●辺境への誘い
「驚きの事実、と申し上げましょうか。或いはそのような予測をなさっていた方もおられましょうか? 世界の全てを把握するのは容易ならざることとはいえ、よもや、ダークセイヴァーが地下世界などとは」
そう語りかけ、ジャグ・ウォーキー(詩謔・f19528)は微笑み、頷いて見せた。
「なれば、先を求める冒険は如何でしょう。勿論、容易に『第3層』に至ることはできないでしょうが、そこがダークセイヴァーのすべてだと思われていた地の果て、通り道たる辺境の冒険へ」
この地が『第4層』であるという事実は、この地を支配するヴァンパイアも碌に知らされておらぬようだ。ともなれば、その支配権では有益な情報は得られまい。
ならば残る手がかりは、ヴァンパイアの支配権を逃れた向こう、辺境を越え――人類の居住区域の外側、完全なる闇に覆われた、生物の生存を許さぬ区域。
人呼んで『常闇の燎原』なる魔境ならば、ヴァンパイアも知らぬ何かがあってもおかしくはない。
「当然のことながら、道程は易くありません」
ジャグはさらりという。
「覚えておいででしょうか? 辺境地帯には『狂えるオブリビオン』なる理性を失った存在がおります……それが何かの詳細の説明は省きましょう、これらは会話不能、断続的な記憶も持たぬ存在。ゆえに強敵ですが、それだけです」
猟兵達が目指すのはもっと先。
ある種、門番ともいえるそのオブリビオンを倒し進めば、辺境ならではの『生命の生存を許さぬ』呪詛や天候の猛威が、試練となるだろう。
「水に流された廃村の光景が見えました……この地で生き抜こうとして、叶わなかった無念を潜ませた昏き水――そして、その水流を強める、激しい雷雨」
激しい風雨と雷鳴を潜り抜け、どれほど進めば辿り着くのか、その具体的な距離は解りませんが、と彼女はひとつ区切り、猟兵たちを見つめる。
「辺境地帯の果てでは、黒い炎を纏うオブリビオンが待ち受けていることでしょう。まるで領域を守るように」
それは、全身から黒い炎を噴き出しながら襲いかかってくる。
――同族殺し、紋章持ちのオブリビオンに匹敵する力を持つと同時に、「あらゆる防護を侵食し、黒い炎に変えて吸収してしまう能力」がある。
即ち、攻撃を受け止めることで、此方の守りは黒い炎と化して、相手を癒やしてしまうのだ。
「ええ、それらを倒すことで、いずれは何かを見つけられるということです。少々遠出になりますが、向かっていただきたい……そういう依頼となります。常闇の向こうにある世界を、求める冒険とでも言いましょうか」
そういって双眸を親しげに細めた彼女は、優雅に一礼したのであった。
黒塚婁
どうも、黒塚です。
相変わらずの泥系ダクセ。
※このシナリオ内で、第3層への手がかりなどの調査などはできませんので、ご注意ください。
●1章ボス戦『葬華卿』
「狂えるオブリビオン」ですので、理性も無く、会話もできません。
ただ目の前に現れた敵を襲うだけの存在です。
●2章冒険
凄まじい嵐の中、廃村を抜けていきます。
詳細は開始前導入にて。
●3章ボス戦
黒い炎を噴出するオブリビオンとの決戦になります。
こちらも詳細は開始前導入にて。
●プレイングに関して
各章、導入公開後の受付となります。
受付日時は特に設けません。書けるときに書けるだけ。
よって、全員採用はお約束できません。
ご了承の上、参加いただければ幸いです。
それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
第1章 ボス戦
『葬華卿』
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POW : 剪定は丁寧に
【美しく相手を仕留める情念】を籠めた【巨大化させた鋏】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【生命の根源】のみを攻撃する。
SPD : 君よ永遠に
【柩から放たれる無数の蒼き花弁】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を麻痺毒の芳香で埋め尽くし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 蒐集の心得
自身が【好奇心】を感じると、レベル×1体の【生命力のみを啜る蒼き花々】が召喚される。生命力のみを啜る蒼き花々は好奇心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠黒蛇・宵蔭」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●一の試練
湿った風の匂いがする。
天上を覆う闇は常より深く、視界は数メートル先すら怪しい。だが、光源を持てば、猟兵ならば不覚はとるまい。或いは五感で対応するものもあろうか。
足元はごつごつとした堅い土ばかり。生き物の気配は、虫一匹すら感じない。
虚無の薄闇――耳に届く、啾啾と嘆くような風の音の向こう、ほの明るく光る何かが見える。
花だ。淡く光る、青い花。
花はぽつぽつと、そこに置かれた柩を慰めるように咲いていた。ただそれは、自然のものではありえぬ――それは、光刺さぬこの地に咲いていることからも明らかだ。
何より、この柩は何か。
不意にそれらを遮るように人影が動いた。その足元で、青い花は、輝きとともに消失する。
触れれば、消える――幻覚だった。
人影が、こちらを見ている。無論、オブリビオンに相違ない――。
「……――」
葬華卿の形をした何かは、猟兵の姿を認めたらしく、そこから動かず、じっと此方を窺っている。好意的とは言いがたい殺気を放ちながら。
この地に立ち入る者は等しく死すべし――その一心のみに動く、異端の神の入れ物であった。
ニール・ブランシャード
ダークセイヴァーが、地下世界…。
それならあの世界に…第四層に、「夜明け」は最初から無かったの?
確かめなきゃ。
こんなところで止まってられない。
あの光る花と棺…懐かしいや。
ぼくが最初の冒険で戦った相手といっしょだ。
うぅっ、この体の中を直接斬られる感じ…。
怖気が湧いてくる感覚まで懐かしい…!
でもね。ぼく、前より「勇気」が出せるようになったんだよ。
たくさん冒険をしてきたからね。
怖さは勇気で打ち消せる。
裁たれた生命力は、武器に「生命力吸収」をさせて奪い返すよ!
君の武器には、殺気しか籠ってないね。
ぼくの武器に籠ってるのはね、決意だよ。
「この世界に夜明けをもたらす」決意。
ぼくの斧は、きみの鋏には負けない。
●夜明けを求めるもの
甲冑の騎士が振り返れば、鋼が擦れ合う硬質な音が暗闇に響く。
「ダークセイヴァーが、地下世界……」
思いの外、若い声がした。
甲冑姿に声のイメージというのも不思議な話だが、体格は確りとして見えるのだからしかたない。ただ、鎧に詰まっているのは泥状のいきものだ。
ニール・ブランシャード(ブラックタールの黒騎士・f27668)は、ぼんやりと呟く。
(「それなら世界に……第四層に、『夜明け』は最初から無かったの?」)
天を仰ぐ。此所は夜より深い闇の中で、何も解らない。仮に光があろうともその真偽を見極める術を、彼の身ならず猟兵は持たぬ。
「確かめなきゃ。こんなところで止まってられない」
それは、好奇心からくる衝動か。臆病さからくる不安か。
激しく鎧を鳴らし――ニールは敵へと向き合った。
長柄斧を振りかざすと、ぽうと幻の如く光っては消える花と共にある存在を一瞥した。
「あの光る花と棺……懐かしいや。ぼくが最初の冒険で戦った相手といっしょだ」
――葬華卿。だが、その気配はどこかおかしい。もっとも、オブリビオンの正常な状態など、知るよしもなく、知っている必要もない。
敵は宵闇を軽やかに跳躍し、ニールへと鋏を突き出す。美を求める情念があるのかどうか、解らぬ表情で大剣ほど伸びた鋏は、光なき世界に流れる銀色の一筋と叩き込まれる。
受け止め流そうと構えたニールは小さく呻いた。甲冑の硬度などを無視して、すり抜けてくる。
「うぅっ、この体の中を直接斬られる感じ……怖気が湧いてくる感覚まで懐かしい……!」
まったく楽しい経験では無いはずだが、ニールは不思議と心が奮い立った。
「でもね。ぼく、前より『勇気』が出せるようになったんだよ――たくさん冒険をしてきたからね」
語りかけた相手は、ニールの事を知らぬ。力の強弱でいけば或いは、今の状態の方が冷たく鋭いやもしれぬ。そして、それが――皮肉と、ニールの生命を脅かすには足りぬ。
知ったんだ、と、軽くステップを踏んで長い柄をくるりと回す。
「――怖さは勇気で打ち消せる」
相手の足元を捌くように薙いで、高々と刀身を振り上げる。
腰を曲げたまま後方へと退くオブリビオンに、覆い被さる勢いでニールは前へと跳ぶ。
その勢いをのせ、長柄斧を振り下ろした。
弧を描き落ちる刃は、風を断ちながら――敵の背を、滑らかに割った。
肉を裂き骨で刃が止まる感触にもニールは臆さず、一気に振り下ろせば、地響きと共に、周囲はクレーターのように沈む。
速度、重み、全てを乗せた強烈な一刀に、オブリビオンは血を流し崩れ落ちる。
視界を埋めるほどの砂埃が舞い上がる中で、追撃を忘れず刀身を上げ備え、ニールは囁く。
「君の武器には、殺気しか籠ってないね。ぼくの武器に籠ってるのはね、決意だよ――『この世界に夜明けをもたらす』決意」
沈んだと思った身体が、跳躍する。予想通りだ、とニールも素早く応じた。
斬り上げるよう斜めに走った鋏の斬撃を、見事に叩き落として、彼は叫んだ。
「ぼくの斧は、きみの鋏には負けない」
夜明けのために――此所で止まってはいられない。
大成功
🔵🔵🔵
揺歌語・なびき
思わず笑えてしまった
なぁんだ
おれの故郷は地下世界だったかぁ
あの子になんて説明しよう
太陽がないのも頷ける
けれど、月だけは満ち欠け続けていて
それに怯える己も変わらないのが
不思議だなぁ
おまえだけにかかりっきりって訳にもいかないんだ
そっちは、ここで仕留めたいだろうけど
麻痺毒はなるべく避けたい
己の勘を頼りに回避優先【野生の勘、第六感
棘鞭を振るった風圧で花弁と芳香を追い払う
隙を見て拘束具を放つ
腕も足も、喋らない口も封じてしまえば
花吹雪も届かなくなる
拘束に成功したら棘鞭で攻撃を【串刺し、傷口をえぐる、鎧無視攻撃
その花棺に何を入れたかったかは知らないが
自分が何者かも忘れてるなら
一生なんにも収まらないんだろうな
●徒花
ふふ、と掠れるような声が響いた。
揺歌語・なびき(春怨・f02050)は思わず溢れた笑みをそのままに、闇を見つめる。
「なぁんだ、おれの故郷は地下世界だったかぁ」
世界の全てを知っているつもりではなかった。所謂、太陽が動いているのか、大地が動いているのか。そんなレベルの常識は弁えているつもりであったが――。
「あの子になんて説明しよう」
口元に指をあて考える。闇。身を包む闇。見渡せぬほどもない、
(「太陽がないのも頷ける――けれど、月だけは満ち欠け続けていて、それに怯える己も変わらないのが」)
地下だ、と言われたら頷くことは出来る。けれど、ならばこの身に刻まれた病はなんなのだろう。本物を見ずとも狂わせる、丸い光源。
余所の世界に渡れる猟兵ゆえに、本物も知ってはいるけれど。
「不思議だなぁ」
桜色の双眸を細めた。
昏迷する世界の中で――真実が知りたい、と望む心がないといえば嘘になる。何処まで行っても明らかになるとも限らないけれど。
なびきは曖昧に笑った儘、動く影を見る。強い血の臭いに否が応でも気付いてしまう。
葬華卿の殻を被った狂えるオブリビオンは、闇に乗じて仕掛けてきた。逆手に握りしめた鋏が鈍く光る。
それを揺れるような動きで躱し、なびきは首を傾いだ。
「おまえだけにかかりっきりって訳にもいかないんだ」
そっちは、ここで仕留めたいだろうけど――静かな声音が闇に響く。ふわりと髪が躍って、風に揺蕩う芳香に、攻撃の気配を察する。
華の棘鞭で空を斬り裂けば、なびきの手元で見事断たれた青き花弁が無念と落ちていく。
足元に落ちた花片の残骸は、未練がましく匂い立つ。その上を駆って、オブリビオンは加速する。
「実直な動きだ……でも何のために、お前は戦うのかな」
理性の無い敵は闇雲だが、早い。
獣のように突進してくる――青い花が空に散り乱れる。今、なびきの手の届かぬところにある柩が蓋を開けている限り、その幻影の繚乱は止まらない。
のらりくらり、柔らかに彼は退きながら、鞭打で距離を取る。風で、麻痺の芳香を押し返す意図もあった。
オブリビオンは臆さぬが、徒に一撃を浴びる気はないらしい。一躍でかなりの距離をとると、ぐっと膝を折った。
またその身体能力を元に、捻りも無く正面から来ると解るなら、対処は易い。
穏やかな笑みをそのままに、なびきは拘束具を放つ。
「ほら、腕も足も、」
ユーベルコードの力で生み出された手枷、足枷が次々と、敵の四肢を捕らえ、
「喋らない口も封じてしまえば」
そこまで不自由になっても、ダンと両脚で地を蹴って、高々跳躍するのだから恐れ入る――しかし、口枷ががちりとその舌を抑え込んでしまえば、その攻撃を支える青い花も、芳香も消えてしまう。
「その花棺に何を入れたかったかは知らないが……」
落下に任せ、男は両手で鋏を振り下ろす。
なびきは、別れの挨拶のように腕を振る。ゆるりとした動作だが、走った鞭は鋭く、敵の肩、激しく出血する傷を打ち据え、抉る。
棘鞭は肉と血を周囲に散らし、血を吸い上げ、喜ぶように咲き誇る。
「自分が何者かも忘れてるなら、一生なんにも収まらないんだろうな」
闇へとあしらった相手を無感動に見つめて、肩を竦めた。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
私が…生まれ落ちたこの常闇の世が地の底だった…
さながら地下墓所か…
ならばこそ…我々は外を目指すだけだ…
行くぞ…ワタシは処刑人だ…!
邪魔をするな…狂える敵よ…!
仮面を身に着け[毒耐性とオーラ防御]の加護を得て
鉄塊剣を抜き振るい敵と相手しよう
鉄塊剣を[武器受け]で盾代わりにして敵の攻撃を防御しよう
目障りな蒼い花だ…
ならば…地獄の炎で燃し尽くそうぞ…!
地獄の炎を身に纏い鉄塊剣を振り回し【紺碧の地獄の炎】を発動
紺碧の地獄の炎纏わせた[斬撃波]を振り放ち
敵と蒼き花々とその花弁諸共[範囲攻撃で焼却]してやろう…!
狂える敵め…闇に帰れ…ッ!!!
●紺碧の獄炎
この夜の世界は。この闇の世界は。
世界の支配者たるオブリビオンどものもたらしたものであるように、思っていた節はある――なにせ誰も、光に満ちた時代を知らぬ。
「私が……生まれ落ちたこの常闇の世が地の底だった……」
仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)は、確かめるように呟いた。
慣れ親しんだ冷たい闇は、その白い頬を撫でて、何も語らぬ。
何処までも果てなき世界に見えて、いずれ果てがあるというのか――アンナは軽く目を伏せた。
「さながら地下墓所か……ならばこそ……我々は外を目指すだけだ……」
静かに息を吐く。
宵闇のような瞳が、敵を見据える。淡く青く輝く、オブリビオン。その半身を赤く染めた葬華卿は、涼しい貌で、其処を譲らぬ。
「行くぞ……ワタシは処刑人だ……!」
ペストマスクを装着し、彼女はとんと地を蹴る。鉄塊の如き巨大な剣を手に、飛翔するように疾駆しながら、大剣を振りかぶる。
「邪魔をするな……狂える敵よ……!」
応じる敵も前のめりに飛びかかって来た。追いかけるように、柩から青き花弁が吹き付けてくる。
それらをアンナは剛剣が薙いだ。ふわり躍る花弁すら、真っ二つに両断し、突きつけられた鋏を力任せに弾き返す。
くるりと舞い上がったオブリビオンの動きを視線だけで追いつつ、足元に散らばった花弁と、それらが放つ甘い香りに、仮面の下で眉を顰めた。
麻痺の芳香には耐性があるが、絶対ではない。ましてやそれが敵の戦闘力を高めるものなら、放置しがたい。
「目障りな蒼い花だ……ならば……地獄の炎で燃し尽くそうぞ……!」
アンナの全身に――ぽつぽつと深き紺の炎が灯る。
「紺碧の炎よ!どこまでも燃え広がり、仇なす者を焼き尽くせ!」
蒼穹の色を纏った炎獄の執行人は、大きく剣を振るう。剣風さえも炎を纏って、地に這う花弁を焼いた。
敵は炎をも気に止めず、花弁の上を踏みしめ、アンナに迫る。男もまた、地を這うような耐性で飛ぶように距離を詰めてくる――最中に待ち受ける紺碧の炎に身を焼かれようとも、意に介さぬようだ。
アンナは大剣を片手に、迎え撃つ。距離を読んで最後の一歩を跳躍、上半身を捻りながら、双方ともに凄まじい速度で、衝突する。
「狂える敵め……闇に帰れ……ッ!!!」
彼女の全身から迸る炎は、触れるだけで融けそうな劫火。
舞い上がる花々を悉く蒸発させ、オブリビオンの肉を焼く。爛れた身体に追い打ちを掛ける斬撃が、相手の身体を斬り飛ばす。
高く上がった血飛沫すら、青々と染め上げるその炎は、何処までも広がっていく。
青空も知らぬ世界に、その色彩を知らしめるように――。
大成功
🔵🔵🔵
ファリス・ヴァルナー
形ばかりか
私に貴殿を語る理由も無ければ意義もないが
異端は狩るのみだ
貴殿の中のものごと、砕かせてもらう
明かりは淋漓を腰に。頼り切る気はない
殺気を辿り、音を辿る
足音、鋏の音
聞き逃す事無く背後に来れば尾を振るい
姿が捉えられればそれで良い
大剣を握り、己の血でキアランを呼び覚ます
喰らえよ、キアラン
異端を狩る時だ
開放した大剣で一気に踏み込む
巨大な得物を持つと間合い深くに来ると邪魔なものだが
貴殿はどうだ?
己の傷は構わん
開放した大剣であれば巨大鋏も受け止めよう
至近では拳も使い、少しでも体勢を崩させる
生憎、泥臭い戦いの方が得意だ
生命の根源、狙い来るのであれば
その瞬間を狙って大剣を振るう
骸の海へ還れ、仮初めの器よ
●異端狩り
血と、燻る炎の残り香を、湿った風が運んでくる。闇に沈む荒野の只中、柩と、燐光の花は存在を誇示し、そこに幽鬼のようなオブリビオンがいる。
「形ばかりか」
ファリス・ヴァルナー(拝領・f33575)は呟く。
葬華卿――の、殻を纏う、異端の神。その名も来歴も知らず。元の形も存在しない。
この世界から異端と見なされたもの。
「私に貴殿を語る理由も無ければ意義もないが……」
鋭き灰簾石の瞳を、更に細めて、男は息を吐いた。その呼気は、静かなれど、竜の唸りを思わせた。
「異端は狩るのみだ。貴殿の中のものごと、砕かせてもらう」
言って、踏み出す。暗闇に身を投じることを、臆すファリスではない。
周囲はとっぷりと暗く、月の輝きも星の瞬きもない真の闇で、五感を研ぎ澄ませ、挑む。
その腰で――茨の細工がされたアンティークのランプが揺れている。
だが、彼が頼るのは身を刺す殺気。
聴覚に集中すれば、敵が立てる布擦れの音。足運び、時に鋼が合う鋏の音――血の臭いもあった。
相手の動きは直線的だ。ファリスのランプを見定めたのか、迷い無く此方へと向かってくる。
ひょう、と風を斬る音がした。首を傾げるだけでファリスはそれを躱す。頬に冷たい一閃の気配と、すれ違う葬華卿の姿ははっきり見えた。
試すような一撃と共に、一足で背後の闇まで、異端者の姿は消えた。痛いほどの殺気が、その姿を隠しきれない――だが、ファリスは大剣を手にしたまま佇んで、次の攻撃を誘った。
一呼吸も待たず、背後から、敵は躍りかかってきた。
それを、黒き竜の尾で払い、強かその腰を打ち据えられたオブリビオンは横へと転がる。堪えた様子は無い。脚の力で即座に切り返し、飛びかかって来た。
固く結ばれていたファリスの口元が、小さく、低く、ささやきに動く。
「喰らえよ、キアラン――異端を狩る時だ」
その手元で、新たな血の匂いがした。
望むが儘に、異端を喰らってきた大剣は、ファリスの血を得たことで――形状はそのままに、妖しい輝きを帯びた。近づくだけで寸断されそうな、凶刃らしい犀利な輝き。
刹那、尾が大きく弧を描く。
鎧の重さなど微塵も感じさせぬ、素早さと。しかしその重量を存分に利用した転回でもって大剣を大きく振り薙いで、ファリスは好戦的な笑みを湛えて問う。
「巨大な得物を持つと間合い深くに来ると邪魔なものだが……貴殿はどうだ?」
敵の腹にその刀身を叩き込むような一閃。
骨も内臓も砕いて破壊するような重い一撃を――小さな鋏を噛ませて、オブリビオンは直撃を避けると、衝撃で吹き飛んでいく。
ファリスは腰を落として大剣を再度掲げた。
銀の一閃が遠間より走った。閉ざされた鋏の、重なる鋼の重みで加速したそれはほぼ殴打だ。何とも無骨な攻撃であろうか。
ファリスは大剣を振り下ろして、難なく叩き落とし、前へと跳ぶ。
鋏を叩きつけた反動で跳ね上がった刀身を、その頭蓋へと垂直に落とす。
「骸の海へ還れ、仮初めの器よ」
不穏な音と重なった静かなる声は、静謐な聖句のように――澄んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
私達の住んでいる世界が夜と闇に覆われているのは、
百年前の敗北と吸血鬼の支配が原因だと思っていた…
…でも、事はそう単純な話では無いみたいね
…今でもこの世界が地下にあるなんて信じられない
…だけど、私は確かめなければならない
この道の果てに、答えがあるのなら…
事前に麻痺毒を浄化するように「怪力の呪詛」に防具改造を行いつつ、
闇の精霊を自身に降霊して闇と同化する肉体改造を施しUCを発動
…生憎だけど、先を急いでいるの
お前相手に時間を掛ける気は無いわ
…我が身に宿れ、闇の理。天命乱せし罪人に死の裁きを
敵の攻撃を闇に紛れて回避しつつ敵の懐に転移して切り込み、
"告死の呪詛"を纏う大鎌を乱れ撃ち敵の寿命を切断する
●闇の先
湿った風に、血の香が乗って漂う。
遠くを見るように目を細め、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は貌を上げた。闇に向き合うために。
「私達の住んでいる世界が夜と闇に覆われているのは、百年前の敗北と吸血鬼の支配が原因だと思っていた……」
囁きは闇に融ける。眩い日差しの下であろうと、指先も定かでない闇の中であろうと、どうせ、形のないものは見えない。
「……でも、事はそう単純な話では無いみたいね……今でもこの世界が地下にあるなんて信じられない」
――しかし、この世界の真実の姿を知らなかったのは、また別の話だ。
心理的な衝撃は、如何ともしがたい。受け止めきれずにいる、ともいうか。
リーヴァルディは再び吐息を零した。
「……だけど、私は確かめなければならない。この道の果てに、答えがあるのなら……」
齎された情報が、真実なのかどうか。
見たから変わるというものでもないが。確かめずにはいられない。
心が急いた。
合わせ、リーヴァルディは羽より軽やかに地を蹴った。
視界の先には燐光、あわく咲く花々と、その残骸の作った道がある。
その中央で鋏を構える幽鬼のようなオブリビオンへ、凜然と言い放つ。
「……生憎だけど、先を急いでいるの。お前相手に時間を掛ける気は無いわ」
葬華卿は動かない。負傷のせいではあるまい。敵が――リーヴァルディの方から仕掛けてくる、と本能的に悟っているかのようだ。
時間を掛ける気はない、言い切ったように、彼女もまたそこに真っ直ぐと挑む。
「……我が身に宿れ、闇の理。天命乱せし罪人に死の裁きを」
闇の精霊の加護に、その身を闇と同一にし、その身体は誰ぞの視界からも消え失せる。
煌びやかな長い銀髪すら、闇に埋没し、されど躍動するリーヴァルディは、其処にいる。
彼女は闇から闇を転移し、時に欺くように態と姿を見せながら、敵を翻弄するように接近すると、黒き大鎌を大きく振りかざす。
その視界に、柩から放たれた青い花々が広がっていた。
彼女がいずれ自分に接近し、鎌を振り下ろすならば、そこに仕掛けておく――本能的に備えている戦い方なのやもしれぬ。
笑いもしない、ただ真剣な吐息を持って、告死の呪詛を載せ、斬り裂く。
弧を描く斬撃は、オブリビオンの袖口、肩口、脇腹、次々に裂いて、紅い飛沫を上げる。
如何に永き命の持ち主であっても、リーヴァルディの呪詛はそれを切断していく。
「……お前も、そろそろ眠る時間よ」
闇を打つは、冷ややかな声音――なれど。少し感傷的になっているような響きを、自ら聴き取って、彼女は軽く瞳を伏せた。
大成功
🔵🔵🔵
早乙女・翼
階層世界、ねぇ…
下が地獄だからと上が楽園とも限らないけど
多少マシだと良いさねぇ
さて、狂える貴卿は最早本来の貴方じゃあないんだろう
闇の貴族たる品位も知性も矜持も失われた貴卿にかける言葉も見付からないけど…
向けられる視線を引き付けるように背の羽を広げ、サーベルを投げつけUC発動
青き花々に対し紅き花で相殺するように
葬送の花については別に貴方の専売特許じゃないさよ
どうせなら見送る花は彩り豊かな方が良い
喚びだした魔剣を手に舞い上がり
一気に距離詰めて、渾身の力と祈りを籠めて上からぶった斬る
その持参してる柩の中にぶち込…んでやれるほど器用じゃないけども
まだまだ先は長そうさね
消耗し過ぎないように行かないとな…
●赤と青の葬送
「階層世界、ねぇ……」
早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)は独り言つ。
此所から見ても、天井らしきものは、当然ながら見えぬ。
「下が地獄だからと上が楽園とも限らないけど、多少マシだと良いさねぇ」
何せ地獄は階層重ね、この地が煉獄であれば、救いは天上にあろうか。
「……まー、導きの天使とか乙女とかが現れたとして、胡散臭いのが困ったもんさね」
猟兵生活かく辛き。
いずれにせよ新天地を求めるには、この宵闇の淵から抜け出さねばならぬ。そして、その障害となるのは、当然のようにオブリビオン――。
ヴァンパイアらしくもなく肩で息を吐きながら、爛爛とした眼光で此方を見ている、葬華卿。あちこちを赤く染めた壮絶な姿であるが、それ以上に何かしらが身体から抜け落ちているらしく、随分と苦しそうだ。
だが、殺気は。純然たる殺意は、健在のようだ。
その様子を一瞥し、翼は小さく息を吐く。
「さて、狂える貴卿は最早本来の貴方じゃあないんだろう――闇の貴族たる品位も知性も矜持も失われた貴卿にかける言葉も見付からないけど……」
闇に生きるものに憐憫を憶えるのも変な話さね、彼は困ったように笑うと――身を躍らせ、赤き翼を大きく広げた。
相手の視線を引きつけるべく、艶やかな赤を見せつけるように。
そして、胸の前で細身のサーベルを十字架の如く構える。
「死天使の羽根と彼岸花、死に逝く者に捧げよう」
厳かに告げ――剣を虚空に投じれば、その形状は解けるように消え、視界を埋め尽くす真紅の羽と曼珠沙華へと変じた。
闇にも映える、紅き花弁と羽が入り乱れる光景へ。
対峙するオブリビオンは、無造作に手を翳す。その全身が淡く輝いたかと思うと、青い花が吹き荒れる。
「葬送の花については別に貴方の専売特許じゃないさよ」
不敵に笑ったのは、翼。
赤と、青――それらが紡ぐ力の流れが風を興し、ぶつかり合う。大地に落ちる花弁の色は、どちらが多いか。
拮抗しようが、勝とうが負けようが、翼はどちらでも良かった。
幻想の花が寄せては弾け繚乱する様は、戦場であることを忘れるほどの絶佳。
「どうせなら見送る花は彩り豊かな方が良い」
嘯く声音は嘘ではない。この地に未練よろしく留まる異端の神への手向けである。その花々の向こう、彼は地を蹴り、大翼で強く羽搏く。
その手には長大な魔剣。花の上を一気に滑空しながら上段まで振り上げたそれを、一息に振り下ろす。
瞬間、眼差しは交錯した。
袈裟斬りに沈んだ刀身、自分の定めから目を逸らさず――肩から胸までを断たれたオブリビオンの形をした異端の神は、傷口から、砂塵と崩れていく。
静かに祈りの形を指で刻み、翼は虚空へと視線を投じた。
「まだまだ先は長そうさね――消耗し過ぎないように行かないとな……」
囁きは闇に吸い込まれ。
雷鳴の予兆が、彼方で響いた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『滅ぼされた村』
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POW : 村をくまなく歩いて調べる。
SPD : 殺され方、壊され方を調べる。
WIZ : 時間や場所に関連性や規則性がないかを調べる。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●二の試練
道行けば、風が強くなり、雨が混ざり出す。ほど近くから雷鳴が轟き、痛いほどの雨粒が肌を打つ。
視界も定かではないほどの豪雨とともに、猟兵の行く手を阻むのは、濁流であった。
――古来より、水に沈んだ都の物語は多い。
すべてを洗い流す洪水。神の怒りによって水没した国。
そんなものを想起させるような、村であった。
とはいえ、村であった輪郭は、うっすらと残る土台ばかり。
いつ遺棄された村かは不明だが、そこに誰かがいたかという気配すら、すべて雷雨に洗い流され、何も残っていない。
苦労して作ったであろう水路も決壊し、濁った水をざぁざぁと溢れさせていた。結果、地上に、水を回避するための足場は少ない。
何より、視界が悪い。
周囲に光源となるものは一切無く、闇に埋没した空間に、雨。
時に雷が光るものの、流れゆく水を視認するのは難しい。
そして、闇色の昏い水流は――常におどろおどろしい呪詛を噴き出し、奇妙な渦を巻く水流が脚を絡め取る。
この地に、安寧などない。
行くな。この先に道などない。
希望などない。
寂しい、辛い……苦しい……。
――お前も、此所で死ね。
天を仰げば、障害となるのは雷であろう。
されど――いずれも乗り越えねばならぬもの。
如何なる選択をしようとも、猟兵が目指す常闇の燎原は、この村の向こうにあるのだから。
ニール・ブランシャード
うぷっ!!ひどい雨…!何にも見えないし聞こえないよ…!
(水没したら二度と浮かないのでぷるぷる震えている)
「環境改変」を使ってみよう…本来は土を操作する能力だけど。
今は地形を把握するのに使って、濁流や足場の位置を感知しよう。
妙な渦も巻いてるし、足場を見つけてすぐに渡り切らないと…
…足が重い。水場から早く離れなきゃいけないのに。
怨嗟の声が足に触れた水を伝って体中に染み入ってくる。
大丈夫…大丈夫だよ。
安寧はある。
道もある。
希望は、ある。
この先に…『第三層』よりもずっと遠くにかもしれないけど…きっと…きっとあるから…
だからぼくは、死ねないんだ。
…さよなら。いつか絶対、あなたたちのお墓を作りに来るから。
●悼む者
「うぷっ!! ひどい雨……! 何にも見えないし聞こえないよ……!」
泣き言と共にニール・ブランシャードは甲冑を乱暴に洗う豪雨に喘いだ。
中でブラックタールの身体が、ぷるぷる震えていようとは誰が知ろうか。
水没したら、最後。もう浮かんでこれないという恐怖。
さてどうしようかと考え、これだ、と思いつく。
「ここはもうぼくの領域だよ。」
集中を高めて、周囲の無機物をタール状の泥へと変換する。
本来は、土を操作するために使う力だが、濁流によって見えぬ地形を、泥を操作して把握する。
「妙な渦も巻いてるし、足場を見つけてすぐに渡り切らないと……」
不安そうな声で、ニールは足場を探す。
探査の結果わかったのは、この村の水路は木を組んで作ったらしい。濁流の洗礼を浴びて形状を半分以上失っているが、それによって流れの甘い場所が出来ている。
水路は元々、降りしきる雨水の逃げ場にするために作られたのだと解る。
ニールは、自分が見つけた浅瀬を慎重に渡っていく。
ざぶざぶと水を蹴る。精神的な負荷に比べれば、このくらいの重みは、平気なはずだ。
(「……足が重い。水場から早く離れなきゃいけないのに」)
下から、呪詛が響く。
囁くような声なのに、鎧を打つ煩いほどの雨音に負けず、ニールに苦痛を訴える。
むしろ、水に触れている鉄靴――或いはグリーブに打ち寄せる水が、甲冑の内部に、怨嗟の声を響かせるのだ。
道はない。この世界に安寧などない。希望など、何処にもない……。
それは、先を目指すなというメッセージではなく――この地で安寧を得られなかったものたちの慚愧。
昏い感情を直に伝えられ、ニールはきゅっと目を瞑る。彼らは、苦しんでいるのだ。
寂しい、辛い。此所にいて――。
「大丈夫……大丈夫だよ。安寧はある。道もある――希望は、ある」
静かに、語りかける。宥めるような声音で、ざくざくと水を掻き分けながら。
甲冑の中、痛みに共感しすぎぬよう、強い意志を以て青き眼を開く。
「この先に……『第三層』よりもずっと遠くにかもしれないけど……きっと……きっとあるから……だからぼくは、死ねないんだ」
ざぶ、ざぶ。ざぁ、ざぁ。
一心不乱に歩き続ける――鋼を穿つ硬質な音は、何時しか、雨の音ばかりになり。声は遠く、消えていた。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
雨が酷くなってゆく…見慣れた光景だ…
村だった場所が眼前にある…見慣れた光景だ…
…この見慣れた光景の先に外の世界の手掛りがあるならば…
行くしかあるまい…!
【シュバルツァ・リッター】で亡霊馬を召喚し[騎乗]
[足場習熟と悪路走破]で道なき道を[ダッシュとジャンプ]で
駆け抜けよう
[暗視と視力]を用いて目を凝らし
亡霊馬から生ずる炎を頼りに闇の奥へと進んでゆこう…
地と水に覆い纏う呪詛には霊剣を抜き振るい
[破魔と浄化]の力で掻き消してやろう…
幾人の人がこの地で死んだのだろう…
此処で死んでしまえば…過去へと成り果てる…
死ぬ訳にはいかない…外の世界目指す為に…先に行かなければ…!
●まれびと
「雨が酷くなってゆく……見慣れた光景だ……」
旅人として数多の世界を見た。
仇死原・アンナの黒き瞳は、揺らがない。濡れそぼった外套の重みも気にせず、足を運ぶ。
侵入者を拒むような激しい雨脚。白い膚を強く撃つ雨粒は、まったくダメージにならぬが、まるで弾丸のようであった。
「雨が酷くなってゆく……見慣れた光景だ……」
呪詛のような環境悪化。絶えぬ災害のような場所に足を踏み入れるのも、珍しいことではない――そして、進んだ先に、滅んでしまった村が待つことも。
(「村だった場所が眼前にある……見慣れた光景だ……」)
アンナはそっと息を吐く。
「……この見慣れた光景の先に外の世界の手掛りがあるならば……行くしかあるまい……!」
かっと闇を睨み付ける双眸は、特別な感情を宿していない。
静かに闇を見通す眼差しはそのままに、コシュタバァ、とその名を呼ぶや。
全身から蒼白い炎を噴出する漆黒の亡霊馬が忽然と現れ――、その背にひらりと騎乗する。
蹄の音が重く高く響いた。
アンナはその背に沿うように、身を委ねると、亡霊馬は手綱に従い前へと馳せていた。跳躍する四肢が地に接するのは一瞬のことで、人馬一体、風が如く征く。
闇に閉ざされる視界は、亡霊馬から生ずる炎が、先を照らし。アンナもまた元より闇の奥を見抜くよう目を細めた。
――元より、敵対存在は感じられぬ。
それでも、此所は呪詛の中央。オブリビオンにも至らぬ存在の呪詛であれ、ダークセイヴァーという土地そのものの呪いともいえた。青白き炎に守られた彼女は、愛馬の様子を窺う。
姿もとれぬ水底の怨念は、二人を引き留めることすらできぬ。なれど、徐々にその速度が落ちるのは、打ち付ける雨の勢いが増したからだ。
嘆きが雨を呼び――長躯の亡霊馬の膝までの鉄砲水が一時的に襲いかかる。
激しい雷鳴が光を落とした刹那、アンナの横顔を照らしたのは、揺らめく炎のような波状の刃持つ霊剣。
彼女は押し寄せる水に向かい、退魔の銀閃を放つ。
同時に手綱を引いて、馬を繰る。とんと重力を無視して跳躍すると、浅瀬に降り立った。
「幾人の人がこの地で死んだのだろう……」
事実を確かめるように、馬上のアンナは囁いた。
「此処で死んでしまえば……過去へと成り果てる……」
猟兵たちを迎えるは、一面の闇。
宵闇とは異なる、異質なる黒。
風雨は弱まることを知らず、再びアンナと亡霊馬の脚を絡め、挫こうとしている。旅を断念させようと、吹きつけてくる。
それを、彼女は緩く頭を振って、拒絶した。
「死ぬ訳にはいかない……先に行かなければ……!」
外の世界を見るために。
大成功
🔵🔵🔵
揺歌語・なびき
風が吹く、雨が降る
ただ、いかなきゃいけない
巨狼に変化し道なき道をゆく
視覚よりも別の知覚を駆使して【第六感、野生の勘
比較的危険を避け、村の出口を探す
ぬかるみの深みにはまらぬよう
素早く四つ脚を蹴って跳ね駆ける
少ない瓦礫も使いこなす
雷の気配がすれば
素早くその場から飛び退き直撃を防ぐ
多少の痛みは気にしない【激痛耐性
障害物が邪魔をするなら
爪で叩き割ってでも前へ
…まだヒトのふりは出来てるんだろうか
人間なんてちっぽけだ
営みは簡単に壊れてしまう
潰えた希望を背負ってはやれないし
おれはやさしくはないから
一緒に抱えてもやれない
心を苛む言葉の渦を越える【呪詛耐性
希望もなんにもないなら
その向こう側を
見にいかせてくれ
●走狼
そっと息を吐く――揺歌語・なびきは風に乱された髪をそのままに、進路を見つめた。
濡れ鼠な自分を客観視して、子供のような気分になっても、それを楽しむような心持ちではあれなかった。
(「ただ、いかなきゃいけない」)
先を目指すと決めているのなら、そのために時間を使おう。
瞳を閉ざし、なびきは裡に向き合う。自己に催眠を施し、狼たる領域に落ちて、目覚める。
次に彼が目を開いた時。
その姿は、桜が咲き乱れる毛並み持ち、長く鋭利な爪と牙を備えた、灰緑の巨狼となっていた。
なびきは風の匂いを嗅ぐ。獣は夜目が利くといっても、月明かりもない真の闇では、碌に役目を果たすまい。
豊かな毛皮は雨粒を弾くものだが、この豪雨ではどうにもならない。
それでも、すべての感覚を動員し、水の流れ、マシな足場を探り――四肢で駆け出す。
ぬかるみに脚をとられぬよう、激しく打ち付ける濁流に片足を突っ込めば、この膂力でもっても苦労するだろう。
俊敏さを武器に、重量を感じさせぬ跳躍で、なびきはテンポ良く川のような道を越えていく。
低音で轟く天の様子にも注意を欠かさぬ。
高々と跳んだ身体の傍らに、耳を劈く轟音と、目も眩む光が走ろうと、彼は止まらなかった。
躊躇いなく宙を舞い、狼は別の足場を一撃蹴って、ぐずった泥を蹴り上げて前へと躍る。やがて突き当たったのは、柵であった。
獣避けのような雰囲気のそれは、奇跡的に存在する水を躱した安全圏にある。然り、そこから外敵でもやってきたのだろうか。
皮肉な巡り合わせに、人の時よりあきらかに鋭い瞳を細めて、狼は笑った。
今の今まで維持した人の営みの証を、容赦なく爪で叩き壊す。
「……まだヒトのふりは出来てるんだろうか」
不意に、囁く。言葉は人のものだ。
人が作った門。折角作ったそれは、何から彼らを守ったのだろう――守れなかったのだろう。
(「人間なんてちっぽけだ――営みは簡単に壊れてしまう」)
やむを得ぬとはいえ――それを破壊した彼の足元、怨嗟の声が水飛沫と共に騒がしい。
「潰えた希望を背負ってはやれないし、おれは……一緒に抱えてもやれない」
未練の声を、なびきは無視して疾駆を続ける。直に、この村は越えていけるだろう。
雨は、雷は。何処まで着いてくるだろうか。
そんなことを考えながら。
――その先に、希望なんてない。
一際、その声だけが狼の耳に強く響いた。ふっと、吐息のような笑みを――この姿で、零すことができただろうか。
「希望もなんにもないなら、その向こう側を、見にいかせてくれ」
仮に、何も無くても良い。旅路を祈ってくれとも言わぬ。
ただ、これ以上おれを阻まないで欲しい――傷つけさせないで、くれ。
爪は水辺を強く抉って、土塊を飛ばし、彼は進んだ。
大成功
🔵🔵🔵
早乙女・翼
この雨、ちと飛ぶには酷く向かないさねぇ…
撥水性の羽根じゃねぇし、広げてると水を吸うばかりだな
引っ込めておく方が身軽か
創世記の洪水もこんなだったのかな
余程のこの世界の異端の神々って連中はこの先を見られるのが嫌なのか
UC発動
手にするは鏡の如き刃有する刀
今、こいつで斬るは一つ
この雨風と闇と、足元渦巻く濁流と、全部纏めてぶった斬る!
主に祈りしモーゼが海を割って道を作ったのと同じ様に――
俺はこの闇を雨を割って、進む道を文字通り物理で切り開くさよ
主への祈りと信仰がある限り、俺なら出来ると信じて
割るのは僅かな間で良い
走り抜ける間だけでも
道も希望も己の中から見いだすものだ
呪詛を振り切りながら全力で駆けるさよ
●奇蹟
雨とは天の恵みであり、すべてを破壊する天の禍でもある。
「この雨、ちと飛ぶには酷く向かないさねぇ……」
道中で既にずぶ濡れになっている、早乙女・翼は嘆息した。
性質上、水を含んで重くなってしまう羽は、飛翔するしないに関わらず、お荷物だろう。ただの道行きならばそれでもいいが、廃村という奇妙な地形を挟んで、機動力を奪われては厄介だ。彼の背を彩る赤い翼が、一時的に消えた。
行く手には、ごうごうと流れ落ちていく濁流。
村の痕跡に従って流水はうねっているが、地面は、概ね水没していると言えた。
深い闇と泥水で覆われた世界は、どちらかというと原始的な印象だ。
「創世記の洪水もこんなだったのかな――……余程のこの世界の異端の神々って連中はこの先を見られるのが嫌なのか」
某かを逃れ、安寧を求めた人々を誅するものがあろうか。なれば、こうして侵入者を拒むは、この世界の理なのだろうか。
曾て一帯を支配していた異端の神か。オブリビオン達も何らかの影響を与えているのか――。
「まあ、今はあれこれ考えても解らないさね」
翼は石榴石の瞳を眇めて、ささめく。
口元に余裕を滲ませた微笑を浮かべたまま、唐突に手を掲げたかと思うと――翼は、祈った。雷鳴が轟いて、光が彼の姿を照らす。
「来たれ――敵討つ刃は我が心の内に。」
刹那、白刃が煌めいていた。先程までは存在しなかった光だ。
翼が握るは、鏡の如き刃を有する刀――これは本来、己が敵、と見定めたものを、断ち切る剣であるが。
はたして、闇を透明に透ける剣は、豪雨に濡れることなく、玲瓏とそこにあった。
「今、こいつで斬るは一つ――この雨風と闇と、足元渦巻く濁流と、全部纏めてぶった斬る!」
大上段に構えて、翼は叫ぶ。
「主に祈りしモーゼが海を割って道を作ったのと同じ様に――俺はこの闇を雨を割って、進む道を文字通り物理で切り開くさよ!」
できるか、という疑問は愚問だ。
(「主への祈りと信仰がある限り、俺なら出来る」)
――ダークセイヴァーの果てへ行く。
この世界の、新たな事実をのために、主よ力を貸したまえ。
再びの雷光に垣間見えた翼の表情は、自信に満ちていた。
同時、唐竹割りに、白刃は走る。
一息に振り下ろされた刃は――拡大した衝撃波となって、雨を、水を、雷すら、断つ。
飛沫が割れ、濁流が口を開けていた。
「道も希望も己の中から見いだすものだ――ってね」
成果に感心する間も惜しみ、素早く、翼はその中央へと跳び込んでいく。
真っ二つに断たれた道が永続するはずはないと解っている。今の間に、通過してしまわねば。
――オォオオォ……。
滝壺に吸い込まれる水音のようなものが、未練がましい怨嗟のように響いている。或いは、怨嗟なのやもしれぬ。
軽やかに段差を駆け登る背に――恨みがましい視線がねっとりと追いかけてくるようだ。足を止めず、翼は小さく悪いさね、と零す。
(「あんたらの未練、いつか晴れるといいんだが」)
少なくとも今、この呪詛に付き合ってはおられぬ、と。躍動する青年は鮮やかな朱を走らせて、闇の中へと駆け抜けていった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファリス・ヴァルナー
異端の神の痕跡がある地に
天の差配の如き雨がある、か……
腰の明かりはそのままに
大剣を抜き、流されぬように支えとする
水が腰まで届けば流石に危うかろうな
飲み込まれぬように慎重に進む
水を防ぐよりは、凌ぐように進むとするか
家の壁、柱、岩、一時凌げても壊れる可能性もあるだろう
警戒は緩めず
泥水に浸かろうが気にしないが……、これは呪詛の類いか
どれ程蝕まれようとも、怨嗟の声があろうとも構わん
私にはあるのは膝を屈せずにあることだけ
足を止めるなど……
今までこの手で屠ってきた者に何を言える
俺の終わりは他人に与えられるようなものでもない
ロザリオを握り、祈りを紡ぐ
友誼
大剣に触れ、零す血を捧ぎ対価と共に進もう
私は進むまでだ
●サクリファイス
穢れを洗い流すどころか、そのものが穢れと化した、禍の雷雨――。
「異端の神の痕跡がある地に、天の差配の如き雨がある、か……」
ファリス・ヴァルナーは低く囁いた。
腰で揺れるランプは仄かな光を放って、周囲を照らす。
それでも纏わり付くような、昏い――深い闇だ。
されど灰簾石の瞳は、その向こう側を睨み透かすように正面に据えられている。
大股に踏み出した足は、臆すことなく水を跨ぐ。それなりの体格をしている自覚はあるが――打ち寄せる水流は、ファリスの身体すら運んでいきそうだ。
抜いた大剣を、躊躇いなく、水流へと突き立てた。
今いる地点の水かさは、まだ膝丈ほどだ。
しかし剣を立てた辺りは、やや深い。大地が柔らかいことで、水路に落下するという心配はなさそうだが。
「水が腰まで届けば流石に危うかろうな」
独り言つ。
ランプが照らす範囲すら昏いのだ、警戒を緩める隙はない。
時間が掛かっても構わぬと、ファリスは見える限りの周囲の地形――そのものは、水に覆われているが、剣に触れ流れていく様子と見比べて、判断する。
家の痕跡は一段高く上がり、水嵩も浅いが、そのものが崩れているやもしれぬ。絶えず水に浸食された岩は抉れていた。
過酷な旅路には慣れている――泥に汚れようが、ずぶ濡れになろうが、気に止めず、ファリスは進む。
慎重に足を運んでいるものの、実際はそれなりに足早と進んでいた。
剣に掛かる負荷に、水流の強さを感じ取り、一歩退く。ずるり、と剣を呑み込もうとする水の軌跡は渦となり、男ともども逃すまいと絡みつく。
「……これは呪詛の類いか」
低く呟く。
――しね、シね、死ね、し……。
――おまえだけ、先にいくのは、ゆ、ユルさない……。
それはこの村に沈んだ怨嗟であるが、ファリスの記憶に、馴染みのある言葉にも似ていた。異端審問官を恨む眼差し。血とともに向けられる、強い殺気。
「私にはあるのは膝を屈せずにあることだけ――足を止めるなど……」
目を伏せ、残る言葉は裡で零す。
(「今までこの手で屠ってきた者に何を言える」)
彼を生かしてきたのは、多くの異端者の命。それが生まれついてのさだめといえど、道半ばで尽きるようでは――同胞にも、申し訳が立たぬ。
「――俺の終わりは他人に与えられるようなものでもない」
ロザリオを握る。死地を共にしてきた、それを、堅く握り、祈る。
掌が、血を滴らせる程、強く。零れ落ちる鮮血は、引き寄せていた大剣が啜り――。
束縛するような呪詛すら喰らう、魔剣と化す。
尾で水面を叩き、波紋を散らし、牙を剥かん勢いで、闇を睨んだ。
降り注ぐ豪雨を薙ぐよう剣が躍り、ファリスは感覚として軽くなった水を蹴る。
「私は進むまでだ」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『吸血猟姫ディアナ』
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POW : インビジブルハッピー
【銃口】を向けた対象に、【見えない弾丸】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : バレットパーティー
【血から無数の猟銃を生み弾丸】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : ドレスフォーハンティング
全身を【これまでに狩った獲物の血】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ナイ・ノイナイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●三の試練
雷雨は遠ざかり、闇の中を進めば、黒き炎が燃えている――。
闇で塗りつぶされた世界の中、『常闇の燎原』への到達は、膚で感じる熱だけで実感する。
そして強い殺気。
「よく来たねぇ――けど、此所でおしまいさ」
女が笑う声がする。闇の中、ふたつの赤い光が揺れる。
それが、この地を守るオブリビオンの姿であることは、すぐに知れる。
闇の中で見えないが、ヴァンパイアは黒き炎を纏い、堂々と立ち塞がっていた。
この黒い炎は――触れた時点で、あらゆる防護を黒い炎に変換し、吸収してしまう。
つまり、攻撃を受け止めれば、此方はそれらを奪われ、失う。
少なくともこの戦闘においては――魔力的、物理的……その他、ありとあらゆる守りの効果を期待してはならぬ。
相手の攻撃を如何に躱し、立ち回るか。
視界も悪く、周囲は燃えて――地の利は完全に敵にある。
――そして、単純に、黒の炎によって強化されたこのオブリビオンはかなり手強い。
「逃げてもいいとも。逃げられるもんならね」
吸血猟姫ディアナは真っ赤に光る双眸を鋭く細めて、笑った。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
この常闇の先に外の世界への手掛りがあるというのに…
今更戻る事が出来ようか…!
眼前の敵を討ち倒し闇の奥へと進む為に…!
行くぞ…我が名はアンナ!処刑人が娘也!
自身の肉体に地獄の炎を灯し[視力]を確保
地獄の炎で敵の黒い炎を照らしだし
[暗視]を用いて闇に紛れる敵を注視しよう
【絶望の福音】を発動
敵放つ弾丸の軌道を[見切り]つ回避
鉄塊剣と霊剣振るい[武器受けとなぎ払い]で
弾丸を切り払い防御しよう
二刀を振り払い
鉄塊剣での[重量攻撃]で叩きつけ猟銃を[武器落とし]
霊剣の[破魔と浄化]の力で切り捨ててやろう
そして[吸血]で武器生み出す血の力を封じてやろう…
逃げるものか…貴様を討ち…先へと進もうぞ…!
●処刑人の剣
燃える闇。赫眼のヴァンパイア――吸血猟姫ディアナを。
深淵に似た黒き瞳で真っ直ぐ捉え、仇死原・アンナは緩く頭を振った。
臆すなら、逃げても良いという挑発。そして、それが決して、放言と言い切れぬ気配を前にして、彼女は否を唱えた。
「この常闇の先に外の世界への手掛りがあるというのに……今更戻る事が出来ようか……!」
手を突き出せば、蒼穹が如き地獄の炎がぽつぽつと浮かび上がる。
「行くぞ……我が名はアンナ! 処刑人が娘也!」
名乗りを上げるや、平原を駆る。鉄塊剣と霊剣をそれぞれ片手に全力で走ろうとも、アンナの姿勢は崩れない。
迷い無く前へと躍り出たが、頼りとするのは己の炎と、己の視力だけ――うっすらと相手の輪郭は捉えていた。
ディアナは動かぬ。それは彼女の自信の表れでもあった。
待ち構えるよう佇んだ吸血鬼は、堅く拳を握った。すると、手袋を無視し、鮮血が溢れ出す――血は、自らふわりと宙に浮かぶや、無数の猟銃となった。
一斉に、銃声が次々と響く。闇の中、その発砲音だけは鮮明だった。
黒い炎を纏った銃弾は――正直にいえば、くっきりとは見えなかった。
されど、アンナは加速した。地を強く蹴り、黒髪を靡かせながら跳躍すれば、足元を掠める弾丸、素早く二刀を閃かせれば、ジュィン、という旋回する鋼を鋼で撥ね除けた音がした。
十秒先の未来を予想し、攻撃を仕掛ける事で、身を守る――なるほど、守りの力を持っているわけではないアンナの武器が奪われることはなかった。
「はっは! まだまだ!」
楽しそうにディアナは笑って、次弾を放つ。
「同じ……事だ……!」
身体を翻しながら、アンナは縦と横、斬り上げ、弾く。捌ききれぬ弾丸が、己を掠めていこうとも、アンナは見る間に敵との距離を詰めた。
振り上げた大剣が、血の猟銃を叩き落とし、剣で即座に両断する。
ただの血潮となった残骸は、剣に吸われ消えゆく――黒い炎に包まれた、ディアナの顔は、アンナの炎に照らされて、くっきりと見えていた。
じっとその目を見つめて、処刑人は告げる。
「逃げるものか……貴様を討ち……先へと進もうぞ……!」
刹那、閃く剣影。幾度と処刑を成し遂げた強靱な刃は、黒い炎を斬り分け、その肉を十字と裂いたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ニール・ブランシャード
そんなこといって、逃げる獲物の背中を撃ちたいだけでしょう。
残念だけど、ぼくは君の獲物にはならないよ。
…とはいえ相手は銃使い、武器受けも無理…うぅ…ぼくと相性最悪だよ
でも、銃の攻撃は直線的だ。
彼女がいつ、どこから仕掛けるか分かりさえすれば…
「曖昧な境界・逆流」で、彼女の思考をもとに攻撃位置やタイミングを把握。
武器を振り抜いた【衝撃波】で銃弾を叩き切り、光る瞳を目指して距離を詰める。
…接近するにつれ銃弾への対処は間に合わなくなるかも。
その時は…前腕当で受けて、延焼する前に「中身ごと」燃えた部位を切り離すよ!
ぼくは、君を斃してこの先へ行く。
「夜明け」のための旅は、まだ始まったばかりなんだから!
●前進する勇気
「元気な獲物だねぇ、楽しいよ」
刀創を抑え込んで、出血を留め――吸血猟姫ディアナは笑った。声は強がりでは無く、本気らしい。ぎらつく眼差しに、悔しさのようなものは微塵もなかった。
「さ、そっちの重そうな奴はどうする? 震えているようだが、逃げるかい?」
敵の問い掛けに、ニール・ブランシャードはどきっとした。
まさか、本当に自分が震えていたのではないか、という驚きだが、挑発の類いだということに気づき、
「そんなこといって、逃げる獲物の背中を撃ちたいだけでしょう」
さらっと返す。淀みなく滑らかに、発声できている。己が知らず、戦慄していたってことはない、と安堵しながら、重ねて返す。
「残念だけど、ぼくは君の獲物にはならないよ」
――などと強気に言い放ってみたものの。
ニールは甲冑の奥で密かに、ううーんと苦悩の声を上げた。
(「……とはいえ相手は銃使い、武器受けも無理……うぅ……ぼくと相性最悪だよ」)
果たしてニールに見えているか。
ディアナの傷口から浮き上がった血潮から、血の猟銃が空に浮かび、その銃口が彼を捉えていたことを。
「来ないなら、こちらから行くぞ?」
吸血鬼の唇が弧を描く。
ニールは思考しながら、前へと走る。
「でも、銃の攻撃は直線的だ。――彼女がいつ、どこから仕掛けるか分かりさえすれば……」
「行くぞ!」
彼の独白を、ディアナは聴いたかどうか。ニールは自分の感覚を拡大させ――彼女の感覚に接続する。
「ほんのちょっとだけ、「君」をもらうよ。」
自分の境界が曖昧にして、敵の感覚を混ぜ込む。
狂気に似た殺気。獲物を狩る、という本能。そういったものが、ニールにも解る。撃つ、という瞬間さえ解れば、ディアナのぎらつく瞳を追って、判断できる。
長柄斧を大きく振りかぶり、駆け出す。
甲冑の、鋼が擦り合う音が、闇に響く。
銃声が轟く。闇を切り裂く乾いた音は、鋼を掠めるような唸り声と共に去って行く。
次、次――、火炎の臭い、破裂音がニールに届くより早く、彼はその大体の軌道を認知し、直前に進路を曲げる。
結果、ディアナに迫るためにうろうろと迂回せねばならなくなるが、忍耐強くニールは挑んだ。
(「けど、このままじゃだめだ――」)
ディアナはニールが銃弾を躱す事を、どうとも思っていない。その分、更に撃てばいいだけだと思っている。
疲れ弱ったところを仕留めれば良い、と――そんな思念も¥が伝わってくる。
尽きぬ弾に対応するには、跳び込むための勇気を奮い立たせねばならぬ。
ニールはぐっと足元に力を入れる。銃弾を回避した瞬間、前へと跳ぶ。次の弾丸は、腕を翳して受けた。
前腕は黒い炎に包まれ、粒子と解ける――それが全身に至る前に、ニールは鎧の中身ごと、左腕を切り捨てた。
赤い光は、ほど近く。籠手の吸い込まれていく方角は、すぐそこだ。
好機を疑わず、ニールは片腕で、高く掲げた長柄斧を振り下ろす。
垂直に落ちた刃は、吸血鬼の肩に、深々と埋まった。血の臭いを間近に、ニールは言い放つ。
「ぼくは、君を斃してこの先へ行く。『夜明け』のための旅は、まだ始まったばかりなんだから!」
大成功
🔵🔵🔵
ファリス・ヴァルナー
成る程、君がよく来たというのであれば、これは歓待か?
笑い告げてキアランを抜く
己が魂を主として、我らは異端を狩るのみ
黒き炎とて——構わん
訓戒にて竜の翼を解放する
異端狩りに聖句は無く——ただ、職責を全うせよ
翼は重くとも、意味はある
速度を上げ、奴の間合いへ向かう
愚直に進んだところで奴もただ待つばかりでもあるまい
グルガンナイフを先に放ち、奴の動きを誘う
穿つ一瞬が得られれば良い
黒炎であれば翼で横に回り、銃弾であれば上を取り
速度を利用し、一気に穿つ
終焉だ、猟姫よ
一撃穿てば距離を取り直し、警戒を
銃弾は見えずとも銃口は見える
翼を使い、速度と共に射線を避ける
傷など構わんが、生憎、私の臓腑は貴殿の獲物には向かんよ
●狩猟者と竜
常闇の中。存在を隠さず堂と立つ吸血猟姫ディアナへ、
「成る程、君がよく来たというのであれば、これは歓待か?」
ファリス・ヴァルナーは牙を覗かせ笑い、問うた。徐に大剣を抜くや、構え――その鋒を、女に向ける。
「のこのこと、やってくる獲物を狩るのが、あたしの役割でね」
猟銃を担ぐディアナは、そういって笑う。
表情の詳細は、ファリスには見えぬが、想像は易い。そういった輩と――幾重も対峙してきたゆえに。そして、自分もまた、他者のことをとやかく言える表情ではない、と。
獰猛さを隠さず、されど表情だけは改めて――ファリスは瞠目した。
「己が魂を主として、我らは異端を狩るのみ」
瞼の裏、闇の中に浮かび上がる熱を感じる。闇の中に同一となる炎、その輪郭は掴みようも無いが、ファリスの戦い方が変わろうか。
否。
「——血に飢えた獣では無く、聖典と共に異端を狩る」
異端狩りに聖句は無く――ただ、職責を全うせよ。
灰簾石の瞳を開き、鋭く敵を睨めつけ。
厳かに言葉を空に放てば、その背で開くは黒き竜の翼。屈強で強靱、しかし重いそれは、鎧を纏う長躯の戦士を、軽々と飛翔させる。
「ドラゴンか、いい獲物だ」
ディアナは舌なめずりをした。仮に瀕死まで追い込まれようと、彼女は狩人として、好戦的、威圧的な態度を改めることは無いのだろう。
望むところだ、とファリスは裡で笑う。
風を叩きつける勢いでディアナに接近した彼は、グルカナイフを放つ。独特の湾曲を描く重いナイフを、女は舌打ちとともに腕で払った。
鮮血が噴き出た。その上を、黒い炎が這って、創を覆っていく。
即座に地に寝転んで、猟銃を構える――成る程、飛ぶ獲物を仕留めるのも、経験があるらしい。
大剣を手に、ファリスは羽ばたきひとつ旋回すると、急激に滑空した。ほぼ真下に全速力で突き抜けるような、急降下だった。
「来い!」
「終焉だ、猟姫よ」
衝突までは、一瞬。
両者が吼えると同時、目には見えぬ交錯が走る。
猟銃が轟く。放たれたはずの弾丸は、不可視であった――然し、元より見えぬと知っている弾丸を、彼は見極めるつもりはなかった。
熱が、肩口を走って、鮮血が珠と散る。それを抜け目なく啜り上げたファリスの相棒は――その鋭さを増す。灼熱を感じたのは一瞬、ファリスが構えを緩めることはなかった。
銃口のみを見定めたファリスは軽く姿勢を傾ぐことでそれを回避し、風の抵抗など知らぬよう、剣を下から振り上げる。
地に寝そべるディアナに回避の余地は、無かった。
ざんと走った剣閃は、大きな赤い弧を描いた。腹から肩へ、斜めに裂いて、その地を空へと舞い上げる。ファリスの重量、加速を載せた衝撃だけで、生物であれば潰れてしまうだろう。事実、大地は女を中心に深く亀裂を刻んで、沈んでいた。
だがオブリビオンであるからと、痛みを持たぬわけではなかろう。
黒き炎に包まれた貌が苦痛と憎悪に歪んだことを、認識しながら――ファリスはいっそ穏やかな印象を与えるような笑みで、囁いた。
「生憎、私の臓腑は貴殿の獲物には向かんよ」
大成功
🔵🔵🔵
揺歌語・なびき
要するに防御は捨てるしかないんだろ
そういうのは慣れっこだ
弾丸を己の勘で避【第六感、野生の勘
猟銃の数を視覚で数えるより
聴覚と別の近くで気付くほうが速い
とはいえ、それも全部は無理だ
この熱ですら膚を焼くんだから
耐えるしかない【激痛耐性
おしまいなんて、勝手に決められても困るんだよね
こんなとこで死ぬつもりないんだ
弾丸の雨を駆け抜け飛びかかる
棘鞭で片腕を穿ち絡め取り【スナイパー、串刺し
狂った瞳を間近に
これだけ近けりゃ当たるさ
春華に体を明け渡し、喰い尽くす【鎧無視攻撃、呪詛
ああくそ、熱いなぁ
花も灼けそうだけど
こいつがおれを
死なせる訳ないんだ
最近新しいのが混じったから
そいつも歓んでいるようで
少し、吐き気がした
●華の怪
長い吐息が、闇に沈んでいく。立ち塞がる吸血猟姫ディアナの存在は闇に隠れているが、その所在は赤い瞳と、殺気――そして濃密な血の臭いが示している。
彼女が纏い、その力を高めているのは、黒い炎。この燎原に巡る呪いのような、不可解な力。
守りの力を奪う炎に触れてはならぬ。
なんだ、揺歌語・なびきは茫洋と呟き、双眸を細めた。いつもの笑みに似た表情で、なんでもないように呟く。
「要するに防御は捨てるしかないんだろ。そういうのは慣れっこだ」
獣のように低く構えて、地を蹴る。
闇に身を投げることへの恐怖はない――撃つなら撃て、とも思う。
今は人であるなびきだが、嗅覚と知覚を総動員する。風が髪を撫でたり、熱が揺れる気配。
そして、向かってくる、熱そのもの。
手がかりは沢山あるが、ひとくくりにしてしまえば、第六感。こっちに避けろ、と己が思ったから、そう動く。
横に跳べば、緑髪の一房を、熱が掠めゆく。
足を止めず回り込むように駆った。銃砲と同時に熱の螺旋が、彼の影をなぞるように抜けていく。
寸での回避であれば、黒炎が膚を撫でていく。
それに痛みが無いと言えば、嘘になる。
「さて、何処まで逃げ回れるかねぇ」
ディアナは口の端を吊り上げる。血の猟銃はまだまだある。彼女自身は深く負傷しているが、黒い炎が何かを喰らい、取り込めば生命力は蘇る。
然れど飄々としているのは、躍動するなびきを仕留める、という狩猟者としての享楽に浸っているからだろう。
高く空気を撃つ音がして、なびきは脚に灼熱を感じたが、表情ひとつ変えず、最後の距離を詰める。
「そろそろ諦めて死ぬ覚悟はできたかい?」
「おしまいなんて、勝手に決められても困るんだよね――こんなとこで死ぬつもりないんだ」
そうっと息を吐く。帰りを待つ子もいるし。まだ故郷の果てを見ていない。
痛みを振り切るように、真っ直ぐ踏み込む。
炎に炙られた影響か、内側で蠢く花の香りが騒ぎ出す。
宥める必要もない――いいよ、と裡で笑った。喩え、精緻な制御が叶わなくとも。ディアナの白い膚、爛爛と輝く赤い瞳は、すぐ目の前だ。
「これだけ近けりゃ当たるさ」
自嘲気味に言い放つや、彼の身体は一瞬、力を失ったようにかくんと不可解な動きを、した。
刹那、その面差しが、変わる。
桜色の瞳が不思議な光を湛え、なびきの爪がぎくりと強ばり――無造作に掻き薙ぐ。ディアナの腕を、肩を、掴むや。薙いで、裂く。
代償はある――その身体は黒い炎に包まれている。触れるだけで、なびきの身体も焼くのだ。
(「ああくそ、熱いなぁ」)
愚痴るも、なびきには、儘ならぬ。
内側に住まわせた、UDC――今なびきの肉体を使って敵を攻撃しているのは、それだ。
勝手に獣のように指で獲物を引き裂く。春華の気の済むまで、止まりはしない。
(「花も灼けそうだけど……こいつがおれを、死なせる訳ないんだ」)
頬に触れた血も、膚を焼くように熱かった。
ほどほど馴染みの花の怪異が嬉々と奮うは慣れたものだが。そこに潜む、何か別の感覚に気付き、なびきは小さな不快感を覚えた。
(「あれも、歓んでいるのか……?」)
最近混じったそれの感情――吐き気を覚えたが、今は、そんな自由さえ、ない。
ぐっとオブリビオンの傷口に指をねじ込み――腕を振り上げ、冷たく微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵
早乙女・翼
闇の中に黒い炎、か
手首に巻いた包帯を手早く解けば、闇を照らす紅蓮の炎が零れ落ちる
この炎は未来を照らすべく主が授けてくれたもの
お終い? いや、始まりさよ
新たな道に進む為の、な
UC発動
相手に向けて駆けだしながら、両腕より螺旋描く様に鎖を繰り出す
銃の軌道なんて大体真っ直ぐだ
向こうの位置さえ解れば、自分との直線上に弾は来る
捕らえてやる…喩え見えなくとも
鎖が弾を受けたのは感触で解る
それさえ解れば充分
鎖は黒き炎に飲まれる前に解除
同時に引っ込めてた背中の羽を大きく広げ、一気に跳躍
覚えている向こうの位置目掛け、思い切り魔剣を振り下ろそう
…黒い格好で来たのは幸運だったかねぇ
此方も少しは闇に紛れる事が出来るから
●紅蓮と、闇
「闇の中に黒い炎、か」
呟き、早乙女・翼は手首の包帯を手早く解く――とろりと溢れたのは、闇をも照らす紅蓮の炎。それは次の瞬間、彼の姿を鮮やかに照らした。
「この炎は未来を照らすべく主が授けてくれたもの――お終い? いや、始まりさよ。新たな道に進む為の、な」
吸血猟姫ディアナへ、不敵に笑んだ翼は、その両腕に絡む炎を更に解き放つ。
翼の赤髪が灯火のように照らされ――それに縁取られた貌、柘榴紅の双眸を、軽く伏せた。
「主よ、罪深き者に裁きと戒めの業火を」
声に呼応し、翼の傷痕から――炎に紛れ、鎖が躍る。
鎖は紅蓮の炎を纏い、長い鎖に従って尾のように広がる――確かめるよう、翼は両腕を振るい、それを撓らせる。
火の粉がばっと舞って、消えていく。
刹那の周囲の光景を、記憶に叩き込むと、翼は低く脚を溜めて、前へと奔った。
同時、薙ぐように腕を払って、螺旋を描くように鎖を繰り出した。
――猟銃を構えたディアナの姿は、正直見えぬ。銃を構えているかどうかすら翼には解らぬ。だが、大体の方角は、瞳の輝きと、声から判断できた。
そしてこのオブリビオンが、迫り来る敵を黙って迎えることはあるまい。
(「銃の軌道なんて大体真っ直ぐだ――捕らえてやる……喩え見えなくとも」)
そもそも、どうせ闇の中で弾丸を見極めるのは厳しいだろう。
炎の螺旋を、何かが叩く。否、弾き返されるような衝撃に、翼は笑みを深くする。
鎖が弾丸とぶつかった――途端、鮮やかな炎は黒色に塗りつぶされていく。させじと、翼は躊躇なく、生成した鎖を消す。
彼の疵から溢れる炎は相変わらずだが、光差さぬ常闇に、皓皓と燃えていた紅蓮が消えた事で――ディアナが眉を寄せる。
その怪訝そうな表情こそ、翼とて知らぬが。
「……黒い格好で来たのは幸運だったかねぇ」
嘯き、翼は、強く地を踏み切った。
軽やかな宙返りが、常人とは思えぬ高度に浮き上がったのは、その背に広がった緋色の羽による。
滑らかな飛翔から、身体を転回させるまでの間に、翼の手には、長大な魔剣が収まっていた。
両手で高く掲げた姿勢から、羽撃き加速し――ディアナの頭上へ、全力で振り下ろす。
剣閃は月弧を描く。
ディアナの身体を斜めに割るように――。
翼がぎょっとしたのは、こちらに銃口が向けられており――それが、彼の眉間を正確に狙っていたことだろうか。
「ちくしょう……」
だが、引き鉄を引く力は残っていなかったらしい。口から大量の血液を吐き出してディアナは呻くや、翼の炎に包まれ塵と化した。
地に降りた翼は、慣れた手つきで十字を切った。
「吸血鬼に神に祈れ、なんて皮肉だろうし、祈ってやるのも皮肉さね――でもまあ……汝の魂よ、安らかに」
どうせ、いずれまた骸の海より戻ってくるだろうが、束の間の休息を祈ってしまうのは――性というやつだろう。
「ひとり斃して、謎が解けるわけでもなし……」
目を伏せて囁く。周囲では、馴染み深い炎が爆ぜる音。
「でも必ず、辿り着いてみせるさね」
言い残し、翼は踵を返した。
その背で燃える黒い炎は、この地を守るか呪うのか。
常闇の燎原は探索者の干渉を拒むかのように、燃え続けていた――。
大成功
🔵🔵🔵