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煌輝、蜜蜜と

#アルダワ魔法学園 #戦後 #お買い物 #ゆるふわイベント系シナリオ #プレイング受付終了

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#アルダワ魔法学園
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#お買い物
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●それはきらきらと
 うす暗い店内を、鉱石細工のランプが優しく灯し出す。
 そのなかで、からころ、からころと小さな音が踊っていた。
 ルベライトの赤。ベニトアイトの青。アイドグレースの緑。を、面白そうに転がしていく小さな姿。
 そうしているうちに、飽きてしまったかテーブルの隅やソファの上でうとうとと眠りだしてしまう。
 そんな無邪気な姿を、困ったねえ、とさほど困っていないような口ぶりで見守る人々。
 ほのかなあかりに、宵色の蜜がトロリと透けて。

●その手の輝きを
「ねえ、キミたち。綺麗な石は好きかしら?」
 宝石細工の瞳を柔らかく細め、エリューシア・カトレイン(セイレーンの冒険商人・f27125)は猟兵たちへと問うた。
「綺麗な石?」
「アルダワ魔法学園のとある地方にね、とっても綺麗な石を使って、いろいろなことをする街があるんですって」
 その街では、さまざまな鉱石を材料にした装飾品やマニキュアなどのアイテムを作ることができるという。
 鉱石細工は街にとって主要な産業であり、観光客のクラフト体験としても好評なのだそうだ。
 魔法学園との技術交流なども行われており、細工技術の研鑽のために学園の生徒となる者、また同様に学園を卒業し街で店を開く者もいる。
「それで、秋の収穫祭に合わせて腕や指先を彩るお祭りをやるそうなの。細工師たちの腕試しもかねて、ね。リングやブレスレットのような装飾品から、鉱石を砕いて散らしたマニキュアなんてものまであるそうよ」
 そういってさりげなく胸元に添えたエリューシアの手元には、繊細なレースが編み込まれ彼の瞳の色に似た宝石があしらわれたフィンガーレスグローブを着けていた。これもその街で作られたものだという。
「ええ、『手』はとても重要ですもの」
 ある時は掴み取り、ある時は創り出し、ある時は包み込み。
 手とは、かくも尊いものである。
「お買い物以外にも、とっても素敵なお菓子もあるそうなの。琥珀糖って知っているかしら?  お砂糖を煮詰めて作る、宝石みたいにキラキラしたお菓子でね。本物の宝石みたいに宝石箱に入れて売っているそうよ。お菓子を食べたあとは小物入れとして使えるから、素敵な思い出にもなりそうだわ」
 うふふっと笑ったエリューシアは、しかし少しだけ険しい表情になった。
「だけれどね。その琥珀糖をお茶と一緒に食べられるカフェで困ったことになってしまうの。オブリビオン……アルダワ魔法学園では災魔、と呼ぶそうね? それがたくさん集まってしまうのよ。きっと、その子たちも美味しいお菓子が食べたいのね」
 たぶんね、と言い添えて、こくりと頷いた。
 どんなやつかと訊くと、まずは行ってみてほしいと返される。よく分からないが、彼の口ぶりからすると、凶暴だったり甚大な被害を与えようとしたりするものではなさそうだ。
「素敵な出会いがありますように。それでは、よい冒険を」
 煙に巻かれたような表情の猟兵たちへいたずらっぽく笑うと、グリモア猟兵は猟兵たちを送り出した。


鈴木リョウジ
 こんにちは、鈴木です。
 今回お届けするのは、鉱石とカフェ。

 第1章【日常】収穫祭に合わせて行われるお祭りを楽しみます。
 第2章【集団戦】カフェに現れた災魔をなんとかします。がっつり戦闘して討伐というよりはカフェを楽しみつつといった感じになるかと思いますが、最低でもプレイングの最後に一言倒す行動を添えてください。

●お願い
 鉱石の種類や装飾品、カフェのメニューは『あると言えばある』ので、お気軽にご注文ください。
 マニキュア→ネイルチップのように、極端に逸脱していなければ、多少分類からはずれていても問題ありません。
 一緒に行動される方がいる場合【○○(ID)と一緒】と分かるようにお願いします。お名前は呼び方で構いません。
 グループでの場合はグループ名をお願いします。
 複数名で行動される場合、リプレイ執筆のタイミングがずれてしまうのを避けるために、プレイングの送信タイミングを可能な限り同日中に揃えてください。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『爪先彩る』

POW   :    ブレスレットを作る

SPD   :    リングを作る

WIZ   :    マニキュアを作る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その街は、鉱石や金属の細工があちこちできらきらと輝き、まるで街全体が煌めいているよう。
 ではない。
 一見すると、ごくごく普通の街並みだ。ちょっとばっかりお祭りの飾りはあるけれど、それでもきらびやか、というほどのことはない。
 並ぶ店や屋台も、そう特別な様子はなさそうだけども?
「……あ」
 ふと気付いて声をこぼす。
 さりげなく。本当にさりげなく、小さな鉱石細工のプレートが店先に掲げられている。
 よく見れば、その店ではどういった種類の鉱石を扱っているだとか、どんな種類の装飾品を作れるだとか、そんなことが記されていた。
 不思議そうに眺めていたら、通りかかった人が教えてくれる。
 大切なものを創る大切なお手伝いだから、おおっぴらにはしていないのだと。
 なるほどと納得して別れると、その店の扉を開いた。
瑞月・苺々子
マニキュア……爪のお化粧に使うものの事ね!
作ってみたいな!けれど、ももが使うのはまだ早いかしら?
そうだわ!飛び切り綺麗なものを作って、ママへのお土産にするの。

ママも、ももも、お星さまの輝く夜空が大好き。
だから星空みたいなマニキュアを作るの!
青い色のマニキュアに、お星さまの代わりになるような、白くてキラキラした石を入れたいな。

うーん、上手く出来たかしら?
もも、少し不器用だから心配だわ……。
でもきっと喜んでくれるよね!

いつママに会えるかわからないけれど。大事に大事に持って帰って、渡してあげるんだ。
お仕事で忙しいママだけど、指先だけでもオシャレしてね。
いつまでも綺麗なママでいてもらいたいな。



「マニキュア……爪のお化粧に使うものの事ね!」
 キラキラした小瓶の列に、瑞月・苺々子(苺の花詞・f29455)の心が躍る。
 サンプルとして置かれているらしい小瓶たちは、桜色に赤い花の春、碧から翠のグラデーションに貝殻の海、ミルク色からピンクを挟んで紫色にグラデーションする夕焼け空。
 ディスプレイされている手だけのマネキンの爪先には、白と薄い青の2色で塗られ、雪の結晶の形をした透き通る石が添えられていた。
「作ってみたいな! けれど、ももが使うのはまだ早いかしら?」
 同じくらいキラキラと目を輝かせ、小さな手の先にある爪をじっと見つめると、ぱちりと打ち合わせた。
「そうだわ! 飛び切り綺麗なものを作って、ママへのお土産にするの」
 それに、ママにお願いしたら、きっとお揃いの爪にしてもらえるものね。
 どうしますかとお店の人に訊かれて、そうねと悩む。
 どんなマニキュアを作ろうかしら? ううん、イメージはできているわ。
 ママも、ももも、お星さまの輝く夜空が大好き。
「だから星空みたいなマニキュアを作るの!」
 元気よく答えたら、それじゃあと出してもらった箱のなかにあったのは、ベースになるたくさんのマニキュアの小瓶。
 じっくりと眺めて選ぶと、次はなかに入れるものを選んでくださいなといろいろなケースが入った箱と、調合用の細くて先が小さなスプーンを出してくれた。ケースのなかには何種類ものラメパウダーやホログラムが入っている。
 青い色のマニキュアに、お星さまの代わりになるような、白くてキラキラした石を入れたいな。
 そのままお星さまの形をしたのもあったけれど、なんだかちょっと違う気がする。
 真白で光の加減にキラキラする石を選ぶと、これはスノーホワイトオパールの欠片だと教えてくれた。
 これくらいかな、もう少し? 入れすぎちゃったかしら? 悩みながらマニキュアのなかにちょっとずつ入れていく。
「うーん、上手く出来たかしら?」
 もも、少し不器用だから心配だわ……。
 くぅるりスプーンでかきまぜてみれば、夜空色のなかをキラキラと星がめぐっていく。
 これでいい、かしら?
 ちょっぴり不安になるけれど。
「でもきっと喜んでくれるよね!」
 だって、ママを想って作ったんだもの。
 お店の人からラッピングしますかと訊かれて、こっくりと頷いた。
「いつママに会えるかわからないけれど。大事に大事に持って帰って、渡してあげるんだ」
 嬉しそうに答えたら、お店の人はそれじゃあ大切に包みますねと一度預かり、パールカラーのクッションを入れた小箱のなかにマニキュアの瓶を収めて、苺々子の髪と同じ月白色のリボンでラッピングしてくれる。
 小さなお花の飾りをつけて、はい、どうぞ。差し出された小箱を両手で受け取って、もう一度想いを込めるように胸に当てた。
 いつかこれを、ももの手でママに渡すの。
 お仕事で忙しいママだけど、指先だけでもオシャレしてね。
 いつまでも綺麗なママでいてもらいたいな。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜鳥・藍
W
綺麗な石も鉱石細工も好きだけど、何を探せばいいかしら。
ブレスレットも、もうつけられなくなったけどベビーリングも持ってるし……。それに指輪は今身に着けず、来ないかもしれなけどそれでもいつかの時に取っておきたいし。
ああでもやっぱりきらきらするものはいいものだわ。
原石だけでは輝けない、誰かが磨くだけでも光は出ない。両方揃って人を惹きつける魅力を出すと思うから。

思案しながら眺めていたら目についたのはマニキュアのお店。
仕事でも使わないだろうしお出かけに使うのも恥ずかしい。けど休日のリラックスした日に気分転換に爪先を彩るのは良いかも。
ラメがきらめく宙色のも素敵だし夜明け空もいいわ。どうしよう決まらない。



 雑踏のなか、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は視線をさまよわせながらゆっくりと歩いていく。
 彼女の視線の先には、あるお店にはプラチナのつる草の上でベリルが朝露のようにさらさらときらめくバングル。また別のお店では星空めいた大ぶりのソーダライトに様々なストーンを添えたリング。
 いろいろな装飾品の他に、加工する前の鉱石を並べているお店もあって、見ているだけでも心が弾む。
「綺麗な石も鉱石細工も好きだけど、何を探せばいいかしら」
 ブレスレットも、もうつけられなくなったけどベビーリングも持ってるし……。それに指輪は今身に着けず、来ないかもしれないけどそれでもいつかの時に取っておきたいし。
 ……いつか。
 いつかっていつかしら。考えたのは、永遠に来ない諦めではなく、かすかに甘い期待を含んで。
 今は何も着けていない指先に手を重ねて、ちらり視界の端に捉えた輝きへと顔を向ければ、石たちが日差しで傷まないよう陰を作るために軽く覆いをしようとしているのが見えた。
(「ああでもやっぱりきらきらするものはいいものだわ」)
 原石だけでは輝けない、誰かが磨くだけでも光は出ない。両方揃って人を惹きつける魅力を出すと思うから。
 それに、どれほど輝いていてもその輝きに気づけない。
 思案しながら眺めていたら目についたのはマニキュアのお店。
 仕事でも使わないだろうしお出かけに使うのも恥ずかしい。けど休日のリラックスした日に気分転換に爪先を彩るのは良いかも。
 誘われるようにそちらへ足を向けて、見るだけでもどうぞと促されて店内を眺めれば、マニキュア以外にも小さなストーンやホイルシート、様々なテーマで塗られたネイルチップのセットも。
 シンプルにカラーだけにしようか。それとも少しだけ勇気を出してデコレーションしてみようか。
 ううん、そんなことよりもまずは。
 たくさんに並んだマニキュアを前に、ぴったりと動きを止めてしまう。
(「ラメがきらめく宙色のも素敵だし夜明け空もいいわ。どうしよう決まらない」)
 時間をかけてもなお決められない藍を咎めたり急かしたりする者はいない。
 だって、誰もがそうして迷ってしまうから。
 じっくりと考える藍水晶を、鉱石たちは優しく見守っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユフィルリート・ミルティリエール
私に宝飾品は似合わないと兄姉は言っていた
母が私に遺したのが今この髪を結うリボンだからか、いつも用意されたのは柔らかい布地の物ばかり
それはちゃんと嬉しく思える愛だったけれど
幼心は輝きへの憧れを忘れられなくて
潜ったお店のドアの先
見えた多彩な煌めきに目を奪われた
透明すらも色だと思える
「ブレスレット…」
ふと零れた呟きは意外と拾われていて
「ぁ、あの、えっと…」
人と話すのは苦手で視線が逃げ惑う
でも不意に見えたものではっとした
「これ、何て言うんですか?」
教わったのはマクラメ編み
金属の細いバングルよりもしっくり来た
「この石で、作ってほしいです」
指さしたのはブルーカルセドニーという石
完成したら左手首につけたいな



(「私に宝飾品は似合わないと兄姉は言っていた」)
 ユフィルリート・ミルティリエール(たとえ小さな翼でも・f34827)は、きらめく装飾品を眺めながら思い出す。
 母が私に遺したのが今この髪を結うリボンだからか、いつも用意されたのは柔らかい布地の物ばかり。
 それはちゃんと嬉しく思える愛だったけれど。
 幼心は輝きへの憧れを忘れられなくて、潜ったお店のドアの先。見えた多彩な煌めきに目を奪われた。
 空を切り取ったアパタイトの青。お花で染めたクンツァイトの薄赤。太陽の輝きを閉じ込めたアンバーの黄金。
 透明すらも色だと思える。
 そのまま身につけても違和感のない、あとは鉱石で飾るだけのいくつかの装飾品を見て、ほうとためいきをつく。
「ブレスレット……」
 ふと零れた呟きは意外と拾われていて。
 少し年かさの女性の店員が、気になりますかと優しい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「ぁ、あの、えっと……」
 人と話すのは苦手で視線が逃げ惑うユフィルリートの次の言葉を、ニコニコしながら待ってくれる。
 どうしよう。なにも言わないでお店から出たら失礼かな。だけどうまく言葉が出てこなくて、迷って困ってしまう。こうして目を合わせないのも失礼かも。
 でも不意に見えたものではっとした。
「これ、何て言うんですか?」
 さらさらとした細い糸を編み込んだブレスレットを示して問うと、教わったのはマクラメ編み。
 ひとつ手に取って触ってみると、金属の細いバングルよりもしっくり来た。
 編み上げるところから作るので少し時間がかかるけれどとの確認に、大丈夫ですと応える。
「この石で、作ってほしいです」
 指さしたのはブルーカルセドニーという石。
 柔らかに光を映す青の大きさを決めて、お茶を飲みながら少しお待ちください。そう言われて、お店のすみのテーブルへ添えられた椅子にちょこんと腰かけ、ティーカップを前にドキドキ。
(「完成したら左手首につけたいな」)
 細い手首を見つめていると、そっとその上に編み込まれた石が乗った。
 マクラメ編みのブレスレットは、ブルーカルセドニーを優しく包み込むように。
 さあどうぞ。
 促されて、決めていたとおりに左の手首につけたら、そばに置かれたランプに手をかざす。
 その輝きは、彼女にとても似合っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
なびちゃん(f02050)と

へぇ~プレゼント?愛しいあの子に?ふぅ~ん
春ねぇ
ま、男の見せ所ってヤツ?こーゆーのは一歩間違えると逆効果だものねぇ
にまにま笑いつ揶揄い&不必要に脅しかけてく姿勢

あらマニキュア可愛い~、って解釈違い絶許こわ!(引く姿勢)
えぇ~贈り物だってお洒落の切っ掛けじゃない?
ホラそれ 桜 色 のチップ入ってて素敵~
でも嫌じゃあ仕方ないねぇ、オレ買っちゃおうかなー

と意地悪は程々にして、身に着けるならフォークリングはドウ?
指輪ほど重くないし
螺旋とかレース状のとか可愛さと存在感あってイイじゃない

オレ?じゃあさっきのマニキュア……冗談ヨ、カオ怖ぇっつの
あ~助言代に何か奢ってもらおうかしら


揺歌語・なびき
コノハさんf03130

からかわれる為に誘ったんじゃないんだけど!
…既に全部間違ってるような
そんな気にはなる
脈がひとつもない、とかではないけど

目についたのは
透明ベースの綺麗な鉱石マニキュア
…これは違うかな

おれはあのアイスブルーの爪がすきであってそれをおれが上書きするのはなんか違うと思う(早口
なんていうかさ…たからちゃんが自分の意思で選ぶのとおれが渡すのでは全然変わってくるっていうか…いやそれはネイルじゃなくてもだけど…

フォークリングかぁ
どこの指につけてもいいし、うん
レース状でちいさな花石がひとつ乗るのは、かわいい

せっかくだし店長はどうす…あ?
いやごめんうんわかってる

…(結局マニキュアとリング購入



「へぇ~プレゼント? 愛しいあの子に? ふぅ~ん」
 決して親愛の意味だけでない笑みを浮かべて口にするコノハ・ライゼ(空々・f03130)を恨めしげに見やり、揺歌語・なびき(春怨・f02050)はぐっと唸る。
 春ねぇ、と、もう秋を迎えているのにどこか暑そうに手であおぐ仕草をし、
「ま、男の見せ所ってヤツ? こーゆーのは一歩間違えると逆効果だものねぇ」
「からかわれる為に誘ったんじゃないんだけど!」
 にまにま笑いつ揶揄い&不必要に脅しかけていく姿勢のコノハに耐えかねて叫んでしまうけども、しかしなびきにも思い当たる節があるようなないような。
「……既に全部間違ってるような」
 そんな気にはなる。
 脈がひとつもない、とかではないけど。
 彼女は間違いなくこちらに好意を持ってくれている。けれどその好意は、いったいどんな好意だろう?
 自分が思っているようなものであればいい。でも、そうであってほしくないという願い或いは迷いもある。
 思案しながら目についたのは、透明ベースの綺麗な鉱石マニキュア。
 実際に塗ったサンプルの色を確かめ、その色が『塗り消して』いくイメージを思い浮かべた。
「……これは違うかな」
 振り払うように視線を逸らすなびきとほぼ同じタイミングでマニキュアを覗き込んだコノハは、おやと目を丸くしてみせる。
「あらマニキュア可愛い~、って解釈違い絶許こわ!」
「おれはあのアイスブルーの爪がすきであってそれをおれが上書きするのはなんか違うと思う」
 声を上げて引く姿勢をとってみせる彼に、弁明するというよりは力説するように早口になった。
 それからふっとトーンを下げたのは、自信がないのではなく熱量を適切に伝えられないから。
「なんていうかさ……たからちゃんが自分の意思で選ぶのとおれが渡すのでは全然変わってくるっていうか……いやそれはネイルじゃなくてもだけど……」
 あの子が気にするかは分からないけれど、贈ることにだって意味はある。
 だけれども、彼がどんなものを選んだとしても、あの子はきっと喜んでくれるだろう。
「えぇ~贈り物だってお洒落の切っ掛けじゃない?」
 からかうような調子に別の色を含み、コノハは手をひらひらとさせてからマニキュアを指す。
「ホラそれ 桜 色 のチップ入ってて素敵~」
 なぜか。なぜかそこを強調する彼を桜色の瞳で睨み、ふいと視線を落とした。
 いや、別にだからこれにしないって言ったわけじゃない。自分の要素だからってわけじゃなくて。
「でも嫌じゃあ仕方ないねぇ、オレ買っちゃおうかなー」
「!?」
 予想外の言葉に、がばっと顔を上げてコノハをまじまじと見つめるなびき。
 彼が買ってどうすると思ったのだろう。大体想像はつく。
 と意地悪は程々にして、
「身に着けるならフォークリングはドウ?」
 ついとリングの売り場の一角を示す。
 指輪ほど重くないし。
「螺旋とかレース状のとか可愛さと存在感あってイイじゃない」
 くぅるり円を描いて、どう? と訊くコノハに、なびきもフォークリングかぁ、と口にして、
「どこの指につけてもいいし、うん」
 幻視したのはどの指だったか。
 視線をさまよわせて目についた、レース状でちいさな花石がひとつ乗るのは、かわいい。
 桜じゃなくていいの? いいの!
 購入用のかごにリングを乗せて、よし、と頷く。
「せっかくだし店長はどうす……あ?」
「オレ? じゃあさっきのマニキュア……冗談ヨ、カオ怖ぇっつの」
 かぶせ気味の答えに今度こそ本気で睨みつけられ、コノハが撤回と指摘を口にすると、いやごめんうんわかってる、となびきも謝罪を告げた。
 狼の耳をぺしょっと伏せる彼の様子に笑って、そうだなあ。
「あ~助言代に何か奢ってもらおうかしら」
 ここに入る前までに、鉱石細工のお店以外もたくさんあった。食事やちょっとした買い食いのできるお店もいくつか見てきたし、街のマップももらっている。
 さて、じゃあ何にしようかな。
 コノハが背を向け、売り場から彼の興味がそれたと見たなびきは、名残惜しそうに視線を落として。
「…………。」
 そっと手を伸ばす。
 かすかにことんと音が立ち、その手元には結局マニキュアとリングのふたつ。
 それをこっそり見ていた薄氷の瞳が、笑みに細められた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『眠りネズミ』

POW   :    おやすみなさい、よいゆめを
全身を【ねむねむふわふわおやすみモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    みんないっしょに、ねむりましょ
【ふわふわのしっぽ】から【ふんわりとつつみこむもふもふのいちげき】を放ち、【今すぐこの場で眠りたい気持ち】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    きらきらひかる、こうもりさん
対象のユーベルコードに対し【吐息からキラキラ光る小さなコウモリたち】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 買い物も済んで小休止。
 ふと見た先に、カップに入ったお茶を持つ人々。
 ちょっとのどが渇いているかもな、と思って訊いてみたら、この先のカフェでテイクアウトしてきたものだという。
 琥珀糖を入れると柔らかな甘さになっておいしいよ。宝石のかけらのような琥珀糖も見せてくれた。
「本当はね、なかにいたかったのだけど。ずっといちゃうからね」
 行ってみれば分かると言うのでさっそく向かってみると、ほどなくそのお店は見つかった。
 席は空いているようで、なかに入ってみれば。
 鉱石細工のランプが優しく灯し出すうす暗い店内で、からころ、からころと小さな音が踊っていた。
「……あ!」
 小さな瓶に寄り添うようにして、うとうとしながら鉱石や琥珀糖を転がすそれ。
 あちこちで、眠りネズミたちがくつろいでいた。
 この眠りネズミのポット内にある『夜糖蜜』は飲むと望む夢が見られ、毛を寝具に使えばよく眠れる。
 他にも尾・羽・吐息など、全身『良い眠り』をもたらす素材になるという。この素材を用いて手芸に興じる人もいるのだとか。
 いつも眠そうなこのもっふもふは、たまに大量発生するけれど大体寝ているのでほとんど無害だから、街の人たちもそんなに困ったり被害を受けたりということはない。
 しかしオブリビオンを前にした以上は、猟兵として討伐しなければならない。
「……まあ、ちょっとくらいもふもふしてからでもいいよね」
 ちょっとくらいなら、いいよね。
夜鳥・藍
か、かわいい……!
無害なのに倒さなくてはいけないのはとても心苦しいわ。
えとえと、とりあえずと言っては失礼だけどお茶をいただこうかしら。
そのお茶に琥珀糖を落としてみるけど、その間ずっと視線は眠りネズミに釘付け。
……ころころしてる……かわいい……。
触っても大丈夫かしら?
そっと手を差し出すとそれを枕に寝始めて……つ、連れて帰りたいっ……!
ゆっくりを撫でてみるけどやっぱりやわらかい。

気が付いたらお茶はすっかり冷めてしまったわね。
十分堪能したし名残り惜しいけど骸の海へお帰り。
大立ち回りするわけにもいかないから鳴神でそっと返しましょう。



 藍が案内されたテーブルの上で、眠りネズミがちょこんとお出迎え。
 真ん中を占拠して眠たげにしていたけれど、お客さんですかとにじにじと動いてスペースを空けてくれる。それからふわふわのしっぽをゆっくりと振った。
「か、かわいい……!」
 抑えた悲鳴をあげつつ驚かさないようにひとりがけのゆったりしたソファに腰かけ、ふわり感じたと思ったらソファにももう一体の眠りネズミがいたようで、空いている隙間にうまく収まるように姿勢をなおしていた。
 一方、テーブルの上のは置かれた小さな鉱石細工をけだるげにしっぽで撫でながら、物陰でなにかをごそごそしだす。
 こちらに対して敵意があるどころか興味を持ってさえいない。無関心というよりは、構うのも放っておくのもお好きにどうぞといった様子だ。
 周囲を見ると、ポットのなかの夜糖蜜をお茶に入れたり、スイーツにかけたりしているお客さんもいれば、羽根などをていねいに取っては持ち込んだ容器に収めているお客さんもいる。
 もちろん、眠りネズミと一緒にうたた寝しているお客さんも。
 無害なのに倒さなくてはいけないのはとても心苦しいわ。
 けれど仕方がない。こんなにかわいくても、これは人々に害をなすオブリビオンなのだから。本当に、心苦しいけれど。
「えとえと、とりあえずと言っては失礼だけどお茶をいただこうかしら」
 メニューを手に取り眺めて、どれにしようかな。
 決めて注文する間にも、眠りネズミはしっぽをゆったり、ふりっ……ふりっ……と揺らす。
 すこしして届けられたお茶には、ころんとした琥珀糖が添えられていて、その時だけ頭をあげて。
 そのお茶に琥珀糖を落としてみるけど、その間ずっと視線は眠りネズミに釘付け。
 藍の視線を気にかけず、どこから持ってきたのか、丸くて枕にちょうどよさそうなリングピローをテーブルに置くと、眠る……のではなく、ヘリに縫い込まれたレースをついついとついばむ。
 ……ころころしてる……かわいい……。
「触っても大丈夫かしら?」
 そっと手を差し出すとそれを枕に寝始めて……つ、連れて帰りたいっ……!
 あんまりにかわいくて、感極まってしまい手が震えてしまう。眠りネズミがなぁに? と言うかに顔をあげた。
 なんでもないよと安心させるようにそっとつついたら、気持ちよさそうにウトウトしだして。
 ゆっくりと撫でてみるけどやっぱりやわらかい。
 指先でおでこを撫でたり、首筋を撫でたり。手のひらで背中やおなかを撫でたり。目は開けないけれど、ふすふすと鼻を動かす眠りネズミ。
 気が付いたらお茶はすっかり冷めてしまったわね。
 そっと手を離したら、やっぱり眠たそうにリングピローに頭を落とす。
 お茶に口をつけるとほんのりとした甘さが心地よい。
 十分堪能したし名残り惜しいけど骸の海へお帰り。
(「大立ち回りするわけにもいかないから鳴神でそっと返しましょう」)
 黒い三鈷剣を取り出して小さく口のなかでつぶやき、眠りネズミを捉える。
 これは、おやすみなさいの代わり。

成功 🔵​🔵​🔴​

揺歌語・なびき
コノハさんf03130

うわあなにあれかわいい…!
ふわふわだよぉねむねむだよぉ

お礼に今日はおれの奢りです
実は年上だしね…一応ね…

きらきらの琥珀糖と
いい匂いのする紅茶を楽しみつつ
テイクアウトの宝石箱もいいよねぇ

ふわふわの眠りネズミを膝や手に抱き
ああ~…いのち…(うぅ
たからちゃんもすきだろうな…

甘い砂糖菓子は色とりどりで
彼女に似ているなぁと思った

嫌われてはないよ
…むしろ、多分

抱っこもキスも嫌がらないし
おれは待てができる男だし
ただ、せめあぐねてるのは確かだ

…変な虫はもうつけたくない
うぐ
それは、やだ

一度でもおれの知らない男が居たこと
もうあんな思い、死んでもしたくない

…ん
ネズミ達を家(海)に帰して、おれも


コノハ・ライゼ
なびちゃんf02050

あらホント、ずっと居たくなっちゃうってのも分かるわねぇ

奢りと聞けば両手離しで喜んで
先輩流石!お兄サン素敵!と茶化しながらもふもふとお茶を楽しむわ
宝石箱もイイけど夜糖蜜も素敵、お土産にできないかしら

極自然に零れる名にはぁん、と意地悪な笑み
なあに、また怖くなっちゃった?それとも食おうとして嫌われた?
ナンて、贈り物選ぶ先刻の様子見てりゃありえないって分かっちゃいるけど

やだ、ノロケじゃない
けどまあ……待てしてる間に虫がつくようなら、ソレが答えってコトよ
もしかして自信ナイのぉ?
琥珀糖ひとつ摘まんでなびちゃんの口元へ

さ、ネズミちゃん達をしっかり還して
早くお土産届けに行きましょ



「うわあなにあれかわいい……!」
 ふわふわだよぉねむねむだよぉ、とあまりのかわいさに相好を崩すなびきを面白そうに見てから、コノハはそこここにいる眠りネズミを見やる。
 ポットの上でころんと眠っていたり、お茶を楽しむお客さんのそばでお菓子をつまんだり。もう少し目がさめている子は、身体をすりすりさせたりしっぽをゆらゆらさせたりしている。
「あらホント、ずっと居たくなっちゃうってのも分かるわねぇ」
 言いながら席につき、テーブルの真ん中を占拠しているふわふわを持ち上げ場所を空けつつ、指先を埋めてその感触を楽しむ。
 ほら〜♪ と差し出されたなびきも、とろけた顔でもふもふしてから表情を引き締めて、お礼に今日はおれの奢りです、と言いながらメニューを差し出した。
 実は年上だしね……一応ね……。
 背丈はほとんど同じだけども、年齢はこちらが長じているのに余裕は彼のほうが長じている。
 とはいえ。
 奢りと聞けば両手離しで喜んで、
「先輩流石! お兄サン素敵!」
 と茶化しながらもふもふとお茶を楽しむコノハに苦笑した。
 きらきらの琥珀糖と、いい匂いのする紅茶を楽しみつつ。ついでに眠りネズミのもふもふも。
「テイクアウトの宝石箱もいいよねぇ」
 目を向けた先、棚に並ぶ宝石箱は、ひとつとして同じものが見つけられない。
 サンプルとして蓋が開けられた箱のなかでは、透きとおる琥珀糖がランプに照らされて静かに輝きを含んでいる。
「宝石箱もイイけど夜糖蜜も素敵、お土産にできないかしら」
 コノハが店員さんに訊いてみると、大丈夫ですよと密閉できる瓶をいくつか用意してくれた。プレゼント用にするならと、リボンと鉱石のラッピングセットも添えて。
 夜糖蜜をポットから瓶に移す様子をとろり眠たげな目で眺めていた眠りネズミを、そっと抱き上げる。
 ふわふわの眠りネズミを膝や手に抱き、
「ああ~……いのち……」
 うぅ、と呻くなびきは、もはや抱いているというよりも埋もれていた。
 まわりにはふわふわもふもふ。テーブルの上にはあまあまきらきら。
「たからちゃんもすきだろうな……」
 甘い砂糖菓子は色とりどりで。
 彼女に似ているなぁと思ったその時。
 似ていますか?
 不意に聞こえたような気がして、もう一度名前を呼ぶ。
 極自然に零れる名に、コノハがはぁん、と意地悪な笑みを浮かべた。
「なあに、また怖くなっちゃった? それとも食おうとして嫌われた?」
 ナンて、贈り物選ぶ先刻の様子見てりゃありえないって分かっちゃいるけど。
 実に嫌がらせのきいた問いに、なびきは少しだけ寂しげに笑う。
「嫌われてはないよ」
 自分のことを、あの子が嫌うはずもない。嫌わないなら無関心ということもなく。
「……むしろ、多分」
 確信はある。過信じゃない。
 抱っこもキスも嫌がらないし。
 おれは待てができる男だし。
 だけど胸を張って言えない。
「ただ、せめあぐねてるのは確かだ」
「やだ、ノロケじゃない」
 笑いながら、雪を閉じ込めたペタライトのような琥珀糖をつんつんとつつき、コノハは意地悪な表情を真摯に変える。
「けどまあ……待てしてる間に虫がつくようなら、ソレが答えってコトよ」
 いつまでもそのままでいてくれるとは限らない。
 ご褒美のためにいつまで待てをしつづけている?
「……変な虫はもうつけたくない」
 けれど、自分もそうであるとは思いたくない。
 あの子を守るつもりで、あの子を傷つけてしまう。
 懊悩するなびきを、突き放すようで背を押すコノハ。
「もしかして自信ナイのぉ?」
 琥珀糖ひとつ摘まんでなびきの口元へ。
 うぐ。
 その逡巡が、招いてしまったのに。
「それは、やだ」
 迷いを見透かす瞳に射られ感情を吐く。
 一度でもおれの知らない男が居たこと。
 もうあんな思い、死んでもしたくない。
 でも、それを許したのは、おれだ。
 染めていない指先を見つめて押し黙るなびきに、今度はコノハが苦笑した。
「さ、ネズミちゃん達をしっかり還して早くお土産届けに行きましょ」
「……ん」
 届けて、どうなるんだろう。
 マニキュアを塗った指にリングが通されるのか。
 それとも大切に大切にしまいこまれてしまうか。
 分からないけど、届けなければもっと分からない。
 ネズミ達を家に帰して、おれも。
 迷いを払って、眠りネズミたちを還すのは骸の海。
「――じゃあネ」
 ほの暗い店のなかに、柔らかな虹の帯が広がり桜の花びらが舞う。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

瑞月・苺々子
きゃあ!なにこれかわいい!
ももが連れてるもふもふたちは、ももより大きな子ばかり
目の前に丁度いい大きさのもふもふがいるの……
えっと、ちょっとくらい、ぎゅーってしてもいいよね?

お店の中は甘くて良い香りがするの
店員さんオススメの紅茶に、宝石みたいなお砂糖をひとつ、ふたつ……
ももは甘いのが好きだから、少し甘くして楽しみたいな!
ふふ。もふもふに美味しい紅茶に。幸せなの

いつまでももふもふはしていられないよね……
お店の中で動き回るのは、はしたないから
月花召来で、そっと、おやすみなさいしましょうね

……夜糖蜜があれば、夢の中でママに会えるの?
それもステキだけれど
やっぱりみるのは夢じゃなくて、現実がいいかしら!



 お店に入った苺々子は、あまりの光景に小さく悲鳴をあげてしまう。
「きゃあ! なにこれかわいい!」
 ももが連れてるもふもふたちは、ももより大きな子ばかり。
 だけれどあっちこっちにいる眠りネズミたちは、小さなももよりもっと小さい。
 目の前に丁度いい大きさのもふもふがいるの……。
 そわそわしながら、ソファにちょこんと腰かけて。
「えっと、ちょっとくらい、ぎゅーってしてもいいよね?」
 ゆっくりそぉっと触ってみたら、小さな手がふんわり埋もれる。注意しながら抱きあげて、ふにふにとなでるとくすぐったそうに転がった。
 ぎゅっとだっこしてくぅるり店内を見回す。
 お店の中は甘くて良い香りがするの。
 お茶の香り。お砂糖の香り。お菓子の香りもあるかしら。
 店員さんオススメの紅茶に、宝石みたいなお砂糖をひとつ、ふたつ……。
 お砂糖入れるの? と問いたげな眠りネズミに、そうよと笑って。
「ももは甘いのが好きだから、少し甘くして楽しみたいな!」
 灯りに照らされてきらきらなお砂糖。あとひとつ、どうしよう? 指先で転がすと、含んだ色が不思議に変わる。
 カップに口をつけてこくんと飲む。甘いけれど甘すぎない。
 ほわり笑みが浮かぶ苺々子のそばに、もう一体眠りネズミが寄ってきて、ぽふんと頭を乗せてきた。
 ふふ。もふもふに美味しい紅茶に。幸せなの。
 けれど、幸せな時間はいつまでもいてくれない。
「いつまでももふもふはしていられないよね……」
 名残惜しそうに溜息をついてカップを置く。
 お店の中で動き回るのは、はしたないから。
「そっと、おやすみなさいしましょうね」
 短刀を手に優しく声をかける。大丈夫よ、ほんのちょっとだけだから。
 そうして眠りネズミがきえたあと、残されたのはころんとしたポット。
「……夜糖蜜があれば、夢の中でママに会えるの?」
 この蜜を飲めば望む夢が見られると言うけれど。それならきっと、これを飲んだら。
 眠りを誘う星空模様の蜜を眺めて、ううん、と首を振る。
 それもステキだけれど。
「やっぱりみるのは夢じゃなくて、現実がいいかしら!」
 だって、夢なら目がさめたら全部消えてしまうもの。

成功 🔵​🔵​🔴​

三深・柘
わ、わ…かわいい…!
これが、眠りネズミ…
…ふふ、見ているだけで幸せになっちゃう。
お茶とお菓子をお願いして…宝石みたいなお菓子はあるかしら?
お茶を楽しみながら、眠りネズミをツンツンしたり、もふもふしたり。
はわぁ…こんな…ああ…罪深い…罪深いわ…
…は、いけない、いけないわ。ちゃんと倒さないと…
せっかくだから、蜜を少し分けてもらおうかしら。
きっと幸せな夢が見られそう。
それじゃあ…ごめんなさいね…
そっと、眠りネズミに手をかけるわ。
どうかあなたも、いい夢が見られますように…



「わ、わ……かわいい……!」
 三深・柘(それは降り繰る羽根のように・f35559)の口をついて出たのは、感激の悲鳴。
「これが、眠りネズミ……」
 おそるおそる近づいてみても、眠りネズミは身動きひとつせずすやすやと。
 時々しっぽが揺れたり、寝言なのかくぷんと小さく聞こえたり。
 ……ふふ、見ているだけで幸せになっちゃう。
 お茶とお菓子をお願いして……宝石みたいなお菓子はあるかしら?
 訊いてみると、それならクッキーをどうぞと勧められた。
 或いはクッキーの上に淡い青に透きとおるゼリーでドライフルーツを閉じ込めて、まるで水底に沈む宝石のよう。或いは小さな琥珀糖のかけらをまぶして原石ドームのように。
 少し甘めのクッキーをかじってお茶を飲むと、口のなかでほろり崩れて。
 優しいぬくもりが身体のなかにしみていく感覚を楽しむ柘の目の前で、眠りネズミがゆったりとしっぽをふる。
 お茶を楽しみながら、眠りネズミをツンツンしたり、もふもふしたり。
 ふわふわの毛並みを堪能しているうちに、表情がとろんと溶けてしまう。
「はわぁ……こんな……ああ……罪深い……罪深いわ」
 でも仕方ないの、だってこんなに……ああ……もふもふ……。
 もふ……もふもふ……もふ……あああ……。
 とっても、とっても罪深い。だけどこの罪は許されるはず。そもそも罪ではないのだから。
 しばらく無心でもふもふしつづけて、ふと本来の目的を思い出した。
「……は、いけない、いけないわ。ちゃんと倒さないと……」
 こんなにかわいいけれど、これはオブリビオンなのだ。
 名残惜しさにもう一度もふもふして。
 せっかくだから、蜜を少し分けてもらおうかしら。
 夜糖蜜のポットを取って、小さな瓶に移し取る。夜空をとかした蜜は、深い色で向こうを透かす。
 きっと幸せな夢が見られそう。
「それじゃあ……ごめんなさいね……」
 小さく謝ってから、そっと、眠りネズミに手をかける。
「どうかあなたも、いい夢が見られますように……」

成功 🔵​🔵​🔴​

アニタ・エヴァーフィールド
不思議…ふわふわ…かわいい…
こんなにかわいいのに、オブリビオンだなんて…すごく、残念
でも…倒すまでは、かわいがってもいい、のよね?

お茶…私のお茶はダメよね…
温かくて嬉しい気持ちになれるお茶はあるかしら
それにお砂糖をひとつ、ふたつ
ゆっくりお茶を楽しみながら、眠りネズミをゆっくり撫でて
…この蜜があれば、私も気持ちよく眠れるのかな…
時々見るのは、いつも迷子になる夢
行く先もわからない、戻る道もわからないの
…なんて、あなたたちに言っても無意味よね

さあ、それじゃあお別れしましょう
素敵な時間をありがとう



 アニタ・エヴァーフィールド(さまよいゆくこころ・f26832)は、眠りネズミと同じくらいふわふわな髪を押さえてそおっと覗き込む。
「不思議……ふわふわ……かわいい……」
 近づいても覗き込んでも、眠りネズミは眠そうにウトウトとしている。
 こんなにかわいいのに、オブリビオンだなんて……すごく、残念。
「でも……倒すまでは、かわいがってもいい、のよね?」
 なでなでもふもふすると、気持ちよさそうに首を動かす。
 本当に、かわいい。だけどオブリビオンだから倒さないと。
「お茶……私のお茶はダメよね……」
 時計ウサギのアニタは、ユーベルコードでもある特別な紅茶をいつも用意している。だけど、ここはお店のなかだから、持ち込みはご遠慮ください。
 温かくて嬉しい気持ちになれるお茶はあるかしら。
 訊ねたら、届けられたのは茶葉を丸めたような丸いものをお湯に沈めた透明なガラスのポット。
 なにかしら? じーっと見つめているうちに、なかでふんわりと茶葉が広がり……違う。緩やかに開いたのは大きな金色の花。工芸茶だ。
 見た目も華やかなお茶の味はちょっぴりスパイシーで、ミルクを入れれば和らぐ。
 それにお砂糖をひとつ、ふたつ。チャイに似たミルクティーにして飲めば、心もほっこりあたたまる。
 ゆっくりお茶を楽しみながら、眠りネズミをゆっくり撫でて。
「……この蜜があれば、私も気持ちよく眠れるのかな……」
 ポットを見つめて、小さく呟いた。
 時々見るのは、いつも迷子になる夢。
 行く先もわからない、戻る道もわからないの。
 だからアニタはいつも迷ってしまう。迷って迷って……分からなくなってしまう。
 どうして頑張ってるんだっけ? どこへ行こうとしてるんだっけ?
「……なんて、あなたたちに言っても無意味よね」
 つんと眠りネズミをつついて、くすっと笑う。
 それに、今は分からないけれど、いつか分かるかもしれない。
 前へ進み続けていれば。
 微笑んで、眠りネズミをもふもふする。
「さあ、それじゃあお別れしましょう」
 素敵な時間をありがとう。


 手にした煌めきは、ひとときごとに色を変える。
 ある時は眩しく。ある時はひそやかに。
 秘めた煌輝が、たとえ今は眠っているとしても。
 その輝きは、あなたの想いを輝かせる。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年11月13日


挿絵イラスト