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自転車レース～山あり海あり、乱入者あり！？

作者：唐傘

●無策な未来
「ブレブレブレ！　その程度の車輪とフレームで自転車を名乗ろうとは片腹痛いですぞ！」
　勝者と敗者、そのマシン――『愛機』に大きな違いは見られない。しかし、ゴール地点のタイムスコアが示すのは、1時間以上の大差を付けての圧勝、あるいは大敗。
「次もこの調子では吾輩が殿堂入りしてしまいますな、では――毎月開催してもらった上で、吾輩は第13回にでも出ましょうかな？　さすがに優勝者が1人でも居れば、吾輩といい勝負にはなるでしょうな。そう――50分差に縮めるような！」
　ブレブレブレ、と笑い声を上げつつ、ゴールから退場ゲートへ向かう勝者――猟書家、キング・ブレイン。

●という訳でトレーニングです
「えっと……自転車に乗れる人、ちょっときまふーに向かってもらえないかな？」
　前輪2つの自転車でもいいよ、と補足をするグリモア猟兵。……予知によると『人力でペダルを漕ぐ』『ペダルの回転を伝えて車輪を回す』『ブレーキや前照灯などの安全装置がある』乗り物なら、三輪車のような一部例外を除けばだいたいオッケーらしい。

「順を追って説明するね？　『キング・ブレイン』ってオブリビオン……あの変な笑い方の猟書家の、『ブレインバイシクル1号』って自転車、色々スペックがおかしいじゃない？」
　超速度を出し、次元を超え、テレポートも可能……もはや自転車と呼んで良いのかは疑問だが、常識的な速度で走っている間は自転車なのだろう。
「だから、ブレインバイシクルに対抗するぞーって、きまふーの住民たちがレジャー施設を改造して、特訓コースを作っちゃったんだ。」
　あえて舗装の雑な山道や、舗装の行き届いた市街地風のコース、はまだいいだろう。……海底の水中トンネルで水族館気分だったり、山道の一部に落石トラップを仕掛けたり、挙句の果てに迷路まで作った職人も居るらしい。どうしてこうなった。

「まぁ、猟兵だから死なないとは思うけど……問題はコースの安全性じゃなくてね？　レースをしていると、キング・ブレインが乱入してくる……って予知が出たんだ。」
　無論、相手は超高速なので、ユーベルコードで妨害……もとい、オブリビオンなので攻撃をしなくてはいけないが、しかし同時に自転車を降りることはできない。
　降りたら『キング・ブレインを倒したが、レースは棄権した』と笑いものになりかねない。――そう、ゴールするまでは自転車を降りてはいけないのだ。
　しかし同時に、キング・ブレインを優勝させてもいけない――さすがに優勝させた後の未来は見えていないが、見えたところで碌なものはないだろう。

「まぁ、まだこけら落とし直後だから、キング・ブレインが出てくるまで時間はあるはずだし……ブレインバイシクル1号に、もっと言うと他の参加者に勝てるような自転車を作って、慣らし運転をできるとは思うんだ？」
　とはいえ、慣らし運転として許容されているのは、室内練習場と本番コース1週のみ。仮に本番コースに出れば、スタートに戻ることはできない。例え練習としての1周分が途中でも、スタートに戻ってしまうと次は本番のレースとして走らざるを得ない。
「まぁ、本番はコースを何周もする形式なのと、室内練習場にも本番コースを要所要所だけ再現させてはあるみたいだから、室内と屋外の差異を確認する意味合いが強いのかな？」
　もしくは、単にウォーミングアップとして走らせているだけかも知れない。

「最終的に、走りながら戦う……文字通りに戦う事になるんだけど、ちょっとお願いできるかな……？」
　祈るように手を出しつつ、もう片方の手で転送ゲートを展開する――。

第1章 冒険 『白熱の自転車レース！』

POW   :    力の限り漕ぎまくり、スタミナに任せて前を走る SPD   :    前半は体力を温存し、ここぞのタイミングで一気に仕掛ける WIZ   :    対戦相手を利用したコース取りを行い、風の抵抗を避ける 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「キングブレインに勝つのが目的じゃねえ……アタシのロードを作り出すことが目的だ！」
　ホイールやギア、チェーンを集める四王天・燦（f04448）……既存自転車のカスタマイズが想定されていた中で、フルスクラッチをやる猛者が出るとは誰が予想しただろうか。
　しかし、組み立ては慣れているのか、すぐに自転車を完成させる四王天。
「できた！　チタン製フレームに最新コンポを積み込んだ、燦のロードバイク！　マットシルバーに真紅のライン、稲荷神のロゴがイカす……」
　記者の存在を感じたのか、あるいはただの独り言か――タイヤのケブラーも含めて細かく解説する四王天。

　そして、ひとしきり解説して満足したのか、練習用コースに向かう。トレーナー（ボランティア）とポジショニングを確認して、屋内コースを一回り。
　まず市街地を軽く流し、凍結した山道でヒルクライムとダウンヒルを、大型扇風機で台風顔負けの暴風雨を、そして迫り出す壁の回避や激しい水量の滝登りを――
「……って待て待てー！　猟兵でも死ぬわ！！」
　実際のところは、『台風では中止だが小雨や強風程度はレース決行』『雨天時を除いて、路面に水はない想定』らしいのだが……どうやらコースを作った人たちが悪乗りして、滝や台風並みの暴風を用意したらしい。あと、間違えて練習コースギリギリに置かれたダンボールが迫り出す壁と間違われたらしい。

　という訳で、改めて『想定される範囲での悪路』と『準備された中での最善環境』で感触を試し。腹ごしらえをして。本番用に、恋人や姉妹などが描かれたジャージを用意した四王天が、仮眠する姿が見られた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「キンブレには感謝の念しかないのう……あらゆる意味でパーフェクトにデキる妾の、どうしても不得意な分野！　それが自転車！　……理由は分かるな？　そもそも戦場に立つ以前の問題！」
　いろいろな世界で動画を撮っている邪神様、という設定の御形・菘（f12350）――だが、種族的にはキマイラで、爬虫類が色々混じっているらしいその体は脚がない……いや、蛇の下半身を脚と呼称するなら、この邪神様も立派な御足をお持ちなわけだが。
　まぁどのような身体特徴でも物心がつく頃には移動方法を会得するであろうし、移動が困難な種族でも猟兵であれば戦場へ転送されるため、一部の猟兵は移動という概念から遠いのだが……。
　ともあれ今回は、自転車が前提となる以上、何らかの形で自転車に乗る必要があり。しかし御形は、事前に情報収集していたため、キング・ブレインと戦うためのステージには立つ算段があるらしい。

「妾の体では自転車に乗れない、という前提をぶち壊す！　そのためにハンドサイクルをオーダーメイドだ！！」
　ペダルは御形の手に合わせたサイズを選び、下半身を置くスペースは流線型の覆いの下に作ることで空気抵抗も軽減。
　協力してもらったボランティアの名前はボディの目立つところに名前を書き入れる……が、名前を聞かれた意図がサインの宛名と思われたことは秘密だ！

　そうして完成したハンドサイクルに試乗し、屋内コースで問題ないことを確認して速攻で本番コースに突入！
「はっはっは、自分で運転できるのって楽し～！！」
　実は自分での運転に憧れていたらしい御形、全力で何周も走り回る！
　なお、室内コースで「弾丸の雨程度なら走り切るぞ！」と宣言し、コースの改造が考案されたようだが……銃はさすがに、見送られたらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「自転車……ダークセイヴァーにはありませんが、UDCアースでのトレーニングの一環で乗るようになりました。」
　自前のサイクルウェアを着て、タンデム自転車を選ぶエリカ・タイラー（f25110）――コンコンコンで出す必要があるかと思っていたが、既に何台か出ていたため、サイズ感の都合が良いものを選ぶ。
　しかし、そのままでは乗らず、後部座席をリカンベント式シートに交換する。
　そして前方のハンドルに細工を行い、フレーム内を通して後部席まで操り糸を通す――これで、エリカが自転車を漕ぎつつ後部席のからくり人形を操作しても、操り糸を外部から切断は無理だろう。――自転車のフレームごと斬れば話は別だが、さすがにルールに抵触する行為はしてこないだろうし。

　そうして、屋内コースの周回と自転車の調整を何度か繰り返していたエリカが、ついに動く――そう、本番コースでの試走に切り替えたのだ！
「ボランティアのスタッフさん……いえ、運動好きの方々に並走してもらってみましたが、マリオネット・フィールドも発動はできるようですし……戦闘もこの調子で問題なさそうですね。」
　難があるとすれば、他の猟兵に比べてラップタイムが望ましくないことだろうか……。しかし、1人で全力疾走する他のメンバーと違い、一般人キマイラに合わせて速度を落とすエリカにとっては必然の結果かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『猟書家『キング・ブレイン』』

POW   :    侵略蔵書「スーパー怪人大全集（全687巻）」 【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。 SPD   :    本棚をバーン！ 【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。 WIZ   :    脳ビーム 詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳（かしこさを暴走させる）】属性の【ビーム】を、レベル×５mの直線上に放つ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

「ややっ、面白そうなレースですな！」
　猟兵たちがコースの6割から8割進んだ頃、不意に現れる乱入者――キング・ブレイン。
「しかし、選手が物足りませんな、吾輩の1周遅れは程よいハンデでしょう！」
　先頭との差はそろそろ2周遅れになりそうだが、キング・ブレインは気にせず加速し――その差を縮めようとする！


・現在の順位
1位：御形・菘
2位：四王天・燦
3位：エリカ・タイラー
4位：キング・ブレイン（途中参加のため、周回遅れ）


「現れましたね、キング・ブレイン。二人漕ぎの私にあっさり追いつくとか、本当デタラメですね……。」
　彼我の距離から、キング・ブレインには聞こえていないはず……だが、その距離を徐々に詰める相手に毒づくエリカ。

「ブレブレブレ！　その程度の速度で優勝を狙うとは、片腹痛いですぞ！」
　近付いたエリカに対して、言外に遅いと主張するキング・ブレイン。……いや、彼自身が異常なほどに早い、という自覚はあるのかも知れないが。
「遅い貴女から仕留めましょう、本棚をバーン！」
　エリカに向けて本棚を投げるキング・ブレイン、しかしそれはエリカに当たらず――いや、回避を加味して投げたが、そこにエリカが居なかったのかも知れない。
「こちらからも反撃です！」
　後部座席のからくり人形を操り、漆黒・真紅・群青のボールペンを投げつける！
「ブレブレブレ！　その程度のダーツもどきでは、吾輩のブレインバイシクル1号は傷つきませんぞ！！」
　しかし回避のために速度を落とし、直進をできていないキング・ブレイン……束の間、エリカとの距離が広がる。

「ところで、後部席の方は驚いていないようですが……？」
「えっ、ビルトはからくり人形ですが……」
「……あっ、失礼しました。」
　――数秒ほど、キング・ブレインが失速し、エリカとの差が開いたが……すぐにエリカを追い越したので。キング・ブレインが何を思ったのか、そしてなぜ失速したのか。それはわからない……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「現れましたね、キング・ブレイン！　キマイラフューチャーを脅かす猟書家に、容赦なんてしませんから！！」
　だるま自転車のような、前後輪の差が極端なものを漕ぐニノン・トラゲット（f02473）――どうやら、彼女の体格に合わせて、ペダルをあまり漕がずに移動距離が稼げるものを勧められたらしい。
「ブレブレブレ！　そのような不安定な自転車で吾輩に勝とうなど、笑止千万！！」
「確かに漕ぎ始めは左右のふらつきがすごいですが、すぐに安定して走れるようになりましたよ？」
　だるま自転車の弱点、低速状況での不安定がすぐに解消した――つまり、乗り始めてすぐに安定する程度の速度を出したということ。これは彼女が、周囲に脳筋と呼ばれている事に起因するのかも知れない……。
「そんな自転車、乗るには不向きで、安全性からも時代遅れと教えてあげましょう！　脳ビーム！！」
　本来は賢さをオーバーフローさせて暴走させる脳ビーム、なのだが。
「そうか……わかりました……撃つのはここです！」
「危ないですぞ！？　他の人にビームが当たったらどうするんです！！」
　ニノンが指差した『何もない場所』に、天からの光が降り。その着弾点に吸い込まれるように、キング・ブレインが走り抜ける……。――そう、脳筋が賢さを得て、キング・ブレインの走行コースを先読みできるようになったのだ！
「こんな危ない人と並走できませんぞ！？　吾輩は先に行かせてもらいますぞ！！」
　自分の脳ビームが悪手だったと気付いていないらしく、速度を上げてニノンから遠ざかる――。

成功 🔵​🔵​🔴​

　キング・ブレインが速度を上げた先、サイクルウェアの上から反射ベストを来た走者――四王天が、急ブレーキをかける！
「うわっ！？」
　そして驚きのあまり、キング・ブレインは詠唱をまともにできず――威力がほぼゼロの脳ビームを発射する！
「落下物もないのに急ブレーキとか、非常識ですぞ！　反射ベストで安全に気をつけてる常識人と思った吾輩の感嘆を返してください！」
　反射ベストについては褒めようとしていたらしい、のだが。四王子はブツブツと何かを呟くだけで、特に説明はないらしい。
　仕方がないので、止まったままの四王子を避けて再出発すると、四王子はピッタリ後ろに付けて漕いでくる……。

「そろそろいいかな……。御狐・燦が命ず。符よ、宿りし力を此処に解き放て！　リバース脳ビーム！！」
　どの程度走った頃か、キング・ブレインと付かず離れずを維持していた四王子が、脳ビームを発射する！
「さぁお互い、賢さなど捨てて競おうではないか！　アタシの前を走る奴はいねえ！」
「なんか頭が痛いんですが、脳ビームってこういうものですぞ！？」
　賢さは暴走していないはずの四王子と、賢さが暴走しているはずのキング・ブレイン。その戦いは、山林で互いに見失うまで続いた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「はーっはっはっは！　待っていたぞキンブレよ！」
　山林を抜けた先、市街地で先ゆく御形――乱入者のキング・ブレインを見つけ、しかし速度は落とさないままに歓迎の意を示す。
「さあドラマチックなレースを繰り広げようではないか！　……なんてことをするつもりはない！」
「なんでですぞ！？　吾輩とのレースが目的でないなら、失格覚悟での殴り合いですかな？」
　御形の意図が読めず、困惑しているキング・ブレイン……しかし、彼は忘れていた。これまでの攻撃が全て、自転車に乗った走者からの攻撃だということを……。
「得意ではない分野でイキるつもりはないし、キンブレの実力は認めておるからのう……。よって、勝つために全力で妨害して潰す！　無論自転車からは、降りない！！」
　キング・ブレインが手加減しているのか、あるいは御形が競輪選手並みに速度を出しているのか……速度計がないので不明だが、御形が両手でペダルを回したまま、ユーベルコードを発動する！
「さあ降り注げ流星よ！　良かったのう、ブッ倒れるまで願い事の唱え放題であるぞ！！」
「いやいやいや、吾輩を物理的に潰しに来てませんかこれ！？」
　慌ててスーパー怪人大全集のうち1冊を使い、スーパーキング・ブレインに変身する――そして未来予知を可能にしたらしく、細かく起動調整をしつつもその巨体を生かして速度は維持する、無茶苦茶な走行を実現する！
「……って、自滅しそうな密度ですと！？」
「妾も着弾に耐える！　はっはっは、流星の降る中を二人で走る、なんだかロマンチック！」
「ロマンどころか戦場の爆撃跡ですぞ！？」
　ビルだったものや、道だったもの。二人が走った後は流星……いや、小規模な隕石が多数降り注ぎ。爆撃を受けたかのように、あちこちに亀裂や瓦礫が生まれたという……。

　……あ、キング・ブレインは、あまりの危険さにコースアウトして逃げたようです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

・最終順位（走行時間ベース）
1位：御形・菘
2位：エリカ・タイラー
3位：四王天・燦
4位：ニノン・トラゲット
圏外：キング・ブレイン（リタイア）

最終結果：成功 完成日:2021年10月29日