背中に、祭莉の声がかかった。
 振り向けば、祭莉は両手に木の枝と松ぼっくりを抱えている。その辺の雑木林で集めて来たのだろう。
「ん、まつりん、焚き火をお願い」
 杏のゴーサインも出たので、祭莉は焚火の準備に入った。
 完成したかまどの中に、まず置くのは松ぼっくり。これを火口に、周りに細い枝から並べていく。大きな薪は島の人に貰えたけれど、それだけでは火は付きにくい。
 祭莉は慣れた手つきで火を付けると、竹のふいごで空気を送る。枝に火が燃え移った所で焚き木を入れて、更に空気を送る。
「よし、火熾し完了!」
 2つのかまどの中でメラメラと焚火が燃え出したのを見届けて、祭莉はいそいそと杏の元へ向かう。
「アンちゃん、料理で手伝う事ある? 洗ったり切ったりするよ?」
 祭莉が申し出た時、杏はイカ飯をたっぷり作ってもまだまだ残っているイカの身をどう料理するか、思案している所だった。
 祭莉の手伝いがあるのなら、他の食材を足すのもありだろう。
「じゃあ、里芋の皮を剥いて?」
「おっけー♪」
 祭莉が皮を剥いた里芋を、お湯を沸かした鍋に入れていく。
 さっと茹でたら水に晒して、表面のぬめりを取る。並行して、別の鍋でフライエビの殻から出汁をとっておく。
 ぬめりを取った里芋と、一口大に切ったイカを入れ、砂糖やみりん、醤油で味を調えながら、くつくつと煮込んでいく。
 少なくなって来たタレを絡める様にすれば、里芋とイカの煮っ転がしの完成だ。

「よし、次はえびふりゃ作る」
「それじゃ、おいら宴会の準備して来るねー♪」
 杏のエビフライ宣言に、祭莉は調理場を辞去した。
 揚げ物となると、祭莉が手伝える部分は多くない。食器の準備に、飲み物の仕込みの確認と、宴会の準備もまだまだあるのだ。
「えびふりゃでなかったのなら、えびふりゃにする!」
 杏は大きめにフライエビの身を切り分けると、作っておいた卵液に潜らせ、パン粉をしっかりつけていく。
 箸先につけた衣を油に落として温度を確かめ、エビ投入。
 ジュワワァァァァァッ!
 大きめな特大エビフライの衣が油で爆ぜる小気味いい音が響く。
 やがて、その音がパチパチという音に変わって来た。
「ん。そろそろかな?」
 音の変化で揚げ上がりを感じて、杏はエビフライと言うかエビカツと言っても良さそうな程に、大きく分厚い特大エビフライを鍋から上げた。
 サクッと切ってみれば、中から火が通って白くなったエビの身が現れる。
 フライエビの時は揚げ衣の下が生だった。けれども、今、切り分けた身を揚げたものはちゃんと火が通っている。それは何故か。
「……はっ!」
 その時、杏の脳裏に、電球がピコーンと点灯した。
 フライエビの神秘に対する答えが閃いたのだ。
「……ぷりぷりの秘密、わかった」
 丁度そこを通りかかったルシルの袖をひっつかんで、杏は続ける。
「えびが、おデブで火が通らなかったのでは?」
「ああ、成程。可能性は充分にありそうだ」
 杏の推理はルシルを頷かせた。
 普通の料理でも、食材が厚いと表面だけ焼けて中まで火が通っていないと言う事は、ままある事だ。
 普通のエビでも、小さいエビとイセエビのように大きなエビとでは、焼くにせよ揚げるにせよ、時間は異なるものである。
(「まあ、確かめようがないんだけどねぇ」)
 名探偵でも迷探偵でも証明の機会はもうないのだ。ならば逆に言えば、何が正解でも良いのではないか。
「ルシル、ついでにお味見よろしく」
 などとルシルが胸中で考えていると、杏が特大フライエビを出して来た。ひとつの答えが出て満足した様子だ。
「タルタルソースでも、レモンを振ってお塩も良さそう」
 どっちがいいか、迷っているようだ。
 そういう事ならと、ルシルはタルタルソースと塩レモンで、ぱくり、ぱくりと特大エビフライの味見を頂いてみる。
「タルタルは間違いなく美味い。身が厚いから、塩レモンもさっぱりといけるね。両方出して良いんじゃないかな? 最初はタルタルで途中で塩レモン、なんて食べ方も良さそうだし、あの酒飲み2人ならタルタルと塩レモンでお酒を変えたいとか言いそうだし」
「なるほど……」
 ルシルの感想に頷いたところで、杏は気づいた。
「……んむ? ルシルも、いた!」
「捉まえたの誰だっけ!」
 今更な杏の反応に、ルシルからツッコミが返って来た。

