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秋風に溢れ飛び出す禍鳥

#UDCアース

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#UDCアース


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●恐るべき狂気
 ピチチ、と鳥が鳴いた。
「わあ、可愛い」
 四季折々の風景が楽しめる広大な日本庭園。観光地としても有名なこの場所は、今ひとつの危機に瀕していた。
「あ、あれ……苦しい……」
「どうしたんだ、その顔……!」
 突如として人々は苦しみだし、その姿を怪物へと変化させていく。
 平和な日常は、突如として崩壊したのだ。

●UDCの秘密を守れ!
「諸君! 聞いてくれたまえ! UDCアースのとある庭園で、大変な事態の発生を予知した!」
 ゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)が叫んだ。大変な事態。一体何が起きるというのだろうか。
「多くの人々が訪れる彼の地で、突如として大量のUDC怪物が洪水のように溢れ出すというのだ!」
 そのような場所でUDC怪物が暴れ出せば、人々への被害は甚大なものとなる。そのようなことを見過ごすわけにはいかない。
「先にも述べたように現場には多くの人々が存在する! 彼らを守る為にも慎重かつ迅速に、事態の収拾に当たってもらいたい!」
 出現が予知されているUDC怪物は鳥形の『ルリハ』。伝染力の高い狂気をばらまき、人々をじわじわと、気付かぬ内に怪物へと変化させていく恐るべき相手だ。それが大量発生するというのだから、この一件の脅威がしれるというものだ。被害が出る前に倒しきらなくては。

「だが、この禍鳥の群れを退治して終わりではない! ゴッドはその後にひときわ強力なUDCが出現することも予知している!」
 庭園の中心となる池に現われるそれは、見た人間を即座に発狂させ、場合によっては「その人間をUDC怪物に変えてしまう」という。
 時間の猶予はない。つまり最初に現われた鳥の群れを退治しつつ人々を避難させる必要があると言うことだ。

「更には、首尾良くUDCを退治したとしてもこれだけの大量発生……事件の目撃者はどうしても出てしまうだろう! 彼らへのケアも必要となるだろう!」
 UDCの存在が一般に広まってしまえばさらなる混乱は免れない。うまく何らかのイベントだと信じ込ませるなどして事件として広まらないようにする必要がある。
 UDC組織が記憶消去銃を貸与してくれるので、他に手がないならば使うのもいいだろう。
「纏めよう! まずは人々を大量発生したUDCから守りつつ、中央の池から遠ざける! 続いて、現われた強力なUDCを人々に悟られない内に討伐! その後に目撃者達への対処! やることは多いが、諸君ならばこの困難な状況も打ち破れるとゴッドは信じる! 期待しているぞ!」


納斗河 蔵人
 お世話になっております。納斗河蔵人です。
 今回はUDCアースでUDCの大量発生に対処するシナリオです。
 部隊は広大な日本庭園。

 一章ではUDC怪物のルリハとの戦闘です。
 数が多く、一般人と接触されると被害が拡大します。人々を二章に現われる敵との戦場から引き離しつつ守り抜いてください。

 二章はボス戦です。一際強力な相手で一般人が直視すると大変なことになるので、迅速かつ確実に討伐しましょう。詳細は章開始時に。

 三章は日常ですが、目撃者達のケアを行う必要があります。
 怪物の存在をどうにかして隠し通してください。
 ごまかしたり、見間違いだと説得したり……必要があれば記憶消去銃も使えます。
 庭園を平然と楽しめば、周りの人も大した事件じゃなかったとか思うかもしれませんね。

 それでは、プレイングをお待ちしています。よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『ルリハ』

POW   :    セカンダリー・インフェクション
自身に【病源体】をまとい、高速移動と【病源体】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    アウトブレイク
【伝染力の高い病源体】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    スーパー・スプレッダー
【病源体】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【にばら撒くことで】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒江・式子
連携アドリブ歓迎

了解、大事に至る前に対処します
ちょうど私向きの仕事ですしね
ええ大丈夫、慣れてます(死んだ目)

UC【隔絶の天蓋】を発動
足元の影から黒い茨が沸き立ち
大きな幕を編み上げます
迷路内なら
多少ばら撒かれても問題ありません
人を化物に変じさせる程のエネルギー
きっと〝翳喰らい〟の良き糧となるでしょう
迷路の外側には
変わらない日常の光景が映るので
事件とは気付かれにくいハズです
唯一の出口を
避難経路とは真逆に指定
時間を稼ぎつつ避難誘導を行います
係員を装って
本日は閉園です、とでも言いくるめましょう
退避を渋る輩がいれば
自前の記憶消去銃を使用します
後は
迷路の出口で待ち伏せて
拳銃で攻撃など
臨機応変に行きましょう



「了解、大事に至る前に対処します」
 黒江・式子(それでも誰が為に・f35024)は通話を切り、ふうと息を吐く。
 あまりにも突発的なUDC怪物の大量発生。彼女は予知とテレポートによって迅速に駆けつけることができたが、組織はそうもいかない。
 他の猟兵も動いてはいるが、少なくとも目の前の人々を救い出せるのは式子しかいないのだ。
「ちょうど私向きの仕事ですしね」
 COP .357に弾を籠めつつ空を見上げる。既に何処からか飛来したUDCは数を増し、やがてはこの地に脅威をもたらすだろう。
「ええ大丈夫、慣れてます」
 まったく、どれほどにまでこの世界は。拳銃のロック音と共に歩き出した式子の目から生気は感じられなかった。

 とはいえ、向いているというのは過信ではない。
 天を飛び狂気と病をもたらす鳥「ルリハ」の無軌道な動きを抑えこむ術を、彼女は持っているのだから。
「手短に行きましょう」
 そう告げると共に、足元に落ちた黒い影から湧き出す茨。
 影に宿るUDC〝翳喰らい〟が産み出した黒い茨はたちまち大きな幕を編み上げる。
『隔絶の天蓋(カクゼツノテンガイ)』は庭園に迷宮を作り上げたのだ。
「ピピッ!」
 内に秘めた恐るべき病を感じさせぬ鳴き声で鳥たちは飛ぶ。
 だが、茨の迷宮に触れたと同時にその様子は一変。
「うわっ、何だ!?」
「鳥……?」
 急に落ちてきた鳥に客達は驚きの声を上げる。
 作り上げた幕は敵の活力だけを奪い、彼らには影響を及ぼさない。敵は逃がさず、一般人は避難させる。この状況にはうってつけだ。
「触らないでください。調査していますのでこちらへ……」
「えっ、なになに……」
 式子が申し訳なさそうに声をかける。
「しょうがないなぁ……」
「ちょっとちょっと、今入ってきたばっかりなんだけどどう言うこと?」
「入園料返してくれるの?」
 大半は渋々ながらも指示に従ってくれたが、全員はそうもいかない。
 仕方のないことではあるが真実を告げることはできない。だが、事態は急を要するものであるのも確か。
「……」
 ついつい記憶消去銃へと手が伸びる。事件の隠蔽のために使用許可は出ているが……
「申し訳ありません」
 深々と頭を下げる。
 今使えば避難に支障をきたすかもしれない。使わないですむならばそれでいい。
 どうにか一般人を引き離し、式子はため息を一つ。
「ピピピッ!」
 隔絶の天蓋には出口が一つだけ。大半の鳥はそこにたどり着くことはなかったが、流石に全て封じ込めることはできない。
 COP .357の引き金を引くと共に火薬の弾ける音が響き渡り、一羽のルリハが羽根をまき散らしながら庭園の池へと墜落するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
避難誘導と敵の殲滅。
ま、同時にこなすのも珍しいミッションじゃない
鮮やかに成し遂げてみせようか!

【災華殲尽】を《早業+先制攻撃》で起動し縦横無尽に《空中戦》
翡翠に煌めく羽の《弾幕》は烈風の性質を持つ《属性攻撃》さ
敵全体の動きを俯瞰的に《見切り》、羽弾で敵を貫くと同時に風向きを支配して《吹き飛ばし・受け流し》病原体の拡散を阻止

並行して響かせるは《誘惑+催眠術+歌唱》の歌声、《ブームの仕掛け人》の要領で民間人の意識を《ハッキング》誘導・統率して安全圏まで混乱無く避難させよう
予め布石を打っておけば後始末も楽になるだろうしね?

敵群を一纏めに追い込めば風に《属性攻撃+焼却+浄化》の白炎を乗せて焼き尽くすよ



 風光明媚な日本庭園。その上空に突如溢れ出すUDCの鳥。
 まだ混乱こそ起きていないが、やがて異常さに人々も気付き始めるだろう。
 そして、その時にはもう遅い。狂気は既に彼らの心の奥底に潜み、人づてに拡散していく。
「ま、そんな事はさせないけどね」
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)はフッ、と小さく笑った。
 今出現している敵も厄介だが、後に現れるボスは更に危険だ。
 人々を危機から救うためには敵の殲滅をこなしつつ、人々の避難も進めなければならない。
「とはいっても、同時にこなすのも珍しいミッションじゃない」
 しかし、猟兵たるもの様々な条件で世界を守ってきたのだ。その自信は伊達ではない。
「鮮やかに成し遂げてみせようか!」
 背にした翼をふわりと広げ、カタリナはUDCの群れへと飛び込んだ。

「うわっ、なんだあの鳥……」 
 一人の青年が気付く。あり得ないほどの数の群れに。災厄を呼び込むルリハに。
 その姿は異常であり、人目を惹かぬはずも無い。しかしそれこそがUDCの狙いだ。
「オイ、みてみろよ! すごいぜ!」
「なんだァ……?」
 目撃者が増えるほどに感染は広がる。人々を新たな被害者にして感染源とするべく、UDCはその翼を広げていた。
 しかし。
「おおっ、確かにこりゃすごいや。珍しい羽根だな」
「へ?」
 最初の目撃者が再び視線を上げたとき、上空を埋め尽くしていたのは鮮やかな彩り。
 そこに居たはずの鳥は何処かへと消え失せ、変わりに舞っていたのは翡翠色の羽根であった。
「上の方は風が強いのかな。ひらひらしてて落ちてこないや」
「いや、さっきは確かに……あれぇ?」
 そう、カタリナの『災華殲尽(インフィニット・アトロシティ)』によって、ルリハ達はその姿をはっきりと視認される前に吹き飛ばされていたのだ。
 彼女の巻き起こす烈風は病原体の拡散を許さず、その全てを風の中に留めている。
「秋風に~♪」
「お? 今度は歌が聞こえてきた」
「何かイベントでも始まったのかな。行ってみようぜ」
 それだけではない。高速で空を飛びながらもカタリナは歌声を響かせている。
 誘惑と、催眠と――そんな隠し味を潜ませて人々の意識をUDCから引き離しているのだ。
 誘われるように彼らは庭園の外、ボスの現れる池から離れていく。
「こうやって予め布石を打っておけば、後始末も楽になるだろうしね?」
 上空を飛び回りながら効果を確認し、カタリナは風に集められたルリハ達に向き直る。
「キュッ、キュイッ!」
 風から逃れようとする鳥たちはしかし烈風に阻まれ逃れることはできない。
「それじゃ、キミ達の仕上げと行こうか! 聖なるは誰が栄光を讃えるか、魔なるは誰が威光を畏れるか――」 
 その背の翼が翠から白へと変わり、静かに熱を持ち始めた。
「その魂で思い知れ!」
 浄化の力を秘めた羽根を風に乗せれば、白煙がUDC達を病源体ごと焼き尽くす。
 こうして纏めて焼き払ってしまえば感染者も出ないはずだ。
「よし、この調子でいこう」
 人々を導く歌を口ずさみながら、カタリナは未だ溢れ続けるUDCへ向けて再び翼を広げるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
屋外ならば風は吹く。当然だな?

UC【神・黒風鎧装】。
高速戦闘は無しだ、物陰からUCの漆黒の旋風による【範囲攻撃】及び風に載せた短剣【誘導弾】の【弾幕】で撃破と併せ上空への【吹き飛ばし】敵を一般人から遠ざける。

観光施設なら拡声機ぐらいあるだろう。
一つ頂戴して姿を隠したまま避難勧告だ(【大声】【言いくるめ】)
「ただいまこの地区一帯に強風警報が発令されました。申し訳ございませんがお客様はただちに屋内への避難をお願い致します」

直接当たらずとも頭上に吹き荒び目も開けてられん旋風吹けば現実味もあろう(【目潰し】【恐怖を与える】)
一度勧告に従う気になればUCの【呪詛】が反発を抑制する。
後は鳥を狩るのみだ。



「あっ、鳥だ! 今日はたくさん見かけるねぇ」
 穏やかな景色の日本庭園で、そんな声が漏れ出した。
 伸びた枝先にとまる鳥。実に絵になる情景だ。
 だが、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は知っている。
 この鳥は突如として大量発生したUDC怪物『ルリハ』であり、人々に近づけば甚大なる被害をもたらすことを。
「写真撮ろうかな……って、うわっ」
 風が巻き起こる。UDCの体内で蠢く病源体は、近づいてくる人々に牙を剥くことなく遥か天上へと巻き上げられた。
「えー、何いまの風。鳥どっか行っちゃった」
 残念そうな表情。あの鳥がどれほど危険なものであったか彼らが知る由もないし、知る必要もない。
「風は吹く。当然だな?」
 なんと言うこともない日常の裏で、この事件は処理される。『神・黒風鎧装(ロードレッドロゴス)』を纏ったルパートならば造作もないことだ。

 とはいえ、この後には更に強力なUDCの出現も予知されている。
 目撃しただけで狂気に陥る怪物――人々の日常を乱さぬ為には、もう一手必要だろう。
「ただいま、この地区一帯に強風警報が発令されました」
 そこで黒い鎧が手にしたのは拡声器だ。少々シュールな光景だが、この庭園の備品を拝借したもの、似合わないのはご愛敬。
「申し訳ございませんが、お客様はただちに屋内への避難をお願い致します。場所は――」
「えー、残念」
「でも確かにさっきすごい風が吹いたんだよな」
「そうそう、何か黒かった」
 既に幾度かルリハと病源体を追い払う風が吹いていたこともあり、人々はその案内に抵抗なく従う。
「わっ、今も吹いてる!」
「ヤバい、さっさと逃げよう」」
 今時その光景をカメラで撮影しようなどと考えるものも出てきそうなものだが、それもない。
 鎧が辺りに振りまく呪詛が無意識の行動を封じていることで、半ば強制的に避難へと集中させられているからだ。
「それでいい。我らの戦いは誰にも知られることなく終わるのだ」
 去りゆく人々を確かめ、ルパートはつぶやく。
 後は鳥を狩るのみだ。
「我が魂にもはや栄光なく。されど」
 もはや抑える必要もあるまい。鎧から射出された短剣が漆黒の旋風に乗って空高く舞い上がる。
「未だ闇夜に灯り続ける!」
 無数に飛び出す鳥達を風に捕らえ、裂き。黒騎士の鎧は人知れず、人々のために戦い続けるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃(サポート)
『今日も元気に食べて楽しく戦おうね!』
 人間で22歳の女性です。
いつも元気で、強敵との戦闘、食べる、スリルを味わうことを好みます。

基本的に自分の楽しみのために行動し、敵味方問わず他人の心情等には配慮しません。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用します。
戦闘では真っ正面からの突撃を好み、負傷は気合いで耐えれば良いと考えています。
戦闘以外のことも大体気合いと力でなんとかしようとします。
脳筋です。

武器は主に『重戦斧【緋月】』を使用しますが、他の武器の方が有効そうならそちらを使用することもあります。

クロムキャバリアでも生身で戦います。

不明な点はおまかせします。よろしくお願いします。


徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



「やあやあ遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ! 我こそは三代将軍徳川家光であるぞ!」
「お? 何か始まったぞ」
 突如として庭園に響き渡る名乗りの声。
 何事かと視線を向けた人々が目にしたのは、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)であった。
「ええい、逃げるか! 余が成敗してくれよう!」
 見事な所作で耳目を引きつけた彼は、刀を大きく振りながらその身を翻らせる。
「イベント? それとも撮影とか?」
「わからないけど追いかけてみようよ」
「この庭園、徳川の謂れとかあったっけ……?」
(彼らにUDCのことを悟られぬように、避難させねばなりませんからね)
 じわりじわりと立ち位置を変え、人々を庭園の中心から外周へ誘導する。
 人々はなんだかんだといいながら、その動きから目が離せない。
 そうする内に、一行は庭園の外壁までたどり着く。ここまで逃がせば十分だろう。
「いざ、参る!」
 家光は跳び上がり壁の上に立つと、下駄の音を鳴らしつつ一気に駆けだした。
 UDC怪物は今も湧き出し続けている。戦場へと戻り、殲滅するまで彼らの危機は終わらないのだ。急がなくてはならない。
「おおっ、すごい!」 
「面白い見世物だったねー」
 
「おっ、いい感じに人もいなくなってるし、後はあの鳥達を倒すだけかな?」
 家光や他の猟兵達の活躍により、UDC怪物の大量発生に見舞われた庭園に集っていた人々は避難を完了しつつあった。
 強敵との戦い、スリルを味わうことを好む緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)にとっては好都合だ。
 何しろ、避難だの誘導だのはまどろっこしく、フラストレーションがたまるばかり。
 自分にはこうして大斧を振り回す方が合っている。ドスン、と大地を揺らせば彼女の大きな胸がゆさゆさと揺れた。
「飛んでるのは面倒だけど、蹴散らしちゃうよ!」
「待ってください、あの鳥たちは病原体をまき散らすのですよ?」
 が、そこで待ったがかかる。振り向けばそこにおわすは徳川家光。猟兵ならば顔と名前くらいは誰でも知っている人物だ。
「あれ、上様じゃん」
 透乃は構うことなく気易く返事する。乳を揺らしながら。
 男ならばついついゆさゆさと動くものに視線が向いてしまいそうなものだが、そこは嫁が何百人もいる家光である。
 その表情には戸惑いの色すらない。
「人々は避難させましたが、接近戦は危険です。僕と共に戦いましょう」
「あー、うん。それはそれでいいよ。でも私風邪も引いたことないしさ」
 相も変わらずぽよんぽよんと揺らしながら薄着の透乃は続ける。確かに言うとおりなのだろう。
 しかしルリハの病原体は風邪とはまた違う危険性があるのだが――
「それに、私だって意味もなくおっぱい揺らしてるわけじゃないんだよ」
 そんな不安をよそに、透乃はひょいと大斧を担ぎ上げ大地を蹴る。
「……ほう」
 その動きに、家光は感嘆の声を漏らすことになるのだった。

「その恐ろしいボスって奴をちゃちゃっと引きずり出しちゃうよ!」
 空を埋め尽くさんばかりに飛び交うUDC怪物、ルリハ。
 死を招く病をものともせずに透乃は重戦斧【緋月】を振り回し、竜巻が如く風を巻き起こす。
 先ほどまでの行動、すなわち『乳揺ぶーすと(オッパイポヨンポヨンブースト)』によって彼女の戦闘力は高まり、跳躍だけでも空中戦を十分にこなしているのだ。
 その暴れっぷりはまさしく暴風。ついでに戦闘力も高まり続けている。つまりめっちゃ揺れている。
「いやはや、見事なものです」
 家光もその身を危険に晒すことを厭わず、前線に赴く者である。理由こそ違えど、その戦う姿には共感する。
「しかし、その力故にか些か芯を捕らえ切れていないご様子。ここは僕が援護いたしましょう」
 す、と家光は剣に手をかけた。高く掲げれば、その切っ先から水が溢れ出す。
「天の水甕よ、土蜘蛛より奪いし剣を伝い、我が敵を飲み込め!」
 鎚曇斬剣(ツチグモギリノツルギ)。かつて土蜘蛛の首を刎ねた呪われた神剣を振るうと濁流が天を駆け、鳥たちをなぎ払う。
 これぞ『天河大濁流(テンガダイダクリュウ)』。
「汝らがこの濁流に触れれば飛ぶことはできぬ!」
「ピピピッ!!」
 ルリハ達は水鳥ではない。直撃を受ければもちろん、かすっただけでも濡れた羽根で飛び続けることは不可能だ。
「おっと、逃がさないよ!」
 そんな状況になれば、UDC怪物が逃れる術はなくなる。むしろ透乃の単純な速さと破壊力こそが最適解。
「人々を苦しめる病を振りまこうなどと、この家光、決して許さぬ!」
「さあ、本命はどんな奴かな!」
 大斧が巻き起こす嵐が、神剣が操る濁流が、この戦場を埋め尽くす。
 やがて鳥の群れによって薄暗さを見せていた空は晴れ、光が差し込み始めるのであった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『きんぐセキセイさま』

POW   :    王の一閃
【靡くマント】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ちいさな従鳥
レベル×5体の、小型の戦闘用【ちびセキセイ】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    王の輝き
【王冠から光】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鈴・月華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 溢れ出していた鳥たちは、猟兵達の活躍によってその数を減らしつつあった。
 人々の避難も順調で、たとえ予知されている強力なUDCが出現したとしても彼らがそれを目にすることはないだろう。
 やがて、ルリハ達は一点を目指し始める。それは予知された庭園の中心で水をたたえる大きな池。
 鳥の群れが見守る中、遂に現われたUDCとは――
「きーんぐセキセイさまであーる。ピッピピー!」
 なんとマントを背に纏い、頭に王冠をかぶった巨大な鳥だったのである!
 可愛らしいとも言える丸々とした姿。
 だが、忘れてはならない。
 このUDCは見るものを即座に発狂させ、場合によってはUDC怪物へと変えてしまうほどの強大な力を持っているのだ。
「ひれ伏すが良いのであーる。ピッピー!」
 この日常を守る為、現われたきんぐセキセイさまを打倒せよ!
カタリナ・エスペランサ
可愛いものは好きだけど。
害悪を隠す欺瞞となれば出来が良いほど悪質なだけだね
油断も容赦も無用、確実に狩るとしよう

装備[驕傲]、《情報収集+念動力》の力場を広げ視覚に依らない知覚を確保
《第六感+戦闘知識》で敵の動きを《見切り》対処
[ダガー]を《武器改造+限界突破》し二振りの大剣へと再錬成するよ

【閃舞剣嵐】、ほどく三つ編みは魅了権能の《封印を解く》トリガー
この姿、響かせる《歌唱》、纏う香や魔力の全てが
《誘惑+催眠術》となり敵の思考と知覚を惑わす
縦横無尽に《ダンス+空中戦》、《属性攻撃+斬撃波》――放つ斬撃に重力を纏わせ、
敵を引きずり込むように斬り裂き《蹂躙》しようか
一羽残さず見惚れさせてあげるよ!


黒江・式子
連携アドリブ歓迎

もふもふ……
はっ、いけないいけない
触りたいなんて思っていませんよ
ましてや抱きついて
そのまま寝落ちしたいだなんて
ええ、決して考えていません
色々と夢見が悪そうですし
職務放棄するわけにも行きませんから

適当な遮蔽物に身を隠しつつ
自分の足元の影から
地面をつたって影の茨を伸ばし
セキセイさんの影を捉えましょう
強い光は影をより濃く深くさせる
いかなる威光であれ
その傍らには
いつだって衰退の影が寄り添っているのです
一度でも捕まれば
影を介して徐々に活力が奪われていきますよ

貴方が無害な子であれば
褒め称えるのもやぶさかではなかったのですが
とても残念です
拳銃を構え
引き金を引きましょう


緋月・透乃
ふーむ、このかわいいまるっこいのが見た人を発狂させるのかー。とてもそうは見えないけれど、だからこそあぶないのかな?
ま、猟兵の私は多分大丈夫だし、その見た目からどんな戦いをしてくるのかってほうが興味あるね。

ささっと済ませたほうがよさそうだし、単純に真っ向勝負を仕掛けるぞー!
念の為の発狂対策でめっちゃ気合い入れて叫びながら敵に突っ込み、罷迅滅追昇を叩き込む!
これだけだね!
勢いにまかせて敵の攻撃とかお構いなしに突っ込むぞー!

それにしても、こいつは美味しいのかな?見るだけで発狂するから食べない方がいいのかな?でも食べてみたいね。


ルパート・ブラックスミス
……ただの喋る鳥にしか見えんな。自分に【狂気耐性】があるからなのか。
焼き鳥にしてやろう。喰えたものではないだろうがな。

青く燃える鉛の翼での【空中機動】。
【空中戦】の心得はある。敵の間合いを【見切り】つつUC【黒と青の舞刀曲】。
黄金魔剣で敵UCを【武器受け】しつつ、先程以上に意のままに飛翔する強化短剣の【誘導弾】【弾幕】で四方八方から【串刺し】。
刀身の燃える鉛で【焼却】にかかる。

いつ客が踵を返すかわからん。早急に始末させてもらうぞ。



「我が禍を呼ぶのであーる」
「もふもふ……」
 白い羽毛、丸々とした姿。黒江・式子(それでも誰が為に・f35024)は思わず声を漏らした。
 きっと抱きつけばふわりとした感触に包まれ、眠りに落ちてしまうに違いない。
 疲れ切った日々の癒やしに――
「って、いけないいけない」
 ぶんぶんと首を振る。その容姿に惑わされたが、UDC怪物きんぐセキセイさまは非常に危険な存在だ。
「ふーむ、あのかわいいまるっこいのが見た人を発狂させるのかー」
 緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)の言うように、一般人であれば目にしただけで発狂し、場合によっては怪物へと変化してしまうというのだから。
「……ただの喋る鳥にしか見えんな」
 だが、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の言うようにおよそ狂気を呼ぶようには見えない。
 彼らが猟兵だからか、狂気への耐性を持つからか、或いは。
「そうは見えないからこそあぶないのかな?」
 透乃が首をひねる。
 思えば大量発生したルリハも見た目は普通の鳥であった。人々を油断させ、狂気を、病を伝染させる。
 その目的を果たすには人目につかなければならない。この庭園のような人気の多い場所に現れたのも理に適っているのかもしれない。
「可愛いものは好きだけど……」
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)がため息を漏らした。
「害悪を隠す欺瞞となれば、出来が良いほど悪質なだけだね」
 考えれば考えるほどに気が滅入る。
「避難した客もいつ踵を返すかわからん。早急に始末せねば」
「だね、ささっと済ませた方がよさそうだ」
 ルパートが剣を抜き、透乃が大斧を担ぎ上げた。
「油断も容赦も無用、確実に狩るとしよう」
 カタリナも短剣を抜き放ち、それぞれがきんぐセキセイさまとの決戦へと臨む。
 そして、式子も――
「そのまま寝落ちしたい……」
 沈黙。思わず漏れた願望に猟兵達の視線が集まった。
 その事に気付き、コホンと咳払い。
「なんてこと、考えていませんからね。ええ、決して考えていません」
 色々と夢見が悪そうですし、職務放棄するわけにも行きませんから。
 そんな事を脳裏に浮かべながら、彼女もまた銃を手に戦場へと向かうのだった。

 ルパートの背で鉛の翼が青く燃える。
 ぐんぐんと加速し、衝撃波で池に大きな波が立つ。
「焼き鳥にしてやろう。喰えたものではないだろうがな」 
「愚か者なのであーる」
 大きな池の上で撥ねるようにきんぐセキセイさまは浮かび上がった。
 巨体に似合わぬ機敏な動きで、纏ったマントがルパートが操る無数の短剣をなぎ払う。
「王の一閃の前に断てぬものはないのであーる。ピッピピー!」
 早くも勝ち誇るUDC怪物であるが、彼はこの程度ではとまらない。
 黄金魔剣ルパートを振るい、短剣とマントが飛び交う中を巧みにすり抜けてきんぐセキセイさまへと迫る。
「少なくとも、俺は断てない」
「むむむっ、生意気なのであーる」
 鈍い音と共に剣とマントに衝撃がはしった。鋭い切れ味のマントは黄金魔剣を絶つことは適わず、重い一撃に体勢を崩す。
 まだ生きている短剣を操り、一気に勝負を決める……と、いきたいところであったが。
「ならば見るが良いのであーる。我が従鳥達の素晴らしさを!」
 身を翻しながらきんぐセキセイさまの羽毛から飛び出したのは小さな鳥たち。
「ルリハのように、我が配下を増やすのであーる」
「こいつらも先の鳥と同じか……!」
 溢れ出した鳥の強さは大したことはない。直ちに短剣の軌道を変えれば、撃ち抜いていける。
 だが、問題は数だ。一羽でも逃せばせっかく避難させた人々も再び脅威に襲われる事は想像に難くない。
「王たる我はどっしり構えて待つのであーる」

「……やっぱりね」
 ぴくん、とカタリナの体が反応する。驕傲:世界は我が手の上に。
 先の戦いと、王を名乗るUDC。この二つが合わされば敵の取る手段は予測できた。
 即ち、大量のUDCを用いた一般人への攻撃。
「そんな事が可能だとは思わないで欲しいな」
 二振りのダガーをひょいと放り投げる。両の手に魔力を籠め、目を閉じる。
 そして目を開いたときに地に突き刺さっていたのは二本の大剣。
「この姿、響かせる!」
 三つ編みを解き、長い金の髪を風に乗せる。日の光を受けて煌めくその姿は誰もが目を留めるであろう。
 歌声が響けば、きんぐセキセイさまの命に従い飛び立とうとしていたちびセキセイ達の視線も彼女へと向かう。
「ピッピピー!」
「一羽残さず見惚れさせてあげるよ!」
 大剣を手に、カタリナは舞い始めた。

「おりゃーっ!」
「なんとなんと、民草を守らずともよいのであーるか」
 新たに溢れ出した鳥の群れを突き抜け、透乃は一直線にきんぐセキセイさまへと斧を振り下ろす。
 確かに一般人への攻撃は問題だ。だが、彼女にも考えがある。
「親玉のお前を倒しちゃえば! あいつらも止まるんじゃないかな!」
 衝撃で池の水が割れ、二つに分かたれた。この重い一撃が命中すれば、強力なUDCといえどひとたまりもないだろう。
「ピッピピー! それが可能ならばであーる」
 だがやはりその巨体に似合わず動きは機敏。くるくると空中で回転しながら大斧の衝撃をマントで受け流していく。
 いったいこの姿でどんな戦いをするのかと思っていたが、予想以上に正統派だ。
「やるじゃん!」
 もっと長く戦い続けていたい。このような状況でなければ。いや、この状況でも透乃はそう考える。
 敵は強ければ強いほどいい。そしてそれを打ち破るのが最高だ。
「いっくぞー!」
「むうっ、そうはいかんのであーる!」
 近づかれたらまずい。構えを変えた透乃の動きにきんぐセキセイさまは素早く反応する。
 一気に距離を取ると同時、頭上の王冠が輝き始めた。
「見るがよいのであーる、王の輝きを!」

「うわっ……なんですか……?」
 突如として溢れた閃光に式子が目を細めた。
 物陰に隠れ、手にした銃でちびセキセイ達を撃ち落としていた彼女は他の猟兵達よりも一瞬早く状況を把握する。
「これは……あのUDCの仕業ですか……」
 断続的に放出される光。
 無軌道で狙いこそ定まってはいないが、この状況下でちびセキセイ達への対処ときんぐセキセイさまの打倒を同時にこなすことは困難を極めるだろう。
「貴方が無害な子であれば、褒め称えるのもやぶさかではなかったのですが……」
 ふう、とため息をつく。その容姿さえも人々を苦しめる為の罠だとわかっていても、大きいのも小さいのも魅力的であった。
 UDCでさえなければ一羽持ち帰って愛でたいとさえ思う。だからこそ――
「残念です」
 式子がその身を光の中へとさらけ出す。溢れた光が彼女を照らし、影を描き出す。
「強い光は影をより濃く深くさせる」
 シュルシュルと音を立てて『諦観の泥濘(テイカンノデイネイ)』による茨が伸びる。
 飛び立とうとしていたちびセキセイ達を絡め取ると、鳥たちはやがてその力を失っていった。
「いかなる威光であれ、その傍らにはいつだって衰退の影が寄り添っているのです」
 拳銃を手に、式子は光の中をきんぐセキセイさまへと向けて一歩を踏み出すのだ。

「――光に気付かれたか」
 ルパートが視線を庭園の外側へと向ける。
 王の光は民衆の興味を惹くには十分すぎた。何事かと確かめるために職員や野次馬が池に迫ってくるのは間違いないだろう。
「これ以上時間はかけられん。迅速に決着をつける」
「了解! 仕込みは十分、一題披露仕る――!」
 彼の言葉にカタリナが舞の速度を上げる。
 いや、それだけではない。動きのしなやかさ、鋭さ。辺りに漂う香、放出される魔力。
「酔い痴れるままに果てるといい」
 ちびセキセイ達は誘われるように彼女へ向けてゆっくりと羽ばたきはじめる。
 流麗なる剣舞、『閃舞剣嵐(センブケンラン)』――その魅力の前にはUDCといえど抗うことはできない。
 無防備に近づく鳥たちを切り裂き、カタリナは舞いながらきんぐセキセイさまが陣取る池へと進んでいく。
「――見事! なれば自分も参ろう」
 これならば決着の前に一般人へ被害は出さずに済む。
 ルパートの背がより青く染まる。宙に浮かぶ短剣も、黄金魔剣もその炎を強くする。
「ピッピピー! どうしたことだ、我が配下たちはどうしたのであーるか!」
「知らないよ! 大人しく私と戦いなよ!」
 そんな中でも、透乃はきんぐセキセイさまへと向けて突撃を続けていた。
 従鳥たちの支援も止まり、透乃は王冠から放たれる光を構いもしない。
 だが接近してマントを振るうこともしなかった。彼の目的は人々を狂気に落とすことであり、自らを危険に晒すことを由としないからだ。
「戦術ミスって奴だね」
 カタリナが笑う。どれほどに強力な力を持っていても、きんぐセキセイさまはその使い方を誤ったのだ。
 突如としてそれまで軽快な動きを見せていた巨体が池に落ち、水柱を作る。
「ぬうっ、我の動きが……鈍いのであーる!」
「残念、アタシの剣舞は楽しんでもらえなかったみたいだね」
 カタリナの放出する魔力が、その舞いを楽しまぬ者の動きを鈍らせたのだ。
「我は、我はきんぐセキセイさまであーるぞ! 世を狂気に貶めるものであーるぞ!」
「その予定はキャンセルです」
 式子が放った銃弾にUDCの集中が一瞬途切れる。
 その隙をついて水際から伸びた黒い茨がその巨体を絡め取った。
「おおおっ、動けぬのであーるぞ!」
「悪いね、トドメのチャンスを逃がす気はないよ!」
 じわじわと奪われる体力。自慢のマントでさえももはや勢いを失い、何かを切り裂くことはできない。
 透乃の勢いを乗せたショルダータックルがきんぐセキセイさまの頭蓋を揺らし、そして。
「くたばれ、消え去れ、あの世の果てまで飛んでいけー! 罷迅滅追昇(ヒジンメッツイショウ)!!」
「ぬおおおおおお!」
 ぐん、とその巨体が空へと打ち上げられる。巨大な斧が弧を描き、道を切り拓いた。
「我が名に栄光はもはやなく」
 待ち受けるのは短剣の群れ。四方八方を飛び交う刃に抗う術はきんぐセキセイさまに残されてはいない!
「我の、我の栄光は絶えぬのであーる!」
「されど、我が剣の輝きは未だ鈍らず!」
 黄金魔剣が振り下ろされると同時、白い羽毛は青い炎に染まりその命を燃やし尽くす。
 平穏な日常を打ち砕かんとする狂気は、『黒と青の舞刀曲(ブレードオブブラックスミスバッラータ)』の前に消え去ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『彩の庭園』

POW   :    庭園を散策し、四季折々の風景を楽しむ

SPD   :    茶屋で美味しいものを食べる

WIZ   :    美しい景色を眺めてのんびりと過ごす

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「やれやれ、営業再開?」
「まあこういうこともあるよね」
 風光明媚な日本庭園。避難させた人々も時と共に日常の中へと帰ってきた。
 しかし。
「いやさ、鳥が大量にとんでてさー」
「変な風も吹いてたんだよ」
「あとね、なんかイベントっぽい音とか人とかいたのになんもやってなかったんだよ」
「さっきこっちの方めちゃくちゃ光ってなかった?」
 人々の中にはUDCの出現に纏わる事象の断片を目にしたものも少なくない。
 大半は見間違いや勘違いなどと片付け、すぐに忘れ去ってしまうだろう。
 だが全員ではないのだ。UDCの存在は一般人に知られてはならない――
 いざとなれば記憶消去銃を使う手もあるが、どうにかして人々の疑いを晴らす必要があるだろう。
 彼らは今日もなんということもない日常を過ごしただけ。そうでなければいけないのだ。
 
 ※三章は日常ですが、目撃者達のケアを行う必要があります。
 一章二章に出現したUDC怪物の存在を、どうにかして隠し通してください。
 ごまかしたり、見間違いだと説得したり……必要があれば記憶消去銃も使えます。
 庭園を平然と楽しめば、周りの人も大した事件じゃなかったとか思うかもしれませんね(つまり普通の日常として参加いただいてもOKです)
カタリナ・エスペランサ
UDC退治は犠牲者もなく無事に完了
画竜点睛、後は仕上げまで完璧にこなしてこその一流ってね!

観光地としても有名な日本庭園って事はテレビなんかが取材に来る事もあるだろう
《防具改造+変装+早着替え》の要領で装備[人狼装束]をスーツ姿に再錬成。
【天下無敵の八方美人】による《演技》でインタビュアーを装い、
《コミュ力+礼儀作法》を駆使して民間人に聞き込み《情報収集》をしようか
UDC組織には記憶消去銃より人手を借りたいところだね
なに、スタッフの体裁でカメラやマイクなんかの機材を持ってついてきてくれるだけで十分さ
UDC関連の情報は本来日本庭園に居る鳥や
予定されていたイベントの関係って形で言い包めて隠蔽しよう


黒江・式子
連携アドリブ歓迎
ひと段落しましたが
まだまだ仕事は残っています
全て片付くまで
観光はお預け
ってか観光する時間も無いかもしれない……
マナーモードにしてたスマホには
UDC組織からの着信履歴
多分次の仕事の話ですねこれ
……仕方無いです、仕事ですから(虚無顔)
UC発動
話し掛けるフリをして近づき
人々の影に茨を潜り込ませましょう
疑問、困惑、不信感
そう言った不都合な感情は
浮かび上がるそばから
茨に喰われ希釈されていきます
その隙に
こちらに都合の良い情報を
刷り込んでしまいましょう
全く、何も、無かった
としても良いですし
他の猟兵さんと
口裏を合わせるのもいいですね
嘘だろうが何だろうが
日常が回るならば
それで良いのですよ


ルパート・ブラックスミス
施設のスタッフのふりをしてまた拡声器で放送の真似事だ。
「強風警報が解除されました。お客様がたには大変ご迷惑をおかけいたしましてお詫び申し上げます」
「また、先程の強風の影響により付近の電線一部がショートしておりましたが修理等は既に完了したことも併せてご連絡いたします」

とりあえずこういった内容で触れ回っていれば大凡の人々は【言いくるめ】られるだろう。
それでも心配性や納得しない手合いが話しかけてくる場合は、事前に借り受けていた記憶消去銃で対応する(【物を隠す】【だまし討ち】)
……実は使うのも効果を視るのも初めてだ。僅かに不謹慎な心持ちだが今後の参考の為にも試させてもらうとしよう。



「はい、事件の方は問題なく……ええ、ええ」
 謎のUDC怪物大量発生は猟兵達の活躍によって、一人の犠牲者も出すことなく処理された。
 しかし、まだ終わりではない。
 黒江・式子(それでも誰が為に・f35024)は、電話越しでUDC組織への状況の報告とこれからについての対応に追われていた。
「どうしても目撃者は……こちらで対処しますがそちらにお願いしたいことも……」
「強風警報が解除されました。お客様がたには大変ご迷惑をおかけいたしましてお詫び申し上げます」
 その背後には、再び拡声器を手にしたルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)。
 UDCの痕跡は討伐と同時に跡形もなく消え去っている。
 ならば余計な疑念を人々に抱かせる前に封鎖は解いてしまったほうがいい。
 人々はルパートのアナウンスを聞いて、続々と庭園へと戻ってくる。
「よかった、これで見学できるんだな」
「それにしてもさっき……」
 ところが、そんな中に聞き捨てならない言葉も混じっているようだ。
「UDC退治は犠牲者もなく無事に完了。でも、後始末は残ってる」
 ふう、とカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)が息を吐き出す。
 UDCの存在は人々に知られてはならない。
 今回現れた怪物たちもそうだが、見るだけ、接触するだけでも被害は際限なく広がっていく。
 UDCは存在しないもの。その痕跡や疑念のひとかけらさえこの世界には残さない。
「そうだ、彼らは何も見ていない。何も記憶しない……」
 ルパートが手にした何かを握りしめる。
「はい、そうなんです。お願いします……」
「画竜点睛、後は仕上げまで完璧にこなしてこその一流ってね!」
 そしてカタリナは疲れの色を隠せない式子をよそに、ようやくやってきたUDC職員を引き連れて庭園へと赴くのであった。


「はい皆さんこんにちはー。私は今日あの有名なあの庭園に来ています」
 マイクを手にカタリナが池の前に立つ。
 彼女を取り囲むのはカメラやライト、レフ板を手にした人々。テレビクルーのフリをしているUDC職員である。
 観光客も多く訪れるこの日本庭園ならば、取材が訪れることも珍しくはない。
「それでは、来園された方にインタビューしていきましょう! 何かお話ししたい方はいますか!?」
 呼びかけにいくつかの手が上がる。カタリナはその中の一人へとマイクを向けた。
「こんにちは、今日はどこからいらっしゃったんですか?」
 まずは無難な質問から。『天下無敵の八方美人(パーフェクト・コミュニケーション)』はそうやって距離を詰め、相手の本音を引き出していく。
 今日、この場所で。何かをテレビに向かって訴えたいと思うのはどんな人だろうか。
 もちろん、庭園の素晴らしさを伝えたい者もいるだろう。
 だが、中には先ほどの事件に違和感を覚え、それを語りたい者もいるはずなのだ。
「今日、一番印象に残ったのはどんなことでしたか?」
「さっきの事なんですけど、空一面に鳥がぶわーっと」
 ――いた。どうやら彼は溢れ出したルリハの群れを目にしたらしい。
 ここで「不思議ですね」などと言おうものなら、謎の現象として噂を広めかねない。
「ああ、成る程。特徴から察するにその鳥はこの辺りに生息する……」
 あいまいだからこそ謎は深まり、興味も強くなっていく――そこに答えを与えればどうなるか。
「へえ、そうなんですか」
「慣れない人はびっくりするかもしれませんね!」
 一度納得してしまえば疑問は解決。当たり前のことだといわれてしまえばわざわざ人に話したりもしないだろう。
「はい、ありがとうございました! 次はどの方にお話を聞かせてもらおうかな!」
 そうしてカタリナは次々と人々のUDCに纏わる違和感を解消し、その存在を封じ込めていくのであった。


「また、先程の強風の影響により付近の電線一部がショートしておりましたが――」
 ルパートは拡声器を手に庭園を往く。
 今日起きた問題は解決した。全ては運営上の都合であり、危険は一切ない。現在は通常通り運営しております。
「修理等は既に完了したことも併せてご連絡いたします」
「あら、何かあったのね」
「もうなんともないんだったらよかったわー」
 そう言っておけば、大半の人々はそれで終わりだ。小さなトラブルはよくあること。
 だが、それでは気が済まない人間が居るのも確かであって……
「おうおうおうおう、避難してくださいって俺様の貴重な時間が奪われたんだが?」
「どう責任とってくれるんだよオイー」
 ――この調子である。正直、彼らの容貌は風光明媚な日本庭園に似合わない気がする。それはルパート自身にも言えることではあったが。
「ご迷惑をおかけしました。ご協力に感謝いたします」
「池の方から変な光が何度もしてたしよー、何かヤバい実験でもしてたんじゃねーの」
「それだ! 健康被害とかあったらどうしてくれるんだよ!」
「マスコミにたれ込んでやる!」
 だが、UDCに関する事象を広げられるのはまずい。
 どうやら彼らは思い込みが激しい様子であるし、説得したところで聞きはしないだろう。
 ――これは、遂に出番が来たか。
 ルパートは懐に隠し持った記憶消去銃に触れる。猟兵だけでなく、組織が世にUDCの記憶を残さぬ為に用いるこの銃を使う時が来たというのか。
 噂には聞いていたが使ったこともなければ、誰かが使っているところを見たこともない。
 どれほどの効果があるのか、正直なところ興味がある……
「僅かに不謹慎な心持ちだが、今後の参考の為にも試させてもらうとしよう」
「ひっ」
 突如として向けられた銃。柄の悪い男たちが怯む姿に躊躇することなく、ルパートは引き金を引いた。
 
「あれ、俺ら何してたんだっけ」
「質問にありました茶屋はこの道をまっすぐです」
「お、ありがとよ! 行きましょ、アニキ!」
 ――すごい効果だ。彼らは今日のUDC騒ぎの事をすっかり忘れてしまったらしい。
「威力を調節可能とはいえ、安易に多用はできんな」
 記憶消去銃を懐にしまい込み、ルパートは再び拡声器を手に庭園を巡り始めるのであった。


「はい、庭園の管理者側には――」
 式子が慌ただしくUDC職員達の間を駆け回る。
 他の猟兵達が庭園で後処理を進めているのと同様に、彼女も裏方として果たすべき役割をこなしていた。
「うう、ようやくこっちは終わった……」
 またしても瞳から覇気が消えていく。仕事が全て片付いたら観光しようと思っていたのに。
 カタリナやルパートが動いているが、まだまだUDC怪物の痕跡を消し切れたとは言えない。
 自分も合流して、対処に当たらなくては。
「ってか観光する時間も無いかもしれない……」

「さっき変なことがあったんだよねー」
「え、なになに?」
「それがさー」
 庭園を歩き始めた式子の耳に入ったのはこんな会話。どうやら彼女たちもUDCに纏わる何かを目撃したらしい。
 ゆっくりと、怪しまれぬように近づき会話に割り込む
「すみません、そのお話、私にも聞かせてくれませんか?」
「え? あ、うん……えっとね」
「早く話してよー」
 聞き手の女性と式子は話の続きを待つが、どうにも様子がおかしい。
 うーん、と唸ると話し手は首をひねった。
「忘れちゃった」
(そう言った不都合な感情は浮かび上がるそばから茨に喰われ、希釈されていきます)
 式子の影から伸びた茨が誰にも気付かれることなく揺れる。
 不都合な感情を吸収するUDCの茨が疑問、困惑、不信感といったUDC怪物に纏わる感情を薄れさせてしまったのだ。
 結果として、何が『変なこと』であったのか彼女はわからなくなってしまったというわけだ。
「えー、何よそれー」
「あら、残念です。では私はこれで」
 影から伸びた茨をしゅるりとしまい込み、式子は再び歩き出す。


「あー、それは今日行われていたイベントですね!」
「そうなんだ?」
 カタリナのインタビューは続く。野次馬も増え、その中にも同様の疑問を持っていたものは紛れていた。
「えー、でもそんなイベントがあるなんて告知あったかな?」
「あら、ご存じありませんでした?」
 そんな時にはすかさず式子が茨を延ばし、丸め込む。
 そうしてひとつひとつUDCの痕跡を消していく内にやがて日も傾き、閉園の時間が近づいてきた。
「それでは皆さん、本日はありがとうございました!」
 カタリナもインタビュアーの役割は終わり。
 最終的な後始末はUDC組織に任せれば問題ないだろう。
「真実を知らせるわけにはいかないとはいえ、嘘で丸め込むのは少々気が引けたがな」
「嘘だろうが何だろうが、日常が回るならばそれで良いのですよ」
 ルパートのぼやきに式子がつぶやく。
「今日は何もない一日だった。そうだろ?」
「……そうだな」
 カタリナも同様の意見のようだ。
 猟兵達の活躍によってUDC怪物による事件は防がれた。その事を知る者は彼ら自身だけだ。
「……あ、携帯の着信履歴が山のように……多分次の仕事の話ですねこれ」
「我らの戦いに終わりは無い、か」
「世界に笑顔と未来へ進む希望が溢れるまでね!」
 そして、次なる戦いへと猟兵達は旅立っていくのである。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト