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奇跡が生まれて死んだ今日

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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●とある走馬灯
 あかんぼうが生まれ、顔に皺を刻んだ老人になるまで。
 ぼうっとその景色を見ていた初老の男は、少ししてそれが走馬灯であると気づいた。

 戦乱の絶えぬクロムキャバリアにおいて、男はとある小国家の元首であった。
 この世界の多くの人間がそうしているように、隣国との泥沼の紛争に明け暮れた男は、しかしある時、自分の歩む道は一つではないと気づいたのだ。

 父祖から受け継いだ怒りがある。戦場で倒れた友への想いがある。
 だが、それを手放したのなら、此処はもう少しだけ安らげる場所になるのではないだろうか?
 気づいたその日から男は仲間へ訴え、国民に訴え、敵である隣国へと自分の歩みたい道を語った。
 それがとうとう人々を動かし、自国と隣国の間で軍備縮小条約が結ばれた時、男は奇跡が起こったのではないかとすら錯覚した。

 今日は、両国の国境で行われる平和祈念式典の日。
 互いの国から運んできたキャバリアを同時に破棄して、互いに手を取り合うことを誓うのだ。
 勿論、これは終わりではなく始まり。
 殺し合いをしていた者たちがすぐさま友人に慣れる訳もなく、これからも苦難は続くだろう。
 しかし、その苦難へと挑戦する第一歩を自分たちは踏み出すのだと思うと、喜びと誇らしさが胸にこみあげるのだ。

 それが、どうして。
 突如暴走したキャバリアたちが、国の差別なくすべてを血煙へと変えていく。
 希望に満ちた式典が屍山血河の地獄となるその光景を、男は呆然と見つめていた。

●砕けぬ奇跡を掲げよう
「手の空いてる人はいるかしら? クロムキャバリアでオブリビオンが出てきそうなの」
 グリモアベースで声を上げた少女の周りに、猟兵たちが集いだす。
 未来に起こる悲劇に立ち向かわんとする彼らの前で、予知を見た少女が話を進める。
「小国家同士でね、停戦のための式典が行われるの。お互いにキャバリアを持ち寄って壊しちゃって、もう戦いは終わりにしようって約束するのね」
 そこにあるのは、血で血を洗う闘争を終わらせようという人々の決意。
 敵を倒し、なにより自分を守る武器を手放す恐怖を乗り越えた彼らがその誓いを掲げる日になるのだ。

「だけど……それは全部台無しになっちゃうの。集められたキャバリアがオブリビオンマシンになって、参列者たちは全滅。停戦を進めた穏健派を失った両国は、また終わりのない紛争に向かっていくわ」
 戦乱が日常ですらあるかの世界で、このような停戦条約は奇跡的なものだ。
 一度破綻してしまった誓いに二度目は無く、人々は疑心暗鬼と怒りのままに望まぬ戦いを再開する。
 それが、少女の持つグリモアが映した未来であった。
「でも、そうはならないわ! みんながいるもの!」
 その悲惨な未来を見た上で、少女は明るい声で宣言する。
 グリモアが告げる未来は絶対のものではない。
 世界を渡りオブリビオンに立ち向かう猟兵によって、彼らの運命は変えられるのだ。

「事件が起こるまでは現地で待機してて欲しいの。式典に合わせて特設の遊具や出店が出ていて、ちょっとしたテーマパークみたいになってるわ!」
 少し浮かれた調子で、少女は言葉を続ける。
 オブリビオンマシンが出現したなら、まず優先すべきは式典に参加する人々の安全だ。
 彼らを守らねばならないが、そのためには危険そのものであるオブリビオンマシンを如何に排除するかが求められるだろう。
「それと……ここまで致命的なタイミングでオブリビオンマシンが出るなら、誰かが糸を引いているのかもしれないわ。首謀者が現れたら、その撃破もお願いね!」
 そう言葉を締めくくった少女が異世界への道を開き、猟兵たちは歩み出す。
 戦乱の中で生まれようとしているささやかな平和を守るべく、彼らは悲劇に挑むのだった。


北辰
 武器を取り、戦場に立つ者は勇敢です。
 武器を手放して其処を去る者も同様に。
 OPの閲覧ありがとうございます、北辰です。

 クロムキャバリアにて、平和にたどり着く為のシナリオをお届けします。
 今回は3章構造、日常フラグメントの後、集団戦とボス戦の連戦です。

●1章
 平和祈念式典に参加しましょう。
 様々な食べ物の出店が立ち並び、特設の観覧車やジェットコースターのような遊具まで用意された明るい式典です。
 普通に遊んでいただいてもいいですし、現地の人々と交流してその声を聞く事も出来ます。
 クロムキャバリアは猟兵が認知されているので、式典の警護を申し出ればこころよく受け入れてくれるでしょう。
 ただし、参列者の目の前でキャバリアを破棄して平和を誓う式典ですので、集められたキャバリアを先んじて破壊することは認められません。

●2、3章
 それぞれオブリビオンマシンとなったキャバリアとの集団戦、それを引き起こした首謀者との戦いになります。
 戦場は式典会場ですが、キャバリアにとって障害物となる大きさの建物はありません。
 式典に参加する両国の元首たちや一般人はある程度自力で逃げようとはしますが、猟兵がサポートしてあげた方が確実ではあります。

 武装を破棄する為の式典ですが、プレイングで希望した場合、かろうじてオブリビオンマシン化を免れたキャバリアを借り受けることができます。
 基本的には集団戦で戦うキャバリアと同じ型のものです。

 敵キャバリアにはそれぞれ搭乗者がおりますが、2章で戦うのは正気を失った両国の軍人です。
 可能な限り生かして救出するのが望ましいでしょう。
 3章での搭乗者は現状不明です。
 仮にどちらかの国の人間であった場合、それが露呈すれば両国の信頼関係にひびが入るかもしれません。

●プレイング受付
 原則としてOP公開後は常に受け付けております。
 各章初めに断章を挿入しますが、その前にプレイングを送信したという理由での不受理はありません。

 それでは、奇跡のような平和を目前に降り注いだ悲劇。
 その運命を打ち払い人々を救う皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『娯楽の城』

POW   :    体力の続く限り遊ぶ

SPD   :    マップを活用し、効率よくルートを取って施設を巡る

WIZ   :    座れる場所でのんびり過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●踏み出す
 猟兵たちが降り立った国境地帯は、戦火の傷跡がいまだ残る平原だった。
 簡易的な防壁が両国を隔て、大破して回収することもできなかったキャバリアの錆びた残骸がちらほらとみられる。
 防壁に空いた穴を広げ無理やりに作られた式典会場を見れば、つい先日まで戦いが続いていたことは容易にわかるだろう。

「おや、お客様かい? ようこそ記念すべき今日へ!」
 それでも、猟兵に気付いた警備員の声は明るいものだった。
 出店では嬉々として腕を振るう店主たちが声を張り上げ、特設された遊具に子供たちが群がるのを二国の親たちが見守っている。
 その間にはどことない気まずさのような空気が漂うものの、皆が笑顔を作り話に興じていた。

 戦の傷跡は癒えぬまま。彼らの胸中に宿るものは決して希望だけではないだろう。
 それでも、自分たちが生きるこの地をより良いものにするために。
 敵であった相手と手を結ぶために歩み出した彼らの第一歩が、そこにはあった。
御園・桜花
「…あの。同盟はとても良い事だと思うのですけれど。キャバリアを壊す必要は、あるのでしょうか」
困り顔で何人もの現地の人に、訪ね歩く

「とても貴重な第一歩、歴史的な瞬間ですけれど。私の生国では、物にも命が宿ると言われています。武装解除さえすれば、重機としての第2の生があっても良いのかな、と思うのです。使おうが使うまいが、オブリビオンマシンになる機体はなりますもの。国を守ってきた同志の最期を此のような形にするのは、とても可哀想な事のような気がするのです」

式典の観客として参加
不遜な考えだと戒められたら、しょんぼり出店巡り食べ物パクパク

「…美味しいです」
気に入った物は後の放出考え大量購入し仕舞っておく



●消えゆくものは
 観客として式典を見てみたい。
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が猟兵としての身分を明かしてそう伝えると、警備員は驚くほど好意的にその申し出を受け入れた。
 元首たちの下に案内するという彼の先導に従い式典会場を歩けば、あちらこちらで人々の活気ある様子が見て取れる。
 みな、今日という日を心から喜んでいるように見えて、自分の抱えるとある『問い』は、彼らにとっては考える意味すらないのかもしれない。
 だが、それでも桜花は問わずにはいられないのだ。
「……あの。同盟はとても良い事だと思うのですけれど」
 声をかけ、警備員の足を止めて、彼女は胸の疑問を伝える。
 その視線は、この場所からも見える整列した巨体たちへと向けられて。
「――キャバリアを壊す必要は、あるのでしょうか」

「必要……ですか?」
 一貫して客人に好意的だった男の表情に、困惑とほんの少しの警戒が混ざる。
 国の中には反対派も居るのかもしれない。桜花もそんな警戒を感じ取り、言葉を選んで問いを続けていく。
「とても貴重な第一歩、歴史的な瞬間ですけれど。私の生国では、物にも命が宿ると言われています。武装解除さえすれば、重機としての第2の生があっても良いのかな、と思うのです」
「キャバリアに、第2の生……」
 桜花の柔らかな声色も手伝ってか、警備員の態度は思ったほど悪いものではない。
 神妙な面持ちで彼女の言葉を繰り返す男は、少なくとも桜花の問いを考えもせずに斬り捨てるつもりはないようだ。
「使おうが使うまいが、オブリビオンマシンになる機体はなりますもの。国を守ってきた同志の最期を此のような形にするのは、とても可哀想な事のような気がするのです」
 もちろん、この世界と桜花の故郷の常識は違う。
 オブリビオンですら転生の安らぎを得る世界と、小国家同士の争いが続くこの世界では同じ価値観を望むべくもない。
 それでも、無残に破壊されようとするキャバリアを前に問わずにいられなかった桜花へ、何かに気付いたようなそぶりの男は寂し気に返すのだ。
「……ええ、仰る通り、残酷な仕打ちです。ですが、隣国にとって我らの同志は友を奪った恐るべき兵器。私たちにとっての相手のキャバリアも、同様です」
「……そうですか」
 穏やかな言葉遣いが伝えるのは、明確な否の答えだ。
 猟兵ならざる彼らにとって、キャバリアとは力の象徴。
 それを捨てることで、互いへの恐怖を乗り越える事こそが今日の式典の目的なのだと語られれば、桜花もそれ以上自分の意見を押し付けることはできない。

 あくまで客人として桜花を会場まで連れていこうする警備員の案内を丁重に断った彼女は、ふらふらと出店を見て回る。
 ふと、桜色の綿菓子を見つけて食べてみれば、混ぜ物がしてあるのだろうそれからはほんのりと果実の甘い味がする。
 甘くて、美味しくて、すぐに溶けて消える味。
「……美味しいです」
 消えて、そのまま忘れてしまうことがどうにも寂しく思えた彼女は、綿菓子を思い切り買い込むのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メサイア・エルネイジェ
ぬぬぬ、この国でもオブリビオンが跳梁跋扈しているのですね
わたくしが成敗してさしあげますわ
イェーガーの身となって初仕事、張り切って参りましょう!

ふむふむ、あれが破棄する予定のキャバリアですわね
今のうちにささっと壊してしまいたいところですけれど、ここは辛抱致しますわ
それより現地調査ですわ
この国の民は今回の件をどう捉えているのでしょう?
国を去った身の上とはいえ、王族たるもの市民の声に真摯に耳を傾けなければなりません
喫茶店でお茶を頂きながら民草のお話しを盗み聞き…いいえ立ち聞きしますわ
因みにわたくしの国はこちらの地方ではあまり知られていないようですので、普段通りの格好で歩き回っても大丈夫なはずですわ



●声
「ぬぬぬ、この国でもオブリビオンが跳梁跋扈しているのですね……!」
 豪奢な杖を持つ手が、義憤によりふるふると震える。
 ようやく平和を掴もうと歩み出した国でさえも脅かすオブリビオンマシンの脅威は、この世界に生まれたからこそよく知っている。
 そう、そんな恐るべき存在から人々を守るべく、自分という猟兵がいる。
「イェーガーの身となって初仕事、張り切って参りましょう!」
 クロムキャバリアはエルネイジェ国のプリンセス、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、使命感に燃え、式典会場を訪れたのであった。

「ふむふむ、あれが破棄する予定のキャバリアですわね……今のうちにささっと壊してしまいたいところですけれど」
 まだパイロットが載っているのだろう、今まさに整列しているキャバリアたちを見つけた彼女が周囲に聞こえぬように呟く。
 キャバリアの破壊そのものが平和式典の重要な儀式となるのなら、無理やりに破壊を早めることも避けたかった。
「それよりも……」
 ちらと見やる、キャバリアを眺める人々の姿。
 落ち着いているようにも見えるが、その実どうにもグループのようなものができている。
 二国の国民同士での壁、というより、接し方がわからないだろう彼らの間に溝があるのだ。
「彼らが今回の件をどう捉えているのかは、知っておくべきでしょうね」
 市民の声を聞かぬ国は早晩亡びる。
 王族としての帝王学でそれを知るメサイアは、迷いなく市民の中へと入りこむのだった。

「――なあ、母ちゃん。本当に戦争が終わるのか?」
「(……おや)」
 オープンカフェのような喫茶店の出店。
 テーブル席に座ったメサイアの耳に届いたのは、不満の滲む少年の声だった。
 先ほど横目で見た年頃は、メサイアの半分に届くかどうかだろうか。
「そうだよ、ようやく平和に……」
「俺、やだよ! なんで父ちゃんを殺した奴らと仲良くしなきゃならないんだ!」
 瞬間、周囲のざわめきが途絶える。
 周りの誰かが、息をのむような声を出す。
「(当然の反応ですわね。恐らくは、多くの民が同じような境遇なのでしょう)」
 戦争が続いていたのだ。
 当然人は死に、死んだその人間は誰かの子であり親である。
 興奮からか顔を赤らめた息子へと、母親だろう女性は努めて穏やかな口調で返す。
「……でもね、平和になれば、お姉ちゃんがキャバリアに乗るのは今日が最後になるんだ。出撃のたびに、もう帰ってこないかもしれないなんて怯えなくてよくなるんだよ」
「それは、そうだけど……」
 母が子に諭すのは、今を生きる人間の命だ。
 理屈では分かっているのだろう、少年の声が小さくなると同時に、周囲に走っていた緊張がどこか和らいでいく。

「おおまかには理性的に受け入れている、のでしょうか?」
 親子の会話の終わりと共に席を立ったメサイアが、聞き耳を立てていた市民の声を整理する。
 殺し合いをしていた相手への恨みはある。
 だが、これ以上の流血を避ける為に二国の人々は踏みとどまる決意を固めたのだ。
「つまり、警戒すべき相手がいるならば――」
 守るべきものを失った者たち。
 きっとどちらの国にもいるであろう、繋がりのすべてが戦火に飲まれた人々。
 柔らかい乙女の眼差しが、皇女のそれへと変わっていく。
 この式典に潜んでいるかもしれない敵を見定めたメサイアは、再び人々の波へと消えていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アメリア・バーナード
※アドリブ連携OK
難しい事はわからないけど
戦乱が100年続いてるのは間違いないみたいだし、
真っ当な同盟が珍しいって話、何となくわかるわ。
だとしたら、よくここまで話を持って行けたわね。本当に。

【POW】
色々考えるのも疲れそうね。
英気を養うために、派手に遊ぶわよ!
遊具もあるのね? 何がある? 射的とか?
腕力はあるからそっち系も良いわね。
明日をも知れない傭兵だもの。どんどん使っちゃうわ。
それに、初仕事としちゃ悪くないでしょ。

遊び疲れたら最後は観覧車に乗ろうかしら。
ここまで空が近いのは初めてかも。
それにしても、本当に最悪の場所とタイミングだわ。
全てを得るか、全てを失うか……私達にかかってるって訳ね。



●最高で最悪の日
 アメリア・バーナード(元穴掘り・f14050)はクロムキャバリアの小国で暮らしていた。
 坑夫を続けていたある日、突如出奔してキャバリア乗りになったものの、基本的に難しい話は分からない。
 それでも、100年の戦乱が続くこの世界において、ささやかであっても平和を築こうとする事が、どれほど困難であるかは知っている。
 ……それはそうとして。
「色々考えるのも疲れそうね。英気を養うために、派手に遊ぶわよ!」
 式典に乗りこんだアメリアは、情報収集もそこそこに遊ぶ気満々であった!

 射的をやってみよう。
 キャバリア乗りたるアメリアにかかれば楽勝のはずだ。
 そう思っていたらなんだか妙に難易度が高い。
「おっかしいわねー……的も小さいし、これじゃあ一般のお客さんも……あら?」
 辺りを見渡すと、どうも射的を楽しんでいるのは屈強な体躯の若者が多い。
 キャバリアという兵器がメジャーな世界であるから男女まんべんなくいるが、どうも周りに居るのは軍人らしい。
「なるほど……最後に銃を撃ちに来た感じかしら」
「おや、嬢ちゃんは国外からかい? おっしゃる通り、こいつ等が銃を撃つのもしばらく無いだろうからね!」
 店主である筋肉質な男性が笑えば、周りの客もそれに同調する。
 戦争が終われば彼らも次の仕事を探すのだろうが、決してそれをマイナスに捉えている様子はなかった。
 それだけ今日という日を待ち望んでいたのだろうと思うと、なんだか微笑ましくすら見えるのだ。

「とはいえ嘗められるのも癪ね……あら、いいものあるじゃない」
「え、お嬢さん、コレはあんたの体格じゃあ……」
 そんな風に遊び7割情報収集3割といった具合に歩き回っていたアメリアが次なる遊具を見つける。
 数字が表示されるディスプレイに繋がれたサンドバックのような装置は、パンチの威力を競う為のものだ。
 特に大柄な腕力自慢の男たちが集まるそこでは、女性としてもやや小柄なアメリアはかえって注目を集めていた。
 そうは言ってもお祭りムード、周りの男どもはニヤニヤとアメリアを見つめるものの、係員に参加費を払う彼女を止める者は居ない。
 可愛らしい結果を出そうが、それはそれで話のタネになるのだろうと彼らはボクシンググローブをはめたアメリアを眺め……。
「――せいっ!!」
 ばごぉん、と。
 渾身のパンチが頑丈に作られた筈のパンチングマシーンをへし折ってしまうのを見て、男たちはあんぐりと口を開ける。
 どうだ見たかとアメリアが振り返れば、場の空気は一気に爆発する。
 突如として現れたパンチ女王に大興奮の観衆たちは、はしゃぐようにアメリアへと話しかけるのだった。

「つ、疲れた……」
 もみくちゃにされつつ、どうにか観覧車へと逃げ込んだアメリアの第一声がこれである。
 振り返ってみれば、此処に集まってきた人々は皆一様に明るく、浮かれていたと言ってもいい。
 勿論、その理由は決まっている。
 憧れていた平和が、すぐ目の前にまで姿を見せているのだから。
「……ここまで空が近いのは初めてかも」
 アメリアにとっての憧れは空だ。
 衛星が空を支配するこの世界の空は、ひどく高い。
 移動式の観覧車の高さであってもこの世界ではひと際空に近い場所で、この空がもっと近くに来たのなら、アメリアはどうなってしまうのだろう。
 ――そして、目の前でそれを取り上げられたら。
「全てを得るか、全てを失うか……私達にかかってるって訳ね」
 彼らの期待が高まった今日が、最高の日になるか、最悪の日になるか。
 自分たちの役目の重大さを噛みしめたアメリアの乗るゴンドラは、頂点を過ぎて地上へと降りていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
パフォーマンスに過ぎる嫌いはあれど、善き催しではないでしょうか
“めでたしめでたし”の後に武器は…騎士が出張る必要もないのですから

それとも…『破壊と殺戮』…私達の本分を果たす為、貴方達はオブリビオンと化し人の狂気を煽るのかもしれませんね? (キャバリア眺め)

透明機械妖精で情報収集
一般人の避難経路や暴走時に危険が予測される場所を確認
特に危険な配置の機体に潜り込ませ駆動部や操縦系に●破壊工作をしたい所ですが…
警備もある以上、出来れば僥倖か

それとは別に…

失礼
特に戦果を挙げた、とか著名な機体はありますでしょうか?
破壊が式典の象徴となるような…

(その付近は式典関係者も多い、私なら最優先に狙う場所ですから)



●紛れ目覚める
 正直に言えば、こうして式典を開きキャバリアを破壊するというのは、パフォーマンスの要素が強すぎるようには感じる。
 しかし、論理とは程遠い感情を抱えた人間にはこういった儀式も大切なものであるし、これが平和につながるというのなら善い催しなのだろう。
 なにより――“めでたしめでたし”の後には、武器もそれを扱う騎士にも、出番など無くていいのだ。
「それとも……『破壊と殺戮』……私達の本分を果たす為、貴方達はオブリビオンと化し人の狂気を煽るのかもしれませんね?」
 役目を終えようとするこの世界の機械騎士たちは何を思うのか。
 破壊されるための整列を進めるキャバリアたちを遠目に眺めながら、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は誰に聞かせるでもなく呟いた。

 当然だが、人間よりやや大きめのキャバリアとも見えるトリテレイアであっても、猟兵としての特性から特に騒がれることは無い。
 そして、彼の肩部が不自然に解放されていても、道行く人々は同様に気にしないのだ。
 不自然にならぬ程度に歩みを進めながら、トリテレイアは自身の放った不可視の機械妖精からの情報を受け取り、精査する。
 式典で破壊されるキャバリアの配置、要人の待機場所、一般人の観覧スペースの位置取り。
 いざキャバリアが暴走した時に、スムーズに人々を逃がすための情報は、あればあるだけいいのだ。
「(出店や式典会場同士には、いくらかの余裕がある……逃げるルート自体には困らないでしょうね)」
 問題は、オブリビオンマシンとなったキャバリアに狙われた場合、人の足で逃げ切れぬ事と、それに付随するパニックだ。
 猟兵が避難を誘導するなりしてパニックを抑えるのもいいだろうが、やはり脅威となるオブリビオンマシンをいかに抑え込むかが重要になるだろう。
 いっそ、特に人々に近い位置のキャバリアは、先んじて駆動部等を破壊してしまいたいのだが……。
「バレて騒ぎになれば首謀者が予知と行動を変えるかもしれませんし、そもそもオブリビオン化で直ってしまうかもしれない……リスクに対してリターンが小さすぎますか」
 そこまで思考を進めたトリテレイアの電子頭脳が、即座に次の行動へと移る。
 時間は、いくらでもは無いのだ。

「失礼、少しいいですか?」
「お、なんだい兄ちゃん!」
 周囲の者と同じように、明るい表情の警備員を捕まえて問うのは、著名な機体が無いかという問い。
 特に戦果を挙げたようなものが有れば、その破壊はより象徴的であり、優先して狙われるであろう式典関係者の近くに配備されるのではとの読みである。
「うーん、特に飛びぬけて優秀なのは……あっ」
「……! なにか、思い当たるものが?」

「いや、俺たちはだいたい似たり寄ったりの機体で戦ってたんだが、今日に式典に一機だけ見たこと無いのがあってな……相手方の秘密兵器だったりしたのかなって」
 見たことのない機体。それはまさか、既にオブリビオンマシンとなったのか。
 話を続けようとしたその矢先、トリテレイアのセンサーが不吉な情報を捉える。
 その音は、彼だからこそ聞こえたか細い叫び。

 キャバリアのオブリビオンマシン化に真っ先に気付いた人々――パイロットたちの悲鳴であった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『グレイル』

POW   :    シールドストライク
【シールドを使用した格闘攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【パイルバンカー】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    バレッジ
【友軍と共に繰り出す一斉掃射】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を制圧し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    グレネードショット
単純で重い【榴弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●決起
 真っ先に違和感に気付いていたのは、キャバリアを整列させるために乗りこんでいたパイロットたちだ。
 足元で見守る人々からは見えにくい、キャバリアのちょうど中段に陣取った見たことのないキャバリア。
 きっと、相手方の秘密兵器だったのだろうと。
 そうであれば、今更掘り返して聞くのは、この平和式典に水を差してしまいかねない。
 ・・・
 両国がそう判断したまま整列は進んでいく。

「……おい、なんだあのキャバリアは?」
「ええっと、あれ、破壊予定の目録にはあんなものは……」
 遅れて、式典会場から見守っていた初老の元首がそれに気づき、傍に控えていた秘書に確認するも、その返答はどうにも頼りない。
 なにやらきな臭い、式典を一時中断して相手国へ確認した方がいいかもしれない。
 元首の判断は間違いではなかったが……少しばかり遅かった。

「あれ、操作がおかしく……うわぁ1?」
「な、何よコレ、これってまさか……!」
「どうした! 何があった!!」
 規律を持って整列していたキャバリアたちの動きが乱れ、ついで無線から聞こえるのはパイロットたちの困惑と悲鳴。
 そして、武装を解除した筈のキャバリアたちの手元が歪んだと思えば、そこに現れるのは人命を奪う為の銃器だ。
「オブリビオン……マシン……」
 ある者は立ちすくみ、ある者は訳も分からず逃げ出して。
 混乱がみるみるうちに膨れ上がる中、元首の男は呆然と呟くのだった。
メサイア・エルネイジェ
現れましたわね!オブリビオンマシン!
わたくしが討ってさしあげましょう!

奇しくも同じグレイル同士なら、どちらが勝つかは乗り手次第ですわね
遅れを取るわたくしではなくってよ!
けれど無実のパイロットが乗ったままでは迂闊に墜とせませんわね
逃げ遅れた市井も大勢いるでしょう
ここは確実に1機ずつ仕留めますわ
盾で守りを固めて正々堂々正面から突進をお見舞いですわ
機体ごと飛び込んでパイルブレイクで駆動系を貫いてさしあげます
わたくし、反射神経には自信がありますの
敵よりも早く撃ち込んでみせますわ!
優雅とは言い難い戦法ですけれど致し方ありませんわ
王族あるもの、世の為民の為泥に塗れる覚悟はいつでもよろしくてよ!


アメリア・バーナード
※アドリブ連携OK
機体が修理中なの。悪いけど、一体借りるわよ。

……うん。良い機体ね。
それにいかにも量産型って感じで、腕に馴染むわ。
聞いてる?「グレイル」。手を貸してあげる。
スクラップになる前に、あんたの力、見せてやりなさいな。

銃器で味方の援護や牽制射撃を行うわ。
大きく動きながら、出来るだけ多くの敵の気を引くわね。
同型機だから移動速度も変わらないし、簡単には追いつけないでしょ。

でもいずれは敵UCを食らいそうね。
もしそうなったら、なるべく前の方で無敵城塞を展開。キャバリアごと囮になるわ。どんどん撃って来なさいな。

参加者は出来るだけ助けるわ。
パイロットも見逃してあげる。敵機の脚を集中的に狙うわね。



●アタック&デコイ
「現れましたわね! オブリビオンマシン! わたくしが討ってさしあげましょう!」
 暴走するグレイルの前に陣取り、勇ましく声を上げるのはメサイアだ。
 諸事情により友たるキャバリアを使えぬ彼女、故にこの戦場に持ち込んだのは、奇しくも敵と同じグレイルである。
 そして、同様のキャバリアを駆る味方はもう一人。
「修理してるキャバリアの代打だけど……うん。良い機体ね。いかにも量産型って感じで、腕に馴染むわ」
 件の詳細不明のキャバリアから最も遠い位置に居た為かオブリビオンマシン化を免れたグレイル。
 それを借り受けたアメリアはある程度の操縦のクセを確かめた後、コクピットで満足げに頷く。
 メサイアが自前で持ち込んだものとは違い、これは平和式典で壊される機体。
 だからこそこれは、このグレイルにとっての最後の戦いになるのだろう。
「手を貸してあげる……スクラップになる前に、あんたの力、見せてやりなさいな」
 急遽乗りこんだ自分の操縦にも素直に従う量産型に声をかけてから、アメリアはメサイアの後を追い、オブリビオンマシンの軍へと突撃していく。

 メサイアとアメリアに共通した認識は、オブリビオンマシンの最速の破壊は求められていないという事だ。
 無論、最終的にオブリビオンは倒さねばならないのだが、敵機の中には巻き込まれたパイロットがいて、式典に参加していた市民たちも逃げ遅れた者が大勢いたのだ。
「よし、こっちは援護がてら弾をばら撒くわ。なるべく多くを民間人から引き離すのを優先しましょう」
「了解しましたわ! 誘導を無視して突っ込んでくる相手はわたくしが……こう!」
 猟兵同士の通信でのやり取りの締めは、巨大な質量同士がぶつかり合う轟音。
 その発生源は、右手に装備した銃で弾幕を張って敵を引き付けるアメリアを無視して、少数ながら真っすぐに民間人の集団へと向かった敵グレイルだ。
 その前に立ちはだかったメサイアの機体が左拳を上にした形で盾をかざし、敵の突撃を受け止めた結果が先の衝突音である。
 緊急の為割り込んだ形ではあるが、メサイアの機体もグレイルである以上、機体のスペックは敵と大差ないもの。
 長々と力比べをしていては、数の面で劣る猟兵側が不利であろう。
「ですが、対等の相手に遅れを取るわたくしではなくってよ!」
 敵が距離を離して再攻撃に移るよりも早く。
 メサイアがコクピット内で操縦桿のトリガーを引き絞れば、敵を受け止めていた盾から射出される巨大な杭はそのまま相手キャバリアの頭部を破壊する。
 センサー類の集中した頭部を失った敵を蹴り倒せばもはや起き上がることはままならず、あっという間に敵の先陣は無力化されるのだ。

「おおっ豪快……負けてられないわね!」
 そして一方で、その光景を見るアメリアを追いかけるグレイルの数はどんどん膨れ上がっていた。
 格闘戦を行うメサイアと、彼女が守る市民たちから敵の大部分を引き離すという目論見こそ完璧に達成していたと言っていいが、だからこそ危険なのはアメリアだ。
 恐らくはまともな精神状態ではないだろう敵パイロットに比べれば、アメリアの操縦の方が洗練されてはいるものの、民間人から引き離すように限定された選択肢から逃走ルートを選ばなくてはいけない彼女に対して、敵は数を頼みに逃げ道を塞いでいく。
 そうすれば後は時間の問題、ぐるりとアメリアを囲んだグレイルの陣形を、カタログスペックの同じ機体で突破することは困難だ。
 アメリアへと浴びせられる集中砲火を、彼女が自身のユーベルコードの力を用いて受け止める。
 攻撃を捨て防御に徹すれば猟兵がそう簡単に膝をつく事など無いが、敵は軍。
「相手の弾が尽きる……まで、私のユーベルコードが持つか微妙かなぁ……」
 とにかく切れ目なく浴びせられる弾幕に機体を揺らされながらも、アメリアはどこか呑気に呟く。
 勿論、彼女は無策でこのような状況に踏み込んだのではない。
 なにより、『策』はユーベルコードだけではないのだ。

 アメリアを囲むキャバリアの一機。
 その背後に何かが現れる音をセンサーが捉えた次の瞬間、乗りこんでいたパイロットは天地が逆転する感覚と共に意識を失うのだ。
「――お待たせしましたわ!」
 背後から敵キャバリアに組み付き、ひっくり返して無力化するのは当然メサイアである。
 アメリアが殆どのキャバリアを引き付けたおかげで、市民を狙う残りを伸び伸びと片づけたメサイアの合流により、オブリビオンマシンたちには大きな動揺が走る。
 市民を、そして戦友を守るために容赦ない奇襲を仕掛けるメサイアの接近に気付けなかった敵機が彼女の方へと銃口を向ければ、今度はそれまで敵を引き付けていたアメリアの番。
「パイロットを生かすために胴は避けなきゃだけど……メサイアさんの方を向いてると狙いやすくて良いわね!」
 彼女を守っていたユーベルコードを解除し、牽制ではない本気の銃撃を放てば、それは敵機の脚部に突き刺さり相手の機動力を次々に奪っていく。
 そうして敵が地に伏せたなら、メサイアが武器を踏み壊して無力化は完了だ。
 こうして、二人の連携は鮮やかにグレイルたちを破壊し、辺りのオブリビオンマシンはその数を急速に減らしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
備えという物は儘ならぬのが世の常というもの
始まってしまったからには、最善を尽くすが騎士の務めです!

会場内を疾走しつつUCで召喚した誘導兵器を放ち
射程内の暴走機体の銃器や関節部へ突き刺し作動・駆動システム阻害
攻撃・移動動作妨害

遠隔●操縦で呼び寄せたロシナンテⅣに搭乗
剣抜き放ち動きを止めた敵機を素早く解体

一般市民の命が掛かっている以上、流れ弾一発が脅威
まともな戦いすらさせぬのはご容赦を

センサーでの●情報収集と瞬間思考力で素早く会場内精査
誘導兵器の射程圏外の遠距離の敵はサブアームのライフルの●乱れ撃ちスナイパー射撃で銃器を破壊
人々●かばう事を最優先に移動しつつ誘導兵器での無力化、破壊繰り返し



●騎士の務め
 電撃的に発生したオブリビオンマシンとその襲撃。
 警備員達すら混乱の中で満足な行動ができない中、迷いなく敵機へと向かう者が一人。
「備えという物は儘ならぬのが世の常というもの。始まってしまったからには、最善を尽くすが騎士の務めです!」
 自身のものと同じ由来の名を冠する誘導兵器、『電脳禁忌剣・通常駆動機構:抑止兵装『守護の花』(ディタレンスウェポン・ブローディア)』を展開しながら脚部のスラスターを噴かすトリテレイアは、暴走するグレイルを射程内に納め、ユーベルコードの域に手をかける己が機能を射出する。
 敵機の武器や関節部に刺さった機械の花が吸い上げるのは、キャバリアを動かす動力エネルギーそのものだ。
 動力を失い、膝をつくが如く停止するオブリビオンマシンたち。
 しかし、武器さえも虚空から生み出したオブリビオンである彼らは、放置していればいずれエネルギーを復活させて動き出す可能性は十分にある。

「一般市民の命が掛かっている以上、流れ弾一発が脅威――まともな戦いすらさせぬのはご容赦を」
 だからこそ、トリテレイアは騎士として持ち合わせる矜持に蓋をして、容赦のない追い打ちをしかけるのだ。
 遠隔操縦で呼び出される彼と同じカラーリングのキャバリア、ロシナンテⅣに素早く乗りこんだトリテレイアの操作が、そのまま腰に帯びたキャバリアサイズの巨大剣を抜き放つ。
 改造により格闘戦での運動能力を高められたその機体は主の剣技を十分に反映し、瞬く間に動けぬキャバリアを斬り伏せていくのだ。
「暴走中とはいえ、同じオブリビオンマシンに手を出さぬ分別はある様子……申し訳ありませんが、このまま捨て置かさせていただきます!」
 無論、オブリビオンマシンに囚われたパイロットも猟兵が救うべき市民。
 コクピット部分には決して刃を通さず、四肢や武装を斬り落として無力化していくトリテレイアのセンサーに新たな反応が映る。

 当然ながら、トリテレイアの他にも猟兵は存在し、だからこそオブリビオンマシンもトリテレイアにばかり群がることは無い。
 そして、もっと厄介な手合いは。
「あの進路は……!」
 トリテレイアでも他の猟兵でもなく、逃げる市民へと迫るグレイルの姿。
 人間の足でキャバリアから逃げ切れるはずもない彼らは今にも追い付かれてしまいそうであるが、その位置はトリテレイアからも遠すぎる。
「ならば、此方を使うまでっ!」
 だが、此処に立つのは機械騎士。剣ばかりが彼の武器では無い。
 キャバリアに増設された四腕、サブアームに装備したライフルを彼方のグレイルに向けたトリテレイアは、迷いなくその引き金を引く。
 本来ばら撒かれる弾丸、それこそ彼の危惧する流れ弾を生み出しかねない乱射を、機械の膂力と計算能力で無理やり制御する。
 そうして為される彼の狙撃は、寸分たがわずグレイルの脚部を破壊し停止させるのだ。

「やはり、守るべき人々が多い……しかし、です」
 そう、彼は言葉にしたばかりだ、最善を尽くすという騎士の誓いを。
 それを違えぬために、トリテレイアの駆るロシナンテⅣは戦場を斬り裂いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
話を聞くに、自業自得ですね。

さんざん頼り、戦ってもらい、多くのものを護られ――
自身の命も、大切な人達の命も護ってもらったであろうのに。

人間が始めた戦争をキャバリアのせいにし。
人間が引いた引金をキャバリアのせいにし。
もはや用なしだとばかりに破壊して、
自分たちだけのほほんと生き延びようとしたなら、
激怒したキャバリアに返り討ちにされて然るべきでしょう。

なにが平和の式典ですか。真逆でしょう、馬鹿馬鹿しい。
他者への共感が薄く、自身の都合で踏みにじって顧みない、
こうした人々こそが戦争を創り出すのです。
両国とも滅ぶがいい。それで平和達成です。


……。

……弁別能力のない子供達だけは護ります。
先制攻撃/指定UC。



●愚人でないのなら
「話を聞くに、自業自得ですね」
 オブリビオンマシンによる平和式典の襲撃。
 恐怖に逃げ惑う市民、どうにか自分の責任を果たそうとする軍人に、絶望に立ち尽くす主導者。
 そして、そんな人々を救おうと戦場を走る猟兵の中に、一人だけ冷淡な呟きを吐き捨てる者がいた。
「さんざん頼り、戦ってもらい、多くのものを護られ――自身の命も、大切な人達の命も護ってもらったであろうのに」
 緑の瞳を細め呟く彼女の名は、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)。
 予知を知らされこの地に来た彼女の胸に宿っていたのは、市民を救う使命感でもオブリビオンを倒す敵意でもない。
 この平和式典そのものに対する、軽蔑であった。

 百年の間、飽きもせずせっせと殺し合いをしていたのは誰か? 人間だ。
 剣を振るい銃を撃ち、赤い血をこの地に流し続けていたのは? 人間だ。
 自分の都合で、他を踏みにじり戦乱を振りまいていたのは果たして誰か。
「そのすべてをキャバリアに押し付けて、のうのうと生きようとして返り討ち……ああ、両国とも滅べば望んでいた平和達成ですね」
 レプリカントという、ある意味でキャバリアに近しい身の上の彼女からすれば実に馬鹿げた催しだ。
 目に映る全てが不愉快と言わんばかりに呟くノエルに、恐怖に泣き叫ぶ市民を救う気など無い。
 このような恥知らずを助けるなどまっぴらごめんだし、言葉通り、死んでしまった方が有益だとすら思っている。

 それでも、彼女はこの地に来た理由があった。

「ひ、いやあぁぁ!」
「……チッ」
 オブリビオンマシンが放った銃弾、本来の対象を反れた流れ弾が岩壁に着弾し、砕けた岩が一人の女に降り注ぐ。
 当然彼女も、ノエルからすれば救う義理のない相手であるが、その姿を見たノエルは短い舌打ちの後、勢いよく跳躍する。
「ああああ……え?」
「何を呆けているのです、さっさと行きなさい」
 一瞬のうちに女性の下へたどり着いたノエルは素早く彼女を抱きかかえ、降り注ぐ岩の間をすり抜けるように脱出し救い出す。
 救った相手を睨みつけ、半ば放り出すように下ろしたノエルが踵を返せば、そのまま女の方を振り返る事も無く去っていく。

 繰り返しになるが、ノエルはこの式典を心底軽蔑しているし、何も考えずに喜んでいる人間など死んでしまった方がいいと考えている。
 けれど、彼女は別に殺人者ではないし、死ぬ咎を持たぬ者が命の危機に晒されたのなら、それは救ってやりたいと思うのだ。
「…………親がどれほど愚かでも、弁別能力のない子供に罪はないでしょう」
 馬鹿な行いで大人が死ぬのは勝手だが、それに巻き込まれる子供を見捨てるわけにはいかない。
 赤ん坊を抱えた女を救ったノエルは、幼い無辜の命が犠牲になる未来を退けるべく、オブリビオンマシンの闊歩する戦場へと駆けだしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「物陰にお連れします、暴れないで下さい!」
殲禍炎剣に攻撃されない高度・速度で回避力高め飛行
まず逃げ遅れた人を2人ずつ両脇に抱え物陰へ

「貴方が呆然としてどうするのです!兵に市民の誘導を命じて下さい!」
元首も棒立ちしていたら抱えて物陰へ
ついでに式典のマイクも拾ってきて渡す

市民救助優先
市民が戦場に居なくなったら戦闘参加
「大体どこのキャバリアも構造は同じですから」
飛行で頭部に取りつきメインカメラを桜鋼扇で叩き壊しては次の機体へ移動を繰り返す
偶に制圧射撃で敵機に行動阻害与え味方の攻撃補助
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
味方の攻撃で擱座した機体は外からコクピットのハッチ開け乗員救助し飛行で物陰へ連れていく



●救済、そして
 平和のための今日だったはずだ。
 平和を踏み出すための今日だったはずだ。
 オブリビオンマシンによる破壊と悲鳴が響く中、式典会場に居た元首たちの頭の中では意味のない疑問がぐるぐると渦巻いていた。
 何年もかけ、困難を越えてたどり着いたはずの日が一瞬で壊れた事への驚愕と絶望が、彼らの思考を麻痺させる。
 『本来であれば』、この停滞を終わらせるのはオブリビオンマシンであった。
「――貴方が呆然としてどうするのです! 兵に市民の誘導を命じて下さい!」
「えっ、あ、君は……!?」
 突如元首の目の前に姿を見せたのは、桜吹雪を纏うまさしく精霊の如き女。
 殲禍炎剣が見下ろす世界で動きに制限をかけられた桜花は、それでも民間人を逃がしながらこの式典のメインステージまで現れたのだった。

「ほら、マイクです! 無線ですし、逃げながらでも指示は出せるでしょう!」
 有無を言わさぬまま抱えられた元首は、そのまま桜花が持ってきたマイクを押し付けられる。
 幸いだったのは、予知と違い、猟兵たちの手によって決定的な被害がまだ出ていなかった事。
 そして、異邦人である桜花が自分たちを救うために声を荒げる様を見た男に、僅かながらにも民を守る意志が蘇る。
「オ、オブリビオンマシンに捕らわれていない全軍に告ぐ! 交戦を避け、市民の避難誘導を最優先に遂行せよ!」
 勢いに任せて叫んだ元首が、桜花のもう片腕に抱えられた相手国のトップへマイクを投げ渡せば、そちらからも同様の指示が飛ぶ。
 両国のトップから直接届けられた指示は警備員たちの混乱を劇的に収め、市民たちの避難にもようやく統制が生まれるのだ。
「(よし、特に危険な箇所の市民は私たちで逃がした。瓦礫くらいなら警備員さん方で対処できるから、後は……!)」
 それを確認した桜花は表情を和らげながら、抱えてきた元首たちを避難誘導のグループへと合流させる。
 だが、彼女の眼には、まだ猟兵が救うべき命が映っていた。

 桜花が市民を逃がしていた間に、猟兵たちとオブリビオンマシンの戦いは大勢が決していた。
 二国分のキャバリアといえども一騎当千の猟兵が相手では分が悪く、数を減らしたグレイルたちに逆転の目は見えない。
 残り僅かな残存兵を倒せば、その奥に潜むこの騒動の首謀者を引きずりだせるだろう。
「だからこそ、彼らは今助けないと!」
 飛翔する桜花が降り立ったのは、倒れたオブリビオンマシンの上だった。
 既に脚部やカメラを破壊されたキャバリアは脅威とはならないが、故にこそ中にいるパイロットに自衛の手段は残されていない。
 首謀者との戦いに巻き込む前に助け出さねばと気づいていた桜花が扇を振るえば、コクピットのハッチは容易く破壊され、気絶したパイロットの姿が見える。
 市民たちと比べて、意識すら失ったパイロットを避難させるのは何倍も大変で、桜花のような飛行能力が無ければ間に合わない可能性すらあっただろう。
 今日の惨劇をもくろんだ敵との対決の為、桜花は最後の救命を終わらせるべく、纏う桜吹雪の勢いをいっそうに強めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『罪夢のクィムラヌート』

POW   :    戦禍の手先
戦闘用の、自身と同じ強さの【白兵戦用キャバリア】と【砲撃戦用キャバリア】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    フラグメント・オーバードーズ
【周囲に投影した立体映像】から【断片化された雑多な情報の奔流】を放ち、【センサーや感覚器に過剰な負担をかけること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    大天使の光輪
【BS-F〈アウレオラ〉クリスタルビット】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミカエル・コードウェイナーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ウォーメイカー
「――ここまでか」
 オブリビオンマシンが組む隊列の中心。
 申し訳程度の偽装も戦場の中で崩れ落ち、脚部も無く浮遊する異様なキャバリアがその姿を露わにしていた。
 コクピットから響く低い声は、ある種の諦観を滲ませながらも不思議と落胆の色は見られない。
 ハッキング能力に長けたオブリビオンマシンで従えたグレイルも、多くの機体が猟兵たちに倒された。
 憎き敵国と、その相手の手を取ろうという裏切り者を皆殺しにする彼の野望は、とうに潰えたと言っていい。
 愛機が変容したこのオブリビオンマシンでも、猟兵たちを突破し無理やりに市民たちを殺すことはできないと、曲がりなりにも軍人として戦ってきた男は冷静に分析する。
 故に、男はとうに正気を失った頭脳で自分がすべきことを探して……。

「よお、やってくれたな。こうなれば、お前らだけでも道連れだぁ!」
 猟兵の前に姿を現したオブリビオンマシン、クィムラヌートから搭乗者の粗野な声が聞こえてくる。
 その声はどこか浮かれたような、戦場に不似合いな明るい響き。
 勿論男も勝つつもりで猟兵たちに相対するが、未知の力も振るう連中に絶対の勝利は見込めない。
 ともすれば、自分は敗北し、生きてるか死んでるかは定かではないけれど、オブリビオンマシンから引きずり出される未来もありうるのだ。

 その時、オブリビオンではない、人が殺しに来ていたと知った両国の民は……かつて共に戦場を駆けたあの老元首は、どのような顔をするのだろう。
 まさしく命を懸けて平和を拒絶する男は、戦場に響き渡る大きな笑い声を上げながら、最後の戦いを始めるのだった。
ノエル・カンナビス
(エイストラ搭乗・キャリアは駐車場で待機中)

この人も、戦争の何たるかを解さないお馬鹿さんですか。

戦争は、権利の衝突を解決するための社会制度です。
そして和平は、双方とも許容できる結果を得て成立するため、
双方が勝利するのです。勝った後に戦う意味はありません。

……ま、安心してください。この地に平和は訪れません。
住人の心が変容しない限り、すぐに戦乱に落ち込みますよ。

無線リンクでコンバットキャリアの武器コンテナを開放し、
ハニービーを射出させます。
キャリアがなければ持ち運べない555機もの無人機、
これは自律戦闘しますのでエイストラの手も止まりません。
物量を率いた大火力の高速機、楽な相手ではありませんよ。



●群れと群れ
「この人も、戦争の何たるかを解さないお馬鹿さんですか」
 そう零したノエルの声に滲むのは、怒りを通り越した呆れの感情だった。
 ノエルにとって戦争とは、利権が衝突した国家同士における解決のための『手段』だ。
 互いの武力、国力を示して現実的な落としどころを見つけ、その上で双方が納得する和平を結ぶ。
 二国の同意のもとの終結の後、二つの勝者に戦う理由など無くなった姿こそ、あるべき戦争の終わり。
 オブリビオンマシンに搭乗する男が望むような、一方の国土を焼き尽くし、敵を文字通り皆殺しにするまで終わらない闘争など、もはや戦争ですらないのだ。
「……ま、安心してください。この地に平和は訪れません」
 ・・・・
 その上で、ノエルの駆るツートンカラーのキャバリア、エイストラから響く声はやたら柔らかく優しい。
 この男は野蛮で愚かだが……彼の望みは果たされるだろうから。
 だから安心して倒れていいのだと、白黒のキャバリアは静かに銃を向けるのだ。

「何を言いたいのかは知らねぇが、最初の一人くらいには死んでもらおうか!」
 戦闘開始を悟った男の操作で、クィムラヌートがゆらりと後退する。
 脚部が無く、宙に浮かぶ形で移動するこのキャバリアの明確な欠点の一つに、踏ん張りが効かないことによる格闘戦の不利が存在した。
 だからこそ男は距離を取り、中距離以遠の戦いに持ち込もうとの魂胆であるが、彼には認識の誤りがあった。
「射撃戦が希望ならお望み通りに」
 戦闘用に思考を切り替えたノエルもまた、敵の思惑通りに距離を開けさせ、それを詰めようとはしない。
 彼女の乗るエイストラは高出力機であり、兵装も燃費の余裕のあるものも搭載している。戦いながら間合いを詰めるだけの出力のゆとりは当然存在するのだ。
 だが、互いに射撃能力を持ったキャバリアの戦いになれば、距離を詰めようと前進する側――攻撃を躱す横や上方への移動を捨てる側が不利となるのは自明の理。
 ましてや相手は脚部機構の制限のないホバー機であるなら接近に拘るのはリスキーであるし、なによりも。
「近づかなければ勝てるなんて、随分と見くびってくれる……!」
「これは、ロケット弾……なっ、なんだこの数は!?」
 敵の展開するクリスタルビットに対して、ノエルが呼び寄せるのは無線操作で待機させていたコンバットキャバリアからのマイクロミサイルの弾幕だ。
 それも、折りたたまれた展張翼が展開され、底部にはレーザー機銃が取り付けられた特別製。もはやただの弾丸ではなく、小型の無人戦闘機と呼ぶべき代物である。

「くそ、叩き落すまでだ!」
 クィムラヌートのクリスタルビットも、戦況に応じた柔軟な動きを可能にする優れた兵装ではある。
 事実、故意に出力を落としたレーザーは矢継ぎ早に発射され、ミサイル戦闘機の群れを射抜き破壊していく。
 けれどそれは、555機にも及ぶミサイル群を掃討するには及ばず、レーザー網をすり抜けたものがオブリビオンマシンに直撃し、その機体を揺らす。
 そして、これらは自動操縦での攻撃が可能であり、それが意味するのは。
「――当然、エイストラの手も止まらない」
 体勢を崩した敵に、粒子ビーム砲の照準が合わせられる。
 ノエルの操縦通りに放たれるその一撃は、クィムラヌートの腹部をしかと射抜き、その装甲を破壊するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メサイア・エルネイジェ
強そうな機体ですわね…
傷付いたグレイルでお相手するにはちょっと厳しそうですわ
ここは…戦略的撤退ですわ!
逃げる訳じゃありませんのよ!必ず戻ってきますわ!

