燎原の最果てにて待ち受ける氷炎とは
●グリモアベース
「ダークセイヴァー各地に存在する『紋章の祭壇』の破壊に向かった猟兵の一部が、『紋章』の製造者たる『第五の貴族』から『第4層からの乱入者』と呼ばれたという話は聞いているか?」
グリモア猟兵館野・敬輔が投げかけた質問に、集まった猟兵達はまばらに頷く。
――ダークセイヴァーの地上と思われていた地が、実は『地下第4層』だった。
ダークセイヴァーに住まう一般の人々だけでなく、支配者層たるヴァンパイアの多くにすら知られていなかった事実が明らかにされたことは、猟兵達の間に衝撃を齎すと同時にひとつの疑問を提示していた。
――ならば、この世界の上に『地下第3層』とやらはあるのだろうか?
猟兵達が口にした疑問を肯定するように、敬輔は一つ頷いて言の葉を紡ぐ。
「俺らが住まう地が『第4層』となると、おそらく世界のどこかに『第3層』に繋がる場所があるだろう。現に俺らがいくつか発見してきた『第五の貴族』支配の地下都市が『第5層』である可能性が極めて高いからな」
しかし、此の地が『第4層』たる事実が今まで判明しなかったことを鑑みると、これまで猟兵達が足を運んだ地に『第3層』とやらの道が隠れているとは考えづらい。
――ならば、未踏破の地はないだろうか?
猟兵達が口に出した推測を、敬輔は「ああ」と肯定し説明を続ける。
「手掛かりがあるとすれば、辺境のさらに果て――『常闇の燎原』だろうな」
そこは、辺境を更に越えた人類の居住区域の完全なる外側に位置し、さらに完全な闇に覆われた、おおよそ生物の生存を許さない区域だと、敬輔は言う。
「そこで、皆には『常闇の燎原』を目指し、辺境地帯を踏破してほしい。頼めるか?」
頭を下げる敬輔に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。
「辺境地帯は異端の神々の呪いとやらが蔓延っている。故に狂えるオブリビオンに遭遇する可能性も高いし、何より踏破した先に何が待ち構えているかもわからない」
未開の地ゆえ、グリモアも断片的な情報しかもたらさなかったのか、敬輔の言葉は歯切れが悪い。
「俺のグリモアが齎したのは――人ならざる領域に立つ黒き十字架」
おそらく、その十字架は異端の神々が残したとされる領域に立っているのだろう。
「正直、手掛かりと言えるものはこれだけだ。ゆえに危険な踏破行になるだろうし、その先で強大なオブリビオンが待ち構えている可能性も高いが……どうか気を付けて」
再度頭を下げた敬輔は、猟兵達の目前で白黒に明滅する丸盾のグリモアを展開して転送ゲートを形成し。
――猟兵達を、狂えるオブリビオンが蔓延る辺境地帯へと誘った。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
ダークセイヴァーの「地上」と思われていた地は、実は『地下第4層』でした。
そこで、皆様には『地下第3層』への手掛かりがあると思われる『常闇の燎原』を目指していただきます。
●本シナリオの構造
ボス戦→冒険→ボス戦となります。
第1章はボス戦『暗き森『オンブラ』』。
辺境をうろつく「狂えるオブリビオン」の討伐を願います。
既に理性を失っておりますので、情報収集は望めません。早急な討伐を。
第2章は冒険『異端の神の領域』。
過酷な環境ゆえ、生物の生存すら許さぬ辺境地帯に、何があるのでしょうか?
どうやら、彼の地に長時間滞在すると、幻聴幻覚呪いなど精神や肉体に悪影響を及ぼす可能性があるようですが……。
詳細は第2章の断章で開示致します。
第3章はボス戦『????』。
辺境地帯の果てにて、猟兵を待ち受けるものとは……。
詳細は第3章の断章で開示致します。
●プレイング受付について
全章、冒頭の断章を追加した後からプレイング受付を開始。
締め切りはマスターページとTwitter、タグで告知致します。
なお、本シナリオはサポートをお呼びしつつ早めの進行を心がけますので、プレイングの採用は必要最小限となる見込みです。
全章通しての参加も、気になる章だけの参加も大歓迎です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『暗き森『オンブラ』』
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POW : 幽歩
レベル分の1秒で【姿と気配】を消し、更に【毒が塗られた暗器】を発射できる。
SPD : 堕霊術
【召喚した炎の精霊】が【毒の炎を纏った竜】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : 夢幻
【剣】を【レベル×1本複製すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【生命力吸収】を付与した【複製した剣】で攻撃する。
イラスト:唐草
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「須藤・莉亜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ダークセイヴァー地下第3層・辺境地帯
転送された猟兵達が目にしたのは、果てしなく広がる荒野。
周囲には木々だけでなく草花1本、苔のひとつすら見当たらず、生の気配は一切存在しない。
ただ、瓦礫と乾き切った土のみが存在する荒れ果てた大地が、目の前に、周囲に広がっていた。
――ザッ、ザッ、ザッ。
荒野を踏みしめる足音とともに猟兵達の前に現れたのは、昏き瞳を宿し、漆黒の剣を手にした1人の青年戦士。
「ああ、ああ……いのちだ。世界に捧げるためのいのちが溢れている……」
猟兵を一目見るなり足を止めた戦士は、左手に闇を宿しながら、猟兵たちに剣を向けた。
「貴様らのいのち、世界に捧げるためのいのち……ここで狩り取る!」
猟兵が何か問うより早く、戦士は猟兵のいのちを狩り取らんと闇を伴い襲い掛かる。
強欲なまでにいのちを求める戦士の瞳に宿る光に理性は一切なく、ただ純粋な狂気に満ちていた。
おそらく、この戦士は、生前は一族のために剣を取り、吸血鬼と戦った勇敢な戦士だったのだろう。
しかし、死した後オブリビオンとして蘇った戦士は、吸血鬼だけでなくすべてのいのちを屠ろうとする戦士へと変貌して見境なく殺し続けて来たのか。
そして、辺境に足を踏み入れて異端の神々すらその手にかけ――自ら殺めた異端の神々に憑依されたのだろう。
今の戦士に、勇敢な戦士だった頃の面影は最早ない。
ただ、無暗にいのちを求め続ける――理性無き「狂えるオブリビオン」だ。
今は『常闇の燎原』へのわずかな手掛かりすら欲しいところだが、異端の神々に理性を奪われた「狂えるオブリビオン」からはそれも望めない。
猟兵達は各々の得物を構え、『暗き森『オンブラ』』の名を持つ全てのいのちを奪わんとする戦士と対峙した。
フォルク・リア
「ただでさえ危険なダークセイヴァーの未踏領域。
此処に上層への道があるかもしれないか。
しかし、危険な場所だ。辿り着くまでに
倒れては意味がない。確実に、行くとしよう。」
「俺のいのちは世界に捧げる。なんて高尚なものの為に
あるんじゃない。この命は俺の好きに使わせて貰う。」
表の呪い裏の呪詛を発動。
敵を効果範囲に入れる為に【残像】で敵を攪乱、
攻撃を回避しながら【ダッシュ】して接近。
敵が攻撃範囲に入った瞬間今までに受けた傷を
敵に肩代わりさせて回復しつつ
死の呪詛で攻撃。
敵の生命力吸収効果の相殺を狙い
纏った冥府へと繋がる闇で追撃する。
「命を狩り取るのは俺の方だ。
世界の為じゃなく、この世界の人々の為に。」
●表裏一体の呪詛は、狂える戦士を翻弄し
――ヒュウウウゥゥ……。
細く冷たい風が砂埃のみを舞い上げる、草1本、苔のひとつすらない荒野の片隅で。
フードを目深に被ったフォルク・リア(黄泉への導・f05375)の紫の瞳は、闇に閉ざされた荒野の果てと、目の前の「狂えるオブリビオン」オンブラに向けられていた。
「ただでさえ危険なダークセイヴァーの未踏領域。此処に上層への道があるかもしれないか」
異端の神々の呪いは、ヴァンパイアに支配されし人類の生存圏を著しく狭め、オブリビオンの理性を奪い狂わせる。
その力は、支配層たるヴァンパイアですら、抗うことは叶わぬほど。
呪いに蝕まれ狂ったオブリビオンの行く末は――ただ、いのちを狩り、滅ぼすのみ。
だが、ヴァンパイアすら呪詛を恐れ近寄らぬ危険な地だからこそ、その果てには人類の希望となり得る情報が埋もれ、第3層に繋がる何かが隠されているのかもしれない。
それにしても危険な場所だ、とフォルクは軽く息をつき。
「たどり着くまでに倒れては意味がない。確実に、行くとしよう」
そう、呟いたその時。
オンブラの背後の闇の中から、百を軽く超える漆黒の剣が姿を現した。
――ヒュン!
――ヒュン!!
