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可塑性ゾンビプロセス

#アポカリプスヘル #【Q】 #戦後 #ゾンビ化

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#アポカリプスヘル
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#【Q】
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#戦後
#ゾンビ化


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●過程
 黒き竜巻『オブリビオン・ストーム』によって破壊されたものはオブリビオンへと変貌する。
 それは荒廃した世界アポカリプスヘルにおいて猟兵たちが知る法則の一つである。
 機械であれ、兵器であれ、オブリビオン・ストームによって破壊されたものはオブリビオンとして姿を変え生命在る者を襲わんとする。
 死せる人間の身体であっても例外ではない。
 腐敗した肉体。
 原型を僅かに留めるだけに至った人の形をした人ではないモノ。そこに知性は認められず、ただの衝動として生命在る者を喰らわんとする。

 人はそれを『ゾンビ』と呼ぶし、リビングデッドとも呼ぶだろう。

 かつての文明の残滓である『フラスコチャイルド研究施設』から這い出さんとしている物体があった。
 腐り落ちた肉体。
 体皮はぐずぐずに滑り落ちようとし、そして身体を支える筋繊維は如何なる理屈からか硬直に至らずに動き続ける。
『ND-DUST』と呼ばれるフラスコチャイルドの失敗作、及び廃棄品を再利用しようとして終ぞ生命として活動することのなかったモノたちがうごめいている。
「ウ、ォ、アオオ――」
 呻くような声は、苦しみに囚われているからではない。
 動く度に肺が硬い胸の筋繊維によって絞られ吐き出されているだけの生理的現象に過ぎない。いや、ただの反応でしかないのだ。

 悲哀に満ちた瞳も、嘆きに似た叫びも『ND-DUST』を見る者が、そうであろうと思いたいだけなのかもしれない。
 そして、さらにその奥に蠢く何かがあった。
 巨大な体躯。ぶよぶよとした皮膚。たわむ内側は腐り落ちているのは言うまでもない。腐敗と疫病を体現するかの如き巨躯。
 それはあらゆるものを貪り喰らい、無尽蔵なる食欲を満たそうとしている。
「オオオオオオオ――!!!!」
 その咆哮は嘗ての研究の遺恨か、もしくは功罪か――。

●検証
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はアポカリプスヘルにおける『ゾンビ化』に対する検証とオブリビオンによる害を未然に防ぐための戦いへと赴いて頂きたいのです」
 ナイアルテは、オブリビオン・ストームによってオブリビオンが生み出される時、元々死体であった者は『ゾンビ化』しやすい傾向があるのではないかと考えているようであった。

 それが真実かどうかは今の段階では不明である。
 これまで散見された『ゾンビ』のようなオブリビオンたち。これらがもしも、何らかの意味があって生み出されているのだとしたら、それはアポカリプスヘルに生きる人々の妨げになるだろう。
「アポカリプスヘルの資料を調べた結果、『ゾンビ化』したオブリビオンが徘徊する過去に存在した『フラスコチャイルド研究施設』跡地を見つけることができました」
 地下に存在している『フラスコチャイルド研究施設』から幸いにもまだ『ゾンビ化』したオブリビオンたちが這い出ることはないようであったからこそ、今まで被害がなかったことは幸いであった。

 しかし、それもまた時間の問題であろう。
 いずれ地上に這い出せば人々の暮らす『拠点(ベース)』を襲う存在へと為ることは言うまでもない。
「故に『ゾンビ化』の研究とオブリビオンによる害を未然に防ぐ一石二鳥の戦いとして皆さんにご足労願いたいと思った次第です」
 ナイアルテは微笑み、猟兵たちを送り出す。
 この戦いがどんな一歩になるのかは未だわからない。人々の安寧を護ることに繋がるのか、それともただの徒労に終わるのかも判然としない。
 けれど、いつだってそうだけれど、どんなに小さな一歩であっても、積み重ねていけばより良い明日を掴むことができるはずだ。

 そうした一歩をまた積み重ねるため、猟兵達は『ゾンビ化』したオブリビオン蠢く地下『フラスコチャイルド研究施設』の跡地へと転移するのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアポカリプスヘルにおける『ゾンビ化』の検証と研究のためのデータを集めるために、地下『フラスコチャイルド研究施設』に蠢く『ゾンビ化』オブリビオンを一掃するシナリオになります。

 ※これは2章構成のアポカリプスヘルの戦後シナリオとなります。

●第一章
 集団戦です。
 地下『フラスコチャイルド研究施設』跡地に趣き、オブリビオンの群れと戦います。
『ゾンビ化』されたオブリビオンであり、目立った腐敗が他のオブリビオンよりもあるわけではあるませんが、通常見受けられるオブリビオンと違い知性に乏しく、ユーベルコードが強力なように見えます。
 知性を喪っている『ND-DUST』と呼ばれる元フラスコチャイルドの廃棄品の再利用を目指したオブリビオンを打倒しましょう。

 知性の無さを逆手に取るようにすれば有利に戦うことができるでしょう。

●第二章
 ボス戦です。
 地下『フラスコチャイルド研究施設』の奥に存在している、この『ゾンビ化』オブリビオンの群れとも言うべき『ゾンビジャイアント』との戦いになります。
 データを取りつつ撃破しましょう。
 この『ゾンビジャイアント』も以前皆さんが見た同様の存在よりも更に知性乏しく、強力に見えるユーベルコードを繰り出してきます。

 それでは、未だ謎の残るアポカリプスヘルにおけるオブリビオンによる実害、それらを未然に防ぐために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『ND-DUST』

POW   :    群れの大海
【全個体の一斉攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    バンシィ・スクリーム
【叫び声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    コラテラルダメージ
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【個体数】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。

イラスト:柴一子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ウ、ォ、アオオ、オオオ、アア――」
 それは地の底から響くような声であった。
 唸り声のようでもあったし、悲哀を知らしめるような声でもあった。
 けれど、そのどれもが正しくないことを猟兵達は知っている。
 それはただの音でしかない。
『ゾンビ化』したオブリビオン、『ND-DUST』の肺から絞り出された音でしか無いのだ。
 彼らは地下にある『フラスコチャイルド研究施設』からこれまで地上に出ることはなかった。けれど、人の手によって生み出されたものならば、それらがいつしか劣化し、崩れていくことだろう。
 これまで幾度ものオブリビオン・ストームによって地下にあった『フラスコチャイルド研究施設』は天井を剥がされ、崩落した瓦礫が積み上がっていく。その瓦礫がついに地上にまで到達するほどになって初めて彼らの脅威がアポカリプスヘルの荒野へと放たれてしまうのに時間はかからなかった。
 彼らは一歩を踏み出す。
 自由でもなんでもない。
 彼らはすでに終わった存在。

 彼らはただ己たちの欲求のままに生者を喰らわんと地下より這い出そうと、知性無き瞳を瓦礫から除く空へと向けるのであった――。
黒髪・名捨
【心境】
「ゾンビねぇ…正直一番死んでもなりたくねぇ…。」
まじでああはなりたくねーな。

【行動】
匂いのきつさに心折れそうなんで、まずは合法阿片で一服『ドーピング』っと。
ふー。『元気』でた。
作戦としてはオレがあのゾンビを『おびき寄せ』注意を引きつけて、ある程度集まったら寧々の『範囲攻撃』でまとめて『浄化』って感じだな。

なあ、寧々。あれに飛び込むのはマジ『勇気』いるだが…。
はい、行ってきます…
『破魔』の力を覇気に宿して吶喊して殴っては逃げて、殴っては逃げてを繰り返して、ゾンビが集まってきたところで寧々が稲妻を発動。
『神罰』の雷でまとめて『焼却』完了。

…ってあぶなッ



『ND-DUST』たちのうめき声が地下より地上へと響き渡る。
 それは嘆きでもなければ、怨嗟でもない。
 ただの反応でしかない。彼らには最早知性と呼べるものは何一つとして存在していなかった。
 人の形をした何か。
 崩れた体皮より覗くは、かつての生命の残滓。そこに生命の輝きはなく、凡そ意志と呼べるものは存在していなかったのである。
「ア、オ、アアアア、アア――」
 意味のない声。
 それを前にして黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、心より、ああはなるまいと思った

「ゾンビねぇ……正直一番死んでもなりたくねぇ……」
 臭ってくる死臭に鼻が曲がりそうに為る。
 名捨にとって、それは耐え難いものであった。死の香りがこの地下にある『フラスコチャイルド研究施設』には充満していた。
 どこまでも広がっているかのような地下研究施設の奥から湧いて出てくるように『ND-DUST』と呼ばれる嘗てのフラスコチャイルドたちの残骸は、『ゾンビ化』していることは間違いない。

 目立った腐敗が追加されている気配はないが、それでも死臭だけはどうしようもない。
「この匂いのきつさには心が折れそうだぜ……まずは一服させてもらわないとなッ」
『合法阿片』をくゆらせ、名捨は己の心にドーピングを施す。
 こうでもしないと、この死臭が充満した地下を戦い抜くことは難しいだろう。目の前の『ND-DUST』たちはただれたような、腐り落ちたような体皮を気にも止めずに此方へと散漫な動作で迫ってくるのだ。

 異形に変形した腕部、脚部、その身体のあちこちが戦うために生み出されては失敗してきた廃棄品であることを示していたが、それでもあの数である。
「これだけの数だとな……! 『寧々』、オレがあのゾンビどもをおびき寄せて注意を引く。ある程度集まったら範囲攻撃でまとめて浄化ってことで」
 頭の上の喋る蛙『寧々』にそう告げる。
 けれど、『寧々』はなんとも芳しくない表情であった。
 情けないのぅという顔をしている。己の夫であるのならば、あの程度の雑兵など蹴散らしてもらわなければならんと言う顔である。

「いや、流石にアレに飛び込むのはマジで勇気がいるんだが……」
 正直嫌である。
 名捨にとって死臭は『合法阿片』でドーピングしてもなお、嫌だなぁと思うほどのものであるのだ。
 けれど、ぺちんと額を『寧々』に叩かれてしまう。
「つべこべ――」
「はい、行ってきます……」
 これ以上の問答は時間の問題であるし、『ND-DUST』たちも待ってはくれない。
「ウ、ォ、アオオ――!!」
 咆哮が轟き、散漫な動作ながら、その異形と化した手が凄まじい勢いで名捨に伸びる。
 関節を外し、その分だけ筋繊維を伸ばしてきているのだろう。
 異形なる腕であるがゆえに、そういう使い方もするのだろう。

 それを名捨は黒髪をなびかせながら躱し、地下の『フラスコチャイルド研究施設』を走り抜ける。
「そら、こっちだ! そんなのろまな動きでオレを掴まえられると思うなよッ!」
 破魔の力と覇気を宿した裂帛の気合と拳で名捨は『ND-DUST』たちを殴っては躱し、殴っては躱しを続ける。
 ヒット・アンド・アウェイというやつであろうが、少しでも飛び散る体液から逃れたいという思いも在ってのことだろう。
 それにただ闇雲の戦っていたわけではない。
 迫る『ND-DUST』たちは名捨の戦いに引かれるように次々と地下からはいでてくるのだ。

「まとめて――っていうのは、こういうことを言うんだよな。『寧々』!」
「まあ、婿を支えるのが良妻の仕事というものじゃ」
『寧々』が渋々と言った呈で化け術によって真の姿に変じ、そのユーベルコード、神罰の雷を解き放つ。

 稲妻(プラヅマ)――。

 それこそが『寧々』の真の姿であり、神罰の一撃。
 雷撃は集まってきた『ND-DUST』をまとめて焼き払うどころか、名捨すらも巻き込みかねないほどの広範囲に渡る衝撃を打ち込むのだ。
「……ってあぶなッ」
 名捨は己の前髪を焼き焦がす勢いの雷の一撃を躱しながら死臭すらも焼き飛ばすが如き雷撃の凄まじさに『寧々』という恐妻の恐ろしさを噛みしめるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……ゾンビとかそう言うのはフィクションの中だけにしたいよね……
さて…知性が乏しい分ユーベルコードが強力……だっけか…
…目立った腐敗があまりないのは幸いだね…
…【戦術構築:奸計領域】を発動…戦闘能力が上がったゾンビとまともにやり合うのは下策…
…研究施設の構造は予め頭に叩き込んでおいて…と…
…まずはゾンビを地上に出さないよう多少強引にでも研究施設内に突入…
…ちらちらと姿を見せて後追わせつつ
浄化の魔力を宿した術式組紐【アリアドネ】を張り巡らせた罠で数を減らしていくとしようか…
…進行方向に出て来たゾンビは浄化復元術式【ハラエド】で即座に対処…
…ゾンビ達の数を減らしながら奥へと進んでいくよ…



「オオオ、ウ、ォォオオ――!!!」
 雷撃の一撃が地下の『フラスコチャイルド研究施設』の跡地に叩き落され『ND-DUST』たちが一瞬の内に焼き焦げ霧散していく。
 けれど、その一撃は地下に存在していた『ゾンビ化』しているであろう『ND-DUST』たちを惹きつけるには十分すぎる轟音であった。
 彼らの叫びは意味を持たない。
 悲哀も、怨嗟も、関係のないただの反応の一つ。
 しかし、その咆哮が『ND-DUST』たちの間に広がり、彼らの肉体を強化していく。その範囲と強化の度合いは通常に見られるオブリビオンのユーベルコードよりも強力に見えるのは、『ゾンビ化』というプロセスを経ているからであろう。

 此処にアポカリプスヘルにおける『ゾンビ化』という現象を解明する何かがあるのかもしれない。
 そのために猟兵達はこうして『ゾンビ化』オブリビオンの討滅と、その検証データを得るために危険な戦場へと飛び込むのだ。
「……ゾンビとかそういうのはフィクションの中だけにしたいよね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)にとって、『ゾンビ』というものはフィクションの中に存在するものである。
 腐敗し、ただれた皮膚の下から覗く嘗ての肉体の残滓。
 あらゆる体液がただれ落ち、腐敗と腐臭だけを撒き散らす存在。疫病の元にもなり、増殖していくのは、後年に後付された設定であろうことは言うまでもない。

 ただし、それはフィクションの中に限っての話だ。
 今アポカリプスヘルの現実の中に『ND-DUST』と呼ばれるフラスコチャイルドの廃棄品がオブリビオンとなった存在は、確かに知性の輝きすらない瞳でメンカルに襲いかからんと、散漫な動きながら迫ってきていたのだ。
「……目立った腐敗があまりないのは幸いだね……」
 強力になっているように見えるユーベルコード。
 それが『ゾンビ化』オブリビオンの特徴の一つである。けれど、知性なき存在に対して、メンカルが恐れることはない。

 その瞳がユーベルコードに輝き、戦術構築:奸計領域(ウェルカム・キルゾーン)を展開する。
 この地下の『フラスコチャイルド研究施設』という戦場にあって、そのユーベルコードはメンカルという猟兵の力を数倍にまで引き上げることだろう。 
 すでに『フラスコチャイルド研究施設』の構造は頭に叩き込まれている。兎にも角にもメンカルがまず第一にしなければならないのは『ゾンビ化』した『ND-DUST』たちを地上に出さぬことである。

 目の前に迫る『ND-DUST』たちを前にメンカルが展開した浄化復元術式『ハラエド』が展開され、その不浄なる存在を即座に霧消させていく。
「……敵の数が多いの厄介だけど、大した知性がない……此方を見れば向かってくる。逃げようとすれば地上がすぐそこにあっても、此方を追う……」
 それらの習性を利用して、メンカルは単身『ND-DUST』たちの群れを中央突破し、彼らを引き連れるようにして地下の施設へと更に走っていく。
「オ、オオオオァ、ァ――」
 彼らを惹きつけるようにして走ることなど容易なことであった。

 動くもの、生者を追い立てる習性しかない彼らに、メンカルが張り巡らせた罠を看破することなどできはしない。
 浄化の魔力を宿した術式組紐『アリアドネ』を張り巡らせた、ワイヤートラップでもって彼女の背を追う『ND-DUST』たちは次々と切り裂かれ、その身体を切り刻まれていく。
「罠を感知できない。生者を追うことしか頭にない……知性がないというのは、ユーベルコードを強力にしても、プラマイゼロ以下にするようだね……」
 これならばメンカルは急いで彼らを振り切ることはしないでいいと判断する。
 チラチラと己の背を追わせるように『アリアドネ』の術式組紐を張り巡らせ、『ND-DUST』たちの数を減らすだけでいい。

 これならば最小の労力で、さらに地下に潜むであろう『ゾンビ化』オブリビオンの親玉のところまで敵戦力を削りながら向かう事ができる。
 果たして『ゾンビ化』とは如何なるものなのか。
 知性を喪わせ、傀儡とするためだけの力であるのならば、それを手繰る何者かが存在しているはずだ。
 オブリビオンを従わせ、ユーベルコードを強化する。
「……物量で押す……というよりは、倒された存在の再利用、兵隊を揃える……そういう使い方はできそうだけれど……」
 メンカルは考える。
 オブリビオン・ストームによって死体は破壊され、『ゾンビ化』したような存在となって人々を襲う。
 それは生命を尽く滅ぼすという意味では回りくどいやり方に思えたことだろう。

 倒れても、再び立ち上がる『ゾンビ』という戦力はまるで敵に対する消耗戦を強いるような術策。
「……回りくどいけれど、確実にすりつぶすことはできる……」
 それが意図して行われたことなのか、それとも偶然なのか。
 答えは未だでない。けれど、研究データ、検証を重ねることによって見える真実があるだろう。

 願わくば、これが杞憂であることをメンカルは祈らずにおられず、そして己の背を追って組紐によって刻まれ霧消していく『ND-DUST』たちの哀れなる末路を見やるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・ライム
久しぶりの任務ね
ゾンビの大群を蹴散らすだけとはいえ、こうも数が多いと厳しいわ
こういう時はあなたの出番よ!
炎鋼巨神カマドG!
腐臭も酷いし、私はコクピットへ退避させてもらうわね

すぐにUC発動!
煌めく爆炎紅蓮色の覇気を纏えば
ゾンビたちの捕食欲求という名の悪意が一斉に向けられる
大群からの悪意のおかげで連続攻撃回数は無限に増えてゆくわね!
近付くゾンビは火属性の覇気+オーラ防御で焼却よ!
そしてUCで増幅した無限コンボで敵群のUCにカウンター!
ゾンビの群れを蹴散らしてゆくわ!
カマドGのヒートクローを功夫の要領で振るって爆砕よ!

汚物は焼いて消毒だって言うでしょう?
荼毘に付して差し上げますわ!
ごめんあそばせっ?



 猟兵たちが地下『フラスコチャイルド研究施設』の跡地という『ゾンビ化』した『ND-DUST』たちの巣窟へと飛び込むことによって、刺激されたのは彼らの本能であったのだろう。
 著しく知性を喪っているオブリビオン。
 それが『ゾンビ化』オブリビオンである。彼らには嘗てあったであろう知性と意志はなく、ただ生者に対する反応だけで行動する傀儡の如き存在へと堕とされているようであった。
 同時に彼らが手繰るユーベルコードは強化されているようにも思える。
 この現象が何者かによる力の一端であるのか、そうではないのか。未だ真実は遠く、けれど『ゾンビ化』というオブリビオン・ストームによる現象が齎す悲劇は食い止めなければならない。

 久しぶりの任務に当たる蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)は、己が行うべきことを正しく認識していたことだろう。
『ND-DUST』と呼ばれる『ゾンビ化』したオブリビオンたちを蹴散らし、検証データを集めること。
 けれど、ライムは死臭漂う地下『フラスコチャイルド研究施設』に在って、顔をしかめる。
「蹴散らすだけとは言え、こうも数が多いと厳しいわ」
 目の前に迫る『ND-DUST』たちの群れ。
 彼らが振るう異形なる腕は、その異形なる形を知らしめるようにライムへと伸びる。それらはライムの眼前で真紅の鋼鉄の腕によって叩き潰される。

「こういう時はあなたの出番よ! 炎鋼巨神カマドG!」
 ライムの言葉に応えるように炎の神気を宿す真紅の鋼神にしてライムの相棒が立ち上がる。
 その真紅のスーパーロボットの掌にライムは守られながらコクピットの中へと退避する。腐臭が此処までひどいと流石にライムも鼻を摘みながら戦わなければならないだろう。
「あなたたちの命運は……此処までよ!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 きらめく爆炎紅蓮色の覇気が炎鋼巨神カマドGの機体を覆う。

 それは大気を揺らめかせるほどの熱量で以て『ND-DUST』たちを焼き滅ぼす力の発露。
『ND-DUST』たちは、生者の放つ煌きに対して反応する。
 彼らが求めるのは生者の生き血と肉だけである。
 腹が減っているわけではない。生理現象でもない。ただ、そうあるべきというかのようにただ鏖殺せしめるためだけに行動するのだ。
 そこに怨嗟も、悲哀もない。
「その有様、哀れね……汚物は焼いて消毒だって言うでしょう? 荼毘に付して差し上げますわ!」
 むけられた悪意によって炎鋼巨神カマドGの振るう炎の神気を宿したヒートクローの一撃が『ND-DUST』たちを一蹴する。

 吹き飛ばされ、炎の中に霧消していく『ゾンビ化』オブリビオンたち。
 彼らは確かにユーベルコードを強化されているようにも思えた。けれど、それらは炎の神気によって焼き払われる。
 知性なきオブリビオンにこれを防ぐ手立てなどない。
「ウ、ォォオオ、オアアアア――!」
 咆哮が聞こえる。
 そこに意味がないことを知りながら、ライムは炎鋼巨神カマドGのヒートクローを振るって、彼らの存在を焼却し続ける。

「『ゾンビ化』なんて、フィクションみたいなことが起こり得るのが、アポカリプスヘル……そこにどんな原因があるのかはわからないですけれど……」
 それでもこの『ゾンビ化』オブリビオンひしめく『フラスコチャイルド研究施設』を放っておけば、いずれ人々が住まう『拠点(ベース)』にまで累が及ぶことがあるかもしれない。
 それらを未然に防ぐためには、彼らを滅ぼすしかない。
 研究データを得、そして再発を防ぐ。
 その先に何が待ち受けているかなど、今は知る必要はない。己達ができることは愚直に積み重ねていくことだけだ。

 ふるわれる炎の神気が『ND-DUST』達を焼滅し、彼女の言葉通り荼毘に付すように消えていく。
 優雅に舞うようにふるわれる炎鋼巨神カマドGのヒートクローが葬列を彩るように大気を揺らめかせ、死臭すらも吹き飛ばすのだ。
「ごめんあそばせっ?」
 ライムはコクピットの中で、優雅に一礼し、彼らの存在を焼却し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ほほう、この荒野の世界でゾンビと出会うとはな。
魔術も使わずにゾンビを生み出すとは興味深い。
これは死霊魔術士である我への挑戦とみた!」

弟子と再びはぐれて半月。
荒野を彷徨う我が出会ったのはゾンビの群れであった。

……べ、別に、あのゾンビ食えるだろうかなどと考えてないからな!?

「ともかく、我の死霊魔術とゾンビども、どちらが上かはっきりさせてくれよう!
出よ、我が下僕たちよ!」

死霊魔術【リザレクト・オブリビオン】で、我の手足として動くアンデッドを召喚し、ゾンビどもを蹴散らしてくれよう。

「あんな雑魚ども、正面から叩き潰してくれるわ!
さあ行くのだ、下僕たちよ!」(知性をかけらも感じさせないような大雑把な作戦



 フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)が彼女の弟子兼飯スタントと再びはぐれて半月あまりが経過しようとしていた。
 生活力皆無とも言える不死身の魔女とて腹は減る。
 特にフィアは魔術の行使に魔力を使い、魔力を使えば使うほどに腹ぺこになっていくという同しようもない弱点を抱えている。
 戦えば戦うほどにお腹が空いて力が出ないのである。水に濡れて力が出ないと同じレベルである。

 そんな彼女がアポカリプスヘルの荒野をさまよっていると、出逢ったのは地下の『フラスコチャイルド研究施設』に残された『ゾンビ化』した『ND-DUST』たちであった。
「ウ、ォォオオ、ォ、ア――」
 意味をなさぬ声。
 何を言っているのかなど理解しようと思わない。ただ、フィアはじっと彼らを見て考え込んでいた。
 別に悲哀に満ちているであろう彼らの人生の慣れ果てを哀れんでいたわけではない。
 ぐぅ、と腹の音が鳴ったのは、まさか……

「……べ、別に、あのゾンビ食えるだろうかなどと考えていないからな!?」
 誰に言い訳しているのかは定かではないが、フィアは頭を振る。
 この荒野の世界でゾンビに出会うこと事態が彼女にとっては珍しいことであったのだろう。
 死霊魔術師である彼女にとって『ゾンビ化』というのは興味深いことではあったのだ。
 見た所魔術を浸かっている痕跡はないように思える。本来フィアの中の知識であれば死霊は霊魂を使って屍を動かし、操るものである。
 しかし、目の前の『ゾンビ化』したオブリビオンたちは『知性を喪っている』のだ。考えることも命令に従うこともなく、ただ生者を貪り食わんとしている。ただそれだけなのだ。

「これは死霊魔術士である我への挑戦と見た! いでよ、我が下僕たちよ!」
 ともかく己の死霊魔術とゾンビ、どちらが上であるかをはっきりさせてくれようと彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 リザレクト・オブリビオンによって召喚された死霊騎士と死霊蛇竜がアポカリプスヘルの大地に降り立つ。
 死臭むせ返る地下『フラスコチャイルド研究施設』の跡地に死霊騎士が死霊蛇竜にまたがり飛び込んでいく。
 たとえ『ND-DUST』たちが数に任せて責め立てるのだしても、蛇竜と騎士の人馬一体の如き力の前には無意味である。

「あんな雑魚ども、正面から叩き潰してくれるわ! さあ行くのだ、下僕たちよ!」
 もう少し作戦とかなかったのかなぁと、死霊騎士は思わないでもなかった。
 けれど、召喚主の言葉であるから従わざるを得ない。まるで知性の欠片も感じさせない大雑把な作戦。
 正面からドーンと言って、バーンって蹴散らして、ズドンである。
 死霊騎士は若干困惑する。
 流石にもうちょっと指示があると嬉しいんだけどな、という意味ありげな視線をフィアに送るが、フィアは――。

「何をしておる。さっと言って、ズババっとやってこんか!」
 死霊騎士は諦めた。
 騎乗している死霊蛇竜も右に同じである。吶喊、突撃がモットーと言わんばかりのフィアの作戦のままに彼らは『ND-DUST』へと突撃し、蹴散らしていく。こんな大雑把な作戦が可能なほどにはフィアの魔力の質は良いものであるのだ。
 力押しができるということは、それだけ優れた術者であるという証明でもある。振るう刃が『ND-DUST』たちを次々と霧消させ、『フラスコチャイルド研究施設』の最奥へと駆け抜ける。

 フィアは魔力の行使でお腹が更に空かせながら、腹の虫をたしなめつつ、『ND-DUST』の残骸を見下ろす。
「……か、考えておらぬ! 考えてなどおらぬからな!」
 やはり誰かに言い訳するようにフィアは、飛び散った肉片から目をそむけ、『フラスコチャイルド研究施設』の奥へと歩む。
 いや、流石にそれを食べようと思うとは思っていなかったが、先程のフィアの目を見たら心配にもなるというものである。

 愛弟子、早く来てくれー!
 そう願わざるを得ないフィアのお腹事情を示すように、アポカリプスヘルの荒野に腹の音が響くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が目立ちすぎて忍べないとかそんなことないもん!!(お約束)

うん、反応が無いゾンビ相手って悲しい(しくしく)
やっぱり私にここは似合わないようです
万が一私みたいなクノイチがゾンビになると
なんかもう(属性的に)収拾つかなくなりそうですよね
というわけで近寄るのをやめておきます

【VR忍術】火遁・炎壁の術!
こう、地面から炎の壁が立ち上がるイメージ!
近寄ってくるゾンビから燃やしていきますね
ゲームだと一気に踏みつぶされることもありますが
ユーベルコードなら大丈夫でしょう!(フラグ

ところでここのゾンビって他のゾンビと何か違うんですかね?
ちょっと気にしながら観察していきます



 アポカリプスヘルの荒野にゾンビのうめき声が木霊する。
 世界から世界に泣く人の涙背負ってオブリビオンの始末!
 バーチャルクノイチ、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)即参上!

 とまあ、そんな具合に始まる気配があったのだが、今回の相手は『ゾンビ化』し知性を喪った『ND-DUST』と呼ばれるオブリビオンたちである。
 せっかくの前口上もあんまり意味がなさそうであるし、そうしたところで彼らが怯むことはなかった。
「ウ、ォォオオ、オオオオ、アアアア――」
 ほらやっぱり。
 けれど、そんなことで怯むサージェなのではなかった。
 やらずには居られないのが前口上であるし、お約束である。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が目立ちすぎて忍べないとかそんなことないもん!!」
 誰も突っ込まないから、普通に前口上全部言えてしまった。
 これはこれで、なんかこう、物足らない気持ちになってしまうのは、あまりにも教育されすぎてしまったからであろうか。

 ともあれ、お約束の前口上を告げ、びしっとポーズまで決めたサージェの前に迫るのは『ゾンビ化』した『ND-DUST』たちであった。
「オオオオオ、ア――!!」
 前口上とかお約束とか、そんなの知ったことではないとばかりに咆哮を挙げて、その腐敗したような異形なる腕を振るってくるのだ。
「やっぱり反応がないゾンビ相手って悲しい」
 シクシク。
 あまりにも悲しい。こういう時、ツッコミ役の人がいてくれたらなぁと思わないでもないのだ。

 けれど、この世界観。
 サージェはどうにも似合うことがないように思えたのだ。万が一、サージェのようなセクシークノイチがゾンビになるとなんかもう収拾が付かなくなりそうである。
 なので、サージェは万が一があってはならぬと近づくことをやめ、メモリをコンソールにインストールする。
 瞳に輝くユーベルコードが言っている。
 そう、汚物は消毒だひゃっはー!

「メモリセット! チェックOK! 参ります! VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)、火遁・炎壁の術!」
 地面から噴出するは、炎の壁。
 それがサージェに迫る『ゾンビ化』した『ND-DUST』たちを一瞬で燃やし尽くす。彼らにとって熱も冷たさも、攻撃も何もかもが一緒くたである。
 そこに己たちの身体が火に灼けてしまうという知性は何一つない。ただ愚直に生きている者を襲わんとする、唯一つの指令を全うせんとする意志しかなかったのだ。

 故に、炎の壁は其処にあるだけで『ND-DUST』たちを尽く滅ぼしていくのだ。
「ゲームだと一気に踏み潰されることもありますが、ユーベルコードなら大丈夫でしょう!」
 バーチャルキャラクターであるサージェにとっては、よく見た光景である。
 ゾンビゲームであればお約束と言ってもいい。こういう時現実とゲームの区別が出来ていることは素晴らしいことである。
 けれど、悲しいかな。
 彼らはオブリビオンであるし、知性を喪った『ゾンビ化』オブリビオンである。たとえユーベルコードであったとしても、関係なく炎を踏み越え、仲間の残骸すらも踏みつけにしてサージェに迫ってくるのだ。

 そう、フラグ回収というやつである。
「って、あれー!? ちょ、ちょっと待ってください! なんかここのゾンビって他のゾンビと違いませんか!?」
 目立った腐敗が追加されているわけではない。
 ただ『知性を著しく喪っている』ことと、ユーベルコードが強力になっているように見えるだけだ。
 死体がオブリビオン・ストームによって飲み込まれて『ゾンビ化』したような存在に成り果てることは多く確認されている。

 炎を踏み越えてくる『ND-DUST』たちがその証拠だ。
 知性があるからこそ炎を恐れるし、己が滅ぶことも忌避するだろう。けれど、そんなことお構いなしに生者のみを襲うようにプログラムされたかのように『ゾンビ化』したオブリビオンたちはサージェに襲い来る。
「観察してもやっぱり腐敗がない……けど、あー! ちょ、ダメですってば、近づくのはNGでーす!」
 火遁の術で膨れ上がった炎が『ND-DUST』たちを吹き飛ばして、燃やし尽くしていく。

 死体をオブリビオンに変えるオブリビオン・ストームの力。
 過去の存在が骸の海から滲み出たものがオブリビオンであるのならば、オブリビオン・ストームそのものになんらかの力や意志があるのだろうか。
 サージェは『ゾンビ化』した『ND-DUST』たちを観察しながら、地下の『フラスコチャイルド研究施設』の跡地へと踏み込んでいくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ナイアルテ様発案の儀式魔術「Q」により齎されたこの機会
この世界に未だ残る災害への有効打となれば良いのですが

そして、生者の為に災いの芽を摘むことに変わりなし
騎士として、せめて彼らに“終わり”を齎しましょう

UCの機械妖精で施設内の構造を●情報収集
近接攻撃で幾らか数を減らし、適当なタイミングで後退
狭い通路に誘い込み

物量と膂力を中心に強化された個々の戦闘力は侮れませんが…やはり危機回避の為の知能すら完全に失われていますね

電脳剣の簡易電脳魔術で機械妖精を●ハッキング武器改造出力●限界突破
複数機の頭部レーザーで格子状のレーザーの“網”を形成
逃げ場無き通路を前進させ切り刻み

…物を処理するが如き行いはお許しを



 世界を暴く暴虐なる知の剣こそが、儀式魔術【Q】である。
 アポカリプスヘルにおける大きな戦い、アポカリプス・ランページが終結したことは記憶に新しいものである。
 だが、未だ『フィールド・オブ・ナイン』の三柱は眠りについたままであり、その存在の所在は未だ知られていない。
 オブリビオン側にとってもそれは同様であるように予兆によって知られるものであったが、それでも、その存在がアポカリプスヘルに生きる人々にとって害でしかないことは言うまでもない。

 猟兵たちが暴き出す謎。
 その一端を今掴んだ猟兵たちが立ち向かうのは『ゾンビ化』の検証である。
「この世界に未だ残る災害への有効だとなれば良いのですが」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、儀式魔術【Q】によって、世界がより良いものに、そして今を生きる人々を護るための一歩になればいいと願わずには居られなかった。
 確かにこれは『ゾンビ化』の検証と研究データを集める為の戦いでもある。

 けれど、それ以上に生者の為に災いの芽を摘むための戦いでもあるのだ。
「騎士として、せめて彼らに“終わり”をもたらしましょう」
 トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに輝くのと同時に、自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)が複数、地下の『フラスコチャイルド研究施設』跡地へと飛び込んでいく。
 施設内の構造はすでにトリテレイアの電脳の中に収められている。

 死臭漂う施設内跡地は、ウォーマシンである彼にとっては問題にはならなかったが、それでもなお未だ多くの『ND-DUST』たちが『ゾンビ化』によって蠢き、うめき声を上げる姿が妖精型ロボたちのカメラから伝えられる。
 それを哀れと思わないわけではない。
 知性無き存在。彼らが如何にして『ゾンビ化』にいたり、その根源が如何なるものかを知る必要がある。
「ウ、ォォオオ、オ、ァ――」
 悲哀も、怨嗟もない。
 ただ、反応しているだけ。動くものに見境なく襲いかかる程度の知性しか残されていない存在である。

 それは生者ではない機械、妖精型ロボにまで反応し、トリテレイアは惹きつけるように狭う通路へと彼らを誘い込む。
 頭部に内蔵されたレーザーの一撃が『ND-DUST』たちの肉体を焼き切っていく。
 知性があるのならば、己たちの仲間が攻撃されたことにで幾分こちらの攻撃に対して対処や防御といった反応を示すはずだろう。
 けれど、『ND-DUST』たちはそれすらしない。
 防御も何も関係がないのだ。
「やはり、彼らは……知性を失いすぎている。物量と膂力、それらが強化された個々の戦闘力は侮ることはできないと思っていましたが……」

 それを損なうほどの知性の損失。
 妖精型ロボの放つレーザーを躱すこともせず、動くものだけを追い求める『ND-DUST』たちを狭い路地に誘い込んでの各個撃破は容易なものであると言わざるを得ない。
「やはり危機回避のための知性すら完全に喪われていますね」
 次々と狭い路地に誘い込まれては討ち滅ぼされていく『ND-DUST』たちの姿をトリテレイアは妖精型ロボのカメラアイから見つめる。

 抜き払った電脳禁忌剣の簡易電脳魔術によって妖精型ロボの武器出力を改造し、限界を超えた出力をもって複数の機体と共に格子状のレーザーの網を形成していく。
 彼らが動くものを愚直に追い求めるのならば、この逃げ場無き通路にて一気に彼らを殲滅すればいい。
「……物を処理するが如き行いはお許しを」
 投網のように張り巡らされた格子状のレーザーと共に妖精型ロボが飛ぶ。
 それは一気に『ND-DUST』たちを切り刻み、狭い通路に誘い込まれた彼らを尽く霧消させていく。

 大量に霧散させられた『ND-DUST』たちの咆哮が地下『フラスコチャイルド研究施設』の跡地に響き渡る。
 それはあまりにも無残な最期であったことだろう。
 生まれた意味も、理由もなにもなく。
 ただ徒に意志すら奪われた存在。それらが生者に牙を剥くことなどあってはならない。トリテレイアは騎士として、それを防がねばならないのだ。

「……この『ゾンビ化』……他世界の死霊魔術とは異なるものなのでしょうか……あちらは魂を縛る、手繰るもの。対してこちらは……」
 肉体という器だけを如何にしてか手繰る術。
 腐敗の追加は見られない。されど、ユーベルコードが強化されているように思える力。
 如何なる存在がこれを為すのか。
 オブリビオン・ストームと呼ばれる黒き竜巻。その存在が齎す災厄をトリテレイアは防ぐことができるだろうか。

 そのために蓄積したデータを持ち帰り、この最奥に座す『ゾンビ化』したオブリビオンの首魁を仕留めなければならない。
「これもまた人々を脅かす災いの芽を摘むために必要なこと。如何なる障害が存在していようとも、これを突破しなければなりません」
 電脳禁忌剣を携え、トリテレイアは地下『フラスコチャイルド研究施設』の跡地へと足を踏み出す。
 いつだって己は戦えぬ者たちの盾である。
 その思いを胸に彼は、災いの根源へとためらうことなく一歩を踏み出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ゾンビジャイアント』

POW   :    ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かつての地下『フラスコチャイルド研究施設』の最奥に響く咆哮があった。
 それは『ゾンビジャイアント』と呼ばれる異形なる存在が放つ咆哮であり、あらゆる血肉、兵器、機械群すらも捕食しつづける存在が今尚、その体躯が健在であることを示していた。
 ぶよぶよとした屍人の色の体皮。
 あらゆる暴食の結果とでも言うべき姿。
 人の形すらも忘れたかのような姿は、見るものにおぞましき感情を与えることであろう。

 死臭が体積し、あらゆる残滓を飲み込んだ存在が己に迫る猟兵たちの存在を感知し、凄まじい咆哮を上げる。
「オオオオオオ――!!!!」
 地下の『フラスコチャイルド研究施設』に木霊する咆哮は、耳に突き刺さる。
 一歩を踏み出すだけで、施設の中が揺らぐほどの巨体。
 猟兵達は見上げることだろう。
 その体躯こそが『ゾンビ化』という検証すべき現象の集大成とでも言うべきか。
 未だ実体のつかめぬ『ゾンビ化』への一端を掴むべく、猟兵達は圧倒的な存在へと立ち向かわねばならぬのだ――!
黒髪・名捨
【行動】
はあ、前髪焦げるはゾンビ腐臭が酷いは碌な目に合ってなーな今回。
これ匂いが染みついてねーよな。
考えるのは俺ら脳筋組じゃなくて頭いい奴らに任せて『情報収集』といきますか。(寧々「妾は頭脳労働組じゃぞ」)

ゾンビジャイアントの注意を引きつけて『おびき寄せ』その間に寧々には情報とりと研究施設の家探ししててもらう。

まずは長い髪の毛で足元を『なぎ払い』『体勢を崩す』
スタングレネードを『投擲』『目潰し』などで、動きを抑制し、弱らせつつ動きのデータをなるべく多く出させる。

アレ…こいつ目があるのか?

さ、さて、そろそろオレの鼻と精神が限界なんでここいらでお開きだ。
『破魔』の効果を乗せ陸断を脳天に叩きこむ。



 はぁ、とため息が漏れ出る。
 それは死臭立ち込める地下『フラスコチャイルド研究施設』の最奥に在っても変わらぬものであった。
 焦げた前髪を払い除けて黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は異形なる巨躯を誇る『ゾンビジャイアント』を前にしても平素の態度を崩すことはなかった。
 前髪は焦げるは、ゾンビ腐臭がひどいは、碌な目にあっていないと彼はため息をまた吐き出した。
 どうして自分がこんな目に、とはまでは行かないでも、不条理が身に染みるのだ。
「これ匂いが染み付いてねーよな」
『合法阿片』によってドーピングされているからいいものの、効能が切れた時のことを考えるだけで憂鬱である。

「こういうことはさっさと終わらせて始末をつけるのがいい。考えるのは俺等脳筋組じゃなくて頭いい奴らに任せて情報収集と行きますか」
「妾は頭脳労働組じゃぞ」
 ぺちんと、頭の上に乗っかっている『寧々』が名捨の頭を叩く。
 最初からなんかダメージが入っている気がするのは気の所為だろうか。そんなことを名捨は思いながら己の覇気を解き放ち、『ゾンビジャイアント』の注意を引きつける。

「『寧々』は研究施設の家探しをしといてくれよな。頭脳労働組だろ」
 そういって名捨は駆け出す。
「ウォオオオオオオア――!!!!」
 凄まじい咆哮とともに『ゾンビジャイアント』の右腕のチェーンソー剣が轟音を立てる。やかましいことこの上ない。
 振るい上げられたチェーンソー剣が床に叩きつけられ、その緩慢な動作を補うように床を巻き込みながら巨躯を名捨に肉薄させる。
 ぶよぶよとした屍人色の体皮がたわみ、名捨に迫るのだ。

「知性がなくたって、戦術は一通りってか!」
 相手がチェーンソー剣で肉薄するというのならば、その足元を薙ぎ払う。長居髪の毛が振り乱され、『ゾンビジャイアント』の巨躯たる足元を掴み、払うのだ。
 巨大な体躯であったとしても名捨は裂帛の気合と共に迫る『ゾンビジャイアント』の体勢を突き崩す。
 投げ放ったスタングレネードが光を放出し、目潰しを……と考えて名捨は、『ゾンビジャイアント』に目のような器官が見当たらないことに気がつく。

「……こいつ目がないな」
 だが、強すぎる光と音は『ゾンビジャイアント』の身体がたたらを踏むのは十分であった。引き絞った長い髪がついに『ゾンビジャイアント』の巨躯を傾がせ、凄まじい音を立てて床に倒れ込む。
「『ゾンビ化』っていうのは、腐敗が追加されることじゃない。死んだものを物体として操る……ってことなのか?」
 そうであれば、『ゾンビジャイアント』が機械の類すらも関係なく飲み込むことによって熱反応を頼りに生者を追い立てているのにも納得がいく。

「ともあれ、そろそろオレの鼻と精神が限界なんでな」
 名捨の瞳がユーベルコードに輝く。
 こんな死臭立ち込める場所に長居などしたくはないのだ。飛び上がる名捨の身体が倒れ込んだ『ゾンビジャイアント』よりも高く跳ね上がる。
 黒く長い髪をなびかせながら、彼の瞳に輝くユーベルコードが彼の身体を重力に従って加速させるのだ。
「ここいらでお開きだ。んじゃな。――あばよッ」
 放たれるは超高速の蹴撃。

 その名を陸断(リクダチ)。

 裂帛の気合と共に放たれる蹴撃の一撃は断頭台の上に立たされたかのようなものであった。
 倒れ込んだ『ゾンビジャイアント』の恐らく首であった部分に放たれる蹴撃の一撃。
 それは狙い過たず『ゾンビジャイアント』の首を切り裂くように断ち切り、凄まじい腐臭と腐敗した体液を撒き散らす。
「うへ……マジでやってらんねーなッ!」
 飛び散る体液を躱しながら、名捨は未だ戦いが終わらぬことを悟る。

 首を落としても尚、動く『ゾンビジャイアント』。
 それは最早、そこに魂が宿っていないことを示していたことだろう。ただの物体。肉塊と言っていい『ゾンビジャイアント』。
『ゾンビ化』とは如何なるものなのか。
 未だ答えの出ぬ問い。
 けれど、名捨の一撃は、確かに暗澹たる世界の謎にメスを入れるものであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・ライム
引き続きカマドGに搭乗中

私もかつてオブリビオンとして『そちら側』にいた身だけど、ああまで醜悪な姿を晒すなら死んだほうがまだね……
この個体の大元のフラスコチャイルドだって、こんなふうに変貌を遂げるのは本望じゃなかったはずよ

爆炎紅蓮色の覇気を機体から吹き出しながら
スラスター推力で間合いを保つわよ

ハロウィンにはまだ早いけど
ゾンビ化のデータ採集がてら、安らかに眠らせて上げるわ

カマドGのコアであるヒヒイロカネの勾玉から1億℃の熱光線を連続照射
巨大な身体の秘孔を熱光線で刺し貫いてUC発動

巡り……芽吹いて……爆ぜなさい!
蛇炎神拳・伍式『皐月』!

爆破する白い身体
ついでに右腕のチェーンソーを操って自刃させるわ!



 時間は過去を排出しながら進み行くものであるのならば、過去の集積地たる骸の海よりにじみ出たのがオブリビオンである。
『ゾンビ化』したオブリビオンに目立った腐敗はない。
 けれど、死体というモノに成り果てた物体がオブリビオン・ストームによって『ゾンビ化』オブリビオンへと変貌するのであれば、それは魂無き容れ物が意志無き攻撃性を伴った怪物へと変貌したことを意味するのであろう。

 それが真実であるのか、正しいのかは未だ語られず。
 されど、目の前に存在する首なしの『ゾンビジャイアント』は、たるんだ屍人色をした体皮を揺らめかせ、その身に宿した薄汚れた体液を嘗て首であった部分から噴出させつつ立ち上がる。
 もはや引き裂かれた口腔の如き裂け目から溢れるのは咆哮とも言い難い、耳を塞ぎたく為るような音であった。
「――ッ!!!!!」
 その異様なる姿を見て、蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)はスーパーロボットである炎鋼巨神カマドGのコクピットの中で、ああはならずに済んだことに胸をなでおろす。

 過去の存在が成り果てるモノ。
 それが『ゾンビジャイアント』であるというのならば、あのような醜悪な姿を晒すことは彼女にとっては本意ではなかっただろう。
「この『フラスコチャイルド研究施設』に嘗て存在したフラスコチャイルドの個体が、こんな変貌を遂げたのだとしたら……本望じゃなかったはずよ」
 それは哀れみでもなんでもない。
 生命に対する冒涜そのものであったことだろう。

 どれだけ肉体が魂の容れ物であるのだと説かれたのだとしても。
「それでも遺体を弄ぶ行いに、人は怒りを覚えるものだから」
 爆炎紅蓮色の覇気が炎鋼巨神カマドGの機体より噴出する。体高5mのスーパーロボットが『ゾンビジャイアント』との距離を保つために、覇気でもって牽制するのだ。
 あの巨体に組み付かれてしまえば、如何に炎鋼巨神カマドGであっても、負荷に耐えることはできないだろう。
 なにより、右腕のチェーンソー剣の威力は装甲を削ることだろう。
 だからこそ、炎鋼巨神カマドGのコアであるヒヒイロカネの勾玉から発せられる熱光線が『ゾンビジャイアント』のたるんだ体皮に撃ち込まれ、その身を焼き焦がす。
「――ッ!!」
 口腔から響き渡るのは悲鳴か、それとも怨嗟か。

 あの『ゾンビジャイアント』はあらゆるものを捕食する。
 人肉であろうと機械であろうとあらゆるものを捕食し、取り込む力があるからこそ、ライムは距離を取りながらヒヒイロカネの勾玉から放たれる凄まじき熱量の光線でもって距離を保つ。
「距離を保つだけに放っているわけじゃないわ!」
 ライムの瞳がユーベルオードに輝く。

「巡り……芽吹いて……爆ぜなさい!」
 熱光線の一撃が『ゾンビジャイアント』の体皮を焼き、其処へ叩き込まれる拳の一撃。
 拳から流し込まれる爆炎紅蓮色の覇気が『ゾンビジャイアント』の体内に駆け巡っていく。

 右腕に生えたチェーンソー剣が跳ね上がる。
 炎鋼巨神カマドGにふるわれるかと思った瞬間、そのチェーンソー剣の刃が『ゾンビジャイアント』自身の胴へとふるわれる。
 凄まじい腐臭を放つ体液を撒き散らしながら『ゾンビジャイアント』自身が己の腹部をチェーンソー剣で引き裂くのだ。

 それこそが蛇炎神拳・伍式『皐月』(ジャエンシンケン・ゴシキ・サツキ)。
 その覇気を流し込まれた存在は、限定的とは言え己の身体をライムに操られていまう。
「これが蛇炎神拳・伍式――」
 ライムの瞳がユーベルコードに輝き、腹部を貫いた『ゾンビジャイアント』自身のチェーンソー剣を以て真横に振り抜かれ、その胴体を引き裂いていく。
「――『皐月』!」
 血しぶきのような体液が降りしきる中、ライムは『ゾンビジャイアント』を追い詰めていく。

「再びめぐり芽吹くこともあるでしょう。今度はオブリビオンなんかじゃない、そんな生命として」
 かつて在りし日の姿などもう思い出すこともできないだろう。
 魂の存在すらも感じさせぬ、損なわれた知性。
 その残滓を此処で人知れず葬り去る。それだけが嘗ての生命に対する手向けであるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…これはまた大きい…えーと……ぱっと見は……
…あれか…捕食機能を追加して敵や素材を捕食させれば労せず強化が出来て効率的…とか考えた奴か…
…暴走したときの措置ぐらいは考えて欲しかった…
…さて…(物陰に隠れつつ)知性が無いのであればこれには引っかかるだろう…現影投射術式【ファンタズマゴリア】を発動…
…色んな生物(含む幻獣)の幻影を作り出してジャイアントゾンビに襲いかからせよう…
…その間に【闇夜見通す梟の目】で呼び出したガジェットを通じてデータ収集を行うよ…
……充分にデータが出そろったらそれを元に強化された術式装填銃【アヌエヌエ】からの捕食・融合機能を阻害する銃弾を叩き込むとしよう…



 首を寸断され、胴さえも引き裂かれた『ゾンビジャイアント』の体躯から空気を絞り出すような声が響き渡る。
「――ッ!!!」
 それは最早意味をなさぬ音であり、同時に如何なる感情をも含まぬものであった。
 ただの反応でしかない音。
 それを齎すのが『ゾンビ化』であるというのならば、『ゾンビジャイアント』の元となった死体は如何なる目的で生み出されたものであったのだろうか。

 血肉も機械も、兵器も関係なく捕食し取り込んでいくことが『ゾンビジャイアント』の最も単純な一つの思考であった。
「……これまた大きい……えーと……ぱっと見は……あれか……捕食機能を追加して敵や素材を捕食させれば労せず強化が出来て効率的……とか考えた奴か……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、ざっと『ゾンビジャイアント』の巨躯を見やり、そう判断したのだ。
 恐らく彼女の見立ては正しいものであろう。
 捕食機能によって稼働に必要なエネルギーを得て、同時に取り込んだ兵器や血肉を以て強化されていく存在。

 それが物言わぬ死体となった時、オブリビオン・ストームに巻き込まれたのならば、恐らくあのような異様なる存在へと成り果てるのだろう。
 ぶよぶよとした体皮はすでに引き裂かれ、そこから血液でもない何らかの体液が噴出し続けている。
 呻くような仕草を見せているのは、痛みによる苦悶ではない。
「あれもまた反応……死体になってからオブリビオン・ストームに飲み込まれてオブリビオン化したのだろうけれど……暴走した時の措置くらいは考えて欲しかった……」
 メンカルは物陰に隠れつつ、冷静に『ゾンビジャイアント』の能力を分析する。
 どうやら視界らしきものがなくても動くものに反応するようである。
 ならば、知性が無いものであれば、原初の命令たる生者や動くものを取り込もうとする動きには簡単に引っかかることだろう。

 メンカルは幻影投射術式『ファンタズマゴリア』を発動し、様々な生物の幻影を作り出して『ゾンビジャイアント』へと襲いかからせるのだ。
「……時間稼ぎ……だけれど、これでデータの収集ができるのなら……賢き眼よ、出でよ、視よ。汝は検分、汝は助力。魔女が望むは黄昏飛び立つ森の知者」
 詠唱によって召喚されたのは分析、解析用ガジェットの群れである。
 幻影を前に『ゾンビジャイアント』が左腕の砲口から生体レーザーを解き放ち、決して当たることのない幻影達を攻撃し続ける。

 メンカルはその隙にガジェットから送られてくるデータをつぶさに解析していく。
『ゾンビ化』したオブリビオンは、腐敗が追加されているわけではない。
 それは此処のオブリビオンだけではなく、他のオブリビオンたちも同様であるのだろう。
 ならば『ゾンビ化』とはある意味、そう見えるだけの存在であるのかもしれない。
 ユーベルコードが強化されているように見えるのもまた、同様だろう。そこに如何なる存在の介在があったのかは未だわからない。
 けれど、メンカルにとっては今はそれで十分だった。

 オブリビオン・ストームによる物体のオブリビオン化はこれまでも見てきている。命なき兵器群でさえオブリビオン化させるのがオブリビオン・ストームであるというのならば、生命の喪われたモノ、物体としての死体だってオブリビオンとして手繰ることのできる存在がいたとしてもおかしくはない。
「なら、その捕食、融合機能は……『ゾンビジャイアント』の元になった個体の元々保っていた能力。『ゾンビ化』によって得られたものではないのなら……」
 メンカルはガジェットから送られてきたデータを解析し、術式として己の術式装填銃『アヌエヌエ』に装填する。

 生体レーザーが乱れ打たれる最中、メンカルは駆け出す。
 あの『ゾンビジャイアント』の肉体は、ただの容れ物だ。そこに知性が宿るからこそ、あのオブリビオンは恐ろしさを増す。
 けれど、今『ゾンビ化』した『ゾンビジャイアント』は恐れるに足りない存在だ。知性無く、ただ徒に捕食行動を行うだけの存在。
「……その機能を阻害させてもらう。回復も、復元もさせない。強化だってさせない……」
『アヌエヌエ』の銃口が『ゾンビジャイアント』を狙い、引き金が引かれる。
 轟音が響き渡り、術式を籠められた弾丸が『ゾンビジャイアント』に吸い込まれる。それはこれまで猟兵たちが刻んできた傷痕を捕食と融合に寄って繕おうとしていた『ゾンビジャイアント』の機能を止める一撃。

「――ッ!?!?!」
『ゾンビジャイアント』にとって、それは唐突なるものであったことだろう。
 本来の機能を阻害するメンカルの術式によって、体内から個体としての単一能力を奪われてしまうのだ。
 機能が、己の肉体を復元することすら止める。
 首を失い、胴すらも繋がっていることが不思議な位の損害を受けながら、『ゾンビジャイアント』の巨体がゆらめき続ける。

「無駄だよ。もう復元も、融合も、捕食もできない……後は滅びゆくだけ……後はこのデータを以て『ゾンビ化』の検証をする。良いデータがとれたよ」
 メンカルはガジェットたちを手元に手繰り寄せ、背を向ける。
 最早、己の仕事はない。
 持ち帰った検証データで『ゾンビ化』の真偽が明かされれば、このアポカリプスヘルにおけるオブリビオン・ストームの謎にすら迫ることができるかもしれない。
 世界の謎を暴く、この知恵の剣たる儀式魔術【Q】、その一歩を今踏み出したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
データ収集と解析という意味では、これに頼らぬ選択肢はありませんね

レーザーを対光線兵器反射処理施された大盾で防御
強化レーザーで表面を融かされてもUCの妖精ロボの●情報収集結果を元に更なる強化コーティングが施されます

ただでさえ、光線兵器は故郷で普及しているのです
この剣で強化された守りが撃ち抜かれる事はありません
そして…攻撃を中断する知能も無いようですね

盾受けの技量で反射したレーザーを敵へ打ち返すことで攻撃
切り刻んで肉体を更に解析

あの巨体と武装動かすエネルギーを供給する心臓部…『ゾンビ化』の影響の強化もあるでしょうが

心臓部の位置を●見切り接近
チェーンソーを盾で弾き、剣で刺し貫き

先ずは、眠って頂きます



 撃ち込まれた弾丸が『ゾンビジャイアント』の異様なる体躯にあって、その本来の肉体の機能である捕食、融合の力を阻害する。
 あらゆる血肉、兵器、機械を飲み込み増大していくことこそが『ゾンビジャイアント』の本来の能力である。
 それを阻害する弾丸の一撃は『ゾンビジャイアント』にとっては痛烈なる打撃であったことだろう。
 しかし、彼に今や知性は無いに等しい。
『ゾンビ化』していなかったのならばあるいは。
 いや、それは最早無意味な問いかけであったことだろう。猟兵たちの戦いは繋ぐ戦いである。

 首を寸断し、胴を引き裂き、本来の機能である捕食融合の力すらも阻害する一撃は確実に『ゾンビジャイアント』を追い込んでいたのだ。
「データ収集と解析という意味では、これに頼らぬ選択肢はありませんね」
 電脳禁忌剣・通常駆動機構:兵装改造『妖精の導き』(ウェポンカスタマイズ・スティールフェアリーズ)によって召喚された情報分析に特化し、データを電脳禁忌剣に送る妖精ロボが戦場を駆け抜ける。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己を作り上げた存在に頼り切りになるのは騎士として不甲斐ないと思わないでもなかったが、今此処で使わぬ理由もないのだ。

 アポカリプスヘルに蔓延るオブリビオン・ストーム。
 その謎に迫る一端を今トリテレイアは追う。故に、この『ゾンビ化』という過程を検証し、真実に迫る暴虐の剣を振るうのだ。
「――ッ!!!」
『ゾンビジャイアント』の左腕の砲口が向けられる。
 すでに首を寸断された『ゾンビジャイアント』が上げる咆哮は、意味を成さない。怒りも、苦しみも、怨嗟もなにもないのだ。
 ただの物体が見せる反応の一つ。
 放たれる生体レーザーの一撃がトリテレイアの構える大盾に吸い込まれ、弾かれる。彼の構えた大盾には対光線兵器反射処理が施されている。
 一撃を受け止めることができても、二撃目、三撃目からは反射の力が落ちるのは、それだけ『ゾンビジャイアント』の放つ生体レーザーの威力が凄まじいこともあるのだろう。

 だが、妖精ロボが情報を解析するのにさしたる時間はかからなかった。
 どれだけコーティングを融解させられたとしても、妖精ロボの情報収集結果により、電脳禁忌剣はさらなる強化コーティングを大盾に施すのだ。
「ただでさえ、光線兵器は故郷で普及しているのです」
 そう、己の世界、スペースシップワールドは、此処よりも更に科学技術の発展した世界である。
 銀河の海を往く船すら作り出す人類の科学の結晶が、生体が放つレーザーに対する対抗手段を有していないはずがない。
 さらには電脳禁忌剣によって強化された大盾の守りを貫ける道理などないのだ。

「そして……通じぬとわかった攻撃を中断し、別の攻撃手段に切り替える知能もないようですね」
 トリテレイアは再び『ゾンビジャイアント』を見やる。
 左腕の砲口を向け続け、生体レーザーの乱舞を以てトリテレイアを近づけさせぬとする『ゾンビジャイアント』の動きは、まさに知性のなさを露呈するものであった。
 通常の敵であるのならば、攻撃が通じぬと判断すれば別の手段を講じるだろう。
 けれど、『ゾンビ化』したオブリビオンにはそれがない。
 ただ愚直に命令に従うだけの、単一の行動しかできない。

 大盾に施された強化コーティングが生体レーザーを反射し、『ゾンビジャイアント』へと打ち返す。
 肉を焼く匂いが地下の『フラスコチャイルド研究施設』に満ちていくが、トリテレイアには関係なかった。
 焼き切られた体皮から吹き出す血しぶきの如き体液は、『ゾンビジャイアント』を突く動かす燃料のようなものであろう。
 やはりただの物体。
 有機生命体の残滓というほかない解析情報をトリテレイアはアイセンサーから読み取り、あの巨体の心臓部をスキャンする。

 あれだけの巨体を動かす原動力となる部位が残っているはずなのだ。
「……『ゾンビ化』の影響、やはり物体でしかない。心臓部が脈動してはいるものの、それ単体で巨躯を動かしているわけではない……」
 胴を引き裂かれ、首を寸断されても『ゾンビジャイアント』が動き続けているのがその証左であろう。
 あれはもうただの物体でしかない。
 生物と呼ぶ意味すらない存在だ。

 ならばこそ、その巨躯の動きを鈍らせるためには、重要器官を貫くことは無駄ではないのだ。
「先ずは、眠って頂きます」
 死者の骸を弄ぶ行いは、有機生命体にとって許しがたい侮辱の一つである。
 ウォーマシンである己にとってはそうではないのかもしれない。けれど、彼の心に灯った騎士道精神は、それを否と叫ぶのだ。

 抜き払った剣と『ゾンビジャイアント』の放つチェーンソー剣が激突し、切り払う。すでに生体レーザーの打ち返しに寄って傷つけられた体躯はチェーンソー剣を振るうのだとしても、巨躯としての利点を生かしきれていない。
 盾でガードをこじ開けるように弾き飛ばし、トリテレイアは己の剣の切っ先を『ゾンビジャイアント』の胸へと突き立てる。
 刺し貫かれた胸部から体液が噴出し、ガクガクと『ゾンビジャイアント』の異様なる体躯が揺れる。

 それもまた痛みに喘ぐものではないと知る。
 ただの電気反応。肉体が見せる反応の一つにしかすぎない。目の前の的には魂が宿ってすら居ない。
「ならばこそ、その遺骸は此処で――」
 引き抜いた剣。
 それは死せる後もオブリビオン・ストームによって弄ばれた悲哀を霧消させるように体液に濡れた刀身をきらめかせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ほほう、この魔術工房の主はてっきり死霊術士かと思っていたが、どうやらホムンクルスを製造する錬金術士でもあったようだな」

もはや稼働していないホムンクルス製造装置が並ぶ魔術工房の最奥。
我の前に立つは、巨人のホムンクルスのゾンビ。

「錬金術と死霊魔術の融合か。
だが、我も伊達に漆黒の魔女とは呼ばれておらぬ。
その程度の魔術知識で我を倒せると思うでないぞ!」

【竜滅陣】でホムンクルスゾンビを塵にするため呪文の詠唱を始めよう。

「って、おのれ、その口で我を喰らおうというのか!?
我だって腹が減っているというのに!」

ならば、この【竜滅陣】の魔法をたらふく食べるがよいわ!
口の中に向かって魔術を放ってくれるわ!



「ほほう、この魔術工房の主はてっきり死霊術士かと思っていたが、どうやらホムンクルスを製造する錬金術師でもあったようだな」
 地下に広がる『フラスコチャイルド研究施設』の様相を見て、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は、そう言葉をつぶやく。
 魔女たる彼女にとって、このアポカリプスヘル世界の施設は、その様に置き換えられて見えるのだろう。
 どの世界にあっても人間の考えることは変わらないようである。
 名前や形、技術が変わったのだとしても、根本的なことは変わらない。生命ある者が求めるのは、いつだって不変である。

 己が求めたものもまた同様だろう。
 だからこそ、稼働していない『フラスコチャイルド研究施設』の残滓を見やり、その最奥に座す『ゾンビジャイアント』の威容を見てもフィアはたじろぐことはなかった。
 彼女の目には『ゾンビジャイアント』の巨躯もただの巨人のホムンクルスのゾンビにしか見えないのだろう。
 とは言え、その姿は猟兵たちの攻撃に寄って人の形を最早留めていなかった。
 元より人よりはずれたる姿であったが、未だ残った胴を縦に走る口裂の如き裂け目が、傷ついた肉体を癒やすためにあらゆる生者を捕食せんと咆哮の如き音を響かせる。
「――ッ!!!!」

 それはただの音でしかない。
 感情の乗らぬ咆哮に意味を見出すのは今を生きる生者にしかないものだ。
 けれど、フィアは恐れない。
 目の前の存在はただのモノだ。
「錬金術と死霊魔術の融合か。だが、我も伊達に漆黒の魔女と呼ばれておらぬ。その程度の魔術知識で我を倒せると思うでないぞ!」
 フィアの瞳がユーベルコードに輝く。

 その輝きに惹かれるように『ゾンビジャイアント』の巨躯が蠢く。
 胴を引き裂かれ、首を寸断され、本来の機能である捕食と融合の力さえも阻害された、胸を貫かれし巨体が胴に走った口裂でもってフィアを捕食せんと大口を開けるのだ。
 グロテスクな光景。
 滴る体液は、これまで喪われてきた生命の源であろう。
「って、おのれ、その口で我を喰らおうというのか?!」
 自分だってお腹が空いているというのに! とフィアの怒りのボルテージは一気に跳ね上がる。
 許せないのである。
 此処まで空腹を耐え忍び、ひたすらに敵を滅してきた。
 焼いたいけるのではないかと思わないでもなかったが、腹を下しては元も子もないと我慢に我慢を重ねてきたのだ。

 だというのに、目の前の『ゾンビジャイアント』は悪食もいいところである。
 動くものなら何でも良いとばかりに口裂を開けるのだ。
 あ、いや、フィアを食べるのを悪食って言っているわけではないですあしからずと天というか地の声が聞こえてきそうであるが気の所為である。
「ならば、この竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)をたらふく食べるがよいわ! 漆黒の魔女の名に於いて、我が前に立ち塞がりし全てを消し去ろう」
 カッ! と見開かれる瞳。
 そこに輝くは魔法陣。ユーベルコードの輝きを齎す光が、ドラゴンすらも消し飛ばす大規模破壊魔法を解き放つ。

 それは地下にある『フラスコチャイルド研究施設』という立地を考えぬものであったが、どうせすでに放棄された施設である。
 持ち主も、何も存在したものではない。
 ならばこそ、遠慮なくブッパできるというものだ。
 解き放たれた破壊魔法の一撃が『ゾンビジャイアント』の広げる口裂へとむけて撃ち込まれ、破壊の力を渦のように撒き散らしながら地下『フラスコチャイルド研究施設』の天井すらも吹き飛ばす威力を見せつける。

「どうだ、これが我の魔法! ……とは言え……腹が、減った……」
 ぐぅ、とものすごい音がお腹から響き渡る。
 大規模破壊魔法は魔力の消費もまた凄まじいものである。故に彼女は空腹のあまり倒れ込みそうに為る。
 弟子のご飯が恋しいと思いながら、吹き飛ばされた『ゾンビジャイアント』が瓦礫に叩きつけられた姿を背に、何か食べるものがないかとフィアは研究施設より這い出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
ぎゃー!?グロいの来たー?!
触りたくないんですが!
ハッ!?こういう時はシリカを投げつければ
にぎゃぁぁぁぁ?!(ひっかかれた)

うう、ひどいクノイチの玉のお肌が…
でもちょっと冷静になれました
研究サンプルは…他の人が取ってそうですね
いや、なんか魔法ぶっぱしてそうな人もいますがさておいて

できるだけ原型残すならこれしか!

【VR忍術】水遁・氷柱刺しの術!
地面から複数の氷柱を出現させて刺し貫き、引きちぎります!
ついでにその場に縫い留めるという作戦!
今度こそフラグは回収しません!(フラグ)

千切れた破片があれば
便利な【VR忍術】水遁・氷結の術で冷凍保存しますかね
持ち帰ったら何かわかるかなー?
何か進むといいですね



 凄まじい破壊魔法の一撃に寄って地下『フラスコチャイルド研究施設』の天井は吹き飛ばされ、その瓦礫に埋まるようにして吹き飛ばされた『ゾンビジャイアント』の巨体が蠢く。
 破壊の力に晒されてもなお、その巨躯は威容なる耐久性を見せつける。
 ぶよぶよとした体皮がたわみ、その四肢は大きく損壊している。左腕の生体レーザーを放つ砲口はひしゃげ、首は寸断んされている。
 胴は引き裂かれ、そこから体液と思しきものがとめどなく溢れているのだ。
 それでもなお、臓物を撒き散らしながら立ち上がり、縦に走った口裂から意味のない咆哮を迸らせるのだ。

 その姿はまさに異形にして異様。
 グロテスクな存在となりはてながらも、未だ動きを止めることがないのは『ゾンビ化』というプロセスを経ているからであろうか。
 もはや生物であるという認識すらも誤りであるかのように『ゾンビジャイアント』はだらりと垂れ下がった右腕のチェーンソー剣を唸らせるのだ。
 その巨体が目指すのは、やはり生者。
 捕食し、鏖殺し、あらゆるものを食らいつくさんとする暴食の徒としての本能だけが『ゾンビジャイアント』を突き動かすものであったのだ。

「ぎゃー!? グロいの来たー?!」
 そんな異様なる姿を認めたサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は正直な所、もう帰りたい気持ちでいっぱいであった。
 触りたくない。
 というか、近づきたくない。けれど、『ゾンビジャイアント』は己の肉体を復元せんと生者を捕食するために口裂を開くのだ。
 グロテスクだとか、そういう問題ではない。生理的に無理。ゾンビと言っても、さすがに此処まで来るとモンスター的なあれである。
 毛色が変わってくるのだ。

 けれど、サージェは妙案を思いついたとばかりに、ちらっと白猫又のアバターである『シリカ』を見つめる。
「ハッ!?」
 気がついたのだ。
 そう、こういう時『シリカ』を投げつければ。

 ――ばりぃ。

「にぎゃぁぁぁぁぁ?!」
 まだ何も言っていないのに、阿吽の呼吸で、ばりぃ、である。
 もうお約束である。珠のお肌が傷物になってしまう。けれど、サージェはちょっと冷静になれた。
 どれだけグロくても、どれだけ近寄りたくなくても、これを打倒しなければ『ゾンビ化』というプロセスを検証するデータはとれない。
 物的なデータ、サンプルはすでに他の人がやってくれそうであるが、なんか魔法ぶっぱして全部なかったことにしそうな人がいる中では、サージェもまた自分がやらねばという使命感に駆られる。

 きっとがんばれば褒めてくれる。
 シリカだって、十分に仕事をすれば、ばりぃ、ではない何かこう、喉をごろごろーって鳴らしてすり寄ってくれるそういうご褒美的なアレがあるはずなのだ。
「ならば、できるだけ原型を残して打倒しましょう! メモリセット! チェックOK! 参ります!」
 VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によって発現するは、水遁・氷柱刺しの術。
 大気中の水分を凍りつかせ、『ゾンビジャイアント』の体躯に突き立てられる無数の氷柱。
 それは一瞬で『ゾンビジャイアント』の動きを止め、その場に縫い留める一撃であった。

「ふふん、今度こそフラグは回収しません! これでもう身動きはとれないでしょう……――」
「――ッ!!!!」
 あ。言ってしまった。そういうのは『やったか!?』フラグである。やってないし、倒せてないし、なんなら此処からボカンとなってしまうやつである。
『ゾンビジャイアント』は氷柱などないかのように己の四肢すらも引きちぎりながら、その縦に走る口裂を大きく開きながらサージェに迫る。
「って、やだやだ! こんなところでフラグ回収なんて、そんなこと――」
 クノイチである己がしていい失態ではない。
 サージェの瞳がユーベルコードに輝く。

 メモリがセットされたコンソールから放たれる氷柱が、グロテスクな光景を目の当たりにしてぷっつんしたサージェの力によって解き放たれ、氷柱でもって『ゾンビジャイアント』の巨躯をめった刺しにするのだ。
「――ッ!!!!」
 次々と撃ち込まれていく氷柱。
 それらが『ゾンビジャイアント』の肉体を尽く貫き、人の形すらも留めない肉塊へと変えた時、その異様なる巨躯はついに霧消していく。

「ふぅ……ひぃ、はぁ……こ、これで一件落着ですね!」
 氷柱の中に残された、というか、冷凍保存された『ゾンビジャイアント』の肉片。これを持ち帰れば、検証のデータにもなるであろうし、何かわかるかもしれない。
 というか、ちょっとグロテスクで持ち運ぶのやだなーって思わないでもなかったが、これも『ゾンビ化』の検証をするためである。
 検証が進めば、それが真実かどうかがわかる。
 そうなれば、未だ所在をつかめぬ『フィールド・オブ・ナイン』や、未知の脅威に繋がるかもしれない。

 何か進むといいな、とサージェは思いながら、未だオブリビオンの脅威が消えぬアポカリプスヘルに明日という明るい未来を紡ぐためにクノイチらしく跳躍するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月07日


挿絵イラスト