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壺の中の大樹祭 〜エンニチ〜 

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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●お祭りがないなら創ればいいじゃない!
 初めまして、と元気良く挨拶をしたのは、トスカ・ベリル(潮彩カランド・f20443)──の肩に乗った、ひとりのフェアリー。
 大きなヘーゼルの瞳を輝かせ、くるくるふわふわの金の髪を自由に泳がせた彼女は、薄く虹色帯る翅を震わせた。
「私はフウリン。フェアリーの冒険者よ。単刀直入に言うと、私の創ったお祭りに招待したいのよ。来て!」
 有無を言わせずフウリンと名乗るフェアリーの女はそう言った。トスカが補足する。
「これまでも、みんな、行ったことがあるかもしれない。ユーベルコードのフェアリーランドを使った世界にお招きしてくれるそうなの」
「私、神隠し受けたひとから色々文化について聴くのが大好きなの。だから今回は浴衣よ。浴衣で参加すること、これが必須!」
 ぐいぐい来る。よほど来て欲しいらしい。
「来て欲しいって言うよりみんなの浴衣姿を見たいだけね!」
 ……そういうことらしい。
 トスカは小さく笑って、おしゃべりなフェアリーの頬を軽く突ついた。
「お祭りに辿り着くまでに、少しだけあるんだよね」
「そう。夜道を歩いてもらうわ。その道すがら、光る秋桜を一輪摘んで、帯か髪に差すこと。それがお祭りの参加チケット替わりよ。あ、大丈夫! そのお花は私のユーベルコードで生み出したものだから、気にせず摘んで平気よ。でもまあ、欲張りはダメね。ツツマシヤカでワビサビなのがいいらしいのよ、浴衣の文化では」
 なんだか偏りのある知識ではあるが、まあここでは彼女が文字通り世界の主だ。従うべきだろう。
「フウリン。浴衣はもちろんだけど、甚平はダメなの?」
「いいわよ!」
 即答。
「でもそれ以外はダメ、とさせてね。だって私の想像するエンニチはそうなんだもの!」
 アックス&ウィザーズより出たことのないフェアリーには強い憧れとこだわりがあるようだ。
「小さな山の上に祀られてるカミサマに踊りを奉納して、こんなに幸せですよって楽しむんでしょう?」
 当たらずとも遠からず、と言ったところだが、トスカは特に修正しない。そういうお祭りがあってもいいだろう。
「だからね、まずは夜の山道をとことこ歩いて行くの。なだらかな石階段よ。脚が悪いひと用に左側はスロープになってるわ! そっちを歩いてもいいわよ。その道の左右に光る秋桜が咲いてるわ」
 うきうきとフウリンは喋り続ける。
「で、頂上付近でめいっぱい屋台が出ているけど、まず先にカミサマに挨拶をするの。カミサマって私よく判らないから、私の壺では空と大地を繋ぐくらい大きな樹にその役割を担ってもらってるわ。挨拶してあげてね!」
 そのあとはめいっぱいお祭りを楽しんでくれたらいいわ!
 踊るも良し、食べるも良し。語らうも良し、遊ぶも良し。
「花火だって上げちゃうわ! 魔法で!」
 そんな、欲望しかない手作りの縁日へ。
「……良かったら、行こう?」
 トスカは笑って、猟兵を誘った。


朱凪
 縁日も浴衣着るのも大好き。朱凪です。

 まずはマスターページをご一読ください。

▼参加について
 光る秋桜が参加チケット替わり、と言ってますが、お祭りだけの参加も問題ありません。山道を上がって摘んで来たよ、と言うことになります。
 1幕はまあ、2幕で思いっきり遊びたいから浴衣描写はこっちに入れるぜ、みたいな人向けです。もちろん、1幕だけの参加も歓迎です。
 募集期間はタグにて案内します。

▼描写人数について
 お祭りシナリオなのでできるだけたくさん描写したいなーと思っておりますが、いかんせんのんびりペース執筆になります。
 人数があまりに多くなった場合は返戻が発生するかもしれません。その場合の取り扱いはマスターページの通りです。

▼トスカ、フウリンについて
 2幕だけ、お誘いがあれば参加します。
 トスカだけ、フウリンだけのお誘いでも当然大丈夫です。好きに遊んでください。

 では、縁日を浴衣で楽しむプレイング、お待ちしてます♪
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第1章 冒険 『夜空の下で探索を』

POW   :    夜目が利くので、己のポテンシャルを生かして探索

SPD   :    効率重視。思いついた策を試してみる。

WIZ   :    地形や痕跡などから、対象を探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●秋の忍び寄る
 りぃ、りぃ、と小さく虫の声のする石段をきみ達は登る。
 時折休む者もあるだろう。石段の数は数十では済まない。ただなだらかだから、一段一段ごとに掛かる脚への負荷はまだそれほど大きくはない。
 夜風がさわりと抜けていく。
 木々の葉擦れが耳に優しい。
 山道の一定感覚で石灯籠が置かれ、ゆらゆらと小さいながらも炎が灯ることで猟兵たちの道の先を導いている。
 それらのすぐ傍。あるいは、少しだけ石段を離れた場所に、花が揺れる。
 ぽう、と小さく光る花弁。
 色は秋桜そのもののような、淡い桃色や柔らかな白、あたたかい黄色。
 あるいは、青白いそれも見付かるかもしれない。珍しい色は、それなりに探す必要があるだろう。
「──……」
 言葉を供に、あるいはやさしい沈黙を傍らに、きみ達は山道を往く。
 
ニーナ・アーベントロート
弟のロラン(f04258)と
夏祭り、ロランと一緒に行くのは初めてかな
浴衣で縁日だなんて、風流なフェアリーさんだね
…うんうん、ペア水着着られたのは楽しかった
素直に甘えてくれる弟はやっぱり可愛くて
二つ返事で手を繋いじゃう

濃紫の花咲く蒼い浴衣はしっとり純和風
帯の黄色もよく映えてるでしょ
…お、ロランよく似合ってる!
さっすがあたしの弟、とにっこり笑い
下駄をからころ鳴らして出発

ダークセイヴァー出身だから夜目はきくけど
どのお花も綺麗で目移りしそう
ふと足元を見れば、仲良く並んだ二輪の秋桜が
優しい紫と、明るいオレンジ
…なんか、あたし達みたいじゃない?
じゃあ、紫の方を貰おうかな
簪代わりに髪に挿せば、華やぐ心


ロラン・ヒュッテンブレナー
※アサガオ柄の青い甚平で参加
ほんのり日焼けしている
尻尾や耳によく感情が出る

おねえちゃん(f03448)とお散歩なの

えへへ、マリア(メイドな従者NPC)のお蔭なの
おねえちゃんも、良く似合ってるの

お祭りには何度か一緒に出掛けてるけど、夏のお祭りは初めてだっけ?
一緒にお揃いの水着で水遊びしたり、今年はすごくおねえちゃんと一緒だったの
手、繋いでも大丈夫かな?(ちらちら)

なんだかね、今年の夏はとても明るい感じだったの
なんというか、身体が軽い感じだったの

お話しながら良さそうなコスモスを探すの
え、どれどれ?
ふふ、ほんとだね?
詰んじゃうのは勿体ないけど…

おねえちゃん、どっちがいい?

満面の笑みでお花を髪に付ける



●夏の名残
 からころ、からころ。下駄を鳴らして、緩やかに続く階段をふたり、登る。
 ニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)は隣を歩く、まだ聴こえぬ祭囃子を探すみたいに竜胆色のぴんと立った耳を震わせるロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)の横顔を見た。
「浴衣で縁日だなんて、風流なフェアリーさんだね」
 発起人であり、今歩く世界そのものを生み出したのだという妖精のことを思えば、ニーナの口許も緩む。
「夏祭り、ロランと一緒に行くのは初めてかな」
「うーん。お祭りには何度か一緒に出掛けてるけど、夏のお祭りは初めてだったかも」
 くてりと首を曲げて歩く弟の姿は、夜と闇しかない世界で生まれ育ったニーナの目には淡く石灯籠に照らされる山道の中でもはっきりと見えた。
 彼が纏うのは青色の、朝顔柄の甚平。しなやかに伸びる脚には夏場に履いたサンダルの日焼け痕がある。足の爪が鮮やかなオレンジ色に彩られているのは、見なくても判った。それはニーナの爪も同じだからだ。
「うん、ロラン。よく似合ってる!」
 さっすがあたしの弟! と彼の肩を軽く叩いて言えば弟は嬉しそうに頬を染めた。
「えへへ、マリアのお蔭なの。おねえちゃんも、良く似合ってるの」
 ニーナを彩るのはロランの手や耳の毛並のような濃紫色の花が咲く、蒼い浴衣。差し色の黄色は帯で、しっとりした全体のラインをきりりと引き締めている。
 おそらく、ロランもネイルに目を留めたのだろう。眦を緩めてニーナを見上げた。
「一緒にお揃いの水着で水浴びしたり、今年はすごくおねえちゃんと一緒だったの」
「……うんうん、ペア水着着られたのは楽しかった」
 ただ、めいっぱいに夏を楽しもうと決めていた半分この絆は、これだけでは満たされない。ロランはちら、と揺れるニーナの白い手を見る。
「……手、繋いでも大丈夫かな?」
「うんうん、もちろん!」
 素直に甘えてくれる弟はやっぱり可愛いから。躊躇いがちなロランの手を掬いニーナはしっかとその柔い毛並に覆われたそれと繋いで、山道の端をふたり、探し歩いた。
 もちろん、探すのは夏祭りへの招待状。
 光る秋桜。
 夜風に揺れる淡い光は幻想的で、ニーナは目移りしてしまう。ロランもどれを選ぼうかと、時折しゃがみ込んで夢中で探した。「綺麗だね、おねえちゃん」。
 そうだね、と返したニーナの言葉尻が、少し曖昧になる。なぜなら、目に留まった光の色に意識が吸い込まれてしまったから。
 仲良く並んだ、二輪の秋桜。優しい紫と、明るいオレンジ。
「……なんかあの花、あたし達みたいじゃない?」
 「え、どれどれ?」もちろんすぐにぴょんと耳と尻尾を跳ね上げてロランも視線を走らせ──その色を見留めて微笑んだ。
「ふふ、ほんとだね?」
 見失ってしまわないように、少し山道を外れてその二輪の花の傍へと走り寄り、そっと茎に手を伸ばした。「摘んじゃうのは勿体ないけど……」でも、気にしなくて良いと件のフェアリーが言っていたから。
 背後に追いついてきたニーナに問い掛ける。
「おねえちゃん、どっちがいい?」
「じゃあ、紫の方を貰おうかな」
 彼女がほとんど迷うことなくそう言うから、手折った紫の光を少し上の高さに結われた灰色の髪に挿す。
 そのときの弟の表情は、花の光よりも鮮やかで。
 それを見た姉の心にも、華やかな光が灯るのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
セト(f16751)と

すごいね、セトっ
ひかってる

ほんとだ、花が花火みたいっ
ちっちゃくて消えない花火がいっぱいだ
ふふ、おまつりってかんじだね
頷いて

いちまつもよう?
わたしのも?(浴衣2019)
おそろいだっ

あっ
まってまって、セト
みーつけたっ

袖の猫さん指さして
かくれんぼしてた、かわいいね

そうだねえらぼうっ
しゃがんでじーっ

セトみたいな色がいいな
セトは森のみどりのイメージだけど
くるりと見渡して
うん、このオレンジにするっ
ぽかぽか色
セトの元気なえがおみたいだから
なんとなく翳して、たいようみたいって思う

シュネーはピンクがにあうよっ
小さめの摘んで

帯にさすのを見てまねっこ
これもおそろいだ
うんっ、はやくあいにいこうっ


セト・ボールドウィン
オズ(f01136)と

わぁ。これぜんぶ秋桜?
いろんな色がある

提灯みたいで花火みたいで
何か…お祭りって感じする!

俺の浴衣は、紺色の市松模様
…って仕立て屋さんに教えてもらった(浴衣2021)
色んな柄が隠れてて楽しい。俺の好きなやつ

うんっ、オズのも
お揃いって言われたら嬉しくて、つい顔がにこにこってなる


そうだ。オズ、秋桜摘んでいかなきゃ
何色にする?
辺りを眺めて、何となく傍らのオズを見て

――んじゃ、俺これにしよーかな
淡い黄色の秋桜はあったかくて、ふんわり優しい
一輪もらうねって、帯にさして

シュネーはピンクか
似合ってる、かわいいね

へへ、そーだな。これもお揃いだ
よし。そんじゃ早く行こ!カミサマが待ってるってさ



●おなじ一歩を
 山道の石段を軽い足取りで跳ねるように登りながら、セト・ボールドウィン(木洩れ陽の下で・f16751)はひらり袖を揺らして振り返った。
「わぁ。これぜんぶ秋桜?」
 いろんな色がある、と告げたとおり、石灯籠以外の光は、色とりどりの小さな花々から放たれている。振り返った彼の視線の先で、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)もカンカン帽を押さえてにっこり笑った。
「すごいね、セトっ、ひかってる」
「な! 提灯みたいで……花火みたいで、」
「ほんとだ、花火みたいっ。ちっちゃくて消えない花火がいっぱいだ」
 いくつも、いくつも。寄り添うように、夜風に揺れる。
 胸の底から浮かぶわくわくに身を任せ、セトは両の手を握り締めてオズと顔を合わせて笑った。
「なんか……お祭りって感じがする!」
「うんっ、ふふ、ほんと、おまつりってかんじだねっ」
 すっかり同じ科白を繰り返すばかりのオズも、つまりは同じ気持ちなのだろう。
 ふたりでまた跳ねるように山道を往く。
 道中でふと思い出したようにセトは自らの浴衣を見下ろした。紺を基調に種々の色合いの緑の四角が並ぶ。
「これ、市松模様って言うんだって。仕立て屋さんに教えてもらった」
「いちまつもよう?」
「そう。こういう、四角が並んでる模様のことを言うんだって」
「そうなの? じゃあ、わたしのも?」
 首を傾げて両の袖を持ち上げるオズの浴衣も向日葵のような二色の、
「うんっ、オズのも」
「おそろいだっ」
「そう、お揃いっ」
 互いに手を取り合い、にっこり笑い合えば、心もぽかぽか! 繋いだ両手の、左袖。
「あっまってまって、セト。みーつけたっ」
 星に縦縞、波に斜めストライプ。市松の柄の中にいろいろ籠められた遊び心。そのうちのひとつ、黒いにゃんこが袖にこそり。
「かくれんぼしてた、かわいいねっ」
「だろ? 色んな柄が隠れてて楽しくて好きなんだ」
 ご機嫌に言うセトに、オズも釣られて笑顔。そしてしばらくそのまま足をふたり並んで進めて──ふと、止めた。
「そうだ。オズ、秋桜摘んでいかなきゃ。何色にする?」
「あっそうだね、えらぼうっ」
 すぐさましゃがみ込んで、色とりどりの秋桜とにらめっこ。時折、傍らで「ほんと綺麗だよなー」と零しながら花々を見遣るセトと見比べて。
「これにするっ!」
 選んだのはぽかぽか色のオレンジ。
 一輪摘んで翳したならば、──うん、たいようみたい。
 それから小振りなピンクを、もう一輪。
「シュネーはピンクがにあうよっ」
「おっ、ほんと似合ってる、かわいいね」
 腕に抱いたレディの緩く編んだ髪にそれを挿したなら、ぽぅと灯る光に、白い頬が淡く色付く。
 そんなふたりの様子を眺めていたセトも、
「──んじゃ、俺これにしよーかな」
 一輪もらうね、と告げて手折ったのは淡い黄色。あったかくて、ふんわり優しい。
 セトが帯に差すのを見て、「あ、いいねっ」オズもまねっこする。
「これもおそろいだ」
「へへ、そーだな。これもお揃いだ。……よし。そんじゃ早く行こ! カミサマが待ってるってさ」
 手を差し伸べて笑うセトの笑顔は、帯に差したばかりのぽかぽか色にそっくりで。
 オズは自分の見立てが間違っていなかったと、こっそり満足気に微笑む。
「うんっ、はやくあいにいこうっ」

 互い、知らないけれど。
 きっと“それ”も、お揃いだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・サキ
浴衣姿はイェーガーカードのもの
髪型も合わさり、いつもより幼く見られやすいかも

ん、良い場所、すごいね
……クロを呼ぶのは、有りなのだろうか……?
いやでも、歩いてもらうのが大事っぽいし……1人のほうが良いのかな、うん
石灯籠があるなら……たぶん大丈夫
と、方向音痴でよく迷子になるサキは、山道を歩き出す

一緒に居られない分、クロに似た黒色の花を探そう
クロは大きいし、花も大きめが良い
……ここは危険な場所じゃないし、ちょっとぐらい、道から外れても良いよね?

絡み・アドリブOK


クロム・ハクト
紺地の浴衣に下駄を履いて。
下駄の乾いた音が小気味よくて、一定のリズムでからころと。
以前浴衣を着た時はそれほど歩きまわらなかったし、
常なら足音が出ないように注意する方だから、何だか新鮮で。

選んだのはやさしい白い秋桜。
摘んだ秋桜は帯へ。
髪に挿すのは柄じゃないのもあるけれど、
気付かぬ内に落としかねないと思ったから
なくさぬようにしっかりと。

からころからころ。
無意識に先程よりもテンポが上がって。

踊りを奉納とか言っていたが、そういうのは疎いが…その時はその時か。
こういうのは乗った方が良い事はこれまで学んだから。
屋台は…今回は少し気をつけよう。
そんな事も思いつつ。

アドリブ・絡みOK



●黒の邂逅
「ん、良い場所、すごいね」
 ね、クロ。くるり、黒い髪が泳ぎ桜の髪飾りが揺れる。振り向いて、夏目・サキ(舞い散る桜の夢・f10909)は空っぽの背後に瞬いた。
 いつも寄り添う漆黒の巨狼の姿が、ない。
 そうだったと思い至って、紫がかった黒の瞳をいつもの微睡むような形に戻す。
──歩いてもらうのが大事っぽいし……ひとりのほうが良いのかな、うん。
 そう考えたからこそ、保護者のような相棒を敢えて喚んでいなかったことを。
「まあ、石灯籠もあるし……たぶん大丈夫」
 肯いて、サキはゆっくりと石段を上がり始める。
 吹き抜ける夜風に乗るのは、草と土の匂い──だけではない。なにかは判らないが、においがする。なにかおいしそうな、におい。
 お祭りがあるのだと言う。
 ならそこにおいしいものもあるのだろう。そこまで考えたサキはふと気付く。チケットが要ると聞いた。そうだ。花。秋桜を。
 石段の横に広がる山肌を見遣る。
──……ここは危険な場所じゃないし、ちょっとぐらい、道から外れても良いよね?
 そして迷子上級者のサキは一歩を踏み出した。

 紺地に縞の浴衣の裾から、からんと下駄を鳴らせば黒い耳が上機嫌に揺れる。
──以前浴衣を着た時はそれほど歩き回らなかったし、な。
 前は浴衣姿で空を飛ぶという体験をしたものだから、こうして石蹴る乾いた下駄の音に意識を向けるのは、ほとんど初めてだ。
 それにクロム・ハクト(黒と白・f16294)は咎人殺し。足音など立てぬよう立ち回るのが常となっている所為で、こうして堂々と音を立てて歩くのも新鮮だった。
「それにしても、見事だな……」
 星空ともまた違う。暗がりを照らしてあたためるような柔らかな光は、花弁に触れても熱はない。
 彼は迷わずそっと石段の傍に揺れていたやさしい白の秋桜を手折り、帯に注意深く挟み込んだ。
 髪に挿すのはクロムの柄ではないと感じたのはひとつの大きな理由ではあるけれど、結いも編みもしない髪に挿して、気付かない間に落としてしまうことは避けたかったから。
 これで安心と再びからころ、からころ。意識せずとも湧き上がる高揚感に軽やかになるクロムの足が、止まった。
 水色に白の花咲く浴衣姿が、木々の合間を埋め尽くすように光る秋桜の中を、ふらふらと進んでいる。ふたつに結んだ長く黒い髪のその影の背丈はクロムよりも小さい。
 同じく祭りに参加するのだろう。きっと秋桜を探しているのだ。
 思って通り過ぎようとしたが……どうにも、探しものをしているように見えない。
「おい、どこに行くんだ」
 だから、声を掛けた。
 振り向いた少女は、否、実は彼よりも年上のサキは、もう一度瞬くことになる。
「……クロ、」
 手にしていたのは、大輪の黒い秋桜。
 傍に居られない分、相棒に似たそれを探し見つけ、そしてものの見事に帰り道を見失っていた──性質の悪いことに彼女自身はその事実に気付いていなかった──ところへ声を掛けたのが黒い耳と尾を持つ姿だったのだから。
 もちろん、そんなことを口に出すことはない。
 とてとてと慣れぬ下駄でサキはクロムのいる石段の方へとようやく戻り、
「……助かった、と、思う」
 ありがとう、と告げて、折角だからと彼と共に残りの山道を上がることにした。
「踊りを奉納とか言ってたが、あんたは踊れるか? 俺はそういうのには疎いんだが」
 その時はその時か。クロムは軽く肩の力を抜く。こういう時には乗った方が良い。その方が楽しい。これまでの冒険で彼はそう学んだから。
「だが屋台は……今回は少し気をつけよう」
「……なにを?」
 くてりと首を傾げるサキに、クロムは苦みと共に告白する。以前の祭りで調子に乗って買い過ぎたことを。けれどサキは更に首を傾げた。
「……おいしいものがあるなら、食べればいい」
 純粋な疑問を浮かべる彼女に、遂には彼も小さく笑った。
「ああ、そうだな」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
リュカ(f02586)と

今年の浴衣で
柔い白の秋桜は帯に差そう
ゆるり友と歩く秋の道

戦争で大変だったから
そうだね、お互い無事に帰ってこられてよかったね
リュカ、怪我の具合は?
…オレ?
ってこらこら、クソ野郎はないだろうに
余程気に入らなかったんだねえ

…オレはね、力を全て解放すると厳冬を纏う
あまりに冷たすぎて、人と共には居られない
あの姿を見たら誰もオレを友などと…なんてね
わかっていたことではあるんだけど
小さく眉を下げて笑んで
…そうだね、考えよう
ありがとう、リュカ

神は声を聴くだけさ、良くも悪くもね
そうだな、幸せだよ。人形の身には余る程に
生きて、友が居て、今貴方と遊びに来ていて
それが二人分の通行料になるのなら


リュカ・エンキアンサス
ディフお兄さんf05200と
浴衣は去年の白いの。秋桜は提灯にでも飾って
何気なし会話しながら歩く

なんかゆっくりするのは久しぶりな気がする
お互い死にかかったしね。命がかかってたともいうけど
俺の怪我は治った
お兄さんは、あれからどうだった?
あのクソ野郎に、何か言われなかった?
いや、確かに野郎でなかったのは認めるけど…
…そう
確かに一緒にいて死ぬのは困る
だから、そうならない方法を考えよう
人間っていうのはそこまで特別な力はないけれど
考えることができる生き物だから

それにしても
幸せですよ、ねえ…
幸せでない人間ってお呼びじゃないのかな
お兄さんは今幸せ?
そう。じゃあお兄さんの幸せを通行券代わりに通らせてもらおうかな



●“ ”と呼ぶ距離
 白には龍が刻まれて、黒は裾を青へと彩り移し七宝紋が顔を覗かせる、ふたつの浴衣姿が並び行く。
 ディフ・クライン(雪月夜・f05200)が淡い白の秋桜を帯に差す隣で、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)が無造作に秋桜を提灯に添えようとするのを、「いけないよ、リュカ」ディフが止めて帯に挟んだ。
「変な決め事が多いね」
「人はそういうものが好きだね」
 こういう道はバイクで走ると怒られるからやりづらいんだよね。基本的に階段はバイクで走るものではないからね。そんな他愛もないやりとりと共に石段を上がっていく。
「なんか、ゆっくりするのは久しぶりな気がする」
「ああ、……戦争で大変だったから」
「お互い死にかかったしね。命がかかってたとも言うけど」
「そうだね、お互い無事に帰ってこられてよかったね。リュカ、怪我の具合は?」
「俺の怪我は治った」
 アポカリプス・ランページ。中でもマザー・コンピュータの手になる増殖無限戦闘機械都市によるグリモア必殺計画へ彼らはそれぞれ、赴いた。
 足をやられた、と言っていた彼の足取りを確認するに、端的な回答に嘘はないようだ。ディフはそっと確認して息を吐く。
「お兄さんは、あれからどうだった?」
「……オレ?」
「あのクソ野郎に、なにか言われなかった?」
「ってこらこら、クソ野郎はないだろうに。余程気に入らなかったんだねえ」
 普段と変わらぬ様子で告げるディフに、「いや、確かに野郎でなかったのは認めるけど……」とリュカは言い訳にもならない言い訳をする。
 強制的に戦場に縫い止めるという手段を用いた敵が気に食わない。それは否定しない。けれど、それだけではない。
 窺う蒼の瞳に、ディフは困ったように口角を緩めた。
「……オレはね、力を全て解放すると厳冬を纏う。あまりに冷たすぎて、人と共に居られない。あの姿を見たら誰もオレを友となどと……なんてね」
 わかっていたことではあるんだけど、と眉を下げて告げた彼に「……そう」リュカは応じる。彼もディフの“冬”を目の当たりにしている。
(それは、本当に友かしら)
 記憶をノックするのは、気に食わないあの敵の声。直前に、リュカがディフを警戒したことなど知る由もないはずの女の声が、神経に障る。
──……そんなこと、
 我知らず目を眇め、眇めた己に気付いてリュカは肩の力を抜いた。
「……確かに、一緒にいて死ぬのは困る」
 ぽつり告げた言葉に、ディフもそうだね、とごく当たり前に肯く。だからリュカは彼の青い瞳を見上げた。
「だから、そうならない方法を考えよう。人間っていうのはそこまで特別な力はないけれど、考えることができる生き物だから」
 真摯な彼の視線に、ディフは思わず足を止めた。
 見開いた双眸がリュカのいつもと変わらない無表情を見据えて、──それから緩んだ。
「……そうだね、考えよう。ありがとう、リュカ」