●大人組の空中散歩
「おいで、マン太」
 湖畔にイトマキエイのマン太を呼び出し、ガーネットはその背に乗って、ぷかぷかと空に浮かんでいく。
「夜風が気持ちいいな」
 結局、屍人帝国に繋がりそうな情報は特に得られなかったが、平和を取り戻した空で夜風に吹かれれば、そんな悩み吹き流されていく。
 なんとなく視線を落とせば、若者達の姿が見える」
「あそこで釣りをしているのは、小太刀とアキか。杏とまつりんは、料理の準備中……うん? シリンはどこだ?」
 ガーネットは杏に手を振り返しながら、地上には大人組のもう一人が見えない事に気づいて、首を傾げる。
「何処かで魚を獲っているのかな」
「いえ、ここです」
 まるで聞こえていたかの様なタイミングで、シリンが飛び乗って来た。

「この島の事を、聞かせてもらえませんか?」
 当の本人――シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は島の住人に、秋島の事を聞いて回っていた。
 何でもいいのだ。
 屍人帝国に狙われる心当たり――と聞いても、空振りばかりだった。
 というか、住人の誰もが『危機が去ったのならまあいっか』という考えなのだから、そういうアプローチでは情報を得られる筈もない。
 だからシリンは、取り敢えず島の情報を集めてみる事にした。何か、取っ掛かりがあるかもしれないから。
「もしかしたら、間違えたのかも」
 そんな中、少し面白い反応を返して来た人がいた。
「間違えた、とは?」
「このホーライ浮島群には、他にも島があるんだ。代表的なのは、春島、夏島、冬島と言う島がね」
 少し、気になる話ではある。
 けれども、それ以上の推察には情報が足りない。
「……今のところは、この程度ですかね」
 そろそろ聞き込みを切り上げようかと、シリンは何とはなしに夜空を見上げた。
 丁度そこに、大きなイトマキエイがゆっくりと空を泳いでいくのが見えた。その上で風にそよいでいる、見慣れた赤い髪も。
「見当たらないと思えば、あんな所にいましたか」
 ふっと小さな笑みを浮かべて、シリンは軽く地を蹴った。
「風に舞い、空に踊れ」
 ――シルフィード・ダンス。
 とんっ、とんっ、とんっ。
 マン太の高さに追いつく。ただそれだけの為に風の精霊の力を借りて、シリンは何もない宙空を駆け上がった。

「島の人に、話を聞いていたのです。屍人帝国の目的を推測出来ないかと」
「ああ、連中はもう去ったようだしな」
 シリンの言葉に、ガーネットが島の外に視線を向ける。
 どこまでも、穏やかな雲海が広がっていた。フライエビが出て来た巨大な空飛ぶ鍋も、いつの間にか何処かに消えている。
「しかしおかしな連中だった……」
「ガーネットは、アレを放った屍人帝国の者達を見たのですか?」
 ガーネットの呟きに、シリンが首を傾げる。
「いや。遠目にすら見ていないが……」
 ガーネットは、絶賛解体中のフライエビを指してシリンに告げた。
「あんな魔獣を飼ってた連中が、おかしくない筈ないだろう」
「それもそうですね」
 真顔でガーネットが言った一言に、シリンも真顔で頷いた。

●釣り対決の行方
「ヒーット! これでオレちゃん逆て――」
「よし。わたしも、またかかった!」
 夜の湖に、了と小太刀の声が木霊している。
 糸が張り過ぎないように気を付けつつリールを巻いて引き揚げれば、サンマに良く似た魚が一気に4匹、湖面から顔を出した。
 了も小太刀も、同時に2匹ずつ釣り上げたのだ。
 だが――釣り勝負の趨勢は、決まりつつあった。
「ふふん。今のところ、わたしの方が多いわね!」
「むむ……鈍ちゃん、やるなぁ」
 得意気な顔の小太刀に、了は言い返す言葉が見つからない。
 了も釣れてはいるのだが、了が釣れば小太刀も釣る。了の最初のヒットまでについた差が、中々縮まらない。
(「こーなりゃヌシ釣って……って、ヌシなんているのかな」)
 杏の要望に応えるついでに一発逆転を考えてみるものの、果たしてそんな魚がいるのだろうかと、何処か冷静な頭で考えている部分もある。
「うーん」
 纏まらない思考を逃がすように、了が夜空を見上げてみると、丁度そこを大きなエイが泳いでいった。
「あっ、上空に居るの大人組じゃね?」
「ん? あら、本当だ。ガーネットとシリンね」
 了が気づいたマン太とその上の2人に、小太刀も気づいた。

 マン太の上のガーネットとシリンは、結構前から2人に気づいていた。
 ――オレちゃん、ぎゃくてーん!
 ――わたしも、かかった!
 空からは良く見えていたし、釣りに熱中している了と小太刀の声は、時折、空にまで響いていたのだ。
「どうやら、釣り勝負してるみたいだな」
 これはサンマも期待できそうだと、ガーネットの顔が知らずに緩む。良く知っている相手でなければわからない程度の緩みだったが、マン太に同乗しているシリンは、それが判る相手の1人であった。
「では釣果が出る様に、少しお手伝いしましょうか――精霊よ」
 ガーネットのその表情と、聞こえて来る小太刀と了の声に、より多くの魚が釣れるようにしようと、シリンは光の精霊に呼びかけた。
 シリンが広げた掌の上に、蛍の様な小さな光球が幾つも生まれる。それらはふわりと浮かび上がると、湖面の方へ降りていった。そこで明滅し、水面すれすれを飛び回る。
 バチャバチャ!
 誘魚灯のような光に誘われた魚が、水音を立てる。
「「……」」
 これまでにないチャンスに、小太刀と了は顔を見合わせ――同時に頷いた。
 この一投を最後の釣りとしようと。
 2人同時に釣り竿を構え、仕掛けを投じる。
「わわっ!」
 最初に反応があったのは、小太刀の釣り竿。今までにない強い引きにバランスを崩しかけるも、咄嗟に竿を立てて堪え、じわじわと引き寄せていく。
「オレちゃんも、キタッ!」
 やや遅れて、了の釣り竿も大きくしなった。引きの強さは、小太刀に負けてない。
 そして――。

「あ、小太刀、アキ。待ってた。焼き魚の準備は出来てるよ」
 釣りを終えて戻って来た小太刀と了を、料理の準備バッチリな杏が出迎えた。2人が何も釣って来ないとは、思っていなかったようだ。
「勿論、バッチリ釣れたわよ!」
 ドンッ。
 簡易テーブルの上に小太刀が置いたバケツには、サンマに似た魚がたっぷり。
 どちらが沢山獲れるか――と言う釣り勝負であったので、小太刀に軍配が上がったと言えるだろう。
 だが――。
「オレちゃんヌシっぽいの釣ったよ! ホラ!」
 了が最後に釣ったのは、サンマよりも大きく肉厚な魚であった。もしも釣り勝負が重量勝負であったなら、勝っていたのは了だった筈だ。
「ガーネット。私、アレを見た事ある気がするんですが」
「シリンもそう思うか? 私もだ」
 マン太から降りて来たシリンもガーネットも、その魚に見覚えがあった。
 2人だけではない。小太刀も杏も祭莉も、その魚を知っている。此処ではない別の世界の、更に異空間で出会ったあいつ。

 ――カツオが何故か、湖で釣れたのだ。

 カツオの旬も、秋である。

●かんさつにっきの宴
「よしよし、みんな準備できたね?」
 いそいそと全員にコップを回して、飲み物を注いで回った祭莉は、最後に自分のコップに水出し緑茶を注いで掲げる。
「じゃあ、イカとエビとサンマとカツオに、かんぱーい!」
「「「「「かんぱい!」」」」」
 祭莉の音頭に5人の声が重なって、宴会が始まった。

「待ってましたのご馳走タイム♪」
 釣り勝負に勝ってご機嫌な小太刀が、笑顔でイカ飯に箸を伸ばす。
 甘じょっぱい味に煮込まれたイカの身は、柔らかくも、もっちりとした歯応え。イカの旨味をたっぷり吸ったもち米も、白米にはない味わいがある。
「シリン、これ。えびふりゃ。ちょっと形はオリジナルだけど」
「これがえびふりゃですか……」
 シリンは杏お勧めの特大エビフライを、タルタルソースで一口。サクサクの衣の中にある肉厚なエビの身は、芯まで熱々。エビの旨味と、マヨネーズに卵と玉ねぎとキノコを刻んで混ぜたタルタルソースの組み合わさった濃厚な味わいが口の中に広がる。
「成程。たるたるそーす、この料理に合いますね」
「シリン、タルタルソースの世界へようこそ」
 タルタルソースを気に入ったらしいシリンの両手を、杏がガシリと掴んだ。
「オレちゃん、えびふりゃはレモン派ね!」
 了はタルタルではなく塩レモンのエビフライに手を伸ばす。レモンの爽やかさが、揚げ物の油感を和らげていて、それでいてエビの旨味の邪魔はしない。むしろ、エビ本来の味が強く感じられる気がする。
「タルタルソースもレモンも、それぞれの良さがあるよな。そして、それぞれ合う酒は違うんだ」
 そこに口を挟んだのは、持ち込んでいたグリードオーシャン産のお酒を両手に抱えたガーネットだ。
 顔に酔いは出ていないが、どうやらもう既に飲んでいる様子である。
「こっちは『グリフォンライダー』。これは『幽霊船長の船出』。それから、この島のワインも貰ってあるぞ。勿論、赤白両方」
「勇士の酒もありますか。良いですね」
 ガーネットのお酒を見て、シリンの目が輝いた。
『酒ならとっておきがありますぞ!』
 そこに酒樽抱えたオジサン、参戦。
「ほう。オジサンのとっておきか……煮っ転がしと合いそうだな」
「楽しみですね……」
 酒飲みは、酒飲みを知る。
 オジサンが酒豪であると知っているガーネットとシリンは、そのとっておきが間違いなく美味しいであろうと、顔を見合わせる。
「コダちゃん、オジサンいいの?」
「オジサンだからねぇ」
 ウーロン茶を注ぎながらこそりと囁いた祭莉に、小太刀は投げやりに返す。ああなってしまっては、酒宴が終わるのを待つしかない。

「一番、まつりんと!」
『オジサンでござる』
「踊りまっす!」
 そんな中、余興がいきなり始まった。
 祭莉とオジサンが、両手に手持ち花火で踊り出したのだ。やぶさか2☆、のアナザーバージョンと言った所だろうか。続くか不明。
「え、なにこれ……」
 祭莉が芸妓さん仕込みの宴会芸で踊れるのは知っていたが、オジサンまでキレッキレに踊り出して、小太刀の目が点になる。
「いいステップですね」
「オジサン、こんな芸当を隠していたのか」
「アハハハハッ! いいぞー!」
「よし。うさみん☆、混ざっておいで。え、いや?」
 まあ小太刀を除けば、皆ウケてるんですけどね。

 酒宴の時間が過ぎれば、それだけ酒量も増えると言うもの。
「ルシル、杯が空いてますよ」
「ありがとう。でもお酒はもういいよ。あまり強くないからね」
 シリンが傾けようとした瓶を、ルシルがやんわりと断る。言ってなかったっけ、と笑うその首は、酔いで赤くなっていた。
「ふむ。エルフは酒が強い、というわけでもないのか」
「シリンだからかなぁ」
 意外そうな顔をしたガーネットに、ルシルは笑って返す。
「ウーロン茶にしとく? 口に残ったフライの油もさっぱりするよ」
 そこにささっと寄って来た祭莉が、ルシルのコップにウーロン茶を注いだ。
「あとお酒は食べながらの方が良いって言うから、ハイ、燻製サンマ! 福があるっていうよ?」
 誰かのお皿が空であれば、食べたいものを訊いて取り分ける。
 甲斐甲斐しく給仕に回っている祭莉だが、本人がやりたくてやっているのは明らかなので、誰も止めようとはしていない。
「では、オジサンどうぞ」
『忝い! この一時こそ格別なり!』
 一方、向きを変えたシリンの酌を、オジサンが嬉しそうに受けていた。
「デレデレしちゃってまぁ……」
「まあまあ」
 ちょっと不満そうな小太刀の肩に、了の手が置かれた。

 酒も料理も、どんどん減っている。それは間違いない。
 皆、飲んで食べている。
 けれども――食材はまだ残っていた。
「まだ残りモノとかいう分量じゃないねえ」
「……釣り、ちょっと頑張り過ぎたわね」
「もう1,2品は作れそうですね」
 感心したような了の呟きと、やってしまったと呻く小太刀に、シリンが頷く。
「杏、かまどを借りますね。……杏?」
 シリンが声をかけるも、返事がない。そう言えば、少し前から、杏の声がしていなかったような――。
「……むぅ……」
 全員の視線を浴びた杏は、前後にふらふら揺れていた。
「杏ちゃんは眠い? お疲れ様だよ」
「アンちゃん、荷車に毛布被せた仮眠用のテントもあるよー?」
 船漕いでる杏に了が上着をかけて、祭莉も仮眠を勧める。
「んっ。頑張って起きてる」
 けれども杏は2,3度かぶりを振ると、やおら立ち上がった。
「そうだ。えびふりゃのぷりぷりの秘密、わかったよ! ルシルも可能性あるって」
「エビの神秘ですか」
 迷探偵杏の話に耳を傾けながら、シリンは残りの食材と包丁を手に立ち上がった。
「シリン、大丈夫? 酔ってない? わたしも手伝――」
「いえ、大丈夫です」
 小太刀が小声で申し出た手伝いをやんわり断って、シリンに刻んだ野菜を鍋に入れて火にかける。作っているのは、野菜スープだ。
 話しが終わった所で杏に飲ませれば、身体も温まって眠れる事だろう。それでこの宴会をお開きにするのも、キリが良いかもしれない。
 或いは、宴会は終わらないかもしれない。
 夜はまだまだ、続くのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
リュカさんf02586と

いいですねえ、チーズフォンデュ!
サンマも食べたいですし色々と貰ってきましょう

…あ、怖い話でいいんですか!?
てっきり無茶振りされるかと

ではハレルヤの怖い話…
ある朝、起きて身支度して出かけた所で目が覚めて
起きる夢見てたのかーと身支度して出かけた所でまた目が覚めて
おや?と思いつつ身支度して出かけたらまた目が覚めて
永遠に続く気がして不安になったので違う行動しようと二度寝したら普通に寝過ごした…

次はリュカさんの番ですよ!
ファッションか本気か…
いやネタバレじゃないですか!知らないコップは確かに怖いですけど!
…え、フォンデュに?生サンマを?焼かないで?
本気で怖い。やめてください(真顔


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と

チーズがあったな
チーズを溶かしてフォンデュにしよう
たぶんエビも行けるはず
野菜と果物ももらってこようか
たまにはいいでしょ
(のんびりチーズを囲みつつ

……
夜は長いから
お兄さん、なんか怖い話して
いや。さすがに面白い話してっていうほど鬼畜じゃない

…なるほど?
そのまま繰り返してたら、永遠にループしてたかもしれないから、必要な寝坊だったのかも
怖いっていうか、ちょっと面白そうだけど
俺も体験してみたい

俺?
そうだな…本気で怖いのとファッション怖いとどっちがいい?
前者はいつの間にか俺の荷物に知らない人のコップが入ってた話で
後者は今からここに生サンマを入れようかという話です

なんて夜通し話でも



●蘇る想い出
「さて、お兄さん。ここにチーズがあります」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)が、アルビレオの後部座席に戻した荷物から出して来たのは、硬めのチーズの塊だった。
 そのままでも小さく切れば食べられるが、温めた方が美味しいやつだ。
「溶かしてフォンデュにしようと思う。たぶんエビもイカも合うと思う」
「いいですねえ、チーズフォンデュ!」
 チーズに続いて深めの鍋――ダッチオーブンを取り出したリュカの提案に、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)も目を輝かせて頷く。
 秋島と言うだけあって、夜が深まるにつれて風も少し冷たくなっていた。暖かいチーズフォンデュはぴったりの夜だ。
 それに何より――チーズフォンデュなら、いつかの『醤油ヒタヒタお刺身事件』のような事も起きないだろう。
「野菜と果物も貰ってこようか」
「サンマも食べたいですし、色々と貰ってきましょう」
 そしてリュカと晴夜は、チーズに合う食材とサンマに似た魚も貰おうと、町の方に向かっていったのだが。

 ――バゼラードフィッシュを食べるなら、釣り立てを食べるのが一番だよ!

 そんな島の住人の一言で、リュカと晴夜は釣り竿が並んだ小屋に通されていた。
 釣り竿も、長さや作りが様々だ。使い易いのを選べるのは嬉しい。
「餌は要らないんですか?」
「そこについてる網に寄せ餌を入れるんですよ。針自体が疑似餌になってるんで、寄ってくれば勝手に食いつきます」
 仕掛けの説明を聞いて、晴夜は成程と頷く。
「と言う事だそうですよ、リュカさん。――リュカさん?」
 妙に静かだと晴夜が視線を巡らせると、リュカは何だか真剣な様子で釣り竿を物色していた。これ、と思うものが見つからないのだろうか。
「竿だけで、銛は無いのかな?」
 そして、なんだか不穏な事を言い出した。
「お兄さんと釣りで、去年を思い出してさ。また銛を使ってみるのも良いかなって」
 いつかの海洋世界でリュカと挑んだ、スピアフィッシング。狼化して海中で魚を追い込んでいた目の前を通り過ぎた銛は、晴夜も覚えている。
 夏の昼の海で、そんな目にあったのだ。夜の湖でなんて、ちょっとコワイ。
「釣り竿にしましょう? ね?」
「そう? まあいいけど」
 晴夜はリュカを促して釣り竿を選ばせ、湖畔へ急ぐのだった。

「……」
「……」
 月が映った静かな湖面に、リュカと晴夜は並んで釣り糸を垂らしている。
 手にしている釣り竿は、まだ一度も大きな動きを見せていなかった。
「うん。中々釣れないね? お兄さん」
「……ま、まだちょっと調子悪いだけですよ!」
 ぼーっと釣り糸を垂らしているリュカの隣で、晴夜はちょっと目が泳いでいた。
 ――釣り? このハレルヤに任せなさい!
 なんて、晴夜はいつもの根拠のない自信で言ってしまったものだから、何と言うか、とてもバツが悪い。
(「せめて2、3匹は釣ってみせませんと!」)
 晴夜の中で燃える執念。
 けれど、サンマは群れで泳ぐ魚だ。
 バゼラードフィッシュも、同じ特性を持っているのだろう。だからこそ、サビキと呼ばれる複数の針を付けた仕掛けの竿を渡されたのだ。
 要するに、釣れる時は釣れるが、群れがいないと釣れない。
「あ、これは……来ましたね!」
「こっちも」
 結局、2人同時に釣り竿が大きくしなったのだった。

●チーズと怖い話
「こうすると、太い薪も火が付き易いよ」
「手慣れてますねぇ」
 焚き木の表面を何度もナイフで薄く削って作ったフェザーステックを火種に、リュカが熾した焚火を晴夜が後ろから覗き込んでいる。
 火が大きくなったら、上に置いた鉄板にバターを引いて、一口大に切ったエビとイカに火を通しておく。マッシュルームやアスパラ、カボチャ辺りも一緒に軽く炒めておく。
「レシピによると、チーズは刻んで粉をまぶしておくと良いらしいです」
「そうなんだ」
 続いて、2人でチーズを刻んで小麦粉をまぶしておく。こうしておく事でチーズが分離しにくくなるらしい。
 後は火にかけたダッチオーブンに水を張り、雑に切ったフライエビの殻を入れてしばらく煮詰めて、出汁を取る。
 殻を取ったらチーズを少しずつ入れて、焦げない様に混ぜながら溶かせばチーズフォンデュの完成である。
 あとは一口大に切った素材を、チーズに絡めながら食べるだけだ。
「このエビ……美味しいですね。尻尾がチリチリになりそうになった甲斐があります」
「イカも美味しいよ?」
 どちらも、チーズに合う食材だ。軽く炙ってから溶けたチーズに絡めてみれば、トロリとしたチーズの後にそれぞれの旨味が口に広がっていく。
「たまにはいいでしょ」
「食事はこういうので良いんですよ。肉があれば尚良かっ――」
「ベーコンならあるけど」
「良いですね!」
 リュカが出して来た燻製肉を見て、晴夜の目が輝いた。

 腹もくちいて食材も減って来たとなれば、食べている間は減っていた口数も、自然と戻って来るものだ。
「……。夜は長いから。お兄さん、なんか怖い話して」
 ふと思いついたのか、リュカが唐突にそんな事を言い出した。
「……あ、怖い話でいいんですか!?」
 そこは晴夜も慣れたもの。
「てっきり、面白い話とか無茶振りされるかと」
「いや。さすがに面白い話してっていうほど鬼畜じゃない」
 ほっとした様子でチーズをキノコに絡める晴夜に、素揚げにしたカボチャにチーズを絡めながらリュカが返す。
「ではハレルヤの怖い話をしましょう……」
 キノコを呑み込んで、晴夜は語り出した。

●晴夜の怖い話
 ある朝の事。
 私はいつものように起きて、食事をとり、身支度をして、家を出た――という所で、目が覚めたのです。
 なんだ、起きる夢を見ていたのか――とまた身支度をして、家を出ました。
 そうしたら、また目が覚めたのです。
 おや?と思いながら、またまた身支度をして、家を出ました。
 そうしたら、また目が覚めたんです。
 このままずっと夢を見続けるのでは……そんな不安を抱いた私は、今までと違う行動を取ってみようと、二度寝する事にしました。

●リュカの怖い……話?
「それで……?」
「普通に寝過ごしたんですよ……!」
 促されるままにオチを語った晴夜は、その時の事を思い出したのか、リュカの前でがっくりと肩を落としていた。
 さもありなん。
「……なるほど? そのまま繰り返してたら、永遠にループしてたかもしれないから、必要な寝坊だったのかも」
「ええまあ……疲れは取れましたね」
 エビをもぐもぐしながら考察するリュカに、晴夜はイカにたっぷりのチーズを絡めながら、当時を思い出して返す。
「怖いっていうか、ちょっと面白そうだけど」
「はっはっは。次はリュカさんの怖い話の番ですよ!」
「……俺?」
 体験してみたい――なんて呑気に言っていたリュカは、自分が怖い話を語るつもりがなかったのだろうか。晴夜から次の語りを押し付けられ、小さく首を傾げていた。
「そうだな……」
 しばらく考え込んでいたリュカは、ポンと手を打って晴夜に向き直る。
「本気で怖いのとファッション怖いのと、どっちがいい?」
「え? 2つもあるんですか」
 しかしあっさりとそう返されて、晴夜の方が軽く驚かされる。
「前者はいつの間にか俺の荷物に知らない人のコップが入ってた話で――」
「いやネタバレじゃないですか! 知らないコップは確かに怖いですけど!」
 まさかのあらすじでネタバレに、晴夜は思わず声を上げる。
「後者は今からここに、生サンマを入れようかという話です」
 けれどもリュカはそのツッコミをさらりと流して、サンマ――バゼラードフィッシュの尾を掴んで、チーズフォンデュの鍋の上にぷらーんとぶら下げた。
「……え、フォンデュに?」
「うん」
「生サンマを?」
「うん」
「焼かないで?」
「そう。このまま」
 しかも腸すら取ってない。
「本気で怖い。やめてください」
「え。大丈夫。多分サンマもチーズに合うよ」
「合う合わないの問題ではなくて――!」
 真顔で止めようとする晴夜の手を、リュカがするりと躱す。
 こうして、リュカと晴夜の穏やかな(?)秋島の夜が更けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月28日
宿敵 『フライエビ』 を撃破!


挿絵イラスト