オンブラの手で複製された剣が、フォルクのいのちを狩り取り世界に捧げようと、次々と虚空に浮かびフォルクを狙い撃つ。
それは穏やかな鳥のように緩やかに飛ぶかと思えば、ライフルの弾丸のように豪速で飛び、フォルクの四肢と胴を確実に切り裂かんと狙っていた。
フォルクは緩急つけて飛び交う複製された漆黒の剣から目を離さないようにしつつ、己が魔力を代償に呪詛を発動させる。
「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ」
フォルクの呼び声に応じ現れた冥府へと繋がる闇は、それ自体が意思を持つかのようにフォルクに纏わりつき、姿を晦ました。
「どこだ……いのちの気配の持ち主は、どこだ……!」
冥府へと繋がる闇そのものが形を変えた残像は、闇に慣れたはずのオンブラの目すら惑わせ、フォルクの正確な居場所を掴ませない。
闇を以て闇を制したフォルクは、冥府へと繋がる闇そのものを残像と為し、漆黒の剣の狙いを狂わせながら接近する。
それでも、何百もの漆黒の剣が、闇に紛れるように速度も方角もバラバラに飛び交いながら完全に無傷ではいられない。
フードを、顔を、四肢を、胴を何度も掠められ、生命力が漆黒の剣に吸われる嫌な感覚を覚えながらも、フォルクは足を止めることなくダッシュで接近し続けた。
必死に剣を回避しつつ、フォルクはオンブラを攻撃範囲に捉えられるまでに接近する。
瞬間、漆黒の剣から吸い上げたフォルクの生命力に宿された呪詛が発動した。
「なっ、いのちが……!!」
任意の対象にダメージを肩代わりさせる呪詛は、確実にオンブラに穿たれ、フォルクが受けたダメージを全てオンブラに肩代わりさせるとともに、フォルク自身の傷を癒す。
一方、呪詛を穿たれたオンブラは、捧げるべく吸収したいのちを逆にフォルクに吸い上げられただけでなく、フォルクが傷を負った部位と全く同じ部位に傷を負っていた。
端正な顔を激痛で歪めるオンブラに、フォルクは纏いし闇に籠められた呪詛の性質を僅かに変化させながら追撃。
精神と肉体の双方を蝕む死の呪詛と化した闇は、命を吸い取る漆黒の剣の効果を相殺しつつ、オンブラのいのちを狩ろうとする意思と内臓の全てを呪詛で蝕み、乾いた大地に膝をつかせた。
「いのち、を……その命を、世界に……!」
「命を狩り取るのは俺の方だ。世界の為じゃなく、この世界の人々の為に」
己が内側から焼き尽くすような呪詛に顔を歪めるオンブラを、フォルクはただ、静かに見下ろしていた。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
この世界の解放にはまだまだ時間が掛かるか(嘆息)。
しかし、やるべき事が有るなら嘆く暇は無い。
まずは第3層に到達せねば。
という訳で(オンブラに)ここは押し通るぞ、と宣言。
UCにて左手をブラックホールに変換。
『召喚された竜とその攻撃全て』及び『オンブラが手に持つ漆黒の剣とオンブラの魔術等の攻撃全て』を吸い込み対象にする。
如何に力を得ようと理性を失うのは悪手だぞ。
とオンブラの攻撃を封じ、第六感・瞬間思考力で不慮の事態に備えつつ、見切り・武器受けやオーラ防御による防御態勢を維持する。
念動力でオンブラの身体を拘束、炎の属性攻撃を宿した灼星剣による斬り下げ斬り上げの2回攻撃+衝撃波で燃やし斬り粉砕する。
●煌めく星の一撃は、闇をも切り裂き
――ヒュウウウゥ……。
細く冷たい風が吹き荒れる中、いのちを蝕む呪詛を受けながらもなお立ち上がる暗き森『オンブラ』を、シン・コーエン(灼閃・f13886)は左手にブラックホールを宿しながら見つめていた。
(「……この世界の解放にはまだまだ時間が掛かるか」)
心の裡で嘆息しつつも、やるべきことが有るなら嘆いている暇はないと己に喝をいれるシンの視線の先は、オンブラだけでなく、辺境地帯の果てを見つめている。
とにもかくにも、まずは第3層に到達すべく手掛かりを掴みたいが、辺境地帯に蔓延る呪いに蝕まれたオブリビオンが、シンの行く手を遮っていた。
「いのちを世界に……取り戻すために捧げろ……!」
譫言のように、人類に対する呪詛のように吐き捨てるオンブラを見て、再度心中で嘆息するシン。
既に異端の神々の呪いに蝕まれ「狂えるオブリビオン」と化し、いのちへの妄執に囚われているオンブラに問うたところで、上層への手掛かりは得られないだろう。
「ここは押し通るぞ」
短く宣言したシンは右手に灼星剣を握り締めながら、左手をブラックホールに変異させた。
「その強く輝く光、捧げたらさぞかし神もお喜びになるだろう……!」
オンブラの声に歪んだ熱が宿り、左手に宿る闇が徐々に細長く形を変え始める。
おそらく、シンの灼星剣の輝きを強きいのちと見出し、喰らおうとでも思ったのだろうか。
オンブラは闇を毒の炎を纏った竜へと変化させ、シンに差し向ける。
闇を湛えた竜の瞳が、ギラリとシンを睨みつけた瞬間。
「ギャオオオオオオオオオ!!」
理性を失くした竜の咆哮が、細く冷たい風に晒された大地に轟いた。
「毒竜よ、かのいのちを喰らい、世界に捧げよ!」
オンブラの闇から解き放たれた竜は、一直線にシンを喰らわんと突撃する。
だが、竜は超耐久力と超攻撃力を得る代償に、完全に理性を失っていた。
「如何に力を得ようと、理性を失うのは悪手だぞ」
内心嘆息しながら、シンは左手のブラックホールを毒の竜に向ける。
小細工もなしにただ突撃するだけの竜は、その炎ごとシンの左手に宿るブラックホールに吸い寄せられた。
『召喚された竜』と、『竜の攻撃全て』を吸い寄せるブラックホールは、毒の竜を吸い込むまで、その威力を減ずることは無い。
「ギャオオオオオオオ!?」
頭どころか全身をブラックホールに吸われた竜が、シンに傷ひとつ与えないうちに消滅した。
「ならば、この手で直接狩り取る!」
竜を失ったオンブラが、自ら漆黒の剣を片手に斬り込むが、漆黒の剣もブラックホールに引き寄せられ、体勢を崩す。
いつの間にか、『オンブラが持つ漆黒の剣』と『魔術等の攻撃全て』も吸い込み対象に設定されていたのだ。
神々の呪詛に抗い理性を残していれば、ブラックホールの吸引力を利用しながら鋭く剣を振るい、竜に毒の炎を吐かせられたかもしれないが、呪詛に蝕まれたオンブラに思いつくことはなかった。
「そこだ!」
シンは大きな隙を見せたオンブラの動きを念動力で完全に封じた上で、闇に包まれし地において輝く道標のように激しく輝く炎を宿した灼星剣を、オンブラの身体を両断する勢いで振り下ろした。
――ザシュッ!!
灼星剣の鋭い一撃は、オンブラの胴を深々と焼きながら斬り下ろしてゆく。
それでもオンブラは、一縷の希望を求めし人類を導く道標のように輝き続ける灼星剣を、いのちの煌めきと見出し手を伸ばし、奪い取ろうとした。
「その、輝ける星を、いのちを……!!」
「今は押し通らせてもらう!」
裂帛の気合とともに、シンは灼星剣を斬り上げ、伸ばしたオンブラの手を深々と切り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
雪・兼光
命ばっかり求めてつかれるだろぉ?
一時だが…俺が休ませてやるよ
相手には間合いを見ながら2回攻撃ユーベルコードで攻撃
間合いを詰められたら零距離射撃
あの炎の精霊の変異体めんどうだな
相手をするだけ無駄か、第六感、見切りで出来るだけ回避する
避けきれない場合はキャリーバックでオーラ防御しつつ盾受けだ
他の奴が変異体に構われて身動き取れないなら、援護射撃で注意をこちらに引いて態勢を立て直す時間を稼ぐ
可能なら相手を敵を盾にするの要領に盾にする無理には狙わない
毒状態になったら自分の浄化でどうか出来るかは試す
無理なら積極的に召喚している相手を執念にユーベルコードで撃つ
文月・統哉
第三層への手掛かりか
鬼が出るか蛇が出るか
全てはこの闇の先に
オーラ防御展開しつつ素早く状況確認
可能なら仲間と連携を
闇の中に炎の竜は眩しく目立つ
囮にすれば本体は闇に紛れ易い
理に適った戦術は
狂ってはいてもやはり戦士というべきか
ならばこちらも一計を
UCでマジカルハットから召喚するのは
【毒耐性】供えた光るハト型ガジェットの群れ
一体一体の耐久性はさほど高くはないが数は多い
素早い動きで竜の狙いを撹乱する
一方の俺はじっと待つ
動かねば竜はこちらを狙わない
来るのは本体だ
【視力】と周囲に張ったワイヤーの感触と【第六感】も使い
敵の気配を【情報収集】
攻撃を【見切り・武器受け】して
【カウンター】で斬る
安らかな眠りを願って
●いのちを捧げるのではなく、いのちを休ませるために
――ヒュウウゥゥゥ……。
生の気配が見られない荒野に吹き続ける細く冷たい風は、暗き森『オンブラ』が受けた呪詛や裂傷、熱傷を冷やしても、狂えし精神を落ち着かせることはない。
「いのち、を……捧げるいのちを……」
譫言を吐きながらいのちを求め続けるオンブラの前に、ふたりの猟兵が立ちはだかった。
「なぁ、命ばっかり求めてつかれるだろぉ?」
鋭い眼光を向ける雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)の声は、オンブラを憐むそれ。
一方、文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)の紫の瞳は、オンブラではなく、その先に澱む闇を見据えていた。
(「第三層への手掛かりか。鬼が出るか蛇が出るか」)
――ある『第五の貴族』が口にした『第4層からの乱入者』。
その乱雑な言の葉は、「第3層」が存在する可能性を示唆していた。
それは、この世界に生きとし生ける者たちに対する福音になるのか。
それとも……行きついた先で人類に更なる絶望を齎す呪詛となるのか。
その答えは……。
「……全てはこの闇の先に」
だが、答えに辿り着くためには、意図せず行く手を遮るオンブラを骸の海に還すしかない。
「一時だが……俺が休ませてやるよ」
新鮮ないのちを世界に捧げるために、裂かれた腕が訴える激痛を無視しながら漆黒の剣を握るオンブラを前に。
兼光はハンドガン型のブラスターを構え、統哉は『宵』の名を持つ漆黒の大鎌を握り締めた。
「闇の竜よ、毒を宿し竜よ、目の前のいのちを喰らい、世界に捧げよ!」
オンブラの言霊を受けた、左手に宿る闇が形を変え、毒の炎を纏った竜へと変化。
理性と引き換えに超攻撃力と超耐久力を得た竜は、ひらりと己が身体を翻しつつ、ブラスターを構える兼光に狙いを定め、突進。
「速いな!!」
適切な間合いを取る前に竜に狙われた兼光は、眼前に迫る毒の炎の気配に、咄嗟にブラスターの引き金を引く。
至近距離で発射された光線は、結果的に口内を狙う零距離射撃となり、竜の口内から後頭部を貫いた。
「ギャオォオオオオオ!!」
激痛に咆えながらも、闇と狂気を湛えた瞳は、兼光の持つブラスターを睨みつけている。
兼光の鋭い眼光秘めた瞳もまた、ブラスターを睨みつける竜の姿をとらえていた。
「あの炎の精霊の変異体めんどうだな」
「ああ、だが理に適った戦術は、狂ってはいてもやはり戦士というべきか」
「だな……本体が見つからねぇ」
統哉と兼光が毒の竜に気を取られている間に、オンブラ本体は闇に紛れるよう姿を消していた。
ダークセイヴァーを覆う闇の中では、たとえ毒の炎であっても、炎を纏った竜は眩しく目立つ。
目立つ竜を囮にすれば、本体が闇に紛れ易くなるのは、必然とも言えた。
……果たして、オンブラ本人は何処から狙ってくるか。
統哉が思考する間に、毒の竜は兼光を押し倒さんと幾度も突進を繰り返す。
兼光自身はほとんど動いていないのだが、最初の零距離射撃で『もっとも速く動く攻撃をする』と認識されたのだろう。
兼光はオーラを纏わせたボディガードキャリーバックを盾に、何度も何度も毒竜の突進を受け続けるが、一度受けるだけでもボディガードキャリーバッグが激しく軋んでいた。
「キリがないな」
「ならば、こちらも一計を」
統哉の手中に現れたのは、黒猫の飾りがついたマジカルハット。
「手品でもするつもりか?」
「まあ、見ていて」
統哉が軽く笑いながらクロネコ・マジカルハットの鍔をぽんと叩くと、ハットの中から光るハトが一斉に飛び立った。
「……あぁ、なるほどな」
「そういうこと」
光るハトの正体が統哉のガジェットだと気が付いた兼光が、不器用ながらに軽く笑う。
クロネコ・マジカルハットから飛び立った光るハト型ガジェットの群れは、高速で毒の竜に群がり、周囲を素早く軽やかに飛びながら翻弄し始めていた。
「ギャオオオオオオオ!!」
理性を失い、速く動くものを標的とする毒の竜は、ハト型ガジェットに毒の炎のブレスを浴びせるが、毒耐性を備えたハトはひらりとブレスを回避し、さらに視界をかき混ぜるように飛び回りながら毒の竜を惑わし続ける。
一方、ハト型ガジェットに毒の竜が翻弄されている間、統哉と兼光は細い糸が張り巡らされた場所からあえて動かない。
竜の意識がハト型ガジェットに向かっている以上、動かなければ竜に狙われることはないが、姿を消したオンブラの気配は途絶えたままだから。
ふたりの足元に広がる細い糸のようなものは、統哉の念動力で地面スレスレに張り巡らせた、センサー代わりのクロネコワイヤー。
ワイヤーに引っ掛からないか、あるいはワイヤーを避けて迫って来るか。
統哉は五感を集中しオンブラの気配を掴み取ろうとするが、なかなか気配を掴めなずにいた。
そして兼光もまた、ブラスターを構えながら、オンブラらしき人物の影を求めてじっと闇に目を凝らす。
(「援護射撃で注意をこちらに引いて態勢を立て直す時間を稼ぐ必要はないとはいえ、本体がここまで動かないと不気味だな……」)
こちらが動かないのは、オンブラからも見えているはず。
遠距離射撃が可能なブラスターを警戒しているのだろうか、と兼光の脳裏に在る考えが過った、その時。
――ピンッ!!
兼光の真後ろに張り巡らされていたワイヤーが切れる音が、妙に耳に大きく届く。
その間、毒の竜はハト型ガジェットを1体ずつ爪で切り裂き、ブレスを浴びせて落とし始めていた。
宙を浮く毒の竜とハト型ガジェットがワイヤーに引っかかるとは思えないため、ワイヤーを切ったのはひとりしかいない。
統哉が切れた音の意味に気づき、振り向くより早く。
「そこかぁ!!」
兼光が咄嗟に身体を捻り、背後にブラスターを向け引き金を引いた。
ブラスターの光線が、闇を切り裂き真っ二つに割りながら真っ直ぐ伸び。
「ぐぅっ……!!」
光線の先から、オンブラのくぐもったような呻き声が聞こえてくる。
兼光が身を捻り発射したブラスターの光線は、兼光の背後から漆黒の剣を振り下ろそうとしたオンブラの肩口を貫き、よろめかせていた。
「竜よ! この場の全てを焼き尽くせ! 全てを捧げよ!!」
肩口を貫かれ漆黒の剣を落としそうになりながらも、オンブラは毒の竜に命じるよう叫ぶ。
召喚主の命を受けた毒の竜は、ハト型ガジェットを毒の炎で一掃した後、オンブラと兼光、そして統哉を狙い突撃し、毒の炎のブレスを吐き始めた。
統哉は黒猫紋様のオーラと宵の漆黒の刃でかろうじて顔面を防御し、毒の影響を最小限に止めるが、兼光はキャリーケースを放りだしながらオンブラの影に飛び込むよう身を投げ出した。
「兼光!?」
統哉が慌てる前で、兼光はオンブラの身体を盾代わりに炎を防ぐ。
オンブラの死角に飛び込んだ兼光は毒の炎に焼かれずに済んだが、オンブラは兼光に飛び込まれたことで避ける機会を見失い、己が召喚した竜の炎を真っ向から浴びてしまう。
「ぐああああああああああ!!」
毒の炎に目を潰され、全身を毒と炎に焼かれたオンブラが破れかぶれに剣を振るうが、統哉は冷静に見切って宵の刃で剣を受け、逸らしながら虚空へはね飛ばすように刃先を跳ね上げると、引き攣るような激痛に苛まれながらずっと握られていたオンブラの漆黒の剣はとうとう空中にはね飛ばされた。
空中高く弾かれた漆黒の剣が地に突き刺さるより早く、兼光と統哉は己が得物をオンブラに向け、振るう。
「骸の海でゆっくり休めや」
「……安らかに」
――ザシュッ!
――ビィーッ!
祈りを込めて振り下ろされた統哉の宵は、オンブラの胴を深々と切り裂き。
兼光のブラスターから発射された二筋の光線は、骸の海へと導く光の道標を刻み込むようにオンブラの心臓を貫いていた。
●荒野の果てにて待つものは
荒野に倒れ伏したオンブラが闇に喰われ、消滅するのを見届けた統哉達猟兵は、荒野の果てを目指し歩き出す。
「異端の神々の呪い、か……」
誰からともしれぬ呟きは、細く冷たい風に乗り、何処へと消え去ってゆく。
ダークセイヴァーの辺境地帯に蔓延る呪いは、オブリビオンだけでなく、支配層たるヴァンパイアをも蝕み、狂わせる。
ならば、人類が呪いを受けたらどうなるのか?
その答えの一端を示すかのように。
――兼光たち猟兵の前に、白き光が差し込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『異端の神の領域』
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ダークセイヴァー・辺境地帯――異端の神々の領域
「狂えるオブリビオン」を骸の海に還した猟兵達が荒野の果てを目指し歩いていると、突然白き光に包まれる。
闇に慣れた目に突如差し込んだ光はあまりにも眩しく、猟兵達は反射的に目を閉じていた。
数分後、目を閉じた猟兵達が恐る恐る目を開けてみると。
――街並みも地面も全てが白く輝く、異質な世界が広がっていた。
ここは、常夜の世界を光で覆い尽くさんとした神が遺した、神秘的な領域。
辺境の果てに存在する、一般人は足を踏み入れるどころか近付くことすら許されぬ領域に、猟兵達は知らず知らずのうちに足を踏み入れてしまっていた。
領域内を歩くにつれ、猟兵達の間に異変が生じる。
――声が聞こえると、ある猟兵は口にする。
――見えてはいけないものが見えると、ある猟兵は呻く。
――異端の神に呪われたのかと、ある猟兵は慄く。
異端の神ならぬ身で長時間の滞在は危険、と、猟兵達の本能が警鐘を鳴らし始めている。
急ぎ脱出しないと、幻聴や幻覚、呪いなどが精神や肉体に悪影響を及ぼすかもしれない。
白き光が満ちる神々の領域に、出口らしきものは見当たらない。
だが、巨大な影の十字架が、白き領域に罅を入れるかのようにいくつも立っていた。
――光に満ちた世界に影を落とすようなモノが、なぜわざわざ立てられているのだろう?
いずれにせよ、異端の神々が支配するこの白き世界に「常闇の燎原」への手掛かりはなさそうだ。
ならば、一刻も早く、この地から脱出せねばなるまい。
猟兵達は、異端の神々の領域から抜け出すために、出口を探し始めた。
※マスターより補足
第2章は、光に包まれた異端の神々の領域から脱出していただきます。
この領域の風景はイラストを参考にして下さい。
脱出方法のヒントは、オープニングのグリモア猟兵の言と、この断章に隠されています。
異端の神々がその権能で造り上げた光の世界は、同時に異端の神ならざる身を少しずつ蝕みます。
世界の加護を受けた猟兵であっても、この世界に長時間滞在すると、幻聴や幻覚、呪いに襲われ、世界そのものに取り込まれるかもしれません。
幻聴や幻覚、呪いに抗いながら、急ぎ出口を探し、脱出してください。
なお、幻聴や幻覚、呪いの内容は、プレイングで任意で指定していただいて構いません。
また、この章で幻聴や幻覚、呪いを受けても、この領域から脱出すれば自然と治癒しますので、第3章においてペナルティとなることはありません。
――それでは、よき脱出行を。
雪・兼光
…此処は本当にダークセイヴァーなのか?
まるで他の世界にとんだみたいな気分だぜ…
あれ、昔の俺か
……嫌だねぇ、過去の幻覚が見え始めたよ
浄化と継戦能力でこの世界からの浸食が遅らせるか試す
自分の目はもう幻覚みている時点で当てに出来ないので情報収集で周りを見渡しながらUSBカメラのレンズから周りを撮影して見渡しながら出口を探す
巨大な影の十字架か触ってみるか?
巨大な十字架も情報収集で調べてみよう
USBカメラで撮影してみよう
もしかして、影が出口なのか?
やべぇな…幻聴も聞こえてきやがった
はやく逃げさなければ
●拾われし記憶の欠片は、幻覚幻聴として顕現し
突然広がった光を前に、雪・兼光は思わず首をひねっていた。
「……此処は本当にダークセイヴァーなのか?」
兼光が首をひねったのも無理はない。
世界を覆う闇を全て塗りつぶすかの如く、燦々と降り注ぐ白き光。
そして、白く光り輝く、建物や地面。
全てが白や光り輝くプリズムに包まれ、一方で地面を穿つようにいくつもそびえ立つ巨大な影の十字架だけが異彩を放つ世界は、本当にダークセイヴァーなのかと疑いたくもなるものだ。
「まるで他の世界にとんだみたいな気分だぜ……」
知覚できる現実と世界常識が噛み合わず、面食らった兼光の視界に、ふたりの幼子の姿が飛び込む。
そのうちのひとりの顔に……兼光は見覚えがあった。
「あれ、昔の俺か……」
純真無垢な子供の様な瞳と、幼子らしく耳下で綺麗に切り揃えられた髪、そして病院着のような衣服をつけた幼子は、まごうことなき幼い頃の兼光。
もうひとりはどうやら女の子のようだが……果たして誰なのだろうか。
「……嫌だねぇ、過去の幻覚が見え始めたよ」
ぼやきながら目を閉じて首を何度も横に振り、幻覚を振り払おうとするが、幼い兼光と共にいる女の子の姿は消えない。
実体なのかと疑いたくなるが、過去の自分が見えている時点で幻覚を見ているのは確実だろう。
(「幻覚が見えている時点で、自分の目は全く当てにできない」)
そう判断した兼光は、急ぎUSBカメラを取り出し、レンズを幼きふたりに向け撮影し、すぐに画面を確認する。
光とプリズムに囲まれた都市らしきものの写真には、幼い兼光も女の子も映っていなかった。
カメラのレンズを通して観察すれば、幻覚と現実の区別がつけられる。
そう判断した兼光は、USBカメラのレンズを通して周囲を観察しながら、慎重に出口を探し始めた。
これ以上己が意思ごと異端の神々に侵食されぬよう気を強く保ちながら歩いていると、やがて目に入るのは随所にそびえ立つ影の十字架。
「巨大な影の十字架か」
試しに十字架をUSBカメラで撮影してみると、はっきりと写っている。
実態を持つ影の十字架にそっと触ってみると、手が影自体に吸い込まれるような感覚を覚え、慌てて引っ込めた。
果たしてこの十字架は、神々の気まぐれで穿たれたオブジェなのだろうか。
それとも、影に見せかけた……出口なのか。
兼光が逡巡していると、幼い女の子の声が耳に届く。
『――くん』
「ん……?」
『また、遊ぼうね?』
「ん……」
反射的に生返事をしてしまうが、幻覚のはずの女の子の声が聞こえてきたということは……。
(「やべぇな……幻聴も聞こえてきやがった」)
はやく逃げ出さなければ、記憶の断片が溶け込んだこの世界に囚われてしまう。
兼光はブラスターを取り出し、そっと輝く地面に置いた。
(「俺のブラスターは質量無視で変形もできるんだぜ?」)
そっと呟いた言の葉に反応したブラスターは、質量保存の法則を無視しバイクに変形。
急ぎバイクにまたがった兼光は、一気にアクセルをふかすと、影の十字架に向けて走り出した。
迫る巨大な質量の塊に、兼光の脳裏に影の十字架にぶつからないかと不安がよぎるが、意を決すると目を閉じながら影の十字架に突っ込む。
影の十字架は、表面に漣を立てながら、バイクごと兼光を呑み込んでいた。
兼光が目を開けると、周囲に広がるのは光り輝く異端の神々の領域ではなく、一筋の光すら差し込まない完全な闇。
バイクのヘッドライトを頼りに注意深く周囲の気配を探るも、生の気配も光の気配も一切感じられなかった。
(「なんとか抜け出せたようだが、ここはどこだ?」)
兼光の疑問に答えるものは、今はいない。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「この尋常ならざる世界に長くとどまると
何が起こるか分らない。早く脱出するべきだが……。」
耳鳴りの様な幻聴に頭を押さえ
「……徐々に、酷くなっているようだ。
このままでは。」
前章の敵オンブラの幻が現れ
「お前は確かに倒れたはず。いや、幻か。」
実際に剣に斬られたかのような幻覚を感じ。
「これが続くと例え幻だと分っていても
いずれ精神が耐えられなくなる。」
「光の世界には不純物であろう影の十字架。
出口の見えない世界で脱出口を探すなら
やはりあれに賭けるしかない。」
しかしここから出られたとして何処に着くのか
までは分らないが、
影の十字架をみてその気配を探り
馴染み深いダークセイヴァーの気配を感じるものの
影に飛び込む。
●まぼろしの暗き森は、まぼろしの痛みを伴って
白き光とプリズムのように輝く地面を穿つよう、影の十字架がそびえ立つ中。
フォルク・リアは、突然響いた甲高い音に頭をかき回されるような感触を覚え、頭を押さえていた。
――キィィン……。
――ざわざわ……
耳をつんざくような耳鳴りに混ざる、性別も年齢も不明な人々の話し声。
周囲に人影はないため、フォルクにも明らかに幻聴とわかるのだが、話し声が徐々に大きくなっている気がしてならない。
「……徐々に、酷くなっているようだ」
このままでは、と声に出そうとして、突如現れた気配に顔を上げる。
フォルクの目の前には、いつの間にか漆黒の髪と同色の剣を持ち、左手に闇を宿した戦士が立っていた。
『この世界に、貴様の存在を捧げよ』
口を開いた戦士が紡いだ言の葉は、フォルクと猟兵達が撃破した……暗き森の戦士と同じ。
「……オンブラ」
茫然とその名を口に出すフォルクに、昏き瞳を湛えた漆黒の戦士は、容赦なく漆黒の剣を突き付ける。
「お前は確かに倒れたはず」
――いや、幻か?
目の前のオンブラは、フォルクの疑問に答える代わりに、突き付けた漆黒の剣を、躊躇なく地面と水平に振り抜いた。
一閃。
光を切り裂く漆黒の剣が、フォルクの胸元を横一文字に切り裂いた。
「がはっ……!!」
痛みに声を上げながら仰け反るフォルクの胸元には、傷ひとつない。
まぼろしの痛みが現実となって、フォルクの心身を蝕むが、オンブラの剣は止まらない。
『この世界に己が身を捧げ、果てよ』
袈裟斬り、斬り上げ、薙ぎ払い、突き。
容赦のない幻覚のオンブラの連撃は、フォルクの心身を容赦なく切り刻む。
(「これが続くと、たとえ幻だと分かっていても、いずれ精神が耐えられなくなる」)
――こころが壊れる前に、脱出せねば。
研究者らしく酷く冷静に、しかしその紫の瞳には焦りを滲ませながら。
フォルクは漆黒の剣を躱しながら痛む胸を押さえ、周囲に視線を巡らせた。
白い輝きに満ちる世界の中で、フォルクの目に留まったのは、ひときわ異彩を放つ、影の十字架。
地平線の彼方まで光とプリズムに満ちる中、光を吸い込むような漆黒を保っているのが、研究者魂に引っ掛かった。
(「出口の見えない世界で脱出行を探すなら、やはりあれに賭けるしかない」)
出口がダークセイヴァーの何処に繋がっているのかまでは分からないが、脱出の手掛かりはこれしかない。
フォルクは幻のオンブラの攻撃を避けながら影の十字架の前まで走り、影の十字架そのものの気配を探る。
異端の神々の狂気たる力に満ちた世界において、一際目立つ影の十字架から感じ取れる気配は――馴染み深いダークセイヴァーのそれだった。
(「やはり、この十字架が出口か」)
軽く触れると吸いこまれるような気がして、一瞬躊躇するフォルクの背に、幻のオンブラが追い付く。
『この世界からは逃がさぬ。そのいのち、捧げよ』
幻のオンブラは漆黒の剣を大上段に振り上げ、フォルクの背めがけ一息に振り下ろした。
――幻覚の漆黒の剣の刃に両断されたら、今度こそ壊れる。
フォルクは意を決し、影の十字架に飛び込む。
影の十字架は表面に漣を立てながら、飛び込んだフォルクの身体を漆黒の剣から守るかのように呑み込んでいた。
フォルクが放り出された先は、完全なる闇の中。
全身を苛む痛みはいつの間にか消え失せていたが、周囲に広がる生の気配のなさに不安が湧き上がる。
フレイムテイルに炎を宿しながら見渡した地面に広がっていたのが、草ひとつない荒野だから、なおさらだ。
(「ここは、一体……?」)
フォルクの疑問に答えるものは、今はいない。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
(環境耐性と狂気耐性で自分の心を強く持って周辺の調査を行い、その結果)この世界では通常ならば光はありがたがられるが、異端の神の精神が反映されているのか、有害でしかないなあ、と嘆息。
単に『神』と呼ばれるのではなく『異端の神』と呼ばれるという事は、それとは対極の『正統な神』がいると思えるのだが・・・、その辺は調査を進めていくしかないか。
此処は速やかに脱出するしかないが、この領域に立つ『黒き十字架』が鍵なのだろう。その中に『常闇の燎原』と思われる光景が見えるし。
もしもの為にオーラ防御を張って、『黒き十字架』に飛び込んで突破を図る。
●『異端』と『正統』の狭間にて
――キィィィン……。
異端の神々の叫びの様な甲高い音が微かに響く、白く輝く空間を一通り歩き回った後、シン・コーエンは大きく嘆息していた。
「……異端の神の精神が反映されているのか、有害でしかないなあ」
光に侵されぬよう己が身を守りながら、狂気に陥らぬ様強く心を保ち、己が足だけを頼りに白き光とプリズムに包まれた地を一通り回り調査したシンが得た結論は、極めてシンプルだった。
――この世界は、神ならざる身が滞在するだけで心身に有害だ。
脱出口を探し視線を巡らすシンの脳裏に、ある疑問が過る。
(「単に『神』と呼ばれるのではなく『異端の神』と呼ばれるという事は、それとは対極の『正当な神』がいると思えるのだが……」)
ダークセイヴァーの辺境地帯に蔓延るという『異端の神々』の呪い。
それはダークセイヴァーのオブリビオンに憑りつくだけで、その理性を奪い、狂気に落とし込む強大な呪詛。
その強力さ足るや、『第五の貴族』すら狂気に陥れる可能性もあるほどだ。
支配層の心身を容易に蝕むほどの呪詛を齎す存在は、もはや『神』そのものと言っても差し支えないだろう。
(「そういえば、グリモア猟兵は『異端の神』の存在しか口にしていない……ならば『正統な神』はいるのだろうか?」)
もし、この世界に住まう人々や他の猟兵に『神』の存在を問うた場合、『異端の神』の存在は口にしても、『正統な神』の存在は口にするのだろうか。
生きとし生けるものに憑りつき狂気に陥れる存在が『異端』の神ならば、『正統』な神は生あるもの全てに益を齎す存在なのだろうか。
――そもそも、『異端』と『正統』の境界は何処にあるのだろうか。
実際のところ、この世界の人々は、人類やヴァンパイアの叡智の届かぬ超存在が振るう力を『異端の神』の力と総称しているにすぎない。
だが、かつて辺境地帯を制圧するために攻め込み数々の神々を殺めたヴァンパイア達が、屠ったはずの神々に次々と憑依され、魂と肉体を奪い取られ「狂えるオブリビオン」と化したことを考えると、『異端の神』はオブリビオンを遥かに凌駕する力を持っている存在なのだろう。
それを本当に『神』の力を称して良いか否かは、シンには判断がつかない。
おそらく、『神』にまつわる真実は、人類もヴァンパイアも、そして猟兵達を『第4層からの乱入者』と称したごく一部の『第五の貴族』ですら知らないだろうから。
「……その辺は調査を進めていくしかないか」
再度嘆息したシンは、改めて周囲に視線を巡らし、ある一点に目を止める。
此処は速やかに脱出するしかないが、これまでの調査結果を総合すると、脱出の手掛かりとなり得るものは、ひとつしかなかった。
「……この領域に立つ『黒き十字架』が鍵なのだろうなあ」
まるで光の世界に闇の楔を打ち込むかのようにそびえ立つ影の十字架を見上げながら、シンは独りごちる。
圧倒的な質量を以て迫る十字架に閉じ込められた影の向こう側に『常闇の燎原』と思しき風景が見える気がするが、確証は持てない。
――それでも、脱出の手掛かりはこれしかない。
恐る恐る影の十字架に手を伸ばしてみると、影そのものがシンを吸い寄せるような妙な感覚を覚える。
シンは意を決し、十字架に閉じ込められている影に飛び込む。
影の十字架は抵抗なくシンを呑み込み、この世界から放逐していた。
身体にかかっていた光の圧が消えたことを察したシンが目を開けると、目の前には完全なる闇が広がっていた。
おそらく荒野のどこかだろう、と足裏の感覚から見当はつくものの、微かな光すら見当たらない闇の中では、何も目にする事は叶わない。
目に入るのは……ただ一面に広がる、己が身体すら見えない程濃密な闇のみ。
(「ここは、一体どこだ?」)
シンの疑問に答えるものは、今はいない。
大成功
🔵🔵🔵
文月・統哉
周囲を見渡し観察し
冷静に状況を確認する
あまり長居はしない方が良さそうだ
異端の神々の領域か
成程、闇に閉ざされた世界において
この白き領域は実に異端だ
白き光の中に立つ黒き十字架もまた
如何にも異質な物体に見えるけど
あれは領域の裂け目だろうか
黒き闇の先が出口に違いない
足を進めれば
頭の中に響く幾つもの声
――どこへ行くの?
――どうして行くの?
――ずっとここにいればいいのに
――貴方も過去になればいいのに
――不確実な未来なんて捨ててしまえば
――きっと楽になれるのに
そんな声には穏やかな微笑みを返して
揺るぎない意志と共に
闇の奥へと足を踏み入れる
俺は行くよ
不確実だからこそ知りたいんだ
この歩みの先に何が待っているのかを
●過去からの誘いを振り切り、未来に手を伸ばす
――キィィィン……。
白く輝く世界に広がる静寂を突き破るように微かに甲高い音が響く中、文月・統哉は冷静に周囲を見渡し、白とプリズムが支配する世界を観察していた。
一頻り観察した後、しばし目を閉じ思案するが、注意深く耳にしないと聞き取れない程度の微かな音が、妙に思考を妨げる。
それでもある程度思考をまとめた後、統哉は目を開けて改めて光の世界を眺め、軽く息をついた。
(「……あまり、長居はしない方が良さそうだ」)
恐らく、思考を妨げた微かな音も、異端の神々の権能によるものだろう。
幻覚と幻聴に支配され、この世界に取り込まれぬうちに、統哉は視線を巡らしながら出口を探し始めた。
白き光を乱反射しながらも静寂の中に佇むプリズムの建物の間を歩きながら、統哉は思う。
(「成程、闇に閉ざされた世界において、この白き領域は実に異端だ」)
ここは、常夜の世界を光で覆い尽くさんとした神が遺した神秘的な領域。
白とプリズムに満たされた世界は、夜どころか僅かな影の存在すら許さない。
闇に閉ざされし地に希望の光を満たそうと、神々が善意を以て造り上げた空間なのかもしれないが、たとえごく狭い空間であっても影の存在を一切許さず光で制してしまう能力を、人類の感覚で『異端』と呼ばずして何なのか。
同時に、白き光の中に立つ影の十字架もまた、如何にも異質な物体。
一体何のために、誰が穿ったのか。
いや、影すら許さぬ空間に、なぜ堂々と影の十字架が存在しているのか。
神ならぬ統哉に、影の十字架が存在する理由は察することすらできない。
ただ、ひとつだけ推測できるのは――。
(「――あれは領域の裂け目だろうか?」)
影の十字架に目を凝らすと、十字架の中に別の世界が広がっているようにも見える。
恐らく、あの闇の先が出口に違いない。
統哉は手近な影の十字架に向かい、歩みを進めた。
思考をかき乱そうとする微かな音は、徐々に意思を持った声へと変化し、統哉の脳裏に直接響く。
――どこへ行くの?
――どうして行くの?
脳裏に響いた幼子の声が、統哉の足を止めようとする。
――ずっとここにいればいいのに。
――貴方も過去になればいいのに。
柔らかな若い女性の声が、統哉を光に留め、過去へと誘おうとする。
――不確実な未来なんて捨ててしまえば。
――きっと楽になれるのに。
それは、統哉を確実な過去の存在としてこの世界に留めようとする、異端の神々の囁き。
おそらく、声に従えば、生の苦しみからは解放されるかもしれない。
だが、統哉は穏やかな微笑みと共に、それらの声を全て受け流した。
「俺は行くよ」
どうして、と幼子たちの声が脳裏に響き渡る前に、統哉はこの世界に満ちる光に溶け込ませるように、ゆるりと言の葉を紡ぐ。
「不確実だからこそ、知りたいんだ。――この歩みの先に何が待っているのかを」
……この世界から一歩踏み出し、『常闇の燎原』に到達するために。
揺るぎ無い意思を胸に秘めながら、統哉は声を振り払い、影の十字架に足を踏み入れる。
膨大な質量を持っているように感じられる十字架は、何の抵抗もなく統哉の身体を受け入れ、呑み込むように無限の未来が広がる闇へと誘った。
光満ちた地を抜けた統哉の行く手に広がったのは、永遠とも知れぬ闇。
靴底を通し感じ取れる地面の感触が、石畳を歩くような固い感触から、荒野に足を踏み入れたかのようなそれに変わったことだけはわかるが、本当にそうなのかは、目の前に翳した己が手すら見えぬ様な完全な闇の中ではわからない。
(「果たして、ここは?」)
統哉の疑問に答えを見出すかのように、目の前に広がる完全なる闇の中に徐々にうっすらと揺らめく蒼が差し込む。
その蒼が近づくにつれ、周囲の気温が徐々に下がり始めるのを、統哉は肌で感じ取っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『アイスクイーン』
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POW : アイスコフィン
【溶けない氷壁に一瞬で閉じ込める魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : フラッシュフリーズ
レベル分の1秒で【反応して、瞬間永久凍結魔法】を発射できる。
WIZ : フリージングスタチュー
見えない【好きなポーズ・好きな形に永久冷凍する魔法】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
イラスト:喜ノ崎ユオ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ポーラリア・ベル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
※マスターより訂正とお詫び
1章断章冒頭におきまして、「ダークセイヴァー地下第3層」と記しておりましたが、正しくは「第4層」となります。
ここにお詫びして訂正させていただきます。大変申し訳ございませんでした。
●ダークセイヴァー地下第4層・辺境地帯――最果ての地
影の十字架に飛び込み、異端の神々の領域を脱出した猟兵達の目の前に広がっていたのは、微かな光すら差さない、完全な闇に覆われた空間だった。
足裏に伝わる感触は、生の気配がない荒野のまま。
しかし、周囲の空間を包む闇は、領域に誘われる前に見た薄闇ではなく、完全な闇だった。
完全な闇の中では、光源がなければ己が手すら見ることもままならない。
猟兵達は急ぎ明かりを用意した上で改めて周囲を観察するが、生の気配は全く感じ取れなかった。
草花や苔すら生えていない、乾いた荒野が広がっているのはもちろん、周囲に「狂えるオブリビオン」が彷徨っている気配もない。
完全な闇の世界は、生物の生存すら許さない過酷な環境のようだ。
――まさか、ここが『常闇の燎原』なのだろうか?
――それとも、限りなく『常闇の燎原』に近い、辺境地帯の果ての果てか?
猟兵達が周囲を見渡していると、闇の中から声が響く。
「とうとうここまで人類が辿り着きましたか」
猟兵達が声が響いた方角に視線をやると、闇の中から蒼の髪飾りとドレスを身に着け、蒼い氷の杖を手にした女性が姿を現した。
蒼に身を包んだ女性――冷酷な氷の女王「アイスクイーン」は、猟兵達を視認すると、右手の指をパチン! と鳴らす。
瞬間、アイスクイーンの全身から黒い炎が噴出し、瞬く間にアイスクイーンを覆い尽くした。
「ここまで辿り着いたご褒美として、私の氷と黒い炎で全てを喰らい尽くしてあげましょう」
全身を黒い炎で覆ったアイスクイーンの殺気と魔力が急激に膨れ上がり、冷気と共に猟兵達の肌をピリピリと突き刺した。
猟兵達は、無意識下で感じ取っていた。
――このオブリビオンは、同族殺しや紋章を宿した吸血鬼より強い、と。
さらに、アイスクイーンが纏う黒い炎は、生きとし生けるものを求め激しく燃え盛っているように見える。
もし、黒い炎を纏ったアイスクイーンの攻撃が命中すると、防具や服、肉体は黒い炎に侵食され、アイスクイーンの傷を癒す糧となるだろう。
「さあ、生きとし生けるもの、人類よ。我が氷と黒い炎の前に跪きなさい」
氷の杖を振り上げ、杖の先端に蒼と黒の魔力を集積し始めるアイスクイーンを見て。
猟兵達は氷炎を宿した女王を退け道を切り開くために、各々の得物を抜き、身構えた。
――黒い炎を纏うオブリビオンを排除した先にあるものを、知るために。
※マスターより補足
第3章は「アイスクイーン」とのボス戦となります。
現在、猟兵達がいる空間は、完全な闇に覆われております。
この空間では「黒い炎」に包まれたアイスクイーンの姿は極めて見えづらくなるため、見つけるためには高いレベルの「暗視」スキルが必要となります。
ただし、戦闘開始前に何らかの手段で明かりを用意すれば、アイスクイーンを見失うことはなくなりますので、可能ならば明かりを用意したほうが良いでしょう。
明かり(ないしはそれに類した光源となり得るもの)を用意する場合は、プレイングに記してください。
「黒い炎」に覆われたアイスクイーンは、『同族殺し』や『紋章』を宿したオブリビオンに匹敵する力を持つ、強敵です。
さらに「黒い炎」に覆われたアイスクイーンの攻撃は、命中すると猟兵のあらゆる防護を侵食し、黒い炎に変えてしまいます。
アイスクイーンの攻撃を見切って回避しない限り、攻撃を受けた防具・服・肉体は「黒い炎」に変えられ、アイスクイーンの体力を回復してしまいますので、ご注意ください。
なお、猟兵からの攻撃が「黒い炎」に変えられることはございません。
この章は、【「黒い炎」を纏ったアイスクイーンの攻撃に対処する】と、プレイングボーナスが付与されます。
――それでは、最善の戦いを。
ベッジ・トラッシュ(サポート)
◆戦闘時
戦うのは怖い!
なのでボス戦ではだいたい逃げ回っている。
(味方の手助けになる行動や、囮になるなどの功績を得ることはあるがだいたい無意識)
「こ、ここ…怖いのではないゾ!ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!!」
手の届かない相手にはパチンコで苦し紛れに絵の具弾を飛ばすこともある。
◆冒険時
基本的に好奇心が強く、巻き込まれ体質。
敵味方関係なく、言われたことには素直に従う。
怪しいような気がしても多少なら気にしない。
後先考えずに近づいて痛い目を見るタイプ。
◆他
口癖「ぎゃぴー?!」
お気に入りの帽子は絶対にとらない。
食べ物は目を離した隙に消えている系。
(口は存在しない)
性能に問題はないが濡れるのは嫌い。
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
●闇をもかき消す弾幕と、七色の色彩の中で
――どこまで広がるとも知れぬ、完全な闇の中で。
「ぎゃぴー!!」
突然上がる悲鳴と共に、爛々と輝く金の瞳を湛える四角いテレビの画面が、闇の中に浮かび上がった。
金の瞳とテレビ画面の持ち主たるテレビウムのベッジ・トラッシュ(深淵を覗く瞳・f18666)は、突然周囲に広がった完全なる暗闇を見まわし、オロオロするばかり。
怯えながらも慌てふためくベッジを、黒い炎を身にまとった氷の女王『アイスクイーン』は、カラコロと笑いながら闇の中から見つめていた。
「あら、そこの坊やはこの闇を怖がっているのかしら?」
「こ、ここ……怖いのではないゾ!」
ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!! とベッジが身震いしながら口にしようとしたその時、アイスクイーンの杖先がキラリ、と光る。
「その瞳、よく目立ちますわよ?」
「危ない!!」
杖先から氷の彫像へ変化させる魔術が放たれた瞬間、ベッジの金の瞳を頼りにアイスクイーンとの間に割り込んだスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)が精霊印の突撃銃を連射し、弾幕を張る。
炎の精霊を宿した弾丸は、氷の魔術を操るアイスクイーンに対しては極めて有効に思えたが、ベッジを氷の彫像に変えるための魔術は、スピレイルの目の前で弾幕を凍らせていた。
――『氷の女王』を称するだけあり、アイスクイーンの魔術は炎すら制する威力を誇る。
幸い、弾幕が魔術を遮ったためベッジが氷の彫像にされることはなかったが、目の前で炎がそのまま凍り付けば、スピレイルはもちろん、ベッジも流石に驚くもので。
「ぎゃ、ぎゃぴー!!」
凍り付いた炎に驚いたベッジは、ビビりながら闇雲に逃げ回りつつ、パチンコで絵の具弾を撃ちまくる。
完全な暗闇の中ではアイスクイーンを絵の具で着色する意味はほぼないが、スピレイルが弾幕を張った一瞬だけ、炎の精霊たちが絵の具を浴びたアイスクイーンと絵の具がぶちまけられたかのように染め上げられた地面を浮かび上がらせた。
(「これは……使えそうですね」)
精霊印の突撃銃を構えたスピレイルの脳裏に、何かが閃く。
「ベッジさん、そのまま絵の具弾を撃ち続けて下さい!」
「こ、こここここ……怖いのだゾ!! 大丈夫なのカ!!」
帽子を目深に被り、目印となり得る金の瞳を隠しながらぶるぶる震えるベッジを背に庇いながら、スピレイルはひたすら弾幕を張り続け、叫ぶ。
「こちらは大丈夫ですから、さあ!」
「エエい、こうなれば!!」
ベッジは破れかぶれに闇に飛び込み、逃げ回りながらやたらめったら絵の具弾を撃ち続ける。
パチンコから撃ち出される絵の具弾はたまにアイスクイーンの胴に命中し、べったりと絵の具を貼りつかせるが、ほとんどは外れ、地面を七色に染めていった。
「ちょこまかとよく動くようですが……金の瞳が輝く限り、逃げられませんわよ?」
ベッジを嘲笑するかのように見つめ続けるアイスクイーンの杖先は、ベッジから離れない。
――明かりなき環境で、自然発光するベッジの金の瞳と顔はよく目立つ。
いくらベッジが闇に紛れようとしても、帽子を深く被って顔を隠そうとしても、完全に顔を隠し切れないのでは闇に溶け込めない。
アイスクイーンの口元がベッジを嘲笑するかのように釣り上がり、杖先がベッジに向けられた。
「そのまま凍れば、走り回ることもないでしょうに?」
「土の精霊さん。力を貸してください!」
ベッジを嘲るアイスクイーンの声を打ち消すように、突然スピレイルの声が深き闇の中から響き渡った。
刹那、アイスクイーンの周囲に広がる絵の具の荒野が不自然に盛り上がりながら無数のカラフルな土壁に変化し、アイスクイーンの動きを妨げるように次々とそびえ立ち始めた。
「なにっ……!?」
突如出現した壁に驚き、反射的に発動したアイスクイーンの氷の魔術は、カラフルな分厚い土壁に阻まれ、ベッジまで届かない。
やがて、無数の土壁は複雑に組み合わさり、アイスクイーンを閉じ込める迷路の檻となった。
「こ、これは……やられましたわね」
絵の具で彩られた土壁を杖で叩きながら、アイスクイーンは忌々し気に吐き捨てる。
(「何とかうまくいきました」)
精霊印の突撃銃の銃口を地面に向けながら、スピレイルはほっと一息つく。
ベッジに絵の具弾をパチンコで撃ち続けさせて絵の具の地面を広げさせたスピレイルは、アイスクイーンが絵の具の地面に足を踏み入れた瞬間、土の精霊に命じて絵の具の地面を無数の土壁と変化させ、組み合わせて複雑な迷路を形成し、アイスクイーンを閉じ込めることに成功していた。
「怖かったのだゾ……! あの怖い女の人はモウいないのか?」
息を切らしながら戻って来たベッジを、スピレイルが笑顔で出迎える。
「はい、ベッジさんが絵の具をたくさん撒いてくれたおかげで、居場所が分かりやすくなって迷路に閉じ込めることができました」
「よかったのダ……」
無意識ながら氷の女王の幽閉に貢献したと悟ったベッジが、力尽きたかのようにへなへなと地面に腰を落としかけるのを、スピレイルがそっと支える。
カラフルな土壁の迷路の中からは、アイスクイーンが出口を求めて必死に駆けまわる足音が響き渡っていた。
「これで他の猟兵さんたちも、氷の女王を見つけやすくなるはずです」
「だったらはやくこの闇から逃げヨウ! はやく!!」
「はい!」
ベッジとスピレイルは顔を見合わせ頷き合うと、後続の猟兵に後を託し、撤退した。
――七色の絵の具でカラフルに染め上げられた地面と迷路を残して。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シン・コーエン
単独希望
ここはあくまで通過点だが、強敵には違いないので己が全力で斬り伏せよう。
宇宙空間でも活動できるよう、フィルムスーツには光学以外にもサーモグラフィー機能等が備わっているし、灼星剣の紅い輝きが灯りとなるので闇は克服。
黒い炎による攻撃は第六感で読んでの見切りで躱す。
躱しきれ無い場合はジャンプ・念動力で高く飛んだり、衝撃波・念動力で黒い炎を吹き飛ばしたりで対応する。
魔法に対しては、炎の属性攻撃・結界術・高速詠唱で周囲に炎の結界を張り巡らせて対応、最終手段としてオーラ防御で防ぐ。
反撃として灼星剣に炎の属性攻撃を纏わせ、斬撃波を放ちつつの灼星乱舞を使用。
2回攻撃と合わせての計4回攻撃で敵を焼き斬る!
●闇を切り裂く灼熱の星は、闇すら祓う
――光の差さぬ闇に突如現れた、カラフルな迷宮にて。
「驚いたわね……あれだけの力を持つ人類がいたなんて」
七色の絵の具でカラフルに染め上げられた土壁の迷路の出口から、黒い炎を纏った氷の女王『アイスクイーン』が姿を現す。
「いつのまにか、人類はここに辿り着くだけの力をつけていたのかしら?
複雑な迷路から脱出し、一息つくアイスクイーンを、突如深紅に輝く剣が強襲した。
「っ!?」
反射的にアイスクイーンが杖で弾き飛ばした剣の刀身は、激しく燃え盛る炎で覆われている。
弾き飛ばされた炎の剣――炎に覆われた灼星剣を携えたまま、アイスクイーンから距離を取るよう着地したのは、灼星剣の持ち主たるシン・コーエンだった。
シンにとって、此の地はあくまでも通過点だが、待ち構えていたオブリビオンは強敵に違いない。
――故に、己が全力で斬り伏せる。
シンは着用している宇宙空間での活動に適応したフィルムスーツに備えられた機能のひとつ、サーモグラフィー機能を起動して、闇に紛れたアイスクイーンがいるであろう空間を見渡す。
表示されたのは、暖色と寒色が揺らぎ混じったような人型がひとつ。
暖色は、おそらく黒い炎。
寒色は、おそらく……アイスクイーンの本体。
人型の周囲の空間のいろは、やや冷え込みながらも安定している。
――間違いなく、アイスクイーンはそこにいる。
シンが人型向けて駆け出そうとした、その時。
「こちらからは見えない――そうお思いかしら?」
突如、黒い炎を纏った瞬間永久凍結魔法が凝縮された氷の礫が、暗闇からシンを狙って降り注いだ。
命中すればアイスクイーンを撃破せぬ限り解けぬ氷に閉じ込めるであろう氷の礫を、シンは第六感で察知しつつサーモグラフィーの表示から軌道を見破り、大きく身体を捻ってギリギリ回避。
灼星剣に炎を宿している今、タイミングを合わせれば礫を切り払えたかもしれないが、0.01秒以下の瞬きすら許さぬ時間で生成され撃ち出される氷の礫の軌道を予測し切り払うのは、剣術の達人の域に達していたとしても至難の業だろう。
礫を回避したシンの脳裏に、第六感が齎す警鐘が激しく打ち鳴らされる。
その意味を考えるより早く、シンは念動力を併用し高くジャンプ。
――ガキッ!!
直後、シンが立っていた地面が派手な音を立てながら瞬時に凍結し、決して解けぬ氷の床が一面に広がった。
念動力で己が身を浮かべながら、シンは紅のオーラにも炎を忍ばせ対魔法の炎の結界を構築し身に纏い、一気にアイスクイーンに接近。
瞬間永久凍結魔法で凍り付いた地面は、炎の結界が触れても解けることはないが、念動力を併用して僅かに地面から身を浮かせながら走るシンにとっては移動の障害にもならなかった。
「我が剣よ、我が生命の力を得て更なる進化を遂げ、この地に集いし敵を一掃せよ!」
シンの朗々たる宣言とともに紅く輝くオーラを注ぎ込まれ、さらに炎を宿した灼星剣は、空間全てを焼き尽くさんと高らかに燃え上がり、周囲一帯を照らしながら巨大化。
そのままシンは、紅の斬撃波を放ちながら、巨大化した灼星剣を上段から一閃。
続けざまに下から上に斬り上げるように二閃。
さらに袈裟懸けに斬り下ろすように三閃。
他の猟兵がいたならば無差別に巻き込んでいたであろう灼星剣の乱舞は、他の猟兵がいない故、誰一人巻き込むことなく的確にアイスクイーンのみを融かしながら焼き切ってゆく。
「ああああ……っ!!」
「まだ終わらない!」
氷ごと切断される激痛に叫ぶアイスクイーンを、シンは残っていた土壁の迷宮を巻き込むようにさらに巨大化した灼星剣を振るい、細かく細断された土壁ごとアイスクイーンに追撃たる三撃を加える。
深紅の巨大な剣の乱舞は、闇を炎に塗り替え、紅の軌跡を虚空に刻み込みながら、確実にアイスクイーンの胴や四肢を融かし、焼き切っていた。
大成功
🔵🔵🔵
雪・兼光
完全な闇か
中二病患者なら大喜びしそうだな
相手からの攻撃は第六感、見切り、聞き耳を利用して可能な限り避ける
攻撃を受けたらオーラ防御、浄化で軽減できるか試す
光源はブラスターの光を明り代わりに使う、こっち居場所はばれるが仕方がない
撃つ場合は誘導弾を忘れずに相手の方へ誘導してくれることを祈る
おびき出す的な意味でもいいかな
攻撃はユーベルコードをまず当てる事に専念する
外見が女性だがオブビリオンだ関係ない男女平等パンチアンドキック
相手の氷がユーベルコードの正拳とか回し蹴りで撃ちかえせるなら撃ちかえす
無理なら余計な事はしない
2回攻撃、部位破壊、浄化も付けて攻撃してやる
…お姉さん余裕そうな態度が崩れてるぜ?
文月・統哉
成程、常闇とはよくいったものだね
しかし氷の女王には見えている筈
灯りが有用なのは間違いない
ガジェットショータイムで
空飛ぶ光源を召喚
複数に分離して広範囲を照らし
【念動力】とプログラムで細かい操作も可能だ
素早く周囲の状況を確認
敵味方の位置を把握し【観察・情報収集】
女王の出方を窺う
と見せかけ突進
即応する攻撃を武器受け…は勿論フェイントだ
ガジェットの正体は幻の投影機
黒い炎が侵食すべき実体はそこにはない
俺自身は攻撃を【見切り】回避して
素早く死角に回り込む
女王の攻撃は初期反応が早い分行動の修正はし辛いだろう
死角からのカウンター攻撃で急所を斬り
おやすみなさいと骸の海へ送り出す
目指すは第3層
常闇の燎原のその先へ
●闇の氷炎を穿つ拳と絡繰りの光
――紅く輝く星が消え、再び完全なる闇を取り戻した空間にて。
(「成程、常闇とはよく言ったものだね」)
光の一筋すら差さない完全な闇に身を包まれながら、文月・統哉が周囲を見渡すと、闇の中にほんの僅かに揺らめく青が浮かび上がった。
よく見ると、蒼に幾筋か紅が走っている気もする。
恐らく、先に対峙した猟兵に、熱量を以て焼き切られたのだろう。
「また人類の気配が……いつの間に力を蓄えていたのでしょう?」
痛めつけられた怨嗟を籠めたかのような氷の女王『アイスクイーン』の憎々しげな声は、統哉たち猟兵に確実に向けられている。
(「しかし、氷の女王には俺たちが見えているはず」)
――ならば、灯りが有用なのは間違いないだろう。
闇の中、統哉がそっと周囲を伺うと、いつのまにか別の猟兵の気配がひとつ。
その気配がオンブラを倒す際に共闘した雪・兼光の気配だと気づいた統哉は、そっと合図を送っていた。
(「完全な闇か。中二病患者なら大喜びしそうだな」)
一方、兼光もまた、統哉の気配を察しつつも、ふと場にそぐわぬことが脳裏をかすめ、思わず苦笑いを零してしまう。
暗黒や闇などに惹かれる年頃の少年少女たちなら、大喜びでこの闇に紛れ込みたがるだろうが、ここに足を踏み入れたが最後、現実化した空想妄想に呆気なく蹂躙されかねない。
「これ以上人類に此の地を荒らさせません……凍りなさい」
統哉と兼光の気配を捉えたアイスクイーンが、高らかに杖を掲げる。
それに呼応するよう身構えた兼光の手にはブラスターが、そして統哉の手にはガジェットと漆黒の大鎌・宵が握られていた。
(「まずは光源を確保しないと」)
統哉が念じながら空に放り投げたガジェットは、闇に溶け込みながら小さく複数に分裂し、プロペラを備えた空飛ぶ光源へと変化する。
あらかじめ組み込んだプログラムと、統哉自身の念動力で配置を微調整された空飛ぶ光源ガジェットの一団が広範囲を照らすと、やがて闇に揺らめく蒼いドレスの女性がぼんやりと浮かび上がった。
はっきりと、ではなく、ぼんやりと、になっているのは、アイスクイーンが纏う黒い炎が光を燃やし尽くすかのように遮っているからだが、ぼんやりとでもわかればそれでいい。
統哉と兼光は照らし出された周囲の状況も確認するが、ただひたすら荒野が広がるだけで、双方の動きを妨げるものは何もなさそうだ。
「たかが複数の光源で、私の居場所を暴き出したところで――」
――あなた方には何もできませんわよ?
そう、アイスクイーンの唇が動いたと思われた刹那。
――キラリ。
杖先に光る蒼を見た瞬間、統哉は反射的に身を捻る。
直後、わき腹を掠めるように瞬間永久凍結魔法の塊たる氷の礫が通り過ぎ、一瞬ヒヤッとした。
だが、統哉に氷の礫を狙い撃ったほんの一瞬だけ、アイスクイーンに隙が生じる。
統哉が回避した直後、兼光は落ち着いて腰を落としながらブラスターを構え、照明も兼ねた誘導弾を数発発射。
空飛ぶ光源ガジェットに照らされているアイスクイーンに、ブラスターの光線を引き寄せる誘導弾が数発着弾するのを目視確認した兼光は、ブラスターの引き金を躊躇なく引いた。
光線の出所を辿られれば兼光の居場所もバレかねないが、明かり代わりにもなるため仕方ない、と兼光も割り切っている。
果たして誘導弾に的確に導かれた光線は、確実にアイスクイーンの肩口を捉え、融かしていた。
「くっ……!」
光線が伸びた方角――兼光を睨みつつ、アイスクイーンは焼き切られ融かされた肩から走る激痛をこらえるように、顔を顰めさせていた。
目の前でブラスターの光線に撃ち抜かれるアイスクイーンを眺めながら、統哉は改めてアイスクイーンの出方を伺うふりをし、突然突進する。
光源たる空飛ぶガジェットは、統哉自身を照らし続けるように彼を追いかけていた。
「その蛮勇さ、無謀さ、ああ愚かなことで」
無謀な統哉を嘲笑いつつ、死ね! と再度杖先から放たれた瞬間永久凍結魔法たる氷の礫は、確実に統哉の四肢を襲う。
統哉は宵で氷の礫を切り払おうとするが、瞬きする間に迫る黒い炎を纏った礫を見切るのは容易ではない。
「凍らされるぞよけろ!!」
兼光が統哉に警告するも、刹那の間に生成され、放たれる氷の礫を避けるには間に合わない。
氷の礫が、統哉の四肢を、全身を捉え、凍り付かせようとする。
――ブゥゥ……ン。
だが、礫の直撃を受けた統哉の姿は、風に吹き飛ばされた影のように大きくぶれ、掻き消えた。
「幻影ですって!?」
いつの間に入れ替わったのか見切れず、驚愕のあまり硬直するアイスクイーン。
統哉の無謀な突進も、無謀な切り払いも、全て幻影の投影機たる空飛ぶ光源が齎した、壮大なフェイントだった。
「おおっと……お姉さん余裕そうな態度が崩れてるぜ?」
幻影のフェイントに引っ掛かって大きな隙を晒したアイスクイーンに、兼光はすかさずダッシュで肉薄。
四肢に生体エネルギーをオーラのように纏わせつつ、兼光はアイスクイーンの懐に潜り込むよう密着し、至近距離から拳を腹に叩き込んだ。
――ドゴォゥッ!!
胴をくの字に折られたアイスクイーンの目が大きく見開かれた。
「が、はっ……!! 女性、に……」
「アンタはオブリビオンだ関係ない。男女平等パンチアンドキック」
拳を通して殴った感触と威力を記憶した兼光は、ほぼ同じ程度の力を足に籠め、強烈な回し蹴りをアイスクイーンのわき腹に叩き込む。
立て続けに痛打を浴びたアイスクイーンは、よろめきながら後退しつつ兼光を睨みつけ、瞬間永久凍結魔法たる氷の礫を兼光の拳に放った。
拳を引っ込めれば胴に命中し凍結させられるが、氷の礫を確認してから回避するのもまた至難。
受けるか避けるかの二択しかない状況で、兼光の脳裏を過ったのは――第3の選択肢。
(「今なら拳で撃ち返せる、か?」)
もし、生身の儘なら間違いなく凍結させられ、拳ごとブラスターも封じられるのは自明だが、生体エネルギー……おそらく己が魔力を纏っている今なら、打ち返せる可能性はある。
兼光は思い切って、真正面から迫る氷の礫に己が拳を合わせるようにぶつけてみる。
――カキィンッ!!
氷の礫は魔力が多分に含まれる生体エネルギーにはじき返され、真っ直ぐアイスクイーンに突き進んだ。
「撃ち返した……ですって!?」
驚愕するアイスクイーンの両腕に、兼光が撃ち返した氷の礫が命中、瞬時に凍結させる。
凍結した箇所はすぐに砕かれるも、幻影を囮に死角に回っていた統哉が、背後から胴を掬い上げ両断するように宵を振るった。
「いつの間に!?」
アイスクイーンも咄嗟に瞬間永久凍結魔法の氷の礫を生み出し放つも、既に1度目にしている故に予想していた統哉は簡単に見切って躱していた。
0.01秒以下で発動する魔法は、相手を認識次第即応し、発動できる。
だが、初期反応が早い分、行動の修正はしづらいはず。
統哉の狙い通り、軌道の修正が利かなかった氷の礫は統哉を凍らせられないまま、虚空へと消え去った。
兼光もまた、統哉に合わせるようにアイスクイーンの胸を狙い、正拳突き。
誰に教わったか遥と知れぬ護身術は、しかし確かに兼光の血肉となり、拳をオブリビオンのいのちすら穿つ武器へと変貌させていた。
「このまま骸の海へ還りな!!」
兼光の全魔力が乗った拳は、狙い違わずアイスクイーンの心臓を撃ち抜かん勢いで強打し、その動きを止め。
「……おやすみなさい」
背後から統哉が振るった大鎌は、アイスクイーンの急所を深々と抉り、いのちを狩り取って骸の海へと送り出していた。
「あ、あ……なぜ……」
――なぜ、人類如きに自分が敗れる?
アイスクイーンの脳裏に浮かんだ疑問は、唇には乗らず。
拳と大鎌が引かれ、力なく頽れたアイスクイーンは、そのまま黒い炎に巻かれ融けるように消滅し、骸の海へと漂っていった。
●『常闇の燎原』
アイスクイーンが消滅した荒野に、再び完全なる闇が戻る。
兼光と統哉は、ブラスターの先端に灯した光と空飛ぶ光源ガジェットで周囲を照らしながら改めて周囲を探索するが、周囲は何処まで続くとも知れぬ永劫の闇と荒野が広がるだけだった。
「俺ら、既に常闇の燎原に足を突っ込んでいるのかもしれんな」
ふと、兼光が呟いた言の葉に、統哉も同感とばかりに頷く。
もしその通りだとしたら、今後は『常闇の燎原』で起こる現象もグリモアが予知しやすくなるだろう。
ならば、人の目では決して見通せない完全な闇への対処を考えた上で、機会を改めて探索し直したほうが、きっと良い結果を齎すはず。
「いったん帰るか?」
背後に現れた転送ゲートの気配を察し、兼光が提案すると、そうかもね、と統哉はひとつ頷き、蠢く闇へと視線を向けた。
その視線の先には、相変わらず闇のみが広がるだけだけど。
「目指すは第3層……常闇の燎原のその先へ」
「ああ、いつかこの先へ」
兼光と統哉は、闇の果てを見据えるようにじっと見つめながら、グリモアベースへ繋がる丸盾のゲートに足を踏み入れ、帰還した。
――常闇の燎原のどこかにあるであろう手掛かりを見つけると、心に誓って。
大成功
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