漆黒に染まる空、動き出す帝国
●蒼い空と少女
どこまでも続く雲海。
雲海に浮かぶ無数の島の上空には、澄み渡る青空が広がっていた。
今年で17歳になるエマは空を見上げ、何度も読んだ『冒険譚』の一文を思い出す。
――この世界は冒険に満ちている。危険を顧みず、命を賭して世界に立ち向かえ、若人よ!
エマは5歳年上の兄とともに夢中になって読み、空を自由に駆け巡る冒険の旅に憧れた。
その兄はもうこの街にはいない。3年前に家出したのだ。彼女に「枷」を残して。
――父さんと母さんを頼む。エマには飛空艇技師の才能がある。店の跡継ぎはお前に任せたよ。
この街で生まれ、この街で死んでいく。エマはそんな味気のない人生をただ受け入れるしかなかった。
「こんなものを貰っても……わたしの人生には夢も希望もないよ」
兄が残した『希望の石』を握りしめながら、何度もつぶやいた言葉。
ペンダントにして肌身離さず持っているのは希望を求めているからなのだろう。
いつか誰かがわたしを「枷」から解き放ち、大空への旅に導いてくれる。そんな淡い希望を……。
――奴らが来ます。すぐに旅立ちの準備を整えなさい! あなたはここにいても災禍をもたらすだけなのです!
唐突に頭に響いたのは、切迫した女性の声。
それはことあるごとにエマに語りかけてくる「心の声」だった。
あなたの人生はそれでいいのですか?
このまま一生この街で過ごすつもりなのですか?
あなたの心は既に決まっているはず。
迷う必要はありません。心のままに決断するのです。
諦めた夢を再燃させる言葉の数々。それは自分の願望が生み出した「心の声」なのだろう。エマは「彼女」のことを、そう認識していた。
しかし、今回のは流石に意味がわからない。
「災禍? そもそも奴らって誰なの!」
エマは「心の声」に向かって疑問を呈する。
――神聖ザストリア帝国。この世界を滅ぼす邪悪な存在です。
返ってきたのは聞いたことのない国の名前だった。
それはエマが住む港湾都市ヴァルトリーにこれからやってくる未曾有の危機の予兆だったのである。
●グリモアベース
「皆さん、屍人帝国の襲来を予知しました。今すぐブルーアルカディアに向かってください!」
紡木原・慄(f32493)は、招集に応じてくれた猟兵たちに依頼の説明を始める。
屍人帝国が襲来するのは、鉱物資源が豊富な辺境の浮島・ドゥルガルの西端にある港湾都市ヴァルトリー。
予知によると、真っ黒なガンシップ(機銃を備えた小型戦闘飛空艇)に乗った屍人帝国の軍勢が大量に押し寄せ、港湾都市は壊滅してしまうという。
「敵は『神聖ザストリア帝国』の先発隊と名乗っています。勇士や街の自警団、義勇兵たちが応戦しましたが、圧倒的な機動力で攻めてくる敵軍に完全敗北。そのまま帝国の魔道士が召喚した巨大魔獣に港湾都市は蹂躙されることに……」
先発隊は、子供のような容姿をしたオブリビオン。
漆黒に塗装された流線型のボディに飾り程度の小さな翼と尾翼がついた『鴉零式』というガンシップに乗っている。
天使核エンジンを搭載するガンシップは弾数無制限の機銃とミサイルを装備し、機動性に優れているため、こちらの攻撃をスイスイと避けながら、集団で包囲攻撃をしかけてくるという。
「見た目は子供ですが、常に3機以上で編隊を組み、数的有利を確保しながら狡猾に立ち回る侮れない相手。大空を自在に飛び回るので、地上からの砲撃では効果が薄いでしょう。必然的に今回は空中戦を挑むことになりますね」
飛べない場合には飛行手段の確保が必要だが、幸い、港湾都市では多数の飛空艇ショップが営業している。
迎撃のために義勇兵も募っているので、参戦を申し出ればガンシップを現地調達することができるだろう。
「今回は迎撃に出ている勇士たちとともに戦うことになります。彼らの安全確保も忘れないでくださいね」
夢と冒険の世界に陰惨な結末は似合わない。
人々の「物語」をハッピーエンドに導くのも私たちの使命なのだと、慄は大真面目に持論を語ると、猟兵たちをブルーアルカディアの港湾都市へと送り出すのだった。
刈井留羽
こんにちは。刈井留羽です。お忙しい中、お越しくださってありがとうございます。
今回はブルーアルカディアを舞台にしたシナリオの第一弾です。
戦闘の舞台は、浮島『ドゥルガル』の上空です。第一章(集団戦)、第二章(ボス戦)ともに、港湾都市への襲撃を阻止するための空中戦となります。
飛行手段をお持ちでない場合には、動物型戦闘飛空艇(ガンシップ)の『レッド・ラビット(1〜2人乗り)』を貸してもらえます。
レッドラビットは敵のガンシップと同等の機動性・運動性を持ち、機銃のみを装備しています。
※レンタルする場合にはプレイングの最初に☆マークをお願いします。
なお、今シナリオでは大型飛空艇を駆る勇士(港湾都市の自警団・義勇兵)も出撃しているので、彼らとの共闘となります。
このため、以下の2パターンでの戦闘が可能です。
①前衛で敵軍を迎え撃ち、敵を殲滅する。(猟兵単独・猟兵同士の連携で戦う)
②後衛で勇士の大型飛空艇を守りながら戦う。(勇士の大型飛空艇に同乗も可能)
勇士の大型飛空艇は砲撃で援護するとともに、周囲にガンシップの軍勢(機体は量産機のブルー・ラビット)を展開して敵軍と戦います。彼らは歴戦の猛者ですが、屍人帝国の手強さを知っているので、作戦を提案すれば協力してくれます。
第三章は港湾都市での自由行動となります。
観光、買い物、食事、情報収集、NPCとの交流などを自由に行えます。
詳細は第三章の断章で描写します。
今シナリオではすべての章でプレイング受付開始前に断章を執筆します。断章投稿までお待ちください。
プレイング受付状況はタグをご参照ください。それでは皆様のプレイングを心よりお待ちしています!!
第1章 集団戦
『バッドスクワイア・スクワッド』
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POW : 「ターゲットローック!」「いっせいはっしゃー!」
【照準】を向けた対象に、【戦闘飛空艇からのミサイル一斉発射】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 「囲め囲めー!」「追えー!」「落とせ落とせー!」
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【機銃斉射】で包囲攻撃する。
WIZ : 「弱い者イジメはたまんねーぜ!」「逃がすなー!」
敵より【自分たちの数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●神聖ザストリア帝国の巨大飛空艇
辺境の浮島ドゥルガルの東の空域に、神聖ザストリア帝国の巨大飛空艇が突如として出現する。
船の内部では、子供のような容姿をした先発隊『バッドスクワイア・スクワッド』が急襲用戦闘飛空艇『鴉零式』の前で、それぞれ出撃の準備していた。
「キャキャキャ! 人間どもを皆殺しにしてやるぜ!」
「どのチームが敵を一番多く撃墜できるか、勝負しようぜ!」
「それいいな。優勝チームは一週間王様待遇な! お前らパシらせてやるから覚悟しておけよ!」
楽勝とばかりに軽口を叩き合う悪ガキたち。
すると、彼らの頭上から感情を微塵も感じさせぬ冷淡な声が降ってくる。
――浮ついた気分では困りますね。あなたたちには重要な任務が与えられているのですよ。
それは帝国幹部の魔道士の声だった。場の空気が瞬時に凍りつき、静まり返る。
――任務は港湾都市ヴァルトリーにある核(コア)を回収することです。邪魔な住民は皆殺しにしても構いませんが、任務をおろそかにすることは許しませんよ。
「「「イエッサー!!」」」
背筋を伸ばし、一斉に敬礼をするバッドスクワイア・スクワッド。
帝国魔道士は満足げにうなずくと、先発隊を送り出す。
――それでは行きなさい。神聖ザストリア帝国の栄光を取り戻すのです。
淡々と述べるその声は、異様なほど空疎に響くのだった。
●港湾都市ヴァルトリー
辺境の浮島ドゥルガルの西端に築かれた港湾都市ヴァルトリー。
豊富な鉱物資源を活用した造船業で栄えるこの街は、大空を自由に駆け巡る勇士たちでいつも賑わっていた。
勇士たちの大型飛空艇が入港するのは、街の西岸に整備された大規模な港湾施設。
港湾施設を取り巻くように四角い箱のような灰色の建物が密集し、その間を縫うように整備された道幅の広い街路を、つなぎ姿の男たちが忙しげに行き来している。
そこは造船を基幹産業とする港湾都市ヴァルトリーの工業地区だった。
四角い建物は骨組みや外壁を金属で補強され、屋上に小型飛空艇の発着場を備えた造船所の関連施設である。
そして、工業地区の片隅にある小型飛空艇ショップ『Peaceful Sky』。
この店の長女・エマは、小型飛空艇が数多く停泊する店舗兼整備場の屋上にいた。
青空を背景に、街の上空を輸送用小型飛空艇が働き蜂のように飛び交う日常風景。
彼女はそれをぼんやりと見つめながら、物思いに耽っていたのである。
「はぁ……わたし、本格的におかしくなってきたみたい……そろそろ仕事に戻ろうかな……」
うんざりしたようにつぶやくエマ。すると、突然、警報音が街中に響き渡る。
音の方向に視線を向けると、島の外縁に点在する監視塔からの情報伝達を担う「高速小型飛空艇」が全速力で飛んでいた。
――島の東、およそ2km先に、500を超える敵影を発見! 屍人帝国のガンシップと推定されます! 今すぐ迎撃態勢を整えてください!
「まさか……」
幻聴のことを思い出して絶句するエマ。
すると、屋上に小型戦闘飛空艇(ガンシップ)を停泊させていた一人の男(?)が駆け上がってくる。
それは勇士の飛空艇『ラブリー・ピジョン』の船長のドミニクだった。
「ドミニクさん!」
「アタシたちが飛空艇で先陣を切るわ! アナタは義勇兵たちにガンシップを貸してあげて!」
ドミニクはピンク色に塗装されたファンシーなガンシップに乗り込みながら、動揺するエマに指示を出す。
「はい!」
絶対に大丈夫。港湾都市には、百戦錬磨の勇士や自警団がいるんだから。
今はわたしができることを精一杯しよう。
不安な気持ちを押し込め、自分を鼓舞しながらエマはガンシップの整備に向かう。
しかし、この日、エマたちは、屍人帝国にすべてを奪われることになる。
この悲惨な結末を変えることができるのは猟兵たちだけなのだった――。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
シチュエーション:②
くっ、こいつら…数的有利な状況を最大限に利用して仕掛けて来るのかっ!
かなり難儀な相手だな…
飛空艇を守りながらの戦いだけどなんとかこの場を凌がなきゃ…
俺自身はなんとかなるかもしれないけど、飛空艇と勇士の命が掛かってるんだ
その最悪な事態を頭に浮かべた事で恐怖感を抱き防衛衝動を発動させる
分身たち、すまない力を借りるよ
半分は飛空艇の防衛に【オーラ防御】を纏わせた結界を【結界術】で形成
半分は俺と勇士と共に護符による遠距離攻撃で応戦だ!
俺達は飛翔衣を纏えば【空中戦】も可能だ、最悪遊撃にも出る事が出来る
皆で連携してこの場を乗り切るぞ!誰一人欠けさせてなるものかっ!
水無月・ゆえと
☆
連携・アドリブ歓迎
ブルーアルカディア!初めて訪れる世界ですねぇ。飛空艇ってワクワクします。っと、今回は都市への攻撃を防ぐのが目的でしたね。浮かれ過ぎないように気を付けていきましょうか~。
身のこなしには自信がありますけど、羽は無いのでレッド・ラビットを借りて参戦ですっ。うさぎ繋がりで、なんだか愛着が湧く機体ですねぇ。
[結界術「銀兎」]を使って機体を守りつつ、大砲に形を変えた[黒鋼丸]で遠距離攻撃を仕掛けます!安全を第一に考えて勇士さん達の飛空艇近くに陣取り、船の真下なんかの死角をカバーするように立ち回りますよ。敵の数が増えたのを見計らってUCを発動!一掃しちゃいましょうっ。
●開戦
鳩を模した巨大な船体を持つ勇士の飛空艇。
その船首に立ち、鳳凰院・ひりょ(f27864)は、敵軍を静かに見据えていた。
(あの数が街に押し寄せたら大変なことになる……ここで絶対に止めないと!)
青い空を覆い尽くさんばかりの漆黒の大軍勢。
鴉を模した小型戦闘飛空艇(ガンシップ)を駆り、襲来する『バッドスクワイア・スクワッド』の脅威は目前に迫っていた。
「まずは防衛線を敷くわよ! ブルーラビット隊出撃!」
船長が声を上げると、舷側(船体の側面)の出撃口が一斉に開口。水色に塗装された量産型ガンシップ『ブルーラビット』が続々と大空へと吐き出されていく。
そして、ひときわ目立つ真っ赤な機体がハッチの前に姿を現す。
「レッドラビット、出撃しますっ!!」
周囲の勇士に倣い、出撃の声を礼儀正しく発しながら、カスタムモデルのガンシップ『レッドラビット』を出撃させたのは、兎の東方妖怪、水無月・ゆえと(f29534)だった。
無事に大空に飛び出した『赤い兎』は陽光をたっぷりと浴び、金属光沢のある紅色のボディを煌めかせる。
――レッドラビットは、旋回と姿勢制御に用いる10基の高速プロペラを可動式にして舵と連動させることで、量産機の2倍以上の運動性を実現してます。それからですね、高密度に圧縮した気体を爆発的に噴出させる「ターボジェット推進器」を船首と船尾に二基ずつ設置することで、超加速と急制動を可能にしてるんです。いざというときにお使いください!
それはレッドラビットの開発した少女の補足説明。最新の『天使核エンジン工学』の技術を取り入れているらしい。
要するに、独自の改造によって機体性能を飛躍的に高めているということだった。
渡されたマニュアルはやたらと分厚かったが、猟兵たちはどんなマシンでも難なく操縦できる。
それはゆえとも例外ではなかった。ゆえとは操縦桿と複数のフットペダルによる複雑な操作をリズミカルに行い、ガンシップを乗りこなしてみせる。
「うさぎ繋がりで、なんだか愛着が湧く機体ですねぇ」
ガンシップの動作確認をしながら嬉しげにつぶやくゆえと。
彼は初めての世界での冒険に胸を踊らせていたが、前方には漆黒の襲撃者たちがいる。浮かれている場合ではない。
ファンタジー物語に登場する騎士なら、ここは身を挺して戦うべき状況なのだ。
ゆえとはすぐに城を守る騎士の如く気を引き締め、友軍機の「青い兎」とともに母船の周囲で編隊を組んで飛行する。
一方、飛空艇の甲板では、臨戦態勢が整っていた。
甲板の縁に等間隔で設置された対空機銃。機銃には勇士が一人ずつ割り当てられ、いつでも銃撃できる状態だ。
いよいよ戦いが始まる。ひりょは目前に迫る漆黒の軍勢に鋭い視線を向ける。
そして、船長は船首に立つ彼に視線を向ける。
「アナタはそこでいいのね?」
「はい! 俺はここで皆さんとともに戦います!」
「威勢がいいわね。それじゃ正面の守りは任せたわよ♪」
船長は頼もしい青年にウインクすると、甲板にいる仲間と飛空艇を護衛するガンシップ部隊に号令をかけ、戦端を開くのだった。
●飛空艇防衛戦(上)
しかし、戦端が開かれて早々、飛空艇の勇士たちは苦戦を強いられることとなる。
「ウキャキャキャ!! そんなタマ、当たるワケないだろ!」
「こいつら兎じゃなくて亀じゃねーの! バーカ!」
「へへん! そんな攻撃、効かないよーだ!」
悪ガキ軍団は挑発の声を上げながら、鴉のようなガンシップを自在に操り勇士たちを翻弄していく。
「当たらねぇ! コイツら、速すぎる!!」
「撃て! 撃ちまくれ!!」
飛空艇の甲板で対空機銃を乱射する勇士たち。
ブルーラビット部隊も奮戦しているが、ほとんど戦果を上げられぬまま、後退を余儀なくされていた。
「くそっ、機体性能が違いすぎる……それに悔しいがパイロット能力も……」
「うわぁああ! 勝てねぇ! 逃げろ!」
圧倒的な戦力差を前に、諦めと恐怖が支配する戦場。
「アナタたち、もう少し落ち着きなさい! 敵をよく見て戦うのよ!」
船長が仲間たちを鼓舞するが、この状況では全く意味をなさなかった。
そんな中、奮闘するのは義勇兵として参戦した猟兵たちだった。
「危ない!」
甲板に突撃してくる漆黒のガンシップ『鴉零式』。ひりょは風の精霊の護符を咄嗟に投げて突風を発生させ、その行く手を遮る。
「うわっ、何だ!?」
風の壁にぶつかり、寸前で動きを止める鴉零式。そこへ味方の対空機銃の集中砲火が降り注ぐ。
「助かったぜ!!」
敵を撃墜した勇士たちから感謝の声が届くが、ひりょは表情を曇らせる。
なんとか飛空艇は守りきれてはいるが、いっこうに数が減る気配はない。
しかも敵は機動力が高いガンシップを自在に操り、こちらの弾幕の間隙を縫って波状攻撃をしかけてくるのだ。
(俺一人が生き残ることは難しくはない。でも、このままじゃ、勇士たちを……)
守りきれなくなる。焦燥感を募らせるひりょをあざ笑うかのように、飛空艇の上空で漆黒のガンシップが続々と合流し、30機もの編隊を組んでグルグルと旋回を始める。
一斉突撃を仕掛けるつもりだ。ひりょは直感する。
「くっ、こいつら……数的有利な状況を最大限に利用して攻撃を仕掛けて来るつもりなのかっ!!」
思わず心の声が漏れる。
絶望的な状況を前に、胸が騒ぐ。
すると、ひりょの脳裏に、血まみれで倒れ伏す人々の真ん中で一人、茫然自失で佇む自分の姿がよぎり――。
ドクン。心臓が跳ねる。今のはなんだ。俺、一瞬何を考えた?
それは戦場では決して抱いてはいけない最悪なイメージだった。
鼓動が早鐘のように打ち、全身に冷や汗を掻いていた。
これは恐怖心だ。ひりょはそのことを自覚する。
一度喪われた命は戻らない。喪うこと、喪わせることへの恐怖。
俺はこのまま何もできず、この人たちが死ぬのをただ見ているだけなのか……。
「それは絶対に嫌だ!」
ひりょは恐怖心を払いのけるように叫ぶと、頭上で旋回する「鴉」の群れを睨む。
奴らが数で押しつぶすつもりならば、こちらも数を増やせばいい。
シンプルな考えを実現するために、ひりょは『防衛衝動』を発動させる。
それは自らの「恐怖心」を戦う力へと変えるユーベルコードだった。
「分身たち、すまない。力を借りるよ……」
ささやくような声で言葉を紡ぐと、周囲の空間が歪み、飛翔衣を纏い破魔刀を携えたひりょの分身が115人出現する。
(半分は船の防衛を、もう半分は奴らを攻撃だ!)
ひりょの命令を受け、分身の半数が船の甲板を囲むように立ち、一斉に結界を展開。その内側をオーラで補強していく。
完成した包囲結界はガンシップの突撃を阻害し、甲板への機銃とミサイルの攻撃を遮断する。
「結界を張りました。これで当面は凌げます。このまま反撃を!」
ひりょの声で船上の勇士たちが士気を取り戻し、対空機銃の援護射撃が再開される。
さらに、残りの分身は飛翔衣を使って一斉に空中へと飛び上がると、上空に集まる「漆黒の鴉」の群れに向け、破魔の力を帯びた護符を乱れ撃つ。
逃げ場のない制圧射撃。漆黒の機体に護符が突き刺さり、墜落してきた悪ガキどもに破魔刀を持った分身たちが斬撃を繰り出す。
分身同士の華麗な連携が決まり、悪ガキたちは黒い粒子となって空へと溶けていく。
「やべっ! 敵のほうが多いぞ!」
悪ガキの一人がようやく気づく。敵の数的有利は完全に崩れていた。
形勢逆転。そして、船首に立っていたひりょは地を蹴り、自らも戦いの場へと赴く。
「皆さん、連携して絶対にこの場の乗り切りましょう!」
それは周囲のブルーラビット隊に向けた言葉だった。
誰一人欠けずに生還する。ひりょはそれを実現するために、仲間たちとともに奮闘するのだった。
●飛空艇防衛戦(下)
甲板での戦いの最中、飛空艇の船体の周囲でも激しい戦いが続いていた。
「でっかい船を落とせば100万点だぞ!」
「お前なに勝手に決めてんだよ! まぁ、落とすのは俺らのチームだけどなー」
「船底に回り込め! この機銃で風穴を開けてやるぞー!」
漆黒のガンシップ『鴉零式』を駆る悪ガキどもは、飛空艇を撃墜すべく集中攻撃をしかけてくる。
「奴らを船に近づけさせるな! 弾幕を張って増援が来るまで時間を稼ぐんだ!」
対する青い兎のガンシップ『ブルーラビット』の部隊は、船体の周囲で編隊を組み、防衛態勢を整える。
船体の側面にある丸窓(舷窓)から勇士たちが顔を出し、船内から機銃による援護射撃を続けているが、鴉零式の機動力は圧倒的。大人を手玉に取るような素早い動きで避けられてしまう。
「キャハハハ!! お前ら、遅いぞー!!」
そして、悪ガキ部隊は機銃弾幕をあっさりとかいくぐると、3機の編隊が船底へと機銃を連射した。
――ガガガガガッ!!
「そうはさせません!」
そこに猛然と突っ込んできたのは、ゆえとが駆る赤い兎のガンシップ『レッドラビット』だった。
ゆえとは敵の機銃の射線を遮るように立ち塞がると、琥珀色の宝石『銀兎』で結界術を展開。機体の周囲に球形に展開された防護結界が、敵の制圧射撃を遮断する。
「何だオマエー! 邪魔すんなよー!」
唇を尖らせて悪態をつく悪ガキたち。攻撃を防がれてムキになり、邪魔者の赤い機体に銃撃を集中させる。
対するゆえとは結界で銃撃を弾きながら、素早く機体を旋回させて機首を敵に向けた。
機首には魔力で姿を変える『黒鋼丸』で急造した「大砲」が設置されている。
「反撃ですっ!」
ドンッ。特大の砲撃音とともに流線型の砲弾が発射され、敵の群れに向かって超高速で飛翔。
一瞬反応が遅れた正面のガンシップの船体をぶち抜き、そのまま後方でホバリングしていた、もう一機もまとめて撃墜する。
インパクト絶大の一発。すると、漆黒のガンシップは蜘蛛の子を散らすように散開し、ゆえとをロックオンする。
「囲め、囲めー! まずはあいつをぶっ潰せー!」
悪ガキどもは赤い機体を脅威と認識し、包囲攻撃で仕留めるつもりのようだった。
だが、それはゆえとにとって、願ったり叶ったりの展開だった。
「オレが敵を引きつけますっ! 皆さんは船の守りをお願いします!」
このまま敵を飛空艇から引き離す。自分に注意が向けばそれだけ船への攻撃が減るはず。
ゆえとは『ターボジェット推進器』のレバーを引き、フットペダルを踏み込む。
天使核エンジンが唸りを上げ、船尾の噴出口から噴き出した猛烈な気流が赤色の機体を超加速させる。
同時に物凄いGが体を襲うが、ゆえとは歯を食いしばって耐え、敵軍の包囲を一瞬で突破した。
「疾っ……じゃなくて、お、追えー!!」
逃げる者は追う。悪ガキどもは単純に思考し、追撃を開始。
対するゆえとは縦横無尽に飛び回り、大量の敵を引き連れて大移動。
そして、群がった敵を一掃すべく、ユーベルコード『雪鯨弾幕(ホエールバレット)』を発動。程なくして『黒鋼丸』の「大砲」に魔力のチャージが始まり――。
「チャージ完了! 全部まとめて、お掃除だっ!!」
ゆえとはレッドラビットを急旋回させて、漆黒のガンシップの群れへと主砲を発射!!
まばゆく輝くエネルギー砲弾が群れの中央で炸裂。巨大な花火が上がったかのような大爆発を引き起こす。為す術なく猛烈な爆風に飲み込まれていく漆黒の鴉。
そして、爆風が収まると船体の周囲に群がっていた敵勢はほぼ一掃されていた。
ゆえとは安堵のため息をつき、口元を緩める。
「アタシたちも義勇兵の子たちに負けてられないわよ!」
「「「おぉおお!」」」
飛空艇の甲板で船長と勇士たちの鬨の声があがる。
ひりょとゆえとの活躍によって勇士たちの士気が向上し、劣勢だった戦況が一気に巻き返されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
誰かの故郷を守る。それも四悪霊の誓いなれば。故に力を貸すのである。
霹靂に騎乗しての戦闘となろう。基本は前衛での迎撃よ。
さて、照準とは位置が正確だからこそ役割を果たせるのであって。四天流星の錯誤呪詛にて位置を間違える以上、避けるは容易い。
そして、だ。わしは確かに槍(黒燭炎)装備だがの?届かぬとは言っておらぬ。指定UCでの蹂躙なぎ払いよ!
まったく。誰が皆殺しになどさせるか。
※
霹靂「クエッ!」
この世界の牧場出身。気合い入る。
平穏な青空を覆い尽くさんばかりに襲い来る、漆黒のガンシップ『鴉零式』の大軍勢。
ガンシップを駆るのは、バッドスクワイア・スクワッド。
見た目はただの悪ガキだが、残忍な光をその目に宿すオブリビオンである。
「行くぞー! 皆殺しゲームのかいまくだー!」
「オレっちのチームが一番多くコロスぞー!」
「ウキャキャキャ! ワクワクするぜー!」
数十機の悪ガキ部隊はゲーム感覚で浮島の港湾都市の住民を虐殺すべく編隊を組み、漆黒の弾丸のように飛行する。
そこに立ち塞がるのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と……。
「クエッ!!」
気合十分のヒポグリフ、「霹靂(かむとけ)」である。
「この世界は霹靂の故郷……それ故、わしらは手を貸すのじゃ」
四悪霊を代表して言葉を発したのは、「武の天才」と称えられし武人、『侵す者』。
誰かの故郷を守る。それも四悪霊の誓い。
だからこそ、この空の平穏を脅かすお前たちを跳梁させておくわけにはいかない。
そんな意志を胸に秘めて出陣した義透は、霹靂に騎乗したまま、威厳たっぷりに敵を見据える。
「待て! こいつヤバそうだぞ!」
だが、義透を視認した悪ガキたちのガンシップは即座に散開。統率の取れた動きで周囲を取り囲む。
「バーカ! オレたちは警戒心が強いんだー!」
得意げに言い放つのは、リーダーっぽい雰囲気の悪ガキ。だが、侵す者は全く動じた様子を見せない。
(……この程度の数でわしらを討つつもりのようじゃの。そうじゃ、霹靂、まずはお前が暴れてみるかの?)
「クェッ!!」
霹靂は小さく鳴くと、金色の羽毛が混じった美しい翼を大きく羽ばたかせる。
ビュンと吹く突風。強風に煽られた悪ガキたちは、想定外の不意打ちに怯み、反射的に腕で顔を覆う。
(ゆけ! 霹靂よ!)
数瞬の隙をついて突進していく霹靂。
「「「わぁああ!!」」」
霹靂はガンシップのコックピットに納まる悪ガキたちを足蹴にすると、そのまま翼を羽ばたかせ太陽に向かって急上昇。そのままぐんぐんと上昇し、太陽を背にして空中に静止した霹靂は「クエッ」と鳴き、義透に攻撃を委ねる。
逆光に照らされ、鮮明に浮かび上がるのは霹靂に騎乗した義透のシルエット。
乱れた編隊を整えながら、追撃しようとするバッドスクワイア。
そして、義透は眼下の敵勢に向け、四天流星を乱れ撃つ!
「うわっ! なんだ!」
雨のように降り注ぐ無数の鏢。それはガンシップのボディに悉く突き刺さり、呪詛を噴出させた。
だが、その呪詛の存在に悪ガキどもは全く気づいてはいなかった。
「よくも、オレたちのマシンを傷つけやがったな!」
機体を傷つけられて憤慨する悪ガキたちは一斉に機首を上げ、ミサイルの照準を上空の霹靂にセットする。
だが、霹靂はその場から微動だにしない。
「ミサイル発射!」
数十機の鴉型ガンシップから、一斉に放たれる嘴のような弾頭を持つミサイル。
それは標的に向かって真っ直ぐに飛翔し――。
――ドォォオオン!!
標的の遥か後方で衝突し、爆ぜた。
「すり抜けた!?」
なんで当たらないんだと、顔を見合わせる悪ガキ軍団。
すると、不意に一機のガンシップが「何か」に薙ぎ払われ、炎上した。
「それは、お前たちがわしらの位置を違えておるからじゃの」
「何!?」
声がしたほうを振り返る悪ガキ軍団。そこには霹靂に騎乗し、炎を纏う黒い槍『黒燭炎』を振るう義透がいた。
四天流星から発生する錯誤の呪詛は、五感を惑わせ錯覚を引き起こす。
相手の位置を正確に把握できなければ、照準など意味をなさないのである。
「散れ! こいつは接近戦しかできないぞー!」
敵の得物を見て、悪ガキ部隊の一人が声を上げる。
すかさず散開して距離を取り、機銃を連射する漆黒のガンシップ。
だが、錯誤呪詛の影響下にある敵勢の攻撃が、義透に命中することはなかった。
「届かぬとは言っておらぬぞ!」
声とともに義透が黒い槍を振るうと、渦を巻く炎が敵機に襲いかり、飲み込んでいく。
「己の力を過信し、敵の力を見誤るとは愚かな。それにの、わしらの力はこの程度ではない!」
侵す者の言葉に呼応し、ユーベルコード「四悪霊・『怪』」が発動。義透の体から四悪霊の呪詛がドッと噴き出す。
それは煙のように四方八方に拡散し、またたく間に悪ガキどものガンシップまで到達。その生命力を吸収していく。
「なんだ……力が入らないぞ……」
生気を奪われたバッドスクワイアの軍勢は、ガンシップの操縦どころではなくなっていた。
よろよろと酔っぱらいのような飛行になり、仲間同士で衝突しそうなりながら高度を落としていく。
圧倒的な人数差をものともしない禍々しき呪詛の力。勝敗は既に決していた。
そして、義透は霹靂とともに縦横無尽に飛翔し、動きの精彩を欠いた敵機を黒燭炎で薙ぎ払い、蹂躙していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アルテミシア・アガメムノン
①
飛空艇『イーオケアイラ』(アイテム欄参照)にて戦場へ。
飛空艇の兵装、魔導砲の斉射により敵軍陣形に穴をあけた後、『氷炎の魔王軍』で呼び出された93体の悪魔の軍団が飛空艇より展開。
(斉射は友軍を巻き込まないように射角に気をつけて)
三体一組の編隊を組んで、飛空艇と連携しつつバッドスクワイア・スクワッドの軍勢を削っていきます。
(悪魔軍団で敵を一か所に追い込んで、飛空艇からの主砲で撃滅とか逆に飛空艇に纏わりつく敵は悪魔軍団の一部が直掩して引きはがします)
ある程度の数を揃えていますわね。
イーオケアイラと空兵隊(悪魔軍団)との連携訓練に利用させて貰いましょう。
浮島の上空を漆黒に染める鴉型ガンシップ『鴉零式』。
港湾都市を壊滅せんと押し寄せるバッドスクワイア・スクワッドの大軍勢の襲撃はとどまる所を知らなかった。
猟兵たちの活躍でようやく攻勢へと転じた勇士と義勇兵の連合軍の前に、頼もしい援軍が到着する。
それは全長260メートルの巨大飛空艇「イーオケアイラ」。
アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)が司令官として座乗する軍艦である。
「ある程度の数を揃えていますわね。イーオケアイラと空兵隊との連携訓練に利用させて貰いましょう」
真紅の軍服に身を包んだアルテミシアは操舵輪の前で敵軍を見据える。
視認される敵勢は100機は優に超えている。
悪ガキが搭乗するガンシップは、常に3機以上で編隊を組み、間断なく波状攻撃を仕掛けてくる。
勇士たちは敵機の速さと巧みな連携に翻弄され、苦戦を強いられているようだ。
(それなら、わたくしがすべきことは一つ。敵の編隊を崩すことですわ!)
戦況を見極め、アルテミシアはそう結論付けると、イーオケアイラの主砲を敵軍の群れの中央に向ける。
「魔力チャージ完了ですわ! 魔導砲、発射!!」
発射を告げる声。そして、大筒に凝集された魔力が光へと姿を変え、雷鳴のような轟音ととも放出される。
虚空を突き破るように直進する光の束。それは編隊を組んで飛行する漆黒のガンシップの群れのど真ん中をぶち抜く。
――ドシュッ!!
魔導砲に撃ち抜かれた漆黒のガンシップ十数機が一瞬で蒸発。
「敵の主砲だー! 散れー!」
残った敵勢は即座に反応し、散開。崩れた編隊を組み直し、イーオケアイラに殺気を向ける。
「氷炎の魔王軍、出撃ですわよ!」
敵が動く前に、命令を下すアルテミシア。
すると、舷側に設置された幾つもの出撃ハッチが一斉に開口。鋭利な黒翼を背負う悪魔軍団が続々と出撃していく。
燃える二本角と凍てつく二本角。炎と氷の力をその身に宿す二種の悪魔がほぼ半数ずつ93体の布陣。
そして、アルテミシアは飛空艇の周囲で浮遊する臣下たちにすぐさま指示を出す。
「三体一組で編隊を組んで戦いなさい! 単独行動は許しませんわよ!」
主の指示に従って臣下の悪魔軍が素早く編隊を組み、臨戦態勢を整える。
対する悪ガキ軍団は……。
「でけー! 大ボスとうじょー!」
「よーし! あいつを墜としたやつは、1000万点な!」
「そんならアイツを墜とせば優勝ってことじゃん! やるぞー!」
余裕たっぷりの様子。その機動力を活かして急旋回を繰り返し、不規則な動きで悪魔軍団を翻弄しようとする。
「炎の悪魔部隊! 左右に展開し、敵を中央に追い込みなさい!」
艦上から敵の動きを俯瞰しつつ、指示を飛ばすアルテミシア。
そして、五部隊ずつ左右に展開した炎の悪魔部隊は、一斉に口を開けて火球を放つ。
――ドドドドドドッ!!
絶え間なく乱射される炎の球。それは瞬時に弾幕を成し、やがて炎の壁と化す。
「のわっ! なんだ、こいつらー! 逃げろー!」
左右から押し寄せる灼熱の壁に敵のガンシップ部隊は徐々に中央へと追い詰められていき――。
「「「ぎゃぁああ!!」」」
イーオケアイラの主砲から放たれた魔導砲の餌食となる。
だが、敵軍もすぐに反撃に動く。残存の悪ガキ軍団は、漆黒のガンシップのエンジンを全開にして炎悪魔の猛攻をくぐり抜けると、イーオケアイラへと一直線に突っ込んでいく。
「主砲の餌食ですわ!」
アルテミシアが正面の敵勢に主砲を発射した刹那、左右に割れる黒い鴉の群れ。
「おらー! 船体に風穴を開けてやるぜー!」
魔導砲を躱し、飛空艇の船体を左右から挟んだガンシップの群れが、急旋回してターゲットロック。その直後、大量のミサイルが一斉に発射される。だが、アルテミシアはこの反撃も想定済みだった。
「氷の悪魔軍団! 迎撃ですわ!」
命令とともに船底に待機していた氷の悪魔軍団が飛び出し、舷側の前に立ちはだかる。
そして、悪魔軍団は氷の投槍を両手に召喚。即座に放たれた氷の槍が、船体へと飛来するミサイルを悉く相殺していく。
――ドォオオン!!
友軍と敵軍を隔てるように起こる、大爆発。爆風とともに氷の破片が周囲に飛び散る中、アルテミシアの落ち着いた声が響く。
「これでチェックメイトですわね」
渾身のミサイル攻撃を防がれた敵勢は悪魔軍団に包囲され、既に逃げ場はなかった。
「「「くそぉぉおぉおおお!!」」」
悔しげに叫び、機銃を乱射しながらガンシップで強行突破を図る悪ガキ軍団に、炎と氷の包囲攻撃が容赦なく襲いかかる。
女帝アルテミシアは滅びゆく敵勢を満足げに眺め、微笑を浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・オブライト
☆
①
立ち寄ったなら観光程度楽しみてえんでな
とっととお帰り願おうか
操縦は勘頼みだが。まあ、最低限飛べれば『覇気』による『オーラ防御』を張り被害軽減
複雑な動作をしない分、意識は敵群に割く
【UC】
敵撃破&銃弾の破壊
『念動』制御だ、オレの腕前で機銃を扱うよりマシだろう。この時点で数は光輪の方が敵よか勝っているかもだが
敵が多けりゃ多いで、雷光により視界を奪っての混乱で同士討ちや衝突も狙えるか
ただ数を揃えるだけじゃあままごと遊びと違わねえぞ
大型飛空艇へ抜けんとする敵がいれば、ターボジェットで一気に詰め、覇気で殴るor飛び移り格闘
で、お前は何機墜とせたって?
オレの勝ちらしいな(まるで興味もないが)
※諸々歓迎
猟兵たちの活躍により、漆黒の鴉型ガンシップ『鴉零式』を駆るバッドスクワイア・スクワッドの軍勢は瓦解しつつあった。
しかし、敵の残存勢力は劣勢の戦況でも全く意に介さず、徒党を組んで「ゲーム」に興じていた。
「あのでっかいの、なんか弱そうだぜ。集中攻撃だー!」
編隊を組んで飛行する敵の一団。その視線の先には、鯨型の船体を持つ大型飛空艇「スマイル・ホエール号」の姿があった。ホエール号は義勇兵を乗せた飛空艇。武装に乏しく、専ら後方支援を担っていた。
青い兎型のガンシップ「ブルーラビット」が護衛として展開していたが、戦い慣れていない彼らがバッドスクワイアの軍勢を撃退できる見込みはなかった。
「とつげきー!」
絶体絶命のピンチ。嬉々として敵船に突撃する漆黒の軍勢のど真ん中に、紅色に塗装された兎型の機体が突っ込んでくる。
電流を帯びた一筋の閃光。猛烈な覇気を纏うカスタムタイプのガンシップ「レッドラビット」を操縦するのは、レイ・オブライト(f25854)だった。
「ぐがっ!!」
一番端のガンシップが衝突され、跳ね飛ばされる。
だが、レッドラビットは高密度な覇気のバリアに保護され、全くの無傷。止まるどころかさらに勢いを増し、漆黒のガンシップをドカドカと弾き飛ばしながら直進する。
それはまさに暴走特急。赤い兎に激突された黒い鴉は半壊。飛行能力を失って墜落していくも、敵勢は危険を察知して即座に散開。最小限の被害で食い止める。
すると、ようやくレッドラビットは速度を緩めて旋回。そのまま敵勢に機首を向け、ホバリング状態で静止した。
「オマエ、いきなり突っ込んでくんなよー」
冷や汗をかきながら唇を尖らせて悪態をつくバッドスクワイアの悪ガキ軍団。レイはわずかに口角を上げる。
「悪い、まだ操縦に慣れてねえんだ。こういうチマチマした機械の操縦はどうも苦手でな」
相手の悪態に淡々と応じてみせるが、レイは敵勢の動きを抜け目なく観察していた。
(……数だけは多いな。そんで、こいつらがオレの注意を引きつけ、残りで包囲して機銃で集中攻撃ってところか……)
それなら「崩す」だけだ。
レイは即断し、『Aureola』を発動。
「はっ!」
気迫溢れる声とともに電流を帯びた覇気がどっと膨れ上がり、白銀の鎖「枷」がチャクラムへと姿を変え――。
――バチッ!!
膨張した覇気が唐突に弾けた。同時に飛沫のように放たれた111本のチャクラムは、電気混じりの覇気を纏う「光輪」へと成長し、高速で回転しながら敵勢へと飛翔する。
だが、敵勢は即座に反応。急旋回して回避する。
「へへん、こんなもの簡単に避けれるよーだ!」
しかし、攻撃はまだ終わってはいなかった。
――バリバリバリッ!!
光輪が一斉に強烈な雷光を放ち、虚空に網を張るように高電流が拡散。勝ち誇る悪ガキ軍団の目を灼き――。
「目がぁあああ!!」
その体に高電流を走らせる。
「うがぁあああ!!」
そして、悪ガキたちが操縦する漆黒のガンシップは酔客のように不安定な飛行となる。
そこへトドメとばかりに襲いかかるのは、レイが念動力で制御する光の輪の群れ。
「「「うぎゃぁああ!!」」」
阿鼻叫喚の声が戦場に上がる。ところが……。
「よーどー作戦、成功!!」
戦闘に集中するレイを素早く迂回してやり過ごした漆黒の鴉の群れがホエール号へと迫る。
「そうはさせるか!」
レイは『ターボジェット推進器』のレバーを引き、フットペダルを踏み込む。
天使核エンジンが唸りを上げ、船尾から爆発的に噴出した気流が機体を超加速させる。同時に凄まじいGが襲ってくるが、レイはただ真っ直ぐに前を見つめ、拳を握りしめる。
オレにはこの拳がある。機銃よりも頼りになる自らの「武器」を信じ、レイは敵機の群れへと直進する。
この一振りで止める。不屈の闘志とともにレイの右拳に覇気が宿る。そして射程距離に群れを捉えると、右腕を全力で振り抜く。
剛拳とともに烈風が吹き、覇気の大波が敵陣の横腹へと襲いかかり――。
ドゴッ!! 群れを先導して飛行していたガンシップ数機が派手に弾き飛ばされ、敵勢の動きが止まる。
レイはその隙を逃さずに敵機の一つに近接すると、コクピットから立ち上がり、レッドラビットを急制動。停止する寸前にタイミングよく跳躍し、敵機の上に着地したレイは、コクピットの悪ガキを膝蹴りで気絶させ、そのまま片手で引きずり出し、近くの機体にぶん投げる。ワイルドな投擲攻撃。それで怯んだ近くの機体へと即座に飛び移り、次の悪ガキに殴りかかる。
「どうした! ただ数を揃えるだけじゃあ、ままごと遊びと違わねえぞ!」
これはゲームでも遊びでもない。命の取り合いなのだと、レイは戦々恐々の悪ガキどもに言い放つ。
ガンシップを足場にしての大乱闘。レイの豪快な格闘術は空中戦でも遺憾なく発揮されるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『能天魔怪獣エクスシア』
|
POW : グランホーリーレイ
【頭上】から、戦場全体に「敵味方を識別する【光をねじ曲げ、一点に集中させた強力な光線】」を放ち、ダメージと【膨大な熱量と爆風による大打撃を与え、盲目】の状態異常を与える。
SPD : クリスタライズブラスター
自身が【光を屈折させる事による透明化をして】いる間、レベルm半径内の対象全てに【瞬間的な強烈な閃光を伴う破壊光弾】によるダメージか【自身の周囲の光を吸収する事】による治癒を与え続ける。
WIZ : ディザスターレイ
敵を【崩壊させる不可視の光】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ビードット・ワイワイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●帝国の巨大飛空艇〜物見の間
そこは真っ暗で殺風景な部屋だった。床に描かれた大きな魔方陣が青白い光を放ち、その中央に設置された簡素な台座の上には巨大な水晶球が置かれていた。
魔方陣の中央で、浮遊する椅子に座り水晶球を覗き込んでいるのは白髪の帝国魔道士。
水晶球には猟兵たちにことごとく撃墜されていく先遣隊の姿が映し出されている。
「これは想定外の展開ですね……思わぬ伏兵がいたということでしょうか」
魔道士は大きなため息をつき、虚空を無表情で見つめる。
「勇猛果敢な戦士サマはいつの世にも現れるのでしょうね……本来は街の破壊のために召喚するつもりでしたが、予定変更です。我が帝国の、天使化魔獣の力、存分に味わっていただくとしましょう!」
掌に魔力を凝縮させながら、魔道士は言葉を紡ぐ。
魔獣が暴れた後には遺骸と瓦礫が残るだけ。核(コア)の回収は障害を排除してからでも遅くはない。
今、優先させることは、抵抗勢力を潰すことなのだ。魔道士は冷ややかな視線を水晶玉に映る敵に向ける。
――どんな小さな芽でもすぐに摘め。後顧の憂いを残してはならん。抵抗勢力は見つけ次第、徹底的に叩き潰すのだ!
それは雲海から蘇り、再び野望の実現を目論む【王】の命令だった。
そして、帝国魔道士は召喚魔術を完成させ――。
「ギャォオオオオオ!!」
巨大飛空艇の正面、何もない空間に描かれた光の魔方陣から、『能天魔怪獣エクスシア』が出現する。
野性的な雄叫び。陽光を反射させ光輝を放つ巨体。その眼は機械のようだが、確かな理知が宿っていた。
●巨大怪獣、襲来!
「グォオオオオオ!!」
獣のような唸り声を上げながら鋭角な翼で大気を切り裂き、轟々と飛翔する鉱石魔獣。
それはまるでクリスタル鉱山が飛来してきたかと錯覚するほどの巨体だった。
全長60メートル超。20階建ての高層建築物を凌駕する巨大魔獣の襲来に、敵の残存勢力と戦う勇士たちの顔が青ざめる。
「まさか、あんなのが来るなんて……」
「デカすぎる……勝てるわけねぇ!!」
「うわぁあああ!! もうダメだ!!」
大混乱に陥いる友軍を鼓舞しながら、巨大なオブリビオンに立ち塞がるのは義勇兵として参戦した猟兵たちだった。
強者の気配を察知したエクスシアは空中で静止し、猟兵たちに視線を向ける。
「オマエラ、テイコク二、アラガウ、テイコウセイリョク! テッテイテキ二、ハイジョスル!」
感情を一切感じられない機械的な声。体温を感じさせない、冷たい鉱石の体とは裏腹に、全身から発せられる殺気は皮膚をひりつかせるほど熱を帯び、刃物のように鋭かった。
しんと静まり返る。それは戦端が開かれる前の静けさだった。
だが、残存するバッドスクワイアの軍勢は全くそのことに気づいていない。
「増援だー! やったぜ!」
強力な増援の登場に歓喜の声を上げ、巨大怪獣の周りに集合する。
「ジャマダ!!」
――ブオッ!!
鋭利な棘が生えた巨大な尻尾が振り回まわされ、旋風が起こる。
周囲を取り巻いていた漆黒のガンシップが一瞬で粉砕され、爆散した。
邪魔者が打ち払われ、再び静寂が訪れると、巨大怪獣は透明度の高い鉱石の体を雄々しくそびやかし、猟兵たちを睨み据える。
「ツギハ、オマエラノバンダ!」
グリモア猟兵の予知によると、港湾都市の大規模な破壊はこの巨大怪獣によって引き起こされるという。
この敵を倒さなければ予知は現実のものとなり、住民たちが犠牲になることだろう。
港湾都市の人々の命を救うため、猟兵たちの決死の戦いが今、始まる――。
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《補足》
◆状況説明
・第一章に引き続き、浮島ドゥルガルの上空を舞台にした空戦です。バッドスクワイア・スクワッドは全滅しているので、第二章はエクスシア一体との戦いとなります。
エクスシアは強大な力を持つ相手なので、勇士たちが前線で戦うのは厳しいでしょう。
そこで、彼らは猟兵たちの後方支援に徹するという決断に至りました。
勇士たちの支援内容は、以下の3つです。
①レッドラビットを貸し出す。
・レッドラビットは後方支援の大型飛空艇に何台か積載されているので、第一章でレンタルしていなくても、第二章からレンタルすることも可能です。
②無人のブルーラビットを大量に放出する。
・勇士の大型飛空艇には、量産型の小型戦闘飛空艇の『ブルーラビット』が大量に積まれています。
量産機には『体当たり機能』が内蔵されており、無人でも「ホバリング状態で直進させる」ことができます。
この機能を利用すれば、任意のタイミングで敵周辺の空域に大量のブルーラビットを展開させることが可能です。
足場が必要なときなどに使用できるかもしれません。
③大型飛空艇の主砲(長距離カノン砲)で狙撃する。
・カノン砲は流線型をした金属製の砲弾を放つ、実弾兵器です。
攻撃力はそれほど高くはありませんが、陽動や牽制に利用できるかもしれません。
事前に合図を決めておけば、任意のタイミングで発射してもらうことも可能です。
※支援が必要な場合には、①〜③の数字指定のみでOKです。
勇士たちの支援はフィールドのギミック程度の位置づけです。ご自由にお使いください。
◆レッドラビットの性能(まとめ)
・全長3mの小型戦闘飛空艇(ガンシップ)。
・機首の先に機銃(天使核リボルバーを改造したもの)が設置されています。
・後部に補助席があり二人乗りも可能ですが、操縦は前の操縦席で行います。
・主に操縦桿と複数のフットペダルによる操作で動作します。
・旋回と姿勢制御に用いる10基の高速プロペラを可動式にして舵と連動させることで、量産機の2倍以上の運動性を実現しています。
・高密度に圧縮した気体を爆発的に噴出させる「ターボジェット推進器」を船首と船尾に二基ずつ設置することで、超加速と急制動を可能にしています。
◆能天魔怪獣エクスシアについて
・全長60メートルを超える、クリスタルのような鉱石で構成された鉱石魔獣です。
・邪悪な力を帯びた強力な光のエネルギーを使って攻撃してきます。
・攻撃の性質上、ユーベルコードの発動に「溜め」の動作が必要なようです。
※以下はユーベルコードについての補足です。(今シナリオのみの独自解釈です)
【POW】
・貫通力のあるレーザー光線が「角」から放たれます。角は折れてもすぐに再生可能です。
・発動前に角にエネルギーが集約され、眩しい光を放ちます。
【SPD】
・半径100m程度の範囲に光球を散弾のように放ち、無差別に攻撃します。破壊力を持つ閃光弾のようなイメージです。
・体に入射する光を屈折させる(光を透過させる)ことで、一時的に透明化するようです。体が粒子化したり、存在そのものが消えたりするわけではありません。
【WIZ】
・戦っている猟兵を狙う単体攻撃で、発動前に目が赤く光ります。
・触れた物体を破壊する、見えない光の波動がどっと押し寄せてきます。
・敵が獲得した🔴(赤丸)は、第一章で猟兵たちが獲得した青丸の合計と同じ15個。そこそこ強い感じです。
◎敵は物凄く強そうな相手ですが、魔獣なので倒せば遺骸が戦利品として残るようです。うまく倒せば大量の鉱石が手に入りそうですね。
途中参加も大歓迎です。第二章もよろしくお願い致します!!
アルテミシア・アガメムノン
まあ、あれは……Godzilla? ペットに欲しいですわね!
キャバリア『フリズスキャルヴ』に搭乗。旗艦より飛び立ちます。
操縦は『アガメムノン・システム』により自身の身体以上に自在に動かせます。
高速機動でエクスシアを翻弄。角に光が集約されるタイミングで『フギン&ムニン』の魔力砲弾を角に集中。破壊することで敵POWUCの発動を妨げます。
そのタイミングで『機神降臨』を発動。戦闘力を増大化し、体長10mほどとなり、攻めを強めます。(武装は魔女の具現術で生み出した巨大な鎌)
再び敵がPOWUCを放とうとしても先程より効率的に防げるでしょう。
そこでさらに『機神降臨』を発動。
差はどんどん広がりますわよ!
魔王軍を率いる女帝アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)は、旗艦『イーオケアイラ』のデッキに鎮座するキャバリア『フリズスキャルヴ』のコックピットで微笑を浮かべる。
彼女が見据えるのは、全長60メートルを超える巨大魔獣『能天魔怪獣エクスシア』。
クリスタルのような鉱石で構成された鉱石魔獣である。
――グォォォオオオ!!
直立状態で浮遊し、威嚇するように雄叫びを上げるエクスシア。
アルテミシアはひりつくような殺気にも全く動じずに、アガメムノン・システムを作動させる。
「フリズスキャルヴ、出撃しますわ!」
凛々しい声とともに、魔力感応によって起動した機体が上空へと飛び立つ。
陽光を受けて更に輝きを増す黄金の機体。それは光の矢のように飛翔し、敵との距離を一気に詰めていく。
対するエクスシアは急接近する敵に即座に気づき、右腕を振り下ろす。
――ブオッ!!
風圧とともに、襲い来る鋭利な爪が生えた右手。
(遅いですわ!)
アルテミシアは咄嗟に機体を横回転させながら避けると、行く手を遮るように左腕が突き出される。
だが、フリズスキャルヴはそれを見越していたように急下降して躱し、2つの球体『フギン&ムニン』を召喚。
機体の周囲を浮遊しながら、二個の球体は無防備な懐へと高圧縮魔力弾を発射し――。
――ドンッ!!
敵の胸部の鉱石が砕け、氷片のように宙に飛散する。
だが、そのダメージは軽微。できたのは小さな傷だった。
フリズスキャルヴは5メートルのキャバリア。敵は60メートル超の巨大怪獣である。
その体格差は歴然。だが、機動力ではこちらが数段勝っていた。
魔力感応によって肉体の反応速度を超える空中機動を可能にするアガメムノン・システム。
アルテミシアはフリズスキャルヴを自在に操り、両腕と尻尾での激しい追撃を躱しながら敵の周囲を執拗に飛び回り、フギンとムニンで蜂のようにチクチクと攻撃していく。そして……。
「ウルサイ、ハエダ!!」
業を煮やしたエクスシアは一気に勝負を決めるべく、頭部の角に光のエネルギーを集束させていく。
(今ですわ! フギン、ムニン、角に攻撃を集中させなさい!)
――ドドドドドドドッ!!
一点集中された高圧縮魔力弾が次々に弾け、光輝を放つ角に亀裂を生じさせ――。
――パキンッ!
唐突に一本角が破断。集束した光のエネルギーが虚空に飛散し、光のシャワーがエクスシアに降り注ぐ。
「ナンダ!?」
不測の事態が起こり、硬直するエクスシア。
そう、アルテミシアは敵の大技の発動を誘っていたのだ。
そして、彼女は敵が怯んだ瞬間を狙い、ユーベルコード『機神降臨(ラグナレク)』を発動。
「進化戦闘形態」へと変異したフリズスキャルヴが2倍の大きさまで巨大化し、2倍の大きさになったフギンとムニンが分裂し、倍増する。
全長10メートルになった機体と四つの球体。さらに戦力が大幅に増強されたフリズスキャルヴの手に、巨大な鎌が出現する。それはアルテミシアの魔女の具現術で創り出された「滅びを与える鎌」だった――。
その一方で、エクスシアは破壊された一本角を瞬時に復元。黄色い瞳をギラギラと輝かせ、角に再び光を集束させていく。
「そうはさせませんわよ!」
アルテミシアはすかさずフギン&ムニン×2に指示を出し、角へ向けて集中砲火。パリンッ。光の角が割れ、弾ける。
「グガァ!!」
怒りの声を上げ、黄金の機体を叩き潰そうと振り下される巨大怪獣の両椀。それも難なく回避し、そのまま急上昇したフリズスキャルヴは滅びの大鎌を振り上げ――。
「グギャァアアア!!」
耳を劈く絶叫。半円軌道を描く大鎌が、怪獣の左肩を切り裂き、そのまま左腕を切断する。
地面へと落下していく巨大なクリスタル鉱石。
欠損した左腕に向かって胸部の鉱石が大移動し、瞬時に左腕を修復していく。
だが、欠損部分を補った分だけ胸部の肉がこそげ落ち、陥没ができていた。
よく見ると、陥没部分も少しずつ修復しているようだが、完全回復には程遠かった。
左腕の修復は応急処置なのだろう。敵は大きな欠損を瞬時に回復させる力はない。
このまま攻撃を続ければいずれ修復が追いつかなくなるのは明らかだった。
「あなたの『底』が見えましたわね。わたくしはまだまだ強くなれますわよ」
勝利を確信した女帝は微笑み、再び大鎌を振り上げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
②
引き続き『侵す者』にて
武器変更:四天霊障
嫌な予感がする。霹靂を影の中へと下げ、ブルーラビットを足場にしていこう。
敵へと直進してもらうか。
指定UC発動させ。念のため、黒燭炎も引っ込めて。
こういうときの勘とは当たるものなのよなぁ。赤いのが見えたと思ったら、身体が崩れたわ。
再構築していくから、関係はないのだが。
見えないのが厄介であるが、この状態だと気にする必要もないか。
接近は無事なブルーラビットに飛び移るしかない…なんぞ牛若丸の気分じゃて。
ああ、わしを崩壊させようと何度も攻撃すればするほど、わしの強化に繋がるからの?
結構痛かったからの…その恨みくらいは四天霊障に乗せて叩きつけてもいいじゃろ?
――グォオオオオ!!
60メートル超の巨体を震わせて、咆哮を上げる『能天魔怪獣エクスシア』。
機械のような両眼は冷たく、全身から禍々しい気迫が発せられていた。
「どうもあやつを見ていると、胸騒ぎがするの……」
霹靂に騎乗して敵の様子を伺っていた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、手を上げて後方に合図を送る。すると、戦闘空域を離れ、後方から遠眼鏡で戦況を見守っていた勇士の大型飛空艇が動く。
――支援要請βを確認! 無人ブルーラビットを射出します!
戦域を取り囲むように配置された4機の大型飛空艇。舷側の出撃ハッチが開き、四方から一斉に無人の青い兎型ガンシップが射出される。直後に「体当たりモード」が起動し、青い兎の群れが戦域へと進軍していく。
「霹靂、お前は下がっておれ」
「クエッ!?」
寝耳に水とばかりに素っ頓狂な声を上げる霹靂。
「あの敵から不穏なものを感じたのだ。ここはわしらだけで戦うのが得策じゃろう」
かつて武の天才と称えられた「侵す者」は、数多の戦場を生き延びてきた武人である。彼の判断はただの勘ではない。そのときの経験に基づくものなのだろう。
侵す者に諭された霹靂はおとなしく影へと戻っていく。
「お前の故郷はわしらが必ず守る……そこで安心して見ておるのじゃ」
侵す者は霹靂に言葉をかけながら、すぐさま近くのガンシップに飛び乗り、戦域を見渡す。
ブルーラビットはエクスシアを中心に放射状に散らばり、一定速度で直進していた。このまま機体を足場にして移動すれば敵に接近することも難しくなさそうだ。
「備えは十全にしておかねばの……」
敵を見据え、ポツリとつぶやく義透。彼は黒燭炎を引っ込め、「呪詛」で全身を覆うと、次なるガンシップに飛び移るのだった。
❖
「ジャマダ!!」
エクスシアは苛立たしげな声を発し、周囲にまとわりつくブルーラビットで尻尾で薙ぎ払う。
だが、視界には一面の青い兎。これも敵の陽動作戦なのだろう。
獣の躯に理知を宿すエクスシアはそう判断した。
弱者の戦術などに惑わされぬ。敵を冷静に見据える巨大怪獣は、その視界に青兎の足場の上をジグザグに移動しながら近づいてくる、一人の男を捉えた。
❖
ギラリ。猛烈な殺気とともに、巨大な瞳が血の色に発光する。
ゾワッ。浮遊する足場を軽快に飛び跳ねながら移動する義透は、突然、異様な「気配」に気づき――。
――ドシュッ!!
寸前でわずかに体を傾けた義透の右半身が見えない光に抉られ、霧散する。
(ぐっ! 赤いのが見えたと思ったら、身体が崩れたわ。やはり霹靂を下がらせておいて正解だったの……)
霧散した半身は瞬時に再構築を始め、人の貌を取り戻す。
備えあれば憂いなし。義透は事前にユーベルコード「四悪霊・『回』」を発動させ、敵の攻撃に備えていたのだ。
「ナンダ! アイツハ!」
エクスシアは驚嘆の声を上げ、攻撃の手を止めた。
しかし、それは数瞬のことだった。我が力が通用しない敵がいるはずがない。
再び、冷酷な瞳が赤く輝き、明滅する。
そして、間断なく放出される不可視の光の帯。それは義透の体を悉く貫き、崩壊させる。
だが、壊されても崩されても義透の体は再構築を繰り返す。
義透は体を穿たれても表情を一切変えず、ガンシップの上を軽やかに跳ねながら敵との距離をぐんぐん詰めていく。
すると、射程距離まで接近した義透に、鋭利な棘が生えた巨大な尻尾が襲いかかる。
――バチッ!!
エクスシアが振るった尻尾が「何か」にぶつかり、虚空で止まる。
止めたのは、義透が振るった四天霊障。
だが、それは普段とは桁違いの大きさだった。
四天霊障は四悪霊の怨念を糧にして瞬時に膨張。尻尾を押し返し、巨大怪獣の体勢を崩す。
その僅かな隙を見逃さず、ブルーラビットの足場を蹴り、高く飛び上がる義透。
そして、振るわれるのは右腕に凝集させた四天霊障。
(悪霊のわしらは恨みを力へと変える……お前から受けた数多の辛苦。その恨みをまとめて返させてもらおうかの!)
死にも匹敵する激痛。再構築される体とて、痛みを感じないわけではない。
義透はこの一撃のために激痛をその身に受け続けたのだ。
そして、四悪霊に蓄積された膨大な怨念は、60メートル超の鉱石魔獣をも凌駕し――。
――ドゴッ!
エリクシアの無防備な腹部へと四天霊障が横薙ぎに振り下ろされ、無数の鉱石の欠片が虚空に飛び散る。
「グギャァアアアア!!」
腹部できる大きな陥没。大絶叫を上げ、後方に吹き飛ぶ巨大怪獣を、義透は見据え、すぐさま追撃に向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
水無月・ゆえと
①
アドリブ/連携歓迎
うぉぉ、小っちゃいのを倒したら、今度は随分でっかいの出てきましたねぇ…。どう戦うか難しいですが、ヴァルトリーに住む人達を守るために頑張りますよ。
今回もレッドラビットに乗り込んで戦いますっ。前回と同じように[黒鋼丸]は大砲に変えて火力アップです。
前回とは違い相手が大きいので、こんどは数で勝負です。UCでミニうさ達を呼び出してレッドラビットに乗ってもらい隊を結成しましょう。皆で四方八方に飛び回って、相手の攻撃を攪乱。その上で集中砲火をお見舞いです![結界術「銀兎」]を持たせて防御力も上げときます。
無傷とはいかないでしょうし、危ない時は位置を入れ替えて脱出しましょう。
義勇兵を乗せ後方支援を担う大型飛空艇「スマイル・ホエール号」の格納庫。
水無月・ゆえと(月兎の騎士・f29534)は格納庫の端で出撃準備を整えていた。
すると、小型飛空艇ショップの娘だという、整備責任者の少女が駆け寄ってくる。
「義勇兵の皆さんにお貸しした残りですが、すべてあなたにお預けします。壊しても構いません。どうかお願いします。わたしたちの街を守ってください!」
ガンシップならたとえ破壊されても修理すれば済むことだ。街が滅ぼされ、多くの人の命が失われてしまえば取り返しがつかない。すがるような瞳を向ける少女に、ゆえとは真剣な表情でうなずく。
「オレ、ヴァルトリーに住む人達を守るために全力で頑張りますっ! オレたちがいれば絶対に大丈夫。だから安心して待っていてください!」
少女を安心させたくて力強く宣言したものの、ゆえとも相手が強敵だということはわかっている。
だが、苦境に立たされる市民を守るのは騎士の務め。憧れの騎士のようになるため、ゆえとは覚悟を決める。
そして、ゆえとはユーベルコード『招集・忍者兎(コール・ラビットシーフ)』を発動させた。
「集え、影に潜みし同胞たち!」
招請に応じ、影から出現する数十体の忍者兎。
――我ら、忍者兎飛行隊!
そんな声が聞こえて来るほどに、ビシッと敬礼すると、忍者兎たちは我先にと赤い兎の機体に乗り込んでいく。
「レッドラビット、出撃しますっ!」
先陣を切って出撃したゆえとを追うように、忍者兎たちのレッドラビットが出撃ハッチから続々と空に飛び出していく。
「急ぎましょう! 一刻も早く前線に合流するのですっ!」
❖
『能天魔怪獣エクスシア』が暴れまわり混迷を深める戦域に、ゆえとが率いる忍者兎飛行隊が到着する。先制攻撃でゆえとが『黒鋼丸』で作った主砲を打ち込むと、巨大怪獣は興奮したように殺気を撒き散らし雄叫びを上げる。
――ギャオオォオオ!!
「みんな、行きますよっ!」
ゆえとは忍者兎たちに声をかけると、操縦桿を握りしめレッドラビットを加速させる。
(……とはいいましたが、敵は見えないビームを撃ってくるみたいですし……無闇に突っ込むのは危険ですね)
それなら空域をバラバラに動き回り、照準を絞らせないようにするだけだ。
ゆえとはすぐに忍者兎たちを敵の周囲に散開させ、四方八方から機銃を斉射させる。
――ドドドドドドッ!!
すると、巨大怪獣は棘が生えた尻尾を振り回して応戦。そのまま体を回転させ、周囲に風を巻き起こしながら索敵し――。
「ミツケタゾ!! オマエガ、ボスダナ!」
ギロリ。エクスシアの両眼が赤色に輝き、ゆえとのレッドラビットに不可視のビームが放たれる。
対するゆえとは『銀兎』で発生させた防護結界で防御。
ピシッ。敵の攻撃を一瞬受け止めるも、直後に結界に亀裂が入る。そして……。
――ドォオン!!
派手な爆発音とともに、一機のレッドラビットが爆散。
爆発の中から飛び出した影の兎が直下を飛行する仲間のレッドラビットに回収され、戦線を離脱する。
その様子を少し離れた位置から見守っていたゆえとは、安堵のため息をつく。
(まさか銀兎のバリアを破ってくるとは……「入れ替わり」が間に合ってよかった〜)
直撃を受ける寸前、ゆえとは少し離れた位置にいる忍者兎と位置を入れ替えたのだ。一機撃墜されたものの、その犠牲は無駄ではなかった。重要な情報が得られたからだ。
エクスシアはゆえとだけを狙って不可視のビームを放つ。
さらに攻撃の威力はバリアで機体を守れば、1〜2秒は耐えられる程度のものだ。
それは機首から『黒鋼丸』を回収し、忍者兎と入れ替わるのに充分な時間だ。
そして、ゆえとは一つの作戦を思いつく。
(これならもっと安全に戦える……オレたちの戦いはまだこれからですっ!)
❖
「ナンダ! オマエァアアア!!」
怒り狂った声を上げ、赤い瞳を明滅させる巨大怪獣。
だが、直後に放たれた不可視のビームはゆえとが搭乗する機体を捉えることはなかった。敵は混乱の最中にあったからだ。
標的の機体を発見したかと思えば、いつの間にか操縦席には真っ黒な偽物が座っている。
そう、ゆえとはレッドラビットで敵の周囲を飛行しながら、忍者兎との入れ替わりを繰り返しているのだ。
それは猟兵に殺意を向けるという、敵の特性を利用した巧妙な作戦だった。
そして、作戦の成功を確信したゆえとは攻勢に転じる。
「反撃の時間ですよっ!」
ゆえとはレバーを引き、フットペダルを踏み込んで『ターボジェット推進器』を起動。直後に物凄いGが体を襲うも、そのまま操縦桿とフットペダルを巧みに操作して急旋回を繰り返し、稲妻のような軌道で飛行する。
戦いの中で成長し、すっかり一人前のガンシップ乗りとなったゆえとは敵の攻撃を自分に引きつけながら、忍者兎たちに指示を出す。
「あの光る目に集中砲火ですっ! 撃てぇ!」
――ウゴォオオ!!
機銃の一斉射撃を受け、鉱石の欠片を撒き散らしながら、苦悶の声を上げるエクスシア。ゆえとも敵の攻撃をくぐり抜けながら大砲を連射し、着実にダメージを与えていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
これはまた…超巨大な奴が登場か
キャバリアを召喚している時間は…なさそうだ
こいつを止めなきゃ予知の通りになるというのなら…やってやるっ!
オーバーロード!
真の姿を解放し敵に挑む
真の姿は翼がある状態だから、それを活かし【空中戦】を挑む
勇士からの支援は③を依頼
敵の攻撃開始の合図である目が赤く光るのを確認したら、俺の前方に向けて砲撃してもらおう
相手の攻撃は不可視でも、実弾兵器に触れればその瞬間にその位置が把握できる
ついでに相手にとって目くらましにもなるだろうしね
俺は敵の攻撃を支援を受けつつ【残像】で回避
これだけ大きいとこちらの攻撃も限定的なダメージを与えるのみになりそうだが、他の猟兵達もいる!
皆で攻撃すれば撃破も可能なはずだ
敵の攻撃を回避しつつ詠唱時間を稼ぎ、UCを発動させる!
この一撃に全てを賭ける!疑似精霊達、俺達の全力をぶつけるよ!
相手の攻撃が不可視だろうと、それを貫通しながら敵へダメージを与えられるこの攻撃なら通用するはずだ!
ここでお前を倒し、悲劇が起こるのを防いでみせる!
●出撃
鳳凰院・ひりょ(f27864)は、バッドスクワイア・スクワッドとの激戦を共に乗り越えた勇士たちの飛空艇の船首に立ち、神妙な顔で『能天魔怪獣エクスシア』を見つめていた。
バッドスクワイアの襲撃を退けた矢先での巨大怪獣の襲来。後方支援を担うことになった多数の飛空艇の安全確保がようやく終わり、前線に合流できる状態となったのだ。
「行くぞ!」
気合を入れるひりょ。すると、彼の背後に立った船長が声をかけてくる。
「……行くのね」
「はい、決着をつけてきます!」
「アタシたちができるのは、ここで後方支援に徹することだけ……ゴメンなさいね……」
「いえ、皆さんの支援のおかげて俺たちは前線で戦えるんです。最後まで一緒に戦い抜きましょう」
そして、ひりょは彼らに後方からの支援砲撃を依頼する。
「それくらいお安い御用よ♪仲間の船にも声をかけておくわね」
❖
(キャバリアを召喚している余裕はない……俺が飛んで戦うのが手っ取り早いけど……)
わずかに胸をよぎる、ためらい。飛空艇の防衛戦でひりょの体力は消耗していた。
しかし、彼の瞳はこの状況下でも強い光を宿していた。
俺達は目の前にいる勇士たちだけではなく、ヴァルトリーの街に住む大勢の人々の命を背負っている。
グリモア猟兵の予知によると、あの巨大怪獣が街を蹂躙し尽くし、大量の死者が出る。
(あいつを止めなきゃ予知の通りになるというのなら……やってやるっ!)
その強い思いの力が、超克の力を喚び起こす――。
白と黒。ひりょの体から噴き出した二色の波動が螺旋を成し、全身を包み込む。
そして、ひりょの背中に漆黒の右翼と、純白の左翼が顕現し、真の姿へと変貌を遂げる。
「アナタ、その翼は……」
背後で船長が驚愕の表情を浮かべ何か言いかけたが、すぐに思い直したように笑顔で言葉を紡ぐ。
「行ってらっしゃい♪ ちゃんと生きて帰って来るのよ!」
「はい、行ってきます!」
ひりょは礼儀正しく言葉を返すと、甲板を蹴って空へと飛び立つ。
「あの子、大丈夫かしら……少し気負いすぎてる気がするわね……」
船長は遠ざかっていくひりょの背中を思案顔で見つめるのだった。
●暴走怪獣
自らの翼で大空を飛翔し、前線へと合流したひりょは、戦闘空域で暴れまわる巨大怪獣を見据える。
「グォオオオオオ!!」
背中の鋭利な翼を激しくばたつかせ、近くにいる者に手当たり次第に突進攻撃を仕掛けている。
野生の本能を解放したような捨て身の暴走に、空域で戦う猟兵たちは散り散りになっていた。
(まずはあの出鱈目な動きをなんとかしないとな……)
ひりょは敵の進行方向に立ち塞がり、とうせんぼするように両腕を広げる。
「次は俺が相手だ!」
堂々と名乗りを上げるひりょ。すると、殺気に満ちた黄色い瞳がターゲットを捉える。
「コロス! コロス! コロス!」
矛先を変えて突進してくる敵に、ひりょも正面から突っ込んでいく。
ぶつかる――寸前で急上昇。躱されたエクスシアはそのまま突進し、敵の頭上に逃れたひりょはその背中に破魔の力を帯びた護符を乱れ撃つ。
(狙いは翼だ!!)
――パリンッ!!
クリスタル鉱石の右翼の三分の一が破砕。巨大怪獣はそのまま空中でスピンしながら静止する。
だが、敵は全く動じてはいなかった。
「グガッ!!」
エクスシアは怒気を帯びた声を上げながら右翼を背中の鉱石で修繕すると、垂直に急上昇。
あっという間にひりょと同じ高度まで達すると、ひりょをギロリと睨みつけ、両眼が赤色に輝く。
――ドンッ、ドンッ、ドンッ!!
その瞬間、三方向から長距離カノン砲が放たれ、不可視の光線を遮る。
流線型の砲弾が光の波動に飲み込まれ、一瞬で破砕。それを視認したひりょは即座に反応。虚空に残像を映しながら不可視の光を躱すと、牽制に破魔の護符を乱れ撃ちながら敵との距離を取る。
(ありがとうございます。皆さん……)
ひりょは支援砲撃で自分を守ってくれた勇士たちに心の中で感謝する。
だが、それをきっかけに敵の攻撃は激しさを増していく――。
●援軍
「ウゴォオオオオオ!!」
雷鳴のような唸り声をながら、間断なく発射される見えない光の束。
鳴り止まぬ飛空艇の砲撃音。
弾幕のように飛び交う飛空艇のカノン砲の弾丸の助けを借りて、ひりょは不可視の光を難なく回避していく。
だが、エクスシアの両眼は赤色光が明滅し続け、攻撃が緩む気配はない。
躱しても躱しても次第に激しくなる攻撃に、ひりょは防戦一方に追いやられていく。
「くっ! あんなに連射されたんじゃ、反撃する余裕もないぞ!」
現状では牽制に護符を投げる程度の時間しかない。
その上、複数の飛空艇による砲撃も追いつかなくなってきていていた。
(まずいぞ……このままでは押し負ける……)
危機感を募らせるひりょを、敵の両眼が捉える。
そして、複数の砲口から不可視のビームが一斉にひりょに向けて発射され――。
――ドドドドドドッ!!
ビームの射線を遮るように打ち込まれた砲弾による弾幕。
不可視の光に砲弾が飲み込まれ、ひりょは寸前のところで攻撃に気づき、回避する。
砲弾の出処はいつの間にか戦域内まで侵入していた「大型飛空艇」だった。
――アタシたちの船は、主砲の長距離砲は一門だけど、副砲の中距離砲は二門あるのよ♪ こっちは連射もできるから弾幕も張れるわ!
聞き覚えのある船長の声が背後から聞こえ、ひりょは驚愕する。
「危ないですよ! 下がっててください!」
――あら、危ないのはアナタのほうでしょ♪ アタシたちはトモダチを決して見捨てない、愛と友情の空挺団なのよ!
男気(?)ある船長の言葉に呼応するように飛空艇の勇士たちの歓声が上がる。
無鉄砲な勇士たちだが、声を通じて熱い思いが伝わってくる。
彼らも俺と同じなのだ。目の前で傷つく人を見過ごせない。たとえ我が身を危険に晒しても誰かを守る。
ひりょは勇士たちの心意気に胸が熱くなる。
そして、ひりょは奮い立ち、両翼を広げる。
「弾幕、お願いします! 俺があいつの攻撃を絶対に止めてみせますから!」
力強く宣言すると、ひりょは大きく羽ばたき、敵の照準を絞らせないように急上昇と急降下を繰り返しながら、詠唱を始める。
だが、エクスシアは両眼を赤く光らせ、見えない光線を容赦なく放ってくる。
高速で飛び回りながらの詠唱は至難の業だった。
――主砲で牽制! 副砲で弾幕を張るのよ!
休息の暇もなく襲い来る不可視の光線に対し、後方から船長の指示が飛ぶ。即座にひりょの周囲に弾幕が貼られ、主砲から牽制の砲弾が放たれる。
さらに、後方から複数の飛空艇が発射した長距離カノン砲が飛来し、敵の照準をずらす。
まさに総力戦。ひりょを援護するために多くの勇士たちが動き、敵の猛攻を凌いでいく。
❖
そして、ひりょは長い詠唱を終え、巨大怪獣の不可視のビームを躱した直後に急上昇。太陽を背にして止まると、翼を広げて前方に両掌を突き出す。
(疑似精霊たちよ……俺にありったけの力を貸してくれ!)
ひりょの思いに呼応し、周囲に出現する膨大な数の疑似精霊。
何千、何万という疑似精霊が光の粒へと変わり、ひりょの両掌に集束していく。
火、水、風、土、光、闇。疑似精霊が放つ属性の光と、ひりょ自身から発せられる破魔の光。
すべての光が渾然一体となり、一つの光球を成す。それはこの世界を憎悪し、すべての命を蹂躙せんとする巨悪を滅する七色の光輝。
だが、膨大な力の奔流は、まるで術者を試すかのように暴れ出す。
(ぐっ! まだだダメだ! このままギリギリまで力を凝集するんだ!)
歯を食いしばり、暴発しそうになる光球を強引に押さえ込むひりょ。そして、彼の両掌で『精霊光照射(セイレイハカイコウセン)』が完成する。
「行くぞ! これが俺の最大火力だぁああああ!!」
魂の叫びとともに両掌の前で光が爆発し、敵に向かって押し出される七色の光線。
魔を滅ぼす強烈な光は、エクスシアが苦し紛れに連射した不可視の光を悉く突き破って直進し――。
――グギャァアアアア!!
大気を震わす大絶叫。七色の光線がエクスシアの巨躯に大穴を穿ち、その動きが止まった――。
静まり返る戦場。友軍の鬨の声が上がる。
それをきっかけに猟兵たちの総攻撃が始まり、巨大怪獣を圧倒していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・オブライト
☆
③合図は敵の姿が消え始めた瞬間
次はおまえらの番、か。そりゃいい
オレの世界だと、どうぞ倒してくださいってな意味だ
★作戦
③の金属製の砲弾が、展開した『覇気』を通過=触れた際に【Relic】奇跡解放
弾速・威力を引き上げるとともに『念動力』で誘導弾に変えておき
透明化した敵に一度は回避されるものとして、大技を放ち透明化解除した直後にUターンさせ意識外からぶちあてる
……
つまるところ、窮地を演出するほど気を緩ませやすい。やったか!? ってやつだ
敵UCの光球は『覇気』の『オーラ防御』と惜しげなく使うターボジェットで突っ切って、最低限凌げりゃいい
オーラ防御は主にマシンに回す。行きずりの縁とはいえ繊細な相棒なんでな
オレに関しちゃ「そのとき」に意識が確かなら十分だ(『激痛耐性』による『継戦能力』)
★作戦 成功時、敵に突き刺さった金属弾に雷を落とす要領で『属性攻撃(電気)』追撃
親近感が湧かねえでもねえピカピカ具合だが
そうやって壊せば壊れる限り、気のせいだったらしいな
※諸々歓迎
●死闘
――グォオォオオオオ!!
怒号のように響き渡る獣の叫び。
「オマエラ! ミナゴロシダ!!」
全長60メートルを超える巨大怪獣『能天魔怪獣エクスシア』は、その巨体を小刻みに揺らし、黄色の両眼をギラギラと輝かせ、戦域に猛烈な殺気を発散させる。猟兵たちとの戦いで体が損耗し、既に修復が追いつかなくなっていた。
それでもエクスシアは、一歩も引かずに広範囲攻撃を放つ。
青空の中に溶け込むように消えゆく体。そして、無数の光球が放射状に打ち出され――。
――ボボボボボボボッ!!
光球の威力はそれほど高くはないが花火のように弾け、周囲に光と衝撃波を撒き散らしていく。
そして、混迷を極める戦域に敢然と飛び込んでくるのは、一機の赤い機体。
「こいつはオレが止めてやる!」
そう力強く宣言したのは、カスタムタイプのガンシップ『レッドラビット』を駆るレイ・オブライト(f25854)だった。
(頼むぞ! 作戦通りにな!)
敵と距離を置いて機体を静止させたレイは電気を帯びた覇気を使って電光を放ち、一定のリズムで明滅させる。
飛空艇乗りの間で用いられている光の信号。それは事前に決めておいた『合図』だった。
――支援要請γ-L1を確認! 長距離カノン砲、一斉連射、撃て!!
作戦決行の合図を受け、後方支援にあたる多数の大型飛行艇から長距離カノン砲が絶え間なく発射される。
照準は発光するレイの周囲の空域。
後方からの砲撃音を聞いたレイは、「ハッ!」と歯切れのよい掛け声とともに覇気を上下左右に噴出させ、防護ネットのように展開。「覇気の網」が、後方から飛来する多数の砲弾を捕らえ――ユーベルコード『Relic(ワンダーラスト)』が発動する。
それは「聖者の奇跡」と呼ぶべき現象だった。
覇気の網を通じて伝達した「聖者の光」に包まれた金属砲弾は、流体のように波打ち、まるで生き物のようにその形状を変えていく。流線型の砲弾が紡錘形となり、やがて先端が錐のように尖る。
数秒後、聖なる輝きが砲弾に吸い込まれるように消失すると、レイの周囲には金属製のダートの群れが顕現する。
(『聖遺物』と呼ぶには少し不格好だが……使い勝手はよさそうだな)
念動力で操作できる「誘導弾」の出来栄えに、レイは口元をわずかに緩める。
そして、ダートの群れは自在に操作され、大空を縦横無尽に飛び回りながら、四方八方に散開。そのまま巨大怪獣を取り囲み――。
だが、敵の動きも迅速だった。
「ソンナモノ!」
ダートの群れの照準から消え、光球で迎撃する。本能的な判断でユーベルコードを発動。エクスシアは大気へと溶け込むように、その姿を消す。
(ただ消えただけだろうが!)
敵が直前までいた空間に向かって砲弾を一斉に放つレイ。
そのとき、突風がブオンと吹き、砲弾が空を切る。
――バカメ! オマエハ、モウ、ノガレラレナイ!!
少し離れた位置から声。透明化したままエクスシアは飛翔し、攻撃を躱したのだ。
そして、無数の光球が生まれ、嵐が起こる。
「何!?」
レイは思わず声を上げる。
光球の嵐。それは透明化したエクスシアが中心で錐揉み回転し、渦を巻くような軌道で光球を射出した結果だった。
(こんな奥の手を隠し持ってるとはな……オレはともかく、このままでは「相棒」がもたない……荒っぽい運転になるが、少し我慢してくれよ……)
この空域を離脱する。すぐに決断したレイは機体の周囲を覇気のバリアで包み込むと、『ターボジェット推進器』のレバーを引き、フットペダルをベタ踏みする。天使核エンジンが唸りを上げ、超加速した機体で嵐の中を突っ切っていく――。
❖
レッドラビットの防御は万全だった。
覇気の防壁が光球を弾き飛ばし、全くの無傷。
だが、レイは全くノーガードだった。
当然、光の球がガンガンぶつかり、光と衝撃波が全身に襲いかかる。
肉が裂け、骨が軋みを上げ、全身に激痛が苛む。
(ぐっ! だが、オレに防御は不要。ただ動けさえすれば、それでいい!)
レイは苦境の中でも微笑を浮かべているのだった。
❖
「ナンダ、コイツ、ワラッテイルノカ?」
そんなはずはない。コイツは気が狂ったのだ。
狂いながらもこの空域から離脱して、逃亡を図る愚かな敵。
逃さんぞ。お前はここで散るのだ。愚か者めが。
尚早な判断をしたエクスシアは回転を止め、レイを追撃するために再び実体を現す。
(かかったな!)
逆境に自らを晒し、敵の油断を誘う戦術。躱されたダートの群れはUターンし、敵の頭上で身を潜めていた。
そして、姿を表した巨大怪獣の全身に雨のように降り注ぐ、ダートの砲弾。
――ウギィイィイィイイ!!
鉱石の山を掘削するように鋭利な先端がザクザクと突き刺さり、苦悶の声が上がる。
そして、巨大怪獣はダートの尖った後端が「避雷針」のように全身の至るところから突き出す、無残な姿と化す。
これにて「作戦」の仕込みが完了。そして……。
「うぉおおおおお!!」
魂の叫びとともに、レイのヴォルテックエンジンがフル稼働し、膨大な電気を作り出す。さらに、覇気が体内で凝縮、高密度に圧縮され、膨大な電気を帯びた「覇気の砲弾」が充填されていく。
「ぐわぁああ!!」
突然、全身の傷が開き、体が千切れそうな痛みがもたらされる。
それでもレイは歯を食いしばり、その痛みを力に変換するかのように覇気と電気を蓄積。
そして、満身創痍の全身から、全力、全開の覇気が放たれ――。
スババババッ!! 覇気とともに迸る雷撃が大気を切り裂き、エクスシアの「避雷針」へと向かっていく。
――グギィイイイイイ!!
雷の直撃を受けたエクスシアは叫び声を上げながら、閃光を浴びた鏡面のように周囲に光を撒き散らす。
(そんな体でもビリビリには弱えらしいな。親近感が湧かねえでもねえピカピカ具合だが……うぐっ!!)
思考を途絶させるような激痛。光球の直撃を受け続けたレイの体も限界寸前だった。
(限界が近いな……だが、この一撃だけは叩き込む!)
拳を握りしめ、レイは眼光鋭く敵を睨みつけると、今度はレッドラビットに視線を落とす。
「悪いな、相棒……もう少し付き合ってもらうぞ!」
レッドラビットの機首を敵に向け、フットペダルを踏み込むレイ。
搭乗者に思いを背負い、赤い機体は急加速し、最後の突撃を敢行する。
そして、レイは操縦席から立ち上がり、右腕を大きく振りかぶった。
「グォオオオオ!!」
対するエクスシアは本能的に左腕を振り上げて迎え撃つ。
拳と拳の勝負。力と力のぶつかりあいに、レイの魂が燃焼する。
「そんなんじゃ、オレの拳は砕けねえぞ!!」
自らの魂をすべて込め、拳を繰り出すレイ。全身全霊の一撃。拳から火炎のように噴き出した凶暴な覇気がクリスタル鉱石の左腕を噛み砕き、魂の拳がエクスシアの鳩尾を打ち砕く。
――ギャァアアアア!!
絶叫。爆裂音。周囲に衝撃波とともに大量のクリスタル片が宙に飛び散り――。
ピシリッ。それは巨大怪獣の体に無数の亀裂が入った音だった。
だが、その瞬間、レイの視界がブラックアウトし、全身の力が抜ける。
(……今ので倒せたのかわからねえが……オレはもう、動けねえ……後は任せたぜ……)
最後の追撃に殺到する友軍の気配を感じながら、レイは「相棒」のパイロット・シートに背をあずけ、満足げに微笑を浮かべる。
それはまさに己の限界を超越し、強大な敵を超克した「死闘」だった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『港町を満喫しよう』
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POW : 食べ歩きで名物料理に舌鼓を打つ!
SPD : 商店街で買い物三昧!
WIZ : 観光スポットで異文化体験!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●凱旋
港湾都市ヴァルトリー。
機能性重視の無機質な建物が並ぶ工業地区から一歩出ると、街並みは一変する。
赤茶けた煉瓦葺きの切妻屋根と真っ白な漆喰が塗られた壁。明るい配色の建物が並ぶ、清潔感のある街並み。街を東西に貫く石畳のメインストリートは住民と勇士たちで賑わい、活気に満ち溢れていた。
そして、未曾有の危機を乗り越え、歓喜の只中にある街に猟兵たちは凱旋する。
「よおっ、勇士さん方、ありがとよ!」
「今晩はうちのお店で祝勝会を開きますので、是非参加してくださいね♪」
「屋台広場に来いよ! おいらの鉄板焼き、たらふく食わせてやるぜ!」
「オレっちのガンショップに寄ってくれよな! いい銃を選んでやるからさ」
「剣は銃よりも強し。近接武器がほしくば、ワシのところに来るがいい!」
「……あ、あの、瓶詰めのお肉いりませんか?」
「兄ちゃん、グライダーで一緒に遊ぼーよ!」
「トリック・オア・トリート! ヴァルトリー・バザールではハロウィンフェスを開催中です!」
初対面の猟兵たちにも気さくに声をかけてくる住民たち。
脅威から解放された港町は、帝国の軍勢の撃退に多大な貢献をした猟兵たちへの歓待ムードに満ちていた。
ところが、神聖ザストリア帝国の脅威(?)はまだ去っていなかったのである。
●暗躍
平穏な日常を取り戻しつつある街の大通りを怪しげな人間たちが闊歩していた。
一見して港湾都市に立ち寄った勇士の一団。しかし、その実体は帝国魔道士が密かに街に潜入させていたバッドスクワイア・スクワッドの悪ガキどもである。
「あー、面倒くせーな!」
「魔道士サマの術で人間に化けたのはいいけど、正直お手上げだよな……」
「若い娘が『核(コア)』を持ってるってだけで、手がかりはそんだけだろ?」
「わかるわけねぇじゃん。無理ゲーっす!」
魔道士の術で人間の姿に化けてはいるが、中身は悪ガキのままだった。
当然、核(コア)の捜索がスムーズに行くはずもなく……。
「まあ、いっか。その辺にいる若い女を片っ端から締め上げて吐かせようぜ!」
「いや、ここは慎重に動かないと、奴らクッソ強えみてえだし……」
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
早くも暗礁に乗り上げる悪ガキたちの会議。
そして、当初の目的を逸脱し始める。
「それにしても、ここ賑やかな街だな……」
「この機会に遊んじゃおうぜ!」
「オイラは、いたずらしちゃうもんね!」
「おっ、それいいアイディアだな。この街で騒動を起こせば、核(コア)を持った娘も出てくるよな!」
「うんうん、過程はどうであれ、終わり良ければすべて良しだぜ!」
かくしてその場のノリで話がまとまり、悪ガキたちは行動を開始する。
ちなみに、帝国の戦艦はドゥルガル島の周辺空域から既に撤退している。
要するに、悪ガキたちは全く期待されていない、ただの「置き土産」に過ぎなかったのである。
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《補足》
●報奨金
『能天魔怪獣エクスシア』を撃破したことで、エクスシアの遺骸を戦利品として入手できました。遺骸からは巨大天使核や純度が高い良質なクリスタル鉱石が産出され、街は潤ったようです。
このため、迎撃戦に参加した義勇兵たちに、一人20G(20万円)の報奨金が出ることになりました。
これでヴァルトリーでの買い物や食事に困ることはありません。お金のことは気にせず港湾都市を楽しみましょう。
●ヴァルトリーの主要な施設
【メインストリート】
◆大通り沿いの自由市場『ヴァルトリー・バザール』
・ヴァルトリーに集まる物品を売買する自由市場。
・露店では食料品の他に、魔獣の素材を使った装飾品や工芸品も販売されています。
・現在ハロウィンフェス開催中。通りを歩く人々はフェスの仮装をしているので、ハロウィンの仮装をして歩くことが可能です。
◆屋台広場
・自由市場のある大通りの先にある噴水広場に、屋台がずらりと並んでいます。
・魔獣食材を使ったB級グルメが食べられる屋台村です。
・デートスポットとしても人気で、大食らいの勇士たちも大勢集まって大食い大会を開いてたりします。
【常設店舗】
・店主オススメの商品を紹介してくれるお店。
◆小型飛空艇ショップ『Peaceful Sky』
◆ウェポンショップ『男の刃』
◆ガンショップ『マスケット・ガンナー』
◆雑貨屋『木漏れ日』
【その他】
◆勇士が集う酒場『梟の止まり木』
・祝勝会開催中。元勇士のマスターが経営するガッツリ食事もできる酒場。
・店には小さな舞台があり、弦楽器を弾く吟遊詩人や踊り子が芸を披露しています。
◆居住区
・街に住む人々の家があります。子供が広場で遊んでたりします。
◆図書館
・本がたくさんあります。
◆港湾施設
・大型飛空艇が停泊しています。
●描写について
この場所でこんなことをしたい。誰とこんなことをしたい。こんな状況になったらこういう行動をする……といった行動をプレイングに自由にお書きください。それを反映させたシーンを描写します。
・NPCが話しかけてきたり、ちょっとしたハプニングもあるかもしれません。
・悪ガキたちが各地で小さな騒動を起こしていますが、基本放置でも問題はありません。
・特定のNPCと積極的に交流したい場合には、プレイングにお書きください。
・食べ歩きや酒場で飲食をする場合には、好きな食べ物(お酒)、苦手な食べ物、食べたいものなどをお書きください。
(ヴァルトリーで入手できる食材で作れる、好みに合った料理が出てきます)
・未成年の飲酒は不可です。酒場ではノンアルコール飲料(果汁、ミルク、お茶など)が供されます。
●簡易記号(文字数節約にどうぞ)
○=好きな食べ物
✕=苦手な食べ物
★=好き嫌いなし(おまかせ)
補足は以上です。第三章は👑(王冠)が少ない日常フラグメントなので、お二人目の方のプレイング返却期限前日くらいが受付締切日になると思います。
プレイングの受付状況はタグにてお知らせ致します。それでは第三章もよろしくお願いします!!
❖屋台広場〜ヴァルトリーガイド①〜
自由市場の大通りを抜けた先にある噴水広場。
そこは種々雑多な料理を提供する屋台が所狭しと立ち並ぶ、「屋台広場」となっていた。
造船業で栄える港湾都市ヴァルトリーには、小型飛空艇の仕入れに訪れる大商人や飛空艇の整備に立ち寄る勇士たちによって古今東西から豊富な食材がもたらされる。穀物や野菜、果物、そして勇士たちが持ち込む魔獣。家畜の肉も流通しているが、岩場が多く、牧草地が少ないドゥルガル島では高級品だった。
当然、庶民の胃袋を満たすのは「魔獣食材」となる。
ビースト肉、バード肉、フライングロブスター……魔獣食材はヴァルトリーでは大まかに分類した名称で呼ばれ、一般的な食材として浸透していた。
そして、今日も屋台広場にはお腹を空かせた人々が集まっていた。
ビースト肉料理の屋台の前に長蛇の列を作る屈強な男たち。
広場に点在する木製のベンチで料理を食べさせあう仲睦まじい男女。
大きな籠を持って広場を歩き回り、パンやお菓子の移動販売をする行商人。
最近出店が増えているスイーツや美容にいいドリンクの屋台には、おしゃれな雰囲気の女性たちが集まっている。
――私たちは、老若男女、どんな方でもご満足いただける屋台広場を目指しています。ヴァルトリーにお立ち寄りの際は是非お越しくださませ!
それはヴァルトリー商人連盟の会長イルザ・フランクの言葉。やり手の会長の指揮の下で屋台広場は日々発展を続けているのだった。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
★(激辛・激甘な食べ物でなければ大抵美味しく食べられます!)
あちこちら漂ってくるいい匂い
これは堪りません
オーバーロードで全力を出したのもあるし【大食い】な所も刺激されて…
よしこうなれば食べ歩きといこう!
屋台広場を練り歩きつつ、殺気の戦いで怪我した勇士の方がいたら生まれながらの光で傷の手当てをしてあげよう
おぉ?大食い大会をやってるんですか!
それは参加しないわけにはいかないね!
今回は一人で来ているし少しくらい羽目を外してもいいだろう
ガンガン食べまくるぞ~♪
屋台村制覇するくらいのつもりで食べ歩いた後、生まれながらの光で回りを回復したせいか、またお腹が減ってきたから大会も万全だ!ふふっ♪
●食べ歩きと傷ついた勇士
「船乗り焼きそば、一皿5C(カッパー)。ウマさ、安さ、ボリューム、三拍子揃った庶民の味方。初めての人は是非お試しあれ!」
「スカイシュリンプボール、8個3C。外はカリッと中はトロトロ、スカイシュリンプのプリプリの食感は癖になるぜ!」
「ビースト肉のもつ煮込み、1杯5C。これぞ、おふくろの味。コラーゲンたっぷりで美容にもいいよ!」
屋台広場にやって来た鳳凰院・ひりょ(f27864)は客引きの声に釣られるように次々に屋台を渡り歩き、港湾都市のB級グルメを堪能していく。
そして、ひりょは噴水近くのベンチに座り、定番料理に舌鼓を打とうとしていた。
彼の膝の上には木製のトレイ。その上にはビースト肉の串焼きが乗った木皿と、蓋付きのカップに入ったアイスティー。
「うまいっ!」
少し硬めだが、脂が乗った良質な肉。フルーティなBBQソースとの相性も抜群で、行列ができるのも納得の味だった。
「さすが定番料理……このお茶も爽やかでいいなぁ……」
ひりょは串焼きを食べながらアイスティーを飲み、夢心地でつぶやく。
アイスティーはお茶の名産地セイルン島の茶葉を使ったフレーバーティー。鼻孔をくすぐるハーブの香りが、心も体も穏やかにしてくれる。
「そろそろデザートも欲しいな……」
串焼きを食べ終えたひりょはデザートの屋台を探し、周囲を見回す。
そのとき、近くを歩いていた勇士の一団から突然、悲鳴が上がる。
「腹が、腹がぁああああ!!」
「おい、大丈夫か!?」
「面目ねえ……食いすぎて腹の傷が開いたようだ……」
男は戦闘で負った腹部の傷が塞がる前に羽目を外しすぎたようだ。
食べ過ぎで膨らんだ腹部から鮮血が迸り、着衣が血に染まっていく。
「こいつはやべぇぞ! 誰か医者を呼んでくれ!!」
「大丈夫ですか?」
手負いの男に駆け寄ったひりょは男の手を握り、ユーベルコード『生まれながらの光』を発動する。聖なる光が男の体内に流れ込み、その傷を癒やしていく。
「あれ? 痛みが消え……傷も、治ってる?」
不思議そうな顔でひりょを見つめる男。目の前で起こった「奇跡」に仲間の勇士たちも呆然としている。
「傷が浅かったようですね。もう大丈夫だと思います……それじゃ、俺はこれで……」
ひりょは騒ぎになる前に踵を返して人混みに紛れると、小さく安堵のため息をつく。
(あの人、もう少しで手遅れになるところだったな……助かってよかった……)
グゥゥ……。それはひりょのお腹が鳴った音だった。
重傷患者の治療で体力を消耗したせいだろう。そして、彼が空腹を満たすために次に訪れたのは――。
●大食い大会
「さあさあ、今日も始まりました。賞金5Gをかけた大食い大会! メニューはヴァルトリーのジャンクフードNo.1と称される『ビースト肉饅頭』。参加者は総勢15人の猛者たち。ルールはとてもシンプル。30分で最も多く食べた者が優勝となります」
司会の饅頭屋の店主が手慣れた様子でルール説明を行う。
店先に並べられた長テーブルの前には、大食い自慢の参加者が座り、眼前の大皿に山のように盛られた肉饅頭を見つめていた。
「美味しそうな肉まんだな♪ ガンガン食べまくるぞ~♪」
ウキウキした気分で開幕を待つひりょ。彼の腹部は既に獣のような唸り声を上げている。戦闘準備は万全。そして、大食い大会の火蓋が切られる――。
❖
「限界だぁあ!」
「おーっと。またもや脱落者がでました! エントリーNo.14のマルケスさん、20個目で脱落。またの挑戦、お待ちしておりまーす!」
ハイテンションで実況する店主。大食い大会を見守る観衆から失望の声が上がる。
特大サイズの柔らかい饅頭の中に隠された、こってり濃厚な肉団子。
その圧倒的なボリュームを前に、参加者たちの胃袋はすぐに限界に達し、続々と脱落していく。
そして、最終的に残ったのは、ひりょと前回チャンピオンのサミュエルだった。
サミュエルは王都でもその名を知られる大食いファイターだった。
今回の優勝もサミュエルだろうというのが、大方の予想だった。
ところが……。
(うまいっ! ハーブとスパイスが適度に効いていて飽きがこない味……ふわふわの皮をかじるとジュースのように溢れ出る肉汁……これならいくらでも食べられるぞ!)
ひりょは満面の笑みを浮かべ、肉汁たっぷりの高カロリー肉饅頭を両手に持ってバクバクと食べ続ける。
大食いファイターのサミュエルはその食いっぷりに圧倒され、手が止まる。
(ずっとうまそうに食ってやがる……こいつの胃袋、底無しかよ。咀嚼力もハンパねえ。こいつの顎の筋肉どうなってるんだよ……うぷっ……ペースを上げすぎたか。このままじゃ「リバース」しちまう……)
公衆の面前での「リバース」は大食いファイターとして一生の恥。
リバースの結果、引退に追い込まれたファイターもいるほどだ。
観衆には悪いが、この勝負は降りるしかない。
「ギブアップ!!」
サミュエルは片手を上げて降参を告げる。
すると、観衆から万雷の拍手とともに、歓声が上がる。
「すげっ!! サミュエルに勝っちまったぞ!」
「誰だ、あいつは!」
「あいつ、まだ喰ってるぜ! すごすぎる……」
大番狂わせに騒然とする観衆をよそに、ひりょは大皿の上の肉饅頭を食べ続け――。
「ここで決まりました! 優勝者は……」
「おかわり、お願いします!」
手を上げて、おかわりを申請するひりょ。食べるのに夢中で優勝したことに気づいていないのだ。
「なんと! ここでチャンピオンのおかわり宣言だ! ウイニングランならぬ、ウイニングイート! これは前代未聞だぞぉおお!」
「「「おぉおおおお!!」」」
優勝してもなお、底知れぬ食欲を見せつける新チャンピオンに、会場は異様な盛り上がりを見せる。
こうして大食い大会は優勝者一人による前代未聞の延長戦に突入するのだった。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
引き続き『侵す者』にて
霹靂と陰海月も呼び出して、食べ歩きをするか。
…さて、如何する?(四人で一人なので、好き嫌いがバラバラしている)
え?今回はわしに合わせると?…最近、わしに譲ったりするの、多くないか?
(一番働いたからと押し切られた)
◯肉、餅
✕セロリ
こうなるのよなぁ。どうしてもセロリはの…生前(狼獣人)、鼻が効きすぎた弊害というか。
餅は、(顎にくっつかなくなったため)今になって食べられるようになった。
肉なら、骨付き肉とかもあると良いのだが。陰海月が食べやすい。
※
陰海月、串とお箸が持てないため、骨付き肉の方がいい。ぷきゅ。
霹靂、お皿に乗ってたら食べられる。お酢が苦手。クエクエ。
●骨付き肉
「まるで魑魅魍魎の大行列だの……」
メインストリートを通り抜け、露店広場にやって来た馬県・義透(f28057)は、周囲を行き交う人々の姿に目を見張る。今はハロウィンフェスの期間中。露店広場にもハロウィンの扮装をした人々が大集合していたのだ。
「クエッ、クエ♪」
「ぷきゅ♪」
フェスの賑やかな雰囲気に、霹靂と陰海月も楽しげな声を上げる。
四本脚で力強く大地を踏みしめて歩く霹靂と、義透の肩の上をふよふよと浮遊する陰海月。
幸いにも一行はハロウィンフェスの会場に違和感なく溶け込んでいた。
「さて、まずは霹靂と陰海月にうまいものを食わせてやらんとな」
そして、義透たちがやって来たのは骨付き肉専門店『ワイルド・ライフ』。そこは野性味溢れる勇士たちで賑わう屋台だった。
「へい、いらっしゃい!」
威勢がいい声で出迎えたのは、魔獣の毛皮で作った服を着こなす中年男。
常連客から『ワイルドおやじ』と呼ばれる彼は、口の周りにワイルドな無精髭を生やし、熱気の中で骨付き肉を焼いていた。
販売されているのは『骨付きビースト肉』と『骨付きバード肉』の2種類。
上下から骨が突き出た塊肉が、鉄板の上でジュージューと音を立てて焼かれ、食欲をそそる匂いを醸し出している。
(ん? これは……)
義透は骨付き肉の「骨」に違和感を持つ。
その視線に気づいたのか、ワイルドおやじはバツの悪そうな顔をした。
「本来は家畜の骨付き肉で作るんだが、この街では高価だからな。骨は代用品だ」
魔獣の骨は非常に硬いことから、武器や防具、飛空艇の建材などに利用されている。
食用にされるのは肉と内蔵だけである。
そこで、この店ではパスタ生地を筒状にしてカリカリに揚げたものを骨の代用にし、これに厚くスライスしたビースト肉を巻き付けて焼いたものを「骨付き肉」として提供しているという。
「オレらの祖先は狩猟民族だ。その時代からワイルドな男たちは骨付き肉にかぶりついていたことだろう。串焼きより何倍も手間がかかるが、オレの野生の本能がこの骨付き肉に凝縮されてる。味は保証するぜ!」
ワイルドおやじは持論を熱く語ると、親指を立ててニヤリと笑う。
骨付きビースト肉が1本5C(カッパー)、骨付きバード肉が1本4C。庶民に優しい良心的な価格だ。
「ではわしの分と……連れの分を3本ずつもらおうかの」
「クエッ」
「ぷきゅ」
義透の背後から顔を出す霹靂と陰海月。ワイルドおやじは、珍しい客の来訪にも全く動じずにサムズアップ。
「おう! おめえらのためにも、張り切って焼かせてもらうぜ!」
十数分後。義透一行は店の近くのベンチに座り、骨付き肉を食すことにした。
「これはなかなかに美味だの」
味付けは岩塩と胡椒のみ。
良質な肉を使い、素材の旨味をしっかりと味わえる野性的な骨付き肉だった。
これには陰海月と霹靂もご満悦だった。
「ぷきゅ、ぷきゅ♪」
骨付き肉を食べながら空中で踊るようにクルクルと回る陰海月。
「クエッ、クエッ!」
木皿に取り分けて貰った骨付き肉を夢中でつつく霹靂。
義透はそれを満足げに見守りながら骨付き肉を頬張るのだった。
●餅
なごやかな食事を終え、義透がベンチから立ち上がると、行商人とおぼしき姉妹が視界をよぎる。
「もちもちのお饅頭いかがですか〜。美味しいですよ〜」
「もちもちのお饅頭です〜。1個3Cです〜」
20代前半くらいの黒髪の姉妹。背中に行商の大きな籠をかつぎ、のぼりには「もちもち饅頭」と書かれていた。
立ち売り箱に商品を乗せ、売り歩く姉妹の表情には疲労の色がありありと浮かぶ。
声も元気がない。どうやらほとんど売れていないようだ。
「ひとつもらおうかの」
「はい! ありがとうございます!」
義透が声をかけると、姉妹は目が覚めたように応対する。
そして、もちもち饅頭を試食する義透を姉妹は食い入るように見つめていた。
(ほう、これは大福じゃの……餅より少し柔らかくもっちりしとるようだが、中にはちゃんと餡子も入っておるな。餡子は草色……鶯餡か……甘過ぎず、味も申し分ない。これが何故売れんのか……)
その理由を尋ねると、姉妹は表情を曇らせた。
「この街の人、もちもち米を食べる習慣がないみたいなので、警戒されてるみたいです……」
もちもち米は東方にある辺境の浮島で栽培されている特産品。当然、この街の人々は餅を見たことすらない。
他の島から来た行商人は警戒されやすい。行商人から「怪しげな食べ物」を購入する物好きはほとんどいないのだろう。
ヴァルトリーでもちもち饅頭の店を出すという夢を掲げ、遠方からやって来た姉妹は途方に暮れていた。
(これはどうしたものかの……)
しばらく思案に耽る義透。すると、唐突に背後から子どもたちの歓声が起こる。
義透の後ろで大人しく待っていた霹靂と陰海月に、天使の仮装をした子どもたちが群がっていた。
「わー、ヒポグリフだ〜」
「すげー。オレ、初めて見た!」
「こっちのクラゲさんもかわいい♪」
「ねぇ、ねぇ。おじさん、この子たちに触ってもいい?」
「えー、危ないよー」
「危なくないよ。この子たち優しい顔をしてるもん!」
ドゥルガル島では工業化が進み、島内での移動や輸送は専ら小型飛空艇が担っている。
当然、騎乗に用いる幻獣や天馬を飼育する牧場もない。
子どもたちは絵本でその存在を知ってはいても、実物を見ることはほとんどないのだろう。
瞳を輝かせる子どもたちに義透がうなずくと、子供たちは礼儀正しく並んで順番に霹靂と陰海月をなでていく。
「羽毛がふさふさしてるね♪」
「クエッ♪」
「わぁぁ……こっちはぷよぷよしてて、気持ちいい〜」
「ぷきゅ〜」
霹靂と陰海月を囲んで笑い合う子どもたち。大人気の霹靂と陰海月もまんざらでもなさそうだ。
笑顔に溢れる少年少女を静かに眺め、義透は口元を緩める。
(こうして童らが笑って過ごせる世を守るのも、わしらの役目だからの……そうだ、この童らに……)
ふと思いつき、義透は違う場所に移動しようとする姉妹を呼び止めて「もちもち饅頭」を大量に購入すると、集まった子どもたちに配っていく。
「「「おじさん、ありがとー!」」」
そして、子どもたちは「ハロウィンのお菓子」を次々に口に運ぶ。
「わぁ、もっちもち〜」
「甘くて美味しいね♪」
「これ、すごくのびるよ! のびのびー」
新食感のスイーツを楽しげに味わう好奇心旺盛な子どもたち。この様子なら口コミでもちもち饅頭の知名度も上がるだろう。
『侵す者』は好物の餅を頬張りながら、姉妹の大福屋の屋台が繁盛する光景を思い浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
水無月・ゆえと
絡み/アドリブ歓迎
〇甘いモノ
危機は去って、お金はある。とくれば、まずは腹ごしらえですよねぇ。
通りを散策しながら美味しそうなものを適当に食べあるこっと。
お腹が満たされたら今回お世話になった飛空艇でも見に行きましょうかぁ。
色んな種類があるんでしょうし、一通り説明してもらいながら、これだ!というものを買っちゃいます。
買った飛空艇でそのまま空を散歩が出来たら楽しそうだなぁ。
適当に日暮れまで時間を潰したら、雰囲気の明るい酒場でご馳走を食べながら一日を締めくくりたいですね。
特に「魔獣食材」は食べたことがないので、おすすめの料理とお酒を口にしながら酒場の人達と地元の事とか色々お喋りしちゃいます。
●ヴァルトリー・バザール
「危機は去って、お金はある。とくれば、まずは腹ごしらえですよねぇ」
そんなわけで、古今東西からヴァルトリーに集まる物産品を販売する自由市場『ヴァルトリー・バザール』にやって来た水無月・ゆえと(月兎の騎士・f29534)。
ハロウィンの仮装をした人々でごった返す大通りは、活気に溢れていた。
通り沿いを彩る野菜や果物。魔物の牙や爪を素材にした装飾品や工芸品。魔獣を模したと思しき、怪しげな彫像なんかも販売されている。まさに種々雑多な品物を取り扱うバザールだった。
ハロウィンフェスのためスイーツの出店も多く、ゆえとの好みの食べ物もすぐに見つかった。
「これ一つください!」
「おおっ、これもいいですねぇ!」
そして、ゆえとは「ビーストワッフルサンド」と「プルプルミルクティー」を購入して食べ歩く。
プルプルミルクティーは、お茶の名産地セイルン島の茶葉を用いた紅茶、ヴァルトリーでは貴重な家畜のミルク、そして魔獣から抽出したコラーゲンで固めたプルプルのゼリーを浮かべたドリンク。
ビーストワッフルサンドは、カリふわのワッフルにカスタードクリーム、ミルククリーム、酸味が強い木の実を挟んだ甘党の勇士に好評のスイーツである。栄養満点の魔獣の卵を使用しているため、疲労回復効果もあるという。
ワッフルサンドは勇士の食欲に合わせてビッグサイズだったが、甘い物好きのゆえとはあっという間に平らげてしまう。
「おいしかったな。次は何を食べようかなぁ」
ゆえとはその後も食べ歩きを楽しみ、次なる目的地に向かう。
●ガンシップを買おう!
続いてゆえとが訪れたのは小型飛空艇ショップ『Peaceful Sky』。
三階建ての建物の一階にある展示コーナーに入ると、かなり若い女性店員が出迎えてくれた。
ちなみに店員の姉は、スマイルホエール号で出会ったレッドラビットの整備責任者の少女エマ。彼女は帰って来て早々、どこかに出かけてしまったという。
「当店では『戦場をキュートに飛び回れ』をコンセプトにしたカスタムガンシップ『Zooシリーズ』を販売しています」
そして、店員はゆえとをオススメ商品の元へと案内し、滑らかな口調で解説してくれる。
一機目は、機動性重視のレッドラビット。
大空を自在に飛翔する兎型ガンシップです。武装は最小限ですが、ターボジェット推進器(「天使核ロケットエンジン」を改造)での高速飛行が可能です!
二機目は、攻撃力重視のイエロータイガー。
「携行式魔導砲」を改造した主砲を備え、攻撃力を強化した虎型ガンシップです。魔獣をどんどん撃ち落とせます!
そして三機目は、防御重視のグリーンリザード。
硬質な「魔獣の鱗」の特殊装甲でボディを覆うことで、耐弾・耐久性能を強化したトカゲ型ガンシップです。
機動性、攻撃力では他の機種に劣りますが、機銃を食らった程度ではビクともしません!
「当店のオススメはこの三機種です。ボディの色はお客様のお好みの色に無料で塗装致します。装備は他の機種にもオプションで搭載可能です。機体名はご自由におつけください」
オプション装備には「フックショット射出装置」もある。大型飛空艇に牽引してもらうときなどに使えるという。
さらに、この三機種は帝国との戦いで大活躍した義勇兵たちに「特別割引価格」で提供しているという。価格を尋ねると、報奨金でギリギリ足りる金額だった。
そして……。
「ではこの船を買います!」
一通り見て回り、説明を聞いたゆえとは意中のガンシップの購入を決断する。
❖
「夕日が綺麗ですねぇ」
夕焼けに染まる空を飛翔するカスタムガンシップ。
ゆえとは機体の試運転をしながら、雲海の上に浮かぶ夕日を見つめていた。
乗り心地も快適だった。これで報奨金はほとんどなくなってしまったが、後悔はない。この景色を特等席で見ることができたのだから。
ゆえとは夕日に照らされた真新しい機体を自在に操縦し、日が暮れるまで空の散歩を楽しむのだった。
●酒場
ゆえとは激動の一日の締めくくりに、勇士たちで賑わう酒場を訪れる。
奥の小さな舞台では吟遊詩人が弦楽器を爪弾き、優しい歌声を披露していた。
「よおっ! 兄ちゃん、今日はありがとな!」
常連客の勇士たちに声をかけられながら店の奥へと移動し、カウンター席に座る。
「どうしようかな……おすすめ料理ってありますか?」
注文に迷ったゆえとは、カウンターに立つ屈強なマスターに尋ねる。
「魔獣肉初心者なら、ビーストステーキがいいだろうな。酒はどうする?」
酒の種類は、火酒(蒸留酒)、黒い麦酒(エール)、果実酒。
果実を発酵させて作る果実酒は口当たりがよく、オススメだという。
「ビーストステーキと果実酒をお願いしますっ!」
注文してからしばらくして厨房の扉が開き、ウエイトレスが熱した金属板に盛りつけられた料理を持ってくる。
「お待たせしました。ビーストステーキです。熱いので、気をつけてお召し上がりくださいね」
「いただきますっ!」
そして、ゆえとは小さな容器に入ったソースを分厚いステーキの上にかける。
金属板の上で沸騰するソースと香ばしい肉の匂いが鼻孔に届き、食欲をかきたてる。
ゆえとは欲求の赴くままにナイフで一口サイズにしたステーキを口に入れ――。
「おいしい……」
感嘆の声を漏らす。魔物のワイルドなイメージとは程遠い上品な味。ソースの適度な酸味が肉の脂っこさを緩和し、香草の爽やかな香りが肉の臭みを消している。下処理も丁寧に行っているのだろう。料理人の技量の高さを感じさせる一品だった。
「うまいだろ。うちのカミさんが裏で作ってるんだよ。これができた女でさ……」
「パパ、お客さんの前でのろけないでよ!」
先ほどのウエイトレスが慌ててたしなめる。
「ご家族でお店を営んでるんですねぇ。あちらのウエイトレスさんもですか?」
ゆえとは忙しそうに立ち働くもう一人のウエイトレスに視線を向ける。
「双子の妹なんです。私がマイ、妹がアイです。それから父がサム、裏で料理をつくってる母がマリーです。4人家族で毎日、店を切り盛りして……って私なんで家族紹介してるんだろ?」
首をかしげるマイ。どうやら天然が入ってる子らしい。ゆえとは小さく笑うと口を開く。
「じゃあ、オレも自己紹介しようかな。水無月ゆえとです。よろしくねっ」
「おう! ゆえと、よろしくな!」
「なんでパパが割り込んでくるのよ!」
「おっ、親子喧嘩勃発か? いいぞ、もっとやれー」
店の常連客が冷やかしの声を上げ、赤面するマイ。マスターのサムは何喰わぬ顔で仕事に戻る。これが酒場の日常風景だった。
「ふふふっ、皆さん、仲がいいんですねぇ」
こうしてゆえとは果実酒を嗜みながら地元の人や勇士たちとの交流を存分に楽しみ、夜はなごやかに更けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・オブライト
まずは守れた街の活気に安堵
死に放題とはいえ、先の深手が元通りといくには時間がいる
報奨金を受け取っちまったからには、精々この街に還元しようと
ぶらりと歩く
特に、マシンを借りた店には挨拶を。初のフライトにゃピッタリだったってな
悪ガキが騒ぎを起こしていればとっつかまえる。必要なら『覇気』で脅す
が、流血沙汰は避ける。こちとら疲れてんだ
おまえらみたく無尽蔵にはしゃげるガキじゃあなくてな
欲しいもんには対価を払え
ベンチに座っておとなしく飯を食うと約束出来るなら代わりに払ってやる。勿論「出来るか」見張る。金の使い道はそんなもんでいい
で、パパとママはいつ迎えにくるんだ?
等、軽く探りも入れて
※飲食はしない。他歓迎
●エンジェル焼き
「せっかくだから街を見て回るか……この報奨金も、街に還元するのが筋だろうしな」
街で無事に蘇生したレイ・オブライト(f25854)がやって来たのはハロウィンフェスに賑わうメインストリート。
大通り沿いを埋め尽くす露店に集まる人々の表情は一様に明るく、帝国の襲撃がまるで夢であったかのようだ。
街を守りきれたことに安堵し、口元を緩めるレイ。
すると、天使の扮装をし、小さな荷車を引いて菓子を売り歩いていた少女が駆け寄ってくる。
「これエンジェル焼きっていうんだよ♪ 今日はハロウィン限定のクリームなの。1個3C(カッパー)だから食べてみて!」
エンジェル焼き。それはこの街の人なら誰もが知る「ウイングレイズ冒険譚」に登場する「黒き翼の巫女」を刻印したカスタードクリーム入りの焼き菓子だった。少女は菓子屋の娘。今日は家業の手伝いをしているのだという。
「悪いな。オレは食わねえんだ。他を当たってくれ」
レイは即座に断ったが、少女はなおも食い下がる。
「それなら贈答用にどう? エンジェル焼きは老若男女に愛されてるお菓子だから、みんな喜ぶと思うよ♪」
贈答用。レイはその言葉でこれから向かうべき場所を思い出す。
「土産も必要か……そんなら、そこにあるやつを全部もらおう」
「ぜ、全部!? 100個くらいあるけど、お金大丈夫?」
「ああ、金ならここにある」
レイは袋から金貨3枚を取り出し、少女に渡す。
少女はしばし呆然とし、やがて満面の笑顔を見せた。
「お買い上げ、ありがとうございます!」
●姉と妹
エンジェル焼きを大人買いしたレイは、小型飛空艇ショップ『Peaceful Sky』を訪れる。
今日の相棒――赤い兎のガンシップ――を借りた礼をするためだ。
しかし、彼を出迎えたのは義勇兵を輸送する飛空艇でガンシップの整備を担当していたエマではなく、店員として働いている妹のサラだった。
「お姉ちゃんですか? 帰ってきて早々、買い出ししなきゃって出て行っちゃったんですよ。最近、様子がおかしいんですよね。休憩時間に屋上で兄から貰った『希望の石』をずっと見てるし……あっ、もしかして……」
サラは何かに思い当たったかのように、表情をこわばらせる。
(どうやら込み入った事情があるらしいな。オレにはどうでもいいことだが……)
レイはお土産が入った袋をサラに渡すと、踵を返す。
「一応聞いとくが、この辺りの連中は買い出しをするときに、どの店に行くんだ?」
背中を向けたまま尋ねるレイ。サラは戸惑いがちに答える。
「……多分、裏通りの雑貨屋だと思います。あそこに行けば旅の準備に必要なものは全部揃うから……」
「そうか、少し覗いてみるか」
そして、レイは店から出て通りを歩き出す。すると、サラが慌てて追いかけてきた。
「あの、お姉ちゃんに会ったらこれを渡していただけますか?」
息を切らせながら、サラがレイに差し出したのは四つ折りにされた便箋だった。
●悪ガキの目的
「泥棒だ!! そいつを捕まえてくれ!」
「誰が捕まるかよバーカ! どけどけ! 邪魔する奴はぶっ殺すぞ!」
道すがら、屋台村を通りかかったレイは騒ぎの現場に遭遇する。
周囲の人々を威圧し、乱暴な言葉を投げかけながら布袋を背負って逃げ出す男。
それは勇士風の服装をした小柄な男だった。
(変装してるようだが、あいつ、オブリビオンだな……)
即座に判断し男の前に立ち塞がるレイ。
そして、突っ込んでくる男を受け止め――。
「ぎゃっ!!」
その頭をむんずと掴んで持ち上げる。ジタバタする男。すると背後から女性店主の声が響く。
「こっちは食い逃げよ! 捕まえてー!」
「またか! お前、仲間だろ? 止めてこい!」
レイは逃げる男に向かい、捕まえた男を豪快に投げ飛ばす。
「ぶべしっ!!」
衝突。そのまま地面に倒れ伏す男たち。
そこへ被害者の店主二人が駆け寄ってくる。
「悪いが、こいつらはオレが預からせてもらうぞ」
レイは店主たちに代金を多めに支払ってやると、そのまま悪ガキ二人を引きずっていく。
❖
「ほら、大人しく座って食えよ。腹が減ってるんだろ?」
屋台村の一角。休憩用のベンチに縮こまって座る二人の小柄な男。
レイはその隣で腕を組み、保護者のように座っていた。
(おいおい、どうすんだよ……やべー奴に捕まっちまったぜ)
(コイツ怖えよ……逃げようとしたらぜってー、頭を握りつぶされる!)
バッドスクワイアの悪ガキ二人はガクブルしていた。
「お前ら、ここで何やってんだ? 観光か?」
「か、観光です……」
「なら欲しいもんには対価を払え、わかったな」
「わ、わかりました……」
「で、お前らのボスはいつ迎えにくるんだ?」
「え? ボスですか?」
「お前らのボスは、お前らを置いてとっくに帰ったぞ」
「……」
絶句する悪ガキAとB。まさかの事態に落ち着きを失った悪ガキBは突然立ち上がる。
「いや、核(コア)を手に入れれば絶対に迎えに来てくれるはず!」
「ば、バカッ! 何しゃべってんだよ!」
「そうか、お前らの目的はそれか……詳しい話を聞かせてもらおうか?」
眼光鋭く悪ガキたちを凝視し、レイは尋問を始めるのだった。
●雑貨屋
メインストリートの大通りから少し外れた裏通り。
この通りの先には雑貨屋『木漏れ日』が営業していた。
控えめな性格の店主が営む雑貨屋は、普段は物資の補給に立ち寄る勇士たちで賑わっている。
だが、今日は帝国の襲撃のおかげか、客足はほとんどなかった。
薄暗く閑散している裏通り。そこへ一人の男が歩いてくる。
それは勇士風の男に変装したバッドスクワイアの悪ガキだった。
「くそっ、道に迷ったぜ! ここ、どこだよ!」
すると、こちらに歩いてくる少女の姿が視界に入る。小型飛空艇ショップの長女のエマである。
それは偶然の遭遇だった。男は鼻をひくつかせ、目を見開く。
「これは核(コア)の匂い! おーい、そこの女!」
嬉々とした表情でエマに突撃していく悪ガキ。
だが、悪ガキは脇道から飛び出してきたレイに阻まれ――。
――ドゴッ
出会い頭の一撃を食らい、吹き飛ばされる。
「やれやれ、大当たりかよ……オレは勘が鋭いほうじゃないんだがな……」
レイは嘆息し、通りの先で身を固くするエマに視線を向ける。
街に潜入した悪ガキどもは『核(コア)』と呼ばれる黒水晶を持つ少女を探していた。黒水晶は暗黒のオーラを発しており、一定距離まで近づけば感知できるものだという。もしエマが持つ「希望の石」が核(コア)ならば狙われるに違いない。
そう直感し、レイは即座に動いたのだ。
「あなたは義勇兵の……」
「今はただの配達人だ。これはあんたの妹からの預かりもんだ……」
レイは言葉少なに要件を告げて便箋を渡すと、気絶した悪ガキを引きずりながら去っていく。
「一体、こいつら何匹いるんだよ。こちとら疲れてんだぞ……」
成り行きで悪ガキどもの「御守」をすることになったレイは、顔をしかめるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
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❖旅立ち(After Episode)
鳩を模した船体を持つ大型飛空艇『ラブリー・ピジョン』のデッキでエマは妹の手紙をじっと見つめていた。
お姉ちゃん、パパとママのことは私に任せて、旅を楽しんできてね。
それからお兄ちゃんに会ったら、そろそろ家に帰るように伝えてね♪
店の便箋に走り書きのような文字で書かれた短い手紙。それはまるで旅行に送り出すような文面だった。
突然家を出ていく姉を一切責めることなく、妹は送り出してくれた。
「もうサラは大人だね……お姉ちゃん、これから先、どうしたらいいかわからないよ……」
こぼれ落ちる弱音。あれほど夢見た空の旅なのに、エマの気分は晴れなかった。
それも仕方がないことだ。これから先、エマは帝国の刺客から逃げ続けなければならないのだから。
エマは首から提げた黒い石を強く握りしめる。
太陽にかざすと虹色の輝きを放つ黒水晶。それをエマたちは「希望の石」と呼んでいた。
しかし、現実は全く逆のものだった。
――あなたがこのまま故郷に留まれば、帝国は核(コア)を狙って何度もやってくるでしょう。さあ、旅に出るのです。勇士の空挺団の一員として!
エマは謎の女の声を思い出す。彼女はアイリスと名乗った。
それは「ウイングレイズ冒険譚」の「黒き翼の巫女」と同じ名前。
かなり胡散臭い。その名前を名乗ればわたしが喜ぶとでも思っているのかもしれない。この女は「魔女」だ。わたしに呪いをかけたのだ。
「こんな『呪いの石』、わたしはいらない!」
そして、エマはペンダントを外し、黒水晶を雲海の中へと投げ捨て――られなかった。
それは今まで何度も試みたことだ。だが、そのたびに彼女の中の「魔女」が干渉し、それを阻むのだ。
「どうして……どうしてわたしなの?」
苦悶の表情でつぶやくエマの中にアイリスの気配が現れ、涼し気な声が届く。
――あなたは天命を持って生まれてきたのです。あなたの魂は私の魂と同調し、重なり合っています。今のあなたは私であり、私はあなたでもあります。天に与えられた「使命」が終わるまで、この接続は切れることはないでしょう。
「使命ってなんなのよ!」
――私たちは勇者の導き手。ただここに存在し、勇者を待てばいいのです。
「それって蒼空の翔剣士のこと?」
エマは冒険譚の主人公の二つ名を口にした。
――この世界にはもう蒼空の翔剣士はいません。しかし、神聖ザストリア帝国を打ち破る力を持つ者は存在します。
「それが勇者?」
――そう、あなたも目の当たりにしたでしょう。あの強大な魔獣を凌駕した特異な力を持った者たちを。
「あの人たちが……」
エマは巨大鉱石魔獣に勇猛果敢に立ち向かった義勇兵たちの姿を思い浮かべる。
――勇者は私たちが危機に陥ったときに必ず現れ、救いの手を差し伸べてくれるでしょう。彼らなら帝国の野望を阻止できるはず……。
「それってすごく他力本願な気がするんだけど……」
――蒼空の翔剣士と黒き翼の巫女の時代はとっくに終わっています。私は彼らの手を借りるのが最善だと判断しました……はぁ、少し疲れましたね……私はそろそろ休ませてもらいます……。
唐突にエマの中でアイリスの気配が途絶え、霧散する。眠ったのだ。
「もう! 話の途中でなんなのよ!」
一人ポツンと残されたエマは苛立ち紛れに叫ぶ。
「フフフッ、元気そうね」
「ドミニク船長!」
「あら、今までみたいにドミニクさんでもいいのよ♪」
「そうはいきません。今日からわたしも団員です。できることはなんでもしますから!」
自分のせいでこの船のみんなを危険に晒すことになる。エマは快く迎え入れてくれたドミニクと空挺団の団員たちに少しでも恩返しをしたかった。
「アナタは負い目を感じる必要はないのよ♪ これはアタシたちが決めたことだから」
「でも……」
エマはそれ以上言葉を続けれらなかった。彼らは「魔女」に操られているかもしれないのだ。
ドミニクは「希望の石」を見せた途端、いままで見たことがないほど真剣な表情になり、エマの旅立ちのために懸命に動いてくれた。それは不自然なほどトントン拍子に進み、ドミニクはエマの父親にエマを「修行の旅」に出すよう直談判までしてくれたのだ。
「……見くびってもらっては困るわね。アタシたちはトモダチを決して見捨てない、愛と友情の空挺団なのよ! そうでしょ、みんな!」
「「「うぉおおお!!」」」
男気(?)のある船長の声に続き、二人の様子を固唾を呑んで見守っていた船員たちから鬨の声が上がる。
――私は彼らに何もしてませんからね〜この船の皆さんはただのお人好しなだけですよ〜
さらにアイリスが眠たげな声で補足する。
杞憂だったことを知り、エマの双眸に涙が溢れる。
「ありがとう……皆さん、ありがとうございます!」
「もちろん、アナタにはしっかり働いてもらうわよ。アタシたちの空挺団専属の飛空艇技師としてね♪」
「はい!」
こうして猟兵の『導き手』の少女エマの旅が始まる。
それは猟兵たちと神聖ザストリア帝国との熾烈な戦いの幕開けに過ぎなかったのである。