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Intelligent Insect

#アポカリプスヘル #【Q】 #戦後 #賢い動物

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#【Q】
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#賢い動物


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 暗く、冷たい地下空間。
 人の手によって築かれながら、今や誰にも知られぬ、忘れられた施設。
 立ち並ぶのは、大小数多のカプセル群。それらの中に収まり眠るは、種々様々なる昆虫達──。



「──という、昆虫達の研究を行っていた施設に、今回は赴いて頂きたいのです」
 グリモアベースに集った猟兵達に、グリモア猟兵、愛天・真澄(愛神の使徒・f32265)が語るのは、アポカリプスヘルのとある廃都市の一角に存在する研究施設の話。
 その施設では、かつて虫や昆虫を用いた様々な研究や実験が行われていた。当初は虫達の持つ特性を、生活の向上や自然環境の改善などに活かそうとしていたこの施設だが。何ゆえに道を外れたのか、文明崩壊の直前においてこの施設で行われていたのは、昆虫を生体兵器として改造する等の生命倫理を違えた研究の数々。
「その中において、虫や昆虫に人間と同等の知性を与える、という研究も行われていました。世界崩壊と共に研究も中断され、開発されていた知性昆虫達もほぼ全てが死に絶えてしまいましたが──この施設に、それら知性昆虫達のプロトタイプというべき虫や昆虫達が、コールドスリープ状態で保管されていることが分かったのです」
 狂気の研究の産物とはいえ、生まれた命、それも己の生き方を考えられるだけの知性を具えた命。なれば解放し、各々の生を謳歌させてやりたい処ではあるが。
「ただ、彼らがこの世界で生きられるよう計らうには、中断されていた研究についてのデータを集め、解析する必要があります。それらを基に適切な処置を施さなければ、彼らを目覚めさせたところですぐ死んでしまう可能性もありますゆえ」
 即ち、この研究施設に残された資料から、知性昆虫に関する研究データを回収すること。それが此度の任務となる。
「施設に残る資料は、他にも沢山あります。昆虫兵器を始めとした別の研究に関するもの、施設運営そのものに関するもの、その他細々とした資料が雑多に集められてますので、目的の資料を探すのは大変かと思いますが……」
 どうやら、効率の良い資料の探し方を考えていく必要がありそうだ。
 そして、もう一つ問題があると真澄は言う。
「この施設の存在を知ったオブリビオンが、資料や昆虫達を狙って襲撃をかけてくる、という予知も見えました。皆さんには、このオブリビオンの撃退もお願いしたく思います」
 襲撃してくるオブリビオンは『『造命妃』ヴィーズリーベ』。生命を玩弄し改造・新生させることを快楽とする者。その気質を満たす玩具として、施設の知性昆虫達に目を付けたのだろう、と真澄は推測する。
「また、自ら生み出した改造生物を複数、手下として連れています。これらはユーベルコードこそ使わないもののそれなりに強靭で、またヴィーズリーベのユーベルコードで強化される場合もあります。性質も凶暴そのものですので、併せて排除して頂きたく」
 様々な意味で、此の場においてはとりわけ危険なオブリビオンだ。確実に殲滅するべきであろう。

「データの解析が完了すれば、知性昆虫の皆さんを解放することが可能となります。もしかしたら、その中から猟兵の力に目覚める個体も出てくるかもしれません」
 即ち、新たな仲間を得る機会とも言える。それでなくとも折角の命を、オブリビオンの狂える悦楽に供するような事態は避けねばならない。
 宜しくお願いします、と願う真澄の声に見送られ、猟兵達はかの研究施設へとグリモアの力以て転移してゆくのであった。


五条新一郎
 サンダー。
 五条です。

 さて今回は儀式魔術【Q】に基づく調査シナリオ。
 知性昆虫に関する研究資料を回収し、冷凍冬眠中の彼らを解放する道筋を整えに参りましょう。

●目的
 知性昆虫の研究資料の回収。

●舞台
 アポカリプスヘルのとある都市跡にある研究施設。
 地上部には研究室や実験場、資料庫などがあり、地下には知性昆虫達がコールドスリープしている保管庫が存在します。

●第一章
 資料の捜索を行う「冒険」です。
 書類などの物理媒体、データサーバー等の電子媒体、どちらにも目的の資料は存在し得ます。

●第二章
 知性昆虫や研究資料を狙ってきたオブリビオン『『造命妃』ヴィーズリーベ』との「ボス戦」です。

●プレイングについて
 第一章はOP公開と同時、第二章は章移行後断章を投稿しますのでそれ以降からプレイングを受け付けます。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
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第1章 日常 『研究資料回収』

POW   :    施設内をくまなく歩き回り、資料を探す

SPD   :    散乱した書類の中から目ぼしいものを探し出す

WIZ   :    施設に残されたコンピュータにアクセスする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに、昆虫さん達は被害者ですからねぇ。
頑張ってみますぅ。

【征境】を発動し『領域』を形成、半径Lvm内の構造を把握しますねぇ。
これで『隠し棚』等が有ればすぐにわかりますし、『各種資料の集積場所』も把握可能ですぅ。
『領域』内の物体の『操作』も可能ですから、『集積されている場所』に向かいつつ『明らかに違う品』等を省いたり、移動中の障害を取り除いておきましょう。
私は専門家では有りませんから、可能な限り回収して後程専門の方にお渡しし、判別していただく方が確実と思われますので、『FTS』の『亜空間倉庫』を利用して『可能性の有る資料』や『隠し棚の中身』等を一通り回収しておきますぅ。


アーネスト・シートン
蟲…蟲…ファーブル昆虫記の世界ですか…
今回も、毎度おなじみ小動物大騒乱使って、薬莢をネズミやリスに変身させて資料を【情報収集】【失せ物探し】【動物使い】【医術】で集めておきますね。
『あ、ネズミさんとかが、好物にしてるやつだー…あ、ぼくは、ドングリとか、木の実が好きなんだけどねー』

とりあえず、バナーくん。まー、いいんじゃないですか?わたくしとしては、虫なんてどうでもいいんですけど、この資料集めすれば、大型動物や海洋生物達も解放されることになりますし。
だから、ありとあらゆる資料を集めるのですよ。