「それにしても、幸せですよ、ねえ……」
 再び石段を上がりながら、発起人たるフェアリーの言葉を思い起こしてリュカは呟く。カミサマにその姿を見せるのだと。
「幸せでない人間ってお呼びじゃないのかな」
 捻くれた彼の感想に、ディフは軽く首を傾げる。
「神は声を聴くだけさ、良くも悪くもね」
 そんなものなの。そんなの──続く言葉はしっかり呑み込んで、リュカは問う。
「お兄さんは今、幸せ?」
「そうだな、幸せだよ。人形の身には余る程に」
 即答だった。
「生きて、友が居て、今貴方と遊びに来ていて」
「……そう。じゃあお兄さんの幸せを通行券代わりに通らせてもらおうかな」
「それが二人分の通行料になるのなら」
 ささやかなやりとりが、夜風に浚われて消えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
【花結】
浴衣を纏い、君に添う
隣の花を眺めるばかりで
転ばぬように気を付けて

簪に触れる指先追い
眸細めて、想い馳せて
僕も手繰らずにいられないさ
その燈會が描く沈丁花にと
『永遠』を託して誓ったこと
それを君が受けてくれたこと

ふたりでひととせを経て
花も灯も、褪せるでなく
増すことに裡は温もり
君咲く鈴蘭と沈丁花に
倣う真白の花を挿して

さあ、僕にも頂ける?
お姫様を緩りと抱き上げ
戴冠を恋うよに頭を擡げる
添う感覚に離れゆけば
揃う眸が重なり綻んで

花増す君は、実に可愛いな
――ン、頭の中に関しては
恒でも“花”ばかりだけれど?
心地良さに、戯れ返し
そうと額に唇を寄せる

僕もね、しあわせだよ
花の添い咲き綻ぶ容を
眸の先で見られるから


ティル・レーヴェ
【花結】
浴衣姿のあなたとふたり
虫の声や木の葉に
カラコロ歌う下駄も軽く
石段の脇に光る花弁も誘うよう
平気よ
だって妾の王子様が繋いでいてくれるもの

ついと指先伸ばすのは
髪に揺れる燈會簪
ふふ、浴衣に袖通すとね想い出すのよ
あなたがこの燈をくれた日を
今宵はまた灯りを下さるの?
揺れる花灯りに視線向け
あなたからの一輪をこう

あなたに灯す一輪は妾から
愛し腕に身を預け
ふわり浮き近づく白に挿し添えるのは
ふたり揃いの眸色
柔く淡い紫の秋桜

あなたもとうてもお似合いよ
いつかのように花盛り?なんて
髪梳き戯めくはご愛嬌
あなたと花揃うのが嬉しいの
腕の中にいることも

妾の“しあわせ”は
唇同士重ねて贈り

――“次”は妾からと言ったでしょう?



●“ふたりじめ”
 りぃ、りぃ、と小さく夜を震わせる虫の音に、さわさわとささめく葉擦れ。
 アンサンブルとばかり、からころ歌う下駄を供に、灯る秋桜を口許綻ばせて眺めつ石段を往くティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)のちいさな手を、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)はそと取る。
「隣の花を眺めるばかりで、転ばぬように気を付けて」
 当たり前のように感じる大きな掌。猫の足跡ついた浴衣から伸びた、骨張った手、指。それを享受して彼女は眦を和らげ振り返る。足許の赤薔薇のレェスが揺れる。
「平気よ。だって妾の王子様が繋いでいてくれるもの」
 目を奪う隣の花なんて、リラばかり。囁けばあなたは色付いてくれる?
 繋いでいない指先が触れるのは、髪に揺れる沈丁花の燈會簪。ライラックもその仕種を目で追うのを見て、ふふとティルは零した。
「浴衣に袖通すとね想い出すのよ。あなたがこの燈をくれた日を」
「僕も手繰らずにはいられないさ」
 朱色の千本鳥居を過ぎた先。空に咲いたあかの中。君をとらえたあの夜。
 その燈會が描く沈丁花にと『永遠』を託して誓ったこと。
 ──それを君が受けてくれたこと。
 眸細めて掌に僅か力籠めた彼の頬に、大輪咲く浴衣から白い腕を伸ばし掌を滑らせて、ティルはこう。
「ねえ、今宵はまた灯りを下さるの?」
 揺れる鈴蘭と沈丁花。夜に灯る彩り豊かな秋桜へ視線を遣る彼女に、ライラックは柔く笑んで仰せのままにと石灯籠の導から僅か離れる。
 淡い桃色や柔らかな白、あたたかい黄色。──選ぶいろは、決まっている。
 脳裏に過るのはふたりで経たとうといひととせ。
 花も灯も、褪せるでなく増すばかりであることにライラックの胸の裡もあたたまる一方で、秘色の髪に白の秋桜を添わせた。
「さあ、僕にも頂ける?」
 いとしいお姫様の膝を掬い上げてゆるりと抱き上げ、戴冠をこうよに頭を垂れた彼に、ティルはしかと身を預けて手を伸ばす。白い猫っ毛に灯るのはふたり揃いの眸色。
 いつもよりもずっとずっと近い距離で、そのふた揃いの紫が笑みに緩む。
「花増す君は、実に可愛いな」
「あなたもとうてもお似合いよ。いつかのように花盛り? なんて」
 彼女の指先が彼のやわらかな髪を梳き、ころころと笑う声に、その指先に瞼を伏せて頬を寄せて彼も言う。
「──ン、頭の中に関しては、恒でも“花”ばかりだけれど?」
「あら、」
「どうかした?」
「いいえ、内緒」
 先に考えたばかりのことを口にする彼と、花ばかりでなく揃うのが嬉しい。
 文筆家然と紡ぐあそび心満ちた言の葉を、音にするとすぐに紅潮する目尻が愛おしい。腕の中にいる今このときも。
「……妾の“しあわせ”は」
 カミサマに伝えるのだという、それは。──カミサマには、教えてあげない。
 腕を彼の首筋に回して、重ねたくちびる。
 瞬時まぁるくなった紫は、けれど蕩けるように甘くなる。
「──“次”は妾からと言ったでしょう?」
 今宵は“ひとりじめ”。石段も離れたなら、周囲は夜風に揺れる灯る秋桜ばかり。
 いいこのあなたに、贈らせて?
「……僕もね、しあわせだよ」
 真っ直ぐな視線を向けるティルの額へライラックはくちづけをひとつ落とし、それから己の額を合わせて微笑んだ。
──花の添い咲き綻ぶ容を、眸の先で見られるから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
フウリンさまの素敵な御誘いに感謝しつつ
ペットのフジモトを伴い
今年新調致しました、赤い浴衣にて参加いたします
光る秋桜…まあ、なんてお素敵なのでございましょう
そっと摘んで、髪に飾って
それでは、カミサマにご挨拶へと伺いましょう

石階段を上りつつ
少し、これまでの事を思い返してみます
様々な事がございました
一番印象に残っておりますのは、亡くなった筈の
老執事のフジモトに何度も再会したことでございましょうか
ふふ、不思議な体験でございました
この先には、一体何が待っているのでございましょう?

まあ、とても大きな樹、でございますね
ぱんぱんと手を合わせて―このやり方で良いのかと迷いつつ
はじめまして、とご挨拶申し上げますね



●ご挨拶と振り返る幸福
「まぁ、なんてお素敵なのでございましょう」
 淡く光を灯し、揺れる秋桜の群生を眼前にして、ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は口許に指先添えて素直な感想を零した。
「フジモト、あんまり離れてはいけませんよ」
 石灯籠に照らされているとは言えど、薄暗い山道。
 秋桜は背が高い植物だ。埋もれてしまっては見付けるのも大変と彼女は傍らの柴犬のような雑種犬のバディペットへと声を掛ける。
 装いを赤の浴衣──牡丹をメインに種々の花々が咲くそれへと替えたベイメリアは頬を撫でる夜風に目を細めつつ、手を伸ばす。
 選び摘む一輪はやはり、赤い秋桜。既に大輪の牡丹の髪飾りが彩る金の髪に挿して、「それでは」と彼女は背筋を伸ばす。
──カミサマにご挨拶へと伺いましょう。

 石の階段を上りながら心に浮かぶのは、これまでのこと。
 とてとてとベイメリアの傍を歩くフジモトの姿に、彼女は小さく微笑んだ。
「様々な事がございましたけれど……、一番印象に残っておりますのは、亡くなった筈のフジモトに何度も再会したことでございましょうか」
 もちろん、傍らのバディではない。名をもらった、幼き頃控えてくれていた老執事。
「ふふ、とても不思議な体験でございました」
 この先には、一体なにが待っているのでございましょう?
 想像するだけで綻ぶ口許もそのままに進んだベイメリアが、最後の石段を上がり切る。
 顔を上げた途端──視界を全て埋め尽くしたのは、樹。
「まあ、とても大きな……」
 そんな言葉では表現し切れないほどの大木。『空と大地を繋ぐくらい』という言葉に偽りはなかったらしい。圧倒されそうなその姿の根元には、遠近感が狂うような屋台が建ち並んでいるのが見えた。
 これで良いのかと躊躇いつつも、ベイメリアはふたつ柏手を打つ。そして頭を垂れて、告げる。
「はじめまして」
 それは初めで始まりの、ご挨拶。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『大樹祭』

POW   :    興行への飛び入り参加

SPD   :    露天商・屋台巡り

WIZ   :    祭りの喧騒を遠くに、静かに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●大樹の下の縁日
「さぁようこそ! いらっしゃい!」
 大樹の前は広場になっていて、その広場をぐるりと取り囲むように様々な屋台が建ち並んでいる。
 冷やされて棒に刺された胡瓜や果物、チョコレートの掛かったバナナ、あるいは艶めいた飴に包まれた林檎、苺、蜜柑に葡萄。ふわふわの綿状の飴。
 鉄板の上でジュウジュウと音を立てる腸詰め肉や串焼き。肉の種類は牛や羊に、ドラゴンもあるのだと言う。
 あれはなに? と指差す姿はフウリンに招待された一般人なのだろう。「タコヤキと言うらしいわよ!」と件のフェアリーが自慢気に告げる横では、焼きそばも売り出されているようだ。
「あれはタイヤキ、すごいのよ、あれは魚の形をしているけど、甘いの!」
 大樹前の広場では、浴衣姿の人々がめいめいに踊っている。本来の神前に奉納する舞いとはまるで言えないような光景ではあったが、今この場所では、それでいいらしい。
 大樹の聳える小山から離れた場所からは、鮮やかな大輪の花火が打ち上がっている。
 どぉん、……どぉん、と響く音に紛れ、弾けるのは銃声。
 もちろん撃ち出すのは実弾ではなくコルク──射的と呼ばれる遊戯の屋台に、赤と黒の金魚をポイで掬う屋台、色とりどりの水風船を紙帯に繋いだフックで釣り上げるヨーヨー釣り、投げ輪。
 他にも探せば遊戯も食べ物も、色々あるかもしれない。
「ねえ、これでエンニチって合ってる? 楽しんでもらえる?」
 嬉しそうにフウリンはにっこり笑った。
クロム・ハクト
フウリン(、或いは他の猟兵と)

そうだなと肯いてみたものの
今回も少々やりすぎた感は否めない
両手にいっぱいなんて事にはならないものの、
巡った末に、今度はタイヤキを手にしている

ああ、馴染みのない物も含めて、なかなか面白い

幸せかと問われれば
こうして余しかねないほどの何かを得て
こうして穏やかな時間を過ごせるのはとても幸せな事だと思う

踊りか何かに誘われたら、少し待ってくれ
そうだ、あんたも食べないかと手にしたそれをわけっこ

幸せと思うものは分け合った方がいいからと
その方がたくさんになるでしょ
そういったのは誰だったか
視界の端に入る帯の秋桜、白い花

ああ、今行く

アドリブ・絡みOK


ベイメリア・ミハイロフ
まあ、まあっ、フウリンさま…!
これぞまさしく、エンニチ、でございます!
今年の夏祭りに参加しそびれたわたくしにとっては
とても嬉しいお誘いでございます
引き続き、浴衣姿で堪能したく存じますよ
フジモトははぐれないよう、また、
他の方にご迷惑をおかけしないよう、リードにて繋ぎ参ります

まずは、りんご飴を頂きとうございます
他にもタコヤキ、タイヤキなどを
食べ歩きとうございますね

めいめいに踊る…盆踊りのことでございましょうか?
折角でございます、わたくしも混ぜていただきましょう

フウリンさま、なんという、再現力でございましょう
わたくし感動致しました
素敵なお時間を、ありがとうございます

(他の方との絡みも歓迎いたします)


夏目・サキ
カミサマへの挨拶を済ませたら、さっそく屋台巡りへ
登ってるときから、楽しみだった
広場の踊りを見て、実家柄、奉納の舞の作法とかがつい頭に浮かぶけど
……今日は、そういう仕事じゃないし、ね

目指せ、食べ物屋台、全制覇
私、大食いだけど、早食いじゃないから、のんびり一つずつ味わって食べるつもり
ここならではのものとか、あるかな?

とりあえず目についたものから買ってもぐもぐ
全制覇目指しつつも、無計画にうろうろ
ここさっきも来たっけ……?

トトやフウリンに会えたら、挨拶したい
先ず感謝と、オススメの屋台や、私がまだ行けていない屋台の話とか
そして、その屋台と真逆に向かおうとする私をなんとかして欲しい

絡み・アドリブOK



●“エンニチ”
 大樹に手を合わせ頭を垂れ、挨拶をした夏目・サキは、さっ、とふたつに結わえた漆黒の髪を靡かせて身を翻した。
 なにかおいしそうな匂いが、山道からずっと届いていた。それがより近いのだから。
──目指せ、食べ物屋台、全制覇。
「とりあえず、それと、それ。これも」
 香りの強いソースに惹かれて、焼きそばにたこ焼き。傍にあった飴掛けの林檎は思ったよりも大きい。冷める前にと焼きそばを口に頬張ったなら、舌に甘辛い味が広がって鼻に抜ける。散りばめられたキャベツのしゃきしゃきが楽しくやさしい。
 もぐもぐと食べつつ更に視線を巡らせる。
「ここならではのものとか、ある?」
 飲み込んでから問うサキに、その食べっぷりを嬉しそうに見ていた屋台のお姉さんがにこりと微笑む。
「フウリンが聞きかじったお祭りだからね、どれがそうなんだか判らないけど。あっちの屋台の串焼きドラゴンは、オススメよ」
「そう。ありがとう」
 指差された方を確認してぺこりと一礼したサキは、歩き出す。──全く逆へ。
「ちょっとちょっと、どこ行くの?」

 ようこそいらっしゃい、と微笑んだフェアリーが纏うのは薄藤に撫子柄の小さな浴衣。
「まあ、まあっ、フウリンさま……! これぞまさしく、エンニチ、でございます!」
 両の指を組み翡翠色の眸を輝かせるベイメリア・ミハイロフへ、フウリンは満面の笑みを向けた。
「ほんと? やったわ!」
「ええ、今年の夏祭りに参加しそびれたわたくしにとってはとても嬉しいお誘いでございます」
 彼女の傍で、リードに繋がれたバディペットのフジモトもひと鳴きする。
 まずはやはりこれでしょう、とベイメリアが求めたのは飴掛けの林檎。齧りつけばぱりぱりと薄く割れる飴の中から瑞々しく爽やかな果肉が口いっぱいに広がった。
「他にもタコヤキやタイヤキなど……あら、」
 はたと止めた彼女の視線の先にはクロム・ハクト。正確に言うと、その手にいくつものタイヤキ。
「いや、その。……これひとつをとっても色んな味があって、つい」
 食べればいいと言うサキに、そうだなと応じはしたものの、やはりある程度は節制しようと思っていたのに──。少しバツが悪そうな彼の様子に、ベイメリアはくすりと笑う。
「よろしいかと存じますよ。カミサマへ、こんなに幸せですよとお伝えするお祭りなのでございますから」
 「まあ、そうだな……」首の後ろへ手を遣って、クロムもどこに居ても見上げることのできる大樹を見た。
「こうして余しかねないほどの何かを得て、こうして穏やかな時間を過ごせるのはとても幸せな事だと思う」
「ふふ、楽しい?」
 虹色帯びた翅を震わせて間近にフウリンがヘーゼルの瞳を細めるのに、クロムも餡子の詰まったタイヤキをひと齧り。ぱりり表面が音を立てたあと、ふんわりした甘い生地。
「ああ。馴染みのないものも含めて、なかなか面白い」
「ん……ここさっきも来たっけ……? あ。クロ──ムと、フウリン、だっけ。お誘い、ありがと」
 辿り着いたのはサキ。今彼女の手にあるのはトマトソースの掛かった腸詰肉串に、綿のようなふわふわの飴。
「……それ、いくつめだ?」
「えーと、まだ六つめかな。私、大食いだけど、早食いじゃないから。クロムはなにか、オススメの屋台見つけた?」
「あら、」
 そんなふたりのやりとりの向こうで、ベイメリアは広場の様子に瞬いた。話に聞いたとおり、確かに決まった動きもなくめいめいに踊る人々の姿。
「あれは、盆踊り、でございましょうか?」
「ボンオドリ? ベイメリア、あなた正しい舞いを知っているの?」
「ええと……正しい、と言うとわたくしも自信がございませんが……けれど、折角でございます。わたくしも混ぜていただきましょう。フウリンさまも、皆様も!」
 鮮やかに笑って駆け出した彼女の赤い浴衣の袖が泳いで、手を差し伸べる。
「ん、少し待ってくれ。……そうだ、あんたも食べないか」
「いいの? これはまだ食べてない」
──『幸せと思うものは分け合った方がいい、その方がたくさんになるでしょ』。
 そう言ったのは、誰だったか。微か睫毛を伏せたクロムの視界では、帯に挟まれた秋桜……白い花が揺れて。
 半分に割ったタイヤキの頭の方をサキに渡す。中にはたっぷりチョコレートクリームが詰め込まれていて、サキはありがたく口に運びながらベイメリアたちが溶け込んだ広場の踊りを見遣った。
 サキの脳裏に浮かぶのは、奉納の舞いの作法。それとは似ても似つかぬ広場の笑顔。
──……今日は、そういう仕事じゃないし、ね。
 小さく口許を緩める彼女たちをベイメリアが手招くから、「ああ、今行く」「私はこれを食べ切ってから」駆け出すクロムの背を、サキは見送る。
「こうして、こう……そう、そんな感じでございます!」
 フウリンが中空で飛びながら手や足の運びを学ぶのに、ベイメリアは両手を叩く。どんと空に上がる大輪の光の花が、祭に彩りを添える。
「フウリンさま、なんという、再現力でございましょう。わたくし感動致しました」
 ぱちりと瞬くヘーゼルに、彼女は心から告げた。
「素敵なお時間を、ありがとうございます」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

モモカ・エルフォード
【初会合】

リリーさんの浴衣はももが選んで着付けしたの♪
すごく似合ってて可愛いでしょ?
髪も結って光る秋桜を髪飾りに…ももとお揃い!
えあんさんも帯に刺した秋桜がいい感じよ?
うんっ もう仲良しなの♪
(ね?とリリーさんに笑いかけ

射的やりたいです!
(えあんさんに、りんご飴を預けて)
襲ってこない的なら当たるはず
えあんさんに、カレー味のカップ麺狙うの…!
ありがとう、でもももお姉さんだもんっ
リリーさんにも、くまさんのぬいを…っ

横で華麗な射撃の腕を見せるリリーさんにたじたじ…す、すごすぎるの…!

(リリーさんのからの戦利品を山と抱えて
…えあんさん、あとはよろしくなの;(タッチ
でも応援は平等に。どっちもふぁいとー!


エアン・エルフォード
【初会合】
モモカ呼称:もも
リリーとは顔馴染み
妻に合わせた浴衣で楽しむ

お、二人とも可愛いじゃないか
光る秋桜もなかなかいいね
さっきまで緊張していたようだけど、その様子なら安心したかな(笑って
じゃあ、行ってみる?

参拝した後は屋台巡り

へえ…射的も面白そうだ
せっかくだし、チャレンジしてみたら?
荷物は俺が預かろう
ちなみに、何を狙うの?
なるほど…巡り巡って俺の好きなものになっているが、いいか
側で見守りつつ

リリーは思った以上に上手いな…
勝負するなら、やってみよう
もも、選手交代
これは負けられないね
※勝敗お任せ

まあでも、二人の初顔合わせは成功だろうか
和やかな様子に内心安堵

うん、こちらこそ付き合ってくれてありがとう


リリー・ウェントワース
【初会合】

浴衣…不思議なお洋服ですね、もも様ありがとうございます
お揃い…昔、御主人様もこうしてリリーに色々と着せてくれました…とても、懐かしい気持ち
仲良し、嬉しいです(ぎこちなく微笑む)

射的、もも様は何か欲しいもの、ございませんか?
銃はそれなりに嗜んでおりますので、リリーが取って差し上げます(眼光鋭く銃を構える)
カレー味…折角ですから他の味も…!
…リリーの分、ですか?もも様はお優しいですね(嬉しげに)

あら、エアン様と交代ですか
それではどちらがもも様のお役に立てるか、勝負です

エンニチ、楽しいものですね…いえ、お二人と一緒だったから、でしょうか
今日はお誘いいただき、嬉しかったですわ…感謝いたします



●“初めて”のお祭り
 珊瑚色の袖を手に持ち上げて、リリー・ウェントワース(ミレナリィドールのシンフォニア・f34030)は金色の両目を瞬いた。
「浴衣……不思議なお洋服ですね」
 続いた石段を登るにも不便だとしか思えなかったその形は、けれど祭の場に辿り着いたならこれ以上相応しい格好もない、と感じられる不思議。
 もも様、ありがとうございます。無表情ながらも告げた彼女の結い上げた髪に光る秋桜に、モモカ・エルフォード(お昼ね羽根まくら・f34544)は同じく結い上げたふわふわなローズブラウンの髪に揺れる秋桜を示してにっこり笑う。
「これも、ももとお揃い!」
「お揃い……。昔、御主人様もこうしてリリーに色々と着せてくれました……とても、懐かしい気持ちです」
 秋桜に指先を触れて呟くリリーに、一歩遅れて石段を登り切ったエアン・エルフォード(Windermere・f34543)は祭の灯りに照らされたふたりを見て青い目を細めた。
「うん、二人とも可愛いじゃないか。光る秋桜もなかなかいいね」
「ふふ、リリーさんの浴衣はももが選んで着付けしたの♪ すごく似合ってるでしょ?」
 えあんさんも帯に差した秋桜がいい感じよ? 夫の姿を見つめる彼女と彼の浴衣は揃いの濃紺に流水。ももも似合ってる、と囁いて、エアンはちらとリリーを見た。
「さっきまで緊張していたようだけど、その様子なら安心したかな」
 モモカはエアンの夫であり、リリーはエアンの顔馴染み。彼女たちが共に行動するのは初めてのことだ。
「うんっ、もう仲良しなの♪」
 ね? と笑い掛けながらモモカはリリーの腕を抱く。リリーはぎこちなくも微笑んだ。
「仲良し、嬉しいです」
 ふたりの様子に安堵して、「じゃあ、行ってみる?」エアンは祭の中へといざなった。

 いくつかの屋台を巡ったとき、モモカがしゅぴっ、と指を指した。
「射的やりたいです!」
「へえ……面白そうだ。せっかくだし、チャレンジしてみたら?」
 荷物は預かろう、と告げる彼にモモカはいそいそと手にしていた林檎飴を預け、射的屋のおやじに声を掛け、単純な造りながらもしっかりとしたコルク銃を手にした。
「襲ってこない的なら当たるはず……!」
 射的銃とライフル銃はまるで構え方が違うのだけれど、真剣そのものの顔でモモカは的へ銃口を向ける。その隣に、リリーも並んだ。
「もも様はなにか欲しいもの、ございませんか? 銃はそれなりに嗜んでおりますので、リリーが取って差し上げます」
 モモカよりも背も年もちいさい彼女が鋭い眼光で銃口を構えるのに、暫時モモカはぽかんとしたけれど。にこッ、とモモカは笑い掛けた。
「ありがとう、でもももお姉さんだもんっ」
「ちなみに、何を狙うの?」
 林檎飴に金魚の袋も手にしたエアンがなに気なく問うのに、ふらふらする銃口でモモカが言う。
「えあんさんに、カレー味のカップ麺狙うの……!」
「カレー味……折角ですから、他の味も……!」
「なるほど」
 なぜか盛り上がるふたりの背後で、エアンは手にした串焼きをひと口。巡り巡って彼自身の好きなものが目的になっているが、まあいいだろう。
「それから、リリーさんにも、くまさんのぬいを……っ」
「……リリーの分、ですか? ……もも様はお優しいですね」

 ぱんっ、と小気味良い音がして、景品であるドラゴンジャーキーの箱が落ちた。得意げな顔をするでもなく次のコルクを銃身に詰めるリリーの横顔に、山と渡された景品を両手いっぱいに抱えたモモカは唖然。
「す、すごすぎるの……!」
「ああ、思った以上に上手いな……」
「……えあんさん、あとはよろしくなの」
「あら、エアン様と交代ですか。それではどちらがもも様のお役に立てるか、勝負です」
 きらと金色の瞳が輝くのに、エアンも軽く顎を上げた。「これは負けられないね」妻の役に立てるかどうかならばなおのこと。
「もも、選手交代」
 モモカから銃を受け取り、エアンは背筋を伸ばす。リリーも揺らがぬ表情で再び的へと向かう。
「どっちもふぁいとー!」
 平等な応援が飛ぶ中、ぱん、と軽い銃声が走った。

「ふふ、さすがえあんさんなのっ」
 腕にうさぎのぬいぐるみを抱えたモモカが破顔するのに、リリーもくまのぬいぐるみを抱えてこくりと肯く。
「エンニチ、楽しいものですね……いえ、お二人と一緒だったから、でしょうか」
 そんなふたりを横目に、エアンは小さく胸を撫で下ろす。
──まあでも、二人の初顔合わせは成功だろうか。
 そんな彼の想いを知ってか知らずか、リリーは足を止め、そしてふたりに向けて深々と頭を下げた。
「今日はお誘いいただき、嬉しかったですわ……感謝いたします」
「こちらこそ!」
「うん、こちらこそ付き合ってくれてありがとう」
 それと良ければ、これからも。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
クロト(f00472)と
2021浴衣で

秋の夜は長い、ゆるりと行こう
クロトが可愛い顔を…(いつも可愛い
揃いの秋桜を彼の帯へ飾り
…照れるのもお揃い
彼と手を繋げば、とても特別で幸せな時間

心得た、とカミサマに手を合わせ一礼
カミサマもどうか佳い夜を

高所でも冷えぬよう寄り添い
淋しいのは心苦しいが
彼がそう感じるのを愛おしく思う

さっき摘んでくれた花。
帯に挿した花の光が彼の眸に映り込み、咲くのを見る
一夜限りの花は儚いが
花とともにこの綺麗な瞳を、愛しい表情も、共に過ごす光景も一緒に
私はずっと憶えてる
さみしいけれど、さみしくない
少しだけ。すぐまた逢える
彼の頬に触れ、花と彼を瞳に収めて
重ねた唇の甘さ(餡子で)に笑った


クロト・ラトキエ
■浴衣2021
千之助(f00454)と

もう多くの方が登り切られましたかね。
光る秋桜一輪、千之助の帯へ。
そろっと視線を上向け、瞳で、揃いが良いな、と訴えてみたりして。
なだらかな階段。手でも繋いでみます?
…自分で言ってて照れるんですけど!

でも。
こうした祭の空気も、共に歩くのも…
嬉しいのは、楽しみだったのは本当で。
――少しの間だと、解っていても。

まずはカミサマにご挨拶。多分、ここ重要。
花火を見るなら高所も良いですね!
無茶振り(但しやる気)しつつ、飲み物と、タイヤキでも手に♪

少しの、間。
逢えない時間ばかりになるだけ、なのに。
…只の退屈を、淋しさに変えてしまった、
ひどい、ひと。
けど…
待ってる。
…頑張って



●堅香子
「もう多くの方が登り切られましたかね」
 静かでなだらかな階段に一歩を踏み締めながら、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は流星を思わせる桔梗色の浴衣の裾を揺らす。
「秋の夜は長い、ゆるりと行こう」
 特に不服気ではない彼の語調に小さく笑って佐那・千之助(火輪・f00454)は青碧の浴衣の肩を竦めた。当然クロトも「そうですね」と肯き、淡い黄色の秋桜を摘んだ。
 顔の前に掲げて、それから千之助の帯へと挟んだ。そうして覗き込む二藍の双眸。
──可愛い顔を……。
 まあいつも可愛いのだけれど。黙したまま千之助は迷うことなく淡く黄色に光灯る秋桜を手折った。
 これだろう、と揃いに帯に挟んでやれば、眼鏡の奥の深い青の瞳が和らぐ。それをまた可愛いと思う。
 それを知ってか知らずか、振り向いたクロトが手を差し出した。
「手でも繋いでみます?」
 自分で言ってて照れるんですけど! 赤い頬は目指す祭り提灯からの逆光で見えないといい……なんて思うけれど、足許には石灯籠もあるから難しいだろうか。
 彼の思い掛けぬ誘いに瞬き、頬に朱が昇ることすらお揃いだけれど、千之助は躊躇わず手を取った。絡めた指先は夜風の中でじんわりと熱を帯びていく。
 面映ゆくはあろうとも、特別で幸せな時間であることは間違いなく。
 こうした祭の空気も、夜道を浴衣で共に歩く……ただそれだけのことさえも。クロトにとって嬉しく、楽しみだったことは純然たる事実で。
──少しの間だと、解っていても。
 クロトは願う。
──ほんの少し翳る表情だけは、彼には見えませんように。

 傭兵という職業柄、神頼み、というものはしない性質だ。それでもその地の神に挨拶をすることは、
「多分、ここ重要」
「心得た」
 クロトにも察することができる伝統であるし、千之助もカミサマ──見果てぬほどの大樹へと手を合わせ一礼する。
 終えたならば楽しもうと屋台の光があかあかと照らす広場へと視線を巡らせ、千之助は大樹の幹へと掌を添えた。
「……カミサマもどうか佳い夜を」

 花火を見るなら高所も良いですね! と、嬉々としたクロトの無茶振りを叶えるため、彼らは雑踏から離れた樹の太い枝へ腰掛けた。カミサマとは比にはならないが、それでも成人男性ふたり乗ってもみしりとも言わないのだから、充分な大木だと言える。
 忍び寄る秋夜の気配から守るように身を寄せた千之助へ受け取っていた飲み物の片方を渡し、クロトは袋からタイヤキを一匹釣り上げて口へと運んだ。
 屋台の提灯よりも高い位置で、ぼぅと光るのは帯に差した秋桜。
 ふと、それがクロトの眸に映り込むのに気付いて──彼がこちらを見ているのを知る。その眸の語る感情も。
 そしてそれを知りつつ、彼がそう感じるのを愛おしく思う己はひとでなしだろうか。
──一夜限りの花は儚いが、この綺麗な瞳を、愛しい表情を。
 帯の秋桜をひと撫でして、千之助は困ったように笑って見せた。
「共に過ごす光景も一緒に、花と共に、私はずっと憶えてる」
 誓いのような言の葉にクロトは唇を引き結び、俯いて彼の青碧の浴衣を握った。
「少しの、間。逢えない時間ばかりになるだけ、なのに。……只の退屈を、淋しさに変えてしまった、」
 ひどい、ひと。
 ぽつり。クロトが落とした恨み言さえも可愛らしいと千之助は口許を緩める。「さみしいけれど、さみしくない」。
「少しだけ。すぐまた逢える」
 彼の頬に掌を滑らせて。
 どん、と身を震わす音と共に咲いた大輪の花火が夜を照らす。そ、と唇を離したなら、千之助はそこに残る餡の甘さに微笑んで見せる。クロトはただ、彼の懐へ額をぶつけた。
「……待ってる。──……頑張って」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セト・ボールドウィン
オズ(f01136)と

すげーな。みんな楽しそう
辺りをきょろきょろ
投げ輪の屋台だ。あれやってみるか

的を狙うのはわりと得意
何かいけそーな気がする
まっすぐ。よーく狙って…しゅっ!
うん。いい感じ

頑張れオズ!
あっ、いまの惜しい。もうちょっとだ
――やったやった!すごいじゃん
わーいって両手を挙げてハイタッチ


えっ、踊んの?
俺。あまりやったことないや…
ちょっと気後れしちゃう

でもオズの声が楽しそうに誘うから
差し出された手とオズの顔を交互に見る

ん-と…うん…よし、行こ!
オズの手をぎゅっと握って

今度は俺が、オズのを見よう見まね
くるっと回って…今度はジャンプ?
思いきり飛んだらオズと目を合わせて笑う
うん。すっごく楽しい!


オズ・ケストナー
セト(f16751)と

いろいろあるよっ
目を輝かせて

なげわ?
うん、やってみたいっ

しんけんなセトをわくわく見守る
わ、セトすごいっ
こう?
見よう見まねでえーいっ
あれ?もう一回っ

わ、はいったっ
向けられた掌に飛びつくみたいにハイタッチ
重なればうれしいきもちがふえるみたい

ね、セト。むこうでみんながおどってるよ
わたしたちもいこうっ

だいじょうぶ
うまくおどろうとしなくたっていいんだもの
たのしかったら、ぜんぶせいかいだよっ
セトに手を差し出して
取ってもらえた手があたたかい

ターンっ
シュネーもくるり
セトも、ほら花火の音にあわせて…ジャーンプっ
ふふ、たのしいねっ

わたしはおどるのがすきだから
セトが笑ってくれてとってもうれしい



●ココロオドルママ
 カミサマへの挨拶を終えたなら、早速セト・ボールドウィンは周囲の喧噪を見渡した。
「すげーな。みんな楽しそう」
 きらきらのキトンブルーでオズ・ケストナーも「いろいろあるよっ」とたくさん並んだ屋台群へと目移り、目移り。
 その中でもセトが興味を惹かれたのは、
「投げ輪の屋台だ。あれやってみるか」
「なげわ? うん、やってみたいっ」
 それがなにかは判らないけれど、優しいきみがそれを選ぶなら否定する理由なんてない。
 にゃんこの隠れた袖を捲り上げ、真剣な眼差しで投げ輪を手に、セトはひたと的を見据えた。彼はアーチャーだ。
「なんかいけそーな気がする。……まっすぐ。よーく狙って……」
 しゅ、と鋭く飛んだ輪は浅い放物線を描いて、そして遠くの的棒へと見事にイン!
「わ、セトすごいっ」
「うん。いい感じ」
 くるくるっと余韻を残して床に落ちた輪にはしゃいだオズへ、「さあ次はオズの番だ」セトは笑い掛ける。
「頑張れオズ!」
「よーし、わたしもっ。えっと、こう? えーいっ」
 見よう見まねで放った輪っかは、不安定に揺れながら飛んで、そして──「あれっ?」ぽてっ。
「あっ、いまの惜しい。もうちょっとだ」
「うんっ、もう一回っ」
 よぉく狙いを定めて、もう一度。今度は指先に引っ掛かることもなく放物線を描いて。
「わ、はいったっ」
「──やったやった! すごいじゃん!」
 掲げたセトの両掌に、飛びつくみたいにオズも両手をぱちんと打ちつける。うれしいきもちがふるえるみたいに、あたたかさが胸の内側に広がった。
 途中、ひとつのふわふわな綿飴をふたりで分けっこしながら「わ、ちょっとぱちぱちするのがはいってるねっ」「ほんとだ! 楽しいな」。賑やかな気配にオズが目を留めたのは、カミサマの前の広場。
「ね、セト。むこうでみんながおどってるよ。わたしたちもいこうっ」
「えっ、踊んの? 俺。あまりやったことないや……」
 彼の住まう隠れ里にはそういう風習はなかったのか、あるいは彼自身の性格か。躊躇うようにうろうろと泳ぐ若芽色の瞳に、けれどオズはにっこり笑った。
「だいじょうぶ。うまくおどろうとしなくたっていいんだもの」
 だって広場で踊る人々は本当にてんでばらばら。音楽だって花火の音であってないようなもの。それでもみんな、笑っている。
「たのしかったら、ぜんぶせいかいだよっ」
 差し伸べる、掌。
 セトはその掌と楽しそうなオズの顔とを交互に見て、ほんのちょっぴり眉を寄せて。「……うん……」小さく肯き、ぎゅっとその手を握った。
「よし、行こ!」
 広間の踊りの輪の中に駆け込んだなら、今度はセトが見よう見まね。
 彼の手をくいと掲げて、オズは笑う。
「ターンっ、次は花火の音にあわせて……ジャーンプっ」
「わ、わわっ?」
 天衣無縫なオズのリードに、セトは持前の反射神経で一緒にジャンプ! どぉん、と夜空に花火が咲いて、オズの肩で一緒にジャンプしているシュネーも含めて、みんなの顔がきらきらで。
「ふふ、たのしいねっ」
「うん。すっごく楽しい!」
 セトのぽかぽか笑顔に、オズはこっそり胸を撫で下ろす。たのしいのがすき。いっしょがすき。おどるのがすき。
 だからセトにも、のしいって思ってもらいたくて、ちょっぴり強引だったのは理解していたから。
──セトが笑ってくれて、よかったっ!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニーナ・アーベントロート
ロラン(f04258)と

人混みの中、はぐれないように手はしっかり握り
屋台が連なる賑やかな広場へ
祭囃子を聞いてたら、何だか楽しくなって
声も足取りもついつい弾んじゃう
たまにはおねーちゃんも、童心に返ろうかな

そういうわけで、一緒に金魚すくい付き合って?
赤、白、黒のかわいい子達が泳ぐ水面を注視
ポイが破れないように、そーっと…今だっ!
(結果はお任せで)
…あらら、ロランは怖がられちゃったか

えーっと、気を取り直してかき氷食べる?
選ぶのは王道に練乳掛けの苺味
甘くて酸っぱいちいさな雪山をしゃりしゃり味わって
んん~っ! キーンってするの分かっててもぱくぱく食べちゃうよね
色がついた舌を見せ合うように、何度も笑う


ロラン・ヒュッテンブレナー
おねえちゃん(f03448)とお祭りなの

美味しそうな食べ物のにおい
みんなの楽しそうな声と祭囃子

ぎゅっと繋いだ手を引っ張って、
ねぇねぇ、はやく、はやくおねえちゃん!
珍しくはしゃいじゃうの

金魚すくい?
どうやってするの?って、おねえちゃんのを見てみるの

次は、ぼくもやってみるの
金魚さん、逃げて行っちゃう…
集まってる方に行っても、やっぱり…
あ、狼の気配、感じ取ってるのかな?
(しゅーんとする)

ん、かき氷、食べよ?
氷を削るシャリシャリって音、なんだかいいよね
味はね、んー、おねえちゃんと同じのがいいな

冷たくて美味しいね?
はむはむはむはむっ、んーーー!(キーン)
びっくりしたの、と笑い合う



●めいっぱいの夏祭り
「お邪魔、しますっ」
 元気よくカミサマへの挨拶をしたなら、ロラン・ヒュッテンブレナーは姉の手を引いて祭の喧噪へと駆け出した。
 だってこの大きな耳に届くのはみんなの楽しそうな声と祭囃子。敢えて嗅がなくても鼻に届くのは美味しそうな食べ物のにおい。
「ねぇねぇ、はやく、はやくおねえちゃん!」
「ちょっとロラン、そんな引っ張らなくても……!」
 珍しくはしゃぐ弟の手をニーナ・アーベントロートはしっかりと握り締める。祭のひとの波の中で、はぐれてしまわないように。
 けれど。でも。
 ニーナの黄昏色の瞳も周りの歓喜にあてられて、次第にきらきら。足取りも軽く、跳ねるよう。
「たまにはおねーちゃんも、童心に返ろうかな。そういうわけで、一緒に金魚すくい付き合って?」
「もちろん! でも、……金魚すくい?」
 にっこり微笑んだ姉のお誘いをロランが断るはずもなく。意気揚々と出店の傍に近付いたロランは、くてりと首を傾げて今度は彼女に手を引かれて、ついていく。
 辿り着いたのは水を張った広く浅い水槽に、赤、白、黒のちいさな金魚たちが泳ぎ回っている場所。きょろきょろと視線を彷徨わせれば、早速ニーナも店の親父から受け取った丸い枠の中の白い紙を、こども達がきゃあきゃあと水の中に突っ込んでいる。
 真剣な、でも楽しそうに柔らかな笑み浮かべたニーナの横顔を、姿を、水槽の木枠に両手を揃えてロランは見つめる。
──ポイが破れないように、そーっと……、
「今だっ!」
 白い紙が水を切るように奔る。小さく水飛沫が散って、もう片方の手に備えていた水を溜めた椀の中に──ぽちゃんっ!
「わ、すごい! おねえちゃんすごいの!」
 赤橙の金魚が、そこには一匹移り住んでいた。
 かわいい弟に格好良いところを見せられたニーナはふふ、と胸を張る。ロランもやってみよ? うん、やってみるの。そんなやりとりのあと、ロランは甚平の袖を捲った。
「えいっ、……あれっ、」
「……」
「んしょっ、」
「……あらら、」
「み、みんな集まってるここなら……? ……う、ぅん……」
 掬っても掬っても、金魚はすいとポイの上から逃げおおせ、水ばかりを吸って重くなった紙は遂に破れて大きな穴が開いてしまった。しゅーん、と三角の耳が垂れ下がる。
「狼の気配、感じ取ってるのかな?」
「怖がられちゃったかな。え、えーっと、気を取り直して、かき氷食べる?」
「ん、食べよ?」
 親父にもらった袋の中にはさっきの赤橙と、ロランの奮闘の間にニーナが掬い上げた黒の金魚。二匹仲良く泳ぐ姿を見つめて微笑みながら、ふたりはかき氷の屋台の前へと足を進めた。
「氷を削るシャリシャリって音、なんだかいいよね」
 しょげていたはずの耳をご機嫌に動かし、ロランはきらきらと氷の欠片がカップに落ちるのを見つめる。
「あたしは王道に練乳掛けの苺かな。ロランは?」
「んー、おねえちゃんと同じのがいいな」
 今年の夏は、めいっぱいお揃いがいいの。そんな弟の言葉に、姉もついつい頬っぺたがゆるゆるで。
「冷たくて美味しいね? はむはむはむはむっ、」
 甘くて酸っぱいちょっぴり本格的な味を、薄い木のスプーンで口に運べば歯触りも楽しいから、ついつい、スプーンを動かす手が止まらない!
「んーーー!」
「んん~っ!」
 だからキーンって頭に響いたって、過ぎれば顔を見合わせてふたり、笑い合うのだ。
「びっくりしたの」
「分かっててもやっちゃうよねえ。あ、ロラン、舌見てみて」
「わ、真っ赤なの!」
 そんな些細なことさえ、大切な夏の思い出だから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
リュカ(f02586)と

リュカ、ドラゴンの串焼きだって
あれって本物かな
リュカ、わかる?
ふふ、なるほど。そうかもしれない。じゃあ折角だし食べてみよう
あの飴がけの果物も美味しそうだ
あれも買ってみようよ

射的を見つけてたらリュカの後ろを珍し気について行き
欲しいもの?
リュカの欲しいものがあったから、来たんじゃないのかい?
なるほど、じゃあ…あの辺りのお菓子を、どれか
見渡してふと見つけた小さな猫の人形
ねえあれ、自分で取ってみたいんだけど
銃を撃ったことないんだ
リュカ、コツとか教えて?
取れるかどうかは運次第かな

不思議と笑み零れる縁日
景品はあるのに当たりが出ないと噂のくじを引いてみたり
リュカと心ゆくまで遊び倒そう


リュカ・エンキアンサス
ディフお兄さんf05200と

ドラゴンの串焼きね
バッタ物のほうが俺としては面白い気がする
本物でも偽物でも、俺にはわからないけれど、なんとなく
毒でなきゃなんでも面白いし、美味しいよ
飴?いいよ。食べてみよう
他にも何点か購入して

後は、射的を見つけたら参加
…お兄さん、何か欲しいものない?
俺はない
無いけどこういうの見たら、ほら、やる気になる
言ってくれたら片っ端から撃ち落とすよ
自分で取るの?ん-、コツ?コツか…じゃあ、構え方から
あんまり人に教えないから、ちょっと難しいな

後は…あ、くじ引き
大当たりの目玉商品は絶対出ないっていう
よし、やってみよう。くじ全部買って…
(当たらなければ喜ぶ。当たればがっかりしたという



●無欲の欲望
「リュカ、ドラゴンの串焼きだって」
 指された黒いグローブの先を、リュカ・エンキアンサスは素直に見た。
「あれって本物かな。リュカ、わかる?」
 彼はアックス&ウィザーズを縦横無尽に旅していると言うから。ディフ・クラインが訊ねたなら、リュカはじっと店先で焼かれているそれを見つめる。
 ぱっと見は淡泊な鶏肉のようにも見える。ぢりぢりと炭火で焼かれ、甘辛いタレが燻ぶる焦げた匂いさえ美味しい──と誰かは言うだろう。
 リュカは変わり映えしない表情で告げた。
「バッタ物のほうが俺としては面白い気がする。本物でも偽物でも、俺にはわからないけれど、なんとなく」
 そして続けるのだ。
「毒でなきゃなんでも面白いし、美味しいよ」
 『美味しい』を、ニアリーイコールで『食べられる』と変換していそうな、素っ気なさで。
「ふふ、なるほど。そうかもしれない。じゃあ折角だし、食べてみよう」
 そんな友の言葉を、彼もまた素直に『面白い』と感じたのだろう。
 ディフは微笑浮かべ屋台の方へと歩みを勧め、途中の店先にいくつか並んで突き立ったつやつやの果実にも菫青石の双眸を瞬いた。
「あの飴がけの果物も美味しそうだ。あれも買ってみようよ」
「飴? いいよ。食べてみよう」
 手にした林檎丸ごとひとつを包み込んだ豪快な甘味は、ずっしりと重いが、そんなことでたじろぐリュカではない。
「お兄さん、これ食べ終えたらあの鉄板の上の麺みたいなの食べよう。それと──」
 そうして次々と屋台を制覇したリュカが次に目を留めたのは、
「……お兄さん、なにか欲しいものない?」
「欲しいもの?」
 彼の視線の先を見ると、棚にずらりとなにかが並び、少し距離を取った台から身を乗り出すように皆が楽しんでいるのは、射撃。否、射的。
 迷うことなく進むリュカにディフはついていく。
「リュカの欲しいものがあるから、やりたいんじゃないのかい?」
「俺は無い」
 今度はリュカの即答。
「無いけどこういうの見たら、ほら、やる気になる。言ってくれたら片っ端から撃ち落とすよ」
「なるほど」
 言われてみれば、心なしかそわそわしているだろうか。それが見知らぬ銃への好奇心なのか、あるいは銃使いとしての矜持からなのかは、ディフには判らない。
「じゃあ……あの辺りのお菓子を、どれか」
「了解。この銃、片手で持つのか。変な形。まあ、」
 コルクを銃身に詰めて、狙う。
「──支障はないけどね」
 学習力と情報収集力を遺憾なく発揮して、宣言通り次々と景品が棚から射ち落された。達人がやると妙技さえいともたやすく見える。ディフはくいとリュカの袖を引いた。
「ねえあれ、自分で取ってみたいんだけど、オレ、銃を撃ったことないんだ。リュカ、コツとか教えて?」
 彼が指した小さな猫の人形を一瞥して、「自分で取るの?」問う。そのサイズから、難易度の高さを測るともなく知る。
「んー、コツか……じゃあ、構え方から」
「うん、……こう?」
「ちょっと違う、もうちょっと、こう……あんまり人に教えないから、難しいな」
 慣れないなりに懸命に教えてくれるリュカへ、当のディフはおっとりと構えている。取れても取れなくても、運次第だ。

「あ、くじ引き。大当たりの目玉商品は絶対出ないっていう」
「景品はあるのに出ないのかい?」
「そう。よし、やってみよう」
 くじ全部買うと告げるリュカとそんなのだめだよとごねる親父とのやりとりを後ろで眺めながら、ディフは手の中の猫の人形を撫でる。
「ほらお兄さんも引いて」
 差し出される糸を引っ張って、結局親父を丸め込んだのだろう、また糸を引っ張る友を見て、また引いて。
 当たった、と目をまんまるにする彼に、また笑うのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
ペペル嬢(f26758)と
素敵な浴衣姿を拝ませてもらう約束
私も一昨年のものだが夜色に大輪の花が咲く浴衣を
似た色で、揃いのようだね
おや、飾りもかい?
はは、君の願いなら、聞き届けないとね
揃いに結び直して、これで良い?と小首傾げて

賑わっているようだし、はぐれないように手を繋いで
屋台や踊る光景を眺めながら一回り
和気藹々と楽しむ姿を想像しては微笑ましく
灯る花の彩りと、日ごと色を変える石を重ね描いて
君の幸せに貢献できるのなら、幸いだ

お姫様にお勧めするなら、宝石みたいなつやつや林檎飴
あるいは射的で私の雄姿をお見せしようか
繋いだ手を引いてゆるり踊るのも、楽しそう
お喋りしながら二人で選んで
縁日を満喫しつくそう

見つけた飴細工を一緒に覗いて
細かな細工が可愛らしいね
どの子も連れて帰りたいけど…
選ぶなら、猫と魚がいいな
君は猫を、私は魚を
今日の思い出にぴったりなふたつ
そうだね、全部というのは、難しい
物足りなくても、物寂しくても
ちゃんと、選ばないと
選んだふたつをそれぞれ抱えて
いつものように、指切り添えてまたねをしよう


ペペル・トーン
エンティちゃん(f00526)と
猫の国で仕立てた紫陽花の浴衣
得意気にくるりと回り微笑んで
浴衣姿の素敵な貴方の、揃いの言に心弾むも
でも、髪飾りが反対よと悪戯に
ね、飾りもお揃いにしたいわ

繋いだ手に添うまま、貴方の聞きたいお話を
和気藹々の言葉をもつこの花はゴースト達と私みたいよね
それでね、暗闇でも見えるよう花を灯したの
貴方がくれた空の欠片みたい
偶然でも、思えばより幸せで

浴衣は猫さんのお任せだけど
ねこのちゃんな貴方にお任せしたら
どこに連れていってくれるの?
少しの意地悪と期待を胸に

甘い宝石も、貴方の雄姿も見てみたいし
共に踊るのもきっとステキ
両手繋げば、今よりよく見えるもの

貴方がいる嬉しさは
暗い夜も眩しくて
手を離す帰路が近い程寂しいけど
離したくないと言う程我儘ではないの
だからとびきりのお土産を探すのよ

迷う視線の端
可愛らしい飴細工に惹かれ
猫に魚に、花も好き
兎と熊も…でも幽霊はいなくて
どれかを選ぶなら私もそれがいいわ
全部を選ぶのは…やっぱりダメよね
共に綻ぶ夜の中
甘い子達は2人分
結んだ小指に、約束を重ねて



●やくそく
 黒帯びた紺に、紫陽花模様。
 得意気にくるり回って見せて、ペペル・トーン(融解クリームソーダ・f26758)はにこりと微笑んだ。右側の髪に薄いヴェールのような絹が揺れる。
「似合う? エンティちゃん」
「ああ、よく似合っているよ。私の浴衣とも似た色で、揃いのようだね」
 素敵な浴衣姿を披露するという約束だったから。エンティ・シェア(欠片・f00526)の浴衣は深い紺地に、裾にゆくほど大輪の花が咲く。夜色に花火咲くかのような印象がふたり、同じだ。
「お揃い? ふふ。でも、髪飾りが反対よ?」
 悪戯気に彼女は両手を後ろで組んで、エンティの翠の瞳を覗き込んだ。鬼灯などが揺れる髪飾りは、彼の左側。
「ね、飾りもお揃いにしたいわ」
「おや、飾りもかい? ──はは、君の願いなら、聞き届けないとね」
 ちょっぴり驚いたエンティだったけれど、否やを告げる理由なんてどこにもない。緩やかな手付きで左を右に変えたなら、これで良い? と彼女の瞳に笑み返す。
「ええ、嬉しい」
 邪気なく破顔するペペルと並んで石段を上がったなら、想像以上に賑わう山上の祭りが広がっていた。
 はぐれないよう、手を繋ごうか。喜んで。すいと手を取り合ったなら、エンティの掌には手袋越しでもひんやりする彼女の温度が伝わって。
 石段上がるときも話していた猫の国での物語を、ペペルはきゅ、と繋いだ手を確かめるみたいに握りながら続ける。
「猫の国の仕立て屋さんで聞いたのだけど、この花には和気藹々の言葉を持つらしいの。まるでゴースト達と私みたいよね」
 ゴーストキャプテンたる彼女にはいつも死者の魂たちが寄り添っている。今日は姿を潜めているようだけれど、ペペルと“彼女たち”が和気藹々と楽しむ姿は、想像するに微笑ましい。エンティは口許を緩めて肯く。
 それでね、と彼女は己の髪を飾る花にそっと指先を触れた。
「暗闇でも見えるよう、花を灯したの。そうしたら、貴方がくれた空の欠片みたい」
 朝焼けから夜闇まで灯す石たち。偶然でも、それすら揃いと思えば胸が温かくなって、幸せで。
「君の幸せに貢献できるのなら、幸いだ」
 右目に掛かる髪をすこぅし退けてやりながら、エンティもあたたかな思いで微笑んだ。

 さあ、どこから巡る?
 賑やかな喧噪を見渡してエンティが問えば、ペペルは口許に指を添えて考えたあと、傍らの男を見上げた。
「浴衣は猫さんのお任せだけど。ねこちゃんな貴方にお任せしたら、どこに連れていってくれるの?」
 ちょっぴりの意地悪と膨れ上がる魔法の夜への期待に輝く色違いの双眸に、けれどエンティは少しも動じることなく胸に手を当てて恭しく告げた。
「お姫様にお勧めするなら、宝石みたいなつやつや林檎飴……あるいは射的で私の雄姿をお見せしようか」
 ゆるり踊るのも楽しそう、と彼が見遣るのは広場の方向。そこではいろんなひとたちが、好きなように躍っていた。
 彼の唄うような誘い文句に、ペペルはぱぁっと笑みを咲かせ、
「甘い宝石も、貴方の雄姿も見てみたいし、共に踊るのもきっとステキ」
 もう片方の手も取っったなら、ふたりは輪になった。
「こうして両手繋げば、今よりよく見えるもの!」
 頭ひとつ分以上低い位置の彼女の明るい表情に、それは素敵、とエンティも返して。
「ではどれもこれも楽しもうか、お姫様」
 すべて拾って満喫し尽くそうと、一度片手だけ離して歩き出す。まずは夜空に花咲くステージでステップを。つたなくてもいい、君と一緒なら。

 至近距離で笑い合って、甘い宝石の大きさに目をまんまるにして。射的の音に竦んだものの、射落とされた小さなリスのぬいぐるみを手に、ペペルは弾む足取りで祭りを行く。
 隣をみればすぐ視線が重なって、ん? と首を傾げてくれる貴方。
──貴方がいる嬉しさは、暗い夜も眩しいほど。
 夜空の花火が鮮やかになればなるほど、手を離す帰路が近付くようで寂しいけれど。
 離したくないと言うほど、我儘にもなれないから。
──だからとびきりのお土産を探すのよ。
 そんな想いを胸に秘めて、周囲を見回すペペルの視野に入ったのは、
「……あれはなぁに? エンティちゃん」
「飴細工、だね。覗いてみようか」
 出店の木枠に並んだ、棒の先端の動物や乗り物などなど。驚くほど精緻なものから、ほんの少し顔が歪んで愛嬌のある形になったそれまでさまざまだ。
「細かな細工が可愛らしいね」
「猫に、魚に、花もあるのね。花も好き。あ、見てエンティちゃん、兎と熊も……」
 でも、幽霊はいない。ちょっぴり俯いたペペルの想いは見て取ることはできたけれど、この出店はその場でリクエストして作ってくれるタイプのお店ではないようだから、仕方がない。
 ふむとエンティも並んだ飴細工たちをじっと見つめた。
「どの子も連れて帰りたいけど……。選ぶなら、猫と魚がいいな」
「全部を選ぶのは……やっぱりダメよね」
「そうだね、全部というのは、難しい。物足りなくても、物寂しくても、ちゃんと、選ばないと」
 空の容れものにみっつ全部つめこんだ男がそう言うのに、ペペルはなにか言いたげな視線を投げたけれど、結局言葉は呑み込んだ。
「どれかを選ぶなら私もそれがいいわ」
「うん、じゃあ君は猫を、私は魚を」
 今日の思い出にぴったりなふたつを。赤茶の丸くなる猫と、緑と水色帯びた魚の尾鰭は長く澄んで。
 はい、と猫のほうを差し出せば、彼女もありがとうと受け取って、頬を緩めた。
 とびきりのお土産。これで──繋いだ手を離しても、寂しくない。……きっと、しばらくは。
 石段を下りた別れ際、絡めた小指はいつもどおり。
「じゃあ、またね」
「ええ、またね」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
【犬好き】3人
見つけましたよ、トトさん
兄妹水入らずで一緒に遊びましょう!
まあ今回はオマケも一緒なのですがね

まずは言われた通りに大きな樹へ挨拶を
カミサマとやらにあまり興味はないですが、
縁日を楽しませて頂けるなら幾らでも挨拶しますとも

よし、それでは美味しいものを沢山買って、皆で花火を見るとしましょう
今宵はこのハレルヤが豪勢に奢って差し上げますよ
年下限定で!

おや、雨さんは縁日初体験でしたか
あれは金魚すくいですね
そうそう、救いを求めてもがく金魚達を助け出す遊戯です
あの網は救われずに死んでいった金魚達の魂を弔う為の道具ですよ
纏め髪に大量に挿して踊るのが本来の使い方です(平然と嘘を吐き)

お、これは美味そうな肉!片っ端から買っていきましょう
あと甘いのも欲しいですよね
あれ、奢って下さるんですか?
では遠慮なく!

しかし何やら元王子の様子がさっきからずっと奇妙ですよね…
ハァ?トトさんに告白するのはハレルヤよりいい男しか──(ここまで過激派)

…(ここからも過激派)
棺桶の中で着る装束は洋服と和服どっちがいいです?


三日月・雨
【犬好き】3人で参加

こんばんはトスカ、良い夜だな
こんなに華やかな女性が二人もいるのだ。男二人がオマケであろう
しっかりエスコートするがよい

まずは神様とやらに挨拶して、と

わたしもエンニチとやらは初めてなのだ
いい匂いのする所だ
あ、金魚がたくさんいるぞ。あれを救うのか? 救い出すのか?
あんなやわい網じゃ救えないのではないのか?
おお、なるほど晴夜(その顔を見て)
…嘘だな(根拠なく断言)

ところでレヴィはどうした、何かおとなしいな
お腹でもすいているのか?
そこのタコヤキでも買って皆で食べようか
…と言うまでもなく晴夜がやたらトスカに奢っているな
ほどほどにしとけよ
しかし思えばこの中でわたしが一番年上…
よし、師匠も何か皆にご馳走してやろう
タイヤキとか、どうだ?

レヴィの言葉に、後ろからケモミミを両手で引っ張る
お前はいい歳した大人になってまだそんなことを言うのか
そんなに巫女服が好きなら自分で着るがいい!
(ぺちぺちと背伸びをしてレヴィの後頭部を叩く)
トスカ、無視していい
それよりあのきれいな花火を愛でようではないか


レヴィアス・アークライト
【犬好き】3人
ミステリアスな孤高の一匹狼レヴィアスが知的クールに登場!
オマケではない!
今日は師匠とトスカとついでのハレルヤで遊ぼう

カミサマに挨拶をしてから、何故かトスカによそよそしくなるレヴィアス

美味しいものを食べてる時も、花火を見ている時もトスカをチラチラと見つめては、目が合うと目を逸らして照れている
まるで恋する乙女のよう

おとなしいレヴィアスは師匠にタイヤキを奢ってもらい、タコヤキとタイヤキって何か語呂似てね?とか思いながらもトスカへの想いを膨らませ

そしてトスカへの溢れる想いを止める事が出来ないレヴィアスは、遊んでいる途中で思いきって告白する

「トスカ!オレはキミの事が…」(ここまでシリアス)

(ここからコミカル)
「キミの事が…前から巫女服が似合うと思っていたんだ!」
(鞄から巫女服を取り出し、トスカに薦める)
「是非ともこの服を着てエンニチを楽しもう!きっと似合うから!」

(ぐいぐい行くも、師匠とハレルヤに阻まれ)

「師匠とハレルヤが怖い…助けて」

(ガクガクと震えながらトスカに助けを求める)



●(ここから御楽)
「見つけましたよ、トトさん。兄妹水入らずで一緒に遊びましょう!」
「、ハレ、──と、雨と、レヴィ」
「こんばんはトスカ、良い夜だな」
「ミステリアスな孤高の一匹狼レヴィアスが知的クールに登場!」
「……ええまあ、今回はオマケも一緒なのですがね」
 やれやれとかぶりを振る夏目・晴夜(不夜狼・f00145)を押しのけ、レヴィアス・アークライト(人狼のフォースナイト・f06238)がトスカ・ベリル(潮彩カランド・f20443)へと一歩踏み込む。
「オマケではない! 今日は師匠とトスカとついでのハレルヤで遊ぼう」
 そしてそのレヴィアスの衿を掴み、三日月・雨(月冴ゆ・f04591)が軽く息を吐く。
「こんなに華やかな女性が二人もいるのだ。男二人がオマケであろう。しっかりエスコートするがよい」
 誰がオマケですか先に言ったのそっちだろ、とやりあうのをまた衿首掴んで止める雨の姿に、トスカは笑った。
「ありがと、来てくれて嬉しい」
 やっぱりお祭りは、賑やかな方がいいから。

「まずは神様とやらに挨拶して、と」
 根元の傍に寄ればもう枝葉の先まで見えないほどの大樹の前で、雨は手を合わせて頭を下げる。それに晴夜とトスカも倣う。
「カミサマとやらにあまり興味はないですが、縁日を楽しませて頂けるなら幾らでも挨拶しますとも」
「ほらレヴィも挨拶しよ」
 きょろきょろと周囲を見回していたレヴィアスに声を掛けると、「あ、ああ」肩を跳ねさせた彼はぎこちなく手を合わせて大樹に頭を垂れた。
 それから四人は広場を通り、種々の出店の賑やかさを見渡す。白群の髪を指に掛けて雨は物珍し気に瞬いた。
「わたしもエンニチとやらは初めてなのだ。いい匂いのする所だ」
「おや、雨さんは縁日初体験でしたか」
「そうなんだ。じゃ、めいっぱい楽しも」
「元王子、どうしたんですか。行きますよ?」
「お、おう」
 彼女の手を引いて、トスカがぽっくり鳴らして行く。振り返った晴夜の声にレヴィアスは急いでそれを追った。
「あ、金魚がたくさんいるぞ」
「あれは金魚すくいですね」
 雨の目に留まったのは、水を張った広く浅い水槽にちいさな金魚が泳ぎ回っている出店。「金魚すくい……」晴夜の説明に彼女は瞬いて振り返り、そしてもう一度そこで遊んでいる子供たちを見た。
「あれを救うのか? 救い出すのか?」
 確かにあれでは水草もないし、息苦しいのかもしれない。そんな思いで真摯に告げる彼女に、晴夜はぴるりと耳を震わせ胸を張った。
「そうそう、救いを求めてもがく金魚たちを助け出す遊技です」
 そうなのか……と。雨は子供たちの様子を見つめ続ける。円形の輪に紙を貼ってあるだけのように見える網。見ていれば、どんどん破れていっている。
「あんなやわい網じゃ救えないのではないのか?」
「あの網は救われずに死んでいった金魚たちの魂を弔う為の道具ですよ」
「おお、なるほど──……」
「纏め髪に大量に挿して踊るのが本来の使い方です」
 感服して振り向いた雨の輝いていた瞳は、ドヤ顔の晴夜を見た途端、すっと色褪せた。
「……嘘だな」
「救おう。あの子たち」
 けれどトスカがしっかとふたりの袖を掴んだから。

「あー……袖がびしょびしょです」
 卯の花色の浴衣の袖を絞って零す晴夜に、雨が苦笑する。
「花火に気を取られたからだな。しかしレヴィに負けるとは」
「それはオレの人徳……金魚徳の賜物だな」
「ふふ、良かったね」
 レヴィの腕にぶら下がった透明な袋の中の金魚たちに顔を寄せてトスカが笑うのに、彼は微かに頬を染め、いたたまれない様子でさっ、と顔を逸らす。
 さっきからずっとそうだ。
 そして弟子の様子に気付かない師匠ではない。
「レヴィはどうした、何かおとなしいな。お腹でもすいているのか? そこのタコヤキでも買って皆で食べようか」
「よし、それでは美味しいものを沢山買って、改めてゆっくり花火を見るとしましょう。今宵はこのハレルヤが豪勢に奢って差し上げますよ!」
「あ、じゃあ苺飴──……」
「年下限定で! お、これは美味そうな肉! トトさんいかがですか?」
「え、それトスカだけじゃ」「え、いいの?」
「ええハレルヤは寛大なので! あ、綿飴もありますよ」
 片っ端から買っていきましょうとばかりにひょいひょい出店を回る晴夜に、雨は呆れ顔を隠さない。
「ほどほどにしとけよ……」
 微笑ましくはあるが、と。耳をしょんと下げているレヴィの背をぽんと叩きつつ、雨は思う。
──しかし思えばこの中でわたしが一番年上……。
「よし、師匠も何か皆にご馳走してやろう。タイヤキとか、どうだ?」
「あれ、奢って下さるんですか? 丁度甘いものが欲しいと思ってたんですよね! では遠慮なく!」
 そしてたくさんの食べ物を買い込んだなら、四人並んで少し小高くなっている場所へと腰を下ろす。どぉん、と上がる花火を、きらきらした目で見上げる雨とトスカ。
 その横でタイヤキを口に咥えた晴夜は、じっとタイヤキと見つめ合うレヴィアスを怪訝な目で見る。
「元王子、さっきから様子がずっと奇妙ですけど」
「……タコヤキとタイヤキって何か語呂似てね……?」
「は?」
 どぉん。どぉん。
 夜空に咲いた花に、人々の嬉しそうな顔が照らし出される。綺麗だね、と話す声が聴こえる。レヴィアスは──立ち上がった。
「は?」
 二度目の晴夜の声。雨とトスカも花火を背にしたレヴィアスをぽかんと見上げた。
 ぐ、とレヴィアスは息を呑んで。
 そして、吐き出す。
「トスカ! オレはキミの事が……!」
 まっすぐに目を見つめて。
 まんまるになる海の浅瀬色の瞳の傍で、「ハァ?」剣呑な声を出したのは当然のように晴夜だ。
「トトさんに告白するのはハレルヤよりいい男しか──」
「キミの事が……前から巫女服が似合うと思っていたんだ!」
 しゅばっ、と鞄から取り出された巫女服に、トスカの目が更にまんまるになる。
「是非ともこの服を着てエンニチを楽しもう! きっと似合うから! さあ!」
「……。棺桶の中で着る装束は洋服と和服どっちがいいです?」
 氷よりも冷ややかなアメジストと、冴え過ぎた月色の銀が彼を見る。雨の手が、弟子の獣耳を両手でぐいぐい引っ張った。
「お前はいい歳した大人になって、まだそんなことを言うのか!」
「いい痛い痛い、師匠、千切れる、取れる」
「そんなに巫女服が好きなら自分で着るがいい!」
 耳を離しても後頭部をぺちぺち叩き続ける雨と晴夜の背後に佇むニッキーくんがわきわきと指を動かすさまに、レヴィアスはがくがく震えてトスカへと手を伸ばした。
「と、トスカ……師匠とハレルヤが怖い……助けて」
「トスカ、無視していい」
 雨がぴしゃりと言って、そしてトスカは手を伸ばす──「え」晴夜がぎょっとして、雨も目を見開き、レヴィアスはぱぁ、と顔を輝かせ──。
「レヴィには預けられない」
 トスカはさっと彼の手首から金魚の泳ぐ袋を奪い取り、背を向けた。
「そんな!」
「よし」(ごしゃあ)(※音声のみでお送りします)
「それよりあのきれいな花火を改めて愛でようではないか」
「うん」
 そしてエンニチの空に、どぉんとまた眩いばかりの花が咲いた。

   (ここからも御楽)
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
【花結】
腕降りる君の指引き
大樹の神様に一礼を
序で、願わせて頂こう
『あの子を招けるように』

何せ射的は初めてのこと
銃の構えは見様見真似で
君の期待に添えるほど
格好良くと、あれるかな

藤の眸を気にしながらも
狙い定めるのは、真剣に
特賞たる犬のぬいぐるみ
君に贈ってみせたいもの

特賞の小さな的を狙い
捲る腕を伸ばし寄せて
斜め上に向け、唯々三発
そのたび、落胆零しつつ
重石が入っているよう?
当たれど落ちないねえ

ンン、一度交代しようか
重いから落とさないように
緩やかに銃を渡したなら
覚束無い様に、頬が緩み
――そんな君もかわいい

銃口が揺れるのならば
後ろから抱き、手を支え
確と狙えば君も成せるよ
やわらかに助言添えて
的が落ちれば感嘆の声

いいや、それは君の才さ
これは負けていられない
恋人として、何としてでも
終は《幸運》招かんとし、

――あっ、落ちた!
泣きの一回で転がる的に
重なる声で思わず燥いで

君抱く犬に妬けれども
願い叶えられたことも
己重ねてくれることも
胸の温もりゆくばかりで

ふふ、こちらこそ
素敵な我儘をありがとう
大樹にも、密か礼告げて


ティル・レーヴェ
【花結】
腕の中も幸せだけど
祭りは並び歩きたいもの
繋ぐ先導くあなたと大樹のもとで
我儘叶える優しい願いに綻んで

銃を構えるあなたが見たくて
景品は二の次だったけど
真白の大きな犬ぐるみが
愛しの姿と重なって
欲しくなってしまったの

狙う先見据えるあなたの姿は格好いい
浴衣姿も相俟ってくらりとする程
でもきっと彼にその自覚はなくて
――ずるい

彼ばかりの眸とて
今宵は弾の行方も
握り拳で見届けて
あーっ!当たったのに!

妾も?と交代に受け取る銃
わ、想像より重いのね
あなたは難なく持ってたのに
ヨイショと構えるも覚束無いわ

彼に支えられる頼もしさと
包まれる温かさに
熱持つ頬に首振って
助言に耳傾け真剣に

飛んだ弾は狙いを逸れて
あっ!と
流れる弾が偶然落とした花柄の的
わぁ、一輪挿しを頂けるよう
きっとあなたのくれた幸運ね

再び構える恋人を
祈るように見守って
わぁ!落ちた!
重なる声と共に抱きつきぴょんこ

あなたに似た子を
迎えられた事もだけれど
願いをひとつ、ふたつと
叶えてくれたのがなによりも
嬉しさと幸せを載せるよにぎうと抱え

えへへ、ありがとう
だいすき



●一喜一遊
 ねえ妾、あなたの銃を構える姿が見たいの。
 石段の途中で彼女──ティル・レーヴェが告げた言葉へ、ライラック・エアルオウルズが否定を唱える理由なんてあるはずもなくて。
 目的のお店は、石段を登ってすぐに見つけた。弾ける音と、歓声。
 棚にはずらりと的が並んでいて、その傍には景品の棚がある。お菓子やおもちゃの並ぶ中にひと際目を惹く存在。“特賞”と札のついたそれを見たとき、きゅ、と首に回された腕に力が篭もったのに、ライラックが気付かないわけもなく。
 それからふたりで大樹を見上げ、そしてティルは自らの足で歩くと彼に告げた。
「腕の中も幸せだけど、祭りは並び歩きたいもの」
 そっと耳許に囁き落とされたなら、仕方ないなと眦が緩むのを止められない。もちろん離しはしない。指引いて大樹──カミサマの前に並び立つ。
 お邪魔しますと、揃って一礼した際に、ライラックは願う。
──どうかあの子を招けるように。

「さあ……何せ射的は初めてのことだからね。君の期待に添えるほど格好良くと、あれるかな」
 出店の親父にコインを渡し、ライラックは苦笑しながら周囲の人々の見様見真似で射的銃を構えた。片手で構える上級者のようなひとも居れば、台に肘をついて安定を図る者もいる。
 片手なら距離は詰まるが、“特賞”の的はその名に恥じぬほど小さいから。
 ちらと恋人の藤の双眸を気に掛けつつ、ライラックは台に肘をつく方を選ぶ。
「あ……」
 その射線の先。ティルは彼の狙いに気付く。……言って、ないのに。ライラックは小さく笑みを刷く。
「あの犬のぬいぐるみ、君に贈ってみせたいもの」
 銃口の先には、大きくて真っ白で、もふもふで少し癖のある毛並の、犬のぬいぐるみ。
 猫の足跡ついた藤縞の浴衣の腕を捲って、片目を瞑る。
 その姿は、──格好いい。浴衣姿も相俟ってくらりとするほど。でもきっと、彼にその自覚はなくて。
「──ずるい」
 彼の集中を乱さぬ程度に、ちいさくちいさく、ティルは零した。

 二発、弾けるような空気音。
 コルクは飛んで、的のどこも掠ることなく過ぎる。その度、ティルの眸が忙しなく彼と音をした方とを行き来して、ライラックは悄然と肩を落とした。
 三度目の正直、と。
 いきたいところだったけれど。
「あーっ! 当たったのに!」
 いつしかぎぅと握り締めた両の拳を上下に振るうのに、的屋の親父は嬉しそう。それをライラックは横目で睨めつけてから「重石が入っているよう?」とティルの方を見て困ったように笑って見せる。
「ンン、一度交代しようか」
「妾も?」
「少し休憩したくてね。はい、重いから落とさないように」
「わ、本当。想像より重いのね。あなたは難なく持ってたのに」
 ヨイショと抱え込むようにして持ち上げる少女の姿に、張っていた緊張の糸が緩んで頬も緩む。
──そんな君もかわいい。
 台に乗せるのも爪先立ち、とは言わずとも、肘をつくには少々高いから。細い手で懸命に支える彼女を、後ろから包み込むようにしてライラックはティルの手へと掌を重ねる。
「さあ、支えてあげるから、君は狙いだけ定めて」
「……え、ええ」
「確と狙えば君も成せるよ」
 胸の裡から湧き上がるような頼もしさと、背に感じるぬくもりについつい頬に熱が昇るのを、ティルはふるふると顔を振って意識の外へ追いやって。
 き。
 引鉄を。引く。
 軽い空気の音と同時に、コルクが飛んだ。
「あっ!」「おお、」
 コルクはすっかり狙いの的を外れ、けれど花柄の的の角に当たり──それを落とした。
「わぁ、一輪挿しを頂けるよう。きっとあなたのくれた幸運ね」
 腕の中でくるんと身を翻し、見上げてくるティルの満面の笑みに、いいやとライラックは首を振る。
「それは君の才さ」
 そして、純粋に祝う気持ちが芽吹くと同時に、むくむくと頭をもたげる、自尊心。
──これは負けていられない。
 恋人として、なんとしても。
 再び銃を手にして、ライラックは構える。ひたと銃口を据えて。
 息を吸って、吐いて。
 ティルは両の手を組んで、祈るように見守る。
 き。──ぱんッ。
「──あっ、落ちた!」
「わぁ! 落ちた!」
 転がり落ちた小さな的に、思わずはしゃいで声を大きくしたライラックに、ティルが抱き付いてぴょんぴょんと跳びはねる。そんなふたりに、的屋の親父も満足気。

 射的の店を後にして、ライラックはちらと隣歩くティルを窺った。
 彼女は嬉しそうに、幸せそうに、ぎゅうと真白の犬のぬいぐるみを抱き締める。
「……ずるい」
 ぽつり、零した大人げない言葉に、「え?」振り仰ぐ彼女の視線からさっと顔を逸らし口許を片手で隠すライラック。
「いや、うん。君の願いを叶えられて良かったよ」
 明らかに誤魔化そうとするかわいらしい恋人の腕にそっとティルはしがみついて、下を向く。
「あのね。……ほんとは景品は二の次だったけど、この子の姿があなたの姿と重なって。欲しくなってしまったの」
 だから、と。
「あなたに似た子を迎えられた事もだけれど、願いをひとつ、ふたつと叶えてくれたのがなによりも、幸せ」
 顔を上げて咲った。
「えへへ、ありがとう。──だいすき」
「……ふふ。こちらこそ。素敵な我儘をありがとう」
 こどもっぽい感傷さえ溶かしてしまうくらいの、あまくあたたかい“温度”を胸に覚えつつ、こつりとライラックはティルに額を寄せた。

──ありがとう、カミサマ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト