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【戦後】燃え盛る恐怖の先に

#アポカリプスヘル #【Q】 #戦後

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#【Q】
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#戦後


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 戦は去り、数多くの敵は骸の海へと還っていった。
 しかし、残された課題は数多くある。
 この黒炎燃え盛る草原も其の一つ。――たし、と獣の足が草さえ燃え果てた大地を踏みしめた。

 るるる。るるる。
 あそんで。
 ぼくたちと、あそんで。
 ぼくたちはここにいるよ。まだうごける。でんちぎれになんか、なってない。

 其れは無数の獣の影。
 嘗て愛玩用として造られた人形の慣れの果て。
 赤く瞳を輝かせ、獣は新しい飼い主を待つ。



「みーんなっ、戦争お疲れ様!」
 集まった猟兵に甘い笑みを浮かべるのはメニ・シュガハニ(甘甘蕩蕩・f04470)。
 隣にはドレスを纏った人形を連れて、おしごとのじかんだよ! とにっこり。
「アポカリプスヘルのメンフィスって覚えてる? そう、黒い炎がいっぱい燃えてたところ。あそこね、まだ燃えてるんだって。」
 ついでにまだオブリビオンの根城になってるんだって。とメニは言う。
「黒い炎とか、如何にも何かありそうだよね。何って? お宝とかかな! お金だと僕は大喜びなんだけど。まあ、何もなくても復興の妨げにはなってるんだよね。で、どうもあそこに集まってるオブリビオンを倒していると、炎が弱まって来てるっていう報告があったんだ。多分戦場になってた時よりは随分と弱くなってるんじゃないかな?」
 僕は戦争の事あんまり知らないけどね。
 お菓子食べてて忙しかったんだぁ。
「なーんて、僕の事はさておいて。其処にワンちゃん型のロボットが群れてるのを予知したので、ワンちゃんと戯れて来てほしいんだ。血が出る位のあまがみとかしてくるから、壊すくらいの勢いで可愛がってあげてね」
 ――それから、と、少し声音を落として。
「ワンちゃんをあらかたお掃除すると、もう一つ敵が現れるんだ。――其れが何かは僕には判らない。何せ君がもっとも恐れるものだから、僕にはさっぱりなんだな、これが。……恐怖を乗り越えた一撃だけが、そいつには通る。君たちは逃げても良い。目を背けても良い。でも、どうせならワンパンでぶっ飛ばしちゃった方がかっこいいよね」
 僕だったら、そうだなあ。鞭とか出て来るかも。殴られると痛いんだよ、アレ。
 グリモアの扉を開きながら、じゃあ頑張ってね、と人形の手を振り振りメニは皆を見送るのだった。


key
 こんにちは、keyです。
 アポカリプスヘルの戦後シナリオになります。
 遊んでもらえない事を恐れる犬がいます。

●目的
「恐怖を打ち砕け」

●プレイング受付
 断章投下後、募集開始です。
 受付開始・終了日時はタグ・マスターページにてお知らせ致します。

●このシナリオについて
 一定数シナリオが成功するとメンフィス灼熱草原の黒い炎が消失します。

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。(合言葉がない場合、別れ別れになってしまう危険性があります)
 出来れば失効日が同じになるように投げて下さると助かります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『暴走ロボット犬『シベリー』』

POW   :    行動プログラム:甘噛み
【激しい噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味のデータ】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    行動プログラム:お迎え
【助走をつけて放つタックル】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    行動プログラム:遠吠え
【激しい咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 グリモアの門を潜った先は、一面黒い炎に包まれていた。
 確かに戦時よりは弱まっているように見えるものの、草原を食いつくすような勢いで噴きあがる漆黒の炎。

 るるる。
 るるる。

 低く歌うような唸り声が聞こえる。
 其れは四方八方から、まるで群れるように聞こえてくる。

 あそんで。
 あそんでよ。
 それがぼくたちの存在意義なんだ。

 遊具と呼ぶには余りにも鋭い牙と爪を備えてしまった彼ら。
 存在意義を失う事を“恐れる”狼たちを、骸の海へと還す時が来た。
御狐・稲見之守(サポート)
 100歳超(実年齢秘密) 妖狐の仙人✕陰陽師 
 口調「ワシ、~殿、ゾ、じゃ、じゃナ、かナ?」

 荒ぶる力を揮うカミにして、人喰い魂呑みの外道、そして幻を繰る妖狐、御狐稲見之守である。
 助けを求め願う声を聞き届けるが我が務め。ヒトの道理で叶わぬならば、カミの道理を通してみせよう…なんてナ。
 
 天変地異を起こす[荒魂顕現]や、幻覚を見せて動きを封じる[眩惑の術]、生命力を喰らう[狐摘み]を使ったりするゾ。無論、[狐火]は妖狐の嗜みじゃナ。
 ふふ、そして『魂喰卿』の肩書き通り、我が領域[魂喰らいの森]を顕現させることも出来るんじゃ。

 さァて、遊ぼうじゃァないか。




 御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)に恐れるものはない。
 かつて人食いとして世を騒がし、荒魂として祀られた彼女に何を恐れるものがあるだろう。
 故に黒い炎も彼女にとっては僅かな火の粉。故に紛れて群れる玩具の群れも、彼女にとっては子犬にすぎないのだ。
「おお、可愛い仔犬が揃って吼えておるナ。愛らしい事だ。わんわん、わんちゃん……なんてナ」
 巫女服の袖で口元を隠し、くすくすと笑う稲見之守。しかし相手は仔犬扱いなれどオブリビオンだ。可哀想だが屠らねばならぬ。聞くに、其の咆哮には人を傷つける力があるという。では其処から封じていくとしよう。
 稲見之守は袖から護符を幾枚も取り出すと、ばらっ、と周囲にばらまいた。其れ等は意思を持つかのように飛び回り、周囲の仔犬へと貼り付いていく。
「ウウ……!? わ、ワン! ワンワンワン!」
「ふふ、これで少しは大人しくなろうかナ」
 何かが貼り付いた! と慌てる仔犬たちだが、胴体に、背中にと様々な箇所に張り付いた護符を剥がすことは出来ない。大地に身体を擦りつけたとて無駄だ。其の様を見て、また稲見之守はおかしげに笑った。
 吼えようとしても思うように声が出ない。仔犬たちは其の爪と牙を振るおうと稲見之守を取り囲む。
「さァて、遊んでやるとするかナ。どの子からでも良いゾ」
 すらり、と魂喰刀を抜き払いながら、稲見之守は笑った。金銀妖目が輝く。其れは例え玩具の慣れの果てであっても一切容赦しないという戦意の現れ。
 剣舞が始まる。其れは一方的な殺戮でもあった。ああ、そんな無力にされては――嘗て人食いとして暴れまわった血が騒ぐというものだ!

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
狂信者の一人、リユを思い出す。あの時の祈りは何処かに届いたのだろうか。
俺は神サマなんざ嫌いだが…その身を炎に包まれても懸命に祈ったんだ。安らぎぐらい与えてやって欲しいと思うね。

今度はワンちゃんか。
要するに遊べば良いんだろ?ハッ、遊んで猟兵業が出来るってんだから、今回は楽なモンだぜ。
ほら!来いよ、ワンちゃん!(魔剣も銃も用意せず腰を落として手を叩く【挑発】しつつ【悪目立ち】)
一匹や二匹じゃないだろ?纏めて遊んでやるぜ。
噛みつきを【見切り】で躱しつつ、UCも交え。躱して頭を撫でたりしながら存分に楽しもうか。
適当な二丁銃を引き抜いて──楽しかったぜ。また遊ぼうな?【クイックドロウ】で撃ち抜いていく




 ――なぁ、アンタ。名前は?
 ――な、まえ?

 嘗てこの平原でしたやりとりを、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は思い出す。

 ――ああ、名前。あっただろ、アンタにも。
 ――……リユ。
 ――……。そうか。

 ナイフさえ持たず祈り続けていた信徒は、過去に眠っているのだろうか。
 神様なんて嫌いだが、彼女は其の身を炎に包まれても祈り続けていたのだ。少しの安らぎくらい、与えてやってほしい。

「……で、今度はワンちゃんか」

 るるる。
 るるる。
 祈りもせず、請いもせず、唸り声を上げる犬型ロボットはカイムに迫る。カイムはどこ吹く風、といった風に腰を落とし、両手をぱんぱんと打ち鳴らして、まさに犬を呼ぶような仕草をした。
「遊んで猟兵業が出来るってんだから、楽なモンだ。ほら! 来いよ!」
「ガルルルッ!」
 剣も銃も構えないカイムに怒ったのか、ただの犬扱いに怒ったのか。其れとも本当に遊んでもらおうとしたのか、犬たちがまとめて飛び掛かって来る。其れは弾丸の飛来に似ていた。だから避けやすい。
 半身になり一歩下がる。一歩進んでオブリビオンをかわしながら、其の頭をグッドボーイ、と撫でてやる。ばちばちと音がして、犬の頭部を紫雷が焼いた。気付けばカイムの周囲では、紫色のいかづちが弾けている。
 足に齧りつこうとしたオブリビオンをかわすと、其の腹を優しく押し上げて持ち上げ、腕に抱いてやる。
「ヒュウ、イイコだ」
 口笛一つ。雷を纏った腕で抱き締められた犬は成す術もなく焼かれ、遊んで貰えた喜びを得ながら青黒い灰へと変わっていく。
「さて、運動はオシマイだ。次はエサの時間だぜ、ワンちゃん」
 カイムは二丁銃を引き抜き、弾丸の雨を振り撒く。
 たらふく食ったらおねむの時間だ。まるで赤ん坊みたいだな。だが――其の眠りはきっと安らかなものになると思うぜ。もう目を覚ます事がイヤになるくらいにな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

唐桃・リコ
犬ども
さあ、遊ぼうぜ!
オレかお前らか、どっちかくたばるまで!!

ほら、来いよ!って駆けて回って敵を寄せ集めて
【Howling】
お前ら……つれえの、こえーの
そんな死にかけで、まだ動くの

なら、最後まで吠えまくってやろうぜ
ほらこいよ、って呼べばタックルしてくるだろ
何か、情緒がねえって言われるオレには分かんねえけど
こいつらが「寒い」んだろうなってのはわかるから

寂しいなら最後の瞬間まで、オレと遊べばいい
じゃれついて、噛み付いて、吠えて見せろよ!
お前らはお前らの好きなように最後まで生きればいい!
オレはお前らを力に変えて、
オレの大事なものを守る力に変える!
それだけだ!




「来いよ犬ども」
 唐桃・リコ(Code:Apricot・f29570)は笑った。黒い炎が噴き出す勢いに、白銀の髪が揺れる。焼かせやしないさ、あいつと同じ三つ編みなんだ。
「遊ぼうぜ! オレかお前らか、どっちかがくたばるまで!」
 あおん、と犬が哭いた。機械人形の犬たちは、群れてリコに襲い掛かる。速度をエサにして、放つのは体当たりの「甘え」。其れをリコはかわしながら、円を描くように犬たちを集めていく。
 集まれば集まるほど、犬は我先にと走る余り甘えられなくなる。集まれば集まるほど、リコは一網打尽にしやすくなる。

 ――リコが、あおん、と吼えた。

 苗床への人生(みち)を短くしながら放つ咆哮は、ばちばちと機械仕掛けの犬を唸らせた。前方にいた者が斃れ、後方にいた者たちも麻痺でうまく四肢が動かなくなる。其れでも、と前脚が空を掻く。後ろ足が大地を蹴る。
 お前ら、つれえのに、こえーのに、そんな死にかけでまだ動くの。
 悲しいとは少し違う。寂しい、のかもしれない。リコには判らない。其の感情を表現する術が、判らないのだ。
「最後まで吼えろよ、ほら、来いよ!」
 だから、リコは来いっていう事しか出来ない。
 きっと“寒い”んだ。なら“寒さ”がなくなるまで遊んでやる。じゃれついて、噛み付いて、甘えて、吼えてみせろ! 好きなように最期まで生きれば良い!
 オレも勝手にやる。お前らの全部を力に変える。大事なものを護る力に変える!

 元々きっと、熱で殆どの機能をやられていたのだろう。呆気なく転がって青黒い灰になっていく犬たちの中、よろよろと起き上がり甘えようとしてくる一匹の犬がいた。リコは其の弱すぎる攻撃を真正面から受け止めて、横に転がした。
 まるで笑うように、嬉しそうに、犬は、わん、と哭いた。それきりだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「此の地から炎が消えるなら。豊かな平野も人集う歌の都も、甦るのが夢ではなくなるかもしれません…」

UC「精霊覚醒・虹」使用
犬達の前を滑るように飛ぶ
第六感と見切りを駆使して犬達のタックルを躱し踊るように頭や鼻先撫でる
召喚した七属性の精霊達にも犬達があまりに当たらない攻撃に攻撃方法の再試行を検討するような素振りを見せる迄犬を誘うように動き続けてから属性攻撃を行うよう依頼

「お休みなさい、何時かまた…」
自分も犬達が行動再試行のための立ち止まり等の素振りを見せる迄は時折制圧射撃混ぜながら躱し続け、その後一気に飛行で近付き桜鋼扇で殴って頭部破壊する

全ての犬を倒したら彼等の転生願い鎮魂歌を歌い送る




 ――この地から炎が消えるなら。
 ――豊かな部屋に、人集う歌の都。
 ――其れ等が蘇るのも、夢ではなくなるのかも知れません。

 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はそう思っている。願っている、と言った方が正しいだろう。桜を飾ったような鋼扇をぐっと握り、彼女は弾丸のように飛び出す。春一番のように舞いながら、犬たちの前を滑るように飛び、其の注意を引いた。
「わん! わん!」
「わおん!」
 犬たちは群れらしく吼え合って、桜花へとタックルを仕掛けるが、桜花の身のこなしが早すぎて巧く当たらない。召喚された七精霊もまた、彼らを弄ぶように宙を舞い続ける。其れはまるで、季節外れの落花に似ている。犬は花弁と戯れて、けれど何も掴まらない。

 ――何故捕まらないのだろう?

 犬が考えるために立ち止まった瞬間だった。炎の塊と氷の礫が嵐と共に舞い、岩が巻きあがる。雷光がぴしゃんとオブリビオンたちを打ち据えて、闇が優しく手招きする。
 七精霊のあらゆる攻撃に、オブリビオンたちは苦しむ間もなく青黒い灰へと還っていく。其れ等をかいくぐった犬たちもいた。しかし、一息吹いた春一番に頭を殴られ砕かれて、彼らもまた、青黒い灰へと還っていく。其れは桜花の鋼扇による一撃。せめて苦しまぬようにと頭を狙った一撃は、犬に己が死んだと思わせる時間すら与えない。

 ――やがて、天災が去る頃。
 桜花は扇を帯に収め、静かに旋律を奏でた。
 せめて彼らが生まれ変わり、今度はちゃんと甘えられるように。愛し愛される主人を、或いは友を得られるように。
 きっと生まれ変われば幸せになれるから。
 そんな信仰にも似た願いを込めて、桜花は鎮魂の唄を歌う。この歌が届かなくても良い。どうか、叶いますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『恐るべき幻影』

POW   :    今の自分の力を信じ、かつての恐怖を乗り越える。

SPD   :    幻影はあくまで幻影と自分に言い聞かせる。

WIZ   :    自らの恐怖を一度受け入れてから、冷静に対処する。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●おそれとは
 未知から来るものと、既知から来るものがある。
 即ち、「知らないから怖い」もの。そして「知っていて、太刀打ちできないから怖いもの」の二種類が存在する。
 君の前に立ち塞がるのは、果たしてどちらの恐怖だろうか。

 いずれ来る未来への恐怖だろうか。
 いつか見た過去への恐怖だろうか。
 其れともまんじりともしない現在への恐怖だろうか?

 失うのが怖いのか?
 得る事が怖いのか?
 其れとも、恐れる事を恐れるのか?

 其れは物質的な恐れとは限らない。
 心に入り込んで蝕む恐れもあるかもしれない。
 けれど君たちは戦わなければならない。

 黒い炎は微かに弱まっている。
 炎が恐怖を呼んでいるのかは判らないが、乗り越えなければ君たちは此処から帰る事は出来ない。
 何よりも、君たちが日常に帰るために――此処で一つ、恐怖を殺さなければならないのだ。
 殺してみろ。自分の手で。
御園・桜花
目の前を塞ぐように立つ
顔を紗で隠した白装束の世話人の女が2人

「貴女達は…どうして何も言ってくれないのです!私に何をさせたかったのです!一人助かった私を…恨んでいるのです…?」

「…呪ってやる呪って呪って呪…」
軋んで木霊する金属的な声音
目の前の女達の紗が血に染まる
血塗れの白装束の女達に掴み掛かられ思わず桜鋼扇で殴り倒した

行灯の明かりが消える事のない地下の座敷牢
言葉を掛けられず育てられ
舞の所作は体で覚え込まされた
某かの役目はあっただろう
彼の地が滅されなければ
死を理解できず死体の横を通りすぎてしまわねば

2人が倒れ伏しても木霊が続く

「ごめんなさい…此からは知ろうとするから…助けるから…」
耳塞ぎ駆け抜けた




 “其れ”は、桜花の前に立っていた。
 顔を紗で隠し、俯き気味に立っている白装束の女。桜花は知っている。彼女たちは、世話係。世話されていたのは――
「……貴方達は」
 問わずにはいられなかった。
「……」
 白装束は何も言わぬ。
「どうして、何も言ってくれないのです。私に何をさせたかったのです! ……一人助かった私を、……恨んでいるのですか」
 俯く。片手には、扇を持ったまま。
 何も言われなきゃ判らない。言ってくれなきゃ判らないじゃないか。
 その思いに応えるように、白装束が言葉を発した。

「呪ってやる」

 端的だった。軋んだ金属のような、耳障りな声色だった。

「呪ってやる。呪ってやる。呪ってやる。呪ってやる。呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪って呪って呪って」
 紗が血に染まる。白装束に朱が滲む。
 女たちは一斉に動き出すと、桜花に掴みかかってきた。呪いの言葉を吐きながら。
「あ……ッ!!」
 悲鳴を上げる暇もない。
 猟兵としての防衛本能と、生き物としての防衛本能が動く。気付けば桜花は片手に持っていた桜鋼扇で女たちを殴り飛ばしていた。

 ――思い出すのは。
 行燈の明かりが始終ついている、地下の座敷牢。
 掛けられる言葉は一切なく、舞の所作だけを体で覚え込まされた。
 きっと、何かの役目があったのだろう。だから覚えさせられたのだろう。
 けれど其れを知る事は叶わなかった。滅びてしまったから。
 死を理解出来なかった桜花は、死体の横を通り過ぎ、自由という光の元に飛び立ってしまったから。

「呪ってやる」

 言葉は聞こえ続けている。軋んだ金属音のように。
「ごめんなさい」
 桜花は知らず、謝っていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……! これからは、頑張るから、知ろうとするから! 助けるから……!!」
 耳を塞いで、黒炎の中を駆け抜ける。何処にも出口はないのにね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
最近は戦争だ依頼だ、と紫雷の力を使いまくってたからな。(掌にバチリと弾ける紫雷を眺めて)殺せ、殺せと煩い声が耳に煩わしい。此処で力の片鱗を殺せばもう暫く、俺の内側のも静かになる。

恐怖――なんざ俺自身は認めたくねぇが、姿を現したのはもう一人の俺。
力に溺れて、内の化物に誇りも矜持も売り渡して破壊と殺戮を好むだけの『未来』だ。
言葉は喋らない。ニヤついた残酷で殺しを愉しむ俺の笑み。同じ顔なのに似ても似つかない。それを見る度に思うぜ。コイツを解放しちゃ行けない。解放すりゃきっと友も。世界も。俺の居た場所も。コイツは喜んで壊して奪おうとするだろうさ。
俺は…もう二度と自分の手で友を殺さないと決めてる。死ぬのが怖くて臆病だった…自分が死にたくないからアイツを殺した、そんな俺はもう居ない。
それに――そのイケメン面でダサい笑い方すんじゃねぇよ。
余裕を見せろ。笑え。自分より強い相手?絶望的な状況?いつでも笑って潜り抜けて来ただろ?
便利屋Black Jack。この依頼は俺が請けてる。俺自身を――超えるぜ。




 戦争を駆け抜けた。銃弾飛び交う中、依頼をこなしてきた。
 其の際に紫雷の力を借り受けすぎたのかもしれない。“殺せ”と耳鳴りのように頭の中で声がする。此処で力の片鱗を恐怖として殺せるなら、内側も静かになるだろう。

 其の通り、カイムの前に現れたのはカイム自身だった。
 ただ、表情が違う。余裕と僅かなウイットを含んで笑う彼とは違って、破壊と殺戮を楽しむ醜悪な笑顔を浮かべている。内側に潜む紫色の化け物に、誇りも矜持も明け渡してしまった“IFの未来”のカイムだった。
「おいおい、俺はもっとイケメンな筈だろ? イケメンらしい顔したらどうだ」
 肩を竦めてみせるけれども、目の前のカイムは銃を抜いて向けるだけ。銃に意匠された狼でさえ、何処か醜悪に見えるのは目の錯覚だろうか。

 コイツを解放しちゃいけない。

 カイムの内側が警鐘を鳴らす。解放してしまえば最後、きっと友も世界も居場所も何もかも、コイツは喜んで壊して奪おうとするだろう。もっとも、壊してしまえばもう奪う事なんて出来ないけれど。蹴り倒した歪んだ椅子に座ってニヤつくのだろう相手を想像すると、何ともいえない気持ちが渦を巻いた。
 カイムは剣を抜く。銃と剣、どちらが有利かなんて判り切ってる。でもカイムは剣を抜いた。
 カイムは決めている。もう二度と自分の手で友を殺さないと。死ぬのが怖かったカイム。臆病だったカイム。死にたくないから友を殺したカイム。そんな奴はもういないんだと。

 だから、そんなダサい笑いなんてしないんだ、俺は。

 余裕を見せて笑え。自分より強い相手? 絶望的な状況? そんなものごまんとあって、其れ等全てを便利屋「Black Jack」は笑って潜り抜けて来ただろ?
 そうさ。便利屋Black Jack。俺が受けるぜ、この依頼。俺自身を――超えてやる。

 オルトロスが吼えた。
 真っ直ぐにカイムは突っ込む。タイミングを合わせて――剣を逆袈裟に振るう! ちりん、と金属同士が触れ合う鋭い音がして、驚異的なタイミングで剣と弾丸が触れ合い、弾丸の軌道が大きくずれた。
 オルトロスがもう一度咆哮を上げる前に。両手で火の型に構えた剣を、カイムは幻影のカイムに向けて振り下ろした。其の瞬間のこいつの顔は――ああ、見てられないぜ。仮にも俺の姿をしてるなら、そんな顔は二度とするな。
 まあ、もう真っ二つにしてやったからいいんだが。

「なんだ、……簡単すぎて溜息が出るぜ。何でも出来ちまうのも困りものだな?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
あれは――。
私の所属部隊が為す術もなく潰滅させられた――銀河帝国軍『白魔』艦隊。

手が震えていることに気付く。
なるほど、自分自身気付いていませんでしたが、私はまだあの時のことを引き摺っていたのですね。
せっかく与えてくれた機会です。
今の私の技をもって、その中心炉を射貫いてみせましょう。

違う。
これは過去だ。
確かにあったことだ。
それを書き換えてはならない。

人の心に土足で踏み込んで来るのは、あまり感心できませんね。
そして、それが命取りです。
私に干渉してきた以上、その痕跡を隠せるとは思わないことです。

迫りくる艦隊を無視して、精神集中。
自らに干渉してきた存在を見切り、光弓で射貫きます。




 其の艦隊を視界にとらえた瞬間、びりり、と背筋に電撃が走るような思いがした。クレア・フォースフェンサー(認識番号・f09175)は思い出す。忘れる事などない。あれは――クレアが所属する部隊を壊滅せしめた、銀河帝国軍『白魔』艦隊。
 何故こんなところに、だなんて思いながらも、クレアは己の手が震えている事に気付いた。何故こんなところばかりヒトらしいのかと、一抹の自嘲が混じる。クレアの身体の殆どはナノマシンであるというのに、理性が覚えるより先に本能が身体を震わせている。

 ――私はまだ、あの時の事を引きずっていたのですね。

 忘れられない過去。忘れるには痛む創。
 けれど、折角乗り越えるための機会が目の前にあるのだ。今の自分の技でもって、其の中心炉を射抜いてみせよう。

 ――違う。
 クレアの心が否定する。
 ――これは過去で。
 ――確かにあった事で。
 ――其れを書き替えるのは、いけない事だ。

 すう、と息を吸って、吐く。
「人の心に土足で踏み込むのは、余り感心しませんね」
 呟く。艦隊がこちらに迫る。其れを無視して、クレアは弓を構えた。其の弓は過去を貫くのではなく――クレアの心に眠る恐怖を呼び覚ました存在を、撃ち抜いた。

 ぼぼぼ、と黒い炎が揺れる。
 其れは此処に来る前よりも微かに、確かに、弱まっている気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月27日


挿絵イラスト