まぁ、来襲するオブリビオンから資料を横取りされないために、頑張りましょう。
アドリブ歓迎



 グリモアベースからの転移を果たし、件の研究施設の前へと到着した猟兵達。
「ここが昆虫さん達の研究をしていた施設ですかぁ」
 所々に破損が見受けられるものの、倒壊の危険は無さそうだ。其を確かめ、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は安心したように頷く。
「蟲……蟲……ファーブル昆虫記の世界ですか……」
 かの施設にて行われていた研究を改めて認識し、アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は思わず、昆虫学の祖と言うべき学者の名を口にするが。
「……いえ、ここで行われていた研究を聞いたら激怒しそうですね、彼」
 少し考えてそう続ける。何しろグリモア猟兵の話によれば、この施設で行われていた研究は、昆虫を様々に改造して利用するという生命倫理を逸脱したものらしいのだから。
「確かに、昆虫さん達は被害者ですからねぇ」
 るこるもまた同意するように頷きながら応える。人間の都合、或いは欲望の求めるままに命を弄ばれ続けた昆虫達。その境遇を思えば、同情を禁じ得ないというものである。
「せめて、自由にはして差し上げたいものですねぇ」
 その研究の末に凍結保存されるに至った知性昆虫達。せめて彼らには自由を与えてやりたい、とるこるは手を握る。頑張ってみよう、と。
「そうですね。それじゃ、早速やっていくとしましょうか」
 アーネストも頷けば、研究施設の入口へと足を進めてゆく。るこるも彼に続き、そうして二人は施設の中へと足を踏み入れて。

 そして早速、倒れた棚や機材に行く手を阻まれる。
「中は酷いことになってましたねぇ」
「外観があの程度で済んでいたのが奇跡みたいなものですしね」
 尤も、二人とも特に動揺は無い。街自体が廃墟になっていたのを思えば、この程度はある意味想定内とも言えた。故に対応も速やかなもので。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『聖王の加護』をお与え下さいませ」
 るこるは己の奉ずる女神へと祈りを捧げる。すると、二人の前を塞いでいた棚や機材がひとりでに動き出し、部屋の隅へと元通り――と思われる形に収まってゆく。
 それは祈りを通して発現した、るこるのユーベルコードによる作用。以て半径115mに及ぶ範囲内の全てを掌握した彼女は、その意志で以て障害物を操作してみせたのだ。
「大自然の精霊よ、力を与え給え」
 アーネストは懐から幾つかの薬莢を取り出すと、それらへとユーベルコードを籠める。すると薬莢はたちどころにその姿を変えていき、やがて複数の鼠とリスと化してアーネストの足元へと飛び降りてゆく。
「さて、ではわたくしはこの辺りから順に調べていくとしましょうか」
 るこるによって通り道が確保された室内を歩みながら、アーネストが言う。その意志に応えるように、リスと鼠達が奥の部屋へと駆けてゆく。
「承知致しましたぁ。それでは、私は上の階を調べて参りますねぇ」
 るこるは応えて返し、付近の階段から上の階へと上がってゆく。両者、それぞれの手段で資料収集を開始してゆく。

 アーネストと彼の操る小動物達は、一階の奥の方にある研究室を捜索していた。リス達と鼠達がそれぞれに室内を探り、それっぽい書類や記録媒体を見つけ出しては次々と主の元へ持ち帰ってくる。
『あ、ネズミさんとかが、好物にしてるやつだー』
 何やら蜘蛛の写真が添付されたファイルを受け取った時、肩の辺りで声。尤も、その主をアーネストは知っている。バナーテイル、通称バナー。アーネストの相棒たるハイイロリスである。
「おや、バナーくん。そうですね、どうやらそのようです」
 対するアーネストは応えを返しつつも、ファイルの中の書類の中身を確かめる。どうやら無関係でもなさそうだ。
『それ持っていくんだー? 賢い虫についてのモノじゃないみたいだけど』
 バナーが不思議そうに言うのに対し、アーネストは微笑を以て応え。
「まー、いいんじゃないかと。わたくしとしては、虫なんてどうでもいいんですけど、この資料集めを進めれば、大型動物や海洋生物達も解放されることになりますし」
 続けての言葉は、昆虫そのものより、別の研究施設の資料と合わせてデータを解析することによる、同様に冷凍睡眠下にある大型動物などの解放を本命とする意志の表明。動物を愛好するアーネスト、そちらにこそ意志が向いている様子。
「ですので、少しでも関係ありそうなら全部収集していこうかと。バナーくんも、お願いしますね?」
 などと微笑みながら宣うアーネストであった。

 一方、上階に上ったるこる。ユーベルコードによってその構造は凡そ把握しているが、その中で気になった点を確かめるべく、彼女は上階へやって来たのだ。
「このお部屋ですねぇ」
 そして訪れたのは、研究室のひとつと思しき部屋。収められている資料は明らかに此度の目的のものではないが、るこるのユーベルコードは、その部屋に隠された要素を既に暴き出していた。
 壁に並ぶ、資料を収めた棚。その一つに手をかけ、横へと引っ張れば。棚が引っ張る動きに従って横へとスライドし、その先に隠されたもう一つの棚――大量のファイルが収められたそれの存在を露わとする。
「おお、さっき確かめた通りですねぇ。では――」
 ユーベルコードによって見出した通りの隠し棚の存在に頷いたるこる。その周囲に四基の宝玉が浮かび上がる。彼女の主武装たるフローティングユニットの一種であるが、無論戦闘の為のものではない。
 宝玉が輝き、そこから光線が射出され、棚の中のファイル群へと命中。すると光線を浴びたファイルが燃えるでも蒸発するでもなく、即座に消失していく。その効果は破壊ではなく転送。るこるが保有する亜空間の倉庫へと、命中したものを転送してゆく光線である。
 この手の研究に関しては門外漢のるこる、どの資料が研究に関係しているものであるかという厳密な精査は不可能。そのため、知識のある者に確認してもらうべく、可能性のある資料は全て回収する方針を取っているのだ。
 程なくして、隠し棚のファイル群全ての転送が完了。次なる資料を回収するべく、るこるは別の部屋へと向かってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
作業に入る前に保管庫を見物
「へぇ、こりゃ凄いな」
様々な種類の虫が眠りにつく様子を眺めて感嘆する
兵器にされるはずだったらしいが…意思疎通の出来る知能の高いこいつらが目覚めてくれれば、自然環境を取り戻すのに強力な味方になってくれる気がするぜ。破壊じゃなく再生の為に、力貸してくれよな
ポッド越しに虫達を撫でてから回収に向かう

資料はとりあえずまず集めて、そこから内容別にざっくり分類してみたらどうだ?
詳しく調べるのは後になるだろうが今のうちに大まかに分けておいた方が後々の助けになるだろ?
兵器開発やら施設の運営やらはよけて後回しだな。知性を与える手術のレポートとか、虫達の性能テストなんかは役に立ちそうだ



 研究施設の地下、冷凍睡眠状態の知性昆虫達が安置されている保管庫。
 緑色の非常灯だけが仄かに光り、低温低湿が保たれたその空間は、何処か静謐なる雰囲気を漂わせる。
 そんな保管庫の中、知性昆虫達の眠るポッドを収めたラックの前を、一人の猟兵が歩む。暗い保管庫の中でも映える金の髪を揺らし、レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)はポッドの中の昆虫達を眺める。
「へぇ、こりゃ凄いな」
 蝶やトンボ、カブトムシに蜂、カマキリ。昆虫ではないが蜘蛛やムカデ。様々な種類の昆虫達の眠りにつく様に、思わず感嘆の声が漏れる。
 事によっては兵器として改造される可能性もあっただろう昆虫達。だが兵器としての性能ではなく、知性と意志疎通能力を与えられた彼らに期待される役割は、恐らくは真逆。
(こいつらが目覚めてくれれば、自然環境を取り戻すのに強力な味方になってくれる気がするぜ)
 元より、自然環境や生態系の構築において、昆虫達の果たす役割は大きい。荒廃しきったアポカリプスヘルにおいても、恐らくその役割は変わらない筈だ。知性をも得た彼らならば尚の事。
「破壊じゃなくて再生の為に、力貸してくれよな」
 大型の蜂が収まったポッドの表面を撫でつつ、一声かけて。レテイシャは保管庫を出ていった。無論、本来の目的を果たす為だ。

「……さて」
 レテイシャが見渡す室内には、棚の中に、机の上にと雑多に散らばる資料と思しき書類の数々。この状態のまま吟味するのは如何にも効率が悪い。
「とりあえず、まずは集めてみるとすっか」
 呟き、レテイシャは棚の中のファイルを数冊纏めて引っ張り出す。かなり嵩張るそのファイル群だが、彼女の腕力ならば問題なく保持できる。そのまま、部屋の一角に置かれた空のデスクまで、ファイルを始め集めてきた資料を積み上げてゆく。
 そうして資料をまず集めてきたら、後は順に内容を吟味するのみだ。デスクの椅子に座ったレテイシャ、まずは資料の山の頂上に置かれた書類の束に目を通す。
「――年度予算編成……こいつは違ぇな」
 一番上の書類に目を通して、この束は違うと判断。デスクの片隅に置いておく。
「グラトニーアント改良計画第三案……こいつも違う、ってかこいつもここで作られたのか?」
 次に手に取ったファイルを開けば、最初に目についた一文を見て違うと判断する。内容そのものには興味はあるが、それは今調べることではない。
「実験昆虫IB-2046行動観察レポート……こいつか?」
 その次の数枚の書類は、何らかの実験に伴うレポートと見えた。これは要確認か。傍らに用意したケースに書類を収める。
「ふう、この調子でいけば何とかなるかね」
 内容を詳しく吟味していては、時間がいくらあっても足りない。故に、明らかに違うだろう資料のみを排除し、多少なりとも関連しそうな資料は全て持ち帰り、後から吟味する。それがレテイシャの定めた方針であった。
 その後も、手に取った資料を大まかに内容だけ確認し、関係の有無を判断して分類していったレテイシャ。その甲斐あって、資料の選り分けは非常にスムーズに進んだとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・シルバーマン
昆虫か…現在いる賢い動物よりも更に小さいが意思疎通できるのかのう…
ともあれ起こしてからでなければどうしようもあるまい。
科学技術については明るくないができる限り手伝わせて貰おう。

基本的に技術に詳しくないのでまずは施設の全容把握から。
地下の保管庫に通じる道を確認しつつそこから地上に向かう形で探索、マッピングを行う。
オブリビオンが狙ってくるなら防衛戦になるじゃろうしな。
資料については基本手当たり次第、図表等があり直観的にコールドスリープに関わっていそうな内容の紙媒体があるなら優先的に集め分類していこう。
機械は迂闊に触ると何が起こるか分からんからな、詳しいものに任せるがよい筈。

※アドリブ絡み等お任せ


マホルニア・ストブルフ
◇連携アドリブOK
知性昆虫か。この暗くなっているのはもう駄目なのね。――ああ、こちらはまだ電源ももっていそうだな。

先行している猟兵の後ろから、まだ無事な昆虫たちのカプセル、資料へと進んでいくよ。
アイテム【知覚端子】を操作してオブリビオンが来ないか周囲に気を配りつつ、私も資料を探そうか。
【情報収集】で昆虫たちの情報を収集。電子媒体があれば【ハッキング】を使用。
探すのは解放するために必要な処置と――あとは虫たちが共存できるか、既に兵器としてプログラムされていないか――などか。
このまま放置していても別の誰かに利用悪用されるかもしれないしな。うまいこと開放してやれるといいんだが。


モスキノフ・スティンガー
アドリブお任せだ!

俺も昆虫みてぇなモンだからな、親近感が沸いちまうぜェ
だが生体兵器なんて許せねェよなァ
解放されたら自由に生きてほしいもんだァ

こいつらの血を少し吸わせて貰えりゃ、当時の事が分かるだろうだけどよォ
それが原因で死んじまったら元も子もねェ
仕方ねェが地道に資料探しだなァ

随分と高度な機材を使ってたみてェだなァ
って事ァ、研究データも電子化されてンだろうよォ
そっちの方を当たってみるとするぜェ

よくもまぁ、こんだけの資料が残ってるモンだァ
全く関係ねェ資料も多いが、胸糞悪くなる内容のモンもありやがる
研究対象が虫だったせいか、自分が研究実験されてたような気がしてきちまうぜェ
早いとこ終わらせちまおうかァ



 知性昆虫のプロトタイプ達が眠る地下保管庫。緑色の非常灯のみを照明とする薄暗い空間を、三人の猟兵達が見て回る。
「――この暗くなっているのはもう駄目みたいね」
 昆虫達の眠るポッドの内側は青いライトに照らされているが、奥まった辺りの一角は上部の非常灯ごと光が落ちており、一際暗い闇に覆われている。うっすらと見える昆虫の姿が崩れかかっている様を確かめ、マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)は悼むように蒼白の瞳を閉じる。
「だなァ……生体兵器なンかじゃなく自由に生きて欲しいモンだったが、間に合わなかったか」
 無念そうな声で応えるのは、巨大な蚊を思わせる、なれど強靭さを感じさせる異形の巨躯。モスキノフ・スティンガー(迫りくる吸血刺咬・f35105)、蚊の遺伝子から生み出されたバイオモンスターである彼は、それ故に知性昆虫達に親近感を感じるらしく。このような場所で誰にも知られず生を終えた、彼らの境遇を思っているようであった。
「だが、他の区画はまだ電源も保っているようだ」
 モスキノフに頷きながらも、マホルニアは視線をその先のポッドに向ける。仄かに青い光が漏れるそれらは、恐らく未だ命ある昆虫達のものだろう。万一に備え、電気系統が分割されていたらしい。
「うむ、よくは分からぬが、恐らく生きてはおるじゃろう」
 マホルニアに応えるのは、しわがれた老人の声。胸元や襟足の巻き毛が狛犬じみた印象の老いた人狼、ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)である。科学技術にはあまり明るくない彼、それ故に確信を以て応えることはできないが、直感と希望的観測を以て言葉と成す。
「……しかし、現在いる賢い動物よりも更に小さいが、意志疎通できるのかのう……」
 一方、内心ではそんな危惧も抱いてはいた。何しろ此処に収まっている昆虫達は、いずれも人間の掌に乗る程の小ささなのだ。フェアリーよりも更に小さい。
「どうだろうな? 人間並みの知性というからには、何らかの手段で可能であってもおかしくはないが」
「俺に血を少し吸わせて貰えりゃ分かるかもしれねェが……それで死んじまったら元も子もねェよなァ」
 呟いたローに、マホルニアも己の見解を示す。態々人間並みの知性を持たせる以上、言語能力の習得に期待していた可能性はある。
 モスキノフは己の能力を活かしての調査を考えたが、安全な冷凍睡眠からの解放手段が見出せていない現状ではリスクが高すぎる、と自ら却下した。
「まあ、起こしてからでなければどうしようもなさそうじゃな」
 ローの結論に頷く二者。何はともあれ、資料を収集し解析する処からだ。保管庫を出て地上へと移動する三名――と、地上部への階段手前でローが足を止めた。
「どうした?」
 マホルニアが振り向き問えば、ローは片手の指で頬を掻きつつ、もう片手を懐へ差し入れる。取り出したのは紙とペン。
「技術関係はどうにも詳しくないのでな、先ずは施設の構造を把握しようと思うのじゃ」
 グリモア猟兵の予知する処によれば、この後オブリビオンの襲撃があるという。先の知性昆虫達を守ろうとするならば、敵の侵攻予測と迎撃地点の策定が必要になる。それがローの判断であった。
「なるほど、一理ある」
「そンなら俺らで資料探すとして、アンタは施設構造の把握ッつぅコトで行くとするかァ」
 その意図を理解し、同意を示すマホルニア。モスキノフも納得したように頷くと、両者は先に地上へと上がってゆく。

 後に残ったローは、現在己がいる保管庫前周辺の地形を紙に記した後、遅れて地上への階段を上がる。そこから自分達の進入経路を思い出し記していきつつ、其方へ向かう道の途で横を向けば、如何にも頑丈そうな鉄扉。行き道でも確認していた扉だが、何処へ通じているのだろうか。
 開いてみれば、その先には広々とした空間が存在していた。天井も高く、キャバリアでも余裕で入れそうな程だ。壁面は何か鋭いもので抉られた痕が幾つもあるが、穴が開くまでには至っておらず、壁の分厚さと頑丈さを窺わせる。兵器として改造された昆虫の性能試験用スペースだろうか。
「此処ならば、多少派手に暴れても周りに被害を出さずに済みそうかのう」
 オブリビオンが何処から侵入してくるかは分からないが、道中の道を幾つか封鎖すれば此処まで誘導することも可能だろうか。或いは正面のシャッターを開ければ良いかもしれない。いずれにせよ、迎撃地点としては有力候補と言える。
 そこから入口方面は事務所や応接室など、施設運営や外部と関わる目的の部屋が主のようだった。通路もあまり広いものではないので、戦闘には不向きかもしれない。
 入口までのマッピングを終え、ローは再び施設の奥側へと足を進めてゆく。地下保管庫へ通じる階段に隣接した上り階段を上がれば、其処はこの施設に勤めていた研究者達各々が持つ研究室が集まったエリアのようだった。
 規則正しく扉が並び、その内装も基本的には同一。マッピングする上では非常に楽な地形ではある。途中、棚の後ろの隠し棚が開放されていたり、棚の中のファイルが不自然に抜けていたりする部屋を見かけた。先行していた猟兵が資料を持ち出した後らしい。
 マッピングを終えると階段を降り、更に奥へ。この先は大規模な実験エリアらしい。窓からはかつて昆虫達の本来の生活環境を再現していた跡か、乾ききり朽ち果てた草木が幾つも散見された。
 実験室内へ足を踏み入れれば、様々な実験機械やコンピュータが幾つも並んでいるのが見える。ローには如何なる用途で用いる機械なのか思いもつかぬが、流石にこれらは専門知識を持つ者でなければ彼ならずとも理解はできないだろう。
 首を巡らせ、実験室内の様子を見回すロー。その一角に、マホルニアとモスキノフの姿を認めた。

 時間は少し巻き戻る。ローに先行すること約半刻程、実験室へとやって来た二人。
「しかしまァ、随分と高度な機材を使ってたみてェだなァ」
 今も残る実験機械の数々を見渡し、モスキノフは感嘆の声を漏らす。具体的にどのような用途かは分からないが、擁する技術の高度さは理解できる。
「この世界の本来の文明レベルの高さを実感するね。さて」
 マホルニアも同じく室内を見渡しながら応え――やがて視線を一点に留める。幾つかのコンピュータ群が並ぶ一角に。
「電子媒体があるなら、そこに資料が残っている可能性は高い。漁ってみるとしようか」
「だなァ、これだけ高度な機材があるンだ、電子化されたデータも多いだろうよォ」
 マホルニアの推測にモスキノフも同意し。其々コンピュータの前の座席につけば、電源を入れる。
 パスワードを突破しログインを果たせば、デスクトップを埋め尽くす幾つものフォルダがディスプレイ上に表示される。この中から目的の資料を探し出すのだ。
「よくもまぁ、こンだけの資料が残ってるモンだァ」
 驚くやら呆れるやら、といった声を漏らしつつ、モスキノフはひとつひとつ、研究に関連していそうなフォルダを開いて中身を確かめる。
「けれど関係のない資料も多いね。必要な情報は手早く探し出さないと」
 マホルニアは関連のありそうな語句を用いて検索をかけ、絞り込みを試みる。そうして検索にかかったファイルを確認していく流れだ。
 必要な情報は、冷凍睡眠解除の方法と、知性昆虫達の改造内容。意思疎通の可否や兵器としてプログラムされているか否か――人類との共存を考える上で知っておくべき情報だ。
 ファイル内容に目を通し、必要そうな情報を記録媒体へと移していき――そこでマホルニアは舌打ちの音を聞く。モスキノフのものだ。
「どうした?」
 調査が上手くいっていないのだろうか。問いを投げるマホルニアにモスキノフは応える。
「あぁ、何でもねェ。胸糞悪ィ実験内容のモンが色々あったモンでつい……な」
 研究実験の中には、昆虫の命を使い潰すような非道なものも少なくない。研究対象が虫であり己も虫に由来する力を持つモスキノフ、何処か実験対象たる昆虫達に感情移入しているようでもあった。
「ま、ンなコトぁどうでもいい、早いとこ終わらせちまおうかァ」
「そうするか」
 とはいえ本筋と直接関係のない話ではある。気を取り直して資料検索を再開するモスキノフに、マホルニアもまた深くは問わず作業に戻る。

 そして合流するロー。だが現状では両者の手伝いはできそうにない。機械に疎いロー、下手に触れば何が起こるかわからぬが故、コンピュータの調査は二人に任せることとした。
 そこで彼は、実験室の片隅にて保管されていた資料のもとへと向かい、これらの調査を行う。直感的にコールドスリープに関わっていそうな内容のものを集め、纏めてゆく。
 そうして、三者其々が資料収集を進めるうち。
「……来たか」
 不意に立ち上がるマホルニア。どうした、と問うモスキノフに頷けば。
「オブリビオンだ。ここに来る途中に展開しておいた知覚網に反応があった」
 それはマホルニアが事前に展開していた光学粒子とナノマシン群。これらによって敵の接近を早期に察知したのだ。
「オブリビオンならば、放置はできまい。迎撃に行こう」
 ローに応える二人、三者は実験室を出て駆け出してゆく。知性昆虫達を狙うオブリビオンを迎え撃つ為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『🌗『造命妃』ヴィーズリーベ』

POW   :    造命進化・完全生命
自身の身体部位ひとつを【自由自在】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD   :    造命創生・真化新種
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
WIZ   :    造命繁殖・侵食魔森
【槍を突き立てた地形】から【超高速で繁茂し戦場を覆い尽くす植物群】を放ち、【根や蔦での拘束、毒性の花粉や胞子の侵食】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギージスレーヴ・メーベルナッハです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「此処が昆虫の改造研究をしていた施設ですか」
 研究施設の入口前、かの施設の建物を見上げながら一人の女が呟く。白のボディスーツにコートを羽織った女の目には、何処か狂的な光が仄見える。
 何より、彼女に随うモノ達の異形の有様――二足歩行の獣とでも言うべきか、既存の如何なる生物にも当て嵌まらない異様な姿が、彼女の尋常の人類たるを否定する。
「昆虫兵器の開発、或いは知的昆虫の生育――どちらも大変興味深い。楽しいものが見れそうです」
 其処に収蔵されているだろう禁忌の研究の成果を思い、思わず舌舐めずりしてしまう程に。女は高揚している様子であった。
 彼女こそが『造命妃』ヴィーズリーベ、この施設を襲撃すると予知されていたオブリビオンである。

 早速とばかりに踏み込もうと試みる彼女だが、其処に施設内から猟兵達が次々姿を現した。警戒網を敷いていた猟兵がヴィーズリーベの接近を早期に察知したが故、こうして迎撃に出て来れたのだ。
「――猟兵。先を越されたということですか」
 その姿を認めて、ヴィーズリーベは尚も平然。彼らへ向けるその視線は、敵意以上に好奇心に満ちる。生命の埒外たる猟兵、その存在に対する興味とも見える。
「丁度良い。ここで何人か捕獲して、昆虫共々実験素材にするとしましょう」
 彼女の中では猟兵も、地下で眠る昆虫達も等価の存在。異端の好奇心を隠しもせず、何処か興奮さえ滲ませながら、ヴィーズリーベは身構える。応えるように、背後の異形獣らも戦闘態勢に移行する。
 かの敵達を打倒し、知的昆虫達を守りきるべし。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
興味を引かれるのは理解出来ますが、お譲りするわけには?

『FAS』を使用し飛行、『FMS』のバリアで全方位を覆いますねぇ。
そして『FGS』により周囲一帯に『重力波』を発生、造命妃の動きを抑えると共に【酷郭】を発動、『裁域』を形成しますぅ。
この場合、彼女の『変異』は「飛行」「遠距離攻撃」「守り」辺りでしょうかぁ?
「飛行」「遠距離」に対しては『FGS』で動きを制限、バリアと『裁域』の空間爆破で逸らしつつ[空中戦]の[カウンター]を狙いますぅ。
「守り」に対しては『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]を『裁域』の空間操作で一点集中、薄い部分を[部位破壊]しますねぇ。


モスキノフ・スティンガー
アドリブ連携歓迎だ!

チッ、俺達も実験素材にしようってかァ?
悪ィがそりゃァできねェ相談だなァ!

先に取り巻きの異形獣をなんとかした方が良さそうだなァ
ま、目的はそいつらの血だがよォ…取っ捕まえて吸血させて貰うぜェ

次々と吸血していくが、同時に得られる情報や記憶からある共通点に気づいちまう
こいつらも元は普通の生物だったのかァ…?
みんなあの女の犠牲者って所だなァ
こりゃァ、冬眠してる昆虫達を絶対渡すわけにはいかねェ

他の猟兵達が異形獣達を普通に倒しちまったら、こいつらの記憶や思いが永久に失われちまうなァ
しゃァねェ、ここは俺が取り巻きを引き受けてやるぜェ
たっぷり吸血してやるからなァ!



 ヴィーズリーベの前へ最初に現れた猟兵は二名。童顔且つ小柄ながら豊満極まる肢体を有する美少女と、蚊を思わせる身体特徴と強靭な印象の巨体を併せ持つ男。
「――チッ、俺達も実験素材にしようってかァ?」
 対峙した際の発言と、己の身へ向けられる無遠慮な視線。巨躯の男、モスキノフ・スティンガー(迫りくる吸血刺咬・f35105)は煩わしげに、或いは苛立たしげな声で唸る。
「ええ。見たところ蚊の遺伝子を有しているようですが、それでいてその巨体。如何なる経緯によってそのような姿となったか、大変興味深い」
 モスキノフに答える造命妃は、続いて豊満なる美少女――夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)へと視線を向ける。羞恥故か、ぷるぷると小さく震えるるこるの肢体。
「其方は――ふむ、電子生命体ですか。通常の生命とは諸々異なる処の多そうな生命、興味を惹かれる処」
 るこるがバーチャルキャラクターであることを見抜いたらしく、ヴィーズリーベの瞳に危険な光が灯る。その様子は間違いなく、彼女で凄惨なる実験を行おうと考えている有様。
「――わ、私達は兎も角、この地下の昆虫達……興味を惹かれるのは理解できますが、お譲りするわけにはいきませんでしょうかぁ」
 悍ましき視線に全く別種の震えを覚えつつも、るこるは確と真っ直ぐに、かの敵の眼を見返しつつ問いかける。
「いきませんとも。小さき肉体に高い知性を宿す昆虫、このようなものを見す見す見逃す理由など何処にもありません」
 薄笑みと共に答えるヴィーズリーベ、そして彼女より前に歩み出る、異形の獣人めいた生物群。尋常の生命たり得ぬことは明白。恐らく、ヴィーズリーベによって改造された生物であろう。
「知的昆虫達も貴方達も皆、我が知識の糧としてくれましょう!」
 続けてヴィーズリーベが宣言すると同時、我先と駆け出す異形獣達が猟兵達に殺到する。主の意思に従い、猟兵達を狂える実験に供さんとばかりに。
「悪ィがそりゃァできねェ相談だなァ!」
「お断りしますぅ!」
 無論、そのような行いを受け入れるわけにはいかない。其々に拒絶の意志を表明すると、モスキノフは獣達を見据えて身構え、るこるは背より生じたオーラの翼を以て舞い上がり、銀盤によって形作るバリアで身を覆う。
 るこるは更に動く。続いて展開するは十四本の錫杖群。造命妃らを包囲するかの如く配されたそれらが光を放てば、包囲の内に或る獣達の動きが目に見えて悪化する。
「ぐ……っ、これは、重力場ですか……」
 ヴィーズリーベもまた、生じた重圧に眉を顰める。だが、無論のこと只重力に捕らわれているだけではない。その片腕が鞭の如く変じ、振るわれれば。錫杖の一つへと命中し、これを破砕する。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その刑場の理をここに」
 然しるこるは冷静に、次なる手を繰り出す。奉ずる女神に祈りを捧げ、以てユーベルコードを発動。目に見える変化は無くも、効果は確実に生じている。この戦場の空間は、るこるの制御下に置かれたのである。

「ハッ、来やがったなァ! お前らの相手は俺だぜェ!」
 一方モスキノフは、重力場を抜けてきた異形の獣達を迎え撃つ。最初に飛び掛かってきたワニめいた頭部を持つ獣人を組み止めると、蚊のそれの如き口吻を首筋へと突き刺す。
 その体勢から行うのは、無論のこと吸血。蚊の最大の特性たるその能力は、モスキノフにも確と備わっているのだ。そして、吸い上げるのは血液だけではない。
 モスキノフの脳裏に、様々な風景や情報が流れ込んでくる。血液を介して、この獣の情報や記憶を読み取っているのだ。
「げぷっ、ご馳走さん。でもってさようなら、だぜェ!」
 大量に血を吸われ瀕死の獣人へ拳を叩き込み、以て首を弾き飛ばして止めとする。続いて襲いかかってきた、触手生物そのものの上半身を有する獣を組み合う。触手による締め付けに抗いつつ、口吻を太い触手へ突き刺し吸血開始。
(――あん? この記憶……?)
 血液と共に流れ込んでくる記憶。そこでモスキノフは気付く。先の獣人もこの獣も『明らかに今の状態では有り得ない記憶を有している』ことに。それはまるで、異形ならぬ真っ当な生物として生きていた時のような、穏やかな自然の風景。更に。
(……! 間違いねェ、こいつら……!)
 続けて流れてくる情報を認識すると共に確信する。この獣人達は生まれつきこのような姿だったのではない。元は真っ当な生物だったのが、改造された結果としてこうなった、と。即ち。
「――てめェ! こいつらもてめェに玩具にされた生き物だってのかァ!!」
 触手獣の血を吸い尽くし口吻を引き抜くと、激したように声を上げるモスキノフ。向ける先は当然、鞭と化した腕を振るい祭器の破壊を試みているヴィーズリーベだ。
「玩具とは人聞きの悪い。彼らは皆、私の『作品』です。生物として更なる進化と変化を試みる実験の成功例。より高次の生命へと至ったもの達です」
 だがヴィーズリーベは平然と答える。己の行為の正しきを疑わぬ悪辣。込み上げる、嫌悪混じりの怒り。そして、何より。
「――これで、はっきり分かったぜェ」
 確信を以て、モスキノフは言い切る。
「てめェに、地下の昆虫達は絶対渡せねェってなァ!!」
 吼えるや否や、迫りきていた異形獣へと掴みかかり、再度吸血。比較的人間に近いその生物から血液と共に吸い上げた記憶は――己に笑いかける、幼い子供達の姿。
「なんと愚昧な。知性を得るという進化を果たした昆虫達、我が手を介すれば更なる優れた生物へと進化できるでしょうに」
 呻くモスキノフに対し、ヴィーズリーベは伴う異形獣達の全てを彼へ向け差し向ける。十数体もの獣達が、一斉に彼を目掛け押し迫る。
「モスキノフさん、援護しますぅ!」
 其を確かめたるこる、己の武装たる浮遊砲台を向かわせ迎撃を試みるが。
「要らねェ! こいつらは俺一人で何とかするからなァ! お前さんはあの女を頼まァ!」
 モスキノフは敢えて其を拒む。あくまで己一人での対峙を選ぶ。何故ならば。
(こいつらの記憶や思い。引き継いでやれるのは……俺だけだからなァ)
 ただ倒すだけでは、異形獣達はただ怪物として倒されるのみ。元は真っ当な生物であった彼らを、その事実を確かとした上で倒せるのは、そうして生きた記憶を引き継げるのは。彼をおいて他に無いが故。
「さァ、かかってきやがれェ! 全員、俺がたっぷり血を吸ってやるからよォ!」
 故に、モスキノフは異形獣全てを迎え撃つ。肉体を裂かれ、打ち据えられながらも。可能な限り吸血を繰り返す。彼らの生きてきた記憶を、思いを、引き継いでいきながら。

「最早、我らを戒める重力はありません。後は、貴女だけです」
 重力制御ユニットの全てを破壊し尽くし、ヴィーズリーベは背より皮膜の翼を生やして飛翔。木製の槍を構え、狙うは無論上空のるこるだ。
「そのようですねぇ。ですが、負けは致しませんからぁ」
 なれどるこるはあくまで余裕を崩さぬ。己とヴィーズリーベの間の空間、そこへと意識を集中させれば、その直後。
「――ぐっ!? これは……!?」
 突如、ヴィーズリーベの真正面の空間から轟いた爆音。と同時に浴びせられる衝撃波。空間の爆発と言うべきその衝撃に、ヴィーズリーベはのけ反りながらよろめく。
「まだまだいきますよぉ!」
 そして、るこるが反撃に転じる。モスキノフの方から回した浮遊砲台群、それらの照準を一点に集中させて一斉砲撃開始。咄嗟に回避行動を取る造命妃だが、その身には着実に傷が積み重なっていく。
「くっ、ですがまだ……!」
 弾幕の嵐を突破したヴィーズリーベは、そのままるこるを目掛けて槍を構えて飛翔突撃を試みるが。
「いいえ、ここまでですぅ!」
 その動きもまた、るこるの計算通り。今度は彼女の在る位置へと力を流し込み、空間を爆破。怯んだ彼女を、狙い定めた浮遊砲台群からの砲撃が貫き、引き裂いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
◇アドリブ連携負傷OK

あれが造命妃か。趣味の悪いものも引き連れてご苦労なことだ。
知覚端子による【情報収集】で異形達の動向を伺いつつ、レヴィアスクで女を狙うよ。残していれば一番厄介そうだーーが、やはり妨害されるか。
拡張義体で防御、返し刃で【切断】。機器が多少削れても構わん、邪魔者には退いてもらおう。
実験素材?冗談を。

ヴィーズリーベ、生を弄ぶお前の理念は何だ?

――あらそう。残念。

命を軽視した研究でひり出され、その余波で家族を失った私が、何であれその答えを認知こそすれ満足する筈がない。

理解らないな。

最悪、他の猟兵攻撃に繋がるよう女の拘束はできるだろうか。
UCに吞まれて、その思想ごと潰れてしまえ。



 少なからぬ傷を負いながらも、ヴィーズリーベは立ち上がり、研究施設の入口へと視線を向ける。其処には、彼女を厳しい視線で見据える猟兵が一人。マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)である。
「――お前が造命妃か」
 視線は眼前の女に向けているが、その周辺で蠢く異形の獣達の存在もマホルニアは確と認識している。周辺に散布したナノマシンを介することで、彼女の知覚は大きく拡張されているのだ。
「趣味の悪いものも引き連れて、ご苦労なことだ」
 そうして視覚に認めた、獣達の悍ましき姿を踏まえれば。続けての言葉には怒りめいた熱が滲む。造命妃に向ける視線にも、また同じく。
「見てくれはよろしくないかもしれませんが。これもまた、生物の進化という命題における回答例の一つと言えるでしょう」
 当のヴィーズリーベの返答する間に、マホルニアは駆ける。その手には弓成りの両刃剣。瞬く間にヴィーズリーベの眼前へと迫り、横薙ぎの斬撃にて彼女を斬り裂かんと――
「そう、このように」
 だが造命妃はあくまでも平然と。目前へと滑り込んだ、竜派ドラゴニアンの出来損ないの如き蜥蜴人間が、その身の鱗で以てマホルニアの刃を止めたが故だ。
(やはり妨害されるか)
 なれどマホルニアも、獣達の動向は知覚端子を介し把握済。その上で、あわよくばと統率者を真っ先に狙った形。故に、妨害を受けるは想定内だ。
 蜥蜴人が振るう反撃の爪に、刃持たぬ拳を当てる。表面の皮膚が硬化し、昆虫の甲殻じみた形状となり、爪のみならずその手までをも弾いて蜥蜴人を崩す。後は喉を貫き仕留めるだけだ。
 其処へ更に、横合いから歪んだ角を振りかざす人型の獣が突っ込んでくる。マホルニア、角を腕で止めてそのまま上方へ弾き飛ばす。そのまま今一方の手の双刃で首を刎ねる。
 マホルニアは眉根を寄せる。展開した外骨格に傷。なれど損傷は覚悟の上だ。可能な限り素早く、この異形の獣達を退け、造命妃との戦に及ばんと――
「些か金属質に過ぎますが、面白い身体性能を持っておられるご様子で」
 そこへ不意に、当のヴィーズリーベが木槍を繰り出してくる。身を捻り直撃は避けたマホルニア、返しの刃で彼女の首筋を狙うも亀めいた獣兵に阻まれる。
「これ程の速度と膂力、色々と試してみたくなりますね。実験素材として――」
 亀兵の首を裂いたマホルニアの攻撃を認め、ヴィーズリーベの口元が歪む。なれどマホルニア、冗談に過ぎないと突っぱねて。
「ヴィーズリーベ、生を弄ぶお前の理念は何だ」
 構え直しながら問いかける。これ程までに命を、生を玩弄し、歪んだ生物を生み出し続ける理由とは、と。
「無論のこと。数多の生を生み出す事にて生命の神秘を解明し、且つ、より優れた生命を以て地を満たす理想の為に」
 さも当然とでも言うかの如く自慢げな表情でヴィーズリーベは語る。生命を逸脱せし者ならではと言えようか、実に身勝手なる回答である。
「あらそう。残念」
 其を受けたマホルニアの返答は、いっそ不気味なくらいに淡々と。其は、或いは高まりきった怒りの反転現象とも言える代物。
 生命を軽視した研究にて生み出され、その余波で家族も失った彼女。己と同じ境遇の存在を量産するような行為に対し、如何なる理由であろうと認識はできても納得など、ましてや満足などできよう筈もない。
「――理解らないな」
「―――!?」
 続けての一言と共に、ヴィーズリーベの周囲の空気が一変する。高まる重力、生ずる暗黒の特異点。即ち事象の地平線の発生。
「理解など、できようもないし、したくもない。命を弄り回す行為に、意味があるなどと」
 或いは、正当性、とも言い替えられようか。いずれにしても。
「その思想ごと、潰れてしまえ……!」
 発生する超重力、光さえ逃がさぬ暗黒が、命弄ぶ妃を押し潰しにかかってゆく。女は、悲鳴さえ上げられなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アーネスト・シートン
今回のこの施設を襲撃するのは、あなたですか?
表向きは人型…まぁ、人間型オブリビオンなんて、数多居る存在ですけどね。
虫はあまし好きじゃないですけど、ここの研究を悪用させるのは状況的にヤバイと思いますからね。
だから、止めさせて頂きますよ。

…私達も研究の素材? 失敬な。

あなたのような、命を軽んじる輩には、研究も素体も、一切渡しませんから!
では、今回のUC、三獣化で獣人体となっていきましょう。
まずは、狼の姿で襲撃しますが、左右にフットワークを活かしながら広範囲を攻撃して、敵の気を引いたら、チーターに転じて、敵の後ろを狙うような高速攻撃を行う。
もっとも、それでも、敵の防御が開かなかった時にはシロクマに転じて攻撃力を強化して熊爪で強引に吹き飛ばさせる。
「人型は相手にしにくいから、困るんですよね。アポカリプスヘルは、ヒャッハーとか、逆に分かりやすい人のほうが多かったのですけどね。」


ロー・シルバーマン
…こんな思想の輩にこの施設を渡す訳にはいかぬ。
哀れな犠牲者たちも含め終わらせねばな。
少しでもよい未来の為に。

距離を取りつつ走り回りアサルトライフルで牽制。
UC起動し生存本能のままに敵を撃ち抜いていく。
どの能力が優れているのかは知らぬが頭を潰されてはそう生きていられまい。
硬度強化で弾かれる場合は膝関節を狙い足を封じる…それが一番生き延びやすいだろう手段。
ある程度動ける敵の獣人たちの数が減ってきたら猟銃を準備。
ヴィーズリーベからできるだけ守りを引き剥がしたうえで猟銃に持ち替えて狙撃。
その奇襲で怯ませたら一気に走り懐に飛び込んで至近距離からありったけの銃弾をぶち込んで仕留める。

※アドリブ絡み等お任せ



「くっ、流石に強者揃いですね、猟兵……」
 全身を裂かれ潰され、如何にも重傷といった風の有様となりながらも、ヴィーズリーベは尚立ち上がる。
「しかし、それでこそ……データに価値が出るというもの……」
 猟兵達の、そして彼らが守ろうとする知性昆虫達の。変わらぬ執着で瞳をぎらつかせれば、傷が塞がり、砕けた骨が接合する。自己再生をしているというのか。
「自由自在な肉体変化が出来るとは聞いていましたが……成程、応用すれば自己再生も可能ということですね」
「とはいえ体力までは取り戻せんようだが……そこまでして尚、この施設に執着するか」
 その一連の様相を見据えるは、対峙する二人の猟兵。アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)がヴィーズリーベの再生能力を分析する一方、ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)は造命妃の体力が回復しきっていない事実を見抜く。傷は塞がれども体力回復は叶わぬということだ。
「無論です……この研究所に所在する知性昆虫も、あなた達の身柄も。確保し、あらゆる実験の素材として使い倒してくれましょう」
 ローの漏らした一言に、さも当然とばかりにヴィーズリーベは言い放つ。生命の価値を認めぬ、狂える研究者の論理。
「……私達も研究の素材とは失敬な」
 不快感を隠しもせぬアーネスト、なれどヴィーズリーベの発言を踏まえればその反応は至極当然と言える。
「――そんな思想の輩に、この施設を渡すわけにはゆかぬ」
 狛犬めいた狼の貌に渋面を浮かべ、ローもまたヴィーズリーベの思想に怒気を露わとする。
「ええ、虫はあまり好きではありませんが、悪用を許すなど言語道断」
 アーネストが知る範囲に限っても、この施設に残された研究資料はヴィーズリーベのような者の手に渡れば危険な事態になりかねない代物。彼女は確実に止める、その意志を固め、アーネストは身構える。
「いいえ、何としてもこの施設は頂きます。私のような者にこそ、この施設に眠る研究は活かされるべき」
 一方のヴィーズリーベは改めて施設を手に入れようという意志を見せ。木槍を構えれば、そこかしこから残る異形の獣達が姿を現す。彼女の実験の結果として生まれた、怪奇なる生物の群れ。
「否、お前はここまでじゃ。その、哀れなる犠牲者達共々な」
 そんな獣達に憐憫の視線を向けつつも、ローの意志は一つ。
「少しでもよい未来の為に……お前達は、ここで終わらせる」
「あなた達は、ここで止めさせてもらいます!」
 その意志を言葉とすればアーネストも同調し。以て、決戦の火蓋は落とされた。

「人の手の関わり無き野性の力を知るが良いでしょう! わたくし、獣化!」
 先手を取ったはアーネスト。駆け出したその身が急速変異、全身の着衣が毛皮に取って代わり、両の手からは鋭い鉤爪が生じ。頭部は精悍なる狼の顎と化す。ユーベルコードによる獣人化である。
 迎え撃つ異形獣の攻撃をステップにて躱すと共に、鉤爪生ずる手を大きく振るえば。真空の刃さえ生む速度と力が広範囲を薙ぎ払い、眼前の獣人以外の複数を斬り裂いてみせる。
 直撃を受けた獣は胴体を深く抉られ倒れ、その他の獣達も傷は深い。尚も反撃に転じようとしたところに、額を撃ち抜かれ次々に倒れてゆく。
 ローである。構えたアサルトライフルより放たれた弾丸が、狙い違わず彼らの額を的確に捉え、引導を渡してみせたのだ。
 仕留めきったローは、そこに何の感慨も見せることなく。そのまま淡々と次の獣を殲滅するべく走り出す。今の彼は、ユーベルコードによって励起した野性の生存本能のままに戦っている状態。生き延びる為には、弱い敵、弱った敵から確実に仕留めるべし。本能の命ずるままに、ローは引鉄を引き、傷ついた獣人達を次々と仕留めてゆく。
「獣人と獣人ですか。成程、私の合成獣にはない力を感じます。益々、あなた達を実験に使いたくなる」
 そんな彼らの戦いぶりを前としても、ヴィーズリーベの意志は変わることなく。発生せしめたユーベルコードが己の身を変形させ、獣人達を更なる異形へと変じせしめる。
 ヴィーズリーベを守る獣人群へと、ローの放つ銃弾が撃ち込まれる。だが銃弾はあたかも鋼鉄の壁に撃ち込んだかの如く弾かれる。ローの顔の皺が深まる。肉体を硬化せしめたか。
 そこへ人狼化したアーネストの鉤爪が襲う。力強き一撃は敵の獣人群にも確かなダメージを与えるが、然しやはり先よりは負傷が軽い。反撃にヴィーズリーベの鞭めいてしなる腕と、獣達の爪が襲う。回避を試みるも浅からぬ傷。
「くっ……ならば、別の手でいくまでです!」
 唸り叫ぶアーネストの肉体が更に変異。毛皮に斑めいた模様が浮かび、顔と尻尾の形が細くシャープな印象へと変化する。即ち、チーターの獣人へ。
 駆け出せば、最速の速力を持つことで知られるチーター故かその速度は先に比しても尚速く。瞬く間にヴィーズリーベとその兵団の間を走り抜け、反撃らしい反撃を許さぬ。
 気を取られた獣人達へと、ローのアサルトライフル弾が再度襲い来る。負傷していた者にはその傷口を押し開かんばかりの銃弾が叩き込まれ、負傷のない者に対しても膝や脹脛周りなどを撃ち抜き、無力化を図る。己より強いものと相対した際の為に用意された、獣の知恵。走り回るアーネストと撃ち抜くロー、即席の連携が敵群を着実に削り倒してゆく。
「成程、素晴らしい戦いぶりです……!」
 一体また一体と倒れてゆく獣達。それらと、敵対する獣人達とを見遣り、ヴィーズリーベは感嘆の声を上げる。これ程までの遣い手ならばと、更なる実験や研究に供することを考えていたようだが。
「貴方達、その命に代えても彼らを捉えるので――ぐっ!?」
 残る獣人達に指示を下しかけたその身が、呻きながら震える。胸元に、一際大きな赤黒が浮かぶ。アサルトライフルの弾丸ではない。その衝撃と威力にて、オブリビオンたる肉体にも確かな傷を刻み込み。
「――今じゃ!」
 ローは声を上げる。アサルトライフルに代わり携えた猟銃は、連射力こそ劣るがその威力は確か。そして走力を全開として、一気に距離を詰めにかかる。
「人型は相手にしづらいですが……!」
 アーネストも応え、造命妃の懐へと駆け込んでゆく。その身に更なる変化が生じる。毛皮の色が白く変じたかと思えば、筋肉量が一気に増大。その姿はまさしくシロクマの如し。
「―――!!?」
 ヴィーズリーベの身へ立て続けに撃ちこまれる弾丸。よろめく女を、シロクマの大きな鉤爪が襲う。大きく引き裂かれたことで全身から鮮血溢れ、そこに更なる銃弾が叩き込まれ。
「ぁ……が……」
 全身を引き裂かれ、ヴィーズリーベは最早呻くことしかできず。だが、瞳の狂的な好奇心は、些かばかりも衰えることなく。
「此度の私は、これまでですか……。後は、これからの私に、任せる、しか――」
 意味深ぶった台詞は皆まで言えず。額に銃弾を叩き込まれ、直後、シロクマの爪で首を刎ねられ。
 崩れた肉体も、何処か悟ったような顔も。『造命妃』ヴィーズリーベの姿は、それを最期に姿を失い、消え果てていったのである。



 その後も猟兵達による資料回収は続けられ。最終的には、電話帳数冊分はあろうかという膨大な資料がグリモアベースへと齎された。
 此度の知的昆虫達が目覚める日は、未だ目前という程のものではないだろうが。遠くはなさそうだ――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月27日


挿絵イラスト