という訳で戻ってきましたわ
さあやりますわよヴリちゃん
わたくしとヴリちゃんが揃えば百万パワーですわ

むむ、配下を出して来ましたわね
ヴリちゃん!全力全開ですわ!
攻撃されてもなんのその、寄って来た白兵戦用キャバリアを掴み上げますわ
盾にして砲撃型に接近、ぽいっと放り投げてがっしゃんですわ!
おやおや?本体にもダメージが響いているようですわね
ではこのままどったんばったん攻撃を続けますわ!
平和を乱すオブリビオンはわたくしとヴリちゃんが鉄拳制裁ですわ!



●ラン・ラン・ラン
 硬質な金属が破壊される、けたたましい轟音。
 それは、猟兵が乗っていたグレイルがクィムラヌートの従えるキャバリアたちに組み付かれ、強引に四肢をもがれ破壊されゆく音だ。
 当然、パイロットが乗るコクピットも例外ではない。
 容赦のない攻撃に晒されたその場所は千切れた配線から火花が散るスクラップの山と化し、生きた者の姿はまったく見えない。
 ――この有様では、搭乗者ごとミンチにされてしまったと判断してしかるべき状況に置いて、オブリビオンマシンたちは致命的な見落としをしてしまう。
 機械越しの観測だからこそ……血の匂いがしない事には気づけない。

「逃げる訳じゃありませんのよ! 必ず戻ってきますわ!」
 一方その頃。
 銃撃と破壊の音にかき消され、人の声など聞こえぬ戦場において、誰に聞こえるでもない言い訳を叫ぶ少女の姿。
 ついさっきまで搭乗していたグレイルから脱出したメサイアは、あろうことか己が身一つでキャバリアの闊歩する戦場を走っていたのである。
「傷付いたグレイルでお相手するなど無理難題! ここは断腸の思いで……戦略的撤退ですわ!」
 高貴な雰囲気の少女が走りながら叫ぶその姿はある種コミカルですらあるが、これは相当に危険な賭けだ。
 グレイルで戦い続けることもまたリスクのある選択ではあるが、逃げる背を無防備に撃たれることは無い。
 だが、一時の保身を選んだ先に待つのは消耗の末の敗北であり、守るべき民に降りかかる災禍。
 それは駄目だ、それだけは駄目だ。
 それを避ける為ならば、メサイアは役目を終えたグレイルを冷静に乗り捨てるし、敵に背を向けて逃走だってする。
 そして、彼女は民を守る為ならば。
「という訳で戻ってきましたわ――さあやりますわよヴリちゃん」
 子々孫々より伝わる暴力の化身。
 禍々しい黒い機竜だって、従えてみせる。

「あの黒いトカゲみたいなのは……キャバリア、なのか?」
 遠くエルネイジェ王国にて受け継がれ、今代の姫に勝手に持ち出される運びとなったキャバリア、ヴリトラ。
 クィムラヌートに乗る主犯の男も当然詳細を知らぬ相手であり、だからこそ彼は最大限の警戒を持ってメサイアを迎え撃つ。
 優れた装甲と高い運動性を持つ白兵戦用キャバリアを前面に置き、砲撃戦用のキャバリアたちを周りに配置した自身が後方に陣取る。
 数の利を活かした王道の采配は、正攻法であるからこそ崩す事ままならない強固な布陣だ。
 ヴリトラという未知のキャバリアを前にした将として、男は冷静かつ的確な判断を下したといっていいだろう。

「むむ、配下を出して来ましたわね……ヴリちゃん! 全力全開ですわ!」
 だが、正解などない選択肢も、世の中には存在するものだ。
 格闘戦を仕掛けようとしたキャバリアの一機がヴリトラに掴まれれば、その金属製の巨躯はあっさりと持ち上げられて宙を藻掻く。
「く、出力は明らかに上回って……は?」
 勿論オブリビオンマシンも抵抗はするし、周りのキャバリアも援護射撃をヴリトラに浴びせるのだが、それをまったく意に介さないメサイアはあろうことか掴んだキャバリアを盾にして、挙句の果てに放り投げて投擲武器にしてしまう。
「くそっなんだこの出鱈目は!」
「む、逃がしませんわよ!」
 クィムラヌートのユーベルコードで生み出されたキャバリアたちのダメージは本体にも響く。
 一体二体程度なら大した影響ではないが、大人と子供とばかりにスペック差を見せつけるヴリトラの相手をしていては全滅も時間の問題だ。
 先ほどとは真逆、メサイアから離れるべく撤退を始めた相手を追い回すヴリトラの手は、獲物を捕らえるために開かれた右手と、制裁を加える左の握りこぶしが黒い光沢に輝くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「貴方の重すぎる愛国心には届かないかもしれませんけれど。貴方の思いを踏み躙った祖国に復讐するよりも、他国に亡命して傭兵になられては如何でしょう」

「銃や兵器を捨てるのは平和への圧倒的なパフォーマンスですけれど。捨てられる物にも想いはあります。再利用すらされなければ、想いの昇華も出来ないでしょう?貴方は生きて、貴方の願いを叫び続けるべきだと私は思います」

殲禍炎剣に攻撃されない高度・速度で吶喊
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
敵のメインカメラや外部アンテナ等を桜鋼扇で叩き壊し制圧射撃で行動阻害
敵機が倒れ次第コクピット強制解放し操縦者救う

「彼等は憎悪の矛先をマシンに向けることで、自らの憎悪に折り合いをつけ、和平への道を選びましたけれど。それに納得出来ない貴方が、其の願いに迎合する必要はありません」

「生きる事は願う事。貴方が戦場で培った想いは、貴方にしか癒せません。貴方は貴方の願いを貫けば宜しいと、私は思います。ただ…可能ならば、彼等の願いと貴方の願いが共存できる生き方を、考えてみませんか」


トリテレイア・ゼロナイン
生死問わず彼の目的は達成され、政治的な最適解は…死体残さず有耶無耶に、でしょうね
ですが、Oマシンの関与ある以上…騎士として命“だけ”は

瞬間思考力でセンサー系情報収集能力のフィルタリング強化し行動可能に

攪乱とは好都合!

電脳禁忌剣の素粒子干渉能力で地形を蹂躙
巨大なドーム形成し人々の目から逃れ

Ⅳで組み付き拘束
機体飛び降り剣で装甲破壊
搭乗者を怪力で引き摺り出し遠隔●操縦するⅣへ放り込み
剣から放つ素粒子分解光線で敵コクピットブロック消滅

戦闘後ハッキングで首脳陣に接触

『自爆試み、やむ終えず殺害』…脚本はご用意しました
隠蔽処理はお任せ致します

…生まれ来たる次代の為に
この男の絶望を
私と共に踏み躙って頂けますか



●終戦
 猟兵との衝突を経て、クィムラヌートの各部に刻まれた傷は増える一方だ。
「は、はは……もう少し、もう少しだ……」
 だからこそ、コクピットの中に陣取る男はその狂気的な笑みを深めていく。
 自分の目論見を潰した猟兵たちを道連れにこの式典を、そして自分を裏切った故国と仇敵を殺戮できれば最上であったが、このまま死んでしまって両国の仲を引き裂くのも悪くはない。
 マシンごと押しつぶされて自分の痕跡を消されてしまう事が一番の懸念点ではあるものの、日常よりも戦場に居る時間が長い軍人である彼には、負けるとてミンチにされるのを避ける程度の自信はあったのだ。
 勝てれば文句なし、負けたとしてもそれはそれ。
 この戦いが終われば結果に関わらず自分の目的は達成されると思うと、男の胸中は不思議と冷静に、落ち着いたものへと変わっていく。
「貴方の重すぎる愛国心には届かないかもしれませんけれど」
 そんな彼の心に一石を投じたのは、中空に浮かびオブリビオンマシンのアイカメラを見つめる桜花だった。
 コクピットの中の男の様子は当然分からない。
 それでも、目の前の桜花を即座に攻撃しない様子から対話そのものを拒絶されては無いと感じ取った桜花は、そのまま言葉を続けていく。

「貴方の思いを踏み躙った祖国に復讐するよりも、他国に亡命して傭兵になられては如何でしょう」

 桜花の言葉を聞いた敵の反応は、劇的だった。
 ユーベルコードによって展開されるクリスタルビットはこれまで以上の最大限の物量となり、桜花に照準を合わせる。
「ふ、ふざけるな! 他国だと!? そんなとこに俺の戦場が、俺の戦争がある、あるとでも!」
「……ええ、まあ。じゃあそうしよう、と言う方なら此処でこんな事はしてませんよね」
 クィムラヌートから響く男の声は絶叫じみて、興奮に舌がついてこれていない様子ですらある。
 クリスタルビットから放たれる最大出力のビームが桜花へと襲いかかるも、出力ばかりを高めたそれは、桜吹雪で照準をずらしてしまう桜花には掠りもしない。
「ですが、明らかに動揺し冷静さを失っている。この地域への執着は、彼の精神においてもっとも重要な要素なのかもしれません」
 その様を見て、ロシナンテⅣに搭乗するトリテレイアは男の置かれた状況を考察する。
 オブリビオンマシンに搭乗した者は、破滅的な思考に囚われる。
 その度合いはケースバイケースと言う他ないが、今日この場でオブリビオンマシンに変えられたグレイルのパイロットよりも、目の前のクィムラヌートを駆る男の精神汚染はより深刻だろう。
 無論、それは目の前の男が全くの無辜の人物であることを意味するわけではない。
 ある程度の『素質』はあったのだろうし、この状況に陥った以上、この男は存在そのものが両国にとっての害ですらある。
 政治的な最適解、最大多数の最大幸福を守るなら、目の前の人物は最初から居なかった事にしてしまうべきだ。
 すなわち、死体すら残さずに抹殺し、国民には偶発的に現れた無人機であったとでも説明して、何食わぬ顔で式典をやり直す。
 それが賢いやり方だと、トリテレイアはとうに気付いている。
「ですが、オブリビオンマシンの関与で本来の物以上の狂気に歪められたのなら……騎士として命“だけ”は」
「はい、捨てられる銃や兵器にも想いはあって、彼の意志もまた同じ。彼は生きて、彼の願いを叫び続けるべきです」
 その賢い終戦を否定する騎士の呟きに、空舞う天女が頷いて。
 それが、この戦争の最終決戦の狼煙であった。

「くそっ、殺してやる! お前らも、敵も味方も、ぜんぶ!」
「な、なんだあれは!?」
 怒り狂うクィムラヌートから放たれるユーベルコード、立体映像の奔流による情報的圧殺に驚愕の声を上げたのは、遠くに逃げおおせた市民たちと元首だ。
 肉眼ではとうてい追いつけない戦いを、式典用の中継装置で見守っていた彼らであったが、オブリビオンマシンの攻撃の余波により、彼らの最後の目も奪われる。
「うう、チカチカしますけど、これは私よりも……!」
 そして、その攻撃の矛先である猟兵たちには当然最大量の攻撃が向けられる。
 精霊化によって通常の肉体から変質している桜花にとっては、敵が見えにくくなる程度で済むだろう。
「これ、は……!」
 だが、キャバリアに搭乗し、自身も電子頭脳で思考するトリテレイアにとっては自我を直接攻撃されるような凶悪なもの。
 ウォーマシンである彼が苦悶の声を上げるその攻撃は絶え間なく続き、オブリビオンマシンの回路が焼き切れようとも止める気はないという決意が滲むよう。
 だから、それは。
「――攪乱とは好都合!」
 二人の目的にも、合致する。

 トリテレイアが所有する禁忌の剣。
 支配という言葉すら生ぬるい、周囲の蹂躙を持って干渉された大地がせり上がり、猟兵とオブリビオンマシンを囲むドームが形成される。
「捕える気か! そうは……」
「いいえ、これは檻ではなく、帳です」
 その行動を閉所への幽閉と判断したクィムラヌートが脱出を試みるも、この場の猟兵はトリテレイアだけではない。
 生身故の身軽さでオブリビオンマシンに取りついた桜花がカメラアイを破壊すれば、鋼の扇は返す刀で角状のアンテナを破壊し、クィムラヌートの体勢を崩す。
 転倒するオブリビオンマシンを見ているのは、もはや二人の猟兵だけ。
 オブリビオンのユーベルコードで観測機器が破壊され、物理的にもドームで視線を隔てられたこの空間を、見守る市民たちは観測できない。
 故に、コクピットの存在する胸部を無防備に晒したオブリビオンマシンの最後の決定権は、この二人だけが持つのであった。

●忘れるべきでないモノへ
「追い詰められた敵機は最後、自爆による反撃を試みました。それを食い止めるべく、素粒子分解光線でコクピットを消滅させ……」
「コクピットがあった場所には何も残らず、人間が搭乗していたかどうかすら不明……か」
 戦いが終わり、市民の護送も完了した後のこと。
 壊れた式典会場でクィムラヌートの最後を語るトリテレイアの言葉を、どこか遠い目をした元首が続ける。
 クィムラヌートのパイロットは死んだ。
 もはや何処の誰であったかも分からないし、もしかするとAIを搭載したキャバリアで、パイロットというものすら居なかったかもしれない。
 ・・・・・ ・・・・・・・・・
 表向きには、そういう事になった。

「……平和式典は無期限の延期となったよ。キャバリアは結局殆ど破壊されたし、壊れた会場で無理に行う事もないという理由だが……向こうの国の、首脳陣にとってはそれだけじゃない」
「あのパイロットが貴方方の国の人間だったから、ですか」
「そうだとも。勿論、命がけで私たちを救ってくれた貴方たちの判断を否定するつもりはないがね」
 桜花の言葉に答える元首の声色は、どこか寂し気な物。
 彼の夢見た戦争の終わりは、なんの条約も結ばれる事も無く、キャバリアが無いから戦わないという、酷く曖昧で頼りないものとして実現されたのだ。
 相手国とて、オブリビオンマシンの狂気によって今回の一件が起きたと分かっているからこそ、『事実』を首脳陣だけでとどめているのだ。
 だが、果たしてすべてがオブリビオンの狂気のせいだったのか。
 その疑問から発する不信感は、きっと彼らの思考に深く突き刺さっている。
「公に裁くわけにもいかない。相手国に引き渡すにしても、一度オブリビオンマシンに乗った人間を自国に捕らえるなど嫌がるだろうしね」
「Ⅳから引き渡した彼は……」
「眠らせているよ。下手をすれば一生……そうしなければ、舌を嚙んででも自害を図るだろう」
 苦悩の滲む声は、決して本意ではないのだろう。
 猟兵が市民の目を欺いて救い出したパイロットは、この元首にとっても戦友の一人だ。
 だが、オブリビオンマシンに魅入られるほどの憎悪を宿したあの男は、一国の元首と言えども手に余る存在となってしまった。

「――彼の願いは」
 明らかな懊悩の表情を浮かべる男へ、意を決した面持ちの桜花が問いかける。
「彼の願いは、貴方たちと共存することはできませんか……?」
 その言葉に、トリテレイアが思わず視線を向ける。
 あのパイロットの思想は平和への願いとはまったく相容れないものであり、命があるだけでも奇跡的な立場なのだから。
「…………わからない。ただ、私たちは武器を捨て、憎しみを忘れる事だけが正しいと信じて……そうできない者すらも忘れ去ろうとしてしまったのだと思う。それで、彼が忘れる事など無いのに」
 答える老人の声は弱弱しく、後悔が滲み、それでも淀みない口調には意思が宿る。
 平和への憧れは変わらない。
 だが、そこへ歩むため選んだ道は決して最善のものではないと、この地の人間は気づいたのだ。

「これから、もっと良い道で、良い場所を目指したい――貴方方が守ってくれたからこそ、それができるのだ」
 役目を終えた猟兵を迎えるグリモアの光が、二人を淡く包みだす。
 その意味を察した男は深々と頭を下げ……猟兵たちが消えた後に上げられたその目には、確かな決意が宿っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト